女神達の奇妙な冒険 (戒 昇)
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設定集

初めまして戒昇という者です、処女作ですのでいたらぬ点があるかと思いますがどうぞ宜しくお願いします、今回は主人公の設定のみとなります


名前:比屋定 承一(ひやじょうじょういち)

出身地:沖縄県

所属学校:音ノ木坂学院2年生

年齢:17歳

誕生日:2月1日

好きな物:お菓子全般、優しい人 

嫌いな物:他人を傷つける奴全般 

スタンド:第一話にて発表 

 

性格は基本的に穏やかで誰にでも優しいが、自分以外の者を傷つけようとすると激昂する為若干直情タイプである

両親:父親とは死別、母親は沖縄に住んでいる 

身長:177cm

体重:64kg

趣味:スポーツ全般(とにかく体を動かせるなら何でもいいらしい)、料理

 

容姿はわりと整っているがイケメンの自覚はない(むしろ平凡クラスだと思っている)住居は学院から歩いて十分程度の所にあるマンションの五階で一人暮らし

 

「μ’s」メンバー

高坂穂乃果

μ’sの発起人でありリーダーを務める、常に笑顔で行動力に満ちている

 

園田海未

μ’sの作詞担当、穂乃果、ことりとは幼なじみである

 

南ことり

μ’sの衣装を担当している、穂乃果、海未とは幼なじみである

 

星空凛

明るく活発で、体を動かすのが好きな少女

 

小泉花陽

凛と幼なじみ、内気でおとなしいがアイドルが大好き

 

西木野真姫

μ’sの作曲担当、実家が総合病院のお嬢様

 

絢瀬絵里

音ノ木坂学院元生徒会長、才色兼備なロシア系クォーター

 

東條希

音ノ木坂学院元生徒副会長、神田明神で巫女のバイトをしている

 

矢澤にこ

「にっこにっこにー」が合言葉のアイドル志望者 

 

「スタンド」 

一部の者だけが使える特殊な能力の総称、名前の由来は「傍に立つ(Stand by me)」から

能力は人それぞれにあり、スタンドの像も人型なり本体やほかの物質と融合するなど様々にある

 

「ドッペルゲンガー」

「南海トラフ大地震」の発生から数ヶ月が経ったころよりたびたび目撃される様になった怪現象、当初は幻覚やただのネットの嘘情報と言われていたが「ドッペルゲンガー」が襲ってきたなど被害報告が発生した為本格的な調査が行われてがいまだに解決にはいたっていない

 

「南海トラフ大地震」

2014年1月21日の未明に発生した巨大地震、東海地方(神奈川、静岡、愛知)に数十mの津波が押し寄せ死者2万1345人、行方不明者数万人にもおよぶ大災害となった、しかし当初の予定被害を下回ったのはこれまで繰り返し行われていた防災訓練と政府の迅速な対応があった為と報じられ、結果的にそれまで国際的信用が低かったのが震災後再び信用があがり国際支援を受けられた為震災復興が大幅に進む結果となった、しかしその裏であまりにも順調な為「政府がおこした人工地震」などの都市伝説も生むことになった

 

 




以上が設定となります、次回の更新は一週間後ぐらいになります(多分)


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第1章 スタンド覚醒編
第1話 その出会い、始まり


設定集だけで三人のお気に入り登録ありがとうございます!!早速ですが記念すべき第1話です


「ピピピ、ピピピ」

 

目覚まし時計の音が鳴り、眠気を感じながら体を起こす。

 

「せっかくの日曜日なのに学校に行くのかよ...」

 

正確に言えば転入手続きをする為に行くのだが眠気には勝てず、頭から布団をかぶり目覚ましを取って時間を見たら

 

「8時40分…」

 

確か「明日9時までに来てくださいね」て言われていた気がするな…て、ことは…

 

「遅刻じゃん!!!!」

身支度をして朝食も食べず家を出る。

とんだ初日になりそうだ…やれやれだ。

 

 

 

階段をのぼり、横断歩道を渡ると目の前に立派な門が見える。

 

「ここが音ノ木坂学院か」

 

明日から卒業まで通う学校を前にしてそう呟く、ここは数年前に共学化した伝統ある女子校「国立音ノ木坂学院」、共学化したのは近くに新しい設備がある「UTX学院」ができたのと少子高齢化の影響によって廃校寸前になったからだという

 

「世知辛いものだな、しかし…」

 

共学化したといえ、まだ男子の数は圧倒的に少なく今年度は俺も含めて4人ぐらいだといっていたな…別の意味で不安になったぜ。

 

 

職員室に行き、そこから理事長室へ案内された。

 

「ここかな」

 

何とも重々しくいかにも偉い人の部屋!という扉の前にいる訳だか、故郷にいた時はこんな所に来たこともないから余計に緊張するな、けど突っ立てもしょうがない為、意を決して「コンコン」と二回ノックをする。

 

「どうぞ」

 

と女性の声がしたので恐る恐る中へ足を踏み入れる、すると椅子に座っていた人が立ち上がって自己紹介をしてくれた。

 

「ようこそ音ノ木坂学院へ、理事長の「南 日向」です」

 

「宜しくお願いします」

 

美人だ・・・20代くらいと言っても嘘に聞こえないほどだ、自分が想像していたのとまるで違う。しかし一つだけ気になることがある…あのトサカに見える部分はどうなっているのか、何かに針金でも仕込んでいると言われても信じてしまうぞ。

 

 

「はい、これで大丈夫ですよ」

 

転入手続きの為の書類を書き終え、それを理事長先生が一つ一つチェックしてくれて今ようやく終わった所になる。

 

「まだ慣れていないから分からないことや困ったことが

あったら何でも相談してね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

トサカの事はまだ気になるけどいい人でよかった、これなら楽しく過ごせそうだ。そう思っていると南さんが真剣な表情をして尋ねてきた。

 

「ところで、比屋定君バイトとかする予定はあるの?」

 

「いえ、やるつもりはまだないですね」

 

「そう、なら良かったわ」

 

「…何でですか?」

 

「ここ最近、良くない噂や不審者がいるみたいだからもしするのなら気をつけてね」

 

「分かりました、けど大丈夫ですよ」

 

不審者か…やっぱり東京にはそういうのがいるのか、仮に来たとしても俺には誰にも言えないある「力」があるから平気だけどな。

 

 

 

 

午後12時半、手続きを終えちょうどお昼時になった。実は地元以外でご飯を食べたことがなく密かに楽しみにしていたのだ!どこかいい場所がないかブラブラしていると一つの看板が目に入った。

 

「ん、「GOHAN‐YA」?…定食屋か」

 

定食なら減りに減ったお腹を満たせるだろうし入ってみることにした、店内に入ると店員の元気な声が聞こえた。

 

「いらっしゃいませ!空いているお席へどうぞ!」

 

(なかなか人が入っているな)

 

奥の席に座り、メニューを開く。うむ和洋中全て揃っているのかどれにしようか…

 

「すいません、ハンバーグ定食のご飯大盛りで!」

 

無難なのを選んでしまったがいいだろう、でもから揚げ定食も魅力的だし餃子定食も捨てがたい…いや、さすがに食べすぎだな。

 

 

「お腹いっぱいだ~」

 

漫画に出てきそう大盛りのご飯をようやく平らげ、箸を置く。腹が苦しいがハンバーグも小鉢に付いてきたきんぴらも美味しく予想以上に満足になった。 

しかし、お腹の具合も良くなったら軽くジョギングでもしてこようか…太るのだけは勘弁だからな。 

 

「ここが秋葉原か、思ってた以上だな」

 

さすがオタクの街と言われるだけある…周りを見渡しても人、人、人だらけで頭痛くなりそうだ。

ある程度観光をしようと思ったけど、予想だにもしない混雑で家であるマンションに帰ろうと思い、踵を返した。

しばらく歩いた所で、少し離れた角から鞄を抱えていている男と、それを追いかけている人影が飛び出してきた。

 

男の腕には似つかわしくない青い鞄が抱えられていて、しきりに後ろを見て前方にいる俺には気付いていないようである。まぁどこから見てもひったくりだな…

 

「やれやれ…だな!」

 

その男に対して、自分の力…「スタンド」と呼ぶ力を発言させる、それは全身を灰色と黒色のロングコートで覆われ、背中には身の丈ある巨大な「大剣」が背負われていて頭部には西洋甲冑のような兜を被っている人型スタンドである。その「スタンド」が右拳で近くにあった自動販売機の横にあるゴミ箱を殴る。

 

「どけどけ…うわ!!!」

 

その瞬間、男の足元に何本かの空き缶が集まっていき、それを踏んでしまい男は頭から盛大に転び、手から離れた鞄が宙を舞う。

 

「よっと」

 

それを両手でキャッチし、男を追いかけてきたと思われる女の子に手渡す。その人はオレンジ色の髪色に頭の片側に髪を纏めていて、学校の帰りだろうか制服を着ていた。

 

「はぁ…はぁ…あ、ありがとう!!」

 

「いやいや、礼はいらないよ」

 

「そんな事ないよ、あ!お礼をさせてよ!」

 

「え…?いや、だ、大丈夫だから…」

 

「ダメ!!するの!!」

(拒否権がないのかよ!)

 

「自己紹介がまだだったね、私高坂穂乃果!よろしくね!」

 

太陽みたいな明るい笑顔を見せてくれた彼女との出会いが、俺の運命を大きく変えてしまうことになるなんて、この時は思いもよらなかった。




いかがだったでしょうか、感想ご意見お待ちしています
スタンド紹介
スタンド名:「アウタースローン」
本体:比屋定 承一
破壊力‐B、スピード‐C、射程距離‐B
持続力‐C、精密動作性‐D、成長性‐A
能力
本体が指定した物質に別の物質を集める能力
指定するのは何でも良いが、集められる物質は射程距離内のものに限られる
集められるのは気体固体液体どれでも可能


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第2話 その名は「μ’s」

感想・お気に入り登録ありがとうございます!今回はスタンドは出てきませんが見ていただければ幸いです、それでは2話始まります


「うう…つ、疲れた」

 

あれから「お礼」という名目で、色んな場所に連れ回された挙句「この町に引っ越してきたばかり」と言ったら「秋葉原周辺の案内」に切り替わってしまい余計に歩くハメに…不用意に相手に情報を与えてはいけないこと身をもって知ることになるとは、それで今どこにいるかというと…

 

「お待たせ~お茶とお饅頭持って来たよ~」

 

「ありがとう、早速頂くよ」

 

彼女、高坂穂乃果さんの家に来ている。女の子の家に行くのは初めてだし、何より知り合って間もない男子を家に上げるのはどうかと思ったので最初は断ったけど、これまた強引に押し切られ今に至るという。

それにしても…

 

「美味しいなぁ、饅頭は初めて食べたけどこれほど美味しいなんて」

 

「え!?初めてなの?」

 

「うん、地元にはあまりなかったからな」

 

「そうなんだ~でも沖縄出身ていいなぁ、海とか綺麗そうだもんね」

 

自慢じゃないけど海の綺麗さならどこにも負けないけどね!と危うく言いかけてしまう。

 

「でも、高坂さんの方が羨ましいよ、こんな美味しい和菓子を毎日食べれるなんて」

 

「ムム~~」

 

ハムスターよろしく両頬を膨らまさせてジト目で睨まれてしまう…何か気を悪くする事でも言ってしまっただろうか…

 

「高坂さんじゃなくて、穂乃果でいいよ!」

 

「で、でも知り合ってばかりなのに名前呼びは・・」

 

「じゃあ、私も承君て呼ぶから穂乃果て呼んで!」

 

「え!?わ、分かったよ・・・穂乃果」

 

「うん!これからよろしくね!」

 

押しが非常に強い彼女だけど、不思議と嫌な気分にならないのはなんでだろうな・・・そこが良い所なのかな。

それから穂乃果のお母さんにお土産として饅頭の詰め合わせもらい、自分の家に帰った。

 

 

 

~~~~~~****~~~~~

 

 

 

翌日

音ノ木坂学院に初登校する日、真新しい男子用の制服に身を包み家を出る、因みに朝食は済ませてある。

 

「7時半前か、これなら大丈夫だな」

 

昨日のように時間ギリギリは大変だからな、いつもより早く出たのだ…!

心の中でドヤ顔を決めた所で目的の場所に着いた。

校門をくぐると、桜の木が並ぶ道が眼前に広がり、心が踊り若干浮き足気味で校舎の中に入る。

職員室へ行き、そこで担任となる先生が自己紹介をしてくれた。

 

「2‐Aの担任の「山田博子」だ、これから宜しくな」

 

「比屋定承一です、宜しくお願いします!」

 

「うむ、元気がいいのはなりよりだ」

 

先生もいい人だな、やっぱりこの学校で良かったなと思っていると、山田先生が立ち上がる。

 

「さて、そろそろ教室へ行くか」

「はい」

 

職員室を出て、すぐに目的の教室へ着いた。

 

「じゃあここで待ってくれ、呼んだら入ってきてくれ」

 

「分かりました」

 

そう言って、先生が先に教室に入る。

 

「お前ら、早く席につけよ」

 

「さて、知っているとおもうがこのクラスに転校生が来るぞ!」

 

そう言った時、教室内がざわつき始める。

 

「どんな人だろう~」

「カッコイイ人かな~?」

 

今ハードルが凄く上がった様な気がする…この状況ではとても入りにくいと思っていたら先生の声が聞こえた。

 

「じゃあ、入ってきていいぞ!」

 

…この状況で入れとは鬼畜の所業でしかないと思う、しかし呼ばれてしまったから仕方ない、意を決し扉を開け教室に入ると…

 

「カッコイイ~!!」

「スラっとしてる~~!」

 

顔から火どころかマグマが吹き出そうなくらい恥ずかしかったが、入った以上逃げる訳にはいかない…

ぎこちなく歩き、先生の横まで移動する。

 

「静かにしろ~とりあえず自己紹介してくれ」

 

「は、はい!」

 

「えーと、この度音ノ木坂学院に転入した「比屋定承一」と言います、体を動かすことが趣味です!

これから卒業まで宜しくお願いします!」

 

そう言うと教室から拍手が送られてきた、何とか第一印象は大丈夫そうだな、拍手に混じって「二の腕見せて欲しい…」や「腹筋が板チョコみたいになっているかな…」て聞こえたきたが気のせいだろう。

 

「じゃあ席は・・と、高坂の後ろが空いているからそこだな」

(・・ん?高坂?、ま、まさかな)

 

「あーーーー!、承君だーー!」

(やっぱりだ・・・この先やっていけるか早速不安だ)

 

 

 

 

~~~~~~~****~~~~~

 

 

予鈴の音が鳴り、一時間の昼休みが始まる。

 

「半分ぐらいしか終わってないのに疲れたなぁ~」

 

あれから休み時間になる度に、穂乃果や他のクラスメイトから質問攻めにされ、それをかわすのに精一杯で授業に全く集中できなかった。でもこんなことは初めてで新鮮だからある意味良かったかも…一つ気がかりなのは質問攻めの中で俺のことを遠巻きで見ていた二人組がいたぐらいかな…

 

「ちょっと良いですか?」

 

噂をすれば何とかだな、その二人組みの青い髪の子が俺に話しかけてきた。

 

「良いよ、何だい?」

 

「いえ、ここでは場所を移しましょう」

 

「・・・?、分かった」

 

よく見ると後ろに穂乃果とグレーの髪色の女の子がいるんが見える。

しばらく青い髪の子に着いていき、到着したのは学院の屋上だった。

 

「そろそろ理由を聞かせてもらってもいいかな?」

 

「単刀直入に聞きますが、あなたと穂乃果はどういった関係ですか?」

 

「へ…?どうって」

 

「何故穂乃果があなたのことを名前で呼んでいるのですか?!」

 

「それは、昨日彼女がそう呼んでくれって言われてから・・・」

 

それを聞いた瞬間、その娘は俯いてしまい頭を抱えて小声で何か呟くと、勢い良く顔をあげる。何故か頬が赤くなっていたが…

 

「まさか…あの「ストーカー」の仲間か何かですか…?」

 

「…?」

 

突如として発せられた言葉に理解が追い付けず、何も言えないでいると、その娘は笑顔になり静かにゆっくりと近づいて来る。

 

「無言は肯定と受け取らせて貰いますよ…フフ

  …覚悟はできていますか…?」

 

RPGに出てくるボスの様な雰囲気を出し、目が全く笑っていない笑顔で距離を詰めてくる。

後退りしようにも屋上の鉄柵に当たり、逃げることが出来なくなってしまう。

その時、穂乃果さんが俺たちの間に割り入ってきた。

 

「待って待って、海未ちゃんストップ~~!」

 

「穂乃果?!何故庇うのですか!?今から制裁を・・・」

 

「承君は昨日、穂乃果を助けてくれたんだよ!」

 

「え…?」

 

それから、穂乃果さんは昨日あったことをすべて二人に説明してくれて誤解が解けたらしく、今は四人でお昼を食べている。

 

「すいません、比屋定君、誤解とはいえあやうく危害を加えてしまう所でした」

 

「気にしなくていいよ、すぐに説明しなかった俺にも非があるわけだし」

 

「ことりも、誤解しちゃってて・・」

 

この二人は「園田海未」さんと「南ことり」さんといって、穂乃果の幼なじみらしくさっきの行動は彼女を心配してのことらしい、だからあんなに怒っていたのか…

 

「正直、友達の為に怒れるのはとっても羨ましいよ」

 

「そ、そうですか・・?」

 

「ああ、ところで一ついいかな?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「あの「ストーカー」て言ってたけど、どういう事なの?」

 

その言葉を発した時、穂乃果も園田さんや南さんも不安気な表情が見えたのだ、思い出したくない…そんな声も聞こえそうな程だったのだ。

 

「そ、それは・・・」

 

「海未ちゃん、思い切って承君に話してもみても良いんじゃないかな?」

 

「しかし、関係のない彼を巻き込むのは…」

 

「私も承一君なら、話してもいいと思うよ」

 

「ことりまで…」

 

「……分かりました」

 

そう言って俺の方に3人とも向き直る。

 

「実はね、私たちあるグループにいるんだよ」

 

「あるグループ?」

 

「聞いたことありませんか?一年前に起きた震災の復興の為に歌っているグループを」

 

「聞いたことはあるな…確か…」

 

「「μ’s」だよ、承君」

 

これが俺の数奇な運命が始まりであり、この都市…東京を蝕む巨悪との戦いの序章ともなる……

 

 

 

 

 

~~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

某所

 

とあるマンションの一室…電気もつけず真っ暗な室内に一人の人物が壁を前にして座り込んでいた。

 

「ククク…おもしろい力が手に入ったぞ、これで彼女を…いや彼女達を俺の物とすることができる。

 ああ愛しの「μ's」…待っててくれ…今迎えに行くよ……」

 

虚ろな男の瞳は、壁一面を覆い尽くすほどの「μ's」のメンバーが写る写真に向けられていた。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?今回は2000字越えになりましたね・・・疲れました、三話の内容は九割完成しましたので早い内に投稿したいと思います
感想、ご意見等引き続きお持ちしています!


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第3話 メイビス・シャドウその①

早いですが、3話の投稿です。今回から新たなスタンドがでます


「うーん…」

 

今は昼休み後の5時限目の授業の最中である。本来集中すべきであるが、俺は数十分前のことで頭が一杯だった

 

「君達があの「μ’s」なのか!?」

 

「うん!もしかして気付かなかった?」

 

「名前ぐらいしか知らないから、わかんなかったよ…」

 

「無理もありませんね、東京を中心に活動していますし…」

 

「遠征ライブも、被災地ぐらいしか行ってないものね」

 

まさかテレビなどで話題が持ちきりの人たちに生で会えるなんて、しかも同じ学年の同じクラスなんて普通の人なら喜ぶ所なんだが…

 

「それにしても、「ストーカー」がいるなんて…」

 

「「「……」」」

 

三人とも下を俯いて黙ってしまった・・

 

無理もないと思う、ただでさえ学院との両立で忙しい上に悪質なストーカーがいるとなると、ストレスが溜まる何て物じゃない…下手をすれば疑心暗鬼に陥って、外に出られなく可能性だってあるかもしれない。

 

すると、俯いていた穂乃果が顔をあげる。

 

「お願い!私たちを…「μ’s」を助けて欲しいの!」

 

「ほ、穂乃果…」

 

「穂乃果ちゃん…」

 

穂乃果の話を要約すると、数ヵ月前から現れ始めたらしく、最初の頃はライブの度に9色の花束を送っていて熱心なファンだと思っていたが、その内ライブが終了した後、こっそり自分達の後をつけて歩くようになったという。

メンバーの中には、家の近所まで付いてきたこともあったことも話してくれた。

 

「なるほどな…」

 

「最近では、ライブを開く度にそのことが気がかりになってしまい集中ができませんし…」

 

「なりより楽しいはずのライブが楽しめないのが一番辛いよ」

 

それを言う南さんはとても悲しそうな顔をしており、見ているこちらも胸が痛む気持ちになる。

それと同時に、その「ストーカー」に対する怒りの様な感情も沸いてきた。

 

そこで、俺はある提案を思い付いた。

 

「・・・次のライブはいつやるんだ?」

 

「明後日の8日の水曜日に、学院の講堂でやるよ」

 

「なら俺も一緒に行っても大丈夫か?」

 

「「「え~~~!!!」」」

 

「前もって準備するより、ボディーガードみたいに着いていったほうがいいだろ」

 

「しかし、それではあなたにも危害が…」

 

「なにある程度の護身術は身につけてあるから問題はないよ」

(いざとなったらあの「力」もあるしな)

 

「それに本当に危なくなったら警察でも呼べばいいしね」

 

「ありがとう~~!!」

 

いきなり穂乃果が俺に向かってダイブをしてきたので咄嗟に両手で受け止めた。

 

「あ、あぶないだろ」

 

「だってだって、本当に嬉しかったんだよ!今までずっと不安だったからッ!」

 

そう言った穂乃果の体は若干震えており本当に怖かったと感じられ、俺はまだ見ぬストーカーに対して、静かな怒りを感じていた。

 

 

 

 

~~~~~~*****~~~~~

 

 

 

放課後

 

俺はとある一室に向う為、広い学院内を歩いていた。

 

「メモ用紙に書いてあるのはこの辺なはずだけど、それらしいのは…ないな」

 

あの後、穂乃果から「みんなに承君のことを紹介したいから放課後部室に来て」とメモを渡されていたが…

一言で言うなら「雑」しかないな、さっき職員室で聞いたらこの地図間違っているとまで言われた…昨日の秋葉原案内は奇跡だったのかな…?

 

そんな事を考えていると、ようやく目的の場所へ着く。

一見すると何も書かれていない扉で、ガラスがはめてある所にカーテンがかかっており、その隅に小さく「アイドル研究室」と書かれていた。

「コンコン」とノックするも返事がない、仕方がなく扉を開けた瞬間…

 

「「「「「「「「「ようこそアイドル研究室へ!」」」」」」」」」

 

「へ…?」

 

綺麗に揃った声で出迎えられておもわず変な返し方をしてしまった、中には穂乃果、園田さん、南さん以外にも六人の女の子が椅子に座っていた。

 

「来るのが遅いから、ちょっと心配したよ~」

 

「お前が渡した地図が間違ってなければもう少し早く来れたかもな」

 

「え、そ、そうなの…?」

豆鉄砲に当たった顔をする穂乃果に、園田さんは頭を抱えてしまう。

 

「全く、穂乃果は…」

 

「あはは・・・」

 

南さんは苦笑いする光景を見ると恐らくこういう事は日常茶飯事だろうと思っていると、奥に座っていた女の子が立ち上がった。

 

「ちょっとこいつが本当ににこ達のボディーガードになるわけ!!?」

 

黒髪でツインテールで、学院の制服の下にピンク色のシャツ(?)みたいのを着ている女の子だった、そして何より穂乃果より背が低いのが特徴だった。

あの背格好だ、おそらく一年生だろう。

 

「元気のいい一年生だな、でも先輩をこいつ呼ばわりはいけないかな」

 

「誰が一年生よ!!」

 

「承君、にこちゃんは3年生だよ~」

 

「え……マジで!?」

 

「驚き過ぎよ!全く」

 

「すみません、先輩とは知らずに」

 

衝撃的だった、まさかあんな(失礼だが)で3年生とは新手の年齢詐称かと思ったわ…いや、本当にね。

 

「じゃあ改めて紹介するよ、アイドル研究部の部長の

 

「矢澤にこ」ちゃんだよ!」

 

「ふん!」

そっぽ向かれてしまったが、仕方があるまい…

 

「こっちにいるのが、3年生の「絢瀬絵里」ちゃん!」

 

穂乃果曰く、ロシア人とのクォーターらしい…通りで日本人離れしたスタイルだと思ったよ。

「よろしくね!」

 

「その隣にいるのが、同じ3年生の「東條希」ちゃんだよ」

「よろしゅうなぁ」

 

すごい美人だけど、関西弁を喋っているから出身は向こうになるのかな?、それにしても矢澤先輩と同じなんて信じられないほどだな。

 

続いて一年生の紹介となった。

「じゃあ、一年生を紹介するよ!まずは作曲担当の「西木野真姫」ちゃん!」

「よろしく」

「元気いっぱいの「星空凛」ちゃん!」

「よろしくにゃ~」

「にこちゃんと同じくらいアイドルが好きな「小泉花陽」ちゃん!」

「よ、宜しくお願いします」

 

これまた個性的なメンツだな…そう言えば、小泉さんは昨日の定食屋で見かけた気がしたけど人違いかな?…いや多分そうだろうな、山盛りになったご飯茶碗を持ってたからな。

 

「じゃあ俺も自己紹介を…」

 

「大丈夫だよ、もうみんなには承君のことは伝えてあるから」

 

「早ッ!」

 

「で、どうするの?ボディーガードて言っても付きっきりという訳にもいかないでしょう」

 

確かに西木野さんの言うとおりだ、しかしこっちも授業内容を犠牲にしてある案を思いついた

 

「それなら大丈夫、俺がつくのはライブの始まる直前から、みんなが帰るまでになるから」

 

「確かにそれだとあなたに対する負担は減りますが…」

 

「いくらストーカーと言えど始める前に事を起こしてライブを中止にはさせたくはないだろうし、家に帰れば手は出しにくくなると思ったんだ」

 

「どうかな?穂乃果?」

 

「うん、それでいいよ!みんなは?」

 

「まぁ穂乃果の決定ならいいわよ」

 

「うちもそれでいいと思うよ」

 

「全く~しょうがないわね」

 

「私は別に大丈夫よ」

 

「凛もそれでいいにゃ!」

 

「私も大丈夫です!」

 

そんな訳で俺は彼女達の一日ボディーガードを務めることになった、何事も起きなければいいと願いつつ今日の所は解散となった。

 

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

 

 

4月8日水曜日 講堂内

 

「結構集まってきたな…」

 

この日は午後3時から開放され、開演の十分前の段階で満員になった。

俺は舞台袖から観客席を見ており、不審者が来てないかを確認していたが、今の所はそんな人物はいなかった。

 

そこへライブ衣装を着た穂乃果がやってきた、本番前にダンスの最終確認をすると聞いていたので、今日のライブが終わるまでは顔を見せないと思っていたから、少し驚きながら彼女の方を向く。

 

「いよいよだね」

 

緊張と不安からかいつもより静かな穂乃果の頭に手を置きながら励ましの言葉をかける。

 

「穂乃果、今は嫌な事は忘れて全力で楽しんで来い!

 ストーカーは俺が何とかするからな」

 

「承君・・うん!!」

 

そして午後4時、開演となった。

俺は講堂の舞台裏にいる、ここなら客席で何かあった場合すぐに駆けつけられるからな。

そう意気込んでいたのが30分前だった…だが一向に異変は現れなかった。

(さすがに学校内じゃ手は出さないか…)

そう思ってた時だった。

 

 

俺の後ろで金属音が響くのが聞こえてきた、咄嗟に振り返った所、細長い金属棒が倒れていた。

不審者が侵入してきたかと思ってい為、構わず向き直ったが…

 

確かあそこには物なんてなかったはず…嫌な予感がした為、再び振り返ると、そこには黒色のマントを羽織った人のようなものが金属棒を振り下ろそうとしていた所だった。

 

「くッ!「アウタースローン」!!」

 

振り下ろされた棒を両腕で防ぎ、バックステップで距離をとる。

 

「まさか、俺のこの力と同じ奴がいるなんて…」

 

ユラリと体を動かすあれが…恐らく「ストーカー」の正体なのだろう。

…自分にしか見えない「スタンド」と呼ばれる存在だと直感で解る。

 




ここでスタンド紹介です

スタンド名:メイビス・シャドウ
  破壊力‐C、スピード‐D、射程距離‐A
  持続力-A、精密動作性-E、成長性-なし
本体:神楽坂 信行
能力:自身の射程距離内の「影」に潜行できる、潜行中は攻撃できないが相手も攻撃を加えることができない。さらに「影」として映ったものを武器にできる(例えば「包丁」が映ったなら「包丁の影」を使うことができる)

感想・ご意見お待ちしています


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第4話 メイビス・シャドウその②

初のスタンド戦です、わかりにくいことなどありましたら感想欄にて回答します。それではどうぞ!


時は遡ること10分前

 

講堂内、観客席

 

「フフフ…今日も変わらず綺麗だなぁ~」

 

ボサボサの長髪に皺が目立つ服を着ていて、小言を呟く男の名は「神楽坂 信行」と言い、近くの大学に通う大学生で重度のドルオタでもある。

「μ’s」は結成してから間もない頃から知り、ファンクラブなるものまで作るほど彼女達に入れ込んでいた、だが異常とまで言えるほど執着してしまい「ストーカー」となってしまった。

 

「こんなにも美しい彼女達を…もうすぐ僕の物にするんだ…くくっ」

 

彼が座っている影が形を変え、黒いマントを頭から被り骸骨の頭をした「像」が現れる…これが彼のスタンド「メイビス・シャドウ」である。

それは薄暗い講堂内を進み、舞台裏に入っていく。

 

 

ーー手荒な事はするけど彼女達なら大丈夫だよね…だって「女神」様なんだもんね…

フフ…僕の部屋の準備も整っているし、彼女達をここから連れていく算段もバッチリだ…後は実行するだけさ。

 

ここの構造は前もって調べ尽くしてあるから、もうすぐで着く…さぁもう少しだよ僕だけの「女神」になるのは…

 

恍惚の表情になる男の視線の先には、光り輝くステージで踊る九人の姿があった……

 

 

 

~~~~~*****~~~~

 

 

時は戻り、現在

 

講堂内、舞台裏

 

 

「まさか、俺以外の「スタンド」に出くわすとはな」

 

突如現れた「スタンド」は、承一を見据えながら一歩ずつ近づいてくる。

そして、マントの中に手をやり鉄パイプを取り出す。

 

承一は己のスタンド「アウタースローン」を発現させ、何かをされる前に先制攻撃をすべく右パンチを放つ。

 するとその「スタンド」は足元の影に吸い込まれるように消えていき、それを避けた。

 

「何…!」

 

(消えた…だと…?!)

 

周りを見渡すが、完全に消えていており姿は確認は出来なかった。

 その時、背後からの気配を察知し横へと避けると、先程までいた場所に鉄パイプが通っていった。

 

「く…オラァ!」

 

 「アウタースローン」がパンチを放つが紙一重の所で避けられてしまい、姿も消える。

 すると、予備のパイプ椅子の一部が崩れ、そこから承一に目がけて飛び一脚が左脚に当たる。

 痛みをこらえながら、距離を一旦置く。

 

「…ッ、少し痛むが…骨まではいってなさそうだな」

 

「スタンド」が数m前に現れると、傍に落ちていた鉄パイプを拾い、その影に手を伸ばして掴むと、ベリッ!と音をたて引っ張りながら剥がすと、黒い鉄パイプみたいな物が出来上がった。

 

(…なるほど、影を操る能力か…)

 

手にした二本の鉄パイプを構えると、こちらに向けて投げてきた。

 承一は素早くスタンドを出し、能力を使う。

 

「「アウタースローン」!、俺の右腕にパイプ椅子を!!」

 

「アウタースローン」のスタンド能力、一つの物質に別の物質を集める。

 それによって右腕にパイプ椅子が何脚か集まり、それを盾にしながら敵に向かって突進する。

 

二本の鉄パイプは弾き飛ばされていき、床に落下する。

 能力を解き、集まったパイプ椅子を蹴って飛び上がり一気に距離を縮める。

 

「オラオラオラ!!!!」

 

能力を使われる前に、ラッシュを放つがマントの一部を掠めた程度で直撃はしなかった。

 影に潜られると、こちらからの攻撃はできないが向こうも攻撃は不可能だと分かった。

 

ーーそれならば、奴が姿を見せたと同時に攻撃すれば

そう考えてた時、自分の影が揺らめくように見えた瞬間…

 

突然、鈍い音と共に後方に飛ばされた。

 何が起こったか一瞬分からなかったが、よく見ると俺がいた場所から奴が鉄パイプを持って姿を現していた。

 

ーーくっ…影ならどこでも姿を現せることができるのか、流石に骨が何本か折れたみたいだな。

 どうする…姿を現せないと攻撃はできない、現れる場所はランダム…今のダメージがまだ残っているから避け続けることも無理か…現れるタイミング?、現れる瞬間…そうか、まだ…手はある。

 

「「アウタースローン」!!、俺の両腕にパイプ椅子を!!」

 

持てるだけのパイプ椅子を持ち、自分の周りにばら撒いた。

 そして承一はその場で片膝をついた姿勢になり、タイミングを待つ。

 

そして…

 微かな音が後方から聞こえてきた…同時に体を素早く振り向き、スタンドも出す。

 

「オラッッ!!!」

 

鈍い音と共に、奴がよろめく。

 

「やはりな…現れるタイミングが掴めないのなら、出る瞬間音が鳴るようにすればいい。幸い影の合間を縫って出ることはできないらしな」

 

すると奴は後ろへ振り向き影の中に入って行く。

 

「逃げる気か…そうはさせない「アウタースローン」!」

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

 

講堂内、4時53分

 

「ぐッ…あ!」

 

腹に鈍痛が走る…いつまでも騒ぎが起こらないから不審に思っていると、突然やってきた。

 

ーーくそ…予定外だ、まさか僕の行動を予測していたのか…?そんな訳がない…だが現実はこんなザマだ…畜生、チクショウ…!どいつもこいつも邪魔ばかりしやがって…!

 

まぁいいさ…また機会はある。今は逃げなければ。

 

よろめきながらも立ち上り、出口に向かって歩いていく。

 重い扉を開け、外に出る…まだ明るい空色が憎たらしく思い、学院外へ出ようとする。

 

 

「待ちな!お前が本体だな…」

 

その声に驚きつつ、振り返ると一人の男子生徒がこちらを睨みながら立っていた。

 

「何の事だい?本体って?」

 

「とぼけても無駄だぜ」

 

すると彼の背後からロボットのような「像」が浮かび、その手に持っているのを見せてきた。

 

「そ、それは…!」

 

「お前さんの、スタンドが羽織っていたマントの切れ端さ。腹に一撃入れた時一緒にくすねておいたんだ。

 逃げた時、スタンドにこの切れ端を集めるよう能力を使い、ここまで追い続けた訳だよ」

 

乾いた笑いが口から漏れる…まさか自分と同じ様な能力者がいるとはな、しかし同時に怒りも湧いてくる。

 

「…年下ごときに追い詰められる何てな、思いもよらなかったよ」

 

「認めるのだな、なら俺はあんたを倒さなきゃならない」

 

ーーいちいち鼻につく奴だ…僕の邪魔をした上にまるで警察みたいな事を言いやがって…

 

「…黙れよ」

 

「…?何だって?」

 

「黙れって言ってんだろッッ!!」

 

男の口から吐き出す様に出た言葉は、苛立ちが限界突破したかの如く、講堂にも聞こえるのではないかと思うぐらいだった。

 

「年下のクセにしてッ!僕の邪魔をするんじゃないッ!!!

 彼女は…いや彼女達は僕にとっては救いの女神なんだッ!ちっぽけな僕を救ってくれた!…だから他の連中になんか渡さない!ずっと僕の傍に居ればいいんだ…

 そうさ…僕の物なんだ…ははハハハ、あははハハハハハハ!!!」

 

狂った様に笑い続ける男に、承一はタメ息を付き近寄る。

 

「全く…やれやれだぜ」

 

「だから、邪魔を…するなァァッ!!」

 

絶叫と共に突進してくる、相手に「アウタースローン」の拳が飛んでくる。

 

「げ…あッ!」

 

「救いの女神が何だか知らないが、お前はやってはダメな事をした…」

 

承一の脳裏に辛い思いをしながらも自分に話してくれた穂乃果達の顔が浮かび上がる。

 

「…てめーのエゴで他人を不安にさせた事だ!」

 

「だったら何だ!!誰も僕を裁ける者なんていないんだよ!!」

 

 

「裁く…だと、裁くのは…俺のスタンドだァッ!」

 

「アウタースローン」の拳が、敵の腹を捉える…苦悶の表情を浮かべるが、次の拳が顔面を捉える…それが何度も何度も何度も…続く。

 

「オオオッ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、オラァッ!!!!」

 

「あぶっ!びえばはぁぁッ!!」

 

絶え間ないラッシュを貰い、数メートル先まで飛ばされ気絶する。

承一は男を見て、終わった事を確認する。

 

 

 

「承君~~」

 

犯人を倒し、木にもたれかかっている所にライブを終えたばかりの穂乃果達がやってくる。

 

「大丈夫?!」

 

「ああ、大丈ぶ…痛ッ!」

 

腹のあたりに激痛を覚え、座ってしまう。

それを見かねたのか一人のメンバーが話しかけてくる。

 

「全く、とりあえずうちの所に来て診てもらいなさいよ」

 

「え…?うちの所て?」

 

「言ってなかったけど、真姫ちゃんの実家は病院なんだよ。承君」

 

「そ、そうなの…?」

 

後から聞いた話だと、西木野さんは総合病院の院長の娘らしくいわゆるお嬢様なんだとか…痛みが一瞬忘れるほど衝撃的だった。

 こうして「μ’s」を悩ませていた「ストーカー事件」は無事に解決した。

 因みに犯人はどうなったかと言うと、家を家宅捜査した所これまでのストーカーの記録を残していた為それが決定的な証拠となり刑事訴訟され近い内に裁判にかけられる予定だ。

 

まぁ、何はともあれみんな無事だったしそれで良かったよ。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?スタンド戦は初めて書いたのでおかしな所があれば、指摘してくれれば幸いです。
次回からまた新しいスタンドが出ますので楽しみにしてください!
感想・ご意見お待ちしています


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第5話 ノヴァ・マスターその①

今回は、前回予告した通り新たなスタンドが出ます!それではどうぞ


4月10日、金曜日

 

「うーん・・・暇だ」

 

手にしている雑誌を机の上に置くと、そう呟く。

ここは西木野総合病院の一室である、まぁ何で病院にいるかと言うと・・・

 

「え・・・に、入院ですか・・?」

「正確に言えば、骨がくっつくまで安静にしていてください」

 

あの後、西木野さんの計らいで病院にて精密検査を行ったのだか、結果は肋骨を二本骨折していた為入院となった・・・別に家にいればいいと思うのだか、みんなが・・

 

「無理しないで、入院した方がいいよ!」

「でも、入院なんて大袈裟な・・・」

「何言っているの、骨折は十分重症じゃない」

「そうだよ!無理して怪我が大きくなっちゃたらどうするの!」

「西木野さん・・・穂乃果・・・ありがとう、そうするよ」

「学校でのプリント類は私達が持ってきますので」

 

そして現在に至る訳だか・・・やることが限られているのでほぼ一日中寝ていることしかない、昨日あまりにも暇なので病院内を見て回ったら看護婦さんに「安静にしてないと困ります」と注意されてしまった・・

 

「そうだ、確か・・・」

 

昨日のことを思い出していたら、あることを思い出したので机の上の小型の携帯音楽プレーヤーを取る、これは「μ’s」のみんなが「暇になったら聞いてね!!」て言われて渡されたものだ・・・

 

「一昨日のライブの曲が入っているんだな・・」

 

イヤホンを両耳にあて、再生ボタンを押す

 

~~♪~~♪

 

「いい曲だな・・・」

激しい曲もあるかと思うと、切ないラブソングもある。どの曲も完成度は高く素人の俺でも聞き惚れてしまうほどである

 

「すごいな・・・彼女達は」

 

そう思いに浸ってると、病室の扉が開かれる

 

「やっほ~~承君!!」

「具合はどうですか?」

「新しい雑誌を持ってきたよ~」

 

穂乃果、園田さん、南さんの三人がやってきた、学校で配られたプリント類をこうして持ってきてくれる

 

「いつもありがとうな」

「何言ってるの!守ってくれたんだからこれくらい何ともないよ」

「そうだよ!承一君がいなかったら、私達ずっと不安のままだったんだよ」

「そ、そうなのか・・」

「そうですよ、これで今までのように歌えますよ」

 

三人とも嬉しそうに話している、本当に良かった・・・

 

その後、他愛もない話をしてから三人は帰っていった

 

「さて、じゃあ寝るか」

そう思っていた時

 

ガラガラ・・

 

扉が開く音が鳴ったので、そちらに目を向けると西木野さんが立っていた

 

「どう?具合は?」

「多少動いても痛みは感じなくなったからいいと思うよ」

「そ、そう・・良かったわ///」

 

何か、頬のあたりが赤くなっているのだけど・・何でなろうな?

そう思っていた所、白衣を着た男性が病室にやって来た

 

「どうですか?具合は?」

「動いても痛くないですね」

「では、明日には退院ですね・・おやお嬢様もいらしていたんですね」

「か、柏原先生、執事じゃないんだからその呼び方はやめて・・」

「はは、すみません・・それじゃお大事に」

「じゃあ私もそろそろ帰るね、お大事に」

「ああ、ありがとう!」

 

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

西木野総合病院 外科医室 PM23:00

 

「ふう・・・」

当直医としてこの日の仕事を全て終わらせ、椅子に深く座るのは外科医の「柏原 暁」である

「全く!何で俺がこんなこをしなくちゃならないだ!」

名門の医大を卒業して20代で様々な病院で何百回にもおよぶ手術を成功させ、確かな実績を引っさげこの「西木野総合病院」にやってきたのが・・

「来る日も来る日もやるのは、そこいらの三下がやることばかり!メスを握ったのが数回しかないなんて・・」

「きっと、あのクソ院長俺の才能に嫉妬しているんだな!じゃなければこんな事やらせないもんな」

「何が「もう少し鍛錬が足りない!」だ、自分の地位がなくなるのが怖いだけだろ」

そういい終わると、彼の背中から八本足の軟体動物みたいなものが出てくる

「けどそれも終わりだ、この「力」でクソ院長をブッ殺してこの病院を俺の物にしてやる!」

「そう言えば、あの院長に似つかわしくない娘がいるな・・殺す前にあの娘を見せしめとして嬲ってやろう・・そして絶望のどん底に叩き落してから殺すとしよう」

「明日が楽しみだ・・」

電気を消し、仮眠室へ消えていった

 

 

 

~~~~~~******~~~~~

 

 

 

翌日

 

俺は患者用の服をたたみ、病室から出るとこだった

 

「二日も横になっていたのか、鈍るといけないから早速運動だな」

「とか言って、また怪我をしないでよ」

 

振り返ると制服姿の西木野さんがいた

 

「今日は学校は休みじゃないの?!」

「「μ’s」の練習よ、行くついでにあなたの様子を見に来たのよ」

「わざわざありがとうな、お礼に何か奢らせてよ!」

「ヴェエエ!?、い、いいわよ!」

「そっか、お嬢様だったもんな・・」

「そ、そういうことじゃない・・・よ」

「じゃあ、気が・・向いたら・・お願いするわ//」

 

そう言うと、西木野さんは小走りで行ってしまった

 

「何か可愛いな・・さて俺も行くとするか!・・・・ん?」

 

小走りで行った西木野さんの後姿を見ている白衣の男が、俺の目に映った・・

 

その時、言葉では言い表せないような不安を覚えた・・

 

「イヤな予感がする・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?主人公が羨ましくて作者が別の意味で倒れそう・・・・・まぁ気を取り直してスタンド紹介です

スタンド名:クローザー・グロップ
 本体:柏原 暁(あきら)
破壊力‐なし、スピード‐B、射程距離‐B
持続力‐A、精密動作性‐なし、成長性‐なし

能力
蛸のような軟体動物の姿をしたスタンド
足の先端から神経系の猛毒ガスを噴出する能力
毒の威力は本体が強弱の調整ができ、すぐに殺したい場合は「強」になり、苦しめたい場合は「弱」にする
本体にかかっても抗体ができてるため効かない

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第6話 ノヴァ・マスターその②

お待たせしました、今回はついに「μ’s」からスタンド覚醒者がでます!それではどうぞ


音ノ木坂学院 屋上 PM16:00

 

「それでは、今日の練習はここまでにしましょう」

 

海未のかけ声で、この日の練習は終わった

 

「疲れたにゃ~」

「凛ちゃん、体冷やすといけないよ。はいタオル」

「ありがとう~かよちん」

 

私は「いつもどおりの光景」を見ながら、スポーツドリンクを口に含む。すると希が近づいてきて話しかけてきた

 

「なぁなぁ、真姫ちゃん」

「どうしたの?」

「比屋定君は元気そうだたん?」

「まぁ早速運動するとか言ってるし、元気そう・・・・・て何で知ってるのよ?!」

「いつもより来るのが、遅かったんからどうしたのかな~て」

「つ、ついでよ!入院を勧めた手前、退院の時一言もないのはどうかと思ったから!」

「ふ~~ん、そうなんや~」

(あの顔は絶対信じてなさそうね)

「ところで・・・」

 

今までの表情とは打って変わり、真剣な目つきになる

 

「今日は、家に一人でおるん?」

「・・・?、今日は両親はいるわよ・・・それがどうかしたの?」

「いや、それならいいんよ・・・」

 

そう言って、希は屋上を後にした

 

「何なのよ・・」

 

 

 

~~~~~~*****~~~~~~

 

 

 

西木野家 PM16:30

 

「ただいま」

 

凛と花陽の二人と途中で別れ、自分の家に帰ってきた。でも・・・

 

「・・・・・・・・・」

 

気味が悪いくらい家の中が静まりかえっていた

 

(まだ帰ってないのかしら、でも今日は早く帰れるて言ってたはずなのに)

 

そう思い、リビングへの扉を開けると

 

「お待ちしていましたよ、お嬢様」

「柏原先生!?どうしてここに・・?」

「いえ、あなたとあなたのお父上に用がありましてね」

 

そう言って先生がある所に視線を向けたので、私もそこに目をやると・・

 

「パパ!ママ!?」

 

そこには手足を紐の様なもので縛られ、口にはガムテープを貼られた両親の姿があった

 

「目は閉じさせないでありますよ、これから行うショーの為ですから」

「せ・・・先生・・・?!どういうことなの・・・?」

 

状況が理解できなかった・・・何故こんなことになっているのか、何故柏原先生がこんなことをしているのか、すると・・

 

「見たままの通りですよ、そしてこれから二人には死んでいただくが」

「その前に、余興としてあなたの体を好きにさせていただく」

 

その言葉を聞いた時、背中に悪寒が走った

 

「ひ・・・・い、いや・・・」

「何抵抗しなければ、痛いようにはしませんよ」

 

そう言って先生が、ゆっくり近づいてくる

逃げたくても足がすくんで動けない・・早く逃げて警察に・・・

そう思った時、腕を掴まれてしまったしまった

 

「フフ、逃げないとは従順ですね」

「うう・・・・」

 

もうダメだ・・私はこの男に良いように弄ばれてしまうのだろう・・・せめて彼がいれば・・・

 

そう思い、全てを覚悟した時だった・・・

 

バンッッッ!!!!

 

突然扉が開き・・そして・・

 

「うおおおおお!!!」

 

入ったと同時に、その人は私を掴んでいた先生を蹴り上げた

 

「うぐあ・・・!!」

 

後方に飛ばされ、床にたたきつけられた。その光景を茫然と見ていた私に対してその人は振り向き、こう言った

 

「大丈夫ですか?西木野さん」

「ひ、比屋定・・・君」

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

何とか間に合ったな・・・

西木野さんの無事を確認し、相手の方に向き直ると顎を抑えながら立ち上がっているのが見えた

 

「ここは危険だ、すぐに離れるんだ!」

「でも、パパとママが・・・」

「俺が、奴の気をひくからその隙に二人を助けてあげて」

「わ、分かったわ」

 

そう言い、西木野さんは縛られた二人の元へ向かう

 

「クク、今のは効いたぜ・・」

「そう簡単にのびてはくれないか」

 

この男のスタンド能力はわからないが、近づいてはこないから接近戦のタイプじゃなさそうと思ってた時・・

 

ピンッッ!

 

と何かが外れるような音がした、その瞬間野球ボールサイズの玉が四方から飛んできた

 

「くっ!」

 

体勢を下げて、何とか躱すがそのうち一つが腕に当たる。その時ボールから紫色のガス状の物質が出て腕にかかる

 

「う・・!ぐっ!」

 

かかった個所から痺れ始め、一瞬だけ動かなくなる

 

「運がいいな、「弱」に当たるとは」

「だが、しばらくその腕は使えないだろう」

 

奴の言うとおりだ、痺れがまだ残り動かしづらい

そう思っていると懐から何か取り出すのが見えた

 

「しかし、次はない!!」

 

そう叫ぶと、六つのボールが俺に向かってくる

 

「オラオラオラッ!」

 

「アウタースローン」の能力で近くにあった書類を自分の前に集めさせる。

その紙束に当たったボールから出たのは、さっきのと色が違い濃い紫色をしていたガスであった

それを間一髪で避ける

 

「い、今のは・・」

「ちぃ、避けたか・・今のが当たっていたらお前は即死だったなのにな」

 

猛毒のガスを出すのが奴のスタンド能力か・・・厄介だな。

だが・・スタンドの「像」がないのはどういうことだ・・・?そう考えていたいたら自分の頭上が暗くなった・・

 

「はッッ!」

 

見上げるとそこに蛸みたいなものが、眼前に迫っていた

 

「オラッッ!」

 

拳を繰り出したが、それを躱されてしまう

 

「なるほど、スピードでは我が「クローザーグロップ」の方が上という訳か」

「その遅さでは私の能力と猛毒ガス入りの特製ボールの前ではいつか追いつけるな」

「く!舐めるな!」

 

距離を詰め、拳を放つが避けられ空をきってしまう

 

「遅い遅い・・」

 

ドカッッ!

 

「が・・・はッ! 何!?」

 

奴の顔面に向かって灰皿が飛んでいき、それが命中しよろける

 

「何も考えずに、突っ込むと思っているのか!さっき蹴りを加えた個所に灰皿が集まるように能力を使ったのさ」

「そして・・・捕まえたぜ」

「う・・・・ッ!」

 

「オラオラオラオラオラァ!!!!」

 

「ブッガッッ!!」

 

ラッシュを叩き込み、ガラスを突き破り庭に吹っ飛ばされる

 

「終わったか・・」

「だ、大丈夫・・・?」

 

西木野さんが心配そうに話しかけてくれた

 

「大丈夫だよ、それより怪我はない?」

 

そう言って、後ろを振り向いた時・・

 

ガシッッ!

 

「な・・・!!」

 

突然後ろから組み付かれてしまった

 

「つ、捕まえた・・のは、俺の方・・だ」

「くそ!離せ!!」

「そうはいかない!このままガスをくらわせてやる!」

「ばかな!ならお前も・・」

「くらうってか、残念!俺は抗体ができているから効かないんだよ!」

(ま、まずい・・避けられない)

そう思っていた時だった

 

「もう!やめて!!」

「に、西木野さん・・・」

「彼は関係ないのよ!!私を好きにしていいから、その人を離して!!」

「だめだね、俺の能力を見られたからには死んでもらう!!」

「うッッ・・!」

(私はなんて無力なの!何もできないばかり無関係な彼を巻き込ませてしまって・・・・・力があれば・・彼を助けられる力が欲しい・・・・)

 

「さよならだァ!!!」

「や、やめてぇぇ!!!!!!」

 

(そう叫んだ時、自分の中で何かが生まれる感覚がした・・・・)

 

「・・・・・・・・・な、何!」

確かに俺の毒ガスは奴を捉えたはず・・・・なのに・・・何で・・・

「何で生きていやがるんだ!!!!!!!!!」

「オラッ!」

「ぐあ!!」

肘打ちをもらい、体勢を崩される

 

 

「西木野さん・・・・それは」

「え・・・・な、何これ・・」

自分の隣に腰まである長い髪をして、ダイヤの形をした模様が全身に散りばめられている女性のようなものが浮かんでいた

「ス、スタンド・・・!」

「・・・・・スタンド?」

そう呼ばれた「それ」は微かにほほ笑んだように見えた

 

 

 




いかがだったでしょうか?次回に決着がつきます!
ここでスタンド紹介です

スタンド名:ノヴァ・マスター
  本体:西木野真姫
破壊力-B、スピード-C、射程距離-C
持続力-B、精密動作性-A、成長性-A

能力
スタンド自身から新しい「物質」を創造する能力
ただし現実世界に既に存在するものに限定され、一度に作りだせる物質は気体・固体・液体どれか一種類のみとなる(例えば気体を創造した場合、同時に固体液体は創造できない)

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第7話 ノヴァ・マスターその③

お待たせしました!「クローザーグロップ」戦決着がいきます。さらに新たなスタンド使いが現れます、それではどうぞ


西木野家 PM16:53

 

驚いた・・・まさか西木野さんが俺と同じ能力を発現するなんて・・いやそれよりも

 

「さっきのは、一体・・?」

「わ、私にもよく分からない・・・ただ、あなたを守りたいと強く願ったら「これ」が現れていたのよ」

 

おそらく、さっきのはこのスタンド能力だろう・・・確実に毒ガスを浴びたが俺の体の周りに空気の膜みたいなのができていた

 

「何にせよ、助かった!ありがとう」

「無事ならそれでいいのよ・・・」

 

そして俺は奴の方に向く

 

「これで千載一隅のチャンスを逃したわけだな」

「フフ、バカな事を言うな・・お前を殺る手段などいくらでもあるさ・・!」

 

そう言って再びボールを取出しこちらへ投げるが・・

それは俺には向かず、奴の方に集まりそこで割れる

 

「ぐ・・・な、何故・?」

「俺の能力さ、さっきの肘打ちの時お前にボールが集まるように能力をかけ、投げると同時に発動させてもらったのさ」

「つまり俺にそのボールは効かないということさ」

「な、なら・・・直接貴様に浴びせればいい・・・うッ!」

 

すると奴の周りに空気の渦ができており、身動きが取れなくなっていた

 

「先生・・・もう動かないで・・」

 

見ると、西木野さんのスタンドの手のひらから気体状のものが放出されており、それが奴の周りに渦巻いていた

 

「く・・・そ・・」

「何で・・・何でパパを殺そうと思ったの?!!パパは先生の事を成長させるためにやっていることなのよ!」

「先生なら、将来重要な役職を任せられるとそう・・・言ってたのに・・」

「い、院長がそんなことを・・・・」

 

跪き、うなだれるのを見ると西木野さんはスタンド能力を解いた・・・・その時

 

「・・・信じるものかァァ!!!!!」

 

奴が能力を解かれたと同時に、西木野さんに向かってきた

 

「そんなことあるわけッ・・・ブッッ!」

 

彼女の前に立ち、顔面に拳を放つ

 

「救いようがない奴だ・・・眠ってろォ!!」

「ま、待っ・・・」

 

「オラオラオラオラオラオラッ、オラァ!!!!!」

 

「うっぎゃぁぁぁ!!!」

 

大きく奴が飛ばされ同時に、懐から光るものが落ちたのが見えた

「それ」に近づき、拾う

 

「何だこれ・・?「矢」の先端・・?」

鈍く光り、不思議な模様が描かれておいて、中央に穴が開いている

「こんな物騒な物まで持ち歩いていたのか・・・預かっておこう」

そう思い、ズボンのポケットに入れた

 

 

 

~~~~~~*******~~~~~~~~

 

 

 

 

暫くしてから警察がやってきて、奴は連行されていった・・これで一件落着となったが

 

「西木野さん・・・」

 

彼女はあの後から、下を俯いてしまっている

 

(こんな時、何て声をかければいいだろう・・・・)

(下手に話しかけてより落ち込んでも困るし、かと言って元気よく話してもなぁ・・)

 

そう悩んでいた所、彼女が話しかけてきた

 

「ねぇ・・」

「え!あ、どうしたの・・?」

「・・・もしかしてこないだのストーカーも同じ「力」を持ってたの?」

「・・・・・・うん」

 

答えづらかった、でもここで嘘をついて不信感をもたれるの良くないと思い正直に答えた

 

「そう・・」

「・・・・・・・」

 

静寂が俺達を、包み込む・・・すると彼女がこう切り出した

 

「この「力」は何だろう・・・あなたは何か知ってるの?」

「いや、俺も他人には見えないものとばかり思ってから実はよく知らないんだ」

「・・・・・・」

 

再び気まずい空気が流れようとした時・・・・

 

「その答えなら、うちが説明しようか」

「「え・・・?」」

 

 

 

 

~~~~~~~*******~~~~~~~

 

 

 

 

PM17:45 東條家

 

「さ、どうぞ~」

 

東條先輩がそう言って玄関を開けて、俺達は中へ進む

 

「「お邪魔します」」

 

リビングへ行くと、綺麗に片付けられており一人暮らしとは思えなかった

 

「お茶でいい?」

「はい」

「ええ」

 

そう言うと、先輩はお茶の用意を始めた

 

「ねぇ、いい加減さっきの答えを聞かせてよ!」

「真姫ちゃんはせっかちやね~」

 

そう俺達がここにいるのは、東條先輩が「スタンド」について説明してくれるというので着いてきたが・・・

 

「熱いから気を付けてな」

 

そう言い、紅茶のカップを差し出してくれた・・・こう言ったぐあいに何故か話をしてくれない

痺れをきらし、こう話を切り出した

 

「もしかして、東條先輩も「スタンド使い」なんですか?」

そう言うと、先輩は静かに紅茶を啜りながらこう答えた

 

「うん、そうよ」

 

言い終えたのと同時に、背後から烏のようなものが出てきてそれが肩に乗る

 

「そ、それは・・・!」

「スタンド・・・!」

 

俺と西木野さんは同時にそう言ってしまう

 

「驚きすぎよ・・・真姫ちゃんと比屋定君も同じのを持ってるんでしょ?」

「ええ・・そうですけど」

 

驚きの連続だな、まさか一日で三人にも「スタンド使い」に出会えるとは

 

「うちの、この「力」は小さい時に気づいたらいたんよ」

「俺と同じですね・・」

「そうなん?でもうちのと違って遠距離タイプではなさそうやね」

「そうなの・・・?」

「スタンドには色んなタイプがあって、真姫ちゃんのは比屋定君のと同じやね」

「それと、スタンドにも種類があって中には「スタンド使い」じゃない人にも見えるのもあるんよ」

「・・・・でも、なんで希がこんなに詳しいのよ」

「うちのスタンドは色々なことができるんよ、それで試した結果やな」

 

その後は「スタンド」のことから、一旦離れて世間話をした

今は西木野さんの自宅に向かっている所だ

 

「西木野さん・・・・」

(東條先輩の話を聞いてから、何か考えているようだけど・・)

「決めたわ・・・」

「へ・・?な、何を?」

「これからはこの「スタンド」を使って、戦う!」

「それは危険すぎる!もし何かがあったらどうすんだ!それに君が戦わなくても・・」

「希の話を聞いて思ったの、自分の力は何の為にあるのだろうと・・もし何か意味があって目覚めたのならそれはこの先色んなことが起こるかもしれない・・」

「私はそれに抗いたい、その為の力だと思うから・・」

「そこまで言うのなら、俺には止められないな・・」

「・・そ、それと・・・」

「な、名前で呼んでよ、名字だと何か変だし」

「分かったよ、真姫!」

「うん!」

 

こうして、西木野さん・・もとい真姫と別れ帰路についた

そう言えば東條先輩にあの「矢」のことを聞こうとしたけどいつの間にかなくなっていたなぁ、どこかで落としたのかな・・?




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です

スタンド名:「パープル・ヴァローナ」
 本体:東條希
破壊力-なし、スピード-A、射程距離-A
持続力-C、精密動作性-E、成長性-B

能力
烏のような形をしたスタンド
射程距離内に存在する人間以外の動物に憑依して操る能力
憑依した先からその場の状況を確認でき、その動物を使って攻撃も可能
ただし憑依できる時間は5分が限界であり、5分が過ぎた場合強制的に別の動物に移ってしまう

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第8話 リバイバル・ショット&ハーフダウザーその①

今回の八・九話と次の十話で物語の「敵」側が出てきます、そして「μ’s」最後のスタンド覚醒者が現れます!それではどうぞ


4月13日 音ノ木坂学院内 PM12:05

 

「いや~今日もパンが美味い!」

 

そう言って穂乃果が美味しそうにパンを頬張っている

 

「ほぼ毎日パンしか食べてないけど飽きないのか?」

「だって家だと餡子ばかりだから飽きちゃったんだよ」

(餡子を飽きるほど食べてるだって!何て羨ましい・・)

 

そんな会話をしながら俺と穂乃果、園田さん、南さんは学院内の中庭で昼食をとっている。

すると穂乃果が俺の方を向いてこう言った

 

「そう言えば承君、真姫ちゃんと何かあったの?」

「え・・・・・な、何で?」

突然聞かれたので、やましいこともないのに挙動不審になってしまう

「私達3人が学院に来たとき昇降口の所で二人でいるのをみましたね」

「しかも仲良さそうに話していたから・・」

 

なんてこったい・・・見られていたとは、珍しく早起きして学校に行ったら偶然あって少し話をしただけだか・・

 

「いや、何もないよ」

「ふ~~ん」

 

すごい疑われているな・・あらぬ誤解をされる前に釈明しようとするが

 

「怪しいですね・・・」

「本当かな~?」

 

園田さんと南さんからも疑いの眼差しを向けられる・・精神的に大ダメージを負ってしまいそうだよ・・そんな事を思ってると

 

「まぁ承君がそう言うのなら、そうかもね」

「そうですね、嘘をつくのはあまり得意ではなさそうですしね」

「そうだね、穂乃果ちゃんの言うとおりかも」

 

良かった・・本当に助かった、自分のこれまで行いが良いのか彼女たちが良かったは分からないけどともかく誤解されずにすんだな

 

「真姫ちゃんと言えば、家の方は大丈夫なのかな?」

「本人は盗られたものはないから平気だと言ってましたが・・」

(真姫、そんなことを言っていたのか・・大方みんなに余計な心配をさせない為だな)

(それに「スタンド」の事は、言っても誰にも見えないからな・・仕方がないだろう)

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~******~~~~~~~

 

 

 

 

 

放課後

 

俺は人がまばらになった教室で、今日の授業の復習をしている・・何故かって?

いつもは4人で帰るが園田さんは弓道部の練習へ、南さんは保健委員の集まりで、穂乃果は生徒会に用事があるんだと、しかし早く終われるから教室で待っててと言われたのだ!しかし・・・

 

「い、意外と難しいな・・」

 

慣れない数学に四苦八苦していると・・教室に誰かが入ってきた

 

「まだ残っていたんですか?」

「あ、川和先生・・人を待っているんですよ」

 

この人は俺達のクラスで数学を教えている「川和征四郎」先生だ、普段はもの静かで授業中でも大声とを出さないことで有名で生徒には人気である、しかしその反面表情が表に出てこないのでロボットじゃないかと思う生徒もいるらしい・・

 

「おや、数学ですね。教えてあげようか?」

「いえ、大丈夫ですよ」

「ふむ、大丈夫ならそれでいいです。あまり遅くならないように」

「はい、分かりました」

 

そう言って先生が教室から出ていく、それと入れ違いに穂乃果が入ってくる

 

「ゴメン!意外と長引いちゃって・・」

「いや大丈夫だよ、さぁ帰ろう」

 

そう言って教科書を鞄に入れ、一緒に教室を出る

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~~

 

 

 

 

学院から出て、まずは穂乃果の家に向かっている。後から気づいたが俺の住むマンションから彼女の実家まで近い距離にあったので、彼女を送って自分の家に帰れる訳なんだ

な、そんな道中彼女が話しかけてくる

 

「・・・・ねぇ承君」

「どうした?」

「お昼のことだけど、やっぱり真姫ちゃんと何かあったの?」

「・・・・・・・・」

 

薄々気づいていたのかな?俺達が何かを隠していることに・・でも彼女に話しても分からないだろうし、それになりより事情を知らないのに巻き込むこともできないし・・

 

「穂乃果に話しても分からないと思うけど・・・それでもグループのメンバーや承君が何か大変な事に巻き込まれているのなら少しでも力になってあげたい!」

「・・・・ほ、穂乃果・・・」

 

彼女なりに考えているんだな・・・あの大所帯のグループをまとめるほどはあるな・・・でも

 

「君の気持は嬉しいが、やっぱり話せない・・もし巻き込まれでもしたら俺が辛いんだ」

「そう・・・」

「でも、君と話していると気が落ち着く・・ありがとな」

「・・・うん!」

 

そう言った彼女の笑顔はとても輝いていた、やっぱり笑顔の方が似合うな。

そんな事を思いつつ、彼女の家までもう少しという所に差し掛かった時

 

「ん・・・?」

「どうしたの・・?」

 

前方に黒いコートを着た男が先を阻むように立っていた、そしてその手にはペットボトルが握られておりこちらに気づいたと同時にそれを投げてきた

 

「・・・・まずい、穂乃果あぶない!!!」

「えっ・・」

 

空中で舞ってたペットボトルが破裂したかと思うと、中から針状のものが飛び出してきた。

咄嗟に彼女を庇い、腕に数本受けた

 

「だ、大丈夫・・?!」

「大丈夫だ・・それより早く逃げるんだ!」

「でも・・・!」

「君を巻き添えにはしたくない・・・早く!!!」

「わ、分かった・・・」

 

彼女を先に行かせ、俺はその男と対峙する

 

「・・・・・・」

「・・・・・・・・オラッ!」

 

腕に刺さった5本ほどの針を引き抜き、奴に向かって投げる

すると・・

 

バシャァ!

 

という音ともに針が奴の眼前で「水」になってしまう

 

「何だと・・・・!」

 

俺が驚いていると、今度は二本のペットボトルを投げてきた

今度も空中で破裂し、ナイフとなり襲い掛かる

 

「「アウタースローン」!!」

 

近くあった標識に能力をかけ、そこにナイフを集めさせる。それと同時に素早く奴との距離を縮める

 

「オラオラ!!」

 

数発のパンチを繰り出すが・・・

 

ザパァ!!

 

突然、水の壁が出来て防がれてしまう

 

「どういうことだ・・?」

 

スタンド能力は一人一つのはずだ・・・「水」を「金属」に変えるのが能力なら今のは・・

そう考えていると後ろの方から声が聞こえた

 

「なにチンタラやってんだよ!!敦のおっさんよ」

 

振り返ると茶髪で顔の左半分に大きな傷がついている男がいた

 

「ちゃちゃと、終わらせようぜ~、こいつは一人なんだから」

 

 

ふ、二人組のスタンド使いだと・・・・・!

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です

スタンド名:「リバイバル・ショット」
   本体:権藤敦
破壊力-B、スピード-D、射程距離-C
持続力-A、精密動作性-C、成長性-なし

能力
水色の体色をした人型スタンド
スタンド自身か本体が触れた「水」を「金属物質」に変える能力
射程内なら手元を離れても自由に変える事ができ、あらかじめ触れた個所も変えられる
ただし変えた物が射程外に出ると強制的に「水」に戻ってしまう

スタンド名:「ハーフ・ダウザー」
   本体:ジェームズ・T・ヤマモト
破壊力-なし、スピード-なし、射程距離-A
持続力-A、精密動作性-なし、成長性-なし

能力
左腕に刺青のような模様で描かれている本体一体化タイプのスタンド
射程内全ての「物質」を「水」に変えられる能力
さらに変えた「水」の形も本体が自由に変えられる
欠点は上記に記したことしかできないこと

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第9話 リバイバル・ショット&ハーフダウザーその②

二人組みのスタンド使い達を承一はどう倒すのか?それではどうぞ!
次回の事に関して重要な告知を後書きに書きますので最後まで目を通していただければ幸いです


「はぁ、はぁ・・・・!」

 

スタンド使いが協力してくるとは、それに狙いは俺みたいだな・・

今は奴らから離れた所に身を潜めている・・だがいつまでも隠れている訳にはいかないが・・・その時

 

ビチャァ!

 

「・・・・っ!!」

 

突然、もたれ掛かっている壁が「水」になったと思うと上空からナイフが降ってきた

 

「オラオラッ!」

 

ナイフを弾き飛ばし、そこから脱出しようとした所さきほどの黒いコートの男が出口を塞いでいた。引き返し入ってきた所から出ようとすると

 

「逃がしはしないぜ!」

 

今度は茶髪の男がそこを塞いでいた。

 

「くっ・・・!」

「悪いな、あんたに恨みはないがこっちも前金を貰ったからな~~」

「それと抵抗しなければ殺しはしないよ、ただ数ヶ月病院で過ごしてもらうがな」

「・・・・・誰がっ!」

「そっか・・・なら、死ね!!!」

 

そう叫んだと同時に、黒いコートの男が持ってた「水」の塊を投げてきた

それは空中でナイフとなり、こちらに向かってきた!

 

「「アウタースローン」!!」

 

近くにあった室外機に能力をかけ、ナイフをそこに集めさせコートの男との距離を縮める

 

「オラッ!」

「・・・・・・フンッ!」

 

拳を繰り出すが、奴のスタンドに阻まれてしまうしかし素早く側面に回りこみ左脚に蹴りを入れ、体勢を崩す。崩れた所に上段蹴りを繰り出す

 

ドガッ!

 

「ブグッ!!」

 

しかし、奴はよろめくも倒れはしなかった

 

「中々頑丈だな」

 

一旦距離を置き、対峙する。そこへ茶髪の男が合流してきた

 

「おっさん!!大丈夫かよ・・」

「・・・・・何とかな」

 

そのやり取りを見ていると長年の信頼関係があるのだと分かった、そして俺は彼らにこう聞いた

 

「なぁ、さっき前金を貰ったとか言ってたな・・依頼したのは誰だ?」

「お、教える訳ないだろぉ!」

「あんたらが俺を攻撃してきたのは、そいつが頼んできたからだろう」

「頼まれてやったのなら俺はあんた達を倒すのに理由はないよ」

「・・・・・本気で言ってるのか、それ?」

「無論、それにあんた達はそいつにいいように利用されているだけだぞ」

「それでもいいのか?」

「・・・・・・・甘いな、少年よ」

「我々は常に「利用され」、「利用して」いるんだ」

 

・・・・・説得は無理だな、それに今のはどういうことだ・・・?

 

するとコートの男はペットボトルを取り出し、こちらに投げてきた

 (また、ナイフか!)

そう思って避けようとすると、それはコの字型の金属となり俺の手足を固定した

 

「なっ・・!」

 

それはしっかり地面に食い込んでおり、動いても取れる気配はなかった

 

「油断したな、おっさんの能力がナイフぐらいしか変えれないと思ったか」

「くっ・・!」

「しかし、これで終わりだな」

 

そう言うとコートの男がゆっくり近づいてきた。その手にナイフが握られていた

 

(何か、この状況を打開するには・・・!)

 

必死に策を巡らせていたが、ついに俺の眼前まで来てしまった。

そして、ナイフを持っている腕を高く上げた・・その時

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

時は遡り、数分前

 

私は家までの道を走っていた・・・

 

(承君・・・)

 

彼はああ言ってたけど、本当に大丈夫かな・・・?

そう思っていた時、私は走る足を止めた

(いつもそうだ・・・・いつも誰かに助けてもらってばかりいる・・・「μ’s」のメンバーに、そして承君にも・・)

(こないだの、講堂ライブの時も彼がいてくれたから・・)

(・・・・・確かに何もできないと思う、けど・・!)

 

来た道を引き返し、再び走り始める

 

(何もできないかもしれない・・・・けど、それでも・・!)

(私は何かしてあげたい・・!守ってくれたあの人の為に!)

 

さっき別れた場所に戻ったけどそこには誰もいなかった

(承君・・・・どこに・・・?)

そう思い、近くの小道を通りそこを抜けた先に広がっていたのは

地面に固定された承君と、その彼に近づく男の人・・その手には鋭く光るナイフみたいなのが見える

 

(ど、どうにか・・しないと・・!)

 

必死になって考えてみるが、一つもいい案が浮かばず焦りが頭の中に駆け巡る・・・

 

(本当になんでのいいの!何か・・・彼を・・・助けてあげられる・・・方法を・・・!)

 

その時自分の心の奥で、何かが生まれた・・・

 

 

 

~~~~~~~*******~~~~~~~

 

 

 

腕が振り下ろされようとした時

 

バシャァ!

 

持ってたナイフが突然、「水」となり地面に落ちたのだ

 

「・・・・・・・・え?」

「ど、どういうことだ・・?」

 

二人も何が起こったのか分からずじまいだった、ふと自分の腕を見ると拘束していた金属具が「水」となっていた

 

「・・・・・!」

 

素早く起きると、目の前の奴の顔面にパンチをあびせた

 

「オラァ!!」

 

「う!・・・ぐっ」

 

一撃をもらうと、少し後ろに倒れこんだ。そして周りを見渡すとそこに穂乃果がいた

 

「お、お前・・・何で・・?」

「良かった~無事で」

「逃げろって言っただろう!」

「でも!あなたを助けたくて・・」

「しかし・・・・・っ!」

 

ふと彼女の背後を見ると、そこには全身オレンジを基本とした色で網目模様の人型スタンドがいた

 

「ほ、穂乃果・・・・それ」

「へ・・・?だ、誰?!」

「何モ恐レルコトハ、アリマセンヨ。アナタヲ守ル為ノ存在デスカラ」

「しゃ、喋ってる・・だと」

 

色んなタイプのスタンドがいるとは知ってるが、まさか喋るとはな・・

 

「す・・・凄い!!」

 

すごく目をキラキラさせている・・・・こんな反応は始めてだよ

 

「ねぇ!名前はなんて言うの?!どうして穂乃果の傍にいるの?!」

「ソノ質問ハ後ニシマショウ、目ノ前ニイル敵ヲ片付ケテカラデスネ」

「ああ、そうだな」

 

そう振り向くと奴らはこちらに向かってきている所だった

 

「舐めるな!こっちにはまだ策はある!」

 

そう言うと茶髪の男が手にしていた石を「水」に変え、コートの男に渡す

そして、それをこちらに投げてくる。

空中でそれはノコギリの刃となった

 

「オ任セクダサイ!!」

 

そう言って、数発の拳を繰り出した。

するとその刃達は「水」に戻ってしまった

 

「・・・な、何故なんだ・・?」

「嘘だろ・・!」

 

奴らがうろたえている・・・今だ!!!

素早く距離を縮め、眼前まで迫る

 

「私モオ手伝イシマスヨ!」

「頼む!」

 

「「オラオラオラオラッ!!オラァァッ!!!!」」

 

「うぐあっ!!」

「ぎゃっぴー!!!!」

 

二人はまとめて吹っ飛ばされ気絶したようだ・・・あ・・・依頼した奴聞きそびれた・・

 

「終ワリマシタネ」

「ああ」

 

すると、穂乃果が・・

「もう名前聞いても大丈夫だよね・・?」

「ソウデシタネ、私ノ事ハ「アクティブ・ガール」ト呼ンデクダサイ」

「うん、宜しくね!!」

 

 

このとき俺達は気づかなかった、この様子を遠巻きで見ていた「2人の人物」がいることに・・・・・

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です

スタンド名:「アクティブ・ガール」
   本体:高坂穂乃果
破壊力-B、スピード-C、射程距離-A
持続力-C、精密動作性-A、成長性-不明

能力
スタンドが触れた「物」を「一時間」前の「状態」に戻す、人が怪我をしたときこれを使えばその傷は「一時間」以内の傷なら元の状態に戻せる
ただし、自分には効果を使用できない

*告知
次回の話は主人公サイドの人は出てきません、この物語の「敵側」の主人公が主体となります

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第10話 三枝三機哉 -平穏を求めし狂人-

今回の話は前回告知したとおり「主人公」サイドの話ではありませんので、あらかじめご了承ください。ではどうぞ


4月12日 AM9:00

 

「ふぅ・・・さて起きるか」

 

暖かい春の陽気が、私の眠気を誘う・・・がいつまでも寝ていたら体に毒なのでベットから起き上がる。

洗面所に向かいまずはシャワーを浴びる、その後歯磨きをする・・毎日続けている為虫歯などになったことは一度もない

キッチンへ移動し朝食の準備をする、メニューは食パンとベーコンエッグとトマトサラダだ・・リビングへ行きテレビを見ながら朝食をとる

 

「フン・・くだらない番組しかやらないな」

 

朝のニュース、通販、ドラマ一通り目を通したが、どれもつまらなくテレビを消してしまう・・・

 

「音楽でも聴くか・・」

 

そう思い、CDプレイヤーを引っ張り出し中にDVDをセットする

 

~~♪~~♪

 

流れているのは「ローリングストーンズ」の曲だ、音楽は素晴らしい・・私の心を「穏やか」にしてくれる・・ただ今の状態は私にとって「穏やか」じゃない、何故なら・・

一枚の「写真」を手に取り、写っているものに目をやる

 

「「弓と矢」・・・「これ」はこの町にあるはずなのだ!」

 

そう・・この「弓と矢」、私の中に眠るあの「力」を呼び起こした元凶である。

私こと「三枝三機哉」は一年前までは普通のサラリーマンだった・・あの日いつもの様に仕事から帰っていつものと同じ夕飯を食べ風呂に入り就寝するはずだった、いつの間にか入ってきた男と出会うまでは・・

すぐに警察に連絡しようとしたが、その前にそいつが持っていた「弓と矢」で喉を貫かれてしまい大量の血が出てしまい、自分の死を覚悟した時不思議な光が全身を覆った。

そして目を覚ますと・・自分が生きていることにまず驚きそしてその男がまだ部屋にいたことにもう一回驚いた・・するとその男は

 

「おめでとう、君は選ばれた者のようだ」

 

最初は何のことか分からなかった、だがそれが実感できたのは次の日からだった・・

自分を悩ませていたいた全ての事柄を「それ」が解決し、それまでぐっすり眠れなかったのが嘘のように快眠できるようになった・・私はあまりのことに人生初めてのうれし涙を流してしまった。

やっと・・・やっと求め続けていた「平穏」を手にしたのだからな・・

だが、私の「平穏」は揺らぎ始めている・・・数週間前仕事が長引いた時自宅近くの公園で・・「それ」を見てしまった・・・・あの、

あの「弓と矢」を持った男に・・!!!!

 

ガシャァン!!

 

気持ちが高ぶってしまったからか、朝食が乗った皿を机の上から払いのけてしまいそれが床に落ちた・・・が

 

「どうでもいい・・!!」

 

そう、どうでもいい・・今はあの「弓と矢」だ!あれがあるという事は私と同じ能力がまだいるかもしれないという事になる!

そうなればいつ自分の前に現れるか分かったものじゃない・・それは私の「平穏」の終わりを意味する・・・

あの「弓と矢」は私が持つか、最悪の場合は破壊するしかないな・・・我が「平穏」の為に・・!

 

割れた食器類を片付けて、パソコンがある自室へ向かう

 

「探し始めてから一週間も経つのか・・・」

 

机の中にはこれまで調べた資料がところ狭しと入っている・・これら全て「弓と矢」に関するものだ・・

 

この一週間で起きた不審な事件を纏めてた所、二件ほど気になったものがありその内一件の犯人が近くの警察病院にいるのだ・・

 

「こいつに聞いてみるか」

 

 

 

 

 

~~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

千代田区警察病院  AM11:25

 

あれから病院の構造を調べるのに手間取ってしまった。

さてどうするか・・・

 

「・・・・ん?あそこは」

 

見ると、この病院の職員が使うであろう専用の出入り口が少しばかり開いていた・・

周りを見渡し素早くそこから入る

 

「さて・・あれを片付けるか」

 

職員用とはいえ、そこには当然防犯カメラがある。今はカメラの死角にいる

私は自身の能力を発現させる・・

 

「・・キング・ロマネスク!」

 

それはカメラに拳を繰り出す、そして私はそいつを引っ込める

 

「これで、私はカメラに「写らない」・・」

 

静かに移動をし、目的の場所まで行く。そこは五階のとある病棟だった。

扉に手をかけ中へ入り込み、ゆっくり「そいつ」に近づく

 

「な、何だ・・・お前・・?」

「やぁ・・・柏原暁さん」

 

「そいつ」の名前は「柏原暁」、数日前自分が勤めている病院の院長の自宅に忍び込んだ所居合わせた女子生徒に暴行を加えようとした所、一緒に来ていた男子学生に返り討ちにあったらしくここに入院しているということなのだか・・

 

「返り討ちにしては随分なやられようだな」

「な・・・何」

 

そう・・返り討ちにしては大分重症なのが気になったのだ、もしかすると私のこの「力」みたいにパワータイプにやられたのだとしたら

 

「お、お前不審者だな・・」

 

そう言い医師を呼び出すボタンを押そうとするが

 

「フン・・!」

「あ・・が・・・何?!」

 

「キング・ロマネスク」が拳を繰り出し、腕を捕らえそのままへし折る

 

「下手なことはしない方がいいよ」

「う・・・うぐあ・・」

 

腕を押さえ苦悶の表情を浮かべる

 

「その状態で悪いが簡単な三つの質問をさせてもらおう」

「う・・・!」

「当たり前だか嘘はつくなよ・・!」

「それと答えにはイエスかノーで言ってもらう、それ以外の言葉を発したら即頭を吹き飛ばし脳みそをぶち撒けるからな」

「・・・わ、分かった」

「よし、一つ目の質問だ」

 

懐からあの写真を取り出す

 

「これの事を見たことがあるか?」

「イ、イエス・・!」

「・・・二つ目、お前はこれを持っているか?」

「ノー・・!」

「そうか、なら最後に「これ」について何か知っているか?」

「ノー・・だ!」

 

 

見たことがあり、持ってはいないか・・・・

 

「少し気になったから聞くが、お前を倒した奴も私の「これ」と同じものなのか?」

「そ・・そうだよ」

 

ということは、そいつが何か知っているかもな

 

「分かった、もういい・・がその前に」

「・・・・・・・・え・」

 

能力を、奴の頭にかける・・・

 

「私と会った記憶は「消させて」もらうぞ」

 

力なくベットに横たわったことを確認して病室から出る

 

 

 

~~~~~******~~~~~

 

 

カチャカチャ・・・・

 

自宅へ戻り情報を整理する・・・・・

柏原が勤めていた病院は「西木野総合病院」・・ということはそこにいた男は、おそらく娘の友達か何かだろうな・・・

娘が通うのは・・「国立音ノ木坂学院」か、あそこは数年前に共学化したはず

するとそこの男子学生か・・・ちっ!ホームページには入ってきた数しか書かれていないか・・だが幸いにも4人しかいないのか・・

ならそこを見張っていれば誰かは分かるな・・・・・

 

今日の所はいいだろう・・・・日曜だから学校は開いていないな、それに焦っても仕方がない・・そうだ「平穏」を取り戻すため・・・確実に一手一手進めるだけだ・・・!

 

 

 

 

 

 

 




いかかがだったでしょうか?ここでスタンドと人物紹介です

名前:三枝 三機哉(さえぐさ みきや)
歳:29歳
身長:181cm、体重:75kg
髪の色:金
イギリス人の父と日本人の母の間に生まれたハーフ

スタンド名:「キング・ロマネスク」
   本体:三枝三機哉
破壊力-A、スピード-A、射程距離-D
持続力-D、精密動作性-B、成長性-不明

全身格子状のような模様で覆われ緑と黒の配色となっており、腕と腰には装飾を施され背中には特徴的な突起物がある
能力
スタンド本体が触れた「物体」の中にある本体にとって「不都合な情報」を消させることができる能力

消せる「情報」に制限はなし、ただし「存在」は消すことはできない

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第2章 「弓と矢」編
第11話 非日常の中にある日常


今回から新章「弓と矢」編が始まります!これから主人公達が辿る戦いを是非ご覧くださいそれではどうぞ


4月15日 通学路 AM8:00

 

「いい天気だな~」

 

心地いい日差しの中、学院への道を歩きながらそんな事を呟いていると・・・

 

「お~~い!承君~」

「ん?穂乃果か・・おはよう!」

「おはよ~~!」

 

元気よく挨拶してきた穂乃果の後ろからいつもの二人が歩いてきた

 

「おはよう御座います、比屋定君」

「おはよう~承一君!」

「園田さんに南さん、おはよう」

 

二人にも挨拶した所で、4人で学院へ行くことになった

 

「そう言えば、今日は朝練はないのか?」

「うん!ライブも近いしね!」

「なるほど、無理に体を動かして怪我とかしないようにする為かな」

「はい、その通りです。しかしよく分かりましたね?」

「もしかして、昔ダンスとかやっていたの?」

「いや、ダンスとかはやっていないけど、サッカーの大会前はよく言われていたからな」

「へぇ~そうなんだ」

 

そんな事を話しながら学院に着いた、さて今日も頑張りますか!

 

 

音ノ木坂学院内 AM12:10

 

 

「・・・ここが屋上か」

 

長い階段を上り、屋上への扉の前にいる。何故こんな所にいるかと言うと、

 

「話があるの・・」

 

5分前、教室でお昼を食べようとした時、突然真姫が入ってきてそう言ったのだ

 

「まぁ大丈夫だよ、でも急にどうした?」

「・・・・ここじゃ話づらいことよ」

 

彼女の表情を見ておそらく「スタンド」のことだろう、しかし話とは何だろう・・そう思いながら扉を開ける

 

「お!来たんやね~」

「東條先輩!?どうしてここに?」

「私が呼んだのよ」

 

声が聞こえた方に目を向けると、セミロングの赤髪を指で弄っている真姫がいた

 

「そ、そうか・・ところで話って?」

「ちょっと聞きたいことがあって・・「ドッペルゲンガー」て知ってる」

「いや・・・知らないな、てか「ドッペルゲンガー」て何?」

「そっか、比屋定君は東京に来たばかりやもんね」

「都市伝説みたいなものよ、去年の震災以降度々目撃されるようになっているの」

「最初はデマかと言われてみたいやけど、被害報告とが出てきたせいでもしかしたらいるかもと言われておるんよ」

「そんな事が・・・もしかして真姫はそれらが「スタンド」の仕業だと思っているのか?」

「もしかしたら・・の話よ」

「ふむ・・・」

 

あり得なくもないな・・・射程がとんでもなく広い奴もいないとは限らないからな

でも

 

「被害といっても、都市伝説の範囲に収まっているのなら目頭をたてることじゃないような気もするが・・」

「ところがそうはいかへんよ、なぜなら」

「それが、自分になりすまして家族に紛れているとしたら・・」

「まさか・・そんな事が出来るのか・・?!」

「被害にあって人達の大半が「家に帰ったらもう一人の自分がいた」というものだからやね」

「恐ろしいな・・」

 

自分がもう一人いる・・調べてみたらヨーロッパの方で語り継がれている出来事から名前がとられているのか、出会ったら死ぬというのが大きな違いみたいだけど。

そんな事を考えていると扉の方から気配がした

 

「・・・!誰だ!!!」

「・・・っ!」

「・・・・・」

 

真姫と東條先輩も「スタンド」を出し、臨戦態勢をとった。すると恐る恐る開かれた扉から出てきたのは、穂乃果だった

 

「え、えーとお邪魔だったかな・・・?」

「お前か、びっくりさせるなよ」

「ゴメン、ちょっと承君を探していて・・・えっ!!」

 

真姫の方を見て後ずさる穂乃果、見ると真姫の「スタンド」が出ていた

 

「ま、真姫ちゃん・・・それ・・」

「こ、これは・・・その・・・」

「すごい!私のと同じようなのが見えるよ!!」

「「「・・・・え・・?」」」

 

3人同時に変な声が出てしまった・・穂乃果はこういう奴だったとすっかり忘れてしまっていたよ・・

その後穂乃果にスタンドが発現したこと、真姫に発現した経緯について4人で話した

 

「良かった~~穂乃果や承君以外にも「スタンド」を持っている人たちに会えるなんて、しかもメンバーで」

「私も以外だったわよ、まさか穂乃果に発現していたなんて」

「そうやね、うちも驚いたよ」

 

3人とも同じ反応だった、無理もないだろうな。ただえさえ他の人たちに見えないものを持っているのだから・・

 

「それにしても不思議やね、こうして同じ「μ’s」の仲間が「スタンド」に目覚めるなんてまるで「引力」みたいやね」

(・・「引力」か、言われてみればそうかもな)

(最初に穂乃果に出会い、初めてのスタンド戦で負傷し病院で真姫と会ってその後東條先輩に会えた・・・もしかしたら本当にあるかもな)

「きっとあるよ!「μ’s」としてみんなに会えた、だからこうして承君とも会えたのもそうだよ!」

「穂乃果・・・」

 

普段は色んな所が抜けていて、ドジな部分も見えているけど彼女なりに色んなことを思って考えているのだろうな・・

 

「ところで・・・「引力」て何だっけ?」

 

・・・・前言撤回、やっぱり只のあほだったようだ

 

 

 

 

 

~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

 

放課後 アイドル研究室

 

「何故・・・ここに」

 

あ、ありのまま起こったことを話すぜ!最後の授業が終わった後トイレに行って帰ろうとしたところ机の上に置いといたはずの鞄がなくなっていた!その代り「返してほしければアイドル研究室に来い」という置手紙があったからそこへ行ったら3人がかりで取り押さえられた挙句椅子に縛られているんだ!何を言っているか分からないと思うが俺が一番分からないぜ!

 

「なぁとりあえず、解いてくれないか・・?」

「どうしようかな~」

 

ほ、穂乃果め・・・・あとで覚えておれ・・!

 

「まぁまぁ、穂乃果ちゃん・・」

 

そう言って、南さんが紐を解いてくれた・・天使だ・・!

 

「そんな事言ってないで用件を先に言ったら?」

「あ、そっか・・!」

(こいつ今まで忘れていたな・・)

「で、用件て何だよ?」

「承君!」

「何だよ、てか顔が近い・・・」

「今度の土曜日暇?!」

「一応、暇だけど・・・・」

 

何だろう・・嫌な予感がする・・

 

「私達のライブに着いて行ってほしいの!!」

「・・・・・・・・・はい?」

 

訳がわからず、困惑していると園田さんがこう補足してくれた

 

「正確に言えば、定期的に行っている「東海復興ライブ」が土曜日に名古屋で開かれるのでそれに来て欲しいということなのです」

「え・・・、しかし何でまた・・?」

「先週の講堂ライブと同じ理由だよ!」

「講堂ライブ・・?まさか・・!」

「うん、またボディーガードをやってもらいたいなぁ~て」

 

「・・・・・お腹が痛いんで帰ります・・・」

 

「だめです・・!」

「逃がさないにゃー!」

 

小泉さんと星空さんに先回りされてしまい、出れなくなってしまう

 

「いいじゃん~!この前はやってくれたじゃん」

「あれは君らがすごく困っていたから、何とかしてあげたいと思って言ったことなのでしかも1日だけだったし・・・!」

「もしかして怖いの~?」

「うっさい!まな板先輩!」

「だ、誰が!まな板よ!!!」

 

先輩に思わず噛み付いてしまった・・・まぁいいか、そんなことより!

 

「と、とにかく引き受ける訳には・・!」

「強情だな~しょうがない!ことりちゃん!」

「うん、任せて!」

 

そう言い、南さんが俺のとこまでやってきて胸元の前に手を置き、上目遣いでこう言った・・

「承一君・・おねがぁい!!」

 

・・・・あの声とあの目はとても断れないぜ・・・気が付けば自然と承諾している自分がいた、しかし名古屋までの費用は学院側が負担してくれるとのこと・・タダで旅行できると思えばいいか。

こうして俺はまた彼女達「μ’s」のボディーガードとなった・・・もう専属てことじゃないかと思ったのは内緒にしてほしい




いかがだったでしょうか?今回は戦闘はないためスタンド紹介もなしです。
スタンド案の募集はまだまだ行っていますので是非そちらの方もよろしくお願いします!


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第12話 ストゥームその①

お待たせしました!今回から「東海復興ライブ」として名古屋が舞台です、そして新たなスタンド使いが出ます!それではどうぞ


JR名古屋駅  AM9:30

 

「・・・・もう着いたのか」

 

新幹線が目的場所に着いたようなので体を起こす、すると隣から

 

「ほらほら~承君着いたよ~」

「今起きたところだよ」

 

穂乃果だ、随分元気だな・・・もしかしてずっと起きていたのかよ、俺も起きていようとしたけれど結局寝ちゃったな

 

「五時起きは辛いよ・・・」

 

そんな独り言を言いながら荷物をまとめ、出口に向かう

 

「ん~~いい天気やね~」

「本当ね」

 

東條先輩と絢瀬先輩がそう言ってたように、空は雲一つない快晴だ・・・ここが一年前震災の被害があったとは信じられないな。そんなことを考えていると穂乃果が話しかけくる

 

「どうかしたの承君?」

「いや・・少し考え事をしてたんだよ」

「そうなの?何か難しい顔していたよ」

「もしかして、これからの事を考えていたのですか?」

「いや・・・そうだな、こないだのことを思い出していてな」

 

変に震災のことを言って、場の空気を重くさせまいと咄嗟に言ってしまったが、あながち嘘でもない・・あのストーカーみたいなのがまた来ないとも限らないからな

 

「大丈夫だよ!承君がいてくれるから!」

「俺が・・?」

「そうですよ、あの時あなたが助けてくれたおかげですよ」

「穂乃果・・園田さん・・」

 

・・・二人共そう思ってくれていたのか・・

 

「ありがとう・・」

 

自然にその言葉が出ていた・・そんなに感謝されるのはいつ以来だろうか・・

 

「さぁみんな行くわよ」

 

絢瀬先輩がそう言うと、名古屋滞在の為に用意されたホテルへ向かうタクシーが止まっていた。俺も気持ちを切り替えて行くか!

 

 

名古屋プリンスホテル AM10:00

 

「・・・・・」

 

何故黙っているかというと・・

 

「・・・・・広い、いや広すぎる・・」

 

「μ’s」の為に用意されたホテルだということなのだが・・ロビーが広く内装も豪華そのものだ・・・シャンデリアとか初めて見たぞ・・!

 

「いつもこういうところに泊まっているのか?」

「いつもじゃないけどね、確か今日明日のライブで20回目だからその記念てことじゃない?」

「絢瀬先輩・・冷静すぎます」

 

生まれて初めてこんなところに来たのだから、すごいソワソワするな。そんなことを考えているとホテルの人がやってきて部屋に案内してくれた

 

「部屋もすごいな~」

 

部屋の中は一人だと広々していて、窓からは名古屋の町が一望できるとは・・・・あ!ウェルカムフルーツもあるのかよ・・豪華すぎるよ。

因みに部屋割りは、俺は一人で後は穂乃果・南さん・小泉さんと東條先輩・園田さん・星空さんと絢瀬先輩・矢澤先輩・真姫となっている

穂乃果が自分達と同じ部屋でいいとか言っていたが、さすがにそれは俺の理性が飛んでいきそうなので全力で断った・・全く

 

「できれば、何も起きてほしくはないな・・」

 

 

 

 

 

~~~~~~~******~~~~~~~

 

 

 

 

 

時は遡り、30分前

 

 

「やっと着いた~~」

 

そういい新幹線からおぼつかない足取りで出てきたのは一人の学生だった

 

「電車賃、宿泊費・・うう結構な額になってしまったけどもう引き返せないや!」

 

自分を奮起させ、名古屋駅から出発する彼の名前は「久井 武臣」、「μ’s」のファンでありそして「音ノ木坂学院」の一年生である。見た目は黒のセミロングの髪型をしており、一見女性にも見えるがれっきとした男である・・男である!

 

「早く彼女達を見つけないと・・」

「けどどうやって探そう・・僕の「能力」じゃ探すことはできないし」

「・・・まぁ適当に探せばいつかは見つかるよね!」

 

そう言って彼は町へ入っていく・・・

 

~30分後~

 

「だ、だめだ・・全然見つからない」

 

相当歩いただろうか・・肩で息をしながら路地の壁にもたれる

 

「やっぱり適当は駄目だったか~」

 

広い名古屋の町をあてもなく探し回るという事がどれほど無謀なことか、彼は改めて思い知らされたようだ、するとそこに

 

「どうしたの?そこのお嬢ちゃん~?」

「へ・・!?いや大丈夫です」

 

いかにもチャラついた男が彼に話しかける・・どうやら女と見間違えているらしい

 

「そう言うなって、俺と一緒に遊ぼうよ~」

「け・・結構です・・あ!」

「逃がさないぜ~」

 

男の手が、右腕を掴む

 

「は、離して・・!」

 

必死にもがくが男の方の力が強いせいか離れる気配は全くない

 

「冷たいな~ちょっとぐらいいいじゃん」

(全然離してくれない・・こうなったら)

 

心を落ち着かせ、呼吸を整え静かにゆっくりと自らの「能力」を呼ぶ・・

 

(・・・・・・・・・ストゥーム)

「お!ようやくその気になったの・・・か?!」

 

ガンッッ!!!

 

突然男の左後方にあったポリバケツが飛んできて、後頭部に直撃する

 

「な・・・・ぐぅ!」

 

男は手で押さえ、そのまま気を失った

 

「ふぅ・・こういう人は東京以外にもいるのか・・・」

「早く探さないと・・・」

 

そう言って足早にその場から立ち去る、ポリバケツは元の位置に戻っている

 




今回は短いですがここまでです。スタンド紹介です

スタンド名:「ストゥーム・Act1」
   本体:久井武臣
破壊力-D、スピード-B、射程距離-B
持続力-C、精密動作性-C、成長性-A

能力
本体の周りにある「気流」を操る能力
「気流」の速さ、向きなどを自在に操作し、それによって物を飛ばしたり自分の周りの「気流」を速くして攻撃をかわすことも可能、ただしスタンド本体の攻撃力はとても低い

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第13話 ストゥームその②

用事があって遅れてしまいましたが、ようやく投稿できました。それではどうぞ!


名古屋プリンスホテル内 PM14:00

 

「今のところは何も異常はないか・・・」

 

俺はホテル内の二階にある「第一会議室」から少し離れた場所にいる・・・一応不審者などが入ってきそうな箇所は見て回ったが特に何もなかった。

考えてみれば、ホテルの中になるので宿泊客以外が入ってきたらロビーのところで捕まる訳になるからなぁ・・・

 

「・・・にしても、結構かかるな」

 

彼女達がいる会議室の方を見る、今は市の関係者とこれからのライブについて最終打ち合わせの真っ最中なのである

 

「ライブの打ち合わせはそんなにかかるのかぁ」

 

ため息交じりの言葉を呟いて二階のエレベーターホールに向かおうとした時、角から人影みたいのが出てきたが反応が間に合わずその人とぶつかってしまう

 

「うっ!!」

「わっ!」

 

お互い身を引こうとして体を反らすが、その人は体勢を崩し尻餅をついてしまう

 

「痛た・・・」

「すいません!大丈夫ですか?」

「は、はい・・大丈夫です」

 

咄嗟にその人に手を伸ばし、体を起こす。見た目は黒髪の少し長めであって一見すると女性に見えるのだか・・

 

「あの本当にすみません・・・よそ見をしてしまって」

「大丈夫ですから気にしなくてもいいですよ」

 

気を遣わせてしまった・・どうも俺の悪い癖だな、そう思っていたらエレベーターの一つが開いた

 

「それじゃ僕はこれで・・」

「あ・・はい」

 

その人は上りのエレベーターに乗り込んで別れを告げていく・・・ん?僕・・・?ま、まさか・・・!

 

「お~~い、終わったよ~!」

「・・・・・ああ」

 

そんな穂乃果の声が聞こえて、考えていたことを振り払う・・

 

(そんな人もいるよな・・・)

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

ホテル内 5F

 

「びっくりしたぁ~~!」

 

自分の部屋に帰り、開口一番にでた言葉だった。興味本位で立ち寄った場所で他の人に出会うなんて・・・

 

「ちゃんと謝っておくべきだったかな・・・?」

 

でもあの人、結構優しかったなぁ・・せめて名前ぐらい聞いても良かったかな?一瞬そう思っていたがすぐに振り払う

 

「駄目だよ、今日はライブを見に来ただけじゃないから・・!」

 

そう言い、鞄の中から一枚の「写真」を取り出す。

 

「何としてでも、彼女達に伝えなくては・・・危険が迫っていることを」

 

そこに写っていたのは「μ’s」メンバーの一人「園田海未」の後ろ姿であった。そしてその裏には撮影された日と日時と時間が書かれていた・・・・

 

「さて、少し寝てからライブ会場へ行こう」

 

~一時間後~

 

「・・・・・ん。う~ん」

 

眠気が残る体を動かし携帯を見る・・

 

「・・・3時か、もう移動をしようかな」

 

そう言って手早く荷物をまとめ部屋を出ようとした時

 

「そうだ!ツイッターの様子はどうなっているかな?」

 

携帯を取り出し、ツイッターのところを開く

 

「ふむふむ、もう会場へ行ってる人がいるのか・・・物販はもう始まっているのか~」

 

画面をスクロールしながら見ると、とあるツイートの所で手が止まる

 

「ええ!「μ’s」が「名古屋プリンスホテル」に泊まっているの?!!」

 

まさか・・・同じ場所にいるなんて・・・これは早くチャンスかもしれない!そう思い、まだ纏めている最中の荷物を置いて部屋を飛び出た

 

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「じゃあみんなそろそろ行きましょう!」

 

絢瀬先輩の言葉で会議室にいたみんなは各々準備し始めた

 

「俺は先に出て異変がないか見てきますよ」

「承君・・気をつけて!」

「穂乃果・・分かってる!」

 

そうみんなに告げ、一人部屋の外に出る

 

「・・・・静かだ・・・いや静かすぎる」

 

さっきの静けさとは一変し、無機質な静寂がこのフロア全体を覆っている。

すると・・・・

 

ガシャンッ!!

 

「・・ッ!!」

 

奥の方から物音がした、それに反応するかのように穂乃果達が出てくる

 

「い、今の音は・・?」

「奥から聞こえたな・・様子を見てくるから君達は先に行っててくれ」

「しかし・・!」

「・・・・・・・行こう!」

「穂乃果ちゃん!?」

「私は承君のことを信じるよ、だからみんな行こう!」

「穂乃果の言うとおりだ、君達のライブを待っている人達の為に行ってくれ!」

「・・・分かったわ」

 

そう言い、絢瀬先輩を先頭にみんながエレベーターへ向かい全員が行ったことを確認して奥へ向かう

 

「ここか・・・・」

 

見るとそこは非常階段への扉だった、おそらくこの扉の先から聞こえたはず・・・

慎重に扉を開けてみると、そこには何もなかった。

扉を全開にして階段の方に出ても変った様子はなかった

 

「気のせいか・・?確かに聞こえたはずだが・・」

 

そう思ってホテルの中へ戻ろうとした時、突然扉がすごいスピードでこちらに向かい閉まろうとしていた

 

「オラッ!!」

 

扉と拳がぶつかり合い、鈍い金属音が響く。扉を少しへこみ閉まった・・

 

「今のは・・スタンド攻撃か・・!」

 

周りを見渡すが人の気配はなかった・・

 

「だがどこかにはいるはずだ」

 

その場から移動しようとすると、数メートル先にあった消火器が俺の方に向かって飛んできた

 

「くッ・・!」

 

身を屈めてそれをかわす、消火器は床に落ちる。

 

(どうやら、物を操作するタイプようではないな・・)

 

だが物と飛ばすのではないとしたら、一体何なんだ・・?俺のと同じタイプか・・?それならどこかで本体と接触してるはず・・まさかあの時の人が・・?それだったら攻撃チャンスは他にあったはず

移動しようと体を動かそうとするが、全く体が動かなくなっていた。

 

「な・・何・・!」

 

どういうことだ、これがさっきの消火器や扉と同じなら余計に分からなくなるぞ・・!

すると後ろにあった消火器がカタカタ動いたと思うとこちらに向かってきた

 

「うおお!オラオラッ!」

 

数発の拳を繰り出し、消火器を殴り飛ばす。その衝撃からか中身が漏れ出した、それは空中に舞い俺の横を通り過ぎていった

まるで俺の体を避けるように・・・

 

(そうか、分かったぞ!敵の能力が・・!)

(おそらく・・・・「気流」の向き、強さを操作する能力だ!)




次回決着がつきます!今回はスタンド紹介はないです
スタンド案の件ですが「味方」側は決まりましたので「敵」側のスタンドのみの募集になってしまいのでよろしくお願いします

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第14話 ストゥームその③

今回でストゥーム戦が決着します!
それとスタンド案の募集は締め切らせてもらいましたのでご了承ください
それではどうぞ!


ホテル内2F PM15:08

 

(気流を操る能力か・・・厄介だな)

 

さきほどの攻撃を躱し、今は第二会議室と書かれている部屋の中で体勢を立て直しているところだ

 

(だが、本体の姿が見えないのはどういうことだ・・?)

 

本来なら遠隔操作型は本体が目に見えない位置だと正確に攻撃はできない・・あの消火器の動きはあきらかに俺を狙って飛んできた。

 

(つまり考えられるのは、俺から見えず相手から見えている方法があるかもしくは遠隔自動操作型か)

(前者ならその方法を見つければいいが無闇に動くわけにもいかないし、後者なら探す範囲がこのホテル全域に・・いやホテルの中にいるという可能性はないかもしれない)

 

何か方法はないか・・・そう考えてた時

 

バタンッッ!!

 

「・・ッ!」

 

突然二つある会議室の扉の内、奥の方の扉が開いた。そして

 

ガシャ・・ガシャ・・・

 

奥側にあった椅子が少し浮いたかと思うとこちらに向かって飛んできた!!

 

「くッ・・!!」

 

飛んできた椅子を避け、奥の出口に向かって走る!そして扉を閉める

 

ガンッ!ガシャンッッ!

 

扉と椅子同士がぶつかり合う音が聞こえ、すぐに静かになる

そしてすぐに周りを見渡すがやはり誰もいない・・

 

「やはり、遠隔自動操作型の可能性があるな・・」

 

そうなるとホテル内にいるのは得策ではない為、この階から出ようとエレベーターホールに向かおうとし、さきほどまで使われていた第一会議室の前まできたところで

 

バンッ!バンッ!

 

会議室の扉が開かれたと思うとそこから数個の机と椅子が飛んできた!

 

「「アウタースローン」!!!!」

 

能力を使い、さっき触れておいた柱に飛んできたものを集めさせる。

すると中から全身渦を巻いた半透明の人型スタンドが出てきた

 

「やっとスタンドのお出ましか・・!」

 

一瞬の静寂のあと素早く拳を繰り出す!

 

「オラオラオラッ!!」

 

奴は身を捻って躱そうとするが、拳の到達が早かった為右腕に直撃する。すると

 

うああッッ!

 

痛みのあまり本体が叫び声をあげた、そこは・・

 

「男子トイレか・・」

 

エレベーターホールのすぐ近くにある男子トイレだった、乗り込もうと一歩踏み出したところ一人の男が出てきた・・だがその人は・・

 

「え・・・・?」

 

見間違えではなければ、その人は数時間前この階でぶつかった人だった・・・やっぱり男だったんだ

 

「え・・?あなたはさっきの・・」

 

どうやら向こうも驚いているだった・・驚きたいのはこっちだがな

 

「まさか・・・あなたが・・!!」

「へ・・・何が・・?」

 

何か気に障ることでも言ったのか、肩をプルプル震わせながら俺のことを睨みつける

 

「とぼけても僕は許しません!!」

 

そう叫ぶと、さっき柱に集めさせておいたはずの机達がこちらに向かってくるのが見えた

 

「仕方がない・・・!」

 

一気に彼との距離をつめ、拳を繰り出す!

 

「オラッ!」

「う・・・・ぐぅ・・!」

 

アッパーの要領で繰り出された拳は顔面を確実に捉え、そのまま気を失った

 

「何とか終わったな・・」

「しかし聞きたいことができたからしばらくはここにいるか、穂乃果達には何て説明しようか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

 

 

「う、う~ん・・・・」

「気が付いたか」

 

あれから数十分後、目が覚めたらしいので話しかける

 

「ま、まだいたんですか?!」

「いやいや、そんなに警戒しなくていいよ・・」

 

起き上がるのと同時に、後ずさりして距離をとられてしまう・・

 

「しかし、あなたは・・!」

「待ってくれ、俺が何かしてしまったのか?」

「・・・・本当にわからないんですか?」

「ああ、全く・・・」

 

そう言うと、一呼吸おいてゆっくりと話始めた

 

「実は、彼女達いや「μ’s」に危険が迫っていることを伝えたくてここまで来ました」

「危険だって・・!?」

「はい、僕は「音ノ木坂学院」の学生なんですが、そこでこんな「写真」を拾って・・」

 

受け取った写真には見慣れた人が写っていた・・

 

「これは園田さん!?どうしてこんなものが・・・」

「分かりません、ただこれを見た時とてもイヤな予感がして・・・」

「確かに・・普通ではないな」

 

ぱっと見た感じは普通に見えるのだが写真の角度が下向きなのと被写体である園田さんがこちらを向いていないのが余計に不気味だ、これではまるで「盗撮」されたとしか思えない、そんなことを思ってると

 

「そう言えば、名前を聞いてなかったですね・・」

「そうだな、俺は「比屋定承一」音ノ木坂学院の二年生だ。宜しく!」

「先輩だったんですか?!僕は「久井武臣」です、一年生です」

 

同じ学院だったとは・・・しかも年下という、何か今日は驚きぱなしの一日だな

それよりも・・

 

「今は一刻でも彼女達の元に向かわなくては・・」

「僕も着いて行きます、元は勘違いで襲ってしまったから・・・せめてお手伝いだけでもさせてください!」

「・・分かった、じゃあ行くぞ!」

「はい!」

 

そう言い俺達はエレベーターに乗り込む・・・時間は15:45分か、何も起きていないことを願いホテルを出発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~*******~~~~~~

 

 

 

 

 

同時刻 音ノ木坂学院 弓道場

 

 

ヒュンッ!トンッッ!

 

弓矢が風を切り、的に射られる音が鳴る道場で一人の女子生徒が道着姿で練習をしていた、彼女は最後の一本を抜くと弓にあて、弦を引き矢を放つ

 

ヒュンッッ!トンッッ!!

 

さきほどと違い力強く的に刺さる矢、それを見つめ一礼しその場から去る

 

 

「ふぅ・・・」

 

ここは弓道部の更衣室である、女子生徒は着替えている最中だった・・・すると鞄の中から一冊のノートを取り出す

 

「はぁ~今日もいまいちだったな、やっぱり「あの人」がいないと練習に身が入らないよ~」

「でも「これ」さえあればいいもんね~」

 

そしてそのノートを開く、そこには・・・

 

「いつ見ても凛々しいですわ~「園田さん」は」

 

開かれたページにはびっしりと「園田海未」の写真が張り付けられており、そして一枚一枚はすべて違う角度から捉えられている、それらの写真を恍惚の表情で見ていてやがて満足したのかノートをしまい、こう言った

 

「早く帰ってこないかしら~私は「あの矢」で園田さんを射ったらどうなるか早く試したいよ」

 

そう呟き、ロッカーの中に目をやるとそこには鈍く光る「弓と矢」の一式が置かれていた・・・・

 




いかがだったでしょうか?今回もスタンド紹介はなしです

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第15話 「同化人間」

今回は物語の根幹に関わる者が出てきますのでお見逃しなく!
この話は前回の後半からの続きから始まりますのでご注意ください


音ノ木坂学院内 PM16:05

 

さきほどの女子生徒が廊下を歩き、目的の場所へたどり着く

 

「失礼します、弓道場の鍵を返しにきました」

 

職員室の扉を開け、部室となっている弓道場の鍵を返しにきたのは学院の弓道部に所属しさらに副主将を務める「谷ヶ崎飛鳥」である

 

「お!ご苦労だな、谷ヶ崎」

「山田先生・・・川和先生はいらっしゃらないのですか?」

「まだ戻ってないな、確か補修授業をやっているからな」

「そうですか・・」

「鍵は私が預かっておくよ、戻ってきたら渡しておくから」

「はい、ありがとうございます」

 

そう言うと、鍵を山田先生に渡して職員室を出る、そして荷物を置いておいた教室へ向かう

 

「さて・・・と」

 

鞄を肩にかけ、細長い筒状の物に手を添える

 

「今日は誰かいい奴はいるかな~?」

 

その中身は「スタンド」を覚醒させる「弓と矢」だった・・・・

 

 

東京都文京区本郷 PM16:25

 

音ノ木坂学院から数十分の場所にあるこの場所に彼女はやってきた。

 

「ここに来るの初めてかな~」

 

道すがら色んな人に出会ったが「弓と矢」の反応は芳しくなかった・・

 

「・・・全く「あの人」も神経質すぎるんだよね~わざわざ「人間」を「スタンド使い」にさせなくてもな~」

 

長い独り言を呟きながら歩いていると、ある大学の前で足が止まった

 

「「弓と矢」が反応している・・・この大学の中からか」

 

そこには「京花院大学」と書かれていおり、生徒だろうか人がちらほらいるのが分かる

 

「物は試しだし、入ってみるか!」

 

彼女は躊躇なく大学内に足を踏み入れた、入ると桜の花が咲き誇り満開となっていた

 

「反応を示したのは・・・あいつか」

 

桜の木の下の丸椅子に腰かけている女性に「矢」は反応していた。

それを確認すると、「弓と矢」を出し構えに入った・・

 

「どうなるかな・・・・とっ!」

 

矢を引いた指を離した、風切り音とともに矢はその人の心臓部を貫き・・・その刹那激しい発光し体を包み込んだ

 

「なるほど・・適正ありってことか」

 

その人は胸を少し抑えたが、何事も無かったようにその場を立ち去った

 

「せいぜい頑張ってくださいよ、「私達」の為に・・・」

 

そして彼女も踵を返しその場を去った。

 

これまでの彼女の行動は誰かが見られていると思われているがその可能性はゼロだろう・・何故ならば彼女は「人間」であり「人間」ではないからだ、「それ」が持つ固有の能力によって自身の姿を消せてしまうからである。

 

ここで簡単なプロフィールを紹介しておこう・・・

 

名前:谷ヶ崎飛鳥 歳:17歳?

性別:女性 生年月日:不明 出身地:不明

スタンド使い 

種族:「同化人間」

 

「社会」という「色」に「同化」する彼等の目的は一体何だろうか?・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

 

少し遡り数十分前 名古屋市立スポーツドーム PM16:10

 

ここは名古屋市が市民の為に設立した公共施設である、ここでは様々なスポーツイベントが行われているが今日はその限りではない。

中央グランドに特設ステージを造り、そこで「μ’s」の「東海復興ライブ」が行われていた、そこに息を切らした二人の人物が現れる

 

「はぁはぁ・・・やっと着いた」

「も、もう・・・歩けません・・・」

 

比屋定承一と久井武臣である、二人はホテルから走ってこの場所に来たのだが・・・・

 

「よく考えれば、バスで行った方が早かったんじゃないか・・」

「へ・・・た、確かに・・」

 

余計な労力を使ってしまったと思う二人はさておきライブは既に行われており、どこにも異常な事は起こってなかった

 

「良かった、何もなくて・・」

「これなら安心ですね・・」

 

取り越し苦労なわけだが、普段と変わらない様子のライブを見て二人は安堵した

 

「過ぎたことを言ってもしょうがないな、今はライブを楽しむか!」

「はい!比屋定先輩!」

 

それから一時間後全ての曲が披露し終え、鳴りやむことがない歓声と拍手の中ライブは終了した。

承一はすぐに、久井を連れみんなが待つ控室に行った

 

「みんな!今日のライブは大成功だな!」

「承君、どこに行ってたの?!」

「え・・!まぁ色々とあったからな・・」

「ふ~~ん」

 

何か変な目で見られてるようだが気にしないでおこう、そんな事を思っていると真姫が話しかけてきた

 

「ところで、あそこにいる人は誰なの?」

 

そう言って見た先には、目をキラキラさせている久井の姿があった

 

「すごーい!!本物だ~~!!」

「さっき知り合った人でな・・・後で話したい事があるから穂乃果と東條先輩に伝えてくれ」

「分かったわ」

 

話したいこと・・彼が「スタンド使い」であるという事、さらに園田さんを狙っている者の存在・・・

これからどんな事が待ち受けているかは分からない・・・・なら今という時間を大切にしなきゃな

 

 

名古屋プリンスホテル4F 承一の部屋 PM19:30

 

「お邪魔します・・・」

「遠慮しないでも大丈夫だ」

 

恐る恐る入ってきた久井を迎え入れる、穂乃果、真姫、東條先輩はすでに部屋の中でくつろいでいた

 

「それで話ていうのは「スタンド」のことやね」

「はい・・」

「え!?もしかしてみなさんも僕と同じ力を・・・?」

「うん!そうだよ!」

「まぁそうなるわね」

 

久井が驚き、二人が各々の反応を示す。てか真姫も慣れたのか、スタンドを見ても驚かなくなったな

そんな事を言っている場合じゃないな!

 

「久井、あの写真を・・」

「う、うん・・・」

 

懐からあの「写真」を三人に見せる

 

「何これ!?海未ちゃんの写真!」

「これどう見ても盗撮じゃないの!」

「・・・・・・」

 

二人が反応を示す中、何故か東條先輩だけは黙っていた

 

「あの、どうかしたんですか?」

「いやな、海未ちゃんの背景に写っているこの壁の色・・・・学院の廊下の色によく似とるなと思って」

 

指摘された個所をよく見ると、確かにこの色は学院のものだと分かった

 

「・・・ということは」

「学院内の誰かが撮ったということになるわね」

「ど、ど、どうしよう~!?」

「落ち着け穂乃果!今慌ててもしかたがないだろ」

「で、でも・・」

 

慌てる穂乃果を落ち着かせ、今できる対策を考える・・・と言ってもできるのは限られている為、明日も考えることになって今夜は解散となった

 

とりあえず、名古屋にいられるのは明日の午前中だけだからな・・・こんな時こそ冷静にならなくてはと思い眠りについた




いかがだったでしょうか?「同化人間」の解説は次話になります。

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第16話 光と暗黒

今回の話は冒頭に「同化人間」の解説を持ってきますので、少々読みづらいかもしれないので気をつけてください
それではどうぞ!


・「同化人間」詳細解説

 

・いつ?どこからやってきたのかは不明

いつの時代からいてどうやって生まれたのかも分からない、ただ「彼ら」はその時代に合わせその「社会」に「寄生」するように生きてきた

 

・平均寿命は「大体270歳」ほど

人間より成長スピードが速く、歳を取るのも速い

老化はしない

 

・睡眠、食事の必要はなし

体内でエネルギーを作り、それを糧に生きているため食事は摂らなくても平気(稀に趣味で食事をとってたりする)

 

・男女があり、約90%が「スタンド使い」である

 

・「同化」と「吸収」と呼ぶ能力がある

 

・「吸収」とは

吸収したい相手の遺伝子情報(爪、髪の毛等)を体内に取り込み、その人物になれる(ただし「記憶」は反映できない)

 

・「同化」の仕組み

体中の汗腺から「同化粘液」と呼ばれる物質を出し、それで服ごと全身を覆う

「同化粘液」は、体外に出ると瞬間的に硬質化する

硬質化すると、「光」を透過・偏向ができなくなり人間の視覚では捉えることができなくなってしまう(擬似的な光学迷彩である)

 

・人口は不明

 

・死亡

体組織が崩壊し始め、霧状となり消滅する

 

・社会との繋がり

睡眠を必要とせず、食事も摂らなくても生きていけるのと一度「同化粘液」に包まれると高温(500℃程度)極低温(-190℃程度)まで耐えれる体を持っているため集団による組織社会を作らず、「人間」が作った社会に「寄生」という形で生き続けてきた

 

・「弓と矢」の関連性は現在不明である

 

詳細解説 終

 

 

本編に戻ります

 

 

 

 

 

~~~~~~~*******~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

4月19日 東京行き新幹線内 AM12:30

 

「・・・・・」

車窓から望む景色が高層ビル群になってきたのを思うと、東京に帰ってきたことを実感できる・・・

俺は昨日ぐっすり眠ってしまった為眠れず外の景色を見ながらうわの空になっていた・・・違うな、正確に言えば数十分前のことを思い出していたんだ。

 

AM12:00 新幹線内

 

「これからどうするか・・・」

 

この日の席は東條先輩の提案で俺、穂乃果、真姫、東條先輩、そして久井で座ることになった

 

「海未ちゃんに伝えて、犯人を捕まえるまで家にいてもらうのは・・?」

「だめよ、それだと危険が増えるわよ」

「え・・・」

「真姫の言うとおりだな、相手がそれを知って学院に留まっているとは限らないしな」

「それに海未ちゃんの家族に危害がおよぶかもしれへんからな」

「あう・・・確かに・・」

「穂乃果、助けたい気持ちは分かるが今は焦る時じゃない」

「う、うん・・」

「それに俺達にもアドバンテージがある!」

「・・・・?」

「今、俺達の事を相手はまだ知らない・・」

 

そう言うと、真姫が納得したように頷く

 

「なるほどね、相手は調べられていることを知らないから警戒はされていない」

「そう・・・だけど調べていけばこっちの存在も知らせることになる」

「早い段階で見つけなかあかんと言うことね」

「そうだな、せめて明日か明後日には見つけないと・・」

「・・・でもどうやって・・・?」

 

今まで静かだった久井が弱々しく聞いてくる

 

「・・・それはまだ決まっていないな」

「と言うか、今まで何で静かだったの?」

「・・ちょっと乗り物酔いで・・・」

「はい!私の酔い止め薬を分けてあげる!」

「ありがとう御座います・・穂乃果さん」

 

穂乃果から薬を貰い、それを飲む

 

「せめて心当たりがあれば良かったけど・・」

「穂乃果は海未から何か聞いてない?」

「うん・・・聞いてないよ」

 

手掛かりはこの「写真」しかないか・・・どこかにヒントは・・・

そう思っていると穂乃果が何かに気づいた

 

「あれ・・・これって・・?」

「どうした?」

「いや、この廊下て確か「弓道場」へ行く道だな~と思って」

「本当か?!」

「うん・・ことりちゃんと一緒によく通ったから分かるよ」

 

となれば、これを撮った人物は・・・

 

「弓道部に所属する人ってことね・・」

「これでかなり条件は絞られたやね」

「でも・・その途中で撮ったということは・・?」

 

確かに・・久井の言う通りだな、だが

 

「それは、無いと思うよ」

「へ・・・?」

「だってこの道は途中で曲がるとこがないから、途中で来ることはないよ」

「それにこの距離なら不審者だったらもう気づいているよ」

 

なるほどな、一本道なら途中で出会うことがないし途中で隠れる場所もない、それにこの近距離なら確かに気づいていてもおかしくないな

 

「同じ部活動の生徒なら怪しまれずに近づけるよね」

「な、なるほど・・・・」

「弓道部なら所属している生徒はあまりいないだろう・・」

「これでやるべき事が決まったね!」

 

 

大分前進したな、「弓道部」の誰かが園田さんを狙っていることが・・・なるべく早く解決した方が良いな、彼女の為にもそして彼女を思う者たちの為にも・・・

 

 




短いですがここまでです。次回学院を舞台にストーカーの正体を探るため承一達が奔走します!

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第17話 狂気の矢

今回は学院を舞台に承一達の捜索が始まります。
それではどうぞ!


4月20日 音ノ木坂学院通学路 AM8:00

 

「んん~~」

 

暖かな日差しが降り注ぐ中、背伸びをしながら学院へ歩いていく。

今日は園田さんのストーカーを学院内で捜索すべく、昨日の段階で色んな作戦を練ったつもりだが・・・

 

「・・・全く思い浮かばなかった」

 

生徒とは何て不便だろうか・・そもそも何の部活動に入ってない俺は「見学」という名目で入ろうと思ったが、穂乃果曰く勧誘週間はとっくに終了していた為あっけなくダメになってしまった・・・仕方がなくほかの方法で入ろうと考えたが・・・結論から言ってどれもダメだった。

 

「あ・・もう着いたか」

 

そうこう考えている内に学院の校門前に着いてしまった・・いい案が思い浮かばなかったけど何とかなるかな?・・・いや、不安しかないけど

因みに穂乃果達は朝練の為に学院に一足早く来ているから襲われることはないだろう・・・・まさか朝から襲うこともないだろうけど

 

学院に入り、自分の教室まで行く

 

「おはよう~」

 

教室に入ると園田さんが既にいた、けどいつもの二人がいない代わりに見知らぬ女子生徒が彼女と話していた。少し話した後、園田さんがこちらに気づき挨拶をしてくれた

 

「おはよう御座います、比屋定君」

「あ、ああ・・・おはよう」

 

するとその女子生徒は園田さんに一言別れを言って教室から出た

 

「今の人は・・?」

「同じ弓道部の方で、副主将を務めているのですよ」

「へぇ・・」

 

て・・・弓道部の人だったんか!?・・・聞きたいことがあったからまた会いたいのだがそうすると園田さんに怪しまれるからな、昼休みに聞ければいいかな

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~*****~~~~~~

 

 

 

 

学院内 教室「2-C」 AM8:30

 

「びっくりしたな・・」

 

谷ヶ崎飛鳥は自分の席について小さく呟いた

 

(まさか、園田さんが男性と話すなんて・・・そう言えばあの男、どこかで見かけた気がするな)

(いや、それはどうでもいい・・・それより例の事を彼女に伝えておいたから放課後にも実行できそうだな)

(フフ・・今から楽しみだよ)

 

微かな笑みを浮かべ、静かに放課後になるのを待つ

 

 

 

 

 

 

~~~~~~*****~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

学院内 中庭 AM12:05

 

 

「どうだった?みんな」

 

昼休みの時間、俺、穂乃果、真姫、東條先輩、久井の5人で集まっていて各々の成果を聞いてみた

 

「全然ダメだったよ~」

「私の方も芳しくなかったわね」

「うちもあんまり良くなかったね」

「ぼ、僕も・・・・」

 

やはり聞き込みぐらいでは有力な情報は得ること難しいな、俺の方も大した情報は入ってこなかったからな

 

「やっぱり海未ちゃんには悪いけど、こっそり後を追った方が・・」

「それだと途中でバレた時の言い訳を考えておく必要がある上に、部室内に入ったらそこで終わりになってしまうからな」

「あう・・そうだよね・・」

 

穂乃果に徐々にだが、焦りの色が見えるな・・当然か幼なじみに危機が迫っているからな、だけど・・・

 

「焦りは禁物だ・・余計に周りが見えなくなってしまうからな」

「・・・うん」

 

少し静かになったところで、東條先輩が口を開いた

 

「直接干渉はできないけど、うちの能力で動向を監視するぐらいならできるよ」

「そうなんですか?!」

 

先輩の能力は初めて見るからな・・・そんなことができたなんて、だけどこれで部室に入るまでは安心かな

 

「後は犯人が誰なのか突き止められればいいけど」

「「「「う~~ん」」」」

 

 

ここにきてその問題が立ちはだかる・・・弓道部の誰かまでしか分かっていないからな

そう考えていたらお腹のなる音が聞こえてきた

 

「・・・・」

「まぁとりあえずお昼にしよか?」

 

悩んでいてもお腹はすくのか・・・・結局あの後具体的な案は出ず、そのまま解散となった

 

 

 

 

学院内 教室 PM15:45

 

何もできないまま放課後を向かえてしまった、当の園田さんは既に部室に行ってしまって、穂乃果と一緒にどうするか考えている

 

「これからどうしよっか・・?」

「東條先輩からの連絡はないから、今の所は平気みたいだけど・・」

「もしかしたら今日は何もないんじゃないかな?」

 

確かにここまで何もないのかと思うと、明日以降になるのかもしれないかな。

ここまで気を張りすぎたかも・・・そう思ってた時だった

 

バンッ!

 

教室の扉が勢いよく開かれたと思うと、そこには息を切らした真姫の姿があった

 

「はぁ・・はぁ・・ここにいたのね」

「どうしたんだ、そんなに慌てて・・」

「そ、それが・・・」

「・・・?」

「一年生の弓道部の人から聞いたけど、今日は部活はやっていないみたいなの!」

「何・・・・?!」

「でも、今日はあるって言ってたけど・・・」

 

その言葉を聞いた瞬間、体が先に動いていた・・・・間に合ってくれ!

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~*****~~~~~~~

 

 

 

時は少し遡り 弓道場 PM15:55

 

ガラッ

 

道場の扉を開け、園田海未は中へ進む。するとそこにはすでに道着姿の谷ヶ崎飛鳥がいた

 

「飛鳥、早いのですね」

「園田さん、ええ授業が早く終わりましてね」

 

いつもの様に挨拶を済ませ、更衣室へ行く。

道着になり、射場へ向かうと飛鳥が既に何本か放ったところだった

 

「園田さん、私は終わりましたからどうぞ」

「分かりました」

 

矢を射る位置まで来ると、ふとあることに気づく

 

「そう言えば、ほかのみなさんは遅いですね・・」

「確かに・・呼んできましょうか?」

「いえ、大丈夫ですよ」

 

そう言い、的に向かい矢を放ち始める。その後ろで飛鳥が鈍く光る「弓と矢」を取り出したことに気づかず・・

 

(ようやくこの時が来ましたよ、今日は他の人たちには休みであることを伝えているので邪魔が入りませんよ)

 

そして、弓に矢を当て構えをとる

 

(園田さん・・・完璧ともいえるあなたにこの「矢」を使うとどうなのかな?もしかすると死んじゃうかも・・・)

(そしたら私が「吸収」してあげますよ、あなた自身となってこれから生きてあげましょう)

(じゃあ・・・運命の時です・・!)

 

そして、矢を掴んでいた指を離した・・・

 




いかがだったでしょうか?ここで久々のスタンド紹介です

スタンド名:「ダイヤモンド・ダスト」
   本体:谷ヶ崎飛鳥(同化人間)

破壊力-C、スピード-D、射程距離-B
持続力-C、精密動作性-A、成長性-?

能力
透明な人型スタンド
射程距離内にある「空間」の「温度」を操作する能力
高温(摂氏400度)から極低温(-100℃)まで自由に操作でき、さらに物の一部だけを操作できるなどの高い精密動作を可能とする

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第18話 ダイヤモンド・ダストその①

久々の投稿になりました。お待たせしました!
それではどうぞ


音ノ木坂学院内 弓道場 PM16:00

 

「矢」は放たれ真っ直ぐ園田海未の首に向かい飛んだ、彼女はその音に反応しこちらを向いたがそれは眼前まで迫った。

しかし、それが彼女に当たることはなかった・・・なぜなら

 

「・・・ッ!何?!」

 

飛鳥は突然の光景に後ずさりしてしまった・・絶対に当たると思っていた「矢」は突如現れた巻藁によって阻まれてしまったからだ。

 

 

「巻藁が・・何で・・?」

 

困惑していると、道場の入り口に二人の男女がいるのが見えた。

 

園田さんは「矢」と巻藁がぶつかった衝撃で後ろの柱に、飛ばされ気を失ってしまった

 

「海未ちゃんッ!!!」

「穂乃果、園田さんを頼む!」

「分かった!」

 

そう言い終わると、男の方がこちらに向かって歩みを進めた

 

「あんただったとはな・・」

「君は・・・園田さんと一緒にいた・・」

 

いい終わる前に、彼から出た「スタンド」の拳が飛んできた

 

「くッ・・!」

 

紙一重の所でかわして、距離をとる

 

「いきなりは・・・びっくりしたな」

「今のは当たったと思ったがな・・」

「しかし、園田さんの為にわざわざ来たのかい?」

「当たり前だろう」

「・・・・君が彼女にとってどんな存在かは知らないが、私の邪魔をしたのは許さないよ!!」

 

自分の「スタンド」を出す、透明の体色をした人型スタンド「ダイヤモンド・ダスト」を

 

「俺もあんたのことを許す気は・・ない!!」

 

お互いに距離を詰め、拳を繰り出す!

 

「はぁッ!!」

「オラッ!!」

 

ドガッッ!!!

 

拳がぶつかり合い、鈍い音が道場内に響く

 

「・・・フッ」

「うッ・・!」

 

彼が距離をとる・・・無理もない「スタンド」能力を発動したからな

 

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

「う・・・くッ!」

 

さっきの拳がぶつかった時、腕が異常に冷たい・・これが奴の能力か

だが距離をとっていれば、問題ないはず・・そう思った時だった

 

パキ・・ピキ、パキ・・・

 

奴の背中のあたりから氷柱に似た鋭利な物質が生成せれていた、それを両手に持ちこちらに向かって投げてきた!

 

「オラオラ!!」

 

何とかラッシュで全てを払うことができたが、奴はいつの間にか距離を詰めていた

 

「・・・ッ!!」

 

バックステップで距離を取ろうとするが・・・

 

「な・・!」

 

足が凍らされたように動かなくなっていた・・!そして目の前まで迫ってきた

その手に氷柱が握られていた

 

「くッ・・・「アウタースローン」!!」

 

振りかざした腕に能力をかける、数メートル離れた所にある土盛りから土がその腕に集まり動きを鈍らせる

 

「オラッ!」

 

集まった土に戸惑っている所に、拳を入れる・・・だが

拳は届くことなく、数センチ手前で止まってしまう

 

「何だと・・・」

「私の能力を甘く見ては困るな・・」

 

言ったと同時に、右肩に激痛が走る・・

 

「うぐぁ・・!」

 

見ると、さっきの氷柱が自分の肩を貫いていた。そして傷口から赤い鮮血が滲み出てくる

あまりの痛さに膝をついてしまう

 

「いい格好だね・・・君は「スタンド使い」だから「矢」で貫いても意味がないから、このまま殺してあげるよ」

 

そう言って、ゆっくり近づいて目の前まで来る

 

「氷柱で全身を刻んであげてもいいけど、それだとここが汚れてしまうから・・・汚れないやり方で殺してあげるよ」

「知ってる・・?「人間」は温度が生死を左右することを」

「特に・・「脳幹」と呼ばれる場所はそこの温度を低下するだけで死に至る・・もう分かったよね」

「・・・まさか!」

「低下させるのは首の後ろの第一頸椎骨あたり!、そこから!」

 

そう言って手を首へ持って行こうとした時だった

 

バキッ!

 

突如現れた「スタンド」の拳が奴の腕を捉え、そのまま吹っ飛ばす。

 

「この「スタンド」は・・」

 

「スタンド」がやってきた方向へ振り返ると、そこには息を切らしながら立っている穂乃果の姿があった

 

「穂乃果!?どうして戻ってきたんだ?、それに園田さんは・・?」

「海未ちゃんなら保健室に運んだよ、今は静かに眠っている」

「なら傍にいてあげた方が・・」

「希ちゃんが来て、見ていてあげるから行ってあげてって」

「・・・分かった、だが無理はするなよ!」

「もちろん!」

 

穂乃果が加わり、改めて奴と対峙する。

 

「フ・・フフッ、まさか「スタンド使い」がもう一人いるとは・・・」

「これならこっちも「本気」をだすべきかな!!」

 

そう叫んだと同時に、奴の体が見えなくなっていく・・・

 

「ばかな!」

(あれも「スタンド能力」なのか・・!だけど能力は一人一つしか持てないはず)

「じ、承君・・・」

 

横にいた穂乃果が心配そうな声でそう言った。その時

 

ドゴッッ!!

 

腹部に鋭い痛みが走ったかと思うと後ろへ飛ばされた

 

「フフ、余所見している暇はないよ」

 

どこからか奴の声が聞こえる、痛む部分を押さえながら立ち上がり見渡すが姿はどこにもない

 

「大丈夫?!」

「ああ、平気だ・・」

 

だが今の状況は大丈夫じゃないな・・姿が見えない上にあの温度低下能力もある、しかも少しずつだか俺達の周りが寒くなり始めている・・

 

「うう・・・」

「大丈夫か?ないよりかはマシだろ」

 

そう言って、制服の上着を穂乃果に着せさせる。

 

「でも、承君は・・」

「構わないよ、それに奴を何とかするのが優先だろ」

 

とは言ったものの、どうする・・?

そう考えてた時、穂乃果が何かに気づいたらしく奴に聞こえない様にこう言った

 

「ねぇ、姿が見えなくても「音」ぐらいならだすと思うけど・・」

「音・・・なるほど!」

 

穂乃果の言葉で、前に姿が見えない「スタンド」と戦った時のことをが脳裏に浮かび、その時そいつを見つけた方法を思い出した

 

(だが、何か音が出るものは・・・)

 

周りを見渡し、目に飛び込んできたものは園田さんが持っていただろう数本の矢だった

 

(あれなら!)

 

「「アウタースローン」!!」

 

能力を使い、手にその矢を集める。そしてそれを周りにばら撒く

そして穂乃果に耳打ちをする

 

「これから奴を叩くが、その前に少し芝居をやってくれないか?」

「芝居・・?」

 

やる内容を伝えると、少し驚いた後にやると言ってくれた。

そして・・

 

「うう、寒くて・・立つこともできないよぉ」

「穂乃果!?諦めるな!俺が倒してみせるから!」

「でも・・・」

 

そんな会話を後方から見ていた飛鳥はやれやれと言った表情を見せた後

 

(焦らなくても今すぐに殺してあげますよ)

 

そう思い、ゆっくりと歩を進め後少しのところだった。

 

パキッ!

 

何かを踏みつけた様な音がしたかと思い、確認しようとした時だった

 

「オラオラオラオラオラオラァッッ!!!!」

 

「うぐあッッ!!!」

 

突然数発の拳が飛んできて、全て命中し大きく飛ばされる

 

「やっと見つけたぜ、このまま再起不能となってもらうよ!」

 

 




いかがだったでしょうか?スタンド紹介はなしです

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第19話 ダイヤモンド・ダストその②

お待たせしました、今回で決着がつきます!そして新たなる謎が出てきます。
それではどうぞ


音ノ木坂学院 弓道場内 PM16:20

 

「・・・や、やったのか・・」

 

若干の冷気が残る中、俺のスタンドのラッシュを受けた「奴」は未だに床にふせている。

すると心配そうに穂乃果が話しかけてきた

 

「承君・・大丈夫・・?」

「ああ、少し腕が動かしにくいけど大丈夫だよ」

「良かった~~でもいきなり演技してくれだなんて、びっくりしたよ!」

「はは・・・」

 

相手を油断させる為に即興で思いついたことだか、上手くいったな・・穂乃果のあの演技には驚いたけどな

 

「でも、これからどうしよう・・」

「どりあえず、一旦ここから離れて東條先輩達と合流しよう。それから考えればいいよ」

 

そう言って道場の入り口まで歩こうとした時だった・・

 

「クク・・・フ、クク・・・」

 

不気味な笑い声・・・地の底から響くような声がしたのと同時に振り返ると「奴」がしっかりと二本足で立っていた

 

「なるほどね・・・クク、どうりで見た事があると思ってたよ・・」

「・・・・?なんの話だ?」

「とぼけなくてもいい・・・仲間から聞いたことがあるけど、確か死んだはずなのだが・・」

「・・・・何!?」

 

どういうことだ・・?俺が死んだ・・・?まるで訳が分からない、問いたださないといけないな

 

「まぁ、お前がかつて何者であったのはどうでもいい、ただ一つ言えるのは・・」

 

そう言って奴は一気に俺達との距離を跳躍して詰める。

 

「ここで完全に息の根を止める!!!!」

 

その言葉と同時に、スタンドの拳が飛んできた!俺は自身のスタンドを出し、応戦する

 

「「アウタースローン」!!!!」

 

お互いの拳が交差しあい、腕に当たる

 

「う・・!」

「ぐ・・!」

 

痛む個所を抑え、畳み掛けようとするが突然腕から出血してしまう

 

「・・・こ、これは・・!」

 

出血を止めようと思い、傷口に手を当てた時

 

「熱ッ!」

 

その個所が異常に熱く、まるで火傷をしたかの様だった

 

「私の能力が温度低下だけだったと思ったら大間違いだよ!」

 

そう叫ぶと、周りの温度が段々と熱くなっていくのが肌で感じられた。なるほど奴の能力は・・・

 

「空間の温度を上昇させたり、低下させる能力か・・」

「ご名答・・だがそれに気づいた所でもう手遅れだよ」

 

奴の言うとおり、温度が上がり過ぎた影響で視界が若干ぼやけてきた・・・早い所倒さないと不味いな

 

「それと、もう一人の方は限界みたいだね」

「何・・!」

 

すると、俺の後ろにいた穂乃果が頭を抱え込んで倒れてしまった。

 

「しっかりしろ!穂乃果!!」

「・・・・じ、承・・君」

 

かろうじて意識はあるみたいだが、かなり弱っている・・このままだと・・!!

 

「脱水症状で死んでしまうかもよ・・不幸だね、お前と関わったばかりに死ぬことになるなんて」

「・・・・・黙れ」

「いや、そうなるとお前に殺されたと言ってもいいかもな・・!」

 

その言葉で自分の中にある「何か」が切れた・・

 

「黙れッッ!!!」

「来てみなよ!そのゴキブリみたいな生命力を・・ここで終わらせてやるからよ!!!!」

 

二人がほぼ同時に動く・・一人はスタンドの拳を急所に向けて放とうとした・・一人は能力を使った

 

ドスッ!ドスッ!!

 

「うああッ!!!」

 

能力を使い、さっき集めた矢を奴の腕に集めさせた。刺さるまではいかなかったが猛スピードで集まった衝撃で奴の動きが止まる・・そして

 

「オラオラオラオラァッーーーーーオラッ!!!!」

「ぎッ・・・・ガッ!!!」

 

「な・・・!!」

 

ラッシュで気づかなかったが、さっきの能力で集まりきれなかった矢の一部が拳に押されたかなんかで奴の喉元を貫いてしまったのだ

 

「しまった、これだと話が聞けない・・!」

 

急いで奴の元に駆け寄る

 

「おい、しっかりしろ!」

「・・・う・・・・くっ・・」

 

少しばかりしか息をしていない・・・もうダメか・・

 

「・・・・く・・わ、私・・が・・こんな所で・・この・・・「同化人間」である・・・わ、た・・・し・・・・が・・」

 

「同化人間」・・?聞き慣れていない言葉のことを考えていたら奴が動かなくなってしまった

 

「く・・くそ・・!」

 

何か知っているんじゃないかと思ったが仕方がない・・・そう思っていた時だった

 

ビシッ!!バギッ!!!

 

突然、奴の体が青白くなったかと思うと全身にひび割れが入りそこから煙を立てて崩れてしまった・・

 

「な、何だ・・・これは・・」

 

あとに残ったのは白い粉状のものだけだった・・・そして

 

「これは・・?」

 

足元を見ると、さきほど奴が園田さんに向けて放った「矢」が転がっていた。

 

「一応、回収しておくか・・・」

 

そう言い、「矢」を手に取り倒れている穂乃果を抱え道場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~******~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

時間は遡り 音ノ木坂学院正門前道路 PM16:10

 

道路の路肩に一台の乗用車が駐車してある、その中で「レッドツェッペリン」の曲をかけて静かに何かを待つ男の姿がある・・・「矢」を求める「三枝三機哉」である

 

(・・・今日も収穫なし・・か)

 

読んでいた雑誌を後部座席へ放り投げ、車を発進させる為エンジンをかけようとした所

 

ドギュン!!!

 

「・・・・ム?!」

 

突然、呼び出していないはずのスタンド「キング・ロマネスク」が車外へ出ていた

 

(・・?何故出たんだ、能力は使っていないはず・・・・もしかして何かに反応している・・?)

 

三枝の考察をよそに、スタンドはどんどん進んでいく・・その先は学院があった。

 

(やはり・・あそこには何かがある・・!!)

 

急いで車から飛び出し、スタンドと共に並び学院前まで来る、そして能力使用の為、近くの電信柱の影に隠れ・・

 

「さて、防犯カメラの類が見当たらないが・・・用心しておくか」

 

(「キング・ロマネスク」!!)

 

自身に能力をかける、それは・・

 

(俺自身と服から「色彩」を消した・・これで俺は透明となり普通の人間では認識できない)

 

そして堂々と正門から侵入を果たし、校舎前まで来る

 

(どこに反応しているのだ・・まだ中には入らないようにするか)

 

校舎の横にある道を進むと、渡り廊下の所で人の気配を感じ取った。

すると一人の男子生徒が女子生徒を抱え走っていくのが見えた。

 

(何かあったのか?・・・あ、あれは!!)

 

その男子生徒の手には自分が血眼になって探していた「弓と矢」の内「矢」の部分が握られていた。

 

(まさか!・・・こんな所で探し物が見つかるとは、だがこれで標的を一つに絞ることができた!)

 

(あの生徒の事を調べて・・それから奪うことにしよう、最悪の場合は殺してでもしないとな・・)

 

遂にたどり着いた「弓と矢」の行方・・三枝は「漆黒の意思」を胸に決め学院を後にした・・・

 

 




いかがだったでしょうか?今回もスタンド紹介はありません

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第20話 アイム・ヒーローその①

お待たせしました、20話目です!今回から新たなスタンド使い達が出てきます。
それではどうぞ


音ノ木坂学院内 保健室 PM16:45

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

静かに眠っている穂乃果を見て、少し安心できた・・・一時はどうなるかと思ったけどな。

ただ、俺はあんまり大丈夫とは言い難い・・何故なら

 

「死んだはず・・・か」

 

ため息交じりでそう呟いた、さきほど戦ったあの「スタンド使い」が言ったことだ。奴があの状況でハッタリをかけただろうか?いや、あの表情は・・奴のあの顔、まるで幽霊を見たかの様な顔はハッタリとは信じられない

それと「同化人間」・・か、人とは全てがまるで違うあの「姿が消せる」能力を持った者、しかもそれが奴以外にも存在するかもしれない・・

ベットに横たわる穂乃果を見る、

 

(今まで俺の為と言って、危険なスタンド同士の戦いに付き合わせていたけど・・)

 

「もう・・これ以上は巻き込ませたくない・・」

 

もし今回以上のヤバイ奴が出てきたら・・そう考えただけで悪寒が走る。

 

「しばらく学校に来ない方がいいのかもしれないな」

 

そう言い、保健室から出ようとすると、

 

「そんな事したら穂乃果ちゃん達が心配するよ」

 

「東條先輩・・・」

 

「ちょっと話があるんよ」

 

 

音ノ木坂学院の屋上、俺は東條先輩に話があると言われここにやってきた。そう言えばここに来るのは二度目だったな・・

 

「そう言えば話て何ですか?」

 

「単刀直入に言うとやね・・「これ」見たことあるよね?」

 

そう言い、先輩が鞄から取り出したのはさっきの戦いで手に入れた「矢」に似ている・・・いや全く同じ物だった、一つ違うとすればそれが「矢尻」の部分しかないといったところか

 

「・・・ん?でもどっかで見かけた気が・・」

 

よく思い出してみるとそれは数週間前に戦った「スタンド使い」の「柏原」が持っていたいたものだった・・・あの後拾ってポケットの中に入れておいたはずだったがいつのまにか無くなっていたんだよな。

 

「・・て!何で先輩が持っているんですか?!」

 

「勘違いしてるかもしれんけど、うちも驚いているんよ」

 

聞いた話では、あの時俺達が帰った後リビングの隅に落ちているのを見つけたらしいが・・

 

「でもどうしてポケットから落ちたんだろう?そんなに浅くはないはずだけど・・」

 

「それは・・この「矢」は「スタンド」を覚醒させる道具だから、そして「矢」自身も「スタンド」に引かれあう物なんよ」

 

「え・・・?!」

 

「知らないのも無理は無いよ、「スタンド使い」でも知っているのはごく僅かだかやね」

 

「でも先輩は知っていた、何故なんですか?」

 

「正確に言えば、うちじゃなくお父さんが調べていたことなんよ」

 

「お父さんが「スタンド使い」だったかは分からないけど、時間の合間を縫ってこのことを調べていたのは確かなんよ」

 

そう言い、一冊の古ぼけたノートを取り出した。それを見せてもらうとそこには「矢」のことについて調べたことが沢山書かれていた

 

「こんなに・・・今その人に会えますか?」

 

それを聞いた先輩は少し悲しげな表情をした後、

 

「お父さんは五年前に亡くなってしまったんよ・・」

 

「あ・・・す、すみません無神経なことを言ってしまって」

 

「ううん、気にせんでいいよ、それよりもうい出てきてもいいと思うよ」

 

「へ・・?」

 

そう言うと、ゆっくり扉が開きそこにいたのは穂乃果だった。

 

「もしかして聞いていたのか?」

 

「うん、入るタイミングを逃しちゃって・・」

 

「穂乃果・・俺は、」

 

そう言いかけた時、突然俺の手を彼女が握ってきた

 

「え・・ちょ・・」

 

突拍子もない行動に慌てていると、

 

「穂乃果は大丈夫だよ・・自分の「能力」が出た時から「覚悟」はできているよ!」

 

力強くそう言いきった彼女の瞳は迷い一つ無かった・・・俺は先輩の方を見ると黙って頷いていた。

 

「お前がそこまで言うのなら・・・でも無理だけはするなよ」

 

「うん!」

 

夕日にも劣らない眩しい笑顔を見て、俺の迷いも消えた・・・巻き込まれた以上最後まで戦ってみせる、自分自身とそれに彼女達の為に

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~*****~~~~~~~

 

 

 

同日 外神田三丁目付近の公園 PM23:30

 

足元がおぼつかないのを見ると、相当飲んでいたのが窺い知れる。その人物、サラリーマンは酔いを醒まそうと公園の水を飲みにきた

 

「う~~、調子に乗って飲んでしまった・・」

 

蛇口の所まで来て水をがぶ飲みにする。

 

「少しまともになったかな・・」

 

そう思っていたが、まだ視界が回っている為近くのベンチに腰掛けた。すると四~五人の男達がこちらに近づいてきた

 

「よぉ~~そこのおっさん、いい気分みたいだな」

 

「な、なんだ・・お前達は・・!」

 

「別に何でもいいだろぉ、これから痛い目にあってもらうからな」

 

「な、何だと・・」

 

「そんなに身構えるなよ~~俺達はちょっと金が欲しいだけだから」

 

「財布だけ置いていけば軽く二~三発で済ましてやるよ、だがもし抵抗したら」

 

そう言った男が手にしていた金属バットを地面に向かって振り下ろした。

 

ガギッッン!!!

 

「病院送りになってもらうぜ!!」

 

男達の目が据わっている・・これは本気だ!そう感じたリーマンは逃げようとするがまだ酔いが醒めていなかった為すぐに転んでしまった

 

「ぎゃはっはっは!!転んでやんの!」

 

一人がそう笑い飛ばすと、ほかの男達も笑い出した。そうするとさきほどの男が行く手を塞ぎこう言った

 

「まぁ逃げたってことは、抵抗したことになるから半殺し決定な!」

 

「まずは動けないように両足でも叩いておくか」

 

「叩きすぎてミンチにならないように気をつけないとな!」

 

もう駄目だ・・!自分が終わったことを悟り目を瞑ったその時・・

 

バキッッ!! カラン

 

何かがぶつかり、地面に何かが落ちた音がする・・自分の体の痛みが無いことに違和感を覚え、恐る恐る目を開けると

 

「おいッ!大丈夫かよ!!」

 

さきほどの男が気を失っているのかピクリとも体が動かなくなっており、心配した仲間は彼の傍に近寄っている。

するとどこからか声が響いてきた

 

「弱者を多人数で囲むとは・・貴様等の悪行は俺が断じて許さん!!!」

 

「どこにいやがる・・出てきやがれ!!」

 

「どこに目をつけている・・・さっきからここにいるぞ!!」

 

そう言った声のする方向を見ると、高い樹木の先に立っている人物が目に入った。その人物はそこから飛び降りると片足で地面に着地しこちらへ歩いてきた。

そこにいる全員が驚愕した・・なぜならその人物は全身赤を基調とし、胴体には青と緑のラインが走っている鎧の様なものを身に纏い、頭部にはクワガタのあごのみたいなのが生えていた。それはさながら仮面ラ〇ダーを彷彿させる姿でもあった

 

「何だ!て・・・め!」

 

そういった男のみぞおちに肘打ちを入れ、気絶させた後うろたえている他の男達もパンチとキックを入れ気が付けば一分も経たない内に彼等は全滅していた。

全員倒れたのを確認すると踵を返しその場を去ろうとする、

 

「あ、あの!!」

 

「・・・何か?」

 

「助けてもらったので何かお礼を・・」

 

「礼は不要だ、当たり前のことをしたからな!」

 

「せめてお名前だけでも・・・」

 

「名乗る者じゃありませんよ、だが強いて名乗るなら・・・」

 

「I'm HERO(アイム・ヒーロー)!!!」

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?今回から少し書き方を変えてみました、変える前がいいと思ったら感想欄にて言ってもらえれば幸いです。
ここでスタンド紹介です

スタンド名:「アイム・ヒーロー」
   本体:出水 英雄

破壊力-?、スピード-なし、射程距離-B
持続力-?、精密動作性-A、成長性-?

本体に装着するタイプのスタンド、服に媒介して発現するため非スタンド使いにも視認できる
能力
装着した本体の五感をすべて強化する能力、しかし本当の能力はまだ本体にも気づけていない・・・・

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第21話 アイム・ヒーローその②

お待たせしました、昨日投稿する予定でしたが用事が入ってしまい今日になってしまいました・・
それではどうぞ


東京都千代田区 とある住宅街 AM8:00

 

「ふわぁぁ~~」

 

大きなあくびをついて家から出た少年は自分が通う学校へ向かった、眠気と戦いながら・・・その家の表札には「出水」と書かれていた。

 

 

家を出て横断歩道を渡り、コンビニ近くのバス停留所へ到着する。しばらくスマホのニュースを見ているとバスがやってきた

 

「・・・ここにしようかな」

 

後ろから左二番目の席に座り、目的地まで揺られる・・・寝ないようにしなきゃな

 

「まもなく、多町二丁目に到着します」

 

「ふがっ・・!」

(あぶな・・完全に寝る直前だった)

 

慌てて停車ボタンを押してそこで降りる、ここから歩いて数分の所にある学校・・・僕が通う「私立群堂ヶ岡中学校」がある。

校門をくぐると色とりどりの花達が出迎えてくれる・・まぁ花の名前は全く知らないからたが綺麗だなと思うぐらいしかならないけどね。

 

全校生徒千人を超え都内屈指の進学校・・・というのは一昔前までの話、今では新しくできた進学校達に抜かされ続け今はただの私立学校に成り下がってしまった。でもこれくらいがちょうど良いと思うのは僕だけじゃないはず・・授業だってそんなに難しいことはやらず最低限の知識を教えてくれる、部活も殺伐とした雰囲気ではなく和気藹々としている。

 

つまり何事も「普通」なのが一番・・・それにこしたことはない、僕自身がそうだった様に「普通」の学校生活、「普通」の友達、「普通」の日常・・・でもそれはつい数ヶ月前の事だった、僕は「普通」じゃない「力」を手にしてしまったから・・

 

 

そんな事を考えながら自分の教室に向かう、教室に着くとほとんどのクラスメイトがすでにいてその中に親友の姿のあった

 

「よぉ!!遅かったな、ヒデ!」

 

「いつも通りだよ・・マサ」

 

茶髪のツンツンした髪型で朝からテンションが高いこいつは「神崎正樹」である、彼とは小学校からの付き合いで僕自身が心から信頼できる友なのだ。

 

「それよりさ!見た?今週号の「アイドルデイズ」を!」

 

「いや、見てないけど・・」

 

「アイドルデイズ」とはその名の通り日本各地のプロ~アマチュアのアイドル達をピックアップして様々な魅力を紹介する雑誌なのだ。

マサは大の「アイドル」ファンなので毎週この雑誌を買ってきては僕にアイドルの良さを熱弁してくるけど・・・とにかく長いのでほとんど流してしまっているけどな

 

「何だよ~~見てないのかよ!今週はあの「μ’s」なんだから!!」

 

しまった・・・よりにもよって一番大好きなユニットに当たってしまうとは・・今週の土日は強制ライブ鑑賞会だな

 

「し・か・も、なんと俺の大好きなコーナーである「ピックアップメンバー」が推しメンである「星空凛」ちゃんなのだ!!!」

 

何・・・だと・・・、まさかそこまで被るとは・・鑑賞会の後は推しメンのことについて語りだすから、おそらく完徹になりそうだな・・はぁ。

 

そう思っていると予鈴が鳴り、担任の先生が入ってきてホームルームが始まる。

 

 

 

私立群堂ヶ岡中学校 屋上 PM12:10

 

長かった四限の授業が終わり、今はマサとほか二人を交えて昼食をとっている。因みにほか二人とはマサのアイドル友達らしい・・・

三人の会話は全く着いて行けず、適当に相槌をうっているとマサが何か思い出したみたいに話を振ってきた

 

「そう言えばさ、また出たんだってな「アレ」が」

 

「「アレ」って何だよ」

 

「知らない?夜な夜な神出鬼没に現れては悪いことをしている奴らをフルボッコにする奴のことだよ」

 

「へ、へぇ~~、そ、そんな人がいるのか・・・」

 

「何か声が震えているけど・・?」

 

「気のせいだよ~~ハハ・・」

 

それって思いっきり僕の事じゃん・・そんなに噂になっているとは

 

「でもカッコいいよな~、ああいう男になりたいぜ!」

 

「・・・・・」

 

もしその人が僕だと知ったらマサはどんな反応をするのだろう・・今まで言わなかったことへの「失望」かそれとも素直に喜んでくれるだろうか・・・

心まで読むことはあの「力」にもできない・・だから打ち明けることが怖い・・今まで通りではいられなくなったら僕は立ち直ることはできない・・もう「あの時」の様な思いはしたくはない!

僕自身は「ヒーロー」になれているのか・・分からない、けど誰にも褒められなくてもそれでもいい・・誰かの「ヒーロー」であればそれで・・・

 

僕の名前は「出水 英雄」・・・「ヒーロー」じゃないけど「英雄」の名前を持っている中学三年生、僕のこれまでの「日常」はこの日を境に「非日常」へ変わる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~********~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 とある喫茶店 

 

一人の男性がブラックコーヒーを飲みながら腕時計に目をやる

 

(・・・五分も過ぎている・・)

 

そう思っていると店の扉が開かれる。そこにいたのは若い女性の姿だった。

 

「いらっしゃいませ、一名様ですか?」

 

「待ち合わせですが・・あ!そこにいたのね」

 

そう言うと駆け足で男性が待つ席へ行く。

 

「遅いぞ、何をやっていた?」

 

「ゴメン、大学の講習が中々終わなくて・・」

 

そうは言ったものの女性からは全く悪びれる様子はなかった、そこへボーイが注文を取りに来た

 

「え~~と、スパゲッティグラタンにチョコレートケーキ!飲み物はアイスコーヒーで!!」

 

「畏まりました」

 

そう言ってボーイは厨房へ下がる

 

「そんなに頼むと太るぞ」

 

「講習を受けるとお腹が減るんです~!」

 

「そういうみきちゃんこそサンドイッチだけじゃ足りないでしょ!」

 

「こんな所でその呼び名はやめろ」

 

「え~~かわいいのに・・・」

 

そう言うと男は無言で女性を睨みつける

 

「ちぇ~~分かりましたよ、三枝三機哉先輩て呼べばいいんですよね」

 

「普通に三枝先輩でいいだろ・・お前の極端な性格は変わらないな」

 

「いや~~それほどでも」

 

「褒めてない!」

 

そんな問答をしていると料理が運ばれてきて、女性の目の前に熱々のグラタン皿が置かれる。しかし女性はそれに目をくれず三枝にこう切り出す

 

「ところで、頼みたいことって何ですか?」

 

「お前が持つ「スタンド能力」でこの写真の女から「弓と矢」のことを聞きだして欲しい」

 

そう言って二枚の写真を女性に渡す。

 

「この子が「スタンド」を持っている可能性は?」

 

「不明だ、しかし持っていたとしても大したことはないだろう」

 

「ふ~~ん、報酬はいくらになるの?」

 

それを聞いた三枝は懐から分厚い茶封筒を差し出す。

 

「百万が入っている、だがこれは前払いだ。成功すればこの倍を渡そう」

 

「・・・・・嘘は言ってないよね」

 

「俺が嘘をついたことでもあると思ってるのか?」

 

女性は無言で封筒を受け取り鞄の中にしまう

 

「じゃあ早速行ってくるよ!早めにやっておいた方がいいでしょ」

 

「頼んだよ、この料理達の代金は払ってあげるから」

 

 

そう言って女性は席をたつ、手にした写真には「弓と矢」そしてもう一枚にはオレンジ色の髪でサイドポニーテールの髪型をした少女が写っていた

グラタン皿には何も残っていなかった・・・

 




いかがだったでしょうか?部活が殺伐としているとかの表現は作者の空想みたいなものですので本当にそうなのかは分かりません、だからあまり気にしなくて大丈夫ですよ

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第22話 アイム・ヒーローその③

ようやく投稿できました、それではどうぞ


私立群堂ヶ岡中学校 PM15:45

 

「やっと終わったぜ~!」

 

「・・・昼休み以降の授業はほとんど寝てたじゃん」

 

「うぐ!・・・言うなよ」

 

マサと一緒に帰る支度をしている、彼の家は僕の家の方向はほぼ反対になるのだが秋葉原に行きたいと言ってたのでそれに付き合うことにした。

 

「よし、じゃ行こうか!」

 

「うん!」

 

昇降口に行き、上履きから靴に履き替え学校の外へ出る。

秋葉原までの道中彼のアイドル話を散々されたおかげで数十分の距離が数時間に感じられたよ・・・

 

「う~~ん、さすがアキバだな!」

 

「買いすぎだよ・・」

 

秋葉原に着くなりマサはアイドルショップに行って目当てのグッズをこれでもかと言わんばかりに買い込んでいって僕はほぼ荷物持ちみたいになっていた。

 

「悪いな、滅多に来れるとこじゃないから」

 

「はは・・・・」

 

まぁ僕自身も嫌ではないからな、それにこうして「普通」の日常を送ることで僕があの「力」に飲み込まれることを防げている。

 

あの「力」・・僕自身に装着する鎧みたいなもののことだ、この鎧を纏うと不思議と心の奥から自信が湧き上がってきて口調も変化してしまう、あの時の「自分」と今の「自分」は別人だと言っても過言ではない・・・・最初は自分とは違う存在に気味悪がっていたけど、今は困っている人達を助けてあげる存在と思って受け入れている。

 

「・・デ、・・ヒデ!」

 

「わ!ど、どうしたの?」

 

「どうしたじゃない、さっきから呼んでいるのに返事もしないんだから!」

 

「ご、ごめん・・考え事をしていて」

 

「ふ~~ん、まぁいいけど」

 

そんなに深く考えていたのか・・・マサは変な所で鋭いからな、この悩みを悟られないようにしなきゃな

 

「そろそろ、小腹が減ってきたな・・」

 

「じゃあ、どっかで軽食でも食べる?」

 

「なら、この近くに美味しいハンバーガーの店を知っているからそこにするか?」

 

「うん!」

 

 

 

あれからハンバーガー店に行ったあと、またショップを巡ったけど金欠らしいのでグッズは買わなかった・・・これ以上買われたら腕が多分死んでいたよ。

 

「・・16時半か、そろそろ帰るか!」

 

「うん、そうだね」

 

「そう言えば、明日テストじゃん・・・」

 

「しかも大量だったね」

 

「はぁ~~」

 

マサが大きくため息をする、そこまで頭は悪くないからそこまで嫌がることはないけどと思うけどそのことを言うと不機嫌になるから言わないでおこう、それより自分のことが心配になって鞄の中からノートを持ってきたか確認したら・・

 

「あ・・・・」

 

「?どうした?」

 

「一冊だけ持ってくるの忘れた・・・」

 

「マジ!?これから取りに行くと時間がかかるぞ」

 

「仕方がないよ、取りに行かなきゃ明日補修になるかもしれないから」

 

「そっか、気をつけろよ」

 

「ありがとう」

 

こうしてマサと別れて一人学校を目指すことになった、早く行って勉強しないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~******~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

時は遡りPM16:20 音ノ木坂学院正門

 

「お待たせ、穂乃果ちゃん!」

 

「うん!それじゃあ行こう」

 

保健委員の集まりから戻ってきたことりちゃんと一緒に、これから海未ちゃんのお見舞いに行くことになった。

 

「大丈夫かな・・・海未ちゃん」

 

「・・・うん」

 

今日は珍しく海未ちゃんが学校を休んだ・・・・無理もないよ、あんなことが起これば誰だってショックは受けるに決まっている。

私は何があったかは見ていたから分かるけど、ことりちゃんや海未ちゃんには何て言えばいいのか分からないままこの時まで来てしまった

 

「穂乃果ちゃん、承一君の所にも行ってみる?」

 

「あ~~ちょっと遠いけど行ってみようかな」

 

そう言えば、承君も休みだったな・・でも彼は怪我の事はあまり気にしてないみたいだから、別の理由があったと思う

 

そんな事を考えながら歩いていると、あるビルの角に見たことがある青い色でロングヘアーの人物がいることに気が付いた。

 

(あれは・・海未ちゃん?、でも何でこんな所に・・・?)

 

(もう出歩けるのかな・・・それでも何かがおかしかった様な・・・)

 

私の中で嫌な可能性が浮かんだ・・・

 

(まさか・・・)

 

そう思った時、咄嗟にその角に向かって走り出していた。

 

「穂乃果ちゃん?!」

 

「ことりちゃん!先に行ってて!!」

 

そう叫んで私は角を曲がり、あたりを見渡す・・・すると学校のような建物の脇道に消えてゆくのを見つけて追いかける。追いかけた先は広い公園のような所に出た。

でもそれはいつの間にか消えるようにいなくなっていた

 

「あれ・・?確かにこっちに来たと思ったのに」

 

そう言って公園内に入った時、不意に声をかけられる

 

「やぁ、あんたが「高坂穂乃果」て人か?」

 

「・・・ッ!、あなたは・・?」

 

「私の名前は「青島奈央」、その反応だと間違いはなさそうだね」

 

「海未ちゃんは何処?!」

 

「海未・・?ああ!なりすましてした奴のことかな」

 

そう言うと懐から青い髪のウィッグを取り出した。

 

「・・・何だ、良かった」

 

「それは結構、ところであんたに聞きたいことがある。これを見たことはあるかい?」

 

それを言ったと同時にウィッグが形を変え、一枚の写真になる

 

「・・!「スタンド」!?」

 

「やっぱりこれが見えているのか、で質問の答えは?」

 

そう言われてその写真を見ると、それは承君が持っていた「弓と矢」にそっくりだった。

 

「・・・・・」

 

「表情からどうやら見たことはあるみたいだな、それは今何処にある?」

 

途端に彼女から殺気みたいなのを感じる、もし彼のことを言ったら何をするかは分からない・・なら

 

「知ってたとしも言わないよ!」

 

「・・・はぁめんどくさい・・」

 

「え・・・?」

 

「素直に吐いていればいいものを!!!」

 

その叫びと同時に懐から何かを出し、それが空中で形を変えると小型の爆弾となった。

 

回避しようと思い足を動かそうとした時、一斉に爆発した。

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

 

私立群堂ヶ岡中学校正門前 PM16:40

 

「良かった~机の中にあって」

 

忘れたノートはすぐに見つかる場所にあったおかげか、時間はそれほど経っていなかった。

 

「早く帰ろう、補修は受けたくないし」

 

そう思い、校門から出ようとした時、

 

ドッグォォォン!!!!

 

すさまじい爆発音がして、音のした方角を見るとそこは学校の裏手にある公園からだった

 

「・・ッ!一体何が・・?!」

 

爆発音もさること、これほどの音なら近所の人も気づくはずなのに周りは騒然となっていなかった

 

「・・・行ってみるか」

 

素早く物陰に隠れて自分の「力」を出した後、学校の柵を飛んで公園に入るとそこには地面に伏している女の子とその子に近づく女性が見えた。

 

 

 

 

 

~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

 

「う・・・ぐぅ・・・」

 

直撃は免れたけど、爆風が足にかかり痺れるような痛みで立つこともできない

 

「威力の低い爆弾だから直撃でも死なないようになっているから、安心しなよ」

 

少しずつだけどゆっくり近づいてくる・・・何とかしないとみんなに危害が・・・そう思った時甲高い声が公園内に響いた

 

 

「待ちたまえ!!!!!」

 

 

その人と私はほぼ同時にその声がした方を見た、そこには全身赤を基調とした鎧をきた人物がいた。

 

「何?あんた、こいつの仲間か?」

 

「愚問を・・俺は正義の味方として今ここにいる邪悪を倒す!」

 

「へぇ~~ヒーロー気取りて奴か・・・癪に障るからまずお前から潰してあげるよ!」

 

「やれるものなら!!」

 

二人が同時に動く、彼女が懐から出した物を爆弾に変えそれに反応した鎧の人は素早い避ける。私はその隙に「スタンド」で傷を治すことにした。

 

「ちぃ・・!しぶといね・ならこれならどうだい?」

 

「・・・ムッ!」

 

そう言うと、近くにあったブランコに触れるとそれは自動車に変わり、その人に突っ込んでいった。その人は避けずに直撃してしまった。

 

「避けられなかっただろうね、もし避けたらそいつに当たっていただろうし」

 

それを聞いて、よろめきながら立ち上がるその人に話しかけた。

 

「そうなの?!どうして私の為に・・・」

 

「ヒーローは・・弱い立場の人を見捨てはしないからだ!」

 

 

「そういうのは本当にムカつくから・・こうしてあげるよ!」

 

今度は滑り台に触れ、それがさっきと同じ様に自動車になりこちらに向かってくる。

 

「ははは!!さぁどうする?!ヒーローさんよ!!!」

 

「・・・ク!」

 

「・・・・・・・」

 

私の「スタンド」・・どうか・・

 

「お願い!私に「力」を貸して!!!!!」

 

「アナタガソウ望ムノナラ」

 

ドッシュュン!!!

 

その声が聞こえたのと同時に、こちらに向かってきていた自動車は消えていた。滑り台は元に戻っている

 

「な、何故・・・」

 

「・・もしかして」

 

私の力は物や傷を治すのではなく・・物の「状態」を「元に戻す」ことだったのか・・立ち上がり彼女の方に向かって歩いていく、すると彼女は懐から物を取出し再び爆弾に変え投げてきた

 

「く、くっそぉぉぉ!!!近寄るなぁぁ」

 

冷静に向かってきた爆弾達に能力を使い、全てを無力化した。

そして・・

 

「あなたが何が目的なのは知らないけど、あなたを倒さなくちゃいけない!!」

 

そして「スタンド」を出し、ラッシュを与える

 

「WAAAANNABEEE!!!」

 

「ぐぶぁぁ!!」

 

後方へ飛ばされ、そのまま気絶ように動かなくなった。

 

「終わった・・・」

 

これまでの緊張がなくなったおかげか、地面に座り込んでしまった。すると鎧の人が能力を解除してこちらに来ていた。

 

「す、凄かった・・です」

 

「え、あ、ありがとう。それにしても君は?」

 

「ぼ、僕は「出水 英雄」て言います!」

 

「私、「高坂 穂乃果」!宜しくね!」

 

こうして初めての「スタンド戦」を乗り切って新たなスタンド使いの人とも知り合えた!・・・結局この後海未ちゃんの所には行けなかったけど

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です

スタンド名:「エネミーマーシー」
   本体:青島奈央

破壊力-D、スピード-C、射程距離-C
持続力-A、精密動作性-C、成長性-C

左腕が機械のようになっている人型スタンド
能力
本体が触れた「物質」限定で他の「物質」に変えることができる能力
但し変えられる物質は事前に本体の目で確認したものに限る(写真や絵では不可)
変えられる物質の大きさは変える前の物質の大きさに比例する

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第23話 ツヴァイヘンダーその①

お待たせしました、今回登場するスタンドは、以前募集した案からになります!(長い間お待たせしまい、すみません・・)
それではどうぞ


4月22日 某所 AM6:30

 

4月にしては珍しく暑くそれでいて夏の様に蒸す気候の中、とある廃工場に一人の男が木箱に俯きながら座っている。その手には携帯電話が握られている

 

「・・・・・・」

 

男はその携帯を静かに見つめている、その時・・

 

~~♪~~♪

 

着信を知らせる音楽が鳴ったと同時に通話ボタンを押す。

 

「もしもし、・・・はい・・ええこちらで少しばかり支障が出まして・・・はい、・・・・・え!?それですと「計画」に遅れが・・・はい、それに、こちらで始末と回収の算段があります・・・ええ、それでは」

 

そう言って通話は切れる、男はしばらく考える素振りを見せた後突然立ち上がり、近くにあったドラム缶を蹴り飛ばした

 

(・・・クソ!!こんなにイラついたのは初めてだ・・・)

(あんな刹那でしか生きられない生物共によって、完璧な「計画」に遅れを生じさせてはいけない・・!)

 

携帯を素早く操作し、とある電話番号にかける

 

「・・・・もしもし、ああ私だ・・・実は頼みたいことがあってね・・・今から画像添付のメールを送るからそこに写っている男から「弓と矢」を回収してくれ、そいつの生死は問わん・・」

 

通話を終え、男はため息をつく。そして出口に向かって歩き出す・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~******~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日 音ノ木坂学院屋上 PM12:40

 

俺は今、昼休みでいつも通りのメンバーで昼食をとっている。みんなに話したいことがあるって穂乃果が言ってきたのは驚いたが昨日あった出来事を聞いてさらに驚いてしまった

 

「鎧みたいになっているスタンドか・・」

 

「スタンドには色んな型があるけど、それはうちも初めてやな」

 

「うん!すごく格好良かったよ!」

 

当の本人は能天気みたいなことを言っているが、そのスタンド使いが来なかったら今頃は・・・いやそれは考えないでおこう、無事だったんだからな。それにしても・・

 

「最近はスタンド使いと良く会うわね」

 

真姫が髪の毛を弄りながらそう言った。

 

「スタンド使い同士引かれ合うし、その影響かもしれないな」

 

だが、奴ら・・「同化人間」と呼ばれている人間達は姿を見せていない、それが少しばかり気がかりなことだけど・・そう考えてた時ある事を思い出した

 

「そう言えば、穂乃果は園田さんのお見舞いに行った最中だったんだよな・・」

 

「うん・・」

 

「その後は大丈夫だったのか?」

 

「い、急いで行ったら何とか間に合ったから、大丈夫だと思うけど・・」

 

彼女のことだし、何があったのか聞かれた時よく分からない事を言っている姿が想像できるな。

 

「でもしょうがないと思うけど、他人に見えない力を説明されても余計に混乱するでしょう」

 

「それにそんな事言って、頭を打ったかと思われるかもね」

 

真姫と東條先輩の言うとおりだ、非スタンド使いに見えない以上説明のしようがないし、仮に説明できたとしても理解してもらうことは難しいだろう・・

 

その時昼休みが終わる予鈴が鳴った。

 

「もうこんな時間!早く教室に行かなきゃ!」

 

「そうね、そろそろ行きましょう」

 

みんなが慌しく片付けている時、東條先輩が小声で話してきた。

 

「なぁ比屋定君、今日の放課後空いている?」

 

「?空いていますよ・・」

 

「君に会わせたい人がおるんけどいいかな?因みにうちの知っている人だから大丈夫よ」

 

「そうなんですか」

 

先輩の知っている人か・・・もしかしてスタンド使いとかかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院正門前 PM15:30

 

 

午後の授業が全部終わり穂乃果達と別れ、先輩との待ち合わせ場所に向かった。女性を待たせてはいけないと雑誌か何かで読んでいた為早く行ったが既に先輩は待っていた。

 

「すみません、待ちましたか?」

 

「ううん、うちも今来たからね」

 

「・・て、本当なら言うのは逆のはずなんやけど」

 

「あ・・・そうなんですか」

 

「まぁ、ええよ。ほな行こうか!」

 

そう言って俺と先輩は学院を後にした。

 

 

しばらく御茶ノ水方面に歩き、駅から少しばかり離れた所に来た。道中の話ではこれから会う人は女性らしい、それ以上のことは会ってからのお楽しみだと言われ教えてくれなかった。

 

「さぁ、着いたよ。ここで待ち合わせているんよ」

 

そう言って着いた場所は、とあるビルの脇にある公園みたいな所だった。

あたりを見渡したがそれらしき人影は確認できなかった・・

 

「本当にここですか・・?」

 

「おかしいな・・ちょっと探してくるよ」

 

「え・・あ、先輩・・!」

 

行ってしまった・・・どうするんだよ、下手に動かない方がいいかもな。そう思い公園内のベンチに行こうとした時だった・・

 

「コォォォォ!!!!」

 

「・・ッ!!!、クッ?!」

 

突如茂みから現れた全身紫色の鎧を身に着けた、人の様な物体の突進を避け、体勢を整える。

人かと思っていたら「それ」は上半身が人で下半身が馬になっており、さしずめ「ケンタウロス」のようだった。さらに特徴的なのは左手に大盾を持ち右腕は腕そのものが剣になっていることだな

 

「「スタンド」か、先輩は大丈夫だろうか・・・」

 

そう言い、一瞬意識を逸らした時・・

 

「コォォアア!!」

 

「ぐあ!!」

 

一気に距離を詰められたと思ったら、既に眼前に大盾が迫っていてそれを避けきれず直撃してしまう。

 

「ぐっ!・・・あぐ、はぁ・・はぁ」

 

鋭い痛みがまだ残っている・・・ということは

 

「近距離パワー型か・・・となれば、本体は近くにいるな」

 

さっきの攻撃は正確に狙ったもの、それに意識を逸らしたのがスタンドそのものに分かることはほぼ不可能だしな。

とは言ったもののそれらしき人物はいない・・・

 

「隠れているのか・・・」

 

だが隠れられるスペースはあまりない・・・なら

 

「「アウタースローン」!!!!」

 

自分の目の前に集めた木の葉で、簡易的な盾を形成する。

 

「コォォォォ!!!!!」

 

するとスタンドがこちらに向かってくる音が聞こえる、すると葉の盾を剣の突きで貫いてきた。

 

(やっぱりな・・・・)

 

あらかじめ距離をとっていた為、その攻撃が届くことはなかった。そして盾が崩れ、奴との距離が大体分かる。

俺はスタンドを出したまま、両手を下げリラックス状態にし目を瞑った。

 

すると目を閉じたのと同時に奴が近づいてきてるのが分かる。

 

「クォォォォ!!!」

 

剣を振りかざす音が聞こえたと同時に目を開ける!

 

ガシィィン!!!!

 

勢いよく振り下ろした剣を俺は・・・・・白羽取りの要領で受け止めていた!

 

さすがに奴もこれには驚きが隠せず、力が緩んだのが分かるとすかさず拳を腹に数発入れる!

 

「オラオラオラ!!!」

 

近距離で受けたのが効いたのか若干よろめく・・トドメのラッシュを入れようとした時不意に声が聞こえた

 

「そこまでよ!!比屋定君」

 

振り向くと東條先輩と隣には長身の女性が立っていた。

 

「先輩・・・隣の人は・・?」

 

「この人が会わせたい人の・・・」

 

「落合 楓(おちあい かえで)よ、宜しく!」

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。
なお前書きにも書いた様に今回のスタンドは募集したスタンドです!

スタンド名:「ツヴァイヘンダー(両手剣)」
   本体:落合 楓

破壊力-?、スピード-B、射程距離-D
持続力-?、精密動作性-C、成長性-C

能力
特殊な呼吸法で発生する「波紋」を攻撃能力とする近距離パワー型のスタンド
本体の呼吸の深さによって破壊力と持続力が変わるが、機動性と戦闘能力のみに重きを置いた正統派スタンドとなっている。

案を送ってくださった「エス氏」様ありがとうございます!

感想・ご意見お待ちしています


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第24話 ツヴァイヘンダーその②

新たなスタンド使いとの邂逅、承一の運命という歯車が回り出す・・・・
それではどうぞ


コーヒーショップ&喫茶店「SPW」 PM16:05

 

俺と東條先輩は、落合さんの案内で公園の隣にあるビルの二階にあるカフェに来ていた。

 

「ここでいいかな?」

 

 

落合さんに促られて窓際の席に座る、店内は若干薄暗いながらも落ち着いた雰囲気を醸し出し、クラシック音楽がちょうど良い音量で流れている。

そこへ初老の男性が近づいてきた、ここのマスターかな?

 

「ご注文は何になさいますか?落合様」

 

「いつものブレンドをホットで、この二人にも同じものを」

 

「畏まりました」

 

注文を取り終え、カウンターへ戻っていく、それを見届けると彼女がこちらに向き直った。

 

「さて、さっきはいきなり攻撃してしまってすまなかったね」

 

「大丈夫ですよ、でも理由は知りたいですね」

 

「いや、希んが連れてくる人だから腕試しついでにってね」

 

「はぁ・・・ん?希ん?」

 

「ちょっと楓さん!その呼び方は恥ずかしいからやめてよ!」

 

顔を真っ赤にしながら抗議する東條先輩、いつもはほかの人をからかっている姿しか見てないから新鮮だと思い、なにより可愛いとも思った。

 

「相変わらずの反応だな、可愛いから照れなくてもいいんだよ~」

 

「も、もう!」

 

 

そんな会話をしているとコーヒーが三つ運ばれてきた。

 

「お待たせしました」

 

それぞれにコーヒーが行き渡り、口をつけ始める。

 

「そう言えば、さっきの戦闘で二、三聞きたいことがあるけどいいかな?」

 

コーヒーを飲みながら落合さんが、そう聞いてくる

 

「はい、いいですよ」

 

「木の葉を集めて盾を作っていたが、あれはもう少し大きくすることもできたのではないか?」

 

「・・確かにそれも考えましたが、本体が分からない以上下手に自分の視界を狭めるのは危険だと思って・・」

 

「それに盾から動かなければ、どの程度相手に見えているか分かりますからね」

 

「なるほど・・・見えなければ盾を切り裂くが、見えていれば剣の突きなどで攻撃ができるな」

 

「でも、それやと盾を回り込んだ方がいいんじゃない?」

 

「彼は、それを前提にして行動していたから、それは難しいよ」

 

「仮に回り込まれたら、あらかじめ触れておいたベンチをぶつけるつもりだったしな」

 

「あの状況でそこまで想定しているとはな・・冷静に分析できる能力が高いとも言えるな」

 

「それに白羽取りをできる、あの豪胆さ・・これからの成長が恐ろしく思えるほどだよ」

 

なんだかそこまで褒められると、気恥ずかしいというか・・なんというかだな、そんなことを思っていると落合さんの顔つきが一瞬だけ険しくなる。

声を小さくして聞く

 

「どうしたのですか?」

 

「どうやら、私か君たちに用事がある人が居るみたいだな」

 

「「え?」」

 

「君たちから見て左斜めで店の入り口付近の一人用の席に座っている」

 

そう言われ、目線を少しずらし確認すると帽子を深く被った男が雑誌を読んでいた。しかし時折こちらに視線を送っているのが分かった

 

「確かにこちらを窺っているな」

 

「一旦ここから離れようか、余計な被害がでない内に・・」

 

そう言って静かに会計を済ませ、店外にでる。すると俺達が出た直後に会計をしている音が聞こえてきた。

 

「さ、急ごうか!」

 

「でも、何処へ・・・」

 

「この近くに廃ビルがあるからそこへ誘導する、希は三階に行ってこちらが終わるまで退避していてくれ」

 

「はい、楓さん比屋定君・・・無事でな」

 

「うん!」

 

「ええ!じゃあ裏から出ようか」

 

その言葉と共にビルの裏口から外へ飛び出した、そして俺達の後を追ってきた男の姿が見える

 

(やっぱり俺達が狙いか!)

 

落合さんの後を追い、しばらくすると古ぼけた四階建の建物にたどり着いた。

中に入ると一階部分は柱とコンクリートだけとなっており唯一あるのは二階へ上がる為の階段があるくらいだった。

 

「さてと・・・そろそろ隠れていないででてきたらどうだい?」

 

そう問いかけると入り口の影から先ほどの男が出てきた。顔は分からないががっしりとした体格から筋力は相当あると思われる

 

「わざわざこんな所まで来て俺様と戦うとはな・・・まぁいい」

 

「始末すればいいだけのことよ!!!!!!」

 

そう男が叫んだのと同時に、奴の「スタンド」が発現する。人型で全身の筋繊維がむき出しになっており右拳にはメリケンサックのような物を着けている

 

「「グローリーサンド」!!!!!」

 

男が高らかに言うと、突然の耳鳴りと共に落合さんが横に大きく吹き飛ばられてしまった。

 

「落合さん!!」

 

駆け寄ろうと思い、走りだそうとした時だった

 

「よそ見を・・・しているんじゃねーーーぞ!!」

 

奴は数メートル前まで迫ってきており、スタンドのパンチを受けてしまう。

 

「ぐッ・・・!」

 

ギリギリでスタンドを出し、防御したがあれをまともに喰らう訳にはいかないな

 

「「アウタースローン」!!!!」

 

手元にあったガラスの破片を奴の右腕に集めさせる、だが

 

「フン!・・・無駄なことよ」

 

ガラス片は奴に届く前に、空中で割れてしまった・・・

 

(何故・・?、あれが奴の能力なのか・・・)

 

「もう一発喰らいやがれーーー!!!」

 

再び右拳を振り上げ、能力を使おうとするが・・

 

「ブギッッ!!!」

 

突然コンクリートブロックが飛んできて、それが奴に直撃する。それは落合さんのスタンドが投げたものだった。

 

「さっきは不意打ちを喰らったが、貴様の能力の正体は既に分かったよ」

 

「がふっ・・・ば、ばかな・・」

 

「お前の能力・・・それは「音波」を操る力・・だろう?」




いかがだったでしょうか?今回は人物紹介です。

名前:落合 楓(49歳)
波紋使い、スタンド使い 生年月日:1965年10月22日

職業:スピードワゴン財団日本支部、東京支部専属医師

身長:179cm 体重:62㎏

すらりと伸びた脚にメリハリのある身体でかなりの美女と言える、「波紋」と呼ばれる特殊な呼吸法を用いて若さを保っており、見た目は20代ともいえるほどである。
スピードワゴン財団に約20年前に入り、世界各国で医師として従事しておりその功績が見込まれ一年前に東京支部へやってきた。
「波紋」は落合家が代々師範代を務める「真空流柔術」の中に、組み込まれているため幼いころから修行を積み会得したものである


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第25話 ツヴァイヘンダーその③

お待たせしました、こんなに空いてしまって申し訳ないです・・
ではどうぞ!


 

ゆっくりと歩き、男との距離を縮める。すると男は若干後ずさりして困惑気味に落合さんに問いかけた

 

「何故・・・?俺様の能力が分かった?数回しか見せてないのに・・・」

 

「数回でも見れれば十分だよ、それにあんたの動きも分かりやすかったからね」

 

そう言い、自らのスタンドを出す。

 

「能力の解説は後にするとして、今は聞きたいことが山ほどあるからそれを聞かせてもらうよ!!」

 

言ったのと同時に、男に向かい走り出す!俺も後に続くように走り出す。

 

「く、来るなぁーー!!」

 

男は絶叫しながらスタンドを出し、応戦しようとするが動きが雑な為全て当たらなかった。

 

「ツヴァイ!!!」

 

「そしてダメ押しの「波紋疾走」!!!」

 

スタンドの大盾が男の腹部を捉え、さらに落合さんの右拳に稲妻の様に光ったかと思うとそれを顔面に食らわせた!

 

「ドギャァァーーー!!!」

 

男は後方へ大きく跳び、気絶はしなかったが動けそうにはなかった。

落合さんは男の傍に近づき、静かに問いかけた

 

「さて、まずは一番疑問に思っていたことだけど・・・・どうやってあのビルに入ったんだ?」

 

俺が思っていたのより意外な質問だったので、聞き返してしまう

 

「あの・・落合さん?それなら誰でも入れるんじゃ・・・」

 

「いえ、スピードワゴン財団が所有するビルに立ち入るのには専用のカードが必要になるの」

 

「カードを発行するのには財団支部に問い合わせてもらうしかない、それに偽造のできないようになっている」

 

「他の誰からか奪ったとかは?」

 

「それもないね、カードを受け取る時に指紋を取られ、ビルに入る際に認証することになっているから」

 

「・・・・確かにそれではどうしようもないですね」

 

「裏口から入った形跡もない・・戦いが始まってからずっと気になっていたのよ」

 

「・・・ク、誰が・・・答えるかよ」

 

「答えないのなら、あなたの携帯を見せてもらうからね」

 

そう言って落合さんが懐に手を伸ばそうとした時だった

 

ミシ・・・ミシ・・・

 

何かが軋む音がし、上を見ると二人の真上の天井が大きくひび割れて今にも崩れそうになっていた。

 

「ッ!、落合さん!あぶない!!」

 

その声に反応して、落合さんは素早く男から離れる。それと同時に天井が崩れ落ちあたり一面が砂ぼこりになる。

 

ようやく晴れたかと思うと、男のいた場所は瓦礫の山となっていた。

 

「こ、これは・・・・」

 

「スタンド攻撃・・?、いやそんな気配は無かった・・・どちらにせよ口封じの為か」

 

そう言って肩を落とす落合さんの足元に、キーホルダーみたいなのがあることに気づく

それを拾ってみると、赤い文字でアルファベットの「O」で真ん中に「I」が貫くようになっているものだった。

 

「これが落ちていたんですけど、何ですかね?」

 

それを受け取ると、一瞬だけ驚いた表情になったがすぐに元に戻った。

 

「なるほど・・・ここが関係しているのか」

 

「あの・・・それは?」

 

「これはとある会社のマークだよ」

 

「会社の・・・マーク・・」

 

「ええ、世界最大の製薬会社にして遺伝子工学等の様々な分野に精通している「オデュッセウス・インダストリー社」・・ここが出てくるなんてね」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~*******~~~~~

 

 

 

 

 

 

同時刻 社団法人「永和の会」本社ビル 正面ロビー

 

(ここが「永和の会」か・・・特に何も無いのが不気味だな)

 

そう言ってロビー近くのソファーで座っているスーツ姿の「三枝三機哉」は、ここへ見学と称してやってきたのだ。

 

(偶然にもこのビルの隣のビルで商談を行った時、やたらと私の「スタンド」が反応していた・・・その時は分からなかったが・・・)

(この前の音ノ木坂学院での出来事でようやく理解した。私の「キング・ロマネスク」は「弓と矢」に反応を示すのだと!)

(何故かは知らんが、好都合だ!内部を調べる為にここへやって来たが・・・)

 

「いつまで待たせる気だ・・・」

 

(かれこれ十分近く待っているが、一向に誰も来ないとは・・!)

 

そんな憤りを感じていると、奥から事務員らしき女性が出てくる。

 

「お待たせしまい申し訳ございません、ただいま許可が下りたのでご案内します」

 

「ええ、宜しくお願いします」

 

女性の案内で、まずは二階からの紹介が行われた。四階で「瞑想の部屋」と呼ばれる場所でのこと・・

 

「ここが、「瞑想の部屋」となります。入会したらまずここで座禅をくんでいただきます」

 

「はぁ・・・」

 

(馬鹿らしい・・・)

 

そんな事を考えていると、ふと柱に掲げられている一枚の絵が目に留まった。そこにはあの「弓と矢」の矢尻の部分が描かれていた

 

(・・!あれは・・)

 

「すみません、あの絵は・・?」

 

「ああ、あれはここの代表が描いたものなんですよ」

 

(やはり、ここにあるのかもしれないな・・・)

 

「ここはこのくらいでいいでしょう、次は五階になりますので階段で行きましょう」

 

そう言って、女性は階段へ向かう。三枝は密かにスタンドを出していた。

 

階段へ着くと、三枝はスタンド能力を使い女性の脚の感覚を「消した」、女性は感覚が無くなったことに驚き、前のめりに倒れ顔面を階段に強打してしまい気絶する。

三枝は用意していたガムテープで女性の口と手と足を封じて空いている部屋に押し込んだ。

 

「さて、これで邪魔者はいなくなった」

 

軽い足取りで五階に上がり、捜索を始めようとした時不意に声をかけられた

 

「どこに行こうとしているのかな?あんたは~?」

 

「誰だ・・?」

 

「ただのバイトマン・・・さ!!」




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です

スタンド名:「グローリーサンド」
   本体:本郷 健人
破壊力-B、スピード-C、射程距離-C
持続力-D、精密動作性-なし、成長性-C

能力
右手のメリケンサックから「音波」を出し、それを操る能力
「音波」の強弱、方向等も操作することが可能、ただし自身で発生させた「音波」は操れない

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第26話 「ギャング・クラウンズ」と「キング・ロマネスク」

お待たせしました、今回は募集したスタンドが出てきます!
それではどうぞ


(こいつ・・・・)

 

ここのバイト・・?警備員か何かと思ったが、見た所普段着だしその可能性はないな。

それに・・・右目までかかるほど伸びた髪、両耳には髑髏の形をしたピアスをしている、所謂チャラ男と呼べるものだった。

 

(そんな奴が私と張り合おうとするのか・・・)

 

「何者かは知らんが、怪我をする前にどっかに失せることだな」

 

「お!?何々~警告を言ったぞ!みたいな言い方は?!」

 

「無論、そのつもりだが?」

 

「へぇ~~、いい気になってんなよ!てめー!!!」

 

男の背後がブレて人型のスタンドが出てくる、それは黒いスーツを着てピエロのマスクを装着してその手にはナイフが握られていた。

 

「警告はした・・・・降りかかる火の粉は払わなければいけない!」

 

自身のスタンド・・「キング・ロマネスク」を出し応戦する。

 

「それが、あんたの「スタンド」か~~」

 

(スタンドの事を知っている・・・あの少年の仲間か?)

 

「しかし、どんな奴だろうと俺の敵じゃあ~~ねぇ~~!!」

 

そう言った時、背後の物陰から飛び出した「何か」に脇腹を強打される。

鈍い痛みに襲われたが、何とか耐えその「何か」を見る。そいつは男の背後から出てきたスタンドと同じ格好をしていた。唯一違うのは手にしている武器がメリケンサックになっていることだった。

 

「くっ・・・!!」

 

「どうだい?調子に乗っている奴にはこたえただろう?」

 

「フン!舐めるなぁ!!」

 

「キング・ロマネスク」が床に手を触れる、そこへ能力をかける

 

(「床」から「摩擦」という「情報」を消す!、ただし奴のいる箇所のみとする)

 

すると、床の摩擦が無くなったことにより盛大にこける。

 

「カボスッ!!!な、何だ・・?」

 

立ち上がろうとするが、再びこける

 

「無駄だ、お前がいる箇所は摩擦は無くなっている。無理に立ち上がろうとするな」

 

「うおおお!!「ギャング・クラウンズ」!!」

 

その叫びと同時に、他の所に隠れていたと思われる奴のスタンドが三体ほど出てくる。

一体がボウガン、一体がスレッジハンマー、そしてチェーンソーを持っている。

ボウガンの射撃により一旦距離をおいた

 

「ここからが本番だぜ!!!やれクラウンズ!!!!」

 

その言葉と共に五体のスタンドが襲い掛かってくる

 

遠距離のボウガン以外が一斉に向かってくる、しかし正面からただやってきただけの単調な攻撃なのでスタンドのラッシュで迎え撃とうと思った時だった。

 

「ぐあッ!」

 

突然脚が焼かれるような痛みが走ったかと思うと、右脚の太ももから出血していた。後ろから発砲音がした為「スタンド」で防御した。そこを見ると銃を構えたスタンドがいた。

 

(・・・く、六体目・・・だと)

 

考えている暇もなく、五体のスタンドがこちらに向かってくる。

 

(チィ!!)

 

近くにあった消火器をスタンドで潰し、床に叩きつけあたりが真っ白になる。

その隙に近くの空き部屋に逃げ込む。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

撃たれた個所は服の一部をちぎって、それを巻いて止血できたが・・・

 

(くそっ!!、追い詰められているのか私が・・!この私が・・!!)

 

こみ上げる悔しさから下唇を強く噛みそこから血が出てくる。

 

(私があんな奴ごときに追い詰められるなんて・・・・く・・!!、考えるほど焦りが出てくる・・・何とかしてあの六体のスタンドを退けなければ・・・)

 

様々な案が頭の中を駆け巡り、自問自答するが決定的な解決にはならず全て没となる。そんなことが何十回か繰り返した時だった

 

 

ーープッツン

 

 

頭の中で何かが切れる音がした・・・・・

 

(・・・そうだ、難しく考えなくてもいい・・・ぶっ潰すのが増えたぐらい・・)

 

スタンドを出し、部屋のドアを殴り飛ばす

 

「うおっ!!びっくりした・・」

 

すると、ちょうど二~三m前に「奴」がいた、仕留めるべき「標的」が・・

 

「自分から出てくるなんて、いい度胸だな~」

 

「まぁいいケド、探す手間が省けたもんだぜ!!!!」

 

奴のスタンドが向かってくる、ピストルとボウガンがほぼ同時に撃ってきた・・・

 

 

だが私は・・・・

 

 

あえて真っ直ぐ奴に突っ込む、正面突破の形をとることにした!

当然弾や矢が当たるが、問題はない・・・なぜなら

 

(「キング・ロマネスク」で「自分の体」から「痛覚」という「情報」を「消した」からな、急所となる部分はスタンドで防御しそれ以外は全て捨てる・・・)

 

さすがの奴とはいえ、これには何の対処はできていないらしく、攻撃が散漫となる。

すかさずスタンドの一体の胸倉を掴み、前方に引き倒して顔面を足で何回も踏みつける。

 

「う・・・あ・・・」

 

奴の額から血が出てくる、六体もスタンドがいるからダメージも六分の一になるわけだ。そんなのは今は関係ないがな・・

 

そのまま一気に距離を縮める、一メートルぐらいまで来てスタンドのラッシュを喰らわせる・・・

 

 

 

「オオオオッッ!!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァ!!!!!!!」

 

 

 

「グッピィィーーーー!!」

 

大きく飛ばされたが、気絶はせずスタンドに抱えられ下の階へ逃げる・・・・私は体の「痛覚」を戻しその跡を追った。

 

 

 

「うぐぐ・・・・・」

 

スタンドが何とか盾になってくらたおかげで、今は小さい物置スペースに身を潜めている・・・・

にしても・・

 

(何てクレイジーな野郎だ・・・もうあんな奴に喧嘩をふっかけるのはよそう・・・)

 

何て事を思っているが、この状況をどうにかしないと俺が殺されちまう・・・どうにかしねぇと

 

 

(あいつは「スタンド使い」・・・「スタンド」か・・・もしかして・・!!)

(食いつくかは分からんが、やってみるしかない!!!)

 

そんな決意をしたのと同時に、扉のむこうから声がした。

 

「こんな所にいるみたいだな・・・・」

 

あいつだ・・・もう来やがったのか、落ち着けよ俺・・・落ち着け・・

 

「なぁ・・あんた」

 

「何だ・・・?」

 

「本気で俺を殺す気か?」

 

「当たり前だ、今さら命乞いをしても無駄だぞ」

 

「そんな事はしないぜ、ただな俺はあの「弓と矢」の事を知っているから・・殺すのには惜しいと思うぜ」

 

「何・・・・?」

 

(お!今あいつは「ピクッ」てなったと思うぜ、扉からの殺気が若干弱くなったからな・・・もう少し様子を見るか)

 

「スマン!今のは戯言だ・・・ひと思いに殺してくれ」

 

「・・・・・・続けろ」

 

「あ~~~何か生きるのもだるくなってきたな~」

 

「いいから続けろと言っているだろう!!!!」

 

「・・・・話を聞く気になったの?もしかして助けてくれたりとかは・・?」

 

「それは話をきてからだ」

 

(チィ!用心深いぜ・・・)

 

「正確に言えば「矢」がどんな奴が持っていて、何本あるかということぐらいだがな」

(本当は何も知らないけどな~~)

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

(黙りこんでいるな・・・もしや嘘だとバレたのか・・)

 

「・・・・ひとつだけ質問があるがいいか?」

 

(・・!よし喰った!!)

 

「ああ!いいぜ!」

 

「お前自身は「弓と矢」に興味はないのか?」

 

「無いぜ!だからあんたに情報と渡そうと思ってるぜ」

 

「・・・・・・分かった、何もしないから出てこい」

 

(来たーーーー!!!後が大変になるがまぁいいだろ)

 

 

扉を開け、外に出る。そこにはあいつが立っており、スタンドは出していなかった

 

「ありがとな、助けてくれて・・」

 

「別に・・・ただの情報元として生かしてやっているだけだ」

 

「そりゃどうも、なら自己紹介でもしようか!俺は「海山 イデヤ」だ!宜しく!!」

 

「・・・・「三枝 三機哉」だ」

 

 

 




いかがだったでしょうか?スタンドは「通りすがりのチンピラ」様から募集をいただきました!ありがとうございます!!

スタンド名:「ギャング・クラウンズ」
   本体:海山 イデヤ

破壊力-C、スピード-B、射程距離-C
持続力-A、精密動作性-B、成長性-B

能力
全六体で構成される人型の群体型スタンド
本体の命令を忠実に実行し、行動することができる
自動攻撃に変えると、それぞれが考え行動する。
さらに自我もついてそれぞれが会話もする(今回は描けなかったです・・すみません)
持っている武器はそれぞれ違う

№1ナイフ、№2ピストル、№3メリケンサック、№4ボウガン、№5スレッジハンマー、№6チェーンソー

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第27話 来訪者その①

お待たせしました、それではどうぞ!


4月24日 マンション「ベルフォレスト」承一の部屋 AM8:00

 

「今日は雨か~」

 

どんよりとした空を見上げてたらそんな言葉が出てきた。今日の予報は一日中雨だと言っていた気がする。

トースターに入れていたパンが焼きあがりそれをベーコンエッグが乗った皿に載せ、淹れたてのコーヒーを啜りながらテレビの前へ移動する

 

流れてくるニュースを聞きながら、朝食を食べているとなにやら速報が届いたらしく、それをキャスターが慌しく読み上げる。

 

「ただいま入ってきました速報です、東京都知事である「唐沢 英一」氏の不透明な借入金問題が発覚しました。東京地検特捜部は引き続き捜査を進める模様です。繰り返します・・・」

 

「・・・」

 

(よく分からんが、多分大変なことなんだろう)

 

そんな事を考え、ふと時計を見ると八時半を回っているところだった。

 

「あ!ゆっくりしすぎた~~!!」

 

残っていたコーヒーを飲み干して、鞄を持ち慌しく部屋を飛び出す。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~~

 

 

 

 

音乃木坂学院 理事長室 AM9:00

 

理事長室にとある男が案内される、その人は大きく膨れた鞄を肩に掛け入ってきた。

 

「ようこそ、理事長の南です」

 

「・・・・ご丁寧にありがとうございます、私はこういう者です」

 

そう言って男は名刺を手渡す。

 

「オデュッセウス・インダストリー社、地質学一課課長の・・・えっと」

 

「・・「ざいべ」です、座井部(ざいべ)強(こわし)と読みます」

 

そう名乗った男は、黒のスーツに独特の柄のネクタイをしていて、髪型が若干モヒカン気味になっていた。

 

「この、地質学一課というのは?」

 

「読んで字の如くです、世界中の地質を研究しており人類の起源など様々な謎を解明しようとする部署です」

 

「なるほど、では今日はどういったご用件で?」

 

「いえ、大した用ではないですよ。ちょっと確認したいことがあるだけですよ」

 

そういうと男の背後から「影」みたいなのが出てくるが、理事長はそれに気づけなかった。

 

「だから、あなたには少しいなくなってもらいます」

 

男の発言と共に、理事長の姿がなくなる・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

 

 

音乃木坂学院 二年生教室 AM11:00

 

 

「雨全然止まないな~~」

 

机に伏せてそう穂乃果が言った。

 

「しょうがないよ、穂乃果ちゃん今日は一日中雨らしいよ」

 

南さんが苦笑いしながらそう言った、予報が見事に当たってしまった訳だな

 

「穂乃果が雨止め~とか言って、止んだら面白いよな」

 

俺の言葉を聞いた瞬間、突然起き上がり窓を開けると、

 

「雨止め~~~!!」

 

と叫んだ、しかし止むことはなくそれどころかほぼ全開にした窓から雨粒が教室に入ってきた。

 

「うわわ!冷たい!!」

 

慌てて窓を閉める、するとちょうどトイレから帰ってきた園田さんに見つかってしまう

 

「こら!穂乃果!!何をやっているんですか?!!」

 

「う、海未ちゃん!いや承君がやれって言ったから・・・・」

 

「本当ですか?!!比屋定君!」

 

「え、いや冗談みたいなものだったし、本当にやると思わなかったんだよ!」

 

急いで弁明をする、やれやれ今日は厄日だな・・・・・そんな事を思っていると始業の予鈴がなる。しかし

 

「先生が来ないな・・・」

 

窓の近くで吹き込んだ雨水を、ハンカチで拭きながらそう言った。

 

「本当だね、もう来てもいいよね」

 

そう穂乃果が言ったけど、クラスメイト達はあまり気にしてない様子だった。

 

「・・・・ちょっと呼んでくるよ」

 

「なら、私も行くよ!」

 

そう言って穂乃果も付いてきた、そして俺達は教室の外へ出るとその異様な光景に言葉を失った。

 

 

 

・・・誰もいない、というより人の気配が全くなかった。

 

 

「・・・こ、これは」

 

「し、静か過ぎるよ・・・・」

 

俺は隣ぼ教室に走った、そして扉を開けると・・・・そこにはいるはずの三十人近くの生徒がいなくなっていた。

 

(どういう事だ・・・・まさか!!?)

 

「じ、承・・君」

 

穂乃果が顔色を悪くして話しかけてくる、あの様子だと別のクラスも見たらしくそこも・・・

 

「間違いない、スタンド攻撃だ!」

 

 

 

同時刻 一年生教室

 

 

「・・・でね、そこのラーメンとっても美味しかったんだにゃ~!」

 

「あなた、さっきから美味しいしか言ってないじゃないの・・」

 

「ふふ、凛ちゃんらしいよ」

 

「でも、そんなに食べても体型が変わらないのは羨ましいな~」

 

教室で凛、花陽、真姫、久井が談笑していた、そんな時予鈴が鳴った。

 

「もう授業かにゃ~」

 

「でも、先生が来ませんね・・・」

 

久井がそう呟く、真姫がそれに反応する。

 

「本当ね、もう来ていてもおかしくないのに」

 

「呼びに言った方がいいですかね?このままじゃ始まりませんですし」

 

「そうね、じゃ私が行ってくるわ」

 

「じゃあ凛も行くにゃ~~」

 

「何言ってるの、一人でいいわよ」

 

そういうとさっさと教室から出て行く、すると・・・

 

 

「な、何・・・これ・・・?」

 

そこには誰もいなく、静寂が支配していた。真姫はすぐに階段を上り職員室まで走って行き、扉を開けたが・・・

 

「・・・・ッ!!!!」

 

そこには、いるはずの教師達が一人も・・・いなくなっていた。

 

「何が・・・起きているの・・・?」




いかがだっただしょうか?ここでスタンド紹介です。

スタンド名:「レイニーデイズ」
   本体:座井部 強(同化人間)

破壊力-なし、スピード-A、射程距離-A
持続力-不明、精密動作性-なし、成長性-なし

能楽の面のような仮面をつけ、首から下はマントのようなもので覆われているスタンド
能力
雨粒を媒介して発動する、その雨粒に触れた物体に触れるか、雨粒そのものに触ったことがある物を全て極薄い紙状に変えてしまう能力、本体が解除するか、本体が死ぬことがない限り能力が解けない

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第28話 来訪者-静かなる侵略-その②

大分空いてしまいました・・申し訳ないです。
では、どうぞ


同時刻 三年生教室

 

「中々止まないわね・・・」

 

「予報では一日中降るみたいやね」

 

「こうも降ってると、気が滅入るわね」

 

三年生の教室では絵里、希、にこが止まない雨のことで話をしていた、そしていつもの様に予鈴が鳴った。

しかし、鳴って数分も経つが一向に教師が来る気配がない・・・

 

「遅いわね、予鈴はもう鳴っているのに・・・」

 

「忘れている・・・何て流石にないわよね」

 

「うちが呼びに行こうか?」

 

「呼びに行かなくてもその内来るでしょ・・・・ん?」

 

そう言ったにこが何かに気付く・・・それは席の近くにある窓ガラスの鍵が閉められていなかったのだ。

 

「こんな雨の日なんだから閉めなさいよ、全く!」

 

「まぁまぁにこっち、あんまりカリカリしない方がええよ」

 

希に諭されたにこが、鍵を閉めようと窓ガラスに手を伸ばそうとした時だった。

ふと窓ガラス越しに希が外を見ると、そこには逆さまになってお面のような物を被った「何か」を見た。そして彼女はすぐさま叫んだ!

 

 

「にこっち!今すぐ窓ガラスから手を放して!!」

 

 

「わ!・・・何よびっくりするじゃない」

 

その叫びは一歩遅かった、すでに鍵に触れた所だった。

 

ーーガチャン

 

鍵が閉まる無機質な音が鳴ったのと同時に、にこの姿は何十人の人の前で忽然と消えてしまったのだ。

彼女が消える直前まで持っていたシャープペンが、持っていた主を失い床に落ちた・・・・

 

「に・・・にこっち?」

 

「え・・・?に・・・こ・・?」

 

突然の出来事に誰も立ちすくんでいると、後方の窓ガラスが勢い良く開いた!

そしてその近くいた何人かの生徒が先ほどのにこと同様に姿が消えた。

 

(な・・何が起きているんや・・・)

 

「は、早く先生を呼びに行かないと・・!」

 

そう言って何人かの生徒が教室を飛び出していった。

走る足音が教室のすぐ傍で消えてしまった。

 

(まさか・・!)

 

希はすぐに教室から出た!そこには校庭側の窓ガラスが二枚ほど全開となっており、先ほど飛び出した生徒の姿はどこにもなかった・・・

 

「の、希・・!」

 

「エリち!どうし・・・!!」

 

絵里が呼ぶ声が聞こえたので、急いで教室の中に戻ると先ほど見たお面を被った「何か」が彼女の後ろに立っていた・・・

 

 

「・・ッ!エリちィィィ!!!」

 

その叫びと同時に絵里の姿は消えてしまう・・・

 

「・・・・うッ・・・!!」

 

こみ上げてくる感情を抑えて、教室から飛び出す。向かう場所は比屋定達がいる二年生の教室だった。

 

(悔しいけど、うちのスタンドじゃ太刀打ちはできない・・けど比屋定君なら・・)

 

(それに、あのスタンドの能力発動条件は分かった。おそらく特定の範囲・・・「結界」の様なものを張ってその中に入った人達を消すことだと思う・・)

 

(そして、その範囲は「窓ガラス」の付近・・!ならそこに近寄らなければ・・!)

 

 

しかし、その推測に僅かな疑問が出てきた。それと同時に向かう足が止まる。

 

(じゃあ・・・何故あの時窓ガラスを開ける必要があるのかな・・?)

 

(窓ガラスに触れさせる為?でもにこっちが消えたのが見えたから余計に近づきにくいはず・・・)

 

(もしかして・・・窓ガラスを触れさせることじゃなく、開けさせることが目的なら)

 

(開けたなら何が入ってくる・・・!あのスタンド?風?・・・いや、「雨」・・・・!)

 

(「雨」・・・「雨粒」・・・「触れる」・・・!まさか!!)

 

一つのある仮説が頭の中に浮かんだ、確かな証拠がある訳ではない。だがそれなら全てのことに説明がつく

 

「早くこのことを伝えないと!!」

 

改めて目的の場所に向かう為、一歩を踏み出そうとした時だった。

 

 

 

ブシュウゥゥゥ!!

 

 

風船がしぼむ様な音がしたと思ったら、突然下半身に力が入らなくなり床に伏せてしまう。

 

(・・ど、どうして・・・?)

 

上半身を起こし、恐る恐る下半身に目をやるとそこには・・・

 

 

「な・・・何・・・これ・・・?」

 

確かに足は見えた、いつも通りだった・・・・「紙の様に極薄くなっていること」以外は・・さらに恐ろしかったのはその足に触れるといつも変わらず体温を感じ、肌の感触があることだった。

 

「何で・・?何処で・・?あッ・・・!」

 

思い返してみると、教室から出た後の廊下で開けたままの所から雨が吹き込んでいたことを思い出した。

 

「あの時、雨に当たっていたんか・・!」

 

床を這いずるように何とか前進しようとした時だった・・・ふと自分の左隣に気配を感じたかと思うと・・・

 

 

ーーブン!!

 

何かが振り下ろされる音がしたのと同時に、左腕に力が入らなくなった。

 

 

「やはり・・・気付いていたのか」

 

聞いたことがない低い声が聞こえたので上を見上げると、一人の男が立っていた。

 

「だ、誰・・?まさかあなたが・・・・」

 

「ほう、勘が良いな・・」

 

すると男の背後に自分達の教室で見た「スタンド」が現れる。

 

 

「まさか我が「レイニーデイズ」の能力を短時間で理解するとはな・・・人間にしては優秀な方だな」

 

「人間にしては・・・?それはどういう・・?」

 

「君が知る必要はない、例え知ったところで理解はできまい」

 

「しかし、その洞察力は私の「目的」の邪魔になるかもしれないから・・・」

 

「君はここで「GAMEOVER」だよ・・!」

 

 

そして「レイニーデイズ」のマントが希の視界を覆った。

 

 

(・・・ひ、比屋定・・・君、伝え・・ないと・・・)

 

 

彼女の意識はそこで暗転してしまった・・・・・・。

 

 

 




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第29話 来訪者-漆黒の意思-その③

お待たせしました、それではどうぞ!


「・・・・・」

 

誰もいなくなった廊下で一人の男「座井部 強」は無言で立っていた、さきほどまでいた女生徒が消したので、すぐにでも移動すべきなのだがそれはしなかったのは・・・

 

(・・・・やはり思い過ごしか、何か仕掛けているかと思ったのだがな)

 

そう、そこにいた女生徒は自身のスタンド能力に気付いたのだ。

 

(少ないヒントで能力の目星をつけた奴は初めて会ったからな、正直不安は残るが「目的」を済ませよう・・・)

 

男は踵を返し、その場を後にした

 

 

 

 

時刻は東條希が消される直後に遡る、比屋定承一と高坂穂乃果は職員室に向かって走っていた。

承一は表情には表さなかったが、心の内では怒りと焦りで満ちていた・・・

 

(くそッ!!まさか学院で事を起こす奴が出てくるなんて!)

 

自分が予想していた最悪の出来事が現実となったことへの憤りと、相手の能力が分からないことへの不安で心の中に黒い沈殿物が溜まろうとした時だった

 

「・・!承君!!あれは・・」

 

穂乃果が指差す方を見ると、三階へと続く階段の傍に何かが丸まっているのが見えた。

承一がそれに近づく・・・

 

「こ、これは・・・東條先輩のスタンド!」

 

それは確かに東條希のスタンド「パープルヴァローナ」であった、しかし動きは弱弱しくここまでやってくるのが精一杯と見えた。

 

「何でここに・・?それにこんなに弱っているのかな?」

 

「分からないが、スタンドがこんなに弱っているのを見ると東條先輩の身に何かが起こったのかもしれない」

 

すると、抱えられていた「パープル・ヴァローナ」が僅かに動き、羽についてた雨粒を使って途切れ途切れだが文字を書いていく・・・

しかし、ある程度書いた所でその姿が消えてしまう。

 

(くッ・・・!先輩、仇はとります・・)

 

「残った文字は・・・」

 

「えっと、ア・・メ・・?それと、ノウ・・・リョ・・・ク?でいいのかな?」

 

「雨・・・能力・・か」

 

(雨を使う能力は誰もいない・・・まさか敵の能力か!)

(雨に触れるかしたら発動する能力か・・?なら)

 

「穂乃果、とりあえず一年生の教室へ行くぞ!!」

 

「え?!でも・・・」

 

「今は味方が多いほうがいい!真姫と久井にもこのことを伝えないと!」

 

そう言って承一は走り出した。

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~~

 

 

 

同時刻 職員室前

 

 

誰もいない職員室という異様な光景を目の当たりにして、立ちすくんでいた真姫だがすぐさま自分の教室に戻る為走り出した。

 

(これが「スタンド攻撃」なら、教室にいるみんながあぶない!それに早く承一に伝えないと!)

 

廊下を進み、一階へ続く階段の手前まで来た所で階段を登ってきた久井と鉢合わせになる

 

「西木野さん!!」

 

「久井!?どうしてここに?!」

 

「それが・・教室にいた時妙なスタンドに襲われて・・・それで僕以外は・・・」

 

「・・・・そう」

(あの様子だと凛と花陽達は・・・)

 

「・・・・今は他のみんなと合流をするわよ」

 

「は、はい・・!」

 

そう言って二年生の教室に行こうとした時だった

 

 

「残念だが、それは叶わないことだな」

 

 

「・・ッ!誰?!」

 

声のした方を見ると黒いスーツ姿の男が三階へ続く階段からこちらを見下ろしていた。

 

 

「驚いたな、スタンド使いがまたいるとは・・・」

 

「・・!まさか、あんたがこんなことを!」

 

「悪く思わないでくれ、これも我が計画の為だからな」

 

 

 

そう言うと男は、自身のスタンドを出してきた、そしてーーー

 

 

二人にスタンドが迫る。

 

 

 

その刹那、真姫は思う

(私のスタンドでは倒せないけど・・・・承一達に伝えなくては・・・!)

 

久井は思う

(西木野さんは僕が守らなくちゃ!その為には・・・・!)

 

同時に二人の体が動いた。

 

 

 

久井は真姫の前までスタンド能力で移動し盾となり相手の攻撃を自身の体で受け止め、全身が極薄い紙状になってしまう。しかしほんの数秒だけ隙が生まれた・・・

真姫はその数秒で自身の能力を使って「固体」である「鉄」を創り出し、それを思いっきり床に叩きつけた。

 

その一連の行動に男は真意を見出せなかったが、構わず攻撃を再度行う

 

 

「何の意図かはわからんが、無意味だ!」

 

 

しかしその攻撃に真姫は躱さず、その身で受け止める。男はあえて両手足だけに能力をかけ、疑問をぶつける。

 

 

「何故・・?さっきもそうだが君の考えがまるで分からん。何故躱さなかったのか?」

 

「・・・・・」

 

男の問いに真姫は何も答えず、それどころか澄ました顔をしていた。

 

 

 

「・・・ッ!!!」

 

その態度に苛立ちを覚え、男は真姫の首根っこを掴むとそのまま壁に押し付ける

 

 

「何故さっきから黙っているッ!!何故答えん!!」

 

 

真姫は首からの圧迫感の為表情を歪めるが、無言を貫いていた。

 

「くッ!・・・人間風情が」

 

男の苛立ちが頂点に達しようとした時だった、これまで無言だった真姫が一言呟いた。

 

 

「やっと来たわね・・・・遅いわよ全く」

 

「何・・・?」

 

真姫の不可解な言動に一瞬動きと思考が止まる。その時背後から迫ってくる一つの拳があった。

 

 

「オラッッ!!」

 

 

「ぐ・・・がぁ・・!」

 

拳は男の顔面を完璧に捉え、そのまま吹き飛ばした!

 

 

「悪いな真姫、遅くなったよ」

 

「大丈夫?!真姫ちゃん!」

 

 

現れたのは比屋定承一と高坂穂乃果の二人だった。

 

 

「穂乃果、真姫の事を頼む!」

 

「うん!」

 

そう言うと承一は、先ほど自分が吹き飛ばした男の元まで行く

 

「ようやく見つけた・・・お前が・・みんなを・・・」

 

男の元まで来ると、手を固く握りしめそう呟いた。

 

 

「全く予想外だよ・・・消えた仲間と「矢」の行方を追っていたら懐かしの顔に出会うとはな・・・」

 

「何・・・・?」

(こいつの言っている事がまるで分からない、懐かしい・・?会ったことはないはずだが・・)

 

 

「覚えてないのか?あの日・・・「蒸し暑い雨の日、ヨットでの出来事」だよ・・」

 

 

 

 

その言葉で、承一は五年前の事を思い出す・・・尊敬し愛してた父親が亡くなった出来事を・・・

承一の心が、ざわついた・・

 

「・・・お前が・・・あの時・・・・ッ!」

 

息が荒くなり、言葉が上手く回らなくなり様々な感情が渦巻く・・・・・怒り、悲しみ、そして憎悪・・・・

 

 

 

そしてーーー

 

 

承一の中に「漆黒の意思」が芽生える・・・・

 

 

「・・・・・ッ!!!」

 

承一は走り出した!憎き敵に向かって・・・!

 

 

 

「死にきれなかったか、また殺してやるよ!!」

 

「「レイニーデイズ」!!!!」

 

男がスタンドを発現し、その魔手を伸ばす!!

 

承一も、自身のスタンドを出し応戦の構えをとる。

 

 

(愚かな・・・私のスタンドの方がスピードは上回っている・・・終わったな・・・)

 

男は内心で勝利を確信した・・・・・だが

 

 

 

ドグシャァァ!!!

 

 

男の顔面に「アウタースローン」の拳が命中する。

 

(なッ・・・・!バカな・・・・何故・・・?)

 

「何故当たるゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラァ!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!、オラッ!!!」

 

 

 

凄まじい速度で放たれたラッシュは、男に全て当たりさらにダメ押しの一発で廊下のガラスを突き抜け、そのまま地面に落ち絶命した。

 

承一は割れたガラスの一部が額に当たりそこから血が出たものの、それに構わず外を見つめていた。

 

 

「承君!、大丈・・・夫?」

 

穂乃果がやってきたが、彼の事を見て驚愕する・・・いや正確に言えばその「瞳」が今まで見たことがないぐらいに冷酷で暗いものだったから・・・・

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?スタンド紹介はないです。


感想・ご意見お待ちしています。


追記

音ノ木坂学院の内部があまりよく分かってないので、作者の創造でこうなっているだろうなと思って書いてますので、おかしな点があると指摘してくだされば幸いです。


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第30話 疑念 -五人のスタンド使い達-

お待たせしました、それではどうぞ


4月25日 土曜日 AM9:00

 

 

夢を見る、今でも父と母が揃っている夢を・・・・・・・

 

だけどそれはもう叶わない・・・・あの日、あの時の出来事によって・・・・・

 

 

父は優しく時に厳しかった、家族にも自分にも・・・特に悪い事をした時はより一層だった。

けど、それは本当にその人の事を思って言っていることであり、怒られて嫌に思うことはなかった。

 

そんな事からか父は地元の人からの信頼が厚く、町内会の長を任されたこともあり、さらに島内のパトロールボランティアにも参加しており何度か警察の方から表彰された事もあった・・・・俺はそんな父の背中を見続けていて自分自身いつかこんな大人になりたいと子供ながらそう思ったものだ。

 

そして・・・忘れないあの日がやってきた・・・・・

 

五年前、六月の蒸し暑く少しばかり強い雨が降っていた日の事だった・・・・父は自主的に島のパトロールをしており、その日も何事もなく帰ってくるだろうと思っていたが・・・

 

 

「隣の島で何かあったみたいだ、ちょっと様子を見てくる」

 

 

父から家にそう電話がかかってきた・・・それが父の最期の言葉となってしまった。

一・二時間で戻ってくるだろうと俺は思っていたが、夜になっても帰ってく気配がなく心配した母が、翌日警察に捜索願を出し島の人達も総出で探し尽くした・・・・そして見つかった・・・・もの言わぬ遺体となって・・・

 

母と俺は最初は全く何が起こったのか理解できず、ただただ呆然とするしかなかった。けど葬式があって火葬場に行き、骨壷を持った時初めて父が死んだことを理解し、その場で泣き崩れてしまった・・・・・

 

 

父の死について、警察は事故と断定したが俺は今でも事故じゃなく誰かに殺されたと思っている・・・あの穏やかな海域で父が事故を起こす訳がない、しかも乗り慣れている船で・・・だから俺は自分なりに犯人を捜し出してやると決意をした。

 

それからは自分なりに調べ続けたがめぼしい物は見つからず諦めかけた頃、父の日記から「東京、神田」にいた頃の様々な体験が書かれていた。具体的な内容はほぼ伏せられていて分からなかったが、そこで何かがあったのは確実だった・・・・・

 

(「東京」に行けば何かが分かる・・・)

 

そう確信し東京へ行くための方法を模索していた所、高校で成績優秀者に対して東京の高校からの勧誘がいくつか来ており、そこに「神田」に近い「音ノ木坂学院」があった・・・・

 

 

 

 

 

「・・・・・運命・・・かな」

 

土曜日の朝、俺は寝室で横になりながら数ヶ月前の事を思い出しそんな言葉を口にした。

 

(そしてようやく掴んだ手かがり・・・・昨日出会った「同化人間」はあの日の出来事を知っていた・・・・・だけど俺は・・・!)

 

昨日の出来事を思い出し、体が震える。

 

 

(あの感じは何だった?!奴の言葉を聞いていく内に上手く口が動かせず何も考えられなくなった・・・・・ただ一つだけ除いては・・・)

 

 

それはーーーー相手への「憎しみ」の感情だった。

 

 

(まるで自分ではなかった感じだった、心の中に違う自分がいるみた・・・ッ!)

 

 

そんな事を考えていると、突如スマフォからメールの着信音が聞こえた。

 

「びっくりした・・・・、誰からだろう?」

 

メールの差出人を見ると、穂乃果からだった。

 

「えっと・・・今日学校に集まれるかだって?急に何だろう・・?」

 

急な呼び出しに戸惑いながらも、身支度をして家をでる。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~*******~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に着き、取り敢えず部室に行ってみるとそこには「μ’s」のメンバー全員と久井が揃っていた。

 

 

「承君!」

 

「穂乃果、急に呼び出すなんて珍しいな。それにみんなもいるけど」

 

「あ、あのね・・・実は」

 

「呼び出しをしたのは、私達なんです」

 

穂乃果の言葉を遮って、そう言ったのは園田さんだった・・・

 

「え?そうなんだ・・・でもどうして?」

 

「それは・・・・あなた達にどうしても聞きたいことがあるからです」

 

聞きたい事・・?改まって何だろう?昨日の事は何とか誤魔化せたから大丈夫だろうけど

 

 

 

 

「比屋定君、穂乃果、真姫、希、久井君・・・・・私達に何か隠している事はありませんか?」

 

 

一瞬だけあたりに静寂が訪れる・・・・その空気の中で最初に開口したのは穂乃果だった。

 

 

「う、海未ちゃん・・・私達は隠している事なんてないよ・・・」

 

「それは本当ですか・・・?穂乃果」

 

園田さんが今まで見せた事もない悲しさと若干の怒りが混ざった表情をしていた。さらによく見ると南さん、小泉さん、星空さん、絢瀬先輩、矢澤先輩までも同じ様な表情を見せていた。

 

「穂乃果だけじゃないわ、真姫に希もそうでしょ?」

 

「それに比屋定に久井もそうでしょ!?」

 

 

絢瀬先輩と矢澤先輩の言葉が突き刺さる、確かに言っていない事はある・・・しかしそれは・・・

 

「で、でも昨日事は・・・・」

 

「昨日の事は一旦置いて、気になったのはあなた達のあまりにも冷静なことなのです!」

 

「そうね、海未の言うとおりよ」

 

「あんた達が昨日の出来事をどうしたかは知らないわ、ただそれをにこ達に説明をしないことがよく分からないし気にいらないのよ!」

 

「そうだにゃ、せめて一言ぐらいあってもいいのに・・・」

 

「何も言わないと、私達はどうすればいいのか分からなくなっちゃうよ・・・」

 

 

俺達五人は何も言わなかった・・・いや言えなかった、「せめて一言」それがなかったからみんなが不安と猜疑心にかられてしまったのだろう・・・・

しかし、「スタンド」の事を言っても信じてくれるかは分からない・・・・仮に信じてくれたとしても「スタンド攻撃」に巻き込まれてしまうかもしれない・・・そう思うと話すのを躊躇ってしまう。

 

 

そんな時、今まで黙って聞いてた東條先輩が切り出した。

 

「確かにみんなに何も言わなかったことはウチらが悪いことだと思うんよ・・」

「ただ、言いたくても言えない事情というものもあってな」

 

「希・・・・」

 

「ちょっと!じゃあ言わない気?!」

 

「ううん、けど言わないとこんなギクシャクした空気のままになってしまう・・・それはウチも嫌や」

 

「じゃあ、どうするのですか?」

 

「ウチらに一日考える時間を貰えんかな?明日、今日と同じ時間に集まってそこで答えを聞いてほしいんよ」

 

 

先輩が提案したのは、考える時間を貰って明日になって話すという事だった。

確かにそれなら、こちらは決心がつくし向こうも落ち着いて話を聞くことができるな。

 

「・・・・・」

 

六人を代表して、園田さんが考えている。無理もないか今までの事があったからな

 

 

「・・・・分かりました、明日まで待ちます」

 

「海未ちゃん・・・・」

 

「海未!あんた・・・!?」

 

「ただし!納得いく答えを・・・・必ず聞かせてください!」

 

「うん・・・・もちろん!」

 

 

そして、その場は取り敢えず解散となり園田さん達六人は部室から去って行った。

 

 

 

 

 

 

俺達は今試練の時なのかもしれない・・・・いつかは来ると思っていたこの出来事、明日までに答えを見つけられることができのだろうか・・・?

 

 




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第31話 決意 -六人の傍観者達-

お待たせしました!
承一達が下す決断は?そして六人が出す答えとは?、見守っていただければ幸いです。

それではどうぞ


「・・・・・はぁ」

 

ここは学院から少し離れた場所にある喫茶店だ、そこである考え事をしていたら自然にため息がでた。というのも・・・・

 

 

(どうすれば、園田さん達に信じてもらえるだろうか・・?)

 

 

数十分前、園田さんに呼び出されそこで「何か隠しているのでは?」と言われてしまったからである・・・・「隠し事」とは言わずもがな、「スタンド」のことであり、昨日の出来事について不信感をもたれたことがそう思われた原因だろう。

 

 

・・・・確かに今まで言わなかった俺達に落ち度があるにしても、あんな危険な事にみんなを巻き込みたくなかったのも事実だ。だからこそ言っていいものなのか分からなくなってくる。

 

 

仮に言ったとしても、「スタンド」は「スタンド使い」にしか見えないものだから「非スタンド使い」である園田さん達に言っても信じてくれるかは保証できない上に最悪の場合、ふざけているのではと思われるかもしれない・・・・・

 

そして言わなかった時は、今までの信用を全部失う可能性はある・・・いや可能性ではなく絶対に失うな、しかも「μ’s」というグループの存続にも関わるかもしれない・・・それだけはダメだ、元は俺が原因なのかもしれないから

 

 

俺が学院に転校してきて穂乃果達に出会い、成り行きでボディーガードをしそこで自分以外の「スタンド」を初めて見た。それを撃退して彼女達九人と関わりあいを持った。

 

その後は真姫の実家である病院で世話になり、彼女の父親に恨みを持つ「スタンド使い」と戦闘になりそこで、真姫が「スタンド使い」として覚醒した・・・驚き以上に嬉しかった、「スタンド」の事について話せる友人ができたことに俺は浮かれてしまったのかもしれない

 

それを皮切りに東條先輩にも「スタンド使い」であったことを知り、そして穂乃果にも「スタンド」が目覚めた・・・全て俺が来てからの出来事だ、俺が今の状況を作りだしたと言っても過言ではない、あの時浮かれずちゃんと対応していれば・・・・こんなことにはならなかったかもしれない・・・

 

 

「そんなこと言っても仕方がない・・・よな」

 

今さら自分を責めた所で状況が好転するわけもないので・・・そう思い、気分転換に頼んだアイスコーヒーを一口飲む・・・シロップを入れ忘れたな

 

中々強い苦みを舌の上で感じつつ、改めてどうするか考え込む・・・

 

そんな時、喫茶店の扉が開く音が聞こえた。

 

 

「いらっしゃいませ、一名様ですか?お好きな席へどうぞ」

 

 

そんなマスターの声が聞こえてきた、俺はそれに構わず思考を巡らせようとした所・・

 

 

「あれ?承一君じゃない、奇遇だね」

 

「へ・・?」

 

突然声をかけられた為、間が抜けた声で返事をしてしまう。視線をテーブルから声のした方へ向けると、そこにはつい最近知り合ったスタンド使い「落合 楓」さんがいた。

 

「相席いいかな?」

 

「は、はい・・・どうぞ」

 

そう言うと楓さんは席に着き、アイスウィンナコーヒーを注文した。

 

「楓さん・・どうしてここに・・?」

 

「ん?いや、散歩がてらこの辺を歩いていたら偶々見つけてね」

 

「そうなんですか・・・」

 

 

「もしかして、何か悩んでいるこでもあるの?」

 

「え・・・?」

 

心の中を読まれたような感じだった、まだ何も言っていないはずなのに適格に当てられてしまったからだ。

 

「ど、どうして・・・?」

 

「そんな深刻な顔をされては・・・・ね?」

 

誰だって分かるよと言わんばかりの顔をしていた・・・・表情にそんなに出ていたとは気づかなかった。

 

 

「もし、話せることなら遠慮せず言ってくれても構わないよ」

 

「・・・・・はい、実は・・・・」

 

俺と同じ「スタンド使い」の楓さんなら・・・・そう思い、今日あった事を全て話した。

 

 

 

 

「なるほど・・・そんな事があったのね・・・」

 

「はい・・・それでどうすればいいのか分からなくなって」

 

話を聞き終え、楓さんはしばらく考える素振りを見せた後に静かに口を開いた。

 

「私個人の意見をすると、それは正直に話した方がいいと思うよ」

 

「そ、それは・・・」

 

意外な答えに少し戸惑ったがすぐに反論しようと思い口を開いたが、楓さんは俺の言葉を遮ってこう言った。

 

「「スタンド」は彼女達に見えないから、それは無理だと言いたいんだね」

 

「現実はそうですから・・・」

 

 

楓さんはため息をすると、やれやれといった感じでこう続けた。

 

「君は見えるか見えないかで悩んでいるようだけど、私に言わせればそれは些細なことだと思うよ」

 

「え・・・な、何で・・?」

 

「私が所属するスピードワゴン財団で「スタンド使い」は私だけだからね」

 

「・・!!」

 

衝撃的だった・・・てっきり楓さん以外にもいるかと思っていたから・・・

 

「じゃあ他の人達は・・?」

 

「うん、ただの普通の人だよ。でもスタンドについての知識はある程度のことを理解しているよ」

 

「見えないはずなのに?!」

 

「そして私がスタンド使いであることも承知の上だよ」

 

「・・・・・!」

 

ただ驚くばかりで何も言えなかった、見えないものを理解するだなんて・・・・

 

 

「承一君、確かに見えないものを理解するのは難しいよ・・・だけど「お互いの信頼」があれば乗り越えるのは難しくはないと思うよ」

 

「「お互いの・・・・信頼」・・・・」

 

「私も財団の皆とは強固な信頼関係がある・・・だから目に見えない力であっても築き上げた信じあう心で理解をすることができる!」

 

 

 

「他人を信じることは、自分を信じてないとできないよ・・・君は自分の中にある彼女達を信じてないのかい・・?」

 

 

 

・・・・・俺の中にある「彼女達」・・・・・

 

思い出されるのは、最初の「スタンド」戦の後・・・みんなが心配しそして感謝してくれたこと、名古屋に行った時絢瀬先輩の言ってくれたこと・・・・

 

 

そうだ・・・みんなは俺を信じてくれていた、だから俺はその想いに応えようとした・・・・!俺はみんなの事を・・・・

 

 

 

「・・・・馬鹿だったな俺、そんな事で悩んでいたなんて」

 

「決まったみたいだね・・・」

 

「はい、楓さん!ありがとうございます!」

 

俺の決意は決まった・・・後は伝えるだけだ・・・!

 

その時、ふと思ったことを口にしてみた。

 

「楓さん、明日みんなに紹介したいので一緒にいて貰ってもいいですか?」

 

「う~ん、まぁ明日はやることがないからな・・・分かった!」

 

「それじゃ、明日俺が迎えに行きますので」

 

「ええ、待ってるよ」

 

 

会計を済ませ、喫茶店を出る・・・・決意は変わらない、後は信じるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

ーー翌日 AM10:00 音ノ木坂学院

 

 

 

この日、南さんのお母さん(理事長)から特別に許可を得て学院に来ている・・・・因みに今いるのは学院の屋上である。

 

そして俺を含めた六人は全員揃っており、園田さん達の到着を待っている・・・

 

「承君・・・大丈夫かな・・・?」

 

穂乃果が不安そうな声で聞いてくる、だけど俺は・・

 

「大丈夫さ、きっと皆なら・・・」

 

 

そう言った所で、屋上の扉がゆっくり開き園田さん達六人が姿を見せる。

 

 

「・・・・約束通りですね」

 

「勿論、破る訳がないだろう」

 

「・・?そちらの方は?」

 

そう言って屋上のフェンスに寄りかかっている楓さんの方を見る。

 

「ああ、彼女は「落合 楓」さん・・・俺達の事について関係のある人だから来てもらったんだよ・・」

 

「そう・・・なのですか」

 

少しの間だけ静寂が流れる、そして園田さんが切り出した。

 

 

「では、聞かせてください・・・昨日の問いの答えを」

 

改めて質問されると少し萎縮してしまうが、これに答えないとみんなの今後に関わる・・・俺は意を決した。

 

 

「園田さん・・それに皆、俺がこれから言うことは真実であることを頭に入れてもらいたい・・」

 

「確かに俺達は隠していることはある・・・・・それは」

 

「・・・・・・」

 

全員が固唾を飲んで見守る・・・・

 

 

「・・・「スタンド」と呼ばれる力の一種みたいなものだ」

 

「「スタ・・・ンド」?何ですか?それは・・?」

 

「「スタンド」とは、それを持っているものにしか見えない精神エネルギーの塊みたいなものなんだ」

 

「俺を含めこの五人全員が持っている・・・これが俺達の隠していることなんだ」

 

正直に全てを話す・・・・これが俺の決断だった、おそらく今ので信じてもらえるかは微妙な所だ。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

現に六人全員が俺の言ったことを理解しようとしているのか分からないが、皆押し黙ってしまう・・・

 

そんな中、口を開いたのは絢瀬先輩だった。

 

「正直、信じられないし信じられる証拠はないけど・・・・私は信じてみようと思うの」

 

「・・・・・!」

 

「ちょっと、絵里!本気なの!?」

 

「エリち・・・・」

 

「それはあくまで比屋定君達自身を信じていることだから、その力に関してはまだ信じられない・・」

 

「けど・・・昨日別れてからずっと考えていたの、本当に大事なことを黙っているのかって、もしかしたら話せない事情が少なからずあるのかもしれないと」

 

「絢瀬先輩・・・・」

 

「それに今まで一緒にいた仲なのに、それを信じないなんて・・・私にはできないわ」

 

胸が打たれる思いだった、それと同時に熱い何かがこみ上げてくる感覚があった・・・

 

「・・・実は私も絵里と同じ気持ちなのですよ・・・」

 

「・・・私も」

 

「海未ちゃん・・・ことりちゃん・・・」

 

「幼なじみである穂乃果を信じないのは、私には考えられないことですから」

 

「うん、それにそんな事情じゃ言えないのも仕方がないよ」

 

(園田さん・・・南さん・・・)

 

「凛達も・・・真姫ちゃんの事を信じるよ!一人の友達として「μ’s」の一人としてにゃ!」

 

「真姫ちゃん達のことを少しでも疑ってごめんなさい・・・友達なのに信じないのはダメなことだから」

 

「凛・・・花陽・・・」

 

(星空さん・・・小泉さん・・・)

 

「に、にこはまだ信じてないわよ・・!だけど信じようとは思っているわ・・・あんた達の事・・・」

 

「にこっち~、あんまり素直じゃないんやね~」

 

「べ、別に・・!そんなんじゃないわよ!!」

 

(矢澤先輩・・・・)

 

 

 

俺は・・・・本当に彼女達と出会って・・・・本当に良かった、信じてもらえることがこんなに嬉しいなんて・・・・

 

 

気が付くと、頬に一筋の涙が零れていたのが分かった。そんな俺に楓さんがそっと近づいてきた

 

「どうしたの?もしかして感極まったの?」

 

「あ!い、いや・・・・これは」

 

楓さんは何も言わず、ハンカチを差し出してくれた・・・・・俺はそれを受け取ると静かに俯き、溢れる涙をそれで堪えた。

 

 

 




いかがだったでしょうか?今回はちょっと長くなってしまいましたね・・・

次回からは「第二章」最終話の話になります!ご期待ください!


感想・ご意見お待ちしています。



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第32話 アイズ・トゥ・トゥモローその①

お待たせしました、後数話で「第二章」も完結となります!

それではどうぞ


4月30日 音ノ木坂学院 AM12:20

 

 

俺達の秘密であった「スタンド」の事を話してから数日が経った、いつもの様に学院の中庭で穂乃果達と一緒に昼食をとっている。

俺自身としてはもう少し詳しく話しておくべきかと思ったけど、「キチンと話してくれたのでもう大丈夫です」と園田さ・・・海未がそう言ってくれたのだ。

 

今ので分かったと思うが、これまで苗字で呼んでいた六人をこれから名前呼びにすることになったのだ。

流石に先輩である二人は先輩をつけようとしたが、「「μ’s」は先輩禁止だから駄目!」と今まで感じたことがない凄みに気圧されしまったのだ(今思い返してみれば凄いこじつけだと思う・・・・)

 

「承君、どうかしたの?」

 

穂乃果が俺の顔を覗き込みそう聞いてきた。

 

「あ、いや・・・ここ数日は平和だな~て思って」

 

「本当だよね~~」

 

別の事を考えていたけど・・・・まぁいいだろうな、実際は少しだけ考えていたけど・・・

 

「あれ?」

 

「どうした?・・・・ッ」

 

穂乃果が変な声をだしたから、彼女の方を向いたときそこにあるものに驚愕した・・そこにあったのは

 

 

「「矢」の一部が・・・・どうして・・?」

 

ズボンのポケットに深く入れておいたはずの矢尻だけの「弓と矢」の「矢」が地面に落ちていた。

 

「・・・・・!」

 

(た、確かこの「矢」は特殊で「スタンド使い」に反応するって希が言っていた・・・・まさか・・・!)

 

すぐにその場から立ち上がり、周りを見渡す。

・・・しかし何も変わらない風景が広がっているだけで怪しいものなどはいなかった。

 

「承一?どうかしましたか?」

 

「いや、何もなかったよ・・・・」

 

だけど・・・・・さっきから嫌な視線を感じるのは気のせいか・・・?

 

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

 

放課後

 

結局あの昼休みの後、視線の事について色々考えていたから授業に集中できなかった。上の空にもなっていたらしく先生に注意されるまで全然気づかなかった。

こんなモヤモヤする時は、甘い菓子を食べるに尽きる・・・その為には

 

「穂乃果の家で、饅頭でも買って帰るか・・・」

 

そう思い、マンションへの岐路から少しばかり離れる・・・

 

穂乃果の家まで後数百mの所まで来た所だった・・・何かが軋む音が聞こえたので上を見上げると、建築途中の家の二階部分にあった鉄の板の数本がこちらに向かって少しずつ移動していた。

 

「く・・・ッ!」

 

その場から走り出したのと同時に、勢いよく落ちてきた・・!

落ちるスピードが速い為かこのままだと間に合わないと思い、振り返り「スタンド」を出した。

 

 

「オラオラオラッ!!」

 

スタンドの拳で全て弾き飛ばした、板が完全に地面に落ちたのを確認し、周りを見る・・・・だか俺以外は誰もいなかった。

 

(何かヤバイ・・・ここから離れた方がいいか)

 

そう考え、路地に入り表の通りに出ようとした時だった・・・・突如後方からクラクションの音が聞こえた、後ろを見ると軽トラがこちらに向かって突っ込んでくるのが分かった。

 

「・・・ッ」

 

鞄からノートを取り途中のページを何枚か破り、破られたノートの方を空中へ投げた!

 

「「アウタースローン」!!」

 

そこで能力を使う、破ったノートの一部を破られたノートへ集まらせる。それに掴まることで体が空中へ浮く、それで軽トラを紙一重で避ける。

 

軽トラは電柱に激突して停車する、警戒しながら運転席を覗き込むと男性がハンドルを握りながら呆然としていた、足の方はブレーキを踏んでいたが・・・

 

その場から移動して、表通りに出る。

 

(他の人を巻き込む訳にはいかないな・・・とりあえずこの道路を渡った先にある公園まで行くか)

 

そう思い、道路に架かっている歩道橋を上る。上りきった所で一息をつく為橋の手すりに手を乗せた所・・・・

 

「うッ・・!」

 

その手が何故か滑り、その手に体重をかけた為バランスを崩しそのまま道路へ落ちてしまう、だが何の問題はない

 

制服のポケットに入ってたシャープペンのキャップを取り、本体の方を橋に向かって投げキャップに能力をかける・・・シャープペン本体にキャップを集まらせた。

 

空中から橋に戻り一安心したが、俺の体は何かに引っ張られるように橋の壁に激突する。

 

(ぐ・・・こ、これは・・・!)

 

今までの能力とはまるで違う、それよりも・・・・

 

(ほ、本体の・・・姿が・・・見えないだと・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?今回は短いですかここまでです

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第33話 アイズ・トゥ・トゥモローその②

続きです、それではどうぞ


 

歩道橋より少し離れた道路にある自動販売機の前に、スーツ姿の男が佇んでいた・・・・

その男は微動だにもせず、ただ歩道橋のある部分を見つめてる。

 

すると見つめていた所から人影がゆっくり立ち上がり、走り始めた・・・その行動に呼応するかのように男も歩き始めた。

人影が公園に入ったのを確認すると、男も後を追うように入ろうとする・・・その時目の前から来たカップルの存在に気づかなかったのか、肩同士がぶつかる。

 

「痛ってなぁ、ちゃんと前を見て歩け!」

 

ぶつかられた方の男がそう叫ぶ、ぶつかった方の男は何も言わず顔だけをこちらに向けた。

 

「人様にぶつかったら謝るのが筋だろッ!!」

 

一言の喋ろうとしない事に痺れを切らしたか、女性の目の前でいい格好しようとしたのか、男はそいつに向かって肩を掴みながら言う。

 

「・・・・ッ!」

 

その男の顔を見るや血の気が引く感じがした・・・なぜなら表情が全く動かず、どこを見ているのか分からないが鋭い眼差しだったからだ。

男はその眼差しに気圧されたか、さっきまでの勢いはなくただ黙っていることしかできなくなっていた。

 

すると、さっきまで無表情だった男が気持ち悪いほどの満面の笑顔になり肩に手をポンポンと叩き、口を開いた。

 

「いや~~すまなかったね、考え事をしていたみたいで気づかなかったよ!」

 

「え・・・お・・・おう」

 

さきほどの雰囲気は一変し、突然フレンドリーになる男に付いていけず半端な返事しかできなかった。

 

「次から気をつけるよ!バイバイ、じゃあね!!」

 

そう言って男は立ち去る、残された二人はよく分からないままその場から歩き始める。

 

 

しかし・・・・・

 

 

それから三十秒後、暴走した乗用車が歩道に突っ込み歩いていたカップルを撥ねた・・・二人は即死だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り、承一の元へ戻る・・・・

 

 

「ぐ・・・・くぅ・・・」

 

歩道橋の壁に押されているか引っ張られているのか、とにかくすごいパワーが働いている・・・

 

(このままだと、壁を突き抜けてしまう・・・・)

 

最悪の想定を覚悟し、再び能力を発動させようとした所急にその力が無くなった。

 

「と、止まった・・・・のか」

 

安心したのか、ふと見上げると手すりの内側にアルファベットの「C」を逆向きにした「マーク」があった、しかしそれはすぐに消えた。

 

「今のは・・・まぁいい、ここからすぐに離れないと」

 

すぐに立ち上がり、その場から走り去る。

 

歩道橋を降り、近くにあった公園へ行く。公園というより運動公園みたくなっており、学校が終わったのか小学生達が野球やサッカーなどをしていた。

走り続けたおかげで息が辛くなりすぐ傍にあったベンチに腰掛ける。

 

 

(さて・・・これからどうするか、学院に戻ってもいいが・・・・駄目だなここからだと遠すぎるな・・・)

 

(そもそも、敵の能力がまだ分からない以上、下手に動くこともできないな・・・・)

 

これからの事を考えてた時、後ろの方で大きな音がした。

 

「何だ・・・・ッ!」

 

見ると、乗用車が歩道に乗り上げ停車しており、事故を近くで目撃した人達が慌てふためく様子が見えた。

 

(これも、敵の能力か?だとするとここにいるのはマズい・・!)

 

すぐさま走り出し、公園を抜ける。

 

(あまり人がいなさそうな所へ行くしかない・・・!)

 

明確な場所は分からないが、とにかく移動するしかない・・・そう思い歩を進める。

 

しばらく走った後、とある通りに差し掛かった所で前の角から蕎麦屋のバイクが走ってきた、するとそのバイクが突如こちらに向かってきた。

 

「う、うわあ!な、何だッー!!」

 

「ッ!またかよ!」

 

このままだと自分もバイクに乗った人も無事ではないだろう・・・そう考え承一は「スタンド」を出した。

 

 

「「アウタースローン」!!」

 

スタンドの拳は近くにあった収集前のゴミ袋にかけ、それを自分の目の前に集めさせる。

柔らかいゴミ袋達がバイクを受け止め、事なきを得た。バイクの運転手の安全を確認しその場から去る。

 

「まさか、ゴミ袋に助けられとはな・・・・救いは生ゴミじゃないことぐらいか」

 

 

 

 

しばらく進んだ所で、妙な感覚に陥る・・・・

 

「何だ・・・・ここ、見たことがあるぞ・・・」

 

しばらく歩いた所で、ある建物が目に移りこの感覚の正体が分かった。

 

「あれは・・・「穂むら」・・・穂乃果の家だ・・・・知らない内に戻っていたのか」

 

そう、ここは当初行く目的の場所だった所だ。知らず知らず迂回する形でここにやってきたのだ。

そんな時、「穂むら」の右にある道に目をやると、50メートル先だろうか一人の男性が立っているのが見えた。

 

「あれは・・・・川和先生?どうしてここに・・?」

 

何故ここにいるか?そんな事を考えようとした時、自分を呼ぶ声が上からした。

 

「比屋定さん!どうしたんですか?」

 

「え・・?あ・・」

 

見ると「穂むら」の二階から穂乃果の妹である「高坂雪穂」がいるのが見えた。

 

「雪穂ちゃん!・・・いや何でもないよ」

 

「そうなんですか?あ!お姉ちゃんならまだ帰ってきてませんよ」

 

「あ・・・いや、そういう事で来たのでは・・・・」

 

ふと、視線を戻すと川和先生がこちらに向かって歩いてくるのが見えた・・・・・その時だった。

 

「きゃっ・・・!」

 

何かが割れる音がしたので、視線を再び上げると雪穂が手をかけていた木の板が折れ、バランスを崩し空中へ投げ出される所だった。

 

「雪穂ちゃんッ!!!!・・・ッ!」

 

すぐに受け止めたが、体勢が悪かった為かバランスを崩してしまう・・・そして視線を倒れこむ地面にやった時割れた木の一部が、何故か重力に逆らって鋭い方がこちらに向いていた。

 

(・・・ッ!「スタンド」が間に合わない・・・このままじゃ)

 

「スタンド」が間に合わないことを悟り、すかさず体を捻るが少しばかり遅く一部が脇腹に突き刺さる。

 

「ぐ・・あ・・・」

 

痛みに耐え、雪穂を下ろす。

 

「大丈夫ですか?!」

 

「なんとかな、それより早くこの場から去るんだ!」

 

「え・・・・・で、でも」

 

「いいから、早く・・ッ!」

 

戸惑う彼女に避難するように言おうとした所、彼女の右手の甲には「C」の逆さまになった「マーク」があるのが見えた。

 

(ま、まさか・・・)

 

頭の中で予想した事を確認しようと、こちらに向かってきている川和の方を見る、すると・・・・

 

 

「想像以上に頭の回転が速いな、いやそうではなくてな・・・」

 

既に五メートル以内まで近づいてきた「川和征四郎」の後ろに人型の「スタンド」が立っていた・・・・

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでしばらくぶりのスタンド紹介です


スタンド名:「アイズ・トゥ・トゥモロー」
   本体:川和征四郎(同化人間)

破壊力-B、スピード-B、射程距離-D
持続力-A、精密動作性-C、成長性-なし

能力
対象とした物体全ての「三十秒先の未来」を確定させる能力
スタンドか本体が触れることによって発動する。
物の場合、確定したらその通りに動くことしかできない、人の場合の同様である(「死ぬ」ことを確定された場合、いかなる方法でも必ず死亡する)、さらにもう一つ隠された力がある。

「アイズ・トゥ・トゥモロー:C3(シーキューブ)」
対象とした物体・人物に「印」をつけ、本体が指定した事柄を未来で起こさせる能力
(物なら「落下する」・「激突する」・「滑る」など指定すればその通りに動く)
動いていないものも、指定をされればどんな状態でも動く
但し、持続力がない為何らかの方法で避けられるとその事柄は起きない


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第34話 アイズ・トゥ・トゥモローその③

お待たせしました、それではどうぞ


 

 

川和が発現させた「スタンド」は見た感じは何の変哲もない人型であった。

赤と黒の縞模様が全身を覆っており、顔は口元以外が鉄製の仮面を被っており表情が窺うことができない、さらに両手甲に時計の文字盤みたいなのが付いているのが分かる。

 

 

 

「川和・・・・征四郎・・・」

 

「比屋定承一、学院外だからといって先生呼ばわりしないのは感心できんな」

 

いつも学院内で見ているのと違い、嬉々とした目でこちらを見ている・・・・それはこれから獲物を狩るハンターの様な目ともとれた

 

俺は後ろにいる雪穂ちゃんに目をやり・・・

 

「早く、ここから離れた方がいい・・・危険だから」

 

「でも・・・」

 

「俺はここで奴を食い止めないといけない・・・だから早く」

 

「わ、分かった・・・・・」

 

少しばかり殺気立った発言に驚いたのか、彼女は足早に去ろうとした時・・・

 

 

「いけないな・・・女性に向かって殺気を立てるとは」

 

いつの間にか川和が彼女の背後に立ち、手首の所を掴んでいた。

 

「お、お前・・・・!」

 

「せっかくの観客だ・・・この子も交えて楽しもう・・・・か!!」

 

「あ・・・う・・・」

 

そう言うと、奴は彼女の首元を一瞬だけ強く圧迫すると力なく崩れてしまう・・・

 

「な!?き、貴様ァ!!」

 

「落ち着け、一瞬だけ気道が圧迫されたことによって酸素が行き辛くなりそれによって気絶しただけの話だ」

 

「まさか・・・人質にするつもりか・・・」

 

「そんなことはしないさ・・」

 

それを言い終わる前に奴の「スタンド」が掴んでいる手首に対して手刀を構えるようにしていた。

 

 

「その手を離せッ!彼女は関係ないはずだッ!」

 

だがその叫びは届かず、奴はその状態から横一文字に手を素早く動かし手首を切り裂いた。だが・・・・

そこから多量の出血はなく、その代わりそこには「C」を逆向きにした「マーク」があった。

 

奴はそれを確認すると、彼女をこちらに渡してきた。

 

 

「これから私はお前を殺すが、ただ殺すのはつまらないから・・・ゲームをしよう」

 

「ゲーム・・・だと・・・?」

 

「十分だ、我が「アイズ・トゥ・トゥモロー:C3(シーキューブ)」の力によって「十分後に手首からの出血が始まる」という未来を確定させた。」

 

「な・・・に・・・」

 

「簡単な事さ・・・それまでにお前は私を倒せばいい、そうすれば能力は解除される。できなかったら彼女と共に死ぬだけさ」

 

「お・・お前・・・は・・・!!」

 

「始めようか・・・本物の命を懸けたゲームを・・!」

 

 

奴のその言葉と同時に俺の脚は既に動いていた、早く倒さないといけない思いに駆られて・・・

一メートルの距離まで詰め寄り、左ストレートを放つ・・・それを躱したのと同時に右フックを顔面に喰らわせてやる・・・・だが

 

「見え見えの動きだぞォッ!!」

 

それを読まれていたかの様に、腕を掴まれ引き寄せられてしまい逆に奴の肘打ちを受けてしまう、さらに「スタンド」の蹴りを腹に直撃し吹き飛ばされてしまった。

モロに入った影響で胃酸が逆流しそれを吐き出す。

 

「どうした?その程度か・・?」

 

「・・・く!」

 

挑発に乗りそうだったがそれを堪え、今度は「スタンド」能力を使う。

 

奴の右腕に近くにあった木から葉を集めさせる・・・その影に隠れ突進する。これなら・・

 

「フン・・・つまらん」

 

葉がまだ集まりかけている時、俺の「スタンド」も射程内に入った。

 

「そこだッ!!」

 

ラッシュを喰らわせようと拳を突き出した、その時だった・・・突然鋭い痛みと共に体がよろける・・・

よく見ると、奴が拳を突き出していたのが分かった。

 

「く・・・う・・」

 

「何が起こったのか分からない顔だな・・・我が「スタンド」能力によって「私自身のパンチが三十秒後、比屋定承一に絶対に当たる」という未来を確定させたのだ」

「だから、姿が見えずともお前に当たったのだ」

 

「そんな事が・・・」

 

「飛鳥と座井部を倒したから、少々期待していたが・・・とんだ外れだな」

「それでいて奴の息子だというのだから、人間は心底不思議だな」

 

「な・・!お前は・・父さんを知っているのか?!!」

 

「知っているも何も、奴を始末したのを手伝ったからな」

 

やっぱり・・・こいつらが・・・父さんを!、また心の中から怒りの感情が湧いて出てくるのが分かった。

 

 

「何故・・・父さんを・・・?」

 

「奴は我々の「計画」を潰し、無駄な延長をさせたからだ」

 

「だから・・・殺したのか・・?」

 

「全ては「計画」の為だ」

 

 

「うあああああッ!!!」

 

怒りが頂点に達し、その為か考えるより、脚が動く・・・こいつらのせいで、こんな奴なせいで・・・!

がむしゃらに走り、「スタンド」で高速の拳を繰り出す。

 

「さっきより動きはいい、だが!」

 

一つ一つ弾かれた上に、その都度カウンターをもらい耐えられず地に伏せてしまう

 

「が・・はぁッ!!」

 

「単調すぎるな、これでは楽しむことができないぞ・・・」

 

そう言うとゆっくり俺の傍まで近寄り、先ほどの木の破片によってできた傷口に足を乗せる。

 

「私を楽しませてくれよッ!、なァ!なァ!なァ!なァ!なァ!!」

 

そこを踏みつけるように何度も足蹴にする。

 

「ぐあ・・・があっ!!」

 

傷口からは出血が始まり、あまりの激痛に声が出てしまう・・・

 

 

「まだ三分ちょとしか経ってないが、もうお終いにしようか・・・」

 

そう言うと懐から数本のナイフを取り出した。

 

「これらに「ある」未来を確定させた・・・何かは分かるよな・・・?」

 

「・・・・!まさか!」

 

「青ざめたな、勘の良いお前なら分かるだろう・・・三十秒後に起こる凄惨な未来が!」

 

そして、鈍い光を放つナイフが空中を舞う、一瞬だけ止まったかと思うと切っ先がこちらに向き・・・・そして一斉に飛んできた。

 

 

弾く・・・いや破壊しないと・・・!!

 

「オオオオオッ!!オラオラオラッ!!!オラァッ!!!」

 

全てのナイフを破壊し、少しだけ気が緩んでしまう・・・そんな時背後から声が聞こえる。

 

「やはり、人間だな・・・所詮「空条」の血筋であっても・・な」

 

「な・・!」

 

「同化人間の性質をもう忘れたのか?ナイフはただの囮・・・さ!」

 

 

奴のスタンドの拳が体に直撃する・・・・・

 

「人間の努力など、無駄なことだァッ!!!!」

 

「WRYYYYYYYーッ!!!!死ねッ!「空条仗世也」の忘れ形見が!!」

 

 

高速のラッシュが一発また一発と打ち込まれていき、最後は顔面にクリーンヒットし「スタンド」にひびが入りそこから血が飛び出る。

 

地面に仰向けに倒れ、息が絶え絶えになる。

 

「まだ息があるのか、その生命力には父親と同じだな・・・」

 

「か・・・は・・・」

 

口の中に血が溜り、言葉を出すのも辛くなっている・・・

 

(俺・・は死ぬのか・・・ここで・・・何もできずに・・・)

(俺は・・・)

 

「一人で死ぬのは辛いだろう・・・安心しな」

「お前に関わった奴らを全員みな殺しにしてやるよ・・・それなら寂しくないだろう?」

 

「・・・ッ!」

 

その言葉に反応する・・・「μ's」の皆が・・・!

 

 

皆の顔を思い浮かべる・・・穂乃果、真姫、希、海未、ことり、凛、花陽、絵里、にこ・・・・皆が殺される・・・?

 

(ふざけるな・・・・そんな事はさせない・・・絶対に!)

 

視線を少し上げると倒れている雪穂ちゃんが目に入った。

 

(俺が死んだら彼女も死ぬ・・・・)

 

心の中に父への思いが呼び起される・・・・

 

(家族を失わせはしない!あんな思いは誰にも味わって欲しくは・・・・ない!!)

 

 

 

 

 

その時ーーーー

 

 

 

心の中に怒りでも憎しみでもない感情が生まれた・・・それは力強くそれでいて暖かく、全身に満ちていく感じがした。

 

(そうか、この気持ちは・・・・)

 

ゆっくりと立ち上がり、奴と向き合う・・・・

 

 

「ば、ばかな・・・!立ち上がる・・・だと」

 

「・・・俺にも不思議だよ、こうして立ち上がれることが・・・だが」

 

 

 

 

 

胸に手をあてる。

 

 

 

 

「全身に満ちていく・・・この思い、分かる気がする・・・・」

 

 

 

それはーー

 

 

 

「「大切なものを守る」・・・ただそれだけ・・・・

 

 

 

「俺はようやく分かった、これまで分からなかったこの気持ち・・・これだけで人が強くなれることを!!!」

 

「そんなもので・・・そんな事でッ!!!」

 

「お前には一生かかっても分からんだろうな・・・・独りで生きていけるお前達には!」

 

「限りある命だから大切な人達を共に歩むことこそが、人間の素晴らしさ!そしてそれを脅かすものと闘う為の力の源が、俺の中に満ちていくこの思いなんだ!」

 

「く・・・・あ・・・・」

 

圧倒的に俺の方が不利な状況で、奴は何も言えず・・・ただ後ずさりするだけだった。そう思っていると不意に右腕を見る、そこには・・・

 

 

「これは・・・「矢」が・・・・」

 

矢尻だけの「弓と矢」が右腕の途中でへばりついている・・・そしてそれはズブズブと音をたてながら腕の中に入っていく。

俺はその光景に何も疑問を抱かなかった・・・・何故なら・・・

 

(感じる・・・・「矢」の力を・・・)

 

ほとばしる「矢」のエネルギーが俺の中に入ってくるのが分かる・・・

 

 

その光景を見ていた川和はすぐさま行動をした。

 

 

(な、何かがヤバい・・!止めなければ・・・!)

「くッ・・!トドメだッ!!比屋定承一!!!」

 

 

「スタンド」がラッシュを放つ・・・・だが

 

 

ーーー

 

 

「はッ!!!?」

 

 

放った先には誰も居ず、ただ拳は空を切っていた・・・

 

 

(ど、どこへ・・・・?!」

 

 

すると、背後からすさまじい気配を感じた・・・

 

 

「決着をつけよう・・・・川和征四郎」




いかがだったでしょうか?
次回で川和戦に決着がつき、そして第二章も終わり新章が始まります!お楽しみ!


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第35話 アイズ・トゥ・トゥモローその④

対川和戦、決着! それではどうぞ!


「・・・・なッ!」

 

背後からの声に川和は驚愕する・・・・つい数秒前まで、自分の目の前にいた人物がいつの間にか後ろに移動しているからだった。

 

(どうやって・・?!!私は目を離していないはず・・・!!?)

 

振り返ろうとして、体を動かす・・・が

 

 

「オラッ!」

 

「ブッ!・・・ガッ!!」

 

突如こちらに向かってきた拳に反応できず、顔に受けそのまま数m吹っ飛ばされてしまう。

 

「ぐ・・・こんな事が・・!」

 

体を起こした時、その眼に確かに映った。傷ついた「比屋定承一」の傍に立つ「スタンド」の姿を・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・!」

 

承一は己の「スタンド」を見て僅かながら衝撃を受けた。

これまでの「アウタースローン」は人型のロボットの様な「スタンド」だったが、今の姿はまるで違っていたからだ。

 

最も目立つのは黄金色の頭髪だ。それが肩まで伸びており、全身は筋骨隆々の逞しい肉体をしていて体色は藍色を基調とし腕には黄金のラインが走っている、手と腰には装飾が施されている。

 

「これは・・・ッ!」

 

奇妙な感覚が全身を覆う・・・それは嫌悪感はなく、むしろ力が溢れてくるようだった。

その力をかみ締め、目の前の敵に向き直る。

 

「川和・・・征四郎・・・」

 

「比屋定・・・承一・・!」

 

あたりが静寂に包まれる・・・その中開口したのは承一だった。

 

「来な・・・・もう時間は・・ないからな」

 

「・・・・・・」

 

川和がゆっくり立ち上がる、そして無言のままお互いが近づく・・・距離にして二メートル弱までの所で止まる。

 

 

そしてーー

 

ほぼ同時に動く・・・!

 

 

 

「アイズ・トゥ・トゥモロー」!!!」

 

「アウタースローン」!!!!!」

 

 

拳が交差し、その結果が出る・・・・・

 

 

「が・・・ふッ!!!!」

 

崩れ落ちたのは川和だった・・・・「アウタースローン」の重い一撃が入りそれに耐え切れなかったからである。

 

「どうして・・・・?何故当たらん・・・?!」

 

「これが・・・・俺の新たな力だ」

 

承一は静かに答える。

 

「・・・何?!」

 

「俺の「スタンド」は今までの能力を引き継ぎ、さらに進化したんだ」

「それが・・・・「時を感覚で五秒だけ戻す」ことができることだ!」

 

「相手は「時」が戻ったことに気づけない・・・・だからお前は何が起こったのか分からないのだ」

 

「なッ!・・・・ば、ばかな!?」

 

「五秒・・・僅かな時間だが感覚を狂わせるには十分だな・・」

 

(あ、有り得ん・・・「時」を操る能力が・・・・現れるなんて・・!)

 

 

川和はこれまで感じてこなかった危機感と焦燥感に囚われる・・・・それを振り払うかの様に立ち上がる。

 

「認めんぞ!!この呪われた「空条」の血筋如きがァ!」

「道端に落ちている糞以下の存在がァ!崇高なる私を超えるなぞッ!!!!」

 

承一に攻撃を仕掛けるが、能力によって「戻される」・・・・

 

「いくらやっても無駄だ・・・もうお前は勝てない・・・ぜ!」

 

承一が眼前まで迫る・・・・!

 

 

「う、うわあああああああッ!」

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!!!」

 

目にも留まらない速さの高速ラッシュが放たれ、川和に全て命中する。

 

だが・・・

 

 

「ぐぶああっ・・・!こ、このォ!人間風情がァッーーーーーーーー!」

 

「オオオオッ!オラオラオラァッッ!!!!!」

 

 

執念の攻撃を繰り出そうとする川和だったが、承一の追撃のラッシュを受け完全に沈む。

 

それと同時に雪穂ちゃんに付いていた「マーク」は消え去る。

 

 

 

承一は全身にひびが入り、体組織が崩れ始めている川和に近づく・・・・

 

「・・・・・」

 

「・・・哀れむ・・のか、貴・・様が・・」

 

「人外に哀れむほど、俺は優しくはないさ・・」

 

「フ・・・だろうな・・・・」

 

すると川和は一息すると静かに喋り始めた。

 

「最後に教えてやる・・・・お前の父を・・・本当にトドメを指したのが・・・」

「・・・お前の故郷にいるということを・・・」

 

「何ッ!本当なのか!!?」

 

「ククク・・・行って・・みれば・・分かるさ・・」

 

それを最後の言葉となり、川和は完全に崩れその場には彼の残骸が残った・・・・

 

 

(俺の故郷・・・・「沖縄」に・・・・・)

 

思考を巡らせようとした所、強烈な眩暈に襲われる。

 

(ぐ・・・そろそろ体の方が限界か・・・・まぁいいだろう、やる事はやったからな・・・)

 

そして、承一の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕刻のニュースが流れる・・・それはこれからの「東京都」のことを左右することだった。

 

「五時のニュースをお伝えします。先日発覚した「東京都都知事」の「唐沢 英一」氏の不正な借入金問題で、唐沢氏が社団法人「洛巣会」から約5千万円を都知事就任前に受け取っていたことを認めた為、「東京地検特捜部」は同氏を「公職選挙法違反」と「政治資金規正法違反」の罪で逮捕しました。

なお同氏は知事の辞任を発表し後任は五月に各党から立候補から選ばれる予定となります。

なお立候補者は以下の通りになります」

 

画面が三人の顔写真を映し出す。

左より自由党から「丸川 和成」氏(72歳)、民心党から「山之内 豊春」氏(66歳)、野党からは推薦で「空条 丞一郎」氏(49歳)。

 

これから「東京」・・いや「世界」は何処へ向かうだろうか・・?

 

・・・・・その答えはまだ分からない、だが一つだけ言うのならば「運命」はきまぐれであり正か邪に転ぶかは分からないということだ。

 

 

 

第二章「弓と矢」編、完・・・!

 

新章「承一と過去と因縁」へ・・・・

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。

スタンド名:「アウタースローン・ジ・インフィニティ」
   本体:比屋定 承一
破壊力-A、スピード-A、射程距離-C
持続力-C、精密動作性-A、成長性-?

能力

承一の「アウタースローン」と「弓と矢」が合体したスタンド
「時」を集め、それを用いて「時を感覚で五秒だけ戻す」ことができる、通常の能力も勿論使える

感想・ご意見お待ちしています。





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第3章 承一と過去と因縁編
第36話 承一、沖縄に立つ!


お待たせしました、新章が遂に開幕します!

それではどうぞ!


 

5月1日 西木野総合病院 PM15:30

 

 

「んん~~~、ふぅ・・」

 

軽く背伸びをしてベットから体を起こす、どうやら背中の傷は完全に塞がったみたいだ・・・昨日は少し痛むぐらいだったからな

 

外の景色を見ながら昨日の出来事を思い出す。

・・・・あの後、気を失った俺を病院まで運んでくれたのは雪穂ちゃんとご両親だったみたいらしい(このことはお見舞いにやってきた穂乃果達が教えてくれたことだ、因みに一番心配していた穂乃果が俺を見た瞬間いきなりダイブしてきて、また気を失う所だった。)

 

傷関係で思い出したのが、ここへ運ばれた時一番目立ったのが背中の傷だけだったと担当の先生が言っていた。

 

(顔の傷や骨折がいくつかあると思っていたが、それらがなかったのは少し気がかりだな・・・・)

 

それも俺に新しく発現した「スタンド」の影響なのか・・・?分からないが今は深く考えないでおこう、それよりも・・・・川和が最後に言っていたのが気になる。

 

 

「お前の父を・・・本当にトドメを指したのが・・・・お前の故郷にいる・・・・」

 

 

あの言葉の真意は分からない、だけど確かめなくてはいけない・・・ようやく父の死の謎が解けるかもしれなから・・・

 

 

「一カ月振りに、帰るか・・・・沖縄に」

 

この時俺は気づかなかった、この一言を病室の前で聞いていた人物がいることに・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~********~~~~~~~~

 

 

 

 

翌日 沖縄、那覇国際空港 AM10:30

 

 

「懐かしいな、この空気の感じ」

 

東京の羽田から三時間弱、ここは沖縄県の那覇国際空港、俺の故郷である。

(正確に言えば、那覇ではなくここから南に行った所が故郷だが・・・これは追々説明することにしよう)

 

さて、これからどうするか・・・?

 

実家の鍵は持っているから、そこに行くのは当然として・・・・まだ時間はあるから町を見て回ってみるかな?

そう言えば、首里城でバイトしているクラスメイトがいたな・・・行ったついでに驚かそうかな・・・・

 

そんな事を考えていると視界の隅で動くものが見えた、それは俺から左前方にある空港内の土産店からだった。

 

よく見てみると置物の「シーサー」の前に陣取り興味津々に見ていた(俺の位置からだとそう見える)

問題は見ている人物が、オレンジ色の髪にサイドポニーテールをしていることだった。

 

(俺の中でそんな特徴を持っている人物は一人しかいないんだが・・・・)

 

 

まさかと思いつつその人物に近寄ろうとした所・・・・

 

「海未ちゃん!ことりちゃん!これ・・!」

 

「穂乃果・・・・何でここにいる・・・?」

 

「え、えーーと・・・あはは・・・」

 

苦笑いを浮かべる彼女・・・いや本当に何でいるんだよ、俺が沖縄に行くことは誰にも言ってないはず・・・じゃあ

 

そう思っていた時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた・・・しかも一人じゃなく何人も・・・

 

「穂乃果!急に走り出しては・・・!」

 

「穂乃果ちゃん!・・・あ・・」

 

「暑いにゃ~~・・・」

 

「大丈夫?凛ちゃん、お水いる?」

 

「こんなに暑いと日焼けしそうね・・・」

 

「日焼けはアイドルの大敵!日焼けクリームなら沢山あるニコ!」

 

「五月なのにこんなに暑いなんて・・・」

 

「流石海開きが日本で一番早い所やな!」

 

 

そこには「μ's」のメンバーが勢揃いしており、全員が俺の姿を確認すると一瞬だけ固まった。

 

・・・・まぁ予想はしていたよ、穂乃果を見た時からな

 

 

この後どうやって俺が沖縄に行くことを知ったか問い詰めてみると、昨日穂乃果が一人でお見舞いに行った時病室の扉の前で聞いたらしい・・・(あの独り言同然のを聞いていたなんて、すさまじい聴力だな・・・・・)

それでせっかくのゴールデンウィークといこともあり、全員を誘ったという訳である。

 

どうやら神様は俺にただでは帰郷させないつもりらしいな・・・・全くこの先どうなることやら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~******~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

沖縄県 某所 

 

 

とある部屋の一室、男が電話を耳にあて話している。

 

「はい・・・そちらは無事に選出されたようですね・・・・こちらは問題ありません・・・ええ、面白い「スタンド使い」を発見しましたので・・・・はい・・・・はい失礼します」

 

男は受話器を置くと、部屋をグルリと見回した。そして・・・・

 

「君らに指令を出そう・・・目標がこの地にやってくる、その人物を抹殺してもらいたい、当然報酬は各々の希望通りにさせていただくよ」

 

 

「・・・・・・」

一人はブツブツ呟いており、そのまま部屋を出た。

 

「・・・・ケケ」

一人は小さく笑うと、即座に外へ出た。

 

「・・・・・・」

一人は何も言わず、部屋を出て行った。

 

 

誰も居なくなった部屋で男はポケットの中に手をやり、一枚の写真を取り出した。

 

 

「まさか・・・のこのこと貴様の方から来るとはな、ここが終焉の地となるのだ・・・・・比屋定承一」

 

男は写真を握りつぶした。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?今回から新章「沖縄」編となります、承一達の新たな戦いをご期待ください!

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第37話 復讐者(リベリオン)その①

お待たせしました、それではどうぞ


沖縄県 我那覇島 PM13:00

 

 

沖縄本島から数キロ南下した所にあるのが「我那覇島」、俺(承一)の生まれ育った島である。

人口は約千人ぐらいで島の産業のほとんどが漁業であり、マンゴーなどと言ったフルーツの類はあまり育てていない(但し個人で育てているのがあり、とても美味い)

島の形が二等辺三角形に似ているから島民は「三角島」と呼ぶこともあり、さらに形が少し酷似している「宮古島」からは「兄弟島」なんて呼ばれている。

観光名所と言えば、島の中心に位置する五百年ほど前の城跡ぐらいしかなく後は、白い砂浜程度のものだろう。

 

と言った具合に俺の生まれ故郷の話をμ’sの面々に話した所、凄い盛り上がりをみせてくれた(主に砂浜のところで)

 

「そんなに羨ましいのか?」

 

「羨ましいよ~~」

 

「そーなのかー」

 

「すごい棒読みだよォ!!?」

 

そんなやり取りをしながら本島から出ている高速船に乗り込む。これが島に行ける唯一の手段である。

時間にすれば二十分程度であるがその道中は、綺麗な海を見て騒ぐμ’sのアホ代表(穂乃果、凛)から目を離しておけなかったからそれ以上の時間が掛かったような気がする。

 

 

船から降り、島の風を感じる・・・久しぶりの故郷だ。一ヶ月だけ離れていただけでこんなに懐かしいと思うんだな。けどもう一つの事も忘れてはいけない・・父を殺した奴がここにいるかもしれないことを・・・

 

「承君!早く早く~!」

 

「ああ、今行くよ」

 

穂乃果に呼ばれ足早に歩き出す、・・・・ところで彼女達は泊まるのかな?ここにはホテルは数軒しかないからな

 

 

 

 

「ここに泊まるのか・・・」

 

「うん!そうだよ!」

 

何処に泊まるのか興味本位で彼女達と見に来たら・・・島で一番高い「リゾートホテル」だった。確か一人一泊7~8000円ぐらいしたはずなんだけど・・・・もしかして

 

「私が先に払っておくから、みんなは部屋に行っても構わないわよ」

 

・・・・やっぱり、まぁこのメンツで払えるのは真姫ぐらいしかいないのは分かっていたけど

 

「でも、ホテルって払うのはチェックアウトの時だと思ったけど違うのかしら」

 

絵里の言うとおり、普通ではそうなのだがやはり高い所は違うのか・・?そう考えてた時、カウンターの奥から一人の男性が出てきた。

 

「私共のホテルは全てを含んでいますから」

 

身長は190cmだろうか青いスーツに星型の絵柄が入ったネクタイを締め、髪型はソフトモヒカンをしている男性だった、その人はカウンターから出て俺達の目の前まで来て一礼をした。

 

「あの・・全てを含むというのは・・?」

 

「言葉足らずでしたね、つまり部屋にある飲料水や当ホテルに併設されているプール、レストランの食事などといったものを含むということです。」

「先払いにさせていただくのは、せっかく楽しい旅行ですので後で払うより初日に払っていただいた方が、帰る時に楽しいままお帰りいただける為です」

 

「な、なるほど・・・」

 

「紹介が遅れましたが、私は当ホテルのオーナーを務めています「神場崎 渚(かんばざき なぎさ)」と申します」

 

丁寧な挨拶をされ、俺達もおもわず頭を下げる。

 

「では、私はこれから所用で出かけますので・・・どうぞごゆっくりしていってください」

 

そう言って出口に向かっていった。

 

「じゃあ、俺もそろそろ行くよ」

 

「え~~、承君行っちゃうの・・」

 

「後で戻ってくるから大丈夫だよ」

 

 

穂乃果達と別れ、実家に行く為ホテルを出る。

 

 

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

 

ホテルから少し離れた所にある公園、二人組みのバイク乗りが近くにあるファストフード店のコーラを飲みながら休んでいた。

 

「この後、どうしよっか?」

 

「そうだな・・じゃあ隣の島まで行ってみるか!」

 

楽しげに談笑する二人、だがその近くにいたとある男には気づかなかった・・・ふらふらした足取りで今にも倒れそうだが確実に前を進む男に・・・

 

「・・・・・、・・・・」

 

ブツブツと何を言っているのか、分からなかった。

 

男は足元にあった石に引っ掛け倒れそうになるが、近くにあったバイクに手をついたことによって転倒は避けられたが・・・

 

「あ!せっかく磨いた俺の単車が・・!」

 

「それに、何だ?油みたいのもついているぜ」

 

「ほ、本当だ・・・汚ったね~」

 

布で汚れを落としながら、それを付けた男の方を睨みつける。

 

「クソッ!!あの野郎!」

 

「お、おい・・やめておけよ」

 

激高した仲間を抑えようとするが、怒りが収まらず男に向かって大声で言った。

 

「ふらつきながら歩いてんじゃねえよ!!この酔っ払い野郎が!!!」

 

しかし、言われた男は何も言わずそのまま歩き続けた。

 

「何か気味悪いぜ・・・あいつ」

 

「はっ!ビビッて何も言えないんだろうよ!!」

 

高笑いしているせいか見えていなかった・・・・歩くのをやめ、こちらを静かに睨みつけている男のことを、

男の背後から「影」が出てきたことにも・・・・

 

 

「はぁ~ようやく収まったぜ、こんなにイラついたのも久しぶりだな」

 

「さっさと行くとしますか、腹が減ったからな」

 

「ん・・・?」

 

「どうした・・?」

 

バイクに腰掛けてながらコーラを飲んでいた男が急にそんな声をあげる。

 

「何か熱いな・・・」

 

「そりゃここは沖縄だからだろ」

 

「い、いや・・・そういう..ゴボッ・・じゃなくて」

「何か..ビチャ・・変なんだよ..ゴホッ・・」

 

「た、確かに何か変だぞ・・・」

 

男の言葉が途切れ途切れで、何かがこぼれる音もした。そのまま男は連れの方を向き直る。

 

彼は見てしまった、その目で・・・・仲間の喉元が焼けただれ、血の独特の臭いが漂い飲んでいる物と血が混じりあった液体がこぼれ続けているのが・・・

 

「ヒィ!!何だそりゃ!!!」

 

「ゴボッ・・お、俺はどうなってい・・・ガバァッ!!!」

 

そう言った瞬間、喉から大量の血が噴出し男は絶命した。

その血が顔にかかる、かかった箇所から焼けるような感覚に襲われた。

 

「うぎゃぁぁぁぁ!!何だぁ!!!」

 

その場から逃げようとした時、足元の液体で滑り血溜りに顔から突っ込む・・・顔と喉が焼けただれ、彼も絶命した。

 

 

その様子を遠くから見ていた男は、不敵な笑みを見せその場から立ち去る。

 

 




いかがだったでしょうか?

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第38話 復讐者(リベリオン)その②

お待たせしました、それではどうぞ!


我那覇市内

 

 

町の電気屋に設置されている多くのテレビが、午後のニュースを伝える。

 

「・・・では続いてのニュースです。一昨日裁判所から脱走し行方不明となっている「神楽坂 信行」被告ですが、警視庁の調べでその日の午後八時に沖縄行きの飛行機に乗っていたことが判明しました。その為警視庁は沖縄県警と合同捜査を開始することを明らかにしました。繰り返すます・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

時刻はまもなく二時を指す所だった、市内の商店街を一人で散策しているのはμ’sのリーダーを務める「高坂穂乃果」であった。

 

「あ!このシーサーも可愛いな~」

 

と、商店街の一角にある土産店の置物を眺めている訳だか彼女の本心はというと・・

 

(はぁ・・・一人でだとやっぱりつまらないよ~~)

 

こんなことなら海未ちゃんとことりちゃんも連れてくれば良かったかも・・・まぁ一通り、散歩はしたからホテルに戻ろうかな。

 

そんな事を思いつつ、歩いていると一軒のカフェが目に入った。

 

(コーヒー一杯ぐらいなら・・・大丈夫かな)

 

店内に入り、窓側の席に座る。

 

「外が暑かったから、アイスコーヒーが身体に沁みるよ~」

 

ひんやりと冷たいグラスを持ちながら、一息つく。すると後方からドアの開くおとがした、一瞬だけ気にはなったがおそらくトイレか何かだと思い、後ろを振り返らなかった。

 

しかし、振り返った方が良かったかもしれない、徐々にこちらに近づく一つの「影」に気付けたかもしれないからだ。

 

ゆっくりと確実に近づき、ほぼ真後ろまできた所で左手を掲げる。そして迷う事なくその手を振り下ろした!

 

耳をつんざく様な音と共に、窓ガラスは割れて床に散らばる。しかしそこに彼女の姿はなかった、その「影」が顔を横に向けると自身の「スタンド」を出し臨戦態勢を整えている穂乃果の姿があった。

 

 

「まさか・・・こんな所で襲ってくるなんて」

 

突然の出来事で混乱しているほかの客の騒ぐ音が聞こえる中、その眼は確実に「敵スタンド」を見据えていた。

人型で手足に黒い布を巻きつけてあり、体色は黒で統一されて胸には髑髏を模した飾りをつけていて、表情は怒っているのか笑っているか分からないものをしていた。

 

こちらに向かって歩き始め、「スタンド」の射程内に入ると先に拳を放つ。

 

「「アクティブ・ガール」!!!」

 

数発放った拳は全て受け流され、逆にカウンターが飛んでくるがそれは脚で蹴り飛ばしガードをした。

 

(じゃあ・・・・これなら)

 

手元にあったガラス片に能力をかけたのと同時に走り出し、自分から見て左側に避けるように右の拳を放つ。

相手は予定通りに左に避ける、そこに能力をかけ「一時間前」の状態に戻ろうとするガラス片が向かってきていた。

 

(あの体勢からじゃ、避けるのはほぼ無理なハズ!!)

 

しかし、それは当たることなく空を裂いた。何故なら当たる寸前にまるで何かに飲み込まれるように地面に吸い込まれてしまったからである。

 

(え・・?う、嘘・・・)

 

近寄って見るもそこには影も形も無くなっていた、「スタンド」を探そうとした時、突如脇腹に痛みを覚え見てみると立て看板の「影」から腕だけが出ている状態で攻撃をしていた。

 

(く・・影に潜る能力・・・だけどどこかで聞いたことがあるような)

 

考える暇を与えない為か、すかさず拳の連打が入る。

 

「う!・・・くぅ・・」

 

それを躱しながら周りを見る。するとさっきの騒動の影響か鍵が外れているマウンテンバイクがあった。

 

「・・・気は進まないけど仕方がない!」

 

隙をついて、その場から離れマウンテンバイクに跨る。同時にペダルを漕いで発進させる。

相手は影に潜ると建物や標識、信号の影を利用しながら追いかけてくる。

 

「とにかく、承君やみんなに連絡をとらなくちゃ・・」

 

しかし、後ろからは依然追ってくる気配は消えない・・・・・

 

どうすればと考えてた時、交差点を右に曲がった時建物が無くなっていて更地になっているところが見えた。

すると今まで執拗に追ってきた気配が消えた。

 

(・・!そうか、影の無い場所にはやってこれないんだ!それに影から影に移る時も制限距離みたいなものもあるのか!)

 

「今の内に・・・」

 

更地の隣の細い路地に自転車を停め、承一に電話をかける。

1コール後、すぐに彼がでた。

 

「穂乃果か、どうした?ホテルにならもうすぐ着くぞ」

 

「承君!、今「スタンド」に追われていて・・・」

 

「本当か?!何処にいるんだ?すぐにでも向かえるが・・」

 

「大丈夫だよ!何とか振り切ったみたいだし」

 

「そうなのか?それならいいが・・・」

 

「うん、それでね・・・」

 

そう言いかけた時、路地の前の道路に一台のタクシーが止まる。そこから出てきた人物に穂乃果は驚愕する、さらに彼の足元から「スタンド」が出てきた!

 

「穂乃果?おい!どうしたんだ!?」

 

「ごめん承君・・・また後でかけるから!」

 

電話を切り、すぐに発進させた。それと同時に「スタンド」も再び追ってくる。

 

路地を抜け、道路に出る・・・進んでいると目の前に交差点が見え信号は青を示していた。

このまま突っ切ろうとした時、青から黄になり赤に変わってしまう。よく見ると先ほどの人物が歩行者優先ボタンを押していた。

 

「スタンド」は追ってきている状態なので信号無視を覚悟で突っ切ろうとした時、角の方から乗用車が出てきた。

 

(このままだとぶつかる・・!でもスピードを落としたら確実に捕まる!こうなったらこのまま行くしかない!!)

 

ペダルを漕ぐ脚に力を入れ、スピードを落とさず突っ込む!!

 

接触する前に「アクティブ・ガール」で自転車をバラバラにして宙に浮き、乗用車を飛び越える形で避ける。そして能力を使用し「一時間前」に戻して修復する。

 

(すごく・・・心臓に悪かった・・・)

 

そのまま道なりに進み、浜辺にでる。そこで自転車から降りる。すると追ってきた「スタンド」とその本体が姿を現す。

 

「・・・ここに来てどうするつもりなんだ?」

 

「あなたを倒す為です。・・・神楽坂さん」

 

そうこの本体こそ、約一カ月前μ’sをストーキングし学園の講堂ライブの際承一によって倒され、その後警察に逮捕された「神楽坂信行」である。

 

「でも・・・何でここに・・?」

 

「そんなの決まっている!!俺をこんな目に遭わせた「比屋定承一」に復讐するためさ!!!!!」

「その為に!君には彼をおびき寄せるエサになってもらう!この新しく「弓と矢」で貫かれて、貰った力「リサージェンス」によってな!!!」

「奴には極上の死をやるよ、この「フッ化水素酸」で骨の皮もドロドロに溶かしてやる!彼をここに呼んだら君の命は助けてやるから・・・」

 

「呼べよ!!!!!奴を!!」

 

金切り声にも似た声で叫ぶ、そんな姿に何も言わずただ黙っている。そして・・・

 

 

「呼ばないよ、絶対に・・・!」

 

「・・・何?」

 

「呼ばない!あなたはここで私が倒す!」

「守られてばかりじゃ・・・・もうないんだから!!!!」

 

「こ、この・・・・雌豚がぁぁぁぁ!!!!!」

 

雄叫びと共に突進してくる神楽坂・・・穂乃果は静かな声で呟く。

 

「それと、ちゃんと持ち主には返しておくよ・・・」

 

その言葉と同時に能力をかける、するとマウンテンバイクは突進する奴の目の前に現れそれに気づいたが止まれる訳もなく、それにぶつかり盛大にこける。

すぐさま近づき、スタンドのアッパーを喰らわせる。奴はその一撃で意識を失った。

 

「途中で気付けたのが幸いかな・・・・」

「あれがレンタルされている自転車だということに、そもそも、あんな所に堂々と置いてある時点で罠だったということになるのね」

 

 

その後、パトロールをしていた警察の人に彼の事を任して私はホテルに戻っていった。戻ったと同時に心配していた承君やみんなにこってり怒られてしまった、でも無事で良かったと聞いた時は安心して気が抜けてしまったよ・・・・

 

 




いかがっだたでしょうか?ここでスタンド紹介です。

スタンド名:「メイビス・シャドウ・リサージェンス」
   本体:神楽坂 信行

破壊力-?、スピード-C、射程距離-?
持続力-?、精密動作性-?、成長性-なし

遠隔操作型の人型スタンド

能力
影に潜行できるのが本体もできるようになり、影の中に物を隠し持てたり影の中を渡って追跡することができる。(但し、移動するには影同士の間が距離にして二メートル以上離れていると移動が不可となる)


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第39話 フラッシュ・バックその①

お待たせしました、それではどうぞ


ーー翌日

 

 

昨日の穂乃果の一件があったからどうするべきか考えたが、せっかく来てくれたのだから島の案内をすることになった。勿論襲撃に備えて九人全員での移動となる訳だが・・・・

 

 

「ここが、島の唯一の観光名所「我那覇城跡」になるよ、ここで昼にでもしようか」

 

「そ、そうしよっか!」

 

「う、うん!」

 

穂乃果とことりの会話が少しぎこちない・・・・まぁ理由は分かっているけど

 

「何もないからって遠慮することはないぞ」

 

「え!・・・そ、そう?」

 

ここは一応「城跡」と名乗っているが、本当に「跡」しかなく、かろうじて城の石垣部分が残っている程度で、ほかはただの広い公園みたいなものになっているから「何もない」とも言われても仕方がないな

 

「でもここからの眺めはいいわね!」

 

「ありがとう、ここは綺麗な夕日が見られることでも有名だからな」

 

「ハラショー!、それも見てみたいわ!」

 

絵里との会話で出てきたが、ここは山の中腹に位置している為市内を一望でき、さらに夕日も綺麗なので一部界隈では人気らしい。

すると、穂乃果が俺の裾を掴んで尋ねてきた。

 

「ねぇ、承君・・あれって何て言う鳥なの?」

 

彼女が指さす方にいた鳥は、全長が60cmほどあり背中と翼の上面は黒褐色で、腹と翼の下部と顔は白色をしていて後頭部に小さな冠羽をつけているものだった。

 

「あれは、「ミサゴ」という猛禽類だな」

 

「へぇ~~」

 

「大きな鳥だね・・・」

 

花陽が小さな声でそう呟く

 

「大丈夫だよ、ああ見えて人は襲わないから平気だよ」

 

そう言うと安堵の表情を見せてくれた。しかし妙な事に、やけにこちらを見ている様な気がするな・・・気のせいか?

 

 

昼飯を食べ、「城跡」を後にした俺達は海岸までやってきて目の前に広がる海を見ていた。

 

「綺麗な海ですね」

 

海未が海を見ている・・・・別にかけた訳じゃないからな、そんな事を思っていたら穂乃果も同じ様に思っていたらしく、お互いに顔を見合わせて少し笑みを浮かべた。

 

そんな一時を過ごしていると、不意に後ろから声をかけられた。

 

「誰かと見れば、比屋定の坊主じゃないか」

 

振り返ると、白のタンクトップに黒の短パンというラフな格好で目つきが鋭い老人が漁網を抱えて立っていた。

 

「舟木さん、お久しぶりです」

 

「島を出て行ったから、一生戻ってこないかと思ってたが」

 

「いくら何でも大袈裟ですよ・・・」

 

「ふん、所でそっちにいるのは?」

 

「転校先の同級生ですよ、この島に来たから案内を・・・」

 

「そうかい・・・」

 

そう言うと穂乃果達を一瞥してそのまま去って行った。

 

「何・・?今の人は?」

 

にこが若干不機嫌そうに尋ねてきた。

 

「この島で漁師をしている「舟木」さんだよ、大の余所者嫌いだから気にしなくていいよ」

 

だけど、いつも以上に機嫌が悪いように見えたけど何かあったのか?

 

 

 

 

 

 

~~~~*****~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 東京

 

ここはあるビルの一室、ここでは短期契約社員の為の研修が行われようとしており、室内に集められた二十名の研修員を出入り口から見ている男がいた。

 

(まさか、「矢」の事を調べに来たら面倒な仕事を押し付けられるとは・・・)

 

その男、「海山 イデヤ」は頭を掻きながら室内を見渡し俯く。

 

(三枝の旦那に何かしらの有益な情報を与えないと俺の首が飛ぶ!(物理的に))

 

イデヤが悶々と悩んでいると、扉が開きそこから灰色のスーツを着こなし黒の髪色と天に突き刺す様な髪型をした丸メガネの男が入ってくる。

 

(何だ~、いかにも「エリート」です!みたいなキザ野郎は・・・)

 

その男はイデヤの事を横目で見ると、何も言わず通り過ぎ前の方へ移動する。

 

「本日はお集まりいただき、誠に有難うございます。私は本日皆様をご案内させていただく「黒須 雷鳴(くろす らいめい)」と申します」

 

そう言って深々と頭を下げる彼を尻目に、イデヤは下を向いて腹を押さえている。これは決して腹の調子が悪い訳ではなく・・・

 

 

(変な名前だな~~!、あんな名前でよく恥ずかしいと思わないよな!ププッ!)

 

腹を抱えて笑っているだけである、そんな彼を置いておくとしてここにも下を向いているスーツ姿の女性がいた。

 

 

 

 

いや、

 

 

 

 

女装した男子と言った方が正解のようだ。

 

 

(か、楓さんに言われて来たけど・・・・)

 

(やっぱり無理だよ~~~~~)

 

その女性もとい男子の「久井武臣」は15年の人生で最大の汚点を作りだそうとしていた。

 

二人の異なる状況に置かれた「スタンド使い」はそれぞれの目的で潜入を果たしていた・・・・ここは「オデュッセウス・インダストリー社」傘下の会社「大日本薬学研究所」、運命の邂逅が間もなく訪れる。




いかがだったでしょうか?スタンド紹介はないです。

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第40話 フラッシュ・バックその②

お待たせしました、それではどうぞ!


(・・・はぁ、どうしてこうなった・・・)

 

ため息交じりの呼吸をして女性用スーツを着ている「久井武臣」はそう思った。

 

(でもスカートじゃなくてズボンタイプだったのが唯一の救いかな・・・でも)

 

改めて今朝の事を思い返してみる、以前学校で会った「落合 楓」さんから連絡があり「スピードワゴン財団日本支部」まで来るように言われ、そこへ行った時だ・・・・

 

ーーーー

 

ーー

 

 

階段を上り、二階にある喫茶店(確かSPWってとこだった)に入り目的に人物を探す。

すると奥の方の席にいる人が手を振っているのが見えた為、そちらに近寄る。

 

「やぁ、待っていたよ!久井君」

 

「はい、楓さん」

 

ふと席を見ると自分と同じような色の黒髪をしており、髪形は短髪をしている男の子が座っていた。すると楓さんがその彼を紹介してくれた。

 

「彼は「出水 英雄」君、私達と同じ「スタンド使い」で、穂乃果さんが知り合った学生さんだよ」

 

「初めまして・・・「出水」と言います・・・」

 

「僕は「久井武臣」、宜しく」

 

挨拶を済まし、彼の真向かいの席に座るとタイミング良くアイスコーヒーが運ばれてきた、それを一口飲み彼女の方に向き直る。

 

「集まってもらったのは他でもない・・・この町で今起きていることの原因を突き止めることだ」

 

「比屋定先輩が戦っているんですよね・・」

 

「ええ、そうよ」

 

そこまで聞いた出水君が少しばかり俯いてしまった。

 

「怖いか・・?出水君?」

 

「し、正直に言うと・・・・ちょっとだけ」

 

「無理もないね・・だけど大丈夫よ、私があなた達の支えになるから!」

 

そう言った楓さんの横顔はとても神々しかった・・・落ち着きがあり、その瞳の奥には恐怖というものは感じられないほどに・・・

出水君の方を見ると、顔が若干赤くなっておりその姿に見惚れている。気持ちは分からなくないけどね。

 

「さて、私達にしかできないことをやらないとね!」

 

そう言って、鞄から数枚の紙とある模様がついた金属製のバッジを出し、机の上に広げた。

 

「これは・・・?」

 

「バッジの方は大企業「オデュッセウス・インダストリー社」の社員に配られるもので以前、比屋定君と共に戦った際に敵が持っていたものだ」

 

「我々が敵対しているものにその会社が関わってくるのは確かだか・・・今の所は手掛かりはこれしかなく、これ以上バッジからは情報を得ることは難しいだろう」

 

「だからここに潜入するしかない」

 

指差した紙には「大日本薬学研究所」と書かれており、そこに関する情報が載っていた。

 

「この会社がその大企業と関係があるんですか?」

 

「ここは三年前に買収され、「オデュッセウス」の傘下の企業となっているのだ、まずはここに潜入して情報を得る」

 

「・・・・!」

 

「敵がどのくらいの規模で何人いるのか?、そして何が目的なのか?それを知らなくてはいけない」

 

「で、でもどうやって・・・?」

 

「それはここに書いてある」

 

そこには大きい赤文字で「短期契約社員、募集中!!」と書かれており、その下には詳細が記されていた。

 

「も、もしかして・・・」

 

「そう、これに応募して潜入を果たす。後は必要な情報を抜き取り脱出すればいい」

 

「でも誰が・・・まさか楓さんが?」

 

「いや、多分私は顔が知られているかもしれないからね、潜入は難しいだろう」

 

「だから行くのは君だよ、久井君・・」

 

「ぼ、僕がですか?!」

 

突然の指名が来て、驚く僕に楓さんは言葉を続ける。

 

「君が私の仲間だとはまだ知られていない、ましてや「スタンド使い」であることも」

 

「な、なら・・僕も行った方が・・!」

 

「いや、二人はマズい・・・確かに成功する確率は上がるがその分バレるリスクも上がってしまう、だからこれは一人ではなくてはいけない・・」

 

ここまでの事を聞いて体の震えが収まらない。理由は自分でも分かっているのかもしれない・・・これが無謀であり、危険な事でもあると・・・・でも

 

(比屋定先輩や高坂さん達は今まで戦ってきた、だけどその人達がいない今自分にできることをするんだ。だから・・・)

 

「・・・分かりました、僕が行きます!それが今できることなら!」

 

「久井君・・・ありがとう」

 

楓さんは一息つくと、鞄からカツラみたいなのときっちり折りたたまれたスーツ一式を取り出した。

 

「あ、あの・・・これは?」

 

「ん?、勿論君の変装道具だよ!」

 

「こ、このままでいいんじゃ・・」

 

「まぁ、男よりも女性で潜入した方が相手にもバレにくいからね!」

 

凄い満面な笑みでそう言われると、とても断りづらいからな・・・仕方がない

 

「分かりました・・・ところで研修はいつからになるんですか?」

 

「今日からだね、それに着替えたら車をだすから」

 

「・・・・・」

(何か話がトントン拍子で決まってる感じがするのは、気のせいかな・・?)

 

 

ーー

 

ーーーー

 

 

 

(多分、気のせいじゃないかも・・・)

 

「黒須」と名乗った男性社員の部署説明やら今後の予定等を一時間近く聞かされた後、十分の休憩を貰い今は楓さん達と連絡すべくトイレ(勿論女子トイレ)の個室に入っている。

 

(それにしても、随分長い説明だったな・・・でも真面目でまともな感じがしたな)

 

先ほどの説明の感想を思いながら、ポケットから通話状態になっているスマートフォンを取り出す。

 

「もしもし、楓さん?」

 

「はぁーい!そっちの首尾はどう?」

 

「まぁまぁです、それより・・・・」

 

「ええ、さっきのは聞こえていたわ。けど特に変わったことはなかったね」

 

「そう・・・ですか・・」

 

「焦らなくても大丈夫、それに相手もすぐには正体を現さないだろうからね」

 

「・・・はい、それでは」

 

そう言い、電話を切りそれをポケットにしまう。

 

 

「ふぅ、さてそろそろ戻らないと・・・・」

 

トイレから出て、先ほどまでいた会議室に戻ろうとした時、妙な違和感を覚えた。

 

(・・?、やけに静かだな・・・物音一つしないなんて)

 

不思議に思いつつ会議室のドアを開ける、すると・・・・

 

「な、何これ・・・何で誰もいないの・・?」

 

さっきまで十数人いたはずの室内は人影一つもなく、静まり返りそれが一層不気味さを醸し出していた。そんな状況に立ちすくしていると後ろから声がした。

 

「なるほど・・・本当に海老で鯛が釣れるとはな」

 

「・・・ッ!!」

 

振り返ると、赤褐色の体色をした「スタンド」と後ろには数十人の人と共に「黒須 雷鳴」の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

沖縄 我那覇市市内

 

 

「この組み合わせも久々やね♪」

 

「・・・・」

 

東條希と西木野真姫はまだ太陽が照りつける中、近くにあるドラッグストアで買い物をした後ホテルへ帰ろうとしている所である。

 

「希が日焼け止めを買いに行っただけじゃない・・・」

 

「まぁ、それもあるけど・・・・」

 

そう言って視線を上げると、そこには紫色の烏の姿があった。

 

「うちの「パープル・ヴァローナ」でこの島全体の確認をしときたかったからな」

 

「私はその護衛みたいなもの?」

 

「そ、うちのは攻撃手段が乏しいからね、自分の身を守ることが難しくてな」

 

「でも、何も起きなかったわね」

 

真姫はこれまでの事を思い返してみたが、これといった異変は無かった。昨日の穂乃果への襲撃が嘘みたいに

 

「そうやね、でも何が起こったら視野を広くして周りを見ることが大事になるよ」

 

「そ、そう・・・」

 

その言葉の真意は分からなかったが、過去に的確なアドバイスをくれたことを思い出し今のも胸にしまっておくことにした。

 

しばらく進んでいる途中にて、信号待ちをしていた時だった。

希との会話をしている際、何気なく視線を落とすと誰かがポイ捨てしたのか「空き缶」があるのを発見した。

 

(全く、ちゃんと捨てなさいよ・・・)

 

心の中で不満をこぼしながら、その空き缶に手を伸ばそうと腰を屈めようとすると、

 

「真姫ちゃん!!」

 

何かに気付いたのか希が急いでその空き缶に手を伸ばし、掴む

 

「な、何を・・・ッ!」

 

突然の事で驚き、何のつもりか聞こうとした時その口が止まった。何故なら真姫が見たものは掴んだはずの「空き缶」がグニャグニャに変形しそれが希の右腕に絡まっていたからである。

 

「の、希ッ!!?」

 

それを外そうと手をかけようとした所、希に止められる。

 

「これに触れるのは危険なんよ、それにこれは外せそうにない・・・の・・・かも」

 

そう言った彼女は何故か息が途切れ途切れになっており、今にも倒れそうになっていた。

 

(す、「スタンド攻撃」!・・・でも何処から?!)

 

周りを見渡すがそれらしき人影を発見することはできなかった。

 

(とにかく、ここから離れないと!)

「希!ここから移動するわよ!」

 

「う・・・真・・姫ちゃ・・ん・・・え」

 

事態を上手く整理しきれず、混乱する真姫には今の声は聞き取れなかった。

 

交差点を渡らず、島の海岸線を目指して歩き始める。

 

海岸線に着くと、すぐ近くにある休憩所に行きそこで希を休ませることにした。

 

「とりあえずはこれで・・・・でも」

 

状況を整理しようと考えるが、すぐ近くで悲鳴があがる。

 

「え・・?」

 

なにが起こったか確認しようと見てみると、希と同じような物質が腕や胴体に絡まっている町の人達の姿だった。

 

「な・・!、他の人達まで・・!」

 

それが一人ではなく、複数人にも見られた。

 

(何とかしないと・・!でもどうすれば・・・)

 

焦りと不安が押し寄せ、それに飲み込まれそうになった時だった。さっきの希の言葉を思い出す。

 

「視野を広く持って・・・周りを見る・・・・」

 

「・・・え・・・・たいは・・・・に・・る」

 

彼女の途切れる言葉に耳を傾ける、焦らずゆっくりと紐解くように・・・・

 

(周りにいない本体・・・希の言葉・・・「・・え・・たいは」・・・・「う・・え・・・ほん・・たいは」・・・!「上に本体は」!!)

 

一つの結論に達し、上を見渡す。すると道路を挟んだ反対側の電信柱の上に一羽の「ミサゴ」がこちらを見つめていた。

 

「まさか・・・あの鳥が・・・「スタンド使い」!」

 

「ミサゴ」の方は自分に気付いたことにご満悦なのか、口角をニッと上げた。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です

スタンド名:「ドール・スタンプ」
   本体:黒須 雷鳴(同化人間)

破壊力-C、スピード-C、射程距離-E
持続力-∞、精密動作性-なし、成長性-なし

赤褐色の体色をした人型スタンド
能力
スタンドが触れた生物限定で、それと全く同じ姿形をした「人形」を作りだす能力、一度作りだせば本体が自分の意思で消すか消滅しない限り、その存在は消えない。作りだした「人形」は体温等などといったものも持っている。本体の命令のみを実行する。


「ゴールデン・リング」
種族:ミサゴ、スタンド使い、全長:63cm、体重:約1.7kg

左脚に黄金の輪のようなものを付けているためそう名付けられた。「弓と矢」によって「スタンド」が目覚めたことにより、凶暴性と知能が増した「ミサゴ」である。

スタンド名:「フラッシュ・バック」
   本体:ゴールデン・リング

破壊力-B、スピード-B、射程距離-A
持続力-A、精密動作性-E、成長性-E

本体より二回り大きく六枚の翼と黒色の体色をした鳥型スタンド
能力
射程距離内にいる者達が地面に手や胴体をつけた場合に発動する、地面から泥状の物質が絡みつきそのものの栄養を吸収する能力
泥状の物質に触れると蓄えられた栄養を元に衝撃波を与える。精密な動作が出来ない為非スタンド使いでも無差別に発動してしまう


感想・ご意見おまちしています。


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第41話 フラッシュ・バックその③

長らくお待たせしました、それではどうぞ


沖縄 我那覇市

 

 

不敵な笑みを浮かべ「ミサゴ」は柱から飛び立ち、両翼を羽ばたかせこちらへ向かって来る。

真姫はそれに応戦すべく自身のスタンドを呼ぶ

 

「「ノヴァ・マスター」!!」

 

彼女の身体から出た「スタンド」に臆することなく、黒色の鳥型スタンドを出す。

 

(・・・ッ!やっぱり「スタンド使い」!!)

 

六枚の羽根を靡かせ、こちらに向かってくるかと思いきや突如進路を変更し、自らの左斜めの方に逸れた。

 

「・・?」

 

頭に疑問符を浮かべた所で、車のブレーキ音が聞こえてきた為そちらの方に目をやると乗用車が車線を外れ、歩道に乗り上げ来るのが見えた。

 

(このままだとこっちへ来る!?)

 

それを避けようと左方向へ行こうとするがそちらには先ほどの「スタンド」が待ち受けていて退路が塞がれいた。

その為、次の回避手段を考えようとするがその間にも車が接近し続けていた。

 

それを避けきれないと感じた真姫は「スタンド」能力を使い、右手に約一メートルほどの竹製の棒を創り出し、それを目の前の地面に突き立て棒高跳びの要領で飛び上がり車を躱す。

 

着地と同時に周りを見渡すと、町の地図が載っている立て看板の上にこちらを睨みつけているかの様に見ていた。

 

「ゲゲ」

 

鳥とは思えない不気味な笑い声(?)を発すると垂直に飛び上がり、「スタンド」から何かをこちらに向け発射させてきた。

 

「っ!・・・」

 

「ノヴァ・マスター」で何とか弾き返すもその直後弾いた指の表面が少し切れ、血が滲んできた。

 

(この羽根みたいな物がこんなに固いなんて・・)

 

そう思っていた所、間髪を入れず再び硬質化した羽根を飛ばしてきた。

 

(あれを受け続けてたら、こっちが持たない・・!)

 

バックステップで避けた後、柵を飛び越え砂浜に着地しようとするが、

 

「な!?」

 

真姫の目に映った物・・・それは自分の着地地点に突き刺さった無数の羽根だった。

 

(まさかこれを狙って撃ったのか!、今からだと向こうには戻れないし柵にしがみついたら狙い撃ちにされてしまう・・・・だったら)

 

自分の背中側にある壁を蹴り、その衝撃で前方に押し出される形となって着地するが、その際地面に手をついてしまう。

すると、地面から泥状の物質が飛び出し真姫の右腕に絡みつく。

 

(くっ!これは希の腕についたのと同じ奴か)

 

外そうと手をかけるがその瞬間、体全体に衝撃みたいなのが走った後、痛みが襲ってきた。

 

(か・・・はっ!・・)

 

一瞬だけ意識が飛びそうになるが気力で何とか持ちこたえた。

 

(希が触ってはいけないって言ったのはこれが理由か・・・それに体中から力が抜けている感覚がする)

 

今はまだ立っていられるがその状態がいつまで続くかは分からない。

 

(早めに決着をつけないとね・・・)

 

その時、目の前にある柵の上に降りる敵の姿が見えた。

 

「ゲッゲゲ、ギギ・・!」

 

その鳴き声はまるでこれから獲物を仕留めることに喜びを感じている様に聞こえていた。

 

(さしずめ私は狩られる側てことになるのかしら・・・でも状況は不味いことになっているわね)

 

・・・・・・・「ミサゴ」が柵から飛び上がり、自分の所まで到達するのに約十数秒の間、彼女は過去の事を思い返していた。

自身び「スタンド能力」を発現した時のこと・・・「比屋定承一」という少年が助けてきてくれて、彼を「守りたい」気持ちで「スタンド」に目覚めたことを・・・・・・

 

(不思議な気持ち・・・・「彼」の事を思うと「勇気」が湧いてくる・・・・・!)

 

「ミサゴ」と自分との距離が半分ぐらいになるまで来ている、だが彼女はとても落ち着いていた・・・・波が一つもない海の様に心の中に「恐怖」や「焦り」は無かった。

 

(そう・・この感覚は・・・これが「成長」した感覚・・・!)

 

眼前まで迫った敵を見据えて、真姫は「スタンド」を使う。

 

 

 

ーーーその瞬間、彼女の周りを白い煙みたいなものが覆った。

 

 

「ゲ!」

 

突然のことに状況の整理が追いつけず、時が止まったかの如くその場で固まってしまう。するとどこからか声が聞こえてくる。

 

「今の「煙」は「ドライアイスの煙」よ・・・まぁ「鳥」に言っても解るかどうか・・・」

 

「ギィ!・・・・ガガ・・!」

 

声のする方角が分からない為、首を左右に振って確認しようとするが姿は見えなかった。

 

「そっちじゃないわ・・・あんたのほぼ真後ろよ!」

 

「ゲ?!」

 

「「ノヴァ・マスター」--!!!」

 

鋭く早い一発の拳が腹部に直撃した、その影響か胃の中にあった物を吐き出してしまう

 

「グ・・・ゲェェェェーー!!」

 

そして、そのまま重力に従って落ちていく。真姫はゆっくりと近づいていき腰を下ろして「ミサゴ」を見る。

 

「鳥だからこれ以上の攻撃はしない・・・・・けど」

 

突然、「ノヴァ・マスター」で目の前の地面を勢いよく殴りつけた。

 

「次に私の前に姿を現したら・・・今の拳があんたの顔面を貫く!!」

 

そう言った彼女の表情は一切迷いがなく、今言ったことは必ずやると動物的な直感が囁いた。

 

「ギィアーーー!」

 

それを感じたか、甲高い悲鳴にも聞こえる声をあげるとそのまま気絶してしまった。

 

「ふぅ・・・」

 

一息つくと確かな足取りで希がいる休憩所まで向かう、すると携帯に着信が届いた。

 

「しまった・・・もう17時を過ぎている、・・・・みんなへの説明が必要ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~*******~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

東京 大日本薬学研究所 所内

 

 

(ま、まずい・・・・この人は!!)

 

「「あの人」から、妙な事が起こっていると言われて来てみたが・・・・」

 

目の前にいる人物に目をやる。

 

「本ッッ当に!厄介な事が起きたな!!!まさか俺達を嗅ぎ回っている奴がいたとは!」

 

久井は全身が震える感覚に襲われながらも、この状況を打破する策を考えていた。

 

 

だがーーーー

 

 

(だ、だめだ・・!今は逃げるしかない!)

 

「「ストゥーム」!!!」

 

「やれ・・我が「人形」達よ!、八つ裂きにしろ!!」

 

黒須の掛け声と共に後ろにいた人達が久井に向かって襲い掛かってくる。それを「気流」を使い上手く避けて行く時には廊下に置かれている観葉植物の鉢を飛ばしたりしていた。

エレベーターホールに着き、下の階へのボタンを押す。

 

「は、早くッ!早く来て!!!」

 

運が良かったのか、エレベーターはすぐに来て扉がゆっくり開いてくる。

 

(早くここから出て、楓さんと合流を・・・)

 

開ききったドアの光景を目の当たりにする、そこには沢山の生気がない「人間」達が待ち構えていた。

 

 

「う・・・うわあああああああ!!」

 

 

そして、追いついてきた黒須率いる数十体の「人間」達がホールの出口を固めた。

 

「これが本当の・・・四面楚歌って奴だな。貴様はもう終わりだ!」

 

 

 

迫りくる「人間」達を見て久井は絶望の中に落ちる。

 

(---もう終わりだ・・・・何もできないまま・・・・ここで・・)

 

 

しかし、この時誰も気づいてなかった・・・・久井も・・・黒須と「人間」達も・・・・・背後からゆっくりと近づく一つの影に・・・・

 

 

ある程度来たところでその影は、手にしたものを構える。

その気配に気づいたか、黒須が後ろを振り向く・・・・・・・そして

 

 

「はっ!」

 

振り向く動作と同時に発砲音がし、それと共に一発の弾丸が黒須の下あごを貫く。

 

「ぐあ・・・!う・・がっ・・!」

 

続けざまに五~六発の弾丸を放つ、その内二発は右腕と左足に命中する。

 

「ぐあう・・・!、何をやってる「人形」共!!!早く俺を守れよ!!!!!!!」

 

黒須の叫びと共に、複数人が彼の周りに集まる。それを確認するとその影は走り出し、座り込んでいた久井の腕を掴み、エレベーターの中に入り素早い動作で扉を閉め、一階のボタンを押す。

 

突然のことで状況の整理ができていない久井は助けてくれた人にお礼を言おうと顔を上げたところ、その姿に驚いてしまった、その人・・いや「スタンド」は全身黒スーツでピエロのマスクを被っていたからだ。

 

「あ、あなたは・・・・」

 

「ン?・・・コレハ失敬、私ハ「ギャング・クラウンズ」トイウ者デス。以後オ見知リオキヲ」

 

丁寧に挨拶をし、頭を下げる。

 

「はぁ・・(ん・・・「ズ」が付いているってことは他にもいるのかな?)」

 

「ドウカシマシタカ?」

 

「い、いえ・・・助けてもらいありがとうございます」

 

「礼ニハ及ビマセン・・・」

 

エレベーターが一階へ着いたことを示すランプが光る。久井はすぐに降りるとそこには一人の男の姿があった。

 

 

「こんな可愛い娘が「スタンド使い」とはな」

 

男は金髪で、髑髏のアクセサリーを付けている者だった、肩には鞄をかけてそこから何枚か紙が見えていた。

 

「あなたは・・・・」

 

「俺の名前は「海山 イデヤ」っていう者だ、よろしく~」

 

「・・・・・」

(まさか、比屋定先輩達や楓さん以外にも「スタンド使い」がいるなんて・・)

 

「こんな所で話すのもなんだから、さっさと行こうぜ!」

 

「え、ええ・・・・」

(でも・・悪い人じゃない・・・かな?)

 

イデヤが先行してホールから走って出て行く、久井はそれに続いて行く。通路を通り正面出入り口があるエントランスに着くまでは誰とも出会うこともなかった。

 

(おかしい・・・階段でも追いつけると思っていたけど・・・誰もいないなんて)

 

そう思っていると目の前を行くイデヤの足が止まる。そこはエントランスの所だった。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「こりゃ・・・中々ハードな状況だな」

 

恐る恐る見てみると、出口を塞ぐように大量の「人間」達がいた・・・そしてその中心に黒須の姿がいた。

 

「援護を頼むぜ~・・・ええと名前は」

 

「久井って言います」

 

「流石に下の名前まで教えてもらえないか・・・・」

 

そう話している間に「人間」達はこちらに向かってくる。それを確認した二人は「スタンド」を出す。

 

「「ギャング・クラウンズ」!!」

 

「「ストゥーム」!」

 

 

クラウンズがそれぞれの武器で応戦しながら、次々となぎ倒していくがうじ虫の様に湧いて出てくる。

 

「くそっ!キリがないぜ!!」

 

(どうすればいい・・・・このままだといずれは・・・・・)

 

久井は考えるが、どれも決定的な解決はできない・・・それどころか不安や焦りが募るばかりだった。

 

(僕がなんとかしないと、でも楓さんみたいに経験はない、比屋定先輩みたく「スタンド」が強力なものでもない・・・本当に無力だ・・・僕は・・・・)

 

負の感情が積もっていき、そのプレッシャーに押しつぶされようとした時だった・・・・ふと黒須の言葉が聞こえてきた。

 

 

「お前等はもう終わりなんだよ!そこの金髪野郎と「子供」みたく縮こまっている女は!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいる誰しもが耳を疑うような低い声が久井の口から出た。

 

 

「・・・・誰が「子供」みたいだって?・・・・誰がガタガタ震えている子羊みたいだって・・・・・?」

 

「え?・・・そ、そこまでは・・・言ってない・・・・」

 

その異様な雰囲気に呑まれ、黒須は情けない声でそう言ったが・・・・・

 

「確かに聞いた・・・・ぞ!!!!」

 

その言葉を言ったのと同時に彼の指から弾丸みたいなものが発射され、それが黒須の喉元を貫いた。

 

 

「げふっ!!!!」

 

 

口から血を吐き出し、苦しむ・・・その光景を目の当たりにしながら久井の眼はしっかりと前を見据えていた。

 

 

(これが噂に聞く「スタンドの成長」って奴か・・・こんなとこで見れるとはな)

 

イデヤの視線の先には、半透明の身体に青色の中世の騎士風の鎧を身に着けた人型のスタンドがいた。

 

「海山さん」

 

「お、おう・・・どうした?」

 

不意に声をかけられたか、拍子抜けした返事をする。

 

 

「このまま、スタンド本体を直接叩きます・・・付いてきてください」

 

「・・・・!」

(さっきまでとはまるで別人・・・キレると逆に落ち着くタイプだな、いい・・・)

 

 

(実にいい!俺は惚れた女には惜しみなく協力する性質だからな、だからもちろん・・・)

 

「OK!いくぜ!!」

 

それを合図かの様に二人が同時に走り出す。

 

 

「人間」達はその進行を阻止しようと立ちはだかるが、クラウンズの援護があった影響で本体である黒須への接近を許してしまう。

そして、二人がほぼ同時に構える。

 

 

「「ストゥーム」!!!」

 

「「クラウンズNo、2」!!」

 

「・・・・ひ!」

 

 

「「これで終わり(だ)!!!」」

 

 

同時に発射された空気弾と弾丸は黒須の胸や腹部に全て命中し、そこから体にひびが入る。

 

 

「良し、「No、6」!」

 

そう呼ばれたクラウンズがほぼ動かなくなった黒須に近づき、手にしてた「スレッジハンマー」を思いっきりスイングした。

 

「ぐが・・・・はぁ・・・」

 

当たった個所からひびが大きくなり、そのまま首だけを残して砕け散った。

 

 

その瞬間、周りにいた「人間」達は跡形もなく消えてしまい、その場にはイデヤと久井だけとなった。

 

 

「やったな!久井ちゃん!!」

 

「は、はい・・・・」

 

 

 

 

ーー「黒須 雷鳴」(同化人間)スタンド名:「ドール・スタンプ」・・・消滅

 

「久井 武臣」スタンド名:「ストゥームAct2」発現

 

「海山 イデヤ」・・・この後連絡先を交換しようと提案するも、即断れて帰宅後一人で泣いた

 

 

 

 

 

 




いかがっだでしょうか?ここでスタンド紹介です。

スタンド名:「ストゥーム・Act2」
   本体:久井 武臣

破壊力-B、スピード-B、射程距離-C
持続力-D、精密動作性-C、成長性-A

能力
気流を操るのに加えて両手の指から空気を圧縮して生成した「空気弾」を発射する能力、弾数に制限はないが、一度の連射で最大五発までが限度である


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第42話 母「比屋定奈美」

5月4日 我那覇市内 早朝

 

 

陽が上り始め、明るくなりつつある市内の海岸線に一人の女性が佇んでいた。その人は大きく背伸びした後、深呼吸をした。

 

 

「フゥ・・・気持ちいい朝だね」

 

 

亜麻色の長髪を風に靡かせながら波打ち際を歩く、しばらく歩いた所である人物に出会う。

 

「おはようございます、今日は大漁ですか・・・・舟木さん?」

 

「相変わらず早起きだな、それに今日「は」じゃなくて今日「も」だよ」

 

そう答えたのが地元の漁師の「舟木」である、そして舟木の答えに対して微笑する女性

 

「フフ、相変わらずなのはお互い様ですよ」

 

「そうか、所で・・・」

 

そう言って、訝しげな顔をする。

 

「わしに「息子」の様子を見に行かせるのはもうやめておくれよ」

 

「そんな事を言っても引き受けてくれた舟木さんには、感謝してますよ」

 

「全く・・・奈美嬢には困ったものだ・・・」

 

女性は微笑むとその場から立ち去る。

 

 

 

 

 

同日 9時

 

比屋定承一は市内の公園で時計を見ながらとある人物を待っている、もちろん「μ’s」の面々も揃っている。

 

「遅いな・・・」

 

時間を見ると約束の9時を過ぎていた。そんな承一の姿を心配してか真姫が話しかけてくる。

 

「大丈夫なの?約束の時間になっても来ないなんて・・」

 

「ああ、まさかだとは思うけど」

 

「「スタンド攻撃」・・・・」

 

その言葉に反応して彼女の方を見る。

 

「有り得ない訳はないでしょ、穂乃果や私達が襲われたから」

 

承一の脳裏に嫌な推測が浮かび上がる、一昨日と昨日で「スタンド」がこの島にやって来たのだからその可能性はあるかもしれない・・・・

 

「みんな!、少し家の方に行くからここで・・・・・」

 

「ひゃあ!!」

 

家の様子を見に行く旨を伝えようとした所、妙な声が聞こえたのでそちらの方に目をやると穂乃果の背後に何者かがおり、がっしりと両腕で彼女の胸辺りを押さえていた。

 

「ん~~?あら・・・」

 

その人物は何かに気づいた様子でその腕を脇腹や腕周りにやった。

 

「お腹周りに少しばかり余計な脂肪はついているけど、あまり問題はないみたいね。それに脚周りの筋肉が鍛えられているのを見ると・・・・」

 

「く、くすぐったいよ~~!!」

 

「アイドルみたいな事をやっているのかしら」

 

「へ・・・?!」

 

まだ自分の事を話していないはずなのにズバリと言い当てられたことで穂乃果は固まってしまった。

 

「それは置いといて・・・次は」

 

それだけ言うと今度は海未の方に移動する。

 

「こっちの大和撫子ちゃんだね~♪」

 

「な、何ですか!あなたは!?」

 

海未も穂乃果同様、全身を弄られてしまう。その光景に呆気にとられていた真姫はようやく現実に戻った。

 

「ちょっと何やっているの!?」

 

するとさっきから黙っていた承一が小さな声で言った。

 

「・・・俺の母さんだよ」

 

「・・・・え?」

 

 

公園から移動して一行はカフェにやってきた。

 

「・・・という訳で改めて紹介するよ、俺の母の」

 

「「比屋定奈美」だよ、宜しくね!「μ’s」の皆さん♪」

 

「「「「「「「「「よ、宜しくお願いします」」」」」」」」」

 

「どうしたの?疲れているみたいだけど」

 

「スキンシップと称して弄られたら誰だって疲れるだろ・・・」

 

「そうかな~~?」

 

全く悪びれず「テヘペロ♪」と言いたそうな顔をしている母に対してため息をついて頭を抱える息子だった。

 

「そんな事より、まさか承一がアイドルの手伝いをやっているなんてね・・・・これも血筋なのかしらね」

 

「そうかも・・・・」

 

二人の会話に疑問を抱いた穂乃果が承一に聞く

 

「ねぇ今の血筋ってどういう事なの?」

 

「ん?それはな・・・母は昔アイドルをやっていたんだよ」

 

「へぇ~~って、ええ!!?」

 

あまりの衝撃で公共の場だということを忘れて大声で驚いてしまった。

 

「そううよ~「トライエンジェルズ」って聞いたこと無い?」

 

「「トライエンジェルズ」・・?」

 

「き、聞いたことありますよ!」

 

そう言ったのは、先ほどのスキンシップでお腹周りを弄られ過ぎた花陽だった。

 

「知ってるの?花陽ちゃん?」

 

「知っているも何も・・「トライエンジェルズ」と言えばアイドル黎明期を支えたグループとして業界として有名ですよ!」

 

花陽の言葉に続ける様に、にこが言う。

 

「当時は女性アイドルは陽の目が当たらなかったから歌詞や作曲、振り付けも全て自分達でこなしていたことでも有名よ」

 

「今のアイドルブームの起源と言っても過言ではないですよ!」

 

花陽のあまりの饒舌ぶりに呆気にとられていた奈美だったが話を聞き終えた後、少し笑みの表情を浮かべる。

 

「君はとてもアイドルが好きなんだね、その話し方からよく分かる」

 

「へ!?・・・あ、あの・・・」

 

「嫌な気分とかじゃないんだ・・・ただ・・・嬉しくてね、そんな人に出会ったのは久し振りだから・・・」

 

「母さん・・・」

 

奈美の表情はどこか遠くの記憶を懐かしむように見えた。

 

 

「さぁ!辛気臭い空気は置いといて、我が家に行こうか!ご馳走も作ってあるから~」

 

その声と共に奈美は席から立ち上がりカフェの会計を済ませる為にレジに向かう、承一達はやれやれと思いつつ、各々席から立ち上がり、彼女の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~******~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は同じくして 那覇国際空港 国内線到着ロビー

 

 

東京発那覇行きの飛行機が到着し、手荷物を受け取る為ロビー内の「ターンテーブル」と呼ばれる個所に人が集まり始める。

その中で一際目立つ金髪で後ろ髪を真っ赤で大きなリボンで結んでいる女性がいた、彼女は手荷物を受け取ると出口に向かって歩き出す。その道中で携帯電話を取出し、とある人物に電話をかける。

 

 

「もしもし、10時35分24秒那覇市に定刻通り到着、これより我那覇島へ向かいます」

「ええ、それでは同志・・・後ほど」

 

そう言って通話を終了する、通話相手の名前に「空条 丞一郎」とあった。

 

女性は出口を出てタクシーに乗り込み、そのまま市内へと消えていった・・・・・




いかがだったでしょうか?今回はスタンド紹介はないです。

次回、長らくお待たせしました・・・応募スタンド最後の登場となりますので楽しみにしてください!

感想・ご意見お待ちしています。


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第43話 スーパーチャージャーその①

お待たせしました、今回から以前募集したスタンドが登場します。
それではどうぞ


同日 比屋定家 AM11:10

 

「ご馳走様、美味しかったよ母さん」

 

「フフ、お粗末様」

 

日差しが差し込んでくる実家のリビングで、母さんの手料理を堪能し今は食休みをしているところだ。

 

「ゆーきーほ、お茶っ~」

 

・・・穂乃果がソファで寝そべりながらそう言ってた、まるで家のようにくつろぐ姿を見てあきれつつ微笑ましくも思った。

 

「みんな、いい子達ね・・・とても眩しく見えるわ」

 

「そうかな?まぁ、みんなはアイドルをやっているからかな・・」

 

「それもあるかもしれないけど、それとは別の輝きを感じるのよ」

 

母さんが言う「輝き」という言葉の意味が良く分からず、首を傾げてしまう。

 

「今は分からなくても、いずれは分かるわよ・・・」

 

そう言うと母さんは洗い物をする為、キッチンへと移動する。その姿を見届けると窓の外へ目をやる。

 

すると、家の裏側から木の葉が揺れる音と殺気を感じた。

 

 

「・・・ッ!」

(い、今のは・・・殺気!?まさかこんなとこまで来るとは)

 

今の殺気を感じ取ったのか、希が俺の隣にやってきた。

 

「承一君・・・今」

 

「ああ、俺も感じ取ったよ・・・」

 

「どうする?うちらも出た方がいい?」

 

こちらは四人、対する相手は・・・おそらく一人だろう、しかし、囮の可能性もないとは限らない・・・なら

 

「いや、ここは俺だけで行く事にする。希はみんなに事情を話して家の中にいるんだ」

 

「分かった、気をつけてな」

 

軽く頷いて玄関まで移動をする、その道中でキッチンの入り口の前を通り過ぎる時、声が聞こえてきた。

 

「承一、無事に帰ってきて・・ね」

 

少しばかり震えている声だった、母さんは父の事を思い出したのだろうか・・・そんな声に俺は、

 

「もちろん!」

 

そして、家を出て裏の方へ回る。裏手に広がるのはうっそうとした森林である、これは海の方まで伸びており、昼間でも若干薄暗くて不気味な雰囲気をだしていた。

林の入り口まで来た所で仁王立ちをしている人物を発見する。

 

「・・・・」

 

そいつは黒髪で頭頂部が針のような髪型をし、小太りの大男だった。

周りを見渡し、誰もいないことを確認する。

 

「何者だ?お前は・・・」

 

「・・・・・」

 

さっきから一言も喋らないのは気になるが・・・・先手必勝だ!

「スタンド」を出し、奴に向かって拳を繰り出す。

 

「オラオラオラオラッ!」

 

拳は奴を確実に捕らえたが・・・・・

 

 

(全く手ごたえがない・・・・だと?)

 

 

相手は力なく仰向けになり、倒れてしまった。改めて周りを見るがそこには静寂に包まれた林あけがあった。

警戒しつつ、倒れた奴の下に近寄る。

 

「・・!脈がもうない・・・死んでいただと!?」

 

一度に起きた出来事の情報を整理する為、考えていると背後に一瞬気配を感じた。

 

「はっ!」

 

「ウッシャアアア!!」

 

数発の拳がさっきまで自分の頭があった所を通過する、それを紙一重で避け向き直す。

 

「フム、これを避けるとは・・・中々やる」

 

「・・・お前は誰だ?」

 

「初めましてと言えばいいか・・・私は「三枝三機哉」だ、君と同じ「弓と矢」を求めているものだよ」

 

「何だと・・・!」

 

三枝と名乗った奴は長めの金髪が特徴でスーツを着こなす普通のサラリーマンに見えるが、纏っている雰囲気は異常だった。

 

「その殺気・・・何人の命を奪ってきたんだ!」

 

「殺気だけでそこまで分かるのか・・・・まぁいい、問い答えるなら「知らない」だ」

 

「な・・!」

 

「それに殺したなどといった感覚はないよ・・・・敢て言うのなら「自分の平穏」を守る為にやったことだからな、何も間違ってはいないだろ?」

「君がゴキブリを潰して罪悪感を感じないのと一緒だよ、「自分にとって不快な物」を排除にしただけの話だからね」

 

・・・・狂ってやがる、いやそんな言葉でも足りないぐらいの狂人ぶりだ・・・・・・淡々と喋っているあたり嘘は言ってないことが分かるし、本当に罪悪感も感じていない・・

 

「・・・お前の様な奴にあれは渡せない!!」

 

「別に渡さなくてもいいよ、「殺して、奪い取る」までだ!!」

 

 

 

「「アウタースローン」!!!」

 

 

「「キング・ロマネスク」!!!」

 

お互いのスタンドがぶつかり合う、「アウタースローン」が放った拳を「キング・ロマネスク」が右腕で防ぐ、空いた左手で首を狙うが足を引っ掛けられ仰向けの姿勢で倒される、その途中で「アウタースローン」の左腕の正拳突きが飛んでくる。

 

「オラッ」

 

「ちぃ!!」

 

「キング・ロマネスク」が両手で腕を掴むと倒れそうになっている自分の反動を利用し、後方へと投げ飛ばす。投げ飛ばされ細い樹木に激突しその衝撃で木が折れる。

倒れた三枝はすぐに起き上がり、拳を叩き込む為近寄ろうとするが目の前に先ほど折れた樹木が迫っていた。

 

「く、無駄無駄っ!」

 

ラッシュで木を打ち砕く、しかしその先には誰もいなかった。

 

「・・!そこか!」

 

「オラッ!」

 

上に影が映ったかと思うと、ほぼ真上から拳が飛んでくる。それにギリギリの反応をし同じ拳を放つ。空中でお互いの拳がぶつかる。

 

「オオオオオ!!」

 

「ぐ・・・こ、こいつ・・!」

 

「アウタースローン」の拳の圧力が強くなっているのが分かる。それと同時に受け止めている自分の手にひびが入ってそこから出血をする。

 

「ぐ・・あ」

 

痛みの為、拳を引っ込め後方へ退避する。承一はそのまま地面へ降り立つ。

二人の男が面と向かって対峙する。

 

お互いにチャンスを窺っていた、相手を一撃で仕留める為に・・・そしてほんの少しばかりの風が二人の間に流れる。

 

それを合図にほぼ同時に動き出す・・・・しかし

 

「はっ!」

 

「何・・!」

 

突如、横から来た黄金に輝く光の筋みたいなのが二人同時に向かって来る。

それを避け、筋が来た所に目をやると一人の男が立っていた。

 

 

「そこまでだよ・・・お前達はここで始末させてもらうよ・・・」

 

 

その男に承一は覚えがあった。

 

 

「・・・・「神場崎 渚」・・・!」

 

男・・・「神場崎 渚」は不敵に笑みを浮かべる。




いかがだったでしょうか?スタンド紹介は次の回になります。

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第44話 スーパーチャージャーその②

 

承一にとって目の前の男、「神場崎 渚」の第一印象は悪いものではなく、むしろ今まで出会った中での敵スタンド使いとしてはマトモな部類に入っている。

 

だが・・・今の彼はとてつもない殺気を纏っているのが分かる。立っているだけのはずなのにこちらは冷や汗が出てきて、威圧感のせいか胸が圧迫される感覚も覚える。その状況下で先ほどまで相対してた「三枝」が口を開く。

 

 

「何者だ?邪魔をしないでもらおう」

 

「邪魔?、そんな事はしないよ・・・ただ」

 

そう言いながら右手を銃の形にして、それを三枝に向ける。

 

「続きは・・・あの世でしな!!」

 

言葉と同時に指先が光ったかと思うと、凄まじい速度で「何か」が放たれた。

 

「何・・・!」

 

一瞬の出来事なので三枝は屈んで避けようとしたが、その動作よりも早く彼の左肩を撃ち貫いた。

 

「うぐあ・・・!」

 

「心臓を狙ったが・・・いい反応だな」

 

肩からの出血で片膝を地面につける三枝を横目で見ると、今度は承一の方に向いた。

 

「君は確か・・・ホテルの方で出会っていたな、まさかあんな形で会うとは思ってもなかったよ」

 

「・・・・」

 

何の反応を示さない承一の姿を見て、一つため息をすると何かを思い出したかのような素振りを見せた。

 

「そう言えば、君は「空条仗世也」の息子だそうだね・・?」

 

「父さんを知って・・・・!まさかあんたが?!」

 

「そう・・・「私」が彼を「殺した」のだよ!!この手でな!」

 

 

この時、承一は冷静でいなくてはならなかった能力の全容が分からない内は下手に近付かないのはスタンド戦においては基本であり、「相手の能力を見極める」のがまず最優先であった。

しかし、承一は冷静ではいられなかった・・・父の無念、残された母の事を思うと・・・だから

 

「スタンド」で目の前のヤツをぶっ飛ばす!、それだけが頭を駆け巡った。

気がつくと既に走り出して、距離が縮まりつつある。

 

 

「まだ青いな・・・これしきのことで冷静さを欠くとは・・!」

 

それだけを言うと、懐からハンカチを取り出しそれを丸めて承一の方へ投げる。

 

「・・・?」

 

「・・・「スーパーチャージャー」!」

 

その言葉とほば同時にハンカチの承一側部分にあたるところから放射線状に、針状の光が飛び出してきた。

それらは腕や脚に刺さり、一本一本の痛みは大したことはないが主に脚に刺さった為、歩を止めてしまう。

 

「く・・・うう」

 

「彼の息子と言っても・・・その程度か」

 

「だが・・・」

 

神場崎が承一をまじまじと見る。

 

「本当に良く似ている、その黒い髪もオールバックの様な髪型も・・・唯一似てないのは身長ぐらいだな」

 

「まぁしかし・・・それもどうでもいい事だな、これから死ぬ君にとっては」

 

それだけ言うと、指を銃の形にして承一の頭部に向ける。

 

「「アウタースローン」!!」

 

「ム・・・!」

 

「スタンド」で近くにあった木の根元を殴りそのまま倒す、一瞬早く反応した神場崎は後方へ退避をしたが、横から近付いてきた三枝が待ち構えていた。

 

「くらえ!「キング・ロマネスク」!」

 

「雑魚がしゃしゃり出てくるんじゃない!!わきまえろ!」

 

指を三枝の足元に向け、そのまま「スタンド」を発動させる。それは左足を貫いた。

 

「うあ!・・・・」

 

跪く三枝に対して、その顔面に蹴りを入れ吹き飛ばす。

その隙を突くべく、承一が距離を詰めていた。

 

「オラオラッ!」

 

「次は君か・・・」

 

迫る拳を避け、地面を蹴って飛びさらにその足で木の幹を蹴って飛び上がる・・所謂三段跳びの要領で承一の真上を通過し、着地する直前で周りの景色と「同化」する。

 

(周りと「同化」した・・・・ここでじっとしているのはまずい・・・なら)

 

この場に留まるのは危険と判断をし、林の中に逃げる承一・・・それを見ていた神場崎は彼を追う。

 

(林の中なら障害物が多くこちらの動向を掴め易いと思ったか・・・無駄なことを)

 

 

そして一人取り残された三枝は悔しさを滲ませていた。

 

(くそ・・!どいつも私をこけにしやがって・・・・だが)

 

彼の心は悔しさの反面、これまで会ったこともない敵を前に高揚感に似たものを感じていた。

 

(認めたくはないが・・・奴等は強いことは分かった、そして今の状況はかなり追い詰められている・・・しかも能力の全容が分からないときた・・・)

(平穏を求めて「弓と矢」を探し続けていたが、こんな壁にぶつかる事になるとは・・・しかしこれは私への「試練」と受け取った!)

(平穏の為のこれから歩み続ける幸福な人生の為に・・・・・・私は「このくそったれな運命を乗り越えてみせる」!!!)

 

三枝は立ち上がり、よろめきながらも前に進んでいく。

 

 

林の中では承一が走り続けながら後ろから追ってくるものの存在を感じ取っていた。

 

(やはり、こちらに向かってきたか・・・さっきから攻撃をしてこないのは不気味だがここ一つ試してみるか)

 

走っている足を止め、「スタンド」で周りにある石を掴み後方へ投げる。そして手に持った小石に能力をかける。

 

「「アウタースローン」!」

 

するとさっき投げた石達が戻ってくる。それらは枝などを折ったりしながらこちらに向かっているが何かにぶつかった様子はない。

 

(後ろからではなかったのか・・・だがまだ気配は消えていない・・・)

 

手元には集まってきた石がある。それを地面に捨てようとした時、左後方から枝が何かに裂かれる音が聞こえた。

 

「・・・ッ!」

 

すぐさま持ってた石を後方に投げ能力をかける、集めたのは地面の土だった。

その土壁に何かが当たり、焦げる様な音がする。

その場から離れるとまた追ってくる気配がしてきた。

 

(まだ追ってくるか・・・しかし距離はまだ詰められていない!)

 

 

しかし・・・走り続けていると少しずつ視界が開けていくのが分かり、そのまま林を抜け砂浜がある海岸線に出てしまった。

 

 

「なっ・・・!」

(いつの間に・・開けた場所に出ない様に注意を払ったつもりが、まさか今までは誘導されていたのか・・・)

 

その時、後ろから声が聞こえた。

 

「少し気分転換に・・・・昔話でもしようか」

 

「何!?」

 

「君が一番思い出したくない記憶・・・「五年前の出来事」でもな!」




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。応募してくださった「鮭宵」様ありがとうございます!

スタンド名:「スーパーチャージャー」
   本体:神場崎 渚(同化人間)

破壊力-A、スピード-C、射程距離-なし
持続力-D、精密動作性-B、成長性-C

無像型のスタンド、使用時にエンジンに使われるパイプが周りに現れる。
能力
本体が触れたあらゆるエネルギーを本体自身か本体の所有物に溜め込める。溜められる時間は一分が限界。溜め込んだエネルギーは衝撃として解放できる。
解放する場所や量や方向も本体の自由だが一ヶ所からしかできない、時間が過ぎた場合は全方向に溜めた力と同じ衝撃が拡散される。
溜めたものの耐久量以上の力が溜め込まれると崩壊が起こり完全に壊れると溜めた力は辺りに霧散し消滅する。


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第45話 スーパーチャージャーその③

??? 

 

周りには視界を遮るほどのもやがかかっていて、ここが何処なのかは分からない状況である。そこに二人の男が立っているが両者とも呼吸がひどく荒れ、脚は小刻みに震えており、立っているのは精一杯だというのが窺える。

 

一呼吸を置いた後、両者の背後から「スタンド」が飛び出しお互いの拳がぶつかる。

 

 

「オオオオッ!!!」

 

 

黒髪でオールバックの髪型が特徴的な男の「スタンド」がもう一方の男の「スタンド」の拳を砕き、そのままの勢いで顔面を捉える。

 

 

「う・・・ぐっ!!!」

 

 

顔面に直撃し男の「スタンド」は右目辺りからひび割れ、そのひびは首を通り胴体へ到達しそこからの出血もひどいものになっていく・・・その最中、男は必死の叫びをあげる。

 

 

「ぐがあ・・!ま、まさか・・・!この私が!・・・・この・・・私が!」

 

 

男は自らの視界が三等分される中、自分を倒した憎むべき相手を見る・・そいつは何も言わずただこちらを見つめているだけであった。

 

 

「よ、よくも・・・!貴様さえ・・・邪魔をしなければ・・・・!!!我が愚息「仗世也」よ・・・」

 

「・・・・永遠の眠りにつけ、親父・・・・」

 

 

男の裂傷が腰にまで到達した時、噴水の様な血を出し空を仰ぐように倒れ絶命した。その姿を見てもう一人の男「空条仗世也」はそう呟いた。

 

 

 

ーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーー

 

 

五年前・・・西暦2010年6月24日

 

 

「・・・・はっ!」

 

ベットから飛び起き、荒く息をしながら起きたのは「空条仗世也」(当時42歳)である。

 

 

「夢・・・・か」

(それにしても「あの時」の事を夢に見るなんて・・・・)

 

寝汗で濡れた額を拭いながらベットから降り、シャワーを浴びる為一階に向かうことにした。

 

「おはよう、奈美」

 

「あら!おはよう、あなた」

 

一階に降りるとキッチンで朝食の準備をしていた妻の「比屋定奈美」の姿があった。そしてもう一人の家族が二階から降りてきた。

 

 

「おはよ~~」

 

「おはよう、承一!」

 

「おはよう・・・また寝不足なのか・・?」

 

 

眠そうな目をこすりながら降りてきたのは、当時小学生であった「比屋定承一」だ。

 

 

「うん、だって明後日の遠足が楽しみなんだから!」

 

「はは、分からなくはないな」

 

「ふふ、そうね」

 

そんなやり取りをして父と子は洗面所に向かい、妻は出来上がった朝食をテーブルへ運んでいた。

二人がリビングに戻る頃には既に出揃っていていつでも食べられる状態にあった。

 

 

「うわ~~美味しそう!」

 

「盛り付けも綺麗だ、流石だな!」

 

「も、もう、二人してそんなに褒めないでよ・・・ちょっと恥ずかしいから」

 

そう言って少し顔を赤くする奈美を見てほほ笑む仗世也と承一・・・これが彼等の日常であった、これから起こる事が想像を絶することになるとは誰しも思っていなかった・・・

 

始まりは食事中に掛かってきた一本の電話であった。

 

 

「・・・ん?誰からだろう・・・?」

 

席を外し、通話ボタンを押す。

 

「もしもし、ああ舟木さんか・・・・え?隣の島に・・・構いませんよ、では後で」

 

「どうかしたの?」

 

「ああ、隣の島の連絡が昨日から無いらしくて、これから様子を見に行こうと」

 

「・・・大丈夫なの?」

 

「心配ないよ、多分電波を受信するアンテナとかの故障か何かだと思うから」

 

優しく妻を諭した後、身支度をして家を後にする。外に出た時空がどんよりとした曇り模様であった。

 

 

「予報では雨だったからこの後降るかもしれないな・・・」

 

 

車を走らせ、「我那覇港」へ行きそこに泊めていたクルーザーに乗り込み発進させる。

港から約五分の所にある島に問題なく着いた。だが・・・

 

 

(問題が無かった・・・だと?)

 

 

島の村長と状況を確認した所、全く問題は見られなかったとのことであった。今は念の為にと電波やそれを受信するアンテナを確認した後、自らの船の元に帰る途中であった。

 

 

(アンテナもおかしな所は無かった、電波状況も変わっていることも無かった・・・となれば昨日の事は何だったんだ・・?)

(いや、問題が起こらなかったんだ・・・それならそれでいいんだ)

 

そう自問していると目的の船に到着し、乗り込むと同時に小雨が降ってきた。

 

(降り始めたか・・・急いで帰ろうか)

 

船体を停めている係留綱を外そうとした時、不意に声が聞こえてきた。

 

 

「2010年6月24日・・・ここまで来るのに随分な時間を要してしまったな・・・」

 

声のする方を見ると、操舵室の所に一人の男が座っていた。蒸し暑い時期にも関わらずロングコートを羽織ったソフトモヒカンの男だった。

 

「!?何者だ?お前は・・・」

 

「君の知り合いの友人と言った所かな?・・・・いや「実父」と言ったのが正しいかな」

 

「ば、ばかな・・・!!?」

(こいつ・・・「あの男」の仲間だと言うのか?!・・・まさか・・!)

 

「驚くのも無理はないか・・何せ「始末した男」が生きてるかもしれないのだからな」

 

その一言を聞いた時、今まで漠然とあった不安が現実のものとなった瞬間だった。それと同時に仗世也の心にある決意が灯った。

 

刹那と同時に仗世也の背後から「スタンド」が出る!

 

 

「「アウタースローン」!!!」

 

 

出現した人型スタンドは、目の前の男にラッシュを入れる・・・・・はずだった。

 

 

「「レイニーデイズ」!」

 

 

その言葉と共に現れた仮面を被ったスタンドが現れ、両手足を薄い紙状に変えられてしまい、力なく倒れてしまう。

 

 

「うぐ・・・あああ」

 

男が立ち上がり、ゆっくりと歩を進めてくる。

 

「仲間がいないと思っていたのか?・・・・・・舐めるなよ「空条仗世也」、ここでお前を始末する」

 

 

 

 




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第46話 スーパーチャージャーその④

 

男がそう言い終わるのと同時に、彼の背後から新たな男が出てきた。

 

 

「呆気ないものだな、もう終わるとは・・」

 

「油断は禁物だぞ、座井部は右に回れ」

 

 

もう一人の男「座井部 強」は言われた通り、仗世也の右側に回り込む

 

 

「さて「空条仗世也」よ・・・ここで始末するが一つだけ答えてもらうことがある」

 

 

仗世也は怪訝な表情で男を見る。

 

 

「お前が持っているはずの・・・鏃だけの「弓と矢」はどこにある・・・?」

 

「・・・!!」

 

その質問を聞いた時、誰が見ても動揺をしている表情をしてしまう仗世也・・・それを見て確信を得られた顔をする男

 

「やはり知っていたな・・・何処にあるか・・・言え!!」

 

男の蹴りが脇腹を強く捉える、喉が圧迫される感覚に陥り思わず咳き込んでしまう。

 

「がはっ!・・・ごほ、ごほ・・・」

 

 

さらに男は仗世也の髪を掴むと操舵室の方に投げ飛ばした、飛ばされた先は操舵室の扉の横にある壁だった為背中を強打する。

 

「いいか、このまま言わなかったら・・・お前の家族を皆殺しにするぞ、いや家族だけじゃない・・お前に関わった全ての人間を殺してやるぞ」

 

「な、何だと・・・・」

 

「それが嫌ならさっさと鏃の在り処を言うことだな・・・」

 

家族や関係のない人達の命を盾にするやり方に怒りを覚えるが、この状況から脱出しなければ皆が危険に晒される。仗世也は思考を静かにそして素早く張り巡らせる・・・

 

「・・・ふ、ふふ・・・」

 

静かな笑い声が仗世也の口から出る、それを聞いた男は疑問符を浮かべた。

 

「何が可笑しい?」

 

「いや・・・いい考えが浮かんだよ・・・お前達を倒す算段がな・・・」

 

「何・・・・?」

 

仗世也が顔をあげ、二人の男を睨みつける。

 

「お前達が何者かは知らんが必ず倒す、そしてその後ろにいる者も含めてだ!」

 

「オイオイ・・・・何を言っている・・・追い詰められておかしくなったのか?」

 

男は周りを見渡す、だが誰も近づいてくる気配や何かが起きることも無かった・・・・・

 

「この状況で誰かが助けに来ると思っているのか?!」

 

その言葉を聞いた仗世也はやれやれと言った表情をした後、口を開く。

 

「「誰かに助けを求める」なんて一言も言った覚えはないんだか?・・・ヒントを出すなら「耳をすませ」だな」

 

「何を・・・!?」

 

「・・・最もヒントを出した所で遅すぎたな・・・」

 

二人の男の空が一瞬暗くなった為、見上げた所・・・・三m以上はある津波が船に向かって覆い被さろうとする寸前だったのだ。

回避することは勿論できず、船もろとも三人は海中へ投げ出されてしまった・・・・・

 

 

波が収まり、二人の人影が砂浜にいた。

 

「ごふ・・!ぐぐ・・・」

 

「はぁ・・・げほっ・・・・」

 

海水を飲んだか、息苦しそうになっているのは座井部と仗世也に尋問を行っていた「神場崎 渚」だった。

「神場崎」は苦悶の表情をしつつ、その眼には確かな憤りを感じていた。

 

(・・くそ・・・ここまで私を愚弄するとは・・・・)

「座井部!、すぐに島の北部で待機させていた「谷ヶ崎」と「川和」を呼べ・・・・ここら一帯を調べせるのだ・・」

 

「あ、ああ・・・・」

 

座井部はいつもは冷静な「神場崎」からは感じられない威圧感に萎縮し、言われた通りにする。

 

 

 

 

同時刻、島の南東海岸

 

船が停泊していた南海岸から数十メートル離れた所に位置するこの「南東海岸」は、岩肌がむき出しになっていて干潮時には潮溜りがいくつもでき、子供達の遊び場となっている。そんな場所に一人の男が海から上がってきた・・

 

「はぁ・・はぁ・・・何とか凌げたな・・・」

 

仗世也は荒い息を整えながら、砂浜まで来ていた。

 

(まずは奈美と承一を安全な所へ避難させないと・・・・その為には)

(船の確保が最優先だが・・・それがあるのは北の海岸のみ、何としてでも奴らより先に行かなくては・・・)

 

重い足取りで進もうとした時、前方からこちらに向かってくる二人の人影が見えた。その二人組は仗世也が視認できる位置まで来るとまじまじと見つめてきた。

 

「ふ~~ん・・・」

 

「・・・・」

 

一人は若い女性で何処かの学校の制服の様な物を着用しており、もう一人の男は黒のスーツを着用しているどこにでもいそうな感じだったが、両者からは殺気が放たれており只者とは言えなかった。

 

 

(く・・・ここに来て仲間がいるなんて・・・だが合流していないのなら、まだ勝機はある・・・!)

 

「この人が・・・ねぇ、神場ちゃんが探していた「空条仗世也」なんだね・・・?」

 

「そうだ、そして油断するなよ座井部と神場崎さんの二人から逃れた奴だからな」

 

「川和ちゃんは心配性だな~言われなくてもきちっと殺ればいいんでしょ?」

 

 

そう言い終わると女性の背後から「スタンド」を出し、こちらに接近してくる。

 

「私の「スタンド」で、心臓を直接凍らせればね!」

 

距離として三mほど来た所で、仗世也の「スタンド」が出現する。

 

「今更!もう私の射程内に入って・・・」

 

ふと、そこまで言った所で右足に違和感を覚え視線を落とすと・・・

 

「え!?あ、脚に砂がひっついて・・・!」

 

「・・・さっき色々話していた隙に俺が触れた砂を飛ばしておいたんだ・・・そして覚悟はできたな?」

 

「うっ!・・・・」

 

仗世也の「スタンド」・・「アウタースローン」が迫る。

 

 

「オラオラオラオラっ!!」

 

 

その刹那、ラッシュが放たれる・・・・・だが

 

「あぶないあぶない・・・」

 

「だから言っただろう・・・・油断するなと」

 

高速で放たれたラッシュは女性に一発も当たらかった、まるで拳から相手を避けるようにすり抜けてしまった。

 

「ばかな・・・何故?・・・」

 

「それが我が「アイズ・トゥ・トゥモロー」の能力だからさ・・」

 

そう答えたのは黒いスーツを着た男の方だった。

 

「対象の人物の三十秒後の未来を確定させる・・・この力で「谷ヶ崎飛鳥に対して三十秒後、いかなる物体も触れることはできない」という未来を確定させた訳だ」

 

 

未来を確定させる・・・そんなバカげた能力を目の前に何とか打開策を練ろうとする仗世也に男は静かに言った。

 

 

「悪いが・・・あんたに「次」はない・・・」

 

 

男の言葉の真意が分からない内に、仗世也の喉元に一筋の閃光が貫いた。

 

 

「がふっ!・・・・」

 

 

口から大量の血を吐き、地面に突っ伏せる・・・・

 

その一撃は致命傷となり、意識が薄らいでいくのがはっきりと分かった。

 

 

(はぁ・・・はぁ・・・)

 

 

走馬灯を見る。

 

21年前、四人の仲間達との約二か月余りの旅路・・・・

 

 

奈美と出会った日の出来事・・・・

 

 

彼女と結婚し、子供を授かった日の事・・・・

 

 

そして、今朝の家族との最後の会話・・・・・

 

 

全ての思い出が脳裏を過り、仗世也は・・・・

 

 

「奈美・・・承一・・・・」

 

 

愛する家族の名前を消えそうな声で呟き・・・・その生涯に幕を下ろした・・・・・



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第47話 スーパーチャージャーその⑤

 

 

神場崎が話した過去に承一は驚きを隠せなかった。それは自らの「スタンド」を進化させた「弓と矢」の鏃のみが、かつて父が所有していた物だったからだ。

そんな承一の様子を見た神場崎は短く微笑えむ。

 

「・・何がおかしい・・?」

 

「いや・・・運命とは皮肉なものだなと思ってしまったのだよ」

 

「仗世也は家族を巻き込まない為に自らが鏃を持っていたが、それが死んだことによって私の手に渡り、そして谷ヶ崎に渡して「東京」での「スタンド使い」達を生み出す計画を担わせた」

 

「その谷ヶ崎が、東京で総合病院の院長になる予定だったとある医者に渡して計画の増大を図ったのだ」

 

その言葉に承一の脳裏に数週間前に西木野邸で起こった出来事が蘇る。

 

(とある医者・・・「柏原」の事か・・・!)

 

「病院なら患者やそこで働く医者とか、様々な人間に出会えるからな・・・もしかしたら「スタンド使い」が生まれるかもしれなかったからな、そしてなりより・・・・」

 

「そこで死んでも・・・「死亡証明書」とかの面倒な書類達を偽装できるしね・・!」

 

 

戦慄が走る・・・というのはまさしくこのことだろう、承一の本能が「コイツは危険だ!」と叫んでいる。

 

「だが・・・そんな計画を狂わせたのも、運命の皮肉を完結させたのも全てお前なのだ!比屋定承一!!」

 

「どういう・・・事だ?」

 

「ある日から谷ヶ崎が消息不明となり、それを調査していた座井部、川和が揃って行方不明となったのだ。貴様が倒したのだろうな」

 

「しかし、鏃の行方が貴様にあると知った時は思わず笑ってしまったよ・・・仗世也が遠ざけたはずの運命が巡り巡って息子に到達してしまったのだからな!」

 

 

承一は思う・・・父があまり自分の事を話したがらなかったのか、故郷である「東京」をわざわざ離れていったのか・・・その答えは家族に自分の過酷な運命を背負わさない為だった、ただ普通の生活を送って欲しかったのであると・・・なら今自分がすべきことは・・・・

 

 

「そんな話を聞かされたら・・・お前を倒さなくてはいけない!今!ここで!!」

 

「貴様も父と同じ運命を辿るがいい!!」

 

承一は「スタンド」を出す、神場崎は指先に対して「スタンド能力」を使う。

しかし、その間に割り込むように一つの影が現れる。

 

 

「神場崎渚!!お前をここで処分する!!我が平穏の為に!」

 

「小蠅如きが!!図に乗るんじゃない!!!」

 

後から追いかけてきた「三枝三機哉」が追いつき、三つ巴の戦いが始まる。

 

 

 

三枝はどこからか拾ってきた鋭く尖った木の枝を神場崎に向かって投擲する。それを難なく避けるが、避けた先に承一の「アウタースローン」が待ち受けていた。

 

「何っ!!」

 

「オラァ!!」

 

神場崎は「スーパーチャージャー」を使い、手のひら全体にエネルギーを放出させた。それによって拳は弾かれ、その反動で体勢が崩れる。

不安定な体勢になった承一を狙おうとするが、三枝が自身の後方から迫っていた。

 

「貰ったぁ!!」

 

しかし、その攻撃は地面に放った「スーパーチャージャー」によって発生した砂埃によって視界が封じられた為、不発に終わった。

 

その隙に神場崎は「同化」を行い、周りの景色と同化する。

 

「またっ!・・・」

 

「・・・っ!」

 

二人ともその場から動かずに、神場崎の居場所を探そうとするが・・・

 

 

「ぐ・・・あ!」

 

「うぐ・・・!」

 

 

次の瞬間、承一は右足を三枝は左腕を貫かれていた。

 

「思い込みとは恐ろしいものだな・・・私が「同化」して直ぐに移動をするとでも思ったのか?」

 

その問いには、二人は答えられることはできなかった。

 

「フン、まぁいい・・・次はとっておきで始末をしてやろう・・・」

 

それを言うと、右手の人差し指に光り輝く小さな「球体」が除々に作りだされていった。それは水風船ぐらいの大きさになったところで承一に向かって投げる。

早くも遅くもないスピードで近づく球体に焦りを感じたか、「スタンド」で落とそうとする。

 

「オラオラオラッ!!」

 

放たれた拳は球体を確かに捉えるが、その刹那輝きが一層増したかと思うと轟音と共に大爆発を起こした!

 

 

「今の球体はこれまでと一緒でエネルギーを溜めた物だが、一つ違うのは「崩壊寸前までエネルギーを溜めた」ということだな、これでちょっとした外部からの刺激で爆発するようにエネルギーが拡散したのだ・・・と言ってももう聞こえていないかな」

 

「・・・・はぁ・・・はぁ」

 

承一はかろうじて直撃は免れたが、ダメージが大きく立ち上がることができなかった。

 

 

「承一は虫の息・・・トドメは後にするとして、まずはお前から始末しようぞ!」

 

そう言って三枝の方を向く、当の本人は腕のダメージを堪えていたがそれをもろともしない目つきでこちらを睨んでいた。

 

 

「良い目をするな・・・だがお前では私を倒すことは不可能・・・」

 

「その・・・上から目線の態度・・・実に不愉快だ、お前は必ず消す!」

 

「そんな強気な発言をしても、もう無意味だぞ・・・」

 

再び指先にエネルギーが溜まっていく、そして先ほどと同じような球体が出来上がってそれを投げる。

 

「お前にこれを躱せるかぁーー!!」

 

球体が迫ってくる・・・だが三枝は不敵に微笑む。

 

 

「躱す?そんな事はしない・・・むしろ」

 

 

そう呟き、三枝は球体に向かうとおもむろに「スタンド」で鷲掴みにする。

 

 

「敵わないと思って自暴自棄になったか・・・そのまま死ね!」

 

 

だが、爆発は起きず球体は原型を保たれたままであった。

 

 

「そんなはずは・・・!まさか・・・貴様の「スタンド能力」!」

 

「正解だ・・我が「キング・ロマネスク」は俺が不要と思った全ての情報を消すことができる・・・エネルギーにある「拡散する」という情報を消させて貰った」

 

「拡散ができないことで爆発自体を阻止するとは・・・」

 

 

三枝は手にした球体を前方に放り投げると、神場崎に向かい歩いていく・・・・そして距離は二メートルほどまで近づいた。

 

 

「この距離ならお互い外す心配は無くなったな・・・さぁ、死ぬ用意はいいか?・・・」

 

「面白い・・・だがここからなら致命傷となる部分はいくらでもあるぞ・・・」

 

 

互いに睨みあい、沈黙が流れる・・・・・

 

 

その時、吹き続けた風が一瞬だけ止む・・・・それを合図にするかのように二人が同時に、動いた・・・・!

 

 



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第48話 スーパーチャージャーその⑥

神場崎戦、決着!


時刻は神場崎が過去を語り終えた直後まで遡る。

 

比屋定邸のリビングで先ほどから落ち着かない様子で行ったり来たりしているのは「高坂穂乃果」である。

そんな姿にソファーで小説を読んでいた「西木野真姫」は痺れを切らし、本から顔を上げた。

 

 

「ちょっと穂乃果!少しは落ち着きなさいよ」

 

「え!あ・・・ご、ゴメン・・・」

 

 

それを言うと、真姫と同じソファーに座った。しかし脚を貧乏揺すりみたく小刻みに動かしている為、それが気になってしょうがなかった。

 

 

「どうしたのよ?さっきから落ち着かないみたいだけど・・・」

 

「あ・・・うん・・・」

 

 

真姫の質問に少し顔を俯いた状態で声を絞り出す。

 

 

「承君の事が心配で・・・それで・・・その」

 

「気になって落ち着かないって訳?」

 

 

穂乃果は首を縦に振って答えを示す、それを見た真姫は手にしていた本を机に置いた。

 

 

「それなら大丈夫だと思うわよ、彼の事だから問題はないんじゃない?」

 

「私もそう・・・思うけど・・・何だか」

 

 

穂乃果は目を強く瞑って、胸に手を当てる。

 

 

「モヤモヤするというか・・・胸の奥がざわつくような・・・・」

 

「他に何かしらの心配事があるの・・・?」

 

「うん・・・そんな感じ・・・」

 

 

それを聞くと、真姫は思考を巡らす・・・

 

(他の心配事・・・か、希の「スタンド」で周囲を警戒して貰っているけど特に変わった様子はない・・・他のみんなには二階に行っているから襲われることはない・・・じゃあ何が・・・?)

 

穂乃果が感じている「懸念」の謎を探ろうと考えていた真姫だったが、それは比屋定邸のチャイム音によって遮られてしまった。

 

 

「・・・・っ!」

 

「え・・・!?」

 

 

突然の出来事に戸惑う二人、希からは何も知らされていなかった為この訪問者は只者ではなく、何かしらの「スタンド」を所持していると思われた。

 

 

「真姫ちゃん、ここは私が出てみるよ」

 

「危険よ!相手が何者かが分からない今は・・・」

 

「念の為に「スタンド」も出しておく、真姫ちゃんは直ぐに二階にいる皆にこのことを伝えて」

 

 

無謀とも言えるこの提案だったが、今自分がしなくてはいけない事・・「戦う」のではなく「守る」ことを優先させた場合、素直にここは従った方が賢明であった。

 

 

「分かった、だけど皆を避難させたら必ず戻ってくるから!・・・それまでは・・・」

 

「うん・・・!」

 

 

穂乃果は笑顔で応え、そのまま玄関へ向かう。

 

玄関前まで来た所で「アクティブ・ガール」を発現させ、ゆっくりと近づく。そして扉を開けていく・・

半分まで開いた所で訪問者の全体が見えてきた、その人は紺色の女性用のスーツを着こなし、天然なのか染めたものなのかは分からないが綺麗な金髪をしていて、何より目を引いたのは真っ赤な大きいリボンでそれで後ろ髪を縛っていた。

 

 

「あ、あの・・・どちら様ですか・・・?」

 

「初めまして・・・私「神奈 いやび」と申します。以後お見知りおきを「高坂穂乃果」様・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻り・・現在

 

 

「「キング・ロマネスク」!!」

 

「「スーパーチャージャー」!!」

 

二人の体がほぼ同時に動く・・・「キング・ロマネスク」の左ストレートは神場崎の心臓を狙う、「スーパーチャージャー」の一撃は三枝の頭部を射抜こうとする。そして・・・

 

 

「・・・」

 

「・・・・な」

 

 

神場崎は己の目を疑った、完璧に狙ったはずの一撃は避けられていた・・・しかし、それ以上に不可解な事が起きていた。

 

(私の身体に何も起こらない・・?確かに奴の「スタンド」の拳は防御しなかった・・・だから当たっているはずだが・・・)

 

自身の身体を調べていく内に「ある物」が無くなっている事に気が付いた。

 

 

「き、貴様・・・!私の携帯を・・・・!!」

 

 

三枝の手にはしっかりと神場崎の携帯が握られていた。

 

 

「フン・・・狙いは最初からこれだったんだよ、馬鹿正直に戦いなど挑むわけがないだろう・・・」

 

それを言い終わると、背を向け素早く来た道へ戻っていく。

 

 

「ま、待て・・・」

 

「お前へのトドメは・・・「彼」に任せよう・・・・」

 

「?・・・はっ!!」

 

三枝の台詞に疑問符を浮かべるが、その意味は直ぐに分かった・・・・背後から迫る拳が見えたからだ。

 

 

「オラッ!」

 

「ぐ・・・はっ!!」

 

 

拳は顔面を確実に捉え、神場崎はその場に倒れる・・・それを見届けた三枝は林の中に消えていった。

 

「ひ、比屋定・・・承一・・・!」

 

「神場崎・・・・渚・・・」

 

顔や腕から出血が見られ、脚がふらつきながらもその眼は眼前の敵を見据えていた。そして一歩また一歩ずつ近づいてくる。

神場崎は考える・・・

 

(今すぐ携帯を取り返せなくては・・・奴の狙いは私が所持している「弓と矢」だ・・・しかし承一に背を向けることはできない、まずは承一を始末すればいい・・・「矢」の事はそれからだ・・・)

 

(それに・・・)

 

承一の足取りは重たいものであり、今倒れてもおかしくないほどだった。

 

(こんな手負いの虎の状態の奴に苦戦はしないだろう・・・数分で終わらせれば、それでいい)

 

神場崎は承一の方に向き直し、「スーパーチャージャー」を発現させておく。

 

 

「何も問題は発生しない・・・このまま、お前を始末することにはな」

 

「・・・・」

 

「そんな傷では戦う所か、歩くのも辛いのではないか?」

 

「・・・・」

 

 

先ほどから言葉も発しない承一に不快感を覚えながらも、左手の指を銃の形に構える。

 

 

「まぁいいか、これで終わらせ・・・」

 

 

言いかけた時、何かが弾ける音と共に赤い液体が飛び散るのが見える。それが散った箇所を見ると全て理解した・・・自身の左手の指があらぬ方向に曲がり折れていたからである。理解しきったのと同時に激痛が走る。

 

 

「ぐ・・・があああああっ!!!」

(何が起こった・・・いや、何をされた・・・のだ?)

 

 

「・・・今のは・・・父さんの痛みだ・・・・お前が与えた・・・!」

 

「・・・っ」

(見えなかった・・・この私でさえも・・・どういう事だ?)

 

 

改めて承一の「スタンド」を見る・・・だが何も変わった所はない、それが神場崎を戸惑わせる。

 

 

「く・・くそ!私が・・・この私がぁぁ!!!」

 

「オラッ!」

 

「ぶっ!・・・がはぁ!」

 

 

冷静さを欠いた神場崎が承一に襲い掛かるが、「アウタースローン」の一撃が胸部へ当たる・・・

 

 

「これからの拳に、父さんの分を入れる・・・」

 

「こ、この・・・わ、た・・・」

 

 

「オラオラオラオラオラオラッオラオラオラオラァァァァ!!!!!」

 

「オラッァァ!!!」

 

 

「ぐばっ!はァァァァ!!!」

 

 

高速ラッシュが全て打ち込まれ、身体は海の中まで飛ばされていき、そこで消滅した。

 

 

「終わったよ・・・父さん、ようやく仇を討てた・・・・でも」

 

 

誰もいなくなった砂浜で、承一は家の方角を見る。

 

 

「まだ、やらなくちゃならない事がある・・・・無事でいてくれ穂乃果、みんな・・・」

 

 

痛みが残る体を引きずりながら、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第49話 強襲、そして・・・・

今回の話で三章は終了となります


「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

承一はまだ痛む箇所を押さえながら、家の数百m手前まで来ていた。時間帯はちょうど昼時だったので太陽の日差しが体力を奪っていく、それでも一歩一歩前へ進んでいく・・・

 

 

(心配をかけさせる訳にはいかないからな・・・)

 

 

先の戦いからおよそ三十分ほど経っており、余計な不安を抱かせてしまうのではないかと思い歩を進めている。しかし承一にはもう一つの考え事があった。

 

 

(三枝の件を楓さんに報告をしないと、奴の事だから今後も俺を狙うに違いないからな)

 

 

神場崎と闘う前に、三枝と交わした会話が思い浮かぶ・・・自身の目的の為なら殺人をも躊躇わないあのドス黒い精神力、財団との協力で何とか手遅れになる前に止めないと・・

 

 

(おそらく・・・神場崎の持つ「矢」は奪われたかもな)

 

 

何より奴の事だから自分が持つ「矢」を奪う為、「μ's」のみんなに危害が及ぶかもしれない・・・それを防ぐ為にも話しておいた方がいいかもしれない

 

進み続けてようやく家が見えてきた・・・と思っていたが様子がおかしいことに気が付く。

 

 

「玄関が・・・開いている・・?」

 

 

あんな不用心な事を母やましてや「μ's」の皆がする訳が・・・それに開けたままでいるのもおかしい・・・

「何かが起きている」・・・そうとしか思えない、気が付いたら承一の脚は動いていた。

 

 

(頼む・・無事でいてくれ!・・・)

 

 

最悪の未来が頭を過ったが、すぐにかき消した・・・!そんな事を考えている暇があったら脚を動かせっ!と脳が叫ぶ。

そして・・・・眼前に広がる光景に言葉を失う・・・

 

 

スタンド攻撃の影響か、地面の所々が抉れていて、さらに目を玄関の周りにやるとそこには傷ついて倒れた二人の人物ーー真姫と希の姿があった。

さらに、視線を右にずらしていくとまた二人の人影があった・・・

 

 

一人は金髪の女性だったが見覚えがない人物だった。

 

 

もう一人の人物ーー穂乃果がいたが・・・その体はボロボロで気を失っているのかピクリとも動いていなく、その代わり謎の「スタンド」が彼女の首を掴み、その体を持ち上げていた・・・・

 

 

 

 

「な・・・・!」

 

 

言葉が続かない・・・だけど・・・早くしないと・・・!

 

 

 

 

「穂乃果ぁあああああああ!!!!!」

 

 

 

 

承一は体中の痛みに構うことなく走り出していた・・・それに気づいたのか金髪の女性がこちらを振り向く。

そして、「スタンド」を穂乃果から離し立ち塞がる。

 

 

「邪魔だぁあああ!!!」

 

 

「アウタースローン」を発現させ、ラッシュを放つ。

しかし、それを予測していたか全て受け流されてしまう。そのまま両腕を掴まれてしまい身動きができなくなった。

 

 

「・・・単調な動きですね」

 

「く・・・」

 

 

少しでも動けば腕を捻り上げられてしまう体勢の中、承一は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「何が可笑しいのですか・・・?」

 

「いや、ここまで自分の予想通りになったからな・・・つい」

 

 

言っている意味が分からず、少しばかり考える素振りをしようとした時だった。

 

 

(・・・?何、この音は)

 

 

どこからか乾いた音が微かに聞こえてきた、だがあまりにも小さい音なのでその正体は何なのか分からなかった。

 

 

「まだ気付かないのか・・?もう向かって来てるぞ」

 

「どういう・・・はっ!」

 

 

その瞬間、承一の背後から数個の植木鉢が飛んでくるのが見えた。それを避ける為に腕を振りほどいたが、一つが右腕に直撃し鈍痛に襲われる。

 

 

「ぐ、うぅ・・・」

 

 

解かれたと同時に、穂乃果の元に駆け寄り首元に手をあて脈の確認をする。幸いな事にただ気を失っているだけだったので、彼女を背にして目の前の敵と対峙する。

 

 

(私とした事が敵を甘くみるとは・・・しかし、あの一瞬で周りを確認する状況判断とそれをこちらに悟らせない技量、確かに厄介かもね・・・)

 

「神場崎の仲間か・・・いつの間に呼んだのか・・・」

 

「今の言葉に訂正を申し上げますと、彼に呼ばれたのではありません・・・・とある任務の為ですよ」

 

「へぇ・・・その任務とやらは?」

 

「たった今変更になりました・・・比屋定承一、あなたの抹殺にね・・・!」

 

 

言い終わったのと同時に「スタンド」を出し、向かってくる。

その「スタンド」に奇妙な違和感を感じる、赤紫の体色に悪魔を彷彿させる捻じ曲がった二本の角が生えている頭部だったが、その首から下は白色の外骨格の様な物に覆われていたからである。

 

 

(妙な「スタンド」だな、だったら能力を使われる前に先手を打つ!)

 

 

「「アウタースローン」!!」

 

 

能力を使い、先ほど飛んで割れた植木鉢の破片を集めさせる。次々に飛んでくる破片を叩き落としている為、歩みが止めてしまい、その隙を衝いて一気に距離を詰める。

 

 

「オラオラオラッ!!!」

 

 

射程内に入ったのを確認し、一気にラッシュを放つ・・・・・放たれた全ては当たるはずだった、だが・・・・・

 

 

「何・・・?!」

 

 

そこにはさっきまであるはずが無かったガラス版みたいな物があり、それがラッシュを防いでいた。

 

 

「こ、これは・・・・!」

 

 

さらに自分の周りを見渡すと戦闘機のコックピットの様な所にいるのが分かった、驚いている暇もなく大きな衝撃と共にそれが動いているのが分かった。

 

 

「まさか・・・!これが能力・・!?」

 

「そう・・・これは私の能力・・・いや借りた能力と言おうかしら・・・」

 

「どういう意味だ・・・?」

 

「その答えを知ることはできない、ただ確実なのはその戦闘機・・「F-4」はここを離陸後一時間もすれば墜落するという現実よ・・・」

 

 

その言葉と同時に「F-4」は宙に浮かんだかと思うと、そのまま急上昇をした。

 

 

「さようなら・・・これで計画に邪魔者はいなくなった」

 

 

戦闘機が見えなくなると、そう呟いてその場を後にした。

 

 

 

 

 

その頃、承一はコックピット内で気圧の変化や「G」に耐えながら打開策を考えていた。

 

 

(く・・・どうにかしないと、奴の言う事が本当なら・・・このままだと不味い!)

 

 

しかし、周りを見渡しても物一つもないのでそれが余計に焦りを促す。

 

 

(ダメだ、焦ってはいけない・・・弱点がない能力は無いのだから手はあるはずだ・・・)

 

 

承一の頭の中に様々な言葉が浮かぶ、一時間後の墜落は決定されている・・ならその裏返しで一時間以内なら何をしても墜落はしない・・・承一にある策が浮かぶ。

 

 

(無事でいられるかは分からない・・・だがやるしかない・・)

 

 

「スタンド」を発現させ、前方に狙いを定める。

 

 

 

「オラオラオラァ!!」

 

 

前にある壁をラッシュでぶち抜く、そしてパイロット席に座る。そして・・

 

 

「オラオラオラオラッ!!」

 

 

様々な計器をラッシュで破壊し、鉄くず達が出来上がる。さらに先ほどまで座っていた後部席の椅子部分を無理矢理「スタンド」で剥がした。

 

 

「「アウタースローン」・・・この細かいパーツを俺の周りに集める・・・!」

 

 

するとバラバラになった鉄くずが承一の周りを取り囲むようにして集まる。

 

 

 

その直後、急に減速したかと思うと機体はほぼ垂直で墜落していくのが分かった・・・・そして轟音と共に承一の意識は暗転した・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

比屋定承一・・・・・生死不明

 

高坂穂乃果、西木野真姫、東條希・・・・三人とも重傷の為、近くの病院に入院

 

三枝三機哉・・・・神場崎の私室から「弓と矢」を二本発見し、それをGET!

 

神場崎渚・・・スタンド:「スーパーチャージャー」、消滅

 

 

 

 

 

第3章「承一と過去と因縁」編、完

 

次話より、「最終章」が開始・・・・




いかがだったでしょうか?


感想・ご意見お待ちしています。


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最終章 廻る世界編
第50話 5月6日 SIDE「比屋定承一」


真っ黒な空間が広がっていく。

 

 

ここは…何処だ…?

 

 

俺は…どうなったんだ……?

 

 

思い出すことは確か…神場崎を倒して母さんとみんなが待つ家に帰った所、謎のスタンド使いと遭遇して戦い…そして能力が分からないまま、倒されてしまったんだ。

 

その事まで思い出すと真っ黒だった視界が徐々に明るくなっていくのが分かった。

 

 

「…ん?」

 

 

目を開け、一番最初に入ってきたのは薄暗い室内と古ぼけた天井だった…周りを確認しようと上半身を起こした所、腕や背中などに痛みが走る。

 

 

「痛ッ!」

 

 

無理に動かさない方がいいと判断して目だけを動かして見る、畳張りの床に年季の入ったキッチン…といっても食器棚とガスコンロと冷蔵庫、換気扇だけのシンプルな見た目であった。そして衣類を入れるのだろうかクローゼットも確認できた。

 

一通りの周りを見渡した所で玄関の鍵が開く音がした、ビニール袋が擦れる音が聞こえたた為買い物帰りか何かだと思われる。敵かもしれないので用心して自らの「スタンド」を出しておく。

 

扉が開かれたーーー

 

 

「気が付いたんだね、いやぁ~良かった良かった」

 

 

そこにいたのは、180cmぐらいの身長で服の上からでも分かるがっしりとした肉体で、黒髪の短髪で何より目立ったのが右目の下にある数センチの切り傷がより強面の印象を与えていた。

 

 

「あ、あなたは…?」

 

「自己紹介は初めてだね、わいは「島 秀二(しま しゅうじ)」ていう者で怪しい見た目だけど、怪しい者じゃないからね」

 

 

その外見で言われてもあまり説得力がないような…そんなことを思っていると買い物袋を開け、慣れた手つきで冷蔵庫にしまっていく。

 

 

「それにしてもびっくりしたよ~まさか、空の上から落ちてくるなんて…」

 

「え、そうなんですか!?」

 

「まぁ嘘だけどね~」

 

「嘘かい!!」

 

 

体が痛むから心の中で盛大にずっこけた…あんな見た目で冗談を言うなんて、人は見かけによらずとはまさしくこのことだろう。

 

 

「でも目を覚ましてくれて良かったよ、今から夕飯の準備をするからね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

取り敢えず悪い人には見えなさそうで一安心した。しかし俺自身の現在状況がまだ分からないままなので、夕食を食べたら聞こうかな。

 

 

「ご馳走でした」

 

「ああ~食べた食べた!」

 

 

お腹をぽんぽんと叩きながら島さんは寝そべっている、俺は食べ終わった食器達を重ね、キッチンのシンクに運ぼうとしたが、何故かシンクが見当たらない…あるのはガスコンロとまな板を置くのか多少のスペースぐらいしかなかった。

 

 

「あの…島さん?シンクがありませんがどうしたら…?」

 

「そこに置いていいよ、後で大家のとこで勝手に借りて洗うから」

 

 

さらりと問題発言を聞いた気がするが流しておくか、それよりもシンクがないのは本当に驚いた、まさか今の今まで大家さんの所から借りて洗っていたのか…考えただけで頭が痛くなってきたので一旦忘れよう、それよりも…

 

 

「いくつか聞きたいことがあるのですか、大丈夫ですか?」

 

「スリーサイズ以外なら何でも」

 

 

いや、そんな堂々と真顔で言われてもツッコミずらいことこの上でないのでスルーして話を進むようとすると、物凄く不服そうな顔をする……ボケをスルーされたことは少なからず同情するも今の俺はどうしても知りたいことがあるので我慢してもらうとし、気を取り直して質問をする。

 

 

「ここは何県の何市になるのですか…?」

 

「…?、不思議な事を聞くもんだね~君は」

 

 

若干怪しまれそうになり、嫌な汗が背中を伝う……だがそれを気にしている場合ではない、今は少しでも情報が必要だから…

 

 

「何か訳ありって感じだけど、深く追及はしないでおくよ…質問の答えだけど、ここは「大阪の岸和田」てとこだね」

 

「大…阪…?」

 

 

衝撃が走った、沖縄からそんなに移動をしてしまったらしい…財布も携帯も持っていないのにどう東京に戻ったらいいのやら、その衝撃でからか頭がどんどん冷めていくなかで

もうひとつの疑問が浮かんだ。

 

 

「後一つ、俺はどのくらい寝ていましたか…?」

 

「2日ぐらいかな、確か」

 

 

衝撃が再び襲った……沖縄にいた頃が五月四日だったから、今みんなの状況がどうなっているのか分からない…携帯がない以上、楓さん達と連絡を取り合うことができない…自分の状況を知れば知るほど気が早まってしまう。

 

 

「何か、困っているのか…?」

 

「え…い、いや…」

 

 

どうする?目の前にいる島さんに頼るか……しかし、関係のない人を巻き込む訳にはいかないけど俺一人ではこの状況を打開することはできない…どうする…?

 

 

「何を思っとるのかは分からないが、わいにできることがあれば何でも言ってくれや!これも縁というやつだからな」

 

「島さん…」

 

 

厳つい見た目に反して優しくそれでいて強い言葉に、不思議と安心感を覚えてしまう……その言葉に甘えて最初にやるべき事を告げようとした時、玄関の扉は勢いよく開かれた。

 

 

「兄貴ィ!すぐに…」

 

「うるせーーーぞッ!!!」

 

「ぶべらッ!!?」

 

扉を開け入ってきた小太りの男性に対して、島さんが見事な飛び蹴りをかまして部屋の外に吹き飛ばした。

 

 

「開ける時は静かに開けろっていってんだろ!!何回言わす気だ、ゴラっ!」

 

「兄貴~酷いっすよ~」

 

「やかましい!…で何の用だ?」

 

「はい、実は……」

 

 

部屋の前で何やら二人で話し始めたかと思うと、ものの数分で島さんが戻ってきた。

 

 

「悪い、今から出かけなきゃいけない用事があるから留守番をお願いしてもいいかい?」

 

「大丈夫です、それとこの近くで公衆電話とかありますか?」

 

「それなら、このアパートの前の道を北に真っ直ぐ行くと「オーソン」ていうコンビニにあると思うよ」

 

「分かりました、それと…」

 

「お金の事だろ?だったらクローゼットの中に瓶詰にしてある小銭があるから、そこから取りな…じゃあ行ってくるから」

 

 

それを言って島さんは速足でその場から去って行った、俺はクローゼットの中から少しばかり小銭を拝借して公衆電話に向かった。




いかがだったでしょうか?それと大変お待たせしまして申し訳ないです、仕事の合間を見つけるのが精一杯でしたので…


遂に、最終章に入りました!これから承一と「μ's」の最後の戦いが始まります、是非見守ってください。

それではご意見・感想お待ちしています。


*番宣(?)みたいなもの

同時投稿しています「東方冒険奇譚」も宜しくお願いします!


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第51話 5月6日 SIDE「高坂穂乃果」

5月6日 東京、西木野総合病院内

 

 

「…う」

 

ぼやけている目の前を両手で擦りながら、「高坂穂乃果」は目を開けた。白い壁に自分の周りには点滴などがあった為、ここが病院だと気付くことができる。

 

「あれ…どうして病院に…?」

 

体を起こそうとするが腹部や頭に痛みが走り、ベッドに再び寝てしまう。

無理に動かせない事を文字通り、身をもって知った為動かせる範囲で自分の状況を調べてみることにした。

 

すると、ベッドの右側にあった小さな台にアイドル雑誌が何冊か積まれており、その横には実家である和菓子屋の名物饅頭である「ほむまん」があった。

 

 

「雑誌は花陽ちゃん辺りかな…ん?」

 

ふと雑誌達に埋もれている新聞紙を見つけ、引っ張りだしてみる。

それは、2日前の5月4日付けの新聞で大きく一面に「大阪湾にて謎の飛行物体が墜落?!」と書かれていた。

 

 

(4日…?あれ、何か忘れているような…)

 

 

穂乃果はゆっくりと今までの記憶を思い出していく、承一と共に沖縄に行き、そこで彼を追ってきたスタンド使いを撃退した後、彼の実家に行った……その後、

 

(は…!そうだ、あの後は)

 

「神奈いやび」と名乗った女性が突然襲いかかってきて真姫や他のみんなを避難させた希と一緒に応戦したが、謎に満ちた能力で圧倒されてしまい、二人が倒され自分も絶体絶命なのを彼…承一が助けに来てくれた所までを覚えていたが、それ以降の記憶はなかった。

 

(真姫ちゃん達もここの病院にいるのかな…?)

 

そんな疑問は直ぐに解決することになる、穂乃果がそう思った時病室の入り口が開かれ、目をやると…

 

 

「ほ、穂乃果…?」

 

「穂乃果ちゃん…?」

 

「海未ちゃん、それにことりちゃんも…」

 

 

「μ's」の中でも付き合いが最も長い幼馴染が揃って固まっていたので声をかけたら、二人は見たこともない速さで自分が寝ているベッドの両側に駆け寄ってきた。

 

 

「穂乃果!大丈夫ですか!?私が誰だか分かりますか?!」

 

「う、海未ちゃん…落ち着いて…」

 

「穂乃果ちゃん、良かったよ~ずっと目を覚まさないから心配したんだからね」

 

「ありがとう、ことりちゃん」

 

 

1人は気が動転しているのか同じ質問を繰り返し、1人は至って冷静だったがその言葉からこれまで心配をしてくれたことが伝わった。

そんな時、再び病室の扉が開かれる。そこには、

 

 

「目が覚めたんだね、穂乃果さん」

 

「楓さん…」

 

 

スピードワゴン財団に所属して「波紋」と呼ばれる特殊な呼吸法を用いる「落合楓」の姿があった。

 

 

「どうして、ここへ…?」

 

「あなたに伝えたいニュースがあるのだけど…聞く?」

 

 

悪戯っ子みたいな笑顔をしながら問いかけてくる楓に、少し戸惑いながらも彼女の言うことならと、穂乃果はそれを聞くことにした。

 

 

「そう言ってくれると思ったよ……彼、承一君は生きているよ」

 

「え……?!」

 

 

一瞬だけ間が空いてしまう……今一番知りたかった事がこんな形で聞いてしまったからである。

 

 

「そ、それ…本当ですか、本当に承君が…?」

 

「ええ、さっき本人から電話をもらったからね」

 

 

楓はそれを言うと、事の顛末を話し始めた。

 

 

 

数十分前……

 

 

落合楓は穂乃果達が入院している西木野総合病院に向かう為、自宅にいた時の事だった。

 

「さて…そろそろ行くかな」

 

立ち上がって部屋を出ようとした時、自分の携帯が鳴っているのが分かった。

 

「電話…?見たことのない番号だけど…」

 

「はい、落合です」

 

「楓さん!俺です、比屋定承一です!」

 

 

聞こえてきたのは、2日前に行方不明になっていた「比屋定承一」だった。

 

 

「承一君かい?無事だったのか、良かったよ」

 

「何とか…ですけどね、所で穂乃果達やみんなは無事ですか?」

 

「みんな無事だよ、君は本当に優しいんだね…自分の事よりも彼女達の安否を心配するなんてね」

 

「まぁ、俺よりみんなの方が気掛かりですので…」

 

 

やれやれと思いつつ安堵の表情をする楓だったが、直ぐに気持ちを切り替え伝えるべきことを言う。

 

 

「ところで、今は一体何処にいるんだい?」

 

「言いにくい…ですけど、大阪の岸和田て所なんです」

 

「岸和田…か、もしかして一昨日の飛行物体墜落の件は君という訳だったのか」

 

「俺も今さっき知りましたので、おそらくは…」

 

 

この事はテレビのワイドショーなどで大きく取り上げられ、今でも警察や消防、果ては海自などが動いており大阪だけではなく、日本中の話題となっていた。

 

 

「さて…これからどうするかだけど…」

 

「テレビで伝えられているとなると、東京に戻るのに新幹線の利用は止めておいた方がいいですね」

 

 

「神奈いやび」と名乗った人物…おそらく彼女は「同化人間」の仲間であろう、ならばテレビなどで取り上げられている現状から「比屋定承一が生きている」と当然知られていることだろう…

承一は以前戦った「同化人間・川和」の事が頭に浮かぶ、奴は自分を始末する為に関係のない者まで巻き込んでいて今回も同じ様な事が起きないとは限らない為、それを含めての提案だった。

 

 

「確かに…でも陸路からだったら移動手段はどうするの?」

 

「それなんですが、俺の家にクレジットカードがあると思うのですがそれがあればタクシーなりバスなり利用ができますが…」

 

 

少し考えた後に楓はとある提案を出す。

 

 

「渡す方法はあるけど騒ぎの中心地では不味いから、別の所で渡すことにしようか…」

 

「というと?」

 

 

楓は部屋にある机の引き出しから全国の高速道路の地図を取り出し、大阪から離れた所でかつ近い場所を探しだす。

 

 

「もし何らかの移動手段があるなら、奈良県の「天理PA」まで来れないか?」

 

「無くはありませんが、どうしてそこに?」

 

「なるべく早く渡すのなら人じゃないものがいいのだけど、それの行ける限界が大体奈良になってしまうのだよ」

 

「分かりました、ではそれで」

 

「君も、気を付けなよ…」

 

 

 

 

「という事だったんだよ」

 

 

全てを聞き終わった後、穂乃果は一つ息を吐いてポツリと呟く。

 

「良かった…無事で」

 

その表情はこれまでの明るい感じではなく、心の底から心配しているものからだと気付いた楓だったが、あえて言うことはなかった。

 

しかし、彼女達はまだ知らなかった…彼等「同化人間」の魔の手はすぐ傍まで来ていることに…

 

 




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第52話 ミセス・オールグリーンその①

5月6日 東京、オデュッセウス・インダストリー社、本社ビル28階

 

 

一流企業特有の空気に包まれている社内の中でも28階は特別な場所であった。そこは「第一会議室」と呼ばれている大きな部屋と複数の「資料室」、そしてこの階へと降りられるエレベーターしかない奇妙な所である。

しかし、そこへ入れる者は数千を超える社員の中であってもごく僅かである為か存在すら知らない者も少ないない

 

今、そこにある「第一会議室」の扉が重々しく開く音がする、開いたと同時に複数人の男女が中へと入っていく。

 

 

「緊急召集だってな、何かあったのか?」

 

「さぁ?でも何かがあったから呼ばれたのではなくて?」

 

「・・・・」

 

「ったく…せっかく寝ていたのに…」

 

 

入ってきた計7名の人物は各々席に座っていく…それを見計らったように一人の女性「神奈いやび」が現れる。

 

 

「揃いましたね…「テレマコス」の皆さん、まずは飲み物でも配っておきましょう」

 

 

その言葉を合図にするかのように何処から用意したのかティーセットが現れ、それを手際良く全員に配り終えると静かに話題を切り出した。

 

 

「今回召集した理由についてだが…神場崎渚が死に、その上「弓と矢」も二本共奪われた」

 

 

すると、一人が口に含んでいた飲み物を吹きだして笑い出す。

飛んで行った液体が対面に座っている人物の手元まで届いたのを気づかずに…

 

 

「はっ!死んだ奴の尻拭いみたいなのを俺らにやらす気かよ、こりゃ傑作だぜっ!!」

 

「そうなってしまいますが、我慢してください」

 

「だから…」

 

 

そう男が言う前に、テーブルを強く叩く音がする。

見ると体を震わせながら立ち上がっているオレンジ色の髪の女性がいた。

 

 

「その前にさ…あんたの汚ったねぇ口から出たもんがあたしの所まで来たんだけど!!」

 

「悪かったな、お前のような意地汚い「スタンド」を持っている奴がそんなに潔癖とは思わなかったぜ…!」

 

「そうかい、そんなに肉塊にして欲しいのか?クソ野郎が!」

 

「やってみろよ…メス豚風情が!」

 

 

二人の間に一触即発の空気が流れるが、それぞれの近くに座っていた人物がそれを止めた。

女性の方は隣に座る同じ髪色の女性に、男は隣にいた長身で中性的な顔立ちの男に蟀谷(こめかみ)に銃のような物を突き付けられていた。

 

 

「…何のつもりだ?」

 

「面倒事を起こすな…それだけだ」

 

 

舌打ちをしながら席に座り、脚を組んで不貞腐れる。女性の方も納得はしていなかったが渋々席に座る。

それを確認したいやびは話を続ける。

 

 

「あなた達にやって貰いたいのは「矢」の捜索、しかしその途中「彼等」を見つけたらついでに始末しても構わない」

 

 

それを言うと全員に見える様に四枚の写真を広げる。

 

 

「何だ?ガキまでいるのかよ…ならさっさと終わりそうだな」

 

「なら、あんたは出なくてもいいんじゃない?」

 

「あ?」

 

「何よ?」

 

 

再び火花が飛び散りそうな勢いだったが、長身の男がある質問をしたことでそれが止む。

 

 

「ん?「比屋定承一」がいませんが、もう始末されたのですか?」

 

「彼に関してなら、既に手を打ってありますから気にかける必要はありませんよ」

 

 

すると女性用帽子の一つである「キャペリン」を被った女性が立ち上がり、出口に向かって歩いていく。

 

 

「どちらへ?」

 

「善は急げ…ですわよ、早速向かわせて貰います」

 

「分かりました、くれぐれも失敗はしないように…」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

同日、マンション「ベルフォレスト」正面ロビー

 

 

ここは承一が住むマンションの正面の入り口である、そこに一人の人物がいた。

 

 

「ここか…」

 

 

黒の女性用スーツに身を包んだ「落合楓」は、珍しく緊張した面持ちで訪れていた。

しかし無理もないことだった、何故なら承一の親族と偽ってマンションの管理人からマスターキーを使い、部屋に入ろうとするからである。

 

(と言っても私自身49歳になるからなぁ…親になっても不思議でもないし…いや、これ以上考えるのはよそう)

 

「波紋」の効力で大分若いように見えてるが、体の中身まではそうはいかないことまで考える前に「管理人室」と書かれている扉をノックする。

しかし……

 

(…?おかしいな、留守な訳ないと思うけど…)

 

そう思い、ドアノブに手をかけ静かに回す。すると小さく金属音の後にゆっくりと扉が開かれていく。

 

(まさか!)

 

半分まで開いた扉から中の様子を窺う、しかし特別変わったことはなく…そこにいるべき住人がいないことを除いては…

 

楓は自らの「スタンド」を出し、扉を勢い良く開ける。

 

 

「誰もいない…」

 

 

目の前に広がるのは、誰もいない空間に淹れたばかりであろうコーヒーが入ったカップだけであった。

カップに触る…まだ熱くなっていることからいなくなったのはほんの数分ぐらいであろう。

 

(もう、こちらの動きが読まれていたのか?!)

 

それにしては早すぎる…あの電話が盗聴されていた…?それは無理がある、携帯は常に肌身離さず持っていたから細工できる隙はない…ならどうやって?

 

(尚の事、急がなくては)

 

楓は管理人室から飛び出し、エレベーターに向かいボタンを押そうとした時だった…

 

 

「ぐッ!!」

 

 

突如現れたツタのような植物に手足、そして首に巻きつかれてしまう。

 

(な、何だ…こいつらは?!)

 

振り解こうとするも締め付ける強さが増し、首が圧迫され呼吸が苦しくなる。

 

(か…はっ!、このままだと不味い…「ツヴァイ」!!)

 

 

現れた「ツヴァイヘンダー」が凄まじい剣捌きで、ツタを切っていく。

それと同時に圧迫から解放され、少し咳き込む。

 

 

「も、もうここまで来ているなんてね…新手の「スタンド使い」は!」

 

 

 

 

 

 




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第53話 ミセス・オールグリーンその②

(…流石に早すぎるな…)

 

楓自身は自らが動くことによって敵に察知されることは覚悟の上で来ていたが、ここまで早いことに驚愕が隠せなかった。

 

(私の読み込みが甘かったか…それとも、彼等が早いだけか…)

 

そう考えている間に何処からともなく現れたツタ状の植物達がエレベーターの前を覆いつくそうとしていた。

 

(考える暇なし…か、上等!)

 

一瞬、周りを見る…すると自身の左前方に上階へ続く階段があるのに気付けた。

しかし、そこに行くまでは目の前にいる植物を退けなくてはいけなかった、楓は普段の呼吸から「波紋」を生み出す呼吸に変える。

 

(勝負は一瞬で済ませる…!)

 

足に踏み込みをかけると同時に植物は一斉に襲い掛かってくる。

 

 

波紋疾走(オーバードライブ)!!」

 

 

両手に「波紋」を発生させ、向かってくる植物に次々と打ち込んでいく。

内部に放たれた「波紋」によってバラバラになっている植物達を尻目に階段へ向かい、駆ける。

 

(「波紋」が流れる…つまり普通の植物なのか、だけど…

  あれだけ巨大なツタを育てるのがスタンド能力か…?)

 

敵の能力を考えながら、二階へと上がりきるとそこは日が出ているといえ若干薄暗かった。

罠を警戒して慎重に三階への階段へ行こうとするとその足が何かを踏みつける感覚がした。

 

(?何だ…?)

 

下を見ようとした時、耳に何かが風を切る音がした。

 

そしてーー

 

体の両サイドから痛みが走り、同時に視界が真っ暗になる。

 

 

「これは…!!?」

 

 

自身の上から覆い被さったそれは、手から伝わる感触から植物だと分かる。

 

 

「まさか、植物のトラップなんてね…だが、問題はない!!」

 

 「「ツヴァイ」!」

 

楓のスタンド「ツヴァイヘンダー」が被さった植物を切り刻んでいく。

挟んでいる力が弱くなったのを確認して頭に乗った物を払いのけると、その正体が分かった。

 

 

「確か…「オジギソウ」だったか、この葉っぱは

 なら、さっきのはこの植物特有の性質か…」

 

 

「オジギソウ」とは偶数羽状複葉と呼ばれる形状をした葉を持つ植物であり、その葉に接触や風、振動を受けると先端から一対ずつ順番に閉じていく性質がある。

この性質は特定の部位の細胞が膨圧と呼ばれる水分の移動によって行われる。(蛇足になるが、この膨圧によって閉じた状態の葉がお辞儀しているように見えるから「オジギソウ」と呼ばれるのである)

 

 

「しかし、これが敵のスタンド能力…」

 

 

普通の「オジギソウ」なら人体を包むのは到底不可能…しかし、楓の目に映ったのは異常(・・)に大きくなっている姿であった。

 

 

三階へと登り、早速目の前に現れた植物群にやれやれといった表情を見せる。

 

 

「今度は「鳳仙花」か…

 となるとあの状態は…ヤバイ!」

 

 

「鳳仙花」は種を蓄えている果皮と言う部分が、これまた膨圧によってその種を遠くへと勢い良く飛ばす性質を持っている。

そして、楓の目の前にある「鳳仙花」は果皮が相当膨らんでいる状態だった。

 

 

(間に合え!)

「「ツヴァイ」!!!」

 

 

スタンドを出すのと同時に勢いがついた種が、まるで弾丸の様に飛んできた。

「ツヴァイヘンダー」も負けじと凄まじい斬撃の幕を作り出す、種はそれに触れただけで切り刻まれていくが、一部はそれをすり抜け楓に向かっていく。

 

ーーだが、それは予定通りだった。

 

 

波紋疾走(オーバードライブ)!!!」

 

 

拳に集中させた「波紋」で種を受け流すように弾いていく。

 

しかし、向かってくる種は一向に減る様子はない…それに対して疑問を持った楓がとある事を思い出してしまう。

 

(…確か鳳仙花の種は大体9~10個あたりだと聞いたことがある、なら今…あそこにあるのは見えるだけで10本以上…いや、もっとある

 だとしたら、約百発以上になる!!)

 

「うおおおあああああっ!!」

 

 

楓は「ツヴァイヘンダー」の斬撃のスピードを上げられる限界まで上げ、全てを斬ろうとするが斬り漏らしたものが遂に直撃してしまう。

 

 

「が…はっ!!」

 

 

咄嗟に腕を交差させ頭を守るがそこ以外の部分に当たってしまい骨が軋む音が体中に響く、そして勢いのまま廊下の先から向こう側…つまり空中へ放り出されてしまう。

 

(…やりたくはなかったが、仕方がない…)

「「ツヴァイ」!!」

 

 

「ツヴァイヘンダー」の後ろ足で楓自身の背中を思いっ切り蹴り上げ、上階へ飛ばす。

手を伸ばし、何とか手すりに捕まりよじ登って到着する。

 

(残る痛みは「波紋」で和らげるとしても、自分の「スタンド」に蹴らすなんて今回限りにしよう…)

 

四階の辺りを見渡すが二階・三階みたいに目立った植物はなかった、しかし何もないのが余計に不気味が際立つ

 

 

「何もない…?そんなはずは…」

 

 

警戒をしながら、五階へ続く階段に足を踏み入れようとした時とあろものが目につく。

 

 

「こいつは…確か食虫植物の…」

 

 

そこにあったのは、光りに反射して輝く粘液を持つ食虫植物「モウセンゴケ」であった。それが階段を至る所を埋め付くしていた。

 

 

「今度は食虫植物かよ…全く冗談が過ぎるな」

 

 

階段が埋まり、手すりは足場とは言えがたい…しかし楓にはまだ策があった。

 

(あまり嘗めては…困る。

  それに、ここまできたのなら…一気に行かせて貰う!!)

 

 

すると、隠し持っていたある物を取り出す。

 

(ここで役に立ってもらうことにするか…)

 

それは一階で「ツヴァイヘンダー」によって切られたツタ状の植物の一部であった、それを一つや二つではなくいくつも持ってきたのである。

それらに「波紋」を流し、交互にくっつけていく…結果出来上がったのはロープに似た長い物質であった。

 

その先端はツタの尖った先であり、それを階段脇から五階の壁に突き刺す。

それを伝って登っていく…登り切り五階に到達すると同じ方法で六階…屋上へと登る。

 

 

「私の勘なら、おそらくここにいるはず…」

 

 

見回すと屋上の手すりにもたれ掛り、何処からか持ってきたのかティーカップを優雅に口に運んでいる女性の姿があった。

 

 

「あら…意外に早く来ましたわね」

 

「戦闘前にティータイムを楽しんでいる方が意外だと思うけどね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「ミセス・オールグリーン」
   本体:海江田 静葉
破壊力-E、スピード-A、射程距離-A
持続力-B、精密動作性-D、成長性-E

樹皮の様な身体に肩から枝が突き出ている人型スタンド
能力
実物の「種子」と少量の「水分」を使い、「植物」を異常に成長させることができる能力
「四季」に関係なく育てることができ、場所も関係ない。
成長スピードも速く、成長度合いも操作が可能


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第54話 ミセス・オールグリーンその③

 楓はここに至るまでの道中で敵スタンド使いの正体を推測していてどんな者が来ようと動じるつもりはなかったが…優雅に薔薇をあしらったティーカップを静かに口に運んで待っていたとは誰が予想できたことだろう…

 

 

「少し待っていてくださいね、これが飲み終わったらお相手をしてあげますわ」

 

 

「スタンド」を出し身構えた所、この一言が飛んできたので頭の中が混乱してしまって今はその整理を余儀なくされた。

楓は承一を含めたスタンド使い達の中では戦闘経験が豊富であり、動揺をあまり見せず冷静に対処することができるが…

 

 

(…正直に言って、やりずらい…)

 

 

目の前の敵スタンド使い…もとい緑のロングスカートに薄緑のブラウス、真っ白のカーディガンを羽織り、頭には鍔の広いこれまた緑色の帽子を被った女性は楓が培ってきた経験をまるであざ笑うかのような発言をして今は飲み終えたカップを丁寧に持参したバックに仕舞っている所であった。

 

 

「これで良し…待たせてしまったわね、では始めましょうか」

 

「気にしないで…おかげであんたをブッ飛ばす算段ができたから、むしろ有難うと言っておくよ!」

 

 

それを言うと、楓は一気に敵との距離を詰めるべく駆け出した。同時に屋上に来る為使っていたツタの先端部分に「波紋」を流し込み、真っ直ぐ敵に向かって投擲する。

 

(どうでる?植物で防ぐのかそれとも、スタンド能力を使わないで避けるのか…?)

 

どちらを選ぼうとも彼女にとっても些細なことでしかなかった、なぜなら本当の狙いはあくまで敵との距離を詰め「ツヴァイヘンダー」の射程距離内に入れることであり、接近して最大の「波紋」の呼吸をして力で押し切ろうと考えていたのである。

 

しかしーー

 

投げられたツタとの距離が縮むのに対し敵は動く気配はなく、さらに自らの左腕を差し出してきたのだ。

 

 

(ばかなっ!受け止めるつもりなのか!?、だが仮に止められても「波紋」でダメージは入る!)

 

「……「ミセス・オールグリーン」」

 

 

そう小さく囁いたかと思うと、迫ってきているツタは見る見る内に小さくなっていき彼女の元に届いたのは最初より十分の一ほどになってしまっていた。

 

 

「いい考えですけど、甘いですわね」

 

「…ッ」

 

「私のスタンドは「植物を異常成長させること」ですけど、その逆も可能でありますのよ」

 

 

距離を詰めることはできなかったが、重要な収穫はあった。

 

(能力を熟知していて尚且つ冷静に場を見ている…油断や隙が全くない強敵だな)

 

 

その一方で敵スタンド使いこと「海江田静葉」も表情には出さなかったが心中では驚きを隠せなかった。

 

(私の植物をあんな方法で攻撃に使うなんて…それにあの「スタンド」、見た目は近接戦闘を得意と見た…なら接近戦ではパワーが無い「ミセス・オールグリーン」では不利…)

(一定の距離を保ちつつ、倒すしかない…か)

 

 

お互い睨みあいながらも先に動く瞬間を待っていた、しかし能力や型が分かってしまっている以上下手に動くことはできず、時間だけが過ぎていった…

 

一分が経とうとした時、戦いは動き出すーー

 

 

ほぼタイムラグなしに二人が同時に動く……楓は前進を、静葉は後ろへ退いた。

 

 

「「ツヴァイ」!」

 

「…ッ、あくまで接近狙いか!」

 

 

射程距離まで数mまで迫った所で「ツヴァイヘンダー」が右腕と一体となった大剣を振り下ろす……が、それはツタ状の植物によって阻まれてしまう。

すぐさま後退し、再び敵との距離が離れてしまう

 

 

「く…」

 

「そう簡単に近寄らせる訳にはいきませんわ…それに植え付け(・・・・)は済ませていますから」

 

 

今の言葉に疑問を感じようとした所で、楓の周りに巨大な植物が囲うように生えだしてきた。

それは高さにして六~七m程に達した所で成長が止まり、あたかも竹林の様な風景だと見間違えそうになる。

 

(何だ…?!この植物は…)

 

一枚の葉がとても大きく、先端にはブロッコリーの形をしており小さい花がいくつも集まっているように見えた。その内の一つが風に煽られ葉が左手に付こうとした時、楓の中の本能が危険だと察知し素早く手を引っ込める。

 

 

「触らずに危険だと判断できる…やっぱりあなたは強いわね」

 

「私に気付かれない様に仕込むほどだからね…何もない訳がないじゃない」

 

「流石ね…だけどこの毒をみても余裕でいられるかしら?」

 

 

そう言うとツタの植物が一枚の葉に巻き付き圧力をかけていく…すると先端から一滴の樹液が出てきて、下のコンクリートに落ちると落ちた箇所から煙があがる。

 

 

「コンクリートを溶かすほどの強酸性の毒…私の「ミセス・オールグリーン」はただ成長させるだけじゃなく、その過程で植物の中の成分を変えることもできるのよ」

 

「全く…冗談でもキツイ…な」

 

 

タメ息をつき、楓は改めて周りを見渡す……

自分の周囲を囲っているのは猛毒の植物達、そして巨大化したツタ状の植物も見えている。

状況としては追い詰められていると言ってもいいほどであるが「落合楓」はそんな状況でも前を向き、静葉を見据えていた。

 

 

「…諦めては貰えないかしら?私は火牟囲(かむい)のような戦闘狂でもないし、殺すつもりもないからね」

 

「諦める?……馬鹿を言うなよ、

 

  可能性が1%でもある限り…諦めることはしない!」

 

 

静葉は楓から発せられる気迫に一瞬たじろぐも直ぐに一呼吸置いた後、自身の前に植物達を展開する。

 

 

「なら残念だけど、ここで終わりよ!!」

 

 

その言葉と同時に襲い掛かる植物…しかし楓は前へと駆け出すことを選んだ。

迫りくる攻撃を難なく躱し続けるが、目の前には猛毒の植物群が立ちはだかる…

 

だが、それでも彼女は歩みを止めようとはしなかったーー

 

 

「「ツヴァイ」!!」

 

 

植物との距離まで1mを切ったところで「スタンド」を発現させ、左手に持った大盾で目の前の植物を押さえつけた…!

そのことに驚く暇もなく、楓はその盾を踏み台代わりにして宙を舞った。

 

空中で「波紋の呼吸」を行い、落下と共に両拳に山吹色の稲妻が光る……

 

 

「震えるぞハート!燃えつきるほどヒート!!山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!!!」

 

「な…!は、速ッ…」

 

 

放たれた高速の拳に防御する隙も与えられず体中に電気が走った感覚がした後、後方へ吹き飛ばされ屋上に設置された柵に叩きつけられる。

 

 

「うぐッ…はぁ、はぁ…」

 

「意識までは失わなかったのか…流石だな」

 

「フフ、良く言うわね…今の攻撃は本気じゃなかった癖に」

 

「殺すのが目的な訳ではないしな、それにあんたは完全な悪人でも無いからね」

 

 

静葉は呆気にとられた表情をすると、夕焼けに染まりつつある空を見上げた。

 

 

「完敗だよ…私の、ね」

 

 

戦意喪失した静葉を屋上に残し、楓は予定通り承一の部屋に辿り着き管理人室から拝借したマスターキーを使って中に入った。目的の物を手に入れると部屋から出ず、そのままベランダに行く。

 

 

「そろそろ来るはず…」

 

 

見渡していると、どこからか白色の鳩が飛んできてベランダの手すり部分に止まった。

 

「時間ほぼぴったりとはな…本部から借りてきた甲斐はあったものだな」

 

鳩の脚に目的の物を取り付け終わったのと同時にそこから飛び立っていく…

 

「頼むよ…「サヴェジ・ガーデン」、彼の元に届けてやってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かなりお待たせしまして申し訳ないです、次回は承一サイドをお届けしますので楽しみにしてください。


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第55話 メタル・フリックその①

久々の投稿です…


5月6日

 

落合楓が承一のマンションへ訪れた時刻と同じ頃…

 

 

大阪は岸和田市内を一台の車が南下しながら進んでいた、メタリックレッドの色にウイングを取り付けた三菱製「ランサーエボリューションⅹ」である。運転をするのは「島 秀二」、その隣の座席に座っているのが「比屋定承一」である。

その車内で承一は……気持ち良さそうに寝ていた。

つい数分前に島の奢りという事でお好み焼きを腹一杯食べて、さらには快適な運転も相まって睡魔に襲われてしまい、うたた寝状態になってしまったのだ。

 

「…はっ!」

 

自分が寝てしまったことに気付いたのか、慌てて起きて頭を左右に振る。

 

 

「おはよーさん!良く寝れたかい?」

 

「ぼちぼちですね…」

 

 

寝起きの為か瞼を擦りながら答える、そんな承一の姿に島は微笑みつつ運転を続ける。

承一は一息つき、これからのルートについて今一度思い浮かべる。

 

まず、岸和田市内から四号湾岸線に乗って「助松JCT」に行き、そこから再び一般道に戻り「堺JCT」を目指し今度は阪和自動車道に乗り「松原JCT」まで行った所で西名阪自動車道に乗り換え、ようやく「天理PA」に到着することができる。

ここまで何事もなければ(・・・・・・・)一時間半ぐらいで着けるのだが…

 

(起きる訳…はあるか)

 

不測の事態が起きない様に神経を尖らせて警戒はしている…が今の所は順調に進んでいた。

そんな中、島の携帯が鳴りだした。

 

 

「承一はん、ちょっと電話をするから路肩に止めるよ」

 

「ええ…」

 

車を止め、島は電話を手に取り通話を始める。

 

「おう、何やお前か…で何の用や」

「…ああ、はぁ!?消えたってどういう事や!」

「ええから!早く返して貰わないとこっちにも示しがつかへんのや!」

「お前は聞き込むなりなんなりして、探しだしな!こっちはまだ来れへんからな」

「…見つかったらお前が取り立ててくれや…おうじゃあな…」

 

そこで通話は終わり、携帯を置くと車を発進させた。

 

承一が島の本業を知ることになったのは楓に連絡を終え、彼のアパートに帰った時のことである。

島の本業は簡単に言えば、金融会社に勤める「借金取り立て人」である。と言ったものの高金利で貸しているや暴力団関係者などと言ったことはなく、真っ当な金利で貸している所に勤めている。

それでも返済を踏み倒す人は少なからずいて、その場合に限って活躍をするのが「島 秀二」率いる「取り立て人」の存在であった。(因みにこれまで取り立てられ無かったことは一度たりともないというのが、彼の自慢であったりする)

 

 

しばらく走っている景色を横目で眺めていると島が話しかけてきた。

 

 

「詮索するつもりはないけど、一つ聞いていいかい?」

 

「ええ、いいですよ」

 

「奈良の天理に行きたいって言ってたけど、何かあるん?」

 

「…荷物が届くんです、今の俺に必要な…」

 

 

楓さんと連絡を取ったのは数十分前…ここから指定された場所までは一時間以上は掛かると島さんから聞いている、それならなるべく早く行った方が得策と思って無理を承知で直ぐに車をだして貰ったけど…

 

(…思ったよりも早く着いてしまうな…)

 

車は一般道から四号湾岸線に入り、北上して最初の目的地である助松JCTを目指すことになる。

承一はここまでの道のりで何もない事が逆に気が気でなかった…同化人間達のことから既に仕掛けてきてもおかしくなかったからだ。

 

(まさか…もう仕掛けてきて…いや、もしそうだったら異変は出ているはず…)

 

嫌な考えが頭の中に浮かんでは消えるを繰り返している、それらを振り払うように一旦両目を閉じる。

すると運転席にいた島が小さい声で何かを言っているのが聞こえてきた。

 

 

「…島さん?どうかしたんですか?」

 

「ああ、さっきから後ろで煽ってくる車がいるんだよ…」

 

 

承一は車のバックミラーを見てみると、青い色の乗用車がかなり近い距離まで接近しているのが確認できた。

 

「ったく…二車線しかないんだから、追い越せばいいだろ…全く」

 

「…」

 

承一が後ろの車を確認したのを合図にしたかのように右のウィンカーを出し、追い越し車線に移動して並走するかの如く横に張り付いてきた。

真横に付くと承一の視線の先にはピカピカに磨かれた青色の車体が目に入った、しかしその中に何やら小さくて黒い点(・・・・・・・)の様な物が動いているのが分かった。

 

(…?何だ、あれ…?)

 

目を細めて良く見てみると「それ」は徐々に大きくなっていき……そしてーー

 

右腕が機械化して左手には大きく伸びた鎌の様な物が付いていて体の所々は配線みたいなものが見え隠れしており、銀色の仮面が顔全体を覆っている人型が現れた。

 

 

「こ、こいつは…「スタンド」!」

 

 

承一はすぐさま目の前のドアガラスを半分ほど開け、開けた瞬間と同時に「アウタースローン」を出現させ左拳を振りぬく。

 

 

「オラッ!」

 

 

敵「スタンド」に向かっていく拳は直撃するはず……だった、実際に捉えたのは並走をする車の車体だった。

しかも、当たった個所がまるで湿地帯にある沼の如く柔らかくズブズブと音を発しながら拳が飲み込まれていく、それに引っ張られる様に承一自身も車から身を乗りだす姿勢になっていく。

 

(…このままだと、ヤバい!)

「「アウタースローン・ジ・インフィニティ」!、五秒前に時を戻す!!」

 

 

時が一瞬止まり、巻き戻されていく……

 

時が戻り、「スタンド」と対峙している頃になり承一は敵を睨む…すると突如として「声」が聞こえた。

 

 

(それがし)を認識したな?』

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?久しぶりの投稿で申し訳なかったです(仕事に忙殺されたり、クトゥルフ神話のシナリオの制作などが主です)
11月にかけては週に三~四日ぐらいを目途に投稿していきたいです!


感想・ご意見お待ちしています!


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第56話 メタル・フリックその②

(「喋る」事ができる「スタンド」…「自動操縦型」か「遠隔操作型」なのか…?)

 

目の前の「スタンド」の一声を聞いて承一が最初に思ったのが「スタンド」の(タイプ)の予測である。

「自動操縦型」にならば本体は近くにいる事はなく、しかも「スタンド」に攻撃を与えても本体へのフィードバックダメージがないことから、直接本体を見つけ出して叩くしか勝つ方法がないのだ。

 

(高速道路内にはいる可能性は低い…なら)

 

最初の目的地である「助松JCT」が後数百mである事を示す看板が目に入った。

 

(一般道に降りるから、そこで仕掛ける…!)

 

出口が目前にまで迫った時、並走していた隣の車が車線変更をして承一達の目の前に入り込んでくる。

そしてバックドア部分に「スタンド」の姿が浮かび上がってきた。

 

「…!」

 

「スタンド」は鎌となっている左手を掲げるとそれをスイングする様に振りかざしてくる。そして鎌の先端部分が車体から出ようとした時、その個所からまるで飛び出して来るかのようにメタリックブルーの「大鎌」が向かってきた。

 

 

「な、何や!!?」

 

「島さん!右へ避けてそのまま追い越してくださいッ!!」

 

「え?!、お、おう!」

 

 

鎌が当たる寸前に島はハンドルを右にきり追い越し車線に出てそれを避けた後、再び元の車線に戻った。

 

 

「はぁ、はぁ…何だったんだ今のは…?」

 

「すいません…急に叫んでしまって…」

 

「ええよ、それよりも詳しい事は聞かないけど…随分な厄介事に巻き込まれているみたいやな」

 

「もう慣れっこですけどね」

 

「そうかそうか…って、あ!!」

 

 

急に大声を出したかと思うと、島の顔色が悪くなっていくのが見てとれた。

 

 

「島さん?」

 

「承一はん…さっきのを避けるのに必死だったから気付かなかったんけど…

 スマン、一般道に降りれなくなってしもうた…」

 

「え…?」

 

「正確に言えば、他の高速に乗ってしまったからだな…けど目的地には問題なく着けるで」

 

 

島曰くここは「堺泉北有料道路」と呼ばれている所で、目的地である「堺JCT」に通っている為そこは問題ではなかった。

問題はここからは通行量も多くなるという事なのだ、つまりは…

 

(能力はまだ分からない上に、本体の見当もつかない…その状況で普通の人達を巻き込む訳には…)

 

承一は窓の外に目をやるが、先ほどの車はどこにもおらずその代わりにトラックや前を走る複数の乗用車の姿が確認できた。

スタンドがいなくなった事に漠然とした違和感を覚えるが、念のために自身のスタンドを出した時だった。

 

 

『何処に目をつけている…?』

 

 

不意に聞こえたその声に車内を見渡す、そして奴はいた…

 

承一のちょうど目の前…車のボンネットから体を出していた。

 

 

「何ッ!!?」

 

『…意外にもあっけなかったな』

 

 

そう言い、体をボンネットの中に沈める。

承一が姿を追おうとしてシートベルトを外した時、ドアが一人でに開いた。

 

 

『死ねッ!』

 

開いた隙間からスタンドの腕が伸び、承一の服を掴み車外へ引っ張る。座席に手をかけ落とされない様にしたが、スタンドの力が強くそれは無駄に終わってしまった。

宙に浮く感覚の後、体が外に飛び出してしまう。

 

 

「承一はんッ!!」

 

『始末したぞ!!』

 

 

 

「やれやれだ…気の早い奴だな」

 

 

島と敵スタンドが同時にその声に反応する…その声は車の後方、リアウィング辺りから聞こえてきた…敵スタンドがそこを良く見てみるとウィングを掴んでいる承一の姿が確認できた。

 

 

『ば。馬鹿なッ?!!』

 

「これが無かったら、危なかったな…」

 

 

「アウタースローン」を出し、それに掴まりバックドアの上まで上る。すると目の前の車の天井部にスタンドの姿があった。

お互いが睨み合っていると島の声が聞こえてきた。

 

 

「承一はん!、大丈夫なのかッ?!」

 

「何とか大丈夫ですよ!」

 

『いや…大丈夫じゃなくしてやろう、某「メタル・フリック」の能力でな』

 

「それが名前か…覚えておくぜ」

 

『覚える?…これから死ぬ身がか?』

 

「ああ……

  ここまでやってくれたからな!この礼は倍返しにするぜ!!」

 

 

 

 

 

~~~~~~*****~~~~~~

 

 

 

同時刻 東京

 

 

薄暗い部屋の中で一人の男が新聞を読みながら紅茶を啜っていた…腰かけていた椅子をさらに深く座る。

同じ部屋にはテレビが点けっぱなしになっていた、そこからニュースが流れてくる。

 

 

「…では次のニュースです、昨日大阪湾付近で目撃された未確認飛行物体ですが、新たに地元住人の話では岸和田市の海岸辺りに墜落したものと証言がありました。

警察では事実確認をする為、海上自衛隊と共に大規模捜索をすると決定しました。」

 

 

そこまで聞くとテレビをオフにした。手にしていた紅茶をカップに置く。

 

 

「…比屋定承一、奴は生きている…そしてこちらに戻ろうとしている…!」

 

「ご安心ください、既に「メタル・フリック」鍵山蓮が対処を開始しています」

 

 

いつの間にかそこには一人の女性…「神奈いやび」が控えていた。

 

 

「奴に始末ができるのか…?」

 

「彼の能力は特筆したものがあります、仮に退けたとしても手は残っていますので問題は発生しないかと」

 

 

そこまで聞くと男は椅子から立ち上がり窓の外を眺める。

 

 

「奴の…「空条」の血はしぶといからな、慢心はするなよ」

 

「分かっています…

  それとしぶとい点ならあなたも同じでしょう?…「空条丞一郎」様…」

 

 

それを聞くと、顔だけいやびの方を向ける…その表情は決して良いものではなく、むしろ不機嫌そのものだった。

しかし、それを知ってか知らずか彼女はその場で一礼をして部屋を出ていく。

 

部屋に静寂が訪れる…




また遅くなってしまいました。すいません…

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第57話 メタル・フリックその③

 車上で対峙する承一と一つのスタンド…先に仕掛けたのは承一の方だった。

「アウタースローン」の拳が敵スタンド「メタル・フリック」に対して振るわれる、予想を超えたスピードに辛うじて左腕で防御をするが、そこにあった装甲が割れてひびが入る。

 

 

『ぐッ…!』

 

「オラッ!!」

 

 

続けざまに左ストレートが顔面を捉えるべく振りぬかれた、だが敵もこれを予測し素早く能力を発動させる。

 

 

「なっ…」

 

 

承一は驚愕した…目の前にいた敵スタンドがまるで溶けるかのように天井部の金属部分に沈んでいったからである。

そしてメタリックレッドの金属部分に敵の姿が映し出されていた。

 

 

「これが、お前の能力…!」

 

『そうだ、そして攻撃は終わっている…』

 

 

横からの声に反応すると、そこに半身だけ出した「メタル・フリック」の姿があった。

「攻撃が終わっている」との言葉に疑問符を浮かべていると、突然車体が左へと大きく傾き始めた。

 

 

「こ、これは…!」

 

『タイヤを切り裂いておいた、これで壁に激突しな!』

 

「お前ッ…!」

 

 

それだけ言うと敵はすぐ後方を走っていたトラックへと移動した、その間も車は壁に吸い込まれる様に近づいていった。

すると運転席の窓が開き、そこから島が顔を出していた。

 

 

「承一はん、このままじゃ…!!」

 

「島さん!俺はこれから奴の元へ行きます!…短い間でしたが、本当にありがとうございましたッ!」

 

「な、何を…?」

 

「オラオラオラオラッ!!」

 

 

すると迫る壁のコンクリートに対して「アウタースローン」のラッシュを浴びせ、その衝撃を受けるのと同時に勢い良く車から飛び出していき、右からきたトラックの荷台に移った。

 

 

「何ッ!!じ、承一はん?!」

 

 

壁にぶつかり停車した車から島が出てきて、承一が乗り移ったトラックを見送る。

承一は島の無事を確認したのか、軽く会釈した。

 

 

『まさか…ここまで来るとは…』

 

「お前を倒さないといけないんでね」

 

『それほど早く死にたいになら…

   ここが貴様の墓場だァァァァ!!』

 

右腕を高く振り上げ、迫ってくる。承一は「アウタースローン」で迎え撃つ。

自身の首に向かっていた鎌を左手に付けていた手甲で受け止め、空いた右拳で腹部を狙う。それは左腕で防がれるが敵が防いだ事に一瞬動きを止めた時、足をかけ仰向けに倒す。そして…

 

 

「オラオラオラ!!」

 

『グブッ!ハァッ…!』

 

 

倒れている動作の最中にラッシュを胸部・腹部にくらわせる。確かな手ごたえと同時に敵が崩れて荷台から飛び出す。が…荷台の金属に潜行し、姿を消す。

 

 

『やってくれたな…だがここが某の独壇場だと忘れては困るッ!』

 

「…くっ!」

 

 

その言葉と共に、承一の下の金属が剣の形となり飛び出してくる。それを拳で弾き飛ばして防ぐ。

だが、今度は荷台の側面部の金属が鉤爪状となり、承一を挟み込むように迫ってくる…上に跳ぶことでそれを避けようとする。

 

 

『跳んだな、目の前に迫る物を知らずに…な!』

 

「はッ!」

 

 

迫ってきたのは行き先を示す標識だった…身をよじって避けることもできない中、承一は自らのスタンドで自分を殴ってその標識のさらに上に押し上げた。

標識を乗り越える形で避け、そのまま荷台に着地する。

 

 

「痛ッ~!、咄嗟の判断といえど自分のスタンドに殴らせるモンじゃないな…」

 

『く…ここまでしても仕留めきれんとは…』

 

「簡単にやられる訳にもいかないのでな…

  それと…お前の能力も分かってきたことだしな…」

 

 

先ほどまでの戦闘で承一は確信を得ていた。

「メタル・フリック」の能力…「金属」の中に潜行し、内部から自在に形を変えられることができる。そして本体の場所にも検討はついていた。

 

 

「お前の型はおそらく「遠隔操作型」…

  さっきの剣を作りだした時、正確に俺の急所を狙った…それは本体が見ていたからできた事だからな」

 

『…!しかし、それが分かった所でッ!』

 

「俺に負けないとでも?、残念だがお前を倒す方法は考え済み…だ!」

 

 

承一は真っ直ぐ敵に向かう、敵は先ほどの言葉に動揺しているのか一瞬の躊躇いの後、荷台の「金属」に潜行しようとするが…

 

飛び込んできた承一の「アウタースローン」が蹴りを入れられ、宙に浮感覚くの後トラックから押し出される形になってしまう。

追撃を予測し防御の構えをとるが、承一の取った行動に思わず声が漏れる。

 

 

『なッ…!?』

 

 

彼がズボンのポケットから取り出した物…先ほど自分が作った「金属」の剣であったのだ。

いつの間にか取っていたのか、その疑問が出る前に承一はそれを自分の頭上高く投げた……そして

 

 

「この手でお前の敗北は決定する…」

 

 

それを聞き終える前に「能力」が自動的に発動してしまう。実はこの「潜行」する際その対象は自身の半径1m以内の「金属」にのみ移動するもので、範囲内に自分の意思でない物も入ってしまっても発動してしまうのだ。

さらに移動中は身動きがとれなくなってしまうので移動先が見破られたたら格好の的になってしまうのが唯一の欠点であった。

その為、この事は相手に悟られない様にしてきたが今想定していた最悪のことが起きてしまう。

 

移動を終える直前、自らの顔面に綺麗な右ストレートが飛び、その影響で能力が中断してしまう。

 

 

『ぐ…はッ…!』

 

「捉えたぜ…完全にな」

 

『い、いつから気付いていたのだ…?某の能力の欠点を…』

 

「お前の能力が分かって少ししてからな…

   てか、気付いた段階でわざわざ喋るのかよ、お前は?」

 

『そ、それは…』

 

「まぁいいさ…それより覚えているか?

    お前に…倍返しにすることを…」

 

『え?…あ…』

 

 

仮面で表情を見えないが、確実に恐怖をしている事に気付いた承一はゆっくりとした動作で構えに入る。

 

 

「覚悟はできたな…?」

 

『ひっ!…うわああああああ!!』

 

 

「オラオラオラオラッ!!

   オラオラオラオラオラオラァッ!!!」

 

 

高速ラッシュによって吹き飛ばされる敵スタンド、それと同時に後方から凄まじい音と共に壁にぶつかる車が見えた。

それを確認すると、ちょうどトラックが料金所に差し掛かる所だったので荷台の屋根から料金所の屋根へと移った後そこから降り、激突している車に近寄る。

 

中を見てみると、ボロボロになった男が運転席に座り怯えた目でこちらを見ていた。

 

 

「こいつが本体か…」

 

「ひ、ひぃ!お願いです…こ、殺さないで、ください…」

 

「別にあんたを殺す気なんてないよ…」

 

 

やれやれといった感じでこれからどうするか決めかねていた所、真っ直ぐこちらに向かってくる黒塗りの車が見えてきた。

 

 

「承一はん~無事か~!」

 

 

助手席から顔だけ出しているのは先ほど別れた島であり、運転席にはアパートであった彼の部下の姿も見えていた。

 

 

「島さん?どうして…?」

 

「あんたが心配でな、若い連中に無理言って車を出させたんや」

 

 

「わいのランエボちゃんは尊い犠牲になったんや…」と言い、肩を落とす島を尻目に運転席から出てきた人が承一の隣…つまり敵スタンドの本体を指さして叫ぶように言う。

 

 

「あ!兄貴、こいつですよ。踏み倒そうとしたんのは!!」

 

「なるほど…あんたが、ねぇ?」

 

 

島が運転席を覗き込むように言うと、男の肩がビクッと跳ね上がる。

それから少しの間、考える素振りをした後に承一の方を向く。

 

 

「承一はん、今から車を出させますんでこの人の事は任せて貰ってもいいですか?」

 

「ええ、大丈夫ですよ」

 

 

それを聞いてすぐさま今まで乗っていた車に促し、運転は島の部下である人に任して承一は最終目的地である「天理PA」へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

目的地へ着いた頃は既に日が傾き始めている時だった。

パーキングエリアの駐車場で待っていた…すると

 

 

「…ん?」

 

 

遠くの方から小さい黒い点のようなものが段々と近づいてくるのが分かった。

それは確実にこちらに向かっており、はっきりと確認がとれたのは数秒後である。

 

正体は真っ白な羽毛を持つ1羽の「鳩」であった。

鳩は承一の姿を確認すると、脚に付けていた金属部品を外し彼に渡す。

 

 

「なるほど、伝書鳩みたいなものか…」

 

 

優雅に飛び去るのを見送った後、明日は移動の為に今夜の寝床を探すことにした承一であった……

 

 

  

 




いかがだったでしょうか? ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「メタル・フリック」
   本体:鍵山 蓮(27歳)
破壊力-B、スピード-B、射程距離-A
持続力-C、精密動作性-B、成長性-E

遠隔操作型のスタンド
能力
「金属」の中のみを潜行したり、その金属を変形させて好きな物を作りだせる能力
但し、変形させた場合その分だけ金属は減っていく(つまり無限には作りだせない)
移動する際は移動先は半径1m以内にあるものしかできず、本体の意思では移動先を選べない


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第58話 ルナティック・カームその①

 5月7日 東京 

 

ゴールデンウィーク明けの今日、東京各所では「2015年東京都都知事選挙」の告示が行われていた。

マスコミはこぞってこの選挙を報じ、都民からの関心も持たれ投票率が50%を超えるかもしれないとの噂がたつほどだった。(過去三年は全て50%を下回っていた影響もある)

 

特に注目を浴びたのが、野党統一候補の「空条丞一郎」氏であった、政治経験ゼロにも関わらず高齢者医療問題の抜本的な解決を元とした都政改革を提示することで50代・60代の支持を集めている、さらに鮮やかな赤髪に左目に覆うような独特の髪型や整った顔立ち、他者を引き寄せる力強い演説などで若い有権者など幅広い層からの支持をされ始めていた。

 

だが、その一連の事をニュースで見て驚愕を隠せない表情をしているのは、昨日の戦闘で負傷しその傷を癒している「落合楓」であった。

ニュースが流れ始めた時は再び聞くことがないと思っていた名を耳にした瞬間、何故だがある確信めいたものを感じた。

 

 

(これまでのスタンド使い達に「同化人間」と自らを呼称する者達の襲撃…間違いなく「丞一郎」が関わっている!)

 

 

確かな証拠などはない…だがかつての(・・・・)「丞一郎」を知っている彼女は彼が無関係とは到底思えなかった、己の野心の為に日本をいや…世界を支配しようと固執していた奴が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~*****~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

同日 私立群堂ヶ岡中学校 教室内

 

昼休みの時間がもうすぐ終了になる教室内は、まだ談笑する者やトイレに立ったり次の授業の準備をする者がいる中、ただ一人だけ窓の外を見つめている生徒の姿があった。

 

 

「はぁ…」

 

 

その生徒…「出水(いずみ)英雄」はため息をついて再び窓の外に目をやった。

考えることは山ほどあった、特に自身の「能力」のことについては最大の悩みの種で最近はあまり本調子ではないのもそれが原因である。

 

(…昨日、財団からの連絡があったかと思えば楓さんが傷だらけだったよな…

    僕も同じ能力があるし…戦いになるなんて事には……)

 

無い…とは言い切れない、現に楓本人からこれまで知らなかった「スタンド使い同士の戦い」を聞かされた時は、恐怖という感情が体中に走り風邪でもないのに全身が震えてしまった、それだけではなく同じ能力を持つ自分も巻き込まれる可能性があると思うと、「今すぐ逃げたい!」…そう心が言ってしまうほどである。

 

(いや、ダメだ!ここで逃げては、あの頃の自分に戻ってしまう…!それだけは……)

 

弱くなりそうな心に喝を入れ、己を奮い立たせる。するとタイミング良く後ろから声をかけられ、そちらへ振り向く。

 

 

「どうしたんだよ、蜂が豆鉄砲をくらったみたいな顔をして!」

 

「それを言うなら「鳩が豆鉄砲をくらった」だろ…マサ」

 

「あはは、そうとも言うな~」

 

 

びっくりした時の表現を一文字違いで間違えるのは出水の数少ない親友でありアイドルオタクの「神崎正樹」である。どうやら走ってきたらしく着ている制服の所々にシワが目立ち、急いできたのか手には教科書も何も持っていなかった。

 

 

「何も持ってないけど、準備はもういいの?」

 

「ふっふーん、そこは抜かりないぜ!」

 

 

若干ウザいドヤ顔を披露し、神崎は出水の前の席に移動し机の引き出しを開け、その中を見ると次の授業の用意がきっちり真っ直ぐ並べてあった。

 

 

「昼休みの始まる前に用意しておいたのだッ!どうだい?」

 

「マサらしいといえばいいのかな…」

 

 

渾身のドヤ顔に内心イラっとしながらも苦笑いで応える。それと同時にチャイムが教室内に響き慌ただしくなる中、神崎は珍しく低い声で呟いた。

 

 

「…悩みがあるなら、いつでも相談してくれよ…ヒデ」

 

「え…?それって…」

 

 

出水の問いかけに答える間もなく五時限目の授業を務める先生が教室に来てしまい、結局全ての授業が終わるまでそのことについては聞けなかった。

 

 

 

 

 

放課後、普段なら神崎と一緒に寄り道をして帰るのが日課だったが、今日は彼が掃除係だったので久しぶりに一人での帰りとなっていた。帰る足取りは昼間に神崎から言われた一言が頭の中を反芻しており、とても気分がいいとは言えなかった。

 

(…やっぱりマサには分かるのかな?僕が悩んでいた事に…)

 

(でも…)

 

言える訳はなかった、非スタンド使いである神崎に自分が抱えている悩みを打ち明けた所で根本的な解決になるとは言いにくい、それに彼の性格を考えると絶対に今の問題に関わってくるだろう…そうなれば……

 

(戦いに巻き込まれてしまう…)

 

前述の通り、彼は何も力を持たない非力な中学生である。もし戦いになれば怪我だけで済めばいいものだが、最悪の場合命を失う危険性もある。

 

(それだけはダメだ…!絶対に…!)

 

心にそう固く誓い、改めて家に帰ろうとすると後ろから声をかけられる。

振り返り見てみると、70~80代くらいの男性が地図を片手にもっており、上下黒のスーツに黒のネクタイをしていた。

 

 

「すみません、この場所にいきたいんじゃが…」

 

「はい、ええと…」

 

 

行先を見た所、近くにある葬儀式場を示しておりどうやら誰かの葬儀に出る様子らしい。

何回も秋葉原を訪れた事がある為すぐにそこへの道を教える。

 

 

「確か、この道を真っ直ぐ行って右に曲がればありますよ」

 

「すまないねぇ」

 

 

教えた道を歩いていく老人を見送りながら、家路へと向かっていく。

その途中の路地にて何者かに後をつけられている感覚を覚える、最初は気のせいかと思ったが速足にしても、付かず離れずを保って足音が聞こえたので駆け足で路地裏に飛び込み、自身のスタンド「アイム・ヒーロー」を発現させ、追手を待つ。

すると、黒い影が角から飛び出してきた。

 

 

「ウオオオッ!!」

 

 

渾身の左ストレートを放ち、それは影の顔の部分にあたる個所に命中した。

だが、手ごたえがあまりなく感触も泥みたいな半固形のようであり、それでいて何かが中で蠢く感じもあり得体の知れない物への恐怖で、左足で蹴り飛ばす。

左手が何もない事を確認して、蹴り飛ばした相手を見てみる。

 

 

「なっ!…」

 

 

そこにいたのは、先ほど道案内をした老人が小さい声で呻きながら倒れていた。

しかし、その姿はあまりにも酷い有様であり、皮膚はドロドロに溶けているかの様に見え、黒い筋みたいなのが皮膚の中で動いているのが見えた。

 

 

「何なんだ…こいつは…」

 

 

すると、溶けかけていた皮膚が徐々に液体状になっていき数分もしない内に残されたのは身に着けていた服だけであった。

そして、その服の周りに黒い筋が集まってきており、一つの「集合体」へと変貌を遂げた。

 

 

それは……「異形のスタンド」であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしました。ようやく投稿できました…


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第59話 ルナティック・カームその②

 その「スタンド」の容姿を一言で表すのなら…まさしく「異形」が合っているだろう。

下半身には「脚」はなく、その代わりに青白い血管のようなものが浮き出ている黒色の「触手」が何本も生えていた、上半身はボロボロになった白い布を被っており「スタンド」の顔は見えなくなっている。

 

 

「うっ…」

 

 

出水はその怪物みたいな姿に思わず後ずさり脚もよく見てみると小刻みに震えているのが分かる…

彼がこれまで相手にしてきたのは只の人間であり、「スタンド」それもあんな異形と闘うことは考えもしなかったから無理もないだろう。

 

そんな彼の心を知ってか知らずか、「スタンド」は粘着物を踏む様な音をたて徐々に近寄ってくる。

 

 

「う、うああああッ!!」

 

 

恐怖心からか近づこうとする相手を殴りかかる、がむしゃらに放った拳はほとんどが外れていったが幸運にも一発が「スタンド」の顔面を捉えた。

 

だが……

 

確かに当たった、しかし相手は平然とし逆に左手がスローモーションのような動きで右腕を振りかざしてきた。

それを避ける間もなく、振りぬかれた拳は自分の顔面に直撃し大きく後方へ飛ばされる。

 

 

「うぐッ!」

 

 

コンクリートの壁に当たった後地面に倒れ伏す。

殴られた個所はジンジンと熱を帯びる様に痛み、その衝撃からか上手く立つことすらままならない。

 

(あ…ああ……)

 

自分の中で敵「スタンド」に対する恐怖心が強くなっていくのが分かり、悍ましい姿が再びこちらに向かってくるのだと思うと脚だけではなく全身までも震えてきた。

 

 

「う…く、ああああ…うわああああ!!」

 

 

僅かに残った力で飛び跳ねる様に起き上がるとその足は相手ではない逆方向に向き、そのまま駆け足でその場から逃走してしまう。

 

 

(は、速く…もっと速く逃げなきゃ…追いつかれる前に!!!)

 

 

彼は走った、自分の格好など気にすることもなく走り続けた。

細い路地裏に入り込み走った…人通りの少ない、多い関係ない道をとにかく走った…

 

どれくらい走っただろうか…気が付けば少し開けた場所に辿り着いていた。

そこは赤色の建物があり、絵馬が飾られた場所があることからここが「神田明神」だと気付くことができ、出水は

一息つくために前後左右を確認していないことが分かると近くの建物の影に身を潜める。今更気付いたことだが「スタンド」は既に解除されて、制服姿になっていた。

 

しかし、安心したのもつかの間…今になって敵から無様に逃げ出したことを思い出し、頭を抱えてしまう。

 

(…こんな姿で「ヒーロー」だなんて笑っちゃうよ……でも、

 無理だよ…僕が戦うなんて…比屋定さんや楓さんみたく強くない僕何かが…

 ただの中学生の僕が…)

 

 

抗いようもない絶望感が心を覆いつくし、いっその事ずっとここにいてしまいたいと思っていた時だった。

 

 

「ヒーローさんがこんな所で、どうしたん?」

 

 

声が聞こえた…それも女性の声だった。

恐る恐る顔を上げると、音ノ木坂学院の制服を着た紫色の髪の美しい女性が傍にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~*****~~~~~~

 

 

 

その日は彼女…「東條希」にとっては普段と多少変わらない日だと思っていた。

「比屋定承一」の一件以来、「落合楓」からの注意を受けて学院内にいる時から自身のスタンド「パープル・ヴァローナ」を出し警戒はしてきたが、特に何もないまま今日を迎えた。

 

今日は学院が終わった後、普段通りここ「神田明神」のバイトに入り、終わり次第帰るはずだった。

 

巫女衣装から学院の制服に着替え終わり帰ろうとした時、誰かが境内に入ってくる気配がした…参拝客なら既に本殿にいるはずだが、その気配は消えることなく姿を現さないので「スタンド」を出しつつ気配元に近づくと…

 

そこには顔をうずめる中学生ぐらいの少年がいた。

 

 

(あれ…?この子どこかで…)

 

 

以前、学院の後輩でスクールアイドル「μ's」のリーダーである「高坂穂乃果」が話していた着るタイプの「スタンド」を操る少年がいることを思い出した。

 

しかし、彼女から聞いていた姿と今の状態は似ても似つかないので、確信に迫るべく声をかけてみた。

 

 

「ヒーローさんがこんな所で、どうしたん?」

 

「あ…貴女は…?」

 

「うちは東條希、君の事は穂乃果ちゃんから聞いているよ」

 

「高坂さんから…」

 

 

高坂穂乃果の名前が出てきたことから間違いはないが、だからこそ彼に何があって、今の状態になってしまったのか…「スタンド」という可能性を考えながら、希は話を聞くことにした。

 

 

「…その様子だと、何かあったと思うんけど…話してくれる?」

 

「そ、それは…」

 

「大丈夫よ、うちだって君と同じ「スタンド使い」なんだから」

 

「で…でも……」

 

 

最初は戸惑いがあったものの、ポツリポツリと自分が体験したことを話し始めた。

怪物の様な「スタンド」と出会った事、

それに最初は立ち向かったが、恐怖のあまり逃げ出してしまった事、

散々逃げ回り、気付いたらここにいた事を…次々とまるで堰を切った如く早口気味に話し、希はそれを一言一句聞き逃さない様に聞いていた。

 

 

「笑ってしまいますよね…敵から逃げ出したなんて…これじゃあヒーロー失格だよ…」

 

「…なるほどね、「スタンド」はいたけど本体は近くにいないのなら「遠距離」タイプかもしれんよね」

 

「…?東條さん…」

 

「そしたら、うちの「スタンド」の出番やな!

ただ、「遠距離操作型」と「遠距離自動操縦型」だと探す手間が違うからな…どっちかが分かればいいんやけど」

 

「な、何を…?」

 

「何って…もちろん、この戦いに勝つ為に必要な事を考えているんよ?」

 

 

そこまで聞くと、出水は青く顔をしながらも勢い良く立ち上がった。

 

 

「か、勝つって…そんなこと無理ですよ!

 あんな怪物みたいな相手に!それに…!」

 

「出水君…」

 

「怖くなって逃げ出した奴なんかが……

 臆病な僕があんなのに勝てる訳がないじゃないですかっ!!」

 

叫ぶ様な声で聞いたのは彼の疑いのない、「本音」だった…聞いていた希は優しく微笑み、静かに語る。

 

 

「うちだって怖くないと言ったら嘘になるんよ…

でもね、「スタンド」という能力(ちから)には 「スタンド」でしか対抗できない…つまり」

 

「うちにしかできない事なんよ、悪意のある者達から「日常」を守ることは…他でもない自分自身が…

 それが(スタンド)を持った意味だと思っている」

 

「東條さん…」

 

「だから、うちは戦う…「これまでの日常」、「これからの日常」を守りたいから!」

 

 

女性とは思えない力強い言葉に何も言えず呆然としている出水だったが、不意に嫌な気配を感じた。

希はその姿を見据え、苦い顔をする。

 

 

「どうやら、向こうから来てくれたみたいやね…」

 

 

再び、「異形」が現れる……

 




お待たせしました。

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第60話 ルナティック・カームその③

明けましておめでとうございます(今更ですが…)

今年の二月頃には本編を終わらせて、続編と短編みたいなのをやる予定になると思います。


2017年、初投稿!


 「神田明神」から少し離れらた場所にあるビルの屋上に一人の人物がいる。

その手には双眼鏡を持ち、ある一点を見続けながら頭をしきりに掻き落ち着かない様子であった。

 

 

「くそッ!あのガキ、仲間がいたのか…!」

 

 

双眼鏡から目を離し、空いている右手で懐から赤いパッケージが施された袋を取出し、中にあるキャンディーを掴みとる。

それを口に放り込むと、奥歯で噛み砕きながら食べ再び双眼鏡を覗く。

 

 

「まぁいいさ…どのみち奴の「恐怖」は俺の物になった。

 が、問題は…」

 

 

男の視線の先にいるのは、制服姿の少女であった。

その少女は臆することもなく男のスタンドと相対している。その事が男が落ち着けない理由になっていた。

 

 

「何者だ…?スタンド使いにしろ「恐怖」が一遍も感じられないとはッ…」

 

 

関係ないーー何者であっても俺が身に付けたスタンド「ルナティック・カーム」に、死角はない!

その確固たる自信を持って男は落ち着きを取り戻し始めた、そして二個目のキャンディーを口に含む。

 

 

 

 

~~~~******~~~~

 

 

 

 

神田明神の大社殿の裏では奇妙な構図があった。

二人の学生、「出水英雄」と「東條希」から数メートル離れた所に、立っているスタンド…それは少しの間動かなかったと思うと、こちらに向いて前進し始めた。

耳にこびり付く様な不快な音を出し、そこまでスピードはなかったが確実に迫ってきていた。

 

出水は引け腰になっているが希は凛とした表情を崩さず、目の前の敵を見据えていた。

 

 

「と、東條さん……」

 

「そこまで早くはないんやね…なら何とかなるかな」

 

 

心配そうに呟く出水とは対照的に冷静に分析している希であるが、敵は迫り続けていた。

そんな中、希はスタンド「パープル・ヴァローナ」を発現し、近くにいた鳩に憑依させる。

 

 

『ウォォォバァァァァ!!!』

 

「「パープル・ヴァローナ」!」

 

 

希の動きとスタンドの攻撃が交差する…繰り出されるラッシュが当たる直前、鳩に憑依した「パープル・ヴァローナ」が敵の眼前で羽ばたく。

それに不意をつかれ、一瞬だが顔を横に逸らしてしまう。それを待っていたと言わんばかりに希は行動を起こす。

 

 

「出水君!」

 

「え…?わッ!」

 

 

彼女は出水の手を取り、素早く建物の影に飛び込む。

数秒遅れてスタンドが隠れたと思われる場所を覗き込むが、そこには人影すらなかった。

 

 

 

 

「み、見失った…だと」

 

男の双眼鏡を持つ手が力を増していく…ほんの一瞬だけ目を離しただけで姿を見失ってしまうとは考えもよらなかったからだ。

一回り離れた子供を始末するだけの簡単な仕事のはずだったが、ここまで苦労したり予期せぬ乱入があったりなどとして、男は再び落ち着きがなくなっていた。

キャンディーを取り出そうとするが上手く取れず、袋ごと無理矢理引っ張りだして中に手を入れるが。既に空になっていた。

 

 

「くそがぁッ!!!クソッ!クソッ!クソッ!!」

 

 

空になった袋を床に叩きつけ、足で何度も踏みつける。

それだけでは抑えられなかったのか歯軋りをして、横の壁を殴りつける。

 

 

「…いや、まだ大丈夫か…

 能力はまだ奴らには掴まれていない、それに自衛手段もなくはないさ…」

 

 

不敵な笑みを浮かべて、男は屋上にある柵へと近づいていく。

そして、眼前の景色を見下ろしながら囁く様に言う。

 

 

「精々足掻きな、逃げることなんて…できはしないぜ」

 

 

 

 

 

一方、出水と希は大社殿の屋根、その軒先部分にしがみ付いていた。

出水はスタンド「アイム・ヒーロー」を発現させ、片手で軒先をもう片手で希の手を取っていた。

二人は敵スタンドが見えなくなったことを確認すると、地面に降りてきた。

 

 

「…行ったみたいやね」

 

「そうみたい…ですね

 でも、これからどうしますか?」

 

 

何かを考える素振りを見せた後、希は出水の手を取る。

彼女の突然の行動に戸惑いながらも、しっかりと見据えながら聞く。

 

 

「二手に分かれようか

 うちが本体を探して、出水君がスタンドを足止めをするんや

 幸い、本体の位置は検討がついてるからね」

 

「え!?ぼ、僕が…あれを」

 

「うん、これは君にしか任せられないことだから…」

 

 

出水の心は揺れ動いていた…

また「アレ」と対峙しなくてはならない「恐怖」、

任かせたと言ってくれた東條さんの期待を裏切ってはいけない「正義の心」、

揺れながらも、少年は答えを出す。

 

 

「……分かりました、僕にしか出来ないなら…やります!」

 

 

希は無言で頷き、近くの障害物を利用しながらその場から離れた。

一人残された出水は震えている拳を手で押さえていた。

今になって恐怖が戻りつつあり、冷や汗も出てきた……唯一先ほどと違うのは彼の心に、一筋の光があることだろう。

その正体は希の言葉だった。

 

『自分にしかできないをやる』

 

この言葉を聞いた時、自分はあのスタンドに恐怖していた訳ではなく…

情けない自分の心に怖気づいていた事に気付いた。

 

ーー僕は…自分が逃げてしまったから…もう一度同じ結果になってしまうことになるのが怖かったんだ…

今でも脚が震えている…けど逃げたいなんて思ってない…だって、

 

 

「僕にしかできないことを…

  僕ができることを…やるんだ、やらなきゃ何も守れないからッ!!」

 

 

勇気を持ち、自分を奮い立たせ…少年は三度「怪物(スタンド)」と相対する。

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「ルナティック・カーム」
   本体:霧島 洸九郎

破壊力-?、スピード-C、射程距離-A
持続力-A、精密動作性-B、成長性-E

能力
対象の「恐怖」の根源となっている「記憶」を読み取り、それを再現させることやその「恐怖」を自らのパワー変えることができる能力。
「誰か」を恐れているのなら…「その人物」に
「何か物体」を恐れているのなら…「その物体」になれる。
但し、対象に取れるのは一人であり、他の対象にしてしまうと能力はリセットされてしまう。

名前の元ネタは、イギリスの電子音楽グループ「ルナティック・カーム」から



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第61話 ルナティック・カームその④

 臨戦態勢をとる出水に対して、敵スタンドは左右に揺れながら攻撃の機会を伺っていた。

この時、彼の心は不思議と落ち着き状況を冷静に把握することができていた、その事に本人は驚きを隠せなかった。

 

  (さっきまでの恐ろしさが嘘みたいだ…)

 

 両手の拳を自身の胸の前まで持ってくる…所謂ボクシングの基本フォームである、断るまでもないが出水自身はボクシングの経験はなく、ましてや過去に本を読んだ事すら無いのだ。

 つまり、体が自然に闘う為の姿勢をとったことになり、本能とも言い換えることができるかもしれない。

 

 

『バァァァッ!!』

 

 「ハッ!」

 

 

 敵スタンドの拳と出水の右拳がぶつかり合う、力が拮抗し互いの拳が弾かれる。

 触手の脚を凪ぎ払う如く横から飛んでくる、それを右腕で受け止めると素早く掴みとり、自分の方に引き寄せる。そして空いた左拳で腹に当たる部分を殴り付ける。

 

 しかし、掴まれた段階でその攻撃を察知していたのか数本の脚で防がれていた。出水は深追いはせず手を離すと、バックステップで距離をとる。

 間髪入れずに敵スタンドの懐に入ると、ひじ打ちを腹に入れ相手がよろめいた所を右手の掌で顎に強い一撃を与える。

 

 

『グッ!』

 

 「これでッ!」

 

 

 動きが止まった隙をついて蹴りを入れて後方へ吹き飛ばし、地面を蹴り上げ空中へ飛び、そのまま飛び蹴りを放つ。

大量の土煙が発生し、視界が遮られるが出水は確かに直撃がしたかと思ったが、手応えがない事に気が付いた。

そして、土煙が晴れると敵スタンドの姿がなくなっていた。

 

 「ッ!、何処に…」

 

 

 

 

 

時間は少し遡る、ここは敵スタンドこと「ルナティック・カーム」の本体である「霧島 洸九郎」がいるビルの屋上である。出水が一人で出てきた事を見て焦りが顔に表れる。

 

 「なッ!もう一人は何処に行きやがった!」

 

急いで周りを見渡すが姿を確認できず、柵の一部を殴り付けて悔しさで顔が歪む。

 

 「ま、まさか…俺の能力が「遠距離操作型」だと気付いたかッ!」

 

 ーーいや、そんなはずはない!

 仮に気付けたとしても場所までは分かる事はない、それに来たとしても来ているのは女の方みたいだからな…俺でも対処はできる。

 

 

「ま、ここが分かる訳がないか…」

 

 

 

 

「…あなたが本体やね」

 

 

不意に聞こえてきた声に驚き、後ろを振り返ると…先ほど姿を消した制服を着た少女が扉の前に立っていた。

時間にして数分程度しか経っていないはず、なのに直ぐに見つけられた事に霧島は怒りを露わにして問いかける。

 

 

「ば、ばかなッ!どうしてここが分かった!!?」

 

「手がかりが色々あったからね…それのおかげと言うべきかな」

 

 

手がかりーーそんな物が有ったのか…?と言わんばかりである顔をする霧島を余所に…

制服を着た少女もとい希は語り始める。

 

 

「まず、さっきのあなたの「スタンド」がうち等を見失った時…

  実は屋根にしがみついていただけなんや…なのに見失った」

 

「と言うことは、本体の位置はあそこから影になって見えない所に限定される…

 まぁ、「自動操縦型」やったら不味かったけどね」

 

 

悪戯っ子ぽく少し舌を出して微笑む希とは対照的に顔色が悪くなってきてる霧島である。

 

 

「次に、その場所からあの神田明神が広く見渡せる所を探した…

 あの位置から影になるのは「北の方角」…そして見渡せるぐらいの場所は、

 

 

    ここ、「アキバ第二商業ビル」の屋上しかない」

 

 

「こ、こんな事が…」

 

「さらに言えば、この下の階には「オデュッセウス・インダストリー社」の第三支部が入っている。

 …ここまで言えばもう分かるよね」

 

 

少女から発せられたとは思えない言葉に呆然としていた霧島だったが、何かを思い出したのかククッと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「追い詰めたようだが…俺にはまだ策はある」

 

「…?」

 

 

発言の意図が理解できない希を一瞥し、霧島はズボンの右ポケットから折り畳み式のナイフを取り出し、鋭利な刃を出した。

 

 

「コイツを使わせる事になるとはな…

 癪だがあんたを始末してから、一旦退却するしかないな」

 

「…そんな物騒な物を持ってるとはね」

 

「自分の無用心さを…後悔しなッ!」

 

 

右手に持ったナイフを突き刺すように一直線に向けてくる、それは散発な攻撃で希は容易く横にずれる事で避ける。

 

 

「クソッ!避けんじゃねェッ!」

 

 

避けられた事に腹を立て、今度は真一文字に来たが滅茶苦茶に振り回しているおかげか、攻撃は明後日の方向に飛んでいく。

それでも攻撃の手は緩めず、まだ振り回している…

時に縦に一直線に、再び真一文字や心臓に突き刺してくることもある…がどれも希を捉える事はなかった。

 

(楓さんに護身術を習っておいて正解やったな…)

 

次々と繰り出される攻撃を冷静に避けながらも、希は善意で教えてくれた波紋使いに感謝していた。

 

…それのせいか、または足下を疎かにしたのか一瞬だけ脚が何かに引っ掛かり態勢を崩す。

この隙を逃すことはなく、霧島はナイフを上から斜めに切りつける。

 

着ているブレザーのボタンが弾かれ、その下のシャツまで切れていた。

それに希が怯んだ瞬間、ナイフを振り下ろす…だが若干のタイムラグのおかげか胸に突き刺さる前、両手でナイフを持っている腕を掴めた。

 

 

「へへッ、良く見ればあんた…中々の体をしてんな」

 

「…ッ」

 

「殺す前に…味見でもしてみるかぁ~」

 

 

ゴクリと生唾を呑み込み、さもご馳走を食らう前の猟犬みたいな血走った目で、全身をなめ回す様に希を見た。

そんな視線で見られたか彼女の背中に悪寒が走る。

 

 

「手始めに抵抗出来ない様に、腕の一本でも使えなくしておくかッ!」

 

 

希の手を振りほどき、逆に彼女の右腕を掴んでナイフを突き立てようとする。

その一連の動作に対応出来なかった希は何もできず、その時を待つしかなかった。

 

 

「グ…ァ」

 

「…え?」

 

 

聞こえたのは、うめき声の様なものだった。

見ると顎の所を手で押さえている霧島の姿があった、希はその隙にナイフを右手から強引に奪い取る。

 

 

「あ…し、しまった!」

 

「これは没収やね…もう観念しなよ」

 

「観念……だと…」

 

 

 

 

「馬鹿め…気付かない様だが俺は「スタンド」を回収したんだぜ、あんたを確実に殺す為になぁ!!」

 

「あのガキは始末し損ねるが、仕方がないがな…」

 

 

ーー距離があるせいか、戻るまでには時間は要するが目の前の奴を確実に殺れるからいいだろう、と思っていると希の表情は絶望していないことが見てとれた。

 

 

「…こんな状況で絶望はしないのか」

 

「絶望…?そんなのは感じないよ…

 だって、勝利の構図が出来たやからね!」

 

「そんなハッタリがぁ!」

 

「うちのスタンド「パープル・ヴァローナ」は人以外の生物に憑依して操る能力…

 今までスタンドが出てきてないのは、ある人を誘導(・・)する為、そしてそれはもう終わった…」

 

 

言い終わると同時に、屋上の扉が開かれていく…

そこには、「アイム・ヒーロー」を見に纏う「出水英雄」の姿があった。

 

 

「東條さんッ!」

 

「時間ピッタリやな、出水君」

 

 

…全く予定通りに事が進まず、獲物を追いかける狩人だと思っていたのが今では追い詰めらる側になってしまっていることが霧島のプライドに触れる。

 

 

「お、お、俺は…こんな、違う…俺はァッ!

 

俺はお前等の様な落ちこぼれとは違うッ!!

 

エリートである、この俺が!負ける訳がねェェだろォォッ!!!」

 

 

叫びながら突進してくる…出水は決着をつける為、希の前に立つ。

 

 

「ルナティック・カァァァーム!!!!」

 

「ウォォォリァァァッ!!」

 

 

交差する拳、捉えたのは……

 

 

 

 

出水の拳であった、渾身の右ストレートは顔面のど真ん中に直撃し、骨が折れる様な音が響く。

その一撃は、精神的に疲労していた霧島の意識を刈り取るには十分すぎるものだった。

 

 

 

 

 

 

戦い後は、出水と希は今回の事をスピードワゴン財団と「落合楓」に報告する為に神田明神で休憩をとり、出発する。

そこで、あるミスをしてしまう…普段より厳しい戦いであったゆえ「アイム・ヒーロー」を解除しないまま、神社の境内まで来てしまったのである。

 

希に指摘されて、ようやく解除をしたが……その一部始終を参拝ついで立ち寄った「神崎正樹」に目撃されてしまった。

 

 

「ヒデ……何で、何も言ってくれなかったんだよ…!」

 

 

正体を隠していた事ではなく、自分が出水にとって頼り甲斐がない奴だと思われていた…

その事にショックを受けた彼は、声をかけることもなく走り去ってしまう。

 

空は彼の心と同調するかのように、どんよりとした曇り模様だった。




いかがだったでしょうか?少しお知らせがあります。


本作「女神達の奇妙な冒険」の1話から3話まで、加筆・修正を致しました。
4話以降も順次修正していく予定で、修正が完了した時は活動報告にあげていきます。


感想・ご意見お待ちしています!


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第62話 川西兄弟その①

5月8日

 

 承一にとって電車の始発に乗ることは初めてであり、未体験の域に入る程である…ゆえに彼の現状は致し方がないことでもある…つまりは。

 

 (…はっ!、ま、また眠くなる所だった…)

 

 今、承一は睡魔と言われる強敵と必死に戦っていた…天理から乗り換えること数回、やっと最期の乗り換えになる所で5時起きの代償がやってきてしまった。

 少しでも気が緩むと意識が底無し沼に引き摺りこまれる為、常に気を張る必要がある。

 緩めては引き締めを繰り返し、彼は電車に乗っていただけで既に疲労感に襲われ目的地である三重県は「鈴鹿市」に着く頃には、直ぐにでもホテルで休みたいと思うほどであった。

 

 

「やっと…着いた、はぁ…」

 

 

駅に降り立ち背伸びをする…ここまで二時間以上もかかったこともあり、思わずタメ息がでる。

そんな承一の目にある物が映る、それは飲み物などがある自動販売機であった…疲労が全身に残っている今「冷た~い」の表記はとても魅力的で、気付けば、体は自然に動き始めていた。

 

 目の前まで来ると様々な飲み物達が待っており、どれも美味しそうに目に映る。

桃や林檎などの果汁ジュースにブラックコーヒーやミルク入りのコーヒーもあり、さらにコーラやジンジャーエールといった炭酸飲料も揃っていた。

 財布を昨日の一件で楓から届けて貰ったので、小銭は有り余るほどある、そこから買うのに必要な分だけ取り出し、投入口に入れようとした時だった。

 

 疲れの影響からか十円玉が手から落ちていく…承一が気付いた時には既に眼前から消えており、拾うべく下を見ようとすると…次に聞こえてきたのは小銭が落下した際の音ではなかった。

 

 

 『痛ッ!』

 

 

 明らかに聞こえたその声は人のものではない、承一が恐る恐る視線を落とした先にいたのは…「小人」だった、比喩ではなく本当に小さい人間の様なものが見える。

 髪形なのか分からないが頭から針の様な物が生え、耳が三角形みたいな形をしており、さらに三日月をあしらったスーツを着こなし蝶ネクタイも締めている姿だった。

 そんな小人が頭を押え(うずくま)っていると、もう一人の小人が出てくる。服にデザインされているのが満月であることが唯一の違いであった。

 

 『大丈夫カ?!誰二ヤラレタンダ?』

 

 

 痛そうにしている仲間に慌てた様子で駆け寄る。

 すると、頭を押さえてない方の腕で真っ直ぐ承一の事を指差しした。

 

 

 『オ前カ!ヨクモヤッテクレタナ!!』

 

 

 「い、いや…俺は落としただけだから」

 

 

 『問答無用ダッ!』

 

 

 凄い形相で睨みつけられ、一瞬たじろいだがすぐに弁明するも聞く耳を持たず、ある物を手に取る。

 承一は身構えるが、それを見て脱力をする。

 

 それは承一がさっき落とした十円玉であり、小人は円盤投げのような姿勢をとっていた。

 

 

 『構エナイトハ、舐メタ真似ヲスルジャナイカ!

 ソノ余裕ブッタ面ヲ吹キ飛バシテヤルヨ!!』

 

 

 その言葉と同時に手にした物を投げてくる…避ける必要もないと思い、受け止めようとした承一の目が確かに捉えた。

 小人の手を離れた十円玉は、途中まで見えていたが、次の瞬間には忽然と消えていた。

承一はとっさの判断で「スタンド」を出していた。

 

 

 「「アウタースローン」!!」」

 

 

 飛び出したスタンドは承一の目の前に拳を降り下ろす!

金属音と共にズボンのポケット辺を掠めながら地面のコンクリートに十円玉が落ち、跳ねながら後方へと転がっていく。

 

 

 『マサカ…コノスピード二付イテイケルトハナ…』

 

 「お前…!」

 

 

 見下ろすとポケットの部分が破れ、中に仕舞っていた財布が少しだけ見えていた。

先程の軌道は自身の目の辺を狙ってきた事から、承一は明確な敵意を感じスタンドを全面に出す。

 小人は不敵な笑みを浮かべながら、口を開く。

 

 

 『ヨウヤク、ヤル気二ナッタカ』

 

 「…」

 

 

 周りを見渡し一般人がまだいる事を考慮し、ここからなるべく離れて戦う事にする。

その為に左手に飲み物を買うのに用意しておいた残りの小銭を、密かに右手に一枚持たせる。

 

 「オラッ!」

 

 『ハッ!何処二向カッテ攻撃シテルンダ!』

 

 「アウタースローン」はわざと大振りの攻撃をする…当然小人には届くことはなかったが、しかし承一の狙いは右手に持っていた小銭を投げる事にあり、それに能力をかけていた。

 

 

 「「アウタースローン」…十円を中心に集まる…!」

 

 『ナッ!ヒ、引ッ張ラレル?!』

 

 

 能力をかけられた十円に小人が引き寄せられ、その場から離れていく。

 その隙に承一は反対に逃げていく、なるべく人がいなさそうな所へと行く為に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 人通りが多い駅前を離れ、閑静な住宅地へと移動し、人気がない小さな公園へと着く。

かなりの距離を走ってきた為、一休みの為にベンチへと移動する。

 座ろうとした時、やけに腰のあたりに重みを感じたので、そこに目をやると…

 

パンパンに膨れ上がり、長方形の形が無残にも歪んでいた財布の姿があった。

 

 「な、何だ…これは?!」

 

 一部財布から溢れている物もあり、百円玉や五十円玉、特に十円玉の量がとても多かった…さっきまでは無かったはずの小銭達に驚いていると、後ろに気配を感じた。

 

 

 『ヘェー、モウ異変二気付クトハナ…』

 

 『キャカカカ!良イネ、歯応エガアリソウダナ!』

 

 『五月蝿イゾ…オ前ラ』

 

 

 不意に背後から聞こえてきた声達に反応して、振り返るとベンチの背もたれの上に立つ「四人」の小人の姿があった…




お待たせしました、やっと投稿できました……


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第63話 川西兄弟その②

四人の服装は、駅前にて出会った二人とは違いは一つだった…描かれている月の形が微妙に細かったり、ふっくらしている程度の違いだった。

 

 (さっきのと、ほとんど同じ格好…群体型か…)

 

 ベンチから距離をとるとスタンドを出し、承一は相手の出方を見る。

小人達は背もたれの上に立つと、内二人が溢れていた小銭の元に近寄り、それを掴む。

 

 『マ、サッサト終ワラシマスカ!』

 

 『右二同ジ!』

 

 ほぼ同時のタイミングで、小銭を投げ、やはり途中で軌道が見えなくなる。

だが、承一にも対策が無い訳ではなく、素早く頭を下げる…すると頭上から物が通り過ぎる音が聞こえた。

 

 「同じ手が通用するとでも、思ったか」

 

 『ナラ、コレハドウカナ?』

 

 頭上からの声に反応し、見上げると先程までベンチにいたはずの小人の一人が、踵落としの体勢になって現れた。

 承一は「アウタースローン」の左腕で止め、カウンターで右拳を放つが体をひねり、避けられてしまう。

 そのまま地面に着地すると、他の三人は承一の周りを囲むかの様に立っていた。

  四人が同時に走り出す…手には何も持っていなかったが承一は危険だと判断し、回避をする。

 だが、一歩遅れてしまい右足のスニーカーに手を触れられてしまう。

 

 

 『タッチ!』

 

 

 その声と共に右足の全体が若干重くなる感じがした。

 しかし、それに構う暇もなく他の三人がそれぞれの箇所に触れてくる。

 

 

 『タッチだぜ!』

 

 『…触レタゾ!』

 

 『タッチダヨ!』

 

 

 左腕、左足、そして右手の親指辺を触れられて、やはりその箇所が重くなる。

 拳を振るおうにも上手く動かせず、簡単に避けられてしまい、四人は一定の距離を置く為、その場を離れる。

 

 

 『サァ!止メトイコウカ!』

 

 

 一人が傍にある十円玉を拾い上げる、その動作に合わせたか三人が承一に真っ直ぐ向かう様に、列を成す。

 列ができたのと同時に十円玉を蹴って、近くにいる小人に渡す…それを、渡されたがまた蹴る、その次も同様であり、最期の一人が蹴る体勢に入る。

 

 

 『テメェノ顔面二シュゥゥート!!』

 

 

 蹴られた小銭は、瞬間に消えた。

 …承一は全身の重みが無くなったのを感じ、回避をしようとするが……

 

 僅かな気配を察し、横目で確認すると幼稚園児ぐらいの女の子と傍にはその子の母親の親子連れが歩いてくるのが見えた。

 

 ――俺が避けたら…あの人に当たってしまう…!それだけは!

 

 避けるのではなく、別の方法を探る…自分の為ではない、他の誰かが傷つかない為に…!

 

 

 「オラッ!」

 

 

 「アウタースローン」の左手が空を掴む様に振り抜く…静寂が一瞬だけ支配される。

 最初にその静寂を破ったのは、承一だった…握った左手を離すと、そこから十円玉が出てくるが、表面に少しばかり血が付着していた。

 

 

 『嘘ダロ!?アノスピードヲ止メタノカヨ!』

 

 『…厄介ダナ』

 

 

 驚く四人を尻目に、承一は距離を詰めるべく走り出していた。

 素早く移動し、四人を自身の射程内に捉える。

 

 

 「待ってくれッ!!」

 

 

 その時、公園内に響く声が聞こえた、承一がその声の元を探ると、入口辺りに人影が見えた…傍らに三人の小人を連れて…

 

 

 

 

 

~~~~****~~~~ 

 

 

 

 

 場所は変わり、市内のとある一軒家。

 そこに、承一はお茶と菓子類を出されている、そして…目の前には綺麗な土下座をしている同年代ぐらいの男子がいた。

 ここに来てから一時間近く経っていたが、今だに顔を上げない事から痺れをきらし、声をかける。

 

 

 「あの…もういいから、顔上げなよ…」

 

 「いえ!後、三時間はこのままでいいです!!」

 

 

 駄目だ、こりゃ…承一は出された菓子に手をつけ始める。

 その様子を見ていた七人の小人達は申し訳なさそうに出てきた。

 

 

 『ナァ、ゴ主人様~モウイイト思ウケド…』

 

 『ソウダ…痛ダダッ!顔ヲツネルナァァァ~!!』

 

 「大体な!ほとんどの原因はお前達なんだぞ!」

 

 

 小人の顔が真横や上下に動かしながらつねりまくる、この黒色の短髪で半袖、長ズボンの少年は「川西 (すぐる)」と名乗り、周りの小人達は「ムーンライト・ドライブ」と言う群体型スタンドであると、土下座をする数分前に紹介された。

 

 

 「事情はよく分かったし、そろそろ許してあげなよ…彼等も反省しているだろうし」

 

 『比屋定ノ旦那ハ、分カッテイルネェ~ウチノ主人モ見習ッテ欲シイゼ』

 

 「一言余計だ、一言」

 

 

 突っ込みをいれ、ようやく顔をあげる。

 彼等の事情とは、ここの所頻発に発生する謎の傷害事件である…分かっているだけで数十人が被害に遭い、中には重症者も出てきている程である。

 何より不気味なのは、それほど被害が出てきているのに誰一人として、犯人の顔はおろか姿すら見ていないことだった。

 

 

「…実はその中に、俺の父親もいて…幸い軽傷で済みましたけど…」

 

 

「川西 傑」はその一件から幼い頃から持つ親への感情と正義心から、三ヶ月前に自分に宿った力…「ムーンライト・ドライブ」で犯人を見つけようと、市内全体に散らばせていたのだ。

 

 承一は偶々、血の気が多い小人と当たってしまい、公園での戦闘になってしまったらしい。

 

 

 「だけど、少し気になるな…」

 

 「比野定さん…?」

 

 「いや、君の話だと昼も夜も動かしているなら、見つかってもおかしくはないはず…だけど」

 

 「見つける所か、手がかりすら掴めません…」

 

 「…もしかしたら、犯人は一人では無いかもしれないな…」

 

 

 単独で逃げ回るのには、限界がある…だが、それに一人が加われば話は違ってくる、今回の事件もそうではないかと承一はそう推測する。

 

 

 「そ、そんな…じゃあ、どうすれば…」

 

 「まだ推測の域を出ていないから、決まった訳ではないから…」

 

 

 項垂れる傑を何とかしようと弁明する承一だったが、あまり効果があったとは言い難かった。

 そうこうしていると居間の扉が開かれ、一人の背が高い長髪の男が入ってくる。

 彼は台所にある冷蔵庫に真っ直ぐに行くと、扉を開けコーラを取り出しその場で飲み始める。

 

 

 「義俊(よしとし)!せめて、お客さんが来ているから挨拶ぐらいしなよ!」

 

 「……」

 

 

 弟だろうか、傑が注意するも何も言わず、飲み干したペットボトルを捨てて居間から出ていこうとするが、傑が腕を掴み、引き留める。

 

 

 「おい、義俊!」

 

 「…うるせぇぞ、クソ兄貴」

 

 

 掴まれた腕を振りほどき居間から出ていくのを、傑はただ黙って見送るしか出来なかった。

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「ムーンライト・ドライブ」
   本体:川西 傑
破壊力-D、スピード-C、射程距離-A
持続力-B、精密動作性-A、成長性-B
七体の小人達で構成される群体型スタンド
能力
触れた物体の速さ・重さを十倍にし、さらに物質の個数をも十倍にする能力。
一度、能力をかけたものに別の物が触れても射程内なら発動が可能。
しかし、一度に複数の物に別の能力をかけることはできず、その場合は一旦能力を解除しなければならない。

元ネタは、アメリカのロックバンド「ザ・ドアーズ」の楽曲「月光のドライブ」より


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第64話 川西兄弟その③

「川西 義俊」は兄である傑より背の高く、髪も首に届くほど長く伸ばしており左側には金色のメッシュを入れていて、17歳にはとても見えないと評される少年であった。

 そんな彼は俗に言えば、「不良」と呼ばれるもので実家は1年前に飛び出し、今は市内のアパート暮らしをしながらガソリンスタンドでアルバイトをして何とか生活をしている。

 

 決して良い生活を送っているとは言い難いが、その中で唯一の楽しみがあった…バイトで稼いで貯めた金で買った自慢のバイクである。

 車種はSUZUKI「グラディウス」と言い、学校が休みなどの時は、これで郊外までツーリングするのが専らの趣味になっている。(免許は16歳の夏に取得済みである)

 

 ――この日は学校の帰りに仲間達と一緒にツーリングする予定で、その途中珍しく実家の前まで寄ってみた…まぁ、いい思い出はないが飲み物の一つぐらいはあるだろう。

 

 家に入ると、兄貴がいた…後知らない男が居たが誰なんだろうか、兄貴の友達かな?

 まぁどうでもいいが、さっさと用事を済まして出掛けたいので冷蔵庫の扉を開けると、随分と前に買っておいたコーラが冷えていた…ラッキー!

 全部飲み干した後、ごみ箱に捨てて居間から出ようとすると、兄貴が何かうるさく言いながら腕を掴んできた。

 

 …うっとしいから強く言って出ていく、昔は何かしら言い返してきた兄貴だったが、この日は何も言ってこなかった…珍しい日もあるものだと思いながら、家の前に止めておいた愛車に跨がり、エンジンをかけ出発する。

 

 

 …そうだ、「彼」に今晩の事で連絡をいれるか、俺の事も…いや「俺の能力」をも理解してくれたあの人に…

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

「さっきのは、弟…さん?」

 

 「ええ、まぁそうです…はぁ」

 

 

 義俊が出ていってから重い空気が流れていたが、最初に口を開いたのは承一であった。

 傑は申し訳なさ一杯で頭が上げられずにいる。

 

 

 「昔は良い弟だった…ですけどね」

 

 「仲が悪い…て言うレベルじゃあないね…」

 

 

 「でも…」と続ける傑の顔はとても思い詰めており、声も絞り出す様な感じである。

 

 

 「弟が…義俊がああなったのは、俺のせいだからかもしれない…だから余計に強く言えないんですよ」

 

 「傑君…」

 

 

 その表情から承一は、兄弟の溝の深さを思いしり、同時に兄は弟への思いやりに溢れている事が分かった。

 

 

 

 

 

 

~~~~****~~~~

 

 

 

 

 

 その日の夜、市内のビジネスホテルに宿泊している承一は夕飯を近くにあったファミレスで済ませた帰り道、町を散策していた。

 まだ完全に陽が落ちきっておらず、夕焼けが残っている町並みを見ながら物思いにふけていた。

 

 

 「何とかしてあげたいけどな…」

 

 

 悩みの種は昼間に出会った兄弟であった、だが兄の様子からでは他人である自分にとっては、解決する事はおろか余計な火種になりかねない…と思うと何もしない選択をするしかない。

 けど、傑の弟思いである事は確かな上に何とかしたい思いもある。

 そんな姿を見ると手助けの一つはしたいが、悠長に時間を使う事もできない…

 

 「あ~、モヤモヤする…」

 

 

 頭を抱えるも、ただ時間だけが過ぎていく…仕方がないのでホテルに向かうべく踵を返す。

 

 

 「ん…?」

 

 

 …先程まで風は自分の左から右に抜けていたはずが、今は向かい風となって吹いていた。

 さらに…承一がこれから行く道の曲がり角にバイクに跨がった人影のようなものが見える。

 

 それは、こちらが気付いた事に反応して、真っ直ぐバイクを走らせてきた。

 

 何とか避けるも、横を通り過ぎた時に何故か突風が起こり、それによってバランスを崩すも直ぐに体勢を整える。

 

 「スタンドか…!てことは次の刺客になるのかな?」

 

 

 その「スタンド」は、人もバイクも黒を基調だが、人の方はヘルメットに金色の文字で「Rider」と書かれており、黒光りするライダースーツを着ている。

 バイクはエンジン部に当たる所もナンバープレートも黒く、唯一タイヤのホイールは赤色になっていた。

 

 再び、エンジンを吹かし一直線に突っ込んでくるが、承一は「アウタースローン」を発現しバイクを受け止める。

 

 

 「そんな単純な攻撃は…効かないぜ!」

 

 

 右ストレートがライダーの胸あたりを殴り、後方へ飛ばされる…だが地面に倒れることなく、地面に吸い込まれる様に消えていった。

 

 

 「…!まさか、こいつは…」

 

 

 嫌な予感を感じながらも、その場を後にする。

 しばらく歩き、とある城跡公園に差し掛かった時、再び向かい風が吹き「スタンド」が現れる。

 

 

 「やはり…「自動操縦型」か、やれやれだぜ」

 

 

 本体探しをこの決して狭いと言えない鈴鹿市内でやることにタメ息がつきそうになるも、「スタンド」は先程と同様に真っ直ぐ突っ込んでくる。

 承一も同様に受け止めるべく、「スタンド」を出した。

 

 だが、承一の手前で「スタンド」は前輪のみブレーキをかけた事により、慣性の法則に従い後輪の部分が浮き上がった後、ライダーが車体の左側部を蹴り、前輪を軸として回転したバイク本体が、勢い良く承一に向かってくる。

 

 

 「な…!オラッ!」

 

 

 左腕でガードをするも勢いがついたバイクを受ける事はできず、公園内まで吹き飛ばされてしまう。

 

 

 「あ、あの攻撃は…受け止められるのを前提にした対処だ…それを「自動操縦型」ができるのか…?」

 

 

 承一は疑問の答えを思索するが、その前に「スタンド」が目の前までやってくる…素顔を覗かせないヘルメットで獲物(承一)を見下ろしながら…




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第65話 川西兄弟その④

承一が「スタンド」の襲撃を受ける数十分前。

 

 市内、表通りに面しているカフェの店内に一人の男がいた…背中まで伸ばした黒髪を首あたりで結び、前髪の一部を両目の間まで伸びている。

 注文したカフェオレに砂糖を三杯ほど入れ、口に含む…コーヒーの香りと牛乳のクリーミーさと砂糖の甘さを感じ、至福の一時に浸っていると、携帯が鳴った。

 

 

 「もしもし」

 

 「古賀さん?俺です、川西です」

 

 

 古賀と呼ばれる男は着信相手に僅かながら口角を上げ、応対する。

 

 

 「義俊君か、どうしたんだい?」

 

 「はい、今夜の為に「あれ」はもう出しておきますか?」

 

 「そうだね、そうしておいてくれ…僕の方も動くからね」

 

 「分かりました…あの、古賀さん…」

 

 「?、どうした?」

 

 「いえ、俺の能力が古賀さんの役に立てて…それが嬉しくて」

 

 「そんな事か…別に気するな、それに僕もようやく同志を見つけられたのだから、お互い「win-win」になれたからね」

 

 「…ありがとうございます、それでは」

 

 

 通話が終了する、携帯をズボンのポケットにしまい、カップを手に持ち一口飲む。

 しかし、その表情は通話前の穏やかな顔ではなく、狂気の笑みを浮かべていた。

 

 

 「クク…役に立てて嬉しい、か…せいぜい役立って貰うさ…俺の為だけに…な」

 

 

 静かに呟くと、男の背後から「スタンド」の「像」が出てくる。

 

 名前…「古賀 軍生(ぐんせい)」、男、スタンド使い…

 

 

 

 

~~~~****~~~~

 

 

 

 

 時は戻り、現在

 

 バイクに跨がる「スタンド」に見下ろされている承一は、先程の奇妙な攻撃の事を考えていた。

 本来の「自動操縦型」は一度放てば、ほぼ無限の射程を持ち尚且つパワーのある攻撃力が可能となる…しかし、スタンドを介して状況を把握できず、精密性のある動きはできないのが原則としてある。

 先程の攻撃は、まさしく上記にあげたデメリットを無視していた…なまじ「スタンド」に対する知識がある承一にとっては混乱させるには充分なものだった。

 

 

 ――奴は自動操縦ではない…?それなら精密性を説明できるが、あの攻撃力は不可解だ…その逆も然りだ。

 いや、今は深く考えている暇はないか…

 

 「スタンド」は再び承一に向かってくる、だが受け止めることはせずに当たる寸前で避け、通り過ぎた後を振り向き様に拳を振るう。

 

 

 「オラッ!」

 

 

 しかし、当たる直前で突風が吹き拳が届く事はなかった。

 こちらを向き、エンジンを吹かし立ち止まる「スタンド」を睨みながら、承一は体勢を整えていた。

 その時、視界に二つの影が飛び込んでくる。

 

 

 『ドリャァァ!!』

 

 「な…!?」

 

 飛び込んできた影の内、一つは「スタンド」に蹴りを入れた後、後ろ向きに回転しながら着地した。

 その正体は「川西 傑」のスタンド「ムーンライト・ドライブ」であり、その内の二体であった。

 

 

 「お前達!どうして…」

 

 『イツモノ様ニ、偶々旦那ヲ見カケタンダ』

 

 『…ソシタラ襲ワレテイテイタカラ…』

 

 「なるほど、だが助かったぜ」

 

 

 幸運な事に、蹴り飛ばした影響で後方に下がって承一達との距離が開けた、その短い間ながら周りを確認をすることができたが、本体らしい人物の姿はなかった。

 息つく暇もなく、「スタンド」が突進してくるが行動を予め予測していたので、簡単に避ける

 

 …が、「スタンド」は右腕を前に差し出す様に構えると、突風が発生し砂埃が舞い踊り、承一の目の前が塞がれてしまう。

 その間にもエンジン音が近づいてくるのが分かった。

 

 『旦那ァ!任セテクレ!』

 

 それだけを言うと二体は砂埃に紛れていく…その直後、中から前輪を高々と持ち上げた「ウィリー走行」の状態で「スタンド」が出てきた。

 だが、それが承一に届く事はなかった…後輪部分が重くなった様に地面にめり込んでいたからである。

 

 

 『…車体ソノモノヲ十倍ニ重クシマシタ』

 

 『旦那!チャンスダゼッ!』

 

 「オオオ!オラッ!」

 

 

 「アウタースローン」の拳が確かにヘルメットに直撃し、ぶっ飛ばす。

 同時に重さがなくなったバイクを蹴りで横方向に飛ばしておく。

 

 

 『ヨッシャァ!止メダァ!』

 

 「いや、ここは……逃げる!」

 

 

 二体を「アウタースローン」で掴むと、反対方向へと全力で走り出した、公園を北へ進み、通り抜けてそのまま西へと走っていく。

 

 

 『チョ、チョット旦那ァ!ドウシテ…?!』

 

 「敵はパワーとスピード、それに無限に近い射程…そして不可解な高い精密性を持っている…

 そんな奴と正面から戦ったら俺達がジリ貧になる…!だからやるべき事は一つだけだ」

 

 『ソ、ソレッテ…?』

 

 「「スタンド」の本体を見つける事だ…!」

 

 

 

 

 

 

 「クク…やはり、最近の俺は運がいい!」

 

 カフェにてノートパソコンに送られてきたメールを見て、思わず笑みを浮かべる。

 そこには数ヶ月前に自分の「スタンド」を引き出してくれた人からのものだった。

 メール内容は「比屋定承一の始末」であり、成功報酬などが書かれていた…「スタンド」からの情報がタイミング良く来たので、呟く。

 

 「報酬は…500万か、しばらくは盗みをしなくても食っていけるな…

 それと、あのガキとは…まだ手を組んでおいてやるか、あれのおかげで無敵に近い能力を手に入れた…からな」

 

 「それに…利用されている事も気付かない馬鹿を見ていると、とても良い気分にも浸れるからなぁ…」

 

 

 歪む表情をする彼の肩に青と緑の配色をした小さな「蜂」がとまっている事に、店内にいる者達は気付く様子はなかった。




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」
   本体:川西 義俊
破壊力-A、スピード-B、射程距離-A
持続力-A、精密動作性-E、成長性-C

能力
本体に触れるか、または本体が触った物質に触れた者の所にランダムに出現するバイクに跨った人型スタンド、自動操縦型
現れた者に攻撃を仕掛け、立ち上がらなくなるまで追跡し続ける能力を持ち、またこのスタンドの周り(約1~2m)に突風を発生させることもできる。
因みに出現条件は一日経てばリセットできる。この事は本体は知ることはできない。

元ネタは「ザ・ドアーズ」の楽曲から


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