ザレゴトフィアンマ ~戯言遣いとボンゴレマフィア~ (昆布さん)
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標的1 請負人(受け追い人)

学校の図書室で軽く読んだつもりが気付けばまとめ借り、そしてこんな作品まで。
多分短くなるんだろうなあ…


空っぽで虚ろで空虚って、じゃあ充実ってなんですか?

 

・・・・・

 

「起きます」

ぼくは誰にともなくそう呟いて、身を起こすと軽く頭を振って意識を覚醒させてから時計に目をやる。午前九時。社会人としてはいささか駄目な気もしないではないが、自営業のようなものなのでまあよしとしておこう。

「さて、今日の予定は…たしかクライアントと会う予定だったよな…」

スケジュール帳…等という大それたものではなく、カレンダーに書き込まれた予定を見てからぼくは一応背広を着る。

簡単に身だしなみを整えるとぼくは依頼人の指定した場所…6年ほど前に、今思えばアレはデートと言えなくもなかったけれども、ある女の子といっしょに入った新京極のマクドナルドに向かう。人混みで、適度に騒がしい場所。というのが待ち合わせ場所の条件である辺り、かなりやばい部類と考えても良さそうだ。

ひょっとしたら哀川さんや崩子ちゃん、場合によっては真心にも手伝ってもらわなければいけないかもしれない。

「えっと…どこかな…」

件の依頼人を捜すのはかなり楽だった。

色素の薄い瞳の老人。上質なスーツに身を包み、柔和な表情を浮かべているこの老人が今回の依頼人である。にわかには信じられない話だが。

「まず簡単に自己紹介をさせてもらおうかな。」

いいさして老人が口を閉ざしたのはぼくが遮ったからだ。

「それなりに裏の世界にもパイプがあるんで、あなたのことは存じ上げていますよ。ボンゴレⅨ世。」

ほう。と驚いたような顔をするボンゴレにぼくは質問する。

「で、依頼の方は?」

「今並盛で暮らしている綱吉君の護衛をたのみたい。」

「護衛…ですか?しかしネオ・ボンゴレⅠ世は聞くところによると天下無双だとか…」

嬉々としてその話をする哀川さんの顔を思い出して少しだけ顔色が悪くなったのだろう、ボンゴレは心配そうにぼくの顔を覗き込む。

「顔色が悪いようだが、大丈夫かね?」

ちょっと知り合いのことを連想しちゃったものですから。とごまかして話を元に戻す。

「とにかく、護衛など必要ないのではありませんか?」

その通りだ。とボンゴレは首肯し、しかし首を振りながら言う。

「たしかにハード面において綱吉君の右に出るものは古里炎真君を筆頭に六道骸君や雲雀恭弥君、XANXUS、白蘭くらいしかいないだろう。しかしソフト面ではと言うと…」

「なるほど、陰謀に関してはいささか脆いものがある…と。で、心当たりは?」

ボンゴレは今までも充分低かった声のトーンを更に落として続ける。

「人類最悪…といえば分かるかい?」

「なるほど。分かりました。その依頼、受けましょう。」

しかし西東天か…しつこいもんだなあ…




この作品は、亜鉛5グラム、ニッケル30グラム、データ長さ相応、そして勢い95キログラムで制作されております。もうなんかオレの頭が西尾感染症…シュワット!(しまった!)


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標的2 零崎の女性(零裂きの女性)

予定の時点で既にいーちゃんより人識の方が目立ってる気がして仕方がない…
でも実際問題活躍しそうなキャラじゃないしなあ…いーちゃん。となると鏡写しの人識に頑張ってもらうしかないよなあ…
などと言いつつ実際に一番頑張るのはおそらくルビ機能だろうなあ…


自殺なんてしませんよう。だって痛そうじゃないですか。

 

・・・・・

 

というわけでぼくがいるのは並盛のホテルだ。

で、ルームメイトはというと…

「うにー…ヒマだよ~…いーちゃん、なんか面白い話ってない?」

「ないよ。」

言わずと知れた元青色サヴァンの玖渚友だ。

なんでついてきたのか、理由は単純。

「いーちゃんと旅行にいきたかったから。」

なんて単純な理由だ。まあそれはともかく、いちおうぼく一人で動くのには限界があるので、まあ、報告書やら何やらのために助手を一人連れているようなものだ。

「つれないなあいーちゃんは。でも凄いよね…スイートルームなんて借りるお金、いーちゃんにあったんだ…」

さらりと失礼なことを言うな。去年仕事で知り合った戦場ヶ原さんじゃないんだから。ときどき阿良々木君の気持ちが分かるのが怖い。

「いや、ぼくじゃなくて拠点ってことでボンゴレが資金を出してくれてるんだ。ついでに、あっちのアパートの部屋も家賃未納にならないようにしてくれるってさ。」

ふうん。というと玖渚はまたヒマだよ~を連呼する。

正直ちょっといらっと来たし、あのクソ狐も今のところはなんのアクションも見せていないのでちょっと考えて僕は言った。

「だったら友、二人でどこか食事に行くか?」

そうきくと玖渚はパッと破顔して

「うにっ♪」

と頷いた。

 

・・・・・

 

「そういや友、いっしょに旅行なんていつ以来だっけ?」

並んで歩く玖渚に聞くと

「さっちゃんの時以来だよ。」

「あー。兎吊木(うつりぎ)の時か…」

兎吊木垓輔(うつりぎがいすけ)害悪細菌(グリーングリーングリーン)

なんというか…本当に壊し屋としか言いようのないヤツだった。

10年ほど前には玖渚他数人の仲間達と一緒に世界中のネットワークで暴れ回り、6年前は堕落三昧(マッドデモン)こと斜道卿壱朗博士の生きる希望を破壊し、神足雛吉という男の肉体を生命をズタズタに破壊した。

今も元気にどこかで何かを壊していることだろう。

それはそれとして、今ぼくらの後ろを赤いニット帽の女性がつけているようだ。生憎とぼくはそれに気付かないほどじゃない…ハズ。位のレベルに達しているらしく、勘だけならなかなかのものらしい。くるりと振り返る。

「なんかさあ、今ちょっとしたデジャヴを感じてるんだけど、君、どこかで僕と会ったことない?」

「うふふ。どうでしょうねえ?多分無いと思いますよ。私もちょっと知り合いに似てるかな~…って思ってついていただけですから。」

あっそ。とぼくにしては素っ気なく彼女に背を向ける。

「で、なにたべる?」

「うーん…どうしようかな~…」

…殺気!じゃなくて殺意!

「うおおッ!?」

振り向きながら身をかがめると、ぼくの頭上を大きな鋏が突き抜けていった。

そのままだったら背中を抉られてたところだ。

「ははあ…やっぱりそういうことか…」

「うふふ、そういうことですよ」

「うむー…いーちゃんはトラブルメーカーなんだよ…」

酷いな…せめてトラブルホイホイくらいにしておいて欲しいものだ。それはともかく…

「マジにかからないと殺されそうだ…相手は殺し名だからな…」

噂に聞いた零崎で今もっともキレている殺人鬼零崎舞織を前にして、懐かしく思いながらぼくは玖渚の手を掴むと…少なくともぼく主観では一瞬でステップを踏み、人混みに紛れ込んだ!うん、我ながら上出来だ。それにちょうど目の前に寿司屋がある。

「友、ここにするか?」

「うん。おなか空いたんだよ」

さり気なく顔を横に向けながら、視界の端で彼女を捜す。しかし見つからない。ぼくは一息つくと安心して店に入った。

 

・・・・・

 

おいおい、町中で暴れちゃ駄目だろうが。

彼女の後ろにいる青年が言う。かなり小柄でまだらに染まった髪の毛と顔面刺青が特徴的な青年だ。

「やっぱりアレがあなたの言ってた『アイツ』ですか…」

舞織がそうきくと青年はかははと笑う。

まさかこんな旅先であいつと会うとはなあ。しかも女連れで。こいつは…

「傑作…ですか?お兄ちゃん。」




兎吊木垓輔って打ち込むのクソめんどくせえな…普通にでてこねえもん。
兎を吊る木ってうってからいらんものを削って、垓の字を手書き文字入力してから普通に輔を変換して…作業の量がハンパじゃねえ!害悪細菌って書いてグリーングリーングリーンってのもあるし、多分一番ルビ機能が頑張るキャラクターだろうな…ちなみにオレの頭の中では兎吊木ニアイコール解体業者。というかあの鉄球クレーン。
…さっきから今ンところ出る予定のない兎吊木の話しかしてねえ。
まあ本題といっても実はい-ちゃんは気付かないうちに護衛対象の関係者に接触していたのでした。ぐらいのものですが。並盛+寿司=山本の親父の店!これオレの脳内における方程式。
吉見浅尾岩瀬の中日投手陣の黄金方程式と同じくらいイコール。…こんな後書きを書いてみても分かるのはオレが中日ファンだってことぐらいだ。後書きもかなりぐだぐだになってきたのでこの辺で締めます。ちゃおちゃおー。


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標的3 傑作だ(欠策だ)

よく考えたらツナ、今回初登場ですねえ…
うむ…一応リボーン側の主役に据えるつもりだったのに…しかし73の設定って狐さんが目をつけそうな話だよなあ…要はバランスをグッチャグチャに、それこそむいみちゃんの精神ぐらいグチャグチャにしちまえばいいわけだから、リングに悪影響を及ぼす方法さえ分かれば後はその通り…って、その方法は分からんが…


なんで平然と殺すのか?知らねえよ。

 

・・・・・

 

所変わってここはネオ・ボンゴレⅠ世予定の沢田綱吉の自宅から道一つはさんだところだ。そこには奇抜なファッションに身を包んだ青年が隠れている。

「まあ、あっけないものではあるが、俺が出張ったら一瞬で終幕だわな。」

呪い名奇野師団の現エースであるところの奇野才知は誰にともなく呟き、沢田家に視線を向ける。

「全く、既知も頼知もなんだって人一人殺せずに死んじまったんだ?まったく「理解に苦しむよな」!?」

「だがまあそいつはその二人の落ち度ってことで、しかし奇野既知ってのはどっかで聞いた名前だな。たしか俺と兄貴を間違えて襲ってきた感染血統の病毒遣いじゃなかったか?呪い名の」

冷気の後ろにいつの間にか立っていたのは先ほど舞織から兄と言われた青年だ。

「まあ、あんたにとっちゃ、いやな奴に出会っちまったか。位のモンだと思うがな「テメエ誰だ!?」」

あ?俺?と少しだけ聞き返すと、青年は名乗るほどのもんでもないさ。と前置きする。

「ただ、強いて言うとすれば…通りすがりの『人間失格』ってところかな?さて、早速悪いが…」

青年が喋り終えるころには奇野才知はそこにはいない。ただ、見覚えのある肉片があたりに散らばっているだけだ。

「殺して解して並べて揃えて晒してやったぜ。」

 

・・・・・

 

「ええ!?近所でバラバラ死体ィ!?」

ここに来て初登場であるところの沢田綱吉はそのニュースを聞いて顔を青くした。

翌朝、家庭教師たるリボーンが死体の第一発見者…無論、表向きは別の一般人が第一発見者ということになっている…として綱吉に情報をもたらしたのだ。

「だが、ちっと面倒なことになっててな…」

「な、なんだよ?」

「死体の身元がわからねえんだ。」

というより存在しないことになってる人間だ。と言ってリボーンは写真を綱吉に見せる。

「名前は奇野才知。こいつの周りにいる人間はどいつもこいつも毒物中毒を起こしちまうらしい。だが、そこまでだ。」

それ以上の情報が手にはいらねえんだ。そういってリボーンは黙り込んだ。

 

・・・・・

 

ううむ…何ともめんどくさい奴が尋ねてきたなあ…

「君だろ?零崎。」

人間失格はなんのことだ?とうそぶく。

ぼくは今朝見つかったバラバラ死体だよ。と言って玖渚のデジカメで撮ってきた写真を見せる。

「呪い名、それも近付くことも危なくて仕方がない感染血族の奇野師団を相手にして、あんな風にバラバラにできる人間なんて、目の前にいる人間失格以外にぼくは知らない。」

「なかなか鋭いじゃねエか。欠陥製品。」

かはは。と笑って零崎は続ける。

「俺はただなにしでかすかわかんねえ舞織を追いかけてきただけなんだがな。」

立場が逆転しちまったな。と肩をすくめると零崎は続ける。

「で、ぶつぶつと呟いてる奇野を見かけたもんだから、気がついたらつい殺しちまってたってワケだ。」

「なんて呟いてた?」

「さあなあ…俺が出張ったら終幕だとか、既知も頼知もなんだって人一人殺せずに死んじまったんだ?とか、そんな感じだな。誰かに頼まれたようではあったが…」

人類最悪か…ぼくはちょっと考えてから零崎を追い出しにかかった。

「今から実地調査に行くから、お前はとりあえず出てってくれ。友!来てくれ!」

 

・・・・・

 

なあ、この住所ってここで合ってるか?

「うん、あってるよ。」

「結構良い所に住んでるんだな…」

一応護衛対象の一人である、直球型でネオ・ボンゴレⅠ世の右腕をつとめる獄寺隼人の自宅アパートの前でぼくは少しだけ恨めしい気分になった。

「いーちゃんは大学生で骨董アパートに住んでたんだもんね」

一部屋4畳のおんぼろアパート…もっとも今は改築されていて、みいこさん曰く「骨董アパート改めただの塔アパート」になっているが、とはいえ高校生より大学生当時のぼくの生活水準が劣っていたと来れば、ちょっとばかりイラッと来るのもまた人情というものだ。

まあ、それはともかくとしてだ。

ぼくは同じようにアパートを見上げる着流しの男を見据えてはっきりとした声で言った。

「久しぶりだね。狐さん。」

 

・・・・・

 

「『久しぶりだね、狐さん。』ふん。たしかに久しぶりではあるが、あまり感慨深くはないのだろう?」

よくわかったね。

「当たり前だ。」

「で、なんの目的でネオ・ボンゴレⅠ世をねらう?」

西東は『なんの目的で』ふん。と再びぼくの台詞を反復して言う。

「新しい世界を終わらせる方法を思いついたんだよ。」

どうもペースを握られているような気がする。だからぼくはささやかに反撃してみた。

「『世界を終わらせる方法』ふん。聞かせて欲しいもんですね。」

ほう。と狐面の下で軽く驚いたような顔をしたのだろう。おどけたような動作をとってまあ教えないが。という。

「それがボンゴレに関係しているってことかな」

「まあな。おっと喋りすぎた。当時の奴にどやされかねんな。」

深く関わると痛い目見るぜ。くるりと背を向けて、右手をヒラヒラと振りながら西東は去っていった。

「世界を終わらせる方法…か。友、ちょっといいか?」

「うん?何かな?」

「頼みがあるんだ。ちぃくんと…」

つなぎをとってくれないか?




いーちゃん以外の視点だと三人称ですが、なにぶんいーちゃんの本名は知ったら死ぬカンジなので使えないし、そもそも出てすらいないのでいーちゃんだけ一人称にせざるをえないんですよね~…まあ、何言っても戯言なんですけどね。
しかしそうだな…『時宮病院』から『咎凪党』にいたるまで、一応裏切り同盟みたいなものを設定してあるんだけども、果たしてうまく動かせるのやら…最悪、咎凪が人間関係みたいに出番をなくす可能性も否定できないです。では、ここからは書きあげ次第随時更新していきますので、気長にお待ち下さい。


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隠し弾1 設定解説その1

誠に唐突ですがちょっとした設定解説をさせていただきたいと思います。
今後もちょいちょいこの手のことはやっていこうと思いますので。っつーかpixivの方更新すんのにこっち何も無しじゃあれだなあと思った結果+時間稼ぎだけどな!
本編にとっては焦らし作戦。
焦土作戦!
イエー。


いーちゃん(ぼく)

 

25歳、職業は請負人。

無為式。嘘吐き。戯言遣い。

戯言シリーズにおける語り部で、自己評価は低い。一応死にたいからは脱却した。

今回は9代目の依頼と狐との関係で並盛にやってくる。

どうもエピローグからさらに2年の間に直江津高校の某人間やめかけと出会ったらしく、ツッコミかたがちょっと似ている感じが漂う…玖渚経由でちぃくんからの情報を得ることができるらしく、けっこうな情報通。

 

玖渚友

 

25歳。

元青色サヴァン。僕様ちゃん。うにー。

一応戯言シリーズでは、とくにクビキリサイクルにおいて主人公というか、謎解きをしない探偵役という立ち位置にいた。いーちゃん大好き。

で、仕事の手伝いと旅行というわけでいーちゃんについてきた。

右目だけがかろうじて青い。今回はちぃくんが登場せずに大活躍するので、必然的に僕様ちゃん大活躍なんだよー。

 

零崎人識

 

25歳。

殺人鬼。人間失格。汀目俊希。零崎一賊。

いーちゃんと鏡写しに同一な存在。

今回は舞織を追って並盛にやってくる。理由は何をしでかすか分からないから。何か兄貴と同じになっちまってるなあ。こんなことならもうちっとばかり大人しくしとくんだったなあと若干後悔気味らしい。

ちゃんと登場する初めてのシーンでさっそく殺して解して並べて揃えて晒してくれました。

 

零崎舞織

 

23歳。

殺人鬼。無桐伊織。零崎一賊

どんどん覚醒が進んでいった最新の零崎。

で、今回かつての人識と似たような状況。鬼いちゃんが追いかけてくるのも同じ。ただし鬼いちゃんは変態じゃなくて人間失格。ここ重要。

誰とぶつけようか、目下思案中といったところ。




まあこんな感じです。狐さんの部下については、まあ追々と言うことで、ちゃおちゃおー。


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隠し弾2 零崎人識の人間関係~零崎人識との関係~

ハイ、ちょっとした番外編です。皆さん気になってると思いますが、人識君は終末医療のような状態で、本来殺人が行えない、というかしてはいけないような状態なのです。 で、そんな状態で一体何故才知さんを殺害することができたのか?石凪砥石…もとい零崎問識君を交えての前日譚です。
しかし書きにくいな死吹製作所。


「そういえばになりますが。」

唐突に問識が聞いてきたのは人識が並盛へやってくるほんの少し前の話だ。

「何だよ?」

「ひと死き君は本来人殺死を行えない体で死たよね?」

それはほとんどはげ死い運動を死てはならないという意味でもあるはずです。と、死吹製作所ならではの口調で言う。

「ならば何故寿命を縮めながら妹を捜死て全国行脚を死ているのですか?」

「ああ、またそれか。」

肩をすくめつつ、ちょっと前まで茶化していた質問に答える。

「そうさなあ…最近ちょっと寂しくなってきたってのがまず一つ。」

殺人鬼っつっても根っこのところは人間だからな。といって軽く笑うと床に置いていたリュックサックに手をかける。

「それから、最近になってだけど、兄貴を振り回してばっかだったことをちょっと後悔してるんだよ。」

「零崎…そう死きさんですか…面死きはありませんで死たが、会ってみたいとは思いますね。」

「で、その兄貴だよ。今の伊織ちゃんはまさに昔の俺だ。だからなんかな…放っておけないんだよな。それから最後の一つ。」

人識はリュックサックを持ち上げ、背に負うと問識に背を向けて、振り返りながらいった。

「兄貴以外にも、家族だって思える奴を見つけちまったからだよ。」

「それが舞織さん…ですか?」

「そ。ッてなワケで、またしばらく旅に出るから、家賃の方、よろしく頼むぜ。」

「死か死、背の高い女性がタイプのひと死き君とそのあなたが好みのタイプであるところの舞織さん…妹じゃなくて奥さんと死て家族に迎えても良いのでは?」

そりゃ傑作だ。そう言い捨てて人識は満更でもなさそうな声でかははと笑いながら後ろ手にドアを閉めた。

「はー。家族のためなら自分が死ぬことも恐れないとは…いかにも零崎ってカンジですね…」

ため息とともに問識は面と向かって言えないようなことを続ける。

「まるでマインドレンデルだ。」




結論。家族のためなら命がけ。それこそ伊織を助けに来て殺されてしまった双識みたいなもの。しかし案外長生きするかも知れねえなあ…


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標的4 西東軍(再登群)

今回はおっそろしく短い上にとんでもなく説明口調なのでございます。故にお約束!
隠し弾をうちます!


世界が終わるとしたら、その時あなたはどうするの?

 

・・・・・

 

「なるほどな。奇野師団…まさか噂に聞いた呪い名だったとはなあ…」

リボーンはそう呟くと9代目から送られてきた…もっとも情報ソースは戯言使いであるが…情報にひとしきり目を通すと今いる並木の下を歩いている青年を呼び止めた。

「珍しいな。お前が並盛に来るなんてな。」

「クフフフフ…僕としても来るつもりはなかったのですがね…ですが同じような臭いを昨日からずっと感じている…」

どんな人間なのか興味がありますからね。そういうと六道骸はまたクフフと笑う。

どん。

「おっと失礼。!?」

「すみません。」

足早に去っていく彼女(・・)を後ろ姿を目を見張って見送る骸が呆然と呟く。

正確には彼女とすれ違い、こちらに駆け寄ってくる彼女と寸分違わぬ顔の少女(・・・・・・・・・・・・)を見て。

「クロームが…二人?」

 

・・・・・

 

「奇野才知はもういないとして…」

玖渚とぼくはちぃくんが調べてくれた名簿を見ている。

時宮当時(ときのみやとうじ)罪口積木(つみぐちつみき)拭森貫知(ぬくもりかんち)死吹隠(しぶきかくれ)咎凪鋭他(とがなぎえいた)…そこに昨日殺された奇野才知(きのさいち)を加えると、恐ろしいことに時宮、罪口、奇野、拭森、死吹、咎凪、六つの呪い名が全て西東天のもとに揃っていると言うことになる。

「しかもだ…」

断片集(フラグメント)の失敗作、一つの体に境界の曖昧な二つの人格を有する、匂宮出夢(におうのみやいずむ)&匂宮理澄(におうのみやりずむ)の下位互換とでも言うべき匂宮旋律(におうのみやせんりつ)。とはいえ失敗作といえど、まさに殺人的な平手打ちを有していた匂宮兄妹の例を見るとおりどうやら一概に弱いと言い切ることはできなそうだ。もっとも、人類最弱のこのぼくと殺し名序列1位、匂宮雑伎団の団員を比べること自体、間違いではあるのだが。それこそ、匂宮に勝てる化け物は零崎の鬼位のものだろう。

他にも詳細不明のマフィア崩れが何人か集まって形成されているのが西東軍だ。

「やっかいだな…」

「悲観的になっててもしょうがないよ、いーちゃん。…そうだ!お腹減ったし何か作ってよ。」

「ええ?いきなりだな…外食とか考えないわけ?」

「えへへー…だっていーちゃんが料理してるとこ、うにょい(参照:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1138220071)もん。」

はいはい。




しかし、名前に整合性持たせる…というかあのすごいネーミングセンスにちなむってとんでもなく大変なことなんですよね…


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隠し弾3 設定解説その2

今回は標的4でちぃくんが教えてくれたキャラクター達の紹介となります。


時宮当時

 

時雨、時刻、時計に対して当時。

呪い名序列第1位、時宮病院構成員の操想術師。

相手がもっとも攻撃しづらい人間に自分を見せる。ちなみにこれは無自覚であり、本人の顔や性別はおろか性格までが全くの不詳。

一応本人曰く20代半ばごろらしい。

 

罪口積木

 

摘菜、積雪に対して積木。

呪い名序列第2位、罪口商会所属の武器職人。

軽い性格で武器職人としてのプライドにかけては他の追随を許さない。

19か二十歳。

武器による攻撃は完全に無効とすることができるが、反面武器以外による攻撃にはめっぽう弱い。ついでにいうとそんな体質なのに素手や武器以外の攻撃に対する警戒心はほぼ皆無。

 

奇野才知

 

既知、頼知に対して才知。

呪い名序列第3位、感染血統奇野師団所属の病毒遣い。

自信家ですぐかっとなる性格。口癖は「~だわな」

大体20代前半位。

俺の奇野師団に対するイメージのせいか逆掴み的な扱いになってしまったが腕そのものはよいらしい。

 

拭森貫知

 

貫道に対して貫知。ついでに温もり感知とも読める。

呪い名序列第4位、拭森動物園所属の飼育員。

戦闘スタイルは貫道と同じ。ただし貫知の場合は近付かず、遠くから目的を奪いさる。慎重な性格で、文字では分からないことだがイントネーションがおかしい。と言うか語尾が必ず下がる。疑問系でも下がる。

トレードマークは愛用の双眼鏡。と言うかこれがないと近付かざるをえない。

年齢不詳。

 

死吹隠

 

屍滅(死滅)に対死て隠(お隠れ)。

呪い名序列第5位、死吹製作所死配人。

傷だらけの体をノースリーブのジャケットに包み、死ろいスラックスをはいている。

多分台詞回死が一番独特で一番打ち込みにくい人。

だってそうで死ょう?死と言う文字が出てくる度にこう死なければならないのですから。

死ゅみは解剖学の本を読むこと。そこからえられた知死きで確実に急死ょを狙ってくるので非常にキツい相手。

年齢不死ょう。

この台詞回死はやはり死んどいですね。

 

咎凪鋭他

 

咎離(とがり)に対して鋭他。

呪い名序列第6位、咎凪党党員の予言者。

参謀的立ち位置で表舞台に出てくることは少ない。性格は至って温厚で、しかし沸点が低く、火が点くと止まらない扱いにくい人。

ちなみに愛用のパソコン(クリザリッド99)(本人命名)は情報戦にとってなくてはならない相棒だが、正直言って型が古く、しかも違法改造のせいでかなり不安定な状態であり、最悪爆発の可能性もあるという何とも黒ヒゲ危機一髪というか、ギャグチックというかなかんじ。そのため基本もう一台の違法改造パソコン(クロゼロ2000)(これまた本人命名)と併用して負担を軽くするのがセオリー。

年齢不詳。

パソコンの文字数が本体の文字数をオーバーしてしまいました…

 

匂宮旋律

 

出夢に対するものが浮かばなかったので理澄と対比して旋律。

殺し名序列第1位、匂宮雑技団団員。ちなみに失敗作の失敗作であるため無理矢理つけて団員NO****(エラー)。出夢とどこか似通った雰囲気があるらしく、人識は平常心を保てなかった。外見は全く似ていないが。

強いのか弱いのかよく分からない人物で、強いときは一喰い(イーティングワン)顔負けの、言うなれば直木飛縁魔の俺的必殺問答無用拳みたいなものが使えるが、弱いときはペチンという音が鳴るかならないかぐらい。中間は存在しない。超絶自信家の時が強いときで激烈ネガティブ野郎の時が弱いとき。

大体20歳ぐらい。出夢にとって大切な敵対者である人識に興味があるらしい。




しかし何というか…咎凪さんのパソコンは壊れる気満々ですね。スンマセン、ネタです。ネタでしかありません。それでは、ちゃおちゃおー。


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標的5 積木のナイフ(罪切のナイフ)

今回は罪口さんのご登場となります。今回持ってきた得物は刀、ダイナマイト、トンファ、ナイフ、グローブです。イメージとしては摘菜が七七七で双識と間違えて人識を攻撃したときと同じですね。
剣士としての山本、スモーキンボムの獄寺、トンファ使いの雲雀、ナイフ使いの人識、そんでグローブで戦うツナ・・・ってカンジで。


俺に勝てるわけがないんだ!

 

・・・・・

 

キィンッ!ガキャッ!ガキィンッ!

ハァッ!ハァッ!ハァッ!

「いーちゃん、変な音がするよ」

「そうだな、友はジッとしててくれるか?」

ぼくはそう言い置いて音の発信源へと向かった。

と言っても角を一つ曲がるだけなのだが。

そして目に映ったのは常軌を逸した光景だった。

まず、嵐でも吹き荒れたような傷跡を残すアスファルト。

次に、まだらに染められた零崎の特徴的な髪。

最後に端正な顔を大小無数の切り傷で彩った学ラン少年、ボンゴレ最強の守護者雲雀恭弥。

「えーっと…どういう状況?」

どうやら並盛の風紀を重んじる雲雀にとって風紀を乱しているとしか思えない零崎の行動がかんにさわったと言うことらしい。

と、むこうの角からボンゴレと二人の守護者、獄寺隼人と山本武が現れた。

「ちょっ、雲雀さん!?何やってるんですか!?」

「風紀活動。」

即答である。と、そんなやりとりの中、頭上から声が落ちてきた。

「おーおー、やってるやってる。ちょっと手間かもしんないけど、一つ俺と戦ってもらえねえかなあ?」

「誰だテメエ!初代に対してなんて無礼な口をききやがる!」

いかにも忠誠心に篤い獄寺君らしい台詞に続き山本君も

「町中で戦うつもりかよ?」

と疑問系ながらも刀を抜いている。

「ふうん…ちょうどいいストレス発散の対象になってくれそうだね。」

雲雀恭弥も臨戦態勢である。ボンゴレだけが

「んなー!?三人とも戦う気ー!?」

と戦うことを渋っている。電柱の上にいる青年はロングコートを着ており、内側から日本刀を取り出し、右手に握る。そして左手にはダイナマイト、よくよく見てみればコートの内側には他にグローブやトンファ、三節棍、そしてナイフなど、多彩な武器が揃っている。

「なーるほどッ!こいつは傑作だ!立て続けに二人も呪い名が出てくるとはなあ!」

零崎がいつものように虚ろに笑い、ぼくが静かにそいつに言う。

「君だろう?罪口商会の罪口積木ってのは。」

「その通り、武器職人として戦いに来た。まあ、ついでと言っちゃなんだがな、世界を終わらせる手伝い…ってのもある。それじゃあ始めようぜ…!」

キィンッ!気がつけば山本君の刀が積木の刀と鍔迫り合いをしている。

「へえ…たかが高校2年生かと思ってたが、存外!やるじゃねエのよ!」

「そいつはどうも…!」

さっと山本君が離れるとそこにダイナマイトが飛び込む。

「うおっと。危ないなあお兄さんよ!」

爆風に巻き込まれても無傷の積木に驚く獄寺君に積木は容赦なくダイナマイトを叩き付ける。

「摘菜と同じ轍は踏まん、カラクリは教えてやらねえからな!」

戦闘のプロとも言うべき10代目ファミリーを前にして一方的に攻め立てる積木。そこへぼくが正拳を叩き込んだ。

「ぐふっ!?」

それまで10代目ファミリーを相手に、それら全ての攻撃をすり抜け続けた積木の体を、ぼくの拳がとらえたのだ。カラクリの分かっている零崎以外は呆然としている。

「クソッ…!テメーが狐のオッサンのいう『いーちゃん』って奴か!罪口のこと、知ってやがったな!」

「当たり前さ。イタリアの裏社会が彼等のフィールドなら、裏社会の全てはぼくにとって図書館も同じ。特にやばい『殺し名』と『呪い名』についてはそれなりに知識を持ってるつもりだよ。」

いいつつも、僕自身は零崎より後ろに下がる。

「だったらまず厄介な…『いーちゃん』から片付けてやるぜ!」

積木が刀を大上段に振りかぶり、飛び上がった瞬間、零崎がいう。

「武器に好かれ、武器による攻撃の一切を無効とするテメエらの呪いでも、武器じゃねえ物による攻撃は通用するからな…」

そして次の瞬間、積木のからだが裁断された。

「糸は武器じゃねえ。ジグザグ相手じゃ勝てねえぜ」

 

・・・・・

 

ジグザグ。あるいは曲弦糸。

ぼくのかつての友人、柴木一姫(ゆかりきいちひめ)ちゃんが使っていた技術。

空間に張り巡らせた糸を用いた護身術。

しかしそれも零崎の手にかかればあっという間に殺人技術となる。

攻撃を遮断する糸の結界はいかなるモノをも寸断する刃の森となり、敵を拘束する糸は首を落とすワイヤーカッターになる。

そして挑発に乗った罪口積木は自らその刃の森へ突っ込み…

その命を散華させたのだった。

 

・・・・・

 

どうにか4人を撒いてホテルに戻るころには、ぼくも、玖渚も、零崎もへとへとになっていた。

「次は…っと。はたして誰が来るのやら…」

と、これはベッドに腰掛けて天井を仰ぐぼく。

「さあな。俺が知るかよ。」

これはテーブルに軽く腰掛けた零崎。

そして爆弾発言を投げつけたのは椅子に逆向きに座り、背もたれに頬杖をついた玖渚だった。

「さっき知り合いが商店街で誰かが戦争してるってつぶやいてたよー。」

「「はあ!?」」




ちなみに、最後に出てきた情報ソースはツイッター・・・俺はやってないけどね。
それでは、ちゃおちゃおー。


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標的6 幻術(現実)

今回戯言メンバーの活躍は無し。
骸さんが頑張ってくれました。


僕の一部を真似られるとは・・・存外いらつかせてくれる。

 

・・・・

 

遡ること数分前。

六道骸は特に何を見るでもなく、偶然に身を任せて並盛商店街をぶらついていた。

「ほう…これはこれは。わざわざ僕にこんな殺気をぶつけてくるとは、一体何者ですか?」

突然感じた殺気に振り向くと、骸の目の前にいたのは彼とそっくりの髪型をした並盛高校の制服に身を包んだ…もっとも骸の服装も並盛高校のそれなのだが…眼帯の少女。

「なっ…!?クローム…!?」

驚いてそういう骸に首を振ってそいつは言う。

「否、我が名は当時。時宮当時…呪い名、時宮病院の…操想術師…」

操想術?と眉をひそめる骸に少しだけ頷いてクロームの姿をした当時は答える。

「あなたにとってもっとも攻撃しづらい、そして大切な相手の姿を見せ、大切な人に攻撃される恐怖を味わって死んでもらうための技術です。」

「幻術とは違うというのですか?」

コクリ。と頷く当時。

「私はあなたが誰の姿を見ているのか分からない。あくまでもあなたが見ているのはあなたの心が作ったもの…」

「ほう、それは厄介…だっ!」

不意を突くような鋭い蹴りが当時を襲うが、どこか普段に比べて精彩を欠いている感がぬぐえない。それは恐らく操想術について、クロームの口調で当時自身が語ったせいだろう。自分でも気付いていない気持ちをあぶり出す。これほどいやらしい相手など他には存在しないだろう。

シュンッ!と当時の貫手が走り、骸が仰け反って躱すと、上半身の動きについてこられなかった制服のネクタイがその手に貫かれた。

「これは…厄介ですね…」

滅多に動じない彼の頬を冷や汗が伝っていく…

 

・・・・・

 

その日、クローム髑髏は商店街で夕食の材料を買おうと思い、アーケード街を歩いていた。

と、彼女の目の前を命の恩人であり、誰よりも敬愛する主でもあるところの六道骸が横っ飛びに吹っ飛んでいった。

「!?骸様!?」

きっ。と骸を殴り飛ばしたとおぼしき男に視線を向けると、クロームの顔が驚愕に染まった。

「おやおや。随分とかわいらしい援軍ですね。」

何故ならその男は六道骸そっくりだったからだ。

「どういう事!?骸様が二人…」

と、殴り飛ばされた方の骸が半身を起こして呻きながらいう。

「クローム…どうやら君にはあれが僕に見えるようですね…」

「どういう事ですか?」

「操想術師時宮当時…彼か彼女かは判然としませんが、あれは見る者にとってもっとも攻撃しにくいものの姿をとるのです。僕には時宮が…君に見える。」

そういいながらも再び立ち上がると骸は思い切り息を吸い込み、次の瞬間には一足飛びに当時に向かって飛び込む。

「やれやれ。随分と単純な戦法だ。」

がごっ!と当時のハイキックが骸の顎をとらえる。が、更に骸はその足を捕まえる。

「何ッ!?どういう事だ!?何故攻撃することができる!?」

「本物が来た以上、ニセモノは邪魔なゴミに格下げを喰らったのですよ。邪魔なゴミが相手ならば、躊躇う理由は何もない。」

等と言いつつ、骸は関節技で散々ダメージを与えた上で拘束を解く。

「とはいえ、僕自身の手でクロームを攻撃しているように思えてならなかったのもまた事実ではある。さて、どうしたものか…」

うそぶきながら骸は黒い手袋を鞄から取り出し、その手にはめた。

「そうですね…ここはこういってしまいましょうか。よくもこの僕に彼女の姿を破壊させたな…とね。」

そういって掌を当時にかざす。

「僕らを襲うにはいささか力不足だったようですね時宮当時。その後悔を抱いたまま…」

そして現れる無数の鴉。時宮当時が操想術師ならば、六道骸は幻術遣い、骸は自らの幻覚の最大奥義を発動させる。

「限りなく現な幻、幻想より生まれしわが想像の怪物…限現幻獣喰骸鴉(げんじゅうががいあ)。」

現れる黒い烏たち。それは当時の体に群がり、肉を食いちぎってゆく。

「やめろ!待て!何をするつもりだ!この上まだ何かあるというのか!?」

「墜ちろ…」

骸が静かに背を向け、サムズアップした右腕を一気に回転させる。

サムズアップは地獄へ堕ちろのジェスチャーに早変わりし、そして骸も仕上げの一撃は忘れない。

「そして巡れ」

烏たちが爆発し、当時の体を巻き込んでこの世界から消え失せた。

 

・・・・・

 

で、ぼくらは積木から受けた傷(刀による致命傷は受けていないがトンファが結構強烈にヒットしやがった)の治療ついでに並盛総合病院へ向かう。

しかしここにいるのは僕と付き添いの玖渚だけだ。零崎曰く

『汀目俊希の保険証なんて使えねえだろ?』

だそうだ。まあ、アイツも表家業の人間ではないのだから、それぐらいの反応はして当然のことかも知れない。まだ一応何でも屋ということで、かなりギリギリ表の世界に住んでいるぼくとはそういったところで根本的に違うのだから。

と、いうわけで、しばらく玖渚と並んで待合の長いすに座り、どうでもいい雑誌をパラパラとめくっていると青みがかった髪をてっぺんの辺りで結び、まるでパイナップルのような髪型にまとめた高校生がやってきて、ぼくの隣に腰を下ろした。高校生というのは、ブレザーを着ていたからで、最近は中学校でもブレザーというところもあるにはあるのだろうけど、彼は中学生というほど子どもっぽくはなく、と言って高校生というにはあまりに大人びていた。なるほど。高校3年生、受験生か。

「その腕…」

「うん?」

彼がぼくの前腕部についた傷(これはダイナマイトの爆発で飛んできた破片を受けたもの)を見ていう。

「どうかしたのですか?」

「ああ、ちょっとね。転んで先に落ちていたガラスの破片が刺さっちゃって。破片は全部洗い流したんだけど傷のほうはどうにも…」

それは痛そうだ。と言って彼は傷だらけの顔で苦笑する。

「そういう君は?まるで苦手な人と喧嘩したみたいな顔じゃないか。」

「ええまあ。苦手、と言うか攻撃しづらい相手とそっくりな人物と少しばかりもめてしまいまして。たしか名前は…時宮…と言いましたか。」

「え…?今、君は時宮っていったのかい?呪い名序列第1位の時宮?」

怪訝そうな顔で彼は何か知っているのですか?と聞いてくる。なのでぼくは少しの真実と多分な嘘を織り交ぜて答える。

「ああ、何でも屋みたいな仕事をしているんだ。その縁で知ったんだけど、裏の世界には殺し名と呪い名というものがあるらしい。その中でも特に最強といわれるのが殺し名序列第1位の匂宮雑技団で、もっともタチが悪いといわれるのが呪い名序列第1位の時宮だ。例えるなら、匂宮は抵抗が無意味なクリームで、時宮はホワイトスネイクってところかな。」

****さーん。と呼ぶ声が聞こえたのでぼくは最後に彼の名前を聞く。

「僕の名前は知ったら死ぬらしいから渾名だけ教えておくけど、君の名前を聞かせてくれないかな?」

「六道骸…ですよ。で、渾名というのは?」

「戯言遣いとか、いーちゃん、いの字、いーいー、いっきー、いー兄、いーたんに師匠、あと欠陥製品かな。それじゃあ。」

「ええ、ではまた縁があれば。」

ボンゴレ霧の守護者に知らず知らずのうちに接触してしまい、内心ではかなり驚いていたのだが、うまく隠し通せたようで、ほっとしながらぼくは診察室に向かう。

「いーちゃん、驚いてるでしょ?」

ああ。

「そろそろ、ボンゴレ側と接点を持たなきゃいけなくなるのかな…」

 




時刻のような恐ろしいもので無し。
時雨のように超えられると思えば貫けるものでなければ時計のように真紅を知っている者に簡単に打ち破れるでもなし。
ともすれば最も精神力を浪費する力だと思うが、黒曜の団結力はすごいのでこの程度じゃどーにもならんでしょうなあ・・・
というか呪い名1位がゴミのように・・・骸さんスゲエ・・・
それではちゃおちゃおー。


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標的7 殺し名(殺しな!)

公式で生死不明なので、ついでに言えば零崎大好き人間なので彼に登場して頂きました。
生きてりゃトキさんに出て欲しいところでしたが…


殺して解して並べて揃えて晒して刻んで炒めて切って潰して引き伸ばして刺して抉って剥がして断じて刳り抜いて壊して歪めて縊って曲げて転がして沈めて縛って犯して喰らって辱めてやんよ

 

・・・・・

 

零崎人識が普段どこで寝泊まりしているのかなど誰も知らないし、また、某県某所のアパートにしたって管理しているのは石凪砥石…もとい、零崎問識だ。

舞織については本当にホームがレスで、近場の廃墟なんかをねぐらにしているらしいのだが、では、最近の二人はどこで寝泊まりしているのかというと…

「というわけなんだよー。」

「ふぅん…なんか大変そうなお仕事してるんですねー。いーさん…でしたっけ?」

宿泊料金も払わずに、勝手にいーちゃん達の部屋に押しかけてきているのだ。

まあもっとも、押しかけているという立場上、二人は向かい合わせに配されたソファで寝ているのだが…というか舞織がベッドを一つ占領し、下手をすればいーちゃんがソファにまわされかねなかったので人識が押さえ込み、この状況になったわけなのだが…。で、その人識である。

「おー、おー、まあ、そういうことだからさあ…え?ダメ?んなツレないこと言うなよ…」

携帯電話で先ほどから誰かに電話している。

いーちゃんは現在沢田綱吉に会いに行っており不在。

と、携帯のスピーカーから漏れ出た声に玖渚が反応した。

「おわっ!?ちょっ!」

『あー?どーしたっちゃか?ひとs…』

「わー!ぐっちゃんだー!」

げっ!?暴君!?と電話の向こうで驚いたのは(バッドカインド)こと式軋騎式(しききしきしき)もとい、零崎一賊の殺人鬼、愚神礼賛(シームレスバイアス)こと、零崎軋識(きししき)だ。彼は零崎一賊に属する殺人鬼でありながら、玖渚友がかつて率いていたハッカー集団、通称<チーム>のメンバーで、<チーム>唯一のハードウェア専門家だった。で、慌てる軋騎。

『なんで人識の電話に暴君が割り込んでくるんですか!?』

「うん、いっしょの部屋にいるから。ていっても僕様ちゃんはいーちゃんにぞっこんなんだけどねー」

人識の耳にはこの時携帯電話の向こう側からズガァァン!と言うまるで雷でも落ちたような音が聞こえた気がした。おらかえせ。と言って携帯電話を玖渚からむしり取ると

「つーかなんなんだよぐっちゃんって。」

と当たり障りのない質問をする。

『知らん…ぐしんらいさんのぐだったらちっとまずいことになるが…』

ちなみに、今のところ零崎一賊に属する殺人鬼は3人。

人識と、舞織と、問識。軋識は表向き死んだことになっており、また、長男、切り込み隊長であった自殺志願(マインドレンデル)、双識も無桐伊織が零崎舞織として目覚めるとき、あおりを喰らって早蕨刃渡に殺され、少女趣味(ボルトキープ)ことベジタリアンの曲識も人類最強によってその命を散らしている。

無論、零崎への覚醒が頻発すれば零崎はまた30人程度の小集団に戻るだろうが、今のところは3人の殺人鬼と1人の脱落者が生存するのみである。

で、電話を終えた人識は何とはなしに窓から外を見やる。

「匂宮…ね…」

そしてふと雑踏に目をやると、見覚えのある人影が見えた。

「いずっ…!」

む。と言いきらないうち日常の雑踏に紛れてそれは見えなくなった。

「どーかしたんですかー?」

後ろからいつもの調子で声をかけてくる舞織に対し、普段以上にぶっきらぼうに人識は答える。

「どーもしねーよ。」

 

・・・・・

 

で、どうだった?

狐が聞いた。彼は答えた。会えなかった。と。

鬼は妹を伴って外へ出た。

ちょっとした、観光のつもりだった。

 

・・・・・

 

めずらしーですねー。舞織はそういって隣を歩く人識を眺めやる。

自分より少しだけ背の低い兄。しかし今の舞織にとって、彼だけが唯一の家族と言えるのだ(彼女は問識のことも知らなければ、人識が親しくしている識軋騎識が更に上のお兄ちゃん、零崎軋識であることも知らない)。しかしそんな人識も舞織にはつれない。双識のように全国行脚までしているというのに彼の彼女への態度は、やはりどこかよそよそしい。

「お兄ちゃんが自分から誘ってくるなんて」

お兄ちゃんじゃねエよ。と呟いて人識は視線をそらす。

「あれ?普段から白い方だと思ってたんですけど、少し青白くありません?」

「そりゃ気のせいだ。」

などとうそぶいてみせるが、人識の顔色はたしかに悪い。

と言うのも彼は、肉体を酷使しすぎたせいで、全身ガタガタで、寿命も恐らく他人の半分程度になっているのだ。一般的な寿命が80歳としても80÷2で40。余命およそ15年。自分の死期が目に見えて迫っているというのに顔色が悪くならないのは恐らく6年前のいーちゃん位のものだろう。

(殺人鬼だからいい死に方なんて望んじゃならねえ、楽に逝こうとか安らかに逝こうとか、そんなこたあ分かってる、分かってるけど、全く持って…)

「戯言…だよなあ…」

 

・・・・・

 

そんなふうにいつになくセンチな気分であった人識は、後ろから声をかけられた。

「なあ、お兄ちゃん、ちょっと道を教えてくれねえかな?つっても人生の道じゃないけどね。ぎゃははっ!」

「ッッッ…!」

驚愕。短く揃えた銀に近い白髪も、標準サイズの腕も、どこもかしこも彼とは似てもにつかないものであったが、しかしその口調は人識にその彼を連想させるのに十分すぎた。

「いず…む…?」

「出夢?ああ、俺の更に一世代前の出来損ないか。ン、まあ俺も出来損ないっていやあ出来損ないだけどな。アイツと違って俺は完全に弱さを切り離せていない。」

まあ、んなこたどーでもいいんだ。と続けるとそいつは言う。

「俺の目的は狐さんの邪魔をしかねないお前を始末することなんだよ。零崎人識。」

どこか落ち着かない。さっきから何故かこいつと出夢を重ねて見てしまう。そんな人識にそいつは叫んだ。

「俺の名は旋律…匂宮旋律だ。さて、それじゃあ…俺は殺し屋!依頼人は秩序!十四の十字架を背負い、これより使命を実行する!」

それに呼応するように、人識は吼えた。

「上等だ!今日の俺は機嫌が悪いからなあ!殺して解して並べて揃えて晒して刻んで炒めて切って潰して引き伸ばして刺して抉って剥がして断じて刳り抜いて壊して歪めて縊って曲げて転がして沈めて縛って侵して喰らって辱めて愛さずもっぺん殺してやんよ!」

匂宮出夢と匂宮旋律に対する決定的な違い。

出夢には愛を向け、プラスからマイナスまで、人識にできることを全て捧げ…旋律には言ったことしか捧げなかった。

 

・・・・・

 

「俺の拳は…そうさなあ。例えるとすりゃあクリームだ。進行方向の全てを粉微塵にしちまう。しかも綺麗に刳り抜きながら…だ。」

旋律はそういいながら人識に向けて拳をぶっ放す。

「うぉあ!」

仰け反ってそれを躱し、そしてその勢いにのせて旋律の手をほんの少しだけ弾き飛ばす。

「そんなモンかよ、零崎!」

しかしそれは効くはずのない攻撃。全力で攻撃しても倒せるか倒せないか…位のものだ。

「人識くんっ!」

「ガハッ!」

めき、めき、めき(・・ ・・ ・・)…左脇腹に突き刺さった回し蹴りが人識の肋骨の内数本にヒビを入れる。

倒れ伏す人識。彼は独り言のように呟く。その中に、多大な諦観を含んで。

「俺ってさあ…なんもないんだよなあ…」

妹はいる。弟もいる。兄も…表向き死んだことにされているが…いる。人類最強の請負人、戯言遣いの欠陥品。外にもたくさんの人がいて、たくさん助けてくれた。

しかし中は違う。人識にとって、自分の中身が空っぽであれば、それは外側から取り入れることもできない諦めの境地。

諦めか…そういえば、兄貴はずっと自分のことを不合格と思ってただろうがさ…案外アンタ、合格かも知れないぜ?

伊織ちゃん…そうだったな。俺にはまだ、やることが残っている。

だから…こんなところで、こんな失敗作に。

「止まってられるかよ!」

叫び人識はナイフを向ける。

「つーことでだ。こっからが本番だ。」

瞬時に距離を詰めて斬りかかるが、そのナイフは峰のところを片手の指でつまんで止められる。

しかしその後すぐに手を離すと旋律の顔面に手痛いフックを食らわせた。

「ぐうっ!」

気合いと根性で体を動かしている今の人識にとって長期戦はムリだ。だからこそ手早い決着を狙う!

と、その時だ。旋律が不敵に笑っているのを舞織は見た。

「人識くんっ!伏せてっ!」

そして放たれる旋律のストレート。身をかがめた人識の頭上をすり抜け、後ろにあった電柱を中途からへし折り…

「うわぁっ!?」

どうやら一般人らしい、一人バットケースを肩から提げて帰る中学生を強襲する。

「あぶねえッ!」

咄嗟に曲弦で電柱を絡め取り、どうにか彼の頭上に電柱が倒れ込むことは免れた。免れたのだが…

「ーーー!!!」

声にならない絶叫が響き、その中学生の体が崩れ落ちた。

え…?

ウソだろ…?ちゃんと電柱から助けてやっ…!

彼の背中に垂れ下がった一筋のケーブル。電柱が倒れるときに切れた電線(・・・・・・・・・・・・・・)だった。

「オラどうしたよ、さっさと続きをやろうぜ?ほらはや…」

「うるせえッ!」

人識の声にびくっと身をすくませる旋律。人識は旋律に向け、歌いあげるように言う。

「それいじょう<こっちへ来るな>!」

言い置いて人識は彼のバットケースから金属バット(・・・・・)を取り出す。続いて放り出された学生鞄から覗く裁縫セットの裁ち鋏(・・・)。鋏を右手に、バットを左手に構えた人識が歌いあげるよう宣誓した。

「それじゃあ、零崎を始めるぜ」

言うや瞬時に距離を詰め、金属バットで顔面を横殴りに吹っ飛ばす。

「なん!?だとォ!?」

「まだだァ!」

続けざまに繰り出された鋏が頬を貫いて右目を潰す。そして鋏を放して上着からもう一本ナイフを抜き放ち、突き出す。それが旋律の左肩を抉った。

「ん…がああああッ!?」

唐突に…糸でも切れたように旋律の左腕が落ちる。だらりと左腕を垂れ下がらせながら、渾身のストレート。咄嗟に交差させて受け止めた金属バットとナイフが折れた。しかし人識には奥の手がある。十指に仕込んだ奥の手が。

「さて…出夢がザ・ハンドだとするならば、テメエはクリームか…たしかに的を射ているが、だったら俺はスティッキィ・フィンガーズってとこかな?」

「クソがァ!くたばりやがれ!俺様必殺の、粉微塵(えぐりとり)!」

そう叫んで拳を振りかぶる旋律に対して、人識は両腕を孔雀のように広げて迎え撃つ。

一喰い(イーティングワン)!」

まず最初の一撃で粉微塵を斬り飛ばし…人識の爪には一本残らずダイヤモンドカッターが仕込まれている…続いてもう一度…

「俺に出夢を連想させたことを、後悔しながら死んでいけ!一喰い(イーティングワン)!!!」

己に迫る人識の掌。

それが旋律の見た最後の映像だった。

 

・・・・・

 

「あ゛ぐぁ゛ッ!」

ミシミシと、何かがきしむ音が聞こえる。

下の方から聞こえてきた。続いて膝の辺りから。人識ががくりと膝を折る。

「が…あああっ・・・ッ!」

「人識くんっ!」

全身が痛みに悲鳴を上げ、その度に人識の体が震える。

「うくッ…畜生…寿命が5年も縮んじまっ…」

アアアアアッ!ひときわ大きく痛みに吼えると、人識はその場に崩れ落ちた。




人識君は俺の中では殺せる善人といったキャラで通ってるんです。
だから曲弦で人助けもしてくれるわけですよ。
ちなみに彼の心の中には今でもかなり重要な位置に出夢がいますから、連想させる者は人識にとって一番嫌う者なのです。


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標的8 幽霊(GHOST)

旋律を倒したものの、体にガタが来て倒れてしまった人識、そんな彼の見舞いにやってきたのは…
零崎一賊勢揃いでございます。つくづくトキさんとレンさんが死んでしまったのが痛い…


その呼び方は無しだ

 

・・・・・

 

「ん…んあ…」

目を開けると、白い天井が目に入った。

「あれ…?俺…」

「よー、気がついたっちゃか?」

人識がベッドサイドに目をやると、面会人用の椅子に腰掛けた浅黒い肌の男がいた。

「なんだよ…いたのかよ?大将」

軋識は人識のまだらの長髪とは対照的に短い髪を手串でなでつけながら

「本当は暴君に会いに来たっちゃが…結局暴君は幼なじみとか言う請負人にとられちまってるし…がっくりしてるところへお前がぶっ倒れたって舞織ちゃんから聞いて、すっ飛んで来たっちゃ」

オイちょっと待てよ。人識は軋識の言葉を遮って言う。

「伊織ちゃんは大将のケータイ番号しらねえハズだろ?」

「ああ、そりゃ…」

「人識君のケータイでかけたからですよー。」

「「うわわあああ!」」

突然乱入してきた舞織に二人は盛大に驚く。

「あれー?どうしたんですか?」

「い…いきなり出てくるんじゃねえよ…」

「心臓に悪い…掛け値無しに五拍は休んだっちゃ…」

「でも心配しましたよー。人識君、一体どうしたんですかー?」

ああ、それな。と前置きして人識は自分の体のリミットについて語った。

「まあ、そんなわけだ。言って見りゃ爆弾付きだってことだ。長く見積もってあと15年ってとこだろうぜ。」

それよりも。と人識は軋識に目を向ける。

「あんただよ。大将、アンタ一体どうやって死んだように見せてたんだよ?いつもはぐらかしてばっかりだったけど、今日こそは訊かせてもらおうじゃねエか?」

「ああ、そのこと…実に単純。零崎軋識の死体をでっち上げて、あとはハッキングの腕の見せ所だ。いろんなデータをでっち上げちまえば、だれも死体を怪しまないっちゃ。」

そして式岸軋騎として表に出ればいい。そう結んで軋識は席を立つ。

「それじゃどうぞごゆっくりー。」

……暫くの沈黙。やがて人識がポツリと呟いた。

「気ィ利かせてくれたのかな…あのクソ兄貴…」

「みたいですね…」

どう思った?人識は遠慮がちにそうきいた。

「俺の体のこと…」

「正直ショックです…殺しても死なないような人識君が…実は一番脆かったなんて…」

誰も一番とは言ってねエよ。と突っ込むと、人識は握った両手を見つめて言う。

「俺だって人間だ…殺人鬼だなんだ言われても、最終的には死にたくないただの人間なんだ…」

正直、怖いよ。

「死ぬのが怖い、伊織ちゃんを一人残して死んじまうのが、問識をほったらかして死ぬのが怖い。」

「人識君…」

自嘲気味に笑うと人識は舞織の方を向いて言う。

「なあ…もし…もしもだぜ…こんな俺が…伊織ちゃんのこと、妹じゃなくて女性として好きだって言ったらどうする?」

その顔にいつもの感情を隠す笑みは無い。

真摯で、真剣な眼差しが舞織をとらえて放さない。

「もちろん…」

どれだけ見つめ合っていただろうか、やがて舞織が口を開く。

「受け入れます。」

「いいのか?」

大歓迎ですよ。と言って、舞織は笑った。

「あぁ?そういやサングラスがねえけど、あれどうした?」

「知りませんよ、でも、要らないんじゃないですか?」

「普通の奴は刺青見ただけでびびっちまうんだぞ?」

「だったら彫らなきゃいいでしょ?お洒落ガンバリストさん。」

「ンだとこのモテカワメイク!」

二人とも一歩も譲らず睨み合っていたが、やがてどちらからともなく

「ぷっ。」

「くすっ。」

小さく吹き出し、そしてすぐに

「かっはははははははは!」

「あっはははははははは!」

と笑い出した。

 

・・・・・

 

そしてこちらは二人に気を使って退室した零崎軋識、もとい、式岸軋騎である。

彼は一時間近く病院内をさまよっていた。

「クソッ…此所は何処だ…?俺は今…どこへ行こうとしてるんだ…?」

もはやキャラ作りのためにちゃをつけることも忘れている。

「いや、それ以前に俺は…」

誰に襲われているんだ!?

 

・・・・・

 

拭森貫知はそんな軋識を後ろから見つめていた。

「誰かは知らんが、零崎人識の病室を尋ねたと言うことは奴の仲間だと言うこと…と来れば、狐様のために、死んでもらうとしよう(↓)」

俺の脳内干渉スキルにより、貴様は全ての目的を失い、のたれ死ぬのさ。そう続けて貫知はひとりごちる。

俺の術中にはいった今、お前の命は風前の灯火よ!

 

・・・・・

 

しかしそこは戦闘経験豊富な零崎軋識である。彼は既に相手が拭森動物園の構成員であることを見抜いていた。

(さて、と…唯一の救いは拭森さんが近くにいることだな…)

例え見えなくされていても、廊下という限られた遮蔽空間なら、適当に大きめの何かをぶん投げて、一撃で沈めることもできる。

しかし軋識はそういったまわりくどい方法を一切とらずに…

「せぇーのぉ…」

どんっ!

ありったけの脚力でバックステップを踏んだ。

「なっ!…ぐはっ!?」

「トレースすんなら後ろからがセオリーだろ?まあ拭森動物園じゃそんなことしねエでもこっちの脳に干渉しちまえば見えなくすることができる。」

そんでもって。と貫知の頭を引っ掴んだままで続ける。

「そしてこの病院、それも感覚から察するに、かなり近くからじゃねえとかけ続けられねえような強度でかけてきてたからな。ずっと向こうにあるあっちの角より、こっちの角を狙うのは当然だろ?」

「ぐががッ…貴…貴様は…!?」

(バッドカインド)こと式岸軋騎…覚えなくてもいいぜ」

ぶん(・・)。と大きく腕を振るって貫知を廊下の端にある、今現在空気を循環させるために開いている窓に向かって放り投げた。

「なあっ!?有り得ない!こんな腕力、あり得るわけがない!」

零崎軋識。通称シームレスバイアス。自らと同じ名前を持つ愛用の装備…愚神礼賛(シームレスバイアス)という一体鋳造型釘バットを振るう、零崎史上もっとも荒々しい手口で、もっとも多くの人を殺した殺人鬼。

一体鋳造型の釘バットで(・・・・・・・・・・・)

釘バットの形をした鉄塊で(・・・・・・・・・・・・)

超重量の鉄塊で(・・・・・・・)

そして鍛え上げられた腕力で、鍛え上げられていないほっそりとした体躯の拭森貫知をぶん投げた。

そして一気に跳躍。あっという間に追いついて、痛烈なボディブローを叩き込み、完全に窓から飛び出した貫知に、思いっきり打ち下ろすような拳を落とした。

「ま、病院内で人殺しなんてするわけにゃなんねえからなあ。」

窓の外なら死んでもいいか。物騒なことを呟いて軋識はきひひ。と笑った。

 

・・・・・

 

グチャグチャに潰れた死体。それを見て、さすがに少しだけ面食らったらしい白髪の青年はノースリーブのジャケットの襟を少しだけいじり、満足がいったらしくその手を離して舌打ちする。

「死か死、裏死ゃ会の人間一人殺せないとは…拭森貫知…案外と不甲斐ない…では、俺が直死きに行って殺死てきてやるとするか。」

そう呟いて死吹隠がくるりと踵を返し、戯言遣いのほうへ向かおうとする。

しかしその目の前には隠とは似てもにつかない、しかしどこか似通った雰囲気を持つ青年が立っていた。

「残念ながら、それはできないと死かいいようがないな。」

「貴様、死吹の!?」

いやいや。と首を振って青年は言う。

「僕は一応死吹ではありませんよ。零崎です。」

「零崎だと!?」

「零崎問死き。お見死りおきを。」

隠の傷だらけの顔を冷や汗が伝う。

死吹製作所のスキル。それは身体支配。鏡写しに相手の体を支配して、ダメージのフィードバックで相手を殺す技術。

しかし、さきほどからそれを使用し続けているというのに、問識は平然と身振り手振りを交えて(・・・・・・・・・・・・・・・・)しゃべり続ける。

「ちなみに旧姓は石凪です。ええ、石凪診療所です。で、あなたが一番気に死ていることについてですが…死吹でもあります。」

まあ、今の死ょ属は零崎ですけどね。そういうと問識は軽く肩をすくめる。

「死か死、やはりというべきで死ょうか。僕の術にはかかりませんねえ…とすれば、我慢比べです。」

「我慢比べ?」

「ええ。僕はあなたの懐に入るために術を破らなくてはいけない。しかしあなたは僕を懐に入れないために術をかけ続けなければならない。そしてその術を回避するために僕はあなたに術をかけようとする…」

二人の感覚にはガラスの割れるような音が延々と響いている。

本当に鳴っているわけではない。あくまでもこれは二人の感覚に響く音のようなもの。お互いにかけた鎖が砕ける音だ。

二人の静かな戦いは始まったばかりである。




というワケで、人識君はしばらく動くことができません。果たしてリボーンサイドのキャラクターは今のうちに活躍回数を増やすことができるのか…うむむ…
頑張ります。


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標的9 人類最悪の軍隊(人類災厄の群体)

咎凪さんが異様にしょぼい…人間関係で出てきた尖離さんが登場せずして死んでしまった影響ですねえ…うん…これ以上に書きようがなかった…兎吊木も好きだから出したかったわけだし。


なにがどうだ、あれがどうだ。そんなのは全部、同じことだ。

 

・・・・・

 

ぼくがホテルに戻ると、玖渚が携帯電話を使って誰かと通話していた。

「うん。じゃあよろしくねー。」

ぴっ。

「あ、おかえり、いーちゃん。」

「ただいま。誰と電話してたんだ?」

さっちゃんだよ。一切の屈託もなくそういってのける玖渚。しかしぼくからすればそれはとんでもないトラウマネーム。

「マジ?」

「マジ」

 

・・・・・

 

「全く…俺ともあろう者が、破壊と真逆のことをやるハメになるとはな。」

薄緑色のサングラスの位置を整えてその男は笑う。

「だがまあ、誰あろう暴君のたのみだ。この害悪細菌(グリーングリーングリーン)、全力を持って事に当たろう。」

そういうと男…兎吊木は猛然と打鍵音を響かせ始めた。

 

・・・・・

 

咎凪鋭他は西東軍こと、正式名称フォックスファミリーの情報戦担当だ。

彼の相棒はクリザリッド99とクロゼロ2000と言う二台のノートパソコン。

そこに何か、不穏なアクセスが入った。

「んん?不正アクセスか?ハッキング…うん、面白い。ずっと後ろというのも飽きてきたところだ。真剣勝負と行こうじゃないの?この俺、咎凪鋭他が直式に相手してやるよ!」

鋭他もまた、兎吊木と同様のタイミングで打鍵を始めた。

 

・・・・・

 

「るあァッ!」

「くたばんなア!」

二人がかりの同時攻撃。右の男の正拳突きと左の男の回し蹴りを受け流し、大きく距離をとると綱吉は息をつく。

そっくりの顔をした男達を睨み付け、綱吉は両の拳にオレンジ色の炎…超高圧縮エネルギーである死ぬ気の炎を宿し、二人に聞く。

澪標(みおつくし)…だったか?何故俺達を狙う。」

綱吉の質問に二人は同時に答えた。

「「狐の旦那のためだ。」」

「失敗作とされた詰草(つめくさ)を拾ってくれた狐の旦那のため」

「失敗作とされた巻耳(おなもみ)を拾ってくれた狐の旦那のため」

俺達が世界を終わらせる。デュエットでそういうと、詰草と巻耳は再び攻勢に出る。

「一撃目…」

「二撃目…」

「三」

「四」

次々と、息のあったコンビネーションで、挟み込むように連続コンボを打ち込んでくる澪標兄弟。

全て流している綱吉だが、そのうち二人の拳が決まり始める。

「何ッ!?」

「挟み込む…」

「逃しはしない…」

「力と…」

「力の…」

「「サンドイッチ」」

そして…綱吉の体に二人の拳が迫る。

詰草の拳を跳ね上げて、巻耳の拳の衝撃に備えようとした瞬間、その行方にバンテージの巻かれた拳が割り込んだ。

「部室の前が騒がしいと思ったら…貴様ら、沢田に何をする!」

「了平!」

芝生のような白髪を短く刈り揃え、こめかみに刻まれた傷跡と鼻の頭の絆創膏が特徴的な青年…笹川了平が巻耳に指を突きつけ、吼える。

「貴様!この笹川了平が相手になる!極限にかかってこい!」

「笹川了平…」

「ボンゴレ晴の守護者…」

澪標の合気と了平のボクシング。

思いも寄らぬ異種格闘技戦が幕を開けた…

 

・・・・・

 

西日がキツい。

そんな血のように赤い世界の中で、二人の青年が睨み合う。

「クソッ…!」

「どう死ま死たか?」

隠が術をかけては問識が術を破る。術と術の破り合い、根性頼りの泥仕合だ。

しかし、軍配がどちらに上がるかは、よくよく考えてみれば一目瞭然である。

直接戦うことをせずに、絶対安全圏から戦わずして殺す、それが呪い名。対して自らの命を危険にさらして、誇りと生死を賭けるのが殺し名。

精神力の格が違う。

バリィィィーンッ!それまでひときわ大きい破壊の感覚。

「ッ!」

隠の体が、それまで問識と、直立不動で睨み合っていた隠の上半身が、大きく仰け反った。

「ここまでのようですね…では、大人死く死になさい。」

僕は他と違って始めないのです。

「では、零崎を終えま死ょう。」

懐から取り出した刃で、一瞬にして命を刈り取る。

死神のような所行を平然とこなす殺人鬼。

死神と製作所死配人と殺人鬼。殺しのハイエンド。最悪のハイブリッド。

それが零崎問識である。

 

・・・・・

 

おつかれさま。

そんな文面がモニターに現れ、鋭他は愕然とした。

「これは…しまっ…!」

クリザリッド99とクロゼロ2000の画面が一瞬で、大量のおつかれさまに変わる。

それはもう、ニコニコ動画など、物の数ではないほどの弾幕に。

過負荷。それは違法改造の旧型パソコン二台を操る鋭他にとって致命傷だ。

パチリ。とスパークが散り、鋭他の眼前で。

ぼぼんっ。

「ぐあッ!」

眼前で起こった小爆発に仰け反った鋭他の体が思い切り倒れ、床に後頭部を打ち付ける。どうしようもない致命的な角度で。

結果、脳死状態になった鋭他は、あっけなく舞台を退場した。

 

・・・・・

 

了平自慢の右ストレートをかわし、巻耳はその腹に鋭い蹴りを喰らわせる。

「ぶぐっ…」

「まだだ」

了平の左腕につけられたバングルに炎が灯っていく。

「これで終わりだ。」

奥義…と、思い切り腰を入れた正拳突きを繰り出す。

「ぐふっ!」

続く本命の一撃。狙うは一点心臓のみ。彼等二人が少しだけ囓ったかつての直木飛縁魔の必殺技。

「問答無用拳!」

ドムッ!

「ガッ…!」

しかし倒れない。

日輪のごとく燃えさかるバングルをはめた左腕をしっかりと引き絞り、溜めを作る。

「とどめにもう一撃、奥義、問答無用拳…」

そして巻耳の放つ一撃。了平はそれに応えるように、拳闘士としての天性の素質で、そもそもそれほど難しいわけではないこの必殺技を盗み取った。

そしてそれを放つ。

巻耳の問答無用拳を身をかがめて躱し、零距離で溜めを作った左拳を左胸へ向けてまっすぐ伸ばす。

極限問答無用拳(マキシマムバーニング)!」

巻耳の体が崩れ落ち、了平は座り込んでボクシング部の部室の壁にもたれかかる。

「ビッグバンアクセル!」

詰草をKOした綱吉も、疲れ切った表情だ。

しかしここまででもほんの序曲なのである。

そしてここから、曲は変調を迎えるのだ。




飛縁魔さんも好きで、どうにかこうにか、何らかの形で関わらせたいと思ってたので、澪標兄弟に絡めて問答無用拳だけ使わせて頂きました。
澪標兄弟については次の解説にて。


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隠し弾4設定解説その3

澪標兄弟とその他零崎勢の紹介となります。 何とか頑張って次の話を仕上げなくては…


澪標詰草

澪標巻耳

 

読みはつめくさとおなもみ。匂宮の分家、澪標のはぐれもので、フォックスファミリーの一員。

合気と飛縁魔流の格闘術のハイブリッドで戦うが、それ故に他の澪標と相容れず、失敗作として捨てられたところを狐に拾われる。

二人とも引き締まったシャープな体つきの青年で、同じデザインの赤いシャツを白いインナーの上に羽織っている。

一応それっぽい解説をさせてもらうと詰草のほうは普段からクールに振る舞う、早蕨刃渡のような人物。刃渡りよりは肉親に対する情は厚いが。ついでにクールボケ。巻耳は戦闘時以外はお調子者。しかしツッコミスキルが高く、詰草へのノリツッコミの制度は他の追随を許さない。

俺の脳内ではツナ、いーちゃん、人識、巻耳でツッコミ四天王というカテゴリが生まれている。

高海と美空が嫌い。

 

式岸軋騎

 

元シームレスバイアス。38歳。零崎軋識。(バッドカインド)

うまいこと軋識の死体をでっち上げて生き延びていたことにさせて頂きました。

生活費はネットオークションを使った転売でまかなってる。けっこう稼いでるらしい。

舞織の電話で引きずり出された。

ちなみに素手。

軋識としては表に出ないので基本的にキャラは作っていない。ただし人識の前ではときどき語尾が「ちゃ」になることも。

 

零崎問識

 

元石凪調査室。20代半ば頃。石凪砥石。

これまた舞織に電話で引きずり出された。

石凪と死吹と零崎のハイブリッドであるが故に、全てに精通しているカンジ。

萌太みたいに魂のサーチもできるし死吹の身体支配も使えないまでも跳ね返せる。零崎の共感覚も所有している。

死ゃべり方も相変わらずのしの音が死になるもの。

ある意味殺しのハイエンドという認識。

 

おまけ(字数稼ぎとも言う。)

 

フルアーマー人識

 

感電死した中学生の持ち物をいくつかとってきた人識。

目に見える装備は教材の裁縫セットからとってきた裁ち鋏とバットケースから取り出した金属バット。あとはブチ切れているので殺気が尋常じゃないほど怖いので、<こっちに来るな!>で本当に一歩も進めなくなる。これについては支配と言うよりもただ単純に足がすくむだけ。

どれも微妙にずれてはいるものの一応双識の自殺志願(マインドレンデル)、軋識の、愚神礼賛(シームレスバイアス)、曲識の、少女趣味(ボルトキープ)による音楽支配をイメージしててんこ盛りにしてある。本体性能は普段よりやや高め(体の負担について一切意識していないから)。

 




最初に打ち込んだら文字数が足りずに受け付けてもらえなかったので四苦八苦しましたが、どうにかこうにか受け付けてもらえるところまで持ってくることができました…ふう。
それでは次回でお会いしましょう。ちゃおちゃおー。


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標的10 人類最強(人類最恐)

出したいなあ出したいなあと思っておりました。
ついに登場哀川さん!曲識との絡みもどうにか書きたかったので遺産のCDという形で。


くっはははっ。おもしれえなおまえ!

 

・・・・・

 

旋律との戦いで体にガタが来たので絶対安静で入院させられている人識は、目を閉じて音楽に陶酔していた。

「人識君、これ、なんて曲ですか?」

「零崎曲識作曲NO.74、『土管』だ。」

舞織の質問に、目を閉じたまま応える人識。

「あー、義手の時に仲介してくれた零崎さんですか。」

「そーだよ。ちなみに、この曲は癒しソングとしてときどき聴いてる。」

ちなみにこの癒しという言葉、ガチである。曲識曰く鎮静効果のある曲だそうだ。

罪口商会の罪口積雪に舞織の義手の代償として人形ブラックジャックでボコボコにされたときは生演奏にお世話になった。

まあ、それはそれだ。

「ひ、人識くーん…」

「な、なんだよ、伊織ちゃん…」

ドアの外からなんとなーく赤い気配が…と、病室の外を指さす舞織。

「ま…まさか…ないないない!絶対にない!あるわけない!こんな時に限って死色が出てくるわけがな…」

ばんっ!

「おーっすお洒落ガンバリストー!暇つぶしに見舞いに来てやったぞー!」

ごんっ!

「痛いです人識君…」

「すまん、不可抗力だ…」

言わんでも良さそうだが、敢えて解説させてもらうと…

突然死色が部屋に入ってくる→人識と舞織がずっこける→お互いにヘッドバットを喰らわせる。

で、死色の真紅こと人類最強の請負人、哀川潤、遅ればせながら登場である。後ろにはいーちゃんと玖渚の姿もある。

 

・・・・・

 

と、いうわけで、ぼくが連れてきた哀川さんのせいでちょっとした騒ぎになった病室である。

「哀川さん、病院なんですから少し位遠慮して下さい。」

「あたしを苗字で呼ぶな。苗字で呼ぶのは敵だけだ…って、いーたんおめー何回このやりとりくりかえしゃ気が済むんだよ?」

遭遇回数とイコールですね。と、しれっと言ったら鉄拳が降ってきた。

「で?仕事の状況は?」

手こずってたら手伝ってやろーか?などとほざきやがる哀川さんにぼくは平然と

「順調ですよ。とりあえず護衛対象にも狐さんのことは伝えましたし、ちぃくんに調べてもらったところに曰くもうあっちに残ってるのは裏社界の人間と、木の実さんくらいのものですから。」

と、これ見よがしに肩まですくめてやった。

「で?お洒落ガンバリスト。」

「なんだよ?」

「この曲、曲識のやつだろ?」

「ああ、にーちゃんが世界に3組だけ残したアルバムだよ。」

零崎が言うには6年前に死んだ一賊の一人が自分の演奏を記録したものらしい。

1組は親戚で、彼の知るところの唯一生きているとおぼしき零崎に、もう1組はかなり親しい間柄であった罪口積雪に、最後の1組は…

「これもらってくるときにいっしょに置いてあったメモに書いてあったぜ。最後の1組は真紅。アンタに渡せってな。」

そうか。とだけ言って哀川さんがその1組を受け取った。

「アンタのにはボーナストラックが入ってるって書いてあったけど、なんなんだろうな?」

「予想はつくぜ。」

いかん。このままではぼくらがほったらかしになってしまう。それは避けたいし、一応心配ではあったので

「で、あとどれくらい入院することになるんだ?」

と聞いてみた。はたして零崎は

「先生は1週間ぐれえっつってたな。」

どうやら順調に回復しているらしい。

ところで。と哀川さんが病室にいる全員を見回し、口を開きかけた。

「あたしが持ってきた情報…オイ、そこの。さっさと入ってこい。」

こねーんならこっちから蹴りに行こうかなー?なんてのたまいながらドアの方へ歩いて行く。

体を癒す場所におけるこの所行…アンチ癒し系だ。リバース和み系だ。初対面から全く成長してねえよこの人。

で、ドアのところで話を伺っていた浅黒い肌の男とその隣で同じように息をひそめていた線の細い青年が入室してくる。浅黒い肌の男はたしか<チーム>の式岸軋騎さん…だったかな…もう一人を見た零崎は舞織ちゃんを少しだけ見やり、問識まで呼んでくれやがってと呟いた。どうやら彼は問識と言うらしい。

「で、一応役者は揃ったわけだから言わしてもらうぜ。あたしが持ってきた情報だが、イタリアのカタファルコ島でつい最近、爆発事件が起きた。なんでも、島の中心部にある領主の館の地下で何かがあったらしくてな、まるで凍り漬けの何かが自分で氷をぶち破ったような痕跡があったそうだぜ。」

 

・・・・・

 

「で、気分はどうだ?人類最恐。」

「悪くないな。」

ウェーブのかかった髪の筋肉質な男は狐面の男にそう返すと、近くに置いてあった花瓶をいとも容易く、指だけで粉微塵にしてみせる。

「寧ろすこぶる良い。」

「『寧ろすこぶる良い』ふん。まあ、ご健勝で何よりと言ったところだな。それより例の件…本当に受けてくれるんだろうな?」

「無論だ。世界の終わりは我とて見たい。」

「期待してるぜ、パーヴェントさんよ。」

狐面の奥で、彼の瞳が細くなった。

 

・・・・・

 

『このメッセージをあなたが聞いていると言うことは、僕は既にこの世に亡いということだろう。人識はちゃんとあなたにこのアルバムを渡してくれただろうか?私には確認のしようがないことだが、このメッセージを聞く者が哀川潤であることは既に僕の中では予想されていた…』

かっこつけてんじゃねえよ。そういって潤は椅子に座り、グラスを傾けながらメッセージを聞く。

『もしかしたら死ぬ目際に会っているかも知れないし、そうでなくても録音後に会っているかも知れないが、敢えて今あなたにこの言葉を贈ろう。』

暫くの沈黙…備え付けのスピーカーの向こうで曲識が決意するように息を吸い込むのを感じた。

『僕はあなたが好きだ。きっとそれはどんなになっても変わらない気持ちだろう。どうか、受け取って欲しい。けして忘れないでくれとは言わないが、せめて記憶の片隅にでも、僕のことをとどめておいて欲しい。』

「曲識のやつ、縁起の悪いこと考えてやがったな…それに、忘れるわけねえだろうが。」

『だからこそ、僕はあなたに、一人の音楽家、零崎曲識としてこの曲を捧げる。作曲、零崎曲識…』

『「作品NO,欠番(ゼロ)、ままごと」』

メッセージの結びに込められたその曲の想い。それをしっかりと受け止めるように潤は被せて言った。

「心配すんな。あたしもお前のことは好きだからな。ひょっとしたらいーたんよりも…な。」

繊細な旋律が流れ出す。彼女は全身でそれを味わうように目を閉じた。

 

・・・・・

 

同時刻、某都某所にある国際空港に一人の青年が降り立った。

髪は銀に近い水色。二十歳位だろうか。鷹のように鋭い光を碧眼に宿している。

と、迎えに来ていた綱吉が青年に駆け寄った。

「ジェラーロさん!」

ジェラーロと呼ばれた青年はそちらの方を向くと

「ボンゴレ。元気そうで何よりだな。」

そういって右手を振り返す。しかし、防寒性の高そうなファーのついた白いコートの左袖は微動だにしない。碧眼にしても、綱吉のことを見ているのは右目だけで、端正な顔を大きく横切る傷が左目の上を走っている。

「その傷…」

「まさかパーヴェントが自力で氷を脱するとは思わなかった…まあ、一人で全開のパーヴェントとやり合ってこの程度で済んだんだ。充分に幸運だったよ。」

他の部分に異常がある様子ではないが、どうやら左腕と左目を失ってしまったようである。敢えてその時の様子を想像してみるに、上半身の左側に攻撃を受け、命こそ助かったものの障害を残す体になってしまったようだ。

「でもなんでパーヴェントが…」

「さあな。アレは俺やお前の先祖が封じ込めていたはず…未来での一件もあったが、アレはあくまでも意図的に復活させたもの…いやまて、たしかあのとき…」

ジェラーロが急に黙り込んだので、少々の驚きを浮かべた顔で綱吉は彼の顔を覗き込む。

「そうだ…いたんだ…あのとき、あの場所に、俺と、パーヴェント以外にも、バルテスカの生え抜きを何人か従えた狐面の男が…」

綱吉の頭をよぎるのは先日会談を行ったばかりの戯言遣いの顔。たしか彼はこういってなかったか?

”狐面の男、人類最悪の遊び人、世界の終わりを見たがった、見たがっている人、、西東天”

「もう一度、会ってみたい。いや、なんだかよく分からないけど会わなきゃならない気がする…」

かくしてボンゴレ雪の守護者、バルテスカファミリーのボス、ジェラーロが戦場へと舞い降りた。

策師の萩原子荻であればきっと盤上は全く違うものに変わるとでも言うのだろうが。あるいはその程度の不確定要素は考える価値もないとでも言うのだろうか。

 

・・・・・

 

「ふうん。しかしホントに役者は揃った!みたいなカンジになってんなー。」

と、再びボンゴレサイドとぼく達の会談の席が設けられ、その席で開口一番にかの人類最強、哀川潤が言った台詞がこれである。緊張感のかけらもない。

「潤さん、少し黙ってて下さい。」

ぼくは一本だけ釘を刺して綱吉君を見る。

「で、今回の目的はなんだい?」

情報交換です。と綱吉君は言ってぼくの目を真っ向から見据える。正直そんなことができる人間をぼくはそれほど見たことがない。というか佐々沙咲さんには墨汁をどろどろに煮詰めてぶちまけたようなドス黒い目とか言われたし。というか今でも多少はマシになったが斑鳩数一さんからの評価はあまり変わっていない。本当にどうしようといったカンジだ。

「君は…目をそらさないんだね。」

「はい?」

戯言だよ、気にしないでくれ。と、左手をヒラヒラさせながらぼくは応える。

ちなみに遅ればせながらメンバーを紹介させてもらうと、ボンゴレサイドが綱吉君、獄寺君、山本君、リボーン、ジェラーロという男の人の5人。ぼく達はぼく、哀川さん、式岸さんの3人だ。

「こちらにはパーヴェントについての情報があり、そちらには西東天の情報がある。取引としてはそれほど悪いものではないと思いますが…」

「等価交換というやつだ。」

綱吉君の台詞に被せるようにしてジェラーロ(ぼくのほうが5つ上なので敬称はなし)が言う。

と言うかイタリア人、どこの錬金術漫画だよ。

「そういわれちゃ俺としてはこう返さざるをえんだろうが?等価交換なんか必要なし。蹴って殴って吐かせるだけだ…ニュアンス的にはこんなカンジだ。」

軽く肩をすくめながら言う式岸さん。と言うかぶっちゃけアンタそういうキャラだったのかよとか思わざるをえない。全然クレバーに見えねえよ。

「いいこと言うねえグリード君。」

アンタものってんじゃねえよ。

かくしてグダグダの内に会談の幕は上がり、階段が現れる。唐突に…会談場所である沢田家の庭に入ってくる足音の主…

「よう、邪魔するぜ。元気そうだな俺の敵」

人類最悪、自らの手によって。




設定については次の次に投稿させて頂きますので、しばしお待ち下さい。
しかし本当によくここまで描いたものだよなあ…これ最初100%勢いだったんだよな…
それでは完結目指して頑張らせて頂きますので気長にお待ち下さい。
ちゃおちゃおー。


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標的11 裏の社会(裏の世界)

きっと冒頭書いたとき眠たかったんだと思う。


ぶるぅぁぁぁッ!

 

・・・・・

 

今回の出現はどうやら前回とは全く違ったものらしく、少なくとも前回のように偶然の出会いというわけではなく、彼はいけしゃあしゃあとぼく達の目の前に姿を現した。

なんだろう、この状況…というかこの空気…<新作ゲームを買いました。ただしデータは使用済み>みたいなっ!

…いかん。気まずさのあまりプチ巫女子ちゃん化が…

「なんなんだよこの登場の仕方は!テメエそれでも黒幕か!<初代ドラクエの電源オン、ただし最初は竜王の城>みたいな空気じゃねエか!」

獄寺隼人の文字通り嵐のような罵倒を受けても西東天はどこ吹く風。いつものように『なんなんだよこの登場の仕方は』ふん。と復唱して流す。

「有り体に言えば宣戦布告だ。昔みたいに才知のやつに任せてもよかったんだがな…」

死んじゃいましたもんね。

「まあ、そういうことだ。しかしまあ、俺が動こうが、他の誰が動こうが、そんな物は全部同じことだ。」

で、宣戦布告?

「ああ、そうだ。久しく俺が腰を上げたんだ。今度はこの腰骨が折れるまで頑張れよ俺の敵。」

と、ここで再び獄寺君が吼える。

「テメエ、初代のこと無視してんじゃねえ!」

「『初代のこと無視してんじゃねえ』ふん。そいつが今回のターゲット…いや、お前自身もそうみたいだな。」

世界のバランスを司るもの。狐面の男はそう続ける。

「7つのボンゴレリング…いや、今はボンゴレギアと言うんだったか…それに同じく7つずつのマーレリングとおしゃぶりの器…」

その単語を聞いたボンゴレサイドの面々に緊張が走った。

「何故それを知っている…とでも言いたげな顔だな。ふん。裏社会など表世界の一部に過ぎん。裏世界にある程度まで触れてしまえば情報の開示率は圧倒的に高い。少なくとも暴力の世界よりも圧倒的に楽に情報は集まったさ。」

「まあ、それについて否定はしねえさ。」

動揺する綱吉君を戒めるような口調で式岸さんが言う。

「有り得ないなんてことは有り得ない…現に情報面でも戦力面でもほぼ無双だったところのお前らが殺し名のことを知らず、また、たかだか匂宮の分家如きにボロボロだ。」

「まあ、それはそれだ。ところでお前、沢田綱吉…だったな?ネオ・ボンゴレⅠ世。」

「俺!?はい、合ってますけど…」

それからジェラーロ。と言って狐面の男はジェラーロの方に向き、指さす。

「山本武に、獄寺隼人…ふん。そこにいるのは裏社会最強のクソガキ…みんなみんな、俺とすくなからずの縁があるようで、助かったぜ。」

縁?そうきくのは山本君。哀川さんも式岸さんも眉をひそめている。

「人類最強、そして人類最終を作り出すことを目的とした研究施設…ER3システムのMS-2と言う部署…俺達3人…順哉と明楽が所属し、そして俺の娘…哀川潤の続き、想影真心を作った組織…その縁で俺と俺の敵は知り合い…そしてそれ以前…俺の娘の製造過程においてお前達、ボンゴレとバルテスカは俺の娘…ひいては俺との縁を持った。」

人類最恐を参考に人類最強を作ったのだから。クククッ。と狐面の男は犯しそうに笑う。嗤う。

「またお前だよ、俺の娘。本当に凄いモンだな。まるでお前自身がネットワークの中心部だなあ?」

「で、人類最恐ってのは一体どういうものなんだ?」

これまでほとんど喋らなかった、と言うか彼はムードメーカーらしいので、多分雰囲気を壊さないために黙っていたのだろう、山本君が質問した。

「『人類最恐ってのは一体どういうものなんだ』ふん。お前達の呼び名で行けば…パーヴェント…だな。」

 

・・・・・

 

「と言うわけだ。」

「へー…」

所変わって零崎人識の病室である。

「なにやら…とんでもないことに首を突っ込んで死まったようですね…」

そもそも、先の会談に軋騎が同席したのは玖渚友の代理であり、また、人識の代理でもあったわけで、つまりはこの街にいる他の零崎に情報を伝達しているというわけだ。

「ていうか、とんでもないことはいつものことじゃないですか。」

問識の苦笑混じりの呟きに意地の悪い笑みで舞織が茶々を入れる。

「まあ、そーだよな。俺や大将や伊織ちゃんはもちろんのこと、問識なんてとんでもないハイエンドだろ?っと。んで、あの駄狐、なんつってたんだ?」

「ああ、死色の真紅を創る上で利用した100年ほど前の化け物を復活させて、今度はあの欠陥製品じゃなしに、ボンゴレの上層部を潰すって話だ。」

 

・・・・・

 

「で、なんでそれが世界の終わりに繋がっちゃうわけー?」

「なんでも73(トゥリニセッテ)とかいうモンが世界のバランスを司ってる生命のエネルギーだとかでな、全部で21ある内の、とりあえず7つを先にブッ壊しちまおうって話だ。あのクソ親父、妙なところが手抜きめいてんな。」

「まあ、ゆくゆくは21個全部を…とかって話だけど、一番居場所が分かりやすいのがボンゴレだからって話だ。」

僕たちは玖渚に今回の会合について報告していた…というか哀川さん、アンタいつからここにいるんだよ

「あん?いーたんとほぼ同時だよ。つーかあたしを苗字で呼ぶな。苗字で呼ぶのは敵だけだ。」

失礼しました。

「しかし、どんなアプローチを仕掛けてくるのやら…オラ、わくわくしてきたぞ!」

「どこのサイや人だアンタは。」

つーかリアルでこええんだよ。

しかし本当にどうくるんだろう?

 

・・・・・

 

裏社会を含め、最大最強の力を持ち、一般人達が無自覚に力を持っているこの世界のことを表世界、あるいは普通の世界と呼ぶ。

普通の世界の内訳はこうだ。

ボンゴレやシモン、バルテスカ、ミルフィオーレなどのマフィアが闊歩する裏社会、一般人達が暮らす表社会、ERシステムなど、一部が裏世界に食い込んだ組織が存在している狭間の世界だ。

ちなみに普通の世界をパソコンのOSで例えるならウィンドウズがそれに当たる。

赤神家、氏神家、謂神(いいがみ)家、檻神家、絵鏡家の五つの財閥が束ねる財政力の世界。これはマックOSがそれに当たる。

壱外、弐栞、参榊(さんざか)肆屍(しかばね)、伍砦、陸枷、染の名(しち 名)とばして捌限(はちきり)の八家と、それらを統括する玖渚機関が核となる政治力の世界。

ここはユニックスだ。

最後にOSの存在しない世界。

匂宮雑技団、闇口衆、零崎一賊、薄野武隊、墓森司令塔、天吹正規庁、石凪調査室の殺し名七家、対を為す時宮病院、罪口商会、崎の字無しで奇野師団、拭森動物園、死吹製作所、咎凪党の呪い名六家。

そしてそれらと関わりの薄い者や分家を含めた数多の人外達が跳梁跋扈する戦闘能力の世界。

このうち財政力、政治力、戦闘能力の3つの世界のことを総称して裏世界と呼ぶ。

そしてごくごく少数ながらもそれら4つの世界全てに深い関わりを持つ人物が存在する…

                              十全でしょう?お友達(ディアフレンド)

 

・・・・・

 

「…というのが裏世界についての概要だ」

『kouta isimaru』の署名の入った封筒の中からとりだした紙を綱吉の部屋の机に広げてジェラーロがいう。

「ところでジェラーロさん、このコウタ イシマルって人、一体誰なんです?」

「最後に追記されていたごく少数の一人だ」

指で空中に石丸小唄と漢字でスペリングしながらジェラーロは続ける。

「こっちの紙によると…彼女の他に3人…人類最恐の請負人、死色の真紅、砂漠の鷹(デザートイーグル)赤き征裁(オーバーキルドレッド)等々様々な渾名を持つ人類最強、哀川潤…さっき会ったな。そしてあの狐面の男…西東天。最後に本名不詳、人類最弱の請負人の戯言遣いだ。」

凄いな…山本が呟く。

「俺達、そんなすげえ人とお近づきになっちまったってことか?」

「そういうこったな。」

獄寺も相槌を打って零崎の文字を指さす。

「あの顔面刺青も、零崎って呼ばれてたしな。」

「近所で死んでたのも奇野って人だったし、こないだ襲ってきたのは罪口っていってたよね?」

「ああ、たしか罪口積木…だっけ?」

骸を襲ったのも時宮だし…といいさして黙り込む綱吉に獄寺は両手をヒラヒラさせていう。

「大丈夫ッスよ。並盛病院のところで死吹ってやつも拭森ってやつもやられてました…し…」

そこまで言って黙り込んだ獄寺。脳をフル回転させているといった表情で顎に指を当てて考え込む。

「待って下さい、たしか並盛病院にその顔面刺青も入院してる、そして奇野のやつはまるでナイフというか、糸で刻まれたような死体の様子だった、罪口の倒され方はジグザグとかいう糸の技だった…拭森が最後に目撃された場所は顔面刺青の病室から出てきた男を尾行しているところ、そしてその病院の前で死吹はナイフで殺されていた…初代!」

「ああ、間違いないよ!」

「既に戦いは始まっていたということか!?」

綱吉達に声を荒げながら尋ねるジェラーロ。一つ頷いて山本は

「ターゲットだってのに、バレないように事が進んでいたらしいっすね。」

と返す。

「逆にばれても良いという局面になっているということは…」

はい。と綱吉が頷いて三人の顔を見回した。

「事態はそこまで進んでいる。」




玖渚機関がめんどくさかった…宝月社のムック片手にキーボードぽちぽちうっておりました。
それでは。
ちゃおちゃおー。


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隠し弾5 零崎常識の人間爆弾

常識さんってどんな人…?と思って、思って思って思って考えた結果がこの話。
知らぬなら、作ってしまえ、設定を。
というわけで今回は2話連続投稿。


零崎…零崎なあ…

「どうしたの?隼人」

ああ、初代。と物思いにふけっていた様子の獄寺は慌てて振り向いた。

「さっきから落ち着きがないけど。」

「いえ、顔面刺青よりも前に零崎の人間にあったような気がするんですよ。」

ずっと昔にですけど。と言い足して獄寺はジェラーロに声をかけた。

「なあ、零崎の有名どころっていうと誰がいるんだ?」

「なんだ?藪から棒に…まあいい、やはり群を抜いて有名なのが自殺志願(マインドレンデル)、二十人目の地獄、首斬役人こと零崎双識だな。」

「違う気がする。」

獄寺の呟きに眉をひそめながらもジェラーロは続けた。

「次点として上げられるのが愚神礼賛(シームレスバイアス)。かつてもっとも荒々しい手口で、もっとも多くの人間を殺したといわれる零崎軋識だ。」

「こいつでもない。」

「さっきの二人に加えて零崎三天王といわれるのが音使い、少女趣味(ボルトキープ)こと零崎曲識。少女以外は殺さないという菜食主義者(ベジタリアン)で、また、厄介ごとには首を突っ込まないところから『逃げの曲識』の異名をとっている。一方で音楽家でもあり、北海道の某市でクラッシュクラシックというピアノバーを経営していたらしい。」

「全然違う。」

「最後は寸鉄殺人(ペリルポイント)こと零崎常識(つねしき)。爆弾を使う殺じ…」

「そいつだ!」

獄寺の裏社会における通り名は二つ。ひとつは綱吉へのぶれない忠誠心とその圧倒的実力からつけられた『ネオ・ボンゴレⅠ世の右腕』。

もう一つはそのダイナマイト使いの見事さからつけられた『スモーキン・ボム』

「もう6年も前になります。俺は、あの日いつものようにイタリアの路地裏で荒れていました。並盛に来る、3年前のことです。」

 

・・・・・

 

どんっ。

「おっとすまねえ。余所見しちまってたぜ…ケガはないよな?」

その日、隼人にぶつかったのは跳ね回る黒髪を顎のあたりで切りそろえた日本人であった。

憮然とする隼人にその男は悪びれもせずに言葉をかけてくる。

「そ-むくれんなよ。悪かったって。ところでよ、道に迷っちまったんだけど、教えてくれねえか?」

つっても人生の道を聞いてるわけじゃないんだけどな。そういって男はけけけと笑う。

当時の隼人は、今もまだそう言われればそうなのだが、更に沸騰しやすい瞬間湯沸かし器だった。

「ふざけんな!そっちからぶつかっといてその態度はどーいうことだ!」

ぶちぎれて隼人は煙草に火をつけ、ダイナマイトに着火する。

「果てやがれ!」

爆煙。何も見えなくなる。

「どーだクソ野郎!この獄寺隼人様をなめてんじゃねえぞゴラア!」

気を吐く隼人の後ろからその時声が聞こえてきた。煙と爆発の余韻をも切り裂く強い声だ。

「ふうん。テメエがスモーキン・ボム…いいじゃねえの。ホントにいいじゃん。ガキにしちゃいい殺気だし、躊躇う様子も微塵もなかった。油断こそ減点対象だが、ダイナマイトの扱いもガキにしては悪くない。表のプレイヤーじゃ足下にもおよばねえだろうな。けけけ。そう構えるな。褒めてるんだぜ。」

「な…なんだテメエは…」

そーさなー。いっちゃってもいーけどどーしよーかなー。などとふざけて見せながら男は名乗った。

「いいだろ。教えてやるよ。俺の名は寸鉄殺人(ペリルポイント)の常識、零崎常識だ。」

そういいながらポケットに突っ込んでいた両手を取り出してみせる常識。その指の間にはダイナマイトがはさまれていた。親指と人差し指、人差し指と中指、中指と薬指、薬指と小指に各2本、それが両手で計16本のダイナマイトだ。

「人にもよるが俺のことを爆熱の殺人鬼なんていうヤツもいるがな。けけけ。言う程のモンじゃねえっつーの。」

全身から迸る殺気に身をすくませる隼人に向けて常識は試験だ。と前置きして宣言する。

「俺の攻撃から逃げ延びられるか?試してやろう。」

「うう…」

「オイ、返事はどうした?受けねえんなら死ぬだけだぜ?生き延びたけりゃやるっきゃねえんだよ。」

「だ…誰がやられるかよ!いいぜ!やってやらあ!」

いい心がけだ。命は大事にしないとな。ともう一度けけけと嗤って常識は言う。

「そんじゃあまあ、零崎を始めるか。まずはこれだぜ、2倍ボム!」

爆煙と爆炎が路地裏を支配した。

 

・・・・・

 

「てなワケで、どーぞこーぞ煙に紛れて生き延びたわけですよ。」

青ざめた顔で思い出話を語り終えた獄寺。

「雲雀以外に逃げた相手といやあ、後にも先にもあの寸鉄殺人だけでしたね。」

「もし再会したらどうするの?」

好奇心からの綱吉の問に獄寺は真っ向から

「爆弾使いとして、あいつを超えたと思い知らせて見せましょう!」

と、そう答えた。ちなみに獄寺の2倍ボムは、常識の技からヒントを得て開発した物だとか。




というわけで設定も投稿させて頂きます。
ではまた。


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隠し弾5 設定解説その4

今回は最○シリーズと常識さんになります


西東天

 

人類最悪の遊び人。年齢不詳。フォックスファミリーボス。

ご存じ狐さん。今回の作戦はパーヴェントを利用してボンゴレギア、マーレリング、アルコバレーノの炎の器の73を一つ残らず破壊、生命力の枯渇による世界の終末をもくろむ。

最終目的はあいかわらずのディングエピローグ。

口癖はご存じ「ふん。」「『相手の台詞』ふん。」「そんなのは全部同じことだ。」ちなみに全部活用形がある。

ちなみに架城明楽がいないのに狐面を被っている理由は「俺の敵にとって俺は狐さんだからな。」らしい。呼称は大半が狐さんや狐の旦那だが、まれに「駄狐」とか「クソ狐」とかも言われる。

 

パーヴェント

 

人類最恐。年齢不詳。フォックスファミリー最恐の守護者。CV若本。

DSのフェイトオブヒート3から。

ラストバトルに使えるキャラクター…哀川さんに対抗できるキャラクター…として考えながらyoutubeでFOH3の動画を見ていたら良さそうじゃねエか!と相成った次第。

ちなみに俺はクローム達と合流するところで敵が強くて詰んだ。

ぶるぁぁぁ。

特に必殺技なども持たない。強いて上げれば力任せにぶん殴るぐらいのもの。

容赦もなければ気紛れもない人。マジこええよ。

 

ジェラーロ

 

雪の守護者。二十歳前後。バルテスカの10代目。

DSのフェイトオブヒート3から。

ぶっちゃけた話、パーヴェントを出すために引き摺ってきたようなもの。立場的には戦闘潮流のメッシーナ師範代(笑)が近いかも。

9代目やD同様未来での戦いの記憶を受け取っているためツナ達と共闘してパーヴェントを凍り漬けにしたことを覚えている。

FOH3での戦いを経てボンゴレに対する鬱屈した感情はなくなっており、今作では登場しないディーノに近い役割を振られることになる。

これまた身も蓋もない話、ディーノの代役として引っ張ってきたキャラクター。

 

哀川潤

 

人類最強の請負人。年齢不s「グハッ!」。フリーの請負人。

説明不要の請負人。これといって語ることもなし!石丸小唄は行間で大活躍中。

パーヴェント復活の情報を伝えたりと、七々見(ななななみ)位にしか見えない活躍振りである。で、性悪な友人を放って置いて哀川潤はアクセル全開。深く考えずに暴れまくる。身内に甘いのもあいかわらずのご様子。

いささか蛇足的ではあるが、今作における初恋の相手は零崎曲識という設定。

 

零崎常識

 

寸鉄殺人(ペリルポイント)。故人。

爆熱の殺人鬼。獄寺の回想に登場する。

キャラ設定などは人間シリーズ本編においてほんの少しばかり語られているところから拾い集め、人識の性格をベースにして構築した。




これ見てるとけっこうフリーダムな俺。自重しやがれ俺。
ちゃおちゃおー。


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標的12 前夜

今回は狐さんが同じ事を二回言っていますがまあお気になさらず。相手は別々だし、大事なことなので二回それぞれに言いました。
しかし積雪さん、けっこうクセになる人ですねえ。


人が使うのではありません、武器が人を使うのです。

 

・・・・・

 

式岸軋騎名義で借りているホテルの一室に、その夜一人の男が尋ねてきた。

「どうも、あなたが軋識さんでよろしかったですね?」

「ああ、罪口積雪さんだな?」

ええ、と頷くと着流しを着た壮年の男を部屋に招き入れる。

積雪は早速肩から提げていた細長い鞄をおろして軋識に中のそれを見せる。

「さすが罪口商会…それも統括クラス…すげえ出来だな。」

積雪から離れて軽くそれを振ってみる。

「ああ、これだ…このカンジ…前と同じ、いや、寧ろもっといい!」

「注文の品、新しい愚神礼賛(シームレスバイアス)。気に入って頂けてよかった。」

軋識の手に握られているのは艶消しブラックの全鉛製一体鋳造釘バット。かつて裏世界にその名を轟かせた愚神礼賛だ。必要性を感じた軋識が積雪に連絡したのはほんの一日前だというのに、ここまでの出来のものを用意してくれた。

かつて曲識の依頼で漆黒のマラカス、少女趣味(ボルトキープ)を2日で仕上げたことのある男だ。その短時間で彼はグランドピアノ並みの調律と鉄パイプを大きく上回る格闘武器としての強度を兼ね備えたマラカスを作り上げていたし、人識の依頼で舞織の義手を作ったときには装着予定者を見ることもなく、それも1日で完璧な物を仕上げてきた。

罪口積雪とはそれほどの腕を持つ職人なのだ。

「で?代金…いや、代償はなんだ?」

「そうですね、私が彼と知り合ったのは7年前…彼が24歳の時でしたから、それ以前の曲識君についての思い出話で、いかがでしょうか?」

「いい商売してやがるぜ…おっと、愚神礼賛を持ったからにはもう普通に喋るわけにはいかないっちゃね。じゃあまずあいつと出会ったときの話からだ、レンのやつが初めてあいつを連れて来たっちゃが…」

夜通し共通の知人、軋識にとっては弟兼親友であり、積雪にとっては自身がファンである音楽家であり、親友であった殺人鬼、少女趣味(ボルトキープ)零崎曲識についての思い出話で、夜通し花を咲かせる二人であった。

 

・・・・・

 

奇しくもそれは軋騎さんが武器を手に入れたときと同じであったのだが、ぼくはその時、一本の電話を受け取っていた。

玖渚がシャワーを浴びている間、ぼくは本を読みながらこれからのことについて考えていたのだ。

狐さんははたしてどういう手段で戦争を仕掛けてくるんだろうか?そう考えたとき、ぼくの携帯がコール音を響かせたのだ。

「はいはいっと…知らない番号だな…まあいいや。」

通話ボタンを押してGET BACKを停止させ、電話に出る。

「どちら様?」

『おめでとう、電話番号ゲットだな。電話帳に覚えさせておけよ、俺の敵。』

「!…何の用ですか?」

『『何の用ですか』ふん。決まっているだろう、明日勝負を仕掛けるから、それについての業務連絡だ。三回勝負だし、一応そう考えてはいるが、一戦落としただけでもどうなるかは想像がつかん。』

まあつこうがつくまいが同じ事だがな。と付け足して狐面の男は言う。

『で、どうするんだ?この賭け、受ける(コール)のか?降りる(ドロップ)のか?はっきり言葉に出してもらおうじゃねえか、ええ?戯言遣いよ。』

随分とえらそうですね。そう返してぼくは啖呵を切ってやる。

「みんなやる気十分みたいですし、ぼくはダービーとは違いますからね、はっきり言ってやりましょう。」

ほう。という声が電話の向こうから聞こえるが、ぼくは構わず宣言した。

「コール!やっつけてやりますよ、狐さん。」

『ククッ。おもしれえ,やはりお前を俺の敵としたのは間違いじゃ無さそうだ、よかったぜ。開戦は明日の午後3時だ。しっかり覚えて準備しろよ、俺の敵。』

じゃあな。と狐面の男は電話を切りかけ、そして付け足すように言う。

『覚えてるだろうな、俺の名は西東天だ。もう一度しっかり覚えて刻み込め。』

「そっちも覚えてるか怪しいモンだからもう一度教えましょう。ぼくの名は×××××です。覚えなくてもいいですよ。どうせ忘れられない名前になる。」

暫くの沈黙、回線を通して睨み合った後、どちらともなく電話を切った。

「いーちゃん、シャワー空いたよ。」

「OK、じゃあぼくもシャワー浴びてねることにするよ。」

玖渚にそう応じてぼくもシャワールームへ向かおうとして、呼び止められた。

「心配、要らないよね?」

「…当たり前だろ?友。ぼくはお前の相棒だぞ、心配しなくていいから、信頼してくれ」

一瞬考えた後に応えた言葉には嘘も偽りもない。全てが本音。混じりっけのない本音だ。

「うん、じゃあ心配しないで信じてるから、絶対戻ってきてね。」

おう。と返事をして僕はシャワーを浴びに行き、そして眠った。

 

・・・・・

 

同時刻、並盛病院。

零崎人識が入院していた病室はもぬけの空になっている。でははたして彼はどこに行ったのだろうか?それを知るものはいない。

ただ、夜の街を見下ろせる場所に成人男性にしては小柄な影が立ち、夜風を浴びている。

その唇が開いた。

「殺して解して並べて揃えて晒してやろうぜ」

「はい、零崎を始めましょう」

後ろにいる背の高い女性が影の言葉に同調して…

二つの影がそこから消えた。

 

・・・・・

 

『たしかに伝えたぞ。沢田綱吉。』

「はい、承りました。では、俺達はあなたに真っ向から立ち向かいます。」

先ほど戯言遣いにそうしたように、あるいは6年前に戯言遣いにそうしたように狐面の男は回線の向こうで綱吉に向けて名乗った。

『西東天、それが俺の名前だ。しっかり記憶して刻み込め。』

綱吉はそれに怯まずに返す。

「俺の名前は沢田綱吉、記憶に焼き付けて刻んで下さい。」

 

・・・・・

 

かくして、夜が明け、昼が過ぎ、日が傾いて…

 

 

 

 

 

「時間だ。」

 

 

 

 

 

戦争が、始まる。




というわけでシームレスバイアス復活と相成りました。実はこの武器が白蘭がらみのすごい物で・・・と。詳しくは本編の更新にて。
ちゃおちゃおー。


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標的13 快進撃(壊!震!撃!)

ぅおっっっしゃあああああ!ストックが上がったぞぉぉぉぉ!
・・・つってもまあ、こっから加筆やら修正やらをして完成した物を上げていくことになると思います。


なめんじゃねーっちゃ。

 

・・・・・

 

とある洋館の前にいた男が、やってきた数人の学生に声をかけた。

「よー。おそかったな。」

白いランニング姿にだぼだぼのズボン、首に掛けたタオルと麦わら帽子が特徴的なその男の顔を見て綱吉は驚いた。

「式岸さん!?」

「ちげーよ。今の俺は零崎軋識っちゃ。」

ちゃ?復唱して訝しむ獄寺に軋識は続ける。

「おうよ。こりゃまあ愚神礼賛としてのキャラ作りっちゃが、この口調が知る人ぞ知る恐怖の象徴になっているっちゃ。」

なにせ愚神礼賛と自殺志願は忌み嫌われ度第一位、殺し名序列第三位の零崎一賊の二枚看板なのだ。

「それより、もうじき時間じゃねえか?」

山本の台詞に反応して腕時計を見るのは人類最強の請負人、哀川潤だ。

「ああ、たしかにそうみてえだが、しかし愚神礼賛よ、アンタなんでここにいるんだ?」

本来無関係のハズだろ?と続くはずの台詞を遮って軋識はいう。

「報復っちゃ。如何に何考えてるのかわからねえ人識のガキといえども一賊には違いない。一賊に敵対する物は全て排除するのが俺達零崎一賊っちゃ。」

「ボス…」

「ん?どうしたの?クローム?」

クローム髑髏の言葉に反応した綱吉は彼女が示す方向を見て、片手を上げた。

「こんにちは、戯言遣いさん。」

 

・・・・・

 

「やあ、綱吉君。潤さんも軋騎さんもわざわざ来てくれたんですね。」

さて、とぼくは全員の顔を見回した上で周囲を示す。

「早速でなんだけど、この黒い霧って何かな?」

「パーヴェントの手下でも出てくるんじゃねえの?」

山本君がいうと獄寺君も続けて

「ありゃ手下っつーか眷属だろ」

と答えた。

「ふうん…で、早速で悪いんだけど、綱吉君と潤さん以外は待機してもらえるかな?」

ここにこの霧が現れて、そこからザコ敵軍団が現れるんなら、ちゃんと殲滅する方が良いだろう。後顧の憂いを断つ意味でも。

「あたしは一人でも大丈夫だけどな」

うわ、マジモンだよ。戦略もクソもねえよ。人類最強がアホの子扱いされるとか不名誉極まりねえぞ。

とまあそんなこんなで、途中獄寺君が「初代を差し置いて何勝手に話進めてやがる!」とか騒いだが、それも綱吉君が鎮圧し、ぼくら三人はここから動くことにした。

「で、どこに行くんですか?」

「行き当たりばったりでいーんじゃねーの?」

ダメです。と、マナーモードにしてある携帯電話が鳴った。

「メールだ…読み上げますよ。」

『よう俺の敵。きっとあてもなくさまよってるころだと思うから一応教えといてやる。並中の屋上だぜ。』

「だそうです。」

どうする?と綱吉君に顔を向けると彼は軽く頷いて同意してくれた。

「意見もまとまったし、行くとすっかね」

なんでアンタが仕切ってんだよ。

 

・・・・・

 

「るぁぁぁあ!」

ブゥンッ!

釘バット愚神礼賛が振るわれ、黒い人魂のようなモノ達を破壊していく。

「俺達の出番ってないんじゃないのか?」

「そんなだからテメエは野球バカなんだ…よっ!」

獄寺のダイナマイトが炸裂し、黒い霧を量産する。一瞬の黒煙をすり抜けた山本の太刀筋がその向こうでハンマーにも似た腕を振り上げるそいつが斬り捨てた。

「おーおー、さすがに表の最強クラスともなるとやっぱり派手っちゃねー…ふぬあッ!」

二人に負けじと愚神礼賛を振るう軋識。積み雪が最近身内から仕入れた技術で作られた強度に自信があると豪語する最新作と言うだけあってその攻撃力、耐久性共に文句なしだ。

と、そんな軋識の眼前に刀が振り下ろされる。

「おおおッ!?不意打ちとはまた…驚くっちゃねー。」

愚神礼賛を担ぎ直して目の前に現れた男を見る軋識。

没個性的な顔立ち…であるかどうかは彼の目には判然としない。

「なるほど、アンタがバルテスカの裏切りモンとかって奴っちゃね。モンゴロイドは閉鎖的だから白人の顔の違いはよくわかんねえっちゃ。」

飄然と構える軋識に再度刀が居合い抜かれる。

その刹那、彼の耳は男の呟きを完璧に拾っていた。

「―零閃―」

しゃりん!

 

・・・・・

 

「狐さんに頼まれてな、シンボルエンカウントの中ボスまがいの登場のさせ方をさせてもらうぜ。」

そういってぼく達の前に現れた男は刀を抜いた。

いやにギラギラと光る刀だ。荒れに触れたら鉄もダイヤも関係なく、それこそ斬鉄剣で斬られたみたいに障子紙同然。バッサリ逝かれることだろうと思う。

「元バルテスカファミリー、否、フォックスファミリー所属、イエーナ…いや、違うな、こりゃ俺の名前じゃねえ。」

何言ってやがる?潤さんが呟いたところで男は二イッと唇をつり上げて笑った。

綱吉君がゾクッと身をすくませる。

 

・・・・・

 

同時刻、並盛商店街であぐらをかいて座っていたその男の首筋に、ピタリとトンファが突きつけられた。

「へえ、最後の一人には誰が来るのかと思えば…ボンゴレ最強が来るか…!」

来るか…といった瞬間、後ろに立っていた線の細い青年がトンファを振り抜き、間一髪で逃れた男は冷や汗を拭って彼を睨み据える。

「どーやら3人の中で最後にエンカウントしたのが俺って事になるみたいだなあ、雲雀恭弥さん。」

「うっとうしいね。それに基本的に武器の携帯が認められるのはぼくだけだ。その刀は違反している。」

手厳しいね。と呟くと男は居合いの構えをとった。

「さて、これから俺の剣技…抜く手も見せぬ最速の居合いを披露するわけだが、残り二人といっしょにかるーく自己紹介をさせてもらおうかな?」

 

・・・・・

 

瞬間、殺気を感じて軋識が飛び退き、男が舌打ちをした。

綱吉達の前にいる男は気味の悪いニヤニヤ笑いをへばりつかせているし、居合いの構えを捕った雲雀の前の男は口元を引き締めている。

そして三人同時に口を開いた。

「罪口商会第2地区統括、罪口積木だ。」




カニャッツォに勝てん・・・というわけで鬱憤を晴らすが如く大暴れ。
ちなみにですが、冒頭で出てきた洋館は虹の呪い編に登場したユニチームの拠点です。
では次回、並行世界(閉口世界)にてお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。


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標的14 並行世界(閉口世界)

ん~…刀語も面白いなあ…というわけで、設定上問題ない範囲で変体刀を登場させてみました。
罪口と斬刀は組み合わせればとんでもないことになりそうだったんでちょっとデチューン。


並行世界原産の混成型変体刀…ってトコかな?

 

・・・・・

 

白いにーちゃん。積木は自分の工房にやってきた白髪の青年を肩越しに見やっていった。

「俺は金は欲しないが、技術を代償にモノを作る。このしちめんどくさそうなグローブと引き替えになるような技術があるってんなら、ぜひとも聞かせてもらいてえもんだな、え?白いにーちゃんよ」

ほんの数ヶ月前のことである。青年は積木にへらへらとした笑いを浮かべたままでこういった。パラレルワールドの技術じゃダメ?と。

 

・・・・・

 

「君が積木?嘘つくなよ。罪口積木はぼくの前で零崎に殺して解して並べて揃えて晒されたんだ。そんなこと、あるわけがないだろう?」

「アンタに嘘吐き呼ばわりはされたくねエな。アンタのスタンスは立てば嘘吐き座れば詐欺師、歩く姿は詭道主義じゃなかったっけか?」

好きで嘘ついてんじゃないよ。と返すと積木もどきは悠々と説明する。

「そんなこたどーでもいいんだ。いいぜ、教えてやるよ。この体はたしかにバルテスカの人間のモノだ。だがよ、そこはそれあの白いにーちゃンの持ってきたパラレルワールドの技術のおかげってやつかねえ?こんなすげえ刀が打ち上がったんだからなあ。」

訝しむ潤さん。綱吉君が積木もどきに対して質問する。

「そいつって白蘭?」

「さあなあ。俺って顧客の個人情報とかいらねえって突っ返すタイプだから。これもどうでもいい話だがな。で、肝心の刀だよ。いやあ面白い面白い。ラノベの世界にしか存在しないような刀が確かに打ち上がったんだからな。」

その世界における―と、等々と解説を続ける積木もどき。

「異端にして究極、孤高にして伝説の刀工、四季崎紀記がつくりし12本の完成系変体刀、それらを複合、昇華させて生み出した罪口積木謹製、混成型変体刀…今のところ成功作は一振りだけだが、な。」

ギラリと光る刃。ぼくにはそれ自体が意識を持っているように見えた。二人もいっしょだろう。息を呑んでその刃を見ている。

「切れ味に重点を置いて作られた絶てぬモノ無き刀…斬刀「鈍」と所有者を刀工の意思、すなわち刀の毒性によって支配する毒刀「鍍」…唯一にして絶対、至高のハイブリッド…腰に帯びた者全て…といっても今のところ三振りしか存在しないんだが…な刀…より特徴の強い方をメインに持ってきて、さしずめ毒刀「鈍」ってトコかな?」

「つまりあなたはその体を…乗っ取ったんですか!?」

信じがたい。といった表情を浮かべて叫ぶ綱吉君。と、積木、否、毒刀の姿が動いた。

「零閃!」

 

・・・・・

 

「きひっ。」

何が可笑しい。と軋識と相対する毒刀は言った。

「何が可笑しいって…つまり、テメエはなんでも切れるって言うんだよな?」

「ああ。それがどうした?なんなら試してみるかい?」

「そりゃ良い。」

軋識は言いながら愚神礼賛を構える。大上段に振りかぶり、いつでも振り下ろせるといったふうだ。対する毒刀は零閃の構え。

「零閃編隊…五機!」

しゃりんしゃりんしゃりんしゃりんガキンッ!

一瞬のうちに五度抜刀された「鈍」。そして振り下ろされた愚神礼賛は…

「なあ!?」

斬れていない(・・・・・・)。以前とは些かの違いも見受けられない姿の暴力的金属塊を軋識は力強く振り上げる。

「強度に特化した刀のことを積雪さんに言ったのは失敗だったな。お前にとって俺は最悪の相手だっちゃ。」

なにせ愚神礼賛は。といって軋識は麦わら帽子を少しだけ上げて被り直す。

「折れず曲がらずよく壊す。」

愕然とする毒刀。

「まさか積雪の兄貴が…!」

「そういうこった!」

相手のお株を奪うように軋識は愚神礼賛を居合いに構える。毒刀も慌てたように構えた。

「ぜ、零閃編隊十機!」

しゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんバキンッ!

真っ向からぶつかり合う武器。「鈍」が叩き折られ、男の体も真っ二つにされる。

「なーんとも味気ない戦闘だったっちゃねー。」

 

・・・・・

 

「出し惜しみは無しで行くぜ。」

雲雀の前。毒刀は懐から輸血パックを取り出すと零閃でそれを一刀両断した。

「鞘内に血を溜め、じっとりと湿らせることによって鞘と刃の摩擦係数を極限まで下げる…こうすることにより、抜けば抜くほど速くなった零閃は光すらも超える…毒刀「鈍」、ひいては斬刀「鈍」限定奥義、斬刀狩りだ。俺は呪い名の中じゃあ結構な腕の持ち主でね。」

まあこの体じゃないが。とわずかに肩をすくめながら毒刀は一歩踏み込む。

「寧ろこいつはもっと良い…零閃!」

「五月蠅いよ、君。」

バキン!

「バカな!?見えない零閃を叩き折っただとォ!?」

中途で折れた鈍を見て毒刀が明らかに動揺する。

「ぼくは生物としてのスペックが違うんだよ。さて、それじゃあ遠慮無く…」

咬み殺そうか。

ドギャ!バギ!ズドッ!ゴッ!ドゴォォン!

「ぎゃああああ!」

粉々になった金属片と毒刀に乗っ取られていた、今は元の顔立ちが伺えぬほどボロボロにされた男を一瞥するとあくびを一つ。

「…つまらないな。」

 

・・・・・

 

「へえ…受けるでなく、下がるでなく、仰け反って躱すか。さすがは超直感。先読みにかけちゃ右に出る者無し…ねえ?」

咄嗟に大きく体を反らし、前髪をほんの少しかすめるだけにとどめて零閃を躱した綱吉君の表情は明らかにびびってるといった様子だ。

「どうだった?」

ときくと

「あれ、空気を裂く音もしませんでした…」

かなりびびっている。まずいな…

「ねえ、毒刀君。」

「罪口積木だよ。ダチでもねーのに人を渾名で呼ぶんじゃねえよ。」

「良いじゃないか、どうせ君の本体はその毒刀なんだから。」

それもそうか。というと毒刀は肩をすくめる。

「で、なんだ?」

「君の体って武器による攻撃は効くのかい?」

「さあなあ、よく分からんが、たぶん効くんじゃねえかな?こいつは罪口じゃないから得物にゃ愛されてねえハズだぜ。」

そうか。それをきいて安心したよ。

「なら投げっぱなしにしても大丈夫だね、潤さん、綱吉君、行こう!」

二人に声をかけ、ついでに牽制で一発次元大介さながらに後ろのベルトループに刺していたジェリコを引き抜いて二三度引き金を引く。

「うおわっ!あぶねえなあ。当たったらどうするつもりだよ…ありゃ?」

ブツクサ言う声が曲がり角の向こう、今さっき抜けてきたところから聞こえる。

「おもしろくねーなー…なんでド派手にやらなかったんだよ?」

ジェリコ使っただけでもぼくにしてみれば充分派手ですよ。

「でも良いんですか?あいつ放って置いて?」

「ああ、大丈夫大丈夫。あの程度ならあいつの足元にも及ばないだろうね。オリジナルの積木相手にあれだけ苦戦したのはあの武器が通用しないことが理由だったんだから。」

減ってる出番をプレゼントしてやったんだ。感謝しろよ

 

・・・・・

 

「ちっ。見失っちまったか。あそこは王道的にガチバトルで斬り捨てられてバッドエンドルートに進むところだろうが…」

などとひとしきりぼやく毒刀。

「いや、別々の場所でそれぞれのバトルが行われるのも王道的展開だと思うぜ?」

「ああ、それもそうだな。一人の圧倒的強者相手に複数でかかって返り討ち…ってのも王道だ。」

「それを言えばそこからはドラゴンボールみたいにこっちのパワーが倍増するんじゃねえの?」

「あるいは中ボスらしくサクッとやられちゃうってのもありですよねー」

「はあ…病み上がりが無理するモンでもないだろうに」

「いやいや、わっかんねえぜ?案外病み上がりと病人と怪我人は強いと相場が決まってるぜ?トキしかりグラントしかりブ男しかり」

「ロックオンしかり…てか?」

「分かってるじゃねエか。」

苦笑した毒刀は振り返り様に零閃を放った。

「で?その零崎君がここへ何しに?」

決まってんだろ?といって人識は赤い舌を覗かせ、決め台詞を叩き付けた。

「殺して解して並べて揃えて晒しに来たのさ」

言うや鉈型をした大振りなナイフを横薙ぎに振るう。

「不意打ちとはまたひきょ…」

「伊織ちゃん!」

「はいはい!」

小さなステップでナイフを躱した毒刀は慌てて上体を捻り、舞織の自殺志願を避ける。

「はなっから2対1なんだぜ?」

「そりゃそうだ。油断したこっちが悪かったってこったな。とはいえ、こっちに必要なのはたった一振りだ。すぐにケリつけてやるよ…零閃編隊三機!」

鍔鳴り音が三度。咄嗟に二人は身を引いたので切られずにすんだが続けて更に

「五!六!」

とどんどんどんどん隊の規模を増やしていく。

「やーれやれだぜ」

「あれ?人識君、ナイフどうしました?」

そっちこそ。と人識は舞織の手元を指さして言う。

「自殺志願はどうしたよ」

「あー、それはですねー」

「まあ答えてやるとだな」

「「捨てた。」」

「七!八!九!じ…ッ!ぐああ!」

毒刀の両肩から鮮血が散った。そこに刺さっているのは人識のナイフと舞織の自殺志願だ。

「そんじゃとどめは俺が貰うぜ。」

おらっ。と軽い調子でそういい、人識は腕を一振りする。

袖口から飛び出してきた一振りのナイフを掴むとそれをそのままの流れで振るい、毒刀の頸動脈をあっさりと切り開いた。




書いていて思ったこと。お前がラノベとか言うな。まあそれはそれとして、滅茶苦茶考えたな俺…バカすぎたんだ。多分。でなきゃ気の迷い。組み合わせるんじゃなくて積木の置き土産みたいにすればよかったかも。


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標的15 最終戦(最終選)

どうしてこうなった・・・潤さんがやけにゲームの話ばっかり振って来やがる・・・でも実はそれに反応して、しかもMUGENまで出してくる今作のツナがある意味一番マニア・・・何か宝島社のムックにこんなこと書いてあった気がする。


運命がどちらを選ぼうが、そんなことはどれもみんな同じ事だ。

 

・・・・・

 

「懐かしいなあ…」

2年ぶりくらいになるのかな?

「ええ、でもこの学校よく大変な事になるよなあ…」

「そーなのか?」

毒刀を零崎に投げてぼく達は並盛中学に辿り着いた。今のところ誰もいないし、どこに狐さんがいるのかは分かっているので足取りは比較的軽い。

少なくとも澄百合学園跡地へ乗り込んだときよりは。あのときは完全なるアウェーである上にどこに誰がいるのかも校門のところにいたノイズ君以外知らなかったから、警戒心はいやでも上がる。

それに対して今回はボンゴレにとってのホームグラウンド。

しかもリボーン君が学校中に張り巡らせたアジト網のおかげで屋上以外には人がいないことが確認されている。この状況下でむやみやたらと警戒して精神力を磨り減らすわけにもいかない。

「あ…鍵かかってる。どうします?」

「いーたん、あれ。」

はいはい。それでは左胸のホルスターから…

鍵開け専用刃物(アンチロックドブレード)に活躍してもらいましょうか。」

細長い刃物を鍵穴に突き刺してガチャガチャやる。と、3秒もしないうちにカチャリと言う音がして鍵が外れた。

「お待たせしました、西東さん。」

「待ったぜ、俺の敵。」

これまでの死装束のような着流しから一転、白はそのままにスーツを着て、狐の面を外している。

「しかしこの学校よく大変な事になるよなあ。マフィアの内部抗争の舞台になったり、戦争の初日に床ぶち抜かれたり、よくマフィアに入り込まれるし。風水的にまずいんじゃねえのか?」

御託はそこまでで良いだろう。という声が西東の後ろから聞こえてきた。

「おお、そうだな。それじゃあ俺の娘とボンゴレの若造はお前に任せる。こっちはこっちで対談といくぜ」

「好きにしろ。」

その声が聞こえたとたん、潤さんが両腕をクロスさせて飛んできた拳を受け止めた。

「ふむ。さすがにこれは受けるか。」

緩くウェーブのかかった紫の髪。黒いスーツの上からでも分かる筋肉質な体。黒い瞳はどろどろとした色で奥が覗き込めない。

「いーたん、そっち任せたぜ。」

「はい。いってきます。」

では行きましょうか。と声をかけて西東とぼくはこの場から消える。

「良いのか?相手は人類最恐の化け物だぞ?」

「あの男が人類最恐なら潤さんは人類最強ですよ。ついでに綱吉君はそうですね…史上最強の学生ってトコですか」

さて。適当に見つけた教室の真ん中辺りで向かい合う。ぼくの右手には黒光りする人殺しの金属塊…ジェリコ。ピタリと狙いをつけてぼくはきく。

「るれろさんもなしにどうやってあのパーヴェントをおさえてたんですか?」

「不思議か?」

当たり前だ。

「あの男、下手すりゃ真心よりも強いかも知れない。いや、それでなくても底が知れない。人形師のるれろさんもいなければ、病毒に冒されてる印象もないし、もちろん操想術師の時宮時刻でさえ術をかけっぱなしにすることはできなかった。」

そうなのだ。真心は自分に掛けられた操想術を解くことができた。ならばパーヴェントもできるはずだ。

心臓のビート。それすらも操作して術を解いたあいつにできて更に底の知れないあの男にできないはずがない。

しかし西東はあっさりと種を明かした。

「ハッ。おさえてたんじゃねえ。手を組んでたんだよ。…というより互いに利用していたといったところだ。」

信じられない、信じられる話ではない。

「『信じられない』ふん。あいつはこう言ったんだよ。世界が終わるとき人間はどういう顔をするのか、どんな顔をするのか見てみたいってな。くくく。その顔が恐怖だったら御の字だとよ。知ってるか?パーヴェントの意味。恐怖だぜ。」

「そんな馬鹿な話が…」

そう、出来過ぎてる。馬鹿みたいに。

何度か教室が小刻みに揺れた。上ははたしてどうなっているんだろうか。

 

・・・・・

 

「ぶるあああっ!」

「うおっ!?」

突く、蹴る、突く、蹴る、薙いで振るってぶち込んで。

「あーやべー。ちっと厳しそうだわこれ。ツナ!手伝え!」

「はい!はぁぁぁぁ…」

綱吉の目つきが険しくなる。リングの力を発動させずに、額に死ぬ気の炎を灯す。握った拳は硬く強く。

死ぬ気を超えた超死ぬ気。そしてそれを更に超えていく。

「ほう。それが死ぬ気の到達点か…」

「そうだ。いくぞ!」

掌を後ろに構え、オレンジ色の炎を噴射して一気に懐に飛び込む。

「はあ!」

今度は綱吉が攻める。

突き、蹴り、突き、蹴り、カウンターを躱して拳を叩き込む。

「ふむ…悪くない。だが甘い!」

「ッ!」

ただ突き出される拳を躱して再びストレートを放つ。

「その程度か。」

掴む。右手を出すために左腕を引いているので突き出すには時間がかかる。コンマ一秒が命取り。なので綱吉は両手を開いた。左手から噴出される炎。

「ぬ?」

「X-BURNER!」

逆噴射を訝しむパーヴェントの眼前で止まった右掌から暴力的な炎が迸る。

「やったか?」

「避けろツナ!」

「ぶるあああっ!」

ドゴンッ!痛烈なフックが綱吉の体をとらえ、続いてそのままの勢いで繰り出された裏拳が大きく弾き飛ばす。

「く…ぅ…ほとんど効いていない…」

ほとんどどころじゃねえよ。と潤はジャケットを捨て、Yシャツにネクタイという姿になったパーヴェントを睨み据える。

「全く効いてねえぜ。ドリームオーラでも張ってんじゃねえの?」

「ドリームウイルスじゃないんだから…」

「でもま、二人がかりでいけばティウンティウンとはいかないわな。」

どんだけロックマン好きなんだよと呟くと綱吉は再びパーヴェントに挑みかかる。

「莫迦の一つ覚えか?」

「どうだかな!」

綱吉が両手足を用いてラッシュをかけるがパーヴェントはそのことごとくを弾き受け止め流して防ぐ。そしてその背中に赤い一撃。

「スタンドモードなしじゃタンデムコンボはかわせねえ…ぜ!」

「今度はジョジョかよ。どんだけ漫画好きなんだよアンタ…は!」

前後からタイミングをずらし、攪乱しながらの連打。

「ぶるぅぅぅあぁぁぁぁっ!」

裏拳とフックのコンビネーション。回転して力任せに二人を弾き飛ばす。

「ったく…よ-く分かった!劇場版の珍しく辟易してる悟空の気持ちがあたしにはよーく分かった!面接とかっちゅうウソつき大会に出ても良いからとりあえず終わらせたい気分だ!」

「相手はブロリーじゃないぞ。」

わーってるよ。といって潤は再度パーヴェントを見据える。

「ところでさー、リカバリーって10を限界枚数入れとくのと200を一枚入れておくの、どっちが良いんだろうな?っていうかどーよ?フォルダ全部リカバリーのロックマンで天下一武道会の出場者と戦ってもらうってのは?」

「MUGENでもやってろ…」

強いて言えば、と苦笑しながら綱吉は答える。

「リカバリーを使う前に消滅させられるんじゃないのか?」

「なるほど、そりゃそうだ。」

そして二人は再度パーヴェントに飛び掛かった。

 




死ぬ・・・中間試験にかこつけやがって・・・俺ツ○ヤのカード持ってねえからサントラ借りられねえ・・・ほっとんど中毒症状みたいになってきた・・・助けて・・・っとまあそれはともかく、バトル編は次回で最終回、+エンディングと後日談を2,3上げたらフィナーレとなりますのでお楽しみに。
ちゃおちゃおー・・・やってらんないからフィニッシュ決めちゃいます、というわけで本日2話連続投稿!
改めて・・・ちゃおちゃおー。


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標的16 決着

かくしてフィニッシュにいっちゃいます。で、とんでもなくふざけた話ですが、パーヴェントが特に技らしきものを使わない理由です。コレ簡単。そこまで進んでないからです。木こりの家がムズ過ぎるんだよォ!外見なんかはつべで見たイベント集で確認。今に至る・・・と。あとやけにぶるああ言ってるのはセルリスペクト。だって若本だもの。若本と言えばセル!とゆーリユーはこじつけか。


このまま終わったら、死んでも死に切れねえ!

 

・・・・・

 

どっ。

「うああっ!」

ずしゃあっ。

「いづづづづ…無事か?ツナ?」

「ああ、無事…とは行かないが、一応五体満足だ。」

そりゃよかった。というと潤は左肩を示して言う。

「じゃお前の腕、3本ぶんのはたらきしろ。」

はあ!?と綱吉が潤に目を剥く。パーヴェントも怪訝そうな顔だ。

「肩、外れちゃった。」

「そっちが無事じゃねえじゃねえか…」

「だから無事かきいたんじゃねえか。来るぜ!」

ドゴン!右腕一本でパーヴェントのジャブを受け止め、続けて打ち込まれる連打を掠らせながらも躱し続ける。

「潤!」

「ふん!」

援護に飛び込む綱吉だが、後ろも見ずに放たれた蹴りがそれをはじき返す。

「ツナ!…っ!」

「終われえっ!」

ゴゥンッ!

とどめを刺すように潤の左肩にパーヴェントの拳が打ち込まれた。

「次は右だ」

霞むような拳。それが潤の右腕に届く前に、パーヴェントの腹に拳がめり込む。

「ぐ…むぅ…」

ぐらりと体を傾がせ、狙いがそれた腕が振り下ろされ、再び左腕に打ち込まれる。否。右手で無理矢理左腕を動かしてぶち当てたのだ。

「動く方を守ろうとしたらラッキーだったぜ…」

「な…に…?」

「肩…」

拳を思い切りパーヴェントの胴に叩き込む。

「入ったあああああ!」

「ぶぐぉぁ!」

たまらず体を折ったパーヴェントに、続けざま潤の右拳が放たれ、パーヴェントが今度は仰け反る。

「見よ!我がアームストロング家に代々伝わりし芸術的格闘法~ってか?」

左!右!左!右!左!左!左!右右左!左左右右右左右左右左右!左フック!右アッパー!ワンツーパンチ!

「ぬおおおお!」

「あたしのレパートリーはまだまだあるぜ!」

「む?ぬぐあ!」

右肩から全力でぶつかり、体を捻って突き上げる。

「Charging!からの~!バアーンナッコー!」

続けざま拳でブッ飛ばし、パーヴェントの体が少しだけ屋上から飛び出しかける。

「まだ…!」

「なんちゃってバスターウルフ!」

「ぶぐっ!」

完全に屋上から飛び出すパーヴェント。

「行ったぞツナ!」

「作戦通り!」

先ほど吹っ飛ばされたツナがパーヴェントの視界に映る。

両手を揃え、何かを放つような構えをとっている。

「作戦…だと?」

リカバリー…復帰…ピコピコ音源…落下…天下一武道会…場外…一瞬で消滅!

「まさかっ!?」

「そのまさかよ!やっちまいな!」

「XX-BURNER!」

両手から迸る炎。綱吉はその反動でより高く飛び、逆にパーヴェントは地面に叩き付けられる。

なまじ躱そうとしなければ、あるいはその結末は避けられただろう。あるいは躱し方にもよるが、少なくとも咄嗟にとったその行動は逆効果だった。

頭部をかすめただけでも十分な衝撃。炎はそのまま地面を穿ち、そしてパーヴェントの体勢は地面と平行だったものから垂直なものに。衝撃は更に加速を与え、重力加速度も相まって一瞬の後地面に叩き付けられた。

 

・・・・・

 

ザンッ!

「はあ、はあ、はあ…終わりが見えない…」

ジェラーロは右手に握った氷の剣で薙ぎ、黒い兵士達を斬り捨てた。

「るああああ!」

再び切り払い、貫き、袈裟斬りにする。

「限界か…だが…はああああ!」

逆袈裟に目の前の兵士を斬り捨てた。

「?復活しない?周りの霧もそういえば晴れている…やったか!?」

わずかに遅れて足下に衝撃が来る。

膝を着きながら、それでもジェラーロは笑った。

「よくやった、ボンゴレ!」

 

・・・・・

 

どしゃっ。

…え…?

西東天の眉間から血が流れている。

「…痛ッ」

右足が焼け付くように痛む。これは…折れたかな?近くには椅子が転がっている。つまりこうだ。

さっきの衝撃、恐らく決着のためにどちらかが大技を放ったからだろうが―のせいで備品が吹っ飛んだ。その内の一つ、つまり椅子が足に当たり、ぐらついたぼくの指に力が入った。

そして引き金が引かれ、銃弾が彼の眉間を貫いた。そういうことだろう。

「なんか…あっけなかったな。」

今回の騒動は、こうして幕を下ろした。




没ネタ

「フン!」
パーヴェントの拳が綱吉にめり込む。
「ぐっ…」
「ツナ!」
続けてPの字を描くような連打。
「ガハッ!」
「此が…我の名だ」

GUILTY GEARのジョニーより「これが俺の名だ」…
すみません、気の迷いです。だってジョニーが格好いいんだもの!
次で一応本編は終わりとなります。お付き合いありがとうございました、エンディング、おまけ共々、また、他にも作品を投稿することもありましょうが、宜しくお願いいたします…なんていってるこれ、まだ最終回じゃないけど。
ちゃおちゃおー。


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標的17 それから

WRRRRRYYYYYYYYYY!試験終わったァァァァッ!
苦手な英語もそこそこできたしやーよかったよかった。
一番下の英文、文法とか気にせんといて?
では本編最終回でございます。どうぞ!


復活(リ・ボーン)!死ぬ気で話を〆るー!

 

・・・・・

 

「いーちゃん、あーんして」

ちょっと待て

「折れてるのは足だぞ?腕は大丈夫なんだから自分で食べるよ。」

「つまんないの…むぐ!?」

残ったりんご三切れの中から一つ取り、不意打ちで食べさせてみた。

「うまい?」

「うにー♪」

嬉しそう。

「友、ボンゴレはなんて?連絡あったんだろ?」

「うに。今から来るってさ。」

「今からって…」

やな予感がする。というか待て、このタイミングでぼくが食べようとしているリンゴを横取りするんじゃない!

「お邪魔してしまったかな?」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「あ、ボンゴレのおじいさん!」

ちょっ!友さん!?このタイミングでよくそんなにこやかに手え振れますね!?

などとわたわたしているぼくにボンゴレは真顔になり

「さて、事の顛末を聴かせてくれるかい?」

「は、はい。」

 

・・・・・

 

というわけで、西東天、パーヴェント両名共に死亡しました。

「ふむ、浮かない顔だね?」

「一生かけてあの人の悪巧みに付き合うつもりでしたからね。なんというか、その…拍子抜けというか、まあ、そんなカンジです。」

「そうか、しかし依頼は達成されたようだから、報酬は指定の口座に振り込んでおくよ。骨折の治療費もこちらで負担しよう。」

「うに、おじいちゃん太っ腹だね」

依頼主にそんな口をきくんじゃない!…別に友は請負人じゃないけど。

「そうでもないさ。敵対した者達も友人同様接することができる綱吉君の方がよっぽど器が大きいと思うよ。」

「そんなモンですか?」

そうだよ。と少しだけ笑ってボンゴレは席を立つ。

「それじゃあ、邪魔者は消えるとするよ。」

待って下さい。

「なんだね?」

その時はぼく達も。

「ああ、ぜひ呼ばせてもらうよ。」

「うに。ありがとうなんだよ。」

「よろしくお願いします。ああ、そうだ。綱吉君も全身筋肉痛だとかで入院してますよ。二つ隣の病室ですから会いに行ってはいかがですか?」

「ああ、そうさせてもらうとするよ。」

 

・・・・・

 

「俺もバカだって自覚してますけど、人識さんもそれなりじゃないですか。」

「ああ?そうか?」

「ああ、やっぱりツナ君でも気付きますかー。そーなんですよ、人識君はすぐ無茶したがる死にたがりなんですよ」

死にたがってるわけじゃねエよ。と呟くと人識は綱吉に人差し指を突きつけて言う。

「そもお前ほど違法に死線超えてる奴を俺はしらねえ。少なくとも普通の方法だったら既に死んでるようなことを何度もするんじゃねえ」

普通の方法というのは、つまり眉間を死ぬ気弾でぶち抜き、後悔した内容に対して死ぬ気になることである。あるいは小言弾で愛のある無形の鞭をくらい、より強力な死ぬ気になるかの、要するにヘッドショットである。で、綱吉は修行というか、リボーンのスパルタ特訓によってそれらのプロセスをすっ飛ばして自力発動を可能としている。普通ならハイリスクなもんをローリスクで済ますんじゃねエよ。と呟くと人識は舞織に顔を向けた。

「で、俺達お邪魔な気がするんだけど、ちょっとコンビニ行ってこようぜ。」

「いーんですか?」

良いんだよ。と綱吉を心配そうに見ているちょっと髪の色素の薄い少女―最終回にてようやく登場した笹川京子を示して言う。

「寧ろ俺達がいる方があいつらに対して悪いぜ。とはいえ、俺一人じゃチト厳しいモンがあるし、そうだ、伊織ちゃん、肩貸してくれよ。」

はいはい。と人識を立ち上がらせると舞織は二人に顔を向けて

「では二人ともごゆっくり。」

とだけ言い置いて出て行った。

残された綱吉である。思いを寄せる少女と二人きりという状況に心臓をバクバクいわせながらああ何か言わなきゃでも何言えばいいのか分かんないし誰かタスケテなどと思考が渦を巻いていたが最後の望みだけは叶わないモノである。

部屋を出てすぐに人識が舞織から紙とペンを借り、常備しているジグザグ用の糸と合わせて<馬に蹴られて死にたくなけりゃ這入るんじゃねえぞ>というおよそウェルカムボードらしくない何かを作り上げてしまったからである。

「…心配した?」

「うん。」

ごめん。と呟くと綱吉は黙り込む。というか二の句が継げない。

「…でも、信じてたよ。」

「えっ?」

驚いて俯けていた顔を上げるとそこには太陽のような笑顔。

「ツナ君は絶対無事で戻ってくるって。」

「!」

耳の先どころか、入院着に隠れて見えないがもはや全身真っ赤である。

「あ、でも戻って来るも何も、最初から並盛であったことなんだよね?」

「う、うん。」

そしてまた沈黙。

「………」

「………」

「………」

「………」

「…き…」

「え?」

綱吉が蚊の鳴くような声で呟くように言う。

「す…だ…」

「何?」

ちょっと耳貸して。と手招きし、綱吉は京子の耳元でごにょごにょとささやく。

「え!?それって告…」

「いや?」

「ううん!そんなこと無いよ!」

「よかった。あ、そこのみかん取ってくれない?」

「いいよ。」

と、どうやら綱吉は無事に想いを伝えることができたらしく、とてもじゃないが誰かが入れるシーンではない。

「…どうしよう。」

「…どうしましょう」

二人して戻ることができなくなった人識達であった。

 

・・・・・

 

着替えその他諸々に、もともとここに来るときは持っていなかった長細い鞄を加えてけして多くない荷物を肩に担いだ軋識は街を離れるところであるが、ふと気になることがあったのか問識に声をかけた。

「なあ、おめーはどうやって生活するっちゃか?」

「そういうき死死きさんはどうやって生活費を稼いでいるのですか?」

「俺はネットで転売屋みたいな事やってるから良いんだよ。あとせどりとかな。」

それなりに稼いでんのさ。というと更に続けて

「アパートも借りるどころか一部屋買ってるからな。別段生活に困るわけでもねーっちゃ」

そうですか。というと問識はしばらく考え込んでから

「まあ、なんとか死て食っていくと思いますよ。死ゅ猟とか」

そりゃ怖い。と呟くと軋識は片手を振って一人歩いて行く。

「人識は何か真っ当な職を探すらしいっちゃ。ま、おめーもがんばれよ。」

縁があったら会いま死ょうと返して問識は軋識とは反対の方向に歩いて行った。

 

・・・・・

 

そして一月ちょっと。ようやくギプスも取れ、一時期病院が別荘とか病院が実家などと揶揄されていたおかげか特にリハビリなんかもなく退院して京都に戻ってきたぼくである。

「あれ?みいこさん、どうしたんですか?」

「いの字、ちょっと前に私が指導している高校の剣道部員から話があった」

へえ。と呟いてぼくはみいこさんに続きを促す。

「で、どんな?」

「お前を紹介してくれと言うんだ。」

仕事ですか?

「だろうな。ご丁寧に名刺まで用意してたぞ。」

「分かりました。悪い友、先に帰っててくれるか?」

「うに。しょうがないんだよ」

悪いな。といって玖渚を見送ると僕はみいこさんに言う。

「では、その子に伝えて下さい。」

その依頼、確かに請け負うよ。

                    E.N.D…?

 

一年後…

 

「それでは、ボンゴレの証を、ここに継承する。受け取ってもらうよ、Ⅹ世」

「はい。(結局こうなったか…)」

マフィアのボスになんて絶対にならないと公言していた綱吉君だ。不思議な気分だろう。

「でも、それはそれで良いのかも知れないな。」

「うに」

ぼくは黒いスーツに身を包んだ綱吉君を見る。

人はいつも自分にとってベストな選択肢を選び取っているのだろう。時にそれが失敗な事もあるが、それでもこれは彼にとってのベストな選択なのだろうと思うから。

「でも、今夏だよ。ツナ君二学期どうするのかな?」

「………」

「うに?いーちゃんどうしたの?」

全く…なんだかとても締まらないが、これがぼく達にとってふさわしい形なのだろう。

最後まで決めることができない、それ故に人間らしい、主人公体質。

……なんてこんな考察、全部が全部、十中八九はおろか一から十まで隅から隅まで徹頭徹尾…

「戯言だよ」

                  <the fake master and vongola famiglia>E.N.D




英文は意訳すると「戯言遣いとボンゴレファミリー」です。まんまサブタイトルですね。
文法以前に単語の問題。フェイクマスターであってますかねえ?じゃまあこの辺で。
どれが先になるか分かりませんが予備カートリッジ 沢田綱吉の場合 戯言遣いの場合 零崎人識の場合 刃物同盟の場合のどれかでお会いしましょう。ちゃおちゃおー。


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予備カートリッジ1 沢田綱吉の場合

キンキンに冷えたお茶がおいしい季節がやって参りました、この俺、昆布さんは今回から現実と絡めたネタで行こうと思っております。
というわけでマガジン一本目!ザレゴトフィアンマ×GG!
・・・っつってもまあ、ツナとチビ達が遊んでるだけなんだけど


周りは敵だらけ、仲間は一人もいない…

後ろから襲ってきた相手を倒し、続けざま死角の敵を薙ぎ払って俺は戦う。

しかし一瞬対応が遅れ、俺は包囲した敵に蹂躙されてしまう。

そして最後の一撃が…

<you lose!>

「あ…」

ゲームオーバー。あと少しだったのにと落胆する俺にもランボは容赦無い。

「ツナー!かわれー!」

はいはい。と俺はコントローラーをランボに渡す。

「でもこのゲーム結構難しいぞ?ランボ大丈夫か?」

「るっさいわボゲ!ランボさんはねー、ゲームでも強いんだぞ~!」

そういってこともあろうに、いや、ある意味正しいのかな?旗振り回すアホの子王子を選択した。

で、相手はイーピン。こちらは至極真っ当に人外に足突っ込んだ赤い服の男。

数分後には両手を突いてが、ま、ん・・・となったランボがいた。

「・・・だっ、だったら格闘ゲームでもやるか?」

「やるやる!やるもんね!」

うわ!・・・復活早いな

「イーピンも!」

そして次に始めたのはさっきまでのやつと同じシリーズ。続編でジャンルのがらりと変わったシリーズで、元々は格ゲーだったんだし、寧ろランボはこういうのの方がいい気がする・・・おバカだから

「じゃあ誰にする?俺は・・・」

と、俺が選択したのはインファイターの吸血鬼。対するランボは・・・

「格好いいからコイツにするもんね!」

「あ゛・・・」

ゲーム開始。しかしながらこのゲームは次々にコンボを決めていくゲーム。俗に言うコンボゲーというやつだ。なわけで、移動技で一気に近付いて、スライディングからの拳の連打、連打、連打!仕上げにゲージを溜めてそれを消費してのキャンセルも利用しながら、吹っ飛んだ相手を追い打ちしての直下型ダンディー!

<シッショー!>

・・・かなり大人げなかったと思う・・・あ、ランボがまたが、ま、んになっちゃった・・・

「喉渇いたな・・・じゃ俺ちょっと飲み物持ってくるから」

最高難度の勝ち抜きモードをチャイナ娘で難なく勝ち抜いていくイーピンにそら恐ろしさを覚えつつ俺は台所に向かった。

途中上からだったらコイツだもんね!という声とデカい軍人のくぐもった、というか加工されたボイスが聞こえてきて・・・

(ぐっぴゃあああああ!)

返り討ちに遭っていた。

「やれやれ・・・ン?」

インターホンが鳴っている。とりあえずコップに注いだジュースをテーブルにおいて俺は玄関に向かう。

「はいは~い・・・あ!京子ちゃん!」

大体普段の生活はこんなカンジだった。




次回は近畿地方の某県にある娯楽施設×いーちゃんの忍野添えです。
今回の登場キャラクターはシン、ソル、紙忍者、スレイヤー、ジャム、ポチョでございます。
ではまた次回。
ちゃおちゃおー。


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予備カートリッジ2 戯言遣いの場合

というわけで近畿地方の某県にある娯楽施設×いーちゃんの忍野添えです。
書くことがねえ・・・


「うう~にい~」

「なんだかいやに間延びしてるな・・・どうしたんだ?」

どうしたもこうしたもないんだよ。といって友はむくれた顔を向けてくる。

「最近お仕事ばっかりでいーちゃんちっとも僕様ちゃんに構ってくれないからヨッキューフマンなんだよ」

そりゃ悪かった。じゃあ今ンとこ仕事も入ってないし、どっか遊びに行くか?

「うに♪」

数時間後にはレンタカーを借りてぼく達は高速道路を走っていた。

「で、どこ行くんだっけ?」

「パンダの赤ちゃんを見にいくんだよ」

あ、そ。というかわれながらかなり行き当たりばったりだと思う。そういえば。と何とはなしに話を振ってみた。

「そういえば、なんでパンダなんだ?神社仏閣はさすがにないにしても、○塚不二雄のマンガミュージアムなんかもいいと思うけど。」

本当に何とはなしに振った話に友は

「作者が三重県人だからだよ」

「メタだし身も蓋もないな・・・」

そんなとりとめもないことを話しながらぷーっと車を走らせていると何というか、非常に分かりやすい忍者のモニュメントが現れた。

「伊賀だね」

「ああ伊賀だな、ちょっと休憩するか。」

喉も渇いたし。とぼくは自販機のところへ歩いて行く。歩いて行って・・・

「げ・・・忍野さん・・・」

「やーいーちゃん。こんなところで会うなんて奇遇だねえ」

住所不定職業およそ人の世には存在できない、強いて言えばエクソシストというかオカルト研究家というか、研究家兼エクソシストのアロハのおっさんがいた。自販機の前でしゃがみ込んで顔を横にして・・・っておい。

「何してんですか」

「小銭がなければ僕は生きていけないんだよ!」

いや拳を握って力説されても何とも返しようが・・・まあいいや。と、早く車に戻りたかったので財布を取り出して

「おしるこぐらいなら驕りますよ」

「いやーありがとうありがとう。いーちゃん今日は気前いいねえ、何かいいことでもあったのかい?」

「玖渚と白浜にパンダ見にいくんですよ」

「青春だねえ・・・ってあれ?いーちゃんマイカー持ってたっけ?アパートの死んじゃった女の子の部屋に少しだけ居候したときはベスパしかなかったと思うけど。」

レンタカーですよ。とだけ言って僕はペットボトルを二本・・・ジュースとどこぞの落語家の顔が描いてある麦茶・・・を自販機から取り出すと車に戻った。

「よし、じゃ行くか。」

「うに」

鞄からCDケースを取り出し、デッキにセットして出発する。

<~♪空ッ!溢れ落ちたァ二つの星がァ~♪光とッ闇の水面ォ吸い込まれてゆぅ~くゥ~♪>

最近アニメ化された某奇妙な冒険のオープニング(完全に玖渚の趣味)を流しながらエンジンを振るわせる車の後ろでアロハのオッサンの「んぎゃあ~っ!」という熱いおしるこを顔面に被ったような悲鳴が聞こえたが黙殺しておこう。




あからさまに伏線を張りやがりましたが、果たしてスターダストクルセイダースはアニメ化されるのか・・・個人的にはむしろダイヤモンドは砕けないの方が見たいけど。
次回はクラッシュクラシック×ほんのちょっとだけ八軒と御影×人識です。
水がなければ牛乳を飲めばいいじゃないって・・・んなムチャな。


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予備カートリッジ3 零崎人識の場合

うん、少ないな。残弾。
後一話で撃ちつくしとなりますのでどうかお付き合いを。
では、クラッシュクラシック×ほんのちょっとだけ八軒と御影×人識、始まりますよ~!


「ン…っと、鍵鍵鍵・・・」

俺はとある店の扉の前でポケットをごそごそやっていた。後ろにいるのは二人。伊織ちゃんと、なぜだか憑いてきた死色だ。いや生きてるけども

「あった。・・・おーっす、邪魔すんぜ~・・・っと、誰もいねえか」

「人識君、ここってホントにバーだったんですか?」

そうきく伊織ちゃんに答えるのは死色だ。

「そりゃ6年も経ってんだぜ、そりゃ埃も積もるだろうさ。」

はあ。と頷く伊織ちゃんを連れて俺は店の奥に置かれたピアノの前に立つ。

ピアノバー・クラッシュクラシック。少女趣味(ボルトキープ)こと曲識のにーちゃんが経営していた店だった。

「あのにーちゃんの事だ、最終的に俺達が来るのを見越してたんだろーな。」

「でしょうねえ。ネットの掲示板に明らかにそうと分かる広告を出してみたりして・・・目立つことこの上無いと思いますよ」

「まああのにーちゃん特別偏屈だから」

兄貴尊敬してたし。と付け足すと俺はピアノの前に座った。隣には伊織ちゃんもいる。

「じゃまあ、聞いてくれや。にーちゃんの代わりによ。」

「作曲者零崎曲識、作品NO.200、ぎっこんばったん」

あのにーちゃんが俺達に残したもう一つ、もう一曲の音楽が響く。俺達にプレゼントしてくれた(もっとも俺からしたら押しつけられた以外の何物でもないが、まああのCDと並ぶにーちゃんの数少ない置き土産というのは否定しねエ)楽譜、連弾用の曲だ。

やがて、俺達はにーちゃんが書いた曲を弾き終わり、ピアノの前から立ち上がった。

「で?俺達は用事を済ませたわけだが、死色、あんたはどうするんだ?」

「ああ?アタシか?そうさなあ、とりあえず・・・おいモテカワメイク」

はい?と首を傾げる伊織ちゃんに死色は右手を出す。掌を上にした何かを要求するような形だ。

「ぎっこんばったん・・・だったよな?アレの譜面わたせ。アタシも弾いてから出てくことにするわ。」

「え?でもあれ連弾用の曲ですよ?」

いーんだよ。というと死色は伊織ちゃんから丁寧に、しかし強引に譜面をむしり取ると隣ににーちゃんがいるようにピアノを演奏し始めた。

「譜面のコピーは?」

「大丈夫ですよー、そりゃあ、アレはオリジナルですけど、一応コピーも取ってありますから。何の心配も要りません」

そうか・・・よし帰るぞ

「へ?」

「お邪魔虫はとっとと退散するとしようや」

「ですね」

地下にあるクラッシュクラシックを出て大通りを歩く。

「しっかし結構意外性ありますよねえ」

あア?

「だってそうじゃないですか。今回のことといい、ツナ君の時といい、人識君って冷徹そうで結構いい人ですよねえ。酷い人みたいなのに。」

まあ人じゃなくて鬼ですけど。なんていうモンだからこっちも何とはなしに

「それいったら伊織ちゃんだって相当なモンだと思うけどな。俺ら見た目と中身に差がありすぎるから。」

近くを歩く眼鏡の青年と可愛らしい少女が軽く会釈をしてきたので俺達も返すとまあなんだ。と俺は言った。

「寝床さがさねえとなんねえしな・・・忙しくなるぜ?」

・・・足下に・・・転がってる・・・過労した働き蜂・・・なんか、本当に前途多難なカンジがしないでもない・・・




後一発。ですが勢い書き始めた作品がございますのでそちらも投稿させて頂きます。
次回、刃物同盟×墓標、というか美形会議!おっ楽しみに~!
ちゃおちゃおー。


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予備カートリッジ4 刃物同盟の場合

今回でザレゴトフィアンマはおしまいでございますが、ときどき上げる短編共々王子の長~い一夜/暴雨鮫の妖しい一夜をなにとぞ宜しくお願いします。
では、刃物同盟×墓標、というか美形会議
はじまりま~す


※今回は代本形式でお送りいたします。それぞれス=スクアーロ、ほ=崩子ちゃん、や=山本、ひ=人識、い=伊織、つ=積木と毒刀です。

 

ス「う゛お゛お゛い゛!何の用だあ゛!」

や「いや、俺もよく分かんないんだけどさ、そもそもこれ、どーいうメンツなんだ?」

ほ「私もさっぱり分かりません、説明を要求します」

つ「「「「ままままそー言わずに待ってみよーぜ、招集かけた二人をさあ。」」」」

ス「お゛お゛い゛!何なんだてめーら!4人一ペンに喋って気持ちワリイぞお゛!」

つ「「「「しょーがねーじゃん、本編じゃ4人で1人みたいな扱いだったんだからよお」」」」

ほ「メタですね…」

ひ(よし、そろそろ頃合いだな…)

い「はい皆さんよーこそお集まり下さいました~。」

ひ(ちょっ!伊織ちゃん!早いから!明らかにフライングしてるから!…しゃーねーか…)

ひ「第1回刃物会議、司会を務めるのはこの俺、零崎人識と」

い「零崎舞織こと無桐伊織でーす!」

や「刃物会議?」

ひ「うん、よく聞いてくれた!俺もよく分からん!ただなんか本編登場キャラ+原作から1人ずつ出して刃物同盟を作る!とか作者に無茶振りされたから集めただけだ!本当に集まってくれるとは正直思わなかった!」

い「まあその辺にしてさっさと自己紹介行っちゃいましょう!えーまずはこちらの声が大きい銀髪お兄さん!お名前は?」

ス「S・スクアーロだ」

い「では続きましてこちらの4人組、めんどくさいから代表だけが喋ってくれませんか?お名前をどうぞ!」

つ「罪口積木だぜ」

ひ「じゃまあ面倒だから残りは俺が紹介しとくわ。こっちのへらへらしてるガキが山本武で、地味~な女の子が闇口崩子ちゃんな。」

ほ「あの…」

い「いーさんに許可取ってありますから逃げられませんよ?」

ほ「そうですか…(T_T)で、会議と言うからには何か話し合うのでしょうが、一体何をテーマに話し合うのですか?」

ひ「ズバリ、得物に対するこだわりだ。例えば俺なんかだと、もうナイフ以外には考えられねえが…スクアーロ、アンタどうだ?」

ス「そうだな…刃渡りと切れ味が俺の基準に合ってればとりあえず何でもいいが…まあ、そうはいっても左の義手に装備できるモンでなきゃあダメだな寧ろ小僧、テメエにこそこの質問はふさわしいんじゃねえのかあ゛?」

い「と、言いますと?」

や「ああ、俺はこの、親父から受け継いだ時雨金時じゃないとダメだな。うん。」

い「それでしたら、私も双識さんからもらった自殺志願(マインドレンデル)じゃないとダメですから、そーいう意味じゃ私達って似てますよねー。崩子ちゃんはどーですか?刃物にかんするこだわりなんかを一つ。」

ほ「バタフライナイフ以外に考えつきませんね」

ひ「即答だな。ま、俺はバタフライナイフってやつは地味だからあんまし好きじゃねエけど。寧ろゴツゴツした、でっかいの。そっちの方が趣味だな。こんな風に。」

ジャキン!

つ「バカあぶねーだろーが!毒刀組は俺と違って愛がねえからうっかり斬り殺されちまうだろ!」

ひ「斬り殺すっつーか俺に言わせれば殺して解して並べて揃えて晒すだけなんだけどな。」

つ「そーいうこと言ってンじゃねエよ!」

ス「で?そう言うおまえはどうなんだ?」

つ「ン…そーだな…基本的に注文がありゃ何でも作るが、護身用に使うのは日本刀じゃなきゃダメだ。ときどきテストにいろんな武器を使わざるをえねえことがあるが、さもなきゃ俺は日本刀以外は使う気にならんね。」

ほ「…」

や「以外に真っ当な答えが返ってきたな」

ス「じゃあ手短にすませるとするか。まず斑頭の顔面刺青が派手なナイフ、ニット帽が大鋏、地味子がバタフライナイフと来て俺が義手につける長剣、小僧が親父譲りの竹刀と来て…武器商人の日本刀」

ひ「結論で言うと、同じ刃物でも射程距離が全然違うな、自殺志願と日本刀じゃ刃渡りに差がありすぎて比べる気にもならねえ」

い「ですねー。まあ、小回りとリーチと安全性で一長一短ってことで、お開きにしましょうか。」

ほ「…なんの為に集まったんでしょうか、これ。」

ス「…さあなあ゛…」

や「ハハハ…」

ひ「美形会議とは…いかなかったな。」

い「尻切れトンボでしたね~。みんなもう仕事は二次創作にしかないというのに。」

ほ「シリーズも連載も終わっちゃいましたね…しかし伊織さんは漫画版『零崎双識の人間試験』があるからいいじゃないですか」

ス「最後までメタメタだあ゛…」

 

・・・おまけ・・・

 

つ「うわッ!よく見りゃおまえそれ、初代古槍頭巾がつくった一番のキワモノ刀じゃねエか!」

や「ん?時雨金時のことか?ああ、まあ親父が言うにはそうらしいんだけども・・・ってなんで知ってるんだ?」

つ「そりゃおまえ決まってンだろ、俺達ゃ武器職人集団の罪口商会だぜ!それぐらい知ってるさ!他にもあれとかこれとかうんぬんかんぬん・・・くどくどべらべら・・・」

や「長くなりそーだな・・・」

ス「・・・帰るぞお゛・・・」

ひ「そだな」

い「そーですね」

ほ「あの・・・山本さんは?」

ひ「ほっとけ」

つ「でだな、コレがこーでアレがあーで・・・それがそーでだからこーなって・・・」

や(終わりが見えねえ!Σ (゚Д゚;))




うむむ・・・美形会議テイストってのは実はかなり難しい、あの暴走特急アンストッパブルなノリも、ありゃああれで技術がいる・・・いや、あれ描いてる人は実際すげーや。
と、いうわけでシリーズはこれでおしまい。他作品で末長~くお付き合い下さいね~
ちゃおちゃおー。


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