やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている (サラリーマン)
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番外編 ボーダーラグビー部

修学旅行中に書いたただの駄文です
クオリティはくそ低いです
本編に関係ないと思うんで見なくても大丈夫です


8月某日ボーダー本部多目的体育館。入隊式などで使われる部屋に俺たちは集められていた。ここにいるメンツは俺、レイジさん、風間さん、柿崎さん、ゾエさん、村上さん、歌川に東さん、楓子さん、熊谷、謡だ。全員が動きやすいジャージだ。それから俺たちをここに集めた張本人がやってくる

 

唐沢 「やあみんな。全員揃っているかな?」

 

俺たちをここに集めた張本人、唐沢さんの登場だ。

 

歌川 「あの、俺たちがここに集められた理由ってなんですか?」

唐沢 「よくぞ聞いてくれた!これから君たちにはラグビーをしてもらう!」

八幡 「え、えー!な、な、なんだってー」

唐沢 「なんだい比企谷君。その反応は」

八幡 「いや想像通りだったもので」

唐沢 「まあいい。大学で一緒にラグビーをしていた友人に頼まれてしまってね。ボーナスは出すしお願いできないかな?」

八幡 「あの俺ルールとか知らないんですけど」

唐沢 「最初にしっかりと説明するし練習中にもちょくちょく説明していくからそれで覚えられると思うよ」

柿崎 「ラグビーをするのはいいですが全員が集まって練習する時間がとれないと思うんですけど」

唐沢 「とりあえず沢村さんにお願いしてできるだけ全員が集まれるようにしてもらったがそれでも全員が集まれるのは4回しかない。だから個人練習練習がメインになるかな」

風間 「なぜこのメンバーなのですか?」

唐沢 「普段から生身のトレーニングしてる人を選ばせてもらった」

北添 「え、ゾエさん生身のトレーニングなんてしてないんだけど」

唐沢 「ゾエ君は体格と影浦君と生身で戦えるから呼んだんだよ」

楓子 「私たちはなぜ呼ばれたんですか?」

唐沢 「君たち女の子達には練習のサポートとマネージャーを、東くんには戦術面を手伝ってもらおうと思ってね。質問はもうないかい?」

レイジ 「試合をする日は何時で相手は誰なんですか??」

唐沢 「次の日曜日で相手は大学のラグビー部だ」

八幡 「もう一週間もねえじゃねえか!」

 

俺のツッコミが体育館中に響き渡った

 

***

 

それから試合の日まで俺たちはラグビーの特訓をしまくった。みんな試合をするからには負けたくないようで暇な時間を見つけては体育館に赴き一人で練習したり、そこにいるメンツで連携の練習をしたりと、ラグビーの練習に精を出していた。

そして迎える試合当日。

試合会場となる大学のグラウンドに行くとそこにはたくさんの観客と非番だったボーダー隊員で結成されたボーダー応援団がいた。観客の方は大学の方で大々的に宣伝されていたらしく急造とはいえボーダーのラグビーチームが見たいということでたくさん集まったらしい。応援団の方は応援団長を名乗っている弾バカが声をかけ集まったらしい。そんなわけでたくさんの人が見ているなかで試合をすることになった。

 

唐沢 「試合時間は前後半7分。それを三試合やって最終的に先に二勝した方が勝ちだ。フォーメーションはフォワードに木崎、北添、比企谷。バックスは柿崎、風間、歌川、村上だ。しまっていくぞ!」

選手 「おう!」

 

それから一試合目が始まった

 

***

 

二試合終わり一勝一敗。一勝といってもボーダーチームに花をもたせるためか明らかに全力ではなかった。

 

東 「唐沢さんこのままでは」

唐沢 「わかってる。最終戦はあの作戦でいこう。比企谷君頼んだよ」

八幡 「はい」

 

そして最終戦が始まった

 

***

 

レイジ 「比企谷!」

 

俺は某バスケ漫画の幻の六人目のように相手のパスを横からかっさらう。そのままフリーだったレイジさんにパスを出す。これが俺たちの作戦「横からかっさらおう」だ(ネーミングセンスのなさはご愛敬)。この作戦のおかげで格上相手に互角に戦えていた。しかし小手先だけの作戦ではすぐに対応されるのは目に見えていた。すでに対応され始め縮まってきていた点差がまた開き始め、そしてそのまま試合終了した。

 

***

 

試合が終了し、ベンチに座っている監督の唐沢さんの前に全員が並ぶ

 

唐沢 「悔しいか?悔しいだろう。この悔しさを次に戦う時に返そう!」

選手 「はい!」

 

こうしてボーダーラグビー部が誕生した

 




沖縄の修学旅行が終わり地元に戻ったときの第一声

「さっむ!!」

次回は本編です


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キャラ紹介とプロローグ

どうもはじめましての方ははじめまして
久しぶりの方はお久しぶりでございます。サラリーマンです
性懲りもなくまた書きましたのでよろしくお願いします
設定はこれから変更していくかもしれません

追記 一部他者さんの作品と被っていたので修正しました。もしかしたらまた変更があるかもしれませんがご了承ください


A級1位 比企谷隊

比企谷八幡 比企谷隊隊長

ポジション:オールラウンダー

メイントリガー:バイパー 弧月 旋空 バッグワーム

サブトリガー :バイパー メテオラ グラスホッパー シールド

サイドエフェクト:脳機能強化

脳機能強化:脳の機能を強化できる。具体的には思考のスピードが速くなり周りの光景がいつもの1000分の一のスピードで流れる。(相手の1秒が八幡は1000秒になる)。しかし、思考を加速させるだけで動きは早くならない。この能力を使うにはキーとなる言葉を言う必要があり、この能力を使いすぎると少しの間アホになる

 

師匠は陽乃さんと楓子さん。陽乃さんには剣とバイパーの弾道の引き方を、楓子さんには体術を教えてもらう。第一次侵攻で両親を失い小町と二人で暮らす。ボーダーには陽乃さんの紹介で入る。よくほかの隊のヘルプに入るためボーダー内で連絡先を知っている人は多い。その中でも出水、米屋とはよくランク戦をするため仲がいい。学校ではボッチ。学校でボーダーだと知っている人はボーダー隊員以外いない。陽乃さんに脅されA級に上がっても遠征には参加しないことと学校にばれたくないため日中には防衛任務を入れないことを条件に隊長になった。

 

雪ノ下 陽乃 

ポジション:アタッカー

メイントリガー:弧月 旋空 バイパー ss(二刀流)

サブトリガー:弧月 旋空 シールド グラスホッパー

 

No.1アタッカー。八幡の師匠。ボーダーのスポンサー企業の娘。コネを利用してボーダーに入ったがトリオンもセンスもあったためコネを使わなくてもボーダーにスカウトされていたと思われる。一部の人には雪ノ下陽乃に斬れないものはないという意味を込めて「絶対切断(ワールドエンド)」と呼ばれていたりもする。

 

倉崎 楓子

ポジション:パーフェクトオールラウンダー

メイントリガ―:アイビス イーグレット バイパー シールド

サブトリガー:スコーピオン バッグワーム シールド グラスホッパー

 

玉狛のレイジさんに続き二人目のパーフェクトオールラウンダー。八幡の体術面での師匠。相手の攻撃を掌に厚く張った局所シールドですべて叩き落すという陽乃さんと同じに化け物。弟子は八幡しかいないが、パーフェクトオールラウンダーを目指す荒船さんがよくトレーニング方法などを聞きに来る。

 

四埜宮 謡

ポジション:アーチャー

メイントリガ―:アステロイド(天弓) フレイム(天弓) 弧月 シールド

サブトリガー:アステロイド(天弓) メテオラ(天弓) バッグワーム グラスホッパー

 

ボーダー唯一の弓使いでボーダー最年少A級隊員。比企谷隊のメンバーを兄や姉のように慕っており、ハチ兄・フ―姉などと呼んでいる。ロリコンである鬼怒田さんに頼み、新しい弓トリガーと分裂弾を作ってもらうあたりけっこうな策士。弧月は相手に接近されたとき用に入れている。

 

城廻 めぐり

ポジション:オペレーター

 

比企谷隊のオペレーターと総武高校の生徒会長を兼任するすごい人。周りからはほんわかオーラのせいで仕事ができなそうに思われがちだがA級1位部隊のオペレーターだけあり、オペレート能力はすごく高い。

 

比企谷隊

A級1位部隊。はじめは八幡と陽乃とめぐりの三人だけの予定だったが部隊を組む時に楓子と謡も加わり今の部隊になった。部隊を組んでから一度も負けることなく最速でA級まで上がりそこから1位にまで上り詰めた。

オペレーターのめぐりが生徒会の関係で参加できないことがあるので基本比企谷隊の全員がオペレーターをすることができる。

 

  ―プロローグ―

 

八幡 「…知らない天井だ」

 

目を開けると知らない天井だった。体を動かそうとすると左足と左腕に痛みが走り俺は思わず顔をしかめる。首から上だけで周りを見てみると全体的に白い部屋でここは病室らしかった。しばらくするとドアが開いたような音が聞こえ恰幅の良い中年の医者らしき人と一緒に一人のきれいな女性が入ってくる。

 

医者 「お!やっと起きたか!名前は言えるか?」

八幡 「比企谷八幡です。」

医者 「名前は言えるな。どこか痛い場所はあるか?」

八幡 「左足と左腕が痛いですね」

医者 「そうか。ここにいる理由は分かるか?」

 

医者に言われ考え始める。一つ思い当たったことがあったので俺はそれを口にした。

 

八幡 「…車と衝突したからですか?」

医者 「おうそうじゃ。とりあえず頭は大丈夫そうだし、わしはほかに急ぎの仕事があるからもう行くぞ。詳しいことはまたあとで来るからその時にな。ではまた来るぞ。」

 

そう言って医者は出て行き、病室には俺と女性だけが残された。

 

八幡 「え~と、あなひゃは?」

 

噛んだ。はずっ!超はずい!幸い女性はスルーしてくれたので俺もなかったことにして話をする。

 

??? 「私は雪ノ下陽乃。君がぶつかった車の持ち主だよ。まあ私が運転してたわけじゃないんだけどね」

八幡 「で、その持ち主様が俺に何の用ですか?」

陽乃 「さっき名字言ったからもうわかると思うんだけど私の家って雪ノ下財閥でさ、その雪ノ下財閥が所有してる車が事故を起こしたと公になるとちょっとまずいわけ。だから

八幡 「口止めの交渉に来た。でしょ」

 

雪ノ下さんは一瞬驚いたような表情を浮かべたがすぐに直し俺の話を肯定した。

 

陽乃 「うんまあそうかな。それでどうしたら比企谷君は黙っててくれるのかな?」

八幡 「そうですね…ここに入院してるお金は払ってください。それと俺にバイトを紹介してください」

陽乃 「バイト?なんで?」

八幡 「うち両親が大規模侵攻の時に亡くなっているんです。今までは遺産とかで何とか生活できてましたけどそろそろきつくなってきましたので」

陽乃 「そうなんだ…ならボーダーに入んない?」

八幡 「ボーダーですか…」

陽乃 「うん。ボーダーに階級があるのは知ってるよね。C級は訓練生だからお金はもらえないけどB級に上がればネイバーを倒すだけでお金がもらえるようになるの。それにA級に上がれば固定給ももらえる。バイトとしてはいいと思うけど」

八幡 「俺が入ったらC級からのスタートになりますよね。B級に上がるのは大変なんですか?」

陽乃 「う~ん。普通だったら半年くらいあれば大体の人は上がれるんだけど師匠次第では2か月もかからずにB級に上がれると思うよ」

八幡 「雪ノ下さんはなんでそこまでボーダーに詳しいんですか?」

陽乃 「改めて自己紹介するよ。私はボーダーNo.1アタッカー雪ノ下陽乃。君がボーダーに入るなら私が君の師匠になってあげる。さあどうする。」

八幡 「俺は…」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

4月某日 日曜日

今日は俺の隊の防衛任務があるのだが、俺たちは警戒区域内の家の屋根の上で座っている。

 

八幡 「暇ですね」

楓子 「そうですね。今日は全然ゲートが開きませんね」

謡 「なのです。今日はまだ一回しかゲートが開いてなくて動き足りないのです。」

陽乃 「そうだね~。私も動き足りないかも。」

楓子 「だったらこれが終わったらみんなでランク戦ブースに行って荒らしませんか?」

陽乃 「おっ!いいね~。そうしよっか!」

謡 「う~ん。私は遠慮するのです。まだ宿題が終わってないのです」

楓子 「ハチさんはどうします?」

八幡 「俺も遠慮しますよ。確か俺も課題の作文があったので。」

 

と、俺たちが話しているとオペレーターのめぐりさんから通信が入った

 

めぐり 『みんな~ゲートが開くよ!誤差は3,14だよ!時間的にこれがラストだよ』

八幡 「了解です。じゃあ行きますか!」

陽乃・楓子・謡 「「「うん(はい)!」」」

そして俺たちはゲートから出てきたネイバーに向かっていった。

 




投稿し始めたばっかであれなのですが次回投稿は8月に入ってからを予定しております。
理由はまじかに控えた危険物取扱者の勉強と夏休み課題を早く終わらせるためです。
そんなわけで次回更新は遅くなりますが夏休み課題を終わらせ次第すぐ書きますのでまたよろしくお願いします


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奉仕部入部
奉仕部1


みなさんお久しぶりでございます。大変お待たせしてしまいまして申し訳ない。えっ、待ってない?知ってる
インターンシップも終わり、宿題もページ数がそこまでないワークみたいなものと休み明けにテストがあるもの以外終わりこれから書いていけそうです。危険物取扱者の試験に落ちたことを胸に抱えながらこれからも頑張っていきます
じゃあどうぞ


『高校生活を振り返って                 比企谷八幡

 

  特に振り返ることがありません。』

 

俺は今、平塚先生に呼び出されて職員室に来ていた。

 

平塚 「比企谷。なんだこの作文は。」

 

そう言って平塚先生は俺が提出した作文用紙を見せる。

 

八幡 「なにって先生が出した作文の課題ですよ」

平塚 「そういうことではない。内容のことを言ってるのだ!」

八幡 「特に書くことがなかったので正直に書いただけです」

 

先生が溜息を吐く。

 

平塚 「はぁ。君は友達はいるか?」

八幡 「ええ。それなりにいますよ。」

 

ただし。学校ではなくボーダーで、だ。

 

平塚 「平然と嘘をつくな!君みたいな目の腐ったやつに友達がいるわけないだろ!」

八幡 「先生は俺の交友関係知ってるんですか?まさかストーカーですか?」

平塚 「そんなわけないだろ!学校での様子を見てればわかる。まあいい。なら彼女はいるか?」

八幡 「いませんよ」

 

俺がそう言うと先生が明るくなる。

 

平塚 「そうかそうか!私もそう思っていたよ!うんうん!」

 

まるで自分と同じ仲間を見つけたような口調だ。

 

八幡 「いやいや仲間を見つけたみたいな感じで言われても…。考えてみてくださいよ。高校生の俺とアラ――

 

先生の拳が飛んできた。楓子さんに生身の鍛錬の大切さを教わってから楓子さんや、玉狛のレイジさんにトレーニングメニューを組んでもらってから生身の鍛錬もしているのでこのくらいのスピードなら余裕で受け止められる。

 

平塚 「なっ!」

 

先生が驚いている。そろそろ帰りたくなってきたので話のまとめようとする。

 

八幡 「とりあえず罰として作文は書き直します。それでいいですよね」

平塚 「いや君には作文の書き直しのほかに奉仕活動を命じる。ついてきたまえ」

 

そう言って平塚先生は席を立ち職員室から出て行き、俺もそれについていく。歩いている方向からして特別棟の方に向かっているようだ。そこで俺のスマホが鳴る。

 

八幡 「電話きたんでちょっと待っててもらっていいっすか」

 

俺は先生の返事を待たずに廊下の端へ行き電話に出る。

 

八幡 「もしもし諏訪さんどうしたんですか」

諏訪 『おう比企谷。今日の夜空いてるか?空いてたら俺の隊の防衛任務を手伝ってほしいんだが』

八幡 「夜は空いてるので大丈夫ですけど誰か休みなんすか?」

諏訪 『日佐人が風邪ひいたんだよ。じゃあ頼んだぜ!』

八幡 「了解です。それでは」

 

俺は電話を切り平塚先生の元へ戻る。

 

八幡 「待たせてしまってすいません。あと用事ができたんで奉仕活動を早くしたいんですけど」

平塚 「もうすぐ着くからそう焦るな」

 

そうしてしばらく歩き空き教室の前で立ち止まるとノックもせずにその扉を開けた。

 

平塚 「邪魔するぞ雪ノ下」

 

扉を開けて先には一人の少女がいた。俺はこの少女を知っている。話したことがあるわけではないが知っている。彼女は雪ノ下雪乃。俺の師匠である陽乃さんの妹だ。俺は陽乃さんから彼女のことを聞いていた。曰く、なんでも自分の思い通りにならないと気が済まない傲慢な女とか。陽乃さんが言っていたことを思い出していると

 

雪ノ下 「それで先生そこのヌボーっとした人は?」

平塚 「彼は比企谷、入部希望者だ。」

八幡 「は!?入部ってなんすか。俺は放課後は忙しいので部活なんて入っている時間はありませんよ」

平塚 「君にはあの作文を書いた罰としてここ、奉仕部で部活動をしてもらう。異論反論抗議口答えは認めん。雪ノ下、私からの依頼こいつの曲がった性根の矯正だ。頼んだぞ。」

雪ノ下 「お断りします。その男の下卑た目を見ていると身の危険を感じます。」

 

こいつ頭大丈夫なのか。初めて会ったのにすぐに罵倒するとか頭がおかしいとしか言いようがない。

 

八幡 「誰がお前なんかをそんな目で見るかよ。それより先生さっきから俺のことばかり言ってますが俺より雪ノ下の方が問題じゃないですか。」

雪ノ下 「なんですって!この私のどこに問題があるっていうのかしら」

八幡 「普通の人は初対面の人間にまず罵倒なんかしねーんだよ。常識がないのか?」

 

俺がそう言うと雪ノ下は俺をにらんでくる。二宮さんのにらみに比べたら全然怖くない。

 

雪ノ下 「確かにこれはもう矯正が必要なレベルですね。平塚先生あなたの依頼承りました。私がこの男を更生させます。」

平塚 「受けてくれるか雪ノ下。では任せたぞ。」

八幡 「じゃあがんばれよ。俺は帰るんで。」

 

扉に向かって歩き始めるが平塚先生が俺の前に立ちふさがる。

 

平塚 「どこに行こうとしてるんだ比企谷。お前にはここでの部活動を命令したはずだが。」

八幡 「さっきも言った通り放課後は忙しいんです。それなのにこんな部活動に割く時間はありません。」

平塚 「そんなに言うなら放課後に何があると言うのだ。言ってみろ」

 

そう来たか。ボーダーをことは知られたくないしどう答えるか…。やっぱり濁すしかないか

 

八幡 「バイトです。」

雪ノ下 「嘘をつくのはやめさない。あなたみたいな人を雇ってくれるところがあるわけないじゃない」

 

このくそ女が!そろそろ俺も切れるぞ。俺は今までボーダーで培ってきたさっきを全開に出そうとしたら、タイミングよくまた俺のスマホが鳴った。今度は許可を取らずに教室の隅に行き電話に出る。

 

??? 『もしもし比企谷君』

八幡 「何か用か那須?」

那須 『今日これから予定がないようならまた指導つけてほしいんだけど』

 

那須は弟子ではないがたまにバイパーの指導や那須隊の連携の確認の手伝いをしているためよく那須から連絡が来る。

 

八幡 「悪いが今日は諏訪隊の防衛任務のヘルプが入っているか無理だ。明日のうちの隊の防衛任務の前なら時間空いてるがそれでもいいか?」

那須 『うん大丈夫だよ!じゃあ明日お願いね。じゃあまた明日』

八幡 「ちょっと待ってくれ。お前今学校にいるか?いるようなら特別棟の空き教室まで来てほしいんだが」

那須 『わかったけどなんで?』

八幡 「事情はあとで話す。ついたらその中に俺がいるから入ってきて俺に話を合わせてくれ。」

那須 『うん。今から向かうね』

八幡 「頼んだ。」

 

電話が切れた。これでやっとここから出る準備が整った。あとは那須が来るのを待つだけだ。

 

雪ノ下 「あらわざわざそんな演技までして友達がいるアピールしなくてもいいのよ。あなたに友達がいないことなんてもうわかっていることなのだから」

八幡 「そういうお前は友達いるのかよ。さっきから人のこと罵倒しまくって友達いるように見えないんだが」

雪ノ下 「…まずどこからどこまでが友達が定義してもらっていいかしら」

八幡 「もういいわ。そんな友達がいないやつのテンプレ台詞はく奴なんて初めて見たわ。お前人に好かれそうなのに友達いないとかどういうことだよ」

雪ノ下 「貴方にはわからないわよ。私は昔から可愛かったわ。

八幡 「はいはいナルシスト乙」

平塚 「ちゃかさないで聞け。雪ノ下続きを」

雪ノ下 「そのせいで私にたくさんの人が近づいてきたわ。けれどもその中に女子はいなかった。私は小学校のころ60回上履きを隠されたわ。そのうち50回は女子の手によるものだったわ。この世界は優秀な人間ほど生きづらくなっているの。だから私は変えるのよ。人ごとこの世界を。」

八幡 「プっ!」

雪ノ下 「なに笑っているのかしら」

 

俺は不覚にも笑ってしまった。だってそうだろう

 

八幡 「まさか高校生にもなって世界を変えるとかそんな現実も見えていないことを言うやつがいるとは思わなくて」

雪ノ下 「なんですって!」

八幡 「じゃあ聞くぞ。お前は今まで自分の周りで何かを変えられたのかよ。」

 

雪ノ下は何も言わずに俺をにらむ

 

八幡 「ほらな。自分の周りも変えられないやつに世界を変えることはできないんだよ。実績がなければ何を言ってもただの妄想だ。夢を見るより現実を見ろよ。」

 

俺は心の中で論破ポーズをとっているとちょうど教室の扉がノックされるのだった。

 




誤字報告やこうしたほうがいいんじゃないか、感想待ってます


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奉仕部2

教室のドアがノックされ、雪ノ下が返事をしたことで教室のドアが開かれる。そしてそこから入ってきたのは二人の俺が知ってる女子生徒だった。

 

那須・熊谷 「「失礼します」」

 

熊谷が一緒にいたことは想定外だが計画に支障はない。

 

八幡 「悪い那須、熊谷。買い物行くことすっかり忘れてたわ」

 

那須も熊谷もさっき頼んだように俺に合わせて話をしてくれる

 

那須 「約束の時間になっても比企谷君が来ないから探しに来たよ」

熊谷 「ほら早くいくよ」

 

そういって俺の腕をそれぞれがつかんで引っ張っていく。どうやら俺が呼び出した意図は分かったようで俺が何も言わなくても廊下の方へ歩き出していた。そんな中で那須たちが来てからずっとポカンとしていた平塚先生が声を上げた。

 

 

平塚 「ちょっと待て。確か…那須と熊谷だったか。君たちは比企谷とどんな関係だ?」

那須 「どんなって友達ですけど」

八幡 「おい聞いたか雪ノ下。俺はお前と違って友達はいるんだよ」

雪ノ下 「比企谷君、女の子脅して友達と言わせてうれしいのかしら」

 

プチ。とうとう俺の堪忍袋の緒が切れた。雪ノ下に殺気を出そうとするとまたしても那須に止められた。

 

那須 「雪ノ下さん、私たちは別に脅されてるわけじゃないよ。比企谷君のことよく知らないのにそんなこと言わないでほしいな」

 

那須がそう言うと教室に沈黙が流れる。そろそろここから出るか

 

八幡 「話も終わったんで帰ります。あと俺はこの部活に入りませんから」

那須・熊谷 「「失礼しました」」

 

俺たちは教室から出た。教室の中からは平塚先生の声が聞こえたが無視をして俺のカバンがおいてある教室に向かう。それからげ下駄箱へ向かった。

 

八幡 「悪いな。助かったわ」

那須 「気にしないで。それより何があったの?」

八幡 「ああ実はな…

 

   ~~~

それから俺は那須たちが来るまでの出来事をかいつまんで話した。話し終わると二人にそろってため息をつかれた。

 

八幡 「なんだよ二人そろってそのため息は。」

那須 「何でってねえ」

熊谷 「うん。あんたばかなの?作文でそんなこと書いたら呼び出されるに決まってるじゃない!」

那須 「比企谷君って成績よかったよね?だったら嘘でもいいからまともに書くことを考えなかったの?」

八幡 「防衛任務終わった後だったからななんか考えるのが面倒になった。」

熊谷 「比企谷らしいね。それで奉仕部?だっけ?入るの?」

八幡 「入んねーよ。防衛任務あるし、それに毒しかはかないやつと一緒に部活なんて死んでもごめんだわ」

 

ほんとにあいつは初対面の相手にあんだけ毒はけるのか不思議でしょうがねーわ。

 

那須 「それって雪ノ下さんだよね」

八幡 「ああそうだが」

那須 「なんか意外だね。噂に聞く雪ノ下さんと全然違って」

熊谷 「それより比企谷あんた大丈夫なの?平塚先生はたぶんあきらめてないと思うけど。」

八幡 「大丈夫だ。何個かプランは考えてあるしな」

那須 「聞いてもいい?」

八幡 「ああ。今んとこ考えてるプランは三つ。プランA理詰め、プランB脅迫、プランC屠る。」

熊谷 「後半二つが怖いんだけど。特に最後の」

八幡 「まあCは最終手段だ。たぶんBまでで何とかなるだろ。それに陽乃さんに言えばどうとでもなる。」

那須 「あ~…やりすぎないようにね。」

八幡 「そうだな。っと、お前らこれから本部行くのか?」

 

話しながら歩いているといつの間にか下駄箱についていた。ここからボーダー本部に行くには左にいかなければならない。俺の家がある方向はまっすぐなので那須たちがボーダー本部に行くならここで別れることになる。

 

那須 「そのつもりだけど」

八幡 「俺一度家に帰ってから行くつもりだからここまでだな」

那須 「そうなんだ。じゃあね比企谷君」

熊谷 「じゃあね比企谷。明日よろしくね」

八幡 「ああ。じゃあな」

 

それから俺は那須たちと別れひとり家に向かって歩く。朝に雨が降ったおかげでチャリに乗って学校に来ることができなかった。俺はポケットからスマホを出し、ある人に電話を掛ける。

 

??? 『もしもし八幡君。どうしたの?』

八幡 「もしもしめぐりさん。ちょっと聞きたいことがありまして。今って電話しても大丈夫でしたか?」

 

そう俺は奉仕部のことについて詳しく知るために総武高の生徒会長であり、比企谷隊のオペレーターであるめぐり先輩に電話をかけていた。

 

めぐり 『大丈夫だよ~それで聞きたいことって?』

八幡 「奉仕部って部活のことなんですけど」

めぐり 『う~ん奉仕部か~』

八幡 「どうしたんですか?」

めぐり 『それがね私たち生徒会もよくわかってないの。新学期入ってからすぐに平塚先生が来て無理やり話を進めて強引に成立させたらしいから』

八幡 「らしいってどういうことですか?」

めぐり 『私はその場にいなくてね。その場にいた副会長にあとから聞いた話だから』

八幡 「そうなんですか。それでも部員数くらいはわかりますか?」

めぐり 『それくらいならわかると思うよ。ちょっと待ってね。えーと、一人だけ…だね』

八幡 「ありがとうございます。あと、無理やり先生が生徒を部活に入れることってできないですよね?」

めぐり 『もちろん。部活動に入れるには本人の同意が必要だよ。さっきからなんで奉仕部だったり部活動のことなんて聞くの?もしかして…』

八幡 「たぶんめぐりさんが想像してるのであってますよ。ちょっと今平塚先生に奉仕部に入れられそうになってましてそれを断るために情報がほしいんですよ」

めぐり 『そうなんだ…気を付けてね。三年生の中で平塚先生ってあまり信用ないから』

八幡 「わかりました。またなんかあったらお願いしますね」

めぐり 『うん!もし八幡君が断り切れなくても生徒会長の権力を利用して入れさせないから安心してね!それにはるさんに頼めば一発だよ!そんなわけだからあまり無理しないようにね。明日の防衛任務遅れないようにね。じゃあね!八幡君』

八幡 「めぐりさんや陽乃さんのお手を煩わせないように頑張ってみます。それじゃあ、明日の防衛任務の時に」

 

めぐりさんとの電話を終え、一つの作戦を思いついた俺はもう一件ある人物に電話を掛けながら家に帰るのだった。

 



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奉仕部3

翌日の放課後になり、那須の指導と防衛任務のためにボーダー本部に行こうとすると予想していた通り平塚先生に呼び止められた。

 

平塚 「おい比企谷どこへ行く」

八幡 「どこって帰るんですよ。バイトありますし」

平塚 「昨日奉仕部に入れと言ったはずだが」

八幡 「それ断りましたよね」

平塚 「異論反論抗議口答えは認めんと言ったはずだぞ。三年で卒業できなくてもいいのか」

八幡 「いくら生徒指導の先生とはいえ、たかが一先生が出席日数も足りてて問題を起こしてもいない生徒を卒業させないとかできると思っているんですか?」

平塚 「グっ…」

 

平塚先生が黙る。

 

八幡 「理解してもらえたようで何よりです。では俺はこれで。最後に一つ、俺にかまう暇があるなら男でも探した方がいいですよ」

 

最後に余計は一言を加え、俺は先生に背を向け歩き出す。こうすることでほぼ確実に先生は俺を殴ってだろう。きっとおそらく十中八九。俺を殴ったことを盾にすればこれ以上先生が俺に必要以上にかかわることもしなくなり、めぐりさんや陽乃さんの手を煩わせなくて済む。これが俺の考えた作戦だ。

 

平塚 「衝撃のォォォォファーストブリッドォォォォ!!」

 

その声が聞こえた瞬間振り返りつつ、腕を胸の前でクロスさせわざとあたり吹っ飛ぶ。もちろんパンチが当たる瞬間に少し後ろに飛んでダメージを軽減させることも忘れない。吹っ飛ばされた俺はすぐに立ち上がり先生に近づく。

 

八幡 「昨日に比べてずいぶんと速くて重いパンチになりましたね。これが一晩の修行の成果ってやつですか。それともまさか精神と時の部屋にでも?そんなことどうでもいいですね。材木座!!」

 

隠れている材木座を呼び出す。そう俺が昨日めぐりさんの後に電話していた人物はこいつなのだ。そしてこいつはボーダーのエンジニアでエンジニアの次期エースと呼ばれている。

 

八幡 「見せてくれ」

 

俺は材木座が持っていたスマホを受け取り、画面に表示されている動画を見る。

 

八幡 「材木座ばっちりだ。それ俺に送ったら消していいぞ」

材木座 「おう。」

八幡 「さて平塚先生、今俺の手元には先生が俺を殴ったシーンの動画があります。これを俺が偉い人に見せたら先生はどうなるでしょうかねぇ~。そんなわけでこれを公開されたくなければ俺に必要以上にかかわらないでください。別に全くかかわるなと言ってるわけじゃないです。授業で俺だけかけられないとか目立つだけですからね。ただ授業以外で俺にかかわるなってことです。それじゃあ、今度こそ失礼します」

 

これでまた俺にかかわってくるならもうただの馬鹿としか言いようがない。それから俺が歩き出すと俺についてくるやつがいた。

 

八幡 「何でついてくる材木座。ってかお前まだいたのか」

材木座 「ひどいではないか八幡!!我とお主の——

八幡 「本題を言え。」

 

俺は少し殺気を込めながら言った。

 

材木座 「わかったわかったから八幡!殺気を出すでない。陽乃殿に伝えてくれ『頼まれていたものができた。金土日のどれかに来てくれるとありがたい』とな。」

八幡 「それを陽乃さんに伝えればいいんだな。用がそれだけならもう行く。じゃあな材木座。今日は助かった」

材木座 「さらばだ。八幡」

 

そして俺は材木座と別れてボーダー本部に向かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

平塚先生との一件から数日後の金曜日、俺がいつも通りベストプレイスでメシを食っていると背後から、足音が聞こえた。ボーダー隊員でも学校ではよほどの用がない限り話しかけるなと言ってあるので、俺に用事があるやつではないのだろう。そんなわけで俺は気にせずに飯を食う。すると

 

??? 「ヒッキー!…おーいヒッキー!…ヒッキー?」

 

声を聞く限りさっきここにやってきたのは女子のようだ。さっさと反応してやれよ引きこもり君。うるさかったので少しにらんで静かにさせようと思ってそいつの顔を見ると、そいつもこちらを見ていて目が合った。

 

??? 「やっと反応してくれた。なんで無視したし!」

八幡 「いや俺じゃないと思ったんで。それよりお前誰。」

??? 「信じらんない!同じクラスじゃん!由比ヶ浜結衣しっかり覚えてよ!」

八幡 「気が向いたらな。それでなんか用か」

由比ヶ浜 「あの…えーと…これ!お礼だから!」

 

そういって由比ヶ浜は俺に袋を投げてすぐに走って行ってしまった。由比ヶ浜に渡された袋の中身を見ると

 

八幡 「なにこれ」

 

木炭が入っていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

由比ヶ浜から木炭?をもらった日の放課後、俺は比企谷隊の隊室で勉強をしている。ここには楓子さんと謡もいて俺と同じように勉強に取り組んでいる。陽乃さんは材木座のところに新トリガーを取りに行っている。めぐりさんは生徒会の仕事があるらしく今日は来ていない。なぜ俺がここで勉強しているのかというとここなら基本的に陽乃さんか楓子さんかめぐりさんがいるのでわからないところは教えてもらえるのだ。さらにこのメンバーでチームを組んでからはテスト前には誰かしらが要点を絞って教えてくれるので常に学年で五番以内に入ることができている。過去の最高順位は二位。ちなみに一位は奈良坂だ。あいつは高校に入ってから誰にも一位を譲ったことがない。あの時は雪ノ下に勝って二位になっても何も思わなかったが今になってみると…何も思わねえな。もう関わらんし。まあいいや。

それからしばらくして俺の宿題が終わると同時にタイミングを見計らっていたように陽乃さんが隊室に入ってきた。

 

陽乃 「やっほー!みんなお疲れ!八幡今時間ある?」

八幡 「ちょうど宿題が終わったんで大丈夫です。新しいトリガーですか?」

陽乃 「うん!さすが材木座君だよね。エンジニアの次期エースと呼ばれていることはあるよ!」

八幡 「そんなにすごいんですか。楽しみです」

陽乃 「期待してていいよ。楓子訓練室お願い!」

楓子 「了解です」

謡 「陽姉、私も見てていいですか?」

陽乃 「もちろん!よしじゃあやるよ八幡!」

八幡 「わかりました」

 

それから俺と陽乃さんは訓練室へ転送された

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

俺と陽乃さんは訓練室の中で向かい合っている。

 

陽乃 「とりあえず一本目は何もしないでただ受けてね。二本目以降は戦いながらって感じかな」

八幡 「二本目以降は俺も仕掛けていいんですよね」

陽乃 「もちろん!ぞれじゃあ行くよ。スターバーストストリーム♪」

 

陽乃さんがそうつぶやいたら、気づいた時には俺の体は切り刻まれていた。

 

八幡 「は!?」

 

すぐに俺の戦闘体が再換装される。

 

八幡 「陽乃さん今のって」

陽乃 「この前八幡が読んでた本の技を再現してみました!なかなか再現度高いと思わない?」

 

二刀流ソードスキル、スターバーストストリーム。某デスゲームの中で黒の剣士の使っていたソードスキル。確か16連撃だったはずだが、一瞬すぎて何回剣を受けたかがわからない

 

八幡 「すごいですね…。それってどういう仕組みでそんな速く動けてるんですか?」

陽乃 「原理的にはあらかじめ動き方をプログラムその動きを再現してる感じかな。だから早く動けてもプログラムに沿ってしか動けないから技を途中で止めることはできないみたい」

八幡 「そうなんですか。二本目やりましょう。」

陽乃 「そうだね。行くよ」

 

それから何回か剣を打ち合わせていく。陽乃さんは俺の体勢が崩れた時にソードスキルを使ってきた。俺は今回もよけようとはしなかった。しかし俺は

 

八幡 「バーストリンク」

 

俺のサイドエフェクトの能力である加速を使ってソードスキルを発動してから16連撃終わるまでの時間を確認してみる。すると俺が加速してから約50秒で八太刀受け、そこで戦闘体が破壊された。つまり現実時間で八太刀で約0.05秒。なので16連撃が終わる時間は約0.1秒ということになる。0.1秒で16太刀。無理だ。防げる気がしねえ。となるとよけられるかだな。それができないとマジ詰む。

 

八幡 「三本目やりましょう。」

陽乃 「なんか攻略法でも見つかった?」

八幡 「そうですね。これがだめだったらもうなんも思いつかない程度の策ですけどね」

陽乃 「そうなんだ。じゃあやろうか」

 

今回も二本目と同じように何度か剣を打ち合わせ俺の体勢が崩れた時にソードスキルを使ってきた。俺は陽乃さんの声が聞こえた瞬間にグラスホッパーを使い強引にその場から離れる。なんとか左腕を犠牲にしただけでベイルアウトせずに済んだ。すぐさま反撃しようと陽乃さんの方を見ると動かずにその場で固まっていた。あ~これはアレだな。スキル後硬直。原作と同じようにスキルを使った後は動けないらしい。念のためその場からバイパーを打ち込みベイルアウトさせる。すぐに陽乃さんの戦闘体が換装され、俺の戦闘体も換装される。

 

八幡 「やっぱり原作と同じようにスキル使った後は動けないようですね」

陽乃 「うん。無理やり体を動かすからどうしても使った後は動けなくなるみたい。一対一ならいいけどチーム戦だとフォローがないと使えないかな。それよりあんな回避方法があったんだね!」

八幡 「テレポーターでもあれば無傷で回避できると思うんすけど、グラスホッパーだとあれが限界だと思います。あとソードスキルってそれしかないっすか?突進系のがあればもっと便利だと思うんすけど」

陽乃 「そうだね。これから材木座君とこ戻って頼んでみるよ。あと硬直時間ももっと短くできないかも。」

 

そして楓子さんに訓練室の解除をしてもらい陽乃さんはまた出て行った。なんとなく物足りなかった俺は見ていてうずうずしていたのか楓子さんと謡の三人でランク戦ブースに足を向けるのだった。

 

 

 

それからいい時間になったので三人で隊室に戻り帰る準備をする。

 

謡 「八兄、ランク戦に行く前から気になっていたのですがそのかばんの中に入っている袋は何が入っているんですか?」

八幡 「木炭だ。」

謡 「木炭?なんでそんなものがカバンの中に?」

八幡 「今日な、女子にお礼だとか言ってもらったんだ。これ渡されてすぐに走ってどっか言ったから何のお礼かわかんねえけど」

楓子 「お礼に木炭ですか…もしかしてそれってクッキーなんじゃ」

八幡 「クッキーですか…」

楓子 「ええ。常識的に考えてお礼に渡すと言われたらクッキーが普通じゃありませんか」

八幡 「まあそうですけど」

謡 「だとしたらハチ兄。食べないとなのです」

楓子 「そうですね。せっかくその人がハチさんに感謝を伝えたいと思って作ったんですから、食べないと失礼ですよ」

八幡 「いやこれ食べたら俺は死ぬと思うんすけど」

楓子 「大丈夫です。死んだら骨は拾います。」

謡 「なのです!それに加古さんの外れチャーハンと同等のものがこの世にあるとは思えないのです!」

 

確かに加古さんの外れチャーハンと同じものが何個もあるとか考えたくないな。それから覚悟を決めた。

 

八幡 「死んだらあとはお願いします」

 

クッキー?を口に入れ、ゆっくりと咀嚼する。そして飲み込む。そして俺の意識は暗転した。



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職場見学編
テニス部1


厚木 「お前ら二人組作れ」

 

俺のクラスの体育の担当教師である厚木が言う。学校ではプロぼっちをしている俺はもちろんクラスに二人組を作れるようなやつはいない。だがしかし長年のボッチ生活のおかげでこういう時の対処法はもちろん心得ている。

 

八幡 「先生、体調悪くてペアの人に迷惑かけてもアレなんで壁打ちしてもてもいいですか」

厚木 「わかった。ダメそうなら無理せずに保健室に行けよ」

八幡 「わかりました」

 

体調悪いとペアの人に迷惑かけるの相乗効果で簡単に許可がもらえる。そして俺は壁打ちを始める。壁打ちをし始めてから数分、俺は一度も休むことなく壁にボールを打ち付けている。時々、ラケットのフレームに当てイレギュラーなバウンドをさせそれを拾う。それをひたすら繰り返す。なぜ俺がずっと続けていられるかというと、昔俺がB級に上がってすぐのころ陽乃さんがスナイパーの狙撃に反応できるようにと言って訓練室を少しいじってスカッシュゲームを作ったのだ。そのゲームは一定回数以上続くと徐々にボールのスピードが上がってくる。さらに一定のスピードを越えるとボールの数が増えるといった仕様で一時期はランク戦よりこっちのスカッシュゲームばかりをしていたので、ただの壁打ちぐらいなら永遠に続けていられる自信がある。

そんなこんなでいつのまにか授業が終わる時間になっていたようなので切り上げラケットとボールを片す。

 

昼休みになり、俺はベストプレイスで飯を食っている。すると

 

由比ヶ浜 「あれヒッキーじゃん!またここで食べてんの?」

八幡 「俺はいつもここで飯食ってんだよ」

由比ヶ浜 「何で教室でご飯食べないの?」

八幡 「教室だとお前らみたいなリア充がうるさいからな。それよりおまえは何してんの?」

由比ヶ浜 「ゆきのんとのゲームに負けて、罰ゲーム中で飲み物を買いに行ってるの!」

八幡 「ふーん。ってかゆきのんって誰。」

由比ヶ浜 「J組の雪ノ下雪乃。この前のクッキー作るの手伝ってもらってそのままその人の部活に入部したの!そういえばクッキーおいしかった?」

八幡 「おまえ逮捕されたくなかったら二度と料理するな。死者が出るぞ。」

由比ヶ浜 「ちょっとそれどういう意味だし!」

??? 「由比ヶ浜さんと比企谷君?」

 

名前を呼ばれその方向を向くとそこにはジャージ姿のかわいい生徒がいた。

 

由比ヶ浜 「さいちゃんじゃん!よっす!」

??? 「由比ヶ浜さんよっす」

由比ヶ浜 「昼練?いつも大変だね」

??? 「そんなことないよ。うちのテニス部あんまり人数いないから僕が頑張らないと。そういえば比企谷君もテニス上手だよね。」

八幡 「そうなの?あんまり人とテニスしないからよくわかんねーわ。で、誰?」

由比ヶ浜 「信じらんない!あたしの時もそうだけどクラスの人の名前くらい覚えようよ!」

??? 「同じクラスの戸塚彩加です。よろしくね」

八幡 「悪いな。クラスの女子とかかわらんから名前わかんなかったわ。」

戸塚 「あの…」

 

なぜか戸塚がもじもじしている。トイレか?それなら俺なんか気にせずにさっさと行けばいいのに

 

戸塚 「僕、男なんだけど…」

八幡 「…よく聞き取れんかった。もう一回言ってもらっていいか」

戸塚 「僕男なんだけど」

八幡 「は!?」

 

戸塚が男…だと…。そこらにいる女子より普通にかわいいぞ。そこで予鈴が鳴る。

 

戸塚 「片付けとかしないとだから先行くね。」

 

戸塚が走って先に行く。

 

八幡 「由比ヶ浜、雪ノ下に飲み物買っていくんじゃないのか」

由比ヶ浜 「そうだった!」

 

そうして俺はひとりで教室に戻った。

 

次の日。今日も体育があり内容も前回と同じでテニスだった。壁打ちの許可をもらうために先生のところへ行こうとすると、肩をたたかれた。振り返ると頬に指を押し付けられた。

 

戸塚 「あはは。引っかかった。今日いつもペア組んでる人が休みで僕一人だからも比企谷君さえよかったら一緒にしない?」

八幡 「いいぞ。俺も一人だし」

戸塚 「よろしくね!」

 

しばらくラリーをしていると

 

戸塚 「ちょっと休憩しない?」

 

俺たちはコートの端に行き腰を下ろす。

 

戸塚 「やっぱり比企谷君テニス上手だね。経験者?」

八幡 「いやテニスは授業でやってるくらいだな。けど、前に知り合いにスカッシュやらされてたから、少し感じは違うがその経験が生きてるんじゃないか?」

戸塚 「そうなんだ!あの相談があるんだけど、昨日も言った通りうちのテニス部弱いからさ、もしよかったらテニス部に入ってくれないかな。」

八幡 「すまない戸塚。バイトやってて放課後は無理なんだ。その代わりと言ってはアレだが昼休みの練習の手伝いならできるがそれでもいいか?」

戸塚 「もちろん!テニス部以外の人が授業以外でテニスコート使うには生徒会に申請しないとなんだけど僕やっておこうか?」

八幡 「生徒会に知り合いいるし俺がやるからいいぞ。けど、専門的なこととか全然わからないからラリーの相手とかしかできないと思うから頭に入れといてくれ」

戸塚 「わかったよ!じゃあ明日からお願いします!」

八幡 「おう。」

 

それから休憩をやめ、またラリーを続けるのだった。

 

翌日の昼休みになり昼食を軽く食べ、テニスコートに向かう。昨日のうちに生徒会長であるめぐりさんに申請しておいたのですぐにテニスコートに向かう。テニスコートに着くとすでに戸塚がいて準備運動をしていた。

 

八幡 「悪い戸塚遅かったか?」

戸塚 「大丈夫だよ比企谷君。比企谷君のほかに練習手伝ってくれる人がいるんだけどいいよね」

八幡 「ああ。」

 

俺はコミュ障だが今回のメインは戸塚。俺がほかのお手伝いの人と話すことはないだろうと思い、俺は二つ返事で返事する。

 

戸塚 「今申請しに行ってるから先にラリーしてようか」

八幡 「そうだな」

 

ラリーをしているといきなり戸塚がボールと止め手を振る。他をお手伝いの人が来たのか。一応あいさつしといたほうがいいだろ。そう思って振り向くと、

 

由比ヶ浜 「あー!!何でヒッキーがいるし!」

 

由比ヶ浜と雪ノ下がいた。

 

雪ノ下 「なぜあなたがここにいるのかしらひき…ひき…ゾンビ君」

八幡 「お前は人の名前も覚えられないのか学力2位さん。」

雪ノ下 「無駄なことを覚える趣味はないもの」

八幡 「お前は人一人の名前を追加で覚えられないほど脳のキャパ少ねーのかよ。こりゃ次のテストで2位もいられなくなるかもな」

 

雪ノ下が俺をにらむ。

 

由比ヶ浜 「二人とも落ち着いて!ヒッキーもさいちゃんの練習のお手伝いってことでいいんだよね」

八幡 「ああ。練習メニューは考えたのか」

雪ノ下 「もちろんよ。まずは体力づくりね。技術だけあってもそれを続けるだけの体力がなくちゃ意味ないもの」

八幡 「まあ現状じゃそれがベストか。」

 

それから体力づくりのトレーニングが始まった。

 

 

 

雪ノ下 「今日はこれくらいにしましょうか。明日は実践的な練習をしましょう」

八幡 「そうだな。戸塚わかってると思うが体力は今日一日だけでつくもんじゃなくて継続することで鍛えられるから日々の鍛錬は怠らないようにな」

戸塚 「うん!」

 

それから片づけをしその日は解散となった。

 

翌日。今日も俺たちは集まり、戸塚の特訓をする。今は戸塚に難しいコースの返球をさせている。雪ノ下がコースを指示し、由比ヶ浜がそこにボールを投げ、戸塚が返球する。そして俺は球拾い。口で言えば簡単そうに聞こえるが、実際は雪ノ下の指示する場所がエグイ。右に指示したと思えば次は左にそして前や足元にとひたすら戸塚を動かしている。そんな中、戸塚はよくくらいついている。たまに拾えない時もあるがほとんどラケットに当てるなりしている。他のテニス部員もこの戸塚のがんばっている姿を見ればもっとやる気になるだろう。そんなことを考えていると戸塚が転んだ。みんなが戸塚に駆け寄る

 

由比ヶ浜 「さいちゃん大丈夫?」

戸塚 「大丈夫だから続けよう。」

 

戸塚の足を見ると膝をすりむいていて、それなりに血が出ていた。戸塚は続けると言っているが、これは消毒とかしたほうがいいだろうな。そう思っていると

 

雪ノ下 「まだ続けるの?」

戸塚 「うん。みんな付き合ってくれてるから」

雪ノ下 「そう。由比ヶ浜さんあと頼んだわ。」

 

そう言うなり雪ノ下はテニスコートから出て行ってしまった。

 

戸塚 「ぼく呆れられたのかな」

由比ヶ浜 「違うと思うよ。ゆきのんあれで意外と優しいから」

八幡 「救急箱でも取りに行ったんだろ。ちょうどいいし少し休憩するか」

戸塚 「うん。でもぼくもう少し練習したいんだ」

八幡 「それで悪化したら元も子もないぞ」

戸塚 「それでも練習したい。」

 

ここで無茶させるのはトレーナーとしてはだめだと思うんだが戸塚の練習が始まってから初めて見せたここまで強い意志に折れた

 

八幡 「わかった。ただし無理しないようにしろよ」

戸塚 「うん!」

 

それから練習を再開させようとするとテニスコートの外から俺の嫌いなリア充の声がした。

 

??? 「あ~テニスしてんじゃん!戸塚私たちも遊んでいい?」

 

急な侵略者の登場でめんどくさい展開になってきたことに俺は落胆を隠せなかった。

 

 



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テニス部2

今日で夏休みが終わる。

学校なんて存在から消えてなくなればいいのに…


テニスコート外から飛んできた言葉に戸塚はおどおどしながら答える

 

戸塚 「三浦さん、僕たちは遊んでるわけじゃないんだけど」

 

あの金髪縦ロールは三浦というらしい。

 

三浦 「え~聞こえないんだけど」

 

そんなわけねーだろ。耳も腐ってんのか腐れリア充どもが!心の中でそう罵り、戸塚に助け舟を出した

 

八幡 「テニスコートを使うには生徒会の許可がいる。ここを使いたかったら生徒会に許可取ってこい」

三浦 「誰もあんたとしゃべってないんですけど。急に出しゃばってくんなし。それで戸塚いいでしょ」

八幡 「お前耳腐ってんのか?生徒会の許可がないと使えないって言ってんだろ。耳悪いならいい耳鼻科紹介するぞ」

三浦 「さっきからあんた何なの。それに生徒会の許可がないと使えないんなら何であんたもここにいるんだし」

八幡 「戸塚の手伝いするために生徒会に許可取ったからにきまってんだろ。考えればわかるだろ。…さっきの言葉撤回するわ。悪いのは耳じゃなくて頭だった。」

三浦 「はあ!?あんたあーしにけんか売ってんの?」

葉山 「まあまあ優美子落ち着いて」

 

今三浦を止めた男は葉山。クラスの奴の顔を覚えてない俺でもこいつは知ってる。こいつの名前は葉山。下の名前は知らん。教室でべーべーうるさいやつがよく名前を言っていたので覚えてしまった。

 

葉山 「どうだろうヒキタニ君。ここは部外者の俺と君がテニスの試合をして勝った方がこれからテニスコートを使える。もちろん戸塚の練習は手伝う。戸塚も強い人と練習したほうが効率もいいと思うしさ」

八幡 「だからお前らにはその権利さえもないって言ってんだよ。許可取っ——

 

突然顔の付近にテニスボールが飛んできた。それをぎりぎりで受け止める。

 

三浦 「隼人~あーしそろそろテニスしたいんだけど」

八幡 「戦争だ」

葉山 「え?なんて言ったんだ?」

 

俺がつぶやいた言葉は葉山には聞き取れなかったみたいだ。

 

八幡 「さっきの提案受けてやるよ」

葉山 「本当にいいのかい?」

八幡 「ああ。ただしルールは簡単にしてくれ。初心者なんでルールとかよくわからんのでな」

葉山 「わかった。15点マッチで1セットやってそのセットを取った方が勝ち。サーブは2回ごとに交代で。こんな感じでどうだい?」

八幡 「ああ。そんくらいシンプルがいいな。」

三浦 「それだとあーしテニスできないから、いっそ混合ダブルスにしない?うそあーしちょー頭いいわ!」

葉山 「それでいいか?」

八幡 「お前らは二人でいいぞ。俺は一人でやる。足手まといがいても邪魔なだけだしな」

由比ヶ浜 「ヒッキー!私も試合でるよ」

三浦 「結衣ー。それあーしと試合するってことだけどいいの?」

由比ヶ浜 「うん。あたしは部活も大切だから」

三浦 「ふーん」

 

由比ヶ浜の言葉に三浦は興味なさそうにつぶやき、試合をする準備をする。奴らが試合の準備をしている間にめぐりさんに連絡して、今の状況を簡潔に説明し先生を連れてくるように頼んだ。

 

 

 

戸塚 「試合開始」

 

戸塚のコールで試合が始まる。サーブ権は向こうにある。三浦がサーブを放つ。それは俺の方へ飛んできた。落ち着いて相手コート隅に返球する。葉山は追いつけず1点取った。三浦の2回目のサーブ。またもおれのところに飛んできた。さっきのが偶然だったのか確かめるためだろう。今回も追いつけないところに返球し、2点目。それから俺たちにサーブ権が移り、由比ヶ浜がサーブを打つ。コースが甘いため葉山が由比ヶ浜に向けて返球する。それをうまく返せずに相手に1点。それから由比ヶ浜が狙われた。

あっという間に得点はひっくり返され今や2対9。そろそろ逆転するか。そのために…そこボールを追いかけていた由比ヶ浜が転んだ

 

由比ヶ浜 「痛った」

八幡 「大丈夫か?」

由比ヶ浜 「ごめん。ちょっと捻ちゃったかも。負けたらさいちゃん困るよね」

八幡 「いいから休め。俺としてはそっちの方が好都合だ。」

由比ヶ浜 「ちょっとそれどういう意味!?」

八幡 「そのまんまだ。俺一人でやった方が強い」

由比ヶ浜 「それはそうかもだけど…」

八幡 「わかってんなら早くコートから出ろ」

由比ヶ浜 「…わかった。」

 

由比ヶ浜がコートから出て行く。ふとそこでいつの間にか集まっていたたくさんのギャラリーの中に知ってる顔をたくさん見つけた。まずは那須と熊谷。少し離れたところに奈良坂がいた。さらにもう少し離れたところに菊地原・歌川・鳥丸の総武高の1年ボーダー隊員がそろっていた。

 

八幡 「これはこの点差では終われないな」

 

誰に言うでもなくつぶやく。

 

八幡 「これからは俺一人で相手するぞ」

葉山 「ならここで終わりにしないか。お互いによく頑張ったってことでさ」

三浦 「ちょ隼人。何言ってんの。ここまで来たら決着つけなきゃまずいでしょ」

葉山 「けど相手は一人になったわけだしさ。これ以上は—-

八幡 「俺のことなら気にしなくていいぞ。お前らごとき一人で余裕だ」

三浦 「ヒキオ、調子のんなし!ほら隼人あいつもこう言ってるし」

八幡 「それじゃあ試合を再開させるぞ」

 

葉山が何か言う前に俺のサーブで試合を再開させる。さっきよりも球速をあげサーブを放つ。そのサーブに葉山たちは反応できなかった。それからは一方的だった。相手のサーブでは加速を使い体の動きなどから判断し、余裕をもってボールのコース上に入り、相手がギリギリ追いつけるところに返す。それで返ってきたボールもギリギリ追いつけるところに返す。それを繰り返して体力を削る。サーブは反応できない球速で放つ。そうして同点になるころには葉山たちは肩で息をしていた。そして俺のサーブで逆転する。だんだんギャラリーが騒がしくなってきた。

 

モブ1 「おいあの葉山が負けんのか」

モブ2 「あんな目の腐ったやつに」

菊地原 「さっさと負ければいいのに」

歌川 「おい!菊地原!」

 

ギャラリーの声に交じって菊地原の生意気な言葉とそれを注意する歌川の声が聞こえる。やっぱ歌川っていいやつだな。また今度おごってあげよう。それから俺のサーブ。それを走ればギリギリ追いつくコースに放つ。すでに体力が限界に達していた葉山は届かない。これで9対11。三浦のサーブ。疲れているため試合序盤ほどの威力はない。よって加速は使わずに返す。あれは使いすぎると一時的にアホになってしまうので使用するときは注意しなければならない。まあそんなことより相手は返せずに9対12。

 

八幡 「あと三点」

 

俺が葉山たちに聞こえるようにつぶやく。

 

葉山 「君はなぜ最初から本気を出さなかったんだ」

八幡 「なぜって、誰かさんたちが足手まといばかりにボールを集めてこっちにはボールが飛んでこなかった。それだけだ。」

三浦 「あんた結衣に何言ってんだし!」

八幡 「なにって本当のことだろ。じゃあ聞くが何でお前たちは由比ヶ浜ばかりにボールを集めた?それは俺より点が取りやすかったからだろ。そしてお前らに狙われた結果、最初あれだけ点差が開いた。どうだ?俺は間違ったことを言ってるか?」

 

葉山と三浦は反論することができない。そこで俺の目にめぐりさんと先生が見えた。

 

八幡 「葉山、ゲームオーバーだ。」

葉山 「それはどういう意――

先生 「お前らここで何やっておるか!!」

 

葉山の問いはめぐりさんが連れてきた先生によって遮られた。

 

葉山 「…テニス部の練習を手伝っていました」

 

葉山は苦し紛れにそう言う。

 

めぐり 「肝心のテニス部の戸塚君は休んでいるようだけど?それに君たち、生徒会にテニスコートの使用申請してないよね」

葉山 「そ、それなら彼はどうなんですか」

 

葉山は俺の方を見ながら言う

 

めぐり 「彼からはテニス部のお手伝いとして使用申請を受けています。あとそこにいる由比ヶ浜さんと今いないけど雪ノ下さんもね」

先生 「お前ら…葉山と三浦だったな。ちょっと来い。周りで見てる連中もはよ教室戻らんかい」

 

それから葉山と三浦は先生に連れていかれ、ギャラリーも撤収を始める。それと入れ違いになるようにして雪ノ下が戻ってきた。雪ノ下の手の中には救急箱があった。

 

雪ノ下 「これは何の騒ぎなのかしら?」

八幡 「部隊長が何も言わずに消えたら領地のテニスコートを奪おうと他国が攻めてきて、部隊長より上の本部長に泣きついて何とか他国を撃退したところだ。さて俺は先に戻るぞ。」

戸塚 「うん。今日はありがとう!」

 

戸塚に満面の笑みで言われた。え、なにこれ超かわいいんですけど(今さら)。そんな顔で私を見ないで!浄化されちゃう!なに俺はゾンビか何かなのか?

 

八幡 「おう。」

 

そしてテニスコートから攻守へ向かうところで待てってくれためぐりさんのところへ行く

 

八幡 「めぐりさん、今日はありがとうございました。」

めぐり 「ご飯食べてたらいきなり携帯が鳴ったからびっくりしちゃったよ」

 

それから雑談をしながら俺たちは自分の教室に向かった。

 

後日談というか今回のオチ

テニスコート侵略事件(俺命名)のあと葉山と三浦は説教をくらい、葉山は1週間の部活動参加禁止と反省文、三浦には部活をしていなかったため反省文と奉仕活動をする羽目になり、葉山は次期サッカー部のキャプテン候補から外されたらしい。ざまぁw

 




テニスってこんな感じでいいんすかね?去年高校の体育でやっただけなんでこんな感じでいいのかよくわかんないです。体育の時は二人組でラリーしてろみたいな感じだたんで試合のルールとかも知らないです。ちなみに二人組は前後の奴で作る感じだったのでボッチにはなりませんでした。

学校始まっても更新できるように頑張ります。
学校なんて消えてなくなればいいのに はっはっは


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閑話 二宮匡貴

学校始まってグロッキーなサラリーマンです。
新学期始まって課題テストなどの勉強が忙しくてなかなか書く時間が取れないので次回以降の更新が遅くなります。今回も短いです。

そう言えばsaoのメモリーデフラグ配信されましたね。リセマラはユウキでやめました。やっと青眼の悪魔まで進みました。ゲームやるなら勉強したり書けって話ですよね。

本編をどうぞ


ある日の防衛任務上がり、報告書を書いていると俺のスマホが鳴った。画面を見ると珍しいことに二宮さんから電話が来た。

 

八幡 「もしもし珍しいですね二宮さん。どうかしたんですか?」

二宮 『比企谷これから時間あるか』

八幡 「防衛任務の報告書書き終わってからなら時間ありますけど」

二宮 『書き終わったらホテル最上階のエンジェルラダーという店に来い。倉崎もいるなら連れて来い』

八幡 「わかりました。」

二宮 『言い忘れていたがスーツで来いよ。ないようなら雪ノ下に用意してもらえ』

八幡 「そうなると陽乃さんはたぶんついてきたいと言うと思うんですが一緒でも大丈夫ですか?」

二宮 『構わん。待ってるから早く来い』

 

電話が切れた。とりあえず全員に電話の内容を伝えた。

 

楓子 「…鳩原さんのことですよね」

八幡 「たぶんそうだと思います」

 

鳩原さん…鳩原未来は楓子さんの姉弟子にあたる人で二宮隊に所属していた。そういた、なのだ。先日、ボーダーのトリガーを一般人に横流しし、その一般人とともにゲートの向こう側へ行った。しかし表向きはその事実を伏せ、鳩原さんが隊務規定違反をしてボーダーをクビに、二宮隊も連帯責任でB級へ降格処分になった。となっている。俺がそこまで考えていると

 

謡 「だったら報告書は私とめぐ姉に任せて早く行った方がいいのです!」

めぐり 「そうだね!二宮さんを長時間待たせるのも悪いし。それにふうちゃんはすぐに行きたいでしょ?」

楓子 「けどいいの?」

謡・めぐり 「「もちろん!」」

 

それから俺たちは陽乃さんの用意したスーツに着替え、二宮さんが指定した店へと向かった。

 

二宮さんが指定した店に着くと、二宮さんはカウンターに座っていた。

 

八幡 「お待たせしました。二宮さん」

二宮 「来たか。」

 

二宮匡貴。B級1位部隊隊長にしてボーダーNo.1シューターである。

 

陽乃 「今日呼び出されたのは鳩原ちゃんのことでいいんだよね?」

二宮 「ああ。早速だが俺はあいつがこんなたいそうな計画を立てられるわけがないと思っている。あいつを唆した黒幕が必ずいる。俺はそれが誰なのか知りたい。そいつの心当たりはないか?倉崎。」

楓子 「特にありません」

八幡 「黒幕の候補みたいな人はいないんですか?」

二宮 「同じ日に三人、行方不明者がいる。ゲートに消えたトリガーの反応は鳩原を除いて三つ。行方不明となった三人で間違いないだろう」

陽乃 「確かにタイミングを考えればその三人の可能性が高いだろうね。その三人の素性の調査は?」

二宮 「あらかた終わっている。これを見ろ」

 

二宮さんは三枚の紙を渡してくる。これは…

 

八幡 「これって二宮さんが一人でやったんですか?」

二宮 「ああそうだが」

八幡 「完成度高すぎじゃないですか」

 

そうこれは完成度がすごく高い。名前、身長、体重、家族構成から小学校の時のあだ名まで確実に要らないような情報まで書いてある。そんな調査書を三人で回して見る。それから二宮さんが調査書の顔写真を指さして

 

二宮 「この三人に見覚えあるやついるか?」

 

俺たちは三人そろって首を横に振る。ここで一つの疑問が生まれる

 

八幡 「なんで黒幕は鳩原さんを狙ったんでしょうか。二宮さんが言ったように本当に黒幕がいるのなら例えば、玉狛の小南の方が唆すことだけで見たら容易なはずです。なのになぜ鳩原さんが狙われたのか。こっちの方面から探ってみるのもありだと思うんすけど。それに、これに乗っかることによる鳩原さんのメリットとか」

二宮 「…そうだな。俺はこれで失礼する。時間とらせて悪かったな。またなんかわかったことがあったら連絡をくれ」

 

そう言って二宮さんは店から出て行った。俺たちも二宮さんに続き店を出る。その時に一人の従業員とすれ違った。俺は立ち止まってすれ違った従業員の後姿を見る。

 

楓子 「どうしましたか、ハチさん」

八幡 「いえ、何でもないです」

陽乃 「もしかしてさっきすれ違った従業員の子に惚れちゃった?ひ、ひどいわ八幡!私という許嫁がいるのにたった一度すれ違っただけの子に一目ぼれするなんて!」

八幡 「違いますし、そんな変な設定足さないでくださいよ」

陽乃 「じゃあなんで?」

八幡 「ただ若いなって。未成年と言われても納得できそうだったんで」

楓子 「確かに未成年と言われても納得しそうでしたね」

陽乃 「それならしっかりと顔見ておけばよかったな~もう一回見に戻ろうかな」

八幡 「それでもいいですけど俺と楓子さんは帰りますよ。長居して未成年だとばれたくないんで」

陽乃 「そうだね。ほんとにここで働いているならまた来た時に確認すればいいや」

 

それからエレベーターに乗り、ホテルを後にした。そして今日が終わるころには若い従業員のことを忘れてしまっていた。

 



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職場見学1

テニスコート侵略事件から数週間後、二宮さんの呼び出しから1週間後。朝起きて、時計を見ると9時半。これは完全に寝坊したな…まあいいや。もう寝坊という事実は変わらないしゆっくり行くか。そう思い、朝食を食べゆっくりと学校へ向かった。

 

学校へ行くと、平塚先生の授業中だった。先生は板書していたので音を立てずに席に着こうとしてたのだが、偶然後ろを振り返った先生と目が合った。

 

平塚 「今は授業中だから遅刻の理由はあとで言ってもらう。今は席について、授業終わったら私のところまで来い。じゃあ授業を進めるぞ」

 

席に座り授業を聞く。10分ぐらいで授業が終わった。まあそれもそうか。俺が来たのがもうほとんど終わりかけだったし。それから平塚先生のところへ向かう。

 

平塚 「じゃあ比企谷。遅刻の理由について話してもらおうか」

八幡 「純粋に寝坊しました」

平塚 「珍しいな君が言い訳をしないなんて…とりあえず反省文は書いてもらうぞ」

八幡 「わかりました」

 

反省文は回避できるのだが今回は俺が全面的に悪いので甘んじて罰の受けることにした。そうしていると後ろで扉が開く音がする。そっちに視線を向けると青みがかった髪の制服を着崩した女子が入ってきた。

 

平塚 「このクラスは問題児が多いな。川崎沙希、君も遅刻か?」

 

川崎と呼ばれた生徒は会釈だけして、自分の席に着いた。

 

平塚 「全く…川崎、君も放課後までに反省文を私に提出しろ」

 

平塚先生は教室から出た。俺は川崎の顔をどこかで見たことがある気がしていたが思い出せずにもやもやしたまま授業を受けた。

 

総武高もテスト期間に入り、作戦室でいつものように勉強している。ここには俺と謡の二人だけだ。陽乃さんは大学の方で楓子さんとめぐりさんは総武高でそれぞれ用事が入っているらしくまだ来ていない。ここに来てから2時間ずっと勉強していて腹が減ってきた。そこに、

 

謡 「ハチ兄、そろそろおなかすきませんか?防衛任務の前にご飯食べに行きませんか?」

八幡 「そうだな。食堂にするか?」

謡 「それでもいいですけどたまにはほかの場所で食べたいです」

八幡 「ならサイゼは?」

謡 「いいですね!そこにしましょう」

八幡 「よしじゃあ行くか」

 

それから財布とスマホだけ持って謡と一緒に一番近いサイゼを目指した。

 

 

サイゼに向かい歩いていると電話がかかってくる

 

八幡 「もしもしどうした?小町」

小町 『あ、お兄ちゃん?ちょっと相談があるから今から会えないかな?』

八幡 「いいけど防衛任務があるからゆっくりできない。今日は話を聞くだけでもいいか?」

小町 『もちろん!お兄ちゃんは今どこいる?』

八幡 「謡と一緒にメシ食うためにサイゼに向かってる。その相談は謡がいても大丈夫なのか?」

小町 『ういちゃんもいるんだ!…ういちゃんがいても大丈夫だよ!今塾でたとこだからお兄ちゃんたちの方が早く着くと思うから待っててね?』

 

なんか変な間があったが何だろうか

 

八幡 「りょーかい。先行って待てるぞ」

小町 『うん。よろしくねお兄ちゃん!』

 

それから謡に電話の内容を話し、引き続きサイゼに向かった。

 

 

 

サイゼに着き、案内された席に向かう。その途中で勉強している三人組が目に入った。

雪ノ下、由比ヶ浜、戸塚の三人だ

 

雪ノ下 「では次はことわざの問題。無慈悲なものでも時には慈悲から涙を流すことがあるということわざは?」

由比ヶ浜 「無慈悲?慈悲?」

雪ノ下 「…言い換えるわね。比企谷君のようなひどい人間でもたまには優しさを見せることがある。鬼の目にも…」

由比ヶ浜 「わかった!金棒!」

 

まさか高校生にもなって慈悲の意味が分からないやつがいるとは思わなかった。さらに答えも間違っているし。雪ノ下に関してはスルー。

 

八幡 「答えは鬼の目にも涙だ。おまえはあれか?鬼に恨みでもあんのか?鬼に対してひどすぎるだろ」

由比ヶ浜 「ヒッキー!何でここに?」

戸塚 「八幡も勉強会に呼ばれたの?」

 

戸塚にはあれから八幡と呼ばれるようになっていた。さらに侵略事件以降戸塚以外のほかのテニス部員も戸塚が昼休みに練習していることを知り一緒に練習するようになっていた。

 

雪ノ下 「あら貴方は呼んでないのだけど。なぜあなたがここにいるのかしら?」

八幡 「メシ食いに来ただけだよ。それに呼ばれたとしても参加しないけどな。由比ヶ浜に教えてるだけで時間なくなりそうだし。というわけで行くぞ謡」

雪ノ下 「ちょっと待ちなさい」

 

席に向かおうとすると雪ノ下に呼び止められる

 

八幡 「なんだよ」

雪ノ下 「今すぐ両手を括って待ちなさい。すぐに警察呼ぶから」

 

雪ノ下はスマホを取り出す。後ろにいる謡の雰囲気が徐々に悪くなっていくのを感じる。

 

八幡 「なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ。行くぞ謡」

謡 「いいんですか?ハチ兄」

 

たぶんこれは言い返さなくていいのか?みたいな意味だろう

 

八幡 「ああこいつらに付き合ってたらそれこそ時間の無駄だ」

戸塚 「八幡!さっきからその子、ハチ兄って呼んでるけどその子って八幡の妹なの?」

八幡 「いや違うぞ戸塚。こいつは四――

小町 「いたいた、お兄ちゃん!ういちゃん!」

 

俺の言葉は入ってきた小町にさえぎられる。小町の方を見ると横には見知らぬ男が…

 

八幡 「おい小町今すぐその場から離れろ。お前の後ろに邪魔な虫がいるからお兄ちゃんがつぶしてやるから」

小町 「待てお兄ちゃん!大志君はそんなんじゃないから!さっきの電話で言った相談って大志君の総武高に通ってるお姉さんのことなの!」

大志 「お願いします!もうお兄さんしかいないんです!」

八幡 「お兄さんと呼ぶな。次呼んだら地獄を見せるぞ」

謡 「どこの頑固おやじですか…」

 

謡があきれていたが俺は気にしない。小町は誰にもやらん

 

小町 「とりあえず座ろうよ」

 

小町の提案で席に座る。それから俺と謡は注文をし、小町もここで食べることにしたのか一緒に注文した。今このテーブルには俺と謡、小町と大志それになぜか雪ノ下と由比ヶ浜

、戸塚もいた。

 

八幡 「雪ノ下、由比ヶ浜なんでいるんだよ」

由比ヶ浜 「何でさいちゃんはいいんだし!」

八幡 「当たり前だろ。戸塚だぞ。それよりほんとなんでいるんだよ」

由比ヶ浜 「総武高に通ってるなら私たちも何か協力できるかもしれないし」

小町 「とりあえず一回自己紹介しませんか?」

雪ノ下 「そうね。初めまして。私は雪ノ下雪乃よ。」

由比ヶ浜 「初めまして由比ヶ浜結衣です」

戸塚 「僕は戸塚彩加です。八幡とはクラスメートです」

 

小町は三人の顔を見て、

 

小町 「みんなかわいい人だね!お兄ちゃん!」

八幡 「まあ戸塚は男だけどな」

小町 「またまた。そんなわけないじゃん!」

謡 「そうですよ。ハチ兄失礼ですよ」

戸塚 「僕男なんだけどな…」

 

戸塚が言うと、小町も謡も目を丸くする。

 

謡 「本当に男の人なんですか?」

戸塚 「うん」

謡 「失礼しました。私は四ノ宮謡と言います。ハチ兄と小町さんとは親が友達だったので昔よく遊んでもらってました。今日は両親が仕事で帰るのが遅くなると言っていたので、ハチ兄と一緒にご飯を食べることになりました。」

 

さすが謡。この中では俺と小町と謡しかわからない昔のことを入れることで誰もこれが嘘だとは思わなかったようだ。

 

小町 「次は小町だね!いつも愚兄がお世話になっております!比企谷小町です!」

大志 「最後は俺っすね。川崎大志っす。今日は姉ちゃんのことで相談があってきました。話聞いてもらっていいですか?」

八幡 「小町から聞いていると思うが、今日はあまり時間がない。それでもいいなら話せ。」

雪ノ下 「貴方みたいな友達がいない人に用事なんてあるわけないじゃない。それに相談を受けたなら解決法を提示するのが筋じゃないかしら」

謡 「雪ノ下さん貴方さっきから何なのですか!あなたがハチ兄のなにを知ってるっていうんですか!外見だけ見て中身見ないで話すのやめてもらえませんか?虫唾が走ります」

 

正直驚いている。俺が謡と会ってからおよそ一年。謡が怒るのなんて初めて見た。このままだと謡と雪ノ下の口論になる気がしたので止める

 

八幡 「やめろ謡。雪ノ下、お前は小学生を夜に連れまわしてなんかあったときに責任とれんのかよ。小町や大志だって中学生だ。遅くなれば親は当然心配もする。それにこの相談を持ち掛けられたのは俺だ。俺の都合に合わせてもらう。急にしゃしゃり出てきたやつが文句言うな。本来ならこの件は、お前は聞く権利がないことを自覚しろ。…大志話してくれ」

大志 「はいっす。」

 

それから大志は話し始めた。

 



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職場見学2

大志が相談を始める

 

大志 「俺の姉ちゃんは川崎沙希って言って、2年生です。クラスは確かF組だったと思います。」

戸塚 「あ、うちのクラス」

八幡 「川崎…あいつか」

由比ヶ浜 「あのちょっと怖い感じの人だよね」

 

俺はこの前遅刻したときに同じ日に遅刻した奴を思い出していた

 

大志 「最近その姉ちゃんが帰ってくるのが遅いんです」

雪ノ下 「具体的に何時くらいなのかしら」

大志 「5時です」

八幡 「朝じゃねえか」

 

ボーダーならその時間になることもあるが少なくとも俺はボーダーで川崎を見たことがない

 

戸塚 「ご両親は何も言わないのかな?」

大志 「両親は共働きだし下がまだいるんで、あんま姉ちゃんにはうるさく言わないんです」

戸塚 「そうなんだ…」

大志 「それにこの前家にエンジェルなんとかって店から電話が来たんすよ!エンジェルっすよ!エンジェル!絶対やばい感じの店っすよ!」

謡 「それはエンジェルという店に偏見持ちすぎでは?」

由比ヶ浜 「へんけん?」

雪ノ下 「今までの話から推測するに川崎さんはバイトをしているんじゃないかしら」

 

エンジェル…川崎…朝帰り…!それまでばらばらだったものが一気に一つにつながった気がした

 

八幡 「大志何個か質問いいか?」

大志 「はい」

八幡 「まず一つ目、朝帰りはいつからだ?」

大志 「2年になってからだと思うっす」

八幡 「2つ目、その前と後で何か変わったことは?」

大志 「…たぶん俺が塾に通い始めたくらいです」

八幡 「ラストだ。お前は姉にどうしてほしい?」

大志 「家族はみんな心配してるので朝帰りはやめてほしいっす。それができなくても、せめて事情だけでも話してほしいです」

八幡 「そうか…小町、謡帰るぞ。大志もついて来い」

大志 「えっ、あ、はいっす!」

雪ノ下 「待ちなさい」

 

席を立とうとすると雪ノ下に呼び止められる

 

雪ノ下 「貴方にこの問題が解決できるのかしら」

八幡 「ああ。もう朝帰りの原因は分かっている。さっき言った通り相談を受けたのは俺だ。雪ノ下、お前は何もするなよ」

 

雪ノ下が何か言う前に席を立ち、金を払い店を出る

 

八幡 「大志、お前はもう帰れ。姉の事情がどうであれお前が勉強をしなくていい理由にはならないからな。姉の件はできる限りのことはしてやるよ」

大志 「よろしくお願いします!お兄さん!」

八幡 「お兄さんと呼ぶな!お前この件が片付いたら二度と小町に近づくなよ。視界に入れることも許さん。もし小町に手を出して見ろ。地の果てまで追いかけてお前に死ぬよりつらい地獄を見せてやるからな」

大志 「…姉のことはよろしくお願いします」

 

大志は去っていった。それから小町を家まで送り謡と一緒にボーダー本部に行き防衛任務をこなした。その時に陽乃さんに事情を説明し、またスーツを用意してもらえないかと頼んだ

 

 

 

翌日の夜となり、陽乃さんに用意してもらったスーツを着て、この前二宮さんに呼び出されたエンジェルラダー 天使の階に向かっている。横には陽乃さんがいる。昨日スーツを頼んだ時にやはり今回もついてくると言った。エンジェルラダーに着くと、まず店内を怪しまれないように見まわし目的の人物がいるか確認する。いた。川崎はカウンターでグラスを磨いている。俺たちはカウンターに座り川崎に話しかける。

 

八幡 「川崎沙希で合ってるよな?」

川崎 「そうですけどあなたは?」

 

川崎は俺を怪しみながらも敬語で返す

 

八幡 「お前と同じクラスの比企谷八幡だ。」

 

俺が言うと川崎は驚いた表情を作ってから悲しげな表情になった。

 

川崎 「そっか。とうとうばれちゃったか。先に言っとくけどあんたが先生に言っても無駄だよ。このバイト辞めさせられても別のバイトするからね」

八幡 「お前がそこまでバイトをしたがる理由…学費で合ってるか?」

川崎 「っ!?なんであんたがそれを!?」

八幡 「お前の弟から俺の妹を通して相談があってな。そこでいろいろ聞いた。まあ学費というのは推測だけどな。弟が言ってたぞ。家族なんだから相談してほしいって」

川崎 「相談できるわけないじゃん!両親は共働きで忙しい!大志は受験生で塾に通い始めた!毎日働いて大志の塾のお金を出した両親にまだ二年なのに私の塾のお金まで出してほしいなんて言えるわけないじゃん!それにまだ妹もいる。妹のことを考えると私が迷惑をかけるわけにはいかない。それともあんたは私の学費を払ってくれんの?それができないなら私の問題には関わってこないで!」

 

川崎の言葉を俺たちは黙って聞いていた

 

陽乃 「はいはーい!私はあなたの学費を払ってもいいよ!私にメリットがあるなら…だけどね」

八幡 「陽乃さん茶化さないでくださいよ。真剣な話してるのに」

川崎 「比企谷、この人は?」

陽乃 「私は雪ノ下陽乃。八幡の師匠だよ!」

川崎 「師匠?なんの?」

八幡 「それはあとで話す。俺はお前の学費を払ってやることはできない」

川崎 「だったら――

 

川崎の言葉を遮る

 

八幡 「だけどお前に二つの提案をしてやろう。一つ目はスカラシップだ」

川崎 「スカラシップ?」

陽乃 「簡単に言えば成績優秀者を対象に入学金や学費の一部もしくは免除しようってことだよ」

八幡 「大体そんな感じだ。先生に聞けばより詳しくわかると思うぞ」

川崎 「…それで二つ目って何なの?」

八幡 「それはボーダーに入ることだ」

川崎 「は?ボーダー?」

陽乃 「うん。最近いろんな大学がボーダー推薦をしてるの。ボーダー隊員がいるってだけでそれなりのステータスになるからね。最低限授業についていけるだけの学力は必要だけどね」

八幡 「お前の普段の成績は分からないがこれだけでボーダーと提携している大学にはほぼ確実に入れる。塾に行かなくてもだ。それに妹がいるって言ったよな?ボーダーならその妹のために金を稼ぐことができる」

陽乃 「まあ良い事ばかりじゃないけどね」

川崎 「どういう事?」

八幡 「ボーダーに入ればネイバーと最前線で戦うことになるわけだ。防衛任務ならまだ安全だがまた大規模侵攻があれば当然危険が伴う」

川崎 「なんだそんなことか」

 

川崎が言った一言に驚く

 

八幡 「そんなことって。結構重要だぞ」

川崎 「だってそうでしょ。あんたたちボーダーを信頼してないわけじゃないけど、ネイバーが警戒区域から出てきたとき、自衛手段がないことの方がよっぽど危険じゃない?」

八幡 「確かに…」

川崎 「一つ聞きたいんだけど、ボーダーって才能とか必要じゃないの?」

八幡 「川崎の言う通り才能がないやつが上の連中を見て才能の差を感じてやめていくやつもいる。けど才能なんて本人の努力と工夫次第でどうとでもなる。嵐山隊の木虎は知ってるか?」

川崎 「うん」

八幡 「あいつはトリオン量が少なかった。トリオン量ってのはボーダーの武器と使うためのエネルギーだと思えばいい。けどあいつは努力と工夫で嵐山隊のエースになった。才能がないからってあきらめるのは努力したくないやつの言い訳だ」

陽乃 「八幡正論なんだけど木虎ちゃんの個人情報…」

八幡 「あっ…川崎、他言無用で頼む」

川崎 「…うん」

 

川崎は呆れながらもうなずいてくれた。

 

八幡 「まあボーダーに向いてるかどうかは職場見学の時にわかるだろ。他のところと同じ内容なら対ネイバー戦闘訓練があるはずだしな」

 

今年の総武高の職場見学は希望者が二年生の九割を占めたため全員でボーダー本部になった。

 

川崎 「初心者に戦闘訓練なんてさせるの?」

八幡 「ネイバーが相手って言っても向こうは攻撃してこない。その分耐久力だったかなにかしらが上がってたはずだ。まあこの記録がすべてじゃないが一つの目安としてはいいはずだ。これで提案は終わりだ。スカラシップにしろボーダーにしろ決めるのはお前自身だ。ボーダーの方は家族と相談しないと決められないけどな。陽乃さん、帰りますよ」

陽乃 「は~い。ボーダーに入るならよろしくね川崎ちゃん」

川崎 「比企谷ありがとう。雪ノ下さんもありがとうございました」

八幡 「気にすんな。もう一つ言っておく。ここ、やめるなら早い方がいいぞ」

川崎 「は?どういうこと?」

八幡 「J組の雪ノ下雪乃って知ってるよな?そいつが近いうちにここに来る」

川崎 「どうして?」

八幡 「俺がお前の弟から相談を受けていた時に近くにいたからな。あいつはたぶんお前をやめさせようとするぞ」

川崎 「そうなんだ。わかった。」

八幡 「俺たちはこれで帰るから」

川崎 「うんじゃあね」

 

俺たちは店から出てエレベーターに乗る。

 

陽乃 「そういえば昔八幡がよくやってたスカッシュゲーム、あれ訓練として導入されるらしいよ」

八幡 「やってた、じゃなくてやらされてた、ですよ」

陽乃 「いやいや、最終的には自分からやってたじゃん!」

八幡 「これしか選択肢がなかったからですよ」

 

あん時は、これをやるか、陽乃さんと楓子さんのバイパーをよけ続けるという選択肢しかなかったからな

 

八幡 「それで導入はいつからなんです?」

陽乃 「今調整中らしいから職場見学のころには導入されるんじゃないかな?」

八幡 「ポイントってもらえるんですかね?」

陽乃 「もらえないんじゃないかな?反射神経だけよくても強いわけじゃないしね」

八幡 「そうですよね。…思ったんすけどこれってスナイパーがすごくつらくなりません?」

 

反射神経をよくするということはつまり不意打ちなどに強くなるということ。スナイパーにとっては天敵なのだ

 

陽乃 「けど、しとめるだけが仕事じゃないし。連携次第ってことだよ」

八幡 「そうですね」

 

エレベーターが止まる。どうやら一番下の階に着いたようだ。陽乃さんが先に降り続いて俺が降りる。すると降りた先には雪ノ下と由比ヶ浜がいた。

 

陽乃 「あれ?雪乃ちゃんじゃーん!なにしてんのこんなところで?」

雪ノ下 「ね、姉さんには関係ないでしょ。それより姉さんは何でここに?」

陽乃 「私は大学の友達と飲みに来ただけだよ。ね、八幡(やはた)君?」

 

陽乃さんは俺に会話を振る。今の俺の恰好は陽乃さんが用意してくれたスーツに髪はワックスで迅さんふうに仕上げ、メガネをかけている。これで名前を変えることで俺は完ぺきに「比企谷八幡」には見えない。それから、嵐山さんのようなさわやかな笑顔になり

 

八幡 「ええ。それで陽乃さん。彼女たちは?」

陽乃 「黒髪の方は私の妹の雪乃ちゃんだよ!もう一人は雪乃ちゃんの友達の由比ヶ浜結衣ちゃん、通称ガハマちゃんだよ!」

八幡 「初めまして。私は陽乃さんの友達で桐ケ谷八幡(やはた)と言います。よろしくお願いしますね。」

由比ヶ浜 「よ、よろしくお願いします」

雪ノ下 「姉さん。なんで由比ヶ浜さんのことを知っているのかしら」

陽乃 「私は雪乃ちゃんのことならな~んでも知ってるんだよ?例えばこれから最上階にあるバーでバイトしてる女の子のところに行こうとしてる、とかね!」

 

雪ノ下と由比ヶ浜の顔が驚愕に変わる

 

雪ノ下 「何で姉さんがそれを!?」

陽乃 「さっき言ったじゃん!雪乃ちゃんのことなら何でも知ってるって。…というのは冗談で、今雪乃ちゃんが教えてくれたんだよ。」

雪ノ下 「カマかけたっていうの!?」

陽乃 「そうだね!」

八幡 「少しいいですか?女性の店員なんて今日いましたっけ?」

雪ノ下 「どういうことですか!?桐ケ谷さん。」

八幡 「僕たちけっこう長い時間居たんですが女性の店員なんて今日は見ませんでしたよ」

雪ノ下 「本当ですか!?」

八幡 「ええ。ですよね、陽乃さん?」

陽乃 「そうだね。それに私としては妹が非行に走ろうとしてるのを黙ってみてるわけにはいかないんだよね。もしこのまま行こうとするなら私はお母さんに相談するよ。」

雪ノ下 「…ごめんなさい、由比ヶ浜さん。今日は帰りましょう。」

由比ヶ浜 「う、うん」

陽乃 「ごめんね、八幡君。私は雪乃ちゃんがしっかり家まで帰るか見届けないとだから雪乃ちゃんたちと行くね」

八幡 「わかりました。お気をつけて」

陽乃 「うん。またね八幡君」

 

陽乃さんが二人を連れてホテルから出て行く。三人の姿が見えなくなった瞬間、俺は顔に張り付けていた笑顔を解いた。

 

八幡 「疲れた…」

 

それから、疲れた体を引きずって家に帰った。

 



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職場見学3

今回今放送中のアニメからあるキャラが登場します
じゃあどうぞ


職場見学の日の朝、自分の職場に職場見学をしなきゃならない俺はいつもよりテンションが高かった。なぜかって?そりゃあ、休むからだよ。ほんとに何が悲しくて自分の職場を見学しに行かなきゃならないんだよ。そんなわけで今日は休みます!なにがあろうと絶対休んでやる!…これってただのフラグじゃね?

 

小町 「あ、お兄ちゃんおはよ!」

 

リビングに入ろうとすると横の洗面所から出てきた小町と遭遇した。

 

八幡 「おう、おはよう小町。今日俺なんか熱っぽいから学校休むわ」

小町 「そうなの?けど――

 

小町の言葉は遮られた。

 

楓子 「あらそうなのですか?ハチさん?」

八幡 「…」

 

小町の言葉は楓子さんによって遮られた。当然現れた楓子さんに俺は思考が停止した。再起動には数秒かかった。

 

八幡 「えーと、楓子さんは何でここに?」

楓子 「ハチさんが今日の職場見学をさぼらないように見張- いえ、たまたま早く起きたので散歩がてら来ただけですよ?」

八幡 「…そこまで言ったならもう言い直さなくていいです」

楓子 「で、さっきはなんて言ったのですか?聞こえなかったのですが」

八幡 「熱っぽ—

楓子 「え?」

八幡 「熱—

楓子 「え?」

八幡 「…今日の職場見学は楽しみだなー」

 

思いっきり棒読みになってしまった。

 

小町 「楓子さん、兄をよろしくお願いします。」

楓子 「任されました。いってらっしゃい小町さん。」

小町 「行ってきます!楓子さん!あ、そうそうお兄ちゃん、お菓子の人と会えてよかったね」

八幡 「お菓子の人?」

 

お菓子の人…そんな人に心当たりはない。

 

小町 「結衣さんだよ。」

八幡 「由比ヶ浜?あいつからは食物兵器しかもらった覚えないぞ?」

小町 「食物兵器?たぶんそれじゃなくてお兄ちゃんが入院してる時の話だよ!」

八幡 「俺、あいつと入院してる時に接点なんてあったか?」

小町 「あれお兄ちゃん知らないの?学校であった時にお礼言うって言ってたんだけどな…まあいいや。お兄ちゃんが助けた犬の飼い主さんが結衣さんなの」

八幡 「は?」

楓子 「お話し中ですが小町さん、時間は大丈夫なのですか?」

小町 「あ…行ってきます!」

 

それから小町は走って学校に向かっていった。

 

楓子 「ハチさんもそろそろご飯食べないと遅刻しますよ」

八幡 「そうですね」

 

俺は考えるもそこそこにメシを食べ、制服に着替え、行きたくない学校に楓子さんと一緒に向かった。ちなみに俺がメシ食べてる間、楓子さんは俺の部屋から持ってきたラノベを読んでましたまる

 

 

ボーダー本部・大広間。

ここに職場見学のため総武高の二年生がそろっていた。さっきまでざわざわしていたが嵐山隊が登場しさっきまでのざわざわが歓声に変わる。それから静かになった頃合いを見計らい、嵐山さんが話し始めた。

 

嵐山 「総武高生のみんな、こんにちは!今日は俺たち嵐山隊が君たちの職場見学の案内をさせてもらう!よろしく頼む!」

 

嵐山さんのさわやかスマイルで歓声がさっきの三倍の大きさになる。嵐山さんはよくあのさわやかスマイルをずっと続けていられるな。この前、川崎の件で行ったホテルで雪ノ下と由比ヶ浜相手に別人としてあのスマイルを真似してみたがたぶんあれ以上は続けていられなかっただろう。

 

戸塚 「やっぱ嵐山さんってかっこいいね!ね、八幡!」

八幡 「ああ、そうだな戸塚」

 

俺の隣にいる戸塚がそう言った。確かに嵐山さんはかっこいい。少なくとも葉山が目じゃないくらいには。やべぇ、そう考えると葉山ってすげー劣化した嵐山さんって感じだな。そんなことを考えている間に嵐山さんは話を進める

 

嵐山 「初めにボーダーの忍田本部長から挨拶だ」

 

忍田さんが壇上に現れ挨拶する

 

忍田 「私がボーダー本部長の忍田だ。今日は来てくれてありがとう。今回の職場見学を通して君たちにボーダーについてより深く知ってもらおうと思っている。わからないことは嵐山隊や総武高のボーダー隊員に聞いてくれ。ではこれで私の挨拶を終わる。」

 

忍田さんの挨拶が終わり、嵐山さんが進める

 

嵐山 「次はボーダーという職種についてだ。―――以上で説明を終わる。最後に今日の予定について説明しよう。これから君たちには訓練室でネイバーとの戦闘訓練をしてもらう。その次に食堂で昼食をとり、午後の時間になったらランク戦ブースというところに行く。それで今日の見学は終わりとなる。最後にはスペシャルイベントを用意してあるので期待しててくれ!それじゃあ移動するぞ」

 

嵐山さんはそう締めくくり、移動を開始する。

 

 

俺は今、スナイパーの訓練場にいる。総武高生が訓練室に移動しているときに、嵐山隊のスナイパーの佐鳥と一人の男子生徒が別の道に曲がったのが見えた。気になった俺は戸塚にトイレに行くと言い、その二人を追いかけた。その二人が向かったのはスナイパーの訓練場。どうやら男子生徒はスナイパーの訓練をするみたいだ。男子生徒がトリガーを起動させる。

 

佐鳥 「じゃあここから100m離れたところに的が出るから、それを撃ってね。5発撃つごとに少しずつ距離が離れるから注意してね」

 

男子生徒はうなずき、狙撃を開始した

 

狙撃が終わり、的が近づいてくる。俺は後ろの壁に寄りかかっていたので、的が近づくのに合わせて的を見るために近づく。的を見て

 

八幡 「うまいな」

 

自然とそうつぶやいていた。弾のほとんどは中心部の近くにあった。俺のつぶやきに反応して二人が振り向く

 

佐鳥 「比企谷先輩じゃないですか!」

八幡 「うるさい。黙れ佐鳥」

佐鳥 「ひどいですよ、比企谷先輩!」

男子生徒 「えっと、二人は知り合いってことでいいのか?比企谷」

八幡 「ん?なんで俺の名前知ってんだ?」

男子生徒 「…お前クラスに興味なさそうだもんな。同じクラスの千種霞だ」

八幡 「そうか。よろしく千種。で、俺と佐鳥は別に知り合いじゃないぞ」

霞 「いやいや、学校でいつも寝ているお前に初対面の人とあんなやり取りできるほどのコミュ力あるとは思えないんだけど」

八幡 「…確かに否定はできないな。」

 

否定したいのに言ってることが正しすぎて否定できない

 

佐鳥 「というか、そろそろ学校でもばらしたらどうです?ボーダー隊員だって」

霞 「ああ、やっぱりそうなのね」

八幡 「佐鳥、職場見学終わったらランク戦しようぜ!もちろん100本な」

佐鳥 「中島君のノリで言わないでくださいよ!というか俺、スナイパーなんすけど」

八幡 「なんか言ったか?」

佐鳥 「俺、スナイ

八幡 「ん?」

佐鳥 「お

八幡 「ん?」

佐鳥 「サーイエッサー!」

霞 「漫才してないでそろそろ戻んない?」

 

千種があきれながら提案する

 

佐鳥 「そうっすね。そろそろ戻りましょうか」

 

千種の提案に佐鳥が乗っかり、歩き出す。逃げさせはしない

 

佐鳥 「ほら比企谷先輩も戻りますよ!」

八幡 「ああ。佐鳥、希望の死に方とか考えておけよ。なるべく希望に沿ってやるからさ」

 

佐鳥は顔面を蒼白にさせながら先頭を歩いた。

 



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職場見学4

俺と佐鳥、千種が訓練室に着くと、すでに戦闘訓練開始されていた。各クラスから10人の生徒が選ばれ、A組から順番にやっており、今はE組だ。訓練の最短タイムは40秒で千種明日葉という生徒だった。2位以降は1分を下回っていた。

 

八幡 「佐鳥、嵐山さんに報告してこいよ。それから職場見学中はもう近づいてくるなよ」

佐鳥 「失礼します、比企谷先輩、千種先輩」

 

佐鳥が嵐山さんに報告に行く。ちょうどE組の最後の生徒が終わった最後の人のタイムは3分28秒。次はF組の番だ

 

八幡 「千種、うちのクラスからは誰が出るんだ?」

千種 「確か…うちの一番うるさいグループの葉山、三浦、由比ヶ浜に、川…川何とかさん、あとはモブだ。」

八幡 「読者にいらない情報は与えない雑で簡潔な説明だったな」

千種 「比企谷、読者とかメタい」

八幡 「ほっとけ」

 

F組の訓練が始まる。最初はモブ三人と由比ヶ浜、三浦だ。由比ヶ浜は…バイパーか?弾道設定がなかなかできないのか変な方向に飛んで行ってた。三浦はスコーピオンを使っていた。千種と並んで見ているとひとりの女子生徒が近づいてきた。

 

女子生徒 「お兄、スナイパーの方どうだった?」

霞 「普通だった」

女子生徒 「そうなんだ。こっちは結構面白かったよ。それで隣の人は?」

霞 「比企谷。クラスメートだ。」

女子生徒 「千種明日葉。よろしく。」

 

千種のことをお兄と呼び仲よさそうにしゃべっていた女子生徒は千種明日葉と名乗った。同じ苗字ってことは

 

八幡 「比企谷八幡だ。お前らって双子なのか?」

千種 「いやただの兄妹だ。俺が4月で明日葉が3月だからな。」

八幡 「そうか。それで千種妹。あのランキングの一位はお前で合ってるか?」

明日葉 「合ってるけど…千種妹って…普通に明日葉でいいじゃん」

八幡 「俺は誇り高きプロボッチだぞ。女子を名前呼びなんてできるわけないだろ。それよりトリガーなに使ったんだ?」

明日葉 「それよりって…使ったトリガーは拳銃型のア…アス…」

霞 「アステロイド?」

明日葉 「そうそれ!比企谷なんでそんなこと聞くの?」

八幡 「気になっただけだ。」

 

千種妹が俺をじろじろ見てくる。なに俺のこと好きなの?そんなことを考えていると千種が俺をにらんでくる

 

八幡 「千種妹。俺をじろじろ見てるけどなんかついてるのか?」

明日葉 「いやなんか、お兄と同じにおいがする気がするんだよね」

八幡 「ちなみにどんなにおい?」

明日葉 「シスコンのにおい」

八幡 「…」

 

そうこうしているとF組の一組目が終わり、二組目が訓練室に入っていった。一組目で一番早いのは三浦でギリギリ一分をきり、56秒。それからモブ三人と続いて最後に由比ヶ浜で3分47秒。最初の様子から察するにたまたま当たっただけだろうな。というか、初心者にバイパー使わせんなよ。

 

明日葉 「あ、負けた…」

 

千種妹のつぶやきでモニターを見ると葉山が終わって36秒だった。続いて川…川…川島?が40秒で終わった。川野?はこのタイムならボーダーでも問題ないだろう。川崎?…川崎は訓練室から出ると、まっすぐこちらに向かってきた。

 

川崎 「比企谷ちょっといい?」

八幡 「ああ。」

 

俺が返事をすると川崎は訓練室の人がいないところに歩いて行く

 

川崎 「あたしのタイムってどうなの?」

八幡 「ボーダーでは初めてで1分きれればいいほうだな」

川崎 「そっか…比企谷あたしボーダーに入るよ」

八幡 「家族と相談したのか?」

川崎 「多少しぶったけど、オーケーしてくれたよ」

八幡 「なら俺が言うことは何もない」

川崎 「それでさ、ボーダーに入ったらあたしの師匠になってくんない?」

八幡 「断る。俺はまだ人に教えられるほど強くない」

川崎 「わかった。これからはボーダーでもよろしくね」

八幡 「おう。とりあえず戻るぞ。二人でいるとこ見られると面倒だからな」

 

今はまだ葉山が最高タイムを出したことでそっちに視線が集まっているが、そろそろ次の組が始まるからな。千種兄妹がいたとこまで戻ろうとして振り向くと、後ろには千種兄妹がいた

 

明日葉 「比企谷ってボーダーだったんだね」

八幡 「お前ら何でここいんだよ」

明日葉 「別についてくるなとは言われなかったし」

八幡 「いやいや普通わかるでしょ」

明日葉 「それより、そこの川崎さんと同じタイムの私も優秀ってことでいいんだよね」

八幡 「優秀とまでは言ってないが、いい方ではあるな」

明日葉 「じゃああたしもボーダー入ろっと」

八・霞・川 「「「は!?」」」

 

千種妹の発言に俺たちの声がそろった。

 

明日葉 「なんでみんな声そろってんの?ウケる」

八幡・霞 「「いやウケないから」」

 

またも千種と被った。

 

川崎 「ちょっとあんたこんな大事なこと家族に相談もしないで決めていいの?」

明日葉 「お兄いいよね?」

霞 「明日葉ちゃん、言い出したら聞かないでしょ」

明日葉 「ほら」

川崎 「親と―

明日葉 「親はもういないし」

川崎 「ごめん。」

明日葉 「いいよ。別に気にしてないし。お兄はどうする?」

霞 「明日葉ちゃん一人で危険なことさせるわけにはいかないでしょ」

明日葉 「というわけで、比企谷。ボーダーに入るにはどうしたらいいの?」

八幡 「ボーダーのホームページを見ろ。やり方は全部書いてある」

明日葉 「お兄。じゃああたしは友達のとこ戻るから。じゃね~」

 

千種妹が去っていく。

 

八幡 「…千種おまえも大変だな」

霞 「わかってくれるか比企谷…」

 

俺と千種は手を固く握った。そんな俺たちを川崎は温かい目で見ていた。

 

霞 「まあ明日葉ちゃんが世界一かわいいからいいんだけどね」

 

その一言をきっかけに握った手を離す。

 

八幡 「一つ訂正があるぞ千種。世界一かわいいのは俺の妹だ。」

霞 「…」

八幡 「…」

霞 「明日葉が」

八幡 「小町が」

霞・八幡 「「一番かわいい!」」

 

それから俺たちはにらみ合う。そこに川崎が割って入ってきた。

 

川崎 「ちょっと待ちなあんたら。一番かわいいのはうちの京華だよ。」

 

ここで第三勢力、裸エプロン同盟…違った。川崎が入り三つ巴の攻防戦が繰り広げられた。実際にはそれからしばらく三人でにらみ合っていただけだけど。

 

 

 

 

のちにこの光景を見ていた者はこう語った

「あそこだけなんか気温が違ったんですよね。少し遠くで見ていたんですけどこっちまで寒くなってきました。ちょうどその時葉山君がすごい早いタイムを出していて片方では歓声や何やらですごい気温が上がっていたのに三人の方に意識を向けると気温が下がっているんですよね。三人がただにらみ合っていただけなのに周りにすごいプレッシャーを与えていて。まるで熟練の剣士が三人でにらみ合っていてほかの二人の様子を伺いつつ、いつ誰に仕掛けるのか探っている。そんなふうにも見えましたね。ええ。私のほかにも何人か見ている人がいたんですが誰も間に入って止めようとはせずに、ひたすらに身を小さくして目の前にある大きな脅威が過ぎ去るのを待つ。そんな感じでしたね。三人から伝わってくるプレッシャーがすごくて見ていた人は内心で早く終わってほしい。そう思っていたと思いますね。ええ。三人がにらみ合いをやめたときは生きてるってことに心から安堵しましたよ。私はもう二度とあんな現場には遭遇したくないですね。そういえば、三人がにらみ合っていた時に嵐山さんが何か言いたそうな顔で三人を見ていたんですよね。なぜだったんでしょうか…」

 




なんとなく作者は第三勢力と聞くと、某めだかの箱の裸エプロン同盟を思い出します。
ずっと載せようと思っていて忘れていたボーダー所属の総武高生の表を載せておきたいと思います

総武高ボーダー隊員
3年…荒船・犬飼・城廻・倉崎
2年…比企谷・那須・熊谷・奈良坂・仁礼
1年…菊地原・歌川・鳥丸

こんな感じになっています。もしかしたら変更するかもしれませんが現状はこんな感じです


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職場体験5

検定とかがあるため次回更新は遅くなります


あれから三人で特に会話もなくモニターを見ていた。今はJ組の二組がやっている。そしてそのJ組の二組目には雪ノ下が出ていた。訓練が始まり、雪ノ下が動く。手には弧月を持っていて、前までやっていた人たちで目が弱点と分かったのか目を目指して進んでいく。そして目をつぶし擬似ネイバーを倒す。記録は26秒。総武高のメンツでは一位だった。雪ノ下が1号室から出てくると葉山の時以上の歓声が上がる。それから嵐山さんが近づき声をかける。

 

嵐山 「君すごいじゃないか!ボーダーでもなかなかいないタイムだぞ!」

雪ノ下 「ありがとうございます。でもボーダーにはもっと早い人もいますよね?その人は何秒ですか?」

嵐山 「ボーダーで一番早いのは四秒だ。その次がうちの隊の木虎で九秒だな」

雪ノ下 「私の六分の一…そうですか。ありがとうございます。失礼します。」

 

雪ノ下がJ組の生徒が多数いる場所に歩いて行く。その途中で目ざとく俺を見つけてどや顔をしてきたが俺は華麗にスルーした。

 

嵐山 「では最後に総武高二年ボーダー隊員の代表者に同じ戦闘訓練と今後ボーダーで実装予定の新しい訓練をしてもらおうと思う。」

 

あれ?嫌な予感がする。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。俺のサイドエフェクトそういう系統じゃないけど…

 

嵐山 「それじゃあ比企谷!前に出てきてくれ!」

 

嵐山さんが俺の名前を口にした瞬間、逃走を開始。もうすぐ訓練室から出れそうだった時聞きなれた二つの声が聞こえてきた。

 

謡 「嵐山さんそれじゃあだめなのです」

楓子 「そうですよ。ハチさんを呼ぶにはこうしないと…ハチさーんあと十秒で出てこなければ次の修行はハードモードになりますよー。はーい、10、9 ―

 

カウントダウンが聞こえた瞬間に俺の体は宙を舞い、楓子さんの前でスライディング土下座をする。

 

八幡 「申し訳ッございませんでしたァァァァァァァァ!!」

楓子 「お早いお着きですねハチさん。そんなに私との修業がお嫌ですか?」

八幡 「いえそんな滅相もございません。ただハードモードというのは少しばかり私が死にかけますゆえぜひとも遠慮していただきたいのですが…」

楓子 「そうですね。考えておきます。嵐山さんあとはお願いします」

嵐山 「あ、ああ。とりあえず頭をあげてくれ比企谷。」

 

俺は土下座をやめ頭をあげる。まず目に入ってきたのは身長的な問題で謡の呆れた顔。その次に楓子さんの生き生きとした笑顔。最後に嵐山さんの少し引き攣った笑いだった。

 

嵐山 「比企谷お前にはプライドというものがないのか」

八幡 「命の危…んん!謝るときに捨てられないプライドなんて持ってないです。もしよかったら嵐山さんも楓子さんのハードモードの修行受けてみます?修業が終わったら生きてることに心から安堵しますよ」

嵐山 「…いや遠慮しておくぞ…」

 

嵐山さんに拒否された。そのとき訓練室の中がざわざわしていることに気付き耳を澄ましてみると

 

「あんな奴がボーダー!?」

「目が腐ってるのに!?」

「あいつ倉崎先輩と仲がよさそうだぞ!これは親衛隊に報告しなければ!」

「隣の小学生は?」

「あら×はちキタ!」

明日葉 「土下座とかマジウケる」

 

などなどいろいろ聞こえてきた。楓子さんって学校に親衛隊なんているのかよ…そして千種妹笑ってんじゃねーよ

 

嵐山 「気を取り直して、比企谷お前にはさっき言ったように戦闘訓練と新しい訓練を受けてもらう。」

八幡 「新しい訓練ってスカッシュですよね」

嵐山 「なんだ知っていたのか比企谷。もともとお前達がやっていたものだしルールの説明はいらないよな」

八幡 「はい。トリガーは自分のものでいいですよね」

嵐山 「ああ。戦闘訓練が終わったらすぐにステージが移行するから中で待っててくれ。それじゃあ頼んだぞ」

八幡 「了解です。トリガー起動(オン)」

 

それから俺は一号室に入った

 

 

 

アナウンス 『一号室訓練開始』

 

俺はアナウンスと同時に弧月を抜きつつ

 

八幡 「旋空弧月」

 

旋空を使い目を切り裂いた。

 

アナウンス 『訓練終了。記録0.5秒。続いてスカッシュモードに移行します。』

 

俺の持っていた弧月がラケットに変わり壁には凹凸が現れる。それから俺から見て右上からボールが飛んできた。最初の速度はアイビスと同じ速度。余裕を持て打ち返すとそのボールは壁の凹凸で反射する。正面の壁から天井へ。天井から左の壁へ。それから俺に襲い掛かってくる。ステップで少し立ち位置をずらし返す。またいろんなところで反射し、今度は右斜め上から。それも同じように返し10球ぐらい返すとよくゲームのレベルアップであるようなファンファーレが鳴り響く。これはボールの速度が上がる合図だ。次の速度はイーグレット。それもさっきまでと同じように返していく。10球ぐらい返したところで再びファンファーレ。次はライトニングの速さになった。それでもひたすら返していく。さらにファンファーレが鳴り、次はライトニングの速さのボールとアイビスの速さのボールの二つになる。それからボールの速度が速くなるにつれ俺の思考は徐々に消えていき、ただボールを打ち返す。それだけの機械になっていた。

 

 

アナウンス 「訓練終了 レベル142」

 

あれからしばらくして失敗した。これを最後にした時と比べて10もレベルが下がっていた。一号室から出ると、楓子さんと謡以外の驚いた顔が目に入った。

 

楓子 「ハチさんレベル下がりすぎです。一番してた時期と比べて10もレベルが下がってますよ」

八幡 「久しぶりだったんでこれが限界っす」

謡 「嵐山さん次の進行を」

 

俺と楓子さんがしゃべっている間に謡が嵐山さんに進めるように促してくれていた。

 

嵐山 「そうだな。A級1位部隊の隊長ともなればこれくらいのこともできるようになる」

 

嵐山さんの発言でまたざわついた。曰く

 

「あんなのがA級一位だと…」

「目が腐ってんのに」

 

などなど。さっきから目が腐ってんのは関係ないだろ

 

嵐山 「これで午前の見学は終わりだ。午後の見学は一時から。それまではこれから案内する食堂にいてくれ。わかっているとは思うが立ち入り禁止の場所には入らないように!それじゃあ移動するぞ!」

 

最後尾で移動していると、戸塚が前からやってきた。

 

戸塚 「八幡!八幡ってボーダーだったんだね!」

八幡 「黙ってて悪かったな」

戸塚 「ううん。全然大丈夫だよ!八幡の知らなかったことを知れて僕うれしいよ!」

 

そう笑顔で言う戸塚。やばい。守りたいこの笑顔

 

謡 「戸塚さん、こんにちはなのです!」

戸塚 「謡ちゃん!こんにちは!何で謡ちゃんが?」

謡 「私もボーダー隊員なのです!」

戸塚 「え!謡ちゃんもなの!?じゃあこの前言ってたのは?」

八幡 「悪い。あれは嘘なんだ。あの時はまだボーダーだってばれたくなかったからな。」

戸塚 「そうなんだ。もしかして謡ちゃんは八幡のチームに?あと倉崎先輩もそうなんですか?」

楓子 「あら私を知っているのですか。えーと…」

戸塚 「あ、戸塚彩加です」

楓子 「よろしくお願いしますね、戸塚さん。戸塚さんが言った通り私も謡も比企谷隊のメンバーですよ。ハチさんどこでこんなかわいい女の子と知り合ったのですか?」

八幡 「…楓子さん、戸塚は男ですよ」

楓子 「え…」

戸塚 「僕、男の子です…」

 

楓子さんが戸塚の顔をじっくり見る

 

楓子 「すいませんでした。女の子に見えてしまって。それで戸塚さんとハチさんはどこで?」

八幡 「戸塚はテニス部なんですけど前に練習を手伝ってくれって頼まれたんです」

戸塚 「体育の授業で八幡の壁打ちがすごく上手だったので頼んだんです。八幡がテニス上手なのってさっきのスカッシュのおかげなの?」

八幡 「たぶんな。楓子さんは俺の師匠なんだけどその時にあれをやらされてな。たぶんそのおかげだ。」

戸塚 「そうなんだ。さっきは本当にすごかったよ!すごい速さのボールが二つで、しかもどこに反射するかわからないのに、それでも返していて!」

楓子 「全盛期はもっとできてたはずなんですけどね。」

謡 「そうですね。戸塚さんあれってもう少し続けるとボールが三つになるんですよ」

戸塚 「ほんとなの!?八幡は三個でも続けられるの?」

八幡 「いや全盛期のときでも三個になったらすぐに終わったな。」

戸塚 「そういえば八幡の隊って八幡と楓子さんと謡ちゃんの三人だけなの?」

八幡 「いや違うぞ。あと戦闘員が一人とオペレーターが一人いるぞ」

戸塚 「え!そうなの?僕はてっきり謡ちゃんがオペレーターなのかと思っていたけど…じゃあ謡ちゃんはなに使っているの?」

謡 「私のトリガーは天弓って言って私の一点ものトリガーなのです!」

 

そんなことを話していると食堂に着いた。

 

 

食堂では総武高生でほとんどの席が埋まっていた。空いている場所がないかと探していると、嵐山さんが近づいてきた

 

嵐山 「比企谷、食堂の席が足りなさそうだからお前達は比企谷隊の作戦室で食べてくれないか?」

 

と言ったので、俺たちはそれを了承し、戸塚と別れ、俺、楓子さん、謡となぜかついてきた材木座の四人で比企谷隊の作戦室で昼食を食べ、また食堂に戻った。

 



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職場見学6

検定は終わったんですがテストがあるのでまた更新が遅れます


俺と楓子さんと謡と材木座の四人で比企谷隊の作戦室で昼食を食べて食堂に戻ると、テニスコート侵略事件の主犯三…さん…縦ロールと那須と熊谷がにらみ合っていた。

…なにこれ。

近くにいた奈良坂に事情を聴いてみると

 

奈良坂 「あのバカがお前がずるしただの言い出して那須と熊谷がキレた」

八幡 「そうか」

 

奈良坂から事情を聴いた俺は那須と熊谷に声をかける

 

八幡 「那須、熊谷お前らが怒る必要ないぞ。俺がボーダーから抗議すればいいだけだからな」

三浦 「あんたボーダーに頼って恥ずかしくないわけ?」

 

縦ロールはアレで煽っているつもりなのだろうか?

 

八幡 「別に何とも思わないな。せっかく使える手札があるんだ。使わなきゃ損だろ」

三浦 「あんたせこい手を使ってA級一位になったんでしょ。あんたもあんたのチームメイトもくずだね」

 

今の言葉を聞いた瞬間俺の中で何かがはじけた。俺は素早くトリガーを起動し弧月を出し縦ロールの首に当てる。俺から見て縦ロールの右には頭めがけて弓を引き絞っている謡と左にはイーグレットを縦ロールの頭に押し当てている楓子さんがいる。二人とも殺気が全開だ。

 

八幡 「口を閉じろよ雑魚が。」

 

縦ロールの首に弧月を当てながら続ける

 

八幡 「別に俺はな俺自身を馬鹿にされることはいいんだ、慣れてるからな。けどな…俺のチームメイトやボーダーの仲間を馬鹿にするのは許さねぇ。もしまたするようなら…殺すぜ」

 

殺すのところで俺も殺気を出す。言い終わると俺は弧月を縦ロールの首から離した。楓子さんと謡はまだ縦ロールに武器を当てたままだ。

 

楓子 「さっきハチさんは自分のことは馬鹿にされてもいいと言いましたけど私たちの隊長を馬鹿にするならそれ相応の覚悟をもってくださいね」

 

楓子さんと謡が武器を下ろす。それと同時に縦ロールは崩れるようにしりもちをついた。周りを見ると近くにいたやつらのほとんどが地面に座り込んでいた。…覇王色の覇気使うとこんな感じなのかな…

ちょうどそのとき、自隊の作戦室で昼食を食べていた嵐山さんたちが戻ってきた

 

嵐山 「…なんだこの状況は…」

 

この状況を見て嵐山さんはこうつぶやいた。それから嵐山さんに事情を説明する。

 

嵐山 「そうか…相手に非があるとはいえさすがにやりすぎだ。たぶん罰が与えられると思うがお前達が怒った理由も理解できるから俺から上の人には軽くしてもらえるように頼んでおく。」

八幡 「迷惑かけてすいません」

嵐山 「気にするな。この話はもう終わりだ。さあ職場見学に戻るぞ」

 

周りを見てみると座っていたやつらも立ち上がっていた。

 

嵐山 「いろいろあったみたいだが職場見学の続きをするぞ!午後の案内はランク戦のブースからだ!それじゃあついてきてくれ!」

 

嵐山さんはみんなを先導して歩いて行った。

 

 

 

ランク戦ブースに着くと嵐山さんが使い方を説明する。擬似ネイバーとの戦闘訓練の時は部屋数と時間の関係で一部の生徒しか体験できなかったが、今回は部屋数が多いので交代しながらなら全員が体験することができる

 

嵐山 「最後にここではチーム戦もすることができるが操作が難しいためチーム戦がしたいときには近くにいるボーダー隊員に声をかけてくれ!以上だ。始めてくれ!」

 

まず各クラスのトップカーストの連中がランク戦ブースに我先にと入っていった。それからところどころ空いているところにカーストの低いやつが入っていって、すぐにブースが埋まった。ボーダー勢は嵐山さんの説明で分からなかったやつに教えていて忙しそうにしていた。…俺?俺は見てる。誰も話しかけてこないし…別に寂しくねーし!

 

それからしばらくしてブースに空きが出始めた時に俺は声をかけられた。

 

明日葉 「比企谷チーム戦のやり方教えて」

八幡 「面倒だから他を当たれ」

明日葉 「倉崎先輩、めっちゃ見てるけどいいの?」

 

楓子さんの方を見ると、めっさ笑顔でこちらを見ていた。目が合うと楓子さんの口が動く。「は・た・ら・け」と…

 

八幡 「よし千種妹!チーム戦だったな!お前のチームは何人だ!」

明日葉 「あたし、お兄、川崎さんの三人」

八幡 「相手のチームは!」

明日葉 「一人」

八幡 「…は?お前らの相手って誰だ?」

明日葉 「比企谷」

八幡 「…俺はアレがアレでアレだから無理だ。」

川崎 「あれって具体的に何?」

八幡 「え~とほら使い方わかんないやつに教えたりとか」

霞 「お前さっきまでボーっとしてたろ。それに嵐山さんと倉崎先輩の許可はもう取った」

 

楓子さんを見る。今度は笑顔でうなずかれた。

 

八幡 「はぁ…何本勝負だ?」

明日葉 「三本でいいよね?」

霞 「いんじゃねーの」

川崎 「そうだね」

明日葉 「じゃあ三本で」

八幡 「わかった。まずはチーム戦の仕方だけ説明するぞ」

 

それからチーム戦の仕方を説明し、俺もブースに入った。ブースに入るとすぐに転送された。

 

***

 

川崎と剣を打ち合わせながら千種の狙撃を警戒する。千種妹は転送位置が悪く転送直後に俺が殺した。

今は千種の居場所を特定するために隙を見せつつ川崎の相手をする。しばらく川崎と剣を打ち合わせていると右斜め後ろから狙撃が飛んでくる。それを頭をずらして躱し、川崎にとどめを刺す

打ち合っていた剣を剣の腹でそらし、少し体勢が崩れたところで横腹に蹴りを入れ、完璧に体勢を崩してから首を飛ばす。それから、狙撃が来た方向を頼りに千種を探した。

 

***

 

アナウンス 『模擬戦終了 3対0 勝者 比企谷八幡』

 

ブースから出ると対戦した三人が寄ってきた。

 

霞 「比企谷、お前弧月以外使ってないだろ」

八幡 「あっ、バレた?」

川崎 「え、ほんとなの?」

八幡 「三人とはいえ素人相手にトリガー何個も使うなんてさすがにアレだからな」

明日葉 「くーつーじょーく!!…よし決めた!お兄、川崎さんボーダー入ったらチーム組もっ!」

川崎 「そうだね。このまま負けたままってのも気に食わないし」

霞 「まあまずはボーダーに入れるかってことだけどな」

明日葉 「お兄盛り上がっているときにそういうこと言わないでよ。だからごみぃなんだよ」

霞 「いやいや現実見ることちょー大事でしょ。なんなら現実見えすぎて現実に絶望するまであるぞ」

八幡 「まあ落ち着けよ。千種妹と川崎は戦闘訓練のタイムもあるしたぶん落ちることはないだろう。千種はまあ…がんばれ」

霞 「わ~お。世間が俺に冷たいです。」

明日葉 「あはは!お兄マジウケる。これからよろしくね川崎さん」

川崎 「沙希でいいよ。」

明日葉 「ならあたしのことも明日葉でいいよ。じゃあ改めてよろしくね沙希」

川崎 「よろしく明日葉」

 

女子二人がなんかいい感じになった。これを見て俺は

 

八幡 「…若いっていいな」

霞 「お前も同じ年でしょ」

 

俺のつぶやきは千種にツッコまれた。

 

雪ノ下 「ちょっといいかしら」

 

後ろから雪ノ下に声をかけられ、俺と千種が振り向く

 

八幡 「なんだよ」

雪ノ下 「私とも模擬戦しなさい」

八幡 「だってさ千種」

霞 「いや比企谷でしょ」

八幡 「ここには俺と千種がいる。雪ノ下は誰と模擬戦したいとしっかり言ってないからな」

雪ノ下 「屁理屈言わないで頂戴。私はあなたに模擬戦をしなさいと言ったのよ。屁理屈谷君。」

八幡 「千種。ここに屁理屈谷なんて変わった名前の奴いるか?」

霞 「いや、いないな」

雪ノ下 「貴方たちは私を怒らせたいのかしら」

霞 「怒らせる?そりゃ無理だな。お前が勝手に一人で怒るだけだろ」

八幡 「千種お前のどこのアロハシャツのおっさんだよ…」

雪ノ下 「千種君貴方はさっきから何なのかしら。あなたの隣にいる腐った人と同様にあなたも腐っているのかしら」

霞 「さすが戦闘訓練一位さん。一般人とは違った狭い心をお持ちなようで」

雪ノ下 「いいわ。比企谷君と戦う前にあなたから相手をするわ。」

霞 「…ぼく、弱い者いじめはよくないと思いまーす。というわけで比企谷あとよろしく」

八幡 「千種…雪ノ下、お前は嵐山さんの許可は取ったのかよ」

雪ノ下 「さっき千種君たちと戦っていたのだから問題ないでしょう?」

八幡 「問題しかねえよ。さっき嵐山さんが出したのは千種たちと戦う許可だ。お前と戦う許可じゃねえ。俺と戦いたいなら許可取ってからにしろよ」

雪ノ下 「貴方そう言ってもうすぐ時間なのをいい事に逃げる気なのでしょう」

八幡 「そういうことじゃねえよ。正式な手順を踏めって言ってんだよ。」

 

と、そこで陽乃さんの声がした

 

陽乃 「受けてあげなよ八幡。嵐山君の許可は私が取るからさ」

雪ノ下 「姉さん…」

八幡 「陽乃さん。…もしかしてめぐりさんもこっちに来てたりします?」

陽乃 「もうすぐ来ると思うよ!」

八幡 「なにがあるんすかこれから…」

陽乃 「まだ内緒だよ!それより早く雪乃ちゃんと戦って、格の違いを見せてあげて」

八幡 「はぁ…了解です。ほら早くやるぞ。時間もないし、1本勝負だ」

 

そう言い、ブースに入った。

 

 

ステージに転送される。しばらくその場にとどまっていると雪ノ下が馬鹿正直に正面から斬りかかってきた。

 

八幡 「おせぇ」

 

ボーダーの猛者と戦ってきた俺からしたら雪ノ下の剣速はそれこそ蚊が止まって見えるほど遅かった。俺はその攻撃を片手で弧月を握って止めた(・・・・・・・・・・・・)。そのまま雪ノ下の首を斬る。

 

アナウンス 『雪ノ下 緊急脱出(ベイルアウト) 勝者 比企谷八幡』

 

ブースから出ると陽乃さんと雪ノ下が向かい合っていた。

 

陽乃 「これが格の違いだよ、雪乃ちゃん」

 

雪ノ下は何も言わずに陽乃さんの前からいなくなった。

 

川崎 「比企谷、雪ノ下の剣をつかんでたけどどうやったの?」

八幡 「あれは柔法って言って俺が楓子さんから教わった技だ。」

??? 「あの時は八幡君大変だったよね。いつもよりふうちゃんが痛覚の設定あげて腕が切れるごとに悲鳴あげてさ」

川崎 「比企谷大変だったんだね…って生徒会長!?」

 

途中から話に交じってきたのは総武高の生徒会長でもあり、比企谷隊のオペレーター城廻めぐりさんだ。

 

八幡 「めぐりさんお疲れ様です」

めぐり 「八幡君もお疲れ!」

 

そこで嵐山さんの声が響く

 

嵐山 「全員ブースから出たな?これでランク戦の体験は終わりだ。最後にスペシャルイベントの紹介をする!まずは比企谷隊!前に出てきてくれ!」

 

嵐山さんの言葉を聞き後ろに行こうとしていた俺は両脇を陽乃さんと楓子さん、後ろを謡とめぐりさんに囲まれ陽乃さんと楓子さんに両腕を組まされ連行された。

 

嵐山 「最後のイベントは比企谷隊VSボーダー連合のチーム戦だ。連合チームのみんなは前に出てきてくれ!」

 

総武高生のところから那須・熊谷・奈良坂。さらに出入り口方向から加古隊の加古さん・黒江。柿崎隊の柿崎さん・照屋・巴。それに仁礼と各隊のオペレーターが出てきた

 

嵐山 「今出てきたもらった戦闘員八人に加え、俺たち嵐山隊から俺と木虎と佐鳥が加わる!」

 

今までで一番総武高生がざわついた

 

***

 

八幡 「作戦は敵の数が多いんで合流優先で楓子さんが狙撃で支援する形で行きます」

陽楓謡 「「「了解!」」」

八幡 「めぐりさんはまず合流地点の選出をお願いします。」

めぐり 「了解!」

八幡 「それじゃあ今回も勝ちましょう」

陽楓謡め 「「「「うん(はい)!」」」」

 

それから謡が近くにあった椅子を近づけその椅子の上に上がり、手を前に出す。その上に楓子さん、めぐりさん、陽乃さんの順に手を重ね、最後に俺が重ね、全員が重ね終わると手を引き拳を合わせる。これは俺たちのランク戦前の儀式みたいなものだ。それからマップへの転送が開始された。

 




最後の手を合わせるやつが分かりづらかったらsao2期のopを見てください。アスナとスリーピングナイツがやってるあれです


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職場見学7

遅くなってすいません
テスト勉強の合間に書いてたのでクオリティは低いと思いますがどうぞ


ステージに転送された。ステージはランダムに選ばれた市街地A。マップとレーダーを開き、現在地と人数を確認する。表示された人数は12人。全員合わせて15人なので消えているのは三人。楓子さんと奈良坂、佐鳥だろう。俺の転送位置はステージの端の方だった

 

八幡 『めぐりさん全員の位置は?』

めぐり 『はるさんとういちゃんは北側!わりと近くてもうすぐ合流できるよ!ふうちゃんは中心あたりだね!』

八幡 『了解です。俺は南側の敵を狩りながら北に向かいます。』

めぐり 『了解!』

 

それから楓子さんに通信をつなぐ

 

八幡 『これから北で合流しようと思ってるんすけど敵の数が多そうなんで俺のフォローをお願いします』

楓子 『了解!』

 

それからすばやくバイパーとメテオラを合成しトマホークを作り、レーダーで見えた一番近い人に向けて上空からの奇襲になるように弾道を設定しトマホークを飛ばした。

トマホークを着弾地点が見える位置に移動するとそこには片足を失いところどころトリオン漏れを起こしている木虎がいた。木虎の首を飛ばすために

 

八幡 「旋空弧月」

 

旋空を使い木虎の首を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。木虎に飛ばした旋空は那須と柿崎さんのフルガードによって防がれた。そして那須はバイパーを、柿崎さんはアステロイドを俺に打ち込んできた。

 

八幡 「チッ!」

 

俺は舌打ちをしながら飛びのき那須たちの正面に立った。その時北側でふた筋の光が上がった。

 

八幡 『めぐりさん、今落ちたのは?』

めぐり 『連合のくまちゃんと双葉ちゃんだよ』

八幡 『ありがとうございます』

 

俺は柿崎さんに話しかける

 

八幡 「向こうでは二人落ちたみたいですね」

柿崎 「そうみたいだな。けどここでお前を落とせればトントンだろ?」

八幡 「落とせたら…ですけどね」

 

それから攻撃が来る前にメテオラをばらまき視界を奪ってからバイパーを5×5×5計125発を展開し木虎に向かって放つ。機動力が死んでる上に視界がない木虎は防ぎきれずにベイルアウトした。視界が開けてくると、両攻撃(フルアタック)しようとしてる那須と突撃銃を構えている柿崎さんがいた。そのまま射撃戦に入る。那須と柿崎さんの攻撃を防ぎながら楓子さんに通信をつなぎ指示を出す。

 

八幡 『狙撃ポイントに着いたら連絡してください。二人で那須と柿崎さんを殺します』

楓子 『了解です。レーダーから二人消えてますので注意してください』

八幡 『了解です』

 

楓子さんから連絡が来るまで攻撃を防ぎ続ける。那須のバイパーは同じバイパーで相殺し、柿崎さんの攻撃はシールドをはるかよけるかして防ぎ続ける。

 

楓子 『ハチさん狙撃ポイント着きました。』

八幡 『柿崎さんをお願いします。仕留めきれなくても俺が仕留めますんで』

楓子 『大丈夫ですよ。必ず仕留めますから』

八幡 『タイミングは楓子さんにお任せします』

楓子 『わかりました。3カウントでいきます。3,2,1!』

 

楓子さんの壁抜き(・・・)狙撃が柿崎さんに直撃する

 

柿崎 「なにっ!?」

 

柿崎さんは驚いた声とともにベイルアウトした。すぐにバイパーを展開し那須を狙う。那須は分が悪いと思ったのかバイパーをシールドで防ぎながら移動をし始めた。追撃をしようとバイパーとメテオラを合成させ、トマホークを放とうとする。

 

楓子 『ハチさん!後ろです!』

 

楓子さんの声で後ろを振り返ると、弧月を持った照屋がすぐ近くまで来ていて、その後ろには巴が拳銃を構えていた。普段だったらグラスホッパーを使うが、今はトマホークがあるのでグラスホッパーを使うことができない。じゃあどうするか…

 

八幡 「バーストリンク」

 

こうした。加速状態に入り、実際は少しずつ動いているが周りが止まっているように見える。トマホークを半分は照屋にもう半分を巴を狙うようにして弾道を設定し、照屋に向かう方には射程をほぼなくし弾速と威力にトリオンを振り分け、左右から狙うように設定し、巴の方は巴の周りに当たるように設定する。

 

八幡 「バーストアウト」

 

ここまで設定したら加速状態を解除する。トマホークは俺が設定したように飛んでいき、照屋はトマホークに当たりベイルアウトした。巴の方も俺が考えていた通りにトマホークが周辺の建物を破壊し視界が悪くなっていた。すぐに弧月を出し

 

八幡 「旋空弧月」

 

旋空を使いベイルアウトさせる。巴がベイルアウトしてから巴のいた場所から最後のあがきとばかりにハウンドが飛んできたがバイパーで相殺する。那須が逃げて言った方向からベイルアウトの光が見える。

 

楓子 『那須さんは落としました』

八幡 『あとは北側の加古さん、嵐山さんとスナイパー二人ですね』

 

ちょうど北側から一筋の光が上がりすぐにもう一つ光が上がる。

 

めぐり 『今加古さんと嵐山さんが落ちてあとはスナイパー二人だよ!二人ともさっきまでの位置は分かっているから八幡君とふうちゃんは近い方に向かってね!遠い方は陽さんとういちゃんがもう向かったから!』

八幡 『わかりました』

 

めぐりさんから位置情報が送られてくる。楓子さんと合流し位置情報で示されている場所に向かう。そこには予想通り誰もいなくなっていたのでスナイパーを探すためメテオラで周りの建物を破壊していく。離れて場所でも同じように建物が破壊されていく音が聞こえる。どうやら陽乃さんたちの方もいなかったようで同じ作戦をとっていた。破壊を始めてからすぐに離れた場所でベイルアウトの光が二つ上がった。

 

めぐり 『自発的にベイルアウトしたみたいだね』

八幡 『ということは』

めぐり 『うん!私たちの勝利だね!』

 

***

 

ボーダーへの職場見学が終わりバスで学校に戻った。これから防衛任務があったのでそのまま本部に残りたかったがカバンを学校に置きっぱなしだったことを思い出し、一度学校に戻った。カバンを回収し下駄箱に向かう。下駄箱のところには由比ヶ浜がいた。

 

由比ヶ浜 「あっ、ヒッキー!」

八幡 「ずっと前から言いたかったんだがそのヒッキーってのやめろ。不愉快だ」

由比ヶ浜 「え、なんで?ヒッキーはヒッキーじゃん!」

八幡 「はぁ…何のようだ」

由比ヶ浜 「みんなで優美子励ますためにカラオケ行こうってことになってヒッキーもどうかなって…それよりなんでボーダーってこと黙ってたし!」

八幡 「うるさい。お前馬鹿なの?どうしてへこませた本人を連れて行こうと思たんだよ。それにボーダーの件はどうしてお前にボーダーだって言わなきゃいけないんだよ」

由比ヶ浜 「友達に隠し事すんなし!」

八幡 「は?友達?じゃあお前は葉山にスリーサイズ聞かれたら正直に答えんのかよ。それに誰と誰が友達なんだよ?」

由比ヶ浜 「あたしとヒッキーに決まってんじゃん!」

八幡 「俺とお前が友達?お前さっき友達に隠し事はしないって言ったよな?もし仮に俺とお前が友達なら何でお前は一年前の事故の原因となった犬の飼い主だって言わないんだよ。友達に隠し事はしないんだろ?言ってることとやってることが矛盾してるぞ」

由比ヶ浜 「っ!?ヒッキー知ってたんだ…」

八幡 「小町が教えてくれた。お前が俺に変なあだ名までつけて近づいてきたのは自分が原因で友達がいないとか思って同情で近づいてきたんだろ?そんな気持ちで近づかれても不愉快なだけだ。それにお前のおかげで陽乃さんに出会えてボーダーに入って楓子さんやめぐりさん、謡やほかの奴らとも出会えた。学校ではボッチだがボーダーではたくさんの仲間がいる。だからもう無理して近づいてこなくていいぞ」

 

そう言って俺は靴を履き替えボーダー本部に向かった。

 



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職場見学8

明日から修学旅行なのでただでさえ遅くなってた更新がさらに遅くなります




ボーダー本部への職場見学の次の週の月曜日、俺は少し寝坊して遅刻ギリギリで教室に滑り込んだ。俺が入った教室は空気が重くチャイムが鳴ったとはいえ先生も来ていないのに全員が席についていた。一瞬入る教室を間違えたのかと思ったが千種や川崎、我らが大天使戸塚がいるのでここは2-Fで間違いなかった。気にはなったがこのまま突っ立っていてもそのうち先生が来てしまうのでこそこそと自分の席に移動して座る。すると後ろから足音が聞こえ、俺の横で止まる。横を向くと怒ったような表情の葉山がいた。

 

葉山 「比企谷―

 

葉山を遮るようにして先生が入ってきた。

 

先生 「葉山ー。みんな座ってんだからお前も早く座れー」

葉山 「…はい」

 

先生の言葉に従い葉山が自分の席に戻った。

 

先生 「SHRを始めるぞー。はい号令ー」

 

担任が号令をかけるように声をかける。すると何思ったのか

 

「起立!踊りくるちゃえ!ス○ライクシ○ット!」

「プっ!」

 

クラスでこのネタを知っている奴(主に男子)が大爆笑していて、それを知らないやつ(主に女子)が冷めた目で見ている。ちなみに俺は必死に笑わないようにこらえていた。

 

先生 「誰がク○ナダのスト○イクショ○トを使えと言った!しかもあれは大号令だ」

「全軍、敵艦隊を駆逐せよ!」

先生 「モ○ストネタはもういいわ!はぁ。もういいわ、全員座れ。連絡していくぞー」

 

先生が連絡していくなか、前の席の千種が話しかけてきた。

 

霞 「比企谷お前、あいつになんかしたの?すげーさっきのアレが緩和したとはいえ空気重いんだけど」

八幡 「特にした覚えないんだけどな」

霞 「そしたらあんな怒らんでしょうよ」

八幡 「そうなんだが…」

霞 「ま、早く何とかしろよ。俺は静かなのは好きだが気まずいのは嫌いだからな。」

八幡 「俺に原因があるなら善処するよ」

 

それからSHRが終わり1限が始まった。

 

***

 

4限が終わり昼休みに入る。いつも通り購買によってからベストプレイスに行こうと思って席を立つと朝みたいに葉山に呼び止められる。

 

葉山 「比企谷、ちょっと来い」

八幡 「5分だ。手短に済ませろ」

 

葉山は何も言わずに教室を出た。俺は葉山についていく。葉山は階段を上り屋上に出る。

俺も屋上に出た。あと2分。

 

葉山 「比企谷、お前金曜日職場見学があった日の放課後、結衣に何した!」

八幡 「は?なに言ってんのお前」

葉山 「とぼけるな!あの日結衣はお前を誘うって言って学校に残った。俺たちは先に行って待っていた。しばらくしてから結衣は一人で来た。目の周りを赤くして!お前が結衣に何かしたんだろ!」

八幡 「どこにその証拠がある?」

葉山 「犯人は大体そういうんだ!『証拠はどこにある』『大した想像力だ。君は小説家になった方がいい』『犯人と同じ部屋になんていられるか!』」

 

…今ってシリアスな場面じゃないの?

 

八幡 「最後の被害者のセリフだろ。しかも死亡フラグ立ててる系の。証拠と言っただけで犯人扱いされるとか弁護士大変だな。なぁ、葉山ぁ」

葉山 「ッ!話を逸らすな!」

八幡 「逸らし始めたのどっちだよ。まあいい。確かにその日由比ヶ浜に会ったし、カラオケにも誘われた。断ったけどな」

 

何か言おうとした葉山を手で制す。あと1分

 

八幡 「というか一つ聞いていいか?なんで由比ヶ浜を止めなかった?カラオケは縦ロールを励ますために行こうとしてたんだろ?そこに凹ました本人を連れて行ってどうするつもりだったんだ?」

葉山 「そ、それは…」

 

葉山はなかなか答えられない。時間だ。

 

八幡 「答えられないならいいわ。時間だしもう行く。」

葉山 「待てよ。君は結衣が誘いを断っただけで泣いたと持っているのか?」

八幡 「知らねーよ。カラオケに誘われて断った。それが事実だ」

葉山 「それくらいで泣くわけないだろ!」

八幡 「いい加減にしろよ。そんな長々話に付き合っていられるほど俺は暇じゃない。どうしても知りたければ本人に聞けよ」

 

校舎に入りドアを強く締め速足で購買に向かった

 

***

 

その日の放課後。俺はすごくイライラしていた。昼休みが終わって、午後の授業が始まってからずっと葉山からの視線を感じていた。それが気になり授業に集中することもできずに、かといって寝ることもできなかった。ふとその視線が一つだけだったことに気付いた。他の葉山グループの連中は俺より前の席だが縦ロールは違ったはずだ。気になったのでさりげなく見てみると、何かを考えているような表情で黒板を見ていた。まあ理由はどうあれうざい視線を送ってこないならそれでよかったが視線が一つでもうざいことには変わりない。授業が終わるころには俺のイライラはピークに達していた。

 

八幡 「三バカいるよな?」

 

俺はこのイライラを三バカで発散することに決めた。

 

***

 

八幡 「いたいた。ランク戦しようぜ。弾バカ、迅バカ」

 

ランク戦ブースにつくとそこにいたのは 弾バカことA級2位太刀川隊のシューター出水とA級5位草壁隊のアタッカー緑川がいた。この二人にA級9位三輪隊の米屋の加えた三人がA級三バカと呼ばれている。

 

出水 「珍しいなハッチ。お前がランク戦に誘ってくるなんて」

八幡 「ああちょっとな。米屋はどうした?」

緑川 「よねやん先輩なら防衛任務だよハッチ先輩!そういえば学校にボーダーってことがばれたのほんとなの?」

八幡 「職場見学の時には」

出水 「俺も聞いたぜ!その時にお前ら比企谷隊と嵐山隊とかが連合組んで戦ったらしいな。連合には誰がいたんだ?」

八幡 「嵐山隊に加古隊、柿崎隊と奈良坂、那須、熊谷だ。時枝は解説役として参加はしてなかったな」

出水 「それで勝ったんだろ?やっぱお前らチートすぎだろ」

八幡 「それより早くランク戦やろうぜ」

緑川 「そうだね!今日はよねやん先輩いないし4割でいい?」

八幡 「ああ。」

 

いつも俺たちがランク戦するときには俺対三人でやっており、三人でやるときには5割以上取った方が取れなかった方に飲み物をおごることになっている。今は米屋がいないため俺は二人相手に6割以上勝利しないといけない。まあ今の俺に関係ないが

 

出水 「ハッチ何本やる?」

八幡 「200だ」

出水・緑川 「「え?」」

 

出水と緑川の首をつかみブースに投げる。それから俺もブースに入り、ランク戦を始めた。

 

八幡 「さあ、狩りの時間だ」

 

***

 

200本勝負が終わり俺が173勝25敗2分けという結果を収めた。イライラを解消できポイントももらえ、マッ缶も2本もらえる。一石二鳥いや一石三鳥の素晴らしいランク戦だった。

 

出水 「ハッチ強すぎだろ」

八幡 「今日はいらいらしたことがあったからな。そのイライラを込めたし」

緑川 「あ!」

 

突然緑川が声を上げた。

 

出水 「どうした?」

緑川 「俺これから防衛任務だった!ごめんハッチ先輩!マッ缶は今度渡すね!」

 

緑川が走っていなくなった。俺も時計を見るといい時間だったので帰ることにした。

 

八幡 「出水、俺は帰るけどお前は?」

出水 「そうだな…俺も帰るよ」

 

二人で並んで歩いていると後ろから声をかけられる

 

謡 「ハチ兄!出水さん!」

八幡 「おう謡」

出水 「久しぶりだな謡ちゃん!」

謡 「久しぶりなのです出水さん。お二人はランク戦ですか?」

八幡 「もう帰るところだけどな」

謡 「私も帰ろうと思っていたのでご一緒してもいいですか?」

出水 「もちろん!そうだ!職場見学の時のランク戦について聞かせてくれよ!」

 

それからランク戦について話しつつ比企谷隊の作戦室で俺と謡のカバンを回収、次に太刀川隊の作戦室に向かった。その時に事件は起きた。

 

加古 「出水くん!比企谷君!謡ちゃん!」

八幡 「加古さんどうしたんですか?」

加古 「今からチャーハン作ろうとしていたから食べてくれる人を探していたの!」

 

加古さんの口からチャーハンという言葉が聞こえた瞬間、俺と出水の顔が引き攣る。出水とアイコンタクトで会話を始める。

 

出水 (ハッチやばいぞ。どうする?)

八幡 (任せろ。俺に考えがある。)

出水 (頼んだ)

 

わずか一秒でアイコンタクトの会話を成功させる

 

八幡 「すいません加古さん。俺家で小町が待っていますし、小学生の謡をあんまり遅い時間に帰すのもアレなんで、俺と謡は遠慮させてください」

 

俺と謡のところを強調して言う

 

加古 「そうね。なら仕方ないわ。出水くん、いきましょう」

出水 「ひ~き~が~や~!」

 

出水は血涙を流しながら加古さんに連れられて行った。俺は心の中で合掌して出水を見送った。

 

謡 「そんなに加古さんのチャーハンはあれなのですか?」

八幡 「ああ。ただ100回に一回奇跡の味が出るらしい。何でも天に昇る味だとか」

謡 「…それはすごいですね」

八幡 「もうちょい確率高ければ挑戦する人は増えそうだけどな」

 

それから謡を送りつつ家に帰った。

 

余談だがこの日、ボーダー本部の医務室からは3人のうめき声が聞こえ、1週間太刀川さん、出水、堤さんの姿を見たものはいなかった。

 




*追記 この作品の加古チャーハンの当たる確率は1%になります


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夏休み編
千葉村1


なぜか1話完成したので連日投稿します。
前の話でも言った通り今日から修学旅行なので次回はほんとに遅れます。たぶん…きっと…メイビー…


八幡 「沢村さん書類整理終わりました」

謡 「こっちも終わったのです」

 

夏休みに入り俺と謡は今、本部で今度ある入隊試験の書類整理の手伝いをしている。俺の隊は遠征を免除してもらう代わりに入隊試験などの忙しい時期に書類整理などの手伝いをすることになっている。

 

沢村 「お疲れ様。そういえば小町ちゃんも入隊するんだね。」

八幡 「ええ。俺としては入隊させたくないんですけどね」

沢村 「でたな、シスコン」

謡 「けどハチ兄が許可するとは思いませんでしたけど」

八幡 「小町が『これまでお兄ちゃんにばかり苦労させてきたけどこれからは小町も少しでも家計の助けになりたい』って。それにボーダー推薦で総武高に行きたいっていう本音も少しもれてましたけどね」

沢村 「あはは…けど総武高って進学校でしょ?ボーダー推薦で入ったとしても授業についていけないこともあるんじゃない?」

八幡 「そうならないように学校で毎週小テストがあるそうなんでそのテストの結果次第で例えば月曜はボーダーには来させないで家で勉強させるとかそんな感じにするつもりです。それにたまに楓子さんやめぐりさんに家庭教師をお願いしようかなって思ってます」

沢村 「それならあまり心配はないね。やりたいポジションとかはもうあるの?」

八幡 「いえ。いろいろ体験してみてから決めたいって言ってました。あ、もし小町が迅さんにセクハラさせたら容赦なく訴えるつもりなんでその時はお願します」

沢村 「任せて!今日の仕事はもうないしもう上がっていいよ」

八幡 「わかりました。お先失礼します」

謡 「失礼します」

沢村 「あ!忘れてた。比企谷君これ。」

 

沢村さんに一枚の紙を渡される。

 

八幡 「なんです?これ」

沢村 「小学生のキャンプのバイトなんだけど、ボランティアで募集かけたんだけど集まらなくて唐沢さんに相談したら少しくらいならバイト代を出せるっていうから、やってみない?あんまり関係ないけど謡ちゃんの学校だよ」

謡 「そうなのですか?」

沢村 「うん。対象が六年生みたいだから謡ちゃんは知らなかったみたいだね。それでどうする?」

八幡 「俺はいいですけど、謡はどうする?」

謡 「私は参加したいです」

沢村 「わかったわ。あと8人くらい人集めたいから誰かに声かけてくれる?」

八幡 「わかりました。小町って連れて行っちゃだめですかね?」

沢村 「いいんじゃない?さすがにまだボーダー隊員じゃないからバイト代は出せないけど」

謡 「防衛任務と重なっていたらどうするんですか?」

沢村 「そこらへんはこっちで調整するわ。それと送り迎えもこっちで用意するわ。」

八幡 「何人か声をかけておきます。締め切りっていつまでですか?」

沢村 「なるべく早い方がいいから次に手伝いに来てくれる時までに決まってると嬉しいかな」

八幡 「わかりました。失礼します」

 

俺と謡は部屋を出て、比企谷隊の作戦室を向かう

 

八幡 「謡、誰に声かける?」

謡 「陽ねえは家の方がこの時期は忙しいって言ってたので難しいと思いますけど、楓ねえやめぐねえなら来てくれると思うのです」

八幡 「そうだな。残りのメンツは高2組にとりあえず声をかけて埋まらなかったらほかにも広げていく感じでいいか」

謡 「はい!いいと思うのです」

 

それから比企谷隊のグループラインと高2組のグループラインに写真と説明、それと防衛任務は変わってもらえることを打ち込み謡を家まで送り俺も家に帰った。

 

***

 

家に帰って小町に千葉村でのボランティアのことを話すと参加すると言ってくれた。それからラインの方を確認するとうちの隊からは全員返信は来ていた。楓子さんは参加、陽乃さんは謡が言っていた通り家の方が忙しいらしく不参加、めぐりさんも生徒会の方が忙しくなるらしく不参加となった。高2組からは何人か返信があった。

 

―高2組―

 

八幡:写真

八幡:小学生のキャンプの手伝いのバイトに参加したいやつはいるか?

八幡:防衛任務のシフトは調整してもらえるらしい

 

小南:玉狛の方で旅行があるからあたしと栞は無理ね

 

宇佐美:ごめんね

 

出水:シフト変更してもらえるなら俺は参加するぜ

 

米屋:俺も参加するぜ

 

綾辻:私は広報の仕事が忙しいから無理かな

 

出水:三輪や奈良坂はどうすんだ?

 

奈良坂:俺はパスだ

奈良坂:塾がある

 

米屋 :おい弾バカ。秀次は来ないだろ

 

三輪:陽介どういう意味だ

 

米屋:目つき鋭いせいで小学生怖がるだろ

 

出水:大丈夫だろ。目が腐ってるハッチいるし

 

―八幡が出水を退席させました―

―三輪が米屋を退席させました―

 

小南:プっ!弾バカと槍バカww

熊谷:あんたたちなにしてんのよ

 

―奈良坂が米屋を招待しました―

―奈良坂が出水を招待しました―

 

米屋:秀次てめー!

 

出水:ハッチもだコラ!

 

三輪:自業自得だ

 

八幡:俺たちは悪くない。お前らが悪い

八幡:ところで熊谷はどうすんだ?

 

熊谷:私は参加しようかな

 

那須:私も最近調子いいから参加するわ。

 

仁礼:あたしはめんどいからパスで

 

八幡:一回まとめるぞ

八幡:今参加するやつは

   出水・米屋・熊谷・那須・三輪で合ってるよな?

 

出水:合ってると思うぞ

 

那須:比企谷君、私たちのほかに参加する人っているの?

 

八幡:いるぞ。謡と楓子さんとあと小町が参加する

八幡:で、まだ返信が来てないのは

   三上と小佐野ぐらいか?

 

熊谷:そうね

 

小佐野:めんどいからパース

 

三上:私も家族旅行が入ってるから無理かな

 

八幡:わかった。

   これで沢村さんに報告しておく

八幡:詳しいことはまた連絡する

 

それからラインを閉じ、夏休みの課題を終わらせるために勉強をし始めた。

 

***

 

八幡 「小町ー準備できたかー」

小町 「オッケーだよ!お兄ちゃん!」

八幡 「じゃあ行くぞー」

 

今日は八月の初め。小学生のキャンプの手伝いに行く日だ。これから謡と楓子さんと合流して集合場所に行くことになっている。

 

***

 

謡と楓子さんと合流して集合場所のコンビニに着くとすでに那須と熊谷、出水が来ていた。

 

八幡 「早いなお前ら」

出水 「おうハッチ!あとは三輪と槍バカだけだな。」

八幡 「まあ三輪は米屋のせいで遅いだけだと思うけどな」

 

しばらくすると諏訪さんと沢村さんが車でやってきた。

 

諏訪 「おーい!比企谷!」

八幡 「どうも諏訪さん。今日は諏訪さんと沢村さんが送ってくれるんですか?」

沢村 「ええそうよ。全員そろってるかしら?」

八幡 「いえまだ三輪と米屋が」

諏訪 「米屋のせいだな」

八幡 「たぶんそうでしょうね」

沢村 「三輪君たちが来る前に先に荷物とか載せておきましょうか。車は普通に男子と女子で別れましょうか」

 

全員が荷物を載せ終わるとちょうどよく三輪と米屋が来た

 

八幡 「よう。遅れた原因は米屋か?」

三輪 「ああ。俺が迎えに言ったら案の定寝ていた。」

八幡 「三輪お疲れ」

諏訪 「三輪!米屋!早く荷物載せろ!お前らが載せたら出るぞ!」

 

それから二人が荷物を載せ千葉村を目指して二台の車が出発した。

 

***

 

沢村 「それじゃあ比企谷君、楓子ちゃん。ボランティア側の人と協力して頑張ってね。あと頼んだわよ」

八幡 「はい」

楓子 「帰るときもお気をつけて」

諏訪 「じゃあなお前ら!お前らも楽しめよ!」

 

沢村さんと諏訪さんは帰っていき、俺たちは雑談をしてボランティアの人たちが来るのを待った。しばらく待っていると一台の車が止まった。

 

八幡 「楓子さん」

楓子 「ええ。来たようですね」

 

ボランティアの人たちだと思われる車が来たのだ。その車から人が降りてくる。その人たちを見て驚いた。

 

雪ノ下 「比企谷君…」

由比ヶ浜 「ヒッキー…」

平塚 「比企谷…」

戸塚 「八幡!」

 

車から降りてきたのは奉仕部の連中と戸塚だったのだから。

 



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千葉村2

お久しぶりです。約2週間ぶりの投稿になりますね
とりあえず…
申し訳ございませんでした!(土下座。きっと読者の皆さんにはパソコンの前できれいな土下座をしているサラリーマンの姿が見えていることでしょう)最後の投稿から修学旅行の感想文だのレポートだのレポートだのレポートだの文化祭の準備だのいろんなことがありまして投稿することができませんでした。
これからは失踪せずに投稿したいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。


ボランティアの車だと思われる車から降りてきたのは雪ノ下、由比ヶ浜、平塚先生の奉仕部のメンツと戸塚だった。

 

楓子 「皆さんは小学生のキャンプのボランティアで?」

平塚 「あ、ああ」

楓子 「ほら、ハチさん」

八幡 「ボーダー側の代表者の比企谷です。これからよろしくお願いします」

 

いつの間にか沢村さんに俺はこのバイトの責任者にされていたのだ。

 

平塚 「比企谷が責任者だと」

楓子 「何か問題でも?」

平塚 「いや、よろしく頼む」

八幡 「ボランティアはそれで全員ですか?」

平塚 「いやまだいる。それより比企谷は何でそんなにかしこまっているんだ?」

八幡 「最初だけですよ。まあ形式上でも一応はボーダーの代表者ってことになってますので」

平塚 「そうか」

 

先生に挨拶をするとさっきまで由比ヶ浜としゃべっていた雪ノ下がこちらにやって来た

 

雪ノ下 「あら誰かと思ったら偉そう谷君じゃない。後ろの人たちを脅してまで代表者になってそんなに嬉しいのかしら」

八幡 「やりたくてやってる訳じゃないが、まあ少なくとも奉仕部という一人しか部員がいない部活のお山の大将よりは嬉しいぞ」

 

俺がそう言うと雪ノ下がキッとにらんでくる。ほんと言い返せなくなるとにらむとか子供のすることだろ。それに比べて戸塚は

 

戸塚 「八幡!代表者って大変そうだね!なんか僕に手伝えることがあったら言ってね!」

 

これだぞ!どっかの毒しか吐かない女とは大違いだな。いやあいつと戸塚と比べる事さえも烏滸がましいな

 

八幡 「なんかあったら頼んだぞ」

戸塚 「うん!」

 

癒される…やっぱり世界中に戸塚が行って笑えば世界から戦争がなくなって世界が平和になるまである。いやほんとまじで。けどなぁ…戸塚を危険なとこに行かせる訳にもいかないしな…結論!戸塚はかわいい!」

 

戸塚 「もう八幡!かわいいとか言わないで!」

 

戸塚が俺の胸をぽかぽかなぐってくる。なにこれちょーかわええ。

 

出水 「おいハッチ!そのかわいい娘たちは誰だよ!俺に紹介しろ!」

八幡 「黒髪が雪ノ下。ピンクが由比ヶ浜。かわいいのが戸塚彩加だ。ちなみに戸塚は男な」

出水 「ハッチ、小南じゃねえんだからさすがに騙されねーよ」

謡 「戸塚さんは男ですよ」

楓子 「ういういまで。戸塚さんに失礼ですよ」

戸塚 「あの、僕男です」

「「「……」」」

 

俺と謡と楓子さんを除くボーダー組全員が静かになった。そこにまた車がやってきて少し離れたところに止まった。さっき平塚先生が言ってたもう一つのボランティアグループなのだろう。その車から降りてきたのは…

 

葉山 「比企谷…!」

 

なんと葉山君とゆかいな仲間たち(縦ロール、っべーさん、メガネ女子)と養護教諭の鶴見先生でした!ちゃんちゃん!おわり!

 

謡・楓子 「「まだ終わらせません!!」」

 

………

 

八幡 「あの心読まないでください」

楓子 「顔に出てましたので」

謡 「ハチ兄は分かりやすいのです!」

平塚 「比企谷彼らもボランティアの参加者だ。向こうの代表にもボーダーの代表としてあいさつしておきたまえ。」

八幡 「え、いやなんですけど」

楓子 「ハチさんこれも仕事ですよ」

八幡 「…はい」

 

俺はあからさまな作り笑いを浮かべて葉山たちに近づく

 

八幡 「ドーモドーモ。お久しぶりデス、みなサン

楓子 「ハチさんその口調やめなさい」

 

少しふざけたら楓子さんに怒られてしまった。

 

八幡 「…このボランティアでのボーダー側の代表の比企谷です。こっちの代表は鶴見先生ってことでいいですか?」

鶴見 「?こっちの代表も何も総武高からのボランティアってことで代表は平塚先生のはずだけど」

 

八幡 「平塚先生ェ…とりあえず俺がボーダーの代表ってことなんでなんかあったら俺か楓子さんまでお願いします」

鶴見 「わかったわ。これからお願いね、比企谷君、倉崎さん。向こうではもう自己紹介をしているみたいだし、私たちも行きましょう」

 

鶴見先生に言われて平塚先生たちの方を見ると確かに自己紹介をしているぽかった。そっちに合流するとちょうど自己紹介が終わったところだった。

 

平塚 「すまないが小学校の先生との打ち合わせの時間までもうあまりないから、今来た人たちの自己紹介は歩きながらにしてくれ」

 

***

 

八幡 「えー、今日から三日間皆さんのキャンプのお手伝いをするボーダー隊員の比企谷です。そして今皆さんから見て右にいるのがボーダーからのお手伝いで

左にいるのが総武高校からのお手伝いです。三日間という短い間ですがよろしくお願いします」

 

俺は、小学生の前でメガネをかけて挨拶をさせられていた。なぜこうなったかというと…

 

~~~打ち合わせ中~~~

 

小学校教師 「あの、ボーダーの代表者さんに開会式の時に挨拶をしていただきたいのですが」

八幡 「楓子さんお願いします。俺の目じゃ小学生を怖がらせるだけなんで」

楓子 「その点は大丈夫ですよ。ういういアレを」

謡 「はい!」

 

謡が持ってきたカバンから取り出したのは前に川崎のバイトしていたバーに行ったときにかけていたメガネだった。

 

謡 「念のため持ってきていてよかったのです!」

 

謡がメガネを差し出してくる。俺はそれを受け取らずに

 

八幡 「アレがアレでアレなんで無理です」

楓子 「ハチさん、やりなさい」

八幡 「…はい」

 

楓子スマイルには勝てなかったぜ…

 

~~~

 

こんなことがあって俺は挨拶をする羽目になった。やはりボーダーは小学生たちのあこがれの的のようで俺がボーダーだというと「すげー」など歓声が上がった。

 

小学校教師 「ありがとうございました!それでは、オリエンテーリングスタート!」

 

小学生たちがあらかじめ決められていたであろう班に分かれて次々といなくなっていった。俺たちは平塚先生に呼ばれて集まる。

 

平塚 「君たちは歩いてゴール地点に向かってくれ。ゴール地点で昼食の用意をしてもらうから、くれぐれも小学生よりも遅い到着にはならないでくれよ」

鶴見 「私と平塚先生は車で先に行って材料運んだり準備しておくから」

八幡 「それじゃあ俺たちは行きます」

 




なんか平塚先生が普通の先生になってきた?


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千葉村3

えーとですね…
次回更新は12月の中頃になると思います。
理由は来週の危険物の試験と12月初めの期末テストに向けてガチで勉強しないとまずいからです。中間の結果がひどすぎた。勉強してる間も息抜きとして書いてはいると思うのでもしかしたら投稿するかもしれないですけど…

じゃあ本編へどうぞ

どうしてこうなったんだろう…


ボランティアに参加しているボーダー女性陣と小町と戸塚の会話に耳を傾けながらみんなの後ろをついていく。しばらく歩いているとふいに服の後ろを引っ張られた。振り向くとそこには縦ロールがいた。

 

三浦 「比企谷、ちょっといい?」

 

なぜ俺に来いと言っているのかわからないが縦ロールの真剣な表情が気になった俺は縦ロールの誘いに乗った。

 

八幡 「…ああ」

 

縦ロールは安心したように一回息を吐くと再び気を引き締めたような表情になり、近くにあったわき道に入っていった。俺も縦ロールについてそのわき道に入る。縦ロールは少し進んだところで立ち止まりこちらに向き直る

 

三浦 「ごめんなさい!」

 

振り向いた縦ロールは俺に向かって謝ってきた。正直俺は驚いていた。プライドの高そうなこいつが俺に謝るなんて思ってもみなかった。

 

八幡 「それは何に対してだ?テニスの時か?それとも職場見学の時のか?」

三浦 「両方。テニスの時はあーしのわがままで迷惑かけたし、職場見学の時はあんたのことよく知りもしないのにバカにした。そのことについて謝りたかった。」

八幡 「テニスの時のことを俺に謝るのはお門違いだ。あれで迷惑をかけられたのは戸塚だ。」

三浦 「うん。あとで戸塚にも謝る。…あーしさ、姫菜と一緒にボーダーに入ろうと思うんだ」

八幡 「姫菜っていうとメガネ女子で合ってるか?」

三浦 「うん」

八幡 「なんでボーダーに入ろうと思たんだ?」

三浦 「職場見学の時からずっと考えていたんだ。あんたあの時あーしがあんたの仲間をまた侮辱するようなこと言ったら本気であーしの首を斬るつもりだったでしょ」

 

縦ロールが言ってるのは俺が首に弧月を当てていた時のことだろう

 

八幡 「ああ」

三浦 「やっぱり。あれからずっと考えてたんだ。あーしにもそんな信頼関係があんのかなって?」

八幡 「葉山グループがそうなんじゃねーのかよ」

三浦 「なんかさ薄っぺらいんだ。みんな隼人とは友達だけど他とはただの友達の友達でしかない。みたいな。それに隼人もあーしたちを心の底から信頼してるのかわからないんだ」

八幡 「人間そんなもんだろ。心の中身は自分しかわからない」

三浦 「けど、あんたたちは心の底から信頼している気がした。そんなあんたたちを見てそんな関係があーしもほしくなった。だからボーダーに入ろうと思ったの」

八幡 「ボーダーに入ってもそんな信頼できるやつが見つかるかわからないぞ」

三浦 「それでもずっとこのままでいるよりましだから」

八幡 「そうか…ひとつ言っておくが、職場見学の時にいた連中にはしっかり謝っておけよ。」

「その必要はありませんよ」

 

突然聞こえてくる楓子さんの声。さっき俺の前を歩いていた人たちが元の道から顔をのぞかせていた。

 

楓子 「お話は聞かせてもらいました。三浦さん、私たちがあなたに言うのは一つだけです。」

「「「ボーダーへようこそ!」」」

三浦 「えっ」

楓子 「私たちボーダーはあなたを歓迎しますよ。」

 

それから三浦は静かに泣き出した。まるで今までためていたものを流しだすかのように静かに涙をながしていた。泣いている女子を見続けるわけにもいかないので俺は周りを見ていると、森の中に一人の少女がいた。遠くからなのであいまいだが、その少女は白い服を着ていて、見た感じだとまだ十歳にもなっていないような見た目だった。その少女はしばらくその場でボーっとしたかと思うといきなり倒れた。

 

八幡 「ッ!」

 

俺は急いでその少女の下へ駆け寄る。

 

八幡 「おい!大丈夫か!」

 

俺は少女に呼びかけるが反応がない。何度か呼び掛けていると後ろから楓子さんの声が聞こえた。

 

楓子 「ハチさん。どうしたんですか?」

八幡 「この子が急に倒れて、呼びかけているんすけど返事がないです。」

 

楓子さんも駆け寄ってくる。

 

楓子 「気を失っているだけですね。参加している小学生の妹さんでしょうか」

八幡 「たぶん。ここで寝かせておくわけにもいかないですし、とりあえず俺はこの子を連れて先に行きます。後、任せていいですか?」

楓子 「わかりました。ういうい、ハチさんと一緒に先に行きなさい」

謡 「了解なのです!ハチ兄行きましょう」

 

そして俺は少女をおんぶし謡と集合地点を目指した。

 

***

 

集合地点に着く。ここに来るまでに出水たちとしか会わなくてよかった。雪ノ下たちと遭遇してたらもっと時間がかかっていただろう。

 

平塚 「おい比企谷。背中にいる女の子は誘拐したのか?」

 

集合場所に着くなり平塚先生にこう言われた。

 

八幡 「平塚先生、そういうのいいんでこいつを寝かせられるとこに案内してください」

平塚 「すまん

鶴見 「比企谷君こっち!」

 

鶴見先生が場所を探してくれていた。案内された場所に少女を寝かせる

 

鶴見 「改めて比企谷君、その女の子は?」

八幡 「俺たちが山を登ってる途中で見つけて急に倒れたんで連れてきました。たぶん参加している小学生の妹だと思うんすけど」

平塚 「まあそうだろうな。事情は了解した。後で小学校の先生に聞いてもらうとしよう。さあ、せっかく早く来たんだ。比企谷には昼食の準備を手伝ってもらうぞ。四埜宮はこの子を見ていてくれ」

 

それから平塚先生たちの手伝いをしつつ楓子さんたちの到着を待った。

 

***

 

手伝いをしていると一番先に出ていた出水たちが戻ってきた。

 

出水 「おいハッチ!さっきおんぶしてたあの子誰だ!?」

米屋 「まさか誘拐したのか?」

三輪 「比企谷、自首したほうが罪は軽くなるぞ」

八幡 「おいてめえら殺すぞ。ってか三輪まで馬鹿どもに乗るなよ」

三輪 「すまん。で、本当に誰なんだ?」

八幡 「わからん。森の中で倒れたから連れてきた。誰かあの子見たか?」

出水 「見てないな。」

米屋 「俺も見てねーな」

八幡 「なんかわかったら頼む」

三輪 「わかった」

 

出水たちとしゃべっていると楓子さんたちが到着した。

 

楓子 「ハチさん!あの子は!?」

八幡 「今奥で謡が見ています。さっき見に行ったときはまだ起きてはいませんでした」

楓子 「そうですか。心配ですね」

 

俺と楓子さんが話していると平塚先生が来て次の指示をしてきた。

 

平塚 「全員そろったようだな。次の指示を出す。まずは全員で弁当の配膳をしてくれ。それが終わったら食後のデザートとして梨を用意している。それを切って用意した紙皿に盛り付けてくれ。それで終わりだ。終わり次第君たちも昼食にしてくれ。では作業に移ってくれ」

 

平塚先生の指示通り全員で分担して弁当の配膳を終わらせる。それから包丁が5本しかなかったので、梨を切る担当とようじを刺す担当分かれた。切る担当には俺と小町、楓子さん、雪ノ下、由比ヶ浜。ようじ担当にはそれ以外となった。しかし、由比ヶ浜は大丈夫なのか?クッキーを兵器にできるほどの腕を持っているが。加古さんと同じようにある一つの料理では無駄な才能を発揮するタイプなのか?自分から志願してきたところを見るとたぶんそうなのだろう。

そしてその予想はすぐにはかなく消え去った。

 

由比ヶ浜 「えー!?なんでこんなになっちゃうのー!?ママがやってるの見てたのにー!!」

 

由比ヶ浜の手元にはグラマラスな、俗にボンッキュッボンと呼ばれるような形になった梨の姿があった。いやなんで見てるだけなんだよ。やれよ。見ただけで覚えられたら人生苦労することなんてなんもねえよ

 

雪ノ下 「由比ヶ浜さん違うわ。包丁じゃなくて梨を動かすの」

由比ヶ浜 「こう?」

雪ノ下 「そうじゃなくて…」

 

雪ノ下が由比ヶ浜に教えているがこのままだと由比ヶ浜の上達より梨の全滅の方が早い。

 

八幡 「雪ノ下、ストップだ。料理教室は今度にしろ。このままだと梨の全滅の方が早い。」

雪ノ下 「そうね」

 

それから俺はようじ担当に呼びかけた。

 

八幡 「誰か切る担当を由比ヶ浜と変わってくれ」

戸部 「あーじゃあおれやるべー」

 

名乗りあげたのは戸部(さっき三浦に教えてもらった。)だった。そしてしぶしぶといった感じで包丁を渡す由比ヶ浜から包丁を受け取ると上手に皮をむき始めた。

 

八幡 「上手いな」

戸部 「だべー。たまに料理とかするから慣れてんだ。そういう比企谷君も上手だべ。」

 

戸部が俺の手元を見て言う。おれはずっとしゃべりながら梨を切り続けていた。

 

八幡 「まあ俺も結構料理するからな。」

戸部 「おっ!じゃあ勝負しようベー!お互い残り一個だしこれを早く切った方が勝ちってことで!」

 

各自に梨のノルマが振り当てられており、俺も戸部(由比ヶ浜時からの引き継ぎ。もともと数は少ない)も残すところあと一個となっていた。

 

八幡 「いいぜ。じゃあスリーカウントで始める。3,2,1 イテっ!」

 

後ろを向くと楓子さんがいた。どうやら俺は楓子さんに殴られたようだ。

 

八幡 「楓子さん何するんすか。こっち包丁持ってるんですよ」

楓子 「なにするはこっちのセリフです。勝負なんて速さ競って両方とも残念な結果になるのがお決まりじゃないですか。梨の余りはないんですから普通に切りなさい」

八幡 「だってさ戸部」

戸部 「倉崎先輩の言うとおりだべさ。機会があったらそんなときしようぜ!料理勝負!」

八幡 「機会があったらな」

 

まあそんな機会は来ないだろうな。さて、

 

八幡 「これで昼食準備は終わった感じですかね」

 

あたりを見てみると一足早く終わっていた米屋と出水が騒いでいてそれを呆れた目で見ている三輪と熊谷がいた

 

楓子 「そうですね。みなさーん!お弁当ここに置いておきますので終わった人からここからとっていってください!」

 

楓子さんの指示で終わった人から弁当を取っていく。最後に俺と楓子さん、謡の分の弁当と梨が残った。

 

八幡 「俺は謡のところに行ってあの少女の様子を見ながらメシにしようと思いますが楓子さんはどうします?」

楓子 「もちろんご一緒しますよ」

八幡 「じゃあ行きましょう」

 

俺は謡の分の弁当と梨を持って、少女が寝ている部屋へと向かった。

 

***

 

楓子さんと謡といまだに眠っている少女の下で昼食を食べる。やはり俺たちが昼食を準備している間も目覚めなかったらしい。しばらく三人で少女を見守りながら昼食を食べ続けていたが一足早く食べ終わると襲ってきた眠気に逆らえなくなり身をゆだねた。

 

***

 

「-チに-!-チ兄!ハチ兄!」

 

謡の声で目が覚めた俺の目に映ったのは、目を開け上体を起こした少女だった。

 

謡 「ハチ兄、今楓姉が先生を呼びに行きました。私たちはこの子から聞けることを聞いてみましょう。」

八幡 「ああそうだな」

 

それから俺は少女の目の前でしゃがみ、目線を合わせてから優しい声で少女に話しかけた。

 

八幡 「名前はなんて言うんでしゅか?」

 

噛んだ。おい謡。後ろで笑ってるんじゃーない。ひとしきり笑うと、俺の隣に座った。

 

少女 「?」

 

そして少女。なぜ名前を聞かれて?マークを浮かべる。何?不思議ちゃんなの?

 

八幡 「俺は八幡っていうんだ。で、こいつが」

謡 「謡です。」

少女 「な…まえ…ユ…イ。ユイ!はいまん!うい!」

八幡 「はちまんとうたいな」

ユイ 「はいまん?うあい?」

 

間違いを正そうとしてみるが治らなそうなので好きに呼ばせることにした。

 

八幡 「好きなように呼んでいいぞ」

 

するとユイは今度は通じたようで少し考えてから

 

ユイ 「はいまんは…か…える?」

 

グサッと!俺の心にナイフを突き刺してくるユイ。なんでこの子は俺の心をえぐったの?とユイが首を横に振っている。

 

ユイ 「パパ。はいまんはパパ!ういはねえ!」

 

素早く謡とアイコンタクトを交わす。

 

八幡 「えーとパパだぞ?」

謡 「ねえですよ~」

 

あの謡さん?ノリノリすぎじゃありません?あれかいつもみんなを姉って呼んでるからたまには自分も姉って呼ばれたいみたいな?

 

ユイ 「パパ!ねえ!」

 

ユイが俺と謡に飛びつき、何度も「パパ!ねえ!」と連呼する。そしてそこに入ってくる楓子さんと鶴見先生。気まずくなりました。

ちゃんちゃん

 




saoが小説として存在してるのにユイちゃんが出てくるという恐怖
投稿予約してて気が付きました。


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千葉村4

待たせてしまって申し訳ない。やっと復活しました。
しかし、テストが終わったはずなのに書く時間がないとかなぜなんだろうね


楓子さんと鶴見先生にユイに抱き着かれている理由を説明し、やっと気まずい雰囲気がなくなった。それからユイについてわかったことを説明し鶴見先生がユイに質問をする。

 

鶴見 「ユイちゃん少し聞きたいんだけどユイちゃんはどうやってここまで来たの?」

ユイ 「わかんない」

 

ユイが首を横に振る。

 

鶴見 「じゃあおうちの場所は?」

ユイ 「わかんない」

 

またもユイは首を横に振る

 

鶴見 「じゃあ本当のパパとママは?」

 

鶴見先生がそう聞くとユイは立っていた俺の足にしがみつき泣いてしまった。鶴見先生と目を合わせ「やめよう」という意味を込めて首を横に振ってから、ユイの頭をなでながらユイをなぐさめる

 

八幡 「ユイ大丈夫だ。パパはここにいるからな」

 

しばらくなでていると泣き止んで泣き疲れたのかまた眠り始めた。ユイをさっきまで寝かせていたところに寝かせると四人で相談を始める

 

鶴見 「比企谷君ごめんなさい。最後任せてしまって」

八幡 「気にしないでください。それより…」

 

誰もなにも言わなくなり沈黙が流れる。そして楓子さんが口を開いた。

 

楓子 「…記憶喪失…ですよね」

鶴見 「たぶんそうなんでしょうね」

謡 「私たちになついてきたのも…」

八幡 「たぶんな。いつから記憶喪失なのかはわからないがひな鳥が初めて見たものを親だと思うように目覚めて初めて見た俺たちを親や家族のように思ったんだろうな」

楓子 「これからどうすればいいのでしょうか」

鶴見 「ユイちゃんが起き次第、小学生を当たってみて本当の家族を探しましょう」

楓子 「それで見つからなかった場合は?」

鶴見「近くの警察署に行ってみましょう。服の汚れからして森に入ってすぐに発見したみたいだから近くの警察署に行けば捜索願が出てると思うわ」

八幡 「そうですね」

鶴見 「これからの方針も決まったことだし私は小学生のオリエンテーションの手伝いに戻るわ。比企谷君にはユイちゃんが起きたら連れてきてもらいたいから残るとして倉崎さんと四埜宮さんはどうする?」

謡 「私は残ります」

楓子 「私は戻ります」

鶴見 「わかったわ。四埜宮さん、比企谷君と一緒にユイちゃんをお願いね」

 

鶴見先生と楓子さんが手伝いに戻り、謡とユイが起きるのを待った。

 

***

 

ユイは30分ほどで起き、ユイを連れて謡とともに小学生にユイの身元について聞き込みをしているが成果はなかった。

そして今はカレーを作るための準備をしている。キャンプといえばカレーらしい。今平塚先生が火のつけ方を実演して見せてくれている。炭を積み上げその下に丸めた新聞紙と着火剤に火をつける。しばらくうちわで火をあおり、火が少し大きくなったらサラダ油をぶかっけた。一気に燃え上がる火。上がる悲鳴。火に照らされ妖しく笑う平塚先生。まあそれは嘘で、満足げに笑ってました。

 

平塚 「ざっとこんなもんだ」

八幡 「先生慣れているのは分かったんでもうちょっと小さい子に気を使ってください。ほら」

 

俺の足にしがみついているユイを見せる。一気に大きくなる火を見てユイが泣きそうになって俺の足にしがみついたっきり離れなくなってしまった。

 

平塚 「あっ…ひ、比企谷どうすれば…」

 

平塚先生がおろおろしだす。結婚していない先生にはどうすればいいのかわからないようだ

 

平塚 「おい比企谷、何か変なこと考えなかったか?」

 

平塚先生がぎろりと俺をにらむ。それを見てユイが完全に泣き出した。

 

八幡 「平塚先生、なにやってんっすか。俺が端の方で泣き止ませますんで平塚先生は指示だしの方をお願いしますよ」

 

ユイを炊事場の端に連れて行き泣き止ませつつ炊事場の方を見ると男子が火をつけつつ女子が食材を取りに行っていた。これはあれかな?先生のトラウマでも混じってんのかな?先生が火をつけていた時に他の男女がイチャイチャしてたとか…男子の方を見てみると葉山と出水と米屋が火をうちわで煽っていた。一番大変な作業お疲れ様です。女子の方は…と

 

八幡 「どうしたさぼりか?雪ノ下」

雪ノ下 「貴方に言われたくはないわね。それに…」

 

雪ノ下がユイを一瞥して

 

雪ノ下 「とうとう少女に手を出して。両手を括って待っていなさい。今すぐに警察を呼んであげるから。ああ、明日警察に行くのだったわね。せいぜい最後の牢屋の外の夜、楽しみなさい」

八幡 「子供になつかれただけで終身刑とかww自分が人に好かれないから嫉妬ですか?ww」

雪ノ下 「そんなわけないじゃない。目だけでなく心も腐っているのかしら」

八幡 「ああ!すいません。嫉妬にしか聞こえなかったもので」

 

雪ノ下と言い合っているとユイが俺と雪ノ下の間に立つ。

 

ユイ 「パパ!けんかしちゃめー!なの!お姉ちゃんもめーなの!」

八幡 「ああそうだよな。けんかはだめだよな。雪ノ下」

雪ノ下 「そうね。…それにしてもあなたが小さい子の扱いが上手なことに驚いたわ。」

八幡 「これくらい普通だろ。むしろ、表裏がない分だけ大人よりもマシだろ」

雪ノ下 「そういうものかしらね」

八幡 「そんなもんだろ」

 

それからユイの相手をしつつぼんやりと炊事場の方を見ていると、ふいに雪ノ下が溜息を吐いた。

 

八幡 「どうした?」

 

雪ノ下に問いかけつつ雪ノ下の目線の先を見ると葉山が一人の少女に近づいていた。雪ノ下が溜息を吐いている理由が分かった。そりゃ、悪手じゃろ葉山(ありんこ)。あの少女はボッチだったのだろう。ボッチに話しかけるなら秘密裏に動かなければならない。そんなこともわからないのか最近の若者は…

 

雪ノ下 「彼女…鶴見留美さんというのだけど、彼はさっきも鶴見さんに話しかけていたわ」

 

雪ノ下に適当に相槌を返しながら葉山と少女――鶴見留美の会話を聞く。

 

葉山 「カレー好き?」

 

好意的に答えれば、周りから調子乗ってると思われ、すげなく答えれば何様?調子乗ってると思われる。この場合だと戦略的撤退が最善策だ。

 

鶴見 「…別にカレーに興味ないし」

 

鶴見もそれが分かっているようで興味ないと言い葉山から離れこっちに向かって歩いてくる。葉山はさらに声をかけようとしていたが他の小学生に囲まれて声をかけることができなかった。葉山は切り替えたように小学生たちに隠し味で入れたいものなどを聞いていく。チョコレートやコーヒー、砂糖など小学生らしいアイデアを披露していく中で、その小学生に混じって由比ヶ浜が「桃!」と言っていた。ただのバカだろ」

 

留美 「ほんとバカばっか…」

八幡 「世の中大概がそんな奴ばっかだ。よかったな早く気づけて。ちょ、ユイ、くすぐったい」

 

ユイが俺の腹を叩いたりなでたりしてくる。鍛えてるので痛くはないがスゲーくすぐったい。

 

雪ノ下 「貴方もその大概でしょ」

八幡 「安心しろ。俺はその中でも一人になれる。…ジャンケンポン。あっち向いてホイ!ジャンケンポン。あっち向いてホイ!」

 

俺の体に飽きたユイに誘われてあっち向いてホイをし始める。俺の体に飽きるって表現なんか卑猥だな…

 

雪ノ下 「そんなに誇って言うほどのことではないでしょうに。さっきからあなたたちは何をしてるのかしら」

八幡 「あっち向いてホイ!みりゃわかんだろ。あっち向いてホイだ」

雪ノ下 「?あっち向いてホイ?何かしらそれは」

八幡 「まじか。さすがいいとこのお嬢様…ジャンケンして勝った方が上下左右のどれかに指をさし、負けた方はいずれかの方向に顔を向ける。それで指の向きと顔の向きが同じなら指をさした方の勝ちっていうシンプルなお遊びだ。ユイ、雪ノ下と遊んで来い」

 

ユイがとてとてと雪ノ下の方に走っていき、あっち向いてホイをする。雪ノ下は戸惑いながらもユイとあっち向いてホイをする。すると鶴見が俺の方へと近づいてきた。

 

留美 「名前」

八幡 「名前がどうした?」

留美 「今ので普通伝わるでしょ。名前を教えて」

八幡 「人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗れって教わんなかったか?」

留美 「鶴見留美」

八幡 「比企谷八幡だ。で、黒髪の…両方とも黒だったな。高校生の方が雪ノ下。小さい方がユイだ。」

 

ユイが俺に呼ばれたと思ったのかこっちに走ってきて俺の足に抱き着く。抱き着いてきたユイの頭をなでているとさっきまで葉山たちのところにいた由比ヶ浜がこっちに来た。由比ヶ浜は俺を見て気まずそうな表情を作り鶴見に名前を言った。

 

由比ヶ浜 「えっと留美ちゃんでいいんだよね?あたしは由比ヶ浜結衣。よろしくね」

 

鶴見は足元に目線をやったままで由比ヶ浜を見ようともしない。そしてそのまま途切れ途切れに口を開く。

 

留美 「そこのロリコン

八幡 「おい誰がロリコンだ。」

 

あのやろう、ロリコンって言うときに俺の方を見やがった。俺はユイがかわいいから愛でているだけだ!ロリコンじゃ…ないよね?

 

雪ノ下 「貴方しかいないじゃない。鶴見さんこんな男なんかにかまわずに続けて。」

留美 「そこのロリコンと雪ノ下さんは違う気がする。あの辺の人たちと」

 

鶴見の目線の先には葉山たちがいた。まあそうだな。リア充のあいつとボッチの俺たち。そりゃあ違うわ。

 

留美 「私も違うの。あの辺と」

 

ボッチという意味だったら確かに違うな

 

留美 「みんなガキなんだもん。だったら一人でもいいかなって」

由比ヶ浜 「でも一人って寂しくない?」

八幡 「ユイ、謡の、ねえのところに行ってこい」

 

俺は小声でユイに言った。

 

ユイ 「やだ!ユイも聞く!」

八幡 「だめだ!ねえのところに行け!」

 

俺が怒ると、とぼとぼと謡たちがいる方へ歩いて行った。

 

雪ノ下 「いいの?ユイさんに怒鳴ったりして」

八幡 「まだユイが知るにはきつい話になるかもしれないからな。悪い。続けてくれ」

 

話のじゃまにならないように小声で話していたが、いつの間にか話を中断させていたようだった。

 

留美 「中学上がればよそから来た人と仲良くなればいいだけだし。」

 

鶴見は夢を見ている。このままではほぼ確実に叶わない絵空事に期待している。

 

雪ノ下 「残念ながらそんなことはあり得ないわ。あなたの進む中学にはあなたの学校からも進学してくるのでしょう?だったら中学に進んでも同じことが起こるわ。今度はよそから来た人も一緒になってね」

留美 「やっぱりそうなんだ…ほんとバカなことした…」

 

鶴見はそのつぶやきと悲しげな表情とともに自分の班の方へ戻っていった。

 



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千葉村5

1週間ぶりのサラリーマンです
年内にもう二話くらい出せるといいな


ユイが俺特製のカレーを食べて笑顔になる。なぜ俺特製カレーなのかというと…はーい海藻入りまーす。…なんでや!何でカレーに海藻入れるんや!かいそうの字がちゃうやろ!(もやっとボール風)。じゃあほんとに回想入りまーす

 

―――

 

八幡 「ユイさっきはごめんな」

ユイ 「…ねえ!」

 

ユイがこっちを向いてくれない。そして何も言わずに謡のところに行ってしまった。俺は膝から崩れ落ちた。

 

戸塚 「八幡!?」

戸部 「比企谷君!?」

八幡 「戸塚ぁ戸部ぇユイに嫌われた…死にたい」

戸塚 「ちょ八幡!」

戸部 「ヒキタニ君!しっかりするべ!」

八幡 「戸塚…俺が死んだらユイを…ユイを頼んだ。」

 

天使とパトラッシュの姿が見える。パトラッシュなんだかもう眠たいよ

 

戸塚 「戸部君!娘 けんか 仲直りでググって!はやく!」

戸部 「お、おう!えーとなになに『娘とけんかし仲直りしたいあなたに!その方法を教えましょう!その方法とは…ずばり!娘が許してくれるまで待つ!です!無理に仲直りしようとしてうざがられたりしていませんか?待っていれば娘さんもきっとあなたの考えを分かってくれます!それまで待ちましょう!』だって」

戸塚 「八幡?はちまーん!」

戸部 「ヒキタニ君!君の勇姿は忘れないよ!」

ユイ 「パパ!パパ!」

八幡 「ユイこん…なパパ…で…ごめん…な」

ユイ 「パパ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

八幡 「いい…か…らもっ…と顔を…見せておくれ」

ユイ 「パパ!パパー!」

 

こうしてユイ用のカレーを作ることでユイと仲直りを果たしました。

 

熊谷 「なにこの茶番」

 

***

 

ユイが俺のカレーを食べて笑顔になる。それを見て俺も笑顔になる。

 

熊谷 「比企谷キモイ」

那須 「くまちゃん!そんな本人に言わなくても」

楓子 「玲さん止め刺してますよ」

ユイ 「?パパ?」

 

ユイが俺を心配して声をかけてくれた。

 

八幡 「カレーがおいしすぎて目から汗が出ただけだ」

 

この日のカレーはすごいしょっぱかったです

 

謡 「ほらユイお口閉じて」

ユイ 「んー」

 

謡がユイの口の周りについているカレーを拭う。

 

小町 「ういちゃんもすっかりお姉ちゃんだね」

八幡 「謡も妹ができてうれしいんだろ」

 

俺たちがそんな会話をしていると

 

由比ヶ浜 「…どうすればいいんだろ」

 

由比ヶ浜のそんなつぶやきが聞こえた。

 

平塚 「どうしたのかね」

由比ヶ浜 「ちょっと孤立してる子がいるんです」

 

おい、孤立してることを悪いみたいに言うな。問題は何によって孤立しているかだ。

 

平塚 「ふむ君たちはどうしたい?」

 

現状俺たちにできるなんて何もないだろ。下手に手を出せばハブリから明確ないじめに変わる可能性だってあるんだ。それが分かっているからか全員何も言わない。ただ一人マイペースなやつを除いては。

 

三輪 「そいつがどうなろうと俺には関係ないので先に失礼します。」

八幡 「ん、了解。風呂もう入って大丈夫なはずだから先に入っていていいぞ」

米屋 「あ、時間あったら布団敷いといて」

出水 「よろ~」

三輪 「自分で敷け。じゃあな」

 

ボーダー組は三輪がこういうやつだとわかっているので平然としている。しかし総武高の奴らは唖然とし、いち早く再起動できた葉山が突っかかった。

 

葉山 「ちょお、まってんか!んんっ!ちょっと待ってくれないか。」

 

ん?今なんか変なの混じんなかったか

 

葉山 「君は本当にそう思っているのか」

八幡 「おいちょっと待て。さっき変なの混じんなかったか?もやっとボールみたいなやつが混じんなかったか?」

葉山 「…(作者が)魔が差したんだ。忘れてくれ」

八幡 「お、おう…そうか…」

葉山 「で、三輪君。君はほんとにそう思っているのか」

三輪 「ああ」

 

三輪は軽く答えると歩いて行ってしまった。葉山は三輪の背中をしばらくにらむと口を開いた。

 

葉山 「やっぱりこのままにはしておけない。俺は可能な限り何とかしたいです」

 

なんとかしたいと言いつつも可能な限りとつけることで何もできなかった時の逃げ道を作る。いい考え方じゃあないか

 

雪ノ下 「貴方には無理よ。そうだったでしょ」

 

雪ノ下はそう言い冷たい目で葉山を見る。葉山は苦しげな表情な浮かべる

 

葉山 「そうだったかもな。けど今は違う。」

雪ノ下 「どうかしらね」

 

二人の過去に何があったかは知らないし、知ろうとも思わない。ただ、それを引っ張ってきてまで気まずい雰囲気は作るなよ

 

平塚 「やれやれ…雪ノ下君はどうしたい?」

雪ノ下 「一つ確認したいのですが、これは奉仕部の合宿も兼ねていると仰っていましたが彼女を助けることは合宿の内容と考えてよろしいでしょうか」

平塚 「もちろんだ」

雪ノ下 「なら私は全力をもって彼女を助けたいと思います」

平塚 「そうか。では私はもう寝る。あとは任せたぞ」

 

は?この教師は何を言ってるんだ?この人は責任者だろうが。責任者が真っ先にいなくなってどうする

 

八幡 「平塚先生どこに行こうとしてるんですか。この会議で可決された案を実行し不具合が生じた場合の責任を取るのはあなたなんですよ。その場にいなかったから責任はないなんてことはないですからね。」

 

もしこれでも寝るというのであればあの時の動画のネットにばらまくことも考えておこう。しかしこの考えは杞憂だったようで

 

平塚 「悪かった。ここには留まる。しかしよっぽどのことでなければ私は口は出さんぞ」

八幡 「それで大丈夫です」

 

そして会議が始まった。

 

***

 

会議が始まり一番最初に手をあげ発言したのは海老名さんだ。

 

海老名 「趣味に生きればいいんだよ。同じ趣味の友達見つければ、居場所なんてすぐに見つかると思うし。学校だけがすべてじゃないしね」

 

三浦から聞いた情報に腐女子とあっただけにどんな意見なのか警戒していたが想定外にいい案だった。特に学校がすべてじゃないと言ったところに共感が持てるな一年の時の俺なんて特にそうだし

 

海老名 「私はBLで友達ができました!ホモが嫌いな女子はいません!だから雪ノ下さんも倉崎先輩も那須さんも熊谷さんも

三浦 「姫菜!飲み物取ってくるよ!」

海老名 「ああ!まだ布教の途中なのに!」

 

三浦が海老名さんを引きずって行った。ナイス三浦

 

それから意見は出るものの解決できるかと言われれば微妙なものばかり…

 

葉山 「やっぱりみんなが仲良くできる方法を考えないと根本的な解決にはならないか…」

 

葉山のつぶやきが聞こえ、思わず鼻で笑ってしまった。葉山が俺をにらんでくる。

 

雪ノ下 「そんなことは無理よ。絶対に不可能だわ。」

三浦 「あんさー雪ノ下さんさっきから何なの?」

雪ノ下 「なにがかしら?」

三浦 「隼人の考えはさっき雪ノ下さんが言った通り無理だとは思うけど、さっきから他人の意見否定してばっかで雪ノ下さんも考えはどうなの?否定するときは代わりに自分の意見を言えって知らないの?」

八幡 「おー!正論正論ちょー正論」

 

俺は感心しながら手を叩く。確かに雪ノ下は否定してばっかでこの会議では自分の意見を口にしていない

 

雪ノ下 「私だったら鶴見さんも含めてあの集団を説教するわ」

楓子 「その心は?」

雪ノ下 「簡単です。私が説教すればこんな愚かなことはもうやめるからです」

 

なんだその根拠もない超理論は

 

八幡 「論外だろそんなの。葉山の案以上に論外だ」

雪ノ下 「論外とはどういう意味かしら」

八幡 「そのまんまの意味だ。平塚先生もし葉山や雪ノ下の案を実行するとどうなりますか?」

平塚 「そ、それは…」

楓子 「答えづらいなら私が言います。葉山さんの案を実行すれば鶴見さんは高校生の陰に隠れた卑怯者というレッテルを張られていじめに発展するかもしれません。雪ノ下さんの案は論ずるかちさえも感じられません」

葉山 「なっ!?」

雪ノ下 「そんなことはあり得ません。私が一度説教すればこんな愚かなことはやめます。ソースは私。あの時は私が説教したら全員がやめました。」

熊谷 「あなたの時はそうだったかもしれないけど今回もそうなるとは限らないでしょ!そんなこともわかんない!?」

雪ノ下 「そんなの言い訳だわ。――

 

それから雪ノ下と熊谷・那須の口論が始まった。しかし、それもすぐに収まった。今まで何も言ってなかった謡が声を荒らげたからだ

 

謡 「いい加減にしてください!雪ノ下さんそんなので本当に解決できると思うのなら帰ってください!不愉快なのです!」

 

謡はそう言って半分眠りかけのユイの連れて席を立った。きっと謡が年齢が一番近いこともあって鶴見の気持ちがわかるのだろうな。

それから楓子さんが手を叩き注目を集める

 

楓子 「平塚先生今日はここまでにしましょう。いいですよね?」

平塚 「ああ。今日はこれが解散とする。明日は朝食後キャンプファイヤーの準備をしてもらうので遅れないように。では解散!」

 

それから男子と女子に分かれそれぞれのロッチに戻った

 




葉山のアレはタイプミスからデス!


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千葉村6

千葉村完結です


会議が終わってから風呂に入りUNOやトランプで一通り遊んでから俺たちは布団に入った。女子はボーダー組と総武高組で別れているらしいが男子はボーダー組も総武高組もまとめて一部屋だ。そして俺の隣には戸塚が………寝れるわけねえだろうが!寝顔やばいし、時々寝言で俺の名前呼んでくるんだぞ!まぁそんなわけで夜の散歩にしゃれ込んでいます。適当にふらっと歩きたどり着いた開けたところにあった丸太に座って満天の星空を見上げる。千葉では見ることのできない星空に俺が感動しているとパキッという枝の折れたような音が響いた。…熊?トリガーって持ってきてたっけ?そもそもトリガーって熊に有効なのか?ああ、ユイを残して死にたくないなぁ

 

楓子 「ハチさん?」

 

どうやら枝を折ったのは熊ではなく楓子さんだったようだ

 

八幡 「こんばんは、楓子さん」

楓子 「ええ、こんばんはハチさん。眠れなくてここに?」

八幡 「そうです。楓子さんもですか?」

楓子 「はい。隣、座っても?」

八幡 「もちろん」

 

俺は少し横に移動し楓子さんが座れるスペースを作り、そこに楓子さんが座る。しばらく二人で星空を眺めていたが楓子さんが口を開いた。

 

楓子 「ユイちゃん、ういういにくっついて寝ていましたよ。写真ありますけど見ます?」

八幡 「見たいです」

 

楓子さんがスマホで撮った写真を見せてくれた。謡とユイがくっついて寝ている。まるで

 

八幡 「まるで姉妹みたいですね」

楓子 「みたいじゃなくて姉妹ですよ。ユイちゃんの家族が見つかるまでですけどねパパさん?」

八幡 「やめてください。楓子さんに言われるとすごい恥ずかしいです。」

楓子 「ハチさんは明日大丈夫ですか?ユイちゃんと別れることになりますけど」

八幡 「ユイにとってそれが一番良い事だと分かってますから覚悟はしてます」

 

覚悟というのは少し大げさかもしれないが俺にとってはそんな感じなのだ。

 

楓子 「そうですか…そろそろ戻りましょうか明日もいろいろありますしね」

八幡 「そうですね」

 

俺と楓子さんはまずは女子のロッジを目指す。もうすぐにロッジというところで

 

楓子 「明日の朝走るのなら一緒に走りませんか?」

八幡 「了解です。時間はどうします?」

楓子 「汗の始末とかの時間も考えて30分前にやめるとして…5時半でどうでしょう」

八幡 「わかりました。場所は…俺がそっち行きましょうか?」

楓子 「お願いします。じゃあまた明日の5時半に。おやすみなさい」

八幡 「おやすみなさい楓子さん」

 

それから自分のロッジに戻り布団に入った。散歩をしたおかげか割とすぐに眠ることができた

 

***

 

まだ少し薄暗い5時半少し前。ジャージに着替えた俺は女子のロッジの前まで来ていた。別に女子の寝顔とか見に来たわけじゃないよ。まあもしそんなことしようものなら楓子さんに殺されるけどな。ランニングの約束をしていた楓子さんをストレッチをしながら待つ。ちょうど5時半になると楓子さんが出てきた。

 

八幡 「おはようございます。楓子さん」

楓子 「おはようございます、ハチさん。それではいきましょうか」

 

それから二人で走り始めた。しばらく走っていると前に人影が見えた。

 

楓子 「ハチさんあの人って」

八幡 「たぶん戸塚ですね。おーい戸塚ー!」

 

俺が前を走っていた戸塚に声をかける。

 

戸塚 「あ、おはよ八幡!おはようございます倉崎先輩!」

楓子 「おはようございます戸塚さん」

八幡 「おはよう戸塚。戸塚もランニングか?」

戸塚 「うん。僕もあれから朝はランニングするようにしてるんだ。八幡は倉崎先輩と二人で走ってるの?」

八幡 「ああそうだぞ」

戸塚 「もしよかったら僕も一緒に走っていい?」

八幡 「もちろんいいぞ。いいですよね楓子さん」

楓子 「ええ。それではいきましょう」

 

それから三人でまた走り始めた。それからおよそ30分。

 

楓子 「そろそろ終わりにしましょうか」

八幡 「戸塚大丈夫か?」

戸塚 「ハァハァ…うん大丈夫ハァ」

 

途中から参加した戸塚の息はすごいきれていた。

 

戸塚 「二人ともすごいね。全然息がきれなくて」

 

しばらく歩いて乱れていた呼吸を整えた戸塚。

 

八幡 「もう長いこと走っているからな」

楓子 「私はここで失礼します」

 

いつの間にか女子のロッジの前に着いていた。

 

楓子 「二人とも汗の始末はしっかりしてくださいね。お疲れ様」

戸塚 「お疲れさまでした!」

八幡 「お疲れさまでした。戸塚行こうぜ」

 

楓子さんに見送られ俺たちは女子のロッジを後にした。

 

***

 

朝食を食べ終え、キャンプファイヤーの準備も終わりとうとうユイを警察署に連れて行く時間になった。

 

鶴見 「四埜宮さんは助手席に、比企谷君とユイちゃんは後部座席に。比企谷君、チャイルドシートはないからユイちゃんを頼んだわよ」

八幡 「もちろんです。いざとなったらトリガー使ってでもユイにけがはさせません」

鶴見 「頼もしいわね。それじゃあ行きましょうか」

 

俺たちは一番近い警察署に向かった

 

***

 

いきなりだが結論を言おう!ユイをうちで預かることになりました!拍手!流れ図で説明すると

 

警察署に着く

→事情を説明し捜索願の確認をする

→捜索願で出ていない

→ひとまず施設に預けることに

→ユイが泣く

→対応してくれた刑事さんが提案

→ユイを預かることに!

 

こんな感じだ。刑事さんに電話番号を教え、もし俺に直接つながらなかった時のために俺が最も長時間いるであろうボーダーとその次に長い時間居るであろう総武高の番号も教え、俺たちは警察署を後にした。

今はその車の中。ユイと謡は寝ているようでこの車で起きているのは運転手である鶴見先生と俺だけだ。

 

鶴見 「よかったわね。比企谷君。ユイちゃんと離れ離れにならなくて」

八幡 「よかったんですかね?やっぱり施設に預けた方がユイにとって良かったんじゃ

鶴見 「そんなことないと思うわ。本当の親が見つからなかった今無理やり引き離して不安にさせるよりも安心できる比企谷君たちの近くにいる方が私はいいと思うけどな」

八幡 「そうですかね?」

鶴見 「そうよ。さあこの話はもう終わり!次はそうだな…比企谷君はどうすれば留美ちゃんを助けられると思う?」

八幡 「やっぱり自分の娘は心配ですか?」

鶴見 「そうそう!あの子自分のことはなんにも…え!気づいてたの!?」

 

いやー半信半疑だったからカマかけといてよかった。

 

八幡 「ことあるごとに心配そうな目で見てたのに気づいてたんで。名字も同じですし」

鶴見 「そう…さっきも言ったけどあの子なんにも自分のことは話してくれなくてね。それでこの林間学校のこと聞いたらすごい嫌そうな顔をしたから平塚先生に無理言って一緒に連れてきてもらったの。それで…」

八幡 「この状況を知った、と」

鶴見 「比企谷君なんとかできないかな?」

八幡 「…一つ案はあります。けど俺の案はあくまできっかけを作るだけ。あとは努力次第です。それでもいいなら聞きますか?」

鶴見 「うん。聞かせて」

八幡 「それは―――

 

***

 

昨日ユイを寝かせていた部屋で鶴見親子を待つ。さっき鶴見先生に話した案を鶴見に伝えるために。

 

鶴見 「比企谷君連れてきたわ」

八幡 「ありがとうございます」

留美 「八幡何の用?お母さんにこんなとこまで連れてこさせて」

 

先生はもう俺に親子だとばれてることを伝えていたみたいだ

 

八幡 「鶴見

留美 「留美。お母さんと同じだから留美でいいよ八幡」

八幡 「んじゃあルミルミ

留美 「八幡キモイ」

八幡 「…留美、みじめなのは嫌か?」

留美 「…うん」

八幡 「俺には現状を変えられるかもしれない案がある。この案は鶴見先生にも話してあってお前が望むならそれでいいと言ってる。聞きたいか?」

留美 「もったいぶらずに教えて八幡」

八幡 「留美、ボーダーに入らないか?」

 

そう俺が考えたのは留美をボーダーに入れることだ。海老名さんが言っていた別のコミュニティを作るという案を参考にさせてもらった

 

留美 「私がボーダー…」

鶴見 「比企谷君が言ったように私は留美が入りたいというなら私は止めないよ。」

留美 「八幡変えられるかもしれないってどういうこと?」

八幡 「俺にできるのはきっかけを作るだけ。ボーダーに入って新しい人間関係を築けるかは留美の努力次第ってことだ」

留美 「…お母さん、私ボーダーに入りたい!」

鶴見 「わかったわ。比企谷君次の試験っていつ?」

八幡 「ちょうど今月に入隊試験があります。申込期限がもうすぐだと思うんで林間学校(これ)が終わったらすぐに申し込みをお願いします」

 

『プルル プルル』

 

八幡 「少し失礼します」

 

鶴見親子に確認を取り電話に出る。電話をかけてきたのは那須だ

 

八幡 「どうした那須」

那須 『比企谷君!葉山君と雪ノ下さんが昨日言ってたことやろうとしてるの!すぐに戻ってきて!』

八幡 「楓子さんたちは?!」

那須 『楓子さんは謡ちゃんとユイちゃんとどこかに行ってるの!』

 

楓子さんがいたら何とかしてくれると思ったが…

 

八幡 「わかったすぐに行く!俺が行くまで葉山たちを止めといてくれ!」

那須 『うん!』

鶴見 「比企谷君どうしたの?」

 

電話が切れると同時に鶴見先生が聞いてきた

 

八幡 「葉山と雪ノ下が昨日の案を実行しようとしてます。」

鶴見 「何で!倉崎さんはそこにいないの!?」

八幡 「いないみたいです。急いで向かいましょう」

 

現場に向かいに向かいながら留美に説明する。説明が進むにつれて留美の顔は真っ青になっていた。最後に俺はこう締めくくった。

 

八幡 「自分を変える一歩目だ。勇気をもって踏み出せよ」

 

***

 

留美 「もう私にかかわらないでください私のために何かしようとしないでください。迷惑です」

 

留美を連れて那須たちの下へ行き留美が葉山と雪ノ下に言い放った

 

八幡 「ということだ。本人が嫌がってるのにそれをするのはいじめと同じだぞ」

葉山 「留美ちゃんは本当に解決しなくていいと思ってるのかい?」

八幡 「それでいいって言ってんだろうが。ちゃんと耳ついてんのか?」

雪ノ下 「そんなんじゃ強くなれないわ!」

八幡 「そもそも強くなろうとしてないし、どんな強さを求めてんのかわからないやつに自分の一方的な考えを押し付けんなよ。あんまおいたがすぎるようなら陽乃さんに言いつけんぞ」

雪ノ下 「なっ!?姉さんは関係ないでしょ!」

八幡 「陽乃さんに頼まれてんだよ。お前が何かしでかしそうになったら報告しろって」

 

 

まあ嘘だけどな。けどほんとに何かしでかすようなら報告したほうがいいかもな。雪ノ下家の名を傷つけるわけにもいかないし雪斗さん(雪ノ下父)も陽子さんも(雪ノ下母)いい人だし…

閑話休題。悔しそうな表情のままその場を去る雪ノ下と雪ノ下についていく由比ヶ浜。念のために葉山と雪ノ下には見張りをつけておきたいが…三浦と海老名さんがうなずいてくれ、三浦は葉山に、海老名さんは雪ノ下たちの方に向かってくれた。

 

那須 「ねえ比企谷君。比企谷君のことだからもう解決してるんじゃないの?」

八幡 「そうだった。こいつボーダーに入るから」

「「「えええーーー!」」」

 

その場にいた人たちの声が森中に響き渡った

 

***

 

夜に開催されたキャンプファイヤーも肝試しも特に大過なく過ぎ去りいろいろあったこのバイトもあとは帰るのみとなった。

 

平塚 「全員お疲れさん。終わったからと言って家に帰るまで気を抜かないように。ボーダー組の迎えはもうすぐ着くと連絡があったので少し待っていてくれ。総武組は車に乗り込んでくれ!」

 

総武高からのボランティア組がそれぞれ車に乗り込み出発した。それと入れ替わるように行きと同じ諏訪さんと沢村さんが到着し、俺たちも車に乗り込んだ。ユイは俺の膝の上に座りそのことで俺は散々いじられ、2泊3日のバイトが終了した

 




次はララポに連れて行こうと思ってるんですが大型商業施設に行った記憶がほぼないボッチのサラリーマンでした


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夏休み1

今年最後の投稿です。
なんとか間に合わせるために最後雑になりました。
来年もよろしくお願いいたします


キャンプのバイトの翌日、惰眠をむさぼろうとしていた俺は愛娘によって起こされた。…ダンスで

 

ユイ 「パパー!」

八幡 「グフッ!」

 

どっかの空中艦の義妹司令官のような起こし方(腹にダイブ付き)をするユイとその兄と同じような反応をする俺。

 

八幡 「ねえユイちゃん?なんでこんな起こし方?」

ユイ 「こまちがやれって」

八幡 「こぉぉぉぉまぁぁぁぁちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

部屋から飛び出て小町がいるであろうリビングに飛び込む。

 

小町 「あ、お兄ちゃんおはよう。小町もユイちゃんももう食べたからお兄ちゃんも早く食べちゃって」

八幡 「ああ。じゃなくて!何でユイにあんな起こし方させたの?お兄ちゃん口から内臓が飛び出るかと思ったよ」

小町 「およ?お兄ちゃんあーゆーの好きじゃないの?それより早くご飯食べちゃって!もうすぐういちゃんも来ちゃうし!」

 

悲報 俺氏妹に変な性癖を持っていると思われている模様。それに

 

八幡 「謡が来るって今日なんかあったか?」

小町 「あ、そっか。お兄ちゃん昨日いなかったね。昨日の帰りの車の中でね、ういちゃんと今日ユイちゃんの服を買いに行こうってなってね」

 

ユイの服は発見した時の1着しかなく今はサイズの合ってない小町の服を無理やり着せている状態だ。確かに買いに行く必要があるな。駄菓子菓子…違った。だがしかし

 

八幡 「俺が行く必要なくない?」

小町 「お兄ちゃんは荷物も…財布だよ!」

八幡 「そこまで言ったら同じだし、言い直した後の方がひどくなってんぞ」

小町 「まあまあ気にしない!ほらご飯食べちゃって!」

 

俺は溜息を吐きつつユイの頭をなでてから小町の用意した朝食を食べ始めた。

 

***

 

八幡 「そんなわけでやってきました。ららぽーと!」

小町 「小町、謡、ユイ、八幡の四人は果たして目的のユイの服(ブツ)を手に入れて帰ることができるのか!?」

謡 「全米が泣いた超大作!」

小町・謡 「「ユイの名を!絶賛公開中!イエー!!」」

 

小町と謡がハイタッチをしつられてユイもハイタッチをする

 

八幡 「ツッコミたいとこはたくさんあるが移動するぞ。入口にずっと立っているのは迷惑だからな」

 

それに周りの視線がつらいし。痛いものを見る目というよりはかわいいものを慈しむような愛に満ちた目とこの集団を連れてる俺への嫉妬の視線がほとんだだけどな。たくさんの人の視線に慣れていない俺は今すぐにでも帰りたい。まあそんなことはできるわけもなく俺たちはそそくさと服屋を目指した

 

***

 

服屋では………すごかった。はじめは小町と謡と店員さんがひたすらユイに似合う服を持ってきては着せ替えをしていたのだが1着着せ替えるたびにユイを見る人が増え最終的には即席のファッションショーとなっていた。もともとユイの服には金の糸目はつけないつもりだったが20着を越え30着に近づいた時にはさすがにストップをかけた。それから厳選に厳選を重ねた結果、何とか6着まで絞った。そこに至るまでかかった時間は2時間。ユイの服を買ったころにはちょうど昼飯のピークを過ぎた時間でフードコートには空席も目立つようになってきていた。俺たちは席の確保と買い出しに分かれた。買い出しは俺とユイ、席の確保は小町と謡だ。俺たちは某ハンバーガーショップの数人の列に並ぶ。人数分の注文とお金を払いハンバーガーを受け取る。それから小町を探していると後ろから声をかけられた。

 

「比企谷」

 

後ろを見るとそこには千種兄妹と見知らぬ女子がいた。

 

八幡 「久しぶりだな。千種、千種妹。そっちの人は初めまして」

??? 「八重垣青生です。あすちゃんと霞さんとは中学が同じでそれから仲良くさせてもらってます」

八幡 「これはど丁寧にどうも。比企谷八幡です。千種とはクラスメートです」

明日葉 「比企谷、その子は?」

 

千種妹がユイを見ながら言った

 

八幡 「ああえーと」

 

馬鹿正直に事情も知らないやつに娘だというと変な目で見られるからな…と、どう濁すか考えていると

 

ユイ 「パパこの人たち誰?」

明日葉 「そのパパっていうのは比企谷で合ってる?」

 

明日葉がユイに目線を合わせながら尋ねる。

 

ユイ 「うん!」

 

無邪気に答え俺の足に抱き着くユイ。ちょやめてそんな目で見ないで

 

霞 「比企谷、警察へ行こう」

八重垣 「そうです!自首なら罪が軽くなりますから!」

 

千種だけでなく初めて会ったばかりの八重垣にまで言われた。そんなに目の腐った男が小さい子にパパと呼ばれるのは犯罪チックに見えるのか…あ、俺もそんな光景見たら警察呼ぶわ

 

八幡 「いろいろ事情があんだよ!察しろ!」

 

そこで後ろから小町の声がした

 

小町 「お兄ちゃん遅いよ!ういちゃんも小町もお腹ペコペコだよ!あれ、その人たちは?」

八幡 「おう小町。知り合いだ」

明日葉 「比企谷の妹?あたしは千種明日葉。よろしくね」

霞 「千種霞だ。」

八重垣 「八重垣青生です。」

小町 「お兄ちゃんも妹の比企谷小町です!よろしくお願いしますね!」

八幡 「小町、千種兄妹の方はお前と同じで今期の入隊試験受けるぞ」

小町 「そうなんですか!」

明日葉 「ってことは小町ちゃんも受けんの?」

小町 「はい!お互いに合格するといいですね!」

霞 「お前ら誰か待たせてるんじゃないのか?」

 

…やべ、謡忘れてた

 

八幡 「悪い千種助かった。小町、ユイすぐ戻るぞ。謡が待ってる」

小町 「あ、先行ってて。明日葉さんたちと連絡先交換してから行くから。ういちゃんは奥の柱の近くにいると思うよ」

八幡 「わかった。じゃあな千種兄妹、八重垣」

千種 「じゃあな」

 

ユイを連れて謡のところへ急ぐ。そして謡を見つけたのはいいが謡は頬を膨らませて怒っていた

 

謡 「ハチ兄遅すぎなのです!ハチ兄とユイちゃんを探しに行ったはずの小町さんもなかなか戻ってこないし心配したのです!」

八幡 「悪い。ちょっと知り合いと会ってな。何でもするから許してくれ」

謡 「じゃあ私にも服買ってほしいのです」

八幡 「わかった。昼めし食ったら買いに行くか」

謡 「はい!」

 

それから小町も合流し、少し遅めの昼めしを食いながら午後の予定を話し合った

 

***

 

ユイ 「パパーこれ」

八幡 「んーそれはまだユイには難しいからな、こっちとかはどうだ?」

ユイ 「これにする!」

 

俺とユイは本屋に来ていた。謡の服を買い、小町が買いたいものがあるとかで謡とともに他のお店に行ったので別行動となっている。

ユイは本に興味があったみたいで何冊か手にとって中を見て、買いたい本を決めたようだ。それから俺もほしかった本を探す。お、あった。その本に手を伸ばすと横から伸びてきた手がその本をかっさらっていった。

 

「八幡君これ私持ってるから読みたいなら貸すよ?」

八幡 「ありがとうございます。めぐりさん」

 

俺のほしかった本をかっさらっていたのはめぐりさんだ。そしてめぐりさんの後ろには楓子さんもいる。

 

楓子 「ハチさんはユイちゃんの服を買いに?」

八幡 「ええ。小町と謡も一緒なんですが今は別行動してます」

めぐり 「ねえねえユイちゃんってさっきふうちゃんが八幡君の娘って言ってた子?」

八幡 「はい。おーいユイー」

 

近くでまた本を見ていたユイを呼ぶ。

 

ユイ 「パパなーに?」

八幡 「めぐりさん、この子がユイです。」

めぐり 「こんにちはユイちゃん。私はめぐりだよ!よろしくね!」

ユイ 「ユイです!」

めぐり 「八幡君。この子頂戴!大事にするから!」

 

そう言ってめぐりさんがユイを抱きしめる。

 

八幡 「だめです。ユイは俺の娘ですから誰にも渡しません。」

めぐり 「八幡君のけち!ぼけなす!はちまん!」

八幡 「八幡は悪口じゃないでしょうよ。そんなこと言ってるとこうしますよ」

 

俺は無理やりめぐりさんとユイを離した。

 

めぐり 「もっとぉ!もっと私にユイちゃんを~!」

八幡 「落ち着いてくださいめぐりさん!」

 

なんかどんどんめぐりさんがやばくなってる気がする。目がもうやばい。何とか抑え込もうとするが俺一人では抑え込むことができない

 

楓子 「落ち着きなさいめぐり。そんなにユイちゃんと一緒にいたいなら今日はハチさんの家に泊まればいいでしょう?」

八幡 「え?」

めぐり「それだー!そうしよう!」

八幡 「家主の俺の意見は!?」

めぐり 「ダメ…かな…?」

 

頬を染め上目遣い…グッときました

 

八幡 「ま、まあしょうがな

めぐり 「ユイちゃんなにして遊ぶ?絵本だ!絵本を読もう!」

八幡 「切り替えはえーな!ってかキャラ変わりすぎだろ」

めぐり 「ほらほら八幡君早く早く!」

八幡 「わかりましたって。…楓子さんは何を?」

楓子 「陽乃さんに連絡とってただけですよ?陽乃さんも参加するそうです」

八幡 「も、って楓子さんも?」

楓子 「もちろん参加しますよ」

めぐり 「八幡君!早く小町ちゃんたちと連絡とって!」

八幡 「ハァ…わかりましたよ」

 

小町と連絡を取り、合流してから家に向かった。それからユイが寝るまで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ…まあたまにはこんな休日も悪くない…のか?

 

***

 

ユイが寝てからは静かにできるゲームということでマージャンをしていた。時折メンバーを入れ替えつつ、遊んでいると時計の針は12時を回った。そしたら急に電気が消えあたりは真っ暗になった。

 

「停電ですかね?」

「ブレーカーが落ちただけとか?」

「俺見てきますよ」

「小町がブレーカー見てくるからお兄ちゃんは座ってて!」

 

小町がブレーカーを確認しに行った。いつもだったらこういう時は俺に任せていたと思うが珍しいな。それになぜか人が移動する音がするがみんなこの暗闇の中で行動してるのか?

 

「ブレーカーが落ちたみたいです!つけますよ!せーの!」

 

ブレーカーの方から小町の声がする。せーの?

 

「「「「八幡(君)(ハチ兄)(ハチさん)誕生日おめでとう!」」」」

「へ?」

 

俺がスマホの画面を確認すると8月8日。つまりは俺の誕生日だった。このあと俺はみんなからマッ缶を箱でなどたくさんのプレゼントをもらった。

さらにこの日、防衛任務でボーダー本部に行くとたくさんの人からまたマッ缶やぼんち揚げを箱でなどたくさんのものをもらった。

 

 

 

 

 



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夏休み2

あけましておめでとうございます。サラリーマンです。
なんとか1日で書き切り、連投することができました
それに、少し変えてみました
今年もよろしくお願いします


8月の中頃。今日はボーダーの入隊試験の日だ。俺は小町とユイを連れて試験会場に向かっている

 

「小町もうすぐ会場だ」

「う~なんか緊張してきた」

「心配すんな。基本的にはトリオン量で決まるんだ。俺の妹なら落ちるなんてことはないだろ」

 

俺はボーダーの中でも上位クラスのトリオン量があるからな。同じ血が流れてるはずの小町が落ちるなんてことはないだろ

 

「それに落ちてもオペレーターになるっていう選択肢もあるんだ。そこまで肩ひじ張らずに楽に行けよ」

「うんそうだね!ってあれって明日葉さんたちじゃない?」

「あーそうだな」

 

会場の入り口付近に千種兄妹と…川…川…口?川何とかさんがいる。

 

「明日葉さーん!」

「あ、小町ちゃん」

 

小町が三人のところへ走っていく

 

「おはようございます!」

「おはよ」

「おう」

「おはよう」

 

上から小町、千種妹、千種、川島だ。小町と川谷は面識があったのか

 

「ようお前ら」

「あ、比企谷おはよう。ってその子は?」

 

ユイとまだ会ったことなかった川崎が聞いてきた。

 

「比企谷の娘だよ。ユイちゃんおはよ」

 

俺が答えようとしたが先に千種妹が答えやがった。千種妹の言葉で、川崎は驚いている

 

「いろいろ事情があんだよ」

「ってかその事情俺たちまだ聞いてないんだけど」

「小町説明しといてくれ。それにもうそろそろ会場入っとけ」

「あ、そうだね。お兄ちゃん行ってくるね」

「おう。行ってこい」

 

小町たち四人が会場に入ってく。

 

「じゃあユイ俺たちは玉狛支部に行くか」

「うん!」

 

小町が入隊試験を受けている間俺たちは玉狛支部に行くことにしていた。宇佐美がプログラムした「やしゃまるシリーズ」というモールモッドの相手をしてほしいらしい。そんなわけで玉狛支部に向かおうとすると俺たちが来た方から鶴見親子がきた

 

「比企谷君おはよう」

「八幡おはよ」

「おはようございます。ルミルミボーダーの先輩からのありがたいお言葉だ。」

「な、なに?それに留美」

「目上の人には敬語を使え。年上に敬語使わずに舐めた態度ばっか取って先輩にぼこぼこにされて心折られて辞めてったやつを俺は知ってるからな」

 

ま、ぼこぼこにしたの俺なんだけどね。あの永井とかいうやつ最後まで俺に舐めた態度取ってたからな。俺がまだB級だった時に向こうが稽古つけてくれって頼んできて(きっと俺が弱いと思って笑おうとしてたんだろうな)舐めた態度ばっかだったからひたすら手足斬り落としてたら対戦が終わると泣いてどっかに行ってそれから姿見なくなったからな。緑川も最初は舐めた態度だったが一度対戦すると人が変わったように素直になったからな。

 

「うん。わかった。じゃなくてわかりました」

「よしそれでいい。頑張ってこい」

「ありがとうございました。八幡先輩」

「おう」

「がんばってね!」

「ありがとユイちゃん」

「じゃあ留美行きましょう」

 

鶴見親子が試験会場に向かっていった。そしてまた歩き出すと今度は三浦と海老名さんが走ってきた

 

「ヒキオおはよう」

「あ、比企谷君ハロハロ~ユイちゃんもハロハロ~」

「はろはろ~」

 

なにそれかわいい。ユイもっとやって。それより

 

「時間大丈夫なのか?」

「やっぱり!優美子が寝坊するから!」

「今そんなこと言っても仕方ないじゃん!ほらまた走るよ姫菜!じゃあねヒキオ!」

「じゃあね!比企谷君!」

 

慌ただしく二人は去っていった。そして俺たちは玉狛支部に向かった

 

***

 

「来たぞ宇佐美」

「お、待ってたよ比企谷君」

「何で比企谷がここに?」

「ほらこの前俺たちも戦った「やしゃまるシリーズ」の相手をするんじゃないですか?宇佐美先輩もっと相手がほしいと言ってたし。ですよね比企谷先輩」

「ああ合ってるぞ」

 

俺の言葉に反応したのは上から順にボーダーメガネ人間名誉会長の宇佐美、だまされガール小南、もさもさしたイケメン烏丸だ。

 

「比企谷その後ろにいる女の子は誰よ」

「小南先輩知らなかったんですか?この子は比企谷先輩の娘さんですよ」

「えっそうなの?」

「すいません。嘘です」

「騙したわね!比企谷ぁ!」

 

小南の言葉にいつもの調子で烏丸は嘘をついているが今回は烏丸が言ってることは正しい。そしてなぜか俺が嚙みつかれる

 

「噛むな!俺を嚙むな!それに烏丸が言ったようにこの子は俺の娘だ!」

「「え」」

 

小南も烏丸も驚く。普段クールな烏丸の驚いた表情なんて珍しいな

 

「ほうほう。その子が本部で噂になってる比企谷君の娘だね」

「ちなみにどんな噂?」

 

最近ユイのために防衛任務以外ではボーダー本部に行かなくなっているので本部で流れているという噂が気になった

 

「んーとね、竹を切ったら出てきたとか、川から流れてきた桃を切ったらその子が出てきたとか、空から降ってきたとか、比企谷隊の誰かとの子なんじゃないかとかいろいろあるよ。比企谷隊の中でも本命が楓子さん、対抗が陽乃さんだね」

「後半で急に現実的になったな」

 

かぐや姫、桃太郎、ラピュタと来て最後に現実を見せるというね

 

「それで結局真相はどうなんですか?」

「あん中にはねえよ。正解は山の中で拾った、だ」

「「「は?」」」

 

三人の声が重なった。

 

「八月入る前くらいに高2組のラインでキャンプのバイトの連絡したろ。その時に森の中で倒れてて助けたら懐かれて今に至るってわけだ。」

「でもパパって」

「それはこいつ俺が助ける前の記憶がなくてな。それで起きて初めて見た俺をパパだと思ったんじゃないかと俺は思ってる」

「ほーそういうこと…」

 

そこで俺の服が引っ張られる。

 

「おーごめんな。じゃあユイ自己紹介だ」

「ユイだよ!よろしくね!」

「宇佐美栞だよ。それにこっちが小南桐絵でこっちは烏丸京介。よろしくねユイちゃん」

「よろしくねユイちゃん」

「よろしく」

 

それぞれの自己紹介が終わるとさっそく本題に入る

 

「それじゃあさっそく本題に入ろうか。改めて説明するけど比企谷君に挑戦してほしいのはあたしがプログラムした「やしゃまるシリーズ」だよ。」

「シリーズってことは何体か種類があんのか?」

「うん。圧倒的なパワーと装甲!やしゃまるゴールド!神速の斬撃ととんがったボディ!やしゃまるブラック!スリムな体に銀翼の翼!やしゃまるシルバー!女子ウケがいい!やしゃまるハニーブラウン!やしゃまるブラックのことが気になっているが生き別れの兄妹だってことは知らない!やしゃまるピンク!さあどれと戦う?」

「…順番に一体ずつ出してくれ」

「おっけ~それじゃあよろしく!」

 

俺は玉狛支部の地下空間でトリガーを起動しやしゃまるシリーズの出現を待った。

 

***

 

異変はやしゃまるシリーズと戦い始めてからすぐに起きた。

 

『比企谷君!ユイちゃんが!』

 

その言葉を聞いた瞬間おれは地下を飛び出した。さっきいた部屋に入るとユイが気絶したようにソファーに横になっていた。

 

「宇佐美なにがあった!」

「あたしの膝の上にのって一緒に比企谷君の勇姿を見ようとしてたんだけどモニターにやしゃまるゴールドが出たら気を失っちゃって」

 

そこで俺が開け放ったままのドアから二人の男が入ってきた

 

「どうした?なんかあったのか?って比企谷君」

「八幡ではないか!どうしたのだ?」

 

玉狛のエンジニアのクローニンさんと材木座だ。

 

「材木座、どうしてここに」

「クローニン殿とトリガーの話をしていたのだ。面白い話がたくさん聞けたぞ八幡!」

 

その時、ユイが急に起き上がった。俺はユイに駆け寄る

 

「ユイ!大丈夫か!」

「パパ、全部思い出したよ」

「八幡誰だその子は!お主のことをパパと呼んだではないか!」

「ちょっと黙ってろ材木座。ユイ何を思い出したんだ?」

 

俺は材木座を黙らせ、ユイに続きを促す

 

「皆さんはネイバーフッドにあるトロポイという国を知っていますか?」

 

ユイが俺たちに尋ねる。俺は分からないがネイバーであるクローニンさんなら何か知ってるんじゃないかと思いクローニンさんの方を見る。

 

「確か自立トリオン兵を作ってる国だったか?」

「はい。私はトロポイで開発されていた次世代型自立トリオン兵試作1号コードネームユイ。それが私です」

「ユイが…トリオン兵だと…」

「次世代型というと何が違うんだい?」

 

クローニンさんの問いにユイは答える。

 

「次世代型は自動で情報を採取することともう一つ。人工的にサイドエフェクトを持った自立型のトリオン兵のことです。」

「人工的なサイドエフェクト…ユイもサイドエフェクトを持ってるのか?」

「はい。私のサイドエフェクトは姿を見るとその人の感情が分かるというものです。このサイドエフェクトのせいで向こうではたくさんの人の心を見せられました。歓喜や感動などといった正の感情。怒りや嫉妬、絶望といった負の感情。そんな中で負の感情は私の心の中にバグを残していったのです。」

「そのバグのせいで記憶喪失になったのか?」

「結果的にはそうなります。」

 

ユイは俺の言葉を肯定する

 

「そのバグは私のサイドエフェクトに多大は影響をもたらしました。そのバグのせいで私は正の感情が見えなくなり、負の感情しか見ることができなくなりました。」

「そしてまたバグがたまる。…負のスパイラルか…」

「バグがたまりすぎた私の心は次第に崩壊していきました。そして記憶がなくなった私はマスターに捨てられました。それからどういう経緯で玄界にたどり着いたかは私自身覚えていません。」

「それならばもう問題ないのではないか?事情はよく分からぬがユイ殿の記憶が戻ったから八幡と一緒にいられないということはないのであろう?」

「いいえ。これはそう簡単でもありません。マスターたちは私の記憶が戻ったときに他国に情報が洩れぬように記憶が戻ったら私が崩壊するように改造しました。」

「何でトロポイはそんなことを…そんな手間を加えるくらいならその場で殺した方が

「クローニンさん!」

「ごめん比企谷君」

 

俺の怒鳴り声でクローニンさんは自分の失言に気付いたようで謝った。

 

「いいんですパパ。私に最後の改造を施したマスターが言ってくれました。『自分たちが感情を持たせたせいで君にこんな目に遭わせて悪かった。上の命令で改造をやめることはできないが何とか記憶がないうちは崩壊をしないように改造する許可はもらった。力が及ばずに申し訳ない』と。それでクローニンさんと材木座さんにお願いがあります。今私の中にはトロポイで与えられた情報と玄界に来るまでに通ったはずの国の情報があります。これを私の中から抜きとってください。」

「けどそれをしても君は…」

「はい。私はもう助かりません。けど私が生きたきた証をパパたちのために残したいんです。」

「ユイ…」

「ずっと一緒に居たかったです、パパ」

 

俺は涙を流してユイと抱き合う。

 

「ユイ俺もずっと一緒に居たいよ」

「パパぁ……」

「八幡、もしかしたらユイ殿を助けられるかもしれないぞ」

「本当か材木座!」

 

材木座の言葉に俺は顔をあげる。

 

「理論上では可能だよ。ユイちゃん君が言う崩壊まであとどれくらい時間がある?」

「もうそんなに時間がないです!」

「わかった。急ごう義輝君」

「お願いします!材木座!クローニンさん!ユイを助けてください!」

「「全力を尽くす!」」

「それで八幡お主のスマホを貸してくれ。」

「俺のスマホがユイを助けるために必要なのか?」

「ああ。ユイちゃんを助けるためには絶対必要になる」

 

俺は材木座にスマホを渡す。

 

「しばし待たれい!」

 

材木座とクローニンさんはユイを連れて俺のスマホをもって玉狛支部の研究室に入っていく。この時ただ信じて待つしかできなかった俺はただただもどかしかった

 

***

 

材木座とクローニンさんが研究室に入ってからすでに一時間が経過した。

 

「ハチ兄!ユイちゃんの記憶が戻ったって本当ですか!?」

「ハチさん!どうなんですか!?」

「八幡君!」

 

入口につながるドアから謡、楓子さん、めぐりさんが飛び込んできた。

 

「ええ。本当です」

「ならユイちゃんはどこに?」

「今は材木座とクローニンさんと研究室の中にいます」

「何でユイちゃんが研究室に?」

 

めぐりさんの疑問はもっともだろう。

 

「それは…ユイがトリオン兵だったからです」

 

それから三人にユイから聞いたことをすべて話した。三人は驚きながらもしっかりと話を聞いてくれた。

 

「あとは信じるしかないのです」

「そうね」

 

三人も俺と同じようにただ信じて材木座とクローニンさんが出てくるのを待った。

 

***

 

それから30分後。とうとうその時が来た。材木座とクローニンさんががユイを連れ立って出てくる。………はずだった。なのに出てくるのは材木座とクローニンさんだけだ。

 

「材木座、ユイは…」

 

材木座は無言で俺のスマホを返してきた。その顔には悔しそうな表情。

 

「そんな…ユイ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですかパパ?」

 

ユイの声が俺の手元から聞こえてきた。俺が手元を見るとスマホの画面にユイが映っていた。

 

「ユイがなんで俺のスマホに!?」

「ユイちゃん!?」

「パパ驚くのはまだ早いです!ちょっとトリオンを込めてみてください」

「俺生身なんだけど」

「イメージだ八幡!スマホにトリオンを込めるイメージをするのだ!」

 

材木座に言われた通りイメージをする。俺のトリオンをスマホに込めるイメージ…イメージ…

 

「こうか?」

 

その瞬間俺のスマホから光が飛び出した。その光は俺のスマホの上で人の形に集まりだし、最後にひときわ強く発行したかと思うとユイとなって俺の目の前に降り立った。

 

「また会えましたねパパ、ねえ」

「ユイ!」

「ユイちゃん!」

 

俺たちはユイに抱き着く。

 

「パパ、ねえ」

「なんだユイ?」

「なあにユイちゃん?」

「大好き!」

 

こうしてユイは俺たちの下に戻ってきてくれた

 




思ったけど誕生日忘れてない?


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夏休み3

二つ前の話に誕生日のことをを追記しました。
材木座に説明させるってむずいですね


「しかし、材木座これはどういう原理なんだ?」

 

俺のスマホから実体化したユイの頭をなでながら材木座に聞く。しかし答えてくれたのはクローニンさんだった

 

「簡単に言うとコピペだよ」

 

コピペ?あのコピーアンドペーストの略?俺が疑問に思っていると楓子さんが聞いた

 

「コピーアンドペーストのことですか?」

「うん。すべて物には核がある。トリオン兵にも核があってその核の中には情報が詰まってる。その核の中からユイ嬢を構成する核の情報をコピーし、代わりの核となる物にペーストする。そういう意味でコピペ。」

「じゃあこの実体化については」

「それは我が説明しよう!」

 

次の質問に答えたのは材木座だった

 

「基本はトリオン体の換装と同じ原理なのだ。トリオンで器を作りそこに核を入れる。ただユイ殿には自分でトリオンを生成することはできない。一応擬似的なトリオン生成器官は組み込んであるがそれで生成されるのはごく少量。なので他者のトリオンをもらうことで実体化を可能にしている!」

「それは誰のトリオンでも可能なのですか?」

「無論だ!」

 

謡の質問に答える材木座。

 

「だったら私のスマホにもハチ兄と同じ装置もつけていただけませんか?」

「私にも!」

「私のもお願いします」

 

めぐりさん、楓子さんも謡の提案に乗っかる。

 

「そのことなのだが、核となる部分は林道支部長がネイバーフッドから持ち帰ったものを使わせてもらったので八幡のスマホに使ったものしかないのだ。」

「だから残念だけど実体化は八幡君のスマホからしかできないんだ。けど、専用の回線をつなげば実体化はできないけどユイ嬢がそれぞれのスマホを行き来できるようにならできるよ。それでもいいかい?」

「もちろんです!」

「わかった。さっそく取り掛かるから貸してくれるかい?」

「よろしくお願いしますなのです!」

「我も手伝った方がよいか?」

「いや大丈夫だよ。それより材木座君は比企谷君たちにアレを見せておいてくれるかい?」

「承知した!」

 

クローニンさんが謡、楓子さん、めぐりさんのスマホを受け取り材木座と一緒に研究室に行った。材木座はすぐに戻ってきたがその手の中にはメガネがあった

 

「ユイ殿またスマホの方に戻ってくれるか?」

「わかりました材木座さん」

「ユイは自分の意志で戻ることは可能なのか?」

「はい。自分の意志で戻ることもできますし、トリオンがきれれば自動的に戻ることになります。この辺は某家庭教師が殺し屋のマンガの匣兵器とおなじですね」

 

へぇーあの漫画と同じかぁ…ってちょっと待て!

 

「何でユイが漫画のこと知ってんの?おれ家でそれ見せた覚えないんだけど」

「材木座さんがつぶやいたのを聞いて検索してみたんです」

「えっ?検索ってインターネットで?」

「はい!スマートファンに核があるおかげか、インターネットを潜ることができるようになったんです!気分はもう某自律固定砲台さんです!」

 

なんかユイがどんどん変な方向に進化していってる気がする。

 

「じゃあ一回戻りますね」

 

そう言い残しユイは俺のスマホへと戻っていった。

 

「基本的にユイ殿がスマホにいる場合はスマホのカメラのレンズを通してユイ殿は外を見ることができる。八幡このメガネにトリオンを込めてかけてみてくれ」

 

材木座に言われた通り、トリオンを込めてメガネをかける。かけてみた感じ普通のメガネとあまり変わらない。度が入っている感じもしないし…

 

「これがパパの見ている景色ですか!」

「…材木座、説明を」

「もう分かったと思うがトリオンを込めてこのメガネをかければこのメガネはユイ殿の目の代わりとなる!さらにこのメガネには拡大、集音機能も備わっておる!」

「「「「お前(材木座さん/くん)は何を目指してこのメガネを作ったんだよ(の!?)!」」」」

 

思わずこうツッコんだ俺たちは悪くないだろう。だってこれ見た目は子供、頭脳は大人の名探偵がかけてるメガネとそっくりじゃん。なにこの無駄な技術力の高さ。ノーベル賞でも貰って来いよ

 

「あ、パパ!小町さんからLINEが来ました!読み上げますね!『お兄ちゃん、入隊試験終わったよ!小町は無事合格しました!他の人は明日葉さん、霞さん、沙希さん、留美ちゃん、優美子さんは合格したよ!姫菜さんは落ちちゃったけどオペレーターとして入隊するってさ!今会場近くのサイゼでみんな集まってるからお兄ちゃんも用が済んだらこっち来てね!』だそうです!なんて返信しましょうか?」

「返信までできんのかよ!もうほんとに自律固定砲台だな…『了解、もう少し待ってろ』って返信しといてくれ」

「わかりました!」

「これから小町を迎えに行こうと思いますが楓子さんたちはどうします?」

「私たちは残ります。まだスマホが帰ってきてませんし、それにユイちゃんがいない理由も説明しやすいでしょうし」

「あ…」

 

そうだった。忘れてた。千葉村からほとんどの時間一緒に居たユイはもういない。いやいないわけじゃないがユイを長時間実体化させることはトリオン的に難しい。小町たちの前で堂々とユイにトリオンを供給することはできない。今日明日くらいなら楓子さんや謡のところにいると言えばごまかせるだろう。しかしそれ以降となると厳しいものがある。ましてや千葉村でユイに嫌われたかもしれないというだけであんな醜態を見せたんだ。ユイと2,3日会わなかったとなると禁断症状が出てもおかしくないと思われてるかもしれない…

 

「楓子さんどうしましょう?これからどうやって小町をごまかせばいいですか」

「それなんですが小町さんにはばらしてもいいんじゃないでしょうか。ボーダーに入隊したならネイバーに国があることもいずれ分かることですし。ちょっと早めに事情を知ったと思えばなんてことないと思いますよ」

「私もそれがいいと思うのです!」

「私もそれでいいと思うよ」

 

謡もめぐりさんも楓子さんの考えに賛同した

 

「わかりました。とりあえず今日は謡のところに行ってるって言ってごまかして今度本当のことを話そうと思います」

「はいそれがいいと思います」

「それじゃあまた。宇佐美、『やしゃまるシリーズ』の相手できなくて悪かった。また今度来た時に相手するよ」

「うん。よろしくね比企谷君」

「おう」

 

それから玉狛支部を後にし、試験会場近くのサイゼに向かった。

 

***

 

「あれ?お兄ちゃん、ユイちゃんは?」

 

サイゼに着くなり小町に聞かれた。

 

「さっき楓子さんたちと会ってな。楓子さんと遊んでくるってさ。でこっちは千種は?」

「霞さんは何かまだ検査しなきゃいけないことがあるみたいでまだ残ってるよ」

 

入隊試験が終わった後に測定するもの?…サイドエフェクトか?

 

「で、お兄ちゃん!小町たちに何か言うことは?」

「ボーダー入隊おめでとう?」

「何で疑問形なのさ。まあいいや。じゃあ小町たちのボーダー入隊を祝ってお兄ちゃん!ゴチになりまーす!」

「「「「「ゴチになりまーす!」」」」」

「いやいやちょっと待て!俺今手持ちがアレだから無理だ!」

「お兄ちゃん…」

 

小町が神妙な顔で俺の名を呼ぶ

 

「ATMならそこだよ」

「おろしにいけと!?…はぁおごってやるから一人一品までにしろよ」

「やったね!」

 

みんなが好きなものを注文していく。ってかこいつら俺が来るまでドリンクバーで粘ってたのか?うわーなにそれ。スゲー迷惑な客だな

しばらくしゃべっていると注文したものが届き始めみんなが食い始める

 

「そういえばお兄ちゃん。もらった書類の中で適正トリガーとポジションって紙があったんだけどこれってどうやって決まったの?」

「詳しいことは俺も知らん。俺は一般公募じゃないからその紙もらってないし」

「へぇー比企谷って一般公募じゃなかったんだ?じゃあスカウト?」

「たぶんな。俺もあれよあれよという間にボーダーに入ってたからよくわからん」

 

退院したらすぐにボーダーに連れて行かれてそのまま陽乃さんに剣の使い方教えてもらってたからな

 

「比企谷っていつからボーダーに入ってたの?」

「高1の春からだ」

「あんまし長いってわけじゃないんだ…」

「まあそうだな」

 

今考えてみると。確かに短いな。けど俺としてはこの一年、事故に遭ったと思ったらボーダーに入れられたり、そこで隊を組まされ隊長をやらされたり、いろいろあってすごい長く感じているけどな…隊と言えば

 

「千種妹。ほんとに千種と川崎と隊を組むのか?」

「あーそういえばそれなんだけど三浦さんと海老名さんも入れて5人で隊を組むことになったよ」

「ほう。お前ら適正トリガーとポジションはなんて書いてあるんだ?」

「あたしは拳銃型のアステロイド」

「あたしは弧月だよ」

「あーしも弧月だし」

 

上から順に千種妹、川崎、三浦だ。現状で前衛2枚に中衛1枚か。割とバランスがいいな

 

「けっこうバランスがいいな。小町と留美は何だった?」

「小町は射手でハウンドだよ」

「私はスコーピオンだよ、じゃないです」

 

小町も留美もなんとなく想像通りだな。ってか小町は弾バカになりそうな気がするな…

 

「比企谷仮入隊ってした方がいいの?」

「別にしなくてもいいがした方がはやくB級に上がりやすくはなるな」

「そっか。あ、お兄も来たみたい」

 

千種妹の言葉で入口を見ると千種がいた。千種は俺たちを見つけるとこっちに来る。そしてそのまま空いているこっちのテーブルに座った。(人数が多いので二つのテーブルに分かれて座っている)そして座るなり

 

「比企谷、サイドエフェクトってなに?」

 

やはり千種が受けていたのはサイドエフェクトの検査だったようだ。

 

「千種サイドエフェクトは一応機密事項だから一般人がいるところでは口にするな」

「わかってる。けど今はいいだろ?俺たちの周りには客がいないし」

「まあそうだな。サイドエフェクトはトリオンが脳や感覚器官に影響を及ぼして出た超感覚だ。検査して検査結果は教えてもらったか?」

「詳しい検査は後日やるって言ってたがなんか強化聴覚?ってのが俺にはあるらしい」

 

菊地原と同じサイドエフェクトか。

 

「簡単に言えば耳がいいってやつだな。」

「なにそれ。しょぼくない?」

「いやそうでもないぞ。そもそもサイドエフェクト自体が貴重だからな。サイドエフェクト持ってる人ボーダーでもそこまでいないし」

「そうか。ならいいや」

 

しかし強化聴覚か…使い方によっては驚異的になりそうだな。風間隊なんかはカメレオンが流行りだした頃に菊地原の耳のおかげで無双してたとか聞くし。やっぱいいなサイドエフェクトは。俺も持ってるけど…

 

「さあお兄も来たことだし帰りますか!」

「え、ちょっと俺まだ何にも食ってないんだけど」

「そうだな帰るか」

 

千種妹の提案に俺も乗っかる。おごる人数は少ない方がいいからな。そしてみんなも帰る準備をし始めた。

 

「え、ほんとに帰るの?」

 

俺はみんなより一足早く伝票をもって席を立ち、会計を済ませて外で待つ。

 

「ちょっと待って。何で比企谷のおごり?」

「ほらさっさと帰るよお兄!じゃあねみんな」

「じゃあね」

 

千種を無視して同じ方向なのか千種兄妹と川崎が千種を引きづっていった。

 

「留美の家はどっちだ?」

「向こうの方」

 

留美が指さしたのは左方向だ。

 

「それならあーしたちと一緒だから留美はあーしたちが送ろうか?」

「留美はそれでいいか?」

「うん」

「じゃ頼んだ三浦」

「はいよ。じゃあねヒキオ、小町」

「じゃあね~」

「サヨナラ八幡先輩、小町さん」

「じゃあね!」

「じゃあな」

 

三浦たちも帰っていき今この場には俺と小町しかいない。

 

「俺たちも帰るか」

「そうだねお兄ちゃん!」

 

俺はこのタイミングでユイのことを言うことにした

 

「あのな―――

 

***

 

「あれが花火ですか!きれいですね!」

「そうだねユイちゃん!」

 

夏休みが終わるまでもう三日を切ったころ、俺たち(比企谷隊+ユイ)は地元の花火大会に来ていた。ユイの「花火を見てみたい」の一言により花火大会を見に行く計画を練っていたところに陽乃さんから貴賓席で見ないかとお声がかかり、比企谷隊とユイでおじゃまさせてもらっていた

 

「しかしほんとに俺たちで使っていいんですか?」

「うん!どーせ私やお父さんお母さんはあいさつ回りでここにゆっくり座ってみていられるほどの余裕はないからね。だったらユイちゃんの初めての花火を見るための場所として提供したほうが有意義だし」

「ありがとうございます。雪斗さんと陽子さんにも伝えてください。」

「うん!それにしてもユイちゃんがトリオン兵だったなんてね」

 

陽乃さんには小町に説明した後に電話で説明した。小町と同じで最初は半信半疑という感じだったが俺のスマホにいるユイや実体化を見せるとすぐに信じてくれた。

 

「あ、そろそろ行くね!じゃみんな楽しんでね!」

 

陽乃さんが雪斗さんと陽子さんがいる方に向かっていった。

 

「ユイ、楽しいか?」

「すごい楽しいですパパ!」

 

俺はこの笑顔だけですぐに始まる二学期を乗り切れそうだ。

 




次は文化祭編に入ります
次もよろしくお願いします


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文化祭編
文化祭1


なんか最近書く時間が取れないです。
そんなわけでしばらくの間、更新頻度が落ちると思います。
更新が遅くなっても終わりまではしっかり描き切るつもりなんでよろしくお願いします。


新学期【しんがっき】 新しく始まる学期。また、学期の初め。 我らが先生、グーグル大先生より。

新学期の意味を調べた理由?『舟を編む』に影響されたんじゃない。影響されたんじゃない!大事な事なので二回言いました!っと俺は新学期初日の朝に総武高の職員室に来ていた。

 

「失礼します。2-Fの比企谷です。水沼先生に用があり参りました。」

 

どうぞという声を聞いてから職員室に入り、職員室の奥の方にいる担当の水沼先生にシフト表を渡し、来た道を戻り職員室を出る。

 

「あ、比企谷」

 

振り返ってみるとそこに那須と熊谷がいた。

 

「よう那須、熊谷。お前らもシフト表の提出か?」

「そうだけど、お前らもって比企谷もシフト表の提出に?」

「ああそうだぞ」

「珍しいね。いつも放課後に防衛任務を入れてる比企谷隊が日中にシフトを入れるなんて。なんかあるの?」

「めぐりさんが文化祭実行委員の仕事があるからシフトは日中に入れてくれって」

「「ああ~」」

 

これから文化祭の準備が始まるがめぐりさんはすでに生徒会の方で忙しいらしい

 

「じゃあ比企谷は文実になったりすんの?」

「さあどうだろうな。まあできるだけめぐりさんを手伝うつもりだけどな」

 

めぐりさんは俺たちのオペレーターだからな、と続けると、那須と熊谷は軽く笑う。

 

「なんかあったら声かけてね」

「ああ、その時はよろしく頼む」

「またね比企谷」

「おうじゃあな」

 

職員室に入っていく二人を背に俺は自分の教室を目指した

 

***

 

始業式から数日後のLHRに文化祭の実行委員を決めることとなった。

 

「えーと文化祭の実行委員やりたい人はいますか?」

 

ルーム長の声が教室に響く。しかしその声に反応して手をあげる者はいない。…俺以外。

 

「じゃあ男子は比企谷君にお願いします。女子でやりたい人はいませんか?」

 

結局俺は実行委員になることにした。理由はめぐりさんの手伝いをするため。それに俺がある情報を聞いたからだ。その情報を提供してくれたのはセクハラエリートという妖しい人ではなく、某MぐりさんやA辻といった信頼できる筋からの情報なのだ。なんでもうちのクラスのある人が文化祭のクラスの出し物で演劇をしたいらしく、そのためにクラスの過半数に根回しし、多数決となっても勝てるようにしたらしい。まあそこまではいい。ここからが問題なのだ。演劇をしたいと言ってるのは海老名さん。そしてその海老名さんが台本を考えるというのだ。ここでさらに情報提供者を紹介しよう。T川隊のK近さんだ。彼女もまたMぐりさんやA辻と同じように俺が海老名さんにオペレーターの先輩として紹介した中の一人だ。彼女は6割ほど完成した台本を見せてもらったというのだ。その内容は口にするのもおぞましい(そこまでは言っていない)ものだったという。そんな最悪の演劇を回避するために俺は文実を選んだのだ。

 

「比企谷、お前どうした?文実に立候補するなんて。」

「めぐりさんの手伝いをするなら文実の方が都合がいいからな」

「ふーん」

 

千種は何も疑問に思わなかったようだ。菊地原の耳は心音で隠し事を見抜けるというが千種の耳は菊地原より精度が悪いのか、はたまた今は意識していなかったからか分からないが俺が何か隠してることは気づかれなかったようだ。じゃあ何も知らずに死地に赴くクラスの男子たちに敬礼っ!!

 

***

 

放課後になり会議室に向かう。ちなみにうちのクラスの女子の文実は葉山のカリスマ(

笑)によって相模という生徒に決まった。会議室に入るともうすでに半数くらいの人が集まっていた。その中には楓子さん、荒船さん、犬飼さん、奈良坂、歌川とボーダーのメンツもいた。楓子さん以外は一か所に集まっていたので、そこに向かおうとしたがその途中で楓子さんに呼び止められた。

 

「あらハチさんも文実になったのですね」

「ええ。こっちの方がめぐりさんの手伝いがしやすいですからね」

「ねえ楓子。この子は?」

 

楓子さんと話していた女性が聞いてきた

 

「比企谷八幡。私たちの部隊の隊長ですよ」

「楓子たちの隊長さんってあの噂の子連れ隊長だよね。へぇ~この子がそうなんだ。私は竹宮琴音。B級の桐ケ谷隊のオペレーターやってます」

 

桐ケ谷隊…確か聞いたことあるぞ

 

「今B級ランク戦で破竹の勢いで勝ち上がっているっていう桐ケ谷隊ですか?」

「うんそうだよ」

 

確か、男一人と女二人でチームで男の方は陽乃さんと同じように弾丸を切るって噂になってたと思う。

 

「比企谷八幡です。よろしくお願いします」

「うんよろしくね」

 

そこで会議室の扉が開き雪ノ下が入ってくる。雪ノ下は俺を見つけるとにらんでから空いている席に座った。

 

「ねえ比企谷君。君あの子に何かしたの?すごいにらんでたけど」

「向こうが勝手につっかかってきてるだけなんで気にしないでください」

 

そこでまた会議室の扉が開き、今度は先生と生徒会の人たちが入ってきた。その先頭を歩いているめぐりさんは俺たちに気付くと小さく手を振ってきた。俺はそれに返すと楓子さんと竹宮さんに一言言ってから2年生の場所の空いている席に座った

 

 

全員が座った頃合いを見計らいめぐりさんが話し始めた

 

「生徒会長の城廻めぐりです。それじゃあさっそくなんだけど実行委員長を選びたいと思います!誰かやってくれる人はいませんか?」

 

やはり手をあげる者はいない。俺もめぐりさんの手伝いをするために文実になったがさすがに実行委員長はめんどくさすぎてやる気にならない。すると一人の女子生徒が小さく手を挙げた。

 

「あの~うちみんながやらないっていうならやってもいいですけど」

「本当?えっと」

「2年F組の相模です。あんまり前でるのとか得意じゃないですけど。うちもこの文化祭を通して成長したいっていうか」

 

「なあ比企谷あいつが実行委員長で大丈夫なのか?」

「今なら俺も未来視のサイドエフェクトが使える気がする」

「奇遇だな。俺もそう思う」

 

奈良坂がこんなこと言うなんて珍しいな。けどまああんな上っ面だけの言葉聞けばみんなそう思うか。あのめぐりさんもほかの立候補がいないから相模に決めようとしてるがその声にはいつものほんわかさが全然ないからな…はぁどうなっていくのかねこの文実は…

 




水沼先生は三雲修の通う学校の水沼先生の双子の姉です
竹宮さんは誰かわかるかな?
正解は覚えてたら次回!


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文化祭2

前の話切るとこミスったな


さっそくめぐりさんが実行委員長となった相模に司会をやらせているが予想していた通りやばかった。実行委員の部署を決めようとしていたのだが、噛むのはいいがそれを恥ずかしがり、どんどん声が小さくなりほとんど聞こえなくなり、最終的にめぐりさんがさばいてしまっていた。

俺は仕事の楽そうな記録雑務にした。俺と同じ記録雑務にはさっき知り合った竹宮先輩と雪ノ下がいて、竹宮先輩は記録雑務の担当部長となっていた。そのほかの俺の知っている人では有志統制には犬飼さんと歌川、広報宣伝には荒船さん、保健衛生には楓子さんが担当部長となっていた。そしてそのまま各部署ごとに顔合わせをし、その日は解散となった。

 

***

 

文化祭まで一か月をきると教室での残留が解禁となった。そしてうちのクラスの黒板には

 

『監督 海老名姫菜 

 演出 海老名姫菜

 脚本 海老名姫菜』

 

と、ドリームチームの名前が書かれていた。その隣には役名が書かれている台本はすでに配られている。劇の内容は「星の王子さま」だ。中を見てみたが「ワシの行った星は百八式まであるぞ!」「とある飛行士と変態王子」というところで読むのをやめた。一人配役が発表されるたびに教室は指名された人の悲鳴が響く。

 

「それじゃあ最後!王子さま、葉山隼人!ぼく、千種霞!」

 

うわーこいつら面白い顔すんな。片方は顔を青白くし、もう片方は目を腐らせた。

 

「ねえ比企谷。何やってんの?」

「うおっ!って千種妹か」

 

急に声をかけられて、振り向くとそこには千種妹がいた

 

「演劇の配役を決めてんだよ。台本あるから見るか?」

「見る」

 

千種妹に台本と渡すと、黙々と読み始めた。千種妹が台本を読んでいる間、俺が暇を持て余していると俺のスマホが震えた。スマホを見てみるとLI○Eが起動されていて画面の端にはユイがいた。それから文字が出てきた。

 

『パパ!私も読みたいです!』

『ユイが読んでいいもんじゃないからだめだ』

 

俺は素早く文字を打ち込むとスマホの電源を切った。さすがに切ってある電源を入れるなんてことしないよね?…できないよね!?

幸いそれから勝手に電源がつくなんてことはなかった。ユイと激しい(?)攻防を繰り広げていたら、いつの間にか千種妹が台本を全部読み終わっていたようだ

 

「ひなちんがあたしを呼んだのはこーゆーことか」

 

千種妹はそうつぶやくと俺たちのいる教室の後ろから前で騒いでる海老名さんたちに近づいた。

 

「お兄これに出んの?」

「あ、明日ちゃん!そうそう霞君はこれに出るんだよ!」

「いや何言ってんの?出ないからね」

「え、出ないの?お兄?きっと出たらおもしろいとおもうんだけどなぁ~」

「いくら明日葉の頼みでも――

 

瞬間、海老名さんがニヤッとしたのを俺は見逃さなかった。たぶん千種妹も同じような表情をしているだろう。なぜわかるかって?このあとやりそうなことを知ってるからだよ

 

「おねがい!おにーちゃん♡」

 

ほらこれだ。俺たちシスコンに対しての一撃必殺。じわれやぜったいれいどみたいに確率ではなく絶対に決まる技。妹によるお願い攻撃だ。これをされて落ちないシスコンはいない…はずだ!ほら千種も

 

「まあ妹の頼みだからね」

 

見ての通り落ちた。抵抗する人が減れば勢いが減るのは分かりきっていて、その後すぐに葉山もあきらめたようで抵抗をやめた。それを見てから俺は実行委員会に向かった。

 

***

 

数日後、いつの間にか雪ノ下が記録雑務から副実行委員長になっていた。雪ノ下一人抜けたところでもともと文化祭当日まで記録雑務の仕事は少ないし、情報処理にたけているオペレーターの竹宮先輩もいるので仕事量はそこまで変わっていない。

そんなわけで定例ミーティング。各部署ごとの報告から始まった。

 

「まずは宣伝広報からお願いします」

 

担当部長が現在の進捗状況を報告すべく起立する。

「掲示予定の七割を消化し、ポスター制作についても、だいたい半分終わっています。」

「そうですか、いい感じですね」

 

相模は満足げにうなずくが横から声が上がった

 

「いいえ少し遅い。文化祭は三週間後。掲示箇所の交渉、ホームページへのアップは既に済んでいますか?」

「…まだです」

「急いでください。社会人はともかく、受験志望の中学生やその保護者はホームページを結構こまめにチェックしていますから」

 

宣伝担当が気圧されてへたり込むように座った。雪ノ下の隣にいる相模は何が起きたか分かっていないようでポカンとした表情で雪ノ下を見ていた

 

「相模さん続けて」

 

促されてようやく会議が再開する

 

「あ、うん。じゃあ有志統制お願いします」

「…はい。有志参加団体は現在10団体」

 

遠慮がちに発言する担当とぎこちない返事をする相模

 

「増えたね。地域賞のおかげかな。次は…」

「それは校内のみですか?地域の方々への打診は?去年までの実績の洗い出して連絡を取ってみてください。例年、地域とのつながり、という姿勢を掲げている以上、参加団体減少は避けないと。それから、ステージの割り振りは済んでいますか?集客の見込みと開演時のスタッフの内訳は?タイムテーブルを一覧にして提出をお願いします。」

 

先に進めようとする相模を遮る形で厳しい追及をする雪ノ下。

そんな調子で会計監査、保健衛生と会議が進んでいく。そのたびに雪ノ下の確認と指示が飛ぶ。なお、保健衛生の担当部長の楓子さんは他と比べて追及されることは少なかった。

 

「次、記録雑務」

 

いつの間にか進行も雪ノ下がやってしまっていた。

 

「特にないです。」

 

竹宮先輩はこう報告した。実際、俺たち記録雑務は文化祭当日の記録がメインであり、この段階での仕事は少ない。

相模もそれは分かっているのかうなずくと会議を終わらせようとする。

 

「じゃあ今日はこんなところで…」

「記録は当日のタイムスケジュールと機材申請、出しておくように。」

 

各部署の報告の問題点の洗い出し、それの対応策を協議した後、今後のスケジュールの共有。話すべきことをすべて話し終え、終了の空気の感じ取り会議室の雰囲気が弛緩した。

 

「では委員長」

「うん。えっと、明日からもお願いします。お疲れさまでした。」

 

定例会議が終わるとみんなが雪ノ下の辣腕をほめた。どちらが委員長なのかわからない、と言う人もいた。そんな中で委員長である相模は取り巻きを連れて逃げるように会議室から出て行った。その姿をほとんどの人が気づかなかった。

 

***

 

次の日の放課後、俺が会議室へ向かうと会議室の前には人だかりができていた。人なみをかき分けて進み、中を覗いてみるとピリピリとした雰囲気になっていて、その発生源にはめぐりさん、雪ノ下、そして陽乃さんがいた。

 

「姉さん、何でいるのかしら」

「有志の書類の提出に来ただけだよ」

「何かやるんですか?陽乃さん」

「あ、八幡!めぐりから有志団体が足りないって聞いてね。だったらOBOG集めて管弦楽でもやろうかなって。ね!いいでしょ雪乃ちゃん」

「好きにすればいいじゃない。どうせ決定権は私にはないもの」

「へぇ~雪乃ちゃんが委員長じゃないんだ。じゃあ誰が委員長なの?」

「相模というやつなんですけど今は…」

 

一応会議室を見回してみる。俺が乱入してからほとんどの人が席に着いて、確認はしやすかったがやはり相模はいなかったが

 

「まだ来てな―――

「すみませーん!クラスの方に出て遅れました!」

 

俺の言葉を遮るようにして入ってきやがった

 

「はるさん、この子が委員長です」

「あ、実行委員長の相模南です」

「ふ~ん。実行委員長がクラスの方に参加して遅刻ね~」

 

そう言いながら陽乃さんはじっくりの相模を観察する。その視線に相模はびくっとしていた

 

「あの…その…」

 

相模が必死に言い訳を考えているとふっと陽乃さんは微笑んだ。

 

「さっすが委員長!文化祭を最大限楽しめる人こそ委員長にふさわしいよねー」

「あ、ありがとうございます」

 

さっきまでとは違う急に表情の変化に戸惑いながらも、おそらくここに来て初めてであろう肯定に相模は表情を明るくさせた

 

「で、えーと何がみちゃんだっけ?三上?それは三上ちゃんに失礼か。甘噛み?まあいいや。委員長ちゃんにお願いがあるんだけど。有志として参加したいんだけど、雪乃ちゃんにしぶられちゃってね…」

 

嘘くさいしおらしい演技をする陽乃さん。

 

「…いいですよ。有志団体足りてないですし、OGの方が参加してくて下されば地域とのつながりをアピールすることもできますし」

「きゃーありがとっ!卒業しても帰れる母校って最高だな~。友達にも教えてあげよっと」

「あ、じゃあその友達の方にも出てもらえばいいんじゃないですか?」

「おっ!グッドアイディーア!さっそく連絡してきていいかな?」

「どうぞどうぞ」

 

見事に陽乃さんに操られているな。いったい何のつもりで…ってまあだいたいわかるけど。たぶんそのことでアイコンタクトで呼ばれてるし

同じ様に呼ばれていためぐりさんと楓子さんと一緒に出て行くと怪しまれるので、まず俺が隠密を使って誰にも気づかれないようにして会議室を出る。それから順に楓子さん、めぐりさんと集まる。

 

「みんなさ、あんまりお母さんが雪乃ちゃんの一人暮らしをよく思ってないのは知ってるよね?」

 

俺だけがうなずいた。花火大会の時に少し愚痴みたいな方で聞いていたのだ。

 

「それで千葉村の話を聞いて、これから自分で成長できそうにないなら実家に連れ戻そうと決めたみたいで。その判断は私に任されていて今回やろうかなって」

「つまり?」

「委員長ちゃんを使って試そうかと」

「具体的には?」

「全然考えてないけど…どうかな?」

 

さっき相模にしたのとは違う本当にしおらしい態度をとる陽乃さん。

俺たちは目を合わせると、うなずき合う。

 

「はるさんの頼みならもちろん!」

「私もいいですよ」

 

めぐりさん、楓子さんと順に答え、そして俺も答える。

 

「いいですけど、それで仕事が遅れたら手伝ってくださいよ」

「もちろん!」

「それじゃあ決まったことだし戻りましょうか」

 

それから集まった時と同じようにバラバラに戻ってった。あ、こそこそ集まらないで普通にボーダー関連だって言えばよかったじゃねーか

 

***

 

俺たちが自分の持ち場に戻りしばらく仕事をしていると相模が急に立ち上がり声を出した。

 

「皆さんちょっといいですか?」

 

全員が手を止め相模を見る。この時嫌な予感のした俺は気づかれないようにスマホを起動しユイに音がしないように録音を頼んだ。電源を消したことで最初はいじけていたユイだったがあとでできる範囲で言うことを聞くことを条件に何とか聞いてくれた

 

「少し考えたんですけど文実はちゃんと文化祭を楽しんでこそかなって。やっぱり自分が楽しまなきゃ人を楽しませられないっていうか」

 

どっかで聞いたセリフだな

 

「文化祭を楽しむためにはクラスの方も大事だと思います。予定も順調にクリアしてますし少し仕事のペースを落とすっていうのはどうですか?」

 

こいつ、仕事もできないのにやる気までないのかよ

 

「相模さんそれは違うわ。バッファをもたせるための前倒し進行で」

 

雪ノ下が異を唱えるが横から明るい声が邪魔した

 

「いやーいいこと言うね!私の時もクラスの方もみんな頑張ってたな~」

 

陽乃さんの方を向くとウインクされた。このタイミングでさっきのアレをするみたいだ。タイミングとしてはいいと思うがこのままだと少しまずいかもな…

 

「あーちょっといいか」

 

全員の目がこちらを向く。ふぇぇぇ~怖いよ~…やめよ。きもいな

 

「委員長さんに聞きたいんだが自分の発言に責任とれるよな?」

「はぁ?なに言って

「いいから答えろよ。イエスかノーか。どっちだ?」

 

少し威圧を込めながら言う

 

「い、イエス」

「そうか。ならいい」

 

俺は席に座るとまた気づかれないようにスマホを操作する

 

『ユイ録音できたか?』

『ばっちりです!パパ!』

 

それだけ確認すると、俺は目をあげた。その時には拍手多数で相模の案は可決された。陽乃さんが手伝ってくれるとはいえ確実に増えるであろう仕事に俺は溜息しか出なかった。

 

――おまけ――

 

下校時間を迎えると全員が帰る準備をし始め仲がいい人と塊になって帰る人がいる中、俺は陽乃さんにどこから取り出したのかわからないギターと楽譜を渡されていた。

 

「え~と陽乃さんこれは?」

「ギターと楽譜だけど?」

「それは知ってます。なんでこれを俺に渡すのかってことです。」

 

俺の問いに答えたのは陽乃さんではなく楓子さんだった。

 

「この文化祭に私たち比企谷隊でバンド組んで参戦することにしたんですよ。ハチさん」

「それで八幡君にはギターしてもらおうと思って!」

「いや、俺楽器なんて授業でしかしたことないから無理ですよ」

「大丈夫ですよ。まだ約一か月ありますし」

「いや文実の仕事も!」

「私たちもありますよ」

「防衛任務も」

「だから私たちもあるって」

 

そこでスマホが震える。画面を見るとユイが出たいと言っていた。周りに誰もいないことを確認するとユイを実体化させる。

 

「どうしたんだ?ユイ」

「私もパパたちのバンドみたいです!」

「ほらユイちゃんもこう言っていることだし。だから八幡」「ハチさん」「八幡君」

「「「やって/やりなさい」」」

「…はい」

 

ユイのお願いと三人の圧力に屈するしかなかった俺はその日から文実に防衛任務に加えてギターの練習という超過密スケジュールとなった。

 



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文化祭3

最終的に相模をどうするか全然考えてなかったな…


数日後の会議室にはゾンビのなりそこないが大量にいた。現在この会議室にいるのは20人弱。確か全体で60人くらいいたはずだから三分の二がさぼっていることになる。そのせいで真面目に参加してる人の仕事が増えた。さらに陽乃さんの有志参加を聞きつけてか有志の申し込みが急増。急増した申し込みは雪ノ下、めぐりさん、楓子さん、竹宮先輩の尽力と管弦楽の練習の合間をぬって来てくれる陽乃さんとバンドの練習のために来ていた謡の手伝いでやっと回っていた。そんな中で俺は自分の仕事を進めつつマッ缶を配って回っていた。マッ缶教の布教をしようなんて少ししか思っていない。少しは思ちゃってるのかよそんなことは置いといて糖分を補給してもらおうという粋な計らいだ。で、マッ缶をテーブルに置くだろ?そうするとお礼を言っているつもりなのであろうが「あ゛~」という「あ」の濁った声しか返ってこないわけだ。もうほんとになりそこないじゃなくてゾンビなんじゃねーの?と思っている俺ガイル。

なんやかんやでようやく下校時間を迎え明日は週末。ゆっくり休んでください。いやマジで。さすがに俺たちもこれからバンドの練習をする元気は残ってないので、今日はこのまま解散となった。その際に大変そうで尚且つ今すぐに取り組んだ方がいいものから半分くらいを持って帰ることも忘れない。…社畜ってつらいなぁ…

 

***

 

翌日、みんなで作戦室で俺の持ち帰った仕事をしている

 

「陽乃さん、雪ノ下の処遇ってどうするんですか?そろそろ処遇決めて文実の方に手を打たないと誰かしらが倒れてもおかしくないと思うんすけど」

「処遇って…それなんだけどこれで決めるつもりだよ」

 

陽乃さんの手には各クラスの企画申請書類がまとめてあるファイルがあり、2-Fつまり俺のクラスのものだけなかった。確か相模がやるって言ってたはずだが…こんくらいやっておけよ

 

「わかってると思いますけど俺は書けませんよ。ろくにクラスの方に出てないんだから」

「わかってるよ。それじゃあ問題です。八幡はこれを書くにはどうしたらよいでしょうか」

「適当に書く、ですか」

「それをするのはハチ兄だけなのです!」

 

いやいや俺だけじゃないでしょ。ほら米屋とか出水とかもしそうだけどな

 

「普通は分かる人に聞きますよハチさん」

「うん楓子のが正解だよ。続いて問題です。八幡は誰に聞くのが正解でしょうか」

「演劇の監督ですか?」

「普通だったらそれで正解なんだけど今回の正解は隼人だよ」

「隼人?…ああ葉山か。けどなんで葉山なんです?」

 

普通だったら監督である海老名さんに聞いた方がしっかりかけると思うのだが

 

「それはね、隼人だったら今の雪乃ちゃんを見ればきっと手伝うって言うと思うからだよ」

 

なるほど。ここで雪ノ下が素直にそれを受ければ成長したってみなすってことだな

 

「わかりました。葉山を呼び出すのはお願いしますさて次の問題は…」

「どうやって文実を正常にするか…だよねー」

「あ、それについては一つ案がありますよ」

「ほんと!?八幡君!」

「ええ。それはですね…

 

***

 

休みが明けての月曜日。文実のメンバーは金曜から誰一人欠けずにそろっていた。土日にしっかりと休んだおかげかゾンビ化していた人は全員元に戻っていた。チッ!

仕事を始めるとすぐに企画申請書類のことで雪ノ下に呼ばれた。

 

「2-Fの担当者。企画申請書類がまだ出てないのだけれど」

「わり、俺書くわ。つっても俺はクラスのことはよくわからんしな。どーすっか…」

「そんなことだろうと思って強力な助っ人を呼んどいたよ」

 

順調に計画通りに進み、会議室のドアがノックされ葉山が入ってくる。

 

「えっと、陽乃さんに呼ばれて来たんですけど」

「お、隼人早かったね~八幡強力な助っ人の葉山隼人君です!拍手~」

「何でこいつなんすか」

 

葉山がなんか言ってるが無視して話を進める

 

「だって2-Fで連絡取れるの隼人しかいなかったし」

「それで俺は何のために呼ばれたんです?助っ人とか聞こえましたけど」

「八幡がクラスの方に参加してないから企画申請書類が書けないの。だから八幡にいろいろ教えてあげて」

「わかりました。ヒキタニ君どんなことを書くんだい?」

「ああこれだ。立ちっぱじゃ書きづらいから座るぞ」

 

葉山に紙を渡すと席に座る。

それから葉山に教えてもらいながら書類を書き始める。

 

「なあヒキタニ君。人手足りてるのかい?」

「さあな。俺は担当部署だけで手いっぱいだから他のことは分からん」

「担当部署って?」

「記録雑務」

「似合うな」

 

殺すぞ

 

「けどぱっと見、一部の人に仕事が集中してるように見えるけど」

 

はたから見ればそう見えるかもしれないが実際はみんながそれなりにやった上でできる人は追加でやるみたいな感じだから一部の人に仕事が集中してるなんてないけどな。

 

「そう見えるんならそうなんだろうな」

「このままじゃどこかが破綻する。そうなる前にちゃんと人を頼った方がいいよ」

 

俺たちは雪ノ下の反応を待つ。雪ノ下は少し考えると自分の考えを口にした。

 

「いえ、結構です。」

 

陽乃さんが小さくため息をついたのが分かった。

 

「でもこのままじゃ誰か倒れるかもしれないよ。そうなる前に手を打っておくべきじゃないかな?」

 

陽乃さんがめぐりさんに視線を送る。めぐりさんはそれに気づきうなずく。

 

「そのことでみんなに相談があるんだけどいい?」

 

***

 

翌日、放課後を迎えると、久しぶりに会議室に文実の全員がそろっていた。ここで今日の作戦を紹介しよう。今日は文化祭のスローガンのことで全員を集めた。その会議の途中でここまで真面目に文実に参加してきた者たち(以下真面目組)に舟をこいでもらう。そのうえで俺が会議の頃合いを見計らい完全に寝たふりをする。そうすると平塚先生なり誰かが俺を起こすだろう。もしそれがなかった場合はめぐりさんに起こしてもらうことになっている。起こされた俺はこの会議自体にいちゃもんをつける。なんやかんやで来てもらっている謡を引き合いに出し罪悪感を抱かせる。というのが今回の作戦だ。…見通しが甘すぎるというツッコミはしてはいけない。きっと作者がめんどくさがっただけなのだから。ん?作者?まあいいや。

会議が始まると真面目組はあくびをしたり舟をこいだりし始めた。前の案がだめになりほかの案考えなければならないためにみんなを呼んだ。という意図がめぐりさんから伝えられ、意見を求められる。なかなか出てこないのでなぜか参加している葉山の提案で紙に書くことになった。その紙が配られている中で俺はめぐりさんに合図をし、寝たふりを始めた。………

まだかなー?早く起こしてくれないかなー?今はそれぞれが考えた案を発表しているのだが、自前のカメレオンが働いているのか平塚先生に気付いてもらえない。ねぇ!早く起こして!

 

「おい比企谷何寝ている」

 

俺の思いは通じたようで平塚先生に起こされた。俺はいかにも今起きましたよという感じでのそりと寝ていた上体を起こす。

 

「すいません。最近仕事が溜まっていたもので」

 

「そんなに寝たいなら帰ればぁ?あんたなんかいなくても誰も困らないっつーの」

 

嘲笑の混じった声で相模が入ってくる。ボーダー組が一気に殺気だつと同時に俺も切れた

 

「テメェ――

「じゃあお言葉に甘えて帰らせてもらいます。」

 

は?楓子さん?あーそういうことか。真面目組の全員が楓子さんの意図を察し立ち上がる。

 

「え、ちょっと」

 

相模の制止も無視し、俺たちは会議室を出る。

 

「今日中に仕上げなければならない書類がいくつもあるんでお願いしますね。そこまで難しいものじゃないんで今まで真面目に参加してればすぐに終わると思いますんでよろしくお願い致します。…あーやっと寝れる」

 

最後に会議室を出た俺はこう言い残した。まぁ実際は今日仕上げなければならん書類は昨日までに終わらせてあるから無いんだけどな。さぁてバンドの練習かぁ…

 

***

 

結論から言うと次の日にはさぼっていた人も全員がそろっていた。謝罪もなく何事もなかったように来ていることにイラつきを覚えるがここで俺が切れてまた来なくなっては元も子もないのでここは我慢する。

 

「やあやあしっかりと働いているかね?」

「御覧の通りですよ。陽乃さん」

「ここ計算間違ってるよ」

 

陽乃さんが指摘したのは俺がやっていた書類だ。

 

「ほんとだ。ありがとうございます陽乃さん」

「暇だし私も手伝おうかな。雪乃ちゃーん!私も手伝うよー!」

「姉さんは邪魔だから帰って」

 

雪ノ下は冷たく返すが陽乃さんは全く意に返さない

 

「ひどい!雪乃ちゃんひどい!……まぁ暇だし勝手にやっちゃうんだけどね。八幡、半分もらうよ~」

 

陽乃さんが俺の机に置いてある紙束に手を伸ばそうとすると、雪ノ下は深々とため息をついた。

 

「…はぁ。予算の見直しをするから勝手にやるならそっちにして」

「はーい♪」

 

陽乃さんは雪ノ下の背中を押して移動する。きっと打ち合わせでもするのだろう。

しかし陽乃さんは時間大丈夫なのか?うちの部隊のバンドのほかに管弦楽の方の練習もあるだろうに…まぁ大丈夫か陽乃さんだし…

 

***

 

一日一日文化祭が近づくたびに総武港全体の熱量は上がっていく。

 

「副委員長。ホムペ、テストアップ完了です」

「了解。…相模さん確認を」

「うん。OK」

「本番環境に移行してください」

 

雪ノ下は的確な指示を飛ばして。ひっきりなしに来ている人をさばいている。そこに後ろから忍び寄った陽乃さんが抱き着いた。

 

「さっすが私の雪乃ちゃん」

「離れて近づかないで帰って」

「雪乃ちゃんがいじめるよ~八幡」

 

雪ノ下に邪険に扱われた陽乃さんがこっちに来る

 

「おーよしよし。って何ですかこの茶番は」

「気にしない気にしない♪」

 

俺が陽乃さんをあやしているとめぐりさんと楓子さんが雪ノ下に近づくのが見えた

 

「雪ノ下さんあと任せていいかな?下校時間が近くなったらまた戻ってくるから」

「はい。大丈夫です」

「ありがとね!ほら八幡君もはるさんも遊んでないで行きますよ。ういちゃんも待ってますし。」

「そうだね!」

 

陽乃さんは会議室の中を見回す

 

「やっぱ文実はこうでなくちゃ!あー今すっごい充実してるなー!」

 

陽乃さんの声にみんながうなずく。文化祭実行委員としての責務を果たしているからだ。ただその行動はこないだまでの文実を否定するものだ。机の下で相模が紙をくしゃッとしたのが分かった。

さあ、ついに明日は文化祭だ…バンド間に合うかな…

 



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文化祭4

皆さん知ってますか?
明日(予約投稿なんで見てる人は今日ですね)2月22日はなんと!うちの学校の期末テストです!
全然関係ないんですけどね…
ってかテスト終わった次の日にレポートの提出締め切りとかふざけんなよ


ずっと忘れてましたが竹宮琴音さんはSAOのフィリアさんです。
わからない人は今すぐググろう!


総武高文化祭一日目。

時刻は9時57分。

俺はインカムのスイッチを押し、ラグがあるため二秒ほど待ってから話し始める。

 

「開演三分前。開演三分前」

 

数秒を待たずに耳に着けているイヤホンからノイズが走る

 

『雪ノ下です。各員に通達。オンタイムで進行します。問題があれば即時発報を』

 

いくつかの部署から連絡が入る。雪ノ下がその受け答えをしている間に開始までもう間もなくとなった

 

「開演十秒前。九 八 七 六 五」

 

『四 三』

 

あり?いつの間にかカウント奪われてやんの。そして0になるのに合わせて今まで真っ暗だったステージに光が爆ぜる

 

「お前ら文化してるかー!?」

「うおおおおお!」

 

ステージの上にいるめぐりさんのあおりにオーディエンスが怒号を返す

 

「千葉の名物、踊りと——!?」

「祭りいいいいい!」

 

「同じ阿呆なら踊らにゃ——!?」

「シンガッソ―!」

 

めぐりさんのコール&レスポンスで生徒たちは一気に熱狂する。

そして始まるオープニングアクト。ダンス同好会やチアリーディング部の協力とめぐりさんのマイクパフォーマンスで熱狂そのままに盛り上がってる。

それより今さらなんだけど文化してるかって何?

 

『こちらPA。まもなく曲あけます』

『了解。相模委員長。スタンバイします』

 

雪ノ下からの連絡でダンスチームは下手袖にはけ、上手袖にいるめぐりさんが相模を呼び込む。

 

「では、続いて実行委員長の挨拶です」

 

ステージ中央に向かう相模の表情は硬い。千人を超す人の視線が相模に一斉に注がれる。

がちがちに緊張している相模が一声を放つ。

その瞬間。キ———ンと耳をつんざくようなハウリング。あまりのタイミングの良さに観衆はどっと笑う。

ほんとによくもまあこんなタイミングよくハウリングが起こるもんだ。まさか仕込み!?もしそうだとしたら俺の中での相模の評価は少し上がるんだけどな。けど元がマイナススタートだから少し上がったところでマイナスであることには変わりないんだけどな。

まあ話を戻すともちろん仕込みのわけはなく観衆の笑いの前に相模は委縮してハウリングが収まっても相模は何も言えずにいた。

すかさずめぐりさんがフォローに入る

 

「…では気を取り直して、実行委員長どうぞ!」

 

相模はめぐりさんのおかげで再起動したが焦ったおかげで手に持っていたカンペを落とす。それがまた観衆の笑いを誘う。相模は真っ赤になりながらもそれを拾う。

相模の挨拶はカンペがありながらもとちるかむは当たり前、つっかえつっかえしながら進む。

それよりなんで最初からカンペを持ってんだよ。カンペは困ったときの最終手段だろ。

相模が何回も止まるせいですでに予定の時間を大分過ぎている。タイムキーパーである俺はさっきから必死に腕を回し『巻け』のサインを出しているが相模は全く気づかない。しまいには俺が前の方にいる人に応援される始末。

 

『以降のスケジュールを繰り上げます。各自そのつもりで』

 

雪ノ下からそう通信が入る。

それからやっと実行委員長の挨拶が終わり、次の進行に移る。

前途多難な幕開けだ。

 

***

 

やることがなく教室内をうろうろしていると海老名さんに受付をするように頼まれた。

 

「公演時間とか知らねーんだけど」

「入口に貼ってあるから大丈夫。入口に誰もいないってなんかかっこ悪いしね。座ってるだけでいいからよろしく」

 

マジか。座ってるだけでいいとかどんな夢ジョブだよ。最高じゃん。将来はこういう仕事に就きたいな。

 

 

 

 

 

「比企谷君もういいよ。ありがとね~」

 

海老名さんからの夢ジョブからのリストラ宣告が下された。あーあもっと続けた…くわないな。座っているだけとはいえ仕事だし。

さあこれからどうすっかな。特に回りたいとこもないし。

 

「ハチさん。何をしているのですか?」

 

名前を呼ばれ振り返ると、楓子さん、めぐりさん、竹宮先輩がいた。

 

「クラスの方の仕事してたんですけどお役御免になったんですよ」

「八幡君のところはミュージカルだったよね?どう?お客さん入ってる?」

 

めぐりさんは一度台本を見ているだけにお客さんが入っているか心配なのだろう

 

「ええ。超満員でしたよ」

「へぇ~」

 

実際ほんとに教室はすし詰めの状態だった。なにしろ葉山が出てるのだ。人が集まらないわけがない。まあそれに付き合わされた千種はドンマイとしか言いようがないが。その千種も本番前に千種妹の応援(笑)ですごいやる気を見せてたし

 

「超満員だったんだ…比企谷君次の公演はいつから?」

「あんまり見るのはお勧めしませんよ?」

「え、比企谷君のところなんだよね?」

「まあいろいろとあるんですよ」

 

もしこれのせいで竹宮先輩がはまってしまったらまだ見ぬ竹宮先輩のチームメイトに申し訳ない。

 

「そういえば三人そろってどうしたんですか?」

「ふうちゃんとことちゃんと三人で回ろうとしてたんだけど八幡君がいたから一緒にどうかなって」

 

うまく話を逸らすことに成功したようだけど…美少女三人の中に俺が入れと?なにそれ死ねる

 

「えーとアレがアレでアレなので遠慮します。」

「そうなんだ」

 

よし。うまく断れたようだ

 

「よーしじゃあどこから行く!?」

 

え、めぐりさん?今断りましたよね?

 

「え、今比企谷君断らなかった!?用事があるって」

「大丈夫ですよ琴音。ハチさんがアレと使ったときはほとんどがめんどくさかったりただ断りたいときですから」

 

お、おう。バレテーラ。

 

「そうなんだ」

 

竹宮先輩はそうつぶやくとジト目で俺を見てくる。それから急に下を向いたかと思うと今度は上目遣いで俺を見てきた

 

「そんなに私たちと回るのが嫌…なの?」

「嫌、ではないです」

 

自然と俺の口から漏れ出ていた

 

「じゃあ行こう!もちろん比企谷君のおごりで!」

「え、ちょっと」

「いいね~ことちゃん、ふうちゃん、どこから行く?」

「あ、私クレープ食べたい!」

「いいですね。めぐりもいい?」

「もちろん!それじゃいこー!」

 

え、ちょっと俺の意志は?はい無視ですか。はい

 

 

 

 

「チョコクレープ4つ!」

「はいよ!1200円だ!」

「ほら比企谷君」

「いや、ちょっと」

 

 

 

「みんなどうする?私はチョコケーキと紅茶にするけど」

「私はミルフィーユとコーヒーで」

「私はチーズケーキと紅茶!八幡君は?」

「あ、じゃあチーズケーキとコーヒーで…じゃなくて!」

「あ、熊谷さーん!注文お願い!」

「はーい!え、なんで比企谷泣いてんの?」

 

 

 

「あ、射的だって!」

「ハチさん、琴音。マッカンひと箱交換券がありますよ」

「「なに!」」

「…比企谷君手、組まない?」

「奇遇ですね竹宮先輩。俺も今同じこと考えてましたよ。」

 

パンパンパンパン

 

「ああ、惜しい!」

「「もう一回」」

 

パンパンパン

 

「もう少しで倒れそうですね」

「「もう一回」」

 

パンパン  バタッ

 

「あ、倒れた」

「「っしゃああああああああああ!」」

 

 

 

「文実だ!トロッコに乗せちまえばこっちのもんだ!」

 

ドタドタ

 

「八幡君!ふうちゃん!」

「たすけっ」

「「きゃあああ!」」

 

「おいあっちにもいるぞ!早く乗せちまえ!」

 

ドタドタ バタッ

 

「楓子さんこれって正当防衛ですよね?」

「そうですね。襲い掛かってきたわけですし。めぐり琴音おかえり。どうだった?」

「申請内容と違うようだけど、荒船君。説明して」

「フレキシブルな状況判断で…悪ノリした」

「もう荒船君!まあ楽しんでる人多いみたいだし、追加で申請書類を出すのと、利用者に説明を徹底してね」

「ああ、わかった」

「じゃあ事故には十分に気を付けてね」

 

 

 

「あ、そろそろ私戻らなきゃ!」

 

いろんなところに連れ回され、めぐりさんの言葉で時計を見ると一日目が終わる約一時間前になっていた。

 

「あ、私も打ち合わせがあるんだった!私も行くね!」

 

そして残った俺と楓子さん。

 

「ハチさんはこれから予定あります?」

「俺に予定があると思います?」

「…練習しましょうか」

「…はい」

 




速報:比企谷八幡さんと倉崎楓子さんをトロッコに乗せようとした者たちは無事二人に撃退された模様
なお、フィリアさんはマッカン教に入信したようです


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文化祭5

遅くなってすいませんでした
テスト終わった開放感からかずっとマイクラをしてました。
長かった(期間が)文化祭も終わりなのでこっからはすぱすぱいけるといいですね(願望)


俺たち記録雑務は文化祭二日目の一般公開の時の写真撮影がメインの仕事になる。

…が

 

「ユイこっち向いて」

 

さっきからユイの写真を撮っている

 

「もうパパ!私だけじゃなくて他の人も取ってください!」

「そうです!ハチ兄の仕事はユイちゃんの写真を撮ることじゃなくて一般のお客さんを撮ることなのです!」

「わかってないな謡は」

「なにがなのです?」

 

本当に謡は分かっていないようだった。なので俺は少しためを作って言う

 

「ユイだって一般の客だぞ?それに他の人だって撮ってる。ほら」

 

パシャ 油断していた謡を撮る

 

「ほら撮ってるだろ?」

「あーもう!ユイちゃん!お願いなのです!」

「パパがしっかりとお仕事しないと家出しますよ?」

 

ユイが家出…だと

 

「嫌だああ!」

「ならわかっていますね?」

「わかった!わかったから家出だけはやめてくれ!」

「ならいいのです」

 

ユイと謡がうんうんとうなずく。とそこで聞きなれた声が耳に届いた

 

「なにやってんのお兄ちゃんたち。こんな廊下の真ん中で」

「「「あ」」」

 

 

 

「お兄ちゃん!なにういちゃんやユイちゃんに迷惑かけてるの!」

「すいませんでした」

 

さっきまでいた廊下の真ん中ではなく人通りの少ない奥まった廊下で俺は10分以上小町に怒られていた。

 

「もうお説教はやめるけどもう迷惑かけちゃだめだよ」

「ああわかってるよ小町。」

 

正座していた足を崩す。あーやばい。くそ足しびれた。動けねえ。そんな俺に小町と一緒に居た人が近づいてきた

 

「久しぶり八幡…先輩」

「おう久しぶりだな。ルミルミ」

「ルミルミ言うな」

 

なんとなくこの会話が留美と会った時のテンプレになってるな。

 

「調子はどうだ?留美」

「まあまあかな。最近は勝ったり負けたりを繰り返してる感じ、です」

 

おー言葉が足りない気がしてたが伝わってよかった。

それより前は敬語使えって言ったが最初がため口だっただけに留美に敬語使われるとなんかむずむずするな。

 

「あーなんだ、もしあれだったら俺にはため口でもいいぞ。留美に敬語使われるとむずむずするしな」

「なにそれ」

 

留美があきれた感じでつぶやく。

 

「そういえば何で小町と来たんだ?約束でもしてたのか?」

「昨日ランク戦してたら小町さんに誘われた。」

「そうか」

「お兄ちゃん小町たちはいつユイちゃんをあずかればいいんだっけ?」

 

謡とユイとしゃべっていたはずの小町がいつの間にかこっちに来ていた

 

「あーっと最後の音合わせが2時15分からだから2時くらいに頼むわ」

 

現在が11時半ぐらいだからあと2時間半ぐらいだな

 

「おっけー!手をつないでいるだけでいいんだよね?」

「ああ」

 

材木座が手をつなぐだけでトリオンが補給できるように改良してくれたのだ。お礼にマッカンひと箱送ってやろうとしたがその後の言動を見てやめた。あの言動さえなければ素直に感謝できるんだけどな。それ以前にマッカンじゃお礼にならない?知らんなそんなこと

 

「八幡たち何かやるの?」

「ああ。うちの隊でバンドやるんだわ」

「いつから?」

「時間は忘れたがトリとか言ってた気がする」

 

何でもトリは一番集客が見込める人がやるらしい。美女&美少女が4人もいるんだ。まあ人は集まるわな

 

「絶対見に行くね」

「おう。まあなんだ、楽しみにしてろ」

「それじゃあいこっか留美ちゃん!」

「ん?一緒に回らんのか?」

 

てっきり一緒に回るもんかと思ってたが違うのか?すると小町は呆れたような表情になる

 

「チッチッチ!呆れたようなじゃなくて呆れてるんだよ」

「さらっと心読むなよ」

「お兄ちゃん今さらだよ」

 

ああそっか。今さらかーっておい!

 

「おっ!ナイスノリツッコミ!」

「なにこれ、もうやだ」

「そんなことは置いといて!せっかくユイちゃんと回れるんだから三人で!ね!」

 

最近は文実のせいであまり実体化させてやれなかったからな。小町が気を使ってくれたのだろう

 

「…ありがとな、小町」

「うんうん。お兄ちゃんに気を遣う妹。小町的にポイントたっかい~♪」

「最後のがなければ素直に感謝できるのにな」

「じゃあまた後でね!」

 

小町と留美が人並みの中に歩いて行った。

 

「さて俺たちはどこに行く?」

「もうそろそろお昼ですし混む前に食べちゃった方がいいと思うのです」

「そうだな。ユイどこか行きたいところはあるか?」

 

パンフレットを見ているユイに尋ねる。ユイはトリオン兵ではあるが味覚があるらしい。

 

「パパこのきのこ喫茶vsたけのこ喫茶というのは何なのでしょうか」

「確かきのこ派の多い二年A組とたけのこ派の多い二年B組が売り上げ勝負をするらしい」

 

各クラスの企画申請書ではそうなっていたはずだ

 

「パパたちはどっち派ですか?」

「俺は基本的に中立だが絶対にどっちかを選ぶとなったらたけのこかな」

「私もたけのこ派なのです」

「やっぱりそうなんですね!この前いろいろ調べてたらきのこたけのこ戦争はたけのこ軍の勝利で幕を閉じたって情報がありました!」

 

そういえばテレビでお菓子の日本一を決めるのがあってそこでたけのこが勝ったんだっけか

 

「じゃあたけのこ喫茶に行くか?」

「「はい!」」

 

 

「よう奈良坂」

 

たけのこ喫茶に入ると偽りのキノコ眷属である奈良坂がウェイターをしていた

 

「比企谷か。空いてるところにかけてくれ」

「あれハッチじゃん!」

 

俺たちが空いてる席に座ろうとすると奥の方から声をかけられた。

 

「お前らも来てたのか。米屋、出水、三輪」

「うーすハッチ!謡ちゃんもユイちゃんも久しぶりだな」

「お久しぶりです」

「久しぶりです!出水さん米屋さん、三輪さんも!」

「…悪いが先に出る。」

 

ユイに声をかけられた三輪はすぐに出て行ってしまった。するとすぐさま出水がフォローに入る

 

「ごめんなユイちゃん。あいつも悪いやつじゃないんだけど」

「いえ、三輪さんが私に良い感情は持っていないのは分かってるのに声をかけたのは私ですから」

 

俺はこの前上層部と千葉村来ていたボーダー組にユイのことを伝えた。

城戸さんにはあまりいい顔をされなかったが今持っている情報を渡すことを条件に認めてもらった。

 

「秀次追いかけるわ。行くぞ弾バカ!じゃあなハッチ!またランク戦しようぜ」

「あ、おい待て弾バカ!くそ!あいつ金払わねえで出て行きやがった!じゃあなハッチ!謡ちゃん!ユイちゃん!」

 

米屋を追いかけるように出水も慌ただしく出て行った

 

「俺たちも何か頼むか。ユイ何が食べたい?」

「私は――」

 

 

 

「次はどうする?」

 

きのこ喫茶で昼食を食べた俺たちは次の目的地を決めようとしたいた。

 

「これから歌も歌いますし腹ごなしに少し動きたいのです」

「だったらウォークラリーはどうでしょう」

 

学校の各所にヒントがあり、それをたどりながらゴールを目指す。そんな感じだったな。

 

「いいんじゃないか?どうだ謡」

「はい。大丈夫なのです!」

「じゃあ行くか。スタートは三年C組だったな」

 

 

 

「比企谷君?」

 

昼食を食べ、腹ごなしとしてウォークラリーをしていると後ろから声をかけられた。後ろを振り向くと竹宮先輩と中性的な顔の男子に栗毛色のロングヘアの女子、メガネをかけたおとなしい感じの女子に小町と同じ中学の制服のでかい(どこがとは言わないが)女子がいた。もしかしてこいつらが竹宮先輩の所属している部隊のメンバーか?

 

「どうも竹宮先輩」

「すいません!人違いでした!」

 

え?

少し戸惑っているとユイと繋いでいた手が引っ張られた。ユイを見ると繋いでない方の手で目を指さしていた。あ、俺今メガネしてたんだったわ

 

「いや合ってますよ。ほら」

 

そう言いながらメガネを取る。瞬間、竹宮先輩とたぶん竹宮先輩のチームメイトの顔が驚いた表情になった

 

「え!?比企谷君なの!?メガネかけると全然変わるんだね。」

「まあ俺は目が腐ってさえいなければイケメンですからね」

「自分で言っちゃうんだ」

「まあ冗談ですよ」

 

こんなこと自分で言う人がいるなら俺は精神を疑うね。いい医者紹介しますよ?

 

「それで後ろの人たちは?」

「私のチームメイトだよ。男の子が隊長の桐ケ谷和人君。栗毛色の女の子が結城明日奈ちゃん。メガネの女の子が朝田詩乃ちゃん。制服の女の子が和人君の妹で直葉ちゃんだよ。直葉ちゃんはソロ隊員だけどね」

「桐ケ谷隊の隊長の桐ケ谷和人、高2です。よろしくお願いします」

「比企谷隊隊長の比企谷八幡だ。同じ学年だからため口でいいぞ。よろしく頼む」

 

中性的な顔の男子――桐ケ谷と同じように俺も名乗る

 

「私は比企谷隊所属の四埜宮謡です。」

「ユイです。」

 

謡とユイも名乗る

 

「それで少しお聞きしたいことがあるんですが桐ケ谷和人さん、結城明日奈さん、どこかでお会いしたことがありませんか?」

 

ユイが桐ケ谷兄と結城にこんな質問をした。どういうことだ?少なくとも俺はこいつらとは初対面のはずだ。だとしたらまだユイがこっちに来る前、つまりネイバーフッドにいたころに?ということはこいつらはネイバーか?けどそれでも記憶がある今わからないのはおかしいか

 

「いや初対面のはずだけど…なぜかは分からないが俺も同じ気がするんだ。どっかでユイちゃんと会った気がする。アスナはどうだ?」

「うん。私もユイちゃんとはどこかで会ったことがある気がする」

 

どういう事だ?三人が三人とも初対面のはずなのに昔に会ったような気がすると三人がそろって言っている。すると今まで黙っていた謡がつぶやくようにして言った

 

「…並行世界(パラレルワールド)」

「え?なんて言ったの?」

「いえ、何でもないのです」

 

謡のつぶやきは近くにいた俺にしか聞こえなかったようで桐ケ谷妹が聞き返していた。

並行世界(パラレルワールド)…俺たちの世界とは別の世界…そこでユイと桐ケ谷、結城さん?(学年が分からん)が会っていたということか

 

「まあ思い出せないということはそこまで大切なことじゃないんじゃないか?」

「そうだな。大切なことなら忘れるわけはないし」

 

この話はこれでひと段落着いたようだ。ほんとに必要なことならいずれ思い出すだろうし今はそこまで気にする必要もないだろう

 

「あの、比企谷さんって比企谷小町ちゃんって知ってますか?」

 

話が終わったと思ったら今度は桐ケ谷妹に話しかけられた

 

「知ってるも何も妹だ」

「わあ!珍しい名字だからもしかしたらと思ったんですがやっぱりそうなんですね!あたし小町ちゃんとは1,2年と同じクラスだったんです。それであの…もしよければ今度手合わせしてもらえませんか?」

「あ、おいスグ!ずるいぞ!比企谷俺も手合わせしてもらえないか?」

「もちろんいいですよ」

 

ねえ謡さん。なんで俺の代わりに答えてるんですか

 

「どうせハチ兄は理由もなく断りますから」

 

…なんかもうこのまま俺は一言も発さずに会話することができそうな気がしてきた

 

「もうキリト君!直葉ちゃんも!」

「けどアスナA級の実力を生で見てみたくないか?」

「それは思うけども…」

「だったらチーム戦にしますか?直葉さんは和人さんのチームに入って4対4で」

 

まあそれならいいのか?俺一人にかかる負担は少ないし。…俺が戦うのは確定なんですね…はぁ

 

「みんなもそれでいいか?」

 

向こうの全員がうなずく。

 

「わかりました。私たちはこれから予定がありますので細かい話はまた今度にでも」

 

時計を見るともうすぐ2時というところまで来ていた

 

「ああ、わかった。」

「では失礼するのです」

 

竹宮先輩たちと別れて俺たちは小町たちとの集合場所を目指した

 

 

 

音合わせを終え、舞台裏に向かうとエンディングセレモニーの担当のスタッフ深刻な表情で集まっていた。

 

「琴ちゃんなんかあったの?」

 

めぐりさんが集まっていた竹宮先輩に尋ねる

 

「あ、めぐり!みんなも!あのね、相模さんがいなくなったの」

 

竹宮先輩とそこ場にいた雪ノ下から詳しく話を聞くとエンディングセレモニーの最終打ち合わせの時間になっても相模は来なくて、連絡もつながらないらしい。

 

「相模が来ないなら代役立てんのは?」

「それは難しいわ。挨拶や総評はともかく地域賞の投票結果を知っているのは相模さんだけだもの」

「じゃあでっち上げんのは?」

「「「却下」」」

 

雪ノ下だけでなくめぐりさんや楓子さんにまで却下された。一番現実的は案だと思うんだけどやっぱりだめか

 

「集計し直すのは?」

「さすがに時間がなさすぎるわ」

 

他の案を考えていると袖を引っ張られる

 

「たぶんユイちゃんならできると思うのです」

 

あーそれは思いつかなかったわ。確かにユイならできそうだな。

 

「誰か集計前のデータ俺のスマホに送ってくれ。たぶん俺の知り合いなら集計できると思う」

「本当の集計し直せるのかしら?」

「このまま何も手を打たずにいるよりいいだろ」

「…竹宮先輩お願いします」

「わかった。比企谷君アドレス教えて」

 

竹宮先輩にアドレスを教えている間に謡に小町に連絡してもらってユイに帰ってきてもらう。

そして電話しているふりをする

 

「ユイどれくらいで終わる?」

「10分もあれば終わりますパパ!」

「お願いしていいか?」

「もちろんです!任せてくださいパパ!」

 

ユイが言ったことをみんなに伝える

 

「10分もあれば終わるそうだ」

「最後あなたたちしか残ってないのに無理よ」

「いや大丈夫だろ。」

 

いつの間にかいなくなっていた陽乃さんが何枚かの紙を持ってきた

 

「雪乃ちゃん追加で一曲やらせてね~はい八幡。これ楽譜ね。どれくらいでできるようになる?」

 

渡された楽譜を見てみる。楽曲はあまり音楽番組を見ない俺でも知ってる曲。これなら…

 

「…10秒ください。楓子さんたちは練習しなくて大丈夫なんですか?」

「一度さらえば何とかなりますよ」

「それよりハチ兄は2時間強で大丈夫なのですか?」

「死ぬ気で覚える。そういえば相模の捜索は誰かにやらせておいてください」

「分かってる。みんないる?」

 

めぐりさんが誰もいない空間に呼びかけるとどこからか生徒会役員の方々が現れる。久しぶりに見たけどすごいな

 

「相模さんの捜索お願いできる?」

「御意」

 

それだけ言うと生徒会の役員の方たちはすぐに探しに出かけた。

 

「偶然いた隼人にも頼んでおいたからね~」

 

陽乃さんがみんなに向かって言う。

 

「それじゃあ俺もやりますか」

 

せわしなく動いてる人の間を縫い、端っこに行く。そして久方ぶりにサイドエフェクトを発動させる。前回使った時に気付いたのだがサイドエフェクトを使った状態で極限まで集中すると、なんかこう、どう表現したらいいのか分かんないが、なんか何もない空間に行くのだ。そこでは思い浮かべたものが実体化するのだ。今回はこれを使う。まず初めの5秒、俺の中では1時間20分くらいで楽譜を覚える。それから残った時間をハイレベルでのシミュレーションに使う。(わかりづらいため最初の状態をロウレベル、ロウレベルから集中した状態をハイレベルと名付けた)思い浮かべて実体化すると言っても、あくまで俺の創造なので周りがどう動くかわからないやつはできないが、今回ならば自分の運指のタイミングさえできれば何とかなる。…はず

 

「バーストリンク」

 

 

 

「…ふう」

 

うえ。少し酔った。俺のサイドエフェクトは便利なんだけど使いすぎると酔うことが玉に瑕だな

 

「八幡お帰り。できるようになった?」

「たぶん。それより氷ってあります?」

「あるよ~。はい」

「ありがとうございます」

 

陽乃さんから氷を受け取り口に含む。車とかに酔った時は氷をなめると治るぞ。これ豆な。

酔いを直してから軽く運指の確認をする

 

『最後はプルバリーです!どうぞ!』

 

俺たちのバンド名がコールされる。バンド名の由来?比企谷隊だから比企→引く→プルと谷→バリー、繋げてプルバリー。…安直だな

 

「八幡の準備もできたことだしいこーか!」

 

そして俺たちの演奏が始まるのです!…違うな

 

***

 

結局、相模は葉山に連れられてエンディングセレモニーが終わった後、つまりすべてが終わった後に帰ってきた。葉山に説得されたときに泣いたのか化粧の崩れた相模の顔に刺さる逃げたという文実からの視線。その視線を受け相模は

 

逃げ出した。

葉山は追いかけたがしばらくすると見失ったようでうなだれて帰ってきた。

そしてそのまま総武高校文化祭は幕を閉じた。後日相模は行方不明と発表された。

 

 

 

 

 

***

 

少女は走る。ただひたすらに。そして気づく

 

「ここは?…あれはボーダー本部かな?ということは警戒区域!?」

 

そして少女は運が悪かった

 

『ゲート発生ゲート発生。座標誘導誤差8.15.近隣の皆様はご注意ください』

 

「ウチ、ネイバーに食べられて死ぬんだ」

 

そこで少女の意識はなくなった

 

 

 

ここはある国の遠征艇の中。二人の男女が一人の少女を見ていた

 

「隊長この少女はどうしますか」

「連れて帰るぞ。トリガー使いではないが玄界の貴重な情報源だ。それに我が国ではだれも使えないあのトリガーが使えるかもしれん」

「はい。ハイレイン隊長(・・・・・・・)」

 

その日玄界から一人の少女が消えた

 




ここではキリトは高2で直葉は中三になります

これからの予定としては修学旅行をはさんでからvs桐ケ谷隊となる予定です
ワートリの原作はいる前にしっかりと戦闘シーンの練習をしなければ


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修学旅行編
修学旅行1


総武高校2年生は文化祭が終わり、体育祭も終わると一気に修学旅行の雰囲気に染まる。

文化祭での相模の行方不明のことで、体育祭が始まるまでは2年生全体が暗い雰囲気となっていたが、げんきんなもので体育祭が終わるころにはすっかり文化祭以前の雰囲気に戻っていた。以前の雰囲気に戻ったとなると、わいわいがやがやうるさいのなんの。もう騒いでないと生きていられないのか?思うほど。これだったらまだ暗い雰囲気の方がよかったかもしれない。ちなみになんだが相模は一般的にはただの行方不明となっているが実際はネイバーに攫われている。俺たちの前から走り去った後、警戒区域に設置していた監視カメラが警戒区域内にいる相模を捉えていて、攫われたところの映像はなかったが監視カメラに映った相模の予想進路とちょうど運の悪いことに発生したゲートの座標が一致した。

それで相模がいないとなれば攫われたと考えるのが妥当だろう。ま、どうでもいいんだけどね。相模がいようがいまいがリア充どもがうるさいことには変わりない。

 

「はぁ」

 

思わずため息が出てしまう。

 

「どしたんヒキオ。ため息ついて」

「どうしてこんなことになってんのかなーと思ってな」

 

俺の机の周りでそれぞれの昼食を広げる川崎、三浦、千種、海老名さん。ほんとに何でこんなことになってんだろ。今日はあいにくの雨でベストプレイスが使えず、しかたなく教室で食ってるとなぜか急に集まりだしていつの間にか机が合わせられていた。ごめんね隣の関君。いつも授業中にやってる暇つぶし、最近すごい凝ったものになってきたね。俺は君の暇つぶしが先生に見つからないことを祈ってるよ。…あれ何の話してたんだっけ?

 

「何でお前らここいんの?」

「ヒキオが珍しく教室でご飯食べてたから来ただけだし。そういえばあんたつぎのLHRどうすんの?」

「なんかあるのか?」

 

LHRなんかいつも寝てるから内容なんて気にしたことねーわ

 

「うん。修学旅行の班決め」

「別に普段と変わんねーよ。余ったところと組むだけだ。」

「うわ!比企谷らしい」

「お前に言われたかねえよサキサキ。おまえは今までどうしてたんだよ」

「サキサキ言うな。…ごめんなさい」

 

ほらやっぱり川崎も同じだったんじゃねーか

 

「比企谷組む相手いないなら組まないか?知ってるやつの方が気が楽でいいだろ」

「まあそうだな。組むか」

「かす×はちキターーー!」

「ちょ海老名!鼻血ふけし!」

 

海老名さんの鼻血から必死に購買で買ってきたパンを守る。

 

「あと二人どうする?」

「戸塚とあとは余ったやつでいいだろ」

「お前戸塚好きすぎだろ」

「だって戸塚だぞ。」

 

戦争している国に戸塚を連れて行けば世界から戦争は消えるまである。いや戸塚を戦争になんて危険な場所に連れて行けるわけないだろ。

 

「えっとぼくが何かな?」

「戸塚はかわいいなって話をしてただけだ」

 

いつの間にか戸塚が近くに来ていたようだ

 

「もう八幡!ぼくだって怒るんだからね!」

 

頬を膨らませ怒ったような表情をする戸塚。やべぇ…ちょうかわええ。

 

「戸塚もしよかったら修学旅行同じ班にならないか?」

 

よしナイス提案だ千種。

 

「うん。もちろんいいよ!」

 

次の時間に行われたLHRの班決めでは人数の関係上で俺たちは三人の班になることができた。

ああ、いい修学旅行になりそうだな

 

 

 

「隼人君計画通り優美子たちと同じ班になることができたよ!」

「それはよかった。これで戸部が告白を成功させればきっと…」

「優美子と姫菜は戻ってきてくれるしヒッキーと仲直りできるんだよね?」

「ああ。だから絶対戸部の告白を成功させるぞ」

「うん!ゆきのんも手伝ってくれるって言ってたし、あたしも頑張ってフォローする!」

 

***

 

一度東京駅に集まってから点呼をし、新幹線に乗り込む。

 

「あーし窓側がいい。」

 

開口一番に自分の希望を言う三浦

 

「サキサキはどこでもいい?」

「サキサキ言うな。別にどこでもいい」

「じゃあ優美子が窓側で沙希が真ん中、私が通路側だね。で、反対側の窓側が戸塚君、その隣が比企谷君、通路側が霞君ね」

 

いつの間にか俺たちの席が決まっているだと…?こういう場合孤高系ボッチである俺は黙って端っこに行くというのに

 

「いや俺たちは適当にどっか空いてる場所座るから」

「もう新幹線も出ちゃうし早く座らないと」

 

ほんとにもう新幹線が出発しそうだったので仕方なく海老名さんが言った通りに座る。

 

「結衣は通路挟んだそっち側でいい?」

「全然大丈夫だよ」

 

どこに座ろうか迷っていたような由比ヶ浜に海老名さんが声をかけ座らせる

由比ヶ浜が座るとちょうど新幹線が出発した。

 

 

 

「ヒキオ食べる?」

 

三浦の手にはきのこの山とたけのこの里の箱があった。きのこはたくさん余っているのに対したけのこの里は空っぽ。

 

「なあ、たけのこがないんだけど」

「ほんとだ。最後のたけのこは…」

 

三浦が俺の左隣、つまり千種の方を見る。千種は手の中にあったたけのこを口に入れる

 

「あ、悪い。もう食べたわ」

「おい今慌てて食べたよなぁ」

 

そのときお手洗いに行っていた川崎が戻ってくる。

 

「沙希これ食べる?」

 

三浦は川崎にも俺の時と同じように、しかしきのこの箱だけを差し出す

 

「あたしたけのこ派なんだけど」

 

………

 

「やめたげて!きのこが…きのこがかわいそうだから!」

 

 

 

東京駅から約2時間。俺たちは京都の地に降り立った。

京都駅からバスに乗り清水寺などの観光地を巡り今日の予定は終了。俺たちは宿へと入った。

飯を食い、俺はロビーの一角でユイからの情報で京都にMAXコーヒーがないことを知った俺は持参したMAXコーヒーを飲みながら電話をしているふりをする

 

「ユイ、京都はどうだ?」

 

今日一日俺の胸ポケットに入れていたスマホのレンズから一緒に京都を回っていたユイに尋ねる

 

「とっても面白いですパパ!この国の文化を見ることができてとても興味深いです!」

「そうかユイが楽しそうで俺はよかったよ」

 

そこで俺たちに近づいてくる足音が一つ。

 

「比企谷こんなところで何してるんだ?」

「よう奈良坂。」

 

周囲に誰もいないことを確認してからスマホの画面を奈良坂の方へ向ける

 

「お久しぶりです!奈良坂さん」

「そういうことか。久しぶりだなユイちゃん。文化祭以来か?」

「そうですね。文化祭以来会ってないと思います。奈良坂さんは何しにここに?」

「飲み物でも買おうと思ってな。そういえば比企谷上層部へのお土産はどうする?」

 

俺たち総武高のボーダー隊員は日ごろお世話になっている上層部へのお土産をみんなで、まとめてという形ではあるが買っていくことにしている。

 

「誰かが買っとくか、三日目くらいに一回集まって買うか、だなぁ」

「まあ全員と相談してだな」

「お二人とも誰か来ます」

 

奈良坂と会話をしていて気づかなかったが確かに足音がしていた。奈良坂と二人で足音のする方を見ているとそこから現れたのはスーツの上にコートを羽織りサングラスをかけた平塚先生だった

 

「あれは平塚先生か?」

 

奈良坂の言葉に反応したのか平塚先生がこちらの方を見る。そして驚いた表情になる。

ほうほう。これはあれだな

 

「平塚先生まさかラーメンを食いに行こうとしてませんよね?」

「な、なんのことかね?」

 

嘘下手か!そんなに動揺してたら嘘だとすぐにわかるわ!

 

「あーあこのままだとほかの先生の前で某h塚先生がラーメン食いに行こうとしてたとか口が滑ってしまいそうだな~誰かがラーメンおごってくれたら口が堅くなる気がするな~」

 

奈良坂が隣で呆れた表情になってるのが分かった

 

「一緒に来るかね?」

「お供します。奈良坂はどうする?」

「いや俺は遠慮する。失礼します」

 

奈良坂は部屋がある方へと戻っていった。

 

「私たちも行くぞ」

 

平塚先生は俺を伴い颯爽と夜の京都へ繰り出した

 



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修学旅行2

戦闘描写ってむずいですよね。
これから黒トリ争奪戦だとかアフトとかいろいろあるのに…
がんばろ


修学旅行2日目。

今日はグループ行動となり太秦から洛西エリアを巡っていく。

今日の最初の目的地は映画村だ。最初の映画村までは三浦たちも同じらしく一緒に行動している。

俺たちと同じ修学旅行生や観光客で超満員のバスから吐き出されるように降り、映画村の中に入る。

ひとまずは中を見て回ることになり、江戸の街並みになっているあたりをしゃべりながら抜けていく。

 

「最近小町ってどうしてるし。合同演習の時以外本部で全然見かけないんだけど」

「ああ、小町なら今は猛勉強中だ。一回テストでいい点とったからって調子に乗って勉強さぼってたら次のテストでやらかしてな。それを楓子さんが知って勉強させてる。しばらくは合同演習以外ではボーダーの方には行かせないって楓子さんは言ってたな。」

 

小町は楓子さんに勉強教わり始めてから初めてのテストでどや顔でテストの結果を見せてきたのに、次のテストではかたくなにテストの結果を見せようとしなかった。業を煮やした俺と楓子さんで協力して強引に奪った結果、全教科80点を越えてたのに次の方ではほとんどが平均かそれより少し上くらいに収まっていた。それを見た楓子さんが怒って、怒った楓子さんを見た俺もビビった。

 

「小町は総武受けるんだっけ?今の小町の成績はわかんないけど頑張んないとだね」

「ああ。一応本人にも危機感はあったみたいだし、このままじゃ年内にB級に上がれないってぼやいちゃいたが、まあまじめに勉強してるよ。そういえばお前たちはどうなんだ?すぐにB級に上がれそうか?」

「たぶんもうすぐ上がれるかな。あーしと明日葉はもう3800は越えてるし。沙希は少し低くて3600くらいだったと思う。あと、留美は3500くらいって言ってた」

「そうか」

 

それくらいならたぶん修学旅行が終わったらすぐにみんなB級に上がれるな。千種がどうなってるのかわからないがこいつらが部隊組む日も近いな。

三浦と最後尾でしゃべっていると前の方にいた由比ヶ浜が突然大きな声を出した。

 

「あ、あれ、隼人君たちじゃない?おーい隼人くーん!」

 

由比ヶ浜が離れたところにいた葉山と戸部達を呼ぶ。

 

「やあみんな。まさか偶然会えるとは思ってなかったよ。」

「ダウト」

 

いつの間にか近くに移動してきていた千種のつぶやきに反応したのは近くにいた俺とこちらもいつの間にか移動してきていた川崎だけだった。三浦もいつの間にか前の方に移動していた。なんかみんな俺の知らない間に移動してんの多くね?なにみんな飛廉脚でも使えんの?じゃあ俺は瞬歩使いたい。まあそんなことはどうでもよくて、川崎が千種に今の言葉について聞く。

 

「どういう事?」

「葉山が偶然と言った時に心音に変化があった。絶対じゃないがたぶん葉山は嘘をついていると思う。」

「あいつらは狙ってここに来たということか?」

「偶然が嘘ならそうなるだろうな。」

 

問題は誰を狙って何のために来たかだな。少なくとも狙いは俺たち男子じゃないよな?…やべぇ海老名さんの目が光った気がする。これ以上考えるとまずいな。狙いは女子の誰か。しかしこれは俺たちが考えてもどうしようもない気がする。

 

「川崎何の目的で来たかわからない以上警戒というか一応気にしておいてくれ。」

「わかってる。もし何かしてくるようならやっちゃってもいいよね?」

 

川崎がこぶしを握り締めている。

 

「ほどほどにな」

 

俺たちが相談を終えるとタイミングを見はかっらたかのように声がかかった

 

「おーい沙希ちゃん、霞君、比企谷君。次はあそこに行こうだって!」

 

海老名さんの指さす先には史上最怖のお化け屋敷なるものがあった。

 

「え゛」

 

川崎の口から出た言葉と反応に俺たちは驚きを隠せなかった。

 

***

 

映画村で三浦たちと別れた俺、戸塚、千種の三人は龍安寺に向かった。もちろんロックガーデンこと石庭を見るためだ。

枯山水。

つまりは水を使わず、石やなんかでそれを表現する庭園様式のことである。

三人でそれを座ってぼーっと眺める。しばらく眺めていると声をかけられた。

 

「あ、お兄。比企谷に戸塚も」

 

振り向くとそこには千種妹がいた

 

「おう明日葉」

「よう千種妹」

「こんにちは明日葉ちゃん」

 

三人がそれぞれ挨拶を返していく

 

「あれ?優美子たちは?一緒に回ってるんじゃないの?」

「最初の映画村までな。そっからは別行動だ。」

「ふーん。じゃあさっき一緒に居たのは誰だったんだろ」

「さっき?三浦たちにあったのか?」

「会ったというか一瞬見かけただけだけど。優美子と沙希に姫菜。あと胸の大きな子と男子が何人かいたからお兄たちかと思ったんだけど…」

 

葉山たちが一緒に行動してるってことか?

 

「明日葉ちゃーんそろそろいこ?」

「友達に呼ばれたしあたしはもう行くよ。じゃーねー」

「ああ。じゃあな」

「うん。じゃあね」

「おう。じゃあまた」

 

千種妹が来た時を同じように三人それぞれ千種妹に返事を返すと千種妹は同じグループの人といなくなった

 

「俺たちもそろっと移動するか。次はどこだっけ?」

「金閣寺だよ。」

「うへぇ。また歩くのか」

「まあまあ霞君。それじゃあいこっか」

 

俺たちは龍安寺を後にし金閣寺へと歩を進めた。

 

***

 

修学旅行3日目。

この日は完全自由行動だ。誰と大阪に行こうとも奈良に行こうともいい日だ。

今日は千種は三浦たちと、戸塚はテニス部の人たちと行動するらしい。

そんなわけで俺は今日は一人で京都を見て回る…訳ではなかった

 

「パパまずはどこから行きましょうか」

 

そうユイと一緒なのだ。宿で朝食を食べ自由行動の時間になったらすぐに宿から出て人目のないところでユイを実体化させた。

 

「そうだな…伏見稲荷大社かな。」

「千本鳥居のところですね。」

「ああ。じゃ行くか」

「はい!」

 

 

 

伏見稲荷大社で千本鳥居の道をユイと歩いている

 

「昔の人は何でここに鳥居を千本も立てたんだろうな」

「ネットで調べて情報だとここら辺は神の降臨地である山の入り口で現世から神様のいる幽界へと続く門として建てられたのが始まりらしいですよ。それに鳥居は実際は一万基くらいあるそうですよ」

 

一万…か。こう思うのは違うんだろうけど、信仰心がそこまでない俺からしたらそれだけ立てれば労力もコストもかなりかかっただろうにってやっぱり思うんだよな。

 

「パパそこにお茶屋さんがあることですし一回休憩しませんか?私はまだ京都に来て何も食べてないので何か食べてみたいです!」

「そうだな一回休憩するか」

 

ユイと近くの茶屋に入り注文をする。二人とも緑茶を頼みユイは追加で団子を頼んでいた。

 

「パパこれからの予定はどうしますか」

「うーんと北野天満宮で小町のお守りを買ってから嵐山でボーダー連中と合流かな。ユイはどこか行きたいところあるか?」

「嵐山のライトアップされた竹林が見たいです」

「ライトアップされた竹林か…」

 

ライトアップということは当然夜になるよな。どこかのタイミングで抜け出すか。

 

「わかった。じゃあさっき言った通りに行動して、夜になったらどこかのタイミングで抜け出すから見に行くか」

 

これからの予定が決まったところでちょうどお茶と団子が運ばれてきた。

 

「うまい」

 

運ばれてきたお茶を一口飲みそう思った。

 

「確かにおいしいです。素材が違うとこうも違うものなんですね」

 

ほんとにユイの言った通りだと思った。素材の違いでこんなにも差が出るなんてな。

これ茶葉とか売ってたりしないんだろうか。俺がいれたんじゃ味は落ちるだろうがみんなにもこれを飲んでもらいたい。

そう思って店内を見てみる。お、あった。

 

「ユイちょっと待っててくれ。茶葉を買ってくる。」

 

ユイを待たせて、家の分とうちの隊用に二袋茶葉を買った。あとは嵐山でお茶うけになりそうなものを買ってあと個別のお土産と上層部へのお土産を買えばひとまずお土産はいいか。

 

「パパそろそろ行きましょう」

「よし行くか」

 

会計を済ませ俺たちは次の目的地である北野天満宮を目指した。

 

***

 

北野天満宮で小町のお守りを買い、嵐山で上層部へのお土産を買うと自由行動終了の時間となっていた。

みんなで宿に戻り夕食を食べ、部屋に戻る。

本来ならこれから入浴時間なのだがユイと約束した竹林を見るために風呂は後回しにする。

 

「八幡これから入浴だけど準備しないの?」

 

入浴の時間なのに準備しない俺を疑問に思ったのか戸塚が訪ねてくる。

 

「ああ、ちょっとな」

「あーあれだろ。ユイとライトアップされた竹林を見に行くんだろ」

 

あ…千種がばらしやがった。千種をにらむがもう口から出てしまったものは戻せない

 

「え!?ユイちゃんがいるの!?」

 

戸塚はユイという言葉にすごく反応した。…そっか。戸塚は千葉村以降ユイと会ってないのか

 

「ああ。ユイも親の仕事の都合でちょうどこっちに来てて、ずっとホテルの中に居させるのもかわいそうだからって今日は自由行動だったから俺に預けててな。それでユイとライトアップされた竹林を見に行こうって約束しちまってこれから見に行くんだ」

 

見よこの口からあふれ出た出まかせを。戸塚にうそをつくのはつらいがユイのことを教えるわけにはいかないしこうするしかないのだ

 

「あのさ八幡…もしよかったら僕も行っていいかな?久しぶりにユイちゃんに僕も会いたいし」

 

そこでスマホが震える。きっとこれはユイの合図だろう

 

「もちろんいいぞ。で、千種も来るよな?」

 

こうなったら千種も共犯にしないとな。ぐっへっへ

 

「いや俺は

「来るよな?」

「…わかった」

 

よしこれで千種も共犯だ。それからユイを迎えに行くふりをして先行しユイを実体化させ、竹林を目指した

 

***

 

ねえ何でこんなことになってんの?

俺たちの視線の先には海老名さんと今にも告白しそうな戸部。そしてさらにその奥には雪ノ下と由比ヶ浜、葉山の姿も見える。

2日目に偶然を装って会ったのはこのためだったのか

 

「ねえどうする?このまま見てるのも戸部君たちに悪いし」

「けど実際戻れないしなぁ」

 

ここに来る途中で巡回をしている先生を見つかりそうになりとっさに入ったこの通路でこの場面に出くわしたのだ。

 

「あのさ、俺さ…」

 

そうこうしている間に戸部が告白を始める。

 

「ボーダーのエンジニアになりたいんだけどどうしたらいいかな?」

「へ?」

 

海老名さんの口からそんな言葉が漏れた。もちろん俺たちも同じ気持ちだ。

 

「えーと何で私なの?優美子でも比企谷君でもいいと思うんだけど」

「いやー優美子はあんまし知らなさそうだし比企谷君はいつも一人でいるから何か話しかけづらいべ」

 

「「「プッ!」」」

 

こっちにいる千種、戸塚、ユイが三人そろってふきだした。え?これ怒っちゃっていいよね?そんなわけで千種の頭をつかみ握りつぶすがごとく力を入れる。

 

「いたああああああああ!比企谷!何で俺だけ!」

「あん?そんなもん戸塚やユイにアイアンクローなんてできるわけないだろ」

「!おい比企谷。やばい先生が来る」

 

俺たちは再びアイコンタクトをし…

 

「ユイおぶされ。逃げるぞ!」

 

脱兎のごとく駆け出した。

 

「え!何で比企谷君に戸塚に千種君も!?」

 

いきなり走って出てきた俺たちに戸部が驚くがそれに反応している暇はない

 

「先生が来る。見つかりたくなきゃ逃げろ」

 

短くそう伝えると状況が分かったようだ

 

「逃げるべ。海老名さん手を」

 

戸部が海老名さんの手を取り逃げ出した。そのまま戸部達の後ろにいた葉山たちとも合流し、先生の目をかいくぐりつつ宿に向かう。

 

「戸塚おれはユイをホテルまで送り届けなきゃだからこっちに行く。先生になんか言われたらうまくごまかしておいてくれ。」

「うん。気をつけてね八幡。じゃあねユイちゃん!」

「はい!サヨナラです戸塚さん!」

 

戸塚たちとは別の道に入りしばらく走ったところで足を止めた。

 

「ふう。ここなら大丈夫だろ。竹林どうだった?」

「とてもきれいでした!今度はねえや楓子さんたちとみんなで見に来たいです」

「そうだな。また今度、次は京都じゃなくても沖縄とかでもみんなで旅行するか」

「はい!じゃあパパおやすみなさい」

「おうおやすみ」

 

ユイがトリオンの粒子となって俺のスマホに戻っていった。

 

「さて俺も宿に戻りますか」

 

そうして俺の修学旅行は幕を閉じた。

 

 

 

あのあと海老名さんを通し正式に戸部がエンジニアになりたいと言ってきたので材木座を紹介しといた、

 



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修学旅行3

どこかでやったかもしれませんがどこで書いたか見つけることができなかったので改めて書きますが
謡のトリガーのフレイムとは分裂弾のことで、効果はその名の通り撃った矢が分裂します。フレイムとアステロイドの合成弾(矢?)がボルテクスで威力の高いフレイム、フレイムとメテオラの合成弾がト―レンツで分裂した矢が爆発します

キャラ紹介のところに追記しておきます



修学旅行が終わり次の土曜日。この日は桐ケ谷隊とのチーム戦をする日となっていた。

 

「特に警戒しなきゃならないのは桐ケ谷と結城です。柔軟に行きましょう」

「「「はい!」」」

 

俺の作戦?の確認に返ってきた返事は三つ。楓子さん、謡、それからユイのものだ。陽乃さんは家の方で、めぐりさんは生徒会の仕事が急きょ入ってしまい欠席。ユイにはめぐりさんの代わりにオペレーターをしてもらう。

 

『比企谷準備できたか?』

「ああ。こっちはオーケーだ」

『わかったじゃあ始めるぞ』

 

こうして俺たち比企谷隊対桐ケ谷隊のチームランク戦が始まった。

 

***

 

転送先は道路の上。マップは市街地Aか?

レーダーを確認すると楓子さんと相手のスナイパーの朝田だったか?の分が映らず5個の点がある。

 

「謡、バッグワームを着けて近くの高い建物に上がってくれ。タイミングを見てト―レンツを打ち込むぞ。タイミングは指示する。楓子さんは狙撃地点に。俺は相手が合流する前にちょっかいかけてきます。ユイ、楓子さんの狙撃地点の選定と相手の合流地点からスナイパーを居場所の絞り込み、できるか?」

『任せてくださいパパ!』

 

さてと俺も行きますか。

 

「お、いたいた。バイパー」

グラスホッパーで近づきすでに合流していた結城と桐ケ谷妹を視界に収めるとバイパーを放つ。当たりそうだったバイパーはすべてシールドで防がる。

 

「アステロイド」

 

シールドで防ぐと結城はアステロイドを展開し反撃してくる。

 

「バイパー」

 

それを俺は威力を高めに設定したバイパーをぶつけて相殺すると弧月を展開し接近してきていた桐ケ谷妹と打ち合わせる。桐ケ谷妹の剣は俺たちボーダーに入ってから剣を握ってきたある意味なんちゃって剣士と比べると太刀筋が違う。たぶんボーダーに入る前からずっと剣道をしてきたのだと思う。

しかし俺たちがしているのはルールに縛られた剣道の試合ではなくルールなしの殺しあいだ。桐ケ谷妹が振り下ろす手の軌道上にグラスホッパーを設置。無理やり手を撥ね上げさせると空いた胴に向かって弧月を一s

 

『パパ!』

 

桐ケ谷妹への攻撃を取りやめ、桐ケ谷妹の後ろから飛んできたバイパーをシールドで防ぎ後退する。その間に桐ケ谷妹も結城のところまで後退する。

 

「直葉ちゃん大丈夫?」

「はい、なんとか」

「二人で協力してキリト君が来るまでの時間を稼ごう」

 

結城はそう言うと弧月を手に持ち目の高さで水平に俺に向けて構える。彼我の距離は10メートルくらい。この距離で弧月の攻撃は旋空くらい…違う!確か修学旅行の少し前くらいに材木座が旋空と似た新しいオプショントリガーを開発したと言っていた。そのオプショントリガーの名は…

 

「閃光弧月」

 

そう閃光だ。簡単に言えば突きの旋空。しかしモーションに特徴がある。旋空とは違い刀を振る必要がなく、構えた刀を突き出して手元に戻すだけで打てる。つまりこいつの一番の利点は連射性能だ

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

結城の閃光弧月による連撃が俺の身体を襲う。だが残念。俺には速さ系の遠距離攻撃はきかん!

 

「バーストリンク」

 

一つずつ的確に局所シールドを張り防いでいく。そして結城の閃光の影にかくれて近付いてきていた桐ヶ谷妹にバイパーで牽制をする。あと後のことを考えるとここら辺が限界か

 

「バーストアウト」

 

加速を解くとちょうどユイから通信が入る。

 

『パパ、和人さんが後ろから来てます!』

「了解!」

 

俺がグラスホッパーで大きく移動するとさっきまで俺のいた場所には弧月を持った桐ケ谷がいた。

 

「俺がいない間に俺の彼女と妹にちょっかいかけるのやめてもらおうか」

 

あ?なんつったこいつ。俺の彼女だと…リア充死すべし!

 

『謡!』

『はい!』

 

俺の後方から初めは一本の矢が幾本にも分裂し合流した三人に目掛けて飛ぶ。そしてその矢は着弾いや着矢と同時に爆発し周囲を煙で包み込む。俺はその煙に乗じて横なぎに一閃

 

「旋空弧月!」

 

俺の怒りを込めた一撃は煙を切り裂き、煙の中にいた一人をベイルアウトさせた。

煙が晴れてそこにいたのは腹から少しトリオンを漏らした桐ケ谷と無傷な結城だった。

ベイルアウトしたのは桐ケ谷妹か。たぶん結城は射程範囲外だな

 

「アスナ謡ちゃんの方へ向かってくれ。あの爆撃が続くのはきつい」

「わかった!キリト君も気を付けてね」

 

いやいや二人とも内部通話にしようよ。俺に丸聞こえだよ?まあこの状況で結城がどっかに行けば謡のところに向かったってわかるけどさ

 

『謡、楓子さん、結城がそっちに向かいました。楓子さんは結城をお願いします。謡はすぐにバッグワームを付け直して楓子さんのフォロー。スナイパーの攻撃があったときはそっちの対応をしてくれ。』

『了解!』

 

さぁてやろうか桐ケ谷

 

***

 

楓子は周りの警戒をしながら謡がさっきまでいた場所を目指している結城明日奈――アスナを近くにあるビルから見ていた

 

(さてどうしましょうか。まずはスナイパーの居場所を知りたいですね)

 

『ユイ、スナイパーの位置の絞り込みは終わってますか?』

『はい。現在戦闘中のパパと和人さん、ねえがさっきまでいたあたりで戦闘が起こった場合に最も狙撃しやすい位置を絞り込んであります。視界に表示させましょうか?』

『お願いします』

 

楓子の視界に位置が表示される。そして楓子は自身の勘とスナイパーとしての経験を総動員してそこからさらに自分なりの順位をつける

 

『謡、結城さんは私が止めますので、ト―レンツで今から言う建物を破壊していってください。まずは謡のいるところから左に300m先にあるお店。次は右前方160m先にあるビル。次は―――。最後に200m前方の建物です』

『わかりました』

 

謡の返事を聞くと楓子はイーグレットを展開し移動し続けているアスナに照準を合わせた。

 

***

 

朝田詩乃――シノンは焦っていた。先ほどから狙撃地点が悉く潰されていたことに。一度爆撃の主である謡を倒すことも考えた。しかし、謡が立っているのはここらへんで一番高い建物の屋上。他の建物の高さでは十分に謡の姿を捉えることはできない。そのために謡を倒すことは断念し、楓子に狙いを絞っている

 

(ここなら…大丈夫そうね)

 

先ほどから爆撃は止まっており、たぶんキリトたちの方へ移動したのだろうとシノンは考えていた。シノンは焦っていたがゆえにそれが罠であることに気付かなかった。

そしてそれに気づいたのは自分がベイルアウトさせられた後だった。

 

***

 

(謡は作戦通りうまく仕留めたようですね。そろそろこちらも終わらせましょうか)

 

楓子はアスナとの戦いではアスナの攻撃を避けてから攻撃することを主体として戦っていた。しかし楓子はここでその戦い方をやめた。避けるのではなく受け流す。俗に柔法と呼ばれる方法である。

アスナの弧月による刺突攻撃を掌で円軌道を描くように受け流しアスナの体勢が崩れたところでスコーピオンを出し、アスナの首を斬った。

 

***

 

俺は視界の端でベイルアウトの光が二つ上がったのを捉えた。たぶん楓子さんと謡が倒してくれたのだろう。お願いそうであって。こいつ倒した後にさらにほかの奴の相手なんて面倒で仕方ないから

しかしちょっとやばいな。俺が左腕をくっついてはいるが使えないのに対し、桐ケ谷は身体のあちこちに傷はあるとはいえ部位欠損はなし。

あれさえ使えれば勝てるだろうけどそのためには桐ケ谷の動きを一瞬止める必要がある。

さあどうやって桐ケ谷の足を止めさせるか…とりまメテオラをばらまくか。うまく引っかかってくれよ

 

「メテオラ!」

 

桐ケ谷の周りに煙を立ち込めさせこちらを見にくくする。ここで桐ケ谷が旋空を使ってくれれば

 

「旋空弧月!」

 

来た!桐ケ谷の旋空は狙い通り囮として置いてきた使えなかった左腕を切り裂く。

左腕を自分で切ってさらにトリオンは漏れたものの、たぶん俺の残りのトリオンは60パーくらい。これならいける!見せてやろう陽乃さんでも突破することのできなかった牢獄の威力を!

 

「バーストリンク!」

 

加速した俺は残りのトリオンをすべて使いバイパーとメテオラを合成させトマホークを作る。(加速の状態でも合成弾をいつの間にか作れるようになっていた)それをほぼ止まっている桐ケ谷に向けて何層にもわたる鳥籠を作るように弾道の設定をする。射程にはあまり割かずに威力と弾速にトリオンのほとんどを振る。するとなんということでしょう!自分に向かって狭まる触れると爆発する檻の出来上がり!

あの陽乃さんでさえもこの檻の攻略はできなかったからな。さすがに攻略はできないだろう…フラグじゃないよね?

一応心配していたがそんなことは起こらずに桐ケ谷はベイルアウトした。その瞬間俺たちの勝利を告げるアナウンスが入った

 

『模擬チームランク戦終了 勝者比企谷八幡 倉崎楓子 四埜宮謡』

 

***

 

「あー疲れた。予想外に強かったし」

 

模擬戦が終わり今は4人で作戦室に帰る途中である。

「そうですね。ハチさんは奥の手使いましたし」

「最初は使うつもりはなかったんですけどね。桐ケ谷が予想外に強くて」

「確かに皆さん強かったのです」

「そうそう。あーマッ缶飲みたい」

 

久しぶりにランク戦をしたせいか、すごいのど乾いてんだよね。

 

「確か部屋のマッ缶切れてたのです」

 

げっ。買いに行くしかないか

 

「じゃあ俺はマッ缶買ってきます」

 

俺は来た道を戻り本部の中でも奥の誰も来ないようなところにある自販機に向かう。鬼怒田さんの血糖値のせいでマッ缶が本部の奥の方にしかなくなってしまったのだ。ああつらいつらい

 

自販機にたどり着きお金を入れる。そしてマッ缶のボタンを押そうとしたところで横から伸びてきた指が俺より早くマッ缶のボタンを押した。

伸びてきた指を主を見るとそこには

 

「よう比企谷ぼんち揚げ食う?」

 

ぼんち揚げを片手に持った迅さんがいた

 

 

To be continued

 



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BBF風プロフィール&次回予告

連続投稿です。
比企谷隊VS桐ケ谷隊はこの前の話になります。
今回の話?は読まなくても問題ないです。ただ他の人がやってたのを見てかっこいいなと思っただけなので。メインは次回予告。BBF風プロフィールとトリガー構成は文字数稼ぎにやっただけです
それにまだ製作途中なので変更があるかもしれません。ご了承ください


比企谷八幡

PROFILE

 

ポジション オールラウンダー

年齢 17歳

誕生日 8月8日

職業 高校生

好きなもの 妹 娘 チームメイト MAXコーヒー ボーダーの仲間

 

PARAMETER

 

トリオン 10

攻撃 9

防御・援護 10

機動 8

技術 8

射程 4

指揮 7

特殊戦術 7

 

TOTAL 63

 

雪ノ下陽乃

PROFILE

 

ポジション アタッカー

年齢 19歳

誕生日 7月7日

職業 大学生

好きなもの チームメイト 妹 小町 ユイ 気に入った人にちょっかいをかけること

 

PARAMETER

 

トリオン 8

攻撃 15

防御・援護 8

機動 8

技術 9

射程 2

指揮 7

特殊戦術 2

 

TOTAL 59

 

倉崎楓子

 

PROFILE

 

ポジション パーフェクトオールラウンダー

年齢 18歳

誕生日 2月05日

職業 高校生

好きなもの チームメイト 小町 ユイ 自己鍛錬

 

PARAMETER

 

トリオン 11

攻撃 9

防御・援護 8

機動 8

技術 8

射程 7

指揮 8

特殊戦術 3

 

TOTAL 62

 

四埜宮謡

 

PROFILE

 

ポジション 

年齢 10歳

誕生日 9月15日

職業 小学生

好きなもの チームメイト ユイ 小町 和文化

 

PARAMETER

 

トリオン 8

攻撃 8

防御・援護 14

機動 7

技術 7

射程 5

指揮 7

特殊戦術 7

 

TOTAL 63

 

城廻めぐり

 

PROFILE

 

ポジション オペレーター

年齢 17歳

誕生日 1月21日

職業 高校生

好きなもの チームメイト ユイ 小町 読書

 

PARAMETER

 

トリオン 2

機器操作 9

情報分析 8

並列処理 7

戦術 7

指揮 7

 

TOTAL 40

 

他作品キャラのトリガー構成

 

千種霞

メイン:ライトニング イーグレット アイビス シールド

サブ:バッグワーム シールド フリー フリー

 

千種明日葉

メイン:アステロイド(拳銃) ハウンド(拳銃) シールド バッグワーム

サブ:アステロイド(拳銃) ハウンド (拳銃) シールド フリー

 

三浦優美子

メイン:弧月 フリー フリー シールド

サブ:フリー フリー シールド バッグワーム

 

川崎沙希

メイン:弧月 フリー シールド バッグワーム

サブ:レイガスト スラスター シールド フリー

 

桐ケ谷和人

メイン:弧月 旋空 シールド バッグワーム

サブ:弧月 旋空 シールド グラスホッパー

 

結城明日奈

メイン:弧月 閃光 シールド フリー

サブ:アステロイド バイパー シールド バッグワーム

 

朝田詩乃 

メイン:ライトニング イーグレット アイビス シールド

サブ:フリー フリー シールド バッグワーム

 

桐ケ谷直葉

メイン:弧月 フリー フリー シールド

サブ:フリー フリー シールド バッグワーム

 

 

次回予告

 

 

「あれが…迅さんの言ってた…」    「人型ネイバー!」

 

~玄界に降り立つ一体の人型ネイバー~

 

『あれは…何でこっちに!』   「ユイなんなんだあれは!」

「ハチ兄来ます!」   「グルァァァァァァァ!!」

 

 

 

「早く…早く俺をベイルアウトさせろ!」  「どうしたんだし!ヒキオ!」

 

   ~比企谷八幡に迫る異変~

 

 

 

「絶対にやつを取り戻すのだ!行けドラーク!」

 

     ~攻め来るはネイバーフッド最大の鎖国国家~

 

「お!新型か!おい出水あいつは俺にやらせてくれよ」  「だめっすよ太刀川さん。本部、こちら太刀川隊出水。新型トリオン兵と遭遇。これより処理を開始します」

 

      ~迎え撃つはボーダーの戦士たち~

 

 

 

「お前は一体…?」   「私の名は***」

 

        ~謎の人物との遭遇。そして~

 

「我が力お前に託そう」

  

            ~力の譲渡~

 

 

「「「「「信じてるよ八幡/ハチさん/ハチ兄/八幡君/パパ!」」」」」

 

 

次回!新章開幕!!!

 

 

闇に包まれた因果が浄化され新たな未来に結び付いた

 



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災禍の鎧編
災禍の鎧1


新学期始まったおかげでなかなか書く時間が取れないサラリーマンです。
たぶん次回も遅くなることでしょう。
そんなわけで災禍の鎧編。どうぞ!




読者様からのご指摘により陽乃さんのトリガーセットを変更しました

章を作ってみました


桐ケ谷隊との模擬戦が終わり、マッ缶を求めてボーダー基地の奥の自販機で俺は迅さんと遭遇した

 

「よう比企谷。ぼんち揚げ食う?」

「いただきます。それでなんか用です?」

「それが…」

 

迅さんがいつものおちゃらけた表情ではなく普段見せない真剣な表情になり言葉を紡ぐ。

 

「比企谷たちの次の防衛任務って今日だよな?」

「?ええ」

 

質問の意図が分からずにあいまいに返す

 

「たぶんその時に人型ネイバーが来る」

「っ!大規模侵攻ってことですか?」

「いや、少なくとも比企谷たちが戦ってたのは一人だけだった」

「そう…ですか。その未来はもう確定してるんですか?」

「ああ。この未来はもう確定してる」

「城戸さんたちには?」

「いやこれからだ。ただ気を付けてくれ比企谷。お前たちがその人型ネイバーを倒した後、比企谷隊、いや比企谷。お前を中心にたぶんこの問題が解決するまで未来が全く見えなかった。」

「…了解です。まあ精一杯頑張りますよ」

 

そこで俺は迅さんと別れ、比企谷隊の作戦室へと向かった。

しかし、迅さんのサイドエフェクトが使えないのか。それはやってくる人型ネイバーの影響なんだろうな。

それより単騎で攻めてくるってどういうことなんだろうな。まあ俺一人で考えてもしょうがないか

 

***

 

作戦室に戻り、迅さんから聞いた話を楓子さんと謡、ユイに話し終えると、ちょうど防衛任務の時間となったので防衛任務に向かう。

陽乃さんは家の方の用事が終わり現地で合流することとなっている。

 

 

そして現在。

 

「暇ですね」

「暇だね」

「そうですね。今回はいつもよりゲートが開く回数も少なかったですし」

「けど迅さんの予知はもう確定してるのですよね?だとしたら」

 

謡の言葉を遮るようにしてユイからゲートが開いたことが伝えられる。

 

『皆さん!ゲート発生しました!誘導誤差は4.78です』

 

「OK。すぐに向かう」

 

ゲート発生地点が近づいてところでその発生地点が確認できる建物に上がる。今回の防衛任務ではどんな人型が来るのかわからないのでこうして確認してから仕掛けるようにしていたのだが今回はあたりのようだ。そこから見えたのはトリオン兵の白い巨体ではなく、銀灰色の全身鎧に包まれた一匹の獣だった。

 

「あれが迅君の言ってた人型ネイバーなのかな?」

「たぶんそうだと思いますけど、あれなら人というより獣じゃないですか?」

『最初はどう攻めますか?』

 

その時、獲物を探すようにあたりを見回していたその獣がこちらを向いた。そしてこちらに一直線に向かってくる。

 

「気づかれた!全員散開!敵の能力が分からないんでくらわないこと優先で!」

「「了解!」」

 

速い!見るからに重そうな鎧に1メートル以上ある大剣をもってこのスピードか!

向かってきた獣は初めに俺たち中央で進行方向にいた陽乃さんをターゲットにしたのか陽乃さんに向かって手に持っていた大剣を横なぎに振る。

 

「くっ!ああ!」

 

嘘だろ!?陽乃さんがふっ飛ばされた!?

敵の攻撃を二本の弧月をクロスして防御した陽乃さんが吹き飛ばされ、何軒もの家を貫通した音がする。

 

『陽乃さん!生きてますか!』

『何とかね。けどすごいよあいつ。完全に防御したと思ったのにその上からふっ飛ばしてきたよ。直撃したら一発でベイルアウト確定だね』

『了解です。今度は俺たちが気を引くんで奴の死角からの旋空をお願いします』

『任せて』

 

相手は見た目よりの素早く、一発も重い。まともに打ち合えばこちらは分が悪いなんてもんじゃない。

 

「メテオラ!」

 

メテオラをばらまき煙幕を張る。

 

『謡、ト―レンツを撃ちまくって煙幕を絶やさないようにしてくれ。楓子さんはチャンスならガンガン撃ってください。ユイあいつについて何か知ってることはないか?』

『ごめんなさいパパ。今のところ思い当たる情報はないです』

『そうか。引き続きオペレーション頼んだぞ』

 

ユイもこいつについて知ってる情報はないか…弱点とか分かればよかったんだがわからないものは仕方がない

 

「バイパー+メテオラ トマホーク」

 

これで当たればそれでいいし、当たらなくても行動は絞られるだろう。行動さえ絞れれば…

 

『旋空弧月』

 

陽乃さんが普通の旋空ではなく生駒旋空を放つ。視覚外からの攻撃でこの視界も悪い中なら確実に当たるだろう。

しかし俺のその予想は簡単に裏切られた。獣はその巨体からは考えられないほどの高い跳躍を見せたのだ。

 

「謡!後ろだ!」

 

そして空中で極微細な粒子になったかと思うと謡の後ろにいて、謡に鋭い牙の生えた口を向けていた。謡は俺の声で振り向くと同時に弓を弾き絞り、まさにかみつこうとしてる獣目掛けて矢を射った。その矢は獣を右腕を穿ったが、謡は獣にかみつかれてベイルアウトした。

 

『ハチさんあれを』

「まさか…再生してるのか!?」

 

謡が命懸けで奪ったはずの右腕が再生される。そして獣の口の端からオレンジ色の光が漏れ出たかと思うと獣は俺に向かって口から炎を吐き出した。

 

「グラスホッパー」

 

グラスホッパーで緊急回避をしたが弧月の剣先が炎をかすめる。剣先をかすめた炎は弧月を伝って俺の手元まで這い上がろうとする。弧月を投げ捨てて新しい弧月を展開しているとユイの動揺した声が聞こえてきた

 

『ショートワープ…再生能力、火炎放射…もしかして…なんで玄界に!あれはもう10年も前に討伐されたはずなのに!』

『ユイ落ち着いて教えてくれ。ユイはあいつのことを知っているのか?』

『実際に見たことはなかったですけど情報として知っています。』

『ならユイちゃん弱点とかないの?』

 

陽乃さんの問いに弱弱しい声でユイが答える

 

『すみません。わからないです』

『そうか…確実に行くなら俺たちで足止めをして陽乃さんのソードスキルにつなげるしかないですかね』

 

それでだめだったらもうどうしようもない

 

『けどできるの?』

『はっはっはー愚問ですね。できるかできないかじゃない、やるんですよ』

『お、八幡頼もしいね。じゃあお願いしようかな』

『任せておいてください』

 

と言ったもののどうすればいいだろうか。普段だったらグラスホッパーをわざと踏ませて空中に出せるが今回は敵がショートワープができるおかげでそれは使えない。煙幕張ってもそこに留まり続けるとは限らないし、さっきの煙幕張った状態で死角からの攻撃をよけてたからもしかしたら攻撃察知とか迅さんと同じ未来予知とかのサイドエフェクトを持ってるかもしれないし…なにこいつ。技のオンパレードじゃね?再生、ワープ、火炎放射にもしかしたら攻撃察知までなんでもござれ。他の能力使って来てももう驚かねえわ。

で、話を戻すとそんな技の宝箱に確実に当てるにはわかっても対処できないような素早い攻撃をするか、わかっていても防御できないようにしなきゃならない。

どちらの方が簡単か、できそうかと言われれば当然後者なわけで。でもどちらかで選んだだけでどちらも難しいことも変わらない。

後者の状況を作るには…周りの建物を崩して生き埋めにする?ショートワープで逃げられる。なまじ埋められたとしても陽乃さんのソードスキルが使いづらくなる。

となると…

 

『楓子さんと俺であいつに接近してなんとか抑え込みます。その間に陽乃さんは俺たちごとあいつを切ってください』

『オッケー!』

 

さあてまずはどうやってあいつの剣をよけながらあいつに近づくか…

 

「!」

 

なんだこれ。脇腹に衝撃…引っ張られる!

 

「誰か俺とあいつの間にあるワイヤーを!」

 

横から限界まで伸ばしたスコーピオンの刃が伸びワイヤーを切断する。しかしワイヤーが切れても慣性の法則で俺はそのまま獣の下へ引っ張られ続ける。

 

「グラス…ホッパー!」

 

俺の進路上にグラスホッパーを配置し、無理やり俺の体を跳ね上げ、獣を上に行きもう一度使い獣の後ろに回り獣を羽交い絞めにする

 

「陽乃さん!」

 

陽乃さんがこちら着いてソードスキルを使うまで大体あと5秒。

やばい!獣の力が強すぎる!このままじゃ

 

「あれ?」

 

なぜだか急に獣の抵抗する力が弱くなる。そして…

 

「ゼリャァァァァアアアアアア!!」

 

陽乃さんのソードスキルが獣の鎧を切り裂き、その下にあるトリオン体も切り裂いた。

大きな音とともに敵のトリガーが解除され、敵が生身になる。陽乃さんのソードスキルに巻き込まれ、ベイルアウトはしなかったものの両腕が肘の先からなくなった俺はその敵を支えることができずにそのまま前に倒してしまった。しかしその敵は強い衝撃があったにもかかわらず、前のめりに倒れたままピクリとも動かなかった。

俺たちはそろって首をかしげると楓子さんが敵の首に手を当て脈を計る。

 

「これは…ユイちゃん!今すぐ救護班を呼んで!脈がないわ!」

「はぁ!?」

 

***

 

救護班が来るまでに心肺蘇生法を試してみたが効果はなく、敵であった若い桜みたいな色をした髪の男は脈がないまま。そのまま救護班にそいつを預けた。

 

「ユイはあの敵のことを知ってるって言ってたよな?教えてくれないか?」

『そのことなんですが、さっきほど上層部の方から連絡があって敵について報告をしてほしいとのことなのでその場でいいですか?パパ』

「そういうことならわかった。なら上層部のところに向かおうか…そういえばまだ交代の時間になってないんだけど…」

『次の柿崎隊の準備はもうできているそうなので引き継ぎだけすればいいそうです』

「りょーかい」

 

それから柿崎隊に引き継ぎを行い、上層部のところを目指し本部の入り口をくぐった。

その時最後尾を歩く俺の耳にふと声ならざる声が聞こえた気がした

 

「……え?」

 

思わず振り向くがもちろんそこには誰もいない

 

「どうかしたの八幡?」

 

陽乃さんの声に慌てて前を向き首を振る

 

「いえ何でもありません」

 

陽乃さんと楓子さんに続いて本部に入る前に俺はもう一度だけ後ろを振り返った

 

(…気のせい、だよな)

 

胸の中でつぶやきすぐに前を向く。

しかし、本部のドアをくぐる瞬間、奇妙な声がもう一度聞こえた気がした。それはこんなふうに聞こえた。

 

―喰イタイ。

 



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災禍の鎧2

遅くなって申し訳ないです。前回も書きましたが補修とかいろいろあってこれからは遅れると思います


今回独自設定含みます



獣みたいなネイバーを倒してすぐに俺たちは上層部に呼ばれて会議室に来ていた。

 

「じゃあユイちゃん。さっきのあの人型ネイバーについて教えてもらえるかな?」

 

忍田さんの言葉にユイはうなずくと静かに口を開いた。

 

「あのネイバーは向こうの世界ではディザスター、災禍の鎧と呼ばれていました。」

 

ユイの語るストーリーはそんな言葉から始まった。

 

―ディザスターはまだ向こうの世界でもそこまで技術が発達してなかった頃に誕生したある一人のトリガー使いの名だ。

銀灰色の全身鎧に身を包み、一メートル以上ある大剣を持ち、数多のトリガー使いを地に這わせた。その戦い方は苛烈、あるいは残忍の一言で、降参しようとしていた者の首を刎ね、手足を捥ぎ、暴虐の限りを尽くしたという。

しかし、無数のトリガー使いを死に追いやった彼にも、最後の時はやってきた。その当時存在していた国が共同戦線を張り、幾本ものブラックトリガーやその国独自のトリガーをつぎ込み災禍の鎧の討伐を始めたのだ。

ついにその頑丈な鎧が砕かれその首が切り離される瞬間、彼は哄笑とともにこう叫んだという。『俺はこの世界を呪う。穢す。俺は何度でも甦る。』

その言葉は真実だった。ディザスターと呼ばれたトリガー使いはこの世を去ったが、ディザスターが使っていたブラックトリガーはこの世にとどまった。その討伐に加わった国の一つにそのブラックトリガーが渡り、適性検査が行われ、討伐に参加した一人のノーマルトリガー使いがそのブラックトリガーの所有者となった。そしてブラックトリガーを使った時、そのトリガー使いの精神を…乗っ取った。それまでは高潔なリーダーとして慕われていたのに一夜にして残虐な殺戮者へと変貌したのだ。その荒ぶる姿は≪初代≫と全く見分けがつかなかったそうだ。

 

そこで一回言葉を止め、全員の顔を確認するように一瞥してから、ユイは続けた。

 

「同じことが実に三度繰り返されました。≪鎧≫の持ち主は大変な恐怖をばら撒いたのちに討伐され、しかし鎧は消えずに、主を討ったものへと次々に乗り移り人格を変容させました…そしてそのトリガー使いは本来の名ではなくディザスターと呼ばれるようになります。」

「そこで、鬼怒田さんにお願いがあります。私とそのモニターと繋いでいただけませんか?」

「ああ。わかった。ユイちゃん」

 

鬼怒田さんが立ち上がり、会議室にあるモニターとユイを接続させる。ユイと接続されたモニターは一つの荒野とそこで走る一人の人を映し出していた。

 

「ユイこれは?」

「…今から2年半ほど前に行われた4代目≪ディザスター≫の討伐の映像です」

 

ユイの言葉に会議室が騒然とした。それからいち早く再起動した城戸さんがユイに質問する

 

「なぜユイ君がこんなものを持っているのかね」

「私を生み出したトロポイと言う国は攻撃など軍事的な技術がそこまで発達していない代わりにこういった情報収集に長けているのです。様々な国にこちらの世界で言う蜂よりも小さいくらいのトリオン兵を飛ばしその蜂が集めた情報をまとめて本国へと持っていっています。」

「そのトリオン兵はこちらの世界にも来ているのかね」

「私がトロポイにいた時点ではこちらの世界には送っていなかったはずです」

「そうか…」

 

そこで映像に動きがあった。今までは走っていた人の足音しか聞こえなかったのだが映像からその音とは違う音が混ざり始めた。この音は…剣の音か!

その時一気に開けた場所を映し出した。そしてその中央部には銀灰色の全身鎧のトリガー使い、ディザスターと老人のトリガー使いが剣を打ち合っている。さっきまで走っていたトリガー使いは大きく踏み込むと、数十メートルあった距離を立った一歩で0にし、二人の戦闘に乱入した。

老人と走っていたトリガー使い…長いからAでいいや。Aは連携しながらディザスターに攻撃を与えていく。

 

『ガッ!!』

 

肉食獣のような咆哮とともにディザスターは大剣を猛烈なスピードで振り下ろす。二人のトリガー使いは避けたものの後ろに見えていた山はバターのように2つに割れた。それを見たからかどうかはわからないが二人のトリガー使いは一回距離を置く。しかしディザスターはその場で口を膨らませ、俺たちにしたように炎を吐くモーションをする。

 

『ブレスだ!』

 

初めてディザスター以外の人を声が聞こえた。二人のトリガー使いはその声を聞き、ばらばらに動き出して炎を回避する。ディザスターはそれを分かっていたのかすぐさま大剣を持って老人を方へ向かい、剣を振り上げる。しかし身の丈ほどのでかい盾を持った大男が間に入り老人をガード。その隙に老人は大きく下がった。ディザスターは盾に力任せに大剣を叩きつける。

耳をつんざくような衝撃音とともに、滝のように火花が飛び散る。大剣は跳ね返したが盾を持った人はがくっと膝をつく。

 

『ガッ、ガガッ!!』

 

怒りとも喜悦ともとれる叫びを漏らし、ディザスターは大剣を無茶苦茶な動きで何度も何度も振り下ろした。一撃でもヒットすれば体を断ち切られそうなその攻撃を、大男は的確に、愚直にガードし続ける。

ここで俺はディザスターの鎧にいくつもの深い傷があることに気付いた。剣をふるうたびその傷からトリオンが洩れ、空中に消えていく。

 

「手負い……?」

 

無意識のうちにつぶやくとユイがささやきを返した。

 

「そうです。彼は、この直前に他のトリガー使いとも戦い、この場所に追い込まれました。残存トリオン量的にはもう瀕死のはずです。なのにこれほど荒ぶります。私はこれを初めて見た時、心の底から恐ろしかったです。」

 

それはそうだろう。普段ほとんど表情を変えない城戸さんでさえ驚愕の表情をしているのだ。

内心でそうつぶやきながら俺はぞっと総毛立つのを感じていた。

と、そこでどれだけ大剣を叩きつけても崩れないことに苛立ったのか、ディザスターが低く唸った。攻撃を継続しながらも、その長い頭部を伸ばし、突如湿った音とともに口を開いた。

 

「あれは!」

 

さっきの戦いで謡にした攻撃と似ていた。というよりそっくりだった。

 

「あれはディザスターの能力の一つ≪トリオン吸収≫です。彼は口で相手を食べることによって相手のトリオンを奪うことができます。」

 

今まさに盾を持った男が食われようとしていた時、一回退いた老人とAが挟み込むように突進してくる。そしてそのまま老人の視認ができない速度での攻撃でディザスターの首を断ち切った。

そこで画面の右下にある再生時間を示すスライドバーが右端に到達した。

 

 

 

 

映像が終わると俺は掌がじとっと汗をかいていることに気が付いた。

 

「ユイちゃんに聞きたいんだがこの後ディザスターブラックトリガーはどこの国に渡ったのかな?」

「…私はこの後このブラックトリガーは壊されたと聞いています。」

 

確かに強力ではあるが制御できないのならガラクタもいいとこ。さらに見境もなくトリガー使いを襲うともなればリターンよりもリスクの方が大きい。壊した方が賢明だろう。けど…じゃあ俺たちがさっき戦ったのは何なんだ?ディザスターと呼ばれたブラックトリガーは壊されたはずなのにそれと同じ能力を持ったトリガー使い。

 

「なんにせよ人型ネイバーは比企谷隊が倒したんですし、この話はもう終わりでいいのでは?」

 

根付さんの言葉に城戸さんは少し考えてから肯定した

 

「…緊急会議はこれで終わりとする。各自それぞれの仕事に戻ってくれ」

 

会議が終わるとみんなが扉から出て行く。そして俺も出ようとしたところで

 

「比企谷これから何か違和感を覚えたら報告しろ。比企谷隊のほかの隊員にも伝えておいてくれ」

「了解です」

 

俺は短くそう返すと今度こそ会議室から出た。

 

***

 

あれから数日、特に俺にも俺の周りにも変わったところはなく、平穏そのものだった。

そんなわけで今俺は警戒区域に来ています。なぜかというと

 

「あぁ~緊張する」

「そうだね。あたしも緊張するよ」

「そんな緊張するようなことでもないでしょ。あ、そうだお兄。これ終わったら焼き芋食べたい」

「いやいや明日葉ちゃん。お兄ちゃんはお財布じゃないのよ?わかってる?」

「千種兄妹緊張感なさすぎだろ」

 

千種隊の初任務の付き添いである。新米部隊の最初の数回の防衛任務時にはすでにチームを組んでいる誰かしらが通常付き添うことになっている。その付き添う人は基本的にはその時に防衛任務がない人になるが例外として知り合いがやることもある。それで俺がやる羽目になってしまったのだ。

 

『みんなゲート発生したよ!誘導誤差4.22だよ』

「了解。モールモッドは三浦と明日葉、バムスターは俺と川崎でやる。そんな感じでいいんだよな?比企谷」

「まあいんじゃねーの。あとはネイバーを討ち漏らして警戒区域の外に出さないようにだけは注意しろ。じゃあがんばれよ」

 

屋根の上に座り持ってきていた本を開く。本を読んじゃいるが一応いつでも動けるように準備はしているしB級に上がる腕があるなら連携さえしっかりすれば負けることはないだろうし大丈夫だろ

そんなこんなで5分くらいたつころにはすべてのネイバーを倒し終えていた。

 

「お疲れ。あとは次にゲートが開くまで待機な。」

 

俺がそう言うと千種が戻ってくるのを待ってから4人は輪になって固まって、今の戦闘を振り返りながら談笑をし始める。俺が思ってたよりみんなリラックスしてるようだ。前に他の新米部隊の付き添いをしたときは戦闘が終わってからも緊張しまくってたからな。ここで東さんとかならリラックスできるような言葉をかけるだろうが俺にそんな言葉をかけることができるわけもなく最後までずっと緊張してて疲れたからな。その点こいつらはそこの心配をする必要はなさそうだな。重ねた来た時間はまだ少ないがもうすでに確かな信頼がそこにはあるのだろう。

 

きっと奴らのようにはならない。

 

ふとそんな考えが浮かんだ。

 

(ん?奴らって誰だ?)

 

―奴ラハ我カラ大切ナ人ヲ奪ッタ。我ハ奴ラガ憎イ。我カラ大切ナ人ヲ奪ッタ物ガ憎イ。憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ

 

「ヒ…ヒキオ!?どうしたんだし!?」

 

え?三浦を見ると戸惑った表情で俺を正確には俺の腰のあたりを見ていた。俺もそこを見てみると…

 

「なんだよこれは!」

 

俺の腰のあたりから尾が生えていた。そして俺の右腕が指先から鎧に覆われて行く

そしてさっきの声が聞こえてきた

 

―ソウダ、ソノママ我ニ身ヲ委ネロ。奴ラヲ切リ裂キ、引キ千切リ、喰イ尽クス。喰ラウ。喰ラウ。喰ラウ。

 

「ッ!誰か!早く俺をベイルアウトさせろ!俺が飲み込まれないうちに早く!」

「どうしたんだしヒキオ!それにその腕は」

「いいから早くしろ!う…お、おおおっ……!」

 

拳を砕けんばかりに握りしめ、俺は必死に抗う。俺を支配しようとする闇色の波動を全力で遠ざけるように。

 

「お兄!どうしよう!?」

「どうするって言ったって比企谷が言うようにするしかねえだろ」

 

千種たちの話し声が聞こえるが聞こえているだけで頭に入ってこない。頼むから早くベイルアウトさせてくれ

そして頭に衝撃。数秒後にベイルアウト用マットにたたきつけられそこで俺の意識は闇に包まれた。

 



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災禍の鎧3

休み明け1週間後にテストとレポート、それからほぼ1週間ごとに部活の大会や検定など6月半ばまで鬼畜スケジュールのサラリーマンです


暗転。

スポットライト。

白い光の輪の中に、艶のない朱色に塗られた鳥居と石畳が出現する。そしてその石畳の上を走る小さな人影。

続けて弱い照明が周囲を照らす。夜。無数のかがり火が音もなく揺れる。鳥居は最初の一つだけではなく、同じものが幾本も連なっているようだ。石畳のわきには純白の玉砂利。少年の向かう先には小さな、しかし立派な屋敷があった。

少年―ファルはその屋敷の門番の人に挨拶すると玄関の扉を開け、中に入ると音を立てないように一直線にある部屋を目指した。その部屋の前でファルは一呼吸置くとその部屋に向かって声をかけた

 

「フラン。入っていい?」

「いいけど…」

「おじゃましまーす」

 

ファルはフランの部屋に入るとあることに気付いた。

 

「もしかして邪魔しちゃった?」

 

フランは家で集中したいときには部屋の明かりをすべて消し、一つのろうそくの光だけにするのだ。そして今フランの部屋はそれと同じ状況だったのだ。

 

「ううん、大丈夫だよ。そろそろ明日に備えて寝ようと思ってたところだし。」

「…とうとう明日だね」

 

明日はブラックトリガー≪ザ・ディスティニー≫の所有者決定戦があるのだ。先代の≪ザ・ディスティニー≫の所有者が死に、次の所有者候補のフランともう一人の候補が戦うのだ。

 

「うん。ファル君見ててね。明日絶対に勝ってみんなをもっと楽にさせてあげるから」

 

フランの家は現当主の意向で身寄りのいない子供を引き取っているのだ。

 

「うん。明日は絶対見に行くから。応援してるよ。それじゃあね」

「…もしかしてそれを言うためだけにこんな時間にわざわざ来たの?」

 

現時刻、子の刻(今でいう午後11時ごろから午前1時ごろ)

 

「うん。そうだけど…」

 

ファルの言葉にフランはぷくっと頬を膨らます

 

「あーあ私の幼馴染君は寝る前の女の子の家を訪ねてきて一言言っただけで帰る薄情な人だとは思わなかったな~これは明日、試合が終わってからえんじ屋の甘味おごってもらわなきゃかな~」

 

そう言ってフランはちらちらとファルを見る。

 

「はいはいわかりましたよお嬢様。明日勝ったらいくらでもおごりますよ」

「よろしい!明日は何食べよっかな~ファル君のおごりだし、お店のもの全部食べるのもいいかもね!」

「僕の財布がカラにならないように遠慮してくれよ?じゃあほんとに帰るよ。おやすみ」

「うんおやすみ!」

 

そうしてファルはフランの屋敷を出た

 

***

 

「改めてフランの勝利を祝って乾杯!」

「乾杯!」

 

フランとファルはえんじ屋で向かい合って座り乾杯をしていた。昼間に行われた所有者決定戦はフランの勝利で幕を閉じ二人は打ち上げと称し、えんじ屋に来ていた。

もうすでにフランは何品も頼んでおりファルの財布は軽くなっていた。

 

「なあフランそろそろ…」

「えー!ちょっと持ち合わせ少ないんじゃない?」

「あのね、フランと一緒にしないでよ。冴えない一般家庭のうちじゃあこれが限度だって。」

「しょーがないなー!またおごってもらおっと!ごちそうさまでした」

「さっき行って待ってて。会計したらすぐに行くから」

「うん。じゃあ待ってるね」

 

二人は席を立つと分かれてフランは出入り口に、ファルは会計をしに向かった。

 

***

 

暗転。

スポットライト。

 

 

 

(思ったよりも遅くなっちゃたな。フランが風邪ひかないといいけど…あれ?いない)

 

会計が混んでいて終わるまでに時間がかかってしまっていたファルがお店を出てるとそこには待っているはずのフランの姿がなかった

 

「フラン?どこ行っちゃたんだろ」

 

なんとなくファルはお店の裏にある林の中にフランがいるような気がして林の中に入っていく。そしてしばらく林を進んでみたものは…

開けたところに横たわる、探していたフランの姿とその周りに立っている5人の人だった

 

「フ、フラン!」

「ん~思ってたより早かったな。ま、もう少し待っててくださいよファルさん」

 

フランに声をかけようとすると後ろから急に押さえつけられる。

 

「僕たちとしては用があるのはフランさんだけなのでファルさんはここで待っててください」

 

そこでファルはこの声が聞いてことがあることを思い出す。

 

(この声は…確か!)

 

「お前は…バイスの部下の…テイカー!」

 

バイスとは今日フランが戦った所有者決定戦で戦った相手だ

 

「お、もう僕の正体がわかりましたか。意外と頭が切れるんですね。」

「何でフランを!」

「許せないですよね。たかがあの人ごときがあのブラックトリガーを持つなんて。七星外装(セブンアークス)は我らが主が持つのがふさわしいのに…だから殺して奪うんですよ。」

 

その言葉が合言葉となったのかフランを囲んでいた連中が自身のトリガーを展開し、フランに攻撃をし始めた。

 

「やめろ…、やめろ、やめろ―!」

 

トリガーを起動させ、上に乗っかっていたテイカーを弾き飛ばし、正面で剣をふるっていたやつを突き飛ばし、素早くフランを抱えるとファルのトリガーの能力である瞬間移動を使い森の中に逃げ込む。

 

「フラン、フラン」

 

瞬間移動と言っても長い距離は移動できないため、まだ近くにはテイカー達がいる。なのでファルはテイカー達に気付かれないように小声でフランに声をかけた。

何度か声をかけているとフランは薄くだが目を開けた

 

「フラン…よかった。今すぐに医療所に連れて行くからもうちょっと我慢して。」

「ごめんね…ファル君。私の最後のお願い…あなたの手で私を殺して…」

「は?最後?…それに俺がフランを殺すなんて…なんで!」

「相手の中に毒使いがいたの…その毒に触れてしまったの…だからお願いファル君!大好きなあなたの手で終わることができればきっとこの旅は幸せだったと思えるから!」

「………フラン」

 

胸にあふれた思いをすべて言葉にすることはできなかった。

だからファルは傷ついたフランの体を抱きしめ、一度体から離し、フランの顔を見てありったけの感情を込めて囁いた

 

「ありがとう。俺も大好きだよ」

 

ファルはもう一度フランを強く抱きしめるとフランを離し、自分のトリガーからフランの剣型のトリガーに切り替える。

そして振りかぶり、ファルはフランの首を切―

 

「イッツショウタイム」

 

れなかった。横から現れたさっきフランの取り囲んでいたやつの一人に切られてしまった

 

「う……あ……ああああ………」

「さて、兄弟(ブロ)を呼ぶ前に見つけちまうか」

 

そしてその下手人―ヴァサゴはフランの体から何かを探し始める

 

「お、発見。」

 

下手人が見つけたのは≪ザ・ディスティニー≫と呼ばれるブラックトリガー。

 

「う……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

ドクンと。

≪ザ・ディスティニー≫はその雄たけびに反応するように淡く輝く。そしてひとりでに動き出し、ヴァサゴの手からするりと抜け出すとファルの前で止まる。

ファルは選ばれなかった。だが今なら≪ザ・ディスティニー≫を使える気がしていた

 

「…着装 ≪ザ・ディスティニー≫」

 

小型の恒星の如き強烈な光が生まれ、世界を銀色に染める。

ファルの手足と胴体を分厚い追加装甲が覆っていく。そのデザインは先代の所有者が使っていた時とは大きく異なっていた。

さらに鎧の変化はデザインだけではなかった。

 

「お前たちのせいでフランが………あ…あ……ああああああああああ!」

 

ファルの絶叫に呼応するように鎧から闇色のオーラがあふれ出していく。そしてそのオーラは通常では絶対にありえないことを引き起こした

 

「スターキャスター」

 

ファルが握っていたフランのトリガーを起動させた。通常なら二つ同時にトリガーを起動させることはあり得ない。しかしファルは≪ザ・ディスティニー≫と≪スターキャスター≫二つのトリガーを起動させていた。

 

「オオオオオアアアアアア―!!」

 

無限に湧き上がる怒りそれ自体が媒質となり、トリガーに干渉していく。

もともと別々のトリガーだった≪ザ・ディスティニー≫と≪スターキャスター≫。

二つのトリガーが歪み、崩れ、溶け合う。そしてここに新たなトリガーが生まれる

 

最凶のブラックトリガー ≪ザ・ディザスター≫がここに誕生した

 



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災禍の鎧4

遅くなってすみませんでした
次はもっと早く出せるように頑張ります


その日、楓子はめぐりと一緒に八幡のベストプレイスで食事をとっていた。

 

「八幡君まだ起きてこないね」

「そうですね」

 

八幡は千種隊の防衛任務付き添いの後から三日間眠り続けていた。

 

「けどほんとに八幡君がディザスターになっちゃったのかな…」

「千種さんのお話を聞いた限りでは、完全ではありませんがユイちゃんの映像で見たディザスターの特徴とそっくりらしいですね…」

 

その時、二人同時にボーダーから支給されているスマホが鳴る

二人は八幡が起きたのかと思いすぐさま電話に出る。しかし、電話から聞こえてきたのは八幡が起きたということではなかった

 

『全ボーダー隊員は今すぐに警戒区域に向かってください。繰り返します。全ボーダー隊員は今すぐに警戒区域に向かってください』

 

「ふうちゃんこれから何にあるのかな」

「わかりませんが嫌な予感がします。急いで向かいましょう」

 

楓子は職員室に向かい、緊急の任務で総武高の全ボーダー隊員が出動することを伝えると、めぐりとともにボーダー本部に向かった。

 

***

 

「迅さんこれはどういうことなんですか」

 

楓子はめぐりを本部に送った後、謡・陽乃と合流し警戒区域に戻ろうとすると迅と会い、迅と警戒区域に向かう。迅ならば何か知っているであろうと思い、楓子は迅に尋ねる

 

「これから人型ネイバーが来る未来が見えた。それと一緒に見たこともないトリオン兵が警戒区域全域で戦っている未来が見えた。だからみんなを招集したんだ。」

「そうなんですか…!迅さんあれを!」

 

楓子の視線の先には一つのゲートがあり、そこから5人の人が出てくる。

 

「どうやらあいつらが今回の相手みたいだな」

 

5人の中心にいた錫杖を持った女性がこちらに気付いた

 

「聞け!玄界の兵よ!我らはレオニーズ!我らの要求はただ一つ。先日こちらに来たはずのディザスターの次の依り代の身柄を渡してもらおう!」

「悪いがそれはできないな。仲間をお前らに渡すわけにはいかない」

「ふっ、いいだろう。お前らが渡さぬというならば力づくで奪うまでだ。絶対に次の依り代は手に入れる。行けドラーク!」

 

錫杖を持つ女性が投げた卵から生まれたのは龍型の新型のトリオン兵だ。

 

「私は船に戻り、適当なところにドラークをまく。お前らは好きに暴れていろ」

 

女性の指示を聞きレオニーズの兵が二人ずつ二手に分かれる。

 

「俺が金髪の少女と黒髪の少年の方へ行く。楓子さんは新型のドラゴンの方に、陽乃さんと謡ちゃんはもう一つの人型の方に向かってください」

 

迅の指示に三人は素直に了承する

 

「「「了解」」」

 

そうして彼女たちの戦いは始まった。

 

~~~

 

リーダーと思われる女性が持っていた卵から出てきたドラークと言う名の新たな龍型のトリオン兵。

先ほどから楓子は距離を取って攻撃を仕掛けているが楓子の攻撃は龍のうろこを貫けないでいた。

 

(これは硬いというより攻撃そのものが弾かれているといった感じでしょうか)

 

楓子のその予想は当たっていた。ドラークの鱗には不完全ではあるがトリオンリフレクターが備わっており、普通の遠距離攻撃ではトリオンリフレクターを破れるほどの威力を出せない

 

(これは時間かかりそうですね…)

 

~~~

 

「トリオンメイク槍騎兵(ランス)」

 

黒髪の少年―グレイはトリオンで作った槍を迅に向けて放つ。迅は余裕をもってそれをよけると風刃の斬撃をグレイに向かって飛ばす。グレイはそれを自分で作ったシールドでガード。その隙に金髪の女性―ルーシィは迅の横に回りその手に持っていて鍵を虚空に突き出しひねると同時に言葉を発する

 

「開け人馬宮の扉 サジタリウス!」

 

出てきたのは馬の帽子をかぶった弓を持った一人の男性。予知ですでにこういう未来があると分かっていたとはいえ、目にするとさすがに迅は驚きを隠せなかった。その隙にグレイは次の技を発動する

 

「トリオンメイク アイスフロア。ルーシィ!」

「うん!サジタリウスお願い!」

 

グレイがトリオンで氷の床を作って迅の足を止めるとルーシィはサジタリウスに命令を出す。サジタリウスはトリオン体の急所である脳とトリオン伝達器官を狙って弓を射る。

迅はそれを風刃ではじくと足の氷を破壊、それと同時に少し距離を取る。

 

「なあ、少し話をしないか?」

「話だと」

「ああ。君たちの目的を教えてくれないか」

 

唐突に迅は二人に話しかけ始める

 

「あ?ディザスターの次の依り代を手に入れるってあいつが言ってただろうが」

「違う違う。あの女性たちの目的じゃなくて君たち二人の目的だよ。君たちだけはあの連中とこっちに来た目的が違うんだろう?」

「なんでそう思うの?」

「俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

「…グレイ。この人になら話してもいいんじゃない?」

「ルーシィはこいつが信じられるのかよ。こんな胡散臭いやつ」

「確かに胡散臭いだけど…信じてもいいと思う。」

 

グレイはしばらく考えた後、自分たちの本当の目的を話し始めた

 

「おい先代のディザスターの依り代だった男は今どうなってる」

「今は本部で安置されているはずだ。」

「俺とルーシィの目的はそいつの遺体を返してもらうだけだ」

「どういう関係だったか聞いてもいいか?」

 

この質問に答えたのはルーシィだ。

 

「あたしたちは家族だったんだ。親のいなかったあたしたちをマスターが引き取ってくれてそれからあたしたちは血より濃い絆で結ばれた家族になった。けどあの日あナツはあたしたち家族を守るために禁断だった力に手を染めちゃったの」

「それが≪ザ・ディザスター≫だったってことか。事情は分かった。その件に関しては俺が本部に交渉してなんとかする。その代わりあの新型トリオン兵の弱点みたいなものがあれば教えてくれないか?」

「あいつの鱗にはトリオンリフレクターがあって下手な威力の攻撃では通らないってことは分かってるな?」

「ああ。それをどうすればいいのか知りたい」

「奴の喉元に一点、少しだけ色の違う鱗がある。そこを攻撃すればトリオンリフレクターは消える。」

 

それを聞くと迅は警戒区域に展開している全ボーダー隊員に通信をつなぎ、弱点について伝える。

 

「これで良し。それでこれからどうする?本部との交渉はこれが全部終わってからにしてほしいんだが」

「わかってる。どうしよっか、グレイ?」

「あーもしあれだったら協力してくれないか?」

「何に?」

 

迅はそこで少しためを作り、

 

「リーダーのあの女性を倒す」

 

***

 

『新型トリオン兵、ドラークと言うらしいんだが、そいつの弱点は喉元にある色の違う鱗だ。そこを攻撃すれば攻撃が通るようになる。みんな頼んだぞ』

 

(そういうことでしたか)

 

楓子は迅からの通信でドラークの弱点を知るとバイパーで重点的にそこを狙い始める。

尻尾での薙ぎ払いなどで体の向きを頻繁に変えていたのだが、ボーダーの中・遠距離トリガーの上位の使い手である楓子にはそれくらいなんてことはない。

楓子の方に頭が向いた瞬間に喉元にある鱗をピンポイントで打ち抜く。

 

(これで攻撃は通るはず)

 

バイパーを展開しドラーク目掛けて放つ。バイパーはドラークの体をいとも簡単に貫いた

 

(攻撃を反射させるのにトリオンをたくさん使って本体の防御力はないも等しいですね。これなら…)

 

再びバイパーで攻撃しようとトリオンキューブを楓子は展開したが、そのトリオンキューブは発射されなかった。なぜなら

 

「やっほー楓子。元気ー?」

「楓ねえお待たせしましたなのです」

 

二人の人型ネイバーの相手をしていたはずの陽乃と謡が先にドラークにとどめを刺してしまったからだ。

 

「二人の人型はどうしましたか?」

「ちゃんと倒して捕虜にして本部に引き渡してきたのです」

「それにしても楓子。あの新型を倒すのに時間がかかってたみたいだね」

「初めて見るタイプでしたのでモーションを把握するのに時間がかかりました。けど完璧に把握したのでもう大丈夫ですよ」

「じゃあ楓子を頼りに他のところを救助に行こっか。めぐり、ここから一番近いところで助けが必要そうな部隊がいるところは?」

『えーとですね、今みんながいるところから…みんな近くにゲート発生だよ』

 

めぐりの新たなゲート発生の報告と同時にさっき聞いた声が聞こえてきた

 

「なぜこうもたやすくドラークがやられている…まあいい。所詮はただの兵器。やはり最後は我の手でやるしかないようだな。」

 

女性――コスモスは手に持っていた錫杖を二回鳴らす。

すると、コスモスの周りにゲートが開きそこから二体のドラークが姿を現す。

 

「また出てきたね。楓子二体だけど頼んだよ。」

「任せてください。」

「それでは行くのです!」

 

謡は先手必勝とばかりにコスモスに向かい矢を放つ。その矢はコスモスの周囲に当たりコスモスを煙で包み込む。そして陽乃が旋空を放つ。二人はこんな攻撃で倒せたとは思っていない。しかし当たった音はしたので何かしらのダメージは入っていると考え、すぐに追撃しようと陽乃は剣を、謡は弓を構えたが結局、追撃することはなかった

 

「陽姉、これは…」

「うーん敵のトリガーかな?けどこれは厄介だね。まさかデバフがかけられるなんて(・・・・・・・・・・・・)」

 

コスモスの持つブラックトリガー≪ザ・テンペスト≫。その能力を一言で言うなら―エンチャント。錫杖の音を聞いたものに様々な効果を付与する。

今使ったのはスロウ。簡単に言えば体の動きが遅くなるということだ。普段ならほとんど効果はないが、こと戦闘においてはすごい効果を発揮する。

 

***

 

楓子が体の異常に気付いたのはドラークとの戦闘中だった。ドラークの攻撃のスピードは変わらないのにさっきまで余裕で受けきれたはずの攻撃が急に受けられなくなった。それだけで楓子が異常に気付くのは十分だった。それから致命傷となる攻撃は受けていないが細かな攻撃で大分削られ、あと一発でも攻撃を受けたら即ベイルアウトという状況。普段の楓子ならこの状況でも焦りはしなかった。しかし、八幡が三日も眠っていて起きる兆候もないという事態が楓子に焦りを生んだ。その結果―

 

転倒。

 

それをドラーク二体は見逃さなかった。楓子に近寄り、口を開ける。そして楓子にかみつこうとしたところで

獣の怒号によって(・・・・・・・・)動きを止めた。

二体のドラークの目線の先には銀灰色の全身鎧を身に纏った一匹の獣がいた

 

 

 

 

 

                     ここに災禍の力を持った獣が再臨した。

 



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災禍の鎧5

なんか書き方が迷走してる…


変な夢から目の覚めた俺を目に映ったのは、何回か見たことのあるボーダーの医務室の天井だった。

目が覚める前の記憶を探ってみると千種隊の防衛任務のときに倒れたのだと思い至った。

 

(それにしてもなんか騒がしい)

 

医務室のベッドの上からでもわかるほど慌ただしい気配が漂ってくる。なんかあったことを直感し、ベッドから出る。どれくらい寝ていたのかはわからないが固くなっていた体を軽く伸ばすと、医務室から出る。

さしあたって情報収集するにちょうどいい中央オペレーター室を目指す。近づくにつれ何が起きているのかわかってきた。

 

(要するにネイバーが攻めてきているってことか)

 

それが分かると俺はすぐに警戒区域を目指す。ネイバーが攻めてきているのなら迎え撃つのがボーダー隊員である俺の仕事だ

 

***

 

俺が警戒区域に出て近くの戦場に着き俺の目に映ったのは、楓子さんが見たことのないトリオン兵にやられそうになっているところだった。

そしてそれを見た瞬間、俺の心にある一つの感情が爆発した。

それは憤怒。

怒り。圧倒的な怒りが俺の体を駆け巡る。それと同時にゆがんだ声が脳裏いっぱいに響く

 

―我ハ汝。汝ハ我。

―永遠ノ時ヲ経テ、今ツイニ蘇ラン。我ハ≪災禍≫。我ハ≪終焉≫。世界二終ワリノ鐘声ヲ響カセル者ナリ。

―我ガ名ハ―

 

「≪ザ・ディザスター≫!!」

 

俺の体がトリオン体に変わりどんどん鎧に包まれていくのが分かる。一時の激情に身を任せてしまった結果、もう取り返しのつかないところにたどり着いてしまったことが鎧に包まれていく体に伝わってきた。

全身が鎧に包まれると同時に手には一振りの長剣。はるか昔にスターキャスターと呼ばれたトリガー。

その剣を手に俺は吠えた。

 

「グル…アアアアアアアアッ!」

 

その雄たけびは無限の憤怒に満たされ、俺の体を勝手に動かしていく。次第に意識が遠くなり、俺の意識は飛ばされた。

 

―素晴ラシイ。ココマデ適合シタノハ初メテダ

 

***

 

目覚めると、俺はサイドエフェクトのハイレベルを使った時に来る空間にいた。普段であれば俺が何かを想像しないと何もないただ真っ白な空間なのに今回は既に物があった。

 

俺の手足を縛る鎖という形で。

 

俺の手足はその鎖に縛られて身動きが取れない。今動かせるのは首から先だけだ。その動かせる首で周りを見てみると俺の正面には大きなモニターがあった。モニターって言うのは語弊があった。本当は空間にただ映像が映し出されていた。その映像は…

 

見るからに重そうな鎧なのにそれを着たまま俊敏に動き二体のトリオン兵を手に持った長剣で簡単に一刀両断するディザスターとなった俺の姿だった。

そしてその映像の中で俺は二体のトリオン兵の近くにいた楓子さんの首を片手でつかみ持ち上げ、今にも絞め殺そうとしていた。

 

「おい待て!やめろ!」

 

俺の声は届かずになおも映像の俺は楓子さんの首を絞め続ける。

 

「やめろって言ってんだろうが!止まれよ俺の体!」

「無駄ですよ。あなたがここでいくら叫んだところで今の彼には届かないですし、今のあなたにあなたの体の制御権はありませんよ。だからここであなたがいくら抗おうと無駄ですよ」

 

俺だけだと思っていた空間に一人の女性が現れる。その女性は夢で見たフランと呼ばれていた女性とそっくりだった。

それと同時に本来のあり方を思い出したように映像がゆっくり映しだされるようになった。

 

「うるせえ。そんなことは関係ない」

 

女性の言葉を無視し今度は両手両足を縛っている鎖を力の限り引っ張る。鎖はびくともしないがそれでもなお引っ張り続ける。

 

「なぜそんなに災禍に抗うんですか?」

 

俺の行動を見ていた女が不思議そうに尋ねてきた。

なぜ災禍に抗うのか…そんなものは決まってる。

 

「仲間のためだ。」

「仲間…ああ知っていますよ。仲間なんて自分の目的のためなら人を容赦なく襲う。そんな人たちのことですよね?そんな人たちのためになんでそんなに頑張るのやら。私には理解できませんね。」

「は?なに言ってんだお前。」

 

女の言葉に俺は鎖を引っ張ていた力が抜けた。

 

「仲間はそんなもんじゃない。仲間は同じ目的に向かって進む同志だ。いや、目的なんて違くていい。一緒に笑って、支え合って、互いが互いを信じあえるようになる。それが本当の仲間だ。仲間の絆舐めるなよ!」

 

抜けた力を再び込める。するとさっきまでとは違い鎖は少しだが確実に鎖は動いた。

それを見て女は驚いた顔を浮かべた後、笑った。

 

「いいでしょう。私の力あなたに託します。信じていますよ。きっと彼に会わせってくれるって」

「何―

 

俺の言葉は最後まで続かなかった。なぜなら

 

(You got an enhanced armament≪star caster≫)

 

この言葉が頭の中に入り込んできたからだ。これが頭に入り込んでくると同時に俺の手足を縛っていた鎖が砕けた。

 

「さあ行ってきて。…信じていますから」

 

女の言葉に俺は

 

「任せろ」

 

自然とこの言葉が出てきていた

 

***

 

俺の意識が現実に戻る。体はまだ鎧に包まれたまま。そしてまっすぐに突き出した左腕の先にはこれ以上ないほどに傷ついていき、意識を失っている楓子さんがいる。

すぐさま地面に下ろそうとするが左腕は動かない。

 

―ナゼ我ニ抗ウ!

―ソレハ≪敵≫ダ!

 

体全体がぎしっと震えたがそれ以上は動かない。獣が邪魔をして俺の意志で体が動かせないように、今は俺の意志で獣の行動の邪魔をする。

だが、いつまでもそれを続けてはいられない。いつまで邪魔を続けられるかわからない以上早々に行動を移さなければならない。

当たり前だがやったことはない。けど、やり方は知ってる。

俺は何とか右腕を動かし、近くに突き立てられていた禍々しいフォルムのスターキャスターを掴む。この剣はもともとこんな禍々しいフォルムではない。遥かな過去、鎧が姿を変えた時に一緒に取り込まれてしまったフォルムが変わった。

姿かたちが変わろうとも、この剣の中には使い手であったフランの魂が残っている。それを獣―ファルに会わせる。そのためには…

手に持った剣を逆手に持ち替える。そして切っ先を自分へと向ける。

 

「…ハチ、さん?」

「すいません。つらいと思いますがもう少しだけ待っててください」

 

意識を取り戻した楓子さんにそう言うと、剣を自分に向かって突き刺した。

 

―我ヲ、裏切ルノカ!汝マデモガ我ヲ裏切リ滅シヨウト言ウノカ!!

―違えよ。今のお前ならもうわかるだろ。

 

脳裏に響く獣の怒りの声。その声に返事をすると俺の意識はまた飛ばされた。

 

***

 

再び俺はハイレベルの加速をした時の空間に来ていた。この場には俺とフラン、それに獣がいた。

フランが怖れるふうもなくまっすぐに歩み寄りながら、獣に向かって右手を差し出した。

 

「ごめんね。長い間一人にして。寂しかったよね………。苦しかったよね。」

 

獣の巨大な口から、低い唸り声が漏れる。目の前にいる少女の存在が信じられないというように小刻みに首を振り尻尾を垂らして後ずさろうとする。

だがフランはスピードを緩めることなく獣の前まで達すると、広げた両手で躊躇いなく巨大な首を抱いた。それから獣の頭をなでながら囁く。

 

「これからはずっと一緒だよ。ずっと、ずーっと一緒………」

 

ばっ、と音を立てて獣から鎧が剝がれていく。中から現れたのは夢でフランと一緒に居た少年。

 

「…フラン」

「…ファル君」

 

二人はお互いの名前を確かめるように呼ぶと、その場で手をつなぎ抱きしめ合った。しばらく抱きしめ合うと二人は離れたが、その手につながれたままだった。

ファルがこちらを向く。

 

「ありがとう。君のおかげでまたフランに会うことができた。………サラバダ、我ガ最強ノ共闘者ヨ。なんてね。」

「ああ。じゃあな。…幸せに、な。」

 

どちらからともなく笑うと、ファルの体が淡く光りだした。しかしフランの体は光りだしたりせずにそのまま。

 

「ねえねえ、二人とも何言ってんの?」

「「え?」」

 

俺とファルの言葉が被った。

 

「ファル君が鎧を歪めちゃったせいでハチ君の国は今大変なんだよ?だったら最後まで責任とらないと!」

「でもどうやって?僕たちはここから出られないよ?」

「ファル君が負の心意で鎧を歪めちゃったように今度は私たち二人で正の心意で鎧を変えるの!ほら想像してファル君。誰にも負けない絶対無敵のトリガーを!ハチ君が使いやすいように!」

 

二人の体からさっきファルから出ていた光とは違う光があふれ出し、繋いでいた手を前で収束していく。光が収まり出てきたのはブレスレット。

 

「はい、出来たよハチ君。これがハチ君のためのブラックトリガー。名前は≪絶滅天使(メタトロン)≫。大切に使ってね」

「けどいいのか?もともとはお前らの国のブラックトリガーなんだろ?」

「気にしないで。今の所有者はハチだから。それにたぶん敵のリーダーが持ってるトリガーはもともと僕たちの国が持ってた七星外装(セブンアークス)の一つだから。対抗するならなおさら持ってた方がいい。」

 

いつの間にかこの二人には俺の呼び方がハチで統一されているようだった。

そんなことは今はどうでもよくて。ファルの言葉から敵のリーダーが持ってるのは七星外装(セブンアークス)?と呼ばれるたぶんすげえブラックトリガーなんだろうと推測できる。それに対抗できるって言うならおとなしく貰っておくのが吉と見える。

 

「分かった。ありがたく使わせてもらう。」

「うん。私たちはここから見てるから頑張ってね」

「ああ。」

 

俺に向かって手を振っているフランとファルにうなずいてからいつものように加速を解除した。

 

***

 

現実に戻るとすぐに楓子さんを地面に寝かせる。

 

「楓子さん大丈夫ですか」

「ええ。ベイルアウト寸前ってところを除けばなんともないです。それより鎧は…」

「鎧はこれになってもうなくなりました。」

 

俺は左腕についているブレスレットを見せる。

 

「それは…いいえ、今は敵を倒すことを優先しましょう。話はまた後で」

「はい。敵はどこですか?」

「向こうに。今は陽乃さんと謡が戦っているはずです。」

 

楓子さんの指さした方にかすかに爆発音が聞こえる。たぶんそこだろう。

 

「私はもうベイルアウトします。後は頼みました。」

「任されました。」

 

一回深呼吸をし、俺は彼らからもらった名前を口に出した。

 

「絶滅天使(メタトロン)、起動」

 



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災禍の鎧6

これで災禍の鎧編も最後となり、次回からはワートリの原作に突入すると思います。


「絶滅天使(メタトロン)、起動」

 

≪ザ・ディザスター≫からフランとファルが俺の使いやすいように変化させた≪絶滅天使(メタトロン)≫を起動する。

起動と同時に絶滅天使(メタトロン)の使い方が頭に流れ込んでくる。

 

(…これ俺が使いやすいようになってるか?)

 

頭の中に入ってきた情報を整理した結果がこれだ。

ごちゃごちゃ考えている時間もないので最も早く楓子さんたちの下へたどり着くために俺は

 

翼を生やした(・・・・・・)。

 

よくアニメとかで見るような翼。それが俺の背中に生えている。これがブラックトリガー≪絶滅天使(メタトロン)≫の能力の一つ、飛行能力だ。

まず俺は確認するように翼で大きく空気を叩く。そして今度は鳥がはばたくように連続して翼を動かすと、体が少し浮き上がった。肩甲骨のあたりから伸びている骨を動かすイメージを作るのに少し手間取ったが、一度イメージして慣れてしまえばあとはもう楽々飛べるようになっていた。

ひとまず高度を10メートルくらいに保ち、その場でホバリングする。時間がないのは分かっているが自分の攻撃の性能などをぶっつけ本番で試してみたくはない。なので一回そこら辺のトリオン兵が試してみたいが…

 

「見つけた」

 

上空から少し離れたところに一体のトリオン兵と、そのトリオン兵と対峙している三人の人影が見えた。その三人には悪いがそのトリオン兵で性能実験をするために横取りをさせてもらおうか。

その場所まで一瞬で飛ぶと俺は翼から一枚の羽を分離させる。そしてその羽の先端をトリオン兵に向けるとその先端からレーザーを撃った。

これがメタトロンの二つ目の能力、レーザー攻撃だ。その名の通りレーザーでの攻撃なんだが、その威力がすごい。相手がシールドを張っていようと、間に建物があろうと超高密度のレーザーでトリオンでできているものすべてを蒸発させる、という代物だ。

まずはただ撃つだけで、二発目はレーザーを曲げてみる。バイパーをリアルタイムで弾道を引くときと同じような感じでイメージするとその通りになることが分かると、すぐに止めを刺し、また翼を広げる。そして飛び立とうとしたところで声をかけられた。

 

「ヒキオ?」

「「比企谷?」」

 

そこにいたのは千種隊の三人だった。ここにはいないがたぶん千種もどこか狙撃できる位置にいるだろう。

 

「ヒキオ、あんた大丈夫なの?」

「ああ。心配かけて悪かった」

 

俺が倒れたのは千種隊の防衛任務の引率の時。ただでさえ初めての防衛任務で緊張してたって言うのに引率者が急に苦しみだして殺してくれ(やることとしては同じ)なんて言われたときの気持ちを考えると非常に申し訳なく思う。

 

「アンタその恰好…」

「ああこれか?これはだな、あん時の原因となったものが変化したものだな」

「それ着けてて大丈夫なの比企谷。また暴走とかしないの?」

「千種妹の懸念ももっともだがその心配はもうないぞ」

「そ、ならいいんだけど。あ、お兄」

 

背後に人が降りた音がする。俺は振り向きつつそいつに向かって声をかける。

 

「久しぶりだな千種」

「おう久しぶり。それで早速だが比企谷、城戸司令からの伝言だ。『終わったらすべて説明してもらう。早くケリをつけろ』だってさ。」

 

きっと俺には通信できないから千種を通じて伝えてきたのだろう。

 

「了解。そういうことだからもう行くわ。お前らもやられないように気をつけろよ」

 

さっき飛ぼうとした時と同じように翼を広げ、空気を叩くように数度震わせ一気に空に上がる。

 

「おーいヒキオー!今度あーしも飛んでみたい!」

「あ、あたしも!」

「そういうことなら俺も。」

「………」

「ん?サキサキは?」

「無理無理無理!高いところとかほんと無理だから!」

 

千種隊の頼みに手を挙げて答えると、翼を震わせ、飛んでいく。目指すは陽乃さんと謡が戦っている戦場だ。俺は今出せる全力でそこへと向かった。

 

***

 

全力で飛ぶとすぐに陽乃さんたちのいる戦場の上空にたどりついた。まだ気づかれてはいない今のうちに上空から一発でかいのを打ち込んでおきたいが、それをするには陽乃さんの位置が近すぎる。何とか離れてくれるといいが…

ん、なんか陽乃さんの動きがおかしい。動きにキレがないというか、いつもより動きが遅い。よく見てみると、援護をしようとしている謡の動きも遅い。もしかしてこれは敵のトリガーの効果か?

 

≪正解だよハチ君。≫

「っ!」

 

何か急にフランの声が聞こえてきたんだけど。なにこれ怖い

 

≪怖いなんて心外だな~≫

≪フラン、ハチが困ってるから。ハチ君の仲間の運動能力が下がってるのは相手が持ってるブラックトリガー≪ザ・テンペスト≫の能力だよ。能力は任意で相手に様々の効果を付与すること。今回はハチ君の仲間に運動能力低下の効果が与えられてるんじゃないかな?≫

≪おいちょっと待ってくれ。なぜこうして会話できているんだ?≫

≪そんなこと今はいいんじゃない?ほらあのお姉さんピンチだよ≫

 

陽乃さんが相手の錫杖を受けきれずに先の尖がった錫杖が陽乃さんの太ももに突き刺さる。すぐに抜かれるがそこから漏れ出るトリオンの量が尋常でない。

 

≪あーたぶんあれトリオン漏出増大もかかってるね≫

≪なあ、あれって無条件にかけられるわけじゃないよな?その条件って何だ?≫

≪音だよ。所有者によって形は変わっているけど、音が条件だよ。たぶん彼女の場合は錫杖の音かな≫

≪それって近接戦闘してたら確実にだめだよな≫

≪うん、だめだね。けど遠距離攻撃ならけっこう余裕だし、ハチのブラックトリガーがあれば負けることなんてほぼないと思うよ。≫

 

なんか相手が持ってるのってすごいブラックトリガーなんだよな?そんな簡単に倒せるもんなのか?

 

≪あったりまえじゃん!私とファルがハチ君専用に作り上げたブラックトリガーだよ。≪ザ・テンペスト≫の本当の使い方もできてないのに負けるわけないじゃん≫

≪本当の使い方ってどういうことだ?≫

≪ハチもさっき能力を聞いたときに思ったと思うけど、あれって援護が基本でしょ。それで彼女は相手の能力を下げることに使ってるけど、本当は味方の能力をあげる方が何倍も効果が強いんだ。≫

≪心が通った相手なら効果はさらに大きくなるよ。確かブラックトリガーがテンペストだけの一個小隊が一国をほぼ壊滅させたなんて話もあったよね≫

≪まじか、何そのチート≫

 

俺のブラックトリガーも十分ぶっ壊れだがあれもやべぇな。確かファルは俺の変化前のブラックトリガーもあいつのテンペストも七星外装(セブンアークス)って言ってたから、名称から察するにこんなぶっ壊れブラックトリガーがあと5本も残ってるのかよ。これ以上はぜってー相手にしたくねえわ。

 

≪さてそろそろ倒しに行こうか≫

≪ちょっと待ってくれ。陽乃さんが近くにいすぎて、今攻撃すると陽乃さんにも当たっちまう≫

≪いやその心配はないよ。ハチのレーザーは意識すれば対象だけを消失させることも可能だよ。ほら想像して。君の仲間は絶対に消失させない。ゆっくりでいい。確実にイメージして作るんだ≫

 

ファルが言ったことを何度も頭に反芻させつつ、レーザーをゆっくりと作る。ひたすらに敵だけを消失させるイメージを。

 

≪そうそうその調子。確実なイメージができたところで放て!≫

 

俺は絶対に逃がさないように直径をでかくしたレーザーを放つ。そのレーザーは陽乃さんごと敵を包む。陽乃さんは驚いて空を見上げ、こちらに気付き、笑顔を見せる。

そして、レーザーの光が収まった後には、こちらを見上げ笑顔の陽乃さんと、気を失ったように倒れている女性がいた。

 

***

 

後日談、と言うか今回のオチ。

 

「ブラックトリガー≪ザ・テンペスト≫の所有者は四埜宮謡とする。本来であれば今回の襲撃でブラックトリガー使いとなった比企谷、四埜宮の両名はS級となるはずだが雪ノ下陽乃の強い希望で両名はA級のまま、非常時のみブラックトリガーの使用を許可することとなった。以上をもって解散をする。」

 

ディザスターの襲来から約1週間。俺と謡、ボーダー上層部、各隊の隊長が揃った今回の襲撃の事後報告会と題した会議が終わった。この会議の主な議題は三つ。論功行賞の発表と捕虜となった三人のこと、そしてブラックトリガー使いとなった俺と謡についてだ。

まずは論功行賞から。特級戦功にはうちの隊それぞれと迅さんが。一級戦功には太刀川隊や風間隊などA級上位部隊が入った。

捕虜三人については一応一通りの尋問は行うがあまり無茶なことはしないらしい。何でも迅さんが敵だった二人と交渉し、向こうの要求を呑む代わりに情報提供をしてもらうらしい。

最後に俺と謡について。本来ならS級となるところを陽乃さんが最大のスポンサーと言うコネを生かして、脅はk…脅s…お話してとりあえずはA級のまま、非常時にはブラックトリガーを使用するとなった。

これで会議は終わり。俺と謡は本部内の廊下を歩いているのだが…

 

≪いや~キドシレイだっけ?あの人顔が怖かったな~≫

≪フラン失礼だって≫

 

さっきからこの二人が、特にフランがうるさい。

この二人はこのまま俺の頭の中に居座り続けるらしい。理由を聞いたところ、『玄界を見てみたい』との簡潔な答えが返ってきた。まあ俺から追い出す気もないし、そもそも追い出し方もわからないから結局はこのままなのだが。

 

こうして1週間に渡る《ザ・ディスティニー》を巡る一連の騒動は終わり、舞台は激動の冬へと移った。




迅さん、原作で普通に黒トリで通信してたけどどうやったんだろ?


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原作突入編
原作突入1


なんとなく分割して短いです。


≪ザ・ディザスター≫の一連の騒動が終わった後すぐに総武高では生徒会の選挙が行われた。普通の高校生だと選挙に関わるのが投票の時など少ない機会しかないのでへぇーあるんだ的な反応だけでそこまで印象に残らないが、俺の場合は違った。去年は既に部隊を組んでいためぐりさんの当選を確実にするためにいろいろ奔走した。今年こそ何もしないでいいと思ってたのに、めぐりさんが面倒な依頼を持ってきた。今年の総武高の選挙管理委員会は現役生徒会が行っているが何でもめぐりさんが防衛任務でいないときに一年の一色という人物から届け出があったらしいんだが、その投票は本人が望んだものではなく、その一色はクラスの中でもめぐりさん曰く悪目立ちしているらしく、周りの人間が勝手に届け出たらしい。選挙規約に記載されていないから立候補の取りやめもできずに、じゃあ投票で落ちればいいと言ってみたところ、立候補が一人しかいないので信任投票で分けるのはカッコ悪いと言われ、どうやって一色に引き受けさせるのか(もうすでに選挙で負けることは考えないことにしたらしい)を一緒に考えた。結局、舐められたままでいいのかと煽ること、そして好きな人がいるならその人に手伝ってもらえば合法的に二人っきりになれる等のメリットを提示することに決まった。今考えてみればけっこう穴だらけの作戦だったが何とか一色に会長を引き受けさせることができた。それが3週間くらい前。それから期末テストがあって、やっとゆっくりできた今日この頃。俺は謡と作戦室のコタツでぬくぬくしていた。

 

***

 

今作戦室には俺と謡しかいなかった。陽乃さんの持ってきたコタツを囲んでみかんを食べつつ本を読む。これぞ冬って感じがするな。ちなみに俺が読んでいる本は「ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)」通称「ロクアカ」だ。アニメを見て面白くて一気に大人買いをしてしまった代物だ。ただ、今俺が読んでいるのは「ロクアカ」だが俺の正面のコタツの上にはまだ読んでいない「ロクアカ」のほかに、「エロマンガ先生」と「週末何してますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?」通称「すかすか」が積みあがっている。この二つも「ロクアカ」と一緒に大人買いをしてしまったのだが、一時に買いすぎてしまった。テストが終わってからコツコツを読み進めているのだが、いっこうに減らない。それでも今日、なんとか読み進めて積み本の5分の1は減らした。今日はもう少し時間があるからもう1、2冊は読み終えたい。でもその前に

 

「謡、なんか飲むか?いるようならついでに買ってくるが」

 

謡に声をかけておく。トイレに行くついでに何かしらの飲み物を買おうと思うが謡は何かいるだろうか。

 

「それなら緑茶をお願いするのです。」

「緑茶な。了解」

 

トイレを済ませ、謡の緑茶と自分のMAXコーヒーを持って戻る。

 

「謡ここ置いとくぞ」

「ありがとうなのです」

 

そして、また読書を再開しようとしたところで慌ただしく作戦室の扉が開かれた。

 

「八幡君、ういちゃん!ゲームしようぜ!」

「いきなりどうしたんすかめぐりさん…」

 

***

 

話を聞いてみると、まあ予想通りではあったが国近先輩のせいらしい。ひたすらにコンボつなげられてこちらが動く間もなく殺されたと。国近先輩容赦なさすぎだろ。それで国近先輩でネイバーフッド遠征に行ってる隙にうまくなって驚かせてやろうと思ってるようだ。そんなわけでゲームの準備をしているのだが…

 

「これ4人用のゲームじゃないですか…あと一人どうするんですか」

「それはもう大丈夫!ユイちゃんに頼んであるから!だから八幡君。ユイちゃんをお願い」

「わかりました。」

 

自分のスマホに触れ、トリオンを込める。スマホからあふれ出てきた光が少女の形を作り、それがユイへと変わる。

 

「よろしくお願いします!パパ、ねえ、めぐりさん!」

「よろしくね!ユイちゃん。よしじゃあ、『さあゲームを始めよう』」

 

アンタはどこの引き籠り人類最強ゲーマーだと心の中をツッコミを入れつつゲームを始めようとする。

 

≪ねえハチ君!あの女の子は誰!?それにハチ君のことをパパって!それよりハチ君のスマホ?から出てこなかった!?≫

≪そんないっぺんに質問すんな。答えられないだろうが。で、ユイは娘。どっかの国のトリオン兵だったけどいろいろあって今は俺のスマホに住んでいる。以上だ。≫

≪ひどく簡潔だね。どういう原理なの?≫

≪悪いが俺もよくわかってない。林藤さん、ボーダーの上層部の一人な。その人が個人的にネイバーフッドから持ち帰ったトリガーをエンジニアが使ってこの仕組みを作ってくれたんだよ。≫

 

「あ」

「パパ!油断怠慢すなわち怠惰!です!」

 

フランとファルと会話をしていたせいで手元がおろそかになっていたみたいだ。そんなことより

 

「ユイ。パパと約束だ。もう二度とペテルギウスのマネしちゃいけないのデスよ」

 

………

 

この後二時間くらいゲームしたら解散となりました。

 

***

 

「―――――て!」

「――君―きて!」

「――君!起きな―――キスし―――よ?」

「ちょっ!―ラン!」

 

なんか耳元でうるさいな。こっちは気持ちよく寝てるって言うのに。どうせ小町だろ。

 

「あと10分寝かせてくれ小町」

 

瞬間、部屋の温度が下がり、今まで不鮮明だった声がクリアに聞こえる。

 

「…やっちゃおうかファル君」

「そうだねフラン」

 

ん?今フランとファルって…すぐに目を開けるとそこにはベッドの片側を持ち上げようとしている二人の姿が…

 

「さっさと起きろーー!!」

 

その声とともにベッドが持ち上げられ、俺は抵抗することもできずに床にたたきつけられた。

 

 

 




心意があると、くまちゃんが村上先輩に勝つ未来もあり得るな…


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原作突入2

夏休みって何ですかね?
夏休みに入ったはずなのに入る前より時間がないってどういうことですかね?


 

「それでお兄ちゃん。小町が知らない間に知らない人を二人も家に泊めといてその二人に朝起こしてもらってたことに何か言いたいことはあるかな?」

 

フランとファルに乱暴に起こされた後、うちで寝ていた小町がフランの声に気付かないわけもなく、たたきつけられた後すぐに小町が俺の部屋に来て、説教モードに移行した。

理由を問いただされるも、俺もなぜこいつらがここにいるのかわかるわけもなく、必死にアイコンタクトでファルに助けを求める

 

≪ごめんねハチ≫

≪いつもみたいに会話できんのかよ!俺が必死にアイコンタクトした意味は!?おかげさまで目がいてえよコンチクショー!≫

≪まあまあそんなに怒らない♪≫

≪誰のせいだと思ってんだ誰の!それより早く助けて!小町ちゃんの視線がやばい≫

 

下を向ている俺の頭に刺さる視線の温度がやばい。視線で人が殺せるならもうすでに俺は何度も死にまくっているだろう。そんな中でやっと助けが入った

 

「えっと、小町ちゃんでいいんだよね?そんなにハチを怒らないであげて。ハチが疲れてるの分かってて無理を言ったのは僕たちだし、その恩を忘れて起こしちゃったのはこの子だからさ」

 

ファルの説得に小町も何とか怒りの矛先を収めてくれた。

 

「この人に免じてだからねお兄ちゃん。次からは誰かを呼ぶようならちゃんと一言言ってね」

「おう分かった。でだ、小町。こいつらの分の朝食も作ってやってくれないか。簡単なものでいいからさ。」

「最初からそのつもりだよお兄ちゃん」

「さんきゅうな小町。俺たちは部屋に行ってるからできたら呼んでくれ」

「了解であります!」

 

俺はフランとファルを連れ、部屋に戻る。それから適当に雑談をするふりをしながら、いつものようにテレパシーを送る

 

≪一応まだユイには秘密にしておくためにこっちで話すぞ。さてまずはどうやって実体化したのか聞こうか≫

≪ユイちゃんの実体化を見て私たちもしたいな~って思って、心意使って一晩かけてやっと完成したんだ!≫

≪心意って万能だな!≫

 

いやほんとにそう思うわ。トリガーを姿を変えるわ、さらに機能を追加するわ、何でもありだな。

 

≪本来の心意とは少し違うんだけどね≫

≪どういうことだ?≫

≪心意の基本技術は射程距離拡張・移動能力拡張・攻撃威力拡張・装甲強度拡張の4つで、これらを単品だったり組み合わせたりするんだけど、僕たちのは全く違うでしょ?一応心意ではあるんだけど、本来の心意とは違うってこと。≫

≪そういうことか…なあ俺でも心意って使えるのか?≫

≪使えるよ。心意は心よりいずる力。強い思いやイメージがあれば誰にでも使えるよ≫

 

誰でも使えるって割には今まで、見たことも聞いたこともなかったな。

 

≪なあ俺は今まで聞いたこともなかったんだがなんでだ?≫

≪たぶん誰も習得してないってことだよ≫

≪さっきは誰でも使えるって言ったけど、それは可能性の話。誰でも習得できる可能性はあるけど、実際に身に着けるのは難しい。身に着けるにはよほどの強いイメージか、気の遠くなるほどの時間が必要なんだよ。≫

 

一通り説明を聞くと、ちょうど小町から朝食ができたと呼ばれ、フランとファルとともに食卓に着き、食事を始める。

 

「そういえばお二人の名前ってなんていうんですか?」

 

食事が始まってすぐに小町がこれを言った。そういえばまだ言ってなかったような気もする。

 

「私はサフラン。サフラン・ツーベルクだよ!気軽にフランって呼んでね!」

「僕はファルコン。ただのファルコンだよ。ファルって呼んでね」

 

ふむ。最初からフランとファルって呼んでたから知らんかったが、フランはサフラン・ツーベルク、ファルはファルコンと言うのか。フランに家名があって、ファルに家名がないのは家の階級みたいなものの違いなんだろう。ディザスターが生まれた夢を見た時にも、フランが他とは違ういい家に住んでいたしな。

 

「比企谷小町です!よろしくお願いしますねフランさん!ファルさん!」

「よろしくね!小町ちゃん!」

「よろしく小町ちゃん」

「よろしくお願いします。お二人とも日本人じゃないようですけど、どこでお兄ちゃんと知り合ったんですか?」

 

……な に も か ん が え て な か っ た。

 

≪やっばいよ!ハチ君どうすんの!?≫

≪……俺がなんとかする。そっちも何とか話を合わせてくれ≫

≪うん。了解。任せたよハチ≫

 

「あーえっと、この二人はだな、海外の新しいボーダースポンサー候補の子供でな。親が商談している間に俺がこっちを案内することになって今に至る」

「うん、そうなんだ!お父さんたちが商談している間に、ハチにこの街を案内してもらおうと思って!」

「そうなの小町ちゃん!そうだ!小町ちゃんはこの街でいい服屋さん知ってる?できたら案内してほしいんだけど!」

 

よし!ナイスだフラン!うまいこと話をそらせた!

 

「わっかりました!お兄ちゃんじゃそういうことは分かりませんもんね!小町におっまかせーです!」

 

≪でかしたフラン!≫

≪でしょ!だから服のお金頂戴!≫

 

そりゃあこいつらがこっちのお金を持ってるわけがないか…

 

≪あんまり高い金額は渡せないからな≫

≪やったー!愛してるぜハチ君!≫

 

「なっ!」

 

ファルが声を漏らす。それに小町が反応した

 

「どうかしましたか?ファルさん」

「いや、何でもないよ」

「そうですか…あ、ファルさんもどこか行きたいところはありますか?」

「そうだな…特にないけど、強いて言うならおいしいものが食べたいかな」

「わかりました。それじゃあもう少しゆっくりしたら出発しましょう!」

 

こうして今日は小町、フラン、ファルの三人と出かけることと相成った。

 

***

 

「待て。ほんとに待って!それ以上は…それ以上は!」

「そうだよフラン。それ以上はハチが!」

 

「「俺(ハチ)の財布が持たない!」」

 

みんな大好き千葉県民御用達のララポでフランの頼みの服を見たり小物を見たりしていると、いい時間になったので近くの飲食店に入る。そこまではよかったのだ。そうそこまでは。フランたちがいたところとは全く違うこっちの味付けに感動したのか、さっきからフランの注文が止まらない。それこそフードファイターのごとく、注文した料理を腹に収めてはメニューを開き、また新たに追加注文をする。その無限ループ。エンドレスリピート。軽く計算してみたところ、もうすでに持ってきたお金の6割以上になっている。

 

「え~私まだ入るよ?」

「フランのおなかの心配はしてないの!ぼくたちが心配してるのはハチの財布!」

「そうですよフランさん!さすがに食べすぎです!太っちゃいますよ!?」

 

小町から飛んできたのは実に女の子らしいセリフだった。

 

「そのことは大丈夫!だって私はトリって痛ったぁ~!なにするのファル君!」

「いや、ごめん。足がすべちゃって」

 

危うくトリオンでできていることを口走りそうになったフランの足を対面に座っていたファルが足をけって黙らせる。

 

「トリ?トリってどういうことですか」

「トリじゃなくて特じゃないのか?俺にはそう聞こえたぞ。ほらいくら食べても太らない特殊な体質とかそういうことが言いたかったんだろ」

「何でお兄ちゃんが答えるのさ。けどいいですね~いくら食べても太らない体質って!」

「食べた分は頭にでも…それはねえな。普段から何も考えてなさそうだし、おつむも弱そうだし」

「何おう!普段からしっかり頭も使ってるよ!」

「ないな」

「ないね」

「ないと思います」

 

上から俺、ファル、小町だ。会って半日の小町にまで言われるとは…あの夢で見た時にはもっとしっかりしてる印象だったのにな。

 

「そろそろ出るか。次どっか行きたいところはあるか?」

「僕は本屋に行きたい」

「本屋か。ちょうど俺も続きが出てるか確認したかったし行くか。小町とフランもそれでいいよな?」

「異議なーし!」

 

こうして俺たちは本屋に向かった。

 

***

 

「ファルさんすごいテンション上がってるね」

「そうだな。俺もあんなファルは初めて見たわ」

 

俺と小町の前にはさっき本屋で買ったばかりの本を手に持ち、その本のことを熱心に語るファルとそれを聞いてうんざりしている顔のフランがいる。

なんでもファル曰く「この本がこっちの歴史を物語っている。こっちの世界って面白い!」だそうだ。

 

「ねえお兄ちゃん。ボーダーの関係者で空閑って人いる?」

「急にどうしたんだ。」

「この前うちのクラスに転校生が来たんだけどこの時期の転校生、それに三門市だからボーダーの関係者なんじゃないかなって。本人は否定してたんだけど、フランさんたちと同じで親がボーダーの関係者とかじゃないかなって思って」

「そうか。少なくとも俺は知らないな。もう少し古くからいる人ならなんか知ってるかもしれないから念のため聞いておこうか?」

「いやいいよ。別に知ったからなんだって話だしね。…そうだ!お兄ちゃん。小町そろそろB級に上がれそうなんだけどトリガーセットってどうすればいいかな」

 

お、とうとう小町もB級か。勉強をがっつりとさせたから上がるまでに時間がかかってしまったが、無事上がれそうで何より。

 

「基本はメイントリガーや戦術に合わせるが、詳しいことは家でな。」

「はーい。そうだ、帰る前にスーパー寄らないと。冷蔵庫の中結構からになってきたよ」

「まじか。おーいフラン、ファル!帰る前にスーパーに寄るぞ!そこ右な」

「はーい!」

 

フランの元気な返事が返ってきた。今日の晩飯は何にするかな。

その前に空閑、空閑な。なんとなくだが、これからそいつを中心になんかが起こりそうな気がする。名前、覚えておくか…

 




なぜ分割したんだろう


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原作突入4

なんか違うな


ある日それは唐突に起きた。

 

『緊急警報 緊急警報 門が市街地に発生します。市民の皆様は直ちに避難してください。繰り返します。市民の皆様は直ちに避難してください。』

 

突如として学校に響いたサイレン。とある少女は手に持っていたロッカーから取り出したばかりの次の教科の教科書をその場に投げ捨て、二つ隣の教室に向かう。

 

「スグちゃん!」

「小町ちゃん!」

 

二つ隣の教室にいるのは小町と前は同じクラスだった直葉。この学校の二人しかいないB級隊員の一人だ。そしてもう一人は…

 

「B級に上がったって聞いたけど本当なの小町ちゃん!?」

 

そう小町だ。と言っても二日前に上がったばかりで実戦経験など彼女にはない。

 

「うん。けど数日前に上がったばかりで実戦経験がないよ」

「そっか。なら小町ちゃんは先生たちと協力して生徒の避難誘導をお願い。」

「うん。」

「それじゃあ行こう!トリガーオン」

 

直葉の体がトリオン体に切り替わる。

 

「トリガーオン」

 

小町もトリオン体になり、直葉とは別れて行動する。直葉は校舎内に侵入してきたトリオン兵の排除を、小町は校庭に出て先生の手伝いを。学校に出てきたトリオン兵は三体。その三体とも避難が進んでいない南館の方に足を向けていた。しかしそのうちの一匹が避難している生徒の方に向かってくる。

 

「えっとこれは小町が対応するパターン?」

 

誰にも聞こえないように小町がそうつぶやく。小町は校舎の方に目を向け、直葉が二匹を相手に戦っているのを確認する。それを見て小町も覚悟を決める。

 

「この一体は小町が倒す。」

 

覚悟を言葉にして口にする。そして八幡からフランたちと買い物に行った後、家に帰ってからトリガーセット以外に言われたことを思い出す。

 

『トリオン兵の動きは不規則のようだが、実際はただプログラムに沿って動いているだけだ。』

『射手の仕事は味方に取らせることだ。仲間が取りやすいように常に考えて、相手を動かせ。』

 

それを頭で反芻しながら考える。小町の今のトリガーセットはC級からいつも使っていたハウンドにアステロイド、シールドだけだ。

 

(この手持ちで時間を稼ぐ!)

 

小町のこの考えは正しい。まだ実戦を経験したこともない少女がベテランのバックアップなしで一人でネイバーと戦うことは難しい。こんなイレギュラーな状況なのだ。彼女が一人でネイバーを倒せる実力があってもイレギュラーな状況、初の実戦の緊張で本来の実力は出せないだろう。

だからこそベテランである直葉の到着まで時間を稼ぐというのは正しい選択なのだ。さっきつぶやきは一人で戦う覚悟を決めるため。

そうして彼女の戦いが始まる。

 

***

 

ある程度経験を積んだ射手であれば本職のアタッカーには負けるもののそれなりの近接戦闘ができるが、B級上がりたての射手である小町には近接戦闘の技術はない。

したがってモールモッドに対して接近をさせずに遠距離から時間を稼ぐ。まずはハウンドを目の周りに撃ちかく乱をする。

そしてターゲットが自身に移ったことを確認すると、逃走を開始する。少しずつ移動しながらハウンドを放つ。速度重視にしてあるためダメージはほぼ通っていないが、タゲをとり続けることには成功している。

そして彼女の耳に待ち望んでいた通信が入った。

 

『小町ちゃんこっちは終わったよ!すぐに救援に行くね』

 

その言葉を聞いた瞬間小町の緊張の糸は切れた。切れてしまった。

初めての実戦を一人で戦う。そのプレッシャーの中で救援が来る。誰だって安心するだろう。しかしまだ安心してはいけなかった。

 

「え?」

 

小町は緊張の糸が切れたせいで足元の確認を怠った。

足元には小さなへこみが。小町とモールモッドの戦闘でできた小さなへこみだった。小町はそこに躓いた。

そして顔前には鎌を振り上げ小町の命を絶とうとするモールモッドがいる。

 

(あちゃーこれはもうダメかな)

 

小町は目を閉じて襲ってくるはずの衝撃に身をゆだねようとした。が、少年の叫び声によって小町は目を閉じることをしなかった。

 

「うわあああああああああ!!」

 

その少年は振り下ろされている鎌と小町の間に入ると、小町を守るように手に持っていたもの縦のように振り下ろされている鎌にかまえた。

 

(あれは三雲君?それにあの恰好…三雲君ってC級隊員だったんだ)

 

場違いにも小町はそんなことを考えた。間に入った少年―三雲 修は手に持っていた武器―レイガストをモールモッドにかまえたが、三雲の弱いトリオン、しかも訓練用のトリガーでモールモッドの鎌を防げるわけもなく、三雲は片腕を切り落とされた。(運よくトリオン体は破壊されなかった。)

モールモッドがまた鎌を振り上げる。三雲は片手がなくて戦えない。小町はまだ体勢が整えきれてなくて戦えない。しかし、今度こそ小町は安心していた。

 

「ゼェアアアアアア!」

 

直葉が弧月を一閃。まずは鎌を切り落とすと返す刀で目を切り裂いた。

 

「大丈夫?小町ちゃん。あと、えっと…」

「三雲、三雲修だ。よろしく桐ケ谷さん」

「あたしのことは知ってるんだ」

「そりゃあそうだよスグちゃん。ボーダー隊員で剣道部のエースだよ?知らない方がおかしいって」

 

直葉はボーダー隊員にしては珍しく部活をしている。ボーダーの活動で出れることは普通よりも少ないがそれでも参加できるときは参加し、この前の大会ではベスト8まで進んでいた。

 

「それよりもその恰好。三雲君ってC級だよね?基地の外でトリガー使ったら隊務規定違反になっちゃうよ!」

「そうだよ!それにB級以上のトリガーにはベイルアウトの機能がついているからあそこで三雲君が間に入らなくても本部に飛ばされるだけだったんだよ!それなのに無茶して!」

 

二人に詰め寄られタジタジになる三雲。

 

「それでも、それでも僕がそうするべきだって思ったから」

「……なんか主人公みたい」

 

原作主人公に向けてそんな言葉を放つ小町。と、そこにもう一人の原作主人公が来た。

 

「お、いたいた。ヒキガヤとキリガヤ、先生が呼んでいたぞ。一段落したら知らせてほしいって」

「ありがとう空閑君。行こスグちゃん」

 

そう言って小町と直葉は去っていった。そしてその場に残った原作主人公たち。

 

「だから言っただろオサム。近くにキリガヤが来てたんだからお前が行く必要はないって。」

「それでも僕はそうするべきだと思ったんだ。それに僕が行かなきゃ比企谷さんはトリオン兵に殺されていたかもしれないだろ」

「いやそれはないだろう」

「……!?」

 

唐突に発された知らない声に三雲は驚いた

 

「しゃ……しゃべった!?なんだそいつは!!」

「珍しいなレプリカ。おれ以外としゃべるとか」

「うむ。初めましてオサム。私の名前はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。」

「お目付け役……!?」

「以後よろしく。それでさっきの話なのだが、玄界には緊急脱出のトリガーがあると聞く。オサムは知らなかったから一部の隊員だけかもしれないが、それを使えばヒキガヤは無傷だったはずだ。」

「緊急脱出……」

 

何度か復唱して心当たりがあったのかはっとなる三雲。

 

「ユーマ、オサムそろそろ戻った方がいいのではないか?あまり遅いようだと心配されるだろう」

「そうだな。いこーぜオサム」

 

そう言い、空閑はさっさと歩いて行く。三雲が空閑に追いつき、二人で校庭に行くとそこにはおそろいの赤いユニフォームの部隊、嵐山隊がいた。

 

「ん?小町ちゃん、彼は?」

「あちゃー」

 

嵐山の視線の先には片腕を失ったままのいまだにトリオン体(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)の三雲がいる。

小町も直葉も当然三雲がトリオン体から生身に戻ってからくると思っていた。

 

「えっと、C級隊員の三雲修です。この格好の方が避難誘導をさせやすいと思ったのでトリガーを使いました」

 

事実、三雲はトリオン体で避難活動を手伝っており、ボーダー隊員と言うことで生徒も安心してスムーズに避難できたいた。

 

「そうだったのか!よくやってくれた!!」

 

怒られると思っていた三雲は嵐山に褒められて驚く。

 

「小町ちゃんや直葉ちゃん、君がいなかったら犠牲者が出ていたかも知れない。それに撃ちの弟と妹もこの学校の生徒なんだ!」

 

そういうと嵐山は避難した生徒の中から自分の弟と妹を見つけると素早く近づき頬ずりをしていた。

しばらくすると満足したのか三雲たちの方に戻る。

 

「嵐山先輩。彼がしたことは隊務規定違反です。違反者をほめるようなことはしないでください」

 

嵐山兄妹の団欒?に水をさしたくなかったのかずっと待っていた木虎が戻ってきたばかりの嵐山に言う。

 

「しかし、三雲君が動かなければ負傷者が出てきたかもしれなかったのは事実なわけだし」

「それは評価に値しますが、ここで彼を許せば他のC級隊員でも同じことをする人が現れます。今回はB級隊員もいて避難誘導だけでしたが、C級隊員だけだった場合、実力不足から深刻なトラブルを引き起こすことは目に見えています。

他のC級隊員に示しをつけるため、ボーダーの規律を守るため、彼は処罰されるべきです」

 

木虎の発言に周りはどよどよする

 

「…なあ何で遅れて来たのにえらそうなの?」

「…だれ?あなた」

「オサムの友達だよ。日本だと誰かを助けるのにも許可がいるのか?」

「…それは個人の自由よ。ただしトリガーを使わないならね。トリガーはボーダーのものなんだから使うにはボーダーの許可が必要。当然でしょ?」

「何言ってんだ?トリガーはもともとネイバーのもんだろ。お前らはいちいちネイバーに許可取って使ってんのか?」

「あ……あなたボーダーの活動を否定する気!?」

 

そこに現場調査を終えた時枝が帰ってくる。

 

「はいはいそこまで。現場調査は終わったから回収班呼んで撤収するよ」

「時枝先輩……!でも」

「木虎の言い分もわかるけど三雲君の処罰を決めるのは上の人だよ。ですよね嵐山さん」

「そうだな充の言うとおりだ。今回のことはうちの隊から報告しておく。三雲君は今日中に本部に出頭するように。処罰が重くならないように力を尽くすよ。」

 

さっきのシスコンブラコンの姿とは打って変わってしっかりとした姿で指示を出す嵐山。

 

「あとは、小町ちゃん、直葉ちゃん。今まで同じ場所で複数回ゲートが開いたって言う報告はないけど警戒はしといてくれ」

「わかりました!」

「よし、木虎、充撤収するぞ」

 

嵐山隊の三人が帰っていくと、避難していた生徒たちも教室に戻され、否定の声は上がったものの最後まで授業をし、その日は放課後を迎えた。

 



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原作突入4

だ、誰か……!
ルミルミに出番を与えておくれ!


放課後を迎えるとすぐに俺は学校を飛び出し、小町の学校へ向かう。昼間は三浦たちに「小町ちゃんなら大丈夫だ。」と止められたが放課後なら俺がどこに行こうと関係ない。俺は全力で小町の中学に向かう。

で、学校に着いたがいいんだが、

 

「何やってんのお前」

 

校門前ではなぜか木虎の写真撮影会をやっていた。

 

「比企谷先輩!?これは違うんです!これは……その……仕方なく」

「あーみなまで言うな。あれだろ?アイドルにあこがれたとかそういうあれだろ?大丈夫だ。俺は分かってるから」

「違います!そういえば比企谷先輩は何を……ああ小町さんが心配だったんですね」

「おう。そういうお前は何でここに」

「違反者の見張りです」

「違反者?なんの?」

 

木虎が答える前に我が愛しい妹の声がした

 

「あ、お兄ちゃん。」

「おう小町。怪我無いか?」

「お兄ちゃん、心配しすぎだよ!トリオン体だったんだから怪我するわけないじゃん!」

「それもそうだな。ところで小町、隣にいる虫はなんだ?今ならお兄ちゃんが駆除してやるぞ」

 

川崎弟には強力な護衛がいたがこいつらにはいない!勝ったな!がはは!

 

「もうお兄ちゃん!三雲君たちはそんなんじゃないって!ただのお友達だよ。大志君と同じ霊長類ヒト科のお友達。」

 

やだ小町ちゃん辛辣!これは同じ男として同情を禁じ得ない。現にメガネは冷や汗が流れている。もう片方の白髪は何のことだがわからないって顔だ。それよりなんだこいつ。髪が白い。もしかしてアルビノって言われるやつか?

 

『ハチ君あの白い髪の子。戦えば強いよ。常の周りの警戒を怠ってない。』

『そっちの世界の住人か?』

『わからない。けどこっちの人だったらあれほどの警戒心は身に着かないと思う。だからたぶん彼はこっちで言うネイバーだ』

 

俺がフランたちと脳内で会話している間に木虎がメガネに向かって言う。

 

「やっと来たわね。確か……三雲君だったわね。私はボーダー本部所属嵐山隊、木虎藍。本部基地まで同行するわ」

 

……

 

「小町どういう事?」

「うーんとね、三雲君ってC級なんだけど、トリガー使って避難誘導のお手伝いや小町を助けてもらったんだよね。それで処分とか決めるために呼び出されててこれから向かう予定だったんだけど…藍さんが迎えに来るなんて思わなかった」

「そうか」

 

小町を助けてくれたことは感謝するがこいつ相当アホだろ。C級が無断でトリガーを使ったとなればたぶんクビになる。確かそれは入隊したときに言われているはずだ。

 

「比企谷先輩、小町さん。私はそろそろ三雲君を本部まで連行しますが、お二人は?」

「俺は特に本部に行く用事はないが……小町は?」

「お兄ちゃん、もしよかったら稽古つけてくれない?小町強くなりたい」

 

今日のことで悔しいことがあったのか表情はいつになく真剣だ。本部から一つ頼まれごとをされていて、それをしながら放課後を過ごすつもりだったが小町がこんな真剣なんだ。

 

「もちろんいいぞ。と言うことで俺たちも一緒に行くぞ」

「わかりました。では行きましょう」

 

こうして木虎を先頭に俺、小町、三雲、そして最初から三雲、小町と一緒に居た白髪頭の空閑と五人で本部に向かい始めた

 

***

 

……犬猿の仲ってこういうのを言うんだろうな

 

「精……鋭……?」

「何よその疑いの目は!?」

 

さっきから木虎と空閑がけんかしまくってる。木虎が三雲に抱いてる対抗心をことを空閑が指摘し、さっきからこの調子だ。

 

「そういえば比企谷先輩聞きたいことがあるんですけど」

「なんだ?」

 

二人のけんかに関わりたくないのか三雲が俺たちの方に来る。

 

「今日の警戒区域のネイバー……あれは何だったんですか?なんで警戒区域の外にネイバーが出てきたんですか?」

「あーまだ確認が取れたわけじゃないんだが、なんでもボーダー基地の誘導装置に引っかからないようにゲート発生装置を取り付けた小型の改造されたトリオン兵がいるらしい」

 

ユイの話ではその可能性があると。まだそいつを発見できていないから絶対とは言い切れないらしいが十中八九そいつと言うことらしい。

 

「と言うことはこの街はいつどこにネイバーが出現してもおかしくないってことですか!?」

「そういうことだな」

「なら早く対処しないと」

「そうだな」

 

そうそう簡単に見つかるもんじゃないと思っていたがやっぱり全然見つかんねえな。

その小型トリオン兵を見つけるために、何人かには街を歩くときに注意して見ろ、と言われている。俺もその一人なのだが、それを頼まれてから意識していろいろ歩いたりしているがそれらしいものは全然見つかんない。一匹さえ見つければあとはそいつを解析してレーダーを映るようになるからいいんだけど、その一匹を見つけんのがつらい。

 

『ハチ君!』

「ああ。なんとなくわかった」

 

今歩いている土手から川の方を見るとそこにゲートが開いた。

 

『緊急警報 緊急警報 門が市街地に発生します。市民の皆様は直ちに避難してください。繰り返します。市民の皆様は直ちに避難してください。』

 

ゲートから出てきたのは初めて見る空中を飛ぶ魚みたいなトリオン兵。

 

「ユイあれは?」

 

電話をするふりをしてユイに聞く。

 

「まずいですパパ!あれはイルガー、爆撃用のトリオン兵です!」

 

見るとそのイルガーとやらは街の上まで行くと爆弾みたいなものを落としていく。

 

「小町、木虎。奴は見ての通り爆撃型のトリオン兵だ。」

 

それからユイから情報を受け取りつつそれを二人に伝える

 

「奴は周回軌道で移動しつつ、爆撃する。さらにめんどいことにダメージを与えすぎると勝手に自爆モードに移行して、付近で最も巻き込める人間が多い場所に落下して自爆するらしい」

 

なぜか空閑が驚いた表情でこちらを見ている。なんに対しての驚きなんだ?まあいいや。

 

「これを踏まえてだ……小町、木虎二人は住民の避難救助に当たれ。奴は俺が担当する。いいか?」

「比企谷先輩、あのトリオン兵は私にやらせてくれませんか?お願いします」

 

木虎が俺に頭を下げて頼んでくる。頭を下げる前に見た木虎の目には俺が許可するまで絶対に引かないという意思が見えた。

 

「だが断る」

「な……なぜですか!?」

「もし木虎が何の力も持たない一般人だった場合、あの魚が空飛んでるの見てどうだ?不安に思うだろうが。それに木虎じゃ決め手に欠ける」

 

木虎のトリガーセットとトリオン量では徐々に削っていかないととどめはさせないだろう。ダメージを与えすぎると自爆すると分かっていてもその自爆するラインが分かっていない以上、一撃で確実に屠ることのできる俺のメタトロンの方が絶対に良い。

木虎はしぶしぶ頷いてくれた。

 

「あ、あの!ぼくはどうすれば」

「……お前は避難していろ、って言いたいが状況が状況だ。責任は俺が取るからお前もトリガー使って避難を手伝え。」

「はい!」

「比企谷先輩、いいんですか?」

「今は猫の手も借りたい状況だし、それに一回も二回も変わらんだろ」

 

隊務規定違反を一回した時点でもう鬼怒田さんとかはクビだなんだと言い出すだろうからな。

 

「質問なけりゃあそろそろやるぞ。空閑はしっかりと避難しておけよ」

 

空閑は三雲と一言二言言葉を交わすと、黒い豆粒みたいなものを渡してその場を離れていった。

 

「メタトロン起動」

 

さて俺も行きますか

 

***

 

「ここからならよく見えるな」

 

さっきの場所から離れた土手に立った空閑は今川の上を飛んでいるイルガーを見ながら言った。

なぜ空閑が避難せずに土手にいるのか、その理由は三雲に言われたからだ。

 

~~~

 

『空閑は比企谷先輩についてくれないか?先輩たちの会話を聞くにたぶん先輩たちも初めて見るトリオン兵だ。比企谷先輩は何か策があるみたいだったけど手に負えないかもしれない。その時はばれないように手を貸してほしい』

『え~~~オサムは分かってないかもしれないけどヒキガヤ先輩はすごい強いよ』

『それでもだ。頼む』

『やれやれ。オサムは自分はむってぽうに突撃する癖に面倒見の鬼だな。レプリカ』

『心得た』

 

レプリカから小型のレプリカが分裂する。

 

『持っていけオサム。私の分身だ。私を介してユーマとやり取りできる』

『困ったときはすぐ呼べよ』

『ありがとう空閑、レプリカ』

 

~~~

 

「レプリカ。ヒキガヤ先輩は自爆モードになる前に倒せると思うか?」

「玄界のトリガーはヒキガヤやキリガヤが使ったものしか見ていないが、あれだけならば難しいだろうな」

「俺もそう思う。となると、本当に俺たちの出番があるかもな」

「ユーマ。あれを」

「ヒキガヤ先輩?空……飛んでる」

 

八幡はイルガーと同じ高さまで飛ぶと手を振り上げ水平に手を振った。

 

「嘘だろ」

 

自爆モードほどじゃないにせよ分厚い装甲があるおかげでそこそこ硬いイルガーがいとも簡単に一瞬で消えていなくなった。

その光景に空閑もレプリカも驚きを隠せない。

 

「レプリカ、あれがどんな攻撃だったか分かるか?」

「すまないユーマ。レーザーみたいな攻撃だとは思うがそれ以上は分からない」

「いや、気にするな。それより俺たちも街の方に行こう。ヒキガヤ先輩に見つかるとめんどくさそうだからな」

「そうだな」

 

そうして空閑とレプリカは街の方へと向かった。

 

***

 

「ハチ君!ビルを曲がったところに閉じ込められている人がいるよ!」

「ハチこっちにも!」

 

イルガーを倒した俺はすぐに住民の救助に向かった。

一般人の前だと三雲がやったようにボーダーの服の方がいいので、メタトロンを解除してボーダーのトリガーを起動すると、それと同時にフランとファルが実体化し、救助を手伝ってもらうことになった。

 

「わかったすぐに行く!すいません。敵は倒しましたが念のため避難所に避難をお願いします」

 

いま助けた人にそう言うと急いでファルの方に向かう。ここら辺の人はもうほぼ助けたし、フランとファルのところで最後のはずだ。

先に近いファルのところにたどり着くと状況を確認。

 

「ファル、そっち持ってくれ。一気に行くぞ!せーの!」

 

ファルに協力してもらいながら脱出するのに邪魔ながれきなどをどかす。

 

「敵は倒しましたが一応避難所に避難をお願いします。」

 

さっきと同じく助けた人にそう言うと、今度はファルと一緒にビルの角を曲がった先にいるフランの下を目指す。

 

「フラン!こっちの状況は?」

 

角を曲がりながらフランに尋ねる。

 

「あ、ハチ君。こっちはもう大丈夫だよ。小町ちゃんたちが来てくれたからね」

 

フランの場所までたどり着くと、すでに小町に三雲、木虎に避難しているはずの空閑も到着していて救助が終わっていた。

 

「お兄ちゃん!フランさんたちがいるなんて聞いてないよ!」

「俺も救助してる時に知ったんだよ。なんかちょうどここら辺にいたらしいな」

「うん驚いたよ。フランとここらへんで買い物してたら急にゲートが開いたからね。」

 

なんか最近こうやって平然と嘘つくことが増えてきたな。……今俺に嘘に空閑がなんか反応した?そんな気がする。

 

「あの比企谷先輩、この人たちは?」

「ああ、俺のちょっとした知り合いだよ。それより救助終わったし本部行こうぜ。この件に関しての報告書書かないとだし」

「……そうですね。行きましょうか」

 

たくさん嘘ついてそのどこからぼろが出るのかわからないし、あまりフランとファルについて詮索されないように話を変える。

 

「フラン、ファル気を付けて帰れよ」

「じゃねハチ君、小町ちゃん」

「また今度ハチ、小町ちゃん」

「おう」

「サヨナラです!フランさんファルさん!」

 

一回フランとファルとは別れるが誰もいなくなったところで二人は実体化を解き、メタトロンの中に帰ってくることになっている。

そういえば空閑はいつまでついてくる気なんだ?

結局。一般人がギリギリ行ける本部に行くための連絡通路までついてきましたとさ。

 

 



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原作突入5

長くなったなぁ。
急いで書いたからいろいろ雑だなぁ。
ルミルミ登…場…?


イルガーとかいう新型のトリオン兵を倒した次の日、C級まで動員した大規模な小型トリオン兵の駆除作戦が行われた。やはりイレギュラーゲートが開いた原因は、ユイがにらんだ通りラッドという小型のトリオン兵だった。迅さんが捕まえてきたそいつをエンジニアの人たちが解析をし、レーダーに映るようにしてから駆除作戦が行われている。で、俺がいるのは本部に頼んで結構反応が多い住宅街に一人で来ている。なぜ住宅街なのかというと俺があることを試すためになるべく人がいないところがよかったのだ。住宅街なら日中は基本的に主婦の人しかいないので避難してもらう人数が少なく簡単だ。

 

「いつも以上に深く集中して。そうもっと深く」

「自分の体の中にトリオンが血液みたいに流れることをイメージして」

 

フランとファルの指示の下、座禅を組み集中し、体中を巡るトリオンの流れをイメージする。

 

「そのまま体を流れるトリオンを手に集中させて」

 

膝の上で三角形を作るようにしていた手を胸の前まで持ち上げる。そこにトリオンを集中させる。今まで閉じていた眼を開けると、俺の手の間には一つの光の球体ができていた。

 

「それが、この技の核となるものだよ。ただこれより大きいものを作っちゃだめだよ。これ以上だと命を削る。」

「ああ。わかってる。」

「ならいいよ。じゃあその技を完成させようか!」

「球体を解放して、一気に光を広げるイメージだよ」

「ああ。……天使の法律(エンジェルロウ)、発動」

 

はじけた球体を中心に辺りに光が広がっていく。少しの間光り続けると光は解けるように消えていった。さて、成果は……

 

「ユイここら一体の反応はどうだ?」

「すごいですパパ!パパを中心に半径250メートル圏内のラッドの反応がすべて消えました!」

 

よし!実験は成功だ!

近くにいるフランとファルとハイタッチを交わす。

天使の法律はメタトロンの大技だ。俺が敵と認識したものだけを消失させるレーザーを広範囲に光として放つことができる。ただし広範囲な分威力は落ちる。範囲を大きくしたまま威力を出そうとすると、さっきフランが言ってたように命を削る。と、まあなんだ、便利ではあるが代償もそこそこあるという基本に忠実な仕様となっている。

 

「パパ人払いしたはずなのに近くに誰かいるんですか?」

「ああ、いや、これはだな……」

 

答えようとしてしどろもどろになっているとテレパスが通じる。

 

≪ねえハチ君そろそろ誰かに伝えてもいいんじゃないかな?私たちのこと。≫

≪……いいのか?≫

 

なんとなくいいきっかけがなくまだフランたちのことは誰にも話していない。それに……

 

≪大丈夫だよ。ハチの周りにはあの騒動の大本だって聞いて今さら騒ぎ立てるような人はいないでしょ?≫

≪それにそっちの方が今よりも自由に動けるしね!≫

≪お前はそっちの方が目的か!≫

 

フランのおかげでユイに伝える決心がついた。

 

「ユイ、今からちょっと出てきてくれないか?」

「いいですけど、どうかしたんですか?パパ」

「ちょっとな」

 

スマホにトリオンを込め、ユイを実体化させる。

 

「なんですか?パパ。あ、お久しぶりですフランさんファルさん!」

「久しぶりユイちゃん」

「あれでもなんでお二人がここに?パパは人払いしたんですよね?」

「ああ。でも人払いした原因の一端がこいつらにもあるっていうかな。とりあえず百聞は一見に如かずってことで見てくれ。フラン、ファル」

「ほいほい」

 

フランとファルが一瞬でこの場からいなくなる。

 

「え……」

「フラン、ファル」

 

もう一度二人に呼びかける。

 

「ほいほい」

 

今度は一瞬で二人が姿を現す。

 

「えええええぇぇぇぇぇぇーーー!」

 

ユイの絶叫があたりに響き渡った。

 

「あー見てもらって分かったと思うがネイバーなんだわ。この二人」

「正確には元ネイバーね。」

「で、現幽霊、かな?」

「……」

 

ユイが驚いた表情のまま固まっていた。驚きすぎて思考回路が停止してしまったのか?

 

「……はっ!どういうことですかパパ!フランさんとファルさんが元ネイバーの現幽霊って!」

「いやー実はな。かくかくしかじかで」

 

それからユイに今までのことを説明する。

 

「つまりお二人は大昔に亡くなった方で今はメタトロンの中に住んでいる。ということですか?」

「意識しかないから住んでいるってわけじゃないけどそう言うことだね」

「そうですか。……パパこのことはねえたちにはもう言ったんですか?」

「いやまだだけど」

「だったらねえたちに言うときに質問させてください。パパ今はラッドに」

「そうだな」

 

ここら一体のラッドはいなくなったとはいえ三門市全体にはまだまだたくさんのラッドが潜んでいる。話の続きはユイが言った通りラッドを全部倒して、みんなが揃った時の方がいいだろうな。

 

***

 

ラッドの殲滅が終わり、フランとファルのことをみんなは話してから1週間後、期末テストも終わりなんとなく学校中がだらだらとした雰囲気になっている中俺は駅の近くにあるコミュニティセンターへと向かっていた。

ことの発端は数日前、謡とルミルミが俺のところまで来たのが始まりだ。(ほぼ毎日謡とは会ってるんだけどね)

なんでも小学校の方で海浜総合高校と総武高校が主催するクリスマスパーティーの手伝いとして参加することになり、その会議に参加したのだが最悪だったらしい。いつまでも何も決めようとしない進行役がいたり、海浜総合のメンツが濃かったりとかなんとか。総武高の生徒会も参加していたんだが、会長と生徒会メンバーのコミュニケーションも取れてなく、散々だったらしい。何してんだ本牧よ。(旧生徒会でめぐりさんの手伝いをしているときに知り合った)そんなわけで総武高生徒会の手伝いとして俺に白羽の矢が立ったわけだ。

謡とルミルミの頼みだし、知らない顔がいないわけでもないから引き受けた。本牧にはすでに言ってあるというかこの案自体本牧の発案らしい。おい本牧よ。

謡とルミルミとはコミュニティセンター近くのコンビニで待ち合わせとなっている。

コンビニで謡たちと合流するとコミュニティセンターの中に入り、ひとまず本牧に挨拶する。

 

「よう本牧」

「久しぶり比企谷。今日は来てくれて助かったよ」

「よくも巻き込んでくれやがったなこの野郎。聞けばお前発案らしいじゃねえか」

「それに関しては本当にすまないと思う!」

「お前はどこのバウアーさんだよ」

 

けっこう似てんじゃねえか

 

「で、どこまで決まってるんだ?」

「何も」

「え?」

「だから何も決まってないよ。議事録に見るか?」

「ああ」

 

議事録を受け取り中を見る。

 

「オーケーオーケー把握した。……帰っていい?」

「「「だめ(だ/です)」」」

 

本牧だけでなく謡やルミルミにまで却下された。なんだこの議事録は。中身スッカスカだろ。

 

「ついてきて比企谷。一色さんと向こうの会長に挨拶するから」

 

そう言って連れてこられたのが亜麻色の髪をしたあざとそうな女子と意識高そうな男子のところだ。あ、一色ってあれか。生徒会長になったやつか。

 

「一色さん、玉縄君。こちらは比企谷。助っ人として来て貰ったんだ」

「比企谷だ。よろしく頼む」

 

一色も玉縄も最初は怪訝そうな顔をしていたがスケットと紹介されてからは納得したような顔になっていた

 

「よろしくお願いしますせんぱい」

 

うんあざとい

 

「僕は玉縄で海浜総合で生徒会長をしているんだ。総武高校と一緒に企画できてよかったよー。お互いにリスペクトできるパートナーシップを築いてシナジー効果を生んでいけないかなと思っててさー。」

 

……のっけからいいパンチ打ってくんなーこいつ。半分以上何言ってんのか分かんなかったし。

それから近くにいた人間がわらわらやってきて自己紹介をしていく。類は友を呼ぶって言うか、あの意識高い玉縄の下に集まったのは同じく意識の高い連中だった。

その中で一人、俺を見て驚いているのかぱちぱち目をしばたかせている奴と目が合った。

 

「ってひきぎゃや」

「俺の名前は比企谷だ」

「失礼噛みました」

「違うわざとだ」

「かみまみた☆」

「高校生がそれいって恥ずかしくない?」

「付き合ってあげたんだから最後まで付き合ってよ」

「俺はお前がこのネタを知ってることに驚きだわ」

 

俺と軽快?なやり取りをしたのは折本かおり。中学の同級生だ。

 

「比企谷って生徒会なの?」

「いやただの助っ人だよ」

「そっかー。あたしの同じ、なのかな?あたしは友達に誘われてきたんだけど」

「似たようなもんだろ」

「そうだねー」

 

そこで本牧が驚いた表情でいることに気付いた。

 

「比企谷って知り合いとかいたんだね」

「おいその言い方だと知り合いとか存在したのかに聞こえるぞ」

「そのつもりで言ったんだけど」

「確かにねー。比企谷って教室でもずっと本読んでんだもん。あたしが話しかけてなかったら一日誰とも話してなかったんじゃない?」

「ふっ。何を当たり前なことを」

「あたりまえだって。マジウケる。そろそろ始まりそうだから戻るね」

 

折本はたぶん所定の位置なのであろう席に向かう。コの字型にセットされた机と椅子に皆が座っていく。さて俺は、と端っこの席に座ろうとすると肩を掴まれる。

 

「比企谷はこっち」

 

そういって本牧に連れてこられたのは本牧の隣、席順で言えばコのつながってる部分から一色、本牧、俺、残りの生徒会、謡、ルミルミの順だ。

 

「いやいや俺端っこがいいんだけど」

「まあまあほら座って」

 

無理やり本牧に座らされ、渋々ながら折れる。

コの字型の真ん中、いつも城戸さんが座っている席には玉縄が座っている。ちなみに俺たちはコの下の部分だ。

改めてみると向こうの方が数が多い。俺たちは謡たちを加えても7人に対し向こうは倍近い。しかし、実質的にその差よりも人数差は大きく感じられた。その最たる理由は騒がしさだろう。海浜総合の方は男女入り乱れてにぎやかだが俺たちは静かだ。向こうが言い出しっぺらしいし、気合の入れ方が違うのは仕方ない。

状況から察するにメインは海浜総合で俺たち総武高はサポートだろう。

皆が座ったことを確認すると、向こうの生徒会長、玉縄は手を叩き注目を集める。

 

「えー、じゃあ会議を始めまーす、よろしくおねがいしまーす」

 

手慣れた感じで言うと、皆も軽く頭を下げる。

ついに会議が始まった

 

***

 

コミュニティセンター内の自販機でコーヒーを買い、近くのベンチでそれを飲みながら息を吐く。

なんなのあいつら。カタカナばっか使いやがって。あれが会議してるつもりなのかよ。

 

「比企谷どんな感じか分かったか?」

 

本牧が謡とルミルミを連れてこっちに来る。やべえあいつ。小学生を侍らせてやがる……あ、ブーメランだ。俺もコンビニから一緒に来てたわ

 

「いやまったく。」

「だよね。私も何言ってるのかわからなかったし」

 

高校生の俺たちでも理解できてないんだ。小学生のルミルミが理解できないのも当然だろう。

 

「とりあえずどうしましょう。このままだと開催できないか、できても薄い内容のものしかできないのです」

「まずあの空気をぶっ壊さなきゃダメだろうな。あいつらはこの会議のまねごとを楽しんでいる。そこからまずは主導権を奪わないと何を言っても流されて終わりだ。」

 

実際さっきの会議でも本牧や謡は出し物を決定させるためにいろいろと発言していた。が、玉縄はうまいことその提案を躱し、ブレストを続けた。

現状、出てきた意見はオーケストラやバンド、ジャズコンサートなどがあるが、何やるにせよオファーや練習などのことも考えるとそろそろ決めないと本気でまずい。

 

「一番いいのは会長がガツンと言ってくれればいいんだけど」

 

そう言うと本牧は玉縄と楽しそうに談笑している一色の方を見る。

こういう複数の組織が混ざる場合は得てしてトップの意見がその組織の意見となる。一色は会議の最中は理解できなかったというのもあるんだろうが発言がなく、ただうなずいているだけだった。

 

「現状じゃそれも厳しいな」

 

この現状を打開するには一色に意識を変えてもらうしかないだろう。

 

「本牧、一色を何とかしろ」

 

これについては俺がでしゃべるべきではない。もともと俺は助っ人でメインは生徒会だ。新生徒会の初めての仕事で関係ないやつを頼りにしすぎるのもよくないだろう。それに一色と他の生徒会の連中とのコミュニケーションがそこまで取れてないことも問題がある。

 

「ああ、わかってるよ」

「これでこの企画が成功するかしないかは本牧にかかってるわけだ。頑張れよ副会長。んじゃ帰るわ。こいつら送らんとだし」

「うんおつかれ」

 

二人を送り家に帰る。

ほんとに準備とかを考えると明日には具体的なことを決定しないともう間に合わない。本牧超頑張れ

 

***

 

いや、昨日一晩で何したのさ本牧。

 

「考え方としてはありだと思うんだけど二校合同でやることに意義があると思うんだ。別のことをやるとシナジー効果も薄れると思うし、ダブルリスクなんじゃないかなぁ」

「そうかもですけどー、わたし的にはこっちもやりたいなーって思うんですよね。両方見れるとかお得じゃないですかー?」

 

一色が昨日までとは打って変わり鋭い舌戦を繰り広げる。本牧には何とかしろって言ったけどさ、一晩でこんなに変わるとはだれも思ってないって。

今日の会議が始まると、一色は演劇案を提案した。しかし敵も幕間に演劇をはさむ折衷案を提示し、一色は金銭的な面から二部構成を提案した。

ここまでは非常にいい流れだったのだがここで会議が停滞した。そしてさっきのような一色と玉縄の会話が繰り返されている。

俺は邪魔にならないように小声で本牧に話しかける。

 

「一色、大丈夫か?さっき舌打ちみたいなものも聞こえたけど」

「どうだろう。結構イライラしてるみたいだし」

「気持ちはわかる」

「僕もだ。だからそろそろなんとかしないとね」

 

本牧が手を挙げて立ち上がる。

 

「二部構成に反対な理由って何?」

「んー、反対ってわけじゃなくてさ。ビジョンを共有すればもっと一体感が出せると思うんだ。イメージ戦略の点でも合同イベントの大枠を外さない方がいいんじゃないかな?」

「なあ、合同でやる必要ってあるか?」

 

ここが勝負とみて、俺も加勢に入る。

 

「それは合同でやることでグループシナジーを生んで、大きなイベントを」

「シナジーなんてどこにもないし、このままじゃ大きなイベントなんてできないってことに気付いてないのか?それにだ、会議って言うのは会議に参加してる人全員が内容を理解できて共有できて会議なんだ。なあ謡、留美。これまでの会議は内容をしっかり把握しながら進んでいたか?」

「いえ。会議が終わってから総武高校の人に聞いてやっと内容が把握できていました」

「それに難しい英語なんて使われてもわからないし」

 

謡とルミルミが正直に答える。

 

「聞こえたか?今までやってきた会議はただの偽物。そんな無駄なものに俺たちはもう時間を費やしたくない」

 

会議室は音を忘れたかのように静かになった。その隙を縫うようにいまだに呆然としてる出席者たちに本牧が話しかける。

 

「無理に一緒にやるより、二回に分けたほうがお客さんにも楽しんでもらえると思うし、それぞれの学校の個性とか出せていいと思うんだけどどうかな?」

「え、あ、うん。いいんじゃないかな」

 

不意な問いかけに反射的に答えてしまったのか折本は肯定する。その答えに自信がないのか隣の人と顔を合わせた。すると顔を合わせた人もうなずく。こうして雪崩式に二部構成になり、会議は幕を閉じた

 




次回更新は早くても9月下旬になると思います。
9月は大事なことがあるので


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原作突入6

就職決まりました!
次回…は中間テストあるから遅くなるけど(なぜか今さらとある教科で満点を取ろうとしている)次回以降は早くなる!きっと、たぶん、おそらく

自由だーーーーー!


コミュニティセンターの講堂の壁にもたれかかり、演劇の練習を見る。頼んだ翌日ということもあり、まだ小学校の低学年の子供たちの動きはばらばらだ。

一昨日の会議の翌日に謡たちを通じて、低学年の子供たちに演劇のオファーを出し、今日から練習が始まっている。

しばらくそれを見ていたが、扉から本牧が入ってきたので、そちらの方に意識を向ける。すると本牧は俺に用事があったのか、こちらの方に向かってきた。

 

「比企谷、ちょっと来てくれないか」

 

講堂から出て本牧は会議室の方に向かう。そしてたどり着いた先には、会議室の端の方で頭を抱えている書記ちゃんがいた。

 

「二人で物語の終わりを考えていたんだけど、いいのが思いつかなくてさ。比企谷も協力してくれないか」

「まあいいぞ」

「ありがとう。それで比企谷はどこまでストーリー知ってる?」

「今小学生が練習してることまでだな。さっき謡に見せてもらった」

「オーケー。藤沢さん今できてるとこ見せてもらえる?」

 

書記ちゃんから渡された紙を黙読する。ストーリーは『賢者の贈り物』でちょこちょこアレンジを加えていくらしい。まだ決まってない終わりのところには、いくつかの案が書かれている。そこまで黙読し、少し考える。

 

「ペン、貸してくれ。あと、空いてるとこに書いていいか?」

「はいどうぞ」

 

ペンを受け取り、空いているところに書き込みを入れていく。

 

「とりあえず読んでみて、何個か考えたものを書いてみた」

 

それから書いた案について説明を始める

 

「……と、こんなところだ。どうだ?」

 

今回の相手は老人が多いから老人が好きそうなものをいくつか考えてみたがどうだろうか。

本牧と書記ちゃんは目を合わせるとうなずく

 

「ありがとう比企谷。三つ目の案で行きたいと思う。もう少し細部を詰めたいから手伝ってくれるか?」

「ああ」

 

それから三人で演劇の内容を詰めることとなった。

 

***

 

演劇の内容を最後まで決めた頃には外は真っ暗になっており、小学生たちは外が暗くなり始めた時にすでに帰らせていた。いつもなら謡とルミルミも俺と同じ時間まで残り、家に送るなり、本部まで一緒に行くなりしていたが、今日は二人は本部に行くが俺は特に本部に用事がなかったため、別々に帰っている。さらに小町も今日は本部にいるため、今日の晩飯は自分で何とかしてくれとのことなので適当にラーメン屋を探して歩く、歩く、歩く。さらにペースを上げて歩く、歩く、歩く。背後から迫る死神から逃げるように歩く、歩く、歩k

 

「比企谷いい加減止まれって」

 

チッ、捕まってしまったようだ。

 

「さっきから何なんですか迅さん。ついにセクハラ大魔迅(注.誤字にあらず)からストーカーにジョブチェンジしたんですか?よかったですね!これでムショまであと一歩ですよ!」

「何、比企谷はそんなに俺を刑務所に入れたいの?そんなことより話がある。晩飯まだだろ?ラーメンおごるよ」

「すいません。俺、男は守備範囲じゃないんで」

「小町ちゃんのことだ」

「行きます。」

 

即答だった。

 

***

 

迅さんに連れてこられたのは、たぶん迅さんのなじみのラーメン屋だ。

 

「おやっさん、ラーメン二つ」

「あ、一つは大盛りで。あと餃子もお願いします」

「はいよ!」

 

こちらを見てくる迅さんを無視しつつ、空いてるところに座る。

 

「それで迅さん、小町のことで話って何ですか」

「怒らずに冷静に聞いてくれよ」

 

そこで一呼吸置いた迅さんは静かにこう切りだした

 

「……小町ちゃんが死ぬ未来が見えた」

「……は?どういうことですか!迅さん!!」

「順を追って話すから落ち着け。ほら水飲め」

 

迅さんに手渡された水を一口飲む。確かに頭に血が上りすぎてる。迅さんのことだ。きっとそれを回避する未来も見えてる。

 

「すいません落ち着きました。それでどういうことなんですか」

「これはまだ上層部にしか伝えてないことなんだが近々大規模侵攻が起こる。」

「…その時に小町が死ぬ未来が見えたってことなんですか?」

「ああ」

「もちろんそれを回避する未来も見えてるんですよね?」

「ああ。だから今日話をしに来たんだ。…ところで遠征部隊がもう帰ってきたことは知ってるか?」

「知ってます。めぐりさんが国近先輩にゲーム勝負をしに行きましたから」

 

迅さんが少し引いた顔を見せる。いやほんとに。遠征から帰ってきたばかりなのにすぐゲームとか。

 

「それでその遠征部隊が帰ってきたことと今までの話となんか関係があるんですか?」

「ああ。その遠征部隊なんだが、玉狛を、というか玉狛支部にいるやつを襲撃しようとしている」

「な!?……もしかしてネイバー、それもブラックトリガーですか?」

 

ボーダー隊員が一般人を襲撃しようとするはずもないし、遠征部隊まで引っ張ってくるとすればそれしか選択肢がない。

 

「そう、正解。ついでに言うなら遠征部隊+三輪隊だな。で、比企谷には俺と協力してその遠征部隊と三輪隊を撤退させてほしいんだ」

「撃退ではなく、撤退ですか。そこに何か意味が?」

「撃退はプランBだな。なるべく本部との摩擦は小さくしたい。」

「話は分かりました。協力します。けど、これが小町が死ぬ未来を回避するための手段なんですよね?」

「そうだ。ここであいつを守れるかで未来が変わる。さすがのあいつもボーダーの精鋭部隊が相手だと負けるかもしれないからな」

 

遠征部隊はブラックトリガーにも対抗できるチームが選ばれる。俺たちが守るやつのブラックトリガーがよほどのバケモノみたいなトリガーじゃない限り負けるだろう。

 

「あ、そういえば一つ聞きたいことがあるんだが比企谷は金髪の女の子と亜麻色の髪の男の子を知ってるか?俺が見た未来で俺と比企谷と一緒に戦っている未来があった」

 

思い浮かぶのはフランとファルの二人。もしかして…

 

≪お前ら一緒に戦おうとか思ってないよな?≫

≪≪……≫≫

≪なんか言えよ!≫

 

なぜか二人とも一緒に戦おうとしているようで……急に黙った俺を迅さんが訝しげに見てくる。

 

「えーと一応心当たりがあります」

 

俺がそう言うと呆れたような表情に。

 

「なんか比企谷も大変そうだな。……とりあえずラーメン来たし、この話はここまでにしよう」

「そうですね…あ、最後に質問が」

「ん?なに?」

「その襲撃っていつあるんですか?」

「これからすぐ」

 

持っていたコップを落としそうになった

 

***

 

「こんばんわー!初めまして迅さん!メタトロンの中の人一号ことサフラン・ツーベルクです!フランって呼んでください!よろしくー!」

「メタトロンの中の人二号ことファルコン、ただのファルコンです。ファルと呼んでください」

「おうよろしくな」

 

ラーメン屋を出て、待機場所に着いたとたんフランとファルはメタトロンの中から飛び出してきた。それから軽く事情を説明(心意のことはぼかしてほぼ全部。)してからいま自己紹介が終わった。

そこで少し気になったことを聞いてみる

「フラン何でお前そんなにテンションが高いんだよ」

「だって久しぶりに戦闘ができるんだよ!?相手も強いって聞くしテンションが上がらないわけないじゃん!」

「うわー戦闘狂の発言だ。ってか、なに戦う気になってんだよ。お前たちに戦わせる気なんてないぞ」

「はっはー!いくらハチ君でも私のはやる気持ちを抑えることはできないぜー!」

「何こいつめんどくせえ」

 

視線でファルに助けを求めるも静かに首を横に振られる。

 

「ごめんハチ。フランがこうなったら僕じゃ止めることなんてできないよ。それに…」

 

それに…?

 

「僕も戦いたいしね」

「お前もかよ!」

 

大声で突っ込んだ俺は悪くないと思うんだ。あと、迅さんには同情したような目で見られてました……悲しくなんてないやい!

 

***

 

メタトロンの能力を応用してファルが擬似カメレオン状態(なんかレーザーで光を屈折させて見えなくさせてるらしい。詳しいことは八幡文系だからわかんない!)で迅さんと襲撃部隊の会話を見守る。(ちなみに俺たち三人は全員がメタトロンの能力を使える)自己紹介が終わってから「かっこいい登場がしたい!」というフランのわがままから何もないところから現れるということが決まってからこの透明な状態になって少し、なんだかこの透明な状態が気に入ってきていた。(ファルがやっているのはこういうのはファルが一番得意だからだ)

 

『ハチ君あの中で一番強いのって誰?』

『それは太刀川さん、先頭のひげの人だな。ソロランキング二位だし』

『へぇー!じゃああの人と戦いたい!』

『それはたぶん無理だな。太刀川さんはたぶん迅さんと戦うから』

『じゃあ僕たちと戦いそうな人って誰なの?』

『うーん…』

 

太刀川さんは迅さんの方に行くだろうし、風間隊も迅さんの方に行きそうだから

 

『…でかい方の目つきの悪いやつとカチューシャ、ひげじゃない方の黒のロングコート、あとはスナイパーとか、もしかしたらめんどくさいトラッパーの人もいるかもしれん』

 

さっき当真さんが冬島さんはいないって言ってたがその発言自体がブラフって可能性も捨てきれないからな。一応警戒はしておいた方がいいだろう。

 

『それぞれの戦い方とかトリガーの特徴とかは?』

『スナイパー、トラッパーは省略するぞ。目つきの悪いやつは「レッドバレット」という重くなる弾を使う。これは射程とかが短い代わりにシールドに干渉しない。カチューシャは穂先の変形する槍を使う。ギリギリで受けすぎると、斬れてることがあるのと、飛ぶ斬撃も使えるから注意な。黒のロングコートの方は前の二人と違って完全な中距離型だ。注意するのは合成弾。こんなところだ。他の人が来たらまた説明する』

『うんおーけー!あ~早く戦いたいな~』

『もうすg、いや行くぞ』

 

メタトロンの能力を解除させ姿を現す。突然現れた俺たちに襲撃部隊は驚いた表情を浮かべたがすぐに真剣な顔になる。

 

「おい比企谷。隣にいるやつらは誰だ」

「まあ俺のちょっとした知り合いですよ。そんなわけで俺たちは迅さんに加勢するんでどうぞよろしく」

「比企谷たちがいればはっきり言って俺たちが勝つよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。俺だって別に本部とけんかしたいわけじゃない。ここは引いてくれると嬉しいな」

「何言ってるの迅さん!それじゃ私が戦えn

「お前こそ何言ってんだバカ!皆さんすいませんうちのバカが。このバカは俺たちがなんとかしますのでどうぞお話続けちゃってください」

「…迅が何と言おうと俺たちは任務を遂行する。」

 

襲撃部隊は戦闘態勢に入る。俺たちもそれぞれ武器を抜く

 

「それに迅、お前の予知を覆したくなった」

 

その言葉が合図となり戦闘が始まった。

 




三人ともメタトロンの能力を使うことはできます。
ただフランとファルの実体化にトリオンを使うので残りは半分ほど。
そこで、三人が一緒に使うことになればさらに三分の一ずつ。
なので八幡は二人が実体化しているときは通常トリガーを使います。
フランとファルもメタトロンのトリオンを使っているので基本的に二人も生きていた時に使っていたトリガーを使っています。
なお、実体化するときには戦闘用と非戦闘用から選べる。途中変更も可。戦闘用の時は生前のトリガーも一緒に実体化される。

こんなところかな?
急に思いついて加えたからいろいろ甘い。質問あればどーぞ


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原作突入7

前回、自由だと言ったな。あれは嘘だ

すいません。いろんなゲームのイベント回ったり、文化祭の準備でいろいろあって遅れました

次回こそは!

*今回、完成してからすぐに出したんで誤字あったら報告オナシャス!*


玉狛襲撃部隊との戦闘が始まる。

まずは俺が武器を構えこちらに向かってくる風間隊にバイパーを放つ。風間さんと菊地原はシールドで防ぎ足を止めたが歌川は躱して迅さんに斬りかかる。迅さんは弧月で歌川のスコーピオンを受け、カウンターで上段から斬り下ろす。歌川はスコーピオンで止めようとしたがスコーピオンの低い耐久力では受けきることができずに斬られ少しトリオンが漏れだし、後ろに下がる。それと同時に今度は太刀川さんが迅さんに斬りかかる。迅さんは歌川の時と同じように弧月で受け止めようとしたが、今度はそれをすることなく歌川と同じように一歩下がる。そして空いたスペースには、フランが入り込み、太刀川さんの剣を手に持つ黄金色の剣で受け流し、体制の崩れた太刀川さんに追撃を加える。

 

「…ぐっ!」

 

太刀川さんは無理な体勢でガードしたが、続くフランの体術を織り交ぜた攻撃を受けきることができずに、太刀川さんは身体のいたるところからトリオンを漏れ出させる。

 

「フランちゃん」

 

迅さんがフランに声をかけ、フランがこっちに戻ってくる。俺もファルもけん制していた手を止める。

 

「どお、太刀川さん。今戦ってたフランちゃんははっきり言って太刀川さん以上の腕を持ってるし、ファル君もフランちゃんと同等くらい強い。改めて言うけどここで退いてくれないかな」

『まあ退かないでしょうね。それで迅さん向こうの次の行動ってやっぱ分断ですかね』

『そうだな。何人かそっちで担当してもらうだけで楽になるしよろしく頼む』

『オーケーです』

「比企谷が連れてきた二人がどれだけ強かろうとも俺たちは任務を遂行するだけだ」

 

そう言いつつ太刀川さんは鞘に収めていた弧月に手をかける。そして旋空を放つ。

 

「コール メタリック エレメント」

 

ことができなかった。抜こうとした弧月の柄の先に金属の円盤みたいなものが見える。あれがあったせいで弧月が抜けなかったみたいだ。

 

「コール アクウィアス エレメント、サンダー エレメント」

 

さっきと同じような呪文?を唱えた途端、俺たちと太刀川さんたちの間に水の塊が出現し、そこに電気みたいなものが流れて水が消滅する。

 

「ハチ君迅さん退くよ。ファル君!」

「コール サーマル エレメント」

 

サーマル?熱?考えてるうちに強引にフランに引っ張られその場を離脱させられる。太刀川さんたちの方では何かに気付いたような風間隊の三人と三輪がすぐにその場を離れる。その場に残る太刀川さん、出水、米屋の三人と今度はファルの呪文で出てきた炎のやり。その炎のやりはさっきまで水の塊があった場所まで進むと、爆発が起こった

 

「…なにあれ」

「水を電気で分解して発生した水素に火をつけてどーん!だよ」

「…いやそっちじゃなくてあの水とか作ったやつ」

「あれは神聖術って言って僕たちの国ではみんな使えるよ。まあ得意不得意はあるけどね」

「…ファル君たちの国ってすごいんだな」

 

迅さんがしみじみとつぶやく。ほんとそれな。神聖術に心意、七本の神器とまで言われるほどのブラックトリガー。改めて思ったけどやばい

 

「さてそろそろ俺たちも別れましょうか。俺たちは向こうの公園辺りで戦います」

「わかった。まだ作戦はAのままだぞ」

「わかってます。気を付けてください」

「そっちもな」

 

迅さんと別れて公園に行く。目的は何人か引き付けることなので公園の中央。見つかりやすいところで待機する。………

 

「いや、そこブランコで遊ぶなよ」

「だってなかなか来ないんだもん」『そこの木の後ろにいるね』

「確かに。そろそろ来てもいいはずなのにね。もしかしてこっちに来てないとか?」『姿は見えないし、透明にでもなってるのかな』

「後ろから挟撃されるリスクを考えたらそれはないんじゃないか?」『なんでそんなことわかんだよ』

 

てかこれつらい。口で別なこと言いつつ、頭の中で別なこと考えるのまじつらい。

 

「けどこれだけ来ないとね~」『知覚を極限まで拡大し、相手の動きなどはもちろん、音や空気、ありとあらゆるその場の情報を俯瞰的に把握する。識の境地って言うんだけどそれを使ってるんだ。で、せっかく囮になって一人でのこのこ出てきたのに来ないし、待ってないでこっちから行く?』

「もう少し待ってみて来なかったら迅さんの方に行こうぜ」『そうだな。透明になってるとしたら風間隊だ。警戒するところは、厳しい訓練で得た連携力と菊地原っていう毒キノコが強化聴覚のサイドエフェクトを持ってて、それを全員が共有できるところだな』

『はーい!じゃあ一発大きいのかますからあとは臨機応変に行こう!』

『なにその雑な作戦』

『じゃあ行くよ。金木犀の剣!リリースリコレクション!!」

 

フランの持っている剣――金木犀の剣の刀身が無数の花弁になる。…いやどこの六番隊隊長の千本桜だよ!フランの千本桜(仮)はさっき二人が言っていた木の陰を中心にその周辺まで飛んでいく。さて、風間隊は…

ガキガキッとフランの放った花弁が撃ち落されていく。風間隊の三人がカメレオンを解除し、スコーピオンを手に持ち姿を現す。

 

「そこの二人を連れて引け比企谷。俺たちは城戸司令の勅命で動いてる。」

「残念ですがそれはできません。こっちにも事情というものがあるんで。風間さん」

「これ以上邪魔するようならお前のトリガーは没収され、そこの二人は討伐対象になるぞ」

「『模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる』俺のトリガーが没収なら風間さんたちのトリガーも没収ですよね。それならいいらしいですよ。それにこの二人ならなら大丈夫ですよ。この二人が負ける姿なんて全く想像できませんから」

「さっすがー!ハチ分かってる!そうそう私たちは誰にも負けないよ。誰にも、ね!」

 

落ちたはずの花弁が宙を舞う。

 

「撃ち落しただけで止まると思った?残念!そんなんじゃ止まらないよ」

 

フランは花弁でドームみたいなものを作り風間隊の三人を閉じ込める。たまに一部分だけドームが厚くなってるところを見ると、きっと出ようと風間隊の三人が抵抗しようとしてるのだと分かる。

 

「じゃあ後はよろしく。ファル君」

「うん。青薔薇の剣!リリースリコレクション!!」

 

ファルが持っている青色の剣――青薔薇の剣を地面に突き刺すとそこから地面が凍っていき、氷がドームまで伸びていく。そしてドームが開いた時、風間隊の三人の氷像が完成していた。

 

「これって中生きてるの?」

「生きてるよ。ただまったく身体は動かせないけどね」

「さて後は迅さんたちの方だな」

 

迅さんたちが戦闘している方を向くと、ちょうど一条の光の柱が上がる。

 

「っとプランBだな。えーっとあのまま砕けばいいのか?」

 

風間さんたちの氷像を見ながら尋ねる

 

「いやそんなことしなくても大丈夫。咲け!青薔薇!!」

 

ファルの突き刺した剣から出た茨が凍った地面をたどり、風間さんたち三人に巻き付いていく。その巻き付いた茨は風間さんたちの体に何輪もの青い薔薇の花を咲かせる。そして風間さんたちはベイルアウトした。

ファルは地面に突き刺していた剣を抜くと、風間さんたちを凍らせていた場所まで行き、地面に落ちた薔薇の花を拾い上げていた。それをしばらく回して観察したかと思うとファルはその薔薇の花を一口口に含んでいた。

 

「うまい!フランもハチも食べてみなよ!」

「ファル君が絶賛するなんて久しぶりだね。なら久しぶりに食べよっと…ん!おいしい!」

 

ファルに薔薇を手渡され、ファルの評価を聞いたフランがためらいもなく口に入れる。

 

 

「ほらハチも食べてみなよ。おいしいから」

「いや俺いいから」

「まあそんな遠慮せずに」

「ほんといいから」

「あーもう!じれったいなー!」

 

フランは持っていた薔薇の花を無理やり俺の口に突っ込んできた。

 

「…なにこれ、ほんとうまいな。」

 

千葉のソウルドリンクであるマッ缶にも勝るとも劣らない味。それに…

 

「トリオンが回復してる」

 

さっき使ったトリオンが回復している。

 

「青薔薇の剣は、相手を凍らせることで動きを止め、相手のトリオンを吸収して薔薇の花を咲かせるんだ。」

「そして薔薇の花を食べるとトリオンを回復できる。味の方ははっきりとした基準はないんだけど強いとおいしいみたい。よし、トリオンも回復できたことだし、迅さんの方に行こうよ!あの髭の人とまた戦えるかもしれないし」

「お前はそればっかだな!」

 

文句は言いつつも、フランの意見には賛成なわけで俺たちは迅さんの方へと向かった

 

***

 

「正式入隊日まであと二週間弱…それまでに必ず、お前を倒してブラックトリガーを回収する。」

「残念だけどそりゃ無理だ」

 

迅さんは風刃を振り、最後まで残っていた太刀川さんと、三輪をベイルアウトさせた。

 

「お疲れさまでした迅さん」

「そっちもお疲れ。まあまだ終わってないんだけど。そういうことで本部行くぞ本部!」

 

え、ちょ、どういうこと?

 

***

 

「失礼します。どうも皆さんお揃いで。会議中にすいませんね」

「「失礼します」」

「失礼しまーす!」

 

「な…!?」

「迅、比企谷」

 

会議中にいきなり入ってきた俺らに上層部の方々は驚いた顔をする。

 

「きっさまらぁ~!よくものうのうと顔を出せたな!」

「まあそう怒らないでください鬼怒田さん。血圧上がっちゃうよ」

「何の要件だ迅、比企谷。宣戦布告でもしに来たか」

「違うよ城戸さん。取引しに来たんだ。こっちの要求は二つ。うちの後輩空閑遊真のボーダー入隊を認めてきたいただくこと、それとここにいる二人、ファルコンとサフランを今後一切襲わないことを約束していただきたい」

「なにぃ?どういうことだ!?そもそもその二人はどこの誰だ!?」

 

迅さんが俺に目配せをする。なんとなく意図は察せた

 

「この二人のことは俺から。まずは見てもらった方が早いと思います。フラン、ファル」

 

フランたちが一回メタトロンの中に戻り、再度現れる。

 

「こうゆうことです」

「…えっと、比企谷君。その二人はユイちゃんと同じ自立型のトリオン兵なのかい?」

「それとは違ってですね、この二人は…幽霊みたいな感じです」

「比企谷もっとわかりやすく説明しろ」

「あーとこの二人は一番最初、災禍の鎧ができた時の依り代となったというか、そんな感じの奴らで詳しいことは長くなるんで省きますが、いまは表現するならメタトロンというか俺に憑りついてるって感じです」

「サフラン・ツーベルクです!」

「ファルコンです。どうぞよろしく」

 

フランとファルの自己紹介が終わる。

 

「迅君、君は取引に来たと言ったね?だったら君は何を差し出してくれるんだい?」

「風刃を出す。さっきの二つの要求と引き換えにこっちは風刃を本部に渡すよ。さあどうする城戸さん」

 

きっと上層部の頭の中ではリスクリターンの計算が行われているだろう。

 

「…いいだろう。空閑遊真のボーダー入隊を認め、サフランとファルコンの二人を今後襲わないことを約束する」

「ありがとうございます。用件は済んだので俺たちは失礼します」

 

そう言って俺たちは会議室を出た

 

***

 

会議室を出て迅さんたちと廊下を歩く。今日はもう遅い時間だし、作戦室に泊まろうかな、などを考えていると、廊下の両側には太刀川さんと風間さんがいる。

 

「ちょっとツラ貸してもらおうか」

 

…ヤンキーか何か?

 

***

 

「おい迅、俺たちを利用してまでネイバーをボーダーに入れる目的はなんだ?なにを企んでる?それに勝ち逃げする気か?今すぐ風刃取り返して、もう一回勝負しろ」

「無茶言わないでよ。それに俺はあいつに「楽しい時間」を作ってやりたいだけだよ」

「楽しい時間?それとボーダー入隊にどうつながる。何か関係あるのか?」

「もちろんあるさ。俺は太刀川さんたちとバチバチしてる時が最高に楽しかった。今のボーダーにはいくらでも遊び相手が居る。あいつもきっと毎日が楽しくなる。あいつは昔の俺に似てるからな。それに今なら太刀川さんたちだって勝てない遊び相手もいるからな」

 

や、そこでニヤリとしてこっちを見ないでくださいよ

 

「そうそう。髭の人は迅さんより先に私にリベンジマッチしなくていいの?それにちっちゃい人は二対三で私たちに完封されて修行が足りないんじゃないの?」

 

うわこいつ、太刀川さんはいいとして風間さんまで煽ったよ。ほら見ろ迅さんまでに引いてるぞ

 

「いいだろう。じゃあ相手になってもらおうか」

「あ、待って風間さん!女の方が俺がもらう。あの時は後ろに迅が控えていてまだ全力じゃなかったからな」

「じゃあそう言うことでハチ君、ちょっといってくるね~」

「あんまり遅くならないように帰って来いよ」

「わかってるよ」

 

そして残ったのは俺と迅さん。

 

「元気ですね、彼らは」

「そうだな」

 

最後に残ったのは乾いた笑いでした

 

結局、フランとファルが帰ってきたのは日付が変わり、さらに長針が二周ほどしたころでした

 



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原作突入8

やった!やったよ!
久しぶりに1週間以内に出せたよ!


ブラックトリガー争奪戦からはや数日。年が明けました。

ブラックトリガー争奪戦の次の日には総武高では終業式が行われた。その日にもらった冬季休業中の課題を終わらせつつ、家の掃除をしているとすぐに年が明けた。長期休業中でないと大規模の掃除ができないとはいえ、なかなかにやばい状況だった。台所の換気扇なんかは油汚れがひどくて一日中洗剤につけておかなきゃいけないほどだったし、そのほかにも、指でなぞればくっきりと指でなぞった跡が付くほどほこりがたまっていた場所を掃除したり、ずっとタイミングがなくて積みあがっていた縛ってなかったジャンプを縛ったりと、なんとも大変だった。けど、頑張った甲斐があって、まあそこそこきれいになったんじゃないかと思う。

ただこれからは小町も正隊員になり、家にいる時間も少なくなると思うので家にいるときにはこまめに掃除をしようと二人で決めた。

大掃除の話はこのくらいにしておいて、俺たちは今初日の出を見に来てます。

もともと比企谷隊プラス小町、ユイ、フラン、ファルの計九人の大所帯で初詣には行くつもりであったが、ユイとフランの初日の出が見てみたいとの言葉から初日の出まで見に来ることとなった。(フランは見たことがあるんじゃないかと思ってファルに聞くと、ファルたちの国では太陽的なものが二つあり、新年にちょうど初日の出が見られるのは20年に一度くらいらしい。…ナメック星かよ)

初日の出は陽乃さんのおすすめの場所で見ているがすごい。俺たちの前には池というか湖みたいなものがあり、そこで太陽の光を反射していてとても幻想的である。

初日の出を見てから一度家に帰り、初詣に行くとすでにけっこうな長蛇の列ができていた。

 

「ハチ君暇。なんか面白い話して。それにこの振袖?ってなんか動きずらい」

 

そう、女性陣は一度家に帰ったタイミングで全員振袖に着替えているのだ。

 

「普段気ないものなんだから仕方ねえだろ。それに俺が面白い話なんてできると思ってんのか」

「ううん。思ってないよ」

「じゃあなんで俺に振ったんだよ」

「…それでしたらみんなでウミガメでもやりませんか」

 

楓子さんの提案にみんなが首をかしげるなか、俺とファルはその正体を知っていた

 

「ああ、『妹さえいればいい』のやつですか」

「それです」

 

あの1話目アバンは衝撃的だった。ファルと一緒に録画したものを見ていたが一回再生を止めて確認したからな(筆者談)。それより楓子さんも見てたのかあの1話

 

「楓子そのウミガメって?」

 

へぇ~陽乃さんは知らないのか

「正式名称はウミガメのスープ。水平思考パズルです。出題者がある奇妙な事件を言い、回答者は出題者にYESかNOで答えられることを質問していきその事件の真相を暴くというものです。実際に私とハチさんで一回試しでやってみましょうか。…とある男が海の見えるレストランでウミガメのスープを注文しました。それを一口飲んだところで男はシェフを呼び、「これは本当にウミガメのスープですか」と質問しました。シェフは「間違いない」と答えました。男は勘定をし帰宅した後、自殺しました。なぜでしょう」

 

これはウミガメのスープってググると一番最初に出てくる問題だ。目的はやり方を見せることだから少し考えて質問するか

 

「男がスープを飲んだことと自殺したことに関係ありますか」

「YES、すごく重要です」

 

これはYESの質問。

 

「男は借金がありましたか」

「NO」

 

これはNOの質問。

 

「男はシェフでしたか」

「わかりません。わからないって言うのは関係がないってことです。こんな感じで質問していき真相を見つけていきます」

 

だいたいこんな感じだ。もしわからなくて知りたかったらググってくれ。

 

「ふうちゃんやり方は分かったけどその事件の真相って?」

「いろいろバリエーションがありますが、一番オーソドックスなものは男は船で遭難したことがありその時に食料がなくなり仲間たちは死体の肉を食べたが男は食べなかった。男が死にそうになった時に仲間は死体の肉をウミガメのスープと偽り、飲ませた。助かり、レストランでウミガメのスープを飲んだ時に味の違いから、真実に気付き自殺したというものです。改めて、ルールは大丈夫ですよね」

 

みんながうなずく。

 

「では問題です。ある作家が締め切りを破ると編集部の人に感謝されました。なぜでしょう」

 

こっちは『妹さえいればいい』の1話で出された問題だ。読者の中には知っている人もいると思うが、読者だけにヒントを言うと、締め切りの意味を考えることだな。

 

「うーん、まずは…それは現代日本の話ですか」

「YES、ですけどあまり関係はないです」

「じゃあ今の日本でその状況は起こりえますか」

「…YES、ですかね。絶対にないとは言い切れないです」

 

こんな感じで質問していき、正解が出るころには列はかなり進んでいた。

 

「正解です。もうすぐ私たちの番になりますし、ここまでですね」

 

楓子さんの言葉で前を見るとあと、五組かそこらしかいない。

 

「ユイ、フラン、ファルお賽銭渡しておくぞ」

「ハチ君お賽銭って何?」

 

お賽銭を知らないのか。やっぱ文化の違いってあるもんだな。

 

「神様に渡すお金みたいなもんだ。詳しいあれは知らん。昔からこんなもんだって思ってやってるからな」

「そうなんだ。それでお賽銭ってどうすればいいの」

「正しいのはお賽銭を前の方にある賽銭箱に投げ入れて二礼二拍手一礼なんだが混雑してるし二拍手してから一礼しつつ願い事を心の中で念ずるくらいだな。ほら今やってる人の参考にしろ」

 

ちょうど今やってる人がいたので参考にさせてもらう。ごめん、そしてありがとう。

 

「へぇ~うんわかった!願い事って何でもいいの?」

「本来なら抱負がいいんだろうが、何でもいいと思うぞ。」

「ちなみにパパは何にするのですか」

「俺は特にないから小町の受験祈願にするし。ところでフランたちの国では新年にどこかに行くとかそういうのはしなかったのか」

「特にしないよ?ただこっちのおせち?みたいに食事が豪華になるだけ」

「ほー…順番だな」

 

さすがに九人が一気に横に並べるスペースはないので四、五に分かれる。ちなみに先発は陽乃さん、楓子さん、めぐりさん、小町で後発は俺、フラン、ファル、謡、ユイだ。

ユイはもともと結構ネットに潜ってるから知ってるみたいだし、フランとファルもさっき教えたことをしっかりとできていた。

全員のお参りが終わり、集まる

 

「色々出店が出てますけどどうします。というかこいつがもう我慢できそうにないんですけど」

 

抑えているフランを見る。出店で売っているものが見たことがないのか目を輝かせている

 

「出店見てみるのはいいけど先に絵馬をみんなで書こ」

「そうですね」

「ハチ絵馬って?」

「絵馬っていう木の板があってだなそこに願い事を書いてつるすんだよ。そういえばおみくじもありましたね」

 

やっぱ初詣に来たならこの二つもやっておきたいよな

 

「だってさフラン。もう少しお預けだね」

 

いや俺をにらむなよ。

その後は絵馬を書き、おみくじを引く。

 

「みなさんどうでしたか。私は吉なのです」

「小吉です」「大吉だね」「末吉だよ」「吉です」「小吉です」「どこ見るの?」「ここ」「じゃあ大吉」「中吉だね」

 

順番に謡、楓子さん、陽乃さん、めぐりさん、小町、ユイ、フラン、ファルの順だ。そして最後に残った俺は

 

「凶」

 

ねえ何でおれだけ悪いの?…べ、別にいいしー!ほ、ほ、ほらあとは上がるだけっていうか!もう下がることはないし。ただ気になるのは争事(あらそい)、これからの大規模侵攻に関してそうでなんかやなんだよな

 

「ちょっと結んできます」

 

凶のおみくじをもって境内のところにある結ぶやつに向かう。とそこで知ってるやつらの声がした。

 

「あれ?比企谷じゃん。こんなとこで、っておみくじ凶出たんでマジウケる」

「あ、ヒキオじゃん」

「ん」

「はろはろ~」

「よお」

 

いや、川崎さんや。「ん」の一文字って何なん?俺でももっとまともに…できないな

 

「お前らも、って聞くまでもないか」

「今日ここに来るとしたらそれ以外にないっしょ。ヒキオは一人なん?」

「いや向こうにみんないるぞ」

 

俺がみんながいる方を向くとこっちに気付いていたのか手を振っていた。三浦たちは会釈で返している

 

「俺はそろそろ戻るわ。じゃあな」

「「「じゃあね」」」

 

三浦たちと別れ、陽乃さんたちの方に戻る。俺が戻るとすでにフランの口からはよだれが垂れていた

 

「ハチ君戻ってきたしもう行っていいよね!」

「渡した金をオーバーしても追加で貸さないからな」

「わかってる!行ってきます!!」

「ちょっと待ってよフラン!」

 

まずはリンゴ飴の屋台に突撃していくフランにそれを追いかけるファル。

ユイも夏祭りの時は屋台の方に行くことはできなかったので興奮した感じで謡と小町とわたあめの屋台の方に向かっていた。

陽乃さん、楓子さん、めぐりさんの年上三人組は射的の方に向かっている。

周りを見てみると幸せそうな家族連れやカップル(滅べ)がいる。こいつらだけじゃなく三門氏の幸せを守るために今年も一年がんばるぞい

 

~~~~

 

「この力でヒキタニに復讐してやる!」

「まさか本当にアレ(・・)が使えるとは思いませんでしたね、隊長」

「ああ。ミラ、こいつが次の遠征で使い物になるようにしっかり訓練させておけ」

「はい、ハイレイン隊長」

 



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原作突入9

わーい
ちょうど4444文字だ~!不っ吉~!


1月8日。今日はボーダー入隊式の日だ。俺たち比企谷隊はいつも通り嵐山隊の手伝いをしている。今は嵐山さんが入隊者向けて説明を行っていて、これからアタッカー・ガンナー組とスナイパー組に分かれるが、俺たちは既に分かれている。楓子さんはスナイパーの方に、めぐりさんはオペレーターの方に、俺と謡はアタッカー・ガンナーの方に分かれている。ちなみに陽乃さんは用事があるそうなので欠席だ。

 

「ん?あれは三雲か?」

 

体育館の端の方に三雲を見つけた。あいつは既に入隊しているはずだが何でいるんだろうか

 

「誰かお知り合いでいたのですか」

「ああ。あ、そういうことか」

 

三雲の近くには特徴的な白髪頭の空閑がいることから察するに、空閑の付き添いとかそこらだろう。

そうこうしてる間に入隊者たちは二手に分かれ、まずはスナイパー組が移動を始める。アタッカー・ガンナー組は正隊員への上がり方を説明され、とある三バカが目立っている。まああいつらは仮入隊期間にそれなりの実績を残して、ポイントが上乗せされているからな。目立って当然だろう。

一通りの説明が終わり、アタッカー・ガンナー組も移動を始め、俺と謡も最後尾をついていく。

 

「あ、比企谷先輩!それと…」

 

最後尾にいると少し前を歩いていた三雲と空閑がこっちに気付いた

 

「初めまして三雲さんと空閑さんですね。私は比企谷隊に所属している四埜宮謡と申します。」

「これはご丁寧にどうも。空閑遊真です。背は低いけど15歳です」

「えっと僕は三雲修です。よろしくお願いします」

 

おい三雲よ。なぜそんなに冷や汗をかいている。あれか?謡が明らかに自分よりも年下なのに言葉遣いがしっかりとしているところにか。俺も始めて謡と会った時はビビったわ。

 

「三雲さんは恰好から察するにB級なのですよね。今日はなぜここに?」

「あ、僕は空閑の付き添いと転属の手続きをしに来ました」

「転属?もしかして玉狛にでも行くのか?」

「あ、はい!」

 

迅さんはまた何か企んでいるのか?

 

「なあヒキガヤ先輩。俺なるべく早くB級に上がりたいんだけど何かいい方法ある?」

 

ふむ。早くBに上がる方法か。

 

「それは――「簡単よ。訓練で全部満点を取って、ランク戦で勝ち続ければいいわ」――木虎ェ」

 

俺のセリフを木虎に取られてしまった。これが一番簡単なんだけどさ、脳筋すぎない?けどその脳筋に空閑は惹かれたようで

 

「なるほど。わかりやすくていいね」

 

ネイバーは脳筋が多い(錯乱)

 

 

まず初めに到着したのは訓練室。ここでは対ネイバー戦闘訓練が行われる。仮想戦闘モードの部屋の中でボーダーの蓄積データから再現したネイバーと戦うというものがこの訓練の内容である。

 

「私の時もこれだったわ」

「僕も」

「私もなのです」

 

昔から一番最初の訓練はこれのようだ。部屋の中に通常より少し大きな出現する。これは仕様で攻撃力がない分耐久力を高めに設定しているのだ。

 

「さあ訓練を始めてくれ!」

 

嵐山さんの号令で順番に訓練室に入っていく。……うーん。しばらく見てるが三バカの中の一分切ったやつが空閑を除けば最速かな。そしてとうとう空閑の番になった。空閑が訓練室に入り訓練を始める

 

「んー圧倒的だな」

『記録0.6秒』

 

開始を同時に目まで飛んで一発か。正隊員でも訓練用トリガーだとあの記録が出せるかわからんな。三バカがいちゃもんをつけたようで空閑がもう一回訓練をするが今度の記録は0.4秒。さっきよりも縮んでいる。それから三バカは空閑をチームに誘うが空閑は三雲のチームに入ると言い、これをスルーした。その時新たなアナウンスが入る

 

『記録0.4秒』

 

は?空閑以外にこんな記録出せるやつがいんのかよ。そう思ってみてみると

 

「フラン?」

「フランさんなのです」

 

え?なんで?そういえば今日静かだったのはこうやって外で何かしてたからなの?

急いでフランのところに行くが、先に三バカが近づき空閑の時みたいにいちゃもんをつけたのか、フランは訓練室に入っていき間に合わなかった

 

『記録0,3秒』

 

フランが一秒縮めて出てきたがどうでもいい。捕まえた。

 

「おいフラン」

「あ、ハチ君!見てみて!この記…録!?ちょ痛い痛い!」

 

フランの頭をアイアンクローしながら嵐山さんのところに向かう。

 

「嵐山さん、ちょっとこいつ連れて行きますね」

「あ、おう。ほどほどにな」

 

嵐山さんの許可をもらいフランを廊下まで引きずって行く。

 

「何でお前がここにいる」

「えっと、サプライズ?」

「ギルティ」

「あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!」

 

頭を強くつかむ。到底女の子が出せないような声が出てきたが無視だ。

 

「その訓練用トリガーはどうやって入手した」

「忍田さんだよ。この前会った時にダメもとで頼んでみたら快く貸してくれた!」

 

忍田さん何してんすか…

 

「もしかしてファルはスナイパー組の方に行ってないよな?」

「…」

「ないよな!?」

「大丈夫だよハチ君。ファル君はたぬきのおじさんのところに行ってるから」

「たぬき?…あ、鬼怒田さんか。紛らわしい事すんな!」

 

フランの頭に軽くチョップする。

 

「確認なんだが本当にその訓練用トリガーは忍田さんから許可を得ているんだよな」

「うん」

「ならいい。戻るぞ」

「はーい」

 

戻ると訓練生はいなくなり、訓練室では三雲と風間さんが戦っていた。…Why?

 

「謡これどういう状況?」

「おかえりなさいなのですハチ兄フランさん。これは風間さんが三雲さんの実力を知るためにしてる模擬戦なのです」

「もっと詳しく頼む」

「風間さんは『迅の後輩の実力を確かめたい』って言ってましたよ、比企谷先輩」

「お、とりまるか、久しぶりだな」

「お久しぶりです」

 

風間さんは迅さんが風刃を手放してまで空閑を入隊させたことを言っているのか?だとしても何で三雲に?

 

「比企谷先輩も止めてください。もう18回も負け続けてるんです。もう見るに堪えません」

「オサムだってまけることはわかってる。オサムは先のことを考えて経験を積んでんだよ。」

「『ダメで元々』『負けも経験』いかにも三流が考えそうなことね。勝つつもりでやらなきゃ勝つための経験は積めないわ」

「「おぉ~」」

「さすが木虎さんなのです」

「まあいつ終わるかは始めた二人次第だからな」

「ちょうど終わったみたいですね」

 

風間さんは武器をしまい、三雲に背を向けていた。最後の何本かしか見てなかったが三雲の奴手も足も出てなかったな

 

「あれ?まだやるみたいだぞ?」

「何で…?もう十分負けたでしょ?」

「さあ?なんか話してたみたいだけど」

 

「あの子、ちょっと変わったね」

 

フランの言葉に俺もうなずく。三雲の表情がさっきまでとは打って変わっている。

 

『ラスト一戦開始!』

 

さっきまでと同じように風間さんはカメレオンで透明になる。

 

「考えたな三雲は」

 

訓練室に漂うのは三雲の撒いた超スローの散弾。透明なままじゃ風間さんはこれに対処できない。必然的に風間さんは風間さんはカメレオンを解除し、スコーピオンを出す。

 

「ただカメレオンがなくても風間さんは強いぞ修」

 

風間さんはスコーピオンで自分に当たりそうな散弾は斬っていく。三雲は左手にレイガストを構え、右手にはアステロイドを用意する。

 

「散弾で壁を作りアステロイドを当てるつもりでしょうか」

「たぶんな。ただ風間さんも狙いには気づいてると思うぞ」

 

たぶん、いや確実に風間さんは三雲の狙いに気付いてる。そして多分三雲も気づかれてることは分かってると思う。そのうえで三雲はどうするのか。

 

「スラスターオン!」

 

「ハチ君今のは?」

「レイガストのオプショントリガースラスターだ」

 

三雲は近づいてきた風間さんにシールドチャージを放つ。風間さんも予想してなかったのかそのまま三雲に押され壁まで追いつめられる。壁まで押し付けられた風間さんはスコーピオンを振るうも、三雲はレイガストのシールドを広げ風間さんを閉じ込める。そしてシールドの一部に穴をあけ、分割なし、たぶん射程弾速なし威力最大のアステロイドを叩きこんだ。

 

「まさか…勝ったの?」

「いや見てみろ」

 

『伝達系切断、三雲ダウン』

 

三雲の首にはスコーピオンが刺さっていた。

 

「惜しかったわね」

「何言ってんの?相討ちだよ」

「「「は?」」」

 

フランの言葉にほぼ全員が疑問符を浮かべる。そしてアステロイドを叩きつけた時の煙が晴れていくと、そこには体の半分くらいを失っている風間さんがいた。

 

『トリオン漏出過多、風間ダウン』

 

「まさか風間さんと引き分けるなんて」

「勝ってないけど大金星だな」

 

きっと大相撲であればたくさんの座布団が舞っていることだろう。

 

「どうでした?うちの三雲は」

 

戻ってきた風間さんにとりまるが話しかける。とりまるが師匠らしいしぜひとも弟子の評価を聞いておきたいんだろう

 

「はっきり言って弱いな。トリオンも身体能力もギリギリのレベル。迅が押すほどの才能は感じない…だが自身の弱さを自覚しそれゆえの発想と相手を読む頭がある。知恵と工夫を使う戦い方は嫌いじゃない。」

 

それだけ言うと風間さんは上の方から見ていた風間隊の二人と合流して帰っていった。

俺たちも先にラウンジで休憩してるやつらと合流するために向かおうとすると嵐山さんが慌てて三雲たちと呼び止めている

 

「三雲君大変だ。君たちのチームメイトが」

「え?」

 

詳しいことは聞いてないがスナイパー組の方にいる三雲たちのチームメイトが何かあったらしい。

 

「謡、俺は念のため三雲たちの方に着いていくが謡はどうする?」

「私は残るのです。」

「わかった」

 

三雲たちと走ってスナイパー組の方へ向かう。スナイパー組の訓練場に着くとそこには

 

「そうかそうか千佳ちゃんというのか」

 

太陽のような笑顔で少女の頭をなでている鬼怒田さんがいる。その後ろにはどうしていいのかわからないような感じで頬をかいているファルもいた。

とりあえずこの一連の騒動を知っていそうな人、楓子さんのところに行く。

 

「楓子さん今ってどういう状況なんです?」

「あの子があそこの壁の穴をあけたんですよ。アイビスで」

「まじっすか!」

 

見ると壁には穴が開いており、その穴の先に外の景色が広がっていた。

 

「ボーダーでもトップクラスのトリオン量ですね」

「そうですね。…そういえばそっちの方はもう終わったのですか」

「もうほとんど終わりました。あとは次の訓練の日付とかを確認するだけだったと思います」

「そうなんですね」

 

アタッカー・ガンナー組がもう終わりかけなことを聞いた楓子さんが東さんに合図を送ると、東さんは訓練の続きを説明する。そして終わり次第そのままスナイパー組も解散となった。

少女の方のエンブレム、そして三雲たちのチームメイトという発言から少女は玉狛の人間。後で確認を取るとトリオンの測定記録もないと言ってたし、きっと迅さんや林道さんはこいつらをど派手にデビューさせたかったのだろう。そこにどんな目的があったかは知らないがあの二人、特に迅さんは意味のないことはしない。きっとこれにも何かしらの意味があり、よりよい未来がこの先にあるのであればこの前みたいに暗躍するのもやぶさかではない。そう思った。

 




思ったんだけどさ、次会議やる予定なんだけどレプリカ先生お仕事なくね?


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大規模侵攻編1

1月の正式入隊日の三日後、今日は戦闘訓練以外の地形踏破訓練などの訓練がある日だ。しかし俺はそっちの手伝いには参加せずに本部の会議室に来ていた。今日はここでこれからあると予想される大規模侵攻についての会議が行われる。まあ会議といっても、参加者は上層部の一部の人と、俺、ユイ、風間さん、迅さんくらいの小さな会議だ。三輪も来る予定だったが体調不良で欠席とのことだ。

今は迅さんがまだ来ていないため、皆でモニターの個人ランク戦ブースの様子を見ながら待っている。そしてそのモニターでは今、空閑が三バカ相手に無双していた。

 

「あれが空閑の息子か……風間、お前の目から見て奴はどうだ?」

「まだC級なので確実なことは言えませんが、明らかに戦いなれた動きです。戦闘用のトリガーを使えば、マスタークラス、8000ポイントくらいの実力はあるでしょう」

 

俺もそう思う。戦闘の経験値だけで言えば会議室の中ではだれよりも、フランやファルと同じくらいの経験値はあるだろう。

 

「ならば一般の隊員と同じスタートにしたのはまずかったかもしれんな。初めからポイントを高めにして早くB級にあげるべきだった」

「そうしたかったけどなー城戸さんに文句を言われそうだったし」

「…やつはなぜブラックトリガーを使わない。昇格するにはS級になるのが一番早いだろう」

「そうしたら城戸さんトリガー没収してたでしょ。『入隊は認めたけどブラックトリガーの使用は認めてない』とか言って」

 

林藤さんの城戸さんのものまねけっこう似てたな

 

「…雨取千佳。先日基地の壁に穴をあけたのも玉狛の人間だったな」

「あーあの子はトリオンが多すぎてね。いずれ戦力になるから大目に見てやってよ」

「ブラックトリガーのネイバーとトリオンモンスター、そいつらを組ませてどうするつもりだ」

「もしかして城戸さんって俺や迅がいつも何かを企んでると思ってないか?チーム組むのもあの子たちが自分たちで決めたことだよ。千佳は攫われた兄と友達を助けるため、遊真ともう一つの隊員はそれに力を貸しているんだ」

 

へぇ~そんな目的があったのか。けどそれは現実的に厳しくねえか?ネイバーフッドのどの国に攫われたのかわからないし、攫われたのがいつの話か分からないが生存さえしていない可能性もある

 

「ばかげた話だ。ネイバーに攫われた人間をネイバーが奪還するなど」

「だからやめろと?」

「まあまあ目的があってそれに向かって努力するのは悪いことじゃないでしょ。それが救出であれ、復讐であれ。なあ比企谷、蒼也?」

 

林藤さんは俺と風間さんに話を振ってくる

 

「俺は別に両親の復讐をしようとは考えていませんよ。妹やユイもいますし、みんなでワイワイやってるのが楽しいんで。それを壊そうとするなら容赦はしませんけど」

「蒼也はどうだ?」

「三輪辺りはそうでしょうが、自分は比企谷と同じく復讐をしようとは考えていません。ボーダーの命令に従って任務を遂行するだけです。三輪は先日の小競り合い以降何やら悩んでいるようですが」

「ありゃまどしたの?」

「詳しくは分かりませんが、迅と太刀川に何か言われたようです」

 

噂をすればなんとやら、ちょうど迅さんがやってきた

 

「全員そろったな。それでは会議を始める。今回の議題は近くあると予想される大規模侵攻についてだ」

 

忍田さんの号令で会議が始まった

 

***

 

ユイの情報をもとに会議を進めているが一つ思ったことがあるんだけど…

 

「あの、空閑も参加させた方がいいんじゃないですか?ユイの情報で侵攻してくるかもしれない四国、リーベリー、キオン、レオフォリオ、アフトクラトルでしたっけ?そこに空閑がいたことがあったらもっと詳しい情報が得られるんじゃないですか?」

「それもそうだな。城戸さんよろしいでしょうか」

「ああ、かまわん」

「迅悪いが遊真君を呼んできてくれないか」

「わかりました。さてと…」

「空閑ならランク戦ブースで緑川を圧倒してるようですよ」

「へ?なんでそんなことわかんの?」

「うちのバカも一緒に居るみたいなんで」

「ああ、そういうことか」

 

自分で言っといてあれだが、うちのバカで伝わるあの子は何なんだろうね

 

「では行ってきます」

 

迅さんが空閑を連れて売るために会議室から出て行った

 

「比企谷一つ聞きたいことがあるんだがいいか」

「なんでしょう忍田さん」

「君は今生身だよな?トリオン体なら通信すればランク戦ブースの情報が得られるかもしれないが、君は生身でどうやって情報を得たんだ」

「俺とフランとファルは生身で通信できるんです。災禍の鎧の中から俺に乗り移ってから通信というか、テレパシーって言った方が妥当かもしれないっすけど、できるようになって、実体化しできるようになってからもこうしてテレパシーできるとは思ってもいませんでしたけど」

「比企谷、災禍の鎧から乗り移るとか、実体化とか何を言っているんだ?」

 

あれ?もしかしてまだフランたちの詳しい説明してなかったっけ?

 

「たぶん言い忘れてたと思うので言いますけど、あの二人、フランとファルは幽霊?なんです。普段はたぶんメタトロンの中にいるはずなんですけど、最近は勝手にどっかいってることが多いです、特にフランは。…ファル出てきてくれ」

 

きっとメタトロンの中から見てるであろうファルに呼びかける

 

「皆さんこんにちわ。呼ばれたんで出てきました」

 

ユイ以外の会議に参加してた人が唖然とした顔になる。

 

「比企谷どういうことだ。説明してもらおうか」

 

それから迅さんが空閑を連れてくるまでの時間つぶしとしてこれまでのことについて話した。もちろん心意のことは伏せてだ。俺もフランとファルの監視の下心意の修行をしているからわかる。心意は強い反面、心の闇が襲い掛かってくる。心の闇に飲まれれば自分が自分じゃなくなる。だから俺たちは知らないのならだれにも話さないと決めたのだ。

 

「そうかそんなことが…」

「迅さんたちが来たみたいですし、聞きたいことがまだあるようでしたらあとでにしましょう」

 

心意の修行と並行して進めている識のおかげで到着した迅さんたちの様子が扉の外からでもわかった。

 

「失礼します」

 

迅さんが空閑と三雲と陽太郎を連れてきた…なんで陽太郎?

 

「我々の調査で近々ネイバーの大規模な侵攻があることが分かった。先日の爆撃型のネイバーの攻撃、比企谷がいなければ多数の犠牲者が出たと予想される。我々は万全の備えで被害を最小限にしたい。平たく言えば、君にネイバーとしての意見を聞きたいということだ」

 

陽太郎の存在は無視され、会議は進められる

 

「なるほど。それなら俺の相棒に聞いた方が早いな。よろしく」

『心得た』

 

空閑の指輪から黒い炊飯器が出てきた

 

『初めまして私の名前はレプリカ。ユーマの父ユーゴに作られた自立型トリオン兵でユーマのお目付け役だ』

 

黒い空飛ぶ炊飯器――レプリカは自分のことを自立型のトリオン兵だと言った。ユイは次世代型自立トリオン兵の試作機だと言っていたので、レプリカはユイの先輩(まだユイみたいな次世代型が完成しているかわからないが)ということになる

 

『私の中にはユーゴが遺したネイバーフッドの国の記録がある。おそらくそちらの望む情報を提供することができるだろう。だがその前にボーダーにはネイバーに無差別に敵意を抱くものがいると聞く。私自身まだボーダー本部を信用しきれていない。ボーダー最高責任者殿には私の持つ情報と引き換えにユーマの身を安全を保障していただこう』

 

レプリカはああ言ってるが、実際、口約束などどうとでもできるだろう

 

「よかろう。ボーダーの隊務規定に従っている限りは隊員空閑遊真の安全と権利を保障しよう」

 

三雲がちらっと空閑を見る。俺も前に嘘に反応されてことがあったし、もしかして空閑は嘘を見抜くことができる系統のサイドエフェクトを持ってたり?

 

『確かに承った。それではネイバーについて教えよう。すでに知っていると思うがネイバーフッドを構成しているもののほとんどは果てのない夜の暗黒であり、その中でネイバーの国が星のように浮かんでおり、決まった軌道で回っている。この在り方をユーゴは『惑星国家』と呼んだ』

 

惑星国家、か。空閑の父親はもともとこっちの世界の人なのか

 

『太陽を回る恒星の動きとは異なるがほとんどの国はこちらの世界をかすめ遠く近くを周回しており、こちらの世界に近づいた時に門を開き、侵攻することができる。そして攻めてくる国を知るには今どの国がこちらの世界に近づいているのか知る必要がある。林藤支部長、ネイバーフッドの配置図があるなら見せていただけないだろうか。もし不十分であれば私の持つデータを追加しよう』

「はいよレプリカ先生。けど、それは必要ないと思うぜ?ユイちゃん」

「はーい!」

 

ユイが用意されていたプロジェクターに接続されていたパソコンを操作し、配置図を映し出す

 

「おお~!もしかして俺たちが持ってる配置図よりでかいんじゃないか?」

『そうだな。差し支えなければこれほど大きな配置図をどうやって作ったのかご教授願いたい』

 

林藤さんが城戸さんに許可を求める。

 

「実はな、このユイちゃんはレプリカ先生と同じトリオン兵なんだ」

「次世代型の人型自立トリオン兵の試作機、それが私です。つまりレプリカさんは私の先輩ということになりますね」

「我々はこの配置図からリーベリー、キオン、レオフォリオ、アフトクラトルの四国が近づいておることが分かっておる。」

「さらに、ユイの話では先日の爆撃型と偵察小型。その二種類から可能性が高いのはキオンとアフトクラトルって聞いたがお前たちはどう思う」

「うん。俺たちもそう思う。イルガー使う国ってあんまりないし」

 

空閑たちもアフトクラトルとキオンだと思うらしく、この二国が相手と仮定した話を進めてもよさそうだ。

 

「ひとまず、その二国が相手だとして話を進める。次に知りたいのは敵の戦力、特にブラックトリガーがいるかどうかだ」

「私のデータではアフトクラトルには十三本、キオンには六本のブラックトリガーがあることになっています。空閑さんたちの方はどうでしょう」

『私たちがその二国に滞在したのは五年以上前だが同じだ』

「そういえばレプリカ。俺たちが滞在してた時にある噂がなかったか?」

「ある噂?」

 

俺は空閑の言う噂というのが気になった

 

「うーんと…セブンアークスっていう超強い七本のブラックトリガーがあって、そのうちの一本をアフトクラトルが持ってるって言う噂。もしあったとしても話を全く聞かないから使い手は見つかっていないと思うけど。そういえば噂といえばもう一つ。災禍の鎧がこっちの世界に向かったって言う噂を聞いたんだけど」

 

災禍の鎧は向こうでもやっぱり有名なのな

 

「災禍の鎧なら討伐したぞ。セブンアークスが一つ、開陽≪ザ・ディスティニー≫。それが変化した姿が災禍の鎧、≪ザ・ディザスター≫で、今は俺のブラックトリガー≪メタトロン≫だ」

 

幻覚か?レプリカから冷や汗が出てるぞ

 

「どうやって討伐したの?あれ倒した人に憑りついて永遠になくならないって聞いたんだけど」

「まあ色々あったんだよ。それより話を進めようぜ。遠征にブラックトリガーの複数投入はされないんだよな?」

『ブラックトリガーはどの国でも貴重なためその可能性が高い。また、船はサイズが大きいにしたがってトリオンの消費も大きい。したがって攻撃には卵にできるトリオン兵を使うのが基本だ』

「つまり敵の主力はトリオン兵で、人型は少数ということだな」

『現在の情報ではそうなる』

「では、人型の参戦も考慮に入れつつトリオン兵団の対策を中心に考えていこう。さあネイバーを迎え撃つぞ」

 

忍田さんの号令の下、俺たちはさらに話し合いを積み重ねた。

 



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大規模侵攻2

これまで順調に更新できていましたが次回更新は遅れそうです


その日は朝から大変だった。朝食時には箸がぽきんと折れ、登校するときには家を出て一歩目で靴ひもがきれた。さらには上から鳥の糞が落ちてきた(避けたけど)。授業では事前予告なしの英単語のテストがあった(もちろん合格したけど)そして昼食のためにベストプレイスに行くと、いつも座っている場所には鳥の糞が。

もうね、ここまでくると分かったわ

 

『門発生、門発生。大規模な門の発生が確認されました。警戒区域付近の皆様は直ちに避難してください』

 

遠くで避難を促すアナウンスが聞こえる。とうとう大規模侵攻が始まるようだ。

俺はトリガーを起動し、グラスホッパーで屋上まで跳ぶ。そこにはオペレーターも含めた総武高のボーダー隊員が集まっていた。各学校にはこういう非常時の時にボーダー隊員が集合する場所が定められており、そこで本部にオペレーターを送り届けるものや学校側に避難誘導するものなどを決める。

でだ、だいたいこういうのは暗黙の了解として一番年上の人かランクが高い人が仕切ることになっており、なぜかみんな俺を見ていた。もたもたしている暇もないわけで俺は溜息を一つ吐き、指示を出した

 

「楓子さんは謡を拾いつつオペレーターを本部まで送り届けてください。学校の避難誘導は俺と…奈良坂で行います。他の人たちは本部の指示に従いつつ警戒区域からトリオン兵出さないように倒していってください。後千種隊は少し残ってくれ」

「「「了解!」」」

 

各人が俺の指示を聞き屋上から飛び出していく。

 

「千種隊、お前らはまだ経験が足りない。だから絶対に単独で行動はしようとするな。これは戦争だ。何が起こるかわからない。一人で対処できないことは必ず起こる。だからチームで対処しろ。いいな?」

 

俺の言葉にうなずいたのは三浦と川崎の二人だけだった…え?俺けっこういいこと言ったやん

 

「え、なに。比企谷はわざわざそんなこと言うためにあたしたち残したの?マジウケる。そんなこと私たちが一番わかってるよ」

「そうそう。それに俺たちで対処できなかったら、他の人になすりつ…協力してもらえばいいだろ」

 

おい千種兄。お前協力の前になんて言った

 

「早くいかないと撃破数稼げないしあたしたちはもう行くよ」

 

そう言って勝手に千種達も警戒区域の方に向かっていった。

 

「じっくりと話したことはなかったんだが…すごいな」

「ああ。まあわかってるようだし俺たちもさっさと避難誘導終わらせて向かうか」

「だな」

 

屋上から飛び降り、総武高の生徒が集まっているグラウンドに行く。

 

「校長先生、ボーダー隊員比企谷と奈良坂です」

「これはどういうことなのかね」

「ネイバーの大規模侵攻です。ひとまず今集まっている人をシェルターに避難させます。奈良坂ついて行ってくれ。俺は学校に逃げ遅れた人がいないか確認する」

 

校長先生がアナウンスをかけ、総武高の生徒は近くにあるシェルター目指して避難していく。それを確認しつつ上から順に声を出して逃げ遅れがいないか確認していく。

四階は、いない。三階は、いない。二階は

 

「あれ?比企谷君?」

「鶴見先生何してんすか」

 

遭遇したのは鶴見留美の母親で総武高の保険医の鶴見先生

 

「逃げ遅れがいないかの確認をね。比企谷君も?」

「ええ。先生は下から来たんですよね?下の確認は終わりましたか?」

「うん。上は比企谷君が確認してくれたのよね」

「はい。ならあとはこの階だけですね。この階は俺が見るんで先生は先に避難してください」

 

生身の人間とトリオン体の人間。見て回るのなら確実にトリオン体の人間の方が早い。それを分かっている鶴見先生は任せてくれた

 

「ねえ比企谷君。留美は…ううん。何でもない。確認お願いね」

 

鶴見先生はそれだけ言うと昇ってきたばかりの階段を下りていく。

 

「先生、留美ならきっと大丈夫ですよ」

 

鶴見先生は振り返らずにうなずいて、すぐに姿が見えなくなった。そして俺もさっさと二階の確認を終わらせる。幸い、鶴見先生が確認してくれた一階も含めて逃げ遅れた人はいないようなので良かった。

 

『奈良坂こっちの確認は終わった。逃げ遅れた人はなし。そっちの手伝いは必要か』

『こっちももうすぐ終わるから必要ない』

『わかった。なら俺は先に警戒区域に向かう』

 

避難の方も手伝いが必要ないことが分かり、グラスホッパーを用いて全力で警戒区域を目指す。本部と連絡を取りつつ向かった先はまだ誰も到着していないところでトリオン兵が大量にいた。メタトロンを使えばどれだけ大量にいようとも一瞬で殲滅することは可能だ。出し惜しみはしたくないが、いざというときにトリオン切れにはなりたくない。なのでまだ俺はノーマルトリガーで戦っている。

トリオン兵の数は多いが冷静に処理していく。なるべくトリオンを消費しないように一太刀、一発で仕留める。

識を使いながらの戦闘は何度かこなしてきたが、まだ慣れてはいない。しかし今回はしっかりと反応できた。

しゃがみ、急いでその場から距離を取る。俺の頭があった場所には白くて太い腕があり、その腕の持ち主は今までに見たことのないトリオン兵だった。

 

『ユイあれは』

『あれはアフトクラトルで開発されたトリオン兵ラービットだと思われます。ラービットはトリガー使いを捕獲することを目的に開発されたので、とても強いです!』

『オーケー』

 

ユイに言われるまでもなく識を使い始めてから感じる圧力?みたいなものがほかのトリオン兵とは段違いだ。それだけでもう強いことが分かる。

それが二体。新しくもう一体が俺が倒したバムスターの腹の中から出てきた。しかも色違い。きっと捕まえれば3V以上だと信じてる。

まあそんなことは置いておいて、だ。色違いの方(先に遭遇したのが白だったから白を通常種と仮定)は何かしら通常種とは違う能力みたいなものを持っているのが定番だ。だからやつも何かしらの能力を持っていると考えられる。そうでもなきゃ色を変える必要はないしな。そう考えさせるためのブラフって可能性もあるが、なんにせよ警戒するに越したことはないだろう。まあほんとにブラフでしたってパターンが個人的にはうれしい。だからお願いします!ブラフであれ!

 

「ハチ君下!」

 

と思っていた時期が俺にもありました。色違いが地面を殴ると俺の足元からとげみたいのが生えてくる。フランの言葉で先に離脱していた俺にはダメージはない。しかし今のが色違いの能力か?

 

「フラン、ファル。色違いは地面を殴ることで任意の位置にとげを発生させる能力だと推測するがどう思う」

 

いつの間にか出てきていたフランとファルに問う

 

「そうだね。私もそう思う。ファル君は?」

「情報は少ないけど今の情報で考えるなら僕も同じ」

『ユイ今の情報を本部に伝えて他に情報がないか聞いてきてくれ。』

『了解しました!パパ!』

「俺たちはさっさとこいつらを倒すぞ!」

「「うん!」」

 

俺より強い二人が前衛となり、俺が後衛、二人のサポートだ。

さっき仕切った手前、この編成に少し思うところもないことはないが、それを飲み込み二人のサポートに回る。

ただこの二人は俺のサポートが必要ないくらい強いわけでものの三分もしないうちに倒してしまった。

 

「うーん意外と弱かったね」

「いやお前らが強すぎんだよ。A級部隊が1チームで倒すところを一人で倒しやがって」

 

戦闘中に風間隊がラービットを倒したとの通信が入ったのだ。

 

「まあまあきっと陽乃さんとか太刀川さんとかも一人で倒せると思うし…あれ?この歌…」

 

ファルは聞こえてくる歌に気付いたようだ。この歌は警戒区域に設置されているスピーカーからフランとファルが戦い始めた時くらいから流れ始めた。

この歌の正体は謡のブラックトリガー、セブンアークスの一つ天璇≪ザ・テンペスト≫だ。その能力は簡単に言えば、バフデバフスキル。例えばバフならば術者が味方と認識した人すべてにその恩恵を等しく授ける、というものだ。

前所有者はデバフしか使っていないようだったが本来効果が高いのはこっちのバフスキルの方だ。

 

「だから今日は調子が良かったのか」

「ファルの謎も解けたことだし、第二ラウンドと行こうぜ」

 

新たに開く大量の門とそこから出てくるたくさんのトリオン兵。

ボーダーA級部隊隊長とゆかいな仲間たちvsトリオン兵団。その火蓋は切って落とされた

 

***

 

時は少しさかのぼり、アフトクラトル遠征艇内

 

「比企谷ぁ!殺してやる!絶対に殺してやる!!」

「どうやらあそこに映っているのがミナミの因縁の相手のようですね」

「ああ…ウィザ何を見ている」

「いえ…懐かしい友がいたもので」

 

ハイレインの問いかけにウィザは答えた。ハイレインはウィザの見ていたモニターを見るがウィザと同じくらいの歳の兵は見あたらない

 

「まあいい。ウィザとヒュースは予定を変更し先ほど確認された金のひな鳥を捕獲してこい。ランバネイン、エネドラ、ミナミは予定通り玄界の兵を散らしてこい」

「ちょっと待ってよハイレイン!ウチは比企谷を殺すのよ!」

「ミナミ口の利き方に気をつけなさい。それにミナミが玄界の兵をたくさん殺せばきっと彼は来るわよ」

 

ミラはミナミを諭し、いくつかの門を作る。そこを通りアフトクラトルの兵士たちは玄界の戦場に降り立っていく。そして誰も通らなかった門にたくさんのトリオン兵の卵を投げた。

 

今、玄界の戦場に角の生えた鬼が解き放たれた

 



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大規模侵攻3

CADなんて知らない!
ほんと素人には羽根車でさえも設計はできません


色々改変入ってます。
年内にアフトは終わらせたいな~


大量のトリオン兵たちの相手を数十分。やっと終わりが見えた

 

「これでラスト!」

 

旋空弧月でモールモッドの目を切り裂く。この一体でやっと俺たちの前に現れたトリオン兵団の殲滅が終わった。

 

「つっかれた~!やっと休める。いくら雑魚でも、あ、雑魚だからこそたくさん来られると疲れるんだよね~強い人がたくさん来てくれればいいのに」

 

フランの戦闘狂発言は置いといて

 

「休んでる暇はないぞ。いろんなところで人型が暴れてる。お前たちはそっちの相手に行ってくれ」

 

トリオン兵団との戦闘中に通信があった。今わかっていることは人型は六人ということ。うち一人は米屋、出水、緑川と東さんなどの近くにいたB級連合で倒したらしい。が、他はまだ倒れておらず。風間さんとレイジさんがそれぞれ別の人型に倒されていて、レイジさんを倒した方は「星の杖(オルガノン)」というアフトクラトルの国宝級のブラックトリガーの使い手にやられたらしい。

 

「お前たちはってハチはどうするの」

「俺はメタトロンでトリオン兵の方を対処する。人型と新型の影響でトリオン兵の相手が足りないらしい。今はまだ何とかなっているが、すぐにトリオン兵が警戒区域外に出てもおかしくないらしいからな。だから俺はそっちに行く」

 

基地の南・南西部は戦場の匠、天羽の手によってトリオン兵は住宅とともに潰され更地が広がっているが、他の方面、特に北東方面には人を操るトリガーを持つ人型がおり、その相手で人手が足りず、トリオン兵の対処が疎かになっているとのことだ。そこ以外にも大量のトリオン兵の出現により、トリオン兵が警戒区域外に出そうなところもあるらしく俺はそっちに行けとの指示が出た。

 

「おっけー。もちろんその人型のところまでは送っていってくれるんだよね?」

「そんくらいならな。…つかまれ」

 

ノーマルトリガーを解除し、メタトロンを起動。翼を広げ少しだけ浮上する。フランが右腕に、ファルが左腕にぶら下がり飛び立つ。

 

「フラン、ファルお前らの相手はオルガノンって言うブラックトリガーだ。能力は玉狛のレイジさんが解析してくれているが……もしかして知ってたりするか?」

「オルガノンでしょ?知ってるよ。昔。オルガノンの使い手を友達だったからね。能力は……なんだっけ?」

「……はぁ。自分を中心に同心円状に複数の円を作り出し、その軌道上を刃が走る。そんな感じの能力だよ」

「そうそうそれそれ!ウィザ君元気かな~?」

「そのウィザってのがお前たちの時のオルガノンの使い手か?」

「うんそうだよ!」

 

フランたちが生きてたのが約50年くらい前。もしそのウィザがずっとオルガノンを使い続けてたらすごい強くなってるんだろうな

 

「まあそのオルガノンってのがお前らの相手だ。わかってると思うが能力知ってても油断するなよ」

「「うん」」

 

しばらく飛んでると遠くからでもビルを含め大量の建物が倒壊しているところが見えた。聞いていた座標とも一致するし、あそこだと判断する。

 

「フラン、ファルあの場所だ。今は空閑が戦っているからそれと交代で相手をしてくれ」

「オッケー!あ、ハチ君。ちょっと上空でホバリングお願い」

 

疑問を覚えながらも指示通り、戦っている場所の上空でホバリングする。

 

「ありがとハチ君。ファル君」

「「コール メタリック エレメント シェイプ ニードル」」

 

二人の神聖術で周りにたくさんの鋼のとげができる

 

「準備オッケー!ハチ君手離して!」

「おう」

 

…何も考えずに手を離したけどあいつ着地どうすんの?

 

「ヒーローは!遅れて!空からやってくる!!」

 

フランはどこぞの不良蝶々のようなセリフを吐きながら落ちていく。あのバカせっかく上空から奇襲かけてんのに声出して教えてどうすんの?それともまだ聞こえてないか?

 

「ハチぼくらも降りよう」

 

ファルは飛び降りることはしなかった。頼まれて俺はゆっくり高度を下げる

 

「コール エアリアル エレメント」

 

フランは風を発生させ。空閑と空閑と戦っていた老人の間に立つように静かに着地。俺もファルもその近くに着地する。フランたちが放った鋼のとげは老人の周りに刺さっていた。

 

「久しぶり。ウィザ君…で合ってるよね?」

「ええ。合っていますよ。久しぶりですねフラン、ファル。確か私と同じ年だったと記憶しておるのですがどうして若い、というかあのころの姿のままなんでしょうか」

「まぁいろいろあったからねー。そういうウィザ君は年とったね!」

「ほっほっほ。もう50年経っていますからね。…旧交を深めたいところではありますが私には任務がございます。そこにいるということは玄界の兵として私の前に立ちふさがるということですね」

「!空閑伏せろ!!」

 

俺も伏せながら空閑に叫ぶ。直後ウィザという老兵の攻撃が俺の頭上を走ったのが分かった。メタトロンの攻撃予測がなければ、確実に殺されていたであろう攻撃だ

 

『ハチ君。空閑君連れてすぐ逃げて』

 

翼を広げ空閑に向かって飛ぶ。敵の攻撃は攻撃予測で見えるしフランたちが止めてくれる。そう思うと安心して飛ぶことができる。

空閑を拾い一気に上空へ。

 

「空閑もう聞いていると思うがお前はチームメイトの手助けをしろ。そこまでは俺が送る」

「ありがとうヒキガヤ先輩。これが先輩のブラックトリガーの能力?」

「正しく言えばその一つだな」

 

下にC級隊員の制服が見えた。少し離れた場所で三雲が何かを手に持ち人型から逃げている。

 

「先輩ここで降ろして」

「飛び降りるか?」

「うん」

「行ってこい」

 

抱えていた空閑を離す。空閑に無事に着地し三雲の助けに向かう。

俺は空閑を離すとすぐにボーダー本部の屋上まで飛ぶ。屋上に降り意識を集中する。イメージするのは光の球

 

「…できた」

 

完成したのはこの前と同じくらいの大きさだ。ここまでは前の時と同じなので割とすんなりとできた。

 

「あとはこれを大きく」

 

再び意識を集中。さっきまでの大きさでは警戒区域全域をカバーするためには全然足りない。核をもっと大きくするために俺はさっきよりも深く意識を集中していった。

 

***

 

その日、ミナミ/相模南は久しぶりに玄界/地球に地に立った。

 

「あーもう!イライラする!」

 

その理由は単純。目的である比企谷八幡にすぐに会うことができないからだ。

彼女の目的は彼女を陥れた(と思っている)比企谷八幡の殺害だ。そのために彼女は力をもらい、その力を使えるようにした。彼女がもらった力の名は

 

セブンアークス 天権≪ザ・ルミナリー≫

 

その能力は操作。トリオンを持つものを強制的に操作する悪魔の力。アフトクラトルで使い手が存在せず、ずっと眠っていた力。その力をもって相模南は久しぶりに地球に帰ってきた。

相模は艇を出る直前に同じ艇に乗りきたアフトクラトルの兵、ミラが言っていたことを思い出し、少し離れたところでトリオン兵と戦っている二人のボーダー隊員に目をつける。

アフトクラトルの兵、ランバネインとの戦いで何とか生き延びトリオン兵と戦っていた茶野隊の二人は大量のトリオン兵に気を取られ、相模にまだ気づいていない

 

「ターゲット、ロック」

 

つぶやきつつ、相模は腕を振りかぶる。相模が狙いをつけたのは茶野だ。

 

「ショット」

 

相模が放ったのは目を凝らして見なければ気づけぬほどの小さな針。相模の放ったその針は追尾をし、しっかりと茶野の腹に刺さった。そしてその針は腹から茶野のトリオン体の中に入り込み茶野の体の中に根を伸ばす。そのことに茶野は気づいていない(・・・・・・・)。茶野は自身の腹に何かがぶつかったかもしれない程度にしか思っていなかった。その後に茶野は腹を見ても何の異常も見つからなかったことも気づかなかった原因かもしれない。しかし、茶野の体の中には徐々に根が広がっていく。

相模は茶野のほかにこの周辺にいるトリオン兵にも、もう根を張りめぐらせておりいつでも好きなように動かせるようになっている。

そして茶野の体に根が完全に張りめぐらされたとき、相模は邪悪に嗤った

 

 

「真、なにす

 

茶野隊の藤沢はベイルアウトした。そして彼をベイルアウトさせたのは同隊隊長の茶野だ。

しかし手を下した彼自身にも自分が何をしたのか理解できていなかった。それもそのはず今のは相模に操られての行動だ。

 

「何が…どうなって」

 

ランク戦でもないこの戦争時に仲間を自分の手でベイルアウトさせた。そのことに茶野はひどく動揺する。

その茶野を相模はさらに操作し、一番近くにいるボーダー隊員のところに向かうようにする。茶野は操作に抗えぬまま一番近くの千種隊の下へと向かった。

 

…………………

 

茶野は千種隊を見つけるとすぐに発砲する。

 

「お前ら!早く俺をベイルアウトさせろ!」

「はぁ?どういう意味だし!」

 

突然発砲された三浦はシールドで防ぎつつ攻撃して来た茶野に詰問する。

 

「敵のトリガーで操られてる!だから俺をベイルアウトさせろ!」

 

それを聞き、千種明日葉は構えていた銃の引き金をためらいなく引き、茶野をベイルアウトさせる

 

「ちょっと明日葉!」

「本人がそう言ってたし優美子を攻撃したのは事実じゃん」

 

そこでその場に不釣り合いな明るい声で乱入してくるものがいた

 

「あっれ~!三浦さんに川…川崎さんだ~!うわ~ちょー懐かし!」

「あ、あんた…相模!何でここにいんだし!」

「決まってるじゃん。ウチを陥れたヒキタニに復讐するためよ!そのために力も貰ったのよ!」

「何言ってんだし!文化祭のことはあんたの自業自得だし!」

「うるさいうるさい!ターゲット ロック ショット!」

「「「シールド」」」

 

相模の攻撃に対し三浦、川崎、明日葉はシールドを張る。しかし相模の放った針はシールドをすり抜ける。そのことに三人は気づかなかった。唯一気づいたのは

 

『…ふう』

 

千種隊隊長のスナイパー千種霞だ。彼は自身のサイドエフェクトで投擲された針、三本(・・)に気付き、ライトニングで撃ち落とした。

 

『今の攻撃、シールドすり抜けたから気をつけろよ。今みたいなまぐれはそうそうないから次からは自分で対処な』

『ん、あんがと霞』

『たぶんさっきの人操ってたのはこの人だよね?だったら敵だよ。元クラスメートでもね』

『…うん。わかった。相模はあたしたちで倒す!』

『『うん!』』

 

こうして三浦は元クラスメートと戦う覚悟を決めた。

 

それぞれの場所でそれぞれの思いを抱え、少年少女は衝突す。運命の時まであと少し。

 

 

 

 

『…隊長は俺なんだよなぁ…』

『お兄うっさい』

 



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大規模侵攻4

ヒャッハー!クリスマスだ!学校だぁぁぁ!!
そうなんです。周りの学校は冬休みだというのにうちはあと二日あるんです
リア充ともども滅びろ!


千種隊対相模の戦いが始まる。

 

『たぶん相模はまだ戦闘経験が少ないと思う』

『そうだね。現に今だってあたしたちがいるのにあたしたちから目を離してるしね』

 

実際相模の戦闘経験は三浦たちのそれと比べて圧倒的に少ない。ほぼないと言ってもいいくらいだ。

その証拠に少しでも戦闘経験があるのだったら戦闘中に敵から目を離したりはしない。その隙に何が起こるかわからないからだ。

しかし相模は三浦たちから目を離し、さっきの狙撃の犯人、霞を探している。このことが相模が戦闘経験が少ないということの証明となっていた

 

『だから霞は相模をイラつかせるようにお願い』

『うーい』

『まずあーしが突っ込むから沙希、明日葉フォローよろしく』

『『了解』』

 

三浦が指示を出し、それぞれがそれぞれの武器を構える

千種隊の戦闘スタイルは、川崎が防御、霞が支援に回り、明日葉と三浦が点を取るというスタイルだ。

三浦のアタッカーとしての腕はボーダーに入って半年という期間にしては高い方である。もともとテニスをしていたからか、反応速度がよく、相手の攻撃を見切り攻撃することに長けている。そういう点から普段は三浦が前に出て戦うことが多い。

今回もその例にもれず三浦が走って相模に近づく。さらには走っている三浦に隠れて明日葉が放った弾丸が追随する。三浦が少し横にずれればその弾丸が敵に当たるという寸法だ。

しかし、今回は通用しなかった

 

「三浦さ~んそんな簡単に敵に近づいちゃだめだよ?こんな風になっちゃうからね」

 

三浦と追随していた弾丸の動きが止まる。

 

「あ、後ろに弾丸なんてあったんだ~残念、意味なかったね~それじゃあ三浦さんお願いね~」

「あんたなにを…ってなんで!」

 

三浦の意志に関係なく三浦の体は勝手に動き、来た道を戻る

「沙希、明日葉逃げて!」

 

自分がどういう状況にあるのか察した三浦は川崎と明日葉に逃げるように言う。しかし逃げることは間に合わずに三浦と川崎は剣を撃ち合わせることになった

三浦と川崎のつばぜり合いが続く。

 

「あーもう時間切れか」

「時間切れって何が…体が…動かせる。沙希、明日葉一回逃げるよ。霞時間稼いで」

 

三人は物陰に隠れ、円になり顔を合わせる。

 

「もしかして操るのに時間制限があるとか?」

「優美子は一分くらいだったけどさっきの茶野はどうだったんだろ」

「姫奈確認してもらっていい?」

『うん!任せて!それとトリオン兵が集まってきてるよ。近くにいるほかの隊員も対応してくれてるけど、このままじゃ囲まれちゃうよ』

「優美子どうする?」

 

明日葉は三浦に聞く。千種隊にはまだブラックトリガー使いとしては未熟とはいえブラックトリガーを相手にしつつトリオン兵を相手にする力はない。それができるのはボーダーの中でも最精鋭、比企谷隊くらいなものだが。

 

「一回撤退するよ。そのあと、援軍と一緒にまた来よう」

 

戦闘が始まる前に本部にブラックトリガーを戦闘になったこと、そして援軍の要請をしていた三浦。

その判断は正しく、その援軍はちょうど到着した。

 

「撤退の必要はないよ」

「陽乃さんに楓子さん、謡ちゃんも」

 

本部が千種隊の援軍として向かわせたのは、比企谷隊の女性三人だ。

 

「今わかっている情報を教えてください」

「わかっているのは相手のトリガーは人を操ることができることです」

「それは人だけなのですか?」

 

楓子が問いかけ、川崎が答えると謡からさらに質問が飛ぶ。

 

「いや、優美子と一緒にあたしが撃った弾丸も操られたから人だけじゃない」

「三浦ちゃんも操られたんだ。敵の攻撃手段は?」

「小さい針と飛ばす攻撃があってこれはシールドじゃ防げませんでしたけど、シールド以外なら撃ち落すことが可能です。それとあーしは近づいたら操られました。一分くらいで自分で動けるようになりましたけどあーしの前に操られてた茶野はベイルアウトさせるまでずっと操られてました。」

「三浦ちゃんと茶野君にした攻撃は違うってことだね。…もしかして針での攻撃って言うのが茶野君がされた攻撃なのかな?茶野君がされた攻撃って何かわかる?」

「それは今姫奈に確認してもらってます。それと…敵は相模です」

 

三浦の言葉に比企谷隊の三人は驚いた表情を浮かべる

 

「相模って文化祭の後に行方不明になった相模ちゃん何だよね?」

 

もう一度確認するようにされた問いに三浦はうなずく

 

「そっか。…八幡に復讐するとか言ってそう」

「それさっき言ってましたよ」

「あ、もう言っちゃってたかー」

 

そこで茶野に情報収集を頼んでいた海老名から連絡が入る

 

『みんな分かったよ!茶野君は身体に何かが刺さったような感じがした後、操られたらしいよ』

「ありがと姫奈。茶野は何かが刺さったとに操られたらしいです。」

「優美子、やっぱりそれって」

 

川崎、明日葉は霞が撃ち落してくれた攻撃がそれだったのではと推測する

 

「たぶん霞さんが撃ち落したやつがそれだと思うのです。それで聞きたいのですが、操る以外に直接的な攻撃はありましたか?」

「少なくともあたしたちにはなかったよ」

「う~ん…三浦ちゃんと川崎ちゃんは中、遠距離の攻撃手段ってある?」

「あたしも優美子もないです」

「そっかなら二人は周囲の警戒をお願いしようかな。明日葉ちゃんは手伝ってもらうよ」

「なにを?」

「ちょっと情報収集を兼ねてドンパチをね」

 

 

開幕は陽乃の旋空弧月。それから相模を中心に円状に展開した楓子、謡、明日葉、それから少し離れたビルにいる霞の攻撃が相模に向けられる。

もちろん相模はそれらすべての攻撃を操り、来た方向に反射するが一発も当たったものはない。それが霞が稼いだヘイト値をさらに増大させる。相模のあたまには血が上り冷静な判断が徐々できなくなっている。

 

「実験その一!」

 

相模に攻撃がヒットし、相模の体勢が崩れる。そこに襲来する数多の攻撃。しかしそれは反射され、あらぬ方向に飛んで行った。

 

『やっぱりトリオン以外の攻撃は有効ですね。けど反射は本人の意思はあまり関係ないみたいですね』

 

相模にヒットした攻撃の正体はがれき。陽乃は近くにあったがれきを相模に飛ばし、トリオン以外の攻撃が有効なのか確認した

 

「そうだね。じゃ!実験その二!」

 

開幕は旋空弧月の後はほぼ同時攻撃だったのに対し、今度の実験では時間差で攻撃を仕掛けた。その中の一つが相模のトリオン体を削った。

 

「ビンゴ」

『やっぱり永続じゃなくて一回使うごとにインターバルが必要みたいなのです』

『あとは一回の発動時間とインターバルの時間の確認ですね』

 

「ふっざけるなぁぁぁぁぁぁ!」

 

突如相模の慟哭。

無敵だと思っていた自身のブラックトリガーがダメージを受けたこと、それが引き金だった。さっきまでのヘイト稼ぎが仇となり、一気に相模の怒りが爆発。相模に禁断の技を使わせた。

 

「魔王徴発令(デモニックコマンディア)!!」

 

それは使用者の一定期間の昏倒と以後の能力の使用の制限と引き換えに使用者が敵だと認識したものを強制的に操る絶対の力。

通常、ネイバーフッドに数多ある精神干渉系のトリガーは自分と同等かそれより力のある者には効かない。しかし相模の使った魔王徴発令は違う。それは例え同等のセブンアークスを持っていたとしても一切の抵抗をさせずに操る。

 

「はっ!さいっこーに気持ちいいわ!たしか千種さん?だっけ?ヒキタニの居場所教えて?」

「わかりません」

「ちっ。使えないわね。じゃあもう行っていいよ。できるだけたくさん殺してね」

 

先ほど三浦の体が勝手に動き出した時のように明日葉の体も勝手に動き出す。

 

「え~と雪ノ下さんでしたっけ?あなたならヒキタニの居場所知ってるよね?」

「それは…」(言いたくないのに口が勝手に!?…このままじゃ八幡が殺されちゃう。…誰か、誰か助けて!!)

 

陽乃の心の叫びに答えるようにボーダー本部の屋上から光の塊が解き放たれた。その光はみるみるうちに広がっていき、やがて警戒区域を満たす。

 

(あったかい光…もしかして八幡?)

 

しばらくすると光が消える。そして光が消えた後の警戒区域にはトリオン兵は一体もいなくなっていた。そしてその光は陽乃たちの体にも変化をもたらした。

 

(体が動く!ありがとね八幡)

 

「やぁぁぁぁぁ!」

「なんで!?なんで動けるのよ!」

 

不意を突かれた相模に陽乃は刀を振りかぶる。陽乃は直感的に相模がもう操ることができないことを分かっていたのだろう。

陽乃の斬撃が相模を襲い、相模のトリオン体を破壊した。派手な煙が立ち、それが晴れると生身の相模が地面に仰向けになっていた。

 

「なんでなんでなんで!?どうして負けたのよ!」

「うるさいわよミナミ。回収に来てあげたわ」

 

空間に穴が開きそこから顔を出すのはミラだ

 

「ミラ!あんたが手伝ってくれたら!」

 

ぶつくさ文句を言いながらミラが伸ばした手を掴もうとする相模。しかし相模は何者かにタックルをされ、ミラの手を掴むことができなかった。

その直後、一つの光がボーダー本部に向けて飛んで行った。

相模を突き飛ばしたのは三浦。そしてそのあとに上がった光の正体はベイルアウトの光だ。

そして突き飛ばされるまで相模がいた場所には、近くの空間に開いた穴からとげが突き刺さっていた。

三浦は相模をかばいベイルアウトしたのだ。

そして突き飛ばされた相模をミラから守るように楓子と謡、川崎、明日葉が立つ。

 

「楓子、腕についてる発信機を壊して。そうすればこの女はピンポイントでワープできないから」

「はい」

 

楓子が相模の腕についてる発信機を壊してミラのピンポイントワープを封じる。

 

「どうするの鬼女さん。まだ続ける?」

 

ミラは無言でゲートを閉じかけた。

 

「これだけはもらっていくわ」

 

そう言い、相模が胸につけているネックレスの鎖をとげを出して破壊。回収しようとしたところで

 

「させない!」

 

ミラがネックレスを掴む前に川崎が弧月を投げる。それに反応した一瞬の隙を突き、謡がネックレスを奪取。陽乃、楓子、明日葉はミラ目掛けてバイパーとアステロイドと放つ。ミラは空間に穴をあけることでそれに対処しようとしたが、陽乃と楓子が放ったバイパーはそれを読んでいるかのように穴を避け、ミラにダメージを与えた。

 

「謡そのトリガーを持って本部に!」

「はいなのです!」

 

謡はすぐさま自分が奪取したトリガーを持って本部に向かう。

 

「もう一回聞くよ?目的のトリガーは奪えなかったけど、まだ続ける?」

「チッ」

 

今度は無言ではなく舌打ちをし、今度こそ完全にミラはゲートを閉じた。

 

「川崎ちゃん、明日葉ちゃん。もう一回相模ちゃんの体調べて発信機があったら壊して。それが終わったら気絶してる相模ちゃんを本部に連れて行って」

「「了解」」

 

相模は三浦に突き飛ばされた後から気絶していた。

 

「楓子、私たちは他の場所に行くよ」

「了解」

 

これで一つの戦いの幕が閉じた

 

***

 

場所は変わり時は少しさかのぼり、舞台はフラン&ファル対ウィザに移る

 

フランとファルは苦戦していた。部位がないなどの大きな負傷はないが体のいたるところからはトリオンが漏れていた。

フランたちが使うトリガーはブラックトリガーではないが、フランとファルのためだけに作られた一点物のトリガーであるためトリガーとしての差はそこまでない。それにプラスして二人はメタトロンの力も使うことができる。運動能力などの基礎スペックを除いた点だけで見れば二人はウィザよりもはるかに有利なのだ。それでも二人がかりでも埋まらないウィザとの差。

 

(やっぱり私たちが死んでからの約50年。その経験の差が出てるな~)

 

フランたちが死んだときフランとファル、ウィザの間に実力の差はなかった。100戦戦えばそれぞれが毎回50勝ずつになるほど実力は均衡したものだった。

しかし今模擬戦をしたならば、フランとファルの二人がかりでも10勝できるかどうかだろう。

差をつけた原因、それは経験だ。フランたちが死んだとき一回二人の時間は止まった。動き出したのは八幡が災禍の鎧≪ザ・ディザスター≫の中にいたフランに気付き、解放した時だ。しかしウィザの時間はフランたちが死んでも動き続けていた。その動き続けた時間の中でウィザは様々な敵と戦い、たくさんの経験を積み、その経験値をため続けた。

その差が明確に実力の差となって表れた。

今二人に部位欠損などの大きな負傷がないのはひとえにメタトロンの攻撃予測のおかげだ。

 

「少し、話をしませんか」

「話?どういうこと?」

「仲間から通信がありまして私たちの隊長が出撃したそうです。彼が出てくれば私たちの目的は達成されたも同然です。そうすると私が玄界にいられる時間も少ない。ですので残された時間をあなたたちを話すことに使いたい。どうでしょう。付き合っていただけますか?」

『どうするファル君。私たちがウィザ君をここに足止めするというかされているこの状況にも意味があると思うんだけど』

『そうだね。ウィザの隊長は向こうの人たちに任せるにしても、ここでウィザが自由に動けるとなると状況は悪化するし』

『だね。ここはウィザ君の提案に乗ろうか』

 

フランとファルはウィザの提案に乗ると決め、武器を下ろす。

今さらお互いの発言を信じられないような関係ではないが、乗ると決めたからには自分たちから武器を下ろした

 

「そうだね。久しぶりに会えたんだから少し話そっか。あとひとつ言っておくけどあまり玄界舐めない方がいいよ。あの災禍の鎧をノーマルトリガーだけの4人部隊で討伐したんだから」

「ほうそれは興味深いですね。やはり玄界の進歩は目覚ましいということですね。そのあたりことも含めて聞いてもよろしいでしょうか」

「言えることならね。その代わりそっちのことも教えてよ?」

「もちろんです。まずはさっきファルと一緒に空から降りてきた人は一体誰なのでしょうか」

「ハチのこと?ハチは恩人だよ。僕たちを再び会わせてくれた、ね。ハチがいなかったらこうしてウィザとまた会うこともなかったし」

「今度はこっちの番だね。ウィザ君たちが玄界に来た理由って何なの?」

 

ウィザは少し迷うそぶりを見せつつ答える

 

「それは私たちの新しい神を探すことです」

 

『もしかしてマザートリガーの生贄の人の寿命がもうなくなるのかな』

 

マザートリガーとはネイバーフッドの国がある星を作っているものだ。つまりはネイバーフッドの国そのものがバカでかいひとつのトリガーなのだ。

今回アフトクラトルが来た理由はそのトリガーの生贄を探しに来た。そういうことなのだ。

 

『たぶんね。そうでもなきゃ国宝を持ち出す理由もないし』

『となると雨取ちゃんが狙われてる?』

『きっとね』

 

ウィザから聞いた情報から二人は推察していく。

 

「次の質問ですが、二人は今玄界に住んでいるのですよね?玄界での生活は楽しいですか?」

「うんとっても楽しいよ。ここは他のネイバーフッドの国と違う技術の発展をしてるからね。ウィザ君知ってる?玄界にはね、ソフトクリームって言う冷たくて甘くてとってもおいしい食べ物があるんだよ!それにケーキにドーナツ、パフェにパイ。玄界にはおいしいものがたくさんあるんだよ!」

「フラン落ち着いて。食べ物の話しかしてないよ。ウィザ玄界にはスマホって言ってこのくらいのサイズの板があって、それを使えばトリガーを持っていなくてもどんな距離からでも通信ができるようになって、こっちの世界じゃほとんどみんなが持ってるんだよ」

 

フランをなだめたファル自身も少し興奮した様子で玄界で体験したことを語った。

 

「二人とも玄界で素敵な体験をしたようですね。そこでお二人、特にフランに提案なのですが玄界を捨て、アフトクラトルに来ませんか?」

 

ウィザの発した言葉に周囲の温度が氷点下以下まで下がる

 

「ウィザ君どういうことかな?」

「言葉通りに受け取っていただいて構いません。フラン。私と一緒にアフトクラトルまで来てください。アフトクラトルで一緒に暮らしましょう」

「いやだ。私はこっちでファル君やハチ君、小町やみんなと一緒に過ごす」

「どうしてもですか」

「どうしてもだ」

「ならば無理やり連れて行きます」

「そんなことぼくがさせない!」

 

フランを守るようにフランの前に立つファル。

 

「フラン僕が前に出るからフランは援護よろしく」

「いいでしょうファル。あなたを倒してフランを連れて行く」

「そんなことさせないって言ってるだろ!っ!さっきよりもブレードが多い」

 

さっきウィザが出していたブレードは六本。その六本を二人はギリギリでしのいでいたのだ。しかし今出されているブレードは八本だ。

星の杖は円の軌道上をブレードが通るという仕組みなので仕組みが分かっていれば避けるのはたやすい。しかしウィザは相手の挙動を見てから円の軌道を変える。そのため攻撃予測があっても避けるのがギリギリになってしまう。

六本でギリギリならば八本になってしまえばもうアウトだ

 

「ファル君一回隠れるよ!金木犀の剣リリースリコレクション!!」

 

フランはファルとウィザの間に刀身でできた花弁を操り壁を作る。それを利用し二人は隠れる。

 

「僕に策がある。だからまた援護を頼みたいんだけどいい?」

「いいけどどんな作戦?」

「……って作戦なんだけど」

「なんかいつもの作戦らしくないね」

 

フランは作戦を聞き顔をしかめる

 

「これが唯一ウィザに勝っているからね。使わない手はないいって言うか使わないと勝てない」

「まあそうだね。!ファル君この光って!」

 

フランがボーダー本部がある方向から球速に広がる光に気付く

 

「たぶんハチだ。フラン急ごう」

 

二人は恩人を助けるために敵となった昔馴染みを倒すため駆け出した。

 

*………*

 

「「コール アンブラ エレメント バースト!」」

 

発生させて闇素を爆発させ、ウィザの周りを煙幕で満たす。

 

「おややっと出てきましたか。しかしこの程度の煙幕では目隠しにもなりませんよ」

 

ウィザは自身の周りでブレードを高速回転させることによって煙を払っていく。

 

「「コール アンブラ エレメント バースト!」」

 

フランとファルは再び闇素を発生、爆発させ辺りを煙幕で満たす。

 

「またですか…これは」

 

ウィザもまたブレードを高速回転させることで煙を払おうとするがブレードが動かずに煙が払われない

 

「ファル君なるべく早く!抑えるの結構キツイ」

「もう届いた!」

 

煙幕の中からファルが飛び出し、ウィザの腰に飛びつく。

 

「仕留めそこないましたか」

 

飛びついたファルには膝から下がない。ウィザが見えないように視界の外に設置していたブレードに斬られていたからだ。

 

「男に抱き着かれる趣味はありませんファル離しなさい」

「そんな趣味ぼくにもないけど、離せない。青薔薇の剣リリースリコレクション!咲け!青薔薇!!」

「自分の体ごと!ですがトリオンが足らなかったようですね。これで私の勝ちです」

 

ファルは自分ごとウィザを凍らせようとするがトリオンが足らずに右半身しか凍らせることができてない。

絶体絶命のはずなのにファルの口からは笑みがこぼれている

 

「いいや僕たちの勝ちだ!フラン!」

「トリスアギオン!!」

 

メタトロンの光線技であるトリスアギオンを使いファルごとウィザにレーザーを当てる。

そしてウィザのトリオン体が破壊された

 

「フランここは僕に任せてフランはハチのところに行って」

「よろしくね。ファルはしっかりウィザ君を見ててよ?」

「もちろん。いってらっしゃい」

「いってきます!」

 

ファルは離れていくフランを見送る

 

「…私への当てつけのつもりですか?」

「あっごっめーん!そんなふうに見えちゃった?いつものやり取りだったから無意識だったよ!」

 

わざとらしく明るい声でファルはウィザを煽る。そんな煽りにウィザは乗ることはない

 

「…私は焦りすぎていたのでしょうか」

「そうじゃないかな?まあ焦ろうが焦らまいが結果は変わらなかったけどね」

「…また会えてよかったですよ」

「僕もそう思うよ」

 

そういって昔なじみの二人は笑った。

 

 

***

 

二つの戦いは終了し残るは一つの戦いのみ。物語は終わりへと向かう

 



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大規模侵攻編5

なんとか年内!(もちろん狙ってますよ)
前回言った通り今回でアフトというか大規模侵攻編が終わりです


小町はこのボーダー対アフトクラトルの戦争が始まってからずっと三雲と行動を共にしてきた。それは目の前に現れた人型ネイバーによって友達の好きな子?がキューブにされたこの状況でも変わらない

 

「まだ終わってないよ三雲君!本部まで行けばまだ助けられる!」

「小町ちゃんの言うとおりだ修。お前がやるべきことをやれ!」

 

三雲は小町と師匠である烏丸の言葉を聞き覚悟を決める。

 

「本部へ向かいます!サポートお願いします!」

「おー行け行け。こいつには一発やり返さねぇと気が済まねーぜ」

 

出水がハイレインと対峙しながら言う

 

「小町はついていくよ!」

 

走りだした三雲と小町を二体のラービットが追う

 

「三雲君後ろから空飛ぶタイプと磁力のタイプの二体の新型が来てる!」

「わかった。磁力の方は磁力が届く前に止める!シールド!!」

 

三雲はシールドを展開し、自身たちに磁力の影響が及ぶ前にシールドで磁力型の攻撃を止める。

 

「三雲君!手を!」

 

三雲が伸ばした手を小町がつかみ引っ張る

 

「やりゃぁあああああ!!」

 

直前まで三雲がいた場所に砲撃が飛ぶ。もし小町が三雲を引っ張っていなかったらその直撃を食らってしまっていただろう。

 

「ありがとう比企谷さん。…しまった!」

 

磁力型の攻撃に気付かずに二人とも磁力にとらわれてしまう。その二人に迫る砲撃。

 

「「シールド!!」」

 

二人はシールドを張るがたった二人分のシールドだけでは防ぎきれない。絶体絶命だと思われていたその時、二人のシールドの上に新たに黒いシールドが現れた。

 

『待たせたなオサム、コマチ。ユーマの指示で護衛しに来た』

「「レプリカ(さん)!」」

『門印』

 

レプリカの開いたゲートから出てきたのは黒いラービット。その黒いラービットは先ほど砲撃を放ったラービットのパンチを受け止めると空いている手でパンチをする。それは敵ラービットを破壊するまでには至らなかったが、片腕を破壊した。

 

『立て二人とも。私の内蔵トリオンでは二体目のラービットは作れない。もし敵に増援が来れば分が悪くなる。…解析完了。磁力を中和した。今のうちに離れろ。』

 

二人は磁力が消えたことを確認するとレプリカの指示通り、二体の敵ラービットを味方の黒いラービットに任せ、その場を離れる。

 

「レプリカの本体が来て空閑は大丈夫なのか!?」

『問題ない。救援を優先するとユーマ自身が決めたことだ。それに急ごう。ジンの予知によればオサムとチカ、コマチが基地に入れるかどうかが未来の分かれ目になる』

「…わかった。急ごう!」

 

二人は速度を上げ走り始めた

 

**

 

『二人とも、とりまるがベイルアウトした』

 

三雲はレプリカからその報告を聞き驚いた

 

「烏丸先輩が…!」

『基地(ゴール)までおよそ120メートル。最後の壁だ』

 

足を止め見上げた先にはハイレインがいる。二人と一体は一度建物の陰に隠れ、最終確認をする。

 

『基地まではおよそ120メートルだ。基地の入り口が閉まっていたら私が開ける。ただこちらの技術が使われていた場合は少し時間がかかる。こちらの機械は複雑だからな』

「あ、それなら大丈夫です。ユイちゃん聞こえる?」

『はい聞こえていますよ小町さん』

「いつでも基地の扉を開けられるようにしてもらいたいんだけどできる?」

『もちろんです!任せてください小町さん!』

「ありがとユイちゃん…これで入口は開くようになりました」

『ならばあとは我々がたどり着くだけだ』

 

そこにはイレインのトリガーで作られた鳥が飛んでくる。レプリカがシールドでガードするが鳥と当たった部分のシールドがキューブになる

 

「キューブ化のトリガー…!」

『とりまるの情報ではあの弾丸はトリガーにしか作用しない』

「なら建物をカベにして」

「だったらこうしようよ。アステロイド!」

 

小町がアステロイドで民家の玄関を壊す。

 

「こっちの方が早いよ」

『そうだな。このまま建物を突っ切ろう。上からも死角になる。閉じ込められないように注意しろ』

「了解」

 

突然の小町の行動に三雲は驚きながらもレプリカも賛同したので家の中を突っ切る

二軒、三軒と家を突っ切るが敵の攻撃がない

 

「なんだか静かすぎるね」

「そうだね…!こっちはだめだ!別の部屋から」

 

三雲が入ろうとした部屋に敵の攻撃があったのか道を変更しようとすると、足元からバチッという音がした。

二人が足元を見るとそこにいたのはクラゲだ

 

「クラゲ…!こいつも弾なのか!?」

『建物を出るぞ』

 

今度はレプリカが壁を破壊し、二人と一体は道路へと出る。そして出た先にいたのはハイレイン。

三雲も小町も自身が目の前にいる敵には絶対にかなわないことはわかった。

 

『どうする。まともに戦って勝ち目はないぞ』

「…よし!三雲君。小町が時間は稼ぐから入口に向かって」

「だったら僕が残って時間を稼ぐ」

「その足じゃ大した時間稼ぎはできないだろうしそれに小町は三雲君より強いから」

 

小町は三雲たちの前に出る。

 

「なんだ?玄界ではこういう時に女が出てくるのか?」

「こっちでは男女こようきかい?均等法がっていう法律があるんですよ?だから男とか女とか関係ないです。わくわく動物さん」

「だが女を前に出すのは格好悪いと思うがな」

 

「だったら俺が変わる」

 

「「空閑(君)!!」」

 

突然の衝撃音とともにやってきたのは老人と戦っているはずだった空閑だった

 

「空閑!お前は老人の相手をしていたはずじゃ」

「ヒキガヤ先輩が連れてきた入隊日に大暴れしてた人に変わってもらった」

「お兄ちゃんが!?そのお兄ちゃんはどこに?」

「なんかやることがあるって言ってたけど。それよりここは俺に任せて早く行け」

「うん…ほら三雲君行くよ!」

 

小町は三雲の手を取ると立ち上がらせ、そのまま手を掴んで走っていく。

 

「ちょっとストップ!基地の入り口の前に穴が開いてる!」

『小町さん、それは敵のワープ使いのトリガーです』

「そうなの!?ありがとユイちゃん。二人ともあれは敵のワープ使いのトリガーなんだって」

「その能力でピンポイントに襲ってきたのか!けど誰もいない。これなら!」

 

後ろからブワンという音がした

 

「三雲君!」

 

小町がとっさに三雲の体を押す。後ろでした音の正体のワープ使い、ミラのとげが三雲の足に刺さる

 

「目標補足」

 

すぐさま小町とレプリカはミラに攻撃をする。ミラはその攻撃をワープゲートを発生させそこに攻撃を入れるもう一つのワープゲートから出すことで反撃に利用した

三雲と小町は横跳びでそれを躱すとそのまま逃げるように走り出す

 

『開けた場所に出るな。さっきのとげで狙い撃ちにされる』

 

建物を陰に逃げたはずなのに二人の先にはミラ。

 

「あきらめなさい。悪あがきは好きじゃないの」

『発信機か』

 

レプリカは三雲の腕のとげをを見ながら言う。

 

「気づくのが遅かったようね」

『……いやそうでもないようだ』

 

ドォンという音とともに二体の敵ラービットの相手をしていた黒いラービットが来る。

そのラービットは腕を大きく振りミラに攻撃を仕掛ける

ミラはジャンプしてそれを回避した

 

『ラービットから離れすぎるな。ワープで先回りされる』

 

レプリカがそう指示をした瞬間だった。

ミラの攻撃によりレプリカが両断された

 

「「レプリカ(さん)!!」」

 

レプリカに攻撃したミラはラービットの攻撃により再び離れる。

二人もその隙に二つに分かれたレプリカをもって物陰に隠れる。

 

『…落ち着けオサム。ワープ使いのマーカーを外した』

「レプリカ!大丈夫なのか!?」

『予備のシステムに切り替えた。ほとんどの機能は停止したがまだ大丈夫だ』

「ならこのまま入口を目指そう」

『…オサム、コマチ一つ提案がある。敵の遠征艇を狙おう』

「遠征艇を!?レプリカどういうことだ」

『一度退けたとしても国が近くにあるならば国に帰らずにまだ攻めてくることもある。しかし、一度国に帰ることになればまた攻めてくるだけの時間はもうない。

遠征艇に帰還の命令を出しそのままロックすれば確実にやつらを国に返すことができる、ということだ。』

 

二人はレプリカの策を聞き、検討する。レプリカの作戦にいくつかの案を付け足し、作戦を決めた

 

『ユーマが相手をしているが相性がいいわけではない。作戦を実行に移すなら今しかないだろう』

「わかってる。比企谷さんも大丈夫?」

「うん大丈夫。覚悟は決まってる」

 

その時、すぐ近くボーダー本部の屋上から大きく光が放たれた。

その光はトリオン兵に当たるとトリオン兵を音もなく消失させた

 

(…このあったかい感じ。もしかしてお兄ちゃん?ってうそ!?」

「今だ!」

 

トリオン兵を音もなく…それはレプリカの出した黒いラービットも例外ではなかった。

しかし一度飛び出してしまってはもうやり直すことはできない。二人は壁がいない中で作戦をスタートさせた

先行した三雲を追うように小町も物陰から飛び出す。そんな二人を狙ってミラがとげを出す。ふたりは急いでいたためか避けることをせずに何本もの刺さったとげにより身動きができなくなってしまう。そこにハイレインの鳥型の弾が迫る

 

「「トリガーオフ!」」

 

二人はトリガーを解除することによりトリオンにしか効かないハイレインの弾を無効化。

さらにボーダーのトリガーの基本機能の、物理的に動けない時にトリガーを解除した場合に周囲のものと干渉しない場所に転送される仕組みの利用し、ミラの串刺しからも脱出する。

そして生身のまま入口を目指す。

小町がちらっと人型の方を見るとちょうど空閑がワープさせられ、姿が見えなくなったところだった。そしてそのまま人型がこっちの方に走って向かってくるのが分かった。

 

((人型が来てる!だが/だけど…行ける!))

 

二人がそう思った時だった。二人の下にとげが発生し二人を改めて串刺しにした。

三雲は左足の太ももとわき腹に、小町は右胸とわき腹に突き刺さる。

 

『オサム投げろ!』

 

三雲はレプリカの指示に従い、懸命に体を振りかぶり左手に持ってるレプリカを投げ

 

 

 

れなかった。三雲の意識はあと1秒耐えることができず、三雲は意識を失った。後方では小町も意識を失い胸から大量の血を流していた。

ハイレインは意識を失った三雲が落としたキューブを拾う。

 

「これは…違う。ただのトリオンキューブだ。ミラ!すぐに本物の『金の雛鳥』を探すぞ!!」

 

その時、背後から声がした

 

「これをしたのはお前らか」

 

ハイレインが振り返るとそこには倒れていた小町を抱き、表情の消え去った顔をした八幡がいた

 

***

 

目を開き手元にあるはずの光の核を見る。

 

「うおっ!」

 

思わず声が出てしまうほど大きかった。

俺が今いるのはボーダー本部屋上の給水タンクの上だ。ここで俺は天使の法律(エンジェルロウ)の核を大きくしていた。

 

「…天使の法律発動」

 

光の核を解き放つ。解き放たれた光は一気に警戒区域全域まで広がっていく。

そして解き放った俺は地面にうずくまっていた

 

「やばい。これはまじで死ぬ」

 

以前フランたちに大きいのを作るのは命を削ると言われていた。それは自分でも十分理解していたつもりだった。

しかし全然理解できてなかった。これがこんなにもしんどいなんて思ってなかった

 

「比企谷か?大丈夫か」

「…おう奈良坂。古寺もか。一応大丈夫だ。けど、ちょっと手伝って」

 

二人に手を貸してもらい体を起こす。少しはこのしんどさにも慣れてきたか?

 

「いつから屋上にいたんだ?」

「集中していたから時間は分からんが、俺が屋上に来たときは誰もいなかった」

「全然気づかなかった」

 

こんな時でも俺のステルスヒッキーは健在ですか。あぁそうですか。

 

「それよりさっきの光はお前だろう。あれはなんだ」

「奥の手だよ。警戒区域内の全トリオン兵を消滅させられたと思うんだが、確認してくれるか?」

「ああ……確認した。警戒区域内のトリオン兵はさっきの光で全部消えたらしい」

「そうか。…っとと」

「大丈夫ですか。まだ休んでた方が」

「平気だ。それに何かいやな予感がする」

 

まだ少しふらつくが立ち上がる。さっきから何かいやな予感がしてる。今ここで動かないと一生後悔しそうな予感が。

 

「こっちか?」

 

いやな予感のする方に進む。屋上の端に着き、下を見る。そこから見えたのは地面に倒れている小町とその下の赤い水たまりだった

 

「小町!!」

 

すぐさま翼を開き下に降りる。小町を抱き、目の前にいる鬼男に尋ねる

 

「これをしたのはお前らか」

 

尋ねた。しかし答えは聞かなくてもわかりきっていた。

 

「うるさい。邪魔だ」

 

鬼男が自分の周りを泳いでいた魚をこっちに飛ばす。俺はレーザーでその魚を消滅させた

 

「なに!?」

 

鬼男が驚く。続けてレーザーを鬼男に受けて放つ。が、急に鬼男が消え、鬼男は少し離れたところにいる鬼女のところまで移動していた。

そんなことはもうどうでもよかった。腕の中の小町の命が急速に失われていくのが分かる。

俺はメタトロンを解除し、メタトロンのトリガーを小町の血が付かないところに置く。

そしてフランとファルに呼びかける

 

『フラン、ファル聞こえるか?』

『聞こえてるよ。』

『うんこっちも。それよりさっきの光ってハチ君でしょ。だめって言ったよね。あれ以上は命を削るって』

『フラン、ファル。元気でな。みんなによろしく言っておいてくれ』

『え、ちょ、どういう

 

まだフランの声がしていたが無視をする。

フランとファルに伝言は伝えたし、もう思い残すことはない。

俺はノーマルトリガーを取り出し俺のすべてを注ぎ込み、

 

 

 

俺は小町を助けるためにブラックトリガーとなった。

 

 

 

***

 

(…死んだと思ってたけどなんでまだ生きてるの?)

 

そんな疑問を抱きつつ小町は目を開いた。小町の目に一番最初に入ってきたのは、真っ白な灰になった兄である、否、兄であった比企谷八幡の姿だった。

小町は兄を姿を確認したと同時に背中を地面に打ち付けた。

小町が上体を乗せていた兄の足であった部分が風にさらわれたのだ。さらにその風は足だけでなく腹も胸も全身をさらう

 

「うそ!なんで!なんでお兄ちゃん!!」

 

小町は必死に灰をなった兄を集めようとするが、灰のほとんどは風に乗せられ高く高く舞い上がっていく。

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」

 

小町は泣きながら大声で兄を呼ぶが返事はない。あるわけがない。…はずだった

 

『小町。泣くのはいつだってできる。今は他にやらなきゃいけないことがある。そうだろ?』

 

小町の声に声に答えるように八幡の声が響く。

 

「ないよ!お兄ちゃんを差し置いて他にやることなんてないよ!」

『小町!』

 

それは小町が初めて聞いた兄の自分に対しての怒鳴り声。

 

『あの連中は誰だ』

「それは…」

『ボーダーの敵、すなわち俺たちの敵だ。小町がここで動かなきゃ、あそこで倒れている三雲が死ぬ。それに陽乃さんや楓子さん、謡、ユイも死ぬかもしれない』

「そんなの…そんなのやだよ!お兄ちゃんだけじゃなくてみんなもいなくなるなんて!!」

『じゃあやらなきゃいけないことは分かるな?そのための力を小町はもう持ってる』

「…うん。けど上手に使えるかな」

『大丈夫だろ。小町が一番俺を扱うのがうまかっただろ』

「なにそれ。けどありがとお兄ちゃん。頑張るから見ててね」

『おう』

 

小町はしっかりと敵を見据える。

これから小町が使うのは今まで一回も使ったことのない力。それを扱うのに小町の心に不安はなかった。

小町は足元をならすように二度地面を踏み、一瞬で姿を消した。

次に現れたのは数秒後、突然ハイレインたちの後ろに現れた。

 

「まず一人」

 

小町は黒く巨大な爪でミラを切り裂くと次の瞬間にはまた姿が消えており、数秒後にまた姿を現す

 

「申し訳ありません隊長」

「手筈ではもうすぐに艇にいる誰かが回収することになっている。それを待って撤退するぞ」

 

ハイレインたちはミラが戦場に出て負けた時に備え、あらかじめ船の中に門が開けるラッドを何体か用意していた

 

「撤退ということはまさか…」

「ああ。『金の雛鳥』はあきらめる」

 

「いいこと聞いたけど撤退なんかさせないよ」

 

突然背後に現れた小町に驚きつつもハイレインはその小町に向けて周りを泳いでいる魚を飛ばす。

小町は避けることをせず魚に当たった。しかしなぜかキューブ化はされない。

 

「影竜の斬撃」

 

小町はさっきの爪と同じものを今度は腕全体に纏いそれを大きく振りはらうと、腕から斬撃が飛ぶ。

その斬撃をハイレインは魚を盾にしてガード。今回はしっかりとキューブ化されていた。

 

「およ?ちょっと失敗しちゃった。外側のがしっかりと機能しなかったか。ま、いいや。目的は達成できたし」

 

ハイレインは聞こえてきた言葉に心の中で首をかしげる。自分は何かされただろうかと

その疑問を解消したのは隣から聞こえてきた悲鳴だった

 

「た、隊長!助けて」

 

その悲鳴に反応し隣を見ると隣にいたミラの体の下半身が徐々に影に飲み込まれていた。

ハイレインが助けようと手を伸ばすが間に合わず、ミラは完全に影に飲み込まれた。

そのタイミングでハイレインの後ろに門が開く。

 

「隊長!無事か」

「俺は無事だがミラがやられた。ウィザを回収してすぐに撤退するぞ」

「ヒュースはどうする」

「『金の雛鳥』が回収できなかった以上、ヒュースは置いていく」

「了解した。すぐにウィザのところまで門を回す。隊長もすぐに乗り込んでくれ」

 

艇を操っていたランバネインと言葉を交わしながら撤退の準備をするハイレイン。しかしそう簡単には小町がさせない

 

「撤退なんかさせない!影竜の咆哮!!」

 

小町が口をぷくっと膨らませすぐに何かを吐き出す。吐き出されたものは威力を増しながらハイレインたちの下まで飛ぶが、あと一歩のところで届かずに門は閉じてしまった。

その直後、空を黒く覆っていた雲が消え、空には青空が広がっていた。

近くに誰かが来た音がした。小町が振り返ってみるとそこにいたのは陽乃達比企谷隊のメンバーとフランで

 

「小町ちゃん。八幡は」

「お兄ちゃんは小町を助けてブラックトリガーになりました」

「そう…」

 

小町がそう答えるとみんなが顔を伏せる。

 

「みなさん!なに下を向いてるんですか!お兄ちゃんは小町のブラックトリガーになってまだいますし。それにこの戦争が始まる前にお兄ちゃんがおすすめしてきた本にこんな言葉があったんです。『思い出はここにある』って」

 

小町はグーを作り自分の胸を叩きながら言う

 

「お兄ちゃんがいなくなったからって今までお兄ちゃんと過ごしてきた思い出は消えることはないんです。ずっと小町の、皆の胸の中にあってその中でずっとお兄ちゃんは生きてるんです」

 

小町は笑顔でみんなに向かってそう言った。

 

「そっか、そうだね。八幡は私たちの心の中でしっかりと生きてる」

「そうです!だから今は笑顔でいましょう!」

「「「うん(はい)!」」」

 

小町が空を見上げる

 

(…これでいいんだよねお兄ちゃん)

 

空に浮かぶ雲の一つが誰かのアホ毛のように見え、そのアホ毛がぴょこぴょこ揺れ、それでいいと言ってるように小町には見えた。

彼女たちの上には今日も青空が広がってる

 




前書きがでは大規模侵攻編が終わりとかきましたが
今回で本編最終回です。
今まで1年と5か月くらい応援いただきありがとうございました。

最後に疑問に思われるかもしれないことをいくつか

Q.八幡が鳴ったブラックトリガーの名前と能力は?

A.影竜(スキアドラム)と言いまして影を操る能力です。ハイレインの魚に当たってもキューブ化しなかった理由は影に吸収したからです。
フェアリーテイルのローグをパクリました。

Q.ミラはどうなった?

A.影から出された後、トリガーを没収、捕虜となっています

他になにかあれば感想欄にどうぞ


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