遊戯王UA (akc)
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第1話-ピンチをチャンスに変えられるカード

こんにちは、初投稿となります。akcです。以前私は某サイトで「遊戯王5D's 本当の支配者」という5D'sを題材とした小説を書いていました。

サイト閉鎖に伴い、心機一転、温めていたアイディアをここに解放し、新しい小説を書いてみようという気持ちで、この作品を書かせていただきました。

本当にただの趣味で投稿させていただいておりますので、稚拙な表現が度々出るかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

それでは第1話をお楽しみください。


「あの男が…?」

「そうだ。あの男こそが、UA計画のために必要な人材だ。」

「だが…彼に実力がなければ…」

「うむ…」

 

金色の刺繍がところどころ目立つ黒いマントを羽織った者2人が、聖堂のようなところで話し合っている。彼らにとってはシリアスなのだろう。話し声以外余計なものは一切聞こえてくることはない。

 

「ならば私が、彼の力を確かめてくる。」

「なに?接触するのか?」

「もちろんだ。管理職よりも現場の人間の方が現実がわかるというのは、世の常だ。」

「耳が痛いな。」

 

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

「みなさんおはようございます。新入生のみなさん、ご入学おめでとう。在校生のみなさんは、春休みが終わり、新たな年度が始まりました。このデュエルアカデミアセントラル校では知っての通り、幅広い人材を育成することを目標とした3ヶ年間の教育が行われることとなります。それぞれの学年の目標…」

 

校長の挨拶では毎年同じようなことが話される。教員からすれば校長の挨拶ですら教材とすることができる一方、当然生徒からすればそんなことは知ったことではなく、人生の貴重な数分を無駄にしたと大半の生徒が思っている。

 

「ふあ~ぁ…面倒くせえな。この後テストなのかよ…今日は始業式だけでいいじゃねえか。」

 

教室で独りごちたのは草薙遊士。彼はデュエルアカデミアセントラル校2年生で、16歳。華奢な体格の着る学ランの第一ボタンを外した彼は「面倒くせえ」と言いながら、自分の耳までかからない髪を掻き毟った。

 

「とか何とか言って、お前勉強してきたんだろ?」

 

窓際の遊士の席の右隣の席からそう言って「チャート式デュエル問題集」で彼を指差したのは天竜崎翔斗(てんりゅうざきしょうと)である。

 

遊士は背が低いわけではないのだが(180cmほど)、その遊士よりもさらに10cmほど背が高い天竜崎は、そのリーチを活かしたちょっかいを出してくる。

 

「するわけねえだろ。俺が嫌いなものは、努力だっつってんだろ?」

「出た出た。努力してるくせに。」

「ってかなぁ翔斗。お前は人の世話焼いている前になんとかしねえと退学になっちまうぞ。」

「う…そ…それは…」

 

 

これより15分後に50問のデュエルモンスターズのルールに関する小テストが行われ、下校時刻となった。

 

下校時刻といえども、多くの生徒は部活動に熱心であるため、すぐには帰宅しない。

 

しかし遊士は違った。彼は特に部活動に所属することもなく、ゲームセンターに寄るか、帰るか、友人とカラオケかボウリングに行くかである。もちろんその友人もほとんどの場合部活動に行くために彼の取る選択は多くの場合…

 

「まだ2時か…。家に帰るにはちょっと早かったかなぁ…」

 

「退屈か?」

 

真後ろから聞こえたその声に、遊士はすぐに自分に対するものだと感じられた。

 

「な…なんだお前、いきなり?」

「草薙遊士だな?」

「ヘッ。知らねえのか?人に名前を聞く時はまずは自分から名乗るものだって!」

「私の名前はクラウダー。遊士。お前にデュエルを申し込みに来た!!」

 

「俺とデュエルだと?お前、俺が誰だかわかってケンカ売ってんのか?」

 

彼は自分がデュエルアカデミアのセントラル校に通っていることに誇りを持っており、それゆえしばしば自分にデュエルを申し込みに来る他者に対し、蔑んだ態度を取ることがある。

 

だがその不遜な態度にストレスを感じた様子を見せることもなく、クラウダーと名乗る黒いマントを羽織った銀髪の顔立ちの整った青年は、1枚のカードを遊士に渡した。

 

「こ…これは?」

「デュエルアカデミアセントラル校から徒歩3分、セントラルパークに4時に来い。私はそこで待っている。」

「いいぜ。ビビッて逃げんじゃねえぞ!」

 

 

この場でデュエルを行わないことに対し、特に疑問を抱くこともなく、遊士は退屈凌ぎだと思い、2時間後の4時にはセントラルパークに着いた。

 

時間にルーズで約束にも間に合わないことが多い遊士であるが、特にすべきこともなかったためか、10分前には着いていた。

 

陽が傾いている午後4時。セントラルパーク中央には噴水があり、噴水からは四方八方に水が飛んでいる。

 

(見た感じでは、特に何か特殊なモノがある少年ではなさそうだが…デュエルをすればわかることか。)

 

クラウダーは自身の髪の色と同じほど明るい銀色のデュエルディスクを展開し、トイレの建物の上から飛び降りた。レンズのようなものがたびたび夕陽の光に照らされている。

 

ゆっくりと歩いてくるクラウダーを捉えた遊士は、既にデュエルディスクを展開したクラウダーを見て口を開いた。

 

「ヘッ。やる気は十分なようだな。いくぜ!」

「お前の腕前…見せてもらうぞ!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

草薙遊士 :LP4000

クラウダー:LP4000

 

 

 

「先攻は私がもらう。私のターン!」

 

(先攻のプレイヤーは1ターン目にドローすることはできない。そして、相手の実力を見る上でこのデッキを使っているということもあるが、十分だ!)

 

「私は、《デーモン・ソルジャー》を召喚!(4)」

 

 

《デーモン・ソルジャー》

通常モンスター

レベル4/闇属性/悪魔族/攻撃力1900/守備力1500

デーモンの中でも精鋭だけを集めた部隊に所属する戦闘のエキスパート。与えられた任務を確実にこなす事で有名。

 

 

 

「リバースカードを1枚セットし、ターンエンド!(3)」

<遊士:伏せなし クラウダー:伏せ1枚>

 

「攻撃力1900か。俺のターン!(6)俺は手札から、《切り込み隊長》を召喚!」(5)

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200

 

 

「モンスター効果発動!このモンスターは召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体、特殊召喚することができる!いくぜ!《コマンド・ナイト》特殊召喚!」

 

 

《コマンド・ナイト》:☆4/攻撃力1200→攻撃力1600

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200→攻撃力1600

 

 

「攻撃力がアップした?」

「そうだ。コマンド・ナイトには、自分フィールドの戦士族モンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる効果がある!」

「だがそれでも攻撃力が足りないな。」

「ヘッ!あめえなぁ!永続魔法、《連合軍》!」(3)

 

 

《連合軍》

永続魔法

自分フィールド上の戦士族モンスターの攻撃力は、自分フィールド上の戦士族・魔法使い族モンスターの数×200ポイントアップする。

 

 

「連合軍…自分の戦士族と魔法使い族の数×200ポイント、自分の戦士族モンスターの攻撃力を上げるカード…」

「わかってるじゃねえか。これで切り込み隊長と、コマンド・ナイトの攻撃力は400ポイントずつアップするぜ!」

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1600→攻撃力2000

《コマンド・ナイト》:☆4/攻撃力1600→攻撃力2000

 

 

「バトルフェイズ!切り込み隊長!デーモン・ソルジャーを攻撃!」

 

身構えたデーモン・ソルジャーの首元を切り付け、切り込み隊長はあっさりとデーモン・ソルジャーを撃破した。

 

 

クラウダー:LP4000→LP3900

 

 

「そして、コマンド・ナイトでダイレクトアタック!」

「クッ…」

 

 

クラウダー:LP3900→LP1900

 

 

「見たか!こいつがコンボ攻撃の威力だ!」

「何とも古典的なデュエルだな。」

「ああ、よく言われるぜ。だが生憎、俺にはこの戦い方が合ってる訳よ!カードを1枚伏せて、ターンエンド!(2)」

<遊士:伏せ1枚 クラウダー:伏せ1枚>

 

「私のターン!(4)だがその程度の攻撃力では私を倒すことはできない。永続罠、《リビングデッドの呼び声》を発動!」

 

 

《リビングデッドの呼び声》

永続罠

自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 

 

「墓地からモンスター1体を特殊召喚する!蘇れ、《デーモン・ソルジャー》!」

「ヘッ。何度蘇っても無駄だぜ!」

「ならば、《デーモン・ソルジャー》をリリースし、《タルワール・デーモン》をアドバンス召喚!(3)」

 

 

《タルワール・デーモン》

通常モンスター

レベル6/闇属性/悪魔族/攻撃力2400/守備力2150

そのタルワールは、悪魔族でも剣術の達人しか持つ事を許されていない。

 

 

「《タルワール・デーモン》で、《切り込み隊長》を攻撃!」

「くっ…」

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3600

 

 

《コマンド・ナイト》:攻撃力2000→攻撃力1800

 

 

「俺のモンスターが1体減ったことで、《連合軍》の効果で上がる攻撃力が200に下がっちまった。」

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。(2)」

<遊士:伏せ1枚 クラウダー:伏せ1枚>

 

デーモン・ソルジャーの攻撃力1900というのは、下級モンスターの中では高い方であり、そう簡単には上回れる数値ではないというのが、少なくとも遊士の認識であった。しかしそれを上回る攻撃力を連合軍とコマンド・ナイトのコンボで出したことに、いささかの動揺も見られないクラウダーを見ると、遊士は彼を手練れだと捉えた。

 

もちろんクラウダーの言う通り、遊士のデュエルは古典的であるというのは、遊士自身も自覚しているのだが…

 

「俺のターン!(3)俺は《隼の騎士》を召喚!(2)」

 

 

《隼の騎士》

効果モンスター

レベル3/地属性/戦士族/攻撃力1000/守備力700

このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

 

「2体のモンスターは、《連合軍》の効果によって、攻撃力が400ポイントずつアップする!」

 

 

《コマンド・ナイト》:☆4/攻撃力1600→攻撃力2000

《隼の騎士》:☆3/攻撃力1000→攻撃力1400

 

 

「そして装備魔法、《融合武器ムラサメブレード》を、《コマンド・ナイト》に装備!(1)」

 

 

《融合武器ムラサメブレード》

装備魔法

戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。モンスターに装備されているこのカードは、カードの効果では破壊されない。

 

 

「この効果により、《コマンド・ナイト》の攻撃力は2800にアップ!バトル!《タルワール・デーモン》に攻撃!」

「あくまで力押しか。だがそうはいかない。私はライフポイントを500ポイント払い、罠カード、《冥王の咆哮》を発動!」

 

 

クラウダー:LP1900→LP1400

 

 

《冥王の咆哮》

通常罠

自分フィールド上に存在する悪魔族モンスターが戦闘を行う場合、そのダメージステップ時に100の倍数のライフポイントを払って発動する。そのターンのエンドフェイズ時まで、戦闘を行う相手モンスター1体の攻撃力・守備力は払った数値分ダウンする。

 

 

「《コマンド・ナイト》の攻撃力は、これで2300にダウン!」

「な…!?」

 

イラストより飛び出た冥王の咆哮をまともに受けたコマンド・ナイトは一瞬竦み、その隙にそのデーモンは、タルワールで返り討ちにした。

 

 

草薙遊士:LP3600→LP3500

 

 

《隼の騎士》:☆3/攻撃力1400→攻撃力1200

 

 

「くそっ…俺のターンで仕掛けておきながら、負けちまうとはな。ターンエンドだ。(1)」

<遊士:伏せ1枚 クラウダー:伏せなし>

 

「私のターン!(3)さて…そろそろ終わらせるか。どうやらお前は、我々が探し求めていた逸材ではなかったようだ。」

「なに…?逸材…だと?」

「私は装備魔法、《堕落(フォーリンダウン)》を発動!私のフィールドにデーモンが存在する時、装備モンスターのコントロールを得る!」

「俺のモンスターの!?」

「《隼の騎士》のコントロールをいただこう。」

 

瞬時に《隼の騎士》は遊士のフィールドからいなくなり、クラウダーのフィールドへと姿を現し、主と対峙した。

 

「このモンスターは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃することができる。2体のモンスターの攻撃が決まれば、それで終わりだ。バトル!《タルワール・デーモン》で、プレイヤーに直接攻撃!」

 

目の前に立ちはだかったタルワール・デーモンは、垂直にタルワールを振り下ろした。咄嗟に左腕のデュエルディスクでそれを防いだ遊士は、体勢を崩した。

 

「ぐあっ…」

 

 

草薙遊士:LP3500→LP1100

 

 

「そして、《隼の騎士》で、ダイレクトアタック!」

「罠カード発動!《エヴォルブ・サクリファイス》!」

 

 

《エヴォルブ・サクリファイス》

通常罠

相手モンスターの直接攻撃宣言時、自分の手札を1枚捨て、自分の墓地に存在する同じ種族のモンスター2体をゲームから除外して発動する。除外したモンスターと同じ種族のレベル7もしくは8のモンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、次の自分のターンのエンドフェイズに破壊される。

 

 

「手札を1枚捨てて発動!(0)自分の墓地から戦士族である《切り込み隊長》、《コマンド・ナイト》を除外し、同じ戦士族のレベル7モンスターをデッキから呼び出すぜ!」

「ほう。この局面でか…」

「せっかくだから見せてやるぜ。俺のエースモンスターを!来い!《剣聖-ライジング・ソード》!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》

通常モンスター

レベル7/光属性/戦士族/攻撃力2400/守備力2000

未知の力を持った剣聖。その力は、昇華され続けるといわれている。

 

 

「何かと思えば、通常モンス……!?な…なんだ…」

 

クラウダーが感じ取ったのは、名状しがたい何かであった。わかりやすく言うなれば、威圧感、プレッシャーという類のものであろう。

 

思わずクラウダーは後退りをしてそのモンスターを見た。その姿は、全身を褐色の鎧で包み、青白い光を放つ刃を持つロングソードを右手で握った青年であった。兜をかぶっているため、その髪型を捉えることはできなかったが、その眼差しからはどこか熱いものを感じる。

 

「わかるか…お前も。こいつの威圧感が!」

「威圧感…それが関係なくとも、お前がそのモンスターを出した理由はわかる。永続魔法、《連合軍》の効果で、ライジング・ソードの攻撃力は2600になっている。」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:☆7/攻撃力2400→攻撃力2600

 

 

「それなら、私の《タルワール・デーモン》を倒せると思っているのだろうが、そうはいかない。私は手札から魔法カード、《パワー・コネクター》を発動!(1)自分フィールドのモンスター1体、もちろん《堕落》でコントロールを得ている、《隼の騎士》だがな。モンスター1体をリリースし、それ以外のモンスター1体の攻撃力を600ポイントアップさせる!」

 

 

《タルワール・デーモン》:☆6/攻撃力2400→攻撃力3000

 

 

「攻撃力3000…」

 

「私はこれで、ターンエンド!」(1)

<遊士:伏せなし クラウダー:伏せなし>

 

「この剣聖は確かに通常モンスター。だけどな。こいつの力はいつだってピンチをチャンスに変える!」

「何を言っている。このピンチをチャンスに変えられるというのか?」

「もう変わってんだぜ。チャンスにな!俺のターン!!」

 

遊士は自らのデュエルディスクの一番上のカードに指を置き、弧を描くようにしてカードをドローする。

 

「ドローッ!!(1)装備魔法、《巨大化》を発動!」

「なに?ここで…巨大化…!?」

 

 

《巨大化》

装備魔法

自分のライフポイントが相手より少ない場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値になる。自分のライフポイントが相手より多い場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を半分にした数値になる。

 

 

「これを、ライジング・ソードに装備!装備モンスターの元々の攻撃力が2倍になる!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:☆7/攻撃力2400→攻撃力4800

 

 

「そして!《連合軍》の効果で、ライジング・ソードの攻撃力が…5000にアップ!」

「な…なんだと…?」

「バトル!ライジング・ソードで、《タルワール・デーモン》を攻撃!」

「バ…バカな。ぐ…ぐああああああっ!!」

 

 

クラウダー:LP1400→LP0

 

 

二転三転したクラウダーは、土埃のついたマントを払いながら、立ち上がった。何か腑に落ちない様子であり、困惑した表情であった。

 

「わかったか?俺に喧嘩を売るって意味が…」

「なるほど。」

 

聞きたいことがある、と切り出そうかと思ったが、遊士の後方から、2人のデュエルアカデミアの生徒が近づいていることに気付いた。

 

「次にデュエルをする時は、勝たせてもらう!」

 

捨て台詞のようなものを吐き、クラウダーはマントを翻し、その姿を消した。

 

「なっ…こいつ…消えた…?」

 

「おーい!!」

「ン?」

「遊士!!」

「おおっ!翔斗!それに、智紀も!」

「どうしたんだよこんなところで?」

「売られた喧嘩を買ってたのさ。」

 

色々と説明をするのは面倒だというのが、遊士の性格であるためか、遊士はクラウダーとデュエルをして勝利したことだけを同級生である2人に伝え、カラオケに行った。

 

 

(あいつ…何だったんだろう。ま、いいか…)

 

 

この時から、少しずつ、次元の上昇が始まっていた。

 

 

(次回に続く)

 

<今日の最強カード>

《剣聖-ライジング・ソード》

通常モンスター

レベル7/光属性/戦士族/攻撃力2400/守備力2000

未知の力を持った剣聖。その力は、昇華され続けるといわれている。

 

 

<次回の最強カード>

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

ペンデュラムモンスター

レベル7/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2500/守備力2000

【Pスケール:青4/赤4】

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」のペンデュラム効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分のペンデュラムモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。

【モンスター効果】

(1):このカードがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

 

 

 



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第2話-お楽しみは、これからだ

1話からかなり間が空いてしまい申し訳ありません。なかなか小説をコンスタントに書き続けるのは難しいところではありますが、せっかくあたためたアイディアですので、書き起こし続けたいと思います。

よろしくお願いします!


午前8時30分。朝のショートホームルームが始まる時間が8時45分であることを考えると、ややギリギリの時間に到着した遊士であるが、むしろ自分なりには早く来た、もう少し寝ることができたなと思い、舌打ちをして教室に入った。

 

「遊士ぃ!」

「ああ…翔斗。おはよう。テンションたけぇなお前は。」

「お前さぁ、低血圧もいい加減にしろよ。友達無くすぞ。そんな朝機嫌が悪いんじゃ。」

「うるっせぇなぁ。なんでそんなテンションたけぇんだよお前…?」

「そんなの…決まってんじゃんか!今日は、交流戦の日だろ!」

 

「こ…交流戦…」

 

交流戦とは、1学期に一度開催されるものであり、外部のデュエルアカデミアやデュエルスクール等のデュエリストを数名呼び、代表者と戦わせるのである。

 

今回は、規模は大きくないものの、エンターテイメントのデュエルをプレイスタイルとするデュエリストがやってくるという噂が、専ら飛び交っていた。

 

「まだ4月20日だぞ。そんな時期にやんのか?」

「去年もそうだったじゃんか!新年度が始まってすぐに行うのは、俺たちのクラスのまとまりを作るためでもあるって…」

「翔斗お前よく人の話聞いてんだな。全然覚えてねえぜ。まっ、俺には関係のねえことだけどな。」

「わからないぜ。今日は遊士があたるかもよ?」

「ヘッ。まあいいけどな。俺にケンカ売るって言うんだったら、買ってやるぜ。」

 

1時間目の授業開始のチャイムが鳴った。ドアについている小窓越しに、杉崎という英語教師が近づいてくるのがわかるが、彼の後ろに、一人の少年の姿が見える。

 

「はい、座れ!」

 

少年は入ってすぐのところに立っており、中性的な顔立ちをした少年で、カーゴパンツ、オレンジ色のシャツに、白いジャケットのようなものが目に入る。何より彼の首元に下げられているペンダントが気になるところ…

 

「えっ?この子が今回の交流戦の相手…?」

「かわいい~っ!私デュエルする!!」

 

中性的な顔立ちからか、多くの女子生徒は、彼と対戦することを望んでいる。

 

「はい、うるさい。それでは、まず授業を始めるぞ。天竜崎、号令。」

 

「起立!」

 

高校2年生ともなれば、号令にも飽き飽きしてくるところ。だらだらとした挨拶を終え、ドアのそばに立っている少年の自己紹介に入った。

 

「こんにちは!僕の名前は、榊遊矢です!舞網市の遊勝塾からやってきました!父さんが流行らせた、エンタメデュエルを、僕も目指しています!今日はよろしくお願いします!」

 

教室内には割れんばかりの拍手が巻き起こった。再び静まり返ったその瞬間、杉崎先生はすぐに口を開いた。

 

「榊くんの父さんは…榊遊勝だって?あのプロデュエリストの…」

「はい!そうです!」

 

 

「すげえ!プロデュエリストの息子!?」

「戦ってみたい!」

 

「かわいい…!」

 

 

「今日…僕が戦う相手は…?」

「大丈夫だ。もう決めてあるから。」

 

杉崎先生がクリアファイルから資料を取り出し、今日の榊遊矢の対戦相手表をチェックすると、教室は再び静まり返った。

 

「プロデュエリストの息子である榊遊矢と戦うのは……

 

 

草薙遊士!!」

 

 

特に関心なさそうに窓の外を見ていた遊士が自分の名前を呼ばれると、さすがに我に返ったのか、自分のことを親指でさし、杉崎先生の方を見た。

 

「は…?俺…?」

「そう、お前。」

「スギティー(杉崎ティーチャーの略)!なんで俺なんだよ!?他にも戦いたい奴はたくさんいるだろ?」

「時間がないんだ。指名された人は誰であろうと、快く返事をして、アリーナに急げと言われてるだろ?早く行け!」

「ったく…めんどくせぇなぁ…」

 

自分よりも2つ程年下である遊矢を軽くもんでやると思った遊士は、すぐに教室を出た。すれ違いざまに、「よろしくな。」とあいさつをして。

 

遊士が教室からいなくなった後、当然先生は生徒たちから多くの質問を浴びた。

 

「なんで遊士なんですか先生!?」

「あんなだるそうな奴が代表だったら、失礼じゃねえか!」

 

「うるせーなー!!色々な事を総合的に考えて判断したんだよ。」

 

苦笑しながらそう言い続けて彼らの質問をかわすと、遊矢への質問時間があった後、彼らもアリーナへと向かった。

 

 

 

------

 

 

多くのデュエルイベントは、80メートル四方ほどのアリーナの広さを利用し、10ペア前後で同時に進行されるのであるが、この交流戦に関しては、学年ごとに1つの交流戦、つまり3デュエルまでが同時に進行されることとなる。

 

「さあ、2年生の部、次は、B組の代表生徒、草薙遊士と舞網市の遊勝塾代表、榊遊矢の対戦になります!!」

 

「いくぜ、遊矢!」

「お願いします!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

草薙遊士:LP4000

榊遊矢 :LP4000

 

 

 

「先攻はチャレンジャー、お前からだぜ。」

「俺のターン!《EMディスカバー・ヒッポ》を攻撃表示で召喚!(4)」

 

 

《EMディスカバー・ヒッポ》

効果モンスター

レベル3/地属性/獣族/攻撃力800/守備力800

①:このカードが召喚に成功したターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに、レベル7以上のモンスター1体を表側攻撃表示でアドバンス召喚できる。

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド!(3)」

<遊士:伏せなし 遊矢:伏せ1枚>

 

 

(うーん…アクションデュエルじゃないから、ヒッポに乗れないもんな。調子狂うなぁ。)

 

ヒッポは召喚されてから、自前のシルクハットを振り回して遊んでいる。遊矢が召喚するモンスターだからか、それとも愛嬌のある姿だからか、B組の生徒からは、「かわいい!!」という黄色い声援が上がる。

 

「俺のターン!(6)攻撃力800だったら、すぐに倒してやるぜ。俺は手札から、《不死武士》を召喚!(5)」

 

 

《不死武士》

効果モンスター

レベル3/闇属性/戦士族/攻撃力1200/守備力600

自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードを墓地から特殊召喚できる。

この効果は自分の墓地に戦士族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。このカードは戦士族モンスターのアドバンス召喚以外のためにはリリースできない。

 

 

「うわっ!アンデットデッキ…?」

「ちげえよ。不死武士は立派な戦士族だぜ。不死武士で、ヒッポを攻撃!」

「速攻魔法、《カバーカーニバル》!」

「何?」

 

 

《カバーカーニバル》

速攻魔法

①:自分フィールドに「カバートークン」(獣族・地・星1・攻/守0)3体を特殊召喚する。このトークンはリリースできない。「カバートークン」がモンスターゾーンに存在する限り、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。このカードの発動後、ターン終了時まで相手は「カバートークン」以外のモンスターを攻撃対象にできない。

 

 

「さあっ!カバたちの魅惑のダンスをお楽しみくださいっ!」

「お前…魅惑の意味がわかってんのか?」

「わかっておりますとも!遊士さんの不死武士にご注目っ!」

「…?」

 

突然イラストから3匹のヘソだしルックのカバが飛び出し、遊士の目の前でサンバを踊り出すと、ヒッポを攻撃対象にしたはずの不死武士の攻撃は、そちらへと逸れていった。

 

「攻撃対象を変更する効果か…?」

「その通り!カバーカーニバルは、3体のカバートークンを呼び出し、攻撃を誘導する効果を持っているのです!」

「ヘッ。時間稼ぎってか。カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!(3)」

<遊士:伏せ2枚 遊矢:伏せなし>

 

「俺のターン!(4)さあ、カバの魅惑のダンスの後は、エンタメイトたちの華麗なるチームプレイをお見せしましょう!手札から、《EMフレンドンキー》を攻撃表示で召喚!(3)」

 

 

《EMフレンドンキー》

効果モンスター

レベル3/地属性/獣族/攻撃力1600/守備力600

①:このカードが召喚に成功した時に発動できる。自分の手札・墓地からレベル4以下の「EM」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

 

「フレンドンキーの召喚時、手札から、エンタメイトを特殊召喚できる!来い、《EMウィップ・バイパー》!」(2)

 

 

《EMウィップ・バイパー》

効果モンスター

レベル4/地属性/爬虫類族/攻撃力1700/守備力900

①:1ターンに1度、フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替える。この効果はお互いのメインフェイズにのみ発動できる。

 

 

「一気に2体のモンスターか。」

「ウィップ・バイパーの効果発動!モンスター1体の攻撃力と守備力をエンドフェイズまで入れ替える!」

 

 

コンフュージョン・ベノム!!

 

 

魅せるモンスター群、エンタメイトの一員であろうと、そのモンスターは立派な蛇。毒を吐けば、相手を冒すことは当然できる。

 

 

《不死武士》:攻撃力1200→攻撃力600

 

 

「バトルだ!ディスカバー・ヒッポで、不死武士を攻撃!」

 

 

ヒッププレッシャー!!

 

 

「あっ!てめっ!」

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3800

 

 

「そして、ドンキーと、ウィップ・バイパーでダイレクトアタック!」

「させるか!罠カード、《ガード・ブロック》を発動!モンスター1体から受ける戦闘ダメージを0にし、カードをドローする!(4)」

「だけど、攻撃力の低い、ドンキーの攻撃は受けてもらう!」

「ぐわっ!」

 

 

草薙遊士:LP3800→LP2200

 

 

都心部では、アクションデュエルはやや時代遅れという風潮にはなっているが、リアルソリッドビジョンシステムは健在。質量を持ったドンキーの攻撃に、遊士は大きく突き飛ばされた。

 

「おい、遊士…」

 

冴えない顔をしたドンキーに突き飛ばされた遊士に、会場から聞こえるのは天竜崎が漏らしたような苦笑、そして…

 

「いいぞ、遊矢!!」

「がんばれーっ!」

 

 

「おい、てめえら!何であいつの応援してるんだよ!!おいこら、遊矢!てめえも、ありがとーっ!じゃねえっ!」

 

 

「やだ、遊士嫉妬してるわ。」

「ダサダサね。」

 

 

「ターンエンド!(2)」

<遊士:伏せ1枚 遊矢:伏せなし>

 

「こっからだ…いくぜ!俺のターン!(4)このスタンバイフェイズに、墓地に存在する、《不死武士》の効果発動!俺の墓地に存在するモンスターが戦士族のみの場合、このカードは墓地から特殊召喚される!」

 

 

《不死武士》:☆3/攻撃力1200

 

 

「お前が手札からエンタメイトを呼ぶなら、俺は手札から戦士族を呼んでやるぜ!手札から、《切り込み隊長》を召喚!(3)」

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200

 

 

「このモンスターは召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体、特殊召喚することができる!《コマンド・ナイト》特殊召喚!」(2)

 

 

《コマンド・ナイト》:☆4/攻撃力1200→攻撃力1600

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200→攻撃力1600

《不死武士》:☆3/攻撃力1200→攻撃力1600

 

 

「すごい!戦士族モンスターが3体も!しかも…攻撃力が上がった?」

「そう。《コマンド・ナイト》は、俺の戦士族モンスターの攻撃力を400ポイント上げる!」

「だけど、俺のウィップ・バイパーには攻撃力は及ばない!」

「ヘッ。そう言うと思ったぜ!あめぇなぁ。装備魔法、《融合武器ムラサメブレード》を、《切り込み隊長》に装備!(1)」

 

 

《融合武器ムラサメブレード》

装備魔法

戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。モンスターに装備されているこのカードは、カードの効果では破壊されない。

 

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1600→攻撃力2400

 

 

「攻撃力2400…!?だったら俺は、ウィップ・バイパーの効果発動!」

 

 

コンフュージョン・ベノム!

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力2400→攻撃力400

 

 

「相手ターンでも使えんのか!?おい、それを先に言いやがれ!」

 

 

眉間に皺を寄せ、顎を突き出すようにして遊矢を睨み付ける遊士に対し、すかさずブーイングの嵐が巻き起こった。

 

 

「うるせーっ!遊士!お前が確認しなかったのがいけねーんだよ!」

「遊矢気にしないでー!やっちゃってー!」

「遠慮せずにーっ!」

 

 

杉崎先生は生徒を制止させはするものの、それ以外は何も言わない。基本的に腕を組んで見ているだけだ。日頃事あるごとにメモを取る杉崎先生を見ている天竜崎は、その様子を不思議そうに見ていた。

 

 

(杉崎先生…メモとか取らねえのかな…取っちゃまずいのか…?そっか。お客さんの前だからか。)

 

 

「攻撃力400じゃ、ウィップ・バイパーは倒せねえな。だったら…バトル!《切り込み隊長》と、《不死武士》で、カバートークンを攻撃!」

「うわっ!」

「さらに、《コマンド・ナイト》で、《EMディスカバー・ヒッポ》を攻撃!」

 

凛々しい姿のコマンド・ナイトは、驚いた様子を見せ、涙目を見せるディスカバー・ヒッポに対しても容赦はせず、一閃の形で切り裂いた。

 

「ぐっ!」

 

 

榊遊矢:LP4000→LP3200

 

 

「速攻魔法、《魂の刃》を発動!」(0)

 

 

《魂の刃》

速攻魔法

自分フィールド上に存在する戦士族モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊したターンに発動することができる。自分フィールド上に存在する戦士族モンスター1体を墓地に送ることで、相手フィールド上に存在する戦士族以外のモンスター1体を破壊し、相手に800ポイントのダメージを与える。

 

 

「バトルで相手モンスターを破壊した戦士族モンスターの魂と引き換えに、お前のモンスターを破壊する!俺は、《不死武士》を墓地に送って、ウィップ・バイパーを破壊!」

「なにっ!?ウィップ・バイパー!!」

 

 

白い光のオーラを纏った《不死武士》が、ウィップ・バイパーの腹部を切り裂き、破壊。間もなくして、《不死武士》は光となって散った。

 

遊士はアウェイのようであったが、この光景には「カッコイイ」という声を漏らすものもいた。

 

「さらに、800ポイントのダメージを与えるぜ。」

 

 

榊遊矢:LP3200→LP2400

 

 

「ターンエンドだ。」(0)

<遊士:伏せ1枚 遊矢:伏せなし>

 

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力400→攻撃力2400

 

 

遊矢のフィールドには攻撃力1600のフレンドンキーがいるが、《切り込み隊長》の効果によって、他の戦士族モンスターには攻撃ができないため、《コマンドナイト》と相討ちをすることはできない。しかも《切り込み隊長》に装備されているムラサメブレードは、カード効果では破壊されない強力な装備魔法である。

 

だがそんな状況にもかかわらず、遊矢はプレッシャーを感じなかった。負けるというプレッシャーはなかった。

 

「遊士さん。」

「…?」

 

 

「お楽しみは、これからだ!!!」

 

 

「…見せてくれよ。お前のお楽しみを!」

「ドローッ!(3)俺は手札のスケール1の《星読みの魔術師》と、スケール8の《時読みの魔術師》で、ペンデュラムスケールをセッティング!!」(1)

 

 

 

《星読みの魔術師》:S1

《時読みの魔術師》:S8

 

 

 

「なっ…こいつは…!?」

 

「ええっ!?」

 

突然、アリーナの客席の3Bの生徒たちが一斉に立ち上がった。セントラル地区でも、ペンデュラム召喚が珍しい召喚方法であることに変わりはない。高校生の手に届くものではないのだ。

 

杉崎先生は、立ち上がりことしなかったが、前かがみになり、その様子を見ていた。

 

「ペンデュラム…召喚!?」

「遊矢くんすごいわ!!」

「サイコーッ!」

 

 

「みなさま、ご喝采ありがとうございます!しかし驚くのはまだ早い!これで私はレベル2から7のモンスターが召喚できるのです!私の手札はこの1枚!どのレベルのモンスターが出てくるでしょうか!?」

「ここまで勿体ぶったってことは…レベル7か?」

「その通りです遊士さん!!」

「来るか…」

 

 

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!!ペンデュラム召喚!雄々しくも美しく輝く二色の眼!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!

 

 

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

ペンデュラムモンスター

レベル7/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2500/守備力2000

【Pスケール:青4/赤4】

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」のペンデュラム効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:自分のペンデュラムモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。

【モンスター効果】

①:このカードがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

 

 

「こいつが…オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。」

「バトルだ!オッドアイズ!その二色の眼で、捉えた全てを焼き払えっ!」

 

 

螺旋のストライクバースト!!

 

 

「切り込み隊長っ!!」

 

 

草薙遊士:LP2200→LP2100

 

 

「ドンキー!コマンド・ナイトと相討ちだ!」

「チッ!向かってきやがるか!」

 

 

相討ちをしてでもモンスターをつぶしに来る遊矢に、遊士は思い切りの良さも感じた。次のターンに《不死武士》が復活するとしても、遊矢に新たなモンスターを召喚されれば、ダイレクトアタックを受けかねない。

 

 

「ターンエンド!(0)」

<遊士:伏せ1枚 遊矢:伏せなし>

 

「俺のターン!!(1)」

 

 

遊士は、手札のカードに目を向けるよりも前に、不思議と、遊矢の胸元に下がっているペンデュラムの首飾りに目を向けた。発光していたから、気になったのであろうか。

 

(…なんで光ってんだ。あれ…?)

 

「あれ…俺の、ペンデュラム…?」

 

遊矢が思わずそう言ったのを、遊士は聞き逃さなかった。さらに言えば、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが頷いたのも、見逃さなかった。そして次の瞬間…遊士、遊矢の視界は青白い光に包まれた。

 

 

 

「あ…」

「あれ…?」

 

遊士の目の前には遊矢の姿が。そして、遊矢の目の前には遊士の姿が。それ自体は変わっていない。しかし、ここはアリーナではない。生徒はいない。他の招待されているデュエリストもいない。先生もいない。

 

青白い空間の中に2人が立っている。デュエルディスクもつけていない。

 

 

だが目の前には…オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの姿があるのは確認できている。

 

 

「遊矢。ここ…どこだよ…?」

「俺も…わかりません。でも…オッドアイズが…頷いたのを…見ましたか?」

「ああ。オッドアイズ、そして、お前のペンダントが、俺たちをここに…ン!?ちょっと黙れ!」

「えっ…?」

「いいから!」

 

 

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン…このカードが我々には必要だな。サブリメイションカードと組み合わせ…オッドアイズ・アセンション・ドラゴンへと進化させる必要がある。』

『そうだ。全ての次元が新たなるステージに進むために、オッドアイズの力を使うんだ。』

『しかしそのためには…サブリメイションの力を持ったカードを持つ者がいなければ…』

『心配するな。ある程度、見立ては立てている。』

 

 

(オッドアイズ・アセンション・ドラゴン…どこから聞こえるんだ、この声…?)

 

「「うわっ!!!」」

 

 

2人が同時に声をあげると、目の前のオッドアイズはいなくなり、今度は真っ白な光に包まれ、目が眩むほどのものだと思ったその刹那…

 

「はっ。」

「あれ…?」

 

2人とも、首の発汗を感じたことで、これが夢でないことは悟った。

 

「遊…矢。」

「夢じゃないですね、今の。」

「あ…ああ。」

「とりあえず今は、このデュエルを完結させましょう!」

「わかってるぜ。」

 

 

どれくらいの静寂があったのかは不明だが、ギャラリーはすっかり静まりかえっていた。

 

 

遊士は記憶を辿り、アリーナの上方に位置しているペンデュラムモンスターを見た。

 

(そうだ。俺はストロング石島とコイツのデュエルを見たんだ。確かあの時…片方のペンデュラムモンスターで、アクションカード、《回避》の発動を無効にし、もう片方で、《バーバリアン・ハウリング》を無効にした。どっちだったか…)

 

 

「賭けるしかねえ!速攻魔法、《毒霧の刃》を発動!」(0)

 

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

ペンデュラムモンスター

レベル7/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2500/守備力2000

【Pスケール:青4/赤4】

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」のペンデュラム効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:自分のペンデュラムモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。

【モンスター効果】

①:このカードがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

 

 

 

<次回の最強カード>

《毒霧の刃》

速攻魔法

このカードを発動するターン、自分はモンスターの特殊召喚は行えない。相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を対象として発動する。対象としたカードの効果を次の自分のエンドフェイズまで無効にする。この効果で無効にしたカードが魔法カードだった場合、エンドフェイズにカードを1枚ドローする。また、自分の墓地からこのカードを除外し、自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスター1体の攻撃力を500ポイントアップすることができる。この効果はこのカードが墓地に送られたターンには発動することができない。



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第3話-CDTへの招待状

草薙遊士

 

・LP2100

・手札0枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)《毒霧の刃》(発動中)/1枚

 

 

榊遊矢

 

・LP2400

・手札0枚

・(モンスター)《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》(ATK2500)

・(魔法・罠)なし

・(Pゾーン)《星読みの魔術師》S1/《時読みの魔術師》S8

 

 

2人は青白い光に包まれ、異空間のようなところで、オッドアイズ・アセンション・ドラゴンという名前を聞いた後、アリーナに戻って来た訳であるが、手札が1枚で、場にモンスターもいない遊士のターン、緊張感が漂っていた。

 

 

「毒霧の刃は、フィールド上のカード1枚の効果を、次のエンドフェイズまで無効にする!俺が選ぶのは……《時読みの魔術師》!!」

「時読みの魔術師のペンデュラム効果を封じた…!?」

(ってことは、次の俺のターンのバトルフェイズに罠カードを使うつもりなのか…?)

 

モンスターがいないことを不思議に感じた遊矢は、思わず口を開いた。

 

「あれ…どうして、《不死武士》が復活しないんだ…?墓地には戦士族以外のモンスターはいないはずだけど…」

「《毒霧の刃》を発動したターン、俺はモンスターの特殊召喚が行えない。《不死武士》も例外じゃねえ。けど…俺はこれで、ターンエンド!そしてこのエンドフェイズ、無効にしたカードが魔法カードだった場合、カードを1枚ドローする!(1)」

<遊士:伏せ1枚 遊矢:伏せなし>

 

 

(俺の戦略は筒抜けだぜ。だけど、いずれにせよ魔法・罠カードを破壊するカードを引こうものなら、発動するつもりだろうぜ。だったら、たとえ筒抜けの戦略でも、賭けるしかねえ。負けたら成績が下がるかもしれねえからな。負ける訳にはいかねえんだよ!)

 

「俺のターン!(1)俺は再び、ペンデュラム召喚を行う!」

 

 

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!現れろ!《EMバブルドッグ》!!

 

 

《EMバブルドッグ》

ペンデュラムモンスター

レベル6/地属性/獣族/攻撃力2300/守備力1000

【Pスケール:青5/赤5】

①:Pモンスター以外の、エクストラデッキから特殊召喚された自分フィールドの表側表示モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを破壊できる。

【モンスター効果】

①:このカードがエクストラデッキからの特殊召喚に成功した時に発動できる。このターン、エクストラデッキから特殊召喚された自分フィールドのPモンスターは効果では破壊されない。

 

 

「バブルドッグ…攻撃力2300だと?」

「さあ!榊遊矢のエンターテイメントショーも、このターンでクライマックスとなりそうです!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で、遊士さんにダイレクトアタック!!」

 

 

オッドアイズの口元に光が集まっていく中、歓声が徐々に大きくなっていく。遊士の伏せカードが何か、気になっているという人もいるだろう。

 

 

螺旋のストライクバースト!!

 

 

「そうはいかねえよ!罠カード、《エヴォルブ・サクリファイス》を発動!」

 

 

《エヴォルブ・サクリファイス》

通常罠

相手モンスターの直接攻撃宣言時、自分の手札を1枚捨て、自分の墓地に存在する同じ種族のモンスター2体をゲームから除外して発動する。除外したモンスターと同じ種族のレベル7もしくは8のモンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、次の自分のターンのエンドフェイズに破壊される。

 

 

「直接攻撃が宣言された時、手札を1枚捨て、(0)俺の墓地から、《切り込み隊長》と、《コマンド・ナイト》を除外して、同じ種族のモンスターを1体、自分のデッキから特殊召喚する!来い!《剣聖-ライジング・ソード》!!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》

通常モンスター

レベル7/光属性/戦士族/攻撃力2400/守備力2000

未知の力を持った剣聖。その力は、昇華され続けるといわれている。

 

 

「おっ!来た!ライジング・ソード!」

「コイツを狙っていやがったのか、遊士は!」

 

「だけど、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は2500!ならば、倒すことができる!いけっ!螺旋のストライクバースト!」

「墓地の速攻魔法、《毒霧の刃》を発動!墓地からこのカードを除外し、《剣聖-ライジング・ソード》の攻撃力をエンドフェイズまで500ポイントアップさせる!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400→攻撃力2900

 

 

ロングソードを持った青年は、オッドアイズの懐へともぐりこみ、素早くその首を斬りおとした。鮮やかな逆転に、ギャラリーは再び盛り上がった。ブーイングもあったが。

 

「おい!遊士!なんでそういうことを言わねえんだよ!墓地で発動するって言わねえなんて、ずるいぜ!」

「そうよそうよ!」

「るっせえなおめえら!さっき遊矢が似たようなことした時には、何も言わなかったじゃねえか!」

 

 

榊遊矢:LP2400→LP2000

 

 

「バブルドッグの攻撃力は2300。これで、ターンエンド。(0)」

 

エースモンスターを倒した遊士であったが、安堵した表情さえ浮かべない遊士に、遊矢はペンデュラム召喚について知っているという推測をした。

 

「ペンデュラムモンスターは破壊されてもエクストラデッキに加わります。そしてペンデュラム召喚を行う際、セッティングされているスケールで召喚が可能であるなら、エクストラデッキから、呼び出すことができるのです!」

「やっぱりそういう厄介な効果があるのか。ってことは、オッドアイズは不死身ってことだな。このターンで終わらせるしかねえ。」

 

 

(ライジング・ソード。俺に力を貸してくれ。お前さえいれば、どんなデュエリストにだって勝てる。そんな気がするんだ。)

 

 

「いくぜ!!俺の…ターン!!(1)」

 

 

常人とは思えない程の気迫でカードをドローする。声が大きい、アクションが大げさ、そんな次元のものではないドローの力に、遊矢は何をドローしたのか、興味津々であった。

 

「俺は装備魔法、《アサルト・アーマー》を発動!」

 

 

《アサルト・アーマー》

装備魔法

自分フィールド上に存在するモンスターが戦士族モンスター1体のみの場合、そのモンスターに装備する事ができる。装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

装備されているこのカードを墓地へ送る事で、このターン装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

 

「このカードを、《剣聖-ライジング・ソード》に装備する!」

「《アサルト・アーマー》…?」

「装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップするが、このカードを墓地に送る。」

「えっ!?攻撃力を上げたのに、墓地に送る…?」

「これによって、装備モンスター、つまり《剣聖-ライジング・ソード》はこのバトルフェイズで2回攻撃することができるぜ!バトル!ライジング・ソードで、《EMバブルドッグ》を攻撃!」

 

容赦のない剣の一撃が、バブルドッグを破壊した。アサルト・アーマーによる炎のようなオーラが、ライジング・ソードを包んでいる。

 

まだバトルフェイズは終わっていない、そういう意味だろう。

 

 

榊遊矢:LP2000→LP1900

 

 

「そして、ライジング・ソード!遊矢にダイレクトアタック!」

 

 

アサルト・ソード・ブレイク!!

 

 

「くっ!ぐああああっ!!」

 

 

 

榊遊矢:LP1900→LP0

 

 

 

「俺の勝ちだ、遊矢!」

 

遊矢は仰向けになっていた状態からすぐに立ち上がり、場内に響き渡る歓声に応えるように、遊士と握手をして挨拶し、会場に向かって一礼した。

 

「遊士さん。完敗です。」

「驚いたぜ、ペンデュラム召喚。」

「で…でも、あれ…」

「いい。その話はまた今度にしようぜ。」

 

 

 

※※※※※※

 

 

それから5日が経った。遊士は未だにあの光の中で聞いた声のことが忘れられなかった。通学中はもちろん、授業中もそればかりを考え、身が入らない。

 

一方で、それ以上に何か進展がある訳でもなく、少しずつ、忘れかけていた。

 

 

「ただいま。」

 

和風の一軒屋が遊士の自宅であった。セントラル地域(東京都の繁華街のようなイメージをすると良いだろう)から自転車で30分ほどのところにあるのだが、目の前には一つ山がそびえ立っており、所謂『田舎っぽい』ところにその家は位置しているのだ。

 

「おい、おふくろ。」

 

自分の母親の事をおふくろというのは、16才の男子からすれば今時かなり珍しいだろう。どこか古風なところを持ち合わせているのが遊士である。当然ながらこの「おふくろ」という言い回しは真面目に言っている。

 

「おふくろ。いるなら返事くらい…」

「あ、ああ…おかえりなさい遊士。」

 

郵便受けをチェックしたのだろう。母親が胡坐をかいている畳の上には、ハガキと封筒が合わせて4通ほど置かれているのだが、一番上の封筒以外は、何も手が付けられていない。

 

いつもの遊士なら、関心無く、自室に行ってしまうのだが…何のインスピレーションがそうさせたのか、遊士は母親に話しかけた。

 

「何の…封筒だ?」

「あなた、すごいじゃない!」

「え?」

 

「CDT(Central Duel Tournament)の招待状よ!」

 

「は!?俺宛に…?ちょっと見せて!」

 

招待状と言っても、B5のサイズのプリントが三つ折りにされ、封筒に入っていただけなのだが、それを遊士が母親から奪い取るようにして見た。

 

CDTとは、セントラル地域で主催される、一年のデュエルイベントの中で世界各地からのデュエリストがやって来るかなり規模の大きい大会である。その招待状であるが…

 

 

遊士には心当たりは全く持ってなかった。なぜ自分が選ばれるのか。確かにデュエルアカデミアセントラル校はプロデュエリスト養成というのが学校方針の一つとして取られているということがあり、無条件に一人の枠が設けられている。

 

それ以外は、表向きは招待ではなく、公募であるが、デュエルアカデミアにおいて好成績を残している生徒や、セミプロデュエリスト、店舗大会優勝者等が優先的に出場資格を得られるようになっていると専らの噂。

 

「俺がなんで…?」

「理由なんてどうでも良いじゃない。こうして書いてあるんだから!あなたをCDTに招待しますって!」

「そうだけど。」

「あれじゃないの?遊勝塾の生徒に勝ったんでしょ?」

「え?何で知ってんだよ?」

「ママ友をなめんじゃないわよ。」

 

「はぁ~…誰が言ったか知らねえが、余計なことを。」

「でもすごいじゃない!ペンデュラム召喚を使う人に勝ったのって。」

「榊遊矢か。あいつに勝ったのは関係ねえよ、多分…」

 

やはり遊士は納得できなかった。なぜ自分が出場できるのか。出場資格のところを見ると、『校長の推薦を受けたもの』という文言があり、これについても気になるところだった。

 

 

※※※※※※

 

 

2年B組の教室に走り込んできた遊士に、天竜崎は、始業ギリギリかとも思ったが、まだ8時40分であることに驚いた。

 

「まだ40分だぞ。どうしたんだ、遊矢?」

「ちょっと校長室行ってくる!スギティーによろしく!」

「え?校長室!?ちょっと、待てよ!」

 

 

遊士はノックもせず、校長室の木製のドアを開けた。

 

「校長!!」

「君は草薙くん!ノックくらいしたまえ!」

 

細身で長身の校長と、対照的に背丈が短く太った副校長が同時に遊士の方に目を向けた。

 

書類仕事をしているようだが…

 

「一つ聞きたいことが…あります。」

「何かな?」

「なんで俺が…CDTの出場権利を…?」

 

「なんだそんなことか。」

 

口を挟んだ副校長に、その上『そんなこと』と言われたことに、遊士は思わず声を荒げた。

 

「うっせえ!俺は校長に聞いてんだよ!」

「草薙くん!言葉遣いに…」

「いいんだ、副校長。」

「し…しかし…」

 

校長は見るからに温厚そうな人物であり、その細く垂れた目を見せた。

 

「簡単なことだよ草薙くん。君は、先日行われた交流戦で、ペンデュラム召喚を使う榊遊矢くんを倒した。だからだ。」

「本当にそうなのか…?」

「そうだよ。君は君が思っている以上に素晴らしいデュエリストなのだよ。自信を持って、参戦してくれよ。」

 

だが、母親と同じ答えに、当然納得いくはずもなく、遊矢はその場に黙り込んでしまった。整理がつかないのだ。

 

すると、校長が続けて言葉を発した。

 

「気になることがあるのなら、CDTで勝ち上がってみれば良い。そうすれば全てがわかるだろう。」

「なに?」

 

「CDTに出ることに何か気になることがあるのなら、そこで全てがはっきりするはずだ。そうではないかな?」

 

「ヘッ…確かに、そうかもしれねえな。だったら、出るぜ。話はそれからだ!ありがとうな、校長。学校の顔ってだけじゃなく、たまには生徒のためになることもするんだな。」

「貴様っ!校長に向かって何てことを!!」

「いいんだ、副校長。」

「しかし!!」

「草薙くんの遅刻が一つ増えなければ、それでいいさ。」

 

「えっ…?……8時45分。やべぇっ!!し…失礼しましたーっ!!」

 

慌てて出ていった遊士を後に、副校長は戸惑いを隠せない。

 

「校長!私も思います!なぜ、彼のような生徒に、推薦を…今からでも遅くは…」

「いいのですよ副校長。彼には、可能性がありますから。そういえば草薙くんに言い忘れてしまいましたね。近々CDTの枠を彼が得たことを朝礼で発表することを…」

 

 

その日の4時間目は実習の時間であった。このデュエル実習の時間では、決められた二人一組でデュエルを行い、指定されたデッキを一人のデュエリストが使い、もう一人は、自分のデッキを使用するというものが行われる。

 

 

「ったく…交流戦に出た俺は今日はデュエルできねえのか。そんだったら先に言えよな。デッキ作成の時間に充てられるだなんて…」

「文句言わないの。いいじゃない、交流戦にも買ったんだから。」

「あ…ああ。」

 

田村ユキ。独りごちた遊士に声をかけた同じクラスの女子である。ダンス部に所属し、長身の良いスタイルを持ち合わせており、素直で明るい性格が、男女問わず人気である。

 

「田村さん!喋ってる暇はないはずだよ!」

 

ユキの対戦者は平山智紀(ひらやまとものり)であり、彼は今機械族デッキの実習を行っている。正確に言えば、《XYZ-ドラゴン・キャノン》を主軸としたデッキなのだが。

 

 

 

平山智紀

 

・LP2300

・手札2枚

・(モンスター)《X-ヘッド・キャノン》(ATK1800)/《Y-ドラゴン・ヘッド》(ATK1500)/《Z-メタル・キャタピラー》(ATK1300)

・(魔法・罠)《リミッター解除》(発動中)/《前線基地》(∞)

 

 

田村ユキ

 

・LP3300

・手札3枚

・(モンスター)《シュクリーム・メイジ LV3》(ATK1300)(∞)

・(魔法・罠)《シュガーコート》(∞)/伏せ1枚

 

 

「速攻魔法発動!《リミッター解除》!僕のフィールドの機械族モンスターの攻撃力を2倍にする!」

 

 

 

《X-ヘッド・キャノン》:攻撃力1800→攻撃力3600

《Y-ドラゴン・ヘッド》:攻撃力1500→攻撃力3000

《Z-メタル・キャタピラー》:攻撃力1300→攻撃力2600

 

 

 

「バトルだ!Y-ドラゴン・ヘッドで、シュクリーム・メイジを攻撃!」

「カウンター罠、《攻撃の無力化》を発動!」

「えっ!?」

「モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!」

「そんな…」

「どうするの?XYZは、全てリミッター解除の効果で破壊されるわよ。」

「田村さんだって、僕がどうするのか、わかってるんでしょ…?」

「まあね。」

 

智紀は、中性的な顔立ちをした少年で、頼りになる男という印象より、やや情けない少年という印象である。天然なところや、照れると赤くなったりするところもあるのだが、それはそれで、一部の生徒に好かれる要因であるという。

 

「XYZの3体のモンスターを除外!合体召喚!《XYZ-ドラゴン・キャノン》!」

 

 

 

《XYZ-ドラゴン・キャノン》

融合モンスター

レベル8/光属性/機械族/攻撃力2800/守備力2600

「X-ヘッド・キャノン」+「Y-ドラゴン・ヘッド」+「Z-メタル・キャタピラー」

自分フィールドの上記カードを除外した場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。このカードは墓地からの特殊召喚はできない。手札を1枚捨て、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

 

「来たわね。」

「これで、エンドフェイズには《リミッター解除》の効果を受けない。さらに僕は、《XYZ-ドラゴン・キャノン》のモンスター効果発動!手札のカードを1枚墓地に送り、フィールドのカードを1枚破壊する!」

 

 

ハイパー・ディストラクション!

 

 

ヘッド・キャノンの砲身から、二発の弾丸が放たれ、《シュクリーム・メイジ LV3》が破壊された。シュークリームに手と足が生え、ハットを被ったモンスターであったのだが、あっさりと破壊されてしまう。

 

「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド!(0)」

<智紀:伏せ1枚 ユキ:伏せなし>

 

 

「私のターン!(4)私は手札から、《モンブラーン・ナイト LV5》を召喚!」

 

 

《モンブラーン・ナイト LV5》:☆5/攻撃力2000

 

 

タルト生地の土台の上に生クリームが引かれ、さらにその上に螺旋状のクリームが置かれている。やはりクリのクリームなのだろう。色が真っ白という訳ではない。

 

すぐさま足と手が生え、マロン色の盾を構えた。

 

「モンブラーン・ナイト…?」

「このカードは、自分フィールドにモンスターがいなければ、リリースなしで召喚が可能!そして私は、永続魔法、《シュガーコート》のもう一つの効果を発動!このカードを墓地に送り、自分フィールドの光属性のLVモンスターをレベルアップさせる!」

「えっ!?」

 

 

《モンブラーン・ナイト LV7》:☆7/攻撃力2500

 

 

「けど、攻撃力2500じゃ、XYZは倒せない!」

「甘いわね、マロングラッセより甘いわ!」

「お前、それ言いたかっただけだろ。」

 

遊士のツッコミに、ユキは鋭い視線を向けつつ、振り返った。

 

「うるさいわね!」

 

同時に、モンブラーン・ナイトの頭の部分に、シロップでコーティングされたマロングラッセが乗った。

 

「でも、それを言いたいだけでこのモンスターを召喚するはずがないじゃない。私は魔法カード、《ホイップ・チャージ》を発動!(2)光属性のLVモンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる!」

 

 

《モンブラーン・ナイト LV7》:☆7/攻撃力2500→攻撃力3300

 

 

「攻撃力3300…!?」

「バトル!モンブラーン・ナイト LV7で、《XYZ-ドラゴン・キャノン》を攻撃!」

「罠カード、《フュージョン・ソウル》を発動!」

 

 

《フュージョン・ソウル》

通常罠

 

 

「この戦闘で破壊された融合モンスターはデッキに戻り、その素材として書かれているモンスター一組を、自分のデッキから守備表示で特殊召喚する!ただし、次のターン、僕は魔法カードを発動できない!」

「またXYZを合体召喚するつもりね?」

「そう!フュージョン・ソウルの効果で、魔法カードは使えないけど、合体召喚には、融合の魔法カードは必要ない!」

 

 

平山智紀:LP2300→LP1800

 

 

「このターンで終わらせるから、何にも考える必要はないわ。」

 

 

冷ややかという印象は受けなかったが、逆に何の悪気も無くそう言ったユキは、ナヨナヨとした智紀からすると恐怖を覚えた。

 

「えっ?」

「《モンブラーン・ナイト LV7》の効果発動!モンスターをバトルで破壊した時、自分のライフポイントとこのカードの攻撃力が同じ場合、このカードをリリースすることで、自分のライフポイントの数値分のダメージを与える!」

 

 

マロングラッセ・ビーム!!

 

 

「ダセえよ、その名前。」

「うるっさいわねっ遊士!」

 

「わあああああっ!!」

 

 

平山智紀:LP1800→LP0

 

 

「やった!」

「すごいな、杉崎先生のお気に入りデッキの一つで、負けちゃった。」

「他人のデッキだものね。しょうがない。」

 

 

実習が終わる直前、遊士がデッキを作成しているのを遠くから見ている少女がいた。ユキとは対照的に、冷ややかな視線を持つ女子である。ショートヘアーの眼鏡をかけた生徒会長の典型とも言える容姿の、雨宮サツキ。取り巻きが常に2人以上いるが、本人は気にしてはいない。生徒会がボスだというのは、古いものの考えだ。

 

「草薙遊士…どうやら、聞いた話によれば、CDTの招待状が来てるとか…」

「ええっ!!?サツキさん、なんでそれを…?」

「声が大きいわ汐莉。あくまで噂だから。」

「でも…それだったら、誰かがあの草薙くんを倒せば良いのよね~」

 

すると、サツキは人差し指で眼鏡を少し上げた後、小さく呟いた。

 

「だったら……

 

 

私が倒しましょうか。」

 

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《毒霧の刃》

速攻魔法

このカードを発動するターン、自分はモンスターの特殊召喚は行えない。相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を対象として発動する。対象としたカードの効果を次の自分のエンドフェイズまで無効にする。この効果で無効にしたカードが魔法カードだった場合、エンドフェイズにカードを1枚ドローする。また、自分の墓地からこのカードを除外し、自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスター1体の攻撃力を500ポイントアップすることができる。この効果はこのカードが墓地に送られたターンには発動することができない。

 

 

<次回の最強カード>

《デシーヴ・オーナー》

通常罠

 

 

 



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第4話-生徒会長からの挑戦!

降りしきる雨の中、遊士は家路を急いだ。たとえ大雨でもバスを使わずに自転車で登校するというのは、今時珍しいと言えばそうかもしれない。

 

「ふざけんなよ!通り雨だなんて…聞いてねぇぞ!」

 

そりゃそうか、通り雨の情報は入るはずがないかと遊士は独りごちた後に独り合点した。

 

「ただいま!」

 

自転車を止めてすぐに家に入った。郵便受けの確認を忘れて家の引き戸を閉めたが、自分がCDTの出場者に選ばれてから、郵便受けに入っているものが何か気になっている。

 

「何もなけりゃいいんだけどな…」

 

遊士が中身が気になって取ったそれは、B5サイズの手紙が三つ折りで入る、茶封筒だった。達筆とは、こういうものを言うのだろう。宛名の「草薙遊士」の文字は中央に集められており、見事にバランスの整ったものであった。

 

「誰だ…?雨宮サツキ…?あっ!!生徒会長じゃねえか!どれどれ…?明日の放課後にデュエルアリーナ?ふざけんなよな、勝手に決めやがって。」

 

遊士はその手紙を読んだ翌日、一人でデュエルアリーナに向かおうとしていた。

 

「あれ、今日どっか行くのか遊士?」

「ちょっと、デュエルアリーナにな。」

「は?アリーナ?特訓でもすんのか?」

 

そういえば遊士は、友人である天竜崎にさえ、自分がCDTの代表生徒になったことを明かしていないことに気が付いた。しかしそれが理由でアリーナに行く訳ではないため、その理由を話した。遊士は自分で格好をつけているつもりはないのだが、たまに古風なところが出る。

 

「ラブレターをもらってな。」

「ラブレター!?」

「お前は多分もらいたくない相手だろうけどな。」

 

「へぇ~…ラブレター…?誰から?」

 

ユキは掃除がされている教室内の窓際で話す2人の会話に首を突っ込んだ。

 

「お…おう、ユキ…」

「私には教えてくれないの~?」

「知っても嬉しくねえと思うぜ。生徒会長だ。」

「生徒会長…!?サツキ!?デュエルの招待状なんて、もらいたいわよ!」

 

「は?あのいかにも生徒会長って感じの冷たさのある女からなんて、もらいたくねえよ。仕方なく付き合ってやるけどよ。」

「知らないの遊士?サツキは、成績優秀で、毎回の定期試験学年10番以内に入って、さらにデュエルの腕も、プロに匹敵する腕だって言うじゃない!」

「そっか。成績優秀ってことは…デュエルの腕も優秀ってことか…おもしれえ。やってやるぜ!」

 

自分の言っていることと、遊士の口から出ることが食い違っていると感じたユキの口から出るものは、ため息以外何もなかった。

 

 

※※※※※※

 

 

午後3時50分。デュエルアリーナは時間で区切って借りることができる。デュエルフィールドは9つあるため、一度に多くのデュエリストが訪れても多少は余裕があるのだが、基本的には当日には借りられない。デュエルアカデミアの生徒は好きでデュエルをしているということが、わかる一面である。

 

既にアリーナには雨宮サツキが控えていた。細身な体と、銀色の縁のメガネが、より一層冷たさを際立たせる。雨宮の後方には、生徒会副会長の2人のうちの1人の山口ナツメと生徒会書記の海野カオリ。

 

彼女らは雨宮の取り巻きという訳ではなく、今回は友人として誘われたという意味が強い。というのも、2人とも雨宮の腰巾着という印象はないのだ。山口ナツメはダンス部の生徒であり、長髪の女子で、背丈がスラッとしている。(年齢的に難しいところもあるが)素直で実直、明るい性格で、笑顔がかわいいと男女問わず人気がある。そういう立ち位置は、ユキに似ている。

 

一方、海野カオリは、陸上部に所属する女子で、基本的には無表情であり、変化をするとしても授業中に見られるものはうるさい生徒に対して舌打ちをする程度。しかし最近は、様々な教員から微笑む様子も見られており、表情が豊かになってきた。

 

 

「草薙遊士さん、こんにちは。」

「雨宮サツキか。手紙とは随分とレトロな真似をするんだな。」

「あなたの戦い方ほどじゃないわ。」

「あんたも俺の戦い方にケチをつける気か。」

「それを確かめるのよ、古風かどうかを。そのデッキで、榊遊矢のペンデュラム召喚を破ったのなら…」

 

「稽古でもつけてくれるってことか。ありがたいことだな。」

「そんな生ぬるいものじゃないけど…いくわ!」

 

 

デュエル!!

 

 

草薙遊士 :LP4000

雨宮サツキ:LP4000

 

 

 

「私の先攻で行かせてもらうわ。モンスターを裏側守備表示でセット。カードを1枚伏せて、ターンエンド!(3)」

<遊士:伏せなし 雨宮:伏せ1枚>

 

1ターン目が終わると、ユキと天竜崎はナツメとカオリのところへと行った。座席は雨宮を背中から見る形ではなく、2人両方ともが見える場所であった。

 

「ナツメ!」

「あっ、ユキ先輩!遊士先輩の応援に来たんですか?」

「まあ…応援ってか…ねぇ?」

「興味があって、見に来たってとこだな。」

 

天竜崎はそう言って、ユキの質問に答えた。

 

 

「俺のターン!(6)俺は手札から、《ミスティック・ソードマン LV2》を召喚!(5)」

 

 

《ミスティック・ソードマン LV2》

効果モンスター

レベル2/地属性/戦士族/攻撃力900/守備力0

このカードが裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、このカードを墓地に送る事で、「ミスティック・ソードマン LV4」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

 

 

「攻撃力900だあ?おい、遊士!裏守備モンスターを倒す気がないのか?」

「翔斗、知らないの?あなた遊士の友達じゃないの?」

「えっ?何がだよ?」

 

「モンスターは攻撃力だけじゃねえぜ。ミスティック・ソードマン LV2は裏守備モンスターをそのまま破壊する効果がある。どんなに守備力が高かろうと、こいつの前じゃ無力だぜ!」

 

面喰らった。雨宮は確かに面喰らったのだ。高い攻撃力のモンスターで、裏守備モンスターに攻撃を仕掛けると思っていたが、モンスターは攻撃力だけではないという彼の発言は、雨宮の考えを改めさせるものとなった。

 

(意外と考えているのね…)

 

「バトルだ!ミスティック・ソードマン!セットされたモンスターに攻撃!」

「リバースカードオープン!《通り雨》!」

 

 

《通り雨》

通常罠

フィールド上に裏側守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを表側守備表示にし、そのモンスターが水属性モンスターだった場合、相手ライフに500ポイントのダメージを与える。

 

 

「セットされたモンスターをリバースさせる!」

「何だと!?」

 

 

《雨神の巫女-レーゲン》:守備力1900

 

 

「さらに、そのモンスターが水属性だった場合、相手に500ポイントのダメージを与える!雨神の巫女-レーゲンは水属性、よって500ポイントのダメージ!」

「クソッ!」

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3500

 

 

「そしてバトルは続行される!」

 

「まずい。ミスティック・ソードマンがダメージ計算を行わずに倒せるのはセットされたカードだけなんだろ?このままじゃ1000ポイントの反射ダメージを受けちまうぞ!」

 

天竜崎のその声が遊士に合計ダメージ、1500という現実感を与え、手札のカードを発動させたと言っても、過言ではないだろう。

 

「させっかよ!いきなり1500のダメージなんて、幸先わりぃぜ!速攻魔法、《モンスター・バック》!俺のフィールドのモンスター1体を手札に戻して、バトルフェイズを終了させる!」

「これであなたのフィールドにモンスターはいなくなったわ。いくら反射ダメージを避けるつもりだからと言い、フィールドのモンスターを離すのはどうかしら?」

「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」(4)

<遊士:伏せ1枚 雨宮:伏せなし>

 

「私のターン。(4)私は《雨神の使徒-プローア》を攻撃表示で召喚!」(3)

「また雨神モンスターか。」

「さらに、《雨神の巫女-レーゲン》を攻撃表示に変更!」

 

 

《雨神の巫女-レーゲン》:攻撃力1000→攻撃力1200

《雨神の使徒-プローア》:攻撃力1700→攻撃力1900→攻撃力2100

 

 

「攻撃力が上がりやがった!」

「レーゲンとプローアのモンスター効果よ。レーゲンが攻撃表示の時、私の場の雨神モンスターの攻撃力は、200ポイントアップする。さらにプローアの攻撃力は、フィールドの雨神モンスター1体につき100ポイントアップ!」

 

遊士が自分の伏せカードを一瞬見たのを、彼女は見逃しはしなかった。

 

(伏せカードを発動するのかしら…?)

「バトル!レーゲンで、直接攻撃!」

 

青い袴を穿いた白装束の巫女が、遊士に錫杖を向け、そこから青い波動が向かった。

 

「手札から、《トリック・ナイト》を特殊召喚するぜ!」(3)

「《トリック・ナイト》…?」

「相手が直接攻撃を宣言した時、このカードを守備表示で特殊召喚する事ができる!」

 

 

《トリック・ナイト》:☆3/守備力1000

 

 

「でも、《トリック・ナイト》の守備力は1000。」

「ヘッ!罠カード、《迎撃準備》を発動!」

 

 

《迎撃準備》

通常罠

フィールド上に表側表示で存在する戦士族か魔法使い族モンスター1体を裏側守備表示にする。

 

 

「これで、《トリック・ナイト》を裏側守備表示にするぜ。」

 

「どういう事だ?特殊召喚したモンスターを裏側守備表示に…?」

 

天竜崎のその疑問には、すぐさま対戦者である雨宮が答えた。

 

「リバース効果を使うためね。」

「そうだ。《トリック・ナイト》には、手札から特殊召喚する効果とは別に、リバースした時の効果もある!」

 

遊士がそう言い終わると同時に、青い波動が伏せカードを反転させ、褐色のブロックで作られたオモチャのような戦士がバラバラになって破壊された。

 

「リバースしたこのカードがバトルで破壊された時、このカードをバトルで破壊した相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をこのカードの守備力と同じにして、他のモンスターの攻撃をこのターン無効にする!」

「レーゲンの攻撃力を下げつつ、プローアの攻撃を封じたという訳ね。」

 

 

《雨神の巫女-レーゲン》:攻撃力1200→攻撃力1000

 

 

「ターンエンド。(3)」

<遊士:伏せなし 雨宮:伏せなし>

 

 

草薙遊士 :LP3500

雨宮サツキ:LP4000

 

 

「遊士先輩、すごいですね!サツキ先輩とほぼ互角!」

 

純粋なナツメは、このデュエルがどういう意図で行われているかということを考えない。雨宮が、遊士が遊矢を倒したことに興味を持っていると本気で考えているのだ。

 

「でも、遊士のフィールドにはモンスターがいないわ。次のターンでどうするかが大事ね。」

「大丈夫ですよユキ先輩!」

「え、どうして?」

「勘です!えへへっ…」

「勘って…ねぇ。」

 

「俺のターン!(4)俺は手札から、《切り込み隊長》を召喚!(3)」

 

 

《切り込み隊長》

効果モンスター

レベル3/地属性/戦士族/攻撃力1200/守備力400

このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手は他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。

 

 

「モンスター効果発動!手札から、レベル4以下のモンスターを特殊召喚する!来い、もう1体の《切り込み隊長》!(2)」

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200

 

 

「切り込み隊長で、攻撃力1000になった、《雨神の巫女-レーゲン》を攻撃!」

「うっ!」

 

 

雨宮サツキ:LP4000→LP3800

 

 

《雨神の使徒-プローア》:攻撃力2100→攻撃力1800

 

 

「ターンエンドだ!(2)」

<遊士:伏せなし 雨宮:伏せなし>

 

「攻撃と防御を兼ね備えた良い一手ね。」

「ヘッ。《切り込み隊長》の効果をわかってるみてえだな。」

「常識よ。他の戦士族モンスターに対しての攻撃を封じる。それが2体いて、お互いが守り合っているということは、私のモンスターは、攻撃ができないということね。」

 

所謂切り込みロック。召喚時に同名モンスターを含め特殊召喚可能なモンスター2体によるロック。ロックを形成するのは容易であり、それが原因で一時期《切り込み隊長》は準制限カードであったこともある。

 

これをどう破るか。冷たい視線の奥で、確かに雨宮は自分の中の「何か」に火が点きかかっているのを感じている。

 

 

しかしそれも次のドローまでの一瞬であった。

 

 

「私のターン!(4)」(《デシーヴ・オーナー》)

(《デシーヴ・オーナー》…。そうだったわ。危うく私は、自分のすべきことを忘れるところだった。今はこのカードを発動して、あることを確かめなくてはいけない…)

 

既に前のターンから手札にあるカードを右手の人差し指と中指で挟み、デュエルディスクの魔法・罠カードのスロットに差し込んだ。

 

「魔法カード、《デステニー・ボルテックス》を発動。(3)」

 

 

《デステニー・ボルテックス》

通常魔法

 

 

「《デステニー・ボルテックス》、何だそりゃ?」

「自分フィールド上の水属性モンスター1体をリリースし、お互いのプレイヤーは手札のモンスター1枚を公開して捨てる。私は手札から、《雨神の語り手-ルビア》を墓地に送るわ。」

 

 

リリース:《雨神の使徒-プローア》

 

 

「だったら俺は、《ミスティック・ソードマン LV2》を墓地に送るぜ。」

「そしてお互いのプレイヤーはデッキから、レベル7または8のモンスター1体を手札に加える事ができる。この効果で手札に加えたモンスターは、このターンのエンドフェイズに、自分のフィールドのモンスター2体をリリースする事で、手札から特殊召喚する事ができる。」

「レベル7または8だと!?」

 

「そうよ。どうかしたのかしら…?あなたのエースモンスターでも手札に加えると良いわ。」

 

その言葉に一瞬ためらいを感じたが、遊士は迷わずにデッキからモンスター1体を手札に加えた。昇華をし続ける、遊士を数多くのピンチから救ってきた、あのモンスターである。

 

「私は、《雨神の祈祷師-アクアツォーネ》を手札に加える。(3)」

「俺は、《剣聖-ライジング・ソード》を手札に加えるぜ。(2)」

 

 

「サツキ先輩は、デステニー・ボルテックスの効果で、アクアツォーネを特殊召喚するのね!」

「それはないわ。」

「えっ。何よ、カオリ。」

 

先ほどからデュエルの経過を記録している海野カオリが、口を開いた。口数が少ないが、的を射たことを多く言う、そんな人のことをサイレント・ストロンガー(silent stronger)と呼ぶが、まさに彼女のことだろう。

 

「デステニー・ボルテックスはエンドフェイズに特殊召喚する。攻め手が遅れる上に、相手にエースモンスターを使われたらどうするの?」

「じゃあ、手札コスト…?」

「それだったら、デステニー・ボルテックスそのものを手札コストに充てれば良いじゃない。」

 

彼女はキャンパスのノートを、「サツキ先輩のデッキに入っているモンスターからすると…」と言いながら、パラパラとめくった。

 

「えっ、どれ…?」

 

ナツメはカオリのノートを脇から見に行った。

 

 

「私は手札からチューナーモンスター、《雨神の弾き手-ツユ》を召喚!」(2)

 

 

《雨神の弾き手-ツユ》:★1/攻撃力0

 

 

「チューナーだと!?」

「このモンスターをシンクロ素材とする場合、他のチューナー以外のモンスターは、墓地の雨神と名の付いたモンスターでなければならない。その際、雨神と名の付いたモンスターは、ゲームから除外される。レベル4のプローアに、レベル1のツユをチューニング!」

 

 

☆4+★1=☆5

 

 

光去りし天空より、その姿を現せ!シンクロ召喚!レベル5、《雨神の召喚師-レイン》!

 

 

《雨神の召喚師-レイン》

シンクロモンスター

レベル5/水属性/水族/攻撃力2200/守備力1500

チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上

1ターンに1度だけ、自分の手札または墓地から「雨神」と名の付いたモンスター1体を自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で墓地から「雨神」と名の付いたモンスターを特殊召喚した場合、このターンのバトルフェイズをスキップする。

 

 

「レインの効果発動!手札から、雨神モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する!私は手札から、《雨神の祈祷師-アクアツォーネ》を特殊召喚!」(1)

 

青い着物に身を包み、青い宝玉が先に埋め込まれている杖を天に掲げた召喚師。青の生地に毛皮の帽子を深々と被っているため、顔は見えない。

 

 

《雨神の祈祷師-アクアツォーネ》:☆7/攻撃力2300

 

 

「このタイミングで特殊召喚してきやがったか。」

「切り込み隊長2体の効果で攻撃ができないのなら…直接ダメージを与えるまで。私は、《雨神の祈祷師-アクアツォーネ》のモンスター効果を発動!」

 

十二単まではいかないものの、かなりの厚地の青い着物を着て立つ祈祷師が、指先から波のようにうねる波動を出した。その波動は遊士の真上に向かって放たれ、そこには雲が集って行った。集まるというよりは、積み重なり、新たな雲となるという印象であった。

 

「こ…これは?」

「1ターンに1度だけ、自分フィールド上に存在する雨神モンスター1体につき、相手に500ポイントのダメージを与える!この効果を発動する場合、このカードは攻撃ができない。さあ受けなさい!」

 

 

神々の気まぐれ!

 

 

「ぐあっ!てめっ!」

 

濡れることこそないが、そのエフェクトが、激しい雨となって、遊士を襲った。

 

 

草薙遊士:LP3500→LP2500

 

 

「そして…カードを1枚伏せて、ターンエンド。(0)」

<遊士:伏せなし 雨宮:伏せ1枚>

 

「おいちょっと待てよ。ターンを終わらせる前に、やらなきゃいけねえことがあるだろ。」

「フッ。そうだったわね。」

「鼻で笑っていられるのも今のうちだぜ。俺はフィールドの2体の切り込み隊長をリリースして、《デステニー・ボルテックス》の効果発動!手札から現れろ!《剣聖-ライジング・ソード》!!」(1)

 

 

身を褐色の鎧で包み、青白い光を放つ刃を持つロングソードを右手で握った青年。他の外面的特徴を挙げれば兜や、熱いものを感じられる眼差し。それだけ、本当にそれだけなのだが、威圧感が、場を支配している。

 

「ライジング・ソード。これが…」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》

通常モンスター

レベル7/光属性/戦士族/攻撃力2400/守備力2000

未知の力を持った剣聖。その力は、昇華され続けるといわれている。

 

 

雨宮がライジング・ソードを睨んでいると、ナツメは身も蓋もないことを言った。

 

「え?ただの通常モンスターじゃないですか。」

「違うのよ、アレが出た時の遊士は…」

「ああ。あいつは、遊矢を倒したカードでもあるんだ。あいつが出ると…」

 

(やっぱりだ。ライジング・ソード。お前がいれば、俺は誰にも負けねえ。お前の力を感じるぜ。成績優秀な雨宮…この生徒会長にもなっ!!)

 

「よし、この状況を逆転するカードを、ドローするぜ!俺のターン!!(2)」

 

雨宮には不思議と、彼のドローする軌跡が見える気がした。

 

「俺は装備魔法、《アサルト・アーマー》をライジング・ソードに装備する!(1)」

 

「おおっ!あの装備魔法は、遊矢を倒した時の!」

「バトル中に2回攻撃できるカードね!」

 

 

《アサルト・アーマー》

装備魔法

自分フィールド上に存在するモンスターが戦士族モンスター1体のみの場合、そのモンスターに装備する事ができる。装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

装備されているこのカードを墓地へ送る事で、このターン装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

 

「さらに、この状態のアサルト・アーマーを墓地に送って、効果発動!装備モンスターは、このバトルフェイズに2回攻撃できる!いけっ!ライジング・ソード!!」

 

 

アサルト・ソード・ブレイク!

 

 

ライジング・ソードは、一閃でレインを、逆袈裟でアクアツォーネを撃破した。

 

 

雨宮サツキ:LP3800→LP3600→LP3500

 

 

(やはり…ライジング・ソード。ただのカードではない。何かが宿っているかのような。私は見逃さなかった。彼はこのターンに手札に加えたカードを、魔法・罠カードゾーンに置いた。ということは、アサルト・アーマーをドローした。偶然と言えばそれまでだけど、この威圧感は…

 

 

だったらなおさら…)

 

 

「俺はこれで、ターンエンドだ!(1)」

「この瞬間、罠カード《デシーヴ・オーナー》を発動!」

「…!?」

 

 

《デシーヴ・オーナー》

通常罠

ターン開始時に、自分フィールド上にモンスターが2体以上存在していたターンに発動することができる。このターンのエンドフェイズに、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手フィールド上に表側表示で存在するこのターンに戦闘ダメージを与えたモンスター1体のコントロールを得る。その後、相手はカードを1枚ドローする。

 

 

発動直後、ライジング・ソードは、ゆっくりと振り返り、所有者である遊士を一瞥した。遊士は雨宮と同じようなライジング・ソードの視線を、冷ややかだと感じ、自分のモンスターではないような感じを受けた。

 

「おい…どうしたんだよ。」

「《デシーヴ・オーナー》は、モンスターが2体以上存在し、エンドフェイズに全ていなくなっている場合、相手フィールドのこのターン私にバトルダメージを与えたモンスターのコントロールを得る。」

「何だと!?じゃあ…ライジング・ソードは…」

 

 

「そう。さあいらっしゃい、ライジング・ソード…」

 

 

雨宮が手招きをすると、所有者が雨宮に移り変わったように、すぐさま彼女のフィールドに、ライジング・ソードは移った。

 

「このモンスターは、あなたに勝利をもたらしたのではなく、

 

 

 

所有者に勝利をもたらすということを、思い知らせてあげるわ!私の…ターン!!!」

 

 

 

(次回に続く)

 

<今日の最強カード>

《デシーヴ・オーナー》

通常罠

ターン開始時に、自分フィールド上にモンスターが2体以上存在していたターンに発動することができる。このターンのエンドフェイズに、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手フィールド上に表側表示で存在するこのターンに戦闘ダメージを与えたモンスター1体のコントロールを得る。その後、相手はカードを1枚ドローする。

 

 

<次回の最強カード>

《アセンション・リバース》

通常魔法

 

 



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第5話-スーパーストロングデュエリスト

舞網チャンピオンシップについての記述がありますが、あれはワザとARC-V本編とは違った事実が書いてあります。

ARC-V本編では、バトルロイヤル後、シンクロ次元に行く予定でしたが、この話では、舞網チャンピオンシップ、榊遊矢の優勝で終わっています。


草薙遊士

 

・LP2500

・手札1枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

雨宮サツキ

 

・LP3500

・手札0枚

・(モンスター)《剣聖-ライジング・ソード》(ATK2400)

・(魔法・罠)《デシーヴ・オーナー》(発動中)

 

 

「俺の…ライジング・ソードが…」

「私のターン。このカードの力で、勝利を得るわ。けどその前に、《デシーヴ・オーナー》の効果で、カードをドローしなさい。もっとも、ロクなカードは引けないでしょうけど…」

「そうか。《デシーヴ・オーナー》には、カードをドローさせるデメリットがあるのか。だったら1枚ドロー!」(2)

 

まだ希望を捨ててはいけない。そう思い、力強くカードをドローする。ドローしたカードを確認した遊士は、ライジング・ソードの能力がないからこのカードを引いたのではないという思いを抱いた。

 

「まぁ…今は俺のエンドフェイズだしな。都合良く相手ターンを何とか凌げるカードなんて引けねえよ。」

「トリック・ナイトのようなモンスターはどうなのかしら?」

 

今の遊士の揺れる心には、その一言はむしろ重たすぎる一撃となった。

 

「トリック・ナイトのような、手札で発動できるモンスターであれば、私のターンのダイレクトアタックはないはずよね。」

「て…てめえ!」

「エンドフェイズは終わった。このドローで、とどめを刺してあげる。私のターン!(1)」

 

勝利を宣言した雨宮に、運命は笑った。

 

「来るか…」

「生徒会長には勝てねえのかな、遊士。」

 

まるでカードテキストを隅から隅まで読むようにして、ドローしたカードを睨みつける雨宮に、周囲の雨宮の勝利という共有意識は、姿を変えていった。

 

「バトル!ライジング・ソードで、ダイレクトアタック!」

「ぐ…!」

 

遊士は咄嗟にデュエルディスクを盾にして、ソリッドビジョンとはいえ、ライジング・ソードの攻撃をかわした。もちろんダメージは受けるが、彼の心へのダメージも大きい。

 

 

草薙遊士:LP2500→LP100

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。」(0)

<遊士:伏せなし 雨宮:伏せ1枚>

 

「あーあ、先輩、モンスターが引けなかったのね。」

 

ナツメは呑気だったが、ライジング・ソードが勝利をもたらさないことに、遊士は驚きを感じていた。もちろん安堵もあったが。

 

「ヘッ!ライジング・ソードは…お前には勝利をもたらさねえみたいだな!」

「フッ。面白くなってきたわね。」

「諦めるのはまだ早いみてえだな!俺のターン!!(3)…!!このカード!」

 

思わずそう声に漏らしたことに、反応せざるを得ない雨宮。

 

「…?」

 

(あの日の放課後…校長が俺に…)

 

遊士が校長に自分がCDTに出場することができる理由を聞きに行った日、その放課後に、今度は校長の方から呼び出しがあったのだ。

 

『このカードを持っていきなさい。』

 

アセンション・リバース。この状況を見越していたかのようにさえ思った遊士は、おぼろげな希望を、このカードへと繋げるという確固たる信念に変えた。

 

(俺はこのカードの発動に…繋げてみせる!)

「モンスターを裏側守備表示でセット!(2)カードを1枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<遊士:伏せ1枚 雨宮:伏せ1枚>

 

「防戦一方とはね、せっかくのチャンスにも関わらず、残念ね。私のターン!(1)よし、このターンで終わらせるわ。罠カード、《時雨》を発動!500ポイントのライフを払い、手札から雨神モンスター1体を特殊召喚する!出でよ、《雨神の使徒-プローア》!この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は500ポイントアップし、戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

 

 

雨宮サツキ:LP3500→LP3000

 

 

《雨神の使徒-プローア》:攻撃力1700→攻撃力1800→攻撃力2300

 

 

「攻撃力2300なら、守備表示モンスターは倒せるはずよ。プローアで守備表示モンスターを攻撃!」

「そうか、プローアは、雨神モンスター1体につき、100ポイント攻撃力がアップするのか!」

 

そう言っている間に、プローアの剣による一撃が、盾を切り裂いた。

 

「《フリードの守護者》、効果発動!このカードは1ターンに1度、戦闘では破壊されないぜ!」

 

そこには若い頃のフリード、と言った金髪の青年の戦士が、自分の体と同じくらいの大きさの盾を構えていた。プローアの剣が切り裂いたのは、フリードの守護者の持つ、別の盾であった。

 

「なっ…しぶといわね。なら、《剣聖-ライジング・ソード》!」

 

フリードを切り裂くライジング・ソードの青い瞳と、目があった遊士は、彼を取り戻す決意を固くした。

 

「ターンエンド!(0)」

<遊士:伏せ1枚 雨宮:伏せなし>

 

「さあ…いくぜ。ライジング・ソード…お前を…取り戻す!俺の…ターン!!(2)来た!来たぜ、雨宮!ライジング・ソードは、返してもらう!魔法カード、《増援》を発動!」(1)

 

 

《増援》

通常魔法

自分のデッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加え、デッキをシャッフルする。

 

 

「俺はこの効果で、《ならず者傭兵部隊》を手札に加えて、召喚!(1)」

 

 

武器、防具にサビがついているものを見せつける者や革製の装備で自信に満ち溢れた顔を見せる者がぞろぞろと現れ、彼らはまさに、「ならず者」臭を漂わせた。

 

その様子に、起死回生の一手として相応しいのかがわからなかった生徒会副会長の山口ナツメは、思わず口を開いた。

 

「攻撃力1000のモンスター…?あのモンスターで大丈夫なんですか、ユキ先輩?」

「あのモンスターは確か…」

 

 

「モンスター効果発動!このカードをリリースし、フィールドのモンスター1体を破壊する!ライジング・ソードを破壊する!」

 

《ならず者傭兵部隊》は召喚されてすぐに白い光に包まれ、姿を消し、そのモンスターがフィールドを離れるのとほぼ同時に、ライジング・ソードも白い光に包まれ、破壊された。

 

「けど、私のフィールドにはまだモンスターがいるわ。攻撃力2300のプローアがね!」

「焦んなよ!俺のターンはまだ終わっちゃいねえ!手札から魔法カード、《アセンション・リバース》を発動!(0)」

 

 

《アセンション・リバース》

通常魔法

 

 

「アセンション・リバース…?」

「俺のフィールドにモンスターがいない場合、俺の墓地に存在する戦士族モンスター1体を特殊召喚する!蘇れ、《剣聖-ライジング・ソード》!!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:☆7/攻撃力2400

 

 

「そして、この効果で特殊召喚した後に、カードを1枚ドローできる!」

「な…!?」

 

 

「ライジング・ソード。お前の力を俺に貸してくれ。あいつを…生徒会長をぶっ倒せるカードを…俺に!!ドローッ!!(1)」

 

雨宮は確かにその目に捉えた。遊士のドローの軌跡を。比喩ではない。彼のドローは光を放っていた。

 

「装備魔法、《稲妻の剣》を発動!(0)」

 

 

《稲妻の剣》

装備魔法

戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップし、フィールド上に表側表示で存在する全ての水属性モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。

 

 

「ライジング・ソードの攻撃力を800ポイントアップし、水属性モンスターの攻撃力を500ポイント下げる!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400→攻撃力3200

《雨神の使徒-プローア》:/攻撃力2300→攻撃力1800

 

 

「いけぇっ!ライジング・ソード!」

 

 

ライトニング・ソード・ブレイク!!

 

 

戦闘態勢を取るプローアを前に、ライジング・ソードはまず稲妻の剣を掲げ、その雷撃でプローアを弱らせ、その隙にライジング・ソードは大きく振りかぶり、その後にプローアを切り付けた。

 

 

雨宮サツキ:LP3000→LP1600

 

 

「くっ!」

「さらに罠発動!《ブレード・ストライク》!」

 

 

《ブレード・ストライク》

通常罠

装備カードを装備したモンスターがモンスターを戦闘で破壊した時に発動することができる。戦闘で破壊されたモンスターのコントローラーは、そのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。その後、装備カードを装備したモンスターのコントローラーは、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「装備カードを装備したモンスターが相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを、お前に与える!」

「そんな…」

 

 

雨宮サツキ:LP1600→LP0

 

 

雨宮はしばらく立っていたが、間もなくして地面に膝を着いた。静寂、というより独特な緊張感が漂う中で、やはりと言うべきか、最初に口を開いたのはナツメだった。

 

「サツキ先輩!!そんな!サツキ先輩…負けちゃった。」

 

無口な生徒会書記の海野カオリも、驚きを隠せないでいた。

 

「こ…こんなことは…あり得ない。」

 

「すごい…遊士。生徒会長を倒しちゃったわ。」

「遊士!!お前って奴は……すげえぜ!!」

 

遊士は、崩れて膝を着いた彼女に歩み寄った。

 

「俺の…勝ちだ。」

「草薙…遊士。ライジング・ソードが選んだのは…あなただったわね。」

「当たり前だろ。俺のカードなんだぜ?」

「フッ…」

「次やる時は、本気で来いよ。」

「私は手加減はしていないけど…」

「嘘つくなよ。《剣聖ーライジング・ソード》、訳があって奪ったんだろ?」

「さあ…?」

 

遊士の中では確信を得たものであったが、雨宮は白を切った。

 

「あなたとまたデュエルできる日を、楽しみにしているわ。」

 

その一言を最後に、雨宮は副会長と書記とともにアリーナを後にした。

 

 

※※※※※※

 

 

ゴールデンウィークと言われる日に、CDTのエキシビションマッチが行われる。

 

天候には恵まれた。多少の雲はあるものの、晴れており、日差しが強いわけでもない。気温も時より吹く風がそよ風だと感じられるほどのものであった。

 

とは言え、新緑の中にあるヨークトスタジアムにはCDT参加者約500人及びその保護者、応援者等がいることになるので、それによる人いきれは尋常ではない。

 

数軒の屋台をまわり、ゴミ箱にフランクフルトを食べた際に出た木の串を放り投げたのは、天竜崎であった。

 

「あちぃなぁ…」

「ああ。って、なんでお前らがいるんだよ?」

「何言ってんの!寂しいでしょ遊士?だから応援に来たんじゃない!」

「寂しかねぇよ。俺のデュエルなのに…」

「アカデミア代表生徒のデュエルを、スギティーだって観に来ないんだぜ?俺らが来なくてどうすんだ?」

 

遊士がアカデミア代表生徒としてこの予選会に参加しているのを、彼らはわかっていた。

 

一週間ほど前の全校朝礼で、遊士が今年のアカデミア代表生徒として大会に参加することを激励されたのだ。

 

「大げさなんだよ、ったく…」

 

「おーい!」

 

聞き覚えのある声がした方に目を向けると…

 

「お前…遊矢!!」

「遊士さん!」

「遊矢も、この大会に出場するのか。遊勝塾代表としてか?」

「ああ!」

 

遊士の後ろにがっちりとした体格の男と、ピンク色の髪をした女の子がついてきているのがわかった。彼女の腕のブレスレットが特徴的だ。

 

「遊矢の知り合いか?」

「ん?あんたたちは…権現坂昇!それに、柊柚子!」

 

「そうだが、なぜ俺たちの名前を…」

 

すると、遊士ではなく天竜崎がその疑問に答えた。

 

「だってお前ら、舞網市デュエルチャンピオンシップに出てただろ?」

 

「見てくれてたんですか?嬉しい!」

 

塾の宣伝云々ではなく、純粋に心からそう思った柚子は、思わずそう叫んだ。しかし、すぐ我に返り、遊士と発言した遊矢の方を見た。

 

「そういえば、遊士ってことは…この前交流戦で戦った…?」

 

「ああ。俺がその草薙遊士だ。またあたるようなことがあったら、よろしくな。」

「もちろん!最高のエンタメデュエルをお届けするさ!」

 

そう言っている間にも、2人はお互いに感じていた。交流戦の日に聞いた声、そしてペンデュラムの輝きを…

 

「3人とも、CDTに出場するのか?」

 

その天竜崎の発言が、2人を現実に引き戻した。

 

「もちろん!」

「この漢、権現坂。相手が遊矢の知り合いであろうと手加減はできないッ!」

「私も、当たったら、よろしくお願いします!」

 

舞網チャンピオンシップは、遊矢の優勝で幕を閉じた。予選、決勝トーナメントが行われ、そこで遊矢が勝利したのであった。

 

「よう、お前ら!」

 

人が話をしているにもかかわらず、馴れ馴れしく割って入ったのは沢渡シンゴであった。

 

「沢渡!お前も出るのか?」

「LDSの代表生徒としてか…」

 

「当たり前だろ!この俺様が出なかったら、どうなっちまうんだよ?」

 

「誰だ、この大口を叩く奴は?」

 

天竜崎は思ったことをすぐに言うタイプの人であり、会って間もない沢渡にそう言い放った。彼は舞網チャンピオンシップを観ていたのだが…

 

「遊矢の知り合いか?この俺様は…沢渡シンゴ!スーパーストロングデュエリストだぜ!」

 

「へぇー、面白い人ね!」

「デュエルの実力が伴っていりゃな。」

 

「なっ!バカにすんのか、お前!お前、誰だ!?」

「俺か?草薙遊士、よろしくな。」

「遊士…?お前が…!?」

 

沢渡も噂では聞いていた。遊矢を破ったデュエルアカデミアの生徒がいると。

 

 

ふとスタジアムの前方を見ると、緑色という異様な色のスーツを着た長身の男がマイクを持って立っている。

 

「レディースエンドジェントルメン!本日は遠い中、そして暑い中お越しいただき、まことにありがとうございます!」

 

太い声の持ち主がマイクを使い、そう高々と叫ぶ。

 

「私は本日のセントラル・デュエル・トーナメント、予選会兼エキシビションマッチの司会をさせていただきます、マイク・グローリーです!今回のCDTには総勢500名ほどのデュエリストが参加することとなります!いやぁ、これほどのデュエリストが参加することになるとは、嬉しい限りでございます!」

 

 

説明を聞けば聞くほど、遊士は自分の闘志が続くのかが気になった。まずは全国各地で予選トーナメントが行われ、そこで勝ち上がったデュエリストたちで決勝トーナメントを行う。ここまでは予想できてはいたことだが…

 

早ければ翌日には予選1回戦は始まるが、そこから予選トーナメント(4回戦分)が7月中旬まで続き、決勝トーナメントは8月下旬から始まるのだ。

 

「とっとと決着つけてえのに、下手すりゃ年末までやってるわけだろ?かったりぃな。」

「そんなこと言わないの、遊士!代表生徒なんだから…」

「そりゃそうだけどさ、ユキ。」

 

 

「それではみなさん!本日は、記念すべき第10回大会ということもあり、エキシビションマッチを行いたいと思います!応募していただいきました方々の中から、抽選で一組、2名様にエキシビションマッチを行っていただきます!」

 

「応募…?」

 

あからさまにワクワクしている遊矢に対し、応募…と呟いた遊士を見ると、権現坂が問いかけた。

 

「エキシビションマッチには…応募しなかったのか…?」

「いや、応募って、何?」

「えっ!冗談だろ遊士!申し込み用紙の下の方に、エキシビションマッチに応募するかどうかの欄があっただろ!」

 

思わず遊矢がそう叫ぶと、「応募する」「応募しない」に丸をつける質問が一つあったことを思い出した。

 

「やべっ…でも、ここで戦ったら手の内を晒すことになる訳だろ?」

「いや、別にここで使うデッキは、大会の中で使うデッキじゃなくてもいいんだ。」

「そうなのか…」

 

「せっかくだったら、私の洋菓子デッキを使ってもらおうと思ったのに。」

「ああ、スイーツデッキね。あんなチャラチャラしたデッキ使えるかよ。」

「スイーツじゃないわ!洋菓子!!」

 

言い争いをしている声をかき消すように、グローリーの声が響き渡った。

 

「エントリーナンバー100!サニー・キッド!!」

 

「おっ!俺か!?」

 

サニー・キッドと呼ばれた少年は、スタッフの誘導のもと、軽やかにスタジアム中央へと移動した。彼にフードの男が話しかけていたようだったが、遠くからであったことやよく見えなかったこともあり、遊士はあまり気にしなかった。

 

「今回初めてCDTに参加します!12歳の元気いっぱいの少年デュエリストです!さあ!対するは……!!

 

 

エントリーナンバー200!沢渡シンゴ!!」

 

 

「えっ!?沢渡…!?」

 

 

「よくわかってるじゃねえか!!そう!この沢渡シンゴの出番だ!!」

 

 

誘導のスタッフが沢渡のところに近付くよりも前に、駆け足でスタジアム中央へと移動した。

 

「頑張れよ、沢渡!」

 

実際、変な奴、沢渡のデュエルは遊士も気になってはいたのだ。

 

 

2人がスタジアム中央に移ると、白い枠で囲われた2人のいる部分が隆起し、デュエルリングが作られた。

 

「うおおっ!」

「おーしっ!テンション上がって来たぜ!」

「テンションが上がっただと?サニーとか言ったか?このスーパーストロングデュエリストの沢渡シンゴ様が相手とは、お前も持ってないねぇ!大勢の前で、恥をかいちまうんだからなぁ!」

 

ある意味でエキシビションマッチには相応しいデュエリストかもしれない沢渡に、サニーは少々引き気味であったが…

 

「ヘッ!そんな事言っていられるのも今のうちだぜ!お前こそ、俺の最強カードでぶっとばされるんだからな!」

 

寡黙なデュエリスト2名によるエキシビションマッチだとどうなるのか、それがグローリーの最大の懸念事項であったが、今この瞬間、その不安がなくなった。

 

来年度からは、あらかじめエキシビションマッチに出場するデュエリストには声をかけた方が良いと運営側に案を出すべきだと彼は思った。

 

「さあ、それでは始めましょう!先攻は沢渡シンゴです!エキシビションマッチ、開始!」

 

 

 

デュエル!!

 

 

 

沢渡シンゴ:LP4000

サニー  :LP4000

 

 

 

黒いマントを羽織った銀髪の青年と、凛々しい顔立ちの少女が彼-サニーを見て話している。

 

「サニー…あのカードを使わないかが心配だ。」

「あのカードを取り上げれば良かったのよ。」

「まさかサニーがエキシビションマッチに選ばれるとは思っていなかったからな。しまったな。」

 

 

「俺の先攻!俺は魔法カード、《女神の挑発》を発動!」(4)

 

 

《女神の挑発》

通常魔法

1000ライフポイントを払う。相手の手札を確認し、魔法カードがあった場合、2枚まで選択し、相手フィールド上にセットすることができる。このカードを発動したターン、バトルフェイズは行えない。

 

 

 

沢渡シンゴ:LP4000→LP3000

 

 

 

「手札を確認させてもらうぜ!」

 

 

お互いのプレイヤーは10メートルほど離れた位置で向かい合ってデュエルをしているため、デュエルリングでデュエルをする場合、ディスプレイをタッチし、public knowledge(公開情報)項目を選び、自分の手札を1枚ずつ翳す。

 

もちろんここで公開された手札は、スタジアム内の大型ディスプレイにも映し出されるので、周囲の人もサニーの手札を把握することができるのだ。

 

 

《サニーサイド・ホーク》、《サニーサイド・ナイト》、《サイクロン》、《鳳凰神の羽根》、《スピリット・バリア》の5枚がスタジアム内に表示された。

 

 

「よし!《サイクロン》と、《鳳凰神の羽根》を伏せてもらう!」

「どういうつもりだ…?」(5→3)

「そのカードを利用させてもらうぜ!手札から、《氷帝家臣エッシャー》を特殊召喚!」(3)

 

 

《氷帝家臣エッシャー》

効果モンスター

レベル4/水属性/水族/攻撃力800/守備力1000

相手の魔法&罠ゾーンにカードが2枚以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

「相手フィールドの魔法・罠ゾーンに2枚以上カードがあれば、特殊召喚できる!さらに、エッシャーをリリースして、《氷帝メビウス》をアドバンス召喚!」(2)

 

 

《氷帝メビウス》

効果モンスター

レベル6/水属性/水族/攻撃力2400/守備力1000

このカードがアドバンス召喚に成功した時、フィールドの魔法・罠カードを2枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

 

「このカードのアドバンス召喚に成功した時、フィールドの魔法・罠カードを2枚破壊するぜ!」

「なにっ!?」

 

 

フリーズ・バースト!!

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(1)」

<沢渡:伏せ1枚 サニー:伏せなし>

 

 

1ターン目からの攻めの姿勢に、会場ではざわめきが起こっていた。ただのビッグマウスではないということが、認識された瞬間でもあっただろう。

 

 

「やるなぁ、沢渡。」

「間接的に相手の手札を捨て去るとは…」

「これで相手は大きく出遅れたわ!」

 

 

「その程度で、勝った気になるなよ!反撃だぜ!俺のターン!!(4)」

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《アセンション・リバース》

通常魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。自分の墓地に存在する戦士族モンスター1体を選択し、特殊召喚する。その後、自分のデッキからカードを1枚ドローする。この効果で特殊召喚したモンスターは、次の自分のエンドフェイズに破壊される。

 

 

<次回の最強カード>

《エクシーズ・フォース》

装備魔法

 

 

 

 



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第6話-揺れ動く心

沢渡シンゴ

 

・LP3000

・手札1枚

・(モンスター)《氷帝メビウス》(ATK2400)

・(魔法・罠)1枚

 

 

サニー・キッド

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

 

「俺のターン!(4)手札から、《サニーサイド・ホーク》を攻撃表示で召喚!(3)」

 

 

《サニーサイド・ホーク》

効果モンスター

レベル4/光属性/戦士族/攻撃力1400/守備力1300

このカードの召喚に成功した時に発動する。自分の手札からレベル4以下の「サニーサイド」と名の付いたモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

《サニーサイド・ホーク》…太陽が象られた盾を装備した鷹のタイプの戦士族モンスター。そのモンスターが天に剣を掲げると、その剣の先から光が溢れ、新たな戦士族のモンスターが召喚された。

 

「このモンスターの効果により、手札から、サニーサイドモンスターを特殊召喚できる!(2)」

 

 

《サニーサイド・ナイト》

効果モンスター

レベル4/光属性/戦士族/攻撃力1200/守備力0

 

 

「同じレベルのモンスターが、2体…?」

「いくぜ!レベル4の《サニーサイド・ホーク》と、レベル4の《サニーサイド・ナイト》で、オーバーレイ!」

 

 

2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!

 

 

「さあ現れろ!ランク4、《暗遷士 カンゴルゴーム》!」

 

 

《暗遷士 カンゴルゴーム》

エクシーズモンスター

ランク4/闇属性/岩石族/攻撃力2450/守備力1950

レベル4モンスター×2

フィールド上のカード1枚を対象にする魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

その対象を自分・相手フィールド上の正しい対象となる別のカードに移し替える。

 

 

オーバーレイネットワークが構築され、その渦の中から現れたのは、重い鎧をその身にまとった《暗遷士 カンゴルゴーム》。

 

 

「なにっ!?攻撃力2450だと?」

「バトル!カンゴルゴームで、メビウスを攻撃!」

 

筒状の武器に腕を通したカンゴルゴームは、勢いをつけ、先端の結晶の部分でメビウスを殴り飛ばした。

 

「うあっ!」

 

 

沢渡シンゴ:LP3000→LP2950

 

 

「この一撃は大きいぞーっ!!」

 

 

MCであるグローリーの発言に、思わず「どうしてだ?ライフは50しか減ってないのに…」という声を漏らしたのは遊矢であった。

 

「攻撃力2450。もし沢渡のデッキが帝デッキであった場合に、戦闘では倒せないからだ。」

 

権現坂がそう答えたが、遊矢の顔からハテナは消えていない。再び権現坂が答えた。

 

「帝デッキ?」

「アドバンス召喚時に発動する効果を持つモンスターで固められたデッキだ。全ての帝モンスターの攻撃力は2400。つまり沢渡がせっかく上級モンスターを出しても、カンゴルゴームの攻撃力2450を超えることはできない。」

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。(1)」

<沢渡:伏せ1枚 サニー:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(2)本番はここからだ!ここから!」

 

頭を掻き毟っている様子から、沢渡は明らかに動揺している。権現坂の言うように、攻撃力2450ポイントはレベル5か6の帝モンスターでは超えることができない。

 

「バトルで倒せねえなら…効果で倒すまでだ!永続罠、《始源の帝王》を発動!」

「なんだ、こいつは…?影…?」

「そう。こいつは帝王の影の姿をしたモンスター!このモンスター扱いの罠をリリースし、手札から、《邪帝ガイウス》をアドバンス召喚!(1)」

 

 

《邪帝ガイウス》

効果モンスター

レベル6/闇属性/悪魔族/攻撃力2400/守備力1000

このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、相手に1000ダメージを与える。

 

 

「くらえっ!ダークネス・ブラックホール!」

 

登場時に胸元で抱えていた黒い球体を勢いよくカンゴルゴームに投げつけた。

 

「ガイウスは、アドバンス召喚に成功した時に、フィールドのカードを1枚除外できる!そしてそれが闇属性モンスターなら、さらに1000ダメージだ!カンゴルゴーム!お前にはこのフィールドから消えてもらうぜ!」

 

逆転の一手のはずだが、歓声が起こっていないことなど、自分に酔いしれている沢渡が気付く由もない。まるで聴衆は、この効果が通らないことをわかっていたかのようである。

 

「カンゴルゴームの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのカード1枚を対象とする効果の対象を、別のカードに変更する!」

 

 

《暗遷士 カンゴルゴーム》:OU2→OU1

 

 

「なにっ!?」

「ガイウスは、別に俺のフィールドのカードじゃなくてもいいんだったよな?だったら俺が対象にするのは当然!!」

 

黒い球体はカンゴルゴームの腕に弾き返され、ガイウス自身がその球体に包まれ、姿を消した。

 

「あっ!!俺のガイウスがっ!!」

 

 

サニー:LP4000→LP3000

 

 

「闇属性モンスターを除外したことで、俺に1000ポイントのダメージは発生するが、もうお前のフィールドにモンスターはいないぜ!」

「け…計算済みだぜ!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」(0)

<沢渡:伏せ1枚 サニー:伏せ1枚>

 

「エキシビションなんだから、もうちょっと粘ってくれよな!俺のターン!(2)俺は手札から、《サニーサイド・ガーゴイル》を攻撃表示で召喚!(1)」

 

 

《サニーサイド・ガーゴイル》:☆4/攻撃力1800

 

 

「さあ、終わりにするぜ!《サニーサイド・ガーゴイル》で、ダイレクトアタック!」

「どあっ!」

 

 

沢渡シンゴ:LP2950→LP1150

 

 

「《暗遷士 カンゴルゴーム》!ダイレクトアタック!」

 

ガーゴイルの攻撃で大きく吹き飛ばされた沢渡は、慌てて起き上がり、罠カードのアクティベートスイッチを押した。

 

「罠カード発動!《帝王の凍魂》!」

 

 

《帝王の凍魂》

通常罠

攻撃力2400以上の相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。自分の墓地およびゲームから除外されている攻撃力2400以上で守備力1000のモンスターのそれぞれ1体ずつ、自分のデッキに戻し、その攻撃を無効にする。その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。ドローしたカードの中に、攻撃力2400以上で守備力1000のモンスターがなかった場合、ドローしたカードを全て墓地に送る。

 

 

「除外されているガイウスと、墓地のメビウスをデッキに戻して攻撃を無効にする!その後、カードを2枚ドロー!(2)」

 

ガイウスとメビウスのシルエットがカンゴルゴームの一撃を受け流し、沢渡は九死に一生を得ることとなった。

 

「ドローしたカードの中に、帝モンスターがない場合、墓地に送る!引いたカードのうち1枚は、《風帝ライザー》!!よっしゃぁ!!やっぱり俺、カードに選ばれてるーっ!!ひゃっほーっ!!」

「いや、お前の劣勢に変わりないぜ。」

 

サニーがため息混じりにそう言うと、聴衆もそれに呼応して頷いたように見えた。

 

「うるせーっ!見てろ!このスーパーストロングデュエリスト、沢渡シンゴ様の一撃を…見せてやるぜ!俺のターン!(3)」

 

(風帝ライザーをドローしたのは少し驚いたけど、結局無駄だぜ。仮に召喚できたとしても、カンゴルゴームの前じゃ、無力だぜ!)

 

 

《風帝ライザー》

効果モンスター

レベル6/風属性/鳥獣族/攻撃力2400/守備力1000

このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを持ち主のデッキの一番上に戻す。

 

 

「ヘッ。お前の考えてることはお見通しだぜ!」

 

得意げにそう言い放ったのは劣勢にあるはずの沢渡。

 

「なんだと?」

「俺は速攻魔法、《帝王の烈旋》を発動!(2)このターン、モンスターをアドバンス召喚する場合、必要なリリース1体分を、相手モンスターで賄うことができる!」

 

 

《帝王の烈旋》

速攻魔法

「帝王の烈旋」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。

①:このターン、アドバンス召喚のために自分のモンスターをリリースする場合に1度だけ、自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドのモンスター1体をリリースできる。

 

 

「カンゴルゴームの効果を忘れたのかよ、沢渡!その効果対象を、別のモンスターに変えるぜ!」

 

得意げに言い返したサニーは、カンゴルゴームの下に重ねられているカードに手を伸ばしたが、ディスプレイには「Error」と表示されてしまった。

 

「なにっ!?なんで効果が使えねえ?」

「残念だったな!カンゴルゴームが持っている効果は、フィールドのカードを対象にした効果を変更する効果だ!帝王の烈旋は、単に相手をリリースできるってカード!誰かを対象にしたカード効果じゃないぜ!」

「ちくしょう…」

 

黒いマントの男は、サニーが舌打ちしたのを見て、憐れだと感じた。カード効果が使えないことを知らなかったからだ。

 

「カンゴルゴームをリリースし、来い!風帝ライザー!(1)」

 

 

《風帝ライザー》:攻撃力2400

 

 

「モンスター効果発動!このカードの召喚時、フィールドのカード1枚をデッキの一番上に戻す!くらえ!エンペラー・ブレス!」

「ぐあっ!《サニーサイド・ガーゴイル》!」

「バトル!ライザーでダイレクトアタック!」

 

 

ボルテクス・ブラスト!

 

 

「ぐああああっ!」

 

 

サニー:LP3000→LP600

 

 

「ちくしょう…」

 

沢渡のライフポイントが1150であるのに対し、自分は600。数値の上での逆転が起こった。確かにそうなのだが、サニーにとっては、そんな単純な問題ではなかった。

 

風帝ライザーは、フィールドのカードをデッキの一番上に戻す。その性質上、沢渡やサニーはもちろん、このデュエルを観ている人も、次に彼がドローするカードが、《サニーサイド・ガーゴイル》だということはわかっている。

 

(墓地の《サニーサイド・ナイト》の効果で、俺のフィールドにサニーサイドモンスターがいる場合、復活することができる。そうすれば、2体のレベル4のモンスターで、ランク4のエクシーズモンスターが召喚できる。

 

俺のエクストラデッキには、攻撃力2400を超えるランク4のエクシーズモンスターは、いねえ。確かに手札には、《エクシーズ・フォース》があるけど…)

 

 

《エクシーズ・フォース》

装備魔法

エクシーズモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地に送った場合、以下の効果から1つを選んで発動することができる。この効果を3回使用した場合、このカードを自分のデッキに戻す。

●戦闘で破壊し墓地に送ったモンスターの攻撃力分のダメージを与える。

●自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを1枚破壊する。

 

 

 

硬直してしまったサニーを見たマントの男は、不安そうに彼のことを見ていた。敗北の不安ではない。

 

 

「まさか…」

「使うかもしれないわね、あのカードを。」

「…お前…」

「クラウド。なぜサニーにあのカードを渡したのかしら?サニーだったらカッとなって使いかねないって、思わなかったの?」

「それは思う。だから私は彼のデッキからあのカードは抜いたのだが…」

「また、あなたのデッキケースから抜き取ったのね。」

「迂闊だった…」

 

 

沢渡は自信満々の表情で、手札のカード1枚を、フィールドにセットした。

 

「ターンエンドだ!(0)」

<沢渡:伏せ1枚 サニー:伏せ1枚>

 

(なんだあいつの自信。あのカード。わかりやすい奴だな…だけど…手札には、《エクシーズ・フォース》しかない。こいつを使っても、モンスターが破壊されたら何の意味もねえ!)

 

「どうしたサニー?もう終わりか?このスーパーストロングデュエリストには、勝てなかったってことだな!ヘッヘッヘッ!!このエキシビションマッチで赤っ恥をかくことになっちまったな!うーん、やっぱり俺はもってるねぇ!そしてお前は…もってないねぇ!!」

 

 

赤っ恥をかく、もってない、これらのセリフは、揺れ動くサニーの心に、あることを決断させるきっかけになるには十分過ぎた。

 

 

「俺のターン!(2)俺は手札から、《サニーサイド・ガーゴイル》を召喚!(1)そして墓地の、《サニーサイド・ナイト》の効果発動!デュエル中に一度、俺のフィールドにいるモンスターがサニーサイドモンスター1体のみの場合、特殊召喚できる!」

 

「レベル4のモンスターが、2体?」

(いいぜ…来いよ。)

 

「俺はレベル4の2体のモンスターで、オーバーレイ!!」

 

 

交差する魂よ、道徳に背を向けた料理人に、今一度大いなる輝きをもたらせ!現れろ、ランク4!《No.59 背反の料理人(バック・ザ・コック)》!!

 

 

 

《No.59 背反の料理人》

エクシーズモンスター

ランク4/炎属性/戦士族/攻撃力2300/守備力200

レベル4モンスター×2

①:このカードは、「No.」と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:自分フィールドのカードがこのカードのみの場合、このカードは他のカードの効果を受けない。

③:1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカード以外の自分フィールドのカードを全て破壊する。その後、このカードの攻撃力はターン終了時まで、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの数×300アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「59」と書かれた数字が光を放つと、フライパンを持つ、目つきの悪いコックがサニーの目の前に現れた。その光景に…クラウドたちは思わず声をあげた。

 

 

「なっ!サ…サニー…」

「あーあ…やっちゃったわね。ナンバーズを召喚しちゃったわ…これじゃ、トーナメントの前にバレちゃうかもしれないね。」

 

 

「もう容赦しねえぞ!」

「な…ナンバーズ…!?なんだか知らねえが…罠発動!《帝王の凍破》!相手がモンスターを特殊召喚した時、そのモンスターを破壊して、自分フィールドの帝モンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

 

イラストには《氷帝メビウス》が描かれているが、ライザーが助走をつけ、背反の料理人を殴りつけようとした。

 

「背反の料理人、効果発動!自身のオーバーレイユニットを1つ使い、自分フィールドのこのカード以外のカードを全て破壊する!」

 

フライパンの上には火の玉が浮かび、それをサニーがセットしていた、《スピリットバリア》に向かって放ち、破壊した。

 

「自分のカードを破壊するだと!?」

「背反の料理人は、自分フィールドに他のカードがなければ、如何なるカード効果も受けないぜ!」

 

ライザーの一撃を、サッと後ろに飛び上がって避けた背反の料理人。さらにその料理人に、青いオーラが纏われた。

 

「装備魔法、《エクシーズ・フォース》を、背反の料理人に装備!装備モンスターの攻撃力は、500ポイントアップする!」

 

 

《No.59 背反の料理人》:攻撃力2300→攻撃力2800

 

 

「攻撃力…2800!?」

「バトルだ!背反の料理人で、ライザーを攻撃!」

 

 

バニッシュ・バーニング!!

 

 

フライパンからの火の玉が、ライザーを焼き尽くした。さらにその火の粉が、沢渡を襲う。

 

「うわっ!な…なんだっ!?」

「《エクシーズ・フォース》の効果だ!戦闘でモンスターを破壊した場合、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

「うそおおおおん!!」

 

 

 

沢渡シンゴ:LP1150→LP0

 

 

 

「けっちゃぁぁぁぁく!!鮮やかな逆転劇で、サニー・キッドが勝利を収めました!風帝ライザーの効果で、デッキの一番上のカードが聴衆にもわかっている状態での勝利、素晴らしかったですねえ!ささ、サニーさん。こちらにどうぞ!!」

 

 

呆然としているサニーに、MCであるマイク・グローリーがデュエルリングからステージに上がるように促した。

 

 

その時に会場の大気が揺れたようには誰も感じなかっただろう。まるで、別次元の何かが今の次元に干渉したような揺れが、起こったような気がする。そのような考えに、至る者など、いなかった。

 

 

※※※※※※

 

 

エキシビションマッチから一週間が経過した。会場で知り合った権現坂のデュエルが、その日に行われるということを遊矢から聞いた遊士、天竜崎、ユキの3人は、エールを送るという意味でも、彼のデュエルを観に行くことにした。

 

ヨークトスタジアム内は人ごみで溢れている。権現坂のデュエルは10時からであり、開場から1時間ほどしか経っていない中でのデュエルなので、混んでいるというのが、論理的な考え方だろう。

 

「遊士さん!」

「おお!遊矢、柚子!それに…エキシビションマッチで負けた沢渡!」

「よ…余計なことは言わなくていい!!あれは本気じゃなかったんだ!」

「そうだよな、スーパーストロングデュエリスト!」

「やめなさい、遊士。性格悪いわよ。」

 

ユキに止められると、天竜崎が話題を変えた。

 

「おいおい。んで、遊矢。権現坂は?」

「もう、デュエルリングに上がってます!」

「じゃあ急ごうぜ!」

 

 

(この漢権現坂。不動の精神で、必ずや勝利してみせる!親父殿…俺は負けない!)

 

 

「さあ、セントラルデュエルトーナメント初日!本日第2試合目!権現坂道場の跡取り息子で、舞網チャンピオンシップでは好戦績を残した不動のデュエリスト!権現坂昇!!」

 

デュエルリングの高度が上がると、会場の応援席の人もより多く見えるようになってきた。そこに遊矢たちの姿があることに、権現坂は安堵を感じた。

 

「遊矢…必ず勝って見せる!」

 

 

「対するは…経歴不明、その正体を黒いローブに隠し、禁断のデッキを使用するデュエリスト!アルファ・エイス!」

 

その紹介の通り、黒いローブに身を包み、表情が見えないデュエリストであることに、気味の悪さを感じる。

 

「アルファ・エイスか。勝たせてもらうぞ!この不動のデュエルで!」

「不動…か。いくぞ!!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

権現坂昇    :LP4000

アルファ・エイス:LP4000

 

 

 

先攻のデュエリストの部分に、権現坂と表示され、権現坂は手札のモンスターを素早くフィールドに召喚した。

 

「俺のターン!手札から、《超重武者ワカ-02》を召喚!」

 

 

《超重武者ワカ-02》:攻撃力0→守備力2000

 

 

「このモンスターは召喚に成功した時、守備表示になる!ターンエンド!(4)」

<権現坂:伏せなし アルファ:伏せなし>

 

「私のターン!(6)カードを1枚伏せ、ターンエンド。(5)」

<権現坂:伏せなし アルファ:伏せ1枚>

 

何の躊躇いもなく、わずか5秒ほどで1ターンを終わらせたアルファに、権現坂は面食らった。

 

「なっ…それで終わりだと…!?」

「一つ教えてやろう。私のデュエルスタイルは……

 

 

 

不動のデュエルだ。」

 

 

 

 

(次回に続く)

 

 

 

 

<今日の最強カード>

《エクシーズ・フォース》

装備魔法

エクシーズモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地に送った場合、以下の効果から1つを選んで発動することができる。この効果を3回使用した場合、このカードを自分のデッキに戻す。

●戦闘で破壊し墓地に送ったモンスターの攻撃力分のダメージを与える。

●自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを1枚破壊する。

 

 

<次回の最強カード>

《超重武者ビッグベン-K》

 

 

 

 



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第7話-不動のデュエルvs不動のデュエル

権現坂昇

 

・LP4000

・手札4枚

・(モンスター)《超重武者ワカ-02》(DEF2000)

・(魔法・罠)なし

 

 

アルファ・エイス

 

・LP4000

・手札5枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)1枚

 

 

「不動のデュエル…だと!?」

 

アルファは自らのデュエルスタイルを不動のデュエルだと宣言した。ハッタリの可能性もある中、どのような戦い方なのか興味深いと権現坂は思った。

 

「お前がどんな戦い方をしようと勝手だ。お前の不動のデュエルがどのようなものか、見せてもらう!俺のターン!(5)俺は手札から、《超重武者カブ-10》を召喚!(4)」

 

 

《超重武者カブ-10》

効果モンスター

レベル4/地属性/機械族/攻撃力1000/守備力2000

①:相手がモンスターの特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分フィールドの攻撃表示の「超重武者」モンスターは全て守備表示になり、その守備力はターン終了時まで500アップする。

 

 

「モンスターがいないなら、直接攻撃するまでだ!カブ-10!ダイレクトアタック!」

「手札から、《フルアーマー・ガードナー》のモンスター効果発動!このカードを手札から墓地に送り、相手フィールドのモンスターを全て守備表示にする!(4)」

 

いわゆるチョバム・アーマーという複合装甲を身に纏ったヘルメットを着けた兵士がカブ-10の目の前に立ちはだかると、その装甲をすぐに解放した。チョバム・アーマーはアルファの周囲に停滞し、それが放った眩い光が、カブ-10の攻撃を防いだ。

 

「俺のモンスターを守備表示に…」

 

 

《超重武者カブ-10》:攻撃力1000→守備力2000

 

 

「さらにデッキから、《フルアーマー・ガードナー》を1枚、手札に加える!(5)」

「ターンエンドだ!(4)」

<権現坂:伏せなし アルファ:伏せ1枚>

 

「私のターン!(6)私はこれで、ターンエンド。(6)」

<権現坂:伏せなし アルファ:伏せ1枚>

 

(どういう事だ…確かに不動のデュエルだが…モンスターも召喚せず、魔法・罠カードも出さなければ、どうやって勝利する…?奴がやっていることはドローのみ…)

「俺のターン!(5)俺のモンスターを守備表示にして、攻撃を防ぐ。それだけでは防げない攻撃を、見せてやろう!俺はワカ-02と、カブ-10をリリースし、手札から、《超重武者ビッグベン-K》をアドバンス召喚!」

 

 

《超重武者ビッグベン-K》

効果モンスター

レベル8/地属性/機械族/攻撃力1000/守備力3500

①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。このカードの表示形式を変更する。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「超重武者」モンスターは、表側守備表示のままで攻撃できる。その場合、そのモンスターは守備力を攻撃力として扱いダメージ計算を行う。

 

 

 

「このモンスターは召喚した場合、守備表示になる!」

「自ら守備表示に…だがそれでは、私にダメージを与えることはできない!」

「残念だったな…ビッグベンーKは守備表示の状態で、守備力を使って攻撃することができる!」

 

「なにっ!?守備力は…3500!?」

「いけっ!ビッグベンーK!」

 

手に持つ矛を使うわけではなく、左手で大地を殴り、地割れを引き起こした。

 

「それは通らない!私は手札の、《フルアーマー・ガードナー》のモンスター効果を発動!手札のこのカードをゲームから除外し、プレイヤーへのダメージを0にする!」

「くっ…」

 

先ほどと同じように、チョバム・アーマーがアルファを取り囲み、バトルダメージを防いだ。

 

「ターンエンド!(4)」

<権現坂:伏せなし アルファ:伏せ1枚>

 

「私のターン!(6)」

「このターンも何もしない…か?」

 

挑発のつもりではないのだが、権現坂のその発言の直後、アルファは罠カードに手を出した。

 

「罠カード、《無謀な欲張り》を発動!ドローフェイズを2回スキップする代わりに、カードを2枚ドローする!」(8)

「ドローフェイズを2回スキップしてまで、ドローするだと!?」

「さらに手札から速攻魔法、《死者への供物》を発動!」(7)

 

 

《死者への供物》

速攻魔法

フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを破壊し、次の自分のドローフェイズをスキップする。

 

 

「フィールドのモンスター1体を破壊する!ビッグベン-Kを破壊!」

「手札の、《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果発動!手札からこのカードを墓地に送り、自分フィールドの超重武者モンスターの破壊を無効にし、その守備力は800ポイントダウンする!」(3)

 

 

《超重武者ビッグベン-K》:守備力3500→守備力2700

 

 

「破壊を免れたか。しかしまだ私のターンは終わっていない!手札から速攻魔法、《手札断殺》を発動!」(6)

「なに…?」

「お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

 

《手札断殺》

速攻魔法

お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送る。その後、それぞれデッキから2枚ドローする。

 

 

2人はほぼ同時に手札のカード2枚を墓地に送り、カードをドローした。このタイミングでの発動に、権現坂は疑問を覚えた。

 

(なぜ、このタイミングで手札断殺を…?ドローフェイズをスキップしたかと思えば、カードをドローし、手札を入れ替えるとは、どういうことだ?それに奴は…全く攻めて来ない。確かに不動のデュエルだ。)

 

「モンスターを裏側守備表示でセットし、カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(4)」

<権現坂:伏せなし アルファ:伏せ1枚>

 

 

《超重武者ビッグベン-K》:守備力2700→守備力3500

 

 

「俺のターン!(5)手札から、《超重武者装留イワトオシ》のモンスター効果発動!このカードを手札から、ビッグベン-Kに装備!(4)」

 

 

《超重武者装留イワトオシ》

効果モンスター

レベル4/地属性/機械族/攻撃力1200/守備力0

①:自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。自分の手札・フィールドからこのモンスターを装備カード扱いとしてその自分のモンスターに装備する。

②:このカードの効果でこのカードを装備したモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「超重武者装留イワトオシ」以外の「超重武者」モンスター1体を手札に加える。

 

 

ビッグベン-Kが弓矢のようなモンスター、イワトオシを装備した。権現坂はまだ攻撃宣言を行っていないのだが、ビッグベン-Kは片目を瞑り、守備表示モンスターを射ようとしている。

 

「守りを固めるというのなら、この一撃を受けてみろ!ビッグベン-Kで、守備モンスターを攻撃!」

 

待ってましたと言わんばかりに即座に矢を放ち、守備モンスターを撃ち抜いた。

 

「イワトオシを装備した超重武者が、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値分のダメージを相手に与える!」

「ぐっ…」

 

アルファは一瞬顔を歪ませたが、それも一瞬であった。ライフカウンターがストップした後、彼の顔には確かに笑みがあったのだ。

 

 

アルファ・エイス:LP4000→1600

 

 

「フッ。私がセットしたモンスターは、《ディープ・ダイバー》。」

 

 

《ディープ・ダイバー》

効果モンスター

レベル3/水属性/水族/攻撃力1000/守備力1100

 

 

「このモンスターが戦闘によって破壊されたバトルフェイズ終了時、自分のデッキからモンスター1体を選択し、デッキの一番上に置くことができる。私が置くカード。それは…

 

 

 

《封印されしエクゾディア》!!」

 

 

 

フードの暗闇から見せた不気味な笑みはあったが、客席からはざわめきが起こった。

 

「さらに罠カード発動!《リフェイザー・ドロー》!」

 

 

《リフェイザー・ドロー》

通常罠

 

 

「次の自分のドローフェイズにカードをドローしない代わり、スタンバイフェイズにこのカードの効果によってカードをドローする。ドローしたカードがモンスターカードであった場合、そのターンのエンドフェイズにもう1枚ドローできる。次の私のターン、《無謀な欲張り》と《死者への供物》のデメリットによってドローフェイズがスキップされていても、ドローできる!気付いた時には負けている。私は動かなかった。しかし、動かざるして、勝利を得たのだ!」

 

アルファは、勝利を確信したその瞳で権現坂を見下ろした。俯いている権現坂を、敗北が目の前にあるデュエリストとしか見なしていない。しかし…

 

 

「わかっていた…」

 

 

「なに…?」

 

 

「わかっていた。お前が、エクゾディアパーツを集めていることは。」

「しかし、もう遅い。お前には打つ手立てはない。お前のバトルフェイズは終わっている。」

「そうだ。だが、メインフェイズ2で、新たなモンスターを召喚することはできる!手札からチューナーモンスター、《超重武者ホラガ-E》を通常召喚!(3)レベル8のビッグベン-Kに、レベル2のホラガ-Eをチューニング!!」

 

 

☆8+★2=☆10

 

 

荒ぶる神よ、千の刃の咆哮とともに、砂塵渦巻く戦場に現れよ!シンクロ召喚!いざ出陣、《超重荒神スサノ-O》!!

 

 

 

《超重荒神スサノ-O》(小説版)

シンクロモンスター

レベル10/地属性/機械族/攻撃力2400/守備力3800

機械族チューナー+チューナー以外の「超重武者」モンスター1体以上

このカードはルール上「超重武者」カードとしても扱う。

①:このカードは表側守備表示のままで攻撃できる。その場合、このカードは守備力を攻撃力として扱いダメージ計算を行う。

②:1ターンに1度、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、500ライフポイントを払い、相手の墓地の魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを自分フィールドにセットする。この効果でセットした魔法カードはこのターン発動することができ、この効果でセットしたカードはフィールドから離れた場合に除外される。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

やや濃い緑色の装甲がところどころに見られる鎧を纏い、薙刀を持った大男のようなモンスターが権現坂の目の前に現れ、胡坐をかいて座った。

 

そしてその荒ぶる神が手を天に向かって掲げると同時に、アルファの墓地が光を放った。

 

「超重荒神スサノ-O…」

 

このモンスターの登場に、ただの脅しではないということが感じられたアルファは、身構えた。

 

「まずは、墓地に送られた、イワトオシのモンスター効果により、自分のデッキから、超重武者と名の付いたモンスター1体を手札に加える!俺が手札に加えるのは、《超重武者テンB-N》!(4)」

「来るか…」

「スサノ-Oのモンスター効果発動!自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、ライフポイントを500払い、相手の墓地に存在する魔法・罠カード1枚を俺のフィールドにセットする!」

「私の魔法・罠カードを…セットだと?」

 

 

権現坂昇:LP4000→LP3500

 

 

「そうだ!」

「まさかっ…!!」

 

 

「速攻魔法、《手札断殺》を発動!」

 

 

《手札断殺》

速攻魔法

お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送る。その後、それぞれデッキから2枚ドローする。

 

 

「お互いに手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドローする!お前もだ!さあ、カードを2枚墓地に送れ!」

「くっ…」

 

アルファの手札は現在4枚。必ず2枚のエクゾディアパーツを墓地に送ることになる。どれを選んでも大差はないが、《封印されし者の左腕》と《封印されし者の右腕》を墓地に送った。

 

「ターンエンドだ!(4)」

<権現坂:伏せなし アルファ:伏せなし>

 

「権現坂のターンが終わりました!今現在アルファの手札は4枚ですが、権現坂のスサノ-Oの効果で手札断殺を使われてしまい、手札のエクゾディアパーツ2枚は墓地にいってしまいました!アルファはその2枚を回収することができるのでしょうか!?」

 

 

不安を煽るMCだな、とアルファは心の中で思った。

 

「私のターン!このドローフェイズはカード効果でスキップされるが、《リフェイザー・ドロー》の効果発動!このスタンバイフェイズでカードを1枚ドロー!(5)」

 

ドローした瞬間、アルファは再び不敵な笑みを浮かべたかと思うと、「ハハハハハ!!」と口を大きく開け、けたたましく笑い始めた。権現坂は表情一つ変えずにその不気味な笑いを聞いていたが、会場からは彼の不気味さについて囁かれている。

 

 

「あのエクゾディア使い。どうしちまったんだ?」

「なんか、気味が悪いわ。」

「ユキに言われちゃおしまいだな。」

「うるっさいわね!!」

「遊士。ユキ。いちゃいちゃするな!」

 

「権現坂…」

 

ボソッとそう呟いたのは遊矢である。もちろん権現坂の実力を信頼している。しかし、彼がどのようなカードを引いたのかは想像できないのである。

 

 

「残念だが、お前に敗北の未来があることには変わりないようだ。永続魔法、《平和の使者》を発動!」

 

 

《平和の使者》

永続魔法

フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1500以上のモンスターは攻撃宣言をする事ができない。このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に100ライフポイントを払う。または、100ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。

 

 

「このカードの効果で、攻撃力1500以上のモンスターは攻撃ができなくなる!そしてもう1枚!永続魔法を発動する!このカードで、お前に止めを刺す!《封印されし者の裁き》!」

 

 

《封印されし者の裁き》

永続魔法

このカード発動時に、以下の効果から1つを選択する。選択しなかった効果は無効となる。

●自分のドローフェイズに通常ドローを行う代わり、自分の墓地に存在する「封印されし」と名の付いたモンスター1体を手札に加える。この効果を2回使用した場合、このカードを破壊する。

●自分のスタンバイフェイズに、手札の「封印されし」と名の付いたモンスターを任意の枚数ゲームから除外する。除外したカード1枚につき、相手に1000ポイントのダメージを与える。この効果で除外したカードの中に、「封印されしエクゾディア」が含まれている場合、1枚につき1500ポイントのダメージを与える。

●自分のメインフェイズに、自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊することで、自分のデッキから「ブレイク・ザ・シール」1枚を自分の手札に加える。

 

 

「次の私のターンのスタンバイフェイズに、手札から封印されしと名の付いたモンスターを全て除外し、1枚につき、1500ポイントのダメージを与える!」

「1500ダメージ…」

「私はこれで、ターンエンド!」(3)

 

エクゾディアパーツが全て揃うには、数ターンはかかる。高速化しつつある環境の中で、エクゾディアデッキで勝ち上がるために、アルファは隠し玉として、高い効果ダメージを与えられる永続魔法をデッキに入れておいたのだ。

 

「どうした権現坂?諦めたか?」

「フッ…」

 

アルファの挑発に対し、鼻で笑った権現坂は、ドローフェイズの通常ドローで、勢いよくカードをドローした。

 

「俺の…タァァァァン!!」

 

権現坂道場で精進した者のみが体得することができると言われている、大気を揺らすドローが、会場を沸かせた。通称鬼神札である。

 

「うおおおおっ!これはものすごい気迫だぁ!権現坂、残されたこのターンで、逆転を狙うーっ!」

 

「もう決着はついているがな!!」

「なんだと!?」

「《超重武者テンB-N》を通常召喚!」

 

 

《超重武者テンB-N》

効果モンスター

レベル4/地属性/機械族/攻撃力800/守備力1800

超重武者テンB-N」の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、「超重武者テンB-N」以外の自分の墓地のレベル4以下の「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

 

「テンB-Nの召喚に成功した時、墓地に存在する超重武者を特殊召喚できる!蘇れ!ホラガ-E!!」

 

 

《超重武者ホラガ-E》:★2

 

 

「チューナーと…それ以外のモンスター…?」

「レベル4のテンB-Nに、レベル2のホラガ-Eをチューニング!!」

 

 

☆4+★2=☆6

 

 

シンクロ召喚!見参せよ!レベル6、《超重神鬼シュテンドウ-G》

 

 

《超重神鬼シュテンドウ-G》

シンクロモンスター

レベル6/地属性/機械族/攻撃力500/守備力2500

機械族チューナー1体+チューナー以外の「超重武者」モンスター1体以上

このカードはルール上「超重武者」カードとしても扱う。

①:このカードは表側守備表示のままで攻撃できる。その場合、このカードは守備力を攻撃力として扱いダメージ計算を行う。

②:自分の墓地に魔法・罠カードが存在せず、このカードがシンクロ召喚に成功した時に発動できる。相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 

「シュテンドウ-Gだと?」

「自分の墓地に魔法・罠カードがない場合にこのモンスターのシンクロ召喚に成功した時、相手の魔法・罠カードを全て破壊する!!」

「自分の墓地に魔法・罠カードがない…?そういえば、スサノ-Oもそんな発動条件を…」

 

怯んだ様子でスサノ-Oを見たアルファは、思わずそう零した。その目の前で、《平和の使者》と《封印されし者の裁き》が同時に破壊された。

 

「そうだ。そしてそれこそが不動のデュエル!相手がどのような戦術をとって来ようと、墓地に魔法・罠カードが置かぬ!どっしりと構え、相手を迎え撃つ!!お前はどうやら動きすぎたようだな。無駄な動きが多い。だから無駄な動きの隙を突かれる。お前のデュエルは…

 

 

不動のデュエルではない!!」

 

 

「ぐっ…」

「超重荒神スサノ-Oで、ダイレクトアタック!!」

 

 

クサナギソード、斬!!!

 

 

「どわああああああっ!」

 

 

アルファ・エイス:LP1600→LP0

 

 

 

「けっちゃぁぁぁぁぁく!CDT第一回戦第二試合を制したのは、権現坂道場の跡取り息子である、権現坂昇ぅぅぅ!!」

 

「昇よ!見事だぞぉぉぉ!」

「親父殿…」

 

 

※※※※※※

 

 

午後8時。人気のないロビーで、3人が言い争っている。ヨークトスタジアムに隣接するビジネスホテルである。遠征で来ているデュエリストたちは、このビジネスホテル「スカイ」を利用するそうである。

 

「何が悪いんだよ?」

「何度も言っているだろう!ナンバーズは、別次元のカード!使用すべき場面で使用しなければ…」

「アセンションズである前に、俺だってデュエリストだぜ。負けそうなところで切り札使いたくなるだろ!」

 

「やめなさい。あなたたちは、まったく…」

 

青い髪の細身の女性が、サニーとクラウドの言い争いを止めた。仲裁というよりも、目の前でケンカされることに苛立っている。

 

「どうする?サニーから、ナンバーズを取り上げるべきだと、私は思うが。」

「はぁ!?そりゃねえだろ!俺は優勝を狙ってんだ!俺たちの任務もそうだが…」

「お前の心の中に、任務などという言葉はないだろう!?」

 

終わりの見えない言い争いの渦に、一人の青年が近づいている。当然というべきか、彼らにアプローチしたことに最初に気付いたのはサニーでもない、クラウドでもない、その女性であった。

 

「ちょっと…」

 

話している内容も然ることながら、声が大きくなりつつあることに、TPOを弁えさせ、同時に彼らを宥めた。

 

「あ…うるさかったな。すまない。」

「…」

 

クラウドが近寄った銀色の短髪、深紅色の眼鏡、そしてその深紅色の眼鏡よりはやや薄い赤色をしたマフラーが印象的な青年は、首を横に振った。

 

「私は君たちが騒々しいと思った訳ではない。」

「だったらなんだよ!」

「おい、サニー!」

「っるせぇっ!」

 

サニーは精神的に幼く、すぐにヘソを曲げるタイプである。その様子に、青年はため息をつく訳でもなく、怒鳴る訳でもなく、優しくサニーに声をかけた。

 

 

「デュエルしてくれないか?」

 

 

「なっ…」

「…!?」

 

「えっ……い、いいぜ!!俺のデッキの力を見せてやるよ!」

 

話していた内容を鑑みると、サニーにデュエルを仕掛けた青年が何を考えているのか、クラウドと銀色の眼鏡のクールな女性には理解することができなかった。

 

 

その青年が若くして大企業の社長でもありプロデュエリストでもある人物だということに気付いたのは、サニーと彼とのデュエルが始まってからだった。

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《超重武者ビッグベン-K》

効果モンスター

レベル8/地属性/機械族/攻撃力1000/守備力3500

①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。このカードの表示形式を変更する。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「超重武者」モンスターは、表側守備表示のままで攻撃できる。その場合、そのモンスターは守備力を攻撃力として扱いダメージ計算を行う。

 

 

<次回の最強カード>

《DDD完醒王ザッハーク》

効果モンスター

レベル8/闇属性/悪魔族/攻撃力2500/守備力2500

 

 

 



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第8話-異次元のカード!?

サニーと深紅色の縁の眼鏡に赤いマフラーの青年が向き合うと、多少冷静さを取り戻したサニーがその青年に尋ねた。

 

「デュエルすんのは構わねえけど、お前、どうして俺にデュエルを申し込んだんだ?」

「私は、君の持つナンバーズというカードに興味があってね。」

 

一言目にナンバーズという単語が出てきたことに、サニー以外の2人は動揺を隠せない。

 

「ナンバーズに興味を持っている!?お前…一体…」

「あぁ、紹介が遅れてすまない。私は赤馬零児。レオ・コーポレーションの社長をさせていただいている。」

「レオ…コーポレーション!?」

 

淡々と自分の肩書きを述べた赤馬零児に対し、クラウドはようやく目の前にいる青年がどのような人物であるかを思い出した。

 

「前回の舞網市のデュエル大会の主催か!?」

「そうだ。今回は一人のデュエリストとして参加しているがね。」

 

怪しいと思いながらも、どこか確信が持てず、声が出ない2人に対し、さらに赤馬零児が続けた。

 

「そう考えれば、私がナンバーズに興味を持つことも、わかるだろう?それとも、前回大会で私が何か怪しげな行動を起こしたと思うのかな?」

「………」

 

その緊張感を破ったのは、声変わりもしていない少年を思わせるサニーの高い声であった。

 

「おい!コラ!俺とデュエルしたいんだろ!?」

「おっと失礼。それでは始めよう。」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

サニー・キッド:LP4000

赤馬零児   :LP4000

 

 

 

「私の先攻!手札から永続魔法、《魔神王の禁断契約書》を発動!(4)」

 

 

 

《魔神王の禁断契約書》

永続魔法

①:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。手札から「DDD」モンスター1体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。

②:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。悪魔族の融合モンスターカードによって決められた、このカードの①の効果で特殊召喚したモンスターを含む融合素材モンスターを自分の手札・フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

③:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は2000ダメージを受ける。

 

 

 

「自分の手札から、DDDと名の付いたモンスター1体を守備表示で特殊召喚する!現れろ!《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》!」

 

 

《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》:☆8/守備力3000

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド。(2)」

<零児:伏せ1枚 サニー:伏せなし>

 

「いきなり…守備力3000のモンスターかよ…!?ノーコストで手札から大型モンスターを特殊召喚できるカードなのか、あの契約書ってのは…」

「タダで大型モンスターを特殊召喚できる訳ではない。自分のスタンバイフェイズに、この契約書を持つプレイヤーは2000ポイントのダメージを受ける。」

「2000ダメージ!?正気かよ!」

「もちろんだ。」

 

「何考えてるかわかんねえけど…俺のターン!(6)」

 

サニーは改めて自分の手札を見ると、思わず笑みを浮かべた。

 

「お前のリクエストに応えてやるぜ!手札から、《サニーサイド・ホーク》を召喚!(5)」

 

 

《サニーサイド・ホーク》

効果モンスター

レベル4/光属性/戦士族/攻撃力1400/守備力1300

このカードの召喚に成功した時に発動する。自分の手札からレベル4以下の「サニーサイド」と名の付いたモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「その効果で、手札からレベル4以下のサニーサイドモンスターを特殊召喚できる!もう1体の、サニーサイド・ホークを呼ぶぜ!(4)」

「レベル4が2体…来るか?」

 

「おい、サニー!やめろ!これは彼の罠かもしれない!」

 

「うるせえなクラウド!ナンバーズが見たいって言われてるんだから、ナンバーズを召喚するんだよ!レベル4のモンスター2体で、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ!《No.59 背反の料理人(バック・ザ・コック)

 

 

 

《No.59 背反の料理人》

エクシーズモンスター

ランク4/炎属性/戦士族/攻撃力2300/守備力200

レベル4モンスター×2

①:このカードは、「No.」と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:自分フィールドのカードがこのカードのみの場合、このカードは他のカードの効果を受けない。

③:1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカード以外の自分フィールドのカードを全て破壊する。その後、このカードの攻撃力はターン終了時まで、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの数×300アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「ほう…これが、エキシビションマッチで召喚したナンバーズか。だが、攻撃力2300では、私のモンスターは倒せない!」

「いいや、そうでもねえぜ!装備魔法、《エクシーズ・フォース》!」

 

 

《エクシーズ・フォース》

装備魔法

エクシーズモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地に送った場合、以下の効果から1つを選んで発動することができる。この効果を3回使用した場合、このカードを自分のデッキに戻す。

●戦闘で破壊し墓地に送ったモンスターの攻撃力分のダメージを与える。

●自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを1枚破壊する。

 

 

「この効果で、背反の料理人の攻撃力は2800にアップ!さらに永続魔法、《アサルト・エクシーズ》を発動!(2)」

 

 

《アサルト・エクシーズ》

永続魔法

自分フィールド上に存在するエクシーズモンスターの攻撃宣言時に発動する。そのモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。また、自分フィールド上のエクシーズモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時に自分フィールド上に他のモンスターが存在しない場合、そのモンスターを選択して発動することができる。選択したモンスターはそのバトルフェイズ中にもう一度だけ続けて攻撃することができる。

 

 

「バトル!背反の料理人で、アビス・ラグナロクを攻撃!料理してやれ!」

 

 

バニッシュ・バーニング!!

 

 

《No.59 背反の料理人》:攻撃力2800→攻撃力3300

 

 

フライパンから出た火の玉が、自身の体の2倍ほどの大きさのあるアビス・ラグナロクを撃ち抜いた。

 

「せっかくだから、俺のナンバーズをもっと呼び出したかったけどな。相手が悪かったな!」

「…?」

「装備魔法、エクシーズ・フォースは、戦闘でモンスターを破壊し墓地に送った時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!アビス・ラグナロクの攻撃力は2200!これでお前のライフが1800になれば、次のスタンバイフェイズに、お前自身の契約書の効果で、ライフは0だぜ!」

 

 

赤馬零児:LP4000

 

 

「なっ…確かにアビス・ラグナロクは倒したのに…」

「残念だがその効果は発動しない。私のアビス・ラグナロクはただの効果モンスターではない。」

「えっ…?」

 

デュエルディスクのデッキフォルダから見て対称の位置にあるフォルダ、つまりはエクストラデッキフォルダからアビス・ラグナロクを取り出したのを見た女性は、話には聞いたことのあるモンスター群の存在を思い出し、思わず声をあげた。

 

「まさかそれは…」

 

「そう。ペンデュラムモンスター。ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地に行く場合は墓地に送られず、エクストラデッキに行く。覚えておくと良い。」

「くっそぉ…ターンエンド!(2)」

<零児:伏せ1枚 サニー:伏せなし>

 

「私のターン!(3)」

「けど、《魔神王の禁断契約書》の効果で、2000ダメージを受けるんだろ!」

 

そのセリフを待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべた零児は、その笑みのまま冷ややかに言い放った。

 

 

「契約?そんなもの…」

 

 

サニーの目の前から、魔神王の禁断契約書が消え去った。

 

「なにっ!?どういうことだよ!ライフ2000は、払わなきゃいけないんじゃ…」

「契約は無効になった。私は、《契約洗浄(リース・ロンダリング)》を発動した。」

「リース…ロンダリング?」

 

 

契約洗浄(リース・ロンダリング)

通常罠

自分の魔法・罠カードゾーンの「契約書」と名の付いたカードを全て破壊する。その後、破壊した数だけ自分のデッキからカードをドローし、自分はドローした数×1000ライフポイントを回復する。

 

 

「この効果で、《魔神王の禁断契約書》を破棄し、1枚のカードをドローし、1000ポイントのライフを得る。(4)」

 

 

赤馬零児:LP4000→LP5000

 

 

「なんだとぉ!?」

「さて…私のターンを続けさせてもらおう。手札から永続魔法、《魔神王の契約書》を発動!(3)」

 

 

《魔神王の契約書》

永続魔法

「魔神王の契約書」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:自分メインフェイズに発動できる。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。「DD」融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。

②:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

 

「今度はなんだ!?」

「このカードの効果により、DDと名の付いた融合モンスターを特殊召喚する!」

「永続魔法の融合カードか。でも、契約書なら、ダメージを受けるんだよな!」

「そうだ。このカードの効果ダメージは1000だがな。私は、《DDD完醒王ザッハーク》と、《DDリリス》を融合!」

 

 

闇より誘う妖婦よ、偽りの闇を見通す王よ!冥府に渦巻く光の中で、今一つとなりて、新たな王と生まれ変わらん!融合召喚!生誕せよ、レベル6!《DDD烈火王テムジン》!

 

 

《DDD烈火王テムジン》:☆6/攻撃力2000

 

 

「そして私は手札からチューナーモンスター、《DDナイト・ハウリング》を召喚!」(0)

 

 

《DDナイト・ハウリング》:★3/攻撃力700

 

 

「このモンスターの召喚に成功した時、墓地のDDモンスター1体を特殊召喚することができる。蘇れ!《DDリリス》!」

 

 

《DDリリス》:☆4/守備力2100

 

 

「チューナーモンスターだと!?」

「レベル4の《DDリリス》に、レベル3の《DDナイト・ハウリング》をチューニング!」

 

 

☆4+★3=☆7

 

 

闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て、新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル7、《DDD疾風王アレクサンダー》!

 

 

《DDD疾風王アレクサンダー》:☆7/攻撃力2500

 

 

「ヘッ…だがどっちも攻撃力は俺の攻撃力3300の背反の料理人には及ばないぜ!」

「まだ私のターンは終わっていない。烈火王テムジンの効果発動!自分フィールドにこのカード以外のDDモンスターが特殊召喚された時、墓地のDDモンスターを特殊召喚することができる!蘇れ!《DDD完醒王ザッハーク》!」

 

 

《DDD完醒王ザッハーク》:☆7/攻撃力2500

 

 

烈火王テムジンが炎を纏った剣を掲げると、その光の先から、両肩に蛇の口を持つ巨漢が現れた。厚い装甲に覆われており、人型ではあるが、人ならざる者であることは間違いない。

 

「さらに、《DDD疾風王アレクサンダー》の効果発動!自分がDDモンスターの特殊召喚に成功した時、墓地のレベル4以下のDDモンスターを特殊召喚できる!蘇れ!《DDリリス》!」

 

 

《DDリリス》:☆4/守備力2100

 

 

「《DDリリス》の効果発動!墓地のDDモンスターを手札に加える!私は墓地から、《DDナイト・ハウリング》を手札に加える!」(1)

 

さすがのあまりものを深く考えないサニーも、スムーズにモンスターを並べる彼を見ると、彼が無意味にモンスターを並べるデュエリストには思えなかった。

 

「何か来るのか…?」

「《DDD完醒王ザッハーク》のモンスター効果発動!レベル4以下のDDモンスターをリリースし、そのモンスターの攻撃力か守備力、どちらか高い方の数値分、相手モンスター全ての攻撃力を下げる!私は、《DDリリス》をリリース!」

「《DDリリス》の守備力は2100。攻撃力がそんなに下がったら…やべえ!俺は、《No.59 背反の料理人》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカード以外の俺のフィールドのカードを全て破壊する!」

 

 

《No.59 背反の料理人》:ORU2→ORU1/攻撃力3300→攻撃力2300

 

 

「そうか。背反の料理人は、他のカードがない限り、カード効果を受けない効果を持っていたな。」

「そうだ!これでザッハークの効果も受けない!」

「しかし攻撃力2300ならば、アレクサンダー、ザッハークよりも低い!いけっ!完醒王ザッハークで、背反の料理人を攻撃!」

 

 

ブラッド・ストリーム!!

 

 

肩から生えている蛇の口から吐き出された黒い霧状の何かが背反の料理人へと向かうが、ナンバーズ以外とのバトルでは破壊されない料理人は、一歩下がり、その霧状の何かをフライパンで受け流した。

 

「ナンバーズは、ナンバーズでしか倒すことはできないが、戦闘ダメージは受けてもらう!」

「うわっ!」

 

 

サニー・キッド:LP4000→LP3800

 

 

「続け!《DDD疾風王アレクサンダー》!」

 

 

ライトニング・ブレイド!!

 

 

「ぐっ!」

 

 

サニー・キッド:LP3800→LP3600

 

 

「ターンエンド!(1)」

<零児:伏せなし サニー:伏せなし>

 

ナンバーズを相手に物怖じしない零児の姿勢に、思わず「おぉ…」という声を漏らしたクラウド。

 

「さすがだな赤馬零児。」

「サニー。もうよせ、あなたが勝てる相手じゃないわ。」

 

クラウドに言われ続けたサニーが、今度は悔しそうな表情をクラウドの横の女性に向けた。

 

「レイン!お前までそんな事言うのか!くっそ…どいつもこいつも…!いいぜ。だったら、俺のターン!!(3)魔法カード、《戦士の生還》を発動!(2)墓地から戦士族モンスター1体を手札に加える!そして、手札に加えた《サニーサイド・ホーク》を召喚!」

 

 

《サニーサイド・ホーク》:☆4/攻撃力1400

 

 

「もうわかってるよな?このカードの効果で、手札からレベル4以下のサニーサイドモンスターを特殊召喚できる!来い!《サニーサイド・ガーゴイル》!」(1)

 

 

《サニーサイド・ガーゴイル》:☆4/攻撃力1800

 

 

「レベル4のモンスターが2体…」

 

「おい、やめろサニー!これ以上ナンバーズを呼んだら…」

「いくぜ!2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ!表裏の顔を持つ、天才詐欺師の魂を宿したナンバーズ!《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》!!

 

 

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/地属性/岩石族/攻撃力0/守備力3000

レベル4モンスター×2

このカードは、「No.」と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されない。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。ターン終了時まで、このカードの守備力を0にし、攻撃力を3000にする。

このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。また、エクシーズ素材の無いこのカードは、攻撃された場合ダメージステップ終了時に攻撃表示になる。

 

 

「天才詐欺師の魂…?」

「そうだ!こいつはな、ここじゃねえ別の次元で、天才詐欺師が持っていたカードなんだ。」

「別の次元…」

「そんなこと言われてもわかんねえか!」

「君はその天才詐欺師からそのカードを貰ったのかな?」

「いいや、俺はそいつからはもらってねえが…」

 

「サニー!ペラペラと余計なことを喋るな!」

 

「わかってるよ。ダイヤモンド・クラブ・キングの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカードの攻撃力を3000にして、守備力を0にする!」

 

 

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》:攻撃力0→攻撃力3000/守備力3000→守備力0

 

 

「なるほど。一見すると攻撃力0だが、その効果で、3000にできるところが、詐欺師の魂ということか。」

「今さらビビっても遅いぜ!バトル!…」

(あいつのフィールドには、攻撃力2000の烈火王テムジン、攻撃力2500の完醒王ザッハーク、攻撃力2500の疾風王アレクサンダー。ザッハークは自分のDDモンスターをリリースし、その攻撃力か守備力分だけ相手モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで下げる。あいつの手札にあるカードは、《DDリリス》の効果で手札に加わった《DDナイト・ハウリング》。守備力は1000ポイント。確かに攻撃力が1000ポイント下げられるのはイライラするけど…)

 

サニーのデュエリストとしての腕前はある程度保障されている。デュエリストとしてある程度考えて戦術を立てることができるのだ。彼は、烈火王テムジンと疾風王アレクサンダーの2体のコンボでモンスターを展開したのを覚えている。

 

「ダイヤモンド・クラブ・キングで、《DDD疾風王アレクサンダー》を攻撃!」

 

 

バブル・ブレイカー!!

 

 

「ほう…」

 

 

赤馬零児:LP5000→LP4500

 

 

「そして、背反の料理人で、《DDD烈火王テムジン》を攻撃!」

 

 

赤馬零児:LP4500→LP4200

 

 

「テムジンの効果発動!墓地に存在する契約書を手札に加える!私は墓地から、《魔神王の禁断契約書》を手札に加える!」

「させるかよ!手札から速攻魔法、《エクシーズ・アローズ》!」

 

 

《エクシーズ・アローズ》

速攻魔法

 

 

「自分フィールドにエクシーズモンスターが2体以上いる場合、相手がカード効果で手札に加えたカードを破壊するぜ!契約書は、墓地に送ってもらう!」

「なるほど…」

「そして、ダイヤモンド・クラブ・キングは、戦闘終了後に守備表示になり、エンドフェイズに、その守備力は3000になり、攻撃力は0になる!」

<零児:伏せなし サニー:伏せなし>

 

 

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》:守備力3000

 

 

(ダイヤモンド・クラブ・キングは、ちょっと癖があるモンスターだ。オーバーレイユニットがない状態で攻撃された時は、攻撃表示になっちまう。けど、今オーバーレイユニットはあるし、この効果をあいつが知っている訳はねえ!)

 

「私のターン!(2)」

 

フィールドのモンスターがザッハークのみであろうと、赤馬零児は顔色を変えずにカードをドローした。

 

「このスタンバイフェイズ、《魔神王の契約書》の効果で、1000ポイントのダメージを受ける。」

 

 

赤馬零児:LP4200→LP3200

 

 

「今度はダメージを受けたな。早く俺を倒さないといけないのに、残念だなぁ。俺のナンバーズは戦闘では破壊されないからなぁ!」

「確かにナンバーズは戦闘では破壊されないモンスター。だが…君への戦闘ダメージは発生する。

 

 

 

それは先ほどのターンで学ばなかったのかな?」

 

 

 

まるで同じ指摘を受けた部下を叱責するかのような言い方に、サニーの背筋が凍った。思えば理由はないはずだ。雇用関係にある訳でもないのに…なぜ…

 

「魔法カード、《オーバーレイ・リムーブ》を発動。(0)」

 

 

《オーバーレイ・リムーブ》

通常魔法

 

 

「自分のエクストラデッキからエクシーズモンスターを2体除外し、フィールドのオーバーレイユニットをその数だけ除外する。《DDD怒涛王シーザー》と、《DDD狙撃王テル》を除外し、君のフィールドの背反の料理人と、ダイヤモンド・クラブ・キングのオーバーレイユニットを1つずつ除外させてもらう!」

 

 

《No.59 背反の料理人》:ORU1→ORU0

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》:ORU1→ORU0

 

 

「オーバーレイユニットが!お前…まさか…」

「そして、《魔神王の契約書》の効果発動!墓地のDDモンスターを除外して、融合召喚を行う!」

「墓地のモンスターを除外することでも効果が使えるのか!」

「そう!私は、烈火王テムジンと、疾風王アレクサンダーを除外!」

 

 

神々の黄昏を打ち破り、押し寄せる波の勢いで、新たな世界を切り開け!融合召喚!出現せよ、極限の独裁神!《DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク》!

 

 

《DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク》

融合モンスター

レベル10/闇属性/悪魔族/攻撃力3200/守備力3000

「DDD」モンスター×2

①:1ターンに1度、このカードが戦闘を行う攻撃宣言時に、このカード以外の自分フィールドの「DD」カードまたは「契約書」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻し、このカードと戦闘を行うモンスター以外の相手フィールドの表側表示モンスター1体を選んで装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

②:このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

「なんだ…こいつは!?」

「バトル!まずは、ザッハークで、ダイヤモンド・クラブ・キングを攻撃!」

 

「自ら守備力の高いモンスターに対して攻撃を仕掛けるの?」

「いや、レイン。これは…!」

 

 

赤馬零児:LP3200→LP2700

 

 

「だがこれで…」

「おい。お前…どうして…それを…?」

 

サニーが説明するよりも前に、その効果により、ダイヤモンド・クラブ・キングの表示形式が守備表示から攻撃表示に変わった。そしてその攻撃力は…0であった。

 

「君は何か勘違いをしているようだが、私はナンバーズについて何も調べていない訳ではない。」

「な…何だと!?それじゃ、まさか…」

「そうだ。私は知っているよ。ダイヤモンド・クラブ・キングは、オーバーレイユニットを持っていない状態で攻撃を受けたら、守備表示から攻撃表示になることも!」

 

「だ…だけど!攻撃力3200なら、俺に攻撃したって俺のライフは400残る!次のターンがまだあるぜ!」

 

その発言を無視し、零児はバトルフェイズを続ける。

 

「カエサル・ラグナロクで、ダイヤモンド・クラブ・キングを攻撃!そしてこの瞬間、自身の効果で………!?」

「えっ…!?」

 

「な、何だ!?」

「これって…!」

 

赤紫色のカーペットに何かが渦巻いたと思ったその瞬間、そこからスパークしたものが天井に伸び、電球が割れた。

 

「わぁっ!」

 

サニーが一歩後ずさりをすると、天井に伸びている雷撃の中に見えたのは、人影であった。水色のように見えるが、本当に微かである。

 

「これは…」

 

零児は目を凝らし、それを捉えようとするが、その様子を見たクラウドはたじろいでいるサニーのデュエルディスクに飛びつき、強制終了ボタンを長押しした。3秒という時間があったはずだが、サニーは手を振り払うどころではなかった。

 

「おっ…おい!」

 

サニーが我を取り戻したのと同時に、目の前の雷撃も、ソリッドビジョンも消えてしまった。

 

(今のは…一体…)

 

 

 

(次回に続く)

 

<今日の最強カード>

《DDD完醒王ザッハーク》

効果モンスター

レベル7/闇属性/悪魔族/攻撃力2500/守備力2500

1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「DD」と名の付いたレベル4以下のモンスター1体をリリースして発動することができる。このターンのエンドフェイズまで、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの攻撃力は、リリースしたモンスターの攻撃力または守備力のいずれか高い数値分ダウンする。

また、相手ターンに発動することができる。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合に自分が「DD」と名の付いたモンスターの特殊召喚に成功した場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。「DDD完醒王ザッハーク」のこの効果は1ターンに1度しか発動できない。

 

 

<次回の最強カード>

 



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第9話-手札消費を取り戻せ!

赤馬零児のデュエルディスクには、call off(中止)の文字が表示された。

 

「もう十分だろう!これ以上デュエルを続けることに、意味はない!」

 

クラウドがそう怒鳴ると、零児は青い人影のようなものが見えた現象に疑問を覚えたが、納得の意思を示すべく、腕を下におろした。

 

「クラウド!お前…」

「サニー。いい加減にしろ!ナンバーズは確かに我々に与えられたカード!しかし、無闇にそのカードを使えば、どうなるかわかっただろう!」

 

多少納得のいかない様子であったが、デュエルを続けていても、自分の敗北が確定していたことがわからないほど、サニーは理解力のないデュエリストではなかった。

 

「クラウド!」

 

クラウドとサニーに『レイン』と呼ばれた女性がクラウドを呼んだのは、ビジネスホテルのフロントの自動ドアが開くのが見えたからだ。

 

「クッ。赤馬零児。この借りは必ず…!」

 

そう言って、クラウドがデュエルディスクを起動し、1枚のカードをセットすると、クラウドたちは光に包まれ、その場から姿を消した。

 

捨て台詞も吐かず、サニーは自分の敗北に落胆したまま、姿を消した。

 

「消えたか。」

 

 

※※※※※※

 

 

遊士の一回戦のデュエルは6月中旬に行われる。その一週間前には、融合使いのデュエリスト、「インテグラル」のデュエルが行われる。遊士、天竜崎、ユキ、遊矢、権現坂、柚子の6人は、融合使いのデュエリストと聞き、そのデュエルを観に行った。

 

このデュエリストを知ったのは、遊矢の通うデュエル塾、「遊勝塾」にポスターが貼ってあったためであり、顔見知りという訳ではない。

 

しかし彼らからとってみれば、融合召喚は珍しいものであるのだ。

 

「ところで遊矢。そのインテグラルの対戦相手は誰なんだ?」

「それなんだけど…」

 

そう言いかけたところで、MCのグローリーの声がヨークトスタジアムに響き渡った。

 

「それでは、次のデュエルに参りましょう!そろそろこのヨークトスタジアムで行われる1回戦も終わりに近づいて参りました。1回戦第20試合!デュエリスト2名に入場していただきましょう!まずは、インテグラル選手!」

 

「見ているか皆の衆!?融合召喚こそが特殊召喚の頂点!私の融合召喚の嵐に驚愕するがいい!!」

 

「融合…だと?」

 

そう言ってインテグラルを睨みつけたのは、グローリーにコールされるまで控えている対戦相手のデュエリスト。彼自身に恨みがある訳ではない。

 

 

彼は、融合召喚、いや、融合そのものに異常なまでの憎悪を抱いている。

 

 

「そして、その対戦相手は、舞網チャンピオンシップに出場し、決勝トーナメントまで残ったデュエリスト、黒咲隼!!」

 

黒咲隼-そう呼ばれた青紫色のコートに身を包み、赤いスカーフを首に巻いたデュエリストは、先ほどの鋭い目つきの状態で、デュエルリングへと上がった。

 

「黒咲隼!?遊矢!あいつは!」

「そうだ。あいつは、舞網チャンピオンシップにも出ていたデュエリスト。素良を倒して、決勝トーナメントまで進んだのに、そこから行方をくらませて…棄権に。」

「へぇ、そんな奴がよく出てこれたもんだな。」

 

黒咲のことをよく知らない遊士が溜め息混じりにそう言うと、柚子が割り込んだ。

 

「大会に出たのは何か理由があるって噂よ。」

「理由…か。今回もかな…?」

 

 

「黒咲隼。喜びたまえ!君は私の融合召喚の嵐を受ける最初のデュエリストだ!なぜなら私のデッキは強化され、再び進化を遂げたのだからな!」

 

ワイシャツに黒いセーター、紺の生地に赤いストライプの入ったネクタイ、その上に高級そうな焦げ茶色のジャケットを羽織った恰幅の良いデュエリストであるインテグラルがそう叫ぶ。体格からも、言動からも、横柄な態度が感じられる。

 

「御託はいい。融合召喚を使うデュエリストならば、容赦はしない!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

黒咲隼   :LP4000

インテグラル:LP4000

 

 

 

「私の先攻だな!融合召喚には基本的に3枚の手札を消費する。この場で融合を発動すれば私の手札は2枚になってしまう。さらに…」

 

インテグラルは大仰にもゆっくりと手札2枚を魔法・罠カードゾーンに伏せた。

 

「これで0枚。だが、その手札消費を抑えられるとしたら…どうするかな?」

「御託は良いと言ったはずだ!とっととターンを進めろ!」

「おやおや、せっかくの大きな大会だと言うのに、白けた事を言うんだね君は。君の敗北が近くなるというのに…手札から、《サンダー・ドラゴン》の効果発動!手札からこのカードを捨てて、自分のデッキから別の《サンダー・ドラゴン》を2枚まで手札に加える!(3)→(4)」

 

 

《サンダー・ドラゴン》

効果モンスター

レベル5/光属性/雷族/攻撃力1600/守備力1500

自分メインフェイズにこのカードを手札から捨てて発動できる。自分のデッキから「サンダー・ドラゴン」を2体まで手札に加える。

 

 

「そして魔法カード、《融合》を発動!(1)手札の2枚の《サンダー・ドラゴン》を融合!融合召喚!現れろ、《双頭の雷龍(サンダー・ドラゴン)》!!」

 

 

《双頭の雷龍》

融合モンスター

レベル7/光属性/雷族/攻撃力2800/守備力2100

「サンダー・ドラゴン」+「サンダー・ドラゴン」

 

 

「融合モンスター…」

「さらに私は手札から永続魔法、《凡骨の意地》を発動し、ターンエンド!(0)」

<黒咲:伏せなし インテグラル:2枚>

 

「凡骨の意地だと?」

「フッ。侮るなよ。このカードこそが、融合で消費する手札を回復させてくれるカードだ。」

 

 

《凡骨の意地》

永続魔法

ドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターだった場合、そのカードを相手に見せる事で、自分はカードをもう1枚ドローする事ができる。

 

 

 

黒咲は彼の発言および彼の出したカードを特に気にする様子もなく、カードをドローした。

 

「俺のターン!(6)俺は手札から、《RR(レイド・ラプターズ)-バニシング・レイニアス》を攻撃表示で召喚!(5)」

 

 

RR(レイド・ラプターズ)-バニシング・レイニアス》

効果モンスター

レベル4/風属性/鳥獣族/攻撃力1300/守備力1600

このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンに発動することができる。自分の手札からレベル4以下の「RR(レイド・ラプターズ)」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「バニシング・レイニアスの召喚に成功したターン、手札からレベル4以下のレイド・ラプターズを特殊召喚できる!現れろ!《RR-バニシング・レイニアス》!」

 

 

《RR-バニシング・レイニアス》:☆4/攻撃力1300

《RR-バニシング・レイニアス》:☆4/攻撃力1300

 

 

「そして手札から永続魔法、《RR-ネスト》を発動!」

 

 

RR(レイド・ラプターズ)-ネスト》

永続魔法

「RR-ネスト」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:自分フィールドに「RR」モンスターが2体以上存在する場合にこの効果を発動できる。自分のデッキ・墓地の「RR」モンスター1体を選んで手札に加える。

 

 

「俺のフィールドにレイド・ラプターズが2体以上いる場合、デッキから、レイド・ラプターズを1体手札に加える。デッキから、《RR-バニシング・レイニアス》を手札に加え、2体目のバニシング・レイニアスの効果を使い、このモンスターを特殊召喚!(3)」

「バニシング…レイニアスが…3体?」

「俺はレベル4のバニシング・レイニアス3体で、オーバーレイ!」

 

 

雌伏の(ハヤブサ)よ、逆境の中で研ぎ澄まされし爪を上げ、反逆の翼、翻せ!エクシーズ召喚!現れろーっ!ランク4!《RR-ライズ・ファルコン》!!

 

 

《RR-ライズ・ファルコン》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/闇属性/鳥獣族/攻撃力100/守備力2000

鳥獣族レベル4モンスター×3

①:このカードは特殊召喚された相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。

②:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動することができる。このターンのエンドフェイズまで、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を合計した数値分だけ、このカードの攻撃力がアップする。

 

 

「ほう。なかなか勇壮なモンスターだな。しかし攻撃力が100では、私のモンスターは倒せないよ。」

「ライズ・ファルコンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、敵の特殊召喚されたモンスターの攻撃力の合計分だけ、このカードの攻撃力がアップする!」

 

 

《RR-ライズ・ファルコン》:ORU3→ORU2/攻撃力100→攻撃力2900

 

 

「ライズ・ファルコンの攻撃!」

 

炎を纏った翼が、双頭の雷龍の2つの頭を切り落とした。その光景に、驚きの声をあげる者も多かったが、すぐさま爆発に包まれた。

 

「くっ…」

 

 

インテグラル:LP4000→LP3900

 

 

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!(1)」

<黒咲:伏せ2枚 インテグラル:伏せ2枚>

 

 

《RR-ライズ・ファルコン》:攻撃力2900→攻撃力100

 

 

攻撃力が100に戻ったのを見ると、ユキが思わず呟いた。

 

「確かに鮮やかな攻撃だけど、攻撃力100のエクシーズモンスターを攻撃表示で場に残すなんて…」

「あの人は、融合モンスターを嫌っているんです。」

「えっ?どういうこと、柚子ちゃん?」

「前の舞網チャンピオンシップで融合使いの素良っていうデュエリストと戦った時に、融合次元が敵だって…」

「融合…次元…?」

 

まあとにかく、融合が嫌いなんだろうな、と、この場ではそういう気持ちで決着をつけた。

 

「私のターン!(1)永続魔法、《凡骨の意地》の効果発動!ドローフェイズにドローしたカードを相手に見せて、もう1枚ドローする!私がドローしたのは通常モンスター、《幻獣王ガゼル》!よってもう1枚ドロー!(2)ドローしたのは、《メデューサの亡霊》、さらに1枚ドロー!(3)私がドローしたのは、《赤き剣のライムンドス》!よって、もう1枚ドロー!(4)」

 

赤き剣のライムンドスをドローした次のドローでようやく彼の手が止まった。全てレベル4以下の通常モンスターとは言え、ドローフェイズで手札が0枚から4枚に増えたことを考えると、《凡骨の意地》の可能性を持ち主であるインテグラルは改めて感じていた。

 

「君のモンスターを倒すのには、今ドローしたどのモンスターでも良いが、せっかくなら、融合モンスターで倒してあげよう。」

「融合モンスターだと?お前がドローしたモンスターを素材とした融合はできないハズだがな!」

「言ったはずだ。私のデッキは、融合によるカードの消費を最低限にできるようになっていると!罠カード、《融合準備》を発動!」

 

 

《融合準備》

通常罠

①:エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体をデッキから手札に加える。その後、自分の墓地の「融合」1枚を選んで手札に加える事ができる。

 

 

「エクストラデッキの融合モンスターを見せ、その素材モンスターをデッキから手札に加える!私が見せるのは、《有翼幻獣キマイラ》!」

 

 

《有翼幻獣キマイラ》

融合モンスター

レベル6/風属性/獣族/攻撃力2100/守備力1800

「幻獣王ガゼル」+「バフォメット」

このカードが破壊された時、自分の墓地の、「バフォメット」または「幻獣王ガゼル」1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

「そしてデッキから《バフォメット》を手札に加える!さらに、《融合準備》の効果で、墓地の融合を手札に戻す!魔法カード、《融合》を発動!手札の《幻獣王ガゼル》と《バフォメット》を融合!《有翼幻獣キマイラ》を融合召喚!(3)」

 

伝説のデュエリスト、武藤遊戯も愛用した有翼幻獣キマイラ。それゆえファンも多く、このカードを使うことを躊躇うデュエリストも多い。しかし、彼には融合モンスターを使いこなす絶対の自信があったので、躊躇う必要もなかったのだ。

 

「さらに手札から、《赤き剣のライムンドス》を攻撃表示で召喚!(2)」

 

 

《有翼幻獣キマイラ》:攻撃力2100

《赤き剣のライムンドス》:攻撃力1200

 

 

「一気にライフポイントを削ってあげよう!バトル!《有翼幻獣キマイラ》で、ライズ・ファルコンを攻撃!」

 

 

キマイラインパクトダッシュ!

 

 

「融合モンスターの攻撃で、ライズ・ファルコンが倒せると思うな!速攻魔法、《オーバーレイ・バースト・アーマー》を発動!」

 

 

《オーバーレイ・バースト・アーマー》

速攻魔法

①:自分のエクシーズモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に、そのモンスターのエクシーズ素材を全て取り除いて発動できる。そのモンスターはその戦闘では破壊されず、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 

 

「ライズ・ファルコンのオーバーレイユニットを全て使い、ライズ・ファルコンの戦闘による破壊を無効にし、バトルダメージを0にする!」

 

 

《RR-ライズ・ファルコン》:ORU2→ORU0

 

 

すれ違うようにして、キマイラとライズ・ファルコンの体がぶつかったが、お互いにダメージはない。キマイラは黒咲の目の前で彼を一瞥した後、マスターであるインテグラルの元へと戻った。

 

(さすがにただ感情に任せてライズ・ファルコンを出した訳ではないようだな。しかし、オーバーレイユニットはもうない。次のターンになっても、ライズ・ファルコンの効果は使えない。)

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!(1)」

<黒咲:伏せ1枚 インテグラル:伏せ2枚>

 

「俺のターン!(2)」

 

この日のデュエルとしては5試合目であることもあり、時刻は16時30分。夕陽がデュエルリングを照らしている。その赤い光は、ライズ・ファルコンの燃える翼を髣髴させた。

 

(そうか…やはり革命の火が必要なのか…)

 

 

「俺は手札から魔法カード、《RUM(ランクアップマジック)-レイド・フォース》を発動!(1)」

 

 

《RUM-レイド・フォース》

通常魔法

①:自分フィールドのエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターよりランクが1つ高い「RR」モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

②:墓地のこのカードと手札の「RR」カード1枚を除外し、「RUM-レイド・フォース」以外の自分の墓地の「RUM」魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

 

「ランクアップマジック…!?今度は何だ!?」

「このカードは、俺のフィールドのエクシーズモンスターを、1つランクが高いエクシーズモンスターへと進化させる!俺は、ランク4のライズ・ファルコンでオーバーレイ!」

 

 

獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し 寄せ来る敵を打ち破れ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク5!《RR-ブレイズ・ファルコン》

 

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》:攻撃力1000

 

 

「何かと思えば、攻撃力は1000ポイントしかない。それでは私のライムンドスすら倒せない!」

「バトル!ブレイズ・ファルコンの攻撃!」

「何だと…?

「ブレイズ・ファルコンのモンスター効果により、このカードがオーバーレイユニットを持っている場合、敵プレイヤーに直接攻撃することができる!」

 

 

ストライク・クロウ!

 

 

飛翔したブレイズ・ファルコンは、ライムンドスとキマイラを越え、インテグラルに飛びかかり、その鋭い爪による攻撃を行った。

 

「ぐっ!」

 

 

インテグラル:LP3900→LP2900

 

 

「たかが…1000ポイントのダメージ…!」

 

するとインテグラルは確かに、ブレイズ・ファルコンが自身の翼から小型の無線式兵器を飛ばしたのを見た。

 

「ブレイズ・ファルコンの効果発動!相手に戦闘ダメージを与えた時、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する!」

「なにっ!?」

 

ライムンドスの真上から、その小型の兵器から青いレーザーが降り注ぎ、剣を振り上げるよりも前に、ライムンドスを貫いた。

 

「さらに俺は、ブレイズ・ファルコンのもう一つの効果も発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、1体につき、500ポイントのダメージを与える!」

 

同様にして、青いレーザーがキマイラを貫き、その場で破壊した。

 

 

インテグラル:LP2900→LP2400

 

 

「だが、キマイラのモンスター効果発動!墓地から幻獣王ガゼルか、バフォメットを復活させる!蘇れ、《バフォメット》!」

 

 

《バフォメット》:守備力1800

 

 

「ブレイズ・ファルコンの攻撃力は僅かに1000。バフォメットで倒してくれる!」

「ターン終了だ。(1)」

<黒咲:伏せ1枚 インテグラル:伏せ2枚>

 

「私のターン!(2)このターンも、《凡骨の意地》の効果を発動させてもらおう!私がドローしたカードは、《スロットマシーンAM-7》!よってカードを1枚ドロー!(3)さらにドローしたカードは、《ドラゴンゾンビ》!よってもう1枚カードをドロー!(4)私は今ドローした魔法カード、《融合貯蔵庫(フュージョン・ストレージ)》を発動!」

 

 

《融合貯蔵庫》

通常魔法

自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動する。自分のデッキから「融合」1枚を自分の手札に加える。その後、自分の手札のモンスター1体と、自分のエクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、以下の効果を発動できる。

●見せた手札のモンスターが見せた融合モンスターの融合素材である場合、そのモンスター以外の融合素材モンスター1体を、自分のデッキから手札に加える。

 

 

「《バフォメット》をリリースし、手札の《スロットマシーンAM-7》を見せ、その片割れの融合素材を手札に加える!私が手札に加えるのは、《ルーレットボマー》!」

 

 

《ルーレットボマー》

効果モンスター

レベル4/光属性/機械族/攻撃力1000/守備力2000

自分のメインフェイズに2回サイコロを振る事ができる。出た目を1つ選択し、その数と同じレベルのフィールド上の表側表示モンスター1体を破壊する。

 

 

「さらに私は、《融合》をデッキから手札に加える!(5)」

「また手札消費を抑えた融合召喚か。小賢しい。」

「これはまた随分と厳しいコメントだね。しかしまぁ、君は、私のデッキの真の切り札を見て敗北するのだ。光栄に思うがいい!手札から、《融合》を発動!手札の《スロットマシーンAM-7》と、《ルーレットボマー》を融合!」

 

 

人々の運を司る者よ、星々の運を司る者と一つとなり、新たな次元へ昇華せよ!融合召喚!出でよ、融合の運命を操りし者!《ルーレット・フュージョナー》!

 

 

《ルーレット・フュージョナー》

融合モンスター

レベル9/闇属性/機械族/攻撃力0/守備力3000

「スロットマシーンAM-7」+「ルーレットボマー」

 

 

「このカードこそが、君に止めを刺すこととなるのだ。」

「フッ。融合モンスターに倒されるレイド・ラプターズではない!」

 

 

 

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《凡骨の意地》

永続魔法

ドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターだった場合、そのカードを相手に見せる事で、自分はカードをもう1枚ドローする事ができる。

 

 

<次回の最強カード>

《ルーレット・フュージョナー》

融合モンスター

レベル9/闇属性/機械族/攻撃力0/守備力3000

「スロットマシーンAM-7」+「ルーレットボマー」

このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に存在するこのカード以外の融合モンスターは、相手のカード効果では破壊されない。1ターンに1度だけ、自分の墓地に存在する攻撃力2500以下の融合モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚することができる。また、1ターンに1度だけ、自分のメインフェイズにサイコロを1回振ることができる。出た目によって、以下の効果を適用する。

●1:自分の墓地に存在するレベル4以下の融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

●2:自分の墓地に存在する融合召喚に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

●3:自分の墓地に存在する「融合」と名の付いたカード1枚を手札に加える。

●4:自分のデッキから「融合」と名の付いたカード1枚を手札に加える。

●5:フィールド上に存在する融合モンスター1体を選択することができる。そのモンスター1体を持ち主のエクストラデッキに戻す。

●6:自分の手札の「融合」と名の付いたカード1枚を墓地に送り、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

 



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第10話-反逆の翼 ブレイブ・クロー・レボリューション

黒咲隼

 

・LP4000

・手札1枚

・(モンスター)《RR-ブレイズ・ファルコン》(ATK1000)

・(魔法・罠)1枚

 

 

インテグラル

 

・LP2400

・手札2枚

・(モンスター)《ルーレット・フュージョナー》(DEF3000)

・(魔法・罠)2枚

 

 

「これが私の切り札、《ルーレット・フュージョナー》!」

「図体だけで役に立たんというのは、よくある話だがな!」

 

ブレイズ・ファルコンの3倍ほどの大きさのある金色の機械が目の前に佇む。佇む、というのは、融合素材になったスロットマシンAM-7がベースとなり、スロットの部分がルーレットに置き換わっているのが見られるからである。

 

「ならばこのモンスターの力をお見せしよう!モンスター効果発動!墓地の攻撃力2500以下の融合モンスター1体を特殊召喚できる!蘇れ、《有翼幻獣キマイラ》!」

 

 

《有翼幻獣キマイラ》:攻撃力2100

 

 

「そしてさらに、《ルーレット・フュージョナー》のモンスター効果発動!さあ回れ、ルーレットよ!」

 

腹部のルーレットが1の数字から右回りに点灯を始め、3~4周した後、「3」の数字で止まった。

 

「この効果により、私の墓地から融合を手札に戻す!(3)そして《融合》を発動!手札の《ドラゴンゾンビ》と《メデューサの亡霊》を融合!(0)融合召喚!《金色の魔象》!」

 

 

《金色の魔象》

融合モンスター

レベル6/闇属性/アンデッド族/攻撃力2200/守備力1800

「メデューサの亡霊」+「ドラゴンゾンビ」

 

 

「どれだけ融合モンスターを並べようと無駄だ!」

「《RR-ブレイズ・ファルコン》のモンスター効果を何らかの手段を用いて使うつもりか?残念だがそうはいかない。《ルーレット・フュージョナー》がいる限り、私の融合モンスターは相手のカード効果では破壊されない!」

「チッ…」

「さらに融合モンスターを出させてもらう!罠カード、《地獄の融合召喚》を発動!」

 

 

《地獄の融合召喚》

通常罠

自分または相手が「融合」魔法カードを使用した融合召喚に成功した場合に発動することができる。お互いのプレイヤーは、それぞれ自分の墓地に存在する融合モンスター1体を特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は500ポイントダウンし、効果は無効化される。

 

 

「融合を使用した融合召喚に成功した時、墓地の融合モンスターを攻撃力を500ポイント下げて特殊召喚できる!蘇れ!《双頭の雷龍》!」

 

 

《双頭の雷龍》:攻撃力2800→攻撃力2300

 

 

「おおーっと!これは壮観だぁ!インテグラルのフィールドには、《ルーレット・フュージョナー》、《有翼幻獣キマイラ》、《金色の魔象》、《双頭の雷龍》の4体の融合モンスターが並んでいるーっ!攻撃力1000のブレイズ・ファルコンでは防げないぞ!」

 

インテグラルが次々と融合モンスターを繰り出すのを見た遊士は、思わず口を開いた。

 

「おい。これじゃ負けちまうんじゃねえのか…?」

「いや、遊士さん。黒咲は侮れない…特に相手が融合モンスターなら…そう簡単にはやられない。」

「…?」

 

 

「バトルだ!《有翼幻獣キマイラ》で、《RR-ブレイズ・ファルコン》を攻撃!」

 

 

キマイラインパクトダッシュ!!

 

 

「罠カード発動!《RR-レディネス》!」

 

 

《RR-レディネス》

通常罠

 

 

「俺のレイド・ラプターズはこのターン、バトルでは破壊されない!」

「だが戦闘ダメージは受けてもらう!」

 

 

黒咲隼:LP4000→LP2900

 

 

「そして、《金色の魔象》で、ブレイズ・ファルコンを攻撃!」

 

その魔象はけたたましく雄たけびを上げると、2本のタスクでブレイズ・ファルコンを突き刺そうとした。咄嗟の反応でブレイズ・ファルコンはその攻撃を避け、串刺しになることを回避した。

 

「バトルダメージは発生する!」

「くっ…」

 

 

黒咲隼:LP2900→LP1700

 

 

「まだだ!《双頭の雷龍》で、ブレイズ・ファルコンを攻撃!」

「RR-レディネスの効果はまだ続く!」

「何度も言わせないてくれたまえ!バトルダメージは受けてもらう!」

「ぐっ…」

 

 

黒咲隼:LP1700→LP400

 

 

客席からは、黒咲の反撃を望んでいる声もあり、ここで止めを刺せという声もある。インテグラルは、黒咲に敵対している以上、後者の声に応える必要がある。

 

今、インテグラルの目の前の伏せカードが開いた。

 

「速攻魔法、《融合解除》を発動させてもらう!」

 

連撃がここで終わると思った側であった遊士たちはその伏せカードに驚き、半ば叫び声をあげていた。

 

「融合解除!!」

「やべえぞ、これは!」

「本当に負けちまうんじゃねえのか…」

 

「《金色の魔象》をエクストラデッキに戻し、墓地の融合素材モンスターを特殊召喚する!蘇れ、《ドラゴンゾンビ》、《メデューサの亡霊》!」

 

 

《融合解除》

速攻魔法

フィールドの融合モンスター1体を対象として発動できる。その融合モンスターを持ち主のエクストラデッキに戻す。その後、エクストラデッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を自分フィールドに特殊召喚できる。

 

 

《ドラゴンゾンビ》:攻撃力1600

《メデューサの亡霊》:攻撃力1500

 

 

「長かったがこれで終わりだよ。《ドラゴンゾンビ》で、ブレイズ・ファルコンを攻撃!」

 

 

ゾンビ・デッドリー・ブレス!!

 

 

 

毒々しい色のブレス攻撃(もはや毒ガスに近い)が黒咲に向かうが、黒咲は咄嗟にデュエルディスクを構えると、墓地から光が放たれ、毒ガスを分散させた。

 

「なに…?当たらなかっただと?」

「俺は墓地に送られた、《RRーレディネス》の効果を発動した!このカードを墓地から除外することで、このターンに俺が受ける全てのダメージを0にする!」

 

 

黒咲隼:LP400

 

 

「融合モンスターに負ける俺とレイド・ラプターズではない。そう言ったはずだ…」

 

冷ややかにそう言う黒咲に、インテグラルはその言葉の根拠のようなものを彼自身の気から感じた。

 

「君は…本当に融合モンスターに勝てると思っているのか…?この状況で…」

 

言葉を選び、敢えて「融合モンスター」という点を強調したのは、誰しもがわかった。

 

「勝てる。俺は…いや、俺たちは常に崖っ淵に立たされてきた。だがそこから必ず立ち上がり、貴様たち融合モンスターを根絶やしにする!」

 

その執念に燃えた目線は、対戦相手であるインテグラルではなく、融合モンスターに対して向けられていた。

 

その事にはインテグラルも気付いている。それ故、黒咲にはそれ以上何も言うことはなかった。黒咲が融合を忌み嫌う理由は、彼にとってはどうでも良かった。

 

しかしインテグラルは、違和感を覚えていた。何がきっかけかはわからない。とは言え、このターンにできることはないので、そのままエンドフェイズを迎えた。

 

「そんなに融合が嫌いかね。まあ良い。私が勝利する!このデュエルにはな!ターンエンドだ!(0)」

<黒咲:伏せなし インテグラル:伏せなし>

 

「俺のターン!(2)」

 

黒咲はドローした《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》を一瞥し、そのカードではない手札のカードを魔法・罠カードスロットに差し込んだ。

 

「魔法カード、《レヴォリューション・エッジ》を発動!」

 

 

《レヴォリューション・エッジ》

通常魔法

 

 

「ライフポイントが1000以下の場合、俺の墓地のエクシーズモンスターを特殊召喚し、このカードをオーバーレイユニットとする!蘇れ、《RR-ライズ・ファルコン》!」

 

夕陽を背に黒咲の墓地から再び空を舞うのは、ライズ・ファルコン。インテグラルはこの時自分が覚えている違和感が何から来ているのかがわかった。

 

《RR-レディネス》は、除外すればそのターン内のダメージを0にできる。ライフポイントが400になってから使う必要など全くなかったのだ。

 

「君は…そうまでして…」

「そして、《RR-ライズ・ファルコン》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、敵の場に特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力の合計分を、このカードの攻撃力に加える!」

 

 

《RR-ライズ・ファルコン》:攻撃力100→攻撃力2400→攻撃力4500→攻撃力6000→攻撃力7600

 

 

「攻撃力7600…」

「もはや戦う意志さえあるまい。だが、融合モンスターは全て殲滅する!ライズ・ファルコンは、場に特殊召喚されたモンスター全てに一度ずつ攻撃できる!バトル!」

 

 

全ての敵を引き裂け!ブレイブ・クロー・レヴォリューション!!

 

 

「ぐおおおおおおおっ!」

 

 

インテグラル:LP2400→LP0

 

 

炎に燃える翼が、双頭の雷龍、キマイラ、メデューサの亡霊、ドラゴンゾンビを次々と薙ぎ払い、彼の言葉通り「引き裂いて」いった。

 

 

「デュエル終了-っ!!勝者は、前回の舞網チャンピオンシップにも出場した、エクシーズ使い、黒咲隼!!」

 

黒咲はデュエルが終わるとすぐにリングを後にしようとした。黒咲がどのようなデュエリストで、なぜ融合モンスターを忌み嫌うのか、遊士にとっては気になるところであったが、彼の目に映ったデュエリストが、すぐにその思いを掻き消した。

 

「…!!あいつ!」

「遊士!どうした!?」

 

人ごみの中で、彼の通うデュエルアカデミアの制服を着ていることがその人物の存在感を際立たせた。細身の銀色の縁の眼鏡の彼女が広場に出たところで、遊士は追い付いた。

 

「雨宮!」

「…あなた…草薙遊士。」

「お前…どうしてここに?それに…取り巻きはどこ行ったんだ?」

「ナツメもカオリも、別にそんなんじゃないわ。」

「あぁ…。ひょっとしてお前もデュエリストとして出場してんのか?」

「あら、知らなかったの?それは残念ね。私も出場して、一回戦は勝ったわ。」

 

淡々と話す彼女との会話に天竜崎たちも追い付いた。

 

「生徒会長!」

「サツキさん!」

 

「…同じ学校の知り合い…ですか?」

「そのようだな…」

 

6人の中で一番後ろにいた遊矢に気が付いた雨宮は、素早く彼に歩み寄った。

 

「榊…遊矢?」

「え?あ…はい。そうですけど。」

「ペンデュラムの創始者の?」

「はい!」

 

精一杯元気に返事をしたつもりだった。彼はペンデュラムの創始者で間違いはないのだが、今やペンデュラムは遊矢一人のものではないのだ。

 

(この子が…まさか…こうも早く会えるなんて。)

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を見せてもらえないかしら?」

「えっ。いいですけど。」

 

遊矢は戸惑うこともなく、デッキの一番上のカードであったオッドアイズのカードを、彼女に手渡した。

 

「これが、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》…。」

 

遊士と遊矢は、オッドアイズを見つめる彼女に、不思議なものを感じた。何か霊的なものを感じ取っている。極端に考えれば、そのように見えた。

 

「ありがとう。格好良いカードね。あなたと戦えることを、楽しみにしているわ。もちろん、柊柚子さん、権現坂昇さんも。」

「えっ…」

「俺たちのことを知っているのか。」

「ええ。舞網チャンピオンシップは大きな大会だったものね。そして何より…」

 

彼女は微笑を浮かべたまま、その視線をゆっくりと遊士に向けた。

 

「草薙遊士。あなたと再戦できるのを楽しみにしているわ。」

「ああ。退屈なのはゴメンだけどな。」

「私はAブロック。あなたはBブロックだから、ブロックを勝ち上がることね。それじゃ…」

 

そう言って、雨宮は足早にその場を去った。彼女が去ってから、最初に口を開いたのは柚子であった。

 

「再戦ってことは…遊士さんは戦ったことがあるんですか?」

「ああ。もちろん勝ったけどな。」

「負けそうだったけどね。」

「っるせぇなユキ!あれはあいつが変なカードを使うから!!」

 

「遊士さんを追いつめるほどのデュエリストか。」

 

 

※※※※※※

 

 

「何でだよ!?何で使わせてくれねえんだ!」

「いい加減にしろサニー!何度言えばわかる!」

「俺が負けることはどうでもいいってのか!?」

「次元の扉が開いてしまっては困る!!それに…真のデュエリストなら、ナンバーズに頼らずとも勝てるはずだ!」

 

サニーのデュエルの前日のことである。赤馬零児とデュエルをしたビジネスホテル「スカイ」の506号室で、サニーとクラウドが言い争っている。レインがいないので、止める者もいない。

 

だが、クラウドの「真のデュエリスト」という言葉のチョイスが良かったのだろうか、サニーが多少冷静さを取り戻した。

 

「真のデュエリストか。まぁ確かに…」

「ランク4のエクシーズ召喚軸ならば、強力なランク4のモンスターで固めれば、勝てるはずだ。」

「だけど…これ、《カチコチドラゴン》って。攻撃力2100だぜ。これだったら、攻撃力2300のナンバーズの背反の料理人を入れた方が良いじゃん。」

 

 

《カチコチドラゴン》

エクシーズモンスター

ランク4/地属性/ドラゴン族/攻撃力2100/守備力1300

レベル4モンスター×2

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する事ができる。このカードはもう一度だけ続けて攻撃する事ができる。この効果は1ターンに1度しか発動できない。

 

 

「それならば…地属性であるところに注目すればどうだ?例えばこのカードと組み合わせると…」

「そんなたらればでどうにかなる訳ないだろ!」

「投げやりになるな!考えるぞ。」

「クラウド…」

 

クラウドが《カチコチドラゴン》のカードをエクストラデッキに加えて、ナンバーズを外したその瞬間、サニーが「あ…」と声をあげた。

 

「そういえば、俺の明日の対戦相手って、誰だっけ?」

「お前、それを調べていなかったのか!?」

「誰だろうと勝つからいいかなって。でも、よく考えりゃ、誰だ?」

 

「草薙遊士だ。」

 

「草薙…遊士?その名前どっかで聞いたな。」

「私がデュエルした相手だ。この町に来て最初のな。」

「あぁ!お前が負けたっていう…?」

「そうだ。」

「でもお前、戦い方が古いみたいなこと言ってなかったか?」

「ああ。戦士族モンスターに装備魔法をつけてパワーアップさせるデッキのようだな。しかし彼のデッキの真骨頂はそれではない。」

 

クラウドのその科白を聞くと、サニーはメールで送られてきた報告書を思い出した。

 

「ライジング・ソード……?」

「そうだ。あのカードからは、不思議な力を感じる。あのカードには注意だ。」

「通常モンスターなんじゃなかったっけ?」

「そうなのだが、どうやら…ただのカードではない。」

 

サニーが「まぁいいや…」と言い、再びデッキ作成の作業にかかった。彼らがデッキを作り終えたのはそれから2時間後の23時であった。翌日の昼12時からがサニーのデュエルなので、2人はその後すぐに眠りに就いてしまった。

 

候補となったカードや、元々デッキに入っていたが取り除かれたカード、そして何よりナンバーズが、机の上のデッキケースの外に置かれていた。

 

 

眠りに就いている彼らは、気付いていない。ナンバーズが放つ青い光、そして実体無き者の姿、そして声に。

 

「ここにあったのか。何だよ。デッキから外されてるじゃねえか!ナンバーズ持ってるくせに出し惜しみするってのか?」

 

黒い影のような生命体(?)がいくら声をあげようと、怒鳴ろうと、彼らには聞こえない。それは眠りが深いからではない。その現象が、この次元に彼がリンクしていないことを示している。

 

「だったらこいつ…返してもらうぜ。」

 

不思議なことに、その生命体はナンバーズに物理的に干渉し、カードを持ち去ろうとした。もし彼らが起きていたのなら、ナンバーズが空中に浮遊しているように見えただろう。

 

しかしその生命体はすぐに踵を返した。「いや…」という科白と共に…

 

「ナンバーズを意地でも使ってもらうぜ。使いやすいように、このカードもセットでやるよ。」

 

ナンバーズの青い光を包むようにナンバーズを手に取ると、デッキケースの中に、机上のナンバーズと、元々持っていたカードを入れた。

 

「いよいよ明日か。待ち侘びたぜ。ヘヘヘ…しっかり働いてくれよな。」

 

 

※※※※※※

 

 

「遊士の対戦相手知ってる?サニー・キッド。」

「ラッキーじゃない!エキシビションマッチで見てるから!」

 

デュエルリングの目の前でそう騒いだ天竜崎とユキは、遊矢、権現坂、柚子、そして沢渡と共に遊士のデュエルを見守る。

 

「って、何であんたがいるのよ沢渡?」

「そんなの当たり前だろう!?このスーパーストロングデュエリストの沢渡様に勝ったサニーがデュエルをするんだったら、見なくちゃダメだろこれは!」

「あっそ…」

 

柚子が冷たくそう言うのと同時に、MCのマイク・グローリーが話をデュエリストの紹介を始めた。

 

「さぁみなさん!いよいよ本日は第1回戦最後のデュエル!7月からは、2回戦のデュエルへと進みます!最終日の第一試合は、この2人!まずは、エキシビションマッチでナンバーズを活かした戦いを見せた、サニー・キッド!!」

 

会場に向かって得意げな表情を見せた後、軽やかにデュエルリングへと進んでいった。

 

「そしてその対戦相手は…デュエルアカデミアセントラル校代表生徒!草薙遊士!!本校の成績は……そういうことだそうですが、デュエルにかける思いは人一倍だそうです!うん…」

「おい!何だよその紹介の仕方!俺の成績については触れんじゃねえ!」

 

同じ学校の同じクラスにいる天竜崎とユキはほぼ同時に呆れた表情で頭を押さえた。

 

「おい。お前、一つ聞きたいんだけどよ、エキシビションマッチで戦った時と同じデッキなのか?」

「当たり前だろ?俺様は一々デッキ変えるなんて、セコい真似はしねえんだよ!」

 

マイナーチェンジは加えられているが、ほぼ同じであることは間違いない。

 

「ヘッ。泣くんじゃねえぞ!いくぜ!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

草薙遊士   :LP4000

サニー・キッド:LP4000

 

 

 

「さあ、先攻を取るのは、草薙遊士です!デュエルスタートだ!」

「俺の先攻!《切り込み隊長》を召喚!(4)」

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200

 

 

「モンスター効果発動!このモンスターは召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体、特殊召喚することができる!いくぜ!《コマンド・ナイト》特殊召喚!(3)」

 

 

《コマンド・ナイト》:☆4/攻撃力1200→攻撃力1600

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200→攻撃力1600

 

 

「攻撃力が上がった?」

「そうだ。コマンド・ナイトには、自分フィールドの戦士族モンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる効果がある!ターンエンド!(3)」

<遊士:伏せなし サニー:伏せなし>

 

「俺のターン!(6)」

 

意気揚々と1枚目のカードをドローしたサニーの手が早速止まった。

 

(あれ…こんなカード入れてたっけ?)

 

彼がドローしたカードは、《エクストラ・ディザスター》。見たことも聞いたこともないカード、そのカードを見た時、彼は最初にそう思った。

 

 

《エクストラ・ディザスター》

通常魔法

自分フィールド上に存在するカードを1枚選択して発動する。自分のエクストラデッキからエクシーズモンスター2体を墓地に送り、選択したカードを破壊し、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「何だよ…これ?」

 

天竜崎たちが応援しているところから見てリングを挟んで真正面にクラウドがいる。デュエルリングはかなり広いので、真正面にいるとは言え、その人物を特定することは容易ではないだろうが…

 

「どうした、サニー?」

 

「いいや、とりあえず、デュエルを進めないと。俺は手札から、《サニーサイド・ホーク》を召喚!(5)こいつの召喚に成功した時、手札からサニーサイドモンスターを特殊召喚できる!来い、もう1体の《サニーサイド・ホーク》!(4)2体のレベル4モンスターで、オーバーレイ!」

 

 

エクシーズ召喚!来い、《カチコチドラゴン》!!

 

 

《カチコチドラゴン》:ランク4/攻撃力2100

 

 

「カチコチドラゴン…?そいつだったら俺でも知ってるけど…ナンバーズじゃねえのか?」

「お前にはナンバーズは必要ねえぜ!《カチコチドラゴン》で、《切り込み隊長》を攻撃!」

 

地面から首だけが生えたようなモンスターの《カチコチドラゴン》は、動くことはせず、結晶状の爪を飛ばし、《切り込み隊長》を貫いた。

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3500

 

 

「《カチコチドラゴン》のことを知ってるってのなら、わかるよな?モンスターをバトルで破壊した時、オーバーレイユニットを1つ使い、効果発動!《カチコチドラゴン》はもう一度だけ続けて攻撃できる!」

 

 

《カチコチドラゴン》:ORU2→ORU1

 

 

クリスタル・ネイル!

 

 

先ほどと同様に、結晶状の爪が、《コマンドナイト》を貫き、遊士にダメージを与えた。

 

「ぐあっ!」

 

 

草薙遊士:LP3500→LP3000

 

 

「ヘッ。まだまだ始まったばかりだぜ?」

「このまま押し切らせてもらうぜ!俺はこれで、ターンエンド!(4)」

<遊士:伏せなし サニー:伏せなし>

 

 

一気に2体のモンスターを破壊する芸当は、今まで彼が呼び出したナンバーズでできることではない。そう思うと、ナンバーズに頼らないデュエルでも、戦える、本心からそう思える気がした。

 

 

 

 

しかしサニーはまだ気付いていない。次のドローフェイズには、彼が今思いかけていることが、覆されるということを。

 

 

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《ルーレット・フュージョナー》
融合モンスター
レベル9/闇属性/機械族/攻撃力0/守備力3000
「スロットマシーンAM-7」+「ルーレットボマー」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に存在するこのカード以外の融合モンスターは、相手のカード効果では破壊されない。1ターンに1度だけ、自分の墓地に存在する攻撃力2500以下の融合モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚することができる。また、1ターンに1度だけ、自分のメインフェイズにサイコロを1回振ることができる。出た目によって、以下の効果を適用する。
●1:自分の墓地に存在するレベル4以下の融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
●2:自分の墓地に存在する融合召喚に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。
●3:自分の墓地に存在する「融合」と名の付いたカード1枚を手札に加える。
●4:自分のデッキから「融合」と名の付いたカード1枚を手札に加える。
●5:フィールド上に存在する融合モンスター1体を選択することができる。そのモンスター1体を持ち主のエクストラデッキに戻す。
●6:自分の手札の「融合」と名の付いたカード1枚を墓地に送り、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


<次回の最強カード>
《ヌメロン・カーニバル》
通常罠




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第11話-次元を繋ぐ雷

草薙遊士

 

・LP3000

・手札3枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

サニー・キッド

 

・LP4000

・手札4枚

・(モンスター)《カチコチドラゴン》(ATK2100)

・(魔法・罠)なし

 

 

「おいおい。まだデュエルは始まったばかりだぜ?俺のターン!(4)俺は魔法カード、《戦士の生還》を発動!墓地の戦士族モンスター1体を手札に戻す!俺は、《コマンド・ナイト》を手札に加えて、再び召喚!(3)」

 

 

《コマンド・ナイト》

効果モンスター

レベル4/炎属性/戦士族/攻撃力1200/守備力1900

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。また、自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。

 

 

「だがそいつの攻撃力は1600だ!」

「ああ。だからこいつを装備するのさ!《稲妻の剣》!」

 

 

《稲妻の剣》

装備魔法

戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップし、フィールド上に表側表示で存在する全ての水属性モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。

 

 

「装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする!」

「なに!?」

 

 

《コマンド・ナイト》:攻撃力1600→攻撃力2400

 

 

「バトル!《コマンド・ナイト》で、《カチコチドラゴン》を攻撃!」

「ぐあっ!」

 

 

サニー・キッド:LP4000→LP3700

 

 

「エクシーズモンスターの召喚だけが、高い攻撃力を得られる方法じゃねえんだぜ?」

 

得意げな顔でそう言い放った遊士に、サニーは少し焦りを覚えた。高い攻撃力を得るつもりでエクシーズモンスターをデッキに入れた。しかし、装備魔法を装備した下級モンスターに《カチコチドラゴン》が真っ二つにされた光景は、彼が最も見たくないそれの1つであった。

 

「ターンエンドだ!(3)」

<遊士:伏せなし サニー:伏せなし>

 

「俺のターン!(5)……!?」

 

デッキの残りのカードは全て自分の知らないカードなのではないかと思った。というのは、サニーがドローしたカードが、またしても自分の知らないカードだったからである。

 

(《ヌメロン・カーニバル》。こいつは…ナンバーズのサポートカード!?でも、なんでこんなカードが?俺は…)

 

劣勢に立たされつつあるサニーは、あのカードがなければいい。そう思いながら、デュエルディスクのEXTRA DECKのボタンを押し、エクストラデッキを確認した。

 

ディスプレイに表示されるエクストラデッキのモンスターは3枚。《イビリチュア・メロウガイスト》、《暗遷士カンゴルゴーム》、《発条機甲ゼンマイスター》。右にスワイプし、次のカードを見ていった時、彼の意に反し、見つけてしまったのは

 

彼が所有している、3枚のナンバーズであった。

 

(何でデッキにナンバーズが入ってるんだよ!?クラウドが入れたのか?俺が寝てる間に?そんなことあるわけ…)

 

「おい!!どうしたんだよサニー!?おめえのターンだぜ?」

「わ…わかってるよ!モンスターを裏側守備表示でセットして、ターンエンド!(4)」

<遊士:伏せなし サニー:伏せなし>

 

「そんだけするのにどんだけ時間かかってんだよ。俺のターン。(4)俺は手札から、《不意打ち又佐》を召喚!(3)」

 

 

《不意打ち又佐》

効果モンスター

レベル3/闇属性/戦士族/攻撃力1300/守備力800

このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。このカードは表側表示でフィールド上に存在する限り、コントロールを変更する事はできない。

 

 

「《コマンド・ナイト》の効果で、攻撃力が400アップし、さらに装備魔法、《融合武器ムラサメブレード》を《不意打ち又佐》に装備!(2)」

 

不気味なオーラを放つ剣が又佐に装備されると、又佐はそれを振り上げて、裏側守備表示モンスターに向かった。又佐は短剣を主に使っているが、長い日本刀であっても、立ち回れている。当然のことかもしれないが。

 

 

《不意打ち又佐》:攻撃力1300→攻撃力1700→攻撃力2500

 

 

「《不意打ち又佐》!裏側守備表示モンスターを攻撃!」

「だが、お前が攻撃したモンスターは、《サニーサイド・ガードナー》!」

 

 

《サニーサイド・ガードナー》

効果モンスター

レベル4/光属性/戦士族/攻撃力0/守備力2000

 

 

「戦士族モンスターに装備魔法を着けて、パワーアップして攻撃という由緒正しい戦い方ですが、ここで白銀の盾を持つ《サニーサイド・ガードナー》に受け止められたぁっ!《サニーサイド・ガードナー》は自身のモンスター効果によって、1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されません!!」

 

MCのグローリーの説明を聞いた遊士は、「あぁ、なるほど。」と言った。

 

「しかもそれだけじゃないぜ!《サニーサイド・ガードナー》がいる限り、相手はバトルフェイズ中にモンスター1体でしか攻撃できない!つまりこいつはバトルでは破壊できないってことだ!」

 

次のターンに攻撃力の高いエクシーズモンスターでも出して、反撃に移ればいい、と思い安堵していたサニーに対し、遊士は声をあげた。

 

「おいおい!又佐の効果を知らねえのか?あくびが出るぜ。」

「何だと!?」

「このモンスターはバトルフェイズ中に2回攻撃ができる!《サニーサイド・ガードナー》の効果はあくまでバトルフェイズ中に1体のモンスターでしか攻撃ができないってだけだ。1体のモンスターで、2回攻撃すれば、文句はねえだろ?」

「くっそぉ!卑怯だぞっ!」

 

そう言っている間に、《サニーサイド・ガードナー》は《不意打ち又佐》のムラサメブレードの一閃によって斬られてしまった。

 

「これでお前のフィールドにモンスターはいねえ!《コマンド・ナイト》で、直接攻撃!稲妻の剣の一撃を受けやがれっ!」

「どわあああああっ!」

 

 

サニー・キッド:LP3700→LP1300

 

 

「とおったぁぁぁぁ!!!コマンド・ナイトの一撃で、大きくライフが削られたぞぉ!」

「おいおい。こうもワンサイドゲームじゃ、面白くねえな。」

「んだと!?」

「悔しかったら、あのカードを使って戦えばいいじゃねえか。出し惜しみしてっと負けんだよ。カードを1枚伏せて、ターンエンド。」(1)

<遊士:伏せ1枚 サニー:伏せなし>

 

「くっ…俺のターン!(5)」

 

ドローしたカードは自分の知っているカードの《死者蘇生》。さらにそのカードはエクシーズ召喚の素材を揃えるには打ってつけのカードであり、サニーは少し落ち着きを取り戻した。

 

「いくぜ!《サニーサイド・ガーゴイル》を召喚!(4)そして、魔法カード、《死者蘇生》を発動!(3)墓地から、《サニーサイド・ガードナー》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 

《サニーサイド・ガーゴイル》:☆4/攻撃力1800

《サニーサイド・ガードナー》:☆4/守備力2000

 

 

「レベル4のモンスターが2体。来やがるか!」

 

(俺のランク4のエクシーズモンスターの中で最高の攻撃力を持つのは、《ジェムナイト・パール》。だけど、このモンスターには効果がない。)

 

 

《ジェムナイト・パール》:ランク4/攻撃力2600

 

 

(それに、あいつのフィールドには伏せカードが1枚ある。もしあれが自分のモンスターの攻撃力を上げるようなカードだったら…カウンターで負ける。そしたら、俺のフィールドにモンスターがいない状態で、相手ターンになっちまう。)

 

わかっていたのだ。戦闘によるカウンターを恐れずに進むために、どんなエクシーズモンスターを呼び出したら良いのか。

 

しかしそれを呼び出して良いのかまでは、わからなかった。

 

「くそっ!俺は2体のモンスターで、オーバーレイ!」

 

 

2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!現れろ、No.59 背反の料理人(バック・ザ・コック)

 

 

「きやがったな。ナンバーズ59!」

 

 

「な…ナンバーズだと!?」

 

そう叫んだのは、デュエルリングを挟んで天竜崎の向かい側にいるクラウドであった。

 

 

《No.59 背反の料理人》:攻撃力2300

 

 

「オーバーレイユニットとなった、《サニーサイド・ガードナー》の効果発動!このカードをオーバーレイユニットとしたエクシーズモンスターは、オーバーレイユニットとなっているカードを、特殊召喚する事ができる!俺は、《サニーサイド・ガーゴイル》を特殊召喚する!」

 

 

《サニーサイド・ガーゴイル》:☆4/攻撃力1800

 

 

「さらに、背反の料理人の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、俺のフィールドのこのカード以外のカードを全て破壊して、モンスター1体につき、攻撃力が300ポイントアップする!」

 

 

《No.59 背反の料理人》:攻撃力2300→攻撃力2600

 

 

「攻撃力が2600に上がりやがった!」

「《コマンド・ナイト》は、他の戦士族モンスターがいる限り、攻撃対象にならないモンスター。ならば、背反の料理人で、《不意打ち又佐》を攻撃!」

「そうはいかねえぜ!罠カード発動!《鎖付きブーメラン》!」

 

 

《鎖付きブーメラン》

通常罠

以下の効果から1つ、または両方を選択してこのカードを発動できる。

●相手モンスターの攻撃宣言時に、その攻撃モンスター1体を対象として発動できる。その攻撃モンスターを守備表示にする。

●自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。このカードを攻撃力500アップの装備カード扱いとして、その自分のモンスターに装備する。

 

 

「このカードを又佐に装備し、攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

 

《不意打ち又佐》:攻撃力2500→攻撃力3000

 

 

「くそっ!だ…だけど!ナンバーズはナンバーズとのバトルでしか、破壊されない!」

「戦闘ダメージは受けてもらうぜ!」

 

皮肉なことに、ナンバーズの戦闘破壊耐性が生きることとなり、彼がナンバーズを使う理由が生まれてしまったのだ。

 

 

サニー・キッド:LP1300→LP900

 

 

「これは手痛い一撃!味方のモンスターを犠牲にしてまで攻撃力を上げたバック・ザ・コックだったが、遊士の《鎖付きブーメラン》の効果で攻撃力が上がった又佐に迎撃されてしまったぁ!」

 

(俺の手札は3枚。《希望の朝日》、《エクストラ・ディザスター》、そして…《ヌメロン・カーニバル》。希望の朝日は、俺の手札からサニーサイドモンスターを特殊召喚するカードだが、発動したターンはバトルフェイズが行えない。俺の手札にサニーサイドモンスターがない以上、このカードは使えなさそうだな。だったら、こいつに賭けるしかない。)

 

「カードを1枚伏せて、魔法カード、《エクストラ・ディザスター》!エクストラデッキのエクシーズモンスター2枚を墓地に送って、俺の場のカードを1枚破壊し、カードを1枚ドローする!」

 

サニーはエクストラデッキから、《イビリチュア・メロウガイスト》と、《暗遷士カンゴルゴーム》を墓地に送り、ソリッドビジョンで《希望の朝日》のカードが割れるように破壊される前に、カードをドローしていた。その表情から、焦りが読み取れる。

 

(クソッ!《戦士の生還》だと!?墓地の戦士族モンスターを手札に戻せるけど…戻したところで何の意味もねえじゃねえか!)

 

残った手札の1枚を見つめていると、デュエルリング付近の男が彼に近寄って来た。黒いスーツを着た男性であり、大会運営側だと思われる。

 

「サニー選手。毎ターンの時間が長すぎます。後の試合も控えていますので、もう少しスピーディーにデュエルを進めていただいてもよろしいでしょうか?」

「わかってるよ、うるさいな!カードを2枚伏せて、ターンエンド!(0)」

<遊士:伏せなし サニー:伏せ2枚>

 

「俺のターン!(2)お前のフィールドの背反の料理人はナンバーズとのバトル以外では戦闘で破壊されねえけど、バトルダメージは受けるんだよな。これで…決めるぜ!《不意打ち又佐》で、《No.59 背反の料理人》を攻撃!」

 

 

サニー・キッド:LP900

 

 

《不意打ち又佐》:攻撃力3000

《No.59 背反の料理人》:攻撃力2300

 

 

ラストターンになるかというところで、観客がさらにヒートアップする。当然のことであるが、ナンバーズという特殊なカードを相手に戦う遊士に対しては、さらに歓声が上がる。

 

「いけーっ!!遊士!!」

「《不意打ち又佐》は2回攻撃ができるわ!このバトルフェイズが成立すれば、遊士の勝ちよ!」

 

「なにぃぃぃ!?このスーパーストロングデュエリスト沢渡様が負けたナンバーズに…こうもあっさり勝つだとぉぉ!?」

「あんたの事はどうでもいいの。」

 

 

迫り来る《鎖付きブーメラン》を前に、サニーはある光景を思い出した。赤馬零児とビジネスホテルのロビーでデュエルをした時、2体目のナンバーズを呼びだすと、カーペットから雷撃が放たれ、そこから人の影が見えた。

 

(2体のナンバーズであんなのが見えたんだったら……3体じゃ……でも…俺は…負けられる訳が……ねえ!!)

 

「罠カード!!《ヌメロン・カーニバル》を発動!」

「ブラフじゃなかったのか!」

「俺の墓地に存在するエクシーズモンスターを任意の枚数除外して、除外した枚数と同数のナンバーズを、俺のエクストラデッキから特殊召喚し、そのうち1体の下に、このカードをオーバーレイユニットとして重ねる!」

 

 

《ヌメロン・カーニバル》

通常罠

相手ターンで、自分の墓地に存在するエクシーズモンスターを任意の枚数ゲームから除外して発動する。除外したモンスターの数と同数の「No.」と名の付いたモンスターを自分のエクストラデッキから特殊召喚する。その後、このカードをこの効果で特殊召喚したモンスター1体の下に重ねて、エクシーズ素材とすることができる。また、このカードを発動したターン、攻撃可能な相手モンスターは自分フィールド上の「No.」と名の付いたモンスターに攻撃しなければならない(攻撃対象となるモンスターは、このカードを発動したプレイヤーが決める)。

 

 

「墓地の《イビリチュア・メロウガイスト》、《暗遷士カンゴルゴーム》を除外して、2枚のナンバーズをエクストラデッキから特殊召喚する!来い!《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》、《No.55 ゴゴゴゴライアス》!!」

 

 

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/地属性/岩石族/攻撃力0/守備力3000

レベル4モンスター×2

このカードは、「No.」と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されない。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。ターン終了時まで、このカードの守備力を0にし、攻撃力を3000にする。

このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。また、エクシーズ素材の無いこのカードは、攻撃された場合ダメージステップ終了時に攻撃表示になる。

 

 

《No.55 ゴゴゴゴライアス》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/地属性/岩石族/攻撃力2400/守備力1200

レベル4モンスター×2

このカードは、「No.」と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されない。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。自分の墓地から岩石族・地属性・レベル4モンスター1体を選択して手札に加える。「No.55 ゴゴゴゴライアス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の全てのモンスターの守備力は800ポイントアップする。

 

 

2つの魔法陣がサニーの目の前に現れ、そこから2体のナンバーズが出現した。天才詐欺師の操るナンバーズ、そしてこの会場で披露するのが初となる、塔のように聳える巨岩のナンバーズ。

 

大気が鳴動し、空には暗雲が立ち込める。やや周囲が暗くなったことに、多少の違和感を覚えたのは遊士たちだけではない。

 

「うおおおお!緊張感が増してきたぞぉぉぉぉ!」

 

「呑気なMCだぜ。《ヌメロン・カーニバル》の効果によって、召喚したナンバーズのうち1体の下にこのカードを重ねてオーバーレイユニットとする!」

 

 

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》:ORU0→ORU1

 

 

「そしてお前は、攻撃可能なモンスターはダイヤモンド・クラブ・キングを攻撃しなければならない!」

「…んだと!?《不意打ち又佐》!!」

 

ムラサメブレードを振り上げ、一刀両断しようとするものの、ダイヤモンド・クラブ・キングのボディを断つことはできず、《不意打ち又佐》は引き下がった。

 

「さらに、ゴゴゴゴライアスのモンスター効果によって、自分フィールドのモンスターの守備力は800ポイントアップする!」

 

 

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》:守備力3000→守備力3800

 

 

《不意打ち又佐》:攻撃力3000

 

 

草薙遊士:LP3000→LP2200

 

 

「そして…《不意打ち又佐》は、バトル中に2回攻撃する効果を持っていたよな!」

 

又佐が再びムラサメブレードを振り上げようとしたその瞬間、又佐とコマンド・ナイトがその場から姿を消した。

 

「なにっ!?消えた!」

「速攻魔法、《ブレード・サクフリファイス》!」

 

 

《ブレード・サクリファイス》

速攻魔法

 

 

「戦闘ダメージを受けた時、俺の場のモンスター2体をリリースして、自分の手札かデッキから、レベル7以上の同じ種族のモンスター1体を特殊召喚できる!リリースしちまえば、攻撃はできねえな!」

「逃げたって訳か。」

 

装備魔法も含めると実に3枚のカードを一度に失った(発動した《ブレード・サクリファイス》を含めれば4枚)のを見たクラウドは、そこまでして何のカードを呼び出すのか一瞬は『気になった』ものの、すぐに『悟った』。

 

「レベル7以上の戦士族…まさか!!」

 

「デッキから現れろ!俺の切り札、《剣聖-ライジング・ソード》!!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》

通常モンスター

レベル7/光属性/戦士族/攻撃力2400/守備力2000

未知の力を持った剣聖。その力は、昇華され続けるといわれている。

 

 

全身を褐色の鎧で包み、青白い光を放つ刃を持つロングソードを右手で握った青年。兜をかぶっているため、その髪型を捉えることはできなかったが、その眼差しからはどこか熱いものを感じる。

 

「何だ…こいつ…」

「お前も感じるか?こいつのプレッシャーを!!」

「訳わかんねえこと言いやがって!バトルフェイズ中の特殊召喚なら、ライジング・ソードにも、《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》を攻撃してもらうぜ!」

 

「残念だったな。《ブレード・サクリファイス》を発動したのがバトルフェイズだった場合、バトルフェイズは終わりだぜ!」

「チッ。」

「さらに俺は装備魔法、《ハードヒッター》を発動!これで俺のモンスターが相手の攻撃表示モンスターと戦闘を行う場合、そのモンスターの戦闘またはカード効果で破壊されない効果を無効にする!」

「何だと!?それじゃ、ナンバーズを、ナンバーズ以外のモンスターで…」

「そうさ!倒せるって訳だ!」

 

 

《ハードヒッター》

装備魔法

特殊召喚したモンスターにのみ装備可能。装備モンスターが相手の攻撃表示モンスターと戦闘を行う場合、相手モンスターの、「戦闘またはカード効果で破壊されない」効果を無効にする。また、装備されているこのカードがフィールドを離れた場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「ターンエンド!(0)」

<遊士:伏せなし サニー:伏せなし>

 

遊士がターンエンドを宣言したその瞬間、サニーが自分のターンに入るよりも前に、2人の間に、つまりデュエルリング中央に雷が降り注いだ。

 

「うおっ!?」

「な…なんだ!?ま…まさか…」

 

デュエルリング中央にはマンホールほどの大きさの水溜りのようなものができて、そこから今度は光が真上に昇った。

 

その光は柱となり、一瞬だけ眩い光を放ったが、すぐにその柱の中央にある(いる)生命体らしきものに目が留まった。

 

眩い光の中で『それ』を視認することができたのは、『それ』の色が黒かったからであろう。

 

「遂に来たぜぇぇぇぇ!!」

 

光の柱が消え去り、そこに残ったものは、宙に浮き、デュエルリングで向かい合う2人や観客、その場にいるモンスター、ナンバーズたちを見下ろす人型の生命体であった。

 

「な…なんだ、あれ!?」

「浮いてる!?」

 

「た…大したトリックだな…この沢渡様をビビらせるなんて!!」

「そういうのはいいってばもう。」

「しかし…あいつは一体!?」

 

墨というほどは黒くないものの、グレーというほど光のある色をしている訳でもない。『それ』いや、『彼』は、けたたましい笑い声を上げ、話し始めた。

 

「待っていたぜ!俺がナンバーズの力を利用して、この次元にリンクできる日をよぉ!礼を言うぜ、サニー・キッド!」

「な…何だお前は!?」

 

 

「俺は…そうだなぁ……ダークアストラルとでも名乗っておくぜ!!」

 

 

「おおーっと!いきなり上空にダークアストラルという生命体が現れたぞぉぉぉぉ!え?ビデオに映らない?どういうことだぁ?」

「まだこの次元には完全にリンクできた訳じゃねえのか。」

 

「おいてめえ!俺とサニーは今デュエルしてるところなんだ。邪魔すんじゃねえ!」

 

遊士が上空のダークアストラルに向かってそう叫ぶが、彼は涼しい顔をしてそれを聞き流した。

 

「そうかいそうかい。そいつは悪かったなぁ。けどな、俺はこいつが呼び出した3体のナンバーズに用があって、ここに来たんだよ!返してもらうぜ、俺のナンバーズを!!」

 

「何だと!?俺の3体のナンバーズを…!?」

「俺たちの次元から奪ったモンなんだろ、なぁ?早く渡せ!」

 

サニーは黙って俯いてしまった。自分のナンバーズを呼ぶという行いが、異次元からの追跡者まで呼ぶ結果になるとは、思ってもみなかったのだ。

 

もっとも、ナンバーズは目の前にいる黒い生命体によって、「呼ばされた」のだが…

 

口を閉じているサニーの前で、遊士が怒鳴った。

 

「俺はあいつとデュエルしてるっつってんだろ!引っ込んでやがれ!」

「それはできねえ!せっかくここまで来たのに、黙って帰る訳ねえだろ!」

「そろそろカタが着くんだよ!」

「んなこたぁ俺には関係ねえ!俺には時間がねえ!」

 

(そう。俺には時間がねえ。俺がこの次元に来れたってことは…あいつも俺を追って、いや、ナンバーズを追って来るに違いねえ。)

 

ダークアストラルは左腕を思い切り振り下ろすと、デュエルディスクが装着され、デュエルの体勢を取った。もちろん、宙に浮いた状態で。

 

「俺もデュエルに入れてもらうぜ!バトルロイヤルモードだぁ!」

 

そう言うと、まるでこの大会でバトルロイヤルモードが認められているかのように、デュエルリングのディスプレイには、Battle Royal Modeと表示され、青色を基調としたデュエル画面の表示から、紫色を基調とした表示へと変わった。

 

「な…なんだよ、コイツは!?」

「バトルロイヤルモード?聞いてねえぞ!」

 

「当たり前じゃねえか!俺が力を使って、モードを書き換えたんだからなぁ!さあ始めるぜ!デュエルだぁ!!」

 

 

草薙遊士    :LP2200

サニー・キッド :LP900

ダークアストラル:LP4000

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《ヌメロン・カーニバル》
通常罠
相手ターンで、自分の墓地に存在するエクシーズモンスターを任意の枚数ゲームから除外して発動する。除外したモンスターの数と同数の「No.」と名の付いたモンスターを自分のエクストラデッキから特殊召喚する。その後、このカードをこの効果で特殊召喚したモンスター1体の下に重ねて、エクシーズ素材とすることができる。また、このカードを発動したターン、攻撃可能な相手モンスターは自分フィールド上の「No.」と名の付いたモンスターに攻撃しなければならない(攻撃対象となるモンスターは、このカードを発動したプレイヤーが決める)。


<次回の最強カード>
《No.96 ブラック・ミスト》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク2/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力1000
レベル2モンスター×3
このカードは、「No.」と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されない。このカードが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に一度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。その相手モンスターの攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする。


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第12話-ダークアストラル乱入!強襲のブラック・ミスト!

草薙遊士

 

・LP2200

・手札0枚

・(モンスター)《剣聖-ライジング・ソード》(ATK2400)(+)

・(魔法・罠)《ハードヒッター》(+)

 

 

サニー・キッド

 

・LP900

・手札0枚

・(モンスター)《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》(DEF3800)ORU1/《No.55 ゴゴゴゴライアス》(ATK2400)ORU0/《No.59 背反の料理人》(ATK2300)ORU0

・(魔法・罠)1枚(《戦士の生還》が伏せられてます)

 

 

ダークアストラル

 

・LP4000

・手札5枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

会場は騒然としている。運営側も話し合い、この異常な事態に、デュエルの中止まで検討しているが、運営側の把握しているデュエル・ステータス・モニター(今現在のデュエルの状況を表示するモニター)にはダークアストラルについての一切の情報がない。

 

言い換えれば、大会運営側から見ると、ダークアストラルはデュエルに参加している状態ではないことになっており、デュエルを中止しても、デュエルが続く可能性があるのだ。

 

彼一人のデュエルが…

 

今の彼の様子からして、一人でのデュエル、一人でデュエルモンスターズを召喚する状況が続けばどうなるかを予想するのは難くはないことだ。そのため、運営側も軽率にデュエルを中止する訳にもいかない。

 

「デュエルは中止すべきだろう!」

 

という会場にいる人々の声に対しても、大会運営者の一人、「セイ」という男はこう答える。

 

「ここでデュエルを中止すれば、ダークアストラルと名乗る男が一人で暴れる可能性が高いです。ここは、デュエリストを信じましょう。」

 

「おいおいそんなのアリかよ!」

「安全第一だろうが!」

 

「ここでデュエルを中止して、ダークアストラルが暴挙に出たらどうするつもりですか!?それの方が、我々としては不安です!」

 

そうは言うものの、やはり人々はデュエルの内容に興味津々だった。デュエルリングの周囲にいる大半の人は、彼ら3人のデュエルに釘付けだ。

 

「俺のタァァァァァン!(6)俺は手札から、《マリスボラス・スプーン》を墓地に送り、《マリスボラス・フォーク》を特殊召喚!(4)」

 

 

《マリスボラス・フォーク》

効果モンスター

レベル2/闇属性/悪魔族/攻撃力400/守備力400

自分のメインフェイズ時、手札からこのカード以外の悪魔族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

 

 

「さらに手札から、《マリスボラス・ナイフ》を通常召喚!(3)」

 

 

《マリスボラス・ナイフ》

効果モンスター

レベル2/闇属性/悪魔族/攻撃力600/守備力100

このカードが召喚に成功した時、自分の墓地から「マリスボラス・ナイフ」以外の「マリスボラス」と名の付いたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

 

「このモンスターの召喚時、墓地から《マリスボラス・ナイフ》以外のマリスボラスモンスターを特殊召喚できる!来い!《マリスボラス・スプーン》!!」

 

 

《マリスボラス・スプーン》

効果モンスター

レベル2/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力500

このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合に「マリスボラス・スプーン」以外の「マリスボラス」と名のついたモンスターが自分フィールド上に召喚・特殊召喚された時、自分の墓地から悪魔族・レベル2モンスター1体を選択して特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。「マリスボラス・スプーン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「レベル2のモンスターが3体…?」

「エクシーズ召喚をするつもりか!」

「当然だ!俺が何を求めてここにやって来たと思ってんだよ!俺は3体のモンスターで、オーバーレイ!!」

 

 

現れろ、我が分身!漆黒の闇からの使者!《No.96 ブラック・ミスト》!

 

 

《No.96 ブラック・ミスト》:ランク2/攻撃力100

 

 

「ナ…ナンバーズ!!」

「まさか、本当に異次元からやって来たってのかよ!」

 

サニーが思わずそう言うと、ブラック・ミストは舌打ちをし、苛立ちを顕にした。

 

「だからお前から奪い返しに来たっつってんだろ!ナンバーズをよ!」

「でも、お前のナンバーズは攻撃力100しかねえじゃねえか!俺の3体のナンバーズは倒せないぜ!」

「だったらこいつの力を見せてやるよ!ブラック・ミストで、No.59 背反の料理人を攻撃!」

 

ダークアストラルの目の前に現れた漆黒の塊が、体を海老反りのような状態にし、その体の中央にある口のような部分に、オーバーレイユニットを取り込んだ。

 

いくら息巻いている様子とは言え、攻撃力の差は2200。その現状を見た遊士は、疑問を覚えていた。

 

「自分より高い攻撃力を持つモンスターに攻撃だと?」

「この瞬間、ブラック・ミストの効果発動ォ!オーバーレイユニットを1つ使うことで、戦うモンスターの攻撃力を半分にし、その数値分だけ、このカードの攻撃力をアップさせる!!」

 

 

シャドー・ゲイン!!

 

 

《No.59 背反の料理人》  :攻撃力2300→攻撃力1150

《No.96 ブラック・ミスト》:攻撃力100→攻撃力1250

 

 

「何だと!?俺のナンバーズが!!」

「これで俺のブラック・ミストの攻撃力がお前のモンスターの攻撃力を上回ったぜ!くらえ!ブラック・ミラージュ・ウィップ!!」

 

腹部にある口のようなところから2本の触手を出し、背反の料理人を突き飛ばし、撃破した。

 

 

サニー・キッド:LP900→LP800

 

 

「ナンバーズが…やられた。だ…だけど、まだ俺の場には2体のナンバーズが残ってるぜ!」

「速攻魔法、《アサルト・ナンバーズ》を発動!(2)」

 

 

《アサルト・ナンバーズ》

速攻魔法

 

 

「バトルでモンスターを破壊したナンバーズは、もう一度だけ続けて攻撃できる!さあ、今度はゴゴゴゴライアスを攻撃だ!」

「ナンバーズのサポートカード!?まさか…お前…」

 

「今さら気付いたのかよ!お前のエクストラデッキにナンバーズを入れたのは、お前のデッキに《エクストラ・ディザスター》と《ヌメロン・カーニバル》を入れたのは…

 

 

俺だよ!」

 

 

すぐに声は出なかった。ここまで自分が彼の掌の上で踊らされていたことを認識するには、時間がかかった。

 

「ブラック・ミストの効果により、もう1つのオーバーレイユニットを使い、相手モンスターの攻撃力を半分にし、その数値分だけ、このカードの攻撃力を上げる!」

 

 

《No.55 ゴゴゴゴライアス》:攻撃力2400→攻撃力1200

《No.96 ブラック・ミスト》:攻撃力1250→攻撃力2450

 

 

「くらえっ!ブラック・ミラージュ・ウィップ!!!」

 

「俺は…俺はッ!!う…うわああああああっ!!」

 

 

 

サニー・キッド:LP800→LP0

 

 

 

先ほどからMCの声は全く聞こえない。ダークアストラルが場を支配している状況で、彼の実況も解説も必要はないのだが、サニーが敗れたことに対するコメントもない。

 

ブラック・ミラージュ・ウィップの一撃を受け、4メートル程の高さのデュエルリングからアスファルトに落ちたサニーを見た遊士は、自分のデュエルディスクのプラグを抜き、すぐにリングを降り、彼の元へと駆け寄った。

 

「おい!サニー!!しっかりしろ!」

 

「話にならねえな。てめえみたいな奴に、ナンバーズは使いこなせねえんだよ。」

「てめえ…よくも俺たちのデュエルを…!!」

「だから言ってんじゃねえか。ナンバーズを取り返すってな!あと一つ用事を済ませたら帰るから、離れてろ……よっ!!」

 

ダークアストラルが手から衝撃波を出すと、気を失っているサニーの体を抱える遊士が観衆の中へと投げ出された。

 

「どあっ!!」

 

「遊士!!」

 

 

「さ、返してもらうぜ。お前のナンバーズ…」

「クッ!まずい!」

 

クラウドは咄嗟にその場を離れ、サニーの元へと向かった。ダークアストラルが手を伸ばすと、ナンバーズが3枚、彼のデュエルディスクの上から独りでに動くかと思ったその瞬間であった。

 

奪われてはいけないものは、3枚のデュエルモンスターズのカード。クラウドはそれを防げるはずもないと思った。正体云々よりも、ナンバーズを奪われるのを防ぐことを考え、少しでも早く動くべきだったと思い、後悔し始めたその瞬間…

 

 

『そうはいかない!!!』

 

 

透き通ったようなその声と共に、ナンバーズとダークアストラルの間に白い剣がブーメランのようにして投げられると、ナンバーズはサニーのデュエルディスクの上に留まった。

 

「今度は何だ!?」

「チッ!!思ったより早かったな。」

 

クラウドが足を止め、遊士が観客に起こされ、デュエルリング下にいるサニーの元へと戻ろうとすると…

 

空中には、ダークアストラルの透き通った青版とでも言うべきか、『青いダークアストラル』とでも言うべき生命体が漂っている。

 

「また、浮いている奴がいるぞ!!」

「ど…どうなっているんだ!?」

 

観客席は相変わらず騒然としている。しかしその中で、青い光を放つ生命体は声を張り、自分が何者であるのかをその場にいる人々に言い渡した。

 

「我が名はアストラル。ナンバーズを取り戻しに来た。No.96!お前の好きにはさせない!」

 

 

「アストラル…だと?」

「私もこのデュエルに加えさせてもらう!」

「お前…!!」

 

 

草薙遊士    :LP2200

アストラル   :LP4000

ダークアストラル:LP4000

 

 

「私のターン!(6)私は、永続魔法、《神秘のモノリス》を2枚発動!」

 

 

《神秘のモノリス》

永続魔法

このカードはランク4モンスターエクシーズのエクシーズ召喚に必要な素材1体分の代わりにできる。

 

 

「このカードは永続魔法だが、ランク4のモンスターエクシーズの素材にできる!」

「それを2枚ってことは…ランク4を早速呼ぶつもりか!」

「いくぞ!私は、2枚の《神秘のモノリス》でオーバーレイ!!」

 

 

白き翼に望みを託せ!No.39!希望皇ホープ!!

 

 

《No.39 希望皇ホープ》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2000

レベル4モンスター×2

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。自分または相手のモンスターが戦闘を行う攻撃宣言時またはバトルステップ時に、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

 

「ナンバーズ…39…また…ナンバーズか。」

「きやがったな、ホープ。」

 

白を基調としたボディに、ところどころ黄色の部分が見られる。ホープはブラック・ミストを捉えると、その視線を離すことなく、彼の持つ剣を天に掲げた。

 

「バトルだ!ホープ!ブラック・ミストを攻撃!」

 

 

ホープ剣・スラッシュ!!

 

 

「ブラック・ミストの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、モンスターが攻撃をする時、その攻撃力の半分を頂くぜ!シャドー・ゲイン!!」

「無駄だ!速攻魔法、《オーバーレイ・フラッシュ》!」

 

 

《オーバーレイ・フラッシュ》

速攻魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体のエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動することができる。自分のエクシーズモンスターがフィールド上に表側表示で存在する限り、選択したモンスターの効果を無効にする。

 

 

「ホープのオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体の効果を無効にする!」

 

 

《No.39 希望皇ホープ》:ORU2→ORU1

 

 

「何っ!?モンスター効果を無効にする!?それじゃ、上がった攻撃力も元に戻っちまうじゃねえか!」

「その通り!ブラック・ミスト!!これ以上お前の好きにはさせない!」

「くそぉぉぉ…アストラルゥゥ!!」

 

 

《No.96 ブラック・ミスト》:攻撃力2450→攻撃力100

 

 

ダークアストラル:LP4000→LP1600

 

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!(2)」

<遊士:伏せなし アストラル:伏せ1枚 ダークアストラル:伏せなし>

 

「やりやがったな、アストラル!!」

「おい!!俺のターンだ。引っ込んでろ。」

 

遊士は低い声でそう言った。ダークアストラルが舌打ちをすると、遊士は震えている手を見つめ、拳を作り、自分のターンを始めた。

 

「俺のターン!!(1)」

 

「……」

 

アストラルは黙ったまま、冷たい瞳で遊士を見下ろしている。彼がデュエルをしている理由はあくまでダークアストラルを倒すこと。遊士と戦おうとしている訳ではない。

 

しかしその敵意のない表情、いや、遊士からすれば、興味の無さそうな表情、見下した表情が、彼の怒りの炎を盛らせた。

 

「装備魔法、《団結の力》を装備!装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップ!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400→攻撃力3200

 

 

「バトルだ!ライジング・ソードで、希望皇ホープを攻撃!!」

 

会場の人の多くがダークアストラルに攻撃をし、彼のライフを0にしようとするだろうと思ったが、攻撃対象はホープであった。その行動に、天竜崎は思わず声をあげた。

 

「おい、どうしたんだよ遊士!?」

「ダークアストラルのライフを0にするチャンスなのよ!」

 

天竜崎たち6人は遊士がデュエルリングから降りて、柵の目の前で、戦っているが故に、目の前で彼のデュエルを観ている。彼らの声は、遊士に届いていた。

 

「俺には…許せねえ!許せねえんだよ!」

「何がだよ遊士!?」

 

天竜崎に対して鋭い視線を向け、遊士は怒鳴った。

 

「ナンバーズに決まってんだろ!!」

 

「ナンバーズ……」

 

「てめえらが何でナンバーズを求めてるのかは知らねえ。けどな!このデュエルは、俺とサニーのデュエルなんだよ!!」

「君は…この一戦に全てを賭けているのか?」

 

無表情なアストラルの、彼に向けられた最初の一言であった。

 

「当たり前だろ!俺はな、デュエルアカデミアでも落第ギリギリの成績、デュエルも古いって言われる、授業中も良く寝てる、提出物もロクに出さねえ!!」

「あ…あいつ、何言ってんだ?」

 

「遊矢みたいね。」

「俺はきちんと授業受けてるよ!!」

 

 

「だけど…俺はアカデミアの代表生徒としてここに立って初めて理解した!俺がここに立っていられるのは、多くの人がうっせーから、余計な世話を焼くからだって!」

「それはつまり…君は他人に感謝しているということか?」

「なっ…!!ああそうだよ!!だから俺は、このデュエル、負ける訳にはいかねえのに、邪魔をしやがって!!アストラルだか何だか知らねえが、覚悟しやがれ!!」

 

褐色のオーラを纏ったライジング・ソードが、剣を振り上げ、その衝撃波による攻撃を行った。攻撃が通れば、ハードヒッターの効果で、ホープはやられてしまう。それがわからないアストラルではない。

 

「私も、この一戦に全てを賭けている!!負ける訳にはいかない!ホープの効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

 

《No.39 希望皇ホープ》:ORU1→ORU0

 

 

ムーン・バリア!!

 

 

マントで自分の体を隠すようにして、ホープは剣から出た衝撃波から身を守った。

 

「君の装備魔法、《ハードヒッター》は、あくまでモンスターのバトルで破壊されない効果を無効にするだけだ。モンスターの攻撃を無効にする効果なら、無効にはできない。」

「チッ…ターンエンドだ。」(0)

<遊士:伏せなし アストラル:伏せ1枚 ダークアストラル:伏せなし>

 

「遊士とか言ったなぁ!!礼を言うぜ!俺に直接攻撃せずに、ナンバーズを倒すことを優先したことになぁ!!俺のターン!!(3)俺は手札から装備魔法、《エクシーズ・リバイバル》を発動!」

 

 

《エクシーズ・リバイバル》

装備魔法

自分の墓地のモンスターエクシーズ1体を選択して発動する。選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。

 

 

「このカードは墓地に存在するモンスターエクシーズを復活させる!来い!《No.96 ブラック・ミスト》!!」

 

 

《No.96 ブラック・ミスト》:攻撃力100

 

 

「またこいつか!」

「さらに面白いものを見せてやるぜ!《RUM-バリアンズ・フォース》を発動!(1)」

 

 

《RUM-バリアンズ・フォース》(アニメ版)

通常魔法

自分フィールド上のモンスターエクシーズ1体を選択して発動する。選択したモンスターよりもランクが1つ高い「(カオス)」と名のついたモンスターエクシーズ1体を、自分のエクストラデッキから、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。この効果でエクシーズ召喚したモンスターエクシーズは「戦闘では破壊されない効果」を無効にする。

また、相手フィールド上に存在するモンスターエクシーズ1体を選択して発動できる。選択したモンスターのエクシーズ素材全てを、このカードの効果でエクシーズ召喚したモンスターエクシーズの下に重ねてエクシーズ素材とする事ができ、選択したモンスターの攻撃力は、このカードの効果で奪われたエクシーズ素材の数×300ポイントダウンする。

 

 

「来たか…バリアンズ・フォース!」

 

 

そのデュエルの様子を会場のモニターで見ていたエクシーズ使いのデュエリストは、彼が魔法カードを使った瞬間、歩みを止めた。

 

「ランクアップマジックだと…?俺以外にそのカードを使う奴が…奴は、エクシーズ次元からのデュエリストなのか?」

 

関心を示した黒咲は、デュエルリングへと急いだ。

 

 

「何だ!?」

「このカードの効果で、俺のモンスターエクシーズをランクアップさせ、それよりも1つランクが高いモンスターエクシーズへとカオス化させる!ランク2の、ブラック・ミストでオーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.96!混沌なる嵐を巻き起こし、今ここに舞い降りよ!ブラック・ストーム!

 

 

「カオスナンバーズ…!?一体何だ?」

 

二足歩行であったはずだが、バリアンズ・フォースの影響を受けたCNo.96は、四足歩行で移動する猟犬のようであった。邪悪な意思を纏った「それ」は、飢えている。明らかに…。

 

 

《CNo.96 ブラック・ストーム》:ランク3/攻撃力1000

 

 

「もうホープにオーバーレイユニットはねえ!いけっ!ブラック・ストーム!」

「また自分よりも高い攻撃力を持つモンスターにバトルを…まさか!」

「その通り!このモンスターもブラック・ミストのように、バトルする際の効果がある!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体の攻撃力を0にし、その攻撃力分だけ、このカードの攻撃力がアップする!!」

「何だと!?」

 

 

カオス・アブゾーバー!!

 

 

猟犬で例えるのならば、その舌の部分がホープに巻き付いて縛り上げると、黒い瘴気がホープの力を奪っていくのが見える。

 

 

《No.39 希望皇ホープ》:攻撃力2500→攻撃力0

《CNo.96 ブラック・ストーム》:攻撃力1000→攻撃力3500

 

 

「さあ、その爪で、ホープを引き裂け!」

 

 

ダークネス・カオス・クロウ!!

 

 

「ぐああああああっ!」

 

 

 

アストラル:LP4000→LP500

 

 

 

ホープが破壊され、爆風で大きく吹き飛んだアストラルは、宙を舞ったが、1回転すると、すぐに体勢を立て直した。

 

「まだだ。まだ私のライフは残っている!」

「相変わらず往生際が悪いな!俺はこれで、ターンエンド!(1)」

<遊士:伏せなし アストラル:伏せ1枚 ダークアストラル:伏せなし>

 

「くっ…私のターン!」

 

自分のターンを始めるよりも前に、アストラルは遊士の方へと視線を落とした。遊士はその視線を感じたのか、自然とアストラルと目を合わせた。

 

「草薙…遊士。」

「ン…?」

 

「君が絶対に負けられない戦いであったように、私にとっても負けることは許されない。私にとって、ナンバーズはとても大切なカードなのだ。」

 

冷静にそう語りかけるアストラルに、遊士は激する気にはなれなかった。

 

「人のデュエル邪魔してまで…何でそんなに大切なんだよ?」

 

 

「ナンバーズは…私の、記憶のピースなのだ。」

 

 

「は?記憶のピース…?」

「そう言っても信じてもらえないのはわかっている。だから遊士。私が言いたいのはそれではなく、これだ。」

「これ…?」

 

デッキの一番上のカードに指を置いたアストラルの言う、これが何のことかは、一瞬ではわからなかった。

 

「デュエリストならば、言葉は不要だろう。私の覚悟を、このドローで見せる!いくぞ!!私のターン!!(3)」

 

弧を描くようにしてドローした。彼のドローした軌跡が見える訳でもなく、光輝いたドローであった訳でもないのだが、遊士には、彼が何かこの局面で重要なカードをドローした気がした。

 

「私がナンバーズを奪還することを待っている人がいる。この次元ではなく、別の次元で!!彼の元へと戻るため…私は…No.96!お前を倒し、ナンバーズを取り戻す!罠カード、《エクシーズ・リボーン》!!」

 

 

《エクシーズ・リボーン》

通常罠

自分の墓地のエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

 

「墓地からモンスターエクシーズ1体を呼び戻す!蘇れ、希望皇ホープ!」

「蘇ったか。」

 

「そして私が覚悟を示すドローで引いたカードは…《RUM-ヌメロン・フォース》!私はこのカードを…発動するっ!!」

 

 

「ヌメロン…フォース!?」

 

 

(次回に続く)

 

 

 




<今日の最強カード>
《No.96 ブラック・ミスト》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク2/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力1000
レベル2モンスター×3
このカードは、「No.」と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されない。このカードが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に一度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。その相手モンスターの攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする。


<次回の最強カード>
《No.39 希望皇ホープ》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2000
レベル4モンスター×2
このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。自分または相手のモンスターが戦闘を行う攻撃宣言時またはバトルステップ時に、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。



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第13話-次元を超えた出会い

草薙遊士

 

・LP2200

・手札0枚

・(モンスター)《剣聖-ライジング・ソード》(ATK2400)(+)(+)

・(魔法・罠)《団結の力》(+)/《ハードヒッター》(+)

 

 

アストラル

 

・LP500

・手札2枚

・(モンスター)《No.39 希望皇ホープ》(ATK2500/ORU1)

・(魔法・罠)《RUM-ヌメロン・フォース》(発動中)

 

 

ダークアストラル

 

・LP1600

・手札1枚

・(モンスター)《CNo.96 ブラック・ストーム》(ATK3500/ORU0)

・(魔法・罠)なし

 

 

「ヌメロン・フォースは、私の場のモンスターエクシーズ1体をランクアップさせる!」

「何だと…?」

「希望皇ホープで、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.39!希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ!《希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》!

 

 

《CNo.39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》

エクシーズモンスター

ランク5/光属性/戦士族/攻撃力2800/守備力2500

レベル5モンスター×3

このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。また、このカードが「希望皇ホープ」と名のついたモンスターをエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●このカードが相手の表側表示モンスターに攻撃宣言した時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。ターン終了時まで、その相手モンスターの効果は無効化され、このカードの攻撃力はその相手モンスターの攻撃力分アップする。

 

 

白を基調としたボディに黄色のフレームの希望皇ホープが、腕部、肩部が紅く塗られたホープへと進化を遂げた。色が変わっただけではなく、少しマッシブになったように見える。

 

「このタイミングで、ヌメロン・フォースだとぉ!?」

 

状況がわかっているダークアストラルは、勝利を確信した顔のアストラルと対照的に、苦い顔をしていた。

 

「さらに、ヌメロン・フォースの効果により、エクシーズ召喚に成功した場合、召喚したホープレイ・ヴィクトリー以外のカード効果は、全て無効になる!」

 

 

《CNo.96 ブラック・ストーム》:攻撃力3500→攻撃力1000

 

 

「バトルだ!ホープレイ・ヴィクトリーで、ブラック・ストームを攻撃!」

 

 

ホープ剣・ダブル・ヴィクトリー・スラッシュ!!

 

 

脚部に収納されているソードを2本、それぞれの手で取り出したホープレイ・ヴィクトリーは、「V」の字を描くようにして、それぞれの腕を振りおろし、猟犬のようなブラック・ストームの額(に相当する部位)を切り付けた。

 

そしてホープレイ・ヴィクトリーは一歩下がり、再び「V」の字を描くようにしてブラック・ストームを破壊した。

 

 

「ぐああああああっ!!」

 

 

 

ダークアストラル:LP1600→LP0

 

 

 

先ほどから声を発していなかったMCのグローリーがマイクを拾い上げ、ハウリングを起こすような勢いで実況を再びし始めた。

 

「おおおおおおっ!!!決着だぁぁぁ!!この乱入によって行われたバトルロイヤルデュエルも、ランクアップして現れた、ホープレイ・ヴィクトリーによって決着がついたぁ!」

 

「ふざけんなグローリー!!」

「ひぃっ!?な…なんですか!?」

 

素っ頓狂な声を上げたマイクに対し、怒りを顕に遊士が続けた。

 

「まだ決着はついてねえ!俺はこいつを倒さねえと気が済まねえんだよ!デュエルは続けさせてもらう!」

「君がその気ならば、私は構わない。ヌメロン・フォースの効果は君のフィールドにも及んでいる。装備魔法、団結の力とハードヒッターの効果は無効になっており、ライジング・ソードの攻撃力は2400に戻っている。」

「上等だぜ。俺のフィールドには、ライジング・ソードがいる!!今こそ見せてやるぜ!ライジング・ソードが導く、奇跡のドローを!!」

 

大きく吹き飛ばされて蚊帳の外に居たダークアストラルが、2人の間に割り込んだ。

 

「おい!!お前ら無視してんじゃねえ!」

「無視などしていない。私は今から、ナンバーズを回収させてもらおうと思ったところだ。」

 

アストラルは、先ほどダークアストラルがサニーに対して行ったように、手を前に翳すと、大気が揺れ、横たわるサニーのデュエルディスクの上にあるナンバーズがまたしても独りで宙に浮いた。

 

「サニー!!」

 

血相を変えてクラウドが柵を飛び越えると、それと同時に、ダークアストラルが叫びをあげた。

 

「させるかよ!!くそっ!こうなったら…!!」

 

ダークアストラルが右腕を天に掲げると、曇り空から、雷が3本ほど降り注いだ。

 

「な…なんだ!?」

 

天変地異か、この世の終わりかと思った観客はスタッフの指示など聞くことはなく、出口を求めて一目散に逃げ出そうとする。

 

「きゃあっ!」

「助けてくれ!」

「死にたくない!」

「なんなんだよあれは!?」

 

「ヘッヘッヘッヘッ!!この世をカオスに陥れてやる!アストラル!お前のせいだ!お前が邪魔をしたからだ!」

「そうはいかない!!ナンバーズたちよ!私に力を貸してくれ!!」

 

サニーの元から背反の料理人、ダイヤモンド・クラブ・キング、ゴゴゴゴライアスの3枚のナンバーズがモンスターとして実体化し、ダークアストラルを取り囲んだ。

 

「ナンバーズども!おのれっ!俺を裏切るのか!」

「元々君のカードではない!諦めろ!」

「だったらナンバーズ共々、地獄に送ってやるっ!再び我が元に現れろ!ブラック・ストーム!!」

 

デュエルには敗北したダークアストラルがエクストラデッキからブラック・ストームのカードを取り出し、アストラルに見せると、そのイラスト部分から猟犬のようなブラック・ストームが再び現れた。

 

紫色の雷が降り注ぎ、光が広がっていく中、その様子を立ち尽くした状態で見ている遊士を捉えた天竜崎が声をかけた。

 

「おい!遊士!!何してんだ!あぶねえぞ!」

「逃げるわよ、遊士!!」

 

彼らの声をまるで聞いていない遊士。ユキは確かに、遊士が怒りに燃える瞳で、ブラック・ストームの前に立ちはだかるところを見たのだ。

 

「遊士…」

 

 

「邪魔するなっつってんだろうが!!!!いけぇっ!ライジング・ソード!!」

 

 

「ただのモンスターに、俺は倒せな……!?」

「これは!?」

 

ライジング・ソードが振り下ろした剣の剣先から、光が漏れ、それが徐々に広がっていく。

 

「ライジング・ソード!?ランクアップしたモンスターを、退けるだと!?」

 

ランクアップマジックに興味を持ち、デュエルを観に来ていた黒咲は、周りの客が逃げている中、自分を光が包み込んでいることに気が付いていたのだろうか。

 

広がりつつある光が、遊士、アストラル、ダークアストラルを包み込んだ。

 

「遊士…遊士!!」

「ユキ。ユキーッ!!」

 

数センチに見えた。彼と彼女の手と手が触れあうまでは。しかしその刹那、その距離は数メートル、数キロメートルになったかのように見えたのだ。

 

『見えた。』そう表現したものの、彼らがそれを肉眼で感知することができる瞬間は、一瞬で終わりを告げた。

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

太陽の光が眩しい。遊士が意識を取り戻してから、最初に得た感想はそれだった。

 

「…」

 

自分は意識を失っていたはずだが、自分の手が触れているものはベッドではなく、アスファルトの床でもなく、道端に生えている雑草であった。

 

見覚えのない場所に寝ていたことに驚き飛び起きた遊士の脳裏には、様々なことが過り、消えていく。

 

「ここは…どこだ?俺は確か…」

 

 

「君は、ダークアストラルとの戦いの最中に、光に包まれ、飛ばされたのだ。」

 

幸運にも、遊士たちの次元と気温はほぼ同じであり、梅雨時のややジメジメした感じを彼は覚えたのだ。

 

夢の続きを見ているかのような感覚に陥ったのも一瞬、すぐにその声の主がアストラルだということがわかった。彼の目の前で、アストラルは腕組みをして宙を漂っているのだ。

 

「アストラル!!」

「気が付いたか。」

「俺は…ここは…別次元!?……一体どこなんだ!?」

 

 

「エクシーズ次元。」

 

 

「エクシーズ…次元?何言ってんだ?」

「そうか。君は、次元というものについて、知る所はないのか。」

「おい。ふざけたこと言ってんじゃねえ!」

「ふざけてなどいない。この世界は、いくつかの次元に分かれている。君たちは、スタンダード次元というところに住んでおり、我々はエクシーズ次元に住んでいるのだ。」

 

淡々と真顔で話すアストラルに対し、やはり遊士はパッとしない。

 

「どういうことだよ?」

「今私がいった通りだ。この世界は、いくつかの次元に分かれているのだ。」

「はぁ?そんな話信じられる訳ないだろ?」

 

「そうかな…?もう既に君は摩訶不思議な体験をしていると思うが。」

 

アストラルはそう言い、人差し指と中指を目の前に翳すと、その間に《No.39 希望皇ホープ》のカードが現れた。

 

「ナンバーズ…!」

「そうだ。君はもう既に、異次元との接触をしているのだ。」

「クソッ。どうやったら戻れるんだ!?」

 

「この次元には、異次元に行くことのできるいわゆるワープポイントのような場所がいくつかある。そこから…」

 

アストラルの話を遮り、遊士は焦りに満ちた表情で彼に迫った。

 

「だったら!すぐにそこに俺を連れて行ってくれよ!」

「もちろんそのつもりだ。だがその前に、その場所がどこかを調べなければならない。」

 

冷静な物言いのアストラルと、冷静に会話を進めるが、やはり遊士は腑に落ちなかった。彼にとってここに来ることが不本意であるからという理由だけではない。

 

トーナメント一回戦のデュエル中に彼らエクシーズ次元の者たちに乱入されたからである。

 

 

遊士はアストラルとともに、エクシーズ次元の主要都市ハートランドに行き、その大通りを越え、さらに橋を渡り、都心部から少し離れたところにある一軒屋に辿り着いた。

 

「ここは誰の家なんだよ?」

「我々の家だ。」

「九十九って書いてあるじゃねえか表札。」

「心配することはない。」

「ったく…滅茶苦茶心配だよ。」

 

インターホンを鳴らそうとするよりも前に、遊士は後ろから声をかけられた。少年の声がした。

 

「家に何か用………って、アストラル!!!」

「えっ?」

「うおおおお!戻って来たのかアストラル!どうだった!ナンバーズは!見つかったのか!?異次元に行ったんだよな!?お土産は!?レアカードとかねえのか!?」

 

いきなり目をウルウルさせた海老のような特徴的な髪型の少年は、遊士と目を合わせると、沈黙した。

 

「あ…」

 

一般人にはアストラルは見えないという認識をしている彼は、自分のことを変人扱いする人がまた一人増えるという思いが沸き起こったのを感じていた。

 

「いや、これは…と、ところで!!俺の家に、一体何の…」

「俺だってアストラルは見えてるから大丈夫。」

「はっ!?アストラルが見える!?」

「君は相変わらず論理的ではないな。次から次へと質問をし、話題を固定化せず、それではコミュニケーションなど取れるはずがない。」

「うるせえ!!久々に会ったってのに、何だその言い草!ってか、あんた…誰?」

「突然悪いな。俺は草薙遊士。実は俺はこの次元の人じゃねえんだ。」

 

遊士はいきなり核心に触れる話をした。故意に話をしたのが、遊馬が異次元の話を信じられる人かどうかを試したからであることは、言うまでもないだろう。

 

「別次元の?」

「そう。私は、何と呼ばれているかは不明だが、ここではない別次元にナンバーズを求めて行き、そこで彼に出会った。」

「遊士が…ナンバーズを?」

「いや、彼が持っていたのではなく、彼がデュエルトーナメントで戦っていた相手が持っていたのだ。」

 

人のデュエルを妨害したことをどう捉えているのか、遊士は気になった。その後に起こったこと、ここまで来た経緯を、あまりにもアストラルが淡々と説明しているからだ。

 

遊士は九十九家に入れてもらった。玄関をから遊馬の部屋に続く階段に登ろうとすると、居間で遊馬の実姉、九十九明里に会った。

 

「こんにちは。遊馬のお友達……って、背が高いわね。高校生…?」

「あ…ハイ。草薙遊士っていいます。」

「ゆ…ゆっくりしてね。」

 

遊馬の部屋にある円卓を3人が囲み、2人はその場にあぐらをかき、1人は宙に浮き、話をしている。

 

その円卓の上には、地図が広げられており、その地図が世界地図であることはすぐにわかった。いくつかボールペンで書かれた赤い点がある。

 

「別次元に行くっていうのなら、一番近いポイントは…ここだな。」

「ハートランド倉庫か!」

「ハートランド倉庫…?」

「ここからなら、歩いて20分くらいのところ。ハートランド埠頭にある倉庫なんだ。」

「よし、じゃあ行くぜ。大会に戻らなきゃいけねえ!」

 

「待ってくれ遊士!」

 

立ち上がろうとした遊士を、アストラルが腕組みを解いて止めた。

 

「何だよ?俺には時間が…」

 

 

「そこに…別次元から来た誰かがいる。」

 

 

「何でそんな事がわかるんだよ?」

「私は人間ではないからな。」

 

曖昧な説明だが、遊士は目の前で浮いている人型の生命体を前に、何かを言う気にはなれなかった。

 

「けど、そこに誰かいるとしても、別に敵じゃないかもしれないし…デュエルをすれば、わかり合える!かっとビングだ!!」

「かっとビング…?」

「君ならそう言うと思ったよ、遊馬。よし、行こう。陽が暮れる前に!」

 

 

彼らは思いのほか早く、16時30分ごろにハートランド埠頭に着いた。倉庫の前で、遊士が相変わらずややジメジメしており、湿気の髪型への影響を気にして前髪を指で押さえたその瞬間…

 

「…?」

 

この季節にはやや暑いであろうロングコートを着た鋭い瞳の青年が、同時に倉庫のドアに手をかけていたことに3人は気が付いた。

 

 

「お前は!!黒咲隼!!」

 

 

「貴様…CDTで戦っていたデュエリスト!それに…アストラル!?」

 

「お前、アストラルが見えるのか!?ってか、遊士の知り合いなのか!?今日は訳わかんねえことが多すぎて、頭が爆発しそうだぜ!」

「君は…まさか…別次元からやって来た?」

「そうだ。俺も貴様らとダークアストラルのデュエルを観ていた。その時、貴様らのデュエルを観ようと近づき、白い光に包まれ、この次元に飛ばされた。」

 

「そこまでの推測がつくのか。君は、元々あの次元に居たのか?」

「違うな。俺は元々エクシーズ次元に居た。ここは…何次元だ?」

「ここが、エクシーズ次元だが?」

 

アストラルのその声を聞いた黒咲はそれまでの言葉の勢いを失った。合点のいかないことがあるのは、言うまでもない。

 

「バカな。エクシーズ次元は、確かにかつてはこうだった。かつては、ハートランドシティを中心とし、栄えていた。だが…今は…俺たちがいたエクシーズ次元は…」

「え、でも、ここはエクシーズ次元で間違いないよな、アストラル?」

「そうだ。次元とは、世界を包む存在。だからこの次元に、アストラル世界とバリアン世界も存在している。世界はいくつかあったとしても、エクシーズ次元は、これ一つのはずだが…」

 

視線を落とした黒咲は、黙り込んでしまったが、その瞬間に彼の目にデュエルディスクが入ると、すぐに顔を上げた。

 

 

「貴様らにはまだ聞きたいことがある!」

 

 

「何だ?」

「貴様らの使ったカード、ランクアップマジックは、どうやって手に入れた?」

 

「あぁ!あんた、カードコレクターだったのか!でもざぁんねん!ランクアップマジックは、そう簡単に手に入るモンじゃ……」

 

遊馬が得意げにそう言い続けていると、黒咲は目の前で《RUM-レヴォリューション・フォース》を遊馬とアストラルに見せた。夕陽の光がカード面に反射し、美しく輝いている。

 

「ランクアップマジック!?」

「なぜ君がそのカードを持っている!?」

 

「貴様らがどうやって手に入れたのか、全てを話してもらう!俺はエクシーズ次元でこのカードを手に入れた。戦火の中、仲間を救う、取り戻すという思いが、魔法カード、レヴォリューション・フォースを、ランクアップマジックへと変えた!」

 

「戦火の中…?」

 

双方ともがそれぞれの疑問を抱いていると、遊馬が明るい声で切り出した。

 

 

「だったら、デュエルしようぜ!」

 

 

「遊馬!」

「おい!」

 

「俺と、デュエルだと?」

「そうだ!お互いの疑問は、デュエルで解決する!これが鉄則だろ!それに、デュエルをすれば、誰とでもわかり合えるんだ!」

「デュエルをすれば、誰とでもわかり合える…だと?」

 

黒咲の脳裏によみがえったものは、自分の妹が出ているデュエル大会を観ている光景でも、好敵手と握手を交わした光景でもなく、

 

猟犬型のマシンが群れを成して仲間たちに襲い掛かっている、仲間たちをカードにしている凄惨な光景だった。

 

「ああ!デュエルをすれば、みんな仲間なんだ!」

 

 

「黙れっ!!!軽々しくそんな口を叩くな!」

 

「黒咲…」

 

「いいだろう。遊馬と言ったな。貴様のその愚にも付かない考えが、いかにぬるいかを教えてやる!そして貴様らの知っていることを、全て話してもらうぞ!」

「だったら決まりだ!デュエルディスク…セット!!Dゲイザー・セット!」

 

 

ARビジョン…リンク完了

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

九十九遊馬:LP4000

黒咲隼  :LP4000

 

 

 

「俺の先攻!(5)俺は、《ゴゴゴゴーレム》を攻撃表示で召喚!(4)」

 

 

《ゴゴゴゴーレム》

効果モンスター

レベル4/地属性/岩石族/攻撃力1800/守備力1500

フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードは、1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。

 

 

遊馬の目の前の地面から現れたのは、遊馬のデッキの代表モンスター、《ゴゴゴゴーレム》。攻撃面も守備面も優れているモンスターだ。

 

遊馬はWDCを優勝する腕前のデュエリスト。アストラルが口を出すことではないと、彼はそのデュエルを遊馬の後ろから見ている。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(3)」

<遊馬:伏せ1枚 黒咲:伏せなし>

 

「俺のターン!(6)俺は手札から、魔法カード《RR-アライブ》を発動!(5)」

 

 

《RR-アライブ》

通常魔法

 

 

「俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札からレイド・ラプターズと名の付いたモンスターを特殊召喚することができる!現れろ!《RR-ワイルド・ヴァルチャー》!(4)」

 

 

《RR-ワイルド・ヴァルチャー》

効果モンスター

レベル6/闇属性/鳥獣族/攻撃力1600/守備力2000

①:このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズにこのカードをリリースして発動できる。レベルの合計が6になるように、自分の手札・墓地から「RR」モンスター2体を選んで特殊召喚する。

 

 

「すげえ!鳥獣族デッキかぁ!」

「ワイルド・ヴァルチャーの効果発動!このカードをリリースし、手札から、レベルの合計が6になるように、レイド・ラプターズ2体を特殊召喚できる!現れろ!《RR-スカル・イーグル》!」

 

 

《RR-スカル・イーグル》:☆3/攻撃力1000

《RR-スカル・イーグル》:☆3/攻撃力1000

 

 

「そしてこの2体のモンスターをリリースし、《RR-アナザー・ファルコン》をアドバンス召喚!」(1)

 

 

《RR-アナザー・ファルコン》

効果モンスター

レベル7/闇属性/鳥獣族/攻撃力2700/守備力2300

 

 

「うおおお!でけぇ!」

 

犀ほどの巨体を持つ隼が光の中から姿を見せた。漆黒の羽根を持ち、鋭い鉤爪が時より光を放ち、長細い目が、獲物を捕らえている。

 

「《RR-アナザー・ファルコン》の効果発動!アドバンス召喚に成功した時、俺の墓地の同じレベルのレイド・ラプターズ2体を特殊召喚できる!蘇れ、《RR-スカル・イーグル》!」

 

「レベル3のモンスターが2体…来るぞ!遊馬!」

「おうっ!」

 

「2体のスカル・イーグルで、オーバーレイ!」

 

 

全てを見通す大鷲よ、黒き魂の双翼で、立ちはだかる者全てを薙ぎ払え!エクシーズ召喚!ランク3!《RR-デビル・イーグル》!!

 

 

《RR-デビル・イーグル》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク3/闇属性/鳥獣族/攻撃力1000/守備力0

レベル3「RR」モンスター×2

「RR-デビル・イーグル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上の特殊召喚された表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。この効果は相手ターンでも発動することができる。

 

 

「オーバーレイユニットとなった、《RR-スカル・イーグル》の効果発動!デビル・イーグルの攻撃力を300ポイントアップさせる!」

「なにっ!それが2枚分ってことは…!」

「そうだ。《RR-デビル・イーグル》の攻撃力は、1600にアップする!」

 

 

《RR-デビル・イーグル》:攻撃力1000→攻撃力1600

 

 

「バトルだ!アナザー・ファルコンで、《ゴゴゴゴーレム》を攻撃!」

 

「まずい!ダイレクトアタックを受けちまうぞ、遊馬!」

 

思わず遊士がそう叫んだのに対し、黒咲が被せるようにして言った。

 

「アナザー・ファルコンは、モンスターをバトルで破壊した場合、自分のデッキからレベル4以下のレイド・ラプターズを特殊召喚できる!」

「なにっ!ってことは…」

「そう。このバトルにより、お前のライフは900削られ、3100ポイント。デビル・イーグルの直接攻撃により1500。その後、そのレイド・ラプターズで直接攻撃をすれば…ライフは尽きる!!」

「くそっ!!」

 

 

「戦場でのデュエルをその身に受け、散るがいい!アストラル、遊馬!!」

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《No.39 希望皇ホープ》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2000
レベル4モンスター×2
このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。自分または相手のモンスターが戦闘を行う攻撃宣言時またはバトルステップ時に、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。


<次回の最強カード>
《RUM-クロス・フォース》
速攻魔法



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第14話-運命のクロス・フォース

九十九遊馬

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)《ゴゴゴゴーレム》(ATK1800)

・(魔法・罠)1枚

 

 

黒咲隼

 

・LP4000

・手札1枚

・(モンスター)《RR-デビル・イーグル》(ATK1600)/《RR-アナザー・ファルコン》(ATK2700)

・(魔法・罠)なし

 

 

「行けッ!《RR-アナザー・ファルコン》!!」

「トラップ発動!《ハーフ・アンブレイク》!」

 

 

《ハーフ・アンブレイク》

通常罠

フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。このターン、選択したモンスターは戦闘では破壊されず、そのモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは半分になる。

 

 

「俺のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる!」

「チッ…」

 

 

鋭いクチバシが突き刺したのは、《ゴゴゴゴーレム》ではなく、《ゴゴゴゴーレム》を覆うバリアのようなものであった。

 

 

九十九遊馬:LP4000→LP3550

 

 

「戦闘ダメージは受けたけど、デビル・イーグルの攻撃力は、《ゴゴゴゴーレム》より下だぜ!」

「俺はこれで、ターンエンドだ!(1)」

<遊馬:伏せなし 黒咲:伏せなし>

 

「よし、遊馬!《ゴゴゴゴーレム》はフィールドに残せた。エクシーズ召喚のチャンスだ!」

「ああ!俺のターン!(4)俺は手札から、《ガンバラナイト》を召喚!(3)」

 

『ガンバァァァァ!!』という声と共に、天より地上に着いたのが《ガンバラナイト》。気合い十分だが、攻撃力が0であるのが残念なところ。

 

「レベル4の《ゴゴゴゴーレム》と、《ガンバラナイト》で、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、《No.39 希望皇ホープ》!!

 

 

《No.39 希望皇ホープ》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2000

レベル4モンスター×2

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。自分または相手のモンスターが戦闘を行う攻撃宣言時またはバトルステップ時に、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

 

「これは、アストラルが使っていたカード!ナンバーズは、お前のカードでもあるということなのか?」

 

遊士が遊馬にそう尋ねると、遊馬は明るい口調で答えた。

 

「ああ!ナンバーズは、俺とアストラルの絆の証なんだ!いくぜ!ホープで、《RR-デビル・イーグル》を攻撃!」

「デビル・イーグルのモンスター効果発動!オーバーレイユニットを1つ使うことで、敵の場にいるエクシーズモンスター1体の攻撃力分のダメージを与える!」

 

 

ホープ剣・スラッシュによる一撃がデビル・イーグルを斬るのと同時に、雨のように降る紫色の光が、遊馬を襲った。

 

 

「なにっ!ぐあっ!」

「さらに、エクシーズ素材となっていた、《RR-スカル・イーグル》の効果も発動!オーバーレイユニットとなっていたこのカードが取り除かれた場合、このカードを除外することで、墓地のRRと名の付いたカードを俺の手札に戻すことができる!俺は墓地から、《RR-アライブ》を手札に加える!(2)」

 

 

 

九十九遊馬:LP3550→LP1050

黒咲隼  :LP4000→LP3100

 

 

 

「2500ポイントの効果ダメージ!こりゃいてえな、遊馬、アストラル。」

「まだまだ!こんなんじゃ、俺のかっとビングは終わらねえぜ!」

 

「かっとビング…」

「なんだ?そのセンスの欠片も感じられない言葉は?」

 

遊士のその言葉に、遊馬はヘッドスライディングを能動的にするかのようにその場にこけた。

 

「センスありまくりだろーがー!」

「どういう意味なんだよ?」

 

「かっとビングってのは…ゆ」

 

 

「勇気を持って踏み出すこと。どんなピンチでも決して諦めないこと。あらゆる困難にチャレンジすること。その3つのことだ。いわばチャレンジ精神ということだ。」

 

 

「ってアストラル!おいしいところだけ持ってくんじゃねー!」

 

心の無さそうなアストラルがそれら3つを言い切ったことは、遊士にとっては確かに印象に残ることであった。遊馬が心から大切にしていることであり、彼が筋を通し続けていることへの、何よりの裏付けであった。

 

「確かに、諦めるという文字は、俺たちの辞書にもない。かっとビングか。遊士の言うように、センスの欠片も感じないが、いいだろう!!かかって来るが良い!!俺の、鉄の意志と鋼の強さを持ち合わせたデュエルに勝てるのなら!!」

「ああ!勝ってみせるぜ!カードを2枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<遊馬:伏せ2枚 黒咲:伏せなし>

 

 

「俺のターン!(3)このスタンバイフェイズに、《RR-アナザー・ファルコン》のモンスター効果を発動!自分の墓地に存在するレイド・ラプターズを効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する!」

 

 

《RR-デビル・イーグル》:守備力0

 

 

「レイド・ラプターズが蘇った!?」

「そして…お前たちに見せてやろう。本物のランクアップマジックをな!《RUM-スキップ・フォース》を発動!」

 

 

《RUM-スキップ・フォース》

通常魔法

①:自分フィールドの「RR」と名の付いたエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターよりランクが2つ高い「RR」と名の付いたモンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

②:自分の墓地からこのカードと「RR」と名の付いたモンスター1体を除外し、自分の墓地の「RR」と名の付いたエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

 

「なにっ!?ランクアップマジックだって!?」

 

疑っていた訳ではないのだが、改めて遊馬とアストラルの知らないランクアップマジックが目の前で発動されたことに、驚きを隠せなかった。

 

遊馬は興奮しているようだが…

 

「すげぇ!どんなモンスターが出てくるんだ!?」

 

遊馬と黒咲とでは、2人の温度差を感じているのは黒咲だけであった。ランクアップマジックは、彼が戦場で覚えた感情そのもの。

 

「貴様ら…」

 

「スキップ・フォースは、俺のレイド・ラプターズよりも2つランクの高いモンスターへと進化させる!」

 

 

ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!現れろ!RR-ブレイズ・ファルコン!!

 

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》:攻撃力1000

 

 

「攻撃力1000じゃな!ホープは倒せないぜ!」

「甘いぞ!ブレイズ・ファルコンはオーバーレイユニットを持っている場合、相手に直接攻撃をすることができる!」

 

ブレイズ・ファルコンが夕焼けの空に飛翔すると、アストラルが思わず声をあげた。

 

「遊馬!これを受けたらライフが50になるぞ!」

「そんなこと言われなくたってわかってるって!ホープの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、モンスターの攻撃を無効にする!!」

 

 

ムーン・バリア!

 

 

《No.39 希望皇ホープ》:ORU2→ORU1

 

 

「ほう。そんな効果を持っていたか。ならば俺は、ブレイズ・ファルコンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、敵の場に特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、1体につき500ポイントのダメージを相手に与える!」

 

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》:ORU1→ORU0

 

 

ブレイズ・ファルコンの飛ばした小型のビーム兵器がホープを取り囲み、一斉射撃を放った。

 

「させねえ!罠カード、《エクシーズ・バリア》を発動!俺のフィールドのモンスターはこのターン、カード効果で破壊されない!」

「またしても躱したか。だがこれは躱せまい!《RR-アナザー・ファルコン》で、希望皇ホープを攻撃!」

「攻撃力の差は200ポイント。だったら…」

 

 

巨大な翼をホープを打ちつけたアナザー・ファルコン。ホープはよろけたが、倒されてはいない。バトルが終わると、腰に手を当てて立っている。

 

 

九十九遊馬:LP1050→LP850

 

 

「ナンバーズはナンバーズ以外のモンスターとのバトルでは破壊されない。そうだったな…カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」(1)

<遊馬:伏せ1枚 黒咲:伏せ1枚>

 

「俺のターン!!(2)いくぜ!ホープで、《RR-ブレイズ・ファルコン》を攻撃!」

 

 

ホープ剣・スラッシュ!!

 

 

ブーメランのようにして投げられた剣は、ブレイズ・ファルコンの頭部に命中し、直後に爆破するようにしてブレイズ・ファルコンは倒された。

 

「ぐっ!」

 

 

黒咲隼:LP3100→LP1600

 

 

「だが俺のフィールドにはまだ、アナザー・ファルコンが残っている。これで更なるエクシーズモンスターを呼べば…」

「それはどうかな!」

「何だと?」

「リバースカード、オープン!罠カード、《オーバーレイ・ボム》!」

 

 

《オーバーレイ・ボム》

通常罠

自分フィールド上のエクシーズモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合に発動することができる。そのエクシーズモンスターのエクシーズ素材を3つまで、任意の数だけ取り除き、相手フィールド上に存在するカードをその枚数分だけ破壊する。

 

 

「ホープのオーバーレイユニットを1つ使い、相手のカードを1枚破壊する!俺はこの効果で、《RR-アナザー・ファルコン》を破壊するぜ!」

 

ホープが前方に胸を突き出すと、ホープのオーバーレイユニットがアナザー・ファルコンへと向かい、アナザー・ファルコンの胸元で光を放ち、爆発を起こした。

 

「アナザー・ファルコンッ!」

「よっしゃあ!これで2体とも撃破だぜ!」

「おのれ…貴様、これで終わりだと思うなよ!俺の…いや、俺たちレジスタンスの不屈の闘志を…終わりなき反逆を見せてやる!リバースカード、オープン!《反逆の狼煙》!」

 

 

《反逆の狼煙》

通常罠

 

 

「俺の闇属性モンスターが破壊されたターン、手札を1枚墓地に送り、自分のデッキから、ランクアップ・マジックを手札に加える!俺は手札から、《RR-アライブ》を墓地に送る!そしてデッキから、《RUM-レヴォリューション・フォース》を手札に加える!」

「また、ランクアップ・マジックか…」

 

アストラルがそう呟いたのを聞くと、遊馬は何かを感じたのか、先ほどから手札にある魔法カードをフィールドに伏せた。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド。(0)」

<遊馬:伏せ2枚 黒咲:伏せなし>

 

黒咲の様子は、ここ数ターンで大きな変わりはない。レイド・ラプターズは全て破壊され、黒咲のフィールドは、かつての自分の故郷のようになっているが、それでも、鋭い眼差しで、遊馬を捉えている。

 

「この状況じゃ、さすがにキツイんじゃないか、黒咲は。」

「でもあいつ…このデュエルを諦めた目じゃないぜ。あいつにも、かっとビングの魂があるってことだ!」

 

「かっとビングなどと、くだらん。」

「なっ!」

 

 

「俺のターン!!(2)俺は墓地に存在する、《RUM-スキップ・フォース》の効果を発動!墓地のこのカードと、レイド・ラプターズを1体除外することで、墓地に存在するレイド・ラプターズと名のついたエクシーズモンスターを復活させる!俺は墓地から、《RR-スカル・イーグル》を除外し、《RR-ブレイズ・ファルコン》を復活!」

 

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》:守備力2000

 

 

「スキップ・フォースにはそんな効果が。だから、アナザー・ファルコンがやられても、大丈夫なのか。すげえぜ!」

「感心している場合ではない!俺は手札から速攻魔法、《RUM-レヴォリューション・フォース》を発動!(1)」

 

 

《RUM-レヴォリューション・フォース》

速攻魔法

①:発動ターンによって以下の効果を発動できる。

●自分ターン:自分フィールドの「RR」と名の付いたエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。ランクが1つ高い「RR」と名の付いたエクシーズモンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

●相手ターン:相手フィールドのエクシーズ素材の無いエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。そのエクシーズモンスターのコントロールを得る。その後、ランクが1つ高いエクシーズモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

 

「ブレイズ・ファルコンをエクシーズ素材として、オーバーレイ!!」

「更なるランクアップか!」

 

 

誇り高きハヤブサよ、英雄の血潮に染まるその翼翻し、革命の道を突き進め!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!現れろ!ランク6!《RR-レヴォリューション・ファルコン》!!

 

 

《RR-レヴォリューション・ファルコン》

エクシーズモンスター

ランク6/闇属性/鳥獣族/攻撃力2000/守備力3000

鳥獣族レベル6モンスター×3

①:このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。

②:このカードが特殊召喚された表側表示モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。そのモンスターの攻撃力・守備力を0にする。

③:このカードが「RR」と名の付いたエクシーズモンスターをエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

 

 

「かっけぇ…」

「レヴォリューション・ファルコンは、エクシーズ素材にレイド・ラプターズと名の付いたエクシーズモンスターを持っている場合、相手モンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える効果がある。遊馬!貴様のライフは残り850!これで終わりだ!」

「そうはいかねえ!罠カード、《オーバーレイ・ソウル》!フィールドのモンスターエクシーズのオーバーレイユニットを全て取り除くことで、発動したそのモンスター効果を無効にする!」

 

 

《No.39 希望皇ホープ》:ORU1→ORU0

《RR-レヴォリューション・ファルコン》:ORU1→ORU0

 

 

レヴォリューション・ファルコンは急上昇したものの、そこから爆撃を行うことはなく、再び黒咲の元へと戻った。

 

「これでお前のモンスターエクシーズのオーバレイユニットはなくなったぜ!」

「甘いな!《RR-レヴォリューション・ファルコン》は、特殊召喚されたモンスターと戦闘する場合、そのモンスターの攻撃力・守備力を0にする!これはオーバーレイユニットの有無には関係がない!しかも今のトラップで、貴様のホープのオーバーレイユニットはなくなった!攻撃を止めることはできない!」

「くそっ!」

「貴様の全てを聞かせてもらう!レヴォリューション・ファルコンの攻撃!」

 

 

レヴォリューショナル・エアレイド!!

 

 

だが、遊馬の口元が緩むのを黒咲は見逃さなかった。追いつめられているはずなのに、なぜ不敵な笑みを、そう考えたのは、彼だけではなかったはずだ。

 

「速攻魔法、《RUM-クロス・フォース》!!」

「なにっ…」

 

 

《RUM-クロス・フォース》

速攻魔法

相手の墓地に存在する「RUM」と名の付いた魔法カード1枚を選択して発動する。選択した魔法カードの効果をこのカードの効果として発動する。

 

 

「相手の墓地に存在するランクアップマジックを発動する!」

「バカなっ、俺の墓地のランクアップ…!?やはり貴様は、俺がランクアップマジックを使用することを知っていて…」

「それはちげえ!俺は、いや、俺とアストラルは、ランクアップマジックを使って戦うデュエリストたちと、今でも戦っている最中なんだ!だからその対策に、このカードを入れていたんだ!」

「ランクアップマジックを使って戦うデュエリスト…たち…?」

 

ランクアップマジックについての情報を得るため、黒咲は遊馬にデュエルを仕掛けた。黒咲の墓地にある魔法カードの中で、発動条件を満たすカードは1枚しかない。黒咲は、このデュエルの結末が見えていた。それゆえその情報を手に入れることに注がれたその闘志は、徐々に薄れていった。

 

「いくぜ!俺はお前の墓地にある、《RUM-レヴォリューション・フォース》を発動!相手フィールドのオーバーレイユニットのないモンスターエクシーズのコントロールを得て、そのモンスターよりも1つランクが高いモンスターエクシーズへと進化させる!ランク5の《RR-レヴォリューション・ファルコン》で、オーバーレイ!!」

 

黒咲は思わず手を伸ばした。その光景は、奪われた者がいる黒咲にとって、見たくないものの一つであったことは間違いない。

 

 

熱き魂を引き絞り、狙いをつけろ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!《ガントレット・シューター》!!

 

 

《ガントレット・シューター》

エクシーズモンスター

ランク6/地属性/戦士族/攻撃力2400/守備力2800

レベル6モンスター×2

自分のメインフェイズ時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを破壊する。

 

 

「ガントレット・シューター。俺のモンスターが…エクシーズ素材に使われただと…」

「黒咲!我々は負ける訳にはいかない!ナンバーズを求めて戦う以上、負けは許されないのだ!いくぞ、遊馬!」

「おう!俺のターン!(1)《ガントレット・シューター》で、ダイレクトアタック!」

「くっ…俺は…仲間たちを助けるために…」

 

 

 

黒咲隼:LP1600→LP0

 

 

 

もう既に陽は沈み、夜の闇が辺りを包み込もうとしていた。彼ら3人は、開きかかっている倉庫の前で、佇んでいる。

 

「俺は…デュエルをすれば皆仲間だというお前の言葉を、飲み込むことはできない。」

「黒咲。でも、伝わったんだ!」

「伝わった…?」

「お前の思いだ!お前がなぜレヴォリューション・ファルコンを使ったのか。どうしてレヴォリューション・フォースを手に入れたのか!そして、お前がなぜ、取り戻したいものがあるのか…その気持ちは伝わったんだ!」

「貴様に同情される覚えはない!だが……俺は敗北した。戦場での敗北が、何を意味するか、それはお前もわかるだろう。」

 

 

「バリアン。」

 

 

突如アストラルに言われたその単語は、ボリュームとしてはあまり大きくはなかったものの、閑静な場所であるからか、彼らに響いた。

 

「何?」

「我々は、バリアンと戦うためにこのランクアップマジックを使っている。」

「バリアン…だと?」

「でも、アストラル。黒咲はいきなりバリアンなんて言われても…」

「いや、彼の認識しているエクシーズ次元と、我々の認識しているエクシーズ次元が異なる理由だ。その認識がずれているから、君からすれば、我々をそう簡単に信じることができないのだろう?」

 

敗北し、彼らに背を向け、歩き出そうとしていた黒咲は振り返った。

 

「聞いたことのない名前だ。」

「黒咲!俺たちに力を貸してくれ!バリアンが悪い奴なんだ!そいつを倒せば、きっとお前の失った人たちも返ってくる!」

「勘違いをするな。俺は大切な人を奪ったのが誰かまではわかっている。」

「えっ…?」

「融合次元という次元の者だ。どうやらそいつらとは関係無さそうだな…」

 

再び彼らに背を向けた黒咲に、今度は遊士が声をかけた。

 

「おい。力を貸してやったらどうなんだよ?」

「貴様には関係のないことだ!」

「お前、負けたじゃねえか、遊馬に。お前にとっては、デュエルってのは生死を賭けた戦いなんだろ?それだったら、命をもらった訳じゃねえか。」

「…」

 

「頼む、黒咲!バリアンを倒すためには、一人でも多くの…」

「うるさい、黙れ!!」

「黒咲っ!」

「……少しだけだ。少しの間だけだ!!」

「おおおっ!!ありがとう、黒咲!!」

 

 

「おい。盛り上がっているところ悪いんだけどさ、俺、そろそろ向こうの次元に戻りたいんだけど。」

「遊士!お前もこっちにいればいいのに…」

「お前のところにいつまでもいる訳にはいかねえだろ?それに、俺はまだ大会の最中だって…って、あれ?黒咲…お前、大会は?」

 

「あんな茶番に出る必要はない。俺は招待されただけだ。もしも俺を求める奴がいるとするのなら、次元を超えてでも、会いに来るだろうからな。」

 

「あっ、そう。じゃあ、遊馬、アストラル。短い間だったけど、ありがとな。」

「本当に短かったな!」

「大丈夫だ。また我々は会える。」

 

不思議であった。根拠はないはず。少なくとも遊士の中には根拠はない。なのだが、アストラルのその言葉を、信じざるを得なかった。

 

 

「ああ、またな!!」

 

 

気が付けば良かった。思い出せれば良かった。エクシーズ次元に来たのが、あの光に包まれたのが、彼ら2人だけではなかった…

 

彼が手を取ろうとしていた、大切な人もまた、そうであったということを…

 

(次回に続く)

 

 

 

 




<今日の最強カード>
《RUM-クロス・フォース》
速攻魔法
相手の墓地に存在する「RUM」と名の付いた魔法カード1枚を選択して発動する。選択した魔法カードの効果をこのカードの効果として発動する。


<次回の最強カード>


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第15話-手がかりを求めて!遊士vs零児

遊士が目を覚ますと、辺りは夜の闇に包まれていた。雨が降っていないことが幸運だと思えたくらいであり、街灯の灯っている通りだけでは、今どこなのかわかるはずもなかった。

 

「ここは…どこだ?」

 

すると、学ランの制服姿のアカデミアの生徒を見つけた一人の警官が近寄って来た。

 

「キミ!こんなところで何をしている?大丈夫か?」

「あぁ…何って…言われてもな。」

「もうこんな時間だぞ。早く家に帰りなさい!ご家族も心配しているだろう!?」

「こんな時間って、何時だよ?」

「午前1時だ。」

「はぁっ!?」

 

勢いよく立ち上がった拍子に街灯の光で顔が明るみになると、警官は「君は…」と呟いた。

 

「草薙遊士くん…?」

「えっ?何で俺の名前知ってんだよ。俺、別に疾しいことはやってねえよ!」

「捜索願が出てるんだよ。」

「は?」

 

 

遊士は不安だった。自分の知っている次元に戻ってきたのは良かったものの、どれくらいの時が進んでいるのか。俗に言う、「浦島太郎現象」が起きていないのか。

 

進んでいた時間はほぼ二週間であった。期末試験が終わってしまい、「見込み点」というシステムで点数がついており、国語の68点を除き、全教科30~40点台の点数である。大きく点数を失ったのだ。

 

それ以外にも彼が失ったものはあった。最低2つだ。1つ目は、CDTへの出場資格。正確に言えば、不戦敗だ。遊士とサニーとのデュエルでの第三者の乱入については、一週間後に乱入される前の状態でデュエルを行うという処理が施された。その一週間後に遊士もサニーも両方とも現れなかったために、二人ともが不戦敗になった。

 

 

そして、もう1つは…

 

 

「そういえば、ユキは?休みか?」

 

遊士が戻ってきたという現実を受け止められるようになった周囲の人と会話ができるようになったのもつかの間、天竜崎にそう言った瞬間、彼は俯いた。

 

「お前…」

「何だよ。何かあったのかよ。」

「お前と同じ状態なんだよ。田村は!」

「は…?」

 

自分と同じ状態、その言い回しに一瞬理解ができなかった。しかしそれは本当に一瞬であった。彼には心当たりがあったのだ。

 

アストラル、そしてダークアストラルとのデュエルで光に包まれる時、ユキは彼の元へと飛び出し、その光に包まれていたのを思い出した。

 

「まさか…ユキ…!」

「そう。俺もそう思ってんだよ。でも、お前の言う、エクシーズ次元ってところでは会わなかったんだろ?」

「ああ。くそッ、行くしかねえ!!」

 

自分の下足ロッカーに上履きを放り投げ、外に向かって走り出した彼を、天竜崎は止めた。

 

「待てよ!行くって、どうやって!?」

「…」

「アストラルも、ダークアストラルもいない。ナンバーズもない。別次元に行くことができそうなものは、何一つないんだ!」

「わかってるよそんなこと!!くっ…くそっ!!」

 

筆記用具と弁当箱しか入っていない通学バッグを遊士は力一杯地面に叩き突けた。

 

その鈍い音が響き渡り、2人以外に誰もいない玄関で、気まずさが漂った。

 

しかしその共有意識は正門を出たところですぐに割られた。

 

「遊士さん、天竜崎さん!!」

 

話す気がないという態度を醸し出している遊士を庇うように、天竜崎はわざと彼の前に出て3人の話を受けた。

 

「あっ…遊矢。」

「学校、終わったんですか?」

「そうだけど、お前らって、この近所…?」

「いいえ、そうじゃないんですけど、今日は近くにあるデュエルアリーナに遊びに行ったんです。」

「言い出したのは遊矢でな。」

 

遊矢、柚子と権現坂の3人の登場に、一端はCDTの話をされたくないと思い、顔を背けた遊士であったが、何かを思い出したようで、遊士はすぐに顔を遊矢に向けた。

 

「遊矢!!」

「えっ…!?ゆ…遊士さん…!?」

「お前、エクシーズ次元って、知ってるだろ!?」

「えっ…ま、まあ。話でしか聞いたことないですケド…」

「行き方知らないか!?」

「そ…そう言われても…」

「知らないかっつってんだよ!!」

 

鬼のような形相で遊矢に詰め寄る遊士を天竜崎が引き離した。

 

「やめろ遊士!!」

「一体どうしたんですか!?」

 

「っ……。すまねえ。」

 

遊士が落ち着いて訳を説明すると、やはりと言うべきか、周囲は重苦しい空気に包まれたが、権現坂と柚子が唸る中、遊矢が口を開いた。

 

 

「赤馬零児。」

 

 

「えっ?」

「赤馬零児!あいつなら…あいつなら!きっとわかる!」

「赤馬零児って、確か…この前の舞網チャンピオンシップを開いた…」

「そう。あいつは、ランサーズという組織を作ろうとしていた!目的は次元戦争を防ぐためって言っていた!結局作らなかったけど、次元戦争ってことは、エクシーズ次元も知ってるはず!」

 

「遊矢!そのことは…」

「簡単に周りに言うなって言いたんだろ?けど、権現坂!いいのかよ!?大事な人がいないままって…」

「それは…」

「行こう!赤馬零児のところに!」

 

デュエルアカデミアからLC(Leo Corporation)までは片道電車で20分ほどで行けるので、そこからすぐに動き始めた。

 

「ここが…レオ・コーポレーション!?でも、零児って、社長だろ?そんな簡単に合わせてくれるモンなのか?」

 

二頭のライオンの銅像、ところどころに金の装飾が施してあるエントランスを前に、天竜崎がそう言った。

 

そこから見上げても、建物の全貌はわからないほどの大きさだ。

 

「それなら大丈夫ですよ!」

 

柚子が何の疑いもなくそう言い、エントランスから入り、受付の前を通り過ぎようとすると、受付の係の女性社員に声をかけられた。

 

「あの…お客様ですか?」

 

学ランを着た生徒や私服の子どもがスルスルと中に入っていく光景がよほど信じられなかったのか、目を丸くして20代の後半のその女性社員は近寄ってきた。

 

「あ、はい。赤馬零児に用があって…」

「社長に!?社長はお忙しい方なので、アポ無しでは、困ります。」

 

女性社員は迷惑そうにしているというよりも、困惑した表情で彼らを止めたが、彼女が手にしているボードを見ると、すぐにもう一度彼に聞いた。

 

「あの…失礼ですが、お名前は…」

「俺、榊遊矢って言います!」

「榊さん…あっ。」

 

彼女は自分の持っているボードのリストを指で辿り、すぐにその指を止めた。

 

「あぁ…榊遊勝さんは…オッケーだけど、この人は…違うか。」

 

そう一人呟くと、彼女が首からぶら下げていた社員証から声が聞こえた。

 

 

「彼は榊遊勝の息子だ。通してくれ。」

「しゃ…社長!?失礼しました!!さ…こちらに!」

 

「すげぇな遊矢。」

「へへっ!父さんのお陰さ!」

 

 

彼らは社長室に通してもらった。ドアを開けると、最初に見えたものはボスチェアと、その後ろで窓の外を眺めて立つ赤馬零児の背中だった。

 

「零児!!」

「榊遊矢、権現坂昇に、柊柚子。一体何の用……!?君たちは…」

 

学ラン姿の2人は見慣れない男だと思ったが、零児は鋭い視線で話しかけた。

 

「その校章は…デュエルアカデミア。そして君は、CDTでサニーと戦ったデュエリストの…草薙遊士だったかな。」

「ああ。さすが社長だな。戦う可能性のあるデュエリストは既に研究済みって訳か…」

「用があるのは君か?」

「そうだ。聞きたいことがあるんだ。」

「ン?」

「エクシーズ次元への行き方を教えてくれ!」

 

シンプルで分かりやすい質問ではあったが、確信を得たものであり過ぎたのか、零児が返答するのには少し時間がかかった。

 

「その質問に答える前に、2つ聞いても良いか?」

「2つ?ああ。いいぜ。」

「まず1つ、君は次元というものを知っているのか?」

「ああ。俺は実際にエクシーズ次元に行ったんだ。お前も見てたんだろ、俺とサニーのデュエル。ダークアストラルが引き起こした力で、俺とアストラルはエクシーズ次元に飛ばされちまったんだ。」

 

「なるほど。では2つ目だが、君はなぜエクシーズ次元に行くことを望んでいる?」

「俺の友達が、エクシーズ次元に行っちまったからだ。あの白い光に包まれたのは、俺、アストラル、黒咲、そして、ユキなんだ!」

 

(ほう…黒咲もエクシーズ次元に…)

 

先ほどから2人のやり取りを黙って聞いていた遊矢が口を開き、会話に割って入った。

 

「零児!知っているんだろ!エクシーズ次元に行く方法!遊士のために、力を貸してくれ、頼む!」

 

遊士が深々と頭を下げる遊矢を見て思うことは一つ。なぜ彼は他人のために懇願するのか。彼の脳裏に仮説が浮かんではそれは否定され、消えていく。しかし一つだけ、遊士と遊矢の繋がりを表すような出来事があった。

 

オッドアイズ・アセンション・ドラゴン。見たこともないカードだが、2人でのデュエル中の出来事を忘れはしない。

 

「ディメンション・ムーバー。このカードがあれば確かにエクシーズ次元に行くことはできる。」

 

そのカードが自身のロッカーや金庫、デスクの引き出しから取り出すわけでもなく、白いズボンの後ろポケットに入っていたデッキケースから取り出されるのは驚きであったが、遊士はそのカードこそが、彼の待ち望んでいたカードであった。

 

「だがこのカードをタダで使わせる訳にはいかない。」

「は!?何でだ…って、そりゃそうか。信用できねえよな。いきなりこんなこと言われたって。」

「いや違う。私はタダで使わせる訳にはいかないと言った。条件付きでの使用を認める。」

「マジか!?条件って…」

 

「私とデュエルをして欲しい。」

「何だと?俺が?」

「そうだ。エクシーズ次元に行っていなければ、不戦敗にならなかった。CDTで君と戦える可能性はなくなってしまった。ならばせめて今戦いたいと思ったのだ。」

 

人差し指で自らの赤いフレームの眼鏡を上げながらそう言った。零児の言うことはそれらしい言葉であったが、真意はわからなかった。

 

「それに君は、聞けば榊遊矢を倒したデュエリストらしいな。」

「まあな。」

「ペンデュラムの創始者である榊遊矢を倒すなど、並みのデュエリストであるはずはない。何か不思議なカードでも持っているのかと思ってね。」

「なるほどね。」

 

「ま、確かに遊士は不思議なカードを持ってるよな。」

 

天竜崎は軽く笑いながらそう言って遊士の肩を叩いたが、それを零児が聞き逃すことはなかった。

 

「いいぜ!!俺もお前とはデュエルをしてみたいと思ってた。手加減はなしだぜ!翔斗!デュエルディスク貸してくれ!」

「ったく、置いてきたのかよ。」

「荷物じゃねえか。」

「丁寧に扱えよ…なっ!」

 

パッドのようなタイプのディスクではなく、天竜崎は旧式のデュエルディスクを好む。彼はかつてバトルシティで使われていたようなディスクを、フリスビーのようにして投げ、遊士に渡した。

 

「重っ!」

「文句言うんじゃねえ!」

 

「いくぞ、草薙遊士!!」

「ああ!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

草薙遊士:LP4000

赤馬零児:LP4000

 

 

 

「先攻はもらうぜ!俺は手札から、《切り込み隊長》を召喚!(4)モンスター効果によって、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!来い!《コマンド・ナイト》!!(3)ターンエンドだ!」

<遊士:伏せなし 零児:伏せなし>

 

 

《切り込み隊長》

効果モンスター

レベル3/地属性/戦士族/攻撃力1200/守備力400

このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。

 

 

《コマンド・ナイト》

効果モンスター

レベル4/炎属性/戦士族/攻撃力1200/守備力1900

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。また、自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200→攻撃力1600

《コマンド・ナイト》:☆4/攻撃力1200→攻撃力1600

 

 

「モンスターを2体並べたか。私のターン!!(6)手札の、《DDスワラル・スライム》のモンスター効果を発動!手札のこのカードともう1枚のDDモンスターを墓地に送り、融合モンスターを融合召喚する!私はスワラル・スライムと、《DDバフォメット》を墓地に送る!(4)」

 

 

《DDスワラル・スライム》

効果モンスター

レベル2/闇属性/悪魔族/攻撃力200/守備力200

「DDスワラル・スライム」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

①:このカードが手札に存在する場合、自分メインフェイズに発動できる。「DDD」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

②:墓地のこのカードを除外して発動できる。手札から「DD」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

自在に形を変える神秘の渦よ、異形の神と一つとなり、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ、レベル6!《DDD烈火王テムジン》!!

 

 

《DDD烈火王テムジン》

融合モンスター

レベル6/炎属性/悪魔族/攻撃力2000/守備力1500

「DD」モンスター×2

「DDD烈火王テムジン」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:このカードがモンスターゾーンに存在し、自分フィールドにこのカード以外の「DD」モンスターが特殊召喚された場合、自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

②:このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合、自分の墓地の「契約書」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

 

「融合モンスターか!」

「さらに手札からチューナーモンスター、《DDナイト・ハウリング》を召喚!(3)」

 

 

《DDナイト・ハウリング》

チューナーモンスター

レベル3/闇属性/悪魔族/攻撃力300/守備力600

①:このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は0になり、そのモンスターが破壊された場合に自分は1000ダメージを受ける。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は悪魔族モンスターしか特殊召喚できない。

 

 

「このモンスターの召喚時、墓地のDDモンスターを復活させる!蘇れ、《DDバフォメット》!レベル4の《DDバフォメット》に、レベル3の《DDナイト・ハウリング》をチューニング!!」

 

 

☆4+★3=☆7

 

 

闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て、新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ、レベル7、《DDD疾風王アレクサンダー》!!

 

 

「シンクロ召喚もすんのか!?」

「これで終わりではない。烈火王テムジンの効果発動!他のDDモンスターが特殊召喚された時、墓地のDDモンスターを特殊召喚する!蘇れ、《DDバフォメット》!」

 

 

《DDバフォメット》:☆4/攻撃力1400

 

 

「さらに、疾風王アレクサンダーのモンスター効果により、他のDDモンスターが召喚・特殊召喚された時、墓地のレベル4以下のDDモンスターを特殊召喚する!現れろ!《DDスワラル・スライム》!!」

 

 

《DDスワラル・スライム》:☆2/攻撃力200

 

 

「DDバフォメットの効果発動!スワラル・スライムのレベルを4にする!」

 

 

《DDスワラル・スライム》:☆2→☆4

 

 

「レベル4のモンスターが2体…まさか!?」

「レベル4の《DDバフォメット》と、《DDスワラル・スライム》で、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

この世の全てを統べるため、今、世界の頂に降臨せよ!ランク4、《DDD怒涛王シーザー》!!

 

 

《DDD怒涛王シーザー》:ランク4/攻撃力2400

 

 

「なにっ!?融合、シンクロ、エクシーズ!?」

 

「そうよね。赤馬零児と初めてデュエルするんだものね。」

 

柚子がそう一人呟くと、権現坂はそれに続けて言った。

 

「赤馬零児は融合、シンクロ、エクシーズの召喚方法を操る。」

「もっとも、それだけじゃないけど…」

 

「それだけじゃない…?」

 

どういう意味だと遊士が遊矢に聞こうとしたが、零児は人差し指で眼鏡を上げた後、高らかに「バトル!」と宣言し、それを掻き消した。

 

 

《切り込み隊長》:攻撃力1600

《コマンド・ナイト》:攻撃力1600

 

 

《DDD烈火王テムジン》:攻撃力2000

《DDD疾風王アレクサンダー》:攻撃力2500

《DDD怒涛王シーザー》:攻撃力2400

 

 

「まずは烈火王テムジンで、《切り込み隊長》を攻撃!」

 

 

ファイヤー・ストローク!!

 

 

「うわっ!」

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3600

 

 

「そして疾風王アレクサンダーで、《コマンド・ナイト》を攻撃!」

 

 

ライトニング・ブレイド!!

 

 

「チッ!」

 

 

草薙遊士:LP3600→LP2700

 

 

「やべえ!遊士のフィールドにはもう壁モンスターがいないぞ!」

「遊士さん!」

 

「続けっ!怒涛王シーザー!ダイレクトアタック!!」

 

 

タイダル・トーレント!!

 

 

「ぐああああっ!」

 

ソリッドビジョンではあるが、シーザーの激流を帯びた剣の一撃を受け、遊士は後方に大きく飛ばされ、仰向けになって倒れた。

 

 

草薙遊士:LP2700→LP300

 

 

「くっそ。」

「私はこれで、ターンエンド。(3)」

<遊士:伏せなし 零児:伏せなし>

 

挑発の一言さえなく、ターンを終え、まるで「仕事中だったのだから時間が勿体ない。早くターンを進めたまえ。」とでも言いたげな様子から確信した。

 

「つえぇ…。」

 

しかし遊士は手札の3枚のカードを見ると、希望が湧いた。

 

「けど、俺は負けねえ!俺のターン!(4)俺は手札から、魔法カード《ソウル・バトラー》を発動!」

 

 

《ソウル・バトラー》

通常魔法

 

 

「前のターンに俺の墓地に戦士族モンスターが送られた場合に発動できる!その数だけ俺のフィールドに戦士族のバトラーズトークンを特殊召喚する!」

「2体のトークンか。」

「そしてこいつらをリリース!出でよ、俺のエースモンスター、《剣聖-ライジング・ソード》!!(2)」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:☆7/攻撃力2400

 

 

「これは…!!」

 

思わず零児は前かがみになった。光の中から現れた青年の剣聖から、何かを感じ取ったのだ。

 

(草薙遊士。彼は…やはり…)

 

「そして速攻魔法、《リロード》を発動!手札を1枚デッキに戻してシャッフルし、その枚数分だけドロー!」

 

「そんな、無茶よ!1枚のカードをドローだなんて!」

「いや、柚子ちゃん。あのモンスターを呼び出した遊士は、一味違うんだ。」

 

結果がわかって笑みを浮かべている天竜崎が、柚子に優しくそう言った。

 

「えっ…?」

 

「そのドローにかけているのかね?」

「かけている?ちげえな。これは…必然だぜ!!ドローッ!」

 

弧を描くようにして勢いよくドローした先を、零児は目で追っていた。そして遊士はそのカードを一瞥した後に、魔法・罠カードゾーンのスロットへと差し込んだ。

 

「装備魔法、《スピリット・ブレード》を発動!(0)」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:☆7/攻撃力2400→攻撃力2900

 

 

「装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップ!」

「なにっ!」

「今度はこっちの番だぜ!ライジング・ソードで、《DDD疾風王アレクサンダー》を攻撃!」

 

 

アサルト・スピリット・ブレイク!!

 

 

逆袈裟の形でロングソードを振ると、そこから出た衝撃波がアレクサンダーを引き裂いた。そしてさらにライジング・ソードはもう二度ロングソードを振り、バトルを行っていないはずのテムジンとシーザーを倒した。

 

 

赤馬零児:LP4000→LP3600

 

 

「なに?テムジンとシーザーまで!」

「俺は装備魔法、《スピリット・ブレード》の効果を発動した!装備モンスターが相手モンスターをバトルで破壊した時、ライフポイントを半分払うことで、相手フィールド上のそのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持ったモンスターを全て破壊できる!」

 

 

草薙遊士:LP300→LP150

 

 

「私は怒涛王シーザーのモンスター効果を発動!このカードが墓地に送られた時、デッキから契約書と名の付くカードを手札に加える!私はデッキから、《地獄門の契約書》を手札に加える!(4)」

 

「俺はこれで、ターンエンドだ!(0)」

<遊士:伏せなし 零児:伏せなし>

 

「なるほど。なかなか面白いものを見せてもらった。ならば今度は……

 

 

こちらの番だ!!!」

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《スピリット・ブレード》
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地に送った時、自分のライフポイントを半分払うことで、相手フィールド上に存在する戦闘で破壊したモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスターを全て破壊する。また、1ターンに1度だけ、相手フィールド上にモンスターが特殊召喚された時、装備モンスターの攻撃力はターン終了時まで800ポイントアップする。このカードを発動したターン、装備モンスターは相手に直接攻撃をすることはできない。


<次回の最強カード>
ペンデュラムモンスター
レベル8/闇属性/悪魔族/攻撃力3000/守備力1000
【Pスケール:青4/赤4】
①:1ターンに1度、自分フィールドの「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。
【モンスター効果】
①:1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合、そのモンスター1体を対象として発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、対象のモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果を発動するターン、このカードは直接攻撃できない。
②:このカードは、このカードを対象としない魔法・罠カードの効果では破壊されない。


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第16話-旅立ち!そして…

草薙遊士

 

・LP150

・手札0枚

・(モンスター)《剣聖-ライジング・ソード》(ATK2900)(+)

・(魔法・罠)《スピリット・ブレード》(+)

 

 

赤馬零児

 

・LP3600

・手札4枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

「私のターン!(5)永続魔法、《地獄門の契約書》を発動!1ターンに1度だけ、自分のデッキから、DDと名の付いたモンスターを手札に加える!」

 

 

《地獄門の契約書》

永続魔法

「地獄門の契約書」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:自分メインフェイズに発動できる。デッキから「DD」モンスター1体を手札に加える。

②:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

 

「私が手札に加えるのは、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》!」

 

零児は意図的に、カードの下半分を隠すようにしてそのカードを持った。2人の距離が離れているのもあり、遊士にはそのカードがただの効果モンスターのようにしか思えなかった。

 

「ヘル…アーマゲドン?」

「そして私は手札のスケール1の《DD魔導賢者ガリレイ》と、スケール10の《DD魔導賢者ケプラー》で、ペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 

《DD魔導賢者ガリレイ》:S1

《DD魔導賢者ケプラー》:S10

 

 

「おい!これって…」

「そう。私も榊遊矢と同じく、ペンデュラムカードを使う。剣聖-ライジング・ソードの力、見せてもらった。ならば私もこれを見せなければなるまい!!」

 

 

我が魂を揺らす大いなる力よ!この身に宿りて、闇を切り裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!現れろ、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》!!

 

 

《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》:☆8/攻撃力3000

《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》:☆8/攻撃力3000

 

 

「2体のヘル・アーマゲドン!?」

 

ひし形に近い形(盾のような形に近いか)をした胴体に無表情の顔が現れ、遊士を見下ろす。だがヘル・アーマゲドンが現れたのと同時に、装備魔法、《スピリット・ブレード》が光を放った。

 

「けどこの瞬間、《スピリット・ブレード》の効果発動!相手がモンスターを特殊召喚した時、装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする!!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2900→攻撃力3700

 

 

「ほう…」

「これでお前のモンスターの攻撃力を上回ったぜ!」

 

 

一瞬だけ赤馬零児が動きを止めたが、すぐに目の前のライジング・ソードを指さした。

 

「構わぬ!《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》で、ライジング・ソードを攻撃!」

「自分よりも高いモンスターに攻撃を…!?」

 

ヘル・アーマゲドンが左右の頂点から繰り出したビーム砲のようなものをスピリット・ブレードが跳ね返し、ヘル・アーマゲドンを破壊した。

 

 

赤馬零児:LP3600→LP2900

 

 

「《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》のモンスター効果発動!私の他のモンスターが破壊された時、このカードの攻撃力はエンドフェイズまでそのモンスターの攻撃力分だけアップする!!」

 

 

《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》:攻撃力3000→攻撃力6000

 

 

「攻撃力6000だと!?」

「行けっ!ヘル・アーマゲドン!!」

 

2体目のヘル・アーマゲドンは、背中の部分から触手を繰り出し、その触手を束ねてライジング・ソードを叩き潰した。

 

「ライジング・ソード!!!!」

 

 

草薙遊士:LP150→LP0

 

 

「ぐああっ…」

 

 

遊士は衝撃を受け、その場で宙を舞い、社長室の入り口のドアの方へと投げ出された。

 

 

「クソッ…ま…負けた。俺の…ライジング・ソードが…」

 

 

「たとえどのような不思議な力があるカードであっても、デュエル中であれば、効果の無いモンスターに過ぎない。それに気が付かないようでは、君は私に勝てない。それだけは言っておこう。」

 

 

しゃがんでいる遊士を見下ろすようにして、零児はそう言った。その一言は、敗北を喫した彼には十分すぎるものであったようで、彼はしばらく言葉を発することができずにいた。

 

すると零児は続けて言った。

 

「さて、これが、《ディメンション・ムーバー》だ。このカードがあれば、エクシーズ次元に行くことができる。ただし、このカードはどこでも使える訳ではない。」

「なに?」

「このカードを発動するには、次元の扉がある場所でなければならない。」

「次元の…扉?そんなものどこに?」

 

「ここだ。」

 

「へっ?ここ?この社長室?」

「そう。そのため《ディメンション・ムーバー》を発動するのはここでということになる。」

「だったら、早速使ってくれよ!条件はもう満たしただろ?」

 

焦燥を隠せない遊士のそのセリフを聞いた天竜崎は思わず口を開いた。

 

「おい!またこの次元からいなくなるのか!?学校とかどうすんだよ?」

「どうせもう夏休みだろ?指名講習だって、サボれば良いし。」

「それ以外にも、家族とか、友達とか、色々あんだろ!?」

「うるっせえな!ユキはこうしている間にも、危険な目にあってるかもしれねえんだぞ!そんなのんびりしてられねえんだよ!」

 

「こっちでお前の帰りを待つ人間の気持ちも考えろって言ってんだよ!!」

 

立ち上がった遊士に詰め寄った天竜崎の怒鳴り声を聞いた遊士は、少し冷静さを取り戻し、返答した。

 

「あ…ああ。わかったよ。確かにそうだな。赤馬零児。3日だけ時間をくれないか?」

 

「もちろんだ。ちなみに、榊遊矢、権現坂昇、柊柚子、君たちにも来てもらう。」

 

「えっ!?俺たちも!?」

「なぜだ!?」

 

「君たちはどの道ランサーズとして、別次元に旅立つ予定であった。だとすれば、問題はないはずだ。」

「零児。俺は次元戦争に手を貸すつもりはない!」

「そういうつもりはないが…君は知りたくないのか?自分が首から下げているものに、どのような因縁があるのかを…」

 

零児は遊矢が首から下げているペンダントを指さしてそう言った。

 

「ペンデュラムと…俺。」

「そしてその近くにいる君たちも、恐らく真実を知った方が良いのだろう。」

「真実…」

 

静寂が続いている中、それを破ったのは少し掠れた、初老を思わせる男性の低い声だった。

 

 

「世の中には…知らない方が良いこともあるがね。」

 

 

「なっ!?」

「誰だ!?」

 

社長室のドアはロックされており、外から入ることはできない。非常口のドアも空いていないことから、明らかにその男性は突如出現した存在であることがわかった。

 

「どっから出てきた!?」

 

全身白の服装のその男性は、時より白いフードの中から青い瞳を覗かせていた。金髪であることがフードの隙間からわかる。

 

どこから出たのかと天竜崎に聞かれたその男性はフッ、と軽く笑った。

 

「驚かせてすまない。君たちに挨拶をしたいと思ってね、次元を飛んできたのだよ。」

「は?次元を飛んできた?お前も…?」

 

「私の名前は、ヘヴン。」

 

「ヘヴン?」

「人の部屋に勝手に入り、何の用だ?」

「これは失礼。しかし言わせてもらいたいことがあってね。異次元に行くことはやめた方が良い。」

 

「なんだと!?人がせっかく行こうとしているところに…!」

 

「人間がやって良いことと、やってはいけないことがある。既に人間の中には、償いきれない罪を犯しているものがいる。君たちは次元を超えることによって、彼らに絶対に接触してしまう。それを防ぐには、異次元に行くことをやめるしかない。」

 

そこまで述べたヘヴンに対し、遊士が疑問をぶつけた。

 

「その罪ってのは、何だよ?」

「次元を行き来するということだ。何かの事故ならば仕方がない。しかし、自分の意思で次元を行き来する、これは人類が到達すべき地点ではない。君たちがこの宇宙、地球以外の世界を所有したらどうなる?絶望的だ。」

 

言っていることは理解ができた。しかし、そうだとしたら、今目の前で自分たちに説いているのは誰なのか…それが心の中で引っかかることとなった。

 

「君は今、我々が次元を超えることによって、罪を犯した人に接触すると言ったが、それはどういうことだ?」

 

突然話題を変えた零児に、ヘヴンと名乗る人物は、狼狽えることなく答えた。

 

「心当たりがないか?君の知り合いで、次元の研究をしている人物。君にかなり近い人物だがね。」

「赤馬…零王!!」

 

ヘヴンはそうだと言わんばかりに、ニヤッと微かに笑った。

 

「赤馬…ってことは、零児の…」

「私の父親だ。」

「父親!?」

 

「次元戦争のことはこちらでも把握している。君たちが次元を超えれば、必ず彼らと接触することとなる!そうすれば…もはや君たちは…」

「赤馬零王っつったか?んなもん関係ねえ!」

「遊士…」

「俺は、いなくなっちまったユキを探しに行くんだ。俺には関係ねえ話だ!」

「確かにそうだ。しかしそれでは終わらんのだよ!確実に!」

「何だと?」

「君が持つカードの中には、不思議な力を持つカードがあるだろう?」

 

ヘヴンがそう言うと、遊士はデュエルディスクの墓地にあるカードを1枚取り出した。

 

「まさか…お前…」

「剣聖-ライジング・ソード。ただの通常モンスターではない。そうだろう?」

「何でお前がこのカードのことを!」

「私はヘヴン。この世のあらゆることを知っている。知らなければならない立場の者だ。」

「訳のわからねえことを!!」

「君のそのカードの力は、ひしひしと伝わってくる。君が次元を超えれば、次元戦争を目論む赤馬零王に利用される!間違いはない!零児。君もそう思っているはずだ。」

 

「フッ。私は単に、エクシーズ次元に遊士が探している人物がいるから行くだけだ。」

「そうだ!他の奴は関係ねえ!」

 

そこまで言うと、少し溜め息を漏らした後、ヘヴンは言った。

 

「わかった。そこまで言うのなら、もう私は何も言わない。だが、最後にこれだけは言わせてもらう。」

「あ…?」

「そのユキという人物には、会わない方が良いと思うぞ。」

 

今までのようなことを言うのかと思った遊士であったが、その一言を受けて、面食らった。しかし時すでに遅し。ヘヴンはもう既に、目の前に創り出したワームホールのようなものを潜り、姿を消していた。

 

「おい、ちょっと待て!ユキに会わない方が良いって…おい!!」

 

ユキという言葉を発していないにもかかわらず、ユキと言われたことに驚きを隠せなかった。彼なら必ず何かを知っている。その事実が、彼に決断を下させた。

 

 

「いくぜ。いくしかねえ!!エクシーズ次元に!」

「行くのか、遊士。」

 

天竜崎は、先ほどのように怒鳴りはしなかった。遊士の決意が固いことは、わかっていたのだ。

 

「ああ。待たせちまうかもしれねえが、俺は必ず戻ってくる。」

「わかった。そこまで言うなら、もう俺は何も言わねえ。頑張れよ!」

 

 

※※※※※※

 

 

それから3日後。予定通りではあった。赤馬零児の使用したディメンション・ムーバーにより、遊士、遊矢、零児、権現坂、柚子の5人は離れることなくエクシーズ次元に到着をすることができた。

 

「ここは…。」

 

青空が見えた。遊士たちが周囲を見渡すと、繁華街らしき場所の路地裏であることはわかったが、それ以上のことはまだわからない。

 

「あ、あれ!!」

 

遊士がそう叫ぶと、その先にあったものは、炎をまとった手の形をしたモンスターと、氷をまとったそれと同じ形のモンスターが1体ずつ存在していた。

 

「デュエルモンスターズか!?」

「誰かがデュエルをやっているというのか!?」

 

 

「お…俺のモンスターは…バトルでは破壊されないぞ!」

「んなことはわかってんだよ!俺は、レベル4の2体のモンスターで、オーバーレイ!!」

 

2体の手の形をしたモンスターが合わさり、灰色をベースとしたさらに巨大な手の形をしたモンスターと姿を変えた。掌の中心部にある一つ目が、さらに気味悪さを増している。

 

「何だあいつは!?」

 

工事現場にもなっているその路地裏の『安全第一』の看板を退かし、身を乗り出してデュエルを観ている遊士は思わずそう叫んだ。

 

彼にとって見覚えのあるものがあったのも、叫んだ理由かもしれない。

 

「あの数字って……」

 

 

「お前も、俺と同じ種類のモンスターを使うのか!?」

「当然だろ?俺はナンバーズを使うデュエリストを狙っているんだからな!くらえ!!No.49 秘鳥フォーチュンチュンを攻撃!」

「うわあああっ!!」

 

 

青年:LP200→LP0

 

 

「さあ、約束だ。お前のモンスターを渡してもらうぜ。」

「クッ…」

 

「あれは…ナンバーズ!!間違いねえ!」

 

「遊士さん!!」

「ちょっと!!」

 

安全第一の看板を投げ捨てると、遊士は怯えきっている青年の前に立ちふさがった。

 

「待ちやがれ!!」

 

「…!?」

「ン…何だお前は?」

 

「き…君は…!?危ないからど…どいているんだ!」

 

青年は怯えきった声で遊士にそう言ったが、遊士はまるでそれを聞かない。彼の意識は、目の前のマスクを被った巨漢にしかなかった。

 

「おいおっさん!俺とデュエルしろ!」

「何だお前。お前に構っている暇はない。邪魔をするな!」

「お前の狙いはナンバーズなんだろ?」

 

仮面の奥に見えている興味の無さそうな目の色が変わったのが、遊士にはわかった。もちろんそれは、ある単語を聞いたからであろう。

 

「お前!ナンバーズを知っているのか!?」

「ああ。俺にはナンバーズが必要なんだ!」

「ナンバーズが必要だと?どこで情報を得たのかは知らないが、やめておけ。一般人がナンバーズを使えば、心がナンバーズによって支配されるだけだぞ。お前の後ろで怯えているそいつだって…なぁ?子どもたちと接するうちにストレスが溜まり、違法賭博デュエルで勝ち続けて違法賭博デュエリストを生業にしようとした、元塾講師さんよぉ!」

 

肩の後ろにわずかに見える顔を見下ろし、仮面の男は青年を蔑んでいた。

 

「ぼ…僕は…」

 

仮面の男は手を前に翳し、ゆっくりと話し始めた。

 

「さあ、おしゃべりは終わりだ。俺も仲間のところに戻らなくちゃいけねえからな。ナンバーズをいただくぜ。」

 

青年のデュエルディスクにあった2枚のナンバーズが、宙に浮いた。青年は仮面の男が言ったことが本当だと思ったのか、深く反省しているのか、その光景に驚きはしなかった。

 

 

だが、遊士は咄嗟にその2枚のナンバーズを取り上げ、自分のデュエルディスクに入れた。

 

 

「おい、お前!!何をしやがる!?」

「これで2枚のナンバーズは俺のものだ。デュエルだ!仮面野郎!」

「遊士さん、いくら手がかりを得るためだからって、やめるんだ!!」

 

遊矢、権現坂、柚子、零児もそこに現れた。仲間が増え、人数が多くなったことに煩雑さを覚えた仮面の男は再び手を翳した。今度はその手から赤い光が放たれている。

 

「チッ。面倒だ。くらえ!バリアンズ・ハンド!!」

「なにっ!?」

 

思わず顔をデュエルディスクの装着された方の左腕で庇った遊士。天竜崎からそのまま借りていたため、旧式のバトルシティで使われていたころのデュエルディスクであるが、そのデッキの部分から、淡い光が発せられ、バリアンズ・ハンドを弾き返した。

 

 

「ぐあっ!なっ…何だ、こいつの力は…!?」

 

 

仮面の男には一瞬だが、ロングソードを構える剣聖の姿が見えた。彼にとっては初めて見るモンスターであったが、そこから異様な雰囲気を覚えた。

 

(ヘッ…何だか知らねえが、おもしれえ。)

「いいぜ。そこまで言うなら、デュエルを始めようじゃねえか。」

 

「そうこなくちゃな。」

 

「どこの馬の骨かわからねえ奴にこいつを使うのは趣味じゃねえが、邪魔をするなら仕方ねえな。いくぜ!バリアンズ・スフィア・キューブ展開!!」

 

仮面の男が目の前に赤い何かを投げつけると、そこから球体のフィールドが展開され、遊士と仮面の男は赤い空間に覆われた。

 

「何だこいつは!?」

「バリアンズ・スフィア・フィールド。俺たちバリアンが、力をフルで発揮できるようにするための空間を作り出すものだ。お前の魂ごと、ナンバーズを頂くぜ!!バリアン七皇の一人、ギラグが相手だ!!」

 

敗北したら魂を奪われる、それを示唆する一言も、今の遊士は気にしなかった。そもそも別次元に飛んできたことは、彼にとっての覚悟の表れなのだ。

 

「俺は草薙遊士。いくぜ、ギラグ!!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

草薙遊士:LP4000

ギラグ :LP4000

 

 

「俺の先攻!俺は手札から、《マジック・ハンド》を召喚!(4)さらに、《プロミネンス・ハンド》を特殊召喚!!(3)」

 

 

《マジック・ハンド》

効果モンスター

レベル4/闇属性/魔法使い族/攻撃力800/守備力1600

このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、相手がドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えた時に発動できる。そのカードを墓地へ送り、相手に800ダメージを与える。

 

 

《プロミネンス・ハンド》

効果モンスター

レベル4/炎属性/炎族/攻撃力600/守備力2000

自分フィールドに「マジック・ハンド」「ファイヤー・ハンド」「アイス・ハンド」のいずれかが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

「レベル4の2体のモンスターで、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

この世の全てを握りつぶせ!No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド!!

 

 

《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》

エクシーズモンスター

ランク4/地属性/岩石族/攻撃力2000/守備力2000

レベル4モンスター×2

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外との戦闘では破壊されない。相手フィールドのモンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除き、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。このモンスターがフィールドに表側表示で存在する限り、対象の効果モンスターの効果は無効化され、表示形式の変更もできない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「な…ナンバーズ…106だと!?ナンバーズは…100枚じゃねえのか!?」

「にわか野郎!!このオーバーハンドレッドナンバーズこそが、俺たちバリアンに与えられた力よ!カードを2枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<遊士:伏せなし ギラグ:伏せ2枚>

 

スフィア・フィールドの外から見ていた零児が口を開いた。

 

「早速場を固めて来たか。あのモンスターの効果もわからないが、伏せカードも気になるところだな。」

 

 

「俺のターン、ドロー!(6)」

(ナンバーズはナンバーズでしか倒せねえ。俺にはあいつの持っていたナンバーズが2枚ある。けど…フォーチュンチュンは攻撃力400のナンバーズ。あいつは倒せねえ。もう1枚のナンバーズは、攻撃力ではあいつのモンスターを上回っているが……仕方ねえ、こいつに繋げるしかねえ!)

 

「手札から俺は手札から、《切り込み隊長》を召喚!(5)」

 

 

《切り込み隊長》

効果モンスター

レベル3/地属性/戦士族/攻撃力1200/守備力400

このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手は他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。

 

 

「モンスター効果発動!手札から、レベル4以下のモンスターを特殊召喚する!来い、もう1体の《切り込み隊長》!(4)」

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力1200

 

 

「切り込み隊長は、他の戦士族モンスターへの攻撃を防ぐ、これなら、どうだ?」

「守りを固めるだけじゃ、俺は倒せないぜ。」

「ヘッ!残念ながら、俺の狙いはそこじゃねえよ!装備魔法、《シャドウツインブレード》!(3)」

 

 

《シャドウツインブレード》

装備魔法

 

 

「このカードは、戦士族モンスターにのみ装備できる装備魔法。装備モンスターと同じ攻撃力を持ったモンスターがフィールドにいる場合、装備モンスターは直接攻撃ができる!いけっ!《切り込み隊長》で、ダイレクトアタック!!」

「その攻撃は通らねえ!罠カード、《ハンドバリア》を発動!」

 

 

《ハンドバリア》

通常罠

自分フィールド上に「ハンド」と名の付いたモンスターが存在する場合、このカードを発動したターンに発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 

 

斜め上より剣を振り下ろした《切り込み隊長》の攻撃は、ギラグが出したバリアによって防がれた。

 

 

「俺のフィールドにモンスターがいる場合、バトルダメージは0になる。」

「くそっ。ナンバーズがバトルでは破壊されないからって。ターンエンドだ!」(3)

<遊士:伏せなし ギラグ:伏せ1枚>

 

「俺のターン!!(2)」

 

 

「大丈夫かな、遊士さん。」

「切り込み隊長によるロックがある限り、ギラグのモンスターは攻撃できない!大丈夫だ!」

 

「ヘッ。無駄だ!ジャイアント・ハンドのモンスター効果発動!モンスター秘孔死爆無惚!!」

 

指先から出た光が、切り込み隊長を貫き、膝をつかせた。

 

「これは!?」

「ジャイアント・ハンドは、オーバーレイユニットを2つ使うことで、モンスター効果を無効にし、表示形式の変更も不能にする!握りつぶせ!!ジャイアント・ハンドで、《切り込み隊長》を攻撃!」

 

《シャドウツインソード》を装備した《切り込み隊長》は、ジャイアント・ハンドに握りつぶされて破壊されてしまった。

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3200

 

 

(こいつを待ってたぜ。《シャドウツインブレード》が墓地に送られる時を!!反撃開始だ!!)

 

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》
ペンデュラムモンスター
レベル8/闇属性/悪魔族/攻撃力3000/守備力1000
【Pスケール:青4/赤4】
①:1ターンに1度、自分フィールドの「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。
【モンスター効果】
①:1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合、そのモンスター1体を対象として発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、対象のモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果を発動するターン、このカードは直接攻撃できない。
②:このカードは、このカードを対象としない魔法・罠カードの効果では破壊されない。


<次回の最強カード>
《レベル・ブレード》
装備魔法






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第17話-ナンバーズを駆使せよ!

草薙遊士

 

・LP3200

・手札3枚

・(モンスター)《切り込み隊長》(ATK1200)

・(魔法・罠)なし

 

 

ギラグ

 

・LP4000

・手札2枚

・(モンスター)《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》(ATK2000)(ORU0)

・(魔法・罠)1枚

 

 

(俺には、後ろの男からパクッたナンバーズが2枚ある。1枚は攻撃力400しかない秘鳥フォーチュンチュン。だが、もう1枚は…)

 

「おい!まだ俺のバトルフェイズは終わっちゃいないぜ!リバースカード、オープン!速攻魔法、《RUM-クイック・カオス》!」

 

 

《RUM-クイック・カオス》

速攻魔法

「CNo.」モンスター以外の自分フィールドの「No.」と名の付いたエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」と名の付いたモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからエクシーズ召喚する。

 

 

聞き覚えのあるカードに、遊矢は上空にできたバリアンズ・スフィア・フィールドを観ながら言った。

 

「あれは…ランクアップ・マジック!!」

「速攻魔法なの!?」

 

「このカードは、バトル中にモンスターをランクアップさせる!俺は、ジャイアント・ハンドで、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.106!混沌なる世界を掴む力よ、その拳は大地を砕き、その指先は天空を貫く。溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド!!

 

 

灰色をベースとして作られたジャイアント・ハンドが深紅色の光に包まれ、再び姿を現した時、溶岩でできたことが一目瞭然であるほどの紅い光を発した腕部から掌にかけての部位を模したモンスターとなった。

 

「このモンスターは!?」

 

 

《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》

エクシーズモンスター

ランク5/地属性/岩石族/攻撃力2600/守備力2000

レベル5モンスター×3

このカードは「No.」と名の付いたモンスターとの戦闘では破壊されない。このカードが「No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、魔法・罠・効果モンスターの効果がフィールド上で発動した時に発動する。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果をターン終了時まで無効にする。

 

 

「これこそが、選ばれしバリアンの戦士だけが手にすることができる、カオスナンバーズ!!」

「カオスナンバーズ…遊馬が持っていたのと同じ!?」

 

その言葉を聞くと、ギラグは下を向きかけていたが、大仰なほどに首を遊士の方へと振り向けた。

 

「何…お前…九十九遊馬を知っているのか!?」

「ああ。この前会ったからな。」

 

「どうやらお前は俺が思っている以上に危険な奴のようだな。容赦はしない!」

 

「は?どういう事だ?」

「問答無用!バトル中に特殊召喚されたモンスターには、攻撃の権利がある!ジャイアント・ハンド・レッドで、残った《切り込み隊長》を攻撃!」

 

 

万死紅掌!!

 

 

「ぐあっ!!」

 

 

草薙遊士:LP3200→LP1800

 

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(1)」

<遊士:伏せなし ギラグ:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(4)」

 

 

引いたカードが罠カードであり、モンスター除去効果を持つカードであることがわかると、遊士は思わず頷いた。

 

(道連れか…モンスターが俺の墓地に送られた時、場のモンスター1体を破壊できるカード…)

 

「俺の手札のモンスターを使うしかないな…モンスターを裏守備表示!そしてカードを1枚セットして、ターンエンド!」(2)

<遊士:伏せ1枚 ギラグ:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(2)バトルだ!ジャイアント・ハンド・レッドで、裏側守備表示モンスターを攻撃!」

「すまねえ、《コマンドナイト》。だがこの瞬間!罠カード、《道連れ》を発動!」

 

 

《道連れ》

通常罠

フィールド上に存在するモンスターが自分の墓地へ送られた時に発動する事ができる。

フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

 

 

「俺の場のモンスターがバトルで破壊された時、相手モンスターも破壊する!落ちろ、ジャイアント・ハンド・レッド!!」

 

デュエルアカデミアでデュエルを学んでいる者というだけあり、目の前の未知のモンスターに対しても、対抗手段を用意していると、自分で思った遊士であったが…

 

「無駄だ!ジャイアント・ハンド・レッドのモンスター効果発動!」

「なにっ!?」

「フィールドでカード効果が発動された時、カオスオーバーレイユニットを1つ使い、フィールドの全てのカード効果を、エンドフェイズまで無効にする!」

 

 

ジャイアント・ハンド・レッドが掌を大きく開くと、掌の中央から発せられた紅い光が波のようにして周囲に広がり、道連れのカードが石化し、そのまま姿を消した。

 

 

《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》:CORU1→CORU0

 

 

「これでジャイアント・ハンド・レッドからカオスオーバーレイユニットはなくなったが、お前にはもう打つ手はない。ターンエンドだ。(2)」

<遊士:伏せなし ギラグ:伏せ1枚>

 

 

「俺は負けられないんだ!いくぜ!俺のターン!(3)」

(引いたカードは……《剣聖-ライジング・ソード》。こいつを使えば…けど。)

 

遊士の頭の中にあったのは、ギラグのモンスターを倒せるカードを召喚することだけだった。ジャイアント・ハンド・レッドの攻撃力は2600ポイント。それを下回るライジング・ソードを召喚することの意味は、彼には見出せなかった。

 

「俺は墓地の《シャドウツインブレード》の効果!このカードを墓地から除外して、墓地に攻撃力が同じ戦士族モンスターが2体いる場合、そのうち1体を特殊召喚できる!蘇れ、《切り込み隊長》!」

 

 

《切り込み隊長》:☆3/攻撃力0

 

 

「壁モンスターか?」

「いや、違うぜ。俺は手札から、《レベル・ブレード》を《切り込み隊長》に装備する!」(2)

 

 

《レベル・ブレード》

装備魔法

戦士族モンスターにのみ装備可能。1ターンに1度だけ、手札の戦士族モンスター1体を墓地に送ることで、装備モンスターのレベルは、そのモンスターのレベルと同じになる。この効果でレベルが変化している装備モンスターをエクシーズ素材とする場合、1体で2体分のエクシーズ素材とすることができる。

 

 

「エクシーズ召喚なんてやらねえから、滅多に使わねえカードなんだけど、レアカードだからって、持ってて損はなかったな。」

「レベル・ブレードは…2体分のエクシーズ素材にできる装備魔法か。」

「そうよ!いくぜ!手札のライジング・ソードを墓地に送り、切り込み隊長をレベル7にする!!」(1)

 

その光景を見た遊矢は思わず声をあげた。

 

「ライジング・ソードを墓地に送る!?」

「ああ。これで、ナンバーズが呼び出せる!」

 

零児が思ったのだ。ライジング・ソードを捨ててしまうことが、愚かな行為だと。それ故眉間に皺を寄せ、その様子を黙って見ていた。

 

「…」

 

 

「2体分の《切り込み隊長》で、オーバーレイ!2体分のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

仮想世界に潜む者よ!その姿を可視化させ、幻惑の光とともに、この世界に真実をもたらせ!No.89 電脳獣ディアブロシス!!

 

 

《No.89 電脳獣ディアブロシス》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク7/闇属性/サイキック族/攻撃力2800/守備力1200

レベル7モンスター×2

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。

①:1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手のエクストラデッキのカードをランダムに1枚選んで裏側表示で除外する。

②:このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したバトルフェイズ終了時、相手の墓地のカード1枚を対象としてこの効果を発動することができる。そのカードを裏側表示で除外する。

③:相手のカードが裏側表示で除外された場合に発動できる。裏側表示で除外されている相手のカードの数だけ、相手のデッキの上からカードを裏側表示で除外する。「電脳獣ディアブロシス」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「なにっ!?ナンバーズ…!?」

 

先ほどから怯えきって黙っていた後ろの男も、ようやく口を開いた。

 

「そ…それは…」

「あんたのナンバーズさ!」

 

消耗している男は、叫ぶ気にもなれなかったが、自分の衝動を思い出すと、遊士がナンバーズを使うことには反対だった。目の前の遊士の人格が滅んでしまうかもしれない。先ほどの自分のように…

 

ギラグも同じようなことを考えてはいたが、同時に遊士の様子が少しも変わらないのを見て、別のことも考えていた。

 

(一般人がナンバーズを使うと…心の闇が増幅する…はずだが、何だコイツは?)

 

「まずは、ディアブロシスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手のエクストラデッキのカードをランダムに除外するぜ!」

 

 

パープレックス・ブレイン!!

 

 

《No.89 電脳獣ディアブロシス》:ORU1→ORU0

 

 

騎士の着る鎧のパーツがところどころ浮いており、それらのパーツとパーツの間から時より赤い光が繋がり、ボディを構成している。兜のような部分の上にある、曲がった形をした角のような部分から、雷撃が発せられ、ギラグのエクストラデッキを襲った。

 

「ぐあっ!俺のランク4のモンスターが!」

「《ジェムナイト・パール》。攻撃力2600のエクシーズ!カモフラージュのために入れてるって訳か!だがこれで終わりじゃねえ!ディアブロシスは、相手のカードを裏側で除外した場合、相手のデッキの上から1枚を裏側で除外する!」

「チッ。調子に乗りやがって…」

「バトル!電脳獣ディアブロシスで、ジャイアント・ハンド・レッドを攻撃!」

 

 

ディアボリック・クロウ!!

 

 

ディアブロシスは少し溜めた後、左手の鋭くとがった爪を振り下ろし、ジャイアント・ハンド・レッドの巨大な溶岩の腕を引き裂いた。

 

「クッ!!」

 

 

ギラグ:LP4000→LP3800

 

 

「どうだ!!俺のナンバーズの力は!!」

「ナンバーズは生憎、お前らのものには…なんねえんだよ!罠カード、《ナンバーズ・ハート》!!」

 

 

《ナンバーズ・ハート》

通常罠

相手の「No.」と名の付いたモンスターの攻撃または効果によって、自分フィールド上のカードが墓地に送られた場合に発動することができる。その相手モンスターのコントロールを得る。この効果でコントロールを得たモンスターが相手に与える戦闘ダメージは半分となり、次の自分のエンドフェイズに破壊される。

 

 

「俺のナンバーズを破壊したナンバーズのコントロールを得る!」

「何!?対ナンバーズのトラップだと!?どういうことだ!?」

「わからねえのか?俺たちはな、ナンバーズを使う連中と、戦っているんだよ!」

「ナンバーズを使う連中…?」

 

遊士には心当たりがあった。このエクシーズ次元で探し求めている人物。彼の持つ希望を背負うモンスターは、確かにナンバーズであったのだ。

 

「ホープ…」

 

そう遊士が呟いたのを、ギラグは聞き逃すはずもない。

 

「そうだ。お前が知っている九十九遊馬。そしてアストラル。奴らを叩き潰し、ナンバーズを全て手に入れることこそが、我々のすべきこと!お前のナンバーズも、我々が頂く!」

 

ディアブロシスは振り返り、遊士を一瞥した後、ギラグの元へと移った。

 

(クソッ。こいつらの因縁は知らねえが、ディアブロシスが取られちまった。)

 

「俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(0)」

<遊士:伏せ1枚 ギラグ:伏せなし>

 

「俺のターン!(3)ディアブロシスの攻撃では、お前のライフを0にすることはできない。だったらこいつは…俺のナンバーズを強化するために使ってやろう!手札から魔法カード、《ナンバーズ・ユナイト》!墓地からナンバーズを復活させ、俺のフィールドのモンスターエクシーズ1体をそのモンスターに装備する!蘇れ、《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》!!」

 

 

《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》:攻撃力2600

 

 

ディアブロシスは、ジャイアント・ハンド・レッドの3倍ほどの体長であるが、紅い光となり、ジャイアント・ハンド・レッドを取り巻くオーラとなった。

 

「そして、ジャイアント・ハンド・レッドの攻撃力は、装備しているナンバーズの攻撃力の半分の数値だけアップする!!」

 

 

《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》:攻撃力2600→攻撃力4000

 

 

「攻撃力4000だと!?」

「これで終わりだ。草薙遊士とか言ったか。俺たちの邪魔をした報いを受けてもらうぜ!」

「させるか!罠カード発動!《ソウル・バリケード》!」

 

 

《ソウル・バリケード》

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。自分のデッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターが相手によって破壊された時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。また、この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。

 

 

「レベル4以下の戦士族モンスターをデッキから呼び出す!」

「無駄だ!速攻魔法、《ナンバーズ・ピアース》!ナンバーズはこのターン、貫通能力を得る!」

 

誰が特殊召喚されたのかもわからないまま、ジャイアント・ハンド・レッドの掌が遊士の目の前に覆いかぶさった。鈍い音がしたことで、遊士のモンスターが破壊されたのは確実であったが。

 

「遊士さん!!」

 

 

草薙遊士:LP1800→LP400

 

 

「何!?まだライフが残っているだと!?」

「そうだ。俺が呼んだモンスターは、下級戦士族の中で最高クラスの守備力を誇る、《ビッグ・シールド・ガードナー》!!」

 

 

《ビッグ・シールド・ガードナー》:守備力2600

 

 

「まだだ!《ナンバーズ・ピアース》は、対象モンスターが相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを、相手に与える!」

 

 

「ぐっ…ぐわああああああっ!!」

 

ジャイアント・ハンド・レッドの衝撃波に、遊士は大きく吹き飛ばされた。背中を打ちつけたところが数センチずれていたら、電信柱に当たり、タダでは済まなかっただろう。

 

 

草薙遊士:LP400→LP300

 

 

「そしてお互いに、カードを1枚ドローする!さあ、お前もだぜ遊士。(2)」

「クソッ…ドロー!(1)そして、《ソウル・バリケード》の効果で、特殊召喚したモンスターが破壊された時、1枚ドロー!(2)」

「俺はさらに永続魔法、《ハンド・コンバーター》を発動!(1)」

 

 

《ハンド・コンバーター》

永続魔法

1ターンに1度だけ、自分フィールド上の「ハンド」と名の付いたモンスター1体を対象として発動することができる。そのモンスターの攻撃力は1000ポイントダウンする。次の自分のスタンバイフェイズに、相手に1000ポイントのダメージを与え、相手フィールド上の全てのモンスターを攻撃表示にする。

 

 

「ジャイアント・ハンド・レッドの攻撃力を1000下げる代わりに、次の俺のスタンバイフェイズに、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

<遊士:伏せなし ギラグ:伏せなし>

 

 

《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》:攻撃力4000→攻撃力3000

 

 

(攻撃力は下がったが、壁モンスターを出されて、逃げ回られたら厄介だ。こいつで止めにしてやるぜ。)

「遊士!これで終わりだ。お前にはもう勝ち目はない!!」

 

「くっ…俺のターン!!」

 

(手札にあるのは、《不意打ち叉佐》と《リベンジ・マジック》。)

 

 

《不意打ち又佐》

効果モンスター

レベル3/闇属性/戦士族/攻撃力1300/守備力800

このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。このカードは表側表示でフィールド上に存在する限り、コントロールを変更する事はできない。

 

 

《リベンジ・マジック》

通常魔法

自分の墓地に存在する戦士族モンスター2体をゲームから除外して発動する。前のターンに発動された相手の墓地に存在する魔法カード1枚を選択し、そのカードの効果を発動する。

 

 

デッキの一番上のカードに指を乗せる。手が震えていることがわかる。人差し指と中指から、自分自身の緊張が改めて伝わってくる。なぜだろうか。ナンバーズを賭けた、魂を賭けた戦いだからだろうか。

 

しかし魂が奪われるということに、実感は湧かない。

 

ではなぜだ。ピンチは幾度となく訪れた。しかしそのピンチとは、種類が違う。彼はそう思っていた。

 

 

呆然とする遊士に対し、張った声で叫んだのは零児であった。

 

 

「草薙遊士!!!君の覚悟を見せる時だ!!」

 

 

「零児。か…覚悟って。」

「わかっているだろう。君はナンバーズを召喚した。《剣聖-ライジング・ソード》を召喚する道を捨てて!!」

「くっ…。」

「君が墓地から発動した装備魔法、《シャドウツインブレード》には、3つの効果がある。1つ目は、同じ攻撃力を持つモンスターがいる場合、直接攻撃ができる効果、2つ目は、墓地から除外し、同じ攻撃力のモンスターが2体いる場合に1体を復活させられる効果。そして3つ目は、墓地から《シャドウツインブレード》、そして同じ攻撃力の戦士族モンスター2体を除外して、手札から戦士族モンスターを特殊召喚する効果。それを使い、2体の《切り込み隊長》を除外すれば、手札から《剣聖-ライジング・ソード》を出せたはずだ。」

 

 

「でも零児。ライジング・ソードは攻撃力2400だから、ジャイアント・ハンド・レッドには勝てないって思ったんじゃないのか?」

「いや、《シャドウツインブレード》の効果によって特殊召喚したモンスターは、戦闘では破壊されない。ジャイアント・ハンド・レッドの前でも、問題はなかったはずだ。」

 

遊士は、俯いていたが、顔を上げさせたのはギラグの笑い声であった。

 

「ハッハッハッ!!自らチャンスを潰したとはな!お前のライジング・ソード。そいつが、俺にとっては脅威だった!!だが、ナンバーズを使い始めたお前に…勝ち目はない!ナンバーズは俺たちも良くわかっているからなぁ!魂ごと、ナンバーズを頂くぜ!さあ、引け!お前の最期のドローだ!」

「最期……ふざけんじゃねえ!最期なんかに……させねえ!!わかった!!ライジング・ソードを失った。だったら俺は…別の方法で、勝利してみせる!!俺の…タァァァァァァン!!(3)」

 

弧を描くようにしてドローをした。ライジング・ソードがフィールドにいないものの、描かれた弧が見えたような気がするのであった。

 

「ナンバーズは…ナンバーズでしか倒せない。俺のナンバーズは……装備カードに…。いや、まだだ!まだ手はあるじゃねえか!もう1枚のナンバーズが!《不意打ち又佐》を召喚!」

 

 

《不意打ち又佐》:☆3

 

 

「そして俺は、《クロス・セイバー》を特殊召喚!(1)フィールドに同じレベルの戦士族モンスターがいる場合、特殊召喚できる!こいつは本来、リリース用のモンスター。ライジング・ソードを出すための!!けど、今の俺には…こいつのもう1つの効果を使うしかない!!いくぜ、2体のレベル3のモンスターで、オーバーレイ!!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》!!

 

 

(次回に続く)

 

 

 




<今日の最強カード>
《レベル・ブレード》
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。1ターンに1度だけ、手札の戦士族モンスター1体を墓地に送ることで、装備モンスターのレベルは、そのモンスターのレベルと同じになる。この効果でレベルが変化している装備モンスターをエクシーズ素材とする場合、1体で2体分のエクシーズ素材とすることができる。


<次回の最強カード>
《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》
エクシーズモンスター




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第18話-迷える心に迫る影

本格的に遊戯王ZEXALの話に入ってきたのですが、目安としては、第121話の、エリファスvs遊馬が終わり、凌牙がバリアンになろうとしているところです。

本編と少し違うところがありますが、ご了承ください。

それでは第18話をお楽しみください!


草薙遊士

 

・LP300

・手札1枚

・(モンスター)《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》(ATK400)

・(魔法・罠)なし

 

 

ギラグ

 

・LP3800

・手札1枚

・(モンスター)《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》(ATK3000)(+)

・(魔法・罠)《No.89 電脳獣ディアブロシス》(+)/《ハンド・コンバーター》(∞)

 

 

小さい枝を銜えた青い鳥が遊士の目の前に召喚された。先ほどのディアブロシスとは打って変わって小さいモンスターである。遊士の顔のサイズほどしかない。

 

「遊士さん!」

「うわぁ。きれいなモンスターね!」

 

「そのモンスターは………」

 

「攻撃力400のナンバーズを出してどうするつもりだ?意地張ってないで、諦めろ!」

「意地なんか張ってねえ!俺は、勝つためにこいつを召喚した!《クロス・セイバー》のモンスター効果発動!元々の攻撃力が1000以下のエクシーズモンスターのエクシーズ素材になった時、相手モンスターの攻撃力を、このエクシーズ召喚したフォーチュンチュンに加える!」

 

 

《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》:攻撃力400→攻撃力3400

 

 

「なに!?攻撃力3400だと!?」

「そして魔法カード、《リベンジ・マジック》!前のターンにお前が使った魔法カードを発動!俺はお前の墓地の、《ナンバーズ・ピアース》を発動!!」

「《ナンバーズ・ピアース》を使うだと!?」

「そう!《ナンバーズ・ピアース》は、ナンバーズ1体が相手の守備表示モンスターに攻撃をした場合の貫通能力を与える効果と、戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果!そして、対象となったモンスターがランク3以下のモンスターなら、攻撃力が600ポイントアップする効果がある!」

 

 

《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》:攻撃力3400→攻撃力4000

 

 

「なっ…」

「《ハンド・コンバーター》を使ったことが、完全に裏目に出たな!バトルだ!フォーチュンチュンで、ジャイアント・ハンド・レッドを攻撃!」

 

その小さい体でジャイアント・ハンド・レッドに突進攻撃を仕掛けた。ジャイアント・ハンド・レッドはすぐさまフォーチュンチュンをその掌で捉えたが、掌の中から光が溢れ、徐々に彼のオーバーハンドレッド・ナンバーズは崩壊していった。

 

 

ギラグ:LP3800→LP2800

 

 

「そして、《ナンバーズ・ピアース》の効果により、お前は破壊されたジャイアント・ハンド・レッドの攻撃力分のダメージを受ける!破壊された時点でのジャイアント・ハンド・レッドの攻撃力は、ディアブロシスを装備していたために3000!くらえっ!」

 

「なにっ!ぐわあああああっ!!」

 

 

敗北の声は、その場だけに響いた訳ではない。紅き世界の彼らのところへも、響き渡ったのだ。

 

紅き世界、バリアンの戦士の一人、アリトは、左手で胸を押さえ、その場に蹲った。

 

「ギラグ…」

「お前も聞こえたか、アリト。」

「あぁ、聞こえたぜドルベ。あいつの叫び声が…」

「遊馬に負けたのか…?」

「くそっ…」

 

アリトはドン・サウザンドにあるナンバーズを与えられてから、それまで持っていた熱き闘志を捨て、冷ややかなオーラ纏いし者に変化してしまった。それまで以上に九十九遊馬に対して執着し、彼を倒すためならば手段を選ばなくなったのだ。

 

しかし、ゴーシュという男にナンバーズを持たせ、利用したものの、それでも遊馬に敗れてしまった彼は、戦略を考えざるを得なかった。

 

(九十九…遊馬…!!)

 

バリアンの者を倒せる者など、特殊な力を持つ者以外いるはずがないと考えているアリトの中にある遊馬に対する執念の炎が、さらに激しく燃え盛った。

 

「奴は…俺が倒す!!!」

「落ち着けアリト!お前は既に二度奴にやられているんだ!奴を倒す作戦を…」

「んなもんいつまでも考えられる訳がねえだろ!そんなものを考えていてずっと待っていたから、ギラグが…!くそっ!!!」

 

地面に拳を打ち付けるアリトを見ていたドルベは、もう何も言わなかった。

 

(くっ…あと二人…メラグとナッシュが覚醒してくれれば…我々七皇は完全な存在となるのだが…二人の意志次第なのだが…)

 

 

 

ギラグ:LP2800→LP0

 

 

 

「おおおっ!!」

「遊士さんの勝ちだ!」

「すごいわ!!」

 

「見せてもらった。君の覚悟を…」

 

「俺の…勝ちだ!ギラグ!お前のナンバーズをもらうぜ!」

 

バリアンズ・スフィア・フィールドが解除され、遊士が跪くギラグに歩み寄り、そう言うと、ギラグはその仮面越しに苦笑いを浮かべながら言った。

 

「ヘッ。残念だが、俺のナンバーズは少し特殊でね。アストラルには使えない。」

「ふざけんな!お前らの因縁は知らねえけど、そいつをいつまでも持たれてちゃ、困るんだよ!」

「図に…乗るなッ!!」

 

バリアンの紋章がギラグの目の前に浮かび上がると、衝撃波が放たれたのか、遊士は2、3メートルほど吹き飛んだ。

 

「ぐっ!て…てめっ!」

「お前…九十九遊馬を探しているのか?」

「な…なんだよいきなり。」

「さっき名前を出していたからな。」

「まあな。探しているぜ。」

 

「そうか。会ってどうする?お前、俺たちの戦いに巻き込まれるかもしれないんだぜ?」

「ヘッ。余計なお世話だ。それに、俺に負けたアンタの忠告かよ。勘弁してくれよな。」

 

人を小馬鹿にするその不遜な態度に、ギラグは微かな笑みを浮かべていた。

 

 

「草薙遊士。その面…覚えておくぜ。」

 

ソリッドビジョンのモンスターが消えるようにして、ギラグはその場から姿を消した。彼がどこに向かったかよりも、九十九遊馬の居場所を知っていたかもしれない貴重な手がかりを失ったのだ。

 

「ナンバーズも手に入らず、遊馬の居場所もわからない。」

「これでは今のデュエルには意味がない!」

 

権現坂がそう嘆くと、遊士は首を横に振った。

 

「いや、そうとも言えねえな。」

「…?」

「あいつは遊馬の場所こそ教えてくれなかったが、あいつらにとっては、俺も標的になるだろう。そうなったら、必ず遊馬と俺を動かしに来る。」

 

「なるほど。それには一理あるな。」

 

 

そして一行は、どこの繁華街かもわからないところのビジネスホテルで、一夜を過ごした。赤馬零児は会社の社長。金に困ることはなさそうだ。

 

 

※※※※※※

 

 

ハートランドシティの展望台からの眺めは数ある展望台から見えるものの中でも、秀逸なものであった。高さ750メートルからの眺めには目を見張るものがあるだけでなく、アクセスが非常に便利であり、ハートランド駅から徒歩5分。そして、料金も500円と安価である。

 

誰もいない展望台で一人、紫色の髪をした少年は、自分の両手をズボンのポケットに入れ、遠くを見つめ、立っていた。

 

(俺の…記憶…)

 

シャークこと神代凌牙は、ある日のことを思い出していた。ドルベと名乗る男に、自分の運命を悟られた日のことを。

 

(俺が…バリアン…)

 

凌牙はその場では、「考えさせてくれ」と言い、結論を先延ばしにした。だが、この暗雲立ち込める空を見つめる度に、それが凌牙に結論を出すのを急がせている気がしてならない。

 

(璃緒も…俺の運命に委ねると言っていた。クソッ。イラッとくるぜ…自分のことなのに。なかなか決められねえ!)

 

「クソッ!!」

 

先ほどまで口にしていたアメリカンドッグの櫛を地面にたたきつけるようにして投げた凌牙が、その軌道先を見ると、男性の足元に転がっていくのがわかった。

 

「あっ…」

「凌牙。いや、ナッシュ。結論は出たか?」

「お前は…ドルベ。」

 

人間の姿をしていたドルベはすぐにバリアンの姿へと変えた。それは彼に、バリアンの世界への手招きをしているからに他ならない。

 

「もしも我々と来ないのであれば、君と…君の妹は我々の敵ということになる。残念だが。」

「璃緒だと?璃緒は関係ねえ!」

「関係ない訳がない!彼女はメラグなのだ。彼女もバリアン七皇の一人なのだ!!」

「くっ。」

 

(確かに俺は見た。俺は…ベクターと遺跡でデュエルした時の…記憶で…)

 

「己の運命と向き合うのだ、ナッシュよ!我々と共にもう一度、戦ってはくれないか!?」

「己の…運命…」

 

ドルベは凌牙に1枚のカードを差し出した。咄嗟に出たものであったためか、凌牙はそれを受け取った。

 

「これは…」

「このカードは、君がバリアンであることを受け入れた時に覚醒するはずだ。」

「何だと?」

 

エクシーズモンスターではあるものの、カード名も、テキストも、イラストさえ入っていないカード。彼には予想はついていた。それがどういったカードであるのかは。

 

「こんなものを渡しても、俺は!!」

 

 

「本人が嫌がっているんだから、やめたらどうだ?」

 

 

「ン!?」

「誰だてめえ!」

 

音もなく展望台に現れたのは、黒を基調とした、ところどころ黄色の刺繍の施されたマントに、黒のチノパンを履いている男であった。帯電体質で静電気が常に帯びているかのように、髪の毛は真上に逆立っている。年齢で言えば、20歳過ぎの兄ちゃんと言ったところか。

 

「俺の名前はドナー。全てを知る者の一人だ。」

「全てを知る者だと?何言ってんだ?」

「ヘヴンズ・チルドレンと言ってな。お前らにはわからねえだろうが、この次元、この世界っての事柄を全て知る存在、ヘヴンの配下という訳だ。」

「ヘヴン…?その、全てを知る者が、我々に一体何の用だ?」

「俺たちが直接お前らの前に姿を現すのには、理由は2つに1つだ。1つは警告。そしてもう1つは…駆逐。」

「随分と上から目線な要件だな。」

「今回の理由は、警告だ。」

「何だと?何を警告されなきゃいけねえ!?」

 

「フッ。」と、鼻で彼らを笑った後に、ドナーは答えた。

 

「バリアン。お前らのやっていることは、人ならざる者の所業だ。最近、増えすぎてるんだよ、人ではできないことをやり遂げる奴らの数が!!だから俺たちは、そいつらが平和を壊す前に、やめてもらうために、現れたんだ。」

「バリアンの力のことか。」

「ああ、そうだ。」

「だが、我々バリアンは既に人ではない!バリアンがバリアンの力を失って、何の未来があるという!?我々に死ねと言っているのか貴様は!!」

 

初めてであった。ここまで声を荒げて怒りを露にするドルべの姿を見るのは。

 

「ドルベ…」

 

「別にバリアンの力何かなくたって、生きていけるだろ。お前らは元々人だったんだろ?」

 

 

(何…こいつ、どこでそれを…。やはり、全てを知る者という肩書きは、本物なのか?)

 

 

多少の動揺を見せたが、すぐに我に返り、ドルベは首を横に振った。

 

「違う!我々は、彼らと共に生きることなどできるはずがない!」

「安心しろ。お前らだけじゃなく、他のバリアンにも、そしてアストラル世界の者にもこのことは伝える。全員が人として再び生活すれば、もうこの争いも終わりだろ?」

「そんな簡単なことではないのだ!!」

 

お互いの主張がかみ合わない。かみ合うはずもない。バリアンの神、ドン・サウザンドを復活させたバリアンの一人が、バリアンをやめろと言われて、すぐに話がまとまるはずはない。

 

そんな中、凌牙が沈黙を破った。

 

「おい。俺はどうなるんだよ?全てを知っているなら、俺がどうすべきかも、考えがあるんだろ?」

「お前も同じだ。人間として生きろ。バリアンとして生きるなんてことはダメだ。特にお前は、バリアンにとって一番あってはならない奴だ。」

「は?俺が一番あってはならない?」

「お前は、バリアンのリーダーだ。お前には復活されちゃ困るんだよ。お前がまだ、覚醒してなくて良かったぜ。」

 

理由ができて良かった、と多少の安堵を覚えたのも束の間、すぐに彼は現実に引き戻された。ドルベの声によって。

 

「待てナッシュ!それでは、君は我々を裏切るということか?」

「裏切る…?」

「そうだ。君は元々、バリアン七皇の一人!そちらに居て、良い訳がない!君が人間でありたいのは、遊馬、カイト、トロンの子どもたちとの絆が断ち切れないのはわからなくはない!だが、これは運命なのだ!もう一度言う。己の運命と向き合うのだ、ナッシュ!」

 

「運…命…」

 

「またショートしちまったじゃねえかよ。仕方ねえな。デュエルだ、凌牙!!」

「何?デュエルだと?」

「お前が勝ったら、人間として生きろ。だがお前が俺に負けたら、バリアンとして生きろ。わかったな?」

「俺が勝ったら、人間…?」

 

凌牙とドルベはその条件を不思議に思った。凌牙の勝利で手に入るものは、ドナーにとって好ましいもので、凌牙の敗北で彼に残るものは、ドナーにとって好ましくはないもの。

 

「わざと負ける気なのか、お前?」

「さぁな。」

 

 

(簡単なことだぜ。ここで俺が勝てば、バリアンに成りかけのお前を消せる。面倒くせえ奴が一人減るってことじゃねえか。)

 

 

「くっ。おのれ!ドナー!どちらにせよお前の思い通りに…」

「うるせえ!さあ、デュエルを始めるぜ!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

神代凌牙:LP4000

ドナー :LP4000

 

 

「俺の先攻!俺は手札から、《ビッグ・ジョーズ》を召喚!(4)ターンエンド!」

<凌牙:伏せなし ドナー:伏せなし>

 

 

《ビッグ・ジョーズ》

効果モンスター

レベル3/水属性/魚族/攻撃力1800/守備力300

自分が通常魔法を発動したターン、このカードは手札から特殊召喚することができる。

 

 

 

「俺のターン!(6)カードを2枚伏せる。(4)そしてさらに俺は手札から、《避雷神》を召喚!(3)」

 

 

《避雷神》

効果モンスター

レベル4/光属性/雷族/攻撃力1800/守備力100

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにメインフェイズ1の間は魔法カードを発動できない。

 

 

「雷族デッキか。」

「そうか。ドナー、ドーナは、ドイツ語で雷!ナッシュの水属性デッキには、相性最悪だ。」

 

実際にはそんなことはないのだが、雷の攻撃を水属性のモンスターが浴びれば、感電することは間違いなさそうである。

 

「今頃気がついても遅いんだよ。こいつがいる限り、お互いにメインフェイズ1で魔法カードの使用でできねえ。ターンエンドだ!」(3)

<凌牙:伏せなし ドナー:伏せ2枚>

 

「俺のターン!(5)」

 

凌牙は今引いたレベル3のモンスターを見た後、目の前の骨のようなモンスター、避雷神を見た。

 

「攻撃力1800か。俺は手札から、《シャーク・サッカー》を召喚!(4)」

 

 

《シャーク・サッカー》:攻撃力200/☆3

 

 

「レベル3の《ビッグ・ジョーズ》と、《シャーク・サッカー》で、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ!《潜航母艦エアロ・シャーク》!!

 

 

《潜航母艦エアロ・シャーク》

エクシーズモンスター

ランク3/水属性/魚族/攻撃力1900/守備力1000

レベル3モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動することができる。自分の手札1枚につき400ポイントのダメージを相手に与える。

 

 

「攻撃力1900のエクシーズ…」

「エアロ・シャークの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、俺の手札1枚につき、400ポイントのダメージを与える!俺の手札は4枚!1600のダメージをくらえ!」

 

 

《潜航母艦エアロ・シャーク》:ORU2→ORU1

 

 

エアー・トルピード!!

 

 

数発の魚雷がドナーの目の前に着弾し、彼を襲った。その光景を見たドルベからの反応は特にはなかった。いや、反応などできない。ドルベにとっては、凌牙が勝利することは、自分から離れていくということなのだから。

 

 

ドナー:LP4000→LP2400

 

 

「くそっ…やるじゃねえか。」

「まだだ!《潜航母艦エアロ・シャーク》で、避雷神を攻撃だ!突っ込め!」

 

 

ビッグ・イーター!!

 

 

ドナー:LP2400→LP2300

 

 

「やっぱりお前は人間でありたいようだな。」

「黙れ!俺は、挑まれたデュエルには必ず勝利する!そんだけだ!」

「まぁ、お前は俺には勝てねえけどな!罠カード、《ダメージ・コンデンサー》を発動!」

 

 

《ダメージ・コンデンサー》

通常罠

自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動できる。受けたそのダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

「手札を1枚捨てて、(2)受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから特殊召喚する!」

「受けた戦闘ダメージ…?」

「俺の受けた戦闘ダメージはわずかに100。だが、俺が呼び出すのは、攻撃力0のモンスター!来い!《電影のオコジョ》!」

 

 

《電影のオコジョ》

効果モンスター

レベル1/光属性/雷族/攻撃力0/守備力0

 

 

見た目はオコジョだが、その姿ははっきりと現れたり、おぼろげになったりとする。

 

「俺は伏せカードを1枚セットし、ターンエンドだ!(3)」

<凌牙:伏せ1枚 ドナー:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(3)《電影のオコジョ》のモンスター効果!手札から、レベル4以下の雷族モンスターを特殊召喚することができる!現れろ!《放電ムスタンガン》!」(2)

 

 

《放電ムスタンガン》

効果モンスター

レベル4/光属性/雷族/攻撃力1600/守備力1500

このカードは通常召喚できず、自分が特殊召喚を行っていない自分メインフェイズ1に、カードの効果でのみ特殊召喚できる。

①:このカードは1ターンに2度まで戦闘では破壊されない。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、ターンプレイヤーはそのターン攻撃した回数と同じ回数までしかモンスターを特殊召喚できない。

 

 

電気を帯びた漆黒の馬が現れた。「ヒヒーン」と嘶いているその姿から、気高さを感じられる。

 

「さらに永続罠、《ライトニング・ストレート》を発動!」

 

 

《ライトニング・ストレート》

永続罠

自分フィールド上に雷族モンスターが存在する場合に発動することができる。1ターンに1度だけ、自分フィールド上のレベル4以下の雷族モンスターは、バトルフェイズ終了時まで攻撃力を半分にして、相手に直接攻撃することができる。この効果で直接攻撃をしたモンスターが相手に戦闘ダメージを与えた場合、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り攻撃することはできず、効果は無効化される。

 

 

「このカードは、俺のフィールドに雷族モンスターがいる場合、1ターンに1度だけ、レベル4以下の雷族モンスターは、攻撃力を半分にして、直接攻撃をすることができる!さらに、相手がバトルダメージを受けた場合、相手モンスター1体の効果を無効にして、攻撃も不能にする!」

「何だと…?」

(この攻撃を受ける訳にはいかねえ。)

 

凌牙が目線を自分の足元に向けたのを、ドナーが見逃すことはない。

 

「ヘッ!手札から、《電光-雪花-》を召喚!(1)」

 

 

《電光-雪花-》

効果モンスター

レベル4/光属性/雷族/攻撃力1700/守備力1000

このカードは特殊召喚できない。

①:このカードがモンスターゾーンに存在し、自分フィールドにセットされた魔法・罠カードが存在しない場合、お互いに魔法・罠カードをセットできず、フィールドにセットされた魔法・罠カードは発動できない。

 

 

「こいつもまた、雷族モンスターなのか!?」

「そうよドルベ。凛々しい姿だろ。甲冑姿の女ってのも、アリだよな。」

「御託はいいぜ。とっととかかってこい!」

「その得意げな態度。伏せカードがあるからか?」

「さあな!」

 

凌牙の伏せカードは、《ポセイドン・ウェーブ》。モンスターの攻撃を無効にして、800ダメージを与える罠カード。発動に成功すれば、次のターンのエアロ・シャークの効果も含め、大ダメージを与えられると計算していた。

 

「俺は、《ライトニング・ストレート》の効果を発動し、《電光-雪花-》の攻撃力を半分にし、相手に直接攻撃をする!」

 

 

《電光-雪花-》:攻撃力1700→攻撃力850

 

 

「させるか!罠カード発動!」

「残念だが、《電光-雪花-》の効果で、俺のフィールドにセットされた魔法・罠カードがない場合、お互いにフィールドにセットされた魔法・罠カードは発動できないぜ!」

「何だと!?」

「くらえっ!!」

 

 

電影斬!!

 

 

 

神代凌牙:LP4000→LP3150

 

 

 

「うっ!」

「ナッシュ!!」

 

「この瞬間、《ライトニング・ストレート》の効果発動!《潜航母艦エアロ・シャーク》のモンスター効果を無効にし、攻撃も不能にするぜ!」

「なにっ!!エアロ・シャーク!!」

 

雷の一撃を受けて、エアロ・シャークは「ギョギョギョ!!」という唸り声をあげた後、沈黙し、地面に墜落してしまった。

 

「教えてやるぜ、凌牙。《電光-雪花》がいる限り、お互いに魔法・罠カードはセットできず、セットされた魔法・罠カードは使えねえ。」

 

そこまで説明すると、ドナーの視線は《放電ムスタンガン》へと移った。

 

「そして《放電ムスタンガン》は、お互いにモンスターによる攻撃を行った数しか、モンスターの特殊召喚はできず、1ターンに2度まで、戦闘では破壊されねえ!」

 

「このままでは、ナッシュは何もできないまま、ダイレクトアタックを受け続けてしまう!」

「クソッ…」

「覚えておけ。俺は意外と、チマチマと削っていくのが好きなタイプなんだよ!」

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク3/光属性/鳥獣族/攻撃力400/守備力900
レベル3モンスター×2
このカードは、「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。自分のスタンバイフェイズ毎に自分は500ライフポイント回復する。フィールド上のこのカードはカードの効果の対象にならない。このカードが破壊される場合、代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。また、このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分の墓地のレベル3モンスター2体を選択して発動する。選択した2体をデッキに戻し、墓地のこのカードをエクストラデッキに戻す。「No.49 秘鳥フォーチュンチュン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。


<次回の最強カード>
《電影のオコジョ》
効果モンスター
レベル1/光属性/雷族/攻撃力0/守備力0



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第19話-己(おの)が選択する運命

神代凌牙

 

・LP3150

・手札3枚

・(モンスター)《潜航母艦エアロ・シャーク》(ATK1900)(ORU1)

・(魔法・罠)1枚

 

 

ドナー

 

・LP2300

・手札1枚

・(モンスター)《電光-雪花》(ATK1700)/《放電ムスタンガン》(ATK1600)/《電影のオコジョ》(ATK0)

・(魔法・罠)《ライトニング・ストレート》(∞)

 

 

ドナーのターンが終わり、凌牙のターンへと移るところであるが、凌牙はカードをドローする前に、冷静に状況を分析していた。

 

(厄介なモンスターばっかりだな。《電光-雪花》はお互いに魔法・罠カードのセットを封じ、セットされたカードの発動を封じる効果を持つ。《放電ムスタンガン》は、俺がモンスターで攻撃を行った回数までに、モンスターの特殊召喚を制限する効果を持つ。言い換えれば、メインフェイズ1での特殊召喚はできない…。そして、《電影のオコジョ》は、他の雷族モンスターへ攻撃を誘導する効果を持ってやがる。)

 

 

《電光-雪花》

効果モンスター

レベル4/光属性/雷族/攻撃力1700/守備力1000

このカードは特殊召喚できない。

①:このカードがモンスターゾーンに存在し、自分フィールドにセットされた魔法・罠カードが存在しない場合、お互いに魔法・罠カードをセットできず、フィールドにセットされた魔法・罠カードは発動できない。

 

 

《放電ムスタンガン》

効果モンスター

レベル4/光属性/雷族/攻撃力1600/守備力1500

このカードは通常召喚できず、自分が特殊召喚を行っていない自分メインフェイズ1に、カードの効果でのみ特殊召喚できる。

①:このカードは1ターンに2度まで戦闘では破壊されない。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、ターンプレイヤーはそのターン攻撃した回数と同じ回数までしかモンスターを特殊召喚できない。

 

 

《電影のオコジョ》

効果モンスター

レベル1/光属性/雷族/攻撃力0/守備力0

自分のメインフェイズに発動することができる。1ターンに1度だけ、自分の手札からレベル4以下の雷族モンスター1体を特殊召喚する。相手モンスターの攻撃宣言時、自分フィールド上にこのカード以外の雷族モンスターが存在する場合、そのモンスターを選択して発動することができる。相手モンスターは選択したモンスターを攻撃する。この効果は1ターンに1度だけ使用することができる。また、このカードが破壊されたターンのエンドフェイズに発動することができる。自分の墓地に存在する雷族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

 

(俺の手札は、《ハンマー・シャーク》、《スピア・シャーク》、《オーバーレイ・リジェネレート》。ここで、何とかしねえと!)

「俺のターン!(4)」

 

(引いたカードは…《ディープ・カーレント》。直接攻撃を無効にして、バトルフェイズを終了する罠カードか。《電光-雪花》の効果により、罠カードはセットできねえ。)

「くそっ。ターンエンドだ!(4)」

<凌牙:伏せ1枚 ドナー:伏せなし>

 

「ナッシュ!!」

「おいおい。どうしたんだよ。やる気もなくなっちまったのか?俺のターン!(2)永続罠、《ライトニング・ストレート》の効果を発動し、《電光-雪花》は攻撃力を半分にして、ダイレクトアタックできる!くらえっ!」

 

 

《電光-雪花》:攻撃力1700→攻撃力850

 

 

「ぐあっ!」

 

 

神代凌牙:LP3150→LP2300

 

 

「《電影のオコジョ》を守備表示にして、ターンエンドだ。(2)」

<凌牙:伏せ1枚 ドナー:伏せなし>

 

「俺のターン!(5)」

「このターンも何もしないってのは、やめてくれよな。」

「心配はいらないぜ!俺は手札から、《ハンマー・シャーク》を召喚!(4)」

 

 

《ハンマー・シャーク》

効果モンスター

レベル4/水属性/魚族/攻撃力1700/守備力1500

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。このカードのレベルを1つ下げ、手札から水属性・レベル3以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「バトル!《ハンマー・シャーク》で、《電影のオコジョ》を攻撃!」

「させるか!《電影のオコジョ》の効果発動!攻撃対象となるモンスターを、他の雷族モンスターにする!俺は、《放電ムスタンガン》に攻撃対象を変更!」

 

ハンマー・ヘッドによる頭突き攻撃により、漆黒の馬を大きく吹き飛ばしたが、ムスタンガンはすぐに体勢を立て直した。

 

 

ドナー:LP2300→LP2200

 

 

「ダメージこそ発生するが、《放電ムスタンガン》は1ターンに2度まで戦闘では破壊されないぜ。」

 

そう言い終わると、ムスタンガンが嘶き、凌牙の目の前に、電撃の走る四角い枠のようなものが現れた。

 

「だが同時に、《放電ムスタンガン》の効果によって、俺はモンスターを1体特殊召喚できる!《ハンマー・シャーク》の効果発動!手札からレベル3以下の水属性モンスターを特殊召喚する!現れろ!《ウォール・シャーク》!」(3)

 

 

《ウォール・シャーク》:☆1/守備力2000

 

 

「なるほど。前のターンにナッシュが何もしなかったのは、《ハンマー・シャーク》の効果で呼び出せるモンスターが来るのを待っていたのか。モンスター1体だけがフィールド上に存在していても、結局は《ライトニング・ストレート》の効果によって、攻撃が封じられ、モンスター効果も無効にされてしまうからか。」

 

「俺のターン!(3)」

 

ドナーがドローしたカードは、《電光のバリア-ライトニング・フォース》。《電光-雪花》の効果でカードをセットすることができないためか、すぐさまバトルフェイズに移った。

 

「バトル!《ライトニング・ストレート》の効果で、《電光-雪花》の攻撃力を半分にして、ダイレクトアタック!」

「そいつを待っていたぜ!《ウォール・シャーク》の効果発動!」

 

肌が壁のような模様をしている灰色の鮫の目が黄色く光ると、自分の体を城壁のようにして、シャークを覆った。《電光-雪花》の剣による一撃は、その鮫の壁によって、防がれた。

 

「なっ…」

「《ウォール・シャーク》の効果により、水属性モンスターが俺のフィールドにいる限り、俺への戦闘ダメージは0になる!」

「チッ。やるな。《放電ムスタンガン》を守備表示にして、ターンを終了する!(3)」

<凌牙:伏せ1枚 ドナー:伏せなし>

 

 

《放電ムスタンガン》:攻撃力1600→守備力1500

 

 

「よし!ここで、一気に攻め込むぜ!俺のターン!(4)俺は手札から、《スピア・シャーク》を攻撃表示で召喚!(3)」

 

凌牙のフィールドには、《スピア・シャーク》、《ハンマー・シャーク》、《ウォール・シャーク》、《潜航母艦エアロ・シャーク》の4体が並んだ。ムスタンガンの効果によって特殊召喚が制限されていようとも、4体のモンスターを並べて反撃に転じようとする凌牙に、ドナーは表情を変えない。

 

(《電光-雪花》は、お互いの魔法・罠カードのセットを制限する効果がある。奴のフィールドには魔法・罠カードがない以上、カウンターはできないはずだ。)

「バトルだ!《ハンマー・シャーク》で、《放電ムスタンガン》を攻撃する!」

「残念だったな!手札から罠カード、《電光のバリア-ライトニング・フォース》を発動!」

「何!?手札から罠だと!?」

 

 

《電光のバリア-ライトニング・フォース》

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。相手フィールド上に表側表示で存在するレベル7以下のモンスターを全て破壊する。相手フィールド上に水属性モンスターが表側表示で存在する場合、このカードは手札から発動することができる。

 

 

「《電光-雪花》のデメリットが俺にも及ぶことくらい、使う俺が一番わかってるに決まってるだろうが!相手のレベル7以下の表側表示モンスターを全て破壊するぜ!(2)」

 

《スピア・シャーク》、《ハンマー・シャーク》、《ウォール・シャーク》の3体の真上に雷が降り注ぎ、瞬時に破壊された。

 

「確かに《潜航母艦エアロ・シャーク》は、レベルを持たないモンスターだから破壊はされねえ。まぁ、そいつは《ライトニング・ストレート》の効果によって、攻撃できず、効果も使えねえけどな。」

「またこの状況に…」

「しかし、無条件で手札から罠カードが使えるものなのか?」

 

その問いに、すぐにドナーが答えた。

 

「このカードは、相手フィールドに水属性のモンスターがいる場合、手札から発動できるんだよ。」

「な…!水属性!お前…まさか!」

「お前な、俺だって組織に所属している者だぜ?下調べくらい…なぁ?」

 

 

「姑息な手を…。」

 

 

「さあ、お前のターンだぜ?これで終わりか?」

「クソッ。ターンエンドだ。(3)」

<凌牙:伏せ1枚 ドナー:伏せなし>

 

「俺のターン!(3)手札から、《雷電娘々》を召喚!(2)」

 

 

《雷電娘々》

効果モンスター

レベル4/光属性/雷族/攻撃力1900/守備力800

自分フィールド上に光属性以外の表側表示モンスターが存在する場合、表側表示のこのカードを破壊する。

 

 

「攻撃力1900…!」

「永続罠、《ライトニング・ストレート》の効果発動!攻撃力を半分にして、レベル4以下の雷族モンスターは直接攻撃できる!いけっ!《雷電娘々》!」

 

 

《雷電娘々》:攻撃力1900→攻撃力950

 

 

まるでドラマーのようにして、スティックを器用に扱い、目の前のドラムを叩く。シンバルを叩いたその瞬間、集まった雷が凌牙に直撃した。

 

「ぐああっ!!」

 

 

神代凌牙:LP2300→LP1350

 

 

「恐ろしいコンボだ。あの永続罠、《ライトニング・ストレート》とモンスターの攻撃による連携で、もう既にナッシュのライフを2650ポイント削っている。」

「俺は…これで、ターンエンドだ。」(2)

<凌牙:伏せ1枚 ドナー:伏せなし>

 

「俺のターン!」

(まずい、このターンで何とかしねえと。もうあぶねえ。こんなところで、負ける訳にはいかねえんだ!!)

 

「ドローッ!(4)魔法カード、《オーバーレイ・リジェネレート》を発動!(3)」

 

 

《オーバーレイ・リジェネレート》

通常魔法

フィールド上に存在するエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。このカードを選択したモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

 

「これで、《潜航母艦エアロ・シャーク》のオーバーレイユニットを1つ増やすぜ!」

「だが、エアロ・シャークのモンスター効果は使えない。どういうつもりだ?」

「慌てるなよ!さらに俺は手札から、《セブンストア》を発動!」(2)

 

 

《セブンストア》

通常魔法

自分フィールド上に存在するエクシーズモンスター1体をリリースして発動する。自分のデッキからカードを1枚ドローする。その後、このカードを発動するためにリリースしたエクシーズモンスターに乗っていたエクシーズ素材1つにつき、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「《潜航母艦エアロ・シャーク》をリリースして、1枚ドローし、さらにそのオーバーレイユニット1つにつき1枚ドローする!よって俺は、3枚のカードをドロー!(5)」

「そういうことか。」

「しかし、これでナッシュのフィールドに壁モンスターがいなくなってしまった。」

 

(このままでは、いくら俺がモンスターを並べようと、《ライトニング・ストレート》の効果で、直接攻撃を受けることになる。手札には直接攻撃を防げる罠カードもあるが、《電光-雪花》がいる限り、罠カードはセットできねえ。攻撃力で上回っていても、《電影のオコジョ》の効果で、攻撃対象を《放電ムスタンガン》に変えられちまう。だったら、こいつで…!!)

 

「永続魔法、《シャーク・ストリーム》を発動!(4)そして手札から、《ツーヘッド・シャーク》を召喚!(3)」

 

 

《シャーク・ストリーム》

永続魔法

 

 

《ツーヘッド・シャーク》:☆4/攻撃力1200

 

 

「さらに俺は魔法カード、《アクア・ジェット》を発動!(2)《ツーヘッド・シャーク》の攻撃力は1000ポイントアップする!」

 

 

《ツーヘッド・シャーク》:☆4/攻撃力1200→攻撃力2200

 

 

「どんなに攻撃力を上げようと無駄だぜ!」

「《ツーヘッド・シャーク》で、《電影のオコジョ》を攻撃!」

 

アクア・ジェットを吹かし、突進攻撃を仕掛けるが、オコジョの目が光り、二本足で立ち上がると、《放電ムスタンガン》が首をオコジョの方へと向けた。

 

「無駄だと言っている!《電影のオコジョ》の効果発動!攻撃対象を《放電ムスタンガン》へと変更する!」

 

めり込むようにして頭をムスタンガンに近付けるが、ムスタンガンが目の前に張ったバリアによって弾かれると、得意げにドナーが言い放った。

 

「ヘッ!しかも《放電ムスタンガン》は1ターンに2度まで戦闘では破壊されない!」

「俺はこれを待っていた!」

「なにっ!?」

「《ツーヘッド・シャーク》は1度のバトルフェイズに2回攻撃ができる!《電影のオコジョ》の効果が1ターンに1度だけである以上、もうその効果は使えない!くらえ!《電光-雪花》を攻撃!」

「なにっ!?うおおおおっ!!」

 

《電光-雪花》は青い光を放つ剣を横に向けて《ツーヘッド・シャーク》の攻撃を防ごうとするもその勢いに押され、破壊されてしまった。

 

 

ドナー:LP2200→LP1700

 

 

「これで、罠カードがセットできるようになったぞ!」

「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ!(0)」

<凌牙:伏せ3枚 ドナー:伏せなし>

 

「俺のターン!(3)バトル!《ライトニング・ストレート》の効果で、《雷電娘々》の攻撃力を半分にして、直接攻撃!」

「罠発動!《ディープ・カーレント》!」

 

 

《ディープ・カーレント》

通常罠

相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動することができる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。

 

 

「直接攻撃を無効にして、バトルフェイズを終了する!」

「チッ!さっきから使えずにあった罠か?…けどな、その手の罠なら、一度発動しちまえば墓地に送られる。次の俺のターンのバトルは防げねえぜ!ターンエンドだ!(3)」

<凌牙:伏せ2枚 ドナー:伏せなし>

 

「だが俺のフィールドには、バトルフェイズ中に2回攻撃することができる、《ツーヘッド・シャーク》がいる!俺のターン!(1)バトルだ!《ツーヘッド・シャーク》!《電影のオコジョ》を攻撃!」

「またそのパターンか。《電影のオコジョ》の効果発動!攻撃対象を《放電ムスタンガン》に変更!」

「それはこっちのセリフだぜ!《ツーヘッド・シャーク》、2回目の攻撃!今度も、《放電ムスタンガン》を攻撃!」

 

《ツーヘッド・シャーク》の突進攻撃を再びムスタンガンが弾き返したのを見ると、舌打ちをしていたドナーは勝ち誇った笑みを浮かべて言い放った。

 

「ハッ!!プレイングミスだなぁ!《放電ムスタンガン》はバトルフェイズ中に2回戦闘で破壊されない!つまり、2回の攻撃じゃ破壊できねえんだよ!」

 

「俺がプレイングミスだと…?とんだロマンチストだなぁ!」

「なにっ!?」

「まだ俺のバトルは終わっちゃいねえ!永続魔法、《シャーク・ストリーム》の効果を発動!シャークモンスターがバトルした時、このカードを墓地に送り、デッキからシャークモンスターを特殊召喚する!《放電ムスタンガン》の効果は、俺のモンスターがバトルを行った回数分に特殊召喚を制限する!ならば、その俺がモンスターを呼び出したい数だけ、バトルすればいい話だっ!来い、《ダブルフィン・シャーク》!」

 

 

《ダブルフィン・シャーク》

効果モンスター

レベル4/水属性/魚族/攻撃力1000/守備力1200

このカードを水属性のエクシーズモンスターの素材とする場合、1体で2体分のエクシーズ素材とすることができる。

 

 

「新たなモンスターだとォ!?」

「《ダブルフィン・シャーク》!!《電影のオコジョ》を攻撃だ!」

「ドナーには、この攻撃を防ぐ手立てはない!!」

 

ハートランドシティの展望台で眩い光が放たれた。展望台の下を歩いている人たちは、その光に気付くものだろうか。そのような思いがふとドルベの中に過った。

 

「よし、これでやっと、《電影のオコジョ》が倒せた!」

「それでも俺の場にはまだ2体のモンスターがいる!」

「罠カード発動!《ワンダー・エクシーズ》!」

 

 

《ワンダー・エクシーズ》

通常罠

自分フィールドのモンスターを素材としてエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚する。

 

 

「このカードはバトル中にエクシーズ召喚をする!」

「レベル4モンスターが2体か!!」

 

ドナーがその言葉を言ったのには特に意味があるとは思えなかったが、凌牙は自分のエクストラデッキにあるカードを手に取った。

 

(俺は…)

 

「ダ…《ダブルフィン・シャーク》の効果によって、このカードを2体分のエクシーズ素材とする!レベル4のモンスター3体で、オーバーレイ!!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

来い、《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》!!

 

 

《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》

エクシーズモンスター

ランク4/水属性/海竜族/攻撃力2800/守備力2100

レベル4モンスター×3

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外との戦闘では破壊されない。1ターンに1度、このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。破壊したそのモンスターを相手フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は1000ポイントダウンする。さらに、このバトルフェイズ中、このカードはもう1度だけ攻撃できる。

 

 

「ナッシュ!!君は…」

「俺は…神代凌牙!!これが俺の、信じるデュエルだ!いけっ!シャーク・ドレイク!」

 

 

デプス・バイト!!

 

 

シャーク・ドレイクの口から出された鮫の顔を模した藤色の光線が飛び出すと、そこから何本もの筒のようなものが《放電ムスタンガン》へと向かった。

 

「くそっ。手札から罠カード発動!《ライトニング・カウンター》!エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃を無効にして、デッキからカードを1枚ドローする!(4)」

「また手札からの罠だと!?」

「お前のフィールドに水属性モンスターがいる場合、攻撃対象となった雷族モンスターを破壊することで、手札から発動できるんだよ!」

「だが、次の俺のターンで、確実に破壊してやる!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」(0)

<凌牙:伏せ2枚 ドナー:伏せなし>

 

「この瞬間!!《電影のオコジョ》の効果を発動!!破壊されたターンのエンドフェイズに、墓地の雷族モンスターを特殊召喚する!」

「何?」

 

今さらどのようなモンスターを呼ぼうが壁にしかならないと、大して気にもしていない凌牙であったが、突如雷が鳴り響いた。

 

そしてその雷が天狼へと姿を変えた。

 

「な…これは!?」

「俺が呼び出したモンスターは、《大狼雷鳴》!!」

「オ…オオカミナリ…?」

 

 

《大狼雷鳴》:☆7/攻撃力2500

 

 

「バカな!こんなモンスター、墓地にはいなかったはずだ!」

「あったんだよ。一度だけ、こいつを墓地に送るタイミングがな。」

「手札コスト…!!《ダメージ・コンデンサー》か!」

「そう。《ダメージ・コンデンサー》は手札1枚をコストとする。その時にな。」

「だが、今さら攻撃力2500のモンスターがでてきたくらいで、慌てる俺じゃねえ!」

 

「だったらこいつの真の力を見せてやる!!オオカミナリ、特殊能力発動!!」

 

 

《大狼雷鳴》が雄たけびをあげると、四方八方に雷の剣が舞い、シャーク・ドレイクの体を引き裂き、破壊していった。

 

目の前で崩れ去るシャーク・ドレイクを見た凌牙は、その光景を前に、言葉を失った。妙にスローに見えたのは、ただエースモンスターが破壊されたからという訳ではないのは、自分でも理解できた。

 

運命は自分で決めるものだと思っていた。しかし、運命は自分で決めるものではなかった。決まっているのだ。そう誰かが自分に囁いているようだった。

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《電影のオコジョ》
効果モンスター
レベル1/光属性/雷族/攻撃力0/守備力0
自分のメインフェイズに発動することができる。1ターンに1度だけ、自分の手札からレベル4以下の雷族モンスター1体を特殊召喚する。相手モンスターの攻撃宣言時、自分フィールド上にこのカード以外の雷族モンスターが存在する場合、そのモンスターを選択して発動することができる。相手モンスターは選択したモンスターを攻撃する。この効果は1ターンに1度だけ使用することができる。また、このカードが破壊されたターンのエンドフェイズに発動することができる。自分の墓地に存在する雷族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。


<次回の最強カード>
《魂の行く末》
通常魔法


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第20話-己(おの)に与えられし運命

神代凌牙

 

・LP1350

・手札0枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)2枚

 

 

ドナー

 

・LP1700

・手札3枚

・(モンスター)《大狼雷鳴》(ATK2500)/《雷電娘々》(ATK1900)

・(魔法・罠)なし

 

 

凌牙の動揺に捉われることなく、デュエルは進行していく。凌牙のナンバーズであるシャーク・ドレイクが破壊されたことで、彼は大きく狼狽えている。

 

「くっ!シャーク・ドレイクが破壊された!」

「大狼雷鳴は墓地から特殊召喚された時、相手フィールド上の表側表示モンスターを全て破壊する効果を持っている!これでお前のフィールドはがら空きだ。これで終わりだ!俺のターン!(4)《大狼雷鳴》で、ダイレクトアタック!!」

 

大狼雷鳴が吼え、ノコギリのような歯をこちらに向けると、凌牙は我に返り、罠カード発動スイッチ(アクティベートスイッチ)を押した。

 

「罠カード発動!《ポセイドン・ウェーブ》!」

 

 

《ポセイドン・ウェーブ》

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にする。自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが表側表示で存在する場合、その数×800ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 

「モンスターの攻撃を無効にする!」

 

巨大な波が押し寄せ、大狼雷鳴が押し戻された。しかし息をつく暇もなく、《雷電娘々》が臨戦態勢と言わんばかりにドラムをたたき始める。

 

「だが俺のフィールドには、もう1体攻撃できるモンスターがいる。今度こそ最後だ。《雷電娘々》で、ダイレクトアタックだ!」

 

もう1枚伏せカードがあることは、もちろんドナーも、そしてドルベもわかっていた。

 

「速攻魔法、《ディープ・シー・ブラスト》を発動!」

 

突然《雷電娘々》が放出した雷が軌道を変え、自分自身へと向かい、その雷を浴びて破壊された。

 

「ら…《雷電娘々》が!!」

「《ディープ・シー・ブラスト》は、モンスターが攻撃をした時、攻撃力の半分のダメージを受け、そのモンスターを破壊する!その後、破壊したモンスターをエクシーズ素材としてエクシーズ召喚できる水属性のモンスターエクシーズを、墓地からエクシーズ召喚する!」

 

 

神代凌牙:LP1350→LP400

 

 

「そうか。ナッシュがわざと攻撃力の低い《雷電娘々》の攻撃を無効にしたのは、レベル4モンスターで、シャーク・ドレイクのエクシーズ素材になることがわかっていたからか!」

「そうだ!俺はあきらめねえ!!再び現れろ!《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》!」

 

 

《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》:攻撃力2800

 

 

「またそいつか。」

「鮫は、一度食らい付いたら、獲物は死ぬまで離さねえ!」

(俺のライフは1000ポイントを下回っている。この状況で、シャーク・ドレイクをカオス化して、シャーク・ドレイク・バイスを出し、モンスター効果で、《大狼雷鳴》の攻撃力を0にできれば、奴を倒せる!)

 

「獲物は死ぬまで離さない?だったらここで消えてもらうぜ。魔法カード、《死者への手向け》を発動!」

 

 

《死者への手向け》

通常魔法

手札を1枚捨て、フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを破壊する。

 

 

「手札を1枚捨て、シャーク・ドレイクを破壊する!」

「な…何だと!?ぐああああっ!!」

「さらに手札から永続魔法、《輪廻の雷》を発動して、ターンエンド!(1)」

<凌牙:伏せなし ドナー:伏せなし>

 

 

《輪廻の雷》

永続魔法

1ターンに1度だけ、自分のメインフェイズに発動する。自分フィールド上に存在する雷族モンスター1体を選択する。もしくは選択せずにこのカードを破壊する。選択した場合、そのモンスターを次の相手ターンのエンドフェイズに破壊し、雷族モンスター1体を自分の墓地から特殊召喚する。

 

 

「これは…」

「お前のエンドフェイズが来る毎に、俺のフィールドの雷族モンスターを破壊して、新たな雷族モンスターを墓地から呼び出す。これを使えば、《大狼雷鳴》を何度も呼び出し、その都度お前のモンスターを破壊することができる。逃げようとしても、そうはいかねえな!」

「俺は…」

 

勝てば人間、負ければバリアン。自分と対峙する者は、ヘヴンズチルドレンの一員、ドナー。彼は何を思うのか。そしてそれと同じほど、自分の後ろにいるドルベ。彼は何を思うのか。

 

勝てば人間、負ければバリアン。それらの言葉が交互に脳裏に浮かぶ。

 

(俺は、運命とは…選べるものだと思っていた。だが…)

 

「ドローッ!!!」

 

 

凌牙自身が感じていた。カードをドローした時の、紅い軌跡を。

 

「わかった。今わかった。ドナー、そしてドルベ!!運命は俺に…戦えと言った。ここで…自分の運命に目を背けるな、そう言った。だから俺は…このカードを使う!魔法カード、《魂の行く末》を発動!墓地の水属性モンスターエクシーズを除外し、除外したモンスターエクシーズと同じランクを持つモンスターを自分のエクストラデッキから特殊召喚する!!さらにその時エクシーズ召喚に使用することのできるモンスターが2体揃っていれば、そいつらをオーバーレイユニットにできる!」

「勝ちに行く訳か。ということは、お前の言う運命は…人間として生きること…。」

 

紅い軌跡が見えたドルベは目の前にいる紅き戦士がどちら側につくかということに自信があったので、何の不安もなく彼を直視できた。彼の、覚悟を固めた背中を…

 

 

「俺は勝つ。勝って…バリアンとして、生きる!!それが俺の運命!!」

 

 

「んだと…?」

「ナッシュ!」

 

「レベル4のハンマー・シャークと、ツーヘッド・シャークで、オーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、No.101!満たされぬ魂を乗せた箱舟よ、光届かぬ深淵より、浮上せよ!エクシーズ召喚!現れろ、S・H・Ark Knight!

 

 

「サイレント…オナーズ…アークナイト。」

「ナッシュ!!そのカードは…」

 

凌牙はドルベの方には振り返ることはなかったが、そのカードこそが全てを物語っていた。いや、物語る必要もない。彼は自身で言ったのだから、自分の運命が何であるかを。

 

「クッ…こいつは?」

 

 

《No.101 S・H・Ark Knight》:攻撃力2100

 

 

「だが、攻撃力2100じゃ、俺の攻撃力2500のオオカミナリには勝てねえ!」

「モンスター効果発動!オーバーレイユニットを全て使い、相手フィールドの攻撃表示モンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットとする!」

 

 

エターナル・ソウル・アサイラム!!

 

 

「なっ!?何だと!?オーバーレイユニットに…!?」

「これでお前のフィールドにモンスターはいなくなった。いけっ!S・H・Ark Knight!プレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

 

ミリオン・ファントム・フラッド!!

 

 

 

「どっ…どわああああああっ!!」

 

 

 

ドナー:LP1700→LP0

 

 

 

暫くの沈黙が訪れた。しかしそれはすぐに倒れたドナーの目の前にいる男によって破られた。

 

「俺の勝ちだ。だが、さっきも言ったように、俺は人間としては生きない。宣戦布告だ!!お前らが俺たちバリアンを敵と言うのであれば、受けて立ってやる!!」

「お前…その言葉忘れんなよ。せっかく穏便にことを済ませてやろうかと思ったが、俺たちを敵に回したことを、後悔させてやるぜ!」

 

ふらふらと立ち上がり、ドナーはそう言った後、その場から姿を消した。

 

「ナッシュ…君は。」

「待たせたな、ドルべ。俺は今のデュエルで確信した。これが俺の運命なのだと。人間として生きることではなく、バリアン七皇の一員として生きることが、俺の運命なのだと!」

「うん。」

 

 

「私もそうなる気がしていましたわ。」

 

 

透き通った女性の声が2人の後ろから聞こえた。その場にいないはずの者に驚きを見せることもなく、ナッシュたちは険しい表情をしつつも、彼女を迎え入れた。

 

「璃緒…いや、メラグ。」

「バリアン七皇、結成の時だ!!共に戦おう!!」

 

メラグとナッシュはそのドルべの言葉に、深く頷いた。

 

 

※※※※※※

 

 

それから3日後のことであった。デュエルに敗北したギラグのダメージは彼が思った以上に大きかったようであり、ギラグはバリアンの本部からは動き出せずに居た。

 

「すまねえな、せっかくバリアン七皇が揃ったって時に。」

「一体誰なんだギラグ!お前をこんな目に合わせた奴は!?」

 

「んなモン、決まっているじゃねえか。ナンバーズを使い、ギラグと戦う必要があるデュエリストは、あいつしかいねえじゃねえか。」

 

カプセルのようなものに入り、休養をとっているギラグの目の前に現れたベクターが、ギラグの戦友であるアリトにそう言った。そのセリフは、彼の闘志に火をつけるには十分すぎるセリフであった。

 

「やはり、九十九遊馬か!」

「いや、それが…」

 

「そうだなぁ!九十九遊馬なんだろうな!ナンバーズが使える奴なんてなぁ!」

「クソッ。九十九…遊馬!!もう我慢ならねえ。言ってくる!」

「おい、ちょっと待て…」

 

カプセルに入っているギラグの掠れた声では彼を制止することはできず、そのままアリトは走ってこの場を後にしてしまった。

 

不気味な笑みを浮かべるベクターをギラグが睨み付けると、背を向けながら、ベクターはギラグに言った。

 

「何だよ?あれ、違ったっけ?遊馬だろ?お前を倒したの?」

「違う。お前はわかっていただろ?あの時俺たちのデュエルを見てたよな。」

「何だよ。バレてたのか。残念だなぁ。」

「ベクター。お前一体何がしたい?」

 

「別にぃ。バリアンにとって九十九遊馬は敵でしょー?だったら早々に潰させた方が良いかなぁって!それに…」

 

パチン!ベクターがフィンガースナップをすると、ギラグとベクターの前には、アリトの姿が映し出されたモニターのようなものが現れた。

 

「アリト!!」

「バリアンズ・ヴィジョン!なんちて!」

 

 

バリアンの者たちは、ナンバーズの力を感じ取る能力を持っている。つまり、ナンバーズを所持する人間をどこまでも追いかけることが可能なのだ。その上、彼らは人間ではなく、並外れた身体能力、そして飛行能力も持ち合わせている。彼らから逃れる術はない。

 

一方九十九遊馬は、いつバリアンが来ても良いように、万全の準備をしている。ナンバーズのポテンシャルを引き出すことができるデッキを、備えているのだ。

 

「一体誰なんだろう?俺たちにナンバーズを渡したい…なんて。」

「だから言ったのだ。これは罠だと。やめるべきだ。」

「何言ってんだアストラル!売られた喧嘩は買うのがデュエリストだろ!」

「相変わらずだな、君は…。」

 

学校から帰宅した遊馬は、アストラルとともに2日前に郵便受けに入っていた手紙を読みながら地図の指し示す方向へと進んでいる。

 

ハートランド倉庫。彼も以前に一度だけそこに行ったことがある。その時のことを覚えていた。

 

自宅から20分のところにあるその倉庫にいたのは、以前ここで見たことのあるデュエリストおよびその仲間たちであった。

 

「九十九…遊馬!」

「あ!草薙…遊士!」

「来てくれると思っていたぜ。」

「すぐに会えるって、アストラルも言っていたしな!」

 

2人で会話を繰り広げていると、そこに遊士の後ろにいた零児が割って入った。

 

「2人で盛り上がっているところ申し訳ないのだが、君が、九十九遊馬か?」

「え?あ、そうだけど…」

「私たちは別次元から来たものでな。このナンバーズを渡す代わりに、教えてほしいことがあってね。」

 

そう言って零児はフォーチュンチュンと、ディアブロシスの2枚のナンバーズを遊馬に見せた。

 

「確かにナンバーズだ。」

 

アストラルがそう言うと、零児は「先ほどから気になっていたのだが…」と口を開いて会話を始めた。

 

「君は何者だ?遊馬の背後霊のようなものか?」

「なにっ!?あんたもアストラルが見えるのか!」

「アストラル…?」

「そう。我が名はアストラル。アストラル世界の使者だ。」

 

「俺にも見える。権現坂と、柚子は?」

「ああ。俺にもはっきりと見えるぞ。」

「私にも。普通の人には見えないの?」

 

「君たちは一体…。別次元の者だからか…?普通の人間には見えないのだが…」

「まあアストラル!かてえことはいいじゃんか!みんな見えたほうが都合が良いぜ!」

 

「それはそうと…本題に入っても良いかな?」

 

零児が眼鏡を人差し指で直しながら冷たくそう言った。

 

「そうだな。君たちはこのナンバーズと引き換えに何を教えてもらうつもりなのだ?」

 

するとそこからは零児よりも前に出た遊士が話を進めた。

 

「俺たち、人を探しているんだ!田村ユキって言う。」

「ユキ?」

「俺が前この次元に来た時、多分一緒に来たんだ!光に包まれたんだよ、あいつも!そんで俺が元の次元に戻っても、会えていないから、この次元に取り残されているのかもって。」

「うーん…」

「何でも良い!知っていることはないか?俺たちには手掛かりがねえんだ!頼む!」

 

学ラン姿の遊士が遊馬に頭を下げているが、遊馬は困惑した表情を見せている。

 

「そう言われても…アストラル。何か知らないか?」

「確かに私は異次元のエネルギーをキャッチすることはできるが…それでもそれが、その人のものとは断定できない。」

「そうか…。」

 

「遊士さん。これじゃ、また振り出しに…。」

「ちょっと、遊矢!」

「あ、ごめん。でも…」

 

柚子が余計なことを言わないのと言わんばかりに遊矢の肩を叩くと、遊士が振り向き、明らかに肩を落として言った。

 

「ああ。いいよ、探すしかねえってことだからな…」

 

いきなりゴゴゴ…という倉庫の入り口が開く音がして、一同はそちらに目を向けた。

 

「ン!?」

「誰だ!!」

 

 

「ヘッ。見つけたぜ。九十九遊馬!!」

 

 

「お前…アリト!!」

 

胸元が肌蹴た状態で着ている紅いワイシャツにグレーのスラックスという出で立ちのバリアンの戦士が、遊士たちの目の前に現れた。

 

「何だお前。」

「遊馬。お前に用があって来た!部外者に用はねえ!とっとと失せな!」

「んだよその言い草。まぁいいや、遊馬に用がっていうんなら、俺たちがいる必要もないよな。」

 

この次元のことは良くわからず、ましてや遊馬と他者との人間関係などほとんどわからない遊士たちからすれば、当然のことである。彼らには目的がある。目的があって行動しているのだ。

 

「じゃあな…」と遊士が言おうか言うまいか考えていた時、再び倉庫の入り口が開き、赤いスーツが目に入った。

 

「ン…?」

 

倉庫に入って来た男の第一印象は、横分けにした金髪、両耳にピアスをした赤いスーツ、白いワイシャツの上には黒いクロスタイを身に着けた紳士風の優男と言った具合か。

 

「おっさんかよ今度は。誰だ?」

 

「君は人を見ていきなり誰だと言うのかね?無礼だとは思わんか?」

「わりぃなおっさん。思い通りにいかないことがあって、八つ当たりしちまった。」

「フッ。気にする必要はない。草薙遊士くん。」

 

その名前が出た瞬間、遊士は紳士風の優男に背中を向けかけていたが、その場に立ち止まり、振り返った。

 

「な…何で俺の名前を!?」

「私は、トゥール。ヘヴンズ・チルドレンの一人だ。」

「ヘヴンズ…チルドレン!?ヘヴンって、まさかてめえ。」

「そう。君たちに助言をしたヘヴンの部下の一人だ。」

「助言だと?どう考えても余計なお世話だったけどな!」

 

しばらく2人で言い争っているところに、アリトと遊馬も入った。

 

「おい、何なんだよいきなり。」

「俺たちに関係がねえなら、余所でやってくれよ!」

 

「おっとそれは失礼。だが今回は君たちに関係があるからわざわざここに来たのだよ。私とデュエルをして欲しい。バリアン七皇の一人、アリト。」

「なっ…バリアン七皇…どうしてそれを!?普通の奴には…」

「私は普通ではない。と言えば納得してもらえるかね。」

「お前が普通じゃないとしても、俺はここに遊馬とデュエルをしに来た!ギラグの仇を討ちに!」

「は?ギラグの?」

 

若干裏返り気味の声で遊馬がアリトの言葉に答えると、その後に会話を続けたのはトゥールであった。

 

「ギラグの仇討ちならば、倒すべきは遊馬ではないがね。」

「は…?どういうことだおっさん?」

「わからんのかね。ギラグを倒したのは遊馬ではないと言っているのだ。」

 

「俺だよ。」

 

アリトが理解できていない様子なので、痺れを切らした遊士が呆れてそう言った。しかしそれを言うと、彼の怒りの矛先が自分に向かうということを覚悟しなければならない。

 

人間ではないギラグの仲間の怒りを…

 

「て…てめえが!?」

「ああ。」

 

「ギラグには聞かされていないのかね?意識でも失っているのかな?」

 

全てお見通しであると言わんばかりにそう言ったトゥールの会話は、もちろんバリアンズ・ヴィジョンを通してギラグとベクターも聞いている。

 

(チッ。誰だか知らねえが、余計なことをしやがって!)

 

「…」

 

「ギラグは…てめえにやられたのか!!だったらデュエルだ!遊馬!お前の相手は後でしてやる、この俺、バリアン七皇の一人、アリトが相手だ!」

「俺はてめえに用はねえが…売られた喧嘩は買うぜ!」

 

「遊士さん!そんなデュエルをしている場合じゃ…」

 

柚子がそう言って遊士がデュエルをするのを止めようとすると、遊士の視線はアリトに対して注がれた後に、トゥールに対して向けられた。

 

「俺はこいつに用がある!」

「フッ。私も君たちに用事があって来た。デュエルという用事がね!せっかくだ、それぞれに用があるのならば、トライアングルデュエルといこうか!」

 

「ヘッ。いいぜ。」

「望むところだ!バリアル・フォーゼ!!」

 

すると紅い光の中で、アリトは一気に紅き戦士バリアンの姿へと変化した。

 

「へ…変身しやがった!!何かのヒーローなのか!?」

「ごちゃごちゃうるせえ、いくぜ2人とも!」

 

 

「「「デュエル!!」」」

 

 

 

草薙遊士:LP4000

アリト :LP4000

トゥール:LP4000

 

 

 

「では、先攻を取らせてもらおうかね。私のターン!《ドラゴンフライ》を攻撃表示で召喚!」

 

 

《ドラゴンフライ》

効果モンスター

レベル4/風属性/昆虫族/攻撃力1400/守備力900

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 

 

「ターン終了!(4)」

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし トゥール:伏せなし>

 

「次は俺だ!ドロー!(5)《BK(バーニングナックラー)スイッチヒッター》を召喚!」

 

 

《BKスイッチヒッター》:攻撃力1500

 

 

「このモンスターはバーニングナックラーのエクシーズ素材になる場合、1体で2体分のエクシーズ素材にできる!2体分のスイッチヒッターで、オーバーレイ!」

 

 

エクシーズ召喚!魂に秘めた炎を、拳に宿せ!《BK拘束蛮兵リードブロー》!!

 

 

《BK拘束蛮兵リードブロー》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/炎属性/戦士族/攻撃力2200/守備力2000

「BK」と名のついたレベル4モンスター×2

このカードが戦闘またはカードの効果によって破壊される場合、その代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。また、このカードのエクシーズ素材が取り除かれた時、このカードの攻撃力は800ポイントアップする。

 

 

「リードブロー…」

「いきなりエクシーズかよ!」

 

「ターンエンドだ!(4)」

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし トゥール:伏せなし>

 

「じゃあ今度は俺のターンだ、いくぜ!」

 

表情にこそ出さないが、トゥールはわかっていた。報告書で送られてきた遊士のデッキ内容。それが戦士族デッキであり、さらに言えば、不思議な力を持つ剣聖が入っているということも。

 

「手札から、《コマンド・ナイト》を召喚!このカードの効果で、俺の戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップ!」

 

 

《コマンド・ナイト》:攻撃力1200→攻撃力1600

 

 

「そして装備魔法、《竜殺しの剣》を発動!

 

 

《竜殺しの剣》

装備魔法

戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は700アップする。装備モンスターがドラゴン族モンスターと戦闘を行ったダメージ計算後に発動する。装備モンスターと戦闘を行ったそのモンスターはそのバトルフェイズ終了時に破壊される。

 

 

「装備モンスターの攻撃力は700ポイントアップ!」

 

 

《コマンド・ナイト》:攻撃力1600→攻撃力2300

 

 

「攻撃力2300か。」

「これで、俺のモンスターが最も攻撃力が高いぜ!ターンエンド!(3)」

「フッ。このターンから攻撃が可能となる。いかせてもらうとするかね!」

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《魂の行く末》

通常魔法

 

 

<次回の最強カード>

《Heaven's Call》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分のデッキから、「Heaven」と名の付くカード1枚を自分の手札に加える。

 

 

 



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第21話-遊士vsアリトvsトゥール!三つ巴の戦い!

みなさまお久しぶりです。akcです。

仕事との両立が難しく、約一年ほど、放置してしまいました。

一時はもう更新もやめようかと思ったのですが、すぴばるさんで書かせていただいた、「遊戯王5D's 本当の支配者」の、バックアップも取り忘れ、全てのデータが消えてしまった無念、そして、本当はあと10話ほどで完結する予定だったことを思い出し、たとえ時間がかかっても、遊戯王UAを納得のいく形にしたいと思って、更新を再開しました。

「遊戯王5D's 本当の支配者」に続く本作、両方とも文学に詳しいわけでもない、表現も稚拙な私の作ったものですが、もし読者の方がいらっしゃいましたら、見守っていただければと思います。よろしくお願いします!!


あ、もし…「遊戯王5D's 本当の支配者」の小説内容を持っている人がいたら…いいなぁ。すみません。俺の仕事です。なんでもありません泣


草薙遊士

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)《コマンド・ナイト》(ATK2300)(+)

・(魔法・罠)《竜殺しの剣》(+)

 

 

アリト

 

・LP4000

・手札4枚

・(モンスター)《BK拘束蛮兵リードブロー》(ATK2200)

・(魔法・罠)なし

 

 

トゥール

 

・LP4000

・手札4枚

・(モンスター)《ドラゴンフライ》(ATK1400)

・(魔法・罠)なし

 

 

薄暗い倉庫の中で、正三角形の頂点の位置となるように向かい合って立つ3人。バトルロイヤルルールでの戦いで、次にカードをドローしたのは、トゥールという名の、彼曰く「ヘヴンズ・チルドレン」の一人であった。

 

「フッ。このターンから攻撃が可能となる。いかせてもらうとするかね!私のターン、ドロー!(5)君たちのモンスターはともに私のモンスターの攻撃力を上回っている。様子を探らせてもらおうかな。《ドラゴンフライ》を守備表示に変更し、カードを1枚伏せて、ターンエンド!」(4)

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし トゥール:伏せ1枚>

 

「おいおっさん。俺たちの間に入った割には、守備表示かよ!俺のターン、ドロー!(5)いくぜ!俺は手札から、《BKシャドー》を特殊召喚!」

 

 

《BK拘束蛮兵リードブロー》:攻撃力2200→攻撃力3000

 

 

「なにっ!?リードブローの攻撃力が上がった!?他のモンスターの攻撃力を上げて特殊召喚するなんて…」

「シャドーは、自分フィールドのモンスターエクシーズのオーバーレイユニットを1つ取り除いて、特殊召喚することができるモンスターなんだ。そして、リードブローは、オーバーレイユニットが1つ減るごとに、攻撃力が800ポイントアップしていく!」

 

 

《BKシャドー》:攻撃力1800

 

 

「さらに、《BKグラスジョー》を通常召喚!」

 

 

《BKグラスジョー》:攻撃力2000

 

 

「レベル4のくせに、攻撃力2000だと!?」

「ああ。ただしこいつは、攻撃対象となった時、破壊されてしまう弱点があるがな!」

 

「バーニングナックラーが、3体。」

「バトルだ!まずはシャドーで、《ドラゴンフライ》を攻撃だ!」

 

動かずにじっとしている《ドラゴンフライ》の目の前に軽快な動きで近寄り、強烈なアッパーパンチを浴びせ、その場で《ドラゴンフライ》は仰向けになって倒れた。

 

「ぐっ!だが、《ドラゴンフライ》の特殊能力を発動!」

「なに?」

「戦闘で破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚することができる!出でよ、《ドラゴンフライ》!!」

 

 

《ドラゴンフライ》:攻撃力1400

 

 

「なにっ!?振り出しに戻っちまった!」

 

右手でこめかみを抑え、困惑した表情を見せるアリトを見た遊士は、ため息を混じらせてあえて聞こえるように言い放った。

 

「やれやれ、お前、《ドラゴンフライ》の効果知らなかったのか。」

「知らねえ。」

「彼があきれるのも無理はないな。私も同感だ。自分の使うカード以外のカードにも興味を持つことだな。」

「んだとぉ…?あったま来たぜおっさん!!グラスジョー!続けて《ドラゴンフライ》を攻撃だ!」

 

 

またしても強烈なアッパーカットで、《ドラゴンフライ》は倒された。今回は攻撃表示モンスター同士の戦闘なので、戦闘ダメージが発生する。

 

 

トゥール:LP4000→LP3400

 

 

「私は再び、《ドラゴンフライ》の効果を発動!デッキから3枚目の《ドラゴンフライ》を特殊召喚する!」

 

 

 

《ドラゴンフライ》:攻撃力1400

 

 

 

「へっ!おっさんのデッキにはこれでもう《ドラゴンフライ》はないな!」

「そうだな。攻撃するかね?」

「確かに俺のフィールドには攻撃力3000のリードブローがいるが…リードブローは、《コマンドナイト》を攻撃する!!貫けっ!」

 

 

ライトニング・ファウスト!!

 

 

「俺のモンスター!?うわっ!」

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3300

 

 

「リードブローで追撃をしないの!?」

 

驚いて柚子がそう言うと、その横にいた零児が口を開いた。

 

「おそらく、本命が出てくると踏んだのだろう。」

「本命?」

「デュエルモンスターズでは、同じモンスターは最大で3体までしかデッキに入れることはできない。とすると、《ドラゴンフライ》の3体目を倒した場合、トゥールは必ず《ドラゴンフライ》以外の、風属性で攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚する。いや、そうしなければならない。となれば必然的に、彼が《ドラゴンフライ》で召喚したいモンスターを呼ぶことになる。」

 

そこまで解説すると、彼の言おうとしていることが理解できたのか、権現坂が零児に続けた。

 

「なるほど。もしここでアリトがリードブローでドラゴンフライを倒していれば、奴の本命が呼ばれ、フィールドに残ってしまう。だったら、次の遊士のターンで脅威になりかねない攻撃力2300のコマンドナイトを倒しておいたという訳か。」

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」(2)

<遊士:伏せなし アリト:伏せ1枚 トゥール:伏せ1枚>

 

「くそっ。やってくれるじゃねえか。俺のターン!(4)俺は手札から、《切り込み隊長》を召喚!(3)」

 

 

《切り込み隊長》

効果モンスター

レベル3/地属性/戦士族/攻撃力1200/守備力400

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は表側表示で存在する他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択する事はできない。

このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 

 

 

「モンスター効果発動!召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚することができる!その効果で、《ならず者傭兵部隊》を特殊召喚する!」

 

 

《ならず者傭兵部隊》:攻撃力1000

 

 

「なんだその汚ねえ連中は…?」

「舐めるなよアリト!こいつの効果は侮れないぜ!だがその前に…装備魔法、《デッド・エッジ》を、《切り込み隊長》に装備!(1)」

 

《切り込み隊長》の所持する剣に紫色のオーラがまとわれ、剣を一振りすると、そのオーラが拡散することがよくわかった。

 

「これは…」

「《切り込み隊長》の攻撃力は、自分から攻撃を仕掛ける場合のみ800ポイントアップし、さらに装備モンスターが相手モンスターをバトルで破壊した場合、同じ種族のモンスターが相手フィールドにいれば、そのモンスターを破壊できる!いくぜ!まずは《切り込み隊長》で、《BKシャドー》に攻撃だ!」

 

 

アリト:LP4000→LP3800

 

 

隊長の所持する剣がシャドーの腹部に深々と突き刺さり、シャドーの撃破に成功する。さらに、《デッド・エッジ》の効果なのか、彼の剣が振られると、そのオーラを受けたリードブローもともに、破壊された。

 

「なにっ!俺のリードブローが!!」

「言ったろ!《デッド・エッジ》の効果だって!モンスターを戦闘で破壊した時、同じ種族のモンスター1体を破壊するんだよ!」

「そして、《ならず者傭兵部隊》で、グラスジョーを攻撃!」

 

ならず者の中にも隊長がいるのか、一人がいくぞ!と声をあげ、6名ほどのならず者傭兵部隊がグラスジョーに向かっていった。

 

「くそっ!」

「へっ!お前はペラペラしゃべりすぎなんだよ。くらえ、直接攻撃だ!」

「ぐはっ!」

 

 

アリト:LP3800→LP2800

 

 

アリトが床にたたきつけられたのを見ると、その様子を見た遊矢が首を傾げた。

 

「あれ…?どうして直接攻撃ができたんだ?」

「巻き戻しだ。」

「巻き戻し?それって、バトル中にモンスターの数が変化した時に、攻撃対象を選びなおす…ヤツ?」

「そう。正確には、戦闘中に相手フィールドのモンスターの数が、カード効果によって変化した場合に起こるものだがな。」

「そうか!」

 

手をたたいたのは零児の解説を受けていた遊矢ではなく、その横にいた権現坂であった。

 

「グラスジョーは攻撃対象となった時に破壊される。グラスジョー自身が破壊されるのも、バトル中の効果破壊か。戦闘によるダメージ計算をした訳ではないということか!」

「その通りだ。」

「あぁ…」

 

「グラスジョーは、カード効果で破壊された場合、俺の墓地からバーニングナックラー1枚を手札に加える!俺はこの効果で、《BKスイッチヒッター》を手札に加える!」(3)

 

「これでバトルは終了するぜ。けど、俺のフィールドの《ならず者傭兵部隊》のモンスター効果を発動!自身をリリースして、フィールドのモンスター1体を破壊!俺が破壊するのは、《ドラゴンフライ》!」

 

蚊帳の外という状況であったトゥールがいきなり自分のモンスターの名前を宣言されたことに、いささか驚いた。

 

「ほぉ…《ドラゴンフライ》を効果で破壊するとは…」

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

<遊士:伏せ1枚 アリト:伏せ1枚 トゥール:伏せ1枚>

 

「私のターン!(5)さて、私もそろそろ戦闘に加えさせてもらえればと思うがね。まずは墓地に存在する風属性モンスター、《ドラゴンフライ》をゲームから除外し、手札から、《シルフィード》を特殊召喚する!(4)」

 

 

《シルフィード》

効果モンスター

レベル4/風属性/天使族/攻撃力1700/守備力700

このカードは通常召喚できない。自分の墓地の風属性モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、相手はランダムに手札を1枚捨てる。

 

 

「あんた見かけによらず、こんなイケメンなモンスター使うんだな。」

「遊士くん。そんな減らず口をたたいていられる場合ではないと思うがね。《ウィングド・ライノ》を召喚!(3)」

 

 

《ウィングド・ライノ》

効果モンスター

レベル4/風属性/獣戦士族/攻撃力1800/守備力500

罠カードが発動した時に発動する事ができる。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを持ち主の手札に戻す。

 

 

「そして魔法カード、《サモン・ストーム》を発動!(2)」

 

 

《サモン・ストーム》

通常魔法

800ライフポイントを払って発動する。自分の手札からレベル4以下の風属性モンスターを特殊召喚する。

 

 

「800ライフを支払い、手札からレベル4以下の風属性モンスターを特殊召喚する。出でよ、《ハンター・アウル》!(1)」

 

 

トゥール:LP4000→LP3200

 

 

《ハンター・アウル》:攻撃力1000

 

 

「モンスターが3体か!やるじゃねえかオッサン!」

「君も口の利き方には気を付けた方が良いと思うな、アリトくん!バトル!まずは、《シルフィード》で、《切り込み隊長》を攻撃!」

「おっと!速攻魔法、《グレード・チェンジ》!」

「《グレード・チェンジ》は、装備魔法を墓地に送り、そのモンスターの破壊を防ぐ速攻魔法か。だが、戦闘ダメージを受けてもらう!」

 

 

《グレード・チェンジ》

速攻魔法

相手ターンでのみ発動することができる。自分フィールド上に存在する装備魔法を装備したモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターに装備されている装備魔法を全て破壊し、選択したモンスターはこのターン、戦闘では破壊されない。このカードを発動したターンのエンドフェイズに、自分のデッキから装備魔法を1枚選択し、自分の手札に加えることができる。

 

 

草薙遊士:LP3300→LP2800

 

 

「くそっ!」

「まだだ、私のフィールドには、《ウィングド・ライノ》と、《ハンター・アウル》の攻撃が残っている!この2体の攻撃では、遊士くん。君のライフポイントは削り切れない。ならば…」

 

そこまで言って、少し皺の目立つ顔をアリトに見せ、若干微笑んだかと思うと、アリトを指さした。

 

「君をここで消そう。」

「へっ!やれるもんなら、やってみろ!」

「《ウィングド・ライノ》で、ダイレクトアタック!」

「罠カード発動!《敗者復活のBK(バーニング・ナックラー)》!」

 

攻撃を仕掛けようとした《ウィングド・ライノ》の目の前の大地が割け、そこから轟音とともにリードブローが舞い戻った。

 

「リードブロー!?」

「敗者復活のバーニングナックラーは、相手モンスターの攻撃時、墓地のバーニングナックラー1体を復活させ、強制戦闘を強いる罠カード!引っかかったな、オッサン!」

「《ウィングド・ライノ》のモンスター効果発動!罠カードが発動した時、フィールドのこのカードを、持ち主の手札に戻すことができる!(2)」

 

リードブローが返り討ちに放った拳を《ウィングド・ライノ》は体を捻って見事にかわし、そのまま光の粒となってフィールドを去った。

 

「なにっ!?避けられた!だが、強制戦闘の効果は、お前のフィールドのモンスター全てに及ぶ!《ハンター・アウル》も、リードブローと戦ってもらうぜ!第二ラウンドだ!今度は逃げんじゃねえぞ!」

「《ハンター・アウル》の攻撃力は…」

「説明しなくてもわかってるぜ!《ハンター・アウル》は、フィールドの風属性モンスター1体につき攻撃力が500ポイントアップするんだろ?今、フィールドの風属性モンスターは、そいつ自身と《シルフィード》!つまり、《ハンター・アウル》の攻撃力は2000どまりだ!」

「果たしてそうかな?」

 

 

《ハンター・アウル》:攻撃力2500

 

 

「なにっ!?攻撃力2500!?そうか、遊士!てめえの《切り込み隊長》は、かぜぞ…」

「地属性だ!人のせいにしやがって!」

「う、うっせえ!わ、わかってんだよ!」

 

言い争いをしているうちに、《ハンター・アウル》が手に持っているトライデントのようなものを使い、リードブローを撃破していた。

 

 

アリト:LP2800→LP2500

 

 

「私は速攻魔法、《おそらく、風。》を発動していた。」

 

 

《おそらく、風。》

速攻魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する風属性モンスターまたは魚族モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターの攻撃力は500ポイントアップし、相手に戦闘ダメージを与えた場合一度だけ、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「自分フィールドの風属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、戦闘ダメージを与えた時、デッキからカードをドローする!」

「何だと!?」

「これで、《ハンター・アウル》の攻撃力は2500になっていたという訳だ。そして、《おそらく、風。》の効果で、デッキからカードを1枚ドローする。」(2)

 

荒野の上に一人の男性が正面を見て佇んでいるイラストの、《おそらく、風。》が発動し終わると同時に、トゥールは1枚カードをドローしていた。

 

「ターンエンドだ。」(2)

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし トゥール:伏せ1枚>

 

「俺はこのターンのエンドフェイズに、《グレード・チェンジ》の効果で、デッキから装備魔法を手札に加えるぜ。この、《グレード・ソード》をな!(1)」

 

 

《グレード・ソード》

装備魔法

 

 

半ば話を聞いていないアリト。彼は自分の戦術が躱されてしまったことに動揺しているのか、元々短気なことが災いしてか、トゥールを睨み付けて、カードをドローした。

 

「俺のタァン!(4)だったらお前らに、とっておきを見せてやるぜ!手札から、《BKスイッチヒッター》を召喚!(3)」

 

 

《BKスイッチヒッター》:☆4

 

 

「さらに、魔法カード、《死者蘇生》を使い、墓地からモンスターを特殊召喚!来い、《BKシャドー》!」

「ほう、2体…いや、スイッチヒッターは確か2体分のエクシーズ素材になれるんだったね。3体のモンスターを素材とする、エクシーズ召喚か?」

「そうよオッサン!今更後悔しても、もう遅いぜ。俺は2体分となったスイッチヒッターと、シャドーでオーバーレイ!!3体分のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 

鳴り響け、戦いのゴングよ!流れる星の如くフィールドを駆け巡り、その拳で敵を貫け!《No.105 BK流星のセスタス》!!

 

 

《No.105 BK流星のセスタス》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/炎属性/戦士族/攻撃力2500/守備力1600

レベル4モンスター×3

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。自分フィールド上の「BK」と名のついたモンスターが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時にこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。その相手モンスターの効果はターン終了時まで無効化され、その自分のモンスターはその戦闘では破壊されず、その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「これがお前の…オーバーハンドレッド・ナンバーズ!?」

「遊士、気をつけろ!こいつ…厄介な効果を持ってるぞ!」

「へっ。そんくらいでなくちゃな。」

 

「攻撃力2500か。」

「まずはオッサンからだ!さっきのお返し、受けてもらう!ナンバーズはナンバーズでしか倒せない。《ハンター・アウル》には、消えてもらうぜ!」

「そうはいかない。《ハンター・アウル》は、私のフィールドに他の風属性モンスターがいる場合、攻撃対象にはならない。」

「だったらお前からだ。くらえ、《シルフィード》!!」

 

 

トゥール:LP3200→LP2400

 

 

「くっ。だが、《シルフィード》の効果発動!戦闘で破壊された場合、相手の手札をランダムに1枚、墓地に送る。」

 

アリトの持つ手札のうち1枚が点滅した。トゥールがランダムに選んだカードがそれになった訳だが、アリトはためらいもなくそのカードを墓地に送った。

 

「かかったな!そいつの効果を利用させてもらったぜ!」

「何?」

「墓地に送られたのは、速攻魔法《チャンピオン・パンチ》!このカードを墓地から除外することで、俺のバーニングナックラーは、もう一度戦闘を行うことができる!くらえ!!《ハンター・アウル》を攻撃だ!」

 

 

スターダスト・インパクト!!

 

 

「思った以上にしつこいな。ならばこちらも速攻魔法、《ウィンド・ブレス》を発動!風属性モンスター1体を守備表示にし、このターンのバトルによる破壊を無効にする!」

 

 

《ハンター・アウル》:攻撃力1500→守備力900

 

 

流星のセスタスの飛ばした閃光を腕をクロスさせた状態でハンター・アウルは受け切った。

 

「なにっ!?」

「そしてお互いのプレイヤーはバトルフェイズ終了時に、カードをドローする。(3)この場合は全員だ。さあ、遊士くん。君もドローしたまえ。」

「そりゃラッキーだな。ドロー!(2)」

「くそっ。ターンエンドだ。(2)」

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし トゥール:伏せなし>

 

「今度は俺の番だ!俺のターン!(3)俺は、装備魔法、《グレード・ソード》、そして《宝玉の剣》を、《切り込み隊長》に装備!(1)」

「攻撃力を合わせて700ポイント上げて、どうしようってんだよ?」

「まあ見てな。《グレード・ソード》は、装備モンスターをリリースしてモンスターをアドバンス召喚する場合、2体分のリリースになる!」

「アドバンス召喚の布石か!」

 

「お前が2体分のエクシーズ素材なら、俺は2体分のリリース素材だぜ!《切り込み隊長》をリリース!」

 

この時は、遊士は大して気にならなかった。彼がリリースを宣言した時、トゥールが不気味な笑みを浮かべていたことなど。

 

 

「来い、《剣聖-ライジング・ソード》!!(0)」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400

 

 

「なっ…」

「これは…」

 

褐色の兜と鎧を身に纏い、右手には青いオーラを放つロングソードを構えた戦士が佇む。彼はロングソードを地面と平行になるように持ち、左手は刃に添えられ、精神を集中しているようだ。

 

《ブラック・マジシャン》が杖を振り回すのと…

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》が咆哮するのと…

 

同じはずなのだ。だって目の前にいるのは通常モンスター。しかも攻撃力はその2体より低い。なのにもかかわらず…

 

「なんだよ、これ…この感じ。バリアンが持っているものとは違う…なんだ、これ…」

「こ…これが…このモンスターの力か。」

 

「ピンチをチャンスに変えられるカード。それが、このライジング・ソードだ。墓地に送られた、《宝玉の剣》の効果発動!デッキからカードを1枚ドローする!いくぜ、ビビんなよ?ドローーーッ!!(1)」

 

弧を描いたドローが、またしても遊矢たちには見えていた。

 

「そんな都合良くいいカードが…」

「アリトくん。彼は引くよ。」

「オッサン…何を!?」

 

「俺は装備魔法、《孤毒の剣》を発動!」

「…!?」

 

《孤毒の剣》

装備魔法

自分フィールドのモンスターにのみ装備可能。

①:「孤毒の剣」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。

②:装備モンスターの元々の攻撃力・守備力は、相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時のみ倍になる。

③:自分フィールドに装備モンスター以外のモンスターが存在する場合にこのカードは墓地へ送られる。

 

「こいつは、俺のフィールドに1体のモンスターしかいない場合、そいつに装備できる。装備モンスターが相手モンスターとバトルを行う時、攻撃力を2倍にする!いくぜ、ナンバーズ!!」

 

紫色のオーラを纏い、ライジング・ソードのロングソードが刃の多くついた禍々しい剣へと変わったかと思うと、ライジング・ソードは勢いよく流星のセスタスに飛び掛かった。

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400→攻撃力4800

 

 

「攻撃力4800…!?」

「くそっ!ナンバーズはナンバーズとのバトルでしか破壊できねえ。流星のセスタスは、破壊されない!」

「ダメージは受けてもらうっつってんだろ!」

 

流星のセスタスは咄嗟に左腕で孤毒の剣を防いだが、その際に小爆発が生じて、アリトは大きく後ろに下がった。

 

「ぐあっ!」

 

 

アリト:LP2500→LP200

 

 

「やりやがったな、俺たちバリアンに楯突くってことがどれほど無謀なことか…教えてやるぜ。」

「教えられるもんなら、教えてみせな。ターンエンド。(0)」

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし トゥール:伏せなし>

 

「草薙遊士。君はやはり期待を裏切らないデュエリストのようだな。」

「何だと?おい、おっさん。あんただって、次のターンで、やられるかもしれないんだぜ。殊勝にしてた方が良いんじゃねえか。」

「ハッハッハッ!!!随分とこれは大きく出たな。殊勝にしてた方が…とは。では私も、君たちに面白いものをお見せしよう。」

 

「なに…?」

「面白い…ものだと?」

 

「私のターン!(4)魔法カード、《Heaven's Call》を発動!(3)」

 

 

《Heaven's Call》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分のデッキから、「Heaven」と名の付くカード1枚を自分の手札に加える。

 

 

「ヘヴンズ…コール?」

「デッキから、ヘヴンと名の付いたカードを手札に加える。そして私は手札に加えた、《Heaven's Order》を発動!」

 

倉庫内でデュエルをしているはずだが、ふと屋根の方に目を向けると、大気が渦を巻き始めたのが見えた。夜空がぐちゃぐちゃになっているようである。

 

「これは…何だ。」

 

その渦が徐々に広がっていったかと思うと、遊士の目の前にいたライジング・ソードに触れて、ライジング・ソードが、流星のセスタスに触れて、流星のセスタスが破壊された。さらには、トゥールの目の前にいた、《ハンター・アウル》も同様に…

 

「なっ、おい!!ぐあああああっ!」

「うっ!うわあああああ!!」

 

 

その渦に2人も触れ、足が地を離れたかと思った先、そこからは一瞬であった。彼らには理解ができなかった。今目の前で何が起こり、いや、今自分たちにも何が起こっているのか。ただ、わかったことは一つだけ。

 

 

草薙遊士:LP2800→LP0

アリト :LP200→LP0

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《Heaven's Call》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分のデッキから、「Heaven」と名の付くカード1枚を自分の手札に加える。

 

 

<次回の最強カード>

《アンブラル・スライム》

効果モンスター

 

 



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第22話-忍び寄る悪意の霧霞(きりがすみ)

「うわああああっ!」

 

《Heaven's Order》が発動したかと思うと、遊士とアリトは大きく吹き飛ばされ、一回転して倉庫内にうつ伏せに倒れた。

 

「遊士さん、アリト!」

 

遊馬が一番最初に倒れた彼らに近寄ったかと思えば、遊矢たちも次々に倒れた彼らに近寄った。

 

「見たかね。これが私たちの力。披露したのはほんの少しだがね。」

 

「一体、何だ。この力は…」

「気になるかね、アストラル?」

「なっ!?私が見えているのか?」

「当然だ。私たちは全てを知る、ヘヴンの直属の部下、ヘヴンズ・チルドレンなのだからね。《Heaven's Order》このカードは、フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の合計分のダメージを相手に与える。」

「モンスターを破壊して、攻撃力分のダメージだと!?」

「そしてもう一つ教えよう。このカードに対して、カード効果は発動できない。」

「そんだけの効果があって、カウンターができないのか!?」

「そうだ。まぁ、厳密にはたった一つだけ、我々の力に対抗できる手段があるがね。」

 

そこまで言うと、トゥールはシャツの胸ポケットから1枚のカードを取り出し、地面に投げつけた。

 

「これは…!?」

「今日のは挨拶代わりだ。しかし、君たちがもしも本当に戦うという意思を見せるのであれば、そこに書いてある場所に明日行くが良い。そこで我々の仲間が待っている。もっとも、今日のデュエルでわかったはずだがね。危険なカードを持つ草薙遊士、そしてその仲間たち。さらにはバリアン七皇。いずれも、我々に敵うはずがない、と。」

 

「遊士さんが持っているカードは、危険なカードなんかじゃない!」

「榊遊矢。もはやデュエルモンスターズは、ただのカードゲームではないのだよ。君も1枚持っているではないか。迫りくる次元上昇の役者たるカード、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。」

「迫りくる次元上昇の役者…?」

「オッドアイズも危険だっていうのか!?」

「そうだ。君たちはあくまで人間なのだ。だからこそ、人間らしくあるべきだ。そんな危険な力を持ってはいけない。これは、警告だ。」

 

「警告…だと。」

 

「我々は、人間が持つにふさわしくない力を取り除く義務を有している。今すぐオッドアイズや、ライジング・ソード。それらのカードを渡せば、手出しはしないよ。では、考えたまえ。本当にどうすべきかを。」

 

あきれ顔ででそう言ったトゥールは、勝利の余韻に浸ることもなく、あくまで警告だと主張し続け、倉庫を後にした。

 

彼が倉庫のドアの外の夕暮れの道に消えていくのを見ると、零児たちは素早く気絶している遊士を担いだ。

 

「遊矢。君はオッドアイズのカードを捨てるのか?」

「そんな訳ねえだろ!オッドアイズは、ペンデュラムは…俺の…!」

「…わかった。とりあえず、戻るとしよう。遊士の手当ても必要だ。」

「あ、ああ。」

 

 

透明なガラスに四方を囲まれたその部屋で、彼はその様子をモニターの機能も持つ窓ガラス越しに見ていた。ガラスの先にあるのは雲と青空。差し詰め、雲の上にある天空のオフィスといったところか。

 

金髪の、全身白い衣装を身にまとった者は、ため息をつき、ボスチェアに座り、大型のデスクの上に自分の肘を置き、その手で顎を触っていた。

 

「失礼します。」

 

その言葉に対しては、外の青空を眺めながら、背中越しに返事をした。黒いマントに金色の刺繍。少し肌寒い気候の日には、とても便利なものだろうが、派手ではある服装のクラウダーが、ヘヴンの部屋へと入ってきた。

 

「クラウダーか。彼らの戦いを…見たのか?」

「ええ。ヘヴンも?」

「もちろんだ。トゥールは私の子の一人だ。戦いを見ないはずはない。」

「ならば話は早い。これで、わかったと思います。高次元に導く存在など、彼らの中にはいないと。」

「…?」

「ヘヴンはおっしゃられました。我々が人間が持っていてはいけない力を持つ者の排除は、いわゆるテストだと。」

 

ヘヴンはボスチェアーをクラウダーの方に向けると、「うむ。」と頷いた。

 

「彼らがその力を覚醒させることがあり得るのか、そして彼らにとって脅威となり得るものに立ち向かい、戦うことができるのかを試すテストだと!」

「ああ。」

 

それがどうしたと言わんばかりの表情一つ変えないヘヴンの態度に、クラウダーは拳を握りしめると、一歩前に出た。

 

「もう人外の力を持つ者は根絶やしにすべきです!!彼らに上昇した次元を統率することなどできるはずがありません!」

 

声を震わせながらヘヴンに言い放つクラウダーだが、ヘヴンは表情一つ変えず、真顔でクラウダーの瞳を見返した。

 

「あ…申し訳ありません。出過ぎたことを。しかし!!」

「わかった。クラウダー。君が言いたいことはわかる。だが、たった一度のデュエルで、そこまで決めて良いのか?」

「お…お言葉ですが、では、いつ判断されるつもりで?」

「慌てるなクラウダー。慌てた決断が良い結果を生むとは思えん。」

 

平社員が社長に考え方の訂正を求めることほど緊張することもない。クラウダーはその緊張の中で聞いたものが、一蹴されると、彼はひどく落胆した。

 

「あ、はい。」

「そう落ち込むな。私も別に何も考えていない訳ではない。トゥールは草薙遊士とバリアン七皇に対して、次の戦いがどこで行われるのかも教えてある。そこには、ヘヴンズ・サードを使おうと思っていてな。」

 

「ヘヴンズ…サード?では、ハードルを下げると…!?」

「大きく下がる訳ではない、心配するな。それに…まだ覚醒していない私の子どもが一人いるようだからな。」

「覚醒していない…?」

「彼女にもデュエルをさせる。早いところ働いてもらう必要がある。そこには君も同行してくれ、クラウダー。」

 

「はい。」

 

 

「何も世界はエクシーズ次元だけではない。ここばかりに全員の私の子どもを割くことはできんだろう。」

 

 

 

その翌日のこと。バリアンたちの本部の一室では、自分の思う通りにならないことに対して嫌気が刺したベクターが、メディカルルームを歩き回っている。

 

「おい、ベクター。お前、なぜ嘘をついた?」

「…」

「おい、聞いてんのか、ベクター!」

「うるっせえな!俺はな、今、考え事をしているんだよ。けが人ならけが人らしく、大人しくしてろギラグ!」

 

カプセルの中で、ベクターの作り出したバリアンズ・ヴィジョンを通じてアリトたちのデュエルを見ていたギラグを気にも留めず、地面を鳴らしながら、ベクターはその部屋を出て行った。

 

「おい!」

 

(くそっ!何なんだよ、あいつ!?いきなり出てきたかと思えば、俺たちの敵…?しかも、あんなふざけた奴とは言え、バリアン七皇の一人のアリトを倒すなんて。これじゃ、九十九遊馬とやり合って疲弊したあいつの力を奪うっていう、俺の計画も…)

 

バリアンの紅き世界の壁に肘をついてもたれかかっていたが、後ろから聞こえてきた声で我に返った。

 

「みんな、聞いてくれ!」

「ン…?」

 

「どうしたドルベ?」

 

「とうとう、戻ってきた。あの2人が。」

「あの2人…?」

 

ドルベの背後に、2人の影が見えた。2人が同時に一歩前に出ると、その様子を見ていたミザエルとベクターは同時に驚いた。

 

「長い間待たせて悪かったな。」

「ただいま、戻りましたわ。」

 

「ナッシュ。そしてメラグ。彼らが覚醒した。これで、バリアン七皇は、全員揃ったのだ!」

「それはおめでたいことだが…今はギラグとアリトはやられているから、実働部隊は5人だがな。」

 

(ナ…ナッシュ。)

 

ベクターの視線を感じたナッシュは、彼睨みつけた。一触即発とでもいうべきか。会って早々、そのような雰囲気が漂っている。

 

「ベクター。久しぶりだな。」

「あ…ああ。」

(今、こいつとやり合うのは得策じゃねえ。少しでもバリアンの力を吸収しねえと。)

 

「何だよ、ナッシュ。久しぶりの再会だってのに、そんな怖い顔をしてよ?」

「そうか。悪いな。多分それは、生まれつきのことだ。」

 

冷戦状態と表現するのが適切か、その状態を打破しにかかったのはベクター本人であった。

 

「ところでよ、アリトの仇、取りにいかねえのか!?」

「ほう。意外だなベクター。お前の口から、仇なんて言葉が出て来るとは。」

「何言ってんだナッシュ!アリトだってバリアン七皇の一員じゃねえか。仇を取りたいって思うのは当然だろ!?」

 

「それはそうだが、仇と言っても、どうすれば良いのか。」

 

「安心しろミザエル!さっきバリアンズ・ヴィジョンを使って、アリトのデュエルを見ていた時、敵の奴が場所は言っていた!」

「そうか。なるほど。」

 

「1人じゃ倒せねえなら…2人でかかれば大丈夫だろう!」

(アリトとギラグはここに居ることになるだろうし、ナッシュについては隙がないだろうし、メラグもしばらくはナッシュと一緒じゃねえかな。とすると、連れて行くのは、ドルベかミザエルか。ミザちゃんは、『2対1など卑怯者のすることだ!』とか言いそうで面倒くせえからな。ってことは、最初の生け贄は…)

 

「ドルベ!!一緒に行こうぜ!」

「私…!?いつものようにスタンドプレイをしていれば良いのではないか?数が必要になった時だけ我々を頼るとは…」

「んなかたいこと言うなよなぁ?じゃあお前、あれか?いいのか?アリトの仇をとれなくて!?」

「それは…」

「よし、じゃあ決まりだ!」

 

ナッシュの懐疑的な視線を気にせずにはいられなかったが、畳みかけるようにベクターは一気に決めた。決めてしまえば、あとは計画を実行するのみ。

 

(ドルベも、バリアンの参謀カッコ自称だからな。まぁ…俺の力にすれば、そこそこ強くなるんじゃねえか?これで、一人ずつ、俺の力にしていけば…)

 

「俺の…ではないな。」

 

(ン?ああ。わかっているぜ。)

 

遊馬とのかつての戦いで敗れたベクターがバリアンの世界にある「悪意の海」というところから解き放った存在-内なる声-に耳を傾けたベクターであったが、気味の悪い笑みを浮かべると、ドルベとともに本部を出て行った。

 

 

「こんな目立つ場所でデュエルをして良いのか。」

「大丈夫ですよ、クラウダーさん。ねっ?」

「…」

 

ハートランドシティ付近のダウンタウン。いかにもアメリカ映画でストリートバスケットボールが行われそうな路地で、3人が歩いている。

 

黒いマントに金色の刺繍。少し肌寒い気候の日には、とても便利なものだろうが、派手ではある服装のクラウダー。

クラウダーよりも少し低い身長、紫色の髪の毛の、上下とも真っ白の服装の少年。

そして、もう一人は、長身のやせ型の女の子。学生服なのか、スカートは紺色であった。上着にはパーカーを着用し、フードを被っている。

 

「返事がないなぁ…クラウダーさん。本当にこの子は僕らの仲間なの?」

「私は上司の命令に従っているだけだ。」

「またそれ。」

 

公園に差し掛かったところで、ジャングルジムのてっぺんから2人の男がクラウダーたちの目の前に降りてきた。

 

「ン!?」

 

「じゃっじゃじゃ~ん!!!俺、バリアン七皇のベクター!よぉ、ヘヴンズ・チルドレン。」

「バリアン七皇だと?」

「おうよ!お前ら…よくもアリトをやってくれたなぁ。それの敵討ちっていう訳よ!」

「ならば正式に我々との戦いを受け入れる訳だな?」

「当たり前だ!俺たちの敵はな、アストラル。そして九十九遊馬なんだよ!邪魔をするのなら、消えてもらうぜ!」

 

先ほどから彼の後ろで黙って聞いていたドルベが、腕組みを解いてベクターの隣に来た。

 

「ヘヴンズ・チルドレン。お前たちは、我々が倒す。お前たちの仲間のドナーというデュエリストと戦ったと、ナッシュが言っていた。事情はわかっている!さあ、いくぞ!私は、ドルベ!バリアン七皇の白き……」

 

人の話を遮り、紫色の髪の少年がわざと大きな声で言った。

 

「ヘヴンズ・チルドレン!だったら、僕は違うね。」

 

「…?」

「僕はミストっていうんだけど、ヘヴンズ・チルドレンじゃないから。デュエルは2人に任せましたよ。」

「どういう意味だ?」

「ヘヴンズ・チルドレンっていうのは、ヘヴンが集めた6人の精鋭。そしてその下にいる部下のことを、ヘヴンズ・サードっていうんだ。僕はそのうちの一人さ。」

「なにっ!?では数の上ではバリアン七皇を凌いでいるのか。」

「気にすんなよドルベ。そんな奴、雑魚ばっかに決まってんだろ?」

 

ミストは「え?」という形の口を作ったが、今度は話の間にクラウダーが入ってきた。

 

「お前たちは2人か。確かに私と、彼女がヘヴンズ・チルドレンではあるが、彼女はまだ覚醒していない模様。わかった。では私が2人の相手をしよう。」

「そうだよなぁ!そうこなくっちゃ…」

「舐めるなヘヴンズ・チルドレン!!2人でかかってこい!1人で我々に敵うと思うなよ!」

「おい、ドルベ!いいんだよ、こいつが1人でも戦うって言ってんだからよ!相手は1人の方がやりやすいだろ!?」

 

 

「いい。私…戦う。」

 

 

「ホワイト。しかし君はまだ。」

 

「大丈夫。」

 

ホワイトと言われた少女はクラウダーとミストの前に出て、デュエルディスクを構えた。覚醒していない彼女にデュエルをさせることがリスクを伴うと思ったクラウダーは咄嗟に前に出ようとしたが、彼の前には、ミストが出てきた。

 

「いいよ、クラウダー。僕とホワイトで相手をするよ。雑魚呼ばわりされて、黙っている訳にはいかないからねぇ!!」

 

「チッ。まぁいいか。意外の血の気の多い奴だな、2人でかかって来いよ!」

「2対2のタッグデュエルだな!!いくぞ!!」

 

「おい、ミスト。ホワイト…。」

「まあいいじゃないですか。フィールド、ライフポイント、手札、墓地全て共有しないってルールでどうですか?」

「いいぜ。どんなルールでも、負ける気がしねえがなぁ!バリアル・フォーゼ!!」

「バリアル・フォーゼ!」

 

スフィア・フィールドを投げつけ、紅い空間に、4人は収められた。

 

「デュエル!!」

 

 

 

ドルベ :LP4000

ベクター:LP4000

 

     VS

 

ミスト :LP4000

ホワイト:LP4000

 

 

 

「ではいくぞ!私の先攻!私は手札より、《光天使(ホーリー・ライトニング)セプター》を召喚!」(4)

 

 

光天使(ホーリー・ライトニング)セプター》

効果モンスター

レベル4/光属性/天使族/攻撃力1800/守備力400

➀:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。自分のデッキから、「光天使セプター」以外の「光天使」と名の付くモンスター1体を手札に加える。

➁:フィールドのこのカードを含むモンスター3体以上を素材としてエクシーズ召喚したモンスターは以下の効果を得る。

●このエクシーズ召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、自分のデッキから1枚ドローできる。

 

 

「セプターの効果により、私はデッキから、《光天使ウィングス》を手札に加える。(5)私はターンエンドだ!」

<ドルベ:伏せなし ベクター:伏せなし ミスト:伏せなし ホワイト:伏せなし>

 

「じゃあ…僕からいくよ。僕のターン。僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド。」

<ドルベ:伏せなし ベクター:伏せなし ミスト:伏せ1枚 ホワイト:伏せなし>

 

「は?それで終わりか?俺のターン!俺は手札から、《アンブラル・スライム》を攻撃表示で召喚!(4)」

 

 

《アンブラル・スライム》:☆4/攻撃力500

 

 

液状のスライムというよりも、紫色の塊に邪悪な顔がついたモンスターと言った方が近いように感じるモンスター。

 

「なんだ。君だって別に攻撃力500のモンスターじゃないか。」

「時期にわかるぜ。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!(3)」

<ドルベ:伏せなし ベクター:伏せ1枚 ミスト:伏せ1枚 ホワイト:伏せなし>

 

テンポよく進んでいたデュエルであったが、しばしの静寂が訪れた。不思議だと思ったドルベは、フードを深々と被っているホワイトの方に目を向けた。

彼が何かを言うよりも前に、ベクターが声を出した。

 

「おい!!お前、大丈夫なのかよ?お仲間も心配してるぜ?見ろよ、あの顔!」

 

ベクターはクラウダーの方を指さして煽るものの、ホワイトはそれを意に介さず、手札のカード3枚をフィールドにセットした。

 

「ヘッ。デュエルをしようとする意思はあるみたいだな!」

<ドルベ:伏せなし ベクター:伏せ1枚 ミスト:伏せ1枚 ホワイト:伏せ3枚>

 

「ミスト。ホワイト!!お前たちのフィールドにはモンスターが1体もいない!攻めさせてもらおう!!私のターン!(6)私は手札より、《光天使ウィングス》を攻撃表示で召喚!(5)」

 

 

《光天使ウィングス》

効果モンスター

レベル4/光属性/天使族/攻撃力1200/守備力1800

このカードが召喚に成功した時、手札から「光天使」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

 

 

「ウィングスの効果発動!手札から、ホーリー・ライトニングを特殊召喚する!現れろ!《光天使ブックス》!!」

 

 

《光天使ブックス》:☆4/攻撃力1600

 

 

「レベル4のモンスターが3体…ミスト、ホワイト!!奴のオーバーハンドレッドナンバーズが来るぞ!」

「ふ~ん。」

 

「興味がないようだな。ならばその身をもって知るが良い!ナンバーズの力を!!私はレベル4のホーリー・ライトニング、セプター、ウィングス、ブックスでオーバーレイ!!」

 

 

現れろ、《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》!!

 

 

《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/光属性/天使族/攻撃力2500/守備力2000

光属性レベル4モンスター×3

このカードは「No.」と名のついたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力を半分にし、その効果を無効にする。フィールド上のこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードのエクシーズ素材を全て取り除く事ができる。この効果を適用したターン、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。

 

 

「ふ~ん。」

「まだ興味がないようだな。まずは、オーバーレイユニットとなった、セプターのモンスター効果発動!」

 

半透明のセプターがその場に現れると、その尻尾というべき部分から光線が放たれ、ホワイトのフィールドの伏せカードを貫いた。

 

自分の目の前のカードが突然破壊されたことに驚いた彼女は、少し口を開いたようだったが、彼はあまり気にせず、説明を続けた。

 

「セプターは、自身をエクシーズ素材として、3体以上のエクシーズ素材を必要とするエクシーズ召喚に成功した時、フィールドのカードを破壊できるのだ!これでホワイト!お前のフィールドの《攻撃の無力化》は破壊された!そして、カードを1枚ドローする!!(5)」

「いいねぇ、ドルベ!!張り切ってるじゃねえか!」

「いくぞ!グローリアス・ヘイロー!!ミストに直接攻撃だ!」

 

「僕は手札から、《ヴァニティ・ミスト》を特殊召喚!(3)」

「何…?」

 

 

《ヴァニティ・ミスト》

効果モンスター

レベル10/風属性/悪魔族/攻撃力4000/守備力0

 

 

グローリアス・ヘイローの5倍ほどの大きさのある白黒の霧の巨人のようなモンスターがグローリアス・ヘイローの目の前に立ちはだかった。

 

「何だぁこいつは!?」

「このモンスターは、相手が直接攻撃を宣言した時に特殊召喚できる。」

「攻撃力4000のモンスターを無条件に!?」

「もちろんリスクはある。このモンスターの召喚時、僕は攻撃力の半分のダメージを受ける。」

 

霧がかかったような巨人から白黒のオーラが使い手であるミスト本人を包もうとしたその瞬間、ミストの目の前にある罠カードがゆっくりと開いた。

 

「この瞬間永続罠、《モンスター・モンタージュ》を発動!自分のモンスター効果によって発生する効果ダメージはゼロになる!」

「自分のモンスターの効果ダメージをゼロにするカードだと…?」

 

「だが、お前もわかっているとは思うが、バトル中にモンスターの数が変化した場合、攻撃対象を選び直すことができる!グローリアス・ヘイローで、ホワイトにダイレクト…」

「ちょっと待ちなよ!!」

「何?」

「いや、それはいいんだけど、ヴァニティ・ミストは相手からの攻撃対象にならない効果がある。このまま攻撃すれば、僕への直接攻撃になるんだ。」

「その効果をわざわざ明かすとは。」

 

グローリアス・ヘイローは、光の槍を投げようとしているところで踏みとどまっている。ドルベは少し考えた後、すぐに決断を下した。

 

「バトル!!ホワイトに直接攻撃!」

「なんだ。そっちにいくんだ。まぁ、結局同じなんだけどね。」

「なにっ!?」

「《ヴァニティ・ミスト》の効果発動!相手モンスターが攻撃する場合、攻撃を無効にして、攻撃力の半分のダメージを与える。」

 

グローリアス・ヘイローが投げつけた槍はヴァニティ・ミストの目の前の宙で止まり、その状態で今度はその槍がドルベに向かっていった。

 

ドルベは咄嗟にその場でバク転をして間一髪で避けた。

 

「そんな効果が…」

 

 

ドルベ:LP4000→LP2750

 

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」(3)

<ドルベ:伏せ2枚 ベクター:伏せ1枚 ミスト:伏せなし ホワイト:伏せ2枚>

 

「じゃあこのエンドフェイズに、《ヴァニティ・ミスト》の効果で、このカードは特殊召喚したターンのエンドフェイズに手札に戻る!(4)」

 

「なにっ!」

「き…消えやがった。」

 

「僕のターン!(5)僕はこれで、ターンエンド。」

 

自分のターンに動こうとしない2人の態度に、嫌気が刺したのか、ベクターはドスの利いた声を張り上げ、2人をにらみつけた。

 

「おぉい!!なんだよそれ!?やる気ねえのか!?」

「やだなぁ。やる気はあるよ。」

「くそ。待ちデュエルしやがって!!だったらてめえのその霧のモンスター!!封じてやるぜ!俺のターン!(4)このスタンバイフェイズに、《アンブラル・スライム》の効果発動!ライフポイントを500払って、デッキから同名のモンスターを特殊召喚できる!!」

 

 

《アンブラル・スライム》:☆4/攻撃力500

 

 

「またそのモンスター?」

「さらに、もう1体の《アンブラル・スライム》の効果で、デッキからさらなる《アンブラル・スライム》を特殊召喚!!」

 

 

ベクター:LP4000→LP3500→LP3000

 

 

「俺はこのアンブラル・スライム2体で、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!!エクシーズ召喚!!」

 

 

悪意の淵より目覚めよ!漆黒の闇へと誘う、狂気の霧霞!!《アンブラル・コンシャス》!!

 

 

《アンブラル・コンシャス》:攻撃力2000

 

 

「黒い霧的な?」

「そうよ。お前の霧を、食らいつくしてやるぜ!残念だがこいつが攻撃する間、相手はダメージステップ終了時までモンスター効果は使えねえ!!くらえ、《アンブラル・コンシャス》で、ミストにダイレクトアタック!!」

 

素早く黒い霧のモンスターがミストを通り過ぎると、彼の体に電撃のような痛みが走った。

 

「うっ…」

 

 

ミスト:LP4000→LP2000

 

 

顔を歪ませたところを見たベクターはすかさず自らのデュエルを続ける。

 

「さらに俺は、《アンブラル・コンシャス》の効果発動!自分のバトルフェイズ中にのみ発動することができる効果で、このカードと、このカード以外のアンブラルモンスターをリリースし、あぁ、もちろん《アンブラル・スライム》だがな。このカードと同じランクを持ち、エクシーズ素材に1体多くのモンスターを要求するモンスターエクシーズをエクシーズ召喚扱いで、特殊召喚することができる!!」

 

「つまり…3体分の素材か。ということは、ベクター!!」

 

 

現れろ、No.104!そのまばゆき聖なる光で、愚かな虫けらどもをひざまずかせよ!仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング!!

 

 

《No.104 仮面魔踏士シャイニング》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/光属性/魔法使い族/攻撃力2700/守備力1200

レベル4モンスター×3

このカードは「No.」と名のついたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。バトルフェイズ中に相手の効果モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。その発動を無効にし、相手ライフに800ポイントダメージを与える。また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。相手のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。

 

 

「いくぜ!シャイニングで、ミストに直接攻撃!」

「だったら今度は、《ヴァニティ・ミスト》の効果を使わせてもらおうかな!」

「無駄だ!シャイニングは、オーバーレイユニットを1つ使うことで、モンスター効果の発動を無効にして、相手ライフポイントに800のダメージを与える!さあ、手札に戻ってもらうぜ!!」

 

手札のカードを指で挟み、じっと見ているミストに、シャイニングが接近している。クラウダーはその様子を、黙ってみているだけだった。

 

 

(次回に続く)

 

 

<今日の最強カード>

《アンブラル・スライム》

効果モンスター

レベル4/闇属性/悪魔族/攻撃力500/守備力500

自分のスタンバイフェイズに500ライフポイントを払って発動することができる。自分のデッキから「アンブラル・スライム」1体を選び、自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。このカードをエクシーズ召喚の素材とする場合、闇属性のエクシーズモンスターの素材にしか使用できない。

 

<次回の最強カード>

《RUM-七皇の剣》

 

 

 



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第23話-沈黙を破りしデュエリスト

前回触れ忘れましたが、オリジナルカードの《アンブラル・コンシャス》は、3体のモンスターを素材とするエクシーズモンスターの召喚に成功した時に、《アンブラル・コンシャス》が持っていたオーバーレイユニットを、エクシーズ召喚したモンスターの下に重ねることができる効果があります。

よって、《No.104 仮面魔踏士シャイニング》には、オーバーレイユニットが2つあります。


ドルベ

 

・LP2750

・手札3枚

・(モンスター)《No.102 光天使(ホーリー・ライトニング)グローリアス・ヘイロー》(ATK2500)(ORU3)

・(魔法・罠)2枚

 

ベクター

 

・LP3000

・手札4枚

・(モンスター)《No.104 仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング》(ATK2700)(ORU2)

・(魔法・罠)1枚

 

 

ミスト

 

・LP2000

・手札5枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)《モンスター・モンタージュ》(∞)

 

ホワイト

 

・LP4000

・手札2枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)2枚

 

 

 

 

 

「いってぇな。」

 

「遊士さん!!気が付きましたか!?」

「あぁ。俺は…確かあいつに。」

 

零児が借りたビジネスホテルの一室であった。九十九遊馬の家に滞在することになるのかと思った遊士であったが、部屋のキャパシティも足りないのだろうと、自分なりに解釈することにした。

 

血の気の多い遊士が、静かにしているところを見ると、よほど彼らとのデュエルに負けたことがショックであったのか。今はハンガーにかけられ窓際にある彼の着ていた学ランも、心なしかくたびれているように見える。しかし遊矢はあえて放っておくことはしなかった。

 

「ゆ、遊士さん。そんなに落ち込まないでください!」

「落ち込んでねえよ、別に。」

「…」

 

会話が続かないことにもどかしさを覚えた遊矢であったが、遊士が続けた。

 

「仕方ねえんじゃねえか。あんな強いカード使うんだから。」

「遊士さん。」

 

「それにさ、よく考えてみたら、ユキがこの次元にいるのかもわかんねえんだぜ。何だかさ…面倒くせえことに首突っ込んじまったよな。」

「遊士さんがそんなんでどうするんですか!!」

 

「……うっせえな。」

 

突然耳元で大声を出した遊矢に、遊士は舌打ちをして睨みつけた。彼が高校生であることもあり、遊矢はすぐにすくんだが。

 

「ごめんなさい、いきなり。でも。ユキさんは、必ずこの次元にいます!」

「根拠はあんのかよ?お前、根拠もないのにそんなこと言ってんじゃねえぞ。」

「根拠は、あの光に吸い込まれたっていう…」

「んなことは俺だって思ってたっつうの!けど、手掛かりがねえじゃねえか!何も!」

「だから、ナンバーズを…」

「けどあいつらと、九十九遊馬にアストラルに接触しても、何もなかったじゃねえか!じゃあ何か、お前ら?俺に、あのバリアン七皇ってのと戦えって?ヒーローごっこをやれって?んなことしに来たんじゃねえ!!!」

 

「俺は別にそんなことを…!!」

「うっせえ!!」

 

遊士はその場にあった枕を遊矢に思い切り投げつけた。顔面に当たり、思わず彼は尻餅をついた。遊矢は顔を赤くしながら、その場ですぐに立ち上がった。反撃をするのかと思ったのか、権現坂と柚子が大慌てで入ってきた。

 

「2人とも!やめて!!遊士さん!!遊矢!!」

「落ち着け!!」

 

2人になだめられた遊士と遊矢は呼吸を荒くしたものの、手をあげることは止めた。沈黙が続いている中、今度はその部屋に零児が入ってくる。

 

「確かに、これほど手掛かりがないことは、彼にとってモチベーションが下がる原因ではあるな。」

「零…児。」

 

ふと周囲を見渡すと、ベッドにいる自分を4人がじっと見つめている状況に置かれていることに気が付き、いたたまれなくなった遊士は、咄嗟に学ランを乱暴に取った。その時のハンガーが地面に落ちた際に出た大きな音は、しばらく彼らの耳に残った。

 

「遊士さん、どこに!?」

「散歩だよ!!ガキじゃねえんだ、夜には戻るよ!」

 

遊矢は追いかけようとするが、零児が彼の前に立ちふさがった。

 

「遊矢。」

「零児!!どけよ!」

「わからないのか!彼は今苦しんでいるんだ。」

「えっ?」

「君は先ほど言ったな。遊士さんがそんなことでどうする…と。おそらく彼はわかっている。自分がやらなければ、誰がユキさんを救えるのか。ということを、考え込んでいるんだ。」

 

遊士がいなくなったのを確認すると、権現坂は零児に尋ねた。

 

「では我々を当てにしていないというのか?」

「そうではない。我々を当てにしてはいけないと思っているのだ、おそらく。」

「当てにしてはいけない…?」

 

「我々がここに来た理由は、エクシーズ次元の仲間を対融合次元のデュエリストの控える基地、『前線基地』から集め、融合次元へと旅立つためだ。

 

 

別に遊士に協力する義理も、バリアンを倒す義理も、ヘヴンズ・チルドレンを倒す義理もない。」

 

そこまで言い切る零児に、今度は柚子が尋ねる。

 

「じゃあ、私たちは、遊士さんとは目的が違うから、遊士さんに力を貸す必要はないっていうの?」

「そうだ。今までは『前線基地』がどの辺りにあるのか見当がつかなかったから、我々も動けずにいたが、おおよその目星をつけることはできた。我々は動ける。彼には《ディメンション・ムーバー》も渡してある。いざとなれば、自分の次元に戻ることもできるだろう。もっとも、彼が我々と行動を共にしたいと言った場合、話は別だがな。」

 

「冷静に考えてみれば、俺たちはランサーズ。遊士はランサーズという訳ではない。」

 

誰もが零児が遊士と旅をするつもりがないと解釈し、沈黙した瞬間であった。

 

 

「一点だけ気になるのは…彼の、そして彼の持つライジング・ソードの力だ。」

 

 

「あっ。そういえば。」

「あの力からは何か特別なものを感じる。確かにそれは気がかりだが…今のところその不確定要素が、遊士と行動を共にする必要条件ではない。」

 

 

------

 

 

ぼんやりと、声が聞こえてきた。誰か、男の人2人が、私の目の前で言い争っている。視界がおぼろげだ。確かに自らの足で立っている。確かに前を見ているのだが、声が出ない。いや、喉が痛いとかじゃない。声を出す気にならない。

 

何かを忘れている。自分が何者なのか、そういえばそれも忘れている。けれど、それですらどうでも良い。

 

「返すべきです。」

「いや、この子は必ず覚醒する。断言できる。」

「なぜそう断言できるのですか!!」

 

まるで水中から2人の会話を聞いているみたい。なんだろう、この感じ。

 

「私の子ども(チルドレン)の一人だ。わかる。」

「しかし、恐れながら申し上げますが、仮にそうだとしても、今のこの状態で、覚醒していない状態で、我々にプラスになるとお思いですか?」

 

お…この銀髪の人、私のことを指差しているぞ。ひょっとして、覚醒していないのは…私?ってか、もう一人の人、白いフード被っていて全然顔が見えない。金髪っぽいけど。

 

「相変わらず君は楯突くのが好きだね。」

「楯突くだなんて…私は…」

「いや、冗談だよ。確かに君の指摘はごもっともだ。だから私は彼女にデュエルをしてもらおうと思ってね。きっと彼女は使いこなしてくれる。このカードを。」

 

あ、デュエルモンスターズのカードだ。この人たちも、デュエルするんだ。

 

「それは…エクシーズ次元で使うべきカード!!」

「そうだよ。だが誰に持たせるかを考えていてね。せっかくだから、彼女に使ってもらおう。」

 

え、これ、私にくれるの?

 

「そう。これは君にあげる。さあ、このカードを使い、思う存分暴れるが良い。そのカードがあれば、アストラルも、バリアンも、怖くはない。」

 

 

------

 

 

(あれ…今のは?あっ、そうか。私、デュエル中だ。)

 

 

目の前ではベクターの使う、マスカレード・マジシャンシャイニングが、宙を舞っていた。不意に彼女の視線は腕組みをしているクラウダーと合ったが、彼は特に何も言わなかった。

 

 

《No.104 仮面魔踏士シャイニング》:ORU2→ORU1

 

 

「さあ、くらえ!800のダメージをな!」

「だったら僕は、シャイニングのモンスター効果に対して、《ソウル・ミスト》の効果発動!このカードを墓地に送り、(4)バトルフェイズ中に発動したモンスター効果を無効にする!」

「甘いんだよ!マスカレード・マジシャンシャイニングの効果発動!さらにオーバーレイユニットと一つ使い、バトルフェイズ中に発動したモンスターの効果を無効にする!」

 

 

《No.104 仮面魔踏士シャイニング》:ORU1→ORU0

 

 

「じゃあ僕は…《ホール・ミスト》の効果を発動しようかな。」

「なにっ!?」

 

シャイニングのオーバーレイユニットが切れてしまったところで効果を発動され、狙いが今のカードの発動であることに気が付き、動揺するベクターであったが、もう遅い。

 

「このカードの効果はチェーン3以降にしか発動できないけど、このカードを手札から墓地に送り、(3)バトルフェイズ中に発動した同一チェーン上のモンスターの効果を全て無効にして、バトルフェイズを終了させる!」

「チェーン3以降だと!?」

「1つのカード効果の発動に対して、別のカード効果が発動されることを、チェーンと呼ぶ。シャイニングの効果を、2回も使ってくれたからね。チェーン数が溜まったってことさ。」

 

 

チェーン1:《ヴァニティ・ミスト》

チェーン2:《No.104 仮面魔踏士シャイニング》

チェーン3:《ソウル・ミスト》

チェーン4:《No.104 仮面魔踏士シャイニング》

チェーン5:《ホール・ミスト》

 

 

「バトルを回避されたか。」

「まさか、そのために効果を使った訳じゃないよ。《ホール・ミスト》は、このターンに無効にした効果ダメージ分だけ、相手にダメージを与える。」

「このターンに無効にした効果ダメージっていうと…シャイニングの効果2回分、1600ポイントか。」

「それだけじゃない。」

 

そこまで黙って聞いていたドルベが突然口をはさんだ。

 

「そうか!!《ヴァニティ・ミスト》は特殊召喚時に、攻撃力の半分の、2000ダメージを相手に与える。つまり、3600ポイント!!」

 

「そういうこと。そしてベクター。君のライフポイントは残り3000ポイント。とりあえず君はここで、ゲームオーバーね。」

「んだとぉ…!!!」

 

青白い光がベクターに向かって進んでいく。彼は自分よりも7歳は年下であろう少年のようなデュエリストにしてやられてしまったという思いに呆然としていて、何かを発動するようには見えない。

 

「ベクター!!くっ!罠カード、《リデュース・ダメージ》!!」

「ド…ドルベ!?」

「自らのモンスターの攻撃力を、100ポイント単位で下げることで、効果ダメージを無効にする!私は、グローリアス・ヘイローの攻撃力を、2500下げる!」

 

 

《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》:攻撃力2500→攻撃力0

 

 

「まぁいいや。これで3600ポイントから、2500ポイントのダメージが引かれて、1100ポイントのダメージだね。」

「ぐっ。」

 

 

ベクター:LP3000→LP1900

 

 

「ベクター!!大丈夫か!?」

「余計なことをしやがって!!」

「どんな言い方をされようが、お前は私と同じく、バリアン七皇の一人だ!仲間は、守らなければならない!!」

「な…仲間…だと?」

 

ベクターがドルベから目を逸らすと、ミストがその様子を見て、話しかけた。

 

「仲間に助けられたね。」

「うるせぇ!調子に乗んなよ!!今のはたまたまやられただけだ!まだ俺のターンは終わってねえ!シャイニングの効果発動!1ターンに1度、相手のデッキの上からカードを1枚墓地に送る!さあ墓地に送れ、ミスト!」

「いいよ別に。1枚くらい。」

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」(3)

<ドルベ:伏せ1枚 ベクター:2枚 ミスト:なし ホワイト:2枚>

 

再び沈黙のデュエリスト、ホワイトがカードを1枚ドローする。彼女の手札は3枚。このターンも、何の動きもなくターンが終わるとしたら、いつのタイミングで終わるのか、それをドルベは測っていたが…

 

ホワイトの目の前に、小さくてかわいらしい白い羽の生えたバレリーナのようなモンスターが現れた。

 

「おい、黙ってモンスターを召喚するなよ。」

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット)Lv.1》:攻撃力0

 

 

「ブリザード・スピリットか。」

「からのぉー、やっぱりな。《レベルアップ!》を使ってきたか!」

 

 

《レベルアップ!》

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット)Lv.3》:攻撃力1000

 

 

突然目の前にいたブリザード・スピリットが口から吹雪を吐き出し、グローリアス・ヘイローに浴びせた。

 

「なにっ!?グローリアス・ヘイロー!!」

 

「何も喋らないとわかんないかもしれないから教えてあげるよ。ブリザード・スピリットLv.3は、相手モンスター1体の効果を無効にして、攻撃を不能にする効果があるんだ。今はそれを使ったんだよ。」

「効果が無効!?では、ナンバーズから以外でも、破壊されてしまうのか。」

「だらしねえなドルベ!ナンバーズが、攻撃力1000のモンスターにやられちまうなんてよ!」

 

先ほど助けてもらった者が言う言葉ではないと思ったドルベだが、ドルベはベクターを気にしている場合ではない。

 

ブリザード・スピリットが、自身の羽で羽ばたくと、量としてはさほど多くはないが、吹雪が舞い、グローリアス・ヘイローを取り囲んだ。

 

「ええい!罠カード、《ライジング・エナジー》を発動!」

 

 

《ライジング・エナジー》

通常罠

➀:手札を1枚捨て、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1500アップする。

 

 

「手札を1枚捨て、(2)グローリアス・ヘイローの攻撃力を1500ポイントアップ!!迎え撃て!ライトニング・クラスター!!」

 

 

《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》:攻撃力0→攻撃力1500

 

 

グローリアス・ヘイローの放った槍が吹雪を散らしたが、ブリザード・スピリットは自身の羽から出たバリアで身を守った。小爆発が起こったが、プレイヤーであるホワイトは動じていない。

 

 

ホワイト:LP4000→LP3500

 

 

「何!?あのモンスターは、バトルで破壊できないモンスターなのか!?」

 

「知らないの?残念だねえ。ブリザード・スピリットは、自身の効果を使ったターンは、戦闘でも、カード効果でも破壊されないんだよ。」

 

 

《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》:攻撃力0

 

 

「ドルベのグローリアス・ヘイローの攻撃力が0に戻っちまった。」

「大丈夫だ、ベクター。我々には、彼らにはない、七皇だからこそできることがある!」

 

「七皇だからこそできること?」

 

公園のジャングルジムにもたれかかって聞いていたクラウダーが小さくつぶやいたを、ドルベは聞き逃さなかった。

 

「そう。七皇全員が揃った時、その時にこそ覚醒する我々の力だ!ゆくぞ!!私のターン!」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

 

「私が引いたカードは、《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)》!!」

「あぁ、そうか!そのカードがあったな、ドルベ!!」

 

「ザ・セブンス・ワン?」

 

「ミスト!ホワイト!!見るが良い、このカードの力を、発動せよ、ザ・セブンス・ワン!!自分フィールドのナンバーズ1体を、カオスナンバーズへと進化させる!私は、グローリアス・ヘイローで、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)

通常魔法

自分のエクストラデッキ・フィールド上・墓地の「No.10X」と名のついた モンスターエクシーズ1体を選択して発動できる。(Xは1~7の任意の数値)

選択したモンスターがエクストラデッキ・墓地に存在する場合、 選択したモンスターを召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。 その後、選択したモンスターよりランクが1つ高い「C」と名のついたモンスターエクシーズ1体を、 自分のエクストラデッキから、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。

 

 

来るが良い!《CNo.102 光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン》!!

 

 

《CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン》:攻撃力2900

 

 

「へぇ、これが、カオスナンバーズ。」

「ノーブル・デーモンの効果発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にし、効果を無効にする!!これで、ブリザード・スピリットの効果は無効となり、攻撃力は0!!」

 

 

《CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン》:CORU4→CORU3

《吹雪の精霊Lv.3》:攻撃力1000→攻撃力0

 

 

「ゆけっ!ノーブル・デーモン!!」

 

 

ダークネス・ピアース!!

 

 

槍と共に手のひらにのるほどの老婆の姿をした悪魔がブリザード・スピリットに向かい、闇に飲み込まれたブリザード・スピリットはその場で大きく吹き飛ばされ、同時にホワイトも大きく吹き飛ばされた。

 

 

ホワイト:LP3500→LP600

 

 

(えっ、うそ!宙に浮いてる!?ちょっとちょっと!!なにこ……あいたっ!!!)

 

 

仰向けになり、地面に頭を打ち付けたホワイトだが、彼女の様子に変化はない。

 

「女子供に情けをかけるのかと思っていたが、心配して損したぜ。意外とやるんだな、ドルベ!」

「我々の未来のためだ!私はこれで、ターンエンド!(2)」

<ドルベ:伏せなし ベクター:2枚 ミスト:伏せなし ホワイト:伏せ2枚>

 

「僕のターン、ドロー!(4)あぁ…」

「引きが悪かったのか?だったらとっとと俺のターンに回しやがれ!」

「そんなカッカしないでよ。僕のとっておきを見せざるを得ない手札なんだからさ。」

「とっておき?」

「魔法カード、《融合》を発動!手札の2枚の《ヴァニティ・ミスト》を融合!」

 

 

虚構の存在よ。人には見えぬ姿を重ねて、現世(うつしよ)に現れろ!融合召喚!レベル10、《死霞の谷の龍(デス・ミストバレー・ドラゴン)》!!

 

 

死霞の谷の龍(デス・ミストバレー・ドラゴン)

融合モンスター

レベル10/風属性/ドラゴン族/攻撃力?/守備力?

 

 

「デス・ミストバレー・ドラゴン?」

 

霧に包まれた龍と言われると、常人には触れることが許されない崇高なモンスターに聞こえるものの、「死霞」の文字が示すように、不気味な気配を漂わせており、紫色の煙のようなものが胴体を覆っている。その上その胴体はどうやら骨のようであり、骨でできた龍が、紫色の煙を纏い、時より骨を見せている、といった感じか。

 

「このモンスターは、お前のエースなのか!?」

「まぁ、そうだね。まずこのモンスターの融合召喚時、1000ポイントのダメージを受けるけど、《モンスター・モンタージュ》の効果でダメージは0。そして、このモンスターの攻撃力と守備力は、このカードの融合素材となったモンスターのレベルの合計に、300を掛けた数字となる。ヴァニティ・ミストはレベル10のモンスターだった。ということは、いくつかなぁ?」

 

わざととぼけたふりをしたミストに、ベクターは舌打ちをし、ドルベはすぐに答えた。

 

「20×300、つまり…6000!!」

 

 

死霞の谷の龍(デス・ミストバレー・ドラゴン)》:攻撃力6000

 

 

「別にカオスナンバーズを持っていなくても、勝てるのさ、デュエルには!バトル!!デス・ミストバレー・ドラゴンで、ノーブル・デーモンを攻撃!」

「なにっ!!」

 

ドルベは高を括っていた。ノーブル・デーモンには、オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、破壊を無効にする効果があったからだ。ミストやホワイトの使う除去カードは切り抜けられると、思っていたのだ。

 

デス・ミストバレー・ドラゴンが大きく息を吸い込んでいる時に、ベクターと目が合った。

 

「なぁドルベ。一つ聞いていいか?」

「…?」

「俺かお前のどちらかでも、このデュエルに勝つことが大事なんだよな?」

「そうだ。」

「だったら俺のカードでお前のライフが0になっても、最終的に俺が奴らをぶっとばせれば良いか訳か?」

 

仲間のことを気にかけている。いつもは自己中心的なメンバーにも関わらず、バリアン七皇としての自覚が芽生えたのか、とドルベは思っていたに違いない。彼ははっきりと言い放った。

 

「当然だ!!彼らを倒さなければならない!私の屍を越えてゆけ!!」

「そうか。だったら罠カード、《イービル2》!!」

 

 

《イービル2》

通常罠

このターン、以下の効果を2つもしくは3つ選んで適用する。このカードを発動した次の自分のスタンバイフェイズに、フィールド上に存在するカード1枚を選択して発動する。そのカードを破壊する。

●モンスター同士の戦闘によって発生する戦闘ダメージは半分になり、お互いのプレイヤーが受ける。

●モンスターが戦闘で破壊された場合、そのモンスターのコントローラーはそのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。

●戦闘によってモンスターが破壊された場合、バトルフェイズを終了する。

 

 

「こいつでお互いのプレイヤーは戦闘ダメージを山分けする!」

 

「戦闘ダメージを山分け!?」

「つまりドルベ、ミスト!!てめえらはこの戦闘で発生する3100ポイントのダメージを山分けし、1550ポイントずつダメージを受ける訳よ!」

 

 

ドルベ:LP2750→LP1200

ミスト:LP2000→LP450

 

 

「そして確かお前のデス・ミストバレー・ドラゴンには、モンスターの戦闘では破壊されない効果を無効にする効果があったよな?」

「へぇ、よく知っているね。そうさ、この効果で、そのままノーブル・デーモンを破壊する!!」

「何だと!?」

 

デス・ミストバレー・ドラゴンの毒々しい色のブレス攻撃がノーブル・デーモンを包み、破壊した。

 

「《イービル2》の効果で、戦闘で破壊されたモンスターのコントローラーに、攻撃力分のダメージを与える!ドルベ、わりぃな。」

「ぐあああああっ!」

 

 

ドルベ:LP1200→LP0

 

 

「へぇ、君がパートナーの息の根を止めるとはね。デス・ミストバレー・ドラゴンの攻撃を凌いだとしても、攻撃力は6000ポイントのままだし、防戦一方という感じになりそうだよね。僕はこれで、ターンエンド!(1)」

<ベクター:伏せ1枚 ミスト:伏せなし ホワイト:伏せ2枚>

 

「いくぜ!俺のターン!(4)」

 

(何…?ベクターはここで、通常のドローだと?バリアンズ・カオス・ドローではないのか!?)

 

「俺は、《イービル2》の効果発動!発動した次のスタンバイフェイズに、フィールドのカードを1枚破壊する!!俺はお前の、デス・ミストバレー・ドラゴンを破壊!!」

 

ベクターは自らの右手から紅い光線を放ち、おどろおどろしいそのドラゴンを破壊した。

 

「あっ。僕のモンスターが!!」

「その様子だと…まだ何かありそうだな、俺は魔法カード、《オーバーレイ・リジェネレート》を発動!こいつの効果で、シャイニングにオーバーレイユニットを1つ増やす!」(3)

 

 

《No.104 仮面舞踏士シャイニング》:ORU0→ORU1

 

 

「バトルだ!くらえ!!シャイニングで、ダイレクトアタック!!」

「あーあ。そんなカードがあったんだ。……だったら、少しでもオーバーレイユニットを使わせて、ホワイトが戦いやすいようにしないとね。墓地の《死霞の谷の龍》の効果発動!融合素材モンスターを手札に戻して、そのモンスターの効果を使う!」

「させるかよ!シャイニングの効果発動!!オーバーレイユニットを1つ使い、バトルフェイズ中のモンスター効果の発動を無効にし、800ダメージを与える!!」

「うわああああっ!」

 

 

ミスト:LP450→LP0

 

 

「いいぞ、ベクター!!」

「ヘッ。あとはてめえだけだ、ホワイト!!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」(2)

<ベクター:伏せ2枚 ホワイト:伏せ2枚>

 

いつ彼女のターンが始まるのか、そう思った矢先、不意に彼女の目の前にある罠カードが開いた。

 

「なんだ!?今度は黙ってトラップカードの発動か!?」

「《エクシーズ・ピクシー》。あれは、罠モンスター。」

 

 

《エクシーズ・ピクシー》

永続罠

このカードは発動後モンスターカード(魔法使い族・闇属性・星1・攻0/守0)となり、自分フィールド上に特殊召喚される。このカードはリリースすることはできず、シンクロ素材にもできない。「エクシーズ・ピクシー」2体を同時にエクシーズ素材にする場合、そのうち1体を2体分のエクシーズ素材として扱うことができる。

 

 

蝶の胴体に音符の形をした杖を持った小柄な女性のようなモンスターがホワイトの目の前に現れた。

 

気が付くと、もう1体《エクシーズ・ピクシー》が現れている。

 

「なに!?」

「もう1枚発動したのか!?しかもあれ、エクシーズ・ピクシー同士でエクシーズ召喚すると、2体分のエクシーズ素材になるんだったよな!」

 

 

ドクン、と心臓の鼓動を彼女は感じた。エクシーズ素材が揃ったフィールドを見ると、彼女はエクストラデッキから1枚のエクシーズモンスターを取り出した。

 

「これ…私が出すべきモンスター。私は…」

 

ブツブツと話しているのがドルベたちに聞こえたのか、ドルベはその言葉に反応する。

 

「ン?」

「お前、しゃべれんのか。」

 

(おっ。目覚めたのかな…?)

 

 

「私は、《エクシーズ・ピクシー》の効果により、2体同時に《エクシーズ・ピクシー》をエクシーズ素材とする場合、そのうち1体は、2体分のエクシーズ素材にできる!!レベル1の《エクシーズ・ピクシー》3体分で、オーバーレイ!!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 

 

天空より舞い降りし運命の王よ。戦いの記憶を破壊し、この地に新たなる夜明けをもたらせ!《破数王-ヌメロン・バスター》!!

 

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》

エクシーズモンスター

ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100

レベル1モンスター×3

 

 

まさに死神のようなモンスターという言い方がふさわしいのか、身長は180センチほどの高さで、華奢な体に、その2倍ほどの大きさの黒いマントを着用し、目元まで覆うダークグレーの兜を被ったモンスター。胸元には血のような暗みが含まれている赤色のスカーフが見え、右手には身長と同じくらいの高さの大鎌が握られている。

 

クラウダーは咄嗟に腕組みを解き、驚愕の表情で目の前に現れたヌメロン・バスターを見つめ、口を開いた。

 

「ヌメロン・バスター…彼女は、覚醒したのか!?」

「僕はヘヴンズ・チルドレンよりも下のヘヴンズ・サードだからわかんないけど、しゃべれるようにはなったみたいだよ。」

 

 

「破数王?」

「ヌメロン・バスターだと?」

 

 

「このモンスターは、ナンバーズを抹殺するために作られたカード。」

 

 

 

(次回に続く)

 

 

 

<今日の最強カード>

《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)

通常魔法

自分のエクストラデッキ・フィールド上・墓地の「No.10X」と名のついた モンスターエクシーズ1体を選択して発動できる。(Xは1~7の任意の数値)

選択したモンスターがエクストラデッキ・墓地に存在する場合、 選択したモンスターを召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。 その後、選択したモンスターよりランクが1つ高い「C」と名のついたモンスターエクシーズ1体を、 自分のエクストラデッキから、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。

 

 

<次回の最強カード>

 

《破数王-ヌメロン・バスター》

エクシーズモンスター

ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100

レベル1モンスター×3

 

 



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第24話-白き力の行方

ベクター

 

・LP1900

・手札2枚

・(モンスター)《No.104 仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング》(ATK2700)(ORU0)

・(魔法・罠)2枚

 

 

ホワイト

 

・LP600

・手札2枚

・(モンスター)《破数王-ヌメロン・バスター》(ATK100)(ORU2)

・(魔法・罠)なし

 

 

「ヌメロン・バスターだと…?」

「このモンスターは、ナンバーズを倒すために生まれたカード。」

「だが、攻撃力たかだか100のモンスターで、どうやって倒すっていうんだよ?」

「私は、ヌメロン・バスターのモンスター効果を発動!1ターンに1度、ナンバーズを破壊して、その攻撃力分だけこのカードの攻撃力がアップし、その効果を得る。」

「なにっ!?」

 

ヌメロン・バスターが手に持つ大鎌でマスカレード・マジシャンシャイニングの胴体を真っ二つに引き裂き破壊、さらに破壊された時に出た白い光のようなものを、ヌメロン・バスターは吸収した。

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:攻撃力100→攻撃力2800

 

 

「まずいぞ、ベクター!!このままだと、ヌメロン・バスターのダイレクトアタックを受けるぞ!」

 

「ヌメロン・バスターで、ダイレクトアタック。」

 

覚醒はしたもののまだ寝ぼけまなこなのか、そう一人呟くと、ヌメロン・バスターは勢いよく大鎌を振り上げた。

 

「そうはいかねえよ!罠カード、《ダメージ・ブラックアウト》を発動!」

 

 

《ダメージ・ブラックアウト》

通常罠

自分または相手ターンのダメージ計算時に発動することができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを0にする。その後、フィールド上にエクシーズモンスターが存在する場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「この効果により、戦闘ダメージを無効にし、モンスターエクシーズがいれば、1枚ドローできる!!(3)」

「1枚カードを伏せて、ターンを終了。」(1)

<ベクター:伏せ1枚 ホワイト:伏せ1枚>

 

「チッ。少しはやるじゃねえか。だが、俺のターンだ!(4)」

(《グローリアス・ナンバーズ》か。こいつを使えば墓地からシャイニングを復活させられる。あいつのモンスター効果を使われれば、結局次のターンに破壊されちまうが…その前に利用するまで!)

 

 

《グローリアス・ナンバーズ》(小説版)

通常魔法

自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地の「No.」と名のついたモンスターエクシーズ1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

ドルベはベクターのカードによってチームのための敗北をした訳だが、彼は地に手をつきながら、ベクターをじっと見ている。

 

(おかしい。先ほどのターンも、このターンも、バリアンズ・カオス・ドローを使わなかった。今の状況、彼女は覚醒し、もはや余裕と言える状況ではない。それはベクターの顔を見ればわかる。)

 

『ベクター!!ベクター!!』

(あん?なんだよ。うるせえな。お前は引っ込んでろ!)

 

『聞け、ベクター!!このままだと…』

(安心しな。確かにヌメロン・バスターには面喰ったが、別に手がねえ訳じゃねえ!)

 

周囲には聞こえていない。彼の内なる声が、ベクターに言う。

 

『そうではない!ドルベだ。いつまでもお前がバリアンズ・カオス・ドローを使わないことに、疑問を持っているのではないか?』

(あぁ…それか。確かに、ザ・セブンス・ワンは、七皇への忠誠の証。ドン・サウザンド。あんたと契約しちまった俺には使えねえ。怪しいとは思うよな。あいつだって、俺のカオスナンバーズの力は知っているだろうし。)

 

ベクターがちらと後ろに目を向けると、ドルベは何か俯いてぶつぶつと話しているように見えたが、ベクターにはそのしぐさは気にならず、ドルベにどういうアクションをするかを考えていた。

 

(バリアンズ・カオス・ドロー!なんて恥ずいことをして、引いたカードが、ザ・セブンス・ワンじゃなかったら、突っ込まれそうだしな。まぁ…考えておくか。)

『呑気すぎるぞ、ベクター!!』

(まぁ慌てんなドン・サウザンド。とりあえず、このターンはこのターンのショーを楽しもうぜ。)

 

「おい!!どうした!?サレンダーするならそう言え!」

 

クラウダーがジャングルジムに腰掛けながら声を張り上げてそう言うのを聞くと、ベクターはその言葉で我に返った。

 

「慌てんじゃねえ!俺は手札から、《グローリアス・ナンバーズ》を発動!俺の場にナンバーズがいない時、墓地からナンバーズを復活させ、カードを1枚ドローする!(4)復活しろ!シャイニング!」

 

 

《No.104 仮面舞踏士シャイニング》:攻撃力2700

 

 

「さらに、手札から、《RUM-クイック・カオス》を発動!(3)」

「クイック・カオス…。」

 

ドルベがどのような反応を取ったのか、気になったベクターはドルベの方に目を向けたが、ドルベはまだ時よりぶつぶつと話している。

 

(…?まぁいい。)

 

「シャイニングをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.104!混沌より生まれしバリアンの力が光を覆うとき、大いなる闇が舞い踊る。《仮面舞踏士(マスカレード・マジシャン)アンブラル》!!

 

 

《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》:攻撃力3000

 

 

「アンブラル…」

「まずは、アンブラルの効果を発動!エクシーズ召喚に成功した時、フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する!お前の伏せカードを破壊!!」

 

 

デストロイ・ステップ!!

 

 

アンブラルが自身の持つ杖の先から黄色の波動を繰り出し、ホワイトの場に伏せられていたカード、《エクシーズ・コート》を破壊した。

 

 

「《エクシーズ・コート》か。対象モンスターエクシーズの破壊を無効にするカードな。残念だったな!」

「ヌメロン・バスターの効果発動。相手のナンバーズを破壊し、その効果を得る。相手ターンにこのカードの効果を使う場合、オーバーレイユニットを1つ使う必要がある。」

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:ORU1→ORU0

 

 

「相手ターンでも使えるのか。だが…そうはいかねえんだよ!俺は、アンブラルの効果発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使うことで、相手フィールドで発動されたモンスターの効果を無効にして、相手のライフポイントを半分にする!!」

 

 

ダーク・プランダー!!

 

 

《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》:CORU1→CORU0

 

 

アンブラルが宙を舞い、上空から黒い波動をヌメロン・バスターとホワイトに浴びせた。

 

「…っ!!」

 

初めて苦悶の表情を見たところを見たクラウダーは、彼女のところに駆け寄った。

 

「大丈夫か!!」

「ヘヘヘ!!お前が女の格好をしていようが何だろうが、ヘヴンズ・チルドレンなら、俺の敵には変わりねえんだよ!わりぃな。」

 

 

ホワイト:LP600→LP300

 

 

「ヌメロン・バスターの攻撃力は2800。そしてアンブラルの攻撃力は3000!この一撃で、ヌメロン・バスターをぶっ飛ばしてやるぜ!!」

 

 

くらえ!ラスト・ダンス!!

 

 

アンブラルの一撃をまともに受けたヌメロン・バスター。その場から動こうともせず、大鎌で身を守ることもしなかったのは、モンスターであり、感情など持つはずがないとベクターが思ったからであったが、煙がはけると、大鎌を持った状態で仁王立ちしているヌメロン・バスターが見え、その考えは覆った。

 

 

ホワイト:LP300→LP100

 

 

「なにっ!?」

「ヌメロン・バスターは、ナンバーズとのバトルでは破壊されない。」

「なっ…!!ナンバーズとのバトルでは…だと!?」

 

「そうだ。お前たちが使うナンバーズは、ナンバーズとの戦闘以外では破壊されない効果を持っている。ならば必ずお前たちの切り札は、その強力な効果を持ったナンバーズになるはず!!そうお考えになったヘヴンが、作られたカード。それが、ヌメロン・バスター!!」

 

「チッ。まぁいい。カードを1枚伏せて、ターンエンド!(2)」

<ベクター:伏せ2枚 ホワイト:伏せ1枚>

 

 

------

 

 

「そりゃ、俺だってユキを探さなきゃいけねえのはわかってるけど、いくら何でも手掛かりがなさすぎるだろ。確かにあのヘヴンとかいうやつも、ユキについて何か言っていたけど、それだけだし…ちくしょう、どうすりゃいいんだよ!」

 

ビジネスホテルから徒歩10分ほどのところにあるダウンタウン地区。そこを歩く遊士は地面から自分の手のひらに収まるほどのサイズの石を拾い上げて、地面に勢いよく叩きつけた。

 

ここはハートランドの中でも特に人気のない場所。石の転がるコロコロという音が響くなと遊士は思っていたが、よく聞くと、爆発が起きたような音がする。

 

「ン…デュエルか!?公園の方か!?」

 

遊士は学ランを着たまま、前方の公園に向かって走っていった。

 

 

------

 

「私のターン。(2)」

 

彼女の体が小刻みに震えていることに、近くにいたクラウダーが気付く。若干過呼吸のような感じが見受けられ、時折口を大きく開いて大きく息を吸い込んでいる。

 

「ふぅ…はぁ。」

「ホワイト。」

 

(…?どうしたんだ、あの姉ちゃん。)

 

「私は…まだ戦える。私は、ヌメロン・バスターの効果を発動。アンブラルを破壊し、攻撃力と効果を得る。」

(息が苦しい。一体何この感覚?けど、もう少しでこの気持ち悪い人とのデュエルに勝てる。そうよ、私…あんまり覚えていないけど、色々な物事をガッツ出して、乗り越えてきた!そんな気が…この手足がそれを覚えている。)

 

再びヌメロン・バスターがその大鎌を振るい、オーバーレイユニットを持たないアンブラルを破壊し、オーラを吸収した。

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:攻撃力2800→攻撃力5800

 

 

「ヌメロン・バスター。ダイレクトアタック!!」

 

発汗症状が現れている。おそらくこれで最後の一撃だとするホワイトが力を振り絞ってベクターをにらみつけた時に、彼女の着ている白いパーカーのフード越しの顔に、それが見えた。

 

『ベクター!!もうあのカードを使うしかないぞ!』

(そのようだな!)

 

「永続罠、《イービル1》!!こいつは戦闘ダメージがいくつだろうと、ライフポイントを1にすることによって、その戦闘で発生する自分へのダメージを無効にする!」

 

 

ベクター:LP1100→LP1

 

 

「そ…そんな!!」

 

 

《イービル1》

永続罠

 

 

「その顔、どうやら何としてもこのターンで倒したかったみてえだな!わかるぜ。お前、そのカードを使うと疲れんだろ!?ヌメロン・バスター…恐ろしい力を持ったカードなら、普通、使い手には相当な負担がかかるもんだ。それを知っていながら、そのカードをお前に与えて、自分は高見の見物とは、良いご身分だなぁ、ヘヴン様よぉ!!」

 

ベクターはヘヴンが見ているのかは知らなかったが、夕日に染まりつつある虚空に向かって吠えた。

 

その行為を止めようと一歩前に出かけたクラウダーだったが、彼は目の前にいる汗だくになりながら、過呼吸の状態にあるホワイトを見ただけで、何かをベクターに対して言うことはなかった。

 

「さらに俺は、自分のライフが減ったことで、罠カード、《クレイジー・コープス》を発動!俺のライフが減った時に、墓地のモンスターエクシーズを復活させる!!蘇れ、《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》!!」

 

 

《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》:攻撃力3000

 

 

「ま…まだ決着にならないの…?」

「あぁ。まだまだ楽しもうぜぇ、姉ちゃん!そして、次の俺のターンのスタンバイフェイズ、《イービル1》の効果で、場のカードを1枚破壊できる!これで今度こそお前のヌメロン・バスターは終わりだ!」

 

ホワイトはそのベクターの説明をあまり聞けていなかったが、ヌメロン・バスターに自身が食われていく、そんな気がしてきた。

 

(あぁ…もうダメ。耐えられない。こうなったら…)

「魔法カード、《ブラック・ホール》を発動!(1)」

 

 

《ブラック・ホール》

通常魔法

フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。

 

 

「なんだと!?自分のヌメロン・バスターごと、俺のモンスターを破壊するのか!」

 

突如として出現したブラック・ホールに飲み込まれたヌメロン・バスターとアンブラル。誰もいない公園、という雰囲気か。突如として静かになった。

 

「あいつのフィールドには伏せカードがある。最悪《イービル1》でそいつを破壊すれば良いが…クソッ!!《クレイジー・コープス》の効果で蘇ったモンスターがフィールドを離れた場合、エクストラデッキに戻っちまう。もう俺の墓地には、アンブラルはいねえ。」

<ベクター:伏せなし ホワイト:伏せ1枚>

 

ベクターの手札にある2枚のカードは逆転のカードではない。この状況を打破するためには、何を引けば良いのか。今までは下級モンスターで攻撃を凌ぎつつ、カードを待つなど悠長な考えを持ち合わせていたが、ベクターは自身の心臓の鼓動が少し早くなったことを考えると、焦っているのは自分でもわかった。

 

「俺のターン!!」

 

さきほどまでの癖のようなものか、不意にベクターが後ろを振り向くと、そこには座った状態のドルベがいる。ベクターは『こんなことを思いつくなんて罪深い』と思うことは少しもなく、いやむしろ、『こんなことを思いつくなんて自分は天才に違いない』とさえ思っていただろう。

 

彼にとっては、取っておいたおやつを食すようなものなのか。彼はドルベに歩み寄った。

 

「なぁ、ドルベ。お前言ったよな?」

「…?」

「私の屍をこえてゆけって。」

「あぁ、確かにそう言ったが。」

 

「だったらお前の力、俺によこせよ。」

「なに?」

「バリアン七皇はよぉ、元々ドン・サウザンドに取り入れられるべきなんだよ!」

「ドン・サウザンド!?バリアンの神か!!何をいきなり…!!お前も、バリアン七皇の一人ではないのか!!」

 

「そうだぜ?だが俺はこいつと…契約したんだよぉぉぉぉ!!」

 

突如としてベクターの背後にベクターの身長の3倍ほどある影のような存在が、ドルベを見下ろした。

 

「あ…あなたが…!」

「今、ベクターがいったことは事実だ。我はベクターと契約した。そしてお前たち七皇は、我に吸収されるべきなのだ!」

「っつう訳で…あばよ、ドルベ!!」

 

「ベクター!!くっ、やはりお前は…!!」

 

 

ベクターが手から放ったピンク色の波動を受け、ドルベは自身の体が光の粒になったのを感じる間もなく、消滅し、その粒はベクター、そしてドン・サウザンドに取り込まれてしまった。

 

 

「お前…仲間を!」

「仲間ぁ?ちげぇな。こいつらは俺からすりゃムカつくんだよ、全員!!」

「だがお前のしたことは、他のバリアン七皇にも知れているはず!!だとすれば、お前もただではすまないぞ!」

「そんなことに気付かない俺じゃねえよクラウダー。バリアン七皇はバリアン本部の力を使って、バリアンズ・ヴィジョンを出し、他の七皇が戦っているところを見ることができるが、そいつはもう既にドン・サウザンドによって遮断してきた!要は、回線切断ってことよ!!ついでに、ドルベがいなくても、俺がドルベをやったって疑われることはねえ!!なぜなら…俺はもう…」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

 

「引き当てたぜ!!《RUM-七皇の剣》をよ!」

「なにっ!?お前、先ほどからそれをしないのは、バリアンズ・カオス・ドローが使えないからではなかったのか!?」

「ちげぇよ!七皇の剣が使えなかったのよ、こいつは、七皇に忠誠を誓う必要がある!俺にはそんな気はさらさらねえからな!!発動しろ!ザ・セブンス・ワン!!まずは墓地から、シャイニングを特殊召喚する!」

 

「…」

 

「そしてこいつをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!三度現れろ、《CNo.104 仮面舞踏士アンブラル》!!」

「また、アンブラル。」

「そうよ!アンブラルのモンスター効果は、相手フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する!!お前の伏せカードを破壊させてもらうぜ!!」

「あっ…」

 

彼女はそわそわしていた気がするが、そんなことはベクターにはどうでも良かった。

 

「さあ、これで終わりだ!アンブラルで、ダイレクトアタック!!」

「くっ…!!」

 

 

ホワイト:LP100→LP0

 

 

「ヘッ。手こずらせやがって。さあ、おねんねの時間だぜ。まずはヘヴンズ・チルドレンの一人目だ!!」

 

ホワイトがその場で蹲ったのを見ると、ベクターはすかさず手を前に翳し、ホワイトに狙いを定める。

 

すると、彼らの目の前に、空中に浮かぶ映像のようなものが映し出された。

 

「な…なんだこりゃ!?」

 

「ヘヴンに仕える者、ならびに我々に抗う者に大事なお知らせをする!」

 

「この声…ヘヴン。」

「あ…私にカードをくれた人。」

 

目の前には、4人の人影が写っている。3人が男性、1人が女性という感じ。

 

「このお知らせは、わかりやすく言うなれば我々と敵対する者に対して、我がヘヴンのこのエクシーズ次元に対して出した戦力がどれほどのものかを教えるためのものだ。」

 

「戦力がどれほどかって…ヘヴンズ・チルドレンは6人全員でかかってくるんじゃねえのかよ?」

「違う。この次元以外にも、我々は管理する必要がある次元がある。可能な限りの人材を一か所に注ぐのは、間違っている。」

「ヘッ。」

 

「まず我が子、ヘヴンズ・チルドレンだが、この次元ではクラウダー、そしてホワイトに担当してもらう。」

「ハッ!」

「…」

 

「そして、選び抜かれたヘヴンズ・サードの精鋭たち4人が、まずはこの次元で君たちを倒す存在となるだろう。ナイト、ノックス、ラニット、アフタン!!」

 

まるでどこかのチームの紹介のようにして、彼らの名前が読み上げられる。しかし彼らの姿がその映像に映し出されることはない。映像にあるのは、ヘヴンの姿のみ。相変わらず素顔は見えないが。

 

「彼らがデュエルをする際には、名前を伝えるようにも言っている。映像まで君たちに見せる義理はない。」

 

すると、その映像に向かって声を荒げている者が目の前にいた。ミストである。

 

「あ…ど、どうして!?どうして僕の名前がない!?」

「そうだ。思い出した。何名かをエクシーズ次元に派遣し、ヘヴンズ・サードの中でも見込みがあるのかを試したが、君たちはそれには及ばなかった。お疲れ様。今後の活躍を、祈っているよ。」

 

「そんな…そんな!!僕は、まだ…死にた…うわああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

祈られた者-ミスト-は、その場で喉がかれてしまうのではと思われるほどの声で叫んでいたが、その叫びはすぐになくなった。気が付けば、目の前にミストの姿もなかった。

 

「さて…改めて言うが、人間は人間が定められた枠組みの中でのみ生活することを求められている。しかし君たちは違う。その能力…常人のそれを逸している。ナンバーズ、その存在も然り。良き力か、悪しき力かではないのだよ。これを見れているということは、その対象になった人だ。その力を全て失うつもりがあるのであれば、ヘヴンズ・チルドレンでも、ヘヴンズ・サードでも、伝えてくれ。そうすれば無益な戦闘は行わないことを約束する。だが、そうでないとこちらが判断した場合は、その後の君たちの安全については、保障しかねる。では…始めよう!!」

 

ヘヴンがフィンガースナップをすると、ホワイトの頭の中で、何かが切れた音が聞こえた気がした。ぼやけていた視界がはっきりし、水中から出てきたような気がする。

 

「あ…何か、健康体になった気がする。」

「ヘヴンの合図で、目覚めたというのか。」

「あなたは…確か、クラウダー…さん?」

「私の名前、憶えているのか?」

「あ、はい。だって、ヘヴンって人とも話してましたし。」

「別に寝ていた訳ではなかったんだな。」

「あぁ~。感覚としては寝てたっていうのに近いですけど…」

 

クラウダーが年上だと判断し、敬語を交えた流暢なセリフにぎこちなさを覚えたクラウダーであったが、目の前には手の平をホワイトの方に再び向け始めているベクターがいる。

 

「おい!シカトこいてんじゃねえ!お前を倒したってことは…もうお前は終わりだろ!さっきのが始まりの合図だなんて、俺は認めねえ!第一そんなこと聞いてねえ!」

「彼女は覚醒していなかった!」

「お前らの都合なんて聞いてねえ!……って、おい!」

 

ベクターがそう叫んだのは、ホワイトに対してであった。ホワイトはベクターがいる方向ではなく、真後ろに振り返ったからだ。

 

「どうした?」

「何か、声が…」

 

確かに、耳を澄ますと、「何が始まりだ、ふざけんじゃねえ!」という青年の声が聞こえて来るのがわかる。公園に向かう一本道の奥にその声の主らしき人物が小さく見える。まだ80メートルほど先にいるその青年は、黒っぽい服装で、ベクターと同じようなことを言っているが、どうやら彼は不思議なことに虚空に向かって叫んでいるようだ。傍から見ると、恐ろしくて近寄りたくなくなる存在だ。

 

「誰かこっちに来やがるのか!」

 

「何もないところに叫んでいる。我々と同じく、今の映像を見た人か!」

「ってことは、私たちの仲間?」

「いや違う。仲間なら、つまりヘヴンズ・サードということだが、どんな者かは、私にもわかる!」

「えっ。仲間じゃないの?」

 

敬語で話すこともできなかったホワイト。怖がってパーカーのファスナーの部分を掴んで自らの顔を半分ほど隠し、クラウダーの肩をぺちぺちと叩いている。

 

「七皇の仲間でもなさそうだな。あんな黒い格好の人間体の奴はいねえ。」

 

(なに?七皇でもないのか!?とすると…)

 

60メートル、59メートル、58メートルと近づきつつある彼を目を凝らして見ていると、クラウダーはあることを思い出した。

 

(…あれは…学ランのようだが…まさか、奴は!!!本当にここまで来ているとは!だとすると…これはまずい!)

 

ふとクラウダーが後ろに目を向けると、ベクターが赤い波動を繰り出しているのを察知した。

 

「くらえ!」

 

「くっ!」

「きゃっ!」

 

咄嗟にホワイトを抱きかかえるようにして庇い、その場で2人ともがうつ伏せに倒れた。

 

「チッ。外したか!」

『ベクター。しばらくは我が力を使ったハントは使えないぞ!』

「はぁ!?どういうことだドン・サウザンド!!」

『ドルベを吸収するのに力を使ったからな。』

「使えねえな!」

 

「大丈夫か、ホワイト?」

「クラウダーさん、ごめんなさい。」

 

その場に倒れた2人が顔を同時に前にあげると、そこには、先ほどの黒い学ランの青年-草薙遊士-が2人を見下ろして立っていた。

 

「……!!」

 

遊士は自分の目に映るものを疑い、目を大きく見開いた。その学生服のスカートに見覚えがある。学友会活動(部活動)やその他学校代表者の大会応援には、制服を着用することが義務付けられている。目の前にいる女性、自分を見上げる女性と最後に会った日、パーカーこそどこで手に入れたか不明であったが、彼女はその服装だったのだ。

 

「…ユキ。」

 

その呟きが、彼女の耳に入ったのか定かではなかったが、ユキと言われた女性は、遊士を見たまま、顔を斜めに傾けた。目を見開いた訳でもなかったその様子が、何を示しているのか、彼には容易に理解できた。

 

「え…?」

 

彼が視線を右に向けると、彼はクラウダーを視認した。それと同時に、彼の脳裏にはヘヴンズ・チルドレン、ナンバーズ、CDT…と数十、いや、数百もの単語が浮かび、シナプスが結合されていく気がした。

 

「あの会場でサニーと一緒にいたてめえがここにいて、その横にユキがいるってことは…おい、てめえ!!クラウダー。どういうことか説明しろ!!」

 

顔を真っ赤にして彼を引き起こした後彼の胸倉を掴んだ。あまりの突然の出来事にユキと言われた女性は、目の前の現象を抑えるべく、遊士の手を振り払おうとした。

 

「ちょっと、やめてくださいっ!!」

「ユキ!お前…くそっ!!」

 

遊士はクラウダーを突き飛ばし、彼は少しよろけた。襟をくつろげた後で、クラウダーは落ち着いた口調で遊士に言った。

 

「お前は…何も知らなくて良い。」

 

「な…なんだと…」

 

「とりあえずデュエルの報告をする必要がある。戻ろう、ホワイト。」

「あ…はい。」

 

クラウダーはホワイトのパーカーのフードを彼女の頭にかぶせ、遊士に対して背を向けるようにし、顔を合わせないようにしてそのまま2人はワープしたように、姿を消した。

 

 

「ユキ…お前はホワイトなんかじゃねえ。ユキなんだ。ユキなんだ!!いつもお節介な奴で、うるさくて…俺にとっては…大切な奴なんだよ!!ユキを…ユキを…ユキを返しやがれえええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

陽が完全に落ちてはいたが、多少の残照がある空に、その咆哮は虚しく響き渡った。

 

 

(次回に続く)

 

<今日の最強カード>

《破数王-ヌメロン・バスター》

エクシーズモンスター

ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100

レベル1モンスター×3

このカードは「No.」と名のついたモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、相手フィールド上に存在する「No.」と名のついたモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターを破壊して、そのモンスターの攻撃力分だけこのカードの攻撃力をアップし、その効果を得る。この効果は相手ターンでもこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで発動できる。

 

 

<次回の最強カード>

《自爆スイッチ》

通常罠

自分のライフポイントが相手より7000ポイント以上少ない時に発動する事ができる。お互いのライフポイントは0になる。



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第25話-裏切りのベクター!裁きのカオス・ナンバーズ!

遊士の咆哮は、目の前にいるベクターももちろん聞いていた。おおよその事情がわかったベクターは目の前で崩れ落ちる遊士に対して手を差し伸べる訳でもなく、その場から黙って立ち去って好きなだけ泣かせてやる訳でもなく、彼を嘲笑した。

 

「ハッハッハッ!!残念な奴だなぁ!!恋人に振られちまったかぁ。」

 

「は?誰だてめえ。見てたろ。俺は気が立ってんだよ!!」

「おおっ、怖いねぇ、草薙遊士。」

 

自分の名前が呼ばれると、遊士は我に返った。

 

「お前…誰だ?その格好。バリアン七皇って奴か?」

 

バリアン七皇という言葉を聞いたベクターは一瞬躊躇ったが、自己紹介を始めた。

 

「そうよ。俺はベクター!お前、ギラグを倒してたよな。ナンバーズを使って。普通の奴がナンバーズを使って戦うと、心の闇が引き出される。だがお前は違ったな。ナンバーズを操って、戦っていたな。俺から聞かせてもらいてえのは…草薙遊士。お前こそ何者だ?」

「何者って…」

「お前からは怪しい感じがするんだよ。あの、ライジング・ソード。あいつはどこで手に入れた?」

「てめえに教える義理はねえ!」

「だったら力づくで聞くまでよ!お前のその力、俺がもらい受ける!バリアンズ・スフィア……」

 

「そこまでだ、ベクター!!」

 

バリアンズ・スフィア・キューブを手に持ち、振りかぶった状態で声をかけられたベクターは、慌てて声のする方へと振り向いた。慌てたのは…その声に、聞き覚えがあったからであるが。

 

「ナ…ナッシュ!!なぜお前が!!」

「ベクター。よくも勝手な真似をしてくれたな。」

 

「ン…あいつもバリアン七皇の一人か?」

 

先ほどクラウダーが腰をかけていたジャングルジムから、一歩ずつゆっくりとナッシュが近づいてくる。ベクターは体を彼に方向にすぐ向けたものの、慌てて一歩後ずさりをした。

 

(こいつは一体どういうことだ、ドン・サウザンド!!)

『お前のしたことが…気付かれたのではないか?』

(んだと?)

 

「ナッシュ。なぜここに。別にお迎えなんかなくったって一人で帰れるぜ。」

「お前…ドルベはどうした?」

 

いきなりの核心を突いた質問に、ベクターはほんの一瞬だけ目を泳がせたが、その仕草はナッシュにとっては十分すぎた。

 

「あ…あいつなら、やられたよ。ミストって奴に。まぁ、ミストも、ホワイトも、俺がぶっ倒したがな!」

「ドルベはどうしたって聞いているんだ!」

「お前さぁ、やられた奴のその後を聞く奴がいるかよ。察しろよなぁ?」

「なるほど。」

 

ただの偶然が彼をここで運んだのかと思いかけたベクターだったが、彼のその思いはすぐに覆った。

 

「お前が吸収しやがった…そういうことだな?」

 

「な…何を言ってやがる。ナッシュ!!ドルベは俺たちの仲間だぜ?」

「ドルベは、デュエルに負けた後で、俺に通信を寄越した。バリアン七皇のリーダーである俺とだけは、他のバリアンは連絡を取り合うことができる。ドルベには俺がヘヴンズ・チルドレンの一人と戦った後に教えたが、お前、知らなかっただろ?お前はとっとと本部から立ち去ったからな!」

「そんなことが…そうか!!だからあの時!!」

 

ベクターが思い出したのは、まさにドルベが俯きながらぶつぶつ言っていたあの時であった。

 

「通信時にはデュエルログも表示される。貴様、ドルベに守ってもらった分際で!」

「守ってもらった…《リデュース・ダメージ》のことか?」

「あぁそうだ!あれがなければお前は!!」

「ふざけんな!!そんな話持ち出しやがって!!奴は、お前にデュエルに負けたから通信していたってことは、俺のことを信用してなかったってことじゃねえか!!」

「俺が言ったからな。」

「てめえ…ナッシュ!!!」

「被害者面してんじゃねえ!!お前は俺が消す、ベクター!!」

 

「上等だナッシュ!!てめえも、七皇も、全て俺が手に入れてやる!!」

 

その瞬間、公園全体を檻のようなものが取り囲んだ。格子状になっており、その隙間からはせいぜい顔を覗かせることができるほどで、とても人が出れるスペースはない。

 

遊士は、その檻はベクターが呼び起こしたものだと思ったが…

 

「今決着をつけようってのか、ナッシュ!」

「当然だ!このままお前を放っておく訳にはいかない!構えろ、ベクター!」

 

(正直早すぎるな。こいつとのデュエルは。2人分の七皇の力でも十分勝機はあるが、舞台は整えたいところだ。)

『ならばどうする、ベクター?』

(俺にもちゃんと策はある。安心しな、ドン・サウザンド。)

 

「デュエルするのは構わねえが、デッキを変えさせてもらうぜ。七皇とやり合うためのデッキとな!」

「好きにしろ。」

 

ベクターは自分のデッキをその場で光の粒にして消してみせ、新たなデッキが彼の何もない手の中に収まった。

ナッシュは彼のデッキが入れ替わっている間に、遊士を一瞥して言う。

 

「お前には恨みはねえが、すぐにデュエルは終わる。そこで大人しく見ていてくれ。」

「あ…あぁ。」

 

「いくぜ、ベクター!!」

「ぶっとばしてやるよ!」

 

 

デュエル!!

 

 

ナッシュ:LP4000

ベクター:LP4000

 

 

「俺の先攻だ!《アンブラル・グール》を攻撃表示!(4)」

 

 

《アンブラル・グール》

効果モンスター

レベル4/闇属性/悪魔族/攻撃力1800/守備力0

1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動できる。このカードの攻撃力を0にし、手札から攻撃力0の「アンブラル」と名の付いたモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

「《アンブラル・グール》は、1ターンに1度、攻撃力を0にすることで、手札から攻撃力0のアンブラルを特殊召喚できる!来い、《アンブラル・アンフォーム》!!」

 

 

《アンブラル・グール》:攻撃力1800→攻撃力0

《アンブラル・アンフォーム》:攻撃力0

 

 

「レベル4のモンスターが2体。来るか!」

「レベル4の2体のアンブラルで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

悪意の淵より目覚めよ!漆黒の闇へと誘う、狂気の霧霞!!《アンブラル・コンシャス》!!

 

 

《アンブラル・コンシャス》

エクシーズモンスター

ランク4/闇属性/悪魔族/攻撃力2000/守備力2000

闇属性レベル4モンスター×2

このカードは1ターンに1度だけ、戦闘またはカード効果では破壊されない。自分のバトルフェイズ中にこのカードと自分フィールド上のこのカード以外のモンスター1体をリリースして発動することができる。3体のレベル4モンスターを素材として必要とするエクシーズモンスター1体を自分のエクストラデッキからエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する。その後、このカードのエクシーズ素材になっていたカードを、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とすることができる。

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(2)」

<ナッシュ:伏せなし ベクター:伏せ1枚>

 

「いくぜ、俺のターン!!ベクター。お前だけは許さねえ。お前はこのターンで倒させてもらう!!」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

 

「なにっ!?いきなりかよ。」

「なんだ、あのドロー。」

 

遊士は紅い弧を描いたそのドローを見ると、ライジング・ソードがフィールドに出た時の自分のドローを思い出した。無意識のうちに、彼は自分のドローと、バリアンのドローの関連性を探し出している。

 

見透かされたように、ベクターは遊士の方に振り返り、不気味な笑みを浮かべながら言った。

 

「あぁそういやお前も、バリアンズ・カオス・ドローが使えるんだよな!?」

「なっ。」

「…それは本当か?」

「まぁ俺のは、バリアンズ・カオス・ドローとはちょっと違う気がするけどな。」

「まぁいい。お前の話はこいつを片付けた後だ。俺は手札から、《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)》を発動!(5)オーバーハンドレッドナンバーズを、エクストラデッキから特殊召喚する!」

 

 

No.101!満たされぬ魂を乗せた箱舟よ。光届かぬ深淵より、浮上せよ!S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アーク・ナイト)!!

 

 

「早速オーバーハンドレッドナンバーズのお出ましか!」

「そしてこいつを、ランクアップさせる!」

 

 

CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ。暗黒の騎士となって、光を砕け!S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダーク・ナイト)!!

 

 

《CNo.101 S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダーク・ナイト)

エクシーズモンスター

ランク5/水属性/水族/攻撃力2800/守備力1500

 

 

「こいつは…何だ?」

「ダーク・ナイトの効果発動!相手の特殊召喚されたモンスター1体を、この下に重ねてカオスオーバーレイユニットとする!」

 

 

ダーク・ソウル・ロバー!!

 

 

漆黒の槍の先から出た赤い光を受けた霧霞、アンブラル・コンシャスはそのままひし形の物体となって、ダーク・ナイトの近くに置かれた。おそらくはこれが、カオスオーバーレイユニットであろう。

 

 

《CNo.101 S・H・Dark Knight》:CORU1→CORU2

 

 

「なにっ!俺のモンスターが!」

「《アンブラル・コンシャス》には、1ターンに1度、戦闘では破壊されない効果があるが、これなら無意味だ!そして俺は手札から、《スピア・シャーク》を召喚!」

 

 

《スピア・シャーク》:攻撃力1600

 

 

「この2体の攻撃が通れば、お前のライフは尽きる。これで終わりだ!」

「1ターンキルか…!」

「いけぇっ!《スピア・シャーク》で、ダイレクトアタック!!」

 

 

スピニング・ピアース!!

 

 

「ぐああっ!」

 

 

ベクター:LP4000→LP2400

 

 

「そして、サイレント・オナーズ・ダーク・ナイトで、ダイレクトアタック!!七皇の思いを受けて、消え去れ、ベクター!!」

 

 

セブンス・ジャッジメント!!

 

 

サイレント・オナーズ・ダーク・ナイトが黒い槍の先端から、黒い波動を繰り出し、ベクターの元へと向かっていく。ところがそれは、ベクターの発動した罠カードによって、防がれてしまう。

 

「そうはいかねえよ!罠カード、《アンブラル・ギフト》!!お前のモンスターの攻撃力の合計分だけお前のライフを回復させ、バトルフェイズを終了させる!そして、カードを1枚ドローする!(3)」

「俺のライフを回復させる…だと?」

 

 

ナッシュ:LP4000→LP8400

 

 

「ふざけんなよナッシュ。俺とお前の戦いを、この程度で終わらせてたまるかよ。」

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。(4)」

<ナッシュ:伏せ1枚 ベクター:伏せなし>

 

「あれが…カオスオーバーハンドレッドナンバーズ。すげえ気迫だな。」

 

遊士が学ランの襟をくつろげながら呟く。彼の目は同時に、ナッシュのことも捉えていた。

 

「いくぜナッシュ。俺のターン!(4)俺は手札から、《貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺》を発動!(3)」

 

 

《貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺》

通常魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。自分のデッキの上からカードを5枚めくってお互いに確認し、相手はその中から1枚を選ぶ。選んだカードを自分の手札に加え、その後、残ったカードをランダムに1枚選んで自分の手札に加える。「貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動したターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

 

ベクターの目の前には宝石でできた歯にだらんと垂れた長い舌を持つ貪欲さを見せる表情、そしてその裏側に目を閉じているのか、目元は水平の一本の線のようになっている穏やかで、謙虚な表情の壺がプカプカと浮き始めた。その壺をじっと見ていると、時折真緑色の《強欲な壺》そのものになっている時がある。貪欲なのか、謙虚なのか、はたまた強欲なのか、と考えさせる壺であった。

 

カード名を宣言された時に、ナッシュは動じなかったものの、遊士はベクターの言っていることがわからないという感じに、眉間に皺を寄せた。

 

「なんだその長ったらしい名前は…?」

「こいつは、俺のデッキの上から5枚をめくってお互いに確認し、お前が1枚を選び、そのカードを俺の手札に加える。そして残りの4枚からさらにランダムに1枚が選ばれ、それも俺の手札に加えられるってカードさ。」

「つまりお前は、2枚のカードを手札に加えられるってことか。」

「そうよ!さあ、ナッシュ!!この5枚だ。選べ!!」

 

ベクターがデッキの上から5枚を親指、人差し指、中指で引き抜くと、それを天に掲げた。ナッシュの目の前には、それらの5枚が大きく表示される。遊士は偶然ナッシュの後ろに移動していたので、彼からも、その5枚のカードは見えていた。

 

(なるほど。《トリック・バスター》、《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》、《ナンバーズ・テンポラリ・ドキュメント》、《自爆スイッチ》、《ダメージ・ブラックアウト》の5枚か。)

 

しばらくの間、ナッシュが動くことはなかった。5枚のカードから、ベクターの策略を暴くことに集中している。

 

 

《トリック・バスター》

通常罠

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する。この効果で破壊したモンスターの数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 

《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》

効果モンスター

レベル1/闇属性/悪魔族/攻撃力0/守備力0

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、このカード以外の自分のフィールド上・墓地の「アンブラル」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードのレベルは選択したモンスターのレベルと同じになる。また、フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを破壊したモンスターを破壊する。

 

 

《ナンバーズ・テンポラリ・ドキュメント》

通常魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。自分のエクストラデッキから「No.」と名の付いたモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに自分のエクストラデッキに戻る。このカードを発動したターン、自分はバトルフェイズを行うことはできない。

 

 

《自爆スイッチ》

通常罠

自分のライフポイントが相手より7000ポイント以上少ない時に発動する事ができる。お互いのライフポイントは0になる。

 

 

《ダメージ・ブラックアウト》

通常罠

自分または相手ターンのダメージ計算時に発動することができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを0にする。その後、フィールド上にエクシーズモンスターが存在する場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「さあ…どうするナッシュ?」

 

彼は再び《トリック・バスター》から順番に視線を移してカードを1枚ずつ見ていくが、《自爆スイッチ》を見た時に、彼の視線はそこで止まった。

 

「おいベクター。《自爆スイッチ》だと?お前、このデュエルを引き分けにしようとしてやがるんじゃねえだろうな?」

「さぁな?」

 

ベクターは手のひらを真上に向け、顔を傾け、肘を少しあげてとぼけて見せた。その挑発に乗る訳でもなく、ナッシュは冷静だった。

 

(あいつはまだドルベの力を手に入れたばかりだ。一度体制を整える必要があるかもしれない。もし本当に引き分けを狙っているんだとすれば、奴の狙いは、《自爆スイッチ》。奴のライフポイントは残り2400。俺のライフは8400。現時点で6000ポイントの差がある。《自爆スイッチ》発動のために必要なライフポイントの差は…7000ポイント。この差を大きくしないためには…)

「《ダメージ・ブラックアウト》をお前の手札に加えろ!」

「りょーかい。そしてもう1枚をランダムに1枚、手札に…加えるぜ!!(5)」

 

4枚のカードが壺に入れられ、そこから1枚を引き抜くと、壺はその場で破壊された。

 

 

手札に加えたカード:《ダメージ・ブラックアウト》、?

 

 

「3枚カードを伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<ナッシュ:伏せ1枚 ベクター:伏せ3枚>

 

(伏せカードだけか。あいつの手札には、《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》は加わっていないな。もしあれば、俺の攻撃力1600の《スピア・シャーク》に自爆攻撃をすることで、ライフを800にできたはず。仮に手札に《自爆スイッチ》がなくとも、セットすることで、壁モンスターにはなったはずだ。)

「俺のターン!!(4)よし。俺は速攻魔法、《サイクロン》を発動!(3)フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する!!俺は真ん中のカードを破壊!」

「なにっ!!《ダメージ・ブラックアウト》が!!」

「これでお前のカウンターカードはなくなった!!《CNo.101 S・H・Dark Knight》で、ダイレクトアタック!!」

 

 

セブンス・ジャッジメント!!

 

 

「チィッ。罠カード、《トリック・バスター》!お前のモンスターを全て破壊し、1体につき300ポイントのダメージを与えるぜ!」

 

2本の巨大な矢がイラスト部分より飛び出し、ダーク・ナイトの放った光線を分散させ、ダーク・ナイト、そしてスピア・シャークを貫いた。

 

 

ナッシュ:LP8400→LP7800

 

 

「そうか。もう1枚ランダムに手札に加わったカードは、そいつか。」

「仕方ねえから発動してやったぜ。だがこれでお前のカオスオーバーハンドレッドナンバーズはいなくなった!」

「それはどうかな?」

「なに?」

「カオスオーバーレイユニットを持った状態のダーク・ナイトが破壊された時、俺の墓地にアーク・ナイトが存在すれば、墓地からこのカードを特殊召喚できる!」

 

 

リターン・フロム・リンボ!!

 

 

ナッシュの目の前に黒い魔法陣が描かれ、そこから黒い槍を振り回しながらダーク・ナイトが特殊召喚された。

 

「そしてこの効果で特殊召喚した場合、このカードの攻撃力分だけ俺のライフを回復する!!うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 

ナッシュ:LP7800→LP10600

 

 

「バトルフェイズ中に特殊召喚されたダーク・ナイトには、まだ攻撃の権利が残っている。覚悟はいいな、ベクター?」

 

首を垂れ、地面を見つめるベクターに対し、静かだが熱さのあるその言い方で、ナッシュはベクターに伝えた。

すると突然、彼の肩が小刻みに揺れるのがナッシュには見えた。そして、それと同時に、ナッシュが何かを言うよりも前に、「クックックックッ…」という不気味な声が聞こえてきた。

 

「アーッハッハッハッハッ!!!何が覚悟だよ!!覚悟すんのは、てめえだ、ナッシュ!!罠カード、《自爆スイッチ》!!」

「何!?」

「あれ…さっきの壺で手札に加えたのか?」

「違うんだなぁ遊士。《貪欲で謙虚なように見えて実は強欲な壺》を発動した時には既に手札にあったんだよ!!《自爆スイッチ》がな!!だから俺にとっては《自爆スイッチ》は選んでほしくなかったんだよ。手札でダブついちまうからなぁ!そしたらお前は真面目な顔して考えに考えた後、《ダメージ・ブラックアウト》を手札に加えさせた訳だぁ!!」

「あのカードは…2枚目の《自爆スイッチ》だったのか。」

「《サイクロン》を使われた時は少し焦ったがな。あそこで《自爆スイッチ》を破壊されたら俺は結構ピンチだったぜ。さあ、お喋りはここまでだ!!」

 

ソリッドビジョンなのかは不明だが、ベクターの目の前には、彼の腰の高さまである金属製の台が地面から現れた。もちろんというべきか、そこには赤いスイッチがあった。

 

「くっ。ベクター!」

「慌てんなよナッシュ。俺たちの決着は、もっと別の場所でつけようぜ!!じゃあな!!……おっと、お前も伏せな、危ねえぜ、草薙遊士!!」

「あぁ、言われるまでもねぇ…」

 

彼が笑いながらボタンを押すと、公園全体を包み込むほどの大爆発が起こり、デュエルが終了したことによって、ナッシュの仕掛けた檻は崩れ去った。

 

 

ナッシュ:LP10800→LP0

ベクター:LP2400→LP0

 

 

バリアンの力を使ってデュエルはしていたものの、周囲には破壊行為をもたらすこともなく、煙幕が出ただけのようであった。

 

「ベクター。遊士と言ったな。他の七皇が心配だ。俺は本部に戻る。お前の話は今度聞かせてもらう。」

「ちょっと待てよ。」

「…?」

「お前らバリアン七皇同士でやり合っているのは何となくわかった。何があったかは知らねえけどな。けど、ヘヴン。あいつらとはどうなんだ?」

「俺たちの望みを妨げるのであれば、俺は容赦はしない。あいつらとも、やり合うつもりだ。…お前も、訣別した方が良い。」

「訣別だと…」

 

遊士の肩に手をあてたかと思うと、七皇の一人であるナッシュはそこから姿を消した。周囲を見渡すと、残照もなくなり、すっかり夜の闇に包まれていた。

 

ビジネスホテルに戻った彼はまっすぐ自分の部屋に向かって行った。数部屋取っているのだが、遊士の部屋が一番広いためか、遊矢たちはそこに集まっていた。

 

「遊士さん!!」

「どこに行っていたんですか!?」

「心配したんですよ!」

 

「あ…悪い。遅くなった。」

 

「随分と長い散歩だったな。メッセージの一つでも返して欲しいものだ。行方が知れないのは困る。」

 

遊士がポケットにしまってあったスマートフォンを見ると、不在着信が2件、遊矢や零児からのメッセージが数件溜まっていた。

 

「あ、ごめんみんな。さっきは。実はさ…」

 

明らかに様子がおかしい遊士だったが、自分の方から話し始めた。主に公園で会った女性のこと。もちろん、先ほどのデュエルも話したが、それはオマケのようなものであった。

 

「ユキさんが…」

「そんな。」

「だが、ユキさんは、遊士さんのことを忘れていたって?」

 

「多分、あいつらに操られているんだ。ふざけやがって。だから俺は決めたんだ。俺は…ユキを取り戻すためにも、ヘヴンと戦う!!」

「遊士さん!!」

 

「一人でか?」

「え…?」

 

「我々の使命は、あくまで融合次元にいる赤馬零王を倒し、次元戦争を止めること。君に手を貸し、ユキという人物を探すことではない。」

 

遊士がいない時も、同じようなことを言った零児の冷静な態度に、遊矢が前かがみになって言い寄った。

 

「零児!まだそんなことを!!」

「我々は、一刻も早く前線基地に向かう必要がある!」

「だが…!!」

 

権現坂の言葉に重ねて柚子が「でも…」と言った瞬間、さらにそれに言葉を重ねたのは遊士であった。

 

「いいんだ!」

「遊士さん?」

「零児の言う通りだ。さすが社長だな。どんな時でも、何をしなければいけないかがわかっているってことだろ。」

 

遊士は遊矢とは8センチほど身長の差があった。遊士は遊矢の背の高さまで視線を落とし、まるで大人が小学生に対して話をするように、同じ視線で彼に話をした。

 

「いいか遊矢。お前のエンタメデュエル。そいつで、笑顔をもたらすんだろ?相手は6人だろ?中坊の時には俺は喧嘩じゃ負けなしだったんだぜ?でかい退屈しのぎだ、まったく。だから、お前は、いや、お前らは自分のしなくちゃいけないことをしろ。」

 

そう言いながら、遊士は柚子、権現坂と、視線を移していった。

 

「けれど、一人じゃ勝てないわ!こういう言い方は良くないけど、遊士さんは…」

「わかるぜ。ヘヴンズ・チルドレンに一度負けてるって言いたいんだろ?でも、それはサシのデュエルじゃなかったからだ。サシなら負けねえよ。それに、目的を同じくしてる奴を…俺はすでに知っている。ナンバーズを探し求めている奴をな!」

「あのアストラルというデュエリストか。」

「あぁ。あいつの相棒もな。っつう訳で、湿っぽいのは辞めだ、辞め!今日はカツでも食いに行こうぜ!景気づけによ!」

 

「ええっ、私、ダイエット中なのに…」

「何言ってんだ。誰も柚子のスタイルが良くなったかとか、気にしないよ!」

「もう、遊矢ぁ!!」

 

パシ~ン!!

 

「いたぁ…そんなんだから…」

「ホント、デリカシーがないんだから!」

 

そんな何ということのないやり取りを見て、笑えていることを遊士は実感した。大丈夫、たとえ一人で戦うことになろうとも、今の心の持ちようなら、負けることはない、と論理的ではない根拠により、自信を得ていた。

 

この時は…

 

(大丈夫、もし一人で戦うことになるとしても、何とかなんだろ。)

 

 

翌朝、チェックアウトを済ませた遊士たちは、ハートランドのモノレール駅まで向かった。遊士が手掛かりとする、ナンバーズを所持する九十九遊馬の家と、零児たちの目指す『前線基地』とは途中までは同じであったのだ。

 

彼らとは車内で別れの挨拶をし、二駅目で遊士は降りた。ハートランド中央公園という名の駅だった。

 

遊士は零児より旅先で必要となるものも出て来るだろうからと、ショルダーバッグを受け取っていた。そのショルダーバッグを肩から担いで歩いている。

 

(あぁ…早かったな。あいつらと別れるのも。)

 

 

こうして、草薙遊士は目的を同じくする者を尋ねに一人路地を進んでいった。

 

 

(次回に続く)

 

<今日の最強カード>

《自爆スイッチ》

通常罠

自分のライフポイントが相手より7000ポイント以上少ない時に発動する事ができる。お互いのライフポイントは0になる。

 

 

<次回の最強カード>

《バトル・ストッパー》

通常罠

このカードが相手ターン中に墓地に送られた場合、そのターンのバトルフェイズをスキップする。このカードがバトルフェイズ中に墓地に送られた場合、バトルフェイズを終了する。

 

 

 

 



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第26話-後悔の上に成り立つ決意

今回はデュエルのない回になっております。ストーリー上重要なことを書くかぁ!と思って書いたら、キリが良くなってしまったので、今回はこのようになりました。
遊戯王の二次創作にもかかわらずデュエルのない回ではございますが、ご勘弁ください。それでは、26話、お楽しみください!


午後3時30分。真夏にも関わらず学ランを着続けるのは、特別なこだわりが遊士にあったからだ。ハートランド中央公園ではまだまだ太陽が眩しく地面を照らし続けている。青空の下、鳴き続ける蝉の声を聞くのは、遊士にとっては酷だった。

 

「あちぃな…。」

 

遊士はスマートフォンで時間を確認したが、思えば不思議だった。次元が違えば、スマートフォンなど使い物にならないのかと思っていた。しかし、次元が違っても同じ国家が存在し、同じ時間が存在する。そして、スマートフォンの充電器の規格も同じ。電波も受信する。

 

次元が分かれているとは言っても、元々は一つの次元だったのではないか、そんな仮説が、遊士の頭の中で浮かんでいた。しかしそんな時間も、ある少年の自分の名前を呼ぶ声が、終わりを告げた。

 

「おーい!!遊士!!」

「遊馬!!」

 

ロクな挨拶もなしに、本題に入ろうとする遊馬と遊士のやり取りは、まだ子どものそれというより他なかった。

 

「また、ナンバーズが見つかったのか!?」

「ちげえよ。俺は別にナンバーズハンターじゃねえ。遊馬、お前、ヘヴンからの放送?みたいな奴、見たんだろ?」

「あぁ、この前の!ゼンゼンフッコクだろ?見た見た!!遊士も見たのか?」

 

突然、皇の鍵から現れたアストラルが遊馬に耳打ちをした。

 

「遊馬。それを言うなら宣戦布告だ。」

「うっるせえ!話の骨を折るなよ!」

「それは話の腰を折る…だ。どうやら君は、もう少し日本語の勉強を…」

「だーかーら!ちょっと黙ってろって!」

 

「ハハハ…。あぁそう、宣戦布告ね。俺も見たぜ。んで、お前らどうするのかなって。」

「俺か。そりゃ、あいつらにここを滅茶苦茶にされちゃたまんねえからな。戦うぜ!」

「だが遊馬、彼らもそうだが、大きな危機は別のところからも迫っている。」

「バリアン。」

「彼らはこの人間世界を、カオス化させることを目論んでいる。バリアン七皇からは宣戦布告のようなものはないが、我々の知る限り、バリアン七皇は、ドルベ、アリト、ギラグ、ミザエル、ベクター、そして2人。」

「お前ら、バリアン七皇を全員知ってるんじゃねえのか?」

「まだ覚醒していない…と聞いているが、その2人には会っていないのだ。」

「1人はナッシュっていう奴だった。」

「ナッシュ。そういや、その名前、どっかで。」

 

遊士が顎に手をあてて考えたのは、ある疑問であった。バリアン七皇同士で戦いあっているということ。

 

「だけど、おかしいのは、バリアン七皇は、仲間同士で潰し合っていたぜ。」

「え?どういうことだよ!?」

「ベクターがドルベを吸収したんだ。そしてそれをナッシュが知って、ナッシュがベクターを倒そうとしたんだ。あいつら…仲間じゃねえのかな。」

「ベクターが?」

 

彼にとっては紛れもなく衝撃的な出来事であっただろう、彼の裏切り。真月という人物が、バリアン七皇の一人、ベクターであったということ。遊馬はしばらく言葉を失った。それ故か、アストラルが口を開いた。

 

「遊馬、遊士。それは我々にとっては恐ろしいことかもしれない。」

「どうしてだよアストラル。仲間同士で潰し合ってくれれば好都合だろ。これで倒さなきゃいけない七皇が6人になったんだぜ?」

「いや、ベクターがなぜ裏切ったかを考えると、そう浮かれてもいられない。彼が他の七皇の力を手に入れようとするのは…おそらく。バリアンの神、ドン・サウザンドの力を得るため!!」

「ドン・サウザンド?」

「それって、アストラルが昔戦ったっていう?」

「そうだ。」

 

すると、3人の男子と2人の女子がこちらに走ってくるのがわかった。そのうち1人の女子が「遊馬」の名を呼んでいるので、明らかに遊馬の知り合いであることはわかった。

 

「遊馬!探したぞ!」

「とどのつまり、勝手に行っちゃうんですから!」

「疲れたウラ。」

「もうこれ以上、キャットべにゃ~い!」

 

「遊馬。もう、何で黙って行っちゃうの!?」

 

「みんな!!わりぃ。今日は、先約が…」

「え?」

 

先約と言われると、そこにいた5人の遊馬の同級生らしき人物は揃って学ランを来たガタイの良い高校生を凝視した。

 

「だ…誰ウラ!?」

 

「遊馬の友達か?俺、草薙遊士って言うんだ。」

「草薙さん?そんな名前の知り合い、いたか、遊馬?」

 

少し出た腹が気になる少年、武田鉄男が遊馬に話しかけた。遊馬とは小学校の頃からの腐れ縁、知らない間に、どちらかの知り合いも、2人の知り合いになることがしばしば。

 

「ああ!そっか。ナンバーズクラブのみんなは、初めてか。会うの。」

 

すると、遊士が自己紹介をしたためか、ナンバーズクラブと呼ばれた5人の生徒は、先ほどの鉄男から順番に自己紹介を始めた。

 

「あっ、俺、武田鉄男って言います!」

「僕はとどのつまり、等々力孝です!委員長やってるので、委員長って呼んでください!」

「俺は、表裏徳之助ウラ!あっ、これは口癖ウラ!」

「あたし、ナンバーズクラブのマスコットガール、キャッシーよ!キャットちゃんって、呼んでにゃ!」

「私、観月小鳥です。遊馬とは幼馴染です!よろしくお願いします。ってか、遊馬!あんた、年上の人には敬語使いなさい!!」

「気にすんなよ。別に俺は尊敬される程偉い人じゃねえ。俺がそういうことを言うのは、冗談で言う場合しかねえぜ。……っと、みんな、よろしくな!」

 

知り合いの輪が大きくなることは、遊士にとっては切望していた訳ではなかったが、喜ばしいことではあった。だが…

 

「あれ…?急に雲が…」

「今日は雨は降らない予定ウラ。」

 

何かが空から降ってきた。明らかに雨ではない。もっとゆっくり、まるで木の葉が舞うかのように、デュエルモンスターズのカードの大きさのものがゆっくりと落ちてきた。

 

上空にある時は、光の反射によるものか、それがカードであることはわからなかったが、ジャンプすれば届く程の高さまで落ちて来ると、それが緑色のカード、つまり魔法カードであることがわかった。

 

「ん?カード?」

 

小鳥がそのカードに興味を示し、取ろうとしたその瞬間、アストラルの鋭い声が響き渡った。

 

「取ってはいけない!!!」

「えっ!?」

 

咄嗟に手を引いた小鳥は、そのカードを取ることはなかったが、地面に落ちたカードを見ると、《RUM-バリアンズ・フォース》であることがわかった。

 

「バリアンズ・フォースだと?これって、バリアンが持っている。何でこんなにあるんだ!?」

「おそらくこのバリアンズ・フォースは、人間の力を奪い取るものだ!バリアンが用意したに違いない!一旦ここから離れるぞ、遊馬!」

「おう!みんな!あの屋根の下まで走るんだ!!」

 

徳之助は一番最後に走り出した。アストラルはバリアンズ・フォースと言っていたが、彼の目に映ったのは、それだけではなかった気がする。黒いカード、エクシーズモンスターもなかったであろうか。

 

「これって…」

 

「徳之助君!!早く行きますよ!」

「あっ、も、もちろんウラ。」

 

徳之助は手に持っていた「それ」を自身のズボンのポケットに入れ、走り出した。

公園の管理棟の屋根の下で5分ほどじっとしていると、バリアンズ・フォースの雨は降り止んだ。その間、空の色がどうなったかなどは関心事ではなかったが、遊士が雨が止んだのを確認し、屋根の下から顔を出すと、

 

真夏の3時だというのにもかかわらず、夕焼けが広がっていた…と遊士は思ったが、それは残念ながら夕焼けではない。妙にピンク色であるなとは思っていたが。

 

「これは…バリアンの侵攻が…」

「どういうことだ、アストラル!?」

「バリアンは、そのこの人間の世界をカオス化させるために、この世界に侵攻する。それが始まったのか、遂に。全てのナンバーズなど、集まらなかった!!くっ!」

 

アストラルが眉間に皺を寄せ、握り拳を作っていると、遊馬が彼に声をかけるよりも前に、何者かの低い声がその場に響き渡った。

 

『アストラル。そして九十九遊馬。』

 

どこから声がかけられたのか、方角が全くわからなかった。2人はキョロキョロと周りを見渡してみるものの、彼らの視界に映るのは、ナンバーズクラブの面々のキョトンとした表情のみ。

 

「え…?」

「どうしたの、遊馬?」

「小鳥、聞こえなかったのか?」

 

「この声はみんなには聞こえてないぞ、遊馬。」

「えっ、本当か!?」

「おそらくこの声の持ち主は…」

 

『久しぶりだな、アストラル。』

「貴様は…ドン・サウザンド!!」

「えっ、ドン・サウザンド!?」

 

小鳥、鉄男、委員長、徳之助、キャッシーの頭上には「?」マークが浮かんでいる。同時に彼らは首を傾けたのだ。

 

「誰ウラ?」

 

『アストラル。九十九遊馬。今は実体を移す依り代もお前たちの目の前にはいないからな、声だけが聞こえると思うが、心配するな、今日はほんの挨拶代わりだ。』

「お前か!!バリアンズ・フォースをばら撒いたのは!!」

『もちろんだ。我が力を使い、欲のある人間どもを、こちらの世界に招待してやったのだ。』

「欲のある人間を招待?」

『我は人間の世界をカオス化させることが必要。だが、人間は生まれながらにしてカオスの力を持っている。誰にでも、良き心、悪しき心、双方がある。違うか?』

「確かに、人間はそうかもしれねえ!!けど、どんな奴とだって、向き合えば、お互い分かり合えるんだ!」

『青いな、九十九遊馬。だが、その青さが、命取りになるのだ。』

「何だと!?」

『間もなくだ。間もなく、人間の世界は…カオスの世界となる。そして…フフフ…』

 

その声が一旦止んだかと思うと、ドン・サウザンドは急に耳元で叫ぶようにして言う。

 

『そしてお前だ!!草薙遊士。』

「お…俺?俺はてめえなんて知らねえよ!」

『やはりお前にも聞こえているのだな、我の声が。ヘヴンズ・チルドレンと言いお前と言い、我の計画には意図しない者が出て来たようだが、どうということはない。それを我が力をもって、わからせてくれようぞ。楽しみにしている。』

 

ドン・サウザンドが別れの挨拶のような雰囲気を出し始めたので、アストラルが慌てて彼を止めようとする。

 

「待て!ドン・サウザンド!!」

『我よりも、お前たちは仲間の心配をした方が良さそうだぞ?』

 

「あれ…徳之助?」

 

遊馬とアストラルの後ろからその鉄男の声が聞こえると、徳之助が真紅色のオーラをまとっているのがわかった。それが空の紅さと妙に合っていることに遊馬が気づくと同時に、徳之助は床に両膝をついて崩れ落ち、ぼろぼろと涙を出して泣き始めた。

 

「うっうっうっ…」

 

「徳之助君!どうしたんですか!?」

「いきなり泣いてどうしたの…?それに…このオーラは?」

 

「徳之助!!お前、ナンバーズを拾っただろ!!捨てるんだ!!」

 

徳之助が泣きながら袖に隠れて見えなくなっていたエクシーズモンスター、《No.10 黒輝士イルミネーター》というカードを見せるや否や、誰も訳を聞いてもいないのに、「だって。だって!!」と咽んだ。

 

「徳之助君!これ…どこで?」

「空から降ってきて、それで…それで…!!うっ、うわああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ナンバーズを離さなかったことが、紅き世界から承認を得たということなのだろうか、徳之助はその場で白い光の粒となって、遥か彼方へと去っていった。

 

「徳之助!!!」

「くそっ!!許さねえぞ、ドン・サウザンド!!」

 

もはやドン・サウザンドの声は聞こえなくなっていたが、遊馬は先ほどの徳之助のようにその場に膝をつき、両手の拳で地面を何度も叩いた。その目には大粒の涙が浮かんでいた。

 

(ドン・サウザンド…さっきの声は…一体?)

 

「さっきのドン・サウザンドのことと、今の状況、話した方が良いのではないか、遊馬。」

「…」

 

その突然の出来事に、彼らはしばらくの間沈黙を続けているより他なかった。

 

 

------

 

 

ハートランドシティの港湾部に潜水艦があるのは、数日前より入っている情報であった。もはやこの異常事態に、町側から何かを言われることもないだろうが…

 

「こいつは一体、どういうことだ!?」

「Ⅳ兄様、Ⅴ兄様!大量のバリアンズ・フォースと、ナンバーズが降り注いだようです!」

「何!?この世界を急速にカオス化させるつもりなのか!」

「だとすると、のんびりもしていられまい!」

 

その潜水艦内部は研究室のようになっており、トロンの息子たちであるⅢ、Ⅳ、(ブイ)、そしてナンバーズ・ハンターである天城カイトが座標図や地形図を見ながら、世界の動向やアストラル世界、バリアン世界について分析や研究を行っている。

 

「バリアン七皇を倒せば良いんだろ?」

「落ち着けⅣ!奴らがどこにいるのか、わからないのだ!いつまたバリアンズ・フォースの雨が降ってくるのかわからないんだぞ!今はまだ動いては…」

 

Ⅴが声を荒げてそう言っているのを前に、カイトは元々彼の弟のハルトの面倒を見るために作ったオービタル7を引き連れて、潜水艦を出て行こうとしている。

 

「聞け、カイト!!」

「ナンバーズの情報が入った!!受け取りに行く!」

「受け取るって…相手はナンバーズに取りつかれた奴かもしれないのだぞ!」

 

「いや、相手は信頼できる奴だ。…いくぞ、オービタル!!行先はイタリア、デュエル・コロッセウムだ!」

「あそこは今やデュエルレスラーばかりいる場所…ですが、カイト様?」

「いいから黙って俺を連れて行けば良い!いくぞ!」

「か…カシコマリッ!!」

 

 

------

 

 

雲の上に聳え立つオフィス。その言い方が適切だろうか。その透き通った空間の一室で、2人の男性と、1人の女性が話している。といっても、1人の女性は後ろに下がって、2人のやり取りを見ているだけだが。

 

「ヘヴン。」

「おお、クラウダー。それに…ホワイト。聞いたよ。覚醒したんだとね。おめでとう。」

 

「あ…ありがとうございます。」

 

「それで、何の用かな、ヘヴン?」

「いえ、確認です。我々は、もう本気のデッキで戦って良いということですよね?」

「もちろんだよ。あの宣言がバリアンと遊馬たち、それに遊士たちに届いたのを聞いただろう?君は言っていたじゃないか。彼らにチャンスを与えるべきではない、と。それにも関わらず、そんなことを言うのは、おかしくはないかね?」

「え…ええ。確かに私はそう言いました。人ならざる力を持つ者に、チャンスを与えるべきではない…と。」

「ようやく私の考えが理解できたのかな?私の…悩みが。正直悩んでいるのだよ。人ならざる力を持つ者たちを…簡単に排除してしまって良いのか。彼らが未来を救うことが…できないか。」

「だからあなたは不思議な力を持つデュエルモンスターズを使って、彼らをテストしている。彼らが、我々が与える試練、ヘヴンズ・チルドレンとヘヴンズ・サードとの戦いに勝利できるか…と。」

「わかっているじゃないか、クラウダー。ならば君は当然、本気で戦わなければいけない。」

 

クラウダーが不意にドアの方を見ると、もはや制服もパーカーも着ていないホワイトと目が合った。彼女はリクルートスーツのようなものに身を包んでいる。人間でいえば16歳の彼女にそれは少し大人びたものにはなっていた。彼女の幼さの残る顔には、その服装はマッチしていない。しかし彼女はその服装を自ら選んだのだ。その理由は、どこかで着たことがある気がするからだそうだ。

 

ホワイトはきょとんとした顔でこちらを見ている。話している内容は、聞こえているのだろうか。

 

クラウダーが顔を正面に向けてヘヴンを捉えると、クラウダーはヘヴンがフードの中からわずかに覗かせた納得の表情が見えた。

 

「なるほど。君が言いたいことがわかったよ。…彼女だね?」

「あ、はい。そうです。少し…残酷ではないでしょうか。」

「残酷。それは違う。彼女は早く己の運命を知ることができた。むしろ良かったと思うべきだ。時間が経てば、己の使命も理解していく。最初は辛いかもしれないが…」

「私が!!私が申し上げたいのは、彼女が…」

「草薙遊士の知り合いだということだろう?そんなことはわかっている。だが、我が子であれば必ず、いつかはかつての知り合いと戦わなければならなくなったりする。」

 

クラウダーは思わずこめかみに手をあてた。ヘヴンのその言葉は、クラウダーにある出来事を思い出させる。しかしそれも束の間、後方からのホワイトの呟きで、目を覚ます。

 

「草薙…遊士。」

 

「それで…結論は何かね、クラウダー?」

「結論は…人事異動の提案です!ヘヴンズ・サードの中から1人をヘヴンズ・チルドレンとし、ホワイトを人間の世界に戻す!!」

「君、管理職に人事異動を提案する部下ほど扱いにくいものは…」

「ヘヴンズ・サードの中から、彼女はいかがでしょう?」

 

クラウダーはヘヴンの反対を無視するように、彼の部屋にあるスクリーンにデータ化された履歴書のようなものを映し出した。他者の意見に反対であると言うだけでは子ども。修正案を出すことが必須だと考えたクラウダーの対応自体は悪くなかったが、ヘヴンにとっては具合が悪かったのだろう。

 

「もういい!!少し頭を冷やしたまえ。ホワイトもあそこで待っている。」

「はい。申し訳ありません。」

 

怒鳴ることなどない。クラウダーのヘヴンに対する印象は、冷静そのものだった。彼にとって今の出来事は、ただ怒鳴られただけではなかったのだ。

 

クラウダーは「失礼しました」と言い、ホワイトと共にヘヴンの部屋を出た。

 

(クラウダー。そんなことは、私が一番わかっている。残酷だということは。しかし…ユニバース・アセンション計画。つまりはUA計画。これを成功させるには…私の見立てでは、彼の力が必要なのだ。草薙遊士の。)

 

 

彼らはそのままエレベーターで下の階に降りると、ブリーフィングルームに向かった。人間の世界に降りる前に打ち合わせをする部屋とでも言おうか。ここは人間に降りることが許可された者しか使用できない。周囲を見渡すと、白い雲が窓に張り付いているようであり、ヘヴンの部屋が雲の上なら、ここは雲の中にある部屋である。

 

「クラウダーさんは…何を飲まれますか。」

「あぁ、すまない。アイスコーヒーをお願いする。」

 

無料の紙コップ式自動販売機で、アイスコーヒーのボタンを押す。取り出し口にまず紙コップが置かれ、氷がボトボトと落ち、コーヒーが注がれる。コーヒーが注がれている時に、彼はスタンドから彼女に声をかけた。

 

「気が利くな。」

「いや、そんなことないですよ。」

 

彼女は知らない、いや、思い出せていない。彼女の気が利くのは、ダンス部の頃に上下関係を徹底的に先輩と顧問の教員に叩き込まれた賜物だということを。

 

アイスコーヒーの紙コップを手に取り、そのままホワイトは自分の分を選ぶこととなった。炭酸飲料を選びそうになったがその指を、隣にある烏龍茶のボタンに移した。

 

両手で紙コップを持ち、アイスコーヒーをクラウダーに手渡し、烏龍茶を少しだけすすった。

 

「ジュースとかではないのか?」

「本当は、ジュースを飲もうかと思ったんですけど…何となく、烏龍茶の方が。」

「あぁ、そうか。」

 

クラウダーはその場から逃げ出してしまいたかった。何を口にすれば良いのか。当たり障りのない会話が、彼女の人間界への思いに火をつけるのではないだろうか。何か断片的に思い起こさせるきっかけになってしまうのではないか。

 

と思って黙ってコーヒーを眺めていた。しかし、何も言わなければ、ホワイトが核心を突いたことを言い始めるのではないか、気がかりで仕方がない。焦って時計を見る、出撃まであと20分もある。20分何を話す?

 

そうだ。気になっていたことが一つあった!!クラウダーはその気になっていたことを彼女に聞き始めた。

 

「そういえば、この前のベクターたちとのデュエル。覚えているか?」

「え?あ…はい。」

「マスカレードマジシャン・アンブラルの効果で破壊された伏せカード。あれは…《バトル・ストッパー》だったな?」

 

 

《バトル・ストッパー》

通常罠

このカードが相手ターン中に墓地に送られた場合、そのターンのバトルフェイズをスキップする。このカードがバトルフェイズ中に墓地に送られた場合、バトルフェイズを終了する。

 

 

「はい。」

「この効果を使えば、バトルフェイズをスキップすることができたはずだ。なぜ使わなかった?まだデュエルはわからなかった。《破数王-ヌメロン・バスター》以外にも、ヘヴンからいただいたカードがあっただろう?」

「でも、それを引くかどうかはわかりませんよ。」

「デュエルを途中で諦めたのか?いや、そんなようには見えなかったな。」

 

決めつける訳でないのは、優しいなとホワイトは少し思い、口を開いた。

 

「デュエルを諦めた訳じゃないんですけど、私のデッキであのカオスオーバーハンドレッドナンバーズを倒せるのは、ヌメロン・バスターしかいないかなって。でも、ヌメロン・バスターを召喚すると、また…気持ち悪い感じに襲われるのが嫌で。」

「あぁ…なるほど。」

「私にはあのカードは使えませんよ。クラウダーさん…使いますか?」

「私のデッキであの召喚条件を整えるのは難しい。」

「だったら、《エクシーズ・ピクシー》とセットで。」

「いやいや…」

 

クラウダーは目を閉じながら首を横に振った。ヌメロン・バスターのカード名を聞くと、それを渡したヘヴンの顔が浮かぶ。クラウダーは「気持ち悪い感じに襲われるのが嫌」というホワイトのセリフを聞いても、彼女の顔を見ることはできなかった。

 

「でも…私って…一体何なんでしょうね。」

「…」

「前にも言ったかもしれませんけど、私は、自分のことがわからない。わからないんです。記憶が…ないんです。本当にヘヴンズ・チルドレンなのかも、わからない。」

 

突然俯き始めたホワイトの耳元で、クラウダーは囁いた。

 

「君は…夢を見ていたんだ。長い眠りから覚めたんだ。」

 

詩的な言い方ではあったが、今のホワイトにはその説明で合点がいく。

 

「ゆ…め…?」

「そう。多くの場合夢は、その日には忘れてしまう。君も同じだ。今覚えていないことが多くあるのは…夢を見ていたからだ。」

「けど、クラウダーさんは全然忘れていない!」

「いいや、そんなことはない。私も多くのことを忘れてきた。忘れたんだ。」

 

自分で言いながらクラウダーは、夢とは言い得て妙だなと思っていた。今までホワイトは夢を見ていた。人間界で夢を。

 

「無理に夢の内容を知ろうとしなくて良いのではないか。辛いのだろう?」

「え…あ、はい。」

「我々には果たさなければならないことがある。夢の内容を知ろうとしている間も、やるべきことがあるのだ。残酷だが、時間だけはどうにもならない。無限ではないんだ。」

「今までのは…全部夢だったんですか?」

「そうだよ。夢だったんだ。」

 

ホワイトは心の中で何か引っかかるものがあることを感じていた。しかしそれでも、クラウダーの言う通り、ヘヴンズ・チルドレンとしての使命がある。ホワイトは、引っかかるものがあろうと、前に進む決意を固めている。

 

首をわずかに縦に振っているホワイトを見て、クラウダーはこの上ない後悔の念に襲われた。

 

(なぜこんなことを言ってしまったのだ。私がヘヴンズ・チルドレンに成りたての時に言ってもらいたかったことか。誰かに、安心させることを言われたことを思い出して、彼女と重ねてしまったからか!!だが私は先ほどヘヴンに何と言った!!彼女をヘヴンズ・チルドレンから降ろし、人間界に帰せと……!!何という矛盾なのか。私はもはや人間ではないのに…なぜこうも未熟なのだ。)

 

クラウダーはホワイトの飲み終わった紙コップも重ねてゴミ箱に捨てると同時に、あることを決意した。これからは、ホワイトを完全に目覚めさせることに全力を注ぐ…と。

 

彼女にあんなことを言ってしまった以上、後に引けぬ思いであったのは、言うまでもない。

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《バトル・ストッパー》
通常罠
このカードが相手ターン中に墓地に送られた場合、そのターンのバトルフェイズをスキップする。このカードがバトルフェイズ中に墓地に送られた場合、バトルフェイズを終了する。


<次回の最強カード>
《フィールド・パワー・マネージャー》
効果モンスター
レベル4/地属性/魔法使い族/攻撃力1900/守備力2000
通常召喚したこのカードは攻撃することはできない。特殊召喚したこのカードは以下の効果を得る。
●このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いに攻撃力2000未満のレベル4以下のモンスターを召喚することはできない。


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第27話-突然のリベンジマッチ!ゴーシュvsノックス

真夏のイタリアは最低気温がおよそ18度、最高気温がおよそ30度といった感じであり、日本の東京よりも若干涼しいという感じか。

 

カイトとオービタルが到着するよりも1時間ほど前、2つの闘志がぶつかるところであったのだ。

 

そこでは2人の男性と女性が楽屋のようなところをウロウロしながら待っている。どうやら10分後に出番らしい。

 

「ゴーシュ。最近こういうのが流行っているらしいぞ。注意した方が良い。」

「あぁ?何だドロワ。見せてくれ。」

 

褐色のジャケットの袖に腕を通しながら、ゴーシュという体格の良い男は、目の前の、ドロワという細身の白いジャケットに、タイトスカートを履いた女性が両端を抑えたタブレット端末の画面を見ている。

 

「児童館等の子どもが多く訪れる施設に…男が一人で、ある男の居場所を尋ねるって?何だそのノリは?」

「プライバシーの関係から、その男の名前は出ていないが、我々のところにも来るかもしれないぞ。」

「我々のって、ここは俺のビルじゃねえよ。俺はあくまでプロデュエリストで、まだジム経営者じゃねえ…」

「それはわかっている。しかしゴーシュ!」

「わかってるよ、ったくもう、お前は心配性だなぁ…」

 

「はぁ。忘れていないだろうなゴーシュ。今日は…」

「当たり前だ。あいつの弟がデュエルを見に来ることだろ?」

「そうだ。」

「元気になったのは良いが、いきなり海外に行かなくても…なぁ?」

「弟が切に願ったらしいぞ。兄の姿を見ていたら、自分も色々な人のデュエルを直に見てみたいと。」

「今日はマスクを被る日じゃねえのが、残念だがな。」

「好きなのか?レスリングの方が…頭を使うだろう。魅せプレイがより重要になる。」

「そっちのが俺には似合っている気がする、なんてな。」

 

突然壁にかかっている内線がけたたましい音を立てて鳴り始めた。タブレットを自分のバッグにしまった後で、ドロワは内線に飛びついた。

 

「はい。ゴーシュのマネージャー、ドロワですが。え?はい、わかりました。とにかく、すぐに。」

「おいドロワ。どうした…」

「いくぞ、ゴーシュ!!」

「は?おい、事情を説明しろって!!」

 

マネージメントする対象を置いて勝手にアリーナへと向かっていったドロワに慌ててついていくゴーシュ。ドロワは、説明していると面倒くさいということを知っていたのだ。

 

狭い通路の奥にあるドアを開けると、40畳ほどのサブアリーナであった。その建物はデュエルジムの一つであり、今日はゴーシュが彼と戦ったことのある相手のシーザーという男とデュエル講座を行い、最後に戦うという流れであった。ジムの管理人であるロベルトという人物がゴーシュを呼びに来る手筈だったのだが…

 

アリーナにはロベルトはいないが、筋肉隆々の頭を刈り上げている色黒の男が10人ほどの小学生のような子どもたちに何かを話しかけているようだ。

 

「おぉ、君。知っているな、その顔!!絶対ただの『知っている』じゃない奴だろ!」

「いや…」

 

薄青い髪の少年が、色黒の男に標的にされたと思われる場面であった。他の子どもをの間をずんずんと進み、彼は目の前まで立ち、見下ろす。

少年は必死に彼から目を反らすが、その行為は、色黒の男に確信を与える材料にしかならない。

 

「君は、聞いたことあるんだろう?天城カイトって名前を?」

「聞いたことは…あります。だけど…どこにいるかは知りません。」

「嘘をつくなよ!その動揺っぷり、ただ天城カイトの噂を聞いたってだけじゃ…」

 

色黒の男の太い腕が体育座りの少年の両肩を抑えようとしたその刹那、ゴーシュがその腕を抑え、少年に触れるのを防いだ。

 

「…!?」

「やめろ!!」

 

「ゴーシュ…!」

「ううう…。」

 

10人ほどの少年少女はすっかり怯え切っており、中には涙を流している者もいた。紫色の半袖のYシャツに黒いズボンといういで立ちのその男は、ゴーシュに掴まれた腕を振りほどき、鋭く睨みつけた。

 

一方ドロワは彼らを慰め、落ち着かせている。

 

「邪魔するなよ。」

「邪魔だと?お前誰だ?シーザーじゃねえよな。ここはな、お前みたいな野蛮なノリの奴が来るところじゃねえんだよ。」

「俺はな、聞きたいことがあってここに来たのよ。天城カイトって奴の居場所だ。」

「カイトだと?」

「お前、カイトのことは知っているだろう。WDCにも出場していたようだしな。そしてお前のマネージャーの、ドロワ、お前も!」

「マネージャー…」

 

確かにマネージャーだが、初対面の人が確信を持ってマネージャーだと言い当てることはそう簡単ではないはずだと、ドロワは不審に思い、スマートフォンの電源を入れた。

 

「そしたら、あの青い髪の子どもが、知ってそうだったから、ちょっと聞いただけだぜ。けど、答えてくれないんだよ。」

「子どもにあんな風に詰め寄ったら、ビビるに決まってんだろ!」

「ヘッ。そいつは悪かったなぁ。」

「てめえ、いけしゃあしゃあと!何だそのノリは!!その曲がった根性、叩き直してやる。デュエルだ!!」

「俺とデュエル…?こいつは…粋だが、そんな時間の無駄遣いはしねえ。」

「無駄じゃねえよ。俺に勝てたらカイトの居場所を教えてやるぜ。」

「なに?やっぱりお前知ってるんだな。もし嘘だったら、まぁいい。お前と戦うのも悪くはないな、ゴーシュ・ザ・スターマン!!」

「なっ。お前、その名前…」

「ヘッ。」

 

「えっ!ゴーシュのおじちゃん!それはダメだよ!」

「俺はおじちゃんじゃねえよ。」

 

ドロワはその返答を予想していたのか、腕を組んだまま黙っていた。内心、せめてマネージャーには相談しろと言いたかったかもしれないが。

 

(確かに私たちが何も言わなければ、あの男はまず間違いなく今日デュエルを見に来た弟の天城ハルトに詰め寄るはずだ。)

 

ドロワは青い髪の少年-天城ハルト-を見ている。同時に2人はデュエルパッドを取り付け、展開していた。

 

 

デュエル!!

 

 

ゴーシュ:LP4000

色黒の男:LP4000

 

 

「俺の先攻だ!手札から、《怒れる類人猿(バーサークゴリラ)》を攻撃表示で召喚!」

 

 

怒れる類人猿(バーサークゴリラ)

効果モンスター

レベル4/地属性/獣族/攻撃力2000/守備力1000

 

 

色黒の男が召喚したモンスターは、火炎放射器のように炎を吐くことと、ドラミングをすることを繰り返しているゴリラである。

 

「パワフルだろぉ?なぁ?」

 

さきほどまで怯えていた子どもたちのうち1人が、ニコッと笑ったのを色黒の男は見逃さなかった。彼もまた笑みを浮かべたのだ。

 

「いきなり攻撃力2000のモンスターか。」

「さあどうするゴーシュ?まぁ、当然お前なら、エクシーズ召喚をして高い攻撃力のモンスターを呼び出すつもりだろうが、そうはいかねえ!手札から、永続魔法、《Heaven's Confinement》を発動!」

 

 

《Heaven's Confinement》

永続魔法

 

 

黒い沼地のようなイラストから煙のようなものが出て来てその永続魔法の前に漂う。

 

「何だ!?」

「モンスターの種類を宣言し、宣言された種類のカードが召喚された時、このカードとそのモンスターを破壊してゲームから除外し、カードをドローする!俺は当然、エクシーズモンスターを宣言!!」

「何だと!?」

「俺はこれで、ターンエンドだ。」(3)

<ゴーシュ:伏せなし 色黒の男:伏せなし>

 

「お前…俺の攻め方まで知ってるのか。お前、プロデュエリストだな?」

「ヘッ。ようやく気が付いたのかよ。だがお前は気が付いていないようだな。俺はお前に一度、負けたデュエリストだということを!!」

「俺がお前を倒している?」

「お互いマスク着けてたからわかんないのも無理ねえな。オーガーヘッド…覚えてねえか?」

「オ…オーガーヘッド…だと!!あの…パワータイプデュエリスト。彗星の如く現れた…って記事に書かれそうになったが、体格がゴツすぎて、彗星って書かれず、突如現れた…とか文才のない見出し記事になってめちゃくちゃ怒ったデュエリストか!」

「後半部分は余計だ。」

 

ゴーシュが驚いたのには2つの理由があった。一つは単純に、目の前の存在が、いわゆる般若の面を赤く塗ったようなマスクのデュエリスト、オーガーヘッドだとは思っても見なかったから。

 

そしてもう一つは…

 

「おい、ドロワ。確か…」

「ああ。」

 

二つ目の理由についてはドロワも同意見のようで、ドロワはその真相を確かめるべく、タブレット画面をオーガーヘッドに突きつけた。

 

「先程、私がゴーシュのマネージャーであることをすぐに言い当てた。予想はできても、マネージャーだと断言することは、丁寧な物言いの人間ならしない。」

「丁寧な物言いの人間でなくて悪かったな。」

「これはどういうことだ?」

「ん?」

 

タブレット画面には、「オーガーヘッド謎の死を遂げる」と書かれた記事があった。2年前のものだった。

 

「お前…」

 

子どもたちの手前、ドロワは死んだのではないのかとも聞けず、彼女はただだ黙ってタブレット画面をより彼の顔に近づけることをするだけ。彼女は目配せして子どもの目の前だから直接伝えられないことをオーガーヘッドに伝えると、オーガーヘッドはそれに答え、頷いてから答えた。

 

「あぁ。まぁ…色々あったのよ。今は訳あって、ノックスと名乗っているがな。」

「ノックスだと?」

「ゴーシュ。真相が知りたければ、俺をデュエルで倒してみろ。そうすりゃ全てわかるぜ。さあ、来い!ゴーシュ!!子どもたちも、デュエルを見たがっている!ゴーシュのデュエル、みたいよな!?」

 

ノックスは間をとったが…先程の不信感からか、ゴーシュのデュエルを見たくとも、「はーい」という返事は聞こえてこない。

 

「お前はさっきので、子どもたちをビビらせちまったんだよ。俺のターン!(6)俺は《H・C(ヒロイック・チャレンジャー) スパルタスを召喚!(5)」

 

 

H・C(ヒロイック・チャレンジャー) スパルタス》

効果モンスター

レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1600/守備力1000

1ターンに1度、相手モンスターの攻撃宣言時にこのカード以外の自分フィールド上の「ヒロイック」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで、選択したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

「さらに魔法カード、《フォース》を発動!相手モンスター1体の攻撃力を半分にして、その数値を俺のモンスターに加える!これでお前のゴリラ野郎の攻撃力を半分にして、その攻撃力を加えるぜ!」

 

 

《怒れる類人猿》:攻撃力2000→攻撃力1000

《H・C スパルタス》:攻撃力1600→攻撃力2600

 

 

「なに?」

「くらえ、スパルタスの攻撃!」

 

 

ストレート・ジャベリン!

 

 

手に持つジャベリンの投擲により、ジャベリンがバーサークゴリラの体を貫通し、そのまま爆発した。

 

 

ノックス:LP4000→LP2400

 

 

「別にモンスターエクシーズだけが俺の戦術じゃねえ。油断したな。スパルタスの攻撃力はエンドフェイズに戻り、ターンエンドだ!(4)」

<ゴーシュ:伏せ1枚 ノックス:伏せなし>

 

 

《H・C スパルタス》:攻撃力2600→攻撃力1600

 

 

「この瞬間、《Heaven's Confinement》は、宣言されたモンスターが召喚されなかったことで破壊される。だが、このカードが破壊された時、デッキからヘヴンと名の付く魔法・罠カードを1枚手札に加える。俺が手札に加えるのは、《Heaven's Link》!そして俺のターン、ドロー!(5)」

 

今はノックスと名乗るデュエリストと戦った記憶が、ゴーシュの頭に少しずつ蘇ってきた。だが、彼の使うヘヴンというカードには引っかかった。そんなカードを使ったデュエリストは誰もいないはず。

 

「…」

「手札から、《ダーク・エルフ》を召喚!(4)」

 

 

《ダーク・エルフ》

効果モンスター

レベル4/闇属性/魔法使い族/攻撃力2000/守備力800

このカードは1000ライフポイント払わなければ攻撃できない。

 

 

「またレベル4で攻撃力2000か!」

「《ダーク・エルフ》は、ライフポイントを1000払わなければ攻撃はできない。俺はライフを1000払い、スパルタスを攻撃!」

 

 

ノックス:LP2400→LP1400

 

 

ダーク・ショット!!

 

 

目を閉じたまま人差し指と中指からの先端から出たレーザービームのような閃光の一撃がスパルタスの盾と胴体を貫き倒す。見た目が色黒の《ホーリー・エルフ》であるだけに、そのギャップが激しい。

 

「…うっ!」

 

 

ゴーシュ:LP4000→LP3600

 

 

「まだだ!装備魔法、《Heaven's Link》を発動!(3)自分のモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、そのモンスターよりも攻撃力が低いモンスター1体を自分のデッキから攻撃表示で特殊召喚して、このカードを装備する!」

「ってことは、《ダーク・エルフ》の攻撃力2000ポイントより低い攻撃力のモンスターを呼び出す訳か。」

「さあ来い!!《フィールド・パワー・マネージャー》!!」

 

 

《フィールド・パワー・マネージャー》

効果モンスター

レベル4/地属性/魔法使い族/攻撃力1900/守備力2000

通常召喚したこのカードは攻撃することはできない。特殊召喚したこのカードは以下の効果を得る。

●このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いに攻撃力2000未満のレベル4以下のモンスターを召喚することはできない。

 

 

2人の目の前には、金髪に眼鏡をかけた、口うるさそうな女上司と言うのが妥当だと言えるモンスターが現れた。モンスターには見えない。秘書のような風貌になって金髪になった《ヒステリック天使》のようなカードだ。

 

「何だこのモンスターは!?ドロワよりも美人ってノリだな。」

「ゴーシュ!!」

「な…何も言ってねえよ!」

 

「こいつの前では、お前はどうすることもできないぜ。このモンスターがいる限り、お互いに攻撃力が2000に届かないレベル4以下のモンスターは表側表示で通常召喚できない。」

「何だと!?以前は確かただ単に攻撃力が高いだけのモンスターを入れたデッキだったが、こんなカードを使い始めたのか!」

「あぁ。お前に負けてからな。このデュエルは、お前へのリベンジマッチなんだよ!だからお前が、カイトの居場所を知っていても知らなくても、関係ない!」

 

ゴーシュが、ノックスの言った「リベンジマッチ」という言葉を一人呟くと、ドロワがそこで一歩前に出る。

 

「お前、カイトに会ってどうするつもりだ?」

「お前らには関係ない。知らない方が身のためだ。」

「会ってどうするのかもわからない奴に、カイトの居場所が教えられると思うのか!?ノックスと言ったな!ゴーシュとのデュエルを続ける前に、ターンを終える前に…カイトと会ってどうするのかを教えろ!」

 

体育座りで2人のデュエルを見守る子どものうちの一人が、ビクッと飛び上がったのがわかった。ドロワは少し声を荒げすぎたかと思ったが、ノックスは鼻で笑った。

 

「ヘッ。ゴーシュのマネージャーが子どもを驚かせてどうするんだよ。」

「…」

 

ノックスがため息をつくのと同時に、サブアリーナのドアが勢いよく開いた。ゴーシュたちも子どもたちも、一斉に音のする方へと視線を向けると、そこにはオービタル7を引き連れた、天城カイトが立っていた。

 

「カイト!!」

「兄さん!!」

 

子どもたちの、「カイトだ!」という声の中、一人、一際大きな声で兄さんと言ってしまったがために、青い髪の少年が、カイトの弟であることはすぐにわかられてしまった。

 

「えっ!?兄さん…!?カイト、お前の兄ちゃんなの?」

「いいなぁ!すげえ!ハルトも、フォトン・チェンジできるの~!?」

 

緊迫したデュエルの雰囲気が一気に崩れ、賑やかになってきた。ハルトは咄嗟にカイトのところへと走っていく。

 

「おおっ!ハルト様!ご無事でしたか!」

「ハルト。これは…出し物の最中……ではなさそうだな。」

 

サブアリーナの奥にいる、カイトの居場所を探していたノックスが気味の悪い笑みを浮かべて、カイトの方に歩み寄った。

 

「お前が天城カイトか。」

「そうだが…貴様は?」

「俺はノックス。お前なら、俺が誰だかわかるよな?」

「ノックス…だと!?遊馬からは聞いていたが、ヘヴンズ・サードの一人!!」

「お前も、聞いたんだろ?ヘヴンの宣戦布告を!」

「あの映像のことか。…あぁ、聞いた。俺にはヘヴンという奴と因縁はないが、降りかかる火の粉は振り払うタチでな。」

「そうか。だったらこいつとのリベンジマッチが終わったら、お前の相手をしてやる。」

 

緊張が解けてきた子どもたちからは、なぜカイトがここにいるのかという声が次々と聞こえる。彼らにとってはカイトは初対面なので、さすがに面と向かって聞くのは厳しかったのか。するとそれを察したゴーシュが、口を開いた。

 

「あぁ、カイトは、俺が呼んだんだ。」

「えっ!?」

「きょ…今日の特別ゲストだったんだよ。」

「へぇ~!すごいや、カイト兄ちゃん!」

 

兄ちゃんというフレーズが気に入らなかったのか、眉間に皺を寄せて鋭い眼差しで一人の子どもをカイトが睨みつけた。

 

「俺はお前の兄になった覚えはない!!」

「ひっ…!」

 

素っ頓狂な声を上げて尻餅をついた子どもを見たハルトは、カイトの腕を揺すった。

 

「俺の弟はハルトだけ…」

「やめなよ、兄さん。」

 

「なっ。ハルト!……フンッ。」

 

ノックスはカイトを一瞥すると、自分の立ち位置へと戻っていった。

 

(ただ過保護なだけでここに来たとは思えないからな。何か理由があったんだろう。何にせよ、俺にとっては好都合だがな。)

「デュエルを再開するぜ!!ドロワ。お前が止める理由ももうないからな!」

「くっ!」

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」(2)

<ゴーシュ:伏せなし ノックス:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(5)《フィールド・パワー・マネージャー》の効果によって、攻撃力2000未満のレベル4以下のモンスターの召喚はできない。だったら…」

「セットってか?確かにモンスターのセットは召喚には含まれないからな。だが、そんなことはわかってるんだよ!永続罠、《聖なる輝き》を発動!」

 

 

《聖なる輝き》

永続罠

このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのプレイヤーは、モンスターをセットする事はできない。また、モンスターをセットする場合は表側守備表示にしなければならない。

 

 

「このカードの効果で、お互いにモンスターはセットできないぜ。」

「何!?」

「下級モンスターで攻撃力が2000に届かない奴は召喚できない…だと?だったら…特殊召喚をするまでだ!手札から、《H・C 強襲のハルベルト》を特殊召喚!(4)」

 

 

《H・C 強襲のハルベルト》

効果モンスター

レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1800/守備力200

➀:相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

➁:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

➂:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。デッキから「ヒロイック」カード1枚を手札に加える。

 

 

「このカードは、相手フィールドにのみモンスターがいる場合、特殊召喚することができる!」

「さすがにやるな。ゴーシュ・ザ・スターマン。」

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!(2)」

<ゴーシュ:伏せ2枚 ノックス:伏せなし>

 

苦い表情をしているのが子どもたちからも見えると、デュエルの先行きが不安になったのか、「大丈夫かなぁ。」や、「がんばれ~!ゴーシュ・ザ・スターマン!」という声が聞こえて来る。

 

「大丈夫だ。今こんなノリってだけだ!」

「強がるんじゃねえよ!俺のターン!(3)俺は手札から、《電動刃虫(チェーンソー・インセクト)》を召喚!(2)」

 

 

《電動刃虫》

効果モンスター

レベル4/地属性/昆虫族/攻撃力2400/守備力0

このカードが戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時に相手プレイヤーはカード1枚をドローする。

 

 

「今度は攻撃力2400かよ。」

「さらに永続魔法、《ダメージ・コミッション》を発動して、(1)《フィールド・パワー・マネージャー》で、強襲のハルベルトを攻撃!」

 

 

《ダメージ・コミッション》

永続魔法

 

 

ディモート・フォース!!

 

 

「うあっ!ハルベルト!!」

「これでお前のフィールドに壁モンスターはいなくなった!ライフポイントを1000払い、《ダーク・エルフ》で、ダイレクトアタック!!」

 

 

ノックス:LP1400→LP400

 

 

「させるか!罠カード、《ヒロイック・ブースト》を発動!自分のヒロイックモンスターがバトルで破壊されたターン、手札のヒロイックモンスター1体を墓地に送り、相手フィールドのモンスター1体の効果を、次の俺のターンまで無効にする!」

 

怖い顔をした《フィールド・パワー・マネージャー》の眼鏡がなくなり、金髪も黒髪になってしまった。効果が無効になったということだろうか。

 

「だが今更、《フィールド・パワー・マネージャー》の効果を無効にしても、もう遅い!」

「そして、《ヒロイック・ブースト》の効果で、カードを1枚ドローする!(2→1→2)」

 

ドローした直後、ダーク・エルフの一撃が、ゴーシュの目の前の地面に直撃し、その爆風でゴーシュは後方へと吹き飛ばされた。

 

「ぐあああっ!」

 

 

ゴーシュ:LP3600→LP1600

 

 

「これで止めだ!チェーンソー・インセクト!ゴーシュのライフを0にしろ!」

「ぐっ!!」

 

しゃがみながらチェーンソー・インセクトを睨みつけるゴーシュに、自身のチェーンソーの回転を速めながら突進していく。

 

やがて彼の目の前で爆発が起こり、その煙で彼の姿が見えなくなった。子どもたちは、「そんな!」と騒ぎ、カイトとドロワは腕を組んで煙の先を見つめている。

 

「ハッハッハッハッ!」

 

煙がはけて来ると、最初に声を発したのはハルトであった。

 

「あっ。」

 

そこにはゴーシュと、背中に無数の剣を背負った、一般的な戦士のイメージからは少し離れた、無数の剣によってゴツゴツした格好に見えるモンスターが立っている。

 

「俺は、《H・C サウザンド・ブレード》のモンスター効果を発動していた。こいつは俺がダメージを受けた時に、墓地から攻撃表示で特殊召喚できる。」

 

 

《H・C サウザンド・ブレード》:攻撃力1300

 

 

「《ヒロイック・ブースト》で捨てたカードか。だが、そいつの攻撃力は1300しかない。《ダーク・エルフ》の攻撃を受けて特殊召喚したとしても、チェーンソー・インセクトの攻撃を受けて、破壊されるはずじゃねえのか!?」

「《ヒロイック・ゾーン》も発動させてもらったぜ。このターン一度だけ、ヒロイックモンスターの破壊を無効にする効果と、もう一つ効果がある罠カードさ。そしてもう一つっていうのは…!!」

「なにっ!?」

「手札から、ヒロイック・チャレンジャーを特殊召喚できる効果だ!来い、《H・C アンブッシュ・ソルジャー》!!」(1)

 

 

《H・C アンブッシュ・ソルジャー》:☆1/攻撃力0

 

 

「だが!バトルでモンスターは破壊されなくとも、ダメージは受けてもらうぜ!」

 

 

ゴーシュ:LP1600→LP500

 

 

「だったら、チェーンソー・インセクトの効果によって、俺はカードを1枚ドローさせてもらうぜ!(2)ヘッ。お前のカードで、儲けたな!」

「永続魔法、《ダメージ・コミッション》の効果発動!攻撃力2000以上のモンスターがこのターンに自らの攻撃によって相手に与えた戦闘ダメージ分だけ、ライフを回復する!!お前に与えたダメージは、3100ポイント!」

 

 

ノックス:LP400→LP3500

 

 

(これでライフの面でも、俺の方が上回っている!俺たちヘヴンズ・サードには、ヘヴン魔法・罠カードを3枚までデッキに入れることが許されている。いざとなれば、このカードもある。とはいえ…ゴーシュにはこれを使いたくはないな。なら…)

「俺はメインフェイズ2で、チェーンソー・インセクトと、《フィールド・パワー・マネージャー》で、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

この世に漂う力の渦よ、今ここに集い、地上の監視者を導くが良い!ランク4、《ワールド・フォース・オブザーバー》!!

 

 

《ワールド・フォース・オブザーバー》

エクシーズモンスター

ランク4/闇属性/悪魔族/攻撃力2200/守備力2000

「フィールド・パワー・マネージャー」を含む攻撃力2000以上のレベル4モンスター2体

このカードのエクシーズ召喚は、メインフェイズ2でしか行うことはできない。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は攻撃力2200未満のレベル4以下のモンスターを通常召喚することはできない。

1ターンに1度だけ、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分の墓地に存在するレベル4以下で攻撃力2000以上のモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターを自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、このターン攻撃を行うことはできない。

また、自分フィールド上に存在するレベル4以下で攻撃力2000以上のモンスターを任意の数だけ選択して発動することができる。選択したモンスターの効果はエンドフェイズまで無効化される。

 

 

今度は銀髪の肌の浅黒い体格の良い強面の男性のようなモンスターがフィールドに現れた。このモンスターこそ、力の監視者のようだ。

 

「1ターンに1度、オーバーレイユニットを使い、墓地の攻撃力2000以上のレベル4以下のモンスターを呼び出す!蘇れ、バーサークゴリラ!!ターンエンドだ!(1)」

<ゴーシュ:伏せなし ノックス:伏せなし>

 

 

《怒れる類人猿》:攻撃力2000

 

 

「今度は何だ!?」

「このモンスターがいる限り、こいつの攻撃力未満の攻撃力のレベル4以下のモンスターを、相手は通常召喚できない。たとえ今《聖なる輝き》を破壊しても無駄だ。通常召喚には、セットも含まれる。」

「攻撃力2200未満だと!?」

「今度こそ終わりだ。ゴーシュ!!」

 

手に汗をかいたことは本人にはわかった。その手をゆっくりとデッキの一番上のカードに持っていこうとした時に、ドロワとカイトの声が聞こえた。

 

「ゴーシュ!!こんなところで負けることは許さんぞ!」

「ゴーシュ!お前に熱きデュエリストの魂があるのなら、この状況を…突破してみせろっ!」

「ヘッ。いいぜ。お前らも、子どもたちも、俺のデュエルを見てろよ!!俺の最強のノリを見せてやるぜ!!俺のターン!!(3)このスタンバイフェイズに、《H・C アンブッシュ・ソルジャー》の効果発動!このカードをリリースし、手札・墓地のレベル4以下のヒロイック・チャレンジャーを復活させる!蘇れ、《H・C スパルタス》、《H・C 強襲のハルベルト》!!」

 

 

《H・C スパルタス》:攻撃力1600

《H・C 強襲のハルベルト》:攻撃力1800

 

 

「そして、手札のヒロイックと名の付くカードを墓地に送り、《H・C サウザンド・ブレード》の効果発動!このモンスターを守備表示にし、デッキからヒロイックモンスターを特殊召喚する!来い、《H・C エクストラ・ソード》!!」

 

 

墓地に送ったカード:《ヒロイック・アドバンス》

《H・C エクストラ・ソード》:攻撃力1000

 

 

「これでヒロイックモンスターが4体…」

「まだだ!手札から、《H・C デビルズ・ハンマー》を召喚!(1)」

 

 

《H・C デビルズ・ハンマー》

効果モンスター

レベル4/地属性/戦士族/攻撃力2200/守備力0

このカードが攻撃宣言する場合、サイコロを1回振る。出た目が「1」だった場合、このカードの攻撃力はダメージ計算時のみ倍になる。出た目が「2~4」だった場合、このカードの攻撃力ダメージ計算時のみ半分になる。出た目が「5」だった場合、このカードの攻撃は無効になる。

 

 

「レベル4で攻撃力2200!!んなモンスター入っていたのか!」

「もっとも、こいつはエクシーズ素材だがな。」

「何だと!?今、お前のフィールドには…5体のモンスターが!」

「決着をつけさせてもらうぜ!俺は、5体のモンスターで、オーバーレイ!!5体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

連なりし英雄たちの魂よ、今こそ信念を纏う閃光となり、閉ざされた門を突き破れ!《No.86 H-C(ヒロイック・チャンピオン) ロンゴミアント》!!

 

 

《No.86 H-C ロンゴミアント》:攻撃力1500

 

 

「こいつは…ナ…ナンバーズ…!!」

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《フィールド・パワー・マネージャー》
効果モンスター
レベル4/地属性/魔法使い族/攻撃力1900/守備力2000
通常召喚したこのカードは攻撃することはできない。特殊召喚したこのカードは以下の効果を得る。
●このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いに攻撃力2000未満のレベル4以下のモンスターを召喚することはできない。


<次回の最強カード>
《No.86 H-C(ヒロイック・チャンピオン) ロンゴミアント》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク4/闇属性/戦士族/攻撃力1500/守備力1500
戦士族レベル4モンスター×2体以上(最大5体まで)
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:このカードは自分のライフが500以下でなければ攻撃宣言できない。
➂:相手エンドフェイズ毎に発動する。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く。
➃:このカードが持っているエクシーズ素材の数によって、このカードは以下の効果を得る。
●1つ以上:このカードは戦闘では破壊されない。
●2つ以上:このカードの攻撃力・守備力は1500アップする。
●3つ以上:このカードはこのカード以外の効果を受けない。
●4つ以上:相手はモンスターを召喚・特殊召喚できない。
●5つ以上:1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動することができる。相手フィールドのカードを全て破壊できる。


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第28話-閃光の一撃!ロンゴミアント!

ゴーシュ

 

・LP500

・手札1枚

・(モンスター)《No.86 H-C(ヒロイック・チャンピオン) ロンゴミアント》(ATK1500)

・(魔法・罠)なし

 

ノックス

 

・LP3500

・手札1枚

・(モンスター)《ワールド・フォース・オブザーバー》(ATK2200)/《怒れる類人猿(バーサークゴリラ)》(ATK2000)/《ダーク・エルフ》(ATK2000)

・(魔法・罠)《ダメージ・コミッション》(∞)/《聖なる輝き》(∞)

 

 

 

まだ夏場なので、陽が長いはずだが、不思議と夜を迎えそうにない。それは間違いなく、この紅い空が、そう思わせるのであろう。

 

結局ハートラント中央公園の給水場で涼み、情報を共有したナンバーズクラブと遊士は、鬱蒼とした雰囲気の中、今後どうすべきかも考えられずにいる。

 

「これからどうにゃっちゃうキャット?」

「とどのつまり、わかりません。」

 

「遊馬。」

「鉄男…」

「辛いのはわかるけど、バリアンを倒すしかねえんじゃねえのか。バリアンを倒せば、きっと徳之助だって戻ってくる!それを信じて戦うしかねえ!俺たちも戦う!俺たちも、ナンバーズクラブなんだぜ!」

 

命を賭けての戦い。そう聞けば、いくら友人であろうと、頷くことは難しいのが一般論。だが中学生の年齢の子だからか、それとも彼との絆がとても強く結ばれているからか、小鳥、委員長、キャッシーはすぐに迷いなく、大きく頷いた。

 

「とどのつまり、僕も力を貸します!」

「もちろんキャット!!」

「うん!そうよ!私も最近、デュエル覚えたんだから!」

 

「みんな…」

 

「あっ。そうやって遊馬くんに近づこうと…!!」

「そういう訳じゃない!何よこの化け猫娘!」

「カッチーン。」

「おいおいやめろよ2人とも!!」

 

夏の暑さも忘れそうになるほどのキャットファイトが始まろうとしていたが、さすがにそのような雰囲気ではないことを察したか、2人は、「ふんっ!」と言って、そっぽを向くだけにした。

 

「みんな…ありがとな。」

 

力なく遊馬はそう彼らに言った。彼の目からは闘志が感じられない。遊馬は仲間たちのことを信じてはいる。しかし、巻き込みたくないからか、また誰かが犠牲になるのを見たくからか、ナンバーズクラブでバリアンと戦う作戦を立てる気配がない。それは…一人で何とかしようとする姿勢そのものだと、遊士は今の彼の姿からそう思った。

 

遊士はなおも小さないざこざの絶えない小鳥とキャッシーを他所に、遊馬に話しかけた。

 

「遊馬。一つだけ聞いていいか?」

「あ、はい。遊士さん。」

 

敬語か。調子狂うな。

 

「お前、自分一人で何とかしようとしているだろ。」

「…」

「誰も巻き込みたくないのか?」

「…」

「別に否定してる訳じゃねえよ。俺だって、どっちかっていうと群れるタイプじゃねえから。俺も遊矢たちとは別れて、こっちに一人で来た訳だし。一人でも何とかなるものだろ。多分。おっといけねえ。お前にはアストラルがいるから、2人だったな。」

「…」

「けど、お前の中にもし不安があって、ナンバーズクラブにも何とかして欲しいって思うなら、頼んでみても良いかもしれないぜ。」

「ナンバーズクラブに…けど、頼めることと、そうでないことがある…」

「んなの当たり前だろ。それが嫌なら、キッパリ言ったらどうだ?お前らには何もできねえって。俺ならそれくらい言っちまうかもな。ハハハ。」

 

学園生活の中で、遊士は人を頼ることをしないできた。自分の自信のあることでも、ないことでも。その時、自信のないことについては、人に頼った方が良いかもしれない、と思った場面はあったのだ。

 

今は無論人に頼れるなら頼っても良いかもしれないが、頼れないなら一人でしていいかな、くらいに思っている。なぜなら彼にはデュエルの自信があったからだ。

 

 

この時は。

 

 

------

 

 

「ナ…ナンバーズだと!?」

「そう。俺はカイトにこいつを渡すために、ここに呼んだんだ。お前の偶然が重なったのはやばいノリだと思ったが、このターンでケリをつけるから問題ないぜ!」

 

ゴーシュの目の前には、一本の槍を持つロンゴミアントが立っている。白と金の配色の鎧に身を包んでいる。またその手にある槍は、キリストに対して放たれた槍を彷彿とさせる。

 

「だが攻撃力は1500しかねえじゃねえか。それじゃ俺のワールド・フォース・オブザーバーどころか、バーサークゴリラやダーク・エルフすら倒せねえぜ!」

 

ノックスのその言葉を聞いたゴーシュは、鼻で笑って、得意そうに状況の説明を始めた。

 

「ヘッ。まずは、《H・C エクストラ・ソード》のモンスター効果を発動!このカードがオーバーレイユニットになった時、そのモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる。」

 

 

《No.86 H-C ロンゴミアント》:攻撃力1500→攻撃力2500

 

 

「そして、ロンゴミアントは、オーバーレイユニットの個数によって、効果を得る。1つ以上あれば、戦闘では破壊されない。2つ以上あれば、攻撃力と守備力が、1500ポイントアップする!」

 

 

《No.86 H-C ロンゴミアント》:攻撃力2500→攻撃力4000

 

 

「攻撃力4000だと!?」

「まだだ!3つ以上あれば、他のカード効果を受け付けなくなる!さらに4つ以上あれば、相手はモンスターの召喚・特殊召喚ができない!」

「なに!!俺のモンスターの召喚・特殊召喚を防ぐだと…!?」

「そして…!!!」

 

そこまで言うとロンゴミアントが手に持っている槍を天に掲げた。サブアリーナなので何も起こらないが、外でこの効果を使うと、稲光が走りそうだ。

 

さらにロンゴミアントはゆっくりと振りかぶり、まさに槍を投げようとしている。

 

「オーバーレイユニットが5つある場合、1ターンに1度、相手フィールドのカードを全て破壊する!!くらえ!!」

 

ロンゴミアントが投げた槍はサブアリーナ上部に投げられ、そこで収束した光から、5本の槍となってノックスのフィールドに降り注いだ。それらは《ワールド・フォース・オブザーバー》、バーサークゴリラ、《ダーク・エルフ》、《ダメージ・コミッション》、《聖なる輝き》を容赦なく貫き、破壊した。

 

「うおおおっ!」

「すげえっ!」

「いいぞ、ゴーシュ・ザ・スターマン!!」

 

思わぬ逆転劇に、子どもたちは歓喜の声をあげている。ハルトの顔にも笑みが浮かんでおり、興奮を隠せない様子だ。

 

「これでノックスのフィールドは丸裸だ。」

「ああ…。」

「勝てるね、兄さん!!」

 

 

「バトルだ!ロンゴミアント!奴に止めを刺せ!」

 

今度は目の前に槍を突き出し、槍の先端から放たれた閃光が一瞬でノックスを貫いた。ノックスは物凄い風圧に吹き飛ばされたようにして大きく後方に飛び、後転して、うつ伏せになって倒れた。

 

「やった!!」

「ゴーシュ・ザ・スターマンが勝った!」

 

 

ノックス:LP3500→LP1500

 

 

ゴーシュは自身のデュエルパッドに映る相手のライフポイントの表示が1500で止まったのを見て、反射的に「なにっ!?」と言った後、目の前に倒れているノックスがゆっくりと立ち上がるのを睨んでいた。

 

「お前…どうして!?ロンゴミアントは如何なるカード効果も受けないんだぜ。」

「知らなかったのか?《ダメージ・コミッション》は、フィールドを離れたターン一度だけ、自身が受けるダメージを半分にする効果がある。こいつは何もロンゴミアントに対して使用する効果じゃない。これで俺のライフは残ったという訳だ。」

「チッ。そういうことか。だがそのノリじゃ、いつまでも持たねえぜ!俺はこれで、ターンエンド!(1)」

<ゴーシュ:伏せなし ノックス:伏せなし>

 

ゴーシュが先ほどそうすることもできたように、ノックスもこのターンは、モンスターの召喚・特殊召喚ができなくとも、セットを行うことはできる。ノックスの場の《聖なる輝き》がなくなった以上、ノックスは壁モンスターを用意することができるのだ。

 

たった今ターンを終了したゴーシュは手札の1枚、《H・C 夜襲のカンテラ》をじっと見ている。夜襲のカンテラは、相手の守備表示モンスターを攻撃した時、ダメージ計算を行わずに破壊できる。そのカードテキストのような言葉が脳裏で再生され続けている。

 

「でもさ、ゴーシュのロンゴミアントは、ずーっとエクシーズ素材が5つのままなのかな?それだと強すぎない?」

「そんなこと言っている場合じゃないだろ!ゴーシュライフ500しかないんだから。」

 

「そうだな、そういえば言い忘れていたな。ロンゴミアントは、相手ターンが終わるごとに、オーバーレイユニットを1つ取り除く効果もある。もう次の俺のターンには、破壊効果は使えねえよ。」

 

それを聞いていたのか聞いていなかったのかはゴーシュにはわからなかったが、自身のシャツの埃を自分の手で払ったノックスが、自分のデッキの一番上のカードに指を添えた。

 

「いくぜ、俺のターン!(2)」

(引いたカードは…《ジャイアント・レックス》か。攻撃力2000、守備力1200のデメリットのあるモンスター。こいつをセットしておけば、次のあいつのターンを凌げるかもしれない。だが、あいつが次引くのがモンスターだったら…いやそれ以前に、あいつの手札1枚がモンスターだったら…俺の負けは決まる。)

 

「最後の…ヘヴンカード。」

 

手札にあるそのカードをじっと見つめていると、そのカードを通して、何者かが彼の脳に直接語り掛けて来る。

 

『どうしたのかね?君はゴーシュに勝ちたいのだろう?君がまだ生きていた頃、彼もまた、君をパニック障害に追いやった人物の一人だろう。』

(そ…そうです。しかし彼は人ならざる力を持っている訳ではありません。このカードは…)

『よく見ると良い。持っているではないか。彼のフィールドにいるモンスターは何だ?』

(ナ…ナンバーズ。)

『そう。ナンバーズは、あってはならない存在だ。あれを我々が奪えば、アストラルは消滅する!気が進まないかね?最低限、それが言い訳になるではないか。』

 

ヘヴンカードで止めを刺すということが、どういうことか、ノックスにはわかっていた。眠りにもつけず、目覚めることもできないあの空間での出来事。目の前には子どももいる。ゴーシュが自分のようになったら、目の前の子どもたちもどれほど嘆き、悲しむだろうか。

黙っていると、ノックスに対し、その声の主、ヘヴンはさらに口調を強めた。

 

『ならば問うが、なぜ君はゴーシュにデュエルを挑んだ?カイトの顔を君は覚えていたはずだ。君がしていることは、いわば道草を食うということだ。自分から道草を食いにいったものを、そこで決着をつけることをしないほどの無責任な者に、私はこの任務を与えたというのかな?』

(確かに、俺はこいつを倒したい思いで、デュエルを…!!だったら…その結末は!)

 

「魔法カード、《Heaven's Ritual》を発動!」

『そうだ。それで良いのだ。』

 

「また…ヘヴンズと名の付いたカードか!」

「これは、自分のフィールドにモンスターが存在しない場合、ライフポイントを半分払い、このカードを用いて召喚することができるモンスター1体を自分のデッキ、エクストラデッキから特殊召喚する!このカードの発動ターン、モンスターの通常召喚はできず、この効果以外でモンスターを特殊召喚することはできない。」

 

 

ノックス:LP1500→LP750

 

 

ノックスの目の前には魔法陣が現れ、それを7、8個の燭台が取り囲み、白い炎が灯っている。カードの発動に成功したという演出だろうか。だとすると、それはゴーシュにとっても、周囲のデュエリストにとっても驚くべきことだった。

 

「どういうことだ!ロンゴミアントの効果で、お前は特殊召喚できないはず!」

「残念だが、ヘヴンカードは、ヘヴンカードでしか無効にはできない。このカードの発動と効果は無効化されず、このカードによる特殊召喚も無効にはできない!そして、特殊召喚を封じるカード効果を受け付けない!」

「何だと!?」

「ヘヴンズ・リチュアルのテキストに従い、俺が特殊召喚するモンスターを相手に見せる必要がある。俺はエクストラデッキのエクシーズモンスター、《Heaven's Fourth Lioness》を見せる。そしてその素材となるモンスターを手札またはデッキから選んで、そいつらを素材にエクシーズ召喚を行う!俺はデッキから、レベル10の《絶対服従魔人》2体をエクシーズ素材として、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

(ちから)(ちから)(ちから)!万物を薙ぎ払う力よ、万物を屈服させる力よ!気高き野獣の牙となりて、天が導く運命を示せ!《Heaven's Fourth Lioness》!!

 

 

魔法陣から溢れ出た光が一つに集い、天空に向かって柱が立つと、その柱の先から四足歩行のたてがみを持つ獣を顕現させた。外見は名前の通り、ライオンであるが、たてがみはオーカー色。体毛はベージュ色、その瞳は茶色と黒のオッドアイであった。

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000

 

 

「これこそが、俺の持つ、力の象徴!」

「大したモンスターのようだが、攻撃力4000じゃ、俺のロンゴミアントと互角の攻撃力。俺のロンゴミアントがバトルで破壊されない以上、一方的に破壊されることになるぜ。」

 

体長約2メートルのライオン、いや、力の象徴が、ゴーシュとロンゴミアントを見下ろした。大きく見開き、ゴーシュたちを獲物と捉えたその瞳からは、血肉に植えた野獣だと感じさせる。

 

「ライオネスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカードの攻撃力は、このカード以外のフィールドの全てのモンスターの攻撃力を合計した分だけ、アップする!」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000→攻撃力8000

 

 

「攻撃力8000だと!?」

「これが…これが!俺の力だ!《Heaven's Fourth Lioness》で、ロンゴミアントを攻撃!」

 

もはやロンゴミアントは、オーバーレイユニットを使って巨大化したライオネスの敵ではない。ロンゴミアントを押さえつけることのできるほどの前足でロンゴミアントを捕らえ、そのまま真上に放り投げると、ライオネスがその牙で砕くまでもなく、ライオネスを一飲みした。

 

「何だと。」

 

 

ゴーシュ:LP500→LP0

 

 

ライオネスは呆然と立ち尽くしているゴーシュと目が合うと、口を大きく開け、身の毛もよだつほどの雄たけびを上げた。

 

「ぐわああああっ!」

 

ゴーシュは空中で一回転し、仰向けになってその場に倒れた。直接頭を床に打ち付けた際にできた外傷も気になるところではあるが、それ以前に、彼の様子は少しおかしかった。

 

「…」

「おい、ゴーシュ!!」

 

「フフフ…ハッハッハッ!ゴーシュ・ザ・スターマン!!俺の勝ちだ!」

 

敢えてそう言ってみせたノックスは、腕を広げてゴーシュの元に近寄ろうとする子どもたちの前に立ちはだかった。先陣を切った男の子に、その場にいる子どもたちが聞こえるほどの大きさの声で、耳打ちをした。

 

「おいおい!ダメだ!ゴーシュはな、負けちゃったけど、あれは、演技なんだよ。」

「演…技?」

「そうそう!ああやって、負けたプロデュエリストってのは、倒れていないと、ダメなんだ。」

「ダメって、何がダメなんだよ!」

「いや、ほら、ダメなものはダメなんだ!すぐにムクッと立ち上がったら、緊張感ないじゃんか。」

「じゃあさっき大きく吹っ飛んだのも、ゴーシュの兄ちゃんの演技なの?」

「そう!」

「え~?」

 

子どもたちは明らかに納得が言っていない、だがそうやって彼らを説き伏せているノックスの真意に気が付いたドロワは、ノックスの真横に立った。

 

「そうだ!仕方ない。私が教えてやろう。ゴーシュは、レスリングのスタイルでもデュエルするって知っているだろう?その時の癖だ。ここからは、私が講座の続きを行う!」

「あ…はい。」

「こっちだ。みんな、忘れ物とかないか?ついてきてくれ。」

 

ゴーシュの方をチラチラと見つつ、ドロワに率いられて、子どもたちはその場を後にした。ハルトは自分も行かなければならないと、その一団に戻ったが、カイトには、「後でね!」と伝えていた。

 

カイトは横たわっているゴーシュを引き起こし、人の目につかない控室のベッドに寝かせると、再びアリーナに戻った。その間彼がやっていることを、ノックスはじっと見ることもなく、背を向けていた。

 

「おい、貴様!!どういうつもりだ。貴様の狙いは俺だったはずだ!」

「あぁ。だがあいつは俺がデュエルに勝てばカイトの居場所を教えると言ってきた。そんなことを言われれば、デュエルを断る理由もない。」

「ふざけるな!貴様も、奴がカイトでないことはわかっていたはずだ!貴様とゴーシュに何があったのかは知らんが、個人的な恨みで、ヘヴンとやらの力を使い、ゴーシュを…意識不明に…!!貴様…許さん!!」

「何と言われようと、あれが俺の下した決断だ!…カイト。ならばデュエルだ。俺はお前を倒すために来た。お前の持つギャラクシーアイズ。そしてナンバーズ。全てを消し去る。…確認だが、お前はギャラクシーアイズを俺に手渡すつもりはないんだよな?」

「愚問だな!!貴様らに俺のギャラクシーアイズを渡すつもりなどない!」

「そうか。ならばデュエルを行おう。ここは少し狭いな。屋上で行おうか。」

 

 

------

 

 

バリアル・フォーゼを解いた状態で、ギラグとアリトは2人でハートランド中央公園付近を歩いていた。彼らはちょうど狭い路地に入ったところである。バリアン七皇はナッシュが本部に戻り次第集められ、常に二人以上の一組で行動するように言われたのだ。当然その理由は、ベクターがドルベを吸収したからであった。

 

「クソッ。この格好じゃやりにくいな。」

「仕方ねえだろ。バリアル・フォーゼは必要な時に使う程度にしておかないと、ヘヴンの野郎に見つかる可能性が高くなる。俺たちから先手を打つ!」

「なんだよそれじゃ、俺のカウンター戦法とはミスマッチじゃねえか。」

 

実はこの2人は以前にドン・サウザンドの力を受け、ベクターおよびドン・サウザンドの傀儡となってしまったのだが、時間が経ったためかその影響が薄れてきていた。

 

同時に、彼らの良いところであろう、肩の力を抜いて行動することが多いところが、よく見えるようになってしまったのだが。

 

仕事中であれば、常に注意を払っておく必要がある。プロならば、そうだろう。ここでのプロが、何かの立場に所属している、という意味なら、なおのこと。

 

「うっ!」

「っ!?どうした、アリト!!」

 

いきなりアリトがその場に崩れ落ちるようにして倒れた。ギラグが周囲を見つつ、アリトの肩を揺する。

 

「くそっ。背中をやられた。痛っ!!誰だ…?」

「おい、出てこい!!ヘヴンの野郎!!」

 

「ヘヴン…?だからてめえらは間抜けなんだよ!!」

 

2人の間に入ったのは、既にバリアンの姿となっているベクターであった。

 

「てめえ、ベクター!」

「どうやらドルベをやったらしいな。この裏切り者が!!」

 

(ほう。どうやらこれじゃ、こいつらの洗脳は完全に解けちまっているみたいだな。)

 

目の前にいるバリアンのことも眼中になく、そう考えていると、ベクターは自身の体が後方に吹き飛び、ビルの壁に背中が当たったことがわかり、直後に痛みも覚えた。

 

「うっ!て、てめえ。」

「目を覚ましたか!アリトにこんなことしやがって!」

「やりやがったな、ギラグ。」

 

ベクターが仁王立ちで2人の前に立つと、その背後から、巨大な影が伸びることを2人は感じた。

 

「なっ!」

「これは…!」

 

『フフフ。アリト、そしてギラグ!!我が名は、ドン・サウザンド。バリアン世界の神。』

 

「ドン・サウザンドだと!?」

「どうして、ベクターから出て来るんだ!?まさか、ベクター!てめえ!」

 

「そうよアリト。俺はな、このバリアンの神様と契約したんだよ!さぁ、今一度、お前らには働いてもらうぜ!!」

 

影の存在であったドン・サウザンドが実体化すると、両腕を伸ばしてアリトとギラグの首を掴み、そのまま真上に楽々と持ち上げた。

 

「ぐぁっ!」

「くっ!はな…せ!このっ!」

 

『お前たちには我が手足となって働いてもらう!我が力と引き換えにな。』

 

「ぐああああっ!」

「うわあああああ!!」

 

2人は自分の体の中に、カードのようなものが入り込んでいく感触を覚えた。以前にも味わったような痛みだったが、思い出すまでもなく、彼らは自分の目つきが変わったのがわかるほど、視界が狭くなったことを感じた。

 

「よぉし!これでてめえらは、俺の操り人形だぁ!じゃあ、そうだな。ギラグ!てめえはまず…ン?」

 

2人で話している最中であったが、ビルの陰から、白衣を着て眼鏡をかけた華奢な男性が現れたのをベクターは捉えた。

 

「誰だ…?」

「バリアン七皇か。これだけ大きな声で話していれば、すぐにわかる。この世界も、かなり閑散としてきたようだからな。」

「ヘヴンズ・サードか。ちょうどいいぜ、だったらギラグ!この野郎をぶっ飛ばせ!」

「一部始終は見させてもらったが、そのような操り人形に、私が倒せるとでも?私は、かつて科学者だったのだよ?」

「肩書きなんて関係ねえ!俺たちバリアン七皇とのデュエルではな!」

 

ギラグと、その白衣の男性が同時に構え始めたのを見ると、ベクターは今度はもう一つの駒を動かす準備をしようとしたが。

 

 

「アリト!てめえは……あれ?アリト?あれ?おい、どこいった!?」

 

「私は待ったのにな。私と話す前に、もう一人の七皇とも話しておくべきだったな。」

「くそっ!おい、ギラグ!ちょっと待ってろ!アリトを…」

 

 

「バリアル…フォーゼェェェェ!!」

「おい、ちょっと待てって!」

 

「彼は君の言ったことにしたがっただけだと思うがな。」

「黙れこの白衣野郎!!いちいちいちいち、うっせえんだよ!」

「私の名前はアフタン。覚えておいてくれ。」

「聞いてねえよ、ンなこと!」

「名前で呼べという意味だ。」

 

「チッ。どいつもこいつもめんどくせえ野郎だ!!」

 

ベクターはバリアンの姿となったギラグ、そして彼のデュエルを見ることとし、狭い路地のビルの壁に寄り掛かった。

 

 

------

 

 

サブアリーナとメインアリーナは繋がっており、屋上も繋がっているため、かなり広いスペースとなる。ドロワはゴーシュのするはずだった講座を何とか繋いでおり、ハルトもそこにいるため、屋上には今はカイトとノックス、そしてオービタル7のみ。

 

「カイト様!」

「余計な心配はいらん。黙ってデュエルを見ていろ。ドロワにメールでも送っておけ。」

「カシコマリ!」

 

「随分と便利な相棒だな。俺が勝ったら、オービタル7!お前もいただくぜ!」

「貴様ごときに負ける俺ではない!いくぞ!フォトン・チェンジ!!」

 

カイトの服が光を放つかのように白くなり、同時に彼のデュエルディスクが起動すると、それを合図としたのか、ノックスもデュエルパッドを展開し、構えた。

 

 

「デュエル!!」

 

 

天城カイト:LP4000

ノックス :LP4000

 

 

「カイト、先攻はもらうぜ!」

「好きにしろ。」

「俺のターン!《ゴブリンエリート部隊》を召喚!」

 

 

《ゴブリンエリート部隊》

効果モンスター

レベル4/地属性/悪魔族/攻撃力2200/守備力1500

➀:このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になり、次の自分ターンの終了時まで表示形式を変更できない。

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(3)」

<カイト:伏せなし ノックス:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(6)俺は、《フォトン・サイキッカー》を召喚!」

 

 

《フォトン・サイキッカー》

効果モンスター

レベル3/光属性/サイキック族/攻撃力1200/守備力1000

このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上の表側表示モンスターが、「フォトン」と名の付いたモンスターのみの場合に発動することができる。相手フィールド上のレベル4以下のモンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで得る。この効果を使用したターン、自分はバトルフェイズを行うことはできない。

 

 

「このモンスターは召喚に成功した時、相手モンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで得ることができる!」

「なっ…」

 

藍色のマントに身を包んだスマートなマネキンのようなモンスターが光を放つと、釣られるようにして《ゴブリンエリート部隊》がカイトのフィールドへと移った。

 

「エクシーズ召喚か?だがレベル3とレベル4では、レベルが合わないな。」

「安心しろ、すぐにこいつは使ってやる。さらに手札から魔法カード、《フォトン・ブースター》を発動!」

 

 

《フォトン・ブースター》

通常魔法

トークン以外のフィールド上に表側表示で存在するレベル4以下の光属性モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスター及びフィールド上に表側表示で存在する同名のモンスターの攻撃力は、エンドフェイズ時まで2000になる。

 

 

「このカードにより、《フォトン・サイキッカー》の攻撃力は2000となる!」

 

 

《フォトン・サイキッカー》:攻撃力1200→攻撃力2000

 

 

「俺は攻撃力2000以上の2体のモンスターをリリース!!」

 

そこまで宣言すると、彼の手には、赤色の十字架の形をした物体が現れ、それをその場で彼は真紅色に染まりつつある虚空と投げた。

 

 

闇に輝く銀河よ。希望の光となりて、我がしもべに宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ、《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》!!

 

 

「これが…ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン。」

「《フォトン・サイキッカー》の効果により、バトルフェイズは行えない。俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<カイト:伏せ1枚 ノックス:伏せ1枚>

 

 

「俺ではなく、自身の都合で、ゴーシュを狙った貴様は許さん。このデュエルで、俺が貴様に懺悔をさせてやる!!」

「面白い。やれるモンなら、やってみろ!」

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《No.86 H-C(ヒロイック・チャンピオン) ロンゴミアント》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク4/闇属性/戦士族/攻撃力1500/守備力1500
戦士族レベル4モンスター×2体以上(最大5体まで)
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:このカードは自分のライフが500以下でなければ攻撃宣言できない。
➂:相手エンドフェイズ毎に発動する。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く。
➃:このカードが持っているエクシーズ素材の数によって、このカードは以下の効果を得る。
●1つ以上:このカードは戦闘では破壊されない。
●2つ以上:このカードの攻撃力・守備力は1500アップする。
●3つ以上:このカードはこのカード以外の効果を受けない。
●4つ以上:相手はモンスターを召喚・特殊召喚できない。
●5つ以上:1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動することができる。相手フィールドのカードを全て破壊できる。


<次回の最強カード>
《Heaven's Fourth Lioness》





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第29話-力の象徴!Heaven's Fourth Lioness

天城カイト

 

・LP4000

・手札2枚

・(モンスター)《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》(ATK3000)

・(魔法・罠)1枚

 

 

ノックス

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)1枚

 

「じゃあ、今日の講座はこれまでとします!ありがとうございました!」

「ありがとうございました!!」

 

子どもたちの中にはゴーシュのことを気にかけている人もいたが、もう大部分がそれを忘れ、ドロワが急遽行ったデュエルの実践演習に夢中になっていた。

 

幸い、ゴーシュが自身の講座を終えた後に待っていたことはどの道実践演習であり、相手をローテーションで交代させて行うだけの、ドロワにとっては簡単なことであった。ゴーシュのマネージャーをしていることもあり、子どもの相手にも慣れている。

 

「よし、じゃあ、カイトのところに行こう。」

「はい!」

 

子どもたちが解散した後、ドロワとハルトはエントランスからアリーナへと戻っていった。

 

一方アリーナの屋上では既にカイトとノックスのデュエルが行われており、ノックスのドローフェイズである。

 

「いくぜ、カイト!俺のターン!(4)早速来たぜ。俺は手札から、《Heaven's Ritual》を発動!」

「くっ。そいつは!」

「ライフを半分支払い、このターンの通常召喚とこのカードによる特殊召喚以外の特殊召喚を放棄する代わりに、自分のデッキかエクストラデッキから、このカードを使って特殊召喚できるモンスターを、特殊召喚する!」

 

 

ノックス:LP4000→LP2000

 

 

「俺はエクシーズモンスターの、《Heaven's Fourth Lioness》を選択!その素材となるように、デッキからレベル10の2体のモンスターでエクシーズ召喚を行う!俺はデッキの2体の、《絶対服従魔人》をエクシーズ素材として、オーバーレイ!!」

 

 

出でよ、力の象徴!《Heaven's Fourth Lioness》!!

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000

 

 

「出て来たか。」

「さらに、ライオネスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカード以外のフィールドの全てのモンスターの攻撃力をこのカードに加える!」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力7000

 

 

「いくぞカイト!ライオネスで、ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンを攻撃!消え去れ!」

 

 

トライアンフ・ファング!!

 

 

巨大化したライオネスがその速さをもってギャラクシーアイズに飛びつこうとしたものの、ギャラクシーアイズが光を放ち、お互いのモンスターが白い光に包まれると、まるで時が止まったように、2体のモンスターはその場で動かなくなった。

 

「ギャラクシーアイズの効果発動!このカードがモンスターとバトルする時、お互いのモンスターをゲームから除外する!」

 

カイトがそこまで説明すると、光の粒となって、2体のモンスターはその場からいなくなった。

 

「なに!?これではギャラクシーアイズは倒せない!」

「貴様、俺にデュエルを挑みに来たにもかかわらずギャラクシーアイズの効果も知らんとは。下調べくらいはしておくべきだと思うがな!」

「うるせえな。俺は力で勝負するタイプなんだよ。」

 

その返答に、カイトの怒りのボルテージはますます上がる。己の血液が沸騰していくのを、カイトは感じていた。彼の言うパワー。それは攻撃力ではない。カード1枚の強さ。そう解釈した。

 

「バトルフェイズ終了時、お互いのフィールドに、モンスターが戻ってくる!」

 

 

《銀河眼の光子竜》:攻撃力3000

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000

 

 

「さらに、ギャラクシーアイズの効果により、除外した相手のモンスターがモンスターエクシーズであった場合は、そのモンスターが持っていたオーバーレイユニット1つにつき、攻撃力が500ポイントアップする!」

 

 

《銀河眼の光子竜》:攻撃力3000→攻撃力3500

 

 

「だが攻撃力3500じゃ、ライオネスには届かない。ターンエンドだ!(3)」

<カイト:伏せ1枚 ノックス:伏せ1枚>

 

彼のターンが終わるのと同時に、屋上のドアが開き、ハルトとドロワが入ってきた。ハルトがギャラクシーアイズとライオネス両方を捉えると、緊張を覚えた。ライオネスの瞳が見下ろすのを見ると、思わずドロワの後ろに隠れ気味になった。

 

「貴様の言う力の象徴。それがいかにもろいものなのか、身をもって味わうが良い!安心しろハルト。奴はこのターンで終わりだ。俺のターン、ドロー!(3)いけっ!ギャラクシーアイズの攻撃!」

「何!?攻撃力の低いモンスターで、俺のライオネスに攻撃するだと!?」

 

ギャラクシーアイズがライオネスを見下ろすように飛翔し、その体に光を集め始めたのを見ると、カイトの目の前の伏せカードが開いた。

 

「リバースカード、オープン!《フォトン・トライデント》!!」

 

 

《フォトン・トライデント》

速攻魔法

自分フィールド上の「フォトン」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は700ポイントアップし、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。また、選択したモンスターが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊できる。

 

 

「対象としたフォトンモンスターの攻撃力が700ポイントアップする!」

 

 

《銀河眼の光子竜》:攻撃力3500→攻撃力4200

 

 

トライデントの剣先から出た光の波動をギャラクシーアイズが吸収し、青白い輝きがより一層増す。

 

「なにっ!?攻撃力4200だと!」

 

 

破滅のフォトン・ストリーム!!

 

 

「どわあああっ!」

 

 

ノックス:LP2000→LP1800

 

 

破滅のフォトン・ストリームが口を大きく開けたライオネスを貫き、まるで石像のようにして、その場で崩れ去った。ノックスはその衝撃で吹き飛ばされ、うつ伏せで倒れている。

 

「さらに、《フォトン・トライデント》の効果により、相手に戦闘ダメージを与えた場合、魔法・罠カード1枚を破壊する!貴様の伏せカードを破壊!」

「なにっ!」

 

 

破壊されたカード:《パワー・リバイブ》

 

 

《ゴブリンエリート部隊》:攻撃力2200

 

 

「《パワー・リバイブ》は、フィールド上で破壊された時、墓地の攻撃力2000以上のモンスター1体を特殊召喚する効果がある。だがライオネスを復活させなかったことを見ると、ライオネスはカード効果では復活できないようだな。もはや貴様のエースモンスターは倒された!貴様に勝ち目はない!」

「俺は墓地の《ゴブリンエリート部隊》を復活させた。」

「俺はこれで、ターンエンドだ。(3)」

<カイト:伏せなし ノックス:伏せなし>

 

「俺のターン!(4)俺は手札から、《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》を召喚し、ターンエンドだ!(3)」

<カイト:伏せなし ノックス:伏せなし>

 

 

《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》

効果モンスター

レベル4/地属性/獣戦士族/攻撃力2000/守備力1600

このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの攻撃宣言の際に、自分はこのカード以外の自分フィールドのモンスター1体をリリースしなければならない。

 

 

「まだ続けるか。いいだろう。貴様には懺悔してもらわねばならない!俺のターン!(4)俺は手札から、《フォトン・サーベルタイガー》を攻撃表示で召喚!(3)」

 

 

《フォトン・サーベルタイガー》:攻撃力1200

 

 

「このモンスターは召喚に成功した時、デッキから同名のモンスター1体を手札に加えることができる。そして魔法カード、《融合》を発動!手札に加えた《フォトン・サーベルタイガー》と、場の《フォトン・サーベルタイガー》を融合させる!」

「2体のフォトン・サーベルタイガーで融合!?」

 

 

現れろ!《ツイン・フォトン・リザード》!

 

 

《ツイン・フォトン・リザード》:攻撃力2400

 

 

サーベルタイガーたちの融合によって召喚されたとは思いにくい、《ツイン・フォトン・リザード》がノックスの目の前に現れた。じっと空中に漂い、攻撃のタイミングを伺っているのか、ノックスをじっと見ている。

 

「いくぞ!《ツイン・フォトン・リザード》で、《ゴブリンエリート部隊》を攻撃!」

 

 

サブライム・ブレス!

 

 

「ヘッ!」

 

光に包まれる瞬間、ノックスが不気味な笑みを浮かべていたことをカイトは確かにその目で見た。爆発によって発生した煙によって彼のフィールドが見えなくなっていたと思った矢先、その煙をはけさせたのは、他でもない、彼の力の象徴、《Heaven's Fourth Lioness》そのものだった。

 

「そんな!」

「こ…これは!?」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000

 

 

「《Heaven's Fourth Lioness》だと。奴は倒したはず。しかも奴のフィールドに他のモンスターがいない…!」

「残念だったなカイト。一度バトルで破壊したくらいで、勝てると思ったのか?《Heaven's Fourth Lioness》は墓地にある時、相手ターン中でのみ発動できる効果があるのさ。それは、俺の攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースすることで、墓地のこのカードを俺のフィールドに復活させる効果。そう簡単に俺はやられねえんだよ!」

「くっ。俺は《ツイン・フォトン・リザード》の攻撃を中止する。」

(奴のモンスターには確かにオーバーレイユニットはないが、《ツイン・フォトン・リザード》を攻撃表示でフィールドに立たせておくと、ライオネスの攻撃で戦闘ダメージを受けることとなる。ならば…)

 

「俺は、《ツイン・フォトン・リザード》のモンスター効果を発動し、このカードをリリースすることで、融合素材となったモンスター一組を俺のフィールドに呼び出す!蘇れ2体の、《フォトン・サーベルタイガー》!!」

 

 

《フォトン・サーベルタイガー》:守備力300

《フォトン・サーベルタイガー》:守備力300

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」(1)

<カイト:伏せ1枚 ノックス:伏せなし>

 

再びライオネスがフィールドに現れたことで、ハルトは不安になったのか、咄嗟にドロワの裾を掴んだ。

 

「に…兄さん。」

「大丈夫。ハルト。カイトは勝つ。ギャラクシーアイズはバトルでは倒せない。いくら攻撃力が高いライオネスでも、意味はない。」

「は…はい。」

 

「俺のターン!(4)」(《リクープ・エナジー》)

 

「このスタンバイフェイズに、ライオネスのモンスター効果発動!自分のスタンバイフェイズがやってきた時、俺の墓地のモンスター1体をオーバーレイユニットとして、このカードの下に重ねることができる!俺は、《絶対服従魔人》を、オーバーレイユニットとする!」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:ORU0→ORU1

 

 

「何だと!そんな効果があったのか!」

「そう。だからお前が《ツイン・フォトン・リザード》を攻撃表示で立たせたままにしていたら、こいつの効果で、ライオネスで《ツイン・フォトン・リザード》を攻撃し、ライフを0にできたんだがな。まあ、守備表示にしたところで、逃がしはしないがな!手札から永続魔法、《パワー・ブラスト》を発動!(3)」

 

 

《パワー・ブラスト》

永続魔法

自分フィールド上のモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、相手に500ポイントのダメージを与える。自分フィールド上のモンスターが戦闘で破壊された場合、このカードは破壊される。

 

 

「これで俺のモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊する度に、500ポイントのダメージを与えていく。俺は《怒れる類人猿(バーサークゴリラ)》を、攻撃表示で召喚!(2)」

 

 

怒れる類人猿(バーサークゴリラ)》:攻撃力2000

 

 

「《Heaven's Fourth Lioness》と《怒れる類人猿》で、2体の《フォトン・サーベルタイガー》を攻撃!」

 

ライオネスが一飲みにし、バーサークゴリラが火炎放射で焼き払い、《フォトン・サーベルタイガー》を倒した。《パワー・ブラスト》によって爆風がカイトの目の前で発生し、彼を襲う。

 

「ぐわっ!」

 

 

カイト:LP4000→LP3500→LP3000

 

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド。(0)」

<カイト:伏せ1枚 ノックス:伏せ2枚>

 

「俺のターン!(2)ギャラクシーアイズ!バーサークゴリラを攻撃!」

 

 

破滅のフォトン・ストリーム!

 

 

「この時を待っていた!俺は、《Heaven's Fourth Lioness》のモンスター効果発動!」

 

「なにっ!このタイミングで…!」

「兄さん!」

 

ドロワが驚くのと同時にハルトはドロワのジャケットの裾を握っている手を強くした。

 

「相手ターンのバトルステップで、オーバーレイユニットを1つ使い、このカード以外のモンスターが攻撃対象となった時、攻撃対象をこのカードに変更する!この効果に対して、戦うモンスターの効果は発動できず、そのモンスターの効果は無効になる!」

「何!?」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:ORU1→ORU0

 

 

「これでは、カイトのギャラクシーアイズが《Heaven's Fourth Lioness》に倒されてしまう!」

「兄さんのギャラクシーアイズが!?」

 

カイトは素早くデュエルディスクのアクティベートスイッチを押し、罠カードを発動させる。

 

「罠発動!《模擬戦闘(バトル・シミュレーション)》!」

 

 

模擬戦闘(バトル・シミュレーション)

通常罠

モンスター同士の戦闘時に発動することができる。お互いのモンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで半分となり、戦闘では破壊されない。

 

 

「互いのモンスターはバトルでは破壊されず、攻撃力は半分となる!」

 

 

《銀河眼の光子竜》:攻撃力3000→攻撃力1500

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000→攻撃力2000

 

 

「これなら兄さんのギャラクシーアイズは守られる!」

「戦闘ダメージは受けても、わずか500ポイントだ。」

 

「俺のモンスターの攻撃力を下げるか。それは無駄なことだ!罠カード、《リクープ・エナジー》!」

 

 

《リクープ・エナジー》

通常罠

フィールド上のモンスター1体の攻撃力を元々の数値に戻す。戻した数値分、エンドフェイズまで、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力・守備力を下げる。

 

 

「モンスター1体の攻撃力を元に戻すぜ!これで、ライオネスの攻撃力は4000となり、2500の戦闘ダメージを受けてもらうぜ!」

 

再びライオネスが咆哮をあげ、鋭い爪を振り上げた。その場で飛び上がり、ギャラクシーアイズの翼を切り裂こうとするが、ノックスの視線はカイトの声で彼の方へと向けられた。

 

「かかったな!」

「なにっ!?」

「ギャラクシーアイズの効果発動!互いのモンスターをゲームから除外する!」

「何だと!?」

 

ギャラクシーアイズとライオネスの両者とも、その場で消え去り、フィールドには、バーサークゴリラのみが残った。

 

「あれ?兄さんのギャラクシーアイズは!?」

「安心しろハルト。ギャラクシーアイズの効果で、2体のモンスターがフィールドを去っただけだ。バトル終了時にはフィールドに戻る。」

 

「バカな、どういうことだ!ライオネスの効果で、ギャラクシーアイズの効果は使えないはずだ!」

「フッ。どこまでも二流のデュエリストのようだな。ライオネスの効果に対して、モンスター効果は使えないとお前は言った。ならば、他のカードを発動し、そのカードに対してギャラクシーアイズの効果を使ったまでだ!」

「何だと。そんなのアリかよ!じゃあ、俺の使った《リクープ・エナジー》は…」

「無意味なカードだった訳だ。」

 

カイトは一度呼吸をした後、改めて続けた。

 

「俺は貴様を許さん。貴様のような生半可なデュエリストに、好き勝手にはさせん。ゴーシュの無念、晴らしてやる。俺は速攻魔法、《銀河の宝札》を発動!」(1)

 

 

《銀河の宝札》

速攻魔法

バトルフェイズ中、お互いのフィールド上に存在するモンスターがゲームから除外された場合に発動することができる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。「銀河の宝札」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 

「ギャラクシーアイズの効果で、お互いのモンスターが除外された時に、カードを2枚ドローする!(3)そして、このバトルフェイズ終了時、お互いのモンスターはフィールドに特殊召喚される。」

 

 

《銀河眼の光子竜》:攻撃力3000

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000

 

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド。(2)」

<カイト:伏せ1枚 ノックス:伏せ1枚>

 

今のバトルフェイズの攻防で、一枚上手だったカイトに対し、少したじろいだノックス。彼は握りこぶしを作り、その拳を見つめる。

 

「俺は…負ける訳にはいかないんだ。」

「何?」

「俺は勝たなければいけない。」

「何のためにだ。己の使命のためか?」

 

蔑んだような表情でそう尋ねるカイトに、ドロワが口を挟んだ。

 

「子どもたちのためか?」

 

「なっ。」

 

「子ども…だと?」

 

「お前はゴーシュとデュエルする際に、部外者である子どもたちをどこかに追いやることはなかった。それは確かに、子どもたちに警察でも呼ばれれば面倒なことになるからと思ったのもあるのだろう。だが、そうだとしても、子どもたちを楽しませようとするデュエルを、私は見た。さらにお前は、ゴーシュを倒した後も、ゴーシュが意識不明になったことを知ったら彼らがショックを受けるだろうと思って、わざと私を使い、あれを演出であるように見せかけた。」

「やっぱり…そうなんですね。」

 

ハルトは寂しそうに言った。彼は並の境遇で育ってきた訳ではない。命の危険が伴う世界にいる兄と生きてきたのだ。彼には、人が意識を失っているかを見分けることなど、造作もないのだ。

 

「答えろ、ノックス!お前は本当にゴーシュを倒すためだけにデュエルをしてきた訳ではないのだろう!?」

 

しばらくは口を閉ざしたまま拳を見つめていたノックスだったが、そこまでドロワに問われると、彼女、そしてカイトとハルトを見て答えた。

 

「……そうだ。俺は元々、今の仕事に就くまでは、プロデュエリストだった。お前らの知っての通り、鬼頭豪(きとうごう)、いや、オーガーヘッドとして、デュエルをしていた。」

「きとう…ごう。それがお前の名前なのか。」

「ああ。俺が生まれてすぐ、親は2人とも病気で死んだんだ。そして施設に引き取られ、生活をしていたが、幼い頃から楽しみと言えばデュエルだけだった。そんな時、俺はデュエルを通して、世界中の人たちに希望を与えているプロデュエリストという存在がいることを知った。だから俺は、俺みたいに幼いながら辛い思いをする人たちに、希望を与えたい、そう思って、プロデュエリストになったんだ。俺はデュエルをする楽しさを子どもたちに教えたかった。だから俺のデッキは、当時のプロデュエリストたちが使うようなデッキよりも、少しばかり実戦で使えるカードが少なかった。その分を楽しさに与えたんだ。そうすると当然、俺のデュエルではランクが上になるにつれて勝てなくなっていったんだ。ゴーシュ。あいつに負けてから、あいつに負けてからは、俺は転落人生を歩んだ。」

 

再び彼の視線は、自身の手に注がれた。

 

「そこから連戦連敗。勝てない日が続き、スポンサーも俺の元から離れていった。最初は子どもたちに、それでも希望を与えたい。希望を与えられる子どもがいるのなら、俺は戦い続ける、と思っていたんだが、世の中そう甘くもない。事務所も追い出されてしまった。その後だ。敗北の恐怖かはわからないが、何か得体の知れない感覚が俺を襲うようになった。そして、心療内科に通うと…」

「パニック障害と診断を受けた訳だな?」

「そうだカイト。俺はそれ以降、パニック障害の治療に専念しようとしたが、俺はある日…」

 

ノックスは恍惚とした表情で、宙を見つめる。すると、彼の脳内には、何かが響き渡った。

 

『ノックス。そんなお話をしている暇はないと思うがね。』

(そ…その声は…ヘヴン!)

『もう、ここでこの仕事を辞めるかね?それでも良い。君の代わりは…いくらでもいる。』

(なっ。い、いえ、それは…)

『君にしかできない仕事だと思ったのだがね、残念だよ。』

(お待ちください!)

『ならばデュエルを続行するのだ。君はデュエルでカイトを倒す。それで良い。第一カイトを倒せば、今教えたことなど何の意味もない。彼は伝えられなくなるのだから。』

(は、はい。)

 

しばらく動かなくなったノックスに対し、ドロワは「どうした」と声をかけようとしたその瞬間、ノックスはデッキの一番上に指を置いた。

 

「お前たちに…お前たちに…これ以上話すことはない。」

「ノックス!聞きたいことならまだ…!」

 

「お前たちがこれを聞いても意味はない!お前たちはこれを聞いて、消え去る!ドロワ!お前も、カイトを倒した後、消し去ってやる!俺のターン!(1)そうだ。俺には、力で全てを薙ぎ払う。これしかない!最後に笑うのは…常に勝利者だっ!《Heaven's Fourth Lioness》の効果発動!自分のターンのスタンバイフェイズに、墓地のモンスター1体を、オーバーレイユニットにする!俺は《絶対服従魔人》を、このカードの下に重ねて、オーバーレイユニットにする!」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:ORU0→ORU1

 

 

「さらに、手札から魔法カード、《強欲で貪欲な壺》を発動!(0)」

 

 

《強欲で貪欲な壺》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

➀:自分のデッキの上からカード10枚を裏側表示で除外して発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

「デッキから10枚のカードを裏側表示で除外し、俺はカードを2枚ドロー!(2)」

「そこまでして手札を補充するか。」

「俺は勝利する。この力の象徴でな!俺はまず、ライオネスの効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカード以外のフィールドの全てのモンスターの攻撃力分、このカードの攻撃力をアップする!」

「今いるライオネス以外のモンスターは、バーサークゴリラと、ギャラクシーアイズ。2000と3000か。」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000→攻撃力9000

 

 

「わぁっ!また大きくなった!」

「大丈夫だハルト。カイトのギャラクシーアイズは、バトルでは破壊できない。」

 

「何度やろうと同じことだぞ、ノックス!」

「俺はこのデッキを組んだ時から考えていた。戦闘で倒せないモンスターがでてきた時の対処法をな。永続魔法、《地獄の結界》を発動!(1)」

 

突然ギャラクシーアイズを黒い魔法陣が囲んだ。ギャラクシーアイズはその場で悶え始め、力なくその場に倒れた。

 

 

《地獄の結界》

永続魔法

 

 

「ギャラクシーアイズ!!」

「《地獄の結界》は、フィールドに攻撃力2000以上のモンスターがいる場合に発動し、相手フィールドのモンスター1体の効果を無効にし、攻撃力を0にする。」

「くっ。」

「さらにこのカードの効果により、自分フィールドのモンスターを任意の数リリースすることで、相手の墓地のモンスターをその数だけ特殊召喚する!俺は、バーサークゴリラをリリース!!」

 

ドラミングをしながら、徐々にバーサークゴリラが透明になって消えていき、ギャラクシーアイズの隣に再び黒い魔法陣が現れ、そこから、カイトのモンスターが復活した。

 

「攻撃表示で蘇れ、《ツイン・フォトン・リザード》!!」

 

 

《ツイン・フォトン・リザード》:攻撃力0

 

 

「2体のモンスターはともに攻撃表示!バトルダメージを受けるぞ!」

「兄さんっ!!」

 

「とどめだ、カイト!《Heaven's Fourth Lioness》で、効果が無効化された、ギャラクシーアイズに攻撃!」

「させん!罠カード発動!《フォトン・サロゲート》!俺のモンスター1体をリリースし、攻撃対象をデッキから特殊召喚したレベル4以下のフォトンモンスターに変更し、バトルダメージを半分にする!」

「攻撃対象を変更する罠カードか。」

「俺は《ツイン・フォトン・リザード》をリリースし、デッキより…《フォトン・サークラー》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 

《フォトン・サークラー》

効果モンスター

レベル4/光属性/魔法使い族/攻撃力1000/守備力1000

 

 

今度は黄色の魔法陣に《フォトン・サークラー》がマントをたなびかせながら登場するが、すぐに腕を組んで守備表示となった。

 

「守備力1000。」

「攻撃を受けても、守備表示なら、ダメージは受けないぞ!」

「無駄だカイト!罠発動!《メテオ・レイン》!!」

 

 

《メテオ・レイン》

通常罠

このターン自分のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力

が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

 

「このターン、自分のモンスターが相手の守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃したモンスターの攻撃力が上回っていれば、貫通ダメージを与える!《フォトン・サークラー》の守備力は1000ポイント!《フォトン・サロゲート》の効果で、戦闘ダメージを半分にしても、4000ポイントの貫通ダメージだ!消え去れっ!!」

 

 

トライアンフ・ファング!!

 

 

「ぐあっ!!」

 

《フォトン・サークラー》が、目の前にバリアを作り出したが、即座にライオネスの突進攻撃で破壊され、そのまま鋭い牙で引き裂かれてしまった。

 

「フフフ…ハハハハハ!!……なっ!?」

 

 

天城カイト:LP3000→LP1000

 

 

「ライフが残っている!」

「兄さん!」

 

「やはり勉強不足というべきだな。《フォトン・サークラー》は、自身への戦闘ダメージを半分にする効果がある。これで戦闘ダメージは4000の半分、2000となった。」

「だが、永続魔法《パワー・ブラスト》の効果により、500ダメージを受けてもらう!」

「ぐっ!」

 

 

天城カイト:LP1000→LP500

 

 

「チッ。生き延びたか。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

<カイト:伏せなし ノックス:伏せ1枚>

 

「貴様には…負けん!」

「フッ。だが、強がりもここまでだ!《地獄の結界》の効果を受けたモンスター、つまり、ギャラクシーアイズを素材としてエクシーズ召喚した時、そのモンスターは破壊される!よって、ギャラクシーアイズはただのデクだ!」

 

カイトの目には、まだ希望は消えていない。彼のギャラクシーアイズが魔法陣の中に捉えられていようと、デュエルに勝つ術は残っている。彼はそう確信している。

 

彼自身はナンバーズハンターの活動を積極的には行わないものの、彼に宿ったナンバーズの力が、今再び彼に力を与えようとしている。

 

(俺もただ貴様らヘヴン、そしてバリアン七皇の襲来に、何もしていなかった訳ではない!それを今、貴様に教えてやる!!)

 

 

(次回に続く)

 

 

 

 




<今日の最強カード>
《Heaven's Fourth Lioness》


<次回の最強カード>
《No.90 銀河眼の光子卿(ギャラクシーアイズ・フォトン・ロード)
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力3000
レベル8モンスター×2
このカード名の➂、➃の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:「フォトン」と名の付いたカードをエクシーズ素材としているこのカードは効果では破壊されない。
➂:相手モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。その効果を無効にする。取り除いたエクシーズ素材が「ギャラクシー」と名の付いたカードだった場合、さらにそのカードを破壊する。
➃:相手ターンに発動できる。デッキから「フォトン」と名の付いたカードまたは「ギャラクシー」と名の付いたカード1枚を選び、手札に加えるか、このカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。


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第30話-決断

天城カイト

 

・LP500

・手札2枚

・(モンスター)《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》(ATK0)(∞)

・(魔法・罠)なし

 

 

ノックス

 

・LP1800

・手札0枚

・(モンスター)《Heaven's Fourth Lioness》(ATK9000)(ORU0)

・(魔法・罠)1枚/《パワー・ブラスト》(∞)/《地獄の結界》(∞)

 

 

 

「いくぞノックス!俺のターン!(3)俺は魔法カード、《ギャラクシー・チェーン》を発動!」

 

 

《ギャラクシー・チェーン》

装備魔法

自分フィールド上に「ギャラクシー」と名の付いたモンスターが表側表示で存在する時に発動することができる。相手の墓地に存在するモンスター1体を選択し、相手フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚して、このカードを装備する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃はできない。また、自分フィールド上にエクシーズモンスターが存在する限り、装備モンスターの攻撃力は0になる。

 

 

「貴様の墓地のモンスターを、貴様のフィールドに復活させる!さきほど地獄の結界で俺のモンスターを復活させてくれたな!そのお返しだ!ノックスのフィールドに復活しろ!《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》!!」

 

 

《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》:攻撃力2000

 

 

「だがギャラクシーアイズの効果は無効。攻撃力は0だ。それでどうするという?」

「慌てるな。俺は手札から、《銀河の魔導師(ギャラクシー・ウィザード)》を召喚!」

 

 

《銀河の魔導師》:攻撃力0

 

 

「攻撃力0のモンスターだと?」

「ギャラクシー・ウィザードの効果発動!自身のレベルを8にすることができる!」

「レベル8が2体…」

 

 

《銀河の魔導師》:☆4→☆8

 

 

「レベル8の2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

現れろ、《No.90 銀河眼の光子卿(ギャラクシーアイズ・フォトン・ロード)》!!

 

 

ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンのパーツを散りばめたような体色のモンスターが現れた。右手には大剣を持ち、左手には青い竜の首がモデルになったような、立体感がある盾を持っている。

 

「こいつは…ナンバーズ!?」

「俺はバリアンが攻めて来ることを予想していた。貴様らから宣戦布告されたことは少し予想に反したことではあったが、この世界に迫る脅威と戦う準備は、既にしていた!!俺は無駄な時間を過ごしていた訳ではない!」

「だが、そいつの召喚に意味はない!《地獄の結界》の効果発動!この効果の対象となったモンスターがエクシーズ召喚の素材となった時、そのモンスターは破壊される!」

 

自身の周囲に浮遊するオーバーレイユニットの1つから黒いオーラが出たかと思えば、フォトン・ロードを取り囲もうとした。

しかしフォトン・ロードは大剣ですぐにそのオーラを振り払った。

 

「なに!?」

「残念だが、フォトン・ロードは、フォトンモンスターがオーバーレイユニットになっている限り、カード効果で破壊されることはない!」

「くっ。そんな効果が!」

「さらに、貴様のパンサーウォリアーに装備された《ギャラクシー・チェーン》の効果により、装備モンスターの攻撃力は0になる。」

「そうか。お前がエクシーズモンスターをコントロールしているからか。」

 

 

《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》:攻撃力0

 

 

状況が見えたハルトは、デュエルは終了していないが、笑みを浮かべた。緊張から解けた、と言った方が適切か。

 

「やった!これで兄さんのフォトン・ロードが、パンサーウォリアーを攻撃して、ライフが0だね!」

「ああ…。」

 

ドロワはその傍ら、険しい表情であった。彼女の視線は、ノックスの不気味な笑みと、ノックスのフィールドの伏せカードに向けられていた。

 

「いけっ!ギャラクシーアイズ・フォトン・ロード!!パンサーウォリアーを攻撃!!」

 

「罠カード、《オーバーレイ・リバース》を発動!」

 

 

《オーバーレイ・リバース》

通常罠

 

 

「前のターンに俺がオーバーレイユニットを使った場合にその次のターンで発動できる罠カード!こいつはエンドフェイズまで、ライオネスのオーバーレイユニットとなる!」

「…」

「残念だったな、カイト!さらに《Heaven's Fourth Lioness》のモンスター効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、攻撃対象をこのカードに変更する!」

 

フォトン・ロードの目が光ったかと思うと、フォトン・ロードは自身の剣をパンサーウォリアーに対してではなく、ライオネスに向けた。

 

「まずい!これでは攻撃力2500で、9000に挑むことになるぞ!」

 

「終わりだカイト!迎え撃て!《Heaven's Fourth Lioness》!トライアンフ・ファング!!」

「俺はギャラクシーアイズ・フォトン・ロードの効果発動!相手のモンスター効果が発動された場合、オーバーレイユニットを1つ使い、その効果を無効にする!さらにこの効果で取り除いたオーバーレイユニットがギャラクシーと名の付いたモンスターだった場合、相手のカードを破壊する!」

 

 

フォトン・バニッシュ!!

 

 

「何だと!?」

 

剣に集めた光が徐々に広がり、そこから一筋の光線がライオネスに向けて放たれ、力の象徴ライオネスは石化したように動かなくなり、その後すぐ、ボロボロと崩れ落ちて行った。

 

「バカな。俺の…力の象徴が…俺が…負ける!?」

「止めだ!フォトン・ロード!攻撃力0のパンサーウォリアーを攻撃!」

 

「ぐあああああああっ!!」

 

 

ノックス:LP1800→LP0

 

 

宙を舞ったノックスだったが、すぐにコンクリートの地面にそのパッシブな彫刻のような体が打ち付けられた。カイトはすぐに駆け寄った。

 

「おいノックス!!ゴーシュは!!」

「フッ。カイト…さすがだな。俺…不勉強だったのか。エンターテイメントってのは、ある程度の強さがなけりゃ…成り立たなかったんだな。俺、お前のカードの効果…知らないのが…多すぎたのか。」

 

「そんなレベルではない!!」

 

「…カイト?」

「ヘヴンから与えられた使命とやらを忘れ、己の復讐のために、ゴーシュを、その力を使って倒してしまった。貴様のやっていることに、同情の余地はない!力を与えられた者なら、その力がどのように使われるべきなのかを…理解する必要があった!その点で貴様は終わっている!」

「…フッ。厳しいダメ出しだな。」

 

意識が朦朧とする中、カイトの浴びた罵声を聞き取ったノックスは、目を見開いて、カイトに、手に持っているカードを渡す。

 

「これは…《Heaven's Fourth Lioness》。」

「俺にできることは…もう、これしかない。デュエルに負けることは、クビを意味する。俺なりのケジメだ。受け取れ。」

「俺はこんなカードを使うつもりはない。」

「そういう意味じゃ…ない。俺…たち…ヘヴンのカードにカウンターする手段は…ヘヴンのカードを持っていることだ。そのカードがデッキにあれば…役に立つことが…あるはずだ。」

「なに?」

「…ヘヴンの力を使って負けた者の末路は…誰も知らない。残念だが…ゴーシュも、俺も…」

 

「子ども…そうだ。あいつら…頑張ってほしいなぁ…」

 

文脈がないと思った。言いたいことを羅列しているのだろう。息を切らしながらそう告げるノックスであったが、首が力なく傾いた。彼がそこから先、言葉を発することはなかった。

 

カイトが振り返ると、その場に崩れ落ちたドロワの姿が見えた。

 

「ゴーシュ。ゴーシュは…もう…目覚めんのか…!!」

 

彼女の鋭い眼差しがその場に倒れた筋肉隆々の男を捉えたかと思えば、彼女はヒールの音を響かせ、彼に飛び掛かるように接近し、胸倉を掴んだ。

 

「おい!!!ゴーシュはどうなるんだ!!寝てるんじゃない!!!答えろ!!!」

「やめろ、ドロワ。」

「ノックス!!お前の勝手なリベンジに付き合って、お前の…!!お前のッ……!」

 

彼女の両肩を抑えてカイトは彼女を引き起こした。大きく表情を変えたりすることは日ごろない彼女であったが、その時の涙でメイクが滅茶苦茶になっていた彼女の顔は、カイトに何も言わせなかった。

 

「カイト…カイト!私は…私はっ…!」

 

カイトは言葉をかけることはしなかった。ドロワは涙を自身の手で拭うと、再びその場に力なく跪いた。彼女の慟哭が、紅い空の下に響き渡っていた。

 

 

------

 

 

ギラグ :LP3000

アフタン:LP2000

 

 

「俺は、七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)の効果により、墓地のオーバーハンドレッドナンバーズを復活させる!蘇れ、《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》!さらにこいつをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!」

 

 

現れろ!CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド!!

 

 

少しずつ赤みが増す空の下、バリアン七皇の一人、ギラグと、かつて科学者だったという肩書きを持つ、アフタンのデュエルが路地裏で繰り広げられている。

 

「これが…君の、カオスナンバーズか。だが、私のフィールドには、《光の護封剣》が出ている。」

 

 

《光の護封剣》

通常魔法

このカードは発動後、フィールドに残り続け、相手ターンで数えて3ターン後の相手エンドフェイズに破壊される。

➀:このカードの発動時の効果処理として、相手フィールドに裏側表示モンスターが存在する場合、そのモンスターを全て表側表示にする。

➁:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、相手モンスターは攻撃宣言できない。

 

 

「これがある限り攻撃はできない。」

「攻撃もできないのに、カオスナンバーズを出す訳がねえだろ!」

 

ギラグのフィールドには伏せカードが1枚とカオスナンバーズが1体のみ。対するアフタンのフィールドには《光の護封剣》以外のカードは存在しない。

 

「まぁ、それもそうだがな。」

「魔法カード、《エクスチェンジ・ハンド》!自分フィールドのハンドモンスター1体と、相手フィールドの表側表示カードのコントロールを入れ替える!」

「私のカードと入れ替える!?それでは、君のナンバーズは…」

「甘いな!俺は、ジャイアント・ハンド・レッドの効果発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、フィールドの全ての表側表示カードの効果を、エンドフェイズまで無効にする!」

「なっ!そうか。私の《光の護封剣》を無効にするために!」

「おおっ!俺が思っているよりつえぇじゃねえか、ギラグよぉ!」

 

壁にもたれかかりながらそう言ったベクターを気にもせず、ギラグはアフタンに言う。

 

「今お前のフィールドには《光の護封剣》以外のカードはなく、お前のライフは2000!これで止めだ!ジャイアント・ハンド・レッドの攻撃!」

 

 

万死紅掌!!

 

 

ゆっくりとジャイアント・ハンド・レッドがアフタンの目の前に詰め寄り、掌を真上にあげたかと思えばそこから思い切り腕の形をした自身の体を振り下ろし、アフタンを握りつぶそうとした。

 

だが、彼を握りつぶす寸前のところで、光が漏れだしたのがギラグにもわかり、彼の笑みは顔から消えた。

 

「何!?何が起こった!?」

「残念だったな。私は墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果を発動させてもらったよ。このカードを墓地から除外して、モンスター1体の攻撃を無効にする。フィールドのカード効果を無効にすることはできても、墓地のカードまでは無効にできない。ジャイアント・ハンド・レッドといえど、完全無欠ではない。」

「モンスターの攻撃が無効にされたって言うのなら、俺は場の罠カード、《リターンバック・ボーナス》を発動!」

 

 

《リターンバック・ボーナス》

通常罠

 

 

「メインフェイズ2でしか発動できない罠カード。このターン、モンスターの攻撃が無効になった場合は、俺の墓地のモンスターエクシーズ1体を守備表示で特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする!蘇れ!《No.58 炎圧鬼バーナー・バイサー》」

 

 

《No.58 炎圧鬼バーナー・バイサー》:攻撃力1000

 

 

「またそのモンスターか。さきほどの一撃は、痛かったがな。」

「あれは…あいつがドン・サウザンドから得たナンバーズか。」

「もう説明はいらねえとは思うが…バーナー・バイサーの効果発動!オーバーレイユニットを全て使い、このカードを、俺のナンバーズに装備する!装備モンスターは、相手に直接攻撃をすることができる!さらに俺は、《オーバーレイ・リサイクル》を発動!こいつの効果で、墓地のジャイアント・ハンドを、ジャイアント・ハンド・レッドのカオスオーバーレイユニットにする!!ターンエンドだ!(1)」

<ギラグ:伏せなし アフタン:伏せなし>

 

(こりゃ本当に勝てるんじゃねえか?そしたら俺もわざわざ面倒な戦いをせずに済むってモンだぜ?)

 

アフタンは白衣についた土を払い、手札の4枚のカードを見つめている。《オーバーレイ・リサイクル》によって、ジャイアント・ハンド・レッドにカオスオーバーレイユニットが復活したことが厄介だと思っている。確かにジャイアント・ハンド・レッドの効果は強制的に発動する。発動さえしてしまえば、バーナー・バイサーも取り除かれるものの、効果が無効になってしまっては勝てるものも勝てない。ナンバーズはナンバーズでしか倒せない。しかしアフタンはナンバーズを所有していない。

 

この時ばかりは、ヘヴンズ・サードであることを捨て、ナンバーズを所有したいと思った。

 

「フッ。いけないな。そんなことを思っては。私のターン、ドロー!(5)私は手札から、《コアキメイルの鋼核》を除外し、《コアキメイル・マキシマム》を特殊召喚!(3)」

 

 

《コアキメイル・マキシマム》

効果モンスター

レベル8/風属性/ドラゴン族/攻撃力3000/守備力2500

このカードは通常召喚できない。自分の手札から「コアキメイルの鋼核」1枚をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から「コアキメイルの鋼核」1枚か「コアキメイル」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る。または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する事ができる。

 

 

 

2人の目の前には銀色のうろこを持つまるで機械仕掛けの龍のように見える、《コアキメイル・マキシマム》が出現した。口から吐き出そうとしているのは青白い火の玉か。

 

「それがお前のエースモンスターか。」

「《コアキメイル・マキシマム》は1ターンに1度、フィールドのカード1枚を破壊する!消えてもらおう!ジャイアント・ハンド・レッド!!」

「学習能力のねえ科学者が、粋がるんじゃねえ!俺はジャイアント・ハンド・レッドの効果発動!カオスオーバーレイユニットを使い、フィールドの全てのカードの効果をエンドフェイズまで無効にする!」

 

ジャイアント・ハンド・レッドが握っていたバーナー・バイサーも放り投げられたものの、《コアキメイル・マキシマム》が吐き出した青白い火の玉はその場で消え去った。

 

同時に、アフタンがその眼鏡の奥から覗かせた勝ち誇ったような表情を見ると、ベクターは突如慌て始めた。

 

「おいギラグ!こいつは…!」

「これで君のモンスターからカオスオーバーレイユニットがなくなった!私は、《コアキメイル・マキシマム》をリリースして、更なるエースモンスターを呼ばせてもらおう!出でよ、《コアキメイル・エクステンド》!!」

 

 

《コアキメイル・エクステンド》

効果モンスター

レベル9/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3800/守備力3300

 

 

まるで重油を浴びたかのようなドス黒い直方体の機械の塊がギラグの前の前に現れた。これではドラゴン族のモンスターかどうかがわかりにくい。

 

「何だこいつは!?」

「このモンスターは特殊召喚したターンに攻撃することはできない。だが、特殊召喚に成功した場合は、フィールドの全てのモンスターの攻撃力の合計の半分のダメージを相手に与えることができる!」

「何だと!?」

「《コアキメイル・エクステンド》自身は攻撃力3800ポイント。そして、ジャイアント・ハンド・レッドは攻撃力2600ポイント。合計すると、6400。それを半分にすれば…」

 

「さ…3200…!?」

 

 

ジェノサイド・ハボック!!

 

 

目の前の機械の塊の上部から粒子砲の砲塔が飛び出し、そこから光のエネルギーが集められたかと思えば、大型のレーザーが放たれ、ギラグは直撃を受けた。

 

「おい、ギラグ!!」

 

思わず声をあげたベクターだったが、ギラグは腕をクロスさせ、何とかその攻撃をガードすることには成功した。

 

 

ギラグ:LP3000→LP0

 

 

「私に勝てると思っていたのか?」

 

その場に跪いたギラグに少しずつアフタンが近づく。彼はデュエルディスクを構えており、何かをするつもりなのは間違いない。

 

ベクターはそれを阻止すべく、腕を前に伸ばし、バリアンの力を放った。咄嗟のことでアフタンは対応できず、それを腹部に受け、大きく後方に飛ばされた。

 

「うっ!邪魔をするな!」

 

「すまねえな、ベクター。」

「気にすんなよギラグ。今お前を助けたのは、お前を吸収するのは…あいつの役目じゃねえからだよぉぉぉ!!」

「なっ…!!」

 

ドン・サウザンドのシルエットがギラグには見えただろう。ギラグがたじろいだ一瞬、ベクターが再び前に手を翳すと、ギラグは瞬く間に紅い光の粒となって、消え去った。

 

(ア…アリト…す、すまねえ。)

 

当然それは、アフタンの目にも入っており、彼は驚きの表情でベクターを見ている。

 

「お前…何ということを!1人ならず2人までも!」

「何だ。情報早いじゃねえか。そうか。あいつか。俺と戦ったホワイトとクラウダーか。お前には感謝してるぜ。ギラグをやってくれたんだからよ!」

「…」

「だがお前に構う前に、探さなきゃならねえ奴が一人いるんだよ!」

「アリトか。」

「そう。俺が目を離した隙に勝手にどこかに行きやがって。」

「待て!お前の都合よく…」

 

ベクターを止めようとしたアフタンであったが、彼はデュエルディスクのディスプレイ画面を見ると、彼は舌打ちをした。

 

「招集か。さては誰かがやられたか…。ベクター。お前との決着は後だ。」

「そうこなくちゃな。慌てるナントカはもらいが少ないってな!」

 

 

------

 

 

ナンバーズクラブで会議をしよう。と鉄男が言い始めて15分が経過したが、特に何も進展はない。遊馬は相変わらず一言も彼らとは口を聞こうとしない。

 

「おい。今日はこれでお開きにしたらいいんじゃねえか、素直に。」

「遊士さん。」

「だって、遊馬だけじゃないだろ。辛いの。俺だってついさっき仲良くなった奴を失うのは、ちょっとさ。」

 

この状況が何かを打破してくれるとは思わないと遊士は思い、解散を提案したが、彼らの後方から聞こえてきた男の声がそれを棄却させた。

 

「おい。九十九遊馬はいるか?」

 

そこに立っているのは既にバリアルフォーゼを終えた状態のアリトであった。自分の名前が呼ばれたためか、遊馬はさすがに目線だけアリトに向けた。

 

「いやがったな、俺とデュエルだ!」

「やめろ!遊馬は今…」

「今…何だよ。どけ!部外者はすっこんでろ!」

 

「鉄男!!」

「鉄男くん!」

 

言葉の選択に迷っている鉄男を突き飛ばし、アリトは最も奥にいる遊馬にズカズカと歩みを進める。

 

「てめえの事情は知らねえが、デュエルは受けてもらう!」

 

今の遊馬がデュエルできる状態ではない。客観的に見て、アストラルとナンバーズという最も強力な力を持つデュエリストだからこそ感じている責任が、彼を襲っている。

 

徳之助がバリアン世界に飲み込まれてしまったのは、思えば遊馬のせいではない。だが彼の中は、自身がもう少し早く声を出せば、徳之助が飲み込まれるのを防げた。そういう思いでいっぱいなのだ。

 

遊士にとってはどうでも良いはずだ。彼らがどうなろうと、関係ない。今の自分に大切なのはユキ。ユキに近づくためには、ヘヴンとバリアン七皇の戦いに介入する必要がある、それだけだ。もしも遊馬の代わりにデュエルをしたとしても、ユキに近づけるとは思えない。挑まれたデュエルならまだしも、そうでないなら、黙っておくべきだ。

 

「邪魔だ。」

 

今度は遊馬の前に出ようとした委員長を払いのけた。彼は大きく姿勢を崩し、ベンチに頭を打ち付けてしまう。

 

「さあ遊馬。デュエルだ。」

「ちょっとアンタ!!遊馬とデュエルするなら、また今度に!」

「うるっせぇんだよ、女ぁ!」

 

血の気の通っていない表情であったアリトが、再三の横やりを受けてカッとなったその刹那、彼の拳を、学ランの男が止めた。

 

 

「お前いい加減にしろよ。」

 

 

「遊士さん!!」

「キャット!?」

「そ…そんな!」

 

「てめえ…草薙遊士。」

「俺はな、この場じゃ年長者なんだよ。先輩が尻尾巻いて逃げちゃ、格好つかねえんだよ!!遊馬とデュエルしたけりゃ、まず俺と戦いやがれ!!」

「てめえが俺と…?」

 

アリトはトゥールとの3人でのデュエルを思い出した。彼の脳裏に真っ先に浮かんだのは、ライジング・ソード。あのモンスターから放たれたオーラ。彼はあれには興味があった。

 

しばらく動かなかったアリトであったが、彼はその興味を示した。

 

「いいぜ。デュエルだ。あの時はサシじゃなかったからな。」

「そうこなくちゃな。けど、少し時間をくれよ。」

「時間だと?」

 

「遊士さん!!俺のために!!」

「勘違いしてんじゃねえ。お前にも戦ってもらう。このデュエル。遊馬!お前の、ナンバーズを俺に貸せ!」

 

遊士は遊馬のデッキケースを半ば強引に開いたが、メインデッキ以外にカードがないことがわかった。

 

「あれ…おい。お前、ナンバーズは!?」

「遊馬と連動しているナンバーズ、つまり私が預かったナンバーズは、遊馬と私しか使用できない。」

「はっ!?なんだよそれ。あいつはカオスナンバーズ使うんだぞ!分がわりぃだろ?」

「ごめん。」

「そんなトーンで謝るんじゃねえよ。だったらナンバーズなしで…」

 

「遊士。君には1枚だけ使えるナンバーズがある。」

 

「え?あんの?」

「遊馬が私と出会って得たナンバーズに関しては、君は使うことはできない。だが、たった1枚だけ、私と出会う前に、遊馬が得たナンバーズがある。それは…」

 

そこまで言うと、俯いてばかりいた遊馬が呟いた。

 

「ホープ。…希望皇ホープ。」

「そうだ。」

「ホープって、お前のエースの。」

「ホープには、私が彼と出会うトリガーとなる役割があった。私がナンバーズの回収を始める前に、唯一遊馬が持っていたナンバーズだ。これなら、私がデュエルに関与していなくても、使うことができる。」

「そうか!だったら遊馬。ホープを貸してくれ!」

 

遊馬は考えていたのか、話を聞いていなかったのか、恍惚とした表情であった。遊士は遊馬の両肩を抑え、鋭い眼差しで言った。

 

「仲間を守るんだろ!?だったらお前の力で、守って見せろ!デュエルは代わりにすんだからよ!」

 

意識を取り戻したかのように遊馬の表情が変わると、遊馬は、「お願いします!」と言って手に持っていたホープを彼に渡した。

 

「よし、いくぜアリト!」

「ホープをデッキに入れたくらいで、俺に勝てると思うなよ!」

 

「デュエル!!」

 

 

草薙遊士:LP4000

アリト :LP4000

 

 

デュエルディスクにはアリトの先攻だと書かれている。

 

「俺のターン!俺は手札から、《BKグラスジョー》を召喚!(4)さらに手札から、《BKスパー》を特殊召喚!(3)」

 

 

《BKスパー》

効果モンスター

レベル4/炎属性/戦士族/攻撃力1200/守備力1400

自分フィールド上に「BK」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。この方法で特殊召喚した場合、このターン自分はバトルフェイズを行えない。

 

 

「スパーは俺のフィールドにバーニングナックラーがいる場合、バトルフェイズを放棄して、特殊召喚できる!俺は2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

現れろ、No.79!!鳴り響け、勝利のゴングよ!神をも打ち砕くその拳で、その手に勝利を奪い取れ!BK新星のカイザー!!

 

 

《No.79 BK新星のカイザー》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク4/炎属性/戦士族/攻撃力2300/守備力1600

レベル4モンスター×2

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。自分の手札・墓地から「BK」と名のついたモンスター1体を選んで、このカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。このカードの攻撃力は、このカードのエクシーズ素材の数×100ポイントアップする。また、このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、その時にこのカードが持っていたエクシーズ素材の数まで、自分の墓地からレベル4以下の「BK」と名のついたモンスターを選択して特殊召喚できる。

 

 

「ターンエンド!(3)」

「いきなりナンバーズのお出ましか。」

 

 

(次回に続く)




<今日の最強カード>
《No.90 銀河眼の光子卿(ギャラクシーアイズ・フォトン・ロード)
エクシーズモンスター
ランク8/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力3000
レベル8モンスター×2
このカード名の➂、➃の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:「フォトン」と名の付いたカードをエクシーズ素材としているこのカードは効果では破壊されない。
➂:相手モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。その効果を無効にする。取り除いたエクシーズ素材が「ギャラクシー」と名の付いたカードだった場合、さらにそのカードを破壊する。
➃:相手ターンに発動できる。デッキから「フォトン」と名の付いたカードまたは「ギャラクシー」と名の付いたカード1枚を選び、手札に加えるか、このカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。


《次回の最強カード》
《ならず者傭兵部隊》
効果モンスター
レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1000/守備力1000
このカードを生け贄に捧げる。フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。


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第31話-遊士vsアリト!バリアンの熱き拳!

新年あけましておめでとうございます。遊戯王UAの作者のakcです。お読みいただきありがとうございます。

2019年最初の投稿となりました。今年こそ、定期的に新しい話を書いて、話をつなげていきたいと思っています!

新年早々よからぬ風が吹いている回ですが、よろしくお願いします!

それでは、31話をお楽しみください!


草薙遊士

 

・LP4000

・手札5枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

アリト

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)《No.79 BK新星のカイザー》(ATK2500)(ORU2)

・(魔法・罠)なし

 

 

「いきなりナンバーズか。」

「新星のカイザーの元々の攻撃力は2300だが、持っているオーバーレイユニット1つにつき、100ポイント攻撃力がアップする。よって、新星のカイザーの攻撃力は2500だ。」

 

「攻撃力2500か。」

 

遊士は手札の5枚のカードを見つめている。彼は攻撃力の話をされたこともあるだろう、攻撃力で新星のカイザーを上回ることばかり考えていた。

 

(大丈夫。今の俺には、このカードも、ナンバーズもある。)

 

ふと彼が思い出したのは、遊矢たちと別れる間際であった。

 

『これから厳しい戦いになるかもしれない。このカードを君に。』

『え?これ、レアカードだろ?いいのか?』

『私のデッキには入らないからな。』

『ヘイヘイ、アマリモノだったってことか。』

 

そのような皮肉めいた言葉をかけたものの嬉しかったことは事実だ。だが別に彼は、そのカードをお守りだとは認識していない。

 

 

「俺のターン!(6)俺は手札から、《切り込み隊長》を召喚!(5)」

 

 

《切り込み隊長》:攻撃力1200

 

 

「このモンスターは召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる!来い!《コマンド・ナイト》!!」

 

 

《切り込み隊長》:攻撃力1200→攻撃力1600

《コマンド・ナイト》:攻撃力1200→攻撃力1600

 

 

「攻撃力が上がった?」

「《コマンド・ナイト》の効果だ。自分の戦士族モンスターの攻撃力が400ポイントアップする。さらに手札から装備魔法、《デーモンの斧》!装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする!」

 

 

《コマンド・ナイト》:攻撃力1600→攻撃力2600

 

 

そのモンスターは、凛々しい姿の女戦士には似合わない悪魔の顔が象られた斧を構えた。

 

「攻撃力を上げて来たか。」

 

そのデュエルを見守るナンバーズクラブの表情は、晴れたものではない。この戦闘の結果が見えているからだ。

 

「いけっ!《コマンド・ナイト》!!」

 

斧を振り上げて荒々しく新星のカイザーを攻撃した。新星のカイザーはその左腕で攻撃を受け止めた。その光景を見た遊士は、それが何を意味しているかようやく理解した。

 

 

アリト:LP4000→LP3900

 

 

「無駄だ!ナンバーズはナンバーズ以外のモンスターとのバトルでは破壊されない!忘れたのかよ?」

「やべっ。まずった。攻撃力を上げるだけじゃ…ダメだった。」

「お前、この前戦った時から思っていたけどよ、お前のデュエルスタイルは、古いんだよ!そんなんじゃ、俺たちにはついてこれねえよ!」

「うっせえ!モンスターに装備魔法つけて攻撃力を上げる戦士族の戦い!それの何がわりぃんだよ?お前だって、戦士族じゃねえか、バーニングナックラーは!」

 

「そういうバカみたいに熱いだけなのは…意味がねえんだよ。」

 

「まあいいぜ。このデュエルではっきりするだろうぜ。俺のデュエルスタイルが、お前についていけないものなのかどうか!ターンエンドだ!(3)」

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし>

 

「俺のターン!(4)」

 

(けど、攻撃力2500の新星のカイザーなら、攻撃力2600のコマンド・ナイトは倒せないはずだ。たとえ新星のカイザーがナンバーズでしか倒せない奴だったとしても、壁モンスターにしかならないぜ。)

 

「ヘッ!モンスター効果発動!手札のバーニングナックラーをオーバーレイユニットにできる!俺は手札の《BKラビット・パンチャー》をオーバーレイユニットとする!」

 

 

《No.79 BK新星のカイザー》:ORU2→ORU3

《No.79 BK新星のカイザー》:攻撃力2500→攻撃力2600

 

 

「何!?攻撃力2600!?」

「さらに俺は手札から、《BKシャドー》を通常召喚!(2)」

 

 

《BKシャドー》:攻撃力1800

 

 

「《切り込み隊長》には、他の戦士族モンスターを攻撃対象にはできなくする効果がある。だったらまずは…シャドーで、《切り込み隊長》を攻撃!」

「ぐっ!」

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3800

 

 

「さらに、新星のカイザーで、《コマンド・ナイト》を攻撃!」

「くそっ!…うわっ!」

 

 

草薙遊士:LP3800→LP3700

 

 

「やばいキャット!!」

「とどのつまり、ライフは300しか減っていませんけど、モンスター2体が破壊されて、これは不利です!」

 

「ターンエンドだ。(2)」

<遊士:伏せなし アリト:伏せなし>

 

「まだまだ!俺のターン!(4)俺のデュエルは、何も戦闘だけじゃねえ!魔法カード、《増援》を発動!」

 

 

《増援》

通常魔法

自分のデッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を自分の手札に加える。

 

 

「デッキから戦士族モンスター1体を手札に加えるぜ!《ならず者傭兵部隊》を手札に加えて、通常召喚!」

 

 

《ならず者傭兵部隊》

効果モンスター

レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1000/守備力1000

このカードを生け贄に捧げる。フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

 

 

「なに…コイツは…!」

「もうわかっているよな?このモンスターは自身をリリースすることで、フィールドのモンスター1体を破壊する効果がある。これなら、バトルで破壊できないモンスターだろうと、関係ねえ!いけっ!《ならず者傭兵部隊》!!新星のカイザーを破壊しろ!」

「何…!?」

 

トゥールを交えて3人でデュエルをした時と同じように、ならず者傭兵部隊が一斉に声を上げ、それぞれの武器を振り上げて、新星のカイザーを破壊しにかかった。

 

新星のカイザーは、やがて煙に飲まれ姿が見えなくなり、《ならず者傭兵部隊》とともにフィールドから消えた。

 

「ヘッ!《No.79 BK新星のカイザー》の効果発動!オーバーレイユニットを持つこのカードが破壊された場合、その時持っていたオーバーレイユニットの数まで、墓地のレベル4以下のバーニングナックラーを特殊召喚できる!」

 

 

テイク・オーバー・ソウルズ!!

 

 

《BKグラスジョー》:☆4/攻撃力2000

《BKスパー》:☆4/攻撃力1200

《BKラビット・パンチャー》:☆3/攻撃力800

 

 

「何だと…」

 

「まずいぜ!相手のフィールドに、BKシャドーも含めれば、モンスターが4体!」

「次のターンに総攻撃を受けたら、ライフが0になるキャット!!」

 

鉄男とキャッシーがそう言う一方、遊士は冷静に手札を眺めている。

 

(零児…お前からもらったカード。無駄にはしない。この状況は当然想定済みだ。)

「カードを2枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<遊士:伏せ2枚 アリト:伏せなし>

 

バリアンのつけている仮面の下から、彼の表情が見え隠れする。勝利を確信している訳ではなさそうだったが、どう思っていようと、遊士の取る戦略は一つしかない。

 

「俺のターン!(3)覚悟はいいな、草薙遊士?スパー!!ダイレクトアタックだ!」

「かかったな!くらえ!罠カード発動!《閃光のバリアーシャイニング・フォース-》!!」

 

 

《閃光のバリア-シャイニング・フォース-》

通常罠

相手フィールド上に攻撃表示モンスターが3体以上存在する場合、相手の攻撃宣言時に発動する事ができる。相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 

 

「攻撃表示モンスターが3体以上いる場合、相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊するぜ!」

「なにっ!このタイミングで…シャイニング・フォースだと!?」

 

スパーが飛び上がって遊士に上空から額に向かってパンチを浴びせようと思ったところで、彼の周囲をバリアが覆った。そのバリアに触れたスパーの拳から、まるで彫刻の作品にひびが入っていくようにして、スパーが破壊され、その背後にいたグラスジョー、ラビット・パンチャー、シャドーも閃光を受け、次々と切り裂かれていった。

 

遊士のフィールドにモンスターがいないが、一気にアリトのフィールドが空になったことで、鉄男たちの顔も明るくなった。意気消沈していた遊馬の顔も、明るくなった。

 

「少しはやるじゃねえか、草薙遊士。正直てめえを舐めてたかもな。だが、まだ俺のターンは終わってねえ!グラスジョーの効果発動!カード効果で破壊された時、墓地のバーニングナックラー1体を手札に加える!俺は墓地から、《BKスパー》を手札に加えるぜ!さらに手札から、《BKヘッドギア》を通常召喚!(3)」

 

 

《BKヘッドギア》(アニメ版)

効果モンスター

レベル4/炎属性/戦士族/攻撃力1000/守備力1800

フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードは、1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。

 

 

「さらに魔法カード、《バーニングナックル・スピリッツ》を発動!(2)」

 

 

《バーニングナックル・スピリッツ》

通常魔法

デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動できる。

自分の墓地の「BK」と名のついたモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。「バーニングナックル・スピリッツ」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 

「デッキの一番上のカードを墓地に送り、墓地からバーニングナックラー1体を守備表示で特殊召喚する!デッキの一番上の《ラスト・カウンター》を墓地に送り、蘇れ!《BKシャドー》!!」

 

 

《BKシャドー》:守備力1400

 

 

「さらに俺は手札から、《BKスパー》を特殊召喚!俺のフィールドにバーニングナックラーがいる場合、特殊召喚できる!(1)」

「なに…モンスターがあっという間に3体だと!?」

「だから言ったろ?お前は俺には…ついてこれねえってなぁ!3体のレベル4バーニングナックラーモンスターで、オーバーレイ!!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

現れろ、《No.105 BK流星のセスタス》!!

 

 

「また来たか、オーバーハンドレッドナンバーズ!!」

「お前の虚勢もここまでだぜ。カードを1枚伏せ、ターンエンド!(0)」

<遊士:伏せ1枚 アリト:伏せ1枚>

 

「あれは…我々も戦ったナンバーズだ、遊馬!」

「戦闘で受けるダメージを跳ね返す効果があったはず。そうだったよな、アストラル?」

「ああ。」

 

「戦闘で受けるダメージを跳ね返すだと?」

「そうよ。だからてめえが攻撃力を上げてきても、無意味だってことだ!」

 

遊士はそこまで言われても、動揺はしなかった。彼は自分のフィールドの伏せカード1枚を一瞥し、カードを引く。

 

「ドロー!(2)罠カード、《昇華する戦士の魂》を発動!」

 

 

《昇華する戦士の魂》

通常罠

 

 

「墓地の戦士族モンスター1体を、モンスター効果を無効にして特殊召喚できる!蘇れ、《コマンド・ナイト》!」

 

 

《コマンド・ナイト》:守備力1900

 

 

「さらに手札から、《ビッグ・シールド・ガードナー》を召喚!」(1)

 

 

《ビッグ・シールド・ガードナー》:攻撃力100

 

 

「いくぜ遊馬!いよいよお前の出番だ!2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

来い、《No.39 希望皇ホープ》!!

 

 

遊馬を幾度となく救ってきたエースモンスター、希望皇ホープがフィールドに現れると、彼らは目を光らせた。

 

「おおお!」

「やったわ、希望皇ホープよ!」

「とどのつまり、遊馬くんのカードを、しっかり使いこなしていますよ!」

 

 

「ほぉ。使ってきたか。希望皇ホープを。だがフィールドに立たせるだけなら誰だってできるぜ。レベル4のモンスターを2体用意すりゃいいだけなんだからな。」

「だったら、このホープで、お前の流星のセスタスを倒してやろうか!」

「何…?」

 

 

《No.39 希望皇ホープ》:攻撃力2500→攻撃力3300

 

 

「攻撃力が上がっただと!?」

「罠カード、《昇華する戦士の魂》で特殊召喚したモンスターを素材としてエクシーズ召喚されたモンスターの攻撃力は800ポイントアップし、攻撃する際、相手モンスターの効果は無効になる!」

「何だと!?モンスター効果を無効に!?」

「いくぜ!希望皇ホープで、流星のセスタスを攻撃!」

 

 

ホープ剣・スラッシュ!!

 

 

ホープはブーメランのようにして自らの剣を流星のセスタスに投げつけた。セスタスはモンスター効果が無効にされたためか、モノトーンカラーとなり、効果を発動することもできず、その場で真っ二つに切られた。

 

 

アリト:LP3900→LP3100

 

 

「何っ!?ぐっ…ぐああああっ!」

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

<遊士:伏せ1枚 アリト:伏せ1枚>

 

アリトは流星のセスタスが破壊された時に出た爆風により吹き飛ばされており、遊士の数メートル先で片膝をついている。

 

「クッ。」

「もうお休みかい?」

 

「お前…一つ聞くがよ、ギラグに勝ったのもあって、デュエルには相当な自信があるみてえだが、俺たちに勝てると本気で思ってんのか?」

「当たり前だ。人からどんなに古いといわれようが、何だろうが、勝てるなら文句ねえ。」

「だったらお前に見せてやる。あぁそうだ。遊馬ぁ!!お前も見ておけよ!俺たちバリアンの、真の切り札を!」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

 

紅い閃光と共にドローしたアリトと、その際に発せられた言葉。その2つが遊士に目の前で行われたナッシュとベクターとのデュエルを思い出させた。

 

「まさか…てめえも!」

「魔法カード、《RUM-七皇の剣》を発動!」

 

「ザ…セブンス…ワン!?」

 

「こいつは、俺のモンスター1体をランクアップさせ、カオスナンバーズへと進化させる!」

 

その説明を聞くと、腕組みをしてみていたアストラルが声を発した。

 

「バカな!彼のフィールドには、モンスターはいないはず!?」

「だったら、墓地から復活させるまでよ!このカードは、墓地あるいはエクストラデッキからオーバーハンドレッドナンバーズを復活させることができるんだよ!!蘇れ、ランク4、《No.105 BK流星のセスタス》!!」

 

黒い魔法陣がアリトの目の前に現れ、そこからセスタスが出て来たかと思えば、セスタスはすぐに紅い光となって天空へと昇った。

 

「さらに、セスタスをエクシーズ素材として、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!!」

 

 

闇を飲み込む混沌を!光を以て、貫くが良い!カオス・エクシーズ・チェンジ!!現れろ、《CNo.105 BK彗星のカエストス》!!

 

 

「遂に来たか。お前のカオスオーバーハンドレッドナンバーズ!!」

 

 

《CNo.105 BK彗星のカエストス》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク5/炎属性/戦士族/攻撃力2800/守備力2000

レベル5モンスター×4

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

また、このカードが「No.105 BK流星のセスタス」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

「だが、攻撃力2800じゃ、ホープは倒せねえ!」

「戦闘だけが…デュエルじゃねえんだろ?カエストスの効果発動!カオスオーバーレイユニットを一つ使って、相手モンスター1体を破壊し、攻撃力分のダメージを与える!」

「何!?」

 

背中から四方に飛び出ている突起物より、光が集束し、ホープの腹部を貫き、そのまま内臓をえぐり取るかのようにして大きく吹き飛ばし、ホープは遊士の上空で破壊された。

 

「ぐああああっ!」

 

「遊士さん!!」

 

爆風によって遊士も大きく吹き飛ばされた。仰向けになって倒れている遊士を、カエストスは見下ろしている。

 

 

草薙遊士:LP3700→LP400

 

 

「さぁ、直接攻撃で止めだ!」

「まだだ!!ホープの魂は、俺のエースへと受け継がれる!罠カード発動!《ライジング・アライブ》!」

 

 

《ライジング・アライブ》

通常罠

自分フィールド上に存在する戦士族モンスターが相手モンスターの攻撃または相手のカード効果で破壊された時に発動することができる。自分のデッキからレベル5以上の戦士族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン戦闘またはカード効果では破壊されない。

 

 

「俺の戦士族が破壊された時、レベル5以上の戦士族モンスターを守備表示で特殊召喚する!来い、《剣聖-ライジング・ソード》!!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:守備力2000

 

 

「だが、そいつじゃ、俺のモンスターの攻撃は防げねえ!」

「《ライジング・アライブ》で特殊召喚されたモンスターはこのターン、バトルでは破壊されない!」

「なにっ!」

 

彗星のカエストスの拳から放たれた炎の塊を己の剣で受け止めたライジング・ソードは、そのまま剣の角度を鋭角にすることでその塊の軌道を逸らし、攻撃をかわした。

 

「ターンエンドだ。(0)」

<遊士:伏せなし アリト:伏せ1枚>

 

ピンチの再訪に、思わずキャッシーは声をあげる。

 

「ねぇ、あのライジング・ソードって、どんな効果を持っているの?」

「いや、俺も見たことがねえ。」

「とどのつまり、僕も。」

「何か…凄そう。」

 

「あれは、通常モンスターだから、効果はないぜ。」

 

そう言ったのは彼らよりも後ろにいた遊馬であった。その発言に、ナンバーズクラブの面々は目を丸くした。

 

「ええっ!?」

「マジかよ!?それじゃ、どうやって…」

 

「そう思うかよお前ら?」

 

遊士のそのセリフが聞こえると、彼らは揃ってばつが悪い顔をした。しかし遊士は別に眉を寄せている訳ではなかった。

 

「お前がバリアンズ・カオス・ドローを使ってセブンス・ワンを引き当てたように、俺も、引き当てて見せる!いくぜ!ライジング・ソード!!俺に力を貸してくれ!!」

 

褐色のオーラを、ライジング・ソードが纏い始めた。続けて遊士がカードをドローしたが、そのドローの軌跡もまた褐色であった。

 

「何だ…あれ!?」

「とどのつまり、今、はっきり見えましたよね!?」

「遊士さんの…ドローって。」

 

「そんな偶然がいつまでも続く訳が…」

 

「俺は手札から、《懸崖の宝札》を発動!(0)」

 

 

《懸崖の宝札》

通常魔法

以下の効果の中から可能な限りを適用する。「懸崖の宝札」は1ターンに1枚しか発動できない。

●自分のライフポイントが相手のライフポイントの半分以下の場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●自分フィールド上に存在するモンスターの攻撃力の合計が、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力の合計を下回っている場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●自分の手札がこのカード1枚の時にこのカードを発動した場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「俺のライフがお前のライフの半分以下で、攻撃力がお前のモンスターより低く、手札がこの1枚のため、カードを3枚ドローだ!!(3)」

「なにっ!?3枚のカードをドローだと!?」

「当然この3枚のドローも、俺に勝利をもたらすぜ!《戦士の生還》を発動!(2)墓地の戦士族モンスター1体を手札に加える!戻ってこい!《ならず者傭兵部隊》!!そしてこいつを、召喚!」

 

 

《ならず者傭兵部隊》:攻撃力1000

 

 

再び汚らしい格好をしたならず者傭兵部隊がアリトの前に現れた。いまにもその槍で彗星のカエストスの喉仏を突き刺すべくと動き出そうとしている。

 

「ならず者の効果を、もう1回くらえ!!」

 

ならず者のうちの1人が先陣を切って長い槍を突き刺そうとすると、カエストスはそれを交わし、後方に出現したワームホールのようなところへと消えてしまった。

 

「なにっ!?かわされた!?」

 

ならず者たちがウロウロしていたが、やがて標的を見失ったことを理解し、肩を落とし、力なくその場に座り込んでしまった。

 

「俺は罠カード、《インテンショナル・リングアウト》を発動した。バーニングナックラーと名の付くモンスターの効果破壊を無効にして、互いのフィールドの全てのモンスターを、それぞれの次のスタンバイフェイズまで除外する!さあ、お前にも消えてもらうぜ、《剣聖-ライジング・ソード》!!」

 

ワームホールが突如出現し、その後ろから現れたカエストスがライジング・ソードを羽交い締めにして、そのまま2体ともワームホールに消えてしまった。

 

「ライジング・ソード!!」

「ハハハ!お前の自慢のドローも、そいつがいなけりゃ無意味だぜ!」

「クソッ!」

「さらに、《インテンショナル・リングアウト》には、もう1つ効果がある!自分のエクストラデッキからランク4のモンスターエクシーズ1体を守備表示で特殊召喚する!」

 

 

現れろ!No.80!猛りし魂に取りつく、呪縛の鎧!狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク!!

 

 

「やばい!ここに来てナンバーズかよ!」

「でも、エクシーズ召喚じゃなければ、とどのつまり、オーバーレイユニットはありませんよ!」

「だけど、ナンバーズはナンバーズでなければ倒せニャい…」

 

「しかも遊馬。あのカードからは、ドン・サウザンドの力が感じられる。」

「何だって!?じゃあ、アリトは、ドン・サウザンドに…!!」

 

 

《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》:守備力1200

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(1)」

<遊士:伏せ1枚 アリト:伏せなし>

 

「俺のターン、ドロー!(1)このスタンバイフェイズに、《インテンショナル・リングアウト》で除外された彗星のカエストスは、フィールドに戻る!!」

 

 

《CNo.105 BK彗星のカエストス》:攻撃力2800

 

 

「チッ。戻ってきたか。」

「何を伏せているかは知らねえが、これがてめえのラストターンだ!魔法カード、《RUM-バリアンズ・フォース》を発動!《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》をエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.80!!魂を鎮める旋律が、十全たる神の世界を修復する!!我にすがれ!葬装覇王レクイエム・イン・バーサーク!!

 

 

「なにっ!?こいつまでカオス化させた!?だが、そいつの攻撃力も0じゃねえか!」

「あぁ。元よりこのモンスターは攻撃ができないナンバーズだ。だが!レクイエム・イン・バーサークの効果発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドのカード1枚をゲームから除外する。」

 

力強い拳を放ち、遊士の伏せカードを打ち抜こうとしたが、その瞬間に遊士の伏せカードが開かれた。

 

「罠カード、《戦線復帰》!!」

 

 

《戦線復帰》

通常罠

自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

 

「墓地のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する!蘇れ、《ビッグ・シールド・ガードナー》!!」

 

 

《ビッグ・シールド・ガードナー》:守備力2600

 

 

「守備力2600だと?そんな壁モンスター、カエストスの拳で打ち砕いてやるぜ!」

「だが残ったレクイエム・イン・バーサークじゃ、俺のライフは0にできねえ!」

「だったら、こうしようか。俺はレクイエム・イン・バーサークの、もう一つの効果発動!このカードを俺のフィールドのモンスターエクシーズに、攻撃力2000ポイントアップの装備カードとして装備することができる!」

 

 

《CNo.105 BK彗星のカエストス》:攻撃力2800→攻撃力4800

 

 

「攻撃力4800だと!?」

「カエストス!!《ビッグ・シールド・ガードナー》を攻撃!」

 

 

コメット・エクスプロージョン!!

 

 

カエストスは今度は直接その拳で《ビッグ・シールド・ガードナー》を砕いた。自身の体を隠せるほどの大きさの盾を持ったモンスターであったが、カエストスの前には、紙きれのようなものだったのかもしれない。

 

「さらに、カエストスは、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える!くらえっ!遊士!!!」

 

再びカエストスが拳を前に振ると、拳から出た炎が遊士を襲った。炎に直撃することこそなかったが、爆風を受けた遊士は宙を舞い、一回転してうつ伏せに倒れた。

 

「ぐうっ!!」

 

 

草薙遊士:LP400→LP350

 

 

「遊士さん!!」

 

(ち…ちくしょう。ライジング・ソードが戻ってくるのは、次の俺の…スタンバイフェイズ。スタンバイフェイズは、ドローの後。これじゃ、この状況を打破できるカードは…引けねえのか。ダメなのか。俺は結局、ライジング・ソード頼みだったってことか。)

 

遊士は公園の砂利を握りしめた。石を握りつぶそうとする程の強い力で、握りしめていた。

 

(俺、デュエルじゃ負けねえって思ってた。俺一人でも、バリアン七皇も、ヘヴンズ・チルドレンもぶっ飛ばして、ユキを救えるって…思ってた。でも、サシだったら負けねえとか言っておいて、このザマか。俺は…無力なデュエリストだったんだな。

 

 

ごめんな、ユキ。)

 

 

遊士は目をつぶりかけていた。かすかに、声をあげているナンバーズクラブの面々が見える。

 

 

(鉄男、委員長、キャットちゃん、小鳥…そして…遊馬。)

 

 

遊馬、そしてアストラルを捉えたその刹那、彼は意識を手放し、同時に白い空間が彼の目の前に広がっていった。

 

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《ならず者傭兵部隊》
効果モンスター
レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1000/守備力1000
このカードを生け贄に捧げる。フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。


<次回の最強カード>





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第32話-新たな切り札!アセンションナンバーズ

草薙遊士

 

・LP350

・手札1枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

アリト

 

・LP3100

・手札0枚

・(モンスター)《CNo.105 BK彗星のカエストス》(ATK4800)(+)

・(魔法・罠)《CNo.80 葬装覇王レクイエム・イン・バーサーク》(+)

 

 

遊士が意識を手放したが、彼には何か得体のしれない光景が広がってきた。青白い閃光が彼の周囲を包む光景であった。まるで異空間である。

 

「これは…」

 

思わず遊士はうつ伏せの状態から顔を前に向けると、目の前にはアリトはいない。彼の目の前にいるのは、《剣聖-ライジング・ソード》。そして左側に視線を移すと、そこには遊馬とアストラルが見える。しかし他のナンバーズクラブの面々は誰も見えない。

 

「あ…?」

 

遊士はわざとらしく目をこすって見せたが、その光景がデュエルフィールドに切り替わることはなかった。彼の腕にも、デュエルディスクがつけられている訳ではない。

 

「遊士さん!」

 

遊馬が声をかけてきたことで、彼のおぼろげなその意識は、はっきりとしたものになった。自身の外傷も忘れ、彼はパッと立ち上がった。

 

「遊馬。それに…アストラル!?俺は…どうして…!?負けたのか?いや、俺の目の前には…ライジング・ソード。」

「遊士さん!何か…聞こえます!!」

 

遊馬がそう言うと、遊士の目の前に、半透明の希望皇ホープが現れた。

 

「ホープ!?蘇ったのか!?」

 

ホープとライジング・ソードは、遊士に顔を向けた。そうして2体は同時に頷いた。その光景は、遊士に思い出させた。遊矢と初めてデュエルアカデミアで戦い、その際、2人で見た閃光に包まれたオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと彼と自身との空間を。

 

『希望皇ホープ…このカードが我々には必要だな。サブリメイションカードと組み合わせ…全ての次元が新たなるステージに進むための存在に進化させる必要がある。』

『なるほど。カオスナンバーズではない、別の形の希望皇ホープという訳か。サブリメイションナンバーズか?』

『いやいや、我々のナンバーズならば、アセンションナンバーズが相応しい。』

『それは良いな。しかしそのためには…アセンションのカードと、サブリメイションの力を持ったカードを持つ者の力をぶつけなければ…』

『心配するな。ある程度、見立ては立てている。』

 

「おい、またお前!!おい、てめえはっ…」

 

声だけが脳裏に響いた。実体はない。遊士は姿の見えない存在に苛立ちを覚えつつも、彼らの言った言葉が、気にかかっていた。

 

「アセンションナンバーズ。」

「お前らにも聞こえたな、今の!?」

「あ…ああ。」

 

アストラルは黙って頷いていた。それを見た遊士は、この2体の力を重ねる。それこそが自分が新しい力を手にする方法だと確信した。

 

「まだ負けてはいない!!遊士。なぜこの白い光景が我々に見えるのかはわからない。だが、ここに我々が立っていることには、意味があるはずだ!」

「ああ、アストラル!!言われなくたって、わかってる!!俺は…この光景を信じる!」

 

 

遊士がほんの2秒ほど目を瞑って再び目を開くと、彼の目の前に真っ先に見えたものはレクイエム・イン・バーサークを装備したカエストスであった。その後方には、苛立ちを募らせているアリトも見える。

 

「おい、いつまで待たせてんだよ!?ようやく立ち上がったかと思えば、ボケっとしやがって。」

「待たせたな、アリト。このデュエル、勝たせてもらうぜ。」

「ハッ!寝言は寝ていいやがれっ!」

「俺のターン。」

 

(遊馬、アストラル。俺がこのデュエルで勝つには、さっきの状況を作るしかない。俺は一人の力でも勝てると思ってた。お前らの『カード』、デュエルモンスターズとしての『カード』さえあればそれでいいって。ナンバーズさえいればいいって。けど、ちげえ。俺には、お前らの『カード』じゃなく、お前らの『力』が必要なんだ!)

「俺に力を貸してくれ。遊馬、アストラル。」

 

「もちろんだ、遊士さん!!!」

「我々の思いを、受け取ってくれ、遊士!!」

 

「ドロー!!(2)このスタンバイフェイズに、《インテンショナル・リングアウト》の効果で除外されていた、ライジング・ソードが、俺のフィールドに戻る!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:守備力2000

 

 

「さらに魔法カード、《死者蘇生》を発動!(1)」

「誰を蘇らせようと、ただの壁モンスターにしかならないぜ!」

「戻ってこい、《No.39 希望皇ホープ》!!」

 

 

《No.39 希望皇ホープ》:攻撃力2500

 

 

「遊馬!お前の力を、貸してくれ!!俺は…ランク4のホープと、レベル7のライジング・ソードで、オーバーレイ!!」

 

「何だと!?そんな、バカな!?」

 

「う…嘘だろ!?ホープとライジング・ソードじゃ、レベルもランクも…バラバラ!」

「とどのつまり、ただのエクシーズ召喚じゃない…!?」

「どうなってるキャット!?」

「遊馬と遊士さんの力が…1つに!」

 

2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!新たなる地平を切り開く光!希望という名の力となり、我が剣に宿れ!アセンションエクシーズ!!いくぜ、これが俺の、新たなる切り札、《ANo.(アセンションナンバーズ)39 希望剣聖-ホープ・ザ・ライジング》!!

 

 

《ANo.39 希望剣聖-ホープ・ザ・ライジング》:攻撃力2500

 

 

全く異なるレベル、ランクを持つ2体のモンスターが重なってできたホープ・ザ・ライジング。ライジング・ソードの鎧の模様が白と黄色を基調としたものになり、兜も金色ではないが、光沢のある黄色となっている。凛々しい表情はそのままに、ロングソードには黄色のオーラが纏っている。

 

「ホープとライジング・ソードが合体した!?」

 

「いや、これは合体したというより…ライジング・ソードに、ホープの要素が詰まった!?」

「すっげえぜ、遊士さん!!」

 

「だが攻撃力は2500。たったの100ポイントしか変わってねえじゃねえか!」

「この100ポイントの差はでかいぜ。遊馬のホープ、そして俺が元々来たところで戦った遊矢のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。どっちも攻撃力は2500だ。そして俺のエースは、2400だった。こいつは、仲間の力を得て、その力を上昇(ライジング)させることができるんだ!」

「なに…?」

 

「いくぜ!まずは、ホープ・ザ・ライジングの効果を発動!1ターンに1度、デッキからカードを1枚ドローできる!」

 

遊士がカードを引く時に、ホープ・ザ・ライジングの体が発光した。ホープの力を得たからか、体は黄色く発光し、遊士のドローの軌跡は、変わらず褐色であった。

 

「また…!?」

 

 

(なにっ!?このカードは…)

 

遊士はドローカードを見ると、思わず遊馬に顔を向けた。彼とはすぐに目が合い、遊馬はその場で頷いた。そのカードを使って勝て、そういう意味だったのだろうか。

 

「バトル!《ANo.39 希望剣聖-ホープ・ザ・ライジング》の攻撃!」

「何!?自分より攻撃力の高いモンスターに攻撃するだと!?」

「さらにこの瞬間、オーバーレイユニットを1つ使い、ホープ・ザ・ライジングの効果発動!モンスター1体の攻撃を無効にし、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を0にする!」

 

 

《ANo.39 希望剣聖-ホープ・ザ・ライジング》:ORU2→ORU1

《CNo.105 BK彗星のカエストス》:攻撃力4800→攻撃力0

 

 

ホープ・ザ・ライジングが剣を一振りし、光をカエストスに浴びせると、カエストスの纏っていた紅いオーラが消え、肩を落とした。戦意喪失とでも言うべきか。

 

「カエストスの攻撃力が0に!…だが、モンスターの攻撃が無効になるなら、このバトルでは俺を倒すことはできない!」

「それはもちろんわかってるに決まってるだろ!速攻魔法、《ダブル・アップ・チャンス》を発動!」

 

 

《ダブル・アップ・チャンス》

速攻魔法

モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスター1体を対象として発動できる。このバトルフェイズ中、そのモンスターはもう1度だけ攻撃できる。この効果でそのモンスターが攻撃するダメージステップの間、そのモンスターの攻撃力は倍になる。

 

 

「バカな!?《ダブル・アップ・チャンス》だと!?そいつは遊馬の…」

「ホープ・ザ・ライジングが、俺に力をくれた。俺と遊馬、アストラルの力が合わさったカードがな!」

 

 

《ANo.39 希望剣聖-ホープ・ザ・ライジング》:攻撃力2500→攻撃力5000

 

 

「いけぇっ!!ホープ・ザ・ライジング!彗星のカエストスを攻撃!」

 

 

ホープ剣・ライジングスラッシュ!!

 

 

ロングソードが一振りされると、剣先からは別の剣がクルクルとブーメランのようにしてカエストスに向かっていく。それは紛れもなく、希望皇ホープの使っている剣であった。それがカエストスの腹部に刺さり、直後に袈裟懸けの形で、ホープ・ザ・ライジングがロングソードでカエストスを切り裂いた。

 

「グッ…ぐああああああああっ!!」

 

 

アリト:LP3100→LP0

 

 

カエストスとそれに装備されていたレクイエム・イン・バーサークの体から出たバリアンの瘴気の影響か、ハートランド中央公園の地面に亀裂が生じ、爆風に吹き飛ばされたアリトは地面の裂け目に消えて行った。

 

(くそ…この俺が…)

 

「アリト!!」

 

遊士たちが裂け目をのぞき込もうとしたが、彼の姿は見えず、見えたものはただの闇であったため、彼らは引き返した。

 

「アリト!!」

「遊馬!やめろ!!あぶねえ。」

「遊士さん!止めないでくれ!あいつは、わかりあえる奴なんだ!俺は一度あいつとデュエルをして…」

「やめろって言ってんだよ!!」

 

傷ついた体ながら、遊士は思い切り遊馬を突き倒した。遊馬の周りには砂ぼこりが舞っている。

 

「もしあいつとわかりあえるなら、あいつとまた会った時に世間話でも何でもしろ!今お前がここに落ちたらどうなる!?戻ってこれるか?落ち着けよ遊馬!」

「あ…す、すまねえ。」

 

「そんなことより、ありがとな。お前らの力があったから、俺はあいつを倒せた。それは間違いねえ。」

 

遊士は手に持っている希望剣聖-ホープ・ザ・ライジングのカードをしっかりと持った。その感触を、いつまでも感じていた。

 

 

------

 

時を同じくして、ナッシュ、メラグ、ミザエルはベクターの謀反に伴い、行動を共にしていた。真のギャラクシーアイズ使いを決める戦いを優先するミザエルを説得するのには骨が折れたようだが、ミザエルを失う訳にはいかないというナッシュの一言が、彼のそのバリアンのためではなく個人のための戦いを止めることに成功したのだ。

 

ナッシュはギラグとアリトに対する念話が届かないことが不安になり、2人をダウンタウン周辺を歩いていた。

 

「アリト!!アリトーッ!!!」

「ナッシュ。気持ちはわかるが、それでは敵に居場所を教えることになってしまうぞ!」

「今は落ち着いて、ナッシュ。」

 

「クッ。」

(これが落ち着いてなんていられるか。ギラグとアリトがもしベクターに吸収されでもしたら…!!)

 

 

「仲間をお探しかな?」

 

 

ナッシュたちの真上から、推定年齢30歳ほどの男性の声がした。視線を移すと、真上から白衣姿の男性が彼らの前に現れた。

 

「貴様は…!」

「ヘヴンズ・サードか!?」

 

「そうだ。私の名前はアフタン。ヘヴンズ・サードの一員だ。」

「フッ。わざわざお前の方から出向いてくるとは、殊勝な心掛けだな。」

「そう言ってもらえるとは光栄だな。さあ、デュエルだ。ナッシュ。」

「何…?」

 

「待て。ナッシュと戦うのなら、まずは私たちからだ。」

「そうだ。」

 

ナッシュの前に、メラグとミザエルが出て、アフタンの前に立ちふさがった。

 

「メラグ、ミザエル。」

 

「残念だが君たちに用はない。なぜなら、君たちと同じくらいの実力を持ったデュエリストを、私は既に一人倒したからだ。」

「何…!?」

「そんな…」

「何だと!?」

 

「ギラグ。彼は大したデュエリストではなかったな。」

 

冷ややかにそう言い放つ彼を前に、ナッシュは無意識のうちにメラグとミザエルをかき分け、アフタンの目の前に出たのだった。

 

奥歯を噛みしめ、拳を握り、目の前のデュエリストに怒りを向ける。

 

「ギラグをやったのはてめえか!!」

 

「ナッシュ!!」

 

「だから、ギラグと同じくらいの実力を持ったメラグ、ミザエルでは力不足だ!さあ、構えろ、ナッシュ!」

「いいだろう。このデュエル、受けて立つぜ!!!」

 

「ナッシュ、気をつけろよ。」

 

 

「デュエル!!」

 

 

ナッシュ:LP4000

アフタン:LP4000

 

 

(ナッシュ。君では私は倒せない。ヘヴンの緊急招集があった時、君たちバリアンの切り札を学ばせてもらった。私のコアキメイルデッキで、しっかりと対策は打たせてもらったよ。)

 

「俺の先攻だ!モンスターを裏守備表示!ターンエンド!(4)」

<ナッシュ:伏せなし アフタン:伏せなし>

 

「ナッシュが、裏側守備表示だと?」

「まずは手堅く様子見…冷静ね。」

 

「ならば私のターン!(6)私は手札から、《コアキメイル・ウルナイト》を召喚!(5)」

 

 

《コアキメイル・ウルナイト》

効果モンスター

レベル4/地属性/獣戦士族/攻撃力2000/守備力1500

このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、手札の獣戦士族モンスター1体を相手に見せる。または、どちらも行わずこのカードを破壊する。1ターンに1度、手札の「コアキメイルの鋼核」1枚を相手に見せる事で、デッキから「コアキメイル・ウルナイト」以外のレベル4以下の「コアキメイル」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「レベル4で攻撃力2000!?」

「《コアキメイル・ウルナイト》のモンスター効果発動!手札の《コアキメイルの鋼核》を相手に見せて、自分のデッキからレベル4以下のコアキメイルモンスター1体を特殊召喚する!出でよ、《コアキメイル・ガーディアン》!!」

 

 

《コアキメイル・ガーディアン》:攻撃力1900

 

 

「あいつ、見た目の割には攻撃力の高い下級モンスターを多用するのか!」

「けど、ミザエル。コアキメイルモンスターは、頭脳プレイを必要とするカードよ。」

 

「ヘッ。頭脳プレイか。見せてもらうぜ、お前の頭脳プレイをな!」

「フッ。よく喋る。バトル!《コアキメイル・ウルナイト》で、セットされたモンスターを攻撃!」

 

ウルナイトが手に持った剣で裏側守備表示モンスターを一刺しすると、色彩豊かなサメのモンスターが間もなく破壊された。

 

「《オーロラ・シャーク》の効果発動!」

 

 

《オーロラ・シャーク》

効果モンスター

レベル4/水属性/魚族/攻撃力1000/守備力1500

リバースしたこのカードが戦闘で破壊された場合に発動することができる。このカードを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚したこのカードの守備力は500ポイントアップする。「オーロラ・シャーク」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 

 

「戦闘で破壊された《オーロラ・シャーク》は、そのバトルフェイズ中一度だけ特殊召喚できる!そしてその守備力は500ポイントアップする!」

「なるほど。それは困るな。《コアキメイル・ガーディアン》の効果発動!モンスターの効果が発動した時、自身をリリースすることで、そのモンスターの効果の発動を無効にして、破壊する!」

「何だと!」

 

フィールドに復活するや否や《コアキメイル・ガーディアン》が手に持つ武器で攻撃することもなく、体当たりで2体ともフィールドから消えた。

 

「クッ。」

「カードを1枚伏せる。そして《コアキメイル・ウルナイト》は、その存在をフィールドに維持するためには、《コアキメイルの鋼核》を墓地に送るか、手札の獣戦士族モンスターを見せなければいけない。私は手札の、《コアキメイル・クルセイダー》を君に見せる。ターンエンドだ。」(4)

<ナッシュ:伏せなし アフタン:伏せ1枚>

 

(奴はおそらく、俺のデュエルを研究してきたはず。奴の自信ありげな、鼻持ちならない態度。それは…ヤツなりの準備に裏付けされたものだろう。だったら…)

 

ナッシュはアフタンの伏せカードに視線を向けると、自分のターンの宣言をし、デッキの一番上のカードを黙ってドローする。

 

「ナッシュ!」

「バリアンズ・カオス・ドローではないのか!」

 

「君のスタンバイフェイズに、永続罠、《コアキメイルの閃光》を発動する!」

 

 

《コアキメイルの閃光》

永続罠

自分フィールド上に「コアキメイル」と名の付いたモンスターが表側表示で存在する場合、相手ターンにのみ発動することができる。自分のデッキから「コアキメイル」と名の付いたレベル4以下のモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。装備モンスターが自分のエンドフェイズに存在する場合、自分は1000ポイントのダメージを受ける。

 

 

「デッキからコアキメイルモンスターを特殊召喚させてもらおう!さあ出でよ、《コアキメイル・ウォール》!!」

 

 

《コアキメイル・ウォール》:攻撃力1900

 

 

「《コアキメイル・ウォール》。なるほどな、俺のランクアップマジック封じか。」

「ほぉ。君は《コアキメイル・ウォール》の効果を知っているようだな。」

「当然だ。自身をリリースすれば、魔法カードの発動を無効にする。そんな効果が、あったはずだぜ。」

「だが、君が引いたカード、それはランクアップマジックだろう?このターンはせいぜい壁モンスターでも召喚し、時間を稼ぐのだな。」

 

ナッシュはニヤリと笑って見せると、ドローフェイズに引いたカードを手札には加えず、そのままフィールドに置いた。

 

「俺は…《シャクトパス》を召喚!」

 

 

《シャクトパス》:☆4/攻撃力1600

 

 

「なにっ!シャクトパス!?」

「お前がランクアップマジックの対策をしてくることなど、とうにわかっていたぜ!俺は手札から、《サイレント・アングラー》を特殊召喚!」(3)

 

 

《サイレント・アングラー》:☆4/攻撃力800

 

 

「レベル4のモンスターが、2体!」

「これで条件は整ったというわけか。」

 

ミザエルがそう呟くと、ナッシュはまるで雲を掴むかのように手を空に掲げ、2体のモンスターが光となって昇っていった。

 

「レベル4の2体のモンスターで、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、No.101!満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より、浮上せよ!S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アーク・ナイト)

 

 

「くっ!オーバーハンドレッドナンバーズを召喚されたか!」

「オーバーレイユニットを2つ使い、効果発動!相手の場に攻撃表示で特殊召喚されたモンスターをこのカードの下に重ねて、オーバーレイユニットとする!」

 

 

エターナル・ソウル・アサイラム!!

 

 

「なにっ!《コアキメイル・ウォール》が!」

「さらに、アーク・ナイトで、《コアキメイル・ウルナイト》を攻撃!」

 

 

ミリオン・ファントム・フラッド!

 

 

「ぐあっ!」

 

 

アフタン:LP4000→LP3900

 

 

「ギラグをやった腕前が、こんなもんなはずねえだろ?全力でかかってこい!」(4)

<ナッシュ:伏せなし アフタン:伏せなし>

 

「私のターン!(5)私は手札から、《コア濃度圧縮》を発動!」

 

 

《コア濃度圧縮》

通常魔法

手札の「コアキメイルの鋼核」1枚を相手に見せ、手札から「コアキメイル」と名のついたモンスター1体を捨てて発動する。自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

「自分フィールドにモンスターがいない場合、手札のコアキメイルの鋼核を相手に見せて、手札のコアキメイルモンスターを捨てて、カードを2枚ドローする。私は手札から、《コアキメイル・クルセイダー》を捨てて、2枚ドロー!さらに私は、《コアキメイル・アイス》を召喚!」(4)

 

 

《コアキメイル・アイス》:攻撃力1900

 

 

手に氷でできた槍状の武器を持つ人型の氷のモンスターが現れた。

 

「このモンスターは、手札1枚を捨てることで、フィールドに特殊召喚されたモンスター1体を破壊する効果を持つ!」

「何だと!?」

「エクシーズ召喚も特殊召喚の一つだ。ならば当然、この効果の対象となる!《コアキメイル・アイス》の効果発動!手札の、《コアキメイル・ヴァラファール》を捨て、アーク・ナイトを破壊!(3)」

 

《コアキメイル・アイス》は手に持った槍状の氷の塊をはるか上空に存在するアーク・ナイトに直撃させようとした。

 

しかし、槍がアーク・ナイトに当たる寸前、アーク・ナイトが自身を守るバリアを展開し、槍が砕け散ったのが見えると、アフタンは眼鏡越しに、予想していたと言わんばかりのしたり顔を見せた。

 

「やはりか。」

「アーク・ナイトは破壊される場合、代わりにオーバーレイユニットを1つ取り除くことができる。《コアキメイル・アイス》の効果は無意味だ!」

「それはどうかな?」

「何だと?」

「《コアキメイル・アイス》の効果は1ターンに何度でも発動することができる!」

「なにっ!!」

「さらに手札を1枚捨て、(2)《コアキメイル・アイス》の効果発動!」

 

再び《コアキメイル・アイス》の手には光の中から出た、氷でできた槍が握られ、そのモンスターがそれを投げつけると、今度はアーク・ナイトに貫通し、その場で陥落した。

 

「くっ!」

「バトルだ!《コアキメイル・アイス》で、プレイヤーに直接攻撃!」

 

 

アイスバーグ・レイ!

 

 

槍を持たない手から氷の混じった波動を繰り出し、ナッシュを吹き飛ばした。ナッシュは2メートルほど飛び、砂煙が舞った。

 

「ぐあああああっ!」

 

 

ナッシュ:LP4000→LP2100

 

 

「ナッシュ!」

「我々バリアンと、ここまで互角に渡り合うとは!」

 

「互角…?強がるな。勝つのは私だ。《コアキメイル・アイス》を維持せずに、破壊する!そして私はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(1)」

<ナッシュ:伏せなし アフタン:伏せ1枚>

 

砂埃を払ったナッシュが元居た位置へと戻った。

 

(《コアキメイル・アイス》を維持しなかった?手札に《コアキメイルの鋼核》も、永続魔法もなかったのか?まぁいい。今なら直接攻撃のチャンスだ!)

「ヘッ。ここまでやるのなら…いいぜ、お前にも見せてやるぜ!俺の…俺たちバリアンの力を!」

 

ナッシュがデッキの一番上のカードに指を置くと、アフタンは前歯を覗かせた。冷静沈着な科学者という印象とは裏腹なその顔に、思わずメラグは殺気を覚えた。

 

「ナッシュ!!ダメ!バリアンズ・カオス・ドローを使っては!!」

「バリアンズ・カオス………ううっ!!!……

 

 

グッ、うああああああああっ!!」

 

 

突如彼の周囲を白い球体が包み込み、彼がバリアンズ・カオス・ドローを行おうとするや否や、電撃が走ったかのようにして、彼のドローを妨げた。

 

「ナッシュ!」

 

「フフフ…ハハハハハ!!!」

 

「貴様っ…!これは…一体…はぁっ、はぁっ、何の…真似だ……っ。」

「罠にかかったな、ナッシュ!ヘヴンの中でも数名のみが所有する、ヘヴンズ・コート。それが、このフィールドにはかかっていたのだよ。」

「何だと?ヘヴンズ・コート?」

「そうだ。私は選ばれた者なのだ。私はバリアンと戦うことを任された。そしてヘヴンより、これをいただいた!」

 

アフタンは彼のデュエルディスクが発光していることを見せるために、左腕を掲げて見せた。

 

「このヘヴンズ・コートの中にいる限り、人外の力を使用することはできない。バリアルフォーゼについては、もう既にデュエルの前からしていたからな。それは影響を受けないが。何にせよ、これで脅威はなくなった!」

 

誇らしげにそう言い放つアフタンを前に、ナッシュは毅然とした態度で言い返した。

 

「いいぜ…バリアンズ・カオス・ドローがなくとも、俺は勝つ!俺のターン!!ドローッ!!(4)手札から、《ビッグ・ジョーズ》を召喚!」

 

 

《ビッグ・ジョーズ》:☆3/攻撃力1800

 

 

「さらに手札から、《シャーク・サッカー》を特殊召喚!」(2)

 

 

《シャーク・サッカー》

効果モンスター

レベル3/水属性/魚族/攻撃力200/守備力1000

自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが召喚・特殊召喚された時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。このカードはシンクロ素材とする事はできない。

 

 

「このモンスターは俺のフィールドに魚族モンスターが召喚された時、手札から特殊召喚できる!」

「レベル3モンスターが、2体!?またエクシーズ召喚を行うつもりか!」

「言ったはずだ!バリアンズ・カオス・ドローがなくとも、俺は勝つと!2体のレベル3モンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

此岸の力よ!彼岸の魂に訣別をもたらし、真実を告げる運命の一枚となれ!《No.71 リバリアン・シャーク》!!

 

 

《No.71 リバリアン・シャーク》:守備力2000

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
ANo.(アセンションナンバーズ)39 希望剣聖-ホープ・ザ・ライジング》
エクシーズモンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2000
「No.39 希望皇ホープ」+「剣聖-ライジング・ソード」
このカードのエクシーズ召喚を行う場合、上記のモンスターをエクシーズ素材として、その上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚しなければならない(「No.39 希望皇ホープ」がエクシーズ素材を持っている場合、それらも重ねてエクシーズ素材とする)。
1ターンに1度だけ、自分のメインフェイズに発動することができる。自分のデッキからカードを1枚ドローする。また、自分または相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時にこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動することができる。その攻撃を無効にし、相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時にこの効果を発動した場合、戦闘を行っていた相手モンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで0にする。

<次回の最強カード>
《コアキメイル・エクステンド》
レベル9/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3800/守備力3300




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第33話-封じられたバリアンズ・カオス・ドロー

ナッシュ

 

・LP2100

・手札2枚

・(モンスター)《No.71 リバリアン・シャーク》(DEF2000)

・(魔法・罠)なし

 

 

アフタン

 

・LP3900

・手札1枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)1枚

 

 

「現れろ!《No.71 リバリアン・シャーク》!」

「このモンスターは!?」

「このモンスターは、俺が人の心に別れを告げる一枚。俺がバリアンとして生きることを誓った時にバリアンズ・カオス・ドローと共に手にした、ナンバーズ!!」

「だが、攻撃力0なら、ただの壁モンスターにしかならない!」

「リバリアン・シャークの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、墓地のナンバーズを復活させ、使ったオーバーレイユニットを、復活させたナンバーズの下に重ねて、エクシーズ素材とする!」

「何だと!?」

「蘇れ、《No.101 S・H・Ark Knight》!」

 

 

《No.101 S・H・Ark Knight》:攻撃力2100(ORU1)

 

 

「すごい。ナンバーズを復活させるナンバーズだなんて…」

「これがナッシュの新しい力。人間との訣別を表したナンバーズか。」

 

「いくぞ!アーク・ナイトで、ダイレクトアタックだ!」

 

方舟のモンスターから無数の光線のようなものが放たれるが、アフタンはうろたえることなくすかさず罠カードを発動させた。

 

「その攻撃は通用しない!罠カード、《コアの再練成》を発動!」

 

 

《コアの再練成》

永続罠

自分の墓地に存在する「コアキメイル」と名のついたモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。

自分のエンドフェイズ時にそのモンスターが破壊された時、このカードのコントローラーはそのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 

 

「墓地のコアキメイルモンスターを、攻撃表示で特殊召喚する!」

 

(だが、今まで使ったあいつのコアキメイルモンスターはどれも下級モンスターのはず。大したモンスターは呼べないだろう!)

 

「私は墓地から、《コアキメイル・ヴァラファール》を特殊召喚!」

 

紅蓮の翼を生やした悪魔のようなモンスターが彼の墓地から特殊召喚された。下半身および両腕には炎でできた装甲が纏われており、炎を従える悪魔という存在に相応しい。

 

 

《コアキメイル・ヴァラファール》:攻撃力3000

 

 

「攻撃力3000だと!?いつの間に………そうか!」

「そう。私は《コアキメイル・アイス》の効果を発動するために、このモンスターを墓地に捨てていたのだよ!」

「くそっ。アーク・ナイト!攻撃中止だ!」

 

アーク・ナイトの一撃、ミリオン・ファントム・フラッドはヴァラファールを逸れた。攻撃を中止したという意味合いなのだろう。

 

「たとえナンバーズでも、攻撃力が高いモンスターを倒すことはできない!そしてアーク・ナイトが、相手モンスターをオーバーレイユニットにする効果を使うためには、オーバーレイユニットが2つ必要だ!」

「……カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(1)」

<ナッシュ:伏せ1枚 アフタン:伏せなし>

 

「アフタン…ヘヴンズ・サードなど三流デュエリストの集まりかと思っていたが…」

「ナッシュの反撃すらも読んでいるとは。油断できない相手だ。」

 

「今度はこっちの番だなナッシュ!私のターン!(2)《コアキメイル・ブレイカー》を召喚!(1)」

 

 

《コアキメイル・ブレイカー》

効果モンスター

レベル4/地属性/機械族/攻撃力1900/守備力1900

このカードは自分のデッキから特殊召喚することはできない。このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、手札の機械族モンスター1体を相手に見せる。または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。

➀:このカードが光属性または闇属性のモンスター以外のモンスターに攻撃する場合、このカードの攻撃力はダメージステップの間のみ300ポイントアップする。

➁:自分フィールド上の「コアキメイル」と名の付いたモンスターが相手モンスターに攻撃を行った場合、ダメージ計算終了後に発動する。戦闘を行った相手モンスターを破壊する。

 

 

右手にはドリル、左手には電鋸を持った岩のような巨躯のモンスターがナッシュのフィールドを見下ろす。モノアイが怪しく光る光景は、獲物を探している狩人を彷彿とさせる。

 

「バトルだ!《コアキメイル・ブレイカー》で、アーク・ナイトを攻撃!」

「何?自分より攻撃力が高いモンスターに攻撃を!?」

「《コアキメイル・ブレイカー》のモンスター効果により、戦闘を行う相手モンスターの属性が光か闇以外なら、攻撃力が300ポイントアップする!」

 

 

《コアキメイル・ブレイカー》:攻撃力1900→攻撃力2200

 

 

「だが、ナンバーズはナンバーズでしか破壊されない!」

 

 

ナッシュ:LP2100→LP2000

 

 

「無駄だ。《コアキメイル・ブレイカー》は自分のコアキメイルモンスターが戦闘を行った時、その相手モンスターを破壊する効果がある!」

「ならば、アーク・ナイトの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカードの破壊を無効にする!」

「そういえばそうだったな。だが、私のフィールドにはまだ、ヴァラファールが残っている!」

「ヴァラファールで、アーク・ナイトを攻撃するつもりか!?」

 

流れるようなやり取りの中だったが、ナッシュがそう言ったのをアフタンは聞き逃さなかった。

 

「フッ。そうやって、私にやってほしいことを言ってはダメだな!!君には、リバリアン・シャークがいる!ナンバーズはもう一度復活させられる!」

「ならリバリアン・シャークを攻撃するのか?リバリアン・シャークは守備表示。ダメージは受けない!」

「残念だが、《コアキメイル・ヴァラファール》が守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値分の戦闘ダメージを相手に与える!」

「何っ!」

 

ヴァラファールが鋭い爪で容赦なくリバリアン・シャークを切り裂いた。ナンバーズではあったものの、呆気なくリバリアン・シャークは真っ二つに切れてしまった。

 

「ぐああああっ!」

 

 

ナッシュ:LP2000→LP1000

 

 

「フフフ…お前には反撃は許さない!私は手札から速攻魔法、《Heaven's Battle Option》を発動!」

「ヘヴンズ…だと!?」

「忘れたのか?私はヘヴンズ・サード!当然ながら、ヘヴンカードを持ち合わせている!バトルを行った自分のモンスターを破壊し、デッキからカードを2枚ドローする!私は、《コアキメイル・ブレイカー》を破壊する!(2)」

 

アフタンは手札にある2枚のカードを見ている。フィールドにすぐにセットしないことから、カウンターカードではなさそうだとナッシュは見ている。

 

「私はこのエンドフェイズに、《コアキメイル・ヴァラファール》を維持するために、手札の《コアキメイルの鋼核》を墓地に送る!ターンエンドだ。(1)」

 

ターンの終了を宣言すると、間もなくしてアフタンはそのしたり顔をナッシュに見せつけた。

 

「フッ!!またこの時が来たな!君のターンのドローフェイズが!しかし、君はこのヘヴンズ・コートでバリアンズ・カオス・ドローを行えず、ランクアップマジックを引くことはできない!」

「そいつはどうかな?」

「何!?」

 

「ナッシュ。」

「通常のドローで、引き当てるの?」

 

「確かに俺のデッキにカードは20枚ほどある。ここから《RUM-七皇の剣》を引き当てるのは困難だ。だったら!!!」

 

ナッシュのデュエルディスクの墓地のカードが光を放っているのが、その場にいる他の3人にはすぐにわかった。

 

「俺は、《No.71 リバリアン・シャーク》の効果を発動!このカードが破壊された場合、そのエンドフェイズに、自分のデッキからランクアップマジック1枚を選択し、デッキの一番上に置く!俺が選ぶのは当然、ザ・セブンス・ワン!!」

「なにっ!?」

「そして俺のターン!!ドロー!!(2)いくぜ!俺は《RUM-七皇の剣》を発動!フィールドのアーク・ナイトをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ!暗黒の騎士となって、光を砕け!S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダーク・ナイト)!!

 

 

「くっ!カオスオーバーハンドレッドナンバーズの特殊召喚を許してしまったか!ならば…早々に決着をつけさせてもらう!!」

「何だと?」

「私は手札の、《コアキメイル・エクステンド》の効果発動!自分フィールドのレベル7以上のコアキメイルモンスター1体をリリースし、このカードを手札から特殊召喚する!」(0)

 

 

《コアキメイル・エクステンド》:攻撃力3800

 

 

「何だコイツは!?」

 

漆黒の機械の塊、そのような印象を受けるエクステンドがフィールドに現れた。

 

「このモンスターは特殊召喚に成功した時、フィールドの全てのモンスターの攻撃力の合計の半分のダメージを、相手に与える!エクステンドは攻撃力3800。そして、君の特殊召喚したダーク・ナイトの攻撃力は2800!それぞれを足し合わせ、半分にすればその数値は…

 

 

3300だ!!」

 

 

機械の塊の上部から砲塔が飛び出し、そこから粒子が集められ、ナッシュに向けて放たれようとしている。

 

「残念だったな!ナッシュ!!!君はこれで…終わりだ!」

 

 

ワールド・スローター!!

 

 

「ナッシュ!!」

 

「罠カード、《ディファーメント・ダメージ》を発動!」

 

青白い粒子ビームがナッシュに向けられたが、ナッシュが咄嗟に発動した罠カードで、そのビームが防がれ、そのビームは四方に拡散した。

 

「効果ダメージが発生した時に発動!俺のフィールドのモンスター1体を破壊し、効果ダメージを0にする!ただしこの効果で発生した効果ダメージは、バトルフェイズ開始時に俺が受けなければならない!」

「クッ!自らのカオスナンバーズを犠牲にしてでも…!?」

「犠牲?違うな。」

 

ビームが収まったかと思えば、ダーク・ナイトが破壊された。しかしすぐに、ダーク・ナイトが存在していたところには黒い魔法陣が出現し、アフタンは確かにカオスナンバーズの鼓動を感じていた。

 

「…これは!?」

「ダーク・ナイトは破壊された時、カオスオーバーレイユニットがある場合、墓地から特殊召喚できる!蘇れ、《CNo.101 S・H・Dark Knight》!!」

 

 

リターン・フロム・リンボ!!

 

 

「そういうことか。」

「そしてこのカードの攻撃力分だけ俺のライフが回復する!うおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 

ナッシュ:LP1000→LP3800

 

 

(ダーク・ナイトの攻撃力は2800。《コアキメイル・エクステンド》には及ばない。万が一攻撃力で上回り、エクステンドを倒せたとしても、私のデッキにはまだ、最強モンスターを呼び出せる、《Heaven's Ritual》がある。それでヘヴンよりいただいたカードを呼べる!)

 

不気味な笑いが張り付いているアフタンを前に、ナッシュは自らのダーク・ナイトを使役する。

 

「ダーク・ナイトの効果発動!相手フィールドのモンスター1体を、このカードの下に重ねて、カオスオーバーレイユニットにする!」

「な…何!?」

 

 

ダーク・ソウル・ローバー!

 

 

「これで貴様のフィールドにモンスターはいなくなった!バトル!」

「バトルフェイズに入ったな?ならばお前の《ディファーメント・ダメージ》の効果で、3300のダメージを受けてもらおう!」

 

粒子砲が放たれ、ナッシュは大きく吹き飛ばされてしまったが、すぐに体勢を立て直し、鋭い眼差しでアフタンを睨みつけた。

 

 

ナッシュ:LP3800→LP500

 

 

「今度はお前の…番だ!」

「だが、ダイレクトアタックをしたとしても、私のライフは1100ポイント残る!次の私のターンで…」

「お前に次などない!!」

「なっ!?」

「《ディファーメント・ダメージ》の効果で、破壊したモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスターの攻撃によって相手に与えるダメージは倍になる!」

「バカな…」

「ここまでだ、ヘヴンズ・サード!!ダーク・ナイトで、ダイレクトアタック!!」

 

 

セブンス・ジャッジメント!!

 

 

「どわああああああああ!!」

 

 

アフタン:LP3900→LP0

 

 

アフタンの背中が地面に着くと同時にヘヴンズ・コートが解除されたのが、彼らにわかった。

 

「くっ。バカな。」

「残念だったな。こんな小細工をして、俺たちバリアン七皇が倒せるとでも思ったか?お前にはここで消えてもらう!」

「おのれ………ヘヴンの力よ!!」

 

デュエルディスクを前に突き出すと、デッキから放たれた光が地面に反射したかのように、その場から光が漏れ、爆発が巻き起こった。

 

ナッシュ、メラグ、ミザエルは踏ん張っていたが、メラグが後方に吹き飛んだのを見ると、ナッシュは咄嗟に彼女の背中を庇うようにして滑り込んだが、爆風によって吹き飛ばされ、背中を打ち付けることになってしまった。

 

「ぐうっ!」

「ナッシュ!」

 

メラグとミザエルが地面に背中を強く打ち付けたナッシュに駆け寄ったが、ふと顔を上げると、そこにアフタンの姿はなかった。

 

「くそっ、逃がすか……ぐあああっ!」

「ナッシュ!!私のために!!」

 

「俺は、大丈夫だ。くっ!!」

「無茶はするな!」

 

 

------

 

 

徳之助の消滅を乗り越え、アリトを倒した遊士たちは、勝利の余韻に浸った後、方針を打ち合わせて、解散した。バリアン世界の侵攻を受けても、夜になると空は暗くなる。それがわかって少し安堵したものの、翌朝どんな景色なのかは不安であった。

 

遊士は遊馬の家に泊めてもらうこととなっており、遊馬と共に暗い夜道を歩いていた。

 

「んで…これからは、ナンバーズを集めることに専念するって?」

「おう!アストラルが見つけなきゃいけない、ヌメロン・コードって奴は、ナンバーズを全て集める必要があるんだ。ドン・サウザンドもそのナンバーズを狙いに来る。あいつよりも先に手に入れるんだ!」

「なるほどな。でも、どこにナンバーズがあるかなんて、わかんないだろ?」

「大丈夫!俺一人で探してる訳じゃないぜ!」

 

遊馬の協力者たちは多い。デュエルをした者には絆が生まれる、それが彼の信条であり、その気持ちが通じて仲間になったデュエリストも多い。

 

今ハートランドから3キロ程離れたところにある「はあとの道」というネーミングセンスがないことで有名な緑道に差し掛かった3名のデュエリストも、彼に心を惹かれたのは間違いないだろう。

 

「おいおい。本当にこんなところにナンバーズがあるのか?ただトレッキングしにきただけなんじゃねえのか俺たち?」

「Ⅳ兄さま!そうやって、やる気がなくなるようなことを…!」

「フッ。健康的だな。最近は運動不足気味だったからな。」

「兄貴は…まぁ、そうだろうな。」

 

Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの3人は「はあとの道」の緑道から逸れた、いわゆる獣道のようなところに、ナンバーズの遺跡があるということをアストラルから知った。

 

アストラルがナンバーズを手に入れると、そのナンバーズからさらに別のナンバーズの情報がわかることがあるのだ。

 

「この分かれ道を左に行くみたいですよ。」

「分かれ道って…テープ張ってあるじゃねえか。立ち入り禁止の場所だからこそってことか?」

 

そうぼやきながらも、山道に差し掛かったところでⅣは先陣を切ってy字の分かれ道を左に進んだ。

 

すぐに彼らの目の前にはいかにも怪しげなレンガの積まれた洞窟の入口のようなものが見えた。その狭い入口の中からは煙のようなものが目に入ったが…

 

よく見ればそれが煙でないことはすぐにわかった。顔がついている。魂のようなものか。

 

「ほぉ。こいつか。」

「何だか雰囲気あるなぁ…」

「よし、いくぞ!!Ⅲ、Ⅳ!!」

「はいっ!」

「おう!」

 

3人の兄弟は暗闇に消えて行った。彼らのデュエルディスクにはいくつかの機能がついており、懐中電灯の機能もついている。真っ暗な洞窟の中をそれで照らしながら進むのだが、一本道であるために迷うことはない。

 

「むっ。」

 

先頭を歩くVが階段を降りると、その先には松明の灯っている部屋があった。

 

「ここは…」

「あ、あれは!!」

 

Ⅳが部屋の奥の壁を指さすと、そこに見えたのはデュエルモンスターズのカードであった。エクシーズモンスターであるようだが、ランクが1であること以外に何の情報もない。

 

彼らが立ち止まっていると、突然兄弟の目の前に白い光の線が何本も交差して引かれた。よく見ると、その線の形には、見覚えがあった。

 

「デュエル…フィールド?」

 

『その通りだ!!』

 

「誰だ!?」

「おい、姿を見せろ!」

 

彼らがその部屋を見渡しても、人影は見当たらない。スピーカーのようなものもなく、どこから声が聞こえて来るのだろうか。しかし声は反響しており、マイクを使っていることはわかる。

 

『残念だが私はこの部屋にはいない。私に会いたければ、デュエルで奥に進む必要がある。』

『頑張ってよね。』

 

男性だが高い声、そして渋い声、2人の声が聞こえて来る。

 

「デュエルか、いいぜ!」

「我々が負ける訳がない!」

 

『この遺跡では2つのデュエルに挑戦してもらう!』

 

「2つのデュエル?」

 

『そう!ただのデュエルじゃない!まずは小手調べだ!ナンバーズを求めてここに来たのだろうが、ナンバーズを持つに相応しい力を持っているのか!それを僕たちが今から調べる!君たちが負ければ、即刻この遺跡からは出て行ってもらう。』

『では早速…今回は、代表者一名にデュエルしてもらおうか。』

 

「代表者一名!?」

「おい、どうする?ここはやはり俺が…」

「そうか、Ⅳ。いいぞ。」

「いや、兄さんたち。ここは僕が!!」

 

『面白いんだけどさ、時間がないから僕が決めるよ。じゃあ、そこのピンク色の髪!』

 

「僕の名前はⅢだ!」

『そう。じゃあⅢ!前に出てよね。』

 

「チッ。ここは俺様だろうが。」

「今はまだ私が動くべき時ではない。」

 

Ⅲが一歩前に出ると、彼の目の前にはデュエルスタンドが地面から出て来た。そこには目の前の巨大なデュエルフィールドが縮小されたものが見えている。

 

「これは?僕のデュエルディスクを使ってはいけないの?」

『そうだ。言ったはずだよ。ただのデュエルじゃないって。さあ、Ⅲ。まずはデッキをシャッフルした後、デッキゾーンにデッキを置き、エクストラデッキゾーンにエクストラデッキを置くんだ。』

「え?あ、はい。」

 

 

『じゃあ…デュエルスタートだ!!!』

 

 

デッキとエクストラデッキをセットすると、彼の目の前にはいきなりモンスターが合計して3体現れた。Ⅲのフィールドには《先史遺産(オーパーツ)マヤン・マシーン》。そして相手フィールドには《メリアスの木霊》と《エヴォルカイザー・ラギア》の2体。

 

 

《先史遺産マヤン・マシーン》

効果モンスター

レベル3/地属性/機械族/攻撃力1500/守備力700

機械族モンスターをアドバンス召喚する場合、このカードは2体分のリリースとする事ができる。

 

 

《メリアスの木霊》

エクシーズモンスター

ランク3/地属性/植物族/攻撃力1700/守備力900

地属性レベル3モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●デッキから植物族モンスター1体を墓地へ送る。

●自分の墓地から植物族モンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。

 

 

《エヴォルカイザー・ラギア》

エクシーズモンスター

ランク4/炎属性/ドラゴン族/攻撃力2400/守備力2000

恐竜族レベル4モンスター×2

➀:このカードのエクシーズ素材を2つ取り除き、以下の効果を発動できる。

●魔法・罠カードが発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・特殊召喚する際に発動できる。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

 

Ⅲ :LP4000

相手:LP2000

 

 

「僕のフィールドにマヤン・マシーン。それに、相手の場にはモンスターエクシーズが2体!?」

 

Ⅲがたじろいでいると、彼のセットしたデッキの一番上にカードが光った。いや、よく見れば、光ったカードがデッキの一番上に置かれたのだ。

 

「えっ!?」

『いわゆる詰めデュエル…とはちょっと違うんだけどね、デュエル開始時はステージによって変わるけど、必ず相手フィールドにモンスターエクシーズがいる状態で始まる。全部で3ステージだ。』

「この状態って…僕の手札は0枚なの!?」

『そう。けれど、君のドローフェイズからデュエルが始まる。1ターン目にはドローが許されている。ドローするカードは…決まっているのさ。さあ、引いてよ。』

「ドロー!!」

 

「何を引いたんだ?」

 

『そのカードを使って、勝利できるよう、頑張ってね。』

「なるほど。そういう趣向のデュエルですか!面白いですね!魔法カード、《エクシーズ・トレジャー》を発動!」

 

 

《エクシーズ・トレジャー》

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在するエクシーズモンスターの数だけ、自分のデッキからカードをドローする。

 

 

「《エクシーズ・トレジャー》!!」

「フィールドのモンスターエクシーズの数だけドローできる魔法カードか!」

 

「フィールドには2体のモンスターエクシーズ!よって2枚を、ドロー!!」(2)

『さらにステージ1だけは、君のデッキからランダムに選ばれたモンスターが、君の場にいるから、有効活用してよね。』

「それでマヤン・マシーンが…」

 

(《メリアスの木霊》も、《エヴォルカイザー・ラギア》も、優秀な効果を持っている。けれどよく見れば、2体ともオーバーレイユニットを持っていない!それなら!!)

「マヤン・マシーンの効果発動!このカードをリリースして機械族モンスターをアドバンス召喚する場合、1体で2体分のリリースにすることができる!僕は《先史遺産クレイ・ダイナソー》をアドバンス召喚!」

 

 

《先史遺産クレイ・ダイナソー》:☆8/攻撃力2600

 

 

「ほう。Ⅲはこのターンで決着をつけるつもりらしいな。」

 

「永続魔法、《先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレット》を発動!(0)」

 

 

《先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレット》

永続魔法

自分フィールド上の「先史遺産」と名のついたモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。

 

 

「クレイ・ダイナソーの攻撃力が3400にアップします!そしてバトル!クレイ・ダイナソーは、相手のフィールドの最も高い攻撃力を持つモンスターからバトルしなければなりません!クレイ・ダイナソーで、《エヴォルカイザー・ラギア》を攻撃!」

 

土でできたように見える恐竜が雄たけびをあげ、《エヴォルカイザー・ラギア》を踏み潰した。どこが機械族なのだろうか。

 

 

相手:LP2000→LP1000

 

 

「クレイ・ダイナソーは、モンスターをバトルで破壊した時、もう一度だけ続けて攻撃ができます!《メリアスの木霊》を攻撃!」

 

 

相手:LP1000→LP0

 

 

「よし!」

 

「やったぜ!」

「このくらいはできてもらわねばな!」

 

『へえ、やるね。さっきの人と同じくらい早いね。』

 

「さっきの人?」

「おい、俺たちが最初じゃねえのか!?誰か先に来てるのか!?」

 

 

『うん。君たちよりも1人…眼鏡をかけて、赤いスカーフを巻いた男の人が、来たよ。』

 

 

 

(次回に続く)

 





<今日の最強カード>
《コアキメイル・エクステンド》
効果モンスター
レベル9/闇属性/機械族/攻撃力3800/守備力3300
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上のレベル7以上の「コアキメイル」と名の付いたモンスター1体をリリースして、手札から特殊召喚する。この方法による特殊召喚は、相手が相手ターン中にモンスターを特殊召喚した時にも行うことができる。
このカードのコントローラーはエンドフェイズに「コアキメイル」と名の付いたカード2枚を墓地に送る。もしくは墓地に送らずにこのカードを破壊する。
➀:このカードは特殊召喚したターンには攻撃できない。
➁:このカードが特殊召喚に成功した時に発動することができる。フィールド上の全てのモンスターの攻撃力の合計の半分のダメージを相手に与える。
➂:1ターンに1度、相手フィールド上のカード1枚を選択して発動することができる。選択したカードをゲームから除外し、相手に800ポイントのダメージを与える。


<次回の最強カード>
《エクシーズ・トレジャー》
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するエクシーズモンスターの数だけ、自分のデッキからカードをドローする。


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第34話-シャイニング・ドローを起こせ!

「赤いスカーフを巻いた男の人…だと?」

「ならば急がなければ!ナンバーズが取られてしまう!」

 

『それはないから大丈夫。この先行われるデュエルはタッグデュエル。もう1人デュエリストが到着するまでは、彼もデュエルができないからね。さあ、お喋りはここまでだ。奥の部屋に進んでよ。』

 

ランク1のエクシーズモンスターが描かれた壁の真下が真上にスライドし、次のステージへの入口が開かれた。

 

「ここが2ステージ目か。」

「同じような部屋だな。」

 

『このデュエルは3ステージで完結する。さあ、Ⅲ!君にはデュエルを続けてもらおう!』

「僕は構いませんよ!何回でも勝利してみせます!」

『威勢がいいね。じゃあ、ステージ2の始まりだ!』

 

 

 

・LP2500

・手札なし

・(モンスター)《先史遺産コロッサル・ヘッド》(ATK800)

・(魔法・罠)なし

 

 

相手

 

・LP3000

・手札なし

・(モンスター)《妖精騎士イングナル》(ATK2200)(ORU1)/《交血鬼(アルダンピール)-ヴァンパイア・シェリダン》(ATK2600)(ORU0)/《ソードブレイカー》(ATK2700)(ORU1)

・(魔法・罠)1枚

 

 

《妖精騎士イングナル》

エクシーズモンスター

ランク6/地属性/植物族/攻撃力2200/守備力3000

レベル6モンスター×3

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。このカード以外のフィールド上のカードを全て持ち主の手札に戻す。この効果の発動に対して相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。

 

 

《交血鬼-ヴァンパイア・シェリダン》

エクシーズモンスター

ランク6/闇属性/アンデット族/攻撃力2600/守備力0

エクシーズモンスター

レベル6モンスター×2体以上

元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのエクシーズ召喚の素材とする場合、そのレベルを6として扱う。

➀:1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを墓地へ送る。

➁:1ターンに1度、フィールドのモンスターカードが、効果で相手の墓地へ送られた場合、または戦闘で破壊され相手の墓地へ送られた場合、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスター1体を自分フィールドに守備表示で特殊召喚する。

 

 

《ソードブレイカー》

エクシーズモンスター

ランク6/地属性/戦士族/攻撃力2700/守備力1000

レベル6モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、種族を1つ宣言して発動できる。このカードが、宣言した種族のモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 

 

「今度は僕のフィールドに《先史遺産コロッサル・ヘッド》と、相手フィールドに3体のモンスターエクシーズ。行きます!」

 

 

デュエル!!

 

 

Ⅲ :LP2500

相手:LP3000

 

 

「《エクシーズ・トレジャー》を発動!フィールドのモンスターエクシーズ3体分、カードを3枚ドローする!」

「よし!いけっ!Ⅲ!」

 

(今現在、オーバーレイユニットを持っているのは、《妖精騎士イングナル》と《ソードブレイカー》。《ソードブレイカー》はオーバーレイユニットを1つ使い、宣言した種族のモンスターとバトルを行う時、ダメージ計算を行わずに破壊できる。あのモンスターを残しておくと厄介だ。《妖精騎士イングナル》の効果も、フィールドのカード全てをデッキに戻す効果で、かなり厄介。だけど、その効果を使うには、オーバーレイユニットが2つ必要。なら、今は手をつけなくても良い…)

 

カードを3枚ドローしたⅢであったが、手札をずっと睨んでいる。相手のフィールドのエクシーズモンスターの数だけドローできるとは言え、1枚1枚で相手のエクシーズモンスターを倒せるとは限らない。

 

「いきます!僕は手札から、《先史遺産カブレラの投石機》を攻撃表示で召喚!」(2)

 

 

《先史遺産カブレラの投石機》:攻撃力0

 

 

「さらに、《先史遺産モアイ》を特殊召喚!このカードは自分フィールドにオーパーツモンスターがいる場合、手札から特殊召喚することができる!(1)」

 

 

《先史遺産モアイ》:守備力1800

 

 

「カブレラの投石機の効果発動!自分フィールドのオーパーツモンスター1体をリリースして、相手フィールドのモンスターの攻撃力を0にする!」

 

カブレラの投石機は自らの手を使って何とモアイをソードブレイカーに投げつけた。

ソードブレイカーは咄嗟のことで避けることができず、モアイの下敷きになっている。

 

 

《ソードブレイカー》:攻撃力2700→攻撃力0

 

 

『随分と大胆な戦術だね。だけど、攻撃力800のコロッサル・ヘッドの攻撃じゃ、ダメージはほとんど受けないね。』

「それは、これを見落としていますよ!僕は、レベル4の《先史遺産コロッサル・ヘッド》と、《先史遺産カブレラの投石機》でオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイユニットを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

現れろ、《No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク》!!

 

 

 

ミニチュアの古代都市がバリアのようなものに囲まれている、そんなモンスターがⅢの目の前に浮遊し始めた。

 

 

《No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク》

エクシーズモンスター

ランク4/光属性/機械族/攻撃力2000/守備力2500

「先史遺産」と名のついたレベル4モンスター×2

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする。この効果は相手ターンでも発動できる。また、自分フィールド上の「先史遺産」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。相手フィールド上の、元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を選択して破壊する。

 

 

『ナンバーズ!?』

「そうです!僕たちだって、何もせずに手をこまねいていた訳じゃありませんよ!フォーク=ヒュークの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、モンスター1体の攻撃力を0にする!ヴァンパイア・シェリダンの攻撃力を0に!」

 

 

《交血鬼-ヴァンパイア・シェリダン》攻撃力2600→攻撃力0

 

 

古代都市の建物の一つから閃光が放たれ、それをまともに受けたシェリダンは気分を悪くしたかのようにその場に蹲った。

 

「いいぞⅢ!これで相手の場には攻撃力0のモンスターが2体!」

「さらに僕の手札は1枚残っています!《先史遺産クリスタル・スカル》の効果発動!手札からこのカードを捨てて、デッキからオーパーツモンスター1体を手札に加える!僕はデッキから《先史遺産アステカ・マスク・ゴーレム》を手札に加えます!さらに、このアステカ・マスク・ゴーレムは、自分が通常魔法を発動したターンなら、特殊召喚することができる!!(0)」

 

 

《先史遺産アステカ・マスク・ゴーレム》:攻撃力1500

 

 

 

「よし!《ソードブレイカー》とヴァンパイア・シェリダンは攻撃力0!!それに対して、Ⅲの場には攻撃力2000と1500のモンスターが1体ずつ!2体の攻撃が通れば3500ダメージ!元のライフが3000である相手は、倒せる!」

 

Vがわざわざそこまで説明をする。

 

「いきます!まずはアステカ・マスク・ゴーレムで、ヴァンパイア・シェリダンを攻撃!」

『僕は罠カード、《バトル・ディスチャージ》を発動!』

「なっ!!トラップ!?」

 

 

《バトル・ディスチャージ》

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に1000ライフポイントを払って発動することができる。その攻撃を無効にする。その後、自分フィールド上に存在するエクシーズモンスターをリリースすることによって、バトルフェイズを終了させることができる。この効果を発動した場合、次のスタンバイフェイズに、自分フィールド上に存在するエクシーズモンスター1体を選択し、このカードをそのモンスターの下に重ねて、エクシーズ素材とすることができる。

 

 

『ライフを1000払い、自分のエクシーズモンスターをリリースし、攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!』

 

 

相手:LP3000→LP2000

 

 

リリースしたモンスター:《ソードブレイカー》

 

 

「だったら僕は、フォーク=ヒュークの効果を使います!自分のオーパーツモンスター1体をリリースして、相手フィールドの攻撃力が異なっているモンスター1体を破壊します!僕が破壊するのは、ヴァンパイア・シェリダン!!」

 

《先史遺産アステカ・マスク・ゴーレム》が飛び上がり、光の玉となって、ヴァンパイア・シェリダンへとぶつかる。ヴァンパイア・シェリダンもまた光となり、消滅した。

 

(ダメージは与えられなかったけど、モンスターエクシーズは2体倒した。あと1体いる《妖精騎士イングナル》は、効果が使えない。オーバーレイユニットが1つ足りないんだ。フォーク=ヒュークの効果は相手ターンでも使うことができる。イングナルが攻撃を仕掛けた時に発動すれば、返り討ちも狙える!)

 

「僕はターンエンドです!(0)」

<Ⅲ:伏せなし 相手:伏せなし>

 

『じゃあこちらのターンだね。デュエリストが立っていないから違和感があるねえ。まあいいか。ドロー!(1)』

 

そういうと、奥の部屋への入口の目の前に、大きな石板が落ちてきた。相手の手札ということだろう。

 

『このスタンバイフェイズに、《バトル・ディスチャージ》の効果発動!このカードをオーバーレイユニットとして、僕のフィールドの《妖精騎士イングナル》に重ねる!これで、イングナルのオーバーレイユニットは2つだ!』

「何だって!?そんな効果が!」

『これで準備は整ったね。《妖精騎士イングナル》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ使い、相手フィールドのカード全てをデッキに戻す!』

 

イングナルが手に持っている剣を振り回すと、Ⅲは咄嗟にフォーク=ヒュークに手を伸ばしたが、効果を発動することはできなかった。

 

「フォーク=ヒュークの効果が使えない!?」

『残念だけど、イングナルのモンスター効果に対して、相手は魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できない!』

「そんな!」

『これで君のフィールドは丸裸だ!イングナルで、ダイレクトアタック!!』

 

 

エンシェント・エンレイジ!!

 

 

「うわっ!」

 

 

Ⅲ:LP2500→LP300

 

 

「Ⅲ!!」

「大丈夫か!?」

 

「まだです!まだ僕のライフは残っています!」

『けど君の手札は0枚。これで何ができるというのかな?ターンエンドだよ。(1)』

<Ⅲ:伏せなし 相手:伏せなし>

 

「僕のターン!(1)僕は魔法カード、《先史遺産の記録》を発動!」

『オーパーツ・レコード…?』

「このカードはライフポイントを半分払って、このデュエル中に特殊召喚したオーパーツモンスター1体を自分のエクストラデッキから攻撃表示で特殊召喚できる!」

「何だと!?」

 

 

Ⅲ:LP300→LP150

 

 

「再び現れろ!《No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク》!!」

『だけど、どうするのかな?オーバーレイユニットはない!』

「それはご心配なく!《先史遺産の記録》は、発動後オーバーレイユニットとなって、復活させたモンスターの下に重ねられる!」

 

フォーク=ヒュークの周囲を、再び黄色のオーラをまとった玉のようなものが纏い始める。

 

『何!?またオーバーレイユニットが!』

「いきますよ!フォーク=ヒュークの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、モンスター1体の攻撃力を0にします!」

 

 

《妖精騎士イングナル》:攻撃力2200→攻撃力0

 

 

『くっ!』

「バトル!フォーク=ヒュークで、イングナルを攻撃!!」

 

古代都市のミニチュアのようなものの灯台から、光が放たれ、イングナルの体を貫いた。その後間もなくして、相手のライフポイントが0になった。

 

 

相手:LP2000→LP0

 

 

「おおお!!」

「やったな、Ⅲ!」

 

少年のような微笑みを見せながら、彼は振り返った。

 

『すごいね。こうも簡単に2ステージまでクリアするなんて。じゃあいよいよ最後のステージだ!!奥に進んでよ。』

「よし!最後のステージも、勝たせてもらいます!」

 

最終ステージも、今までと同じような風景だった。だが、それはデュエルモードがオンになるとすぐに恐ろしいものへと変わった。

 

『さあ、これが、最終ステージのキャストたちだ!』

 

 

 

 

・LP1

・手札0枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

相手

 

・LP4000

・手札0枚

・(モンスター)5体のエクシーズモンスター

・(魔法・罠)なし

 

 

『聳え立て!《魔海城アイガイオン》!!』

 

 

《魔海城アイガイオン》(エクシーズ素材:0)(小説版)

エクシーズモンスター

ランク8/水属性/機械族/攻撃力0/守備力3000

レベル8モンスター×2

「魔海城アイガイオン」の➀➁の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、相手ターンでも発動できる。

➀:相手のエクストラデッキから裏側表示のモンスターをランダムに1体除外する。

このカードの攻撃力は除外したモンスターの攻撃力と同じになる。

➁:このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、除外されている相手の融合・シンクロ・エクシーズモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをエクストラデッキに戻し、そのモンスターと同じ種類(融合・シンクロ・エクシーズ)の相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊する。

 

 

『最強の攻撃力を持つ《超量機神王グレート・マグナス》!!』

 

 

《超量機神王グレート・マグナス》(エクシーズ素材:0)

エクシーズモンスター

ランク12/光属性/機械族/攻撃力3600/守備力3200

レベル12モンスター×3

➀:このカードのエクシーズ素材の種類によって以下の効果を得る。

●2種類以上:1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。フィールドのカード1枚を選んでデッキに戻す。

●4種類以上:このカードは「超量」カード以外のカードの効果を受けない。

●6種類以上:相手はカードの効果でデッキからカードを手札に加える事ができない。

➁:このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。自分の墓地から「超量機獣」エクシーズモンスター3種類を1体ずつ選んで特殊召喚する。

 

 

『伝説を超えろ!《デーモンの超越》!!』

 

 

《デーモンの超越》(エクシーズ素材:1)

エクシーズモンスター

ランク6/闇属性/悪魔族/攻撃力2500/守備力1200

レベル6モンスター×2

➀:このカードはモンスターゾーンに存在する限り、カード名を「デーモンの召喚」として扱う。

➁:自分フィールドの「デーモンの召喚」が戦闘・効果で破壊される場合、

代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

➂:エクシーズ召喚したこのカードが相手によって墓地へ送られた場合に発動できる。

自分の手札・デッキ・墓地から「デーモンの召喚」1体を選んで特殊召喚する。

 

 

『終焉をもたらせ!《終焉の守護者アドレウス》!!』

 

 

《終焉の守護者アドレウス》(エクシーズ素材:1)

エクシーズモンスター

ランク5/闇属性/悪魔族/攻撃力2600/守備力1700

レベル5モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して発動できる。選択したカードを破壊する。

 

 

 

『そして最後に…《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》!!』

 

 

《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》(小説版)(エクシーズ素材:2)

エクシーズ・効果モンスター

ランク8/水属性/植物族/攻撃力3200/守備力2800

レベル8モンスター×3

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。この効果は相手ターンでも発動できる。

●相手フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を選択して発動できる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、選択されたカードは発動できない。

●フィールド上の植物族モンスター1体を選択して裏側守備表示にする。

●フィールド上のモンスター1体を選択し、その攻撃力を300ポイントアップする。

 

 

「ナンバーズまで!?」

『さあ始めよう!最後のデュエルを!!』

 

 

デュエル!!

 

 

「いきます!僕のターン!(1)僕は、《エクシーズ・トレジャー》を発動!フィールドにいるモンスターエクシーズは5体!よって僕は、5枚のカードをドローします!」

「いけっ!Ⅲ!!」

「遊馬並みのシャイニングドローを見せつけるんだ!」

 

Ⅲはパッと手を内側に向け、彼の引いたカード5枚を見つめた。

 

「よし!これなら!《先史遺産ゴールデン・シャトル》を召喚します!」

 

 

《先史遺産ゴールデン・シャトル》:攻撃力1300

 

 

「ゴールデン・シャトルの効果発動!1ターンに1度、このカードのレベルを1つアップさせることができます!よって、ゴールデン・シャトルのレベルが、5にアップ!」

 

 

《先史遺産ゴールデン・シャトル》:☆4→☆5

 

 

「さらに、《先史遺産モアイ》を特殊召喚!このカードは自分フィールドにオーパーツモンスターがいれば、特殊召喚できる!!」

 

 

《先史遺産モアイ》:☆5/守備力1800

 

 

『2体のレベル5のモンスター。それは困るな。僕は、《魔海城アイガイオン》の効果発動!』

 

巨大要塞のモンスター、アイガイオンの心臓部らしきところから赤いレーザーが放たれ、Ⅲのデュエルディスクのエクストラデッキを捉えた。

 

「こ…これは!?」

『このカードは、1ターンに1度、相手のエクストラデッキからランダムにカード1枚を除外して、攻撃力を得ることができる!これで…エクシーズ召喚を封じさせてもらうよ!』

 

アイガイオンの放ったレーザーの先には、先ほどⅢが使用したナンバーズの超機関フォーク=ヒュークの姿があった。

 

『フォーク=ヒューク…!!そのモンスターはランク4!!』

「そうですね!ランク4のモンスターエクシーズが除外されても、どうってことないですよ!」

『くっ。』

 

 

《魔海城アイガイオン》:攻撃力0→攻撃力2000

 

 

「僕はレベル5の2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、《No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック》!!

 

 

《No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック》

エクシーズモンスター

ランク5/光属性/機械族/攻撃力2400/守備力1500

 

 

『ナ…ナンバーズ!?』

「マシュ=マックの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドの、元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスターを選択し、そのモンスターの元々の攻撃力と、変化している攻撃力の差分のダメージを相手に与え、その数値分だけこのカードの攻撃力がアップします!」

 

 

インフィニティ・キャノン!!

 

 

壁面から出た砲塔からすぐに無数の射撃が浴びせられ、アイガイオンおよびその奥のスペースに弾丸が降り注いだ。奥のスペースというのは、もちろんデュエリストが立っているべきところである。

 

『うわああっ!』

 

 

相手:LP4000→LP2000

 

 

「まだです!インフィニティ・キャノンによって与えたダメージが、マシュ=マックの攻撃力に加わります!」

 

 

《No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック》:攻撃力2400→攻撃力4400

 

 

『攻撃力4400!?』

 

(この状況、どのモンスターに攻撃しても、彼のライフを0にすることはできない。だったら、次のターンになった時に、どのモンスターを残して置いたらまずそうかを考えるしかない。

 

 

アイガイオンは守備表示で、攻撃力は2000。僕のエクストラデッキを破壊できるけど、フィールドを破壊しないのなら、問題はない。

グレート・マグナスは攻撃力3600だけど、オーバーレイユニットがないから、効果も使えないはず。

デーモンの超越は、《デーモンの召喚》として扱い、《デーモンの召喚》が破壊される場合、代わりにオーバーレイユニットを1つ使うことができる。身代わり効果というだけなら、これも放っておいても大丈夫なはず。

雪月花美神クイーン・オブ・ナイツの効果はわからないから怖いけど…

 

《終焉の守護者アドレウス》。あのモンスターは、オーバーレイユニットを1つ使えばフィールドのカード1枚を破壊できる。次のターンで、僕のカードを確実に破壊しに来る!なら…)

 

「バトル!マシュ=マックで、《終焉の守護者アドレウス》を攻撃!ヴリルの火!」

 

マシュ=マックから放たれ、洞窟の天井に当たった光線が跳ね返るようにしてアドレウスに向かう。いつの間にか光線は炎へと変わっており、アドレウスは成す術もなく焼き尽くされてしまった。

 

『なにっ!!ぐっ!』

 

 

相手:LP2000→LP100

 

 

「おおっ!!」

「いいぞⅢ!もう奴のライフはわずか100だぜ!」

 

「僕はここで負ける訳にはいきません!勝たせてもらいますよ!カードを2枚伏せて、ターンエンドです!!(1)」

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《エクシーズ・トレジャー》
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するエクシーズモンスターの数だけ、自分のデッキからカードをドローする。


<次回の最強カード>
《RUM-アージェント・カオス・フォース》
通常魔法




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第35話-Ⅳ&零児!運命のタッグデュエル!

 

・LP1

・手札1枚

・(モンスター)《No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック》(ATK4400)

・(魔法・罠)2枚

 

 

相手

 

・LP100

・手札なし

・(モンスター)《魔海城アイガイオン》(DEF3000)(ORU0)/《デーモンの超越》(ATK2500)(ORU1)/《超量機神王グレート・マグナス》(ATK3600)(ORU0)/《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》(ATK3200)(ORU2)

・(魔法・罠)なし

 

 

『ぐっ。まさかライフが100になってしまうとはね。』

「ここまでですよ!僕のターンは終わりです。さあ!攻めてきてください!」

『だったら君のターンが終わる前に、クイーン・オブ・ナイツの効果を使わせてもらう!』

 

クイーン・オブ・ナイツは冷ややかな目のまま、手を目の前に翳すと、そこから放たれた光が、Ⅲの目の前にある伏せカードを包んだ。

 

「…っ!?」

『オーバーレイユニットを1つ使って、相手フィールドの伏せカードを、このカードがいる限り使用不能にする!』

「しまった!」

『そして僕のターン、ドロー!(1)僕は魔法カード、《エクシーズ・トレジャー》を発動!』

 

Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの3人はその場で目を丸くした。相手の場にエクシーズモンスターが多く並べられている状態から《エクシーズ・トレジャー》を使ってピンチを切り抜けることがコンセプトであるはずのこの戦いにおいて、相手側が《エクシーズ・トレジャー》を使用するとは思っても見なかったからである。

 

「そんな!《エクシーズ・トレジャー》!?」

「おい!なんでてめえが《エクシーズ・トレジャー》を使うんだよ!?」

「卑怯な真似を!」

 

『卑怯?別に僕はⅢが使ったカードと同じカードを使っただけだよ。僕はデッキからカードを5枚ドローさせてもらう!(5)そして、クイーン・オブ・ナイツの効果をもう一度発動!もう1枚の伏せカードも、使用不能にさせてもらう!』

 

 

《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》:ORU1→ORU0

 

 

「もう1枚の伏せカードも!?」

『僕は魔法カード、《受け継がれる力》を発動!』

 

 

《受け継がれる力》

通常魔法

自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送る。自分フィールド上のモンスター1体を選択する。選択したモンスター1体の攻撃力は、発動ターンのエンドフェイズまで墓地に送ったモンスターカードの攻撃力分アップする。

 

 

『自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送り、エンドフェイズまで、そのモンスターの攻撃力を、別のモンスターの攻撃力に加える!僕はグレート・マグナスを墓地に送り、《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》の攻撃力を3600ポイントアップさせる!(4)』

 

 

《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》:攻撃力3200→攻撃力6800

 

 

 

「攻撃力6800!?マシュ=マックの攻撃力を上回りやがった!」

「まずい。今、マシュ=マックの攻撃力は4400。Ⅲのライフポイントは1!これでは…」

 

『バトル!クイーン・オブ・ナイツで、マシュ=マックを攻撃!君を守る伏せカードは、2枚とも使用不能だ!』

「まだ僕には……手札がありますよ!」

『なにっ!?』

「手札から、《先史遺産-銀鏡の盾》を発動!自分のオーパーツモンスターよりも攻撃力が2000以上高いモンスターの攻撃時に、手札からこのカードを捨てることで、相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する!」

 

マシュ=マックの目の前に一見するとシルバートレイのようなものが現れ、クイーン・オブ・ナイツの放った閃光を防ぎ、拡散させた。

 

拡散した光はまずアイガイオンを貫き、そのまま撃沈させた。《デーモンの超越》は目の前でバリアのようなものを作り出し、閃光を防いだ。

 

『《デーモンの超越》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、デーモンの召喚の破壊を無効にする!』

「《デーモンの召喚》?お前…漢字が読めねえのか!?」

 

Ⅳがしたり顔でそういうが、すぐに返答が来た。

 

『残念だけど、それはこっちのセリフみたいだよ。《デーモンの超越》は、《デーモンの召喚》としても扱う効果があるんだ!』

「なっ!?」

 

『さらに速攻魔法、《ナンバーズ・オーバーロード》を発動!(3)ナンバーズのオーバーレイユニットを使って発動する効果を、このターンもう1度発動する!僕は、クイーン・オブ・ナイツの効果発動!』

「え!?僕の伏せカードを封じる効果を…?」

『いいや、クイーン・オブ・ナイツには、フィールドの植物族モンスターを裏側守備表示にする効果がある!これで、《先史遺産-銀鏡》の効果を回避する!』

「そんな効果も!?」

 

 

《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》:攻撃力3200→裏側守備表示

 

 

「けど、これであなたのバトルは終わりなはずです!」

『そう。これで僕のバトルフェイズは終わり。けれど、まだ僕のターンは終わっていない!僕は手札から装備魔法、《ナンバーズ・フェター》を発動!(2)』

 

 

《ナンバーズ・フェター》

装備魔法

 

 

『場のナンバーズ1体、つまりマシュ=マックの効果を無効にし、攻撃力を0にする!さらに次のターンの君のエンドフェイズに、そのマシュ=マックは破壊され、相手は1000ポイントのダメージを受ける!』

 

どこからともなく現れた巨大な鎖がマシュ=マックを拘束した。

 

「そんな!マシュ=マックが!!」

『これで残念ながら、君はマシュ=マックの効果は使えない。そして僕は魔法カード、《ナンバーズ・デイブレイク》を発動!フィールドにセットされているナンバーズ1体を表側攻撃表示にし、フィールドの伏せカードを1枚破壊する!再び現れろ!雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ!』

 

 

《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》:攻撃力3200

 

 

『さらに、君の場の伏せカードは破壊させてもらうよ!』

「何!?」

『ランクアップマジックか。ブラフとして伏せていたとはね。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)』

<Ⅲ:伏せ1枚 相手:伏せ1枚>

 

「僕はここであきらめる訳にはいかない!僕のターン!(1)僕はこのスタンバイフェイズに、前のターンに墓地に送られた、《先史遺産-銀鏡の盾》の効果を発動!墓地に送られた次の自分のスタンバイフェイズに、僕のフィールドの表側表示のカードがオーパーツカードのみの場合、特殊召喚できる!」

 

 

《先史遺産-銀鏡の盾》:攻撃力0

 

 

 

「さらに僕はマシュ=マックをリリースして、《先史遺産ソル・モノリス》をアドバンス召喚!」

 

 

《先史遺産ソル・モノリス》

効果モンスター

レベル6/地属性/岩石族/攻撃力600/守備力600

1ターンに1度、自分フィールド上の「先史遺産」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターのレベルは6になる。この効果を発動するターン、自分は「先史遺産」と名のついたモンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

 

『使えないマシュ=マックをリリースしたか。』

「ソル・モノリスの効果発動!自分フィールドのこのカード以外のオーパーツモンスターのレベルを6にする!レベル6となった銀鏡の盾と、ソル・モノリスで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、《No.6 先史遺産アトランタル》!!

 

 

『なに…新たなナンバーズ!?』

「さらに僕は墓地に存在する魔法カード、《RUM-アージェント・カオス・フォース》の効果発動!自分フィールドにランク5以上のエクシーズモンスターが現れた時、墓地のこのカードを手札に戻すことができる!」

『そのカードはさっき僕が破壊した…!そんな効果が!?』

 

Ⅲはデュエルディスクの墓地のフォルダから、人差し指と中指を器用に使ってアージェント・カオス・フォースを手札に戻した。

 

「そして、《RUM-アージェント・カオス・フォース》を発動!ランク6のアトランタルで、オーバーレイ!!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

降臨せよ、CNo.6!有限なる時空を破り、今、その存在を天地に刻め!先史遺産-カオス・アトランタル!

 

 

『カオスナンバーズ!?』

「そう!これこそが僕の切り札、カオス・アトランタル!!」

 

 

《CNo.6 先史遺産カオス・アトランタル》:攻撃力3300

 

 

『攻撃力3300。』

(だが、たとえ攻撃を受けても、僕のフィールドの伏せカードは、《バトル・ゲート》!自分の場のナンバーズ以外のモンスター1体をリリースして、その攻撃力分だけ自分のモンスターの攻撃力を上げ、バトルを再開する!僕は、《デーモンの超越》をリリース!その攻撃力2500ポイントが、クイーン・オブ・ナイツに加えられる!そうすればクイーン・オブ・ナイツの攻撃力は5700となり、返り討ちだ!)

 

「僕は、カオス・アトランタルの効果発動!1ターンに1度、フィールドのナンバーズを攻撃力1000ポイントアップの装備カード扱いとして装備することができる!」

『なにっ!?』

 

燃え盛る木のようなモンスター、カオス・アトランタルの胴体の部分から炎の塊がクイーン・オブ・ナイツに向かった。クイーン・オブ・ナイツは咄嗟のことで避けることはできず、そのまま炎に飲まれ、カオス・アトランタルに吸収されてしまった。

 

 

《CNo.6 先史遺産カオス・アトランタル》:攻撃力4300

 

 

 

『くっ。こんなはずでは…』

(《バトル・ゲート》はモンスターが2体いなければ使えない!)

 

「《デーモンの超越》の攻撃力は2500。攻撃が成立すれば、1800のダメージです!バトル!カオス・アトランタルの攻撃!」

 

体のところどころが燃え盛っている巨大な木のようなモンスター。だが人間で言うところの「手」のようなものが見え、そこから巨大な炎の礫がデーモンの超越に向かう。

 

《デーモンの超越》はバリアを張ったものの、炎の礫を受けきれず、そのままそこで消滅した。

 

『うわあああっ!』

 

 

相手:LP100→LP0

 

 

「よっしゃあ!」

「やったな、Ⅲ!」

 

「ふぅ。何とか、勝てました。」

 

『まさかこの僕が負けるとはね。じゃあいいよ。本気で相手をしてあげようか。奥に進みなよ。』

 

デュエルリングの奥にある鉄の扉がギギギという音を立てながら開いた。何があるのかはそこからは見えなかった。奥には暗闇があることだけ。それだけがわかる。

 

「よし、いくぜ!」

 

Ⅳが先陣を切り、2人が続いていく形となった。だがここで彼が先陣を切ったことが、彼の運命を左右することになろうとは、誰も知る由もない。

 

狭い回廊を走り続けること約10秒。暗闇に満ちた部屋から、再び4つの燭台のある部屋へと移った。

 

「待っていたよ。トロンの息子たち。」

 

3人が部屋に入るや否や、その声は彼らの右側から聞こえた。その声には妙に聞き覚えがあった。長い時間考えるまでもなく、その声はさきほどまで話をしていた男性2人であることがわかった。

 

「てめえら…」

「まさか、さっきまで僕とデュエルしていた!?」

 

「そう。我々はナンバーズを守る兄弟、ヌメロ兄弟だ。私は兄のハッグ。」

「僕は弟のロウだ。」

 

ハッグはもロウも長身で華奢な体つきをしている。ハッグは黒いジャケットを着て、ワインレッドのワイシャツがたまに見え隠れしている。たまに見え隠れするのは、ワイシャツの色は白だが、裏地がワインレッドだからだろうか。

さらにロウは、濃い青色のジャケットに、藤色のカーディガンを着用した下に、白いワイシャツを着ている。

 

「ナンバーズを守る兄弟?」

「そう。僕たちはね、ずっとこの地でナンバーズを守り続けてきた。ナンバーズは、勝手に使われてはいけない力でね。それは、君たちもわかっているだろう?」

「確かにナンバーズには、強大な力があるかもしれない。だが、我々にはそれが必要なのだ!ナンバーズを渡してはくれないか?」

 

Ⅴが彼らに掌を向け、落ち着いた口調で言ったが、ハッグはすぐに首を横に振った。

 

「それはできない。私たちにはナンバーズを守る使命がある。」

「それは残念だな。」

「だったら…!強硬手段しかねえんじゃねえのか!?」

 

Ⅳがそう言ってデュエルディスクを構えようとした時に、ロウが口を開いた。

 

「さっき言ったはずだよ。ここではタッグデュエルをするって。」

「あぁ。そういえばそんなこと言ってたな。誰と誰がタッグを組むんだ?って、今Ⅲがデュエルをしたから、当然俺とⅤか。」

「わ…私が動くとき…なのか?」

 

「いや、それは違うね。タッグを組むのは、最初に来た2人だ。」

 

それならやはり自分とⅤだろうとⅣは言ったが、ロウにそこまで言われると、Ⅲは彼に言われたことを思い出したのだ。

 

「そうか。僕たちが来る前に1人、来ている人がいるって…」

「やっと思い出したみたいだね。さあ、そんな暗いところにいないで、こっちにおいでよ。」

 

ツカツカという靴の音が響き渡ったと思えば、赤いスカーフの男、そのような認識を持っていたⅢとⅣとⅤであったためか、次にそれが目に入った。

 

「君は!?」

 

「紹介が遅れたな。私は赤馬零児。レオ・コーポレーションの社長をさせていただいている。」

「赤馬…零児…さん。僕はⅢです。」

「私はⅤだ。」

 

(おかしい。こいつのことなんて知らねえはずなのに。何か知っているような。)

 

ⅤはぼーっとしているⅣの肩を叩き、Ⅳにも自己紹介をさせた。

 

「おい、Ⅳ。」

「あ、あぁ、すまねえ。俺はⅣだ。」

「よろしく。」

 

狼狽える様子を見せない赤馬零児は眼鏡越しの冷ややかな目でⅣに挨拶をした。

 

「これで役者は揃ったな。」

「じゃあ、最初に入った2名でタッグを組んでもらおうか。」

 

「そうすると…赤馬零児と、俺!?」

「こちらに来て、多くの資料を漁ったよ。かなりの腕前のデュエリストだそうだな。」

「ヘッ。下調べをしてきたってことか。まあな。」

 

「よし。これで決まりだな。では早速、デュエルを始めよう。」

「ルールはタッグフォースルールね。」

「タッグフォースルールか。」

 

 

[タッグフォースルール]

・ライフポイントは4000ポイントで共有、フィールド、墓地と除外されたカードも共有

・手札、デッキ、エクストラデッキは共有しない

・デッキサーチ等は、自分のデッキにしか行えない

 

 

「どんなルールだろうが、勝つのは俺たちだ。いくぜ!」

「フッ。せいぜい張り切りなよ。」

 

 

デュエル!!

 

 

Ⅳ&零児 :LP4000

ヌメロ兄弟:LP4000

 

 

「ロウ。先攻はお前からで良い。」

「わかった。じゃあ、僕からいくよ、兄さん。僕のターン!魔法カード、《おろかな埋葬》を発動!(4)」

 

 

《おろかな埋葬》

通常魔法

自分のデッキからモンスター1体を墓地に送る。

 

 

「デッキからモンスター1体を墓地に送るよ。」

「自らのデッキからカードを…?」

「さらに僕は手札から、《ルインズ・スライム》を召喚!(3)」

 

 

《ルインズ・スライム》

効果モンスター

レベル3/地属性/水族/攻撃力300/守備力1500

このカードの召喚に成功した時に発動することができる。自分のデッキから「ルインズ・スライム」1体を墓地に送る。自分の墓地にこのカードを含めた「ルインズ・スライム」が2体存在する場合、このカードを除外して発動することができる。自分の墓地に存在する「ルインズ・スライム」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

 

「このカードの召喚時、デッキから《ルインズ・スライム》を墓地に送る!」

「また墓地に…」

「そして、《ルインズ・スライム》の効果を墓地から発動!墓地に2体《ルインズ・スライム》が存在する場合、そのうち1体を除外して、墓地の《ルインズ・スライム》を特殊召喚する!」

 

 

《ルインズ・スライム》:攻撃力300

 

 

いわゆるよく言われる青いスライム…ではなく、灰色のゴムボールのようなモンスターが2体、彼らの目の前に現れた。

 

「さらに僕は手札を1枚捨てて装備魔法、《|D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》》を発動!(1)」

 

 

《D・D・R》

装備魔法

手札を1枚捨て、除外されている自分のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。

 

 

「ゲームから除外された《ルインズ・スライム》を特殊召喚する!」

「またでてきやがったか!」

「同じモンスターが…3体か!」

「《ルインズ・スライム》3体でオーバーレイ!!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

遺跡に蠢く邪悪なる影、悪しき魂を宿し、今こそ起動せよ!ランク3、《ルインズ・ゴーレム》!!

 

 

《ルインズ・ゴーレム》

エクシーズモンスター

ランク3/地属性/岩石族/攻撃力1000/守備力2500

 

 

レンガの積みあがったような見た目の一つ目の巨人のモンスターが腕を組んでフィールドに現れ、Ⅳと零児を見下ろしたが、Ⅳの反応はイマイチだった。

 

「ケッ。ナンバーズかと思ったら、ただの岩の塊かよ。」

 

「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

<Ⅳ&零児:伏せなし ヌメロ兄弟:伏せ1枚>

 

「今度はこっちの番だな。よし、俺からいく!零児!てめえはまずそこで俺の華麗なデュエルを見てな!俺のターン、ドロー!(6)俺は《ギミック・パペットーギア・チェンジャー》を召喚!(5)」

 

 

《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》

効果モンスター

レベル1/地属性/機械族/攻撃力100/守備力100

このカードはデッキから特殊召喚できない。1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上の「ギミック・パペット」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードのレベルは選択したモンスターのレベルと同じになる

 

 

「さらに俺は手札から、《ギミック・パペット-マグネ・ドール》を特殊召喚!(4)」

 

 

《ギミック・パペット-マグネ・ドール》

効果モンスター

レベル8/闇属性/機械族/攻撃力1000/守備力1000

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に存在するモンスターが「ギミック・パペット」と名のついたモンスターのみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

「このカードは相手フィールドにモンスターが存在し、俺の場のモンスターがギミック・パペットのみの場合、特殊召喚できる!さらに、《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》の効果を発動し、自身をマグネ・ドールと同じレベルにする!」

 

 

《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》:レベル1→レベル8

 

 

「俺はレベル8の2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、No.15!運命の糸を操る地獄からの使者、漆黒の闇の中より、舞台の幕を開けろ!ギミック・パペット-ジャイアント・キラー!!

 

 

自身が漆黒といえるほどの黒さを持つ体であるジャイアント・キラー。ジャイアント・キラーはまるで前屈をするようにして座っている。

 

「随分と趣味の悪い人形だね。」

「まったくだな。」

 

「てめえらにこのギミック・パペットの良さをわかってもらおうとは思ってねえよ!俺はジャイアント・キラーの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのこのカード以外のモンスターエクシーズを全て破壊し、その攻撃力の合計分のダメージを相手に与える!」

 

 

《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》:ORU2→ORU1

 

 

ジャイアント・キラーの指先から白い糸が伸び、《ルインズ・ゴーレム》に巻き付くと、《ルインズ・ゴーレム》を引き寄せて、胸部のローラーで火花を散らしながら粉々にした。《ルインズ・ゴーレム》は特に抵抗する様子も見せなかったが、何とも悍ましい光景である。

 

その後、《ルインズ・ゴーレム》を処理し終えると、そこから砲台が現れ、エネルギーが集中されていく。

 

「《ルインズ・ゴーレム》の攻撃力は1000。1000ポイントのダメージを与えるぜ!くらえ!!」

 

 

デストラクション・キャノン!!

 

 

赤と黒の混じったエネルギービームが一直線にロウに向かい、彼の目の前に着弾し、爆風で彼は大きく吹き飛ばされた。

 

「うわああっ!」

 

 

ヌメロ兄弟:LP4000→LP3000

 

 

「ロウ!」

「だ…大丈夫。兄さん。」

 

「ヘッ。まずは1000ダメージ。奴のライフをえぐってやったぜ!」

「…」

「おい、何かねえのかよ!?反応とか!」

 

興味を示していないようにしか見えない零児を見たⅣは怒鳴るには近い距離であったが、彼に少し寄った。

 

「油断はしない方が良い。彼らのフィールドをよく見ろ!」

「…?」

 

先ほどはデストラクション・キャノンによってできた爆風の煙がはける前だったのでよく見えなかったが、はっきりと見えているのは、《ルインズ・スライム》3体。

 

「なにっ!?こいつらは!?」

「《ルインズ・ゴーレム》は破壊された場合、持っていたオーバーレイユニットの数まで、墓地のレベル3モンスターを特殊召喚できる。」

「チッ。壁モンスターか。ジャイアント・キラーの攻撃力が1500で、《ルインズ・スライム》の守備力も1500か。クッ。カードを1枚伏せて、ターンエンド!(3)」

<Ⅳ&零児:伏せ1枚 ヌメロ兄弟:伏せ1枚>

 

「私のターンか。ドロー!(6)フッ。君はこのモンスターを壁モンスターだと捉えているようだが、それは違うな。」

「何だと!?」

「レベル3の《ルインズ・スライム》3体で、オーバーレイ!!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》!!

 

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》

エクシーズモンスター

ランク3/地属性/岩石族/攻撃力2600/守備力0

このカードは戦闘では破壊されない。このカードが戦闘を行ったダメージステップ終了時に、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカードにカウンターを1つ置く(最大3つまで)。

このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにカウンターが3つ置かれている場合に発動できる。相手フィールドのカードを全て破壊する。

 

 

「ナ…ナンバーズだと!?」

「そうか。このデュエル、君がナンバーズを使うのか。弟は使わずに。」

「さあ…どうだろうな?」

 

 

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《RUM-アージェント・カオス・フォース》
通常魔法
このカード名の➁の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
➀:自分フィールドのランク5以上のエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。
その自分のモンスターよりランクが1つ高い、「CNo.」と名の付いたエクシーズモンスターまたは「CX」と名の付いたエクシーズモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
➁:このカードが墓地に存在し、自分フィールドにランク5以上のエクシーズモンスターが特殊召喚された時に発動できる。このカードを手札に加える。


<次回の最強カード>
《特別雇用の契約書》
永続魔法




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第36話-猛る者、蔑む者

Ⅳ&零児

 

・LP4000

・手札(Ⅳ:3枚)(零児:5枚)

・(モンスター)《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》(ATK1500)(ORU1)

・(魔法・罠)1枚

 

 

ヌメロ兄弟

 

・LP3000

・手札(ハッグ:6枚)(ロウ:0枚)

・(モンスター)《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》(ATK2600)(ORU3)

・(魔法・罠)1枚

 

 

「怪腕のフィニッシュ・ホールド!?」

「あれが、彼らが持つナンバーズのうち1枚…」

 

「攻撃力2600か。」

 

ナンバーズはナンバーズでしか破壊できない。その効果を打ち破ることができる、「ナンバーズ」をハッグが召喚したにもかかわらず、Ⅳと零児は冷静でいる。

 

ハッグはふとⅣの目の前にある伏せカードに目を向けた。

 

「そうか。まあいい、バトルだ!《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》で、ジャイアント・キラーを攻撃!」

「させるか!罠カード、《ギミック・リバース》を発動!ギミック・パペットが相手からの攻撃対象になった時、攻撃したモンスターの攻撃力と守備力を発動ターンのエンドフェイズまで入れ替える!さらに、攻撃対象となったジャイアント・キラーの攻撃力と守備力を入れ替えることもできる!」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:攻撃力2600→攻撃力0

《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》:攻撃力1500→攻撃力2500

 

 

思い切り振りかぶったフィニッシュ・ホールドが、渾身のパンチを打ち込もうとするが、ジャイアント・キラーの目の前で波紋のようなものが広がり、その攻撃は弾かれた。

 

「これで返り討ちだ!」

「なるほど、そんなカードを伏せていたか。ならば私は手札から速攻魔法、《ナンバーズ・バトル・オーラ》発動!」(5)

 

 

《ナンバーズ・バトル・オーラ》

速攻魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する「No.」と名の付いたモンスターが相手モンスターと戦闘を行う時にその「No.」と名の付いたモンスターを対象として発動することができる。以下の効果の中から1つを選んで発動する。

●対象モンスターはこのターンのエンドフェイズまで効果では破壊されない。

●対象モンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、ダメージ計算終了後、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「これで、私はカードを1枚ドローし、フィニッシュ・ホールドから受けるダメージを0にする!(6)」

「なんだと!?」

 

波紋を受け、その場で大きく吹き飛ばされたフィニッシュ・ホールドだったが、破壊されることなくヌメロ兄弟の目の前に留まった。

 

「おい、どうして破壊されねえ!?《ナンバーズ・バトル・オーラ》には、モンスターの戦闘破壊を無効にする効果まではないはずだ!」

「フッ。《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》は、元々戦闘では破壊されない効果を持っているからだ。そして、フィニッシュ・ホールドのモンスター効果発動!戦闘終了後、オーバーレイユニットを1つ使い、このカードにカウンターを1つ置く!」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:ORU3→ORU2/カウンター1

 

 

「カウンターが乗っている?」

 

零児がそう言ったのは、フィニッシュ・ホールドの頭上に「3」という数字が表示され、「2」に減ったからである。

 

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ。(4)」

<Ⅳ&零児:伏せなし ヌメロ兄弟:伏せ3枚>

 

「私のターン、ドロー!(6)」

「赤馬零児、お前の手並み、見せてもらうぜ。」

 

零児はⅣのその発言をものともせず、手札を眺め、その視線を目の前のフィールドに移した。

 

(彼らのフィールドにはフィニッシュ・ホールドと伏せカードが3枚。それに対して我々のフィールドには、ジャイアント・キラーが存在している。ジャイアント・キラーはオーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのエクシーズモンスターを全て破壊する効果がある。それを使えば、フィニッシュ・ホールドを破壊することができる。だが、それに気が付かない彼らではないはず。)

 

彼らなりのポーカーフェイスの作り方なのかは不明だが、ハッグもロウも、何か意味ありげに微笑んでいるだけで、零児からしても何を考えているのかがわからない。

 

「いずれにせよ、これを使わない手はあるまい!《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのエクシーズモンスターを全て破壊し、攻撃力分のダメージを与える!」

 

 

デストラクション・キャノン!

 

 

「なるほど。そう来たか、ロウ!!」

「うん、いくよ、兄さん!罠カード《ビッグバン・カウンター》!」

 

 

《ビッグバン・カウンター》

通常罠

対象を取らない「フィールド上のカードを破壊する効果」が発動した時に発動することができる。その効果を無効にして破壊する。その後、自分フィールド上の全てのカードはエンドフェイズまでカード効果では破壊されない。この効果によって自分フィールド上のカードの破壊を無効にした場合一度だけ、相手に1000ポイントのダメージを与える。

 

 

「僕たちのフィールドのカードが破壊される場合それを無効にして破壊し、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

 

 

ジャイアント・キラーの指先から糸が伸びたが、フィニッシュ・ホールドに巻き付くよりも前にまるで胸部のキャノン砲が暴発するかのようにして自らの体が爆発し、破壊された。

 

 

Ⅳ&零児:LP4000→LP3000

 

 

「おい、何やってんだ!今のは割とわかりやすい罠だっただろうが!!」

「まずは効果を使ってみないことには始まらない…あの伏せカードがハッタリかもしれない。そう思ったのだがね。」

「御託並べてる場合じゃねえ!俺たちのモンスターがいなくなったんだぞ!申し訳なさそうにするとか…ねえのかよ!?」

 

 

完全にジャイアント・キラーが崩れ去り、仲間割れをしていると蔑んだ表情で彼らを見つめるヌメロ兄弟、罵声を浴びせるⅣを目の前に、零児はゆっくりと目を開けた。

 

「これも計算のうちだ。」

「何っ!?」

「私は永続魔法、《特別雇用の契約書》を発動!(5)」

 

 

《特別雇用の契約書》

永続魔法

 

 

「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる!私のエクストラデッキからDDと名の付いたモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する!」

「相手フィールドにのみモンスターがいる状態で発動できる永続魔法だと!?」

 

 

出でよ!《DDD 双暁王カリ・ユガ》!!

 

 

《DDD 双暁王カリ・ユガ》:攻撃力3500

 

 

「何!?攻撃力3500!?それほどのモンスターを、ノーコストで!?」

「もちろん強力なモンスターを使うにはそれ相応のリスクを負わなければならない。《特別雇用の契約書》の効果により、エンドフェイズにはカリ・ユガの攻撃力の半分のダメージを受けることとなる。だが、カリ・ユガの攻撃力は、フィニッシュ・ホールドを上回っている!!バトル!怪腕のフィニッシュ・ホールドを攻撃!」

 

 

ツインブレイク・ショット!

 

 

カリ・ユガが文字通り目を光らせたかと思えば、その目から電光が放たれ、怪腕のフィニッシュ・ホールドを撃ち抜こうとした。

 

「おっと、そのダメージは通らんな!罠カード、《ディメンション・ウォール》!戦闘ダメージを無効にし、その数値分の戦闘ダメージを相手に与える!」

 

 

《ディメンション・ウォール》

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。この戦闘によって自分が受ける戦闘ダメージは、かわりに相手が受ける。

 

 

「怪腕のフィニッシュ・ホールドの攻撃力は2600ポイント。カリ・ユガは3500ポイント。この戦闘によって発生するダメージは900。その900のダメージを受ければ、君たちのライフは残り2100。そこから《特別雇用の契約書》の効果で1750のダメージを受ければ、君たちのライフは残り350だ!」

「おい、零児!てめえ…格好つけておいて…」

「Ⅳ!案ずることはない!!手札から速攻魔法、《DDポートフォリオ》!(4)」

 

 

《DDポートフォリオ》

速攻魔法

 

 

「このカードは発動後オーバーレイユニットとなり、DDモンスターの下に重ねられる!」

 

 

《DDD双暁王カリ・ユガ》:ORU1

 

 

「今更オーバーレイユニットを増やしたところで…」

「さらに、カリ・ユガの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

 

デストラクション・ストーム!!

 

 

カリ・ユガが右手を振り上げると、フィールド一帯を嵐が包み込み、セットされたヌメロ兄弟のカードと、《特別雇用の契約書》が破壊された。

 

「だが、フィールドの全ての魔法・罠カードを破壊したとしても、発動された《ディメンション・ウォール》を無効にすることはできないはずだ!」

「《特別雇用の契約書》の効果により、このカードがフィールドを離れた場合、この効果で特殊召喚したモンスターは破壊される!」

 

嵐が止むと同時に、その場からカリ・ユガも一瞬で消え去った。

 

「自らが破壊されることを想定した上での攻めか。社長らしくはないな。」

「フッ。これもプラン通りだがな。リスクなしのビジネスなど…ありえん。」

 

「何とかダメージは受けずに済んだが、それでもお前。フィールドにはモンスターも、魔法・罠カードもないんだぜ。何とか体制を整えねえと。プランとか言っている場合じゃねえ…」

「もちろんだ。私はモンスターを守備表示でセットし、カードを1枚伏せて、ターンエンド!(2)このエンドフェイズに、《DDポートフォリオ》の効果で、カードを1枚ドローする!(3)」

<Ⅳ&零児:伏せ1枚 ヌメロ兄弟:伏せなし>

 

怪腕のフィニッシュ・ホールドを前に、零児は伏せカードとモンスターで布陣を固めたが、それでは心配だと言わんばかりにⅣがため息をついた。

 

(すました顔してやがるがよ…ホントに大丈夫なのかこいつは?)

 

「じゃあ僕の番だね、ドロー!(1)《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》で、守備表示のモンスターを攻撃!」

 

 

裏側守備表示モンスター:《DDリリス》

 

 

「怪腕のフィニッシュ・ホールドの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカードにカウンターを1つ置く!」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:ORU2→ORU1/カウンター2

 

 

2つ目のカウンターが置かれ、フィニッシュ・ホールドの頭上の「2」という数字が点点滅し、今度は「1」に減った。

 

「おい零児!またモンスターがやられたじゃねえか!」

 

興奮してⅣがそう叫んだが、零児の視線はフィニッシュ・ホールドの真上に注がれ、そして彼は呟いた。

 

「カウンターが乗っているにも関わらず、数字が減っている。」

「あ!?そんなこと…」

「不思議だとは思わないか?」

「んなもん…カウントダウンなんじゃねえのか!?」

 

(カウントダウンか…だとすると…)

 

「僕は速攻魔法、《ドロー・プライズ》を発動!このターンの通常召喚・特殊召喚を放棄し、モンスターがバトルで相手モンスターを破壊した時、カードを2枚ドローする!(2)そしてカードを2枚伏せて、ターンエンド!(0)」

<Ⅳ&零児:伏せ1枚 ヌメロ兄弟:伏せ2枚>

 

「じゃあいくぜ、俺のターン!(4)俺は手札から、《ギミック・サーチ》を発動!」

 

 

《ギミック・サーチ》

通常魔法

「ギミック・サーチ」は1ターンに1枚しか発動できない。自分の墓地に存在する「ギミック・パペット」と名の付いたモンスター2体を除外して発動する。自分のデッキから、「ギミック・パペット」と名の付いたモンスター1体を自分の手札に加える。

 

 

「俺は墓地の《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》と《ギミック・パペット-マグネ・ドール》を除外し、デッキから《ギミック・パペット-ナイトメア》を手札に加える!」

「ナイトメア…?」

 

零児が思わずそう呟いたことに応えるようにして、Ⅳはしたり顔で言った。

 

「こいつは、俺のフィールドのモンスターエクシーズ1体をリリースして、手札から特殊召喚ができ、1体で2体分のエクシーズ素材とすることができる!」

「…でも、君のフィールドには何もモンスターはいないようだけどね。」

「ロウっつったか!安心しろ!すぐに用意してやるぜ!手札から魔法カード、《ジャンク・パペット》を発動!」(3)

 

 

《ジャンク・パペット》

通常魔法

自分の墓地の「ギミック・パペット」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。「ジャンク・パペット」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 

「この効果で、墓地のギミック・パペット1体を特殊召喚できる!蘇れ、《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》!!」

 

 

《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》:守備力2500

 

 

「なるほど。それでナイトメアを特殊召喚し、2体分のエクシーズ素材として、新たなギミック・パペットをエクシーズ召喚。そのモンスターで我々の怪腕のフィニッシュ・ホールド越しに戦闘ダメージを与えようというのか。」

 

ハッグがわかりやすい程に、怪腕のフィニッシュ・ホールドに目を向けている。零児はその視線、そして彼の薄気味悪い笑みに気が付き、怪腕のフィニッシュ・ホールドの真上にあるカウントを思い出し、危機感を覚えた。

 

「フォウ!!彼らの狙いは……!!」

「うるせえ!黙ってみてろ!俺にも俺の、プランってもんがあるんだよ!」

「君の…プラン…」

 

Ⅳは後ろを振り向き、Ⅴと目を合わせ、お互い一度頷いた。

 

「俺は手札から、《RUM-アージェント・カオス・フォース》を発動!(2)」

 

「何!?アージェント・カオス・フォース!?」

 

「こいつは、ランク5以上のモンスターエクシーズを進化させ、カオス化させる!……ぐっ!」

 

彼の腕にある紋章が鼓動し、Ⅳは一瞬顔を歪めるが、間髪入れずエクシーズ召喚を続ける。

 

 

「ランク8の《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》で、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れろ、CNo.15!人類の英知の結晶が、運命の糸を断ち切る使者を呼ぶ!ギミック・パペット-シリアル・キラー!!

 

 

ジャイアント・キラーが漆黒の体であったのに対し、カオス化したシリアル・キラーは黄色を基調とした色の体だが、人間の肌により近い色であるためか、どことなく不気味さを覚える。

 

「これは…」

「シリアル・キラー。」

 

 

《CNo.15 ギミック・パペット-シリアル・キラー》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク9/闇属性/機械族/攻撃力2500/守備力1500

レベル9モンスター×3

このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。「No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー」をエクシーズ素材としている場合、このカードは以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。選択したカードを破壊する。破壊したカードがモンスターだった場合、さらにそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

「俺は、ギミック・パペット-シリアル・キラーの効果を発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのカード1枚を破壊し、それがモンスターだった場合、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 

エクスターミネーション・スラッシャー!!

 

 

シリアル・キラーの腹部から丸鋸が4つほど飛び出し、怪腕のフィニッシュ・ホールドを四方からの攻撃で切り裂いた。

 

「うああああっ!」

「ロウ!……貴様っ!」

 

 

ヌメロ兄弟:LP3000→LP400

 

 

零児はその視線をⅣに向け、同時に腕組みを解いた。

 

「君は…これを狙って?」

「当たり前だ。奴のモンスターはバトルする度にカウンターが乗る。そして次に3つ目のカウンターが乗り、何かしらの効果が発動される。それくらいがわからねえ俺じゃねえよ。」

「ほぉ、私は少し君を見くびっていたようだ。」

「資料を漁った、とか言ってたな。どうせ極東のイカサマチャンピオンだと思っていたんだろ?てめえがどういう経緯で社長になったのかなんて知らねえが、俺だってな、守らなきゃいけねえモンがあるんだよ!」

 

「兄様…」

「Ⅳ。」

 

「さあ、これでフィナーレだ!シリアル・キラー!奴らに止めをさせ!ダイレクトアタック!」

 

 

ジェノサイド・ガトリング・バースト!

 

 

口からガトリングの砲身が見えたかと思うと、すぐに集中砲火が放たれ、その場で片膝をついているロウが狙われた。すぐさま煙が立っていき、ロウとその後方にいたハッグの姿は見えなくなった。

 

「やったぜ。」

「…」

 

 

ヌメロ兄弟:LP400→LP3000

 

 

「何!?」

「ライフが回復しているだと!?」

 

さらに煙がはけると、ヌメロ兄弟の後ろには、オーバーレイユニットこそないが、先ほどエクスターミネーション・スラッシャーで切り刻まれたはずの怪腕のフィニッシュ・ホールドが存在している。

 

「フィニッシュ・ホールド!何でそいつまで!?」

「残念だけど、そんな攻撃は通らないよ。僕は罠カード、《ルインズ・リバイバル》を発動した。この罠カードは、このターンに受けた戦闘ダメージ、効果ダメージの合計分のライフを回復し、回復した数値以下の攻撃力を持つモンスターを僕の墓地から復活させる罠カード。これで僕たちのライフは元通りの3000で、受けたダメージ2600の攻撃力を持つ怪腕のフィニッシュ・ホールドを特殊召喚したということさ。」

 

「チッ。無駄打ちか。」

「いいや、無駄ではない。そのまま攻撃していれば、それこそ奴らの思惑通りだった訳だ!この一撃は無駄ではない!」

「僕は君のターンが終わる前に、もう1枚罠カードを発動させてもらおうかな。罠カード、《ルインズ・パイル》!」

 

 

《ルインズ・パイル》

通常罠

 

 

「僕のフィールドに墓地から蘇ったモンスターがいる場合、僕の墓地の同名モンスター3体一組を、特殊召喚する!蘇れ、《ルインズ・スライム》!」

 

 

《ルインズ・スライム》:守備力1500

 

 

「まさか…また。」

「クッ…カードを1枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<Ⅳ&零児:伏せ2枚 ヌメロ兄弟:伏せなし>

 

「そのまさかだよ。さあ、兄さん!」

「フッ。いかせてもらおう!私のターン!(5)私は、フィールドの3体の《ルインズ・スライム》で、オーバーレイ!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

語り継がれし力に宿る、黒き影!全てを見通す、戦慄の権化となれ!《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》!

 

 

《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク3/風属性/魔法使い族/攻撃力1000/守備力2600

レベル3モンスター×2体以上

このカード名の➂の効果は1ターンに1度しか使用できない。

➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。

➁:1ターンに1度、相手モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。その効果は「お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする」となる。

➂:このカード以外の自分フィールドの「No.」と名の付いたエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。このカードをそのモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする(このカードがエクシーズ素材を持っている場合、それらも全て重ねてエクシーズ素材とする)。

 

 

「2枚目のナンバーズ!?」

「やはり、弟が素材を用意し、兄がナンバーズを使うという流れか!」

 

「今頃わかってももう遅い。そろそろ終わりにしよう。私は手札から魔法カード、《ナンバーズ・エディター》を発動!」

 

 

《ナンバーズ・エディター》

装備魔法

 

 

「このカードを装備したナンバーズの攻撃力と守備力を入れ替えることができる。これで、ゴシップ・シャドーの攻撃力が2600となる!」(4)

 

 

《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》:攻撃力1000→攻撃力2600/守備力2600→守備力1000

 

 

「バトル!まずは怪腕のフィニッシュ・ホールドで、シリアル・キラーを攻撃!」

 

大きく振りかぶって出された渾身のストレートにより、シリアル・キラーは粉々に砕け散った。

 

「ぐっ!」

 

 

Ⅳ&零児:LP3000→LP2900

 

 

「さらに、ゴシップ・シャドーで、ダイレクトアタック!」

 

 

グルーム・ストリーム!!

 

 

誰かの嘲笑や叫び声が聞こえる渦のような波動を繰り出した。Ⅳの脳裏には直接響いたようであり、その場で耳を塞いでかがんでしまった。

 

「くっ!う…るせえ攻撃だ!」

 

 

Ⅳ&零児:LP2900→LP300

 

 

「バトルフェイズは終了する。だがそろそろ終わりにしよう!私はメインフェイズ2に、手札から魔法カード、《ルインズ・レート》を発動!」

 

 

《ルインズ・レート》

通常魔法

このカードはメインフェイズ2に発動することができる。攻撃力1000以下のモンスター1体を手札から墓地に送って発動する。相手の手札を確認し、その中に攻撃力1000以下のモンスターがあった場合、そのモンスターを墓地に送り、お互いにデッキからカードを1枚ドローする。その後、自分の手札からモンスターカード1枚を相手に見せ、そのモンスターの攻撃力を上回るモンスターが相手の手札になかった場合、相手に1000ポイントのダメージを与える。自分の手札にモンスターカードがなかった場合、自分は1000ポイントのダメージを受ける。

 

 

「お互いに手札の攻撃力1000以下のモンスターを捨てる!私は手札から、《ルインズ・ガーゴイル》を捨てる!さあ、Ⅳ!手札の《ギミック・パペット-ナイトメア》を墓地に送れ!」

「チッ。」

「その後、お互いに1枚ドロー!(3)」

「いいぜ、ドロー!(1)」

「そして、私の手札の《ルインズ・ゴーレム》を相手に見せる。今見せた《ルインズ・ゴーレム》よりも高い攻撃力を持つモンスターを相手が持っていなければ、1000ポイントのダメージを与える!」

「《ルインズ・ゴーレム》の攻撃力は、2300!?俺の手札には…《ギミック・パペット-デーモンズ・フェイス》しかねえ。攻撃力1000だ。」

「フッ。これで終幕のようだな!くらえ!」

「そうはいかねえ!《ギミック・パペット-デーモンズ・フェイス》の効果発動!こいつは相手からダメージを受ける時、手札から表側守備表示で特殊召喚できる!そしてそのダメージを無効にする!」

 

今引いたカードをそのままプレイするⅣに、運の良さを感じたハッグであったが、それも想定内と言わんばかりに彼は手を伸ばしてカード効果の発動を宣言した。

 

「私は、《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ使い、モンスター効果が発動された時、その効果を、お互いに1枚ずつドローする効果に書き換える!」

 

 

《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》:ORU3→ORU1

 

 

エフェクト・エディット!

 

 

「な…に…!?カード効果の、書き換え…だと!?」

 

デーモンズ・フェイスがフィールドに現れようとしたが、その姿はフィールドから消え、《ルインズ・レート》で発生した紫色のオーラがⅣに向かう。

 

「くそっ…」

「今度こそ終わりだ!」

 

Ⅳが顔を下に向けかけたその瞬間、彼の右に出て来た零児がデュエルディスクのアクティベートスイッチを押したのが見えた。

 

「罠カード、《供託手続の契約書》を発動!」

 

 

《供託手続の契約書》

永続罠

 

 

「相手のモンスター効果が発動した時に発動することができる!発動後2回目の自分のスタンバイフェイズまで、我々が受ける全ての効果ダメージを無効にする!」

「なにっ!?」

 

 

「零児…お前…」

「Ⅳ。何を驚いている。我々はチームだ。負ける訳にはいかない、そうだろう?」

「ヘッ。ドヤ顔で当たり前なことを…言ってんじゃねえぞ!!」

 

 

(次回に続く)




<今日の最強カード>
《特別雇用の契約書》
永続魔法
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。自分のエクストラデッキから「DDD」と名の付いたモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分はモンスターを召喚・特殊召喚することはできない。この効果で特殊召喚したモンスターがフィールドを離れた時、このカードを破壊する。このカードがフィールドを離れた時、この効果で特殊召喚したモンスターを破壊する。また、自分のエンドフェイズに発動する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける。

<次回の最強カード>
《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク3/風属性/魔法使い族/攻撃力1000/守備力2600
レベル3モンスター×2体以上
このカード名の➂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:1ターンに1度、相手モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。その効果は「お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする」となる。
➂:このカード以外の自分フィールドの「No.」と名の付いたエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。このカードをそのモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする(このカードがエクシーズ素材を持っている場合、それらも全て重ねてエクシーズ素材とする)。





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第37話-悪魔と機械のオーバーレイ

何メートル転落したのか、そんなことにも頭が回らず、バリアン七皇の一人、アリトは遊士とのデュエルでの敗北を噛みしめていた。

 

「くそっ。まさか俺が…負けるとはな。」

「あぁ、俺もそう思ったぜ。」

 

暗闇の中からのその声によって、アリトは瞬時に首を後ろに向けた。満身創痍の彼にできることは、それが精一杯であった。

 

「誰だ!?」

「誰って、俺だよ、俺。ベクター!」

「ベ…ベクター?ヘッ。負けて無様な俺の姿を見に来たか。趣味の悪い奴だな!」

「そんな冷たい言い方するなよなぁ?俺らはバリアン七皇同士だろ?」

「その蔑んだような目のことを、俺は言って…うっ!」

 

これ以上喋らせまいとしたのかは不明だが、ベクターは黙って掌をアリトに向け、そこからギラグに対してやったことと同じく、邪悪なオーラを出し始めた。

 

「ベ…ベクター…てめえ…」

「わりいな、アリト。俺にとっちゃ、お前が負けても勝っても、どっちでも良かったんだよぉ!これがお前の…結末だからさ!!」

 

(す…すまねえ…七皇のみんな。ギラグ…)

 

アリトは果たして感じ取ることができたのだろうか。自分自身が光の粒となっていく過程を。

 

 

------

 

Ⅳ&零児

 

・LP300

・手札(Ⅳ:2枚)(零児:3枚)

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)《供託手続の契約書》(∞)/1枚

 

ヌメロ兄弟

 

・LP3000

・手札(ロウ:0枚)(ハッグ:4枚)

・(モンスター)《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》(ATK2600)(ORU0)/《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》(ATK2600)(ORU1)(+)

・(魔法・罠)《ルインズ・レート》(発動中)/《ナンバーズ・エディター)(+)

 

 

零児の目の前で開いた永続罠、《供託手続の契約書》が《ルインズ・レート》の闇の波動を受け止め、ダメージを防いだ。

 

「ほう。仕留めそこなったか。」

「君らはお互いのことをパートナーだって認めていない、みたいな感じだったけど?」

 

突然のそのロウの質問に、零児が一歩前に出て答えた。

 

「ほんの数ターンではあったが、タッグデュエルを通じて私はわかったのだ。彼が如何にしてナンバーズという強大なものに対して立ち向かうデュエリストなのかをな。」

「零児。」

「それに、君にどんな事情があれ、我々に負けは許されない。そうだろう。」

「ヘッ。そりゃそうだ。」

 

「残念だが、君たちでは我々を倒すことはできないがな。私はカードを3枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<Ⅳ&零児:伏せ1枚 ヌメロ兄弟:伏せ3枚>

 

「ではいこう。私のターン!(4)このスタンバイフェイズに、《供託手続の契約書》の効果を発動!自分は1000ポイントのダメージを受ける!」

「フッ。結局はその場しのぎか!!これは傑作だね!」

 

勝利を確信したからか、今まで以上にロウは高らかに笑ったが、その笑いを消したのは、《供託手続の契約書》のカードそのものだった。

 

「…ダメージが発生していない?」

「《供託手続の契約書》は、あらゆる効果ダメージを無効にする。もちろん、このカードの効果によって発生するダメージも例外ではない!」

「だが、お前の言うリスクって奴を払わなきゃいけねえんじゃねえのか?」

「その通りだⅣ。次の我々のターンのスタンバイフェイズには《供託手続の契約書》は破壊され、この効果で破壊された時、無効にしたダメージ分のダメージを受けることになる。」

 

「何!?」

「それじゃあ、次のⅣ兄様のターンが来たら、無効にした2000ポイントのダメージを受ける!?」

 

それをⅢが言い終わるか言い終わらないかのタイミングで、零児が言い放った。

 

「私はカードを1枚伏せる!(3)」

「…」

 

「そして私は永続魔法、《魔神王の契約書》を発動!(2)」

 

 

《魔神王の契約書》

永続魔法

「魔神王の契約書」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:自分メインフェイズに発動できる。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。「DD」融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。

②:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

 

「手札またはフィールドから、悪魔族の融合モンスターの素材を墓地に送り、その融合モンスターを召喚する!私は手札から、《DDD完醒王ザッハーク》と、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》を融合!(0)」

 

 

神々の黄昏を打ち破り、押し寄せる波の勢いで、新たな世界を切り開け!融合召喚!出現せよ、極限の独裁神!《DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク》!!

 

 

《DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク》

融合モンスター

レベル10/闇属性/悪魔族/攻撃力3200/守備力3000

「DDD」モンスター×2

➀:1ターンに1度、このカードが戦闘を行う攻撃宣言時に、このカード以外の自分フィールドの「DD」カードまたは「契約書」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻し、このカードと戦闘を行うモンスター以外の相手フィールドの表側表示モンスター1体を選んで装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

➁:このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

「ほう。ここに来て攻撃力3200のモンスターを出してきたか。」

「ようやくお前もやる気になったか、零児!」

 

「けど、Ⅴ兄様。ナンバーズはナンバーズでなければ倒せない。いくらカエサル・ラグナロクの攻撃力が高くても、600ダメージを与えるに留まりますよ。」

「それは彼が一番よくわかっていることだろう。」

 

 

(カエサル・ラグナロクは、自身のDDと名の付くカードまたは契約書を私の手札に戻し、戦うモンスター以外の相手モンスターを装備し、その攻撃力分攻撃力を上げる効果がある。カエサル・ラグナロクでゴシップ・シャドーに攻撃を仕掛け、私の契約書を手札に戻しつつ怪腕のフィニッシュ・ホールドを装備すれば、カエサル・ラグナロクの攻撃力は5800となる。確かにゴシップ・シャドーは、オーバーレイユニットを使えばモンスター効果を書き換えられる強力なナンバーズ。だが、その効果を使うためにはオーバーレイユニットが2つ必要となる!)

 

 

《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》:ORU1

 

 

(問題は彼らの場の3枚の伏せカードだが…考えていたところで彼らの伏せカードが何かわかる訳ではない。ならば…)

 

「バトルだ!《DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク》で、《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》を攻撃!」

 

波の中にでもいるかのようなオーラを纏ったカエサル・ラグナロクが惑乱のゴシップ・シャドーの方へと体を向けた。

 

「この瞬間、カエサル・ラグナロクのモンスター効果発動!戦闘を行う相手モンスター以外のモンスターを装備し、その攻撃力を、このカードの攻撃力に加える!」

「なっ…」

「私は《魔神王の契約書》を手札に戻し、装備するのは…当然、《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》!」

 

カエサル・ラグナロクがその巨大な手を広げると、そこに引き寄せられるようにして、怪腕のフィニッシュ・ホールドが吸収されそうになったが、吸収を終えていない段階で、カエサル・ラグナロクはその手を閉じた。

 

「どうした、カエサル・ラグナロク!?」

「無駄な足掻きだったな!惑乱のゴシップ・シャドーをよく見てみるが良い!」

「あ…あいつにはオーバーレイユニットがねえ!さっきまで1つあったのによ!」

「ない、ということは…使ったということか?」

「そうだ。私は罠カード、《オーバーレイ・ブリード》を発動していたのだ。」

 

 

《オーバーレイ・ブリード》

通常罠

 

 

「この罠カードは、自分フィールドに2体以上エクシーズモンスターが存在する場合、墓地のモンスターをその数だけ選び、それぞれのモンスターの下に重ねてオーバーレイユニットとすることができる!これで、惑乱のゴシップ・シャドーに2つ目のオーバーレイユニットが乗り、モンスター効果が使用できたということだ!さあ再び、カードを引くが良い!(2)」

「クッ。(1)だがバトルはまだ続いている!カエサル・ラグナロクで、惑乱のゴシップ・シャドーを攻撃!」

 

 

ジ・エンド・オブ・ジャッジメント!!

 

 

「罠カード、《軍神の采配》を発動!攻撃対象となるモンスターは私が決める!さあ、怪腕のフィニッシュ・ホールドに攻撃をするが良い!」

「しまった!モンスター効果を…」

 

 

ヌメロ兄弟:LP3000→LP2400

 

 

「《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》のモンスター効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカードにカウンターを1つ置く!!」

 

「またそれかよ。いい加減しつこいぜ。」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:ORU1→ORU0/カウンター0→カウンター1

 

 

「このターンで仕留めることはできなかったか。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

<Ⅳ&零児:伏せ3枚 ヌメロ兄弟:伏せなし>

 

「このターンで仕留めることはできなかった……?そんなセリフが良く言えたものだね!僕がこのターンで仕留めてあげるよ!僕のターン!(1)」

 

ロウがドローした永続魔法、《ナンバーズ・リワード》を一瞥していると、零児の声が遺跡内に響いた。

 

「だが、君のナンバーズでは、カエサル・ラグナロクを倒すことはできない!」

 

「そんなことがわからない我々だと思うか?私は場の罠カード、《オーバーレイ・ハンマー》を発動!」

 

 

《オーバーレイ・ハンマー》

通常罠

 

 

「発動後オーバーレイユニットとなり、私のフィールドのエクシーズモンスターの下に重ねられる!私はこのカードを、《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》の下に重ねる!」

「なに?」

「これで、怪腕のフィニッシュ・ホールドの攻撃力は1000ポイントアップする!」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:攻撃力2600→攻撃力3600

 

 

「バトル!フィニッシュ・ホールドで、カエサル・ラグナロクを攻撃!」

「な…」

「カエサル・ラグナロクの攻撃力は3200ポイント。そしてフィニッシュ・ホールドは3600ポイント。その差は400!お前たちのライフは残り…300!これで止めだ!」

 

仁王立ちする零児の目の前にいるカエサル・ラグナロクに対し、フィニッシュ・ホールドの拳が近づいてくる。物凄い速さであったはずだが、彼にはスローモーションのように見えた。

 

そんなことを考えている刹那、カエサル・ラグナロクの前に出たのはⅣであった。

 

「罠カード、《ギミック・フェイカー》を発動!」

 

 

《ギミック・フェイカー》

通常罠

相手ターンでのみ発動可能。このカードは発動後装備カードとなり、自分フィールド上に存在するモンスター1体に装備される。装備モンスターはレベルが2つ下がり、効果は無効化される。また、装備モンスターは1ターンに1度だけ、戦闘によっては破壊されず、装備モンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは半分となる。

 

 

突然カエサル・ラグナロクの体がやせ細り、四肢に細い黒い棒が入り込み、まるで操り人形のようになってしまった。

 

「Ⅳ!すまない!!……ぐっ!」

「《ギミック・フェイカー》によって、カエサル・ラグナロクはギミック・パペット化し、バトルダメージは半分となる!ヘッ。お前に貸しがあるままってのは、気に入らねえからな!」

 

 

Ⅳ&零児:LP300→LP100

 

 

空中で体勢を立て直し、その場に着地した零児を見ると、ⅢとⅤは安堵の息を漏らした。Ⅳは口では「フンッ!」と言っていたが、その表情には笑みが見えた。

 

「くっ!しぶとい奴らめ!だがバトルを行ったことで、《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》のモンスター効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このカードにカウンターを1つ置く!」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:ORU1→ORU0/カウンター1→カウンター2

 

 

「僕はさらに永続魔法、《ナンバーズ・リワード》を発動!」(0)

 

 

《ナンバーズ・リワード》

永続魔法

「No.」と名の付いたモンスターの効果によって、相手フィールド上に存在するカードが破壊された場合、その時に破壊されたカード1枚につき、相手に1000ポイントのダメージを与える。フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手によって破壊された場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「ナンバーズの効果によって相手のカードが破壊された場合、1枚につき1000ポイントのダメージを与える!これで君たちにはもはや成す術はない!」

「やはり。そのモンスターにはカードを破壊する効果がある訳だな?」

「そうさ!怪腕のフィニッシュ・ホールドには、カウンターが3つある場合、戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に相手フィールドのカードを全て破壊する効果がある!」

「ロウ。お前は頭に血が上るとすぐに…」

「上ってなんかいないよ、兄さん!それに、いいじゃないか!効果がわかったところで、どうせ彼らは僕らを倒すことはできない!僕らの持つナンバーズ、4枚のうち、1枚だけ持って帰るという訳さ!」

 

「4枚…」

 

そうⅤが呟いたのをハッグは見逃さなかった。その直後に、Ⅳがロウに向かって言い放った。

 

「けど、お前のナンバーズにはもうオーバーレイユニットがねえじゃねえか!それでどうやって3つ目のカウンターを溜めるんだよ?」

「フッ!《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》の効果発動!」

 

 

ゴシップ・コンバート!!

 

 

フィールドに存在していたゴシップ・シャドーがその姿を光の玉のようなものに変えたかと思うと、それが怪腕のフィニッシュ・ホールドの周囲を飛び始めた。彼らにはすぐにわかった。その玉が何を表しているのか…

 

「ゴシップ・シャドーが…オーバーレイユニットに!?」

「そう!このカードは自身が持つオーバーレイユニットごと、他のナンバーズのオーバーレイユニットにすることができるのさ!」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:ORU0→ORU1

 

 

「これでは次のⅣのターンで、仕掛けにくくなった。動くべき時ではなくなったのか。」

「いや、そうはいかないね!ゴシップ・シャドーに装備されていた、《ナンバーズ・エディター》の効果が発動される!このカードが墓地に送られた次の相手ターン、バトルフェイズを行い、モンスターでの攻撃をしなければならない!しなければ、そのペナルティとして、ゴシップ・シャドーの攻撃力1000ポイント分のダメージを受けてもらう!」

 

「ロウ!もういいだろう。ターンが終わりなら…」

「わかっているよ、兄さん!僕はこれで、ターンエンド!(0)」

<Ⅳ&零児:伏せ2枚 ヌメロ兄弟:伏せなし>

 

ロウはターンを終えると、思い出したかのような顔を見せ、すぐ後に笑みを浮かべた。彼の視線の先には、Ⅳと零児の永続罠、《供託手続の契約書》があった。

 

「そういえば!次のⅣのターンのスタンバイフェイズだったね!《供託手続の契約書》の効果が発動するのは!黙っていても、君たちは負けるんだったね!」

 

 

それは思った。そう。Ⅳからしてみれば、《供託手続の契約書》の存在を忘れることなどあり得ない。零児の発動した罠カードで、チームとは言え、自分のターンで、ライフが0になるのだから。

 

零児のターンが終わり、零児は黙って後ろに下がり、Ⅳが中央の魔法・罠カードゾーンの真後ろに立つ形となった。ここからハッグのターンが終わるまでは、Ⅳ&零児チームではⅣが主導権を握ることとなる。

 

目の前にあるのは、《供託手続の契約書》、カエサル・ラグナロクの効果が書き換えられたことで手札に戻ることはなかった《魔神王の契約書》、そして《ギミック・フェイカー》と伏せカードが2枚。

 

その伏せカードを見た時、Ⅳはある光景を思い出した。そして彼は思わず、後ろにいる零児に顔を向けた。

 

2人とも同時に、微かに、首を縦に動かした。そんな気がした。

 

 

「ヘッ。いくぜ!!俺のターン!(3)このスタンバイフェイズに、《魔神王の契約書》の効果と、《供託手続の契約書》の効果が発動!それぞれ1000のダメージを受ける!」

「フッ!これで終わりだよ、2人とも!自らの契約書で、破産する時だっ!」

 

2枚の契約書のカードイラストの部分が同時に光ると、ロウがそう高らかに言ったが、それを言い終わるか言い終わらないかのところで、2枚の契約書は砕け散った。

 

「契約書…?そんなもの…」

「なっ…!?」

「私は罠カードを発動させてもらったよ。《契約洗浄(リース・ロンダリング)》をね!このカードの効果で、フィールドの契約書を全て破棄し、1枚につき1000ポイントのライフを回復し、回復ライフ1000ポイントにつき1枚ドローする!さあ、Ⅳ!カードをドローするがいい!」

 

 

Ⅳ&零児:LP100→LP2100

 

 

「ケッ。とんでもねえ社長だな。けどよ…嫌いじゃねえぜ、そういうの!ドロー!!(5)手札から、《ギミック・パペット-ボム・エッグ》を召喚!(4)」

 

 

《ギミック・パペット-ボム・エッグ》:攻撃力1600

 

 

「そしてこいつを対象に魔法カード、《レベル・クロス》を発動!手札を1枚墓地に送り、(2)ボム・エッグのレベルを2倍にする!」

 

 

《レベル・クロス》

通常魔法

手札1枚を墓地へ送って発動する。 自分フィールド上に存在するレベル4以下のモンスター1体のレベルは倍になる

 

 

《ギミック・パペット-ボム・エッグ》:☆4→☆8

 

 

「さて、《ギミック・フェイカー》の効果で、カエサル・ラグナロクのレベルは今現在8だ!」

 

 

《DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク》:☆8

 

 

「いくぜ、俺はレベル8となったボム・エッグと、レベル8となったカエサル・ラグナロクで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

万物を従えし異次元の覇者よ!使者の血肉を啜り、滅びの権利を行使せよ!《DDDギミック・パペット-カラミティ・デーモン》!!

 

 

6メートルほどの高さで彼らを見下ろすのは、《DDDギミック・パペット-カラミティ・デーモン》。頭部以外は金色であり、5メートルほどの巨大な錫杖を持つ姿は、デステニー・レオを彷彿させるが、頭部は明るい緑色であり、2本の角の生えた、羊のような悪魔のような、気味の悪さを持っている。

 

「こ…これは!?」

 

 

《DDDギミック・パペット-カラミティ・デーモン》:攻撃力2500

 

 

「図体の割には攻撃力は2500か。それでは残念だが、怪腕のフィニッシュ・ホールドには及ばんな。」

「舐めんなよ!俺はカラミティ・デーモンの効果発動!1ターンに1度だけ、墓地の悪魔族か機械族のモンスター1体を選び、このカードに装備し、その攻撃力分だけ、攻撃力をアップさせる!俺は墓地の、《CNo.15 ギミック・パペット-シリアル・キラー》を装備し、攻撃力を2500ポイントアップさせる!」

 

 

《DDDギミック・パペット-カラミティ・デーモン》:攻撃力2500→攻撃力5000

 

 

「攻撃力5000!?」

「フッ。安心しろロウ。私は墓地の罠カード、《オーバーレイ・ハンマー》のもう一つの効果を発動する!」

「兄さん!」

「相手モンスターの攻撃力がアップした時、墓地からこのカードを除外することで、オーバーレイユニットを持った怪腕のフィニッシュ・ホールドの攻撃力は2000ポイントアップする!」

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:攻撃力3600→攻撃力5600

 

 

「これで再び、フィニッシュ・ホールドの攻撃力が、カラミティ・デーモンの攻撃力を上回ったな。」

「くっ。」

「諦めるのは早い!私は永続魔法、《戦神との不正契約書》を発動!」

 

 

《戦神との不正契約書》

永続魔法

➀:1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに、 自分フィールドの「DD」モンスター1体と 相手フィールドのモンスター1体を対象としてこの効果を発動できる。 このカードがフィールドに存在する限り、バトルフェイズ終了時まで、 対象の自分モンスターの攻撃力は1000アップし、 対象の相手モンスターの攻撃力は1000ダウンする。

➁:自分スタンバイフェイズに発動する。 自分は1000ダメージを受ける。

 

 

「自分フィールドのDDモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせ、相手モンスターの攻撃力を1000下げる!」

 

 

《DDDギミック・パペット-カラミティ・デーモン》:攻撃力5000→攻撃力6000

 

 

《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》:攻撃力5600→攻撃力4600

 

 

 

「なっ!」

「何だと!?」

 

「Ⅳ。もしも我々が意志疎通を図ることができるデュエリスト同士ならば、どんな兄弟が相手だろうと、負ける可能性は低いな?」

「ヘッ。そういうところがいちいちムカつくぜ!負ける可能性は低い…じゃなくてよ、負けることはありえねえ、だろうが!」

「ビジネスに絶対はない!だが…気概という意味なら、絶対、と言えるかもしれんな。」

「ケッ。癪に障るぜ!」

 

そう言いながら楽しそうに笑みを浮かべるⅣは、腕を前に伸ばして、カラミティ・デーモンの攻撃を宣言した。

 

「俺は《DDDギミック・パペット-カラミティ・デーモン》で、フィニッシュ・ホールドを攻撃!」

 

 

全てを滅ぼせ、エクスペル・ディザスター!!

 

 

カラミティ・デーモンの持つ杖から、光と闇の雷が混じりあい、フィニッシュ・ホールドへと向かっていく。

 

 

ヌメロ兄弟:LP2400→LP1000

 

 

「だが、戦闘ダメージは受けたが、私たちのライフポイントは残る!」

「それに、バトルが終わった時には、フィニッシュ・ホールドの効果が発動し、君たちのフィールドのカードは全て破壊される!そして、《ナンバーズ・リワード》の効果で、破壊したカード1枚につき1000ポイントのダメージを与える!」

 

「バトルが終わった時にはな!!」

「何…?」

「残念だが、てめえらのライフは、バトルが終わる時には残ってねえ!俺はカラミティ・デーモンのモンスター効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、モンスターをバトルで破壊した時、お前のフィールドのカードを全て破壊し、1枚につき1000ポイントのダメージを与える!」

 

「な…バカな…」

「我々が、カード1枚につき1000ポイントのダメージ…だと?」

 

地面にぶつかった閃光の塊がその場で弾け、大きな爆発が起こり、ヌメロ兄弟は後方に吹き飛ばされた。

 

「うわあああああっ!」

「ぐわああああっ!」

 

 

ヌメロ兄弟:LP1000→LP0

 

 

「おおっ!」

「Ⅳ兄様と赤馬零児のタッグが勝った!!」

 

「ヘッ!」

「フッ…」

 

彼らに言葉はなかった。一瞬目を合わせて笑みを見せた。それだけで、勝利を分かち合うのには十分すぎる時間だった。

 

「くっ…こんなはずじゃない!今のは…たまたまだ!もう一度デュエルすれば…」

「やめろ、ロウ。負け惜しみほどみっともないものもない。」

「兄さん。こいつらに…ナンバーズを渡すの?」

「ああ。彼らの実力は、ナンバーズを手にするのに相応しい。」

 

ハッグはその場で立ち上がり、近づいてきたⅣに2枚のナンバーズを渡した。

 

「《No.51 怪腕のフィニッシュ・ホールド》に、《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》か。よし。」

「兄様!あそこに出口がありますよ!」

 

Ⅲの指先に、光の漏れる場所があったことで、そこがすぐに出口だとその場にいたものにはわかった。

 

だが、出口に進みかけた時、Ⅴは踵を返した。

 

「待て。ナンバーズは全部で4枚ではなかったのか?」

「そういえば!てめえ、あと1枚はどこだ?」

「あぁ。ロウが言ってしまったな。」

「それは…確かにあったんだけどね。つい最近ここを訪れたデュエリストが…今渡したナンバーズ2枚と引き換えに持って行ってしまったんだ。」

「何だと!?それじゃてめえら、ナンバーズを守ってるとかなんとか言っておきながら、全然守ってねえじゃねえか!」

 

「そんなことはない!」

「そうだ!」

 

「話にならんな。やはり私が動くべき時ではなかったか。」

 

 

Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、零児の4人はその遺跡から出ていくこととした。周囲を夜の闇が包んでいると思った矢先、遊歩道のようなところから出て、鉄橋に差し掛かったところで若い男性に声をかけられた。

 

「おい。」

 

「ン…?」

「誰だお前?」

 

真っ白のスーツに身を包み、眼鏡をかけた狐目で茶髪の男性が、そこに立っていた。夜であるためか、かなり目立っている。

 

「お前ら…そのナンバーズ、渡してもらおうか。」

 

「何。」

「何だと!?」

 

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク3/風属性/魔法使い族/攻撃力1000/守備力2600
レベル3モンスター×2体以上
このカード名の➂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:1ターンに1度、相手モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。その効果は「お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする」となる。
➂:このカード以外の自分フィールドの「No.」と名の付いたエクシーズモンスター1体を対象として発動できる。このカードをそのモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする(このカードがエクシーズ素材を持っている場合、それらも全て重ねてエクシーズ素材とする)。


<次回の最強カード>
《コズミック・フリッパー》
効果モンスター
レベル4/光属性/戦士族/攻撃力1600/守備力1200





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第38話-三兄弟最終戦!Ⅴvsムジョウ

「零児とはまだ連絡が取れないのか!?」

「ああ。」

「大丈夫よ遊矢。赤馬零児が、そう簡単にやられる訳がないじゃない。」

「そりゃそうかもしれないけど!!」

 

遊矢たちが遊士と別れてから5日ほどが経過していた。彼らの目の前にあるのは、畑のようである。畑のよう…そう言えるのは、もちろん畑ではないからである。畑には、農作物がなっているものだが、目の前に広がっているのはそんなのどかな光景ではない。まるで建っていた多くのビルが全て崩れ去ってしまったかのような、そんな印象を受ける、コンクリートや瓦礫が無数に広がり、平らになっているから、畑のように見えているのである。

 

人気もないその荒涼とした場所に遊矢、権現坂、柚子が佇んでいるのにはもちろん理由があった。そこが、彼らにとっては目的地であったからである。

 

「ここが…前線基地だというのは、本当なのか?」

「どうやら、間違いないみたいよ。それは。残念だけど。」

 

遊士たちは手分けをして前線基地にいるデュエリストたちに何があったのかを聞くことにしていたのだが、零児が聞いた情報の中に、「紅く光った空から、光が降り注ぎ、基地がその光によって半壊してしまった」という抽象的なものがあり、空が異常なほど紅く光っていたことや、バリアンズ・フォースの雨が降っていたことを根拠に、零児は前線基地を崩壊させた元凶を突き止めることを決めたのだ。

 

「早く仲間の力を借りて、融合次元に行くつもりだったのだがな。」

「そうだけど、零児は…緑道にある前線基地の一つに向かったっきり帰ってこないよ。」

「待っててとは言われたけど…」

「うむ。」

 

どうすれば良いか迷っている2人に対し、遊矢は頭を両手でかきむしってから言った。

 

「あぁ、もう!じれったい!俺たちもそこにいくぞ!最後に零児の行方がわからなくなった場所を探して、行くんだ!」

「お、おい、遊矢!」

「ちょっと待ちなさいよ~!!」

 

 

------

 

 

アリトとの戦いを終えた後、遊士は遊馬の家に居候させてもらうこととなり、仲間として力を借りた遊馬たちとともに、バリアンとヘヴンズと戦う決意をした。

 

家から目と鼻の先にある公園のベンチで遊士と遊馬は今後のことについて話をしていた。

 

「遊馬。こっからどうすんだ?」

「どうするって、来た奴とデュエルするに決まってるだろ!かっとビングだ、俺!」

「いや、そういうことじゃねえよ。あいつらと戦うにあたって、何か策はねえのかって話だよ。」

「やってるよ!ナンバーズ探し!」

「あぁ。お前の仲間たちにも分担させてんだろ?ⅢとⅣとⅤ…それにカイトだっけ?」

「そうそう!」

「でもそれだけじゃあのカオスナンバーズは対策したことにはならねえだろ。」

「それは私も同感だ、遊馬。」

「なんだよアストラルまで?じゃあどうしろって言うんだよ、2人とも!?」

 

「そんな考えているだけなら、俺様とデュエルしな!!」

 

それを考えていた時、まさにその時に、黒く光沢のある人型のようなものが一瞬見え、その後夕暮れ時の逆光で顔が少し見えにくいが、幼い顔つきが見えた。。

 

「え…?」

 

一瞬時間がかかった。黒く光沢のある人型……それはまるで、西洋の騎士が身に纏う鎧であった。いや、まるでというよりも、本物のそれかもしれない。

 

「…?アストラル。知ってるか?」

「私が知る訳ないだろう。遊馬。君の知り合いではないのか?」

「いや…」

 

「こんなクソ暑い時期によくそんな格好してられんな。」

「お前こそ!こんな暑いのに、学ランなんて着やがって!!」

 

再び沈黙が訪れかけたので、その少年が口火を切った。

 

「聞いて驚くなよ!俺様はな、ナイト!夜ノ騎士(ヨルノ・ナイト)様だ!」

 

「…だれ?」

 

「あぁ、もう!お前ら忘れたのかよ!ヘヴンズ・サードの紹介の時に!!」

「ナイト…?そんな奴いたか遊馬?」

「いた…ような、いなかった…ような。」

「確かにいたな。ナイト。」

「お前らは覚えてなくても、アストラルがきちんと覚えてるじゃねえか。」

 

そのセリフを聞いた途端、遊馬の顔に真剣さが現れた。

 

「こいつ…アストラルが見えてるのか。」

「そうか。それなら、ヘヴンズ・サードだってのも、納得がいくな。」

 

「今更ビビってもおせえぜ!さあ、俺様とデュエル・タイムだぜ!」

 

 

------

 

 

「お前らのナンバーズ。渡してもらおうか。」

 

「そうはいかねえよ。こいつは俺たちがもらったんだ。デュエルに勝ってな。」

「ヌメロ兄弟に勝ってか?」

「な…」

「お前…何者だ?」

 

すると白いスーツの男性は胸ポケットから1枚のカードを取り出して見せた。一瞬だったので詳しいカード名は確認できなかったが、エクシーズモンスターであり、ナンバーズと書いてあったのは間違いなかった。

 

それを視認すると、今までの情報から考えて零児は一つの結論を出した。

 

「そうか。君はヌメロ兄弟が言っていた、ナンバーズを持って行った人物か。」

「ご名答!俺の名前はムジョウ。最強の運の力を手に入れる定めを持った男だ!」

 

彼が力強くそう言うと、Ⅳは鼻で彼のことを笑った。

 

「ヘッ。何が最強の運だよ。てめえがやったことは想像がつくぜ。ヌメロ兄弟にナンバーズを渡し、俺たちがナンバーズを手に入れたところでそのナンバーズを手に入れて、結局てめえがすべてのナンバーズを手に入れようって腹なんだろ?せっこい奴だな。」

「フッ。わかりやすかっただろうな。だが俺は、それでも手に入れなければならない!ナンバーズの力が、俺には必要なんだ!」

「何のために使うかはわかりませんが、ナンバーズを渡す訳にはいきませんよ!」

「だったら俺とデュエルだ!お互いのナンバーズを全て賭けてな!」

 

「誰がそんな不当なデュエルを………!?」

 

Ⅳが鉄橋の先に進もうとした時、鉄格子の部分から鋭い針のようなものが5、6本向けられたのが彼らにわかった。

 

「こいつは!?」

「これは、俺が作った特製の毒針よ。どんな強力な獲物だろうがこいつでイチコロだ。俺のデュエルディスクのオーディオボタンを押した瞬間、針がお前を貫くぜ。」

「何て卑怯な真似を!」

 

「何度も言うが、俺にはナンバーズが必要なんだよ。弟たちのためにも!」

 

「弟たちのため…?」

 

弟という言葉の入ったムジョウの発言に、Ⅴはそう呟いて、デュエルディスクを前に掲げた。

 

「Ⅴ兄様!?」

「兄貴!?」

 

「今こそ私がデュエルをする時!」

 

「そうか。お前も長男なのか?いいぜ。だったらデュエルだ!お前を倒せば、俺がお前らのナンバーズを全ていただくぜ!」

「いいだろう。ならば私が勝てば、君のナンバーズをいただく!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

Ⅴ   :LP4000

ムジョウ:LP4000

 

 

 

「俺の先攻だ!俺は手札からモンスターをセットし、カードを2枚伏せて、ターンエンド!(2)」

<Ⅴ:伏せなし ムジョウ:伏せ2枚>

 

(どんな手で来るかと思えば、モンスターと魔法・罠カードをセットしただけ。凡庸な一手だな。)

「私のターン、ドロー!(6)私は手札から、《コズミック・フリッパー》を召喚!(5)」

 

 

《コズミック・フリッパー》:攻撃力1600

 

 

「《コズミック・フリッパー》は、相手の裏側守備表示モンスターに攻撃をする場合、攻撃力が500ポイントアップする!いけっ!《コズミック・フリッパー》!裏側守備表示モンスターを攻撃!」

 

 

《コズミック・フリッパー》:攻撃力1600→攻撃力2100

 

 

3つ目を持つ、灰色の人型の機械仕掛けのモンスターが右手に持ったトマホークのような武器でモンスターを薙ぎ払った。

 

 

「《アーミー・ダイスン》の効果発動!戦闘で破壊された時、自分のデッキから、《アーミー・ダイスン》を可能な限り、守備表示で特殊召喚する!」

 

 

《アーミー・ダイスン》:守備力1300

《アーミー・ダイスン》:守備力1300

 

 

サイコロでできた頭部に甲冑という、何とも不釣り合いな出で立ちなモンスターが2体現れると、《コズミック・フリッパー》はⅤの元へと下がった。

 

「私はこれで、ターンエンドだ。(5)」

<Ⅴ:伏せなし ムジョウ:伏せ2枚>

 

「俺のターン!(3)俺はこのスタンバイフェイズに、《アーミー・ダイスン》のモンスター効果を発動!自分の手札からモンスター1体を墓地に送り、自分フィールドの全てのモンスターは、墓地に送ったモンスターと同じレベルとなる!俺は手札からレベル5の、《フィフス・ダイスン》を墓地に送る!」(2)

 

 

《アーミー・ダイスン》:☆5

《アーミー・ダイスン》:☆5

 

 

「レベル5にしただと?」

「まだだ。俺はさらに手札から魔法カード、《死者蘇生》を発動!(1)」

 

 

《死者蘇生》

通常魔法

自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

 

「墓地から、《フィフス・ダイスン》を特殊召喚!」

 

 

《フィフス・ダイスン》

効果モンスター

レベル5/光属性/天使族/攻撃力0/守備力100

このカードが特殊召喚に成功した時に発動する。自分のデッキから「フィフス・ダイスン」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

 

「フィフス・ダイスンが特殊召喚された時、自分のデッキから同名のモンスターを特殊召喚できる!出でよ、《フィフス・ダイスン》!」

「これでレベル5のモンスターが、4体…」

「いくぞ!4体のレベル5のモンスターで、オーバーレイ!!4体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

常識を超えし存在よ!今こそ賽の目にその力を宿し、七番目の扉を開け!No.67 パラダイスマッシャー!!

 

 

《No.67 パラダイスマッシャー》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク5/光属性/天使族/攻撃力2100/守備力2100

レベル5モンスター2体以上

➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。

➁:1ターンに1度、自分メインフェイズ1にこのカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。お互いにサイコロを2回ずつ振る。出た目の合計が大きいプレイヤーは、次のターン終了時までモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言できない。

➂:このカードがモンスターゾーンに存在し、自分または相手がサイコロを振った場合、1ターンに1度だけその内1つの目を7として適用できる。

 

 

 

「これがてめえのナンバーズ!」

「Ⅴ兄様、気を付けて!」

 

全身が赤い、筋肉隆々の腰巻を巻いた男…のようなイメージのモンスター。2メートルほどの身長を持ち、その長さと同じほどの棒を手で持っている。その先には、自身の顔よりも巨大なサイコロが取り付けられている。

 

「見た目はどうあれ、強力な効果を持っているかもしれない。油断はできないな。」

「バトル!パラダイスマッシャーで、《コズミック・フリッパー》を攻撃!」

 

手に持ったサイコロの着いた長い棒を振り上げ、そのサイコロの部分で《コズミック・フリッパー》を思い切り殴りつけた。

 

「くっ!」

 

 

Ⅴ:LP4000→LP3500

 

 

「《コズミック・フリッパー》のモンスター効果発動!戦闘によって破壊された時、自分のデッキから攻撃力1000以下の機械族モンスターを手札に加える!私はデッキから、《惑星探査車(プラネット・パスファインダー)》を手札に加える!(6)」

「フッ。来るか?ナンバーズ?俺はこれで、ターンエンドだ!(1)」

<Ⅴ:伏せなし ムジョウ:伏せ2枚>

 

「私のターン、ドロー!(7)私は手札から、《太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)》を特殊召喚!」(6)

 

 

太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)》:攻撃力800→攻撃力400

 

 

「このカードは私のフィールドにモンスターが存在しない場合、能力値を半分にし、手札から特殊召喚できる!さらに私は手札から、《惑星探査車(プラネット・パスファインダー)》を通常召喚!(5)さらに魔法カード、《タンホイザーゲート》を発動!(4)」

 

 

《タンホイザーゲート》

通常魔法

自分フィールド上の攻撃力1000以下で同じ種族のモンスター2体を選択して発動できる。選択した2体のモンスターは、その2体のレベルを合計したレベルになる。

 

 

「自分フィールドの攻撃力1000以下の同じ種族のモンスター2体は、それぞれのレベルを合計した数値に、レベルを変化させる!よって、2体のモンスターは、レベル4と5を合計し、レベル9となる!」

 

 

太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)》:☆5→☆9

惑星探査車(プラネット・パスファインダー)》:☆4→☆9

 

 

「レベル9が2体だと!?」

「レベル9となった2体のモンスターでオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ、No.9!我が背負いし運命よ、今こそ銀河を飲み込む巨大な大地となりて降臨せよ。天蓋星ダイソン・スフィア!

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力2800

 

 

「な…お前が召喚したナンバーズはどこに!?」

「フッ。」

 

Ⅴが黙って真上を指で差すと、夜空に輝いているのは月の輝きではないことはすぐにわかった。輝きは赤く、太陽のような燃える色をしているのだ。

 

「クッ。何て巨大なナンバーズだ!だがデカいだけで使い物にならないというのは、よくある話だがな!」

「それはどうかな?私は天蓋星ダイソン・スフィアで、パラダイスマッシャーを攻撃!」

 

Ⅴたちからもほんの少しだけだが視認することができる機械の部分が光を放ち、燃え上がる太陽のような部分にエネルギーが集束されていく。

 

「きやがるか!」

「受けてみろ、ダイソン・スフィアの一撃を!」

「永続罠、《ダイス・カウンター》を発動!」

「なにっ!」

 

ダイソン・スフィアから放たれた光弾を防いだのは、パラダイスマッシャーを覆うバリアのようなものだった。

 

 

《ダイス・カウンター》

永続罠

自分フィールド上に存在するモンスターが1体のみの場合に発動することができる。このカードは発動後装備カードとなり、自分フィールド上のモンスター1体に装備される。装備モンスターは戦闘では破壊されない。

装備モンスターが相手モンスターに攻撃する場合に発動する。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは倍になり、ダメージ計算後にサイコロを1回振ることができる。出た目の数×500ポイントのダメージを相手に与える。この効果を3回使用した場合、このカードを破壊する。

また、自分フィールド上に存在するモンスターの数が変化した場合、このカードを破壊する。

 

 

 

ムジョウ:LP4000→LP3300

 

 

「何が起こった!?」

「《ダイス・カウンター》の効果で、パラダイスマッシャーの戦闘による破壊は無効となった!俺にはその攻撃は通らなかったという訳だ。」

「くっ。さすがにそう簡単にはやらせてくれないか。カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<Ⅴ:伏せ2枚 ムジョウ:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(2)……Ⅴ。お前は、ギャンブルはするのか?」

「ギャンブル…?フッ。私はギャンブラーと言えるほどの者ではないが、ギャンブルに興じることくらいはある。」

「ヘッ。自信があるようだな。だったら、サイコロ勝負といこうか。」

「なに…?」

「俺は…《No.67 パラダイスマッシャー》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ使い、お互いのプレイヤーはサイコロを2回ずつ振る!出た目の合計が大きいプレイヤーは次のターンのエンドフェイズまでモンスター効果を使うことはできず、攻撃もできなくなる!」

 

 

《No.67 パラダイスマッシャー》:ORU4→ORU2

 

 

 

「ほう。大きい方が負けという訳か。」

「まずは俺からいくぜ!」

 

するとムジョウの手のひらに2つ小さなサイコロが乗せられた。彼はそれをすぐに目の前に放り投げた。目の前は地面であったが、Ⅴは自分のデュエルディスクのディスプレイから、そのサイコロの目を見ていた。

 

 

ムジョウ 出た目:3、5

 

 

「出た目の合計値は8か。」

「ならば今度は私の番だな。運命を見るが良い!!ジャッジメント・ダイス!」

 

なぜかサイコロを振る時の名前をつけて勢いよくサイコロを2つ投げたⅤ。1つ目のサイコロはすぐに回転が止まったため、そのサイコロの目が2であることはわかった。

 

(片方は2か!!ならば…もう一方が何の目であったとしても、私が8を上回ることはない!)

 

Ⅴの投げたもう一つのサイコロが回転を止めたかと思うと、彼は信じられない光景を目にし、目を丸くした。

 

「なに!?バカな!?これは…」

 

「ン!?どうしたの。Ⅴ兄様!?」

「何が起こったんだ?」

 

回転を止めた2つ目のダイスが真っ二つに割れたのである。彼の触った感触としてはプラスチックだったので、割れることはそうそうないと思っていたのだが。

 

ムジョウの顔を見ると、彼は不敵な笑みを浮かべていた。その笑みが、エクシーズ召喚を行った時の彼の口上を思い出させた。

 

「七番目の扉…まさか!?」

「そう。《No.67 パラダイスマッシャー》の効果だ。1ターンに1度、サイコロの出た目を7として扱うことができるんだぜ!言ったろ?常識を超越したモンスターだってな!」

 

「おい。そんなのアリかよ!?イカサマじゃねえか!」

 

「イカサマとは人聞きが悪い。これはパラダイスマッシャーの効果だ。さあ、何にしてもⅤ。これでお前のモンスターの効果は無効になり、攻撃はできなくなったぜ。」

「だがそれでも、ダイソン・スフィアの攻撃力は2800!パラダイスマッシャーを上回っている!」

「そんなことはわかっている!バトル!《No.67 パラダイスマッシャー》で、天蓋星ダイソン・スフィアを攻撃!」

「何!?」

(確かにダイソン・スフィアにはオーバーレイユニットを持っている場合、モンスターの攻撃を無効にする効果があるが…今の状況では、やられるのはパラダイスマッシャーのはずだ。)

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力2800

《No.67 パラダイスマッシャー》:攻撃力2100

 

 

パラダイスマッシャーは自身のサイコロが先についた棒状のものを振り上げて、ダイソン・スフィアに殴りかかった。ダイソン・スフィアが遥か上空に位置するのだが、パラダイスマッシャーはその場で姿を消したかと思うと、ダイソン・スフィアの至近距離に自らを瞬間移動させた。

 

「この瞬間、《ダイス・カウンター》の効果発動!バトルダメージを2倍にする代わりにパラダイスマッシャーはバトルでは破壊されず、サイコロを一度振って、出た目の数×500ポイントのダメージを与える!」

「何!?」

 

再びパラダイスマッシャーは地上に降り、Ⅴの目の前まで来て、筋肉隆々の体を見せつけるかのようにポーズをとってみせた後、サイコロが先端についた棒のようなものを振り上げ、地面に叩きつけた。

 

「出た目は、3だ!1500ポイントの効果ダメージを受けてもらう!」

「なにっ!?ぐあっ!!」

 

 

Ⅴ:LP3500→LP2000

 

 

「くっ。やるな。だが、お前には2倍の戦闘ダメージを受けてもらっている。」

 

 

ムジョウ:LP3300

 

 

「何!?ライフダメージがないだと!?」

「残念だったな。俺はもう1枚の永続罠も発動していたんだよ。罠カード、《ダイス・グラビティ》もな。」

 

 

《ダイス・グラビティ》

永続罠

 

 

「サイコロを振ったターン、自身の攻撃による戦闘ダメージを無効にし、ダメージ計算終了後にカードを1枚ドローする!(2)」

「それでダメージが無効になったという訳か。」

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(1)」

<Ⅴ:伏せ2枚 ムジョウ:伏せ1枚>

 

ムジョウがターンを終えると、しばらく黙って2人のデュエルを見ていた零児が口を開いた。

 

「しかし、こうなると状況は不利だ。」

「あぁ。兄貴の方が不利なのは間違いねえ。次の兄貴のターン、パラダイスマッシャーの効果で攻撃はできねえ。しかも、モンスター効果も使えねえ。次にムジョウのターンが回ってきたら、また同じコンボで、ダメージを受けちまう。」

「しかも、もし次のターン、ダイスの出た目を7にする効果を使わずにムジョウが勝ったら、《ダイス・カウンター》の効果で出た目が7にされて、3500のダメージを受けてしまう!」

 

「私のターン!(3)このターンはバトルはできない…か。私はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<Ⅴ:伏せ3枚 ムジョウ:伏せ1枚>

 

「フッ!成す術なしか!俺のターン!(2)さあ、もう一度ダイスバトルだ!」

「いいだろう。ジャッジメントダイス!」

 

 

《No.67 パラダイスマッシャー》:ORU2→ORU0

 

 

ムジョウ:出た目 2、3

Ⅴ:出た目 6、5

 

 

「まずい!今回はパラダイスマッシャーの効果を使うまでもなくⅤ兄様が負けてる!」

「これじゃ、パラダイスマッシャーの攻撃と、《ダイス・カウンター》のコンボで!」

 

「バトルだ!いけっ!パラダイスマッシャー!ダイソン・スフィアを攻撃!」

「カウンター罠、《攻撃の無力化》!」

 

 

《攻撃の無力化》

カウンター罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。

 

 

「モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!これなら、《ダイス・カウンター》の効果は使えない!フッ。高いダメージを与えられそうなコンボのようだが、その効果は攻撃ができなければ使えない!」

「このターンは生き残ったか。だがな…お前がそういう手で臨んでくることなど、最初からお見通しだ!」

「強がりはよせ。もはやパラダイスマッシャーのオーバーレイユニットは0個。モンスター効果も使えない状態だ。あきらめろ!」

「フッ。どっちがあきらめる必要があるか。それをこのデュエルでわからせてやろう!」

 

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《コズミック・フリッパー》
効果モンスター
光属性/戦士族/攻撃力1600/守備力1200
このカードが裏側守備表示モンスターに攻撃をする場合、ダメージステップの間だけ、攻撃力が500ポイントアップする。
このカードが相手によって破壊された時、自分のデッキから攻撃力1000以下の機械族モンスター1体を自分の手札に加えることができる。


<次回の最強カード>
《除掃機 サイクロン・ダイソン》
エクシーズモンスター
ランク5/光属性/機械族/攻撃力2000/守備力2200
レベル5モンスター×2




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第39話-隠された切り札!?全てを飲み干せ、新たな「ダイソン」!

 

・LP2000

・手札2枚

・(モンスター)《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》(ATK2800)

・(魔法・罠)2枚

 

 

ムジョウ

 

・LP3300

・手札2枚

・(モンスター)《No.67 パラダイスマッシャー》(ATK2100)(ORU0)(∞1)(∞2)

・(魔法・罠)《ダイス・カウンター》(∞1)/《ダイス・グラビティ》(∞2)/1枚

 

 

「兄貴がこのターンを凌ぎ切ったことで、パラダイスマッシャーのオーバーレイユニットは0個!もうパラダイスマッシャーの効果は使えねえぞ!」

 

Ⅳが嬉しそうにそう言う。確かにパラダイスマッシャーの効果を使うためにはオーバーレイユニットが2つ必要である。今はパラダイスマッシャーの効果が有効であるため、次のⅤのターンになっても、ダイソン・スフィアが攻撃をすることはないが、次のⅤのターンの攻撃は防ぎきれない。

 

(Ⅳの言う通りだが…何だ。奴の自信に満ちた表情は?)

 

「俺はこれで、ターンエンドだ!(2)」

<Ⅴ:伏せ2枚 ムジョウ:伏せ1枚>

 

「何かあるのか?あの伏せカードに。だが、今は引くわけにはいかない!私のターン!(3)私は場から永続魔法、《重力圧-グラビティー・プレッシャー》を発動!」

 

 

《重力圧-グラビティー・プレッシャー》

永続魔法

自分フィールド上にランク5以上のエクシーズモンスターが存在する場合、手札から「重力砲」1枚を墓地に送ってこのカードを発動できる。1ターンに1度だけ、自分のメインフェイズに発動することができる。自分フィールド上にランク5以上のエクシーズモンスターが存在する場合、相手に800ポイントのダメージを与える。自分フィール上にランク5以上のエクシーズモンスターが表側表示で存在しなくなった時、このカードを破壊する。

 

 

「手札から、重力砲、つまり…グラビティー・ブラスターを墓地に送って発動!(2)1ターンに1度、私の場にダイソン・スフィアが存在する場合、相手に800ポイントの効果ダメージを与える!くらえ!!」

 

 

グラビティー・プレッシャー!!

 

 

大砲のようなものがⅤの目の前に現れ、そこから渦を巻きながら波動がムジョウに向かっていった。

 

「ぐあっ!くっ。効果ダメージに戦略を変えて来たか!」

 

 

ムジョウ:LP3300→LP2500

 

 

「フッ。敗北へのカウントダウンが聞こえてきただろう?」

「そいつはどうかな?」

「次のターンには、ダイソン・スフィアは攻撃することが可能となる!何か手を打つ必要があると思うのだがな。私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<Ⅴ:伏せ2枚 ムジョウ:伏せ1枚>

 

ターンが開始されるや否や、ムジョウは再び不敵な笑みを浮かべた。彼にはパラダイスマッシャーの効果が使えなくなったということに対する危機感がまるでない。

 

「俺のターン!(3)残念だったなⅤ!お前の読み何て、お見通しなんだよ!オーバーレイユニットがないパラダイスマッシャーなんか、どうにでもなると思っているんだろ?オーバーレイユニットがないのなら…復活させればいいまでよ!罠カード、《オーバーレイ・ダイス》!」

 

 

《オーバーレイ・ダイス》

通常罠

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を対象として発動することができる。サイコロを1回振り、出た目の数だけ自分のデッキの上のカードを対象モンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。この効果でエクシーズ素材としたカードは墓地には行かず、裏側表示でゲームから除外される。

 

 

「サイコロを1回振って、出た目の数だけデッキの上からオーバーレイユニットにする!」

「何!?」

 

 

出た目:4

 

 

「4か。これならばパラダイスマッシャーの効果を使う必要もない!さあ、パラダイスマッシャー!俺のデッキの力を得よ!」

 

 

《No.67 パラダイスマッシャー》:ORU0→ORU4

 

 

「くっ。やはりそんなカードをフィールドに伏せていたか!」

「そして再び、パラダイスマッシャーの効果発動!オーバーレイユニットを2つ使い、俺たちはサイコロを2回振る!」

 

 

ムジョウ 出た目:3、4

Ⅴ 出た目:1、5

 

 

「今度はⅤ兄様の方が数が少ない!」

「バカめ!なら、パラダイスマッシャーの効果発動!お前の出した1の目を、7として扱う!」

 

パラダイスマッシャーが勢いよくサイコロのついたハンマーを地面に打ち付けるとその衝撃によってⅤの投げたサイコロが2つに割れ、7が出た扱いとなってしまった。

 

「1の目が…7か。これでは出た目の合計は12。」

「これで再びお前のダイソン・スフィアの効果は無効!次のお前のターンになっても、モンスターによる攻撃はできない!そして…《ダイス・グラビティ》の効果で、パラダイスマッシャーの攻撃によって発生する自分へのダメージを0にする!さらに…バトル前に俺はこの魔法カードを使わせてもらう!魔法カード、《ダイス・クローズ》!」

 

 

《ダイス・クローズ》

永続魔法

 

 

「自分のターンで効果を適用する。サイコロを振ったターンのバトルフェイズ中、モンスターが攻撃する場合、相手は魔法・罠を発動できない!」

「モンスターの攻撃宣言時の魔法・罠カードの発動を防ぐだと!?」

「さあ!《ダイス・カウンター》の効果を受けてもらうぜ!」

 

パラダイスマッシャーはハンマーを振り上げ、再び天空に聳え立つダイソン・スフィアに向かっていったが、ハンマーを振り下ろす直前に、ダイソン・スフィアが姿を消した。

 

「何だと!?」

 

消え方でわかった。ダイソン・スフィアが破壊された訳ではなく、Ⅴのカード効果によってフィールドを離れたのだと。

 

「あれ…Ⅴ兄様。」

「ダイソン・スフィアが消えた!?」

 

「どういうことだ!《ダイス・クローズ》の効果で、魔法・罠カードは使えないはず!」

「お前のモンスターの攻撃時はな。だから私は、バトルの前に、伏せカードを発動さえてもらったのだよ。速攻魔法、《ナンバーズ・ディメンション》。次の私のスタンバイフェイズまで、ナンバーズ1体を、そのオーバーレイユニットごとゲームから除外する。発動後、カードを1枚ドローする!(2)」

 

ダイソン・スフィアがフィールドを去ったことによって、グラビティ・プレッシャーも破壊されてしまった。

 

「そんなカードが。だが、お前のライフは2000!パラダイスマッシャーの攻撃力は2100!この一撃でお前のライフは0だ!くらえ!」

 

ダイソン・スフィアを庇って自らのライフを0にするようなプレイングをするⅤでないことはⅢもⅣも、零児もわかっていたのだが、無抵抗の状態でパラダイスマッシャーの一撃を受け、衝撃波で吹き飛ばされたⅤを見たⅢは、思わず前に出た。

 

「Ⅴ兄様っ!!」

「あ…兄貴!」

「…」

 

Ⅲが駆け寄って来るのを見たⅤは地面に膝をつけながら彼の方に手のひらを向けた。来るなという合図なのだろう。

 

「来るな!毒針があることを忘れたか!?」

「…でも、兄様!」

 

「ほぅ。覚えていたかそのこと。随分と殊勝な心掛けだな。さあ、大人しくナンバーズを渡してもらおうか!」

「何を勘違いしている?」

「何?」

「まだデュエルは…終わっていないぞ!」

 

 

Ⅴ:LP2000→LP950

 

 

「何!?ライフが残っているだと!?」

「私はもう1枚、お前のモンスターの攻撃前に罠カードを発動させてもらったのだよ。永続罠、《マイクロン・フォース》をね。」

 

 

《マイクロン・フォース》

永続罠

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。 選択したモンスターの元々の攻撃力は半分になる。 選択したモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。

 

 

「《マイクロン・フォース》!?攻撃力を半分にする永続罠!」

「そうだ。これで、パラダイスマッシャーの攻撃力を半分にした!」

 

 

《No.67 パラダイスマッシャー》:攻撃力2100→攻撃力1050

 

 

「私には、守らなければならない者がいる!負ける訳にはいかない!」

「それが…後ろにいるお前の弟たちか?3人も弟がいるの……」

「私は弟ではない。」

 

零児は即答した。

 

「じゃあ、2人か。だったら俺より1人多いんだな。俺にも弟がいる。弟たちのためにも、ナンバーズの力が必要なんだ!」

 

そういわれると、Ⅴはデュエル開始前の彼の発言を思い出し、静かに彼に尋ねた。

 

「そういえばそんなことを言っていたな。弟たちのためにナンバーズを手に入れなければならないとは…一体どういうことだ?ナンバーズの力が人知を超えたものだと…知っているのだろう?でなければこんな遺跡には来まい?」

「あぁ。知っている。だからだ。だからこそ、必要なんだ、俺には。俺の弟は病気なんだ。」

「病気…だと?」

「俺の母親は俺が15の時に病気で死んだ。その時弟は10だった。病気がちだったけど、かわいい奴でな。俺がへそ曲がりだからよくわかる。素直で、人の言うことは良く聞き、人の良いところを見つけようとする天才だった。兄の俺が言うのも変だけどな。俺の父親は母親が病気で死んでから、最初は俺とともに弟を育てていくことに時間を割いていた。だが、今まで母親に家事や子育てをまかせっきりだった父親が、いきなり母親のようになれるはずもなく、それで年ばかりくって自分が母親に頼り切りだったことを認められなくて、そのストレスから耐えられず…女を作ってどこかに消えた。俺が23の時だった。」

 

「何…」

 

派手なギャンブラーのような出で立ち(デュエル内容はギャンブルが多めだが)の彼からはあまり想像できないことであったためか、逆にⅢたちは絶句してしまった。

 

「軍資金…そう称して父親は自分の遺産を切り崩したものを俺に渡した。それで何とか大学までは通えそうだったがその後にある未来をどうすべきか、進路に対する不安と、病気の弟の将来もあり、修得できない単位が増えすぎてな。大学を中退した。」

「それで…ギャンブラーの道に…」

「ギャンブラーじゃねえ!デュエリストだ!」

 

ムジョウは釣り目であり、睨みつけられた時にはその鋭い視線から多少のおぞましさを覚える。Ⅴが「そうか。」と返すと、ムジョウは再び続けた。

 

「俺は、プロのデュエリストとして生きていくことにした。幼い頃、ジュニアデュエリスト選手権で県大会1位になった腕前があったからな。だが…やはりと言うべきか、プロデュエリストの世界はそんなに甘くはない。俺は負けデュエルが続き、あっという間に崖っぷちに追いやられたんだ。そんな時だった。フードを被ったしわくちゃのじいさんが俺に1枚のカードをくれたんだ。」

 

 

『何だよこれ、《ダイス・ポット》?』

 

 

《ダイス・ポット》

効果モンスター

レベル3/光属性/岩石族/攻撃力200/守備力300

リバース:お互いにサイコロを一回ずつ振る。相手より小さい目が出たプレイヤーは、相手の出た目によって以下のダメージを受ける。相手の出た目が2~5だった場合、相手の出た目×500ポイントダメージを受ける。相手の出た目が6だった場合、6000ポイントダメージを受ける。お互いの出た目が同じだった場合はサイコロを振り直す。

 

 

 

『そうだ。この《ダイス・ポット》。連戦連敗のお前には、うれしいカードではいかな?』

『俺に運任せのデュエルをしろってか?』

『運任せ…?サイコロの出目を自由に操れるとしたら…?そうすればこのカードは相手に必ず6000ダメージを与えられるカードに早変わりだ!』

『お前、それはイカサマって言うんだよ。』

 

「俺がそのフードを被ったしわくちゃのじいさんを適当にあしらおうとしたら…」

 

『ナンバーズ。』

『ナンバーズ…?』

『ナンバーズを集めろ。ナンバーズが4枚集まった時、サイコロの目を自由に操作できる力がお前に!』

 

「俺はそのじいさんの言ったことが気になってな。それ以降、ナンバーズを調べに調べた。どうやらナンバーズには不思議な力があるみたいだ。お前らの言う通り。」

「お前の言うそのじいさんとやらが怪しい人物だとは思わないのか?」

「けどな、俺にはこいつに賭けるしかねえんだよ!それに、現に俺が今使ってるナンバーズ、パラダイスマッシャーは、サイコロの出た目を7にする効果を持ってる!あいにく《ダイス・ポット》とのコンボは狙えないから《ダイス・ポット》との相性はよくないが、それでもこのタイミングで俺がこのナンバーズと出会うのは…運命って言っても、言い過ぎじゃねえだろ!」

 

少しずつ興奮していくのがⅤにはよくわかった。ムジョウが興奮していけばいくほど、Ⅴは覚めていくのがわかった。

 

「なるほど。そうか。お前がナンバーズを集めようとしている理由がよくわかった。ならばなおさら…ナンバーズを渡す訳にはいかない。」

「なにっ!?何だと!?」

「お前はまず間違いなくそのじいさんとやらの手のひらの上で踊らされている!」

「構わねえ!たとえ違う結果だったとしても、俺には…ナンバーズを手に入れるしかねえ!」

「そうか。ならばデュエルを続けよう!」

「ああ!これ以上喋っていたってしょうがねえ!《ダイス・グラビティ》の効果で、デッキからカードを1枚ドローする!(4)カードを1枚伏せて、ターンエンド!(3)」

<Ⅴ:伏せなし ムジョウ:伏せ1枚>

 

「私のターン!(3)このスタンバイフェイズに、《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》が私のフィールドに戻る!」

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力2800

 

 

「そして私は手札から、《シャドー・ウォーマー》を召喚!(2)」

 

召喚しながらⅤは思い出していた。天に運を任せるようなデュエルは性に合わないが、自分のデッキの中には、運命を託すモンスターが存在することを。

 

 

 

(仕方ない。私のもう一つの切り札を出すしかないか。このカードはあまりに強力であるが故に、見せたくはなかったのだが。)

 

 

 

《シャドー・ウォーマー》

効果モンスター

レベル4/光属性/機械族/攻撃力1000/守備力1500

 

 

「なんだそいつ…ドライヤーか?」

「フッ。この《シャドー・ウォーマー》を侮ってもらっては困るな。」

 

ドライヤーと言われた《シャドー・ウォーマー》であるが、一見すると従来のドライヤーのように、首が折れていることがなく、金槌のような形をしているので、ドライヤーには見えにくい。

 

「だがどんなモンスター効果を持っていたとしても、今はパラダイスマッシャーの効果が適用されている!モンスター効果は使えない!」

「わかっている。私はカードを1枚伏せて、ターンを終了する!(1)」

<Ⅴ:伏せ1枚 ムジョウ:伏せ1枚>

 

「だったらこのターンで、今度こそ決着をつけてやるぜ!俺のターン!(4)」

「私はこのスタンバイフェイズに、モンスター効果、そして罠カードを発動させてもらう!」

「何?俺のスタンバイフェイズ?」

「お前の、パラダイスマッシャーの効果が発動できるのは、メインフェイズ。この時はまだ、効果が発動できないからな。《シャドー・ウォーマー》の効果発動!墓地のモンスター1体のレベルと同じレベルを得る!私は墓地の《太陽風帆船》のレベルを得る!」

 

 

《シャドー・ウォーマー》:☆4→☆5

 

 

「レベルが5になったから何だという?」

「慌てるな。私は罠カードも発動させてもらうといったはずだが?」

「なっ…」

「罠カード、《ワンダー・エクシーズ》!!」

 

 

《ワンダー・エクシーズ》

通常罠

自分フィールドのモンスターを素材としてエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚する。

 

 

「相手ターン中、私のモンスターでエクシーズ召喚を行う!」

「何!?バカな!お前のフィールドには、エクシーズ素材になれるのは…《シャドー・ウォーマー》しかいないんじゃ!?」

「《シャドー・ウォーマー》は、自分のメインフェイズ以外でエクシーズ召喚を行う場合、1体で2体分のエクシーズ素材とすることができる!もはやパラダイスマッシャーの効果は切れている!いくぞ!《シャドー・ウォーマー》2体分で、オーバーレイ!!2体分のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 

大気を揺るがす異次元の風穴よ!嵐を巻き起こし、森羅万象全てを飲み干せ!《除掃機 サイクロン・ダイソン》!!

 

 

《除掃機 サイクロン・ダイソン》:攻撃力2000

 

 

「サ…サイクロン・ダイソン?」

 

目の前に現れたのは、吸引力の変わらないただ一つの「それ」といえばすぐに想像ができるであろう、「それ」である。

 

「フッ。開いた口が塞がらないということか?確かにな、同じダイソンであっても、ダイソン・スフィアとはサイズが全然違う。私が手にもてるほどだからな。」

「いや…俺が言いたいのはそういうことじゃなくて…」

 

唖然としているのはムジョウだけではなく、デュエルを後方で見ていた零児もである。

 

 

(まさか。彼は、ダイソン・スフィアのダイソンと、サイクロン・ダイソンのダイソンが、同じものだと…思っているのか?)

 

彼が唖然としていると、その横で2人、歓喜の声をあげたものがいたので、すぐに現実に引き戻された。

 

「おおっ!!Ⅴ兄様!!ついにこれが来ましたね!」

「兄貴の切り札じゃねえか!!久々に見たぜ!もうデッキから抜いちまったかと思ったぜ!その類のカード!!」

 

(その…類…?おい、待て。お前のデッキ…まさか昔は、家電製品デッキとかだったんじゃねえだろうな?それでたまたまダイソン・スフィアと名前が一致した、サイクロン・ダイソンだけ、デッキに残してた…とか?いや、さっきのシャドー・ウォーマーだって、あれ、あきらかにドライヤーだぜ?)

 

「いくぞ!サイクロン・ダイソンの効果発動!攻撃表示でのエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するカードを全て、このカードの下に重ねて、オーバーレイユニットとする!」

「何!?」

「全て…飲み干せぇぇぇっ!!」

 

Ⅴがコードレスの掃除機、いや、サイクロン・ダイソンの首を持ち上げ、スイッチを入れ、ムジョウのフィールドに向けた。

 

瞬く間にムジョウのフィールドに存在していた、《No.67 パラダイスマッシャー》、《ダイス・カウンター》、《ダイス・グラビティ》、《ダイス・クローズ》、そして伏せカード1枚がサイクロン・ダイソンに吸い込まれてしまった。

 

「相手のフィールドのカードを一掃した!?」

「そうだ零児。だが君の言うように、利益を得るにはリスクも必要だ。サイクロン・ダイソンの効果によってカードを吸い込んだ後には、相手はサイコロを1回振る。そして出た目の数まで、サイクロン・ダイソンが吸い込んだカードをそのままの状態でフィールドに戻すことができる!」

「何?今度はお前のモンスター効果で、俺がサイコロを…!?」

 

ムジョウが不意に手を広げると、そこにサイコロが置かれた。

 

「さあ、見せてみろ!お前の弟を救いたい思いを!サイコロで5か6が出れば、あったカードは全てお前の元へと戻る!!」

「いいぜ。でりゃあっ!」

 

サイコロが空中を舞い、コロコロという音を立ててフィールドの中央へと転がっていく。彼はパラダイスマッシャーと2枚のダイス罠カードのコンボを狙っている。

 

 

出た目:3

 

 

「3!」

「兄貴。こりゃまずいんじゃねえのか?」

 

「では…3枚を選び、お前のフィールドに置くが良い!」

「ヘッ。パラダイスマッシャーがいなくとも、ツキは俺にあるんだよ!俺は、パラダイスマッシャー、《ダイス・カウンター》、《ダイス・グラビティ》の3枚のカードを、俺のフィールドに戻す!」

 

するとすぐにサイクロン・ダイソンの真空パックを自身のハンマーで突き破ったパラダイスマッシャーがフィールドに現れ、パラダイスマッシャーは《ダイス・カウンター》と、《ダイス・グラビティ》の2枚の罠カードを、サイクロン・ダイソンから取り出した。

 

「これで俺のフィールドのカードはほとんど元に戻った!パラダイスマッシャーの効果を………って…しまった!」

「ようやく気が付いたようだな。私の狙いは、お前のフィールドを空にすることではない。」

「一度フィールドを離れたパラダイスマッシャーには…オーバーレイユニットがない!」

 

 

《No.67 パラダイスマッシャー》:ORU0

 

 

「私の発動した《マイクロン・フォース》の効果も消え、攻撃力も2100に戻ってはいるが…もはや先ほどまでのお前のコンボは破られた!」

 

「すごいよ兄さま!」

 

「ヘッヘッヘッ。俺のコンボが破られただと?お前肝心なことを見落としているみたいだな!」

「なに?」

「パラダイスマッシャーの効果が使えなくても、《ダイス・カウンター》、《ダイス・グラビティ》は機能しているんだよ!いけっ!パラダイスマッシャー!その掃除機をぶっ潰せ!」

「なにっ!」

 

自身のサイコロ付きのハンマーで思い切り振り下ろし、パラダイスマッシャーはサイクロン・ダイソンを粉々に叩き潰した。

 

 

Ⅴ:LP950→LP850

 

 

「そして…《ダイス・カウンター》の効果発動!サイコロを振って、出た目の数×500ポイントのダメージを与える!パラダイスマッシャーの効果で、出た目は絶対に7になる!これで終わりだ!Ⅴ!!」

「いいや、そうとは限らない!サイクロン・ダイソンのモンスター効果により、このカードが戦闘によって破壊された時、破壊したモンスターの効果はエンドフェイズまで無効化される!」

「なっ。このターン、パラダイスマッシャーの効果が使えねえのか!だが、だとしてもお前のライフは残り850!2以上の目が出れば、俺の勝ちなんだよ!さあ、《ダイス・カウンター》の効果をくらいやがれ!」

 

今度はダイス・カウンターのイラストからサイコロが放たれ、ゆっくりと宙を舞った。当然それはすぐにデュエルフィールドへと落ち、コロコロと転がっていく。

 

ダイスの出目が何かを5人が見守っている。

 

やがてその回転は速度を緩め、止まったが、遠くからでもはっきりと何の数字が出たかはわかるものであった。それはソリッドビジョンの影響ではない。

 

その数字だけサイコロの色が違う…そんな結果だったからだ。

 

「な…なに!?1だと!?」

「フッ。私が受けるダメージは…500ポイントのようだな!!」

 

 

Ⅴ:LP850→LP350

 

 

「おおっ!!」

「よっしゃ、やったぜ兄貴!」

「ほぉ…」

 

「やはりお前のデュエルは、パラダイスマッシャーに裏打ちされたものだ。それでは脆い。パラダイスマッシャーの効果が使えていれば…などと言っているようではな。」

「くそっ。だがデュエルはまだ終わってねえ!俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<Ⅴ:伏せなし ムジョウ:伏せ2枚>

 

「私のターン!(2)私は墓地に送られた、《除掃機 サイクロン・ダイソン》の効果発動!オーバーレイユニットを持っていたこのカードが墓地に送られた次のスタンバイフェイズに、墓地からこのカードを特殊召喚する!」

 

 

《除掃機 サイクロン・ダイソン》:守備力2200

 

 

「またそいつか!だが、サイクロン・ダイソンはエクシーズ召喚時にしか効果は使えないはずだ!」

「その通りだ。だが、サイクロン・ダイソンにはもう一つ効果がある!それは、フィールドのモンスター1体に、攻撃力1000ポイントを与える効果!」

「クッ。ダイソン・スフィアの攻撃力を1000ポイント上げるのか!?」

「いいや、私はこの効果を、パラダイスマッシャーを対象に発動する!」

 

 

《No.67 パラダイスマッシャー》:攻撃力2100→攻撃力3100

 

 

「パラダイスマッシャーの攻撃力を上げた…だと!?」

「そうだ。ダイソン・スフィアの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドにこのカードよりも高い攻撃力を持つモンスターが存在する場合、直接攻撃することができる!受けてみろ!」

 

 

ムジョウ:LP2500

 

 

「この攻撃が通れば、兄さまの勝ちだ!」

「いけぇっ!」

 

「ふざけんな!そんな攻撃が通るかよ!速攻魔法、《悪魔のサイコロ》!」

 

 

《悪魔のサイコロ》(小説版)

速攻魔法

相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。サイコロを1回振る。攻撃宣言をしたモンスターの攻撃力を、出た目で割る。この効果は、このターンのエンドフェイズまで適用される。

 

 

「サイコロを1回振り、出た目でモンスターの攻撃力を割る!」

「ダイソン・スフィアの攻撃力を下げようというのか!」

 

 

出た目:2

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力2800→攻撃力1400

 

 

「これなら…俺のライフは、1100残る。」

「フッ。」

 

今のムジョウの判断を狂わせるには、Ⅴのその笑みだけで充分であった。彼の中にある不安。得体のしれないものが、彼の判断を狂わせたのだ。

 

「お…俺は…俺はっ!パラダイスマッシャー、効果発動!出た目を7として扱う!」

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力2800→攻撃力400

 

 

小爆発がムジョウを襲うが、400のダメージなので、大したことはない。

 

 

ムジョウ:LP2500→LP2100

 

 

「そうだ。いいんだこれで。モンスターの攻撃は一回だけだ。もう奴に攻撃できるモンスターはいない。このターンのエンドフェイズに、サイクロン・ダイソンの効果は終了する!そうすれば次の俺のターンに……」

 

そこまで言ってムジョウは思ったのだ。そう。確かにⅤに次のターンは残されていない。どんなサイコロの出目になろうとも、《ダイス・カウンター》の効果を受ければ、Ⅴは確実に負けるのだ。自分の敗北が迫っている人間に、あんな不敵な笑みが浮かべられるだろうか。そう考えると、《悪魔のサイコロ》に対してのパラダイスマッシャーの効果発動が正しかったとは…言えなくなってくる気がした。

 

「おい。まさか…」

 

「速攻魔法、《リブート・バトル》!バトルフェイズ中に攻撃力が変化した機械族モンスターはこのターン、攻撃力を元に戻して、もう一度攻撃をすることができる!」

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力400→攻撃力2800

 

 

「ダイソン・スフィアは、自身の効果によって、直接攻撃が可能!ゆけっ!」

「俺が負ける…!?俺のデュエルが…脆い!?ふざけんな!罠カード、《パワー・ディプライベーション》!」

「もう1枚の伏せカードか!?」

「このカードは戦闘ダメージを受けたターン、サイコロを1回振って、出た目で掛けた数値分、攻撃力を下げる!俺が受けたダメージは400!2でも出れば、俺のライフは保たれる!!!」

 

ムジョウはもはや乱暴にサイコロを叩きつけるようにして地面に投げた。パラダイスマッシャーは虚しさを覚えているような顔でそれを見つめているが、彼が思っているのが祈りなのかどうかはわからない。

 

 

出た目:3

 

 

「3だ!つまり、1200ポイントが、ダイソン・スフィアの攻撃力から引かれる!」

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力2800→攻撃力1600

 

 

「これで、俺のライフは残る!俺の勝ちだ、Ⅴ!」

「いや、お前の負けだ。」

「何!?」

「言ったはずだ。お前のデュエルは脆いと。速攻魔法、《リミッター解除》を発動!」

「リ…リミッター…解除!?」

「機械族モンスターの攻撃力を、エンドフェイズまで2倍にする!!」

 

 

《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》:攻撃力1600→攻撃力3200

 

 

「なっ…なんだとっ…!!?ぐああああああああっ!!!」

 

 

ムジョウ:LP2100→LP0

 

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《除掃機 サイクロン・ダイソン》
エクシーズモンスター
ランク5/光属性/機械族/攻撃力2000/守備力2200
レベル5モンスター×2



<次回の最強カード>
《Heaven's Transcend Field》
Continuous Trap
?



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第40話-俺様系デュエリスト!夜の騎士(ナイト)

ダイソン・スフィアの一撃を受けてムジョウは大きく吹き飛び、鉄橋に腕をぶつけ、その際に彼のデュエルディスクもぶつかった。

 

「しまった!」

 

デュエル中にはオーディオボタンを押しても反応しないため、毒針が飛び出ることはないと踏んでいたⅢたちは恐れてはいなかった。そう思った直後、彼の左腕についていたデュエルディスクが外れた。

 

「壊れたか…クッ!」

「フッ。これで毒針とやらも、無意味だな。」

「もはや使うつもりはない。負けは負け。お前の勝ちだ、Ⅴ。」

 

ムジョウは彼に《No.69 パラダイスマッシャー》を渡し、「このカードは使わないかもしれないな」と付け加えた。

 

同時に、遊歩道の中から、3人の人影が見えた。そのうち1人は「おーい」と呼び掛けているが、零児にはその声に聞き覚えがあった。

 

「おーい!!」

 

「…誰だ!?」

 

「…遊矢か!?」

「おおっ!!零児か!!おーい!!」

 

「彼らは…?」

 

Ⅴは、手を振りながら近づいてきた遊矢たちを見てそう零児に聞いた。

 

「共に旅をする者だ。」

「共に旅をする…者。」

 

「どこ行っちまってたんだよ!?探したんだぜ!」

「すまないな。前線基地を探しているうちに、ナンバーズの遺跡に迷い込んでな。それで、彼らに会って、協力して遺跡を出たという訳だ。」

 

「え…?」

「彼ら。」

 

「そうです!初めまして、僕はⅢで、Ⅳ兄様。そして、Ⅴ兄様です!」

 

ⅣとⅤの2人は「よろしく」という旨の挨拶をし、権現坂と柚子も挨拶をかわし、ムジョウはそれを見ていたので軽く挨拶をして、続けた。

 

「お前らも、ナンバーズを?」

「ナンバーズ…?」

「違う。俺たちは、零児を探しに来たんだ。」

 

「なるほど。君たちは、その、零児の言う、前線基地というものを探していたのか?」

「はい、そうです。でも…ちっとも見つからなくて。壊されてるんです、どこも。」

 

Ⅴの質問に柚子が答えると、今度はⅣが聞き返した。

 

「おい、そもそもよ、その…前線基地ってのは、何なんだ零児?」

「前線基地は、別の次元に行くための基地だ。融合次元にな…」

「融合次元…あぁ、なるほどな。」

「わかるのか、Ⅳ?」

「俺たち兄弟は、次元のことについて研究しているからな。他の次元が存在していることは、もうわかっているぜ。」

「なるほど。」

 

「別の次元についてわかる人がいるなんて!すげぇ!だったら零児!一緒に連れて…」

「何を言っている遊矢。彼らにはすべきことがあるはずだ。我々にもすべきことがあるように。」

「あ…そうだよな。」

 

遊矢は半ばわかっていたことではあったが、その零児の返答に肩を落とした。沈黙が訪れたと思うのも束の間、今度はⅢが彼らに声をかける。

 

「でも…一体誰が前線基地を破壊したんですかね?」

「それはわからない。融合次元の者の可能性もあるが、ヘヴンズ・チルドレンの可能性もある。」

「ヘヴンズ…チルドレン。」

「そう。彼らからすれば、次元を行き来することは、人間が成して良いことではないようだ。だから我々に宣戦布告をした。前線基地を破壊したとしても、不思議ではない。」

「ヘヴンズ・チルドレンか。カイトも言ってたな。」

「だが我々は行かなければならない!前線基地に!」

「えっ?」

 

「まだ生き残っている前線基地があることがわかっている!この遺跡の傍だ!」

「本当か、零児!?」

「ああ!行こう。3人とも。」

 

零児がⅢたちに対して背を向け、歩き出そうとしたが、すぐに踵を返した。

 

「フッ。Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ。協力に感謝する。元気で。」

「零児さんも、お元気で!」

「あばよ!悪徳社長!」

「さらばだ。」

 

傍らで見ていたムジョウは、独特な挨拶だと思って、それを見ていた。

 

 

------

 

 

「俺様とのデュエル・タイムだ!」

「ヘッ。俺たちとやろうってのか?ヘヴンズ・サードだからっていって、大したことねえってのは、よくある話でな。」

「何だと!?この俺様をなめてもらっちゃ困るぜ!」

 

「待て!!」

 

すっかり陽は沈み、夜の闇が辺りを包んでいたころであったので、真上からその声が聞こえても、どこからかがわからなかった。

 

その声の持ち主は勢いよく上空から地上に降り立ち、遊士、遊馬、そして夜ノ騎士の間に割って入った。

 

コートに身を包んだ長身の男、彼が何者かはすぐにわかった。

 

「あっ!!お前…」

「黒咲!!」

「フッ。久しぶりだな、遊馬、遊士。」

 

「何だお前は!外野は引っ込んでろ!」

 

「外野だと?貴様がどう思おうと勝手だが、俺は貴様に聞かなければならないことがある!」

「何?」

「貴様らヘヴンズにとっては、俺たちのように、次元を行き来できる者は…倒すべき相手だということか?」

 

いきなりの核心を突いた質問に騎士は戸惑ったが、すぐに毅然とした態度で答えた。

 

「当たり前じゃねえか!ヘヴンはな、人がそれ以上の存在であろうとする奴らを、粛清するのさ!」

「粛清…だと?わかった。それだけ聞ければ十分だ。」

 

その口ぶりからこの場を去るのかと思った遊馬だったが、黒咲は赤い紐のようなものを取り出したかと思うと、それを騎士の腕に投げつけ、巻き付けた。

 

「これは…デュエルアンカー!?」

「貴様の相手は俺だ。仲間たちの無念を…晴らさせてもらう!!」

 

「えっ!?」

「どういうことだよ、黒咲!?」

 

「奴らは…俺たちエクシーズ次元の者が、融合次元に飛び立つための基地、『前線基地』を破壊した。生かしてはおけん。」

「前線基地…?」

「ヘヴンズ・サードの奴がとぼけるとはな!」

「前線基地を…破壊?破壊行為なんて、ヘヴンズはしないと思うけどな。副次的なものならともかく。」

「黙れ!貴様の戯言に耳を傾けるつもりはない!構えろ!」

「まあいいぜ。どの道お前も倒すつもりだったしな!九十九遊馬、草薙遊士!お前らも俺様のデュエルを見てな!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

黒咲隼 :LP4000

夜ノ騎士:LP4000

 

 

 

「いくぜ!俺様の先攻!俺様は、モンスター1体を裏側表示でセットして、ターンを終了する!(4)」

<黒咲:伏せなし 騎士:伏せなし>

 

(どんな手で来るかと思えば、モンスターをセットしただけか。)

「俺のターン!(6)俺は手札から、《RR-インペイル・レイニアス》を召喚!(5)」

 

 

《RR-インペイル・レイニアス》

効果モンスター

レベル4/闇属性/鳥獣族/攻撃力1700/守備力1000

「RR-インペイル・レイニアス」の➁の効果は1ターンに1度しか使用できない。

➀:このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに1度だけ、

フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを表側守備表示にする。

➁:このカードが攻撃したターンの自分メインフェイズ2に、自分の墓地の「RR」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

「バトルだ!インペイル・レイニアスで、セットされたモンスターを攻撃!」

 

 

《紫炎の影武者》:守備力400

 

 

インペイル・レイニアスは飛び上がった後急降下し、自身の鋭い刃のような嘴で《紫炎の影武者》を一刺しした。

 

「シエンの…影武者…だと。レベル2の通常モンスターか。俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。(4)」

<黒咲:伏せ1枚 騎士:伏せなし>

 

「俺様のターン!(5)」

 

騎士は甲冑を纏っているとは思えないほど身軽に動き、ドローしたカード、《騎士団の行軍》を一瞥すると、そのカードとは別のカードを魔法・罠スロットに差し込んだ。

 

「俺様は魔法カード、《予想GUY(ガイ)》を発動!」

 

 

《予想GUY(ガイ)

通常魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

 

「自分の場にモンスターがいない時、デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚するぜ!」

「レベル4以下の通常モンスターだと?」

「来い、《悪の無名戦士》!」

 

 

《悪の無名戦士》

通常モンスター

レベル3/闇属性/戦士族/攻撃力1000/守備力500

素早い動きで真空を作り出し、相手を切り刻む戦士。

 

 

青い体色が特徴的な悪の無名戦士が、《予想GUY》の発動で生み出されたワームホールのようなところからゆっくりと歩いて出て来た。するとさらに続けて騎士はカードを発動した。

 

「速攻魔法、《クラスター・サモン》を発動!(3)自分がレベル4以下の通常モンスターの特殊召喚に成功した時、そのモンスターよりも攻撃力が低くて、攻撃力が1000以下の通常モンスターを、俺様のデッキから特殊召喚するぜ!俺様は、攻撃力900の《ヴィシュワ・ランディー》を特殊召喚!」

 

 

《ヴィシュワ・ランディー》

通常モンスター

レベル3/闇属性/戦士族/攻撃力900/守備力700

闇に仕える女戦士。相手を血祭りにあげることが生きがい。

 

 

「そして通常召喚!《ウッド・ジョーカー》!(2)」

 

 

《ウッド・ジョーカー》

通常モンスター

レベル3/地属性/戦士族/攻撃力800/守備力1200

嫌な笑みを浮かべた悪魔。手にするカマで、器用に攻撃をかわす。

 

 

あっという間に騎士の目の前にモンスターが3体並んだ。独特な雰囲気を持つモンスターばかりで、統一性がないが、3体とも戦士族ではある。《ウッド・ジョーカー》のテキストには、「悪魔」と書かれているのだが。

 

「ザコがいくら出て来ようと、俺のレイド・ラプターズには勝てはしない!」

「チッチッチッ。わかってねえなぁ。」

 

3体のモンスターのレベルに注目した遊馬が、その場に響き渡るほどの声で言う。

 

「あっ!!そうか!これって、レベル3のモンスターが3体…来るか!?って、展開だよな、アストラル!?」

「いや、そうとも言えない。」

「えっ!?そういう展開じゃねえのか!?」

「彼は確かにレベル3のモンスターを立て続けに3体呼び出しているが、それならわざわざ通常モンスターに拘る理由が見当たらない。」

「あっ。確かに…そうか。」

 

「いいところに気が付くなお前ら!そうよ!俺様のデッキの真骨頂、見せてやるぜ!俺様は手札から永続魔法、《騎士団の行軍》を発動!」(1)

 

 

《騎士団の行軍》

永続魔法

このカードの発動に対し、相手は魔法・罠カードを発動することはできない。自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1000以下の戦士族の通常モンスターは、相手に直接攻撃することができる。

 

 

「騎士団の行軍!そうか!」

「えっ!?どういう効果なんだよ、遊士!?」

「あれは攻撃力1000以下の戦士族の通常モンスターに、直接攻撃の権利を与える永続魔法だ!」

 

「そうよ!俺様のデッキは、相手のモンスターじゃなくて、ライフを直接削っていくデッキよ!さあ、直接攻撃の嵐を受けやがれ!まずは《悪の無名戦士》で、ダイレクトアタック!!」

 

装着されたパタ(手甲剣)を振り下ろし、黒咲を無表情のまま切りつけようとしたが、黒咲は咄嗟にそれをデュエルディスクで防いだ。もちろん、ダイレクトアタックが通ったことに変わりはない。

 

 

「ぬうっ!」

 

 

黒咲隼:LP4000→LP3000

 

 

「そして、《ヴィシュワ・ランディー》!ダイレクトアタックだ!」

 

彼女の持つ6本の手に、ナイフのようなものが現れたかと思うと、すぐさまそれを投げつけてきた。黒咲は咄嗟に真横に飛んでそれらを避けた。

 

 

黒咲隼:LP3000→LP2100

 

 

「まだまだぁ!《ウッド・ジョーカー》で、ダイレクトアタックだ!」

「チィッ!」

 

フレイバー・テキストにはカマで攻撃をかわすとかいてあるが、攻撃にも使えるようで、木から飛び降りたウッド・ジョーカーは、カマを振り上げ、黒咲を切りつけようとした。黒咲は寸前のところでバックステップをし、攻撃の回避に成功した。

 

 

黒咲隼:LP2100→LP1300

 

 

「黒咲!」

「やべえぞ、一気にライフが2700も持ってかれた!」

「どうよ。俺様のデッキ!どんなモンスターを並べようと無意味だぜ!直接、お前のライフを削っていくんだからよ!」

「なるほど。ザコモンスターを並べたのはそういうことか。だが…貴様のデッキには致命的な弱点があるようだな。」

 

幼い容姿の印象のまま、プライドもそれ相応に高いようであり、ナイトは顔を赤くして地面を二度三度蹴った。

 

「何だと!?うっせえな!俺様のデッキに弱点はねえんだよ!」

「ならば貴様にそれを思い知らせてやろう!俺は手札から、《RR-アベンジ・ヴァルチャー》を特殊召喚!(3)」

 

 

《RR-アベンジ・ヴァルチャー》

効果モンスター

レベル4/闇属性/鳥獣族/攻撃力1700/守備力100

自分が戦闘・効果でダメージを受けた場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「RR」と名の付いたモンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない。

 

 

「なに!?」

「こいつは俺がバトルダメージを受けた時に手札から特殊召喚が可能!」

「ヘッ!俺様はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

<黒咲:伏せ1枚 騎士:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(4)俺は手札から、《RR-ミミクリー・レイニアス》を攻撃表示で召喚する!(3)」

 

 

《RR-ミミクリー・レイニアス》

効果モンスター

レベル4/闇属性/鳥獣族/攻撃力1100/守備力1900

「RR-ミミクリー・レイニアス」の➁の効果は1ターンに1度しか使用できない。

➀:このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに1度だけ発動できる。自分フィールドの全ての「RR」モンスターのレベルを1つ上げる。

➁:このカードが墓地へ送られたターンの自分メインフェイズに、墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「RR-ミミクリー・レイニアス」以外の「RR」カード1枚を手札に加える。

 

 

「おおっ!これで黒咲のフィールドにはレイド・ラプターズが3体並んだ!」

「3体のモンスターの攻撃力は全て、ナイトのフィールドのモンスターの攻撃力を上回っている!これで殲滅できる!」

「しかも次のターンに、あの俺様野郎が通常モンスターを呼んでも、《騎士団の行軍》で直接攻撃が可能なのは攻撃力1000以下のモンスターに限る!黒咲のライフが1300である以上、黒咲を倒せねえぜ!」

 

勝利が見えてきた遊馬、アストラル、遊士は無意識のうちに表情が明るくなっていたが、黒咲は表情を変えない。

 

(奴のフィールドには伏せカードがある。おそらく、攻撃時に発動するつもりなのだろう。だが、俺のフィールドの伏せカードは、《ラプターズ・ガスト》。)

 

 

《ラプターズ・ガスト》

カウンター罠

自分フィールド上に「RR」と名の付いたカードが存在し、魔法・罠カードが発動した時に発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

 

 

(これで奴の伏せカードの発動は阻止する!!)

「バトルだ!《RR-インペイル・レイニアス》で、《悪の無名戦士》を攻撃!」

「無駄だぁっ!永続罠、《Heaven's Transcend Field》を発動!」

 

 

《Heaven's Transcend Field》

Continuous Trap

When your opponents activate a card whose name includes "Heaven's," you can negate it by sending this card from your hand to your graveyard. This card's activation and effect cannot be negated except by cards whose names include "Heaven's."

➀:Normal monsters on your field which have ATK1000 or less are not destroyed by battle.

➁:As long as this card is faced up, battle damage caused by normal monsters with ATK1000 or less on your field is become 100.

 

 

「このカードによって、俺様のフィールドの攻撃力1000以下の通常モンスターは戦闘では破壊されないぜ!」

「こけおどしが!カウンター罠!《ラプターズ・ガスト》で、その発動を無効にし、破壊する!」

 

 

ところが黒咲の宣言を意に介さず、《Heaven's Transcend Field》によって張られた青い結界は破壊されないまま、インペイル・レイニアスは結界に鋭利な嘴を突き刺し、《悪の無名戦士》は倒せないまま、黒咲のフィールドに戻った。

 

「な…何だと!?俺の《ラプターズ・ガスト》で、貴様のカードは無効になったはず!」

「残念だったな!!俺様たちヘヴンの操るヘヴンよりいただいたヘヴンカードは、ヘヴンカードじゃなければ無効にできねえのさ!!」

 

動揺した黒咲を見た遊馬たちだったが、冷静であったアストラルが青い結界とナイトを睨んだ。

 

「だが、戦闘で破壊されずとも、ダメージは通る。最も攻撃力の高いインペイル・レイニアスかアベンジ・ヴァルチャーで最も攻撃力の低いウッド・ジョーカーを攻撃すれば、今のバトルによって発生した700ダメージに加え、さらに1800のダメージが与えられる。」

 

「残念だったなぁ!そうはいかねえんだよアストラル!《Heaven's Transcend Field》の効果によって、俺様の、攻撃力1000以下の通常モンスターから発生するバトルダメージは一律して100になる!」

「何!?」

 

 

夜ノ騎士:LP4000→LP3900

 

 

「これで単純計算で、お前はあと39回俺様を攻撃しなけりゃいけないってことよ!」

「バトル続行!《RR-アベンジ・ヴァルチャー》で、《ヴィシュワ・ランディー》を、そして《RR-ミミクリー・レイニアス》で、《ウッド・ジョーカー》を攻撃!」

 

 

夜ノ騎士:LP3900→LP3800→LP3700

 

 

「効かねえなぁ!」

「残念な奴だ。」

「な!?」

「今こそ教えてやろう!貴様のデッキの致命的な弱点を!」

 

「だから!俺様のデッキに弱点なんてねえ!」

「俺は、《RR-ミミクリー・レイニアス》の効果を発動!俺のフィールドの全てのレイド・ラプターズのレベルを1つ上げる!」

 

 

《RR-インペイル・レイニアス》:☆4→☆5

《RR-アベンジ・ヴァルチャー》:☆4→☆5

《RR-ミミクリー・レイニアス》:☆4→☆5

 

 

「俺はレベル5となったレイド・ラプターズ3体で、オーバーレイ!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し 寄せ来る敵を打ち破れ!現れろ、ランク5!《RR-ブレイズ・ファルコン》!

 

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》:守備力2000

 

 

「ランク5のエクシーズモンスター!?」

「これが貴様の弱点だ。」

「何だと?」

「これだけ言ってもわからんとはな、よほど自惚れているらしいな!貴様は、俺のライフを削ることだけを考え、俺のフィールドのモンスターの数を気にしない!その結果、俺はモンスターを特に失うこともなくデュエルを進めることができ、エクシーズ召喚につなげることができた!それが貴様のデュエルの弱点だということだ!!」

「そ…そんなのたまたまだっ!!それに、ランク5でも、呼んだモンスターの攻撃力は1000しかねえじゃねえか!」

「ならば見せてやろう、ブレイズ・ファルコンの力を!《RR-ブレイズ・ファルコン》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、敵の場にいる特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、1体につき500ポイントの効果ダメージを与える!くらえ!」

 

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》:ORU3→ORU2

 

 

いつものように小型の飛行砲台が放たれ、《悪の無名戦士》と《ヴィシュワ・ランディー》を取り囲み、全方位射撃で2体のモンスターは破壊された。

 

「ぐあっ!!」

 

 

夜ノ騎士:LP3700→LP2700

 

 

「10回分の攻撃になった訳だな。」

「くそっ!!てめえ!」

「さらにオーバーレイユニットになっていたミミクリー・レイニアスを墓地から除外することで、自分のデッキから、レイド・ラプターズと名の付いたカード1枚を手札に加える!俺はデッキから、《RR-フューチャー・チッキー》を手札に加える!(4)」

 

 

《RR-フューチャー・チッキー》

効果モンスター

 

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンを終了する!(3)」

<黒咲:伏せ2枚 騎士:伏せなし>

 

「俺様のターン!(1)……クッ…クソッ!!!」

 

黒咲にはすぐにわかった。通常モンスターを引けば勝利を手にできるこの状況で、通常モンスターを引き当てられなかったということが…

 

(ヘヴンズ・サードには最大で3枚、ヘヴンカードを入れることが許されている。俺様の手札には2枚目のヘヴンカード。でもこいつは、俺様の手札が他にないと使えねえ!!)

「バトル!いけっ!《ウッド・ジョーカー》!!」

「…」

 

 

黒咲隼:LP1300→LP500

 

 

「どうだ、黒咲!てめえのライフは500だぜ!」

「フッ。残念な奴だ。この状況で通常モンスターを引き当てられなかったとはな。」

「黙れっ!!どの道次のターンで俺様の勝ちだ!ターンエンド!(1)」

<黒咲:伏せ2枚 騎士:伏せなし>

 

「俺のターン!(4)貴様が直接攻撃をするのなら…こちらも直接攻撃をさせてもらおうか!《RR-ブレイズ・ファルコン》を攻撃表示に変更!」

 

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》:攻撃力1000

 

 

「そしてブレイズ・ファルコンはオーバーレイユニットを持っている場合、相手に直接攻撃をすることができる!バトルだ!」

「何だと!?直接攻撃!?」

「貴様の永続罠、《Heaven's Transcend Field》はあくまで通常モンスターからの戦闘ダメージを100にするだけだ。ブレイズ・ファルコンの直接攻撃の戦闘ダメージを防ぐことはできない!」

 

 

ストライク・クロウ!!

 

 

鋭いかぎ爪でナイトの両肩を切りつけた。ヘヴンが関わっているこのデュエルでは、ダメージは実際のものを受けることになりかねないが、ナイトは肉体的なダメージよりも精神的なダメージの方が大きかった。

 

 

夜ノ騎士:LP2700→LP1700

 

 

「けどな、次の俺様のターンで、《ウッド・ジョーカー》のカマが、てめえの首を狩るぜ!!」

「残念だがそれはない!ブレイズ・ファルコンの効果発動!戦闘ダメージを与えた場合、敵のフィールドのモンスター1体を破壊する!」

「なっ!!《ウッド・ジョーカー》!!」

 

ウッド・ジョーカーが捕まっていた木ごと突然爆発し、ナイトのフィールドにはモンスターがいなくなった。

 

「さらにこのカードは、俺のフィールドにエクシーズモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる!《RR-シンギング・レイニアス》を守備表示で特殊召喚し、ターンエンドだ!(3)」

<黒咲:伏せ2枚 騎士:伏せなし>

 

 

《RR-シンギング・レイニアス》:守備力100

 

 

「クソッ!俺様のターン!(2)」

(引いたカードは《戦士の生還》か。墓地の戦士族モンスターを手札に加えられるけど、あいつのフィールドには《ラプターズ・ガスト》が伏せられている。それで無効にされちゃ、勝ち目はねえ。だったら…)

 

ナイトは少し考えた後、ドローしたカードを墓地に送った。

 

「俺様は手札を1枚捨てて、(1)魔法カード、《Heaven's Reload》を発動!手札が0枚になるように、魔法・罠カードを墓地に送り、墓地に送った枚数プラス1枚になるように、デッキからカードをドローする!(2)」

「またヘヴンカードか。《ラプターズ・ガスト》が使えんか。」

 

精神的に疲弊していたようにも見えてきたナイトだったが、ドローの直後、彼の表情を見て、彼に力が戻ったのが明らかであった。

 

 

「来た。来たぜ!!!ヘヴンカードの中でも最強の1枚!!こいつこそが、俺様にとっての本当の切り札!俺様は手札から魔法カード、《Heaven's Ritual》を発動!」

「ヘヴンズ……リチュアル?」

「自分フィールドにモンスターがいない時、ライフを半分払って発動!俺様のデッキまたはエクストラデッキに存在するモンスターの中で、《Heaven's Ritual》を使って呼び出すことが可能なモンスター1体を相手に見せる!俺様は、デッキに存在する、《Heaven's First Sharpness》をお前にみせるぜ!」

「来るか。」

「そしてその召喚条件を満たすように、手札あるいはデッキからモンスターを選ぶ!俺様はデッキの《Heaven's First Shaprness》の召喚条件は、攻撃力1000以下の戦士族の通常モンスター3体のリリース!俺様はデッキから《マグネッツ1号》、《王座の守護者》、《デス・ストーカー》をリリース!!さあ、準備は整ったぜ!!」

 

 

夜ノ騎士:LP1700→LP850

 

 

ツワモノに宿りし魂!真の敵を貫き、勝者の剣の刃となりて、天が導く運命を示せ!尖鋭の象徴、《Heaven's First Sharpness》!

 

 

 

《Heaven's First Sharpness》:攻撃力2500

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《Heaven's Transcend Field》
Continuous Trap
When your opponents activate a card whose name includes "Heaven's," you can negate it by sending this card from your hand to your graveyard. This card's activation and effect cannot be negated except by cards whose names include "Heaven's."
➀:Normal monsters on your field which have ATK1000 or less are not destroyed by battle.
➁:As long as this card is faced up, battle damage caused by normal monsters with ATK1000 or less on your field is become 100.


<次回の最強カード>
《Heaven's First Shaprness》





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第41話-尖鋭の象徴!Heaven's First Sharpness

黒咲隼

 

・LP500

・手札3枚

・(モンスター)《RR-ブレイズ・ファルコン》(ATK1000)(ORU2)/《RR-シンギング・レイニアス》(DEF100)

・(魔法・罠)2枚

 

 

夜の騎士

 

・LP850

・手札1枚

・(モンスター)《Heaven's First Sharpness》(ATK2500)

・(魔法・罠)《Heaven's Transcend Field》(∞)/《騎士団の行軍》(∞)

 

 

「尖鋭の象徴…だと?」

「こいつこそが、俺様の最強モンスターだ!」

「まさかそいつも…」

「そう!このモンスターは、相手フィールドにモンスターが存在していても、直接攻撃することができる!いけっ!ダイレクトアタックだ!!」

 

1.5メートルほどの体長(?)の、黒を基調として、ところどころに金色の波状の模様があしらわれている剣が剣先を地面につけていたが、攻撃宣言を受け、一回転し、剣先を黒咲に向けて飛び立った。2体のレイド・ラプターズをものともしていない。

 

「チィッ!」

「ヘッ!何をしようが無駄だ!こいつは攻撃する時、相手の魔法・罠カードは受けない!」

 

剣を受けた黒咲の体から爆発が起こった。ナイトは左腕から力を抜き、余韻に浸りかけていたが、すぐに我に返った。

 

「バ…バカな!?」

 

「フッ。どうした?まだ俺のライフは残っているぞ。」

 

「すげえ!」

「何が起きたんだ?」

 

黒咲の目の前に罠カードが現れたかと思うと、その罠カードはすぐに姿を消した。

 

「どうして!?Heaven's First Sharpnessは、罠カードの効果は受けないはずだぜ!?」

「俺は貴様のモンスターに罠カードを使った訳ではない。罠カード、《RR-レディネス》を発動していた。」

 

 

《RR-レディネス》

通常罠

➀:このターン、自分フィールドの「RR」モンスターは戦闘では破壊されない。

➁:自分の墓地に「RR」モンスターが存在する場合に墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分が受ける全てのダメージは0になる。

 

 

「発動ターン俺のレイド・ラプターズはバトルでは破壊されず、墓地から除外することで、このターンに受ける全てのダメージを無効にする!」

「そういうことかよ…まあ別にいいけどな!負けるのはお前だ!それに変わりはないぜ!俺様はこれで、ターンエンド!(1)」

<黒咲:伏せ1枚 騎士:伏せなし>

 

「俺のターン!(4)《RR-ブレイズ・ファルコン》の効果を忘れていないだろうな?オーバーレイユニットを1つ使うことで、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、1体につき、相手に500ダメージを与える!」

「っ…!」

「ヘヴンカードが…呆気なかったな!くらえ!!」

 

再び小型飛行砲台を飛ばし、四方八方からの攻撃で《Heaven's First Sharpness》を破壊した。

 

 

 

夜の騎士:LP850→LP350

 

 

 

「直接攻撃は何も貴様の専売特許ではない!これで終わりだ!《RR-ブレイズ・ファルコン》で、ダイレクトアタック!!」

 

 

ストライク・クロウ!!

 

 

ナイトに向かって急降下をしたブレイズ・ファルコンだが、彼が左腕を正面に翳すと、時空の裂け目のようなものが彼の目の前に現れ、黒い物体がブレイズ・ファルコンの喉仏に当たったかと思うと、その体を貫通し、背中から出て来た。

 

「なにっ!?」

 

あまりのスピードに、黒咲には一瞬何かはわからなかったが、動きを止めたそれを見ると、《Heaven's First Sharpness》であることがわかった。

 

「おい、なんでだよ!?」

「今倒したじゃねえか!」

 

「モンスター効果か?」

「そうよ。このモンスターは破壊されたターン、相手モンスターの直接攻撃宣言時に特殊召喚して、そのモンスターを破壊し、バトルフェイズを終了させることができる!」

「チッ。」

「これでお前は攻め手を失ったぜ!次のターン!俺様のモンスターの直接攻撃で、お前のライフは0になる!」

 

 

直接攻撃で…というフレーズが、黒咲にとっては気がかりであった。

 

 

(奴のデュエルスタイルは一貫して直接攻撃。おそらくそれ以外の方法で相手のライフを削ることはほとんどない。だとすれば…奴は次のターン必ず…)

「俺はカードを1枚伏せる。そして、《RR-フューチャー・チッキー》を攻撃表示で召喚!(2)ターンを終了する!」

<黒咲:伏せ2枚 騎士:伏せなし>

 

 

《RR-フューチャー・チッキー》:攻撃力0

 

 

高い声を響かせ、卵の殻を頭の上に乗せ、あたりをきょろきょろした様子で現れたチッキー。くりくりした目がとても可愛らしいが、レイド・ラプターズらしくはない。

 

「攻撃力0のモンスターを攻撃表示!?」

「まさか…黒咲。」

 

「ヘッ!!俺様のターン!(2)俺様は魔法カード、《増援》を発動!(1)」

 

 

《増援》

通常魔法

自分のデッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を自分の手札に加える。

 

 

 

「そうはいかない!カウンター罠、《ラプターズ・ガスト》を発動!俺の場にレイド・ラプターズがいる場合、相手の発動した魔法・罠カードの効果を無効にし、破壊する!」

「それはわかってんだよ!これでお前の《ラプターズ・ガスト》はなくなったぜ!!俺様は…《冥界の番人》を召喚!(0)」

 

 

《冥界の番人》

通常モンスター

レベル4/地属性/戦士族/攻撃力1000/守備力1200

冥界への入り口を守る戦士。許可のない者は容赦なく斬る。

 

 

「クッ!手札に持っていたのか!攻撃力1000以下の戦士族の通常モンスターを。」

「俺様は、《Heaven's First Sharpness》の効果発動!俺のフィールドのモンスター1体に装備し、このカードの攻撃力分だけ、そのモンスターの攻撃力を上げる!」

「何!?装備カードになるだと!?」

 

黒い胴体の剣を持ち、《冥界の番人》は黒咲に対して構えを見せた。

 

 

《冥界の番人》:攻撃力1000→攻撃力3500

 

 

「いくぜ!《冥界の番人》で、ダイレクトアタック!!《Heaven's First Sharpness》の効果で、《冥界の番人》は魔法・罠カードの効果を受けない!」

「無駄だ!《RR-ディフレクター》を発動!俺のレイド・ラプターズ1体をリリースし、そのモンスターの攻撃力か守備力、どちらかの数値分だけライフを回復し、このターンに発生する俺への戦闘ダメージを半分にする!俺は、《RR-ブレイズ・ファルコン》をリリースする!」

 

 

 

黒咲隼:LP500→LP2500

 

 

 

「何だと!?どこまでもしぶといな!だったら、《Heaven's First Sharpness》の剣の一撃をくらえ!」

 

《冥界の番人》が飛び上がり、そのまま《Heaven's First Sharpness》を振り下ろした。咄嗟に黒咲は左腕のディスクでその攻撃を受け流したが、ディスクに接触した際の爆発で黒咲は後方に吹き飛ばされた。

 

 

黒咲隼:LP2500→LP750

 

 

「ぐあっ!」

「立て黒咲!!まだライフが残ってるじゃねえか!次の俺様のターン、ダイレクトアタックによって、お前のライフは尽きるぜ!ターンエンドだ!(0)」

<黒咲:伏せなし 騎士:伏せなし>

 

「フッ。貴様に次のターンは来ない。もはや貴様が《RR-ディフレクター》の効果に対して俺の場のモンスターを気にかけなかったことで、勝負はついた。」

「な…何を言ってやがる!?強がり言うんじゃねえ!お前のフィールドには、ひな鳥がいるだけじゃねえか!雛に、俺様の尖鋭の象徴を倒すことはできねえよ!」

「雛にはな。」

「…!?」

「雛は…成長するものだ。俺たちがたとえ貴様らや、融合次元の者からして、雛のような存在だったとしても、そこから成長し、大空を舞い、革命の翼で、貴様ら全てを薙ぎ払う!!俺の…タァァァァン!(3)」

 

黒咲がカードをドローすると、夜のはずだが、辺りにある木々から黒い姿の鳥たちがバサバサと音を立てて飛び立っていった。その音や、鳥たちのシルエットは、ナイトに戦慄を与えるのには十分な材料だった。

 

「こっ…これは!?」

「俺は、《RR-フューチャー・チッキー》の効果発動!自分のスタンバイフェイズに、このカードをリリースして、自分のエクストラデッキからレイド・ラプターズと名の付いたランク6以下のモンスター1体を守備表示で効果を無効にし、特殊召喚する!」

 

 

革命の道を突き進め!ランク6、《RR-レヴォリューション・ファルコン》!!

 

 

 

《RR-レヴォリューション・ファルコン》:攻撃力2000

 

 

 

「何かと思えば、攻撃力2000じゃ…」

「俺は手札から魔法カード、《RUM-スキップ・フォース》を発動!」

「ランクアップマジック!?」

 

「来たか、黒咲の十八番!」

「スキップ・フォース…」

 

「自分フィールドのレイド・ラプターズを選択し、そのモンスターよりも2つランクが高いエクシーズモンスターに、ランクアップさせる!俺はランク6のレヴォリューション・ファルコンで、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築、ランクアップ・エクシーズチェンジ!!」

 

 

勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランク8、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》!!

 

 

《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》

エクシーズモンスター

ランク8/闇属性/鳥獣族/攻撃力3000/守備力2000

鳥獣族レベル8モンスター×2

➀:このカードが「RR」モンスターを素材としてX召喚に成功した場合に発動できる。

相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。

➁:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力は自分の墓地の「RR」モンスターの数×800ダウンする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「こいつは…!!」

「サテライト・キャノン・ファルコンはエクシーズ召喚に成功した場合、相手の魔法・罠カードを全て破壊する!!貴様の《Heaven's First Sharpness》は装備カード扱い!消えてもらう!」

「な…何だと!?」

 

 

ギガンティック・ロアー!!

 

 

サテライト・キャノン・ファルコンが自身の持つ砲身から3つ、火炎弾を飛ばし、《Heaven's First Sharpness》、《Heaven's Transcend Field》、《騎士団の行軍》を破壊した。

 

《冥界の番人》は手に持っていた黒い胴体の剣を失い、呆然としている。

 

 

《冥界の番人》:攻撃力3500→攻撃力1000

 

 

「そ…そんな…俺様の…ヘヴンカードが。」

「ヘヴンカードも1枚のカードに過ぎん。攻略ができないカードなど存在しない!そこに気が付かず、貴様は自分の実力を過信し、フィールドの状況を把握することを怠り、直接攻撃を続けていた訳だ。憐れなデュエリストめ!!貴様にヘヴンズ・サードという肩書は荷が重すぎたようだな!」

 

ナイト自身も呆然としていたようだが、彼はそこでヘヴンズ・サードという言葉を不意に呟いた。

 

「俺様は…ヘヴンズ・サード…か。うっ。」

 

ナイトは突然右手でこめかみ辺りを抑え、悶え始めた。その様子を見た遊馬は黒咲を睨む。

 

「おい!少し言い過ぎなんじゃねえのか!?」

「言い過ぎだと?俺は事実を言ったまでだ!こいつにヘヴンズ・サードは務まらなかった。それだけのことだ!」

 

「俺様は………俺は………どうして…ヘヴンズ・サードに!?」

 

「…ン?」

 

遊士が首を傾けると同時に、ナイトは顔をしかめた。発汗症状が始まったようだが…

 

「フッ。すぐ楽にしてやる!バトル!《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》で、《冥界の番人》を攻撃!」

 

少し高度を上げ、砲身を《冥界の番人》に向け、すぐにサテライト・キャノンを放った。

 

 

エターナル・アベンジ!!

 

 

「グッ!うわああああああああっ!」

 

 

夜の騎士:LP350→LP0

 

 

黒咲はすぐさま倒れたナイトに近づこうとしたものの、彼の姿は倒れた場所にはなかった。それだけではない。彼の着用していた甲冑もなくなっていたのだ。彼の姿は、エターナル・アベンジの閃光の中に消えたのだ。

 

「なに!?奴はどこに消えた!?」

 

黒咲、遊馬、遊士の3人が慌てふためていると、後ろから砂利を蹴りつける音が近づいてくることがすぐにわかった。

 

3人が振り返ると、そこには黒いマントを羽織った金髪の男-クラウダーが立っていた。彼を視認した3人の中でも、最初に彼に近づいたのは言うまでもなく遊士だった。彼の頭の中にはもちろん、ユキとクラウダーのことが鮮明に蘇っていた。

 

「てめえ…クラウダー!!」

「草薙遊士。そして九十九遊馬、黒咲隼。我々の再三の警告を聞かない者たちよ。」

「人の記憶を改ざんして、奪うような奴の警告なんて誰が聞くっていうんだよ!?」

「記憶を改ざん……?ホワイトのことか?あれは改ざんではない。元々ホワイトはヘヴンズ・チルドレンの一人だ。草薙遊士。君は彼女と同級生として過ごしていたようだが、それは彼女にとっては夢だったのだ。不運だが、これは認めるしかない。」

「ホワイトじゃねえ!!あいつはユキだ!!田村ユキ!」

 

淡々と言い続けたクラウダーに、遊士はデュエルディスクを向けた。

 

「クラウダー!てめえは俺がぶっ倒す!ここで決着をつけてやる!」

「慌てるな。私は今はここにはいない。それにヘヴンズ・サードを地上に派遣した以上、彼らが倒されるまで我々ヘヴンズ・チルドレンとはデュエルはできない。」

「んだと、てめえ!」

 

二者のやり取りを黙って聞いていた黒咲が今度は前に出た。

 

「ならば貴様は何をしにここにやってきた?ナイトというデュエリストの姿が消えたことと関係があるようだな?」

「ナイトを消したのは彼の精神に異常をきたす前に彼を強制送還する必要があったからだ。彼は幼い頃にヒーローになるのを夢見たが、ある日交通事故で死亡した。ヒーローになりたいという思いが、ヘヴンズ・サード候補生にさせたのだ。」

「ヘヴンズ・サード候補生…?」

「ヘヴンズ・サードはごく一部を除き、元々人間だった者だ。」

「元々…人間だった…?」

「そうだ。つまり彼らは人間としての一生を終えた後、この世に対しての未練や不満がある場合、ヘヴンズ・サードの候補生になる可能性がある。それを決めるのは、ヘヴンだがな。」

 

「何だって!?」

 

「今回このエクシーズ次元に派遣されたヘヴンズ・サードも皆そうだ。

優秀な科学者だったが自らの研究を成功させる前に子育てを全て押し付けられたと感じ、育児ノイローゼになった妻の一家心中で死亡したアフタン。

かつては一世を風靡した眠らない町の女王。支配欲に満ち、他者を自分の者とすることにだけ喜びを感じていたが、同時に虚しさを覚え、薬物中毒に陥り、副作用で死亡したラニット。

覆面プロデュエリスト、オーガーヘッドとして人気を得たものの、強さとエンターテイメントのバランスのとり方に苦労し、戦績不振でプロの世界を追放されてパニック障害となり、駅のホームから飛び降り、電車に跳ねられ死亡したノックス。」

 

「なるほど。生きていた頃の名前とは違うのか。」

 

アストラルがそう呟くと、クラウダーは一度頷いた。

 

「そうだ。生きていた頃の記憶はあり、その時の苦しみ、痛み、トラウマ等を乗り越えてヘヴンズ・サードとして戦う契約を交わすが、いくら何でも生きていた頃の名前を使わせるのは酷だからな。」

 

そこまでクラウダーが言うと、「さて…」と一呼吸おき、遊馬をにらみつけて続けた。

 

「私がここに来た理由だったな。ナンバーズを渡してもらいたい。それだけだ。」

「ナンバーズを!?」

「世界中のナンバーズはもう既に遊馬、アストラルの手に集まりつつある。カイトやⅢ、Ⅳ、Ⅴたちも持っているようだが、それがお前の手に渡ることは明白だ。」

「そんなことできる訳ないだろ!」

「ナンバーズは、人間が持って良いような代物ではない。元々アストラル世界とバリアン世界に出て来るものだ。お前もいい迷惑だ、アストラル。お前が九十九遊馬を巻き込んだんだ。遊馬の父親が絡んでいる話とはいえ。」

「何だよその言い方!ナンバーズは、争いの道具じゃねえ!アストラルの記憶なんだ!第一、アストラルは迷惑なんかじゃねえ!!」

「遊馬…」

「アストラルはな、確かに頭でっかちで、言ってることムカつくこともあるよ!けど…それでも…俺と一緒にかっとんできたんだ!俺を信じてくれてるんだ!俺もこいつのことを信じられるんだ!かけがえのない仲間なんだよ!それに…ナンバーズは、ドン・サウザンドとの戦いに決着をつけるための…ヌメロン・コードを手に入れるために必要な力なんだよ!渡せる訳ないだろ!」

「そうか。」

 

ナンバーズを渡すことを拒否されたクラウダーだが、驚いている様子はない。

 

「ならば実力行使しかないな。全てのナンバーズがお前の手に集まらなければ、結局はヌメロン・コードも手に入らない。我々が1枚でもナンバーズを手にすれば良い訳だな。それに…どうやらナンバーズの中には地球上では覚醒しないナンバーズもあるようだ。」

「何…!?」

「それは時が来たらわかることだ。」

 

用は済んだと言わんばかりにクラウダーは振り返り、スタスタと歩き出そうとした。ここにいないのはわかっているのだが、歩き出そうとする彼を見た遊士は思わず肩を掴もうとした。

 

「おい、待てよ。てめえ…これ以上ユキを戦いに巻き込んだら、許さねえからな。」

 

クラウダーは眉間に皺を寄せながらいかにも不機嫌そうな表情で振り返った。敵意をむき出しにしている。

 

「お前は何様のつもりなんだ?彼女の騎士気取りならそれはやめた方が良い。彼女を救えるのは同じような経験をし、同じヘヴンズ・チルドレンである私しかいない!草薙遊士。《ディメンション・ムーバー》を使って元の次元に帰るが良い。お前が身を引くべきだ。家族や友人が心配しているだろう。」

「うっせえ!!俺はユキを取り戻しに来たんだよ!帰れる訳…ねえだろ!」

「フッ。」

 

不機嫌そうな顔から一転して、物事を楽しんでいる表情へと変化させたクラウダーは続けた。

 

「まあ、それくらいの気概がなければ、アセンションカードを、アセンションナンバーズへと進化させるだけのことができるはずはないだろうがな。」

「アセンションナンバーズ……!てめえやっぱり、それを知って…」

 

クラウダーは遊士の発言を無視して再び彼らに背を向けかけたが、何かを思い出したようで、三度振り返った。

 

「黒咲。お前が聞きたかったことはわかる。前線基地を破壊したのが我々かどうか…だな?」

「そうだ。知っているならさっさと答えろ!」

「それは我々ではない。ドン・サウザンドだ。」

「ドン・サウザンド…!?」

「バリアン世界の神だと自称する者だ。彼がこの地上世界をバリアン世界にする一環として、前線基地を破壊し、その力を見せつけたという訳だな。」

「貴様らは関係がないのか!?」

「もちろん我々のすべきことは人間の領域を超えようとする者を止めることだ。だからやがては前線基地を破壊することにあったのは変わりないがな。言い換えればいずれはお前も倒す…黒咲隼。」

 

そう言うと、クラウダーはその場で姿を消した。

 

「貴様っ!」

 

「黒咲…」

 

その場に立ち尽くした黒咲を見た遊馬は声をかけたが、彼の耳にはアストラルの声が入った。

 

「遊馬。ナンバーズクラブの面々には連絡を入れた方が良い。」

「え…?どうしてだよ?多分ナンバーズは持ってないぜ?」

「念のためだ。ひょっとすれば彼らがナンバーズを手に入れたりするかもしれない。そうなった時にそれを感知したバリアンとヘヴンが狙いに来るはずだ。」

「バリアンも!?」

「当然だ。ドン・サウザンドからしても、我々がヌメロン・コードを使用することは阻止しなければならない。」

 

●我々の任務はナンバーズを集めてヌメロン・コードの所在を明らかにし、起動させること。

●バリアンは我々がナンバーズを集めることを防ぎ、この地をバリアン世界とすることを目論んでいる。

●ヘヴンは我々とバリアン両方を殲滅することを目標として動いている。

 

と、アストラルはそれぞれの組織の方向性がどのように向いているのかを明確に遊馬たちに示した。もちろんアストラルの意見なので憶測の域は出ないが。

 

「でもよ、ヘヴンが俺らとバリアンを倒すにしちゃ数が少なすぎじゃねえか?」

「そうだよな。しかも遊士さんには、アセンションナンバーズがある訳だし!」

「おそらく、先ほどの彼の口ぶりだと、彼はアセンションナンバーズを遊士が手に入れたことに対して、驚いてはいない。」

「だろうな。俺もそんな感じがしたぜ。」

「そんな、じゃあアストラル!それも計算済みだってことか!?」

「ああ。遊士がアセンションナンバーズを手に入れることは…彼らにとって脅威ではないのかもしれない。」

「まあいずれにせよ、数の上で圧倒的に不利なのに、勝てるって思ってる時点で、何かあるのは間違いねえよな。」

 

しばしの沈黙が訪れたかと思うと、遊士、遊馬、アストラルの視線は黒咲へと向けられた。

 

「お前はどうすんだ、黒咲?融合次元に行く手だてを探すのか?」

「ドン・サウザンドという奴がこの俺たちの仲間を倒したというのであれば…ヤツをこのまま放っておけば、俺たちの仲間はやがて根絶やしにされる。俺たちレジスタンスの埃のためにも…そのドン・サウザンドを叩く!遊馬。お前に協力するのはこのデュエルだけにしようかとも思ったが、もう少し付き合ってやる!」

「おう!頼もしいぜ!」

 

「俺も、バリアンも、ドン・サウザンドも、両方とも倒さなきゃいけない存在だ。」

「遊士。君にとってはドン・サウザンドは因縁がないのではないか?」

「何言ってんだアストラル。アリトをぶっ倒した時点でもう既に因縁はついたし、それに…お前等には世話になったからな。アセンションナンバーズを手に入れられたしな。」

 

「よっしゃあ!そうと決まれば、打倒バリアン、打倒ヘヴンだ!!かっとビングだ!」

 

無意識のうちに上を見上げた遊士は、紅色に染まりつつある空にも、星が瞬いているのがわかった。

 

 

「…ユキ。」

 

 

------

 

 

その日が夜遅かったからということもあり、ナンバーズを見かけたもしくは所持したという人は連絡をというメッセージだけを送った遊馬だった。

 

バリアンからすれば携帯電話などの電子機器は不必要なためか、バリアンの侵攻は、少しずつ回線に影響を与えているのはわかっていた。メッセージを送れはしたものの、電話が繋がらないケースが増えてきたのだ。

 

 

キャッシーはいつものように、可愛がっている猫たちに餌をあげた後、自らの屋敷のバルコニーにおいて休みの朝の日光浴をしようとしたところだった。

 

「今日はパパもママもお仕事キャット!猫ちゃんたち、一日中、遊んであげるキャット。」

 

ところが空は相変わらず紅い。バリアンの侵攻が進んでいる折に、日光浴などできるはずもない。彼女はため息をついて、スマートフォンを取りに屋敷の中に戻ろうとした時、「にゃーん」という鳴き声が聞こえて、すぐにバルコニーの縁へと向かった。

 

「あーら!そんな端っこにいたら、危にゃいわよ~!」

 

キャッシーが近づくとすぐにわかった。その子猫は何かを銜えているということに。

 

「えっ…?これは…にゃに?私にくれるの?」

 

子猫が小さな口で銜えているそれを手に取ったキャッシーは、首の下から頭の上にかけて撫でたが…思わず声をあげた。

 

「えっ!?これ……ナンバーズ!?」

 

 

「ほう。お前の家だったか!」

 

ナンバーズを手にした状態で顔をあげると、既にバルコニーに3人の人影があった。

 

「誰…!?」

 

最初こそ条件反射的にそう言ったものの、キャッシーは3人のうち2人の服装には見覚えがあった。ハートランドの学校の制服だからである。

 

「あなた…シャーク!!それに、シャークの…妹。あなたは…」

「私はミザエルだ。」

「えっ…?にゃんでそんな変な奴とつるんでいるの!?2人とも!?」

「私が変だと!?」

 

「キャッシー…とか言ったか?遊馬のダチの一人だな?残念だが俺はシャークじゃねえ。バリアル……」

「待って!!」

 

シャークとミザエルの体が紅く発光する前に、璃緒が腕を横に伸ばして制止した。

 

「メラグ…!?」

「私たちの力を使わなくても良いわ。彼女とは…デュエルの申し込みを以前したことがありますもの。」

 

以前…そういわれてキャッシーは思い出した。それは、ナンバーズクラブの面々が些細なことから仲間割れをし、彼らの仲を元に戻すために行われたスポーツデュエル大会。その最中での出来事である。

 

「覚えて…いてくれたの?」

「当然ですわ。今度デュエルしてくださらない?と言っておいて、忘れるような人だと思って?」

 

そう言って神代璃緒はデュエルディスクを構えてキャッシーの方へと歩み寄った。

 

「いいのかナッシュ?こんな戦い方をして?今バリアンであることを明かすべきだ!」

「バリアンであることを明かしても明かさなくても、奴を倒すことに変わりはないだろ。」

「そうだが!!」

 

 

(私は…あなたとは戦わなければならない。ナンバーズを、九十九遊馬の手に渡してもらう訳にはいかない。けど、あなたをバリアンの力で傷つける訳にはいかない。)

 

キャッシーは約束を覚えていてもらったので、嬉しさがあるはずだが、純粋な瞳でデュエルに向かっているようには見えない。

 

何かを悟っている…そんなように見える。果たしてそれが、璃緒…いや、メラグに感じ取れたかは不明だが。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

キャッシー:LP4000

神代璃緒 :LP4000

 

 

 

(次回に続く)





<今日の最強カード>
《Heaven's First Sharpness》



<次回の最強カード>
《捨て猫》
効果モンスター
レベル1/地属性/獣族/攻撃力100/守備力300
このカードが表側攻撃表示でフィールド上に存在する限り、 相手はこのカード以外のモンスターを攻撃対象に選択出来ない。




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第42話-決意のデュエル!キャットちゃんvs神代璃緒

雲が空を覆うようにして、世界が紅色に染まっていく。バリアンに対抗するデュエリストは多くいるものの、時間の問題のようだ。

 

遊馬はナンバーズクラブの面々にメッセージを送り、電話もしたが、キャッシーだけ繋がらないことに不安を覚えていた。

 

彼女の電話がどこにあるかはGPSによってわかってはいるものの、一時間ほど場所が変わっていないという指摘をアストラルから受けた遊馬は、小鳥に声をかけ、共にキャッシーの屋敷にいくように催促し、今まさに小走りで向かっているところである。

当然遊馬と行動を共にしている遊士も向かっているが、黒咲は前線基地の跡地を調べに行った。

 

「キャットちゃんと連絡が取れない!?」

「ああ。ずっと電話してるんだけど、繋がらないんだ!」

「急ぐぜ!」

「おう!」

「はいっ!」

 

 

------

 

「私の先攻!私は手札から、《猫招き》を発動!」

 

 

《猫招き》

通常魔法

自分のデッキから「猫」または「キャット」と名の付いたモンスター1体を自分の手札に加える。

 

 

「デッキから《捨て猫》を手札に加える!そして永続魔法、《猫集会》を発動!(4)」

 

 

《猫集会》

永続魔法

「猫」または「キャット」と名のつくモンスターが召喚された時、手札の「猫」または「キャット」と名のつくレベル3以下のモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 

 

「《捨て猫》を召喚!(3)」

 

 

《捨て猫》:攻撃力100

 

 

ひっくり返ったダンボールと、そのダンボールに対して顔を向け、尻尾を璃緒に向けている。

 

「《捨て猫》…?」

「この《捨て猫》を侮らにゃいことね!私は永続魔法、《猫集会》の効果発動!自分が猫モンスターの召喚に成功した時、手札から猫モンスターを特殊召喚できる!私はもう1体の、《捨て猫》を召喚!(2)」

 

 

《捨て猫》

効果モンスター

レベル1/地属性/獣族/攻撃力100/守備力300

このカードが表側攻撃表示でフィールド上に存在する限り、 相手はこのカード以外のモンスターを攻撃対象に選択出来ない。

 

 

「攻撃力100のモンスターが2体…あいつはデュエル初心者なのか?」

 

ミザエルがそう言って彼女を蔑んで笑ったが、キャッシーはそれをものともせず、デュエルを続けた。

 

「私はこれで、ターンエンド!(2)」

<キャッシー:伏せなし 璃緒:伏せなし>

 

「私のターン!(6)私は《ブリザード・サンダーバード》を召喚!(5)」

 

 

《ブリザード・サンダーバード》

効果モンスター

レベル4/水属性/鳥獣族/攻撃力1600/守備力1400

 

 

「さあ、いきなさい!《ブリザード・サンダーバード》!」

 

《ブリザード・サンダーバード》が容赦なく《捨て猫》に攻撃しようとしたものの、突然《ブリザード・サンダーバード》はキョロキョロと周りを見渡し始めた。

 

「どうしたの、《ブリザード・サンダーバード》?」

「残念ね!《捨て猫》は、フィールドに攻撃表示で存在する限り、他のモンスターを攻撃できなくする!」

 

「そうか。その効果を持つモンスターが2体か。お互いがお互いを守り合い、どちらも攻撃できなくするということか。」

「なっ…《捨て猫》ロックだと!?」

 

ミザエルはそう言って驚いたが、璃緒はすぐさまデュエルを続けた。

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!(4)」

<キャッシー:伏せなし 璃緒:伏せ1枚>

 

「私のターン!(3)私は手札から3体目の《捨て猫》を召喚!(2)」

 

 

《捨て猫》:攻撃力100

 

 

「攻撃力100のモンスターを3体そろえても、勝てないわよ。」

「防御のためだけにこのモンスターを出した訳じゃない!手札から永続魔法、《猫嫉妬(ねこじぇらしー)》を発動!(1)」

 

 

《猫嫉妬》

永続魔法

自分のメインフェイズ1で発動することができる。自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターの攻撃力の合計が、相手フィールド上に表側表示で存在する最も攻撃力の低いモンスターの攻撃力より低い場合、自分フィールド上に表側表示で存在する「猫」または「キャット」と名の付いたモンスターの数×300ポイントのダメージを相手に与える。この効果はこのターン、この効果を発動した時に自分フィールド上に表側表示で存在していた「猫」と名の付いたモンスターの数だけ発動することができる。この効果を発動するターン、バトルフェイズは行えない。

 

 

「ねこじぇらしー…?」

「私の場の猫モンスターの攻撃力の合計が、相手モンスターの中で最も攻撃力の低いモンスターの攻撃力を下回る時、私の猫モンスターの数×300ダメージを与えて、その数値分だけライフを回復する!」

 

猫じゃらしのような形のブーメランがイラストの部分から璃緒に飛んでいき、璃緒の目の前で爆発をした。

爆風から身を庇う璃緒を見つつ、キャッシーは得意そうな表情で続けた。

 

「クッ…」

 

 

神代璃緒 :LP4000→LP3100

キャッシー:LP4000→LP4900

 

 

「しかもこの効果は私の場の猫モンスターの数だけ使える!」

「そう。じゃああと2回使えるのね。…でも、そうはいかないわ。手札から《ガード・ペンギン》を守備表示で特殊召喚!(3)」

 

 

璃緒が目の前にカードを翳すと、上空に魔法陣が現れ、そこから《ガード・ペンギン》が降り立った。まるで紙吹雪でも浴びせるかのように、璃緒に粉雪を降らせている。

 

 

《ガード・ペンギン》

効果モンスター

レベル4/水属性/鳥獣族/攻撃力0/守備力1200

カードの効果によって自分がダメージを受けた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、受けたダメージの数値分だけ自分のライフポイントを回復する。

 

 

「ペンギン!?」

「このモンスターは、カード効果によるダメージを受けた時、手札から特殊召喚し、その数値分だけライフを回復する!」

 

 

神代璃緒:LP3100→LP4000

 

 

「1回分の効果ダメージを防いだということね!でも、ねこじぇらしーの効果はあと2回使えるのよ!」

「残念ね。このターン、もうねこじぇらしーの効果は使えないわ。」

「にゃっ!?どうして…!?」

「ねこじぇらしーの効果は、あなたの猫の攻撃力の合計が、私の場の最も攻撃力の低いモンスターの攻撃力を超えていては使えない。私の場に攻撃力0の《ガード・ペンギン》が現れた以上、効果は使えないわ。」

「……やるわね。カードを1枚伏せて、ターンエンド!(0)」

<キャッシー:伏せ1枚 璃緒:伏せ1枚>

 

「私のターン!(4)」

(やっぱりこれなら、バリアンの力を使うまでもない。九十九遊馬や天城カイトと言ったデュエリストなら、バリアンの力で倒さざるを得ない。けど、この子は、私たちの戦い巻き込まれただけ。別に魂をバリアンに捧げてもらう必要は…ないわ。)

 

人間体のナッシュとミザエルが後ろで腕組みをして立っている。2人とも、璃緒が何を考えているのか、それを見透かしているのかは定かではないが…今の璃緒は、やるべきことをやるだけであった。

 

彼女がドローすると同時に、キャッシーは二度耳をピクピクさせた。

 

「にゃっ!?」

「…?」

 

璃緒が不思議そうにすると、キャッシーは素早くバルコニーの入口の巨大な扉に近寄った。彼女が耳を扉に近づけると、数匹の猫の声が聞こえたことがすぐにわかったのだ。

 

間もなくして彼女が扉を開けると、三匹の子猫が誰かを率いて来るようにしてやってきた。その誰かというのは、すぐにわかった。

 

「遊馬、小鳥!そして…遊士…さん!?」

 

「キャット!!」

 

遊馬、小鳥、遊士の3人はキャッシーがデュエルをしていることはすぐにわかった。その後は当然ながら誰が対戦相手かを確かめる。確かめた先に居た人物を見て、最初にこえをあげたのは小鳥だった。

 

「璃緒さん!!…どうして、2人が…デュエルを?」

 

残念ながらというべきか、遊馬はそれが、好ましい形のデュエルではないことがすぐにわかった。その根拠は…後ろに控えていたデュエリストたちのうちの1人の存在である。

 

「シャーク!!それに…てめぇっ…ミザエル!!どうしてお前がここに!?」

「遊馬か。」

「私のギャラクシーアイズの力に圧倒されて以来、怯えて出てこれないかと思ったがな!」

「どういうことか説明しろ!シャーク!いもシャ!何でキャットちゃんとデュエルしてんだ!?そんでもって、何でお前らが、ミザエルと一緒にいる!?」

 

「いもシャはやめなさい。ネーミングセンスのない。」

「妹シャークでも何でもいいけど、ちゃんと教えろ!」

 

「……」

「もういいだろう。バリアンであることを明かすしかない。ナッシュ!」

「なら私も…」

「いや、お前はバリアル・フォーゼするな。」

「えっ?」

「無駄な殺生はしたくないんだろ?それくらいはわかる。」

「ナ…ナッシュ。」

 

ひそひそと話をした後、ナッシュとミザエルは一歩前に出て、左腕を突き出した。

 

 

「「バリアル・フォーゼ!!!!」」

 

人間体からバリアンの形態へと姿を変えた2人に、声をあげたのは遊士だった。

 

「あっ!!てめえは…あの時ベクターと戦ってた、ナッシュとかいう!」

「草薙遊士。また会ったな。」

 

「そ…そんな!?シャ…シャークが…バリアン!?」

「そうだ。自己紹介がまだだったな。俺はバリアン七皇のリーダー、ナッシュ!」

「そして私は真のギャラクシーアイズ使い、ミザエル!!」

「ミザエルは知ってるから良いんだけど…そんな、ナッシュって…どういうこと!?それじゃ、璃緒さんはまさか…」

 

「そうよ。私はバリアン七皇の一人、メラグ。」

 

遊馬と小鳥には気持ちの整理がつかない。目の前で何が起きているのか、彼らが何を話しているのか、それを受け入れることができない。遊馬は首を横に振りながらシャークに言い放つ。

 

「ちょっと待てよ!何の冗談だよ!?お前がバリアンだなんて…!!お前は神代凌牙だろ!?シャークだろ!?」

「てめえの知ってる神代凌牙もシャークも死んだんだよ。それだけの話だ。俺たちはバリアンとして生きる運命なんだよ。」

 

運命、というフレーズに、彼の冷めた気持ちを感じた。突き放すようなそのものの言い方に心が折れそうになったが、それでも遊馬の熱い思いは、運命の一言には負けはしなかった。

 

「運命って…シャーク!お前は、もう…覚悟ができてんのかよ!?おい、俺たち、一緒に戦ってきた仲間じゃねえのかよ!?忘れちまったのかよ!?」

「忘れる訳ねえだろ。トロン一家と戦ったのも、Dr.フェイカーを一緒に倒したのも、全部覚えているさ。」

「だったら…」

「だから言ったろ?運命だって。俺にはもうとっくに覚悟ができてんだよ。」

 

一貫した冷たいその物の言い方に、今度は小鳥が物を言う。

 

「待って!だったら、キャットちゃんとデュエルしてるのは…」

「それは、彼女が持っているからよ。ナンバーズを…」

「何だって!?ナンバーズを!?」

「本当に偶然なんだけど、ナンバーズがこの屋敷付近にあって。それを彼女の飼い猫の一匹が拾って彼女に届けたの。」

 

「やっぱり。」

 

メラグの言葉に対して、俯きながらキャッシーがそう言った。決して大きな声ではなかったが、周囲の人全員が聞き取れていた。

 

「あなたが私にデュエルを挑んだ時、いつもの璃緒さんとは違う何かを感じたの。それが何かはわからなかった。猫の…勘?でも、理由がわかったのならなおさら、あなたに負ける訳にはいかない!!たとえシャーク、そして妹のあなたがバリアンになろうが何だろうが、私はナンバーズクラブの一員!遊馬、そしてみんなのために…戦うって決めたの!!」

 

彼女の瞳は真っすぐに目の前のメラグを捉えていた。

 

「キャットちゃん…」

 

小鳥がキャッシーがいつになく真剣な表情でナッシュたちがバリアンであるという事実(ナッシュの言う運命)に向き合っているのを見ると、自らの心に熱い何かを感じた。そしてキャッシーはすぐに遊馬に視線を向けた。

 

「遊馬!!徳之助くんみたいな人を出しちゃいけないって思ってるのは、あなただけじゃない!!私たちはみんな、ナンバーズクラブ!!デュエルは強くなくったって、仲間なの!だからたとえ相手がナッシュでもメラグでも、ナンバーズを守るためには、守らなきゃダメなの!」

「キャットちゃん。」

 

遊馬はキャッシーを別に見下していたつもりはなかった。彼女も仲間の一人だと思っているのは事実だ。だが同時に、自分が他の人を守らなければならない、と気負いすぎているのも…事実だったのかもしれない。

 

「それを聞いて安心したわ。あなたの闘志が、私たちがバリアンだと聞いて、なくなってしまうのではないかと思ったけれど…」

「そんな心配はにゃいわ!!かかってらっしゃい!!」

 

(どの道このターンで決着はつくわ。)

「私は手札から、《オーロラ・ウィング》を召喚!(3)」

 

 

《オーロラ・ウィング》

効果モンスター

レベル4/水属性/鳥獣族/攻撃力1200/守備力1600

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを表側攻撃表示で特殊召喚できる。「オーロラ・ウィング」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「そして、《ガード・ペンギン》と、《オーロラ・ウィング》で、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れよ、《零鳥獣シルフィーネ》!!

 

 

《零鳥獣シルフィーネ》

エクシーズモンスター

ランク4/水属性/鳥獣族/攻撃力2000/守備力2200

鳥獣族レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果を無効にし、このカードの攻撃力はこのカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの数×300ポイントアップする。このカードの効果は次の自分のスタンバイフェイズ時まで適用される。

 

 

「攻撃力2000!でも、どんなモンスターが相手だって、《捨て猫》の効果があれば…」

「シルフィーネの効果発動!!オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上に表側表示で存在する全てのカード効果を次の私のスタンバイフェイズまで無効にする!」

 

 

パーフェクトフリーズ!!

 

 

「きゃっと!?そんな!!」

 

シルフィーネが翼を一振りすると、吹き付けた雪が3体の《捨て猫》と《猫集会》と《猫嫉妬》のカードを凍り付かせた。

 

「これであなたの《捨て猫》は尻尾を振れなくなったわ。そしてシルフィーネの効果はまだ続く。このカード以外の表側表示で存在するカードの数×300ポイント、攻撃力がアップする!今表側表示で存在するカードは、私の場の《ブリザード・サンダーバード》と、あなたの場の3体の《捨て猫》と《猫集会》と《猫嫉妬》の合計6枚!」

 

 

《零鳥獣シルフィーネ》:攻撃力2000→攻撃力3800

 

 

「《捨て猫》の攻撃力はわずか100。バトル!シルフィーネで、《捨て猫》を攻撃!」

 

 

アイス・レイ!!

 

 

「ぐっ!!」

 

「キャットちゃん!」

 

 

キャッシー:LP4900→LP1200

 

 

「《ブリザード・サンダーバード》の攻撃力は1600!《捨て猫》を攻撃して、終わりよ!」

「速攻魔法、《怪猫変化》を発動!自分の《捨て猫》がバトルで破壊された時、デッキから《化け猫》を特殊召喚する!」

「《化け猫》ですって!?」

 

再び子猫が現れたかと思うと、子猫から影が伸び、それが立体的に映し出されたかと思うと、恐ろしい形相で《ブリザード・サンダーバード》を見下ろした。

 

「このモンスターが特殊召喚された時、相手のレベル4以下のモンスターは全て破壊され、1体につき800ダメージを与える!」

「そんな!?……うっ!!」

 

 

メラグ:LP4000→LP3200

 

 

「フッ。そうこなくちゃ面白くないわね。ターンエンド。(3)」

<キャッシー:伏せなし メラグ:伏せ1枚>

 

キャッシーは自分の手札が0枚で、効果が無効になった《捨て猫》2体と《猫嫉妬》、攻撃力が0の《化け猫》があるだけということを再認識し、深呼吸した。

 

そして口を大きく開けて…

 

「キャットビングよ!!アタシ!!ドロー!!(1)」

(来た!!)

 

「私はまず、《化け猫》の効果を発動!1ターンに1度、墓地から《捨て猫》を手札に加える!(2)そして、魔法カード、《猫借り手》を発動!私のフィールドと手札に同名の猫モンスターが3体存在する時、デッキからカードを2枚ドローする!私のフィールド、そして手札に《捨て猫》が3体揃っていることで、カードをドロー!(3)さらに、《猫借り手》の効果で、手札から《捨て猫》を墓地に送って、(2)自分フィールドの猫モンスター2体までのレベルを1つ上げる!」

 

 

《捨て猫》:☆2

《捨て猫》:☆2

 

 

「レベル2が2体…」

「私はレベル2となった《捨て猫》2体で、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

出でませ、《No.29 マネキンキャット》!!

 

 

キャッシーが着用しているいわゆるゴシックロリータの衣装を身に纏い、猫耳をつけている人型のモンスターが目の前に現れた。体色が紫色であることや、無表情であることが、人型ではあるものの、すぐにそのモンスターがマネキンであることを認識させた。

 

「ナンバーズ!?」

「キャットちゃん!?」

 

「やはり、ナンバーズを持っていたか!」

 

 

《No.29 マネキンキャット》:攻撃力2000

 

 

「けどそのモンスターの攻撃力は2000。《ブリザード・サンダーバード》は倒せても、《零鳥獣シルフィーネ》は倒せない。」

「私はマネキンキャットの効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手の墓地のモンスター1体を相手フィールド上に特殊召喚する!蘇れ、《ガード・ペンギン》!!」

 

 

《ガード・ペンギン》:攻撃力0

 

 

「そしてマネキンキャットの更なる効果を発動!このカードが既に表側表示で存在する場合に相手フィールドにモンスターが特殊召喚された時、そのモンスターと同じ種族または属性のモンスターを自分の手札・デッキ・墓地から1体特殊召喚する!」

「《ガード・ペンギン》は水属性、鳥獣族。あなたのデッキは獣族デッキ。鳥獣族はいないはず。ということは…」

「そう!私は自分のデッキから、水属性・獣族の《女遊猫(めゆうびょう)》を特殊召喚!」

 

 

《女遊猫》

効果モンスター

レベル4/水属性/獣族/攻撃力0/守備力0

 

 

「女遊猫…?」

「あら…知らないの?遊女は…猫が化けているんじゃないかって話?この女遊猫は、その魅力で、あなたのモンスターをいただくのよ!モンスター効果発動!相手フィールドのモンスター1体を、装備カード扱いとしてこのカードに装備する!」

 

鋭い眼差しでシルフィーネを睨むと、シルフィーネは女遊猫に吸い寄せられていく。

 

「フフ…強力な効果だけど、あなたが水属性のモンスターを呼んだ時点で、決着はついたわ!罠カード、《ダイヤモンド・ダスト》を発動!」

 

 

《ダイヤモンド・ダスト》

通常罠

フィールド上の水属性モンスターを全て破壊する。その後、この効果で破壊され墓地へ送られた水属性モンスターの数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 

「にゃに!?」

「《ダイヤモンド・ダスト》は、フィールドの水属性モンスターを全て破壊し、その数×500ダメージを相手に与える!フィールドの水属性モンスターは《ガード・ペンギン》、《ブリザード・サンダーバード》、《零鳥獣シルフィーネ》、《女遊猫》の4体!!2000ポイントのダメージを受けてもらうわ!」

 

 

キャッシー:LP1200

 

 

「そうはいかないわ!《女遊猫》の効果を発動!デュエル中に一度、相手のモンスターが3体以上いる場合、相手がカード効果を発動した時、フィールドのこのカードと、相手フィールドのモンスター1体をデッキに戻す!」

「2体のモンスターを!?」

「シルフィーネと、《女遊猫》はデッキに戻る!」

「くっ!これでは、ダメージが1000に減ってしまう!」

「きゃあっ!」

 

 

キャッシー:LP1200→LP200

 

 

「でもこれで…あなたのフィールドのモンスターは全ていなくなったわ!覚悟しなさい!マネキンキャットで、ダイレクトアタック!!」

 

 

マネキン・ニャンニャン・パンチ!!

 

 

無表情のままその場で飛び上がり、メラグに向かって急降下しつつ右手の肉球でのパンチを繰り出した。メラグは左腕で咄嗟にガードしたものの、見た目よりも勢いがあったのか、少し後退した。

 

「くっ!!」

 

 

メラグ:LP3200→LP1200

 

 

「すげえ、キャットちゃん!」

「璃緒さんのライフは1200…あと少しよ!」

 

「《化け猫》を守備表示に変更し、カードを2枚伏せて、ターンエンド!(0)」

<キャッシー:伏せ2枚 メラグ:伏せなし>

 

 

《化け猫》:守備力0

 

 

小鳥の声を聞いたメラグは、顔を下に向けたままゆっくりと立ち上がった。

 

「璃緒…いいえ、違うわ。私は…メラグよ!!私のターン、ドロー!(4)私は手札から魔法カード、《死者蘇生》を発動!(3)墓地からモンスター1体を特殊召喚!蘇りなさい、《ブリザード・サンダーバード》!!」

 

 

《ブリザード・サンダーバード》:攻撃力1600

 

 

「《ブリザード・サンダーバード》の効果発動!手札を1枚墓地に送って、(2)自分の手札、そして墓地から水属性・鳥獣族のモンスターを1体ずつ特殊召喚し、このカードを手札に戻す!私は手札から《霊水鳥シレーヌ・オルカ》を墓地に送り、私の手札と墓地から《霊水鳥シレーヌ・オルカ》を特殊召喚!」

 

 

《霊水鳥シレーヌ・オルカ》

効果モンスター

レベル5/水属性/鳥獣族/攻撃力2200/守備力1000

自分フィールド上に魚族及び鳥獣族モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。この方法で特殊召喚に成功した時、3から5までの任意のレベルを宣言して発動できる。自分フィールド上の全てのモンスターのレベルは宣言したレベルになる。この効果を発動したターン、水属性以外の自分のモンスターは効果を発動できない。

 

 

「その後、《ブリザード・サンダーバード》は手札に戻る!(1→2)」

「レベル5のモンスターが2体!?」

「私はレベル5の2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体の鳥獣族モンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

全ての物を凍てつかせよ!《零鳥姫リオート・ハルピュイア》!!

 

 

《零鳥姫リオート・ハルピュイア》

エクシーズモンスター

ランク5/水属性/鳥獣族/攻撃力2500/守備力2100

鳥獣族レベル5モンスター×2

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力を0にする。

 

 

「リオート・ハルピュイア…あくまでナンバーズを使わないつもり!?」

「ナンバーズを使う必要はないわ。あなたはこのターンで終わりよ!」

 

 

(次回に続く)




<今日の最強カード>
《捨て猫》
効果モンスター
レベル1/地属性/獣族/攻撃力100/守備力300
このカードが表側攻撃表示でフィールド上に存在する限り、相手はこのカード以外のモンスターを攻撃対象に選択出来ない。


<次回の最強カード>
《No.29 マネキンキャット》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク2/光属性/獣族/攻撃力2000/守備力900
レベル2モンスター×2
このカード名の➂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
➀:このカードは「No.」モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを相手フィールドに特殊召喚する。
➂:このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターと種族または属性が同じモンスター1体を自分の手札・デッキ・墓地から選んで特殊召喚する。




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第43話-絶対零度の力!キャットちゃんvsメラグ

キャッシー

 

・LP200

・手札0枚

・(モンスター)《化け猫》(DEF0)/《No.29 マネキンキャット》(ATK2000)(ORU1)

・(魔法・罠)伏せ2枚/《猫集会》(∞)/《猫嫉妬》(∞)

 

 

メラグ

 

・LP1200

・手札2枚

・(モンスター)《零鳥姫リオート・ハルピュイア》(ATK2500)(ORU2)

・(魔法・罠)伏せなし

 

 

「ナンバーズを使わずに、私を倒すっていうの!?」

「そう。このターンであなたは終わり。リオート・ハルピュイアのモンスター効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を0にする!」

「にゃっ…!?」

 

 

アーム・フリージング!!

 

 

《No.29 マネキンキャット》:攻撃力2000→攻撃力0

 

 

「ナンバーズはナンバーズでしか倒せない。けれど、超過した分の戦闘ダメージは当然受けてもらうわよバトル!リオート・ハルピュイアで、マネキンキャットを攻撃!」

「罠カード発動!《猫だまし》!」

 

 

《猫だまし》

通常罠

相手フィールド上のモンスター1体の攻撃宣言時、 自分フィールド上に獣族モンスターが表側表示で存在する場合に発動できる。 相手モンスター1体の攻撃を無効にして、そのモンスターを相手の手札に戻す。

 

 

「相手モンスターの攻撃時、私の場に獣族モンスターがいる場合、その攻撃を無効にし、そのモンスターを手札に戻す!リオート・ハルピュイアはモンスターエクシーズ!手札に戻れないから、エクストラデッキに戻りなさい!」

 

リオート・ハルピュイアは、翼を振り上げたものの、その時点で光の粒となり、彼女のエクストラデッキに退いた。

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<キャッシー:伏せ1枚 メラグ:伏せ1枚>

 

「私のターン!(1)」

 

キャッシーは《カウンター・にゃうんたー》をドローしたのを確認した後、考えていた。彼女の視線には《猫嫉妬》が入ったのだが、今の手札とフィールドのカードでは、《猫嫉妬》の効果で相手のライフを0にすることができないことは、彼女にはわかっていた。

 

 

《カウンター・にゃうんたー》

速攻魔法

自分の罠カードが破壊された時に発動できる。 相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。 自分フィールド上の「猫」または「キャット」と名のついたモンスター1体の攻撃力は、エンドフェイズ時まで倍になる。

 

 

「まずは《化け猫》の効果を発動!墓地から《捨て猫》を手札に加える!(2)そして、《No.29 マネキンキャット》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手の墓地のモンスター1体を相手の場に特殊召喚する!」

 

アーム・フリージングによって四肢が凍り付いてしまったマネキンキャットだが、オーバーレイユニットがその場で音を立てて消え去ると、マネキンキャットは両目から出た光線で地面を照射した。

 

「また私の場にモンスターを復活させるの!?」

「そうよ!再びあなたのフィールドに蘇りなさい、《ガード・ペンギン》!」

 

 

《ガード・ペンギン》:攻撃力0

 

 

照射された場所から水面の上へと飛び立つようにして、《ガード・ペンギン》が現れたが、心なしか疲れている表情だ。

 

「そして、《No.29 マネキンキャット》の効果発動!相手の場にモンスターが特殊召喚された時、そのモンスターと同じ種族か、属性のモンスターを私のデッキから特殊召喚する!私は水属性モンスターをデッキから呼び出す!私のとっておきの切り札を見せてあげるわ!!」

 

 

出でませ、レベル10!《フォートレスキャット・アンフィビアース》!!

 

 

キャッシーの目の前に水たまりが現れたかと思うと、5メートルほどの箱が浮上してきた。しかし、それがすぐに箱でないことがわかった。

 

表面にはキャッシーによく似た猫の絵柄が見えており、箱の下の方には丸い物体が4つ見えたのだ。よく見覚えのあるそれは、まさしくタイヤであろう。

 

 

《フォートレスキャット・アンフィビアース》:攻撃力0

 

 

「何だこりゃ!?」

「すげぇぜ、キャットちゃん!!」

 

 

「バス…?」

「これぞ水陸両用の最終キャット兵器!」

「でも攻撃力0よ。それでどうやって私を倒そうっていうのかしら?」

「《フォートレスキャット・アンフィビアース》の攻撃力は、フィールド上に存在するこのカードを除く攻撃表示の猫モンスターまたはキャットモンスターの数×1000ポイントアップする!さらに私は、《捨て猫》を召喚して、(1)《化け猫》を攻撃表示に変更!」

 

 

《捨て猫》:攻撃力0

《化け猫》:攻撃力0

 

 

《フォートレスキャット・アンフィビアース》:攻撃力3000

 

 

「攻撃力3000…!?」

 

3体の猫と猫の砦がメラグの方へと向くと、キャッシーは一度深呼吸をし、鋭い眼差しでメラグを睨みつけた。

 

「璃緒さん!いや…メラグ!!覚悟!!《フォートレスキャット・アンフィビアース》で、《ガード・ペンギン》を攻撃!」

 

メラグにバスと形容されたそのモンスターの天井にあたる部分が開き、機械の可動する音が聞こえたかと思えば、砲塔が姿を現し、《ガード・ペンギン》を捉えた。標的にされたことがわかった《ガード・ペンギン》は頭部を押さえて、怯えている。

 

「罠カード、《ブリザード・ソウル》を発動!このカードは発動後モンスターカードとなり、私の場に特殊召喚される!」

 

 

《ブリザード・ソウル》:守備力1200

 

 

「罠モンスター?」

「そう!このモンスターが存在する限り、相手は他の水属性モンスターを攻撃することはできない!《フォートレスキャット・アンフィビアース》の攻撃は、《ブリザード・ソウル》へと向かう!」

 

 

氷の塊のようなモンスターがメラグの目の前に現れたかと思えば、フォートレスキャットの閃光の一撃によって、氷の塊は粉々に砕け散った。

 

「ぐっ!」

「まだよ!《フォートレスキャット・アンフィビアース》のモンスター効果発動!水属性モンスターを戦闘で破壊した場合、相手に500ポイントのダメージを与えて、私のライフは1000ポイント回復する!」

 

 

メラグ  :LP1200→LP700

キャッシー:LP200→LP1200

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド!(1)」

<キャッシー:伏せ2枚 メラグ:伏せなし>

 

ライフポイントは逆転したものの、この攻撃を凌がれてしまったことに対し、遊士は苦い表情で言った。

 

「やべえ。あの猫トラックは攻撃力3000だけど、他の猫は全て攻撃力0だぜ?あいつの手札には、《ブリザード・サンダーバード》があるから、そいつに攻撃されたら…」

 

「それは大丈夫!《フォートレスキャット・アンフィビアース》のモンスター効果!さあ、猫ちゃんたち!!砦に乗り込んでーっ!!」

 

キャッシーが頭の上で手を二度叩くと、《捨て猫》、《化け猫》、マネキンキャットは吸い込まれるようにして、《フォートレスキャット・アンフィビアース》の天井からその中へと入っていった。

 

「これは…!?」

「《フォートレスキャット・アンフィビアース》がある限り、他の猫ちゃんたちには手出しができないってことよ!」

「厄介なモンスターね。けど。」

 

逆説の言葉でセリフを止めたメラグは、デッキの一番上のカードに指を乗せた。ところが彼女はそこから動かない。メラグが何を考えているのか、キャッシーにはわかっていたのだ。

 

その様子を見ているキャッシーは、その覚悟を決めた瞳で言い放つ。

 

「使いなさいよ。」

 

「え…?」

 

「私はこのデュエルを始める時から、とっくに覚悟ができているの!バリアンの力、使いなさいよ!手加減なんて…いらないわ!!」

 

「ちょ、ちょっとキャットちゃん!!どうしてそんなこと言うのよ!?」

 

「フフッ。何でかしらね。小鳥。アタシはもちろん、遊馬の、役に立ちたいし、ナンバーズクラブのみんなのお荷物にはなりたくない!でも…私…デュエリストなの。正々堂々戦って、勝ちたいって、思っちゃった。それに…オーバーハンドレッドナンバーズ?それが、この局面で強いカードかなんて、わからにゃいもの!」

 

遊馬、小鳥、遊士、そして見えてはいないがアストラルに、精一杯の笑顔をして見せた。

 

「キャットちゃん。」

 

「そうね。覚悟はできているのよね。なら、バリアンの力…見せてあげるわ。私の、オーバーハンドレッドナンバーズをね。バリアル・フォーゼ!!!」

 

そこからは一瞬であった。いつものハートランドの学校に通う服装から、紅い戦士のバリアンの姿へと変わったのだ。

 

「それがあなたの…本当の姿!」

「そう。いくわよ!私のターン、ドロー!!(2)私は手札に戻った、《ブリザード・サンダーバード》を召喚!そして《ブリザード・サンダーバード》と、《ガード・ペンギン》で、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 

No.103!絶対零度の力、見せてあげるわ!神葬零嬢ラグナ・ゼロ!!

 

 

《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》:攻撃力2400

 

 

「ラグナ・ゼロ!?」

 

両手に氷の刃を持つラグナ・ゼロがフィールドに現れると、ラグナ・ゼロの視界には、猫の砦が入っていた。

 

「これが…璃緒さん…メラグのオーバーハンドレッドナンバーズ。」

「何だこの寒気は…。」

 

「まずはラグナ・ゼロのモンスター効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドに攻撃表示で存在する、元々の攻撃力と異なった攻撃力を持つモンスター1体を破壊する!」

 

 

ガイダンス・トゥ・フューネラル!!

 

 

両手の氷の刃の先端から放たれた水色の光線が猫の砦に直撃し、あっけなく猫の砦は崩れ去り、中にいた3体の猫がその姿を晒すこととなった。

 

「そんな…」

「そして私はカードを1枚ドローする!(2)もうあなたのフィールドにいるモンスターは全て攻撃力0。どうすることもできないわね。」

「…」

「あなたには感想を伝えられそうにないから、デュエルが終わる前に感想を伝えておくけど、このデュエルは楽しかったわ。」

「フッ……私も。」

「またデュエルできることを…楽しみにしてますわ。」

 

メラグが左手を天に掲げたのを見ると、遊馬は全身の血の巡る速度が速くなった感じがして、一歩前に出た。

 

「おい!!ちょっと待ってくれよ!妹シャーク!!こんなの、こんなのおかしいに決まってんだろ!!俺たちは、仲間だったじゃねえか!俺たちは……」

 

「ダメよ、遊馬。私の覚悟に…水を差さないで。」

 

「キャ…キャットちゃん。」

 

「安心して。九十九遊馬。あなたもいずれは倒すことになる。彼女に後を追うことになる。バトルよ。《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》で、《捨て猫》を攻撃!」

 

 

ラグナ・ゼロがブーメランのようにして投げた剣が、《捨て猫》を容赦なく切りつけた。その際に出た衝撃波がキャッシーを襲い、キャッシーは大きく吹き飛ばされ、バルコニーの柵を超えた。

 

 

キャッシー:LP1200→LP0

 

 

 

「…遊馬…くん。」

 

遊馬は慌てて彼女を救わんとばかりに手すりに手をかけたが、遊士と小鳥によって引き留められた。だが、皮肉にもそこからは飛び降りる必要はなかった。

 

彼女の肉体はすぐに光の粒となり、空中でその姿を消したのだ。

 

「キャットちゃん…キャットちゃん!!!」

「そ…そんな。」

「…」

 

「一般人で、私にオーバーハンドレッドナンバーズを使わせたのは彼女が初めてね。別に先ほど私が言ったことは嘘ではなくてよ。」

「一般人だと…シャーク妹!!いや…メラグ…だったか?お前、本当に平気なのかよ!?そんな風に、かつての友達を、そんな簡単に…」

 

遊馬が目を真っ赤にしてそこまで言うと、今度はナッシュが割って入った。

 

「またその問答かよ?もういいだろ。俺たちはとっくに、覚悟ができている。何度言わせりゃわかるんだ?」

「シャーク。お前も…」

「俺はもうシャークじゃねえ。バリアンのナッシュだ。」

 

「さて…」

 

キャッシーのカードが数枚、デュエルディスクから飛び出していたのはその場にいた全員がわかっていた。メラグはその数枚のカードに近づこうとした。

 

「…!?」

 

彼女が異変に気が付いたのは、《捨て猫》、《化け猫》、《フォートレスキャット・アンフィビアース》のカードがあったからだ。その時フィールドに出ていたモンスターの中に、もう1体モンスターがいたはずだ。

 

「まさか…アストラル!?あなた…」

 

「彼女の敗北を、無駄にする訳にはいかない。悪いが、ナンバーズは回収させてもらった。《No.29 マネキンキャット》、確かに受け取った。キャットちゃん。」

「アストラル…」

 

「遊馬!キャットちゃんは、覚悟ができていた。それなのに、君はそうして煮え切らない思いのままでいるつもりなのか?デュエルをすれば仲間。君はいつもそう言っているではないか。ならば、ナッシュやメラグと、もう一度戦い、絆を思い出させるしかない!!」

「アストラル。お前。」

 

すると突然ナッシュが脇腹を押さえてその場に蹲った。メラグはゆっくりと彼に近づく。

 

「う…!くそっ。こんな時に。」

「ナッシュ。やっぱり、アフタンとのデュエルで負った傷が。一度戻りましょう。」

「俺は…大丈夫だ。」

「無理は禁物だ。手負いの状態で勝てるほど、九十九遊馬は簡単ではないと、ナッシュは言っていただろう。戻るぞ!」

 

「わかったよ。遊馬。勝負は預ける。お前のナンバーズ、必ずもらい受けるぜ。」

「シャーク!!絶対に……絶対に……負けねえからな!」

 

遊馬が拳をナッシュに向けながらそう言うと、ナッシュ、メラグ、ミザエルはその場で姿を消した。

 

それと同時に、小鳥のスマートフォンが、ブルブルと着信音を立てて震えた。沈黙が辛いであろうこの時に、しゃべる口実となるのには最良のものだったためか、彼女は誰からかかってきたのかもロクに確認せず、電話に出た。

 

 

「あ…電話。もしもし。……あ、アンナ!?……遊馬!?なに?遊馬に何の用よ!?私にじゃなくて、遊馬にかければいいでしょ!?あ…電源が。それじゃあ…」

「ア…アンナ?」

 

小鳥に向かって遊馬が振り返ると、小鳥は頷いてハンズフリー通話に切り替えた。

 

『おいヘボ遊馬!久しぶりだな!』

「何だよアンナ。今はお前に構っている場合じゃ…」

『何だよその言い方!オレが電話してやったっていうのに!!』

「別にお前の電話なんて求めてねえって。」

『はあ!?お前の家、もう一回ロケットで撃ち抜くぞ!』

「おいおい、待ってくれよ!あれはもうやめてくれよ!修理すんのどんだけ大変だったか!わかった。話聞くからさ!」

『わかりゃいいんだよ!』

 

そのやり取りを黙って聞いていた遊士、小鳥、アストラルはあきれ顔であった。特に初めて聞く遊士は、あきれもあるが、気味悪がっているのは明らかだ。

 

『遊馬!お前…そういや、ナンバーズがどうこうって言ってたよな!?』

「えっ…ナンバーズ!?あ、ああ。そりゃ、ナンバーズは、大切なカードで。」

『オレ、海美姉ちゃんからもらったんだよ!』

「海美姉ちゃんって…海美プロのこと!?」

『おうよ!オレとお前でタッグデュエルをしたことがあったろ!その後!』

 

遊馬とこの電話をしているアンナというデュエリストは、学園祭で遊馬とタッグを組んでプロのタッグデュエリスト羽原海美、羽原飛夫夫妻と戦ったこともあり、その時の話をしている。

 

「その後…?」

『そう!この前久々にもう一回会ってさ!どういう訳かわからないけど、あの後デッキに紛れていたって。でも、あの時のデュエルを海美姉ちゃんは覚えていなくて、その後すぐに産休に入っちゃったからデッキに入っていたのにも全然気が付かなかったんだってよ。』

「そうか。そんで、そのナンバーズを…」

『遊馬にとって、必要なカードなんだろ?だから、渡しに行こうと思ってな!』

「そういうことか、わかった!」

 

今アンナがどこにいるのかを遊馬は聞き出し、2人はハートランド中央公園で落ち合うことにした。

 

その日はたまたまアンナのロケットが壊れており(そのため家を壊す発言はただの脅しでしかなかったのだが)、徒歩で移動するしかなかった。

 

しかしそのことが、思いがけない戦いを引き起こすことになる。

 

「チクショー。今日に限ってロケットが使えないなんてなー。別に今日じゃなくても良かったか、遊馬に会うの。でも…なぁ。この空を見てたら、そんな呑気な事いってもいられないだろうな。」

 

アンナが独りごちていると、中央公園まであと1分の路地裏に差し掛かったところで、道の真ん中に立ち、明らかにアンナの行く手を阻もうとするのがわかる者がいた。

 

「ン!?…何だ、お前!?」

「あなた。ここから先には行かせないわよ。」

 

アンナよりも身長が高い女性。銀色のロングドレスに身を包み、小麦色の肌に、厚い化粧、イヤリングもつけていて、かなり派手な服装。

 

「なんだよオバサン?」

「は!?オバサンですって?アタシはね、夜の女王と呼ばれていたのよ!」

「あっそう。オレ、そういう勧誘系は興味ねえし、急いでるから、じゃあな。」

「待ちなさい。あなた。ナンバーズを持っているわね。」

 

その単語を言われ、咄嗟にピタリと動きを止めてしまった。しかしそれだけで、その女性には十分だった。アンナがナンバーズを持っていると確信させるには。

 

「は…ナンバーズ?」

「大人しく渡しなさい。そのカードは、あなたが持っていていいものではないわ。」

「人の話を聞けって!オレが…ナンバーズ?持ってねえよそんなの!」

「しらを切ろうとしても無駄よ。私の名前はラニット。ヘヴンズ・サードの一人。あなたにはわからないかもしれないけど、特別な力を持つ者は、わかるのよ。」

 

「ヘヴンズ…サード?何でもいいけど、オレはナンバーズ81なんて持ってねえ!」

 

「81…??」

 

「あっ…」

 

アンナは自分でもわかるほど、瞬時の紅潮を感じた。

 

「お、お前!!卑怯だ!!」

「あなたが勝手に言ったんでしょう?ヘヴンズ・コート!!」

「なっ!?」

 

ラニットがそう宣言すると、2人の間を白い円が囲み、結界を作り上げた。

 

「これであなたは逃れることはできない。あなたのナンバーズ、アタシがいただくわ。そのカードがアストラルの手に渡ることはない!」

「アストラルだと…?オレはこいつを、遊馬に渡すんだ!!」

「あ、そう。アストラルのことが認識できないのね。そんな一般人に手を出すのは少し気が引けるけど、仕方ないわね。」

「一般人だと!?オレを舐めるなよ!九十九遊馬と愛のタッグを組んだデュエリストなんだぜ!」

「愛の…タッグ?」

「そうだ!オレは、献身的な愛の力で、遊馬を勝利に導いたデュエリストだ!」

 

恥ずかしげもなく堂々とそうラニットに宣言したが、そのセリフが引き金か、ラニットの表情が曇った。

 

「献身的な…愛。フッ。そう。残念だけど、愛っていうのはね、支配なのよ。」

「はぁ!?何言ってやがる!?」

「まあいいわ。このデュエルでアタシがたっぷりわからせてあげる!!」

「望むところだ!いくぜ!!」

 

 

「デュエル!!」

 

 

アンナ :LP4000

ラニット:LP4000

 

 

「アタシのターン!モンスターをセットして、カードを伏せて、ターンエンド!(3)」

<アンナ:伏せなし ラニット:伏せ1枚>

 

「いくぜ!オレのターン!(6)《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を通常召喚!(5)」

 

 

《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》

効果モンスター

レベル10/地属性/機械族/攻撃力3000/守備力3000

このカードはデッキから特殊召喚できない。

➀:このカードはリリースなしで召喚できる。

➁:このカードの➀の方法で召喚したこのカードの元々の攻撃力は0になる

 

 

「攻撃力3000のモンスターを、リリースなしで召喚ですって?」

「このモンスターは、攻撃力を0にすることで、リリースなしで召喚ができる!さらにオレは《弾丸特急バレット・ライナー》を特殊召喚!(4)」

 

 

《弾丸特急バレット・ライナー》

効果モンスター

レベル10/地属性/機械族/攻撃力3000/守備力0

このカード名の➀、➂の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

➀:自分フィールドのモンスターが機械族・地属性モンスターのみの場合に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

➁:このカードの攻撃宣言の際に、自分はこのカード以外の自分フィールドのカード2枚を墓地へ送らなければならない。

➂:このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに、「弾丸特急バレット・ライナー」以外の自分の墓地の機械族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

 

「また攻撃力3000のモンスターを!?」

「オレは、2体のモンスターでオーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

鉄路の彼方より、地響きとともにただいま到着!《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!!

 

 

「これは…!?」

「グスタフ・マックスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手に2000ポイントのダメージを与える!!」

 

召喚されるや否や、砲塔が飛び出し、エネルギーが充填されていく。

 

 

発車オーライ・ビッグ・カノン!!

 

 

「きゃああああっ!」

 

 

ラニット:LP4000→LP2000

 

 

ラニットの目の前にグスタフ・マックスの弾丸が着弾し、その爆風によってラニットは大きく吹き飛ばされ、見えない結界の壁に背中を打ち付け、その場で倒れた。

 

「立てよ、ラニット!!まだこれで終わりじゃねえ!」

「うっ…くっ…」

「バトルだ!グスタフ・マックスで、セットモンスターに攻撃!」

 

 

グスタフ・アタック!!

 

 

鉄路がセットされたモンスターまで延び、そのまま体当たりでモンスターを破壊した。破壊された大きな釣り目の緑色のワニのモンスターは破壊されたかと思うと、平べったい粘土のような形になり、ぺちゃ、という音を立ててグスタフ・マックスに取りついた。

 

「何!?これは!?」

「かかったわね!《グレイドル・アリゲーター》の効果発動!相手モンスターとの戦闘で破壊された場合、装備カードとなり、相手モンスターに装備される!そして装備モンスターのコントロールを得る!!」

「何だと!?」

 

異空間に消えたグスタフ・マックスであったが、すぐにラニットの目の前に現れた。

 

 

「これでグスタフ・マックスはアタシのもの。これが私のやり方、見せてあげるわ。アタシの…支配のデュエルを!!」

 

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《No.29 マネキンキャット》(小説版)
エクシーズモンスター
ランク2/光属性/獣族/攻撃力2000/守備力900
レベル2モンスター×2
このカード名の➂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
➀:このカードは「No.」モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを相手フィールドに特殊召喚する。
➂:このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターと種族または属性が同じモンスター1体を自分の手札・デッキ・墓地から選んで特殊召喚する。

<次回の最強カード>
《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》
エクシーズモンスター
ランク10/地属性/機械族/攻撃力3200/守備力4000
レベル10モンスター×2
➀:このカードは「No.」モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターはターン終了時まで、そのモンスター以外のカードの効果を受けない。この効果は相手ターンでも発動できる。


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第44話-支配の象徴!Heaven's Third Dominion

神月アンナ

 

・LP4000

・手札4枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

ラニット

 

・LP2000

・手札3枚

・(モンスター)《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス)(ATK3000)(ORU1)(+)

・(魔法・罠)1枚/《グレイドル・アリゲーター》(+)

 

 

「そんな!オレの…グスタフ・マックスが。」

「これがアタシのやり方。見せてあげるわ。支配のデュエルを!!」

「クソッ。オレは…カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(3)」

<アンナ:伏せ1枚 ラニット:伏せ1枚>

 

「アタシのターン!(4)あなたのフィールドには、伏せカードが1枚あるわね。」

「…」

「それに賭けているのかしらね。」

「さあな!!」

「フッ。まあ、いずれにしても、封じさせてもらうことにするわ!アタシは手札から魔法カード、《Heaven's Distrained Card》を発動!(3)」

「なにっ!?」

 

アンナの目の前に伏せられたカードが灰色になった。その光景は、一瞬にして彼女にそのカードの使用不能をわからせた。

 

「これであなたのフィールドの伏せカードは使用不能になった。まずはグスタフ・マックスのモンスター効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、今度はあなたに受けてもらうわ!!」

 

 

発射オーライ・ビッグ・カノン!!

 

 

アンナは迫りくる青い閃光を見つめることしかできず、その直撃を受けたアンナは大きく吹き飛び、狭い路地の地面を背中で滑ることとなった。

 

「わあああああっ!!!」

 

 

神月アンナ:LP4000→LP2000

 

 

「そして、あなたのフィールドにモンスターはいない。伏せカードも使えない!グスタフ・マックス!プレイヤーに、直接攻撃!」

 

 

グスタフ・アタック!!

 

 

前の自分のターンの再現なのかとアンナは思ったが、彼女は手に握っているモンスターカード1枚を瞬時にフィールドに出した。

 

「そうはいかねえ!オレは、自分フィールドの魔法・罠カードを全て破壊して、このモンスターを特殊召喚するぜ!」

「なっ!?」

「《除雪機関車ハッスル・ラッセル》!!」

 

 

《除雪機関車ハッスル・ラッセル》

効果モンスター

レベル10/地属性/機械族/攻撃力2500/守備力3000

①:自分の魔法&罠ゾーンにカードが存在する場合、相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。その後、自分の魔法&罠ゾーンのカードを全て破壊し、破壊したカードの数×200ダメージを相手に与える。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は機械族モンスターしか特殊召喚できない。

 

 

「このモンスターは、相手が攻撃をした時、オレの場にモンスターがいない場合、自分の魔法・罠カードを全て破壊して特殊召喚が可能!そして破壊した数×200のダメージを与えるぜ!」

 

破壊された《燃える闘志》という罠カードが赤い光となり、ラニットにぶつかる。

 

「くっ!」

 

 

ラニット:LP2000→LP1800

 

 

「守備力3000…それではグスタフ・マックスでは倒せないわね。バトルは中止!《グレイドル・コブラ》を通常召喚!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」(1)

<アンナ:伏せなし ラニット:伏せ2枚>

 

「このエンドフェイズに、オレはオーバーレイユニットになっている状態から墓地に送られた、《弾丸特急バレット・ライナー》のモンスター効果を発動!墓地からレベル10以上の地属性の機械族モンスターを手札に加えるぜ!オレは墓地から、《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を手札に加える!(2→3)」

 

ラニットはアンナがカードを手札に加えたのを見ても、得意そうな表情を変えることはない。アンナは目の前にいるモンスターに、思わずため息をついた。

 

 

《グレイドル・コブラ》

効果モンスター

レベル3/水属性/水族/攻撃力1000/守備力1000

➀:自分のモンスターゾーンのこのカードが戦闘または罠カードの効果で破壊され墓地へ送られた場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

このカードを装備カード扱いとしてその相手モンスターに装備する。

➁:このカードの効果でこのカードが装備されている場合、装備モンスターのコントロールを得る。このカードがフィールドから離れた時に装備モンスターは破壊される。

 

 

「って…またグレイドルかよ!!」

「フフッ。あなたのモンスターはいただくわ。」

「けど、破壊しなきゃいいんだろ!オレのターン!(4)」

 

アンナがドローし、攻撃表示のグレイドル・コブラを睨みつけると、ラニットは目の前の罠カードを発動した。

 

「罠発動!《デストラクト・ポーション》!!」

「何だと!?」

 

 

《デストラクト・ポーション》

通常罠

自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。

 

 

「自分の場のモンスター1体を破壊し、攻撃力分のライフを回復する!」

「おい、ちょっと待て!それじゃ…」

 

 

ラニット:LP1800→LP2800

 

 

「そして、破壊された《グレイドル・コブラ》のモンスター効果が、当然発動される!さあ、あなたのフィールドの《除雪機関車ハッスル・ラッセル》のコントロールを得るわ!」

 

グレイドル・コブラが破壊された際に飛び散ったスライム状の何かがハッスル・ラッセルに付着し、ハッスル・ラッセルはラニットのフィールドへと移動した。

 

「くそっ!またオレのモンスターを!!」

 

 

「アンナーッ!!」

 

ハッスル・ラッセルが奪われ、次の戦略を考えていたアンナだったが、突然そのような少女の声が後ろから聞こえ、振り返った。

 

「えっ…?あ!!!小鳥!!それに、遊馬まで!」

 

走ってやってきたのは遊馬、小鳥、遊士の3人。もちろん彼女には見えていないがアストラルもそこにいる。

 

遊馬は焦った様子でロクに挨拶もせず、一歩前に出た。

 

「誰だかわかんないけど、なんでデュエルしてんだよ!ナンバーズは…」

「こいつとのデュエルが終わったらだ!」

「あら、こいつだなんて言い方は失礼ね。アタシはヘヴンズ・サードの一人、ラニット。あなた…九十九遊馬ね。ナンバーズを所持し、アストラルも認識できる。人ならざる者…ね。」

「ヘヴンズ・サードの一人だと?こんなデュエル今すぐやめるんだ!!ナンバーズ目当てなら、俺とデュエルすりゃいいだろ!!何だってアンナと戦わなきゃいけねえんだ!?」

「それは、彼女がナンバーズを持っているからよ。それに……残念だけど、一度始めてしまったデュエルを、途中でやめることはできないわ。」

 

「くそっ!!だったら……だったら、俺と代われ、アンナ!!」

「遊馬…」

 

遊馬は必死になってこの状況を変えようと試みる。だがヘヴンの力によって張られた結界は外から破ることはできないのか、彼はアンナに駆け寄ろうとしたものの、見えない壁に弾かれ、尻餅をついた。

 

「うわっ!……くそっ!何だよこれ!?」

「だから言っているでしょう?一度初めてしまったデュエルを、途中でやめることはできないって。」

 

見えない結界を何度か殴りつけている遊馬の腕を掴み、遊士は後方に引き倒した。

 

「いてっ!何するんだよ!?」

「やめろ遊馬!俺たちは見守るしかねえよ。こうなっちまったら!」

 

「えっ?お前は…」

「ああ。アンナっつったか?俺は草薙遊士。遊馬のダチだ。勝てよ、アンナ!」

「お、おう!」

 

「遊馬。遊士さんの言うように、今は多分、どうすることもできないのよ。」

「小鳥…」

「遊馬。君の気持ちはわかるが、彼女の覚悟に水を差してはいけない。彼女は相手が誰であろうが、勝つつもりなんだ。」

「アストラル…何でお前らはそうみんな冷静でいられんだよ!」

「それは、今我々ができることは、彼女の勝利を祈ることだけだと、わかっているからだ。」

「そんな…」

 

遊馬が絶望に暮れ始めると、アンナは振り返って遊士に笑顔を見せた。

 

「おいヘボ遊馬!安心しろよ!今から、オレの超弩級ナンバーズを見せてやるから!そしたら、お前も、オレが勝つって信じれるぜ!」

「えっ?ナンバーズを…」

「よし!!デュエル再開だぜ!オレは手札から、《爆走特急ロケット・アロー》を特殊召喚!(3)」

 

 

《爆走特急ロケット・アロー》:攻撃力5000

 

 

いきなり攻撃力5000のモンスターが出現したためか、さすがのラニットも驚きを隠せずにいた。

 

「攻撃力5000ですって!?」

「オレの場にカードがない時に、特殊召喚ができる!けどこいつは召喚したターンには攻撃をすることはできねえし、スタンバイフェイズには手札を全て捨てなきゃいけねえ。おまけに伏せカードも伏せられないんだ、こいつがいる限りは。」

「あら、随分と大きなデメリットを背負っているのね。」

「ヘヘッ。心配はいらないぜ!《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を召喚!(3)こいつはリリースなしで召喚が可能だ!攻撃力は0になるけどな!」

「レベル10のモンスターが…2体!?そうか、狙いは!!」

 

「オレはレベル10の《爆走特急ロケット・アロー》と、《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》でオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

現れろ、オレのナンバーズ!!まだ見ぬ世界へ出発進行!《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》!!

 

 

「ナンバーズ!」

「すげぇ!本当だったんだな、お前がナンバーズを持ってるのは!?」

「当然だぜ、遊馬!オレはこいつをお前に届けるために…戦うんだ!」

 

「攻撃力3200。」

「バトル!スペリオール・ドーラで、グスタフ・マックスを攻撃!!」

 

 

発射オーライ!スペリオール・カラミティ!!

 

 

スペリオール・ドーラの砲身から放たれた弾丸の一撃が、元々アンナのモンスターであるグスタフ・マックスを無情にも貫いた。

 

「くっ!!やるわね。」

 

 

ラニット:LP2800→LP2600

 

 

「オレはこれで、ターンエンドだ!(2)」

<アンナ:伏せなし ラニット:伏せ1枚>

 

「なっ!遊馬!!負ける気がしねえだろ!だから黙ってみてろって!」

 

アンナがピースサインを遊馬に向けて満面の笑みを浮かべるものの、遊馬の表情にはいささか曇りが見える。

 

(そんなこと言われても、相手はヘヴンズ・サードなんだろ…。本当に大丈夫なのか?)

 

「どうやらまだ心配みたいよ?」

「うっせえなオバサン!次のターンには完全に心配もなくなってるぜ!」

「オバサンって言うんじゃないわよ!!アタシのターン!(3)モンスターをセットして、ターンエンド!(2)」

<アンナ:伏せなし ラニット:伏せ1枚>

 

ラニットのフィールドにはセットされたモンスターと伏せカード、そしてアンナから得たハッスル・ラッセルと装備カード状態の《グレイドル・コブラ》。状況的には不利なはずだが、彼女は不気味な笑みを浮かべている。

 

「オレのターン!(3)」(《ツイスター》)

 

「とりあえずこのターンはハッスル・ラッセルを攻撃するのかしら?」

「いや!オレはセットされたモンスターに攻撃を仕掛けるぜ!」

 

「よすんだ!それは、またグレイドルモンスターに違いない!!」

 

アストラルのそのセリフは当然彼女には届かず、遊馬がそれを聞いてアンナを止めようとするものの、アンナは聞く耳を持たない。

 

「オレはオーバーレイユニットを1つ使って、《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》で、セットされたモンスターを攻撃!」

「勝負を焦ったわね!!アタシのセットされたモンスターは、《グレイドル・イーグル》よ!」

 

 

《グレイドル・イーグル》

効果モンスター

レベル3/水属性/水族/攻撃力1500/守備力500

➀:自分のモンスターゾーンのこのカードが戦闘またはモンスターの効果で破壊され墓地へ送られた場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。このカードを装備カード扱いとしてその相手モンスターに装備する。

➁:このカードの効果でこのカードが装備されている場合、装備モンスターのコントロールを得る。このカードがフィールドから離れた時に装備モンスターは破壊される。

 

 

「このモンスターは戦闘で破壊された場合、相手モンスターに装備され、そのモンスターのコントロールを得る!」

 

ベチャという音を立てて、グレイドル・イーグルの飛沫がスペリオール・ドーラに飛び散ったが、スペリオール・ドーラはグスタフ・マックスのようには移動しなかった。

 

「な…どうして!?どうしてスペリオール・ドーラは、奪えないの!?」

「スペリオール・ドーラの効果を使ったんだよ!オーバーレイユニットを1つ使うことで、このターンあらゆるカード効果を受け付けなくなる!」

「そんな効果が…で、でも!このターンのエンドフェイズまでなら、次のターンにはコントロールを得ることができるはず!」

「だったらこのターン中に破壊してやるぜ!速攻魔法、《ツイスター》!!(2)」

 

 

《ツイスター》

速攻魔法

500ライフポイントを払って発動できる。フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

 

 

「500ライフを払って、装備カードの《グレイドル・イーグル》を破壊する!」

 

 

神月アンナ:LP2000→LP1500

 

 

「くっ。本来は、《グレイドル・イーグル》が破壊されると、装備モンスターも破壊する。けれど今は、スペリオール・ドーラは効果を受けない。破壊もできないってことね。」

「すげぇぜ、アンナ!!」

「あのナンバーズ、攻撃力が高いだけでなく、耐性を得る効果まで持っているとは。恐るべきカードだ。」

 

 

「愛は…奪うものでも、支配するものでもねえんだよ!」

 

 

鋭い眼差しでそう言い放たれたラニットは、彼女を睨みつけ返した。

 

「何…?」

「お前が愛ってものをどう捉えているのかわかんねえけど、支配じゃねえ!」

「フッ。あなたみたいな小娘に何がわかるって…?」

「オバサンに比べりゃまだまだかもしれねえけど、オレにも愛くらいわかる!」

「愛くらい…?ふざけた子ね。一体誰があなたに愛を教えたのかしらね?言っておくけど、誰かから当てにされることや、周りの人が寄って来るのは、愛じゃないわよ。」

 

「えっ…頼られるってのは…愛されてるってことじゃねえのかよ?」

 

「違うわ。それは、良いように見世物にされているだけ。例えるのなら、テレビに出ている芸人を見るのは楽しいけれど、それを間近で見ることに対しては楽しさは覚えない。常にその人とは距離がないとダメ…それは愛じゃない。アンタが誰から愛されてるって思ってんのかは知らないけど、アンタが思っているのは愛じゃない。」

 

やや早口でそう冷たく言い放った。理解を示していない様子のアンナに対し、ラニットは深くため息をついて続けた。

 

「わかったわ。アンタは話して通じるような人じゃなさそうね。決めた。あなたにはアタシの愛がどんなものかを、とことんわからせてあげることにしたわ。アタシのターン!!(3)アタシは装備魔法、《グレイドル・アンカー》を発動!(2)」

 

 

《グレイドル・アンカー》

装備魔法

自分フィールド上に「グレイドル」と名の付いたカードが表側表示で存在する場合、自分の墓地に存在する「グレイドル」と名の付いたモンスター1体をゲームから除外して発動することができる。相手の墓地に存在するモンスター1体を自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚し、このカードを装備する。この効果で特殊召喚されたモンスターは効果が無効化され、攻撃はできない。このカードがフィールドを離れた場合、装備モンスターは破壊される。

 

 

「墓地の《グレイドル・イーグル》を除外して、アンタの墓地の《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を特殊召喚!!」

 

 

《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》:守備力0

 

 

「オレのモンスターを、また!!」

「そして手札から魔法カード、《融合》を発動!(1)」

「融合!?」

「アタシは《除雪機関車ハッスル・ラッセル》と、《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を融合!!融合召喚!」

 

 

 

混じり合う2つの魂!下々を配下とする力となりて、天が導く運命を示せ!支配の象徴!《Heaven's Third Dominion》!!

 

 

 

《Heaven's Third Dominion》:攻撃力3500

 

 

肩部から2枚の羽を生やした巨大な昆虫のようなモンスター…だと思ったが、人のように二足歩行だと思われる。思われるというのは、そのモンスターは薄桃色のドレスに身を包んでいるので、足元が見えなかったのだ。

 

「ヘヴンズ・サード……ドミニオン?」

「そう!このモンスターは相手モンスター2体で融合召喚することができる!そして、《Heaven's Third Dominion》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体のコントロールを得る!」

「くそっ!そんな好き勝手させるかよ!《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》のモンスター効果発動!オーバーレイユニットを1つ使って、このターン、相手の効果を受けない!」

 

 

《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》:ORU1→ORU0

 

 

白い手袋をしているのか、それとも白い肌なのか、手を前に翳したドミニオンだが、そこから発せられた波動は、スペリオール・ドーラのまとったバリアに防がれた。

 

「わかっているわ。でもこれで、スペリオール・ドーラのオーバーレイユニットはなくなった。バトル!《Heaven's Third Dominion》で、スペリオール・ドーラを攻撃!」

「スペリオール・ドーラはナンバーズ!ナンバーズはナンバーズ以外のモンスターとの戦闘では破壊されない!」

「わかっているわ。でも、バトルダメージは受けてもらう!」

「くっ!」

「ドミニオンは、自身の効果を使った場合、相手に与えられるダメージは半分になる!よって、150ポイントのダメージを受けてもらうわ!」

 

 

 

神月アンナ:LP1500→LP1350

 

 

 

「くそっ!」

「アタシはこれでターンエンド!(1)」

<アンナ:伏せなし ラニット:伏せ1枚>

 

「オレのターン!(3)」

 

アンナはこのターンで立て直さなくてはと思ったが、ドローしたカードを見ると、表情が明るくなった。

 

「魔法カード、《機関連結》を発動!(2)」

「…!?」

「墓地の《爆走特急ロケット・アロー》と、《除雪機関車ハッスル・ラッセル》を除外して、このカードを、スペリオール・ドーラに装備!装備モンスターの攻撃力を2倍にする!!」

 

 

《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》:攻撃力3200→攻撃力6400

 

 

「攻撃力6400!」

「今さらビビっても遅いぜ!お前がどんな強力なモンスターを呼んでも、オレの方が上だってことを思い知らせてやる!!いっけぇ!!スペリオール・ドーラ!」

 

 

スペリオール・ハンマーッ!!

 

 

「ただ攻撃力を上げれば勝てると思っているの?」

「お前の愛が奪うなら…オレの愛は……真っ向勝負だ!!」

「何だかよくわからないけれど…罠カード、《Heaven's Huge Tempest》を発動!自分フィールドのHeaven'sモンスターをデッキに戻して発動する!」

「なにっ!?デッキに戻すだと?」

 

フィールドにいたはずの《Heaven's Third Dominion》が消え去ると、突如として嵐が巻き起こり、スペリオール・ドーラの車体を大きく傾けた。

 

 

「どうなってんだ?」

「やばいぞ、アンナ!」

 

「心配すんな遊馬!こんなことじゃ、オレのスペリオール・ドーラは…」

「もう既にスペリオール・ドーラにはオーバーレイユニットはないわ!《Heaven's Huge Tempest》は、デッキに戻したモンスターの数だけ相手フィールドのモンスターをデッキに戻す!消えなさい!!!」

「くそっ!…うわああっ!」

 

アンナが風を防ごうとして目の前に出した腕を下げると、目の前には、全てのモンスターが姿を消していた。

 

「スペリオール・ドーラが!!」

 

慌てているアンナであったが、アストラルは冷静にも言う。

 

「だが、彼女の《Heaven's Third Dominion》もいなくなった。別にアンナだけが不利になった訳ではなさそうだが。」

 

「けど、オレのスペリオール・ドーラは、ただじゃ転ばないぜ!手札から速攻魔法、《バック・ドロー》を発動!オレの場の機械族のモンスターエクシーズが相手によってフィールドを離れた場合、そのモンスターと同じランクのモンスターがオレの墓地にいれば、デッキから2枚ドローできるぜ!(3)………このままフィールドを空にするのは何だかやばい気がするぜ。オレは《勇気機関車ブレイブ・ポッポ》を召喚!」(2)

 

 

《勇気機関車ブレイブ・ポッポ》:攻撃力2400

 

 

緑色の機関車がアンナの眼の前に現れ、停車した。アンナのフィールドにモンスターが出現したのを見て、安心する遊士一同。

 

「よし、壁モンスターを召喚できたな。しかもブレイブ・ポッポは攻撃力2400!下級モンスターじゃ、まず倒せねえ!」

 

「そういうことだぜ!カードを1枚伏せて、ターンエンド!(1)さあ!ここまで来てこの攻撃力を上回るモンスターがまだ出せるっていうのかよ?」

<アンナ:伏せ1枚 ラニット:伏せなし>

 

「フッ。愚かしいわね。まさか、私が何の策もなくフィールドを空にしたと思っているのかしら?」

「な…!?」

「私のターン!(2)」

 

ラニットはドローしたカードとは別の、つまり既に彼女が持っていたカードを魔法・罠カードのスロットに素早く差し入れた。

 

「手札から魔法カード、《Heaven's Ritual》を発動!」

 

そのカードの発動は、遊馬、遊士、アストラルに、黒咲とナイトの戦いを克明に思い出させた。

 

「なにっ!」

「ここでそのカードか!」

「やべえ、また奴のエースが来るぞ!」

 

「は?お、おい!?どういうことだよ?説明しろよ、遊馬!」

 

「フフッ。そんな言い方されたら、アタシが説明するより他ないわね。このカードは自分の場にモンスターがいない場合、ライフを半分払い、デッキまたはエクストラデッキからこのカードを使用して特殊召喚することのできるモンスターを呼び出せるのよ!」

 

 

ラニット:LP2600→LP1300

 

 

「アタシはこの、《Heaven's Third Dominion》を見せるわ。」

 

ラニットの目の前に魔法陣が現れると、アストラルは不思議そうな顔をして彼女のやることを見ていた。

 

「おかしい。」

「え、何がだよ、アストラル?この状況でエースモンスターを出すのは、別におかしくはねえだろ。」

「いや、そうではない。《Heaven's Third Dominion》は召喚する際には相手モンスターを2体使っていた。今、ラニットの場にはモンスターがおらず、デッキにはアンナのモンスターは入っている訳がない。」

「そういえば…」

 

「良いところに気がついたわねえ、アストラル!!けれどその心配はいらないわ!《Heaven's Ritual》の効果で《Heaven's Third Dominion》を呼ぶ場合、アタシのエクストラデッキからレベル8以上のモンスターを2体墓地に送ることでも、融合召喚が可能なのよ!」

「なんだと!?」

「アタシはエクストラデッキから2体の《グレイドル・ドラゴン》を墓地に送る!」

 

 

再び現れなさい!支配の象徴、《Heaven's Third Dominion》!!

 

 

《Heaven's Third Dominion》:攻撃力3500

 

 

(次回に続く)




<今日の最強カード>
《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》
エクシーズモンスター
ランク10/地属性/機械族/攻撃力3200/守備力4000
レベル10モンスター×2
➀:このカードは「No.」モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターはターン終了時まで、そのモンスター以外のカードの効果を受けない。この効果は相手ターンでも発動できる。

(次回の最強カード)
《Victory Love》
速攻魔法


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第45話-愛は勝つ!奇跡のヴィクトリー・ラブ・エクシーズチェンジ!

神月アンナ

 

・LP1350

・手札1枚

・(モンスター)《勇気機関車ブレイブ・ポッポ》(攻撃力2400)

・(魔法・罠)1枚

 

 

ラニット

 

・LP1300

・手札1枚

・(モンスター)《Heaven's Third Dominion》(攻撃力3500)

・(魔法・罠)なし

 

 

「再び現れなさい!《Heaven's Third Dominion》!!」

「クソッ。またそのお前の曲がった愛の象徴かよ!」

「曲がってなんかいないわ。これが真実よ。バトル!ドミニオンで、ブレイブ・ポッポを攻撃!」

 

ドミニオンが目を光らせると、すぐさま目の前にいたブレイブ・ポッポは破壊され、爆風でアンナは大きく後ろに飛んだ。

 

「うわあっ!」

「アンナ!!」

 

 

神月アンナ:LP1350→LP250

 

 

うつ伏せで倒れるアンナに対して遊馬は駆け寄ろうとしたが、結界があることを思い出し、その場でとどまった。

 

「アンナ!しっかりしろ!」

 

「く…くそっ。」

 

「あら、まだやるの?」

「当たり前だろ?オレのライフは…まだ残ってる!遊馬だったら、絶対にあきらめてねえ!!だからオレも…あきらめねえ!」

「まあいいわ。どの道あなたからは…ナンバーズを取らなきゃいけない。ここでサレンダーなんて…させるつもりはないけどね!アタシはカードを1枚伏せて、ターンを終了する!(0)」

<アンナ:伏せ1枚 ラニット:伏せ1枚>

 

「オレは…負けられねえ。オレのターン!(2)」

 

アンナはドローした、《Victory Love》を見ると、目を見開いた。

 

(このカード!!)

 

彼女が思い出したのは、数日前の羽原海美とのやり取りだった。その女性はアンナの幼い頃からの知り合いで、今の彼女が愛について自分なりの考えを持つようになっているのも、その女性のお陰なのだ。

 

『アンナちゃんも。自分なりの愛の形がわかると良いわね。私があげたカードじゃなくてさ。』

 

そうだ。海美姉ちゃんはそう言ってたから、オレは探し出したんだ。この…《Victory Love》を。

 

「オレは手札から、《爆走軌道フライング・ペガサス》を召喚!(1)」

 

 

《爆走軌道フライング・ペガサス》

効果モンスター

レベル4/地属性/機械族/攻撃力1800/守備力1000

このカード名の➀、➁の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

➀:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、「爆走軌道フライング・ペガサス」以外の自分の墓地の機械族・地属性モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。

➁:このカード以外の自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターとこのカードのレベルは、その内の1体のレベルと同じになる。この効果を発動するターン、自分はXモンスターでしか攻撃宣言できない。

 

 

まるで宇宙空間にいるかのように、美しい星々の煌めきを纏いながら、フライング・ペガサスがアンナの前に到着する。

 

「これは…!?」

「フライング・ペガサスは召喚時、オレの墓地の機械族・地属性モンスター1体を特殊召喚する!来い、《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》!!」

 

 

《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》:守備力3000

 

 

「またそのモンスターか!」

「そして、フライング・ペガサスの効果発動!このカードと、もう1体のモンスター、つまり、ナイト・エクスプレス・ナイトは、レベル10になる!」

 

 

《爆走軌道フライング・ペガサス》:☆10

 

 

「何!?レベル10モンスターが2体ですって!?」

「いくぜ!オレは2体のモンスターで、オーバーレイ!!」

 

 

再到着だ!!《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》!!

 

 

《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》

エクシーズモンスター

ランク10/地属性/機械族/攻撃力3200/守備力4000

レベル10モンスター×2

➀:このカードは「No.」モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。

➁:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターはターン終了時まで、そのモンスター以外のカードの効果を受けない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「またこのモンスター!」

「お前が何度でも《Heaven's Third Dominion》を召喚するのなら、オレは何度でもスペリオール・ドーラを召喚してやるぜ!」

「けど、スペリオール・ドーラの攻撃力は3200ポイント。アタシのドミニオンの攻撃力3500を超えることはできないわ!」

「そんなこともわからずに、攻撃表示でコイツを出すと思ってるのかよ?罠カード、《オーバーレイ・バスター》を発動!」

 

 

《オーバーレイ・バスター》

通常罠

自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで500ポイントアップする。選択したモンスターが相手のモンスターエクシーズ1体を戦闘によって破壊した時、そのエクシーズ素材の数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 

「スペリオール・ドーラを対象として、そのモンスターの攻撃力を500ポイントアップさせるぜ!」

 

 

《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》:攻撃力3200→攻撃力3700

 

 

「おおっ!」

「いいぞ!」

「スペリオール・ドーラの攻撃力が、ドミニオンの攻撃力を上回った!」

 

「いくぜ!スペリオール・ドーラの攻撃!!」

 

スペリオール・ドーラが主砲をドミニオンに向けた。その主砲をまともに受ければ、ドミニオンは体がバラバラになるのではないかというほどに体格差がある。

 

「無駄よ!罠カード、《グレイドル・スプリット》!!」

 

 

《グレイドル・スプリット》

通常罠

「グレイドル・スプリット」の➁の効果は1ターンに1度しか使用できない。

➀:自分フィールドのモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。このカードを攻撃力500アップの装備カード扱いとして、そのモンスターに装備する。

➁:自分メインフェイズに、このカードの効果で装備されているこのカードを墓地へ送って発動できる。このカードを装備していたモンスターを破壊し、デッキから「グレイドル」モンスター2体を特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 

 

「発動後装備カードとなり、アタシのモンスターに装備される!装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする!」

 

 

《Heaven's Third Dominion》:攻撃力3500→攻撃力4000

 

 

「何!?攻撃力4000だと!?」

「残念ね!アンナ!!あなたはここで…終わりよ!アタシの愛の力を…思い知りなさい!」

 

紅い色のオーラを纏ったドミニオンが閃光を放ち、主砲を向けるスペリオール・ドーラを迎撃しようとする。遊馬たちが思わず「アンナ!!」と声をあげると、アンナが歯を食いしばりつつ顔を上げ、鋭い表情でラニットを睨みつけた。

 

「ふざけんじゃ…ねえ!!オレはお前の愛なんて…認めねえって言ってるだろうが!!速攻魔法、《Victory Love》を発動!」

「Victory…Love!?」

「このカードは、オレのフィールドのランク10以上のモンスターエクシーズ1体を、同じ種族・属性のモンスターエクシーズに進化させる!」

 

「何だとっ!?それでは…ランクアップマジックではないか!!」

「すっげぇ!!アンナ、バリアンやアストラルと同じ力が使えんのか!!」

「しかも…素材にはナンバーズを使うの!?」

 

驚愕の一言であった。それは遊馬、アストラル、小鳥、遊士に共通していた。

 

「言ったじゃねえか遊馬!オレは負けねえって!!いくぜ!オレは、《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》で、オーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!ヴィクトリー・ラブ・エクシーズチェンジ!!」

 

 

これがオレの愛の力!小細工なしの、直球勝負で、愛は勝つ!ランク11、《超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ》!!

 

 

《超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ》:攻撃力4000

 

 

「なっ。これは…!?」

 

スペリオール・ドーラがドックのようなところに格納されると、そこから飛び出してきたのは、数基の速射砲を取り付けた深緑色のまるで戦艦のような見た目のモンスターだった。

 

「これが、アンナの本当のエースモンスター!?」

「そうだぜ!」

「攻撃力4000…。強化された《Heaven's Third Dominion》と同じ!」

「いいや、これだけじゃ終わらねえぜ!《Victory Love》の効果を発動!墓地からこのカードを除外し、ジャガーノート・リーベのオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、エクシーズ召喚したモンスターの、オーバーレイユニットを使って発動する効果を使用することができる!」

「この場でジャガーノート・リーベの効果を使うですって…?」

「そうだ!《超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ》のモンスター効果発動!攻撃力を2000ポイントアップする!」

 

 

《超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ》:攻撃力4000→攻撃力6000

 

 

まるで炎のような赤いオーラがジャガーノート・リーベを包んだ。

 

「なっ!攻撃力…6000!?」

「バトル!ジャガーノート・リーベで、《Heaven's Third Dominion》を攻撃!最後に…愛は…勝あああああああつ!!!」

「そ…そんな!!私の…ドミニオンが…」

 

主砲から放たれた弾丸がドミニオンの腹部を貫き、その場でドミニオンは爆散した。同時にそこに張り巡らされていた結界は音を立てて消失し、ラニットは吹き飛ばされて宙を舞った後、その場に膝をついて着地した。

 

「くっ…」

 

 

ラニット:LP1300→LP0

 

 

「どうだ!!オレの勝ちだぜ!」

「まさか…あなたみたいなデュエリストに、アタシが負けるなんてね。」

「ヘッ!そうやって舐めてるからだ!……えっ?」

 

アンナが驚いたのは、ラニットが白い光を全身に纏い始めたからだ。

 

「アタシは…ヘヴンの力を使ってデュエルをした。もう間もなく消えてしまう。だけどこれだけは言っておくわ。アタシはやっぱり、愛は…支配するものだと思うわ。あなたの愛の形も……あるかもしれないけれど。」

 

息を切らしてそういった後、ラニットの体は光の粒となって、天に帰っていった。

 

「ラニット。あいつ…消えちまったのか。」

 

アンナがそう呟くと、最初に駆け寄ってきたのは遊馬と小鳥であった。

 

「アンナー!!」

「すごい!大勝利じゃない!」

「だから言ってんだろ?オレが負ける訳ねえって。あっ、そうだ。コレ。」

「え…?」

 

アンナは遊馬に、墓地から取り出した《No.81 超弩級砲塔列車スペリオール・ドーラ》を手渡した。

 

「これ、お前にとって必要なんだろ?」

「ああ。ありがとな!」

 

「随分とくっせぇデュエルだったけど、すごかったな。」

「あぁ!?お前、確か遊馬の友達の!」

「遊士だ。」

「くっせぇとか言ってんじゃねえ!」

「あ?お、おう。わりぃわりぃ。」

 

アンナが照れくさそうにした後、その場にいた人たちは同時に笑い合った。

 

 

------

 

 

遊馬たちからの連絡を受けたカイトとハルトは、自身の潜水艦兼研究所に戻った。だが研究所に戻り、地下への階段を降りる最中、自身のDパッドにデュエル反応がしたのを感じた。

 

「…!?デュエルか!?」

 

Ⅲ、Ⅳ、Ⅴはたまたま実家に戻っていたため留守にしており、研究所にはカイト、ハルト、ドロワの3人がいた。ハルトは共に階段を降りている。ということは。

 

「ドロワ!!」

「カイト。」

「デュエルをしているのか!?貴様は…誰だ!!」

 

「フッフッフッ。」

 

 

 

その15分ほど前、カイトとハルトが電波状況の良い地上に出た時、潜水艦の中にはドロワ1人になった。

 

潜水艦は2階建てになっており、地上に出られる1階の下に、さらに別の研究室がある。そのいわゆる地下1階に降りた際、ドロワの目には白衣の華奢な男性の後ろ姿が映った。

 

「…!?だ…誰だ!?」

「こんなところに、ナンバーズの研究所があるとはね。私も初めて知ったよ。ドロワ。」

「私の名前を知っている!?……くっ。お前は何者だと聞いている!!」

「フッ。私の名はアフタン。ヘヴンズ・サードの一人だ。」

 

左目に眼帯をつけている。白衣の姿であることを踏まえると、元々つけていたものではなさそうだ。

 

「お前も…ノックスと同じ、ヘヴンズ・サードだというのか!?ここに入れたのも、ヘヴンの力を使ったのか?」

「それはどうかな?」

 

明らかなことではあったが、アフタンは意味ありげにわざととぼけて見せた。その後、そういえば…と言って続けた。

 

「…ノックスは確か、天城カイトと戦って負けたのだったね?彼のデュエリストとしての腕前には興味があるが…今の私にはナンバーズの情報が必要でね。それをもらいに来たのだよ。」

「ふざけるな!みすみす渡すと思っているのか!?」

「ならば君が私を…止めるのかね?君と同じくらいの実力を持つゴーシュというデュエリストは、ノックスに敗北したのではなかったのかな?」

「……くっ。」

「言っておくが、ヘヴンズ・サードも私以外は全てやられてしまってね、私も急いでいるのだよ。だからこのデュエルでは、私はヘヴンの力を全て使って戦う。」

「ヘヴンの…力?」

「負けた者の末路……そこまで言えば君にもわかるだろう。」

「そんなものに……怯える私ではない!!いくぞ、アフタン!!」

「いいだろう。そこまで言うのなら、君はここで消させてもらおう!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

ドロワ :LP4000

アフタン:LP4000

 

 

 

「私の先攻だ。《コアキメイル・ビートル》を召喚!カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(3)このエンドフェイズに、《コアキメイル・ビートル》を維持するために、手札の《コアキメイルの鋼核》を墓地に送る!(2)」

<ドロワ:伏せなし アフタン:伏せ1枚>

 

 

《コアキメイル・ビートル》

効果モンスター

レベル4/地属性/昆虫族/攻撃力1900/守備力1500

このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、手札の昆虫族モンスター1体を相手に見せる。または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。光属性または闇属性モンスターが表側攻撃表示で特殊召喚に成功した時、そのモンスターを守備表示にする。

 

 

「私のターン!(6)《幻蝶の刺客モルフォ》を召喚!(5)」

 

 

《幻蝶の刺客モルフォ》

効果モンスター

レベル4/闇属性/戦士族/攻撃力1200/守備力1600

相手フィールド上のモンスターの表示形式が変更された時、そのモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力・守備力を1000ポイントダウンする。この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「そして、《幻蝶の刺客オオルリ》を特殊召喚!(4)このカードは私が戦士族モンスターを召喚した時、手札から特殊召喚することができる!」

 

 

《幻蝶の刺客オオルリ》

効果モンスター

レベル4/闇属性/戦士族/攻撃力0/守備力1700

このカードは通常召喚できない。自分が戦士族モンスターの召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚できる。このカードはシンクロ素材にできない。

 

 

「ほう。」

「いくぞ!レベル4の2体の幻蝶の刺客でオーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

死の光纏いて、闇夜を舞え!《フォトン・バタフライ・アサシン》!!

 

 

《フォトン・バタフライ・アサシン》

エクシーズモンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2100/守備力1800

レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、フィールド上に守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを表側攻撃表示にし、その攻撃力を600ポイントダウンする。

 

 

「《フォトン・バタフライ・アサシン》。攻撃力2100か。ならば私は、《コアキメイル・ビートル》のモンスター効果発動!相手の攻撃表示で特殊召喚された光属性モンスターを守備表示にする!」

「それは読めていた!速攻魔法、《爆熱鱗粉(バーニング・スケールス)》を発動!フィールド上で効果モンスターの効果が発動された時、私のフィールドにモンスターエクシーズがいる場合、その無効にし、そのモンスターを守備表示にする!」

「な…」

 

 

《コアキメイル・ビートル》:攻撃力1900→守備力1500

 

 

「さらに私はオーバーレイユニットを1つ使い、《フォトン・バタフライ・アサシン》の効果発動!相手の守備表示モンスター1体を攻撃表示に変更し、その攻撃力を600ポイント下げる!」

 

 

《フォトン・バタフライ・アサシン》:ORU2→ORU1

 

 

エキサイト・スケールス!!

 

 

《コアキメイル・ビートル》:守備力1500→攻撃力1300

 

 

「守備表示にしたり攻撃表示にしたりと、忙しいデュエルだね。」

「バトルだ!《フォトン・バタフライ・アサシン》で、《コアキメイル・ビートル》を攻撃!」

 

 

バタフライ・デス・ダンス!!

 

 

「くっ。」

 

 

アフタン:LP4000→LP3200

 

 

すると突然ドロワの後方の階段から、2人の男が降りてきた。

 

「ドロワ!!」

「カイト。」

「デュエルをしているのか!?貴様は…誰だ!!」

 

「フッフッフッ。私の名はアフタン。ヘヴンズ・サードの一人だ。君が天城カイト、そして弟のハルトか。」

 

「貴様、俺のことを知っている?」

「兄さん…」

 

ハルトが得体のしれない何かをアフタンから感じ取ったのか、怯えてカイトの背中に隠れた。

 

「大丈夫だ、ハルト。……貴様!用があるのはドロワではないだろう?」

「まあ、そうだな。私は残るナンバーズがどこにあるか、そしてナンバーズを所有している天城カイト。君に用があるのは確かだ。だが、ナンバーズの情報ならば、ドロワを倒しても手に入るかと思ってね。」

「貴様!!」

「カイト。悪いがこれは奴と私とのデュエルだ。カイトの出る幕じゃない。」

「ドロワ…」

 

彼女の瞳を見ればわかることだった。同じヘヴンズ・サードの1人を倒すことが、ノックスに敗れたゴーシュへの供養になると思ってのデュエルなのだ。これは。

 

「わかった、いいだろう。だがこんないかにも胡散臭い奴に負けるなよ、ドロワ。」

「フッ。当然だ。」

「えっ!?いいの、兄さん?」

「ああ。ドロワは、覚悟はできているのだろう。」

 

「私が胡散臭いとは、聞き捨てならないな。私が君たちを1人1人倒してやろう!私は速攻魔法、《コアキメイルの継承》を発動!」

 

 

《コアキメイルの継承》

速攻魔法

自分フィールド上の「コアキメイル」と名の付いたレベル4以下のモンスターが戦闘で破壊された時に発動することができる。自分のデッキからレベル6以下の「コアキメイル」と名の付いたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は、エンドフェイズまで無効化される。

 

 

「《コアキメイル・ビートル》が破壊されたことで、デッキからコアキメイルモンスター1体を特殊召喚する!」

「何!?」

「出でよ、《コアキメイル・スペルキャスター》!!」

 

 

《コアキメイル・スペルキャスター》

効果モンスター

レベル6/地属性/魔法使い族/攻撃力2500/守備力2200

 

 

深緑色のコートに身を包み、先のとがったハットを被った眼鏡の男性型のモンスターが魔術の呪文書を読みながらフィールドに立っている。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(2)」

<ドロワ:伏せ1枚 アフタン:伏せなし>

 

「私のターン!(3)バトル!《コアキメイル・スペルキャスター》で、《フォトン・バタフライ・アサシン》を攻撃!」

「そうはいかない!罠カード、《隷属の鱗粉》を発動!」

 

 

《隷属の鱗粉》

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。攻撃モンスターの表示形式を守備表示にし、そのモンスター1体にこのカードを装備する。また、1ターンに1度、メインフェイズ及びバトルフェイズ中に発動できる。装備モンスターの表示形式を変更する。

 

 

「攻撃してくるモンスターに装備され、そのモンスターを守備表示にする!私は、スペルキャスターを守備表示に!!」

 

 

《コアキメイル・スペルキャスター》:守備力2200

 

 

「また守備表示にするカードか!!次のターン、前と同じコンボが!!私はエンドフェイズに、《コアキメイル・スペルキャスター》をフィールドに維持するために、《コアキメイルの鋼核》を墓地に送る!(2)ターンエンド!」

<ドロワ:伏せなし アフタン:伏せなし>

 

「いくぞ!私のターン!(3)私は再び、《フォトン・バタフライ・アサシン》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、《コアキメイル・スペルキャスター》を攻撃表示にして、攻撃力を600下げるわ!」

 

 

《フォトン・バタフライ・アサシン》:ORU1→ORU0

 

 

《コアキメイル・スペルキャスター》:攻撃力2500→攻撃力1900

 

 

「さらに、《幻蝶の刺客アゲハ》を通常召喚!(2)」

 

 

《幻蝶の刺客アゲハ》

効果モンスター

レベル4/闇属性/戦士族/攻撃力1800/守備力1200

このカード以外の自分フィールド上のモンスターが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターの攻撃力は、その時に与えたダメージの数値分ダウンする。

 

 

「バトル!《フォトン・バタフライ・アサシン》で、《コアキメイル・スペルキャスター》を攻撃!」

 

 

バタフライ・デス・ダンス!!

 

 

およそ10頭ほどの蝶が交互にスペルキャスターの横を通り過ぎていくようにして攻撃を行う。スペルキャスターは最後の一頭の攻撃時にその場で破壊された。

 

「グッ!」

 

 

アフタン:LP3200→LP3000

 

 

「これでお前のフィールドに壁モンスターはいなくなった!《幻蝶の刺客アゲハ》のダイレクトアタック!!くらえっ!!ヘヴンズ・サードォッ!」

 

アゲハは両手に持った二本の剣で、スペルキャスターがやられてよろけていたアフタンを容赦なく切りつけた。

 

「ぐあっ!!!」

 

 

アフタン:LP3000→LP1200

 

 

「まさか、ここまでやってくれるとはね。」

 

「ドロワ。」

「すごい!!兄さん!このままいけば勝てるよ!」

 

「1枚カードを伏せて、ターンエンド!(1)」

<ドロワ:伏せ1枚 アフタン:伏せなし>

 

「では君のターンが終わる前に……《コアキメイル・スペルキャスター》の効果を発動させてもらおう!!」

「なっ!」

「このモンスターは破壊されたターンのエンドフェイズに、私の墓地に《コアキメイルの鋼核》が2枚以上あれば、自分のデッキから魔法カードを1枚選択し、デッキの一番上に置くことができる!」

「何!?魔法カードだと!?」

 

 

「私が選ぶカードは当然……

 

 

《Heaven's Ritual》だ。」

 

 

(次回に続く)




<今日の最強カード>
《Victory Love》
速攻魔法



<次回の最強カード>
《Heaven's Second Biblos》







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第46話-英知の象徴!Heaven's Second Biblos

「クラウダーさん!!」

 

透き通った女の子の声が響き渡る。例によって天空のオフィスで、彼らはコーヒー、そしてウーロン茶を飲みながら、出動のタイミングを伺っていたのだ。

 

「どうした、ホワイト?」

「たった今、ドナーさんから聞いたのですが、アフタンの居場所がわかったとのことで。」

「ドナー。あぁ、雷使いのヘヴンズ・チルドレンか。うーん。」

「おいおい、疑ってんのかよ、俺の情報をよ!?」

 

黒いマントに黄色の刺繍という、かなりクラウダーに似た格好(クラウダーは黒ではなく今は藍色のものを着用している)の青年が後ろから声をかける。咄嗟に2人は振り向いた。

 

「ドナー。お前はすぐに感情的になる。ナッシュに負けたことを、根に持っているのだろう?」

「チッ。うるせえな。だが、こいつは本当だぜ?ヘヴンズとしては、あいつが勝手にやったことを見逃す訳にはいかねえだろ?」

 

と言って、ドナーがペンほどの長さを持つ銀色の棒を取り出すと、銀色の棒から6センチ四方ほどの画面が浮かび上がった。空中に表示される情報に、ホワイトはかなり驚いている。

 

「えっ!?何ですかコレ!?」

「あ?そうか、新入り。お前知らねえのか。こいつはただのペンじゃねえ。IDV(Information Device for Visualization)っつってな。空中に映像を映し出せるんだよ。ヘヴンズ・チルドレンなら、ヘヴンからもらうはずだけどな。」

「あ、そうなんですか。」

 

ホワイトが下を向きかけた時に、クラウダーは「それはさておき…」と言って話に入った。

 

「ここにアフタンがいるらしいな。」

「そうだぜ。エクシーズ次元。ハートランドだ。今まで反応がなかったのは、あいつがヘヴンの力を使わずにいたからだ。でも、あいつがヘヴンの力を使い始めた…ってことは。」

「デュエルをしているのか!?」

「その可能性が高いぜ。さあ、エクシーズ次元の管轄だろ、お前!?行ってきたらどうだ?」

 

「無論だ!よし、いくぞ、ホワイト!準備はできているか?」

「あ、はい!」

 

そう言って彼女は急いでウーロン茶を飲み干して、オフィスの出口に向かおうとしたところで、ドナーが彼女に声をかけた。

 

「おい、待てよ!」

 

ホワイトが振り返ると、目の前には宙を漂うIDVがあった。咄嗟のことではあったが、彼女は冷静にもそれを片手で受け取った。

 

「えっ。これ…」

「俺の貸してやるから、そいつを使え、新入り!」

「ありがとうございます!!」

 

「すまない、ドナー!!行ってくる!!」

 

 

「ヘヘ…礼はいらねえぜ。」

 

その言葉こそ彼女たちには心地よく聞こえていたが、ドナーが何を考えていたのかは、彼女らに知る由もなかった。

 

 

------

 

 

ドロワ

 

・LP4000

・手札1枚

・(モンスター)《フォトン・バタフライ・アサシン》(ATK2100)(ORU0)/《幻蝶の刺客アゲハ》(ATK1800)

・(魔法・罠)1枚

 

 

アフタン

 

・LP1200

・手札2枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

「何!?《Heaven's Ritual》だと!?」

「あれは…ノックスも使っていたカード!」

 

「私のターン、ドロー!(3)私は、《Heaven's Ritual》を発動!私の場にモンスターがいない場合に発動できる魔法カード。ライフを半分払い、自分のデッキまたはエクストラデッキから、このカードを使って特殊召喚できるモンスター1体を相手に見せ、そのモンスターを呼び出す!」

 

 

アフタン:LP1200→LP600

 

 

「私はまず《Heaven's Second Biblos》を見せよう!」

「カードが白い…シンクロモンスターか!」

「そうだ。そしてその召喚条件を満たすように、デッキからモンスターを墓地に送る!私はレベル4の《コアキメイル・ウルナイト》に、レベル4の《コアキメイル・ガジェット》をチューニング!!」

 

 

☆4+★4=☆8

 

 

捧げられし星々よ!混迷の世界を切り裂く光となり、天が導く運命を示せ!シンクロ召喚!英知の象徴、《Heaven's Second Biblos》!!

 

 

目の前に現れたのは、一言でいえば巨大な書物であった。かなりの年数が経っているためか、元々明るい赤であったであろうその色は擦れて、深み帯びた赤色になってしまっている。

 

 

《Heaven's Second Biblos》:守備力3000

 

 

「…守備表示だと?」

「このモンスターは英知の象徴。攻撃力は3000だが、自ら攻撃を行うことはできない。だが、その効果は強力だ!私はビブロスの効果を発動!特殊召喚に成功した時、デッキから魔法カード1枚を手札に加える!私は《コアキメイルの金剛核》を手札に加える!」

 

 

《コアキメイルの金剛核》

通常魔法

デッキから「コアキメイルの金剛核」以外の「コアキメイル」と名のついたカード1枚を手札に加える。また、自分のメインフェイズ時に墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。このターン、自分フィールド上の「コアキメイル」と名のついたモンスターは破壊されない。

 

 

「コアキメイルの金剛核。コアキメイルカード1枚を手札に加えられるカードか!」

「その通りだドロワ。だがこのターン、ビブロスの効果で手札に加えたカードは発動できない。そしてもう1つ、《Heaven's Second Biblos》のモンスター効果を発動!1ターンに1度、デッキからカードを1枚ドローし、手札の魔法カード1枚をデッキの一番上に置く!」

「手札交換だと?」

「私はこれで、ターンエンドだ。(3)」

<ドロワ:伏せ1枚 アフタン:伏せなし>

 

「守備力3000で、手札交換を毎ターン行えるとしたら、厄介なモンスターだ。私のターン!(2)早々に倒させてもらう!私は場の伏せカード、《蛮勇鱗粉(バーサーク・スケールス)》を発動!」

 

 

蛮勇鱗粉(バーサーク・スケールス)

速攻魔法

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、このターン相手プレイヤーに直接攻撃できない。このターンのエンドフェイズ時、選択したモンスターの攻撃力は2000ポイントダウンする。

 

 

「私の場の《フォトン・バタフライ・アサシン》の攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップさせる!」

 

 

《フォトン・バタフライ・アサシン》:攻撃力2100→攻撃力3100

 

 

「よし、これで《フォトン・バタフライ・アサシン》の攻撃力が、《Heaven's Second Biblos》の攻撃力を上回った!」

「すごい!もうこのターンで、ビブロスを倒せちゃう!」

 

「バトル!《フォトン・バタフライ・アサシン》で、《Heaven's Second Biblos》を攻撃!」

 

体が赤く発光した状態で飛び上がり、書物を切り裂こうとするが、書物に突如として緑色の膜のようなものが張られた。

 

「何!?バリア!?」

「《Heaven's Second Biblos》の効果発動!自分フィールドのカードが破壊または除外される場合、デッキの一番上からカード1枚を墓地に送って発動できる!そのカードが魔法カードなら、その破壊または除外を無効にする!」

「デッキの一番上は…そのモンスターの効果で当然魔法カードに…!」

「そういうことだ!」

 

 

墓地に送られた魔法カード:《コア転送ユニット》

 

 

「くっ。倒せなかったか。私はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(1)このエンドフェイズに、バーサーク・スケールスの効果は終了し、攻撃力は2000ポイントダウンする。」

<ドロワ:伏せ1枚 アフタン:伏せなし>

 

 

《フォトン・バタフライ・アサシン》:攻撃力3100→攻撃力1100

 

 

「私のターン!このドローフェイズに墓地の《コアキメイルの鋼核》の効果を発動し、ドローフェイズ、通常ドローの代わりに手札に加えることができる!(4)さらに私は《コアキメイルの金剛核》を発動!デッキからコアキメイルと名の付くカード1枚を手札に加える!私はデッキから、《コアキメイル・マキシマム》を手札に加える!(4)」

 

 

《コアキメイル・マキシマム》

効果モンスター

レベル8/風属性/ドラゴン族/攻撃力3000/守備力2500

このカードは通常召喚できない。自分の手札から「コアキメイルの鋼核」1枚をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から「コアキメイルの鋼核」1枚か「コアキメイル」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る。または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する事ができる。

 

 

「《コアキメイル・マキシマム》!?」

「手札の《コアキメイルの鋼核》をゲームから除外し、《コアキメイル・マキシマム》は、特殊召喚することができる!出でよ、《コアキメイル・マキシマム》!!」

 

 

フィールドに《コアキメイルの鋼核》が現れたかと思うと瞬く間にそれが割け、その時に生じた光の中から頭部、腕部、脚部と、1つ1つがフィールドにゆっくりと出現していく。

 

「《コアキメイル・マキシマム》の効果発動!1ターンに1度、フィールドのカード1枚を破壊することができる!私が破壊するのは……伏せカードだ!」

 

伏せカードを破壊しに来る辺り、手練れのデュエリストであることを感じさせるが、ドロワはそれに合わせて伏せカードを発動した。

 

「ならば破壊される前に…罠カード発動!《幻蝶の誇り》!」

「《幻蝶の誇り》…?」

「フィールドの幻蝶モンスターの表示形式を守備表示にかえて、このターンに受ける私へのダメージを半分にする!」

 

 

《幻蝶の刺客アゲハ》:攻撃力1800→守備力1200

 

 

「なるほど。だがそれで私の攻撃が防げるとは思わない方が良いな!《コアキメイル・ベルグザーク》を召喚!」

 

 

《コアキメイル・ベルグザーク》

効果モンスター

レベル4/地属性/戦士族/攻撃力2000/守備力200

このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、手札の戦士族モンスター1体を相手に見せる。または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃する事ができる。

 

 

「なっ!レベル4で攻撃力2000のモンスターだと!」

「バトルだ!ベルグザークで、アゲハを攻撃!」

 

左手に装備されている剣でアゲハを切りつけて破壊すると、ベルグザークは軽い身のこなしで一歩後退した。ベルグザークから闘気が消えていないのは、見ればわかることだった。

 

「《コアキメイル・ベルグザーク》のモンスター効果発動!このカードは戦闘でモンスターを破壊した場合、もう一度だけ続けて攻撃ができる!」

「なにっ!?」

「ベルグザークで、《フォトン・バタフライ・アサシン》を攻撃!」

 

今度は右手に装備されている剣で《フォトン・バタフライ・アサシン》を薙ぎ払うようにして破壊した。

 

「くっ!だが、このターンの戦闘ダメージは半分だ!」

 

 

ドロワ:LP4000→LP3550

 

 

「そんなことはわかっている!だが私のフィールドにはまだ、《コアキメイル・マキシマム》が残っている!くらえ!プレイヤーに、直接攻撃だ!」

 

 

コアキメイル・バースト!!

 

 

よくあるブレス攻撃がドロワに向かう。ドロワは咄嗟に腕を交差させて構えるが、《幻蝶の誇り》の効果で発生したバリアに守られた。

 

「くぅっ!!」

 

 

ドロワ:LP3550→LP2050

 

 

「さらに速攻魔法、《Heaven's Battle Option》を発動!このターン戦闘を行った私のモンスターを破壊し、カードを2枚ドローする!私は《コアキメイル・ベルグザーク》を破壊!!(3)カードを1枚伏せて、《Heaven's Second Biblos》のモンスター効果を発動し、手札の魔法カード1枚と、デッキの一番上を交換して、ターンエンド!(2)そしてこのターンのエンドフェイズに、手札のコアキメイルと名の付いたモンスターカード1枚を墓地に送り、《コアキメイル・マキシマム》をフィールドに維持する!私は《コアキメイル・ロック》を墓地に送る!(1)」

<ドロワ:伏せなし アフタン:伏せ1枚>

 

ライフポイントが十分に残っているとはいえ、息が上がっている様子のドロワを蔑むようにして、アフタンは見る。

 

「サレンダーするかね?結果は見えている。もっとも、サレンダーをしたとしても、ナンバーズの情報は教えてもらうがね。」

 

「ドロワ。」

 

「安心しろ、カイト。私は勝つ!ここで負けることは…ないっ!私のターン!(2)私は手札から魔法カード、《バタフライ・デュオ》を発動!」

 

 

《バタフライ・デュオ》

通常魔法

自分の墓地に存在する「幻蝶の刺客」と名の付いたモンスター2体を選択する。選択したモンスター2体を自分フィールド上に特殊召喚し、そのモンスター一組のみを素材として、エクシーズ召喚を行う。

 

 

「墓地から《幻蝶の刺客アゲハ》、《幻蝶の刺客オオルリ》を特殊召喚し、エクシーズ召喚を行う!」

「またエクシーズ召喚か。だが、ビブロスにも、マキシマムにも勝てはしない!」

 

(確かに《Heaven's Second Biblos》は攻撃こそできないが守備力は3000。そして、《コアキメイル・マキシマム》は攻撃力3000。私のランク4のモンスターでは、戦闘で破壊できない。ならば…!!)

「バトルだけが全てではない!2体のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れろ!《フォトン・アレキサンドラ・クィーン》!!

 

 

《フォトン・アレキサンドラ・クィーン》

エクシーズモンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2400/守備力1200

「幻蝶の刺客」と名のついたレベル4モンスター×2

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。フィールド上のモンスターを全て持ち主の手札に戻す。その後、この効果でカードが手札に加わったプレイヤーは、その数×300ポイントダメージを受ける。

 

 

「このモンスターは!?」

「《フォトン・アレキサンドラ・クィーン》の効果発動!オーバーレイユニットを1つを使い、フィールドの全てのモンスターを手札に戻す!くらえ!」

 

 

バタフライ・エフェクト!!

 

 

アレキサンドラ・クィーンがその羽根を大きく振り、鱗粉が舞った。《Heaven's Second Biblos》と《コアキメイル・マキシマム》がその鱗粉を受けると、体が白く光り始めた。

 

「なに?自らのモンスターと引き換えに、私のモンスターを…!?」

 

やがて、アレキサンドラ・クィーンを含めた3体のモンスターは白く光ってその場から姿を消した。

 

「よし、これで奴のモンスターはいなくなった!!」

 

「そして、この効果で手札に加わったカード1枚につき、相手に300ポイントのダメージを与える!」

「…」

 

 

アフタン:LP600→LP300

 

 

「これで終わりではない!私は…!!……!?」

 

ドロワが残りの1枚の手札を右手に持ち替えたその瞬間、ドロワとアフタンの目の前のデュエルフィールドに、轟音と共に、雷のようなものが降り注いだ。

 

「わっ!!兄さん!!」

「これは…!?」

 

「ン!?……ま、まさか…!?そんな!?」

 

アフタンが狼狽えているところをカイトが捉えたその瞬間、その雷の柱の間から、2人の人影が見えた。

 

「このデュエルは中止だ。」

「……クラウダー様!」

「おのれ、アフタン。勝手なことを。マッドサイエンティストなど、配下における存在ではなかったようだな!」

「お、お待ちくださいっ!!」

「お前の言い訳を聞く耳など持たん!はぁっ!!!」

 

マントの男、クラウダーが右手をアフタンに向けて翳すと、アフタンは自らの体を抱くようにしてその場に蹲り、徐々にその姿を消していった。

 

クラウダーが完全にその空間からアフタンの肉体を消すのと同時に、ドロワは彼に詰め寄った。

 

「おい、貴様!!何者だ!!」

 

「私はクラウダー。エクシーズ次元管轄のヘヴンズ・チルドレンの一人だ。」

「貴様…この前…」

「フッ。天城カイト。私の姿を目にしたことがあるということは、お前も駆逐される運命ということだ。」

「ふざけるなっ!」

 

「お前…なぜ、仲間を!!」

「ヘヴンズ・サードの一人、アフタンは、既に一度デュエルでバリアン七皇のナッシュに敗北している。しかもあろうことか、ヘヴンの力をほとんど使わずにな。それでヘヴンの力を使ってデュエルするために、ここに降りたのだ。もはや仲間ではない。」

「だからと言って!!」

「お前たちには関係のないことだ。やはり、マッドサイエンティストは自分の研究が第一…か。」

 

 

その人物が一歩後ずさりしたので、クラウダーの後ろで怯えていた少女に、カイトたちは気が付いた。

 

「貴様は?」

 

「わ…私は…ホワイト。ヘヴンズ・チルドレンの一人です。」

 

「なるほど。貴様もクラウダーと同じということか。」

「はい!」

 

最初こそ弱弱しかったが、本人が(覚えているかは定かではないが)ダンス部での次期部長だったということもあり、声もよく通るようになり、はっきりとした返事をするようになった。

 

「いきなり実戦は負担が大きい。ここでのミッションは私が行おう。」

「い…いえいえ、ここは私が!」

「無理をするな、ホワイト。まずは実戦の前に、見て学ぶんだ。」

「あ、はい。わかりました。」

 

「ならば貴様の相手はこの俺だ!!」

「カイト。」

「いや、カイト!!お前には……役割があるだろう!!」

 

突然カイトの後方にオービタル7が現れた。

 

「カイト様!!」

「オービタル!!貴様が来たということは……」

「出撃準備完了であります!」

 

「何をするつもりだ?」

「いけっ、カイト、ハルト!!」

「えっ、でも。ドロワ…!!」

「いくんだ!!!!早く!!」

 

「逃がしませんよ!!」

 

ヒールは履きなれていない様子だったが、そのスーツ姿のホワイトは、軽快に動き、カイトたちに寄ろうとした。

 

「させん!!」

「…!!」

 

咄嗟にドロワはハイキックを放ち、ホワイトを蹴ろうとしたが、ホワイトは反射的にかがんでそれを避けた。

 

「やめろ、ホワイト!」

「えっ!で…ですが…」

「いい。我々が欲しいのはナンバーズの情報。ドロワ。お前に聞けばわかることだ。カイトたちが何をしに行ったのかは知らないが、それは関係ない。」

「あ、すみません。」

 

「フッ。ならば、私とデュエルするというのか。」

「当然だ。お前以外、ここでナンバーズの情報を持っている者はいない。」

「いくぞ!!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

ドロワ  :LP4000

クラウダー:LP4000

 

 

「私の先攻!」

 

クラウダーは勢いよく引いた5枚のカードをしばらく眺めていたが、その後3枚のカードを右手で同時に持った。

 

「カードを3枚伏せて、ターンエンドだ。(2)」

<ドロワ:伏せなし クラウダー:伏せ3枚>

 

「伏せカード3枚だと…?」

 

 

(クラウダーさんのデュエル。初めて見るわ。一体どんなデュエルなのかしら。)

 

 

------

 

 

バリアンの本部で、ナッシュはその身に受けた傷を癒すために、カプセルのようなものに入っている。メラグとミザエルは腕を組みながら、その部屋を出た。

 

「ナッシュはしばらく休ませるしかない。」

「あのマッドサイエンティストめ。よくも。あの猫ちゃんも、ナンバーズはくれなかったし。ロクな収穫がないわね。」

 

 

「だったらよぉ!!!」

 

 

真上から低い笑い声を轟かせて、メラグとミザエルの2人の前に着地した者がいた。

 

「…!!」

「お前!!」

 

「俺の収穫に、なってもらおうかなぁ!!」

 

「ベクター!!」

 

「聞いたぜぇ?ナッシュが使い物にならねえんだって?だったらよぉ、俺がナッシュをまずは食らってやるぜ!」

「ふざけるな!!貴様の好き勝手にはさせん!!」

「ナッシュから聞いたわ。ドルベ、ギラグ、アリト。3人の魂を…よくも!!」

「おおっ!耳が早いじゃねえか!そりゃそうかぁ!あいつはお前らと違って、他のバリアンのことを感じ取ることができるからなぁ!さあ、おっぱじめようぜ!」

 

「望むところだ、ベクター!」

「決着をつける!」

 

 

 

「デュエル!!!」

 

 

メラグ :LP4000

ミザエル:LP4000

ベクター:LP4000

 

 

「このデュエル、バトルロイヤルでいくぜ!全てのプレイヤーは1ターン目に通常ドロー、そして攻撃はできねえ!」

「いいだろう。」

 

「まずは俺からだ!!俺の先攻!俺はモンスターをセットして、ターンエンド!(4)」

 

「まずは私からいくわ、ミザエル。」

「うむ。」

「私のターン!《ブリザード・ファルコン》を召喚!(4)」

 

 

《ブリザード・ファルコン》:攻撃力1500

 

 

「装備魔法、《アクア・ミラージュ》を発動!(3)」

 

 

《アクア・ミラージュ》

装備魔法

水属性モンスターにのみ装備可能。装備モンスターをエクシーズ素材とする場合、この装備カードは装備モンスターと同じレベルのモンスターとして扱ってエクシーズ素材とする事ができる。

 

 

「装備モンスターをエクシーズ素材とする場合、このカードも同じレベルのモンスターとして扱い、エクシーズ素材とすることができる!私はレベル4の《ブリザード・ファルコン》と、レベル4扱いの《アクア・ミラージュ》でオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》!!

 

 

《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》:攻撃力2400

 

 

「いきなりオーバーハンドレッドナンバーズか!張り切ってるなぁ!」

「私はカードを2枚セットし、ターンエンド!(1)」

「次は私だ!私のターン!!私は《半月竜ラディウス》を特殊召喚!(4)」

 

 

《半月竜ラディウス》

効果モンスター

レベル4/光属性/ドラゴン族/攻撃力1400/守備力1200

相手フィールド上にエクシーズモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。この方法で特殊召喚したこのカードのレベルは8になる。

 

 

「相手フィールドにモンスターエクシーズがいる場合、レベル8のモンスターとして特殊召喚することができる!さらに私のフィールドにレベル8のモンスターが存在する時、このカードは手札からリリースなしで召喚できる!来い、《星間竜パーセク》(3)!」

 

 

《星間竜パーセク》

効果モンスター

レベル8/光属性/ドラゴン族/攻撃力800/守備力800

自分フィールド上にレベル8のモンスターが存在する場合、このカードはリリースなしで召喚できる。

 

 

「レベル8モンスターが2体だと!?」

「いくぞ!私はラディウスと、パーセクでオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

宇宙を貫く雄叫びよ、遥かなる時をさかのぼり、銀河の源よりよみがえれ! 顕現せよ、そして我を勝利へと導け!《No.107 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)》!

 

 

「お前も張り切ってんねぇ、ミザちゃんよぉ!」

「減らず口を叩いていられるのも今のうちだ!!私はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(3)」

<メラグ:伏せ2枚 ミザエル:伏せ1枚 ベクター:伏せなし>

 

 

「ヘヘッ…てめえら2人共々、地獄に送ってやるぜ!!」

 

 

 

(次回に続く)

 




<今日の最強カード>
《Heaven's Second Biblos》


<次回の最強カード>
《オーバーハンドレッド・ディセント》
通常罠





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第47話-牙を向くベクター!共闘せよ、メラグ&ミザエル

ドロワ

 

・LP4000

・手札5枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

クラウダー

 

・LP4000

・手札2枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)3枚

 

 

「伏せカード3枚。それで私を迎え撃つのか…」

「さあドロワ。お前のターンだ。かかって来るが良い!」

「私のターン、ドロー!(6)」

 

「この瞬間、永続罠、《Heaven's Gateway》を発動!」

 

 

《Heaven's Gateway》

Continuous Trap

When your opponent activates a card whose name includes "Heaven's," you can negate it by sending this card from your hand to your graveyard. This card's activation and effect cannot be negated except by cards whose names include "Heaven's."

➀:If your opponent doesn't have any monsters with ATK2000 or higher, monsters your opponent control cannot declare an attack.

➁:Once per turn, during your opponent's main phase: You can target a monster with ATK 2000 or less on your opponent's field; The monster cannot declare an attack this turn.

 

 

「ヘヴンズ……ゲートウェイ…?」

「このカードがある限り、相手は攻撃力2000以上のモンスターをコントロールしていない場合、攻撃宣言できない!」

 

 

(なるほど。これで私にエクシーズ召喚を強要した形になるな…となると、残りの2枚の伏せカードは、私のエクシーズ召喚時に効果を発動するカードか、攻撃時に効果を発動するカードか…)

「私は手札から、《月光蝶(ムーンリット・パピヨン)》を通常召喚!」

 

 

月光蝶(ムーンリット・パピヨン)

効果モンスター

レベル4/光属性/昆虫族/攻撃力1200/守備力1600

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキからレベル4以下の「幻蝶の刺客」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

 

 

「そして私は魔法カード、《速攻召喚》を発動!手札のモンスター1体を通常召喚する!現れろ!《幻蝶の刺客アゲハ》!!」

 

 

《幻蝶の刺客アゲハ》:攻撃力1800

 

 

「…レベル4のモンスターが2体。」

「案外単純だな。私が何の策もなく、《Heaven's Gateway》を発動していると思っているのか?」

「もちろんそんなことは思っていない!私は手札から永続魔法、《幻蝶の帯域》を発動!」

 

 

《幻蝶の帯域》

永続魔法

自分フィールド上の「幻蝶の刺客」と名の付いたモンスターをエクシーズ素材として使用するエクシーズ召喚は無効化されず、エクシーズ召喚時に相手魔法・罠・効果モンスターの効果を発動することはできない。また、そのエクシーズモンスターの攻撃宣言時、ダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動することはできない。

 

 

「幻蝶の刺客をエクシーズ素材とするエクシーズ召喚を無効にすることはできずエクシーズ召喚時にカード効果は使えず、攻撃時にもカード効果は発動できない!」

「なるほど。これでエクシーズ召喚を妨害されることはないということか。」

「いくぞっ!《幻蝶の刺客アゲハ》と、《月光蝶》でオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

死の光纏いて、闇夜を舞え!《フォトン・バタフライ・アサシン》!!

 

 

「来たか、《フォトン・バタフライ・アサシン》!」

「お前の望み通り、エクシーズ召喚をしてやったぞ。これでバトル時にカード効果は使えない!!」

 

クラウダーは「ならば…」と呟きながら、もう1枚の伏せカードのアクティベートスイッチを押した。

 

「バトル前に、永続罠、《Heaven's Skipper》を発動!」

「何!?」

「手札のカード1枚を墓地に送ることで、相手のフィールドに特殊召喚されたモンスター1体の攻撃をこのターンの間だけ不能にする!」

 

フォトン・バタフライ・アサシンに取りついていた帯状のバリアが剥がれたかと思えば、すぐに赤い煙のようなものがそのモンスターを取り囲んだ。

フォトン・バタフライ・アサシンは既にクラウダーのフィールドに向かいかけていたが、表情を変えるようなことはなく、ドロワのフィールドへと戻っていった。

 

「バトル前か…フッ。ターンエンドだ!(3)」

「ならばエンドフェイズに、永続罠《Heaven's Penalty》を発動!」

 

 

《Heaven's Penalty》

Continuous Trap

When your opponent activates a card whose name includes "Heaven's," you can negate it by sending this card from your hand to your graveyard. This card's activation and effect cannot be negated except by cards whose names include "Heaven's."

➀:Once per turn, during your oppenent's end phase: No monsters your opponent controls declare attacks; You inflict 1000 damage to your opponent.

➁:Once per turn, during your opponent's end phase: If you cannot inflict 1000 damage to your opponent by this card's effect ➀, this card will be destroyed.

 

 

「相手のエンドフェイズに、相手が攻撃をしなかった場合、1000ポイントの効果ダメージを与える!」

「なにっ!くっ!!」

 

 

ドロワ:LP4000→LP3000

 

 

「私が何もせずとも、勝手にダンスを踊ってくれそうだな。」

「ふざけるな!私は…こんなことでは負けない!」

「私のターン!(3)私は墓地の《Heaven's Snake》の効果を発動!自分のスタンバイフェイズ時に墓地のこのカードを手札に戻すことができる!(4)」

「何!?それでは、《Heaven's Skipper》のコストは実質不要だということか!?」

「そうだ。毎ターン手札を消費し続けるのは、簡単ではないからな。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(3)」

<ドロワ:伏せなし クラウダー:伏せ1枚>

 

「私のターン!(4)私は《幻蝶の刺客モルフォ》を召喚!(3)」

 

 

《幻蝶の刺客モルフォ》:攻撃力1200

 

 

召喚に成功するのと同時に、ホワイトが口を開いた。

 

「そうか。《Heaven's Gateway》で攻撃を封じるのは、攻撃力2000以上のモンスターをコントロールしていない場合に限る。《フォトン・バタフライ・アサシン》をコントロールしているドロワさんの攻撃は…封じられないんだ。」

「その通りだ!だからモルフォで攻撃ができる!」

 

するとモルフォにも《フォトン・バタフライ・アサシン》と同じように赤い煙が巻かれ、モルフォはドロワの目の前に戻っていった。

 

「何だと!?また…煙が!!」

「残念だったな。《Heaven's Gateway》のもう一つの効果を発動したのだ。相手の攻撃力2000以下のモンスター1体はこのターン攻撃できない。そして《Heaven's Skipper》の効果により、手札の《Heaven's Snake》を墓地に送り、相手のモンスター1体の攻撃を不能にする!(2)」

「クッ。カードを1枚伏せて、ターン…終了。(2)」

<ドロワ:伏せ1枚 クラウダー:伏せ1枚>

 

「ならばこのターンのエンドフェイズ、《Heaven's Penalty》の効果を発動し、1000ポイントのダメージを受けてもらう!!」

 

ドロワの周囲を囲むようにして包囲陣が現れると、中央にいたドロワは何かに押しつぶされたかのようにして、膝をついて苦しみ悶えた。

 

「ぐっ!!」

 

 

ドロワ:LP3000→LP2000

 

 

「私のターンだ。(4)」

 

クラウダーはドローした罠カードを見つめている。罠カードは通常、伏せなければ使えない。しかし彼はそれを伏せる素振りも全く見せず、デュエルディスクの墓地に右手を翳す。

 

「私はこのスタンバイフェイズに、再び《Heaven's Snake》の効果を発動し、墓地からこのカードを手札に戻す!(5)ターンエンドだ。」

<ドロワ:伏せ1枚 クラウダー:伏せ1枚>

 

「なに…?またモンスターの召喚もせずにターンエンドだと?」

 

彼女は鋭い眼差しでクラウダーをにらみつける。クラウダーは蔑んだ表情をしている訳ではないのだが、彼のデュエルの仕方が、そう思わせるのだ。

 

「クラウダーさんは…もしかして…」

 

「くっ。あくまで《Heaven's Penalty》で私を倒そうというのか。そうはいかない!私のターン!!(3)私は《幻蝶の刺客オオルリ》を召喚!(2)」

 

 

《幻蝶の刺客オオルリ》(アニメ版)

効果モンスター

レベル4/闇属性/戦士族/攻撃力0/守備力1700

このカードは自分がモンスターを表側攻撃表示で召喚した時に、手札から表側攻撃表示で特殊召喚することができる。

 

 

「攻撃力0のモンスターを攻撃表示…なるほど。私はバトル前に、《Heaven's Snake》を捨てて《Heaven's Skipper》を、《幻蝶の刺客モルフォ》を選択して、《Heaven's Gateway》の効果を発動!これで2体のモンスターの攻撃は不能になる!」

 

「ここでドロワさんが効果ダメージを受けないようにするためには…」

「バトルだ!《幻蝶の刺客オオルリ》で、直接攻撃!」

 

攻撃力は0であるが、オオルリが勇ましくクラウダーに切りかかったが、クラウダーは気味の悪い笑みを浮かべて罠カードを発動した。

 

「フッ!単純な奴め!罠カード、《Heaven's Retribution》を発動!」

 

 

《Heaven's Retribution》

Normal Trap

When your opponent activates a card whose name includes "Heaven's," you can negate it by sending this card from your hand to your graveyard. This card's activation and effect cannot be negated except by cards whose names include "Heaven's."

➀:When an opponent's monster declares an attack: Target the attacking monster; negate the attack, and if you do, inflict damage to your opponent 800 each monster your opponent controls on your opponent's field.

 

 

「モンスター1体の攻撃を無効にし、相手のフィールドに存在するモンスター1体につき800ポイントの効果ダメージを与える!」

「うまい!クラウダーさんは、ドロワさんのフィールドのモンスターが3体になるのを待っていたんだ!これで一気に2400のダメージ!!」

「そうはいかない!罠カード、《幻蝶の霧散》を発動!」

「何?」

「《幻蝶の霧散》は、私のフィールドの幻蝶の刺客と名の付いたモンスターを全て破壊し、破壊したモンスター2体につき1枚、カードをドローする!(3)ぐっ!」

 

 

ドロワ:LP2000→LP1200

 

 

「ダメージを800に抑えたか。」

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(2)」

「このエンドフェイズに、《Heaven's Penalty》は自身の効果でダメージを与えられなかった場合、破壊される。」

「なに…?自ら破壊される効果もあるのか。」

 

そう言ってドロワは安堵の吐息を漏らすと同時に、クラウダーは手札の罠カード1枚を魔法・罠カードスロットに差し込んだ。

 

 

「罠カード、《Heaven's Death Storm》を発動!」

 

 

《Heaven's Death Storm》

Normal Trap

?

 

 

「手札からの罠!?」

「そうだ。このカードは自身の魔法・罠カードゾーンのヘヴンズと名の付いたカードが破壊され墓地へ送られた時、手札から発動できる!フィールド上の全ての魔法・罠カードを破壊する!」

「なにっ!?」

 

研究所は薄暗かったが、それでもはっきりわかるほどの黒い竜巻がフィールドに発生し、ドロワの伏せた《次元幽閉》、そしてクラウダーの《Heaven's Gateway》と《Heaven's Skipper》が破壊された。

 

(《次元幽閉》か。)

 

緊張感のあるデュエルだとホワイトが感じているようだとクラウダーは思ったが、深いため息を一度ついた。

 

「さて…終わらせよう。」

 

「…!?」

 

「《Heaven's Death Storm》はフィールドのヘヴンズカードを3枚以上破壊している場合、自分のデッキからHeaven'sと名の付いた魔法・罠カードを1枚手札に加えることができる。私はデッキから…

 

 

《Heaven's Ritual》を手札に加える。」

 

 

------

 

 

メラグ

 

・LP4000

・手札1枚

・(モンスター)《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》(ATK2400)(ORU2)

・(魔法・罠)2枚

 

ミザエル

 

・LP4000

・手札2枚

・(モンスター)《No.107 銀河眼の時空竜》(ATK3000)(ORU2)

・(魔法・罠)1枚

 

ベクター

 

・LP4000

・手札4枚

・(モンスター)1体

・(魔法・罠)なし

 

 

「さあ来い、ベクター!!」

「いくぜぇ!俺のターン!(5)俺は手札から、《アンブラル・ゴースト》の効果を発動!このターンの通常召喚を放棄し、俺の手札からこのモンスターと、レベル4以下の闇属性・悪魔族モンスター1体を特殊召喚する!さあ来い、《アンブラル・ゴースト》、《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》!」

 

 

《アンブラル・ゴースト》:☆2

《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》:☆1

 

 

「さらに特殊召喚に成功したウィル・オ・ザ・ウィスプの効果で、ゴーストと同じレベルになるぜ!」

「レベル2が2体…」

「いいやまだだ!俺の場にセットされたモンスターを…反転召喚!来い、《アンブラル・ゴースト》!!」

「レベル2が3体か!!」

 

「いくぜ!レベル2のアンブラルモンスター3体で、オーバーレイ!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!!エクシーズ召喚!!」

 

 

漆黒の闇よりの使者!《No.96 ブラック・ミスト》!!

 

 

《No.96 ブラック・ミスト》

エクシーズモンスター

ランク2/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力1000

レベル2モンスター×3

このカードは「No.」と名の付いたモンスターとの戦闘では破壊されない。このカードが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。その相手モンスターの攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする。

 

 

「ブラック……ミスト。」

 

ダークアストラルという感じではなく、獣のような叫び声をあげたブラック・ミスト。その場で飛び上がり、鞭のような腕を振り上げ、エネルギーを蓄えている。

 

「いくぜ!ブラック・ミストで、ラグナ・ゼロを攻撃だ!」

「…」

「この瞬間、ブラック・ミストの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を半分にし、その数値分だけこのカードの攻撃力をアップさせる!」

 

 

シャドー・ゲイン!!

 

 

《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》:攻撃力2400→攻撃力1200

《No.96 ブラック・ミスト》:攻撃力100→攻撃力1300

 

 

「これでお前のラグナ・ゼロは…」

「甘いわね、ベクター!!ラグナ・ゼロの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールドの元々の攻撃力と異なった攻撃力を持ったモンスター1体を破壊し、デッキからカードを1枚ドローする!」(2)

 

 

ガイダンス・トゥ・フューネラル!!

 

 

ブラック・ミストの波動を受けて士気が低下したラグナ・ゼロだったが、腕を振り上げると同時に刃を放ち、ブラック・ミストを真っ二つに切り裂いた。

 

「何だと!?」

「そのモンスターはもう既に見切っている!私たちには通用しないわ!」

「ヘッ。やるじゃねえか!カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!(1)」

 

「私のターン!(3)私は、《オーロラ・ウィング》を召喚!(2)」

 

 

《オーロラ・ウィング》

効果モンスター

レベル4/水属性/鳥獣族/攻撃力1200/守備力1600

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを表側攻撃表示で特殊召喚できる。「オーロラ・ウィング」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「ラグナ・ゼロの攻撃力は下がったままだけど、あなたに直接攻撃はできるわ!ラグナ・ゼロ、そしてオーロラ・ウィングで、直接攻撃!」

「なにっ!!ぐああああっ!」

 

 

ベクター:LP4000→LP2800→LP1600

 

 

ラグナ・ゼロの刃の一撃と、オーロラ・ウィングの衝撃波を受けたベクターはその場で蹲った。彼の体が小刻みに震えているのがわかった2人は不気味そうにそれを見ていたが、やがてすぐになぜ彼がそうしているのかがわかった。

 

「クックッ…ヒッヒッヒッヒッ…!!」

 

「ベクター…」

「何がおかしい!?」

 

「おかしいぜぇ!俺の戦術にまんまとハマったんだからなぁ!」

「何!?」

「罠カード、《オーバーハンドレッド・ディセント》を発動!」

「何だと!?」

 

 

《オーバーハンドレッド・ディセント》

通常罠

相手モンスターの直接攻撃によって戦闘ダメージを受けたターンに発動することができる。このターンに直接攻撃を受けた回数分だけ、自分のエクストラデッキから「No.101」~「No.107」と名の付いたモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。このカードをバトルフェイズ中に発動した場合、そのバトルフェイズは終了する。

 

 

「直接攻撃を受けた回数分だけ、オーバーハンドレッドナンバーズを特殊召喚する!俺が受けた直接攻撃は2回!よって2体、特殊召喚するぜ!」

「オーバーハンドレッドナンバーズを…特殊召喚するだと!?」

「まずは、《No.105 BK流星のセスタス》!!」

 

 

《No.105 BK流星のセスタス》:攻撃力2500

 

 

「アリト…」

ミザエルは、青い体のセスタスが佇む姿を見て、バリアンの熱き勇士を思い出し、思わずつぶやいた。

 

「そして、《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》!!」

 

 

《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》:攻撃力2000

 

 

「ジャイアント・ハンド…これは…ギラグのモンスター!!ベクター、貴様!」

 

その巨大な掌の形をしたモンスターは、体格が良く、ひょうきんなところはあるが、頼もしいギラグを思い起こさせる。

 

2体のオーバーハンドレッドナンバーズを前にして改めて彼らは実感していた。アリトとギラグがどうなってしまったのかを。

 

「ヘッヘッヘッ!!あいつらも喜んでいるだろうぜ!!俺様の力になれたんだからなぁ!」

 

メラグは目の前で仲間のナンバーズを従わせているベクターを見て、己の体が熱くなるのを感じていた。その表情、仕草、言い回し、全てが、彼女の体を熱くさせている。

 

「ベクターぁぁぁぁぁ!!!」

「おおっと!こええなぁ!!だがな、メラグ。いくら怒っても、《オーバーハンドレッド・ディセント》を発動したのがバトルフェイズだった場合は、バトルは終了するぜ!」

「くっ。私はこれで、ターンエンド。(2)」

 

「ベクター!これ以上勝手なことはさせん!私のターン!(3)バトルだっ!」

「えぇ?ミザちゃん!仲間のナンバーズを攻撃するのかぁ?」

 

ベクターが両手を大きく広げてそう言い、ミザエルを止めようとした。自分がそういわれた際、何と言えるのだろうか…

 

「貴様がそんなことを言うのは読めている。そんなことを言って我々の動揺を誘おうというのは!!それに……そのナンバーズたちに、アリトとギラグの魂が宿っているとするのなら、貴様に操られるよりも、倒されることの方が本望なはずだ!」

「ミザエル……」

 

「へぇ~。お前は相変わらず理屈っぽいな…。」

「ゆくぞ!!ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン!!ジャイアント・ハンドを攻撃!!」

 

 

殲滅のタキオン・スパイラル!!

 

 

「罠カード、《アラウザル・ハンドレッド》を発動!」

「…!?」

「このカードは俺のフィールドのモンスターエクシーズが攻撃対象になった時、自分フィールドのモンスターエクシーズと同じ数だけ、自分のエクストラデッキからオーバーハンドレッドナンバーズを特殊召喚する!」

「何だと!?」

「俺のフィールドには2体のオーバーハンドレッドナンバーズ。ということはつまり!あと2体のオーバーハンドレッドナンバーズを特殊召喚できる!」

 

「2体のオーバーハンドレッドナンバーズだと!?」

 

「いくぜ!!《No.102光天使(ホーリー・ライトニング)グローリアス・ヘイロー》! 」

 

 

《No.102光天使(ホーリー・ライトニング)グローリアス・ヘイロー》:攻撃力2500

 

 

 

「こ…これは…!!」

「ドルベの…!」

 

「そして、《No.104 仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング》!!」

 

 

《No.104 仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング》:攻撃力2700

 

 

「バ…バカな…」

「4体の…」

 

 

「そうだぁ!!ジャジャジャーン!!!これにて、オーバーハンドレッドナンバーズ4体…揃い踏みぃぃぃぃ~!!」

 

 

(次回に続く)

 





<今日の最強カード>
《オーバーハンドレッド・ディセント》
通常罠
相手モンスターの直接攻撃によって戦闘ダメージを受けたターンに発動することができる。このターンに直接攻撃を受けた回数分だけ、自分のエクストラデッキから「No.101」~「No.107」と名の付いたモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。このカードをバトルフェイズ中に発動した場合、そのバトルフェイズは終了する。


<次回の最強カード>
《ドン・サウザンドの牙城》
永続罠





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第48話-ドン・サウザンドの力!強襲のオーバーハンドレッドナンバーズ

※お知らせ※

第49話の前書きにも載せたのですが、冒頭部分において、構成上のミスが発覚いたしましたので、ドロワとクラウダーのやり取りを変更いたしました。申し訳ありません。

それでは、48話お楽しみください!


「それが、《Heaven's Ritual》で呼び出したモンスターか。ノックスが持っていたカードの仲間か。」

「そうだ。」

「くっ。ここまでか。」

「潔いな。」

 

クラウダーがそう呟き、視線を横に向けると、ホワイトがこちらを見ていることに気が付いた。どんな表情をしていたかは見えなかった。いや、見たくなかったのだろう。

 

(私が…彼女の前で…ドロワを。)

 

「どうした!?早くやれ!!!私の《フォトン・バタフライ・アサシン》の攻撃力は2100。そのモンスターの攻撃力は3500!!私のライフは、1200だぞ!!」

 

クラウダーは人差し指をドロワに向けた。ドミニオンが動くその瞬間には、ドロワは目を閉じ、歯を食いしばっていた。

 

「いくぞ!!!《Heaven's Third Dominion》!!」

 

(カイト……すまない。)

 

「クラウダーさん!!」

 

攻撃がドロワに当たる寸前、フィールドから全てのソリッドビジョンが消え去った。ドロワは恐る恐る目を開けると、目の前にあったのは、クラウダーの顔であった。

 

「フッ……勘違いするなよ。私が欲しいのは…魂ではない。ホワイト。誰でも彼でも魂を奪えば良い訳ではない。」

「あ…」

「私は……私は…」

「お前はデュエルに負けた。そうだな?」

 

その場にへたり込んでしまったドロワに対し、クラウダーがそう聞くと、ドロワは力なく頷いた。

 

「デュエリストとしての約束は…果たすべきだ。ナンバーズの情報を、教えてもらおう。」

 

ドロワはしばらくの間固まっていた。明確に意思を表す素振りはしていなかったが、クラウダーの聞いたことに対して、拒否反応を示した訳でもなかった。

 

 

------

 

 

メラグ

 

・LP4000

・手札2枚

・(モンスター)《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》(ATK1200)(ORU1)/《オーロラ・ウィング》(ATK1200)

・(魔法・罠)2枚

 

 

ミザエル

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)《No.107 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)》(ATK3000)(ORU2)

・(魔法・罠)1枚

 

 

ベクター

 

・LP1600

・手札1枚

・(モンスター)《No.102 光天使(ホーリー・ライトニング)グローリアス・ヘイロー》(ATK2500)(ORU0)/《No.104 仮面魔踏士(マスカレードマジシャン)シャイニング》(ATK2700)(ORU0)/《No.105 BK流星のセスタス》(ATK2500)(ORU0)/《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》(ATK2000)(ORU0)

・(魔法・罠)なし

 

 

「4体の…オーバーハンドレッドナンバーズ…!?」

 

《アラウザル・ハンドレッド》の効果で攻撃が止められてしまったことを確認したミザエルは、すかさずタキオン・ドラゴンのエクシーズ素材に指をかけたが…

 

「おおっとミザちゃん!タキオン・ドラゴンの効果は使えねえぜ!」

「なにっ!?」

「《アラウザル・ハンドレッド》の効果により、攻撃してくるモンスターの効果はエンドフェイズまで無効化される!」

「チッ。私はカードを1枚伏せて、ターンエンド。(1)」

<メラグ:伏せ2枚 ミザエル:伏せ2枚 ベクター:伏せなし>

 

「じゃあお楽しみだぜ。俺のタァァァン!!(2)バトルだ!まずは、ジャイアント・ハンドで、《オーロラ・ウィング》を攻撃!」

 

高速で接近した巨大な掌のモンスターが全身を広げ、そのまま《オーロラ・ウィング》を押し潰し、圧殺した。

 

「くっ!」

 

 

メラグ:LP4000→LP3200

 

 

「けど、破壊された《オーロラ・ウィング》のモンスター効果を発動!このカードがバトルで破壊された場合、そのターン一度だけ、攻撃表示で私のフィールドに特殊召喚することができる!」

 

 

《オーロラ・ウィング》:攻撃力1200

 

 

「復活しやがったか。だが俺のフィールドにはまだ3体のオーバーハンドレッドナンバーズがいる!……恨むならミザちゃんを恨めよぉ!攻撃力3000のタキオンなんて用意しやがるんだからな!」

「御託はいい。かかってきなさい!」

「ヘッ!なら望み通り、一気に地獄に送ってやるぜ!流星のセスタスで、再び《オーロラ・ウィング》を攻撃!」

 

 

スターダスト・インパクト!!

 

 

バーニングナックラーではあるが、背中から放たれた光が《オーロラ・ウィング》を襲う。

 

「くっ!」

 

 

メラグ:LP3200→LP1900

 

 

「そして、グローリアス・ヘイローで、攻撃力の下がったラグナ・ゼロを攻撃!」

「くっ……ドルベの…ナンバーズ…!」

「そうよぉ!お仲間の力だぜぇ。よく味わえよ!ライトニング・クラスター!」

 

 

メラグ:LP1900→LP600

 

 

「これでてめえの場にモンスターはいねえ。俺のナンバーズで止めを刺してやるぜ!シャイニングで、メラグにダイレクトアタック!」

 

メラグはすぐに立ち上がり、ミザエルが彼女の名を叫んだのを聞いたが、腕を伸ばしてミザエルの動きを押さえた。

 

「速攻魔法、《導かれる魂》を発動!直接攻撃が宣言された時、フィールドに攻撃を行ったモンスター以外のモンスターがいる場合、その中で最も高い攻撃力を持ったモンスターに攻撃を仕掛ける!」

「攻撃モンスター以外のモンスターで最も高い攻撃力…タキオン・ドラゴンか!」

「そうよ!シャイニング!あなたの相手は、タキオン・ドラゴンよ!」

「よし、いいぞメラグ!迎え撃て、タキオン・ドラゴン!殲滅のタキオン・スパイラル!!」

 

低いうなり声をあげたタキオン・ドラゴンはシャイニングを捉えると、タキオン・スパイラルを放ったが、ベクターはそれと同時にすぐに手札のカードを魔法・罠ゾーンへと差し込んだ。

 

「させるかよ!速攻魔法、《アンブラル・バースト》を発動!(1)」

 

 

《アンブラル・バースト》

速攻魔法

自分の墓地に「アンブラル」と名の付いたカードが3枚以上存在する時に自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズまで1000ポイントアップする。また、選択したモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、そのバトルフェイズ終了時に自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「墓地にアンブラルカードが3枚以上ある時、シャイニングの攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップさせる!」

 

 

《No.104 仮面魔踏士シャイニング》:攻撃力2700→攻撃力3700

 

 

「ぐっ!」

「ミザエル!!」

 

 

ミザエル:LP4000→LP3300

 

 

「呆気なかったなぁ!タキオン・ドラゴンもなぁ!」

 

しかしシャイニングの攻撃によってタキオン・スパイラルが暴発した際の爆発が止み、煙もはけてきたところに見えてきたのは、シャイニングとタキオンの両者であった。

 

「何?タキオン・ドラゴンも残っているだと?」

「…?メラグのカードの効果か?」

「そう。《導かれる魂》の効果によって、この戦闘でお互いのモンスターは破壊されないわ。」

 

「ヘッ。苦しみが少し伸びただけだぜ。俺は《アンブラル・バースト》のカード効果で、バトルフェイズ終了時に1枚カードをドローする!(2)そしてカードを2枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

「今のターンで私を倒せなかったことを…後悔することね、ベクター。」

「ヘッ!強がり言ってんじゃねえ!お前のオーバーハンドレッドナンバーズは破壊された!お前に勝つ手段は……」

 

そこまで言って彼の言葉が途切れたのを見ると、メラグが続けた。

 

「わかったようね。私たちの武器を!!いくわ、私のターン!!バリアンズ・カオス・ドロー!!(3)」

「来たか!」

「私は手札から、魔法カード、《RUM-七皇の剣》を発動!私の墓地から《No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ》を特殊召喚し、1つランクの高いカオスナンバーズへと、進化させる!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

現れなさい、CNo.103!時をも凍らす無限の力が今、よみがえる。神葬零嬢ラグナ・インフィニティ!

 

 

《CNo.103 神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》:攻撃力2800

 

 

「これがメラグの…カオスオーバーハンドレッドナンバーズ。」

「いくわ!まずはラグナ・インフィニティの効果発動!1ターンに1度、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除き、相手のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力が、元々の攻撃力と変わっている場合、その数値分のダメージを与えて、そのモンスターをゲームから除外する!」

 

ラグナ・インフィニティは、両端に三日月のような形をした刃のついた武器を器用に使い、その刃の先から出た黒い光をシャイニングに浴びせた。

 

「なにっ!パワーアップしたシャイニングが…!!」

「これでまず、1体のオーバーハンドレッドナンバーズはいなくなった。」

「そしてベクター!あなたには、1000ポイントのダメージを受けてもらうわ!」

「ぐっ!」

 

 

ベクター:LP1600→LP600

 

 

「バトル!ラグナ・インフィニティで、ジャイアント・ハンドを攻撃!」

 

敢えて間髪入れずにすぐに攻撃へと移った。考えるために立ち止まっては、仲間のことを思い出し、躊躇するかもしれない。そう思ってのことだった。

 

「攻撃力の差は800!これが通れば我々の勝利だ!」

「俺は罠カード、《エクシーズ・テレポーテーション》を発動!俺の場のモンスターエクシーズがフィールドを離れたターン、攻撃対象となったモンスターと、攻撃をしてくる相手のモンスターエクシーズをエンドフェイズまで除外する!」

「なにっ!!」

「ヘッ。残念だったなぁ!!お前らが俺様を倒そうなんざ、無理って訳だ!」

「クッ。私はこれで、ターンエンド。(2)」

 

エンドを宣言すると同時に、ジャイアント・ハンドと、ラグナ・インフィニティは再びフィールドに戻ってきた。

 

ミザエルはフィールドの状況から、すぐに決着がつけられると思い、何も考えることなく勢いでカードをドローする。

 

「安心しろメラグ!私が止めを刺す!私のターン!(3)ゆけっ!タキオン・ドラゴン!ジャイアント・ハンドを攻撃!今度こそこれで終わりだ!」

「聞いてなかったのかよミザエル?お前等に…俺は倒せねえってよぉ!速攻魔法、《ドン・サウザンドの覚醒》を発動!」

 

 

《ドン・サウザンドの覚醒》

速攻魔法

 

 

「ドン・サウザンドだと!?」

「お前……まさか!!」

 

「何驚いた顔してんだよ。あぁ、そうか、お前等には教えてなかったなぁ。俺はな、ドン・サウザンドと契約を交わしたんだよ。」

「バカな!バリアンの神と……契約だと!?」

「そうよ。俺たちが組んで、お前等バリアン七皇の力を根こそぎ奪うっていう契約よ!!」

 

2人がしばらく固まって動かないからか、ベクターは念じ、ドン・サウザンドを、ベクターの人影の部分より表出させた。

 

「フフフ…メラグに、ミザエルか。」

 

「あなたが…バリアンの神…!!」

「そうだ。お前たちには、我が力となってもらう。このベクターに敗れることによってな。」

「我々は…あなたの駒ではない!!」

 

力強くそうミザエルが言い放つが、ドン・サウザンドは表情一つ変えずに彼女らを見下ろして続けた。

 

「お前たちがどう思っていようと、運命は決している!我が力を得たベクターに…勝てるはずはない!覚醒した我が力を見よ!」

 

ドン・サウザンドは自らの手から出した闇の波動をグローリアス・ヘイローと流星のセスタスに浴びせた。2体のモンスターはすぐに闇の塊になったかと思うと、そのまま紅い空へと昇っていった。

 

何が起こっているのかは、すぐにわかった。

 

「まさか…2体を…同時に…」

「カオス化させるのか!?」

 

「そうだ!我が力、《ドン・サウザンドの覚醒》は、フィールドのモンスターエクシーズ2体をカオス化させる!さあ、グローリアス・ヘイローよ、流星のセスタスよ、カオス・エクシーズ・チェンジだ!」

「バカな!」

「そんなことが…!?」

 

2体のカオスナンバーズが闇の中より現れたのを見届けたドン・サウザンドは、再びベクターの中へと戻っていった。

 

「いくぜぇ!《CNo.102光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン》!《CNo.105 BK彗星のカエストス》!」

 

 

《CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン》:攻撃力2900

《CNo.105 BK彗星のカエストス》:攻撃力2800

 

 

「だが…いくらナンバーズをカオス化させたところで、私のタキオンの攻撃を止めることはできまい!」

「そんなこたぁわかってんだよ!《ドン・サウザンドの覚醒》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、カオスオーバーレイユニットを使って発動する効果を、弧の場で使用できる!彗星のカエストスの効果を発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体を破壊し、コントローラーに攻撃力分のダメージを与える!くらえ!」

 

 

コメット・エクスプロージョン!!

 

 

流星のセスタスの時のように背中から光を放ち、タキオン・ドラゴンを破壊した。タキオン・ドラゴンが巨大なモンスターであるためか、広範囲に渡る爆発がミザエルを襲った。

 

「ぐああああっ!!」

 

 

ミザエル:LP3300→LP300

 

 

「大丈夫か、ミザエル!?」

「くっ。私のタキオン・ドラゴンが。」

「これでてめえのフィールドにタキオン・ドラゴンはいなくなった。安心して眠れるな、ミザちゃんよ!」

「おのれ……私はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(2)」

<ベクター:伏せなし メラグ:伏せ1枚 ミザエル:伏せ2枚>

 

「いくぜ!俺のターン!(1)俺は魔法カード、《ドン・サウザンドの賜与》を発動!」

 

 

《ドン・サウザンドの賜与》

通常魔法

「ドン・サウザンドの賜与」は1ターンに1枚しか発動できない。フィールド上に表側表示で存在する「CNo.」と名の付いたモンスター1体につき、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「フィールド上のカオスナンバーズの数だけドロー!俺の場にはノーブル・デーモンと彗星のカエストスが、そしてメラグ!お前の場にはラグナ・インフィニティがいる!よって3枚をドロー!(3)さらに俺は、カオスオーバーレイユニットを1つ使い、ノーブル・デーモンのモンスター効果発動!相手モンスター1体の攻撃力を0にし、効果を無効にする!」

「なにっ!?ラグナ・インフィニティが!!」

 

 

《CNo.103 神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》:攻撃力2800→攻撃力0

 

 

「クッ!好きにはさせん!罠カード、《タキオン・アーマー》を発動!」

 

 

《タキオン・アーマー》

通常罠

 

 

「このカードを、ラグナ・インフィニティに装備する!」

「私のモンスターに…?」

「装備モンスターはドラゴン族として扱われ、このターン、ドラゴン族モンスターの戦闘によって発生するお互いのダメージは0になる!」

 

外見こそ変わらないが、ラグナ・インフィニティの周囲を紫色のオーラが包み込み、時折そのオーラから、竜の牙のような形が見え隠れする。

 

「邪魔すんじゃねえよミザエル!魔法カード、《RUM-バリアンズ・フォース》を発動!(2)」

「ランクアップマジックか!」

「俺はシャイニングをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

来い、《CNo.104 仮面魔踏士アンブラル》!!

 

 

《CNo.104 仮面魔等士アンブラル》:攻撃力3000

 

 

「アンブラル…!!」

「これがお前自身のカオスナンバーズ!」

「そうだ!そして、アンブラルはエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する!俺は、《タキオン・アーマー》を破壊!くらえ!」

 

 

デストロイ・ステップ!

 

 

「…《タキオン・アーマー》が破壊された時、デッキからカードを1枚ドローする!(2)」

「だがこれで、ラグナ・インフィニティを守るカードはなくなったぜ!さあ、今度こそてめえの最期だ、メラグ!!」

「メラグ!!」

「安心しろよミザちゃん!!お前も、こいつを倒したらすぐにやってやるからよぉ!」

 

ベクターのフィールドには、《CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン》、《CNo.104 仮面魔踏士アンブラル》、《CNo.105 BK彗星のカエストス》、《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》の4体のナンバーズが存在しており、メラグとミザエルはいずれか1体の攻撃を受けるだけで敗北してしまう。

 

そんな絶体絶命の状況でも、彼らにはまだ希望が残っていると、その目から確信したベクターがなおも攻撃宣言をしようとした時、自分の名を呼ぶ男の声が響き渡った。

 

「ベクター!!」

 

「ン!?」

 

メラグとミザエルの真後ろから聞こえた声に、2人はすぐに振り返った。そこには息を切らした状態のバリアン七皇のリーダー、ナッシュが立っていた。

 

「ナッシュ!!」

「大丈夫なの、傷は!?」

 

「あぁ。おちおち寝てもいられねえ。ベクター!!貴様、もうこんな戦いはやめろ!てめえが恨んでいるのは俺じゃねえのか!?」

「そうだぜ!だがお前を倒すのもそうだが、この世界はなぁ、全て俺様のものになるんだよ!バリアン七皇も、ヘヴンも、関係ねえぜ!そのためにも、俺はこいつらの力も手に入れなきゃいけねえのさ!より計画の達成を確実にするためになぁ!」

 

その時ナッシュの動きが一瞬止まった。ベクターたちは、それがなぜだかはすぐにわかった。彼の視線の先にあるのは、ベクターのフィールドの4体のオーバーハンドレッドナンバーズたちであったからだ。

 

「ドルベ、アリト、ギラグ………。ベクター……貴様……!!貴様ぁ!」

「おおっと!!邪魔すんじゃねえ!!」

 

ベクターが手を翳すとナッシュの目の前に地面から湧き出た紅い結晶の見た目をしている突起物が現れ、ナッシュの行く手を阻む。

 

「はぁっ!!」

 

ナッシュが突起物を薙ぎ払うようにして腕を振ると、それらは一気に姿を消した。一歩ずつ迫りくるナッシュに、狼狽えたベクターであったが、ベクターの放った影が、今度はナッシュの目の前に立ちはだかった。

 

「なっ!!てめえは……!?」

「邪魔をするなというのが、聞こえなかったか、ナッシュ?」

「我が名はドン・サウザンド。バリアンの神だ。」

「……くそっ!ベクターと組んでいやがったのか。あいつと組んでどうするつもりだ!?」

「ベクターの計画に興味があってな。」

「クソッ。……ベクターを最後には取り込むつもりなんだろ。だとしたら、ベクター。お前もドン・サウザンドと組むことが得策ではないことくらいわかってるだろ!?」

 

「何言ってんだナッシュ!ドン・サウザンドはな、今となっては俺様の力がなけりゃ戦えねえんだぜ。」

 

「フフフ……」

「くそっ。」

「さあベクター!!止めを刺せ!!」

「やめろ、ベクター!!」

 

「ノーブル・デーモンで、ラグナ・インフィニティを攻撃!」

 

 

ダークネス・ピアース!!

 

 

「まだデュエルは…終わっていない!罠カード、《裁きの氷結》を発動!」

「何だと!?」

「水属性モンスターが攻撃対象となった時、攻撃してきたモンスターの攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了させ、相手フィールドの最も高い攻撃力を、ラグナ・インフィニティに加える!」

 

 

《CNo.103 神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》:攻撃力0→攻撃力3000

 

 

「チッ。しぶとい奴だな。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!(0)」

「いくわ。私のターン!(3)安心して、ナッシュ、ミザエル!!このターンで決着をつける!」

「そうはいかねえよ!永続罠、《ドン・サウザンドの牙城》を発動!」

 

 

《ドン・サウザンドの牙城》

永続罠

相手ターンのメインフェイズ時に自分フィールド上に表側表示で存在する「CNo.」と名の付いたモンスター1体を選択して発動することができる。自分フィールド上に存在する、選択したモンスター以外の「No.」と名の付いたモンスターの攻撃力を選択したモンスターに加える。また、このカードを発動したターン、相手フィールド上に存在する攻撃可能なモンスターは選択したモンスターを攻撃しなければならない。

このカードは発動したターンのエンドフェイズに発動する。相手に800ポイントのダメージを与え、このカードはフィールド上にセットされる。

 

 

「俺の場のカオスナンバーズ1体に攻撃力を集中させ、相手はそのモンスターを攻撃しなければならない!」

「何!?」

「俺は当然、アンブラルを選択する!」

 

 

《CNo.104 仮面魔踏士アンブラル》:攻撃力3000→攻撃力10700

 

 

メラグはこのターンのドローフェイズで引いたカードを見つめている。やがて彼女の視線は不気味な笑いを浮かべているベクター、そして彼の足元に置かれている伏せカードに移った。

 

(《ドン・サウザンドの牙城》による勝利を、確信しているの…?それとも…)

 

やがて彼女は立ち尽くしているミザエルを一瞥し、彼女がドローしたカードを、魔法・罠スロットへと差し込んだ。

 

「魔法カード、《カオス凍結》を、ラグナ・インフィニティを対象に発動!手札の魔法カード、《魔水晶(ディストーション・クリスタル)》を墓地に送り、対象に選んだモンスターが攻撃する際、墓地からモンスター1体を選んでカオスオーバーレイユニットにする!この効果でカオスオーバーレイユニットを得たモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

「何!?カオスオーバーレイユニットを得るだと……!?」

「バトル!!ラグナ・インフィニティで、アンブラルを攻撃!そしてこの瞬間、ラグナ・インフィニティの下に、ラグナ・ゼロをカオスオーバーレイユニットをとして重ねる!」

 

ドン・サウザンドの体色と同じ色のオーラを纏ったアンブラルを前に、ラグナ・インフィニティは武器を翳した。

 

「そして、ラグナ・インフィニティの効果はわかっているわよね。カオスオーバーレイユニットを1つ使い、元々の攻撃力との差の分のダメージを与える!」

 

攻撃力の差は歴然としているが、それでもラグナ・インフィニティは果敢に立ち向かう。彼女はその手に持つ武器で、アンブラルの首を狩っ切らんとしていた。

 

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《ドン・サウザンドの牙城》
永続罠
相手ターンのメインフェイズ時に自分フィールド上に表側表示で存在する「CNo.」と名の付いたモンスター1体を選択して発動することができる。自分フィールド上に存在する、選択したモンスター以外の「No.」と名の付いたモンスターの攻撃力を選択したモンスターに加える。また、このカードを発動したターン、相手フィールド上に存在する攻撃可能なモンスターは選択したモンスターを攻撃しなければならない。
このカードは発動したターンのエンドフェイズに発動する。相手に800ポイントのダメージを与え、このカードはフィールド上にセットされる。


<次回の最強カード>
《ドン・サウザンドの桎梏》
通常罠
自分フィールド上に「CNo.」と名の付いたモンスターが存在する場合に相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターの効果は無効化され、攻撃力は0になる。また、このカードを相手ターンで発動した場合、そのターン内に相手に与える戦闘ダメージは倍になる。


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第49話-謀反の終焉

※お知らせ※

第48話の冒頭部分において、構成上のミスが発覚いたしましたので、ドロワとクラウダーのやり取りを変更いたしました。申し訳ありません。

それでは、49話お楽しみください!


メラグ

 

・LP600

・手札1枚

・(モンスター)《CNo.103 神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》(ATK2800)(CORU1)

・(魔法・罠)なし

 

 

ミザエル

 

・LP300

・手札2枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)1枚

 

 

ベクター

 

・LP600

・手札0枚

・(モンスター)《CNo.102 光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン》(ATK2900)(CORU0)/《CNo.104 仮面魔踏士(マスカレードマジシャン)アンブラル》(ATK10700)(CORU1)(∞)/《CNo.105 BK彗星のカエストス》(ATK2800)(CORU0)/《No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド》(ATK2000)(ORU0)

 

 

「ヘッ!!んなもん……お見通しなんだよぉ!!罠カード、《ドン・サウザンドの桎梏》を発動!」

「なっ…」

 

アンブラルが自身の体から気を放ち、ラグナ・インフィニティの胴体と腕を縛り付けた。

 

 

《ドン・サウザンドの桎梏》

通常罠

自分フィールド上に「CNo.」と名の付いたモンスターが存在する場合に相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターの効果は無効化され、攻撃力は0になる。また、このカードを相手ターンで発動した場合、そのターン内に相手に与える戦闘ダメージは倍になる。このカードを発動したターンのエンドフェイズに、フィールド上に存在するエクシーズ素材を1つ取り除く。

 

 

「俺のフィールドにカオスナンバーズがいる場合、相手モンスターの効果を無効にし、攻撃力を0にする!!」

「モンスター効果を……無効に…!?」

「さらにさらに!特典として、バトルダメージは…倍になるぅぅぅ!!」

 

動けないラグナ・インフィニティの前に、邪悪なオーラを纏ったアンブラルが降り立ち、ラグナ・インフィニティを見下ろしている。

 

「そんな……メラグ…」

「メラグ。」

「すまない…ミザエル。そして…ナッシュ。」

 

メラグがデュエルディスクを持つ左腕を力なく下に下げると、それと同時に、アンブラルが手にした大鎌のような武器でラグナ・インフィニティを真っ二つに切り裂いた。

 

「くっ……きゃあああああっ!!」

 

 

メラグ:LP600→LP0

 

 

「ナッシュ……。」

 

「メラグ!!メラグ!!」

 

ドン・サウザンドに阻まれている彼は、メラグのもとに近寄ることはできない。

 

「どけっ、ドン・サウザンド!!」

「フッ。別れの挨拶くらい……するが良い。」

 

ドン・サウザンドが自身の姿を消すと、ナッシュはメラグに駆け寄った。ベクターはその様子を見て哄笑を響かせ、それがナッシュの怒りを増幅させる。

 

「ベクター!!」

「ナッシュ。大丈夫。私は…負けても、デュエルには…勝て…る、から。だから…」

 

そういったのを聞き逃さなかったベクターは、哄笑をやめ、倒れているメラグを睨みつけた。

 

「あん?どういうことだ?」

「ベクター!!あなたの負けは……決定したわ。一足先に、地獄で待っているわよ。そして……ナッシュ、ミザエル。バリアン七皇としての務めを…果たして欲しい。ドン・サウザンドの好きにさせては…ダメ…」

 

そこまで言うと、彼女は光の粒となり、ベクターの中に入り込んだ影に、吸われていった。

 

「メラグ……。メラグ!!!くっ、くそっ!!うわあああああっ!!」

 

「クッ…何ということだ。」

 

「ケッ!安心しろ、ミザエル!!てめえもすぐに地獄に送ってやる!」

「貴様のターンが来るのは次の私のターンの後だ!!私にはわかっている。メラグがああ言った理由が!!」

「残念だったなぁ!!このエンドフェイズに、《ドン・サウザンドの牙城》の効果により、このカードはフィールドに再セットされて、その時、800ポイントのダメージを相手に与える!!何が、一足先に地獄で待つ……だよ!!地獄に行くのは、おめえだ、ミザエル!!」

 

カードイラストの部分から放たれた紅い光がミザエルの目の前の地面にぶつかり、爆発を巻き起こし、瞬く間にミザエルの姿は煙に飲まれた。

 

「ナッシュ。次はお前だ。さあ、構えやがれ!!」

「ベクター……」

 

「フッ。」

 

煙の中から見えたのは、ミザエルと、その前にある罠カード、そして1体のドラゴンのモンスターであった。

 

 

ミザエル:LP300

 

 

「バカな…!?ライフが残っていやがるだと!?」

「罠カード、《ダメージ・オルトレーション》を発動させてもらった。」

 

 

《ダメージ・オルトレーション》

永続罠

 

 

「このカードはプレイヤーにカード効果によるダメージが発生した場合、墓地に送ってそのダメージを無効にし、無効にしたダメージと同じ分の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する!この効果で私は攻撃力800の、《星間竜パーセク》を特殊召喚した!」

「そういうことか。チッ。じゃあてめえのターンだぜ、ミザエル。だが、たとえ何が来ようとも、《ドン・サウザンドの牙城》があるぜ!」

 

「私のターン!!ベクター!!貴様には、ギャラクシーアイズの鉄槌を受けてもらう!!我々七皇を裏切った、その罪を…償ってもらおう!!」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!!

 

 

「私がドローしたカードは、《RUM-七皇の剣》!!このカードを発動する!」

「なにっ!?」

「墓地のギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴンを復活させる!!そしてこのカードをエクシーズ素材として、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

逆巻く銀河を貫いて、時の生ずる前より蘇れ。永遠を超える竜の星! 顕現せよ、CNo.107!|超銀河眼の時空龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》!

 

 

《CNo.107 超銀河眼の時空龍》:攻撃力4500

 

 

「ネオタキオンか。だったら俺は、永続罠、《ドン・サウザンドの牙城》を再び発動し、アンブラルの攻撃力を、10700にアップさせる!返り討ちにしてやるぜ!」

『ベクター。やはり貴様は所詮、その程度のデュエリストであったか。もう貴様に用はないな。』

「なっ…いきなり何を言いやがる!?ドン・サウザンド!!」

 

「私は、ネオタキオンのモンスター効果を発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、全てのカードを、このターン開始時に戻す!」

 

 

タイム・タイラント!!

 

 

ミザエルが効果発動を宣言すると、周囲の空間の色が反転し、空間が歪み始めた。

 

「ン!?」

「これにより、お前の場の《ドン・サウザンドの牙城》はフィールドに再セットされる!」

「ヘッ!そんなんだったら、俺は……もう一度発動するまでよ!永続罠、《ドン・サウザンドの牙城》を発動!」

「フッ。無駄だ。ネオタキオンの効果を使った場合、そのターン相手は私が許可したカードでなければ発動できない!」

「何だと!?それじゃあ……」

「これでお前のモンスターの攻撃力は上がらない!いくぞ!!!」

「なっ、なにぃ!?」

 

「ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴンで、《CNo.104 仮面魔踏士アンブラル》を攻撃!!」

 

 

アルティメット・タキオン・スパイラル!!

 

 

ネオタキオンから放たれたアルティメット・タキオン・スパイラルがアンブラルを貫き破壊された。他のカオスナンバーズとオーバーハンドレッドナンバーズは、その様子を見ていた。ミザエルにとっては、そのナンバーズたちは敗北に対して悔しさを覚えている訳ではなさそうだった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

ベクター:LP600→LP0

 

 

「ふ…ふざけんな。ミザエル。俺は、お前なんかに……ぐっ、ぐおおおっ!!」

 

再びミザエルの中から影となっていたドン・サウザンドが姿を現した。傷だらけとなったベクターは、その場で蹲ることしかできない。

 

「ベクター。我がバリアンの神の力となれぃっ!!」

「ドン・サウザンド……!!てめえぇぇぇっ!!」

 

咆哮をあげながら、ベクターはその場で光の粒となり、その粒はドン・サウザンドに吸収されてしまった。

 

「ベクター!!」

 

勝利の余韻に浸ることもできず、ミザエルとナッシュはこうなってしまっては、メラグが戻ってはこないのではないかと、思い始めた。

 

「おい、ドン・サウザンド!!てめえ!何を!」

「貴様!まさか、ベクターまでも!?」

「ベクター…までも?フッ。七皇は全て我が力になる、定めなのだよ!」

 

ドン・サウザンドの体が急に発光し始めた。すると今までの巨大な影といえる形態から徐々に姿は小さくなり、やがてナッシュやミザエルと同じくらいの背の高さになった。

 

「ドン・サウザンド!それがお前の真の姿か!?」

「いや、まだだ。ここにお前たちの力が集まれば、真の姿となる!フフフ…ハハハハハ!!」

「ふざけんな!!お前の好きにはさせねえ!!来やがれ、ドン・サウザンド!!ここで決着をつけてやる!!」

 

デュエルディスクを構えたナッシュに対し、ドン・サウザンドは鼻で笑った。

 

「フッ。慌てるなよナッシュ。我々の戦う舞台はまだ整っていない。」

「何だと?」

「我々が手に入れなければならないもの、バリアン七皇の一人であるお前なら、気が付いているだろう?」

 

落ち着いた口調でそう言われると、ナッシュはそれまで感じていた熱さが少しなくなったのがわかった。

 

「ヌメロン…コード。」

 

「そう。ヌメロン・コードこそ、我が欲する力。それを起動させるためには…」

「ナンバーズか。」

「もうナンバーズは多く集まりつつある。だが我にはわかる。100番目のナンバーズ、ヌメロン・ドラゴン。それが、ギャラクシー・アイズの力がぶつかり合う時に、生まれると。」

「何だと!?」

「だから我はここで油を売っている暇はないのだ。まずは、ナンバーズを集めさせてもらおう。ナンバーズを多く持っている者…それを訪ねるということだ。」

「ナンバーズを多く持つって、遊馬、そして…アストラル!」

「フッ。」

 

肯定する代わりにドン・サウザンドは笑みを浮かべると、2人を一瞥し、その場で背中を向けたかと思うと、彼の声だけを残してその場から姿を消した。

 

「また会おう、ナッシュ、ミザエル!フフフ…ハハハハハ!!」

 

「おい、待て!ドン・サウザンド!!」

「クッ。」

 

ドン・サウザンドがその場からいなくなった途端、彼らを静寂が包む。ミザエルはナッシュの方へと体を向けた。

 

「ナッシュ。すまない。メラグを……」

「お前は悪くない、ミザエル。むしろよくあのベクターを倒してくれた。お前が無事なだけで俺は嬉しい。」

「ナッシュ。」

「だがミザエル。悪いがもう少し、付き合ってもらえねえか?ドン・サウザンドをぶっ飛ばさなきゃならない。そしてあの忌々しいヘヴン。そして遊馬とアストラルを倒し、バリアンに栄光をもたらす!」

「ああ。」

「九十九遊馬に接触する。何としてもドン・サウザンドに先を越される訳にはいかない!」

「…ナッシュ。私には行くべき場所がある。」

「…?」

 

 

------

 

 

今日で何日目だろうか、この紅い空は。ふとそんなことを考えていたアストラルであったが、遊馬が眺めていたナンバーズのうち1枚を小鳥が取ったところで、我に返った。

 

「おい、小鳥!取んなよ、ナンバーズ!これ、なくしたらやばいんだから!」

「街中で堂々と1枚1枚見てる方がやばいでしょ?少しは警戒したら?……どれどれ?No.76 諧調光師グラディエール……ねぇ。素敵なモンスターじゃない。」

「ちょっと、返せよ、小鳥!」

「いいじゃんちょっとくらい見てても…!!」

 

「遊馬、小鳥、そして遊士。カイトの言ったことが本当だとすれば、クラウダーがここに来るかもしれない。」

「あぁ、そうか。確かにな。」

「いいぜ、返り討ちにしてやる。あいつはぶっ飛ばす。絶対にだ。」

「それに、ドン・サウザンドも来るかもしれない。」

「カイトは…ヌメロン・ドラゴンを探しに…?」

「そうだ。彼は真のドラゴン使いを決める戦いで、ヌメロン・ドラゴンを起動させるつもりだ。」

「俺らは、あいつらが来るのを待つしかできねえってことか?」

 

遊士がアストラルにそう聞いた。そこにいる遊士、遊馬、小鳥はちょうど、路地を曲がったところであった。

 

「いや、できることならある。ナンバーズの遺跡のある場所から、まだ入手できていないナンバーズの情報がわかる。」

「まだ入手できていないナンバーズってあんのかよ!?あとヌメロン・ドラゴンだけじゃねえの!?」

 

そういわれると、アストラルは大きくため息をついた。

 

「君は何のために1枚1枚ナンバーズを眺めているのだ。番号順に並べた時に、もう既にNo.1はないだろう?」

「あっ、そっか。」

「それに、他にも飛んでいる番号がある。それが特別な力の及ぶナンバーズなのかどうかは、私にもわからない。だから、その遺跡でナンバーズの位置を調べる。」

「何だよ、そんな便利なモンがあるんだったらもっと早く使えばよかったんじゃねえのか?」

 

遊士の言葉に、アストラルは首を横に振った。

 

「いや、調べている間は私の意識はアストラル世界とリンクすることになる。そうすると、現実にナンバーズの力を及ぼすことが不可能となる。」

「ああそうか。遊馬がデュエルしても、ナンバーズが使えないってことか。」

「そうだ。」

「だったら念のために、俺が見張っておいてやろうか?」

「え?あ…はい。」

「確かに時間がかかるかもしれないから、遊士が見張っておいてくれるのであればそれは非常にありがたい。」

「よし。そうとなりゃ決まりだな!どこに行くんだ?」

「デュエル庵だ。」

「え…?」

 

「じゃ、じゃあ、遊馬たちは先に行っていて!私、忘れ物したから取りに帰る!」

「えっ?忘れ物…?」

「うん!!じゃあね!アストラル、頑張って!遊士さんも、お願いします!そして、遊馬!

 

 

あんたがもしデュエルすることになっても、負けんじゃないわよ!」

 

 

「お、おう!もちろんだぜ!」

「忘れ物…」

 

アストラルがそう呟いた。遊馬と遊士も怪訝そうにしていたが、歩き始めていた。

 

一方小鳥は1枚のエクシーズモンスターを握りしめたまま、家路を急いでいた。そこからは10分となく、彼女は家に着くなり、スカートのベルトを別のものに変えた。それには、何かを入れるためのケースが付いている。

 

「私だって、ナンバーズクラブの一員よ。それに、ずっと遊馬といて、デュエルができないだなんて、笑えない冗談よ!」

 

そう言って家を飛び出し5、6分ほどしたところで、人気がなくなり、家と家の間隔が狭くなり、瓦屋根の家が数件見えてきた。そろそろデュエル庵が近い。百段近くある階段を昇ったところに、それはある。

 

「え…?」

 

ところが階段に差し掛かるよりも前のところ、2つの燭台が立っているところに、人影のようなものを認識した小鳥は、衝突するのを防ぐため、いきなり立ち止まった。

 

人影のようなもの…そう考えたのは、デュエル庵の方を見上げている姿はどう見ても人間(髪が黄色なのが気になるが)。だが、こちらに目を向けると、全身黒いタイツでも着ているかのような色であることがわかり、額には紅い瞳のようなもの、胸元には紋章のようなものがある。その紋章の周りには色とりどりの細い線が描かれているが、左三色右二色の非対称な形が気になる。まるで蛍光灯が一部だけ切れてしまった部屋のようだ。

それらを持ち、体色が黒である者をどうして人間と形容できるだろうか。

 

「この近くに、ナンバーズの集まっている場所を知っているな?」

 

落ち着いた口調でいきなり話しかけに来たことに驚き、小鳥はたじろいでしまったが、すぐに返答をした。

 

「ナ……ナンバーズ?」

「とぼけても無駄だ。我には、ナンバーズの発するエネルギーがわかる。この近くに九十九遊馬、そしてアストラルがいる。それも、我にはわかることだ。」

「なっ…あなた、遊馬たちを探してるの!?」

「やはりお前は…九十九遊馬の知り合いか。」

「え…。ええ。」

 

もはや正体がバレようが、動揺を見せるよりはマシだと思った彼女はあくまで気丈にふるまう。

 

「そうよ!!」

「我が力を使えばすぐに詳細な場所を知ることはできるが、なるべく力は温存したいところだ。さあ…我に九十九遊馬とアストラルの場所を教えるのだ。」

「嫌よ!!誰があんたなんかに教えるもんですか!」

「そうか。ならば我が力を使うしかあるまい。」

 

(ええっ!?ここそういう流れなの!?)

 

小鳥の頭の中に既にあったのは、遊馬の場所を見知らぬ者に教えるのが危険だということだ。それに加えて思い浮かんだのは、時間を稼ぐということ。遊馬たちが今ナンバーズを探しているのであれば、遊馬がデュエルを申し込まれたら危険。何とかしてナンバーズ探索後にさせなければということだった。

 

「ちょっと待ちなさい!!」

「何だ?九十九遊馬とアストラルの場所を教える気になったか?」

「あなたが何者か知らないけど、デュエルよ!!私だってナンバーズクラブの一員!」

「我はバリアンの神、ドン・サウザンドだ。ナンバーズクラブ……?そんな児戯に付き合っている暇はない。」

「バリアンの……神!?」

「そう。九十九遊馬たちに関りがあるのであればわかるだろう?バリアンとは何か。」

「そ…それは…」

 

圧倒的な力の差を戦う前から感じていた。ドン・サウザンドは、バリアン七皇の力を上回るはず。そう考えれば、ギラグ、アリト、ミザエル、メラグのデュエルを見ていた彼女にしてみれば、ドン・サウザンドのデュエルは想像を絶するものであるのは、想像に難くない。

 

 

「わかったのなら、邪魔はしないことだ。お前には関係のないことだ。」

 

 

関係ない…というフレーズが彼女の心に響いた。ドン・サウザンドがゆっくりとデュエル庵の方へと進もうとする後ろ姿と合わせ、彼女の気持ちを動かす十分な要因となった。

 

 

「待ちなさい。」

 

 

「…?」

「ふざけないで。関係なくなんかない。バリアンは、多くの人間をバリアンズ・フォースの餌食にして、それだけじゃないわ!大切な仲間を……徳之助君、キャットちゃん!!少なくとも2人は私たちの友達!!関係ない…?冗談じゃないわ!」

「フッ。」

 

何としてもドン・サウザンドを止めなければならない。そう思い続ける彼女は、気が付けば自分のデッキケースから1枚のカードを取り出し、ドン・サウザンドに見せていた。

 

「ナンバーズ!!私も持っているのよ!!」

「…何?」

 

ドン・サウザンドは踵を返し、初めて小鳥の言ったこと、したことに興味を持ったような顔をした。

 

「あなたの計画は…ナンバーズが全て揃わないと成り立たないんでしょ?」

「九十九遊馬とアストラルのナンバーズのエネルギーの反応が強すぎて1枚のナンバーズには気が付かなかったな。確かにそれは、回収しなければならない。いいだろう。そのデュエル、受けてやろう。我が力、お前で試させてもらおう!!」

 

拳を天に振り上げ、左腕を見せるようにドン・サウザンドが構えると、その腕にはデュエルディスクらしきものが取り付けられた。

 

「やっとその気になったわね。デュエルディスク、Dゲイザー、セット!!いくわよ、ドン・サウザンド!」

 

 

デュエル!!

 

 

観月小鳥    :LP4000

ドン・サウザンド:LP4000

 

 

「先攻は我がもらう。我のターン!」

 

(ドン・サウザンド。いきなり、バリアンの神とデュエル。勝てないかもしれないけど、それでも、今遊馬と戦わせる訳にはいかない!一体、どんなデュエルを…)

 

 

「我はこれで、ターンエンド。(5)」

 

 

「えっ!?何もしないの!?」

「そうだ。かかって来るが良い。」

「だったら、私のターン!(6)」

 

するといきなり小鳥とドン・サウザンドのいる空間を紅いオーラが包む。小鳥は不思議に思ったが、何か起こった訳ではないのかと思い、ターンを続けた。

 

「私は《リトル・フェアリー》を召喚!(5)」

 

 

《リトル・フェアリー》

効果モンスター

レベル3/光属性/天使族/攻撃力800/守備力800

自分のメインフェイズ時に手札を1枚墓地へ送って発動できる。 このカードのレベルを1つ上げる。この効果は1ターンに2度まで使用できる。

 

 

「このカードは1ターンに2度まで、手札を墓地に送って、レベルを1つアップさせる!(4)」

 

小鳥のつま先から膝よりも低い高さの背丈しかない《リトル・フェアリー》は、星の柄のついた杖を元気よく振った。

 

「さらに私は手札から魔法カード、《死者蘇生》を発動!墓地のモンスター1体を特殊召喚する!私は今墓地に送った、踊る妖精(ダンシングフェアリー)を特殊召喚!」

 

 

《踊る妖精》:攻撃力1700

 

 

「レベル4モンスターが2体か。」

「私はレベル4のモンスター2体で、オーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

現れなさい、《フェアリー・チア・ガール》!!

 

 

《フェアリー・チア・ガール》:攻撃力1900

 

 

「ほう。ナンバーズではないのか。」

「ナンバーズを使わなくても、たとえあなたがバリアンの神であっても、私はやれるところまでやってみせる!今、あなたのフィールドはがら空きよ!!」

「フッ…愚かな。」

 

ドン・サウザンドが指を鳴らすと、突然目の前にいた《フェアリー・チア・ガール》がその場で自らの体を抱くようにして悶え始め、爆散した。

 

「《フェアリー・チア・ガール》が!!!そんな。どうして…!?」

 

爆散した時に生じた光が集まり始めると、そこには《そよ風の精霊》が立膝の状態でフィールドに現れた。

 

「そよ風の…精霊。私のカード。」

 

 

《そよ風の精霊》

効果モンスター

レベル3/風属性/天使族/攻撃力0/守備力1800

このカードが自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、自分のスタンバイフェイズ毎に自分は1000ライフポイント回復する。

 

 

「どういう…こと!?」

「書き換えたのだよ。」

「書き換えた…!?」

 

「フフフ……ハハハハハ…ハハハハハハ!!!」

 

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《ドン・サウザンドの桎梏》
通常罠
自分フィールド上に「CNo.」と名の付いたモンスターが存在する場合に相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターの効果は無効化され、攻撃力は0になる。また、このカードを相手ターンで発動した場合、そのターン内に相手に与える戦闘ダメージは倍になる。


<次回の最強カード>
《ヌメロン・ダイレクト》
通常魔法
フィールド上に「ヌメロン・ネットワーク」が表側表示で存在する場合に発動できる。自分のエクストラデッキから攻撃力1000以下の「ヌメロン」と名のついたモンスターエクシーズ4体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。



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第50話-地上の番人!No.1 ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム

遊士は遊馬とアストラルがナンバーズの探索を終えるのを待っている。彼は遺跡の外におり、遊馬とアストラルにデュエルを挑もうとする者がいれば撃退する役目を担っている。

 

「誰も来ねえな…。ま、いいけどよ。」

 

最初の数分こそ緊張感を持っていた遊士であったが、20分ほど誰も近づかないことを考えると、アストラルたちは慎重すぎたのではないかと思い始めた。

 

だが、気持ちが退屈に変わりかけていたことを、心配する必要はなくなった。

 

「ン!?」

 

誰かの足音がしたかと思い、デュエル庵の境内にある鳥居の方に視線を移すと、そこから2人組が出て来たのだ。

 

「こんなところに…寄り道…なんですか?」

「あぁ。挨拶をしておかなければならない人物がいてな。」

 

「お前は!!」

 

「久しぶりだな。草薙遊士。」

「クラウダー!!ヘッ。自分からやられに来るとはな、殊勝な心掛けだぜ。」

「相変わらずの態度だな。」

 

スーツに身を包んだホワイトが、少し怯えた表情で遊士を見る。遊士はたどたどしく、彼女を見る。

 

「ユキ……。お前。」

「私は…ユキではありません。ホワイトと言います。」

「ホワイト…だと?」

「はい。」

 

「遊士。今までお前は、彼女に夢を見させていたんだよ。忌まわしい夢をな。」

「何だと…。じゃあユキは、ユキだった時が、幻だっていうのかよ!!」

「そうだ。遊士。私がここに来たのは、お前にわかってもらうためだ。ホワイトをここに連れて来ることで、お前に、ホワイトの姿を、ホワイトの目を、見てもらおうと思ったのだ!」

「な……なに。」

 

遊士にとって、ユキの目は悔しいほどに透き通っていた。別に彼女が洗脳されているようには全く見えなかった。

 

以前会った時のユキの目のままなら、目の前のクラウダーを倒せば、彼女が戻ってくるのではないかと、希望のかけらのようなものがあったのだ。

 

「フッ。」

 

しかし、クラウダーが自分を蔑んでいるのを見ると、彼はある確信をもってユキに聞いた。

 

「ユキ。いや、ホワイトっつったか。お前、ここに俺を絶望させるためだけに来たのか?」

「いいえ。」

「だったら、何しに来たんだよユキ。」

「デュエルです。私が、あなたに引導を渡し、完全な別れを告げるために来ました。私はあなたを知りません。ですが、あなたと何かしらの因縁みたいなものがあるなら、それは…切る必要がある!」

「そうか。」

 

遊士は俯いた。そこから顔をあげるのに、果たしてどれだけの時間がかかるのかと、クラウダーは予想し始めていたが、間もなくして遊士は顔をあげた。

 

ユキに聞いた時に持っていた確信に満ちた顔を。

 

「俺の知っているユキなら、そうするはずだ。ただ人を陥れてやろうとか、絶望させようとか、そんなことをする奴じゃねえ!ユキ!!覚えてんだろ!?中学校の時にいじめられてた奴を助けたこととかよ!そういう、正義感のあるところ、全部!!」

「知りません。」

 

つっけんどんにそう答えたユキ。だが生徒会長の女のサツキが冷たい顔をしているのとは違う。フレーズこそ冷たくとも、遊士の言うように、人を嘲るような感じはない。

 

「いいぜ、だったらユキ!!デュエルだ!!俺が知っているお前を、思い出させてやる!」

 

彼はデュエルディスクを展開し、クラウダーを一瞥した。

 

「クラウダー。見ていやがれ。」

「いいや、残念だが、私には行くべきところがある。」

「何だと?お前、ユキが一人で戦わせて、不安にならねえのかよ?」

「それは…ある。だが、いつでも連絡は取れる。それに、我々には人手がない。」

「随分と冷たいことだな。」

「フッ。私はホワイトが勝つと、確信している。ホワイト。万が一何かあれば、いつでも私に連絡をするんだ。まあ、我々には作戦があるから、大丈夫だとは思うがな。」

 

「はい。」

 

ホワイトは一度頷くと、クラウダーはその場から姿を消した。

 

「いくぞユキ。」

「いきます!!」

 

 

デュエル!!

 

 

草薙遊士:LP4000

ホワイト:LP4000

 

 

※※※※※※

 

 

 

観月小鳥

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)《そよ風の精霊》(ATK0)

・(魔法・罠)なし

 

 

ドン・サウザンド

 

・LP4000

・手札4枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)《ヌメロン・ネットワーク》

 

 

「私の場に…《そよ風の精霊》が…?」

「そうだ。我はデッキから、カウンター罠、《ヌメロン・リライティング・エクシーズ》を発動したのだ。相手のモンスターエクシーズの特殊召喚を無効にし、それを破壊する。そして相手のデッキから選んだモンスター1体を、相手フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。その際、そのモンスターの効果は無効になる。」

「えっ…?デッキから…カウンター罠!?私だってデュエル初心者だけど、罠カードは、フィールドに伏せなければ発動できないはず!?それくらいは知って…」

「デュエル初心者だと?それで我に立ち向かおうとは、愚かな。これは神のデュエル!《ヌメロン・ネットワーク》の効果を発動した!1ターンに1度、デッキからヌメロンと名の付いたカード1枚枚を墓地に送り、そのカードの効果を適用することができるのだ。」

「《ヌメロン・ネットワーク》…!?」

「そう。このカードは、我のフィールドにカードがない場合、相手ターンのドローフェイズ時に、手札から発動できる!気が付かなかったか?」

 

その時、小鳥は自分がドローをした時に、辺り一面が紅いオーラに包まれたことを思い出した。

 

「そういうことだったのね、あれは。私はカードを1枚伏せて、ターンエンド。(2)」

<小鳥:伏せ1枚 ドン・サウザンド:伏せなし>

 

「我のターン!!(5)」

 

(私のフィールドの《そよ風の精霊》は攻撃力0。これじゃ…)

 

「我はこれで、ターンエンド。(5)」

「えっ!?また!?私のフィールドには攻撃力0のモンスターがいるのに!」

「さあ、早くするが良い。」

「ドローッ!!(3)」

 

侮られているのかと、強い力でカードを引く小鳥。しかしすぐに彼女は立ち止まった。

 

(《ヌメロン・ネットワーク》の効果は、1ターンに1度。ドン・サウザンドは…どこでカウンターを仕掛けて来るのか。あっ!この魔法カードを使ってみれば…)

「魔法カード、《成金ゴブリン》を発動!(2)」

 

 

《成金ゴブリン》

通常魔法

自分はデッキから1枚ドローする。その後、相手は1000ライフポイント回復する。

 

 

「私はカードを1枚引いて、相手は1000ポイントのライフを得る!」

「そうか。ならばカードを引くが良い。」

「カウンターは…しないのね。(3)」

 

 

ドン・サウザンド:LP4000→LP5000

 

 

「だったら私は場の《そよ風の精霊》をリリースして、《光神テテュス》をアドバンス召喚!(2)」

 

 

《光神テテュス》

効果モンスター

レベル5/光属性/天使族/攻撃力2400/守備力1800

自分がカードをドローした時、そのカードが天使族モンスターだった場合、そのカードを相手に見せて発動できる。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

「アドバンス召喚か。ならば我は《ヌメロン・ネットワーク》の効果を発動!デッキからカウンター罠、《ヌメロン・リライティング・アドバンス》を発動!」

 

 

《ヌメロン・リライティング・アドバンス》

カウンター罠

自分のモンスターカードゾーン及び魔法&罠カードゾーンに このカード以外のカードが存在しない場合、相手のモンスターがアドバンス召喚に成功した時、そのモンスターの召喚を無効にして破壊し発動できる。相手のデッキからレベル5以上のモンスター1体を選択して相手フィールド上に守備表示で特殊召喚する(相手のデッキにレベル5以上の特殊召喚可能なモンスターがいない場合、レベル4以下のモンスターを特殊召喚する)。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

 

「上級モンスターのアドバンス召喚を無効にし、我が選んだレベル5以上のモンスターを、効果を無効にして、守備表示で呼び出してもらう。」

「どうして!?《成金ゴブリン》に対しては何もカウンターを使わなかったのに、どうしてこの召喚を無効にしたの!?」

「当たり前だ。通常召喚は1ターンに1度しか行うことができない。それを潰してしまえば、新たなモンスターを呼ぶことは今の状況では困難だろうと判断したのだよ。さて、お前のデッキから呼び出すのは…《光神機(ライトニング・ギア)-桜花》だ!」

 

 

光神機(ライトニング・ギア)-桜花》:守備力1400

 

 

「くっ。また攻撃が…私はもう1枚カードを伏せて、ターンエンド!(1)」

<小鳥:伏せ2枚 ドン・サウザンド:伏せなし>

 

「我のターン!(6)」

 

(このターンも、何も仕掛けてこないつもりなの?)

 

小鳥がそう思ったのをまるで読んだかのように、ドン・サウザンドは既に持っていたカードのうちの1枚を魔法・罠カードゾーンへと差し込んだ。

 

「我は手札より、魔法カード、《ヌメロン・コール》を発動!」

「魔法カード!?」

「遊びは終わりだ。お前が哀れなデュエリストだということはわかった。ここで終わらせよう。このカードは墓地のヌメロンと名のついたカード2枚を除外し、デッキから、《ヌメロン・ダイレクト》を手札に加えることができる!そして手札に加えた、《ヌメロン・ダイレクト》を発動!」

 

 

《ヌメロン・ダイレクト》

通常魔法

フィールド上に「ヌメロン・ネットワーク」が表側表示で存在する場合に発動できる。 自分のエクストラデッキから攻撃力1000以下の「ヌメロン」と名のついたモンスターエクシーズ4体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。

 

 

「このカードは《ヌメロン・ネットワーク》が発動している場合、エクストラデッキから攻撃力1000以下のヌメロンと名のついたモンスターエクシーズを4体、我のフィールドに呼び出す!」

 

 

現れろ!この地上に、最初に降り立ったナンバーズたちよ!

 

《No.4 ゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリ》!

《No.3 ゲート・オブ・ヌメロンートゥリーニ》!

《No.2 ゲート・オブ・ヌメロン-ドゥヴェー》!

 

そして、No.1!

 

天を摩する地獄の門、堅牢なる扉開きし時、一抹の望みを捨てよ!ゲート・オブ・ヌメロン!エーカム!!

 

 

No.1~No.4:いずれも攻撃力1000

 

 

デュエル庵への階段を背景に、そこに突如として4つの門が聳え立った。それぞれ形が異なっており、パズルのようにしてお互いに嵌め合うことができそうである。

 

「ナンバーズ…1。」

「バトルだ。まずはNo.4 ゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリで、桜花を攻撃!」

「自分よりも守備力が高いモンスターに?」

 

門の形はそのままで、門の頂から放たれた閃光が桜花を襲うが、桜花は素早くそれをかわした。

 

「我は墓地に送られた速攻魔法、《ヌメロン・コール》の効果により、このターンの戦闘ダメージを0にする。」

「でも、この戦闘の意味は…」

「チャトゥヴァーリの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、ダメージ計算終了後、自分フィールドのヌメロンと名の付いたモンスターの攻撃力を2倍にする!」

 

 

No.1~No.4:攻撃力1000→攻撃力2000

 

 

紅色のフィールドが脈を打つと、4つの門は紅色のオーラを纏い、攻撃力を上昇させた。

 

「えっ!?どうして!?ゲート・オブ・ヌメロンには、オーバーレイユニットは…ないはず!」

「愚かな。これは神のデュエル。《ヌメロン・ネットワーク》の効果により、我の場のヌメロンと名の付いたモンスターエクシーズのオーバーレイユニットを使って発動する効果を、オーバーレイユニットなしで発動することができるのだ。」

「そんな!それじゃ、他のモンスターも…!?」

「そういうことだ。恐怖に戦きながら、散るが良い!No.3 ゲート・オブ・ヌメロン-トゥリーニの攻撃!」

 

「っ…!!桜花が!」

「そして、No.1~No.4は、全て同じ効果を持っている!トゥリーニのモンスター効果も発動!」

 

 

No.1~No.4:攻撃力2000→攻撃力4000

 

 

「これで壁モンスターは消え去った。終わりだ。No.2 ゲート・オブ・ヌメロン-ドゥヴェー!直接攻撃!」

 

2体のゲート・オブ・ヌメロンと同じように、一瞬で閃光が走り、小鳥の目の前の地面を切り裂き、爆発を起こした。地割れが起こり、積まれていたレンガはそこの溝に吸い込まれるように消えていった。

 

「フッ。呆気のない…ム!?」

 

しかし爆発の際に生じた煙がはけると、そこにはバリアに守られた小鳥が立っていた。

 

「こんなことで負ける訳にはいかない!!」

「罠カード……《エンジェル・ガード》…。」

 

 

《エンジェル・ガード》

通常罠

ライフポイントを半分払って発動することができる。発動ターンに発生する戦闘ダメージを0にする。このカードを発動したターンのエンドフェイズに、自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を自分フィールド上に守備表示で特殊召喚し、そのモンスターのレベルを1つ上げる。

 

 

「そう。このカードはライフを半分払って戦闘ダメージを無効にする!」

 

 

観月小鳥:LP4000→LP2000

 

 

「このターンのバトルダメージを無効に…か。だが、戦闘自体は有効だ。ならば、ドゥヴェーの効果を発動!自分フィールドのゲート・オブ・ヌメロンの攻撃力を2倍にする!」

 

 

No.1~No.4:攻撃力4000→攻撃力8000

 

 

「そして、ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム!直接攻撃だ!」

「くっ!《エンジェル・ガード》!!」

 

デュエルパッドが付いている方の左手を前に翳すと、再び小鳥をバリアが包んだ。

 

「戦闘ダメージはないけど。」

「そうだ!エーカムの効果により、ゲート・オブ・ヌメロンの攻撃力を2倍にする!」

 

 

No.1~No.4:攻撃力8000→攻撃力16000

 

 

「攻撃力16000が4体…!?」

「そうだ。絶望するが良い。1ターン長く生き永らえただけだ。我はこれで、ターンエンド。(5)」

「私は《エンジェル・ガード》のもう一つの効果を発動し、墓地から天使族モンスター1体を、レベルを1つ上げて呼び戻す!復活して、桜花!」

 

 

光神機(ライトニング・ギア)-桜花》:☆7

 

 

「今更何をしようが無駄だ。」

「私のターン。」

 

改めて小鳥が前に聳え立つ4つの門を見上げると、彼女の中には絶望感か、恐怖感か、何か、得体のしれないものがこみあげて来るのがわかった。

 

呼吸が上がっている。胸が熱くなっている。どういうことなのか、自分でもわからなかった。

 

「どうした?お前のターンだぞ。フフフ…絶望しているのか?いいのだぞ。ここで終わりにしても。お前の命は助かる。ただし、九十九遊馬の居場所を吐くことが、条件だがな。」

「遊馬…」

 

(遊馬は…遊馬だったら…この状況。攻撃力16000のモンスターが4体いるこの状況…遊馬…あきらめるのかな…?)

 

遊馬とアストラルが今、どういう状態なのか、彼女は思い出してみた。それを思い出すと、遊馬の日々の様子、何を言っていたか、どのようなデュエルをしていたか、それらも連鎖されて思い出されていた。

 

「かっとビング…」

 

「…?」

 

 

「かっとビング。遊馬だったら、ここで…諦めるはずない!だったら私も…諦めちゃいけない!!かっとビングよ、小鳥ーっ!!!ドローっ!(2)」

「なっ。まだ続けるというのか?」

「来たわ!墓地に存在する、《光神テテュス》をゲームから除外して、魔法カード、《エンジェル・トリック》を発動!このターン内に特殊召喚した天使族モンスターのレベルを1つ上げ、ライフを1000回復する!」

 

 

観月小鳥:LP2000→LP3000

 

 

「そして、ゲームから除外されたテテュスを対象に、永続罠、《奇跡の降臨》を発動!」

 

 

《奇跡の降臨》

永続罠

除外されている自分の天使族モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

 

「除外されたテテュスを特殊召喚する!さらに、エンジェル・トリックの効果で、レベルを1つアップさせる!」

「テテュスのレベルが7に。なるほど。お前の狙いは!」

「2体のレベル7のモンスターでオーバーレイ!!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

現れなさい!《No.76 諧調光師グラディエール》!!

 

 

《No.76 諧調光師グラディエール》(小説版)

エクシーズモンスター

ランク7/光属性/天使族/攻撃力2700/守備力2100

レベル7モンスター×2

このカード名の➃の効果は1ターンに1度しか使用できない。

➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスターとの戦闘では破壊されない。

➁:このカードの属性は、このカードがエクシーズ素材としているモンスターのそれぞれの属性としても扱う。

➂:このカードは、このカードと同じ属性を持つモンスターとの戦闘では破壊されず、

このカードと同じ属性を持つ相手モンスターが発動した効果では破壊されない。

➃:相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、対象のモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

巨大なキーボード状の剣を担ぎ、虹色の翼を生やした青い髪の少女のようなモンスターが現れた。そのモンスターが剣を一振りすると、数個の音符と、76という文字あ見えた。

 

「そうか。お前もナンバーズを持っていたのだったな。だが、たったの2700の攻撃力で、我がナンバーズに敵うものか。」

「バトル!グラディエール!ゲート・オブ・ヌメロン-エーカムを攻撃!」

「何?」

「この瞬間、墓地に送られた、《エンジェル・トリック》の効果発動!この効果でレベルを上げたモンスターがエクシーズ素材になった場合、そのモンスターは、戦闘ダメージを0にして、ダメージ計算終了後に、相手モンスターを破壊する効果を得る!」

「そんなことはわかっている!だが、モンスターとの戦闘ダメージが0になっても、モンスターは破壊される!それならば、一度の戦闘しか防げまい!」

 

だが、そのドン・サウザンドの発言とは異なりに、巨大な剣が、一方的にエーカムを破壊した。

 

「何っ!?」

「残念ね。もうゲート・オブ・ヌメロンは、攻略済みよ!」

「どういうことだ?」

「グラディエールは、同じ属性を持つモンスターとの戦闘では破壊されない!グラディエールは光属性!ゲート・オブ・ヌメロンとの戦闘では破壊されないわ!」

「何だと……。」

 

ドン・サウザンドは、効果の発動を宣言しなかったが、後方に控えている3体のゲート・オブ・ヌメロンが光を放った。

 

 

No.2~No.4:攻撃力16000→攻撃力32000

 

 

「攻撃力がどんなに上がっても、グラディエールで1体ずつ倒すわ!私はこれで、ターンエンド!(1)」

<小鳥:伏せなし ドン・サウザンド:伏せなし>

 

如何に攻撃力が上がろうとも、戦闘では負けることはない。グラディエールの存在により、小鳥は自分の中で自信がみなぎって来るのを感じていた。油断はしてはいけない。だが、気持ちに嘘はつけない。

 

「少しは楽しませてくれるようだな。ドロー!(6)ならばお前には、とっておきのカードを見せてやろう。我は手札から魔法カード、《ヌメロン・リチュアル》を発動!《ヌメロン・ネットワーク》が発動している場合、墓地からヌメロンと名の付いたモンスターエクシーズを特殊召喚する!蘇れ、《No.1 ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム》!!」

 

 

《No.1 ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム》:攻撃力1000

 

 

「さらに、この効果で特殊召喚したモンスター及び、我のフィールドの他のモンスターのレベルを11として、それらのモンスターで、エクシーズ召喚を行う!」

「エーカムと、他のモンスターって…ナンバーズ1から4でエクシーズ召喚を!?」

「その通りだ。我はレベル11となったナンバーズ1から4で、オーバーレイ!4体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

出でよ、No.1000!混沌を導くは、愚者の罪業。縋りし夢は、儚き幻。虚ろの王よ、闇を以て、光に鉄槌を!!夢幻虚王ヌメロン!!

 

 

《夢幻虚王ヌメロン》:攻撃力1000

 

 

「ナンバーズ…1000、夢幻王…ヌメロン!?」

「フッフッフッ。」

 

 

(次回に続く)





<今日の最強カード>
《ヌメロン・ダイレクト》
通常魔法
フィールド上に「ヌメロン・ネットワーク」が表側表示で存在する場合に発動できる。 自分のエクストラデッキから攻撃力1000以下の「ヌメロン」と名のついたモンスターエクシーズ4体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。


<次回の最強カード>
《No.1000 夢幻虚王ヌメロン》
モンスターエクシーズ
ランク11/光属性/悪魔族/攻撃力1000/守備力1000



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第51話-熱さを取り戻せ!遊士vsホワイト

観月小鳥

 

・LP3000

・手札1枚

・(モンスター)《No.76 諧調光師グラディエール》(ATK2700)(ORU2)

・(魔法・罠)なし

 

 

ドン・サウザンド

 

・LP4000

・手札5枚

・(モンスター)《No.1000 夢幻虚王ヌメロン》(ATK1000)(ORU4)

・(魔法・罠)なし

 

 

「夢幻虚王…ヌメロン!?」

「ここまではよく頑張ったと言える。だが、お前はここで終わりだ。」

「そんな!グラディエールは、同じ属性を持つモンスターの効果では破壊されない!」

「確かにヌメロンの属性は、光属性。だが…我はオーバーレイユニットを1つ使い、効果を発動する!相手フィールド上のモンスター1体を持ち主の手札に戻す!」

 

鞭のような腕を振るうと、その衝撃波を受けたグラディエールは、光の粒となって消え去った。

 

「そんな!手札に…!!」

「そして、ヌメロンの攻撃力は、オーバーレイユニット1つにつき、1000ポイントアップする!」

 

 

《No.1000 夢幻虚王ヌメロン》:攻撃力4000

 

 

「なっ…」

「ダイレクトアタック!!」

 

高速で振り下ろされたその腕に、小鳥は成す術もなく払われてしまった。

 

「きゃあああっ!!」

 

 

観月小鳥:LP3000→LP0

 

 

「遊……馬……、ごめん……。」

「フッ。人間風情が、出過ぎた真似をするからだ。お前のナンバーズは頂いていく!それ以外のものには、用はない。」

 

小鳥は手に握っていたナンバーズがドン・サウザンドに奪われたと確信すると、意識を手放した。

 

 

※※※※※※

 

小鳥とドン・サウザンドがデュエルを始めるのとほぼ同時に、遊士とホワイトはデュエルを始めていた。

 

「いくぜ、ユキ!俺のターン!俺は手札から、《バルキリー・ナイト》を召喚!(4)」

 

 

《バルキリー・ナイト》

効果モンスター

レベル4/炎属性/戦士族/攻撃力1900/守備力1200

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は「バルキリー・ナイト」以外の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地の戦士族モンスター1体とこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地からレベル5以上の戦士族モンスター1体を選択して特殊召喚することができる。

 

 

「俺はこれで、ターンエンド!(4)」

「私のターン!(6)私は手札から、《吹雪の精霊(ブリザード・スピリット)Lv.3》を召喚!(5)そして、魔法カード、《レベルアップ!》を発動!(4)現れなさい!《吹雪の精霊(ブリザード・スピリット)Lv.5》」

 

 

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効果モンスター

レベル5/水属性/天使族/攻撃力2000/守備力2000

 

 

青いレースを身に纏った青いロングヘアの女性のようなモンスターが、フィールドに現れた。

 

「ヘッ。やっぱりユキ。お前は、レベルモンスターを使うみたいだな?」

「やっぱりって……どういうことですか?」

「俺の知ってるお前も、レベルモンスターを使っていたんだよ!スイーツデッキだったけどな、お前のは!!」

「そんな適当なことを言って、私を動揺させようとしても、そうはいきませんよ!」

「んなつまんねえことを……それならそう思ってな。」

 

彼が残念そうにため息をつくと、ホワイトは勢いよく《バルキリー・ナイト》を指さした。

 

「バトル!!《バルキリー・ナイト》を攻撃!」

「……《バルキリー・ナイト》!!一瞬で凍らされちまった。」

 

 

草薙遊士:LP4000→LP3900

 

 

「カードを1枚伏せます。(3)そして、《吹雪の精霊(ブリザード・スピリット)Lv.5》のモンスター効果を発動!戦闘を行ったエンドフェイズにこのカードを墓地に送り、デッキから、ブリザード・スピリットLv.7を特殊召喚します!!」

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット)Lv.7》:攻撃力2700

 

 

Lv.5との違いはと言えば、ティエラを被っているくらいだろうか。その瞳に映る冷たさは、遠くからでも良くわかる。

 

「ターンエンドです!」

<遊士:伏せなし ホワイト:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(5)《切り込み隊長》か。よし!!いくぜ!《切り込み隊長》を召喚!(4)」

 

 

《切り込み隊長》:攻撃力1200

 

 

「その効果により、もう1体の《切り込み隊長》を特殊召喚!」(3)

「切り込み……隊長。」

「ユキ。こいつらが2体揃うとどうなるんだ?」

 

彼女は、ホワイトだと反論することはないが、不服そうに遊士を見て、すぐに答えた。

 

「切り込みロックですか?」

「そうだ。《切り込み隊長》の効果で、俺の他の戦士族モンスターを攻撃できない。それが2体で、お互いを守り合ってるって訳だ!俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!(2)」

<遊士:伏せ1枚 ホワイト:伏せ1枚>

 

「私のターン!!(4)ブリザード・スピリットLv.7のモンスター効果を発動!相手フィールド上の表側表示モンスター全ての効果を無効にする!」

「えっ!?ちょっと、おい!!」

 

右手の指先から出た吹雪が2体の《切り込み隊長》を包み込む。2体とも寒そうにすることこそないが、全身が真っ青になってしまった。おそらく、効果が無効になったことを表しているのだろう。

 

「これで、ブリザード・スピリットで攻撃ができる。私はさらに、《ブリザード・ウォリアー》を召喚!(3)」

 

 

《ブリザード・ウォリアー》

効果モンスター

レベル3/水属性/戦士族/攻撃力1400/守備力400

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、相手のデッキの一番上のカードを確認してデッキの一番上または一番下に戻す。

 

 

「《吹雪の精霊Lv.7》と《ブリザード・ウォリアー》で、2体の《切り込み隊長》を攻撃!」

「なにっ!ぐあっ!」

 

 

草薙遊士:LP3900→LP2400→LP2200

 

 

「さらに、《ブリザード・ウォリアー》の効果を発動!相手モンスターを戦闘で破壊した場合、相手のデッキの一番上のカードを確認して、デッキの一番上か下かに置く!」

「へぇ…俺のデッキの一番上か。ほらよ。」

 

遊士が彼女にそのカードを見せた。かなり遠かったはずだが、それでもホワイトはそのカードのイラストを少し見ただけで、それが何だかわかったようだった。

 

「《ビッグ・シールド・ガードナー》…」

「そうだ。攻撃力100。んでもって守備力は…」

「2600。」

「お…おお。そうだ。」

 

彼は自分のカードの情報が見られているはずなのだが、不思議と安心していた。

 

「ならデッキの一番上で。」

「了解だぜ。」

「ターンエンド。(3)」

<遊士:伏せ1枚 ホワイト:伏せ1枚>

 

「俺のターン!(3)」

「まだやるつもりですか?もう決着はついていますよ!」

「え?何でだよ?」

「《ビッグ・シールド・ガードナー》は、攻撃を受けた場合、攻撃表示になる効果がある!《ブリザード・ウォリアー》で攻撃すれば、私は1200のダメージを受けますが、それでも、《ビッグ・シールド・ガードナー》は攻撃表示になります。けれど、その攻撃力はわずかに100!!」

「へぇ、やけに詳しいじゃんか。まるで、何回か戦ってきたみたいだな?」

 

その言葉の選択にまたイライラするホワイトだが、なぜ自分がその効果を知っているのかが気になった。

 

デュエルの前、ホワイトはクラウダーから彼のデッキのカードリストを見せてもらっていた。何枚か、警戒すべきカードを言われたはずなのだが、それをあまり覚えていない。それは忘れてしまったのではない。彼女の中の、既知の領域と未知の領域の境目がどこなのか、それを…忘れてしまっているのだ。

 

(私は…知っているの……?)

 

「俺はモンスターをセットして、ターンエンドだ。(2)」

<遊士:伏せ1枚 ホワイト:伏せ1枚>

 

「私のターン!(4)なるほど。そのモンスターはひょっとしたら、《ビッグ・シールド・ガードナー》じゃないかもしれませんね。」

「だったら…どうする、ユキ?」

「魔法カード!《ブリザード・プレッシャー》!」

 

 

《ブリザード・プレッシャー》

通常魔法

 

 

「自分フィールドの水属性モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで800ポイントアップさせます!」

 

 

《ブリザード・ウォリアー》:攻撃力2200

 

 

「これなら、どんな順番で攻撃しようと、あなたのライフを0にできる!まずは望み通り、ブリザード・スピリットで、裏側守備表示モンスターを攻撃!」

 

被っているティエラの宝石の部分から吹雪が放たれ、裏側守備表示の《ビッグ・シールド・ガードナー》を容易く吹き飛ばした。

 

「わっ!《ビッグ・シールド・ガードナー》が!!」

「素直に伏せていたんですね。でも、《ブリザード・ウォリアー》の攻撃力は2200!ダイレクトアタック!」

「そいつを待っていたぜ、ユキ!罠カード発動!《エヴォルブ・サクリファイス》!!」

「な…!?」

 

 

《エヴォルブ・サクリファイス》

通常罠

相手モンスターの直接攻撃宣言時、自分の手札を1枚捨て、自分の墓地に存在する同じ種族のモンスター2体をゲームから除外して発動する。除外したモンスターと同じ種族のレベル7もしくは8のモンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、次の自分のターンのエンドフェイズに破壊される。

 

 

「手札を1枚捨てて、(1)自分の墓地から戦士族モンスター2体を除外し、そのモンスターと同じ種族のモンスターをデッキから特殊召喚する!」

「上級モンスターをデッキから呼び出す!?」

「そうだ!俺は墓地から《切り込み隊長》1体と、《ビッグ・シールド・ガードナー》1体を除外して、いくぜ!こいつ見て、目を覚ましやがれ!!《剣聖-ライジング・ソード》!!」

 

遊士の目の前の円陣から現れたのは凛々しい姿のライジング・ソード。

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》

通常モンスター

レベル7/光属性/戦士族/攻撃力2400/守備力2000

未知の力を持った剣聖。その力は、昇華され続けるといわれている。

 

 

「ライジング……ソード。これは…クラウダーさんがくれた注意すべきカードリストの中にあった…」

 

そう言って、ホワイトはライジング・ソードからはわざと目をそらした。

 

「へぇ、そんなこと教えてもらっているのか。あいつも、何だかんだ言って、警戒してんだな。ユキ、知ってんだろ。こいつ。」

「私は…そんなモンスターは…知りません。」

 

彼女がライジング・ソードから目を背けているのに気が付いた遊士はホワイトに言い寄った。

 

「ユキ!目を逸らすなよ!しっかり見ろ!このライジング・ソードを!」

「私は…そんなモンスターは…知らない!知らないの!モンスター効果発動!ブリザード・スピリットLv.7は、戦闘でモンスターを破壊したエンドフェイズに墓地に送ることで、デッキからLv.9を特殊召喚することができる!」

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット)Lv.9》:攻撃力3100

 

 

青いドレスに身を包み、黄金のティエラに、透き通ったブルーの錫杖を持ち、精霊というよりも、法王なのかという感じを受ける。

 

「まだレベルアップしやがるのか!」

「そして、ブリザード・スピリットLv.9の効果発動!相手フィールド上のモンスターの効果を、全て無効にする!!凍てつきなさい!」

 

 

パーフェクト・ブリザード!!

 

 

通常モンスターであるためか、ライジング・ソードはロングソードを振り払ってその吹雪を受け流した。

 

「わかってんじゃねえか、ユキ!こいつの力を!!お前は、ライジング・ソードが通常モンスターだとわかっているのに、そんなことをしたのは、こいつの力を…覚えてるんだ!そうだろう!?」

「ターンを終了する!!(3)」

<遊士:伏せなし ホワイト:伏せなし>

 

 

《ブリザード・ウォリアー》:攻撃力2200→攻撃力1200

 

 

《ブリザード・プレッシャー》の効果で、エンドフェイズに対象になった《ブリザード・ウォリアー》の攻撃力は相手に戦闘ダメージを与えられなかった場合1000ポイント下がってしまうのだが、そんなことを説明する余裕は、ホワイトにはなかった。ライジング・ソードの存在が出てからというもの、元々白い顔ではあるが、さらに血色が悪く見え、発汗を起こし始めている。

 

「ユキ。そのブリザード・スピリットってのが、お前がクラウダーから受け取ったカードだっていうのなら、そいつは俺が叩き潰す!俺のターン!!(2)」

 

「あ…あれ…」

 

彼がドローする軌跡は、ユキにも容易に捉えることができた。

 

「いくぜ!装備魔法、《団結の力》!ライジング・ソードの攻撃力は、800ポイントアップする!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400→攻撃力3200

 

 

「そんな!!ここで《団結の力》を引き当てた!?」

「バトルだ!ライジング・ソード!!ブリザード・スピリットLv.9を攻撃だ!」

 

 

ユニオン・ソード・ブレイカー!!

 

 

ホワイト:LP4000→LP3900

 

 

「ヘッ。俺の切り札の力だぜ!見たか!」

 

 

(切り札……。そういえば、私、クラウダーさんから。)

 

 

------

 

 

ホワイトが不安を覚える時には、もう既にクラウダーのミッションは、終わりを迎えつつあったのだ。

 

そう。クラウダーが、2人の因縁に入り、デュエルをするのは、彼がホワイトを心配し始める、少し前のことであった。

 

一人の青年が佇んでいる。彼はその星々の瞬く空間で、踏み慣れない地に立ち、目の前にあるいくつかの石板を眺めている。石板に描かれているのは、竜のような生物。そしてそれが何なのか、彼には見当がついている。

 

彼が少し視線を上に向け、パイロットスーツ越しに星々を眺めていると、電子音が聞こえてきた。

 

「カイト様!エネルギー反応あり!来ます!!」

「いよいよか。」

 

黄色の光が目の前の地に着いたかと思うと、その光の中からは、バリアンの戦士の一人、ミザエルが立っていた。

 

「ミザエル。」

「カイト。やはり貴様もここに来たか。」

「ああ。俺たちにもはや語る言葉は不要だ!」

「そのようだな!!決着をつけよう!どちらが真のギャラクシーアイズ使いか、それを決めるために!!!」

 

「待て!!」

 

ミザエルが手を上に掲げるのと同時に、彼らよりも10歳ほど上の年齢と思しき男性の声が響き渡った。

 

「ン!?」

 

「初めまして。」

 

「貴様は…確か、ヘヴンズ・チルドレンの。」

「ほぉ、ミザエル。覚えていてくれているのか。それは光栄だな。私の名前はクラウダー。ヘヴンズ・チルドレンの一人だ!」

 

宇宙空間のの中マントで過ごしているというのは常人ではないと思った次の瞬間、カイトはあることを思い出した。

 

「貴様…なぜここが!!」

「そんなのは当然、デュエルに勝って聞き出したからだ。ドロワにね。」

「ということは、貴様、ドロワを!!」

「彼女は無事だ。私は必要以上な殺戮はしないタイプでな。」

 

カイトが舌打ちをすると、今度はミザエルが一歩前に出た。

 

「何の用だ?我々の邪魔をするのはやめてもらおうか!!」

「邪魔…か。私からしてみれば君たちの方が邪魔だがな。地上ではドン・サウザンドがその力を広げつつある。ヌメロン・コードの力まで利用させる訳にはいかない。」

「ほぅ。それで貴様は、俺たちのうちどちらかが覚醒したヌメロン・ドラゴンを手に入れることがわかり、邪魔をしに来たということか。ヌメロン・ドラゴンが手に入れば、ナンバーズの力を得るのは目前だからな。」

「そうだ。カイト、ミザエル。お前たちが真のギャラクシーアイズ使いを決めるのは結構だが、私にはナンバーズが必要なのだ。今ドン・サウザンドに利用されてもらっては困るのだ。」

 

「ミザエル。どうやらお前とのギャラクシーアイズ使いを決める戦いは、こいつを倒してからになりそうだ。」

「フッ、奇遇だな、カイト。私も同じことを言おうとしていた!」

 

「2人がかりでかかって来るか。いいだろう。私ももとよりそのつもりだ!!いくぞ!」

 

「デュエル!!!」

 

 

天城カイト:LP4000

ミザエル :LP4000

クラウダー:LP4000

 

 

「バトルロイヤル形式だが、数の上は私が不利だ。私の先攻でいかせてもらおう!私のターン!カードを3枚伏せてターンエンド!」(2)

 

「伏せカード3枚か。何を伏せているかは知らんが、そんなものに怖気づく俺ではない!ミザエル!まずは俺からいかせてもらう!!」

「ああ、いけっ!カイト!!」

「俺のターン!俺は儀式魔法、《光子竜降臨》を発動!手札の《フォトン・チャージマン》をリリースし、《光子竜の聖騎士(ナイト・オブ・フォトン・ドラゴン)》を儀式召喚!」

 

 

《光子竜降臨》

儀式魔法

「《光子竜の聖騎士(ナイト・オブ・フォトン・ドラゴン)》」の降臨に必要。自分の手札・フィールド上から、レベルの合計が4になるようにモンスターをリリースしなければならない。また、自分のメインフェイズ時に墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。レベルの合計が4になるように自分の墓地のモンスターをゲームから除外し、手札から「光子竜の聖騎士」1体を儀式召喚扱いとして特殊召喚する。

 

 

光子竜の聖騎士(ナイト・オブ・フォトン・ドラゴン)》:攻撃力1900

 

 

「そしてこのモンスターをリリースして、デッキからこのモンスターを呼び出す!」

 

 

闇に輝く銀河よ。希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ、《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》!!

 

 

「早速来たか、ギャラクシーアイズ!」

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!(1)」

(ドロワとヘヴンズ・サードのデュエルも、全てデータは持っている。奴らのデッキのキーカード、あれを封じれば、デュエルの戦力を大幅に削ることができる!)

 

「次は私だ!私のターン!カイトの場に、ギャラクシーアイズが存在することにより、《限界竜シュバルツシルト》を特殊召喚!」(4)

 

 

《限界竜シュバルツシルト》:攻撃力2000

 

 

「シュバルツシルト…」

「このモンスターは相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚が可能!さらに私は魔法カード、《エルゴスフィア》を発動し、デッキから《限界竜シュバルツシルト》を手札に加えて、再び特殊召喚!!(3)」

 

 

《限界竜シュバルツシルト》:攻撃力2000

 

 

「レベル8のモンスターが2体…だと!?」

「私は、2体のレベル8のモンスターで、オーバーレイ!!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 

宇宙を貫く雄叫びよ、遥かなる時をさかのぼり、銀河の源よりよみがえれ! 顕現せよ、そして我を勝利へと導け!《No.107 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)》!!

 

 

《No.107 銀河眼の時空竜》:攻撃力3000

 

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド(2)」

<クラウダー:伏せ3枚 カイト:伏せ1枚 ミザエル:伏せ1枚>

 

「なるほど。お前たちはこのデュエルがどのようなもので、誰と戦っているのかということを、しっかりとわきまえているようだな。私のターン、ドロー!(3)」

 

カイトは待っていたと言わんばかりに「この瞬間!!」と声を張り上げてアクティベートスイッチを押した。

 

「罠カード、《フォトン・ディジグネイター》を発動!」

 

 

《フォトン・ディジグネイター》

通常罠

 

 

「このカードは俺の場に攻撃力2000以上のフォトンモンスターが存在する場合に発動できる罠カード!カード名を1つ宣言し、そのカードが相手の手札またはデッキにある場合、そのカードを全てゲームから除外する!その後、俺のデッキからも、同名カードを除外する!」

「何!?私の手札とデッキから宣言されたカードを除外するだと?」

「そうだ!ゴーシュやドロワ、ヘヴンズに負けたデュエリストたちの思いを、俺は無駄にはしない!俺は、《Heaven's Ritual》を宣言!」

「Heaven's Ritualか。」

「それが奴らの…キーカード…。」

 

だが、一瞬不敵な笑みを浮かべたクラウダーがデッキを掲げ、カイトにデッキのリストと手札を見せると、

 

「何…!?Heaven's Ritualがないだと!?」

「我々はもはや数が少ないからな。作戦を練らせてもらったよ。私のデッキには、Heaven's Ritualは入っていない!」

 

間もなくしてデッキリストは消えてしまった。カイトは、それでもHeaven'sと名の付いたカードが数枚あったことは見たが、主にどんなカードがあったかまでは、頭に入れることができなかった。

 

「さあ!《フォトン・ディジグネイター》には、失敗した時のデメリットがあるはずだ。発動時に対象としたフォトンモンスターは破壊される!消えてもらおう!ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン!!」

 

一瞬にしてカイトの目の前のギャラクシーアイズが砕け散った。

 

「カイト!!大丈夫か!」

「クッ。」

(そんなバカな。なら奴はどうやって俺たちに…)

 

カイトが視線を落とすと、その視線は、クラウダーの足元に向けられた。伏せカードが3枚ある。

 

(まさか…)

 

 

「カイト。残念ながら、伏せカードでもない。本当に私のデッキには、Heaven's Ritualは入っていない。だがお前がそんなに私の伏せカードに興味を持っているというのなら、発動しよう。罠カード、《エクシーズ・ピクシー》を2枚発動!」

 

 

《エクシーズ・ピクシー》

永続罠

このカードは発動後モンスターカード(魔法使い族・闇属性・星1・攻0/守0)となり、自分フィールド上に特殊召喚される。このカードはリリースすることはできず、シンクロ素材にもできない。「エクシーズ・ピクシー」2体を同時にエクシーズ素材にする場合、そのうち1体を2体分のエクシーズ素材として扱うことができる。

 

 

「何!?罠モンスター!?」

「このカードは…ドルベとベクターが戦った、ホワイトというデュエリストが持っていた……」

「ホワイトだと!?お前の仲間……!」

「フッ。《エクシーズ・ピクシー》の効果発動!エクシーズ・ピクシー同士をエクシーズ素材とする場合、片方を2体分の素材にすることができる!私は3体分となった、《エクシーズ・ピクシー》2体でオーバーレイ!」

 

 

天空より舞い降りし運命の王よ。戦いの記憶を破壊し、この地に新たなる夜明けをもたらせ!《破数王-ヌメロン・バスター》!!

 

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》

エクシーズモンスター

ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100

レベル1モンスター×3

このカードは「No.」と名のついたモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、相手フィールド上に存在する「No.」と名のついたモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターを破壊して、そのモンスターの攻撃力分だけこのカードの攻撃力をアップし、その効果を得る。この効果は相手ターンでもこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで発動できる。

 

 

「ヌメロン・バスター!?」

 

「これがホワイトという奴のエースカードだとすると…まさか。」

 

「そう。我々は、お互いに、エースカードを入れ替えさせてもらった!私がドロワにログを残させたのもわざとだ。彼女を倒さなかったのは、温情ではない。作戦だ。このデュエルの前から、戦いは始まっていたのだよ!!」

 

 

(次回に続く)

 

 

 




<今日の最強カード>
《No.1000 夢幻虚王ヌメロン》
モンスターエクシーズ
ランク11/光属性/悪魔族/攻撃力1000/守備力1000


<次回の最強カード>
《稲妻の剣》
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップし、フィールド上に表側表示で存在する全ての水属性モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。


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第52話-目の前の真実

草薙遊士

 

・LP2200

・手札1枚

・(モンスター)《剣聖-ライジング・ソード》(ATK3200)(+)

・(魔法・罠)《団結の力》(+)/伏せ1枚

 

 

ホワイト

 

・LP3900

・手札3枚

・(モンスター)《ブリザード・ウォリアー》(ATK1200)

・(魔法・罠)伏せ1枚

 

 

「ユキ!!目を覚ましやがれ!お前が使うカードは…それじゃねえんだ!」

「少し優勢になったくらいで!それに!!エンドフェイズには、ライジング・ソードは破壊される!」

「そりゃわかってるぜ。ターンエンドだ。」

 

剣を構えた状態のまま、ライジング・ソードはその場で消滅した。

 

「草薙遊士!私はあなたに勝利する!私のターン!(4)私は、《ブリザード・ウォリアー》で、プレイヤーに直接攻撃!」

 

攻撃力が低下しているとは言え、手に持っている氷のランスを勇ましく振り上げ、そのモンスターは遊士に襲い掛かる。

 

「そうはいかねえ!罠カード、《戦士の帰還》を発動!」

 

 

《戦士の帰還》

通常罠

自分の墓地に存在するレベル4以下の戦士族モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。次の自分のターンのスタンバイフェイズ時に、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「俺の墓地から戦士族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する!蘇れ、《バルキリー・ナイト》!!」

 

 

《バルキリー・ナイト》:守備力1200

 

 

「守備力1200…」

「《ブリザード・ウォリアー》の攻撃力と同じだ。これなら…」

「私は罠カード、《バトル・アドバンス》を発動!」

 

 

《バトル・アドバンス》

通常罠

相手がバトルフェイズ中にモンスターを特殊召喚したターンに発動することができる。自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして、そのモンスターよりも1つまたは2つレベルが高く、リリースしたモンスターと同じ属性の「Lv.」と名の付いたモンスター1体を自分の手札またはデッキからアドバンス召喚する。

 

 

「このカードの効果で、水属性のモンスターをリリースして、そのモンスターよりも2つまで高いレベルを持ったレベルモンスターをデッキからアドバンス召喚する!」

「デッキからモンスターをアドバンス召喚だと!?」

「そう。これで私は《ブリザード・ウォリアー》をリリースしてデッキから、ブリザード・スピリットLv.5をアドバンス召喚する!」

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット) Lv.5》:攻撃力2000

 

 

「またこいつか!!」

「Lv.5の攻撃力なら!そのモンスターを倒せる!消えなさい!」

 

遊士には彼女が冷静でないのはすぐにわかった。彼女の遊士の熱さを恐れる瞳が、そう思わせた。目の前のデュエルを早く完結させたい。ライジング・ソード。その存在を、認めてはならない。そう思っているのは…すぐにでもわかったのだ。

 

「お前、そんなにビビってんのかよ!」

「は…?」

 

明らかに声は震えている。

 

「俺のモンスターの効果なんかお構いなしで、とにかく俺のライフを0にしたいんだろ?」

「当然です!あなたたちを倒すのが、私の務め!!」

「ちげえだろ!強がるんじゃねえ!ユキ!素直になれよ!!お前は、知ってんだよ!ライジング・ソードの力を!覚えているんだよ!お前は…

 

 

俺が一緒にいた過ごした仲間の…ユキなんだよ!」

 

 

「私はホワイトだ!!ユキじゃない!」

「だったら、もう一度こいつの力を、見せてやるぜ!墓地に送られた、《バルキリー・ナイト》の効果を発動!このカードが戦闘で破壊された時、墓地からこのカードと、戦士族モンスター1体を除外して、レベル5以上の戦士族モンスター1体を、特殊召喚する!」

「レベル5以上…!?」

「俺は墓地から《切り込み隊長》とこのモンスターを除外して…俺が呼ぶのは当然!《剣聖-ライジング・ソード》!!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400

 

 

「ライジング・ソード…!!またそのモンスターを……」

「あぁ、こいつの力…もう一回見せてやる!」

「そんなことは…そんなことはっ!!」

 

ホワイトは手札のカード1枚を素早く魔法・罠カードのスロットに差し込んだ。考えている暇などなかった。とにかく、安定した状態を作らなければ、少しでも。

 

「魔法カード、《四次元の墓》を発動!(3)」

 

 

《四次元の墓》

通常魔法

自分の墓地に存在する「LV」を持つモンスター2体を、自分のデッキに加えてシャッフルする。

 

 

「墓地からレベルモンスター2体をデッキに戻す!私はブリザード・スピリットのLv.3とLv.7をデッキに戻す!そして、このエンドフェイズに、Lv.5の効果で、自身を墓地に送って、デッキからLv.7を特殊召喚!」

 

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット) Lv.7》:攻撃力2700

 

 

「攻撃力なら、ライジング・ソードを上回っている!」

「だから言ったろ!いや、知ってんだろ!こいつが起こす、奇跡のドローを!俺の…ターン!(2)さらに、《戦士の帰還》の効果で、もう1枚ドローッ!(3)」

「続けて2枚を!?」

 

「装備魔法、《孤毒の剣》を発動!(2)」

 

 

《孤毒の剣》

装備魔法

自分フィールドのモンスターにのみ装備可能。

①:「孤毒の剣」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。

②:装備モンスターの元々の攻撃力・守備力は、相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時のみ倍になる。

③:自分フィールドに装備モンスター以外のモンスターが存在する場合にこのカードは墓地へ送られる。

 

 

「装備モンスターが相手モンスターとバトルをする時、攻撃力と守備力が2倍になる!」

「なっ…倍!?」

「いくぜ!《剣聖-ライジング・ソード》で、ブリザード・スピリットを攻撃だ!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400→攻撃力4800

 

 

「攻撃力…4800!?」

「くらえ、クラウダーのカードォォォ!!」

 

 

ホワイト:LP3900→LP1800

 

 

「そんな…」

「カードを2枚伏せて、ターンエンド!(0)」

<遊士:伏せ2枚 ホワイト:伏せなし>

 

衝撃によって吹き飛ばされたホワイトを見た遊士は、ホワイトに駆け寄る訳ではなく、その場から言い放つ。

 

「立て!立てよユキ!!ライフが残ってんのに、おねんねする…そんなデュエリストじゃねえだろ!?」

「私は…負け…ない。こんなところで…!!私のターン!(4)」

 

ずるずると這い上がるようにして自分の身を起こしたホワイトがカードを引いた瞬間、彼女の目の色が変わったのが、遊士にもわかった。

 

(このカードは……クラウダーさんが私に……このカードの持つ力は非常に強力だと…私に言っていた。でも…ここで勝つためには…たとえ非常に強力だとしても…いや、だからこそ!!)

 

彼女は目の前にいるデュエリストに目を向けた。その人物は…自分が知っている者なのか。今のホワイトには、それがわからない。ユキ、という言葉が何を指すのか。自分に関係があるのか。関係はあるのだろうが、どう関係するのか…わからない。

 

わからないからこそ…彼女が今すべきことは…自分がこの者との関係を絶つ、それかと思った。

 

「ユキ…!?」

「あなただけが…望み通りのカードを引ける訳ではないわ。」

 

彼女はつぶやくようにして、静かにそう言った。まるで何かが乗り移ったかのように、彼女の瞳から、生気がなくなったように見えた。

 

「ユキ…おい。」

「魔法カード、《レベル調整》を発動!(3)」

 

 

《レベル調整》

通常魔法

相手はカードを2枚ドローする。自分の墓地に存在する「LV」を持つモンスター1体を、召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃できず効果を発動及び適用する事もできない。

 

 

「自分の墓地からレベルモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する!蘇れ、|()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()L()v().()7()!!」

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット) Lv.7》:攻撃力2700

 

 

「そして相手は、2枚のカードをドローする!」

「いいのかよユキ。俺のフィールドに、ライジング・ソードがいるのに。」

「ええ。構わないわ!このターンで決着をつけるから。」

「へぇー、そうかよ。なら…ドローッ!(2)」

 

弧を描くドローにをものともせず、ユキはフィールドにいるブリザード・スピリットを指で掴んだ。

 

「私はブリザード・スピリットLv.7をリリースして、手札から《吹雪の精霊(ブリザード・スピリット) Lv.MAX》を特殊召喚!!(2)」

 

 

吹雪の精霊(ブリザード・スピリット) Lv.MAX》

効果モンスター

レベル12/水属性/天使族/攻撃力3500/守備力3500

 

 

「レベル…マックスだと!?」

 

それまでは人の形と言うことができたものであったが、明らかに有形ではなく、姿形を捉えることができない。煙のようなものと、紅くギラギラと光る眼以外のものは、何も捉えることができないのだ。

 

「実体が…ねえのか?」

「精霊…なんていうものは、目で捉えることはできない。真実は…目に映っていないものにある!」

「は?何言ってんだ?目で見えているものが真実に決まってんだろうが!」

「違う!今私の目の前に映っている…草薙遊士。あなたは…真実ではないっ!!《吹雪の精霊(ブリザード・スピリット) Lv.MAX》の効果発動!相手フィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果を、エンドフェイズまで無効にする!!」

 

 

ブリザード・ハザード!!

 

 

吹雪の大津波とでもいうべきか。そのようなものが遊士と遊士のモンスターに吹き付けた。ライジング・ソードは手に持った剣でそれを受け流そうとするが、その剣が凍ってしまった。

 

「全てのカードだと!?」

「これで当然、あなたの《孤毒の剣》の効果も使えない!!バトル!!《吹雪の精霊(ブリザード・スピリット) Lv.MAX》で、《剣聖-ライジング・ソード》を攻撃!」

 

 

クリティカル・ブリザード!!

 

 

 

実体こそ見えないが、何かを持っているのか、さきほど瞳が見えた位置が顔だとすれば、そのやや右下(つまり右腕)のところから渦を巻いた吹雪がライジング・ソードに直撃し、破壊された。

 

「ライジング・ソード!!」

 

 

草薙遊士:LP2200→LP1100

 

 

ライジング・ソードが吹き飛ばされたのを見た遊士はブリザード・スピリットの頭上から天空に向かって、まるで救援信号でも上げるかようにして白い閃光が上がったのが見えた。

 

「何だ!?」

「大丈夫です。クラウダーさん。私は…草薙遊士を…倒します!!」

「クラウダー!そんなに心配なら…!!」

「私は!!永続魔法、《ブリザード・ドレープ》を発動して、このターンのエンドフェイズ、更なる力を得た、ブリザード・スピリットの効果発動!このターン相手の墓地に送られたカード1枚につき、600ポイントのダメージを与える!!」(1)

「俺の墓地に送られたカード!?」

「そう。あなたの墓地に送られたカードは、ライジング・ソードと、装備魔法、《弧毒の剣》の2枚!よって、1200ポイントのダメージを与えます!!」

 

 

ジャジメント・クローズ!!

 

 

遊士の真上に2本のツララが現れたかと思うと、それはそのまま遊士に振り下ろされた。

 

「勝った。これで…これで良かった。私は…」

 

不意にホワイトは、自分の胸を手で押さえていた。

 

「そんな…私は…正しいことをしたはず…なのに…何このモヤモヤしたの…」

「結局そういうことだぜ、ユキ!!!」

 

ツララがなくなったところから、ゆっくりと遊士が立ち上がったのがユキには見えた。

 

「なっ!!草薙遊士!!」

 

 

草薙遊士:LP400

 

 

「なぜライフが残っている!?」

「残念だったなユキ。俺は速攻魔法、《戦士の遺品》を発動していたぜ。このターンに墓地に送られた戦士族モンスターに装備されていた装備魔法を1枚除外して、ライフを500回復する速攻魔法だ。」

「それであなたのライフが1600になって、1200のダメージで400…」

「そういうことだ。ブリザード・スピリットの効果で受けるダメージは、俺の墓地に送られたカード1枚につき600ポイント。《剣聖-ライジング・ソード》と、《戦士の遺品》の2枚分だ。」

「クッ!どこまでも…!!!」

「俺は負ける訳にはいかねえ。ユキ!!見たぜ。お前だって、自分でモヤモヤしてるんだろ!やっぱり本当はわかってんだよ!どっちが真実か。今お前が見えている俺と、今お前には見えていないクラウダーと…どっちがって!!」

 

「適当なことを言わないで!あなたが見ていたものが、本物だとしても…あなたの言うことが真実だとしても……それでも…私には…何も思い出せない。わからない!」

 

ホワイトがそこまで言うと、彼女は「それに…」と付け加えて、自分のデュエルディスクの永続魔法、《ブリザード・ドレープ》を一瞥した。

 

「あなたには…私は…倒せない。」

「よほど自信があるみてえだな。いいぜ!!俺のターン!!(3)忘れてねえよなユキ!お前が発動した《レベル調整》!あの効果で俺は2枚ドローした!そん時は、俺のフィールドにはまだ、ライジング・ソードがいたって!!俺は手札から、魔法カード《ライジング・ブレイク》!!」(2)

 

 

《ライジング・ブレイク》

通常魔法

自分のフィールドまたは墓地にレベル5以上の戦士族の通常モンスターが存在する場合に発動することができる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊して、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。

 

 

「俺のフィールドまたは墓地にライジング・ソードがいる時、お前のモンスター1体を破壊するぜ!くらえ!!」

「それは読めている!!ブリザード・スピリットの効果発動!1ターンに1度、相手フィールドの全てのカード効果を無効にする!!」

 

 

ブリザード・ハザード!

 

 

「これで、《ライジング・ブレイク》は無効になった!」

「やっぱり…そう簡単にはやらせてくれねえか。」

「それだけじゃない。私のモンスターカードの効果の発動に成功したことによって、私は永続魔法、《ブリザード・ドレープ》の効果を発動します!」

 

青の中でも、紺碧という色に近い、カーテンのようなものが青い光を放った。

 

「これは…!?」

 

 

《ブリザード・ドレープ》

永続魔法

このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の水属性モンスターは相手のカード効果の対象にはならない。また、相手ターン中に自分が水属性モンスターの効果の発動に成功した時に発動することができる。このカードにカウンターを1つ置く。このカードにカウンターが置かれている限り、自分フィールド上の水属性モンスターは元々の攻撃力以上の攻撃力の場合、戦闘では破壊されない。自分のエンドフェイズに発動する。このカードに乗っているカウンターを1つ取り除く。

 

 

「この輝きによって、私の水属性モンスターは攻撃力が下がらない限りは、戦闘では破壊されない!でも、装備魔法をつけようとしても、カード効果の対象にはならない!」

「装備魔法…か。意識してんじゃねえか。ライジング・ソードを。」

「えっ…?」

「ライジング・ソードと装備魔法のコンボ。俺の、古臭いってみんなに言われる戦士族デッキ。ユキ。お前がどう思ってんのか知らねえけど…俺は…お前がこいつを覚えているって信じてる!俺は魔法カード、《アセンション・リバース》を発動!」

 

 

《アセンション・リバース》

通常魔法

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動することができる。自分の墓地に存在する戦士族モンスター1体を選択し、特殊召喚する。その後、自分のデッキからカードを1枚ドローする。この効果で特殊召喚したモンスターは、次の自分のエンドフェイズに破壊される。

 

 

「《アセンション・リバース》……!?」

「ユキ。こいつは俺が、校長からもらったカードだ!CDTに出場する前にな!お前の前でも、使ったろう!」

「知ら……ない!知らない!」

「もう一度、思い出させてやる!!あの時、生徒会長を倒した時の、このライジング・ソードの…俺のデッキの輝きを!!《アセンション・リバース》は、俺の墓地に存在する戦士族モンスター1体を特殊召喚して、カードを1枚ドローする!戻ってこい!《剣聖-ライジング・ソード》ォ!!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400

 

 

「そして1枚…ドローッ!!(2)」

 

彼は「ありがとう。俺のデッキ。」と呟き、右手に持つそのカードを、すぐに魔法・罠カードスロットへと差し込んだ。

 

「俺はさらに装備魔法、《稲妻の剣》を発動!(1)」

「稲妻の剣!?」

「《剣聖-ライジング・ソード》に装備し、攻撃力を800ポイントアップさせ、フィールドの全ての水属性モンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせる!」

 

 

《剣聖-ライジング・ソード》:攻撃力2400→攻撃力3200

《吹雪の精霊 Lv.MAX》:攻撃力3500→攻撃力3000

 

 

「《ブリザード・ドレープ》の効果は、あくまで対象にならないだけ!稲妻の剣は、フィールド全体に効果が及ぶぜ!」

「そんな……」

 

ライジング・ソードが手にした《稲妻の剣》を振り上げると、剣先から出た雷が辺りに降り注いだ。すると、先ほどまで実体の見えなかった空間がうねっているのがわかった。

 

「そこにいやがるな、ブリザード・スピリット!!」

「…!!」

「ユキ。思い出したろ…?」

「生徒会長……稲妻の剣……アセンション・リバース…。私は…」

「バトル!!《剣聖-ライジング・ソード》!ブリザード・スピリット Lv.MAXを攻撃!」

 

 

ライトニング・ソード・ブレイク!!

 

 

結局は薄らとしか見えなかったものの、ライジング・ソードは一閃の形でブリザード・スピリットを切り裂いた。

 

 

ホワイト:LP1800→LP1600

 

 

ライフは確かに残っている。しかし、この後の結末がどうなるか。ユキにはわかっていた。だから、何も言うことはなかった。

 

「そして罠カード、《ブレード・ストライク》を発動!」

 

 

《ブレード・ストライク》

通常罠

装備カードを装備したモンスターがモンスターを戦闘で破壊した時に発動することができる。戦闘で破壊されたモンスターのコントローラーは、そのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。その後、装備カードを装備したモンスターのコントローラーは、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

「……そう……だったよね。」

 

 

ホワイト:LP1600→LP0

 

 

力なくその場に崩れたユキに急いで近寄った遊士は、彼女の体を抱きかかえて揺する。

 

「おい、ユキ!しっかりしろ!」

 

『草薙…遊士。』

 

「誰だ!?」

 

彼の名前が呼ばれたのを聞くと、遊士は思わず顔を上げた。相変わらず空は紅いままだが、そこから彼の脳に向かって訴えかける声が聞こえた。

 

『フフフ……ホワイトを倒したようだな。』

「てめえ!確か……ヘヴン!?」

『ほう。覚えていてくれたのかね。声だけだというのに。』

「てめえのせいで、ユキは……!こんな辛い思いを!」

『辛い?だが、クラウダーの言っていたことに、誤りはないよ。君にとっては残念だだろうがね。』

「てめえまでそんなことを!!」

 

遊士はより強い力で、彼女を抱きしめる。

 

「けど、もうユキは絶対に渡さねえ!てめえも見ていたんだろ!?ライジング・ソードを使った時の、ユキを!あれが本当なんだよ!あれが……!!」

『信じたければ勝手にするが良い。次に彼女が目覚める時、その時に本当に……君たちの側なのかどうかを。』

「…んだと!?」

『まあいい。それよりも、君は彼との決着をつけるなら、急いだ方が良いぞ。』

「彼?」

『当然、クラウダーだ。なぜ彼がここに来なかったのか。彼は別に、ホワイトのことをどう思っていなかった訳ではないのだよ。彼はこの地上に再び戻ってきた時に……別の力と接触したからね。』

「別の力と…接触だと!?」

『フフ…ナンバーズ。と言えば、わかるかな?』

「クソッ。遊馬か!!」

 

遊士はその場からすぐに駆け出すために、抱えているユキをその場に置こうとしたが、すぐに彼は、彼女を背負って駆け出した。

 

(ユキ…絶対に…離さねえ!)

 

彼は走り出してすぐに立ち止まった。

 

(待てよ。ヘヴンは…俺にこう言った。クラウダーは、地上に再び戻ってきたって。ってことは…クラウダーは、地上じゃないところ……カイトが行っていた…月に!?それで戻ってきたってことは……チクショウ!!ふざけんな!)

 

 

遊士がそう予想するよりも少し前、月では、3人のデュエリストが対峙していたのだ。

 

 

(次回に続く)




<今日の最強カード>
《稲妻の剣》
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップし、フィールド上に表側表示で存在する全ての水属性モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。


<次回の最強カード>
《破数王-ヌメロン・バスター》
エクシーズモンスター
ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100
レベル1モンスター×3
このカードは「No.」と名のついたモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、相手フィールド上に存在する「No.」と名のついたモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターを破壊して、そのモンスターの攻撃力分だけこのカードの攻撃力をアップし、その効果を得る。この効果は相手ターンでもこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで発動できる。


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第53話-プライドの攻防!ギャラクシーアイズvsヌメロン・バスター!

天城カイト

 

・LP4000

・手札1枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

ミザエル

 

・LP4000

・手札2枚

・(モンスター)《No.107 銀河眼の時空竜》(ATK3000)(ORU2)

・(魔法・罠)1枚

 

 

クラウダー

 

・LP4000

・手札3枚

・(モンスター)《破数王-ヌメロン・バスター》(ATK100)(ORU2)

・(魔法・罠)1枚

 

 

「ヌメロン…バスター。対ナンバーズ用のカード。」

「そうだ。私は、ヌメロン・バスターのモンスター効果を発動!1ターンに1度、相手フィールド上のナンバーズを破壊し、その攻撃力分だけ自身の攻撃力をアップさせ、モンスター効果を得る!」

 

手に持っている鎌を振りおろし、タキオン・ドラゴンを一刀両断すると、その体から出た粒子のようなものをヌメロン・バスターは身に纏った。

 

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:攻撃力100→攻撃力3100

 

 

「攻撃力3100…!?」

「バトルだ!ヌメロン・バスターで、天城カイトを攻撃!」

 

 

マキシム・オブ・クリエイション!!

 

 

ヌメロン・バスターが体を一振りすると、その衝撃波によってカイトは大きく吹き飛ばされた。月面の無重力空間であったために、その場に復帰するためにはオービタルのエンジンを使った。

 

「うわああっ!」

「カイト様ッ!」

「うろたえるな、オービタルッ!!」

 

 

天城カイト:LP4000→LP900

 

 

「これでお前のライフはたったの900。カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。(2)」

<クラウダー:伏せ2枚 カイト:伏せなし ミザエル:伏せ1枚>

 

「すまないカイト。私のギャラクシーアイズの力で…」

「気にするな、ミザエル。貴様がギャラクシーアイズ使いを自称する以上、タキオンを使わないはずはないからな。奴はそこに付け込んだんだ。」

「付け込んだ…とは、随分と人聞きの悪いな。」

 

「いくぞ!俺のターン!(2)」

(奴のヌメロン・バスターはそのモンスター効果によってナンバーズとの戦闘では破壊されない。となれば当然、ナンバーズを使って戦うのは得策ではない。ならば…)

 

カイトはドローした《ギャラクシー・レーザー》ではなく、既に手札に持っていたカードを魔法・罠カードスロットへと差し込んだ。

 

「魔法カード、《死者蘇生》を発動!(1)」

 

 

《死者蘇生》

通常魔法

自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

「墓地のモンスター1体を特殊召喚する!蘇れ、《銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》!!」

「ここで死者蘇生か。」

「いくぞ、クラウダー!!ギャラクシーアイズの攻撃!」

 

 

銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》:攻撃力3000

《破数王-ヌメロン・バスター》:攻撃力3100

 

 

破滅のフォトン・ストリーム!!

 

 

「そしてこの瞬間、バトル時にギャラクシーアイズの効果発動!戦闘を行うお互いのモンスターをゲームから除外する!」

「やはりその効果を使うか!罠カード、《Heaven's Impede Armor》を発動!」

 

 

《Heaven's Impede Armor》

Normal Trap

?

 

 

「発動後装備カードとなり、自分のモンスター1体に装備される!装備モンスターは、相手のモンスター効果を受け付けない!」

「クッ。」

 

光を放ったギャラクシーアイズはその場で消滅したが、カイトがバトルフェイズを終了させたために、すぐにフィールドに帰還した。

 

(俺の手札にあるカードは、速攻魔法、《ギャラクシー・レーザー》。相手の墓地でカード効果が発動した時、自分の場のモンスターの攻撃力を800ポイントアップさせることができる。これを使える機会が来るかはわからないが…)

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。(0)」

<クラウダー:伏せ1枚 カイト:伏せ1枚 ミザエル:伏せ1枚>

 

「私のターン!(3)」

 

ミザエルはカードを引いた後、手札にあるモンスターカードを手に取った。ミザエルのギャラクシーアイズはカイトのそれとは違い、ナンバーズである以上、ヌメロン・バスターの効果の餌食になってしまうことを考えれば、慎重に動かざるを得ない。

 

「《防覇龍ヘリオスフィア》を召喚!(2)」

 

 

《防覇龍ヘリオスフィア》

効果モンスター

レベル4/光属性/ドラゴン族/攻撃力0/守備力1900

相手の手札が4枚以下で自分フィールド上のモンスターがこのカードのみの場合、相手は攻撃宣言をする事ができない。また、1ターンに1度、自分フィールド上にドラゴン族・レベル8モンスターが存在する場合に発動できる。このカードのレベルをエンドフェイズ時まで8にする。

 

 

「攻撃力0だと?ミザエル。勝負を捨てたか?」

「いいや、私のフィールドのモンスターがヘリオスフィアのみで、相手の手札が4枚以下の場合、そのプレイヤーは攻撃はできない。クラウダー!今現在お前の手札は2枚。次のドローフェイズにカードを引いても、3枚だ。」

「なるほど。」

「私はさらに、カードを1枚伏せて、ターンを終了する。(1)」

<クラウダー:伏せ1枚 カイト:伏せ1枚 ミザエル:伏せ2枚>

 

「私のターン!(3)」

 

最初から隠す必要はないと思っていたのだろうが、クラウダーの堂々としたカードの引き方に、ミザエルはこの状況を打破できるカードがあることをすぐに悟った。

 

「その程度では私を止めることはできない!罠カード、《Heaven's Chain》を発動!」

 

 

《Heaven's Chain》

Normal Trap

?

 

 

ヘヴンズ・チェーン…その響きを聞いた時、カイトは《フォトン・ディジグネイター》を使った際に少しの間だけでも見たクラウダーのデッキの中身を思い出し、その時に読んだテキストを思い出した。

 

「まずい、あのカードの効果は…!!」

 

「フィールドのモンスター1体の効果を無効にする!」

「何!?」

 

鎖は何かを締め付けるためのものであろうが、イラスト部分より飛び出た青色の鎖はヘリオスフィアを拘束する訳ではなく、ヘリオスフィアに直撃し、その場で弱らせた。

 

「これでヌメロン・バスターは攻撃が可能だ!さらに、《Heaven's Chain》の効果により、対象となったモンスターの戦闘で相手に与えるダメージは2倍になる!」

 

「2倍だと!?それじゃ、ミザエルの受けるダメージは…6200!」

 

「カイト、ミザエル。残念だが、真のギャラクシーアイズ使いを決める戦いは…できそうにないな。くらえ!」

 

 

マキシム・オブ・クリエイション!!

 

 

ヘリオスフィアの爆破によって生じた衝撃波で吹き飛び、煙にまみれて見えなくなったミザエル。

 

「フフフ…ハハハハハ!呆気ないものだ!……ン?」

 

しかし煙がはけた時にそこに立っていたのは、傷だらけではあったが、ミザエルであった。

 

 

ミザエル:LP4000→LP900

 

 

「どういうことだ?ライフが残っているだと?」

「私は罠カード、《竜皇の施し》を発動していた。」

 

 

《竜皇の施し》

通常罠

自分フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスターが相手モンスターからの攻撃対象となった時に発動することができる。攻撃対象となった自分のモンスターを破壊し、自分のデッキからカードを2枚ドローする。その時の攻撃モンスターは攻撃をしなければならない。

 

 

「なるほど。ヘリオスフィアを自ら破壊して攻撃を直接攻撃として受け、2枚ドローしたということか。」

「そうだ。私は2枚をドローする!(1→3)」

「まあいい、ミザエル。お前のライフが3100ポイント減ったことに変わりはない!」

 

そう言って、クラウダーは魔法・罠カードゾーンにあった《Heaven's Chain》を墓地に送った。カイトの記憶、そしてクラウダーの表情、その2つがカイトの攻めを躊躇わせる。

 

「…」

 

「ターンを終了する!(3)」

<クラウダー:伏せなし カイト:伏せ1枚 ミザエル:伏せ1枚>

 

「俺のターン!!(1)」

(確かに今の俺のフィールドのカード。そしてギャラクシーアイズの力を考えれば、ヌメロン・バスターを倒すことはできるかもしれない。そしてヌメロン・バスターを倒せれば、奴のフィールドに伏せカードがない以上、俺たちが優位に立てるはず。だが…)

 

 

「どうしたカイト?」

 

 

「ミザエル。」

 

《フォトン・ディジグネイター》の効果が通じなかったこと、自分とミザエルがかかっても勝てていないこと。それらは、カイトに二の足を踏ませるのには十分すぎる材料だった。そんな状況下にもかかわらず、ミザエルはカイトの名を呼び、一度だけ頷いた。

 

「仕掛けろ。お前もギャラクシーアイズ使いを自称するなら…立ち止まるな。」

「ミザエル。……フッ。」

「おおっ!カイト様の新たな友情の誕生であります!!」

 

カイトは、ミザエルの伏せカードを特定するには至らなかったが、お互いに同じギャラクシーアイズ使いだからか、この状況におけるミザエルの目算が…わかった気がした。

 

「勘違いするなよ!俺は奴の指示に従った訳ではない!バトルだ!!ギャラクシーアイズで、《破数王-ヌメロン・バスター》を攻撃!」

 

 

銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》:攻撃力3000

《破数王-ヌメロン・バスター》:攻撃力3100

 

 

「何度やっても同じことだ!《Heaven's Impede Armor》の効果で、ヌメロン・バスターは相手のモンスター効果の影響を受けない!」

「我々の狙いはそれではない!!罠カード、《ギャラクシー・ボマー》を発動!」

 

 

《ギャラクシー・ボマー》

通常罠

発動後装備カードとなり、フィールド上に表側表示で存在する「ギャラクシー」と名の付いたモンスターに装備される。装備モンスターがモンスター効果で除外された場合、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。このカードは装備モンスターのコントローラーのエンドフェイズに除外される。

 

 

「ミザエル!!そのカードは…」

「発動後装備カードとなる罠カードだ!《ギャラクシー・ボマー》の効果は、装備モンスターが除外された時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!さあ、3000ポイントのダメージを受けてもらうぞ、クラウダー!!」

「3000…だと?」

「俺はギャラクシーアイズの効果を発動する!!ダメージをかわしたければ、ギャラクシーアイズの効果を無効にするくらいしかあるまい!!」

 

ギャラクシーアイズが自らの体を発光させ始めると、クラウダーは不気味笑い、墓地からカード1枚を取り除いた。

 

「フフッ!!甘いな!!墓地から、《Heaven's Chain》の効果発動!自身を除外して、フィールドの効果モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする!これで、ギャラクシーアイズはバトルを続行する!攻撃力…3000で、攻撃力3100のヌメロン・バスターを攻撃するがいい!!」

「どうやら甘いのはそちらの方だなクラウダー!!俺は場から速攻魔法、《ギャラクシー・レーザー》を発動!」

 

 

《ギャラクシー・レーザー》

速攻魔法

 

「相手が墓地からカード効果を発動した時に、俺の場のモンスター1体の攻撃力を800ポイントアップさせる!」

「何!?攻撃力3800だと!?」

 

 

銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)》:攻撃力3000→攻撃力3800

 

 

破滅のフォトン・ストリーム!!

 

 

ヌメロン・バスターは自身の持つ大鎌を地面と平行に持ち直し、身をかがめ、破滅のフォトン・ストリームを受け流そうとした。それと同時に、クラウダーが口を開いた。

 

「だが、ヌメロン・バスターはタキオンの効果を得ている。タキオンはナンバーズ!ナンバーズ以外のモンスターとのバトルでは、破壊されない!700ダメージを受けるだけなど、大した問題ではない!!」

「それはどうかな!?」

「なっ…!」

 

新たなクレーターができるという勢いの爆発が起こり、破滅のフォトン・ストリームに飲まれたヌメロン・バスターは木端微塵になった。

 

 

クラウダー:LP4000→LP3300

 

 

「バカな。どうして…」

 

すると、その疑問には今度はミザエルが答えた。

 

「《ギャラクシー・レーザー》は、戦うモンスターの戦闘では破壊されない効果を無効にする。ヌメロン・バスターの効果では、防ぎきれなかったという訳だ。」

「クッ…」

 

「ミザエル。この程度のことで借りを返した気になるなよ?」

「フッ。わかっている。」

「俺は《ギャラクシー・レーザー》の効果で、カードを1枚ドローする!(2)かードを1枚伏せて、ターンエンドだ(1)」

<クラウダー:伏せなし カイト:伏せ1枚 ミザエル:伏せなし>

 

「このエンドフェイズに、《ギャラクシー・ボマー》は破壊される!」

「ならばこちらも、《Heaven's Impede Armor》の効果によって、装備モンスターが破壊されてこのカードが墓地に送られたエンドフェイズに、カードを1枚ドローさせてもらう!(4)」

 

「私のターン!(4)」

(今の奴のフィールドにはモンスターも魔法・罠カードもない。ここで一気にケリをつける。とは言え、ナンバーズを呼び出せば、こちらが不利になる可能性はある。タキオン。お前で止めを刺すのは……カイトと戦う時までお預けだ!)

 

「私は、《輝光竜セイファート》を召喚する!(3)」

 

 

《輝光竜セイファート》

効果モンスター

レベル4/光属性/ドラゴン族/攻撃力1800/守備力0

このカード名の①、②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

①:手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、ドラゴン族モンスターを任意の数だけ墓地へ送って発動できる。墓地へ送ったモンスターの元々のレベルの合計と同じレベルを持つドラゴン族モンスター1体をデッキから手札に加える。

②:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の光・闇属性のドラゴン族・レベル8モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

 

「攻撃力1800だと?」

「セイファートは1ターンに1度、手札からドラゴン族モンスターを墓地に送り、そのモンスターのレベルの合計と同じレベルのモンスター1体を手札に加えることができる!私は手札からレベル8の《星間竜パーセク》を墓地に送る!そしてデッキから、同じくレベル8の《限界竜シュバルツシルト》を手札に加える!(2)」

「シュバルツシルト…3枚目か!?」

「さらに私はシュバルツシルトの効果によって、自身を特殊召喚!!(1)」

 

 

《限界竜シュバルツシルト》

効果モンスター

レベル8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2000/守備力0

相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

「攻撃力の合計は…3800!?」

「ほぉ。ギャラクシーアイズ使いを自称するお前が、ギャラクシーアイズを使わずに私に止めを刺そうというのか?」

「そんな挑発に乗る私ではない!バトル!まずはセイファートで、クラウダーに直接攻撃!」

 

双翼を大きく振り、衝撃波を繰り出したセイファート。クラウダーは衝撃波に耐え切れず、その場に屈みこんでしまった。

 

「ぐっ…」

 

 

クラウダー:LP3300→LP1500

 

 

「これで終わりだ!シュバルツシルトで、直接攻撃!」

「そうはいかない!私は手札から、《Heaven's Anchor》の効果を発動!このカードを手札から墓地に送り、前のターンに破壊された私のモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する!蘇れ、《破数王-ヌメロン・バスター》!!」

 

 

《破数王-ヌメロン・バスター》:守備力100

 

 

「またそいつか!ならばシュバルツシルト!!ヌメロン・バスターを蹴散らせ!」

「無駄だ!この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンのみ、戦闘では破壊されない!」

 

 

見た目はただの空色の模様のついた錨だが、クラウダーの墓地に触れると、そこからヌメロン・バスターが大鎌を構えた状態でフィールドに生還した。

直後にシュバルツシルトが長身の体を生かしてたたきつけようとしたものの、ヌメロン・バスターはビクともしなかった。

 

 

《Heaven's Anchor》

Effect

LV1/DARK/Fiend/ATK0/DEF0

?

 

 

「なにっ!?」

「フッ。お前のその判断は正しかったようだな。ここでタキオンを呼んでいれば、どうなったか。」

「おのれ…カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!(0)」

<クラウダー:伏せなし カイト:伏せ1枚 ミザエル:伏せ1枚>

 

「私のターン!(4)」

 

ドローしたカードを見るや否や、クラウダーは不気味な笑みを浮かべ、そのカードをそのまま魔法・罠カードゾーンスロットへと差し込んだ。

 

「ミザエル。どうやらお前がタキオンを呼ぼうが呼ぶまいが関係なかったようだな。私は手札から魔法カード、《Rank Up Magic-Heaven's Force》を発動!」

「何…!?」

「ヘヴンズ…フォース!?」

 

 

《Rank Up Magic-Heaven's Force》

Normal Magic

When your opponent activates a card whose name includes "Heaven's," you can negate it by sending this card from your hand to your graveyard. This card's activation and effect cannot be negated except by cards whose names include "Heaven's."

Target 1 face-up Xyz Monster you control; Special Summon from your Extra Deck, 1 "HX" monster 1 Rank higher, by using it as the Xyz Material. (This Special Summon is treated as an Xyz Summon. Xyz Materials attached to it also become Xyz Materials on the Summoned monster.)

 

 

「私の場のエクシーズモンスター1体を、ランクが1つ高いヘヴンズ・エクシーズへとランクアップさせる!!」

「ヘヴンズ・エクシーズだと!?」

「我々はな、お前たちを超えていることを証明するため、同じ土俵で戦う必要があるのだよ!私はランク1のヌメロン・バスターでオーバーレイ!!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!ヘヴンズ・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

運命を司る神よ。忌まわしき記憶を破却し、この地の新たな天命を示せ!!《HX-破数神-ヌメロン・キラー》!!

 

 

「ヌメロン・キラー!?」

 

大鎌を構えたいわゆる「死神」というものに似ているモンスターであることは、ヌメロン・バスターと大きく変わりはないが、そのマントは返り血でも浴びたかのような禍々しい紅色の斑点を有し、大鎌の刃は金色になっている。

 

 

《HX-破数神-ヌメロン・キラー》:攻撃力200

 

 

「ヌメロン・バスターと同じような効果を持っているのなら、結局は俺たちの場にナンバーズがなければ力は使えないはずだが?」

「なるほどそれは良い推理だなカイト。だが、そんなことも考えずにこのモンスターを呼んだと思っているのか?ヌメロン・キラーの効果発動!エクシーズ召喚に成功した時、相手の墓地に存在するナンバーズ1体を、相手フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する!復活しろ!タキオン・ドラゴン!!」

 

 

《No.107 銀河眼の時空竜》:守備力2500

 

 

「なっ!タキオンが…」

「そして、ヌメロン・キラーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体を、このカードのエクシーズ素材にすることができる!この効果でエクシーズ素材にしたモンスターがナンバーズだった場合、その攻撃力と、効果を得る!」

 

 

オーバーライト・メモリー!!

 

 

ヌメロン・キラーが左手を翳すと、時空竜はカードに収まってしまい、そのカードをヌメロン・キラーは自らの体に取り込んだ。

 

「タキオン・ドラゴン!!!」

 

 

《HX-破数神-ヌメロン・キラー》:攻撃力200→攻撃力3200

 

 

「攻撃力3200!?」

「バトルだ!ヌメロン・キラーで、攻撃力1800のセイファートを攻撃!」

「グッ…!!」

 

ミザエルは自分のライフポイントが900ポイントであることを再び思い出したが、それとほぼ同時にカイトが罠カードを発動させた。

 

「罠カード、《ギャラクシー・リード》を発動!」

「カイトッ!!」

 

 

《ギャラクシー・リード》

通常罠

 

 

「攻撃対象を俺のギャラクシーアイズへと変更する!その際、ギャラクシーアイズの攻撃力は500ポイントアップする!迎え撃て!ギャラクシーアイズ!!」

 

 

破滅のフォトン・ストリーム!!

 

 

「攻撃力3500だと…?」

「やったか?」

 

だが、カイトは予想していなかったわけではない。目の前の、バトルが終わっても、ヌメロン・キラーが立っている光景を。

 

 

クラウダー:LP1500→LP1200

 

 

「やはり、タキオンの効果を得ている以上、ナンバーズ以外のモンスターとの戦闘では破壊できないか。」

「いや、元よりランクアップしたヌメロン・キラーは、いかなるモンスターとのバトルでも破壊されないがな。そして、コピーしたギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴンの効果を発動させてもらおう!オーバーレイユニットを1つ使い、このターン、相手が発動したカード1枚につき1000ポイントの攻撃力をアップさせ、再び攻撃を行う!」

 

 

タキオン・トランス・ミグレイション!!

 

 

《HX-破数神-ヌメロン・キラー》:攻撃力3200→攻撃力4200

 

 

「まずい。タキオン・トランス・ミグレイションは、フィールドのカード効果を無効にする。もう一度ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンが攻撃を受けた場合、効果を使えないぞ。」

「そういうことだ!どの道お前の発動した《ギャラクシー・リード》の効果でこのターン、私はお前のギャラクシーアイズ以外を攻撃できないからな。ミザエル。お前の命は1ターンだけ生き永らえたということだ。バトル続行!ヌメロン・キラーの攻撃!」

 

 

マキシム・オブ・デイブレイク!!

 

 

効果が無効になったことを表したのか、モノトーンカラーになったギャラクシーアイズをヌメロン・キラーの放った衝撃波が両断した。

 

「ぐああああああっ!!」

「カイト!!」

 

 

天城カイト:LP900→LP200

 

 

「これでお前たちのフィールドに、ギャラクシーアイズは存在しない。もう諦めろ、カイト、ミザエル。お前たちでは…私には、いや、我々ヘヴンズには…勝てないのだ。」

 

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《破数王-ヌメロン・バスター》
エクシーズモンスター
ランク1/闇属性/悪魔族/攻撃力100/守備力100
レベル1モンスター×3
このカードは「No.」と名のついたモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、相手フィールド上に存在する「No.」と名のついたモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターを破壊して、そのモンスターの攻撃力分だけこのカードの攻撃力をアップし、その効果を得る。この効果は相手ターンでもこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで発動できる。


<次回の最強カード>
《HX-破数神-ヌメロン・キラー》
エクシーズモンスター
ランク2/闇属性/悪魔族/攻撃力200/守備力200
レベル2モンスター×4




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第54話-好敵手の託したカード

カイト

 

・LP200

・手札1枚

・(モンスター)なし

・(魔法・罠)なし

 

 

ミザエル

 

・LP900

・手札0枚

・(モンスター)《限界竜シュバルツシルト》(ATK2000)/《輝光竜セイファート》(ATK1800)

・(魔法・罠)1枚

 

 

クラウダー

 

・LP1200

・手札3枚

・(モンスター)《HX-破数神-ヌメロン・キラー》(ATK4200)(ORU0)

・(魔法・罠)なし

 

 

「お前たちでは、我々を倒すことはできないのだ。」

「ふざけるな。まだデュエルは終わっていない!」

「そうだ。こんなところで…我々とギャラクシーアイズがデュエルを諦めるはずがなかろう!」

「粋がったところで、お前たちに待っているのは敗北だけだがな。私はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ。(1)」

<カイト:伏せなし ミザエル:伏せ1枚 クラウダー:伏せ2枚>

 

「俺のターン!(2)俺は手札から魔法カード、《フォトン・サプライメーション》を発動!(1)」

 

 

《フォトン・サプライメーション》

通常魔法

自分の墓地に存在する「フォトン」と名の付いたモンスター2体を除外して発動する。自分のデッキからカードを2枚ドローする。「フォトン・サプライメーション」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 

「俺の墓地に存在する、《フォトン・チャージマン》と、ナイト・オブ・フォトンドラゴンを除外し、デッキからカードを2枚ドロー!(3)さらに俺は手札から、《フォトン・トレード》を発動!手札のフォトンモンスター1体を墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする!!(3)」

「ほぉ…立て続けに。」

「いいぞ、カイト!」

 

「そして俺は手札から装備魔法、《銀河零式(ギャラクシー・ゼロ)》を発動!墓地のギャラクシーまたはフォトンモンスターを特殊召喚して、このカードを装備する!蘇れ、《フォトン・ホエール》!!」

 

 

《フォトン・ホエール》:攻撃力0

 

 

「今捨てたモンスターか!」

「クジラのモンスターなど…」

「ギャラクシー・ゼロの効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は0になり、モンスター効果は発動できない。だがこのモンスターの存在により、俺は手札から、《銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)》をリリースなしで召喚する!(1)」

 

 

《銀河騎士》

効果モンスター

レベル8/光属性/戦士族/攻撃力2800/守備力2600

➀:自分フィールドに「フォトン」モンスターまたは「ギャラクシー」モンスターが存在する場合、このカードはリリースなしで召喚できる。

➁:このカードの➀の方法で召喚に成功した場合、自分の墓地の「銀河眼の光子竜」1体を対象として発動する。このカードの攻撃力はターン終了時まで1000ダウンし、対象のモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

 

「ギャラクシー・ナイトだと?あのモンスターは確か…」

「そう。このモンスターはリリースなしでの召喚に成功した時、俺の墓地からギャラクシー・アイズを守備表示で特殊召喚する!蘇れ、ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン!!」

 

 

《銀河眼の光子竜》:守備力2500

 

 

ナイトが剣先を月面に向けると、そこから浮き出た魔法陣より、ギャラクシーアイズが姿を現し、飛翔した。

 

「ギャラクシーアイズが…復活した!?」

「これでカイトの場に、レベル8のモンスターが3体!」

「いくぞ!ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン、ギャラクシー・ナイト、フォトン・ホエールで、オーバーレイ!!3体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

 

逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりて、姿を現すが良い!降臨せよ、我が魂!《|超銀河眼の光子龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》》!!

 

 

カイトが槍のような物体を月面に投げつけ、宇宙空間に出た渦のようなところから、ネオフォトンが姿を現した。

 

姿を現すや否や、咆哮を轟かせると、宇宙空間はうねりを見せ始めた。

 

 

《|超銀河眼の光子龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》》:攻撃力4500

 

 

「これは…」

「ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンが、ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンをエクシーズ素材として召喚された場合、このカード以外のフィールドのカードの効果を全て無効にする!!」

 

 

フォトン・ハウリング!!

 

 

「何だと!?」

 

ネオギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンの咆哮を受けたヌメロン・キラーは、怯み、持っている鎌を下に向けてしまった。

 

 

《HX-破数神-ヌメロン・キラー》:攻撃力4200→攻撃力200

 

 

「覚悟しろクラウダー!!バトル!ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンで、ヌメロン・キラーを攻撃!!」

 

 

アルティメット・フォトン・ストリーム!!

 

 

「させるか!罠カード、《Heaven's Double Pass》を発動!」

「ヘヴンズ…ダブル…パス!?」

「ヌメロン・キラーを攻撃対象にした攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!カイト!残念だったな!お前のフォトン・ハウリングでは、私の伏せカードまでは、無効にできまい!!」

「ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンの攻撃力は4500。その半分は…2250。」

「そうだカイト。お前の残りライフは200!2250ポイントのダメージを受けて、散るが良い!」

 

 

攻撃力の半分のダメージを与えるだけにしてはかなりのテキストの量だと思ったカイトであったが、それもつかの間。

 

 

ヌメロン・キラーがアルティメット・フォトン・ストリームを避けたかと思うと、空中で大きく回転したヌメロン・キラーはその鎌の刃先から、黒い雷のようなものを出し、カイトを焼き払おうとした。

 

しかしカイトに向かったその黒い雷は、ミザエルの目の前にいたはずの2体の竜によって阻まれてしまった。

 

「なんだと!?」

「残念だったなクラウダー。私は罠カード、《竜皇の宣告》を発動した。」

「《竜皇の宣告》だと…?」

 

 

《竜皇の宣告》

通常罠

 

 

「私の場のセイファートとシュバルツシルトをリリースすることで、そのモンスターの攻撃力の合計分、つまり3800ポイントまで、このターンのダメージは無効になる!」

「ミザエル…。」

「お前たち……」

 

散々邪魔をされてきたからか、それとも、彼には急ぎ月面を離れなくてはならない理由があるからかは定かではないが、クラウダーは奥歯を噛みしめたのちに、大きく舌打ちをする。

 

「小賢しい真似を!お前たちは、敵同士ではないのか?」

「敵…か。まあそうだな。カイトはアストラル側についていて、私はバリアン七皇の一人。」

「だが…俺達にはしなければならない戦いがある!!」

「どちらが真のギャラクシーアイズ使いかを決める戦いがな!!」

 

「…」

 

「だから、我々はこんなところでお前に負ける訳にはいかないのだ!!」

 

再び舌打ちをしたクラウダー。すると、彼は咄嗟に、「何だ!?」と自分の腕に向かって言い放った。すぐに分かった。それは腕に言っているのではなく、腕に装着されている連絡手段のツールに対して言っているのだということが。

 

「フッ。貴様の部下のことがそんなに心配か?」

「ホワイトは…必ず草薙遊士を倒す。心配などいらん!第一お前たちは…他人の心配などしている場合ではあるまい?さあ、カイト!お前のターンを続けろ!」

 

先ほどよりも明らかに声を荒げている。クラウダーにわかっているのは、ホワイトが、ブリザード・スピリットLv.MAXを召喚したということ。彼がホワイトに渡した最強のカード。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(0)」

<カイト:伏せ1枚 ミザエル:伏せなし クラウダー:伏せ1枚>

 

「ミザエル。」

「…?」

「お前が本当のギャラクシーアイズ使いだというのなら、それを証明して見せろ。」

「カイト。」

「俺がネオ・フォトンを出したように、お前もネオ・タキオンを…出してみろ!!」

「いいだろうカイト。ならば私のギャラクシーアイズ使いとしての輝きが、お前に劣っていないことを、思い知らせてやる!!いくぞ!私のターン!!」

 

 

バリアンズ・カオス・ドロー!!

 

 

「私が引いたカードは…RUM-七皇の剣!!」

 

「ザ・セブンス…ワン!!バリアン七皇の切り札か!!」

 

「この効果により、私の墓地に存在するタキオン・ドラゴンを復活させる!!」

 

ミザエルの目の前に現れた紅い魔法陣からタキオン・ドラゴンが再臨した。その後すぐに、タキオン・ドラゴンは紫色の閃光となって宇宙空間に飛び出した。

 

「そしてこのタキオン・ドラゴンを素材としてオーバーレイ!1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

 

顕現せよ、CNo.107!我が魂に宿りし粒子!今、光を超えた力となりて時を逆巻け!!|超銀河眼の時空龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》!!

 

 

《|超銀河眼の時空龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》》:攻撃力4500

 

 

宇宙空間より顕現したのは、黄金色をした三つ首の大きな翼を持つ巨竜。ネオ・フォトンもかなりの迫力であるが、大きさで比較した場合はネオ・タキオンの方が数倍にもなるであろう。

 

「来たか…これがミザエルの真の切り札、ネオ・タキオン!!」

 

「こんな巨大なモンスターが…ネオ・タキオンだというのか…」

「驚くのはまだ早い!私はネオ・タキオンの効果を発動!カオスオーバーレイユニットを1つ使い、このカード以外のフィールド上に存在する全てのカードの効果をエンドフェイズまで無効にし、この効果発動後、相手は私の許可したカードしか発動できず、全てのカードを、このターン開始時に戻す!!」

「な…!?」

 

 

タイム・タイラント!!

 

 

ネオ・タキオンが雄たけびを上げると、フィールド一帯がネガ・ポジ反転をしたような色になり、ミザエルの墓地に送られた七皇の剣が再び彼の手札に加えられた。

 

「こ…これは…」

「驚いたかクラウダー?フィールド及び墓地のカードの枚数…という意味では、実質影響のあるカードは七皇の剣のみだが、それでも、フィールドにあるカードは、私が許可しなければ発動できない!!ゆくぞ!!」

 

そう説明をしている間にフィールドは元の月面に戻った。相変わらず、ヌメロン・キラーは鎌を下げて首を垂れており、ネオ・フォトンはカード効果は無効になっているものの、猛々しさは健在である。

 

「貴様も早く決着にしたいようだからな。ここで終わりにするぞ。バトル!!」

 

クラウダーはネオ・タキオンを見つめ、深い呼吸を数回している。その呼吸が何を意味しているのか…それはわからないが、ミザエルは打つ手を考える必要はない。

 

「超銀河眼の時空龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》で、ヌメロン・キラーを攻撃!!」

 

 

アルティメット・タキオン・スパイラル!!

 

 

三つ首のそれぞれから放たれた黄金色のブレスが、一斉に三方向からヌメロン・キラーとクラウダーを取り囲み、巨大な爆発の中に、クラウダーたちは包まれた。

 

「やったか。」

「タイム・タイラントを発動させた時点で、もう奴らには対抗手段はないはずだ。私が許可しないカードは発動できないのだからな。」

 

だが、その発言をあざ笑うかのように、彼らの目の前には残酷な現実が突き付けられることとなる。

 

その手始めとして、ミザエルの前には、罠カードが光を放った状態で存在している。その後ろには、ヌメロン・キラーはいないが、埃を払うかのようにマントを叩くクラウダーの姿は見える。

 

「なっ…!?」

「バ…バカな!!」

 

「もういいだろう、お前たち。終わりにする時が来た。」

 

「罠カード…《Heaven's Double Pass》を墓地から除外して発動した。」

「ダブル…パス…そのカードは!!」

 

カイトは思い出した。先ほど、ダブル・パスのテキストは、効果に反して長いという感想を持ったことを。

 

「そうだ。先ほどネオ・フォトンの攻撃時にフィールドで発動したカードだ。このカードは墓地から発動した場合、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動しなければならないが…効果は…同じだ。」

「ネオ・タキオンの効果はフィールドにのみ及ぶ。墓地のカードに対しては無力…その穴をついたというのか…」

 

力なくミザエルがそう言うと、クラウダーは見下すように笑う。

 

「穴をついただと?私はただ墓地で発動する効果を使っただけだが…?まぁいい。何にせよ、お前はこのターンで終わりだ。ミザエル。安らかに眠れ、バリアン七皇の一人よ。」

 

先ほどクラウダーを取り囲むようにして着弾したアルティメット・タキオン・スパイラルがミザエルの前にいるクラウダーの真上に浮遊しているのが見えた。

 

間もなくしてその塊が、自分に向かってくるのだろう。

 

そのような考えが浮かぶや否や、ミザエルは《Heaven's Double Pass》が墓地から発動したことを思い出した。

 

「クッ。カイト。お前に…全てを託すしかない…というのか!!ならば…カイト!」

「ミザエル…!?」

「私も墓地から罠カード、《竜皇の宣告》を発動!!!」

「何!?」

 

「このカードは、相手ターン中、私のドラゴン族モンスター1体をリリースし、カード名を宣言!そのカードが相手のデッキにあれば、そのカードを次のスタンバイフェイズに、相手の手札に加えることができる!!」

 

「相手のデッキにあるカードを手札に加えさせるだと?無駄な足掻きを!!やれえっ!アルティメット・タキオン・スパイラルッ!!」

 

無情にもクラウダーがミザエルに指をさすと、クラウダーの真上にあった黄金色の塊が、ミザエルに直線的な動きで向かった。

 

 

(カイト。ここが我々にとって意味のある場所だというのなら、ギャラクシーアイズが、新たな力を生み出すかもしれない。ならば…お前に託すべきカードは…)

 

 

「私は……!!」

「ミザエル!!」

 

「ぐああああああああっ!!」

 

ネオ・タキオンが彼の目の前からいなくなったと同時に、ミザエルはアルティメット・タキオン・スパイラルの一撃を受け、後方に大きく吹き飛んだ。

 

カイトはすぐにバーニアを吹かせ、倒れたミザエルのもとに向かった。

 

「ミザエル!ミザエル!!」

「すまない……カイト。お前との決着…つけられなかったようだ。」

「ふざけるな!しっかりしろミザエル!このデュエルはすぐに終わらせる!!その後、俺たちの………!!」

 

ミザエルは傷だらけの体を無理やり起こし、カイトの右腕に手を当てた。

 

「お前なら……私が最後に送ったカード…その意味が…わかるはずだ。お前と…ともにデュエルできたことを…私は誇りに思う……。」

 

ミザエルはその場で気を失ったのと同時に、光の粒となって、宇宙空間に消え去った。

 

「ミザエル!!ミザエルッ!!!」

「カ…カイト様。」

 

「フフフ……カイト。次はお前だ。」

「クラウダー!!貴様!!同じギャラクシーアイズ使いとして、貴様を倒す!」

 

カイトの瞳に怒りが現れているのは、遠くからでもすぐにわかることであった。もう既に彼の中で勝ち筋が完成しているクラウダーからすれば、それにたじろぐことはない…はずなのだが…

 

(何だ…この感じは…そうだ。ミザエルの託したカードが次の奴のターンで。まさか、ここに来て新たなナンバーズを…。いや、それは私がギャラクシーアイズの力を奪って手に入れれば良いだけの話…!!ホワイトも…心配だ…遊士を相手に…!!クッ!)

 

 

「だが、何をしようともはやお前に勝ち目はない。もう既に勝負は決している!私のターン!!(2)罠カード、《Heaven's Climax》を発動!」

 

 

《Heaven's Climax》

Normal Trap

?

 

 

「何…?」

「このカードは自分のターンでしか発動することはできない。このターンのバトルフェイズを放棄する代わりに…フィールド上に存在するモンスターカードを全て破壊する!」

「何だと!?ネオ・フォトン!!」

 

白い霧が周囲を包み始めたかに見えたが、すぐにその霧は渦のようなものとなり、ネオ・フォトンを取り囲み破壊した。

 

「そしてお互いのプレイヤーはそれぞれのデッキまたはエクストラデッキからヘヴンズモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚し、攻撃力の差の分のダメージを受ける。もしも召喚できないプレイヤーがいた場合、そのプレイヤーは、攻撃力0として扱う!」

「お互いのプレイヤーが…ヘヴンズモンスターを…だと!?」

「カイト。お前の負けのようだな。私が呼ぶモンスターは、《Heaven's Giant》!攻撃力4000だ!」

 

 

《Heaven's Giant》:攻撃力4000

 

 

クラウダーはデッキから引き抜いたカードをフィールドに置いた。巨大化したマネキンのようなモンスターが、カイトを見下ろす。

 

「カイト!!お前は4000のダメージを受けて、終わりだ!」

 

その巨人が腰を捻り、そのまま拳をカイトに向けた。拳が何かにぶつかり、月面付近で衝撃が起こる。

 

だが数秒すればすぐにわかった。その衝撃は、月面にぶつかったから起こったのではなく、月面付近で何かと相殺したから起きたのだと。

 

「な…!?」

 

クラウダーが驚愕すると、彼の視線の先には、ライオンのようなモンスターが牙を剥き、拳を弾き返そうとしているのが見えていた。

 

「残念だったな。」

「そいつは…Heaven's Fourth Lioness!」

 

 

《Heaven's Fourth Lioness》:攻撃力4000

 

 

「そう。ノックスが…俺に託したカードだ。ヘヴンに対抗するには、ヘヴンのカードか、それ相応の力を持ったカードが良い…とな。」

「ふざけた真似を!!あの組織の裏切り者が…」

 

2体のモンスターは閃光に包まれ、その場で同時に消滅した。お互いのモンスターの攻撃力の差は0であるため、両者にダメージは発生しない。

 

「ノックス。」

「チィッ!!《Heaven's Climax》の効果により、お互いのモンスターの攻撃力が同じだった場合、双方のモンスターは破壊される。クッ!ノックス。お前が我々を裏切るというのなら、私はお前に、裏切ったことを後悔させるまでだ!私は手札から装備魔法、《Heaven's Rivive Stringth》を発動!(1)私のフィールドにモンスターがいない場合、墓地からモンスター1体を特殊召喚し、このカードを装備し、相手の墓地に存在するモンスター1体の攻撃力の半分を、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力に加える!蘇れ、《Heaven's Giant》!」

 

 

《Heaven's Giant》:攻撃力4000

 

 

まるで操り人形のように、何本かの糸で引っ張られて月面から出て来た巨人。やはりカイトを見下ろしている。

 

「またこいつか。」

「さらに、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、《Heaven's Fourth Lioness》の攻撃の半分、2000ポイントアップする!!」

 

 

《Heaven's Giant》:攻撃力4000→攻撃力6000→攻撃力6500

 

 

「攻撃力がさらに上がった!?」

「Heaven's Giantは墓地から特殊召喚されると攻撃力が500ポイントアップする!そして、Heaven's Rivive Stringthの効果で、相手の墓地から選んだモンスターがモンスターエクシーズなら、そのモンスターのランクを持つ効果もあるが…関係なさそうだな。」

 

 

《Heaven's Giant》:レベル8→ランク10

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。(0)」

<カイト:伏せ1枚 クラウダー:伏せ1枚>

 

「俺のターン…ドロー!!(1)」

 

クラウダーはできることはしたと思い、ターンエンドを告げた。カイトは勢いよくカードを引く。カードを引いた後、自らのデッキから1枚のカードが光を放っていることに気が付いた。

 

「これは…」

「ミザエルが…選んだ1枚か!?そう、都合良くは…」

 

 

(ミザエル。貴様の思い…しかと受け取った。)

 

 

「俺は速攻魔法、《銀河再誕(リギャラクシー)》を発動!」

 

 

銀河再誕(リギャラクシー)》(小説版)

速攻魔法

自分の墓地から「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を選択し、そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は半分になり、そのモンスターが自分のターンで相手ライフに戦闘ダメージを与えられなかった場合、そのターンのエンドフェイズに破壊される。

また、特殊召喚したモンスターをエクシーズ召喚の素材とする場合、墓地に存在するこのカードを装備モンスターと同じレベルの素材にできる。このカードは発動したターンのエンドフェイズに墓地に存在する場合、ゲームから除外される。

 

 

カイトが手にしてすぐにスロットに入れたことから、クラウダーにはそのカードがミザエルが選んだカードであることはすぐにわかった。

 

「リギャラクシーだと!?」

「俺の墓地からギャラクシーと名の付いたモンスター1体を特殊召喚する!蘇れ、ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン!!」

 

 

《銀河眼の光子竜》:攻撃力3000

 

 

「しつこいなそのモンスターも!!」

「そしてこの効果で特殊召喚したモンスターをエクシーズ素材とする場合、墓地のこのカードも同じレベルのエクシーズ素材にすることができる!」

「何…レベル8…2体だと!?」

 

(ミザエル。これこそが…俺たちの求める…ナンバーズ。いや、それだけではない。俺のデッキの…No.46。ドラッグルーオン。ジンロン、お前も!!)

 

カイトが沈黙し、何かを念じ始めると、カイトの体が青く発光し、カイトの右手にはロングソードのようなものが握られた。

 

「なっ…それは!?」

 

その場で大きく飛び上がったカイトは、右手に持ったそれを勢いよく月面に投擲し、突き刺した。

 

「ジンロン、そしてミザエル!!貴様らの思いを…無駄にはしない!ギャラクシーアイズ!宿命のドラゴンたちの力を得て、その姿を…昇華せよ!!」

 

すると、ギャラクシーアイズの装甲が切り離され、リギャラクシーのカードとともに、エクシーズ召喚の渦に飲まれた。

 

 

現れろ!銀河究極龍、No.62!宇宙にさまよう光と闇、その狭間に眠りし哀しきドラゴンたちよ。その力を集わせ、真実の扉を開け!|銀河眼の光子竜皇《ギャラクシーアイズ・プライム・フォトン・ドラゴン》!

 

 

|銀河眼の光子竜皇《ギャラクシーアイズ・プライム・フォトン・ドラゴン》:攻撃力4000

 

 

「こいつは…」

「ギャラクシーアイズが、ナンバーズの力を受け、進化した姿だ!!覚悟しろ、クラウダー!!」

 

 

(次回に続く)

 

 




<今日の最強カード>
《HX-破数神-ヌメロン・キラー》
エクシーズモンスター
ランク2/闇属性/悪魔族/攻撃力200/守備力200
レベル2モンスター×4



<次回の最強カード>
|銀河眼の光子竜皇《ギャラクシーアイズ・プライム・フォトン・ドラゴン》小説版
エクシーズモンスター
ランク8/光属性/ドラゴン族/攻撃力4000/守備力3000
レベル8モンスター×2
➀:このカードは「No.」と名の付いたモンスターとの戦闘では破壊されない。
➁:このカードが戦闘を行うダメージ計算時に1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ、フィールドのエクシーズモンスターのランクの合計×200アップする。
➂:「銀河眼の光子竜」をエクシーズ素材として持っていないこのカードが相手に与える戦闘ダメージは半分になる。
➃:「銀河眼の光子竜」をエクシーズ素材として持っているこのカードが相手の効果で破壊された場合に発動できる。発動後2回目の自分スタンバイフェイズにこのカードの攻撃力を倍にして特殊召喚する。




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