スターウォーズ短編 (トッキー)
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スターウォーズ短編~女尊男卑の世界編~
世界中の女性達が、いや世界中の人間が、この日ほど絶望に陥った日はないだろう。
彼等の視線の先には、絶対防御も破壊され、ISの操縦者が無残にもその屍を宇宙に晒している姿と、何処と無く昆虫を思わせるフォルムを持つ無数の宇宙戦闘機、そして数十隻の巨大な宇宙船の姿があった。
ある惑星への侵攻作戦の為に編成されたTOKK‐1率いる強力な艦隊は、ハイパースペースの歪みによって、ある惑星の近くへと姿を表してしまったのである。
そのある惑星とは、あの<インフィニット・ストラトス>の世界の地球であった。
当然レーダーにその姿を捉えられた艦隊は、最初口封じの為に、この惑星への侵攻をも検討していた。
しかしいくら惑星侵攻の装備があるとはいえ、作戦目標の惑星ではなく、また味方との通信が取れるかも分からない状況の中で、おいそれと攻撃するのは好ましくない。
こうして各艦の艦長達との話し合いによって、当初は現地政府との『味方と連絡が取れるまで、我々をこの宙海に置いていてくれれば良い』『そちらに攻撃は仕掛けたりしない』等の事を含めた、不可侵条約を締結させようと考えていた。
だがいくら話し合いに持ち込もうとしても、条約の内容を信じてもらえず談合は難航した。
また何人かの国家代表―――全て女性だった―――が、TO‐KK1が男性プログラムを施されていると知った途端に、それまで下手だったのが、急に手のひらを返し強気になったのである。
まるで自分達が正しく、神のようになったかのように。
そしてあろうことか、例の何人かの国家代表がTOKK‐1や艦長達に、『お前達が保有している技術を全て寄越せ。さもないと攻撃する』とまで言ってきたのである。
これには世界各国から「いきなり宣戦布告紛いの事をするのは何事か」と、非難が相次いだ。
しかし強気に発言した国々は、いずれも核ミサイルを保有していた為に、この非難を無視した。
これが、国家代表がTO‐KK1達に強気に出ていた理由であった。
そして一方的に定めてきた期限を過ぎ、一つの某国が核ミサイルを数発、TO‐KK1率いる艦隊に発射した。
徐々に近づき。ミサイルが艦隊にぶつかると同時に爆発したのを見て、世界中の女性達が歓喜の声を挙げた。
しかし爆炎が消えた次の瞬間には、艦隊は一隻も欠ける事なく、無傷で存在していたのである。
そして艦隊は横っ腹を見せ、保有する全火力をこの某国に向けた。
某国は、自国の重要施設に施されているシールドを慌てて展開させた。しかし一発一発が原爆並の威力を持ち、尚且つシールドを貫いて敵艦の装甲を破壊したり、シールドを無効に出来る程の火力を受けた施設群は、軒並み破壊され、残ったのは残骸だけであった。
これを見た各国は、手持ちのIS部隊を全てこの艦隊に向けて投入したのである。しかし、鈍重そうな見掛けとは裏腹に機敏に反応する砲塔や、Aランクの者の攻撃を躱し、逆に無数に襲い掛かってくる宇宙戦闘機を前に、IS部隊は全滅した。
そうして、「IS」という虎の子を失い、戦艦やイージス艦等も軒並み退役させていた国々は、最早この艦隊の敵ではなかった。
そして瞬く間に世界各国は無条件降伏を受け入れていった。
だが、それだけであった。
これには流石に全世界が困惑した。核ミサイルを防ぎ切り、「最強」とされるISをも蹴散らした彼等は、金銭も人質も何も要求して来なかったのである。
というのも、それは至極簡単な事だった。実はTO‐KK1は、当初不可侵条約の中にあったように、艦隊を『味方と連絡が取れるまで、この宙海に置いていてくれれば良い』として、駐屯させておきたいだけだったからである。
これに世界各国の代表は腰砕けになっていた。
それはそうだろう。虎の子を失い、場合によっては自分の命と引き換えに、国民に手を出させないように考えていたのに、何もせず、本当にただ宇宙に艦隊を駐屯させておきたいだけだったと知ったのだから。
しばらくして、ヌート・ガンレイ総督や他の経営首脳陣と交信が可能になった時、この星の素晴らしさを等をTOKK‐1が全面に押し出す事によって、それを信じた経営首脳陣達はこの星を保養地の一つに定めたのである。
尤も、最寄りの星系からこの星に着くまでに、ハイパードライブを使っても最短で一週間弱掛かる為に、来るのは長期休暇の者だけであったが。
そして『IS最強伝説』が払拭され、男女平等になった地球では、何事も無く平常になりつつあった。
そしてISを開発したあの篠ノ之 束はというと…。
「やぁやぁ、君があの何もしなかったへたれのロボット君だね!私は篠ノ之 束だよ!宜しくねーーー!!」
「ね、姉さん…」
「あのバカ…」
「「「あ、アハハハ…」」」
「うわ、スッゴイ…。地球の技術なんか目じゃないわね」
「なんというか、凄まじいですわね…」
「ふむ…」
何故か色々な人物を引き連れ、<ワーカーズ・ボエジ>の第一艦橋にいた…。
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スターウォーズ短編~魔法少女の世界編~①
その日、分離主義勢力の評議会は大きく割れていた。それはある惑星への―――厳密に言えば、その惑星を統司している組織にだが―――即時宣戦布告を声高らかに叫ぶタカ派と、交渉による解決――これまでの被害総額を全額弁償、及び行方不明になっている乗組員の即刻引渡し――を叫ぶハト派の二つに割れていたからである。
タカ派の評議会メンバーの主張とは「共和国との最中に不穏分子を野放しに出来ない。即刻取り潰すべき」という内容だった。対するハト派のメンバーの一人は、「戦争状態だからこそ、余計な出資は抑えるべきである」という主張を断固として曲げる事はなかった。
しかしこの会議も、半ば「開戦」という形で決定されているといっても良かった。
それはヌート・ガンレイ総督以下、独立星系連合の経営首脳陣の大半が、宣戦布告に乗り切ろうとしていたからである。
何故、普段ならば戒める立場にあるガンレイまでが、強硬に宣戦布告を叫んでいるのか。その背景には経営首脳陣だけでなく、独立星系連合全体にとって、戦争以上に頭を痛める出来事が多数存在していたからである。
この会議の数ヶ月前、クローン戦争が勃発してしばらく立ったある日、一隻のミュニファスント級スター・フリゲートによって運ばれていた財宝が、突如謎の艦船に強奪されたのである。
いくら待っても、荷物が一向に到着しない事に業を煮やした経営幹部の一人が独断で捜索を行った結果、銀行グループ・フリゲートが残骸として宇宙を漂っていたところを発見されたのである。
当初はブラック・サン等の海賊や、共和国軍の攻撃で破壊されたのかと思いきや、そうではなかった。
乗員のドロイドは全て破壊され、ニモイディアンの乗員は行方不明になっていた。また記録装置は軒並み破壊されており、通信も周波数が合わず、雑音しか聞こえて来なかったのである。
そして、この謎の艦船が何処の所属のものなのか全く分からなかった為に、乗員が海賊達と結託して、財宝を強奪したのではという憶測もまことしやかに流れた。
しかし、その後も相次いで強奪事件が発生し、同時に乗員も行方不明になっていたのである。
だがその乗員の中には、果敢にも抵抗し、殺害された者も少なからずいた。その死体には、いずれも殺害された後に受けたと思われる暴行の跡が残っていたのである。
その殺害された乗員の一人に、ガンレイ総督やワット・タンバー、サン・ヒル等の経営首脳陣が最も信頼する者―――ギャレッグ・ダーゴ将軍も含まれていた。これがそれまでの事件の流れを大きく変える転換点の一つになったのである。
これがきっかけとなり、経営首脳陣は重い腰を上げ、そしてありとあらゆるコネを使い、犯人を見つけようと躍起になった。そうしてしばらくして、共和国の方でも、同様の事件が起きている事に辿り着いた。
銀河元老院にいた選出議員からの報告では、占領地域への支援物資や、分離主義勢力の放棄された基地から接収した財宝が強奪されたというのである。
またこの正体不明の組織は、共和国・独立星系連合関係なく、領海域を航行中に謎の艦船が突如現れて、『司法機関』のような名を掲げながら、全ての船舶の行動を一方的に制限し、従わなければ病院船だろうと、最悪攻撃・撃沈するという非常識な行動を取るようにもなっていたのである。
これには両陣営互いに憤った。共和国は当初、分離主義勢力の何らかの作戦の一つかと考えられていた。しかしガンレイ総督自らが共和国へ赴き、直訴するという異例とも取れる抗議を行い、両陣営が度重なる調査を行った結果、独立星系連合が行ったものではないと分かったのである。
そして皮肉な事に、この一連の海賊騒動によって、銀河系を巻き込んだ巨大な戦争は下火状態になっていた。
だがそれにも関わらず、被害は右肩上がりであった。避難船も突如現れた艦船によって拿捕され、難民全員が行方不明になっていたのである。
また共和国・独立星系連合のそれぞれの支配地域にも姿を現し、勝手に領有宣言を出し、そしてあまつさえ、惑星の維持に必要不可欠な装置等を強奪したのである。
分離主義勢力の者でさえ手出ししなかった代物を、である。
これ等の出来事によって、住む事が出来なくなった惑星も存在するようになってしまった。それによって難民の数も急増していった。
これにはパルパティーンでさえ頭を抱えていた。市民からは、この組織に対する即時宣戦布告を叫ぶ声が、日に日に叫ばれていったからだ。そしてそれはジェダイの中からもあったのである。
ある惑星へ調査の為に赴いていた、ジェダイ・マスターであるキ=アディ=ムンディが、突如一連の海賊騒動の元凶と思われる一団に遭遇したのである。
そして彼等は突如、ライトセイバーとクローン部隊のブラスター等、全ての武器を引き渡すよう命令してきたのである。
ムンディは嗜めるように説得したが、それを馬鹿にされたと感じたのか、突如この謎の部隊はムンディ率いる共和国軍に牙を向いたのである。
結果としてムンディは仮我を負ったもののなんとか退却する事が出来たが、数に大きく劣った配下のクローン部隊は全滅。そして正体不明の勢力に占領された惑星では、独立星系連合の者でさえ眼を覆いたくなるような圧政に苦しむ結果となった。
これまで全く問題とならなかった些細な事まで犯罪とされるようになり、逮捕者が続出。そしてそれに比例するように税率もみるみるうちに上昇していったのである。
そのような中、ようやく記録装置の復元が完了した時、そこには生々しい侵略者の音声が記録されていた。映像は修復出来なかったが、残されていた音声から、艦橋の戦いが如何に壮絶なものだったか知る事が出来たのである。
ダーゴ『定時報告。現段階に於いて、他の2隻の戦艦共に何も異常なし。予定時刻に到着可能。繰り返す。現段階に於いて…』
バトル・ドロイド『艦長、十時の方向に12隻の正体不明の艦船を確認!!』
ダーゴ『なんだと!?この辺りは我が軍の領海域内の筈だ!何故…』
バトル・ドロイド『艦長、正体不明の艦が急速にこちらに向かってきます!!』
ダーゴ『シールドを展開!全艦取り舵一杯、180度回頭させろ!!悔しいが、向こうが優勢だ!』
バトル・ドロイド『艦長、敵が攻撃してきました!』
ダーゴ『シールドを展開!全艦、直ちに応戦しろ!急げ!!』
[砲撃らしき音を多数確認。しばらくした後に、複数の艦が破壊される音も確認]
バトル・ドロイド『クルーザー全艦破壊されました!!』
バトル・ドロイド『エンジン付近に被弾!全速が出ません!』
バトル・ドロイド『艦長!今の攻撃でシールドが23%まで低下!』
バトル・ドロイド『敵が複数、艦内に侵入!!』
ダーゴ『早く緊急信号を送るんだ!』
バトル・ドロイド『駄目です!強力な妨害電波で、送信出来ません!!』
ダーゴ『くそっ、総員配置につけ!なんとしても貨物を守るんだ!!』
[銃撃らしき音を多数確認。その直後の音声は照合され、声紋分析によって確認した結果、独立星系連合内のどの人物とも未整合であった]
???『いたぞ、こっちだ!』
ダーゴ『この賊共が!食らえ!』
???『な、ぐぁっ!!』
???『くそっ!!やっちまえ!!』
[銃声らしき発砲音の後、一瞬音声が途切れる。その直後、何か倒れる音]
???『ったく、手間取らせやがって』
???『俺達に歯向かうなんて、思い上がりもいい所だぜ…』
???『よ~し、次は例の貨物だ』
???『さっさと回収してゆっくり休みたいぜ』
???『全く同感だ』
???『くっちゃべってないで早く…ぐぁっ!!』
[再び銃声]
ダーゴ『待…て!!』
???『な、こいつ!?』
???『確かに撃ち殺したはず!!』
ダーゴ『総…督の、物に…手を、触れる、な…!この…賊共、が!!!』
???『このクソが!』
???『いい加減死ね、このエイリアンが!!』
[再び銃撃らしき音多数確認。再び何かが倒れる音]
???『はぁ、はぁ、はぁ…。は、ハハハッ!ど、どうだ!思い知ったかこのエイリアンが!!』
???『脅かしてんじゃねぇよ、こいつ!!』
[何かを殴打する音がしばらく続く]
???『はぁ、はぁ、はぁ…』
???『おい、もういいだろ。さっさと回収していくぞ』
???『チッ』
???『いたぞ!こっちだ!』
???『な、なんだこいつら!?』
[声紋分析の結果、仲間を呼び寄せていたのはダーゴの配下のOOMセキュリティ・バトル・ドロイドのOOM283だと判明]
OOM283『し、司令官!よ、よくも!お前達動くな!!』
???『あぁ!?うるせぇんだよ』
???『それで、どうすんだ。これから―――』
OOM283『動くなって言ってんだろ!構わない、撃て!撃ち殺せ!!』
[しばらく銃声と怒号らしきものが響き渡り、大きな爆発音の後に声が途切れた]
この音声を聞いた、分離主義のガンレイ総督を筆頭とするリーダー達は怒り狂った。そしてこのような非常事態に於いて、もはや戦争等とは言っていられなかった。
そして度重なる会議の結跏結果、共和国・独立星系連合のそれぞれの評議会は停戦に同意した。
そしてその停戦協定は、両軍の安全面を考えた結果、ジオノーシスにて締結された。皮肉にも、クローン戦争の幕開けとなった場所で、クローン戦争が終結したのである。
こうして、両陣営における戦艦やそれに類する軍需物資の生産等が最高勢に達していた中、その有り余った戦力の全てをこの組織―――『時空管理局』へぶつける事が決定されたのであった。
なんか色々とフラストレーション溜まって、書いてしまっていました。
なんで本編進まないんだろう…。
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スターウォーズ短編~魔法少女の世界編~②
ミッドチルダはその日、大混乱に陥っていた。正体不明の大艦隊が突如として出現し、その艦隊を静止させようとして出撃した次元航行艦の大半が、大艦隊の正確無比な砲撃によってエンジンや砲塔を破壊される等、軒並み攻撃を受けていった。また、コリコイド・クリエーション・ネスト製のドロック級ボーディング・シップの奇襲を受け、碌な反撃も出来ずに制圧された艦も多数あった。
その様子をホログラムで見ていたオビワン・ケノービは、制圧に一役買ったのが分離主義勢力側のものであったという事に対し、思った以上に役立っているという事実に内心驚いていた。
そうしてミッドチルダの衛星軌道上に存在する、全ての宇宙船が航行不能になってしまっていた。
またこの正体不明の大艦隊は、まるでミッドチルダを取り囲むかのように、配置されていたのである。
奇跡的にも、航行艦には負傷者はいたものの、死者は出なかった。だがその攻撃は、この正体不明の艦隊の持つ攻撃力をまざまざと見せつける結果になった。
すぐに地上本部や、次元航行部隊を交えた緊急会議が開かれたが、それは醜悪なものであった。それは「会議」とは名ばかりで、地上本部を除いた部隊の大半が、互いに責任を押し付けあうという場面が多かったのである。
また「何故あれ程の艦隊の動きを把握出来なかったのか」、「あれ程の武装勢力が何処に存在していたのか」等の意見が多数あった。偶に「あれ程の技術を保有している等とは、我々時空管理局への反逆に他ならない」等といった、的外れも甚だしい意見も出ていたが。
そしてレジアス・ゲイズ中将等の良識派は、その醜悪な会議に始終頭を痛めていた。
だがその醜悪な場面も程なくして終わりを告げた。なんと正体不明の大艦隊を率いているであろう人物から連絡が入ったのである。
映像に映し出された人物は、好々爺でありながらも思慮深く、そして強かさを思わせる風貌であった。
『お初にお目にかかる、時空管理局のお歴々の諸君。私は、銀河共和国最高議長のパルパティーンという者だ。本日は諸君らに対し、「誠意ある」対応をしてもらう為に、ここに来ておる』
「話!話だと!?今貴様等がしている行動が分かってるのか!これは立派な犯罪だぞ!!」
『ほう、我々の今回の行動が犯罪だと…。それは一体、何故なのかね?』
「何を言う!宣戦布告もなしに、このような行動など、犯罪以外の何物でもないぞ!これは貴様等の、その装備にも言える事だ!それに我々の許しも無く、そんな船に乗っている事自体、いやそもそも、我々に脅威を与えるような貴様等の存在が許されるものではないのだ!!」
『ふむ、なるほど…。では君達は、我々の存在はそちらにとって許容出来るものでない。そう言うのかね?』
「当たり前だ!そしてこのような平和を乱すような事等、我々は決して許しはしないぞ!!」
この発言に周囲の者達は同調するかのように、一斉にパルパティーンに対し罵倒を投げかけた。
しかしその発言に対し、最高議長であるパルパティーンはまるで心外であるかと言わんばかりに顔を顰め、言葉を繋げた。
『ふぅむ…。しかし、お主達の言う「脅威を与える存在は許されない」とは、そのままお主達にも言える事ではないのかな?』
「な、何ぃ…?」
『数ヶ月前程から、我々の領海域内における、様々な犯罪行為が目に余るようになってきておるのだが』
「だからどうした!そんなの、貴様等の問題じゃないか!!」
「そうだ、そうだ!」
『確かに。ただの犯罪行為ならば、それこそ我々だけで処理すべき問題だろう。だが…その犯罪行為を貴様達、「時空管理局」が起こしているとなると、話は別ではないかな?』
「な、なんだと!?貴様、我々を侮辱するのか!」
「そんな戯言、誰が信じるものか!!」
『ふむ。ならばこれはどうかな?』
そうしてパルパティーンは、クローン兵に身振りで、ある数箇所の映像を映し出すよう指令を下した。すぐに指示を受けたクローン・トルーパーは命令を実行した。
改造された数隻のルクレハルク級ドロイド指令船を経由し、映し出された映像の先には、管理局が「解放」したとされているいくつかの惑星であった。
一般的に「解放」という言葉を用いられる時、多くの者は自由を得て、そして全ての人間が満足のいく生活を送る事が出来る姿等を想像するだろう。
しかし、そこに映し出されていたのは土地が荒廃し、多くの人々が路頭に迷っている姿でしかなかった。ある惑星では、そのような人々を傍目に、管理局員もしくはその関係者が助けの手を伸べるのでなく、横柄に振る舞い、暴行を振るっていた。
またある惑星では、民間人の唯一の所持品を「盗品」と決めつけ、暴力を振るって強奪し、その何の罪もない民間人を「逮捕」していたのである。さらに、ただその場にいただけの人物も共犯者として捕らえようとしていた。彼等は慌てて逃げようとしたが、なんとそんな彼等に対し、局員らしき人物は下卑た笑みを浮かべながら、後ろから魔法を容赦なく撃ちこんでいったのである。当たり所が悪ければ致命傷になりかねない威力を、である。
そしてそのような光景が、ミッドチルダや管理世界の全ての液晶画面に映し出されていたのである。
それはもはや「解放」等ではなく、正しく「占領」と言うに相応しかった。
『…さて、貴様達が「解放」したとされる星で、何故このような蛮行が行われているのかね?我々に納得がいくように、説明してもらいたいのだがね』
「し、知らん!!こんなもの茶番だ!そうに決まっている!!」
『生憎と、この映像は最新鋭の偵察ドロイドを通してのライブ映像だ。その性能は折り紙付きでね。茶番等ではない事は保障しよう』
「う、嘘だ!こ、こんなの、こんなのでたらめだ!!」
「か、閣下!大変です!!」
恐らく自分が指示したであろう蛮行が、まさか暴かれるとは思っても見なかった高官の一人が狼狽しながらも否定しようとした。しかしそこに、彼の副官が慌てて会議室に飛び込んできた。
「一体どうしたというのだ!」
「さ、先程の映像を見た市民があちこちで『説明しろ』と暴動を…」
「そんなもの、すぐに主導者を逮捕するんだ!デモ隊等、叩き潰せばいいのだ!」
「大変です!他の惑星でもデモ隊が暴動を起こしている模様です!規模が徐々に膨れ上がって、手のつけようが…」
副官の報告を受け、慌てて手元の端末で状況を確認してみると、管理局正門付近では多くの市民の姿が映し出されていた。
またあちこちの惑星では、それ以上に苛烈で管理局の公用車等が引っくり返され、デモ隊が管理局支部に突入しようとしているのが確認出来た。
「くそぉおおお…」
『さて、返答は如何なものかな』
「し、知らん!私は何も知らんぞ!こ、これはあいつらが勝手に…」
『何を言っておる。部下の行動の責任は、当然その上の人間の責任ではないか。当然部下の失敗は、上官である貴様等の失敗でもある。その行動の責任を、貴様等が取らずに誰が取るというのだ』
「ち、違う!わ、私は、命令で…」
『では、その命令を下したの誰かね?』
「そ、それは…」
『ふむ、では、返答は「ノー」で良いのだな』
「な、何故そうなる!?」
『何を言う。そちらの「解放」地域における暴動等、正しくそちらの落ち度だろう。そして、そちらが飽くまで我々の領海域内の惑星に対して「解放」等と言うのならば、今映し出されている抗議行動の発端は、一体何なのかね?まさか知らない等とは、絶対に言わせんぞ』
「だ、だが…!」
『「時空管理局」という組織全体で行っている事なのだろう?何故それぞれの部隊の行動を把握しない?何故その世界の法を把握し、遵守しない?我々が口にするのもおこがましいかもしれないが、一方的な法の押し付け等、従うに値しないのだぞ』
「何を言う!時空管理局の法こそが、我々の法こそが絶対なのだ!!全ての者は、我々に従うべきなのだ!!」
『…なるほど、それが本音か』
「…え?あっ!?」
大将の位にいる彼はまんまとパルパティーンの話術に乗せられ、自らの心底にあった意識を、あろう事か文字通り全世界と通信が繋がっている中で、暴露してしまったのである。
こうなってしまうと、いくら弁解したとしても全て「詭弁」と一蹴されてしまうのは明らかだった。
口を滑らせてしまったこの高官は顔を真っ赤にしていたが、それは彼だけであった。レジアス・ゲイズを筆頭に、この高官の配下の者達でさえ、あまりの事態に顔面蒼白になっていたのである。
中には蒼白を通り越して、土気色になっている者もいた。
『自分達が全て等と訳の分からない理論を振りかざし、気に入らなければ滅ぼす。…まるでわがままな子供のようだ』
「黙れ…!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇええええええええええええええええ!!!!」
『お主のような人物がトップにいる組織とは、正直思っても見なかった。先程、返答は「ノー」だと受け取ったが…こちらとしても、貴様のような人間がいる組織が、誠意ある対応が出来るとは思っておらん。少々遅くなったが、改めて宣言しよう。我々銀河共和国は今この時を以て、貴様達「時空管理局」に対し、宣戦布告する!』
銀河共和国最高議長が声高らかに宣言した瞬間、そばにいたクローンの士官とTシリーズ戦術ドロイドに合図をし、進軍を命じた。
パルパティーンを乗せたサブジュゲーター級ヘヴィ・クルーザー<マレヴォランス>からの命令を受け、共和国・独立星系連合の戦艦部隊の砲塔は、軍事施設に向け順次レーザーを発射し、上陸部隊を乗せたガンシップや上陸艇、そしてファイター群は一斉にミッドチルダに進撃していった。
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スターウォーズ短編~死の宇宙編~
このゲームって…結構怖いよね?
<行方不明となっている調査船『スローカム』号及び、それに関する報告書>
・10日前に通商連合の海域内に突如現れた不審船―――残されたデータから、不審船は『ISHIMURA』という名である事が判明した―――の調査に向かったプロヴィデンス級キャリアー/デストロイヤー『スローカム』号及び、独立星系連合の将軍TO-KK1に関して
上記の戦艦に座乗していたTO-KK1は、艦長であるグリャーゴ提督の指揮の下、突如現れた採掘船と思われる『ISHIMURA』から発せられた、救難信号の細やかな調査に向かう。
先行していたミュニファスント級スター・フリゲート『3987』に同行し、目的のISIMURAに到着。
しかし、この際にトラブルが発生した。
同行したフリゲート艦『3987』が突如爆発。通信記録及び航行記録によると、突如操縦系統が異常をきたし、『ISHIMURA』と衝突した事が判明。
艦は完全に破壊され、『スローカム』の為に用意されていた支援物資の多くが、宇宙の藻屑となってしまった。
単艦となり、また爆発した支援船の影響でエンジン系統を損傷した『スローカム』は、残った装備でも調査は可能と判断。
『スローカム』の搭乗員は、生き残っていた宇宙船のクルー、ザック・ハモンド、ケンドラ・ダニエル、アイザック・クラークと協力しISIMURAの調査、及び『スローカム』の修理を開始。
捜索隊はアイザック・クラークと共に行動、『ISHIMURA』内部の探索を行う。
しかし捜索隊が海域に向かってから6日目、『スローカム』からの定時連絡が途絶えた為、新たに戦艦12隻からなる58支援艦隊を派遣。
ISIMURA付近の宙域に、調査に向かった『スローカム』の信号を捉えた。
その近辺には一体のアストロメク・ドロイド――『スローカム』に搭乗していたR3-D12と判明――が乗った『スローカム』の脱出ポッドがあり、ドロイドと共に中に残されていた緊急信号を発する保存用ボックスが回収された。
内部にはメッセージが入ったデータディスクと、調査に関する一連の動画が残されていた。
データディスクが閉じられていたボックスの表面には、『「ISIMURA」と「スローカム」に近づいてはならない。もう手遅れだ。完全に手遅れだ!全て破壊しろ!!』と書かれていた。
「コレカラココデ起キタコトヲ記録スル」
「我々『スローカム』のクルーハ、採掘船『ISIMURA』ノ調査ニ来タ」
「ダガ到着シタ際、支援船『3987』ハ、ISIMURAニ近付イタ為ニ重力ニ引カレ、ISIMURAニ衝突、完全ニ破壊サレタ」
「支援物資ノ多クヲ喪失シタガ、『スローカム』ニ残サレタ物資デモ調査可能ト判断シ、調査隊ト生キ残ッタ宇宙船ノ乗組員デ、『ISHIMURA』ノ調査、『スローカム』ノ修理ヲ並行シテ行ウ事ニシタ」
「接舷ノ折ニ、混乱シタ乗組員ト小競合イガ起キタガ、スグニ和解シタ」
「ソシテ自分ハ二個小隊ト、技師ノアイザック・クラークト共ニ、『ISHIMURA』内部ノ調査、修理ニ使エソウナ部品ヲ集メニ行ッタ」
「ダガシバラクシテISIMURAノ船内デ『アレ』ガ…『ネクロモーブ』ガ現レタ」
「ネクロモーブガ突然現レ、襲撃ヲ受ケタ我々ハ、一先ズ『ISHIMURA』ノ奥ニ逃ゲタ」
「ダガ、ISIMURAノ中ハ、『奴等』…ネクロモーブシカイナカッタ…」
「我々ハ、何トカネクロモーブヲ撃退シツツ調査ヲ続ケタ…シカシ、シバラクシテグリャーゴ提督ガ、『幻覚』ヲ見始メタ…」
「提督ガ言ウニハ、死ンダ母上ガ見エルト…ソシテ手招キシテクルソウダ」
「始メハ単ナル見間違イダロウト考エテイタラシイ…シカシ次第ニ提督ノ行動ガオカシクナリ始メタ」
「様々ナ場所デ、母上ヤ父上ガ現レ…手招キシテ、声ヲ掛ケテクルヨウニナッタトイウ」
「提督モ、次第ニ声ガスルトイウ方向ニ行キソウニナリ、我々ニ何度モ止メラレタ…」
「何度モソウシテイル内、提督ハ発狂シタカノヨウニ暴レ、ソシテ制止シヨウトシタバトル・ドロイドノ数体ヲ破壊シ、暗闇ノ通路ノ奥ニ消エタ…直後ニ提督ノ悲鳴ガ聞コエタガ、生体シグナルガ消エタ為、生キテハイナイダロウト判断シタ」
「コノ船ニ、アノ化ケ物ガ跋扈シテイル原因ハ不明デアル。ダガ『ISHIMURA』内部ニ遺サレタデータヲ解析シタ結果、コノ船――『ISHIMURA』ヲ訪レタ人間ハ、全員ガ認知症ニ似タ症状ヲ起コシテイル」
「主ナ症状ハ幻覚、ウワ言ノ繰リ返シ、発汗、不眠、攻撃性ノ向上ナドガ挙ゲラレル」
「ソシテISIMURA内部ヲ探索スル内、『印』ト呼バレルモノガアル事ガ判明シタ。正直、コノ『印』ガ何ヲ指シテイルカハ、モウ分カラナイ。ダガコノ『ISHIMURA』デ起キタコトト、何カノ関係ガアル事ハ確カダロウ」
「アイザック氏トハ途中デ逸レ、通信機モ全てネクロモーブニ破壊サレタ…何トカ我々ハ『スローカム』ニ戻ッタガ…艦ハヤツラニ占拠サレテイタ。修理部隊ノ姿ガ見エズ、船内ノ通信装置ニモ応答ガナイ事カラ、警備部隊諸共全滅シタノダロウ。三個師団程イタ部隊ハモウオラズ、残ッタノハ自分ヲ含メ、二個小隊程ダ」
「モウ我々ニ出来ル事ハ…」
「更ニ、興味深イ事ガ判命シタ」
「残サレタデータノ中ニモ、幻覚ニツイテノ内容ガ幾ツカ残サレテイタガ、ヤハリ認知症ラシキ症状ヲ患ッタ者ハ、全員ガ関ワリノ深イ、既ニ死亡シタ人間ノ幻覚ガ見エルラシイ」
「『ISHIMURA』デ起キタ認知症ハ、決シテ認知症デハナイ。恐ラクモット別ノ『何カ』ガコノ症状ヲ引キ起コシタノダト推測出来ル」
「ソシテ『ISHIMURA』ノ内部、オヨビ『スローカム』ニ巣クッテイルネクロモーブニツイテダガ、『ISHIMURA』ヲ襲撃シタノハ間違イナク、ネクロモーブダロウ」
「ネクロモーブハ、死体ダガ、正シクハ死体ニ寄生シタエイリアンダト思ワレル」
「『ISHIMURA』ニ侵入シタネクロモーブガ、『ISHIMURA』ヲ襲撃シ、クルーヲ次々ニ殺シ、新タナネクロモーブヲ作リ出シテイタラシイ」
「何故コノ星域ニ『ISHIMURA』ガ現レタノカハ、全クノ不明デアル」
「ダガソノ中デ、辛ウジテ生キ残ッタクルーガ救難信号ヲ発信、今回ノコノ調査ノ切ッ掛ケトナッタ」
「シカシ既ニ、『ISHIMURA』ニ足ヲ踏ミ入レタ時ニ…我々ハモウ終ワリダッタ…」
「今我々ニ残サレタ事ハ、脱出デハナイ。ソンナ事ハ不可能ニ等シイ…シカシ、コノISIMURAト『スローカム』デ起キタ事ハ、伝エル事ハ出来ルハズダ」
「コレカラ保存用ノボックスニ、今現在録画シテイルコノメッセージ、ソシテ『ISHIMURA』ト『スローカム』デ起キタ事ノ全テヲ記録シタデータヲ、運良ク生キ残ッタR3-D12ニ託ス」
「我々ハモウココヲ出ル事ハ叶ワナイ。私モ脚部ヲ破壊サレ、動ク事ハ出来ナイ。シカシコノアストロメク・ドロイドナラバ、我々ニ起キタ事ヲ伝エテクレルト信ジテイル」
「最後ニ頼ミガアル」
「モシコノメッセージヲ拾ッタノガ、味方デ、自分ノ指揮権ガマダアルナラバ、最後ノ命令ヲ送ル。『ISHIMURA』ト『スローカム』ヲ跡形モナク破壊セヨ。完全ニ破壊シロ。欠片モ残サズニダ!!」
「『スローカム』モ、『ISHIMURA』モ…モウダメダ。モウ両船ニ生存者ハ、イナイ…我々ヲ除イテ」
「コレデメッセージハ以上ダ。分離主義ニ栄光ヲ」
行方不明になっている『スローカム』の搭乗員の捜索、及びそれに関する報告書
確認されたメッセージ、そして同時に中に入っていたログデータとR3-D12に残された記録装置。
保存ボックスに残されていたデータから、メッセージに現れた戦術ドロイドは、画面に映っていた製造番号から、TO-KK1と確認された。
ログデータに遺された情報から、調査船『スローカム』と支援船「3987」の行方、そして採掘船『ISHIMURA』の内部で発生した事件の詳細が判明。
派遣されていた58支援艦隊にその事件のデータが送信され、艦砲射撃及びプロトン魚雷による雷撃によって、採掘船『ISHIMURA』及び『スローカム』の完全な破壊が確認された。
尚、ログデータから今回の事件には、共和国や分離主義勢力の手が届かないような場所の星系に、今回の事件との関連が疑われる宗教団体の存在が発覚した。
早急にこの星系に艦隊を派遣し、今回の事件との関連性を明らかにする必要がある。
調査船『スローカム』艦長、グリャーゴ提督は二階級特進。
同様に、極めて異例だがTO-KK1の二階級特進も認められた。
・追記
遺されたメッセージやログデータの繰り返し再生してみると、所々でなにやら合成じみた、女性の歌声と思われる音声が記録されていた。
『スローカム』号には女性の搭乗者はおらず、その問題の音声を照合記録にかけてみた。
その結果、「あの音声は『ISHIMURA』に派遣されたケンドラ・ダニエルズという女性調査員ではなく、ニコール・ブレナンという『ISHIMURA』にいた女性クルーである事が極めて高い」という結果が出た。
しかし不可解な事に、その記録されていた日時に『ISHIMURA』船内には、女性の生存者は誰一人として存在していないことが判明。
またそのニコール・ブレナンなる女性クルーは、技師のアイザック・クラークを含む調査員達が、『ISHIMURA』に到着するわずか数日前に自殺していたことも判明した。
この事から、結局あの歌声が誰のものなのか全くの不明であり、結論として機械の不調によって誤って録音されたものと位置付けられた。
<独立星系連合に提示された報告書より抜粋 >
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