東方重空光 〜 closs the Time axis (R-9/0)
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生と死の狭間

布都


 ふと目を覚ますと、天井が見えた

 和室の真ん中に敷かれた布団に寝かされていたみたい

 右側の方にある襖が開き、白と緑の少女、██が入ってくる

 その隣には雪見だいふ……半霊が浮いている

 「おはようございます」

 

 「ここは?」

 少女が近くに座る

 座る為に上体を持ち上げる

 「冥界の白玉楼(はくぎょくろう)です」

 冥界というと、死者が転生または成仏を待つ間住む世界が思い付く

 白玉楼は文人だとかが死後に行く天上の楼閣……で合っているかな

 

 私、死んだんだ。でも手足の感覚はあるし、意識もハッキリしてる

 これが幽霊になった感覚?

 

 ██とは反対側の方を見ると、地平線の彼方まで生え揃う桃色の桜、ところ構わず漂う白い霊、適当な場所を繋ぐ石畳の通路、それらを照らす照明が見える

 白玉楼は丘の上に建っているみたい

 桜で地平線が見えない。これを1人で管理する██は凄いと思う

 

 ██はキョロキョロしている私を不審に思っているらしい。表情が分かりやすい

 笑えばきっと可愛いのに

 

 「もしかしなくても、外来人ですよね」

 「外来種?」

 「えっ……え?」

 外来人と言われて外来種が浮かんだので、とりあえず言ってみた。

 そしたら██は顎に手を添えて何かを考え始めて、難しい顔をした

 

 「あの?」

 「いえ、何でもありません。おおよそ、外来種と似たような意味だと思ってくれて構いません」

 「それなら、私は外来人だと思いますよ」

 「そうですか。それで……えぇと……なんて呼べば?」

 「あぁ、私は――」

 アレ、なんでかな。ハッキリと浮かんでこない。

 絵の具が混ざり合ってるような、そんな感覚。自分でもどういう意味か分からない。

 とりあえず、今は。

 

 「……すみません、自分の名前はあまり好きではないんです」

 嘘をつく事に抵抗はあるけど、こっちの方が話が分かりやすくなる。

 

 「私は魂魄(こんぱく)妖夢(ようむ)、白玉楼の庭師をしております。では、今日はお泊りになりますか?」

 

 「大丈夫なんですか? 迷惑ですよね?」

 「大丈夫なんですよ。迷惑だったらすぐ追い出してます」

 「で、ですが……」

 「……好意という物はですね」

 妖夢が、また難しい顔をして話しかけてくる

 「素直に受け取った方が良い物なのですよ。素直に受け取らないというのは、気が引けるからでしょうか」

 

 「は、はい……」

 「でしたら、遠慮なさらないで下さい。主人は客人を自由に泊めていいと言っていました。問題はありません」

 「えぇっと……分かりました…………」

 ここまで言ってくれてるんだし、折れてもいいよね……?

 

 「分かりました。少し用がありますので、失礼します。何かご用の時は近くの霊にお願いします」

 「分かりました、ありがとうございます」

 「いえ、いいんですよ。こちらが言い出したら事です」

 そう言って妖夢は立ち上がり、襖の奥の通路へと歩いて部屋から出て行った

 

 

 

 寝起きなのに眠い。

 ――少しだけ、少しだけ眠ろう。



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鳥と兜の相対速度

 敵意



 目が覚めた私の目を光が刺し、反射で目を背ける

 うおっまぶしっ……木に青空? いつの間に外に……ヤバい、全く覚えてねぇ。

 

 立ち上がり、周りを見渡す

 周りには木が生い茂っていて、少なくとも今見えている木々は例外なく根本に何かしらの(キノコ)が生えている

 パッと見て人の手は加わっていない。森というより林って感じ。

 

 茸からは白い煙のような物が放出されていて、見ていて快いかと聞かれればノーと答えるね。

 あの煙、胞子なの? 煙の量が多過ぎるからか発煙筒みたいな感じになってるんだけど。

 発煙筒と違って空気に溶けるように消えてなかったら視界0だったなハハッ!(甲高い声)

 

 妙に冷静なのはこれが夢だからか? いや、楽観的過ぎるかな。これは現実だ。

 だが、頭が冷えているなら安全だと確信出来――

 

 

 目が覚めた私の目を光が刺し、反射で目を背ける

 うおっまぶしっ……木?

 

 おかしいな。地面が横にある。木が素早く上に動いて行って……揺れてる。

 背中の辺りに骨と、言うとすれば鱗のような感触を感じる

 すぐに誰かの左肩で 仰 向 け に 担がれている事に気付いた

 この姿勢が痛くないって可能性はロシアの金髪幼女も涙目の0だろうね。

 

 「痛い痛い痛い痛いいゥイ゛ェアアアア」

 「ちょっちょ暴れるなって!」

 主に背骨が歪むような感覚を覚えながら痛みを訴えると、私を背負っている“誰か”は器用に私を仰向けからうつ伏せに持ち変える

 “誰か”は走っており、何かから逃げるような挙動だ

 走る速度が常人離れしていて、その分揺れも強い

 あぁ、気を抜いたら舌を噛み切りそう。

 

 身長は目測で170cmぐらいか

 “誰か”の背中には青い翼のような物がついており、そこから鱗の感触を感じる

 サイズは折り畳まれているのか小さく、羽の持ち主であろう“誰か”の背中より小さい

 形だけならどことなくお前を殺す(I'll Kill You)が生存フラグになる人の愛機を思い出すよ。

 かなり小さい上に羽は鱗。飛ぶ事を目的にしているとは思えないなぁ。

 怖いなぁ……怖ぇよ。

 

 顔を上げると正面に、私を、というよりこの“誰か”を追ってきているだろう人が見える

 片側だけおさげにした金髪に、黒い三角帽。濃い青の服に水色のエプロン

 説明不要。……いや、要るか。穂先にミニ八卦炉を積み、速度を上げた箒に跨がった█████だ

 多分、いや確実に怒っているらしい。顔が少し歪んでいる

 誰に? 私は心当たりが何も無いぞ。

 もしかしなくても君が原因だろうね。

 

 「とりあえずどうして追われてるのか説明して下さいよぉ!」

 揺れが強く、大声を出さなければマトモに話せなさそうだ。

 あぁ喉が痛い喉が痛い。叫ぶのは嫌だな。

 とりあえず、ご冥福をお祈りします。

 

 「知らないよ! 近くにある赤い館、紅魔館って言うんだろ! そこのバケモノに食い殺されかけたんだ! それで、逃げ出したんだけど何を勘違いされたのか追われてんだよ!」

 ごめん、もしかしたら違うかもしれない。

 青黒は何を勘違いしたんだ?

 えっ? 白黒? ここにいるのは青黒です。いいね?

 

 ……ちょっと待てよ。

 紅魔館には定期的に人肉が運ばれてるハズだ。それともまだ生きている状態で運んでいるのか? 悪趣味な。

 時止めから逃げ切れるとは思えない。

 逃げ切るどころか無力化、それ以上の事も出来る程の実力者かもしれない。警戒しておこう。

 

 とりあえずこの担がれてる状態をなんとかしよう。

 もしここで降ろしてもらっても青黒に敵じゃないって思われるかどうかも分からないし。

 なら、逃げ切らせて色々と聞くか? だけどそれじゃ今度会った時に……

 

 ……決めた。両方を無力化して話し合いをさせよう。

 

 「私の指示に従ってくれませんか!」

 「指示によるね!」

 金髪の青黒がスカートの中からオプションを4つ取り出す

 そこから取り出すのかよ。

 

 「後ろに飛んで下さい!」

 「それは『一緒に死のう』って事か? お断りだ!」

 「違います!」

 オプションが狙いを付けたのか発光する

 

 「いいから飛んで!」

 「あーもうやりゃあいいんだろやれば!」

 急激に速度が殺され、減速度で後ろに飛びそうになった

 後ろに飛びそう、ってなんかシュール。シュールな場所だけどな。

 もうすぐで止まるか、といった辺りで“誰か”は思いっきり後ろへ飛ぶ

 

 それとほぼ同時にオプションからレーザーが発射され、1本が私の左肩に当たる

 頭が青黒の脇腹に当たり、お互いの機動が横に逸れる

 

 そして地面に衝突し、視界が暗転した

 ――失敗じゃねーか!




 _人人 人人_
 > 魔法の林 <
  ̄Y^Y^Y^Y ̄

 来いよ!【[削除済]権限で規制】


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記憶と記録の再生

 想起



 目を覚ますと、視界に入ったのは天井だった

 体を起こそうとするが、左肩が痛む

 あぁ、そういやレーザーにやられたんだったな。

 “誰か”。あぁ、こう呼ぶのも不便だし青鱗翼の人って呼ぶか。あの翼以外に特徴無かったというか見てなかったし。

 大丈夫かな、私の肩貫通してたのなら当たってるハズだけど。

 

 「あら、起きた? それで――」

 「お金は持ってません」

 声をかけられ、反射で声を返す

 「無一文からどうやってお金を巻き上げるって言うの?」

 

 声をかけてきたのは赤白の巫女服に赤いリボンと、特徴が多い服装の博麗(はくれい)霊夢(れいむ)

 

 「お金の代わりに体の部位賭けたりしてる人もいるそうですよ」

 「要らないわよそんな物。私は霊夢。博麗の巫女よ。それで、何やってたか覚えてる?」

 「大体は」

 青鱗翼の人に担がれ魔理沙(まりさ)に追われて首が折れかけた事までは。

 

 「魔理沙と背中から翼が生えたのがあんたを運んで来てね、2人共気まずいからって外にいるわ」

 「私といるより、その2人だけでいる方が気まずそうな物ですが。……あの2人、何があったんてすか?」

 「紅魔館の連中に食われかけて、それで反撃してたら魔理沙が紅魔館を襲ってると勘違いしたらしいわよ」

 やっぱりあっちの方が気まずいのではなかろうか。

 

 

 突如空中が裂け、多数の目がある空間が現れる

 「お邪魔するわ」

 その空間から、中華風の女性が現れる

 

 「あら? 思ったより驚かないのねぇ」

 「あなたは知っていますから。八雲(やくも)(ゆかり)さん」

 「何回も見れば驚かなくなるわよ。それで、何の用? アレはまだ先でしょ?」

 

 「えぇ。……肩を痛めてる所悪いんだけど、そこの人間。ちょいとお時間良いかしら?」

 私を指して話をしたいと言う女性の名前は八雲紫。

 幻想郷を創った賢者の1人で、最も神に近いと言える程に強大な妖怪だ

 

[◇]

 

 「悪かったな、お前が被害者だとは思ってなかったよ」

 「いいって、焦りはしたけどお互い怪我は無いんだ」

 僕と話をしているのは霧雨(きりさめ)魔理沙(まりさ)、普通の魔法使いと名乗っている女性だ。

 

 「ただ、途中で巻き込んでしまった彼には謝らなきゃ」

 「分かってはいるんだが……気まずいな」

 「僕も分かってはいるのだけれど……気まずいね」

 今は神社を出てどこかへと歩いている。行き先は聞いても教えて貰えない。

 

 

 「そういや、私は名乗ったけどお前は名乗ってなかったな。何て言うんだ?」

 「平太(ひらた)だ」

 「よろしくな、平太。それで、本当にどうするんだよ……」

 「流れ弾当てて気絶させたのを担いで走り肩を負傷させ首の骨が折れかけた。僕なら許さないよ」

 

 魔法の森の中で何か考え事をしていた彼に、翼から飛ばした鱗を間違えて当ててしまった。

 それを森の中に残しておけず担いで走り回り、最後に魔理沙の懐に飛び込んだ際に肩を負傷させてしまった

 

 「素直に謝れば?」

 「結局それしか無さそうだね。戻ろうか」

 「あぁ、そうだな。普通に謝るしかな――」

 魔理沙が急に固まる

 視線は僕ではなくもっと後ろの方を見ているようだ

 

 「どうかした?」

 「振り返ってみろ」

 振り返ると、何も見えなかった。

 真っ暗で、入ったら自分の声すら聞こえなくなりそうな闇が視界を覆っていた。

 

 「わはー。驚い――」

 青鱗翼で闇を斬る

 この闇の中には人が入っているか? それは無い。これは妖怪だ

 妖怪は殺す。慈悲を与えてやる必要は無い

 

 「何すんのよー」

 闇が晴れ、中から僕より頭1つぐらい低い女の子、いや、妖怪が現れる

 「人食い妖怪が真後ろにいて何もしない方がおかしいだろ、とはいってもこれはやり過ぎだが」

 

 「違うんだけどねー。そっちのはやる気みたいだし、遊ばせてもらうよー。スペルは――」

 妖怪の首を狙って斬りかかる

 「おい」

 ――のを魔理沙に止められる

 

 「ルール無視は頂けないな。ここは幻想郷だ。何か気に入らない事があるなら、スペルカードルールで勝負しろ」

 「お前が言うな」

 「……なら、せめて弾幕使えとだけ言っておくぜ」

 「話は纏まったー? ルール無視なんてしたら……もういっそ消滅した方がマシだと思うぐらいの……」

 「ルーミア……ッ! もういい……ッ! あの時の事は忘れろ……ッ!」

 ルーミアって言うのか。

 話を始めたルーミアと、それを聞いた魔理沙の顔色がわるくなる。

 

 「話はそれだけか?」

 ルール? 馬鹿馬鹿しい。そんなのを守る必要があるか? いや、無いね。

 何が起ころうが、こいつを殺せるのなら構わない。

 

 「うん、これだけ。じゃあ、始めよ――」

 「――待った。私が相手になろう」

 どこからともなく現れた女が妖怪を後ろに押し、僕の前に立つ

 「分かったわ。じゃあ私はもう一人の方と遊んでくるね」

 ルーミアが魔理沙の元へ飛んで行く

 

 「久しぶりねー」

 「おう、そういや最近は見なかったな」

 「今回は『聖者は十字架に磔られました』っていっているように見える?」

 「へへっ、ちょっと懐かしいぜ。『人類は十進法を採用しました』って見えるな」

 

 「狐……!」

 「また会ったな、有翼人。あの時は油断していたが今度は簡単には行かないぞ」

 この女の名前は八雲(やくも)(らん)

 僕を殺そうとした妖怪共の1人だ




 千歳ヶ丘もなかさんの小説とのクロスになります

 妖怪は全てブックスんだ、慈悲はない


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正々堂々、正面から卑怯に

 降霊



 木々に囲まれながら、意識を研ぎ澄ます。

 後ろからクナイが飛んでくる。

 避けられないので、防御する為に翼を広げる。

 が、どこからが飛んできた別のクナイがぶつかり、クナイがあらぬ方向へと飛ぶ。

 巧妙に計算されたクナイは周りの物に反射し、僕の足に突き刺さる。

 

 一体僕は、何をやっているのだろうか。

 あの狐の首にでも1発入れられればそれで終わる。

 なのに、今はこうして遊ばれてる。

 妖怪に。人じゃない奴に。狂った奴らに。

 

 ――ふざけるな。

 ――殺してやる。

 僕が今こうして苦しんでいるのは誰のせいだ。

 ――アイツだ。

 ――殺せ。

 ――そうだ、コイツ(魔理沙)を人質にでも取ればアイツ()は出て来ざるを得ないんじゃないか?

 ダメだ、魔理沙の相手も含めて3人を相手する事になる。

 ――やれよ。1発で崩れたザコより強い奴はこの中にいない。

 ――殺せ。

 ――殺せよ。

 

[◇]

 

 「霊夢、客人に茶の1つも出してはくれないの?」

 「この前あんたが茶葉を全部盗っていったじゃない」

 霊夢が紫を哀れむような目で見ている

 ボケが始まってきた祖母でも見ているような目だ

 

 「盗ってるんですか……」

 「盗んでないわよ、ただ死ぬまで借りてるだけよ」

 「言いたい事は多々あるけど、とりあえずそっちの話をして」

 どこかのモノクロみたいな事やってるのか……

 それは相手が長寿者で、魔理沙が人間だから通用する理論だからね?

 理不尽には変わりないけど。

 

 紫の目つきが真剣になり、溜めてから話し始める

 「早速だけど、本題を。今から話す事はあなたの生き方を曲げる。だけど、この話を知るかどうかの選択肢を与える事は出来ない。だから、覚悟して聞いてほしい」

 

 私の生き方を変える? 生き方……生き方?

 「私今までどうやって生きて来たんですか?」

 

 紫が少しの間硬直し、目つきが崩れる

 「ぷ……ククっ……何よっ、真面目に話してたのにっ、ふ……コミカルに……ぺはっ……あは……」

 突然笑いを堪え始めた

 そんなに笑えるような話し方してたのか……

 

 「ご、ごめんなさい。爽やかに言う物だから。それで、とりあえず本題を言うわよ」

 笑いを抑えた紫が、また真剣な目つきに戻り話を始める

 

[◇]

 

 ルーミアと向かい合って何かの準備をしていた魔理沙に翼の鱗を飛ばす。

 が、魔理沙に軽々と避けられる。

 魔理沙は八角形の何かを取り出す。

 「売られた喧嘩は買わずに盗む主義なんだ。恋符――」

 それを僕に向け、何かを呟く。

 それは周りの大気を歪ませ、最後には光を放った。

 

[◇]

 

 「えーと……つまりどういう事ですか?」

 「()が多過ぎて、コップ(あなた)に収まりきらない。このまま放置してたら、いずれ水は溢れ出して周りに影響を及ぼす」

 「最初からそう言えば解り易かったのでは?」

 「細かい事省いて伝わらなかった事があったら困るでしょう?」

 あぁ、なるほど。

 

 

 突然轟音が鳴る。外を見てみると、一筋のと言うには太過ぎる光が辺りを照らす

 なんだ魔理沙か。

 マスタースパークにしては威力が低い気が。マスタースパークのような懐中電灯の方なんだろう。

 相手は妖精の誰かかな。楽しそうで何よりです。

 

 

 「魔理沙ね」

 「魔理沙でしょうね」

 「魔理沙さんですね」

 \満場一致/

 

 「何やってんのよアイツ」

 「弾幕ごっこ(スペルカードルール)が何なのか実演してるんじゃないんですか?」

 「マスパじゃなく懐中電灯で?」

 「略称で呼んでるんですね」

 「当たり前じゃない。マスタースパークマスタースパーク言ってられないわよ」

 確かに。私も略称にしとこう。

 

 ところで、マスパのような懐中電灯の“やる気を削ぐ光”ってどんな物なんだろう。

 今度魔理沙に頼んで浴びてみようかな。

 

 

 「話を戻すわね。それで、水が溢れるのなら水を減らせばいい。だから、減らす事に了解と了承を」

 

[◇]

 

 が、その光は目眩まし以上の意味を持たずに消えた。

 「ハァ、とりあえず1発撃ったが。どうしたんだ? 相手は私じゃないぜ?」

 「眩しいのだー」

 「嘘つけ絶対眩しいとか思ってないぞ」

 魔理沙は八角形の物をしまい、気怠げに何も無い所を指差す。

 

 「お前を人質にしようとすればアイツは出て来る」

 「…………さぁな。アイツは私に価値を見出してない説があるし、放っておくだろうぜ。――卑怯な手を使って戦うってのは妖怪の賢者の式としてどうなんだ?」

 

 

 先ほど魔理沙が指差した場所から、青みを帯びた火が現れすぐに人型を形作る。

 「そうだな」

 火が弾け、1つの塊になり僕を燃やそうと飛んで来たので、近付いた所を翼で弾き飛ばす。

 

 火があった場所には、9本の尾を持つ異形が立つ。

 それを確認し、すぐに一瞬で距離を詰める。

 「ちょっとしたトラウマでな、正面からというのは抵抗がある。だから、こうしよう」

 

 「目も当てられない状態にしてやるッ!」

 殴りつけようと翼を伸ばす。

 ……当たった。深々と。このまま、横に動かせば――

 という所で異形はまた青みを帯びた火に変わった。

 

 

 『狐狗狸さんの契約』

 音は聞こえなかったのに、確かに声が聞こえた。

 これは何かの宣言だ。何故かは分からないけれど、確信出来る。

 

 こう結論付けた直後に、12本の光で出来た両刃の剣が僕の周りを飛び始めた。

 そうだ。アイツに当てられたんだ。この剣だって。

 そんな風に思い翼ではたき落とそうとしたが、翼が軽く炙られるだけだった。

 直後、翼が灰に変わった。

 不思議と痛みは無かった。だが、魂にポックリと風穴があいたような気がした。

 『どうやって目も当てられない状態にするつもりなのかは分からんが――』

 雨のように大量の粒のような物が周囲に漂う。

 

 『――目どころか、色々当てられない状態にしてやるよ』

 雨粒が落ち始める、剣で出来た籠の中に。




 もっと早く投稿できたのですが、某工場ライン建造ゲームやってて遅れました。
 だが私は謝らない。

 引き続き、千歳ヶ丘もなかさんの小説とのクロスです。
 クロスオーバーと言いながら3話も登場させてるのは大丈夫なんですかね……
 大丈夫だ問題ない、略して大問題だよ(自問自答)


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重なる横からの槍

 孤立



 「了解と了承を。拒否は認めない」

 

 「勝手にやっちゃダメなんですか?」

 「コップ(あなた)が揺れていてはやりにくいのよ。それ以前に、私にも良心はある」

 良心はあっても拒否権が無いのは、紫が幻想郷を我が子のように思っているからだろう。

 私が幻想郷にとって脅威になる力を持っていると、遠回しに言っているような物なんだけどな。

 

 

 「ねぇ、アレ。」

 霊夢が外を指差し、紫がそちらを向く

 それに釣られ、私も外を見る

 「あんたの所の式神でしょ? 何かやってるみたいだけど」

 いくつかの光が立ち並び、周囲を照らしていく

 ……のが分かる程暗くはないか。

 

 「……ルールに沿っているようでどっちも本気でやってるわね」

 「どうするの? 私達は動けないわよ?」

 

 紫は悩む様子も無く、少しの空白の後に答えた。

 「あら、ちょうど準備さえすれば動ける人がいるわよね?」

 私の事なのん?

 「という訳で、よろしく」

 やっぱりか。

 「わ……私は……」

 「諦めて弱体化されちゃいなさい」

 弱体化言いやがった。

 

 

 

[◇]

 

 

 

 雨粒が落ち始める、剣で出来た籠の中に。

 

 光る球体が何個も籠を通る。

 だけど、弾幕の知識が無い僕でも簡単に避ける事ができる。

 僕に当てる気はないのか? まだナメてかかってるんだ。痛い目に遭わせてやれ。

 

 直後に球体が増え、隙間がほとんど無くなる。通れそうにない。

 どうする? 弾速がある。下手に出るのは危険だ。

 考える時間が無い。どうすればいいんだ? 賭けにはなるけれど、突っ込むしかない。

 

 腰を落として足に体重を乗せ思いっきり前に飛ぶ。

 が、足に何かが引っかかり顔を地面にぶつける。

 顔の痛みに耐えながら前を見ると、青みを帯びた火が現れすぐに人型を形作る。

 クソキツネ()だ。

 

 瞬きをしたら……えーと、森で担いで走ったのがまだ記憶に新しい、風に揺れる“彼”がモップ()に膝を掴まれ、……いや、受け止められている。

 

 “彼”が突然消える。

 かき氷()の後ろに“彼”が現れ、同時に大量の氷が藍に放たれる。

 

 

 「頭が痛くなってきたんだけど、帰っても……いいかな?」

 「ダメだ、撤退は許可出来ないぜ。」

 「なのぜー」

 魔理沙の隣にいる妖怪に鱗を飛ばす。

 金属同士がぶつかるような、快い音がする。

 「さ"んだっ!」

 地面に重い袋を落とすような、心地いい音がする。

 

 

 

[◇]

 

 

 

 「土産は?」

 「ぐったりした藍とか見た事無かったわねぇ」

 「了解」

 空間を裂くように存在する穴をくぐり抜け、目に囲まれた空間の中を、空に漂うような感覚を覚えながら通り過ぎる

 

 

 足が土を踏むような感触を感じると同時に動く物の気配を探る

 

 ……までもなかった。

 近くで藍、青鱗翼の人が戦っており、魔理沙とルーミアが見学している

 青鱗翼の人が(こうか)の外に出ようとしているみたいなので、足元に枝を飛ばして転ばせる

 

 藍を懐までの距離を0まで縮めて飛び込み、膝蹴りをするが、片手で掴まれる

 「魔理沙が運んできた外来人か。何の用だ」

 藍さん? 膝がミシミシ言ってます。痛いです。

 「横槍入れさして貰うよ、殺して貰っちゃあ困る」

 「スペルカードルールに則った決闘だ。下手しなければ死なない」

 「下手しなければ、な。殺人許可証って知ってるか?」

 

 

 膝が限界なので体を粒子にまで密度を薄め、緑に発光させて視界を奪う

 藍の背後に粒子(からだ)(あつ)め、実体を取り戻す

 

 「鉄屑――」

 1枚のカードを霊力で作り出し、宣言する

 「『貫く百筋の槍』」

 大気の密度を高めて爆発させ、大量の氷の杭を飛ばす

 

 「式輝『狐狸妖怪レーザー』」

 宣言と同時に弾の集合体が放たれ、レーザーが飛び交い針が撃ち落とされる

 こんな感じで迎撃する兵器が実在したような……

 

 カードを作り、宣言する――

 「紅符『スカーレッ――』」

 「境符『永夜四重結界』」

 前に4つの結界が展開され、動きを止めにくる

 

 「……『――トシュート』」

 スペルの宣言を続け発動するが、弾幕は出て来ない

 弾幕用じゃなく本物の結界張られたみたいだけど。

 

 

 「時間よ。戻ってらっしゃい」

 「……紫様」

 間にスキマが開き、中から紫が出てくる

 スキマの中からでもスペル使えるのか。敵には回したくないですね。

 

 「最初からこうすりゃ、横槍飛ばす必要無かったろうに」

 「意外と早く終わったのよ、だけど、念の為に安全策を取ろうと思ってね。さ、皆急いで神社まで来て」

 目の前にスキマを出される

 軽くトラウマ物だと思う。

 

 

 魔理沙、ルーミア、青鱗翼の人、藍と周りを見る

 「今度は純粋に手合わせ願いたい物だな」

 藍がそう言い残してスキマをくぐり、どこかへと行く

 他3人は円陣を組んで相談し合ってるみたいだ

 

 

 「どうしたの?」

 「あぁいや、あの3人はどうすんのかなって」

 言葉と視線で気になった事を紫に話す

 「2人は大人しく来てくれるみたいだけど、あの外来人、平太(ひらた)と言ったかしらね。嫌みたいよ」

 もう少し早めに名前知りたかったよ。

 

 「説得してみるけど、使える時間は?」

 「8分ぐらいが目安」

 「了解」 

 

 

 

 平太に近付き、声をかける

 「きゅうりに蜂蜜かけるとメロンの味がするらしい」

 「えっ」

 「どうしても……着いて行きたくはないのか?」

 関係の無い話をして揺さぶり、毒気を薄めてから本命の質問に移る

 「君は自分を殺そうとした奴の仲間を信じて着いて行けるか?」

 無駄だったようだ

 

 「にしてはルーミアと円陣組んでたみたいだが?」

 「アレは流れという物だ」

 「そ、そうか……」

 第三の眼(サードアイ)を使い、心の中を覗く

 『妖怪は殺――』

 見なかった事にしよう。面倒な事になりそうだし。

 

 

 平太の肩をポンと叩いてから紫の元へ戻り、こう報告する。

 「なんの成果も得られませんでしたーッ!」

 「そう。それなら早くスキマに入りなさい。また会える保証が無いってだけよ。心配しなくてもいいわ」

 それなら安心出来そう。

 だけど、まだやる事は残ってる。

 

 「残りは?」

 「2分。もう行かなきゃマズいわよ」

 2分か。まぁ、充分。

 

 

 平太の元へもう一度行く

 「……何の用だ?」

 

 一度肺を酸素で満たし、少し息を整えて声を出す

 「ありがとう。それじゃあ、“またな”」

 「また会えなんてしな――」

 「時間よ。次会う時は忘れているでしょう」

 いつの間にか私の後ろにいた紫が、平太の発言を遮り私をスキマの中に引っ張り込む

 

 多数の目に見つめられながら、上下左右が分からなくなりそうなスキマの中を漂う

 

 

 

 ……漂う?




 もなかさんとのクロス終了です。ありがとうございました。

 さて、これを半分ぐらい書いた所で意図せず伏線になってしまい、回収しなければ矛盾が生じる箇所がある事に気付いた。
 ……プロット書き換えるか
Q.あなたは今まで変えてきたプロットの回数を覚えてるの?
A.13回。私は腰軽ですわ


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