SPACEBATTLEGIRLヤマト (サイレント・レイ)
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設定 艦娘(拡張工事中)

――― イスカンダル遠征艦隊 ―――

 日本艦隊を母体とした大マゼラン銀河の惑星イスカンダルに赴いて放射能除去装置受領を主目的とした艦隊。

 事実上は主力艦隊であるが、2199年の地球では通信技術の問題で冥王星軌道までしか指揮が取れず、書類上は遠征艦隊とした為に艦娘側(現場)にかなりの自主性が与えられている。

 任務部隊制度が取り入れられており、第二、第三、第四艦隊は旗艦以外(第三のみズイカク残留と言う条件付きでショウカクは容認)の従属艦を入れ換えたり、臨時編入等の状況に合わせた柔軟な艦隊再編が可能。

 

  ~ 第一艦隊 ~

注:キリシマを旗艦とした事実上形だけの艦隊で地球に残留。

 

 

 “キリシマ(霧島)

主砲:36cm連装砲x4。ある程度まではガミラスに有効性があったが、木星沖海戦を機にほぼ無効化。

 

副砲:15cm単装砲x10。対空にも使用可能なケースメート式両用砲(性能は中途半端)を多数装備。

 

雷装:対空用は兎も角、対艦の物は元々巡洋艦より僅かに少なかったが、主砲無力化に伴って増設。

 

対空:多数装備しているも、パルスレーザーと実弾の混合搭載している為か、若干中途半端感あり。更にキリシマは他の姉妹艦より僅かに少ない。

 

補足:ガミラス戦前に健造されたコンゴウ(金剛)級戦艦の1人にして沖田と長く組んでいる秘書艦。 地球圏内ではコンゴウ級は傑作艦と称賛され、ガミラス戦初期もそれなりに活躍出来てはいたが、異常なスピードでアップグレード化を重ねるガミラスに対応出来なくなり、現在は機動性を生かした雷撃か近距離砲撃でしか有効策がない。 因みに先代霧島は“艦隊の頭脳”要素が行方不明だったが、キリシマは旗艦能力強化によるレーダー増強の為に対空砲を姉妹艦より縮小。

 

 

 “ナガラ(長良)”&“ナトリ(名取)

主砲:14cm単装砲x5。元々竣工時から火力不足が指摘され、比較的早い時期からガミラスに完全に無力化。

 

雷装:対空用のは極少だが、対艦のは初期からもガミラスに対抗出来た上、現在はカゲロウ級と同じ最新型に更新。

 

対空:元々低性能だった事で、主砲を減らしてパルスレーザーが増設されるが、若干付け焼刃感が…

 

補足:水雷戦隊旗艦としての運用を主眼とされたナガラ級巡洋艦の姉妹。 巡洋艦内では速度が少し遅いとの短所があるものの、アガノ級が竣工するまで日本巡洋艦内最優秀の対艦性能を保持。

 

 

 

 “カミカゼ(神風)”&“ハタカゼ(旗風)

主砲&雷装:開戦時からガミラスに無力であった旧式を装備していたが、現在は艤装から撤去されている。

 

対空:一応最新の物に更新されているらしいが、絶対的に数が少ない。

 

牽引ビーム:輸送対象を反重力フィールドで包み込んで重量軽減及び浮遊状態を維持して文字通りに牽引可能とさせる特殊光線。 此の性質から波動砲の重力アンカーの元になったとの指摘あり。

 

補足:日本宇宙駆逐艦最古であるカミカゼ級駆逐艦の姉妹。 元々ガミラス戦開戦前から旧式であった為、現在は艤装から武装を全廃して“レアメタル回収”等の後方任務に追従。

 

 

 

 “サツキ(皐月)”&“ミカヅキ(三日月)

航空:カーゴx2。

カーゴ…艦これ原作ではカ号と大発動艇シリーズ、ヤマト原作ではシーガルに該当する多用途輸送機。 速度が遅すぎるのが玉に傷だが、偵察能力にも優れ、更に装備次第で対潜能力を持たせる事が可能。

 

補足:改カミカゼ級であるムツキ級駆逐艦の姉妹。 日本駆逐艦型内で最速(シマカゼ? いえ、知りませんね…)ではあるが、戦闘面ではカミカゼ級と大して変わらなかった為、カミカゼ級同様に武装を全廃して後方支援艦化。 只、カミカゼ級より余裕があった為、カーゴを装備。

 

 

 

 “アヤナミ(綾波)

主砲:12.7cm連装砲x2。当初はガミラス駆逐艦に対応出来ていたが、現在は無力化した事もあって1基縮小

 

対空:主砲縮小の代わりにパルスレーザーを大幅増設するが、抜本的な解決に至らず。

 

補足:改フブキ(吹雪)級と言うべきアヤナミ級駆逐艦の長姉。 フブキ級の致命的な対空性能の悪さの改善が行なわれ、ある程度は前線にいつづけれた。 尚“ソロモンの鬼神”先代綾波と同様に、アヤナミも“日本五大駆逐艦”の1人として称賛される防衛艦隊屈指の実力者で、下記のハツシモと共同戦線を張った事もあって仲が良い。

 

 

日本五大駆逐艦(特別掲示):艦娘競技大会上位入賞者及びガミラス戦で武勇を馳せた5人の駆逐艦娘でアヤナミ、ハツシモ、ユウダチ(夕立)ユキカゼ(雪風)シマカゼ(島風)を示す。 元々はアヤナミ、ハツシモ、ユウダチの3人での“三大駆逐艦”であったが、ガミラス戦で大戦果を上げ続けた新規艦娘ユキカゼとシマカゼが何時の間にかに加わって現在の名称となった。 現在はユウダチ、シマカゼ、ユキカゼが戦死した為に現在はアヤナミとハツシモのみ。

因みにユウダチの姉妹艦シグレを加えて六大(四大)駆逐艦と呼ぶ者達が一部にいる模様。

 

 

 

 “イナズマ()

補足:改二フブキ級(改アヤナミ級)と言うべきアカツキ級駆逐艦の最後の1人。 武装はアヤナミ級と同じだが、機動性の改善が行なわれた。 傑作艦とも言える十分な性能を有していたが、日本の財政難が原因で少数建造となり、ハツハル級やシラツユ級での迷走を引き起こす事に…

 

 

 

サミダレ(五月雨)

主砲:12.7cmx2。現在は対空能力強化の為にアヤナミ級&アカツキ級と同型同数。

 

雷装:最新型を初装備。

 

対空:ガミラス戦前型駆逐艦内では優秀。

 

補足:前衛面が強い日本宇宙駆逐艦には珍しい護衛艦色が強いシラツユ(白露)級駆逐艦の1人。 火力と機動力に物足りなさがあるものの、日本駆逐艦内屈指の探索能力を保持。サミダレも歴代(五月雨&さみだれ)同様に相変わらずのドジッ子。 本作では地球残留だがガトランティス(白色彗星帝国)編(があれば…)で“新米俵太”ポジで艦隊同行予定。

 

 

 

 

 

  ~ 第二艦隊 ~

注:ヤマトを旗艦とした打撃艦隊で編制。 他の艦隊の指揮権を所有。

 

 

共通装備

波動エンジン:イスカンダルから通信カプセルと共に送られてきた特殊装備で、これの装備を前提とした改装を受けた艦娘はガミラスと同等以上に交戦出来るまでに強化が可能。

ヤマトの搭載物は地球側の技術力及び時間不足で艤装に生かしきれていない処があるものの、取り敢えず問題なく運用出来てはいる。 アカシは試作品で他の艦娘は地球製(第1世代型)を装備している為、波動砲はヤマト以外全員が使用不能。 ワープもアカシ以外の大型艦(戦艦&正規空母)でしか安全性が無い為、巡洋艦以下はワープ厳禁とされている。

 

ワープ(特別啓示):光さえ不可能な1年以内でのイスカンダル遠征に必須の宇宙航行能力。 本来なら空間歪曲式を遠征参加要員1人1人に獲得させるべきモノなのだが、上記と通りに地球側の技術力&時間不足が原因で、戦艦と空母の大型艦、唯一例外のアカシ(但しアカシはかなり無理がある為、基本的に予備)にしか出来ない。 此の為に今回の遠征では跳躍距離を犠牲とし、ワープ可能艦で全員を牽引するワームホール式を採用。

 

 

 

 “ヤマト(大和)

主砲:46cm三連装砲x3。大和時代のとほぼ同じ形だが、衝撃砲(ショックカノン)化して威力は桁外れで大抵の標的を一撃で粉砕可能。 また実弾(三式融合弾)が使用可。

三式融合弾…衝撃砲の無力化に伴って開発された特殊砲弾。 原作で言う三式弾と一式徹甲弾(or九一式徹甲弾)の両面を持った対地対艦対空全てで使える汎用性を持っているだけでなく、状況によっては衝撃砲より高威力&高射程が発揮可能。 欠点は現在は戦艦にしか運用出来ない、装填や準備に時間が掛かる。

 

副砲:15cm三連装砲x2。主砲と同射程だが、威力は主砲の半分近くしかない代わりに連射性は主砲のほぼ2倍。 主砲同様に実弾が使用可。

 

雷装:煙突を前方に引き倒して、M202(コマンドーでの「説明書を読んだのよ」のアレ)みたいにして使用するのが基本だが、引き倒さなくても一応使用可。 対艦対空どちらでも使用出来るだけでなく、水中でも使用可。 因みに船体固定式の魚雷(ミサイル)発射管は確認出来ず。

 

対空:極めて優秀。

 

航空:コスモゼロx2。使用時はボウガン型のカタパルト(千歳と千代田のに形が近いが、拳銃サイズに小型化)で射出。 他にも航空機を載せている模様。

コスモゼロ…ミサイルを翼下係留式で運動性が落ちる上に少ない為に対艦能力に不満が有るものの、地球屈指の空戦能力を保持する上にステルス性能を持っており偵察能力にも秀でている。整備と生産性に難が有る為に現在はヤマトのみに配備。

 

波動砲:使用時は船体型の艤装内側に2分割されている砲身を繋げて展開する必要あり。 使用時にエンジンに過負担を掛けないといけない、発射準備に時間が掛かり過ぎるのが短所だが、それ等を補える超射程と数値上は一撃でオーストラリア大陸をクレーターに変えれるだけの破壊力を有している。 対地対艦隊用に収束率を緩める事で、ある程度は拡散させる事が出来るのだが、対艦隊に於いては、あまり満足のいくモノではない事から、ガミラス戦後の拡散波動砲の開発に繋がった。

 

第三艦橋(特別掲示):大和時代のマスト型和傘の代わりに装備。 普段は船体型艤装の内側にあるが戦闘時に左腕に装着。 四次元ポケット並にカタパルトや波動爆雷等を収納かつ取り出し可能だけでなく、楯の機能(波動防壁)も有ってよく大破か消失している為、アカシの頭痛の種となっている。

「第三艦橋は楯ではないのだが…」byヒュウガ

 

真っ赤なスカーフ(特別掲示):地球から旅立つ日に古代守と進から託された古代兄弟の母の形見で、金属輪の代わりに首に巻かれている。 スカーフ自体に直接的な効果は存在しないが、古代兄弟との地球帰還の約束の証なので、此のスカーフを確認する事でヤマトの決意を強くする。

 

(注:他にも未確認の武装や追加予定のがある模様)

 

補足:2百年以上前の深海棲艦戦で戦没した大和がイスカンダルからの何らかの力を受けて蘇生し、艤装の大改造を受けた宇宙最強の艦娘。 元々大和自体が潜在性が高かったと言え、イスカンダルによって恐るべき力を有し、此の事が逆に地球側の技術力不足で艤装に生かしきれていないが、裏を返せば地球の技術向上があればアップグレードが可能で、地球側も此の事を見込んで異常とも言える改良余白を設置。

 

 

 

 “ヤハギ(矢矧)

主砲:15cm連装x3。ヤマトの副砲と同性能だが、連装の為に少し火力が劣る。

 

雷装:対艦能力には優れているが、対空能力は疑問符が付く。

 

対空:少し悪い。

 

補足:水雷戦隊旗艦としての運用を主とした日本宇宙巡洋艦の決定版であるアガノ(阿賀野)級巡洋艦の1人。 アガノ級は阿賀野級同様に対艦性能は優れる反面、対空性能は劣っている。

 

 

 

 “ハツシモ(初霜)

主砲:12.7cm連装砲x2。駆逐艦内で言えば、連射が悪いが火力がそれなりにある。 原作で言えば12.7cm連装砲B型改二(夕立砲)装備状態。

 

雷装:参加駆逐艦では最少。

 

対空:悪い

 

ステルス:カゲロウ級への試験運用の為にハツシモとワカバ(若葉)のみに装備されたが、ガミラスの探知能力(取り分けて熱探知やエネルギー探知)の進歩でほぼ無力化された為、肝心のカゲロウ級には装備取り消し。

 

補足:ガミラス戦以前に日本の財政難から“何処まで安く出来るか?”をコンセプトに建造された事が仇となって失敗作の色合いが強いハツハル(初春)級駆逐艦の1人。 参加駆逐艦の中では一番武装が少ないのだが、ハツシモ自身は五大駆逐艦の1人である通りに防衛艦隊内でも上位に入る器量の持ち主。

 

 

 

 “イソカゼ(磯風)”&“ハマカゼ(浜風)

主砲:12.7cm連装砲x3。駆逐艦内で言えば、ほぼ標準と言える。 原作で言えば“12.7cm連装高角砲(後期型)(浦風砲)装備状態”。

 

雷装:駆逐艦内では標準(?)

 

対空:ハツシモ程ではないが低い。

 

補足:ガミラスとの開戦後に建造されたカゲロウ(陽炎)級駆逐艦の姉妹。 元々優秀艦級であるアサシオ級駆逐艦のステルス型として計画されていたが、ガミラスが対ステルス探知能力を整えた為にステルス機能があまり役に立たない事が判明したので、純粋な改アサシオ級に変更された。 ガミラス戦での反省点が遺憾なく取り入れられての高性能を誇るのだが、設計変更の粗が色々と出ており、特に艤装に統一性が無い為に姉妹艦内であっても互換性が最悪な事から運用費が高く、此の事から改カゲロウ級ことユウグモ級駆逐艦の誕生に繋がる。

因みに木星会戦でのユキカゼの死を巡ってキリシマとすれ違いがある。

 

 

 

 “アサシモ(朝霜)

補足:改カゲロウ級と言うべきユウグモ(夕雲)級駆逐艦の1人で遠征艦隊参加者最年少。 武装こそ前級のカゲロウ級と同じながら、カゲロウ級の欠点の互換性の無さを改善しての運用費のコストダウン、日本駆逐艦屈指の機動性を誇っており、日本宇宙駆逐艦の決定版と言うべき高性能駆逐艦。 アサシモ自身も潜在能力は極めて高いのだが、艤装を余り上手く使いこなせていない模様。 此の為に自分と真逆で、艤装がイマイチだが最強技能を持ち合わせているハツシモを意識し、張り合おうとしている。

 

 

 

 

 

  ~ 第三艦隊 ~

注:ショウカクを旗艦とした航空艦隊。

 

 

 “ショウカク(翔鶴)”&“ズイカク(瑞鶴)

雷装:対空用の物のみ。

 

対空:ヤマトより多数装備し、更に対艦に一応回せる大型のも装備。

 

航空:コスモタイガーx90。

コスモタイガー…破格の性能を誇るマルチロール艦載機。対空能力のみコスモゼロに一歩劣るものの、ガミラス機と同等以上に戦う事が可能。 本作での搭載機は試作機を無理矢理量産したⅠ型(元ネタ:零戦一一型)の為に粗が多々あり、此の反省点から改良されてガミラス戦後に登場するⅡ型は怪物の一言。

 

補足:日本宇宙空母の決定版であるショウカク級空母の姉妹。 ガミラス戦開始直後に竣工した事もあって殆どの海戦に参加した歴戦の艦娘。 瑞加賀要素の代わりとして、ズイカクは戦歴の無さに加えて先代瑞鶴の死を無駄にした事からヤマトを嫌い、ヤマトもヤマトでズイカク(&瑞鶴)の戦歴に嫉妬している。

 

 

 

 “チトセ(千歳)

航空:コスモファルコンx45。

コスモファルコン…コスモゼロ&コスモタイガーの不足から艦娘用の艦載機に改造されたマルチロール陸上機。 性能こそコスモタイガーに引けを取らないが、全武装が実弾の為に頻繁に補給させる必要があるだけでなく、一時的に扱ったズイカクが「重い」と不満を漏らした様にかなり扱いが難しい。

 

修理:下記のアケシ程ではないが、あえて言えば艦娘自身の治療専用。

 

チトセカクテル(特別掲示):原作で言えば戦闘糧食(?)で、チトセが作っては飲んでいる謎の人工酒。 味が独特な上に度数が高過ぎる為に飲み手を選ぶ代物だが、人や艦娘を問わず飲兵衛にはそれなりに高評。 チトセが言うには黄金比率が有るらしく、チトセは暇を見つけては研究と生産を続けているが、此の事でチヨダによく怒られている。 因みに此れと双璧をなす本醸酒『隼鷹』があるらしい。 元ネタはヤマトカクテル。

 

捕捉:先代千歳と違って当初から小型空母であった本作での実写版佐渡。 アカシの姉妹艦の建造取り止めに加えて僚艦ユウバリのMIA認定に伴って、趣味で医療知識のあったチトセのみに修理技能を追加。

 

 

 

 “イスズ(五十鈴)

主砲:12.7cm連装砲x3。彼女のみカゲロウ級の物の改良品を装備。対空能力が強化された(筈)が、搭載基数が縮小された事もあって対艦能力が低下してしまい、結果的に軽巡内では最弱の火力に…

 

雷装:対空用増設で対艦用が縮小されたが、カゲロウ級と同じ最新型に更新。

 

対空:アキヅキ級程ではないが、優秀。

 

捕捉:上記のナガラ級巡洋艦だった1人。 アキヅキ級を統制する旗艦が欲された事もあって対空性能強化が行われた。(改装前のはナガラ&ナトリの項目を参照)

 

 

 

 “カスミ()

主砲:10cm連装砲x3。本来はハツシモと同じ物であったが、アキヅキ級と同じ物に改装。

 

雷装:ハツハル級以上、カゲロウ級以下。

 

対空:アキヅキ級に次いで優秀。

 

捕捉:ガミラス戦以前に建造されたアサシオ(朝潮)級駆逐艦の1人。 本来アサシオ級は水雷重視なのだが、アサシオ級用の部品切れの為にやむを得ずアキヅキ級の物を転用、原作で言う改二乙に近い形となった。

 

 

 

 “アキヅキ(秋月)”&“テルヅキ(照月)”&“ハツヅキ(初月)

主砲:10cm連装砲x4。ハツシモのとは逆で火力が低い代わりに連射性に優れている。 当然ながら原作で言えば“長10cm連装高角砲+高射装置”装備状態で、二百年以上経過しても長10cm砲ちゃん(x2)は健在。

 

雷装:対空用のは優れているが、対艦はイマイチとなっている。

 

対空:当然ながら優秀。

 

補足:砲火力による対空戦闘を想定されたアキヅキ級駆逐艦の3姉妹。 本来なら『霜月』と『若月』、坊ノ岬組の『冬月』も入るべきだが、3人共未実装の為に脱落。

 

 

 

 

 

 

  ~ 第四艦隊 ~

注:アカシを旗艦とした予備戦力にして、航海に必要不可欠のアケシとオオヨドの2人の護衛を主とした艦隊。

 

 

 “アカシ(明石)

主砲:12.7cm連装砲x2。取り敢えずハツシモと同じ物を装備。

 

雷装:無し。

 

対空:極悪。

 

修理:資源さえ有れば、明石とは違って大破状態でも完全修理が可能。

 

補足:本作の真田ポジその1。 上記の修理力だけでなく、ある程度の設備があれば他の艦娘の改装が可能。

 

 

 

 “オオヨド(大淀)

主砲:15cm三連装砲x3。ヤマトの副砲と同型。

 

雷装:対空用のみ。

 

対空:アキヅキ級とほぼ同等な優秀さ。

 

探知:本来航空機用の所にロシア製の高性能探知機を装備。ヤマトと同等か、それ以上。

 

補足:本作での実写版相原ポジ(?)。 本来は警備艦隊旗艦も兼ねた探索艦であったが、ガミラス戦でアキヅキ級の統制旗艦に変更され、更にイスカンダル遠征に伴って航空艤装を廃止してワープ航路用の探索装置を追加。 オオヨド自身は優秀な戦闘力を持っているが、ワープ航法に必要不可欠にして、アカシの護衛の為に前線に基本出ない。

 

 

 

 “タマ(多摩)

主砲:15cm単装砲x4。先述とナガラ級と同じ砲を装備していたが、ヤマトの副砲の同型砲身に更新されるも、若干無理があった為にヤハギやオオヨドに僅かに劣る。

 

雷装:換装に伴って対艦用はカゲロウ級と同型同数となったが、対空用は少ない。

 

対空:悪い

 

捕捉:ガミラス戦以前に建造されたクマ(球磨)級巡洋艦の1人。 半ば旧式枠に入っているがタマ自体優秀であった為に遠征艦隊入り。

 

 

 

 “レシーテリヌイ(通称:レフィ)”&“ヴェールヌイ(通称:ヴェル)”

主砲:12.7cm連装砲x2。上記のハツシモとほぼ同等。

 

雷装:駆逐艦内でも屈指の多数装備。

 

対空:直接のは低いが、空母やオオヨド等の協力があるとアーセナル・シップとして運用可。

 

補足:姉妹揃ってロシアから派遣された、ヴァリャーク級巡洋艦に見られるロシア伝統の重雷装が施された“プチ北上”と言うべき駆逐艦だが、ロシア内では若干旧式と認知されている。 ヴェールヌイは言うに及ばずだが、レシーテリヌイの元ネタは日露戦争時に日本に鹵穫された帝政ロシアの駆逐艦で中身は暁。 暁同様にレシーテリヌイもレディを自称しているが、悉く空回りしている上にヴェールヌイに弄られていて姉の威厳皆無。

 

 

 

 “丹陽”

補足:台湾時代の『雪風』を元ネタにした日本に猫ババされた中国の艦娘。 彼女は一言で言えば日本のカゲロウ級のデッドコピーだが、艦隊編入に伴ってカゲロウ級との規格統一改装を実施。 カゲロウ級ユキカゼとは別人だが、髪が長い以外は何故か容姿は瓜二つ。 後、口調が訛っていて、仲間達からその事をよく弄られている。

 

 

 

 “アマツカゼ(天津風)

主砲:12.7cm連装砲x1(?)。連装砲君だが、イソカゼ&ハマカゼのと同性能。

 

修理:アケシ程ではないが、あえて言うなら機関士(エンジニア)の色合いが強く、専ら艦娘の機関の整備と修理を得意としており……ある意味、徳川彦左衛門ポジ(?)。

 

捕捉:イソカゼ&ハマカゼと同じカゲロウ級駆逐艦の1人だが、次世代艦の為に新型機関を試験搭載した事から機関を中心とした修理能力が追加。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― イカロス調査艦隊 ―――

 火星・木星間の小惑星群の1つである小惑星イカロスに潜伏しているレムレース(潜宙棲鬼)と彼女に随伴する潜宙艦隊の探索・駆除を目的とした任務部隊で基本的にイスカンダル遠征艦隊から選抜。

 

共通追加装備

九五試宇宙爆雷(注:本編での表記は“爆雷”):元々は遊星爆弾を破壊または軌道を逸らす為に開発された宇宙機雷の艦娘搭載型兵器。 ガミラス戦初期は空間魚雷が主体でキタガミやオオイ(一時取り止めになったキソ)等の巡洋艦娘を重雷装化して対応させていたが、より低コストな兵器が求められて試作開発が行われ、予想を上回る効果を発揮していたが、直ぐにガミラスが遊星爆弾を大型・硬質化した為に現在は無力化。 数値上の破壊力は直撃なら重巡級でも撃破が可能だが、“射程が短い”“弾速が遅い”の2つの致命的な欠点が有った為に本採用には至らなかったが、レムレース戦での対潜宙艦兵器として有効なだけでなく、爆発有効範囲の広さや速射性に優れていた事からミサイルや空間魚雷の迎撃兵器としても意外に使える事が判明して制式採用に向けた研究改良が開始され、後の傑作兵器・波動爆雷の開発に繋がる事になる。

 

  ~ 前衛部隊 ~

注:現場部隊で対潜宙艦用武装を追加。

 

 

 “ヤマト”(判明のみ)

ロケットアンカー:追加装甲(プロテクター)も兼ねて左右両脇に1基ずつ携帯して使用時には外して手に持持つ、事実上のツインクローショット(ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス)。 武装ではないが、対象物を引き寄せたりスパイダーマン移動が可能と意外に使用頻度は高いのだが、本来の使用用途がよく分からない謎装備。 尚、当初はヤマトのみの物だと思われたが、他の艦娘達にも装備されている模様。

 

アステロイドリング(アステロイドシップ):本来は地球脱出船が隕石や小惑星に擬態してガミラスの目を欺く為の特殊装置だが、緊急用の防御装置としてヤマトに試験搭載。 三式弾の応用で副砲から時限信管付き砲弾でコントロール装置を射出(初回使用時に、此の方式だとコントロール装置の故障や小惑星から外す、或いは小惑星を破壊する危険性の高さが判明し、空間魚雷や爆雷へ変更する改良案が検討中)して目標の小惑星群へ突き刺してからマグネトロンウェーブでの操作で引き寄せて使用者の周辺に(タル)型の防御壁を構成する擬装形態(アステロイドシップ)、その後に5輪の輪型に高速回転させる防御形態(アステロイドリング)に移行するのだが、此の形態は操作に集中する為に武装が使えなくなる欠点がある。

因みに此の装置は深海棲艦の浮遊要塞を元として、深海棲艦戦時から研究開発が続けられた由緒正しい代物だが、地球側は既に古い手と称されるだけでなく、ガミラスは兎も角として“超弩級のみに許された浮遊要塞を冒涜している”との事で深海棲艦の前で使うと大抵は逆鱗に触れる。

 

 

 

 “アブクマ(阿武隈)”(ナガラ&ナトリとの相違点のみ)

探知:武装の多くが故障した為に代用品として木星基地(跡)に保管されていたレーダー群を臨時に追加。

 

捕捉:木星駐留艦隊の生き残りであるナガラ級巡洋艦の1人でレーダー以外は上記の“ナガラ&ナトリ”と同じ。

 

 

 

 “ハツシモ”&“サミダレ”&“カスミ”&“アサシモ”

捕捉:サミダレとカスミにアサシモの3人は爆雷が追加、ハツシモのみは過去に搭載しての撤去だったので復活搭載となった事以外は変更点無し。

 

 

 

 

 

  ~ 後衛部隊 ~

注:探索や航空による支援艦隊でキリシマとスズヤ以外は基本的に武装変更は無し。

 

 

 “キリシマ改丁”(注:本編での表記は“キリシマ”)

主砲:12.7cm単装砲x1。撤去された36cm連装砲群の代用品として技術部の独断で搭載。 単装砲ながらフブキ級移行の駆逐艦群のと比べて火力が劣るが速射性が極めて優れているのだが、倉庫で長年埃を被っていた代物で出所が不明。 性能的に似か通っている事から後のドレッドノート級前衛航宙艦(主力戦艦)やアンドロメダ級戦艦前衛武装宇宙艦の主砲となる収束圧縮型衝撃波砲の試作品だと推測されているが、防衛軍が否定。

 

雷装:主砲群の代用装備の主体として、コンゴウとハルナの艤装部品を転用する形でVLS式ミサイルを大量搭載。

 

試作亜空間ソナー:異次元探索目的もあってガミラス戦前から開発が進んでいた対潜宙艦(次元潜航艦)探知機。 ガミラス戦勃発からの苦戦に“ガミラスは次元潜航艦、未実装”の希望的観測も加わって潜宙艦研究と共に開発凍結、実は極少人数で開発が続投していたものの、性能云々以前にあまりにも実用性の無い“大型”“重量”“エネルギー消費量”で戦艦級でさえ搭載困難な代物。

 

捕捉:レムレース率いるガミラス潜宙艦隊戦を想定して、武装削減による各種レーダー増設に試作亜空間ソナー搭載を前提とした一時形態で、言わばキリシマ版浦風改丁。 本来ならガミラス戦前に試験実装されたアサシオの対潜仕様(朝潮改二丁)を参考に主砲2基(+α)は残す予定だったが、イタリア艦隊の独断出撃で時間的猶予が激減した為に早期出撃を優先したので武装全廃を予定したが、現場の独断であまりエネルギーを使わない武装を代用装備、結果的に対艦能力が激減した反比例して探知能力は劇的に向上。 先代きりしまも含まれる嘗てのこんごう級護衛艦を思わせる姿となり、ヤマトから測量艦と馬鹿にされたが、キリシマは意外に此の形態を気に入っていた。

 

 

 

 “スズヤ(鈴谷)

雷装:工数の縮小や本人の要望もあって、巡洋艦時代のがそのまま残留しているが、対空のは無し。 此の事から後世からよく“ロシア製空母(重航空巡洋艦)を参考にした”と言われるが、公式では無関係と発表。

 

対空:小型パルスレーザー多数の為、巡洋艦時代より若干悪化。

 

航空:コスモパンサーx30。スズヤが空母続投を求めていた事もあって増量改造が計画中。

コスモパンサー…ガミラス戦前から旧NATO系を初めとした地球各国の多くが採用した多用途戦闘機。 残念ながらガミラス戦闘機に対して“器用貧乏”の気質が強く、数度の改良が施されるも早期に陳腐化。 此の為に新型戦闘機(後のコスモタイガー)の開発が求められるも各国の要望合戦による設計の難航に度重(タビカサ)なる変更で開発(からの制式量産)が大停滞した為に使用を続投、結果艦娘達に不必要な犠牲が大量発生。 現在はコスモタイガーの量産開始にコスモファルコンの艦上機化による大量確保で退役、大半が解体放棄されたが一部の少数は予備機や練習機として続投中

 

捕捉:元をモガミ(最上)級航空巡洋艦であったのをレムレース討伐による空母不足によって、空母伊吹と重巡筑摩空母改造案(廃案)を参考にして改造された空母で、資材に戦没したショウホウ(祥鳳)の艤装とタイホウ(大鳳)の予備部品を使用。 艤装が大破していて元々航空巡洋艦であっただけでなく、航空機の使役に秀でていた事から巡洋艦娘達から選抜されて問題無く空母を運用しているが、如何せん巡洋艦の気質が抜けてない為に雷装を残した代償で“搭載機数の減少”や“防御力の悪化(主に誘爆問題)”が危惧されている。

 

 

 

 “カモイ(神威)

対空:パルスレーザーに交換且つ増設しているがほぼ付け焼き刃

 

航空:カーゴ(対潜警戒仕様)x10。通常戦闘機もより多く搭載可能。

 

捕捉:水上機母艦兼補給艦であった先代神威と違って補給空母と言うべき艦娘。 元々艤装はアメリカのサンガモン級空母群の1つであったが、補給艦娘を大量戦没させた日本を危惧した事から日本へ仕様変更を施して譲渡、先代神威では左腕にあった艦橋が飛行甲板に変わる等、艤装形状は先代神威とガンビアベイとの折檻した様になった。

 

 

 

 “ミカヅキ”(再武装仕様)

主砲:12.7cm単装砲x4。本来は12cm砲だったが、ガミラスには火力不足が目立った為、小規模改良が施された事で連射性が向上したハツハル級&シラツユ級の主砲に交換。 艦これ原作で言えば12.7cm単装砲装備状態。

 

雷装:本来のは旧式化していて既に全放棄状態だったので、アカツキ級のと交換したが、爆雷を大量搭載する為に空間魚雷その物が未搭載なので事実上御飾り。

 

対空:パルスレーザーに交換、増設はしていないが能力はそれなりに向上。

 

捕捉:レムレース討伐に志願して現役に一時復帰した小規模改装形態。 嘗てミカヅキはアブクマ共に火星艦隊所属に小惑星帯の探索に赴いていたが、自分達を可愛がっていた火星艦隊旗艦・戦艦イタリアが轟沈する光景を目の前で見た事から“イタリアの仇を取ろう”との固い意識がある。

 

 

 

 “キサラギ(如月)”(再武装仕様)

主砲:12.7cm連装砲x2。カゲロウ級のと交換、ミカヅキと違って搭載基数が半減。

 

探知:オオヨドを参考に雷装を全廃して各種レーダーを追加装備。

 

捕捉:藤堂の初期艦にして長年の秘書艦であった事から殆ど予備役に近かったが、レムレース討伐によるキリシマの補佐役として一時的に復帰。 基本的にミカヅキのと変わりないが、雷装全廃の為に対艦能力がミカヅキに劣る。 各種レーダーを大量搭載した恩恵から護衛駆逐艦として意外に優れていた為、此れを参考にした改装を他のムツキ級に施しての現役復帰計画が検討中。

 

 

 “アヤナミ”&“イナヅマ”

捕捉:撤去されていた爆雷が復活搭載となった事以外は上記と代わり無し。

 

 

 

 

 

  ~ 救助部隊 ~

注:藤堂の一存で危機的状況下に陥っているであろうイタリア艦隊救出に備えて緊急編成。 書類上は一纏(ヒトマト)めになっているが、実際はジュンヨウ&キソ&ムツキ級の“ジュンヨウ隊”、マミヤ&タイゲイ&ナガラ&ナトリ&カミカゼ級の“マミヤ隊”に分割して運用。

 

 

 “ジュンヨウ(隼鷹)

航空:カーゴ(救助仕様)x5&カーゴ(対潜警戒仕様)x10&コスモパンサーx15。カーゴ(対潜警戒仕様)はカモイが受け入れられなかった分、コスモパンサーは事実上の保険で本編ではスズヤの予備として機能。

 

捕捉:艦これ原作では小型空母の扱いだった謎仕様の先代隼鷹と違って当代のは低速大型空母であるヒヨウ(飛鷹)級空母の片割れ。 元々ジュンヨウは医師志望で実際に宇宙戦士訓練学校卒業直前に医師免許を獲得した事から病院艦機能が追加されて“病院空母”との少し変わった存在に変貌したが、速度改善の為に機関を増設した事で搭載機数が姉妹艦ヒヨウの半分近くまでに減少。(艦これ原作で言えば高速化の為に2スロットが潰れた) 先代の飛鷹級と同等に防御力には難があるが、最前線に赴いては負傷者達と共に帰還し続けている事から“修羅場のジュンヨウ”や“和製ガーデルマン”との渾名を頂いている。

 

 

 

 “マミヤ(間宮)

主砲:14cm単装砲x2。巡洋艦からの転用品だが、事実上御飾り。

 

対空:極悪。給糧艦なのだから当たり前。

 

捕捉:

 

 

 

 “タイゲイ(大鯨)

対空:パルスレーザーへの交換且つ増設が施され、シラツユ級駆逐艦とほぼ同レベル。

 

捕捉:

 

 

 

 “キソ(木曾)

 

 

 

 “ナガラ”&“ナトリ”

捕捉:救助用の装備が追加された以外、上記と変わり無し。

 

 

 

 “ムツキ(睦月)”&“ウヅキ(卯月)”&“ヤヨイ(弥生)”&“サツキ”&“ミナヅキ(水無月)”&“ナガツキ(長月)”&“キクヅキ(菊月)”&“ユウヅキ(夕月)”(救助仕様)

医療装備:魚雷発射管の代わりに2個装備。 今回は艦娘救助仕様の為に1個目には包帯を初めとした血止め道具や注射器各種、2個目には呼吸器とAEDが各々に収納、遭難した宇宙船救助仕様として工作道具を収納した物のも有り。

 

航空:カーゴ(救助仕様)x2。搭載数は上記の“サツキ&ミカヅキ”の項目のと代わりなし。 機体下部の多関節式のアームで対象の艦娘1人を掴み、簡易的な応急処置を施しながら移動させる事が可能だが、艤装の修理は不可。

 

救助仕様時ジャケット(特別掲示):艦これ原作での睦月級駆逐艦改二が着る“緑地に三日月のワッペン”のジャケットを原型とし、更に本来なら赤十字を使うべき処をムツキ級のエンブレムである三日月を使用し続けたかった要望から“白地に赤い三日月(中東仕様赤十字)”となっている。

 

捕捉:第1線から退いたムツキ級駆逐艦から武装を廃止した後方支援型の1つ。 救助の為の各種装備だけでなく、救助現場に可能な限りに早期到着を想定して機関出力を強化したので戦闘仕様よりも速度が出る。

 

 

 

 “カミカゼ”&“アサカゼ(朝風)”&“ハタカゼ”&“オイテ(追風)”&“ハヤテ(疾風)”&“アサナギ(朝凪)”&“ユウナギ(夕凪)”(救助仕様)

捕捉:第1線を退いたカミカゼ級駆逐艦から武装を廃止した後方支援型の1つ。 基本的には上記のムツキ級(救助仕様)と同じだが、艤装の容量の関係でカーゴは未搭載、赤十字の腕章を着用。

 

 

 

  ~ イタリア艦隊 ~

注:本編で名前が出た艦娘のみ表記。 艦これ原作での未実装艦はオリジナル設定。

 

 

 “ローマ”

主砲:38cm三連装砲x3。欧州では多々ある38cm砲群の中でも優秀だが、長砲身である事から実弾を仕様するとぶれからの命中精度の悪いとの唯一の欠点がある。

 

副砲:15cm三連装砲x4。本編では未使用の為に詳細は不明。

 

雷装:対艦用と対空用のがあるらしいが、本編では未使用の為に詳細は不明。

 

対空:先代ローマが深海棲艦の爆撃で戦没した事を気にしていたので、本人の要望で大量増設。 結果的にイタリア艦娘屈指の優秀。

 

航空:本編未使用の為に詳細は不明。

 

捕捉:ガミラスとの開戦前後に順次竣工したイタリア最新鋭のヴィットリオ・ヴェネト級戦艦(一部から竣工順でリットリオ級とも呼ばれる)の末妹たる4番艦だが、3番艦インペロと共に1番艦ヴェネト・ヴェネトと2番艦リットリオとは竣工に大きな開きが出来た事から、2人の運用実績から速度や防御力を改良している為、“インペロ(改ヴィットリオ・ヴェネト)級”とも称される。 イタリアの悪しき伝統たる打たれ弱さが若干あるものの、搭載砲火器はいずれも優秀であり、米軍が震源地に世界規模で採用された自動拳銃『ベレッタ M(モデル)92』や海上自衛隊の御用達となった地球屈指の砲熕大国イタリアの集大成と言える攻撃特化戦艦である。

 

 

 

 “カイオ・ドゥイリオ”&“アンドレア・ドーリア”

主砲:32cm三連装砲x2&同連装砲x2。当初は30cm三連装砲x3&同連装砲x2だったが、三連装砲を1基撤去してボーリング加工で大口径化。

 

副砲:15cm三連装砲x4、当初は13cm三連装砲だったが、規格統一による運用費削減を狙ってヴィットリオ・ヴェネト級と同じ物に交換。

 

雷装:対艦用と対空用のが有るらしいが、本編未使用の為に詳細は不明。

 

対空:ヴィットリオ・ヴェネト級の運用実績を参考に改良されて比較的優秀。

 

航空:本編未使用の為に詳細は不明。

 

キャラ:金髪碧眼の龍驤(何故か関西弁の幼女戦艦カイオ・ドゥイリオ)、茶髪碧眼の羽黒(体格は姉妹逆の内気なアンドレア・ドーリア)

 

捕捉:ガミラス戦前に竣工したカイオ・ドゥイリオ級戦艦の姉妹。 ガミラス戦初期から旧式化していた事から練習艦隊に編入されていたが、主力戦艦群であるフランチェコ・カラッチョロ級戦艦とヴィットリオ・ヴェネト級戦艦が次々に戦没してローマ以外が全滅した事から大規模改装を施して現役に復帰。

 

 

 

 “コンテ・ディ・カブール”&“ジュリオ・チェザーレ”&“レオナルド・ダ・ヴィンチ”

試作亜空間ソナー(レオナルド・ダ・ヴィンチのみ):キリシマの物より小型軽量且つ省エネの為に三連装主砲1基のみ撤去して運用。

 

キャラ:赤騎士の暴君(掠りもしていないコンテ・ディ・カブール)、金色の月桂冠を被ったポッチャリ(但し中身は赤城のジュリオ・チュザーレ)、夕張のイタリア戦艦版(何処かで見た気がする自称天才レオナルド・ダ・ヴィンチ)

 

捕捉:ガミラス戦前に竣工したコンテ・ディ・カブール級戦艦の3姉妹でイタリア艦娘の最古参。 コンテ・ディ・カブールとジュリオ・チュザーレはカイオ・ドゥイリオ級戦艦と共に練習艦隊に編入され、レオナルド・ダ・ヴィンチは艦娘を引退して兵器開発局に出向していたが、カイオ・ドィリオ級と同様の理由で大規模改装を施して現役復帰。 改装内容はカイオ・ドゥイリオ級戦艦のに準じているが、唯一の相違点は副砲が未搭載。

 

 

 

 “アクィラ”

 

 

 

 “スバスヴィエロ”

 

 

 

 “フィウメ”&“ゴリツィア”&“ポーラ”

 

 

 

 “ルイージ・ディ・サヴォア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ”&“ジュゼッペ・ガリバルディ”

 

 

 

 “マエストラーレ”&“グレカーノ”&“リベッチオ”&“シロッコ”

 

 

 

 

 

  ~ 登場かつ合流予定 ~

 

“ハルナ”

“イセ”

“ヒュウガ”

“チヨダ”

“ズイホウ”

“チョウカイ”

“フルタカ”

“カコ”

“アオバ”

“テンリュウ”

“スズツキ”

“ナガナミ”

“ウラカゼ”

“ムラクモ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ????? ~

注:ヤマトがガミラスに追い詰められた時に現れる(かもしれない)三人の謎の艦娘。三人共、日本や地球との関係は不明だが、少なくともガミラスの敵で、ヤマト達(と言うよりヤマトの)の味方である模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “翠星の女王”

真名:クイーン・エメラルダス。

 

主砲:???。該当すると思われるサーベルを携帯。

 

補足:謎の艦娘その1。 行方不明になったイギリスの試作艦娘の艤装に酷似しているらしい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “住みよい場所”

補足:坊ノ岬沖海戦にも現れたとの未確認情報もある謎の艦娘その2。 地球やガミラスとは別……謎のラーメタル星の唯一の艦娘らしいのだが、何故かヤマトによく似た外見らしい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “エイティンス”

補足:最終局面で現れるかもしれない謎の艦娘その3。 敵味方関係なく最強の戦闘力を持っているが、どうも存在すべき時間軸が違うらしい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― まだ見ぬ戦友 ―――

 

 ~ 暗黒星団帝国編(新たなる旅立ち&ヤマトよ永遠に……と言うより、イスカンダルへの追悼&暗黒星団帝国の逆襲&二重銀河の崩壊) ~

注:やる場合“蒼き鋼のアルペジオ”との二次クロスになる可能性あり。

 

“カガ”(空母ではなく、PS2版オリジナルの春藍(超アンドロメダ)級戦艦)

 

“春藍(?)”(出ない可能性大。もし出たら中国の宇宙戦艦で、性格は“デカい山風”)

 

“ジンツウ”(改二実装前の、ほぼ忘れ去られた初期のネガティブな性格で登場、もしかしたら事実上の主人公になるかも?)

“キタガミ”(PS2版オリジナルの『雪風改』と大山歳朗(トチロー)の立ち位置で、工作艦兼任……「私は!?」by大井)

“クロシオ”(徳川太助ポジ)

 

“キソ”

“ユラ”

“ノシロ”

“フブキ”

 

“ムツキ”(?)

 

“タニカゼ”

 

“リュウホウ”

“ユキカゼ”(出るのは戦死した本作の次代。ある意味、加藤四郎ポジ?)

“ハルカゼ”(出る場合、はるかぜ級を元としたユキカゼの姉妹艦)

 

“ナカ”(ヤマトに同行せず、PS2版オリジナルキャラの古野間卓みたいな立ち位置で、地球圏でレジスタンスのリーダーとして活動……「て事は、宇宙一カッコいい那珂ちゃんに!?」by本人)

“ガトランティス編生存組”(ヤマトと同行せずに、ナカと共にレジスタンス活動)

 

“コンゴウ”(戦死した本作の次代、予定では本作のウラカゼが艤装を継承して襲名)

“ヒエイ”(コンゴウとは別行動、どちらか一方が艦隊に同行して、もう一方は地球でレジスタンス活動)

 

“トネ”

“チクマ”

“マヤ”

 

“ソウリュウ”(改ウンリュウ級空母)

 

“マツシマ”(PS版さらばのオリジナル艦『まつしま』と暗黒星団帝国三部のオリジナル空母『ホワイトスカウトⅠ』&『ホワイトスカウトⅡ』を元にした、ガトランティス滷獲空母のオリジナルキャラ)

 

“ノワキ”

“アラシ”

“ハギカゼ”

“マイカゼ”

 

“アキグモ”

“ユウグモ”

“マキグモ”

“カザグモ”

 

“イ401”(出るのはシオイでなく“アルペジオ”のイオナ、更にイオナでもアニメ版(純粋無垢)原作版(おっさん)かも未定)

 

“コロラド”(『メリーランド』の代わりだが、艦これ原作しだいで再変更されるかも?)

“エゾ”(元はPS2版オリジナル戦艦『蝦夷』、出るなら“銀河英雄伝説のイワン・コーネフ”をベースにしたオリジナルキャラで、コンゴウかヒエイの相方)

“アイル・オブ・スカイ”(元はPS2版オリジナル戦艦、オリジナルはドレッドノート級だが、本作では空母型アンドロメダ級)

 

“ネメシス(?)”(元はPS2版オリジナルの改アンドロメダ級だが、出ない可能性大。もし出る場合の性格は“銀河英雄伝説のダスティー・アッテンボロー”か“同、アレックス・キャゼルヌ”のどちらか?、多分、外れた方はアイル・オブ・スカイに転用………シェーンコップ?、カガがいるじゃん「え?」by加賀)

 

 

 

 

  ~ ガルマン・ガミラス帝国&ボラー連邦編(PartⅢ) ~

 

“ホウショウ”(途中で離脱する可能あり)

“タイヨウ”

“アキヅシマ”

“カシマ”(カトリに替わる可能性が有り)

 

“カトリ”(初っぱなで太陽近くで死ぬ可能性大)

 

“ハツユキ”

“シラユキ”(はつゆき級を元にした、土門竜ポジ&揚羽武ポジ?)

 

“ビスマルク”(ヤマトとは別動隊)

“グラーフ・ツェッペリン”(ビスマルクに同行)

“プリンツ・オイゲン”(ビスマルクに同行)

レーベレヒト・マーズ(Z1)”(ビスマルクに同行)

マックス・シュルツ(Z3)”(ビスマルクに同行)

 

“ローマ”{『ノーウィック』の代打(「チョット待て!!!」byガングート)で、ヤマトとは別動隊}

“アクィラ”(ローマに同行)

“ザラ”(ローマに同行)

“ポーラ”(ローマに同行)

“ルイージ・ディ・サヴォア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ”(ローマに同行)

“ジュゼッペ・ガリバルディ”(ローマに同行)

“マセストラーレ”(ローマに同行)

“グレカーレ”(ローマに同行)

“リベッチオ”(ローマに同行)

 

“アイオワ”(『アリゾナ』の代打で、ヤマトとは別動隊。『アリゾナ』みたいになるかは未定)

“イントレピッド”(アイオワに同行)

“サラトガ”(アイオワに同行)

“ガンビア・ベイ”(アイオワに同行)

“アトランタ”(アイオワに同行)

“フレッチャー”(アイオワに同行)

“ジョンストン”(アイオワに同行)

“サミュエル・B・ロバーツ”(アイオワに同行)

 

“リシュリー”(『プリンス・オブ・ウェールズ』の代打で、ヤマトとは別動隊)

“コマンダン・テスト”(リシュリーに同行、水上機母艦でなく空母になる可能性あり)

 

 

 

 

 

 ~ ディンギル帝国編(完結編) ~

 

“ムツ”(出るなら改良型アンドロメダ級戦艦)

 

“サツマ”

“アキ”

“コウチ”

“セッツ”(四隻とも元は日本弩級戦艦群、出るなら完結編版主力戦艦としてのオリジナルキャラ)

 

 

 

 

 

 ~ SUS編(復活篇) ~

 

“三代目ヤマト”(本作のアサシモが、二代目(ヤハギ)から艤装を受け継いで襲名)

 

“アタゴ”(出るなら巡洋艦でなく空母、ある意味、佐々木美晴ポジ?)

“リュウジョウ”(出るならクロシオが襲名……胸? さあ、どうでしょう?)

“ミョウコウ”(ハグロに変わる可能性あり)

“タツタ”(大村耕作ポジ?)

“ミユキ”(桜井洋一ポジ?)

“アサシオ”(上条了ポジ?、対抗馬にカゲロウ)

“シマカゼ”(小林淳ポジ?)

 

“ムラサメ”

“ユウダチ”(2人して天馬兄弟ポジ)

 

“キヨシモ”(スーパーアンドロメダ級の1人としての“大戦艦清霜”、第2移民船団に参加予定の為にヤマトに同行しない可能性あり)

 

”ブルーノア”(『ブルーノア』艦長がベースのオリジナルキャラだが、艦隊に同行せず……てか原作通りに初っ端で轟沈する可能性大)

 

“イタリア(リットリオ)(?)”(出るなら、リベッチオが襲名)

 

“ガングート”(出るなら、ヴェールヌイが襲名)

“タシュケント”

 

特型駆逐艦(吹雪級&綾波級&暁級)の皆さん”(出るなら、復活篇での主力戦艦みたいな立ち位置?)

甲型駆逐艦(陽炎級&夕雲級)の皆さん”(特型と同様に主力戦艦か、或いはスーパーアンドロメダ級みたいな立ち位置?)

 

“エルトゥールル(?)”(元ネタは和歌山県沖で沈没したオスマン・トルコの軍艦。出るのならパスカル将軍及びパスカル座乗艦をベースとしたアマール艦娘のオリジナルキャラ)

 

“シナノ(?)”(ヤマトの搭載艇ではなく空母のだが、原作で実装されないと…)

 

 

 

 

 

  ~ 登場編未定 ~

 

“ゴドラント”

 

“伊良湖”

 

“速水”

 

“大鳳”

 

“飛鷹”

 

“あきつ丸”

 

“三熊”(ガトランティス編がやや濃厚)

 

“熊野”

 

“羽黒”(SUS編がやや濃厚)

 

“球磨”

 

“冬月”(原作で実装され次第)

 

“時津風”(白色彗星帝国編か暗黒星団帝国編のどちらかで濃厚だが、出演する陽炎級が多い為に黄色信号が点灯中)

 

 

 

 

 

  ~ 登場不可 ~

 

“長門”

理由:プロローグ後書きにある通り、公式4コマ(吹雪、がんばります)18話だが、登場要望が多数の場合は後書き常連か、改良型アンドロメダ級戦艦としてムツと一緒に登場かも?……でも絶対カガと犬猿の仲で瑞加賀以上に面倒臭い事になりそう…

ナガト

「アンドロメダ級の力、侮るなよ」

カガ

「アンドロメダ級の子なんかと一緒にしないで」

 

“飛龍”

理由:あれだけ多聞丸(山口多聞)に拘っているとねぇ…

 

“まるゆ”

理由:輸送潜宙艦の使い道が思い付かない。と言うより潜水艦娘自体に黄色信号が点灯。

 

“川内”

理由:夜戦馬鹿を宇宙に放り込んだらどうなるか予想不可の為。

 

“陽炎”

“初風”

“親潮”

“夏潮”

“早潮”

理由:陽炎級が出過ぎの気がある為、余程の理由が無い限り撤回は無し。但し陽炎のみに未練あり。

 

“マサチューセッツ”

“メリーランド”

“ジャン・バール”

“平安丸”

“第百一号輸送艦”

“タスカルーザ”

“伊36”

“伊201”

“コマンダンテ・カッペリーニ”

“夏雲”

“夕暮”

“涼波”

“秋霜”

“ヘイウッド・L・エドワーズ”

“屋代”

“倉橋”

“能美”

“第二十二号海防艦”

理由:私怨ながら、作者未所有の為。出たければ先ずは早くドロップするように(オイ!)




 ご意見お待ちしています。

 追加や丸ごと更新が行った場合は本編の前書きか後書きでお知らせしていきますが、此方はガミラスと違ってそんなには無い筈です。
 謎の艦娘三人は本編に出るか、それまでに読者に正体が見抜かれたら解禁とします……分かる人や指摘してくる人っているのかなぁ…。

 因みに“宇宙戦艦ヤマト”と言う歌も代によって違います。
 初代は哀愁漂う“ささきいさお&ミュージックアカデミーの初期(男の哀愁)バージョン”、二代目のは勇ましい“ささきいさお&ロイヤル・ナイツ版”、三代目は若気たぎる“アマルフィー版”となっています。

 尚、“まだ見ぬ戦友”はやるかどうかは別として、少なくとも白色彗星帝国編と暗黒星団帝国編の骨は一様出来てはいますが、それ以降は敵{ボラー連邦、ディンギル帝国、大ウルップ星間国家連合(SUS、フリーデ、ペルデル、エトス)}が設定出来ていないのが最大の難点となっているで、保健の一種だと思って下さい。
 まぁ、リメイクシリーズや読者の意見や要望でなんとかなるかもしれませんがね…

 因みに、ガトランティスのみは御試し(と言う名の噛ませ犬)の形で本編に先行登場が内定しています………何時?
 2199見ていたら代々予想出来ると思いますよ。

 蛇足ながら、以下は出演内定者達の一部の発言です。

~ 暗黒星団帝国編 ~

加賀
「そう、私が春藍級戦艦、気分が高揚します」
因みに、加賀が春藍級になったのは以下の通り。
春藍の艦娘はPS2版山南の女性版にしよう → 性格が近そうな加賀を参考にしよう → ドレッドノート級に加賀いたから、元が戦艦の加賀本人を春藍にした方が楽だな → 加賀のCV井口裕香女史による幻聴「アンドロメダ級の子なんかと一緒にしないで」が御告げに近い形で聞こえた事で決定。
……暗黒星団帝国編まで行けなかったら、カガの拡散波動砲で消されそうだな…

金剛
「I'll be back!!!」

摩耶
「摩耶の本気、暗黒の連中に見せてやるぜ!!」

比叡
「比叡もどうか、金剛お姉様と一緒に!!!」





~ ディンギル帝国編 ~

陸奥
「あら、私がアンドロメダ級?
別にいいのに」
因みに、陸奥が(改良型)アンドロメダ級になったのは、完全無欠なまでに春藍級化した加賀の副作用。

長門
「だったら、出禁の私と代われ!!!」

陸奥
「やーよ!」


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設定 ガミラス

 此の設定は作者の推測がかなり入っているので、公式の深海棲艦のモノとは違う可能性があります。

 また一部は予定されているモノなので、作品の展開や作者の閃きで、変更や取り消し(ダミー)になる可能性があります。
 特に超弩級はその可能性が高いです。


 本編の十年前から現れた謎の敵対勢力で、正式名称“Galaxy Mystery Robbery Ship(銀河系未確認武装艦)”の4単語の頭を取ってガミラスと呼称されているが、ガミラスは深海棲艦と酷似した姿をしている為、深海棲艦の呼称がそのまま使われている。

 只、中身はほぼ別物となっていて、戦闘面が乗単位で強化されているだけでなく、深海棲艦が行わなかった戦略攻撃を平然と行う等、かなり残虐になっている。

 現在、地球は深海棲艦とガミラスの関係は、“ガミラスの斥候が地球に適応(弱体化)して深海棲艦となった”“深海棲艦の生き残りが宇宙に逃れてガミラスに進化した”の2つの説を立てているが、結局謎のままである深海棲艦共々、解明出来ないでいる。

 

 

――― 通常型 ―――

注:深海棲艦で言うイロハ級。一部は深海棲艦とは別物となっているが、深海棲艦と同様に形態が存在。

 

 

無発光体…基本的な才色や形体が確認可能の通常型の最下位種で当然ながら全級に存在。 本来は育成要員として予備戦力や後方支援に使われるのだが、太陽系制圧艦隊は基本的に此の位で構成、大和(ヤマト)復活まで地球防衛艦隊は壊滅的打撃を与える程の性能。

 

赤色発光体(elite)(通称:エリート)…中位種と言うより、本来の通常形態と思われ全級に存在。 太陽系制圧艦隊では無発光体群の旗艦を務める事があるが、基本的に主力艦隊の構成要員。

 

黄色発光体(flagship)(通称:フラッグ)…上位種で戦艦レ級以外の艦級に存在。 幸か不幸か太陽系制圧艦隊では確認されていないが、その名の通りにエリート群の旗艦を務めているが、下記の超弩級の直属艦隊の構成要員ともなっている。

 

黄白色発光体(改flagship)(通称:改フラ)…重巡リ級、軽母ヌ級、空母ヲ級、戦艦ル級、(戦艦タ級)の限られた艦級のみに存在する最上位なのだが、深海棲艦で確認された此の形態のみ、何故かガミラスでは確認されていない。

 

青色発光体(通称:???)…呉上空戦でガミラスのみに確認された新形態。 改フラの該当種ではないかとの推測があるが、現在は戦艦ル級の1隻のみで確認されただけなので、防衛軍が調査研究中。

 

 

 ~ 駆逐イ級 ~

・主砲…E:評価は低いが戦艦でも無視出来ない一撃を持っている。

・雷装…E:威力はそれなりにあるが、何故かあまり使われていない。

・探索…C

・該当ガミラス兵器…駆逐型デストロイヤー艦(『クリピテラ』級航宙駆逐艦)

・補足…大抵の艦隊に編入されているガミラスを象徴する存在。

 

 

 

 

 

 ~ 駆逐ロ級 ~

・主砲…D:連射性を代償に火力が強化。

・雷装…D:対艦能力強化の為に大型化。

・探索…E:一転集中化。

・該当ガミラス兵器…駆逐型ミサイル艦。

・補足…駆逐イ級の対艦強化型。

 

 

 

 

 

 ~ 駆逐ハ級 ~

・主砲…E:火力を代償に連射性が強化。

・雷装…E:対空能力強化の為に小型化して多連装化。

・探索…C:対空用に同時照準が可能化。

・補足…駆逐イ級の対空強化型。

 

 

 

 

 

 ~ 駆逐ニ級 ~

・主砲…F

・雷装…F

・探索…B:潜宙艦(次元潜航艦)用の装備があるのではと指摘有り。

・補足…駆逐イ級の偵察及び警備型。 此の級は艦隊には教導艦や駆逐戦隊旗艦をよく務めていて、更に偵察での単艦行動や拠点防衛用に基本的に使われている。

 

 

 

 

 

 ~ 軽巡ホ級 ~

・主砲…D

・雷装…D

・探索…C

・補足…水雷戦隊旗艦としての運用を第一とし、軽巡にしては戦闘力に物足りなさが有る。

 

 

 

 

 

 ~ 軽巡ヘ級 ~

・主砲…C

・雷装…C

・探索…D

・該当ガミラス兵器…高速巡洋クルーザー(『ケルカピア』級航宙高速巡洋艦)

・補足…軽巡ホ級に戦力強化が施され軽巡版駆逐ロ級。 対空能力と旗艦能力が低いのが玉に傷だが、支援兼護衛艦としてはほぼ完璧の存在である。 またガミラス通常型屈指の韋駄天。

 

 

 

 

 

 ~ 軽巡ト級 ~

・主砲…D:火力を犠牲に連射性を強化。

・雷装…D:対艦用を縮小して対空用を増設。

・探索…C

・該当ガミラス兵器…円盤型パトロール艇(『デラメヤ』級強襲揚陸艦)。

・補足…元々は軽母ヌ級や空母ヲ級の護衛艦として生み出された軽巡版駆逐ハ級だが、ガミラスにしては珍しく失敗作で、全ての面で中途半端の為に雷巡チ級や軽巡ツ級に役目を奪われており、基本的に後方支援艦(艦娘で言えば鬼怒改二に近い)として運用されている。

 

 

 

 

 

 ~ 雷巡チ級 ~

・主砲…E:精々駆逐イ級に毛が生えたレベル

・雷装…A:深海棲艦版とは違って対空戦に使用可能。

・探索…F:ガミラス中でも1、2を争う酷さ。

・補足…重雷装艦であった深海棲艦版と違って、アーセナル・シップの機能も持っており、軽母ヌ級か空母ヲ級と組むと尋常ではない火力を発揮出来るが、この代償で旗艦を務める事が出来ない。 下記の通りに本作での深海棲艦&ガミラスでは屈指のバリエーションを誇る。

 

 

 

 ~ 雷巡チ級陸戦型 ~(深海棲艦版も掲載)

ビームマシンガン(光線式機関銃)…深海棲艦戦時に鹵獲したドイツ突撃銃“ハーネルStG44(形状が似ている旧ソ連突撃銃USSR AK47『カラシニコフ』とよく誤解される)”を参考(と推測)に開発された雷巡チ級陸戦型の標準装備品。 深海棲艦版は実弾式だったが、ガミラス版は光線式に改良し銃身を伸ばした事から専用銃剣を銃口下に装着する事で近接武器として使用可能。

・拳銃…深海棲艦戦時の地球で類似品が存在しない為に深海棲艦オリジナルと予想(否定派の一部は“アメリカ拳銃コルトM1911『ガバメント』が原型”と主張)、ビームマシンガン同様に深海棲艦版は実弾式でガミラス版は光線式。

・手榴弾類…基本的に地球のと代わりなし、本編だと通常版でも空間騎兵よりも数と種類を携帯しているらしい。

ビームライフル(光線式小銃)(偵察版のみ)…性能や使用銃弾からアメリカ小銃スプリングフィールドM1『ガーランド』を参考、深海棲艦版は実弾式で通常版の標準装備品だったが、ガミラス版は光線式に改良されるも狙撃や式典にか使用しない為に極少数。

パンツァーファウスト(携帯式対戦車擲弾発射器)(擲弾版のみ)…ビームマシンガンと同様に深海棲艦戦時に鹵獲したドイツ使い捨て式無反動砲を複製してからの改良し、オリジナルより再装填が簡易な上に状況に合わせて通常の徹甲弾頭(形状は円錐形)から榴弾頭(形状は球形)に変更可能。 陸戦兵器には珍しく深海棲艦版とガミラス版に基本的な変わりがない。

・捕捉…歩兵戦力として改造された雷巡チ級の亜種で、外見的違いはサーフボード型の下半身が変形しての足(形状はゲッター2のに近い)が展開されている事。 元々は深海棲艦が旧ソ連等の内陸の心臓部を攻略占領する為に生み出された者であり、雷巡チ級が原型に選ばれたのは“数的に揃え易い”“魚雷の多数搭載が可能な積載量”の2点から。  現在確認されているのは“通常版(深海棲艦版は突撃版、本編では無表記)”“擲弾版”“偵察版(ガミラス版は狙撃版兼任、深海棲艦版は通常版)”の4種に加え、ガミラスオリジナルの“空挺版”もあり、“他にもあるのでは?”との予想あり。

 

 

 

 ~ 雷巡チ級・工作版(特別分離掲載) ~

・各種工作器具…艦艇向けにはクレーンやマジックアーム、陸戦型にはスパナ等の道具類や医療関係。

・各種デジタル器具(ガミラス版陸戦型のみ)…コンピューター全盛期の近代ならではので、ガミラスの技術と同等以下ならあらゆるコンピューターや電子(デジタル)ロックに瞬時のハッキングが可能。

・捕捉…魚雷関連の代わりに工作器具類を搭載した文字通りの亜種で、通常(艦艇)型と陸戦型の双方に存在。 当たり前だが武装が主砲(かビームマシンガン)のみの超低速なので前線にはまずいない。

 

 

 

 

 

 

 ~ 重巡リ級 ~

・主砲…B

・雷装…E

・探索…C:偵察及び着弾観測用の艦載機を少数所有。

・該当ガミラス兵器…『デストリア』級航宙重巡洋艦

・補足…非常に汎用性に優れている為、旗艦だけでなく、下記の戦艦ル級の代わりに艦隊中核として、それなりに存在。

 

 

 

 ~ 重巡リ級陸戦型 ~

・ビームマシンガン…基本的に雷巡チ級陸戦型のと同じだが、一部は火力強化型を使用。

・ビームライフル(狙撃版のみ)…旧ソ連対物火器USSR PTRS1941『シモノフ対戦車ライフル』に似た光線式大型狙撃銃、銃火力が強力なので対人対物双方の性能を保持。

ビームガドリング(光線式多銃身機関銃)(機関銃版のみ)…何時何所で手に入れたのか、アメリカ対物火器GE M134『ミニガン』を参考、重すぎて動けない欠点があるも、防御歩兵用火器としては最強。

・大剣&大楯(騎士版のみ)…強行進撃時に最前列に並び立って友軍の文字通りの楯役となる為の時代錯誤2つ、地球の一部は“作ったのはイギリス人(英国面)”と馬鹿にしている。

・捕捉…雷巡チ級陸戦型と同様の重巡リ級の亜種だが、此方には深海棲艦版は存在しない。 外見的違いは兜無しの甲冑を着ている事(衣装がビキニなのだから当たり前)。 主に雷巡チ級陸戦型の統制指揮や、雷巡チ級陸戦型では装備不可の銃火器を使用する為、ガミラス陸上部隊で見かける事は“通常版(別名、隊長版)”“機関銃兵版”“狙撃版”“騎士版”のバリエーション4種ともども比較的少ない。

 

 

 

 

 

 ~ 軽空ヌ級 ~

・主砲…C:下腹部(?)に戦艦ル級と同等以上の火力の大型砲を装備しているが、元々は対地用の物なのか照準と充填が極悪。

・雷装…F:対空用のみ。

・探索…A

・航空…C

・該当ガミラス兵器…高速空母(『ポルメリア』級強襲航宙母艦)

・補足…深海棲艦版と比べてやや器用貧乏化しているが、使い勝手がそれなりに良いのか、駆逐イ級に次いで艦隊に編入されている。

 

 

 

 

 

 ~ 戦艦ル級 ~

・主砲…A:但し対空面にやや難有り。

・雷装…F:対空用に有るらしい。

・探索…C

・該当ガミラス兵器…『ガイデロール』級航宙戦艦。

・補足…空母ヲ級と双璧を成す艦隊主力、ガミラス版はヤマト登場前まで撃沈不可能の存在であった為に絶対的な恐怖の存在であった。 唯一の欠点として若干単細胞かつ短気で、初心を忘れたり挑発に乗って暴走する、旗艦を務める重巡以下の言う事を聞かない等が有り、この事から下記の戦艦タ級誕生の理由となった。

 

 

 

 

 

 ~ 空母ヲ級 ~

・主砲…F:対艦用があるらしいが、大半は対空用。

・雷装…F:対空用のみ。

・探索…A

・航空…A

・該当ガミラス兵器…多層式宇宙空母(『ガイベロン』級多層式航宙母艦)

・補足…ご存知、深海棲艦屈指の人気者。 艦載機数が軽母ヌ級の倍近く持ち合わせている。

 

 

 

 ~ 空母ヲ級スカル・フラッグ(注:本編の表記は“ヲ級フラッグ”) ~

・捕捉…ガミラス太陽系制圧艦隊・第二艦隊旗艦を務める空母ヲ級の1種だが、情報が少ないので性格のみ異端なのかフラッグ(或いは改フラッグ?)の亜種なのかは防衛軍では不明。 最大の特徴は短気で狂暴な性格の表れとしてスカル(scull)(骸骨)の名前通りに沈めた艦娘達の頭蓋骨をトロフィーとして首飾りにして翳していて、随伴艦艇にも骸骨のデザインを着けているのだが、此れが“翠星の女王”の逆鱗に触れる事に…

 

 

 

 

 

 ~ 輸送ワ級 ~

・主砲…F

・雷装…F

・探索…F

・該当ガミラス兵器…タンカーロケット。

・補足…深海棲艦版は謎の頑丈性を持っていたが、ガミラス版は事実上の最弱の存在の為、滅多に戦線に現れない。 逆を言えば、輸送ワ級が確認出来たとすれば、そこはガミラスが安全宙域と認知しているか、近くに基地等の重要なモノが存在している表れである。 更に言うと駆逐ニ級や軽巡ト級と艦隊をよく組んでいる為、駆逐ニ級や軽巡ト級が複数いたら輸送ワ級が近くにいる可能性が高い。

 

 

 

 

 

 ~ 潜水カ級 ~

・主砲…F:駆逐イ級と同じ物が一門のみ装備。

・雷装…B:雷巡チ級に劣る。

・探索…C

・該当ガトランティス(白色彗星帝国)(はい?)兵器…潜宙艦(スペースサブ)

・補足…ガミラス初の潜宙艦だが、異次元潜行能力を光学迷彩で代用している。 此の為に通常兵器でも当たれば撃沈可能な上、小破すると光学迷彩が展開不可能となる為、空間照明弾や広範囲兵器等で炙り出す事が可能。 主力としての運用は下記の潜水ヨ級に譲りつつあるが、機動性が比較的に優れているので、基本的に前衛としての偵察や潜入工作等の支援任務で運用されている。

 

 

 

 

 

 ~ 潜水ヨ級 ~

・主砲…F

・雷装…B:ほぼ僅差だが、潜水カ級より強力。

・探索…D

・補足…潜水カ級とは別方向で生み出された潜宙艦。 潜水カ級より火力が強力だが、反比例的に機動性が悪化していているので、拠点防衛等の限られた運用しか出来ない。 潜水カ級と同様に次元潜航能力は無いのだが、フラッグ改が次元潜航艦になるのではとの推測あり。

 

 

 

注:本作では此処から下は深海棲艦版が確認されていない

 

 

 

 ~ 戦艦タ級 ~

・主砲…A:対艦面は戦艦ル級より劣化。

・雷装…E:対艦用が有るらしい。

・探索…B

・該当ガミラス艦兵器…『ハイゼラード』級航宙戦艦

・補足…戦闘力自体は戦艦ル級に劣るが、戦艦ル級の問題がかなり解決されて総合面ではほぼ完璧となっており、ヤマト達は戦艦ル級より此の戦艦タ級の方が難敵と認知している。 ガミラスが戦艦ル級に未練がある事もあって個体数が少ない方だが、主力艦隊の殆どで主軸となっている。

 

 

 

 ~ 戦艦タ級陸戦型 ~

・捕捉…ガミラスには存在するらしいが確認出来ていない為、“衣装はマント付きハイレグに大型バイザー”“雷巡チ級陸戦型や重巡リ級陸戦型の全銃火器が使用可能な万能”以外は詳細不明。

 

 

 

 

 

 ~ 戦艦レ級 ~

・主砲…A

・雷装…A

・探索…B

・航空…B

・該当ガミラス兵器…『ゲルバデス』級戦闘航宙母艦。

・補足…深海棲艦の出鱈目。 通常型にしては異常な戦闘力を持ち合わせている事から下記の超弩級の幼体や失敗作と考えられている。 また駆逐イ級等の僚艦を捕食する程、かなり狂暴で艦隊編入がかなり困難となっている為、通常型で唯一フラッグが存在しない。 通常航行時は拘束具を付けて檻に入れられた状態で、軽巡ト級や駆逐艦群での牽引で戦場に投入される。

 

 

 

 

 

 ~ 潜水ソ級 ~

・主砲…F:現時点では次元潜行時には使用不可。

・雷装…A:現時点では次元潜行時には使用不可。

・探索…B

・該当ガミラス兵器…『UX―01』。

・補足…ガミラス初の次元潜航能力を所持した潜宙艦。 2199年の時点では、対次元潜航艦兵器である波動爆雷が未開発の為に潜航時に攻撃方法が一切無いだけでなく、亜空間ソナーや亜空間ソノブイ等の異次元探知機が無いと補足すら出来ない、ある意味理不尽な艦種。 不幸中の幸いな事に、圧倒的に数が少ないだけでなく、次元潜行時の武装が開発途上の為に次元潜行時は攻撃手段皆無との本末転倒な欠点があるので、とある存在の為の直轄偵察艦としてのみ運用されている。

 

 

 

 

 

 ~ 軽巡ツ級 ~

・主砲…D

・雷装…C

・探索…B

・補足…軽巡ト級の後継艦として生み出された護衛巡洋艦の決定版。軽巡ト級では失敗した対艦対空能力がバランス良く所持しており驚異性はかなり高いのだが、作られて日が浅い為に固体数が極めて少ない。

 

 

 

 

 

 ~ 重巡ネ級 ~

・主砲…B:ほぼ戦艦級の火力

・雷装…C

・探索…B

・該当ガミラス兵器…『メルトリア』級航宙巡洋戦艦。

・補足…戦艦ル級を制御出来る様に生み出された、戦艦リ級の強化型で事実上は超巡か巡洋戦艦。

 

 

 

 

 

 ~ 駆逐ナ級 ~

・主砲…C:ほぼ軽巡級。

・雷装…D

・探索…D

・該当ガミラス兵器…新型駆逐艦。

・補足…新たに生み出される駆逐ロ級後継。駆逐ロ級処か従来型ガミラス駆逐艦とは真逆の性質、即ち機動性を犠牲に砲火力を強化したガミラス版Z23(ナルヴィク)級駆逐艦。軽母ヌ級と外見的に似ているので、軽母ヌ級の砲艦型と予想する声が多数。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 超弩級 ―――

注:深海棲艦で言う鬼・姫級。

 

 

 ~ 潜宙棲鬼 ~

・主砲…B:超巡か巡洋戦艦級のを装備。

・雷装…A

・探索…S

・原種…潜水棲姫。

・コードネーム…レムレース

・補足…ヤマトが最初に戦った超弩級(ボスキャラ)である実験艦に近い潜水棲姫の亜種。 潜水カ級と同ヨ級と同様に次元潜行能力の代わりに光学迷彩をより完成度の高い物を装備している上、ガミラス屈指の韋駄天であって、現時点ではガミラス最速艦として地球側に認知。 火星・木星間の小惑星帯(アステロイドベルト)に潜んで遊星爆弾の着弾観測及び最終軌道修正を行っているとの予測され、防衛軍からマークされていて、過去に調査に来た火星艦隊旗艦の戦艦イタリアをアブクマとミカヅキの目の前で撃沈した事がある。 基本的な戦術は従属艦や魚雷を牽制にして超高速での一撃離脱による零距離射撃。 先述の通りに“太陽系を1秒で横断可能”とも言われる超高速は、主砲共々次元潜行能力の代わりなのだが、此の超高速は潜宙棲鬼が制御出来ないだけでなく従属艦の存在を否定(よく潜水カ級や同ヨ級を囮にしてしまう)してしまい、更に潜宙棲鬼の調子に乗りやすい性格もあって、此れ等が致命傷としてヤマトに撃沈される要因となった。

 ガミラスもやり過ぎた感を自覚している上に、次元潜行艦の開発が最終段階に入った事から量産はされてないが、改良型にして次元潜行艦の潜宙棲姫に移行が始まったのではないかとの指摘が多数あり。

 

 

 

 

 

 ~ 冥王棲姫 ~

・主砲…A

・雷装…B

・探索…S

・航空…A

・特殊…反射衛星砲:火力こそ波動砲に劣るが、射程と連射性(と言っても全体的には悪い方だが)は勝っており、なにより下記の反射要塞と組む事で死角を無くし、射角を読み難くする。

・原種…北端上陸姫(or離島棲鬼)

・該当ガミラス兵器…冥王星基地。

・補足…冥王星を侵食した本作オリジナル棲姫。 ガミラス太陽系前線基地を管理しているだけでなく、遊星爆弾を製作しては地球に飛ばしている為に防衛軍の最優先攻撃目標に指定されているのだが、ある日を境に姿を眩ましてしまった。

 

 

 ~ 反射要塞(特別啓示) ~

・主砲…B

・雷装…C

・探索…S

・原種…浮遊要塞。

・該当ガミラス兵器…反射衛星。

・捕捉…反射衛星砲の補助的役割を担う冥王棲姫専用の浮遊要塞の亜種。 普段は冥王星の衛星軌道上の小惑星(デブリ)に擬態して待機し、反射衛星砲使用時に擬態板も兼ねた反射板を展開する。 但し此の性質と運用面から浮遊要塞と違って、基本的に単独で冥王棲姫の直接援護が出来ない上、何故か防御面が浮遊要塞の半分以下に低下している。

 

 

 

 

 

 ~ 飛行場姫 ~

・主砲…A

・雷装…C

・探索…S

・航空…S:ガミラス最多搭載量。

・補足…嘗てガダルカナル島に寄生して多くの艦娘達を血祭りにした深海棲艦初の陸上棲姫。 作者もそうだったが、鉄底海峡(アイアンボトム・サウンド)を体験した読者達もコイツには大なり小なり心に傷を負った筈。 後の調査で冥王棲姫の従者として冥王星にも1個体だけ存在が確認された。

冥王星の個体は冥王星前線基地へのエネルギー供給を支援している為、破壊されると反射衛星砲の充填速が大幅に延長(艦これ原作風だと空襲マスの大半が空洞マス化)されてしまう。

 

 

 

 

 

 

 ~ 集積地棲姫 ~

・主砲…B

・雷装…B

・探索…A

・航空…A:陸上型では最少。

・補足…飛行場姫と同様に冥王棲姫の従者である陸上型棲姫。 元々陸上型としては小型の方であるだけでなく、大型兵器類を管理している関係で誘爆しやすい為に比較的弱い方(そりゃ、近くに飛行場姫の怪物がいたら、ねぇ…)である。

冥王星の個体は反射要塞群の管理操作を支援している為、破壊されると反射要塞の同時展開数が激減するので反射衛星砲の弾道が単純化してしまう。

 

 

 

 

 

 ~ 装甲空母姫 ~

・主砲…A

・雷装…B

・探索…B

・航空…A

・該当ガミラス兵器…シュルツ艦(『ガイデロール』級航宙戦艦『シュバリエル』)&戦艦『グルヴェイグ』{ゴールデンバウム王朝銀河帝国(銀河英雄伝説)}

・補足…太陽系制圧艦隊の総旗艦としているらしい。

 

 

 

 

 

 ~ 戦艦棲姫 ~

・主砲…S

・雷装…F:対空用のみ

・探索…A

・該当ガミラス兵器…『ドメラーズ3世』(『ゼルクート』級一等航宙戦闘艦)

・補足…本作では旗艦としてしか現れない為、ダイソン機能は無い。 戦闘艦として完璧であるだけでなく、扱いの難しい戦艦ル級や戦艦レ級を完璧に制御出来る極めて優秀な旗艦能力を持ち合わせ、ヤマト最大の好敵手(ライバル)として敵対する事となる。

 

 

 

 

 

 ~ 駆逐艦棲姫 ~

・主砲…B:ほぼ重巡級。

・雷装…B

・探索…B

・該当ガミラス兵器…『メルトリア』級バーガー座乗艦。

・補足…戦艦棲姫が“剛”なら反対の“柔”をいく駆逐艦のような存在。 機動性を最優先事項にしているガミラスの理想的な存在であり、基本的に戦艦棲姫の懐刀としての分艦隊旗艦を務めているが、戦艦ル級と同等以上に短気且つ好戦的、何故か艦娘達に憎悪に等しいモノを持っていて暴走する傾向がある。

 

 

 

 

 

 ~ 駆逐艦古姫 ~

・主砲…C

・雷装…B

・探索…C

・該当ガミラス兵器…『メルトリア』級ハイデルン座乗艦(コミック版2199)。

・補足…原作艦これでも旧式要素が行方不明の駆逐艦のような存在。 旧式化していて防御力が劣化しているが、双璧を成す駆逐棲姫と共に戦艦棲姫の分艦隊を務め、更に駆逐棲姫の抑えも務めている。

 

 

 

 

 

 ~ 運河棲姫 ~

・主砲…?

・雷装…?

・探索…S

・航空…?

・該当ガミラス兵器…バラン星基地(バラン星鎮守府)

・補足…バラン星にいると思われる、公式屈指の不遇棲姫。詳細は不明だが、バラン星で次元運河(ワープ・ハブステーション)の管理と運用を行っているらしい。

 

 

 

 

 

 ~ 空母棲鬼 ~

・主砲…C:数が少ない上、質もリ級やネ級のとほぼ同等

・雷装…F:対空用のみ

・探索…S

・航空…S:ヲ級の倍以上

・該当ガミラス兵器…第二空母(ガイベロン級多層式航宙母艦『ランベア』)

・補足…ご存じ、イベントでは戦艦棲姫と双璧を成す“空母おばさん”。 外見は加賀に似ているが、内面は短気且つ好戦的で瑞鶴(ズイカク)に似ている。

 

 

 

 

 

 ~ 空母棲姫 ~

・特殊…瞬間物質移送器:ワープ機能を持たない航空機やPT小鬼群を空間超越させて奇襲やアウトレンジ攻撃が可能。 超越距離こそワープ機能に劣るが、ワープでは出来ない速攻が可能。 此の性質から運河棲姫の能力を元に開発された兵器なのではとの指摘あり。

・該当(ガルマン・)ガミラス兵器…二連三段空母。

・補足…空母棲鬼の強化体で、本作では上記の空母棲鬼の進化体。 オリジナルの空母棲鬼と空母棲姫の見分け方が分かり難いが、本作での見分け方は瞬間物質移送器の有無。

 

 

 

 

 

 ~ ガミラス海月姫 ~

・主砲…B:対艦用に重巡級の砲をリ級と同型同数搭載。

・雷装…F:対空用のみ。

・探索…S

・航空…S:空母棲姫には運用不可の大型機が運用可能。

・原種…深海海月姫。

・該当ガミラス兵器…第三空母(『ガイベロン』級多層式航宙母艦『シュデルグ』)

・補足…空母棲姫と比べて、量より質を優先された完全空母型棲姫。 空母棲姫と比べて圧倒的に個体数が少ない事から“空母棲鬼の亜種”“空母棲鬼と主力の座を争って破れた対抗馬”等色々推測されているが、当人達は仲が良い模様。 因みに此の姫の母体となった深海海月姫は『シャングリラ』のコードネームで日米からマークされていた。

 

 

 

 

 

 ~ 護衛棲姫 ~

・主砲…C:駆逐ナ級とほぼ同等。

・雷装…F:対空のみだが、全廃される可能性高し。

・探索…S:潜宙艦捕捉装備も保持。

・航空…A:空母型超弩級中、最少。

・補足…艦艇型では珍しい後方支援型の棲姫。 防衛軍では拠点防衛や哨戒の為に生み出された存在と予想されているが、戦闘力は空母棲姫に劣り、使い勝手は軽母ヌ級や空母ヲ級に劣る中途半端な存在になっており、更に致命的な機動性の悪さから失敗作の烙印を押されて、打ち切りで極少数となって艦隊には編入されず。 尚、予定されるも取り消しになった分は空母棲鬼の増産に振り分けられた模様。

 

 

 

 

 

 ~ 空母古姫 ~

・主砲…C:重巡級の砲を両用砲としている為か、対艦対空の両面で中途半端。

・雷装…F:対空用のみ。

・探索…S

・航空…S:搭載量では空母棲姫やガミラス海月姫に劣る代わりに、三倍近くの早さで全機発艦が可能

・該当ガミラス兵器…第一空母(『ガイベロン』級多層式航宙母艦『バルグレン』)

・補足…七色星団戦で出るかもしれない本作オリジナル棲姫。 文字通りに空母版の駆逐古姫と言える存在で、駆逐古姫と同様に前衛色が強い。 外見は鳳翔(か赤城)に似ているらしい。

 

 

 

 

 

  ~ 空母龍姫(りゅうき)(仮○ライ○ー言うな) ~

・主砲…B:空母『蒼龍』原案に酷似。

・雷装…?

・探索…?

・航空…A:空母棲姫より少く、空母ヲ級より多数。

・特殊…先読み:教育係りを務めた妹分にして戦友であるズイカクの戦略を読んで先手先手を取る事が可能。

・該当ガミラス兵器…『ゲルバデス』級戦闘空母『ダロルド』

・補足…七色星団戦で出るかもしれない、本作オリジナル棲姫。 詳細な情報は不明、分かっているのは外見が飛龍に似ているらしい……のでなく、戦没した空母ヒリュウの成れの果てで、空母ヒリュウ本人。

 

 

 

 

 

 ~ 軽巡棲姫 ~

・主砲…B

・雷装…B

・探索…A

・特殊…威圧:空母龍姫の“先読み”と同様に日本軽巡の戦略を先読みし、更に軽巡ジンツウそっくりな容姿で軽巡群の戦意を萎えさせてしまう。

・該当ガミラス兵器…『メルトリア』級ゲットー座乗艦。

・補足…生存が確認されているジンツウの複製体(クローン)だと推測される存在。 実際外見だけでなく内面もジンツウの生き写しで、ジンツウの渾名“鬼神通(きしんつう)”に因んで“邪神通(じゃしんつう)”、或いはイスズの“絶好調のジンツウに匹敵”との指摘から“SA-X(サムス・エックス)”に因んで“ZI-X(ジンツウ・エックス)”と畏怖されている。 但し此の高性能が仇となって、“全力時に従属出来る通常型がいない”との本末転倒な欠点がある。

 

 

 

 

 

 ~ ヴィントシュトース(コードネーム) ~

・主砲…?

・雷装…?

・探索…?

・該当ガミラス兵器…蒼い雷光(PSゲーム版)or航宙親衛艦隊所属艦(2199)。

・補足…ガミラス戦初期に確認された未確認艦。 判明しているのは“艦級は駆逐艦か軽巡”“ガミラス最高性能の機動性”のみ。更に改良発展型(ヴィルベルヴィントorシュトルムヴィント)もいるかもしれなしく、それ等も含めて現在防衛軍が情報収集中。

 

 

 

 

 

 ~ デュアルクレイター(コードネーム) ~

・主砲…?

・雷装…?

・探索…?

・航空…?:PT小鬼群が搭載可能。

・該当ディンギル兵器(はい?)…水雷艇母艦。

・補足…七色星団で出るかもしれない未確認艦。 PT小鬼群が搭載可能との点以外全くの謎、現在防衛軍が情報収集中。

 

 

 

 

 

 ~ アルウス(コードネーム) ~

・主砲…?

・雷装…?

・探索…?

・航空…S:上記の空母棲鬼と同等以上(?)

・捕捉…現在判明しているのは空母型である事と、正規のガミラスではなくてガミラスの植民兵みたいな存在である事のみの未確認艦。 現在防衛軍が情報収集中。

 

 

 

 

 

 ~ ストレンジ・デルタ(コードネーム) ~

・主砲…?

・雷装…?

・探索…S:ガミラス最高性能。

・航空…?

・該当ガミラス兵器…リレー衛星&サイレン人メラ(特務官ミレーネル・リンケ)。

・捕捉…陸上型に近い未確認艦で、幻術等の間接的(トリッキー)な攻撃を得意としている模様。現在防衛軍が情報収集中だが、海峡夜棲姫の亜種ではないかとの情報を近日入手。

 

 

 

 

 

 ~ ナハト・シュトラール(コードネーム) ~

・主砲…?:波動砲並みの長射程。

・雷装…?

・探索…S

・航空…F:着弾観測用の偵察機のみ。

・該当ガミラス兵器…ガミラス砲艦(実写版)&狙撃戦艦(暗黒星団帝国)

・補足…戦艦レ級か重巡棲姫のどちからの亜種とも推測される未確認艦。 全く情報が無く、現在防衛軍が改良型(グロス・シュトラール)の有無を含めて情報収集中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 登場不可 ―――

 

 ~ 泊地棲鬼(&棲姫&水鬼) ~

 ~ 離島棲鬼(&棲姫) ~

 ~ 北端上陸姫 ~

 ~ 港湾棲姫(&水鬼) ~

 ~ 北方棲姫 ~

 ~ 中間棲姫 ~

 ~ リコリス棲姫 ~

 ~ 欧州棲姫 ~

・理由…特定の島がベースモデルだから出し様が…

 

 

 ~ 夏姫シリーズ ~

・理由…(バカンス)要素、絶対皆無。

 

 

 ~ 防空棲姫 ~

 ~ 防空埋護棲姫 ~

・理由…強い、作品を壊しかねない程に強過ぎる。

 

 

 ~ 深海双子棲姫 ~

・理由…よく分からない存在な上、使い道が思い付かない。

 

 

 ~ 潜水新棲姫 ~

・理由…ガルマンガミラスの艦艇になる公算大の為。

 

 

 

 

 

――― 検討 ―――

 

 ~ 浮遊要塞 ~

 

 

 ~ PT小鬼群 ~

 

 

 ~ 砲台小鬼 ~

 

 

 ~ 駆逐水姫 ~

 

 

 ~ 軽巡棲鬼 ~

 

 

 ~ 重巡棲姫 ~

 

 

 ~ 戦艦仏棲姫 ~

 

 

 ~ 海峡夜棲姫 ~

 

 

 ~ ガミラス鶴棲姫 ~

・原種…深海鶴棲姫

・補足…出る場合は七色星団戦だが、空母古姫か空母龍姫のどちらかが消える可能性あり。

 

 

 ~ ノーチラス(コードネーム) ~

・該当ガミラス兵器…バラノドン特攻隊&???

・補足…駆逐艦しか運用出来ない環境下での戦闘を想定した駆逐艦4種の集合体だが、割りが合わない為に失敗作として遺棄、代わりに駆逐艦古姫や駆逐艦棲姫等の開発に繋がったと予想される。 本編(ガミラス編)ではなく外伝に出るのではとの情報あり。

 

 

 ~ ハボクック(コードネーム) ~

・該当ガミラス兵器…装甲突入型『ゼルクート』級一等航宙戦闘艦(?)

・補足…現時点でガミラス唯一の強襲上陸型の超弩級空母。 機動性が悪い代わりに、戦艦以上の防御力と砲火力(「邪道空母」byズイカク)を有していると予想される。 ノーチラス同様に外伝に出るのではとの情報あり。

 

 ~ 防楯要塞(特別掲示) ~

・該当ガミラス兵器…ガミラス臣民の楯。

・補足…ハボクック専用の、桃色発光の四角形型の浮遊要塞の亜種。 非武装で、正面にしか効果がない上に砲火器に制限が出るが、完璧な防御力を有していて、波動砲すら防げるのではと予想される。

 

 

 ~ スレイプニル(コードネーム) ~

・原種…装甲空母鬼

・該当ガトランティス(白色彗星帝国)(はい?)兵器…『メガルーサ』級殲滅型大戦艦・陸上型

・補足…元々は深海棲艦が内陸部攻略の為に生み出した装甲空母鬼の亜種。 最大の外見的違いでもある、艤装獣下部にキャタピラを装備した事で水陸両用艦(実質・陸上戦艦)に変貌。 機動性が悪化するだけでなく、軽量化の為に空母機能を廃止して防御力を重巡ネ級と同等以下にしたが、どの悪化点も殆ど支障が無い上に総合戦闘力は戦艦級で維持出来たので、陸戦では悪夢の様な存在。 実際にコイツ一隻に欧州連合陸軍が7割近くの大損害を出したので、深海棲艦で最も人間を殺した存在として“移動式挽肉製造工場”の渾名と共に語り継がれている。 対抗兵器として陸上戦艦『ラーテ』等の大型珍兵器群の開発が進められていたと言われているが、それ等の完成前に“80cm列車砲で粉砕”とも“超大型爆弾『グランドスラム』の直撃による爆死”のどちらかと言われているが、人類は割りの合わない勝利を得ている。 ガミラスは量産しているとの意見が多数あるが、使い道が限られているので実際は不採用ではないかと予想されている。 ノーチラス同様に外伝に出るのではとの情報あり。

 

 

 ~ アルティメットストーム(コードネーム) ~

・補足…スレイプニルの簡易量産型ではないかと予想。

 

 

 ~ 雷巡チ級陸戦型(特別掲示) ~

・該当ガミラス兵器…機械化兵(ガミロイド)

・補足…雷巡チ級から武装と水上能力を全廃して、足を追加して、プロテクター(追加装甲)に近い防弾軽鎧を纏わせた完全陸上戦力。 ビームマシンガンを基本とした装備にバリエーションが多数あるが、ガミラス独自の空挺版の存在が予想されている。

 

 

 ~ 重巡リ級陸戦型(特別掲示) ~

・補足…重巡リ級版の陸戦型で、ビキニ姿の重巡リ級通常型とは違って重鎧を纏っているので面影が殆ど無い。 主目的は雷巡チ級陸戦型の統制の為に装備品はほぼ同じだが、重量高火力銃が使用可能なので、対物ライフル装備の狙撃版(スナイパータイプ)、変わり種として斧か大剣装備の近接型や大楯装備の強襲型が存在。 下記の戦艦タ級陸戦型が開発されたので、ガミラス独自の型は存在せず。

 

 

 ~ 戦艦タ級陸戦型(特別掲示) ~

・該当ガミラス“兵器(?)”…女衛士。

・補足…ガミラスが独自に改造した戦艦タ級の陸戦型で、マントが付いてポニーテール以外の外見はイソカゼに在視感のある黒騎士に近い格好をしている。 遠中近全てをこなせる通常陸戦型唯一の万能型で、あらゆる銃火器や刀剣類が最大レベルで使用可能。 更に雷巡チ級&重巡リ級と違って、マントにくるまる事で瞬時のタイプチェンジが可能だが、ガミラスでは戦艦タ級が少数の為に基本的に要人護衛にしか使われない。

 

 

 ~ ムスペルヘイム(コードネーム) ~

・補足…航空戦艦とも工作戦艦とも言われる、ガミラスのNo.2的(ヤマト原作で言えば、兄タランみたいなポジ?)な存在。 近日、船渠棲姫の戦艦イタリア版ではないかとの未確認情報を入手。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ アラハバキ(コードネーム) ~

・補足…ガミラスの手での蘇生からの改造・洗脳された戦艦武蔵ではないかと推測されている。 本来はヤマトの対抗兵器ではなく、とある惑星と艦娘への切り札である模様。

 

 

 

 

 

 ~ 駆逐艦雪辱姫(注:艦これ原作の動向で改名する可能性あり) ~

・原種(?)…深海吹雪。

・補足…出る場合、ミルに近いアラハバキの従属艦? 現時点では、先代も含めた駆逐艦フブキ(吹雪)との関係は不明。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ 試作・戦艦デスラー鬼 ~

・原種…戦艦水鬼

・コードネーム…ヴォルケンクラッツァー

・該当ガミラス艦…デスラー艦(デウスーラⅡ世)

・補足…ガミラス初のデスラー砲(波動砲)搭載艦として開発中と予想されるガミラス総旗艦。 ラスボスとして出る可能性あるが、ガミラスがデスラー砲の開発に手こずっている事もあって出る確率は低い。

 

 ~ ルフトシュピーゲルング(コードネーム) ~

・補足…試作・戦艦デスラー鬼の粗末な同型艦で、外伝のラスボスになるのではと予想される。 理由不明だが色々と妥協されて試作・戦艦デスラー鬼より先行竣工されるらしい。




 御意見をお待ちしています。


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プロローグ 少年と大和

 此の日の鹿児島の沖合いの海は“五里霧中”を具現化したかの様に白い濃霧で朝日を出迎えていた。

 だがそんな日でも地元の漁師は、生きる為に小舟で海へ乗り出して漁をしていた。

 

「…お祖母ちゃん、何かが来るよ」

 

「…っ!?」

 

 漁の手伝いに一緒に乗り込んでいた孫が、霧の先から近付いてきている存在を報せた為に“ギョッ”とした祖母は孫が示した先を見詰めながら硬直した。

 何故なら、此の海域は日本本土の近海にも関わらず、全人類を殲滅しようとする敵対者達……そして此の孫の両親を、父親をフィリピンのゼラバンカの戦場で、母親を東シナ海で各々殺した者達の勢力範囲であったからだ。

 しかも不味い事に霧が少しづつ晴れ始めていた。

 だが霧の先にいる存在は確かに近付いてはいるが、自分達の所に向かわずに通りすぎようとしていたのが分かって安堵の息を吐いた。

 そして霧の中から現れたのは……見るからに重厚そうな装備を纏って、水上をスケートの様に滑って進んでいる少女達四人であった。

 

「あの人達って艦娘だよね」

 

「ああ、そうだよ。

あの娘達は駆逐艦みたいだね」

 

 どうやら艦娘達も二人を敵だと誤認しかけていたみたいで、二人の存在を確認すると艦娘達も立ち止まって安堵の息を揃って吐き、その内の一人が二人に頭を下げ、もう一人が後続に連絡しているようだった。

 少し遅れて、彼女達の仲間と思われる五人の者達が現れ……報告を受けた少しだけ年長と思われる者(多分、軽巡洋艦)が頭を掻いて、もう一人が二人を敵だと誤認したと思われる者の尻を蹴飛ばして、他の者達が笑っていた。

 

(しかし、何故彼女達がこんな所に?)

 

 祖母が疑問に感じたのは、日本の艦娘達は壊滅的打撃を被った事に加えて燃料不足で呉や横須賀等の日本各地の港に引き込もっていた為、輸送船の護衛にしては人数が多すぎた上、その輸送船の気配が全く感じられなかったからだ。

 だがその答えは、更に少し経過した後、霧の中から現れようとしていた……駆逐艦の物より遥かに重厚な装備を纏った者で全てを悟った。

 

「お祖母ちゃん、あの人って、戦艦?」

 

「ああ、そうだよ!」

 

 その装備と容姿から最後に現れた者が最強の存在である戦艦であるだけでなく、その者に揃って敬礼したのを見て、彼女こそが艦娘達が守ろうと従う旗艦だと簡単に分かった。

 だが祖母の腰に抱き付いた孫は戦艦である女性……金剛や扶桑に伊勢、そして最強にして最も日本国民に慕われた長門とは全く違う、その者の正体が分からずにいた。

 否、孫は分からないと言って警戒しているのでなく、その纏っている物も含めて“強く”“気高く”そして“美しく”の三単語を完璧に具現化し、特に艦娘にらしからぬ和傘を携えるに相応しい美形の容姿に見惚れたらしく、頬を赤くして照れていた。

 

「…大和だ。

アレは戦艦大和だよ」

 

「……やまと?」

 

 祖母の出した答えに孫は分からずにいたが、それは当たり前の事であった。

 何故なら大和は終始徹底的に秘匿されていたのだからだが、此の祖母は数少ない例外として大和を知っていたのだ。

 

「お祖母ちゃん、大和って長門や陸奥より強いの?」

 

「ああ、強いよ。

世界で一番強くて美しい艦娘だよ」

 

 孫が驚いている様だったが、その大和が二人に微笑みながら敬礼したのに気付いて、祖母の後ろに隠れてしまった。

 そしてその祖母が大和に答礼すると、大和は艦娘達を従えて前進を再開した。

 

「いいかい、よく覚えておくのだよ。

アレが戦艦大和、日本が世界に誇る、大和撫子の中の大和撫子だよ。

忘れないように、よーく見ておくんだよ」

 

「……大和…」

 

 祖母に抱き寄せられた孫は、敵の勢力下である表れとして不気味に赤黒く染まっている空と海の向こうへと進んでいく大和の後ろ姿をしっかり見詰めていた。

 そして祖母に言われなくても、戦いの場へ赴く大和に“不屈”と“誇り高さ”を見ていたが、実際の大和達は“絶望”と“悲壮”に満ちていたのを知る訳がなかった。

 だが唯一正しいのは、此の二人が戦艦大和を最後に目撃した人間であった事だ。




 感想・御意見お待ちしています。

 残念ながら2199では削られたけど、やっぱりオリジナルでの此のシーンは染みるねぇ~…

大和
「リアリティーを追求したからだと思いますが、あの作品では“大和≠ヤマト”になっている様ですからね。
実際、古代さんは戦艦大和を全く知らなかったですし…」

 確かにリアルを優先したら、ああするしかないと思いますが、アレだと“何故、地下都市じゃなくてあんな所で建造していた?”“戦艦大和に似せる理由はあったのか?”の二点が説明出来ない気がする。
 特に後者、東宝がメカゴジラを復活させる時に、メカゴジラがゴジラ型である理由を最優先で思案するそうなので、悪いですけど、短慮だったんしゃないかと思ってしまいます。

 それにしても“大和≠ヤマト”にしたリメイクシリーズ、“戦艦『大和』を使って乗組員達へ説得をする
古代”と“ヤマトを坊ノ岬の海底に還したいと思う沖田”の重要シーンがある完結編はどうするんだろ?



















武蔵
「それよりも、私の竣工日にこんな話を投稿したのは、何の当て付けだ!?」


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第1話 坊ノ岬沖海戦

 時に西暦1945年、例年より遅れて桜が開花した春のある時、南シナ海の海上を艦娘達が……戦闘艦艇を模した艤装を纏う戦乙女達が、自分達に襲い掛かる飛行物体を迎撃しながら南下して沖縄を目指していた。

 

「…っ!? くぅ!!?」

 

「大和さん!!!」

 

 特に輪形陣を構成する艦隊の中央に旗艦としている史上最強の艦娘である戦艦大和が集中的に攻撃を受け続け、傷を負った左脇を押さえて足を止めて踞ってしまった事に気付いた駆逐艦初霜が思わず叫んだ。

 

「…大丈夫。 2年前にトラック沖で潜水艦から受けた古傷が開いただけよ」

 

 自分の身を案じる初霜に、大和は笑って誤魔化そうとしていたが、実際のところは傷はかなり深刻であった上、初霜の表情を見た様子だとポーカーフェイスが出来ていないみたいだった。

 

「…それに、こんなので音を上げたらみんなに申し訳ないじゃない」

 

「でも…」

 

「それより私より他の娘達はどうなっているの?」

 

 初霜が遼艦の事を聞かれてウッとした。

 

「……先程から足が止まりかけていた矢矧(軽巡)さんと、その矢矧さんを救おうとした磯風(駆逐艦)さんがヤられました。(矢矧は既に轟沈、磯風は海戦後に自沈)

それに霞(駆逐艦)さんが艦隊から落伍(海戦後に自沈)しました」

 

「……っ!? それじゃ…」

 

「…私も含めて健在なのは雪風(駆逐艦)さんと冬月(駆逐艦)さんの3人だけです」

 

 初霜の言う通り、大和が周囲を見渡すと…確かに自分を守ろうと必死に対空砲を必死に撃ち続けている雪風と冬月しかいなかった。

 

「……そう…」

 

 戦闘開始前に駆逐艦朝霜が機関不調で落伍(後に航空攻撃を受けて轟沈)し、更にその後に駆逐艦浜風が真っ先に沈むだけでなく、駆逐艦凉月が落伍(大破するも後日佐世保に無事帰還)して、もう自分達の艦隊が瓦解している事を悟った大和は一旦目を瞑ると何かを決心した。

 

「…仕方が無いですね。

初霜、みんなを連れて撤退しなさい」

 

「撤退!!?」

 

「そうよ。 もう助からない私が責任を取るから貴女達は行きなさい」

 

 元々沖縄へと進行した空母ヲ級と軽母ヌ級の20隻を主体とした深海棲艦の大艦隊への迎撃を目的とした天一号(菊水)作戦であったが、実際は投入戦力は僅かに10人の艦娘達だけであった上に時期も適当なとても作戦と言えない無茶苦茶な代物であった。

 しかも天皇陛下の「海軍に艦娘はもういないのか?」との質問から発案されたと噂されるこの作戦は“帝国海軍水上艦隊の伝統を守る為”と言われながら、実質的には大和を沈める為だけのモノであった。

 

「何を言っているのですか!!?

こんな作戦で大和さんが死ぬ必要なんて有りません!」

 

 勿論、この作戦を察してはいた大和だったが、作戦説明時に「此の作戦に豊田副武GF(連合艦隊)司令長官を同行させなさい!!」と普段の温和な性格から考えられない怒鳴りを上げて、冷静沈着(クールビューティ)な矢矧や気性の荒い霞を驚かせた初霜は、大和をなんとか帰そうと必死に考えていた。

 

「そうです!!」

 

「雪風達が守ってみせます!!」

 

「だから大和さん、一緒に帰りましょう!!」

 

「もう良いの!!!」

 

 冬月と雪風も初霜に同感と示していたが、当の大和は自分の死を悟っていた。

 

「…此れが私の天命なのよ」

 

「でも…」

 

 初霜が何かを言おうとしたが、その直前に雷撃体勢の編隊に気付いた大和が彼女を突き飛ばした。

 

「……っ!

大和さ…」

 

「…若い娘は戻りなさい」

 

 大和が暗く微笑んだ直後に敵編隊から放たれた魚雷群に次々に被雷した事が致命傷となった大和が左に崩れ落ちると…

 

「…っ!? 大和さぁぁーん!!!」

 

…初霜が絶叫して、雪風が頭上に向かって泣き叫んで、冬月が泣きながらしゃがんだ中、大爆発を起こした大和は海底深くへと沈んでいった…

 

 

 

 

 

「……はぁ~…」

 

 光無き海底に着底して大の字に仰向けで倒れているも一時だけ目覚めた大和が薄れゆく意識の中、自分の嫌み嫌う戦歴を思い出していた。

 空母赤城以下の航空艦隊が壊滅するのを遠方で傍観するしかなかったミッドウェー海戦、南方での死闘時に駆逐艦娘達に“ホテル”と陰口を言われ続けた日々、成功目前にも関わらず目標直前で反転した為に姉妹艦武蔵以下の仲間達の死を無駄にしてしまったレイテ沖海戦(捷一号作戦)、そして今回の水上特攻。

 包囲戦の中をしぶとく抵抗し続けたビスマルク、生涯唯一参加した海戦でそれなりの戦果を上げたリットリオ(後にイタリアに改名)、地味な職務をコツコツとやり続けたウォースパイトやアイオワ達等の同時代の戦艦娘達に見劣りする自分のに自己嫌悪していた。

 そして何より竣工前から山本五十六達海軍の高官達から“無用の長物”と罵られていた事もあって、今まで何の為にやってきたのかが分からず、両目を右腕で押さえながら泣き出していた。

 

「……そう言えば戦艦になりたいって清霜や北上が言っていたわね…」

 

 2人に言われた当時ははぐらかしていたが、今なら「戦艦などになるべきじゃない」と自信を持って言えた。

 それが艦娘として……戦艦娘としての宿命だとは分かってはいたが、数多の戦いに関与出来なかっただけでなく、滅亡寸前の祖国を守る事が出来ずに(ただ)後世(こうせい)に罵られるだけの存在になるだろう自分と戦艦の存在に嫌気が指していた。

 

「…もし生まれ変われるのなら……私は客船や貨物船…小さな漁船でも良い。

私は……肌を焦がす暑き南方や(こご)える北方等、好奇心のままに自由に旅が出来る存在になりたい…」

 

 最後に天上に手を伸ばして切実な願いを吐いた大和は意識を手放して眠りに就こうとした。

 だが少しした後、瞼越しに光を感じて何気なく目を開くと、流星の様な何かが自分に向かってきて……自分の心臓部分に直撃し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!?」

 

…再び意識が戻った大和が最初に何かの計器の稼働音が聞き取れ、自分が口に酸素マスクを着けた状態で不自然な緑色の液体に満たされた金属体の中にいる事に気付いた。

 そして昔、轟沈した艦娘を深海棲艦が回収して自分達の手駒しようと改造するとの噂が頭に浮かんで、悪足掻きとして正面の扉と思われる箇所を必死に殴り始めた。

 更に酸素マスクが外れた事もあって、大和が余計に暴れた事で、外の者達が気付いたらしく、直ぐに排水が行われ始めたが、半分まできた処で大和が扉を破壊して出てきてしまった。

 

「…直ぐに提督と長官に此方(こちら)に……!?」

 

 大和が咳き込みながら飲み込んだ液体を吐き続けていたが、破壊した扉を掲げると外の者達目掛けて振り回して暴れ始めた。

 

「不味い、錯乱している!!」

 

「早く精神安定剤を…っ!?」

 

 暴れる大和に手を付けれず必死に逃げ回っていたが、此の騒ぎに気付いて入室した…見るからに満身創痍の状態の眼鏡の女性が一瞬に現状を理解して大和の隙を突いて彼女の懐に入って一撃で殴り倒した。

 

「……全く…面倒を掛けさせないで下さい」

 

 大和が倒れた隙に関係者達が次々にのし掛かって取り抑えながら彼女に精神安定剤を打っていたが、大和を殴った女性も傷が開いたのか、(すわ)ってしまい痛み止めと思われる注射を打たれていた。

 

「……いったいわね…っ!?」

 

 関係者達を振り払って立ち上がろうとした大和だったが、自分を殴った女性にギョッとした。

 

「…霧島、何故貴女がここに?

貴女は確かガダルカナルの戦いで沈んだ筈じゃ…」

 

 2年前に沈んだ筈の霧島の存在に驚いている大和だったが、精神安定剤が効いてきて冷静なったのか、よく見たら左目や右腕を初めとした身体の至る所を包帯で巻いているのは兎も角として彼女から何か違和感を感じていた。

 

「…残念ですけど、私も戦艦キリシマですが、貴女が知る金剛級巡洋戦艦四番艦の霧島ではありません」

 

 大和は霧島……ではなく、キリシマの言葉を否定しようとしたが、よく確認したら此の部屋のあらゆる物が映画に出てきそうな未来的な物なのばかりであった上、何よりこの場にいる者達全員が大和の方を異物として見ているのを感じ取った。

 只、大和が自分を深海棲艦戦時の戦艦霧島と勘違いした事に、キリシマは安堵の息を吐いている事も気にはなった。

 そしてこの部屋に入室してきた……見慣れない服装の軍人達が自分を見て驚いている光景に決定的となった。

 

「…彼女の容体はどうなんだ?」

 

「見ての通り健康そのものですよ」

 

 見るからに最高位と思われる、黒いコート姿の白髭を蓄えた初老の軍人へのキリシマの報告に、全員が驚き疑っていたが、当の大和はその理由が分からないでいた。

 

「…貴方達は何者なの?」

 

 周囲の反応もあって苛立った大和が老人に近づこうとした為、取り巻き達が彼女に銃を向けようとしたのその老人が手で止めた。

 

「それは私が君に聞きたい事だ。

艦娘と言え、何故君は高濃度の放射能の大気の中にいたのに無事なんだ?」

 

「…放射能?」

 

 老人の質問に益々分からなくなっていた大和だったが、老人が取り巻きの1人に顎で指示を出すと…その者は室外から台車に乗ったある物を運んできた。

 

「…っ!? 私の艤装!!」

 

 それが自分の艤装である事が直ぐ分かった大和だったが、問題なのはその艤装が大破状態であるだけでなく、錆で完全に茶色くなって今にも崩れそうになっていた。

 その状態が日や月処か年単位で出来るものでない事を察して答えに達しようとしていたが、それを必死で否定しようとした。

 

「もう一度訊ねる。

何故二百年以上も前の艦娘である君が、今ここで生きているのだ?」

 

 此の老人……後に上官となる沖田十三の質問に答えず硬直している大和が、今自分がいるのは西暦2199年の未来である事を理解するには少し時間が必要であった。




 感想・御意見御待ちしています。

 と言う訳で宇宙戦艦ヤマトが艦娘となって深海棲艦に大暴れする作品がそれなりにあるが、“数多の苦難を乗り越えてイスカンダルに向かう作品が一つも無いじゃん!!!”と思って作っちゃいました(苦笑)

 作品は基本的に実写版のを母体にしていきますが、省かれた戦いはある程度追加していき、更に最後に地球目前で特攻したヤマトは本作では無事に帰還させる予定ですが、特攻の要望が多数あったら変えるかもしれません。

 それとヤマト側の人間は沖田と藤堂以外は全くと言ってもいい位に出ない上、沖田もイスカンダル遠征に同行せずに藤堂共々出番が少ないのでそれは了承して下さい。
 その代わりにヤマトに同行する艦娘をある程度着けますので以下はその予定のです。

・坊ノ岬組(矢矧、朝霜、浜風、磯風、初霜……雪風と現在未実装の冬月&凉月は除く)
・エンガノ岬組(瑞鶴、瑞鳳、千歳、千代田、大淀、五十鈴、多摩、秋月、初月……伊勢と日向、未実装駆逐艦群は除く)
・三川艦隊(鳥海、古鷹、加古、青葉、衣笠、夕張、天龍……未実装の夕凪は除く)
・榛名
・明石
・阿武隈
・丹陽(本来は台湾時代の雪風だが、本作は別艦として分離)
・ヴェールヌイ
・レシーテリヌイ(本来は日露戦争時に暁を襲名したロシア艦だが、ヴェールヌイの姉妹艦として出るが、中身は暁そのまんま)
・照月(未実装の若月&霜月の代打)

 尚、よく竣工日が近い事から艦魂系で大和と仲が良いとされる瑞鶴(ズイカク)ですが、本作のズイカクは同世代故に実写版の古代と雪並にヤマトと仲が悪いとしています。
 その理由はヤマトはズイカクの戦歴に嫉妬して、ズイカクは箱入り娘だったヤマトを馬鹿にする…特にレイテ沖海戦での出来事が致命的になっているとする予定です。


長門
「…ふっ、当然此のビッグ7の長門は出るのだろ?」

 此れ以上の戦艦投入は戦力バランスの崩壊と大和(ヤマト)が食われる危険性があるので出す予定はありません。
 特に長門は公式四コマ(吹雪、頑張ります)もあってまず有りません。

長門
「……そ、そんな…」(〇| ̄|_)


ウォースパイト
「……でしたら…」

ビスマルク
「私達の…」

イタリア
「誰かが…」

アイオワ
「出るしかないわネ!!」

…出さないって言っただろ!
 それに“PartIII ”にする気か、お前等!


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第2話 西暦2199年

――― 呉 ―――

 

 

 二百年以上の眠りから覚めた大和は、それからと言うものの再教育の合間……と言うより隙を突いては脱走して、呉を一望出来る丘の上に座って、何も考えずに遠くを見つめ続けていた。

 

「…やはりここにいたのですね」

 

 そして引き摺ってでもしない限り、大和が何時までも此所にいる為、包帯とギブスだらけのキリシマが見つけては連れ戻すと言う事が恒例行事と化していた。

 

「……相変わらず、よく見つけれますね」

 

「伊達に防衛艦隊旗艦兼任で秘書艦を長く勤めてますからね。

後、出来れば私はこう見えて重傷者の上に多忙なので…」

 

「…分かりました」

 

 大和が連れ戻そうとする度に駄々を捏ねる為、修理途上の艤装を態々(ワザワザ)纏ってきたキリシマは、今回は大和が大人しく帰る事を了承し、それが間違いでないと確信して安堵の息を吐いた。

 

「…それにしても、こんな景色を、いつも見ていてよく飽きませんね」

 

「余計なお世話です」

 

 キリシマの指摘に大和がムッとしたが、実際問題大和が見つめていた先に加えて自分達がいる場所は、花咲く丘がなければ、鳥鳴く森も、そして嘗て大和が駆け巡った魚住む水溢れる海が全く無い、夕焼け空と共に赤茶けた大地が広がっているだけであった。

 大和はどうかは分からないが、キリシマにはそれが悲しくて悔しかった。

 

「……ここにいるのもなんですし、戻りませんか?」

 

 大和は何も答えなかったが、無言で立ち上がった為にキリシマは無言の了承を得たと判断してエレベーターへと向かい……乗る直前に赤い天上から複数の何かが落下してくるのに気づいて振り向き、暫くした後に地平線の彼方で大爆発が起こっていた。

 

「…もう駄目ね。

私達にはアレを防ぐ力は残っていない…」

 

「こんなの見ていて、よく飽きませんね。

アレって今や世界中で見れるんでしょ?」

 

「……余計なお世話です!」

 

 先程の仕返しに近い事をされたキリシマは、半ば怒ってエレベーターのボタンを押した。

 だが実際の処は大和の言う通り、呉の光景と先程の爆発は、今や世界中で見れるモノであった。

 

「…信じたくないでしょう?

これが私達の地球の現状なんですからね。

深海棲艦も此処までの行為をしていないのですからね」

 

 毎度の事ながらキリシマが何度も壁に頭を打ち付けながら悔しそうにしていたが、大和はそんな彼女をあまり気にせず教わった事を思い返していた。

 それによると大和が坊ノ岬沖で沈没した後、西日本に侵攻を許して壊滅寸前だった日本は、勢力を取り返して反撃に転じたアメリカの助けを受けて奇跡的に助かり、更に深海棲艦に占領された広島と長崎に……よりにもよって大和と武蔵の生まれた県に原爆を投下して深海棲艦を都市諸共消し去る暴挙があったが、その数年後に深海棲艦を駆逐する事に成功していた。

 だがその余波で日本はアメリカの属国当然の状態となり、生き残った艦娘達は他国に引き渡された雪風と響以外は、解体されるか標的となって沈んでいった。

 だが深海棲艦が歴史から消えた以降、陸や空で多少であったが相変わらず紛争が相次いでいたが、少なくとも海は平和であり続けられていた。

 更に二百年の長い月日を得て、国際連合の下に取り敢えず一つとなった人類は、遂に宇宙に進出して海王星までの太陽系惑星群を次々に植民地化に成功していった。

 勿論、これに伴って大和の時代より遥かに進化した艦娘達も、地球の海から宇宙の海に活躍の場を移し、更に太陽系最後の(準)惑星である冥王星……そして太陽系外の外宇宙にへと遠征をしに行こうとしていた矢先の10年前(西暦2189年)にそれがやって来たのだった。

 

 最初はソ連改めロシアのツングースカに大型隕石が落下し、落下地点周囲どころかロシアの大半に大打撃を与える一大事が起こったのだった。

 だが地球は当初、この出来事を恐竜達を全滅させたと言われるジャイアントインパクト以来の数千年来の不幸(これにはツングースカが日露戦争時に謎の大爆発が起こった、いわく付きの地であった事もあった)だと思っていたが、その半年後に南米リオデジャネイロに……更にその5ヶ月後にアフリカのケープタウンに……更に更にその4ヶ月後に北米のアンカレッジ等が、大型隕石によって次々に致死量の数十倍の放射能のみを残して蒸発する出来事が起こり始めたのだ。

 これらの出来事が起きて2年近くが経過して、地球側は時が経つ度に周期を短くして人口集中都市群に間違える事なく落ち続ける大型隕石……遊星爆弾が核兵器を超える戦略兵器である事を認知、そして自分達は巨匠H・G・ウェルズの小説の様に外宇宙からの敵の攻撃下にいる現状をやっと理解した。

 ただ、それでもこれらを疑う者達が少なからずいたが、遊星爆弾の落下が日刊に移行してツングースカから四年半が経過した時……つまり西暦2194年に冥王星を調査をしに向かった艦隊が行方不明になり、更にその半年後に海王星に遊星爆弾を落とし続けている張本人……驚くべき事に殲滅した筈の深海棲艦に瓜二つの敵対者達……後にガミラス(GAMYROS)(正式名称:“Ga”laxy “My”stery “Ro”bbery “S”hip、日本語名:銀河系未確認武装艦)と命名される者達の大艦隊が襲来したのだ。

 このガミラスの襲来に、地球は深海棲艦との戦い以来、全ての艦娘達の徴集令を出すだけでなく、軍事力や科学技術を集結させて国連軍を発展強化した防衛艦隊を編成して迎撃体制を整えたのだった。

 だが当初は苦戦しながらもガミラスにある程度勝ち続けられた防衛艦隊だったが、深海棲艦より遥かに強大にして冷酷、そしてより謎(深海棲艦自体、未だに解明出来ていないが…)に包まれたガミラスに海王星処か天王星を奪われてから()けが()(はじ)めて……貴重な資源元でもある、艦隊司令部が置かれる程の重要拠点の土星の絶対防衛圏を撃破される同時に、防衛艦隊の中核を成していたアメリカを初めとしたロシア、オーストラリア、中国、そして欧州各国は時が経つ度に戦力を強大にしていくガミラスに反して戦力を枯渇させていった。

 そしてなにより、嘗ての日本同様に遊星爆弾によって地球自身も序々に疲弊していき……先ず海を初めとした全ての水が蒸発した事から異常気象が多発するようになっただけでなく、全ての土地を高濃度放射能で汚染されて食料生産力どころか、生存に必要不可欠の水にさえ致命傷を受けてしまったのだ。

 この絶望的状況下から、ガミラスと対話による共存あるいは降伏を目指した血迷った一派がいたが、彼等が白旗を掲げる等をしたにも関わらずガミラスが彼らを殲滅した事から、ガミラスは地球に絶対的な死を求めている事が分かるだけに終わった。

 この打開策として軍事技術力の向上だけでなく、ガミラスの研究解明も同時に行われ……ガミラスの斥候隊が地球に適応(弱体化)して深海棲艦となったか、生き残った深海棲艦が宇宙に逃れてガミラスになったかの二つの説からガミラスが地球殲滅を目指していると思われるが、残念ながらガミラスを鹵獲するどころか、駆逐艦すら撃沈困難になっている現状では推測の域から出る事が出来なかった。

 否、ガミラス(と深海棲艦)を解明する処か、軍事競争と言う名の血を吐き続けるマラソンに走り負けた地球は、嘗ての日本と比較出来ない程に破滅への道を爆進していた。

 

「…大和、どうしました?」

 

「あ、いえ…」

 

「だったら早く放射能を洗い落としなさい。

このレベルの放射能は、艦娘でも艤装無しでは危ないんだから」

 

 エレベーターが着いた事に気づかなかった大和は不満を顔に出していたが、当のキリシマが素知らぬ顔だった為か、さっさとエレベーター脇の施設に入って言われた通りに放射性物質を洗い落として出てくると、脱いだ防護服を近くのごみ箱目掛けて投げ捨てた。

 その間に、眼鏡を拭きながら洗い終わった艤装を兵士達に引き渡したキリシマは、右腕を三角巾で吊るしている関係で今まで不便だったのか、背伸びをした後に首を左右に振っていた。

 

「…それじゃあ、行きますか……っ!?」

 

 片目の為に遠近感が少し呆けていたキリシマが蹴躓いてよろけた姿に、大和が笑った為にキリシマが赤面しながら睨んだが、気を取り直して連絡路の先にへと向かった。

 

「…不味い……予想より早く汚染が進んでいるわね。

またエレベーターの拡張改造……いえ、一層の事、新しく作った方が早くて安いかもね…」

 

 移動中、キリシマは何かスマートフォンみたいな物を険しそうに睨みながら操作していた。

 ただ、秘書艦の職務に勤勉なのは良いのだが、世界共通で危険と認知されている歩きスマホをやっている事に間違いはなく…

 

「……っ!?」

 

…現に足下のパイプに気づかなかった為、頭から派手に転けた。

 更に打ち所が不味くて負傷している左目をいためたらしく、左目を押さえながら悶え転げていたキリシマだったが、大和が馬鹿にする様に笑っていたのに気づくと、素早く立ち上がって身を整えて埃を落とすと何事も無かったかの様にまた歩み出していたが、痛むのか時折左目擦っていた。

 まぁ、何とか大和に対して面目を保とうとしているキリシマであったが、そうこうしている間に前方から光が見えてきて…

 

「いつ見ても窮屈そうに見えますよね」

 

「仕方がないでしょう。

ここは急いで作られたのだからね」

 

…連絡路を抜けると、ガミラスの攻撃から逃げ延びている日本国民が(ヒシ)めいている地下都市に辿り着いた。

 規模こそ、大和がフィリピン陥落後から噂で伝え聞いた、本土決戦に備えて建設されていた松代要塞を遥かに凌ぐモノであり、しかも()れと同じモノが日本中どころか地球の至る所に存在していると言うのだから驚くべき事なのだが、大和はこの地下都市をあまり好きになれなかった。

 

「……?」

 

「……うん」

 

 薄暗く空気の悪い地下都市を見渡しながらキリシマに続いていた大和だったが、自分のスカートを掴んで無言で食べ物を恵んでくる薄汚れた少年に気づいた。

 その少年に大和は露骨に溜め息を吐いて数日前に支給されたレーションを渡すと、少年は直ぐ咳き込みながら頬張ると、そのまま礼を言わずに何所かへ走り去っていった。

 

「…アレが最後のだったのに良いのですか?

暫く配給の予定はありませんよ」

 

「良いんです。

あんな不味い物なんか食べれませんし、私には必要ありませんから」

 

「そう言う意味じゃなくて……!?」

 

 今の不用意な行為からのではなく大和が全く飲食をしていない事にキリシマは注意しようとしたが、当の大和はそれを無視して地下都市の至る所にいて軽蔑する様に自分達を見つめている人々を見渡している事に気づいた。

 

「…此所(ここ)不味(まず)いから行きましょう」

 

 人々が自分達に襲うかもしれないと思ったキリシマは、大和の手を引いて周囲を警戒しながら早歩きでこの場から急ぎ去った。

 

「…前にも()して軽蔑の視線が()えて()したね」

 

「仕方がないわよ。

何せ私達は木星沖での海戦で完敗したんですからね」

 

 軍施設近辺の人気が全く無い場所に入ると、自分の手を振り払った大和の皮肉にキリシマは嫌そうに反論した。

 だが実際問題、木星沖でガミラスを迎撃して、あわよくば土星奪還を目指した防衛艦隊が、逆に旗艦キリシマ以下の少数を残して壊滅し、更に木星陥落どころか小惑星群(アステロイドベルト)や火星の制宙権さえも放棄した事もあって、人々をドン底に陥れてしまったのだ。

 しかもキリシマ達がまともな治療(及び艤装の修理)が出来ない程に戦力と資源を枯渇し、更にガミラスの地球総攻撃が秒読み段階に入った現状から誰もが絶望し、厄介な事にその矛先が艦娘達に向いていて彼女達が襲われる事件が多数上がっていた。

 勿論、それは仲間達が次々に殺られていく地獄を見たキリシマ達を更に追い込んでしまっている上、なによりこんな現状になるまでガミラスに連敗し続けたキリシマ達に悔しい思いをさせていた。

 だが先の敗戦で、防衛軍上層部は自分達の無力さを悔やみ悲しんでいる艦娘達にトドメとなるとんでもない作戦を立案していたのだが…

 

「……?」

 

 物思いに(ふけ)りかけていたキリシマに通信が入って簡単なやり取りをしていた。

 

「何を言われたのです?」

 

「早く戻ってこいとの事です。

そしてもう一つは…」

 

 毎度の事であった為、後者の事を察した大和が見るからに嫌そうな表情をした。

 

「…大和、貴女の復隊要請ですよ」




 感想・ご意見、お待ちしています。

 と言う訳でして本作では深海棲艦はガミラスの皮を被って問題なく(?)出てきます。
 只、鬼&姫はオリジナル(先行情報:冥王棲姫)も出しますが、原作のも名前を弄る可能性(例:戦艦棲姫→戦艦星姫)がありますけと少しは出します。


 で、以下はその予定
・戦艦棲姫or戦艦水姫{出るならドメル(ドメラーズIII世)みたいな立ち位置?}
・空母シリーズ(棲鬼、棲姫、水姫)の皆さん{戦艦棲姫の余波で各々ゲットー(バルグレン)、バーガー(ランベア)、クライツェ(シュデルグ)?}
・水母棲姫{空母シリーズと同様にハイデルン(タロイド)だが、対抗馬にレ級だが……現在レ級の方が優勢}

(オマケ)
・レ級(深海棲艦通常型の異常戦闘力保持者だが、本作では“ロックマンワールド5のモンキッキ”をヒントに、強いのだが凶暴性が原因で指揮統制能力に疑問が着く上に味方をも攻撃しかねない為、鬼&姫になれなかった失敗作と定義。
更に上記の水母棲姫のとは別に、オリジナルのレ級亜種が登場予定)


瑞鶴
「戦艦棲姫達を上の形で出すって事は、実写版では無かった“七色星団の戦い”をするの?
只、もし原作で此の上の編成で出たら、五隻だけでもえげつない事になるわよ」

 うん、だからこそエンガノ組を投入する事を決めました。
 只、最近になって瑞鶴出すんなら、翔鶴も出した方が良いのかなぁ~…って迷ってしまいまして、出来れば翔鶴の有無の意見を下さい。
 まぁ、沈む生き残るかは別として(瑞鶴、その弓矢を下げなさい)、翔鶴は冥王星編には出す予定で、現時点では艦載機か損傷度合いが原因で遠征には同行出来ずにキリシマと地球残留としています。

 後、此れは検討事項てすが、さらば版土方竜の立ち位置で赤城は雲龍級三姉妹、西村艦隊、志摩艦隊と共に“さらば&Part2”編で、加賀は主力戦艦として出た事から春籃(改アンドロメダ)級戦艦として谷風と全潜水艦娘(?)と共に永遠編で出したいなぁ~…と思ってますので、翔鶴の代わりとしての要望は出来れば勘弁して下さい。
 最もそこまで行けるか不確定ですし、蒼龍、飛龍、大鳳は未定ですけどね………アクィラとグラーフ・ツェッペリン? 奴等は未所有です。

 後、最後に本来ガミラスと言う単語はカーミラが訛りに訛って出来た物らしいですけど、三原作(オリジナル、実写、2199)の全てで、ガミラスの単語が解明或いは命名されたかが全く無いので、本作では英和辞典片手にガ(Ga)ミ(My)ラ(Ro)ス(S)を各々頭にして頑張って設定しましたが、此の手で強い人で修正の意見があったら、そこも宜しくお願いします。

キリシマ
「ガミラスのラって本来は“Ro”じゃなくて“Lo”じゃありませんでしたか?
それに最後のは“S”ではなく“N”ですし…」
(“2199”を見ていたら分かると思いますが、本来のガミラスの英語表記は“Gamilon”、ガミラス星人なら“the Gamilons”。
現にガミラス国歌(永遠に讃えよ我が光)ではガミラスではなくガミロンと言っている)

…“Lo”が頭の良い単語が見つからなかったんだよ!
 ついでにに言うと“La”と“Ra”もね!


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第3話 深まる絶望(前編)

――― 防衛司令部 ―――

 

 

 戦時下もあって地球防衛を担う防衛軍の中枢である此所・防衛司令部は誰もが忙しく動き回っていた。

 

「北京、食糧不足から大規模テロが発生した模様です!」

 

「モスクワ、通信係が錯乱したらしく“XopoШий δαйκ (サヨウナラ)”を打ち続けています!」

 

「ケニア、通信途絶!!

電力が尽きたもようです!」

 

「第15区画にて高濃度放射能を検知!

区画の放棄を求められています!」

 

…例え、泣き叫ぶか、全てを投げ捨てたくなる程の絶望的状況下でも変わらない様だった。

 

「相変わらず酷い状況ですね」

 

「ああ、艦娘がいないと暇になる君とは違うのだよ」

 

 そんな状況下でも防衛軍を束ねる防衛司令長官として最善の指揮を取り続けている藤堂兵九郎に沖田は声を掛けていた。

 

「…で、君の艦娘達の状況はどうなんだ?」

 

「最悪だ。 キリシマだけでなく生き残った巡洋艦の多くは(ことごと)く大破状態で修理の目処(めど)が全く立たない。

空母は全員動ける事は出来るが、艦載機が無いので死んだのと同じだ。

動けるのは僅かな巡洋艦と駆逐艦だけだ」

 

 沖田の報告に藤堂は「そうか」としか言えなかった。

 

「やはり木星沖海戦の傷は深刻だな」

 

「ガミラスは強い。

数や質に優れているだけでなく、奴らは我々が1つ学べば百や千も先へと進んでいく」

 

 数多の戦いで艦娘達を指揮し続けた沖田の言葉の裏には、先の木星沖海戦を無謀に推し進めた上層部への非難が含まれていた。

 

「そして我々はその争いに敗れた上、満足に戦える艦隊を壊滅させてしまった」

 

 元々木星沖海戦に断固反対していた藤堂も、彼なりに艦娘達に悪びれている様子であった。

 

「……これで例の作戦が行われる………その日が来る事になる…」

 

 沖田が見るからに嫌そうだったが、どうも藤堂の口振りだと例の作戦……選ばれた地球人類の脱出作戦が決行される事が決まった様だった。

 実は木星沖海戦は脱出作戦の為の宇宙船建造資材を地球に運ぶ為、負ける事を前提に強硬されたモノだったのだ。

 勿論、この事実は囮となった艦娘達どころか沖田達現場司令官達にも内密にされていたのだが、艦娘の多くが轟沈かMIA(Missing in action:作戦行動中行方不明)認定を受け、辛くも生き残った者達もほとんどが大破状態となり、此れは本命の輸送船団の護衛艦隊も似たようであったのもあって、艦隊総戦力が壊滅した上に囮であった事を秘密にされた事から上層部への不信感が極限まで高まり、実際にドイツで戦艦ビスマルクを御旗とした艦娘達の反乱が勃発し、()の鎮圧戦でベルリンの地下都市が壊滅する悲劇が起こってしまった。

 当然、日本でも艦娘達が沖田や藤堂達への不信感が高まっていたが、幸いな事に長年沖田と組んでいたキリシマ以下の良心派が抑えてくれた為に大事には至らなかった。

 

「…だがキリシマ達も次の作戦を聞いたらどうするか分からんぞ」

 

 だが上層部はキリシマ達、傷ついた艦娘達の修理資材までもを使用して建造中の脱出船が全船完成次第、まともに動く事すら困難な艦娘達までもを動員して脱出船団を逃す為に一大艦隊特攻を勇敢させるつもりであった。

 その事を止める事が出来なかった藤堂は、過去に彼が発言した「艦娘ではガミラスには勝てない」と馬鹿の1つ覚えみたいな作戦を作成し続ける上層部への非難発言を、あろう事かその上層部が自分勝手に解釈して脱出作戦を作成するだけでなく、誰もが就任拒否をした事もあって否応なしに就任させられた防衛司令長官としても酷く悔やんでいた。

 

「…本当に私は山本五十六になった気分だよ」

 

「いえ、貴方はあの三流軍人とは違います。

それにまだ希望はあります」

 

 自虐的な藤堂は完全なる絶望的でも希望を持っている沖田にキョトンとした。

 

「……藤堂さん、私に大和を託してくれませんか?」

 

「…何だと?」

 

「大和には一部のエリートが僅かな時間を生き残る為にではなく、人類の希望の為に旅立たせたいのです」

 

「…例の坊ノ岬で見つかった二百年前の艦娘をか?」

 

 どうやら上層部内でも大和の事はそれなりに話題がある様だった。

 勿論、これは大和が蘇っただけでなく、二百年前の艦娘にも関わらず高濃度放射能の大気の中を、朦朧とした状態であるも生きていた事からであった。

 

「今の地球に生きる全ての者に必要なのは食料や医薬品よりも希望……明日の光を見出だし今を生きる力を与える希望なのです。

希望を失えば人は死に、絶望は致死性の毒薬と化す、私は多くの戦いをえてそれを実感しました。

だからその為に、大和には僅かな人間を逃す為でなく、今度こそ希望を掴む旅に出させたいのです。

そうすれば人間も艦娘達も絶望の中でなく、希望を持ったまま……死んでゆく事が出来ます」

 

 此の時の沖田は何かを口に含んでいるようで、最後の部分で言い淀んだ時に、歯に何か固い物が当たる音がした。

 普通なら失礼な行為なのだが、藤堂は気づいている筈なのに、沖田に注意する処か反応すらしていなかった。

 

「……しかしな…あの娘がどれだけの事が出来るのだ?

彼女本人だけでなく、防衛軍内部でも武蔵処か、長門か陸奥の方がまだ役に立つと言う者はかなりいるぞ」

 

 沖田は大和を買っていたが、防衛軍上層部だけでなく艦娘達の間での大和の評価は“ピラミッドや万里の長城に並ぶ世界三大馬鹿の一角”と言われる通り、ドン底であった。

 此れには大和が二百年前の艦娘と言うだけでなく、まともに勝ったり作戦成功の功績が皆無である以上は当たり前の話であった。

 ましてや、その大和を冷遇した山本五十六が、ホレーショ・ネルソンや東郷平八郎に並ぶ程に神格化していた上、なによりレイテ沖での目標を目前にしての反転行為は致命的であった。

 尤も前者に対しては「大和が世界三大馬鹿の一角なら、その大和や戦艦娘達を遊兵にし続けた山本五十六は地球一の大馬鹿だ」と主張する山本非難の希少人種である沖田はあまり気にしていないと藤堂は思っていた。

 だが実際大和自身はそれ等……特に後者を気にしていて、「自分達を行かす為に囮として散った武蔵か、日本戦艦の誇りを最後まで背負い続けた長門を蘇らせるべき。その為なら自分は解体されても良い」と言い続け、更に嘗て艦娘達の犠牲を省みない作戦を立て続けて自分達は生き残った日本帝国海軍上層部と同じ様な大罪をしでかそうとする防衛軍上層部への不信感から軍務だけでなく全てに不真面目となっていた。

 

「いえ、私は武蔵や長門と陸奥ではなく、大和でないと駄目だと思っています。

それに土方からの報告は知っているでしょう?」

 

 実は沖田や藤堂達僅かな者達しか知らない事だが、大和は確保される時に外宇宙からの通信カプセルを持っていて、その後の大和の検査と再教育を一任された、沖田の同期である土方竜の報告によると、基本的な戦闘能力は現在でも通用する(どころ)かキリシマ達全ての艦娘を遥かに超える恐るべき数値を出したのだ。

 防衛軍は通信カプセルが大和に何らかの影響を与えたと判断して急ぎ研究解明が行われていたが、沖田は通信カプセルに更に注目している事があった。

 

「…だから藤堂さん、私が提出した作戦を認めてくれませんか?」

 

「……沖田、君はどんな物語を描いて、あの娘にどんな役を与えるつもりだ?」

 

 部下と上官との間柄を超えて戦友と言うべき仲の沖田を信じたがっていた藤堂だが、後一押しを欲していた。

 それに沖田が答えようとしていたが…

 

「緊急報告、軽母ヌ級1隻と駆逐イ級2隻のガミラス艦隊をレーダーに確認!!

呉に向かって降下しています!」

 

…その直前にガミラス艦隊出現の報告に遮られてしまった。

 

()()どもめ、また懲りずに現れたか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 呉 ―――

 

 

 ガミラス艦隊出現の報告に当然ながら呉では自分達が狙われている事もあって動き出そうとしていた。

 

「もう、本当にガミラスの蛆虫(うじ)達は遠慮知らずなんだから!!」

 

 勿論、キリシマも大和を引っ張って艦娘専用の射出室に来ていたが、どうやら“友は類をなす”は戦友にも適応されるのか、沖田と似た様な言葉を発していた。

 

「…艦娘に出撃命令が出されました!」

 

「……出撃って、私を含めて此所の艦娘達は皆重傷なのよ!」

 

 当初は誤報と思っていたキリシマだったが、修理中の自分の艤装(と間違ったのか、大和のも)が運び込まれたのを見て、ギョッとした。

 

「間違いありません!

比較的軽傷な者達を出していくそうです!」

 

「その軽傷な娘だって中破しているのよ!

あの土方提督やアケシがこんな場当たり的な命令を出すなんて信じられない!?」

 

 後に分かる事だが、この時、土方はアケシを伴って防衛司令部に出向いて不在だった上、市民が助けを求めて基地に殺到した為、留守を任されていた者達が慌てて出したモノであった。

 

「直ぐ防衛司令部に連絡は取れない?」

 

「その防衛司令部から工厰だけでも死守せよと指令が入っているのです!」

 

 工厰死守……要約すれば“地球脱出船群の楯になれ”との指令にキリシマは愕然としていたが、この事を伝えた()の若い……否、若い(どころ)か幼過ぎると言うべき兵卒自身が泣き出しそうになっていた。

 だが実際、彼みたいな若い兵卒だらけの()の場でも混乱が生じているのだから、最早修正は無いと判断したキリシマは歯軋りをしていたが、壁に凭れながら座っている大和は、この光景を他人事の様に傍観していた。

 

「……でしたら、私が出る娘を見極めます」

 

 大和に諦めとも思える冷たい目線を向けたキリシマは、少しでも成功率……否、艦娘の生存率を上げようと艦娘達の詰所への通信を取ったが、どうも“泣きっ面に蜂”の言葉通りに悪い事は重なるのか、大爆発音が聞こえた直後に何かの轟音が響いた。

 

「……何なの…今のは何だったの!?」

 

 詰所への通信が途切れた事もあって、何か嫌な予感を感じたキリシマは直ぐ伝令を走らせた。

 そしてその数刻後、伝令が顔を青くして戻ってきた。

 

「…何があったの?

一体、詰所で何があったの!?

答えなさい!!」

 

 自分の悪い予感を否定したがっているキリシマは思わず怒鳴ってしまった。

 

「…詰所が……艦娘の詰所が…先程の攻撃で崩落していて壊滅していました!」

 

 伝令の泣き出しながらの報告に、キリシマは見るからに顔を青くした。

 

「……生存者は?」

 

「………」

 

「……そんな…」

 

 僅かな希望を求めたキリシマだったが、伝令の沈黙から生存者が皆無である事を……日本の艦娘が零に限りなく近づいた事を察してキリシマは崩れ落ちて座り込んだ。

 だが、それでも大和は何も反応しておらず、なによりガミラスの攻撃は続いていて時折地下都市の何所かで爆発音に続いて何かが砕ける音が聞こえていた。

 

(艦隊の頭脳なのでショ?

だったら貴女は、是が非でも生き残らないといけないネ!)

 

(此の命に代えて、ユキカゼがお守りします!)

 

「…コンゴウ姉様、ユキカゼ、こんな地獄を見せる為に私を生き残らせたのですか?」

 

 他の艦娘であれば、この現状で取り敢えずは我に返れると(おも)われるが、キリシマの場合はガミラスから配下の者達をむざむざ虐殺に等しい行為を受けさせただけでなく、コンゴウやユキカゼを初めとした仲間達を楯にして逃げたも当然の退却をした木星沖海戦を思い出していて、絶望の淵に沈んでいた。

 

「…沖田提督より通信が入りました!」

 

 そんなキリシマの元に伝令が沖田からの通信を伝えた。

 一瞬キリシマが、木星沖海戦でコンゴウ達がキリシマを逃す為の行為を許可した事もあって、沖田に恨みに近い何かを見せたが、直ぐ直属の提督の通信に出た。

 

『…キリシマ、何をやっている?』

 




 感想・御意見お待ちしています。

陸奥
「…この大和って、あの鶴翼版?」

 はい実写版古代を参考にしていますので少し違うと思いますが、”鶴翼の絆”の大和と言われても否定はしません。
 只、鶴翼版には二水戦がいましたが、本作のはどん底評価で弁護する人は余りいません。
 だからこそ此の作品では、武蔵や長門が駄目で大和なのかを書いていきます。

陸奥
「だから此の作品中では大和より長門や武蔵の方が人気があるのよね。
まぁ、私はあんな最後だから無理だと思うけどね」

 でも実際“宇宙戦艦ヤマト”が無かったら、大和が此の作品みたいになっていた可能性があるんだよね。

陸奥
「“宇宙戦艦ヤマト”を生み出した故・西崎義展氏と松本零士先生は偉大よね。
これだけじゃないけど、大和が実物が海の底なのに専用博物館が出来る程に神格化したも当然だからね」

 因みに私は去年地元であった講演会で松本零士先生を実際に見ています。
 その時に感じた松本零士先生の印象は“銀河鉄道999”の主人公星野鉄郎がそのまんま老人化した様な、ヤンチャで子供っぽい人だと思いました。

陸奥
「その時、確か五万円以上作品を買っていれば松本零士先生直筆のサインが貰えたのにね」

…よりにも……よりにもよって、金が全く無い時に講演会があったんだよ!
 あれば有り金全て使ってでも買いまくったのに!!(床を叩きながら号泣)


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第4話 深まる絶望(前中編)

――― 呉 ―――

 

 

『…キリシマ、何をやっている?』

 

 通信が繋がっての沖田のキリシマへの一言は此れであった。

 

「呉の艦娘詰所が崩落して艦娘達が全滅したのです」

 

 そのキリシマの皮肉を込めた報告に、沖田が僅かに反応した。

 

『…そうか』

 

 だがそれでも軽い返事をした沖田に、キリシマや周囲の者達がギョッとした。

 

「…そうか…って呉の艦娘が全滅したのですよ!

戦力に致命傷を受けたのですよ!」

 

『そんな事は分かっている。

だがそれでもガミラスの攻撃は続いているのだろ?』

 

 嫌な事だが、確かに沖田の言う通り、ガミラス艦隊は地盤が緩んだ崩落箇所の周辺への攻撃を続けていた。

 当然、このまま何もしなければ艦娘詰所や工廠処か、呉の地下都市その物が住民諸共失われる公算が大であった。

 

『それに戦うべき時に何故戦わん?』

 

「…っ!?」

 

 通常なら誤解を招きかねない発言で、実際に大和が軽蔑する様な目線を向けていたが、沖田と長い付き合いのキリシマは彼が何を言っているかを……何より沖田が諦めていない事を察して驚いていた。

 

「…まだ勝機が失われていないと言うのですか?」

 

 キリシマの質問に沖田が頷いた事に……此の絶望的戦況でまだ勝機があるとの事に、誰もが驚き戸惑っていた。

 

『…キリシマ、大和を出せれるか?』

 

「大和!? 大和を出すと言うのですか!?

あの娘の艤装は…」

 

『飛行出来なくても砲台くらいにはなるだろ?

それとも主砲は撃てないのか?』

 

 勝利の鍵が大和だと言われたキリシマは、思わず壁に凭れている大和に振り向いた。

 

「…取り敢えず三式でのならば」

 

 キリシマの報告を沖田は「そうか」と納得していたが、大和本人は兎も角として、彼女の艤装が撃つ処か動かすのも怪しいと思う程、錆の塊と化している見た目に兵卒達は疑っていた。

 

『横須賀と舞鶴から増援を向かわせた。

せめてヌ級をしとめろ』

 

「分かりました。

やってみます」

 

 沖田に敬礼したキリシマは若干硬直した後、大和に振り向いた。

 

「……大和…」

 

「嫌です」

 

 まぁ分かっていたが、自分が言い切る前に出撃を拒否した大和に、キリシマが唇を噛みながら頭を掻いていた。

 

「此の現状を分かっているのですか!?」

 

「はい、現在重武装の敵艦隊の攻撃を受けていると言う事をです」

 

 此の大和の言葉に、キリシマの何かが切れようとしていた。

 

「あれ位の敵戦力でしたら、別に出なくてもほっておけば、勝手に引き上げると思いますよ」

 

「…貴女、出撃を拒否した艦娘がどんな処分を受けるか知ってるわよね?」

 

「解体される方がマシです。

天一号みたいな事強要されるくらいならね」

 

「…何ですって!?」

 

 脅しに近い形のカマが空振りになる処か、大和の天一号の単語にキリシマが反応した。

 

「あの沖田って人は勝つ為なら艦娘を切り捨てるような人じゃないですか。

実際あの人の指揮下でかなりの艦娘が戦死やMIAになっているじょないですか」

 

 大和の指摘にキリシマは歯軋りをしながら黙ってしまった。

 

「あの人だって連合艦隊司令部の面々と同じです。

艦娘達には死を強要させて、何だかんだ言って自分は生き残る人でs、っ!」

 

 沖田の悪口を言っていた大和にキリシマの強烈なビンタが炸裂した。

 

「……それ以上の沖田提督への暴言は許しません!」

 

 兵卒達が後ずさる程、キリシマから怒気が感じられていた。

 

「貴女はあの人の側で戦っていないから、そんな事が言えるのです!

私もコンゴウ姉様達を死なせたあの人を恨んだ事もありますが、あの人は私達艦娘以上に死者達の業を背負っているのです!」

 

「…そうですよ。

戦えなかった私が分かる筈が無いじゃないですか」

 

 大和の返事に、先述の何かが完全に切れたキリシマが近くの金属パイプを掴むと、力任せに剥ぎ取って大和に振り向いた。

 

「…海軍精神注入棒ですか」

 

 簡単に予測出来るキリシマが行おうとする行為に、兵卒達は顔を青くして硬直していたが、大和は負の何かを感じさせる微笑をした。

 

「……分かってますよ、沖田提督…」

 

「……?」

 

 だが大和達の予想に反して、パイプを振り上げて少しの間硬直したキリシマは、自分の右腕を固めていたギブスをパイプでおもいっきり殴った。

 当然ながらキリシマは悲鳴を上げながら右腕を押さえて屈んだ

 

「…どうして?

殴る価値無しだと言うのですか?」

 

「……か、勘違いしないで下さい」

 

 キリシマの行為に大和が驚き戸惑っていたが、直ぐにキリシマはひび割れ箇所に左手を突っ込むと、そのままギブスを力任せに引き裂いた。

 

「…防衛艦隊は連合艦隊と違って暴力行為や、力でのごり押しを基本禁止しているのです。

それに沖田提督はそう言うのに厳しい人ですから」

 

「だからと言って…」

 

「私も今から坊ノ岬に行ってきますから、おあいこですからね」

 

 キリシマの言った意味を理解出来ない大和はキョトンとしていた。

 

「確かにあの作戦は愚行の中の愚行の、作戦とは言えないモノで、ひねくれるのも分かります。

ですが、そんな馬鹿な作戦に……十死零生の愚行に大和、貴女自身が自分に命じた筈です。

それも直属の上官であった伊藤整一提督や駆逐艦達の反対を押し切ってです。

最も此れは沖田提督の推測ですけどね」

 

 最後の部分で苦笑したキリシマに、大和は何か反論しようとしていたが、何故か言葉を飲み込んでしまった。

 

「舞鶴方面からナガラ以下の水雷戦隊が到着した模様です!」

 

「…分かりました。

大和、貴女は諦めない心と、負けを認めて帰る勇気を持ち合わせた、誰よりも心の強さを持っていると信じています」

 

 兵卒の言う通りなのか、ガミラス艦隊の攻撃による震動がいつの間にか止んでいて、此の急所間にキリシマは自分の艤装を纏い始めていた。

 

「航行に支障がでない様になんとか修理は出来ましたが、まともな武装は副砲以下僅かしかありませんので…」

 

「分かったわ」

 

 艤装の状態の報告して出来れば止めようとしていた兵卒を遮って射出台に上ったキリシマだったが、何か思う事があるのか、目を瞑って溜め息を大きく吐いていた。

 

「……見ていなさい、悪魔達。

私も最後まで戦い続けるわよ。

例え最後の一人になったって………私は決して絶望しない!」

 

 木星沖海戦から帰還後に、自分に言い聞かせる様に一人呟いていた沖田の姿が頭に浮かび、それと似たような事を言いながら顔の包帯を外すと射出機を起動させ、深海悽艦戦とは違って、真上に向かって勢いよく打ち出されていった。

 

「……その先にあるのは絶望しか無いのですよ。

その事が坊ノ岬でよく分かったんですよ、私は…」

 

 大和の不吉な呟きに、キリシマを敬礼しながら見送った兵卒達は誰も気づいていなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 数刻前・艦娘詰所 ―――

 

 

『…直ちに戦闘配備!

繰り返す、ガミラス艦隊接近!

総員戦闘配備!…』

 

「…ガミラス艦隊の攻撃が始まったそうです!

直ちに戦闘配備に入るようにとの指令が入りました!」

 

 キリシマが大和を連れて射出室に入るのとほぼ同時刻、艦娘達の詰所では放送だけでなく、駆け込んだオオヨドの伝令でも伝えられていた。

 

「とても戦える状態じゃないのよ!

土方の糞提督は何言ってんのよ!」

 

「そんな事、私に言われても知りません!

それに土方提督は不在の様です」

 

 だがカスミが反論した通り、此所にいる艦娘達はカスミが体の至る所に包帯を巻いている姿から見て取れる様に、誰もがガミラスにやられて傷付いていた。

 しかもその殆どが立ち上がる処か、ベッドの上で動けず寝ている状態で、オオヨドやカスミ以外で取り敢えず歩ける者は十人に満たないでいた。

 

「しかしこのままでじゃあ、此所だけでなく、呉そのモノがやられるわよ」

 

「それにやられっぱなしってのも癪だぜ」

 

 只、それでもイスズやアサシモの様に戦闘服に着替えて準備を始め、寝ている者達の中にも起き上がろうとしている者が多数いた。

 

「アンタ達、馬鹿なの!?

例え此れを凌いでも特攻をさせられるかもしれないのよ!」

 

 だがカスミの言う通り、木星沖海戦での大敗に加えて地球脱出作戦を聞いて、戦う事に疑問を抱いている者がかないるのか、何人かの艦娘が反応している事から嘗ての帝国海軍の様に「御国の為に」との一言が通用しなくなっている様だった。

 

「だからこそ出ないと。

今の上層部だと出撃拒否をした者を即解体処分にしかねませんよ」

 

「それは……確かにそうだけど…」

 

「それにカスミ、貴女はガミラスに尻尾を巻く気ですか?」

 

 ハマカゼの指摘だけでなく、イソカゼの発破にカスミがムッとなってやる気を見せた事に、当人に気付かれない様にハマカゼとイソカゼがサムズアップをし合っていた。

 まぁ最も、元々素直な性格でないカスミが、本気で拒否する気が無いを知っていたからの二人の手であった。

 

「それに、どうもキリシマだけでなく大和の出るみたいよ」

 

「大和!? 大和がいるの!?」

 

 更に此の間にオオヨドとやり取りをしていたイスズから大和の存在を伝えられて、最初は驚いていたカスミだったが、俄然やる気になっていた。

 只、キリシマの存在にイソカゼとハマカゼが露骨に嫌そうにしていたが…

 

「…でも大和の艤装はまだ水上用のだから、まだ飛べないのよ」

 

「だから私達が殆ど動けない大和を援護しないといけないのね」

 

 イソカゼの言葉に全員が一斉に頷いた。

 

「…アキヅキさん、艤装の準備を出来てますか!?」

 

「はい、何時でもいけます!!」

 

 方針が決まり、最後にオオヨドが自分達の艤装の準備をしていたアキヅキに質問し、そのアキヅキ(と長10cm砲ちゃんx2)が問題がない事を伝えた。

 

「…水雷戦隊、出るわよ!!」

 

 イスズの号令にカスミ以下の駆逐艦娘達四人(オオヨドが出遅れていたが…)が「おお!!」と一斉に答えて、大破して寝ている者達が見送る中を出撃しようとしたが、特大の爆発音が聞こえたと思ったら天井が崩落して、此の場にいる者達全員を彼女達の悲鳴諸共飲み込んでしまった。

 

「…っ!?……う………うわ!!」

 

 暫くした後、キリシマの命令で見に来た兵卒が、崩落した艦娘達の詰所の現状に顔面蒼白になって座り込んでしまい、少しして慌てて立ち上がると、そのまま悲鳴を上げながら戻っていった。

 だがその直後から崩落箇所で、打撃音とも爆発音とも取れる音が響き始めていた。




 感想・御意見お待ちしています。


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第5話 深まる絶望(後中編)

――― 豊後水道 ―――

 

 

「…っ! 攻撃を受けている!?」

 

 此の時、軽巡ナトリを旗艦としてカミカゼ級とムツキ級駆逐艦を主体に編制された艦隊が、豊後水道にて深海棲艦戦時に沈没した貨物船を牽引しながら呉への帰路の途中であったが、その呉からガミラスの攻撃のモノと思われる煙と爆発音を確認して驚き戸惑っていた。

 しかも砲撃や爆撃の音とは明らかに違う爆音が聞こえ、それが呉で一大事が起こったと分からせるには十分であった。

 

「艦隊司令部、ナトリです!!

呉がガミラス艦隊の攻撃を受けてます!

どうすればいいですか!? 応答して下さい!!…」

 

「…行こう。

みんなを助けに行かないと」

 

 ナトリが艦隊司令部に指示を求めていた通信をしていたが、貨物船に繋げていた牽引ビームを解除しながらのサツキの意見にカミカゼも続いて、更に僚艦達が頷こうとしたが…

 

「待って下さい!

私達の艤装は武装が外されているのですよ!」

 

…駆逐艦娘の1人が反対した事で全員が「ウッ」と呻きながら硬直した。

 だが実際問題、元々ガミラス戦の開戦時から既に旧式となっていたカミカゼ級とムツキ級の彼女達(旗艦を務めているナトリだけでなく、此の駆逐艦娘はカミカゼ級でもムツキ級ではなかったが…)は、早くから戦線から外されるだけでなく、資源枯渇に伴って干上がった海底からのレアメタル回収の為に艤装から武装が取り外されて、サツキのみ多用途輸送機カーゴの載せているだけであった。

 現に「スペックが駆逐艦の全てでない」が口癖のカミカゼが思わず黙ってしまった。

 

「…だがそれでも行くべきです」

 

「それに武装なら呉に行けば、なんとかなる筈だ」

 

 そんな中でミカヅキが牽引ビームを解除し、ハタカゼもそれに続いたが、そんな2人を駆逐艦娘が止めようとした。

 尤も当のミカヅキとハタカゼは「聞く耳持たん」と言わんばかりに無視して呉へと向かい、更にサツキも2人の後を追った。

 そんな3人に不安な表情の駆逐艦娘の左肩をカミカゼが掴んだ。

 

「残念だけど、呉の近くに私達以外いないみたいだから行くしかないわよ」

 

「……ですが…」

 

「まぁ、アンタがどう思ってるかは私もよく知っているから。

だけどね、今行かないと、あの時以上の後悔をするのは分かっているよね?」

 

「……はい」

 

 まだ不安を拭えなかった様だが、そんな駆逐艦娘にカミカゼはニッと笑いながら彼女の尻を叩いてハタカゼ達の後を追い、駆逐艦娘も少し遅れて続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…司令部から呉救援に向かうようにと指令が……あれ?

皆さぁーん!! 何所に行ったのですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 呉 ―――

 

 

 豊後水道での事などお構い無しに、ガミラス艦隊の呉攻撃は続いており、そのガミラス艦隊を迎撃しようと次々に艦隊が出撃し、舞鶴のナガラ以下の水雷戦隊(シラユキ、ハツユキ、ウラナミ、アヤナミ、シキナミ、イナヅマ、サミダレ、全て駆逐艦)がキリシマと共に交戦を開始して少しした後、横須賀から出撃してきた空母ショウカクを旗艦とした艦隊(空母ズイカク、ショウホウ、チトセ、巡洋艦タマ、駆逐艦テルヅキ、ハツヅキ、アマツカゼ、丹陽)が呉を目指していた。

 

「ヤバい!!」

 

 だが呉に着いたのは完全に日が沈んで星々輝く夜になっていた上に、呉の上空で戦闘のモノと思われ……否、どう見ても戦闘のモノである現象が確認出来た為、嘗ての翔鶴級空母と同様にショウカクの妹であるズイカクが思わず叫んだ。

 しかも戦局は極めて最悪、キリシマ達の砲撃は悉く軽母ヌ級と護衛の駆逐イ級2隻に跳ね返されており、此の為に駆逐艦娘達がキリシマとナガラの援護射撃下で唯一の攻撃手段である雷撃を試みて突撃を敢行していたが、それ等は軽母ヌ級の艦載機群と駆逐イ級2隻に迎撃されて、ハツユキとウラナミに大破して倒れており、艦載機群の集中攻撃でシラユキの艤装が炎上してのたうち回り、唯一アヤナミとサミダレがなんとか駆逐イ級2隻をいなして、イナヅマがシラユキの艤装を消火していた。

 だがアヤナミとサミダレを追い掛けている駆逐イ級2隻は兎も角として、当の軽母ヌ級はキリシマとナガラの砲撃を気にしていない処か、逆に2人に本来は対艦攻撃にあまり向いていない大砲で攻撃し、キリシマとナガラが必死に回避し続け、更に軽母ヌ級の航空隊がそのキリシマとナガラだけでなく、アヤナミとサミダレに襲おうとしていた。

 

「糞っ!! もっと早く来ていれば!」

 

「ズイカク、仕方がない事を言わない」

 

 元々距離的問題もあったが、木星沖海戦では彼女達空母艦隊は後方にいた為、キリシマ達とは違ってほぼ無傷でいれたが、壊滅的打撃を受けた艦載機の補充兼再訓練で大遅れをしてしまった。

 その結果、キリシマ達が無惨な状況下に置いてしまった事に加えて、呉の艦娘詰所崩落の一報もあって、悔やんでいたズイカクをチトセが慰めていた。

 

「……チョット、比率を間違えたかな?」 

 

「こんな時にチトセカクテルなんか飲むな!!」

 

 只、チトセが懐から小型の水筒を取り出して彼女特製人工酒チトセカクテルを一口だけ飲んだ為、ズイカクに怒鳴られていたが…

 で話を戻して、そのチトセとショウホウにショウカクもズイカクと同じであり、ズイカク以上にその詰所にいる姉妹を思ってアマツカゼとデルヅキ&ハツヅキが顔面蒼白になっていた。

 

「あわわ…」

 

 只、母港の旅順が遊星爆弾で完全消滅した為に横須賀に入港していて、臨時(と言うより、半ばそう言う雰囲気で)に艦隊に編入された中国の駆逐艦丹陽は立場上どうすればいいのか分からずにいたが…

 

「全航空隊、発艦開始!」

 

 勿論、内面で怒り心頭のショウカクは直ぐに弓を構えながら艦載機隊の発艦を指令し、ショウカクに続いてズイカクとショウホウも弓を、チトセが……何と言うべきか、航空格納箱と言うカラクリ箱に近い物を構えた。

 

「くっ、重い…」

 

 ズイカクが矢に文句を思わずぼやいたが、ショウカク達三人の矢とチトセのミニチュアが放たれ……それ等がコスモファルコンの編隊に変化してガミラス艦隊へ突撃していった。

 

「…っ! サミダレさん!」

 

「援軍が来たんですね!」

 

 当然、ガミラス艦隊もショウカク達の航空隊に気付いて、アヤナミとサミダレを攻撃していた航空隊だけでなく、軽母ヌ級から新たなる航空隊が発艦、直ぐに合流して迎撃に向かった。

 そして両航空隊が騎馬戦さらがらの突撃合戦が起こり……数的には不利な筈のヌ級のが勝っていった。

 

「……やはり錬度が…」

 

 ショウカクのぼやき通り、確かにショウカク達の航空隊は軽母ヌ級の4倍以上はいたのだが、軽母ヌ級のが百戦錬磨の玄人揃いであったのに反して、ショウカク達のは先述の通りに元々木星沖海戦で壊滅したのを補充したばかりの上、数値上はガミラスの艦載機に対抗出来る筈の新型機(?)のコスモファルコンを受領したてで、その慣熟訓練中にガミラス艦隊襲来で慌てて出撃してきたのだか錬度など無いに等しかった。

 更に言えば、ショウカク達自身もコスモファルコンの特性をまだ理解していない為に上手く使役出来ておらず……結果を言えば、コスモファルコンが七面鳥さながら…

 

「なんですって!?」

 

「…ズイカク」

 

…殆どバタバタ打ち落とされ、何機かは敵機を振り切って軽空母ヌ級に攻撃を仕掛けようとしていたが、その軽空母ヌ級だけでなく、警戒していたのか予備戦力であったかは分からないが、新たに対空能力に秀でた駆逐ハ級2隻が出現して軽空母ヌ級に合流すると対空ミサイルとパルスレーザーで迎撃されていた。

 

「……コスモタイガーさえ、間に合っていれば…」

 

「ズイカクさん、無いのを言っても仕方がないです」

 

 どうもコスモファルコンが気に食わない様であるズイカクが文句を言ってショウホウに注意されていたが、現在ズイカク達が使っているコスモファルコンは、元々新型艦載機コスモタイガーの開発及び生産の遅れから将来性のある陸上機を艦載機に改造した事から若干使い勝手に悪さがある代物であった。

 まぁ、此れでも木星沖海戦までは旧式化していたコスモパンサーを使っていたのだから、まだマシではあったが…

 

「ショウカク、私は此の間に…」

 

「分かってます。

アマツカゼさんの丹陽さんと一緒にいって下さい。

それとタマさんはイナヅマ達の所に行って下さい」

 

 ショウカクの許可を得たチトセは此の間に、艦隊から離脱してハツユキ達の所に向かった。

 元々個人的に医療知識を持っていたチトセは、日本唯一の工作艦アケシの姉妹艦が建造取り止めになった上にアケシ唯一の僚艦のユウバリがMIA認定となった為、ユウバリ代艦として修理機能が追加されていたので艦娘の治療が出来たのだ。

 

「え、あ、はい!」

 

「……ふん」

 

 そのチトセに従属する様に命じられた丹陽は、次世代機関を試験搭載した事から機関中心に修理機能を持っていたアマツカゼに加えて、自分が選ばれた事に驚いて変な声を出していた。

 だがその為にアマツカゼ(と連装砲君)に殴られていた。

 

「来ました!!

対空戦闘用意!」

 

「「「はい!!」」」

「あ、はい!」

 

 で、チトセ達三人が離脱した直後にガミラス機も攻撃をしようと突進してきた為、ショウカクが命令下で直援用の予備の編隊を放ちながら陣形が整えられ、デルヅキとハツヅキが対空砲を撃ち始めたが、何処か余裕が感じられたガミラス側と違って、ショウカク達からは必死さが感じ取られ……実際、空対艦ミサイル1発だけとは言え、早くもショウカクが被弾して小破した。

 

「キリシマさん、ショウカクさんが!!」

 

「…大丈夫。

まだ終わらない……まだ終わらない!」

 

 ショウカク被弾にナガラが思わず叫んでいたが、キリシマは救援に来させた事は兎も角として、それまでにガミラス艦隊を撃退出来ないでいた不甲斐ない自分に歯軋りをしていた。

 

「……ジンツウ、貴女がいてくれたら…」

 

「いない奴の事は言わない!

だけどショウカク達が敵の艦載機を抑えてくれてます。

此の間に軽母ヌ級を仕留めるんです!」

 

「はい!」

 

 形はどうであれ、取り敢えずは一番厄介な軽母ヌ級の航空隊をショウカク達が対処(と言うより撒き餌になった?)してくれているので、軽母ヌ級への攻撃の好機が生まれてキリシマとナガラは突進を開始した。

 

「アヤナミさん、キリシマさん達が突撃を開始しました!」

 

「……御待たせなのです」

 

「タマ達は駆逐イ級2隻をやるニャ!」

 

「「はい!!」」

「はい、なのです!!」

 

 更にアヤナミとサミダレが2人の行動に気付き、シラユキだけでなくハツユキとウラナミを安全圏に待避させて、彼女達をチトセに託したイナヅマも2人に合流し、更にタマも合流してキリシマと行動しているナガラに代わって旗艦となって駆逐イ級へ牽制した。

 だが先述の通り、肝心の攻撃方法は雷撃しかなく、そしてそれはガミラス側に知られており、キリシマやタマ達の砲撃を無視して懐に入られての雷撃を警戒し、駆逐イ級2隻は高速で蛇行しながら、軽母ヌ級と駆逐ハ級2隻(ショウカク達のコスモファルコン隊も対処しながら)は月軌道から砲撃を続けていた。

 そして悲しい事に、隙を突いてタマ達4人が放った空間魚雷が駆逐イ級2隻に避けられて反撃の砲撃で右往左往して、キリシマとナガラは懐に入れずに雷装を庇ったナガラが左目の上を切って派手に出血して、キリシマは艤装に被弾して数少ない稼働出来る武装の1つである第三主砲が吹き飛ばされていた。

 

「……情けない。

2個主力艦隊が警備隊レベルの小艦隊に遅れてを取るなんて…」

 

 キリシマが歯軋りをしながら悔しくしていたが、此れは此の場にいる艦娘達全員が思う事であり、ガミラスの小規模艦隊に地球主力艦隊が苦戦している此の現状が地球とガミラスの戦況を具現化していた。

 

「……全く情けないわね。

見なさいヴェル、レディの戦いにはほど遠いわ」

 

 そんなキリシマ達の戦いを、ロシアの艦娘であるレシーテリヌイ(通称:レフィ)とヴェールヌイ(通称:ヴェル)の駆逐艦姉妹が遥か遠くから見ていた。

 

「イヤ、彼女達日本艦隊はよくやってる方だよ。

私達ロシアなら瞬殺されているよ」

 

「むぅ~…」

 

 ヴェーヌイの言う通り、元々艦娘が比較的少なかったが、ロシアも木星沖海戦で壊滅的打撃を受けるだけでなく、特攻作戦の噂で士気がドン底に落ちた為に出撃のボイコットが相次ぎ、そんな艦娘達への懲罰で戦える状態でなかった。

 

「でもこのままだど、壊滅するのも時間の問題ね」

 

「どうかな?

ガミラスの艦隊編成と攻撃姿勢に積極性が見られないね」

 

「……誘き出しての艦隊殲滅戦をやろうって言うの?」

 

「違うね。

日本が隠し持っている何かを待っているんだよ。

今更ガミラスが私達の事なんか気にも止めてないよ」

 

 ロシアの貴重な活動可能な艦娘であるレシーテリヌイとヴェーヌイが遥々呉に来ていたのには、彼女達の母港ウラジオストクへの攻撃に備える事に加え、先日日本が坊ノ岬沖で見つけた何か……つまり大和を確認する為にであった。

 確かに日本は坊ノ岬沖で大和を発見したと発表はしていたが、それ以外にも何であったか暈しており、それをロシアだけでなく中国やアメリカ、果ては欧州各国も探りを入れようとしていたが、中国は旅順消滅でそれ処(なにせ自国の丹陽が日本にいる事すら気付いていない)ではなく、欧米は距離的問題で出遅れていた。

 そしてなにより、ガミラスがらしくない呉攻撃を行っている事から確信めいたモノを感じずにいられなかった。

 

「…そ、そうだよね」

 

 尤もレシーテリヌイは一切合切分かっていなさそうであったが…

 だが、キリシマ達が傷付いていっているのに、大和は出てくる気配が全く無かった…




 感想・御意見、御待ちしています。

 今回出た丹陽は本来は台湾(中華民国)の駆逐艦ですが、二百年以上経過していたら中台問題はいい加減解決して統一性しているだろうと思って中国所属としました。
 非難が有ったら台湾に書き換えますので…


「此の作品、そんなコアなファン抱えていると思えないけどね」

…さ、最後に今回の投稿で“設定 ガミラス”を公開します。


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第6話 深まる絶望(後編)

 今回の投稿に合わせて3、4、5話のサブタイトルを変更しました。

 それでは本編をどうぞ。


――― 防衛司令部 ―――

 

 

「ショウカク大破!!

航行は可能なれど戦闘不能!」

 

「ハツヅキを着けてショウカクは退避!

艦載機はズイカクに引き渡せ!」

 

「タマ以下水雷戦隊、エネルギー及び空間魚雷が欠乏寸前です!」

 

「キリシマ、ナガラ被弾!!

両人共に中破!」

 

 現在防衛司令部では呉での艦隊決戦がリアルタイムで映されており、悲惨な戦況をオペレーター達が次々に悲鳴に近い形で報告していた。

 

「戦闘機の撃墜率はどうなっている!?」

 

「約1:5と不利です!」

 

「…キリシマに通達、砲撃目標をイ級に切り替えさせろ!

それとタマ達には雷撃は控える様に通達!」

 

「しかし通信状態が酷すぎます!」

 

「いいからやるんだ!!」

 

 そんな戦況をなんとか打破しようと藤堂と沖田は指示を出し続けていた。

 

「他に友軍艦隊はいないのか!?

佐世保は何をやっている!?」

 

「近くに友軍艦隊はいません!」

 

「佐世保の山南提督からは艦娘全員大破状態の為に出撃不可能と言っています!」

 

「ならば、ロシアや中国はどうだ!?

フィリピンにはアメリカの艦娘が何人かいた筈だろう!?」

 

 レシーテリヌイとヴェールヌイが確認された事もあって藤堂の参謀長を務めている芹沢虎鉄の様に形振り構わぬ指示を出している者達がいたが、そんな者達に藤堂と沖田が何処か冷たい視線を向けていた。

 只、芹沢の場合、彼は藤堂や沖田とは反対の派閥に属していて、呉……と言うよりその呉で建造中の脱出船群の事を尚更気に掛けていた。

 因みに、そんな芹沢が藤堂の参謀長であるかと言うと、藤堂のお目付け役として上層部から半ばごり押しに近い形で赴任されたのだった。

 まぁ、芹沢自体は参謀長を務めれる優秀な人材である事には間違いないのだが…

 

「……呉に非常事態宣言を発令。

正規軍及び空間騎兵隊は住民の避難誘導を開始しろ」

 

 だからこそ、藤堂が事実上の呉放棄を命じた時、芹沢は藤堂を睨みはしたが、何も言わずに歯軋りをしながら職務に戻った。

 

「ヌ級、ハ級2隻を前線に投入して呉への砲撃を開始しました!」

 

 でも実際の現状はそうせざるもやむを得なしの一言であり、奇跡的に沖田の指令が伝わったキリシマとナガラ……更に指令が間違がって伝わったのか、ズイカク達もがタマ達の支援攻撃を開始して駆逐イ級の片割れを撃沈し、もう一方を中破まで追い込んでいた。

 だが軽母ヌ級は護衛の駆逐ハ級を駆逐イ級の救援に向かわせ、フリーハンドとなった自分は呉への砲撃……しかもズイカク達のコスモファルコン隊を非驚異と判断してミサイル付きで再開していた。

 

「大和の準備状況はどうなっている?」

 

「……駄目です!!

呉とは通信が途絶しています!」

 

 大和に拘る沖田に芹沢だけでなく、此の場にいる殆どの者達が怪訝な目線を向けていた。

 だが沖田の期待に反して、肝心の大和が出てくる気配が全く無かった。

 

(……地上に出てこなければ、瀕死の狸と同じだぞ…)

 

 それでも沖田は大和を信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 呉 ―――

 

 

「エネルギーが80%に落ちたぞ!

回路を確認しろ!」

 

「カタパルトが動かないぞ!

何とかしろ!」

 

「ヌ級、方位ニ百から三百に移動!」

 

「砲塁は何やってんだ!?」

 

 キリシマ達が悪戦苦闘いている時、照明が落ちて非常灯が点灯して赤暗い中、兵士達が自分達の職務を必死に務めていた。

 で、そんな兵士達を大和が無表情で見詰めていて、殆どは無視していたが、極稀にそんな大和を軽蔑する様な視線を向ける者達がいた。

 

(…どうやらキリシマ達は戦力分際の愚行に気づいて、駆逐艦へ集中して数を減らそうと目論んでいるみたいね。

でも敵艦隊は機動性に秀でた小型艦艇で編成……いえ、いくら砲撃能力を得たヌ級と言えど、決め手がいまいちなんだから……っ!)

 

 無意識の内に色々戦略を考えていた大和だったが、直ぐ我に返って苦笑していた。

 此の事で艦隊決戦主義に捕らわれていた旧日本海軍の洗脳がまだ解けていない事を自覚し、更に此の為に禍根を残した事をも思い出していた。

 で、そんな大和だったが、急に影が射したのに気付いて顔を上げると、幼さが感じられる士官が目の前に立っていた。

 

「大和さん、戦って下さい!」

 

 士官の訴えに大和は溜め息を吐き、子供を使ってまで自分を戦わせようとする沖田や司令部を邪推していた。

 まぁ、手段がどうであれ、大和の出す答えに変わりはなく、只黙って顔を左右に振るだけであった。

 

「…私は戦えない」

 

「何故なんですか!?」

 

「あの艤装を見れば分かるでしょう」

 

 大和の言う通り、彼女の艤装は錆で真っ茶っ茶で戦う処か、纏って動かす事さえ出来そうに見えなかった。(今更の話であったが…)

 

「直してみせます!

なんとしてでも直してみせます!」

 

 どうやらアケシは彼等子供達に艤装の修理方法を教えていたらしく、少年兵達は素人ながら必死に大和の艤装を直そうとしていた。

 だが、肝心の大和にやる気が無くてあれやこれやと否定し、それでも士官は大和に戦ってほしい事を訴え……否、最早懇願に近いのになっていた。

 まぁ、子供の訴えを拒否し続けている大和も“自分自身も子供だな”と自覚して内心苦笑していた。

 

「…っ!? 艦隊が帰投するぞ!」

 

「帰投って、何所のだ!?」

 

 で、そんな中でキリシマやショウカク達と別の艦隊の者達の帰投に現場の者達が驚き戸惑っていたが、その帰還者達であるカミカゼ、ハタカゼ、サツキ、ミカヅキ、そして……外套とマスクで顔や服装がよく分からないが、背丈等から駆逐艦だけは分かる者の計5人が降りてきた。

 

「何だ、お前達!?」

 

「後方支援艦隊です!

救援に来ました!」

 

「救援ったって、武装が無いじゃないか!」

 

「だから僕達に武装を貸してほしいのです!」

 

 駆け寄ってきた隊長格にミカヅキとハタカゼが取り繕って武装提供を求めていたが、その隊長格から艦娘用の武装保管庫が詰所諸共埋もれた事を伝えられて絶句していた。

 只、5人目だけはそんな事より大和の存在に気付き、驚いた後に大和を凝視して硬直し、その大和も自分でも分からないまま彼女を見詰めていた。

 

「…っ!! アレ使わせてもらうわよ!」

 

 で、そんな中でカミカゼが大和の艤装に気付いて、そこから武装を取り外そうとしたが…

 

「此れは駄目です!!」

 

…大和に願い出ていた士官がカミカゼの前に立って遮った。

 

「何でよ?

此の状況下を分かって言ってんの?」

 

「此れは大和さんの艤装なんです!」

 

「…大和?」

 

 ムッとしたカミカゼは艤装の主が大和だと言われ、その大和が壁に凭れているのを見つけた。

 それで艤装が妙に古かった事も察した。

 

「悪いけど、使わせてもらうわよ」

 

「駄目です!

大和さんにも出撃命令が出てるんです!」

 

 武装が欲しがっているカミカゼに士官が食い下がった為、大和をもう一度見た後に士官を睨んだ。

 

「…貴方、アイツが二百年前に何をしたか知ってるの?」

 

 カミカゼに士官は左右に首を振った。

 

「アイツは沢山の艦娘達の死を無駄にしたのよ!!」

 

 カミカゼの言っているのはレイテ沖海戦の事であり、大和の汚点と言っていいモノであった。

 

「ズイカクの先代達が命懸けで深海棲艦の大艦隊を引き付け、更にヤマシロの先代達が壊滅したのに、アイツは目標直前で引き返したのよ!」

 

「ですけど、あのまま大和さん達が進撃していたら深海棲艦の大艦隊に包囲殲滅されていたと聞いています!」

 

 “羅針盤に嫌われる”との呪いの言葉がある通りに、艦娘達が本人達の意思に反して反転してしまう悪しき行為は度々有り、原因こそ未だに解明出来てはいなかったが、解決方法として航行の改善やレーダー等の電子探知機を発達させていって、深海棲艦戦後期から序々に効果を発揮していき、2199年迄には殆ど起きなくなっていた。

 だが意図的であったレイテ沖での大和の反転行為は、当時の艦隊司令官・栗田貫一中将に因んで“栗田ターン”の悪行名で後世からは非難多数だが、“日数が経過し過ぎていて主目標の輸送船団を殲滅していても意味が無い”“西村艦隊を撃ち破った戦艦部隊が立ち塞がって、北方の空母機動艦隊と挟撃して殲滅される可能性が大”等の擁護が深海棲艦戦当時から存続していた。

 まぁ、それ以前に反転を言い出したのは部下の宇垣纏中将で栗田は当初それを拒否していたし、なにより大和が生き残らせた艦娘達によって北号作戦等の決死輸送作戦が度々行われ、結果的にアメリカの反抗作戦までの時間稼ぎが出来た事が評価され始め、相変わらず否定派が多数を占めているものの、年を重ねる度に擁護派の数が増していた。

 勿論、カミカゼもその事は分かっており、彼女の狙いは敢えて憎まれ役を演じる自分に大和が怒って“なにくそ”と思わせて行動をさせようとしていた事であった。

 

(…コイツ、未だに海底に沈んでいるんじゃないんでしょうね!?)

 

 だが肝心の大和は怒る処か、逆に落ち込んでしまっていて、そんな大和にカミカゼは無反応だと勘違いして益々怒っていた。

 

「だけどね、コイツは更に沖縄特攻をやって燃料と駆逐艦娘を無駄にしたのよ!!」

 

 正直な処、カミカゼは内心やってしまったと自覚し、此れで大和は絶対動かないと思ったが、その直後にカミカゼの頭に岩が直撃した。

 

「アンタの先代はその特攻に同行せずシンガポールで悠々していたのに、ふざけた事言ってんじゃないわよ!」

 

「…っ!?」

 

 伸びたカミカゼをハタカゼが介抱していたが、投石した者……失神しているオオヨドを左肩で担いでいるカスミの声に大和が驚きながら反応した。

 否、カスミだけでなく、彼女の後ろにイスズをお米様抱っこ(ファイヤーマンズ・キャリー)しているイソカゼ、ミイラ男状態で識別不能の艦娘2人を左右に抱えているハマカゼ、アキヅキと長10cm砲ちゃん2人の計3人を器用に抱える(長10cm砲ちゃんの1人は喰わえていた)アサシモもいた。

 当然ながら座り込んだカスミ達に気付いた衛生兵達が殺到していたが、そのカスミ達4人……坊ノ岬沖海戦で戦没した駆逐艦娘達と瓜二つの次代達(カスミ達だけでなく、日本の艦娘達自体が二百年前の旧海軍と艦種がほぼ同じであった)から距離を取ろうとしていた。

 

「…大和、何で戦わないだ?」

 

「戦える訳ないでしょ!!」

 

 イスズを衛生兵に託したイソカゼが先程の士官と同じ質問をしたが、見るからに怯えている大和が先程と口調が違った。

 

「…私は大切な仲間達を犠牲にしてしまったんです。

貴女達だって先代達の後悔や無念を知っているでしょう!?」

 

 “何故自分だけが二百年後の危機的状況下の未来で甦ったのか”と内心悩んでいる大和にして見たら、イソカゼ達四人は坊ノ岬沖海戦の汚点を具現化した様なモノであったが、当人達は揃って主砲を胸前で立てた。

 

「…先代の後悔は知っています。

だがそれは大和、貴女を目的地までに守れなかった事です!」

 

 ハマカゼの返事に大和が顔を上げ、カスミ達三人も同感と揃って頷いた。

 

「私の先代なんか、海戦直前で脱落してしまったしな」

 

「惨めね」

 

 更にアサシモの言葉へのカスミの毒づきでハマカゼとイソカゼが苦笑し、再び立ち上がろうとした。

 

「みんな、そんな体で出撃なんか無理だ」

 

「五月蝿い!!

大和を否定する様な奴等に大和を託せるか!」

 

 だが傷付いてる彼女達…特にカスミは木星沖海戦での傷が開いて血がボタボタ落ちていて、サツキとミカヅキに止められていた。 

 

「お願いします、大和さん!!

貴女なら此の危機を解決出来る筈です!」

 

「……貴方、何故私を信じられるの?」

 

「僕の遠い遠いお祖父さんが二百年前、沖縄へ向かう大和さんを見たんです。

“戦艦大和は誇りと不屈を心に持って沖縄へ向かった、男に生まれたなら大和の様に不屈の男になれ、それが負けると分かった戦いでもあっても”ってお祖父さんや父さんに教えられたんです」

 

「じゃあ、貴方はあの時の…」

 

 坊ノ岬沖海戦の前日の早朝、先代朝霜が深海棲艦と誤認した漁師の老婆と子供をよく覚えていた大和は、その子供の子孫が目の前の士官だと分かって目を見開いた。

 そして“実際は違う”と否定出来ないでいた。

 

「頼むわよ大和、必ず坊ノ岬沖の次代の私達が守るから…」

 

 悩み蠢いている大和にカスミ達4人も懇願した。

 

「……否、坊ノ岬沖に行った駆逐艦の次代はもう1人いる…」

 

 頭のたん瘤を濡れタオルで押さえているカミカゼの言葉にカスミ達がキョトンとしたが、そのカミカゼが顎で五人目の駆逐艦を示し……当人は少し硬直していたが…

 

「…で、アンタもどうする?」

 

「……私も、今度こそ貴女を、守ってみせます」

 

「…っ!? 初霜(ハツシモ)!!」

 

…マスクと外套のフードを外して素顔を見せた駆逐艦が、坊ノ岬沖海戦で最後まで自分を守り帰らせようとした駆逐艦初霜と瓜二つの顔であり、初霜の次代であった事に大和だけでなく、カスミ達も驚いていた。

 只、此のハツシモは純粋さが感じられた先代と違って影を感じさせ(多分ガミラスとの絶望的日々でハツシモでさえそうなった)、ハツシモを見たアサシモがツバの悪そうな顔をした。

 更に言うと雪風、凉月、冬月の3人の次代達もいたら完璧なのだが、残念ながらユキカゼは木星沖海戦で戦没、スズツキとフユツキの姉妹はMIAとなっていた。

 

「…私からもお願いします。

大和さん、戦って下さい」

 

 最後にハツシモに頼まれた大和は、無言で立ち上がって自分の艤装に近寄って撫でていた。

 大和が自分の心の中で迷いや罪悪感を払拭しようとしているのを全員察して、誰もが大和を静かに見詰めていた。

 

「射出室動力回路、準備良し!」

 

「よし、スイッチオン!!」

 

「……ヌ級は月軌道を離脱して降下してきます!」

 

 動力が回復して戦況報告が再び飛び交いだした中、大和は目を強く瞑りながら主砲の砲身の1つを握った。

 

(…お願い……助けて…)

 

 そんな大和に不意に、寝そべった少女の光景がぼやけながらも一瞬映った後…

 

「…貴方、名前、何て言うの?」

 

「……古代です。

古代守二等宙尉です!」

 

「…今回……だけですよ」

 

「…?」

 

「……総員、戦闘配備!!!」

 

…士官こと古代守が大和の瞳の中に僅かな光が点ったような気がした後、カスミ達やカミカゼ達、駆逐艦娘1人1人に目線を合わせた大和が深く息を吸って大号令を発した。




 感想・御意見お待ちしています。

長門
「(前書きを見ている)お前は何やってんだ!!?」

 いや、“最後の希望”が予定していた文字数の三倍以上になっちゃったんです……はい…
 一つ言い訳するなら、宇宙戦艦ヤマトの二次小説って、軒並み尋常じゃない文字数なんですけど、此れ等を書いてたらギョッとする量になったんです。

陸奥
「じゃあ、此の作品、どんだけ文字数が必要になるのよ?
100話に達しても大マゼラン銀河にすら辿り着いていない最悪の事態が起きないわよね?」

 いや、それが、本当にその危険性が出てきそうなんでよね…

陸奥
「(公開予定の艦娘設定を見ている)あ~…此れ、本当に100話越えしそうね…」

長門
「下手に長引きさせそうな奴が三人もいるじゃないか!?」


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第7話 最後の希望(前編)

――― 呉 ―――

 

 

「……畜生…」

 

 ガミラス艦隊とキリシマやショウカク達の艦隊戦の結果はと言うと、ガミラスの勝利で終わろうとしていた。

 その証拠に、キリシマとナガラは艤装共々傷付き疲れはてて地上で踞って動けなくなり、ハツヅキと共に退避した姉ショウカクから指揮を引き継いだズイカク達空母艦隊は、傷付きながらも比較的軽傷なので艦隊行動は支障が無いのだがコスモファルコン隊が壊滅してしまって、上空の軽母ヌ級を睨んでいて、タマ達水雷戦隊とズイカク達と同じ様な状態で傷付いたショウカク達を治療しているチトセを守るように前方に展開していた。

 それに対してガミラスは、駆逐イ級2隻と駆逐ハ級の計3隻を失うも、無傷の軽母ヌ級が多分小破状態の駆逐ハ級共々艦載機隊を戻していた。

 そして軽母ヌ級と駆逐ハ級の2隻はゆっくり降下し始めた。

 

「アイツ等、呉にトドメをさす気ですね」

 

「ええ、危険なモノを徹底的に消すつもりよ」

 

 砲撃能力が付加されたと言え、基本的に艦載機による攻撃を主体とする軽母ヌ級が降下してきたと言う事は、ガミラスはキリシマやズイカク達を脅威と見なしていない事の表れであった。

 だがガミラス側の判断は正しく、現にキリシマとナガラは身動きが取れず、ズイカク達やタマ達は艦載機や空間魚雷(ミサイル)が尽きてしまって、全員が戦闘不能となっていた。

 で、そんなズイカク達を嘲笑うかの様に軽母ヌ級と駆逐ハ級の2隻は地貫通爆弾を複数投下、射出口近くに次々に着弾して派手な砂煙が上がった。

 此の爆撃に艦娘達だけでなく、呉の地下都市で逃げ惑う住民達が悲鳴を上げながら生き埋めになっていく光景が否応なく思い浮かび、ズイカクが弓矢を構えながら前進しようとした。

 

「ズイカクさん、早まらないで!」

 

 ズイカクがコスモファルコン隊共々特攻で軽母ヌ級を葬ろうとするのを察したショウホウがしがみついて止めた。

 

「離しなさい、ショウホウ!

呉が殺られるのを指を食わえて見ていろって言うの!?」

 

「落ち着いて下さい!

あれは表面を抉る程度のです!」

 

 だがそのショウホウでさえ最後の手段は特攻しかないと内心思っていて、迷いからズイカクを止める力が少しづつ弱まっていて、そんな2人にキリシマは一瞬だけ目線を向けた。

 で、奇妙な徹底振りを見せるガミラス艦隊に何かを誘きだそう……否、大和を狙っているのではと推測し、沖田の推測通りに大和には何かあるのではと思っていた。

 

「どうやら司令の推測は外れたみたいね。

帰りましょう、ヴェル」

 

 尤もそんな事など知る訳が無いレシーテリヌイはウラジオストクへ帰還しようとした。

 

「いや、そうとも言い切れないよ」

 

「どう言う事?」

 

 そんなレシーテリヌイをヴェールヌイが呼び止めた。

 

『…ズイカク!』

 

 で、そんな時に沖田の通信が入った。

 

『直ちに残った航空隊を全て発進させろ』

 

「全機発進!?」

 

「攻撃させたら一瞬で壊滅する可能性大ですよ?」

 

 沖田の指令にズイカクが戸惑い、ショウホウが疑問を感じた。

 

『否、防空は兎も角、攻撃はしなくていい』

 

「じゃあ、私達は何をすれば?」

 

『着弾観測だ』

 

 沖田のショウホウの質問への返しにショウホウとズイカクが疑問を感じ、唯一該当しそうなキリシマが戦闘不能である事をショウホウが言おうとしたが、その直前に埋まっていた射出口の扉が大量の土砂共々上空に吹っ飛び……射出口と思われる場所からハツシモもカミカゼが主砲を身構えて警戒しながら出てきたのに続いて、サツキ、ミカヅキ、ハタカゼの3人係りの牽引ビームで吊り上げられた大和が砂煙の中から出てきた。

 

「…大和……あの子達は、ナトリの処のだ…」

 

「遅かったじゃない…」

 

 大和の登場にナガラがカミカゼ達が妹の1人の配下である事を察しながら驚いている隣で、キリシマは苦笑していた。

 

「まさか、沖田提督の狙いはあの人?」

 

「何でアイツが今更出てくるのよ!?」

 

 更にショウホウが戸惑っている隣で、ズイカクは絶句し、先代瑞鶴を犬死にさせた大和にズイカクが嫌悪感全開の視線を向けていた。

 

「サツキ、取舵一杯」

 

「おう」

 

 で、当の大和はそんなズイカクに気付きもせずに、教導役のサツキに指示を出していた。

 更に言うと、そのズイカクは諭していたショウホウと共に予備のコスモファルコン隊を仏頂面で発艦させていた。

 

「艤装はなんとかなってます?」

 

「…元から壊滅している機銃と高角砲は駄目。

副砲は砲弾が無い。

主砲は3基共動かせて三式弾が装填できたけど、電探(レーダー)が完全に壊れている上に測距儀の調子がおかしい」

 

 元々坊ノ岬沖海戦の損傷がそのままの上に錆の塊となっている大和の艤装にミカヅキが不安になって訊ねるが、大和の返事に益々不安が増していた。

 

「そう言うのを、普通は絶望的って言いませんか?」

 

「そうかもね」

 

 更にハタカゼも指摘してきたが、当の大和は何処か他人事の様な返事をしなから艤装を確認していた。

 

「空間魚雷の準備、何時でもいいです!」

 

「…目標、軽母ヌ級。

主砲全門斉射用意!」

 

 ハツシモとカミカゼがガミラス艦隊の急接近に備えて身構えるのを確認した大和は直ちに射撃準備に入った。

 

『距離12万、上下角45度、待機速度秒速5千キロだが徐々に速度を落としている。

但し駆逐ハ級は先行し、若干加速』

 

『ハ級は無視、ヌ級を狙え』

 

「進路は?」

 

「2隻共に変化確認出来ず、真っ直ぐ下りてきている」

 

「だったら仰角9時から9時5分に設定!」

 

 ショウホウの観測報告に沖田の指令で大和は軽空母ヌ級に狙いを定めていたが、本来落下物への射撃は非常に難しいモノなのだが、幸いな事に軽母ヌ級は大和の存在と状態に戸惑っているらしく、駆逐ハ級を先行させた以外は速度を落として単純な動きをして隙を見せていて、狙うには絶好の好機であった。

 で、大和はショウホウだけでなく、カミカゼのオオヨドから拝借したレーダーでの測量下に3基の主砲を動かしていたが、背部の第三主砲に違和感を感じて後ろに振り向いた。

 

『第三砲塔、0.2秒遅れているぞ!

しっかりしろ、訓練通りにやればいい!』

 

「此の状態じゃあ、しょうがないでしょ!」

 

 沖田も大和の第三主砲の動きの遅さに気付いて、直ぐに注意が入った。

 

「サマール沖みたいな空振りは許されないの分かってる!?

此れ外したら、ただじゃすまないのよ!」

 

「言われなくても分かってるわよ!!」

 

 全弾外すと軽母ヌ級が射程圏外に逃げる危惧もあってカミカゼが怒鳴り、レイテ沖海戦で空母群を取り逃がした醜態を言われて大和が怒鳴り返した。

 だが、第一、第二主砲が準備を終えて軽母ヌ級の動きに合わせてゆっくり動いているのに反して、第三主砲は3本の砲身が上下バラバラに動いて中々揃わない為、大和に焦りが感じられた。

 

『間も無く距離11万、何やってんの!!?』

 

「急いで、ヌ級の手足が開いてる!」

 

 ズイカクの怒鳴りだけでなく、深海・軽母ヌ級と違ってガミラス・軽母ヌ級の下腹部には艦隊戦ではあまり役に立たない大型砲が搭載されていて、その軽母ヌ級の手足を広げる事が砲使用の合図であるので、実際にそれをやったのを確認したサツキからも危惧された。

 

「…くそ!!」

 

 軽空母ヌ級の下腹部が光り始めた直前、大和が第三主砲の砲身3本を揃え、射撃の準備は全て整った。

 

「みんな衝撃に備えて!……発射!!!」

 

 カミカゼ達が耳を塞いで身構えたのを素早く確認した大和は直ぐに軽母ヌ級目掛けて主砲を放った!

 此の発射反動で大和が少し後ろに吹き飛ばされて驚いていたが、9発の主砲弾は風や空気抵抗等で若干ぶれるも深海棲艦戦から二百年以上の年月を掛けた技術革新で砲弾自体に搭載された誘導装置が作動して修正が行われ、なにより射線自体が完璧であった以上、9発全弾が軽母ヌ級の下腹部に直撃、軽母ヌ級が痙攣するかの様に激しく震えると絶叫しながら爆散した。

 此の軽母ヌ級が爆沈した光景に、駆逐ハ級が少しの間硬直していたが、軽母ヌ級の仇を取ろうと大和目掛けて突進してきたが…

 

「逃がさない!!!」

 

「守ってみせます!!!」

 

…その事を予測していたカミカゼとハツシモが空間魚雷を発射……カミカゼのは駆逐ハ級に避けられたが、カミカゼのは囮であり、本命のハツシモの魚雷群が背後から回り込んで駆逐ハ級を追跡、駆逐ハ級が回避行動を取りながら主砲を放って迎撃しようとしたが外れ、此れ等も全本が命中して駆逐ハ級を爆沈させた。

 

「ヌ級、ハ級、撃沈!!!」

 

 カミカゼの大声での報告にチトセの治療を受けているのも含めた駆逐艦娘達が一斉に歓声を上げ、チトセとショウカクは驚いて硬直していた。

 

「凄いですよ、三式弾は!!!

ヌ級を一撃で沈めるなんて!」

 

「…いえ、こんな威力は有り得ない」

 

 更にナガラが興奮していたが、キリシマは能力値以上の効果を発揮した三式弾に驚きながら疑問を感じ、その原因と思われる大和を凝視していた。

 その大和は左右の第一、第二主砲を少し見た後、胸元に視線を落として胸部中央に手を当てていた。

 

「…あんなの、砲弾での攻撃が古すぎて対処法を忘れていたヌ級が油断していたからのまぐれよ」

 

「ズイカクさん、素直に誉めてやって下さい」

 

 興奮する周囲に反してズイカクが大和を認めようとせず、そんな彼女をショウホウがあやそうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何をやっている!!?

敵はまだいるぞ!』

 

「え?」

「え、っ!?」

 

…ズイカクがショウホウに何か反論しようとした直前、沖田が怒鳴って注意したら、頭上からの赤い光線がショウホウを貫き、そのまま彼女の背後で大爆発を起こした。

 

「ショウホウ!!?」

「ショウホウさぁーん!!!」

 

 吐血しながら後ろに崩れたショウホウを背後からテルヅキが抱えて彼女に呼び掛けていたが、少ししてテルヅキが絶叫した事でショウホウの安否は簡単に分かった。

 

「……何で?」

 

 ショウホウの事での現実への拒絶反応でズイカクが茫然としていたが、今度はチトセ達の近くで派手な爆発が起こった。

 更に言うと、タマ達もショウホウが殺られた事に気が行っていたらしくチトセ達がやられるのを第2射も含めて茫然と見ていた。

 

「…ショ、ショウカク姉ぇー!!!」

 

 誰がどう見ても、傷付いた艦娘達を狙った攻撃であるのは間違いないのだが、思考が停止しているズイカクは姉の安否を求めてショウカクのいるだろう場所を凝視するだけだった。

 更にキリシマもズイカクと同様にショウカク達の場所を茫然と見詰めていたが、コチラは理由が違って自分達を攻撃していたガミラス艦隊が5隻だった事であった。

 と言うのも、ガミラス(と深海棲艦)は基本的に6隻で1個艦隊を編制、偵察任務や艦隊を複数編制する時に稀に4隻の場合である事も含めて、基本的に現れる総数は“6か4の倍数”のどちらかなのだから、5隻との中途半端な数は普通に考えたらおかしかった。

 沖田はその事を疑問に思っていた様だが、キリシマは攻撃の混乱で“稀なケース”だと自然な内に判断を……それに対する否定要素として駆逐ハ級2隻が遅れて現れたのに、勝手にしてしまった自分への嫌悪感からであった。

 

「何をしているの、ズイカク!!!

戦いはまだ続いているのですよ!」

 

 でそんなズイカク(とキリシマ)にショウカクが怒鳴って正気に戻した。

 よく見たら煙の中でショウカクとチトセが大破しても無事だったのは、どうもシラユキ達4人が咄嗟に庇った為らしいが、そのチトセとショウカクの前方にフブキ級の誰かと思われる首と左腕がない遺体が横たわっていてフブキ級3人とシキナミの安否に不安を感じさせた。

 

「……そうだ……艦載機、艦載機を…」

 

「キリシマ、狙われているわよ!」

 

 ズイカクがコスモファルコン隊を探索に向かわせようとしたのとほぼ同時に赤い光線がキリシマを狙って飛んできたが、大和の怒鳴りに反応したナガラがキリシマの首根っこを掴んで引っ張ったお陰で、2人揃って吹き飛ばされたが直撃は免れていた。

 

「月軌道から何か降りてくるぞ!!」

 

 此の間にカミカゼが大気圏外の遥か上空の敵をレーダーで探り当てた。

 で、カミカゼの言う通りに頭上に注目していると、確かに何かが降りてきていたが、その何かが人型であった事に不安が湧きだしていた。

 直ぐにズイカクがコスモファルコン隊の一部を向かわせて……そこにいた者は…

 

「…っ! 戦艦、ル級!?」

 

「此処でル級ですって!!?」

 

…ガミラスの主力の一角である戦艦ル級をズイカクが悲鳴に近い形で報告し、キリシマが絶叫した。

 

「何でこんな所にル級がいるのよ!!?」

 

 ついでに言うと、レシーテリヌイも戦艦ル級の存在に仰愕して立ち上がった為にヴェールヌイに引きずり下ろされていた。

 厄介な事にガミラス・戦艦ル級は確認された個体数が極少数なのだが、此の10年間の戦いの中で追い散らす事は出来るも1隻も撃沈出来てない為、文字通りの絶望的存在と認知されていた。




 感想・御意見お待ちしています。

…先ずは一言、私にとって、祥凰は小型空母内では千歳と飛鷹と並んで、お気に入りです……はい…

祥凰
「幾らなんでも、此の扱いは酷い!!!」

 諦めなさい、貴女は“アニメ艦これ”での前科があったんだから…
 (芹沢の声で)悲しいけど、此れ、戦争物なのよね…

瑞凰
「だかと言って、また炎上するかもしれませんよ」

 その点は大丈夫だと思うよ。
 だって、前回の話にルパン三世が潜んでいる事を、だぁ~れも指摘してこないから、此の作品の読者層のタカはしれているよ。

龍凰
「……開き直っている…」


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第8話 最後の希望(前中編)

――― 呉 ―――

 

 

「……ル級、ですか…」

 

「ガミラス、やってくれる」

 

 カミカゼとズイカクによって戦艦ル級の出現が知らされ、ミカヅキが現実を否定しようとし、ハタカゼが苦虫を噛み締めていた。

 

「……悪辣な…」

 

 更にその戦艦ル級がショウホウやチトセが治療する傷付いた艦娘達へ砲撃している光景にカミカゼが嫌悪感を出していたが、此れは自分達への脅威になりえる存在を潰せる時に潰している戦艦ル級の行為が利に叶っていると認めている事の表れでもあった。

 

「……妙ですね…」

 

 だがハツシモは戦艦ル級の行為に疑問を感じていた。

 

「どうしたの?」

 

「深海・ル級は兎も角、ガミラス・ル級は良いも悪くも猪突猛進傾向が強いので、あんな冷静な判断が出来るとはとても思えないんです」

 

 ハツシモの返事に、訊ねたサツキ本人(と他の3人)はあまり前線に出ていない事から戦艦ル級が見た事がない為、「そうなんだ」と言うしかなかった。

 だがガミラスとの10年間の戦いに於いて、その超攻撃的な性分から防衛艦隊に度々壊滅的打撃を与えているが、此の反動で旗艦を務める空母ヲ級や重巡リ級以下の言う事を聞かない(特に後者)、簡単に挑発に乗って全軍の崩壊を招く等の暴走行為を起こす欠点があった。

 此の欠点をガミラス側も認知しているのか、太陽系制圧艦隊に戦艦ル級は極少数で、艦隊に組み込まれているのは専ら重巡リ級であった。

 蛇足ながら、此の性分からガミラス・戦艦ル級は、とあるドイツの提督に因んで“ビッテン・ル級”や“黒色槍水兵(シュワルツ・ライツェンシーメェン)”と一部の人間から変な渾名を戴いていた。

 で、話を戻して、戦艦ル級は今度はタマ達水雷戦隊を狙おうとしていたが、威嚇か牽制狙いで大和が第一主砲を発射……3発の内の2発は避けられ、直撃しそうだった最後の1発は右手で受け止めて脇に投げ捨てた為、大和は歯軋りをして艦娘達をギョッとさせた。

 

「大和、アンタはル級が現れるのを予期していたのか?」

 

「……いくらヌ級に砲撃能力と言え、決定力が不測していると思いましたから。

尤もル級が出てくるとまでは…思ってませんでしたが…」

 

「だとしたら、ル級が出てきた事は本懐じゃな……って大和!?」

 

「どうしたんですか、大和さん!?」

 

 カミカゼへの返事で大和が彼女を驚かせ、サツキが茶化そうとでもしたが、その大和が胸を押さえて屈んで動悸を酷くしていた事に他の者達共々驚き戸惑っていた。

 しかも大和だけでなく、彼女の艤装も異様な熱を帯びていて……何らかの艤装の影響を大和自身が受けているのは間違いなさそうだった。

 

「…チトセ、チトセ!!

チトセを呼ぶんだ!」

 

 当然、戦艦ル級への対抗手段である大和に異常が出ているのでカミカゼがチトセを呼ぼうとしていたが、当の大和が“自分で抑えられる”と手を翳して止めた。

 当然、カミカゼが怪訝な顔をした通り、何時戦艦ル級が狙うかもしれない危険性があったが、幸いな事にその戦艦ル級は逃げ回っているタマ達やズイカク達を狙い続けていた。

 此の間に大和が落ち着いて立ち上がった後、タマ達が派手に吹き飛ばされてズイカクが被弾して中破、戦艦ル級はタマ達やズイカクから驚異性が失われたと判断したのか、大和達の所へと向かって降りてきていた。

 

「…っ! 青いル級!?」

 

 そしてある程度降下した戦艦ル級を確認したら、ハツシモの疑問を決定的にしているかの様に戦艦ル級が青く光輝いていた。

 前にも書いたが、ガミラスは過去に殲滅した深海棲艦とは外見が似ているだけでなく、基本性能以外は殆ど同じであり、更に形態も同様であった。

 最初は1番弱い(と言っても艦娘は散々な目にあっているが…)無発光体、次に赤く発光する“elite(エリート)”、更に次に黄色く発光する“flagship(フラッグシップ)(此の場合、意味は“旗艦”ではなく“高性能機”か“ハイエンド機”)”、そして深海棲艦には確認されるもガミラスでは未確認の白と黄色の2色発光の“改flagship(通称:改フラ)”の4個形態なのだが、青く発光する個体はガミラスも深海棲艦双方で未確認であった。

 

「大和、いけますか?」

 

「ええ、もう1斉射くらいなら、なんとかなります」

 

 汗だくの大和を案じたミカヅキが声を掛けたが、当の大和は戦う気満々を主砲を動かして示した。

 

「…っ? 敵ル級、高度1万7千!!

大和、アンタの主砲じゃあ、届かないわよ!」

 

 だが、そんな大和の期待を裏切るかの様に戦艦ル級は上昇して大和の射程圏外で止まっていた。

 

「まさか、あのル級はヌ級をダシにして、大和さんの射程距離を推測したんじゃ!?」

 

「そんな事はいいから!!

サツキ、あと2千上がれないの!?」

 

「やれる事はないけど…」

 

「…っ!! 撃ってきた!」

 

 戦艦ル級の位置にハツシモが愕然としたのを大和が怒鳴って、更にサツキ達に上昇を求めていたが、サツキが答える前に戦艦ル級が大和目掛けて撃ってきた。

 だが此れは事前に気付いたカミカゼの報告に反応したハタカゼが、無意識の内に牽引ビームを解除した為に大和がサツキとミカヅキと共に僅かに落ちたお陰で、大和自身への直撃は免れるも、第一主砲には直撃して根元から消失して背後の大地で大爆発が起こっていた。

 更に第三主砲も巻き添えを喰らったらしく、砲身が3本全てが上半分が無くなっていた。

 

「……大和さんの主砲が…」

 

 大和の消えた主砲を見詰めながらカミカゼ達五人が改めて戦艦ル級の驚異を認知して硬直していた。

 

「……此れ、16インチ(inch)(40cm)砲の火力じゃない…」

 

 だが元々戦艦ル級を叩きのめす為に生み出された大和は、いくら錆びていると言え、戦艦ル級の40cm砲に耐えられるように作られていたのに一撃で消滅した事に驚かされていた。

 

「…32インチ(80cm)砲……いえ、それ以上の火力がある。

此れが2百年以上の技術革新の力か」

 

 嘗て教えられた深海・ル級の2倍以上の火力を持つガミラス・ル級(若干不明要素があるが…)から、自分がいるのが2百年以上後の未来にいる事を噛み締めていた。

 だが、そんな絶望的な開きがあるを自覚しているのに、怯えたりするのとは真逆で自分でも分からない高揚感から笑っていて、その為にサツキ達3人が引いていた。

 

「また撃ってきた!」

 

 だがこんなんで戦艦ル級が攻撃を止める訳がなく、また大和目掛けて撃ってきたが、今度はサツキ達3人が身構えていた為に完全に回避して、そのまま的にならない様に全速力での之字運動を開始した。

 

「ハタカゼ、なんとか上昇させる事は出来ないの!?」

 

「やれば出来ると思いますが、やったら失速しますよ」

 

「兎に角、やるのよ!」

 

 カミカゼが妹のハタカゼに上昇出来るかどうかを尋ね、ハタカゼが難色を示したのにやらせようとしたが、近くに戦艦ル級の砲撃が落ちた為に歯軋りをした。

 

「もういい!!

サツキ、そのまま横須賀まで逃げなさい!」

 

「でも、逃げたら呉がやみんなが!!」

 

「いいから逃げなさい!」

 

 此の状況からキリシマが逃げるように指示を出し、サツキが嫌がるも他共々代案を出せないでいた。

 

「…っ!? 第二主砲が」

 

 現に戦艦ル級の砲撃の衝撃で飛んできた岩石が大和の第二主砲にぶつかり、岩石は砕けはしたが第二主砲の根元(ターレット)が変形したらしく、旋回出来なくなり…

 

「サツキ、貴女左目を!?」

 

「大丈夫だよ、ミカヅキ!!

瞼の上を切っただけだ!」

 

…大和のより小さい岩石でサツキが左目の上を切って派手に出血した為に左目が塞がってしまい、制服(セーラー服)のスカーフで傷を押さえた通り、状況は益々悪くなっていた。

 だが、そんな時にハツシモの視線に座り込んでいるズイカクが入り……自分達が地下から出てくる直前までに彼女がやろうとしていた行為が頭に浮かんだ。

 そしてカミカゼも同様に思ったのか2人揃ってお互いの目線を合わせていた。

 

「…今から……私とハツシモで、ル級に突っ込もう」

 

「その間に、サツキ達は大和さんを上昇させてあげて」

 

「それじゃ、姉さんやハツシモはどうするんですか!?」

 

「特攻するんじゃないですよね?」

 

「そんなの駄目だ!!」

 

 特攻を行おうとしているカミカゼとハツシモにハタカゼが質問するも、2人が黙った為にミカヅキとサツキも気付いて、なんとか止めようとした。

 

「じゃあ、どうすんのよ!!?

此の距離と高度じゃあ、大和の砲弾は届かない上、私とハツシモの空間魚雷が迎撃される公算大なのよ!」

 

 だが、此れ以外にはキリシマが言う“逃げる”か“他の手段で戦う”しか選択肢はないのだが、前者は全員嫌がっていて、後者に当たりそうな事が全く思い浮かばないでいた。

 だがこのままではいずれは何発も飛んでくるル級の砲撃に大和が直撃する可能性が高まり、況してやその大和を吊り上げているサツキ達三人が疲れ果ててしまったら益々最悪に近付いてしまう事になる。

 何も策が思い浮かばない大和の顔から“諦め”が出ていたが…

 

(大丈夫、貴女なら出来ます)

 

「…っ、誰!!?」

 

「大和さん、何を言ってるのです?」

 

…突然且つ何処からともなく聞こえた何者かの囁きに大和が思わず怒鳴ったが、ハタカゼに見られる様に他の者達には聞こえていない様だった。

 

「何所にいるのよ!?」

 

(大和には此れを乗り越える力を持っています)

 

「答えなさい!!

貴女が私を甦らせたの!!?」

 

 大和はハタカゼ達を無視して声の主を探していたが、そんな彼女の視線の彼方で何かを見つけた。

 

「サツキ、右20度、降下角5度に回頭!!!」

 

「え!?」

 

「何言ってるのですか!?」

 

 突然の大和の指令にサツキが驚き、それをやったら旋回しない第二主砲の射角から外れるだけでなく、高度が落ちて戦艦ル級に近付いてしまう危険性がある為にハツシモが反対した。

 

『サツキ、大和の言う通りにしろ!!』

 

「で、でも!」

 

『命令が聞こえんのか!!?』

 

「りょ、了解!!」

 

 沖田も大和の狙いに気付いて、サツキ達に強硬させた。

 

「アンタ達、何やってんの!?」

 

「沖田提督の命令です!」

 

 大和達の行動にキリシマが口出ししたが、ミカヅキの返事にギョッとしていたが、遠すぎて顔が見えない戦艦ル級の笑みが見えたと思ったら、回頭中の大和目掛けて撃ってきた。

 

「「「…っ!?」」」

「え、ちょっ!!」

「何やって!!」

 

 だが、大和は突然艤装を外すと回頭の勢いを利用して飛び下りた為に砲撃は外れてしまった。

 此の大和の行為にル級だけでなくハツシモ達5人までが驚いていたが、茫然としている5人と違って戦艦ル級は直ぐに地上を走っている大和目掛けて撃とうとしていた。

 

「…っ!」

 

 だが、丹陽が無効覚悟で戦艦ル級目掛けて主砲と魚雷を放ち……無傷だったが主砲に被弾し、更に遅れて飛んで来る魚雷群に戦艦ル級の気が向いた為、主砲の射角が外れて大和の真後ろで大爆発が起こって、大和が吹き飛ばされた。

 そして此れが“怪我の功名”となって、吹き飛ばされた大和が転がりながら目的の場所に着いて何かを拾った。

 

「…っ!? 私の主砲!!?」

 

 大和が座りながら起きて、動作確認をした後に構えた物が、軽母ヌ級によって切り落とされた自分の第三主砲であるのが分かったキリシマは驚いていた。

 

「そうか、アレなら届く!」

 

 大和の狙いにナガラは納得していたが…

 

「止めて、大和!!!

それは貴女では扱えない!」

 

…キリシマは大声で叫んで止めさせようとした。

 当たり前の話、ガミラスには無力であると言え、先代霧島の同じ口径且つほぼ同型だが、威力反動は2倍以上があるのだから、なにも改装を受けていない大和がキリシマの主砲である衝撃砲(ショックカノン)を扱えば唯ではすまない。

 深海棲艦戦時で言うならば、駆逐艦娘が50cm連装砲を扱う様な事であり、最悪……と言うより高い確率で発射反動で大和が死ぬ事が目に見えていた。

 

「止めてぇー!!!」

 

 キリシマの制止も空しく、大和は戦艦ル級とほぼ同時に主砲を発射、発射と同時に衝撃砲が爆発して後ろに吹き飛ばされてしまった。

 此のお陰で戦艦ル級の砲撃は外れたのだが、大和は倒れて動かないでいたが、キリシマや他の者達は大和の安否より、大和が放った衝撃砲に目がいっていた。

 何故なら、大和の衝撃砲はキリシマのモノより遥かに太い緑色の光線となって飛んでいき……2条の光線は途中で乱れたかと思われたが、そのまま螺旋を描いて1条の光の矢……と言うより光の槍となって束なり、戦艦ル級の盾型の武装に直撃して戦艦ル級の右腕諸共消し飛ばした。

 少しした後に戦艦ル級は絶叫……否、何故か戦艦ル級が笑みを浮かべていたので狂喜と思われる咆哮をしながら大爆発を起こして消滅した。

 

「やったぁー!!!」

 

「凄い、1発だニャ!!!」

 

 キリシマ達は暫く戦艦ル級の爆煙を茫然と見ていたが、大和が頭を振りながら起き上がった事もあってサツキ達やタマ達が歓声を上げた。

 

「……ル級が、唯の一撃で…」

 

 ガミラス・戦艦ル級の初撃沈が大和に手によって、しかも一撃でやった事にショウカクが逆に恐怖心に似た何かを含めて愕然としていた。

 そしてキリシマもショウカクとほぽ同じなようで、大和が扱って壊れた自分の主砲を拾い上げて確認していた。

 

「……此れは、高出力に耐えきれずに爆発したみたいね…」

 

 自分では駆逐艦すら撃沈出来なかったのに、大和だと撃沈不可能と思われていた戦艦ル級を撃沈する威力を発揮し、しかも主砲の方が大和に耐えきれなかった事からキリシマはハツシモに介抱されている大和を凝視していた。

 更にサツキ達3人が下ろした大和の艤装に目線を向けた。

 

「…いくら戦艦娘と言え、2百年以上前の艦娘が……現代の兵器を扱える処か、現代の兵器を限界以上に扱った!?」

 

 三式弾の計画値以上の破壊力だけでなく、衝撃砲が壊れる程の威力を発揮させた大和に何かが起きた、そう確信したキリシマは再び大和を見詰めた。

 

「…あの人に、現代技術での近代化改装を行ったら、一体どんな事になるのよ!?」

 

 大和の潜在力にキリシマは喜びや期待感ではなく、逆の恐怖心を改めて感じていた。

 

「……見事な、レディね…」

 

「さて、戦いも終わった上に得るべきモノも得たから、ウラジオストクに帰るか」

 

「え、ちょっと!!?」

 

 レシーテリヌイが大和に見惚れていたが、そんな姉をほっておいてヴェールヌイが静かに立ち上がって帰ろうとした為、レシーテリヌイが慌てていた。

 

「…大和か……確かにガミラスが狙う通り、実に面白い戦艦だよ」

 

「ヴェル、置いてかないで!!

たまには姉を持ち上げてよ!」

 

「姉? 誰が?」

 

 ヴェールヌイを追い掛けたレシーテリヌイだが、姉の威厳が全く無いだけでなく、そのヴェールヌイの言葉に頬を膨らませて怒っている辺り、彼女が自称するレディには程遠かった。

 

「…ま、私もレフィと同じで大和に見惚れたのかな?

此れには先代ヴェールヌイだった駆逐艦響の坊ノ岬沖海戦に参加出来なかった事からの無念も関係しているのかもな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、カミカゼ、ナトリはどうしたの?」

 

「……あ!!!」

 

「そう言えば、ナトリさんは!!?」

 

 ナガラがハタカゼと何か会話していたカミカゼに近寄って妹の所在を尋ねた事で、カミカゼや他の4人も、自分達の旗艦にも関わらずにナトリの存在を忘れていた事に気付いた。

 

「……ふえぇぇ~…」

 

 で、そのナトリはと言うと、ガミラスに気付かれなかった事が幸い(?)して、此の戦いの間ずぅぅぅーーっと、豊後水道のど真ん中にて、回収した貨物船の舳先の上で体育座りをしていて、暫くした後にカミカゼとハタカゼを従えた長姉のナガラ達3人に無事に保護されたそうな…




 感想・ご意見御待ちしています。

 今回の投稿に合わせて“設定 ガミラス”の新バージョンを投稿します。
 主な変更点は以下の通りで、古い方は次回投稿と同時に削除しますのでご了承下さい。
・通常型の前書きに発光体を追加。
・駆逐二級の捕捉を若干修正。
・駆逐ナ級を追加。
・空母棲姫の追加に合わせて、空母棲鬼の設定を一部変更。
・駆逐棲鬼、駆逐古姫、軽巡棲姫を追加。
・航戦棲姫を削除して、代わりに空母龍姫を追加。
・何処かで見た事があるコードネーム付きの未確認艦を大量導入。


名取
「ふえぇぇ~…」

五十鈴
「よしよし…」(抱き付いて泣いている名取を慰めている)

長良
「ねぇ、此の作品って、なんか長良級の扱いが酷くないですか!?」

鬼怒
「そうだ、そうだ!
五十鈴も落盤で死にかけたし、マジパナいんだけど!」

 だって、軽巡の中で長良級がなんか扱い易かったんだもん。

由良
「だからと言って、此の不遇度合いはおかしいですよ!」

 でも、艦これ作品(特に戦記物)では長良級が出ていないのが殆どだよ。
 天龍級は圧倒的人気だし、球磨級は存在自体がギャグだし、川内級はアイドル級、阿賀野級は最新鋭、任務娘の大淀は言うに及ばずだから、長良級はせめて“悪名は無名に勝る”にしたいなぁ~…、って思ったので…

五十鈴
「でも、やっぱり此れは酷い!」

 ファンには悪いですけど、此の作品では長良級は諦めて下さい。
 活躍する長良級のは、他の作品で……何かあった?

長良&五十鈴&由良&鬼怒
「「「「うおぉぁい!!!」」」」

…あ、そうだ、そうだ。
 ほぼ最近ので遥士伸著の“鈍色の艨艟”で名取が活躍していました!

長良
「それ、ガチの仮想戦記じゃない!」

…後、他には……何かあったっけ?

長良&五十鈴&由良&鬼怒
「「「「うおぉぁい!!!」」」」

天龍
(なんか楽しそうだな)
球磨
(なんか楽しそうだクマ)
川内
(なんか楽しそう)
阿賀野
(なんだか楽しそうね)
大淀
(なんだか楽しそうですね)






























阿武隈
「………」(レギュラーの予定なので出づらい)


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第9話 最後の希望(中編)

 今回の投稿に合わせて“設定 ガミラス”の古い方を削除しました。

 また、新しい方でも、サブタイから“V.2”を外し、誤字の修正、そして幾つか付け足しをしましたが此れはどうやったのか忘れちゃいました(オイ!)

 それでは本編をどうぞ。


――― 防衛司令部 ―――

 

 

「ル級、撃沈!!!

ガミラス艦隊、全滅!!!」

 

「呉は守られたぞ!!!」

 

「勝った!!!

勝ったぞ!!!」

 

 大和が軽空母ヌ級に続けて戦艦ル級を撃破した後、呉の現場では駆逐艦娘達が歓声を上げていたが、此所防衛司令部は現場以上に歓喜の嵐が吹き荒れていた。

 更に防衛司令部の将兵達を経由して地下都市の人々にも伝わったらしく、既に日付も変わった真夜中にも関わらずに地下都市全体でちょっとした御祭り騒ぎが起こっていた。

 

「……まさか、ル級までもを沈めるとはな…」

 

 藤堂も大和の勝利、特に撃沈不可能と思われていた戦艦ル級を一撃で沈めた事に驚きと喜びが入り交じった表情を沖田に向けたが、当の沖田は「当たり前だ」と言わんばかりに無表情で頷くだけであった。

 まぁ、冷静に考えたら、此れはあくまで一局地での戦術レベルの小さな勝利でしかなく、ガミラスとの戦いに戦略レベルの影響を与えるとはとても思えなかった。

 だが、此の勝利が小さいとは言え、希望となって絶望の縁にいた人々に光を与えたのは確かであり、なによりもその事を求めていた沖田はその表れとして右手を藤堂に差し出し、藤堂もそれに答えて右手を差し出して固い握手が行われた。

 

「…それで、呉の被害状況はどうなんだ?」

 

「……陸上部隊や砲塁が壊滅的打撃を被っています」

 

「ですが、地下都市で崩落したのは艦娘の詰所だけらしく、それ以外の場所では天井のひび割れが多数出来たものの、此れと言った損害や死傷者は出ていない模様です」

 

「その艦娘詰所ですが、ハマカゼの報告で何人かが生き埋めになっているも、生存の可能性がかなりあるらしく救助要請が出されています」

 

「工厰や脱出船の全てが無事だとの報告も入ってます」

 

 芹沢の質問へのオペレーター達が次々に報告し、それ等に芹沢だけでなく、藤堂と沖田も満足そうに頷いた。

 だが、藤堂と沖田は住民や艦娘達の生存の事で、芹沢は地下都市や工厰に建造中の脱出船群の事でと、喜んでいる点が全く違っていた。

 

「芹沢、直ちに艦娘詰所への救助隊を派遣、海防艦娘や後方支援の駆逐艦娘達も投入しても構わんから動ける者は徹底的に動員しろ」

 

 現に藤堂の救助命令に対して芹沢は“忘れていた”とも思われる変な返事をして部下達に命令を飛ばしていた。

 まぁ、それでもちゃんと的確に指令を出し続けている事は流石の一言であったが、それ等が一段落したら芹沢は藤堂と沖田の所に近寄ってきた。

 

「今回の勝利、おめでとうございます。

見事な指揮振りでありました。

特に大和の投入は見事な采配でありました」

 

 で、藤堂に一礼しながら勝利の祝いの言葉を言ったが、大和投入処か戦闘指揮を取っていたのは沖田なのに、その沖田は完全に無視していた。

 尤も、こう言う事は毎度毎度あるのか、沖田は自己主張等をせずに無反応のまま黙っていたし、藤堂も軽く返すだけであった。

 

「それで、大和の事なんだが…」

 

「分かっております。

大和の現役復帰の為への近代化改装の諸々の準備、それからの防衛艦隊への編入は自分にお任せ下さい」

 

「あ、ああ…」

 

 元々、芹沢や彼が属する派閥の者達は大和には不信感しかなかったのに、その大和が軽空母ヌ級と戦艦ル級を撃破した事からの見事なまでの掌返しに、藤堂だけでなく沖田までが呆れていた。

 

「それでは早速、大和の改装の件で政府への説明と予算案をしてきます」

 

「あ、いや、大和の改装の件を含めて政府へは私からしておく、君は戦力の再編に取り掛かってくれ」

 

 藤堂に「は!!」と大声で敬礼すると、直属の部下達を従えて退室していった。

 

「…芹沢達に……大和を託す事は出来ん」

 

 沖田の呟きに藤堂は「ああ」と言いながら頷いた。

 

「だがどうするんだ?

大和が呉預かりの事もあるから、艦隊編入となると呉所属になるだろう。

今回の一件で土方君が呉基地司令長官から更迭されるのは確実で、後任は間違いなく芹沢達の派閥の者だろう」

 

 芹沢達は大和に艦隊特攻(天一号作戦)を再びやらせようとしているのは確かであった。

 況してや大和はその強大な力を秘めているだけでなく、ガミラスに目を付けられている事から格好の撒き餌になりえると考えられていた。

 だからこそ、大和は防衛艦隊編入を嫌がり、防衛軍司令部を嫌っていたのだ。

 故にもしそうなったら大和は……否、大和だけでなく艦娘達や地球人類は今度こそ完全に絶望の深淵に沈んでしまう、2人はそう思っていた。

 だが此の絶望的戦況下では、艦娘を全員動員しての艦隊特攻からの人類の地球脱出しか選択肢は無い、それが防衛軍の殆どの者達が思っている事であった。

 そして政府も脱出船の搭乗員選抜の最終段階に入っている上、死滅した動植物の遺伝子サンプルの準備が出来上がったとの噂があった。

 なにより地球脱出をガミラスが見逃す筈がなく、間違いなくガミラスは艦隊特攻を迎撃しながら脱出船団を捕捉撃滅出来る二面作戦分の戦力を有していて、殲滅される危険性が極めて大きい。

 例えガミラスを振り切って太陽系を離脱出来たとしても、過酷な宇宙環境を無限とも思われる超長期間を耐えなくてはいけない上に第二の地球を見つけてから辿り着けるととても思えない、要約すれば脱出者達も“特攻させられる者達”や“地球に取り残される者達”と同様かそれ以上の絶望を与えるだろうと脱出計画自体が荒すぎていた。

 だが政府や防衛司令部の大半は絶望的戦況から希望的観測にしがみついており、それを察しているからこそ地球上の全ての者達が本当の希望を見いだせないでいた。

 地球は放射能と言う物理的なモノだけでなく、内面から“死”の単語が蔓延っている、だからこそ人々は防衛軍や政府の暴走に近い事をしでかそうとしているのに誰も止めようと訴えない、酒や食料を貪って現実から目を背けて夢の中に居続けようとする、そんな絶望的な日々や未来に耐えきれず総玉砕や破滅論を唱え同意する者達が大多数を占める、そんな事に反対は思えど代案や解決策を見出だせず自殺する者達が相次ぐ、そんな極限の地獄と化しているのが今の地球であった。

 

「だからこそ、大和にあの計画をやって貰いたいのです」

 

 だが大多数を占めている脱出計画をひっくり返えし、更には全ての者達に希望を与える秘策を沖田は持っていたが、沖田を信頼している藤堂でさえ博打的要素が大きすぎる危険なモノであった。

 間違いなく、藤堂以外の人間なら完全に却下するだろうし、藤堂本人も容認との割合は却下の方が多かったが、此の時の空気と此の沖田の言葉が決め手となり、藤堂は決断を下し、沖田に頷いた。

 

「…キサラギを此所に呼んでくれ!!」

 

 その手始めとして自分の秘書艦である駆逐艦キサラギを呼び出した。

 尚、艦娘達の指揮を取る事となる士官には初期艦と言う形で駆逐艦娘の何人かの候補の中から誰か1人を選んで配備される事をとなる。

 つまり藤堂が呼んだキサラギは、若き日の藤堂自身が初期艦として選んだ艦娘あり、現在まで続く長い付き合いとなっていた。

 まぁ、人によっては配置転換とかの形で初期艦を手離す者もそれなりにいるが、大抵の場合は愛着から傍に置き続けていた。

 まぁ、上級士官となれば戦艦や空母に巡洋艦の3種どちらかの艦娘に秘書艦を引き継がせるモノなのだが、藤堂の様に駆逐艦を……それも初期艦に秘書艦を未だに任せている事は極稀なケースであるが、キサラギはムツキ級駆逐艦……旧式と認知されて全員がサツキやミカヅキの様に後方に就いている為、秘書艦には打ってつけの存在であり、キサラギ自身も防衛艦隊が形骸化しかけている事があれど“防衛艦隊司令長官の秘書艦”と言う重職を務め上げられる器量を持っていた。

 因みに沖田が初期艦として選んだのは、フブキ級駆逐艦ムラクモで、藤堂&キサラギと同様に転属させる事なくの長い付き合いをしていたが、残念ながらムラクモはガミラスとの戦いでMIAに認定されていた。

 で、話を戻して、此の時のキサラギはサツキとミカヅキの妹2人と何かのやり取りを通信でしていたが、呼び出しがあると直ぐに藤堂の所にやって来て敬礼した。

 そして、キサラギ自慢の長く美しい黒髪の主に相応しく、その敬礼の一挙一足が美しかった。

 

「藤堂司令長官、お呼びと聞き、キサラギ参りました」

 

「すまんが、大至急記者会見の用意をしてくれ」

 

「記者会見ですか?」

 

「そうだ、地球中……いや、太陽系にいる全ての地球の者達に伝える事がある」

 

「しかし、こんな夜中にしなくても…」

 

「大至急発表したいんだ!」

 

「……分かりました」

 

 長い付き合いもあって、キサラギは藤堂にそれ以上は何も言わずに敬礼しながら了承してくれた。

 

「…あ、それと、キリシマを此所に来るように伝えてくれ」

 

「了解しました」

 

 直ぐ様、準備に掛かろうとしたキサラギを呼び止めてキリシマの召喚を求めた沖田にも了承して、改めてキサラギは準備をしにいった。

 

「此の事は土方君と山南君にも話すがいいか?」

 

「ああ、あの2人なら信頼出来る」

 

「それでは私は政府に会ってくる」

 

 全ては地球人類の為、藤堂と沖田は別れていった。




 感想・御意見お待ちしています。

 今回、元々初期艦の設定は無かったのですが、読者の俊泊さんから出演要望があった内の一人であるムラクモ(叢雲)を出す影響で設定しました。
 更に言うと、土方の初期艦は駆逐艦シグレ、山南修の初期艦は駆逐艦フブキ(かサザナミ)としています。


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第10話 最後の希望(後中編)

――― 呉 ―――

 

 

「此の下にいます!」

 

「ジャッキだ!!

ジャッキを持ってこい!」

 

「此の先にも一室あるぞ!」

 

「熱反応がある!

生存者がいるぞ!」

 

「爆薬はいい、削岩機をもっと持ってきてくれ!」

 

「酸素チューブをもっと伸ばしてくれ!

衛生兵はまだか!?」

 

「今だ!!

引っ張り出せ!」

 

 現在の呉の地下都市では崩落した詰所からの艦娘達の救助作業が、ハマカゼとアサシオの2人を先導として慌ただしく行われていた。

 

「もっとコンクリートを持ってこい!

構わんから、ミキサー車ごとでだ!」

 

「ミサイル車は向こうに止めてくれ!

高射砲はそっちだ!」

 

「ブルドーザーとスチームローラーはもっと増やせないのか!?

ぼやぼやしていると、次の航空便が来るぞ!」

 

「チトセさん、此方に来て下さい!」

 

 更に地上では大量の照明群を頼りに、主体となっているガミラスの再襲来へ備えての防御陣営の再編、地上から計器を使っての救助隊への援護、怪我人の治療、重傷者の横須賀か佐世保等への航空移送の為の飛行場代わりの平地作りが急ピッチで行われていた。

 で、ガミラス艦隊殲滅の最功労者となった大和はと言うと、チトセの簡易診断で取り敢えずは異常無しと診断された後、最終便での横須賀への移動が行われるまで手持ち沙汰だったので、防護テントの中で大破状態から更に壊れた自分の艤装に凭れて座りながら、自分の職務をやり遂げようとしてる外の者達を“ぬ~ぼ~”と見詰めていた。

 因みに他の艦娘達はと言うと、現在も治療で駆け回っているチトセの診断で、キリシマやショウカク達等の重傷と判断された者達は別の所にある医療テントで大人しくし、軽症と診断されたズイカク(出る直前に大和に凄い仏頂面をしていた)やハツシモ等の者達は応急処置を施された後に哨戒任務に出ていた。

 

「随分と暇そうね」

 

「…チトセ」

 

 で、そんな大和が1人いる防護テントに、汚れた白衣を着たチトセが水筒を片手に入ってきた。

 

「深海棲艦戦で暇な事には慣れています」

 

「あんまり慣れて欲しくないモノね。

だけど、あの時と違って軽蔑の視線は感じなくなったでしょ?」

 

 チトセが言う通り、確かに軽母ヌ級と戦艦ル級を撃破した事での呉防衛成功で、少なくとも此の場には大和を軽蔑の目線で見る者はいなくなり、現に大和と視線が合った者達は彼女に一礼か敬礼していた。

 で、チトセは水筒の蓋を開けて飲もうとした。

 

「いいんですか?

こんな放射能まみれな場所で飲んで」

 

「良いの。

ちゃんと除染はしたし、私にしてみれば此れは万能薬の一種みたいなのだから」

 

「………」

 

「…あ、新発見!

時間が経つと味が良くなってる」

 

 一口飲んだチトセは嬉々として、自分を怪訝な目で見ている大和に水筒を突き出し、何か嫌な予感を感じていた大和は一間置いて受け取った。

 水筒の飲み口を少しの間だけ凝視した後、意を決して口を付けた大和は、一口飲んだ直後に胴体にアッパーを食らったかの様な吐き気を感じた後、暫く噎せていた。

 

「あっちゃ~…口に合わなかったか…」

 

「…何ですか、此れ!?」

 

 そう言う大和だが、飲んだのが酒だとは分かったのだが、明らかに度数が高過ぎる上に独特な味に違和感を感じていた。

 

「私特性の人工酒。

いつの間にかにみんなから“チトセカクテル”って呼ばれてるわよ」

 

「そう言うんじゃなくて!

明らかに度数と味がおかしいですよ!」

 

 チトセの先代である空母千歳は空母隼鷹と、連合艦隊で双璧を成す大酒飲み(実はもう1人・潜酔艦ことイヨ(伊14)がいたが、大和は彼女を知らない)だったが、どうやらチトセも先代と同様に飲兵衛の様だった。

 

「知りたい?

確か、今回主体にしたのは……え~と、医療用アルコールの…」

 

「もういいです」

 

 “医療用アルコール”の単語が出た時点でとんでもない代物だと分かった大和は、不満そうなチトセを無視して遮った。

 因みに先代千歳の元は水上機母艦であったが、此のチトセの元は病院船であった為、先代と違って医療知識を持っていたので艦娘達の治療(更に巡洋艦ユウバリのMIA認定後、艤装の修理機能と知識が追加)が出来るのだが、此の反動でか医療用アルコールで人工酒を作るタチの悪い飲兵衛になってしまった様だった。

 現に偶々テントの前を過ぎようとしたアマツカゼと連装砲君が、大和がチトセカクテルを飲んだのを察して“お気の毒”と揃って合掌しながら一礼していた。

 

「自分で言うのもなんだけど、まだチトセカクテルはましだよ思うわよ。

ジュンヨウの本醸造『隼鷹』は、安い日本酒を工業用アルコールで希釈するとんでもない物よ」

 

 最後の部分の日本語がおかしかった様な気がしたが、隼鷹なら工業用アルコールを直飲みしてそうだったので、そんな彼女の次代ならそれくらいしそうだと違和感は感じなかった。

 

「来たんだったら、此れを直してくれませんか?」

 

「あ~駄目駄目、此処まで壊されていたら私じゃ直せない。

そう言うのはアケシが帰ってきてから頼んで」

 

 半分冗談で言ったチトセだが“噂をすれば影”“口は災いの元”の2つ通り……聞こえてきた何かのエンジン音が近付いてきていると思ったら、テントに大型バイクに股がった女性が砂埃と共に入ってきて急停止した!

 

「…貴女が大和ね」

 

「え、ええ、そうですけど」

 

 なんかアマツカゼが倒れていて、連装砲君が見当たらないのが気にはなったが、当の女性はバイクから降りるとマフラーとゴーグルを外して頭を左右に振った。

 

「呼ばれて飛び出て、工作艦アケシ、参りました!」

 

 女性こと、嘗て大和も何度かお世話になった明石の次代であるアケシが満面の笑みで敬礼した

 

「アケシ、貴女秘書艦なのに土方提督はどうしたの?」

 

「土方提督なら沖田提督に臨時指揮を任せて防衛司令部に向かってるよ。

私は土方提督の命令で戻るように言われたの。

実際、私は必要でしょ?」

 

「ええ、まぁ、そうだけど…」

 

「アケシ、何すんのよ!!」

 

 アケシが先述のユウバリのMIAに僚艦となって気心が知れていたチトセと簡単なやり取りをした後、そのアケシにアマツカゼが走り寄って怒鳴った。

 

「あ~あー…見事に錆びてる上に壊れてるね。

ガミラスがもっかい来るかもしれないから、早速修理させて貰うわよ」

 

「人の話を聞きなさい!!」

 

 脇で怒鳴っているアマツカゼを軽く受け流しながら、マイペースなアケシは大和を追いやって彼女の艤装の修理を開始した。

 尤も先代明石と……陸奥以来の戦艦であった事から訓練期間中に教導役の者達と共に大和に付き添って艤装の整備・調整をしてくれ……その翌年にねぐらにしていたトラック諸島の沖合いで潜水艦の攻撃で傷付いた大和に応急処置をしてくれた工作艦と全く変わりがないアケシに大和が微笑していた。

 

「でも、お酒の味が分からないって、貴女意外にお子様なのね」

 

「長門はもっと酷かったですよ!

あの人、梅酒を御猪口一杯飲んだだけで倒れる人でしたよ!

だから祝杯の時、長門は1人だけほうじ茶で飲んでました」

 

(…っ! どうしたの、長門!?)

 

(此れ、ウィスキーじゃない!)

 

(伊勢、またお前か!!?)

 

(そうよ、犯人は此の子)

 

(陸奥の裏切り者ぉぉー!!!)

 

 とある宴会にて、伊勢と陸奥の悪戯でほうじ茶からウィスキーにすり替わった事に気付かずに飲んだ長門が、即失神してそのまま一週間寝込むとの不祥事で、後日陸奥に罪を被わされた伊勢が1人始末書を書かされていた事を、大和が思い出していた。

 

「ああ、やっぱりナガトの先代も下戸だったんだ」

 

 だがチトセも長門の次代であるナガトを思い出して遠くを見詰めて、更にアケシと彼女を手伝っていたアマツカゼ(と何時の間にかにいた連装砲君)が一瞬硬直した。

 

「……ナガトはどうしたんです?」

 

「冥王星沖の海戦で亡くなったよ。

いえ、ナガトだけじゃなく、ムツもイセもヒュウガも、フソウもヤマシロも、コンゴウ、ヒエイ、ハルナも……みんな、みんなガミラスとの戦いで死ぬなり行方不明になっちゃった」

 

 親しかった者達の死に対して戦況を覆す事が出来ない事への無念は、深海棲艦戦もガミラス戦も変わりがなさそうで、現にテントの脇に視線を向けると、そこには戦死した者達が柩代わりの袋に入れられて並べ置かれ、アヤナミが妹のシキナミが入っているモノの前で、イナズマと共にしゃがんで、シキナミの僚艦達共々にも含めて合掌していた。

 だがその事で“なにくそ”と思えない自分自身の劣化を自覚して大和は心の中で苦笑していた。

 尤も深海棲艦戦にはまだアメリカの反攻への期待があったが、ガミラス戦には破滅の未来しか見えてないのでこう言うのは大和だけではなさそうだった。

 

「だけど大和、今回の一件で貴女は確実に防衛艦隊に編入させられるわよ」

 

 既に艦隊特攻が確実視されている中での艦隊編入なのだから、再び十死零生の任務でのキリシマと10番目か11番目の戦没戦艦にならされそうな事に大和がブスッとした為にチトセが笑っていた。

 で、こんな時にイソカゼが息を切らして駆け込んできた。

 

「イソカゼ、傷が開くから落ち着きなさい!」

 

 そんなイソカゼにチトセが大声で注意したが、当のイソカゼはチトセを無視した為、チトセがムッとした。

 

「…さっき防衛司令部から大和を復帰させるとの通達が入ったんだ!」

 

「来るべき事が来たわね」

 

 大和が嫌そうに目線を逸らしたが、軽母ヌ級と戦艦ル級を撃破した以上はこうなる事は分かり得たので、チトセは唸りながら納得していた。

 

「だけど、妙な事も通達された」

 

「妙?」

 

「…大和は……防衛艦隊には編入させないそうなんだ!」

 

「はぁ!?」

 

「まさか、大和を嫌っている人間や艦娘はそんなにいるの!?」

 

「それが、此れを藤堂長官に提案したのは沖田提督だそうだ。

だからキリシマがカンカンになって、異常なスピードで司令部に向かっていったぞ」

 

 イソカゼの言葉にチトセが“えっ”となったが…

 

「ちょっと、何此れ!!?」

 

…その直後にアマツカゼが大声を出してアケシが硬直していたので、大和は思わずチトセとイソカゼと共に自分の艤装を覗き込んだ。

 

「此れ、何!!?」

「「…っ!?」」

 

 どうやらアケシとアマツカゼは、大和の艤装の装甲を外して機関部を確認しようとしていたらしいが、問題はその機関部で……何故か機関部の外装だけが錆びていない事から嫌な予感がしていたが……本来そこに有るべき艦本式タービンが無く、代わりに見慣れない……円柱型2つが向かい合って、2匹の蜘蛛がお互いの腹を見せながら脚を伸ばしているかの様に多数のアームが伸びた、エンジンと思われる物が存在していた。

 

「……アレ、此のエンジン、なんか在視感がある?」

 

 アケシが仕切りに首を捻っていたが、他の者達は勿論の事ながら新型機関を試験搭載している事でエンジンに詳しいアマツカゼでさえ知らない代物なのだから、大和が此のエンジン……波動エンジンを知る訳がなかった。

 

「防衛司令部から間も無く重大発表があるそう……ってみんな、どうしたの?」

 

 でこんな時にカスミがやって来た。




 感想・御意見お待ちしています。

千歳
「5話でも出てたけど、チトセカクテルって、やっぱり?」

 はい、“さらば宇宙戦艦ヤマト”のみに出た人工酒・ヤマトカクテルまんまです。

千歳
「でもあの人工酒って、ヤマト屈指の呪いのアイテムでしたよね?」

 そうですよ。
 さらばには二回出て、一回目は『ヤマト』が宇宙気流に飲み込まれてしまい、二回目は佐渡、アナライザー、徳川、土方の四人が立て続けて戦死しました。

千歳
「本編、大丈夫なの?」

 ショウホウ(祥鳳)達が死んでも誰も苦情等が無かったので大丈夫だと思いますよ。
 まぁ、チトセの死に場所が大体予想出来るかもしれませんがね。

千歳
「……え?」


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第11話 最後の希望(後編)

――― 呉 ―――

 

 

『…大変長らくお待たせしました。

此れより藤堂兵九郎防衛司令長官による発表会見を行います』

 

「あっ、キサラギ姉さんが出てきた」

 

「いつもながらキサラギ姉さんは綺麗に決めてますね」

 

 日本では普通なら誰もが眠りの中にいる時間帯なのだが、緊急的な記者会見にも関わらずに大勢の記者達が詰め掛けて騒いでいたが、司会役のキサラギの報せで全員が一斉に静まって身構えた。

 此の為に貴重な電力を出し惜しみなく使用して地球中のテレビとラジオが全て使われていて、大和達がいる防護テントでも勿論そうであり、テレビが提供されるが発電機等は無しだったが、アケシとアマツカゼの閃きと努力の結果、応急処置が施された大和の艤装に繋げる事で使用可能となった。(「人の艤装を何だと思ってるのですか!?」by大和)

 更に地下都市にいたアサシモとハマカゼ、哨戒任務に出ていたナガラ、ハツシモ、サツキ、ミカヅキ、カミカゼ、ハタカゼの六人が戻ってきたので、テントの中で狭さを感じながらテレビを注目していて、最初に芹沢以下の幕僚達が入室して右側の壁に並んで、次に沖田達……土方竜や山南修等の歴戦の日本提督達が左側の壁に並んでいった。

 更に、沖田にはキリシマ、土方には補給艦タイゲイ(後の空母リュウホウで、アケシの代理)、山南には巡洋艦ナカがいる通り、提督達の後ろ脇に秘書艦が各々に控えていた。

 

「お! キリシマの奴、完治しているみたいじゃん。

アイツ、バケツ(高速修復材)でも使ったのか?」

 

「いえ、多分アレは麻酔や特殊メイクで外見を誤魔化しているんですよ。

現にナカが足を引き摺っていましたし…」

 

「要するに厚化粧か」

 

 アサシモの疑問に、チトセが画面越しに分析して、キリシマ(達)は不足気味の高速修復材(使われている容器に因んで、通称:バケツ)を使わずに誤魔化しているのを見抜いたが、そのキリシマが痛みを我慢して右眉を動かした為にイソカゼの毒に反応したかの様に見えた。

 で、そんなんでヤイヤ言っている間に、最後に藤堂が現れて、日本国旗と地球旗(元は国連の旗)に一礼した後に壇上に登ってマイクの前に立ち、記者達が自分達を見渡している藤堂を一斉にカメラで撮っていた為、カメラのブラッシュが何度も光っていた。

 

『…日本国民の皆さん、世界中の皆さん、今から地球の未来に関わる重大な事をお伝えします。

どうか、冷静に対応するようにお願いします』

 

 場が落ち着いてからの藤堂の一言目は此れであったが、記者達だけでなく此の会見を見ている者達の殆どが今更感を感じていた。

 更に噂されていた地球脱出計画の発表かと、推測しているのが殆どであった為、藤堂の二言目は予想外であった。 

 

『先日、坊ノ岬沖で回収された落下物を解析した結果、落下物は通信カプセルであり、重要なメッセージが含まれている事が判明しました。

此れがそのメッセージです…』

 

 藤堂の発言に合わせて、キサラギが藤堂の背後にスクリーンを展開し、直ぐに始まった映像は先ず白い球体を映した後に拡大していって、一際大きい球体を中心に木目を連想させる九重に並んだ楕円を映した。

 

『……此れが我々の太陽系……更に我々の(アー)(天の川)銀河を示すモノと思われます…』

 

 藤堂のレーザーポインターを使いながらの説明もあって、映像が宇宙地図だとは分かったが、問題は映像は拡大は続いてA銀河から離れて他の星系や銀河系が見える所まで来ていた。

 “何所まで行くんだ?”と思われ始めた直後に頂点に達したらしく、大小二つの銀河系が並んだ所の大きい方に向かって縮小が始まった。

 

『…そして此の大マゼラン銀河に位置する……此の場所……此所がメッセージの発信源、惑星イスカンダルです』

 

 何故、遥か彼方に位置する大マゼラン銀河の惑星の一つが示されたのかが全員分からずに硬直していた。

 

『彼等、イスカンダル人は惑星全土を高濃度に汚染する放射能を完全に除去して、自然環境を回復する何らかの手法……仮に放射能除去装置としますが、それを我々に提供する意思があるそうです』

 

 元々地球では放射性物質は数世紀単位での自然浄化しか手段がなかった為(だからこそ原子力や核兵器が嫌み嫌われた)、それを可能とするイスカンダルの技術力は驚異以外何物でもなかった。

 

『我々防衛軍は此れを検討した結果……辛うじて艦隊戦力を有する日本に、最後の戦艦娘を主体とした艦隊を編成して、此のイスカンダルに遠征させる事を決定しました!』

 

 藤堂の発表に会見場にいた者達だけでなく、地球上全ての者達が時を止められたかの様に硬直していた後、一斉にざわついていた。

 

『そんな遠くに行けるのですか!?』

 

『ガミラスの罠だとは考えられないのですか!?』

 

『時間は、時間は何れくらい掛かるのですか!?』

 

 当然ながら会見場では質問が殺到していたが、テント内ではイスカンダルに行かされるのが……キリシマはあの状態(記者達の反応を見た感じだと、大方はキリシマが行くモノだと誤解しているようだった)だし、他で確認されている戦艦にはロシアのガングード、フランスのリシュリュー、イタリアのローマ、ドイツのビスマルク(彼女のみ反乱首謀者の疑いで牢獄に入っている)、イギリスのウォースパイト、そしてアメリカのアイオワがいるが、藤堂が“日本”と言った為に大和だと察して、全員が大和を注目していた。

 

「そうか、それで大和は艦隊に編入されなかったのか!」

 

「なに納得しているんよ?」

 

「なんでですか?」

 

 で大和のイスカンダル行きに納得していたナガラに、カミカゼと小声で話し合っていたカスミが否定した。

 

「調べた処、大マゼラン銀河は16万8千光年の彼方にあるのよ。

そして普通の艦娘では冥王星に行くまで3週間は掛かるので、計算した結果、片道だけで39億2千万日も掛かるらしいよ」

 

「…地球、何回滅んでるかしらね?」

 

 カミカゼの返事に、ハタカゼが空笑いをし、全員がギョッとして“島流し”の単語が頭に浮かんだ。

 

『軍事上の機密に関わるので此れ以上公表は出来ませんが、我々はイスカンダルから技術提供を受けていて、遠征期間は一年前後と見積もっています。

現に、此の影響で先程呉を攻撃していたガミラス艦隊を撃滅する事が出来ました』

 

「イスカンダルからの、技術提供?」

 

「もしかして、アレ?」

 

 藤堂の言葉に一瞬キョトンとしたアマツカゼとアカシだったが、直ぐに大和の艤装のエンジンが思い浮かんで、そちらに振り向いていた。

 

『いくらなんでも無謀すぎる!』

 

『行かせる戦艦娘は信用出来るのか!?』

 

『確実に帰ってこれる確証は有るのか!?』

 

『国民の意思はどうなんだ!?』

 

『防衛軍の横暴だ!

政府は何を言っているのだ!?』

 

『国民投票を実施すべきだ!』

 

『…そんな時期ではないんだ!!!』

 

 元々軍へのアレルギーが強い日本人の気質もあって、変に感情的になっていた記者達が否定し続けていたが、そんな彼等を藤堂は怒鳴って静めた。

 此の穏和な性格で知れる藤堂らしからぬ行動に、沖田以外の防衛軍の面々は驚いていた。

 

『地球は“無謀”だとか“保証”だとか、そんな事で躊躇していられる状態では、最早ないんだ』

 

 先程の怒鳴りもあって記者達は藤堂の言っている意味を理解出来ずに硬直していたが、芹沢達幕僚達は藤堂が言おうとしている事を察してギョッとした。

 

『…防衛軍の試算では、地球人類が放射能で滅びるまで、もって……あと一年!!

科学者の中には数ヵ月と言う説まである!』

 

 “人類滅亡まで、あと一年”……防衛軍や地球政府の最重要機密事項である藤堂の暴露に、記者達は顔面蒼白となって騒いでいた。

 否、記者達だけでなく、地球全土でざわついており、現に秘書艦であるキリシマ達が藤堂に目をひんむいていた。

 

『…イスカンダルからの申し出は……我々にとって……最後の希望なのだ!』

 

 自分に言い聞かせる様な発言をした藤堂は、大型カメラの一つに顔を向けた。

 

『…国民の皆さん、放射能除去装置さえ手に入れば、我々人類は生き延びる事が出来る。

地下を脱け出し、再び地上に住む事が出来るのです』

 

 元々藤堂は参謀等の後方型の軍人であり、戦略面では疑問符が付く代わりに人心掌握力に秀でており、彼等記者達ではなく地球人類一人一人に訴える手法に切り替えていた。

 そして記者達も黙って藤堂の発言に聞き及んでいた。

 

『このままガミラスの遊星爆弾に身を任し、地球が滅びていくのを手をこまねいて見ていて良い筈がありません』

 

 更に連戦連敗で意気消沈している艦娘一人一人へ“戦わねば生き残れない”と訴える様な発言をした後、キサラギが再びスクリーンを動かした。

 

『此れは我々に与えられた、最後のチャンスなのです!』

 

 藤堂の発言のラストスパートに合わせて、元は観光宣伝用のモノと思われる映像群……森林の合間を縫って移動する上空映像、チベットの何所かの寺から撮られている天高く聳えるヒマラヤ山脈、イルカの群れを追い掛けながらの海上の上空映像、戯れる白熊の親子の背後に映る北極、そして太陽に照らし出される青く輝く地球、どれもが今は無き地上の光景であった。

 

『…我々自身の手で緑の地球を取り戻すのです。

放射能除去装置を手に入れ、十年前の……美しい地球を取り戻そうではありませんか』

 

 此の映像群で、懐かしさから記者達が泣き出しているだけでなく、防衛軍の面々も此れ等を奪ったガミラスへの怒りを露にしていたのだから効果は絶大であった。

 

『…防衛軍は各国に遠征艦隊への協力を求めています。

星間航行に必要な航行技術やレーダー等の観測機器、艦娘の日本艦隊への派遣、整備改装の為の資源提供…』

 

「…イスカンダル、ですか。

大和さんは、どう思っているのです?」

 

 最後に一旦下がった藤堂に代わってキサラギが色々やっていたが、ハタカゼの質問に大和は何も答えずにテントから出ていき、その大和をハツシモとイソカゼが追い掛けた。

 

「……大和、さん?」

 

「さっきのル級、最後に私に“合格ダ”って言っていた気がするの」

 

 空を見上げている大和にハツシモが声を掛けたたが、大和の返事にイソカゼ共々理解出来ずにお互いの目線を合わせた。

 

「で、アンタはたった一年でイスカンダルに行って帰れる自信はあるの?」

 

「そこまでは、まだ分からない…」

 

 イスカンダル云々は大和自身、あまり考えられないでいた。

 だが、二人には言わなかったが、戦艦ル級が最後の最後に「此所(宇宙)に来い!」と言っていた気がした事から、日の出の兆しとして東から青くなりだしていながらも星々がまだ輝いていた空の彼方に広がる宇宙に思いを馳せ参じていた。

 

「…只、私……宇宙に行きたい。

あの星の海と呼ばれる場所に行ってみたい」

 

 深海棲艦戦時では夢物語かと思っていた宇宙に赴く事に、大和は自分でも理解出来ない高揚感に満たされていた。

 そんな大和の背にハツシモとイソカゼは静かに頷いていた。

 

「で、カスミ、ハマカゼ、アサシモ、アンタ達もどうする?

私は同行を命じられると思いますが、それを了解しようと思ってますよ」

 

「勿論、私達も行きます。

今度こそ、大和を目的地まで守り送ってみせます!」

 

 チトセの質問に答えたハマカゼに、カスミとアサシモも“同感”と頷いた。

 

「……朝日が昇る…」

 

 自分はナトリ共々残留させられる事をなんとなく察し寂しく微笑んだたナガラが示した後、丁度大和達三人の前方から太陽が昇ってきた。

 斯くして、此の時から大和と地球の長い長い一年が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…此れで、本当に良かったのか、沖田?」

 

「ああ、後は任せろ」




 感想・御意見お待ちしています。

…やっとイスカンダルの単語が出せた。

長門
「イスカンダルの言葉が出るのに11話か。
漸くスタートラインに立てるって事か」

 いやね、それが、2話ばか寄り道しますがね…

陸奥
「何やってんの!?
此の“最後の希望”だって、三倍以上の文字数を使ってんのよ!」

…こ、此の作品、コナンみたいにやたらめったら“編”が付く可能性が高いですよ。

長門
(…逃げたな)
陸奥
(…逃げたわね)

 それにしても、イスカンダル遠征、原作の艦娘達だったら“行きたくない”って言う奴探した方が早い状態になるだろうな。

陸奥
「少なくとも望月、初雪、山風、名取の四人は嫌がるでしょうね」


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第12話 土星にて

――― 土星 ―――

 

 

 土星…その美しき環を構成する大小問わない数多の衛星群の恩恵から移民者が多数いたゴールドラッシュならぬレアメタルラッシュで賑わっていた木星に次ぐ太陽系屈しの大型惑星である。

 当然ながら地球側も土星の価値を理解しており、宇宙艦隊司令部が置かれる大規模基地が作られるだけでなく、多数のスペースコロニーが存在していた。

 だがそれも今や昔話、ガミラス戦が勃発して更なる価値上昇があったものの、そのガミラスに制宙権を奪われると同時に殲滅戦が行われ……基地だけでなく、全てのスペースコロニーも破壊されて、それ等の残骸は環を構成する物質の1つとなり、静寂なゴーストタウンならぬゴーストスター(別の見方をすれば、人類到来前の状態に戻ったとも言える)となっていた。

 

『……此方、土星…此方、土星…』

 

 だが土星の衛星の1つであるエンケラドゥス…土星内でも最大のレアメタルの鉱脈を持っている氷に覆われた極寒の星に墜落したスペースコロニーから微弱な通信が発せられていた。

 

「…キヌガサ、もう少し出力を上げた方が良いんじゃないか?」

 

「駄目。

此れ以上やるとガミラスに探知される危険性がある」

 

 そしてそのスペースコロニーの通信室では、地球帰還が出来なくなるも、なんとか生き延びている艦娘達の一部である巡洋艦のカコとキヌガサが、自分達の生存を地球に知らせようと通信機を動かしながら調整していた。

 

「カコさん、キヌガサさん、状況はどうですか?」

 

「「…ハルナ」」

 

 そんな2人の所に、土星で生存する艦娘達を束ねる一人である戦艦ハルナが訪ねた。

 

「……駄目だ。

どうやらガミラスが通信妨害を強くしていて、ノイズが酷くなっている」

 

「多分、通信衛星もガミラスに破壊されたか、奪われていると思います」

 

 カコとキヌガサが申し訳なさそうな報告に、分かっていた事とは言え、ハルナが俯きながら溜め息を吐いた。

 只、此の数日間、何故かガミラスが電波妨害を強めていたのは分かったが、その理由が分からない上に気のせいだと思い始めていたので、カコとキヌガサはその事を言わなかった。

 

「…もう少ししたらチョウカイさん達が帰ってきます。

チョウカイさん達は旧司令部で大型通信機を回収したそうなので、それでなんとか出来ませんか?」

 

 数日前から食糧を調達する為に艦隊司令部があったタイタンに向かった巡洋艦チョウカイを旗艦として戦艦ヒュウガ、空母アカギとズイホウ、巡洋艦アオバ、駆逐艦アケボノとウシオの計7人が無事に帰ってくるだけでなく、食糧とは別の収穫物も得た事にカコとキヌガサは素直に嬉しそうにしたが、通信の事では二人揃って相手と目線を合わせた。

 

「…ユウバリさんを呼んで下さい。

どのみち、あの人に色々やってもらわないといけませんので…」

 

「……分かりました」

 

 溜め息を大きく吐いたハルナがユウバリを呼びに行こうとし、少し間を置いてキヌガサがハルナを呼び止めた。

 

「……ハルナ!

チョウカイ達が帰ってくるのでしたら、私達は少しは楽になるから、ハルナも仮眠を取って」

 

 元々、性格的に責任感が強いハルナはイセ、ヒュウガ、そして怪我人にも関わらずアカギが出ていって以降、生存者達1人1人を念入りに確認していたが、自分自身は寝食を取らずにいた為に気持ち窶れていた。

 しかもハルナは此の数日間(と言っても土星と地球とでは時間が違うのだが…)全く寝ていなかった。

 

「……大丈夫です。

ハルナは、大丈夫です」

 

 だが当のハルナはキヌガサとカコに振り向くと、笑顔でそれを拒絶して退室した。

 そんなハルナにキヌガサとカコは暫く目線を合わせた後、揃って溜め息を吐いた。

 

「……ハルナは旗艦には向かないですね…」

 

 で、当のハルナも、カコとキヌガサを気に掛けてしまった自分自身に失望して溜め息を吐きながら廊下を歩いていた。

 更に外が見渡せる場所を過ぎようとしたが、思わずそちらに振り向いて立ち止まっていた。

 そしてそこから見えるエンケラドゥスの氷原には亡くなった艦娘達への、艤装や鉄骨で作られた墓標が大量に立てられていた。

 

(……ずっと……ずっと、榛名は悔やんでました…)

 

「…っ!」

 

 ハルナの心情に連動したのか、通路の奥の方から幻聴が聞こえて、ハルナはそちらに振り向き、そこにはハルナと瓜二つの女性……ハルナの先代である金剛級巡洋戦艦三番艦榛名の幻が立っていた。

 

「……榛名の、亡霊ですか…」

 

 艦娘には過去に活躍した者の名を引き継ぐ者が多数いたのだが、極稀に先代(特に深海棲艦戦時のが多い)の記憶を引き継ぐ事があった。

 現在でも此の現象は防衛軍でも研究が続いているも、未だに解明出来ない上に一部からは精神病の一種等で片付けられて、艦娘達の中でも否定する者がいた。

 だがハルナは此の現象が強く出ていて、しかも巡洋戦艦榛名だけでなく、護衛艦たかつき、護衛艦もちづき、護衛艦ゆきかぜ、潜水艦なるしおの4人を随伴艦として衝突炎上事故を起こした『第十雄洋丸』を撃沈処分(第十雄洋丸事件)を施して唯一自衛隊で“殺さず”を貫けなかった護衛艦はるなの亡霊に近い者達をよく目撃していたのだ。

 しかも何故か此処数日間は榛名をよく見るようになっていた。

 

(…沖縄に深海棲艦が侵攻してきた時、榛名は怪我で動けませんでした。

だけど、その為に……その為に、大和1人に重石を背負わせてしまいました…)

 

 先代榛名は深海棲艦との戦いの殆どで最前線に居続けた上、艦娘として活動出来なくなった後も滅亡して行く日本を見続けた為にかなり無念が強く、此の為かハルナは先代の亡霊を見る事が多数あったのだ。

 で、近日から先代榛名が言うだけでなく、夢でも見せられるのが、深海棲艦末期に沖縄への艦隊特攻に赴こうとする大和とのやり取りであった。

 此れには榛名が大和の教導艦の1人で彼女と親しくしていたのに、大和の特攻を止めたり、艦隊同行すらも出来ず、ただ大和を見送る事しか出来なかった事への無念と罪悪感であった。

 

「……はぁ…」

 

 榛名の幻が消えた後も、幻がいた方向を見詰め続けていたハルナは溜め息を吐いた後、再び通路を歩んでいき……目的地である大部屋に入った。

 

「大丈夫ですか?

何処か痛みますか?」

 

「カザグモ、痛み止を持ってきて!」

 

「ユウグモ姉さん、もうありません!」

 

「じゃあ、取ってくる!」 

 

「ユウバリさん、此方に来てください!」

 

 で、その大部屋には傷付いた艦娘達が呻き声を時折上げながら床に寝ていて、その中を巡洋艦ユウバリが巡洋艦ザラ、ユウグモ級駆逐艦の姉妹であるユウグモとカザグモ、戦艦イセの計4人(イセが倉庫に走っていったが…)を従えて出来る限りの治療をしていた。

 

「しっかりしろ!」

 

「水が欲しいんですね?」

 

「フルタカ、此れを使って」

 

 更にユウバリの手伝いは直接出来なくても、片目を包帯で覆っている巡洋艦テンリュウとフルタカ、服で見えないが胴体の大半を包帯で覆っている駆逐艦レーベレヒト・マーズ(通称:レーベ)の計3人が怪我人達1人1人の脈を確認しながら声を掛けていた。

 

「ああ、ハルナ、戻ったんだ」

 

「…シグレ、ハルナが分かるのですか?」

 

 そんな6人を見ながら奥に進んでいたハルナだったが、壁に凭れて座っていたシグレに呼ばれて驚いていた。

 と言うのも、シグレは両目を包帯で覆っていたので視覚を失っていたからだ。

 

「なに、気配や足音でなんとなくでだよ」

 

 シグレは笑ってはいたが、失明はしていないものの、目が見えない事には変わりなく、その事での不安や不自由さを表面に出さないでいた。

 

「だが僕よりもアッチが気になるんじゃないんか?」

 

「え、ええ…」

 

 シグレが言う通り、ハルナが気にしている艦娘は、下半分以下が失われた左太股が包帯で覆われている巡洋艦ナチと、首に包帯を巻いている巡洋艦ノシロの2人が左右から気にされていた。

 

「……う、ううぅ~…」

 

「「…っ! コンゴウ!!」」

 

 艦娘ことコンゴウは今まで寝ていた様だったが、呻き声を上げながら起きた事にナチとノシロが反応した。

 

「コンゴウ姉様!」

 

「ユウバリ、コンゴウが目を覚ました!

早く此方に来てくれ!」

 

 更にハルナが姉コンゴウの所に急いで駆け寄り、ナチがユウバリを呼んだ。

 

「…Hey、ハルナ、なんて顔をしているのデスカ?

そんなんでは折角の美人が台無しデスヨ」

 

 ハルナの表情からコンゴウはちゃかしを入れて、ハルナの胸を叩こうとしていたが、自分の両腕が失われている事に気付いて苦笑していた。

 いや、コンゴウは両腕処か、両足も失い、更に残っている身体の至る所を包帯を巻いていて、胴体部分のボロボロの白い着物が包帯越しにも関わらずに血で赤く染まっていた。

 因みにコンゴウの左頬に大きな切り傷が出来ていたが、此れのみは縫合によって痕は残ってはいたが治るに至っていた。

 

「…っ、畜生。

アカシかチトセが居れば…」

 

 駆け寄ったユウバリがコンゴウの具合に歯軋りしながら処置をしている通り、本来コンゴウは冗談とかを言える状態ではなく、今すぐにでも本格的な治療をしないといけない危険域をとっくに通り過ぎているのだが、コンゴウは激痛を耐えながら普段通りの自分を……陽気な宇宙戦艦コンゴウを最後まで演じてハルナ達を元気付けようとしていた。

 だが、全員がコンゴウの様に出来る訳がなく、現状に悲観して“死ぬなら地球で”と思って脱走した者達は少なくはなく、その事がハルナ達を益々追い込んでいた。

 だからこそ、コンゴウに他の者達は元気を与えられていた。

 不幸中の幸いなのは、此のコロニーは主要鉱山の遥か彼方に落下していた上、警戒していないガミラスは土星に基地等の施設を作らずに警備か輸送の小規模艦隊しか配備させておらず、しかも輸送ワ級を護衛無しで時折エンケラドゥスの上空を通過させているのみだし、更に先日入港した決死輸送船団に保護していた非戦闘員を押し込んだお陰で食料や医薬品にかなり余裕が出来た事であった。

 

「ごめん、コンゴウ、私では此処までしか…」

 

「そんな顔をしちゃ、Noヨ。

治療の要のYouが不安になってたら、怪我人達がもっと不安になっちゃうデショ」

 

 元々ユウバリは艤装の修理や整備の専門で、艦娘自体への治療は不得意であり、彼女では応急的な事までしか出来ない為に救える筈の艦娘達を次々に死なせてしまった事に何度も悔しい思いをしてきていた。

 只、艦娘用の入渠ドック(治療施設)が使えればユウバリでも治す事が出来き、その入渠ドックは有る事は有った。

 だが、コロニーの動力炉が瀕死の為に入渠ドックは使用不可、例え動力炉を直せたとしても、入渠ドックを使えばガミラスに探知される公算が大の為、どのみち使う事が出来なかった。

 

「誤解してるかもしんないけど、私は此れでも幸運だったのヨ。

ユキカゼがハルナ達を呼んでくれなかったら、私は今頃ガミラスの捕虜だったんですから………?

そう言えば、ユキカゼは?」

 

「…ユキカゼなら……チョウカイ達と一緒にタイタンへ食料を取りに行きました。

あの娘は強運ですから、ビフテキとか高価な物を持って帰ってきてくれますよ」

 

 先の決死輸送船団を見送った後、傷付いたユキカゼが奇跡的に此のエンケラドゥスに辿り着いた事で、木星沖海戦を知ったハルナ達が原場へと向かい……コンゴウを連行(or曳航)していた軽巡ト級から、コンゴウを奪還する事が出来たのだ。

 で、そのコンゴウを救う要因となったユキカゼはと言うと、残念ながらハルナ達に保護されて暫くした後に亡くなっていたが、コンゴウを落ち込ませたくない一心でノシロはユキカゼ生存の嘘を言った。

 尤もナチがギョッとした事もあり、多分見抜かれていたと思われるが、ノシロの嘘にコンゴウは「そう、デスカ」と言って微笑んだが、その直後にコンゴウが数度咳き込んで吐血した。

 

「…ハルナ!!

チョット通信室に来てくれ!」

 

 そんな時に血相を変えたカコがハルナを呼びにきて、そのハルナが“行く”か“拒否”するかで迷っていたが、ユウバリ達の処置を受けているコンゴウが咳き込みながらも目で「Go!」と言ったのを確認し、未練を感じさせながらカコの所に行き、一度コンゴウへ振り向いた後に先に行ったカコを追って通信室へ走っていった。

 

『…彼等、イs…カン………んは……z…』

 

 で通信室に入ると、キヌガサが左耳にインカムを押さえながら通信機を必死に弄っており、カコも到着すると直ぐにキヌガサを手伝っていた。

 

「キヌガサさん、どうしたのです!?」

 

「さっきから地球からの一方通信が入ったんです!

しかも此れは藤堂長官直々のです!」

 

 “藤堂”の単語が出た時点で重要なモノだと分かり、ハルナも通信機に取り付いて調整をした。

 だがノイズだらけの通信は少しして切れてしまったが、キヌガサだけは通信のある程度が聞けたらしく、少しの間だけ硬直した後に宇宙地図を取り出して何かを確認していた。

 

「どうしたんだよ、キヌガサ?」

 

「…何でかは知らないけど……防衛軍は、日本に最後の戦艦娘を主体にした艦隊を編成させて、大マゼラン銀河のイスカンダルって言う惑星へ遠征させるんだって!!」

 

 何故そうするのかは分からないが、少なくとも大規模になるだろう遠征艦隊には間違いなくアカシやチトセが同伴する、そして地球に残っている日本の戦艦娘……10人中でコンゴウ、ハルナ、イセ、ヒュウガの4人は此の土星にいて、ナガト、フソウ、ヤマシロの3人は既に亡く、ムツとヒエイの2人は行方不明(MIA)である事からの消去法で考えたら、該当者はコンゴウ級末妹キリシマしか考えられず、上手くすれば艦隊を呼び寄せられると言う事であった。

 

「やったぞ、キヌガサ!!」

 

「此れで地球に帰れる!!」

 

 此の事でカコとキヌガサがお互いの肩を抱き合って喜んでいて、ハルナも此の事をコンゴウ達に知らせようと急いで走っていった。

 

「…姉様、コンゴウ姉様!!

地球から艦隊が来ます!

きっとキリシマ達が近くに来てくれます!………っ!?」

 

 コンゴウに朗報を伝えようとしたハルナだったが、そのコンゴウの近くでユウグモ、カザグモ、ユウバリの3人は屈んで、シグレは両足を抱えて丸くなって、テンリュウは壁に頭を付けながら殴り続けて、フルタカとノシロは立って天井を向いて泣いていて、ナチ、ザラ、レーベの3人は泣かずに悔しさを滲ませている光景から全てを察した。

 此れはハルナの背後でいつの間にかにいるも、段ボールを落としていたイセも同じであった。

 

「……そんな…」

 

…コンゴウが死んだ……自分の役目を終えたのを察したかの様に笑みを浮かべて二度と動かなくなっていた。

 その胸元の袖口からは、コンゴウ級の4姉妹揃っての写真が、血塗れ且つ皺だらけの状態で僅かに出ていた。

 

「ねえぇさまあぁぁー!!!」

 

 ハルナの絶叫が虚しくコロニー内で響いていた…




大和
「作者に代わって、感想か御意見を御待ちしています」

武蔵
「金剛(コンゴウ)が逝ったか…」

大和
「ええ、生きて同行してくれたら、戦闘面は兎も角として、精神面では頼もしい存在になってくれた筈ですから…」






























武蔵
「そう言えば大和、作者はどうした?」

大和
「作者なら…」

















































比叡
「作者は何所ですか!!?
“ゴジラvsモゲラ”だけでなく、金剛お姉様を、あの様に死なせた、あの馬鹿作者は何所に行きました!!?」










大和
「さ、作者なら、ついさっき、ガミラス戦で亡くなった艦娘達の供養をしに、高野山に行きました!」

武蔵
「だからそのガンダム試作二号機みたいな楯とバズーカを下ろせ!」
















































 最後に一つ、微々たるモノですが、プロローグでの古代兄弟の先祖である少年の両親が何所で死んだのかを、一話での大和の同世代の戦艦娘にウォースパイトを(ガングート? アイツは諦めろ)、各々追加しました。
 特に父親のは“古代”の姓と、松本零士作品を知っていれば、ニヤリとするかもしれません………っ!?

比叡
「見付けました!!!
作者、ちょっとお話があります!!」

 ぎゃあぁぁー!!!
 此所まで追い掛けてきたぁぁー!!!
 そして、話し合うスタイルじゃなぁぁーい!!!

大和&武蔵
「「……雉も鳴かずば撃たれまい…」」


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第13話 冥王星にて

――― 冥王星 ―――

 

 

 冥王星…西暦1930年にアメリカの天文学者クライド・トンボーに発見された太陽系第9番惑星(2006年に準惑星に降格したが…)。

 此の太陽系最後の人類未踏の月より小さい星は、本来は水星と同様に大気の無い岩だけの星なのだが、太陽系制圧を目指すガミラスに橋頭堡として占領されて以降、大気と氷海を有する極寒の星に改造(ガミラスフォーミング)されていた。

 そして、その冥王星のとある場所に存在するガミラスの基地の一角では、ガミラスが捕縛した艦娘達が反乱や脱走されないように艤装だけでなく服や下着までもを取り上げた素っ裸の状態で、暗くて寒い牢に入れられていた。

 尤もガミラスは艦娘達にある程度の治療を施し、1人1人に材質不明の毛布を支給させ、多分1日に1度だけ肉団子のような物(凄く不味い)とパック入りの水を与える、それなりの施しをしていた。

 だがそれは生体サンプルとしての行為らしく、時折艦娘の何人かが何所かに連行されていっており、戦艦娘や空母娘は勿論の事で、巡洋艦娘までが連れていかれて、牢に残っているのは駆逐艦娘だけになっていた。

 その為に残された駆逐艦娘達は何時連行されるか分からない恐怖と、一切の救いを見出だせない絶望的状態から、食事の時以外は毛布に丸まって寝てばかりいた。

 

「……来るぞ!」

 

 だが此所にも例外的な者達はいるらしく、駆逐艦ハツハルが異変を察知して、向かい牢に報せ…

 

「……まったく、辛いのに、大声ださせる事をさせえなや……うぉーい!!!…」

 

…息を乱しながら横になっていた駆逐艦クロシオが起きると、牢の隅のトイレの直ぐ隣の穴にハイハイで近付くと、その穴の中に頭を突っ込んで大声で叫んだ。

 

「…げっ!」

 

「何やってんの!!」

 

「わりぃ、つっかえた」

 

「馬鹿!!」

 

「痛い痛い!!

押すな!」

 

 金属音の交じった足音が聞こえてきたのとほぼ同時に、駆逐艦ナガナミが突き飛ばされる形で穴から出てきて、直ぐに続いて駆逐艦のムラクモとネノヒが出てきた。

 因みに、脱走の手助けになりかねないフォークやスプーンを与えないガミラスが施設に欠陥を作る筈が無かったのだが、此の穴は元は冥王星改造の余波での地盤沈下で出来たらしく、更に此の辺りでは古参に入るムラクモの前の住民達(全員、連行されるか衰弱死)が拡張していたのを、ムラクモ達は引き継いでいたのだ。

 当然ばれたら只ではすまないので、変に擦った胸を痛そうに押さえて転がっているナガナミに冷たい目線を向けながらムラクモとネノヒが穴に蓋をして床を簡単に掃いた後、急いで毛布に丸まって寝た振りをした。

 で、その直後……敢えて言うなら“頭の無いゴリラ”と言うべき形状の警備ロボットが巨体を揺らしながらやって来て、ムラクモ達4人に目線(?)を向けて(多分)レーダーを電子音を出しながら起動して、4人のいる牢に異常が無いかを調べていた。

 で、なんか嫌な間を少し空けて、警備ロボットは回れ右をして一旦戻っていき……再びムラクモ達の所に来ると、檻の柵の一部を解除して左足を掴んで引き摺っていた駆逐艦ウラカゼを投げ入れて彼女が壁に激突して落下した後、ウラカゼの分の毛布を投げ入れると柵を戻して帰っていった。

 

「「「「…っ! ウラカゼ!!!」」」」

 

 警備ロボットが柵を開けたのは連行する為にのだと勘違いして肝を冷やしたムラクモ達4人だったが、それが間違いであり、警備ロボットが去った後に投げ入れられて俯せで失神しているウラカゼに揃って駆け寄った。

 で、ウラカゼを確認した処、抵抗したモノの証と思われる痣が多数あるも、戦傷は最低限の治療は施されて体の至る所に包帯が巻かれていた(の割りには連行が雑だったが)ので、命に別状はなさそうだった。

 

「…で、ムラクモ、どうだったのじゃ?」

 

「なんとか、何所かの外壁に辿り着いた」

 

 ウラカゼの介抱を彼女の姉妹艦であるクロシオに任せたムラクモは、進捗状況を求めたハツハルに答えていた。

 

「……アンタ達、本当に馬鹿ね…」

 

 だが、そんなムラクモ達に、ハツハルの同居人である駆逐艦モチヅキが冷たく否定した。

 そんなモチヅキにムラクモ達4人とハツハルがムッとしたが、先述の通りに彼女達5人の方が例外で、殆どがモチヅキのような思いであり、現に他の牢の者達もモチヅキみたいに言わなくても冷たい目線を向けていた。

 

「こんな事してたって、どうにもならないわよ。

どうせ地球は負ける上に、私達だってみんな殺されるわよ!」

 

 嘗ては此所でも防衛艦隊が冥王星を奪取して自分達を助け出してくれる、そう言う希望を元に励まし合っていた。

 だが、新たに捕らえられた者達から防衛艦隊が壊滅しつつ、海王星以下の太陽系惑星群が次々にガミラスの手に落ちている現状を伝えられて、今やその事を言う者はいなくなっていた。

 更にガミラスが艦娘達に強制労働等をさせずに終始閉じ込め続ける事からの退屈、次々に連行されていく仲間達、それ等に耐えきれなくなって自殺したり拒食症になって衰弱死する者達が絶えず、酷い時には僅かな食料を巡って殺し合いが起こる事もあった。

 現にムラクモやハツハルも、先述の通りに連行されていく者達……特に自分達を励まし続けていた空母タイホウが連行されていった事を…

 

『『『タイホウ!!!』』』

 

『ムラクモ、絶対離すでない!!!』

 

 突然天井から現れた軟体の管がタイホウを頭から飲み込み、ムラクモが当時の同居人2人と共に、彼女の腰や右足を突かんで引っ張り出そうとし、タイホウもヒリュウで抵抗の表れとして左足を激しく振っていた。

 だが管はヒリュウを徐々に飲み込んでおり、更にタイホウごと振り回してムラクモ達3人を振り落とし、此の隙にタイホウを完全に飲み込もうとし、他の2人は打ち所が悪くて伸びてしまったが、ムラクモだけは飲み込まれる直前に両足首を掴んだが、ムラクモとタイホウの2人揃って汗だくの為に滑りやすくなっていた上に変に力が入らない為、少しづつ滑っていき……タイホウの両足首がムラクモの手から抜けた直後に、タイホウが完全に飲み込まれてしまった。

 

『タイホウ!!?』

 

『ムラクモ、助けt…』

 

 尻餅を着いたムラクモが急いで立ち上がろうとしたが、管はタイホウが入って膨らんでいる箇所が奥へ急進して管自体も引き込んでいった。

 

…タイホウを助けれなかっただけでなく、最後に管越しでのタイホウの助けの叫びを聞いた事(幻聴かもしれないが、何者かの嘲笑う声も)もあって、今でも思い出しては悔やんでいた。

 

「……だからと言って、何もしない事は出来ません…」

 

「“艦娘や提督は生きている限り戦い続けろ”か、沖田組は強情だね…」

 

 沖田の思想を守り続けるネノヒ達に駆逐艦マツカゼが苦笑していた。

 

「…だけど、此所から出られたとしても、艤装の無い私達じゃ、冥王星から離脱出来ないよ。

まぁ、例え艤装を取り返せても、地球に辿り着けると思えないし、それよりもガミラスが容易く見逃すと思えないしね」

 

 だがマツカゼの言う通り、艦娘に取っては命であり体の一部である艤装を奪われていては冥王星から離脱出来ない上、此の監禁生活で誰もがガリガリに痩せていて、数日間に及ぶだろう地球への逃避行が出来ると思えなかった。

 まぁ、後者に関してはハツハルは、ムラクモ達4人に自分の分(御陰でハツハルは立って歩けない程に痩せている)を、更に体調を崩してしまったクロシオも他の3人に与えてなんとかしようとしていた。

 

「そんなの、やってみないと分からんねぇだろ!!」

 

 更に諦め状態のマツカゼ達にナガナミが怒鳴って“いー!”とした。

 

「大丈夫ですよ。

地球からの助けは必ず来ます」

 

「何でそんな事を言えんのよ、スズツキ?」

 

 更にハツハル達の牢の隅に座って黙っていた駆逐艦スズツキが禁忌となっていた言葉を言った為、モチヅキが冷たい目線でスズツキに振り向いた。

 

「正直言いますと、スズツキ自身も分からないんです。

ですけど、最近先代涼月が大和と共に沖縄へ赴く夢を見るようになってから、変な希望が沸いてくるんです」

 

「じゃあ、何よ、あの役立たずの戦艦が私達を助けにきてくれるって言うの?」

 

 元々脱出に悲観的だったスズツキが、苦笑しながら根拠の無い事を言った為、モチヅキが呆れていた。

 現にムラクモ達でさえ、“はあ?”となっていた。

 

「だけどさ、スズツキ。

此の二百年以上の間、大和って言う艦娘が現れた事は無いんだよ」

 

「まぁ、確かに、空母ばかり作ってた日本がムツ以降に戦艦娘を建造するって話は聞いた事はないぞ」

 

「ガミラス戦で急遽って事は?」

 

「無いね。 あんな極限状態だと尚更よ」

 

 マツカゼの指摘通り、大和の名を持った艦娘は此の二百年以上の間、姉妹艦の武蔵と信濃を含めて現れた事がなかった。

 更にムラクモが自分達の知らない間に建造されたのではと推測するも自分で否定し、ナガナミに指摘されても改めて否定した。

 

「……う…」

 

「気が付いたか、ウラカゼ?」

 

「久し振りやのぉ~ウラカゼ」

 

「…ナ、ナガナミとクロシオ?

それにネノヒにムラクモ?………って、うわあぁぁー!!?」

 

「なに恥ずかしがってんだ?

此所には野郎はいないんだぜ」

 

 で此の間に、意識が戻ったウラカゼは最初に目に入ったナガナミとクロシオに続いてネノヒやムラクモ達、戦死やMIAに認定されていた者達が多数いた事に驚いていたが、それよりも自分が下着すら着けていない裸である事に気付いて慌てて近くの毛布に丸まった。

 

「って、臭!!!」

 

「仕方ないでしょ。

全員何年も体を洗えていないんだから」

 

 毛布だけてなく艦娘達や牢全体の臭いで、ウラカゼは布団を投げ飛ばすと、顔を赤くして牢の隅に両腕で胸を、両足で股間を隠して踞った。

 だがネノヒの言う通り、此所にいる艦娘達は垢だらけ、中にはシラミを沸かしているとの、老若男女問わずに人間がしていてはよくない状態であった。

 此の恒例行事となっていたウラカゼの行為に加えて彼女が顔を赤くしていた為、皆を代表したムラクモが自分達の現状のを含めて苦笑した。

 只、モチヅキやネノヒみたいな一部の者達は、ウラカゼの胸に冷たい目線を向けていたが…

 

「…っ! そうや、コンゴウ、コンゴウ姉さんは!?」

 

「コンゴウ?」

 

「ウチと一緒に捕らえられた筈なんじゃ!」

 

 ウラカゼの言うコンゴウの事でムラクモ達がキョトンとした。

 

「コンゴウはんは運ばれてへんで」

 

「んじゃ、怪我が酷くてまだ治療中ってのは、無いんか!?」

 

「そんな状態だったら、ガミラスは処分してるぞ」

 

 クロシオとナガナミの返事かろ、コンゴウが殺されたのが大方だと思われて(実際は外れているが)、先代浦風と同様に守るべき戦艦娘を守れずに生き恥を晒しているウラカゼは、自分自身のも含めて床を殴っていた。

 そんなウラカゼにムラクモ達が慰め等を言おうとしたが、その直前に揺れを感じ、更に気持ち爆音らしきモノも聞こえてきていた。

 

「何なんや、此れ!?」

 

「ああ、ガミ公どもが遊星爆弾をまた飛ばしているんだろうよ」

 

 驚き戸惑っているウラカゼに、苦虫を噛み締めたムラクモが説明したが、他の者達はいつもの事なのであまり反応していなかった。

 

「こんな事、いつもの事だって!」

 

「慣れるな!!」

 

 只、ナガナミが笑ってたので、流石にウラカゼに怒鳴られた。

 

「…いや、今回のはおかしいぞ!」

 

 だがマツカゼが気付いた通り、震動がいつもより長く大きかった為、他の牢にいる者達も慌てて起きていた。

 此の事にスズツキが床に耳を当てて集中していたが、暫くすると急に起き上がった。

 

「此れは、ミサイルです!

それも戦略級の大型のです!

ガミラスは戦略ミサイルを多数発射しているんです!」

 

 スズツキの言葉に全員が“えっ”となり、今までガミラスがした事が無かった行為に驚き戸惑っていた。

 勿論、何所に目掛けて撃っているのかを全員察していた。

 

「…奴等、何で今更地球目掛けて撃っているんだ?」

 

「地球で何が起こってんだよ?」

 

 ムラクモやモチヅキの疑問を答えられる者などいる訳がなかった。

 

「……それとも、スズツキの言う通りに、大和とか言う艦娘が現れて、慌てて攻撃をしているのかな?」

 

 スズツキに振り向いたマツカゼはの冗談みたいなのを言ったが、まさかそれが本当だとは思ってもいなかった。




 感想・御意見御待ちしています。

長門
「メ…メル、メルベサーゼ…」(2199版デスラーの演説を言語版で読もうとしている)

…長門、そのガミラス語初級本は何?
 後、その青いペンキをどうする気なんだ?

長門
「い、いやぁ~…ガミラス帝国に仕官出来ないかな~って。
そして冥王星基地の監視長になれないかなぁ~…と思って…」

……陸ぅ~奥ぅ~~ん。

陸奥
「はい!」(さらば2017年ハンマー、装備)

長門
「ぎゃあぁぁー!!!」

 言っておきますが、此の作品は健全な内容に一様していきます!

長門
「助けてぇぇー!!!」

陸奥
「待ちなさぁぁーい!!!」

 けしてアダルトな内容はしません!

 さぁ、いよいよ次回から大和の出撃に入ります!

長門
「…ま……また…変に長引かなければ、いいんだが…(ガクッ)…」

陸奥
「……天誅!」


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第14話 旅立ちの日

明けましておめでとうございます。
今年も他の作品を含めて、よろしくお願いいたします。

“設定 ガミラス”で護衛棲姫の項目を追加しました。


それでは本編をどうぞ。


――― 横須賀 ―――

 

 

 呉を襲撃したガミラス艦隊の迎撃戦…“呉空中戦”と名付けられた海戦から数日が経過し、此の間にイスカンダル遠征への参加志願者を募っての選抜試験(意外な事に、定員を遥かに超えていた)、更にその試験に合格した艦娘達への再訓練が徹底的に行われて、いよいよ旅立ちの日を迎えていた。

 

「あ~、その物資は向こうに持ってってくれ」

 

「艦載機ですか。

それでしたら第三艦隊向けなので、あちらです」

 

「ちょっと!!!

勝手に行くな!!」

 

「こらぁ!!!

コイツは第四艦隊行きだって、言っただろ!」

 

 で現在、遠征艦隊向けの物資や人間の出入りが激しい受付で、空母ジュンヨウを筆頭に駆逐艦のシラヌイとミチシオ、そしてパトロール艦サドが時折怒鳴り声を上げながら捌いていた。

 

「あ~い、次の奴」

 

「…戦艦大和」

 

「ああ、戦か……ん()?」

 

 で、シラヌイ達3人が走り回っている中で、椅子に座って書類を確認していたジュンヨウの前に、旧海軍の第三種軍装に似た防衛軍の軍服を纏った大和がナップザックを携えて立った。

 因みに、ジュンヨウの机の直ぐ隣には、横須賀基地のマスコット猫である三毛猫のミー君が、何処か呑気そうに座りながら右前足の毛繕いをしていた。

 

「……生きてる…」

 

「へえ?」

 

「お前、本当に生きているんか!!?」

 

「え、ちょっ」

 

「ほら、口開けろ!!」

 

 目の前の大和に、シラヌイ達3人共々少しの間硬直したジュンヨウは、直ぐに大和の顔を掴むと、彼女に開けさせた口内の確認を始めた。

 因みに、中と外の両面揃って“ぐうたらな飲兵衛”なジュンヨウだが、先代隼鷹が元豪華客船であった事が変に遺伝したのか、こう見えて彼女は大病院院長のご令嬢であると同時に凄腕の軍医で、チトセと同様に医師兼任の空母娘であった。

 

「…ジュンヨウ、いいがげんいい?

うじ()うじ()ろ」

 

 口を開けていたので少し口調がおかしかったが、ジュンヨウは大和に言われて自分の診断で列が停滞した事に気づき、更に言うと列の何割かがジュンヨウを睨んでいた。

 

「ジュンヨウ、仕事しろ!!」

 

「あ、あーそうそう!!

アンタは~…第二艦隊……」

 

 サドに注意された事もあって、急ぎ書類の中で大和の名を見つけたジュンヨウは、その先に書かれているのを見て、自分の目を疑っていた。

 

「ジュンヨウ、どうしたのですか?」

 

「…大和……お前は、第二艦隊………旗艦!?」

 

 シラヌイが直ぐに疑問に思ってジュンヨウに声を掛けると、ジュンヨウが読み上げた事にミチシオとサド共々ギョッとした。

 

「何故、預かり待遇の貴女が第二艦隊旗艦に?」

 

 シラヌイ達は第二艦隊の旗艦はキリシマだと思っていたので、大和が旗艦であった事は驚き以外の何物でもなかった。

 

「復隊したので、もう預かり待遇ではありませんので!」

 

 そんな4人に、大和は靴を鳴らしながら姿勢を正して報告すると、目線で要望を出した。

 で、直ぐにミチシオが大和に支給品を持ってきたのだが…

 

「あ、その服はいりません」

 

…金属製の旅行鞄の上に置かれた、ビニールに包まれた新しい戦闘服の受け取りを拒否した。

 

「アンタ、何を着る気なのよ?」

 

「どう言うわけか、着馴れた服が補修改良されたので」

 

 ミチシオが眉間に皺を寄せながらの質問に、大和はナップザックから深海棲艦戦時からの着続けていた、少し色褪せた戦闘服を取り出した。

 で、ミチシオは何故か乱暴そうに戦闘服を払い取った。

 

「……猫?」

 

 旅行鞄のみを受け取った大和は、自分に向かって鳴いたミー君に一目見た後に奥に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・別所 ―――

 

 

「……はぁ…」

 

 戦闘服に着替え終えた大和は、戦闘指揮所に向かって歩きながら、後頭部頂部で束ねた髪に喰わえていた髪止めを付けてポニーテール状に髪を整えた後、溜め息を吐いていた。

 因みに大和が着る改良型の戦闘服はと言うと、全く違う素材は兎も角として、見た目は基本的に変わってないものの、両手首の袖口のデザインが錨を模した赤い物に変わり、右腕のZ旗状の腕章と左足の“非理法権天”の文字が無くなり、肩の露出が廃止された事もあって以前の物より何処か“質実剛健”を体言化したかの様になっていた。

 更に言うと、皇室への配慮もあって、首回りに合った菊の紋章付きの金属輪も無かった。

 

「…あ、大和さん!!」

 

「ん?」

 

 行き交う将兵達を避けながら歩いている大和がT字路を曲がって少し進んだ後、自分を呼ぶ声が聞こえたので立ち止まって振り向いた。

 

「お久し振りです、大和さん!」

 

「………」

 

「…あの、覚えてません?」

 

「いえ、覚えているわよ!

貴方、確か呉の古代守君だったわよね?」

 

 大和に忘れられたと勘違いした守がシュンとした後、大和が笑いながら名を言われて“にぱっ”と笑った。

 

「はい、横須賀の第三戦闘指揮所に配備されました!」

 

 自分の所在を姿勢を正しながら大和に報告した守だったが、大和はその彼の後ろにいる子供が妙に気になった。

 

「…処で、その後ろの子は?」

 

「あ、はい!

コイツは僕……じゃなくて、自分の弟の進です」

 

 守に紹介された進は、兄の背から一瞬顔を出したが直ぐに隠れてしまった。

 元々沖縄出撃前に出会った彼等兄弟の先祖に守を重ねていた大和だったが、どうも大和が見た処だと、兄よりも弟の進の方が先祖に似ている気がした。

 だが、それ以前に大和は進になんか見覚えがあった。

 

「聞いた処、コイツは大和さんから食べ物を貰ったのに、お礼を言わずに行ってしまったそうなんです」

 

「…だって、兄ちゃん」

 

 進が守に頭を殴られていたが、大和は“あ~あの時の”と顔に出して納得していた。

 

「すみません、コイツ、人見知りなんで……ほら、進!

大和さんが行っちゃうぞ!」

 

 “現状報告”と“弟の行為の謝罪”だけかなと勘違いして大和が行ってしまうと感じた守は、背後の進を引きずり出して大和の前に立たせた。

 

「…銀河水平、波間を♪……うん?」

 

 偶々近くを過ぎようとしたナカが大和達3人に気付いて曲がり角の裏に隠れていたが、大和の顔を一瞬見た進は、暫く目線を左右に揺らしてモジモジしていて、そんな弟の行為に守が呆れて溜め息を吐いていた。

 

「…君、私に何か用なの?」

 

「………此れ、あげる」

 

 埒が明かないと判断した大和は、溜め息を吐いた後にしゃがんで進に目線の高さを合わせると、進も意を決して目的の物を大和に差し出した。

 

「スカーフ?」

 

 進が大和に差し出したのは、真っ赤なスカーフ……刺繍や模様が一切無く、此の事が赤を際立たせている“simple is beauty”の言葉通りの美しさが感じられた。

 だが此のスカーフは中途半端な長さだった上に焦げがある、明らかな不自然さが有った。

 

「此れ、お母さんの」

 

「…お母さんの……お母さんはどうしたの?」

 

「…父さんと一緒に遊星爆弾で……そのスカーフは僕達が母さんの誕生日にあげた、母さんの形見なんです」

 

 大和の質問に答えずに黙ってしまった進に代わって、守が答えたが、その守も泣きそうな顔をしていた。

 間違いなく、此のスカーフは母親が死んだその日に身に付けて、遊星爆弾で蒸発した遺体に代わって死に場所に唯一残っていた物だろう。

 大和は思う事が有ったらしくスカーフを一時強く握ったが、兄弟にとって大事な形見のスカーフを受け取るのを拒否しようかと思っていた。

 

「此れ、お母さんの形見なのでしょ?」

 

「……だから、大和に貰ってほしいの」

 

 多分……と言うより間違いなく、守の了承下での進なりの大和への激励なのだろう、進は一歩前に出て更に大和にスカーフを差し出した。

 そのスカーフを大和は両手で受け取って立ち上がると、スカーフを右手で軽く伸ばして見つめた。

 

「…此の手に五月蝿い鈴谷が教導役の1人だったのが、幸いかもね」

 

「「……?」」

 

 大和の一人言に、進と守がお互いの目線を合わせてキョトンとしたが、大和はスカーフを自分の首に巻いて軽く縛った。

 

「…どお?」

 

「…っ!」

 

「あ、こら!」

 

 大和の腰に進が抱き付き、その事で守が急いで引き剥がそうとしたが、大和がそれを止めて進の頭を撫でていたが、何故か大和は進を、黒髪の少女に重ねてしまって内心戸惑っていた。

 

「大和ぉ~…悪いんだけど、アケシが来てほしいんだって!」

 

 大和の背後の通路の奥から巡洋艦スズヤが呼び、つい先程頭に思い浮かべた教導役の1人の次代の存在に少し驚きつつ、大和は進を引き剥がした。

 で此の間にナカが出てきてスズヤの脇に立ったが、そのスズヤに横目で冷たく見られていた。

 

「ほら、泣かない。

男の子なんでしょ?」

 

 進が泣き顔で嫌そうだったので、大和は進をあやし、更に守が背後から進の両肩を掴んだ事とあって未練を感じさせながら納得してくれた。

 

「おお~!! そのスカーフ、いかしてんじゃん!

だけど、こうやったらもっと良いよ」

 

 どうやら此のスズヤも先代鈴谷と同じくファッションには五月蝿いらしく、側に来た大和のスカーフを修正した。

 因みに此のスズヤもイスカンダル遠征への参加志願者だったが、スズヤ自身は五体満足なのだが、彼女の艤装が損失に近い大破状態だったので不合格となって重傷の長姉モガミと共に地球残留となっていた。

 で、その大和がスズヤと共に立ち去ろうとしたが、進が守を振り切ってまた大和に駆け寄った。

 

「ねえ、大和!

大和は帰ってくるよね!?

此所に帰ってくるよね!?」

 

 スズヤが「Oh~!」とか言っていたが、当の大和は内心は“そんな事は知らない”と思い、その表れとして右眉が少し動いた。

 だが、大和はその事を実際に言う事が出来ずに硬直していた。

 

「ねぇ、答えてよ、大和!!」

 

「あのね…」

 

 大和に代わってスズヤが進に答えようとしたが…

 

「帰ってくるよ。

必ず此所に帰ってくるよ」

 

…自分自身でも分からないまま、大和は進に帰ってくる事を進に約束し、此の事に守が驚き、スズヤとナカが“えっ”となっていた。

 

「…っ!」

 

 で、進は大和の返事に笑って、新たに作られた腕を地に水平にして右拳を左胸に当てる敬礼をした。

 なんとも可愛らしかったが、色々間違っていたので、大和がしゃがんで修正した後に立ち上がって同じ敬礼で答礼した。

 

「それじゃ、お気をつけて!」

 

 更に進の脇に来た守も従来型の敬礼をし、そのまま大和が答礼しようとしたが、守も大和に修正して貰いたがっているのを察して、形だけ修正した後に答礼した。

 因みに先述の通りに防衛軍には敬礼が2種類あって、右拳を左胸に当てる敬礼は尉官以下の者達は基本的に此れで、通常の敬礼は佐官以上(佐官のみは更に艦長や司令官の者のみ)は此方であり、艦娘達も戦艦娘と大型空母娘のみが通常の敬礼で、他の者達は右拳を左胸に当てる敬礼(但し旗艦を務める者は例外が適用)であった。

 

「行くぞ、進!」

 

「うん!!」

 

 守が進の手を引いていき、進が一旦止まって大和に“バイバイ”と手を振って去っていった。

 

「良い子達だったねぇ~。

アンタにはちゃんとイスカンダルに行って帰って貰わないとね」

 

「さぁ、どうですかね…」

 

「そんな無責任な事を言っちゃ、駄目ぇ~…」

 

 スズヤが大和をちゃかしていたが、当の大和は進と守に答えるも本当に出来るのかの自信がどうしても持てずにいた。

 只、大和は自分でもなんとかしたがっているのか、移動中、頻りにスカーフの端を右手で弄っていた。

 因みに大和は無意識の内にスカーフを弄る事を手癖にしていくのだが、今回の此れが第一回目であった。

 

「…We 're off to outer space♪」

 

 で更なる移動中、退屈だったのか、スズヤは後頭部で腕を組んで歌いだした。

 

「We 're leaving Mother Earth♪

To save the human race our Star Blazers♪」

 

「何ですか、その歌?」

 

「“Star Blazers”、日本語だと“我ら星行く艦娘”って言うアメちゃんの艦娘の誰かが作った歌」

 

「なんか良さそうな歌ですね」

 

「そう?

スズヤは此の歌、なんか軍歌っぽくて堅苦しいから、あんまし好きじゃないんだけどね」

 

「じゃ、何で歌うんですか?」

 

「だって、もう1つの“銀河航路”は男臭くて、もっと嫌だもん」

 

「えぇ~…ナカちゃんは銀河航路の方が良いよ!

あ、でも、Star Blazersも捨てがたいな」 

 

 スズヤとナカが言い合っていたが、当の大和はあまり歌関連に興味がなさそうで、2人を横目で見ているだけだった。

 だが、慰問に来た宝塚歌劇団の公演を見てから「宝塚に私は入る!」が口癖になった先代那珂の影響が濃くなったらしいナカ(実際そうで、自称“艦隊のアイドル”)が、スズヤが呆れているくらい歌の事で熱く語っていた。

 

「何でアンタが此所にいんのよ!?」

 

 で、十字路を通過しようとしたら左の方からズイカクが大和に叫んで近寄ってきた。

 

「悪い?

私も徴集されたの」

 

「こんな特攻みたいな計画に参加するって言うの!?」

 

「そう言うのは、あの沖田って言う人に聞いてよ。

私はただ命令されただけだから」

 

「命令? 預かり待遇のアンタが?」

 

「私、復隊したんで、もう預かりじゃないの!」

 

 嫌悪感全開のズイカクに、ムスッとした大和も変に煽っていた為、なんか険悪な空気が漂い始めたのでスズヤとナカが距離を取ろうとしていた。

 まぁ、そんな中でも大和が無視して行こうとしたので、ズイカクが大和の左手を掴んで止めて、自分の方に振り向かせた。

 

「大和、アンタ何を企んでいるの!?」

 

「別に、今更私1人でどうにかなる訳じゃないでしょ」

 

 ズイカクが更に大和を問い詰めようとしたが…

 

『緊急事態発生!! 総員戦闘配備!!』

 

「「「「…っ!?」」」」

 

『繰り返す、緊急事態発生!!…』

 

…その直前に警報が鳴り響き、アナウンスが流れた事で慌ただしさが感じ取れた。

 

「また、ガミラス艦隊がゲリラライブをしに来たんだ!」

 

「だけど、ガミ公のが来たんなら、そう言うんじゃない!?」

 

 アナウンスの内容に奇妙さを感じて、ナカとスズヤが疑問を感じていたが、ガミラスが何らかの攻撃をしてきたのは確実であった。

 此の為、4個艦隊が編成されたイスカンダル遠征艦隊の第三艦隊の副旗艦(旗艦はショウカク)であるズイカクは、何かを命じようとしたが…

 

「スズヤとナカは艦娘詰所で待機!

ズイカクは第三艦隊と合流!

私は戦闘指揮所に行きます!」

 

…その前に大和が3人各々に命令した。

 

「「了解!!!」」

「了解!!!………?

なんでアンタが命令すんのよ!!?」

 

 スズヤ達3人の返事を聞かずに大和が走り去ろうとしたが、スズヤとナカに合わせて了解してしまった事に気付いたズイカクが、大和に怒鳴って抗議した。

 

「…私が第二艦隊の旗艦だからよ!

空母娘のエースさん!!」

 

 角を曲がった直後に顔だけを出した大和の返事にズイカクがギョッとした。

 と言うのも、先述の通りにイスカンダル遠征艦隊は4個艦隊が編成されたのだが、冥王星以降の外宇宙からリアルタイムでの通信指揮が取れないと言う指揮方法の問題で、現場の艦娘にある程度の自由指揮を与える遠征艦隊と言う体制を取った事で、形だけとなって地球に残留する第一艦隊(旗艦は秘書艦兼任でキリシマ)ではなく第二艦隊旗艦に先任指揮権が与えられると言う事なのだ。

 つまり、ズイカクは今後は大和の指揮下に入る事になるのだ。

 

「アイツが、私の上官!?」

 

 顔を青くして硬直しているズイカクに、ナカは“御愁傷様”と、スズヤは“()(鹿)”との意味合いで苦笑して去っていった。




 感想・御意見お待ちしています。

大和
「大和に真っ赤なスカーフ、此れってあの歌の影響ですよね?」

 はい、2199を見返して例の歌を聞いた時に、大和が宇宙戦艦化したら真っ赤なスカーフを装備させようと思いました。
 因みにボツの理由を含めて初期案では“リボンの代わりにポニーテールにした髪に巻く(スカーフを弄る手癖がやりにくい)”“廃止するZ旗腕章の代わりに右腕に巻く(武蔵や長門なら兎も角、大和には合わない)”“セーラー服の首回りの注連縄状の物と変える(赤一色になって目立ちにくい)”と難航していましたが、結局“スーツ姿の森雪”を見てオーソドックスに首に巻く事に落ち着きました。
 此れにはPIXIVでの宇宙戦艦化した大和のイラストでは、大和時代と変わってなかったり、弄られネタや不満になっていた、難航していた首の金属輪の解決策(撤去)にもなりました。

 だからナカ、アンタには冥王星陥落後に一仕事をお願いするよ。

那珂
「お仕事? 何を?」

 ほらぁ~、最近のアイドルは自分の歌を自分で作詞作曲しているでしょ?

那珂
「……っ!(何かを察した)
分かりました!!
そう言う事は、此の艦隊のアイドル・那珂ちゃんにお任せ!」

 因みに大和の“スカーフを弄る”との手癖は、聖剣伝説3のリース(癖と言うか、待機エフェクトが、頭の羽飾りを弄る)が元になりました。

武蔵
「私だったら、長くて白いスカーフを、ネクタイみたいに巻いてるだろうな」

 アンタは既に、体全体でそんなのをやってるみたいだろ!

武蔵
「うっ」



















長門
「なんで大和は子供に慕われるんだ!?
私だって、古代兄弟にああされたら…(何か予想していたが、邪な方に脱線していっている)……ゴフッ!!?」

陸奥
「どう、長門?
“こんにちは2018年”ハンマーの味は?」

長門
「…ね、年末年始だったから、出来た……二話連続の、期間限定版CITYHUNTERネタ…(ガクッ)…」


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第15話 星間ミサイル、迎撃せよ

 前回、二種類の敬礼の使い分けを書き忘れたので、付け足しました。


 それでは本編をどうぞ


――― 横須賀・戦闘指揮所 ―――

 

 

『…哨戒中のナトリから、ガミラスの星間ミサイル群が突然現れたとの報告が入った!』

 

 大和が戦闘指揮所に駆け込んだ時、藤堂がテレビモニター越しに、星間ミサイル群の出現を沖田に伝えていた。

 更にアケシの所にいて不在のキリシマに代わって秘書艦を務めているナガラを従えている沖田の他に、新しい服と改装された艤装を纏っている第二艦隊の面々……ハツシモ、イソカゼ、ハマカゼ、アサシオの4人(カスミは第三艦隊に配備)もいて、どうやら大和が最後みたいであった。

 

「星間ミサイル?

遊星爆弾じゃないのか?」

 

『ああ、ミサイル群は横須賀に向かっているとの情報も入った。

その子達の事がガミラスに知られたようだ』

 

 藤堂の言う通り、彼の横で映っているモニターにミサイルと思われる円柱型の物体が多数、宇宙を突き進んでいた。

 藤堂が顔を引き吊らせるだけでなく、部下達の怒号が聞こえている辺り、防衛司令部の面々は此のガミラスの前例無き攻撃に慌てふためいている様だった。

 此れは後日分かった事だが、どうも遠征艦隊の要員全員に搭載した波動エンジンの起動時に発生した高エネルギーをガミラスに探知されたのが原因だった。

 だが此の間にも、ミサイル群は地球に向かっていて……最終段階に入ったらしく、次々に翼と思われる4枚の物体を展開し、百合の花みたいな形に変型した。

 

「ナトリ達は迎撃出来なかったのですか!?」

 

『発見位置が悪かったらしく、取り逃がしたらしい』

 

「緊急発進させる!

第二、第三艦隊、出撃せよ!!」

 

 顔面蒼白のナガラを他所に直ちに沖田は出撃を命令したが、その直後にロシアから派遣と言う形で第四艦隊に編入された1人であるヴェールヌイが駆け込んだ。

 

「司令、アカシから伝令!

大和の艤装の準備に、あと10分は掛かるそうだ!」

 

「そんなには待てん。

“5分でやれ”と伝えろ」

 

 軍隊特有の無茶な時間短縮を沖田が言い放ち、ヴェールヌイが“ぐっ”となっていたが、沖田は早くも無視していた。

 

「ヤハギ、大和の代わりに第二艦隊の指揮を取れ!」

 

「…ヤハギ?」

 

「了解!!」

 

 沖田が指示した名前に大和が反応して、返事のあった方に振り向くと…

 

「第二艦隊、お預かりします!」

 

…直ぐ脇に自分とよく似た容姿と服装の巡洋艦娘……坊ノ岬沖海戦で護衛役の第二水雷戦隊を束ねていた軽巡矢矧の次代であるヤハギがいて、沖田に敬礼した後に大和に振り返って微笑んだ。

 そんなヤハギがカタパルトに乗って射出され、ハツシモ達4人も次々に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・地上 ―――

 

 

「…っ! オオヨド、状況はどうなってるの!?」

 

「既に戦闘衛星が迎撃を開始しているけど、1割も落とせてないわよ!」

 

 ヤハギ達が地上に出たら、地対空ミサイルが次々に発射されている中で、近くにレシーテリヌイと丹陽(実は此の子、中国が所在を知らない事に突け込んで日本が勝手に編入、要するに猫ババされた)の2人を従えたオオヨド(アケシ旗艦の第四艦隊所属)がいて、迎撃率の悪さに舌打ちをした。

 更に不味い事に、星間ミサイル群の幾つかは多弾頭だったらしく、一部の星間ミサイルから小型ミサイルが大量に放たれていた。

 此の事から、別の所からショウカク以下の第三艦隊が次々に射出され続け……チトセ、イスズ、アキヅキ、テルヅキ、ハツヅキの順に出た後に、最後のズイカクが妙に遅かった為に姉に注意されていたが、上昇しながら退避を開始していた。

 まぁ、彼女達の主目標は1年以内にイスカンダルに赴いて帰ってくる事、横須賀の人々には悪いが、下手に傷付いて時間を掛しまっては本末転倒だ。

 ショウカク達に続く事も考えられたが、ヤハギとハツシモ達は違う選択肢を選んだ。

 

「私達は此所に留まるわよ!

大和が出てくるまで、時間を稼ぐわよ!」

 

 ショウカクの決断も正しかったが、此の遠征の要は大和、大和がいなくなっては話にならない。

 現に沖田はショウカクやヤハギに何も言ってこなかったし、ヤハギの指示にハツシモ達4人だけでなくオオヨド達3人(レシーテリヌイと丹陽が少し戸惑っていたが…)も了解の意思表示で頷いた以上はやり抜くだけだった。

 

「来ます!!」

 

 遠征用にロシア製の高性能レーダーを持っていたオオヨドだけでなく、ヤハギ達のレーダーでも星間ミサイル群が捉えられる所まで迫ってきていた。

 当然、ヤハギ達は前進しようとしたが…

 

「You達は、待機!!!」

 

…第三者からの通信が入って、驚き戸惑ったヤハギ達だったが、東の方の上空から複数の砲弾と衝撃砲の光線が星間ミサイル群に向かって飛んでいき……更にミサイルや空間魚雷も遅れて飛んで言って、星間ミサイルの先陣が爆発していた。

 

「ほ、砲撃?」

 

「アレは戦艦級のだ」

 

「でも誰のだ?

キリシマは地下都市にいる筈だろ?」

 

 更に東からコスモファルコンの編隊が飛んできた事もあって、レシーテリヌイとイソカゼが茫然として、ハマカゼが誰にともなく疑問を言っていたが、ヤハギとハツシモはなんとなく察するも“まさか”と目線を合わせていた。

 だが、星間ミサイルを迎撃して東から向かってきている者達……その中で旗艦にして戦艦娘と思われる金髪の女性が先頭をきっていた。

 

「ヤーハギ、あのミサイルはWeに任せて、最終防衛線としてそこで待機してなさい!」

 

「アイオワ、アイオワなの!?」

 

 星間ミサイルの迎撃……大和の援護に、いくら日本の長年の同盟国であるアメリカが、唯一動ける戦艦アイオワを空母サラトガや複数の駆逐艦娘を従えて、やって来た事に他共々驚き戸惑っていた。

 まぁ、此れは当然だろう、深海棲艦戦後も二百年以上もアメリカや地球の為にニュージャージー、ミズーリ、ウィスコンシンの妹達と共に代を重ねて活躍し続けたアイオワ(要するに戦艦『アイオワ』の艤装の15代目継承者、彼女は戦艦アイオワ15世と言うべき艦娘)を援護の為だけにアメリカが彼女達を遣わしたんだ。

 況してや、アイオワはガミラス戦で防衛艦隊の総旗艦を最も多く務めた存在なのだから尚更であった。

 

「驚いてはまだまだ駄目よ!」

 

「は?」

 

「Fire! Fire!」

 

 アイオワの返しにヤハギがキョトンとしたが、まだまだ飛んでくる星間ミサイルに、今度は西の方から砲弾と衝撃砲、更にミサイルと空間魚雷が飛んできて星間ミサイルを次々に迎撃していた。

 

王立艦隊(ロイヤルネイビー)到着!

此より日本艦隊を援護します!」

 

 次に西から空母アークロイヤル(現在、コスモファルコンが発艦中)と4人の駆逐艦娘を引き連れた“戦姫”の単語を具現化したかのような戦艦娘……キリシマ達コンゴウ級戦艦とほぼ同世代のクイーンエリザベス級戦艦のウォースパイトであった。

 

「イギリス艦隊まで来た!!」

 

「いえ、もっと来てます!」

 

 驚いているアサシオにオオヨドが指摘した通り…

 

「ああー!!!

私達が最後じゃない!」

 

「アンタがモタモタしていたから、こうなったんじゃない!!」

 

「Oui!!!」

 

…イギリス艦隊の後方から、ビスマルク、ローマ、リシュリューのガミラス戦開始前後に竣工した3人の戦艦娘を主体として、巡洋艦プリンツ・オイゲンとジュゼッペ・ガリバルディにポーラ(二日酔いで目と顔色が悪く、プリンツ・オイゲンが苦笑してジュゼッペ・ガリバルディが露骨に溜息を吐いているのは……見なかった事にしよう…)、駆逐艦のマックス・シュルツ(通称:マックス)とリベッチオの計8人の独伊仏連合艦隊(更に衛星軌道にグラーフ・ツェッペリンとアクィラの2人の空母娘がいた)が、主砲と空間魚雷(ミサイル)を連射しながら近付いてきていた。

 只、ビスマルクは監禁中の処を特別処置としての一時釈放での出撃の為に手錠が付けられたままな上、変な行動を起こさないようにローマの主砲の3基ある内の1基がビスマルクに常に向けられていた。

 

「すぅごいです!

欧米の5大戦艦が集結ですよお!」

 

「6大です!!!

ガングートも入れて6大戦艦です!!」

 

「でもアイツ、結構な歳じゃん。

来てもあんまり役立つと思えないよ」

 

「なんですって!!!」

 

 此の5年間のガミラスとの戦いで、深海棲艦戦時の先代達と同様に功績を上げ続けていた(と言っても戦略上はほぼ常敗だったが…)5人の戦艦娘が此所に集結した事に全員が驚き戸惑っていた。

 只、ロシアの戦艦ガングートのみは重傷の為に未参加だったので、レシーテリヌイが頬を膨らませて丹陽に怒鳴り、更に毒を吐いたアサシオに怒っていた。

 因みに丹陽がアイオワ達5人の戦艦娘達に興奮していたが、此れには宇宙戦艦の建造がまともに出来ず、建造するもガミラスに全員沈められた事からの、中国の戦艦娘の羨望としての現れであった。

 まぁ“空母は誰でも作れるが、戦艦は神様にしか作れない”の言葉通りに建造が非常に難しく、欧米以外で唯一戦艦娘を10人も揃えていた日本(但し、空母を主体とする日本はあまり戦艦娘達を前に出したがらない、此の為に日本戦艦娘全員の戦績がイマイチ)に、中国はお隣韓国共々嫉妬していた。

 

「…藤堂長官、感謝します」

 

 当然ながら、どの国々も傷ついて艤装も壊れている(その例として、アイオワが壊れた第一主砲を外して八連装ミサイルランチャーを代わりに載せている)事もあって、歴戦の彼女達を派遣させるとは思えなかったが、此の様な事態に備えた藤堂が、そんな国々を説得したのだろうと、ヤハギが小声で藤堂に礼を言った。

 

「何しているの、Japon達!!

ミサイルはまだまだ来ているのよ!」

 

 星間ミサイルの多さで苛立っていたリシュリューの怒鳴りでヤハギ達が「はい!!」と一斉に答え、大和が出てくるだろう射出口の上空に展開した。

 

「みんな、大和が出てくるまで持ちこたえるわよ!」

 

 ヤハギの号令でオオヨドや駆逐艦達が「おお!!」と答えた。

 

「…でヤハギ、二百年以上眠っていた眠り姫は、何時目覚めるの?」

 

「…っ!?」

 

 アイオワ達をすり抜けた星間ミサイル群を他の者達と迎撃していたヤハギだったが、突然のアイオワの質問にギョッとして、空の彼方にいるアイオワの方に振り向いていたが、目視出来ない距離にいるにも関わらずにアイオワのにやついた顔が見えた気がした。

 否、アイオワだけでなく、ウォースパイトやローマにリシュリューの意味ありげな、ビスマルクのふてぐされての笑みも感じ取れ、彼女達が此所に来たのはイスカンダルに赴くのがキリシマではなく大和だと知り、大和に地球の命運を託すに相応しいかの見定めが目的だと察した。

 地球を救うべき戦艦娘は地球最強の者でないといけない、もし大和が不適合だと判断したら、アイオワ達は大和に代わって行こうとしかねないと思って、ヤハギが顔を引き吊って笑い、レシーテリヌイと丹陽以外の駆逐艦も苦笑していた。

 

「大和さんなら大丈夫ですよ。

あの人は今も昔も地球最強の戦艦です!」

 

「そうそう、此れからは6大戦艦になるんだよ。

しかも大和が最強格だ」

 

「7大です!!

ガングートも含めて7大戦艦です!」

 

 アサシオがレシーテリヌイに怒鳴られているのはおいといて、ハツシモに言われなくても、その事は此の場にいる日本艦娘達の思う事であった。

 

『不味い、何本かに抜けられた!!』

 

「みんな、下手こいたら大和の顔に泥を塗る事になるわよ!」

 

 舌打ちしてのローマの叫びに、ヤハギの号令下に全員(レシーテリヌイのみ少し遅れた)が身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・戦闘指揮所 ―――

 

 

 星間ミサイル群の迎撃が行われている光景をモニター越しに見詰めていた大和だが、アイオワ達海外戦艦娘達(特にアイオワ)が現れた事で自分でも分からないまま無言で右拳を強く握っていた。

 直ぐ脇でヤハギ達に色々伝えているナガラを他所に、沖田はそんな大和を静かに見詰めていた。

 

「大和の艤装、来ました!!」

 

「アガシさん達も出撃したのです!」

 

 で、待ちに待った大和の艤装が、イナズマを従えたキリシマによって台車で運ばれてきた。

 

「…え?」

 

 だが、自分の艤装に大和(とナガラ)は自分の目を疑っていた。

 

「起動は出来たのか?」

 

「私の艤装でやったんです。

間違いありませんよ」

 

 そんな大和とナガラを無視した沖田の質問にキリシマが答えたが、大和の艤装の起動に使われた為にキリシマの艤装は初期状態になってしまい、当面はキリシマは艦娘として活動出来なくなってしまった為、沖田への返事に少し毒が含まれていた。

 

「…じゃあ、大和、出撃ですよ」

 

「此れを纏って行けって言うのですか!?」

 

 ナガラから秘書艦職を再引き継ぎをしたキリシマの指示に、大和が自分の艤装を指し示しながら怒鳴った。

 

「ちゃんと近代化改装は実施されている」

 

「……サミダレに、やらせてませんよね?」

 

 大和の黒い返しにキリシマ、ナガラ、イナズマの3人が苦笑していたが、沖田は「さっさと纏え!」と無言で命令していた。

 暫く変な沈黙があったが、星間ミサイルの着弾の衝撃での振動があった後、大和が諦めに近い形で折れた。

 

「……陸奥みたいに爆死したら、恥かくのは貴方達ですからね」

 

 溜め息を吐いて、渋々艤装を纏った。

 

「……っ!?」

 

 艤装を纏った大和は何かを感じて驚いたまま硬直した。

 少しした後に艤装を左右順に振り向き、自分の両掌を見詰めていた。

 

「……此れは…」

 

「そうだ…」

 

 何かを察した大和に、ナガラとイナズマが分からず戸惑っていたが、キリシマが笑顔で頷き、沖田が何かを言った。




武蔵
「作者に代わって、感想か意見をお願いする」

大和
「…いよいよ次回、大和の二大イベントが同時に行われます。
回想で使われるらしいけど、此れで漢字表記とお別れとなると、少し寂しい」

武蔵
「ガングートが出なかった最大の理由は、作者がガングートを持ってない所為だって聞いたが?」

大和
「ええ、私怨とか公私混同とか職権濫用とか言えますが、艦これ原作で作者未所有艦は基本的に出さないそうです」

武蔵
「そもそもガングートを取り零したのは、作者が土壇場で変な欲を出した為に丙から乙に上げたのが原因だろ?」

大和
「だけど、最大の戦犯は隼鷹でしょ?
あの人、燃料と時間の問題で最後となった出撃で、第一マスの初弾で大破しましたからね。」

武蔵
「ああ、そうだ!!
HP:1の大破状態での四ヶ月間の晒し刑にしていたが、まだまだ生温い!」(同時のイベントが、武蔵の初陣イベントだった為に機嫌が悪い)

大和
「作者初イベントの鉄鋼海峡での高雄級四姉妹以来の刑執行だったそうですよ(苦笑)」

(無念の退却となったE4ステージにて、大破常習犯だった高雄級四姉妹に対し、高雄・愛宕・摩耶の三人には“バーミリオン会戦でのラインハルトの問題発言”さながらに死をもって償わせ、生き残った鳥海には晒し刑を執行。
その二ヶ月後に愛宕、摩耶、鳥海の三人には恩赦が発令されたが、高雄だけは“霧の艦隊戦”での一時恩赦があるも大破が相次いだ為に和解と完全恩赦に八ヶ月掛かった)




















武蔵
「なぁ、大和、また作者かいないんだが?」

大和
「ええ、前もありましたが、作者なら…」

















































ガングート
「作者は何所だ!!?
自業自得にも関わらずに私を出演させなかった、あの愚か者作者は何所だ!!?」




















大和
「さ、作者なら、ついさっき、ソビエツキー・ソユーズ級戦艦を調べに、サンクト・ペテルブルグに行きました!」

武蔵
「だから、そのヱヴァンゲリヲンのポジトロンライフルを下ろせ!」

大和
「てか、四話連続で、ジャンプ系漫画ネタ!!?」


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第16話 実装、宇宙戦艦ヤマト

――― 横須賀 ―――

 

 

「…っ! アカシ達が出てきた!」

 

 アイオワ達の後衛として、ガミラスの星間ミサイル群を迎撃していたヤハギ達だったが、ハマカゼが遠くの方の射出口からアカシ、タマ、ヴェールヌイ、アマツカゼの4人が飛び出してきたのに気付いて、もうすぐ大和が出てくる事を察して、強張っての笑顔を見せ合っていた。

 

『何だアイツは!!?』

 

 で、そんなヤハギ達に水を差しかねないグラーフ・ツェッペリンの悲鳴が通信機から聞こえた。

 

『どうした、グラーフ!!

何があった!!?』

 

 当然、グラーフ・ツェッペリンの同僚であるビスマルクが大声で訊ねたらが、当の本人は答えようとしたなかった。

 

『…此方、アクィラ!!

ガミラスの星間ミサイルの第二波がやってきたんです!』

 

『第二波!?

それが何だって言うの!?』

 

 グラーフ・ツェッペリンに代わってアクィラが答えた事に少し驚きがあったが、直ぐにローマの質問が大声で飛んだ。

 

『それが、第二波のミサイルは大型なんです!

一波のミサイル群の倍以上あります!』

 

 アクィラの悲鳴に近い報告に全員が“えっ”となり、直ぐにレーダーやサでタブレット(みたいな物)で確認すると……アクィラの言う通り、同型だが今までより遥かに巨大な星間ミサイルが向かってきていた。

 

「で、でけぇ…」

 

 アサシモの呟きは全員の思いであり、全員が冷や汗を流しながら硬直した。

 

「不味いです!!

アレが直撃したら、横須賀処か関東が吹っ飛びます!」

 

 オオヨドの分析結果を言われなくても、大型星間ミサイルの危険度は誰もが見れば分かる代物であった。

 

『アイツを落としてはNoよ!!』

 

『直ぐに地下都市に避難指示を出すのです!』

 

 真っ先に我に返ったアイオワ、彼女に続いたリシュリューの言う通りに、全員が各々に動き、アイオワ、ウォースパイト、ビスマルク、リシュリュー、ローマ5人が大型星間ミサイルへの砲雷撃を開始し、更に彼女達5人の従属艦達も続いた。

 

『駄目です!!!

遅らしたり反らす事が出来ても、破壊出来ない!!』

 

『しかもアイツ、軌道修正を直ぐしてるわよ!!』

 

 だがウォースパイトとビスマルクの絶叫通り、大型星間ミサイルは主力の戦艦娘の5人(➕α)がかりの攻撃に全くの無傷であった。

 

「…何処まで私達から希望を奪うんですか、ガミラスゥゥー!!?」

 

 アイオワ達でさえ破壊出来ない大型星間ミサイルに、ヤハギ達が茫然としてハマカゼが叫んだ。

 

「大和はまだ出てこないのか!!?」

 

 イソカゼの言う通り、考えられるのは横須賀や関東を犠牲にしてでも大和を連れ出すしかない……否、イソカゼ達は大和なら大型星間ミサイルを迎撃してくれるのではと淡い希望を抱いていた。

 

「キサラギ、地下都市の避難は出来てるの!?」

 

『無理です!!

時間がありません!』

 

 キサラギのオオヨドへの返事が彼女達に追い討ちを掛けようとしたが…

 

『ヤハギ、大和が出るわよ!!!』

 

…此処で待ち望んだ報せが、キリシマによって伝えられ、ヤハギに喜びが出た。

 だが、背後の射出口から上がってきた大和に振り向いたら、全員がギョッとした。

 何故なら、大和の纏っていた艤装は、呉空中戦での損傷が修復されていない錆状態のままだったからだ。

 

「…まさか……間に合わなかったって、言うのですか?」

 

 ハツシモの言う通りにヤハギ達もそう思い、ビスマルクとローマが愕然とし、リシュリューが舌打ちをして、アイオワとウォースパイトは頭を押さえていた。

 だが、当の大和は射出口から歩き出てきて……なにもない平地で立ち止まると、目を瞑って大きく息を吐いた。

 

「アカシ、アレはどう言う事なの!?」

 

「ま、まぁ、見てなさいって」

 

「見てなさいって……?」

 

 アカシ達が近くにきたので、ヤハギがアカシの胸ぐらを掴んだので、アカシが宥めてヤハギが何かを言おうとしたが、急に地鳴りが響だしたので硬直した。

 更に続けて地震が起こり………大和を中心とした巨大な切れ目が出来た。

 思わずヤハギ達が悲鳴を上げたが、当の大和は切れ目に落ちずに宙に浮いており、更に切れ目から何かの微粒子が次々と飛んでいき、大和の消失していた第一主砲と損傷していた第三主砲を中心にへばり付いていった。

 此のお陰で第一、第三主砲を主体に艤装の至る処が完全に覆われて、大小問わずに岩を多数くっ付けたみたいになっていた。

 更に此の事での副作用で、多数の岩石も大和のポニーテール諸共浮かび上がり、中心にいる大和が穏やかな表情であった事もあって、何とも言えない光景が出来ていた。

 

「…凄い、地中のレアメタルを取り込んでいる!」

 

「アカシ、まさかアレって改二実装なの!?」

 

 誰もが大和の現状から目を離せないでいたが、オオヨドの分析報告から、大和に改二実装……艦娘が能力を劇的に向上させる現象が起こっているのだと分かったヤハギがアカシに大声で質問した。

 

「ええ、そうよ。

だけど大和のはちょっと異端だけどね」

 

「ちょっとって、アレがちょっとと言えるか!!」

 

「それに大和の改二は計画ではあったが、資源不足で出来なかったって聞いているが、改二を今更実装しても役に立つ訳が無いぞ!」

 

 だがアカシにアサシオとイソカゼが反論した通り、大和のは異質なモノであった。

 その間に大和のは最終段階に入ろうとしているらしく、艤装の露出部分でひび割れが出来て、それが全体に広がった為に全員が“失敗”が頭に浮かんだが、それを否定するかの様に変型して動かなくなっていた筈の第二主砲が旋回して定角度に戻り……第三、第一主砲を覆っている岩石から、深海棲艦当時は日本最新最固のVH鋼板より遥かに優れた硬化テクタイト製の三本の砲身が岩石を突き破ってせり上がった。

 最後に目を開いた大和が何所からか、付属が二号一型電探2基からコスモレーダー4基に更新された新型15m測距儀を後頭部に着けて髪を整えた。

 

『ヤマト、発進!!!』

 

「宇宙戦艦ヤマト、推して参ります!!!」

 

 沖田の号令に大和が復唱して真上に飛び上がると、艤装の錆びた表面が岩石と共に一斉に剥がれ落ち、その下から基本形体は対空強化型(改形態)と変わりないが、傾斜式の煙突が楕円型から直方体となり、首の金属輪と三本マストの和傘が廃止され、左右の船体型艤装の内側に円柱型の何か、更に左側のみにはほぼ四角形の楯みたいな物が吊られていたが、総合的には以前より遥かに洗礼された艤装が現れた。

 かくして、今此処に絶望の象徴である海の女王・戦艦大和は、希望の象徴である宇宙の女王・宇宙戦艦ヤマトにへと脱皮するかの様に生まれ変わった。

 

『オオヨド、大型星間ミサイルの現状はどうなっているんだ?』

 

「…あ、はい!!

ミサイル到着まで距離1500キロ!」

 

『やはり駄目だな。

アカシ、このまま波動砲の発射実験を行う。

目標、大型星間ミサイル!

アイオワ以下の救援艦隊は退避!』

 

 沖田の指令にヤマトは兎も角として、アカシがアマツカゼと共にギョッとしたが、ヤハギ達は“波動砲”と言う聞き慣れない単語に首を傾げていた。

 だがヤマトの艤装の左右の内側に波動砲の物と思われる物体が存在していた。

 

「波動砲はまだ最終チェックが済んでません!!」

 

「それ以前に、こんな所で波動砲を使えって言うの!!?」

 

 アカシだけでなくアマツカゼもが沖田に反対した。

 更にアマツカゼの言う通り、アイオワ達の目の前で波動砲使用に危険性が感じられた。(だからこそアイオワ達が来ていた、とも言える)

 

『撃てんのか?』

 

「……いえ、問題なのは重力アンカーだけなので、ハツシモ達に牽引ビームを使わせて代用させれば、発射は可能、だと思われます」

 

 アカシの沖田への報告に、得体の知れない兵器の代用部品にされる事になりそうなハツシモ達4人は、お互いの目線を合わせて困惑していた。

 その脇で、免れたレシーテリヌイと丹陽は揃って溜め息を吐いたので、アサシオとイソカゼに睨まれていた。

 

『時間が無い上に住民避難が出来ていない以上、他に手は無いんだ。

必ず成功させろ!』

 

「…分かりました。

ヤマト!!」

 

 最後に沖田が強迫に近い事を言ったので、「ユウバリだったら上手くやるだろうな」と内心呟きながら苦笑したアカシ(対してアマツカゼは連装砲君と共に仏頂面だった)は直ぐにヤマトを呼び出した。

 

「アンタ、波動砲のマニュアルはちゃんと読んでるわよね?」

 

「ええ、一様。

だけど、海外製の武器すら扱った事無いから、異星人の武器を扱える保証は無いわよ」

 

『失敗すれば、死ぬまでだ』

 

「………」

 

 なんか無責任な発言をしたヤマトだったが、正論だが黒い沖田の返しに、小声で何かを呟いていた。

 

「距離1200キロ!」

 

『波動エンジン内、圧力上げろ!

非常弁、全閉鎖!』

 

 だがオオヨドが報告する通り、大型星間ミサイルは此の間にも飛んできていて、直ぐに沖田の指令が飛んだ。

 

「……波動エンジン、圧力上げます!

非常弁、全閉鎖!」

 

『波動砲への回路開け!』

 

「…回路……開けます!」

 

 本来ならヤマト1人で行う行為なのだが、今回は試射の為にアマツカゼが左側から自分の艤装……じゃなくて連装砲君の頭とヤマトの艤装をケーブルで繋げて操作を開始した。

 

「波動砲、薬室内圧力上がります!!……っ!」

 

 更にアカシも右側からアマツカゼと同じ様に自分の艤装とヤマトの艤装を繋げ、予想以上の高エネルギーに驚きなから波動砲の確認と調整に入った。

 

「全エネルギー波動砲へ!

強制注入機、作動!」

 

「強制注入機、作動した!」

 

「牽引ビーム、ヤマトに接続!

全員問題無し!」

 

 アマツカゼとアカシが波動砲発射の下拵えをしている間に、イソカゼ達がヤマトの頭上から牽引ビームを繋げていた。

 

『波動砲用意、ヤマト、身を任せろ』

 

「ヤマト、此処からはアンタの役目よ」

 

「………っ!?」

 

 アカシにサムズアップをして、沖田の指令通りに宙に浮くのを止めたヤマトだったが、ヤマトの予想以上の重さ(「失礼な!!!」byヤマト)にイソカゼ達が対応出来なかった為、ヤマトが一瞬沈んだので、そのヤマトがイソカゼ達に睨んで抗議して、イソカゼ達4人が苦笑していた。

 

『波動砲、安全装置解除!』

 

 だがそんな事などお構い無しに、沖田は次の指令を出したのでアマツカゼが呆れていた。

 

「安全装置、解除!

セーフティロック、(ゼロ)

圧力上昇が悪いので、波動エンジンの出力を5%上げ……圧力、発射点まで上昇中!

最終セーフティ、解除!」

 

 先程の発言に反して、ヤマトが見事にスムーズに作業と調整をしていたので、ヤハギ達6人が驚き、アマツカゼが“やるじゃない”と表情に出し、アカシがニッと笑った。

 最終セーフティが解除されたので、艤装左右各々に分けられた波動砲の砲身の固定が外され、ヤマトは砲身を掴み上げると砲身を前後にくっ付けて身構えながら確認と調整を行った。

 

「砲身、作動確認!」

 

「……ヤマト、惑星間ミサイルの軸線に乗りました!」

 

「姿勢制御、固定!」

 

 オオヨドの報告でヤマトは(問題があるらしい)重力アンカーを展開した。

 

「ターゲットスコープ、オープン!

電影クロスゲージ、明度20!

目標、大型星間ミサイル!!!」

 

 発射への準備を終えたヤマトが大声で報告したが、そのヤマトを見詰めるレシーテリヌイとアサシオが“波動砲を代わって撃ちたい”と顔に出していた。

 

「距離180キロ!」

 

「…エネルギー充填、100%!」

 

「……よし」

 

『まだだ!!』

 

 アマツカゼの報告にヤマトが波動砲の引き金を引こうとしたが、沖田が制止した。

 

「…エネルギー充填、120%!!!」

 

「薬室内、圧力限界です!!」

 

『発射、10秒前!!!

対ショック、対閃光防御!!!』

 

 アマツカゼが危険の意味で大声で報告し、アカシも危険性を叫んだ後、沖田が波動砲発射への最後の指示を出し、意味不明なまま支給されたバイザー(物自体は既製品)を納得しながらイソカゼ達8人(と連装砲君)が顔に着け(レシーテリヌイが変にきめようとしてまごついた為、ヴェールヌイに尻を蹴られていた)、オオヨドのみ眼鏡を外して度入りの物に変え、今回は地上での発射の為に手が離せないヤマトにヤハギが彼女にバイザーを付けてから自分にもした。

 此の時の波動砲の砲口に光子群が次々に吸い込まれていき……砲口の中から光の球体が今にも飛び出しそうになっていた。

 

「距離70キロ!

直撃します!!!」

 

「……5……4……3……2……1……波動砲、発射!!!」

 

 オオヨドの最終報告後、ヤマトが秒読みを始めたのに合わせてヤハギ達が身構え……波動砲の砲身を抱える手の力を強めたヤマトは発射を報せると同時に引き金を引いた。

 そしてヤマトの周囲の砂埃が外縁へ吹き飛んだ後、極太の光線が眩い光を放ちながら、天上へと射線上の雲を吹き飛ばして飛んでいき(と同時に重力アンカーが中途半端に作動した為、ヤマトが発射反動で後ろに飛ばされそうになったが、イソカゼ達が牽引ビームで引っ張って止めた)……目標の大型星間ミサイルに直撃して、大型星間ミサイルのエネルギーが波動砲と混じりあって、特大の爆発が起こってヤマト達が飲み込まれた。




 感想・御意見お待ちしています。

 今回初使用となった波動砲ですけど、大まかなデザインは皆さんの各々の予想に任せますけど、基本的には実在する“ベルギー製 FN P90(ISでのシャルロットが使っているアサルトライフル『ヴェント』)”と、伝説の勇者ダ・ガーンの“GXバスター”を足した様な物としています。
 ですので、某『ティロ・フィナーレ』みたいな、ギャグ紛いな巨大な物ではない筈です。

大和
「~~♪」(宇宙戦艦化した上に波動砲を撃ったので、ご機嫌)

金剛
「波動砲欲しいデェェース!!!」
比叡&扶桑&山城&伊勢&長門&武蔵&イタリア&リシュリー&ガングート
「「「「「「「「「波動砲欲しいぃぃー!!!」」」」」」」」」
アイオワ&ウォースパイト
「「WAVE.GUN(波動砲) pleaaaase!!!」」

榛名
「は、榛名は波動砲は無くても大丈夫ですけど(遠慮がち)、他の皆さんは何故なんですか?」

霧島
「復活篇で持ちました」(ディレクターズカット版、但し艦級は不明)

日向
「波動砲より瑞雲が有ればいい」(日向師匠)

陸奥
「別に欲しくない」(天然?)

ビスマルク
「PartⅢで波動砲持った」(微妙な処だが…)

ローマ
「別に私は波動砲が無くったって!!」(ツンデレ)

 更に言いますと、公式と取られるかは微妙の、PS版“さらば”でドレッドノート級としての薩摩、PS2ゲームの暗黒星団帝国三部で、ドレッドノート級として金剛、比叡、榛名、扶桑、山城、加賀の六隻が、その空母型で天城と葛城が波動砲を撃てます。
 更に復活篇でも白雪、初雪、島風(と未実装の朝霧)の三人も持つ事になりますので、波動砲に掠りもしない日本戦艦は伊勢、日向、長門、陸奥、そして微妙な処(復活篇ディレクターズカットで波動実験艦で出てるが波動砲が無い)で武蔵です。

ウォースパイト
「まぁ、プリンス・オブ・ウェールズが持っていったから仕方がないですね…」

アイオワ
「アリゾナとペンシルベニアに負けた…」

ガングート
「私なんか、ポンコツ巡洋艦のノーウィックにだぞ!!」

イタリア
「イタリアなんか、艦艇すら出ていないんです!!」

リシュリュー
「フランスもそうです!!」

伊勢
「……待てよ、私達と榛名はヤマト達に合流するらしいから…」

日向
「諦めろ、伊勢。
ガミラス編で波動砲を持つのはヤマトだけで、私達や榛名は波動砲を持たないそうだ。
代わりに此の瑞雲を愛でてろ」

長門
「夢見たっていいだろ!!!
ビッグ7だもん!!!」

陸奥
「何言ってんの、長門?」

武蔵
「同じ大和級なのに、此の扱いの差はなんなんだ!!?
殆どのアニメや仮想戦記でもこんなんばっかりだぞ!!!」
(注:大抵の仮想戦記で最後まで生き残って活躍する事の多い大和に反して、武蔵はよく途中で離脱か戦没する……此れは信濃が戦艦で出たら高確率で起こる。
酷い時は空母増産等で建造は大和のみとして取り止め、大和のみが空母化した場合は基本的に名前だけしか出ない……但し大和が戦艦のままで武蔵が空母化した場合は救いがある。
近年では“蒼き鋼のアルペジオ”や“ハイスクール・フリート”に見られる通り、滷獲や離脱等で敵になったりもしている……仮想戦記でも大和級同士の戦いになったら基本的に大和が味方で武蔵が敵。
否定したかったら大和を蚊帳の外にして、武蔵が味方サイドで活躍する戦記作品を五つ答えなさい)































大和
「うわっはっはっはっ!!!」(勝ち誇ったかの様に高笑いしているが、何故か背後に巨大な白色彗星&パイプオルガンによる演奏開始)

…君、後々その彗星を破壊する戦艦だったよね?


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第17話 紫の闇路の中へ…

 僅かながら、防衛軍が冥王星の最新情報を入手。

 僅かに判明した冥王棲姫の補足を追加。
 更に冥王星にて存在が確認された“飛行場姫”と“集積地棲姫”の項目を追加。


 それでは本編をどうぞ。


――― 防衛司令部 ―――

 

 

「システム、ダウンしました!!」

 

「回復急げ!!!」

 

 ヤマトの波動砲による迎撃で、大爆発を起こした星間ミサイルの影響で地震が起こっていたが、そんな状況下でも防衛司令部では地上の現状を知ろうと必死になっていた。

 

「レーダーやカメラはどうした!!?」

 

「駄目です!!

全部吹っ飛んだ模様です!」

 

「ショウカクやアイオワに確認させる事は出来ないのか!?」

 

「無理です!

アンテナが損傷した上に電波状態が著しく乱れています!」

 

 藤堂や芹沢の質問にオペレーター達が否定していて、芹沢が愕然としていたが、藤堂は背後のキサラギに振り向いた。

 

「…キサラギ、見てきてくれ!!!」

 

「分かりました!!」

 

 藤堂の指示にキサラギは右拳を左胸に当てる敬礼をして了解すると、直ぐに走っていった。

 

『はわわ!

凄い風なのです!』

 

『嫌だ、髪が痛んじゃう!』

 

 暫くした後にイナズマと合流したキサラギが艤装を纏って地上に出たみたいだが、通信機が入っているのに気付かずに私語を言った為に防衛司令部内で笑い声が多数上がった。

 

『…キサラギです!

此れから映像を出します!』

 

 何故か少し間があったが、キサラギが宣言した後にイナズマのカメラで撮られる映像がメインモニターに映し出された。

 で、僅かな砂嵐の後に映されたのは、巨大な茸雲であった。

 日本人なら2発の原爆と共に覚えさせられる代物だが、映っている茸雲は原爆のモノより遥かに巨大であるだけでなく、複数の火の玉を吐き出し、至る所から雷を放ちながら下部が赤く発光していて“禍々しい”の単語をこれでもかと表していて、防衛司令部の面々が茫然と見詰めていた。

 

「ヤマトは!?」

 

 だが問題にすべき事に誰も気付いていないが、映像にはヤマト達が何所にもいなかったが、沖田がナガラ(沖田は兎も角、ナガラも茸雲にギョッとしていた)を連れてやって来た事で我に返った藤堂がその事に気付いた。

 

『……確認…出来ません…』

 

「……溶けて、しまったのでは?」

 

 藤堂の質問へのキサラギの返しに、顔を青くしている芹沢が不謹慎な一言を言ったが、あの茸雲を見たら誰だってそう思うのだろう、誰もがヤマト(達)が“星間ミサイルで焼死”か“波動砲発射に耐え切れずに死亡”のどちらかを思い浮かべて芹沢に反論出来ず、防衛司令部に嫌な空気を漂わせた沈黙が続いた。

 

『キサラギさん、レーダーでヤマトさん達を捉えられないのですか!?』

 

『駄目です!

レーダーがホワイトアウトしています!』

 

『ヤマトさぁーん!!!

何所にいるのですかぁぁー!!?』

 

 イナズマとキサラギはヤマトの死を否定しようとしているらしく、映像が仕切りに左右に揺れたり拡大していた。

 

「……っ!

止めろ、イナズマ!」

 

 その映像で一瞬映った所に、藤堂が何かを察してイナズマに指示を出した。

 そしてイナズマが指示通りにカメラを向けて、拡大し続けていると…

 

『……あ~…死ぬかと思った…』

 

…茸雲からアサシモとレシーテリヌイが出てきて蒸せていた。

 レシーテリヌイのは煙を吐きながらのだった為に笑いを誘っていたが、此の2人で“まさか”が良い意味で思い浮かばれた。

 そしてヤハギとヴェールヌイ(レシーテリヌイの尻を蹴っていた)が出てきた後、ヤマトが自分の艤装にアマツカゼと連装砲君が貼り付いて何かをしている状態で出てきた。

 

『……ヤマト、さんです…』

 

 キサラギが涙声でヤマトを報告し、その後にオオヨド達4人も続いて、最後にアケシがヤマトの波動砲の砲身を抱えながら弄りながら出てきて全員が揃い、見た処ヤマトだけが傷を負った様だった。

 

『……遠征艦隊、全員無事です!!!』

 

 キサラギのらしくない大声での報告に、防衛司令部の面々が一斉に歓声を上げた。

 芹沢がへたれて大きく息を吐いていたが、藤堂は直ぐ脇にまでやって来た沖田に微笑みながら頷き、沖田も頷き返した。

 此の直後にヤマトからの映像通信がメインモニターに映り、一瞬だけ間を置いて防衛司令部の面々が黙ってメインモニターに振り向いた。

 

『言われた通り、波動砲を使用しました。

アケシとアマツカゼの見立てだと、波動エンジンのエネルギー伝動菅が損傷した以外は無事だそうです』

 

 ヤマトの報告に沖田は「そうか」と答えた。

 そして伝導菅を修理補強さえ出来たら、今後は波動砲を問題なく使えるのが分かった。

 そしてモニターに背を映しているアマツカゼが連装砲君から伝動管と思われる物を受け取ってヤマトの艤装に交換していた。

 

『此れで、良かったのですか?

手の内を晒け出してしまいましたよ』

 

「やむを得ない状況だったんだ

今は君達の無事を祝いたい」

 

 ヤマトの質問に沖田、代わって藤堂が答えたが、ヤマトが言っている相手は、一見ガミラスに思えるが、実際はアイオワ達の背後にいる者達も含まれていた。

 まぁ、その事を知ってか知らずか、ヤマトは藤堂に「そうですか…」と答えるだけだった。

 

『…このまま行けって言うのですね』

 

「ああ、ガミラスが対応策を打ち出す前に太陽系を離脱するんだ」

 

 沖田の要望にヤマトは黙って頷いたが、沖田の横の藤堂は“ヤマトがだんだん沖田に似てきた”と内心笑っていた。

 藤堂が一歩前に出ると、沖田以外の全員が一斉に起立、直立した。

 そのまま黙って目を瞑っていたが、“成功祈願”だけでなく“希望”や“願い”を腹の中に限界まで溜め込み、目を開けるとそれ等を一気に吐き出した。

 

「…防衛艦隊司令長官、藤堂兵九郎の名の元に下す。

ヤマト、出撃せよ!!!」

 

 防衛司令部の面々だけでなく、藤堂本人でさえ一番の軍人らしい号令を出した。

 

『了解しました!』

 

 それにヤマトは敬礼を、ヤハギ達は右拳を左胸に当てる敬礼を一斉にして(“間違えた”と思ったのか、ヤマトの目線が少し左右に揺れた)了解した。

 更に防衛司令部の面々も敬礼で、少し遅れて藤堂も敬礼でヤマト達に答礼した。

 ヤマト達と防衛司令部の面々が一斉に手を下ろした後、藤堂は現場司令官と言うべき沖田に振り返って引き継ぎの意味の表情で頷いた。

 その後に沖田が前に出て、藤堂の直ぐ隣に立った。

 

「オオヨド、第三艦隊は?」

 

『ショウカク達ほ既に地球軌道を離脱して、火星軌道の先行偵察を行っている模様です』

 

「第二、第四艦隊は直ちに前進。

第三艦隊と合流後、火星軌道にてワープテストを行う!」

 

 沖田の指示にヤマト達は各々に敬礼しながら「了解!」と返事をして、実行に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 衛星軌道 ―――

 

 

 地球はガミラスの遊星爆弾によって蒸発した海水が雲に変わった為、現在は金星の様に大半が分厚い雲に覆われていた。

 更にその雲も土埃等を含んでいたらしく、何処汚ならしい色をしていた。

 

「……っ!!」

 

 そんな雲の中を上昇していたヤマト達だったが……雲を抜けた先に、吸い込まれそうな蒼天が……更にその先に星空の真の姿である、暗き闇の中に大きさや色を問わずに大量の星々が光輝く宇宙が広がっていた。

 

「高度2400に到達」

 

「地球大気圏より離脱!

宇宙速度に切り替え!」

 

「…あ、はい!!」

 

 脇にいるオオヨドの報告に合わせ、先行しているヤハギの報せに、ヤマトが変な声を出して続いた為に他の者達が苦笑していた。

 だがそんなヤマトに誰も悪口等を言う者はいない、宇宙に見とれているヤマトの様に初めて宇宙に飛び出した者はこうなるのだからだ。

 

「どう、ヤマト。

宇宙に出た感想は?」

 

「……悪くない」

 

 艦娘と言えど、空気が存在しない宇宙で地球上と変わりなく呼吸と会話が出来る事に驚きと戸惑いがあったものの、アケシの質問へ返したヤマトは笑みを浮かべて機動修整を行った。

 

「私達だってそうでしたからね。

此の宇宙の広さと美しさには、みんな圧倒されてしまうんですよ」

 

 ハツシモの意見に全員が頷き…

 

「レフィなんか、もっと子供みたいにはしゃいでいたよ」

 

「失礼な!!!

レフィはもっとレディーみたいにしたわよ!」

 

…ヴェールヌイに弄られたレシーテリヌイが子供みたいに怒鳴った為に全員が笑った。

 

「……だが、後ろにあるのは…」

 

 イソカゼの言う通り、彼女達の(頭上から)背後には、嘗てユーリイ・ガガーリンが“青いベールを纏った女性”と例えた通りに青く美しい筈が、ガミラスの遊星爆弾によって無惨に赤茶けた地球が存在していた。

 本来なら青い地球にも見とれるのも恒例だったが、現在は此の地球の現状にヤマトの様に地球の絶望的状況を眉を潜めて改めて認知したり、ヤハギ達の様に諸悪の根元であるガミラスに何も出来ないでいる自分自信に悔しさを浮かべる事になっていた。

 

「…私達は此の星に青さを取り戻せるのでしょうか?」

 

「それをしに私達は行くんだよ!!」

 

 思わずネガティブな疑問を言ったハツシモにアサシオが怒鳴って返し、ヤマト以外の他の者達もアサシオに“同感”と頷いた。

 だが此の時のヤマトは、本来の青い地球を見た事がある気がしているだけでなく、宇宙にも妙な懐かしさの、ある筈の無い2つに内心戸惑っていた。

 

「…前方、1時の方角に艦影多数。

ありゃ~、ナトリ達だ!」

 

 アサシオが発見したのは、遠征艦隊出撃の為に哨戒に出ていたナトリ以外のカミカゼ、ハタカゼ、サツキ、ミカヅキ、アヤナミ、サミダレの7人による第一艦隊の面々が地球への帰還途上であった。

 どうやら、ナトリ達はヤマト達を見送りの為にわざわざ前方から脇を過ぎるコースを取っていたらしく、ある程度近付いたら、ヤマト達に向けてナトリの敬礼に合わせてカミカゼ達6人も右拳を左胸に当てる敬礼をした。

 それにヤマト達も各々の敬礼で返し、過ぎ去る間にアヤナミとハツシモがお互いへ頷きあっていたが、此れはアヤナミとハツシモが長年の戦友であっただけでなく、元々は遠征艦隊参加に合格したアヤナミが、性能関係で不合格になりかけていたハツシモに譲った事からであった。

 

「更に右舷より接近する者達多数。

アイオワ達救援艦隊の面々です」

 

 ナトリ達が過ぎていった後、今度はハマカゼが示した方角に、ヤマト達への見送りの為に再集結したアイオワ達21人が前後二列(前列に戦艦娘と空母娘、後列がその他)の横並びでいた。

 

「…Attention!!!」

 

 ヤマト達から距離があったものの、アイオワの号令(ビスマルク、グラーフ・ツェッペリン、ローマの3人が横目で抗議していた)に全員各々に敬礼した。

 

「ヤマト、アイオワ達5人各々から貴女への通信が入ってます」

 

「通信?」

 

 オオヨドの報せにヤマトがキョトンとした。

 

「アイオワからは“Gook lack”、ウォースパイトからは“旅のご無事を”、リシュリューからは“必ず帰ってこい”、ローマからは“4年分のツケを払ってこい”ビスマルクからは“波動砲、寄越せ”、以上です」

 

 オオヨドの生真面目に読み上げた事に加えて、ビスマルクのに全員が“お子様”と内心苦笑していたが、此れ等が彼女達のヤマトへの激励であり、ヤマトが地球を救うべき戦艦娘の代表だと認められた証でもあった。

 更にヤマト達は知らないが、地球上では防衛軍の将兵や艦娘の手の空いている者達全員が、地上に出てきてヤマトがいるだろう空に向かって各々に敬礼していた。

 当然、ヤマトが飛び立った横須賀もそうであり、将兵達に交じって、スズヤやキサラギ以下の艦娘達……艤装が使えないキリシマまでが防護服を纏ってやっていた。

 只、日本の艦娘達の何人かには別の思いも含まれていた。

 そんな地球全土からの願いや思いを察したヤマトは、“これぞ”と言うべき見事な敬礼でアイオワ達に返し、ヤハギ達も右拳を左胸に当てる敬礼でヤマトに続いた。

 手を下ろしたヤマトが前方にへと振り向き、遥々挑むべき星のある方角を見詰めた。

 そこは地球より16万8千光年の大マゼラン銀座……太陽系すら離脱出来ない地球にしてみれば宇宙の彼方と言うべき場所に存在する遥かなる星イスカンダル。

 その道中には数多の苦難が待ち受けている事は簡単に察して一抹の不安はあったが、逆にその不安群が奇妙な高揚感を出していた。

 ヤマトが吹き向いて1人1人確認しているヤハギ達も、強張った笑みを浮かべている事から“自分と同様だろうと”思った。

 

「…宇宙戦艦ヤマト、出撃します!!!」

 

 そんな事からの表れだったのだろう、ヤマトは必要以上な大声を発して外宇宙へと加速し、ヤハギ達もそれに続いた。

 

「「……Oh…」」

「「「……ふん!」」」

 

 ヤマト達を見送るアイオワ達だったが、ヤハギ達が後ろの地球に振り向いていた(レシーテリヌイに至っては振り向き過ぎていてヴェールヌイに殴られていた)のに、ヤマトは振り返ろうとしない上にその気配が全く無く、それ後ろ姿が“美しさ”と“勇ましさ”を醸し出すだけでなく“別れじゃない”と心に言っている様に見えていた。

 だが、“ヤマトは地球に未練が無い”とも思えもしてしまうが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………』

 

……だが、そんなヤマト(達)を密かに見続けている潜望鏡があった事を誰も知らない…




 感想・ご意見お待ちしています。

 今回の投稿に合わせて“設定 艦娘”を解禁いたします。
 此れも先に公開したガミラスのと同様に更新や丸ごと交換を行った場合は後書きか前書きでお知らせします。

 それにしても、ヤマトと言ったら後ろ姿で見せてくれるよねぇ~…
 こんな風に背中で見せてくれるのって、ヤマト以外ではFateシリーズのアーチャー(エミヤ)ぐらいしかいないな。

大和
「17話でやっと地球を離脱出来ましたね」

…長かった……第一目標にしていた“ヤマトの地球離脱”までいけた。
 此れでやっと本編か、新編に入れた。
 此れからは太陽系をさ迷って貰う事になるが、次の目標は百話以内に冥王星(&第十一番惑星?)を落とす、欲を言えばガス生命体の処に行くつもりです。
 ガミラスもメインとなるオリジナル棲姫・冥王棲姫だけでなく、オリジナル棲鬼・潜宙棲鬼だけでなく、新たに確認された飛行場姫と集積地棲姫を立ち塞がらせます。

 冥王星を突破した時点でそうかもしれませんが、それ等を越えたら、間違いなく公式・非公式問わずに艦これ史上最長距離の航海が本格化します。
 此の作品が上手く完結出来たら、少なくとも“ヤマトよ永遠に(片道四十万光年)”との二次クロス作品が出るまでは安泰(?)となるかもしれませんね。

大和
「しかし、百話とは随分とハードルが低いですね」

 本当は“五十話以内に”だったんだけど、思ってた以上に文字数が必要と分かって成功率が四割を下回りそうだったので…

 さあ、次回やるのは実写版ヤマト原作で言ったら、古代と島の会話からの加藤達が登場する場面に該当する事をやります。
 その後は、回想をやってから、ワープ実験からの木星沖での空母艦隊の襲来、本作オリジナルの一旦戻って火星・木星間での潜宙棲鬼(➕α?)との戦い、土星には寄らずに冥王星攻略戦、第十一番惑星で艦これアーケードの追撃戦みたいな事を多分やってから、最後にガス生命体を振り切る場面の順にやっていく予定です。

 それと投稿速度が大幅に遅くなります。

大和
「此の半月間のが異常でしたからね。
話数が倍近くになりましたよ」


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第18話 演習

 ― 無限に広がる大宇宙… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― 静寂な光に満ちた世界… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― 生まれていく星も有れば… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― 死んでゆく星も有る… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― そうだ… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― 宇宙は生きているのだ… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― その命溢れる大宇宙の大海原に… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― 254年の眠りから目覚め、生まれ変わった宇宙戦艦ヤマトが仲間達と共に乗り出していた… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― 全ては終末を迎えようとしている母なる地球を救うべく… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― 遥かなる星イスカンダルを目指して… ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球・火星間宙域 ―――

 

 

 此の時のヤマト達はと言うと、先行して哨戒活動をしているショウカク達第三艦隊に合流しようと火星軌道に向かっていた。

 だが、その火星軌道に到着するまで約24時間掛かり、その間に唯単に航行する訳がなく、改良された艤装の慣らしと動作確認も兼ねた演習が行われていた。

 此れには、ガミラス艦隊が確認されなかっただけでなく、艦隊襲来の可能性が皆無であると判断された事もあった。

 

「…っ!?」

 

「当たった!」

 

 ヤマトの敵側として、彼女に接近しようとするイソカゼを教導艦としたハマカゼ、丹陽、アマツカゼの4人に、ヤマトが放った主砲がアマツカゼに直撃した事にハマカゼが驚いた。

 因みにヤマト達の武装は現在、演習用に最小出力且つ最大限に拡散されていたので、怪我や損傷等はまず起こりえなかったが、それでも被弾したら静電気レベルの痛みはあった。

 まぁ、それでも実戦さながらの緊張感がある割りに費用や資材が極めて安くすむ(砲弾等が使われないので当たり前)為、技術革新さまさまである。

 

「アマツカゼ!!

アンタ、エンジン弄ってばっかりで鈍ってない!?」

 

「五月蝿い!!!」

 

 唯一、判定員を務める事もあって演習未参加のアケシの笑いながらの指摘に、イソカゼとハマカゼに冷たい目で見られた事もあって、アマツカゼが撃沈判定で離脱しながら顔を赤くして怒鳴って返した。

 だがヤマトの砲撃は続いており、ヤマトの次射が丹陽を狙って飛んだが、その丹陽は下に沈んで避けた。

 

「……やりますね…」

 

「伊達に中国唯一のまともに動ける駆逐艦娘である訳じゃないな」

 

 もう1発きたヤマトの砲撃をも避けた丹陽に、ハマカゼとイソカゼが感心しつつ、そのそっくりな容姿からユキカゼに重ねて見ていた。

 だが攻撃を受けている事に変わりなく、更にヤマト前方のタマとヤマト左右各々にいるヤハギとオオヨドも射撃を開始した事もあって、単縦陣の先頭のイソカゼが退避行動を取ってハマカゼと丹陽も続き、更にイソカゼはわざと隙を見せてヤマトを誘おうとしたが、当のヤマトは射撃は続けるも速度を落としていた。

 イソカゼとハマカゼが目線を合わせて歯軋りをしつつヤマトの行動に感心していたが、今度は反対方向からハツシモを教導艦としたアサシモ、レシーテリヌイ、ヴェールヌイの4人が突進してきた。

 

「オオヨド、イソカゼ達をお任せします」

 

「了解しました!」

 

 当然、ヤマトは、退避したイソカゼ達への追撃をオオヨドに命じ、自分達はハツシモ達への射撃を開始したが、ハツシモの巧みな動きに騙されて、上下どちらかにぶれていた。

 しかもハツシモは、反応が僅かに鈍くて弱点になりえそうなレシーテリヌイを上手くカバーしていたのだから、見事の一言であった。

 

「ヤマト、また上下にぶれてるニャ!

此所が宇宙だと言うのを忘れるなニャ!」

 

 タマの注意通り、前後左右の二次元での戦闘のみだった海上のとは違って、宇宙には上下がプラスされた三次元で戦わなくてはいけないのだが、今まで海上での戦闘しか知らなかったヤマトはどうしても上下の感覚を忘れる傾向があった。

 まぁ、深海棲艦戦時での三次元戦闘をやっていたのは戦闘機か潜水艦ぐらいだけだったが、元々対空射撃が苦手傾向だったヤマト(と言っても旧日本海軍で対空射撃のやり手と言えたのは秋月級駆逐艦の姉妹くらい)に取っては、どうしても昔の感覚でやってしまっていた。 

 

「……武蔵だったら、上手くやれてれたかもね…」

 

 一斉射撃から主砲3基と副砲2基による交互射撃に切り換えたヤマトは、武蔵を思いながら冷や汗を流していた。

 幾ら深海棲艦戦時より2百年以上が経過した現在、あらゆるスピードが遥かに向上していたが、それに合わせてレーダー等の射撃関連機器も発達するだけでなく、砲兵器も光線化する事で、弾速が遥かに向上と散布界が無きに等しい状態になっていたが、それでも兵器は人が扱う物に変わっていない事を、ヤマトを噛み締めていた。

 

「…っ!」

 

 だからと言ってヤマトが戦艦娘として失格点だとは言い切れない。

 現にハツシモはヤマトの射撃を悉く避けていたが、そのヤマトの射撃全てが牽制打になっていた為に近付く事が出来ずに悔しさを表情に出していた。

 更にヤマトの絶妙な動きに合わせたヤハギとタマも射撃に加わり、ヤマトが追撃か退避どちらかの動きを取れる様に備えているのを察したヤハギとタマが感心していた。

 只、ヤマトの動きは戦艦としては異端とも思えるモノであった。

 

「ああ―!!

うざってぇぇー!!!」

 

 で、こんな状態に我慢出来なくなったアサシモが雄叫びを上げると、ハツシモの消極的な動きもあって彼女の右脇から前に出て、更にレシーテリヌイも続いてしまった。

 

「…っ!

次は当てる!!」

 

「Yapa!!!」

 

 アサシモとレシーテリヌイ(彼女のみヴェールヌイが背中を掴んで止めようとした)の独断で艦列が乱れ、慌てたハツシモが立て直せない事からの隙を見出だしたヤマトが、宣言通りに一斉射に戻したら、少し間を置いてアサシモが直撃した。

 更に後ろに吹き飛ばされたアサシモを回避したレシーテリヌイがヴェールヌイ共々ヤハギとタマの集中砲火に捕まった。

 

「アサシモ、レフィ!!!

アンタ等、何やってんの!!?」

 

 当然ながら、そんなアサシモとレシーテリヌイにアケシが怒鳴った。

 更に随伴の3人が一気に失われた事に顔をしかめたハツシモにヤマト、ヤハギ、タマの3人係りの集中砲火を、少しの間避け続けたのは流石の一言だったが、積極性が無かった事もあってヤマトの射撃が直撃した。

 

「ハツシモ、残念!!」

 

「仕方がないです」

 

 直撃した事にアケシが同情の言葉を掛けていたが、当のハツシモはアサシモとレシーテリヌイの暴走を予測して止める事が出来なかった事に苦笑していた。

 

「ユウダチだったら、もっと積極的だったぞ」

 

「アンタは黙ってろ!!!」

 

 あまり反省していないアサシモにアケシが何かを投げながら怒鳴ったが、今は亡き積極性の塊だった駆逐艦ユウダチ程でないにしろ、積極的に出来なかった自分自身を責めていたハツシモがシュンとしていた。

 

「う~…」

 

「聞いてんのかぁぁー!!?」

 

 そんなハツシモを、アサシモが額のたん瘤を押さえながら唸り声を上げながら睨んでいた為、説教をしていたアケシが更に怒鳴ったので、ヤマト達3人が笑っていた。

 只、レシーテリヌイがヴェールヌイの怒りの関節技で失神していたのは見なかった事にしていたが…

 

「御免なさい、ヤマト!!

突破された!」

 

 だが、演習は続いている通りに敵側の駆逐艦娘はまだおり、現に一旦退避していたイソカゼ達3人が……イソカゼがオオヨドに撃沈判定となったが、そのオオヨドを大破判定にしたハマカゼと丹陽が振り切ったとの、叫びながらの報告にヤマト達3人が揃って振り向いた。

 

「…っ!? しまった!!!」

「…っ!? しまったニャ!!!」

 

 当然、ヤハギとタマが直ぐにハマカゼと丹陽の2人を迎撃打を放ったが、そのハマカゼと丹陽が上下に別れた回避した事に驚いて硬直した。

 更にハマカゼと丹陽はそのままヤマトを上下からの挟み撃ち状態で、2人同時に主砲を放って更に魚雷を放とうとしたが…

 

「…え?」

「…ふえ?」

 

…標的のヤマトが前方に倒れたと思ったら、体を捻って2人の射撃を避けただけでなく、そのまま第一、第二主砲を2基の副砲と共に左右各々に旋回させると、ハマカゼと丹陽の2人を同時に狙い撃った。

 此のヤマトの動きにハマカゼと丹陽は気を取られて直撃した。

 

「演習終了!!

ヤマト達の勝ち!!!」

 

 ハマカゼが舌打ちして、丹陽が頭を抱えていた中で、アケシがヤマト達への勝利判定を叫んだ。

 

「……ふぅ~…」

 

 演習終了後、アケシに代わってイソカゼとハマカゼからアサシモが説教を受けていて、アケシがオオヨドを弄っていたが、ヤマトが大きく息を吐きながら額の汗を拭っていた。

 肝心の射撃が駄目駄目だった事への反省で、第二主砲に右手を当てて見詰めていたが、主砲に写る自分の顔の脇に小馬鹿にしたかの様にニヤけた鈴谷と伊勢の顔が見えている気がしていた。

 

「ヤマト、お疲れさま!」

 

「お疲れさまニャ!」

 

 そんなヤマトにヤハギとタマが声を掛けた。

 

「…砲撃がこんな様じゃ、私はまだまだですね」

 

「でも砲弾でヌ級とル級を初弾で当てたって言うじゃないか」

 

「いや、呉の事情は特殊だったニャ。

ヌ級やル級は油断もあって速度を落としていたニャ。

多分、普段通りの動きをしていたら、直撃は難しかったと思うニャ」

 

 自虐的なヤマトにヤハギがフォローしようとしたが、タマの指摘でヤハギがウッとしてヤマトが苦笑した。

 だが実際問題、元々輸送ワ級でさえも高速にして速度を最優先としていた深海棲艦、更にガミラスは速度に加えて機動性をも優先していて、ガミラスもまた戦艦(戦艦ル級はそれ以外にも問題があったが…)をあまり前にだそうとしていなかった。

 此の為、深海棲艦戦時の日本は航空戦力を優先していた上に速度の遅い戦艦が不遇な扱いをして、更に此の時の事がトラウマになっていたらしい現在の日本海軍は後方艦以外の多くを高速化させていた。

 

「だけど、足は大したモノだったニャ。

コンゴウ達よりも上手かったニャ」

 

 だがヤマトは砲撃に反して動きはタマも目を見張るモノであったが、ヤマトのは戦艦らしからぬモノで、敢えて言えば駆逐艦や巡洋艦のに近かく、その事はヤハギも感じている様だった。

 

「私は教導役の人達に、砲撃より足の動きを優先的に鍛えられました。

足は唯避ける為だけでなく、相手より優位な位置を得る為になによりも必要不可欠なモノだとね」

 

「へぇ~…」

 

「誰が教導役だったんだニャ?」

 

「重巡の鈴谷、戦艦の榛名、伊勢、日向。

あと特別指南役に近い形で重巡鳥海もいたけど、鳥海は南海に行ってばかりだったけどね」

 

「ああ、前の伊勢級戦艦の姉妹!」

 

「あの姉妹がヤマトの教導役だったんだニャ」

 

 瑞鶴以下の4人の空母が沈んで日本空母艦隊が事実上終焉したエンガノ沖海戦での全弾回避を成し遂げた先代伊勢級戦艦の姉妹の回避運動の天才度合いは後世でも有名であり、その姉妹に鍛えられたヤマト(大和)がレイテ沖海戦や呉軍港空襲を殆ど無傷でいれた理由を納得していた。

 蛇足ながら、波動砲が最も目にいくのだが、此の足の良さこそが、ヤマトがイスカンダル遠征をやり遂げる最大の要因と指摘する研究者達が多数いる。

 

「しかし、波動砲の試射も含めて復帰早々に大仕事でしたね」

 

「でも、今度は火星軌道でのワープ実験だよ、ワープ」

 

 ヤハギの労いへのヤマトの返しに、ヤハギとタマが苦笑した。

 

「それにしてもヤハギ、此の遠征に志願していたんだニャ」

 

「ええ、此れが最後の艦隊になるだろうし、なによりもサカワの為にもね」

 

「ああ、サカワ」

 

 先代矢矧は妹の酒匂を溺愛していたが、どうやら此のヤハギも妹サカワにそうである様だった。 

 

「サカワはどうなったの?」

 

「アガノ姉に任せてきた。

ぐうたらだけど、アガノ姉ならサカワに変な事はしないだろうしね」

 

 因みに同じアガノ級である、サカワと長姉アガノは比較的軽傷且つ性能も申し分無かったのだが、アガノは性格的問題で、サカワは艤装未完成状態且つ技量不足の理由で地球残留となっていた。

 まぁ、アガノは兎も角として、矢矧が酒匂の天一号作戦未参加を残念半分安心半分の複雑な思いだった様に、ヤハギもサカワの遠征未参加に同じ様な思いの様だった。

 

「サカワの為にも帰ってこないといけないニャ」

 

 タマにヤハギが笑顔で頷いたが、自分と違ってタマは姉のクマ、妹のキタガミ、オオイの計3人が戦死かMIAになっているので寂しさが感じられたのでヤハギが直ぐに謝った。

 

「それにヤマトがイスカンダルに行くって言うんだから、先代に代わって守り行かせないと思ったしね」

 

「…貴女、確か佐世保にいたんでしたよね?」

 

「そうだニャ。

ヤハギが坊ノ岬でのヤマトを見つけた第一発見者だったんだニャ」

 

 ヤマトの事を早くから知っていたヤハギにヤマト本人が疑問を感じたが、代わって答えたタマの返事に納得した。

 

「と言っても、私は失神していたから殆ど覚えていないんだけどね。

私に言わせたら、ヤマトを最初に見つけたのはイソカゼとハマカゼと思う」

 

 苦笑しながらヤハギは、そのイソカゼとハマカゼの二人に振り向いた。

 で、イソカゼとハマカゼはと言うと、ヤマトが最後にした横ロールしながらの射撃をマネをしようとしているアサシモとレシーテリヌイを笑いながら色々指摘していた。

 

「…ねぇ、ヤハギ、私が見つかった時って、どんなのだった教えてくれな」

 

 ヤマトにヤハギは“勿論”と頷いた。

 

「……あの時、木星沖海戦の後日、怪我で参加出来なかった私は熱を出したナカに代わってレアメタルの回収に坊ノ岬に行っていたわ…」

 




 感想・ご意見お待ちしています。

 今回上げた大和の教導役を務めたとした者達は、戦艦『大和』の歴代艦長達が『大和』艦長就任前に艦長だった艦に関係しています。
 で下記はその通り。

艤装委員長&初代:宮里秀徳、工作艦『明石』

二代目:高柳儀八、戦艦『伊勢』

三代目:松田千秋、戦艦『日向』

四代目:大野竹二、重巡『鈴谷』

五代目:森下信衛、戦艦『榛名』

六代目:有賀幸作、重巡『鳥海』


 因みに、後々書く予定の武蔵の教導役も同じ法則で以下の通りに決めていますが、数が少ないので死んだ比叡の代わりに山城が加わった等色々とする予定です。

艤装委員長&初代:有馬馨、戦艦『比叡』

二代目:古村啓蔵、戦艦『扶桑』

三代目:朝倉豊次&四代目:猪口敏平、重巡『高雄』


 蛇足ながら、歴代艦長を調べたら話のネタに出来るかもしれませんよ。
 特に個人的に面白いと思っているのが『蒼龍』と『飛龍』、『蒼龍』の歴代艦長の多くは後に『赤城』や『加賀』の艦長に、『飛龍』の歴代艦長の多くは後に翔鶴級のどちらかの艦長になっています。
 此の事から蒼龍は赤城と加賀にべったり、飛龍は翔鶴と瑞鶴にかまってばっかりと思い浮かべるのも案外馬鹿に出来ませんよ……尤も此の作品では使い道は無いけどね(苦笑)


 次回は回想と言う形で、実写版における“古代が通信カプセルを見つける”から“沖田に突っかかる古代”の場面に、オリジナル版&2199版での“火星からの退却”と“古代と島が偵察機の追撃失敗後に戦艦『大和』を見つける”を足したのを行ないます。


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第19話 回想:防衛艦隊の敗走

――― 火星 ―――

 

 

 太陽系第四惑星火星…古典名作宇宙戦争(War the world)の侵略異星人の母星と描かれた通り、古くから地球外生命体の存在が予測されていた地球の直ぐ外縁の惑星。

 尤も二十世紀から既に生命体の存在は否定されて始め、月を制覇した後に次の目標として渡航したアメリカによって生命体は完全に否定されるも、その後の長い年月を掛けて大規模改造(テラフォーミング)が実施されて、その後に制覇された土星とNo2の座を争う程の重要惑星となっていた。

 地球にとって火星が如何に思い入れ深い惑星であるかは、比較的近い距離の金星が火星よりかなり遅れて制覇されて、その後は地球向けの無人のエネルギープラントしか設置されていない事からも簡単に分かる事が出来る。

 その象徴であるドームに覆われた大都市アルカディアシティが建設された北極点にて、嘗て初到達を成し遂げた宇宙戦艦イタリアがそこにイタリア国旗(トリコローレ)を立ててから、イタリア風の都市が多数建設され続け、“火星育ち”や“火星生まれ”が認知(長い期間、“宇宙人”や“火星人(マーシアン)”と悪口や差別の対象になっていたが…)され初め、一時は遷都計画も噂される程のモノであったが、今やそれは昔話となっていた。

 何故なら地球外生命体として初認知されたガミラスとの戦いが勃発して戦況が悪化して以降、徐々に地球への避難や疎開が行われ初め、そして陥落した土星から逃げ遅れた開拓団が殲滅された事もあって、地球への一斉避難が行われ、ガミラスの攻撃や侵攻が全く無いものの都市や設備だけが残る無人の惑星に戻ってしまった。

 否、ガミラスの攻撃が無かった為に無傷で残された建物や施設、乗り捨てられた自動車類や飛行機類、更に避難民達が落としていったであろう衣類や人形等が、何処か悲惨な感情を呼び起こさせていた。

 

「……畜生…」

 

 だが現在は例外的状況で、前哨戦と言える火星・木星間での艦隊戦が行われ、此の時に傷付いた艦娘達が非常用発電所が稼働してアルカディアシティの旧艦娘詰所に留まっていた。

 尤も重傷者達は簡易的な治療が施された後に地球に護送されていたので、窓から空を歯軋りしながら睨んでいるイソカゼ達は小破と中途半端な状態だったので、予備戦力として此所で待機していたのだった。

 

「イソカゼさん、落ち着いて下さい」

 

 あまりに落ち着きがないイソカゼにウラナミが注意を掛け、そのウラナミに小破した自分の艤装を自分なりに直そうとしているハマカゼが同感との意味で頷いた。

 因みにイソカゼとハマカゼの姉妹と違って、ウラナミ達フブキ級の姉妹は前哨戦後からの増援組の為、彼女達は無傷であった。

 

「だがもう3日だぞ!

此所に留まってから3日も経ったんだ!

今こうしている間にユキカゼやウラカゼ達が木星沖で戦っていると思ったら…」

 

「だからこそ、苛立っていてもどうにもなりませんよ」

 

 偶々近くにあったゴミ箱を蹴飛ばしたイソカゼが苛立っていたのは、同僚でもある姉妹艦のユキカゼとウラカゼを思い、更にハマカゼと共に前哨戦で傷付いて離脱してしまった自分自身にからであった。

 まぁ、その事を察したアヤナミはイソカゼの胸部に水入りペットボトルを握った右手を当てて、そのままペットボトルを差し出した。

 此のアヤナミの行為に少し変な間があったが、アヤナミのポヤヤンとした雰囲気もあってイソカゼが大人しくペットボトルを受け取ると、蓋を開けて水を一口飲んだ。

 

「……すまん」

 

 水を飲んだ後に大きく息を吐いて落ち着いたイソカゼは、怒鳴っていた事に全員に謝った。

 そんなイソカゼにアヤナミやウラカゼ達フブキ級の姉妹達は笑って許してくれた。

 

「ですけど、やはり待っているのは辛いモノです」

 

 シラユキが苦笑しながら言った通り、近年フブキ級は予備戦力として後方での待機をよく通達される為、今回の事を何度も体験している。

 そんな彼女達も何か思う事はあるだろうに、それを全く表面に出さないでいるのに、自分は耐えきれていなかったんだから、辛抱強さには感服させられた。

 

「………」

 

……只、奥で寝ていて一瞬背後のイソカゼ達に振り向くも、また直ぐに寝ようとしているハツユキはどうかと思われるが…

 そんなぐうたらなハツユキに全員が笑っていたが、急に通信機が鳴ってウラナミが対応した。

 

「此方、火星…」

 

『…火星基地、私は防衛艦隊司令長官、藤堂兵九郎だ!』

 

 通信の相手が藤堂だと分かり、ウラナミだけでなく他の者達(ハツユキでさえ慌てて飛び起きた)も直ぐに姿勢を正した。

 

『火星基地駐留員に告ぐ、駐留員は間も無く火星に最接近する木星から帰還途上の艦隊に合流して地球帰還せよ!』

 

「帰還!!?

木星沖の海戦はどうなったんですか!?」

 

 藤堂からの帰還命令にウラナミが驚いて叫んだが、既に全員がその答えを察していた。

 

『…木星沖海戦は2日前に終結した。

海戦は………我が軍の敗北で終わった!!』

 

 悔しさを滲ませながらの藤堂の防衛艦隊の敗戦報告にウラナミ達はショックで硬直した。

 

『…もう一度言う、火星駐留員は火星基地を放棄して艦隊と合流して地球に帰還せよ!』

 

「………ちく、しょぉぉう!!!」

 

 木星沖海戦の敗戦で地球の命脈が絶たれた事を察して、全員の意志を代表してイソカゼが絶叫しながら壁を殴っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星沖 ―――

 

 

「…っ! ガミラス艦隊!!」

 

「馬鹿、アレは味方だ!!!」

 

 木星沖から防衛艦隊が火星の近くまで辿り着いた時、ガミラスの追撃への恐怖と警戒心からの極限状態で、駆逐艦アキヅキが前方の火星近くにいる艦隊を敵だと誤認して一様動かせる左手(右手は血だらけで力無く垂れている)で長10cm砲ちゃん達を身構えさせ、そんなアキヅキに釣られて他の者達も次々に続いたが、友軍艦隊だと気付いたジュンヨウが周囲の者達の手を下ろさせながら叫んだ事で同士討ちは避けられた。

 

「友軍?」

 

「…帰って、これた」

 

「助かったんだ…」

 

 だが友軍艦隊だと分かった事で、気が抜けて逆に危険な状態になった者達が多数出てしまい、チトセや比較的まともに動ける者達が慌てて駆け寄っては頬を叩きながら呼び掛けていた。

 でその一方、火星から離脱して地球からの増援と合流して友軍艦隊を構成していたイソカゼ達は防衛艦隊の現状に愕然としていた。

 

「ガングート、しっかり!

火星に戻ってこれたよ!」

 

「…う……うあ…うぼぁ!!」

 

「無理して喋るな」

 

 純白の上着を血で赤く染め、2人して傷付いているレシーテリヌイとヴェールヌイに両脇から抱えられ、力無く項垂れて吐血した戦艦ガングートから見て取れる通り、良くて中破状態の誰もが自分の艤装共々満身創痍となった、“敗残の集団”を此れでもかと表していた。

 

「…9割を超える損害を出したの!?」

 

 だがハマカゼの絶句の通り、最大の問題点なのはその防衛艦隊を構成する艦娘達の数であり、彼女達が離脱直後から大幅に減っていて、艦隊(国)丸ごと消失しているのは1つ2つではなかった。

 勿論、損傷が酷すぎて艦隊から落伍している者や、ガミラス艦隊の襲撃に備えた殿で遅れている者達も考えられるが、それ等を差し引いても帰還した者達の艤少なさは異常であった。

 詰まり、防衛艦隊は歴史的大敗を期したのは間違いなく、その事は当の本人達の表情からも察する事が出来た。

 

「…ノワッチ、アソコにイソカゼ達がいなくない?」

 

「はい、確かにアソコの2人はイソカゼとハマカゼですね」

 

「イソカゼさぁーん!!!

ハマカゼさぁーん!!!」

 

「おおぉーい!!!

コッチだ、コッチ!!!」

 

 防衛艦隊に増援組は駆け寄って怪我人達を抱える等をしていたが、イソカゼ達の様に一部の者達は防衛艦隊の惨状に呆然としていたが、何らかの形で我に帰って先行した者達の後に続き、イソカゼ達も同じカゲロウ級のマイカゼやノワキを初めとした日本艦隊に気付いてそちらに向かった。

 

「…マキグモ?

アラシやハギカゼはどうしたのですか?」

 

 他と同様に日本艦隊もトネ級巡洋艦の姉妹を筆頭に多くの者がいない、いても全員が傷付いている悲惨な状態であり、現にハマカゼはイソカゼと共に、巡洋艦モガミを背負っているマイカゼと、巡洋艦ユラを右肩に担いでいるノワキの2人(此の間にウラナミとハツユキが2人の巡洋艦娘を受け取っていた)と組んでいる姉妹艦のアラシとハギカゼがおらず、代わりにカゲロウ級末妹アキグモとユウグモ級駆逐艦のマキグモがいた為、思わず嫌な予感が頭に浮かんだ。

 因みにアキグモとマキグモは本来ならば、MIA認定(となっていたが実際は土星で生きている)のユウグモとカザグモの2人の代わりに入ったアサシモと組んでいたが、そのアサシモも姿が見えなかった。

 

「心配いりませんよ。

アラシさんとハギカゼさんは殿でキリシマ達と一緒にいますよ。

それにアサシモさんもです」

 

 そんなハマカゼとイソカゼを察したオオヨドが、笑いながら2人(➕α)の居場所を伝えた。

 更に言うと、オオヨドの言ったのを表しているのか、地球組の一部が防衛艦隊を過ぎて後方へ向かっていた。

 

「そうか、ならばユキカゼとウラカゼもそこにいるんだな……?」

 

 安堵の息を吐きながらのイソカゼの呟きに、意識のある日本艦娘達が一斉に硬直した。

 まぁ、幾ら実力者と言え、ユキカゼとウラカゼが生きている事を前提にしていたのは、それはそれで問題だと思うが…

 

「どうした?」

 

「……イソカゼ、よく聞いて…」

 

 イソカゼが驚き怪訝な目線を向けるも、全員が視線を反らしていたが、黙っていてもいずれは分かってしまうとの判断もあって、意を決したチトセがユキカゼとウラカゼの事を話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・数刻後 ―――

 

 

「……帰ってこれた…」

 

 総旗艦キリシマ以下の殿部隊が航行すら出来なくなった者達を回収しつつ、ガミラス艦隊の追撃に備えながら火星沖に辿り着いた時は、先行させた者達が先に地球への帰路に着いたのか一旦火星に降りたのか姿が全く見られなかった。

 取り敢えずの安全地帯に辿り着いた事に他の者達は安心感を顔に出していたが、キリシマのみは安心感に加えて罪悪感も出ていた。

 

「キリシマァー!!!」

 

 でそんなキリシマの所に、イソカゼが驚く程のスピードで駆け寄ってきた。

 

「馬鹿!!!」

 

「よせよせ!!!」

 

 更にそんなイソカゼにマイカゼとアキグモが……多分止めようとしていたが出来ずに張り付いていて、ハマカゼとノワキにチトセも続いていた。

 

「何だ、何だ?」

 

「イソカゼ、何を騒いでいるのでしょうか?」

 

 こんな時に最後尾でガミラス艦隊の追撃を警戒していたショウカク、ズイカク、ショウホウ、カスミ、カザグモ、アサシモの6人が追い付き、キリシマを睨んでるイソカゼに、アサシモとテルヅキが怪訝な顔で話していた。

 

「見損なったぞ、キリシマ!!」

 

 そんなイソカゼに偶々キリシマの近くにいて、2人係りで大破して失神している巡洋艦アシガラを担いでいたアラシとハギカゼが彼女の目的を何となく察して、お互いの目線を合わせた後に揃って顔をしかめた。

 

「…アンタ、ユキカゼを楯にしたんだってな。

ウラカゼ達も捨て艦にしてアンタ、逃げたんだってな………どうなんだ!!?」

 

「……アラシ…」

 

「ノワッチ達、何を話したんだ」

 

 自分達の予想が当たって2人揃って溜め息を吐いたハギカゼとアラシはイソカゼから降り下ろされたマイカゼ達に抗議の視線を向け、そのノワキ達は2人から視線を反らしていたが、当のキリシマはイソカゼを向いたまま黙っていた。

 

「…キリシマ、防衛艦隊を壊滅させるだけでなく、ユキカゼやウラカゼ達を捨て艦にして、自分はのうのうと生きていて恥ずかしくないのか?」

 

「……恥ずかしい?」

 

 本来ならキリシマにも、キリシマなりの意見等があった筈だが、此の時のキリシマは傷の痛みに加えて痛み止の影響で頭が少し鈍っていた。

 だが、此の返事にハマカゼに止められていたイソカゼの堪に触ったらしく、ハマカゼを振り払った(彼女の表情を見たらわざと離したのかもしれないが)イソカゼがキリシマに飛び掛かった。

 

「キリシマ!!」

「馬鹿!!!」

 

 キリシマに殴り掛ろうとしたイソカゼをズイカクとカスミが止めようとしたが、彼女達が動く前にキリシマの前に誰かが割り込み、キリシマの左頬に直撃する筈だったイソカゼの右拳を受け止めた。

 

「イソカゼ、いい加減にしなさい」

 

「っ!? ジンツウ!?」

 

 自分を止めたのが、日本巡洋艦内最強にして“泣く駆逐艦娘も黙る鬼上官(通称:鬼神通(きしんつう))”の巡洋艦ジンツウだった事に驚いていた。

 否、イソカゼだけでなくハマカゼ達駆逐艦娘達も「何でいるの?」と騒いでいる上、ジンツウに傷1つ無い(此の点のみはジンツウならやれそうな気もするが…)だけでなく彼女の艤装に武装が無い事から見て取れる通り、彼女はガミラス戦初頭から前線から退いて、現在は周囲の説得や厚意もあって後方任務に就いていたのだ。

 

「イソカゼ、貴女に何が分かるのですか?

木星沖の海戦にいなかった貴女に、キリシマの何が分かるのですか?」

 

 まぁ、ジンツウがいたのは地球からの増援でだとは簡単に分かったが、睨んだり怒鳴ったりしていないのにイソカゼが怒りを忘れて引いている事から、現役時代からの覇気は全く衰えている様子が無かった。

 蛇足ながら、ジンツウが引退したのはイソカゼ達カゲロウ級駆逐艦が竣工する前だったので彼女達はジンツウの元部下でもなければ教え子でもなかった。

 

「だがソイツはユキカゼを…」

 

「此の現状を見てまだ分からないのですか?

大切な人を失なったのは、貴女だけではないのです。

キリシマもまた、コンゴウを目の前で失ったんですよ」

 

 ジンツウに言われて、確かに其所にいるだけでも存在感のあるコンゴウが見当たらなかった。

 だがそれでもイソカゼに謝罪等の感情が湧かず、やるせなさから唸り声を出した後に急速に離れていった。

 

「…ぁぁぁああー!!!」

 

「イソカゼ!!!」

 

 そんなイソカゼをハマカゼが追い掛けていったが、イソカゼの言った事にも理解があったので、全員がイソカゼを哀れむような目線を向けていた。

 

「すみません、キリシマ。

誤解が無いようにユキカゼ達の最後を伝えたんだけど、ああなってしまって…」

 

「チトセ、良いのよ」

 

 少し間を置いて、チトセがキリシマに頭を下げながら謝り、キリシマがそれを手を翳して許した。

 

「…ユキカゼ達を死なせたのは、旗艦である私の責任に代わりないのですから」

 

「……生きていて帰ってしまった事は、とても辛い事ですからね…」

 

 顔を伏せたキリシマにジンツウが同情の言葉を掛けたが、引退理由でもあるジンツウはガミラス艦隊が初めて確認され、襲撃した海王星基地にて……姉のセンダイを初めとして部下や同僚達が玉砕した中、逃げ延びたも当然の状態で1人だけ生き残ってしまったので、彼女の言葉は非常に重かった。

 まぁ、それだけでなく全員が地獄と化していた木星沖海戦を思い出していた為、此の場でイヤに重苦しい空気が満ちていた。

 

「…ですけど、沖田提督は“生きて帰る”と言う任務もあると言ってましたよ。

尤も私も含めてそんな事への理解がある人がいるとは思えませんが」

 

「私達がそう思っていても、防衛司令部の連中が認める訳がないけどね………?」

 

 だがそんなジンツウ達の遠方で超高速で地球目指して飛んでいる物体がいたのをカスミ達一部の者達が気付いたが、流星か遊星爆弾だろうと軽く受け流していた。




ガングート
「作者に代わって、感想か御意見を待っているぞ」

大和
「今回の投稿の遥か前に“設定 艦娘”の書き換えが行われました。
変更点は“カゲロウ級の補足”“未所有による出演不可”です」

ガングート
「…見事に新規ドロップ艦が一切落ちない、ブラックコンプリートだったんだな」

大和
「代わりに秋雲が大量にドロップしたそうですよ。
お陰で、イベント期間中の作者は秋雲に殺意が湧いたそうです」

ガングート
「だがアーケードでのイベントは新規ドロップ祭りだったんだろ?
特に榛名、奴はアーケード初の改二になったが、改が“ヤン・ウェンリー大尉”並の短かさだったからな」

大和
「因みにアーケードでのドロップは他に“比叡改”“霧島改”“日向改”“長門”“陸奥改”“武蔵”“鈴谷改”“潜水艦の皆さん”“照月(は直ぐにビスマルクとトレード”となりました。
只、唯一悔やまれるのは、瑞鶴が初ドロップしたんですけど、間違って設計図にしちゃったそうです」

ガングート
「その代わり、金が無いのに、万単位の金を消費した上に、最終面で“長門”“陸奥改”“扶桑”“山城”“伊勢”“日向改”のパワープレイをやっていたしな」

大和
「作者だけでしたからね、六人全員が低速戦艦だったのって、お陰で他の提督から注目されていました。
作者はヤマト2の土方提督になった気分になったと言って開き直っていましたけど…」

ガングート
「まぁ、それはそれで置いておいて……分かっていたといえ、防衛艦隊は酷い有り様だな…」

大和
「まだ此れでもましな方ですよ。
なにせ、原作ではキリシマ(沖田艦)しかかえれなかったのですから…」




























































大和
「…そういえば、作者はどうしたのですか?」

ガングート
「ああ、私を二度も酷い扱いにした作者はエンケラドスでコスモナイトを数えているぞ。
本当はシベリアで木を数えをさせたかったんだが、遊星爆弾で更地になってしまったからな」(何処かわざとらしく、パイプを吹かしている)

大和
「……逃げきれなかったんですね…」


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第20話 回想:砂礫の海にて

――― 坊ノ岬沖 ―――

 

 

 レアメタルの採集に来ていた巡洋艦ヤハギは不意に地上に下りて、遥か遠方を見詰めていた。

 そして屈んで足元の地面の砂を掴み上げて、掌の中の砂を見詰めていた。

 手袋越しでも感じる程に熱さを溜め込んでいた砂は、水気が一切無いので手を軽く傾けると直ぐに滑り落ちだし、更に細やかな微風で簡単に吹き流されていた。

 

「……こんなんじゃ、芋処か、(アワ)(ヒエ)も作れないわね…」

 

 現在の地表は唯でさえ遊星爆弾によってあらゆる生物が生存出来ない高濃度の放射能に汚染されていたのだが、それと同時に地球の大半を覆っていた海を初めとした水分が蒸発してしまって、金星となんら変わりない渇きと灼熱だけの星となっていた。

 況してや、今ヤハギがいるのは坊ノ岬沖……本来なら潜水艦しか辿り着けない水面下300m以上の海底であった場所、まぁ塩害等で食物は作れないと思われるが、水気をたらふく含んだ泥に近い土が辺り一帯にあるべきだったのだ。

 大地は死んだ、此の渇ききった土はその表れであり、そしてその事は地球を守れなかった自分達艦娘達の罪の表れでもあった。

 

『お前って、本当に馬鹿なんだな』

 

 何度か砂を握っては落としていたヤハギは、不意に出る前にキソとのやり取りを思い出していた。

 

『こんな状況下でレアメタルなんか掘り起こしてどうするんだよ?

どうせ地球は負けんだよ!!』

 

 此の時のキソは一升瓶を担いで酔っ払っている状態だったが、本来のクマ級巡洋艦キソは、多少は毒舌だったが、テンリュウに匹敵する勇猛且つ諦めの悪い艦娘だったが、万に一つも希望を見いだせないガミラス戦の絶望が彼女を此のように変えてしまったのだ。

 当然ながらキソでさえこうなったのだから、ふてぐされた艦娘は、ヤハギが知る範囲でもかなりの人数がいた。

 

『…だからと言って不真面目になるのは生に合いません』

 

『そうは言っても、あの防衛司令部の無能どもの媚売り行為なんか馬鹿を見るだけじゃないか』

 

 だがそんなキソでもごく最近までは絶望に抗っていたのだが、木星沖海戦の敗戦が伝えられるだけでなく、その木星沖会戦自体が負ける事を想定した囮作戦の一つで、元々木星沖海戦に参加した防衛艦隊に旧NATO所属国の艦隊が一切参加していなかった事が疑問視されていたし、本命の決死輸送船団は大きく迂回コースを取っていた為にほほ無傷の状態で地球に近日帰還予定が伝わったからだ。

 ただし決死輸送船団の事は艦娘達処か提督達でさえ一部の者にしか伝えられない機密事項だったのだが、佐世保の場合は山南司令に伝えられたのをナカが盗み聞いた為に漏らしてしまった。

 

『お前も早く死ぬな。

それも戦艦大和の馬鹿な作戦に同行した先代矢矧と同じ様にな』

 

 最後にキソを殴り倒して出ていったのだが、今でもキソの言葉が頭に残っていて、どうしてもやる気が起こせないで硬直していた。

 

「…ヤハギさん?」

 

「ハツシモ?」

 

 だから、偶々近くを過ぎようとしたハツシモが疑問に思って、ヤハギの所にやってきた。

 

「ヤハギさん、どうしたのですか?」

 

「いえ、ちょっと考え事し過ぎていただけ」

 

「…早くやった方がいいですよ。

此の辺りの放射能濃度が致死量の2倍以上になりそうですから」

 

「分かっているわよ……ああ、此の真下にリチウムが有るわね」

 

 取り敢えずヤハギはハツシモの存在で、やる気が出たらしく、早速スマートフォン型の探査機を使って辺りを調べると、武装の代わりに艤装に積んでいた耕作機を取り出してリチウムの掘り出し作業に入った。

 そんなヤハギを確認したハツシモは、自分もこのままヤハギを手伝うか別の場所に移動するか思案していたが、艤装のレーダーに何かを捉えた。

 

「……っ! ヤハギさん!!

上空に飛行物体です!」

 

「へ?」

 

「落下します!!」

 

 レーダーが無いのか壊れているのか、ヤハギは全く気付かなかった為、ハツシモの報せた落下物体に素っ頓狂な声を出して彼女の示した方角に振り向いたら……確かに何か発光体が此方に向かっていた。

 ハツシモの発見と報告が遅過ぎたと言え、超高速のソレはヤハギとハツシモの2人が何かの反応を起こす前に、彼女達の近くに落下(と言うより墜落?)して2人を吹き飛ばしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蒼天の海上、潮の香る青く美しい世界で、長姉アガノのミニチュアと言うべき容姿だった幼いヤハギが、その長姉アガノを追いかけっこをしながら楽しく移動し、次々姉ノシロがそんな2人に飽きれていたが、そんな彼女達を出迎えに来たのか、駆逐艦娘達と訓練中の艦隊の旗艦を務めていた、今の自分にそっくりな艦娘に胸がトキメキ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!」

 

 仰向けで倒れている状態から目を覚ましたヤハギは打ち身によるモノと思われる全身からの痛みを感じながら、頭を押さえながら起き上がった。

 

「……今の…」

 

 痛みを紛らわす為だろう、つい先程まで見ていた夢を思い出していた。

 だが夢の内容に反して、ヤハギは元々内陸部の出身で海に縁がなかった上に、物心がついた時にはガミラスの遊星爆弾によって海が蒸発していて、アガノやノシロは兎も角として、少なくともヤハギは“海”や“潮の香り”を全く知らないので、海の夢など見ようにも見れなかった。

 

「じゃあ、今の夢のは先代達の?」

 

 此所は坊ノ岬沖、戦艦大和と共に沈んだ先代矢矧の記憶が艤装を通して自分の中に現れたのかと推測していたが、その事で自分の艤装を思い出した。

 だが直ぐ脇に何かの金属片を見つけ、嫌な予感をしながら周囲を見渡すと自分の艤装は完全にバラバラになっていた。

 更に少し離れた場所にハツシモ(彼女の艤装も壊れている)が俯せで失神していたが、彼女との出会い頭の言葉が頭に浮かんだ。

 

(此の辺りの放射能濃度は致死量の2倍以上になりそうですから)

 

「…っ!!」

 

 ヤハギは慌てて自分の艤装を調べたが、彼女の艤装は生命維持装置まてもが壊れていた。

 超人的な能力を誇る艦娘と言えど、彼女達の肉体の強度そのモノは通常の人間と変わりなく、通常の人間と同じ様に発熱や病気に掛かるし、艤装の加護が無ければ通常の人間と同レベルの悪しき出来事で怪我をすれば死ぬ可能性もあった。

 つまり今のヤハギの様な艤装無しの状態では被爆して直ぐに死んでしまう筈だった。

 此の為、ヤハギは無意識の内に喉を両手で押さえながら息を止めて、急いで艤装を探って探査機を取り出すと、その探査機での放射能濃度の値は殆ど微量……今の地球では有り得ない本来の値を示していた。

 

「…何で……?」

 

 ヤハギは故障だと疑って探査機を揺すっていたが、何時までも死なない自分にも疑問を感じて少しの間だけ硬直していたが、不意に振り向いた先に変な揺らぎを見つけた。

 立ち上がったヤハギは千鳥足でそこに歩いていき、揺らぎの出本であったラグビーボール型の機械物が少し埋まっていて、屈んでソレを持ち上げた。

 ヤハギは機械物の正体を探ろうと思ったが、その直前に意識が遠退き始めて、自分が死ぬんだと勘違いをして抗う事なく左に倒れた。

 だがヤハギは再び意識を失う前に、自分の前方の土が盛り上がったと思ったら、そこから何者かが這い出てきた処で彼女は失神した。

 這い出てきた者は失神しているヤハギとハツシモを見付けて暫く茫然と見ていたが、ゆっくりと立ち上がるとヤハギを右手で抱き上げ、次にハツシモの首裏を突かんでそのまま引き摺って何所かへと歩いていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球沖 ―――

 

 

 殿として他の者達より大遅れしていたキリシマ達日本艦隊の面々が地球の沖合いに辿り着いた直後、地球へと向かっている赤く輝く球体の物体に気付いた。

 此の高速で飛翔する物体…自転しながら所々で炎を噴いている地球に死をもたらす悪魔の星・遊星爆弾の初弾は、憎たらしい事にキリシマ達の脇を過ぎようとしていた。

 

「…っ!」

 

「アラシ、駄目!!」

 

 その遊星爆弾へアラシが主砲を構えたが、そんな彼女をハギカゼが止めた。

 

「放せよ、ハギー!」

 

「此の距離じゃ、遊星爆弾に届きません。

それに、今の傷付いた私達には弾薬やエネルギーが殆ど無いのですよ」

 

 アラシを止めたハギカゼだったが、表面にこそ出ていないが、アラシを掴んでいる両腕に変に力が入っていた事から彼女も遊星爆弾を迎撃出来ない自分達に悔しい思いをしているのをアラシは察した。

 まぁそれ以前に、初期の遊星爆弾こそは迎撃が可能、破壊出来なくても軌道を逸らして地球直撃を回避出来たのだが、現在のは初期型より遥かに巨大・強固化していたので迎撃処か軌道を逸らす事すら出来なくなっていた。

 そんな遊星爆弾は艦娘達を嘲笑うかの様に過ぎ去ると、そのまま地球に落下して宇宙からでも確認出来る程の大爆発を起こし、更に2発が後に続いて別の場所に落下していった。

 

「……駄目だ、今はもう防げない。

あの遊星爆弾を防ぐ手立ては…」

 

 キリシマの言う通り、地球に落ち続けている遊星爆弾を迎撃出来ない自分達の無力さに何度も失望させられていた。

 

「そして此れが母なる地球の姿とはね…」

 

 しかも地球は既に破壊の限りを尽くされて、海は蒸発して数多の生命が死滅した、赤茶けた姿となっているのに遊星爆弾はまだまだ落ち続けている、ほぼ“死体蹴り”状態なのだから尚更であった。

 況してや、キリシマ達は勝っての帰還ではなく、負けての帰還なのだから、益々自分達を責め立てていた。

 此の為、“地球に帰りたくない”の一言であり、“帰るぐらいなら自殺でもいいから死にたい”と思っていたが、“ガミラスとの戦いはまだまだ続いていて、次の作戦に備える必要がある”と内心の言い訳を許している自分自信にもまた失望しているのが殆どであった。

 此の為に前々から噂の合った、嘗ての戦艦大和のと同様の特攻作戦に参加したいと思う者達がそれなりにいた。

 

「…ガミ公め」

 

「諦めない、私は諦めないわよ」

 

 だがイソカゼやハマカゼの様に此の万に一つも無い絶望下でも絶望を拒否する者達もおり、そんな二人にキリシマは気付かれないように目線を一瞬だけ向けた。

 だが此所まで来たら、個々がどう思っていようと後は地球へ降下して地下基地に帰投する、それが普段通りであった。

 

『…キリシマさん!!!』

 

「どうしたの、キサラギ?」

 

…どうやら今回は違うらしく、キリシマに血相を変えたキサラギの通信が入った。

 

『大変です!!

ガミラス艦隊が現れました!』

 

 キサラギの報告にキリシマだけでなく全員がギョッとし、真っ先に“追撃”の単語が頭に浮かんだ。

 

「それで、何所に現れたの!?」

 

『それが問題なのです!

斥候らしいガミラス艦隊は九州坊ノ岬沖に突然現れたのです!』

 

「坊ノ岬?

何であんな辺境にガミラスが現れたのよ!?」

 

『それが分からないので、防衛司令部は今大騒ぎなのです!』

 

 謎の行動をするガミラスにキリシマとキサラギが戸惑いながらのやり取りをして、他の者達は各々に戸惑っていたが、取り敢えずはガミラスの斥候が地球上の坊ノ岬にいるのは確かなようだった。

 

「…っ!」

 

「待って、イソカゼ!!」

 

 そんな中で飛び出そうとしたイソカゼをハマカゼが止めた。

 

「止めるな、ハマカゼ!!!

ユキカゼやウラカゼ達、奴等に殺された者達への怨みを胸の中に納められるか!」

 

「私は止める気はありませんよ」

 

 ハマカゼの返事にイソカゼがキョトンとしたが、直ぐにハマカゼの微笑しながらの頷きに彼女のを察して決心が就いた。

 

『既に坊ノ岬で消息不明になった人がいるらしく、キリシマさん達から何人かを選抜して坊ノ岬に向かってほしいとの事ですが…』

 

「だから、今の私達は皆傷付いて……っ!?」

 

「アキグモ、持っていくぞ!!」

 

「ふえ!?」

 

「マイカゼ、お借りします!」

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

 水掛けに近いやり取りをキサラギとやっていたキリシマだったが、イソカゼがアキグモから魚雷を、ハマカゼがハギカゼから主砲を各々の背後から拝借して飛び出した。

 

「行くぞ、ハマカゼ!!」

 

「良いですよ!」

 

「待ちなさい、2人共!!!」

 

 キリシマが怒鳴って止めようとし、他の者達が呆然としていたが、当の2人は素早く準備を整えるとそのまま地球へと向かっていった。




 感想・御意見お待ちしています。

 此の作品の特別設定で、元々の矢矧は阿賀野と同じロングストレートだったが、大和に憧れてポニーテールにしたとしています。

 後、“艤装の加護の無い艦娘の肉体強度は通常の人間と同じ”との設定は“聖闘士星矢”から取っています。


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第21話 回想:ジダイを越えた再会

――― 坊ノ岬沖 ―――

 

 

 地球に降下したイソカゼとハマカゼは早くも坊ノ岬沖に到着して、早速ガミラスの斥候を探索していた。

 

「しかし、何故ガミラスはこんな所に現れたのでしょうか?」

 

「ああ、坊ノ岬沖に基地や資源採掘所があるとは聞いていないからな」

 

 だが、やはりガミラスが坊ノ岬沖に現れたのかが気になって、ハマカゼとイソカゼは揃って思案していた。

 

「坊ノ岬沖と言ったら、大昔の深海棲艦戦時に戦艦大和が沈んだ海だとしか…っ!?」

 

「レーダーに感、近くに何かいる!!!」

 

 元々2人の先代である駆逐艦磯風と浜風が沈んだ海域でもあった事から、2人揃って戦艦大和が頭に浮かんだが、レーダーが何かを捉えたので周囲を警戒していると…

 

「…いたぞ!!!」

 

…2人の前方に単独で何かを探しているらしい駆逐ニ級が低速で動き回っていた。

 元々駆逐ニ級は探索能力に秀でている艦級とは言え、今更感のある単艦行為に明らかに違和感を感じさせた。

 

「よし、叩き落としてやる!!」

 

 まぁどうであれ、敵としているのは確かなので、イソカゼが身構えて、ハマカゼも続いた。

 で遅まきながら駆逐ニ級もイソカゼとハマカゼの2人の接近に気付いて慌てて加速しながら退避行動に入ったが、明らかに出遅れた上に動き自体も鈍かった。

 現にイソカゼとハマカゼを必死に振り払おうとし上下左右不規則に動いていたが、それが出来ずにイソカゼに最適な雷撃ポジションを取らせてしまった。

 

「もらった!!!……っ!?」

 

 当然、イソカゼは魚雷を放とうとしたが、その魚雷が発射させず、発射管(x2)自体から何か変な音が聞こえていた。

 

「どうしたの、イソカゼ!?」

 

「魚雷発射管が2つ共壊れている!!」

 

「接続不備、規格があってなかったの!?」

 

「分からん!」

 

 ギョッとするハマカゼが真っ先に疑ったのは、自分達カゲロウ級駆逐艦の致命的な欠点である互換性の無さだった。

 カゲロウ級は前級アサシオ級駆逐艦を原型としたステルス駆逐艦として設計され、此のカゲロウ級の為だけにハツハル級駆逐艦のハツシモとワカバの2人を、ステルス実験艦に改造しての慎重且つ丁寧に計画されていたのだが、ガミラスが熱探知等の対ステルス用の探知能力を強化した為に地球側のステルス機能が早々と無力化(後日判明するが、ガミラスは次元潜航艦の研究開発を大方進めていたので、ステルス対策が簡単に出来た)、此の結果に加えてステルス機能の生産・維持の困難さもあって純粋なアサシオ級の強化型に変更されたのだった。

 処が、当時の日本は相当慌てていたらしく、基本要点以外は各製作所に一任させた事が原因で艤装形状や服装がバラバラになってしまい、結果で艤装面の一例だと、カゲロウの“マジックアームを多用した独自型”、イソカゼの“シラツユ級の改良型”、ユキカゼの“シグレとサミダレの折檻型”、ノワキの“ハツシモ&ワカバの改良型”、アマツカゼの“シマカゼの転用型”……服装はカゲロウ以下大半の“ブレザーベスト”、次点のイソカゼ達の“伝統のセーラー服”、ユキカゼ・トキツカゼ・アマツカゼの“ワンピース型セーラー服(但しアマツカゼは色違い)”等々……開き直ったのか、末妹アキグモに至っては改カゲロウ級ことユウグモ級駆逐艦の試作品を両面に託されてしまった。(不思議な事にアサシオ級の改良型は無かった)

 此の結果、“高性能だが互換性が無いので整備・維持が物凄く面倒臭い”と称されるカゲロウ級は姉妹艦同士で武装を共用すると規格違いによる動作不良をよく起こしており、だからこそ次級ユウグモ級では規格統一を第一とした為に日本艦娘屈指の小柄体型のマキグモがダブダブの制服を着続けると言う、訳の分からない問題が起こっていた。

 

「アキグモ、あの馬鹿、何をしたんだ!!?」

 

 話を戻して、なんとか魚雷を放とうと艤装を弄っているイソカゼがアキグモに悪口を言っていたが、基本いい加減な性格な上にユウグモ級の試験艦であるアキグモから魚雷を拝借したイソカゼにも問題はあると思う。

 だがイソカゼの雷撃不能状態にハマカゼが気を行っていたこの隙に、駆逐ニ級は宙返りをして一気に逃げ出そうとした。

 

「不味い!!!

ハマカゼ、追え!」

 

「はい!!!」

 

 当然、魚雷発射管故障で身動きが取れないイソカゼは、ハマカゼに攻撃を頼んで当人が了解して直ぐに駆逐艦ニ級に振り向いた。

 

「…っ!? 嘘!!!」

 

 だがハマカゼが振り向いた直後、ハマカゼの背部の艤装が爆発・炎上を起こしてしまった。

 

「駄目です!!

オーバーヒートを起こしました、っ!!」

 

「馬鹿、掴むな!!!」

 

 どうやらハマカゼのは機関が吹っ飛んだらしいのだが、墜落コースに入ったハマカゼは偶然脇下を過ぎようとしたイソカゼの右足を突かんでしまい、イソカゼが足掻いていたが、イソカゼのも機関が吹っ飛んでしまい……ものの見事に2人揃って 坊ノ岬沖の海底(?)に墜落した。

 因みに駆逐ニ級はと言うと、ハマカゼとイソカゼの醜態に気付く事なく、最大速度まで加速して何所かへ逃げてしまった。

 更に蛇足ながら、駆逐ニ級はそのままワープで離脱してしまったので、防衛司令部や遅れて此所に向かっているキリシマ達も見失っていた。

 

「…ハマカゼ、大丈夫か?」

 

「人の事より、自分の事を心配して下さい」

 

 2人揃って墜落で半分埋まるも、頭の出血箇所を押さえながら起き上がった砂まみれのイソカゼがハマカゼを気にしていたが、そのハマカゼも脱臼した左肩を押さえながら起き上がって無事を報せた。

 

「くそっ!! 惜しかった!

一隻たけでも撃ち落としてやりたかった!」

 

 駆逐艦ニ級を取り逃がした事を悔しがっているイソカゼ、そんな彼女に「うん!」と頷いているハマカゼの2人からは微塵も闘争心が失われていないようだった。

 

「でも、此の艤装はどうします?」

 

「……あ」

 

 取り敢えず、お互いの応急処置を施した後、どちらかの艤装を直せないかどうか調べては、実際にやっていた。

 

「……駄目だな。

此れはアケシに任せるか、ドックに入れるしかない」

 

「あ~あ~…、アケシに殺されますね」

 

 で、イソカゼがハマカゼの脱臼した左肩をはめて、彼女のスカーフで左腕を吊るした後に長時間やった結果は駄目。

 しかも不味い事に夕陽で赤くなっていて、日没まで時間が残されていなかった。

 

「どうします?

佐世保か沖縄、どっちに行きますか?」

 

「いや、キリシマ達が来るかもしれないから、此所で待つのも手だ。

救難信号発信器も生きているしな」

 

 日単位での歩いての長距離移動やガミラスの再襲来等の不安要素を思う事はあったが、少なくとも厳重に強固に作られていた艤装の生命維持装置は無事だった上にキリシマ達の後続が近い内に来る可能性が高かったので、2人揃って気を楽にする事が出来た。

 

「…それにしても、何故ガミラスは此の海域にニ級を遣わしたのでしょう?」

 

 で、やっぱり気になるのが、ガミラスが坊ノ岬沖に斥候を遣わした事であったが、その疑問を口に出したハマカゼ本人だけでなくイソカゼも分からずにいた。

 そんな2人は揃って夕焼け空を暫く見上げていたが、背後で何かの音と気配を感じた。

 

「……おい」

 

「…ですね」

 

 イソカゼとハマカゼが真っ先に思い浮かべたのは、自分達が追撃したのとは別のガミラスの斥候、だからイソカゼは艤装から主砲一基を取って、ハマカゼは緊急用に携帯していたコスモガン(光線型拳銃)を一旦取り出して確認した。

 その後、先にイソカゼが岩壁に添って慎重にゆっくり進み、少し遅れてハマカゼがコスモガンを身構えながら続いて、曲がり角の所で二人揃って止まった。

 

「「……っ!」」 

 

 少し間を置いてイソカゼとハマカゼはお互いの視線を合わせて頷きあうと、2人揃って飛び出して身構えたが、その薄暗い谷間の先にいたのはガミラスではなかった。

 

「……あ」

 

「ハツシモと、ヤハギ!?」

 

「2人共、どうしたんだ!?」

 

 いたのは、失神しているヤハギを爪先を引き摺って背負っていたハツシモで、頭を打ったらしく右目が見えなくなる程の頭から派手に出血しているハツシモはハマカゼとイソカゼに存在に安心して屈んでしまった。

 しかもハツシモの艤装は2人以上に壊れていた上、ヤハギに至っては何故か艤装その物が無かったので、ハツシモはヤハギに自分の艤装を接続していて、ハマカゼとイソカゼは慌てて駆け寄って、取り敢えずイソカゼが持っていた予備のマスク型の生命維持装置をハツシモの口に付けた。

 

「ハツシモ、何があったのです?

まさかガミラスが近くにいるのですか?」

 

「……違います……此の先に、此の先にいる人に助けてもらって………でもあの人も危険なので、助けを呼びに行こうと…」

 

 ハマカゼの質問へハツシモの返しに、ハマカゼとイソカゼが目線を合わせたが、取り敢えずはハツシモとヤハギを助けたらしい人物が此の先にいるのは分かったので、イソカゼがヤハギを背負って、ハマカゼがハツシモを右肩で担いで遅れながらも谷間の先に進んでいった。

 

「……っ!」

 

「イソカゼ、どうしたのです……あ!?」

 

 そして谷間を抜けた先にハツシモが言っていただろう……否、艦娘らしき者が小高い丘の上にいた。

 その艦娘は錆びた艤装の右側の主砲に凭れ、ヤハギが見つけた謎の機械物を左手で抱えて座っていた。

 

「…Have withstood pain to cleate many weapons.

Yet,those will hands never hold anything」

(訳:彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う。 故に生涯に意味は無い)

 

「何ですか?」

 

「古い英語の詩文の一部だ。

出所は忘れたがな」

 

 夕日を背に悲しくも何処か美しい雰囲気を醸し出している艦娘に、イソカゼがとある英語の詩を思い出していたが、問題なのは此の艦娘の正体なのだが、何故かイソカゼとハマカゼはその正体を何となく察して……否、恐らく艤装を通して先代が此の艦娘を教えてくれた気がしていた。

 

「…大和……戦艦…大和、なのですか?」

 

 ハマカゼの呟きにイソカゼが反応出来ずに硬直していたが…

 

「…っ! あそこだ!!

あそこにイソカゼとハマカゼがいるぞ!」

 

「イソカゼ、ハマカゼ、無事だった………っ!?」

 

…アサシモとカスミが2人(+α)を見つけて駆け寄ろうとし、更にキリシマ、チトセ、シラユキ、ウラナミの4人も急ぎ続いた。

 そして6人共、夕日を背に眠っている艦娘に気付いて、驚いていた。

 

「…嘘でしょ?

こんな鉄屑(スクラップ)みたいな艤装で生きている」

 

 直ぐにチトセが艦娘に駆け寄って診断して生きている事を確認した。

 

「…や、大和?」

 

「コイツは戦艦大和だろ!」

 

「……信じられない。

此の人、戦艦大和です。

防衛軍が保管していた大和の遺髪とDNAが一致しています!」

 

 どうやらカスミだけでなく、録な学を持っていない……つまり大和を名前だけでしか知らない筈のアサシモも、イソカゼとハマカゼと同様に艦娘が大和だと思っていたらしく、チトセが計器を使って調べた結果、坊ノ岬沖海戦で戦没して行方不明になっていた大和本人である事が確認された。

 

「此れって、D案でしょうか?」

 

「まさか、二百年以上前の艦娘ですよ」

 

 D案……深海棲艦戦時、深海棲艦の艦隊を撃滅した時に艦娘が確保(或いは出現)する出来事が、ガミラス戦バージョンとして大和が現れたんだとシラユキは思っていたが、その当時の艦娘がその時の状態で現れていたのでウラナミが否定した。

 

「兎に角、連れて帰りましょう。

出現理由とか二百年以上前の艦娘がどれ程やれるのかとかが気になりますが、沖田提督からも回収命令を受け取っています」

 

 キリシマの言う通り、大和の出現に色々と疑問はあるが、少なくとも大和を此の場に置いておくとの選択肢は無かった。

 

「……イソカゼ、どうしたのですか?」

 

「いや、なんにもない……なんにも、な…」

 

 チトセがシラユキとウラナミと共に大和をどう連れていくのか話し合っていたが、大和確認後からヤハギは兎も角としてハツシモが安心したかの様に失神し、怒りや失望感とかがいつの間にかに消え失せていた事にイソカゼ、ハマカゼ、アサシモ、カスミの4人が驚き戸惑って目線を合わせ、キリシマの質問に答えられないでいた。

 

「艤装や私達の肉体を通して、先代達が大和との再会を喜んでいるのでしょうか?」

 

 シラユキとウラナミが両脇から大和を抱え上げている中、ハマカゼの呟きにイソカゼ、アサシモ、カスミの3人は無言のままでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(夕日を浴びて死んだ様に眠る大和…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…ですが、大和には希望が託されているのです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(その秘められし恐るべき力を発揮するのは何時の日か…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(大和、二百年と五十四年の眠りから目覚めて下さい)




 感想・御意見を御待ちしています。

 今回の投稿前に第8話と第10話に、量は微量ですが意味合いは多分大きい追加をしました。

 更に“設定 ガミラス”のガミラス鶴棲姫と試作・戦艦デスラー鬼を追加しました。
 只、“設定 ガミラス”でも書いてますが、鶴棲姫は出したいけど、物凄く悩んでいます。


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第22話 歓喜と不信

 今回の投稿前に、第16話での“真新しい砲身~”を“深海棲艦時の日本最新最固のVH鋼板より遥かに優れた硬化テクタイト製の~”に代えました。

 なんか、最近のヤマト二次小説で“『ヤマト』の装甲はコスモナイト”と間違って書かれているのが多い気がしますが、2199の5話でテクタイトの単語が出ていたので、正解はテクタイトだと思いますよ。

 それでは本編をどうぞ。


――― 地球・火星間宙域 ―――

 

 

「……夕日の中で、ねぇ…」

 

 ヤハギから自分が発見された時の状況を教えられたヤマトは、少しの間だけ物思いに耽っていた。

 

「前例の無かった事だったから、防衛司令部ではヤマトがガミラスのスパイ等じゃないかって、かなり疑っていたらしいわよ」

 

 大和(ヤマト)発見後、彼女の艤装から奇跡的に通しナンバーが確認出来るだけでなく、放射線測定での艤装調査から深海棲艦戦時の時代の物である事が判明、更にドック入りした大和を改めてDNA検査をした結果、戦艦大和本人である事が確定したのだが、それでも目覚めた大和本人からの聞き取り調査が行われるまで、ガミラスのスパイ等ではないかと疑う者が多数いた。

 

「今でも、貴女を見つけた時の事は、よく覚えています」

 

「…ハマカゼ……あれ、アサシモもみんな?」

 

 ヤマトが少し驚いていたが、何時の間にかにハマカゼ、アサシモ、イソカゼ、ハツシモ、そして丹陽の5人が脇で揃っていた。

 

「タマは、お邪魔っかニャー?」

 

 坊ノ岬沖海戦に出撃した艦娘達の次代(丹陽が戦没したユキカゼの代わりになると言え、カスミは第三艦隊所属、スズツキは冥王星に囚われていて、フユツキはMIAで、3人欠けているのが悔やまれる)が揃ったので、タマが微笑しながら下がろうとしたが、そんな彼女をヤハギが止めた。

 

「なんか、ご免なさいね。

こんな生還率の低い遠征に参加するはめになっちゃって」

 

「先代がどうとか、私達は関係ありません」

 

「まぁ、敢えて言うなら、ヘマした先代達に代わってヤマトを目的地へ連れていくって言う気はあるけどね」

 

「だからヤマトには気にせずイスカンダルに1年以内に行って帰ってくる事に専念してほしい」

 

 何となく、ヤマトが頭を下げようとしたが、そんな彼女をハツシモが止めて、更にアサシモが続いた。

 だが最後のイソカゼの言葉に、ヤマトが何も返さずにヤハギに目線を向けたので、イソカゼ達は思わずヤマトに呼び掛けた。

 

「ヤマトさぁん」

 

「……丹や~ん」

 

「はいぃ~」

 

「分かっていますけど、その訛った口調をなんとか出来ませんか?」

 

「いや、鈍ってねぇス!」

 

「それを訛っているって言うの!!」

 

 最後の丹陽の呼び掛けに、ヤマトが笑いのツボに入ったので丹陽を注意したのだが、どうも丹陽本人は訛った口調をあまり自覚していなかった。

 その為に「えぇ~」と呻いていた丹陽に、イソカゼとハマカゼが笑いながら突っ込んでおり、どうやら国が違えど丹陽は駆逐艦娘達に上手く馴染んでいる様だった。

 そんな丹陽にじゃれながらアサシモが色々とアドバイスをしていたが、イソカゼがブーツを鳴らして姿勢を正すと他の四人も彼女に続き、5人揃って右拳を胸に当てる敬礼をした。

 

「大日本帝国海軍、第二艦隊所属、第二水雷戦隊、集結しました!

イスカンダル遠征艦隊への参加を許可願います!」

 

 五人を代表してのイソカゼの宣言に、ヤマトが「え~」と呻き、ヤハギとタマが視線を合わせて苦笑した。

 

「貴女達、その古い呼称を使うの?」

 

「当たり前だ。

見ろ!!!」

 

 呆れているヤマトを他所に、イソカゼ達は右腕を下ろすと、5人揃って回れ左をして左袖の腕章……なんと旧海軍の第二艦隊の物を見せた。

 

「…丹陽の場合、不味くない?」

 

「不味いと思うニャ」

 

 ヤハギとタマが小声で話し合っていた通り、日本籍ではない丹陽のみは色々と不味い気がし……実際に丹陽の身勝手な艦隊編入に加えて、旧海軍第二艦隊の腕章を日本側が強要させたとの中国の言い掛かりで大問題が起こるのだが、それは遠征帰還後の話である。

 

「あ~あー…、古臭い腕章を使っちゃって………って、あれ!?

ヤハギ、貴女も付けてるの?」

 

「そう言うヤマトも付けてるじゃない!」

 

 明らかにわざとらしかったが、呆れたヤマトがヤハギも旧海軍第二艦隊の腕章を付けていて、更にヤハギもヤマトも同様に腕章を付けている事に気付いた。

 そんな二人にタマが苦笑し、イソカゼ達5人が「あー!!!」と叫んだ。

 

「あ、そうだ。

此れ、隠し持ってきたんだ。

カスミがいないけど、第二艦隊復活を祝って飲も飲も!!」

 

「あ、それ、美伊じゃないか!」

 

 アサシモが艤装から取り出したのは純米酒『美伊』……元々高価だったのが、ガミラス戦での物資不足で価値が急上昇した高級酒だったので、イソカゼが驚いていた。

 

「ちょっと、飲酒は…」

 

「良いニャ、良いニャ!

で、タマの分はあるかニャ?」

 

 飲兵衛のチトセでさえ、少ししか持っていない稀少な酒に、ハツシモがはしゃいでいる駆逐艦娘達を良心的に抑えようとしたが、そのハツシモをタマが止めながら、自分もありつこうとしていたのでヤハギに呆れられていた。

 

「ああ、もう!!

第二水雷戦隊、静粛に!」

 

 幾らなんでも騒ぎ過ぎなので、ヤマトが静めようとしたが…

 

「静かにしてくれない」

 

…此所にはいない筈のズイカクの声に、全員が一瞬硬直した後に彼女の方に振り向いた。

 ズイカクがオオヨド(彼女の脇にアケシ、レシーレリヌイ、ヴェールヌイの三人もいた)と話し合っているのを見た処、彼女はワープの為の偵察情報を渡す為、先行して合流した様だった。

 因みにズイカクの同伴として、彼女から離れた所にカスミもおり、自分を除いての祝い酒をやろうとした事に、カスミはアサシモ達を睨みながらも、然り気無く左袖の旧海軍第二艦隊の腕章を見せていた。

 

「あのさ、此方は勝手に騒いでいるんだから、どうしようと勝手でしょう?」

 

「どうでしょうかね?

第二艦隊だの、何なのと騒がれていたら、鬱陶しいだけよ」

 

 妙に喧嘩口調な上にヤマト達に背を向けて振り向こうとしないズイカクに、お祝いモードだった空気が険悪なモノに急反転してしまった。

 

「ズイカク、アンタも私達も艦隊を組んだ事があるから、気質は知っているでしょ?」

 

「尤も、こぉーんなデッカイオムツを穿いた状態だったから覚えてないよねぇ~」

 

 そんな空気の中で、ヤハギとアサシモがズイカクに煽り返して、ハツシモを除いた駆逐艦娘達が笑っていて、後姿でも分かるぐらいにズイカクがムッとしていた。

 

「此の遠征でのエースは私が取る!

覚悟しておけよ!」

 

 更にイソカゼが、日本艦隊のトップエースであるズイカクを煽って、ズイカクが怒り過ぎてオオヨド達4人がギョッとしながら距離を取っていたが、当人は少しの間硬直していた。

 そしてズイカクの何かが切れてヤマト達の所に振り向いたが、彼女の口から出たのは以外なモノであった。

 

「ヤマト、何で今だったの?

何で、あの時より前に甦ってくれなかったのよ!?」

 

「あの時?」

 

「……コンゴウ達が亡くなった時よ!

艦隊が壊滅する前によ!!」

 

 此の時に、ショウカク達第三艦隊がやって来ていたが、ヤマトとズイカクの間を中心としたただならぬ空気を感じ取っていた。

 

「要するに、捷一号作戦時と同様に命を惜しんでいたんでしょ。

そんなアンタには、私達が命懸けで戦っていた戦場の地獄度合いなんて分からないでしょ!?」

 

「何だと!!」

 

「…っ!」

 

 ヤマトは一見したら無反応だったが、彼女に代わって怒ったイソカゼ(を初めとした駆逐艦娘達)を止めた。

 

「私は認めない。

アンタが最後の希望だって………腰抜け」

 

 ズイカクの最後の吐き捨てにヤハギ達が飛び出そうとしたのをヤマトはタマとハツシモと共に止めたが…

 

「ズイカクゥー!!!」

 

…1人離れた所にいたカスミのみが、ズイカクに駆け寄って彼女を殴ろうとしたが、ズイカクが右フックでのカウンターで逆にカスミをKOしてしまった。

 

「「カスミ!!!」」

 

「ズイカク、此方に来なさい!!」

 

 伸びたカスミにヤマトとハツシモが駆け寄って介抱して、ズイカクはショウカクの怒鳴っての呼び出しに“しまった”と顔に出しながら、ヤマトの振り向かずに姉の所に向かった。

 

「……出来の悪い妹を持ったら、姉は苦労するわね」

 

 ショウカクがヤマトに頭を下げた後にズイカクを説教か何かをしに彼女を連れて一旦離れる前に、チトセが苦笑しながらショウカクに同情していたが、後に此の言葉はチトセにブーメランとなって帰ってくる事になる。

 

「…誰だよ、あの空母を此の艦隊に入れたの?」

 

 艦娘も内面は通常の人間と同じで相性の悪さがあり、旧海軍で言ったら、ギクシャクしていた北上と阿武隈や、張り合っていた朝雲と陽炎等があったが、取り分けて大和と瑞鶴の不仲は“艦娘版・犬猿の仲”の代表格として後世でも有名であった。

 片や海軍期待の新星として後方で待機させられていた大和、片や“五航戦の子なんかと一緒にしないで”の言葉通りに期待値ほぼ0でありながらも前線に居続けてトップエースに登り詰めた瑞鶴、こんな真逆な戦歴の2人が相容れる訳が無く、大和と瑞鶴は出会う度に口論(流石に取っ組み合いは無かったが)をしていた。

 況してや大和と瑞鶴は竣工日がかなり近かったので相手を意識しないのは無理があり(此の点は榛名と霧島の姉妹仲に近い)、決定的なのはズイカクは先代瑞鶴の犠牲を無駄にした大和(ヤマト)を益々嫌っていたのだから、アサシモが苦虫を噛み締めながらの呟き通りにズイカクの遠征艦隊編入には反対や危惧する声が多数あった。

 まぁ、殆どの者は、ズイカクの遠征艦隊編入(ズイカクの実力だけは編入には値する)はイスカンダル遠征反対派の芹沢辺りの差し金だろうと推測していたが、「幸運の女神が付いている」と自称するズイカクに反して、彼女の存在が遠征艦隊に疫病神を招く不安を頭に過らせていた。

 

(何であの時より前に甦ってくれなかったのよ!?)

 

 此の時のヤマトは、つい先程のズイカクの問い掛けが頭の中で再生されていたが、その問いの答えは“何故甦ったのが自分だったのか?”を含めて、彼女自身が知りたい事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― ????? ―――

 

 

「Offenbar scheint die Erdflotte auf das aeussere Universum zu zielen」

(訳:どうやら、地球艦隊は外宇宙を目指しているようだな)

 

「Es scheint so」

(訳:らしいな)

 

 何所かの暗い大部屋で、2人の存在が遠征艦隊が映る大型モニターを見ていた。

 

「Was machst du?

Wirst du Millieu Admiral um Anwerisungen bitten?」

(訳:どうする? ミリュー司令に指示を仰ぐか?)

 

「Lass nichts deragleichen auf dieses Selbst uebertragen Chu.

Sie wissen,was passiert,wenn Sie ihm “Diese Person” den Status quo melden?」

(訳:あの自己チュー野郎に伝わるような事は一切控えろ。 奴に“あの御方”に現状を報告されたらどうなるか分かるだろ?)

 

「Es versenkte nicht nur das Schlachtshiff Lu Class “dieser Person ”,sondern der Angriff auf interplaneteren Gefechtskopfgeshosse scheiterte」

(訳:“あの御方”の戦艦ル級を沈めてしまっただけでなく、惑星間弾道弾での攻撃が失敗したからな)

 

 苦笑した一方に、もう一方が睨んだが、どうやら此の2人は対等な立場で話し合っている様だった。

 

「Verwandeln Sie die Begleiteinheit der Transportflotte in Richtung Jupou in eine Abfangstation zum Mars,aber sagen Sie ihr,dass sie nach dem “Latenter Daemon” Ausschau halten sollen」

(訳:木星へ補給基地の建設に向かっている輸送艦隊の護衛部隊を火星へ迎撃に向かわせるが、“潜宙棲鬼”に警戒するように伝えろ)

 

「Ich verstehe」

(訳:分かった)

 

 相手に同意した一方は、直ぐに指示を出しに退室していった。

 

「Aber warum kuemmert sich nicht nur Millieu,sondern auch “Diese Person” um diess Schlachtshiff?」

(訳:しかし、何故あの戦艦をミリューだけでなく、“あの御方”までが気にかけているのだ?)

 

 残った一方は、遠征艦隊の映像を操作して、1人だけ拡大されて映っているヤマトを見詰めていた。




 感想・ご意見お待ちしています。

大和
「最後の場面で“ミリュー”って、名前と思われる見慣れない単語があったんですけど」

 奴は宇宙戦艦ヤマトのキャラではありません。
 初代・徳川太助と中の人が同じ松本零士キャラのですから、奴の正体が分かれば此の作品に関わっている松本零士作品が分かります。
 前回報せた第8話と第10話の書き換えは、此の為の布石です。

大和
「大丈夫なんですか?
此の作品には、ガミラス側の提督(将軍)や司令等は出さなんじゃなかったのですか?
現にガミラスのキャラで出るのはデスラーだけじゃないですか」

 本作独自の大和(ヤマト)の過去の秘密を書くのに、どうしても奴の存在が必要になったんです。
 只、作品を終わらせる危険性があったら、投げ捨てる可能性はありますよ。

大和
「はぁ…」





 最後に語学力の無い作者にはガミラス語が書けないので、ドイツ語で代用しています。
 で先行情報として、深海棲艦の武装がアメリカ規格たったのに対して、ガミラスの武装はドイツ規格となっています。

 さあ、次回はワープ実験からのヤマト初の宇宙での艦隊決戦です。
 初のワープだから、アレがあるかもよぉ~ん。

大和
「此の作品は挿し絵の無い小説だから、有っても無くても変わりないと思いますけどね」


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第23話 ワープ、光を超えよ

 今回の投稿前に“設定 艦娘”の書き換えを行いました。





 それでは本編をどうぞ。


――― 火星軌道 ―――

 

 

「……火星軌道に進入しました。

時間的誤差は一切ありません」

 

 オオヨドの報告ではヤマト達遠征艦隊は火星軌道に入ったらしいのだが、レーダーでなんとなく感じられているものの、火星が全く見えないので目視だけではあまり実感が沸かなかった。

 実際にアサシモとレシーテリヌイの2人の顔にその事が出ていたので、オオヨドに睨まれていた。

 

『総員に告ぐ、此れより人類初のワープテストを行う』

 

 通信を入れた沖田側も遠征艦隊が火星軌道に入ったのを確認して、予定通りにワープ実験開始を告げた。

 

『此の実験に失敗したら、君達は勿論、地球人類の破滅に結び付く。

各人気持ちを引き締めて心して掛かるように、以上』

 

 沖田の言った通り、往復33万6千光年の遠征を1年以内に出来るかどうかは此の実験でのワープ航法の確立に掛かっていて、不本意な形で前倒しとなった波動砲試射よりも重要なモノであった。

 実際、その事をよく理解しているヤマト達は顔を引き釣らせ、特に実際にワープ実験をやらされるヤマトは不安……と言うより貧乏クジを引かされた事への表れで首のスカーフを弄っていた。

 

「ヤマト、知っていると思いますが、ワープのおさらいをしますよ」

 

 ヤマトは少し間を置いてオオヨドに無言で頷き、続けてオオヨドが目線を向けたアマツカゼも頷いたのを確認して、セーラー服の首回りのスカーフを引き抜いて、そのスカーフを広げた。

 

「いいですか、イスカンダル遠征は通常での移動方法では、例え光の速さ、即ち光速の動きをもってしても1年以内での往復処か、イスカンダルに辿り着く事すら出来ません。

そこで求められるのが、光速を超えた航行法、ワープ航法なのです」

 

 そう言うと、オオヨドはスカーフの一角に右の人差し指を付けた。

 

「此のスカーフで言うと、此の場合は此の角から対角線上の角へ移動する事として、通常の航行法は対角線上に進んで行く事です。

それに対し、ワープは此の様に角と角を合わせた後に進む事です」

 

 オオヨドは通常航行法の例えとしてスカーフを対角線上一文字に擦り、今度はワープの例えとしてスカーフの角と角を合わせた。

 

「本来のワープとは、“歪める”と言う英単語の“Warp”の通り、空間をねじ曲げると意味合いなのです」

 

「え~…つまり、そうやって空間を飛び越えるって思っていいわけ?」

 

 理解に苦しんでいるチトセにオオヨドは「はい」と言って頷いた。

 

「…あたしゃには、さあぁっぱり分かんない」

 

「ふん、レディである私はしっかり理解したわよ!」

 

 元々こう言う事がからきし駄目なアサシモがゲッソリし、そんな彼女にレシーテリヌイが胸を張っていたが、実際は分からないのに見栄を張っている事を察していたヴェールヌイが冷たい目で姉を見ていた。

 

「で、どうやって空間を曲げるの?」

 

「今からそれを説明しますよ」

 

 ヤハギのフライング気味の質問にオオヨドが苦笑したが、元々オオヨドはウンチク女王の気質があった為に先程から妙に興奮して他の者達が少し引いていたが、そんな彼女の気質を知っているアケシのみは苦笑していた。

 

「ワープには種類は4つ、先程も言った通りの“空間歪曲型”、純粋に光速を遥かに超越する速度で航行する“通常推進型”、一旦別宇宙に飛んだ後に元の宇宙に戻ってくる“平行宇宙型”、先の空間歪曲型に似ているワームホールを作る“ワームホール型”です。

今までの地球の技術力では4つとも全てが不可能でしたが、今回イスカンダルからもたらされた波動エンジンによって空間歪曲型が可能となったのです」

 

 オオヨドの説明に全員が「ほぉ」と溜め息を吐き、“イスカンダルさまさま”と思っていたが、一部ではイスカンダルに疑問を感じる事があった。

 

「ですけど、今回は地球側の技術力に加えて時間的猶予が無かった事が原因で、ヤマトのイスカンダル製のは別として、駆逐艦処か巡洋艦でさえワープに艤装が耐えきれない公算が大なのです。

蛇足ですが、波動砲はもっと駄目で、現在では戦艦娘であってもヤマト以外の者には扱う事は出来ません」

 

「それ、駄目じゃない!!」

 

 カスミの怒鳴っての指摘にオオヨドが溜め息を吐きながら頷いた。

 但し、時間さえあれば此の問題は解決可能で、実際イスカンダル遠征での運用経験を元に駆逐艦やパトロール艦でも単独ての空間歪曲型ワープが可能、全ての戦艦や一部の巡洋艦(要するに重巡)でも波動が使用可能となる新型波動エンジンを2201年ごろから開発・量産に至る事になるのだが、それはまだ未来の話であった。

 

「そこで防衛軍が考えたのは、ワープ可能な艦娘がワームホールを展開した後、他の者達が波動防壁を展開して飛び込む、空間歪曲型とワームホール型の折檻型を採用しました」

 

「只、それだと空間歪曲型と空間超越距離が落ちるって聞いたけど?」

 

 妥協に近い形の空間歪曲型とワームホール型の折檻型は、主体としては空間歪曲型に取って代わられるのだが、改良発展を続けられて“トランスワープ”に進化して使用し続けられる事になる。

 

「勿論その欠点は分かっています。

落ちた1回分の空間超越距離は回数を増やして補います」

 

 ヤマトの質問に答えたオオヨドは後ろのショウカクとズイカク、そしてアケシに振り向いた。

 

「基本ローテは1番距離が飛べるヤマトとしますが、ヤマトが休息・整備をしている間にショウカクとズイカクにワープをしてもらいます」

 

 此のオオヨドの発言に、ショウカクは無反応だったが、ズイカクは「え~」と呻いていた。

 

「後、私もワープは出来るのだけど、私の波動エンジンは試作品だから総合的全てに劣るから、私のは最後の手段と心得ておいてね」

 

 アケシにヤマトが頷いたが、同時に再説明を長くさせ過ぎたオオヨドが沖田に注意されていた。

 直ぐにオオヨドはワープ着地点の予定座標である木星の沖合いを調べていて、此の間にヤマトはアケシとアマツカゼの最後の確認と整備を受けていた。

 此処まで来たら“まな板の上の鯉”状態であり、現にヤハギ達他の面々は気を引き締めようとするも不安を拭えないでいた。

 

「ズイカク、どうして戦闘モードにするの?」

 

 でそんな中、ズイカクが艤装を戦闘モードにして目を瞑って弓を持ったまま腕を組んだ事にショウカクがキョトンとしていた。

 

「そっか、戦闘モードなら波動防壁をより強く展開出来ますヨネ」

 

「なにびびってんのよ!!」

 

 丹陽がズイカクの狙いを察して納得しつつ自分も真似しようかと思ったが、イソカゼに胸を小突かれていた。

 

「ワープ座標、確認出来ました。

空間に異常はありません」

 

「最終調整完了!」

 

「同じく完了!」

 

 オオヨドの解析が終わって、更にアマツカゼとアケシのも終わっていよいよその時が来た。

 後はヤマト次第、そのヤマトも不安や、一番高性能且つ頑丈と言う理由で貧乏くじに近い形で選ばれた事への不満はあったが、より負担の大きい波動砲の試射に成功している事から、ある程度は気を楽にする事が出来ていた。

 

『ワープ!!!』

 

「ワープします!」

 

 沖田の号令にヤマトが復唱しながら実施、急加速した後に前方に展開されたワームホールに先頭のヤマトが押し入る様に進入した後に全員が彼女に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 木星沖 ―――

 

 

 火星軌道でのワープから僅かに3分後にヤマト達は通常空間に戻ってきたが、ワープの影響で19人全員が失神していて、狙い通りの何も存在しない宇宙空間に出た為に重力等の静止要素となるモノが存在しないので“慣性の法則”の通りにそのまま前進していた。

 

「……うっ。

みんな、無事?」

 

 少しした後に、最初にヤマトが強烈な頭痛を感じながら目を覚まして失神している他の者達を確認したが、その他の者達も次々に目を覚ましていっていた。

 

「…成功……したの?」

 

 ヤハギ達もヤマトと同じ様な頭痛を感じているらしく、全員頭を押さえていたが、一見した処だと全員無事の様だった。

 此の間に、ヤマトは最新のデジタル式腕時計と旧海軍時代からの愛用品のアナログ式懐中時計(覚醒当初は錆びて壊れていたが、防衛司令部に依頼された時計職人の重鎮の手によって完全に修復)の2つで時間を確認、時間だけは予定通りだった。

 

「…何だったの、あのデカイ亀………っ!!!」

 

…訂正、ヤマト達から少し離れたカスミが屈んで吐いてしまい、ヤマトが見たくもないカスミの汚物に目線を反らしたが、その向いた所でハツシモが何かの袋へ、更に反らした方角でアサシモもハマカゼに背中を擦られながら吐いていたので、複数の負傷者(?)が出てしまった。

 尤もヤマトも軽めの吐き気と頭痛を感じていて、見た処他の者達も同じ様だった。

 当然ながら、直ぐにチトセがアサシモ、ハツシモ、カスミの順に3人を診察(且つアケシから借りた小型バーナーでの汚物の焼却)していたが、何故かチトセのみは頭痛や吐き気がないらしく、1人だけ元気にしていた。

 

「…ああ、ワープで酔っちゃったみたいね」

 

「酔い?」

 

「ええ、病状が二日酔いや船酔いのに似ているからね」

 

 チトセの言う通り、確かに頭痛と吐き気は昔やった船酔いのに似ていてので、ヤマトは納得した。

 

「3人とも少し安静にする必要があるけど、その内に慣れていくわよ。

どう、迎え酒を飲む?」

 

 更にヤマトはチトセが1人元気だったのは、飲兵衛であった事で酔いに高い耐性を持っていた為だった事を理解していた。

 現に3人の中で一番状態の酷いカスミに注射を射ちながら酒(多分チトセカクテル)を笑顔で進めるチトセ、普段なら怒る筈なのにチトセの顔を見ずに右手を振って“いらない”と示しているカスミの対比から見て取れた。

 

「…イソカゼさぁん、私、3つに別れた気がしたんデス」

 

「いや、私は白亜期の恐竜達を見た気がする」

 

「私は地球が別の惑星と衝突しそうだったのを見ました」

 

「僕は自分自身と正面衝突した、自分でも言っている意味が分からないけどね」

 

「私は海みたいな所に墜落した。

どうやら平行宇宙型が少し交ざったみたいだな」

 

「……っ! ひや!!!」

 

「っ! ショウカク姉、ワープ中に裸にならなかった!!?」

 

 酔いをまぎらわそうと丹陽、イソカゼ、アキヅキ、ハツヅキ、ヴェールヌイの5人がワープ中に体感した事を話し合っていたが、此の5人の会話で何かを思い出したショウカクが胸部を両腕で押さえながらしゃがんで、ズイカクが直ぐに駆け寄り、そのズイカクに睨まれた事をヤマトが理解出来ずに怪訝の顔をしていた。

 

「それよりも、ワープはどうなったの!!?」

 

 酔いが冷めて代わりに頭が回り始めたイスズの言う通り、先ず追求すべきはワープの成否であり、直ぐにアケシ、オオヨド、アマツカゼの3人が各々の確認作業を始めた。

 

「オオヨド、タマ達は何処にいるんだニャ?」

 

「待って下さい!

防衛司令部に連絡を入れなくてはいけませんし…」

 

 タマが自分達の所在確認をせっつかせていたが、オオヨドは防衛司令部への連絡をする必要もあって慌てふためいていた。

 

「……っ、みんな、あれ!」

 

 尤も大まかな所在は、波動エンジンの確認の為にアマツカゼがへばり付いている状態のヤマトが、何かに気付いてそちらを指差した事で、少しの間だけ全員が硬直してしまったが直ぐに分かった。

 何故ならヤマトが示した先……遠征艦隊の左前方には、環を携えた独特な縞模様のガス状惑星が存在していた。

 

「あれって、土星?」

 

「違います!

アレは木星ですよ!」

 

「木星? だって環がありますよ?」

 

 ヤマトは環の存在で前方の惑星を土星と勘違い(と同時にワープが行きすぎたと思っていた)して、テルヅキが木星だと確認した後も疑っていた。

 

「……そうか!

ヤマトさんは木星にも環がある事を知らないのでしたね」

 

 テルヅキが気付いた通り、アメリカの探査衛星『ボイジャー』によって木星の環が確認されたのは1979年だったので、1945年に戦没したヤマトが知らないのも無理はなかった。

 一応、此の事は前人未到の星間航海に出る以上は最新宇宙学の1つでヤマトにも教えられていた筈なのだが、どうやら此の時のヤマトは忘れていたらしく、そんな彼女に向けたズイカクの馬鹿にしたかの様な目線を感じて、思い出すと同時にズイカクを睨んでいた。

 

「前方、障害物無し。

重力場の影響無し!

ワープ座標、誤差許容範囲内!!

時間と共に問題無し!!」

 

「微調整が必要だけど、波動エンジン異常無し!」

 

「全遠征艦隊要員、取り敢えずは命に別状なし」

 

「全員の艤装に損傷を認められず。

ワープ成功ね」

 

 木星が確認出来た事もあって、オオヨドが防衛司令部に確認連絡を取りながらワープ座標に、アマツカゼはヤマトの波動エンジンを、チトセはワープ酔いの3人以外のも含めた簡易診断結果を、そしてアケシが全員の艤装を確認して、全て(?)に問題が無かった事でワープ実験は成功と判断された。

 

「……なんて、力…」

 

 ワープ実験成功に、ヤハギ達(及び連絡を受け取った防衛司令部)は各々に喜び、オオヨドとアケシが沖田に一礼しながら改めて通信していた。

 そしてワープをやったヤマトは、首のスカーフを少し緩めた後に自分の両掌を見つめていた。

 

「木星、か…」

 

 だが数ヶ月前に防衛艦隊が敗走してユキカゼ達大勢の艦娘達が亡くなった海戦の舞台となった軌道の主である惑星へ向けて、イソカゼを初めとしてハマカゼ、アマツカゼ、丹陽、チトセ、ショウカクの計6人は静かに敬礼していた。

 彼女達の死を決して無駄にしない、敬礼をしなかった者達を含めた全員が改めて英霊達に誓っていた。

 

「……?

オオヨド、1時の方向に何かいる!」

 

 そんな時に前方で何かを見つけ、オオヨドに調べるように頼んだ。

 で調べた結果、オオヨドが血相を変えて叫んで伝えた答えに、全員がギョッとした。

 

「ガミラス艦隊です!!!」




 感想・ご意見お待ちしてい、ま(す)!!?

























瑞鶴(弓矢、構え中&橘花改、多数展開)
「作者さん、何でワープ中の透け透け、翔鶴姉にやらせたの?
此の作品の森雪ポジは、私だった筈だよね?
だったら、私にやらせるのが筋だと思うんだけど?」

…自分の(甲板)胸に聞きなさい。

瑞鶴
「…(何かが切れた)…全機、攻撃開始!!!
怒りを込めて、弾薬が尽きるまで、撃ち続けなさぁぁーい!!!」

 それ、土方提督の死亡プラg(爆弾、多数直撃)


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第24話 第二次木星沖海戦(前編)

――― 木星沖 ―――

 

 

 オオヨドや防衛司令部は念入りに木星軌道を徹底的に調べた結果、此の軌道や木星そのモノにガミラスの基地や艦隊はまだいないと判断していた。

 もし、いたとしても火星軌道のヤマト達遠征艦隊を迎撃をしに離れているだろうとの、淡い予想は次々にワープアウトして出現してくるガミラス艦隊によって否定された。

 で、現れたガミラス艦隊は6隻ずつの3つに分けられていて、重巡リ級を旗艦とした雷巡チ級2隻に駆逐ロ級3隻ので編成された前衛、軽巡ホ級を旗艦として駆逐イ級2隻と同ニ級3隻で編成された後衛、そして空母3隻と駆逐ハ級3隻で編成された本衛であったのだが、此の本衛こそが仰愕する要素を持っていた。

 

「…っ! 空母ヲ級がいます!!!」

 

 オオヨドの絶叫しながらの報告通り、軽母ヌ級2隻を従えて本衛の旗艦を務めていたのは、軽母ヌ級に似た帽子を被って外套と杖を携えた魔導師を思わせる容姿の空母ヲ級であったからだ。

 戦艦ル級と主力の双璧を成す空母ヲ級が含まれている以上、彼女達は偶々現れた警備艦隊などではなく、間違いなく遠征艦隊を待ち受けていたガミラスの主力艦隊であった。

 

「後方にも敵艦隊!!!

30、いえ、40隻はいます!」

 

 後方からガミラス駆逐艦群4種混合の7個艦隊までが現れて、チトセが絶叫しながら伝えた。

 

「奴等、包囲する気だニャ」

 

「オオヨド、何でこんな所にワープさせたのよ!!!」

 

 タマが指摘しなくてもガミラスの狙いは簡単に分かったが、問題なのはガミラスが待ち受けている宙域にワープ座標を設定した事であり、現にオオヨドがイスズに怒鳴られ、ワープ酔いで喋れないカスミに睨まれていた。

 

「違います! 偶然です!

観測した時にはガミラス艦隊の反応は無かったんです!」

 

 尤も当のオオヨド自身が“計られた”と慌てふためいていた。

 

「ワープを探知されたのかもしれない。

ワープ航行法に“一日(実際は一ヶ月処か一年でもすまない)”の長があるガミラスに取って、ワープ探知は簡単な事かもしれないわね」

 

「じゃあ、それって!?」

 

 代わりにアケシがガミラス艦隊が現れた理由を察していたが、ヤハギがギョッとした通り、それは同時に今後ワープをする度にガミラス艦隊が待ち伏せている可能性か大である事でもあった。

 

「兎に角、ガミラス艦隊を撃退しないと。

波動砲、用意!」

 

「駄目、波動砲はワープと同じエネルギーを使っているのよ。

ワープしたての現状ではエネルギー不足で使用出来ない」

 

 兎にも角にも、ガミラス艦隊と戦わないといけない事は確かであり、此の間にガミラスの空母3隻が艦載機を発艦させていた事もあって、波動砲の準備をしようとしたヤマトがアケシに止められてしまって、思わず第二主砲のターレットを殴った。

 

「兎に角、波動砲の充填を始めるんだ!」

 

『待て!!!』

 

 イソカゼがせっついた通りに、波動砲を充填出来るようにしたヤマトを、変な間を開けていた沖田が止めた。

 

『ショウカクのワープテストを今から行う。

アマツカゼ、準備にどれぐらい掛かる?』

 

「……エネルギーの充填だけでなく、ヤマトの艤装からデータを取り出しての調整で、20分は掛かります」

 

『オオヨド、20分で土星・天王星間へのワープ着地点の算出は出来るか?』

 

「出来なくてもやってみせます!!」

 

 ワープ中の出来事を思い出して顔を赤くして胸部を両腕で覆ったショウカクの賛否は兎も角として、沖田の指令実行の為の質問にアマツカゼとオオヨドが答えていたが、ヤマトはギョッとしていた。

 

「逃げろと言うのですか!!?」

 

『そうだ』

 

 ヤマトが大抵の軍隊では嫌み嫌われ、最悪の場合は即刻銃殺刑となる敵前逃亡を命じた沖田に思わず反対してしまったが、その沖田の隣にいる秘書艦キリシマも同様らしく、沖田に何か怒鳴っていた。

 況してや師匠分のイギリス海軍のネルソン以来からの見敵必戦主義(search & destroy)を悪化させ、なにより“撤退”の単語を嫌って“転進”の単語を使い続けた日本海軍(だからこそ多くの作戦を破綻させる要因となっていた)ならば尚更の事であった。

 だが今回の場合、沖田は“前方の3個艦隊の艦隊間の距離が開き過ぎている”“本衛に対して前衛は鋭角に近い右斜め前方、後衛は遥か後方にいる為に連繋が取れない”“前衛と後方の編成が真逆(つまり艦隊配置を間違えて前後逆)”“駆逐艦隊が長時間全力走行をし過ぎた所為なのか、脱落艦が相次いでいる”以上の点から、ガミラスはヤマトのワープに慌ててしまい、本来の待ち伏せ部隊である駆逐艦隊を急ぎ反転させて、別方面の3個艦隊(凄い事に此れ等の艦隊は土星に配備、或いは配置転換中のを転用された事が海戦後に判明)を逐次投入したので、戦力配置が無茶苦茶である事を見抜いていた。

 此の状況ならガミラス艦隊の各個撃破の可能性も感じられたが、増援が殺到する危険性から短期決戦は不可と予想、前方の3個艦隊さえ上手く対処したら追撃の可能性が無い上にワープ先に待ち伏せが無いと判断、更に言うとガミラス(と深海棲艦)は追撃戦が苦手との謎の欠点を持っていた事も決定要素の一つとなっていた。

 

『そうだ。

物資や時間に余裕が無い以上、イスカンダル遠征中は一撃離脱からの戦場離脱を基本とする』

 

 そして只でさえ物資が限られて時間の猶予が乏しいイスカンダル遠征に、やたらめったら海戦を続けていたら枯渇する公算が大との現状を理解している沖田は一撃離脱での撤退を狙う事とした。

 そんな沖田の狙いをヤマトは頭の中では理解はしていたが、逃げると言う選択肢への拒絶反応で下唇を噛んでいた。

 

「あの馬鹿、こんな指令を出して、田中頼三提督みたいに更迭されるわよ」

 

「それ、死んだ(・・・)ナガナミ姉ちゃんの前で言ったら怒られるぞ」

 

 尤もヤマトがカスミとアサシモのやり取りを見た処、他の者達も彼女と同感のようであり、そうでないのはショウカク、チトセ、アケシ3人ぐらいだったが…

 

『後方の駆逐艦隊は何れぐらいで接触する?

時間的距離で出せ』

 

「接触まであと25分!!」

 

『ヤマト、2斉射は許す。

前方のガミラス3個艦隊の各旗艦の機関を破壊して追撃出来ないようにしろ』

 

「……分かりました」

 

 作戦の好き嫌いは別として、モタモタしているとガミラスの下手な目論み通りになってしまうので、兎に角沖田の作戦通りにしなくてはいけなかった。

 

「全艦、砲雷撃戦用意!!

第四艦隊から第二艦隊へタマ、レフィ、ヴェルを、第三艦隊へ丹陽を臨時編入。

ヤハギ、チトセ、ハツシモ、アサシモ、カスミは私と共に第四艦隊で待機!」

 

 遠征艦隊(と言うより現在の日本海軍自体)は深海棲艦戦時からアメリカが生み育んだ任務部隊制度を取り入れていて、戦況や現場の判断である程度は艦隊間の編成の入れ替えが可能で、ヤマトは早速此の任務部隊制度を有効活用しようとした。

 ヤマトの狙いは2個水雷戦隊でガミラス艦隊を攻撃且つ攪乱させて、ガミラス艦隊が隙を見せたらヤハギとオオヨドと共に砲撃で仕留める、旧日本海軍の水雷戦の基本戦術の応用を行う事であった。

 

「ニャャャーハッハッハッ!!!

第二艦隊預かるニャ!」

 

 満面の笑みのタマがヤハギの口癖を言いながら彼女の右肩を叩いたらので、ヤハギがムッとしていたが、沖田のとは違ってヤマトのは全員賛成の様だった。

 

「よし、行わよ!!!」

 

 更にイスズの号令に駆逐艦娘達が「了解!!!」と一斉に答えて戦闘体制を整えていて、此の間にヤマトがショウカクの脇に移動して、アマツカゼがショウカクとヤマトの2人の艤装をケーブルみたいな物で繋げて調整を行っていたが…

 

「ズイカク、突撃よ!!!」

 

…ワープする以前から戦闘モードてあったズイカク突進していった。

 

「ちょっと、ズイカク!!!」

「ズイカクさん、待って!!!」

 

 只問題だったのは、丹陽だけでなく直轄のイスズとアキヅキ級の3姉妹もが出遅れてしまい、危惧したショウカクとアキヅキの制止を無視してズイカクが単独で行ってしまった。

 

「畜生!!!

先を越された!」

 

「だから、戦闘モードに入っとくべきだったんデスヨ」

 

「……っ!」

 

 イソカゼが1人先行したズイカクに悔しがって、丹陽が戦闘モードにしていなかった事を悔やんでいた処をイソカゼが彼女の胸を小突いた。

 

「お手並み拝見といきますよ」

 

 此のズイカクの単独行動は戦略的に不味い事が起きる可能性があったが、ガミラス艦隊群が既に戦闘体制に入っている以上は下手に呼び止めるとガミラスに先手を取られると判断したヤマトは、不愉快さはあったものの、ズイカクの行為を容認した。

 

「馬鹿にしないで、これでも開戦当初からのガミラス戦を生き抜いてきたんだから!!」

 

「本衛の航空隊が多数接近しています!

前衛からも接近していますので注意して!」

 

「ワープは20分後、それまでに戻るんです」

 

「りょーかい!!」

 

 ワープ着地点の算出に加えて砲撃の準備をしているオオヨドに代わってのチトセの戦況報告に加えてのヤマトの念押しに、ズイカクがふざけたかの様な返事をした直後にガミラスの航空隊が彼女目掛けて突撃してきた。

 

「コスモタイガー隊、発艦始め!!」

 

 ズイカクは直ぐに弓を構えると矢を放ち、虎と言うよりは美しき鶴を思わせる新型戦闘機コスモタイガーの編隊に変わり、半分は前衛に向かわせると急降下による一撃離脱での雷撃(ミサイル攻撃)を実施して駆逐ロ級1隻を沈め、残りの半分は前衛の航空支援を行おうとしているガミラス航空隊への迎撃に向かわせた。

 コスモタイガー隊とガミラス艦載機隊の空戦の結果は、新型の面目通りにコスモタイガー隊が圧倒するも、ガミラス側が2倍以上の数を揃えていたので何割かがズイカクへ空襲しようとしたが、ズイカクは弓を一旦胴体に対角線上に挟んで対空ミサイルを多数発射しながら回避運動として左右に蛇行したが、生き残って突撃してきた艦載機群をスピードスケートみたいに体を大きく寝かしての右の急旋回をしながら艤装のパルスレーザー群とコスモガン二丁で次々に撃ち落としていた。

 更に艦列を乱しながら突進している前衛から、射程圏内に入った重巡リ級が、少し遅れて雷巡チ級2隻が砲撃を開始、ズイカクが少し驚くも、直ぐに彼女はコスモガン二丁をしまって弓をまた手に取るとムーンサルト(前方二回宙返り一回捻り)をして…丁度上下逆さになった時にコスモタイガーの第二波を放って、雷巡チ級1隻を沈めた。

 

「良い感じじゃない!」

 

 1人で前衛を撹乱しているズイカクは、コスモタイガーが“宇宙の虎”の名前通りに獰猛な高性能を発揮している事に満足していた。

 因みに、コスモタイガーは試作機をⅠ型として無理を承知で量産した為、出撃までにショウカクとズイカクの予備を含めた分しか生産出来なかったので、チトセにはコスモファルコンが搭載されていて、ガミラス戦後に量産性向上と運用実績を元に改良されたⅡ型が防衛艦隊の主力戦闘機として長期間運用され続ける事になるのだが、それはまだ未来の話である。

 で話を戻して、ズイカクの気がコスモタイガーにいった隙を突こうと、雷巡チ級が代名詞である大多数の空間魚雷を一斉に放ったが、直ぐ隣の重巡リ級がギョッとした通り、雷撃するにはまだ距離がありすぎたのだが、此の雷巡チ級に吊られた駆逐ロ級2隻も空間魚雷を続けて放ってしまった。

 

「…っ!」

 

 前衛の雷撃に、ズイカクは当初は驚いたが、直ぐに意外に近くにいた本衛の方に一瞬振り向くと、前衛にニッと笑った後に本衛目掛けて全速力で突進し、前衛も慌てて彼女を追い掛けた。

 勿論、本衛も接近してくるズイカクに迎撃の砲火を多数繰り出していたが、ズイカクが巧みで小刻みな左右の動きで避けていた上、前衛への誤射を怖れて精度を落としていたので、ズイカクに掠りもしないでいた。

 そして雷巡チ級と駆逐ロ級の計3隻の空間魚雷群がズイカクに直撃寸前で、そのズイカクは狙いをつけた右翼の軽母ヌ級の股座をスライディングで滑り抜け……ズイカクの行為に唖然としながら目線のみで彼女を追い掛けていた軽母ヌ級の背部に、空間魚雷群が間違って次々に直撃して爆沈した。

 

「見たかぁぁー!!!」

 

 前衛と共に誤射で沈んだ軽母ヌ級を呆然と見詰めている本衛から距離を取ったズイカクは、右拳を頭上に上げながらガミラス艦隊に向かって吠えた。

 

「やるわね…」

 

 ズイカクが単独且つ短時間でガミラスを3隻を沈めた光景に、ヤマトはヤハギとオオヨドと各々に視線を合わせながら感銘の声を漏らしていた。

 ズイカク1人が飛躍する中、艦隊戦はまだまだ続く…




 感想・御意見お待ちしています。

 他の作品と違って、宇宙戦艦ヤマト……特にガミラス編のは“逃げる”と言う選択肢がよく選ばれているってのは面白いよね。
 まぁ、艦これでも、捨て艦と言う悪例があるけど、逃げる事を戦略に入れる事が出来ますしね。

大和
「まぁ、今は逃げる事を前提にしていますけど、良いも悪くも、瑞鶴のお陰で初戦は制してますね」

 但し、此の作品には艦これ要素が多数入っています。
 詰まり、提督(プレイヤー)なら最低一回は泣くか怒る、艦これの悪しき出来事が起こります。
 元々、実写版でもそう言うのがありましたけどねぇ~

大和
「それって、まさか…」


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第25話 第二次木星沖海戦(後編)

――― 土星・エンケラドゥス ―――

 

 

 艦娘達が身を寄せるコロニーの目の氷原に多数建てられた亡くなった艦娘達の墓標群…その中で四六時中座って伏せているハルナの前にあるのは、コンゴウの葬られた直上に突き刺さっている、彼女の大破した主砲の1基で代用された墓標であり、その墓標にはコンゴウの艤装で唯一無傷だったヘッドギアが架けられていた。

 不味い事に、ハルナはコンゴウ死後から全く飲食をしなくなり、現に彼女の直ぐ脇に空母ズイホウが持ってきていた水筒とレーションが、手を付けられていない状態のまま凍っていたし、なによりハルナ自身が少し雪ダルマになっていた。

 

「ハルナさん、こんな事にいたら風邪を引いてしまいますよ」

 

 仲間達は、ハルナがこのまま死にそうなのを危惧して、交代で彼女の身を案じていて、この時は空母アカギがハルナの所に来ていた。

 

「…先代と同様に、ハルナも何も出来ずに、愛するモノ全ての最後を見る事になるのでしょうか?」

 

 だがハルナはアカギに振り向かずに、いつもの一人言を呟くだけだった。

 レイテ沖海戦直後に金剛の死を見た先代榛名と同様に、長姉コンゴウの死が原因で、先代榛名が大和や仲間達がやられていくだけでなく、広島が原爆で消滅するのを目撃した事から、自分達を含めた地球の破滅を連想して、ハルナは気力の殆どを失っていた。

 

「姉や仲間達、そして誇りを戦場で失う事は、とても辛い事ですからね。

只、私は先代の空母赤城以上にやってしまいました」

 

 溜め息を吐いてしまったが、生存者達の中で1番ハルナの心情を理解しているアカギは、自分の右掌を見詰めながら姉のアマギ、親友だったカガと彼女の妹トサ、同じ空母娘だったリュウジョウ、ソウリュウ、ヒリュウ、タイホウ等の大切な仲間達、そして彼女等空母娘達に従っていた者達を、ガミラス戦の中でムザムザ死なせてしまったのに、自分だけが生き恥を晒している事を感じていた。

 因みに、今のアカギの両手は、怪我で親指以外の指4本を纏めて固定されているので、最低限の日常生活を送るには支障がない範囲で軽く握る事しか出来ず、当然ながら弓矢を使う事も出来なかったので事実上の戦闘不能状態だった。

 更に言うと、そんな両手からあまりに多くの命を溢れ落としてしまった事からの罪悪感で、軽度の拒食症を引き起こしていたので、アカギは少し(ヤツ)れていた。

 

「アカギ、直ぐ通信室に来て!!」

 

「どうしたんですか、アケボノさん?」

 

 アカギはハルナの雪と氷を払い落とすと、彼女と一緒にコンゴウの墓標を見詰めていたが、そのアカギに血相を変えた駆逐艦アケボノが駆け寄ってきた。

 

「…ザラ達が防衛軍の通信を傍受したんだけど、木星の沖合いで海戦が起こったそうなの!」

 

「海戦がこんなに早く起こったのですか?」

 

 アケボノは白い息を吐きながら息を乱していたので少しの間喋れなかったが、膝に手を当てながら屈んで息を整えた後、木星沖での海戦勃発を伝えた。

 妙に早く起こった海戦に疑問があったが、遠征艦隊の事は知っていたので、アカギは此の報告に驚きはせずに“遂に来た”と思った。

 

「それだけじゃない!

ナチの話だと、艦隊の総指揮を取っているのはキリシマじゃないそうなの!」

 

「誰が旗艦なのですか?」

 

 興奮しているアケボノがキリシマが遠征艦隊にいない事を上手く伝えられてないので、アカギはショウカク辺りが旗艦だと予想していた。

 

「ヤマトよ。

旗艦は、宇宙戦艦ヤマト!!!」

 

「ヤマト!?

あの日本が新造戦艦を作ったと、言うのですか!?」

 

「だからと言って、防衛軍の馬鹿どもは役立たずのクソ戦艦の名前を付けたのよ!」

 

 遠征艦隊の旗艦がヤマトである事を伝えられて、アカギもキリシマが地球残留だけでなく、ヤマトの存在に驚き戸惑っていた。

 

「……ヤマト」

 

 2人してこんな状況だった為、ハルナが小声を呟きながら顔を上げ、彼女の目に光が灯ろうとしている事に気付いていなかった。

 この直後、ハルナの目の前で、コンゴウのヘッドギアが小風に揺れて、小さな金属音を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 木星沖 ―――

 

 

「やるわね…」

 

 ズイカクが単独且つ短時間でガミラス3隻を沈めた光景に、ヤマトはヤハギとオオヨドと各々に視線を合わせながら感銘の声を漏らしていたが、ショウカクのみは妹がヤマトを意識しすぎて暴走しかけている事を見抜いていて、ズイカクが足元を掬われそうな事を危惧していた。

 況してや、自分達が戦争の相手にしているのは、数多の艦娘達を葬り、地球を危機的状況に追い込んでいる、高い戦闘学習能力を持ったガミラス艦隊。

 そのガミラス艦隊が、このまま殴られっぱなしな状況を黙っている訳がなかった。

 

「…っ!?」

 

 で、実際にショウカクの不安は的中して、後衛から先行した軽巡ヘ級2隻がズイカクへの砲撃を開始し、不意を突かれたズイカクは、急いで上下左右不規則な蛇行をしながら距離を取ろうとしたが、軽巡ヘ級2隻は巧みに彼女を追撃し続け……ある程度近付いた処で空間魚雷を多数放った。

 

「…くそ!!……っ!?」

 

 此れ等の空間魚雷群をズイカクは、チャフをばら蒔きながらのパルスレーザーの弾幕でなんとか防いだが、矢筒の矢が空になっていた事に今頃気付いてギョッとしている事から、彼女では避ける以外の策は無かった。

 だからズイカクはコスモタイガー隊を呼び戻そうとしたが、それ等は本衛の空母ヲ級も軽母ヌ級のガミラス艦載機隊に阻まれていて、どうやらガミラス艦隊は先ずはズイカクを葬ろうとしている様だった。 

 だが軽巡ヘ級2隻が一斉射でズイカクを仕止めようとした直前、背後からの砲撃が次々に直撃して2隻立て続けに沈んだ。

 

「ズイカクさん、大丈夫ですか?」

 

「…ああ、テルヅキ」

 

 両頬に掠り傷による赤い髭が出来ていたズイカクは、軽巡ヘ級2隻が沈んだ事からの安心感で一気に疲労感が出た為、溜め息を大きく吐きながら顎下の汗を拭うと、左脇にテルヅキが着いた事から、砲撃の主は戦闘域に辿り着いた第二&第三艦隊の面々である事を察した。

 

「先に行くだけが、能じゃないっスヨ!」

 

 更にズイカクの右脇に着いた丹陽の発言に、ハツヅキだけでなく、近くを過ぎようとしている第二艦隊の5人までが笑っていたので、ズイカクがムッとした。

 まぁ、尤もハツヅキのみは、直ぐにイスズに小突かれていた。

 

「統制雷撃とターゲッティングを開始するわよ!

目標、ガミラス本衛艦隊、空母ヲ級!!」

 

「タマ達は後衛を狙うニャ!!」

 

 イスズ、更に続いてのタマの号令に、全員が一斉に「了解!」と返事し、タマ達第二艦隊は向かってくる後衛へ突撃して、イスズ達第三艦隊はズイカクが艦隊に組み込まれながら呼び戻したコスモタイガー隊と共に本衛(と微妙に合流している前衛)への下部に向かって突撃した。

 第二艦隊は反航戦での砲雷撃で後衛を殲滅していたが、第三艦隊のは、前衛の援護とガミラス艦載機隊の牽制と、レシーテリヌイとヴェールヌイの重雷装姉妹を有する第二艦隊と比べて空間魚雷の使用本数がかなり少なかった事で、反航戦での雷撃が駆逐ハ級を沈めて軽母ヌ級を中破させるだけで終わった。

 

「ターゲッティング完了!!」

 

 だがズイカクはコスモタイガー隊を通して、空母ヲ級と重巡リ級の正確な位置情報を捉える事に成功して、それ等をヤマト達第四艦隊に送った。

 

「主砲、斉射!!!」

 

「「主砲、一斉射!!!」」

 

 ヤマトの号令にヤハギとオオヨドが復唱した直後に衝撃砲が一斉に発射……途中で21条の光線群が、8条に束なって……ヤマトのは空母ヲ級が驚きながら背後の緑色光線群へ振り向いた直後に空母ヲ級の上半身を消滅させ、ヤハギとオオヨドのは空母ヲ級と同じ様に重巡リ級も被弾したが、こちらはなんとか耐えるも直ぐに2人の第二射が直撃し、2隻立て続けに大爆発が起き、防御の為に密集体形を取っていた事が仇になって、ガミラス艦載機隊と従属艦群が巻き込まれた。

 

「空母ヲ級及び重巡リ級、撃沈!!

前方のガミラス3個艦隊、壊滅!!」

 

 チトセの観測報告を聞くまでもなく、前方の3隻の旗艦の大破を狙いだったのに、結果的にガミラス3個艦隊が壊滅した事にに、高速で離脱中の第二&第三艦隊のズイカクとヴェールヌイ以外の者達が歓喜の雄叫びを各々に上げていた。

 

「……凄い、今までと違う…」

 

「此れが、波動エンジンの恩恵!」

 

 一方の第四艦隊では、前衛に止めを差したヤハギとオオヨドが新しい主砲の火力に驚き戸惑い、そんな2人と同様でショウカクは硬直して、チトセとアケシはハイタッチをした。

 因みに今回の遠征の為、参加艦娘達は波動エンジンの搭載だけでなく、武装の更新も各々に受けていて、ヤハギとオオヨドにタマの3人の主砲は、備えているも今回使われなかったヤマトの副砲と同じ砲身(オオヨドのみは砲塔ごと)に交換されていた。

 ご覧の通りにヤハギとオオヨドは問題はなかったが、イスズはアキヅキ級を統制する防空巡洋艦を求められた事でアキヅキ級と同じ主砲に改装、タマは火力過剰の傾向が強かったので失敗と指摘する声が多数あった。

 

「……ふぅ…」

 

 ヤマトは呉空中戦で此の事が分かっていたので、安堵の息を吐いていた。

 

「ヤマト、やったわね!」

 

 そんなヤマトに、アマツカゼがサムズアップをして、ハツシモ、カスミ、アサシモのワープ酔いの3人は引き吊った表情で頷いていた。

 

『ショウカク、あと何分だ?』

 

「あ、はい!! エネルギー充填完了まで、あと5分です!」

 

『オオヨド、ワープ可能な場所の特定は出来たか?』

 

「まもなく」

 

『チトセ、後方の駆逐艦隊はどうなっている?』

 

「接触まで、あと10分」

 

 ショウカクが沖田への返事に少し詰まりはしたが、3人の報告だと逃げる算段は準備万端の様だった。

 

「ズイカク、タマ、よくやってくれました!

あと5分でワープですから、直ぐ戻ってきて下さい!」

 

 チトセの呼び掛けに、ズイカクとタマが揃って「了解!」と返し、あとは第二&第三艦隊が戻ってショウカクでのワープで逃げるだけだった。

 

「見た、チトセ?

やっぱり、ズイカクには幸運の女神が付いているのよ!」

 

「そうかもね」

 

 ズイカクとチトセの笑いながらの通信通り、此の時までは遠征艦隊に幸運の女神が付いていた、或いは女神を引き寄せたのかもしれない。

 そして、このままワープで離脱出来たら、ガミラス戦初の完全(ワンサイド)勝利として記録されたかもしれない。

 何故、推測形で語るのかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チトセお姉!!!』




 感想・御意見を御待ちしています。

大和
「…最後のって、実写版の“森機の遭難(オリジナルの山本機の落伍に該当)”の該当の前振りですよね?
明らかに、ヤマト原作よりタチが悪くなっていますよ」
(注:実写版ヤマトでは、森雪はツンデレなコスモタイガー乗り)

 まぁ、艦これの“2-4”等を知っていたら、此の後にヤマトが何をするのか分かりますよね?

大和
「貴方、今年に入ってからドロップと羅針盤に嫌われてますからね」


















































 最後に“宇宙戦艦ヤマト2202”の5章と波動実験艦『銀河』の影響で、SUS編(復活篇)で出る予定だったムサシ(武蔵)を、白色彗星帝国(ガトランティス)編で銀河と共に(か『銀河』に代わって)前倒し登場を決めましたので、“設定 艦娘”の“まだ見ぬ戦友”を書き換えました。
 但し、まだ迷いが有りまので、2202と『銀河』次第で“銀河のみの登場”“銀河と揃って超ヤマト級戦艦キイと交代”になる可能性があります。

 更にムサシ登場が確定した場合、“設定 ガミラス”での継ぎ足しから分かる通り、2編(ガミラス編&ガトランティス編)に渡っての“ヤマトvsムサシ”が最低一回は行う予定です。
 但し、少なくとも『伊勢湾大海戦』『修羅の波濤』『超機密自衛隊』の3つの仮想戦記と『(映画版)青き鋼のアルペジオ』で『大和』vs『武蔵』が有りますが、此の4作品全てで『大和』と『武蔵』は相討ちとなって沈んだので(此のお陰で『修羅の波濤』と『超機密自衛隊』で“大和級を沈められるのは大和級のみ”との格言が出来た)、禁じ手に等しい危険な行為なので、何か意見が無い限りはガミラス編版ヤマトvsムサシはやらない可能性があります。

武蔵
「……つまり、ガトランティス編版ヤマトvsムサシは確実にやるんだな?」

 因みに先行情報として、深海棲艦戦時に武蔵vs大和が起こる可能性があった事を後々描きます。
 その重要な鍵なのは“大和と武蔵の姉妹内でのGF旗艦交代は、実は大和の剥奪に近いのだった”つまり旧日本海軍は何らかの理由で大和に不信感を持っていたのです。

 後、ガミラス編版はまだ真っ白ですが、ガトランティス編版の勃発理由は仮決定……ケッコン(指環)システムを悪用したズォーダーと強制契約されてしまったヤマト(未婚)が洗脳(此の影響でヤマトは銀髪緑肌に変色して感情損失)されてしまい、ヤマト奪還にムサシが立ち向かうとしています。

…あー、ガトランティス編が描きたいなぁ~…と思う日この頃。

武蔵
「だったら、ガミラス編をさっさと終わらせるんだな。
お前だけだぞ、30話目前にしてまだ木星沖にいるのは」


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第26話 友軍救出せよ(前編)

 今回の投稿前に、プロローグから第10話を一斉修正を実施、特に第3話で“実写版沖田の独特の行為”を追加を行いました。

 更に“設定 ガミラス”にて、やるかどうかの微妙の外伝に備えた項目を追加、更に本作独自の深海棲艦(ガミラス)の陸上戦力を追加しました。


 それでは本編をどうぞ。


――― 木星沖 ―――

 

 

『チトセお姉!!!』

 

「ふぇ、え、ええ!!!

チ、チヨダ、何で!!?」

 

 チトセが死んだと思っていた妹チヨダの自分を呼んで直ぐ途切れた通信に驚き戸惑っていたが、少なくとも第四艦隊の面々も、チトセ程でないにしろ、驚いている様だった。

 

「オオヨド、今のは何所から来ているの!?」

 

 当然ながら、ヤマトはオオヨドに発信源の探知を怒鳴って命じた。

 

「…え~と……っ、あった!!

11時の方向、木星近辺です!」

 

「…っ!! ズイカク、コスモタイガー隊の一部を木星に飛ばして!」

 

「あ、はい!!!」

 

 オオヨドが動揺で手元を少し狂わせながらも探り当てた木星の方角に、全員が振り向いては硬直しながら見詰めていたが、ショウカクが我に返ると自分達への合流途上のズイカクに、着艦中のコスモタイガー隊の一部での木星近辺の偵察を命じた。

 

「……っ、いた!! 

環の中にいた!!」

 

 少しした後、木星の環の中にガミラスではない何かが見付かり、間違いなくそれが発信源であった。

 ズイカクを経由してのコスモタイガー隊からの偵察映像が映されると、電球の左右各々に直方体をくっ付けたかの様な姿の宇宙船が、船体の至る所を凹ませた状態で環の中で漂っていた。

 

「何、此れ?」

 

「ほ、『蓬莱丸』級!!?

何で防衛軍の輸送船がいるのよ!!?」

 

 ヤマトのみは正体が分からずに怪訝な顔をしてしまったが、他の者達はアケシが叫んだ通りに、発信源の宇宙船が防衛軍所属の『蓬莱丸』級工場輸送船だった事で益々混乱していた。

 『蓬莱丸』級は大容量な上、輸送船の中では速度も出て、なにより両舷のアタッチメント次第で工場船や病院船にもなる器用さから、大量建造されて重宝されていたのだが、殆どがガミラスに撃沈されて、『蓬莱丸』や『バッファロー・ビル』等の残った船全ては土星決死輸送船団で使われた後に地球にいる上、こんなガミラスの勢力下に成りかけている宙域で生存していた事だけでも驚きであった。

 

「…防衛軍の認識標を確認、環の中にいる『蓬莱丸』級は『ウィンダミア』!!

土星陥落時に行方不明になっていた船です!」

 

 オオヨドの更なる解析で『蓬莱丸』級がMIA認定の『ウィンダミア』だと分かったが、ヤハギとオオヨドのやり取りの通りに益々混乱の度合いを増すだけだった。

 現にチトセが、沖田へ『ウィンダミア』の判断を求めた映像通信で、当の沖田は目を瞑って頭を押さえ、隣のキリシマが(多分)ナガラ達に何か喚き散らしていたので、防衛司令部はヤマト達(現場)以上に混乱している様だった。

 因みに、防衛軍は『ウィンダミア』は土星からの脱出に失敗して撃沈したと誤解していたが、実際は上手く戻れたエンケラドゥスで隠れていたのだ。

 だが地球帰還を求めた者達が、ハルナ達の静止を振り切って強硬出航、木星・土星間を航行していた時期が第一次木星沖海戦の最中だったので、奇跡的にガミラスに見付かる事なく木星まで辿り着いたが、火星・木星間の小惑星帯(アステロイドベルト)の突破方法の思案に加えて、ガミラス艦隊群(遠征艦隊の迎撃に向かった駆逐艦隊群)の接近に気付いたので、木星の生存者達を回収しながら環の中に隠れて現在に至った。

 実は出航が数日遅かったら、決死輸送船団と合流して地球に帰還出来た(実際そうだった、土星の至る所で隠れて合流からの地球に帰還した他の輸送船群によって、防衛司令部はエンケラドゥスの生存者達の事を知るも、救出不可と判断)かもしれなかったが、どうやら『ウィンダミア』の他者を巻き込む不運は続いていたらしく、遠征艦隊が自分達に気付いたのを察して、勝手に動き出すだけでなく、チトセへ割り込み通信をしてきた。

 

『チトセお姉、やっぱりチトセお姉だ!!』

 

「チヨダ!!!

アンタ、なんて事をしてくれるのよ!!?」

 

『だって、お姉が直ぐそこにいるんだよ!

通信しないと、悪いじゃない!!』

 

 喜ぶチヨダ、怒るチトセ、温度差が大きく噛み合わない会話が続いていたが、チトセが映像通信越しにチヨダの顔を見て一声を聞くと、直ぐに怒鳴った事からチトセは妹は本物だと判断した様で、少なくとも『ウィンダミア』の内外両面は“ガミラスの罠”と言う事ではなさそうだった。

 

『あの~、チヨダさん、私が代わります』

 

『え? まだチトセお姉と会話中なんだよ!』

 

 只、チヨダ級姉妹では、全員が埒が明かないと思い、ヤマト達がチトセとの交代を思い浮かべていたが、『ウィンダミア』側もそう思って先に動いた。

 尤も『ウィンダミア』ではチヨダが交代を嫌がっていたので、少しの間だけ揉め事が起こっていた。

 

『……此方…』

 

「っ、アブクマ!!!

アンタもいたのか!!」

 

 で、チヨダが駆逐艦らしき2人の腕にに引き摺られた後に通信に出たのが、MIA認定者だった巡洋艦アブクマだったが、出て早々に興奮し過ぎていたチヨダが怒鳴ってしまったので「すみません!」と何度も言いながらひたすら謝っていた。

 此のアブクマの出現だけでなく、彼女の行為に、アブクマの次姉であるイスズが渋い顔をしていた事も書いておく。

 まぁ、チトセが直ぐにアケシとアマツカゼに諌められ、同時にオオヨドがアブクマをフォローしていたが、チトセが鎮静剤としてチトセカクテルを1口飲んだ後にやり取りを再開した。

 

『我々『ウィンダミア』には土星と木星の生存者達を多数搭乗しています。

どうか艦隊による保護と地球への護送をお願いしたいのです』

 

「アブクマ、貴女達は此の状況を知っているの?」

 

『私は知っています。

ですけど………どうしたの、アサグモさん、キヨシモさん?』

 

 アブクマが何かを言おうとしたが、遠征艦隊との連絡が取れた事を察した生存者達が、駆逐艦のアサグモとキヨシモ(後者のみ、同じユウグモ級のアサシモが溜め息を吐いていた)の静止を振り切って『ウィンダミア』の艦橋に殺到して、アブクマを押し退けて救助要請を次々に言った後に通信が途切れた。

 

「…どうすんのよ、アレ?」

 

 アマツカゼの言う通り、間違いなく今のやり取りでガミラス艦隊が『ウィンダミア』に気付いた事は確実で、『ウィンダミア』の扱いを早く決めて動かなければいけなかった。

 だが、全員の頭の中で真っ先に思い浮かべていたのは“『ウィンダミア』を見捨ててワープする”……元々ワープで逃げる算段だった上に『ウィンダミア』とは距離が有りすぎる、しかも第二&第三艦隊は前方の3個艦隊との戦いでエネルギーと弾薬、そして体力を必要以上に使いすぎた現状ではやむを得なかった。

 更に、こう言う事……つまり、遠征艦隊に生存者達が救助を求めてくる事は出撃前から危惧されていたのに、何の対策を取らなかった防衛司令部が何も言ってこない以上は、現場が判断するしかなかった。

 

「助けに行ってくる!!」

 

「ズイカク、時間が無い!」

 

 だが、案の定と言うべきか、ズイカクが『ウィンダミア』の救出に行こうとしたのを、イスズが止めた。

 だが、『ウィンダミア』を助けたいのは全員同じであり、“船乗りなら危機的状況下の仲間を助ける”と言うシーマン・シップの精神は2199年の絶望的状況でも生きているのは嬉しいが現状では難しかしく、『ウィンダミア』を救えないだけでなく自分達もタダではすまない可能性が高かった。

 

「ワープで避難させる!!」

 

「馬鹿!!!

アンタはエネルギーを使い過ぎた上、艤装の最終調整が出来ていないのに、ワープが出来るわけないでしょう!」

 

「そんなの、やってみなくちゃ、わかんないでしょ!!!

それともチヨダ達を見捨てろって言うの!!?」

 

 ズイカクの言う通り、確かにワープなら『ウィンダミア』を救う有効手段になりそうだったが、ヤマトの言う通りに、今のズイカクだとワープを安全にやれる可能性は極めて低かった。

 だから、ズイカクもヤマトも両者共に意見が正しかったので、平行線による対立が起ころうとしていた。

 

「…私は行く!!!」

 

「タマ!!! イスズ!!!」

 

 埒が明かないと判断したズイカクが動こうとしたが、ヤマトは直ぐにタマとイスズを呼んで、ズイカクが弓矢を構えようとした事もあって、他の者達全員が同士討ちを頭に浮かんだ。

 

「私が助けに行くから、そこの馬鹿を引き摺って戻ってきなさい!!」

 

 だが、予想外のヤマトの指示に、ズイカクを含んだ全員が“えっ!?”となって硬直して、一斉にヤマトに振り向いたが、当のヤマトはショウカクの艤装と繋がっていたケーブルを自分の艤装から外すと、直ぐ様『ウィンダミア』の所に向かおうとした。

 

『ヤマト、持ち場に戻れ』

 

 だが、直ぐに沖田の制止命令が入ったが、ヤマトは立ち止まって溜め息を吐くと、通信画面越しの沖田に振り向いた。

 

「…また、切り捨てるのですか?

コンゴウやユキカゼ達の時みたいに?」

 

 ヤマトと沖田が少しの間だけ睨み合った後、ヤマトが姿勢を正した。

 因みに、コンゴウとユキカゼを持ち出したヤマトの発言に、ショウカクとチトセが反応した通りにするだろうキリシマが何も反応しない……否、それ処か、どう言う訳か、キリシマが沖田の側にいなかった。

 更に言うとナガラ達も沖田の側にいる気配が無かった。

 

「ショウカクはワープのエネルギーを充填中で行動不能、ズイカクは論外、足の遅いアケシでは間に合わない以上、私が救出に行くしかありません。

余剰の衝撃砲のエネルギーをワープエネルギーに転換して、先のワープ座標を元にすれば、比較的早くにワープによる退避が可能性です」

 

「…っ、ヤマト!!

そんな事したら、殆どの武装が使えなくなる!」

 

「空間魚雷は使えます」

 

 ヤマトの作戦は現選択肢の中で成功率が高そうだったが、ヤハギがその事での副作用を危惧したが、ヤマトは“決定事項だ”と無言の反転で発していた。

 

「ヤマト、愚妹達をお願いします」

 

「…ショウカク、海王星で合流って事で」

 

 チトセの“妹達の愚行への罪悪感”と“妹達を助けたい”相反する思いを察したヤマトは、チトセに振り向かずに右手を数度振った後に飛び出していった。

 そんなヤマトに、ショウカクも何かを言うかしようとしてたが、それ等を変に止めて右手を胸に当てて俯いていた。

 

『…馬鹿め!!』

 

「………?」

 

 そんなヤマトの行為を黙認した沖田が、毒を吐いたが、その沖田の吐き捨てた言葉にヤマトは何故か聞き覚えがあって、誰が言っていたのかを思い出そうと仕切りに首を捻っていた。

 此の為にヤマトは、直ぐ近くで擦れ違った第二&第三艦隊のズイカク以外の面々が、自分へ激励の敬礼をしていた事に全く気付いていなかった。

 

『ショウカク、オオヨド、ワープはどうなっている?』

 

「あ、はい!!

ワープまで、あと2分!」

 

「ワープ先、確保しました。

到着地点、障害物、無し」

 

 『ウィンダミア』救出に向かって遠ざかっているヤマトと、戻ってくる第二&第三艦隊を呆然と見つめていた第四艦隊だったが、沖田の質問にショウカクとオオヨドが慌てて報告はしたが、2人は1度お互いの目線を合わせた後に“ヤマトと『ウィンダミア』に対する指示は無いのか”と他共々に目線のみで沖田に訴えた。

 

『ショウカク、ワープの準備を続行しろ。

チトセ、ガミラスの動向を逐一報告』

 

「提督!!!」

 

 ヤハギは、沖田がヤマト『ウィンダミア』を無視したと誤解して怒鳴ったが、当の沖田はチトセから送られてくる情報を注目していたが、僅かな呻き声を出して胸を押さえるも、その事に誰も気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 木星の環・『ウィンダミア』 ―――

 

 

「艦隊が来ないぞ!!」

 

「まさか、見捨てられた?」

 

「そんな、まさか!!?」

 

「チトセお姉!!!」

 

 『ウィンダミア』の艦橋では、コスモタイガー隊だけでなく遠征艦隊の第二&第三艦隊が離れていった光景から、怒号や悲鳴が多数上がっていたが、後部の壁に押し付けられたアブクマは“当然”の意味合いで溜め息を吐いていた。

 

「……やっぱり、こうなりますよね…」

 

「本当に、そうよね」

 

 しかもガミラス艦隊が複数いる事も判明した事もあった悲惨な現状に、アブクマがアサグモの諦めに同感としていたが、心の奥底で救出を願う事があったので、軽い頭痛を感じていた。

 

『…oちら、宇宙戦艦ヤマト!!

『ウィンダミア』、聞こえますか!?』

 

 だからこそ、聞き慣れない名前の艦娘からの通信に全員が、驚き戸惑って硬直してしまった。

 まぁ、直ぐに自分達の所に救援が向かっている事は分かったみたいだが、それよりも“ヤマトって誰だ?”と次々に呟かれていた。

 

『…『ウィンダミア』応答して下さい!!』

 

「すみません、ちょっと通して下さい!

お願いです、通して下さい!」

 

 そんな中で呼び出しがまたあったので、真っ先に動いたアブクマが人々を押し退けながら最前方に辿り着くと、直ぐ脇の航海士から借りた双眼鏡で、正確な位置が分からないままに自分達の所に向かおうとしている戦艦娘を確認……見慣れない筈なのに見覚えがある不思議な感覚に戸惑いながらも直ぐに通信機の所に移動して、通信機の近くにしがみついていたキヨシモから通信機を受け取った。

 

「此方『ウィンダミア』、聞こえてます!!」

 

『あ~良かった、通信機は無事なんですね』

 

 どうやら相手側は『ウィンダミア』の通信機故障を疑っていたが、それが杞憂だったので安心していたが、その出だしがギクシャクした関係のキタガミ(MIA)のに似ていたので、アブクマが「ウッ」と呻きながら前髪を弄っていた。

 

「あ、えっと、もしかして、貴女は、戦艦大和の次代の艦娘さんなのですか?」

 

 少し戸惑ったアブクマは、先代阿武隈が第一水雷戦隊の旗艦を長らく務めた事からの記憶から戦艦大和を思い出し、通信の相手がその戦艦大和の次代だと予想した。

 

『いえ、その深海棲艦戦時の戦艦大和が私だから』

 

「はい?」

 

『説明する時間が無いから、対応策を言うから、そちらの状況を教えてくれない?』

 

 アブクマが他の者達諸共ヤマトの言った事を理解出来ないでいるのを無視して、ヤマトはワープの為の準備を色々と指示していたが、此の間に遠征艦隊ではちょっとした出来事が起こっていた。




 感想・ご意見をお待ちしています。

 今回出た『ウィンダミア』を含む『蓬莱丸』級工場輸送船は宇宙戦艦ヤマトのPSゲームシリーズの暗黒星団帝国三部作に登場するオリジナル艦船ですが、船影を悪れてしまったので、描写が間違っている可能性がありますので、あしからず…


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第27話 友軍救出せよ(後編)

――― 木星沖 ―――

 

 

「ガミラス3機、駆逐ロ級と同ハ級と共に10時20度から急接近!!!」

 

 チトセが自分達に向かっている前方のガミラス三個艦隊の生き残りに気付き、その報告に他の者達が“えっ”とした。

 

『撃ち落とせ!!』

 

 沖田が命じるまでもなく、ヤハギとオオヨドだけでなく、アケシとアマツカゼまでが前に出て、防御の弾幕を張った。

 此の砲火群で、艦載機3機全てが迎撃され、何故か砲雷撃を一切してこない上に妙に速度を出して突進してきた駆逐ロ級をなんとか撃沈したが、最後の駆逐ハ級は炎上しながらのキリ揉み状態でヤハギ達4人の上を過ぎると、そのままショウカクに体当たりを仕掛けて彼女の波動防壁に阻まれた衝撃でエネルギーと魚雷両方の誘爆での大爆発でショウカクを巻き込んだ。

 

「「「「「…ショ、ショウカク!!?」」」」」

 

 駆逐ハ級のまさかの行為に、ヤハギ達5人が一瞬固まった後に慌ててショウカクの傍に行き、ワープ酔いの3人が愕然として、更にズイカクがアキヅキ級の3姉妹に抑えられながら何かを絶叫していたが、当のショウカクは波動防壁に加えて右肩の飛行甲板を咄嗟に楯にしたお陰で、飛行甲板は焦げて幾つかささくれてはいたが本人は蒸せながらも無事そうだった。

 

「ショウカク、大丈夫!!?

痛い所とか無い!!?」

 

「大丈夫、私は大丈夫です」

 

「艤装の被害は!!?」

 

「飛行甲板後部に接触、カタパルトとエレベーター全てが動きません」

 

 チトセとアケシの慌てながらの問診しながらの確認と触診で、ショウカクは小破ながらも無事と判断された。

 

「……体当たり?」

 

 だが問題なのは駆逐ハ級達がやった体当たりから、ヤハギが顔を青くしている通りに、日本の軍に関わる者なら確実に連想してしまう、旧国軍のレイテ沖海戦からの愚行“特攻(カミカゼ)”を思い浮かべていた。

 況してや特攻は、21世紀のテロリストに自爆テロへの影響を与えたと言われていては尚更だった。(但し、軍関連のみを狙う特攻と、民間人を無差別に狙う自爆テロは全く違うモノ)

 

『負けた上に帰る所を失った者達だ。

死ねば諸共と思ったのだろう』

 

 沖田がガミラスの行為を分析したが、全員がギョッとした。

 レイテ沖海戦前からも生還を諦めた者達のやけくそ特攻は、日本だけでなく世界中で存在していたが、先代如月がウェーク島攻略時に深海棲艦の艦載機の特攻で戦没したとの未確認情報(だからか、此の時に防衛司令部にいるキサラギが悲鳴を上げていた)はあるも、公式では深海棲艦にはそんな行為や思考は一切無かった。

 だがガミラスはやった、更に言うとヤハギ達はガミラスから“やけくそ”と言うより“執念”じみた何かを感じ取っていた。

 此の為にヤハギ達は、今まで全く感じなかった、深海棲艦には無かった、ガミラスへの恐怖(か狂気)を感じていた。

 

「っ、後方のガミラス艦隊群が!!」

 

『どうした?』

 

「後方のガミラス艦隊群が『ウィンダミア』に向かって加速!!

それも異常なスピードです!」

 

 チトセの悲鳴に近い形での報告通り、駆逐艦隊群にも狂気が感染したらしく、限界以上に加速して駆逐艦4種全ての目が血走っているだけでなく、落伍はまだ良い方で、爆発している者達が度々出しながらも、遠征艦隊の脇を過ぎての『ウィンダミア』への特攻を仕掛けようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 木星の環・近隣宙域 ―――

 

 

「……コスモゼロ、発艦!!!」

 

 後方のガミラス駆逐艦隊群がやけくそ特攻を起こした事をまだ知らないヤマトは、『ウィンダミア』の詳細な場所を探ろうと、第三艦橋からコスモゼロが乗った拳銃(かボーガン)型カタパルトを2基取り出して身構えると、2機のコスモゼロ各々に搭乗する妖精さん(x2)が敬礼したのを確認して、コスモタイガーとは別ベクトルの強く美しい戦闘機を放っていた。

 

「…まさか、私が零戦を扱うなんてね……まぁ二式水戦(零戦の水上機版)を配備されたと思えばいいか」

 

 系統や面影が一切無いが、零戦の魂を受け継ぐ戦闘機を扱う自分にヤマトが右手のカタパルトを見詰めながら苦笑していたが、直ぐにコスモゼロ二号機(妖精さんの肌と髪の色が武蔵と同じだったので、妙に気になったが…)が、自分の所にゆっくり向かっている『ウィンダミア』を見付けた。

 

『ヤマトさん、危険です!!

離れて下さい!!』

 

「今更、そんな事を言われても無理よ!」

 

 アブクマだけでなく『ウィンダミア』の搭乗者全員が、ガミラス艦隊の異常な突進から、自分達が何を仕出かしたのかを今更ながら自覚して、ヤマトを止めようとしたが、当のヤマトはガミラス艦隊のヤケに気付いていない事もあって無理していた。

 

「…良いよ……良いよ……良し!!」

 

 ヤマトは障害物となっていたガミラスの残骸群を最小限の動きで避けながら『ウィンダミア』に最接近し、一旦『ウィンダミア』の右側に退避してからの急上昇をすると『ウィンダミア』の艦橋直上に降り立った。

 

『…凄い……流石、戦艦だ…』

 

「……?」

 

 尚、ヤマトが窓越しに見える駆逐艦キヨシモ……口癖の様に「戦艦になる」と言い続けていた駆逐艦清霜の次代が、ヤマトに見惚れたらしく、アホ面で見上げていたので、ヤマトが思わず笑ってしまった。

 

「何やってんの!?

直ぐにガミラス艦隊が来るよ!」

 

 キヨシモだけでなく、アブクマ達艦橋の面々もヤマトの鮮やかな着艦に見惚れて硬直していたが、ヤマトが自分の艤装を『ウィンダミア』のケーブルを引き出しては繋げて『ウィンダミア』の操舵システムに連動させてからの檄に、直ぐに動き出して、ワープの準備を始めた。

 

「あ、ちょっと不味いかな?」

 

 ヤマトはアブクマ達がドタバタしている間に操舵の連動を終えると、此処でガミラス駆逐艦隊の異常突進に気付いた。

 不味い事に、ヤマトの計算だとワープが間に合わないと出ていた。

 更に言うと、ショウカク達が合流且つワープの準備を終えているだろうに、そのガミラス駆逐艦隊にヤハギ、オオヨド、タマの三人とアキヅキ級の三姉妹の計6人(他の者達は射程圏外らしい)が撃ちまくって駆逐艦群を減らそうとしていた。

 だが、ワープ座標が狂わないギリギリの範囲まで近付いていたが、距離が有りすぎた上にガミラス駆逐艦隊の速度に翻弄されて2割前後を撃沈するに終わっていた。

 

「…さてと、三式は……止めた方がいいかな?」

 

 ヤマトは三式弾による砲撃を考えるも、ワープの準備を少しでも早めようと考えた上に『ウィンダミア』への影響を考えて、主砲の使用は諦めた。

 その代わりに、背後の八連装ミサイルランチャーに変わっていた傾斜式煙突(通常:煙突ミサイル)を引き倒して右肩に乗せて身構えると、煙突ミサイルの発射時期を見図っていたが、6条の光線群が駆逐艦隊の先頭群に向かって飛んでいて、その光線の発射主達が自分に遅れて『ウィンダミア』に向かっているのに気付いた。

 

「もう、見てらんないわね!!」

 

「遅れてすみません!」

 

「私等がいたら『ウィンダミア』をより安全にワープさせられるだろ?」

 

 ヤマトがカスミ、ハツシモ、アサシモの三人が自分の所に来た事に少し驚いていたが、予備戦力としてエネルギーや弾薬が充分な事から、ショウカクかチトセ辺りが“自分の後を追え”と命じた事を察して苦笑した。

 だが三人共、まだワープ酔いの影響下らしく、ワープ酔いを精神で抑え込んでいるので鬼の形相であり、カスミの額に冷却シートを貼っているのが妙に生々しかった。

 

「畜生、全然減らねえぞ!!」

 

「空間魚雷共々、撃つしかないわね」

 

『ヤマト、まだ早い!!』

 

 だがアサシモが怒鳴った通り、駆逐艦娘三人の合流があるも駆逐艦群をなかなか撃沈出来ない事には変わりがなかったので、ヤマトがアサシモ達三人の空間魚雷と共に煙突ミサイルを使おうとしたが、それを沖田が止めた。

 

「何ですか?

今、取り込み中なんですけど」

 

『ヤマト、恐らくガミラス駆逐艦群は異常速度を出す為に、武装のエネルギーも速度に転換している筈だ。

奴等は砲雷撃はしてこない、今からあの駆逐艦群は魚雷の一種だと考えろ』

 

「魚雷?……っ!」

 

『そうだ、ギリギリまで引き付けて横ロールで回避して、駆逐艦群が体勢を立て直す時間を使ってワープを実行するんだ』 

 

「ヤマトさん、駆逐艦群の下部外縁を狙います!」

 

「カスミ、駆逐艦群の時間的距離を計って!」

 

「りょーかい!!」

 

「キヨシモ、直ぐ真横に傾くから凄い横Gが掛かるぞ!

固定出来るものは全部固定しろ!!」

 

『えっ?』

 

『あ、はい!

フミヅキさん、ワカバさん!!!…』

 

 沖田の指示にヤマトだけでなく、ハツシモ達三人も直ぐ了解して各々に動き出して、アサシモが真下のキヨシモに対応を命じた

 尤も、当のキヨシモは少し理解出来ずに戸惑っていたが、アサシモは無視して駆逐艦群への砲撃を再開して、キヨシモの代わりにアブクマが船内奥にいるフミヅキとワカバに指示を出しながら、動き出していた。

 

「ガミラス駆逐艦20隻、直撃まであと30秒!」

 

「よし、波動砲、砲身展開!!」

 

「はぁ!!?」

「え!!?」

「何ぃ!!?」

 

 幾つかの迎撃だけでなく異常速による暴走爆発で駆逐艦群が20隻にまで減っていたが、残りが『ウィンダミア』への衝突コースに入って、30秒後に衝突する事をカスミが報せた直後、ヤマトが波動砲の砲身を展開して手に持った事に、カスミ達3人がギョッとながらヤマトに振り向いた。

 

「カスミ、駆逐艦群との距離は!?」

 

「え、はい……あと、10秒!!」

 

 3人共、波動砲の充填をしていない事から波動砲の使用は無い事は分かるも、ヤマトの行為を理解出来ずにいたが、それでも尚、駆逐艦群はハツシモとアサシモの砲撃で密集しながらも接近し続けていた。

 

「あと5秒!!………4………3………2!!」

 

「…回避!!!」

 

 間近まで迫った駆逐艦群に、カスミが悲鳴に近い形で残り2秒を伝えた直後、ヤマトが『ウィンダミア』の右舷スラスターを全て起動させ、それでも回避が間に合わないと思わせるも、今度は波動砲の砲口から推進剤を噴射させた事で、『ウィンダミア』が右に急旋回しながら右に垂直に倒れた。

 此の時に『ウィンダミア』の船内から悲鳴が何かの物音に混じって多数聞こえていたが、『ウィンダミア』が横倒しになった直後に、駆逐艦群全てが真上を通り過ぎた。

 

「今だ!!!」

 

 駆逐艦群は『ウィンダミア』に全員避けられた事に驚き戸惑っていたらしく、何隻かが衝突して爆発するだけでなく、見るからに1テンポ遅れてから急上昇からの急旋回をしようとしていたが、その事を見抜いたヤマトの号令下による、引き倒さずの煙突ミサイル、カスミ達の空間魚雷が一斉に放たれて、旋回中の駆逐艦群の先頭に次々直撃、更にコスモゼロ2機が一撃離脱による雷撃と大型機銃による攻撃で4隻が撃沈した事で、明らかに混乱していた。

 

「コスモゼロ2機、着艦!!」

 

「ヤマト、右80度に旋回!

そうすれば、地球・火星間の何処にでもワープが出来ます!!」

 

「…面舵80度!!!」

 

 コスモゼロ2機が、そのまま波動砲の砲身を分割して艤装にしまっているヤマトに向かって2機同時に第三艦橋に入り込んだ直後、まだワープをしていなかったショウカク達の所にいるオオヨドの指示通りに、ヤマトが苦笑しながら『ウィンダミア』を旋回させ、あとはワープをするだけだった。

 

「不味い、また突っ込んでくるぞ!!!」

 

「…ワープ準備完了!!!」

 

『ワープ!!!』

 

 アサシモの悲鳴に近い報告通り、駆逐艦群は避けられないように広く展開しながら突進してきていたが、その間にヤマトがワープの準備を終え、沖田の号令下にワープを実施………駆逐艦群の先頭が『ウィンダミア』に接触するかと思われるも、その直前に『ウィンダミア』はワームホールに入って空振りとなった。

 更にヤマト達が無事にワープしたのを見届けたショウカク達も直ぐにワープしたので、後にはエネルギーが微量の駆逐艦群の生き残りが右往左往していた。

 

 尚、此の時の防衛司令部では、ヤマト達が戻った事はやむを得ない事だと分かっていたが、艦娘達の俗に言う“羅針盤に嫌われる”事となったヤマトへの失望の溜め息が多数あったと言う。

 “終わり良ければ全て良し”とは真逆の結果となった、ヤマト初の宇宙での海戦は後味の悪いモノであった…




 感想・ご意見をお待ちしています。

 尚、此の作品はヤマト原作では艦載機での出来事は敵味方関係なく、駆逐艦に変えていく予定なのでご了承して下さい。

大和
「…ものの見事に、戻っちゃいましたね。
読者の皆さん、“2-4”等の悪夢を思い出さなければいいのですが……あとアニメ艦これの第3話のもそうですが…」

 此れが、艦これを入れた副作用だよ。

 後、今回の話で、“主砲を壊した(or無くした)イソカゼが偶々近くに漂っていたカゲロウ級の主砲で敵を撃退し、落ち着いた時に調べたらその主砲はユキカゼのだった”と言う没案がありました。

大和
「ああ、『ユキカゼ』のコスモガンの該当話ですね。
どうして没になったのですか?」

 真ゲッターロボの第11話を見て、対象人物(x2)と場所を変えました。
 場所は冥王星で、対象人物は死者の方は間接的に出ていますが、生者の方は既に名前だけは出ていますよ。

 さぁ次回からは、ヤマト(大和)は深海棲艦の棲姫達とは戦っていないと設定していますので、ヤマト初の超弩級(ボス)戦である、小惑星群でのレムレース(潜宙棲鬼)との戦いです。

大和
「戦艦『大和』の初陣の相手は潜水艦だったので、初の超弩級戦が潜宙艦とは、中々オツですね」

 だからこそ、潜宙棲鬼のコードネームは『レムレース』……名作“鋼鉄の咆哮”の最初のボスキャラにしました。
 あのシリーズは実に良かった。
 お陰で“宇宙戦艦ヤマト”と“時空戦艦大和”と共に自分を仮想戦記の泥沼に叩き落としてくれましたからね……新作出ないかな、出来れば“宇宙戦艦ヤマト”か“艦隊これくしょん”とのコラボ作とかで…

大和
「貴方、鋼鉄の咆哮シリーズのウォーシップガンナーを下手なりにやりこんだお陰で、初見では苦戦が相次ぐらしい“艦これアーケード”をあっさりやりましたからね。
因みに此の人の鋼鉄の咆哮のプレイスタイルは、波動砲とパルスレーザーを例外とした、レールガンやレーザーを載せない大艦巨砲スタイルです」

 因みに、“艦隊これくしょん&鋼鉄の咆哮”小説はチョット難しいかなと思ってますが、“アズールレーン&鋼鉄の咆哮(PS2版ウォーシップコマンダー2)”小説は出来るんしゃないかなぁ~、と思っています。

大和
「貴方、前に話題になった“戦艦少女”を含めて、アズールレーンはやる予定は一切無かったですよね?」

 いやぁ~…リアルが少し忙しい(お陰で“りっく・じあ~す”がプレイ不可なった事もあって絶賛放置中)上に、とあるアズレン版赤城の同人誌を見てから艦これとアズレンの併用は気が引けるんだよねぇ~…
 只、間もなくデータ丸ごと交換予定の艦これがプレイ不可だった場合は、アズールレーンに転向の予定ですがね。

大和
「…そう言えば貴方、前々からアズレン版の赤城さんに興味津々でしたね?」
(艦これ版大和は作者の唯一無二のケッコン艦、もし重婚した場合は絶対的な本室(第一婦人)が確定している故に少し怒っている)

…さ、最後に、潜宙棲鬼との戦いは、ささきいさお氏が宇宙戦艦の艦長を務めてた作品の話の1つを参考にし、微量要素として“partⅢの次元潜航艇との戦い”がありますが、此の話の影響で、2199の次元潜航艦との戦いは完全に有りませんのでの、あしからず。








































…で、大和、いつまで主砲を向けているの?

大和
「いえ、浮気をしないかどうかを確かめたくて」

…心配は無用だよ。
 此の作品は、君への愛を燃料にして書いているのだからね。

大和
「…(台本と計画書を見ている)…その割りには、此の作品は比較的に黒くなっていきますよね?」

…さらばだぁぁー!!!(テーレッテー♪)


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第28話 馬か蜂を求めて

今回の投稿前に第14話から第17話の修正を実施するだけでなく、ある御方を出す布石として第12話でのムツを戦死からMIAに変更しました。





 それでは本編をどうぞ。


――― 地球・火星間宙域 ―――

 

 

 ガミラス駆逐艦群の特攻を辛くもワープで回避したヤマト達は、予定通り……ではなく、少し行き過ぎて地球にほぼ近い距離での地球・火星間の宙域にワープアウトをし、横倒しになっていた『ウィンダミア』が元の傾斜に戻しながら、通常航行を始めていた。

 

「ふぅ…」

 

「あ~…びっくりした」

 

「アブクマさん、『ウィンダミア』の船内は大丈夫ですか?」

 

 ワープを無事に終えて、ヤマトに続いてアサシモ達3人は座って気を抜いていて、ハツシモがアブクマに船内が無事かどうかを確認を取っていた。

 

「はぁ~…、気をしっかり持っていたら、酔わずにすむわね」

 

 カスミがいつの間にかに袋を持っていたが、多分馴れもあった上に、今回は気をしっかり持っていたお陰で、ワープ酔いを起こさなかった様だった。

 更に言うと、カスミはワープ酔いが醒めてきたみたいなのか、汗で湿気った事で剥げかけていた事もあって、額の冷却シートを剥がしていた。

 

『…皆さん、船内は無事です!』

 

 船内を確認していたアブクマから、問題が無い事が伝えられて、カスミとアサシモがハイタッチをし、『ウィンダミア』と繋げていたケーブルを艤装外して投げ捨てたヤマトにハツシモがサムズアップをした。

 ヤマトはケーブルが自動的に巻き戻されるのを何気無く見た後に正面を見ると、直ぐに立ち上がって姿勢を正し、そんなヤマトの行為にハツシモ達3人が疑問に思うも、ヤマトの視線の先に振り向くと、直ぐにヤマトに習って立って姿勢を正した。

 

「アンタね、何で戻ってくるのよ?」

 

 何故なら、ヤマト達の前方にキリシマ率いる第一遠征艦隊の面々が、横陣を展開していたからだ。

 

「…何でキリシマ達がいんだよ?」

 

 アサシモがキリシマ達の存在に疑問を感じていたが、よくよく思い出してみると、ヤマトが『ウィンダミア』に向かう辺りから、沖田の周囲からキリシマ達の姿が消えていて、どうやら此の時に第一艦隊の面々は此の宙域に向かったと思われた。

 

「貴女も此の船を見捨てろって言いたかったの?」

 

「1年しか時間が無いのにって、言ってるのよ!」

 

 ヤマトの毒にキリシマが怒鳴ったが、ヤマトがやらかした行為は、組織として見た場合は間違っているが、人として見た場合は正しいと、評価はとても難しいモノであった。

 どちらかと言うと、今回の『ウィンダミア』の様な出来事を予測出来たのに、何も対応策を考えて授けなかった防衛司令部に責任があると思うのだが、それなのに防衛司令部の大半の者達はヤマトの行為に失望していた。

 まぁ、組織としての悪態が有るも、藤堂の様に“仕方がない”と判断している者達もちゃんとおり、現にキリシマの背後のナガラ達9人は複雑そうな表情をしていた。

 

「キリシマさん、ヤマトさんを責めないで下さい。

悪かったのは私達なのですから…」

 

 特に詫びを言いながら『ウィンダミア』からヤマト達4人の背後に、キヨシモとフミヅキと共に壊れた艤装を纏って出てきたアブクマの姉妹艦であるナガラとナトリは、取り分けて酷い表情でお互いの目線を合わせていた。

 後、サツキとミカヅキもナガラ級の姉妹と同様に姉妹艦のフミヅキにしていたが、何故かミカヅキのみはアブクマにもしていた。

 因みに、チヨダ、ワカバ、アサグモの3人が出てきていないのは、チヨダが飲兵衛の姉と違って酔いの耐性が無い事からワープ酔いで伸びたので、ワカバとムラサメが彼女を介抱していて、アブクマ達3人も軽度のワープ酔いで顔が強張っていた。

 

「…だからと言って、捷一号作戦の時みたいに、現場責任者の私に責任が無いとは言えないでしょう?

どうしますか、私を営倉にでも入れますか?」

 

「アンタは、さっさと、イスカンダルに向かいなさい!!!」

 

 ヤマトの少し自虐的な質問にキリシマが怒鳴ったが、多分沖田の了承下で、事実上の不問だと宣言したので、ハツシモが安堵の溜め息を吐いて、カスミとアサシモが微笑しあっていた。

 

「……はい、はい…」

 

「はいは一回!!!」

 

「………はいはい…」

 

 まぁ、ヤマトが細やかな嫌がらせをキリシマにしていたが、若干渋々感を感じさせながらもヤマトは『ウィンダミア』から離れて、カスミ達3人もヤマトに続き、最後尾のハツシモが『ウィンダミア』の艦橋で伸びたチヨダを量膝に乗せて介抱している姉妹艦のワカバと目線を合わせて頷き合っていた。

 だが此の時ヤマトは、ワープの2度の行為からの疲労から顎下の汗を右腕の袖で拭いながら息を乱して、3度目のワープに躊躇い少しがあった事に3人共気づいていなかった。

 

「……フミヅキ…」

 

「分かってます」

 

 ヤマト達4人が反転してまた外宇宙に向かおうとしていた時に、サツキとミカヅキが躊躇いながらフミヅキに武装を向けながら、彼女から武装を受け取っていた。

 

「ゴメン、キヨシモ」

 

「え?」

 

「…ふん!!」

 

 更にカミカゼとハタカゼの2人がキヨシモから武装を受け取っていたか、先に詫びを言った後にカミカゼがキヨシモの背中を蹴飛ばした事から、ヤマトを擁護する為に『ウィンダミア』の面々を悪者としようとして、多分公務執行妨害として彼女達を拘束していた。

 当然ながらアヤナミ、イナヅマ、サミダレの3人が『ウィンダミア』の艦橋に入って何かをしていて、ナガラとナトリがアブクマから武装を取り上げて拘束しようとしていたが、当のアブクマは顔を伏せたまま硬直していたら、躊躇いを顔に出しながら離れていくヤマトに振り向いて暫く見つめていた。

 此のアブクマの行為から、ナガラとナトリは彼女が何かを企んでいる事を察して、お互いの目線を合わせていた。

 

「…っ! ヤマトさん!!

ワープをする前に小惑星帯で立ち寄ってほしい所があるのです!」

 

「……はい?」

 

「アブクマ、アンタね!!!」

 

 アブクマの要請に、ヤマトは立ち止まって振り返り、キリシマはアブクマに詰め寄ると彼女の胸ぐらを掴んだ。

 

「今すぐ、此所で沈めてあげるわ!!!」

 

「すみませんすみませんすみません!

だけど、だけどです!」

 

「まぁまぁキリシマ!!」

 

「取り合えずアブクマにも言わせて下さい!」

 

 そんなキリシマを、ナガラとナトリが取り抑えながらアブクマから引き離した。

 

「私、小惑星帯でコードネームを見つけたのです!」

 

「……貴女、嘘をついていませんよね?」

 

 アブクマの返しに、キリシマが思わず怪訝な顔をした。

 コードネームを説明する前に、深海棲艦には振り仮名による呼称を付けられた通常型を超越する、棲鬼や棲姫(や水鬼)……一括りで“超弩級”と呼ばれる存在がいた。

 深海棲艦の超弩級は大抵の場合、陸上型や守備艦隊の旗艦等の守り手側にいたので、偵察要員の死亡率が高いものの確認は比較的に容易だったのだが、稀に攻め手側にいる者達がいて、実力も一線を超えている事もあって情報収集が難しく、一例と言うより代表格として東京初空襲を行った深海海月棲姫が『シャングリラ』の仮称を付けられた事を始まりとしたのがコードネームであった。

 当然ながら、深海棲艦の系統であるガミラスにも超弩級は存在しており、現に太陽系制圧艦隊の総旗艦として装甲空母姫のガミラス版が、冥王星にはガミラス独自の陸上型棲姫である冥王棲姫の2人が確認(但しまだ交戦経験は無し)されているだけでなく、未確認な超弩級が多数おり、やはり実力者であるそれ等を防衛軍はコードネームやとしてマークしし続けていたのである。

 命名基準は発見した国軍に任せられていて、コードネームの命名権を巡っての争奪戦が訳が分からないまま起こっていたが、現在コードネームとして認定(ガセの公算大だが…)されているのは、(多分)判明している情報も含めて、ステルス艦『レムレース』、高速艦『ヴィントシュトース』(及び改良発展型と推測される『ヴィルベルヴィント』&『シュトルムヴィント』)、戦艦『アラハバキ(荒覇吐)』、空母『アルウス』、砲艦『ナハトシュトラール』(改良型の『グロスシュトラール』?)、戦艦『ヴォルケンクラッツァー』、そしてコードネームしか付いていない『デュアルクレイター』『ストレンジ・デルタ』『ムスペルヘイム』であり、蛇足ながらガミラス版が確認されないも深海棲艦戦時に倒された陸上戦艦『スレイプニル』もいた事も述べておく。

 更に言うと、弾速が遅い上に地球・冥王星間のあり過ぎる距離を間違える事なく地球に落ち続ける遊星爆弾(長年の調査結果、誘導装置が搭載されていない事が判明)を着弾観測と軌道修正を行っている超弩級(コードネーム)が火星・木星間の小惑星帯に潜んでいる事が前々から推測され、そしてなにより近年中から地球から出撃する防衛艦隊の規模や編成を読まれている傾向から益々確信めいたモノを得ていた。

 当然、防衛軍は小惑星帯でのコードネームの捜索と駆除を度々行っていたが、全てが空振りに終わるだけでなく稀に損失艦をも出していたので、アブクマのコードネーム発見の報告にキリシマが疑うのも無理はなかった。

 まぁ、その事はアブクマ自身も分かっていたらしく、“百聞は一見に及ばず”の言葉を実行する為、タブレットを取り出すと簡単に操作した後にキリシマに手渡した。

 

「…っ!?」

 

「アブクマ! 此れって!?」

 

 タブレットの映像にキリシマだけでなく、覗き見たナガラとナトリも驚いていた。

 

「はい、その全ては木星からの小惑星帯の観測写真です」

 

 アブクマが頷きながらの返事通り、タブレットには小惑星帯の中から遊星爆弾目掛けて放たれている牽引ビームの写真が撮されていた。

 しかも写真は此れだけでなく、多数有ったのだから尚更であった。

 

「ガミラスに殆どを壊された事もあって、木星基地の設備では探知は不可能でしたが、地球のならなんとかなりそうですか?」

 

「……沖田提督…」

 

 アブクマの質問にキリシマが一目見るだけだったが、直ぐに沖田へ連絡を取ってのやり取りを簡単にした後、多分地球(防衛司令部)からの補助を受けながらタブレットを操作を暫くして、時折唸り声を出していた。

 此の為にヤマト達全員がキリシマに注目していた。

 

「…此の映像が正しければ……どうも、敵の行動半径の中心は、小惑星イカロスになってますね。

まぁ、要すると、敵は小惑星イカロスを、拠点にしてる、と思うわ」

 

 確証を得たがっている表れとして、妙にたどたどしい口調だったが、キリシマはなんとかコードネームがいると思われる宙域を特定した。

 当然ながら、自分の映像を疑われているアブクマは、ブスッとしていた。

 

「じゃあ、ガミラスはイカロスに基地を建設したと、言うのですか?」

 

「いえ、何が潜んでいるのかも含めて、そこまでは分からないわね」

 

「兎に角、小惑星イカロス、或いはイカロスの近辺に、何かがいるのは確かなのですね?」

 

「ええ、だから誰かがイカロスに行って調べてもらう必要があるわ」

 

 ナトリに続いてのナガラの質問に、キリシマは頷きながら肯定した。

 此処まできたら、やるべき事は1つしかなく、キリシマはヤマトの方に振り向いた。

 

「ヤマト、沖田提督から指令です。

“通常航行にて小惑星イカロスに赴き、イカロス及び周辺宙域を調査し、可能であれば潜伏していると予想されるガミラスを撃破せよ”との事です」

 

 実は沖田は敢えてキリシマにも言わなかったが、現在木星軌道上も含めて小惑星群にガミラス艦隊が確認されていない事から、イカロスに行ってもコードネームが出てこない可能性が有ったが、ヤマト程の大物ならば食い付くだろうとの目論みがあった。

 

「…イカロス行きに、日程的に大丈夫なのですか?」

 

「心配しなくても、イカロスは丁度イスカンダルに向かう進路上にいるから、なんとかなりそうよ。

それに、既に日程に遅れが生じたんだから、今さら気にしてもしょうがないでしょ?」

 

 まぁ要するに“ヤマトを撒き餌にしてコードネームを誘き寄せる”、その事をヤマト本人は察していて、細やかな抵抗が空振りに終わった事もあって仏頂面で「了解」と簡単に返事をして、同じく察しているキリシマも苦笑しながらヤマトに敬礼した。

 

「キリシマさん、私もヤマトさん達と同行してもいいですか?

私も行けば、此の情報を上手く生かせられる筈です」

 

 イスカンダル遠征の予定を狂わせた事からの責任感もあって、アブクマがヤマト達への同行を求めて、沖田に許可を求めているキリシマが答える前に、ナガラとナトリが自分達の艤装から各種装備を外してアブクマに手渡していた。

 

「……ヤマト、イカロスに行って空振りだったら、此の子を標的にして沈めなさい」

 

 言い方は酷かった(沖田はそんな事は言っていないと思うが…)が、キリシマはアブクマの遠征艦隊への同行の許可を言い渡し、当のアブクマは「ありがとうございます!」と言いながら、満面の笑みで右拳を左胸に当てる敬礼をした。

 

「あと、サミダレ、アンタもヤマト達に付いていきなさい」

 

 更にキリシマが同行を命じたサミダレが「はい!」と返事をして『ウィンダミア』が急いで出てきて……誤って自分のスカートの裾を踏んだ為に蹴躓いていて、ミカヅキが同行を命じられるのが自分でなかった事を残念がっていた。

 そんなこんなで、サミダレが後を追ったアブクマに、空振りだったら自殺を、発見した場合は命懸けでやるだろう事を察した事もあって、ナガラは彼女の左肩を叩いて、ナトリは「頑張って」と言って激励して、自分達の所にアブクマが来たら、ヤマトはあまり反応してなさそうだったが、カスミ達3人はサムズアップで迎え入れた。

 

「アブクマさん、やっぱり貴女…」

 

「……私、イタリアさんの事を忘れる事が出来なかったの」

 

 最後にミカヅキの質問に、アブクマが少し暗い表情で答えると、イカロスへ向けて前進を開始したヤマトにカスミ達4人の後を追い掛けて行った。

 更にキリシマ達も『ウィンダミア』を連れての前進を始めると、ミカヅキはアブクマの背に向かって右拳を左胸に当てる敬礼をし、そんな彼女の2つの思いを察しているサツキとフミヅキが悲しそうに見つめていた。

 

 後に重要な役目を果たす事になる小惑星イカロスに向かう事となったヤマト達の行為は、“塞翁が馬”か“泣きっ面に蜂”のどちらになるのかは現時点ではまだ分からなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……来ルノネ、獲物ガ…』




 感想・御意見お待ちしています。

大和
「少なくとも瀬名誠庵さんが気づいていますが、コードネームって“鋼鉄の咆哮”の超兵器群(ボスキャラ)のですよね?」

 はい、“設定 ガミラス”でも書いてますが、『ムスペルヘイム』(コイツのみは本伝に出るかも?)『ノーチラス』『ハボクック』『ルフトシュピーゲルング』『スレイブニル』はやるかどうかは微妙の外伝で出るかもしれませんので、予定が一切無いのは『ブラッタ・シリーズ』(マレ、リフレク、シャドー、パーフェクト)『テュランヌス』『ドレッドノート』『アルケオプテリクス』『ハリマ(播磨)』(&『駿河』)『ぺーター・シュトラーサー』『ヴリルオーディン』『アマテラス』(&『あら、葉巻?』)『インテグラタイラント』『ジュラーヴリク』『近江』『アームウィンド』『ソビエツキー・ソユーズ』『リヴァイアサン』『ドーラ・ドルヒ』『フォーゲメル・シュメーラ』『ヘル・アーチャー』『フィンブルヴィンテル』です。

 で、現時点で此の中で出演不可にしているのは、敵とは言えゴキブリ(“ブラッタ”はラテン語でゴキブリ)の名を与えるのは可哀想として『ブラッタシリーズ』、設定すると何故か都市帝国になってしまう『ヴリルオーディン』、地上砲台型だから出し難い『ヘル・アーチャー』、同名の未完成戦艦がいる上にほぼ『フォーゲメル・シュメーラ』と被る『ソビエツキーソユーズ』です。

 『ぺーター・シュトラーサー』と『ドーラ・ドルヒ』は名前だけは本編で使います。

 最後に未練があるのは『アルケオプテリクス』『ハリマ』(&『駿河』?)『アマテラス』(出る場合、信濃の蘇生体?)『近江』(出る場合、『ハリマ』の空母型?)『インテグラルタイラント』です。

大和
「……マレ・ブラッタには、会敵前に航空攻撃で沈められてしまった、嫌な思い出があります…(遠い目)…」

 まぁ、だから代わりに翔鶴に行ってもらったのですが、アイツはアイツで『マレ・ブラッタ』に有視界距離まで接近した直後に沈めたからな。(苦笑)
 なにせ、接近警報が鳴らないなと思っていたら、画面角に一瞬映った『マレ・ブラッタ』が既に誘爆を繰り返していて、気づいて接近した直後に真っ二つに折れて沈んだ事に爆笑したのを、今でも覚えています。

大和
「無印の鋼鉄の咆哮は、中盤までは航空攻撃が敵味方問わずに強力でしたからね。
だから、あの人は『ヴィントシュトース』の初戦でも、同じ事をやらかしましたしね。
後、初戦での『アルウス』も艦載機が壊滅寸前だったから、『アルウス』と同航戦での高角砲を使っての砲撃戦で勝った事もありましたね。
あの作品での翔鶴さんはトップエースとして、瑞鶴が泣いて喜びそうな活躍を中盤までしていましたからね」

 只、『ナハトシュトラール』の初戦で艦載機が全滅してからの退却してから空母が一気に没落した為、それ以降は大和が頑張ってくれましたけどね。
 2からは調整でもあったのか、空母が活躍しにくくなってしまいましたしね。

…また、やりたいな……PC版鋼鉄の咆哮(無印)………後、出来れば新作も出てほしいなぁ~…


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第29話 愚者に潜む黒い影

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

 小惑星イカロス…1949年にドイツの天文学者ウォルター・バーデによって発見された、アポロ群に属する直径1kmの地球近傍小惑星の1つ。

 その名は、水星よりも太陽に近づく事のある軌道長半径から因んで、太陽に近づき過ぎた為に蝋で固めた翼を溶かされて墜落死したギリシャ神話の男性(故に、愚か者の代名詞にされている)から取られていた小惑星は、地球への接近による衝突の危機を時折起こしていた事から、地球から危険視される事があるも、ガミラス戦時では基地建設への適正だけでなく、潜在的価値そのモノも無かったので、少なくとも地球は完全に無視していた。

 だが、アブクマの木星からの望遠調査結果、イカロスに遊星爆弾の軌道修正&着弾観測の為の基地と、コードネーム付きの超弩級の存在が予想されて、にわかに注目されていた。

 

「皆、小惑星が密集しているから気を付けて」

 

 此の為、アブクマを先頭にヤマト、ハツシモ、サミダレ、カスミ、アサシモの順での単縦陣で前進している6人は、小惑星群の合間を縫って小惑星イカロスを目指していた。

 

「思っていた以上に、密度が酷いですね」

 

「まるで私達を、先に行かせない様にしているみたいです」

 

「まったく、何で態々(ワザワザ)こんな危ない所を行かないといけないのかねぇ~?」

 

「………」

 

「此の馬鹿!!」

 

 速度を落として慎重に進んでいるとは言え、危険性のある進路にハツシモとサミダレの懸念に合わせてのアサシモの失言に、アブクマがシュンとしてしまった為にカスミがアサシモに拳骨をした。

 

「幸いな事に、ガミラスの艦隊はいないそうなので、慎重に進んで、損はないですよ」

 

「特にサミダレ、唯でさえアンタはドジなんだから、気をつけてよ」

 

「むぅ~!!」

 

 たん瘤ができた頭を押さえているアサシモは置いておいて、ハツシモ達3人はガミラス艦隊がいない事から気を比較的楽に持てている事から、カスミがからかってサミダレが頬を膨らませていた。

 

「…艦隊がいない……ねぇ…」

 

「ヤマトさん、やっぱり気になりますか?」

 

 だが、ヤマトとアブクマはガミラス艦隊不在からの妙な静けさもあって、ガミラスの動向を不信に思っている事から、逆に警戒心を強めていた。

 更に言うと、ヤマトとアブクマの2人と同様に内心の不安で、ハツシモも妙に視線が泳いでいるし、カスミも変にサミダレとアサシモに絡んでいた。

 

「ほらほらアサシモ、アンタが殿なんだから、しっかりしなさいよ!」

 

「へいへい…」

 

『フフフ…』

 

「…っ!?」

 

 アサシモがカスミの注意に軽く受け流しながら答えた直後、少しエコーが掛かった誰かの笑い声が直ぐ近くで聞こえた。

 慌ててアサシモが笑い声がした方に振り向くと……暫く周囲を見渡していた後に、2つの小惑星の間で何かの左目が彼女を覗いていた。

 

「出たあぁぁー!!!」

 

「ふえ、な、何!!?」

「「「「…っ!!」」」」

 

「いたいた!!

あそこに、なんかいた!!!」

 

「……誰もいないし、何も反応は有りませんよ」

 

 驚いたアサシモが悲鳴を上げながらカスミに抱き付いて、そのカスミが慌てふためいて、ヤマト達4人が直ぐに振り向いて身構えたが、アサシモが示した場所をハツシモが慎重に確認したが、そこには何も無かった。

 

「此の馬鹿!!!」

 

 ハツシモの報告にアサシモが“えっ”としたが、ヤマト達は溜め息を吐いた後に前進を再開して、カスミは顔を赤くしてアサシモに2度目の拳骨をした。

 

「だっていたんだよ!

変な風も吹いたし!」

 

「空気の無い宇宙で風が吹くわけがないでしょ!

ホント、馬鹿なんだから!」

 

「でもい…」

 

『フフフ…』

 

「「…っ!?」」

 

 アサシモが怒っているカスミに言い訳に近いのを言っていたが、アサシモが示した方とは逆の方から、また誰かの笑い声がした。

 今度はカスミも聞いたらしく、2人揃って笑い声のした方にカラクリ人形みたいにゆっくり振り向いて暫く見つめていると、何かが小惑星群の間を高速で動いたのを見えて、抱き合って硬直してしまった。

 

「…な……な、いただろ」

 

「……な、何、今の?」

 

「ゆ、幽霊?」

 

「止めてよ!

わ、私、お化けって、全然駄目なの!」

 

 アサシモとカスミは、見てしまった何かを幽霊とかの類いを連想してしまい、つい先程までなんともなかった、此のうす暗く密集している小惑星群を不気味に感じてしまい、更に背後で2つの小惑星が突然衝突した音(しかも1回2回ではすんでない)を聞いてしまって完全に震えながら動けなくなってしまった。

 しかも此の火星・木星間の小惑星帯では艦娘や宇宙船の遭難事故が度々起こっている事から幽霊か何かが出る、或いはバミューダ諸島沖に時空がネジ曲がっている“魔の三角海域(バミューダトライアングル)”と同様の“空間トンネル”が存在しているのではと噂され、2人揃ってその事を思い出してしまって、顔を青くしていた。

 

「…アサシモさん、カスミさん?」

 

「「…ひぃ!!!」」

 

「ふえ、何で!!?」

 

「あ、なんだ、サミダレか…」

 

「脅かさないでよ…」

 

「酷いです!!!」

 

 2人してこんな状態だったから、背後から自分達を呼んだサミダレに、アサシモとカスミは揃って彼女に振り向きながら主砲と魚雷を向けてしまった。

 まぁ、そんな2人の事を察せなかったサミダレが、驚いて少し涙目になってしまったのも、仕方がない……のかな?

 

「で、何の用なの?」

 

「…あ、2人共、随分遅れていたので、何かあったのかなと心配になりまして」

 

「「…随分、遅れて?」」

 

 サミダレのカスミへの返しに、カスミとアサシモがヤマト達先鋒の方に振り向くと……何時の間にかに遠くに行っていたヤマトがほぼ点になって、アブクマとハツシモに至ってはほぼ見えなくなっていた。

 

「「置いてかないでぇぇー!!!」」

 

「ふぁ、待って下さぁぁーい!!!」

 

 まぁ、こんなんでカスミとアサシモがヤマト達の所へと急発進し、サミダレもまた2人を慌てて追いかけていった。

 

「…やっぱり、何かいますね」

 

 そんなカスミ達3人を……多分気にはしていると思うが、前を行くヤマト達3人は、ハツシモが言う通りに此の宙域にいると思われる何者かを感じ取っていた。

 

「アブクマ、レーダーは大丈夫ですか?」

 

「はい、ノイズは有りませんね」

 

 少し理由が長くなるが、ヤマトとアブクマがレーダーを気にしているのかと言うと、原理や詳細は今だ不明だが、深海棲艦は通信やレーダー波にノイズを発生させるだけでなく、磁場をも狂わせる……現代で言うECM(Electronic Counter Measures:電波妨害装置)に近い生来の性質を有して、俗に言う“羅針盤が狂う”現象を起こしていたのだ。(但し、潜水艦等の例外は多少ある)

 只、通信機器やレーダー(電波探知機)等の電子技術が世界的に遅れていた日本は兎も角として、欧米は此の為に深海棲艦の奇襲(タラント湾や真珠湾の奇襲攻撃は最もな例)を許していて、通常型でも此のザマなのに超弩級のは更に厄介であり、彼女達は“血界海域”と呼ばれる固有結界の一種を展開(確認されている中でも最大なのは、周辺海域諸共フィリピンを覆った捷一号作戦時のモノ)して、最後の頼みの綱である視界さえをも狂わせていた。

 

「……通信機も綺麗なままですね」

 

 当然ながら、深海棲艦時の人類も只なすがままでいる訳がなく、ECCM(Electronic Counter-Counter Measures:対電子妨害装置)の研究開発を進めたものの、確立したのが終戦間際だったので微妙な処ではあったが、それまではレーダーや通信機(あとラジオで、此れが一番)にノイズが起こる事を逆に利用して、沿岸部では軍民問わずにばら蒔いたラジオを、艦隊での警戒域の活動時は短距離通信機をオープンチャンネルにして、ノイズ発生の有無と強弱で敵艦隊の襲来をある程度を探知する方法を編み出していた。

 

「それにしても、まさかこんな古い手を使う事になるなんて、思いもしませんでした」

 

 血界海域は兎も角として、ガミラスもノイズ現象を有していて、現に冥王星が衛星カロン諸共レーダーに映らなくなっていたが、流石に地球もECCMを改良発展を続けたお陰で、長距離のは相変わらず駄目であるも、短距離の通信とレーダーは問題なく運用する事が出来ていたので、オープンチャンネルでのは廃れかけていたので、アブクマが苦笑してしまった。

 だがヤマトにしてみれば、数値的には遥か昔の化石レベルだったが、感覚的にはつい最近まで使っていた手法だったので、ヤマトが思わずムッとしてしまい、そんな彼女にアブクマが笑いながらも手を合わせて謝っていた。

 

「…とは言っても、此の手段でも楽は出来ませんけどね」

 

「それ以前に、ガミラスに楽な存在がいるなんて、とても思えません」

 

 ヤマトの呟きにハツシモが頷きながらのボヤキ通り、オープンチャンネルでも分かるのは、あくまでガミラス(深海棲艦)の存在の有無までであり、最終的には“見て”“聞いて”“感じて”の3種に“直感”を加えた“人間の六感”であり、それ等は“基本”とも“原点”とも言える以上は“戦争は人間(か人間に該当する存在)が行うモノ”は古今東西で適応する事を否応なく感じさせた。

 まぁ科学技術が発達した現代ではそう言う事を鼻で笑う者達が人間・艦娘問わずに多数いたが、鳥海(当時電探(レーダー)未搭載)達が敵艦隊を殲滅するも、主目標の輸送船団を見逃してしまうやらかし(・・・・)をした第一次ソロモン海海戦を一例に、人間としての感性に怠りや慢心が原因で戦略的敗戦が日米両国にあった上、なにより沖田が人間の感性を重要視する者である事から、ヤマトのオープンチャンネルにする事を即許可していた以上は下手な行為は出来なかった。

 

「……あ、ありました!!

5宇宙キロ先に、イカロスが見えます!」

 

 話を戻して、そうこう思いつつ、更にカスミ達3人が息を乱しつつも無事に追い付いた直後、アブクマが双眼鏡で前方の宙域から目的のイカロスを見つけて、彼女が指し示した方角に5人全員がそちらに揃って注目した。

 

「……どれ?」

 

「あれ、あれです。

あの細長くて大きいのです」

 

「ああ、あれ」

 

 少しヤマトが戸惑っていたが、サミダレが示しながら教えたお陰で、ヤマトもイカロスを見つけた。

 

「なんか、空母みたいな形をしていますね」

 

 で、イカロスを一目見たヤマトの感想にアブクマ達5人も「確かに」と若干の個性を各々付けて納得していた通り、イカロスは縦長横短でティアラを連想させる突起物が中央部にある事から、確かに横から見ると空母の様な形をしていた。

 

「ん~…見た処、基地とか、そう言う類いのは無さそうだな」

 

「……レーダーも通信機……揃って、正常…」

 

 だがアサシモの指摘通り、イカロスには人工物等の物は確認出来なかった上に、ノイズ現象が起こっておらず、更に言うとガミラス艦隊の気配も感じられなかったので、空振りの公算が高まっていた。

 此の為、アブクマが必死さが感じられる程にレーダーと通信機を確認していたが、やはり2つ揃って正常且つ無反応だったので、“そんなまさか”と“やっぱり駄目だった”の2つが混じった表情をしていた。

 だが、空振りだと決まったわけではないので、そんなアブクマを左肩をカスミが叩いた。

 

「やっぱり、手筈通りにやるしかないですね」

 

 事前の協議で、もしガミラスがいた場合、ガミラスがイカロス本体や周辺宙域に何らかの罠が仕掛けられている可能性が高いので下手にイカロスに近づくのは危険、だから目視可能距離に入ったらヤマトの三式弾入りの副砲の射撃をイカロスへ(オコナ)って、イカロスや潜伏しているかもしれないガミラス艦隊の反応を見ようと決めていたので、ヤマトは予定通りに副砲2基に三式弾を装填しながら準備を整えていた。

 で、ヤマトが射撃準備を終えて、いざ撃とうとしたら…

 

「「「「「「…っ!?」」」」」」

 

『来タァァー、獲物達ガァー!!!』

 

…その直前に、ヤマト達6人の通信機に針を刺すかの様な耳障りなノイズが聞こえたらと思ったら、何者かの歓喜の雄叫びが聞こえた。

 

「やっぱり!!」

 

 驚きはしたが、此の宙域にガミラスがいる事が確定したので、直ぐにヤマトが副砲の射撃を止めて、アブクマ、ハツシモ、カスミの3人がヤマトの前と左右各々に移動して、サミダレとアサシモが後ろに振り向いて、6人各々に周囲を警戒した。

 だが此の直後に、真上にやや近い後ろ上方から空間魚雷群が飛んできて、カスミが気づいた直後にヤマトの艤装背部の煙突周辺に次々に直撃した!




 感想・御意見をお待ちしています。

 今回の投稿前に変更したのが2つあり、1つ目は本作でのガミラスの正式名称“Galaxy Military Robbery Ship”から、“ミ”の部分に当たる単語を変更して“Galaxy Mystery Robbery Ship”として日本語名称として“銀河系未確認武装艦”を追加しました。
 因みに今更感がありますが、此のガミラスの正式名称は“ガンダムSEEDのガンダム”と“平成ゴジラ7部のモゲラ”の2つをヒントになりました。

 2つ目は、先日から始まった艦これイベントに合わせて、“設定 艦娘”の未所有故の出演不可の項目に、『ネルソン』『神鷹』『ゴドランド』『岸波』『???』を追加して、めでたくドロップした『伊26』を削除しました。

大和
「ろ号作戦が一気に達成出来る程、潜水新棲姫を散々ボコッてましたからね」

 まぁ潜水棲姫もそうでしたが、個人的にあの2人を“艦これ界の『レムレース』”と呼ぶようになりました。
 理由は、読者にもいると思いますが、鋼鉄の咆哮シリーズでは“資金”“部品(ドロップアイテム)”で『シュトルムヴィント』(『ヴィルベルヴィント』)共々、鴨としてお世話になっているからです。

大和
「特に『シュトルムヴィント』は、本来の艦種は“超高速巡洋戦艦”なのに、プレイヤー達からは“超高速輸送艦”と呼ばれています」


 あ、最後に今回から出た、“ノイズ現象”は無印以外の鋼鉄咆哮シリーズから、“オープンチャンネルでの警戒”はサイレントヒルシリーズをヒントにしています。
 補足情報として、他の艦これ作品では、『こんごう』級護衛艦等の現代艦が艦これ世界に転移して大暴れするのがよくありますが、本作では深海棲艦のノイズ現象が酷すぎてミサイル等の誘導兵器やデジタル機器が無力化するので、アナログ式以外の現代兵器が役立たずになってしまうとしています。


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第30話 飛び回る悪童

 今回の投稿前に“設定 艦娘”での未所有故の出演不可にて、『???』を『マエストラーレ』に変更し、獲得出来た『神鷹』と『伊13』を削除しました。
(大東と岸波、今何処?)





 それでは本編をどうぞ


――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「「ヤマトさん!!!」」

 

 不意討ちだった上に波動防壁が展開していない状況下でヤマトが被雷したが、肩い装甲板に弾かれたので、艤装その物は大した損傷ではなかったが、ヤマト本人も含めて被雷箇所に呆然と見つめてしまったが、直ぐにアブクマとハツシモが我に返って、急いでヤマトに確認を取っていた。

 

「…っ! 敵襲!!!」

 

 完全に出遅れてしまったが、カスミが戦闘準備を怒鳴って命じた。

 

「サミダレ、アサシモ、魚雷は何所から飛んできたの!?」

 

 更にヤマトが、レーダーを急ぎ確認していたサミダレとアサシモに攻撃の出所を尋ねた。

 

「それが、分からないんです!」

 

「分からない?」

 

「レーダーには何も反応していなかったんです」

 

「アンタ等、何の為に後ろに着けたと思ってんのよ!!」

 

「無茶言うな!!

こんな所じゃ、レーダーがまともに機能しない事を知ってんだろ!?」

 

 言葉と状態で“そんなまさか”となりながらのサミダレの返事に、ヤマトが“えっ”として、カスミがアサシモの胸ぐらを掴み上げてしまった。

 

「と、兎に角、このままだと敵の思うがままです」

 

「全艦、イカロスより一時離脱!

それと艦列を単縦陣から輪形陣に変更!」

 

 カスミを引き剥がしたアブクマの言う通り、此のままだとガミラスの攻撃を甘んじて受けしまうのは確かで、実際にヤマトは直ぐにイカロスからの離脱を開始すると同時に、迎撃性が高い上に目視による確認が広く取りやすい輪形陣への変更を命じた。

 

「輪形陣、輪形陣です!」

 

 只、輪形陣への変更に、何故かハツシモが喜んだので、ヤマトが“はぁ?”としたので、不謹慎だった事もあってハツシモが直ぐヤマトに頭を下げていた。

 

「……よし、此れでなんとか…」

 

 まぁ兎に角、問題なく輪形陣に移行してから、アブクマ達5人が警戒体勢に入ったので、ヤマトはなんとかなりそうだと思って溜め息を軽く吐いたら…

 

『フフフ…』

 

「左舷に魚雷!!!」

 

…自分達を小馬鹿にしたかの様な微笑が聞こえた直後、サミダレが左側からヤマト目掛けて来ている6本の空間魚雷に気付いて大声で叫んだ。

 

「やあぁぁー!!!」

 

「墜ちろぉぉー!!!」

 

 当然なからサミダレだけでなくカスミの2人が直ぐに迎撃を開始して……6本揃って撃ち落としたが、その直後に逆の右側から艦隊の真上に向かって弧を描いて上昇する空間魚雷6本が現れた。

 

「しまった、左舷のは囮!」

 

「でも外れているぞ!」

 

 アブクマが本命と思われる6本の空間魚雷にギョッとしていたが、アサシモは自分達に向かって来ない事に少し気を抜いてしまったが、その6本の空間魚雷はヤマトの真上に達すると、側面板を傘形に開いて大量の小型焼夷弾を艦隊目掛けて投下した。

 

「っ!? 多弾頭ぉぉー!!!」

 

 ハツシモが本命の空間魚雷2本の正体を叫んだ直後、焼夷弾群が次々に起爆して6人全員処か、周囲の小惑星群諸共焼き払おうとした。

 

「「やられたぁぁー!!!」」

 

 流石に今回の攻撃は事前に波動防壁を展開していたので被害は大した事はなかったのだが、ヤマトだけはなんとか耐えてはいたが、カスミとアサシモが絶叫してアブクマ達3人が悲鳴を上げた通り、受け手には堪ったモノではなかった。

 そしてなにより、何割かが波動防壁を突破していたので、6人共に髪や衣装や艤装の何ヵ所かが焼け焦げていた上に、波動防壁の無いアブクマ(代わりに無意識の内に背後のサミダレと共に、艦隊から一時離脱たお陰で、被弾率だけは一番低い)と集中的に被弾したヤマト(不味い事に先の被雷もあってか、煙突左脇から煙が出ている)に見られる様に小破していた。

 

「嘘でしょ!?

またレーダーが反応していません!」

 

「畜生、ガミ公!!!」

 

 サミダレの叫びながらの報告に合わせて、ハツシモも顔を左右に振っている通り、今回の攻撃までも6人全員のレーダーが何も反応せず、否応なくガミラスはレーダーの領域外いるのかレーダーを撹乱している事が分かり、カスミが魚雷発射菅を殴っていた。

 

「ガミ公、出てこい!!!」

 

「アサシモさん、落ち着いて下さい!!」

 

 だが2度も先手を取られただけでなく、ガミラスの正体と攻撃法が完全に不明な事から、個体差が有れども混乱が生じてしまい、現にカスミとサミダレとハツシモの3人がお互いの目線を合わせて固まってしまい、アサシモが明後日の方角に主砲を乱射してアブクマに背中から抑えられていた。

 

「皆、気をしっかり持って!!

ガミラスはまt、っ!?」

 

 当然なから、こんな好機をガミラスが見逃す筈がないのが簡単に分かるので、ヤマトがなんとかしようとした直前、左側の小惑星の幾つかが砕けてヤマトがそちらに振り向いた直後に彼女艤装背部が爆発……間違いなくガミラスの攻撃を受け、不味い事に煙突ミサイルの弾薬が誘爆したらしく、立て続けに2度目の爆発が起こった。

 

「「「「…ヤマトさぁぁーん!!!」」」」

「…ヤマトォォー!!!」

 

 またしてもヤマトへの攻撃を許してしまった事に、アブクマ達5人がヤマトに振り向いて硬直して、少し間を開けて、一斉にヤマトに叫んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球 ―――

 

 

「嘘、ヤマトが…」

 

「カスミ、あの馬鹿何やってんのよ!!」

 

 画面越しに退避を許可した沖田と共に、不在のキリシマ以下の第一艦隊に代わって徴集された空母ホウショウ(臨時秘書艦)、巡洋艦のスズヤとジンツウ、駆逐艦のマキグモとミチシオにヤマグモの計6人が中破したヤマトの光景に唖然としていた。

 スズヤが声に出してヤマトの身を案じて、ミチシオが3度もガミラスのヤマトへの攻撃を許した妹のカスミ(達)の不甲斐なさに怒鳴っていたが、他の4人は“そんなまさか”と硬直していた。

 沖田もまた内心そうで現に肘掛けに置いた右拳の力が強まっていたが、艦隊指揮官として、それを表に出そうとしていなかった。

 因みに、臨時編入された6人の中で、スズヤとマキグモとミチシオの計3人は艤装の損傷度合い(更に言うと、マキグモはアサシモに、ミチシオはカスミの各々の改装資材として解体転用)が原因で、ジンツウとヤマグモは辞退と言うか志願すらしていない、ホウショウは辞退に加えて日本最古参空母故の能力不足(だからガミラス戦初期から練習艦隊に編入されていた)で、イスカンダル遠征に未参加となっていた。

 

「マキグモ、映像解析の準備は出来ているのか?」

 

「あ、はい、ただ今」

 

 ヤマト達がかなり混乱しているだけでなく、ガミラスの艦隊編成や攻撃手段が分からない以上は、対応策を伝えられない為、沖田は敢えて退避行動中のヤマト達に何も指令せずに、分析を最優先とした。

 

「此れが、2千倍のスローモーション映像です」

 

 で早速、マキグモがヤマグモの協力下に、ヤマトの被雷から始まった戦闘映像を別画面にスローモーションで映した。

 

「駄目じゃん!!

全然、変わってないじゃん!」

 

 だがスズヤのぼやき(でミチシオに小突かれた)通り、通常速と全く変わりがなかった。

 

「此れが、4千倍のスローモーション映像です」

 

「…信じられませんね。

ガミラスの姿が全く見当たりません」

 

 そこで今度はもっと遅くして……特にヤマトの3度目の被弾時のを注目していたが、此れにも変化が見られなかったので、ホウショウが思わず呻いてしまったし、沖田も右拳を顎に当てたまま固まっていた。

 

「やっぱり、機雷とかのトラップを仕掛けているとかは考えられません。

況してや、多弾頭での焼夷弾を大量散布をしたならば尚更です」

 

「となると、カスミ達のは兎も角、此所でのレーダー処か、望遠映像でもガミラス艦隊がいない以上は遠距離砲撃しか考えられないわ。

ヤマト達を攻撃しているのは、砲艦『ナハトシュトラール』よ」

 

 少なくとも防衛軍の設備では木星軌道以下の内縁にガミラス艦隊が確認出来なかったので、ヤマト達は『ナハトシュトラール』の超遠距離(アウトレンジ)での攻撃を受けているのではと、ジンツウとミチシオは予想した。

 

「それは違うかもしれませんよ~。

あれだけの密集宙域ではぁ~、ヤマトさん達を補足出来るとは思えませ~ん」

 

 だがそんな2人の予想をヤマグモが否定し、実際否定要素が多かった上に、沖田も無言で『ナハトシュトラール』説を否定している気配だったので、ジンツウは顔を背けてミチシオは舌打ちしていた。

 

「ハツシモさんから、ヤマトさんの被弾痕の映像が届きました」

 

「……コンピューターによる、解析の結果ぁ~、ヤマトさんのは零距離攻撃によるモノだそ~でぇ~す。

しかもぉ~、装甲で弾いたと言え~、機関部を正確に狙っていま~す」

 

 遠距離攻撃とは真逆の“零距離攻撃”との、マキグモを経由してのヤマグモの報告に、ホウショウ達5人が“えっ”とした。

 

「空母『アルウス』のステルス機を用いた攻撃は考えられませんか?」

 

「いえ、艦載機にしては、あの打撃力は考え難いですね」

 

 マキグモは『アルウス』の航空攻撃だと予想してホウショウに尋ねたが、そのホウショウはヤマト3度目の被弾時のから否定した。

 

「私が見た処、あれは艦砲によるモノだと思います」

 

「そんじゃ、高速艦『ヴィントシュトース』の一撃離脱(ヒットアンドウェイ)じゃない?」

 

「…その可能性は高いけど……あの宙域で雷撃をしながらの高速移動は少し考えられませんね。

況してや、従属艦まで見当たらないのはおかしすぎます」

 

 代わりにスズヤが『ヴィントシュトース』説を推したが、此れも五分五分の思いのジンツウが否定した。

 だが少なくとも噂通りに超弩級が従属艦共々いるのは確実だったが、従属艦群さえ見当たらない現状を解き明かす事すら出来ないでいた。

 

「お手上げですねぇ~」

 

「ガミ公め、なんて言う者を生み出すのよ!!!」

 

 手詰まり感が出てきた事に、ヤマグモが他人事の様に呆れて、ミチシオが八つ当たりで壁を蹴っていたが、手懸かりが最も有りそうなヤマトの3度目の被弾する前後を含んだスローモーション映像を沖田は何度も見続けていた。

 

「沖田提督、何か気になる事でも?」

 

 蛇足ながら、ホウショウは空母としての能力こそイマイチになってはいたが、参謀や軍師としての能力に優れているだけでなく、ガミラス戦前の現役時代に沖田(当時は二佐)の配下初の空母娘として配備され、空母のいろは等を指導していたので、沖田の思考をある程度を読み解く事が出来たので、沖田1人だけが何かに気付いたのを察した。

 

「…影が……影が動いていてな…」

 

「…影?」

 

 沖田の指摘にホウショウも気付いたが、確かにヤマト3度目の被弾時の彼女の背後だけでなく、その前の直ぐ脇の小惑星群が砕けた時、確かに影とも幽霊とも思える何かが一瞬だけ映っていた。

 

「第一艦隊に早く戻るように催促させますか?」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

「あ~、ヤマトさんが被雷した~」

 

 だが沖田とホウショウの推測は、ヤマトがまたしても被雷した事を伝える、ヤマグモの間延びした報告に打ち切りになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「急いで、また誘爆しちゃいます!!」

 

「了解!!!」

 

 現在のヤマト達は可能な限りの速さで木星軌道に離脱しようとしていたが、4度目の被弾を許して多少火傷をしているも、ヤマトがマイナスドライバー食わえながらのスパナ片手に、自分の艤装に誘爆防止の為の応急処置(ヤマト本人のみは後ろ向きのままで進んでいるので、“後進”と言うべきか?)を手助けしようと、アブクマとハツシモが消火器を炎上箇所に掛けていた。

 

「……なんでこんな事に…」

 

 アブクマがもしかしたら自分の所為でヤマトが沈むのではと邪念していた。

 

『イタリアさん!!!』

 

『アブクマ、早く逃げて!!!』

 

 更にアブクマは、嘗て此の宙域で自分達の目の前で沈んだ戦艦イタリアを思い出していたが、そんな彼女に“そんな事はない”とハツシモが顔を左右に振った。

 

「出てこい、ガミ公!!!」

 

 残りのアサシモ達3人はと言うと、そんなヤマト達3人を守りつつ、動き回って周囲を警戒していた。

 

「っ! 何やってんのよ!!?」

 

「ああ、ご免なさい!!!」

 

 だが、またしてもヤマトの被雷を許してしまった事で、カスミとアサシモが殺気立っていて、現にサミダレと左肩同士を擦った事で、カスミが鬼の形相で怒鳴ってしまった。

 

「いつまでもドジが許されると思っていたら、大間違いよ!!」

 

「ご免なさっ!」

 

「邪魔だ、どけ!!!」

 

 カスミがサミダレに殆ど八つ当たりの説教を仕掛けていたが、そのサミダレを近くを過ぎようとしたアサシモが押し退けたので、カスミが露骨に溜め息を吐いた後に警戒行動に戻ったので、尻餅を着いて少し泣き顔のサミダレが残された。

 

「うぅ~………?」

 

 少しの間、サミダレが顔を伏せって硬直していたが、ほぼ後ろの方で何かが光ったのに気づいて、そちらに向かった。

 

「…あ!」

 

 で、目的の場所に着く前に足下の小惑星に蹴躓いて右側の小惑星2つを押し退けながら倒れると、サミダレの目の前に円柱に長方形型の硝子みたいなのを付けた金属物体が存在していた。

 サミダレと金属物体は見つめあった(?)まま暫く硬直していたが、金属物体側が“不味い”と思ったらしく、少し後退して潜る様に消えてしまった。

 それでもサミダレは硬直していたが、金属物体の動きに加えて、その形状から金属物体の正体を悟った。

 

「……ヤ…」

 

 取り敢えず起き上がったサミダレが前に振り向くと、アサシモとカスミだけでなく、ヤマト達3人もかなり離れているのが見て取れた。

 

「…ヤマトさぁぁーん!!!」

 

 少し間を置いて、サミダレはヤマトの元に全速力で向かった。




 感想か御意見を御待ちしています。

 書いてて思ったんだけど、駆逐艦娘達が戦艦娘等の火災を起こした他者を消化しているのって、ウチだけの描写なのかな?

大和
「ああ、炎上している大型艦に駆逐艦が放水する、アレですね」


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第31話 悪童の影を掴め

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「…潜望鏡を、見た?」

 

「はい!!!」

 

 少し退く程、自分を叫んで呼びながら駆け寄ってきたサミダレの「潜望鏡を見た」との報告に対するヤマトの反応はと言うと、眉間に皺を寄せての鸚鵡(オウム)返しであった。

 

「潜望鏡って、潜水艦が装備しているアレだろ?」

 

「それが、むこうに有ったんです!」

 

 サミダレの必死の訴えに反して、思考面での消化不良を若干起こしていた事もあって、深海棲艦も潜水カ級と同ヨ級の2種類の潜水艦を運用していたのだから、深海棲艦に関係のあるガミラスにも潜水艦が有ったんだとしか思えず、呟きに近い形での質問をしたアサシモから見ると、他の者達もヤマトと同じ様だった。

 

「その下は、本体はどうなっていたのよ!?

此所は宇宙であって、海じゃないのよ!」

 

 だが現実問題、カスミの言う通りに潜望鏡の主が問題だった。

 

「それが、消えていたんです」

 

「消えていたぁ?」

 

「はい、潜望鏡も潜る様にして消えてしまいました」

 

「……お前な、カミカゼなら兎も角、()けるにしては早いぞ。

なあ、カスミ……って?」

 

 判断に困っていたヤマトは別として、アサシモが呆れている処からだと、彼女はサミダレを信じていなさそうだった。

 そんなアサシモがカスミに同意を求めたが、そのカスミは真っ先に噛み付くだろうとの予想に反して硬直していた。

 否、カスミだけでなく、アブクマとハツシモが何かを小声で話し合っていた。

 

「……何か思い当たるのですか?」

 

 ヤマトの質問にアブクマとハツシモは揃って頷いた。

 

「もしかしたらですけど、今私が戦っているのは、宇宙の潜水艦、潜宙艦(スペース・サブ)かもしれません」

 

「…1つ聞くけど、宇宙で潜水艦は成り立つのですか?」

 

 サミダレは兎も角として、アブクマとハツシモを疑っている訳ではないが、ヤマトにして………否、大方の一般人にしてみたら、海面下に潜って隠れる潜水艦が、基本的に隠れる場所が無い宇宙で成り立てるのかを疑問に思うのは至極当然であった。

 まぁ、実際に少なくとも2190年代では潜水艦娘が1人もいなかった現状も含めて思う事はあるらしく、アブクマとハツシモが苦笑していた。

 

「少なくとも地球の理論上では、潜宙艦は存在しています。

超高性能ステルス艦を潜宙艦と呼ぶ事もありますが、私達は“次元潜行艦”と呼ばれる、文字通りに異次元に潜るか、亜空間断層を発生させるモノをそう言っています」

 

「それ、本当?」

 

「私はイスズと一緒に、ガミラス戦前に行われたドイツの次元潜行実験に何度も参加しているから確かです!!」

 

 どうやらガミラス戦中に竣工したので潜宙艦を知らなさそうなアサシモに、アブクマが唸り声を上げながら抗議していたが、ハツシモ達3人は納得している様だった。

 因みに言うと、地球で一番潜宙艦の研究開発をしていたのはドイツであり、やはりドイツは潜宙艦によって嘗ての潜水艦大国の復活(ドイツだけでなく、潜水艦自体が艦娘の宇宙進出で衰退した)を目指していたようだった。

 だがドイツ処か、地球各国は潜宙艦開発に悉く失敗していた事(故にハツシモみたいなステルス艦で代用していた)から、ガミラスも潜宙艦は保有していないとの一方的且つ勝手な思い込みが有って、その事を今の今まで疑いもしなかった事を、歯軋りをしているカスミやハツシモが悔やんでいるようだった。

 

「じゃあ、どうするんですか?

相手が潜宙艦だとしても、居場所が分からないと、なにも出来ませんよ」

 

 話を戻して、確かに相手が潜宙艦なら“姿を見せないガミラス艦隊”や“解析不能な攻撃手段”等の不可解要素全てが納得出来るのだが、ヤマトの言う通りに潜宙艦の所在が分からないと反撃すら話にならなかった。

 だがアブクマは解決法を思い付いているみたいだった。

 

「そこでなんですが、ヤマトさん、ワープをしてくれせんか?」

 

「ワープを?」

 

「ああ、平行宇宙型があったから、確かにワープなら異次元に潜行してる奴を見つけられるかもね」

 

 アブクマの提案にヤマトは首を傾げてしまったが、カスミは自分なりにアブクマの狙いを察して、サミダレやアサシモと一緒に納得していた。

 

「ですけど、ワープをしたとしても異次元にいる人達を攻撃出来るとは思えません。

それ以前にワープで潜宙艦のいる次元に行けるとは思えませんし…」

 

 だがハツシモの指摘通りに色々と問題が考えられて、却下の気配があったが…

 

『いや、ワープを行え』

 

…沖田の天の声で決行となった。

 更に言うと、沖田側も敵が潜宙艦との予測に同感としているみたいだった。

 

『確かにワープでは、潜宙艦の所には行けないかもしれないが、潜宙艦が何らかの反応を起こす可能性が高い。

小惑星帯を抜けた直後に不意を突く形でワープを行えば、潜宙艦を炙り出す事が出来るかもしれん』

 

 沖田の言う通りに加え、反対する意見も気も無かったので、沖田の指令を行う事に決定した。

 

「……潜宙艦、か…」

 

 ワープをしに小惑星群からの離脱をしようと直前、ヤマトは左足に視線を落とすと、左足のハイソックスの袖口を握って……沖田との通信がまだ繋がっている事もあって意を決した。

 

「…アブクマ」

 

「え、あ、はい」

 

 ヤマトに突然呼ばれたアブクマが驚き戸惑っていたが、少し間を明けた後にヤマトは大きく息を吐いて口を開いた。

 

「取り敢えず此の戦いの間、旗艦を貴女に譲ります」

 

「わ、私が、旗艦にですか!?」

 

「対潜宙艦戦の知識が全く無い私より、その手の知識がある貴女を旗艦にしていた方が勝率が高いでしょう」

 

 自分達の指揮を取れとの畏れ多い命令にアブクマだけでなく、ハツシモ達3人までがギョッとしながらヤマトに振り向き、当のヤマトはと言うと、今の自分の行為を絶対しないだろうし命じられて了解しても嫌がるだろう武蔵と長門の2人の顔を思い浮かべて苦笑した。

 

「直ぐ沈んだと言え、愛宕は重巡の身でありながら捷一号作戦時に総旗艦として私達を指揮しました。

アメリカでも、重巡洋艦インディアナポリスが総旗艦を何度か務めていたらしいわよ」

 

「でも、巡洋艦の私がヤマトさんをも指揮するのは……オオヨドさんの先代の事もありますし…」

 

 ヤマトは前例があった事を言いたかったらしいが、アブクマは豊田副武GF長官が武蔵から引き継いで最後の連合艦隊旗艦を務めた軽巡大淀を嫌って武蔵の再任を求めていた事が頭に思い浮かべて嫌がっていた。

 此の事は提督達だけでなく艦娘達もそうらしく、現にアサシモが露骨に冷たい目線をアブクマに向けていたが、直ぐにカスミに関節技を掛けられていた。

 

「…沖田提督は旗艦変更をどう思ってます?」

 

『じゃあ、私からアブクマに旗艦変更を命令しよう』

 

 埒が明かないと判断したヤマトは、沖田にアブクマへの旗艦変更を打診して、沖田も賛成したので、要望から命令に変わったのでアブクマの逃げ道が失われた。

 

「お願いします、アブクマさん」

 

 更にハツシモ達3人(泡を吐いて失神しかけているアサシモは置いておいて)も賛成していたのが、決定打になった。

 

「……巡洋艦アブクマ、ご期待に答えます!!」

 

 少し躊躇いがあったが、アブクマはヤマトに敬礼し、ヤマトが答礼した事で旗艦変更が行われ、直ぐにワープの為の小惑星群からの離脱に入った。

 

「で、どうしておけば?」

 

「取り敢えずは、ステルスタイプであった事に備えて、広範囲爆破兵器を用意しておいて下さい」

 

「それじゃあ、主砲に三式弾を装填しておきます」

 

「信管は時限式に変更を、副砲には空間照明弾を装填しておいて下さい」

 

 ヤマトがアブクマの言う通りにしているだけでなく、ハツシモ達も自主的に空間魚雷の信管を時限式に変えていたが、カスミが時限式信管に面倒臭そうな目をしていた。

 尤もヤマトにしてみたら、時限式信管は感覚的につい此の間まで使っていた物なので、手慣れた手付きで交換からの調整をしていた。

 

「あの~、次元潜行タイプだった場合は、どうしておけば?」

 

「その場合は打つ手がありませんから、諦めて逃げるしかありません」

 

「んじゃ、ステルスタイプである事を祈るしかないね」

 

 アブクマのサミダレの質問への返しに、カスミから解放されたアサシモが冗談みたいなのを言っていたが、此の時のヤマトは少し暗い表情をしていた。

 

「……アブクマに、責任を押し付けちゃったかな?」

 

 自分のやったのは逃げただけだったのではと思っていたヤマトは、正直な処は潜宙艦戦に不安しかなかった。

 何故なら貧乏海軍だった旧日本海軍は、ゲームで言えば攻撃力に全振りしていた為に後方を疎かにしてしまい、結果的に深海棲艦戦時に潜水艦に散々な目にあっていたからだ。

 此の為、ヤマトが知っているだけで、駆逐艦では水無月・磯波・狭霧・敷波・漣・雷・電・子日・時雨・五月雨・海風・山風・涼風・大潮・霰・浦風・谷風・秋雲・風雲の19人、軽巡では天龍・龍田・球磨・多摩・大井・長良・名取・夕張・阿賀野の9人(プラス五十鈴だが、坊ノ岬沖海戦の同日にスンバワ島沖で沈んだのでヤマトは知らない)、重巡では加古・足柄・愛宕・摩耶の4人、空母では翔鶴・大鷹・大鳳・雲龍の4人、その他諸々で金剛・速吸・間宮・あきつ丸・瑞穂・松輪の6人、合計して42人(➕1)の艦娘達が潜水艦によって戦没していた。

 更にヤマト(大和)自身も、戌一号作戦時のトラック(チューク)諸島沖で潜水艦の攻撃で左足に大怪我を負わされ、後日に此の時の左足の治療の()いでに改形態(対空強化型)への改装が行われる出来事があったので、どうしても左足の太股に目線を落として左手を当てながら不安を感じていたし、更に言うと先代を潜水艦に殺られたサミダレが少し情緒不安定になっていた。

 

「ヤマト、アンタ不安なの?」

 

 そんなヤマトの心情を察したカスミが彼女に声を掛けたが、そのカスミは先代達と同様に対潜能力を疑われている事にムッとしていた。

 

「心配しなくてもいいわよ。

寧ろ、対潜が一番安心出来るモノよ」

 

「はぁ…」

 

 確かに旧日本海軍から見たら不安かもしれないが、現在の日本艦隊には旧日本海軍の後継組織である海上自衛隊の血筋が流れていた事を、ヤマトが知らないのか分からないのかは分からないが、カスミが言っている事を此の時のヤマトは分からないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Ich habe YAMATO wieder ergaenzt!」

(訳:ヤマトを再補足しました!)

 

 戦艦イタリア以来の大物であるヤマトに3度目の奇襲に成功したガミラス艦隊は、ヤマトへの総攻撃を行う為に小惑星群にいる全艦を集結させていたのでヤマト達から離れていたが、小惑星帯から抜け出ていたヤマト達を見つけ出していた。

 

「Alle Schiffe,vorbereitet fuer simultan Blitzschlag!」

(訳:全艦、一斉雷撃用意!)

 

 ヤマト達が何故か反転して速度を落としていたのが気になったが、兎に角にもヤマト達が気付かずに自分達の所に向かっていたので、予定通りに旗艦の号令下に楔型陣形を整えての雷撃の準備が始まった。

 

「Countdown start,dreiβig sekunden vorher……zwanig sekunden vorher……vor zehn sekunden…」

(訳:秒読み開始、30秒前……20秒前……10秒前…)

 

 此の時のガミラス艦隊は一斉雷撃によって、ヤマトが撃沈する未来絵図を夢見ていた様だが、直ぐに冷や水を掛けられる事になる。

 

「YAMATO,ich werde mich bald verziehen!!」

(訳:ヤマト、間もなくワープをする模様です!!)

 

 従属艦の1人がヤマトがワープを行おうとしているのを察して、大声でそれを伝えたら、ガミラス艦隊の全員が、ヤマトがワープを行う理由が分からない事もあって、ギョッとした。

 

「…っ! Alle Schiffe,stoppe den Angriff!!

Bereite dich darauf vor,mit Kentten zu varfogen!」

(訳:全艦、攻撃中止!! ワープによる追撃準備!)

 

「Am Ende Koenner sich jedoch nor sechs Gefaeβe sofot verziehen!」

(訳:しかし、直ぐにワープ可能なのは、最後尾の6隻だけです!)

 

 旗艦の急な命令に危惧した従属艦の1人が旗艦に反発した事で変な混乱が生じてしまい……此の間にヤマト達はワープをしてしまった。

 

「Lass die Beute nicht entkommen!!!」

(訳:獲物を逃がすなぁぁー!!!)

 

 ワープしたヤマト達に、ガミラス艦隊の殆どが呆然としてしまったが、旗艦の怒鳴り声で我に返って、命令通りに最後尾の6隻が姿を現して、直ぐにヤマト達を追い求めてワープを次々に行った。

 




 感想か御意見を御待ちしています。

大和
「今回のってPartⅢの次元潜行艇の話が元になっていますね」

 分かる人は分かってくれる筈ですが、前回から土門竜の役をやらせたサミダレ(五月雨)は、此れの為に起用となりました。
 ですけど、此れでガルマン・ガミラス&ボラー編での次元潜行艇のは完全に出来なくなりました。
 もしやるとしたら、リメイク版のになります。

大和
「リメイク版も、ガミラス編で次元潜行艦をやりましたから、ガルマンガミラス&ボラー編のは相当変わると思いますしね」

 因みに、ヤマトが言った潜宙艦の疑問は、昔“宇宙戦艦ヤマト”を知らない身内が言ったのを元にしています。

大和
「次回はいよいよ潜宙艦戦ですけど、対潜武装を代用している事から“タクティカル・ロア”を思い起こさせますね」

…不吉な事を言うな。
(注:“タクティカル・ロア”の潜水艦1回戦は、対潜武装を代用した事もあってか主役艦が敗北して大破)

大和
「どのみち、ガルマンガミラス&ボラー編での次元潜行艇のは不吉でしょ」
(注:旧作での次元潜行艇戦は、『ヤマト』が捕獲されて完敗)


 最後に、後半辺りでヤマトが左足を気にしていた事は、戦艦『大和』がトラック諸島沖で潜水艦『スケート』の雷撃を受けた史実と、艦これ版大和の左右で長さの違う靴下をヒントに思いつきました。
 艦これ原作のは知りませんが、本作での大和の靴下は元々は左右均等(右足のが本来の)だったが、潜水艦の雷撃を受けて出来た左足の傷痕等(無くても痛みがあったり、気にするようになった)があるので、左足だけ長くしたのと予備設定があります。
 もしかしたら、深海棲艦は此の事を知っていたから、坊ノ岬沖海戦で大和の左(足)側を集中的に狙ったのかもしれません。

大和
「と言っても大和の靴下で長いのは左、『大和』が被雷したのは右舷第三主砲部分なので、左右逆ですけどね」

 そこは少し残念。


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第32話 掴んで判明、影の主

 今回の投稿前に、第14話の前部に実写版での“『ヤマト』発進直前での古代と佐渡のやり取り”に該当する場面を追加しました。

 更に言うと、抜猫(エラー猫)………ではなく、松本零士作品の恒例の三毛猫のミー君も出ています。





 それでは本編をどうぞ。


――― 火星軌道 ―――

 

 

「ワープ終了!」

 

『ヤマト、小惑星群近くでガミラス艦隊がワープしたのを確認したぞ。

直ぐに周囲を警戒しろ』

 

「皆さん、戦闘配置について下さい!」

 

 ヤマト達は姿を見せないガミラス艦隊の動向を探る為のワープを終えた直後に、沖田を経由したガミラス艦隊のワープ反応が伝えられた事もあって、直ぐに旗艦のアブクマの号令下に6人各々に辺りを見渡しながら……直ぐ前にカスミがいるヤマトの後方左右にアブクマ&アサシモとハツシモ&サミダレが展開する、後方陣に近い陣形に移行しつつ、後ろ向き(“後進”と言うべき?)で内縁に向かっていた。

 

「…っ、いた!!!

12時の方角にガミラス6隻!」

 

 6人各々に周囲を見渡し始めて暫くした後、カスミが狙い通りにワープで追い掛けてきたガミラス艦隊をレーダーで見つけ、他の5人も直ぐにカスミの示した方角に振り向いた。

 そこには確かにカスミの言うガミラス艦隊がいたのだが、残念ながら距離がありすぎた為に双眼鏡越しの目視では艦隊編成の詳細は分からなかった。

 

「…っ、クソ!!!

レーダーから6隻全部、消えた!」

 

 更に今までレーダーで補足していたが、少しした後にガミラス艦隊の6隻全てが、目視とレーダー両面で消えてしまって、カスミが思わず右手の主砲を殴った。

 

「…通常航行でのワープで追い掛けてきましたね」

 

 だが少なくともガミラス艦隊で起きていた事を、ある程度目視で知る事が出来たので、ハツシモがアブクマに一度目線を合わせていた。

 

「…遠かったとは言え、あの反応だと……私の見立てだと、次元潜行艦じゃありませんね」

 

 やたら前髪を弄りながら眉間に皺を寄せての思案をしていてたアブクマの結論に、ヤマト達5人が揃って安堵の溜め息を吐いた。

 

「良かったです。

取り敢えずは、ガミラスはまだ次元潜行艦の実戦配備が出来ていないようですね」

 

「じゃあ、どうやって姿を消しているのですか?」

 

 次元潜行艦と言う最悪のパターンは避ける事は出来たが、それでも相手は姿を見せないステルス艦もまた厄介な敵である事には変わりなかった。

 此の為、ヤマトはアブクマにステルス艦の正体を尋ねた。

 

「ガミラス艦隊で起きた発光現象と、一瞬で姿を消した事から推測すると、おそらく特殊フィールドの一種を展開してレーダー波や光を吸収しているのだと思われます。

ですので、姿が見えないだけで、此の宇宙空間にいる事には変わりありません」

 

「と言う事は、やるべき対処法は…」

 

 ヤマトが言おうとしているのを察したアブクマは、自信に満ちた顔で頷いた。

 

「ジャングルに潜伏するゲリラと同様に、周囲諸共焼き払う!

空間照明弾でステルスフィールドを飽和状態にして、ステルスフィールドを展開不可能にする!」

 

 アブクマの結論にヤマトだけでなく、カスミ達4人も頷いた以上、後は実施するだけであった。

 

「それじゃあ、砲雷撃始めます」

 

「ヤマトさん、やっちゃって下さい!!」

 

「主砲、副砲、斉射、凪ぎ払え!!!」

 

 旗艦であるアブクマの許可の元、計画通りに三式弾を装填していた第一&第二主砲をレーダー反応のあった空間目掛けて発射……続けて煙突ミサイルも使いたかったが先の雷撃で故障した為に使用不可だったが、代わりにアブクマ達5人が空間魚雷を大量に扇状に放った。

 で、設定していた空間で三式弾6発が炸裂する直前にヤマトは続けて副砲2基から空間照明弾を放ち……更に空間魚雷群が次々に爆発して、立ち込めていた爆煙を凪ぎ払うかの様に、思わず目を瞑ってしまう程の空間照明弾の光が6つ発生した。

 

「「「「「「…っ!」」」」」」

 

 最後の空間照明弾の光群が消えようとしていた時に、悲鳴の様な叫び声が聞こえたと思ったら、光群の1つから……20世紀末期に日本で大流行した人面魚を思わせる者が2人が光群の1つから出てきて……内1人は被弾した上に魚雷あたりが誘爆していたらしく、煙を上げながら暫くよたついていた後に爆発したが、もう1人は行動不能になったらしく、軽く痙攣しながら硬直していた。

 

「潜水カ級!!」

 

 姿を現したガミラスにアブクマ達5人が思わず「おお!!!」と声を漏らしていたが、ヤマトは敵が深海棲艦の潜水艦の一種である潜水カ級の名を叫んだ。

 此れで自分達を襲っていたのが、潜水艦隊であった事が確定したのだが、戦闘中である事を忘れて潜水カ級を呆然と見詰めていたが、その潜水カ級が正気に戻って直ぐに後方に逃走しようとしたが、直ぐに我に返ったヤマトがアブクマに振り向き、アブクマが軽く頷いたのを確認して、更にカスミが下に降下すると、ヤマトは潜水カ級に素早く背を向けた。

 

「第三主砲、斉射!!!」

 

 こう言う事に備えて、敢えて三式弾を装填していなかった第三主砲の3門の砲身が最大仰角(嘗ては45度までだったが、改装で90度まで上昇)までに上がると衝撃砲を発射……螺旋を描いて束なって少しした後に潜水カ級に直撃して、跡形もなく消滅させた。

 此の潜水カ級が2隻立て続けに沈んだ光景に、ハツシモ達4人は「ほぉ」と声を漏らしていた。

 

「さっきレーダーの反応にあったのは、6隻でしたよ」

 

「ですね」

 

 アブクマの言う事にヤマトが頷いた。

 そんなヤマト達とは逆で“そんなまさか”となっていたガミラス艦隊は直ぐに行動に移った。

 

「右前方より魚雷多数!!!」

 

「左前方にも魚雷多数!!!」

 

 どうもガミラス艦隊はドイツ潜水(Uボート)艦隊が得意とした群狼作戦による多方向同時雷撃を狙って楔陣形を展開していたのだが、初っぱなで潜水カ級が2隻も撃沈した事に相当慌てていた為、かなり距離が有るのに魚雷をヤマト目掛けて多数放ったので、右側のはサミダレに、左側のはアサシモに気付かれしまった。

 更に言うと、アブクマとヤマトはこう言う事態も事前に打ち合わせをしていて、サミダレとアサシモが報告する前から、ヤマトの第一主砲が右前方に、第二主砲が前方のまま、第一副砲が右に、第二副砲が左前方に、第三主砲が左にと各々に旋回させ、深海棲艦時に編み出した対空体勢へ整えていた。

 

「主砲斉射!!」

 

 ヤマトは準備ができしだいに第一主砲と第二副砲の三式弾での迎撃の斉射をして魚雷の半数を破壊した。

 

「ヤマト、アンタは右側の狙って!」

 

「分かった!!」

 

「ガンガン撃つわ!

迎撃あるのみ!!」

 

 更にカスミが左側の魚雷群の方が多いと瞬時に判断して、ヤマトに右側の魚雷群に高角砲と機銃に代わって装備されたパルスレーザー砲群での迎撃に専念させ、自分は主砲とパルスレーザーでの全力で迎撃して……1本だけ変に蛇行した後にヤマトの真後ろで爆発したのがあったものの、ヤマト共々残った全ての魚雷を破壊した。

 

「ガミ公、私の目が黒い内は、ヤマトをこれ以上やらせないわよ!!!」

 

 カスミの気迫に、姿を見せないガミラス艦隊が気後れするだけでなく、アブクマ達4人を奮起させて、アブクマとハツシモが頷き合った。

 

「…掛かれ!!!」

 

「…行きます!!!」

 

 アブクマが号令下、アブクマ&アサシモが左回りで、ハツシモ&サミダレが右回りで、潜宙艦群が潜んでいるだろう宙域目掛けて突撃を開始した。

 そんなアブクマ達への援護射撃として、ヤマトが主砲の三式弾と副砲の空間照明弾を、魚雷が飛んできた方角を中心とした多方向に放ったが、どうやらガミラスには同じ手は通じないらしく、今回のは空振りに終わった。

 

「ヤマトさん!!」

 

 そこでアブクマは更なる一手を打つ事をヤマトに命じ、直ぐにヤマトは第三艦橋から……忍者の道具の1つの苦無(クナイ)の様な物を多数取り出すと、それ等を各々の指の間に挟みながらの両腕を胸前でX字に重ね…

 

「コスモタイガー隊、発進!!!」

 

…前方に投げられたそれ等は、ズイカク(&ショウカクだが、チトセはコスモファルコンを運用しているので非所有)が運用する最新鋭機コスモタイガー(x30)の編隊に変化した。

 ヤマトから小型空母並のコスモタイガー隊が発進した事にサミダレだけでなくカスミ達3人までが驚いていた。

 因みに改装でヤマトに多数のコスモタイガーを多数搭載させる事が出来たのだか、より多数を運用出来る上に扱いが上手いショウカク級空母の姉妹(➕α)の絶対的エース級がいるので、ヤマトの航空隊はコスモゼロ以外は実質予備の扱いとされていた。

 あと、コスモタイガー隊の事でヤマト本人はと言うと、改装で彗星艦爆を扱えるようになった(が、実際は代用予定だった瑞雲すら搭載されなかった)師匠分の伊勢級戦艦の姉妹が頭に思い浮かべていたので、抵抗云々は感じていなかった。

 

 で話を戻して、今のヤマトにはコスモタイガー隊を運用する事が出来たのだが、やはり経験不足等があるらしく艦攻型はヤマト本人の技量(ソフト面)での問題で扱えなかった。

 此の為にヤマトは、ズイカクが自分に嘲笑う顔を思い浮かべて、ムスッとしていた。

 

「…っ! 見つけた!!」

 

 まぁ、今回は対艦ミサイルを搭載させる必要がなかった事もあって、ヤマトのコスモタイガー隊には航空機用の空間照明弾が搭載されていて、現に怪しく揺らいだ空間を見つけると、そこに空間照明弾を投下して潜水カ級を炙り出すと……多分、仕方がないと思うが、コスモタイガー隊の機銃掃射でなぶられている中(酷いな…)にハツシモとサミダレの主砲が直撃した事が致命傷になって、本日3隻目の撃沈艦となった。

 どうやら、潜水艦(潜宙艦)が受け手に回ると駄目になるのは宇宙や未来を含めた古今東西で共通らしく、僚艦に3隻目の撃沈が出た事にガミラスは悪い方向に向かっているらしく、またヤマト目掛けて雷撃を刊行し、今度は比較的接近してのだったので多数が迎撃されるも、ヤマト直撃コースを進んでいた2本に割り込んだカスミが被雷して大破した。

 此の時に誰も気づいていなかったが、大破に及んだカスミの行為に、後々に引き起こす面倒事への前兆としてヤマトが顔を青くした後に少しの間だけ顔を伏せっていた。

 

「いたいた!!!」

 

 だが此の雷撃でアブクマ達とコスモタイガー隊に、3隻(全員潜水カ級)揃って攻撃場所を特定されてしまい、現に直ぐにアブクマ達の雷撃で内2隻が、もう1隻はコスモタイガー隊の空間照明弾で炙り出されてしまった。

 当然ながら、アブクマ&アサシモとハツシモ&サミダレは潜水カ級達に目掛けて突撃したが、潜水カ級達も黙って殺られる気がないらしく、ヤマトの射線上にアブクマ達を誘い入れて、一番怖いヤマトの砲撃を封じながらアブクマ達へ緊急雷撃をした。

 

「ハツシモさん!!!」

 

「任せて下さい!」

 

 貧乏くじとして潜水カ級3隻の(多分)揃っての雷撃の標的が自分とアサシモだと瞬時に判断したアブクマは、命じられたハツシモとサミダレが転蛇してからの援護射撃下で主砲と対空砲での迎撃をしながら右ロールで回避した。

 

「さぁーて、対潜宙艦戦よ!」

 

「おう!!!

やるっきゃ、ないね!!」

 

「ええ、イスズには負けないんだから!」

 

 アブクマからイスズの名が出た事にヤマトが首を傾げていたが、有効攻撃圏に入ったアブクマとアサシモに対して、潜水カ級3隻は魚雷装填の時間稼ぎもあっての備砲での砲撃を開始したが、3隻がほぼバラけていたので有効性があまり無かった事もあって、アサシモとアサシモの主砲2連射で潜水カ級の1隻が撃沈した。

 だが此の隙に残りの2隻が魚雷の装填を終えてアサシモとアサシモ目掛けての雷撃を仕掛けようとしたが、一方はハツシモとサミダレの牽制射撃に、もう一方はコスモタイガー隊の機銃掃射に邪魔されて攻撃する事が出来ずにいて、此の間にアブクマとアサシモが転蛇して後者を更に沈めた。

 で最後になった潜水カ級はと言うと、僚艦5隻全てが撃沈した現状に戦意を失ったようで、ハツシモとサミダレに牽制の雷撃を放ち……何故かサミダレが被雷して大破して、此の事でギョッとしたハツシモに出来た隙を突いて、奇跡的に直ったステルスフィールドを展開しながら反転しての逃走に入ったが、その直後にアブクマ達が攻撃している間に三式弾から衝撃砲に切り替えていたヤマトの主砲2基による砲撃にステルスフィールド諸共、背中(?)を撃ち抜かれる不名誉な形で撃沈した。

 こうして地球初の潜宙艦戦は、ヤマトのハットトリック達成と同時に終わりを告げた。

 

「皆、凄かったですね」

 

 作戦通りに上手くいったと言え、旧海軍では後方を軽視した事からのハード面だけでなく、“船団護衛は腐れ司令官の捨て置き場”の言葉が罷り通った通りに船団護衛を嫌う提督が多数いた影響で、駆逐艦娘達や軽巡洋艦娘達(例外なのは鹿取級練習巡洋艦の3姉妹?)にも理解は有っても船団護衛からの潜水艦戦を嫌う者が多数いた事から、ヤマトには艦隊戦並に躍動して現在自分の所に向かっているアブクマ達4人には驚き以外の何物でもなかった。

 

「言ったでしょ、今の私達は対潜の方が安心出来るって。

なにせ私達には海自の血が入っているから」

 

 確かに旧海軍だったら悲惨な事になっていた公算大だったが、現在の日本艦隊には旧海軍だけでなく、その後継組織として海上保安庁を経由して生まれた海自こと海上自衛隊……旧海軍とは真逆の“対潜の鬼艦隊”と称された(事実上の)海軍の血潮が流れていたのだ。

 此の海自の血潮から、日本では対潜宙艦の研究を熱心に進められていて、日本の艦娘達でも巡洋艦イスズと駆逐艦アサシオの2人は対潜宙艦研究の双璧であった。

 蛇足ながら既に亡くなっているアサシオは兎も角として、第三遠征艦隊にいて潜宙艦戦に参加出来なかった事を悔しがっているイスズの顔(後日小惑星帯での出来事全てが伝えられて実際そうだった)を思い浮かべていたアブクマが微笑していた。

 

「さ~て、いよいよ本丸攻略って事ですかな?」

 

「いえ、退却ですね」

 

「なんでだよ!?」

 

 イカロスへ再び行こうとヤル気満々だったアサシモだったが、ハツシモに反対されて冷や水を掛けられた為に彼女に噛みつこうとしたが、他の者達もハツシモに同感の様だった。

 

「アブクマ、このままイカロスに行けると思いますか?」

 

「駄目ですね。

装備が全く足りません」

 

 今回はガミラス側のミスを突いての薄氷を踏む勝利だった事(或いは団体戦で例えるなら、先鋒と中堅の2人が揃って負けて、大将のみが勝った様な状態)を自覚出来た以上、生半可な状態では今度こそ殲滅させられる事が目に見えていたので、ヤマトの質問にアブクマが顔を左右に振りながら答えた。

 況してや、カスミの状態(本人は「こんなんで沈みはしない」と言っているが…)を考えたら尚更であった。

 

「あと、イカロスにいる超弩級は…」

 

「ええ、間違いありませんね」

 

 更にヤマトとアブクマが思っている通り、潜宙艦隊が多数いる以上は通常艦艇が旗艦を務める訳がなく、必然的に超弩級の正体も分かる事が出来た。

 

「…ステルス艦『レムレース』……いえ、奴は潜宙艦と言うべきですね」

 

 アブクマに全員が頷き、同時に超弩級の潜宙艦までがいる以上は生半可な状態では返り討ちにあう公算大であった。

 此の後、沖田からの火星への退却命令が出されて、アブクマがそれを即時了解したので、ヤマトがコスモタイガー隊を全機回収出来しだいに火星への退避行動に移った。




 感想か御意見を御待ちしています。

大和
「…また、退却ですか?」

 しかも今回までのヤマト達は、良く言っても引き分けに近い敗北です。
 あるいは、艦これ原作で言えば、一期初期でよくあった、ボスマス前の分岐が逸れた先のマス(通称:お仕置き部屋)で、6人の殆んどが中破か大破してのA勝利みたいなのです。
 ですので提督(プレイヤー)からしたら、悪夢の様な終わり方です。

ヤマト
「しかも今回のって、1マス目で装備か編成の間違いに気づいて、慌てて退却したようなのも含まれてますよね?」

 ですので1話か2話を掛けて装備を整えて、リターンマッチに近い形での本格戦闘になります。

 で、先行情報の1つ目として、数名が離脱するかもしれませんが、キリシマ率いる第一艦隊がヤマト達の増援として来てくれます。
 艦これ原作で言ったら、ヤマト達とキリシマ達の連合艦隊みたいなので挑む事になるかもしれません。

 2つ目は、艦これ原作での前回イベントから実装された友軍艦隊に近い形で、戦艦ローマ率いるイタリア艦隊もレムレースに沈められた戦艦イタリアの仇を取る為に乱入の予定です。
 但し、イタリア艦隊は(カモ)や噛ませの役もやらせる予定なので、予定では艦これ原作では未実装イタリア艦がパコパコ沈んでしまいます。

 そして最後に、冥王星奪取後に遠征艦隊への合流が確定しているスズヤが、先行登場と言う形で第一艦隊に編入させます。

鈴谷
「おおー!!!
良いじゃん、良いじゃん!!」

 更に言いますと、多分間接的だと思いますが、スズヤの存在が、レムレースへの勝利のカギになる予定です。

鈴谷
「ぬふふ…、そう言う事は、鈴谷にお任せ!!!」

大和
「…でも、貴女たしか、艤装が修復不可能な状態でしたよね?」


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第33話 第一遠征艦隊、再反転せよ

――― 防衛司令部 ―――

 

 

「……ヤマトが、退却…」

 

 ヤマト達に火星への退却命令を出した後、沖田はホウショウを伴って防衛司令部に状況報告をしての、レムレース打倒の為の要望を願い出に藤堂の所に訪れていた。

 で、第二次木星沖海戦に続いて……しかも時間を置かずにヤマト(達)の退却報告に、藤堂は秘書艦のキサラギ共々唖然としていた

 

「ボロ船め、どうやら負け癖が付いたようだな」

 

 だが芹沢に見られる通り、他の者達はヤマトへの失望感を露骨に出しており、現に防衛司令部内で“ボロ船”とのヤマトの悪口が幾つか聞こえていた。

 

「藤堂長官、早々にアンタの期待に答えられなくて残念だ」

 

「いや、よくやっているよ。

君も、ヤマトもだ」

 

 沖田はヤマトの上官として退却を藤堂に謝罪(言葉のわりには頭も下げなければ、胸を張った態度が謝罪度皆無だったが…)したが、当の藤堂は“百戦して百勝はほぼ無理”と“1度の敗北は1度の勝利で補える”の2つの単語を心得ているだけでなく、沖田が諦めていない事を見抜いていたので、彼をヤマト共々許した。

 

「それで、何故ヤマトは退いたんだ?

それだけの相手だったのか?」

 

「相手がレムレース率いる潜宙艦の艦隊だったからだ。

実際にガミラスの潜水カ級を確認した」

 

 退却の理由が、相手が潜宙艦の艦隊であった事が沖田の口から告げられると、芹沢が眉間に寄せた皺を右手で摘まんで硬直し、更に「あ~…」との呻き声が一斉に出た事から、恐らく全員がヤマト退却を納得したようだった。

 

「…潜宙艦……まさか、次元潜行艦じゃ、ないだろうな?」

 

「いや、無発光体とは言え、潜水カ級にステルスフィールドがあるが、次元潜行能力が無い事が確認出来た。

エリートやフラッグ、潜水ヨ級等の未確認要素があるが、恐らくガミラスはレムレースを含めて次元潜行艦を実戦配備をしていない」

 

 藤堂もまた“潜宙艦”の単語から次元潜行艦と言う最悪の事態が頭に浮かび、更に全員が“次元潜行艦”の単語にギョッとしたが、沖田の報告に安堵の溜め息が一斉に漏れた。

 

「…ですけど、相手が潜宙艦である事には変わりありません。

厄介な敵である事も、です」

 

 だがキサラギの指摘通り、小惑星群にいるガミラスは、潜水艦大国のドイツでさえ開発すら出来なかった潜宙艦隊であり、次元潜行能力が無くても強敵である事に変わりなかった。

 だが少なくとも今の地球でも潜宙艦への対応策は取り敢えず存在していた。

 

「それで、何の要望があったのだ?」

 

「アブクマの出してきた要望は3つ、1つ目は広範囲爆発兵器だ」

 

「…広範囲爆発兵器……九五試宇宙爆雷(注:以降は基本的に“爆雷”と表記)ですね」

 

 沖田の藤堂への返事の頭にあった“アブクマ”の単語に「ん?」との声が少々あったが、1つ目の要望品をキサラギを初めとした大半は理解した。

 

「僭越ながら、既に佐世保から山南提督の了承下にタイゲイさん、マミヤさん、カモイさんの補給艦3人がナガラさん、カミカゼさん、ハタカゼさんの3人の護衛下に、ヤマトさん達に爆雷を他の物資と共に届けに火星へ向かっています。

更に、帰途した第一遠征艦隊の内の4人に対潜仕様の改装を順次開始しています」

 

 沖田に代わってホウショウが頭を下げた後に2つの爆雷関連に事後報告をし、露骨に嫌な顔をした芹沢は兎も角として、藤堂は爆雷の必要性を認めていたので右手を振って許した。

 

「ですが、問題なのは後の2つでして…」

 

「…その1つは……亜空間ソナー、だな」

 

 2つ目と3つ目の要望をホウショウが言い淀んでしまったが、取り敢えずは2つ目は藤堂が察した。

 だがもう1つあるにも関わらず、此の亜空間ソナーはくせ者だった。

 

「…亜空間ソナーは、使えるか?」

 

「技術部に確認する必要がありますが、取り敢えずは使えると思います。

ですが、艦娘に装備可能な程の容量や大きさではありません」

 

 亜空間ソナーは次元潜行艦の探索だけでなく、異次元の調査にも必要性があったので、潜宙艦の開発と平行して進められていたのだが、ガミラス戦の勃発に加えての戦局の悪化、そして“ガミラスは潜宙艦未所有”との願望に限りなく近い希望的観測によって潜宙艦共々研究開発が中止になってしまい、試作品が中途半端な形で残っていたのだ。

 まぁ、仕方がないと言えばそうかもしれないが、見解の甘さがあったのは確実であり、現に藤堂に答えている芹沢が渋い顔をしているのが、なによりの表れであった。

 

「此所に来る前に亜空間ソナーの試作品を見てきたが、技術部の話だと1日半あれば、少なくともキリシマに搭載出来る程に小型省エネ化が出来るそうだ」

 

「…1日半か、それで間に合うのか?」

 

「どのみち、キリシマの改装はそれくらいは掛かる」

 

 沖田の報告に、芹沢が露骨に嫌な顔をしたが、少し懸念があった藤堂は取り敢えずは納得してくれて、睨む事で芹沢に注意するだけでなく、技術部に発破を掛けるように指示を出した。

 

「それで、最後の要望はなんなのだ?」

 

 取り敢えずは亜空間ソナーは解決出来たので、藤堂が最後の要望を訊ねたが、相変わらずの沖田は兎も角として、ホウショウは少し間だけ目線を逸らした。

 

「……アブクマさんは、空母の増援を求めてきました」

 

「空母、か…」

 

「それも、小型でもいいので、足の速い娘をです」

 

 ホウショウの報告で、無茶ぶりに近いのだったので、藤堂が頭上を向きながら溜め息を吐いた。

 と言うのも、今の日本に残されているのはホウショウとジュンヨウの2人のみで、2人とも低速だったからだ。

 まぁ、まともに使える空母であるショウカク、ズイカク、チトセは3人揃って遠征艦隊に編入したのだから、まともな空母が日本に残っていないのは当たり前の話である。

 

「…第三遠征艦隊、せめてショウカクさんだけでも呼び戻す事は出来ないのですか?」

 

「それは出来ません。

ショウカクさん達は、レムレースへの増援を阻止する目的で、土星・木星間にて発見したガミラスの輸送船団を攻撃しています。

更に軽母ヌ級を複数有する追撃艦隊をも対処中ですので、とても呼び戻す事は出来ません」

 

 キサラギとホウショウのやり取りで、遠征艦隊からのショウカクの呼び戻しすら出来ない事に防衛司令部の面々が残念がっていたが、ヤマト撃沈による戦果独占を狙ったレムレースがヤマトの報告を敢えてしなかった事もあって、ガミラスがヤマトの所在を完全に見失っていた事から、沖田の狙い以上の作用が起こる事になるのだが、それはまた何時か書く事にしよう。

 

「アメリカからサラトガを借りてはどうでしょうか?」

 

「無理だな。

サラトガはアメリカに残った唯一の空母だ。

サラトガ本人の意思は兎も角として、あのアメリカが一時的でも彼女を手離すとは思えん」

 

 内心で薄々は駄目だろうと思っていた芹沢の提案に、藤堂は直ぐに否定した。

 長年の同盟国のアメリカでさえ駄目なのだから、グラーフ・ツェッペリンやアーク・ロイヤル等の他の国々のは当然ながら駄目な可能性が高かった。

 つまり、空母に関してはお手上げ状態と言うべきで、最悪の場合は無理や危険を承知の上でホウショウやジュンヨウで妥協してもらう事も考えられた。

 

「いや、空母に関して1つ考えがある」

 

 だが、沖田には解決策を持っているようだが、その事でホウショウの顔に嫌悪感が感じられた。

 更に言うと、電話等でいいのに、沖田が技術部に出向いていた事に、藤堂が今になって気に掛けていた。

 

「藤堂長官、旧海軍の空母伊吹と、最近発見された重巡筑摩の空母改装案の、2つの設計図の提供許可を得られませんか?」

 

「空母伊吹と、筑摩の空母化案?」

 

 沖田の要望に藤堂が思わず鸚鵡返しをしたが、前者は改鈴谷級重巡として建造されるも中止を経由して空母に変更された艦娘、後者は南太平洋海戦で大破した筑摩に空母改装が計画されるも空母としての技能不足だった為に廃案となった代物、両者に共通するのは元を(重)巡洋艦にした空母だった事から、芹沢達他の者達共々に藤堂は沖田の狙いを察した。

 

「スズヤを空母にするのか?」

 

 藤堂の指摘に沖田は頷いた事で、防衛司令部の面々が手を叩くなり「あ~」と声を漏らす等をして納得した。

 因みに、改装の対象がスズヤだと簡単に察する事が出来たのは、空母化の改装が可能性があるだけでなく、艤装以外で即刻活動可能な巡洋艦娘がスズヤ以外は全員重傷で入院中だったからと言う消去法からであった。

 

「確かにスズヤさんなら技能があるだけでなく、艤装が壊れていますから空母化には打ってつけですね」

 

 キサラギが納得している通り、艤装が大破している現状だけでなく、元は航空巡洋艦であったスズヤは艦載機の扱いに慣れている……レベルではなく、空母娘達でさえも目を向ける技量を持っていた。

 

「既にスズヤ本人に空母化の了承を取っている。

更に呉の安田にスズヤの空母化改装の受け入れを引き受けて貰った」

 

 沖田の事後報告に藤堂は頷いた。

 因みに、安田こと山南の同期である安田俊太郎は呉空中戦で解任された土方の後任として呉基地司令長官に赴任したが、その土方も預かり処分を暫く挟んだ後日に横須賀基地司令長官に就任する事になる。

 

「しかし、改装物資はどうするんだ!?

遠征艦隊に殆ど渡したから、我が国にはそんなに物資があるわけがないぞ!」

 

 だが芹沢が叫びながら指摘した通り、スズヤの改装が直ぐに出来るモノとはとても思えなかったが、沖田はその事の解決策も持っていた。

 

「呉空中戦で戦死したショウホウの艤装を使う。

丸ごと無傷で残っていた彼女の艤装を解体してスズヤに転用する」

 

 沖田の提案に、藤堂達……特にキサラギはギョッとして、先程からのホウショウの態度も納得した。

 

「……死んだショウホウさんから、艤装を取り上げるのですか?」

 

 大分前にも書いたと思うが、艦娘達にとって艤装は命や魂であり、艤装を取り上げる事は裸を見られるよりも遥かに屈辱的な事であった。

 だからこそ、ホウショウ達臨時編入組の者達が既に猛反対し、キサラギが言いたいのは、沖田のは艦娘達にしてみたらショウホウへの冒涜に等しかった。

 

「彼女の魂を受け継いでレムレースを倒すんだ」

 

 だが合理的に考えたら、ショウホウの次代が直ぐに現れない限りは、沖田の提案は正しく、現に防衛司令部の面々は心の片隅で納得しているのを自覚している事から、誰も沖田に反論しなかった。

 

「ですが!」

 

「控えろ、キサラギ!!」

 

 それでもキサラギは反対だったが、そんな彼女を藤堂が左手を翳して止めた。

 

「私から正式に命令しよう。

ショウホウの艤装を転用して、スズヤの空母化改装を行う!」

 

 敢えて高圧的での嫌われる口調で命じる事で、藤堂は沖田を沖田を擁護しようとした。

 

「個人的な提案だが、キサラギも借りるぞ。

レムレースを倒すのに此の娘の力を借りたい」

 

「分かった。

ジンツウを秘書艦代理にするから、後で彼女に防衛司令部に出頭するように伝えてくれ。

キサラギ、此所はもういいから直ぐに行きなさい」

 

「……必ず、レムレースを倒して下さい。

地球の為だけでなく、ショウホウさんの為にです」

 

 キサラギは間を少し明けての嫌々感が若干感じられる敬礼を藤堂にした後、精一杯の悪態を沖田に向けてから呉に伝達をしてからの出撃の準備をしに小走りで退室した。

 レムレース打倒の為に、敢えて憎まれ役を演じて藤堂と芹沢と共にキサラギを見送っている沖田の心情を察して、ホウショウは彼の背に同情の視線を向けていた。

 

「…では、私はキリシマ達の所に行ってくる」

 

 キサラギ退室後、細かな打ち合わせが多少あったものの、沖田や藤堂達がやる事は取り敢えずは無くなったので、お開きとして沖田が退室しようとしたが…

 

「沖田提督ぅぅぅー!!!

藤堂ちょぅぅぅかぁぁぁーん!!!」

 

…マキグモが袖から出ていない両腕を頭上に振り上げながら全力疾走でやってきた。

 そんなマキグモに、軍帽と髭で分かり難いも沖田が怪訝な顔をして、藤堂が苦笑した。

 

「マキグモさん、どうしたのですか?

あと此所は防衛司令部ですから、場を弁えて下さい」

 

 余程な距離を走ったのか、マキグモはホウショウに反応せずに暫く両膝に両手を当てて臥せっていた。

 

「…で、何かあったのか?」

 

「っ! 大変です、沖田提督!!!」

 

 マキグモが息を整えたのを察しての、沖田の質問にマキグモは直ぐに顔を上げた。

 

「…イタリアが、イタリア艦隊が!」

 

「イタリア艦隊がどうしたんだ?」

 

「イタリア艦隊が、戦艦ローマを旗艦としたイタリアの大艦隊が、ドイツから亜空間ソナーを強奪して、小惑星帯へ向けて出撃を開始しました!!!

お陰で、イタリアとドイツの両国で大混乱が生じています!!」

 

 マキグモのイタリア艦隊出撃の報告に、沖田とホウショウがギョッとし、藤堂は芹沢達共々「え!!?」と声を出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・別所 ―――

 

 

「キリシマさん、お願いします!!!」

 

 イタリア艦隊が暴発に近い形での出撃が防衛司令部に伝えられたのとほぼ同時刻、キサラギが第一遠征艦隊の所にやってくると、ミカヅキがキリシマに何かを訴えていた。

 

「ミカヅキさん、どうしたのですか?」

 

「ミカヅキさんがレムレース討伐への参加を懇願しているのです」

 

 キサラギが、隣のアヤナミやナトリと共に困惑しているイナヅマに訊ねての返事に「ああ~」と声を出してしまった。

 

「何度も言っているでしょう?

貴女は地球残留だって…」

 

 計画ではヤマト達への増援に行くのは、キリシマ、スズヤ、ナトリ、イナヅマ、アヤナミ、そして臨時編入のキサラギの計6人であり、マミヤ達3人の補給艦娘達の護衛として出向いているナトリ達3人に加えてミカヅキとサツキは地球残留であった。

 処がその決定にミカヅキが反発して自分も艦隊に加わる様に懇願していたのだ。

 

「ですけど、私は元火星艦隊所属です!

あの辺りの宙域には慣れています!」

 

「悪いけど、旧式のムツキ級の貴女では、レムレースや潜宙艦の相手には荷が重いわよ」

 

 ミカヅキの実力云々は認めてはいるようだが、キリシマは旧式枠に入った駆逐艦である事を危惧して反対しているみたいだった。

 況してや全員波動エンジンが非搭載なのだから、性能や技量を最優先にしていたら尚更で、現に同じムツキ級のサツキがミカヅキを止めようとしていた。

 

「キサラギさんだって行くじゃないですか!?

だったら私も行っても大丈夫じゃないですか!」

 

 キサラギが目線に入った事もあって、ミカヅキは彼女をダシに更に訴えたが、当のキリシマは溜め息を吐いた後に“聞く耳持たない”と言わんばかりにミカヅキを押し退けて何所かに行こうとした。

 

「キリシマさん、ミカヅキさんもイタリアさんの仇を取りたいのですよ」

 

「…精神論で勝てる程、ガミラスが甘い敵じゃないのは、知ってるわよね?」

 

 そんなミカヅキの思いを察しているキサラギも、近くを過ぎようとしたキリシマに彼女の艦隊編入を求めた。

 

「時に人は、正論よりも精神論を優先すると言う事ですよ」

 

「……キサラギ、何が言いたいの?」

 

 怪訝な顔をしたキリシマに、キサラギが何かを耳元で小声で言うと、キリシマが歯を剥いた凄い表情をした。

 

「本当に大丈夫?」

 

「私にしてみたら、同じムツキ級の娘がいてくれたら、気心が知れて楽になります」

 

 悪気が無いとは言え、無駄な犠牲者を出したくないキリシマは、ミカヅキの艦隊編入への抵抗感が顔に出しながら、ミカヅキを暫く睨んでいた。

 

「「キリシマさん…」」

「キリシマ…」

 

「……分かった、分かった。

沖田提督には私から話しておきますから、連れてけばいいんでしょう」

 

 ムツキ級3人揃っての訴えにキリシマも折れて、右手をヒラヒラ振りながら了解して、そのままどっかに行ってしまった。

 

「キサラギ、ありがとう!!!」

 

「ええ、一緒にレムレースを倒しましょう!」

 

 艦隊編入が認められて、ミカヅキはキサラギと手を取り合ってはしゃいでいた。

 

「んじゃ、僕は?」

 

「「貴女は地球残留」」

 

 多分狙ったと思うが、サツキの質問へのキサラギとミカヅキの返しに、そのサツキが「え~…」と言ったので全員が笑った。




 感想か御意見を御待ちしております。

 今回の投稿前に、“設定 艦娘”での“未所有故の出演不可”からネルソンとゴトランドを外しました。

大和
「岸波がまだと言え、欲を言ったら大東と福江が獲得したら初のグランドスラムになるけど、ゴトランドが獲得出来ましたから、悪夢のドロップ限定新規艦娘の2連続ブラックコンプを回避出来ましたね」

…最近のイベント海域は、しんどい。
 欧州救出作戦から難易度が明らかにおかしくなったから、物凄くしんどくなった。
 しかも最近のドロップ運がおかしくなっているしね…

大和
「E4でのボスドロップが、リットリオ→アクィラ→ルイージ(x3)(→E2でザラ)との謎の連続怪奇現状が起きましたからね」

……アイドルマスターみたいな、提督(プレイヤー)間での艦娘のトレード制度が実装されませんかねぇ~…


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第34話 爆雷受領せり

――― 火星沖 ―――

 

 

 潜水カ級の潜宙艦隊との戦いから翌日、火星への一時退避を行ったヤマト達はと言うと、第一次木星沖海戦時にイソカゼ達も使っていた遺棄された基地の施設を用いての“治療と修理(入渠)”で、先ずはヤマトとカスミの2人が入って、途中で完治したカスミとサミダレが入れ代わって、ヤマトとサミダレがほぼ同時に入渠が終わり、後は火星軌道にて対潜訓練をしながら警戒行動を取っていたアブクマ、ハツシモ、アサシモの3人が迎えに行った、マミヤ、タイゲイ、カモイの補給艦娘達3人を、彼女達の護衛役であるナガラ、カミカゼ、ハタカゼの3人共々出迎えるつもりであった。

 

「あ~もう!!

なんで、こうなるのよ」

 

「そう言う事はイタリアの皆さんに言いましょう」

 

…が、3人揃って完治した事もあって、防衛司令部よりアブクマ達やマミヤ達に火星沖で合流しての追加装備品を受領、更に後から続くキリシマ達第一遠征艦隊に合流後に小惑星群に潜伏するレムレース以下の潜宙艦隊の殲滅を通達され、それに従って速やかに火星から抜錨した。

 だが、レムレース討伐が前倒しとなった理由が、イタリア艦隊の暴走に近い形での出撃であると教えらていた為、カスミが愚痴を漏らしてサミダレが宥めていた様に3人各々に嫌気を出していた。

 

「…あ、アブクマさん達です」

 

 まぁ、余程の理不尽なモノでない限りは軍の命令は絶対であり、先ずはハツシモが前方の宙域で見つけた、自分達の所に向かっているアブクマ達3人(ヤマト達に気づいたらしく、彼女達に手を振っていた)との合流であった。

 

「マミヤ達は?」

 

「直ぐそこですよ」

 

 で直ぐに合流した直後、ヤマトはアブクマ達がマミヤ達に合流する前に引き返したと思ったが、そのアブクマが後ろを示した先に、遅れてやって来ているマミヤ達5人がいたが、何故かもう1人の補給艦カモイがいなかった。

 まぁ、カモイがいない事は自分達の繰り上げ出撃に関係があるんだろうと予想していたので、ヤマトは敢えて訊ねなかった。

 

「お待たせしました!

爆雷をその他諸々お持ちしました」

 

 護衛のナガラ、カミカゼ、ハタカゼの3人はなんとも無さそうなのに反してマミヤが息を乱しているのを見た処、とある駆逐艦娘に「貴女は前進してるの? 後進なしているの? それとも停止しているの?」と馬鹿にされた給糧艦の先代間宮と同様に低足の様だった。

 まぁ、マミヤだけでなく、潜水母艦(の皮を殆ど被った軽空母)だった先代大鯨とは違って純粋な補給艦のタイゲイも揃って息を乱しているのだから、補給艦とは足が遅いのが当たり前であり、寧ろドイツの疾風狼(Worf der Strum)提督(但し意見書を出したのみ)やガミラス(&深海棲艦)の様に輸送艦を高速化している方が異端であった。

 

「それでは早速、爆雷の装備作業を始めさせてもらいます」

 

「アブクマ達にはいいの?」

 

「あ、私達は道中でやってもらったので大丈夫です」

 

 タイゲイがヤマト達3人への爆雷搭載作業を始め、ヤマトがアブクマ達3人の状況を思うも、アブクマが自分の艤装背部を見せながら指し示した事(と言ってもどう変わったのかは分からなかった)で、アブクマ達はマミヤ達に合流していた事も分かった。

 

「……マミヤさん…」

 

「無駄ですよ。

マミヤさんは、爆雷やその他諸々の補修部品以外は持ってきていません」

 

「元々急な出撃だったし、此の戦局じゃあ菓子なんて作る暇なんて無いしな」

 

「代わりにビスケットが支給されたのて、此れで我慢してください」

 

 タイゲイと共にヤマトに爆雷の搭載作業をしているマミヤに、カスミが菓子類を持っていないかとの淡い思いがあったが、それを彼女に爆雷を搭載しているハタカゼに否定された。

 更にカスミが“え~”とした事もあってアサシモが苦笑したが、実は先程にハタカゼ達もマミヤの菓子類を求めるも空振りだったのだ。

 因みに、後方を疎かにした日本唯一の給糧艦娘(戦時中に伊良湖が竣工したので“唯一”は返上)だった先代間宮は、海軍の命令で老店和菓子屋の幾つかで修行をした事から、艦娘達の癒しの場であった甘味所間宮を経営していただけでなく、彼女特製の羊羮や謎の和菓子“洗濯板”を巡っての情け容赦の無い争奪戦が時折起こる程の人気が有り、とある提督の「食糧はいいから羊羮を寄越せ」との言葉は最もな表れであった。

 此の為に、先代間宮が男女諸島沖で被雷した時などは、同時シンガポール沖にいた雷巡大井が救出に向かおうとする暴走行為が有ったとの笑い話があり、結果的に言えばワープが出来ない大井が間に合う処か現場に辿り着ける訳がなく、先代間宮は駆逐艦潮に助けられていた。

 そんな彼女の次代なのだから、マミヤもまた“甘味所マミヤ2199(多分時代なのだろう、先代と違って西洋菓子をメインで取り扱っていた)”を大繁盛させていた程の実力者なのだが、残念ながら“甘味所マミヤ2199”はガミラス戦の戦局悪化での砂糖を初めとした物資不足が原因で、マミヤ本人も無念な無期限休店となったので……多分“食い物の恨みは怖い”の範疇内だと思うが、多くの艦娘達に変なガミラスへの憎悪を起こさせていた。

 

「またマミヤさんのお菓子が食べたいですね」

 

「来年以降になれば、また作れる筈ですから。

ですから、イスカンダルに行って帰ってきて下さい」

 

「おお!!! だったら1年以内に帰ってくるぞ!」

 

「…馬鹿!!!」

 

 まぁそれでも、マミヤの菓子類への未練がある事には変わりがなく、アブクマのぼやきに他の者達に加えて、マミヤ本人もまたお菓子作りをしたい思いもあって、同意としての苦笑があった。

 更にアサシモがマミヤの檄で変に燃えるも、カスミに怒鳴られていたが、ヤマトがマミヤの菓子類にあまり興味無さそうにしていたのにカミカゼが気づいた。

 

「ヤマト、マミヤさんのお菓子が食べたくないの?」

 

「う~ん…、まぁ、未練が有るかと言われれば有るけど、先代の間宮さんの羊羮とか食べた事ないから、そんなには思えないわね」

 

「食べた事がない?

連合艦隊旗艦をやった事もあるのに?」

 

「……間宮さんのを貰えた事はあるんだけど、それ等は全部伊勢か長門に盗まれたのよ」

 

 カミカゼ達がヤマトが先代間宮の菓子類を食べた事が無い事に当初は驚くも直ぐに「あ~…」と言いながら納得していたが、当のヤマトは自分の羊羮等を盗んだ伊勢と長門を思い出して少し怒っていた。

 

「じゃあ、ヤマトさんはどう言うのが食べたいのですか?」

 

「……食べたい物……ねぇ…」

 

 ハツシモの質問にヤマトが首のスカーフを右の人指し指に巻いてはほどくのを何度も繰り返している中、他の者達もヤマトが何が食べたいのかが気になってヤマトに注目した。

 

「…ラーメン……三食ラーメン堂の…ラーメン、かな?」

 

「ラーメン?」

 

 で、ヤマトが思案の末に出した答えに、カミカゼ達が“えっ?”とした。

 

「……何なの、その反応?

私はラーメンを食べちゃいけないの?」

 

「いや、あのその~…、意外な答えだったから…」

 

「てっきり、ステーキとかの高そうなのを言うと思ってましたから……ね」

 

「お店の名前も高級感が一切ありませんし…」

 

「あのね、私が何を食べてきたと思ってたの?」

 

 ヤマトが全員を代表してのカミカゼ、ナガラ、ハツシモの3人にムッとしたが、思い浮かんだわりには食べた事が記憶になんとなく有りはしたが、“何時食べたのか?”と“三食ラーメン堂が何所にあったのか?”が思い出せなかった。

 更に言うと、艦娘になる前の記憶自体が全く覚えていないので、内心は戸惑っていた。

 

「あ~でも、ヤマトさんに言われると、私とラーメンが食べたいなぁ~…。

あ、でも、やっぱり私的にはマミヤさんのパフェが食べたいです!」

 

「気持ちは分かるけどアブクマ、貴女あの“飛行場姫パフェ”を食べきった事ないじゃん」

 

「発案した私が言うのもなんですけど、ナガトさんしかあのパフェを完食したのを見ていませんからね」

 

 話を振り返すが、甘味所マミヤ2199では“マミヤ羊羮2199”“イラコ最中2199”“洗濯板2199”等の深海棲艦戦時品の再現品(「なんでもかんでも“2199”なんですね」byヤマト)も相変わらずの人気商品だったが、それ等を押し退けて一番人気となっていたのが、ほぼビーチボールと同サイズの容器に山盛りにされた味と量の両面での超弩級パフェなのだ。

 女性達だけでなくスイーツ男子も多数が挑戦したが、マミヤ本人がやり過ぎた感からの後悔がある此の代物は、亡きナガト以外を悉く返り討ちにした事から、才色や形がなんとなく似ていた事もあって、深海棲艦戦時に最も多くの感娘達を葬り去った飛行場姫に因んで“飛行場姫パフェ”の渾名が付けられていた。

 尚、唯一の完食者のナガトも相当な無理があったが、同時店にいた子供達や駆逐艦娘達の声援で獅子奮起、彼女の現状を察して制止しようとしたムツを「放せムツ!!! 子供と駆逐艦娘好きが想う事は1つ、子供と駆逐艦娘にモテる事!!!」との迷言で振り切って見事に完食して一時的な駆逐艦娘達の人気を得たが、数時間後に行われた将官級の提督達が多数参加した会議での司会進行中に吐いてしまい(目撃した提督曰く「何処かで総辞職が起きそうな勢いと量だった」)、本人は本懐だったそうだったが、後日始末書を大量に書く事になった。

 

「あ、ヤマトさんならアレを完食出来るかもしれませんね」

 

「イスカンダルから戻ったら、ヤマトさんも飛行場姫パフェを食べましょう!!」

 

「…ふぇ?」

 

「あ、すみません、聞いてませんでしたか。

パフェですよ、パフェ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…パ(↓)フェ(↑)エエ?」

 

 ナガラとアブクマの質問が不意討ちに近かったので、記憶の事で思案していたヤマトがパフェを変な発音でしたので、此の宙域にいた艦娘全員が“えっ”と言う形で一斉に硬直した。

 

「…も、もしかして……ヤマトさん………パフェを、知らないのですか?」

 

「………」

 

 タイゲイの勇気を持った質問に対して、ヤマトが何も答えずに目線を逸らしたので、全員が“沈黙は了承”の言葉を頭に浮かべ、変に気まずい空気が高濃度で漂っていた。

 

「…さ、早くヤマトさんに爆雷を搭載しましょう」

 

「そうですね」

 

 間違いなくズイカクがいたら、パフェを知らないヤマトを弄り倒すのが目に見えており、現に全員がズイカクの悪魔の笑みを思い浮かべていた。

 だが現実にはズイカクはおらず、マミヤとタイゲイに見られる通りに全員がヤマトのパフェの事は取り敢えず忘れる事にしていたのは、ヤマトにとって不幸中の幸いだろう。

 

「…パ(↓)フェ(↑)エエ……パ(↓)フェ(↑)エエー!!!」

 

「……笑っちゃ、失礼よ…」

 

…只、“パ(↓)フェ(↑)エエ”だけは忘れる事が難しいようで、思い出し笑いをしたカスミにカミカゼが笑いながら注意をしている2人の背に、ヤマトが凄い顔で睨んでいた。

 

「さ、出来ましたよ!」

 

 元々爆雷の搭載の余白があった為に早々と終わった駆逐艦娘達とは違って、そう言うのが無かったヤマトが一番時間が掛かり、艦尾を模したヤマト専用のVLS(Vertical Launching System:垂直発射装置)式多連装爆雷投射機は彼女の艤装背部の煙突の有る張り出し部分の後部に継ぎ足しの形でマミヤとタイゲイの2人係りで装備され、更に伊勢級戦艦や先代瑞鶴と武蔵がレイテ沖海戦前に装備した12cm二八連装奮進砲によく似た形をした小型のランチャー式爆雷投射機も煙突の根元後部に2基が追加された。

 因みに、防衛軍は技術、時間、資源の3点の不足が原因で、ヤマトのみに搭載されているイスカンダル製の波動エンジンに加えて彼女自身の潜在能力をヤマトの艤装に生かしきれていない事から、異常と言える改良余白を大量に残していて、更に追加機能や艤装改良の研究が常時続けられていて、今回の爆雷投射機も追加機能の1つにあったので、外見上に違和感や不自然さが確認出来ないだけでなく、第三主砲や煙突ミサイルの使用に支障が出ないようになっていた上、火薬庫も煙突ミサイルのと共用しているので扶桑級戦艦の様な悪い意味での全身火薬庫にはなっていない(筈)。

 更なる蛇足だが、此の爆雷投射機2種はレムレース戦後もこのまま持ってはいくが、VLS式はあまり使われる事がなかった事から撤去の話が度々起こるも残留しつづけて、名兵器“波動爆雷”の投射機として改良発展する事になるのだが、それはまだまだ未来の話である。

 

「それにしても、宇宙でもまだ爆雷が使われているなんて思いもしませんでした」

 

「確かに爆雷は大昔に廃れてましたが、此の兵器は元々遊星爆弾を迎撃する為の兵器です。

砲弾や魚雷と比べて安値で有効な兵器に成りうるとして開発されたのですよ」

 

 爆雷投射機の接続確認をしているヤマトが言った通り、深海棲艦戦後から早い段階から対潜兵器として誘導魚雷やミサイルの発達で爆雷は廃れたのだが、ガミラス戦初頭の海王星奪還(通称:海王星の奇跡)と共に数少ないガミラスからの戦略的勝利である遊星爆弾の迎撃法の一貫として復活を果たしたのだ。

 現在と比べて初期の遊星爆弾は小型で脆かった事から質量兵器での迎撃が可能であり、例え破壊は出来なくても軌道を逸らして地球への落下を阻止する方法が確立出来た。

 当初の迎撃兵器の主体は大型ミサイルや空間魚雷だった事から、巡洋艦のキタガミとオオイ(幻になったが、更にキソ)の2人が先代を参考にした重雷装艦に改装されたのだが、より安値の兵器が求められた事から宇宙機雷を参考にして作られのが、此の爆雷こと九五式宇宙爆雷であり、射程が短く弾速が遅いと言った欠点はあったが、数値上は直撃なら重巡リ級を一撃で撃沈可能性な破壊力が有った上、ミサイルと違って連射が可能(ミサイルは2種揃って発射機を冷やす必要性から連射不可)で艦娘なら誰でも簡単に使用可能な安値な兵器として、現場から歓迎されるだけでなく、目論み通りに遊星爆弾の迎撃に多数成功していた。

 此の結果、アヤナミとハツシモをツートップとした前線に投入し難い比較的旧式の駆逐艦娘達からエースが多数現れるだけでなく、巡洋艦娘達の多くを前線に投入する事が出来なかったのだが、残念ながらガミラスが遊星爆弾を大型強固化を進めた為、ある悲劇が起こった事から迎撃が破綻してしまい、その時の当事者であったハツシモがその悲劇を思い出してシュンとしていた。

 蛇足ながら、深海棲艦戦時以降は、砲弾よりも遠くに飛べるミサイルや航空機が艦砲をほぼ駆逐しかけていたが、宇宙進出後からの艦砲の光線化での射程関係の立ち位置が逆転(単純な話ではないが、旧日本の航空隊が苦労したラバウル・ガダルカナル間を衝撃砲は楽に飛翔する)して、更に“防空システムの発達”や“生産や戦闘時の管理のしやすさ”等からの航空機(&空母)やミサイルが主力から後退して、長らく絶滅していた戦艦と共に艦砲が主力兵器に返り咲きする事になった。

 更に言えば、戦艦の宇宙での利用価値はそれだけではないのだが、それはまた今度書く事にしよう。

 

「…さてと、後はキリシマ達との合流ですね」

 

「キリシマさん達はつい先程地球を発ったそうですよ」

 

 話を戻して、本来の予定では、爆雷受領後はマミヤ達は地球に帰還してヤマト達はキリシマ達と火星軌道で合流して最終動作確認と慣らしを兼ねた簡易演習を行った後にレムレース討伐に向かう筈だったが、どうも予定が一度狂うと連鎖的に狂うらしく、それは沖田の臨時秘書艦ホウショウの緊急通信で表れた。

 

『ヤマトさん、大至急小惑星帯に向かって下さい!!』

 

「どうしたのですか?」

 

 通信に対応したヤマトだが、基本的に冷静沈着なホウショウが慌てている事に嫌な予感をしていた。

 

『先行したイタリア艦隊が大打撃を被ったらしいのです!

情報が錯綜していますが、どうも旗艦ローマを含めた戦艦娘達も被害甚大らしいのです!』

 

「イタリア艦隊が!!?」

 

「ローマさんがやられたのですか!!?」

 

『藤堂長官と沖田提督からイタリア艦隊の救出に大至急向かうようにとの命令です!』

 

 アブクマが通信に割り込み、藤堂の名が出た事への疑問があったものの、命令されるまでもなくイタリア艦隊の救出に向かう意向は既にあった。




陸奥
「作者に代わって、感想か意見を待ってるわよ」

長門
「今回の投稿前に、第26話と第28話に出ていたムラサメがユウダチと共にSUS編に出る予定になったのでムラサメがアサグモに変更、第12話でのナチが右腕と左足の骨折の状態から左足欠損状態に変更にされたぞ」

陸奥
「ナチの事は色々言われるかもしれないけど、此れであの娘は白色彗星帝国編での生存プラグが立つかもしれないそうよ」

長門
「作者は、今回出たマミヤ(間宮)と名前だけのカモイ(神威)に未練があるって聞いたが?」

陸奥
「特にマミヤは、元のが通信傍受艦としての機能があった事から、作者お気に入りの桐生美影ポジに近い形での立ち位置にしたいらしいわよ。
後、同行したら銀河間航路中にマゼランパフェを作ってくれるし、もしかしたら波動砲の撃てないヤマトが『くっ、マゼランパフェが足りない』と言うかもしれないそうよ」

長門
「…何処のゴエモンだろうな」

陸奥
「でも実際は、戦闘力が殆ど無いから、妥協案としてのカモイも含めてかなり難しいから、2人の妥協キャラが冥王星に出るらしいわよ」

長門
「…駆逐艦娘か?」

陸奥
「空母娘らしいわよ。
元々出したかったけど諦めていた娘だけど、ある同人誌を見て出演する事を、少しご都合感が出るかもしれない形で決めたらそうよ」

長門
「……それはそうと、漸く1000年女王の関連単語が出たけど、パフェと言ったら、今回2202のマニアックかもしれないネタが3発もあったな。
何が元ネタにしてるのが3発全て分かる奴はいるのかな?」

陸奥
「ヤマトの赤っ恥のは、元々不可能だと思ってたけど、偶々テレビで紹介されたパフェを見た時に武蔵の顔が思い浮かんで、ヤマトなら出来ると判断したって」

長門
「ああ、武蔵の佐世保バーガーか。
それで、食べ物関連で大和級姉妹揃って恥かいてもらおうって判断したのか」

陸奥
「後、やるかどうかは別として、白色彗星帝国編でアーク・ロイヤルが酒関連でアズールレーン版と中身が入れ替わるって言う案があるらしいわ」

長門
「アレだな、作者が『貴方何やってんですか!!?』と叫んだのか」

陸奥
「まさか、同じネタがもう1発出るとは思わなかったらしいわよ」

長門
「山寺宏一氏の場合は、なんとなく示唆されていたけどな」



















































長門
「…で、作者は何所に行ったんだ?」

陸奥
「第19話のが大原部長オチの亜種だって誰も気づかれなかったけど、今回で4回目だどね…」


















































大和
「作者は何所ですか!!?
大和に恥をかかせた、武蔵共々何所に行ったのですか!!?」






























陸奥
「作者なら、武蔵と一緒に、ラーメン二郎を食べに行ったわよ!!!」

長門
「だから、キング・ブラッドレイの格好で、イーターⅠを大量に帯剣してくるな!!!
白色彗星帝国のアポカリプス級空母(大型空母)か、お前は!!!」


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第35話 イタリア艦隊、絶体絶命

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「此方巡洋艦ルイージ・ディ・ザヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ以下第三艦隊、指定されたガミラス潜水カ級群を撃破、殲滅!」

 

「此方巡洋艦ゴリーツィア率いる第二艦隊、カ級を多数撃破したわよ。

見なさい、ガミ公どもがゴミの様ですよ!!」

 

 ヤマト達が火星を経つ数刻前、戦艦ローマを総旗艦……否、独断出撃だったので主犯者としたイタリア艦隊はと言うと、既に潜宙艦隊との交戦状態に入っていて……アクィラとスバスヴィエロの2人の空母娘の航空支援下の攻撃で早くも潜水カ級を10隻前後を沈めて、小惑星帯の内部に進入していた。

 

「うむ! 余達の艦隊の独壇場だな!

ど、く、だ、ん、じょう、だな!!」

 

「…よしよし、流石はドイツと言った処かしら?」

 

 ここ近年は地球に常に圧倒していたガミラスの潜宙艦隊にほぼ一方的に勝っている戦局の原動力となっている亜空間ソナーに、妖艶的且つ開放的な赤いドレスを纏う金髪少女の戦艦コンテ・ディ・カブールが、僚艦の空母スバスヴィエロと共に航空支援を行っている空母アクィラと共に振り向いて微笑した。

 

「いやぁ、ドイツが良い仕事をしたのは確かだが、此の亜空間ソナーを扱っているダ・ヴィンチちゃんが凄いのよ!!」

 

 亜空間ソナーを搭載している戦艦レオナルド・ダ・ヴィンチ……名画モナリザを思わせる容姿である眼鏡を掛けた戦艦娘が高笑いをしている通り、彼女は運用実績が全くない亜空間ソナーを理解しての使いこなして、潜伏している潜水カ級群を次々に見つけてはアクィラ&スバスヴィエロの航空隊で炙り出す、完璧な戦闘管制がなによりのモノであった。

 レオナルド・ダ・ヴィンチにこんな事が出来たのは、彼女は工作艦としての側面を持っていた事からなんだが、変に調子に乗りやすい処(旧日本海軍で言えば夕張と比叡を足した様な存在)があり…

 

「敵を侮るな!」

 

…此の為、3人の姉達と共に戦艦娘達を護衛する駆逐艦シロッコに小突かれた。

 

「此の辺りは小惑星が密集しているから敵が潜みやすいんだ。

只でさえ相手は姿を見せない潜宙艦なんだから、気を抜くな」

 

「そうです。

油断は大敵です」

 

 木星艦隊に所属していた経験から小惑星群をある程度知っているシロッコの指摘に、金の月桂冠を被ったふくよかな容姿の戦艦ジュリオ・チュザーレが頷いた。

 

「ですけど、此れで本当に良かったのでしょうか?」

 

「何をいまさら、もうウチ等はとっくの昔にルビコン(川)を渡ってもうたわ」

 

 陽気な性格が多いイタリア艦娘には珍しいネガティブな性格をしている“茶髪の長髪のハグロ(羽黒)”と言うべき容姿の戦艦アンドレア・ドーリアが他国の機材を強奪しての独断出撃した自分達の身を今更ながら後悔していた

 

「もう無理な話や。

ウチ等はとっくにルビコン(川)を渡ってもうたわ!!」

 

「なに、非難されたら無敵の魔法の言葉“それがどうした”って言ってやればいいさ!」

 

 そんなアンドレア・ドーリアを、彼女の姉である何故か関西弁で喋る金髪ツインテールの幼女戦艦カイオ・ドゥイリオが笑い、巡洋艦ジュゼッペ・ガリバルディが続いた。

 

「ヤマトが信用出来ない以上、私達がレムレースを倒すしかないのよ」

 

 戦艦ローマが2度の退却をしたヤマトへ毒を吐いたが、此れは自分自身の手で次姉イタリアの仇を取りたい事の表れであった。

 元々イタリアンマフィアに見られる通り、イタリア人は家族間の絆が世界的に強い方なのだが、ヴィットリオ・ヴェネト級二番艦イタリアは四番艦(厳密に言ったら改ヴィットリオ・ヴェネト級二番艦、旧日本海軍で言えば三隈と熊野との関係に近い?)である彼女を可愛がっていて、そんな愛するイタリアを沈めたレムレースの首を他人に取られる事など我慢出来る訳がなかった。

 そんなローマの思いを察する事が出来たから、コンテ・ディ・カブール達は、ローマが1人でも出撃しかねなかった事もあって、彼女に同調したのだ。

 因みに、イタリア艦隊も日本艦隊と同様に、主力の艦娘達の殆どをガミラス戦で戦没していた事から、今の艦隊の構成要員の大半が練習艦隊の所属であり、現に艦隊最古参のコンテ・ディ・カブールは、2人の妹達と共に大規模近代化改装を受けていたものの、ロシアのガングートとほぼ同世代の旧式であった。

 

「出てこい、レムレース!!!

私が沈めてあげるわ!!!」

 

 少なくとも現時点でのイタリア艦隊は、常敗不勝の軍隊ヘタリアではなく、欧米が憧れる古代国家ローマ帝国の末裔達に相応しい武勇を見せており、レムレースを誘き寄せるには十分な状態であった。

 

「3分間だけ待ってやるぞ!」

 

「乗るな!!!」

 

……ローマの叫びに、ゴリーツィアがふざけて乗っかった事で次姉の巡洋艦フィウメに怒られたのは無視しよう…

 

「…っ! 航空隊が!?」

 

 どうやらローマの叫びが言霊となって実現したらしく、周辺宙域を哨戒していたアクィラのコスモパンサー隊が突然一斉に爆発し…

 

「…獲物ガ、獲物ガタクスァァーン(沢山)!!!」

 

…ローマの要望通りにレムレースが出現したらしく、今度は第二艦隊が一斉に爆発した。

 

「なんとぉぉー!!!」

 

「第二艦隊が…」

 

 目の前の第二艦隊の全員が一斉にヤられた光景に、ジュリオ・チュザーレが絶叫し、駆逐艦マエストラーレが絶句して、残りの者達は硬直してしまった。

 

「フィウメ姉さん、大丈夫ですか!?」

 

「…目がぁ~…目がぁぁぁー!!!…っ!?」

 

 否、第二艦隊所属の駆逐艦娘達が全滅したのに反してフィウメ、ゴリーツィア、ポーラのザラ級巡洋艦の姉妹3人のみは一様無事だった様だが、見るからに重傷の身で失神しているフィウメはポーラの右肩に抱えられながら退避して、ゴリーツィアはヤられた両目を押さえながら右往左往していた処に、直ぐ脇から飛んできた空間魚雷を複数被雷して、そのまま轟沈した。

 

「…お客さん、ご来店って処か」

 

「…第四艦隊、突撃!!!」

 

 第二艦隊がレムレースが殺られたのは間違いなく、その事にジュゼッペ・ガリバルディが顔を引き吊らせ、コンテ・ディ・カブールが第四艦隊に空間魚雷が飛んできた方角への突撃を命令した。

 

「ダ・ヴィンチ、アンタ何やってたのよ!!?」

 

「それが、亜空間ソナーに何も反応が無かったんじゃ!」

 

「無かった?

アンタ、寝惚けてたんじゃないでしょうね!!?」

 

「そんな訳あるか!!!」

 

「じゃあ、何で反応しなかったのよ!?

亜空間ソナーは玩具だったって言いたいの!?」

 

 直ぐにレムレースの出現を事前察知出来なかったレオナルド・ダ・ヴィンチにローマが怒鳴ったが、当の本人は亜空間ソナーに何も反応が出なかった事に戸惑っていた。

 

「ああ、第三艦隊が!!!」

 

「姉貴ぃぃぃー!!!」

 

 ローマとレオナルド・ダ・ヴィンチが思わず口論をしていたが、此の間にもガミラスの攻撃が続いていて、今度は第三艦隊が多方向同時雷撃(ウルフ・パック)を受けて危機的状況下に陥った事に、駆逐艦リベッチオが悲鳴を上げて、ジュゼッペ・ガリバルディは姉のルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルツィアを叫んだ。

 

「…っ! 2時の方向、上下角プラス45度の方角に潜宙艦反応多数!!!」

 

 あっと言う間に戦局がひっくり返った状況下で、レオナルド・ダ・ヴィンチが見つけて叫んだ直後に、その方向から空間魚雷が多数飛んできた。

 

「迎撃!!!」

 

「此れ以上、イタリア艦隊をやらせる訳には行かないぞ!!!」

 

 だが今回のは、事前に察知出来た事からカイオ・ドゥイリオの号令下の迎撃の砲火で全てを撃ち落とす事が出来るだけでなく、シロッコを先頭にマエストラーレ級四姉妹が突撃をして爆雷を至る所にばらまいた。

 

「…っ! いました!!!」

 

「撃て撃て!!!」

 

 爆雷群の爆発の中から何者かの悲鳴をアンドレア・ドーリアが聞き、ローマの号令下に戦艦娘達6人の一斉射撃が次々に飛んだ。

 

「どうや、ガミ公!!!」

 

 ローマ達が幾つか手応えを感じた事からレムレースに手傷を追わせたと思い、カイオ・ドゥイリオが思わず叫んだ。

 

「っ!? 潜水ヨ級!!?」

 

 だが実際に爆煙から出てきたのはレムレースではなく潜水ヨ級であり、此の現状からして他に潜水ヨ級はいたとしてもレムレースがいた気配は全く無かった。

 

「しまった、囮だ!!!」

 

 ほんの少し間を置いて、レオナルド・ダ・ヴィンチがレムレースが潜水ヨ級群を囮にしたのに気づくもその直後、マエストラーレ級四姉妹が向かったのとは無関係の多方向の近距離から空間魚雷が多数飛んできて、次々に戦艦娘達(+α)に襲いかかった。

 

「ああ!!! 火が、艤装に火が、っ!!?」

 

「嘘じゃろ!!?」

 

「チュザーレ姉ちゃん、しっかり!!!

目を開けて!!!」

 

 流石は戦艦娘と言うべきか、ローマ達の殆どはなんとか小破ですんだが、空母スバスヴィエロは艤装に点いた火を慌てて叩いて消そうとするも大爆発を起こし、コンテ・ディ・カブールとレオナルド・ダ・ヴィンチが2人揃って悲鳴を上げながら吐血しながら横に倒れているジュリオ・チュザーレを揺すっていた。

 

「ローマさぁーん、また来ますよ!!!」

 

 だがガミラス潜宙艦隊は戦果不十分だと判断しての空間魚雷の第2斉射を放ってきたが、今回のは次姉フィウメを安全そうな小惑星の影に退避させての看病をしていたポーラが気づいたお陰で、マエストラーレ級四姉妹を戻しての迎撃体勢を整える事が出来た。

 

「…っ!? 主砲、動け!!!

何で動かない!!!…っ!!?」

 

 だが迎撃の砲火を上げる中で、シロッコの主砲が壊れてしまい、慌てて直そうとしていた処にシロッコの胸部に空間魚雷が直撃、何故か不発だったがそのまま押されてローマ達の脇を過ぎて……小惑星の1つに背中から激突して、空間魚雷に押し潰されたシロッコの胸部が血で真っ赤に染まった。

 

「う、うおおぉぉぉー!!!」

 

「「「シロッコ!!!」」」

 

 ムンク著の名画“叫び”を思わせる表情で絶叫したシロッコの壮絶すぎる光景に、急ぎ戻った姉達3人が揃って悲鳴を上げた。

 

「シロッコ、今助けます!!!」

 

「止めて、グレカーノちゃん!!!」

 

 マエストラーレとリベッチオが硬直したのに反して、無意識の内に動いた駆逐艦グレカーノがシロッコを助けようと彼女の所に駆け寄ったが、嫌な予感を感じたアクィラが叫んで止めようとするも、グレカーノがシロッコの胸部の空間魚雷を引き抜こうとして触った直後、空間魚雷が爆発してグレカーレが吹き飛ばされてシロッコが爆散した。

 

「…何で、亜空間ソナーに反応しないのよ?」

 

 グレカーレ大破とシロッコ爆死で既にそうなりかけていたが、モタモタしている間に奇襲攻撃下の友軍艦隊群に驚き戸惑っていた第四艦隊が全員揃って爆発、更に又しても亜空間ソナーが反応しなかった事にローマが唖然としていた。

 

「……なんて面白い……私の計算を越えていった。

いや、ガミラスの計算は、とっくの昔に私のを遥かに越えていたのか」

 

「…ううむ……此れは少し不味い戦局かもしれん、な」

 

 戦局が一瞬の内にひっくり返った事から改めてガミラスの強大さを認知して、レオナルド・ダ・ヴィンチとコンテ・ディ・カブールの姉妹が顔を引き吊らせて微笑した。

 そんな2人に反するレムレースのと思われる高笑いが、至る所から聞こえていた。




 感想・御意見お待ちしています。

 今回殺られ今後も殺られる予定のイタリア艦隊の未実装の艦娘は、殆どはセリフ無しですが、セリフ付きは全員思い付きに近い形でキャラ設定をしており、こんなんですから“設定 艦娘”に掲載しないかもしれません。
 只、ローマ、アクィラ、ポーラ、リベッチオ、そして先のイベントで実装したてのマエストラーレの計5人はちゃんと掲載する予定ですし、少なくとも此の5人は今回は撃沈はしません。
…後日、『アリゾナ』の立ち位置と言う貧乏クジは引くかも知れませんがねぇ~

マエストラーレ&リベッチオ
「「何で、シロッコがパプテマスの人になってるんですか!!!」」

ザラ&ポーラ
「「ゴリーツィアは飛行戦艦『ゴリアテ』でもなければ、滅びの呪文を目視した大佐じゃありません!!!」」

ローマ
「某シリーズのキャラ3人を元に、コンテ・ディ・カブール級戦艦に何やってるんですか!!?
百歩退いて、レオナルド・ダ・ヴィンチとジュリオ・チュザーレはまだ分かりますが、コンテ・ディ・カブールは掠りもしてないじゃないですか!!!」

イタリア
「と言うより、貴方あのシリーズは1作目のオリジナル版しかやっていないのに、なんで危険な橋を渡ろうとしているのですか!!?」

…言っておきますが、ジュリオ・チュザーレの外見は兎も角として、中身は赤城にしています。
 因みに、カイオ・ドゥイリオ級戦艦の姉妹は、最初にアンドレア・ドリアの中身を聖剣3版ドリアードに、その流れでカイオ・ドゥイリオの中身は聖剣3版ウンディーネに設定しました。

ローマ
「……よりにもよって、あのバージョンのウンディーネですか…」

 自分もそうでしたが、最初に「絶体“なんでやねん”と言うぞ」と注意した後に、友達の何人かに新訳聖剣伝説のウンディーネのイベントを見せたら、全員「なんでやねん」と笑いながら言いました。

イタリア
「どうして、聖剣2ではおしとやかだった水の精霊が、聖剣3から関西の女になったんでしょうね?」

 後、カイオ・ドゥイリオ級の姉妹各々の外見は“國崎出雲の事情”の白浪五人男編であった“演じ替わり”から、性格が近い日本艦娘の龍驤と羽黒の色違いにしました。

マエストラーレ
「それにしても、シロッコのネタの前置きは比較的丁寧に蒔きましたね」

 だって、10年以上前のアーケードゲームでの出来事をよく覚えていたら、頭から離れませんでしたから…

「何か来るぞ、注意しろ!」→「凡人がこの私に勝とうとは、愚かな!」(注:PS2版だと「これ以上、ティターンズの艦隊をやらせる訳にはいかん!」)→「敵を侮ったのだよ!」→2、3回ゲームオーバー→「よし、作戦成k『う、うおおぉぉぉー!!!』」

…初見したゲームセンターで笑いながら画面に頭ぶつけたをよく覚えてますが、此れ等一連を棺桶に入る時までに忘れる自信がありません。
 そんなんですから、wikiでマエストラーレ級駆逐艦四番艦の艦名は『シロッコ』だと知ったら、選択肢は強制的に1つになりますよ。

リベッチオ
「なんか、シロッコを襲った空間魚雷はCV飛田展男とか言われそうな気がする」

……それやると昔懐かしい“ボボボーボ・ボーボボ”になる……かじりレベルでしか読んでないけど…





























磯風
嫌な奴足すぅ(18782 ➕)嫌な奴はぁー(18782 =)皆殺しぃぃ(37564)!!!」(大剣による大振りの素振り中)

…さ、最後に、本編に生かす予定は皆無ですけど、何かの出来事で酷い目にあった為にイソカゼはコンテ・ディ・カブールに苦手意識があるとの裏設定があります。


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第36話 再戦、潜宙艦隊

 今回の投稿前に第19話のカザグモを第12話に移し、更に第12話のクロシオを第13話に移して、此の3話を微調整しました。




 それでは本編をどうぞ。


――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「…っ! 1時半の方角に誰かいます!」

 

 ヤマト達より先行したキリシマ達第一艦隊は小惑星帯に突入し、ガミラスの襲撃への警戒から速度を少し落として進んで小惑星イカロスまで目前に迫った時に、キサラギが前方で何かを見つけた。

 

「全艦戦闘配備!!!」

 

 キリシマは前方にいるのはガミラスだと判断し、他の者達もキリシマに同意として直ぐに彼女に従って、陣形を整えながら主砲を身構えた。

 

「…ガミラスは通常艦艇も配置していたのかな?」

 

 だがミカヅキが潜宙艦しかいない筈の小惑星群でキサラギが見つけた事に疑問を感じた事が連鎖反応が起きて、命令したキリシマ本人でさえもが“うん?”とした。

 

「…っ、待ってください!!

アレは味方です!」

 

 で実際にナトリが双眼鏡で確認したら、いたのはガミラスではなくイタリアの艦娘達であった。

 

Non sparare!!!(撃つな!!!)

 

Non sprarni!!!(撃たないで!!!)

 

 更にイタリア側も先頭にいてルイージ・ディ・サヴォア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィを担いでいたジュゼッペ・ガリバルディと右腕を押さえながらの千鳥足のグレカーレの2人が第一艦隊に気づいて、キリシマ達より早くに味方だと確認したが、そのキリシマ達が誤認による戦闘体勢に入ったのを見て、必死に叫んでいた。

 

「…スズヤ!」

 

「まっかせてぇー!!!」

 

 傷ついたイタリア艦娘達がいると言う事は、ガミラスの潜宙艦隊が近くにいるだろうと判断したキリシマは、直ぐにスズヤに命令を下し、空母に転向したスズヤからコスモパンサー隊が次々に発艦した。

 

「…うわ!! 此れ、チョット酷いよ」

 

 でスズヤのコスモパンサー隊の偵察の結果、イタリアの駆逐艦や巡洋艦の艦娘達が何人も重傷の身でいて、中には生死不明な状態で漂っている者達かいた。

 只、ローマ達戦艦娘達等の主力の者達が見当たらなかったが、おそらく彼女達は別の宙域でまだ戦っているのだろうと思われたが、どのみちイタリア艦隊が総崩れを起こして、目の前の艦娘達はなんとか此所まで逃げ延びた事には変わりなかった。

 

「キリシマ、行かせてもらうぞ!!!」

 

「ええ、周囲の警戒は任せて」

 

 当然ながら此の状況下で、急遽編成されたジュンヨウ率いるムツキ級の7人とキソが一斉に動き出した。

 

「ほらほら、急げ!!

キソ、モタモタするな!」

 

「へいへい…」

 

「此れは酷い…」

 

「ウヅキ、此方に来て手伝ってくれ」

 

「任せるピョン!」

 

「ナガツキ、そこのはどうだ!?」

 

「駄目だ、生き絶えている…」

 

「彼処に誰かいます!」

 

「僕に任せて!」

 

 ジュンヨウやキソ、ムツキ級の7人(ユウヅキ、ヤヨイ、ウヅキ、ミナヅキ、ナガツキ、ムツキ、サツキ……ミカヅキとキサラギの2人は参加せず)がイタリア艦娘達の傍に寄っては後方に運ぶか誘導して、酷い状態の者は直ぐにジュンヨウによる治療が行っていた。

 そんな救助艦隊に、キリシマ達は敢えて進撃を止めて周囲を警戒していた。

 

「…っ! 後方に接近する者達がいるのです!!」

 

「ガミラス艦隊!?」

 

「いえ、違うのです!

ヤマトさん達です!」

 

「……やっと来たわね…」

 

 こんな時に後方からの接近者達にイナヅマが気づき、今回はあらかた予想出来ていたので誤認せずに相手がヤマト達だと確認した。

 

「あ~あー…、派手にやられてるわね、っ!?」

 

「そんな事言ってないで、さっさと手伝って、カミカゼ姉!!」

 

「っえ、ア、アサカゼ!?」

 

 次々に後方に護送されるイタリア艦娘達にカミカゼが溜め息を吐いたが、直ぐに駆逐艦娘を担いでいる姉妹艦のアサカゼに小突かれしまい、更に周囲をよく見渡したらアサカゼだけでなくオイテ、ハヤテ、アサナギ、ユウナギの4人もいた事にハタカゼと共に驚き戸惑っていた。

 

「彼女達やムツキ級の娘達は、藤堂長官の命令で救助艦隊として同行してもらったのよ」

 

「ああ、そう言う事ね」

 

 ヤマト達が予定に無かったカミカゼ級とムツキ級の存在への疑問に、彼女達の所に近づいた補給艦カモイが説明した通りの証拠として、カミカゼ級とムツキ級の駆逐艦娘達の魚雷発射菅があるべき所に赤十字が大きく描かれたアタッシュケースみたいな金属品が搭載されていたし、キソとカミカゼ級の右肩に赤十字の腕章が着いていて、ムツキ級は背中に大きく赤十字と赤い三日月が描かれた白いジャケットを羽織って、ジュンヨウは白衣を着ていた。

 更に言うと、ムツキ級からは多用途輸送機カーゴの救助仕様(勿論、機体側面に赤十字が描かれている)が発艦して、動けないイタリア艦娘達を機体下部に掴んで安全な場所に移動させていて、ジュンヨウもカーゴを多数発艦させてはいたが、何故か彼女のは救助活動に参加せずに何所かへ行ってしまった。

 

「カミカゼ、ハタカゼ、ナガラ、タイゲイ、マミヤ、貴女達5人も救護活動を手伝ってよね」

 

「はいはい…」

 

「で、私達は………鳥海?」

 

「……キリシマよ」

 

 更にキリシマ近づいてカミカゼ達5人に指令して当の本人達は腕章と救護装備(ナガラのみは更にカーゴ)を受け取って、ヤマトが他共々どうしたらいいのかをキリシマに訊ねようとしたが、彼女の艤装の形から鳥海(チョウカイ)と誤認してしまったので、キリシマが苦笑しながら修正した。

 

「その艤装、どうしたのよ!?」

 

 カスミがギョッとしながら訊ねた通り、キリシマの艤装はと言うと、右舷の第二主砲があった場所に何かの装置(試作・亜空間ソナー)があるだけでなく、第一主砲部分には12.7cm単装砲があり、左舷に至っては完全真っ平らなVLS式のミサイル発射機が大量に搭載されていて、主砲4基処か副砲や対空火器全てが撤去されていたので、シルエットだけならば鳥海(改二)そっくりで、詳細は何処か無惨な姿になっていたのだ。

 

「ああ此れね、イタリア艦隊の事での前倒し出撃をする為に、かなりの数を妥協したのよ」

 

 キリシマの艤装の一時改装の予定された計画では、主砲2基➕αを撤去して亜空間ソナーを小型省エネ化して搭載予定だったのだが、イタリア艦隊の独断出撃で前倒し出撃が決まった事から、妥協策として主砲以下の全部装を撤去する事になったのだ。

 尤も、非武装は流石に酷いと判断した技術部の独断で、倉庫で埃を被っていた12.7cm単装砲(小規模な改装は実施)と、コンゴウ&ハルナの予備部品を使っての即興で作り上げたミサイル大型発射機の2つのエネルギーを食わない武装を搭載したのだった。

 

「酷いだろ、戦艦好きのキヨシモが泣いて悲しんでるだろうよ」

 

「ほぼ、キタガミさんとオオイさんですね」

 

「見た目の殆ど、測量艦じゃない!!」

 

「…先代きりしまも1人だった、こんごう級護衛艦と言ってほしいわね」

 

 まぁ、アサシモとアブクマが苦笑して、ヤマトが絶句していたが、当のキリシマの反応を見ると意外に気に入っている様だった。

 

「で、此れからどうするんですか?」

 

「勿論、私達はイカロスに行きますよ」

 

「こんな状況下で行って大丈夫なの?」

 

 大体予測は出来てはいたが、ヤマト達実戦艦隊はイカロス行きがキリシマから伝えられたが、やはり傷ついたイタリア艦娘達が気になっていた。

 

「マミヤ、どう?」

 

「取り敢えずは大丈夫です。

殆どの娘は機関部が撃ち抜かれていますが、身体自体は大丈夫です」

 

 機関部がやたらと撃ち抜かれていた事は気にはなったが、取り敢えずは艤装の中で一番強固な機関部が攻撃された事で命に別状はないらしいが、“ガミラスの罠”の単語は全員の頭の中に浮かんでいた。

 

「…いくら追撃が下手なガミラスでも、こんな好機を逃さないと思うんだけど」

 

「大丈夫よ。

少し質が悪いけど、亜空間ソナーは動いているし、他にも手は考えてますよ」

 

「そうですよ。

どんと、気を持って下さい」

 

 ヤマトへの返しに、キリシマだけでなくカモイも続いた事が気になったが、その直後に前方の宙域に強烈な光が起こった。

 

「ごめーん、キリシマ!!

ガミ公の潜宙艦を3つぐらい見つけたけど、潜って逃げられちゃった!」

 

「カモイ!!!」

 

 直ぐにスズヤが謝罪した事に、ヤマトが渋い顔がスズヤ睨んだのは兎も角として、直ぐにキリシマがカモイに振り向いた。

 

「大丈夫です。

既にジュンヨウさんの分も制御下においてます」

 

「…何で此処でカモイが出るのよ?」

 

 カモイはキリシマに返しながら、カーゴを複数発艦させていたが、ヤマト達は此の場面で何故補給艦であるカモイが出てくるのかを疑問に感じていた。

 

「ドイツから航空機用の亜空間ソナー……つまり亜空間ソノブイの試作品を提供してくれて、それ等をカモイに搭載したのよ」

 

「だから、少し質の悪い亜空間ソナーをある程度カバー出来る筈です」

 

 そんなヤマト達の疑問に、キリシマとカモイが答えながらキサラギ達と共に戦闘準備を整えながら、前後に並んだカモイとキリシマを中心としてナトリ、アヤナミ、イナヅマ、キサラギ、ミカヅキの5人が周囲に展開する輪形陣を構成し、更にカモイが前方にサークルを展開した。

 

「カーゴ全機、亜空間ソノブイを投下します!」

 

 カモイがカーゴ群に亜空間ソノブイを投下させ、更にキリシマの亜空間ソナーとキサラギからのレーダー情報を受けとると、サークルに自分達を中心とした小惑星群の宇宙図を重ねたチャート表が展開され………少しした後にサークルの左上の隅に、多分潜宙艦のと思われる波紋に似た反応が現れた。

 

「なんか土竜(モグラ)叩きみたいね」

 

「いて、もっと別のゲームでしょう?………って、アレって、何て言うのでしたっけ?」

 

 ヤマト達はキリシマとカモイの行為と、それに対する評価をしていたが、そんな2人の行為からカスミとアヤナミが何かを連想して話し合っていたが、ヘッドホンを右耳に押し当てているキリシマから右人差し指を唇中央に垂直に当てて“静かに”と他共々注意した。

 まぁ、ヤマトのみはカスミとアヤナミの会話の意味を全く理解出来ていない様だったが、そんなヤマトは別として、取り敢えずヤマト達はキリシマ達の後方で陣形を整えて待機した。

 

「目標、(エコー)-1- 1!!!!」

 

「了解!!

目標、E-1-1!!!」

 

 少しして、カモイがサークルと腕時計を交互に確認して、ミサイルを飛ばす宙域を設定し、キリシマが伝達されると直ぐに復唱しながらミサイル攻撃を準備をし……少し間を置いた後にカモイの合図でミサイル2発を発射…

 

「…だーん、着(弾着)!!!」

 

…腕時計とミサイルを飛ばした方角を交互に確認したキリシマの報告通りに、左前方で着弾の爆発が起こった。

 

「当たった!!?」

 

「…駄目、外れた!!!」

 

 キリシマは元から手応えを感じなかった事もあったが、ミカヅキの双眼鏡での目視による観測報告から外れた事が伝えられて、キリシマが思わず自分の右舷側艤装を殴った。

 

「イタリア艦隊と戦って、私達に亜空間ソナーがある事を知ったから、警戒しているのでないでしょうか?」

 

「ヘタリアども、本当に余計な事をしてくれたな!」

 

 ナトリの指摘を表すかの様に、確かにガミラス潜宙艦は妙に蛇行していたので、アサシモがガミラスに学習させる要因を作ったイタリア艦隊に毒づいた。

 

「……やっぱり、こう言う事はフソウ、ヤマシロ、イセ、ヒュウガの4人の誰かにやらせるべきだったの?

いえ、イセはいい加減な性格だから、こう言うのは向かないかもね」

 

 更にキリシマが時間的だけでなく自分の艤装の容量からカーゴ群との情報共用を妥協した技術部を恨むだけでなく、容量面では問題がなかった筈のフソウ、ヤマシロ、ヒュウガのイセを省いた死んだ3人の顔を思い浮かべてしまった。

 

『何をしている!?

今は戦闘中だぞ!』

 

 だがこんな状況下でもガミラスはお構い無しに攻めようとしていて、直ぐに藤堂からの注意が飛んできた。

 

「目標、(フォクス)-2-4!!!」

 

 気を取り直して、先程と同じ様にカモイの通達からの、キリシマが復唱してのミサイル攻撃をやった。

 

「また外れました!!

今度は小惑星に間違って当たりました!」

 

 だが今度のは、目標前方の小惑星に間違って当たった為、キリシマがミカヅキと共にゲッとした。

 更に不味い事に、チャートの右上に新たな潜宙艦が現れてしまい、チャートでは確認出来なかったが、2隻揃って魚雷をたずね放った。

 

「左舷、10時の方角から魚雷多数接近!!!」

 

「右舷、1時半の方角からも魚雷多数です!!!」

 

 魚雷発射から少し間を置いて、サミダレとイナヅマが順に小惑星群の合間を縫って近づいてくる魚雷群に気づいたが、キリシマ達の動作が遅れてしまった。

 

「カモイ!!!

左舷の魚雷情報!!!」

 

「ちよっと、ヤマト!!?」

 

「え、はい!!!」

 

 ヤマトが左舷側の魚雷群の方が多い上に早く到来する事を瞬時に気づくと直ぐにキリシマ達の左脇に急速前進し、驚き戸惑ったキリシマを他所にカモイがほぼ無意識の内にヤマトに情報を渡すと、新装備の爆雷を魚雷群目掛けて大量に発射………弧を描いて飛んでいった爆雷群は、ヤマトの狙い通りに直撃はしなくてもその爆発で左舷側魚雷群を全て破壊した。

 

「右舷来る!!!

右舷来る!!!」

 

 更にヤマトの読み通りに右舷側の魚雷群が少し遅れて到来したが、これ等はミカヅキとキサラギの2人だけでなく、敢えて前進したアヤナミとイナヅマも加わっての迎撃で、最後の1本がキサラギとイナヅマの至近距離で爆発した事があったものの、全てを破壊する事に成功した。

 

「はわわわ…」

 

「嫌だ、もう~…、髪が痛んでる」

 

 まぁ此の爆発で、イナヅマが目が眩んでいるのと、キサラギが髪が少し焦げた事を気にしていたのは、無視しよう。

 

『キリシマ、右舷0時半に小惑星が密集している宙域がある。

その小惑星が楯になるようするだけでなく、そこに潜宙艦隊を誘き寄せて進路を制限させるように転蛇しろ』

 

 直ぐに藤堂の指令が入って、先程から沖田が出てこない事が他共々気になったが、取り敢えずキリシマは「了解!」と答えながら言う通りにしていた。

 だが此の直後に、カモイのチャート表に3隻目の潜宙艦が現れ……3隻だけと言え、半包囲をしようとしていた。

 

「…ヤマトさん、目標(インディア)-3-7!!!

キリシマさん、第1目標(ロミオ)-2-6、第2目標(タンゴ)-1-9!!!」

 

 三度目の正直を狙うカモイの指令に、ヤマトがキリシマと共に「了解!」と答えたが、内心“英語じゃなくて日本語で言って”と思っているのが、右眉に少し現れていた。

 

「…カモイ?」

 

 どうもカモイはタイミングを見極めようと慎重になっている事から、なかなか攻撃命令を出そうとしなかった為、嫌な汗が吹き出るだけでなく妙に時間が長く感じさせた。

 

「…カモイ!!!」

 

「……キリシマさん、攻撃開始!!!………ヤマトさん、攻撃開始!!!」

 

 キリシマが攻撃の催促で怒鳴って少しした後、カモイがキリシマに命じ、更に少し間をおいてヤマトに命じた。

 で今回の結果は、キリシマが狙った2つの目標…潜水カ級2隻に直撃して擬態が溶け、第1のは少し間をおいて爆発して第2のはよたついた後に逃げようとし、ヤマトが爆雷で狙った目標…潜水ヨ級は擬態が溶けた後に何度か誘爆を起こした後に爆発した。

 

「逃がすな!!!」

 

「「「「()ぇー!!!」」」」

 

 更に逃げようとした潜水カ級も直ぐにアブクマの号令にハツシモ、サミダレ、カスミ、アサシモの4人が集中砲火で撃沈した。

 3隻だけと言え、潜宙艦隊を一方的に勝利出来た事に日本艦隊の面々が両腕を振り上げての雄叫びを上げたが、その中にヤマトとキリシマは含まれていなかった。 

 

「キリシマ、此れでレムレースもいけると思う?」

 

「どうだか、イタリア艦隊が盗んだのは、私のより高性能のだったけど、それでもやられている状況を考えたら、少し不安ね」

 

 ヤマトが亜空間ソナーの有効性をキリシマに尋ねたら、彼女は正直に答えながら眉間に皺を寄せていた。

 

「新たな反応!!!」

 

 イカロスに赴いてのレムレースへの挑戦に少し不安があったが、そんな時にチャート表の新たな反応が現れた事をカモイが叫んで報せた。

 

「キリシマさん、目標(ウィスキー)-2-5!!!」

 

 直ぐに気を引き締めて、カモイがキリシマに攻撃を指令して、また攻撃のタイミングを計ろうとしたが…

 

「キリシマ!!!

レムレースがそっちに向かった!!!」

 

「ふえ?」

 

…突然入った、ローマの通信に、キリシマが変な声を出した直後、チャート表の反応が消えると同時に近くのユウヅキが担いで移送していた負傷者共々爆沈した。




 感想または御意見をお待ちしています。

 少しネタ晴らしをしますと、ある映画を参考に亜空間ソノブイを前倒し投入しました。

神威
「明らかに後半で、その映画から単語を掻っ払っていますね」

 なんの映画か分かる人はいますかね?





大和
「作者さん、ご飯の用意が出来ました。
今日はチキンブリトーですよぉ~」

 おお、楽しみ楽しみ!

神威
「………うん?」






























霧島
「ねえ作者、どうせなら私に“戦艦(娘)が簡単に沈むか!”とか“痛いのをぶっ食らわせてやれ!”とか言わせてよ」

ローマ
「何を言っているんですか?
貴女はデカい護衛艦になってんだから、私が言うべきでしょ?」


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第37話 レムレース(影の艦隊)の猛威(前編)

 今回の投稿前に第6話の終盤に少し書き加えを行いました。





 それでは本編をどうぞ


――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「オイテが殺られた!!!」

 

「ヤヨイちゃんが、ヤヨイちゃんの胸がぁぁー!!!」

 

「助けて、ウヅキのエンジンに火が、火が、っ!!!」

 

「アサナギ、何所に行ったのぉぉー!!?

っ、今助けに行きます!!!」

 

「来るな、ユウナギ、っ!!?

ああ、ユウナギィィー、っ!!?」

 

「嘘だろ、キクヅキ!!!

返事をしろ!!!」

 

 ローマが日本艦隊にレムレース襲来を伝えた直後、当の日本艦隊が備える暇を与える事なく、レムレースが攻撃を開始して、その標的になったのはヤマトやキリシマ達の実戦部隊ではなく、カミカゼ級やムツキ級の救助部隊が負傷して動けないイタリア艦娘達共々殺られてしまい、ヤマト達実戦部隊一瞬で出来た殺戮光景を呆然と見つめていた。

 

「…っ、何で事前に察知出来なかったの!?」

 

「そ、それが、レムレースは突然現れたんです」

 

 ヤマトは我に返ると、直ぐにキリシマとカモイに半ば怒鳴って訊ねたが、カモイは慌てふためいて、キリシマはインカムを右耳に押し当てながら唸り声を出していた。

 更に接近してきたローマ達イタリア艦隊の主力の攻撃が始まると、キリシマは鬼の形相をした。

 

「ヘタリアども、静かにしろ!!!

全く聞こえなくなったじゃない!!!」

 

 どうやら亜空間ソナーがイタリア艦隊の爆雷攻撃でレムレース処か、潜宙艦2種の所在すら掴めなくなってしまった様で、キリシマがヘッドホンを外して艤装に叩きつけていた。

 まぁ、此の事はイタリア側も同じ様なのか、レオナルド・ダ・ヴィンチがローマの胸ぐらを掴んで前後に揺すっていた。

 

「魚雷が来るぅぅー!!!」

 

 だが、此の地球側の混乱からの好機を見せているのをガミラスが見逃す訳がなく、今度は多方向からの一斉雷撃を行い、負傷者を担いでいたサツキが叫んで伝えた時には大量の魚雷が直ぐ近くまでに迫っていた。

 日本艦娘達は小惑星群を楯にして、怪我を負う者が少々出るも全員がなんとか回避が出来たが、イタリア艦娘の負傷者達は次々に被雷していった。

 

「ああ、小惑星がぁー!!!」

 

 更にムツキが振り向くと、無事にいると思われた小惑星の影にいたイタリア艦娘達に、魚雷が直撃した事で動いた大型小惑星が、負傷者達を押し付けながら小惑星に激突し、2つの小惑星は揃って爆発した。

 

「彼処に誰かいたぞ!!!」

 

 2つの小惑星による圧死をしただろう艦娘達を思ってナガツキが悲鳴をあげたが…

 

「くおらぁぁぁー!!!

勝手に殺すなぁぁぁー!!!」

 

「でも死ぬかと思いました~」

 

…その爆発煙の中からジュンヨウと、いつの間にかに一緒だったポーラが2人係りで、小惑星の影にいた負傷者達を全員担いで出てきた。

 

「は~…良かった…」

 

 自分達の所に来たジュンヨウとポーラに安堵の息を吐き、ムツキが負傷者共々ポーラを安全圏に誘導し、ナガツキがジュンヨウがジュンヨウから負傷者達を受け取っていた。

 

「やるじゃないか、ジュンヨウ。

アンタ、装甲が薄くて鈍足なのにな」

 

「はぁ!?」

 

「え、ちょ!!?」

 

 ナガツキは彼女なりの冗談を言ったつもりだったが、ジュンヨウにはカンに触ったらしく、カーゴ召喚の為の護符をナガツキ目掛けて身構えた。

 ナガツキはジュンヨウが怒って自分を攻撃するのではと思ったが、ジュンヨウが召喚(発艦)したカーゴはナガツキの顔の直ぐ右脇を通過して、ナガツキの後ろで漂流していた負傷者に取りついた

 ナガツキが納得の意味で変な溜め息をはいたが、カーゴは負傷者と共にジュンヨウの所に戻ってきた。

 

「もういっぺん言ってみろ!!!」

 

「分かった分かった!

ジュンヨウは凄いって!」

 

「当然だ!!

私は“修羅場のジュンヨウ”様だぞ!」

 

 ナガツキの言う通り、ジュンヨウは確かに自分で自虐する程の“低速”“低装甲”だったが、そんな身でも最前線から負傷者達と共に帰還し続けた実力と度胸がある事を、ナガツキは苦笑しながら改めて認知した。

 

「ほらほら、助けを求めてる奴は山の様にいるぞ!」

 

「……ジュンヨウさんは、よく知ってますね」

 

「何を、ですか?」

 

 マミヤがナガツキを引き連れて別の負傷者達の救助に向かったジュンヨウへの言葉を掛けていたが、その意味をタイゲイは理解出来ずにいた。

 

「戦闘要員は派手に戦場で命を懸けて戦いますが、此所はそれ以上の修羅場である事をです」

 

 戦場での戦いとは別で、しかもより苛酷なのが有る。

 マミヤの言葉を納得しているタイゲイの2人のやり取りから見ると、少なくとも現在の日本艦隊では中毒症状に近かった旧日本海軍の艦隊決戦至上主義を反省している様だった。

 

「ジュンヨウ、此方は大丈夫です!!!

もっと支援が欲しかったら、増援を送りますよ!」

 

「心配無用だ!!!」

 

 マミヤとジュンヨウ達は気を引き締めて負傷者救助を再開していた。

 で、此の時のヤマト達実戦部隊はと言うと、負傷者達の前方に出て彼女達の楯になろうとしていたが、当のガミラス(と言うよりほぼレムレース)は、多分通常型の潜宙艦群は幸い機能していたカモイの対潜管制だけでなく、偶然に近い形でのイタリア艦隊の主力群との協力でなんとか牽制していたが、そんなヤマト達を無視して負傷者達や彼女達を救助している救助艦隊を狙い続けていた。

 

「ああ、ハヤテちゃんが!!?」

 

「…あ、ああー!!!」

 

「馬鹿!!!

逃げるな、キソ!!!」

 

 味方が次々に殺られる現状にキサラギが悲鳴を上げ、キソが土星陥落時に自分に親しかった子供達が避難船諸共沈められたトラウマを思い出して逃げようとした処をナガラが背後から取り押さえていた。

 

「今度はミナヅキが!!!」

 

「マミヤさん、もう危険です!

此処は後退しましょう!」

 

 潜宙艦隊の波状攻撃で“ミイラ取りがミイラになる”の言葉通り、ハタカゼがマミヤに後退を意見したが、当のマミヤは暫く周囲を見渡していた。

 

「…沖田提督や藤堂長官の命令が無い事から、救助を続けます」

 

 だがマミヤはハタカゼの意見を取り下げ、更にハタカゼがカミカゼに抗議の意見で睨まれた事もあって苦笑した。

 しかし現状は苛酷であり、現にレムレースは負傷者達への攻撃を続けていた。

 

「…見境、なしですか」

 

「相変わらず、ガミ公は士道とかジュネーブ条約とかが無いわね!」

 

 そんなレムレースにアヤナミが嫌悪して、スズヤが怒鳴った。

 

「ジンツウ、藤堂長官、これ以上は危険です!!!

救助艦隊を下げてください!!!」

 

『キリシマさん、私もそうさせたいのですけど、救助活動を止める訳にはいけません』

 

「だけどね!!!」

 

『キリシマさん、此れは藤堂長官の命令です』

 

 マミヤやジュンヨウ達救助艦隊の状況を鑑みたキリシマは、藤堂か彼の秘書艦代理のジンツウに救助艦隊の退却を具申したが、それはジンツウに却下された。

 まぁ、キリシマは分かってはいるも心の片隅で思う事があった事から舌打ちをしてしまったが、ジンツウとの通信から怒号が色々聞こえている事から防衛司令部も救助艦隊退却の是非を巡って揉めている様だった。

 

「マミヤ、そう言う事なんで…」

 

「分かってますよ。

現宙域に留まって、可能な限り救助を続行します……っ!

彼処に誰かいますよ!」

 

 キリシマがマミヤに伝達しながらも思う事はあったが、マミヤはキリシマが言い終える前に了解してカミカゼ達を従えて救助に向かった。

 

「イタリア艦隊、左舷側から魚雷が来ます!!!」

 

Ebbene,che cose!!?(えっ、何!!?)

 

「La flotta giapponese,ce una flotta sattellitare in direzione delle 2!!!」

(訳:日本艦隊、2時の方角に潜宙艦隊がいる!!!)

 

「え、ドエェ!!?」

 

 一方のヤマト達実戦艦隊はと言うと、ハツシモ&コンテ・ディ・カブールとレオナルド・ダ・ヴィンチ&アブクマの言葉のやり取りから見られる通り、此処にきて言語の違いによる情報伝達の混乱が生じた事から、無駄な負傷者や敵の取り逃がしが起き始めていた。

 しかも煩わしい事に、そんな艦娘達を馬鹿にするかの様なレムレースの笑い声が至る所から聞こえていた。

 

「誰かイタリア語が話せる娘はいないんですか!?」

 

「無理ですよ!

私達日本艦隊はイタリアとの繋がりがありませんから、イタリア語を話せるのは行方不明(MIA)のカワカゼちゃんぐらいです!」

 

「だったら、翻訳装置が開発されたんでしょう!

それをだしてよ!!」

 

「有るけど、今回持ってきてないのよ!!!」

 

 不安要素となっているイタリア艦隊の事で、ヤマトがイタリア語の通訳係を求めるもサミダレがほぼ泣きながら該当者がいない事を伝え、代わりに翻訳装置を求めるが此方もキリシマに否定されたが、そのキリシマは急な出撃だったと言え、こう言う事態が想定出来たにも関わらずに翻訳装置を持ってこなかった事を、キリシマは歯軋りをしながら後悔していた。

 

Ritirate!!!(退いて!!!)

 

「っ、え!?」

 

 更に不味い事にリベッチオが小惑星を回避したら、周囲を警戒しながら爆雷をばら蒔いていたナトリに激突してしまった。

 ナトリとリベッチオ2人の艤装が中破して、リベッチオ本人は無傷でもナトリが彼女を咄嗟に庇った事で右肩を痛めたが、各々の先代がやらかした衝突事故を思い起こしたアブクマ(美保関事件(阿武隈&北上、衝突))とイナヅマ(済州島南方沖演習(電&深雪、衝突で深雪事故亡))の2人が顔を青くした。

 

「うぅ~…」

 

「ナトリさん、大丈夫ですか!?」

 

 直ぐにアヤナミが右肩を押さえながら呻いて動けないナトリを救助した日本艦隊は兎も角としても、リベッチオが表情から見ると罪悪感は有った様だが、ナトリに何も言わずにローマ達の所に逃げるように戻って、更にローマ達が日本艦隊を睨んだ事から、日本・イタリアの両艦隊に気まずい空気が濃厚になった事からキリシマが決断した。

 

「ジンツウ、そちらからイタリア艦隊になんとか出来ないの!?」

 

『駄目です!!!

イタリア艦隊の皆さんは頭に血が昇ってるらしく、藤堂長官の指令を無視し続けているんです!』

 

「だったら、私達は後退する!

通常型の潜宙艦隊はイタリア艦隊に任せて、私達はレムレースに専念するからね!!!」

 

『っ! そ、それは…』

 

「カモイの情報は提供させる!

此方にも限度があるのよ!!!」

 

 キリシマの通達にジンツウが何かを言おうとしたが、キリシマはその前にジンツウとの通信を切った。

 此れにヤマトが「流石に不味いんじゃ?」と言おうとしたが、当のキリシマは“責任は私が取る”と目線で訴えた。

 

「っ! 6時の方角に潜宙艦反応!!!」

 

「6時ぃ!!?」

 

 ローマが“ざまぁ見ろ”と言ってそうな笑みをしていた気がしたのは取り敢えず無視して、ヤマト達実戦部隊が後退して体勢を整えていたら、早速カモイが新たな潜宙艦の存在を報せたが、キリシマが変顔をした通りに問題だったのは潜宙艦の出現箇所は潜宙艦隊を殲滅した筈で、しかもその攻撃で小惑星群が吹き飛んだので隠れる物が一切無い広い空間だったからだ。

 

「分かりません。

いきなり現れたんです」

 

「ワープした、のでしょうか?」

 

「こんな宙域でワープなんか出来る訳がないでしょ!!!」

 

 カモイが疑問を感じ続け、イナヅマがワープかと疑うも、キリシマに否定された。

 

「キリシマ!!!」

 

「分かってますって!!!」

 

 だが、少なくともカモイが捉えたのはレムレースである公算が大であるのが分かる以上は何もしない訳がなく、現にヤマトがキリシマに何故か動こうとしないレムレースへのミサイル攻撃を要請した。

 

「「…っ!?」」

 

 だがキリシマがミサイル攻撃をしようとした直前に、レムレースと思われる反応が消えると同時にヤマトとキリシマの近くを影か風と思われる何かが過ぎ去ってローマ達が一斉に被弾と思われる爆発が起きていた。

 

「くそ!!! またかよ………?

ヤマト……キリシマもどした?」

 

 レムレースの理解不能な行為にアサシモが毒づいたが、ヤマトは何故か艤装左舷側の砲身が1門折れたパルスレーザー1基を見つめて硬直し、更にキリシマも同じ様に艤装の右舷最端部分を見つめていたのに気づいた。

 

(ヤマト、知っていると思いますが、ワープのお復習(サライ)をしますよ)

 

「……まさか…」

 

 どうやらヤマトはたった今自分の艤装にレムレースがほんの一瞬接触した事から、“零距離射撃”“亜空間ソナーや亜空間ソノブイで捉えられない”そして第2次木星沖海戦前のオオヨドのワープの説明を思い出して、レムレースの能力のカラクリを察したようだった。

 更にヤマトが見た処だと、キリシマも同様のようだった。

 

「「………」」

 

 それでヤマトが“そこにいたよね?”と前方を指差すと、キリシマは“それが一瞬で彼処に”とローマ達の方角を指差した。

 

「…ヤマト、感じ取れた?」

 

「微かに、勘違いしそうな程の微かに」

 

 ヤマトとキリシマは確信めいたモノを得たみたいだが、お互いの目線を合わせて硬直している処を見ると、それを否定したがっているようだった。

 

「……なんて者を生み出してくれるのよ、ガミラス…」

 

「キリシマさん、何か分かったのですか!?」

 

 ヤマトと共にローマ達の方に振り向いたキリシマに、カモイが察して直ぐにキリシマに大声で訊ねたが、当のキリシマは顔を青くして少しの間だけ硬直した。

 

「…種も仕掛けもなんにも無いわよ。

単純すぎて逆に分からなくなっていたのよ」

 

「単純?」

 

「…アレは………レムレースは速いんですよ。

それも、島風(シマカゼ)が霞む程の以上にです」

 

 カモイはキリシマの返事を理解出来なかったが、ヤマトの説明で、カモイだけでなく同様に分かったアブクマとハツシモの2人と共に“まさか!?”と顔に出していた。

 

「間違いなくレムレースは、通常推進型ワープ……光速を超える速度で動いてます」

 

 ヤマトの断言に近い言葉に、カモイは納得しようとするも脳内部からの拒絶反応が出た。

 

「ですけど、亜空間ソナーや亜空間ソノブイに捉えられない速度だなんて、そんな事は太陽系を1秒で横切る以上のスピードじゃない、と…」

 

 カモイの抵抗は残念ながら、キリシマがカモイから目線を逸らした事で否定され、全員がギョッとした。

 

「レムレースは太陽系処か、A銀河も1秒で横切れるかもしれませんよ」

 

 ヤマトの言葉に全員が「そんな…」と呻きながら顔面蒼白となった。

 

「超光速潜宙艦、それがレムレースの正体よ」

 

「此処まで来たら、もう笑うしかないけど………姿を見せずに超光速で動き回るなんて、反則でしょう…」

 

 ヤマトとキリシマはなんとか耐えてはいるが、他の者達は今までは“知らない幸せ”の中でいた事を知って、強烈な“冷酷な現実を知った故の絶望”に襲われており、何人かは立ち眩みを感じていた…




 感想あるいは御意見をお待ちしています。

 本編では書けませんでしたが、他にもいるかもしれませんが、少なくとも地球はレムレースをガミラス最速と認定します。

大和
「ちょっと、レムレースって第1面ボスみたいな存在でしたよね!?
その割りには、レベルが高すぎますよ!!!」

霧島
「アイツ、間違いなくギラヒム級のボスじゃない!!!」

 不幸中の幸いな事を教えましょう。
 ガミラスはレムレース(潜宙棲鬼)は“力に飲まれてる事から、思考と行動が単純で調子に乗りやすい(本編で書きますが、思考回路がほぼユウダチ)”“従属艦が配備出来ない”“実は速すぎて武装が制限されている”等の点から失敗作として、量産にいたっていません。

大和
「こんなの量産されたら、堪ったもんじゃありません!」

 まぁ此れでも、艦これ原作で言ったら、イオナ(イ401)と同等以上と設定しています。

霧島
「あ~…コラボキャラだけど、艦これ最強潜水艦と、ですか。
演習でイオナに酷い目にあった提督(プレイヤー)達の話はよく聞きますけど、作者はそうでもありませんでしたね。
その代わり、異世界の私(キリシマ)とハルナに酷い目にあいましたけど」

 レムレースの攻略のヒントは先述の欠点に加えて、“はじめの一歩”の一歩vs島袋での鷹村の言葉を少し変えて言うと「異次元にいれば勝てたが、実際にいるのは通常の宇宙」にあります。


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第38話 レムレース(影の艦隊)の猛威(中編)

――― 地球 ―――

 

 

「あら、マヤさん」

 

「おう!」

 

 キリシマ達が小惑星群での救助活動を始めるより数刻前、沖田の秘書艦代理のホウショウはまもなく戦闘が実施されるだろうから沖田を呼びに彼の自室に向かっていた途中で、同じ様に沖田の部屋に向かっていたマヤを見つけて、彼女を声をかけた。

 

「私はジンツウとスズヤの代わりに、マイカゼと一緒に呼ばれたんだよ」

 

「ああ、そう言う事ですか。

だとしてもお身体に気を付けて下さいよ」

 

「なに、こんなのもうどうで事はないさ!…っ!」

 

「ほら、無茶をしない!

貴女、その傷が原因でイスカンダル遠征に参加出来なかったんでしょ」

 

 ホウショウが訪ねる前に、マヤが此所にいる理由を伝えた事で彼女を納得させ、更に笑って包帯が巻かれているお腹を叩いて元気なのを示そうとしたが、予想外に痛かったらしく、呻き声を出してしまった為にホウショウに注意された。

 

「しかし、貴女が秘書艦の補佐ですか。

沖田提督も珍しい事をしますね」

 

「まぁ~、私はチョウカイや姉ちゃん達と違って秘書艦なんて細かい事なんか出来ないからな」

 

 マヤが自虐の笑いをしながら言った通りに彼女は秘書艦には向かない性格である事もそうなのだが、更に言えば沖田はマヤ達タカオ級巡洋艦に特別な思いがある為に彼女達(と言っても、タカオ、アタゴ、チョウカイの3人は既に戦死かMIAだが…)を敢えて遠ざけていたので、ホウショウからみたら今回のマヤ召集は驚き以外の何物でもなかった。

 まぁ大方、他に呼べる艦娘がいなかったから、やむを得なくマヤが呼ばれたのだろうと予想したので、ホウショウはマヤにその事を尋ねなかった。

 

「あ、でも、アタゴ姉ちゃんは私と同類だったかもな」

 

「あの娘は、タマにいい加減な事をしてましたからね」

 

「まぁ、有能な時は有能だったんだけどね」

 

 いくら最悪な戦争をしていると言え、ホウショウはアタゴを初めとした大勢の艦娘達が亡くなり、そしてマヤが秘書艦をやらされる程に艦娘が少なくなった現状に悲しさを内心に感じていた。

 マヤの笑顔の中での僅かな寂しさが感じられたので、彼女もまた同様でありそうだった。

 

「…あれ、アイツ等って、マイカゼとミチシオだよな?」

 

「沖田提督の部屋の前で何をしているのでしょうね?」

 

 まぁそんなこんなで、マヤとホウショウは沖田の部屋の前まで来たのだが、その部屋の前でマイカゼとミチシオが目線を合わせて困っていた。

 

「2人ともどうしたのですか?」

 

「あ、ホウショウさんとマヤ!」

 

「マイカゼ達は、ついさっき着いたんだけど、沖田提督の反応が無いんですよ」

 

「反応が、無い?」

 

「まったく、人には“緊急時には1分以内に来い”と言ってるわりに、自分はそうじゃないんだから、嫌になっちゃうわよ!」

 

 ホウショウはミチシオに「沖田提督はそんな人ではない」と言おうとしたが、奇妙な違和感で動く事が出来なかったが、マヤは直ぐに扉の前に立った。

 

「おーい、とっつぁん!!!

マヤ様が来てやったぞ!!!」

 

「ちょ、と、とっつぁんって!!

マヤ、アンタ提督になんて事を言ってんのよ!!!」

 

「カスミ共々“クソ提督”とか“グズ”とか言ってるミチシオには言われたくないと思うよ」

 

「“クソ提督”はアケホノだけよ、マイカゼ!!

ホウショウさん、あれで良いのですか!?」

 

「あれで良いのですよ。

いえ、本当はいけないと思いますが、マヤさんは姉妹3人と共に沖田提督の養女だから、ある程度は許されるのですよ」

 

「「養女!!?」」

 

 マイカゼに弄られた事で顔を赤くしたミチシオの質問に、ホウショウは苦笑しながらマヤ達タカオ級は沖田の義理の娘である事を伝えて、マイカゼとミチシオは驚きながら叫んだ。

 

「とっつぁん、どした!!?………開けるぞ!!!」

 

 そのマヤは、ノックをしながら沖田を何度か呼んでいたが、彼女なりに何かを感じたらしく、ホウショウ達3人がギョッとしたのを無視して扉を開けた。

 

「「「「…っ!!?」」」」

 

「……あ"…あ"あ"…」

 

 扉を開けると、沖田は胸を押さえながら踞っており、しかも何度か吐いた形跡があるだけでなく、全身痙攣を起こしていた。

 

「とっつぁん!!!」

「「「沖田提督!!!」」」

 

 当然ながら、マヤ達4人が沖田の所に急ぎ駆け寄ったが、当の沖田は意識はあっても混濁していたので全く反応しない、見るからに危険な状態だった。

 

「とっつぁん、私だ!!! マヤだ!!!

分かるか!!?」

 

「医療箱、医療箱は何処!!?」

 

「AEDと酸素ボンベを持ってくる!!!」

 

「ジンツウさん、沖田提督が自室で倒れました!!!

大至急、医療班を呼んで下さい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「魚雷が来ます!!!」

 

「キリシマ!!!」

 

「任せろ!!!」

 

 レムレースの驚くべき正体に唖然とするモノだと分かったが、だからと言ってガミラスが手を緩める訳がなく、現にレムレースがイタリア主力艦隊を攻撃している中、ヤマト達は負傷者達共々通常型の潜宙艦隊による多方向雷撃に晒され、カモイの悲鳴に近い報告からヤマト経由でキリシマが迎撃ミサイルを多数放って、続けてキサラギ達5人と共に防空砲火を放ち始めた。

 

「はにゃー!!!」

 

「イナヅマちゃん!!!」

 

 結果、負傷者達の何人かが被雷して、更に負傷者を担いで退避していたムツキが狙われたが、彼女はイナヅマが飛び込む形で庇ってくれたお陰で無事にすんだ。

 

「イナヅマちゃん、死んじゃ駄目!!!」

 

「イナヅマ、しっかりしろ!!!」

 

 当然ながら、被雷したイナヅマは失神して腹部から派手に出血していて、ムツキが泣き叫びながら彼女に止血作業をして、更にナガツキも来てムツキと止血作業を交代した。

 

「カモイ、レムレースは!?」

 

「駄目です。

また姿を眩ましました」

 

 負傷者達や“ミイラ取りがミイラになっている”救助部隊の事は気になるが、キリシマ達はレムレースの所在を探していたが、既に何回かを繰り返していたが、潜宙艦隊やそれへの攻撃に紛れてレムレースは探索範囲から逃げられてしまった。

 

「ガミ公、やってくれるね!」

 

「本当、単純だけど、厄介な事をやってくれてるわよ!!」

 

 此れまでの死傷者を多数出す高い代償を払ってレムレースの特徴を掴み、レムレースの超光速は3~5分間の短い時間しか出来ず、超光速移動時以上の休息が必要だと分かった。

 だからそのレムレースの休息時を狙えば良いのかと言うと“そうは問屋が卸さず”、レムレースはその間に潜宙艦隊に攻撃させて自分の所在を紛れさせていたのだ。

 タチが悪いのは、レムレースは潜水カ級や潜水ヨ級を囮にした攻撃を行う事もあって、“通常型潜宙艦2種にも超光速移動が可能なのがいるのでは?”更に“増援がくるのでは?”との2つの邪推からの焦りがあった。

 そしてなにより、相手が姿を見せない潜宙艦群である事が強烈なストレスを与えて、レムレース(複数の影(Lemures))のコードネームに偽りはなかった。

 しかも、不味い事にレムレースは好機と判断した事から攻勢を強めての波状攻勢を始めてしまい、此の為に先程から艦娘達に疲労が出始めて、明らかな出遅れや判断ミスが起きていた。

 

「…っ!?」

 

 現に言ってる側から、今度はハヤテが負傷者と共に吹き飛ばされる等の日本艦隊の周辺の負傷者達がレムレースの攻撃に曝らされていた。

 だが今回の場合、ヤマト達の近くの小惑星群までが一斉に砕けてもいた。

 

「まさかコイツ、速すぎて自分を制御出来ていないんじゃ?……っ!」

 

「「「ヤマトさん!!!」」」

「ヤマト!!!」

 

 ヤマトはレムレースへの攻撃は今回は手遅れと判断して次に来るだろう潜宙艦隊を警戒して急速前進した処、ヤマトの左舷側艤装がレムレースにやられた爆発を起こした。

 

「ヤマト、どうしたの!!?」

 

「…う~、左舷補助エンジンが吹っ飛んだ!!!

波動エンジンも徐々に出力が落ちてる!!!」

 

 ヤマトのキリシマへの返事に、カスミ達駆逐艦娘4人がギョッとした。

 

「カスミさん、アサシモさん、行ってください!!!」

 

「了解!!!」

「了k、っ!!?」

 

「アサシモ、っうぇあー!!?」

 

 直ぐにアブクマがカスミとアサシモに、ヤマトの左側に着くように命じたが、その2人が指示通りに動こうとした直後に、レムレースの攻撃でアサシモとカスミが立て続けて吹き飛ばされた。

 幸いアサシモとカスミは波動防壁が奇跡的に上手く作動したお陰で比較的軽傷ですんだが、此の事でヤマトが2人に気がいった隙に無防備だった右舷側に攻撃を受けて爆発が起きた。

 

「畜生!!! 右舷補助エンジンがやられた!!!」

 

 レムレースはご丁寧な事に、ヤマトの右舷補助エンジンを狙い撃ったが、何かがあったのか今回は比較的マシですむも、補助エンジンがヤられた事でヤマトの右舷艤装から咳きの様な火災が数度起きていた。

 

「不味いですよ!!!

もう1度被弾したら、ヤマトさんのメインエンジンが止まっちゃうかもしれませんよ!」

 

「分かってるっ、てぇええ!!?」

 

 ヤマトの艤装の火災は、ヤマト本人だけでなく偶々近くにいたサツキの協力もあって直ぐに消火は出来たが、此の影響でヤマトの右舷側主砲が暴発してしまった。

 

「っ、嘘ぉぉー!!?」

 

 不味い事に、射線上にジュンヨウがいたが、ジュンヨウは自分の背後から来る衝撃砲に気付いて、慌てて避けたので同士討ちと言う最悪の事態は回避したが、近くの小惑星が被弾による爆発でジュンヨウが軽く吹き飛ばされた。

 

「……ご、御免、ジュ…」

 

「ヤマトさん、魚雷が来ます!!!」

 

 ジュンヨウだけでなく他の者達も、状況からヤマトの砲撃は暴発であった事を察して何も言わなかったが、他共々硬直したヤマトが慌てて謝罪しようとした時に、アヤナミがヤマトの背後目掛けて飛んで来る魚雷群に気付いて叫んだ。

 

「…え、魚ら?」

 

「うりゃぁー!!!」

 

 明らかにヤマトの反応が遅れた為に被雷しかねなかったが、その前にスズヤが空間魚雷(巡洋艦時代の魚雷発射菅がそのまま残っている)を多数放って迎撃し、更に撃ち漏らした物が少数あったが、それ等全てはコスモパンサーを特攻させたので、ヤマトには1本も被雷しなかった。

 

「……ふぅ~…」

 

「大丈夫、ヤマト?」

 

 ヤマトは魚雷直撃を回避出来た事からの安堵感から疲労感を感じてしまい、疲労感を拭うだけでなく目が開けられない程に流れ落ちる汗を払う事もあって顔を左右に振い、無意識の内に自分を心配そうに見つめるスズヤに振り向いた。

 

(大和は相変わらず、下手くそな射撃をするねぇ~…)

 

「…っ!?」

 

 だが、ヤマトはスズヤの顔から、先代鈴谷の自分を小馬鹿にする笑みを思い出してギョッとしてしまった。

 

「えっ、ヤマト、スズヤが何かした!?」

 

「あ、いえ、なんでもありません…」

 

 スズヤがヤマトの反応に驚いていたが、そのヤマトも何で此の状況下で先代鈴谷を思い出したのかが分からない事で、驚き戸惑って硬直した。

 

「またレムレースだ!!!」

 

 アサカゼが叫んだ通りに、レムレースが負傷者達への攻撃を再開し、更に固まっているヤマトを再び狙おうとした。

 

「やぁぁー!!!」

 

「…ん……ふえ!!?」

 

「…あ」

 

 だが、レムレースがヤマトの右舷をもう1度攻撃しようとした直前、サミダレがヤマト目掛けて主砲を放ち、サミダレの方に振り向いたヤマトがレムレースの攻撃を受けた直後に、サミダレのがヤマトの測距儀右側をコスモレーダー2基諸共撃ち抜いた。

 

「サァーミダレェェー!!!

何やってんのよぉぉー!!?」

 

 当然ながら、ヤマトを誤射したサミダレに、アサシモと共に戦線に戻ろうとしていたカスミが、鬼の形相でサミダレの所に全速力で駆け寄り、そのまま殴ろうとした。

 

「カスミさん、落ち着いて!!!」

 

「どうどうカスミ、どうどうどぉぉーう!!!」

 

 だがサミダレが殴られる寸前に、ハツシモが割り込んでカスミの右拳を受け止め、少し遅れてアサシモがカスミを背後から掴んで引き剥がした。

 

「すみません!!!

ヤマトさん、本当にすみません!!!」

 

 怒りのあまりに色々喚き散らしているカスミをハツシモとアサシモが前後から押さえているのは無視して、サミダレがヤマトに誤射した事を何度も謝っていたが、当のヤマトは煙を派手に吹いている右舷被弾箇所に目線を落としていた。

 

「サミダレ、何でヤマトを撃った!!?」

 

 そんなヤマトに代わって、キリシマがサミダレに怒鳴った。

 

「…ユ、ユウダチちゃんです!!」

 

「ユウダチ!? 

何で死んだアイツが原因なのよ!!?」

 

「何て言いますか、レムレースはなんかユウダチちゃんによく似ていたから、私なりにユウダチちゃんならヤマトさんを今狙うだろうと思って撃ったんです!」

 

「ユウダチと!?」

 

 サミダレの返答に、キリシマが他共々“えっ!?”とした。

 だが言われよく見ると、レムレースは確かに“攻撃のパターン”や“調子に乗った時の行為が暴走に近い”等で、駆逐艦の野生児ユウダチを連想させ、なによりレムレースの笑い声をユウダチの口癖「ポイ(xn)」に変換したら完全にユウダチになっていた。

 

「あ~確かにユウダチにそっくりな動きをしてるね」

 

「あの娘の潜水艦バージョンって、タチが悪いのにも程がありますよ」

 

 ユウダチと同じシラツユ級だった上に同じ駆逐戦隊所属だったサミダレならではの指摘に、スズヤが懐かしさを感じながら納得してナガラが苦笑した。

 

「だったら、ユウダチちゃんと同じミスをするかもしれませんね」

 

「でしたら、罠とか待ち伏せが張れたらいいんですけど…」

 

 ガミラス戦前にユウダチと共に“日本三大駆逐艦(ガミラス開戦後はユキカゼとシマカゼが加わって“五大駆逐艦”に変更)”と呼ばれたアヤナミとハツシモが、ユウダチが制止命令を無視しての突撃で、同僚達共々戦艦ル級&重巡リ級の十字砲火の罠で爆死したのを思い出して、レムレースに罠を張れないかを思い付いたが、他共々速すぎて無理と判断した。

 

「…待ち伏せ?」

 

 だがヤマトは“待ち伏せ”の単語に反応すると同時に、脳内で何かのパズルピースが次々に繋がっていった。

 

「……あ」

 

 そしてヤマトは先の先代鈴谷の言葉からの出来事を思い出しての答えに達して、キリシマの方に振り向いた。

 

「…え?」

 

 当のキリシマは自分を見つめるヤマトに戸惑っていたが、当のヤマトは不安の現れとして下唇を噛んでいた。

 

「……キリシマ、ちょっと話が…」

 

 色々な不安を払拭出来なかったが、ヤマトは意を決してキリシマに自分の考えを伝えた。

 他の者達は聞けなかったが、キリシマはヤマトの提案に“えっ!?”とした。

 

「やっぱり出来ない?」

 

「私を誰だと思ってるの?

私は艦隊の頭脳たるコンゴウ級戦艦四番艦キリシマよ!」

 

 言い出したにも関わらずに不安を出していたヤマトに、キリシマはニヤリと笑いながら胸を張って了解した。

 

「だけど、最低でも潜宙艦隊を大人しくしてもらなわいと…」

 

 だがキリシマは、ヤマトの提案を実施しようにも、潜宙艦隊が邪魔である事に歯軋りをした。

 

「…っ! 沖田提督から通信です!!」

 

 そんな時に沖田からの通信が入った事がキサラギから伝えられた。

 ヤマト以外の日本艦娘達は“神様・仏様”の思いでの期待を込めていたが、その沖田はとんでもない事を命令し、日本艦娘全員がギョッとした。




 感想・御意見を御待ちしています。

 本編の補足情報として、先ずはマヤ達タカオ級の4人が沖田の養女になったかと言いますと、2199版山本兄妹と同様に火星での内乱で戦災孤児となった4人を孤児院長い期間過ごした後に、遠縁だったからか“銀河英雄伝説”の軍人子女福祉戦時特例法(トラバース法)みたいなのとのどちらかからで、沖田が引き取ったとしています。
 更にタカオ級内での血縁関係も“4姉妹”“タカオ&アタゴとマヤ&チョウカイ”“4人揃って血縁なし”のどれかにしようかと迷ってますが、“4人揃って血縁なし”は大方無しで“4姉妹”が少し抜きん出ています。

摩耶
「父っつぁんが、タカオ(高雄)への思い入れが強いのは、タカオが父っつぁんの1人息子と婚約してたからなんだろ?」

 ええ、設定ではガミラス戦が起きなければ結婚(ガチ)していた筈なのですが、開戦直後にタカオは調査に赴いた冥王星で戦死に近いMIA、直ぐに1人息子も海王星基地駐留艦隊の司令官だった為に戦死したとしています。
 更に使いたなぁ~…としているのが、ジンツウはタカオと同期で長年の親友だったから、マヤとチョウカイに強烈な罪悪感があるとしています。(近いのは、2199版真田と古代進との関係)

摩耶
「言っちまうけど、第27話の後書きで言った“『ユキカゼ』のコスモガン”の該当話は、タカオとチョウカイで冥王星でやるんだったな?」

 他にも要因はありますが、チョウカイ(達)は冥王星の地表で“タカオを何か”を見つけて冥王星基地を発見する予定です。
 更に遠征艦隊合流後に、その手直しを施した“タカオの何か”をチョウカイは形見として終始身に付けます。
 因みに“タカオの何か”のヒントは、“鳥海の改二からの衣装追加品”“真ゲッターロボ第11話での巴武蔵と車弁慶のやり取り”の2つです。

 補足情報2つ目は、ユウダチは練習嫌い故に脱走常習者だが、才能のみは神憑り……一言で言えば“駆逐艦娘版ブライアン・ホーク”みたいにしています。
 此の為に調子に乗ると無双の強さを発揮するが、受け手に回るとてんで駄目になるだけでなく、巡洋艦娘や他の駆逐艦娘の言う事を聞かないので、最終的に後者のが致命的になってガミラスの見え透いた罠に引っ掛かって他共々爆死したとしています。
 でこんなユウダチの対局な存在なのが、ハツシモとしています。


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第39話 レムレース(影の艦隊)の猛威(後編)

――― 防衛司令部 ―――

 

 

“そんなまさか”

 

 それが、超光速潜宙艦レムレースに対する防衛司令部の面々が受けた衝撃の一言であった。

 

「…駄目だ、やっぱりガミラスに勝てる訳がなかったんだぁぁー!!!」

 

 日本とイタリアの両艦隊の多大な死傷者に加えて、万人に絶望を与えるガミラス超弩級の超性能に、若い士官の1人が絶望感から頭を押さえながらの悲鳴を上げた。

 だがその士官が上官に怒鳴られている通り、相手が誰であろうと戦闘の火蓋が開かれた以上は退く事は出来なかった。

 

「…駄目だ。

姿が見えない上に、速すぎる!!」

 

「こんな敵と、どう戦えと言うのだぁー!?」

 

…だからと言って、打つ手がある訳では無かったので、悲鳴は相次いでいた。

 

「ヤマトに波動砲を撃たせて、小惑星群を凪ぎ払ったらどうだ!?」

 

「馬鹿!!!

当たる訳がないだろ!」

 

「負傷した艦娘が多数いるんだぞ!

彼女達までもを凪ぎ払らうのか!!?」

 

「だったら、ワープでもう1度罠を張るのはどうだ!?」

 

「駄目です!!

潜宙艦隊に頭を押さえられています!」

 

「それ以前にガミラスが同じ手に掛かる訳がないだろ!!」

 

「それ以前にイタリア艦隊をどうにか出来ないのか!?」

 

「このままだと枷を着けた状態だぞ!」

 

 通常型の潜宙艦こそ日本とイタリアの両艦隊の攻撃で目に見える範囲で数を減らしていたが、その事が逆にレムレースの超性能を際立たせていて、防衛司令部の面々を益々慌てふためかせて混乱の境地に追い込んでいた。

 

「…レムレースと通常型の潜宙艦隊の交代交代での波状攻撃とは、ガミラスは考えてますね」

 

 藤堂の秘書艦代理ジンツウは、自分達の補佐を務めるアラシとハギカゼが唖然としているのと同様に、レムレースに対する有効な策を思い浮かべない自分自身に苦虫を潰していた。

 まぁ、嘗ては姉妹艦のセンダイとナカと一緒に、現場の過酷さへの理解が無い司令部に不満を口にした事があったが、今の防衛司令部には戦場とは全くの別物の過酷さがあるのをも感じていた。

 

「…く!」

 

 尤もやりがいはあるも、アラシが自分の艤装が大破しているのを忘れて飛び出そうとしていたのをジンツウは抑えながら、アラシと同じ思いが心の片隅にあった。

 

「……藤堂長官、遺憾ながら、ヤマトさん達は戦略的敗北をしたと判断します。

速やかな退却を検討願います」

 

 明らかに顔に拒絶反応が出ていたが、ジンツウはレムレースの撃破は不可能で退却を進言し、藤堂もまた渋い顔で“やむを得なし”と表していた。

 まぁ、元を正すとレムレース討伐はオマケみたいなのであり、こんな処で意地を張って最悪な事態が起こさなくてもイスカンダル遠征への支障を最低限に抑えるのも視野に入れている筈だった。

 

「退却!?

こんな状況で退却など出来るか!!!」

 

 だが、あれやこれやと指示を出していた芹沢が、直ぐにジンツウの退却要請に噛みついので、ジンツウがひたすら謝った。

 

「でしたら、せめてヤマトさんをハツシモ、カスミ、アサシモの3人と一緒に退避させて下さい!」

 

「そうだ!

ヤマトはイスカンダル遠征の要だ!」

 

「馬鹿者!!!

ヤマトは攻撃の要だぞ!

ヤマト無しでどうやってレムレースに対抗する気だ!!?」

 

 そんなジンツウに代わって、ハギカゼが妥協案を提案して、アラシが乗っかったが、芹沢はそれさえも即刻否定した

 だが、確かに一理はあったが、藤堂とジンツウは芹沢の否定の奥底には最悪の事態……ヤマトが沈む事を狙っているを察してギョッとした。

 ヤマトはアラシの言った通りにイスカンダル遠征の要であり、もしヤマトが沈んだらイスカンダル遠征は破綻すると同時に地球脱出作戦の復活に繋がるのが目に見えており、芹沢を初めとした反対派が今回の海戦を好機と見定めているのは目に見えていた。

 

「ヤマトが駄目だったら、救助部隊を退かせたらいいだろ!

救助部隊にはまともな装備が無いんだから、これ以上は危険だぞ!」

 

「何を言っているのですか、アラシ!!!

負傷した者達はもっと無防備で危険な状況下なんですよ!」

 

「藤堂長官、ご決断を願います!」

 

 ムツキが近くの小惑星の爆発に巻き込まれてしたのがモニターに映った通りに刻々と悪化していく戦況からアラシとハギカゼが口論をしかけてた中で、ジンツウは“他力本願”と言う秘書艦にあるまじき行為に出てしまったが、その藤堂は何も言い出せずに冷や汗を大量に流しながら俯いて硬直してしまい、内心では沖田への他力本願を求めていた。

 

「おらぁー!!!

退け退けぇー!!!」

 

「沖田提督のお通りよぉぉー!!!」

 

 だがそんな時に、マヤとミチシオが怒鳴りながら人混みを掻き分けてきて、そのマヤの後にホウショウの右肩に担がれた沖田がマキグモ達駆逐艦娘4人を引き連れてやって来た。

 

「……沖田…」

 

 見るからに弱ってはいるも、沖田の来訪に、藤堂がジンツウ達3人と共に安堵の溜め息を吐いて、芹沢が影で軽く舌打ちをした。

 

「戦況は全て知っております。

取り敢えず、急場を凌げる策があります」

 

 沖田は藤堂にそう伝えて、マキグモが持ってきた椅子に腰掛けると、藤堂の頷いての了承下に通信機を取った。

 

「…ヤマト、キリシマ、ジュンヨウ、マミヤ、カーゴを含めて日本艦隊全員、機関を停止しろ」

 

 沖田の指令にヤマト達現場の者達だけでなく、防衛司令部の全員がギョッとしながら沖田への振り向いた。

 

「何を言っているのですか!?

そんな事をしたら、ヤマトさん達はレムレースに殺られてしまいます!」

 

「黙ってろ、ジンツウ!!!」

 

 ジンツウが直ぐに沖田に反論したが、そんな彼女にマヤが怒鳴った。

 更にマヤはジンツウを殴りそうだったが、此れは沖田に制止された。

 

「別に自殺を強要させている訳でない。

レムレースは艦娘達の機関ばかりを攻撃しているが、裏を返すとレムレースは機関しか攻撃していない。

つまり、レムレースは機関エネルギーしか探知出来ないのかもしれないからだ」

 

「…っ!?」

 

 沖田の指摘通り、確かにレムレースは機関への攻撃しかやっていないだけでなく、思い起こすと攻撃を受けた者達は全員機関を全開にして動き回っていた上に、ヤマト以外の打撃部隊が妙に攻撃に晒されないのは微速でいるからだとしたら全ての辻褄があった。

 此の為、ジンツウに見られる通りに防衛司令部の全員が“あっ”とした。

 

『『『『全艦娘、機関停止!!!』』』』

 

 更にヤマト達4人は再度命じられる前に素早く機関停止を命じながら自分達も実行した。

 

「…っ!?

攻撃が止んだぞ!!!」

 

 沖田の読みは大当たりとなり、実際に日本艦隊への攻撃がピタリと止まり、防衛司令部の誰かと同じ様に驚いたローマ達イタリア艦隊も理由を察して直ぐに機関を止めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「…流石ね、沖田提督」

 

「間一髪でしたね」

 

 キリシマは他共々沖田の命令通りに機関を停止して、内心ビクビクしながらガミラスの反応を待っていたが、そのガミラスが攻撃を全くしてこなくなった現状に安堵の溜め息を吐き、そのキリシマにキサラギが微笑した。

 

「これで体勢を整えられます」

 

 沖田の命令でカモイが対潜網の再編したお陰で、足並みが乱れた事で探知が可能になった潜水カ級と同ヨ級の幾つかにキリシマのミサイルかスズヤのコスモパンサー隊で攻撃したので、現在は小休止に近い状態になっていた。

 

「…っ! 左旋回、20度」

 

「ヤマト、間違ってエンジンを吹かすなよ!」

 

「分かってるって」

 

 慣性航行をしているヤマトが野球ボールぐらいの小惑星に頭をぶつけてコスモレーダー1基が潰れた後、前方に小惑星があったのでヤマトは左側への横になって避けようとしていた処にアサシモの注意が飛んだ。

 この間に、キリシマ達6人は集合して計器を使って何かをし始めていたら、ヤマトの近くの小惑星が複数爆発した。

 

「……探り、ですね」

 

「ええ、どうやらレムレースは盲目状態に陥ってるみたいね」

 

 ヤマトの近くのが、レムレースによる攻撃だと察したハツシモとカスミが目線を合わせていた。

 

「キリシマ、どう?」

 

「あ~…御免、今の攻撃で、レムレースの移動軌跡は数百パターンに絞れた」

 

「数百って…」

 

 キリシマのヤマトの質問への返事に、サツキに見られる通りの呆れる声が多数あった。

 

「はなから無理なんじゃないか、レムレースの移動パターンを読むなんて」

 

 小惑星の影でキソが言った通り、キリシマ達はヤマトの提案でレムレースのパターンの解析をしていたのだが、諦め状態のキソは持ってきた酒ビンを取り出して飲もうと蓋を開けた。

 

「ふん!!」

 

「っ、あ!?」

 

「……かぁ~…、やっすい酒だなぁ~…」

 

 だが、キソが口に付ける直前に、いつの間にか近くにいたジュンヨウが奪って飲んだ。

 

「何すんだ、ジュンヨウ!!?」

 

 当然ながら、キソは直ぐにジュンヨウから酒を取り返そうとしたが、ジュンヨウは軽やかに避け続けていた。

 

「ふん、私はねぇ、酒が分からん奴が、やけ酒しているのが嫌いなんだよ」

 

「んだとぉ!!?

飲兵衛のお前に言われたくないわ!!!」

 

「飲兵衛だから、尚更嫌なんだよ!!!

此のジュンヨウ様はね、溺れる程アルコールを飲んでいるが、一瞬たりとも酒に飲まれたり、酒に逃げた事は無いんだよ!」

 

「逃げ!」

 

「過去の落ち度をいつまでもいじけてる奴に飲まれる酒なんか、もったいないこの上ないって言ってんだよ!!!」

 

 ジュンヨウの普段の温和さが一切無い怒鳴っての睨みに、キソは怖じ気付いていた。

 

『キリシマ、右25.26宇宙キロ先の宙域にヤマトを突っ込ませる。

補助エンジンの動力を餌にすると、左右補助エンジン各々への攻撃パターンは残り幾つかになる?』

 

 まぁ、そんなジュンヨウとキソのやり取りしたさておき、次の行動を悩んでいたヤマトやキリシマ達に、沖田の命令が混じった質問が来て、キリシマ達が“はっ”として急ぎ調べた。

 

「…補助エンジン左、7パターンです」

 

「補助エンジン右、13パターンです」

 

『……やはり、ガミラスは甘い存在ではないな』

 

 左右各々を調べたキリシマとキサラギ2人各々の報告に、沖田は“肉を切らせて骨を断つ”事を決心した。

 

『ヤマト、動力を使わず、右25.26宇宙キロに移動しろ』

 

「右25.26宇宙キロ先って、あの危険地帯に突進させるのか!!?」

 

 沖田がヤマトに通常航行でも危険な小惑星群の超過密宙域への突進命令に、キソに見られる通りに全員がギョッとした。

 

「待てよ、こんな事をしたって、相手は超光速艦なんだぞ!!!

あんな化け物にどうやって攻撃すんだよ!!?」

 

 ヤマトが沖田に答える前に、キソが思わず沖田に反論し、キリシマが何人かの他の者達と共にキソを睨んだのに反して、沖田はあまり反応しなかった。

 

『…キソ、確かに君の言う通りに、普通ならレムレースを倒せる可能性は0.01%以下だろう』

 

 沖田の艦隊司令とは思えぬ発言に、キリシマとホウショウが各々で睨んでいたが、キソは“そらみた事か”と言わんばかりの顔をした。

 

『…だが、レムレースは攻撃時に隙を見せている。

その隙が分かれば、1%ぐらいにはなるだろう』

 

「“最大のピンチは最大のチャンス”だと言いたいのか?

それでも1%しかないじゃないか」

 

『じゃあ逆に聞くが、万に一つもない絶望下で、1%僅な可能性が見えたのに何故諦めるのだ?』

 

 キソは沖田のまさかの返しに黙ってしまったが、少しした後に通常潜宙艦群の探りの魚雷が多数きて周囲の小惑星群に次々に被雷していた。

 

『ヤマト、時間が無い。

早く突進しろ』

 

「……え"いえ"い…」

 

 沖田が改めてヤマトに命令を下したが、当のヤマトは露骨に嫌がるも、両脇にある……追加装甲(プロテクター)を兼ねたロケットアンカー2基を両手各々に持つと、右手のロケットアンカーを飛ばして右前方の小惑星に突き刺すと、そのまま巻き上げての移動で目的の小惑星に右足を着け、直ぐに左手のロケットアンカーを別の小惑星に向けて構えた。

 

「ヤマトの移動って、なんか昔の漫画にあったスパイダーマンに似てない?」

 

「いやぁ、アレはどちらかと言うと、リンクじゃない?」

 

 ヤマトのロケットアンカー2基を使っての移動方に、アサカゼとカミカゼが何を連想するかで話していたが…

 

「うぅ~…」

 

「っ! ナトリさん!!?」

 

…キリシマ達と共に解析にあたっていたナトリが、先程リベッチオと激突した右肩を押さえながら屈んでしまい、アヤナミがミカヅキと共に慌ててナトリに駆け寄った。

 

「っ、不味いです!

ナトリさん、右肩の骨が折れてる可能性があります!」

 

「ナガラさん、何所にいるのですか!!?

来てください!!!」

 

 アヤナミはナトリの右肩が異様に腫れている事から彼女は行動不能と判断し、ナトリが呻きながらも何かを言おうとする前に、ミカヅキがナトリの代わりとしてナガラを呼んだが、そのナガラは目に見える範囲にいなかった。

 

「ミカヅキィ~…ナトリは此方に投げなぁ~。

代わりにコイツを使え!」

 

 ジュンヨウが負傷したナトリの引き受けを通達すると同時に、キソの提供を伝えたら、ミカヅキ達だけでなくキソ本人もが“え!?”とした。

 

「ちょと待て!!!

俺は何もやると言ってねえぞ!!!」

 

「なっさけないな。

天下無双のキソ様が、活躍する絶対の好機から逃げるなんてな。

だったらコイツを飲ませてやるよ。

ほれ、お酒様にお救いを願いな」

 

 キソはジュンヨウに逃げ道全てを潰されたのを察すると、ジュンヨウが突き出した酒ビンを奪い取ると直ぐに口に付けた。

 

「…っ! 人の酒を飲み干すんじゃねぇぇー!!!」

 

 酒ビンが空になっているのが分かったキソは、酒ビンをジュンヨウの胸に叩きつけると、後ろの小惑星を蹴ってキリシマ達の所に向かた。

 

「…御免なさい、キソさん」

 

「ふん!」

 

 ナトリは自分達の所にキソが来ると彼女に侘びを言い、直ぐにミカヅキとアヤナミがナトリの艤装から武装を剥ぎ取ってキソに手渡すと、ナトリをジュンヨウ目掛けて投げ飛ばした。

 で此の間に、ヤマトは危険宙域に突入する直前で止まって、拒絶反応として大きく息を吐いた。

 

「ヤマト、上手く行けそう?」

 

「…波動防壁を張っていい?」

 

「駄目よ、そんな事をしたらレムレースが来ちゃうでしょう。

その代わりに、アレを試しに使ってみたら?」

 

 完全な他人事として微笑しながら質問したキリシマに、ヤマトがムッとした。

 だがヤマトは次にきたキリシマの提案には“あ~”と頷くと、直ぐに小惑星から足を下ろして副砲2基の射撃準備を始めた。

 

「副砲、発射!!」

 

 ヤマトの行為に、キリシマとキサラギ以外の艦娘達が怪しんでいた中で、ヤマトは副砲2基を斉射し……放たれた砲弾群は本の少しした後に炸裂すると、なんか針の様な物体多数が小惑星群に次々に突き刺さっていった。

 

「ヤマトさん、上手く動きそうですか!!?」

 

 キサラギの大声での質問に、ヤマトは真上に上げた右手でのサムズアップで答えた。

 

「…マグネトロンウェーブ、照射!!!」

 

 ヤマトが艤装に何かを操作すると、先の物体付きの小惑星群が一斉にヤマトに引き寄せられ……ヤマトの周囲に(タル)を思わせる石垣が構成された。

 

「何なんですか、アレ?」

 

「アステロイドシップ、実用段階に入れたようですね」

 

 ヤマトの行った“アステロイドシップ”なるモノに、キサラギがイナヅマの質問に笑いながら答え、他の者達が“ほ~”と溜め息を吐いている中、ヤマトは石垣上部から頭を少し出して目視での確認をしてから危険宙域に進んだ。

 

「ヤマト、頑張れぇぇー!!!」

 

 小惑星群の過密宙域に突進して、小惑星の幾つかに衝突しながらも前進するヤマトに、スズヤが大声で応援していたが、当のヤマトはスズヤになんにも返さなかった。

 

(相変わらず大和は射撃が下手だねぇ~…)

 

 何故ならヤマトは、スズヤの応援に先代鈴谷をまた思い起こしながら、レムレース打倒の一手になる過去の出来事を確認していたからだ。

 此の時、ヤマトが思い起こしていたのは、赤城達第一航空艦隊(南雲艦隊)がインド洋で作戦を展開していた時の訓練の日々であった…




 感想か御意見を御待ちしています。

 今回にて、前倒し登場となったアステロイドシップ(オリジナルだと“アステロイドリング”)はオリジナル設定として、此れは深海棲艦の浮遊要塞を長年に渡る研究解析によって開発されたモノだと設定しています。
 此の為に、もし深海棲艦の前でアステロイドシップを、本編ではまだの高速回転モードを深海棲艦なんだぞ前で使用した場合、深海棲艦(ガミラスは知らん)は怒り狂うとしています。


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第40話 勝利の鍵は過去にあり(前編)

 今回の投稿前に、第28話から“小惑星帯”と書かないといけないのに“小惑星群”と間違えていたので、一斉に修正いたしました。




 それでは、本編をどうぞ。


――― 深海棲艦戦時・呉 ―――

 

 

 大日本帝国が深海棲艦との戦いに参戦してから、まだ半年も経過していない春……戦艦長門から連合艦隊(GF)旗艦を引き継いだ大和は訓練に明け暮れていたが、ハワイにて深海棲艦に大打撃を与えた空母赤城率いる第一航空艦隊(南雲艦隊)が、戦艦ウォースパイト率いるイギリス東洋艦隊との共同作戦である第十一号作戦を元にセイロン島を占拠した港湾棲姫の攻略を目指していた。

 

「さあ大和、今日も訓練にいくぞ」

 

「…今度は何所まで走るのですか?」

 

 大和は、稀に通常の的を使った基本的な砲撃訓練はあったものの、回避運動等の航行訓練として来る日も来る日も馬みたいに……障害物や条件がよく附属していたので、競馬と言うより馬術用の馬みたいに走らされていた事から、“今日もまたか”と見るからに不機嫌だった。

 そんな大和に反して、彼女の教導役の筆頭である戦艦日向は、なんか腹が立つ笑顔でいた。

 

「いや、今日からは本格的に砲撃訓練をやるぞ」

 

「砲撃訓練ですか!?」

 

「ああ、それも主砲のだ」

 

 先程までの不機嫌さは何処へやら、大和は日向の言葉に瞬時に目を輝かせる満面の笑みになった。

 だが直ぐに分かる事だが、日向が大和の期待通りの事をさせる訳がなかった。

 

「訓練内容は単純、伊勢と鈴谷の標的役をやらせるから、その2人に模擬弾を当日中に当てるだけだ」

 

 日向が通達した訓練内容に、大和が“えっ!?”とした。

 何故なら、戦艦伊勢は回避運動の連合艦隊屈指の達人だった上、重巡鈴谷も伊勢(と日向)程ではないもののそれなりの上手さがあった。

 

「おぉー、大和来たか!!!」

 

「さっさと始めようよ!!!」

 

 しかも不味い事に、先行して海上で準備をしていた伊勢と鈴谷は2人揃って見るからにやる気全開であった以上、訓練途上の大和の砲撃でまず被弾する事が考えられなかった。

 

「……扶桑さんか山城さんに交替してもらえません?」

 

馬ー鹿(バーカ)、あの2人に当てられない状態だと、初陣なんて遥か先だ。

さっさとしないと、また瑞鶴に馬鹿にされるぞ」

 

「……う~…」

 

 大和からしたら明らかな無理難題だったが、日向に拒否権無しとの意味合いで尻を蹴飛ばされたし、なによりハワイ沖海戦(真珠湾攻撃)後に早々と初陣を上げるだけでなく大戦果を上げた空母瑞鶴に訓練途上の身を馬鹿にされたのを腹立だしくも思い出した事もあって、ほぼヤケクソに近い気持ちで艤装を纏って海に降り立った。

 

「訓練始め!!!」

 

「いくわよ!!!」

「いくよ!!!」

「…っ!!!」

 

 大和が沖合いに出て配置に着いたのを確認した日向の号令下に、伊勢と鈴谷が瞬時に各々に動き、少し遅れて大和も前進して……何を思っていたのか、別個に動いている伊勢と鈴谷の2人を同時に狙っての交互射撃を開始した。

 

「うぉっと!!!」

 

「下手くそ下手くそ!!!」

 

「何をやっている、大和!!!」

 

 目に見えていたが、大和の砲撃は伊勢と鈴谷の2人とは明後日の海面に落ちていたので、見事に“二頭を追う者は一頭も得ず”な状態に陥っていたので、当然ながら日向が怒鳴ったが、当の大和は聞く耳を全く持っていなかった。

 

「あ~…こりゃ、回避した方が当たるかもねぇ~…」

 

「こんな下手くそな砲撃、鈴谷は全部避けちゃうよ!!!」

 

 更に伊勢と鈴谷は避けながら各々に大和をおちょくっていた事が、大和の状態を悪化させていたが、必死なのか頭に血が上っているのか大和はその事に気づいていなかった。

 

「……伊勢、鈴谷、そろそろ始めろ!!!」

 

「…?」

 

「オッケー!!!」

「おう!!!」

 

 日向は、主砲群の交互射撃から斉射に切り替えるだけでなく射程外の副砲4基までもを動員して醜態を晒しだした大和に溜め息を吐いた後、日向の指示に大和が気を取られてキョトンとした隙に、伊勢と鈴谷は揃って大和目掛けての一斉射をした。

 

「え、なんでぇ!!?」

 

 伊勢と鈴谷の予想外の射撃に、大和は慌てふためきながらもなんとか回避しようとしたが、残念ながら大和の動きは遅かった事もあって何発か被弾し、顔を庇った右腕や側頭部右側を初めとした艤装や体の何ヵ所かが塗料で赤く染まっていた。

 

「ちょっと、日向、これどう言う事ですか!!?」

 

「あ~…、言い忘れた。

伊勢と鈴谷には、大和が隙を見せたら攻撃するように伝えてるからな」

 

 当然ながら、大和は直ぐに日向に抗議したが、当の日向は涼しい顔をしていた。

 

「当たった分だけ罰マラソンをやらせるから、2人の砲撃には気を付けろよ~」

 

「そんな無茶な!!!」

 

 難易度が大幅に上がるだけでなく、お仕置きが待っている理不尽すぎる訓練内容に大和が唖然としたが…

 

すっき()ありぃー!!!」

 

「へ、っ!?」

 

…いつの間にかに可能な限り接近していた鈴谷が隙だらけの大和の背中目掛けて雷撃をして、大和はものの見事に被雷して派手に吹き飛ばされた。

 

「へっへーん!!!

砲撃ってのは、こうするんだよ!」

 

「……主砲、副砲、一斉射ぁぁー!!!」

 

 鈴谷が起き上がろうとした大和の顔面に模擬弾を当て、大和は顔の塗料を脱ぐって立ち上がると、鈴谷目掛けての一斉射撃をした。

 

「主砲6基、一斉射!!!」

 

 だが今度は伊勢の砲撃が多数直撃した為、大和の砲撃は鈴谷の遥か頭上を越えてからの遠方で水柱を上げるに終わった。

 

「うわ、悲惨!!!」

 

「なんか昔見た映画で、こんな怪人がいた!!!」

 

 射撃を派手に外すだけでなく、塗料を被りすぎて“赤い液体人間”になっていた大和の現状に、鈴谷と伊勢が泣くほど爆笑し、更に日向も必死に笑いを堪えていた。

 当の大和はと言うと、轟音が聞こえそうな程に震えていたら、心の中の何かが切れた。

 

「待てぇぇー!!!」

 

「いやぁー、来たぁ~!!!」

 

 大和は先ず近くの鈴谷目掛けての砲撃しながらの突撃を開始、鈴谷は大和の砲撃……だけでなく、何かの投げているのを含めて楽しそうに全て避けながら逃げ続け、更に伊勢が砲撃してきたら大和はそちらに進路を変えて、逃げる伊勢に代わって鈴谷が砲撃して大和が再反転する……そんな行為が延々続いていた。

 

「……初陣は遥か先だな…」

 

「…見事な赤っ恥ね」

 

 伊勢と鈴谷にいいようにやられて暴走している大和に、日向が溜め息を吐きながら頭を押さえていた処に、空母加賀がやってきた。

 因みに、第一航空艦隊が不在なのに主力空母の1人である加賀が此所にいるのかと言うと、彼女はパラオ諸島沖での座礁事故で足を負傷した事から静養として日本残留となっていて、その証として加賀は松葉杖を使っていた。

 

「出来の悪い弟子を持つと師匠は苦労するもんだな」

 

「私から見たら、貴女達は給料分の事をやっていると思えません」

 

 日向は瑞鶴を引き合いにしたかったようだが、加賀はそれを無視して大和の不出来は日向達だと注意した。

 因みに戦艦娘と空母娘はあまり良い関係とは言えないのだが、加賀は本来は戦艦になり、更に言うと運命の女神に微笑まれていれば、長門に代わって輝かしい座に付いていた筈だった艦娘であった事から、戦艦娘達とは良い関係を築いていた。

 

「もう少し助言ぐらいしてあげなさい。

分かるモノも理解出来ていないじゃない」

 

「悪いな、お前と違って嫌われ役の姑にはなれない不器用なんだ。

それに私の方針は“自分自身で理解させる”なんでな」

 

「だから、伊勢級の姉妹は駄目だと言われるのです」

 

 日向は加賀に言い負かされてしまったが、実際に大和を上手く指導や助言が出来ない自分達を悔やんでいた。

 此の点は、同じ教導役の戦艦榛名はメンタルケアを含めてある程度上手かったが、その榛名は長姉金剛と共に第一航空艦隊に編入されて不在な上に、何時帰ってくるかも不明だった。

 しかも大和は自己嫌悪だけでなく、ほぼ同期の瑞鶴が先述に加えて姉の翔鶴と共に単独作戦(後のMO作戦)を近々任されるとの噂からの焦りがあったから、余計に悪かった。

 

「なんとかしなさい。

あの娘が駄目の烙印を捺されたら、その責任は貴女達にも有るのですよ」

 

 加賀に言われるまでも、少なくとも日向はその事は自覚しており、大和が山本五十六GF長官達海軍上層部から悪く言われるだけでなく、自分達伊勢級の指導責任も追求されており、その現れとして近々竣工予定の二号艦(武蔵)の教導役には伊勢級と張り合っている扶桑級の最低一方が内定していたのだ。

 

「…まったく、宇垣に面倒な事を押し付けられたもんだ」

 

「はぁ?」

 

 頭を掻いている日向に加賀が怪訝な顔をしていたが、此の直後に大和が伊勢と鈴谷の一斉射撃に被弾していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「…っ、あい!?」

 

 小惑星群の過密宙域を進んでいたヤマトは、始めての実戦式の砲撃訓練を思い出していた事に気がいきすぎて過去に戻っていたが、アステロイドシップの石垣に小惑星群が次々に衝突し始めるだけでなく、潜宙艦の探りの雷撃で真上の小惑星が爆発して、その欠片の1つが自分の頂頭部に軽く接触した事から我に返った。

 

「ヤマト、大丈夫?」

 

 スズヤが直ぐにコスモパンサー隊で潜宙艦(潜水ヨ級)を沈めながらヤマトを心配したが、当のヤマトは、スズヤから先代鈴谷への僅かな殺意を少し思い出してしまうも、手を振って無事を伝えていた。

 

「ヤマト、そろそろ準備して」

 

 ヤマトはキリシマの頃合いを見計らっての指示に「了解」と返事をするも直ぐに準備に入った。

 

「おうおう、派手に進んでるねぇ~…」

 

「まるで除雪車ね……っ!?

アイツ、何やってんのよ!!?」

 

 エンジンを停止して小惑星の影に潜んでいる日本艦隊と違って、イタリア艦隊は時折攻撃してくる潜水カ級と同ヨ級を迎撃しながら、取り敢えずお手並み拝見としてヤマトの動向を静観していたが、レオナルド・ダ・ヴィンチとローマはそのヤマトが突然パルスレーザーでアステロイドシップの一点目掛けての砲撃を開始した事に驚き戸惑っていた。

 

「何で手で静かに開けようとしないんじゃ!?」

 

「あの馬鹿、あんな事してたらレムレースの攻撃を受けるわよ!」

 

 そんなヤマトの行為に、コンテ・ディ・カブールが理解出来ずにいて、ローマが危惧していたら、レムレースが探りとしての攻撃でヤマトの近くの小惑星群が爆発した。

 

「キリシマ、分析はどうなってます?」

 

「補助エンジン左、5パターンに特定できたわよ!」

 

「補助エンジン右、依然13パターンのままです」

 

 ヤマトの質問に、キリシマは自慢する様に答えたが、キサラギは逆に申し訳なさそうに答えた。

 

『キリシマ、ターゲットを左に絞れ』

 

 沖田の指令されるまでもなく、キリシマ達は右は断念して、直ぐにキサラギ達右を解析していた者達が左側のに協力した。

 

「とは言いましても、手詰まり感がありますけど…」

 

 だがアヤナミの指摘通り、確かにキリシマ達はレムレースへの一手が思い付けずにいた。

 

「だったら、コスモパンサーを囮にしたらどうだ?」

 

 そんな時に出たキソの提案に、全員が良い意味での“えっ?”とした。

 

「レムレースの奴は、艦載機や艦娘お構い無しに攻撃してるんだから、コスモパンサーを突発的な形で大量に放ったら、奴もいい反応をするんじゃないか?」

 

 キソの説明にキリシマ達が納得しながらの驚きで硬直してしまった。

 

『スズヤ、コスモパンサー30機、滑空(グライダー)状態でヤマト周囲の宙域へ飛ばせるか?』

 

「オッケー、スズヤに任せて!」

 

 キリシマに代わって、沖田がスズヤに命令に近い形での質問に、スズヤが即了解した。

 

「でもスズヤさん、艦載機をけっこう打ち落とされませんでした?」

 

「ジュンヨウ、スズヤのコスモパンサーは16機しかないんだけど、予備はどんだけある!?」

 

 だがミカヅキの指摘通り、スズヤのコスモパンサー隊は元々少数だった事もあって半減していたので、予備のコスモパンサー隊を預けていたジュンヨウを求めた。

 

「数百機……って言ってやりたいが、私も15機しか持ってきていない」

 

 元々ジュンヨウは医療装備だけでなく機関を追加した反動で、航空搭載量が本来の半分近くまでに減ってしまった上、今回はカーゴ2種も積んできたので、コスモパンサーの少なさに歯軋りしていた。

 まぁ仕方がないと言え、ジュンヨウが投げたコスモパンサーの人形(ヒトガタ)の束を受け取ったスズヤは、人形群を振って矢群に変えながら眉間に皺を寄せていた。

 

「……1回だけで、最終解析か…」

 

 スズヤが言った通りに状況はかなり悪く、キリシマ達が顔をしかめる処か、提案者のキソまでが後悔していた…

 

「もう30機あります!!!」

 

…そんなスズヤ目掛けてコスモパンサーの矢が多数入った矢筒が飛んできて、スズヤが驚きながら受け止めた。

 

「それはスバスヴィエロのです!!

それを貴女に託します!」

 

「アクィラ、あんた何やってんのよ!!?」

 

 アクィラが撃沈したスバスヴィエロの矢筒を送った事にローマが怒鳴っていたが、どうやらローマはヤマトがレムレースを倒そうとしている事に乗り気ではないようだった。

 

「…ハツシモ、此れ預かって」

 

 スズヤは矢筒を近くにいたハツシモに投げ渡すと、頭上に右手を上げるとアクィラにサムズアップをした。

 

「30機追加なったと言え、2回で最終解析をしないといけないのですか…」

 

「チャンスは多いのか少ないのか、分からんな」

 

 キサラギがプレッシャーから溜め息を吐いて、キソが苦笑したが、キリシマがキサラギの叩いた。

 

「スズヤ航空隊、発進準備完了!!!」

 

 そんなキサラギ達3人に反して、スズヤは鼻息粗い状況だった。

 

『スズヤさん、これから貴女の航空隊の飛翔は完全に録画させてもらいますからね。

教材に使うつもりですから、しっかりやってください』

 

「おおう!!!

スズヤ、そう言われちゃうと燃えるよぉー!!!」

 

「入り込み過ぎて、下手こかないでよ!」

 

 スズヤがホウショウからの激励に近い通達でますます乗り気になっていたが、キリシマが注意しながらスズヤの左腕を小突き、スズヤが少しぶぅたれたものの、そのまま最終確認を始めた。

 

『スズヤ、キリシマ、用意はいいな?』

 

 スズヤとキリシマが沖田の最後通達に揃って「はい!!!」と大声で答えた。




 感想または御意見をお待ちしています。

 史実での重巡『鈴谷』は他の最上級3隻と共に馬来艦隊(小沢艦隊)の一員としてインド洋海戦に参加していますが、本作の鈴谷は大和の指導の為に日本残留になったとしています。
 もしかしたら、鈴谷は1人だけインド洋に行けなかった事に拗ねたから、大和に少し八つ当たりしていたのかもしれません。

 更に過去パート最後で日向が言った“宇垣”なる人物は、同時連合艦隊参謀長だった宇垣纏海軍少将の事です。
 本来は、過去パート終盤での日向とやり取りをしたのは、史実通りに正規空母で唯一日本残留になった加賀になってますが、当初は宇垣でして、持ち越しになりましたが次回の過去パートで宇垣が日向と一緒に出る予定です。

日向
「私からの補足だが、本編での理由は不明だが、宇垣が『日向』の艦長だったとのメタ的な理由から、私は宇垣と階級云々関係なしに親しくしているぞ。
まぁ少し違うと思うが、私と宇垣は“貴様と俺”の仲なのかもな」

 因みに、今回出た加賀の次代が暗黒星団帝国編に出ますが、空母娘としての加賀(&カガ)は今回で最初で最後になる公算が大です。

加賀
「既に第2話と“設定 艦娘”2つの後書きでも書かれていますが、私の次代(カガ)の2人目はアンドロメダ級戦艦の後継艦である春蘭(しゅんらん)級戦艦として出るからです」

 もしかしたら春蘭は、中国の戦艦娘としてカガと一緒に白色彗星帝国編で先行登場するかもしれませんが、暗黒星団帝国編では名前だけの存在になる公算が大です。
 更に性格も、当初は(二番艦)がカガだからキツい為に臆病(デカイ山風)になったとしていましたが、最近名前ネタで恋姫無双版夏候惇(瑞の海・鳳の海版長門が近い?)でもいいかなぁ~…と悩んでます。
 後者の性格が採用されたら、もしかしたら春蘭級三番艦として秋蘭(しゅうらん)(恋姫無双版夏候淵)が出るかもしれませんよ………トサ(土佐)? それは知らん。

加賀
「…貴方、然り気無く酷い事を言いませんでしたか?」

…そ、それと、此れはまだ検討中ですが、生存していて白色彗星帝国編でヤマトと同行する空母アカギの事で1つ。
 アカギはもしかしたら土星での戦い辺りで大破した事で、アカギの艤装を改装資材に提供した事でアマギがオリジナル形態の“アマギ改二紅(仮)”になって、アカギ本人は何らかの経緯で“アカギ新(仮)”として空母型アンドロメダ級の艤装を纏うかもしれません。
 此の影響でアタゴ(愛宕)が空母型アンドロメダ級として出るかもしれませんし、もしかしたら此のアタゴがアカギに自分の艤装を提供するのかもしれません。
 此れ等は2202の第6章と第7章で考えます。

 まぁだからと言って、アカギはアマギと終始絡ませる予定なので、アカギとカガの共演はありません。

加賀
「……頭にきます」


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第41話 勝利の鍵は過去にあり(後編)

――― 深海棲艦戦時・呉 ―――

 

 

「あ、あそこで誰か演習してるな」

 

「…あれは、鈴谷さんと伊勢さん……あと1人は誰でしょう?」

 

 第十一作戦終了後、小沢治三郎中将率いる第一南遣艦隊旗艦を香椎(香取級練習巡洋艦三番艦)に譲った重巡鳥海が、空母龍驤、軽巡由良、そして軽巡川内率いる第三水雷戦隊(吹雪、白雪、初雪、叢雲、磯波、浦波、綾波、敷波、天霧、狭霧、朝潮、大潮、荒潮、満潮、全員駆逐艦)と共に、第一航空艦隊に先んじて日本本土に帰還して呉を目指して航行していたら、天霧と狭霧が遠くで演習をしている3人の艦娘達を見つけた。

 

「ああ、あれは大和ですね」

 

「あの人が噂の一号艦ですか!」

 

 演習していた3人の内、鈴谷と伊勢は直ぐに分かるも最後の1人だけは塗料まみれになっていた事もあって全員首を傾げていたが、鳥海はその1人こそが戦艦大和だと見抜いて、大潮を最初に他の者達も次々に頷いた。

 因みに、日本の対深海棲艦戦に参戦する少し前から第一南遣艦隊を率いて東南アジアを東奔西走していた鳥海が、徹底的な秘匿状態だった大和を知っていたのは、軍令部次長兼海大校長で、後に第二艦隊司令長官として大和とも重要な関わりを持つ事になる伊藤整一中将と親しい次姉(高雄級二番艦)愛宕から教えてもらったからだ。

 

「綺麗な人ですね…」

 

 元々大和の顔は比較的塗料を被っていなかった上に、大和が伊勢の砲撃の至近弾で発生した水柱に突っ込んだお掛けで塗料がかなり落ちた事で見える様になった全身像から、吹雪が見惚れて溜め息を吐いた。

 

「綺麗なだけじゃあ、この世界は生きてけないわよ」

 

 だが荒潮がぼやいた通り、大和は砲撃は悉く外れているだけでなく、鈴谷の砲撃に被弾して早くも塗料まみれに戻ろうとしていた。

 

「お~…、避けんのは上手そうやな」

 

「だけど、射撃は全く駄目だね」

 

「ホンマやな。

伊勢はんや日向はんみたいに“避けながら撃つ”のを真似とるんかは知らんが、無理な事をやって二頭を追って一頭を得られてない状態やな」

 

「あんなんじゃあ、夜戦は出来ないね」

 

 龍驤と川内が大和の分析をしながら話し合って、要約したら大和はまだまだ実戦は無理だと結論づけていた。

 況してや、大和自身の焦りの最大の要因でもある、早々と初陣を飾って以降も戦果を上げ続けている瑞鶴を知っていた事が、余計に大和に失望感を感じさせた。

 更に不味い事に、自分の砲撃が当たらないのに反して、鈴谷と伊勢の砲撃は当たっている現状から、大和が悔しさと自己嫌悪からしゃがんで泣き出してしまい、鈴谷と伊勢が“少しやり過ぎたかな?”と目線を合わせた後に戸惑いながらも大和に寄ろうとしたが、大和の後頭部に“さっさと続けろ!”の意味で飛んできた何かが直撃して大和が伸びてしまった光景が余計に輪を掛けていた。

 

「…あの、神通さんって、大和さんの教導役でしたか?」

 

「いや、神通は第二水雷戦隊を率いて東南アジアにいる筈たけど…」

 

 どうやら駆逐艦娘達は大和の最後の部分で神通を思い起こしたらしく、2ヶ月前まで神通の指揮下にいた朝潮の質問に神通の姉である川内が、彼女も神通を思う事があった様で戸惑っていた。

 因みに、第二水雷戦隊は確かに川内の言う通りに東南アジアにいたが、神通は先日から呉で休養していた。

 

「……あれは教えてる方が悪いですね。

あれでは、何時まで経ってもまともになりません」

 

 そんな中で、鳥海は大和の不出来の理由は、大和自身ではなく、指導側にあると結論づけていた。

 

「まったく、誰があの人の責任者なんですかね…」

 

 川内達が“えっ?”としているのを無視して、鳥海は呉へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな、悪い師匠で」

 

 数刻後、呉の連合艦隊司令部にて、鳥海が連合艦隊参謀長の宇垣纏少将に帰還報告をして暫くの休養が他共々命じられた後、鳥海が大和の指導に苦言を色々言ったら、宇垣の秘書艦として同室していた日向が仏頂面で返したので、宇垣のみは“黄金仮面”の渾名通りに無反応だったが、鳥海が“げっ”として、龍驤と由良が苦笑した。

 因みに此所に川内もいるべきなのだが、基本的に夜行性の彼女は由良を代理にして夜間活動の為の仮眠していた。

 

「だがな、私なりにアイツに自分で分からせようとしているんだよ」

 

「お言葉ですけど、放任主義も度が過ぎると職務放棄になります」

 

「だったら、私は手取り足取り教えるべきなのか?」

 

「自分達の不出来を、大和の責任に転換しないでください」

 

 日向も自分なりの言い訳をしたが、鳥海は彼女を睨みながら否定した。

 だがそんな鳥海に、宇垣は僅かに目を光らせ、日向は長年の付き合いである事からそれを見抜くと同時に嫌な予感を感じた。

 

「では鳥海、君なら大和を上手く指導出来るのか?」

 

「ええ、私の計算通りならば」

 

「だったら、君を大和の教導役に加えよう」

 

 まさかの宇垣の命令に、鳥海達4人が“えっ!?”とした。

 

「榛名だけでなく、鈴谷が姉妹達(第七戦隊)共々第一航空艦隊への編入が検討されていてな、榛名と鈴谷の代わりを探していたから丁度良かったよ」

 

「私が大和を教えろと?」

 

「君は実戦を幾つか体験した事も魅力的だからな、それとも先の言葉は出任せだったのか?」

 

「……了解しました。

鳥海、大和の教導役を慎んでお受けします!」

 

 宇垣の“拒否は認めない”との強気な目線に、鳥海は少し戸惑ったが、直ぐに顔に“望むところ”と出しながら敬礼した。

 

「鳥海さん、本当に引き受けるのですか!?」

 

「あんた、教官職をやった事が無いやんか!」

 

 踵を返して退室する鳥海に、彼女が俄然やる気な事から、彼女に由良と龍驤が驚き戸惑いながら続いた。

 そんな形で鳥海達3人の気配が消えた後に、日向が溜め息を大きく吐いた。

 

「本当に良いのか?」

 

「軍令部には俺から話しておく。

福留(軍令部第一部長福留繁少将、宇垣の海軍兵学校同期)なら分かってくれるし、上手くやってくれる」

 

「そう言ってるんじゃなくて」

 

「ミナまで言うな。

大和は翔鶴級の姉妹と違って一流では戦場には出れん。

出る為には超一流になるしかないんだ」

 

 日向も思い当たる事があったが、軍令部と海軍省は大和を前線に出す気が無く、表向きは艦隊決戦の切り札としての温存とされているが、明らかに何か別の理由がある気がしていた。

 況してや、現在の連合艦隊司令長官山本五十六は航空主兵主義者の急先鋒である事から、戦艦娘達や大艦巨砲主義者の提督を否定的なのだから尚更であった。

 現に宇垣も、先述の福留との入れ換え人事で連合艦隊参謀長に就任予定だったのが、山本が拒否として第八戦隊司令官だった伊藤整一を起用して宇垣は第八戦隊司令官として、伊藤が軍令部に出向した後にやっと参謀長に就任した後も、黒島亀人や夜森大介等の優遇される参謀達とは真逆で冷遇される証として、宇垣が1人食事をやったのは数えきれない程あった。

 

「だからこそ、お前達に大和をしごかせたんだがな…」

 

「…私達では役不足だったて言いたいのか?

大和の教導役を頭を下げて頼んだのは誰だった?」

 

「あの時はお前等が此処まで教え下手だとは思わなかったからな」

 

 宇垣と日向は暫く睨み合っていた後、同時に笑いだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こんな時間に、こんな所にいたのですか」

 

「…っ! 鳥海、さん!?」

 

 鳥海が宇垣達と別れた後、罰マラソンをやらされていた後に呉から姿を眩ませた大和を探していた為、彼女に出会えたのは日が暮れてからかなりの時間が経った時だった。

 

「こんな所が有るとは知りませんでした。

いい具合に木々が周りに生えてますから、絶好の隠れ家ですね」

 

「なんで此所が分かったのですか?」

 

「夜間訓練中の川内が、此の島で変な光があったって教えてくれたのですよ」

 

 大和がいたのは、岩壁を背にしたあばら小屋のみが存在する、呉から少し離れた小島で、此のあばら小屋近くの岸部に大和は座って抱えた両膝に顔を埋めていた処に、鳥海が背後から現れたので驚いて彼女の方に振り向いた。

 鳥海が驚いている通り、此所は艦娘達処か地元の者達も認知していない忘れられた小島だったが、大和は此の小島を秘密の自主鍛練所としていた様で、あばら小屋の中に、水筒、大量の缶詰、幾つかの教本があり、更に大和の近くに鎮守府から勝手に持ち出した遠隔操作(リモコン)式の的や旗付きブイが複数、十四年式拳銃、九九式小銃までがあった。

 鳥海が見た処だと、大和はつい先程まで射撃の自主練……大和前方の海に浮かぶ的3つ各々に貼ってある鈴谷、伊勢、日向の等身大ポスターが色々落書きをした後に蜂の巣になってる事から、ほぼ八つ当たりに等しいのをやっていたが、虚しくなったから止めた様だった。

 

「よくもまぁ、頑張ってたものですね。

貴女、連合艦隊旗艦の職務は大丈夫なのですか?」

 

「連合艦隊旗艦は殆ど長門がやってますから、事実上のお飾りですよ」

 

 辺り一帯に落ちている大量の空薬莢等で、大和の負けん気の強さや努力痕は鳥海でなくても分かる事は出来たが、やはりそれ等が実積に結び付いていない事から大和は拗ねていた。

 鳥海はそんな大和の思いを察しながら、彼女の隣に進むと沖で流されいる的の1つに主砲を向け……見事1発でその的を射ぬいた。

 

「まぁこんな的は、鈴谷や伊勢さんと違って、動き回ったり本気で避けようとはしませんからね」

 

 鳥海は言いながらもう1発撃って、先程の的に開けた穴に砲弾を通し……高等射撃技である“ワンホールショット”をやったが、大和は益々ブスッとして両膝に顔を埋めていた。

 

「…ですけど、此の距離であの的を射ぬいているんですから、大したものです」

 

「おだてても何もありません」

 

 大和は世辞と勘違いしていじけていたが、鳥海は射ぬかれた的群と、昼間の演習で鈴谷と伊勢各々がいた海域に砲弾を落としていた事から、大和の潜在性の高さを確信していた。

 更に大和の艤装も最新鋭戦艦の名に恥じない代物だったが、たった1つの歯車が噛み合っていない為に内外揃って不調を起こしている事を見抜いていた。

 

「あの的を射ぬけれるのに、どうして鈴谷や伊勢さんには当たらないのでしょうね」

 

 此の時、鳥海は大和の射撃を狂わす歯車の直し方が分かっていた。

 

「簡単な事です。

貴女は的がどう動くのかを知っているからです」

 

「だからどうしろと言うのですか?」

 

「鈴谷と伊勢さんの動きの法則を読めばいいんですよ」

 

「動きの、法則?」

 

 鳥海の指摘に、大和の目の色が変わった。

 

「暫くは塗料まみれになりますが、2人の動きの法則を探りなさい」

 

「え~…」

 

「いいですか、5戦5勝も5戦3勝2敗も大した差は無いんですよ。

寧ろ5勝全勝は危ない傾向を招く代物ですが、3勝2敗は随分タメになりますよ」

 

 鳥海の教えに大和はどうかは知らないが、もしかしたら鳥海はこの時既に、後にミッドウェー沖での慢心による大敗を引き起こす事になる日本海軍の危険性を察していたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「そんじゃあキリシマ、いっくよぉー!」

 

「頼むわよ」

 

「スズヤ航空隊、エンジン着けずに発艦!!」

 

 スズヤがキリシマ達が準備を終えたのを確認すると、スズヤはボーガンでコスモパンサーを次々に放ち始めた。

 

「あ~…仕方がないと言え、勿体ないです」

 

「アカギさんがいたら、確実に怒りますね」

 

 レムレースを解析する為の囮として失われるだろうコスモパンサー隊に、イナヅマとサミダレが目線を合わせて苦笑した。

 因みに、解析用のコスモパンサー隊は2セットはあるが、もしもの時の保険としてヤマトのコスモタイガー隊も囮に投入予定だが、チトセがコスモファルコンを使っている事から見て取れるが、コスモタイガーは只でさえ生産数が絶対的に少ないので、そうなったら資源が悲惨な事になる筈だった。

 

「来なさい、レムレース」

 

「餌に食い付きなさい」

 

「お前の動き、しっかり見抜いてやる」

 

 まぁそんな事など関係なく、キリシマとキソがコスモパンサー隊が飛んでいった、レムレースがいるだろう宙域を睨んでいる通り、彼女達はなんとしてでもレムレースの動きを解析するつもりだった。

 

「…っ、いいじゃん、いいじゃん!!」

 

「……ほぉ~…」

 

 コスモパンサー隊がヤマトがいる小惑星密集宙域に突入し、スズヤはエンジン無起動状態のままに四方八方に散らせた。

 ヤマトがそうである通りに、スズヤの見事な使役に誰もが感服していたが、当のスズヤは言葉の割りに顔から派手に汗が吹き出ていた。

 

「スズヤ!!」

 

「…動力エンジン始動!!!」

 

 キリシマの叫びにスズヤが答え、予定通りにコスモパンサー隊全機のエンジンを一斉に起動させた。

 此の事でコスモパンサー隊の使役の難易度が遥かに上がったが、高速で小惑星群の僅かな隙間を不規則に飛び回るコスモパンサー隊は全機追突処か、小惑星に掠りもしていなかった。

 

「…凄い!!

あの人、本当に空母になりたての元巡洋艦娘ですか!?」

 

「もっと誉めなさい!

スズヤは褒められると、もっと凄くなるよ!」

 

 スズヤの見事な使役に、アクィラが驚愕していたが、スズヤは自分を誤魔化そうと敢えて調子の良い言葉を発した。

 

「さぁ、レムレース!!!

食えるもんな、食ってみろ!!!」

 

 此のスズヤの挑発的な叫びがどうやら死語になったらしく、この直後にコスモパンサー隊30機全てが周囲の小惑星群諸共一斉に爆発した。

 

「ああ!!?」

 

「ぬぅ!!?」

 

 当然、此れがレムレースの攻撃である事は誰の目でも明らかであり、スズヤが硬直したり、ローマが唸り声を短く上げたりした様に、此の宙域にいた艦娘達だけでなく、此の光景を目撃した防衛司令部の者達までが驚きや戸惑いの声を上げていた。

 

「…っ!」

 

 だがキリシマ達6人は、はっとしたキリシマがキソ、カモイ、キサラギ、アヤナミ、サミダレ、ミカヅキの6人に順番に目線を合わせての頷き合いをした。

 

「…ヤマト、沖田提督……出来たわよ。

レムレースの動きのパターンの解析が出来たわよ!」

 

 キリシマは興奮しながらの報告に、ヤマトは“来たか”と目を向き、沖田は「うむ」と頷いた。

 

「先ず良い事を教えるわ。

レムレースは……奴は、艦隊行動をとってない、単艦で動いてるわよ!」

 

 キリシマは事実上ヤマトにバトンを渡したが、そのヤマトがやる事は1つしかなかった。




 感想、御意見をお待ちしています。

 次回か、次々回あたりでレムレースと決着が着きます。
 仕留めろよ、大和!

大和
「大和、全力で参ります!!!」


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第42話 決着せよ、宇宙戦艦対潜宙艦(前編)

 今回の投稿前に“設定 艦娘”での“未所有故の出演不可”“日進”“峯雲”“早波”“ジョンソン”を追加しましたが、“峯雲”は獲得しましたので削除しました。




 それでは本編をどうぞ。


――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「藤堂長官より、小惑星帯に生存する全艦娘の一切の行動停止の厳命が入りました!」

 

「いよいよ仕掛ける気か!」

 

 アクィラが藤堂の命令を叫んで伝えると、コンテ・ディ・カブールの反応通りに、イタリア艦隊の全員がヤマトが動く事を察した。

 

「……嫌だ…嫌だ!!!」

 

「「ローマ!!!?」」

「ローマさん!!?」

 

 だがローマは、その命令を拒絶してヤマトがいる宙域に突進しようとしたが、その直前にコンテ・ディ・カブール、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ポーラが3人係りで彼女に飛び付いて止めた。

 

「何をする気じゃあ!!!」

 

「姉さんの、イタリア姉さんの仇は私が取るんだ!!!」

 

「諦めろ!

もうお前では無理だ!」

 

「アンドレア・ドゥーリオ達が、私の我が儘に着いてきたみんなが犬死になるじゃない!!!」

 

 コンテ・ディ・カブールとレオナルド・ダ・ヴィンチはローマの純粋な姉や死んだ仲間達への思いを察する事が出来たので、彼女に“諦めろ”の一言で黙らせる事は出来そうになかった。

 

「ローマの奴、暴走しかけてるな」

 

 当然ながら、ジュンヨウが呆れている通りに日本艦隊もローマのに気づいて、彼女の思いと行動を察していた。

 

「どうするんですか?」

 

「…ミサイル、叩き込もうかしら?」

 

 サミダレの質問に、キリシマが溜め息を吐いての物騒な事を言ったが、作戦の破綻が考えられる以上はそれもやむを得ないと思えた。

 

(…示しなさい!!)

 

「…っ!?」

 

(言葉ではなく、その行動で!)

 

「…っ!

カモイ、1つ教えてください」

 

「え、あ、はい」

 

 だがそんな時に、ヤマトがカモイに訊ねた事で、キリシマ達がギョッとした、

 

「落ち着いてください!」

 

「離して!!!…っ!?」

 

 騒いでいるローマがポーラを引き剥がそうとしたら、不意にヤマトの岩壁が回ったら……ヤマトが三式弾による主砲射撃でローマ達に近づこうとした潜水ヨ級を射ぬいた。

 

「……何やったのですか、あの人は?」

 

 唖然としたアクィラに見られる通り、まさかのヤマトの砲撃でイタリア艦隊全員が硬直した。

 更にヤマトがローマを睨んでいた事もあって、イタリア艦隊に嫌な予感を感じさせたが、当のローマはヤマトに睨み返していたものの、それ以外はなにも行動を起こそうとしなかった。

 

「……出来なかったら、レムレースより前に私がアイツを沈める」

 

「どう言う事じゃ?」

 

 突然ローマがヤマトからの目線を外すと、大人しく引き返した為に、コンテ・ディ・カブールが他共々困惑した。

 

「…お見事」

 

 ヤマトの行動だけでなく、彼女の“私が思いを持って討つ”との目線での訴えにキリシマが微笑していたが、当のヤマトは何の反応も示さなかった。

 

「…“示しなさい、言葉ではなくその行動で”」

 

 只、ヤマトは突然自分に言った金髪の長髪の女性からの幻に戸惑いながらもそうした事を、うつむきながら幻が言った言葉を反復していた。

 

『ヤマト、スズヤ、準備しろ!』

 

「はい~い!!

スズヤ航空隊、発艦準備!」

 

「あ、はい!!

ヤマト、左補助エンジン始動準備!」

 

 沖田は状況的から作戦可能と判断し、スズヤとヤマトに命令が入り、ヤマトが少し慌てて出遅れものの、直ぐにスズヤと共に準備を始めた。

 

「ヤマトさん、解析データをお渡しします」

 

「ヤマト、一言言わせてもらうぞ。

此のキソ様が解析に加わった以上は、万が一にも間違いはあり得ねぇ。

もしレムレースを沈めれなかった場合、その原因はお前がヘボだって事だ。

自信が無かったら、キリシマに代わるんだな」

 

 キサラギがヤマトに激励を含めてのデータを送信したら、キソが水を指しかねない事を言ったので、全員がギョッとした。

 

「そう言うのは、ナガト(長門)か武蔵に言いなさい!!!」

 

「わりわりわりぃー!!!」

 

 尤も、ナガラが直ぐにキソをプロレスの関節技で締め上げたので、キソがタップをしながら悲鳴を上げていたが、此れがヤマトにリラックスをさせた。

 

『ヤマト、スズヤ、準備は良いか?』

 

「何時でもけっこう!」

「オッケーよん!!」

 

 現場の艦娘達が各々にヤマトに激励した後、沖田の最終確認へのヤマトとスズヤの返しに、沖田は「うむ」と頷いた。

 

『…レムレース……否、レムール(lemur)(単体影or影の艦)の最後だ』

 

「さぁヤマト、トッチメに行こう!!!」

 

 沖田の作戦開始の通達だけでなく、それに乗っかったスズヤにも含めて、ヤマトが2人各々に頷いた後、第三主砲を左舷に旋回させると、左側の岸壁の一点にパルスレーザーを大量に浴びせた。

 

「あやつは、また何をやっとるのだ?」

 

「…あっ、そうか、熱エネルギーか!!」

 

「っ! 詰まりアレは、撒き餌か!」

 

 コンテ・ディ・カブールがヤマトのパルスレーザーでの行動に首を傾げたが、レオナルド・ダ・ヴィンチはレムレースがエネルギー探知しか出来ない事を思い出してヤマトの行動を察し、コンテ・ディ・カブールと目線を合わせた。

 そしてヤマトの狙い通り、レムレースはヤマトの行動からの熱エネルギーを探知したらしく、レムレースのと思われる影が蠢き始めた。

 

「スズヤ!!!」

 

「まっかせなさい!!!

スズヤ航空隊第二波発進!!!」

 

 ヤマトもレムレースの気配を感じて、スズヤがヤマトの指示通りにコスモパンサー隊を滑空状態で発艦させ、ヤマトの周囲に展開させた。

 

(…良いですか、動きのパターンを読んで、その一手先に砲弾を落とすのですよ)

 

 ヤマトはスズヤのコスモパンサー隊を見つめながら、先代鳥海の教えを思い起こしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 深海棲艦戦時・呉 ―――

 

 

(あらゆる物質に動きの法則が各々にあり、人にもまた人各々の動きの法則があるんですよ。

それを読むんです)

 

「…どうしたんだろ、大和?

なんか大人しくね」

 

「やっぱり鳥海が悪知恵を教えたんだよ」

 

 鳥海が大和の教導役に合流してから数日後、合流後から前兆があったものの、本日の演習では普段なら挑発や当たらない砲撃の現状から感情むき出しにする筈の大和が、腕を組んで砲撃をしながら妙に静かにして、伊勢と鈴谷の砲撃を避け続けている現状に、伊勢の鈴谷は各々に回避運動をしながら目線を合わせていた。

 しかも大和は2人の挑発に全く反応しない処か、伊勢と鈴谷に、日向と一緒に埠頭にいる鳥海と共にニヤけていた事が、2人に戸惑わせていた。

 

「伊勢、鈴谷、気ぃ引き締めろ!!」

 

 日向も大和の事に何か思う事があったらしく、直ぐに2人に檄を飛ばすと、伊勢と鈴谷は目線を合わせて同時に頷いた。

 先ず鈴谷が巡洋艦ならではの高速をもって、回避しながら大和に砲雷撃を仕掛けようとしたが…

 

「…っ、ち!!!」

 

…ある程度接近した所で、大和の副砲4基の連射での牽制に阻まれた。

 

「…ヤバい!」

 

「鈴谷ぁ~、なーに()やってんのよ?」

 

 大和の副砲群の砲撃に、鈴谷が距離を取ろうとして伊勢に笑われていたが、大和(級戦艦)の副砲こと15cm砲はと言うと、元々は鈴谷達最上級巡洋艦が軽巡時代(但し書類上は重巡への艦種変更が行われた形跡無し)の主砲は、近々竣工予定の秋月級駆逐艦の10cm砲が登場するまで日本海軍最良砲であり、過去に最上級の20cm砲への改装を否定する者達が多数いただけでなく、後に陸軍によって五式高射砲に改造される高性能砲だったから、その怖さを知っている鈴谷が必要以上に怯えたのは仕方がない事であった。

 

「さぁって、っ!?

ちっ!!!」

 

 まぁ此の隙に伊勢が砲撃準備をしようとしたが、此方にも大和の主砲2基の砲撃が降り注ごうとしたので、舌打ちをしながら回避運動を行ったが、此の時に大和の右目が光った。

 

(人にも動きの法則が当てはまるなんて思えないでしょう?

ですけど、その人各々の“生まれ”や“育ち”、“教え”や“経験”、色々な要素から“癖”や“性格”とも言える動きの法則を各々に持っているのですよ)

 

 鳥海の教え通り、此の数日間の負けながらの解析で、少なくとも伊勢には当てはまった。

 “伊勢は取舵(左旋回)をよくしたがる”、例外的な事はあるものの、極限状態であればある程にその携行は強かった。

 現に伊勢は大和の読み通りに取り舵を取ろうとしていた。

 

(読んだ一手先に砲弾を落とせれば…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「いくよ、ヤマト!!!」

 

「頼みます!!!」

 

 ヤマトの許可の下に、スズヤは先程と同じ様にコスモパンサー隊のエンジンを一斉に起動させた。

 ヤマトは高速で各々に飛び回るコスモパンサー隊を、伊勢の顔を思い出した事もあって、笑いを堪えながら見つめていた。

 で少しした後、コスモパンサー隊がレムレースの攻撃で一斉に撃墜された。

 

『…懸かった!!!』

 

『っ!?』

『ヒュ~!!!』

 

 日本の艦娘達全員が心の中でそうであったが、沖田が珍しく叫んで反応したので、脇にいるホウショウが驚きながら彼に振り向いて、マヤが口笛を吹いていた。

 

「左補助エンジン、フル稼働!!!」

 

 だが此の間に、ヤマトはキサラギ達のデータを一瞬の間に確認した後に左補助エンジンのみの片肺で前進を開始した。

 

「偽装解除!!!」

 

 更にヤマトが艤装に何かの操作をしながらの号令下、樽型岸壁を構成していた岩群が一斉に分離してヤマトの外側に飛びんだ。

 

「…電磁誘導最大……高速回転、船体防御!

回れぇぇー!!!」

 

 そしてヤマトが最後の操作を行うと、岩群は輪型に高速回転しながらヤマトの真横から真縦に移動した。

 此のヤマトが行った、アステロイドシップからアステロイドリングに移行したを目撃して、沖田以外の誰もが驚きの声を出していた。

 レムレースもまた、アステロイドシップは兎も角として、レムレース的には不意に近い形で現れたヤマトに慌てて反応したらしく、ヤマトから離れた宙域の小惑星群の幾つかが砕けた。

 間違いなくレムレースがヤマトに向かった事を察して日本の艦娘達が思わず「ヤマト(さん)!!!」と一斉に叫んだが、当のヤマトはタイミングを見計らっているのか直ぐに動かなかった。

 

「……今だ、第三主砲発射!!!」

 

 少し間を置いてヤマトは遂に主砲を撃ったが、驚くべき事にヤマトの射撃は衝撃砲ではなく三式弾によるモノだった。

 

(動きの法則を読むのですよ。

そしてその一手先に砲弾を落とすのです)

 

 また先代鳥海の教えを思い起こしていたヤマトが放った砲弾3発は小惑星群の間を縫って飛翔を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 深海棲艦戦時・呉 ―――

 

 

「…次は当てる!!!」

 

 大和は伊勢の動きに合わせて、彼女に背を向けると第三主砲を直ぐに放った。

 

「っ、ヤバ!!!」

 

馬鹿(伊勢)、避けろ!!!」

 

 大和に動きを読まれるだけでなく、自分目掛けて飛んでくる砲弾3発が直撃コースを描いている事を察して、伊勢が顔を青くした。

 思わず日向が伊勢に怒鳴ったが、当の伊勢は狙われたのが舵を戻す途中だった為に上手く動けないでいた。

 

(そうしたら、砲弾なんて意図も簡単に…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「……そうすれば、意図も簡単に…」

 

 先代鳥海の教えの一部を口に出していたヤマトが見つめる砲弾3発は飛翔途中で、誘導装置が作動して大型小惑星の1つに沿う形で進路を変えた。

 此の間にヤマトの右手が軽く開いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 深海棲艦戦時・呉 ―――

 

 

(…当たるモノですよ)

 

「うぎゃ!!!」

 

「「伊勢ぇぇー!!!」」

 

 大和の放った砲弾の1発は、今までの御返しの思いを込めて、顔面蒼白の伊勢の顔のど真ん中にめり込み、伊勢が頭から後ろに倒れた事もあって、鈴谷と日向が同時に叫んだ。

 

「やったぁぁぁー!!!」

 

 大和は思わず両腕を振り上げて歓喜の雄叫びを上げ、そんな大和に鳥海……だけでなく、物影で潜みながら観戦していた宇垣も、微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

『っ!?』

 

 ヤマトが右手を振り上げながら強く握ったのとほぼ同時に、レムレースが小惑星群の物影から飛んできた砲弾3発にギョッとした直後にそれ等の砲弾が直撃して、左側に吹き飛ばされてその先の小惑星に衝撃した。




 感想または御意見をお待ちしています。

 補足情報として、今回までの回想では大和は伊勢&日向&鈴谷といい関係じゃないと思われるかもしれませんが、実際は回想に出なかった榛名共々仲が良いですし、色々な馬鹿を一緒にやったりもしてました。
 特に日向は師匠分として相談相手として大和はかなり信頼していました。
 ですので、サマール沖海戦で鈴谷と鳥海が同時に戦没した事は、大和にとって武蔵の戦没と同等かそれ以上の精神的ショックを受けています。


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第43話 決着せよ、宇宙戦艦対潜宙艦(後編)

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

『ギィヤアァァァー!!!』

 

 ヤマトの砲撃に被弾したレムレースは絶叫を上げながら、小惑星群に次々に衝突しながら蛇行しているだけでなく、ステルスフィールドに異常をきたしたらしく、ぼやけながらも点滅する様に時折姿を現そうとしていた。

 当然ながら現場の艦娘達だけでなく、防衛司令部の面々が歓喜の雄叫びを上げていた。

 

「やった、やったわよ、ヤマトォォー!!!」

 

 更にスズヤはヤマトに駆け寄って彼女に抱き付いた。

 ヤマトがスズヤの行為に少し驚いていたが、更にスズヤに続いてアサシモ、カスミ、サツキ、ナガラ、カミカゼの5人が次々に抱き付いた。

 

「……やりやがった……アイツ、見えない敵を討ちやがった。

まさか、軌道を読むだけでなく、よもやカウンターにするなんてね…」

 

「レムレースは忘れていたのよ。

自分がいるのは異次元じゃなくて、通常宇宙にいるって言うのを。

異次元にいたら、私達はどうする事も出来なかったんだけどね」

 

 そんな中で、キソは唖然として硬直し、キリシマは頭を掻いていた。

 

「レムレース、光速移動不能に陥った模様です!」

 

 カモイが笑顔での報告通り、レムレースはヤマトに文字通りに足を奪われた様で、まだ比較的高速ではあったが、見るからに速度が半分以下に落ちていた。

 

『馬鹿者!!!

まだ戦闘は続いているぞ!』

 

「……っ、不味い!!!

レムレースが逃げる!」

 

 キリシマ達は早くもレムレースに勝った気でいたが、当のレムレースは中破あたりになるもまだ沈んでもいなければ行動不能になっておらず、現にキサラギが叫んでの報告通りに太陽系外縁側へ逃げようとしていた。

 更に不味い事に、ヤマトはレムレースの行為に気づいていないスズヤ達5人が邪魔で砲撃出来そうになかった。

 

「逃がすな!!!

撃ち落とせ!!!」

 

 逃がせば後日只ですまないのは簡単に分かる以上、ジュンヨウの怒鳴りで、キリシマ、キサラギ、ミカヅキ、アヤナミ、サミダレ、イナヅマ、ハツシモの7人は慌ててレムレース目掛けての砲雷撃を仕掛けた。

 

「…っ、そんな馬鹿な!!?」

 

 だがそんな7人の攻撃は、衝突を繰り返しながらも小惑星群の隙間を縫って退避するレムレースに当たらずにその周囲の小惑星群に当たって、キリシマのミサイルに見られる通りに例え直撃コースであっても、潜水カ級か同ヨ級が楯になる形で身代わりになっていた。

 更に不味い事に、潜水カ級と同ヨ級の2種の潜宙艦隊はレムレースを逃そうと一斉に魚雷を大量に放ち……魚雷の全てが外れるか迎撃されるだけでなく、潜宙艦隊も次々に沈められていたが、レムレースは此の間に日本艦隊の死角に移動していた。

 当然、日本艦隊の全員が“逃した”と思ってしまったが…

 

「イタリアの皆さぁぁーん!!!

レムレースを攻撃して下さぁぁーい!!!」

 

…アブクマのみは、レーダーでレムレースの位置を大まかな確認を一瞬ですると、イタリア艦隊に攻撃要請を叫んで行った。

 幸運な事に、レムレースは確かに日本艦隊の死角に移動したが、ローマ達イタリア艦隊の前方の宇宙域を横切ろうとしていた。

 

「痛いのをぶっ食らわせてやる!!!」

 

 自分達の前方を横切る、それがイタリア艦隊を嘗めてるか無視しているとの不愉快に思わせた事もあって、ローマ達の動きはかなり速かった。

 

「Fuoco!!!」

 

 ローマの号令下でのイタリア艦隊の一斉射撃がレムレースに殺到し……当たる外れる関係なくレムレースが周囲の宙域諸共凪ぎ払われた。

 

『痛イ、痛イィィィー!!!』

 

 此の結果、レムレースは完全にステルスフィールドを失ってしまい、絶叫しながらその姿を……白一色の長髪の幽霊を思わせる姿を完全に現した。

 

「ほぉ~…、アレがレムレースの正体ですかぁ~」

 

「……データ照合完了。

アレはインド洋を中心に活動した、深海棲艦の潜水棲姫の亜種だな。

さしずめ、正式名称は“潜宙棲鬼”って処か」

 

 ポーラが少し呑気な溜め息を吐いていたが、レオナルド・ダ・ヴィンチはレムレースこと潜宙棲鬼を深海棲艦の超弩級・潜水棲姫の亜種と断定した。

 何故潜水棲姫の改良型ではなく亜種としたのは、潜宙棲鬼は基本的には潜水棲姫と同じだったが、潜宙棲鬼には潜水棲姫には無い、“目の無い駆逐イ級”を思わせるビット型連装砲(叢雲や初春のに近い)が2基存在していた。

 此の為に、潜宙棲鬼はフランスの潜水艦スルクフを連想させた。

 

『ヤマト、潜宙棲鬼に向かって発進』

 

 潜宙棲鬼はステルスフィールドを失うだけでなく、航行不能に陥った様で、のたうち回りながらも全く移動していない現状を“逃す”との選択肢がある訳がなく、沖田は直ぐヤマトにレムレースの撃沈命令を出し、当のヤマトは「了解」と答えた。

 

「ヤマト、深海棲艦戦時から海の女王の玉座は戦艦から空母と潜水艦に奪われたの知ってるわよね?」

 

「…何が言いたいんですか?」

 

「戦艦娘を代表して、女王の玉座を取り返してきなさい」

 

『キリシマ、ヤマトを援護、潜宙艦隊を近づけさせるな』

 

「了解!」

 

 ヤマトが前進しようとした直前に、キリシマとのやり取りがあったが、無言の了承はあったと思うが、ヤマトはキリシマに何も返さずに改めて前進を開始した。

 

「アブクマ、行け!!!」

 

「ミカヅキさん、行って下さい!!!」

 

 そのヤマトにハツシモ、カスミ、アサシモの3人が続くと思われたが、その3人は動かずに、代わりにアブクマがナガラの叫びで、ミカヅキはアヤナミから魚雷を発射管ごと手渡して更に目線を合わせたキサラギが頷くのを見て、2人各々にヤマトの後を追った。

 

『来ルナ、来ルナァァァー!!!』

 

 潜宙棲鬼は、アブクマとミカヅキを後方左右に従えて自分の所に向かってくるヤマトに対してヤケクソの砲雷撃を仕掛けたが、それ等は悉くアステロイドリングに阻まれてヤマトに全く当たっておらず、そのアステロイドリングの岩群が少なくなったので、ビームの1つがアステロイドリングを貫通してヤマトの顔に当たるかと思われたが、当たる直前にヤマトはそのビームを右手で受け止め、右手に残るビームの残余を右脇に投げ捨てた。

 

「…電磁誘導解除。

敵に全砲門、照準用意」

 

 アステロイドリングを解除したヤマトが別に表情を変えたり、何かをレムレースに言ったりしなかったが、逆にヤマトが淡々とやっている事がレムレースを恐怖を与えて硬直してしまい、古今東西で潜航能力を失った潜航艦が惨め事になるかを示していた。

 此の間に、ヤマト達3人だけでなく、ローマがポーラ、マエストラーレ、リベッチオの3人を従えて別方向から迫って、2方向から潜宙棲鬼が迫られた。

 

(此れ、お母さんの)

 

(父さんと一緒に遊星爆弾で…)

 

 ヤマトは攻撃準備を整えている途中、母の形見のスカーフを自分に託した時の古代兄弟の悲しい顔を思い出して、首のスカーフを右手で掴んだ。

 

「…潜宙棲鬼、此れで遠くから狙われる気持ちが分かりますか?

貴女に沈められた艦娘達だけでなく、貴女が軌道を変えて地球に落とした遊星爆弾に殺された人々の思いを受けなさい!!」

 

 静かに怒っているヤマトが、アブクマとミカヅキの2人各々に振り向き、戦艦イタリアの笑顔を思い出したアブクマとミカヅキが順にヤマトに頷いた。

 

「…全門、凪ぎ払え!!!」

 

 ヤマトの号令下、ヤマト達3人だけでなくローマ達4人も同時に一斉攻撃を開始…

 

『嫌ァ!!!』

 

…ヤマト達7人の衝撃砲が同時に潜宙棲鬼に着弾、更に少し遅れて魚雷、ミサイル、爆雷の3種も同時に着弾して潜宙棲鬼を跡形もなく消滅させた。

 

「…っ!

潜宙艦隊が、残存するガミラス潜宙艦隊が一斉に太陽系外縁に向かってます!」

 

「…逃げた……ガミラスが、逃げてる…」

 

「勝ったんだ、私達は……いや、ヤマトさんが勝った!!!」

 

 潜宙棲鬼が爆沈した光景だけでなく、カモイの残存潜宙艦隊の叫んでの報告に、ハルカゼの様にが呆然とした者も少々したが、サミダレの叫びが呼び水となって現場と防衛司令部の2ヶ所で「やった!!!」と一斉に歓声が上がった。

 

「ふ~…おっそろしい敵がいたものでしたね……?」

 

「ヤマト、やったじゃん!!!」

 

 ヤマトは潜宙棲鬼が撃沈した宙域を見つめながら溜め息を吐いたら、スズヤが駆け寄って右手を掲げたのを見て、ヤマトも右手を上げてスズヤとハイタッチをした。

 

「あ、そうだ。

沖田提督、報告します。

宇宙戦艦ヤマト、レムレース(潜宙棲鬼)を撃破し、状況を終了したと判断します」

 

 ヤマトが沖田への報告を忘れていた事に、当の沖田は無反応で代わりにホウショウがムッとしていたが、通信越しでも分かるぐらいに防衛司令部が騒いでいるのが分かった。

 

『よくやってくれた、ヤマト!!!』

 

 沖田はヤマトにウムと頷くだけだったが、藤堂はヤマトに笑顔で礼を言った。

 

『小惑星帯の全艦娘達に命令する。

キリシマ以下実動部隊は退却する潜宙艦隊を追撃』

 

「了解!」

 

『ジュンヨウ及びマミヤ以下の救助部隊は救助作業を再開せよ』

 

「了解しました!」

 

「ほら、なにをモタモタしてるんだ!?

1人でも多くの者を救助するぞ!」

 

 藤堂の命令に、キリシマは直ぐにキサラギ達を従えて追撃に移り、マミヤは返事をしたがジュンヨウは言われる前に笑いながらカミカゼ達の尻を叩いて救助作業を再開していた。

 

『…ローマ以下イタリア艦隊、君達は小惑星イカロスに赴き調査をし、状況しだいイカロスを制圧せよ』

 

 防衛司令部と小惑星帯の2ヶ所にて少し緊張が走ったが、藤堂が命令を通達した後に笑顔で敬礼した事に、ローマ達が少し間をおいてから右拳を左胸に当てる敬礼を一斉にした。

 

『そしてヤマト、ハツシモ、カスミ、アサシモの3人を従えて速やかにイスカンダル航路に復帰、海王星にて先行するショウカク達に合流せよ』

 

 藤堂の最後の命令に、ヤマトは敬礼で、いつの間にかにヤマトの近くに集まったハツシモ、カスミ、アサシモ3人は右拳を左胸に当てる敬礼で、4人揃って「了解!」と返事をした。

 

「さ、私達も早く行きましょ」

 

「そうですね……って、ヤマトさん!」

 

 カスミの提案にハツシモが他の3人と一緒に了解した直後、ハツシモが前方からローマがポーラ達3人を従えて自分達の直ぐ右脇を過ぎようとしているのに気づいた。

 

「何でアイツ等が?」

 

「さあ?」

 

 アサシモとカスミがローマ達の行動を理解出来なかったのでお互いの目線を合わせていたが、何故かヤマト(達)より僅かに高い高度を取っているローマは、他の者達は露知らずに見下げる形でヤマトを見つめていた。

 対するヤマトも見上げる形でローマを見つめて、ヤマトとローマの目線が合わさった。

 

「……ふん」

 

「……ふぅ」

 

 丁度前後からの横並びになった時に、ローマは鼻を鳴らしながら、ヤマトは溜め息を吐きながら、2人は揃って目線を外した。

 ヤマトとローマが目線のみで何をやっていたのかは誰にも分からなかったが、当の2人からは負の面に該当するモノは一切感じられなかった。

 尚、イタリア艦隊によるイカロス制圧後、ローマは自首に近い形でキリシマに捕縛され、地球帰還後にビスマルクが入っている牢の隣に入れられ、暫くの間ビスマルクとローマの口喧嘩が監守達の頭痛の種になる事を此処に書いておく。

 

「……全速前進、ヤマト、イスカンダル航路に復帰します」

 

 イスカンダルへ向けて先ずは小惑星帯の離脱を目指すヤマト(達)に対し、ヤマト達を見送るジュンヨウ達はヤマトの背に向けて一斉に右拳を左胸に当てる敬礼をし、途中までヤマト達に横並びで同行するキリシマ達も小惑星帯離脱直前で別れて少ししに後にヤマトに向けて右拳を左胸に当てる敬礼をした。

 ジュンヨウ達やキリシマ達のに気づいていなかったが、ヤマトはハツシモ達3人と共に木星軌道に進出し、そのまま問題なく海王星を目指して進んでいった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 防衛司令部 ―――

 

 

「遊星爆弾3つ、軌道を修正して地球に向かいません!

そのまま太陽に引き寄せられています!」

 

 ヤマト達が小惑星帯を離脱して暫くした後、長距離コスモレーダーでの観測で地球に向かう筈だった遊星爆弾3個が軌道を修正して地球に向かわなかった事が確認され、ガミラスが遊星爆弾の着弾観測所と軌道修正所を完全に失われた事が判明して本日2度目の歓声が多くの資料と共に上がった。

 

「やったな、沖田!

ヤマトがやってくれたぞ!」

 

「ああ」

 

 潜宙棲鬼撃破がガミラス戦初頭の海王星奪還以来の戦略的勝利となった事で、藤堂と沖田は笑顔で握手をした。

 

「ふん!

キリシマ達のデータ解析が有ったからヤマトでも沈められたんだ。

データさえ有ったら、ナガトの先代や武蔵でも沈められたさ」

 

 芹沢はヤマトの潜宙棲鬼撃破があまり面白くない様で、不機嫌そうに出ていった。

 

「果たしてどうでしょうね?」

 

「ジンツウさん、どう言う事ですか?」

 

 そんな芹沢に少し否定的なジンツウに、ハギカゼが反応した。

 

「データが有ると言っても、信頼度合いや最終的な情報修正が必要です。

武蔵さんは知りませんが、ナガトさんにはそう言ったモノは持っていなかったと思います」

 

「あ~…ナガトさんって、そう言う細かいのは、全く駄目でしたねぇ…」

 

 ジンツウの指摘にヤマグモが他共々納得しながら、ナガトの思い出し笑いをした。

 だが同時にヤマトの潜在能力の高さを認められ、沖田と藤堂はそんな逸材と言うべきヤマト(大和)を冷遇に近い形で秘匿し続けていた旧日本海軍上層部への疑問を感じていた。

 まぁ少なくとも、ヤマトの潜在能力は確かな事は、マヤとミチシオに背中に向かって舌を出されていた芹沢も多分その事は認めている筈だった。

 

「此れで、ガミラスは大型低速の遊星爆弾を使えなくなった。

初期の小型高速のに戻すのが考えられるが、かなりの時間稼ぎが出来るな」

 

「ああ。

それに初期の遊星爆弾は迎撃が可能だから、予想より時間が稼げるかもな」

 

 沖田と藤堂は、後はヤマト達が如何に早くイスカンダルに遠征出来るかを考えるつもりでいたが、2人の近くを過ぎようとした若い提督達の会話が耳に入った。

 

「なぁ、いっその事、ヤマトに冥王星を奪取させてみたらどうだろう?」

 

「それ良いかもな!」

 

「でも冥王星の艦隊はどうするんだよ?」

 

「ヤマトには波動砲があるだろ?

それで冥王星をガミ公諸共吹っ飛ばしてしまえばいいさ」

 

 ジンツウが少しギョッとした藤堂と沖田を察して若い提督達を注意していたが、藤堂と沖田は周囲を確認すると遠征艦隊での冥王星奪取を話し合っている者達が多数いた。

 ヤマトの潜宙棲鬼撃破は、その副作用として貪欲に勝利を求める危険な誘惑を出現させていた。

 その誘惑からの対象が、本来は否定されていた冥王星攻略であった。

 ヤマトの敵は地球側から現れるのではと、沖田と藤堂は危惧していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 木星軌道 ―――

 

 

 ヤマト達が小惑星帯を離脱して数刻後、突然赤い霧の様なモノが吹き出し始め、広がった赤い霧の中心部からシュモクザメを思わせる容姿の、ガミラスの新型通常型潜宙艦……まだ実験段階ではあったが、ガミラス初の次元潜航艦でもある潜水ソ級が通常宇宙に浮上した。

 

『Bericht bericht.

Notfallsituation aufgetreten,notfallsituation aufgetreten…』

(訳:報告、報告。

緊急事態発生、緊急事態発生…)




 感想または御意見をお待ちしています。

 今回にてレムレースこと潜宙棲鬼との戦いは終了デェェース!!!

大和
「予定よりかなり長くなりましたけど、此の戦いの元になった作品は何だったのですか?」

 此の戦いは、宇宙戦艦ヤマトとは無関係との説得力の無い但し書きがある“大YAMATO零号”の第2話“大ヤマト零号対影の艦隊”を元にしています。
 当然ながら、レムレースは影の艦隊をモデルにしています。
 更に言いますと、中盤でのヤマトとローマのすれ違いは、大YAMATO零号1話終盤にあった『大ヤマト零号』と『ユーノス』のすれ違いを元にしています。

大和
「あと蛇足ですが、『大ヤマト零号』のオズマ艦長はささきいさお氏が演じていましたので、2202のホームページのインタビューで言っていた宇宙戦艦の艦長は、多分此の作品の事だと思いますよ」

 レムレース戦は要らんのではとの意見が有りましたが、此の戦いでの潜宙棲鬼の戦没の責任追求が最大の要因として、ガミラスはヤマトを冥王星に誘きだしての戦いを仕掛ける事にしています。
 此れはオリジナルと2199の両方で、ガミラスが『ヤマト』を冥王星に誘きだして戦いを仕掛ける理由が個人的に分からなかったので、此の作品ではこう言う風にしたのです。

大和
「と言う事は、次回から冥王星攻略に入るのですね?」

…処がドッコイ、冥王星攻略の下ごしらえを暫くやりますので、ヤマト処か遠征艦隊の面々が当面出ない可能性が高いんです。
 次回に至っては、なんとヤマト達艦娘処か地球の皆さんが一切出ません。

大和
「…貴方、何をやるんですか?」

 まぁそれはオマケも付きますので見てのお楽しみとしますが、更に次々回からは数回に渡って、第一冥王星沖海戦に該当する、キリシマ達が地獄を見た第一木星沖海戦を回想します。
 更にその他諸々をやった後に、ヤマト達の冥王星攻略を行いますが、冥王星攻略は色々やらないといけないのが多々あるので、相当長くなる可能性が大です。

大和
「本当に100話以内にガス生命体の所に行けないかもしれませんね」

 で、そんな冥王星攻略が更に長くなる要因になりそう事を1つ、まだ悩んでますが、此の冥王星攻略時に謎の艦娘その1である“碧星の女王”が出るかもしれません。

大和
「本当に“碧星の女王”って何者なのですか?」

 ヒントになりそうでヒントじゃないようなので1つ言うと、個人的に“碧星の女王”は2199版スターシアと同じ声に設定しています。
 ですけど、オリジナルとは似て非なる存在と化していますので、その手のファンに怒られる可能性があります。


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第44話 GAMYROSvsΓAΦLANTIS

――― ????? ―――

 

 

 此所は地球がまだ認知していない未知の宇宙空間であり、ガミラスが重要視する宙域の1つである。

 此の宙域に存在しているのは、海王星に土星の輪をくっ付けた様な惑星がたった1つだけ存在していた。

 そして此の惑星の天上方向から大多数の空間魚雷が飛んできて……暫くした後に惑星と輪のほぼ中間域で多数の爆発が起こっていた。

 

「Alle Ballschlag!

Muster,das der gegnerischen Avantgarde erheblibhen Schaden zufuegte!」

(訳:全弾着弾!

敵前衛に、かなりの損害を与えた模様!)

 

 空間魚雷の飛んできた方向にいたのはガミラスの大艦隊が前衛、左翼、右翼、本衛、後衛(予備部隊)に5つに分割されて存在しており、彼女達はガミラスの占領域である此の宙域に侵入……否、侵略してきた不届きな敵部隊を迎撃していたのだ。

 しかも地球を追い込んでいる太陽系制圧艦隊の総数の数倍の大多数であるだけでなく、構成要員の通常型の大半が太陽系制圧艦隊では極少数のエリート、残りは更に上位のフラッグで無発光体が全くいない……否、無発光体はいた事はいたが、艦隊旗艦として5部隊に1人ずついるその者達は通常型ではなく、ガミラス(と深海棲艦)が誇る戦姫である超弩級であった。

 此れ等の事から見て取れる通り、彼女達は文句無しに精鋭のみで構成されたガミラスの主力艦隊、彼女達から見たら太陽系制圧艦隊など小規模な地方艦隊でしかなった。

 話を戻して、敵側も一呼吸遅れて空間魚雷を放ったらしく、ガミラス艦隊にも空間魚雷群が迫ってきてたが、その事を予知していたガミラス艦隊は既に前衛に迎撃体勢を整えさせていた。

 でその結果、空間魚雷を迎撃していた駆逐ニ級の多数に被害が出ていたが、かなりの被害を出した敵側に反してガミラス艦隊の主力要員は無傷であった。

 始まったばかりと言え、先手を取れた事に総旗艦として本衛の中央にいる女性は満足に頷いていた。

 此の総旗艦である女性、シンプルで黒いタンクトップドレスを纏っている事で、アルビノを思わせる白肌とは真逆の黒い長髪を筆頭に、両脇にいる戦艦ル級のフラッグと比べて頭1つ分の長身、細い胴体に反して豊満な胸部の根元の4本の小型の角や鬼を思わせる頭の2本の角さえも美しさの構成要因と思わせてしまう程の妖艶且つ芸術的な美を最大限に引き出していた。

 だがそんな容姿に反して、彼女の背中から太いケーブルに繋がれている…不自然なまでに肥大化した筋肉質な両腕を生やしている両肩に三連装主砲が付いている事から此れが彼女の艤装だとは分かるのだが、その両腕からゴリラを思わせる屈強な身体に浮遊要塞と同型の頭部が生え、更にその頭部が耳を抑えたくなりそうな咆哮をして開いた口から見える三重の顎もあって、“狂暴”の単語を具現化したかの様な獣を思わせる外見の艤装……正しく“艤装獣”と言うべき異質の中の異質な存在であった。

 だが両脇の戦艦ル級が気にしている艤装獣を総旗艦は優しく宥めていて、対立や上下関係が一切無さそうに見える事から“美女と野獣(Beauty and Beast)”の言葉通りの組み合わせでいた。

 

「Starte die feindliche Flotta vorwaerte!」

(訳:敵艦隊、前進開始!)

 

 で話を戻して、前哨戦を落とした敵艦隊の本隊は壊滅的打撃を受けた前衛を蹴散らし、味方の屍処か大破した者達さえをも気にせず、ガミラス艦隊に野蛮さを感じさせる突進を開始した。

 

「Fange feindliche Flotta ab!

Avantgarde,rechten Flotta,linken Flotta,wie geplant.

Zerstoere die feindliche Flotta!!」

(訳:敵艦隊を迎撃する!

前衛、右翼、左翼、作戦通りに前進開始。

敵艦隊を殲滅せよ!!)

 

 敵艦隊の蛮勇に真っ向から迎え撃つ事を決めた総旗艦の指令通り、先ずは前衛が敵艦隊に向かって行った。

 更に少し間を置いて右翼と左翼が突撃を開始したが、それとほぼ同時に前衛が敵艦隊共々砲戦可能距離に到達し…

 

「Werde ein Feuerklumpen und tauch ein!!!」

(訳:火の塊となって沈め!!!)

 

…前衛の旗艦である、空母アカギ(赤城)と亡き空母カガ(加賀)の2人を足した様な容姿の空母棲鬼の、空母ヲ級群と共に艦載機を大量に発進させながらの号令下に単横陣を展開したガミラス前衛艦隊が砲撃を開始し、ほぼ同時に……魚類を思わせるガミラス(と深海棲艦)のは違って、何処か虫を思わせる要員達で構成された敵艦隊も砲撃を開始したので、赤と緑の光線が飛び交う砲撃戦が始まった。

 どうやら空母棲鬼の狙いは、頃合いを見て単横陣から楔形の陣形に移行しての半包囲殲滅戦の様であり、実際敵の艦載機群を撃退して制空権を獲得した上、敵艦隊はマスケット銃全盛期の密集銃撃体勢を連想させる、人によっては“古すぎる”と思う陣形を取っていたので成功するかの様に思われた。

 だが現実はそう甘くはなく、質は重巡リ級や戦艦タ級を有するガミラス前衛艦隊が勝っていたが、問題なのは数で、敵艦隊の数はガミラス艦隊の総数を上回っていた(更に言うと前衛は前哨戦で先住の通りに駆逐ニ級が多数脱落していた)し、なにより砲撃数は敵艦隊が倍以上も撃っていた。

 なにせ、敵艦隊を構成する3種の内の戦艦ル級に似た容姿で“某金の闇”みたいに黒い長髪を文字通りの大口と主砲に変化させているブラード級戦闘艦(此の為に誤認防止で戦艦ル級が前衛にいなかった)、一見したら寝暗に見えるも脇に巨砲を携えたアカーツィア級巡洋艦の2種は、火力こそリ級とほぼ同等だったが、ガミラス駆逐艦群の2倍近くの連射性を持っていたのだ。

 そしてなにより“勢い”や“情熱”は圧倒的に敵艦隊が勝っていて、現にガミラスの砲撃に怯えない処か、生死問わずにヤられた味方を押し退けては「Yapaaaa!!!」の雄叫びを上げながら突進してくる敵艦隊に、前衛艦隊が気後れして中央部を厚くして包囲陣形に移行出来ないでいて、なにせ空母棲鬼が押すに押せれない現状に悔しそうに歯軋りをしていた。

 此の為にガミラス前衛艦隊が後退するかと思われたが…

 

「Ich werde es nicht tun!!!」

(訳:やらせはしないよ!!!)

 

…此処で、上半身は駆逐艦ハルサメ(春雨)で下半身は円盤の駆逐艦棲姫が率いる左翼艦隊が到着、前衛の左側に迂回して出て……駆逐棲姫が直ぐ脇の軽巡ホ級がブラード級の砲撃が直撃して吹き飛んだのを回避した様に、配下の駆逐艦群や巡洋艦群に脱落者を多数出してしまうも近距離まで接近する事に成功し、一斉雷撃によって敵艦隊の中央部に大打撃を与えるだけでなく、転進しての砲撃をしながらの突撃で楔となって敵艦隊を前後に分断してしまった。

 左翼は前衛が呼応した事もあって敵艦隊前半分の殲滅に取り掛かったが、左翼の一部が砲撃している敵艦隊後半分は左翼に突撃して……味方を救出しようとでなく、左翼を殲滅出来る好機だと判断した様で、厄介な事に後半分には“2組4本腕の黒いメ○テル”のシルカ級空母が多数おり、そのシルカ級群が艦載機の第2波を発進させようとしていた。

 

「Sie haben keinen Platz zum Entkommenl.

Gibt es nicht!!!」

(訳:貴女達に逃げ場は無いの。

無いのよ!!!)

 

 だが惑星を迂回して敵艦隊後半分の後ろ上方に回り込んだ、文字通りの“バイザーを着けた黒いジンツウ(神通)”の軽巡棲姫率いる右翼が到着し、奇襲に近い形での急降下攻撃を実施してシルカ級が次々に被弾しては轟沈していった。

 右翼の攻撃で敵艦隊が瓦解した事から戦局はガミラスのモノで決定的になったのだが、敵艦隊はそれでもなお突撃をして、大破状態のブラード級が空母ヲ級(フラッグ)に体当たりをしてそのままがっちり掴むと…

 

「Yapaaa ГAФLANTIS!!!」

 

…体から白煙を上げて目を赤色発光させると、抱き付いた空母ヲ級だけでなく両脇の者達を巻き込んで自爆した!

 此の自爆に前衛の者達はギョッとしたが、敵艦隊の自爆行為に走る者達は他にも多数いて、見境無くガミラスに張り付いては自爆をしていた。

 此の野蛮と言える行為に前衛で混乱が生じてしまい、ブラード級とアカーツィア級の何割かが前衛を突破して本衛(と言うより総旗艦)に突進してきた。

 

「An diesen Ort zu kommen!!!………!?」

(訳:此所まで来るとは!!!………っ!?)

 

 当然ながら予備戦力として今まで待機していた“黒い大正時代の女学生”の容姿の駆逐艦古姫が率いる後衛が本衛の前に躍り出て楯になろうとしたが、その総旗艦が駆逐古姫に「私がやる」と左手を突き出して静止させた。

 此れに駆逐艦古姫だけでなく、本衛の者達も驚いていたが、当の本人は素知らぬ顔で直轄の戦艦ル級2隻と駆逐イ級3隻の計5隻(全員フラッグ)を率いて本衛の前方へと前進し、敵艦隊も総旗艦に驚喜の雄叫びを上げながら加速した。

 自分が前に出た事を好機だと勘違いした敵艦隊に、総旗艦は小馬鹿にしたかの様に微笑し、総旗艦の内心に共鳴した艤装獣は興奮し過ぎて咆哮しながら体を揺すって主砲を明後日の方角に撃っていた。

 

「Seien sie groβartig,sinken sie von dem Ruhm von GAMYROS!!」

(訳:…偉大なる、ガミラスの栄光の前に、沈みなさい!!)

 

 そんな艤装獣を両頬を押さえて静めるた総旗艦は、振り上げた右腕を降り下ろして攻撃を命じると艤装獣が咆哮しながら主砲を発射し、戦艦ル級2隻と駆逐イ級3隻もそれに合わせ……結果、此の只1度の一斉射で敵艦隊の殆どが消し飛んでしまった。

 敵艦隊も先方で右腕諸共艤装を失うも只1人生き延びれたアカーツィア級が驚いている事から分かる通り、戦艦ル級2隻と駆逐イ級3隻の援護があったものの、総旗艦の圧倒的な砲火力に全員が硬直していた。

 だが此処で前衛の一部が追撃してきて、後方の者達から次々に討たれていて、先のアカーツィア級が何度か頭を前後に振った後、自分達がギロチンの台の上に寝かされた事を察した。

 

「…Yapaaaa ZUORDER、っ!?」

 

 アカーツィア級は死に際に両腕を振り上げて何かを叫んだ直後、それを最後に言い残す言葉だと判断した総旗艦の第2射で上半身を消し飛ばされてしまった。

 此れと同時に終戦となったらしく、総旗艦に駆逐艦棲姫からの通信が入った。

 

「Okimono,flaggschiff der Linken Flotta Destroyer Living Prinzessin,zerstoert 70% der feindlichen Flotta!

Ich werde mit dem Schwanz sie herumlaufen」

(訳:此方、左翼艦隊旗艦駆逐艦棲姫、敵艦隊の7割を撃破!

奴等、尻尾を巻いて逃げだしていきます)

 

 どうやら、駆逐艦棲姫達にも敵艦隊は撃破されて敗走を始めたようだった。

 

「Gatlantis,nicht deine Feinde!」

(訳:ガトランティス、恐れるに足らず!)

 

「Verzweifle nicht deine Feinde!

Destroyer Living Prinzessin match auf den Randbereich aufmerksam,Ein Daemon des Flugzenugtraegers und Lichtbewohlgende Prinzessin bei der Verletzung des verbleibenden Feindes」

(訳:敵を侮ってはいけません!

駆逐艦棲姫は周辺宇宙域を警戒、空母棲鬼と軽巡棲姫は残敵の掃討に当たりなさい)

 

 感情的になりやすい駆逐艦棲姫が、敵艦隊ことガトランティス艦隊を撃退した事で調子に乗っていたが、総旗艦に注意され、更に軽巡棲姫に睨ませた事もあってウッとした後に総旗艦の命令を空母棲鬼と軽巡棲姫共々了解の返事をして、3人共に直ぐ命令通りに動いた。

 駆逐棲姫はガトランティスを侮っていたが、総旗艦は、近年から自分達ガミラスの勢力に侵入しては占領惑星や友軍艦隊を攻撃・殲滅を繰り返すガトランティス……残念ながらガミラスでさえガトランティスが何を目的として、母星が何所にあるのか全く分からず、判明しているのは奴等は獰猛な戦闘種族(だからガミラスは“猿”や“野蛮”と罵っている)で、少なくともアンドロメダ銀河から襲来している2点のみ、そんなガトランティスが此れだけの存在な訳がない事を察していた。

 現に自分達ガミラスは超弩級5人も編入した主力艦隊だったのに対して、ガトランティスのは数こそ圧倒的多数だったが個々の質は、兵種が違う可能性があるが、戦艦や大型空母等の主力がいない……恐らく規格外の斥候部隊だったと思われた。

 それ故に、“あの御方”の信頼厚い(か御寵愛される)総旗艦が此の宙域に派遣されたのだから…

 

「In der Tat,wegen Destroyer Living Prinzessin,im Tonfall…」

(訳:まったく、駆逐艦棲姫め、調子に乗って…)

 

 一見したらその事が分かっていないと思われる駆逐艦棲姫に、同じ駆逐艦の超弩級である駆逐艦古姫は右手を頭に当てて呆れていた。

 

「…Nnn,auf dieses Weise werden sie vorerst nicht weitergehen」

(訳:…まぁ、此れで奴等も当面は仕掛けてこないでしょうね)

 

「Sie werden im Moment keinen Spaβ haben」

(訳:貴女も当面は楽しみが無くなるわね)

 

「Absolut!!」

(訳:まったくだ!!)

 

 総旗艦とは長年の付き合いで、最早“戦友”と言える仲の駆逐艦古姫は遠慮なしに高笑いをした。

 そしてそんな仲だったからこそ、駆逐艦古姫は総旗艦の心が此の宙域から離れている上に、本海戦処か出撃する数日前から変に興奮して、今も益々興奮している理由を察していた。

 

「Interessieren Sie sich fuer die A-Galaxie?」

(訳:A銀河が気になりますか?)

 

「Ja!」

(訳:ええ!)

 

 総旗艦が思っているのはガミラスの同胞・深海棲艦を撃退した地球、それも滅亡直前まで追い込んだ星から現れた1人の艦娘だった。

 しかも超弩級の1人の潜宙棲鬼を倒した艦娘は、総旗艦と同じ戦艦だったのだから尚更であった。

 

「…Zum Beispiel Schiff Maedchen war der Name?」

(訳:…例の艦娘は何て名前だったかしら?)

 

「YAMATO,dass Weltraumschlachtschiff YAMATO」

(訳:ヤマトだ、宇宙戦艦ヤマトだ)

 

「……YAMATO,oder!」

(訳:……ヤマト、か!)

 

 残念ながら此の宙域にヤマトが来る事は完全にあり得なかったし、そもそも太陽系にいるヤマトが外宇宙に出ていないのだ。

 だが総旗艦はヤマトが冥王星基地を攻略して外宇宙に出てくる、そしてそのヤマトの討伐を……対立候補が多数いたが、自分がヤマト討伐艦隊の総旗艦に“あの御方”から命じられるだろうと予想、それが近い内に現実のモノになるだろうと、勝手な予測をして口を歪めた笑みを浮かべていた。

 何故なら、此の艦隊の総旗艦を務めていたのは戦艦棲姫……ガミラス(と深海棲艦)の超弩級群の中で大艦巨砲主義を純粋に具現化した稀少な戦姫。

 強者の敵戦艦を真っ向正面から力で捩じ伏せる事を至上の喜びとしている彼女が、強敵となるだろうヤマトを求めても何らおかしくなかった。




 感想または御意見、どちらでもお待ちしています。

 と言う訳で、2199の第11話を元にしたガミラスvsガトランティスを実施、ガトランティスは“りっく☆じあーす”の敵対勢力であるマグマ軍の皆さんに演じてもらいましたので、実際は深海棲艦vsマグマ軍となりました。
 マグマ軍の皆さん、ご苦労さぁーん!

マグマ軍・一堂
『キー!!!』
(訳:お土産のピロシキ、御馳走様!!!)

 で今回の話と同時投稿した“SPACEBATTLEGAILヤマトⅡ(仮)”のプロローグを見ても取れる通り、白色彗星帝国(ガトランティス)編は、少し影が薄いですけど、りっく☆じあーすとのコラボとします。

大和
「白色彗星帝国編は白兵戦が多いですから、りっく☆じあーすとのコラボが可能になったのですね」

 タイトルの“(仮)”は、ガミラス編が終わって本格始動した時に外します。
 当然ですが、白色彗星帝国編を下手に投稿するもガミラス編の生存者のネタバレを確実に起こしますので投稿はしません。

 後、“設定 艦娘”の“まだ見ぬ戦友”から白色彗星帝国編の項目を削除します。

 さぁ次回からは、キリシマ達が地獄を見た第一木星沖海戦の回想です。
 ヤマト原作で見て分かりますが、かなりの艦娘達が戦没しますので、腹くくってください。


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第45話 回想:第一次木星沖海戦(前編)

 今回の投稿前に“設定 ガミラス”を新しいモノと取り換えました。
 更に第11話での回想に出たヒリュウをタイホウに代えて此方に出しました。





 それでは本編をどうぞ。


――― 木星軌道 ―――

 

 

 数多の大小問わずに大量の光群が飛び交う光景の中……疲労からなのか、興奮からなのかは自分自身でも分からないが、ショウカクは抑えきれない程に息が乱していた。

 飛び交う光群全ては文字通りの生命の光であり、それ等が一瞬か火を吹いてから爆発して消えていっている事に、怒りと悲しみの反する2つの感情が同時に涌き出ていた。

 

「ガミラス艦隊への砲戦距離まで、あと何秒!!?」

 

「主砲射程圏内まで、あと30秒!!!」

 

 1秒が数分とも数時間とも思える程の、煩わしく長い時の中での艦隊戦の中に身を置いている事をショウカクは、自分の隣にいるズイカクの叫びながらの質問で思い出し、後方の艦隊にいるオオヨドが妹の質問に“もう少し耐えて”との意味を込めて大声で返した。

 

『ショウカク、空母艦隊を退避させろ』

 

「了解!! 離脱します!」

 

 現在、此所木星軌道では地球とガミラスの両陣営が揃って大規模艦隊を繰り出しての、後日“第一次木星沖海戦”と命名される事になる一大艦隊決戦が行われていて、その前半戦と言うべき空母部隊による航空戦が行われていたが、後続の主力艦隊が戦闘宙域に前進してきた事もあって、艦隊の総指揮を取る沖田は空母艦隊に後退を命令し、空母艦隊の旗艦ショウカクは直ぐに了解して全員に通信と信号弾の2つを使って、ズイカク以下の従属艦達にコスモパンサー隊共々の退却命令を出した。

 で、前半戦の結果を言うと、地球側の戦術的敗北。

 地球とガミラス、双方が戦闘機掃討戦(ファイター・スウィープ)を狙って戦闘機型を大多数を展開した為に両艦隊に撃沈した者はいなかったが、空母ヲ級4隻(旗艦を務めている個体のみエリート)と軽母ヌ級6隻(内2隻はエリート)を主体に編成されたガミラスの空母艦隊の全員が無傷であるのに反して、地球側のコスモパンサーが殆どを撃墜されてテルヅキの左肩に担がれているアキヅキの右上半身が血で真っ赤になっている通りに負傷した艦娘達が多数いたからだ。

 但し、ガミラス艦隊も艦載機隊のほぼ半数を失った事から、ショウカク達が後退したのに合わせて後続の艦隊に合流しようとしていたので、まぁ取り敢えずは地球側の狙い通りに厄介な空母艦隊を退ける事にギリギリ成功していた。

 

「沖田提督、意見具申!

第二次攻撃の要を認めます!」

 

『却下だ』

 

 尤もショウカク級姉妹の師匠分の空母ヒリュウは、退却に反対だったので航空攻撃の続投を求めたが、沖田に却下された為にブウ垂れていたので、ズイカクが苦笑しながら彼女の肩を叩いていた。

 

「Hay ショウカク!!!

頑張ってくれました!」

 

 戦線離脱に入ったショウカク達空母部隊に代わって前進してきたのは、先頭で進んでいるキリシマを旗艦(総旗艦兼任)とした直轄隊、後続にはアシガラを筆頭とした巡洋艦隊に上下左右にユラ達巡洋艦娘達が各々に率いる水雷戦隊が展開する日本艦隊を主軸として、その後ろには中国以下の東アジア各国の艦隊、更に後ろに北欧各国の艦隊群、そして殿としロシア艦隊で構成された打撃艦隊であり、キリシマの直ぐ後ろのコンゴウが両腕を振り上げながらショウカクにしていた様に、他の者達も空母艦隊に「後は任せろ!」等の労いの言葉を掛けていた。

 

「両舷前進全速、黒15!!」

 

「新たな敵艦隊が見えました!

艦影多数、右舷4時より近づいてきます!」

 

「艦種識別、戦艦ル級3、重巡リ級7で内エリートが3、雷巡チ級14で内エリートが6、軽巡ホ級とヘ級合わせて22で内エリートが10、駆逐艦4種……多数で内エリートが多分半数!!!」

 

 キリシマが全艦に増速を命じた直後に直轄の水雷戦隊の1人である駆逐艦ユキカゼが接近してくるガミラスの打撃艦隊を双眼鏡で確認して、更に直轄隊のオオヨドがガミラス艦隊の構成を解析(駆逐艦のみは多すぎて匙を投げていたが…)して報告した。

 

『全艦戦闘配置。

面舵30、砲雷撃戦用意』

 

「了解、おもぉ―か~じ!!」

 

 更にガミラス艦隊の位置と進路から沖田が進路を指令して、キリシマが了解しながら海軍独特の発音をしながら転蛇した。

 

「…来よったな」

 

「はい、Devil(悪魔)達が来ましたヨ!」

 

 その直後、ユキカゼの言った通りの方角からガミラスの打撃艦隊が前進してきて、他の者達もそうである様にウラカゼとコンゴウが強張った笑みを見せあっていた。

 

「…っ! 不味いですよ。

打撃艦隊の後方に先程の空母艦隊がいます!」

 

 更にキリシマ達の左後方にいる巡洋艦ユラが気づいた通りに、ショウカク達と交戦した空母艦隊が、打撃艦隊から距離を置いているも、恐らく予備戦力として後続していた。

 でガミラス艦隊はキリシマ達の転蛇に合わせて取舵を取ったので、前後からの反航戦が行われようとしていた。

 

「距離7500、相対速度変わらず」

 

「全艦、左舷一斉射撃用意!」

 

「測敵開始、仰角調整開始して下さぁぁーい!」

 

 オオヨドの観測情報の元にキリシマが命じ、コンゴウが他の艦隊にキリシマの指示を伝えていた。

 

『キリシマ、ギリギリまで引き付けるんだ』

 

「分かってますよ」

 

 現在の地球はと言うと、ガミラスに対して有効な兵器を次々に無力化されていて、生半可な攻撃では返り討ちにされるのは目に見えていた。

 況してや、まもなく交戦しようとするガミラス艦隊はエリートを多数投入した大規模主力艦隊である事であれば、尚更であった。

 その為にキリシマ達は事前に念入りな打ち合わせを重ねた結果、駆逐艦までもを動員した一斉射撃からの水雷戦に全てを賭けていた。

 その計画はと言うと、ギリギリまでガミラス艦隊に接近して、全艦隊による一斉射撃でガミラス艦隊に混乱を生じさせて隙を作り、此の間に急接近をして乱戦に持ち込んでからの空間魚雷や実弾を用いた接近戦(インファイト)で勝利を掴もうと言うのだ。

 此の為に、ガミラスに先手を取られながらになるだろう初弾は、敢えて戦艦ル級や重巡リ級を無視して軽巡2種や駆逐艦群を狙う事にしていた。

 

「どうしました、キリシマ?」

 

「あ、いえ…」

 

「旗艦がそんな顔じゃあ、貴女だけでなく、日本艦隊そのものの面目が立ちませんヨ!」

 

 だが此の作戦には懸念材料があり、戦艦ル級や重巡リ級を無視する者達が、駆逐艦娘達を中心に反対意見が多数あり、更に根本的に日本艦隊が主軸になる事を露中韓の3国が現在までも反発していたのだ。

 特に中国は、呆れる位に延々と続いてる反日感情に加えて、自国から防衛艦隊司令長官(藤堂の前任者)を輩出した事からの変なプライドもあって、沖田やキリシマ達に矢鱈めったら反論(但し、少数だが理解者は存在)ばかりしていた。

 此の為にキリシマが不安から呆然としてしまったので、コンゴウに注意された。

 まぁ、尤もそれ等は実に細やかな問題であった事がまもなく分かるのだが…

 

「砲撃開始予定距離まで、あと15秒!!!」

 

「…っ! 皆、準備はいい!?」

 

 砲撃開始まであと僅かである事がオオヨドの大声での報告で分かり、更にキリシマの目に入る他の者達は既に準備を終えて、なのに自分だけがやっていない事をコンゴウ以外の周囲の者達の心配そうな目線にハッとして、慌てて準備をしながら最終確認を求めた。

 

「ユラ達、砲撃準備よし!!」

 

「クマ達も準備いいクマ!!!」

 

「アガノ達も準備OK!!!」

 

「巡洋戦隊、いつでもいいわよ!!!」

 

「私達もいいデース!!!」

 

「各国の艦隊全て、射撃準備完了や!!!」

 

 日本艦隊各員だけでなく他の艦隊全てが射撃準備を終えているのが分かった後、普段なら既に撃ってくる筈のガミラス艦隊が何故か攻撃してこない事が気にはなったが…

 

「撃ってきました!!!」

 

…どうやらガミラス・戦艦ル級の戦術書には“我慢”が掲載されていないらしく、ユキカゼが叫びながらの報告後に3隻揃って主砲を放った。

 

「っ! ユウギリが殺られたクマ!!!」

 

「クラマさん被弾、中破!!!」

 

 此の砲撃で日本艦隊から駆逐艦ユウギリが撃沈して、巡洋艦クラマが武装の一部が消し飛んだが、砲撃した戦艦ル級3隻を取り抑えようと重巡リ級と雷巡チ級の複数係りで取り付いていた事で、ガミラス艦隊に変な混乱が起こっていた。

 

「畜生、撃ってきた!!!」

 

「アシガラ、落ち着きなさい!」

 

 更に日本艦隊でもアシガラが変に興奮して砲撃しようとした為に長姉のミョウコウに怒鳴られた通り、至る所で混乱が生じかけていたが、此の直後に沖田の『狼狽えるな!!!』との一喝もあって、直ぐに治まった。

 更に戦艦ル級3隻が取り抑えながらも明後日の方角に砲撃していたが、此れは地球艦隊の面々を落ち着かせる要因になってしまった。

 

「あと5秒……4……3……2……1!!」

 

「距離、速度、良し!!!」

 

『全艦、主砲斉射!!!』

 

「全門斉射!!!」

 

 オオヨドの秒読み後、キリシマが最終確認を行って沖田の号令下に、変な混乱下で好機を見せているガミラス艦隊目掛けての射撃を一斉に行った。

 明らかに衝撃砲の何条かが戦艦ル級に向かってはいたが、大半は作戦通りに軽巡か駆逐艦に向かっていた。

 

だぁーん、ちゃく(弾着)、デース!!!」

 

 コンゴウの腕時計を確認しながらの報告で、地球艦隊の衝撃砲が一斉にガミラス艦隊各自に着弾して撃沈する……筈だったが、戦艦ル級は兎も角として、無発光体の駆逐艦4種までもが、衝撃砲を弾いてしまった。

 結果を言えば、被弾したガミラス全艦は撃沈や大破しない処か、小破すらしていないほぼ無傷であった。

 

「そんな馬鹿な!!?」

 

「ガミラス全艦、無傷!!?」

 

「Whaaaat!!?」

 

「何が起こったクマァァー!!?」

 

「オオヨド、何がどうなってんの!!?」

 

 斉射が無意味に終わった事で日本艦隊だけでなく、地球艦隊の全体で驚きと戸惑いでの混乱が起きてしまい、更に言うと沖田でさえもが愕然としていたので混乱を治める手立ては無かった。

 

「ガミラスのディフェンスデータが、以前と異なってます!!!」

 

「以前たって、つい此の間の海戦ではなんともなかったのよ!!

そんなに早く、どうやって強化出来たのよ!!?」

 

 オオヨドの解析報告にキリシマが喚き散らしていたが、不意にガミラス艦隊を見ると、いつの間にかに混乱が治まっているだけでなく、戦艦ル級3隻が取り抑えようとしていた重巡リ級と雷巡チ級達と揃ってニッと笑っていた事で、全てを察した。

 

「ガミラス艦隊、斉射!!!」

 

「全艦退避!!!」

 

 先程とは真逆で、混乱下の地球艦隊目掛けてガミラス艦隊が一斉射撃をして、ユキカゼが悲鳴に近い報告をして、キリシマが遅すぎる退避令を出した直後、艦娘達が次々に被弾していき……キリシマもが、第二主砲を消滅させられる被害を出した。

 

「キリシマ、しっかりするデェェース!!」

 

「…大丈夫……私は大丈夫です。

第二主砲がやられた以外は大丈夫です」

 

「シノノメェェー!!!

ウスグモォォー!!!」

 

「シラツユ姉さん、足が、スズカゼの足がぁぁー!!!」

 

「カスミ姉さん、助けて!!!

火が、火がぁぁー!!!」

 

「イブキさんが、殺られた!!!」

 

「ナツグモ、死ぬなぁぁー!!!」

 

「しっかりして下さい、タツタさぁぁーん!!!」

 

「ハヤシオ、ナツシオ、ハツカゼ、何所に行ったぁぁー!!?」

 

 直轄隊はキリシマのみが被弾したのみだったが、他の日本艦隊では撃沈や大破が大量に出て、阿鼻叫喚が至る所で響いていたが、多国の艦隊も似たような被害を多数出していた。

 

「……唯の、一撃で…」

 

「…やられた!」

 

 唯1度の一斉射で死傷者が多数出た現状に、巡洋艦ハグロが呆然として直ぐにアシガラに正気に戻す為に殴られていて、オオヨドは自分達がガミラスに嵌められた事を察した。

 

「キリシマ、後ろを取られるぞ!!!」

 

「第2射が来ます!!!」

 

 だが戦闘はまだ始まったばかりであり、現に巡洋艦トネとユキカゼが叫んだ通りに、ガミラス艦隊はいつの間にか転舵をして地球艦隊の背後を横切る形での“逆丁字(東郷ターン)”状態での絶好の体勢て第2斉射を放って、今回は日本艦隊に被害が出なかったが、地球艦隊の後方を中心にまたしても大量の死傷者が出ていた。

 

「…っ、不味い!!!」

 

 更にガミラス艦隊は後続の空母艦隊までが砲撃を開始して、打撃艦隊は2分して戦艦ル級や重巡リ級を主体とした砲撃隊はそのまま好位置を維持しながら砲撃を続け、軽巡2種のどちらかが雷巡チ級や駆逐艦4種を従えた水雷戦隊の多数が転舵して地球艦隊目掛けて突進を開始し……多頭の毒蛇の如くに地球艦隊へガミラスお得意の突撃砲雷撃戦を仕掛けてきた。

 早々とガミラスが絶対的な優勢を築きつつ、自分達は地獄とほぼ同じの絶望的な状況下に入りつつある事を察したキリシマが顔面蒼白になっていた。

 だが先にも書いたが、第一次木星沖海戦はまだまだ始まったばかり、つまり万に一つの希望の無い地獄は此れから始まるのであった…




 感想または御意見をお待ちしています。

 地獄はまだまだ続きますぞ~


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第46話 回想:第一次木星沖海戦(前中編)

 今回の投稿前に“設定 艦娘”の未所有故の出演不可から日進を削除しました。

 それは置いておいて、今回は艦娘達が大量に死傷していきます。
 ですので、提督(艦これプレイヤー)の読者の皆さん各々にお気に入りやケッコン艦がヤられている可能性が高いので、気を引き締めて読んでください。
 或いは、お気に入りやケッコン艦がヤられていない事を祈りながら読んでください。




 それでは(酷い)本編をどうぞ


――― 木星沖 ―――

 

 

「何で私達の砲撃がきかないのよ!!?」

 

「来る、ガミラスが来る!!!」

 

「助けて、誰か助けてぇぇー!!!」

 

「味方は何所にいるのよ!!?」

 

「……何なのよ、此れ?」

 

 通信機越しに聞こえてくるのは艦娘達の悲鳴か絶叫のみ、此の事からズイカクが愕然としている通り、空母艦隊の面々はキリシマ達打撃艦隊が悪夢を通り越した絶望下の戦況にいる事を察して顔面蒼白になっていた。

 

「助けにいく、皆を助けに行こう!!!」

 

 ヒリュウが打撃艦隊救出を叫びながら提案したが、空母艦隊の全員が黙ってズイカクから視線を逸らした。

 

「無理ですよ、ヒリュウさん。

今の私達は殆どが傷ついて艦載機や弾薬が尽きかけているのよ」

 

 ショウカクの言う通り、それ故に戦線から離脱中なのだから、今の空母艦隊には打撃艦隊救出の力は一切残っていなかった。

 

「…くっ!!!」

 

 その事を嫌々ながら納得したズイカクは自分達の無力さを歯軋りしながら悔しがっていたが、ショウカクもまた弓を握り潰しかねない程に強く握っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィリピン艦隊が壊滅!!!」

 

「タイ艦隊旗艦、空母チャクリ・ナルエベト撃沈!!!

タイ艦隊が総崩れを起こしてます!!!」

 

「遼寧、大破……って、何所に行くんだ!!!」

 

「ガミラス水雷戦隊、更に2個が此方に向かって来ています!!!」

 

「来遠、超勇、揚威、名誉の戦死!!!」

 

「勝手に突撃した韓国艦隊が敵の十字砲火を受けているぞ!!!

アイツ等、何やってんだ!!?」

 

 打撃艦隊の中央にいた中国艦隊は、東アジア各国の艦隊が次々に壊滅や玉砕をしていく中で、中国艦隊の旗艦を務める戦艦定遠が従属艦達を怒鳴り散らしながら現状に抗っていた。

 

「定遠、もう駄目だ!!

此処はもう退こう!」

 

「退く?

我等、中国艦隊に退却の文字は存在せぬわ!!!」

 

 だが中国艦隊の艦娘達が次々に、しかも尋常じゃない早さで倒れていく状況で、巡洋艦広甲が戦意を失った事もあって定遠に退却を打診した為、定遠に胸ぐらを掴み上げられていた。

 だがそんな2人の近くで、姉妹艦達と共に主砲を連射している丹陽からしてみたら、戦死した妹の鎮遠を背負っている定遠も自分を見失っている様に見えた。

 

「よく見ろ、定遠!!!

もう半分以上の同志達が殺られたんだぞ!」

 

「半分!?

20分も経っていないのに、半分も殺られたって言うのか!?」

 

 定遠は地獄の戦況下にいた事から何十時間も戦っていた気をしていたが、広甲の怒鳴りながらの報告に周りを見渡して慌てて時計を確認したら、そんなに時間が経過していないのに艦隊が半壊しかけている現状に唖然とした。

 尤も報告した広甲自身も、現実を否定しようとして定遠共々硬直してしまったが、その直後に戦艦ル級と重巡リ級2種の大勢での一斉射が飛来して、一斉に悲鳴を上げた中国艦娘達を一瞬の内に飲み込んだ。

 

「…っ!

定遠さん、定遠さぁぁーん!!!」

 

 丹陽がガミラスの一斉射から思わず身を屈めた後、目を開けて周囲を見渡すと、姉妹艦全員が殺られているだけでなく、仰向けに倒れていた定遠の傍に駆け寄ったが、彼女は目を開けたままの絶望した表情で死亡していた。

 更に広甲に至っては右腕のみを残して消滅していて、他の中国艦娘達は丹陽1人の残して全滅していた。

 

「……っ!」

 

 中国艦隊壊滅の現状に、丹陽は絶望や悲しみ等より怒りが勢いよく涌き出ているのを自覚すると、姉妹艦達を確認で数度叩いた後に、自分の壊れた主砲を脇へ投げ捨てて姉妹艦達から取り替え、更に姉妹艦達が持っていた空間魚雷を自分の魚雷発射管に装填して身構えると、近くを過ぎようとしていたガミラス駆逐戦隊に目を付けると、それ等目掛けて主砲と空間魚雷を一斉に放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「()えぇぇぇー!!!」」

「魚雷発射クマァァァー!!!」

 

 所変わって、日本艦隊では自分達目掛けて突撃してくるガミラス水雷戦隊を迎撃する為に巡洋艦ユラ率いるアサシオ級駆逐艦達が、巡洋艦クマ率いるシラツユ級駆逐艦達や、巡洋艦アガノ率いるカゲロウ級駆逐艦達と共に一斉雷撃をして……直撃はしなかったが、取り敢えずは追い散らす事に成功していた。

 

「また突っ込んできます!」

 

「え、何所から!?」

 

 だが駆逐艦シラヌイが示した通り、直ぐに別のガミラス水雷戦隊が突撃してきて、アガノがパニクりかけていたが、直ぐにユラとクマが動いた。

 

「次発装填急いで!!!」

「迎え討てぇぇぇー!!!」

 

 指令を出し続けているユラと、救援にきたアシガラ率いる巡洋艦隊もそうだったが、砲撃が効かないガミラスに駆逐艦娘達が明らかな動きの乱れがあった。

 此の為にユラは他共々迎撃か牽制の砲火を放ちながらの空間魚雷の装填を急がせていたが、反対にガミラスは無力な艦娘達の砲火を気にする事なく突進していて、シラヌイが見付けた水雷戦隊とは別方向から突撃してきた駆逐ハ級が主砲の掃射で駆逐艦のシラツユとヤマカゼを吹き飛ばした。

 

「シラツユ、ヤマカゼ、!!?」

 

 更にシラツユとヤマカゼの事に気がいった隙を突いて、先のシラヌイが見付けたガミラス水雷戦隊の一斉射撃で巡洋艦ツクバが頭を吹き飛ばされた。

 

「ヒビキ!!!」

 

「何やってる早く急ぐぞ!!!」

 

 更に彼女達の後方で、駆逐艦のアカツキとヒビキが2人が係りで負傷した駆逐艦ミネグモを護送しようとしていた処に、重巡リ級群の砲火が翔んできて、アカツキ達3人を吹き飛ばした。

 

「アカツキ、よくも!!!

クマを怒らせたクマァァー、っ!!?」

 

「「クマさぁぁーん!!?」」

 

 アサシオ達3人が殺られた事にクマが怒りを顕にした直後に、翔んできた1条の光線に額のど真ん中を貫かれて即死し、少し間を置いて後ろに倒れたクマにサミダレとウミカゼが悲鳴を上げながら駆け寄った。

 

 

 

「ヤマカゼさん、しっかりしてください!!!」

 

 同僚達の制止を無視してシラツユとヤマカゼの救助に向かった巡洋艦ハグロは、なんとか捕まえられたヤマカゼを抱きながら声を掛けていた。

 

「……お……お母さん……お母さん…」

 

 だが、戦闘服の腹部を赤一色に染めるだけでなくそこから血が溢れ出ているヤマカゼは、虚ろに母を呼ぼうとしているだけで、ハグロの呼び掛けに全く反応しなかった。

 間もなく死ぬだろうヤマカゼの現状を受け入れようとしていなかったが、そんなハグロの近くを他国の駆逐艦娘達の遺体が各々に欠損した状態で漂ってきたのが目に入った。

 

「…何で……何で、こんな事をするのですかぁぁぁー!!!」

 

 ハグロがコト切れたヤマカゼを強く抱き締めた直後、彼女に気付いた雷巡チ級群の空間魚雷が殺到して、絶叫したハグロをヤマカゼの遺体諸共消滅させた。

 

「「ハグロォォォー!!!」」

 

 率いていた巡洋艦タツタが護送された為に機能不全になっていたユウグモ級駆逐艦の内のマキグモとアサシモの2人と共に、モガミとマヤの2人がハグロの処に急いで向かおうとしたが、そのハグロが消滅した光景に絶叫した。

 

「…くそったれぇぇぇー!!!」

 

 マヤは八つ当たりに近い形で、ハグロを仕留めた雷巡チ級群目掛けて主砲を乱射したが、当の雷巡チ級群はマヤを無視して別の処に向かおうとし、それでも尚も雷巡チ級を追いかけようとしたマヤを止めようとしたモガミの右脇腹が後から貫かれて軽く吹き飛ばされ、偶々その先にいた駆逐艦キシナミの頭に衝突した。

 

「メディィィーック、メディィィーク!!!

っ、チトセさん此方でぇぇぇーす!!!」

 

「モガミ、しっかりしろ!!?」

 

「キシナミ、キシナミィィィー!!?」

 

 マキグモが悲鳴に近い形で救援を通信で求めている中でチトセを見付けて呼ぼうとし、右横倒しで踞って負傷箇所を押さえながら吐血しての呻き声を出しているモガミにマヤが駆け寄って、タオルでマヤの負傷箇所を押さえた。

 そのマヤの近くで変な形で顔が折れているキシナミの所にアサシモが駆け寄ったが、残念ながらキシナミは死んでいた。

 

 

 

 

 

「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ー!!!」

 

「コラ!!!

静かにしなさい!!!」

 

 ショウカク達空母艦隊とは別の宙域にいる工作艦アサヒ率いる救助艦隊はと言うと、そのアサヒが左足を吹き飛ばされた駆逐艦娘を怒鳴りながら止血処置をしている事から見て取れる通り、次々に担ぎ込まれる負傷した艦娘達を、服を血で染めながら各々に処置をしていた。

 

「アサヒさん、また負傷者多数です!」

 

「…ウチの主力は何やってんのよ!!?」

 

 新たな負傷者2人が引き摺られて運ばれてきた為、前線に出向いているジュンヨウの代わりとしてなし崩し的に入っている、彼女の姉妹艦の空母ヒヨウが怒鳴ってしまった。

 まぁヒヨウから見て取れる通り、彼女達は戦場と同等以上の過酷な処にいたのだが、そんなヒヨウに注意としてアサヒはタオルを投げつけた。

 

「不味い、リ級が複数来まぁぁぁーす!!!」

 

「ぎょ、魚雷接近!!!」

 

 だが、ガミラスが救助艦隊に気付いた為、重巡リ級群が駆逐艦群と共に襲来しようとしていた。

 その先制打として空間魚雷群が殺到し……殆どが外れたものの、動けない負傷者達の何人かを消滅させた。

 

「ひっ!!!」

 

「何をしてる!!?」

 

 ガミラス艦隊の接近に、随伴艦の駆逐艦娘の1人が逃げようとしたのを、ヒヨウが飛び付いて止めようとした直後、他共々の重巡リ級群の一斉射撃が翔んでき、更に戦艦ル級群の支援砲火までが翔んできて、救助艦隊を負傷者達諸共一瞬の内に殲滅させた。

 

 

 

 

 

「ロシア艦隊が、っ!!?」

 

 アガノが最後方から最先端に移ってガミラス打撃艦隊と交戦していたロシア艦隊が壊滅しようとしているのに気付いた直後に駆逐イ級に左肩をイ抜かれてしまった。

 

「アガノさ、!!?」

 

 被弾したアガノに駆逐艦カゲロウが振り向いた直後に彼女もイ抜かれ、更に続けてタカナミ、オオナミ、ハマナミも順に被弾し、最後に急ぎ通信をしようとしたアキグモが左肩を撃ち抜かれた。

 

「チクショウ、ガミ公!!!」

 

「メディック!!!」

 

「しっかりしなさい!!!」

 

 アガノ達の一瞬の惨状に、アシガラが主砲の一斉射の準備をして、負傷者達を気遣っているミョウコウとノワキ、更に巡洋艦トネとアラシと共に砲撃を放ち……なんとか駆逐ニ級を1隻だけ沈めると、ガミラス艦隊からお返しとしての砲火がきて、アシガラとトネが吹き飛ばされた。

 

「「アシガラァァァー!!?」」

 

「トネさん、しっかりしてください!!?」

 

「………がぁ…」

 

 吹き飛ばされた直後に、アシガラはノワキとアラシが、トネにミョウコウが各々に飛び付いて、なんとか取り押さえたが、アシガラは虫の息だが生きてはいたが、トネは被弾箇所が不味かった為に鼻からも出る程の大量の吐血をして死んだの。

 

「…負傷者……負傷者はいないの?

ねぇ、返事をしてよ。

イカヅチ様が来て上げたのよ!!!、あ!!?」

 

「あ、ああぁぁぁー!!!」

 

 そんなミョウコウの視線の先に、駆逐艦イカヅチが戦死者達の中を茫然自失の状態でさ迷っていて、立ち止まって泣きながら叫んだ直後に背中から心臓を撃ち抜かれて前のめりに倒れた事に、ミョウコウが悲鳴を上げながらイカヅチの所に駆け寄ろうとしたが、その途中で戦艦ル級の砲撃に被弾して爆惨した。

 

 

 

 

 

 ガミラスが反撃してこなかった事もあって、姉妹艦達を人垣にして空間魚雷と主砲を撃ち続けていた丹陽だったが、空間魚雷が欠乏するだけでなく主砲の全てのライフリングが駄目になってしまい砲雷撃が出来なくなった。

 

「魚雷をくだサァァァーイ!!!

誰か補給を、っ!!?」

 

「ぁぁああー!!!」

 

 丹陽は此の為に後方要員を呼んで補給しようとしたが、後方要員処か補給物資を持ってそうな艦娘が誰もいないだけでなく、前方から艦娘の誰かが吹き飛んで丹陽の脇を通りすぎた。

 

「「…っ!!?」」

 

 更にその艦娘は、補給物資を運んでいたジュンヨウとタニカゼの所にも飛んできたが、ほぼ無意識の内にタニカゼがその艦娘を受け止め、更にジュンヨウが補給を求めている丹陽に気付いた。

 

「…そいつを頼む!!!」

 

「がってん、タニカゼに任せな!!!」

 

 ジュンヨウは艦娘を医療装備と共にタニカゼに託すと、補給物資を持って丹陽の所に向かった。

 翔んでくる光線群を交わして、ジュンヨウは丹陽への補給に成功していたが、此れは数少ない成功例であり…

 

「っ!? あ、ああぁぁぁー!!?」

 

…現に別の所にいた駆逐艦サギリは、自分が運んでいた補給物資に光線が1発当たった為に火が点いてしまい、慌てて消そうとしていたが、爆発して吹き飛ばされた。

 不味い事に此の爆発でサギリの空間魚雷が誤って発射されてしまい…

 

「っ、え!?」

 

…よりにもよって、その先にタツタの代わりに旗艦を務める巡洋艦チクマが率いる水雷戦隊に入っていた雷巡オオイがいて、不意に背後を振り向いた彼女の魚雷発射管の1つに被雷した。

 そしてオオイの魚雷全てが一斉に誘爆してオオイ自身を消滅させるだけでなく、チクマ達も弾幕を張る為に密集していた事が仇になって誘爆に巻き込まれた。

 

「オオイさぁぁぁーん!!?」

 

「ユラ、止せ!!!」

 

 オオイ達の惨劇に悲鳴を上げたユラが、自分が率いる水雷戦隊を放り捨てて彼女達の所に駆け寄ろうし、そんな彼女をマヤが叫びながら追い掛けて止めようとした直後に、ユラが吹き飛ばされたチクマと激突し、更にマヤ達も突撃してきた駆逐ハ級3隻の砲雷撃を次々に被弾した。

 

「~……ちっ、くしょう!!!」

 

 自分達と一緒にいた駆逐艦娘達が死ぬか失神している中で、マヤは右脇腹を撃ち抜かれて派手に出血した箇所を押さえながらしゃがんだが、痛みをまぎらわす狙いもっあって、我慢しながら過ぎ去っていく駆逐ハ級の内の1隻目掛けて主砲を撃ち続けていた。

 

「……う"…」

 

「……チクマ、さん…」

 

 痛みで起き上がれないユラの視界の中で、チクマが目を覚まして激痛を伴って至る所から出血する上半身を起こした直後に派手な吐血と鼻血を同時にすると……もう自分が助からない事を自覚したのか、それとも戦局や虐殺に近い形で次々に殺られていく艦娘達に絶望したからなのか、少し間を置いた後にコスモガンを取り出し…

 

「…チクマさん、駄目」

 

「……ふ"ん"!」

 

…ユラがチクマがしようとする事を察して掠れ声でなんとか止めようとしたが、チクマは右の側頭部にコスモガンの銃口を当てると、そのまま自分の頭を撃ち抜いた。

 

「……あ"、あ"ぁ"ぁ"ぁ"~…」

 

「っ、馬鹿!!!」

 

 ユラは目の前でのチクマの自殺したのを見て、泣き叫ぶと同時に自分もチクマに続こうとコスモガンを取り出して下顎に銃口を付けたが、マヤがその事に気付いて飛び込んでユラのコスモガンを撥ね飛ばした。

 此の行動で傷が悪化したらしく、マヤはそのまま踞って傷を押さえながら硬直したが、ユラは顔を両手で押さえながら泣き続けていた。




榛名
「作者に代わって、感想か御意見のどちらかを御待ちしています。
…此れは幾らなんでも大丈夫じゃないです」

霧島
「前にも書いたらしいけど、此れでも沖田艦(『キリシマ』)以外全滅したヤマト原作よりはマシな状況です。
戦争とは大体こんなモノですよ」

榛名
「宇宙戦艦ヤマトは3原作揃って地球艦隊が壊滅する処から物語は始まりますけど…」

霧島
「なお先行情報として、第13話の回想に出たヒリュウ(飛龍)タイホウ(大鳳)に取り替えて此処に出す事にしたのは、次回する予定での撤退時に、現在打ち切り中のコミック版2199を後に描く事になる、むらかわみちお氏が描いた“宇宙戦艦ヤマト アンソロジー”の第1話である第一次冥王星沖海戦の一部をオマージュする為にしたようです」

榛名
「ただ、作者は本を売ってしまった上に内容を少し忘れたらしいので、言っている会話が少し違うかもしれないそうです」


















































榛名
「あのぉ~…作者はどうしたのですか?」

霧島
「ああ、今回の酷いのを書いた作者ならね、艦娘達を供養する為の護摩行(ゴマギョウ)を長門と山城の監視下且つ24時間体制でやらせてるわよ。
暫く護摩行しているから、もしかしたら次回も出れないかもしれないわよ」
(何処かを遠方を見つめながら、日本茶を啜っている)

榛名
「自業自得と言えば、そうかもしれませんね…」


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第47話 回想:第一次木星沖海戦(後中編)

――― 木星沖 ―――

 

 

 艦娘達が瞬く間に死んでいっているのに反して、ガミラス艦隊は益々攻勢を強めていた中、キリシマ達旗艦直轄部隊は、高速による遊撃を慣行して被弾を最小限に抑えながら戦闘を継続していた。

 

「Hey、キリシマ!!」

 

「距離、速度、良し!!!」

 

「バァーニング、ラアァァァーブ!!!」

「「「全門斉射!!!」」」

「おどりゃぁぁー!!!」

 

 後続する……多分失神している雷巡チ級を担いでいるコンゴウの呼び掛けに、キリシマは攻撃のタイミングが良い事を伝えると、コンゴウが雷巡チ級を派手に振り回した後に狙いのガミラス水雷戦隊目掛けて柔道技の要領で投げ飛ばし、雷巡チ級が先頭の軽巡ヘ級に衝突した後にキリシマがオオヨド、ユキカゼ、ウラカゼの3人を従えての砲雷撃の一斉射を放って、1個水雷戦隊を殲滅した。

 

「どうよ、ガミ公!!!」

 

 なんとかガミラスの水雷戦隊の1つを潰した事に、キリシマが左腕を振り上げながら叫んだが、ガミラスはまだまだ大多数存在しており、現に「やられたらやり返す、倍返しだ」と言わんばかりに、大量の光線や空間魚雷がキリシマ達目掛けて飛んできて、彼女達5人は瞬く間に飲み込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 だが奮戦敢闘していたのはキリシマ達だけではなく、駆逐艦マイカゼはガミラス水雷戦隊の1つに突進していた。

 

「踊らせてくれる、ね!」

 

 勿論、ガミラス水雷戦隊もマイカゼの存在の気付いて、迎撃を始めたのだが、当のマイカゼは反撃を一切してなかったが、ガミラス水雷戦隊の砲火全てを踊るかの様に避け続けていた。

 マイカゼが反撃をしない事にガミラス水雷戦隊怪しんでいたが、その隙を突いてマイカゼは後ろに体を寝かしてガミラス水雷戦隊の下を通過しようとして、ガミラス水雷戦隊の四番艦に位置していた駆逐ロ級を真下から主砲で狙い撃ち……駆逐ロ級はマイカゼの不意打ちに近い砲撃を避けたが、後続の駆逐ハ級に激突し、更に最後尾の駆逐ハ級をも巻き込んで3隻揃って爆発した。

 

「避けなくても(ハジ)けたのに、お馬鹿さん!」

 

 マイカゼがガミラスの失態に嘲笑っていたが、ガミラス水雷戦隊での生き残りの軽巡ヘ級と軽巡ホ級と駆逐ニ級の計3隻は衝突から爆沈した3隻に唖然とするも直ぐに気を取り直して、マイカゼの追撃を始めた。

 

「…ちょっと……ヤバいかな?」

 

 軽巡ヘ級3隻の躍起になっての追撃にマイカゼが冷や汗を流していたが、そのガミラス水雷戦隊はマイカゼに気がいきすぎて、後上方から接近する者達に気付かなかった。

 

「マキグモ、いいか!?」

 

「照準、良し!!!」

 

「「撃ぇぇー!!!」」

 

 絶好の隙を見せていたガミラス水雷戦隊を見逃さなかったアサシモとマキグモは、一斉に空間魚雷を放ち……最後尾の駆逐ニ級は全く気付かずに被雷して轟沈、軽巡ヘ級は慌てて回避しようとしたが直ぐに被雷から轟沈、最後の軽巡ホ級は回避をし続けて迎撃の砲火を放つも全弾外した後に被雷して轟沈した。

 

「ふぅ~…」

 

「大丈夫か、マイカゼ?」

 

「あんがとね」

 

 砲撃でポニーテールを束ねていたリボンが切れた為に髪が落ちていたマイカゼが安堵の溜め息を吐くと、アサシモとマキグモが彼女の左右に着いた。

 

「流石はユウグモ級ってとこ?」

 

「いやぁ~…魚雷が良いんだよ」

 

 マイカゼの茶化しに、アサシモが笑って空間魚雷の1本を翳した。

 今回の出撃に合わせて、日本駆逐艦の最新鋭であるユウグモ級には、後にヤマト達イスカンダル遠征艦隊に配備される新型空間魚雷が試験配備されていて、アサシモとマキグモの笑顔だと期待通りの性能を発揮していたようだった。

 

「「…っ!?」」

「キリシマさん達が!!?」

 

 だが戦局をひっくり返す程のモノではなく、現に爆発音がしたのでマイカゼ達が振り向いた先に、キリシマ達の惨状が目に入った。

 

「……畜生…」

 

「オオヨドさん、オオヨドさぁぁーん!!!」

 

 ガミラス打撃艦隊からの集中砲火から出てきたキリシマ達はと言うと、艤装が大破して全身至る所から出血しての大破状態でいるのは当然として、キリシマは左腕で掴んでいる右腕が力無く垂れていたし、上半身が仰け反って失神しているオオヨドをユキカゼが抱えながら必死に声をかけてて護送していた。

 

『キリシマ、大丈夫か?』

 

「…機関は無事ですが、武装の殆どが大破しました。

戦闘は不可能です」

 

 沖田がキリシマの返事に顔を引き吊らせてた。

 

『沖田提督、艦隊損耗率が9割を越えました!』

 

『救助艦隊が壊滅したぞ!!!』

 

 更に秘書艦として沖田の側にいるホウショウが他の艦娘達や参謀達共々悲鳴を上げて右往左往していた。

 

「…申し訳ありません。

奴等(ガミラス)と戦える艦娘はもう居ません」

 

 キリシマは戦局は完全にガミラスの手の中にある事を悟って沖田に謝罪したが、沖田も「そうか」と答えて目を閉じた。

 

『…やむを得ん。

キリシマ、撤退しろ』

 

「撤退!!?」

 

『そうだ、生存者を可能な限り回収して地球に撤退しろ。

空母艦隊に残存戦力を全て投入して打撃艦隊の退却を援護させろ』

 

 沖田の撤退命令に反感がそれなりにいたが、地球打撃艦隊の背後から(逆)丁字から砲撃をし続けていたガミラス打撃艦隊は、反時計回りに地球打撃艦隊の右側に回って平行して、再突入してくるガミラス空母艦隊と連動して挟み込もうとしていたので、退却には打ってつけの好機だった。

 

「ですが…っ!」

 

 キリシマが沖田の撤退命令に抵抗していたが、コンゴウが彼女の左肩を掴んで微笑んで顔を……左目の下に出来た傷からの出血で左半分が赤く染まった顔を左右に振り、少し間を置いた後にキリシマが下唇を強く噛みながら信号弾用拳銃(カンプピストル)を取り出すと、撤退を報せる信号弾を頭上に打ち上げた。

 更にキリシマの撤退の信号弾に気付いた者達が通信機越しに叫んで退却を報せ始めた事もあって地球艦隊の退却が始まった。

 だがその退却に秩序が無く、殆どの者達が悲鳴を上げて我先に逃げ出していて、中には自分の武装を投げ捨てている者達がいれば、中には動けずに泣き叫んで助けを求めている艦娘を無視している者達までいた。

 

(駄目だ、彼女達では勝てない…)

 

 撤退命令が出た事に託つけて、恥を晒して逃げ出す艦娘達にキリシマは軽蔑の目線を向けていたが、沖田は今回の海戦で艦娘の心までがガミラスに粉微塵にされた事を察して、軽い絶望感を感じていた。

 

『キリシマ、お前は最後まで戦場に残ってもらうぞ』

 

「分かってますって…」

 

 日本の戦艦娘としてだけでなく、総旗艦としての意地と誇りを保つ為、そして総旗艦の責任に託つけて死に魅了されかけていた為、キリシマは沖田に寂しく微笑んで「総旗艦たる艦娘として責任を果たす」と言おうとしたが…

 

「…それはNoなんだから!」

 

「え、っ!?」

 

…いつの間にかにキリシマの背後に回っていたコンゴウが、キリシマの艤装背部に貫手をして何かを弄ると、キリシマの艤装から小さい爆発が起きて直ぐにキリシマを撤退先に投げ飛ばした。

 

「姉様、何を!!?」

 

「艦隊の頭脳なのデショ?

だったら貴女は、是が非でも生き残らないといけないネ!」

 

 しかもキリシマにとって不味い事に、コンゴウの細工でキリシマの機関が暴走した為、キリシマの意思に反して加速を始めて止められなかった。

 

「沖田提督ぅ、私が殿として最後まで戦場に残りマース」

 

『コンゴウ、何を言っている!?』

 

「私はもう地球に帰れません」

 

「っ! コンゴウ姉様、足が!!?」

 

 コンゴウがキリシマに代わって殿を務める事を、沖田が怒鳴って止めようとしたが、キリシマが絶叫した通り………左頬の傷に目にいったが、いつの間にかにコンゴウの左足が太股の上半分を残して消滅していて、その左足のハイソックスの袖口のみが残っているのが嫌に生々しかった。

 コンゴウから逃げ足が失われたのを察して、沖田はコンゴウの殿を下唇を噛みながら黙認した。

 

「姉様、残るなら私が!!!」

 

「キリシマさん、何をするんですか!!?」

 

「離して、姉様、コンゴウ姉様ぁぁぁー!!!」

 

「もうコンゴウは駄目だぁぁぁー!!!」

 

 だがキリシマは何とかして、自分達に右拳を左胸に当てる敬礼をしたコンゴウの所に反転しようとしたが、そんな彼女をマキグモとアサシモが2人係りで抑えた。

 

「ヤバい!!

敵艦直上、急降下!!!」

 

 だがガミラスが退却する地球艦隊を見過ごす訳がなく、その表れとしてキリシマ(達?)を狙って急降下する駆逐イ級を、マイカゼが気付いて叫んだが、既に攻撃体勢の駆逐ニ級を迎撃出来そうになかった。

 だが駆逐ニ級が攻撃直前に真横から翔んできたコスモパンサー3機の特攻で爆発したが、その駆逐イ級の残骸の1つがキリシマの左目の上部に直撃して、キリシマが顔の左半分を赤く染める程の出血をして開けなくなった左目を押さえていると…

 

「ゴメンね、キリシマ」

 

…いつの間にかに前進してきていたヒリュウが、キリシマに詫びを言うと、そのままキリシマ達の脇を過ぎてコンゴウの所に向かった。

 

「沖田提督、ヒリュウさんを止めてください!!!」

 

『ヒリュウ、何をしている!!?

キリシマに続け!!!』

 

 ショウカクが叫んで報せるまでもなく、沖田が退却を拒否したヒリュウを止めようとした。

 

「沖田提督、私は嫌です。

最後まで戦い抜きます!」

 

『馬鹿な事を言うな!!』

 

「沖田提督、“戦って戦って、死ぬまで戦い抜く”、戦士ならそうすべきじゃないですか!?」

 

『それは違う、それは違うぞ、ヒリュウ!

“今日の屈辱に耐え、明日の勝利を掴む”それこそが戦士だ!』

 

「だったら此の戦いは何だったのですか!!?」

 

 沖田はヒリュウをなんとか呼び止めようとしたが、そんな沖田の制止はヒリュウにとっては自分の信念を否定しているだけでなく、嘗てミッドウェー海戦で孤軍奮闘して文字通り死ぬまで戦い抜いた先代空母飛龍を侮辱したように聞こえたらしく、益々意地になっていた。

 

「こんな欧米(旧NATO)の艦娘達がいない、不利な艦隊編成で戦わされて、防衛司令部は私達に死ねと命じられた見たいですよ!

此れじゃまるで、沖縄に特攻させられた戦艦大和と同じじゃないですか!」

 

 沖田はヒリュウが反論出来なかった。

 沖田は此の作戦は土星からの決死輸送船団をガミラスから逃す為の負け前提の囮だと言う事を知っていたからだ。

 更に言うと、今の地球は嘗ての日本と同様に艦娘達に死を求めているのを察していた。

 

「ヒリュウ、分かってくれ!

その大和はレイテ沖で負けを認めて反転したんだ!

大和に倣って、屈辱にまみれてでも生を選ぶんだ!」

 

 だからこそ、沖田は艦娘達に“生”を求めて欲しかったのだが、沖田の思いはヒリュウには届かなかった。

 

「沖田提督、ヒリュウは戦場に残ります。

死んでいった皆だけでなく、空母飛龍の次代として戦い抜きます」

 

「ヒリュウ、お願いですから、戻ってください!!!」

 

 沖田の撤退命令を完全に拒絶したヒリュウを、不本意な形で退却中のキリシマもヒリュウを呼び戻そうとしたが、そんなキリシマ目掛けて、光線が翔んできた。

 

「…っ!?」

 

「「「ユキカゼ!!!」」」

 

 だが、被弾を覚悟して左腕を身構えながら目を閉じたキリシマに、直撃の気配が無かったので目を開けると、目の前でユキカゼが両手を広げてキリシマの楯と被弾していた。

 

「…キリシマさん、行ってください。

貴女は此所で沈んではいきません」

 

「……アンタだけじゃ、不安やな」

 

 (沖田にとっては)不味い事に、ヒリュウの行動は他にも同調者を呼んでしまったらしく、ユキカゼだけでなくウラカゼも同調して、更に退却した駆逐艦娘や巡洋艦娘達、国問わずに艦娘達の何人かか再反転してコンゴウやヒリュウの所に向かっていた。

 

「行くぞ、ユキカゼ!!!」

 

「此の命に代えて、ユキカゼがお守りします」

 

「ウラカゼ、ユキカゼ、止めてぇぇー!!!」

 

 同じカゲロウ級のマイカゼが叫んでの制止を無視して、ウラカゼとユキカゼはコンゴウの所に向かった。

 

「何をしてるんデス?」

 

「コンゴウ姉さんとヒリュウの2人じゃあ、身が重いと思ったんじゃ」

 

「…艦娘って……意外に、馬鹿が多いのね」

 

 自分達に続いたウラカゼ達に、ヒリュウが自虐込みで馬鹿にしたら、コンゴウ達が苦笑した。

 もしかしたら、ヒリュウは負けを認める勇気が無かった事を自覚していたのかもしれない。

 

「沖田提督、誤解しているかもしれませんが、貴方の下で戦えた事は私達の誇りです!」

 

 沖田へ最後の通信をしながら、ヒリュウに合わせてコンゴウ達は一斉に右拳を左胸に当てる敬礼をした。

 

『…死ぬなよ』

 

 明らかに無念が感じられたが、沖田はヒリュウ達に答礼した。

 

「キリシマ、後を任せるデェェース!!!」

 

 更にコンゴウが笑顔でキリシマに別れを告げ、キリシマが何かを叫んでいたが、コンゴウ達は自分達目掛けて前進してくるガミラス空母艦隊に振り向いた。

 

「さぁ、ガミラスに私達のPRIDEを見せに行きまショォォーウ!!!」

 

 コンゴウの笑顔での言葉に、ヒリュウ達は次々に頷いた。

 

「…銀河水平、波間を越えて、目指す恒星ケンタウリ♪」

 

「「…星の瞬き、遥かに越えて、宇宙(ソラ)に輝く星の船♪」」

 

 突然、ユキカゼが、星往く船乗り達の歌を歌いだし、最初は全員驚いていたが、ウラカゼがユキカゼの思いを察して彼女に合わせた

 

『抜錨、船出だぁー!!! 錨を揚げろぉー!!!』

 

「……みんな…」

 

 そして全員がユキカゼに合わせ、ユキカゼが最も言いたかった歌詞を大声で力強く歌った。

 此の場面で、ヒリュウは自分の我が儘に他の者達を付き合わせた事を悔やんでいたが、そんな彼女の左肩をコンゴウが歌いながら叩いて笑顔で頷くと、ヒリュウも歌に乗っかった。




霧島
「強制護摩行中で不在の作者に代わって、感想か御意見を待ってるわよ」

榛名
「…なんか前回のサブタイが(中編)から(前中編)に代わってますね」

霧島
「長くなりすぎて急遽2つに分けた余波でそうなったらしいわよ。
お陰で護摩行も1回延長になったわよ」

榛名
「不在の作者の話だと、今回の話の胆はオリジナル版を母体にした沖田提督と飛龍(ヒリュウ)との口論らしいですよ」

霧島
「前回も書いたけど、アンソロジーの要素を入れる事にしたんだけど、金剛(コンゴウ)姉様や雪風(ユキカゼ)では出来ないと判断して、急遽飛龍(ヒリュウ)が変更しての出演させる事にしたんですって」

榛名
「後、作品初盤で金剛(コンゴウ)姉様が雷巡チ級を投げ飛ばしてますけど…」

霧島
「アレはね、EMS-10さん著の“追跡鶴”を読んで思い付いたらしいわよ。
更に言うと“side 金剛”の第1話でゲッター3みたいに空母ヲ級を投げてますので、投げキャラにしても違和感はないとの判断もあって、此の影響で私達の姓は“巴武蔵”から貰って“巴”にしたそうです」

榛名
「補足情報として、本作での金剛(コンゴウ)姉様は地球最後の五輪である2188年度オリンピックで金メダル三冠を達成した凄腕柔道家だそうですよ。
此の為、金剛(コンゴウ)姉様は横須賀基地の柔道部主将であっただけでなく、艦娘でありながら空間騎兵隊の特別教官だったそうです」

霧島
「更に言いますと、高雄(タカオ)級四姉妹と(アケボノ)共に金剛(コンゴウ)姉様は艦娘になった経緯が設定されていて、元々天才美少女柔道家で有名だった上に、武者修行と称してイギリスを中心に欧米中の柔道大会を荒らし回っていた処をイギリス海軍経由で日本海軍にスカウトされて艦娘になったそうです。
ですけど金剛(コンゴウ)姉様は日本陸軍が陸娘候補として目を付けていたので、陸海軍でイザコザがあったそうです」


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第48話 回想:第一次木星沖海戦(後編)

 読者の皆さん、第12話で前兆がありましたが、今回コンゴウ(金剛)が酷い事になっていますので、最初に言っておきます。

 金剛ファンの皆さん、ごめんなさい。





 それでは(酷い)本編をどうぞ


――― 木星沖 ―――

 

 

『…進路そのまま宜侯(ヨウソロ)、星に向かって舵を切れ♪

俺達ゃ宇宙の~、俺達ゃ宇宙の船乗りだ♪』

 

『…キリシマ、退却を急げ』

 

「はい…」

 

 退却する艦娘達への別れの歌であり、自分達の葬送曲を歌い続けたコンゴウ達の思いを察して沖田はキリシマに退却を催促したが、頷いたキリシマも沖田も、コスモパンサー隊で逃げられずにいる艦娘達を救助するだけでなく打撃艦隊の退却を援護させているショウカクとズイカクの姉妹も、そして退却する他の艦娘達も悔しさが滲み出ていた。

 

「Follow me!!!

皆さぁぁーん、私に着いてきてくださいネ!!!」

 

 空母艦隊が立ち塞がるコンゴウ達に砲撃を開始すると、コンゴウ達も迎え撃つ為に突撃を開始した。

 当然と言えば当然だが、圧倒的に優勢なガミラスの砲撃で次々に艦娘達が殺られていき…

 

「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ー!!!」

 

…ヒリュウは蜂重巡リ級群の砲火の1つに左肩を撃ち抜かれると、それが呼び水になったらしく次々に被弾していって、目を着けた軽母ヌ級の1隻に、特攻とも衝角(ラム)戦とも思える体当たりをして、キリシマ達に敬礼しながらガミラス空母艦隊の下方へ蛇行して行き……見えなくなる程の遠くに行った後に爆沈した。

 ウラカゼもヒリュウに倣おうとしたが、軽巡ホ級と衝突して明後日の方角に吹き飛ばされた。

 

「っ! 姉様ぁぁー!!!」

 

 そしてコンゴウはと言うと、左足が失われた為の動きの遅さが原因で、ガミラス駆逐艦4種に包囲されると、そのまま駆逐艦群が四方八方からの集中砲火を開始した。

 それに被弾し続けるコンゴウは血肉が飛び散るのを無視して咆哮を上げ………更に右腕が千切れるとそれをクわえながら撃ち返して、なんと効かない筈の衝撃砲で駆逐イ級と同ニ級を沈めて、駆逐イ級2隻を吹き飛ばしていたが、どうやら此処までが限界だったようで、先代金剛の渾名の“鬼”を連想させる壮絶なコンゴウの状態にガミラス駆逐艦4種が怯えて同士討ちを少々起こしながらも砲撃を強めた事もあって、明後日の方向に翔んでいる衝撃砲の数が徐々に減っていって、泣き叫んだキリシマ(達)からは発生した煙でコンゴウが見えなくなった頃に完全に沈黙した。

 そして最後に、ユキカゼがガミラス空母艦隊を潜り抜けて再突入の為に反転しようとした直前、偶然に近い形で翔んできた光線に被弾して大爆発を起こし、この間にキリシマ達が戦闘宙域から離脱した事もあって、此れが第一次木星沖海戦は終了となった。

 

 本海戦の結果はと言うと、地球は9割に迫る戦没者を出すだけでなく、帰還した艦娘達の多くが傷や精神のどちらかで退役(後者のみ彼女達を指揮した提督達の一部も加わる)した為に実質の生存者は1割を下回った。

 それに対し、ガミラスは損傷艦の比率は不明だが、戦没艦は1割に満たなかった上、戦没したのが駆逐艦か軽巡や雷巡が殆どであり、重巡以上の主力艦はほぼ無傷と言える状態と予測された。

 

 第一次木星沖海戦は、防衛軍の汚点と称される完全敗北であった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 横須賀 ―――

 

 

「はっ!」

 

 火星・木星間小惑星帯での潜宙棲鬼(レムレース)討伐し、それから、制圧した小惑星イカロスを戦艦リシュリュー率いるフランス艦隊に引き継がせて、ローマを連行しながら地球に帰還してかろ、他共々に休暇を命じられたキリシマは、第一次木星沖海戦の(悪)夢から目覚めると、上半身を起こして暫く硬直していた。

 因みに現在のローマはビスマルクの居る隣の牢に入っているらしく、ローマとビスマルクはよく壁越しに口喧嘩をしているそうだ。

 

 話を戻して、キリシマは何気無く振り向いた先に有った額縁に入った写真を見つけると、ベットから降りてその写真を手に取った。

 その写真には満面の笑顔のコンゴウが左右のキリシマとハルナ各々の首に腕を回して抱き抱え、少し前のめりになってるキリシマとハルナが驚いていて、右奥で驚きと2人の妹(キリシマ&ハルナ)への嫉妬が混じった表情をした次姉(コンゴウ級戦艦二番艦)の戦艦ヒエイが写っていた。

 キリシマとハルナの2人が揃って艦娘となっての艦隊編入された事を祝っての記念写真である此の写真は、コンゴウ級の4姉妹に取っての戦争の無い平和だった日々の象徴であったが、写真に写る4姉妹が揃う事は永遠に無かった。

 何故なら、コンゴウは言うに及ばず、三番艦のハルナは土星陥落時に衛星タイタンの艦隊司令部と運命を共にし、ヒエイに至ってはガミラス戦争の中で何時何所で亡くなったのかが分からない状態になっていた。

 

「……コンゴウ、姉様…」

 

 キリシマは写真を持つ右手を震わせながら、何故今になって第一次木星沖海戦の夢を見た事を自覚していた。

 その原因である、小惑星帯に赴く前にキサラギから耳打ちされた事を思い出していた。

 

(…防衛司令部内で、ヤマトさん達遠征艦隊を冥王星へ向かわせようとする一派が未だにいます。

藤堂長官は冥王星攻略に反対していますが、私から藤堂長官へ遠征艦隊の冥王星攻略を提案してみせます)

 

 コンゴウ達の無念を晴らす事、それ即ち“ガミラスの太陽系からの駆逐”、簡単に言ったら“ガミラスの太陽系制圧の橋頭塁たる前線基地のある冥王星の攻略”であった。

 此れは遊星爆弾その物を根絶する事も可能であり、現に冥王星での海戦が6度も行われていたが、その全てが地球艦隊の敗戦となっていた。

 後世“冥王星を手にする者は太陽系を手にする”と言われる程の太陽系でも重要な(準)惑星である冥王星の価値を、当然ガミラスも認知していて冥王星には第一次木星沖海戦の艦隊より遥かに強大な艦隊が駐留しているだけでなく、詳細不明ながらも強大な陸上戦力も有しているので、遠征艦隊による冥王星攻略は当初から否定されていた。

 キリシマも当然その事は頭の中で理解はしていたが、感情ではヤマト(達)に冥王星を攻略して欲しい思いが強くあり、相反する思いの対立の表れでキリシマは震える右手の力が緩んで写真を落としそうになったので左手を添えると、両膝を床に着けて写真を掲げながら顔を伏せて目が潤みだしていた。

 

「……姉様、貴女は許さないでしょう。

だけど、私は……姉様達の、無念を……無念を、晴らしたい!!!」

 

 写真をなんとか落とす事なく机の上に置いたら、キリシマはそのまま頭をも床に着けて、冥王星攻略が他力本願せざるをえない自分の不甲斐なさを自覚していた事もあって、机を何度も叩きながら声を出して泣き出していた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― オマケ・土星沖 ―――

 

 

「ふぅ~…」

 

「カザグモさん!」

 

「あ、ゴメン!」

 

 此の時、土星の衛星エンケラドゥスに潜伏していた艦娘達の中で、戦艦ハルナ、空母ズイホウ、巡洋艦のチョウカイとアオバ、駆逐艦のユウグモとカザグモの計6人は、突然入港した地球からの輸送船団の護衛(一様)をして見送った後、ガミラスを警戒しながらエンケラドゥスへの帰還途上で、カザグモが土星が見えた事から溜め息を吐いて気が抜きかけた為にユウグモに注意された。

 

「しかし、あの輸送船団は何だったんでしょうね?」

 

「うん、ガミラス艦隊が土星から居なくなった事もあるしね」

 

 ズイホウのコスモパンサー隊による偵察で土星にガミラス艦隊がいない事が確認され、更に土星から空母アカギ、戦艦ヒュウガ、巡洋艦ノシロ、駆逐艦のフブキとウシオの計5人が迎えに出てきた事もあって、旗艦を務めるハルナの命令で取り敢えず戦闘体制が解除され、よく分からないままに入港してはさっさと鉱物資源を積み込んで行ってしまった輸送船団の事をアオバとズイホウが話し合っていたが、他共々に答えを見出だす事が出来なかった。

 

「まぁ、地球に帰れなかった事は悔やまれますが、保護していた民間人全員を引き取ってもらったので、良しとしましょう」

 

 だからこそか、チョウカイの言葉に5人は揃って頷くしか出来なかった。

 

「皆さん、御苦労様でした」

 

 帰ってきたハルナ達をアカギが労って、ハルナが「はい!」と返した。

 

「…? ヒュウガさん、あれは何でしょうか?」

 

「ん?

ああ、本当にアレは何だ?

なんかロケットみたいだし、えらく速いな」

 

 そんな時にフブキが何かが近づこうとしているのに気付き、知らされたヒュウガも振り向いたが、それが何かと分からないでいた。

 

「……ガ、ガミラス!!?」

 

「っ、全艦戦闘配置!!!」

 

 多分消去法で、アオバが接近する何かはガミラスと決め付けて叫んだ為、アカギを筆頭に他の者達も吊られて一斉に武装を身構えた。

 

「来ます来ます来ます!!!」

 

 カザグモが少しパニクりかけていたが、全員が砲撃開始しの号令を待っていた。

 だがチョウカイやズイホウを初めとした一部は、接近してくる何か言い表せない違和感を感じていて、ズイホウが独断で予備のコスモパンサー隊を発艦させ、チョウカイも解析に協力した。

 

「…っ、待ってください!!!

アレは艦娘です!!!」

 

「味方!!?」

 

 でその結果、チョウカイは接近するのは艦娘だと探り当てた。

 当然ながら、アカギは直ぐに戦闘体制を解除させた。

 

「誰、アレをガミラスだって言ったのは?」

 

「「…此の人」」

 

 味方を誤認した事に、カザグモが呆れながら毒づいたら、ノシロとウシオがアオバを犯人だと指差した。

 

「此の馬鹿!!!」

 

 で、直ぐにアオバの頭にヒュウガの主砲の1基が振り下ろされた。

 

「んで、アレは誰なんでしょうね?」

 

 ノシロの呟き通り、次に疑問に思うのは艦娘は誰なのかだったが…

 

「っ!? アレはユキカゼだぞ!!!」

 

…艦娘が近付いてきた事から、ヒュウガが艦娘がユキカゼである事を見抜き、明らかにユキカゼの様子がおかしかった事もあって、叫んで報せた。

 

「ユキカゼさん!!!」

「ユキカゼ!!!」

 

 ユウグモとカザグモがほぼ無意識の内に飛び出してユキカゼを止めようとしたが、そのユキカゼへほぼ失神していた為にユウグモとカザグモを左右各々に撥ね飛ばしていったが、代わりにハルナが若干後ろに押されながらもユキカゼを受け止めた。

 ハルナがユキカゼを停止させてから少し間を置いて、異常速度を出す程の暴走をしていたユキカゼの艤装の機関も止まった………と言うより壊れたらしく、ユキカゼの艤装の至る所から蒸気のみたいな音を出しながら白煙が吹き出した。

 

「「ユキカゼさん!!!」」

「「ユキカゼちゃん!!!」」

「「「「「ユキカゼ!!!」」」」」

 

 ユキカゼの存在自体がそうだったが、ユキカゼが背中と尻が焼けただれているのを初めとして、体中に傷を負っている状態に、抱き付いている為に気づいていないハルナ以外の者達がギョッとし、少し間を置いてから全員がユキカゼの所に駆け寄った。

 全員が各々にユキカゼに声を掛けていると、ユキカゼが目を開けたが、明らかに意識が混濁していた。

 その為に最初の目に入ったハルナを勘違いした。

 

「…あ、コンゴウさん……コンゴウさんも、木星から逃げ切れたんですね」

 

 ユキカゼの言葉にハルナ達が“えっ!?”としたが、当のユキカゼはまた直ぐに意識を失った。

 

「ユキカゼさん!!?

コンゴウ姉様の身に何があったんです!!?

木星で何があったのですか!!?」

 

 コンゴウの名が出た事でハルナが取り乱してユキカゼを前後に揺さぶったが、失神したユキカゼは何も答えなかった。

 

「ユキカゼさん、答えてください!!!」

 

「ハルナさん、落ち着いてください!!!」

 

「ユキカゼは気を失ってる!!!」

 

 ハルナがユキカゼを危険レベルで揺さぶり出した為、フブキとノシロが2人係りでハルナとユキカゼを引き離した。

 

「木星沖で海戦があったのか?」

 

「でも何故此の時期に……っ!」

 

 ヒュウガとアカギはユキカゼの言葉から、木星沖で海戦が行われたのを察し……更に“先の輸送船団”の“消えたガミラス艦隊”そして“木星沖の海戦”の3点から防衛司令部が何を企んだのかを察して、お互いの目線を合わせた。

 

「まさか、先の輸送船団の為に…」

 

「ええ、コンゴウさん達を囮にしたんですよ、防衛司令部は!」

 

 ヒュウガとアカギの断定に、チョウカイ達が非道とも言える防衛司令部の暴挙に唖然とした。

 

「でも、藤堂さんは、藤堂さんはコンゴウさん達を囮にする作戦を許可する人では…」

 

「別にあの人が立案したとは言ってない。

だが藤堂さんの事だから、囮作戦を強要されたんだろ」

 

 藤堂と長い付き合いのウシオは反対ようとしたが、ヒュウガの指摘に少し涙ぐみながら黙ってしまった。

 

「それよりもユキカゼちゃんです!

危険な状態です!!」

 

「ユウバリだ、ユウバリの所に運ぶんだ!!」

 

 だがフブキの指摘通り、ユキカゼは瀕死であり、ヒュウガの提案に全員が頷くと、直ぐにユウグモとカザグモが左右からユキカゼを担ぎ、更にフブキとウシオがユキカゼに必死に声を掛けていた。

 

「ハルナは、ハルナは木星に行けるだけ行きます!」

 

 そんな駆逐艦娘達4人と違って、ハルナはアカギ達の返事を待たずに土星とは反対方向の木星へと急いで向かった。

 

「「「ハルナ待って!!!」」」

 

「ノシロ、お前も行け!!!」

 

 そんなハルナをズイホウ(とコスモパンサー隊)、チョウカイ、アオバの3人が急いで追いかけ、更にヒュウガに「分かりました!」と答えたノシロも続いた。

 

 

 

 

「っ! 11時の方角に反応2つ!!!」

 

 ハルナ達が土星軌道から木星軌道に移る直前で、ノシロが帰りの燃料を気にしていた時に、チョウカイが前方左手にいる存在を、使用厳禁にしていたレーダーで探知した。

 

「ズイホウ航空隊、発艦!!!」

 

 距離が有りすぎた為に、目視で確認出来なかったので、ズイホウが直ぐに弓矢でコスモパンサー隊を放って確認させると…

 

「「「っ!!?」」」

「コ、コンゴウ姉様!!?」

 

…なんと、コンゴウが白目を剥き、両手足の損失箇所を初めとした体中の至る所から血を撒き散らしての失神状態で、軽巡ト級に牽引ビームで引っ張られていた。

 

「酷い…」

 

「ハルナ、待って!!!」

 

 コンゴウの惨状にノシロが絶句したが、ハルナはコンゴウの事から何かが切れたらしく、アオバの制止を無視して軽巡ト級へ突進した。

 

「コンゴウ姉様を返せぇぇぇー!!!」

 

 どうやら軽巡ト級は油断していただけでなく、主砲を乱射しながら突進してくるハルナの怒りの形相に驚き怯えた様で、牽引ビームを解除してコンゴウを放置すると、急いでハルナから逃げ出した。

 

「ズイホウ、逃がすな!!!」

 

「分かってます!」

 

「追え追えぇぇー!!!」

 

 ハルナは逃げた軽巡ト級を無視してコンゴウに駆け寄っていたが、増援を呼ばれる事を危惧したのも有ったが、コンゴウの惨状と仕打ちに遅れて怒ったらしく、ズイホウがチョウカイに言われるまでもなくコスモパンサー隊(と言ってもズイホウの搭載機数じたいが、9機しかない)で軽巡ト級を足止めして、ノシロを先頭に巡洋艦娘達3人が軽巡ト級を追撃した。

 幸いな事に、ガミラスが他に居なかっただけでなく、軽巡ト級はガミラス内でも弱い方だったので、ノシロ達3人によって時間が掛かるも、なんとか救援を呼ばれる前に沈める事に成功した。

 

「姉様、コンゴウ姉様!!!

ハルナです、ハルナが分かりますか!!?」

 

 その間、ハルナはコンゴウに抱き付いて、錯乱に近い状態でコンゴウを揺さぶって泣き叫んでいた。

 そんなハルナとコンゴウの所にズイホウが、少し遅れてアオバ達3人も駆け付けた。

 

「……あ"、ハル"、ナ"…」

 

「嘘でしょ!?

なんで生きてるんですか!!?」

 

「そんな事より、早く土星に運びましょう!!!」

 

 ハルナの呼び掛けに無意識の状態ながら反応した事からコンゴウはまだ生きている事が確認されて、喋った直後に派手に吐血した事もあってズイホウが驚いていたが、アオバが叫んだ通りにユキカゼが霞むレベルで危険な状態であるのが目に見えていた。

 此の為、チョウカイとアオバが……コンゴウに掴めそうな箇所が見当たらなかったので、沈めた軽巡ト級に倣って2人係りでの牽引ビームでコンゴウを引っ張った。

 

「コンゴウさん、しっかりして下さい!!!

貴女は助かったのですよ!!!」

 

「コンゴウ姉様、コンゴウ姉様!!!

目を開けて下さい!!!」

 

 此の間、ズイホウが低レベルの応急処置をしながらハルナと共に、無反応のコンゴウに呼び掛け続けていた。




日向
「強制護摩行中で不在の作者に代わって、感想か意見を待ってるぞ。
今回の投稿前に“設定 艦娘”の未所有故の出演不可から大東を削除したそうだぞ」

伊勢
「…分かってたけど、金剛凄い事になったわね。
お陰で榛名と霧島が寝込んじゃったわよ」

日向
「作者は“銀英伝の旧アニメよりはマシ”と言っていたがな。
まぁそれでも、さっき比叡がハイオク持って作者の所に行ったのに変わりないけどな」

伊勢
「比叡のは止めなさいよ!……あ、爆発が起こってる…」

日向
「取り敢えずは今回にて、冥王星攻略の布石その1である第一次木星沖海戦は終了だ。
次からは私達土星の生存者達にもう1度話を当てるそうだ」

伊勢
「時間を潜宙棲鬼戦の時に少し戻して、いよいよ私達土星組に動きがあるんだって」


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第49話 ハルナ達の旅立ち(前編)

 今回の登校前に“設定 艦娘”の未所有故の出演不可から福江を削除しました。(ジョンストン、今いずこ?)





 それでは本編をどうぞ。


――― 土星 ―――

 

 

 ヤマト達が小惑星帯での2度目の海戦をしていた頃、土星の衛星エンケラドゥスの生き残りで動ける艦娘達の殆どは、不格好ながらも拡張された通信室に集結していた。

 

「…どうだ?」

 

「……やはり、火星・木星間の小惑星帯で大規模な戦闘が行われてますね」

 

「しかも、我等イタリア艦隊もいます」

 

 両手の怪我で直接操作が出来ないので、ウシオとレーベレヒト・マーズに通信機操作を指示しながらのアカギの、巡洋艦ナチへの返しだけでなく、日本語に交じってのイタリア語の通信も確認された為に急遽通信係に加わったザラの報告に、ナチ達が揃って唸り声を出していた。

 

「やっぱり、前にあった木星・土星間のも関係があるんでしょうか?」

 

「関係はあると思うぞ。

なにせ、火星・木星間の小惑星帯には遊星爆弾関連があると予想されていたからな…」

 

「おそらく、木星・土星間のは囮でしょうね」

 

 レーベレヒト・マーズの呟きに近い形での疑問に、将官級提督の秘書艦を務めた事がよくあったので防衛軍の機密事項をある程度知っていたナチとアカギが答えた。

 

「更に、小惑星帯にはローマさんがいます。

イタリアさんが小惑星帯の調査で沈んだ以上は、あの人が出てきたのは、それ関連だからでしょうね」

 

 更にザラの指摘で小惑星帯帯で行われている出来事の理由は確実的となった。

 

「ですけど、遠征艦隊の航行速度が速すぎますよ」

 

 彼女達がどうしても分からなかったのが、ウシオが指摘した、遠征艦隊の異常とも言える移動速度であり、まぁ此れはワープ機能を得た事を知らないので無理からぬ事であった。

 だが此の所為で、ガミラスが最大限の通信妨害をしている事もあったが、急いでズイホウ達が合流か通信衛星の代わりとして出向いたのだが、通信可能距離に近づく前に友軍艦隊はワープ(ズイカクの初ワープ)で消えてしまったのだ。

 

「それはそうとして、木星・土星間の艦隊は海王星を目指しているのが分かります。

おそらく、海王星で小惑星帯にいる艦隊と合流する気なのでしょうね」

 

「でしたら、私達も海王星を目指してみたらどうでしょうか?」

 

 駆逐艦フブキがショウカク達の進路と太陽系の惑星帯の位置を調べた結果、ショウカク達が地球・大マゼラン銀河(イスカンダル)間の進路上に位置していた海王星を目指している事を察し、そこでザラが自分達も海王星を目指しす事を提案した。

 

「…駄目ですね。

土星の位置が悪すぎます」

 

 だが小惑星帯の海戦の状況も若干あるが、地球・大マゼラン銀河間のほぼ進路上に位置している海王星に対して、土星はほほ垂直に近い宙域に位置していた事を、ユウグモとカザグモの協力下に調べていたノシロが、遠征艦隊に追い付けないとの結論に達した。

 

「くそ、折角の好機だと言うのに!」

 

 土星に駐留するガミラス艦隊がヤマト達各々の対処をする為に全艦が土星から離脱した事で、現在の土星は戦力的に空白宙域になっていたので、大規模な行動を起こすには絶好の好機だったのだが、良い手が思い付く事が出来ない為にナチが苛立ち始めていた。

 更に帰還させるなり他所から転用するなりして、ガミラスが何時土星に艦隊を再配備させるかの恐怖心からの焦りもあって、ナチは直ぐ脇に山積みになっている蒸しジャガイモを素早く取ってやけ食いとして一口かじったが、予想以上のジャガイモの熱さに喘ぎ声を上げながら湯気を時折吐いていた。

 因みに、缶詰等の保存食と共に土星組の主食である此のジャガイモは、元々は此のコロニーの(多分)欧米のとある住民が記念祭の為に真空パックで保存していたのであり、発見からの回収後に、実家がジャガイモ農家のフブキと、宇宙戦士訓練学校で植物学を専行していたウシオの2人を先導にして、土は炭鉱から何往復もして、水は周囲に腐る程ある氷を融かしてから、肥料は………艦娘全員揃って「聞くな」の一言で、完全有機栽培で大量生産をしていたのだ。

 塩やケチャップ等の調味料が早々と無くなった為に味付けが淋しいのが“玉に瑕”だったが、簡単に熱々に調理できるので、極寒の世界である土星では心体両面を暖めてくれる無くてはならない物であった。

 

「……せめて、合流出来なくても、通信可能域に辿り着けたらいいんですけど…」

 

 で、話を戻して、ジャガイモの熱さに喘でいるナチに笑ってはいたが、全員が彼女と同じ思いであり、現にザラ達も次々にジャガイモを取っては、息を吹き掛けて軽く冷ましてから、かじっていた。

 

「だったら、地球を目指してみます?」

 

「いえ、それよりも、簡単な予測のだけど、此の惑星配列だと、むしろ……?」

 

「…ノシロさん?」

 

 冗談に近いカザグモの言葉に、ノシロが返そうとしたが、言っている途中で何かを思い付いたらしく固まってしまった。

 

「ノシロさん、何かにあったのですか?」

 

 此の為、アカギがノシロに尋ねたが、そのノシロが答えようとした直前にアケボノが通信室に駆け込んだ。

 

「アカギさん、大変です!!

ハルナが何所にも居ません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・衛星タイタン ―――

 

 

 アカギ達が自分達の振り分けを話し合っていた時、ハルナはエンケラドゥスを1人抜け出して、衛星タイタンに存在する、ガミラス戦の開戦後から土星陥落時まで防衛艦隊の旧艦隊司令部であった廃墟に来ていた。

 当然ながら、アカギ達がハルナが消えた事に慌てふためいている事など、多少は罪悪感はあったかもしれないが、ハルナがその事を知る訳がなかった。

 

「……酷い有り様ですね…」

 

 ハルナが今立っている旧艦隊司令部の埠頭は、崩れ落ちた天井の瓦礫、墜落して横倒しや前のめりの垂直立ちしている宇宙船群の残骸、それ等2つに交じっている軍人や艦娘達の遺体群諸共、雪と氷で厚く覆われている静寂に包まれた現状だったが、土星が陥落したその時にパニックを起こしながらも脱出者達を同僚達と共に誘導していたハルナは、その時の惨状を今でも夢に見る位に覚えていた…

 

 

 

 

 

「……う…」

 

 地貫通型と思われるガミラスの戦略級兵器の炸裂による大爆発に他の者達共々吹き飛ばされたハルナは、朦朧としながらも最初に視線に入ったのは、白地がほんの僅かに茶色く汚れた戦闘服の袖を通した自分の両掌であり、少し間をおいての覚醒途上で自分が左の横倒しになっている現状に気づいた。

 

「………っ!

そうだ、皆さんは!?」

 

 ハルナが、妙な肌寒さを感じながら上半身をゆっくり起こすと、少しの間多分打ち身のと思われる痛みを全身から感じて硬直した後に自分が気を失う直前まで避難誘導をしていた事を思い出すと同時に意識が完全に覚醒した。

 此の為、直ぐに周囲を見渡すと……壁や天井が崩れ落ち、それ等の残骸に交じるなり、破壊された宇宙船群の中から等、数多の人々が生き絶えて各々に倒れていた。

 そして何所からかショート音や小さな爆発音が時折聞こえいるのに反して、失神する直前まで両耳を押さえなくなる程だった人々の騒ぎ声処か、助け声や呻き声すら無く、要約するば人間が発する音が一切無かった。

 ハルナが見た処だと、ガミラスの攻撃の直接的なのだけでなく、天井や壁だけでなく隔壁までが破られた為、土星の冷気に襲われたので、自分以外の誘導者達、避難しに殺到した者達……出港を急ぐ為に自分達の宇宙船にしがみ付いた者の1人の右腕をナイフで切り落とした者を背後から射殺した乗組員達、出港した宇宙船目掛けてコスモガンやロケットランチャーを放って撃沈した者達、此所にいた全ての地球人が全滅した様だった。

 幸い緊急用の気密防御が機能したので気圧は最低限は保たれ、失神してからかなりの時間が経過した事からか火災の痕は有れども火や煙は見当たらなかったが、それ等2つは今のハルナにはどうでも良い事だった。

 

「…誰か……誰か、生きてませんか」

 

 頭の中に過った土星在住者全滅の現実を否定したがったハルナは、最初に近くの者達を叩くか揺すって……全員が死亡しているのが分かってからは、立ち上がって周囲を見渡したら、埠頭には生きていそうな者が誰1人見当たらなかった。

 その為に、ハルナは無意識の内に埠頭から、千鳥足で総司令部の中央司令所がある奥に向かった。

 だが、その途上もまた人々の遺体が大量に倒れていて、通路沿いの部屋群を覗いたら、その幾つかの中で脱出を生と共に諦めるか、軍人としての矜持を保つ為か等で、自分の頭か喉をコスモガンで撃ち抜いた提督と思われる士官が各々におり、中には士官の後を追っての自殺をしたと思われる艦娘や、ケッコン艦と思われる艦娘と抱き合ってお互いの額を撃ち抜いていた部屋までがあった。

 

「っ! (ファン)長官、皆さん…」

 

 そしてハルナは、取り敢えずの目的地である中央司令所に辿り着いて、変形したのかエラく重くなっていた扉を力任せに開けると、笵図林(ファン・チューリン)以下の艦隊司令部全員もが生き絶えていた。

 それでもハルナは全滅を否定しようとしたが、時折砂嵐を起こしている正面のメインモニターに映っている土星全体の簡易映像で、此所(旧)艦隊司令部だけでなく、土星のコロニー全てが破壊されていた事が否応にも分かった。

 そしてなにより、ガミラス艦隊が見当たらなかった事から、ガミラスが土星全域での制圧を終えた事と同時に、ハルナは土星全体の人々がガミラスに殲滅された事を知り………その事実からの拒絶反応で、メインモニターに向かって歩いていき、その途中で何かに蹴躓いて正面から倒れた。

 ハルナが急いで上半身を起こしながら足に引っ掻けたのを確認したら、それは高級参謀と思われる者の下半身であり、ハルナは裏返って尻餅を着けて下がった先で、上部に大穴が開いた将官用の軍帽が右手に引っ掛かった。

 

「…誰か……誰か!!!

ハルナ以外に生きている人はいないのですかぁぁぁー!!!」

 

 死への誘惑への拒絶反応として、ハルナは軍帽を抱えると、泣きながら誰構わずに叫んだが、只ハルナの叫び声が(旧)艦隊司令所に響くだけに終わった。

 だがハルナが軍帽と共に両膝を抱えながらしゃがんで固まって暫くしら、ハルナが入室した扉とは別の所の扉が何かに叩かれる音がしたので、何気無く振り向いたら…

 

「…誰かいるのですか!!?」

 

「何所です!!?

何所にいるんですか!!?」

 

…その扉が勢いよく開いたら、そこからチョウカイとフブキが懐中電灯を各々に翳して入ってきた。

 こうしてハルナは、チョウカイとフブキによって発見され、2人の話だとハルナの失神(土星陥落)から数日が過ぎていて、艦隊司令や提督は全滅していたが、他の艦娘や民間人の生存者が潜伏するエンケラドゥスのコロニーに連れていかれる事になる。

 

 

 

 

 

 此の埠頭含めた旧艦隊司令部は、ハルナに取ってはトラウマそのモノな存在と化していて、本音を言ったらこんな所に来たくなったが、彼女の目的を果たす為には此の場所に来る必要があり、ハルナは拒絶反応による吐き気を抑えながら、再び中央司令所に向かっていった。




 久し振りに、感想か御意見、どちらでも御待ちしています。

 今回の補足情報は2つ、1つ目は土星組の主な食料はジャガイモだとしていますが、元々は缶詰ばっか食べてたとしてました。
 何故変えたのかと言いますと、コスモゼロさん著の“宇宙艦これヤマト2199 人類最後の希望の艦隊の物語”と、映画“オデッセイ”の2つを見て、思い付きました。

吹雪
「…オデッセイに、ジャガイモ……っ!
ああ、主人公ワトニーがジャガイモ栽培をする場合がありますね」

 コスモゼロさんの作品の第7話で、駆逐艦フブキが昼飯を持ってくる場面を見ていたら、“ウチの土星組は缶詰ばっか食ってる筈から羨ましいかなぁ~”って思ってた所にオデッセイのジャガイモを思い出しての化学反応が起きて、頂きとなりました。
 更に“艦これでジャガイモ(芋)と言ったら吹雪級(しばふ艦)”と思い付いた事もあって、暗黒星団帝国編に出演するかの検討をするも先行登場時期が白紙だったフブキを急遽出演させました。
 此の事で少し悔やんでいるのは、もっと吹雪級か秋月級……欲を言えば艦これ原作で未実装の駆逐艦冬月を出したかったんですよ。

吹雪
「冬月ちゃんは仕方がないとして、夕立ちゃんが村雨ちゃんと一緒にSUS編への出演が決まってますから、アニメ艦これ第一期の駆逐艦3人娘で艦隊同行の予定が無いのは睦月ちゃんだけですね」

 睦月はアニメ基準で出したいんだけど、旧い睦月級は難しいんですよ。
 だから、艦これ原作での冬月の動向にもよりますが、ムツキを1回沈めて、暗黒星団帝国編以降にフユツキ(冬月)共々改アキヅキ(秋月)級の1人として次代のムツキがヤマトに同行するとの検討案があります。

吹雪
「ファンに怒られなきゃいいんですがね」(冷たい目線)

…つ、次の補足情報は、ハルナの回想場面ですが、“オリジナル宇宙戦艦ヤマトのガミラス本土決戦直後の古代”“銀河英雄伝説のガイエスブルグ要塞の崩壊”“機動戦士ガンダムSEEDのへリオポリスで生存者を探すナタル”の3つの場面を元にして書きました。

 さぁ次回でハルナが旧艦隊司令部で何かをやって、そこからハルナが他の者達と共に土星から離れます。

睦月
「そして次回で、冥王星に行ってすらいないのに、此れまでは作者最長作品だったPixie版“ゴジラvsビオランテ F・battle”(40話)をとうに抜いて、作者未踏の50話に達しますね。
よくこんな状態で“50話以内に冥王星を攻略する”なんて言えてましたね」(冷たい目線)

…だ、だから100話以内にってハードル下げたじゃん。

夕立
「此の現状だと、100話以内にガス生命体の所に行くのは危険性があるっぽい?」


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第50話 ハルナ達の旅立ち(中編)

――― 土星・衛星タイタン ―――

 

 

『…こーどヲ入力シテ下サイ』

 

「日本土星駐留艦隊所属、宇宙戦艦ハルナ」

 

 土星陥落直後以来の旧艦隊司令部は、長らく放置された事で安全装置が起動した事が原因で、全ての動力が落ちると同時に、隔壁の稼働可能の全てが展開していた為、ハルナは中央司令所に入る事が出来なかった。

 此の為、ハルナは先ずは予備動力の、機械類が苦手のハルナでも簡単に出来る状態の1つを見付けては起動させてから再び中央司令所に向かい、中央部への扉の電子ロックを音声入力で解除して入室した。

 だが中央司令所も全ての機器の電源が切れていて、そこでハルナは先ず日本の土星艦隊司令の席を懐中電灯片手に捜し、その席にあるキーボードを……秘書艦時代に1度だけ見た時の記憶をなんとか思い出しての、長時間の悪戦苦闘し………諦めて妖精さん達の協力による操作によって、中央司令所の電源を入れる事に成功した。

 

「……ふぅ…」

 

 ハルナは気疲れによる溜め息を吐いたが、まだスタートラインにたっただけであり、少し後悔しながらキーボード越しに旧艦隊司令部の宇宙観測機器を操作した。

 そしてメインモニターに太陽系の宇宙地図を映して、現在の太陽系惑星群の配列を確認した。

 

「良かった!」

 

 メインモニターの宇宙地図には、ハルナの良い意味での予想を裏切るモノが映し出されていた。

 

「……後は…」

 

 ハルナは宇宙地図の最新版を自分の艤装に送信すると、最後の目的地である装司令部の貯蔵庫のロックを解除して、その貯蔵庫にあるエネルギーや武器、できれば予備部品や保存食を取りに向かった。

 因みに此れまでに土星組は此の旧艦隊司令部に何度か来た事はあったのだが、回収物の割合の多くは“食料”“通信機器”“医療の薬品や道具”の3種であり、燃料やエネルギーは4番目の優先度で、武器弾薬に至っては殆ど手付かずの状態だった。

 話を戻して、ハルナは目的の物4種を持てるだけ持ったら、土星から1人離れる気であった。

 だが、黙っての土星離脱の事で、ハルナはアカギ達に罪悪感を感じながら通路を歩いていたら…

 

「…何所に行く気?」

 

…十字路を過ぎた直後にイセの声が聞こえたので、ハルナが驚きながら後ろを振り向いたら、ハルナの死角になる所にイセが壁に凭れていた。

 更にハルナに取っては不味い事に、正面の曲がり角の左からカコとキヌガサとテンリュウの3人が出て、背後からヒュウガとフルタカが追い掛けてきていた。

 

「…っ!!!」

 

「「「「あ、待て!!!」」」」

 

 ハルナは正面のカコ、キヌガサ、テンリュウの3人を押し退けて走り去ろうとしたが、その3人に出来なかっただけでなく、イセが背後から飛び掛かって押し倒し、更にヒュウガとフルタカとその上に乗っかった。

 

「何やってんだ!!?」

 

「ハルナさん、馬鹿な事をしないで!!!」

 

「離して下さい!!!

ハルナは、ハルナは行かないといけないのです!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・衛星エンケラドゥス ―――

 

 

「何をやろうとしたのですか!!?」

 

 結局、ハルナはイセ達に取り抑えられての御用とのり、エンケラドゥスに強制送還となった。

 イセ達に周囲を囲まれて一室のど真ん中の伏せって座るハルナに、アカギが怒鳴っていた。

 温和で“怒り”の存在が疑われていたアカギが怒りを露にしていた事に、イセとヒュウガが引いていたのだから、アカギのはかなりのモノであった。

 だが当のハルナはと言うと、アカギの怒鳴りに答える処か、反応している気配が感じられなかった。

 

「…っ、ハルナさん!!!」

 

「アカギさん!!!」

 

「落ち着いて、落ち着いて!!!」

 

 そんなハルナの態度に、アカギは自分が無視されていると誤解した為にハルナに詰め寄ろうとしたが、ハルナを撲殺しそうだったアカギをアケボノとウシオが2人係りで止めた。

 

「…冥王星に行く気だったのですよね?

冥王星のガミラス基地を攻撃しに行こうとしたのですね。

そうですよね、ハルナ?」

 

 黙秘をしているハルナにアカギ達が少し苛ついたが、チョウカイの指摘に全員が“えっ”として彼女に振り向いた。

 

「旧艦隊司令部でハルナが調べていたのは、土星と冥王星の位置だったのです」

 

 ハルナが立ち去った後の中央司令所で、チョウカイがアオバとズイホウの2人と共に彼女の調べモノを報せた。

 因みに、何故チョウカイ達9人が旧艦隊司令部にいたのかと言うと、彼女達も貯蔵庫の物を回収するつもりでいたのだ。

 だがチョウカイ達はガミラスの探知を警戒して、敢えて旧艦隊司令部の動力を復旧させずに貯蔵庫を開けようとしていたが、その途中で動力が回復するだけでなく貯蔵庫の電子ロックが解除された為、慌てて調べたらハルナが独断的行動を起こそうとしていたのに気付いたのだった。

 

「いやぁ~…ビックリしましたよ。

貯蔵庫の鍵を開けようとしてたら、突然開いたんですからねぇ~…」

 

「ホントホント、ガミラスが戻ってきたんだと思っちゃったよね」

 

 只、当初はガミラスの襲来だと誤解していたので、アオバとズイホウが苦笑し合っていた。

 

「でも何で今更冥王星に行こうとしたんだ?」

 

 ナチがハルナの冥王星行きを疑問に思っていたが、実は以外かもしれないが、土星の生存者の中で絶望のあまりにガミラス艦隊に特攻する艦娘はいた事はいたのだが、敵の巣窟である冥王星に向かおうとする者は、今の今まで居なかったからだ。

 まぁ少なくとも、溜め息を吐いたヒュウガはハルナの行動理由を察していた。

 

「…遠征艦隊を……いや、ヤマトを助けに行く気だったんだろ?」

 

 ヒュウガの指摘に全員が“えっ!?”としたが、同時に納得もした。

 

「何であの戦艦を助けに行くのよ?

アイツとハルナは関係がないじゃない」

 

「…関係なくありません」

 

 だがアケボノがヤマトを助けに行こうとするハルナの気を察しきれないでいたが、彼女の言い方がヤマトを馬鹿にさた様に聞こえたらしく、ハルナがやっと口を開いた。

 

「先代の戦艦榛名は、最後の時に戦艦大和の沖縄特攻を見送るしかできませんでした。

そんな事は先代の事だけだと思っていたかもしれないのですが、私の代には宇宙戦艦ヤマトが特攻と同レベルの危険な航海に出たのです」

 

 ハルナから堰を切って出始めた静かだが熱い思いに、全員が黙ってしまった。

 

「…ハルナは決めたのです!!!

ヤマトがまた無謀とも言える航海に出たのなら、先代の遺志関係なく私自身の思いで、ハルナもその航海に出たいんです!」

 

「だからと言って、ヤマトが冥王星に行くとは限らないんですよ」

 

「冥王星に来てくれなくても良いんです!

ハルナが、ヤマトを迎撃しにくるガミラス艦隊を、此の身をもって止めてみせます!

その間に、ヤマトは先に行ってくれれば良いんです!」

 

 ハルナの暴走にも近い思いは“無謀”と思えたかもしれないが、戦い続ける仲間への思いである事であるのは確かであった。

 だからこそ、カザグモも言ったわりにハルナを止める気が感じられなかったし、全員もそうであった。

 

「ですけれど、ハルナさんが冥王星に行けたとしても、その時期はヤマトさんは既に過ぎていると言う事があるかもしれないんですよ」

 

 だが冥王星はガミラスが厳重な警戒網を設置している事が予測されるだけでなく、ヤマトが冥王星に行く行かないが分からない上に、その時期に間に合うのかが不安要素となっており、それ等の点をウシオが指摘したのだが、何故かノシロが頭を押さえながら溜め息を吐いた。

 

「冥王星に行くってのは、案外良い手なのかもしれませんよ」

 

 ノシロの意見に全員が“えっ?”とした。

 

「今の土星の位置では海王星に時間内に辿り着けない可能性が高いんですが、冥王星には以外に近い位置にいるんです。

上手くしたら、ヤマト達に合流できる可能性が高いのですよ」

 

 ノシロが理由を言おうとしたが、その前にチョウカイに説明されてしまって“ムッ”とした。

 そんなノシロにアカギ達が苦笑したが、ハルナは“まさか”とチョウカイに目を向けた。

 

「私も冥王星に行きます。

ハルナ1人じゃあ、遭難する可能性がありますからね」

 

 チョウカイがハルナに微笑みながら頷いたが、それをにする者が他にもいた。

 

「アカギ、悪いが私も行かせてもらうぞ」

 

「ガミラスとの缶蹴りは飽きちゃったし、こんなの私の性分じゃないしね」

 

 なんとヒュウガもハルナへの同行を求め、更にイセが不謹慎に近い冗談を言った為にヒュウガに睨まれたが、彼女も同行する気でいた。

 

「チョウカイ、ヒュウガ、イセ…」

 

「私等も、先代が大和の師匠分だっただけでなく、アイツの沖縄特攻を見送ったんだ」

 

「私の先代は、その前のサマール沖海戦で沈んじゃいましたけどね」

 

 ハルナはチョウカイ達3人に何かを言おうとしたが、その前にヒュウガがハルナを止めた。

 どうやら、彼女達3人もまた冥王星行きを企んでいたようで、3人揃ってのか、3人バラバラだったかまでは分からないが、ハルナが行動を起こさなくても独断での冥王星に向かう者が現れていたのは確かであった。

 アカギの見立てだと、少なくともチョウカイはガミラスとの初戦での冥王星(第一次冥王星沖海戦)でMIA認定となった長姉タカオの無念を晴らしたがっていたから、1人でもやる気でいる筈だった。

 

「無謀よ!

そんな先代との関係と言うだけで、冥王星に行くなんて!」

 

 アケボノが反対したのは、どう考えても“航海”の“戦闘”の両面で危険度が高い為であった。

 況して後者においては、ガミラスの太陽系制圧艦隊の主力が出てくる筈だから尚更であった。

 

「馬鹿言え、ヤマトがどうであれ、そこで仲間が戦おうとしているんだぞ」

 

 だが、ヒュウガが笑って否定した通り、冥王星にて仲間が戦う事が分かっている以上は、仲間意識が強い艦娘達が見て見ぬふりをするなどは考えたくもなかった。

 

「冥王星か、なかなか暴れがいがありそうだな」

 

「ガミラスに、キヌガサさん達の実力を見せつけるにはいい機会かもね」

 

「仲間を助けに行きましょう」

 

「こう言うのはアオバにも任せてください」

 

 現にテンリュウとキヌガサが笑い合いながら、フルタカとアオバも頷き合って参加を表明した。

 

「皆、航海の途中で艤装が壊れるって危険性がある事を知ってる?」

 

「探索や周囲警戒を私無しでやれる自信があるのですか?」

 

「ふっふーん!

私の活躍の場面が来たってことだな」

 

 更に何処で聞き付けたのか、ユウバリ、ズイホウ、カコの3人が入室して参加を表明した。

 ユウバリのみはハルナの未遂行為を知らない筈だったから、どうやら彼女もチョウカイと共謀していた様だった。

 

「アカギさん、出来れば冥王星行きに許可を」

 

「私もお願いします」

 

「バーカ、お前等、駆逐艦は駄目だ」

 

 更にカザグモとフブキも参加したかったが、彼女達2人はテンリュウに直ぐ否定された。

 

「…土星・冥王星間が最短になりかけていますが、それでも長い事に変わりないので、駆逐艦では航行距離に不安があるからですよ」

 

 カザグモが“ムッ”とした為、チョウカイが苦笑しながらの説明に一様納得して……くれたと思う…多分…

 

「……アカギさん…」

 

 冥王星行きを止めたがったアケボノは、最後の頼みとしてアカギに振り向いたが、そのアカギの顔を見て“無理”だと察した。

 尤もアカギだけでなくアケボノもまた、止めたい思いと五分五分で冥王星に行きたい思いがあった。

 

「…行ってきてください。

日本の艦娘は、戦っている仲間を見過ごす事などないと言う事を示しなさい」

 

 アカギによって、土星組からの選抜隊は冥王星に行く事が決定となった。

 行くのは、戦艦娘からハルナ、イセ、ヒュウガの3人、空母ズイホウ、巡洋艦娘からテンリュウ、フルカタ、カコ、アオバ、キヌガサ、ユウバリ、チョウカイの8人の計12人であった。




 感想または御意見、どちらでも御待ちしています。

 今回の投稿前に、アケボノとウシオは藤堂と親しい関係である設定を忘れていたので、第48話で囮作戦に対してのウシオの疑問の一言を付け足しました。


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第51話 ハルナ達の旅立ち(後編)

今回の投稿後に、第47話で左足が失われたのが確認されたコンゴウに右目の真下に切り傷が出来たのを追加しました。





 それでは本編をどうぞ。


――― 土星 ―――

 

 

「……すまん、私も此の足さえ有れば…」

 

「ナチ、気にすんなよ」

 

 選抜隊が各々に準備中、ナチは松葉杖片手にカコ達4人の所にやって来て、彼女達に頭を下げると自分の左足を恨めしそうに視線を落とした。

 諦めてると言え、本当は冥王星に行きたい筈のナチの思いを察してカコが笑って励まし、アオバ達3人もナチの肩を順に叩いた。

 

 

 

 

 

「…テンリュウ……私も行くわよ」

 

「ノシロ!!?」

 

「馬鹿言わないで!

貴女、その首の状態じゃあ、無理ですって!」

 

 そんなナチに反して、冥王星行きに加わろうと、わざわざ艤装を纏ってやって来たノシロを、テンリュウはユウバリと共に驚きつつ、止めようとした。

 

「ヤハギが出ているのよ。

あの娘1人だけにアガノ級の意地と誇りを持たせる訳にはいかないのよ!、っ!?」

 

 ノシロは使命感等だけでなく、姉としての矜持として行く気だったが、肉体はそうではなく、現に首の傷で既に千鳥足であった上に、首を震源地とした全身の痛みで崩れ落ちてしまった。

 

「ほらみろ、まともに歩けない奴を連れていける訳がないだろ!」

 

「向こうにアケシとチトセがいるんでしょう!!?

だったら、直ぐにあの2人の世話になればいいじゃない!」

 

「ノシロ!!!」

 

 テンリュウが思わずの怒鳴りでノシロも逆ギレしかけていたが、ユウバリはそんなノシロの胸に手帳を叩き付けた。

 

「此れは私なりに、傷ついて動けない娘達の状態や対処法を書いた物です。

ナチやアカギさんが此の手が駄目ですから、此れであの娘達を見ていてほしいんです」

 

「だけどね」

 

「貴女しかいないんです!!!

それに、ガミラスが此所に気づいて攻めてきた時、駆逐艦の娘達を従えて皆を守れるのはノシロしかいないんですよ!」

 

 テンリュウが右往左往しているのを他所に、ユウバリとノシロはお互いの胸ぐらを掴んで睨み合っていたが、暫くした後にノシロが舌打ちをして視線を逸らした。

 

「…ヤハギに、伝えて……アガノ級巡洋艦の名に、泥を塗る事をしたら、承知しないって」

 

 明らかに拒絶反応が出ていたが、ノシロの自分なりの諦めにユウバリは彼女の手を取って頷き、テンリュウもノシロの右肩を叩いて“任せろ”と右手の親指を立てた。

 

 

 

 

 

「普通のやり方で冥王星に向かったら間に合わない可能性が高い以上は、1秒だけでも早く着く手を考えているのか?」

 

 一方で、ヒュウガは、イセ、チョウカイ、ザラの3人と冥王星への航海方法の打ち合わせをしていた。

 

「ええ、エンケラドゥスから離脱したら、土星本星に沿って1周するつもりです」

 

「土星本星の重力を利用してのスイングバイを行おうってのか?」

 

「はい、此れで十分な加速を得られる筈です」

 

「だがそれだと燃費が酷い事になるな」

 

「勿論、その対策は考えてますよ」

 

「ただし、最悪の手です」

 

 交代しながらヒュウガとイセに説明していたチョウカイとザラは、お互いの目線を合わせるとキョトンとしているヒュウガとイセに説明する意を決した。

 

「衝撃砲のエネルギーを航行用のエネルギーに転用します。

此れでギリギリ冥王星に辿り着ける計算です」

 

「…衝撃砲のエネルギーを転用する?」

 

「ズイホウさんにある程度の補給物資を持たせますし、三式弾や空間魚雷を全員に持たせますので、冥王星での戦闘に支障は出ない筈です」

 

「どのみち冥王星までの航海中は戦闘厳禁ですし、衝撃砲もガミラスに無力化していますから無駄を無くそうと言う事です」

 

「じゃあ、航海中にガミラス艦隊に接触したらどうすんのよ?」

 

「逃げるしかありません。

ついでに航海中はガミラス艦隊が正面から来ない事を祈り続けるしかありません」

 

「……冗談、でしょ?」

 

 あまりな手に、説明していたザラが溜め息を吐いてチョウカイが苦笑していたが、イセとヒュウガは茫然としていた。

 

「…細かな説明をしていい?」

 

「止めて」

「よせ」

 

 

 

 

 

 最後にハルナはと言うと、早く準備を終えるとズイホウと共に、コンゴウの墓標の前で装甲板に金槌と鋲を使って文字を彫っていた。

 

「…何をやっているのでしょうか?」

 

「さあ?」

 

 そんな2人の所にアカギと共に来たウシオとアケボノは、お互いの目線を合わせて首を傾げた。

 

「よし、ズイホウさん、お願いします」

 

「……此れで大丈夫?」

 

 事前に刺してあった鉄筋にハルナとズイホウが2人係りで装甲板を持ち上げて大型釘で刺して止めた。

 

「ほぉ~」

 

「……?」

 

「“勇敢なる艦娘達の魂、此所に眠る”って書いてあるんです」

 

 装甲板に刻文にアカギが溜め息を吐いたが、読み書き障害(ディスレクシア)のアケボノが理解出来ずに眉間に皺を寄せると、ウシオが彼女に教えた。

 

「ハルナさん、ズイホウさん、他の人達も準備を終えましたよ」

 

「はい………コンゴウ姉様、行ってきます」

 

 ズイホウは先にアカギ達の所に向かったが、ハルナは少しの間コンゴウの墓標を見つめた後に彼女の後を追った。

 

「ズイホウさん、お願いしますよ」

 

「あ~あ…、給油艦タカサキ(高崎)になっちゃいました」

 

 アケボノとウシオの2人から補給物資を大量に渡されたズイホウは、先代瑞鳳の元である給油艦高崎を思い出しての自虐で、頬を膨らませて不満を露にしていた。

 因みにズイホウは先代瑞鳳と違って、姉妹艦ショウホウと共に純粋な空母であるので給油艦云々は関係なかった。

 

「仕方がないでしょう。

ズイホウは艦載機は一桁になってるじゃないですか」

 

 だが実際アケボノの指摘通り、ズイホウは艦載機隊が壊滅状態なので補給艦の代わりをするしかなかった。

 

「艦載機はまだ此処にありますよ。

ちょうど30機前後ありますよ」

 

 そんなズイホウに、アカギがコスモパンサー群入りの矢筒を差し出した。

 

「え、でも、此れは…」

 

「ちょっと、弓を貸してください………あ~あ~…、かなり傷んでますね。

私の弓も持っていきなさい」

 

 ズイホウはアカギの矢筒に驚いていたが、そんな彼女を他所にアカギはズイホウの弓を手に取って状態を確認すると、代わりとして自分の弓をも差し出した。

 

「……此れ等は、アカギさんの…」

 

 アカギの矢筒と弓の受け取りをズイホウが躊躇っていたのは、彼女の2品は姉アマギや親友のカガとお揃いで作られた物で、親しかった戦死者達の繋がり深いのを知っていたからであった。

 その為、ズイホウはアカギの矢筒と弓を強く抱えた。

 

「勘違いしないでください。

それ等はあげたんじゃなくて、貸したんです」

 

「…貸した?」

 

「ええ、だから後日返してください」

 

 ズイホウはアカギの思いを悟って“はっ”とした。

 

「分かりました。

冥王星を落としたら、必ず御返しします!」

 

 多分アドリブも入ってたと思うが、アカギなりの励ましと生還への思いに、ズイホウは上半身ごと頭を深々と下げた。

 

「おぉーい、ハルナ!!!

そろそろ行くぞ!」

 

 ハルナとズイホウが妙に遅かった事を思って、イセが2人を呼びに来ていた。

 更にイセの後ろにヒュウガだけでなく、チョウカイ達巡洋艦娘7人が揃っていて、ハルナとズイホウは直ぐに彼女達の所に走って向かった。

 

「え~…」

 

「……ハルナは、大丈夫です…」

 

 到着して早々に冥王星への航海法をチョウカイから説明されたが、ズイホウは呆れて、ハルナは苦笑していたが、先に説明されたフルタカ達6人も表情から察するにイセ達やハルナ達と同じ様だった。

 

「さて、行きますか!」

 

 イセの号令に、ハルナ達はイセの目線に順に合わせては頷いていき、ユウバリが念の為に艤装を確認してから最後に頷いて、いよいよ旅立ちの時となった。

 ヒュウガ達は滑走の為にコロニーから離れていったが、そんな彼女達に遅れてフブキ、アケボノ、ウシオ、ユウグモ、カザグモ、レーベレヒト・マーズの駆逐艦娘6人が続いたが、彼女達は土星を離脱するまでイセ達を護衛するつもりであり、もし土星圏内でガミラス艦隊と接触した場合はフブキ達6人が身を呈して守るつもりであり、その決意が彼女6人各々の顔に表れていた。

 

「……あ!」

 

 アカギはイセ達やフブキ達をその場で見送ろうとしていたが、何の気無くコンゴウの墓標に振り向いたら、そこに架けられていたコンゴウのヘッドギアが無くなっている事に気づいた。

 此の為にアカギはヘッドギアの所在を探ろうとしたが、その時にイセ達のいる方角から爆音が多数聞こえた。

 イセ達は艤装のエンジンを一斉に始動させたらしく、アカギが振り向いた直後に雪煙を派手に巻き上げながら滑走し……先導役のチョウカイを先頭にしての複縦陣を展開した11人を、フブキ達が左右から半分に別れての護衛体勢で上昇を開始して、そのままエンケラドゥスの大気圏を離脱していった。

 

「まもなく、土星の環に突入します!」

 

「ヒュウガ、遅れないで!」

 

「…張り切り過ぎだ」

 

 そのまま土星本星の衛星軌道に乗ると、スイングバイを行う為に土星本星を1周するのだが、先ずは第1関門である土星の環に突入する事をチョウカイが伝え、イセが調子に乗りかけたのをヒュウガが注意したが、2人がそう言う狙いだったかは分からないが、取り敢えずは此のやり取りで他の者達が笑ってリラックスさせる事になった。

 此の結果もあったのか、17人全員が衝突する事なく環を突破し、後は頃合いを見計らって土星本星から離脱すべきなのだが、イセ達はエンケラドゥスのコロニーを最後に一目見る為に、もう1度環に突入する事を覚悟してエンケラドゥスの傍を過ぎるコースを取った。

 そんなイセ達の行為に駆逐艦娘達も気付いたが、アケボノが渋い顔をしたものの、誰もその事を注意しようとしなかった。

 

 そしてガミラス艦隊と接触と言う最悪の事態が起こる事なくエンケラドゥスの傍まで来た時…

 

「「「「「「「「「「「…っ!?」」」」」」」」」」」

 

…なんとコロニーの前方に、アカギだけでなく動ける艦娘達全員が……一時的失明状態のシグレまでがザラに導かれて出てきて、横2列に並んでいた。

 遥か上空を過ぎようとするイセ達を確認すると、多少は有った“武運長久”よりも“旅の無事”を祈って、号令が無かったにも関わらずに全員が揃って敬礼した。

 イセ達はアカギ達の行為に驚きつつ、思いを察していたら、今度はフブキ達6人がガミラスの気配が無い事から護衛を終えたと判断して、彼女達から離脱しながら失速を開始し……停止して横1列に並んでイセ達に揃って敬礼した。

 アカギ達やフブキ達の行為に、イセ達は少し間を置いた後に、前進しながら後ろを振り向いて答礼として右拳を左胸に当てる敬礼を一斉にし、前方に振り向くとそのまま冥王星に向けて土星から離れていった。

 

「……行きましたね」

 

「やはり、私も行きたかったな…」

 

「そんな事を皆思っているよ」

 

 イセ達が土星から完全に離脱したのを察して、アカギが感情深い事を言って、それにナチもシグレが反応した。

 各々にヤマトをどう思っているかは知るよしは無かったが、エンケラドゥスに戻っているフブキ達6人も含めた艦娘全員が、地球を救おうと旅立ったヤマト達と共に旅をしたかったとの思いがあった。

 

 確かに彼女達は今回(・・)は縁が無かった。

 しかしある者達は“女神の救援から始まった宇宙全ての人類存亡戦”で、または“戦略兵器を打ち込まれての一夜で占領された地球を解放する為の暗黒の宇宙への旅”に、はたまた“人為的な事故で始まった宇宙災害からの第2の地球捜索”の3種どちらかで、ヤマトと共に旅に出れる未来が一部の者達に有った。

 誰が何時ヤマトと縁を結ぶ事になる事など、全員が此の時に分かる訳が無かった…




 感想・御意見、どちらかか両方をお願いします。

 今回、ズイホウ(瑞鳳)がアカギ(赤城)から矢筒と弓を貸し出されましたが、元々は矢筒だけだったのですが、“銀河英雄伝説”でのフェザーンに転任するユリアンがイゼルローンを見回る一場面である、シェーンコップがユリアンのナイフを自分のと交換させるのを見て、弓も追加しました。
 先行情報として、ズイホウは冥王星奪取後にアカギに矢筒と弓を返してますが、代わりに戦没したショウホウ(祥鳳)の矢筒と弓を使う事になる予定です。
 更に言いますと、現在のズイホウはズイカク(瑞鶴)共々改&改二のカラーリングですが、矢筒&弓と同様にショウホウの戦闘服に着替えると言う事で無印&改二乙のカラーリングに変ようとしています。

 それと本作ではアケボノ(曙)は読み書き障害で、文字を一切理解出来ないとしていますが、此れは“パールハーバー”の主人公の1人であるレイフを参考にしましたので、艦これ原作の曙は当然そうではありません。
 本作ではアケボノは読み書き障害が原因で、両親を失望させるだけでなく、“アホの娘”として虐めを多々受けた為に不良に近い凶暴な存在と化していたが、小学校の社会授業で出会った藤堂が読み書き障害である事を見抜いたので、アケボノは藤堂に絶大な信頼感を持っていると設定しています。
 此の設定の副作用で、アケボノは秘書艦任務は一切出来ず、更にアケボノは敢えて上官の提督に反感を買う態度でいる事で、間違って自分を秘書艦にしないようにしています。


「あの映画って確か主人公がもう1人いたわよね?
ソイツのはどうしたのよ?」

 その“パールハーバー”のもう1人の主人公ダニーのポジにウシオ(潮)を当てて、更に“陽炎、抜錨します”もあって、ウシオはアケボノの古染みの親友としています。
 更に言いますと、内気な性格のウシオはアケボノを守ったり弁護は出来なかった(逆にアケボノがウシオを守る事は多々あり)が、アケボノ本人が「気にするな」と散々注意していますし、早くからアケボノに何かあると薄々感じていてたとしています。

 最後に当初はノシロ(能代)は白色彗星帝国編に出る予定でしたが、“ヤマト2202”第22話での徳川と山崎のやり取りを見て暗黒星団帝国編に先伸ばしにします。
 ただしノシロは白色彗星帝国編に出る事は出ます。

能代
「徳川さんは第7章の予告で、土方艦長、斎藤、キーマンの3人共々、死兆星が見事に輝いてたけど、まさかアガノ級の誰かが戦没するって事じゃないわよね?」

…も、もしかしたら、太助との親子共演があるのかなぁ~…って思ってましたが、徳川さんは死ぬ事確定しちゃいましたからね。
 土方艦長と斎藤も言うに及ばずだったけど、山本(玲)がしるんちゃうかと言われた被弾からの特攻を、何かキーマンがしそうなんだよな~。
 前々から危険視されていた航空隊が取り敢えずは不明でしたけど、個人的には山本だけは生き残って加藤の後任として2代目飛行隊隊長になるんかなぁ~…と思ってます。

能代
「PSゲーム版の山本(明)の扱いが、リメイク版でもあるとの予想ね」

 それにしても、予告での月が見覚えのある事になってたけど、アレは福井さんが“キャプテンハーロック”のをやらかしたんだぜ。


「それはそうと、第7章でテレサさんが危ない動きをしていた上に、アンドロメダ級八番艦『ラブラトリー・アクエリアス』に嫌な予定がありますから、『ヤマト』自身にも危険な傾向がありますけど、もし『ヤマト』特攻の場合は何か対策を考えているのですか?」

 リメイク版の暗黒星団帝国編の動向にもよりますが、もしかしたら暗黒星団帝国編、ガルマンガミラス&ボラー編、ディンギル編は、主役交代としてムサシ(武蔵)にやらせる事になるかもしれません。
 元々ウチの暗黒星団帝国編(及びそれ移行)は大和より武蔵の方がやり易いかなぁ~と思って、何らかの理由でヤマトが身動きが取れないので、ムサシが代わりに暗黒星雲に赴くとの初期設定をしていました。
 現時点ではヤマトの続投としていますが、此の名残で同行予定者達は武蔵の関連艦の艦娘達を集めていました。

 更に言うと、『ムサシ』は第7章に出ると、銀河中央部にてガルマン星を見つけた事でデスラーが白色彗星帝国から離脱するとの噂があるんです。
 リメイクシリーズガルマンガミラス&ボラー編(PartⅢ)を黒歴史にしたいのかな?
 個人的には、暗黒星団帝国にガミラス星が攻められたので誰かがデスラーに助けを求めた為、デスラーが離脱すると予想していたのですが………見事に外れました…

能代&曙&潮
「「「……も、もし、武蔵案が採用となったら……まさか…」」」

 当然ながら“ロックマンX”が“ロックマンZERO”に代わったのと同様、作品名は“SPACEBATTLEGAILヤマト”から“SPACEBATTLEGAILムサシ”に変更!


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第52話 責任からの策

――― ????? ―――

 

 

「Ist Lebendiger Geist defintiv von YAMATO versenkt?」

(訳:潜水棲鬼がヤマトに沈められたのは確かなのか?)

 

『Es ist kein Fehler,Millieu Admiral.

Der Asteroid Icarus wurde ebenfalls ausgeraubt und die Transportflottle in Richung Jupiter zerstoert』

(訳:間違いありません、ミリュー司令。

小惑星イカロスの秘密基地も奪われ、木星に向かっていた輸送船団も壊滅しました)

 

『Was machte dieser ldiot!?』

(訳:あの馬鹿は何をやっていたんだ!?)

 

 ガミラスは潜宙棲鬼がヤマトに沈められた事て早速動いていて、その1つとしてガミラス太陽系方面の重職達が映像通信越しでの報告会議が行われていた。

 

『Also hast du gesagt!?

Soll ich die Tauchflotte verkleinern,damit dieser ldiot keine seltsame Gierwill!』

(訳:だから言っただろ!?

あの馬鹿が、変な欲を出さないように潜宙艦隊を縮小すべきだったんだ!)

 

『Selbst wennich es noch einmal sage,wird es nicht beginnen!

Und sie sindes nicht,die sich gegen die Reduzierung das Tauchflotte aussprechen,weil dies die Planetenbombe-Operation behindert!』

(訳:今更言っても始まらんだろ!

それに潜宙艦隊の縮小は、遊星爆弾の運用に支障が出るからと反対したのはお前じゃないか!)

 

「…Fue uns beide wurde dieser von tauchboot-So bestaetigt.

Ich gehe,diese Angelegenheit wind “Dieser Person” gemeldet」

(訳:…2人共、此の1件は潜水ソ級によって確認されたのだ。

つまり、此の件は既に“あの御方”に報告されているんだぞ)

 

 超弩級の2人が潜水宙棲鬼の戦没の責任の押し付け合いを始めてしまったが、ミリューなる存在から発された“あの御方”の単語を聞いて、超弩級達は揃って顔を青くして硬直した。

 それはつまり、潜宙棲鬼戦没の1件が遊星爆弾の投下が停止状態に陥った太陽系方面だけの問題だけでなく、ガミラス全体に及ぶ問題と化していたのを察したからだ。

 

「Ich danke,Es gibt nur zwei Moeglichjeiten zweischen dam kriegsergebnis unserer GAMYROS,dem “Sieg” oder dem “vollstaendigen Sieg ”.

Wenn sie sich nicht erfuellen koennen,gibt es nur eine Entschuldigurg durch den Tod」

(訳:分かっていると思うが、我等ガミラスの戦争結果は“勝利”か“完全勝利”の2択しかない。

それ等が果たせない時は死によっての謝罪しかない)

 

 ミリューに言われるまでもなく、ガミラスでは敗北は絶対に許されない事であり、現に超弩級達は地球敗北した通常型の者達の何人かを敗北を理由に粛清していた。

 特に“あの御方”に敗北報告が届いて逆鱗に触れる事などになったら、当事者達だけでなく上層部までが唯ではすまなかった。

 

「Under Umstaenden und sogar wenn sie ein kampftrieger sind,ist es noch mehr.Eine Wiederlage absolt inakzeptabel.

Auch wenn es ein defektes Schiff wie Lebendiger Geist ist」

(訳:況してや、君達戦姫ならば、尚更であり、敗北は絶対に許されない。

例え、潜宙棲鬼みたいな欠陥艦であってもだ)

 

 ヤマト達を追い込んだ潜宙棲鬼を欠陥扱いしていたのが驚きだったが、超弩級はガミラスの“力”と“支配”の絶対的な象徴に据えていた事から、繰り返すがガミラスにとって潜宙棲鬼戦没を大きな問題であった。

 現に潜宙棲鬼戦没……ガミラスの超弩級が、圧倒的不利な戦局ではなく、たった1人の存在に倒される事はガミラス統治下や交戦域の宇宙域で早くも知れ渡ってしまい、ガミラスへの反攻や反乱が起き始めていたのだ。

 そして、そんな反ガミラスの御旗的存在に、本人の意思関係なく、ヤマトは祭り上げられてようとしていた。

 故に太陽系方面の責任は重大であり、今まで長椅子に深く腰掛けていたミリューは、不意に立ち上がってすぐ脇に向かっていき…

 

『『…っ!?』』

 

…その先に、鎖等で拘束された潜水ヨ級が顔の至る所を痣を作って出血していて、何度も「Es tut mir leid(申し訳ありません)」と泣きながら言い続けていた。

 

「…Dieser Dummkopf ist!!!」

(訳:…此の愚か者が!!!)

 

 間違いなく彼女は潜宙棲鬼配下の潜宙艦隊の生き残りであり、ギョッとしている超弩級達の前で、ミリューが警棒を手に取って潜水ヨ級の横顔を数度殴った。

 此の潜水ヨ級の状態はどう考えてもミリューの所為であり、間違いなく敗走した事だけでなく潜宙棲鬼への監督不届域の件もあった。

 

「…Alle Ueberlebenden der Tauchflotte,die bereits ohne Verletzung davongekommen waren,wurden bereits gasaeubert」

(訳:…既に仇討ちもせずに逃げてきた潜宙艦隊の生き残りは全員粛清しておいた)

 

 ミリューは最後に潜水ヨ級の左側頭部を、“長銃身の回転式拳銃(リボルバー)”と言うべき形状の光線銃で撃ち抜いた。

 頬に着いた潜水ヨ級の返り血を気にする事なく超弩級の2人を睨み、その超弩級達は嫌な予感を感じた事もあって少し怯んでいた。

 

「“Diese Person”scheint in diesem einen Fall ueber das Befehlssystem der,A-Galaxie nachzudenken und die Kampfstaerke wieder aufzubauen.

Ich moechte Sie dementsprechend entlassen」

(訳:“あの御方”は今回の1件で、A銀河の指揮系統と戦力の建て直しを考えているそうだ。

それに合わせて君達を更迭するそうだ)

 

『…Diese Verfuegung!!?』

(訳:こ、更迭!!?)

 

『Sagen wir,dass wir abgewiesen werden!!?』

(訳:私達が更迭だと言うのですか!!?)

 

 地球でも更迭は酷いモノであったが、ガミラスのは更に輪を掛けて酷く、後任の部下としての屈辱的人事はまだ良い方で、大抵の場合は“本星への召還から”か“その場で”のどちらか2択の形で極刑が執行される事があった。

 此の為、ガミラスに取って“更迭”は“死刑”と同義語であった。

 況してや、今回のは“あの御方”の天の声でのだから、軍法会議や裁判等は行われない可能性は高いので、弁明の機会はまず考えられなかった。

 

「Auch wenn die Kuendigung woeglicherweise nicht widerrufen werden konn,bestfht die Moeglichkeit,dass in gewissem Umfang Amnestie gewaehrt wird」

(訳:だが、更迭の撤回まではいけないかもしれないが、ある程度は恩赦が出る可能性はあるぞ)

 

 再び執務席に腰掛けたミリューに言われるまでもなく、超弩級達が直ぐにやるべき事はたった1つしか思い付かなかった。

 

『Lade YAMATO zu Pluto ein,um ihn niederzuchlagen!!』

(訳:ヤマトを冥王星に誘きだして倒します!!)

 

『Wir werden “Dieser Person”sicherlich den Kopf von YAMATO anbieten!!』

(訳:必ずや“あの御方”にヤマトの首を献上いたします!!)

 

 “宇宙戦艦ヤマトの撃沈”、ガミラスに破滅をもたらる病原菌(それも死病レベルの)になりかけないヤマトを戦場で倒す以外に方法は存在しなかった。

 

「Ist YAMATO zu Pluto.

Aber ist moeglich,dass YAMATO zu Pluto kommt?」

(訳:ヤマトを冥王星にか。

だがヤマトが冥王星に来る可能性があるのか?)

 

 超弩級達の作戦にどうこう思っているかは分からないが、少なくともミリューは圧倒的多数の太陽系制圧艦隊の主力が駐留する冥王星にヤマトが自主的に来る事を疑問視していた。

 超弩級達も当然その事は分かっていたので、お互いの目線を合わせて頷いき合った。

 

『Auf Pluto gibt eine Startbasis von Planetenbombe.

Es besteht sicherlich die Moeqlichkeit,dies zu ignorieren,aber ich denke an eine strategie,um YAMATO zu Pluto einzuladen』

(訳:冥王星には遊星爆弾の発射基地が存在します。

まさかこれを完全に無視して行く可能性は確かにありますが、ヤマトを冥王星に誘いだす策は考えています)

 

『Also Millieu Admiral,Wueden sie mir bitte die Erlaubnis geben,die Weffen von “Reflektierter Satellit” umzuleiten unserer Strategie perfekter zu machen?』

(訳:そこでミリュー司令、我々の作戦をより完璧にする為、“反射衛星砲”の兵器転用の許可を頂けませんか?)

 

「…Ich weiβ,dass Zuendvorrichtung von Planetenbombe night nur eine wichtige Ablagerung ist?」

(訳:…アレは遊星爆弾に必要不可欠な物であるだけでなく、重要な預かり物である事は知ってるよな?)

 

『Urspruenglich handelt es sich jedoch um eine Basisverteidigungswaffe』

(訳:ですが、本来アレは拠点防衛兵器です)

 

 “反射衛星砲”の単語にミリューが反応した後に、思案の為に少し硬直していたが、脇に控えている秘書と思われる存在に目線を向け、その者が頷いたのを見て決断を下した。

 

「Nun,lassen wir “Reflektierter Satellit” die Ablenkung von Waffen zu」

(訳:良かろう、“反射衛星砲”の兵器転用を許可する)

 

『『Der Berg!!!

Gurre GAMYROS!!!』』

(訳:了解!!!

ガミラス万歳!!!)

 

 ミリューの許可を聞いて、超弩級達は右腕を垂直に曲げて上に右手を伸ばすガミラス式敬礼をして映像通信を切った。

 

「War das mit einer solchen Antwort Ordnumg?」

(訳:あんな対応でよろしかったのですか?)

 

「Keine Wahl.

Wenn ich night kann,sagen sie,dass sie dort waren」

(訳:構わんさ。

出来なければ、アイツ等はそこまでの存在だったと言う事だ)

 

 ミリューは映像通信の直後に執務机に垂直に立てた左拳左頬を乗せると、超弩級2人を馬鹿にするかの様に鼻をならしたら、秘書艦を務める戦艦タ級(フラッグ)に注意されたが、軽くあしらっていた。

 戦艦タ級は自分に右手を軽く振っているミリューに何か思う事があったらしいが、彼女は敢えてその事を口に出さなかった。

 

「Mehr als das,Denken Sie,Sie dass YAMATO als zile Dieser beiden Personen zu Pluto kommen wird?」

(訳:それよりも、あの2人の狙い通りにヤマトは冥王星に来ると思うか?)

 

「Es scheint schwierig zu sein.

Weil diese Strategie die Muehe muss,in YAMATO selbst oder YAMATO ueberlegener Offizier zu gehen」

(訳:難しいと思われるます。

此の作戦はヤマト本人か、ヤマトの上官が冥王星に行く気になってもらわないといけませんから)

 

 戦艦タ級の適格と思われる分析に、ミリューは“やはりか”と溜め息を吐いた。

 

「Sie muessen nur eine Beispielhand machen」

(訳:やはり、例の手をやるしかありませんね)

 

「Oh,es ist besten,wenn man das sagt,das Gefuehl der Gerechtigkeit und das Gefuehl der Pflicht zu foer dern」

(訳:ああ、こう言う場合は、下手に正義感や使命感を煽らせるのが一番だ)

 

 ミリューは当たり前の様に言っていたが、戦艦タ級が少し軽蔑の視線を向けていた事に気付いていなかった。

 




 感想または御意見をお待ちしています。

 今回は、ガミラスの通信報告のみでしたが、個人的には此れでガミラスがヤマトを冥王星に誘きだしての戦いを仕掛ける事になったとします。

霧島
「更迭の気配があるから戦いを仕掛ける、2199でのゲールのを元にしていますね」

 個人的にオリジナルとリメイクの両方で、ガミラスが『ヤマト』と冥王星で戦う意義がどうしても分からなかったので、本作ではこうなりました。

 更に潜水ヨ級の仕打ちは、“紺碧の艦隊”のヨルムンガント回に加えて、“戦艦タ級が秘書艦”のも含めて俊泊さんの要望の元にしました。
 此の余波で、戦艦タ級は元々数が少ない上、2199で言えば親衛隊が殆どを持っていった為、基本的に戦艦タ級が配備されているのは、信頼が厚い実力者のみだとしています。

霧島
「まぁ、今回のはかなりマイルドかもしれないけど、ヒロピン好きには堪らないでしょうね?」

……実を言うとね、次回もう1発あんのよね~…

霧島
「……え?」


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第53話 悪意ある挑戦状(前編)

――― 冥王星 ―――

 

 

「クロシオ、しっかり、しっかりしなさい」

 

「…大丈夫……ウチは大丈夫や」

 

 牢に収監されているムラクモ達5人は、相変わらず絶望せずに脱走の手筈を最後の一手までやり遂げていたのだが、その最後の一手である壁の爆破方法がどうしても思い付かず手詰まり状態になっていた。

 更に同室のクロシオが先日から酷い発熱を起こしていたので、4人総出で彼女の体を擦ってなんとか暖めようとしていた。

 

「…ん?」

 

 だから、ムラクモ達5人は来訪者達に全く気付いていなかったが、向かいの牢に入っているハツハルはその事に気付いたが、今はムラクモ達は脱走関連の事を一切していなかっので敢えてその事を伝えなかった。

 だが同時に、ハツハルは来訪時間や足音等から違和感を感じていたが……違和感からの危惧が当たってしまい、柵越しに来訪者達を確認したら、牢獄に来ない筈の重巡リ級(エリート)が、重巡リ級2人と新型の軽巡ツ級3人の計5人を従えて牢を1つ1つ確認しながら此方に向かっていた。

 ハツハルは同居人のスズツキ達3人と共にギョッとしていた通りに他の牢の艦娘達も重巡リ級達に驚き戸惑っていたが、当人達はハツハル達の牢を覗き見てた後にムラクモ達の牢に振り向いた。

 

「Ist es nicht gut fuer dich?」

(訳:アレがいいんじゃない?)

 

「OK,Iass es uns versuchen」

(訳:よし、アイツにしよう)

 

 重巡リ級達はムラクモ達の牢に目星を着けたらしく、柵の一部を解除すると、直ぐに軽巡ツ級達3人が入った。

 

「っ!? 何だ、お前等!!?」

 

「Ablbhnen!」

(訳:退け!)

 

「何すんのよ!!?」

 

「Komm schon,geh schnell raus!」

(訳:ほら、さっさと出るんだ!)

 

 軽巡ツ級達3人は驚きながらも、立ち塞がろうとしたナガナミとネノヒを押し退け、更にウラカゼとムラクモを撥ね飛ばすと、内1人がクロシオの頭を掴んで持ち上げると、そのまま彼女を無理矢理外に出そうとした。

 

「クロシオをどうする気よ!!?」

 

「止せ!!!

クロシオは熱だして弱っとるんや!!!

連れてくならウチにしろ!!!」

 

「「Stoeren Sie nicht!!!」」

(訳:邪魔するな!!!)

 

「Komm auch schnell raus!!!」

(訳:お前もお前で、さっさと出てこい!!!)

 

 ムラクモとウラカゼが連行されながらなんとか抵抗していたクロシオを取り返そうと軽巡ツ級3人に飛び掛かろうとしたが、そんな2人を援護に入った重巡リ級2人が奥に投げ飛ばして、その間に軽巡ツ級3人はクロシオを牢から出して重巡リ級2人も出てきた後に柵を戻した。

 当然ながら牢の艦娘達は、クロシオがそのまま連行されていくのかと思ったが、彼女達の予想に反して軽巡ツ級3人はクロシオを通路の真ん中に突き飛ばして、彼女を3方向から囲んだ。

 

「Hier steh schnell auf!!!」

(訳:ほら、さっさと立て!!!)

 

「Verstehst du nicht,dass du stehst!!?」

(訳:立てと言うのが分からんのか!!?)

 

 クロシオも立って迎え撃とうとしたが、直ぐに屈んで何度も咳き込んでしまって、軽巡ツ級達は2人が左右からクロシオを持ち上げて正面の1人が彼女の顎を蹴り上げて、右に倒れたクロシオに艦娘達が柵に身を寄せて悲鳴を上げた。

 

「…全く、人気もんは辛いわ」

 

 ガミラスが何を意図しているかは分からなくても、クロシオは敢えてガミラスの意図に乗ってなんとか立ち上がったら、軽巡ツ級3人は一斉に身構えた。

 クロシオは正面の軽巡ツ級に目掛けて殴り掛かったが、彼女の右の拳打は避けられるだけでなく、カウンターとして軽巡ツ級の右拳が鼻に正面から直撃した。

 更に嗚咽しながら鼻血を吹いたクロシオが後ろによろけたら、右側の軽巡ツ級の回し右膝蹴りが右脇腹に突き刺さって屈んだら、今度は左側の軽巡ツ級が背中目掛けて右肘打ちでクロシオが俯せに倒れ、その直後に軽巡ツ級3人は順にクロシオを蹴飛ばした。

 

「クロシオォォォー!!!」

 

「出せ、出せ!!!

ガミ公、出せぇぇぇー!!!」

 

「殺す、ガミ公、私が殺してやる!!!」

 

「Du musst den Mund halten!!!」

(訳:お前等は黙ってろ!!!)

 

 クロシオへのリンチにムラクモ達5人は柵を破ろうとしていたが、そんな彼女達を重巡リ級2人が警棒で突ついて抑え込んでいた。

 だがそんな時に重巡リ級の片棒が右耳に手を当てながらムラクモ達の牢から離れると、少し間をおいて、クロシオや軽巡ツ級達から離れていた重巡リ級(エリート)の所に走った。

 此の重巡リ級の行為にクロシオは何かを察して、自分を蹴り続ける軽巡ツ級3人の隙を突いて正面の軽巡ツ級の右足にしがみつくと太股を思いっきり噛み、その軽巡ツ級が悲鳴を上げて怯んだ隙に転がって抜け出ると、重巡リ級を追った。

 

「Es wird gesagt,dass YAMATO bald in den Orbit Neptune eietreten wird.

Also musst du dich beeilen!?」

(訳:ヤマトがまもなく海王星軌道に入るそうです。

たから急ぐように、っ!?)

 

 重巡リ級は重巡リ級(エリート)に耳打ちして催促された事を伝える途中で背後のクロシオに気付くも動作が遅れたが、ぎりぎりの処で軽巡ツ級の1人が割り込んで彼女を取り押さえた。

 だがクロシオが突然笑った事に軽巡ツ級がギョッとした直後、クロシオは気合い一閃と共に軽巡ツ級を振り回して重巡リ級を払い飛ばして、そのまま自分を追い掛けてきた軽巡ツ級2人目掛けて投げ飛ばした。

 クロシオの行為に重巡リ級の無事だった2人が驚いて硬直していた隙に………ウラカゼ達の所は重巡リ級がいるので不可と判断して、代わりにハツハル達の牢に目掛けて走り、団子状態ながらも自分を止めようとした軽巡ツ級達を飛び越えて、ハツハル達の牢の柵を掴み、スズツキがほぼ無意識の状態でクロシオの傍に駆け寄った。

 

「クロシオ、っ!!?」

 

「Diese Goere!!!」

(訳:この餓鬼!!!)

 

 軽巡ツ級達がクロシオの背中を殴りながら引き剥がそうとしたが、その前にクロシオは右手でスズツキの首を掴んで柵に叩き付けると、彼女に首に両腕を回し…

 

「…スズツキ、アンタの勝ちや……」

 

「…え?」

 

…クロシオはスズツキの後ろに何かを落としながら、耳元で何かを囁き、スズツキが“えっ”とした直後に柵から引き剥がされてしまった。

 

「Du hast es gut gamacht!!!」

(訳:よくもやってくれたな!!!)

 

「みんなぁぁぁー!!!

希望はまだあるわぁぁぁー!!!」

 

「Es ist genug,das ist es!

Ich werde dich so schnell wie moeglich nehmen!」

(訳:もういい、そこまでだ!

早く連れていくぞ!)

 

 クロシオが雷巡チ級と軽巡ツ級の5人係りで蹴り続けられ、クロシオが渾身の力で叫んだ直後に失神したのを察した重巡リ級(エリート)がリンチを止めさせ、重巡リ級2人が左右からクロシオを持ち上げて連行していった。

 

「ねぇ、此れって…」

 

「スズツキ、どうしたんだ?」

 

「クロシオは何を言ったのじゃ?」

 

 連行されるクロシオにムラクモ達が叫んでいたが、クロシオがスズツキの後ろに落とした……軽巡ツ級から盗みとった爆雷をモチヅキが驚きながら持ち上げて、硬直していたスズツキにマツカゼとハツハルが駆け寄った。

 だがスズツキはマツカゼとハツハルの質問に答えずに泣き出したので、ムラクモ達もスズツキを凝視した。

 

「……ヤマト、です…」

 

「はぁ?」

「ヤマト?」

 

(…ヤマトって言う艦娘が冥王星に来るそうやで)

 

「…ヤマトが、ヤマトが助けに来てくれるそうです!」

 

 どうやらクロシオは自分へのリンチから冥王星に何かが起こるのではと勘繰っていた様で、そんな時に先の耳打ちを聞いて……直接的には内容は分からなかったが、“YAMATO(ヤマト)”の単語を聞き取って、ヤマトなる艦娘が冥王星に攻めてくる事を察して、その事をスズツキに伝えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球 ―――

 

 

「……あれ?

キリシマさん、どうしたのですか?」

 

「気にしない、気にしない。

休養中で暇だから暇潰してるのよ」

 

 謹慎明けからの小規模任務から帰還したフミヅキとキヨシモは、報告に向かう途中で出会ったキリシマが艦娘の戦闘服でなく私服だった事に驚いた。

 

「そう言う2人は何の任務だったの?」

 

「改良型波動エンジンの試験航海です」

 

「へぇ~…もう改良型が出来たんだ…」

 

「そのついでで、太陽系外縁の偵察と飛行場姫パフェのお届け」

 

 フミヅキに続いてのキヨシモの返事通りに、彼女達2人は飛行場姫パフェ用の……ほぼ相撲用のトロフィーに近い超大型容器を引き摺っていた。

 

「…飛行場姫パフェか、懐かしいわね」

 

 キリシマは嘗てコンゴウ級4人の総掛かりで飛行場姫パフェをなんとか完食した事を思い出して、寂しさを感じさせながら苦笑したが、不意に何かに気づいた。

 

「誰に飛行場姫パフェを食べさせたのよ?」

 

 いくら試験航海と言え、艦娘2人に飛行場姫パフェを配達させたのだから、相手は艦娘だとは分かったが、遠征艦隊以外で生存が確認されている艦娘達は全員地球にいるのだから、お届け先をキリシマが察する事が出来なかったのは仕方がないのかもしれない。

 

「ヤマトさんです」

 

「ああ後、改良型の設計図を提供してくれたアケシさんにお礼を言いにもね」

 

 フミヅキとキヨシモはキリシマに返すと“いいよ”と手を振った事もあって彼女の脇を過ぎ、キリシマは手を振って見送ろうとしたが何かに気づいた。

 

「ちょっと待って、ヤマトって今海王星に向かってる筈なのに、何で太陽系外縁にいるのよ?

それにアケシも音信不通になってるのに、改良型波動エンジンの設計図を送ってきたって言うの?」

 

「「いえ、私達が会いに行ったのは別のヤマトさん達です」」

 

「…はぁ?」

 

 理解出来ずに首を仕切りに捻っているキリシマを無視して、フミヅキとキヨシモはさっさと行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・別所 ―――

 

 

「では、遠征艦隊の状況を報告してくれ」

 

 同時刻、作戦会議室では藤堂達が遠征艦隊の事での会議が行われていた。

 

「ホウショウ、頼む」

 

 尚、本来なら沖田やキリシマ達第一艦隊も此の会議に参加すべきなのだが、キリシマ達は休養中である上に沖田も療養中の為、ホウショウ達代理組が藤堂の秘書艦代理のジンツウ共々続投して、沖田の代理である山南修が彼女達を従えていた。

 

「ショウカクさんの報告ですと、遠征艦隊の先行組は海王星に居て、整備を行いつつ周辺宙域の警戒をしています。

またヤマトさんも海王星の軌道に入ったそうなので、まもなく海王星に辿り着く予定で、ショウカクさん達はヤマトさん達の迎えを送るそうです」

 

 潜宙棲鬼討伐で既に予定日数に遅れが生じていると言え、取り敢えずはヤマト達が海王星に予定通りに辿り着けそうな事に、藤堂が安堵の溜め息を吐いた。

 少なくとも藤堂はこのまま解散の号令を出したかったが、それは出来ない事を嫌々察していた。

 

「やはり、遠征艦隊を冥王星に転進させるなら今がギリギリです」

 

 案の定、芹沢が藤堂がやりたくなかった冥王星の1件を持ち出した。

 

「……前に決めたではないか、遠征艦隊による冥王星奪取は戦力不足だから執り行わないと」

 

 前も書いたが6度も起きた冥王星を巡る海戦の内訳は以下の通り、不意に近い形でのガミラス初戦の第一次海戦及び海王星陥落後の第二次海戦は冥王星の状況偵察を行う為のモノであり、巡洋艦タカオ属する艦隊全員が全滅に近いMIA認定を受けた前者は置いておき、後者は艦隊の多数を犠牲にした偵察で、冥王星がガミラスに占領されての惑星改造と要塞化が行われ、その中枢となっているのが離島棲鬼の亜種である冥王棲鬼である事が判明した。

 第三次海戦は海王星奪還の為、負け前提での救援阻止を兼ねた囮作戦で、予定通りに敗北となったが海王星奪還に繋がった。

 第四次海戦が大動員した空母娘達(少なくともアカギがアケボノとウシオと共に参加)を主力としての本格的な冥王星奪取作戦であったが、元々提督や艦娘達の多くが慢心していた上に第二次海戦で判明した冥王棲鬼が確認箇所から基地共々消えていて、その事で右往左往している隙を突かれて、嘗てのミッドウェー海戦さながらに空母娘達を初めとした玄人艦娘達の多くが戦没する一大事を引き起こしてしまった。

 藤堂が艦隊総指揮を執った第五次海戦は、先海戦の反省からガミラス艦隊戦力の撃退を最優先としたのだが、誤報や情報錯綜もあって、無関係のガミラス輸送船団を含めてガミラス艦隊群とやたらめったら交戦してしまい、冥王星に辿り着いた時に物資が枯渇寸前になった為に基地航空隊援護下のガミラス主力艦隊に返り討ちにされる醜態を晒した。

 そして第六次海戦は、海王星と冥王星の位置関係もあって進軍が迷走した上に、前哨戦の最中に海王星と天王星が同時にガミラス艦隊の奇襲攻撃からの陥落が原因で、道中退却と言う棄権負けとなり、此れ以降は土星軌道防衛戦に移行した為に冥王星奪取は行われる事は無かった。

 で、何が言いたいのかと言うと、冥王星の基地と駐留艦隊が揃って強大であるだけでなく、航空戦力有する基地戦力と空母群を有する艦隊を同時に相手するのが如何に困難であるかを改めて認知する事になり、況して深海棲艦戦時に“ミッドウェー”“ガダルカナル”“マリアナ”“レイテ”の4つの島で散々な目にあった日本はその事をよく理解していたので、ヤマト達遠征艦隊による冥王星奪取は執り行わない事を猛反対を押し退けて決めていた筈だった。

 

「当初とは状況が変わったのです。

ガミラスは隙を見せているのです」

 

 元々冥王星奪取推進派の急先鋒である芹沢は、ジンツウに目線のみで指示を出し、そのジンツウが内心嫌々でモニターを映した。

 

「先日のショウカクさん達の偵察で確認された空母ヲ級と軽母ヌ級の大多数……冥王星に駐留していただろう全ての空母が護衛を伴って冥王星から出撃したガミラス艦隊は、海王星やヤマトさんの所に向かわずに多数に分派して、多方向から太陽系内縁に向かっています」

 

「キヨシモさんとフミヅキさんの偵察情報を含めて、空母艦隊群の目的は小惑星イカロスを含めた火星・木星間の小惑星帯の奪還及び遊星爆弾の機能回復と思われます」

 

「既にイカロスのリシュリュー達には警戒体制に入るように伝えているぞ」

 

「アラシさん!!」

 

 ジンツウに加えてハギカゼとアラシの報告に、遠慮知らずの口調だったアラシにホウショウが怒っているのは無視して、山南は意味ありげに鼻を鳴らした。

 芹沢達の言っていたのは、空母艦隊が大量離脱した為に冥王星の艦隊戦力が大幅に低下したからだ。

 

「…やはり……罠か?」

 

 山南の指摘にジンツウは頷いた。

 

「推測通りにガミラス空母艦隊群の真の目的はヤマトさん達遠征艦隊と思われます。

おそらく遠征艦隊が冥王星に向かいしだい、ガミラス空母艦隊群は一斉反転しての遠征艦隊を包囲殲滅戦を仕掛ける気と思われます」

 

「確かか?」

 

「空母艦隊のいずれにも、重巡リ級が少ないだけでなく戦艦ル級が含まれていません。

此れは反転を見越した編成であります。

そして何より、空母艦隊群の後方に装甲空母姫が直轄艦隊を率いて続いています」

 

 藤堂がジンツウの推測に疑おうとしたが、彼女の示した2点………特にガミラス太陽系制圧艦隊の総旗艦で超弩級の1人たる装甲空母姫が出てきている事で確実となった。

 「心臓を刺せ」と言わんばかりに両腕を広げて胸を晒したガミラスに対し、地球はどうするか………予定通りにワープで太陽系外縁の“ホールドの雲(彗星の巣)”に逃げ込むのか、望み通りに冥王星攻略を行うかの2択であった。

 

「ヤマトは遠征艦隊と合流しだい、冥王星に向かわせるべきだ!!!

短期決戦で、空母艦隊が冥王星沖に辿り着く前に冥王星を落とさせるんだ!」

 

 案の定、芹沢は机を強く叩きながら大声で主張して、彼の一派も続いた。

 

「日数はどうするんだ?

潜宙棲鬼で遅れが出たんだぞ」

 

「人類滅亡の残り日数にばらつきがあるのは遊星爆弾の増大に個人の差があるからで、遊星爆弾が減る事は誰も想定していない。

だから冥王星奪取で遊星爆弾が無くなればかなりの日数が稼げる筈。

現にショウカクは、短期間で冥王星を落とせば日数に問題はないと報告している」

 

 山南が芹沢達にが反論したが、そんな彼に芹沢でなく谷剛三が反論した。

 此の2人のやり取りを呼び水として、提督や艦娘(秘書艦)問わずに先行派と攻略派が乱闘を起こしかねない大論争が起きたが、頭を押さえている藤堂が見た処、沖田が冥王星に対して沈黙していた上にヤマトが潜宙棲鬼を倒した事からの変な欲が原因で攻略派が優勢となっていた。

 

「大変だ!!!

海王星から緊急通信が入った!!!」

 

 そんな時に血相を変えたマヤが許可なく入室したので全員がそちらに振り向くと、彼女が伝えた事で全員が“えっ”とした。

 そして此のマヤの報告が、冥王星の論争に決着が着く事になった。




大和
「暇!!!」

空母ヲ級
「ヲゥー!!!」

武蔵
「違うだろ!!!」

大和
「作者に代わって、感想かご意見を待ってます!!!」

武蔵
「そしてヲ級をアッパーで吹っ飛ばすな!!!
鷹村守か、お前は!!!」

大和
「だって10話連続で大和の出番が無かったんですよ!」

武蔵
「それ言ったら、翔鶴達はもっと悲惨だろ!!!
アイツ等、25話連続で出てないんだぞ!」

大和
「……本編の補足情報ですが、霧島が首を傾げていた文月と清霜が何所に行っていたと言いますと、作者なりの落とし処として“宇宙艦これヤマト2199”の第14話に行っていたとしているそうです」

武蔵
「むこうは七色星団に辿り着いたのに、ウチは何やってんだろうな?」

大和
「本当ですね」

武蔵
「ああ後、本作では冥王星沖の海戦は6度行われたとしているが、此れは“銀河英雄伝説”のイゼルローン攻略回数をそのまま採用したらしいぞ」

大和
「ちょっとした事ですけど、艦これ原作的に言いますと、第四次海戦は“5-5”でボス前で逸れ続けてやっと辿り着いたら戦艦レ級エリート(x2)に当たって全員大破したような状態、第五次海戦は“4-5”等で遠回りをし過ぎてボス戦で燃料と弾薬の欠乏状態になったようにしたそうです」

武蔵
「更に言うと、装甲空母姫率いる空母艦隊群の動きは、“銀河英雄伝説”でのバーミリオン会戦でのラインハルトの包囲作戦を元にしてる」


















































武蔵
「処で、作者は何所に行った?」

大和
「本編前半での事をやる為だけに、黒潮(クロシオ)を土星から冥王星に移した事をやった結果を予想したらしいですよ」



















































陽炎級一同
『作者は何所だぁぁぁー!!?
黒潮をあんな目に合わせた、あの馬鹿は何所だぁぁぁー!!?』































大和
「ボーゼン所長の招待を受けた事もあって、惑星レプタポーダの収容所の取材に行ってるわよ」

武蔵
「お前等、世紀末的チンピラみたいな格好と装備を止めろ!!!」


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第54話 悪意ある挑戦状(中編)

――― 海王星 ―――

 

 

 太陽系第8惑星・海王星とは、ドイツ天文学者ヨハン・ゴットフリート・ガレが、フランス天文学者ユルバン・ジャン・ジョセフ・ルヴェリエとイギリス天文学者ジョン・クーチ・アダムズの2人の計算を元にして、西暦1846年に発見に至った水素主体の大気に覆われた氷の惑星である。

 地球からの観測すると、外見は大気成文のメタンによって“蒼玉”の如く美しく見える海王星は、現在ガミラスが実効支配していたが、ガミラスが冥王星に艦隊を駐留していない事から、破壊された地球の基地にショウカク達遠征艦隊の先行組が入居して、潜宙棲鬼を倒したヤマト達を待っていた。

 そのヤマト達が海王星の軌道に入ったとの報せを受けて、ヤハギ、イソカゼ、ハマカゼの3人の第二艦隊にアカシ、イスズ、アマツカゼの3人が臨時編入された状態でヤマト達を迎えに大渦から海王星を離脱していた。

 

「…っ!

彼処(アソコ)!」

 

「よし、ハツシモ達3人もいる!」

 

 海王星の沖合いで待っていたら、ハマカゼが海王星に向かってきているヤマトを見つけ、続けてヤハギがハツシモ達3人が無事に続いているのを見つけた。

 更にヤマト達もヤハギ達に気付いた様で、ヤマトがヤハギ達を指差した後にカスミとアサシモが両手を振っていた。

 

「皆、ご苦労様」

 

「ご苦労様なのはヤマトの方でしょ?」

 

 ヤマトはハツシモ達3人と共にヤハギ達の近くまで来くと、自分達の出迎え役の彼女達を労ったが、ヤハギの返しにキョトンとした。

 

「…レムレースこと潜宙棲鬼討伐、ご苦労様です!!!」

 

 ヤハギがニンマリと笑うと、ヤマトに対して右拳を左胸に当てる敬礼をして、イソカゼ達5人も笑ってヤハギに続いた。

 

「ああ、そう言う事ね」

 

 当のヤマトは少し間を置いた後に答礼し、ハツシモ達3人も右拳を左胸に当てる敬礼で続いた。

 表情から察するに、ヤハギ達はヤマトが潜宙棲鬼に勝つ事を信じていた様だった。

 

「いやぁ~…ホント、大変だったよ」

 

 そんなヤハギ達からアサシモが調子に乗って、ガミラス潜宙艦隊との戦いを自慢しようとしたが…

 

「…何で、イスズ無しで潜宙艦と戦ったのよ!!!」

 

…その直前に、イスズがアサシモをヘッドロックした。

 どうやら、対潜宙艦の第一人者であるイスズはガミラス潜宙艦隊との戦いに参加出来なかった事を未だに悔しがっていて、アサシモの笑顔が勘に障って彼女に八つ当たりしていた。

 

「ン、ノオォォォー!!!」

 

「イスズさん、タップしてますよ!」

 

「ちょっと、やり過ぎ!」

 

 イスズは相当強く絞めていた為、アサシモが悲鳴を上げながらイスズの右腕を必死に叩いて、ハツシモとカスミがイスズを止めようとしていた。

 

「ぢぃぃーぐじょぉぉー!!!」

 

「…もしかして、イスズは今までああだったの?」

 

「アブクマが活躍したのが、火に油を注いじゃったの」

 

「お陰で、輸送ワ級をやたらと沈めていましたよ」

 

 ヤマトに訊ねられたヤハギがハマカゼ達と揃って溜め息を吐いた事から、イスズにかなり苦労していた様だった。

 

「…ヤマト!!!

よくやってくれました」

 

「え、ええ……どうも…」

 

 そんなんだから、カスミとハツシモの2人によって、アサシモを解放したイスズは、振り向いた彼女が凄い顔だったので少し退いたが、息を整えた後の笑顔での労いに、ヤマトは素っ頓狂に返してしまった。

 

「そんじゃ、確認作業に入るわよ」

 

 そんなこんなで、アカシはアマツカゼと共にヤマト達4人の艤装の確認に入った。

 

「そう言えば、チトセはどうしたの?」

 

 ヤマトの艤装を確認した後にハツシモ達駆逐艦娘達の艤装を点検しているアカシとアマツカゼを見つめていたヤマトは、2人と一緒に来るべき筈のチトセが居ない事に気づいて、彼女の所在をヤハギに尋ねた。

 

「チトセなら海王星の基地でズイカクを見ているわよ」

 

「ズイカクを?」

 

「あの人、艤装の整備不備が原因で、ワープ実験後に体調を崩しちゃったの」

 

 ヤハギの返事で理由が分からなかったが、イスズの補足で納得して、ヤマトは「あ~…」と呻いた。

 

「よし、問題なのはヤマトだけね」

 

「まったく、派手に壊してくれたね」

 

 此の間に、アカシとアマツカゼが4人の確認を終え、潜宙棲鬼に補助エンジン2基揃って大破したヤマトを海王星のドックで直すのみと断定、アマツカゼが毒づいたのでヤマトが申し訳なさそうにしたが、当のアマツカゼは“気にするな”と示した。

 

「「…あ!」」

 

 で、イスズを先導にヤマト達は海王星の基地を目指したら、その基地上空に超巨大な白い渦が存在していて、ハツシモとアサシモが驚きの声を上げた。

 

「アレはね、だいたい深海棲艦戦時辺りに起きた宇宙自然現象で出来たらしくて、あの渦の真下にある巨大クレーターの中心地に基地があるのよ」

 

「はぁ~…深海棲艦と戦争してた時にか」

 

「ヤマトさん、その事でのニュースとか当時ありませんでしたか?」

 

「え、え~と…」

 

「馬鹿ね。

あの極限状態の戦時下で、宇宙での出来事なんか話題にならないわよ」

 

 カスミの説明にアサシモがハツシモと共に溜め息を吐いて、“深海棲艦戦時”との事からハツシモがヤマトに当時の事を訊ねたが、ヤマト本人が何かを答える前にイスズが否定してハツシモが“あっ!”とした為に全員が笑った。

 だが、イスズの行為で誰も気づかなかったが、ヤマトは海王星の渦が出来た経緯を知っている気がするだけでなく、更に奇妙な懐かしさも感じた事もあって、内心強めのパニックを起こしていた。

 

「…ん、アレって何の光だ?」

 

「………っ!?

ガミラス艦隊だ!!!」

 

 だから、イソカゼが右側で奇妙な光を見つけて示して、他の者達がそちらに振り向き………アサシモがそれがガミラス艦隊のワープ現象のであり、そのガミラス艦隊が自分達に接近していたのに気付いて、全員が身構えてアケシがヤハギの背に隠れたが、ヤマトだけは気付かずに海王星の渦を凝視し続けていた。

 

「…重巡リ級が……4で、内1隻はエリート!」

 

「不味いわね…って、ヤマト!!!」

 

「え、皆どうしたの?」

 

「ガミラス艦隊が来てんのよ!!!」

 

「みんな待って!

ガミ公の様子がおかしい」

 

 ヤハギがガミラス艦隊の構成を見極めて、アケシが顔を青くして思わずヤマトに振り向いたら、ヤマトが全くの無反応だったので叫ぶも、ヤマトが何か呆けた感じだったので思わず怒鳴ったが、イスズが重巡リ級群の違和感に気づいて皆を止めた。

 で実際、重巡リ級群はエリートを先頭に残り3隻が横並びに固まっていて、かなり近付いてきても攻撃の気配が全く感じられなかったので、茫然としているヤマト以外の艦娘達は警戒しながら周囲の者達と目線を合わせていたが、不意に先頭が左脇に退いた先の重巡リ級達に全員がギョッとした。

 

「「「「「「…っ!?」」」」」」

「「「「クロシオ!!?」」」」」

 

 イソカゼ達カゲロウ級駆逐艦4人とアサシモが思わず叫んだが、後ろの重巡リ級2隻はクロシオ(これまで重巡リ級と誤認)を左右から抱えていたのだ。

 重巡リ級達がMIAのクロシオを担いでいたのもそうだったが、そのクロシオは艤装が大破して武装全てが外されているだけでなく、首回りにリボンタイが結ばれずに通されたシャツはスカートから出てベストはボタンを留められていない、まさに着せられただけの生々しい格好で失神していた。

 そんなヤマト達を御構いなしに、重巡リ級2隻はクロシオをヤマト達目掛けて投げ飛ばし、更に先頭のエリートが傍を過ぎようとしたクロシオを回し蹴りで勢いを付けた。

 

「…っ! イスズ!!!」

 

「任せて!!!」

 

 ヤマト達は状況を理解出来ずに縦に回転しながら飛んでくるクロシオを茫然と見つめていたが、比較的早くに我に返ったヤハギがイスズと共に飛び出してクロシオを受け止めた。

 受け止めて分かったが、クロシオは明らかに痩せていた上に目に見える身体の至る所に痣が多数ある事から、ガミラスが彼女をどう扱っていたかを察する事が出来た。

 

「クロシオさん!!!」

 

「何があった!!?…っ!?」

 

 クロシオの所に更にハツシモとカスミが駆けつけたが、その直後にアマツカゼが怒りの形相で左旋回で反転して冥王星への退却に入った重巡リ級目掛けて主砲を撃った。

 

「よくもクロシオを!!!」

 

「「くたばれ、ガミ公!!!」」

 

 更にハマカゼとイソカゼにアサシモが彼女に続いたが、彼女達の怒り任せの砲撃は全く当たっていなかった上、当の重巡リ級達は無視して加速していってワープで逃走した。

 

「逃げるなぁぁー!!!」

 

「直ぐにワープだ!!!

アイツ等、皆殺しにしてや、っ!?」

 

「馬鹿!!!」

 

 逃げた重巡リ級達にアサシモが叫び、イソカゼがヤマトに振り向いてワープを求めたが、アカシが彼女の胸ぐらを掴んで左頬を叩いた。

 

「此れが罠だって事が分からないの!?

ワープ先にガミラス艦隊が待ち受けているってのが、私でも分かるのよ!」

 

「……すまん…」

 

 アケシの怒鳴りでイソカゼはハマカゼ達4人共々冷静になった様で、左頬を押さえながら素直に謝った。

 

「ガミ公よりクロシオよ!」

 

「クロシオさん、傷もそうですけど、酷い発熱です!」

 

「早く、チトセの所に行きましょう!!」

 

 逃げ切ったガミラスに思う事はあったが、イスズの叫び通りにそれよりもクロシオの身を案じるべきであり、見た目で既にそうだったが、アケシの簡易的な診察でクロシオが危険な状態が判明して、直ぐにでもチトセの所に運ぶべきであった。

 

「クロシオ、しっかり!!」

 

「アンタは助かったのよ!」

 

「直ぐチトセの所に連れてってやるから死ぬな!」

 

 直ぐにアケシ(ヤハギと交替)とイスズはクロシオを左右から抱え、更にハマカゼ達カゲロウ級の3人が脇でクロシオに呼び掛けている状態で海王星へと向かた。

 

「…っ!

ヤマト、後方警戒をお願い!!」

 

「分かった」

 

「……ヤ、マト…」

 

い、思い出しかの様にイスズがヤマトにガミラス艦隊の再度襲来に備えてもらって、ヤマト本人が了解した直後に、“ヤマト”の単語にクロシオが反応して目を覚まきて周囲を見渡して、後ろのヤマトを見つけると暫く彼女を見つめ続けた。

 

「…アンタが、ヤマトか?」

 

「え、ええ…」

 

「……そうか、そっか、スズツキの言う通り、ヤマトは現れたんやな…」

 

 ヤマト達が戸惑っているのを他所に、クロシオはヤマトを確認して微笑むと、顔を落としてまた失神してしまった。

 

「「「クロシオ!!?」」」

 

「大丈夫、まだ生きている!」

 

 イソカゼ達3人はクロシオが死んだと思ってしまったが、直ぐアケシが彼女の脈と息を確認したので3人揃って溜め息を吐いた後に、また直ぐに海王星へと急いだ。

 クロシオを護送するアケシ達6人を見送りながら、残ったヤハギ達4人はガミラス艦隊がいないかどうかの確認をしていたが、ヤマトは見えなくなった以降もクロシオの背を見つめ続けた。

 “スズツキ”の単語から他にも捕虜の艦娘達の存在等も色々気にはなったが、クロシオが自分の存在を確認した事から、ガミラスは自分を冥王星に誘き出す為だけに彼女にあんな行為をしたんだと察した。

 ヤマトは自分が潜宙棲鬼を倒した事を、別に誇ってはいなかったが、その事からクロシオが酷い目にあったのだと思い、自己嫌悪から下唇を噛みながら顔を伏せった。

 更に、ガミラスはもし冥王星に向かわなかったら捕虜の艦娘達を処刑するのは目に見えていて、その事を否応なく予感させた。

 

「ヤマトは悪くない!!

貴女はクロシオを苦しめる行為は一切していないわよ!」

 

 そんなヤマトの心情を察して、ヤハギは彼女の右肩を掴んで励ました。

 

「クロシオも分かってるわよ!」

 

 更にカスミ達3人もヤハギに続いたが、当のヤマトは心の中のモヤモヤを全く拭う事が出来ずにいた…




 感想または御意見をお待ちしています。

 今回の投稿前に、いつの間にかに出来ていたアンケート機能をしようして、本作でのヤマトの最後をどうしてほしいかを書きました。
 pixie版のを含めて、此のアンケートの結果しだいで、最終場面でヤマトが特攻するのか、地球に帰還するかが決まります。

大和
「現時点では、まだ2票だけですが、帰還派が強いですけど、特攻が採用となったら先行投稿している白色彗星帝国編はどうするのですか?」

 特攻派が多数の場合、後日なんとか回収できたヤマトの艤装を一応修理された後に、ヤハギが艤装を継承して二代目ヤマトになるとしています。
 因みに白色彗星帝国編でも、2202第7章にもよりますが、此方でもヤマトが特攻すべきかどうかのアンケートを実施予定で、しかも此方は暗黒星団帝国編は“ヤマトの主役続投”か“ムサシに主役交代”も兼ねてます。

 それと本編で海王星の裏側に巨大な渦があるとしていますが、此れは本作独自設定でして、本物の海王星にはこんなものはありません。
 前々から色々布石を置いてましたが、海王星の渦が“1000年女王”要素の最大の布石としています。

 最後に活動報告にて、白色彗星帝国編で登場予定のアンドロメダ級の仮設定を公開しました。
 ハーメルンでは、少なくとも確認しているアンドロメダの艦娘は全員クールビューティですが、ウチのは“短気かつツンデレ”との真逆の性格にしています。
 更に、衣装及び艤装形状は“ガングート・ベース”か“ウォースパイトと1000年女王(雪野弥生(プロメシューム))の折檻”の、後者が若干強いが、どちらかで悩んでます。
 若干ネタバレになってるかもしれませんが、此方の意見もどうぞ。


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第55話 悪意ある挑戦状(後編)

――― ????? ―――

 

 

『Millieu,Was soll das sagen!!?』

(訳:ミリュー、此れはどう言う事だ!!?)

 

 クロシオを集団的暴行からの解放はヤマト達地球に衝撃を与えていたが、実を言うとガミラスも衝撃が走っていて、現に冥王棲鬼は直ぐにミリューに抗議の通信を行っていた。

 

「…Was sagst du,worueber sprichter?」

(訳:…どう言う事とは、どう言う事だ?)

 

『Es geht um die POW schiffstochter!!!』

(訳:捕虜の艦娘の事だ!!!)

 

 元々常日頃から“嫌な上官”として内心嫌っていたが、今回のクロシオへの仕打ちの黒幕にも関わらずに他人事の様にしているミリューの態度に吹っ切れたらしく、冥王棲鬼は“上官”や“礼節”を忘れて、画面から出てきそうな程に荒ぶっていた。

 

『Werden private Sanktionen und freiwillige Befreiungen fuer Kriegsgefangene nicht vom Militaer streng verboten!?』

(訳:捕虜の私的制裁や、勝手な解放は軍規で固く禁じられていた筈ではないか!?)

 

 ガミラスには例外なき軍規が存在していたらしいが、残念ながら此の太陽系みたいな辺境では無きに等しくなっていて、通常型が破るのを責任者である超弩級が見て見ぬふりをするのが相次いでいた。

 現に冥王棲鬼も大型の艦娘達の何人かに勝手な行為をしていたのを知っていたミリューは、彼女に冷たい目線を向けていた。

 

「Es ist mein eigener Weg.

YAMATO wird sicherlich zu Pluto kommen」

(訳:私なりの手向けだよ。

此れでヤマトは冥王星に確実に来るぞ)

 

『Wie viel!!?

YAMATO sollte in unserer Strategie nicht zu Pluto kommen!!?

Faengt YAMATO nicht die Tatsache ein,dass stationierte Flotta von Pluto als chance fuer die Eroberung von Pluto drastisch reduziert wird!!?』

(訳:何ぃ!!?

私達の作戦だとヤマトは冥王星に来ないと言いたいの!!?

ヤマトは冥王星の駐留艦隊が激減しているのを冥王星攻略の好機と捉えないの!!?)

 

「Auβerdem wurde mir ein Gefuehlder Mission vermgttelt,als ich einen schlechten Kriegefangenen zurueckgege benhatte」

(訳:それに加えて酷い状態の捕虜を返された事で使命感を(アオ)らせてやったんだ)

 

 自分達のヤマト誘引の拙さを指摘されて、更に小馬鹿にされた気がした為、冥王棲鬼はミリューを睨んだ。

 

『Ich weβes nicht ……ich will es nicht verstehen!

Hast du Militaer besiegt,nur um so etwas zu tun!!?』

(訳:私には分からない………否、分かりたくない!

こんな事をする為だけに軍規を破ったのか!!?)

 

「Die Affen der Erde werden sich wie ein Retter fuehlen,wenn sie den Zustand der Kriegsgenen sehen.

Aber nichts ist so leicht zu handhaben wie der billige Humanismus,der das sagt.

Unter diesen Umstaenden sagen sie, dass Gefuehl der Mission durch das Besiegen von Lebendiger Geist stark geschimpft wurde,aber es heiβt,dass die Ressentiments eine Fallstricke sind」

(訳:捕虜の有り様を見て、地球の猿どもは救世主の様な気持ちになるだろう。

だがそう言う安直なヒューマニズムほど扱いやすいモノはない。

況してや奴等は潜宙棲鬼を倒した事が使命感が強く煽られてきた筈だが、その昂りが落とし穴だと言う事だ)

 

 ミリューの正論は一応的を獲ていたが、それが逆に冥王棲鬼を腹立たしい気にさせていた。

 況してや、ミリューが潜宙棲鬼戦没を逆に利用していたのが、彼女の事で更迭されかねていたのだから尚更であった。

 

「Und vor allem diese Frau eine Frau,die zu gut ist.

Ich werde die Pluto-Erfassungsrihenfolge difiniv nicht ablehnen」

(訳:それに何より、あの女は人が良すぎる性分だ。

間違いなく冥王星攻略命令を拒否はしないぞ)

 

 冥王棲鬼はどうもミリューの言う通りにヤマトが確実に冥王星に来る事は認めていたようだったが、その事での拒絶反応として歯軋りを露骨にしていた。

 

「Wenn Sie es verstehen,machen Sie sich bereit das Abhoeren!!!」

(訳:分かったなら、さっさと迎撃態勢に入ってろ!!!)

 

 冥王棲鬼は敬礼等を一切せずに通信を切ったが、後々ミリューから妙な違和感を感じる事になるのだが、この時は怒り心頭状態だった為にその事に気づかなかった。

 だが、ミリューの秘書艦である戦艦タ級もその事を感じるだけでなく、理由や訳を………つまり、ガミラス内ではヤマトの情報が未だに少ないのに、ミリューがヤマトの人格を知っている事を察するか知っているかもとの疑惑で、露骨に鼻を鳴らしたミリューを冷たい目線で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球 ―――

 

 

 地下都市の深部の議会や防衛司令部が存在する重要区画のゲート前で大勢の人々が押し掛けて右腕を振り上げながら叫んでいて、そんな者達を空間騎兵隊が横陣で楯と警棒で侵入を阻止しつつ解散を目論んでいた。

 此れは政府が勝手に1人辺りの食料配給量を減らしたり、酷い時は配給そのモノを取り止めにする為の抗議として度々行われていたのだが、今回のは少し事情が違った。

 

「ヤマトを冥王星に向かわせろ!!!」

 

「冥王星のガミ公を殲滅しろ!!!」

 

「捕らえられた艦娘を救いだせ!!!」

 

「ガミラスを横暴を許すな!!!」

 

「藤堂長官、御決断を!!!」

 

 御覧の通り、クロシオの解放でガミラスへの怒りを爆発させていた。

 本来ならクロシオの事は箝口令がひかれていた筈だったが、その事が藤堂達の所に報告が入った時にクロシオと同じカゲロウ級のハギカゼとアラシの2人(特に後者が問題で、後日厳罰処分)がいた事が原因で、生き残りのカゲロウ級の姉妹艦達に漏らしてしまったのだ。

 だが元々短気で仲間意識が強い駆逐艦娘達が此のまま黙っている訳がなく、カゲロウ級の誰かがユウグモ級の誰かに漏らした事が呼び水となり、水雷戦隊旗艦として駆逐艦娘達を束ね抑える巡洋艦娘達の多くが入院していた事もあって、瞬く間に駆逐艦娘達全員に知れ渡ってしまい、更に駆逐艦娘達の上官の多くも彼女達に同調した為に軍内部で冥王星攻略を求める声が多数出た。

 更に外部にクロシオ解放が漏れてしまい、死んだ自分達の親族が冥王星で囚われているのではとの淡い思いもあって、クロシオの親族達を御旗とした冥王星攻略を求める大騒動が起こって今に至った。

 

「……はぁ…」

 

 暴動寸前の処までいっている群衆に、将官用の病棟の一室から彼等を見下ろしている藤堂は溜め息を大きく吐いていた。

 

「沖田さん、すみません」

 

 藤堂が振り返った先では、山南が沖田の代理として冥王星攻略を阻止出来そうにない事に、ベット上の沖田に座りながら頭を下げていた。

 そんな山南の後ろでは、彼と共に会議に参加したホウショウも同様にしていた。

 

「……まさか、ガミラスが此処までの行為に及ぶなんて…」

 

 当の沖田は“仕方がない”と手を翳して山南達を許していたが、沖田を挟んでの山南達と反対の所にいるキリシマは、その一因であるクロシオ解放に顔を青くしていた。

 

「長官、やはりヤマトさんを冥王星に向かわせるのは危険です。

なんとか阻止は出来ないのですか?」

 

 キサラギは藤堂に進言して明らかに潜宙棲鬼での密約を反故しようとしていたが、どう考えてもガミラスが罠を仕掛けているのが簡単に分かるので、キリシマはキサラギに抗議等は一切せず、寧ろ彼女に同感として頷いていた。

 況してや、攻略派が意図的にクロシオ解放を外部に漏らした事が推測されてもいては、地球発でヤマトの身に何かが起きるのが目に見えていては尚更だった。

 だがキリシマとキサラギは元々頑固気質の沖田を説き伏せる事が2人揃って出来そうに無く、そこに来ての今回のガミラスの行為に感謝の気持ちが心の片隅にあり、その事は藤堂が無念そうに顔を左右に振ったのを見て確信した。

 だからと言ってクロシオへの行為以外も含めて、ガミラスの行為を許す訳がなく、矛盾する思いの攻め際いがキリシマとキサラギの顔に出ていた。

 

「沖田さん、どうします?」

 

 だがキリシマとキサラギが見た処、山南やホウショウに藤堂の3人も2人と同様の様で、現に冥王星攻略の阻止の事を一切口にしそうになかった。

 

「……潮目、かもしれんな…」

 

 此の為、病室内に沈黙による変な空気が暫く漂っていたら、突然沖田が溜め息を大きく吐いた。

 

「キリシマ、ヤマト達4人の状態はどうなんだ?」

 

「アケシの報告だと、ほぼ無傷のハツシモは兎も角、カスミとアサシモは早くなりそうなのですが、ヤマトは補助エンジン2基揃っての修理でどうしても3日は掛かるそうです」

 

「ですけど、チトセさんは5日は待ってほしいと進言しています」

 

「そんなにクロシオは酷いのか?」

 

「元々かなり衰弱していた上での発熱状態で暴行を受けてますので。

抵抗物質を注射する等して峠は超えたみたいですけど、意識が戻らない事もあってまだ予断は許さないそうです」

 

 キリシマのアケシの報告と、キサラギのチトセからの進言に、沖田は「そうか」と答えると目を瞑って硬直した。

 

「…藤堂さん、ガミラスに示しましょう」

 

「何をだ?」

 

 藤堂は沖田に質問はしたが、その答えを既に察していた。

 

「地球は、“力による支配”“理不尽な圧力”に決して屈しないと言う事をです」

 

 藤堂と山南を前から何となく察していたと思われるが、この時にキリシマ達3人は実は沖田が誰よりも冥王星攻略を望んでいたのを察した。

 これまでは沖田は冥王星攻略を理性で抑え込んでいたが、どうやらクロシオ解放で感情が勝った様だった。

 

「藤堂長官、遠征艦隊による冥王星攻略を許可頂けますか?」

 

「沖田、思う存分やれ」

 

 沖田の質問に藤堂が即答した事で、やらねばならぬ全てが決まった。

 

「キリシマ、5日以内に第7次冥王星攻略作戦を立案しろ」

 

 キリシマは沖田の命令に「了解!」と姿勢を正しながら答えた。

 




 感想・御意見お待ちしています。

 やっと此処まで来た。
 次回やる作戦会議を挟んでいよいよ冥王星攻略に入ります。

大和
「大分前に言ってましたが、本作での冥王星はやる事がたくさん有るのですよね?」

 コスモゼロさんの“宇宙艦これヤマト2199”の感想欄で書いてますが、その1つで2199版ビーメラ星での反乱に該当する要素として、遠征艦隊の1人に“伊藤四郎”(注:コミック版は星名透)に該当する艦娘がいて、此の冥王星攻略の終盤でヤマトの暗殺未遂をします。
 当然、裏切り者がいるのだから、その対抗要素である“星名透”(注:コミック版は伊藤四郎)に当たる表返る者もいますが、表返る者はヤマト原作では藤堂の命で動いてましたが、本作のは土方の命令で動いていると変更しました。

…それにしても、何でコミック版は裏切り者と表返る者が逆転したのかな?
 前々から伊藤がやたらヨイショされていたのが気になってましたが…

大和
「……感想欄でもそうでしたが、誰が裏切るのですか?」

 コミック版伊藤が言う官簇は、実は既に裏切りの前兆が微量ながら出ていますよ。

 さてさて、誰が裏切るのかと、表返る者は誰なのかが分かる人はいるかな?


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第56話 冥王星攻略へ!

――― 海王星 ―――

 

 

 ガミラスのクロシオ解放から5日後、第二次木星沖海戦以来全員が集合したヤマト達遠征艦隊の面々は海王星基地の中央作戦室に次々に入室し、最後となったヤマトがやってくると、他の者達は実際に声に掛けるか微笑む等で潜宙棲鬼を倒した事を各々に労った。

 

「……ふん」

 

…ズイカクただ1人はヤマトと目線を合わせると露骨に鼻を鳴らして目線を逸らして、ヤマト本人は“いつもの事”として無反応だったが、周囲から睨まれてはいたが、彼女なりにヤマトを認めている筈だった。

 此の後直ぐに、沖田やキリシマ達4人の地球からの立体式映像通信が入り、映像通信越しの沖田に遠征艦隊の面々が敬礼(ヤマトのみ通常式で、他全員は右拳を左胸に当てる敬礼)し、そんな彼女達に沖田が答礼して、7度目の冥王星攻略の作戦会議が始まった。

 

『私はイスカンダルへの旅を急ぐ為には無駄な戦闘は極力避けるつもりでいた。

だが地球を無惨な姿に変え、今も遊星爆弾を発射し続けている冥王星基地を見過ごす訳にはいかない。

我々は全力で此の基地を叩き、ガミラスの冥王星支配の中枢たる冥王棲鬼を排除する!』

 

 軍帽と髭で表情が分かり難かったものの、沖田は明らかに高揚していて、沖田の冥王星攻略の意気込みをヤマト達に簡単に分かった。

 只、ヤマトのみは分かっていなかったが、他の艦娘達は冷静沈着を愚直にいく沖田が熱くなっているのは驚き以外の何物でもなく、現に艦娘達の中で沖田との付き合いが一番長いキリシマでさえもが彼に目をひんむいていた。

 

『…キリシマ!』

 

『あ、はい!!

それじゃ、冥王星の現状をお復習(サライ)するわよ』

 

 キリシマはタブレットみたいなのを操作して、ヤマト達の床の大型モニターに冥王星の望遠映像を映した。

 

「……赤い…」

 

 血染めしたかの様に赤黒い姿の冥王星に、ショウカク達は眉を潜めていて、現在の冥王が初見のヤマトは此の映像から深海棲艦の変色海域を思い出し、更に所々を赤くした地球が頭に浮かんで“深海棲艦が天下布武を成し遂げた地球”との有り得たかもしれない未来の1つを連想した。

 

『皆知っての通り、少なくとも10年前にガミラスに占領された冥王星は、地表全てが変色するだけでなく、今や海を有する、敢えて言えば火星に近い小型惑星に変貌しています』

 

「火星に近いって事は、今の冥王星には酸素を有する大気があるのですか?」

 

『第四次冥王星攻略時の情報だと、外気温さえ解決出来たら宇宙服無しで住ごせるらしいわよ』

 

 ヤマトの質問へのキリシマの返事から、ガミラスの優れた宇宙技術力を敵対心関係なしにヤマト達は素直に感心していた。

 

「そんな事より、問題なのは冥王星基地や冥王棲鬼の所在が不明な事ね。

望遠映像とかで冥王星を調べられなかったの?」

 

 チトセの質問にキリシマは左右に顔を振った。

 

『冥王棲鬼は兎も角として、地下基地って事も考えられるけど、ガミラスは何らかの手段で基地を隠蔽しているみたいね』

 

「潜宙艦を実戦配備しているガミラスにとって、基地を隠す事など簡単な事かもね」

 

 キリシマの説明に続いての巡洋艦キタガミの呟きに、全員が同感として頷いた。

 

「「「「………っ!?」」」」

 

 その後に、ヤマト達潜宙棲鬼討伐に行っていた4人は妙な疑問を感じて少しの間硬直し、その理由であるキタガミの存在に気づいて一斉に彼女に振り向いた。

 

「あ~宜しくぅ~…」

 

「……何でいるの?」

 

 当のキタガミは当たり前の様にしていたが、カスミの呟き通りにMIA認定のキタガミがいる事は驚愕以外の何物でもなかった。

 

「言い忘れていたんだけど、コイツ、陥落した海王星基地を細々と潜伏していたんだニャの」

 

「ガミラスが此所に艦隊を駐留させていなかったから、御覧の通りに生きていられたのよ」

 

 笑いながら手を振るキタガミの生存に、どうやらショウカク達は喜びよりも呆れが大きかった様で、現にキタガミがいる理由説明をした姉妹艦のタマが、頭を押さえているアケシと共に溜め息を吐いていた。

 

「あ、どのみち私は艤装のエンジンが壊れてるから、作戦や遠征に参加できないから、気にせず続けてぇ~…」

 

『あ"~…、さっき言った事だけでなく、更に不味い事に、冥王星は変色した影響で地球からの望遠観測が非情に困難な状態になってるの。

冥王星の沖合いに辿り着いてからの捜索方法を考えないとね』

 

 第四次冥王星攻略は基地と冥王棲鬼の捜索に手こずったのが原因で破綻した悪しき例がある以上、先ずはどうやって基地と冥王棲鬼を探し出す事が検討事案かと思われたが…

 

「まぁ、今回は基地や冥王棲鬼を探す必要が無いかもしれないけど…」

 

…ハツヅキの呟きに全員がキョトンとしたが、直ぐにイソカゼが彼女の言う意味を察した。

 

「まさか、波動砲で冥王星その物を破壊する気か!!?」

 

「それも選択肢の1つって事だ」

 

 イソカゼとハツヅキのやり取りで全員がギョッとした。

 

「そんな、冥王星基地には捕虜が多数いるのですよ!!!」

 

「残念だけど、ガミラスはタマ達がハンディを与えられる程の甘い敵じゃないニャ」

 

「しかも、どう考えても短期決戦をやるしかない以上は、“大を生かす為、小を殺す”、軍ではよくある事をやるしかないよ」

 

 イソカゼにハマカゼが援護をしたが、ハツヅキにはほぼ諦めているタマと、割り切っているヴェールヌイが擁護した。

 

「だけど冥王星の破壊は、ヤマト自身に囚われの艦娘達を殲滅させる事になるだけじゃない!

今の冥王星の位置だと、破壊された冥王星の残骸が地球に落ちる可能性が高いのよ!

つまり、ヤマトの手で超大型の遊星爆弾を作る事になりかねないのよ!」

 

「でも冥王星攻略後の冥王星防衛維持に困難が考えられるから、冥王星破壊も戦略的に良手になるかもしれないのよ!」

 

「じゃあ何、私達はガミラスから地球を助けに行くのに、冥王星でガミラスの真似をしろって言うの!!?」

 

「誰が好き好んで味方諸共に冥王星を破壊したがるのよ!!?」

 

 更にヤハギとオオヨドが口論を初めてしまい、そのまま乱闘が起きそうだったが、沖田が「馬鹿者!!!」と怒鳴った事で全員が一斉に姿勢を正して硬直した。

 

『捕虜だけでなく、ヤハギの言う通りな危険性が考えられる以上、冥王星攻略には波動砲は使用しない!

だが、戦局によって波動砲使用がやむを得なしと判断したら、私の責任でヤマトに波動砲を使わせる!』

 

「…要するに、波動砲使用処か、冥王星攻略自体行き当たりばったりって事ね」

 

 ズイカクが頭を掻きながら言った通り、沖田でさえ波動砲使用に決定力を欠けている事に全員が呆れていた。

 

「……長門や武蔵だったら、決断してたかも、ね…」

 

 実際に波動砲を使う事になるかもしれないヤマトはと言うと、自分自身で波動砲使用の是非を決められない事に、長門と武蔵の2人の顔を思い浮かべながら溜め息を吐いて自己嫌悪していた。

 

『だけど、現時点じゃあ、波動砲が使用出来る状態じゃないけどね』

 

『はっちゃんもそう思うよ』

 

 そんな状況下でキリシマの脇にいる2人の内、ポニーテールの少女が苦笑して、もう1人の日本人らしからぬ金髪短髪で眼鏡の少女が“うんうん”と頷いた。

 

「そう言えば、その娘達は誰なの?」

 

「あ、言い遅れましたが、私は艦娘候補生の愛野恵です!」

 

「同じく、葉月・フラーケンです!」

 

 アケシの質問に恵と葉月は2人揃って右拳を左胸に当てる敬礼をしたが、何で此の場に艦娘候補生が2人いるのかが分からずに海王星組は周囲の者達と目線を合わせていた。

 そんな中で恵の方は兎も角、葉月に対して、ヤマトは在視感を感じて首を捻っていて、イスズもヤマトと同じ様にしていたがフラーケンのファミリーネームから何かに思い当たった。

 

「ねぇ葉月、フラーケンって、貴女ドイツのフラーケン提督と関係あるの?」

 

「はい、ヴォルフお爺ははっ……じゃなくて、私の祖父です」

 

 イスズの質問で葉月の祖父がフラーケンだと分かって、海王星組が驚いていたが、ヤマトだけはキョトンとしていた。

 

「フラーケン提督って、誰?」

 

「ドイツ海軍中将ヴォルフ・フラーケン、カール・デーニッツ提督の再来と呼ばれる、潜宙艦研究の第一人者であるドイツの提督です」

 

 ヤハギの返しにヤマトは凄さはあまり分からなかったが、深海棲艦戦時に潜水艦(Uボート)集中運用戦法・群狼作戦(ウルフパック)の発案して大功績を上げ、ヒトラー没後のドイツ第三帝国大統領となった“カール・デーニッツ”の名が出た事で何となくは掴んだ様だった。

 

『此の2人は特別処置として藤堂長官の秘書艦補佐に就いている。

艦娘候補生と言え、艦娘の先輩として失礼のないようにするんだ』

 

「…あの2人って、何の艦娘候補生なんだよ?」

 

「さぁ、新しい艤装が作れない状況下のに、候補生のままなのですから、余程の艦娘なのでしょうね」

 

 沖田の注意に全員が「はい!」と答えていたが、アサシモとテルヅキが小声で話し合っていた通り、やはり2人がなるかもしれない艦娘の事が気になっていた。

 だがヤマトだけは、葉月の親族から彼女の先代になる(かもしれない)者………旧日本海軍内でも屈指の大航海を成し遂げ、イスカンダル遠征にも縁起が良さそうな者を思い出し、その事から連鎖的に恵の先代(?)にあたる者にも思い当たって、2人が各々になろうとする艦娘を察した。

 

「それより、波動砲が使用出来る状況じゃないのは、どう言う事なの?」

 

 まぁ艦娘候補生2人より、先ずは冥王星攻略であり、ショウカクの質問に恵と葉月はキリシマが頷いての許可の元に床下モニターを冥王星を中心とした宇宙地図に変えた。

 

『知っての通り、ガミラスは遠征艦隊の大包囲網を行う空母艦隊多数を火星・木星間の小惑星帯を多方向から向かわせています。

既に小惑星イカロスに駐留するフランス艦隊が空母艦隊の1つと交戦状態に入ったそうよ』

 

『此れ等空母艦隊に対して、防衛艦隊は藤堂長官を総指揮の元に欧米各国を中心とした連合艦隊を編成し、私達日本艦隊もホウショウさん、ジュンヨウ、スズヤの3人の空母娘を主軸とした艦隊が山南提督の指揮の元に出撃しています。

此の連合艦隊でイカロスを防衛しつつ、冥王星に最短で戻りそうな空母艦隊の幾つかにぶつかる予定で、此れである程度は時間稼ぎが出来る筈です』

 

「……ホウショウさんまで、戦線に投入されたのですか…」

 

 キリシマと恵の説明から、ショウカクが旧式空母のホウショウ出撃で本気度合いを察していたが、実際日本は戦闘可能な艦娘全員を動員していて、入院中等の戦闘不能な者を除いて、日本に残ったまともな艦娘は艤装再改造中のキリシマ1人だけの状態だった。

 

「だけどそれが何なの、デスカ?」

 

『それを今から説明するよ』

 

 だが丹陽のもっともな質問に、葉月が苦笑しながら答えた。

 

『ですが問題なのは、先日の望遠観測の結果、ガミラスは波動砲が冥王星を捉えられる直前の宙域に新たに艦隊を展開したのです。

艦隊構成は、エリート2を含む戦艦ル級6隻、重巡リ級20隻、水雷戦隊多数による、艦隊航空戦力こそ有りませんが大規模な打撃艦隊で、追撃・防衛どちらでも対応可能な状態であり、更にワープで回避しての冥王星攻略は不可能です』

 

 実際に床下モニターの宇宙地図の冥王星の沖合いにて黄陣で広く展開している打撃艦隊に全員がギョッとして、実際にレシーテリヌイが小さな悲鳴を上げながら1歩退いて、アキヅキが「嘘、でしょ?」と呻いていた。

 更に言うと、沖田とキリシマは打撃艦隊の登場は予想はしていたが、その予想を超えていた事に何か思う事がある様で、特にキリシマはガミラスの本気を示す艦隊の編成と配置に対応出来ていない事の証として目の下に隈が出来ていた。

 

「…此れって、まるでスリガオ海峡の深海棲艦の艦隊だ」

 

 ヤマトもそう思っていたが、先代が編入された志摩艦隊(他に重巡那智、足柄、軽巡阿武隈、駆逐艦曙、潮、不知火)で参戦したカスミの言った通り、冥王星沖の艦隊は戦艦山城率いる西村艦隊(他に戦艦扶桑、重巡最上、駆逐艦時雨、満潮、朝雲、山雲)を飲み込んだ深海棲艦の艦隊編成に似ていた。

 

『波動砲を使うにしても、冥王星に接近するにしても、先ずは此の艦隊を対処しないといけないけど…』

 

「…いくらヤマトさんがいても、此の艦隊の撃破は無理です。

波動砲も此の陣形だと効果がありません」

 

 更にハツシモ(余談ながら後方要員で未参戦だったが、先代初霜も志摩艦隊の1人だった)の指摘通り、まともにやり合ったら駆逐艦時雨1人を残して瞬時に全滅した西村艦隊の二の舞になるのは目に見えていて、現に切り出したキリシマが溜め息を大きく吐いた。

 しかも地球側は艦隊戦力が明らかに不足していた上、ガミラス打撃艦隊の位置だと冥王星からの援護攻撃も考えられては尚更だった。

 

『更に冥王星には気になる事があるの』

 

「…気になる、事?」

 

『防衛軍の解析結果、ガミラスは海王星・冥王星間の小惑星群に放射性エネルギーを注入、次にその小惑星の前方に作ったマイクロブラックホールの質量誘導で、小惑星に運転エネルギーを与える事で遊星爆弾となる事が分かったの』

 

「何で、今此所で遊星爆弾の作り方を言うのよ」

 

 キリシマが何故遊星爆弾の生成方法を言い出したのかが、ヤマトには全く分からなかった。

 

『気になるのは、マイクロブラックホールを作るには質量物質が必要なんだけど………結構な大きさになるそれが、冥王星には見当たらないのよ』

 

「はぁ、無い?」

 

『更に言うと、太陽系制圧艦隊の収用設備等、冥王星の基地能力が過剰なの。

ガミラス統治下の冥王星には疑問が色々あるのよ』

 

 作戦会議で言うには不吉すぎてヤマトが顔を少し青くしていたが、言った本人であるキリシマも“本当は言いたくなかった”と顔に出していた。

 

『冥王星の疑問は取り敢えずおいておけ。

先ずは打撃艦隊の対処法を考えるんだ』

 

「…いっそヤマトを餌にして打撃艦隊をどっかに誘き出したらぁ~?

クロシオの話でも、ガミ公がヤマト狙ってんのは確かなんだから」

 

「それやったら、今度は冥王星を攻撃する戦力が無くなるニャ」

 

「あの星はアカギさん達主力の空母娘達が多数いても落とせなかったのよ。

ショウカクさんやアンタの2人だけじゃ無理よ」

 

「……私もいるんだけど」

 

 沖田が指摘してからの少しの間の沈黙後、組んだ両手を後頭部に当てながら頭上を向いたズイカクの呟きに近い意見に対し、エンガノ岬沖の当て付けを感じた事もあってのヤマトの睨みは措いておき、タマとイスズが続けて否定した。

 

「……けっ…」

 

 イスズが戦力に数えなかったチトセに謝っていたが、ズイカクは空母カガの嫌味を言いながらの冷たい目線を思い出して、露骨に顔を背けた。

 因みに現在のクロシオは峠を越えるも絶対安静中であり、まさかイスカンダル遠征に参加させる訳がなく、藤堂の命令でタイゲイのジンツウに加えて戦闘不能なれど航行は可能となったユラの3人がキタガミ共々救出しにワープ航法で向かう手筈になっていた。

 

「ですけどズイカクの言う通り、打撃艦隊を誘き出すのは有効な策です。

その路線は貫いた方がいいです」

 

「でもどうやって誘い出すのよ?

本当にヤマトを囮にする訳にはいかないわよ」

 

 ショウカクの意見に続けてのヤハギの疑問に全員が各々に思案し始めた。

 

「…ん!」

 

「………何?」

 

 暫くした後、アサシモが不意にヤハギに振り向いて彼女の全体を見渡し、当のヤハギがアサシモの視線に気付いて目線を合わせると、アサシモが何かを閃いた。

 

「ねぇ沖田提督、ガミラスがヤマトを狙ってんのなら、ヤマトの偽者を作って、ソイツを囮にするってのは、どお?」

 

「まさか、ヤマトを模したロボットでも作る気?」

 

「アンタねぇ、そんなの作ってたら、地球が滅びるわよ」

 

「いやぁ、案外簡単で早く出来るかもよ」

 

 アサシモの提案に、沖田が答える前にレシーテリヌイが眉を潜めて、アケシが反対したが、アサシモは意味ありげに笑ってヤハギを一目見た後に顎に左手を添えて考えた。

 

「…え~っ、とぉ~……取り敢えずは赤い塗料……か赤い生地、後は手頃な金属パイプがいるなぁ~…」

 

「赤い塗料か生地と、金属パイプ?」

 

 当初はアサシモが言っている意味が全員分からなかったが、アサシモが横目でヤハギを見詰めた事で分かったらしく、“ああ、そう言う事”と次々にヤハギの方に振り向いた。

 

「…え………え…え、え、ええ?」

 

 只、当のヤハギは自分に何を求められているのかが分からず、仕切りに顔を左右に振っていた。




 感想または御意見をお待ちしています。

 今回にて、ゲーム版遊星爆弾の要素を入れた影響で、反射衛星砲は当初遊星爆弾の着火装置としていましたが、此れを遊星爆弾の放射性エネルギーの注入装置に変更しました。

 と言う訳で、先ずはリメイク版では何故か理由もなく消された守備艦隊の排除を行います。

大和
「……戦艦ル級が、6隻………冥王星沖にも徹子の部屋があるのですか…」

 自分もそうでしたが、此れの所為でレベル甲での攻略やジャービス掘りを諦めた人は何人いるかな?
 ただし、作戦しだいでは徹子の部屋が前編版か後編版かが決まります。

大和
「それと、あの2人の艦娘候補生ですね」

 元々白色彗星帝国編で出したいけど出せれない艦娘としていたのですが、2202の第24話から出したい気持ちが高まったので、匿名での先行登場として出しました。
 更に、本作での艦娘は“聖闘士星矢”の聖闘士と“恋姫無双”の武将を足した様な存在としていますから、恋姫無双での真名にあたるのを実験投入し、状況しだいで第53話でキリシマの本名を追加いたします。

 最後に、今回先行登場したキタガミは、本人が言っている通り、あと1回出るかどうかとしていて、彼女が本格参戦する予定は、暗黒星団帝国編です。
 補足ですが、キタガミはゲーム版暗黒星団帝国三部作のオリジナルキャラ大山歳朗ことトチローの立ち位置に設定しています。

北上
「まぁ、此の影響で雷巡兼任の工作艦になってるよぉ~…」

 更に言うと、キタガミはアケシと同期で、日本の艦娘内では屈指のIQの持ち主で、いい加減且つ怠惰な性格を除いたら、工作艦としての能力はアケシとユウバリを超えているとしています。

北上
「話は変わるけど、ヤマトのリメイクシリーズも暗黒星団帝国編をやる気配が出てきたねぇ」

 個人的には白色彗星帝国編は、何か設定が、特にアンドロメダ改の四連装波動砲があんまり生かしきれていない気があったのが、残念だと思ってます。
 もしリメイクシリーズが暗黒星団帝国編をやったら、此の作品のはゲーム版との折檻になる予定です。

北上
「んで暗黒星団帝国編は誰が作ると思う?」

 欲を言えば、松本零士氏に作って欲しいなぁ~…と思いますが、ほぼ無理だと思ってますので、“銀河鉄道物語”の1期をやった西本由紀夫氏が監督だったら面白くなるんじゃないかなぁ~…と勝手に思ってます。


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第57話 Flotte vor!!!

――― 冥王星沖 ―――

 

 

 冥王星の沖合いの宙域で、ヤマト達遠征艦隊を待ち受けているガミラス打撃艦隊はと言うと、数日が経過しても遠征艦隊が海王星から出てこない事から、稀にサボりの傾向が出ていたものの、取り敢えずはちゃんとはしていた。

 

「Bericht vom Aufklaerungasschiff!

Eine Flotta,die von Neptune verschifft wurde!」

(訳:偵察艦より通報!

海王星から艦隊が出撃しました!)

 

 冥王星への帰還を望む者が多々出てきた時に、海王星の動きが伝えられた。

 

「Follow-up!!

Es cheint,dass YAMATO an der Spitze der Flotte steht!」

(訳:続報!!

艦隊の先頭にヤマトがいるそうです!)

 

「Wir teilen Pluto und Gepanerte Prinzessin den “YAMATO-Angriff” mit!」

(訳:冥王星及び装甲空母姫様に“ヤマト出撃”を通信!)

 

 そして最大の標的であるヤマト発見の1報で、全員が“遂に来た”と周囲の者達と目線を合わせた。 

 

「Weitere Nachverfolgung!!

YAMATO,geht auf kuerzestem Weg ins Weltall,ohne zu Pluto zu gehen!」

(訳:更に続報!!

ヤマト、冥王星に向かわずに最短コースで外宇宙に進んでます!)

 

 だがヤマト(達)が冥王星に向かっていない事が伝えられると“えっ”となって各々に騒ぎだした。

 

「Komm unikation von Pluto!!

Es ist “YAMATO wird das Sonnensystem wahrscheinlich mit einem Warp in der Asteroidenzone verlassen,daher sollte die streikende Flotte YAMATO auf dem Asteroiden nach dem Entwurf des Plane angreifen”!」

(訳:冥王星より通信!!

“ヤマトは小惑星帯でワープで太陽系を離脱する可能大故に、打撃艦隊は副案通りに小惑星帯にてヤマトを攻撃せよ”との事です!)

 

 どうやら冥王棲鬼はヤマトが冥王星に向かわない事を想定していたらしく、直ぐにヤマト追撃の命令が下り、戦艦ル級6隻を主体とした大半が急発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……通信、“ブクスホーデン、プラッツェンから前進”っと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 海王星・冥王星間小惑星帯 ―――

 

 

「Wir kamen am Asteroidenguertel!」

(訳:小惑星帯に着いたぞ!)

 

「Was ist YAMATO!?

Im Asteroidenguertel!?」

(訳:ヤマトは何処だ!?

小惑星帯の中か!?)

 

 冥王棲鬼の命令通り、ヤマト追撃に向かった打撃艦隊は全速力での移動で小惑星帯に辿り着くや、道中遠征艦隊が小惑星帯を通過するのを確認しなかった事から、ヤマトの所在を真っ先に求めた。

 

「Es wurde wahrscheinlich berichtet,dass Avantgarde under YAMATO nicht von vorherigen Avantgarde verzerrt wurde…」

(訳:先行した前衛からヤマト以下の地球艦隊がワープした事が報告されていませんのでおそらくは…)

 

「YAMATO ist immer noch im Asteroidenguertel,um zu sagen!

Es wird eilen!!」

(訳:と言う事は、ヤマトはまだ小惑星帯の中だ!

突入するぞ!!)

 

「Bitte warte!!

Ich kann mich nicht mit meinem Avant in Verbindung setzen!」

(訳:待ってください!!

先程から前衛と連絡が取れないのです!)

 

「Mai ist groβartig!!!

YAMATO wird mit einer Verwerfung davonlaufen,wenn ich muede bin!」

(訳:五月蝿い!!!

ボヤボヤするとヤマトがワープで逃げるだろ!)

 

 直ぐに遠征艦隊が小惑星帯にいる事が判明して戦艦ル級達は小惑星に突入しようとしたのだが、前衛との音信途絶から何かを危惧した重巡リ級の1人が忠告するも、戦艦ル級達は無視して突入していき、他の者達も相変わらずの戦艦ル級達の考え無しに各々に呆れながら彼女達に続いた。

 

 

 

 

 

「YAMATO!!!

Was fuer ein Ort!!?」

(訳:ヤマトォォォー!!!

何所だぁぁぁー!!?)

 

「…mach es!?」

(訳:…やれやれっ!?)

 

 戦艦ル級達はヤマトを求めて小惑星群を除雪車みたいに払い除けながら突進し続け、重巡リ級以下の後続の者達は戦艦ル級達に呆れながら続いていたら、重巡リ級の数人が左舷から飛んできた空間魚雷の不意打ちを食らって周囲の駆逐艦群を巻き添えにして吹き飛んだ。

 

「Was ist passiert!!?」

(訳:何が起きた!!?)

 

 此の被雷で戦艦ル級達が止まって後ろに振り向いた状態で固まって、後続の者達は轟沈した者達に駆け寄って騒いでいたら…

 

「良い具合で決まったわね!」

 

…空間魚雷が飛んできた遥か先の小惑星2つの間に、屈んで身構えているアサシモとアキヅキの2人の後ろに、垂直に曲げた左足を上げたヤマトがいた。

 

「「「「「「…Ja,es ist YAMATO!!!」」」」」」

(訳:…ヤ、ヤマトだぁぁぁー!!!)

 

 いきなりのヤマトの出現にガミラス艦隊が混乱による沈黙が少しの間あったが、ヤマトが左足を下ろすと同時に我に返った戦艦ル級達が一斉に叫びながら主砲を放ったが、戦艦ル級達の砲撃は全弾外れてヤマト達の周囲の小惑星群に直撃するに終わった。

 

「…ふっ」

 

「「べ~…」」

 

 そんな戦艦ル級達の空振りに、ヤマトが小馬鹿にしたかの様に微笑して、アサシモとアキヅキが舌を出した後に、反撃する事なく背後の小惑星群の影に逃げていった。

 

「「Warten sie!!!」」

(訳:待てぇぇぇー!!!)

 

「…Warum haben sie es nicht auf dem Radar gesehen?」

(訳:…何で、レーダーに映らなかったんだ?)

 

「Was macchst du!!?

Folge schnell!!!」

(訳:何をしている!!?

早く追えぇぇぇー!!!)

 

 密集する小惑星の間を縫って逃げたヤマト達3人を直ぐに戦艦ル級達が追い掛けたが、重巡リ級達はヤマト達が突然現れた事に驚き戸惑っていたが、殿の戦艦ル級に怒鳴られて、慌てて彼女達に続いた。

 

『GiYAaaa-!!!』

 

 ところが、先行した戦艦ル級達、そんな彼女達に釣られて続いた者達の悲鳴が聞こえた為に急いで駆け付けると…

 

「Es ist eine Mine!!!」

(訳:機雷だ!!!)

 

…先行した者達は機雷原に突っ込んだらしく、幾つもの爆発に飲み込まれていた。

 此れに戦艦ル級は軽度の火傷だけですんでいたが、駆逐艦群や軽巡2種の何隻かが轟沈していた。

 

「Wohin ist YAMATO gegangen!?」

(訳:ヤマトは何所に行った!?)

 

「Wie bist du diesem Minenfeld herausgekommen und hast bemerkt,dass es Mine verspueht hat!?」

(訳:どうやって気づかれる事なくあの機雷原を抜けるなり、機雷を散布したんだ!?)

 

 戦艦ル級達が両手の艤装を各々に振り回していた事で意外に元気である事が分かった事もあって、後続組がヤマト(達)の所在を求めて、機雷原の先を見つめていたが…

 

「見事に引っ掛かってる!!!」

 

…不意に機雷原の右上側で笑い声が聞こえた為、一斉にそちらに振り向いたら、その先にある大型小惑星の上でヤマトがお腹を抱えて爆笑していた。

 

「惨めね」

 

 更にヤマトの両脇各々にいる、カスミが機雷原内の戦艦ル級に冷たい目線を向け、テルヅキが何故か静かに額、心臓部、左肩、右肩の順に十字を描いていた。

 

「Zerstoerer veraendert sich」

(訳:駆逐艦が変わってる)

 

 重巡リ級達がヤマトの取り巻き2人が変わってる事に疑問を感じたが、戦艦ル級達はそんな事お構い無しに主砲を次々に放ったが、それ等はヤマト達が乗っていた小惑星を初めとした彼女達周囲の小惑星群に当たるだけに終わって、肝心のヤマト達は乗っていた小惑星の爆発の勢いを利用して後ろの方に逃げていった。

 

「Verpassen sie es nicht!!!」

(訳:逃がすなぁぁぁー!!!)

 

 当然ながら戦艦ル級達は雄叫びを上げながらヤマト達を追い掛け、随伴艦達もヤマトの行動に違和感を感じながら続いた。

 

「Ein rasender Junge!!!」

(訳:逃げ足の速い奴め!!!)

 

「Was fuer ein Ort,YAMATO!!?」

(訳:何処だ、ヤマト!!?)

 

「Komm stolz heraus!!!」

(訳:堂々と出てこい!!!)

 

 だが又しても小惑星群の合間に縫っての追撃したがヤマトを見失ってしまい、戦艦ル級達は周囲を見渡して、時折主砲を所構わずに放ちながら出てる筈のないヤマトを呼び出そうとしていたので、随伴艦達は揃って溜め息を吐いた。

 

「……トーン・タンタン…」

 

…その直後に何処からともなく声が聞こえたので、全員が硬直した。

 

「……トーン・タンタン…」

 

 声自体は別に叫ぶ等の大声でなかったが、静かな空間である事が声を変に大きくして、よく聞いたら足音みたいなのも聞こえていた。

 だが突然声が聞こえなくなったら、小惑星の物影から人型の何が飛び出して驚き戸惑っていたガミラス艦隊の面々の合間を縫いながら、戦艦ル級1人を含めた何人かに空間魚雷を至近距離で叩き込んで、被雷した戦艦ル級のみは小破ですんだが、他の者達は沈むか大破していた、当の襲撃者はガミラス艦隊を見事にすり透けた。

 

「Hey,das dirtte Blitzgeschwader ist verschwunden!」

(訳:おい、第三水雷戦隊が全員やられたぞ!)

 

「Es war ein furchtbar schneller Typ!」

(訳:恐ろしく速い奴だった!)

 

「…Hey,war es nicht ein schwarzhaariger Pferdeschwanz?」

(訳:…アイツ、黒髪のポニーテールじゃなかったか?)

 

 一瞬の出来事でガミラス艦隊で軽い混乱が生じたが、雷巡チ級の1人が襲撃者の髪型を指摘した事で全員が“まさか”と思い、少し硬直した後に襲撃者が過ぎた方にゆっくり振り向いた。

 するとその先の小惑星の物影からヤマトが顔を出してガミラス艦隊を睨んでいた。

 

「「「「「「Es ist vorbei!!!」」」」」」

(訳:いたぞぉぉぉー!!!)

 

 直ぐに戦艦ル級達がヤマト目掛けて主砲を放ち、何故かヤマトが動かなかった事もあって今度は当たるかと思われたが、その直前でイソカゼがヤマトを後ろに引っ張ったので又しても外れた。

 

「Warten Sieund gehen Sie!!!」

(訳:待てゴルァ!!!)

 

「…Warum benutzt er die Waffe nicht?」

(訳:…何でアイツは主砲を使わないんだ?)

 

 戦艦ル級達はまた逃げたヤマトを追いかけていったが、他の者達はヤマトへの違和感が、一撃で戦艦ル級を沈められる火力を持つ主砲を先程から使わない事である事に気づき、今更ながら罠の可能性を疑って二の足を踏んでいたが、後々(があれば)に戦艦ル級達に何をされるか分からない恐怖から、溜め息を吐いて渋々続いた。

 

「Ich habe es vermisst!!!」

(訳:もう逃がさんぞ!!!)

 

「Zerschmetfert,YAMATO!!!」

(訳:くたばれヤマト!!!)

 

 3度目のヤマト追撃を小惑星群の合間を縫いながら暫く続け、ほぼ直線コースに入った時に、重巡リ級以下の随伴艦の者達が行き絶え絶え状態だったが、遂に戦艦ル級達はヤマトを散布界に捉えた。

 

「Oh! Viele feindlich Flugzeuge oben!!!」

(訳:っ!? 真上、敵機多数!!!)

 

 戦艦ル級達が不適な笑みを浮かべてヤマトに主砲を放とうとした時に、重巡リ級の1人が自分達目掛けて急降下してくるコスモタイガーとコスモファルコンの編隊に気づいて、悲鳴を上げながら報せた。

 

「Was fuer ein ploetzlicher Auftritt!!?」

(訳:何で急に現れるんだ!!?)

 

「Sie sind auch auf der linken Seite!!!」

(訳:左舷にもいるぞ!!!)

 

「Sogar von der rechten Seite!!!」

(訳:右舷からもだ!!!)

 

「Ich komme von unten!!!」

(訳:下からも来てる!!!)

 

「Nun,ich war umzingelt!!!」

(訳:まずいぞ、囲まれた!!!)

 

「Feindliche Flugzeuge und Raketen werden werden gleichzeitig abgeeworfen!!!」

(訳:敵機、ミサイル一斉に投下!!!)

 

 上下左右からコスモタイガー&コスモファルコンの編隊の不意打ちに、ガミラス艦隊は混乱が生じた為に防空陣形に移行する処か対空砲を撃つ事すら出来ずに次々に被雷していき、艦隊全域で爆発に飲み込まれいった。

 

「Lass uns gehen!!!

Die weibliche Aff der Schiffstochter,ein gutaussender kerl!!!」

(訳:畜生!!!

艦娘の牝猿どもめ、いい様にヤりやがって!!!)

 

「Sind die Guerilla-Taktiken der Tauchflotte nicht richtig,!!?」

(訳:アレは潜宙艦隊のゲリラ戦法そのまんまじゃないか、っ!!?)

 

 自他共にヤられ放題の状況に、雷巡チ級の何人かがコスモタイガー&コスモファルコンの編隊に毒づいたが、それ等の何割かが、戦艦ル級や重巡リ級は無視して、水雷戦隊への機銃掃射をしてきて、何人かは目をヤられてのたうっていたが、雷巡チ級の何人かは魚雷発射菅を撃ち抜かれて周囲を巻き込む大爆発を起こしていた。

 

「Schaden,Schaden melden!」

(訳:被害は、被害を報告しなさい!)

 

「Torpedoschwader ist angeschlagen.

40% der Gesamtflotten gingen verloren」

(訳:水雷戦隊はボロボロです。

艦隊総数の4割がヤられました)

 

 此の空襲で戦艦ル級無発光体全員が中破するだけでなく、艦隊全域でこの日最大の被害が出た事で、流石に戦艦ル級達は自分達の浅はかな行動を各々に悔やんでいた。

 

「Warum hast so weiter gemacht!!?

Jeder,ich denke es war Ya!!!」

(訳:何でこんな事をし続けたんだ!!?

皆、ヤられたじゃないか!!!)

 

 此の為だろう、錯乱した重巡リ級が戦艦ル級の1人の胸ぐらを掴んで怒鳴っていたが、誰も行動しなかった。

 そんな時に前方近くの小惑星の物影から、腹立たしい笑顔のヤマトが出てきて、全員が硬直した後にゆっくりそちらに振り向いた。

 

「…Zum ersten Mal durfte ich das Aussehen der GAMYROS-Flotte sehen」

(訳:…ガミラス艦隊の醜態な姿、初めて見させてもらったよ)

 

『………』

 

「ああー!!!

良い気持ちよ!!!」

 

 ご丁寧にガミラス語で話し掛けてからの大袈裟な動作でまた小惑星の物影に隠れたヤマトの言動で、戦艦ル級達だけでなく、ガミラス艦隊全員が一斉に心の中の何かが切れた。

 

『…Toete mich!!!』

(訳:…ぶっ殺す!!!)

 

 怒り心頭のガミラス艦隊は一斉にヤマトの追撃を再開したが、全員“数々の疑問”や“罠の可能性”は完全に雲散霧消していた。

 




 感想または御意見をお待ちしています。

浜風
「…今回、ヤマト関係ないネタが3つくらい入ってませんでした?」

五十鈴
「あと、今回のヤマト、何かおかしくない?」

 それ等は次回ネタ晴らしをしますので。


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第58話 Flotte vor!!!(裏)

――― 海王星 ―――

 

 

「皆、準備はいい?」

 

 ズイカクによって艦娘用の射出室に集合した遠征艦隊の面々1人1人丁寧に点呼と確認が行われ、取り敢えずは全員が心体と艤装全てが万全である事を示した。

 

「…ヤハギは?」

 

「まだ来ていませんネ」

 

 だが最後の1人であるヤハギがいない事をイソカゼと丹陽が指摘した。

 

「ヤハギ、来たわよ!!」

 

「待って待って待って、アカシ待って!!!」

 

 その直後にアケシが当のヤハギを引っ張って来たのだが、ヤハギは扉の前で抵抗してズイカク達の前に出ようとしなかった。

 

「ほら出なさい!!!」

 

「嫌嫌嫌嫌!!!」

 

「もう、時間が無いんだから、諦めなさい!!!」

 

 廊下にて、ヤハギは相当悪足掻きをして逆にアケシを引っ張っていったが、ヤマトに背後から突き飛ばされたらしく、ヤマトの右足が見えると同時にヤハギはよろけながら出てきたが、ズイカク達はヤハギの姿を見て全員各々に爆笑した。

 

「どう、なかなかのモノでしょ?」

 

「似てる似てる、まさにヤマトになってます!

アケシ、良い仕事しましたね!!」

 

「ホントホント、可愛いヤマトだ!!」

 

 オオヨドが笑いながらどや顔のアケシに何度も頷き、発案者のアサシモがヤハギを指差しながら爆笑していた通り、今のヤハギの姿はと言うと、後頭部に金属パイプ等の有り合わせ品製のダミー測距儀を着け、赤いスカーフを巻いた首回りの襟を赤く染め、3基ある主砲の砲身の間にダミー砲身を着け、更にターレットから外した第二主砲が艤装背部に無理矢理はっ着けられている等、そして悪のりしたヤマト本人の手でメイクをバッチリされていた為、見た目はほぼヤマトになっていた。

 因みに、ヤハギの艤装は外見上は偽ヤマト化の為のダミー品だらけになってはいたが、性能自体は使用不可の第二主砲以外はアガノ級のが保ててあり、問題の第二主砲も定位置に戻せば使用可能となる。

 

「……だから、嫌だって言ったのに!!!」

 

 だが当のヤハギはと言うと、元々偽ヤマトに仕立てられるのを断固反対していた上、全員に笑われている現状から全身を震わせるだけでなく、目に見える肌全てを真っ赤にして頭から湯気が出ていた。

 

「お前、アガノ級巡洋艦からヤマト級戦艦に転向出来るぞ!」

 

「そうなったらキヨシモに夢と希望を与えるわね!」

 

「あ~、実際に歯軋りして悔しがるキヨシモの顔が思い浮かぶ浮かぶ!」

 

「……イソカゼ、カスミ、アサシモ、覚えてなさい…」

 

 ほぼ諦めているヤハギは、悪のりするイソカゼ達3人に殺気を放ちながら彼女達の所を抜けて、カタパルトの方に向かった。

 

(ヤハギちゃんはアガノ級三番艦なの!!! ヤマト級になっちゃ駄目!!!)

 

(アンタ、ノシロ達を裏切るっての!!?)

 

「……サカワは兎も角、アガノ姉とノシロ姉がいないのが、救いなのかも……ね…」

 

 ヤハギはカタパルトに乗ってズイカク達に哀愁ある背中を見せながら、今の姿をアガノに嘆かれてノシロに怒られる光景を予想して特大の溜め息を吐いた。

 

「イソカゼ、アンタ達も笑ってはいられないわよ」

 

「…え?」

 

「小惑星帯に入ったら、偽ヤマトをやってもらうわよ」

 

「私もやるのか!!?」

 

 アカシがヤハギのと同じダミー測距儀と赤い塗料&スカーフを差し出した事に見事に驚いたイソカゼに、カスミとアサシモは“ご愁傷さま”とし、ヤハギは彼女達に気づかれる事なく振り向いて“ざま見ろ”と笑っていた。

 

「私は“アンタ達も”って言ったわよ」

 

「……まさか…」

 

 更にアカシはギョッとしたアサシモにもダミー測距儀に加えて、セーラー服でないのでヤマトの戦闘服を模したコートに黒い頭髪料を各々に差し出した。

 よく見たら、オオヨドはダミー測距儀と赤い塗料&スカーフ、チトセとアマツカゼはダミー測距儀、コート、黒の頭髪料を各々に翳して“自分達も偽ヤマトを演じる”と示していた。

 

「……何で偽ヤマトを大量に仕立てないといけないのよ…」

 

「アンタもするのよ」

 

「……え"?」

 

 作戦上仕方がないと事は分かっていたが、妙に機嫌が悪いズイカクは大量の偽ヤマトに拒絶の溜め息を吐いたが、アカシはそんな彼女にもダミー測距儀とコートを差し出した。

 

「アンタも長い黒髪なんだから」

 

「冗談じゃないわよ!!!

何で私までがアイツの偽者をやんなくちゃいけないのよ!!?」

 

 ズイカクが予想通りに全力での拒絶にアカシが“やっぱり?”として説得の困難さを自覚していたが、その間にカスミに何かを耳打ちされたヤマトが眉間に皺を寄せていた。

 

「……ズイカク」

 

「あ"あ"ん?」

 

「…私の格好しろや」

 

「何でよ何でよ。

ボロ船がお前…」

 

「…私ノ格好シロヤ」

 

 ヤマトはズイカクの“ボロ船”発言に少し怒ったが、自分が言う意味をあんまり理解していない事から最後に片言になったが、此れがズイカクの何かに触れた。

 

「やってやろうじゃないのよ、この野郎!!!」

 

 取り敢えずはズイカクは怒りながらもやる気になったようで、アカシから偽ヤマトセットを“奪う”に近い形で受け取った。

 

「死ぬぅ!!!

笑い死ぬぅぅぅー!!!」

 

「お腹が痛イ!

海戦をやってないけど、入渠シタイ!」

 

 只、ズイカクの起爆理由が分からなったが、ヤマトとズイカク以外は全員爆笑した。

 

「……テルヅキ、笑っちゃ駄目です…」

 

「だけど、アキヅキ姉……キツい、です…」

 

 アキヅキとテルヅキに至っては笑いを堪えるあまり、壁際で横並びで丸くなっていた。

 

「…カスミ、ヤマトのって、弓技大会でのやり取りの、だよね」

 

「狙ってやらせたけど、予想を超える事になったわ」

 

 因みにヤマトに言わせた事の元ネタが分かったらしいアケシはカスミに耳打ちをして、カスミがそれを肯定した。

 

「さて、いよいよですね」

 

 ヤマトはアキヅキとテルヅキが復活したのを確認して作戦が開始可能と判断したが、当のヤマトは艤装を纏っていなかった。

 更に言うと、クロシオを見る為にキタガミと残留するアケシは兎も角として、ショウカク、タマ、イスズ、ハマカゼ、ハツヅキ、レシーテリヌイ、ヴェールヌイの6人がいなかった。

 

「私達が存分に暴れてくるから、囮役は任せておいて!」

 

 カスミの返しに他の者達も次々に続き、最後にヤハギが背を向けたまま右拳を掲げた。

 因みにヤマトに鼻を鳴らしたズイカクが機嫌の悪さは、先代瑞鶴と同様にヤマトの為への囮にされた事が原因であった。

 

「…此の囮作戦は私達は沖田提督ではなく、土方提督の指揮下になる事を全員注意して下さいね……それでは、総員時間合わせ!!!…」

 

 オオヨドに合わせて全員が自分の時計の時間を確認し、外れている者のは時計を調整して、作戦開始の最終作業が終わった。

 

「第二艦隊、ヤハギ…」

 

「ヤハギじゃないだろ」

 

「……ヤマト、抜錨します!!!」

 

 アサシモに注意にしてフリをされた事でヤケクソになったヤハギを先頭に、ズイカク達も次々に続いていき……そんな彼女達にヤマトは通常の敬礼で、アカシは右拳を左胸に当てる敬礼で見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 海王星・冥王星間小惑星帯 ―――

 

 

「ハツシモから通信、“ブクスホーデン、プラッツェンより前進”です!」

 

 ヤハギ達囮艦隊は小惑星帯に進入して暫くした後、オオヨド経由のハツシモの暗号通信に此の場にいる者達は各々に喜んだ。

 

「ズイカク達は?」

 

「さっき来た前衛艦隊を殲滅したそうです」

 

「私達も通信、“ダヴーは迎撃に入る”!」

 

 ヤハギの命令にオオヨドは直ぐに指定された通信を発した。

 

「…それじゃ、さっさと決めちゃいましょう」

 

「ええ、だけど逆に決められないようにね」

 

 ヤハギがオオヨドに苦笑した後、2人は他共々に各々に別れていった。

 

「…っ、来た!!」

 

 ヤハギはアサシモとアキヅキと共に1番冥王星側の外側の小惑星群に潜んでいたら、ガミラス艦隊の気配を察して準備を整えていると戦艦ル級6隻が近くを通りすぎ過ぎようとした。

 

「……今回は良く引き付けるんだ…」

 

 だが自分達の武装で戦艦ル級を沈めるのは難しいだけでなく、ガミラス艦隊を混乱させるのが目的だったのでヤハギ達は敢えて戦艦ル級達を無視した。

 

「…よし、撃えぇぇぇー!!!」

 

 戦艦ル級達が過ぎ去って、次に来る重巡リ級達に狙いを定めたヤハギが空間魚雷を放ってアサシモとアキヅキも続き、空間魚雷群の多数が重巡リ級達に次々命中した。

 

「良い具合に決まったわね!」

 

 此の雷撃で狙い通りにガミラス艦隊が混乱し、敢えてヤハギは叫んで自分達の存在をガミラス艦隊に知らしめた。

 

「「「「「「…Ja,es ist YAMATO!!!」」」」」」

(訳:…ヤ、ヤマトだぁぁぁー!!!)

 

 で沈黙の少し間を置いて、此れまた狙い通りにヤハギをヤマトと見間違えた戦艦ル級達が一斉に主砲に放って、ヤハギ達3人も驚いて身動き取れなかったが、それ等は外れて周囲の小惑星に当たった。

 

「…ふっ」

 

「「べ~…」」

 

 ヤハギが恐怖からの笑みを浮かべ、我に返ったアサシモとアキヅキが舌を出すと、直ぐに背後の小惑星に回り込んで逃走を開始した。

 

「追い掛けてきたぁぁぁー!!!」

 

「デンマーク海峡海戦での深海棲艦の二の舞を踏みましたね!!!」

 

 アサシモが後ろを振り向いて叫んでからのアキヅキの引き吊った笑顔での指摘とは、大西洋に進出しようとした戦艦ビスマルクと重巡プリンツ・オイゲンの2人を迎撃しようとした戦艦ル級2、重巡リ級2、駆逐艦6の深海棲艦艦隊が、プリンツ・オイゲンをビスマルクと誤認した事(元々ドイツは此の事を狙ってビスマルク級戦艦とアドミラル・ヒッパー級重巡を似た外見にしていた)から戦艦ル級2隻を失った事であった。

 

「2人共、逃げる事に専念して!!!

じゃないとビスマルクの先代みたいになるわよ!!!」

 

 ヤハギの言う通り、海戦後プリンツ・オイゲンと別れてフランスへ修理に向かったビスマルクは、怒り心頭の深海棲艦の100隻に及ぶ大艦隊の追撃戦で壮絶に沈んだ事から、捕まると只ですまない事が分かってる以上は全力で逃げるしかなかった。

 だが戦艦ル級達の殺気に当てられた事もあって、全力逃走での疲労から失速しかねないと自覚したら…

 

「ヤハギ、此方!!!」

 

…アステロイドシップで作った避難場所の穴からアマツカゼが手招きしてヤハギ達3人が次々に飛び込んで、最後のアサシモが入って直ぐに穴を上に向けた事もあって戦艦ル級達だけでなく後続の者達も気づく事なく過ぎ去っていった。

 

「…行ったわ」

 

「「……死ぬかと思った…」」

「……死ぬかと思いました…」

 

 ガミラス艦隊が完全に去ったのをアマツカゼが確認した後に、ヤハギ達3人は揃って溜め息を魂まで出そうな程に大きく吐いた。

 

「ガミラス艦隊は機雷原に向かったわね。

ヤハギ、やるじゃない」

 

「「「もう地球に帰りたい…」」」

 

 囮作戦の初手が上手くいった事にアマツカゼは笑ったが、やったヤハギ達3人は既にぐったりしていた。

 

「それじゃ、私はズイカクの所に移動するから、ヤハギ達は休んだら移動してね」

 

 避難場所から出ていくアマツカゼにヤハギ達は手を振って見送った。

 アマツカゼが移動して少ししたら遠方で爆発が多数聞こえ、少し遅れてガミラス艦隊の怒号も聞こえてきた。

 

「チトセ達も上手くやったみたいね」

 

 

 

 

 

「あ、オオヨドォォォー!!!」

 

 機雷原への誘導だけでなく、第3ポイントへの誘導していた、偽ヤマトに化けたチトセ達3人は避難場所から顔を出していたオオヨドを見つけて急ぎ入って、またしても気づかなかったガミラス艦隊が過ぎ去ってから、ヤハギ達と同様に安堵の溜め息を吐き、髪を黒く染めているチトセは偽ヤマト用のコートの前を開いた。

 

「あ、しまった!」

 

 だが今回は、オオヨドの計算ミスがあったらしく、ガミラス艦隊は航空隊による多方向奇襲が予定された宙域から逸れていった。

 因みに、今のオオヨドには潜宙棲鬼戦でのカモイの装備と運用データがアカシ経由で手渡されていたので、此の小惑星帯での状況が全て分かる事が出来た。

 

「オオヨド、どうするのよ?」

 

 当然、チトセが危惧してオオヨドに尋ねたが、そのオオヨドが答える前に、イソカゼからの通信が入った。

 

「オオヨド、丹陽にアレをやらせて再誘導するから、ヤマトに化けて準備してくれ!」

 

 イソカゼのは要望と言うより命令に近かった為か、オオヨドは「了解しました!」と答えると、戸惑っているチトセ達3人を他所に直ぐに飛び出して首回りの襟とスカートを赤く染めだした。

 

「此れぐらいが限界だな」

 

「そうです、ネ」

 

 その頃、偶々ガミラス艦隊が向かった所の近くにいたイソカゼと丹陽はギリギリの所までガミラス艦隊に潜みながら近づいていた。

 

「イソカゼさぁん、行ってくだサイ」

 

「5分だぞ。

5分でオオヨド達の所に来いよ」

 

 ポニーテールにしてイソカゼのダミー測距儀を後頭部に着けた丹陽が頷くのを見た後、イソカゼは隠れながらガミラス艦隊の脇を過ぎてオオヨドの所に向かって、その間に丹陽は溜め息を吐いて少しした後に近くの小惑星の上に乗ると、両腕を胸元でのXの字に組んでその場でステップを踏み出した。

 

「……トーン・タンタン…」

 

 丹陽はステップでリズムを刻み、更に心を無の境地である明鏡止水の処まで沈めだした。

 

「イソカゼ、此方!」

 

 丹陽の声に気を取られている事もあって、ガミラス艦隊に気づかれる事なく背後に回ったイソカゼは、近くの小惑星に潜んでいるオオヨドを見つけて、そちらに向かった。

 更にオオヨドの後ろにカスミとテルヅキもいた。

 

「丹陽のアレ、何なの!?」

 

 どうも、オオヨドは兎も角、カスミとテルヅキは丹陽がやろうとする事が分からないのでイソカゼに尋ねた。

 

「私もよく分からんが、中国の駆逐艦娘と巡洋艦娘の一部にある特殊能力だ。

静寂な状態でしか使えない、使用後直ぐに10分以上動けなくなる等の制限があるが、大体5分だけユウダチと同等以上の動きが出来るんだ」

 

「「ユウダチと?」」

 

「来ますよ!」

 

 イソカゼの説明にカスミとテルヅキがお互いの目線を合わせてギョッとしたが、丹陽が動くのを察して髪をポニーテールに束ねながらダミー測距儀を着ける等をして偽ヤマトに化けたオオヨドが注意した。

 その直後、声を止めると直ぐに丹陽が動き、超高速でガミラス艦隊の合間を縫いながら次々に攻撃し……ガミラス艦隊をすり抜けると、オオヨドとイソカゼに気づいてそちらに急行した。

 

「丹陽さん!」

 

「何此れ!?」

 

 窒息しかねない程の酸欠状態の丹陽を抱き止めたテルヅキとカスミは、丹陽の行動と状態に驚いていた。

 

「行ってくれ!」

 

 だがカスミとテルヅキと同じ状態であるガミラス艦隊を誘導する為に、イソカゼはオオヨドに動くように頼んだ。

 直ぐにオオヨドは眼鏡を外すと小惑星から顔を出し、裸眼状態の為にガミラス艦隊が全く見えない状態に苦しんでいて、更に戦艦ル級達が撃った事に気づかなかったが、イソカゼが直ぐに引っ張ったので事なきを得た。

 

「逃げるぞ!!!」

 

「近くに避難所があります!」

 

 イソカゼの叫びにオオヨドが眼鏡を掛けながら続き、更にカスミとテルヅキも動けない丹陽を2人係で抱き上げて続いた。

 丹陽が不安要素になっていたが、ガミラス艦隊の動きが遅かった為に無事に避難場所に逃げ込む事が出来、更にガミラス艦隊が当初の予定箇所へ誘導出来たのだが、戦艦ル級達は兎も角として、後続は明らかに動きが遅かった。

 

「…此れって、不味いですよね」

 

「ああ、ガミラスは疑い始めてる」

 

 テルヅキとイソカゼがガミラス艦隊が罠に気づき掛けているのを察して顔を青くした。

 

「だったら、ガミラスをもっと怒らせないと」

 

「大丈夫です。

向こうにズイカクさんが待ち受けてます」

 

 カスミが対応策を言ったら、オオヨドが微笑して答えると、2人と共に納得した。

 

 

 

 

 

「…あ、此れ不味いわね」

 

 此の少し後、ズイカクとチトセの多方向同時の航空攻撃後、ガミラス艦隊が狙いとは逆に冷静になろうとしていた事をアマツカゼが察して、ズイカクや合流したヤハギ達3人と共に危惧した。

 

「……ズイカク…」

 

 ヤハギがズイカクにそんなガミラス艦隊を怒らせるのを目線で頼み、アマツカゼ達4人もヤハギに続いた。

 

「…オオヨド、ちょっとガミラス語を確認したいんだけどいい?」

 

 明らかに嫌がっていたが、ズイカクは渋々了承するとオオヨドに連絡を取って何かを確認しだした。

 

「さぁ、やってください」

 

 ズイカクはアキヅキを睨むと、ツインテールを解いてポニーテールに変え、更に色々やって偽ヤマトに化けると、ガミラス艦隊の前に出ていった。

 

「Zum ersten Mal durfte ich das Aussehen der GAMYROS-Flotte sehen」

(訳:ガミラス艦隊の醜態な姿、初めて見させてもらったよ)

 

「「「「…あ、ヤバい」」」」

 

 ズイカクのガミラス語による挑発で、チトセ達4人はガミラス艦隊全員がキレるのを察した。

 

「あ―!!!

良い気持ちよ!!!」

 

「知らないわよ知らないわよ!」

 

「此の後、知んないわよ!」

 

 チトセとヤハギの言った通り、ガミラス艦隊は此の日1番の怒気を放ち出していた。

 

 

 

 

 

「……あの人は何をやったんでしょうね?」

 

 遠方でも分かるぐらいに怒り狂いだしたガミラス艦隊から、移動中のテルヅキ達は安堵感よりもズイカクに呆れていた。

 

「まぁ、此れで当面は、此所からガミラス艦隊が出ていかないと思っていいわよね?」

 

 カスミのぼやきに近い言葉にオオヨド達3人は頷いた。

 

「んじゃ、オオヨド、通信を頼む」

 

「分かりました」

 

 イソカゼの頼みにオオヨドは笑って了解した。

 

「通信、“ダヴーは防戦成功の上、ブクスホーデンは泥にはまる”」

 




 感想または御意見を御待ちしています。

 と言うわけで、56話終盤での前振りを含めてのヤハギの偽ヤマト化は、いつぞやあった、ドラえもんのクリスマススペシャルにて“のび太にパンダに変装させられたドラえもん”を参考にしました。

翔鶴
「瑞鶴のって、リアル野球BANのですよね?」

 此の影響で、当初は翔鶴級姉妹の姓は“山本”にしていたのが“杉谷”に変更となりました。

翔鶴
「私も巻き添え食らうんですか!!?」


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第59話 ヤマト、冥王星へ

――― ????? ―――

 

 

「Was machst du,dieser ldiot!!!」

(訳:何をやってるのよ、あの馬鹿ども!!!)

 

 海王星・冥王星間小惑星帯の海戦の中継映像を見ているミリューとその秘書艦たる戦艦タ級は友軍艦隊の醜態続きに呆れていた。

 否、戦艦タ級に至ってはその元凶である戦艦ル級達に呆れる極みで怒り出していた。

 此の為にミリューには、戦艦タ級が海王星・冥王星間小惑星帯へ飛び出しそうに感じられた。

 

「Fuehlen Sie sich im Asteroidenguertel YAMATO nicht unwohl?」

(訳:小惑星帯のヤマトに違和感を感じないか?)

 

「Ganz klar lustig.

Ans der Klugheit und Geschwindigkeit des Wolfs zuerraten,kann ich nur denken,dass es mehrere Faelschungen gibt」

(訳:明らかにおかしいです。

罠の巧妙さや動きの速さから推測するに、偽者が複数用意されてるとしか思えません)

 

 ミリューの質問で若干冷静になった戦艦タ級の指摘に、ミリューは“やはりな”とした。

 

「Das heiβt,es gab einge seltsame Mitteilungen von der Erdflotte?」

(訳:そう言えば、地球艦隊から変な通信が幾つか有ったな?)

 

 ミリューの質問に戦艦タ級は直ぐに指定された物を全て提示した。

 

「Der erste ist “Buckhoden,besser als Platzen”.

Der zweite ist “Davout beginnt abzufangen”.

Am Ende heutigen Tages,“Davout erfolgrecih abfaengt,schluepft Buckhoden in den Schlamm”………Platzen……Platzen,Plateau!」

(訳:1つ目は“ブクスホーデン、プラッツェンから前進”。

2つ目は“ダヴーは迎撃に入る”。

現時点での最後が“ダヴーは迎防戦成功の上、ブクスホーデンは泥にはまる”………プラッツェン……プラッツェン、高原、っ!)

 

「Was ist passiert?」

(訳:どうしました?)

 

 ミリューは地球艦隊の3つの通信文を頭を抱えながら頭上を向いて考えていたが、少しして全てを察した様だった。

 

「Schnsuechte usw,zeichnen nicht eine der Landschlachten der Erde,“Die Sclhacht von Austerlitz”」

(訳:此れ等は地球の陸戦の1つ“アウステルリッツの戦い”を順に描いているな)

 

 アウステルリッツの戦い……西暦1801年にフランス海軍がスペイン艦隊諸共に消滅したトラファルガー海戦後、プロイセン王国(後のドイツ)の対仏同盟参加を恐れたナポレオン帝国(フランス第一帝政)がロシア&オーストリア同盟軍を撃滅し、別名の“三帝会戦”の文字通りに当時欧州に3人しかいなかった皇帝達……即ち“フランス皇帝(EMPEREUR)ナポレオン1世”“ロシア皇帝(ЦAPЬ)アレクサンドル1世”“オーストリア皇帝(KAISER)フランツ1世”が一同に集結した陸戦。

 此の会戦の大まかな流れはと言うと、フランスに謀られて重要拠点プラッツェン高原を占領したロシア軍からブクスホーデン元帥の軍が、急所と思われたフランス軍右翼のダヴー元帥(通称:不敗のダヴー)の軍を攻撃中の隙を突いて、スルト元帥の軍が奇襲によってプラッツェン高原を奪取し、直ぐ様ブクスホーデン軍が包囲殲滅されて露墺同盟軍は敗戦、此の結果7年に及ぶナポレオン体勢の成立を成し遂げる事になった。

 

「Warum sollte man den vergangenen Ladkrieg als Code verwenden……Oh!!!」

(訳:何故、過去の陸戦を暗号にして………あ!!!)

 

「Da Austerlitzs Spiel entschieden wurde,weil es einem Ueberraschung san griff der Sult-Armee die Platzen Platen eroberte,wide die “Sult beginnt voranzukommen”」

(訳:アウステルリッツはスルト軍の奇襲でプラッツェン高原を奪取した事で対局が決まった以上、次に“スルトは前進開始”辺りが来るだろうな)

 

 一見すると“そんなの関係ないだろ”と思われるかもしれないが、アウステルリッツの戦いを地球艦隊の動きに当てはめると、地球の戦略的な狙いが分かる事が出来て、現に戦艦タ級は“はっ”とした。

 

「Sagt die Erde,dass sie Pluto ver wenden wird,um die Pluto-Verteidigungsflotte anzugreifen und Pluto inkurzer Zeit zu erobern!?」

(訳:地球は、囮を使って冥王星守備艦隊を誘い出した隙を突いて、冥王星を短期間で攻略すると言うのですか!?)

 

 戦艦タ級の指摘にミリューは頷いた。

 

「Wenn nicht,muessen wir herausfinden,wo sich die YAMATO befindet oder wo sich die Eroberungsflotte von Pluto bewegt!?」

(訳:だとしたら、本物のヤマトの所在や、冥王星攻略艦隊が何所から動くのかを調べないと!?)

 

 当然問題となるのは、アウステルリッツの戦いのスルト軍に該当する主力が何所から来るのかであり、ヤマトが小惑星帯の何所にいるのか、またはヤマトと無関係の艦隊(例えば地球発)が冥王星目指して動いているのか等が気掛かりだった。

 

「Wo ist YAMATO?

Pluto-Eroberungsflotte?」

(訳:ヤマトの所在?

冥王星攻略艦隊?)

 

 だが戦艦タ級に反して、ミリューは全てを見抜いている様で、慌てている戦艦タ級を小馬鹿にした。

 

「Bist du dumm,oder?

Es gibt keine fluchtige Kraft oder Gelegenheit,Pluto ohne YAMATO auf der segenwaertigen Erde fallen lassen kann Was nicht」

(訳:馬鹿か、お前は?

今の地球に、ヤマト無しで冥王星を落とせる艦隊戦力やタマなんて無いわ)

 

「…Also,was weiβt du,welche echte YAMATO?」

(訳:…では貴方はどれが本物のヤマトだと分かるのですか?)

 

 ミリューの言葉でムッとした戦艦タ級は小惑星帯の偽ヤマト達を示したが、それが益々ミリューに馬鹿にされる事になっていた。

 

「Sagen Sie der Pluto-Eroberungsflotte hinten Folgendes…」

(訳:後方にいる冥王星守備艦隊に以下の様に伝えろ…)

 

 ミリューの伝える伝達文で、戦艦タ級は何故ヤマトを見抜いたのかがある程度分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星沖 ―――

 

 

「…Was ist los?」

(訳:…どうなってるんだ?)

 

 断片的に伝わってくる小惑星帯での友軍の苦戦と暴走に、予備戦力として冥王星沖に待機していた重巡リ級を主軸とした守備艦隊は周囲の者達と共に驚き戸惑っていた。

 

「Was soll ich tun?」

(訳:どうしようか?)

 

「Sollen wir nicht gehen?」

(訳:行くべきじゃない?)

 

「Ansonsten ist es beaengstigend」

(訳:じゃないと後が怖いよ)

 

 此の為、残留艦隊での最上位艦種である重巡リ級達は輪になって集まり、自分達の行動………つまり“此の宙域に留まる”か“増援として小惑星帯に向かう”かを話し合っていて、戦艦ル級達への恐怖もあって後者が選ばれる空気になろうとしていた。

 

「Oh! Mitteilung von Millieu Admiral!!」

(訳:っ! ミリュー司令から通信だ!!)

 

「Von Millieu Admiral?」

(訳:ミリュー司令から?)

 

「Wo ist diese Person so?」

(訳:あの人が何でこんな所に?)

 

 でいざ行こうとなっていた処に、ミリューからの通信が入ったので、重巡リ級達は軽めに驚いた。

 此の事から、かの者を嫌っている冥王棲鬼達とは違って、少なくとも重巡リ級達は上官としての礼節を心得ている様だった。

 

「Nun,der lnhalt der Mitteilung lautet“Das gesamte Verhalten von YAMATO im Asteroidenguertel stimmt nicht mit dem Original ueberin”」

(訳:え~と、通信の内容は“小惑星帯で於けるヤマトの言動は全て本来のモノとは一致しない”だそうです)

 

「Mit andersen Worten,ist alle YAMATO im Asteroidenguertel gefaelscht?」

(訳:つまり、小惑星のヤマトは全員偽者って事?)

 

「Na dann ist ein echter YAMATO………!?」

(訳:じゃあ、本物のヤマトは………っ!!)

 

 元々此の宙域にいる者達は、小惑星帯の戦局を客観的に見れた事から偽ヤマトが複数いる事を見抜いていたが、これに加えてミリューからの通信で答えへのピースが次々に合わさっていった。

 

「Obwohl uns ignorierten und Weltraum anstrebten,ist die Faehigkeit zu durchbrechen zu groβ」

(訳:我々を無視して外宇宙を目指していたのに、突破力が無さすぎる)

 

 当初は地球艦隊は冥王星奪取不可と判断して艦隊戦を回避しようとしていたと思われたが、そのわりには振り切ろうとする気が感じられない。

 見敵必戦主義が強いと思われるが、第二次木星沖海戦での行動を見る限り、ヤマトにはその気が少なく感じられた。

 それにモタモタしていたら空母艦隊群が反転して包囲殲滅戦を仕掛けようとしているのが見抜かれてい気配がある以上は尚更だった。

 更に“ヤマトの偽者が複数いるのだから本物もその中にいるだろう”との思い込みが今まであったのが、ミリューの通信で“本物のヤマトの居場所”等の全ての疑問が解けた。

 

「Verdammt!!!

YAMATO wurde nicht von Anfang an versandt!」

(訳:クソッタレ!!!

ヤマトは最初から出撃していないんだ!)

 

「Alle schiffsmaedchen im Asteroidenguertel sind eifersuechtig!!」

(訳:小惑星帯の艦娘どもは全員囮だ!!)

 

 本物のヤマトは海王星にいる。

 此れが分かったなら、ヤマトの狙いと次の一手は冥王星行動が否応なく分かった。

 

「YAMATO springt in einer Katte ueber den Asteroiden und kommt an einen Ort!!!」

(訳:ヤマトはワープで小惑星帯を飛び越えて此所に来るぞ!!!)

 

「Ist das Aufklaerungasschiff noch vor Neptun!!?

Lassen Sie uns Neptun weiter ueberwachen!!!」

(訳:偵察艦は海王星沖にまだいるか!!?

海王星を更に監視させろ!!!)

 

「Was machen Menschen im Asteroidenguertel!!?」

(訳:小惑星帯の奴等はどうするんだ!!?)

 

「In dieser Situation ist ein Rueckruf nicht moeglich」

(訳:あの状態じゃあ、呼び戻すのは無理だ)

 

「Wir muessen nur YAMATO abholen!」

(訳:私達だけでヤマトを迎え撃つしかない!)

 

「Ich werde mich bald fuer das Abfangen fertig machen!!!」

(訳:直ぐに迎撃準備に入るぞ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ~…流石にツメが甘くないですね」

 

 望遠鏡越しにガミラス艦隊の動向を偵察していたハツシモは、自分達が望む行為……つまり此の宙域から離脱して小惑星帯に向かう事であったが、それをせずに留まる事を選んだ事を察して、溜め息を吐いた。

 

「“クトゥーゾフが救援に下山”は打てませんね」

 

 元々キリシマ達が立案した冥王星攻略作戦では、ズイカクを主軸にしたチトセ、ヤハギ、オオヨド、アサシモ、イソカゼ、丹陽、アキヅキ、テルヅキ、カスミの計10人の囮艦隊に冥王星沖の守備艦隊を小惑星帯に誘き出した隙に、ヤマト、ショウカク、イスズ、タマ、ハマカゼ、ハツヅキ、レシーテリヌイ、ヴェールヌイ、そして今此所にいるハツシモの計9人によって冥王星を奇襲しての奪取を目論んでいたが、ハツシモはそれが半分失敗したと判断した。

 因みに、冥王星攻略作戦の人選はと言うと、殆どは波動砲による冥王星破壊を割り切れるかで選ばれていて、例外的にレシーテリヌイとヴェールヌイの2人はその重雷装は基地攻撃に必要との判断から編入された。

 

「通信“アレクサンドルが逃亡”っと」

 

 ガミラス艦隊に諦めたハツシモは、直ぐにヤマト(達)へ“艦隊戦不可避”の意味である暗号を発信した。

 

「…それにしても、前進しそうだったのに、なんで急に止めたのかな?」

 

 これまでステルス機能を遺憾無く発揮させるだけでなく、古参駆逐艦娘としての高い技能でガミラス艦隊を監視していたハツシモは、最後までガミラス艦隊に発見される事なく退却してのヤマト達との合流(ワープアウト)地点に赴こうとしたが、その前に不可解な行動に疑問を感じたガミラス艦隊に少しだけ振り向いた。

 当然ハツシモは知らないが、作戦経過を報せる暗号文……作戦がアウステルリッツの戦いに似ている事に気づいた丹陽の指摘から、完敗した国の後継国家所属のレシーテリヌイとヴェールヌイが嫌がっていたはいたが、アウステルリッツの戦い内容を暗号にしていた事が漏洩の原因となっていたのは先述の通りである。

 大抵の日本人でも分からない薩摩弁の暗号文が解読される等の旧日本海軍と同じミスをしでかしていたが、まぁ地球側は“ガミラスが過去の地球での陸戦が知っていると思えない”との言い訳が後日でる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 海王星 ―――

 

 

「…計画通り、って事にはならないって事ね」

 

 海王星で待機していたヤマト達9人の冥王星攻略艦隊の面々は、ハツシモからの通信で奇襲は不可能で強襲するしか選択肢がなくなかった事に苦笑いをするか溜め息を吐いていた。

 

「意外にガミラスは警戒心が強いんだな」

 

「やはりガミラスは侮れないのですよ」

 

「まぁ、此のおかげでアンタ達が冥王星攻略の最大のMVPになれるって事よ」

 

 ヴェールヌイとハマカゼが少し残念がっていたが、見送りに来たキタガミの茶化しに2人揃って苦笑しながら頷いた。

 

「そうだったら、沖田提督は御馳走をしてくれるかしらね」

 

「ビフテキ辺りは手堅いんじゃないかニャ?」

 

「あ~…でも私はラーメンが欲しいですね」

 

 イスズとタマが冥王星攻略後の戦勝祝いを思い浮かべていたが、ハマカゼの“ラーメン”発言にキョトンとした。

 

「あ、何でもアサシモの話ですと、ヤマトはラーメンを食べたがっていたらしいので、私もラーメンが食べたくなったんです」

 

 アサシモ達がそうであった様に、イスズ達はラーメンを欲するヤマトが意外だった様で、アカシから潜宙棲鬼に壊された補助エンジン2基の最終確認を受けているヤマトの背を見つめた。

 

「しかもヤマトは庶民派らしく、食べたいラーメンは三食ラーメン堂のだそうです」

 

「え!!!

ヤマトは三食ラーメン堂のラーメンを食べた事があるの!!?」

 

 ハマカゼの茶化し半分の言葉にイスズ達が「へぇ~」と小声を漏らし、レシーテリヌイが「レディらしくない」と小馬鹿にしたが、驚きながら食い付いたキタガミに全員が少し退いてしまった。

 

「そんなに凄いのかニャ?」

 

「凄いのなにも、三食ラーメン堂のラーメンは日本史上最強と称される代物なの!

食べれたのは、おおよそ深海棲艦戦役の最中までだったから、時期的にヤマトが食べれてもおかしくないな!」

 

 元々筋金入りの偏食家のキタガミは基本的にラーメンかビフテキしか食べず……特にラーメンは本が数冊書ける程の愛と知識を持っていたので興奮しだして、その事をよく知っているタマは他共々呆れていた。

 そんなタマ達など知らずに高々と三食ラーメン堂のラーメンを説明していたキタガミだったが、ある事に気付いて硬直した。

 

「おかしいな。

確か三食ラーメン堂は横須賀に有ったらしいけど、当時の横須賀に行った事がない筈のヤマトが何で知ってるの?」

 

 キタガミの言った通り、現存する旧日本海軍の記録だとヤマト(大和)は横須賀に関わりを持っていないので、横須賀に有った(らしい)三食ラーメン堂に行った事は艤以外の何物でもなく、現に全員が“えっ?”とした。

 

「呉とかの、支店に行ったんじゃないの?」

 

「いや、三食ラーメン堂の店長はかなりの頑固者だったらしいから、弟子もいなければ、暖簾別けをした事がないから、食べに行くには横須賀に行くしかないよ。

しかも三食ラーメン堂は地元でも限られた一部の人間しか知らない、郊外の分かり難い場所にあったから偶然行けたとも思えない」

 

 イスズの指摘を否定したキタガミの言葉から、ヤマトから妙な疑惑を感じずにいられなかった。

 

「ヤマトは戌一号作戦で横須賀に行ってますよ。

きっとその時に、地元出身の提督に連れてられて行ったのですよ」

 

 此の場は、ショウカクの指摘で全員が各々に納得していたが、此れが後にヤマトを襲う出来事への火種の1つとなってしまった…




 感想または御意見を御待ちしています。

大和
「60話目でやっと冥王星攻略が本格的に始まりますね」

 こっからが長くて、もうしんどい!
 前々から言ってますが、冥王星は色んなモノを大量に書かないと、特にガミラスサイドも多々書かないといけないので独語訳が面倒臭い!!!

大和
「…ガミラス語はガチの独語で書くって、貴方が自分自身で決めましたよね?」

…さ、さぁ、今回の最後で、第34話でも出た“三食ラーメン堂”……即ち、1000年女王の関連単語がでましたが、此れからの冥王星攻略(➕α)が終わった直後から1000年女王が徐々に出てくる予定です。

大和
「……第34話…」

…大和、まだ怒ってるの?
 コスモゼロさんの所でも弄られてウケてた“パ(↑)フェ(↓)エエ”発言の事?

 大和に取っては残念な事ですけど、コスモゼロさんの所でパフェネタをやられた影響で、ヤマト原作での赤道祭の該当回で瑞鶴にパフェネタを弄られるのが決定しました。

大和
「…あ"あ"!?」


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第60話 勃発、第七次冥王星沖海戦

――― 冥王星沖 ―――

 

 

「っ! 前方に冥王星守備艦隊!!!」

 

 ワープで小惑星帯を飛び越えて、偵察に出ていたハツシモと合流した遠征艦隊は、先頭のヤマトの後方左右各々にイスズとショウカクがタマと駆逐艦娘6人を後続させる複縦陣で警戒しながら冥王星目指して前進していたが、冥王星が微かに見える沖合いに達して其所に展開しているガミラス艦隊を黙視で確認した。

 此の事はガミラス艦隊も同様で、ガミラス艦隊は陣形を整えて遠征艦隊の迎撃体勢を取っていた。

 

「…ガミラス、艦隊は……重巡リ級の戦隊2つが、左右各々にエリート2隻を先頭とした梯形陣を、重巡戦隊の後ろに半分近くがエリートの水雷戦隊多数が上下二段の複横陣を展開していますね」

 

 ガミラス艦隊の陣形はショウカクの双眼鏡での確認通りで、真上から見たらほぼ“六”の字型の横長になっていた。

 

「おかしな陣形をしてますね。

波動砲を警戒しているのでしょうか?」

 

 だがハマカゼがぼやいた通り、ガミラス艦隊の陣形の中央部が微かに薄くなっている事もあって、全員が妙な疑問を感じずにいられなかった。

 

「きっと私達が中央突破をしたら、重巡戦隊が後ろに回り込んでの包囲殲滅を狙ってるのよ」

 

「だとしても、ガミラスが見え透いた罠をやりましょうか?」

 

 ガミラス艦隊の狙いの大方は、レシーテリヌイの推測通りと思われるが、ショウカクが疑問に思う通りにガミラスが単純な事をするとも思えなかった。

 だが当のガミラス艦隊は、重巡リ級12隻が一斉に砲撃を開始し、全弾外れはしたが考える時間を与えてくれない事は否応無く分かった。

 

「ヤマト、どうします?」

 

「私はガミラスの引き立て役になる気はありません!」

 

 ヤマトはショウカクの質問に、直接的な返事はしなかったが、取り舵をした事で狙いを示した。

 

「やはり、そうするしかありませんか」

 

 ショウカク達は、ヤマトは4つの組に別れてるガミラス艦隊の各個撃破を狙い、彼女は先ず右翼前方の重巡戦隊を丁字戦法にて撃破して、そのまま重巡戦隊のいた宙域に沿って右翼後方の水雷戦隊を対処しながら突破が狙いだと見抜いた。

 まぁ水雷戦隊の対処からだと、丁字戦法より“車懸かりの陣”と言うべきかもしれない。

 

「さぁショウカク、どうする?」

 

 ショウカクに訊ねたイスズ以下の全員がヤマトに賛成していて、そのショウカクも顔を見るだけで聞くまでもなく、更に沖田も何も言ってこない事から“無言の了承”を得てると判断していたらやる事は1つしかなかった。

 

「ヤマトが右翼なら、私は左翼前方の重巡戦隊を狙います!」

 

 イスズに微笑んでから表情を強めたショウカクは、ヤマトに続いて援護をするよりも、無対応の左翼に横腹を突かれる事を警戒して、ヤマトとは逆の面舵をして左翼の重巡戦隊を攻撃ようとした。

 

「砲撃開始!!!」

 

「前航空隊、発艦!!!」

 

「ハツヅキ、イスズと一緒にヤマトに続くよ!」

 

「了解!!!」

 

「それじゃ、私はショウカクに続きます!」

 

「行きましょう!!!」

 

「タマ達3人は此所で待機するニャ!」

 

 ヤマトが初弾を放って全弾を外し、ショウカクがコスモタイガー隊を放って攻撃に向かわせたのを確認して、イスズとハツヅキは対空能力に不安のあるヤマトへ、ハマカゼとハツシモは対艦能力に不安のあるショウカクへと、各々に援護に向かい、タマ、レシーテリヌイ、ヴェールヌイの3人は予備戦力として取り敢えずは待機した。

 

「え~…私達が待機ぃ~…」

 

「……ふん」

 

 尤もレシーテリヌイは待機に不満だったのを露骨にしめした為、ヴェールヌイに小突かれていた。

 

「取舵20度!!!

っ、挾叉された!」

 

 でイスズとハツヅキが来る前から右翼重巡戦隊と砲撃戦を初めていたヤマトはと言うと、予定旋回地点まで向かいながら砲撃を続けながら重巡戦隊の砲撃を回避し続けていた。

 

「御免ヤマト、遅くなった!」

 

「っ! 面舵20度、速力第三戦速に上げ!!!」

 

 ヤマトが回避運転で蛇行していた事が幸いして、イスズとハツヅキが比較的早くに合流して、自分の後方左右各々に着いたのを確認したヤマトは2人に何かを言おうとしていたが、直ぐに重巡戦隊が撃ってきた事に気付いて、増速しながら回避した。

 

「…上手いな」

 

 ハツヅキが自分達を含めたヤマトの回避運転に舌を巻いていたが、そのヤマトはイスズとハツヅキと共に回避し終えると直ぐに反撃として主砲を放ったが、此方のも重巡戦隊が小刻みでの回避で避けられてしまった。

 

「もう撃ってきた!!」

 

「取り舵20度、第二戦速!!!」

 

 更にイスズとハツヅキが射程圏外故に参加していない事からの実質“1対6”での砲撃戦であるだけでなく、1発の砲火力こそヤマトが圧倒していたが、連射性が重巡戦隊が圧倒していたので、ヤマトが苦戦している様に見えていた。

 

「ヤマト、何とかなりそう?」

 

「…何とかしないと……(先代)比叡の二の舞になるでしょ!!」

 

「「……だよねぇ~…」」

 

 当然ながらイスズがヤマトを危惧したが、第三次ソロモン海海戦で深海棲艦の巡洋戦隊に袋叩きにされた為に後日沈んだ先代比叡を絡めての返事をして、イスズとハツヅキがお互いの目線を合わせた後に苦笑した。

 

『ヤマト、アンタなら先代を含めたヒエイ姉様より上手くやれるわよ』

 

 ヤマトのは、不謹慎かとも思われたが、その比叡の次代の妹の1人であるキリシマが笑っていたのだから、冗談としては通用していた。

 

『ヤマト、早めに片付けろ。

重巡戦隊に接近されると、本当にヒエイの先代みたいにされるぞ』

 

「分かってますって!

面舵20度、左砲撃戦!!!」

 

 だが先代比叡と同じ事態が起きる可能性が高く、その為に沖田がヤマトに催促を促したが、ヤマトは彼女なりに何かを感じて警戒している事から命中精度より回避を優先している為、元々回避し続けながらの砲撃は難易度が非常に高いので、悉くが外れるか回避させられていた。

 しかも左翼では、ショウカク達が重巡戦隊と航空雷撃戦を展開して重巡リ級1隻を大破、更にもう1隻を中破させていたのが、余計にヤマト(達)の苦戦が際立たせていた。

 

「……っ!?

冥王星方向からミサイル多数!!!」

 

 更にヤマト達が追い込む事態として、ショウカクがコスモタイガー越しに自分達目掛けて翔んでくるミサイル群に気付いて、ヤマト達に叫んで報せた。

 

「アレは地球発進時の!」

 

「と言う事は、地対宙ミサイル!!!」

 

 ヤマトがガミラス艦隊を迂回する形で飛んできたミサイル群の形状が、ヤマトの波動砲試射で迎撃した星間ミサイルと、大きさがどれも一回りぐらい小さかったが、同型である事に気づいた。

 飛んできた方向から大体は予想出来ていたが、ハツヅキが叫んだ通りに冥王星から発射された物としか考えられなかった。

 しかも後方の水雷戦隊も近付いてくるヤマト達が射程圏内に入ったらしく、重巡戦隊への援護雷撃までが始まった。

 

『ヤマト、航空隊緊急発進、煙突ミサイルと爆雷連続発射用意。

ミサイルを迎撃しながら砲撃出来るな?』

 

「やるしかないんでしょう?

イスズ、ハツヅキ!!!」

 

「任せて!!!」

「任せろ!!!」

 

 ヤマトを経由しての沖田の命令が発せられる前に、イスズとハツヅキはミサイル迎撃の準備を終えていた。

 

「コスモタイガー隊、発進開始!!!

煙突ミサイル、爆雷、一斉発射!!!」

 

 ミサイル群迎撃の為に速度を落としたヤマトは直ぐにコスモタイガー隊を全機発進させ、続けてミサイル群の先陣目掛けて煙突ミサイルと爆雷を放った。

 

「不味い、ミサイルで頭を抑えられた」

 

 ミサイル群の先陣を迎撃し始めたヤマトだったが、此のミサイル攻撃と支援雷撃で前進が失速してしまうだけでなく、頭の中で僅かにあったガミラス艦隊の先端を迂回する手が完全に消失した。

 

「ヤマト、撃ってきたぞ!!!」

 

 だがヤマトが見せてしまった隙をガミラスが見逃す筈がなく、直ぐに重巡戦隊がヤマト目掛けて一斉射を行い……ハツヅキが叫んで報せるも、反応が遅れた為に回避出来ないと判断したヤマトが舌打ちをしながら波動防壁を集中展開したので、大半が防がれるか逸れるかして、ほんの少数が波動防壁を貫通するもヤマトの艤装に弾かれた。

 

「ミサイルがまた来る!」

 

「ヤマトは砲撃に集中して!!」

 

 だが此の被弾でヤマトの迎撃が遅れてしまったが、代わりにイスズがハツヅキと迎撃の雷撃を開始、イスズとハツヅキは主砲の連射を開始、少し遅れて3人揃ってパルスレーザーの射撃を開始した。

 

「ヤマト、左翼重巡戦隊が撃ってきます!!!」

 

「取り舵20度、第四戦速!!!」

 

 ショウカク達もまたミサイル群の迎撃に追われて前進が止まった上に攻撃が緩んだ隙を突いて、左翼重巡戦隊がヤマト目掛けて一斉射を行ったが、ハマカゼが叫んで伝えたお陰で、ヤマトはギリギリ避ける事が出来た。

 

「やっぱり挟撃してきたわね!!!」

 

「無理もないよ。

ショウカクでも、リ級6隻は荷が重いんだよ!」

 

 遠回しでショウカクに怒ったイスズにハツヅキが注意したが、早くも戦力不足のツケが表面に出始めていた。

 

「やっぱり、キリシマと言わなくても、アシガラ、マヤ、モガミ、スズヤの4人の誰かがいてくれたら…」

 

 イスズが歯軋りしながら呟いた通り、もしキリシマかマヤ達巡洋艦娘の4人の誰かがいたら、左翼攻撃はその誰かが行わせて、ショウカクが後方から航空支援をしてくれたら、ある程度は戦局を楽に出来た筈だった。

 だが実際にはキリシマは秘書艦として沖田の傍にいて、アシガラとモガミは現在も入院中(復帰の為のリハビリ中)、スズヤは空母化してガミラス空母艦隊と交戦しているのだから、“絵に描いた餅”でしかなかった。

 

「ヤマト、やっぱり突撃しよ!」

 

 此の戦局で唯一の幸いとなりそうなのは、ガミラス艦隊が陣形維持を優先している事から動きが鈍いので、上手くいなせば中央突破が可能なだけでなく、誤射を怖れてガミラスがミサイル攻撃と雷撃を止める可能性も高いので、イスズがヤマトに中央突破を進言した。

 

「だけど、ガミラスは間違いなく、私に中央突破をさせようとしているわよ」

 

「罠がある、って事か…」

 

 だがヤマトは、此のガミラスの動きの鈍さに対して妙な違和感を感じらていただけでなく、此れまでの交戦でガミラスが罠を仕掛けている気配を感じ取っていた。

 此れ等はハツヅキだけでなく、進言したイスズも同様の様だった。

 尤も、何の罠の有無だけでなく、どんな形のかがあるのかが全く分からなかったが…

 

「…機雷が、仕掛けられてるんじゃないか?」

 

「いえ、潜宙艦が潜んでるのかもよ?」

 

『ヤマト、コスモゼロでガミラス艦隊の後方に照明弾を投下しろ』

 

 ハツヅキとイスズは各々に定石なモノを推測していたが、沖田も気になった上に見抜けない事からヤマトに命令を達し、直ぐにヤマトはコスモゼロ2機を発進させ、少しした後にガミラス艦隊の後方一帯に空間照明弾が炸裂し、予想に反して別に無かった為に機雷原や潜宙艦がある可能性が全く感じられなかった。

 

「…何にも、無い」

 

「そのわりには、ガミ公はイスズ達……と言うよりヤマトを、彼処に誘い込もうと思えるわね」

 

 イスズの呟きはヤマトや他の者達の思う事であり、元々ガミラスがヤマト撃沈を目論んでいるのが分かっていたので、やはりかの宙域に罠が仕掛けられているとしか思えなかった。

 

「ヤマト、撃ってくるぞ!!!」

 

「っ、面舵15度!!!」

 

 ヤマトが展開している可能性の高いガミラスの罠を見抜けない為に鈍い動きをしていたら、ハツヅキが重巡戦隊が一斉射をしようとするのに気付いて直ぐ報せたので、ヤマトは慌てて回避運転をした。

 

「ヤマトじゃない!?」

 

 だが重巡戦隊はヤマトとは別方向目掛けて射撃し…

 

「ニャニャ!!?」

 

「「タマ!!!」」

 

…ヤマト達を支援しようと接近していたタマが被弾し、イスズとハツヅキが揃って叫んで、ヤマトが歯軋りをした。

 




 感想または御意見を御待ちしています。

 さあ、本作でのヤマトの冥王星攻略が、リメイク版では何故か削除された艦隊戦から始まりました。

 此処で言いますと、次回のも含めた此の場面は、大艦巨砲主義な名作仮想戦記“不沈戦艦『紀伊』”の第一次沖縄戦での、オチがほぼ同じな列車砲の場面を元にしています。
 尚、不沈戦艦『紀伊』は原作小説版と漫画版で内容に若干違いが有ります(例:対峙する列車砲が、原作小説版だとオリジナル61cm列車砲、漫画版だとグスタフ&ドーラ)が、本作のは漫画版が元になってます。

大和
「『紀伊』で言いますと、大和が『紀伊』の立ち位置になってます」

翔鶴
「私のは『長門』の立ち位置です」

多摩
「多摩は『紀伊』では此の前に沈んだがニャ、他のと一緒に水雷戦隊を含めた『榛名』の立ち位置ニャ」

榛名
「後々冥王星に到着する榛名達はと言いますと、『尾張』➕αと後々遅れて現れる『大和』の立ち位置になってます」

伊勢
「戦艦娘の配役と立ち位置が一緒なのは、『尾張』と一緒に行動した私と日向だけね」

 あの場面での『大和』が『マサチューセッツ』を叩き潰しながらの出現場面は好きなんだよねぇ~………その直後に『榛名』共々『インディアナ』に良い様にヤられてるのはどうかと思うけどね…

榛名
「……御免なさい…」

大和
「……あの作品全体で『大和』が冷や飯食わされ続けてるんですよ…」
(注:プロローグで『大和』を噛ませにする形で『紀伊』が登場した事から、以後の扱いを察すべし)

日向
「それはそうと置いておき、『紀伊』の列車砲で言ったら、『伊勢』の水偵(瑞雲?)が逆転の決め手になったが、その事は関わる事があるのか?」

 『紀伊』に近いかは分かりませんが、予定ではヤマト原作リメイク版で真田さんが“冥王星の異様に多いデブリ”に疑問に思ったのを、榛名(変更になる可能性あり)が第五次冥王星沖海戦に参加してた事で気付いて、此れが後に反射衛星砲のカラクラを見抜く事になるとしています。

 まぁそれは後々の楽しみとして、取り敢えず言えるのは……もう何が起こるかは、言わなくても分かるよね?


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第61話 出現、冥王の兜を被りし狙撃手

 今回の投稿前に“設定 艦娘”での未所有故の登場不可で“ジュゼッペ・ガリバルディ”“八丈”“石垣”“????(艦名判明次第、変更)”の4つを加えました。

 尚、ジュゼッペ・ガリバルディは作者が獲得次第、潜宙棲鬼(レムレース)編で出た巡洋艦ムツィオ・アッテンドーロ(➕α)と交替させます。





 それでは、本編をどうぞ!


――― 冥王星沖 ―――

 

 

「「……タマ…」」

 

「ニャははは……ジンツウの様に上手くいかなかったニャ…」

 

 ヤマト達3人の目の前で被弾したタマは、どうやらヤマト達やショウカク達が苦戦しているのを見ていられずに突撃雷撃戦を仕掛けたかった様だが、タマに有効打を与えた事で重巡戦隊が勢い付いてしまい、結果的に裏目になってしまった。

 

『何をしている、ヤマト!!?

堅牢無比な上に波動防壁が付いてるお前なら、ミサイルやリ級の砲撃など無視できるレベルだ!

砲撃優先の行動を取って、右翼重巡戦隊を撃破して中央突破を仕掛けろ!!』

 

 ガミラス艦隊が攻勢を強めてもなお、警戒しているヤマト(達)が消極的に見えたららしく、芹沢が越権行為で方針展開を命じてきて、ヤマトや沖田は兎も角として、イスズやキリシマがギョッとした。

 直ぐに藤堂からの注意を受けてはいたが、タマへの方針をも開始した事でヤマト(達)への砲撃が弱まったので、芹沢の意見に一理は感じられた。

 

『ヤマト、やっぱり中央突破を狙うしかないわよ』

 

「それをしたら、ガミラスの狙い通りになるじゃない」

 

 キリシマが膠着からの不利になりかねない戦況から思わずヤマトに進言したが、ガミラスの(狙い)が見抜けない為に強みが無かった事もあって、ヤマトの拒否に黙ってしまった。

 

『もしかしたら、ヤマトに消極的にさせるのが逆にガミラスの狙いかもしれんぞ』

 

 沖田もまた、戦艦部隊や空母艦隊の到来を狙っての時間稼ぎとして、ガミラス艦隊はハッタリ(ブラフ)を張っているのではと予想して、ヤマトに中央突破を間接的に進言したが、やはり彼もガミラス艦隊への警戒心から強みがあまりなかった。

 

「ヤマト、ショウカク達が!!!」

 

 だが、そんなヤマト達を更に追い込む一手として、ガミラス艦隊が先に方針を転向して、先ずはヤマトとは別の艦娘達を沈めようとショウカク達への砲撃を強め、軽傷と言えどショウカクとハマカゼが被弾した。

 

「タマ達が突撃したわよ!!!」

 

 更に被弾してもなおタマがレシーテリヌイとヴェールヌイを従えて主砲を連射しながら突進して遠距離雷撃を仕掛けていたが、元々牽制が狙いだった事もあって砲撃の多くが外れ……特にタマは必死な形相に反して殆ど外れていて、どうやら新装備の15cm砲を相性が悪い事から扱いきれていない様に見えていて、直撃コースのモノは悉くガミラスに弾かれていて、放たれた空間魚雷もまた全てが迎撃されていて、ヤマト達3人に“蟷螂の斧”の単語を頭に浮かばせていた。

 

「不味い、このままだと艦隊が…」

 

 ヤマトはガミラスの罠の有無や他方面からの艦隊到来がどうしても気になっていたが、それ以前にこのままだと冥王星攻略艦隊そのものが磨り潰される可能性が大きく見えてきたので、暫く唇を噛んた。

 そんなヤマトに残された手は唯1つ……ガミラスの手に乗っての中央突破しかなかったが、どうしてもガミラスの手が気になって躊躇っていた。

 

「……武蔵なら……長門、なら…」

 

 武蔵ならあらゆる罠を食い破る気満々で躊躇わず突撃していた、長門ならガミラスの手を見抜いて何らかの対処が出来たかもしれない、そうヤマトは思わずにいられなかった。

 だが此所にいるのはヤマトであり、武蔵の様な度胸も、長門並の洞察力を持っていない事を、自覚しているヤマトは、不甲斐ない自分自身への思いで歯を潰しかねない程に強い歯軋りをしていた。

 

「「ヤマト…」」

 

 そんなヤマトの心中を察したイスズとハツヅキは、彼女に何も言う事が出来ないでいた。

 

『ヤマト、突撃しろ!!』

 

 だが硬直しかけていたヤマトに、沖田は命令した。

 

『明らかにガミラスは中央突破後に何かの罠を発動するだろうが、その罠が動く前に動き続けろ!』

 

 沖田は拒否を認めない口調で命じたが、目に見えて躊躇いが感じられ、更に隣のキリシマも止めるかどうかの迷いが顔に出ていた。

 

「…沖田提督、ヤマトはこれより砲撃主体に変更し、中央突破を狙います」

 

 ヤマトは出そうに無かった声を右手で首のスカーフを握りなら無理やり出しての弱々しい口調で了解したが、自分で決断出来ずに沖田を頼って逃げた事での自己嫌悪が目に見えていた。

 此の影響での反応が鈍ってしまい、重巡戦隊の砲撃が波動防壁に何発か当たって内1発が波動防壁を貫いて左舷パルスレーザーの1基が破壊され、重巡戦隊は此れを好機と捉えてタマ達やショウカク達への砲撃を止めて一斉射撃の準備をしだしたが、当のヤマトは此の被弾で開き直ったらしく、明らかに目付きが変わったのを見たイスズとハツヅキは“はっ!”としながらお互いの目線を合わせた。

 そしてヤマトが狙った場所に辿り着くと同時に、重巡戦隊がヤマト目掛けて一斉射撃を繰り出し……ヤマトが回避せずに顔面をX字型に重ねた両腕で防御して被弾し、自分達の砲撃全てがヤマトの波動防壁に弾かれるだけでなく、ヤマトの両腕から覗き出た右目のみでの睨みを見て、重巡戦隊が驚き戸惑った。

 

「主砲、副砲、一斉射!!!」

 

 当然ながらヤマトが重巡戦隊の隙を見逃さずにお返しの一斉射を放ち、ヤマトが重巡戦隊が一直線になる位置にいた為に重巡戦隊の6隻全員が貫かれてしまい、最後尾の2隻のみは無事であるも大破状態になった為に各々にふらついていて、更に直線上に位置した左翼後方の水雷戦隊の一部にも被害が出ていた。

 

『今だ、畳み掛けろ!!!』

 

「主砲、副砲、第2斉撃!!!

煙突ミサイル、爆雷、一斉撃!!!」

 

 ヤマトの一撃でガミラス艦隊が驚いて硬直した隙を突いて、沖田の命令下にヤマトが主砲と副砲をまた一斉に放ち、更にイスズとハツヅキだけでなくタマ達3人も続いての雷撃をも行って、右翼後方水雷戦隊次々に被弾による爆発が起きて、見るからに壊滅的打撃を被っていた。

 

「ヤマト、前進!!!」

 

「ヤマト、ミサイルが来る!!!」

 

 前後揃って壊滅しかけていた右翼の隙を突いて、ヤマトは前進したが、水雷戦隊への一斉攻撃で迎撃が弱まってしまった為にミサイルの1つがヤマト目掛けて飛んできていて、報せたイソカゼと共にヤマトがパルスレーザーでギリギリの所で破壊したが、ヤマトが一瞬だけ後ろから爆発に飲み込まれてしまった。

 

『ヤマト、被害報告』

 

「第三主砲天蓋に被弾、第一装甲が剥離しました」

 

 ヤマトの沖田への報告通り、確かにヤマトの第三主砲の真上の何ヵ所かがささくれていたが、見た目に反して大事には至らなかった様だった。

 だが元々誤射防止の為にガミラスがミサイル飛翔数を少なくしていた中央へと移動した事で、ミサイル到来数が少なくなっただけでなく、個々での攻撃をし続ける水雷戦隊を危険そうなののみを砲撃していたので、此れ以上のヤマトの被弾は起こらなかった。

 

「やらせはしません!!!」

 

「ヤマト、行くニャァァァー!!!」

 

 更にヤマトを迎撃しようとした左翼がショウカク(一時的にヤマトの航空隊を指揮下に編入)達とタマ達に阻まれていたのもあって、ヤマト達3人がガミラス艦隊の間を縫っての突破に成功した。

 

「良し!!!」

 

「抜けたぁぁぁー!!!」

 

 ガミラス艦隊を抜けて阻むモノが見当たらない冥王星へ一直線となった事に、ハツヅキが右拳を強く握り、イスズが両腕を振り上げて歓声を上げたが、ヤマトは突破中にガミラス艦隊が妙に落ち着いていた事を疑問に思っていた上、更に左翼重巡戦隊の旗艦と思われる最後尾の重巡リ級が自分に微笑したのに気付いて、予想通りにガミラスが罠を張っているのを確信し、辺りを見渡して何処にども回避出来る様に身構えた。

 

『ヤマト、波動砲発射用意!!』

 

 沖田も罠を確信したらしく、冥王星へ急ぎ前進しようとしたヤマトとは逆で、冥王星に向かわせるのは危険と判断、丁度ミサイル攻撃が途切れている上にガミラス艦隊が追撃出来ない事から、此の場での波動砲使用を命じた。

 

「っ!!?」

 

「波動、ほ!!?」

 

「提督!!?」

 

 沖田の波動砲発射準備命令に、ヤマトだけでなく、ハツヅキとイスズ、更にキリシマまでがギョッとした。

 現状では波動砲使用もやむを得なしだと、頭の中で分かってはいたが、冥王星基地に囚われている筈の艦娘達の事が頭に浮かんでしまい、顔に拒絶反応が出てしまった。

 

『責任は、私が取る!!』

 

「……ヤマト、両舷を停止します」

 

 イスズとハツヅキが直接言わなくても目線で“止めて!”と訴えていたが、ヤマトは後ろ髪が引かれるのを感じながらも、敢えて2人を無視して波動砲の発射準備に取りかかった。

 だが此の波動砲使用の決断は、イスカンダル遠征でも数少ない沖田の誤采配であり、現にガミラス艦隊は失速を始めたヤマトに少し驚き戸惑っていたが、少しした後に赤い照明弾を打ち上げた。

 

「ヤマト、ガミラスが何を打った!」

 

「…照明……いえ、信号弾?

何で今さら?」

 

 波動砲のエネルギー充填を始めて波動砲の砲身の固定を外して持ち上げようとしたヤマトだったが、イスズがガミラス艦隊が打ち上げた物に気付いて報せ、ハツヅキと共に背後に振り向くも、それが何を意味するかが分からずに硬直してしまった。

 だが此れによって危惧していたガミラスの罠が発動し…

 

「っ!? 右舷2時の方向で発光現象!!!」

 

「「……っ!!?」」

 

…ハツヅキが冥王星の右脇で赤い光に気付いて報せたが、その赤い光……否、ガミラス特有の赤い光線がヤマト目掛けて飛翔してきて、直撃はしなかったがヤマトの掠める形で脇を過ぎ、此の影響で煙突脇の小型爆雷発射機が溶けて爆発、装填されていなかったので被害は大した事はなかったが煙突右側面が真っ黒に焦げてしまった。

 

『ヤマト、状況報告!』

 

「…あ、はい!!!

右舷煙突部分に至近弾、波動防壁が貫通しました!」

 

 ヤマトはイスズとハツヅキと共に、波動防壁が一撃で貫通された事もあって自分の身に起きた事を理解出来ずに硬直してしまったが、沖田の怒鳴っての問いかけに間の抜けた声を出して答えたが、見るからに混乱していた。

 

「此れが、ガミラスの罠だったんだ!!

罠の正体はビーム兵器でのアウトレンジ砲撃だったんだよ!」

 

「それより、何で打ってきたのよ!!?

艦砲、戦闘衛星、それとも要塞砲なの!!?」

 

『識別出来ない!

唯、ヤマトが高出力ビームに打たれたとしか…』

 

 ハツヅキとイスズの混乱している自分を落ち着かせる狙いもあって、ビーム兵器の正体を探りあうもそれが出来ず、更に解析するも失敗したキリシマもそうであるだけでなく、よく見たら沖田もまたその事を表面に出さない様にしている表れととして両手各々で椅子の肘掛けの先端部分を強く握っていた。

 

『……っ!

波動砲発射準備中止!

回避行動、10時の方向に転身!』

 

 兎に角、沖田は現状のまま波動砲のエネルギー充填をし続けたらヤマトが蜂の巣になって沈むと判断して、慌てながら直ぐヤマトに退避命令を下して、ヤマトが直ぐに了解したが…

 

「また来るぞ!!!」

 

…発令が遅かった為に、ハツヅキが第2射を叫んで報告した直後、弾道修正を受けた光線がヤマトに直撃、大爆発が起きた。

 

「くそ!!!

第3射が来るぞ!!!」

 

 被弾で艤装から派手に煙が上がっているヤマトに、ハツヅキがまた光線が飛んできてのを報せ、ヤマトが直感で急制動したのが当たって直撃を免れたが、急制動の反動で突き出してしまった左腕を掠めて袖が焼失するだけでなく、左手首に着けていた第三艦橋が真っ正面から撃ち抜かれながら吹き飛ばされた後に大爆発を起こして消滅した。

 

 蛇足ながら、ヤマト最大の笑いのネタであり、後世から“何度もコケ落ちるので有名”と称される第三艦橋の受難伝説は、此の時の消失から始まったと言われている。




 感想または御意見を御待ちしています。

日向
「遂に反射衛星砲が出たな」

 前回の後書きで書いた不沈戦艦『紀伊』での、列車砲が直撃した『紀伊』よりは、まだましだと思いますがね。

霧島
「でも、最後の最後で、大和の第三艦橋が…(笑ってる)」

 ま、まぁ此れで、新旧ヤマト原作で『ヤマト』が冥王星に波動砲を使わなかった理由は、オリジナル版は“原種生命体が生息している”、リメイク版(漫画)は“地球と冥王星の位置的に、冥王星の残骸が遊星爆弾となって地球に落ちる”と各々にしていましたが、本作では単純明細として“波動砲の準備をしている内に、ヤマトが蜂の巣になる”からとしています。
 此の為に反射衛星砲はオリジナル版とは逆設定で、“波動砲に火力に劣るが、射程距離と装填時間に優れる”としています。

日向
「しかもウチのは、その後にインターバルが必要だが3連射が可能としているから尚更だな」

霧島
「更に不味い事に、波動防壁等で重要度が増した第三艦橋をもう失ったのよ…(また笑ってる)
いくら作品の設定上で別にいらないとの判断があったと言え、オリジナル版での悪しき様式美の第三艦橋消滅は少し早くない?」

 ほんでもって、作品が作品だからきっとこんな次回予告が出来るかもよ。

 と言う訳で、霧ちゃん、お願い。

霧島
「マイク、音量大丈夫?
チェックチェック……1……2…」

 尚、ウチは下記のを霧島にやらせましたが、気に入らない読者は、やらかしをしないだろう好きな艦娘に脳内変換を各々にしてください。
















































(ミュージック、スタート)

霧島
「…止めて!!!
反射衛星砲でアウトレンジ攻撃をされたら、砲撃地点が分からないヤマトは手も足も出ないじゃない!
お願い、死なないで、ヤマト!!!
貴女が今此所で沈んだら、古代兄弟との約束や、地球の未来はどうなっちゃうの!!?
耐久値はまだ残ってる!!!
此の攻撃を耐え切れば、勝機を見出す事が出来るんだから!!!

次回、『ヤマト死す』!!!
抜錨、スタンバイ♪」

(ミュージック、エンド)





日向
「……此れ、色んな意味で駄目だが伝説の次回予告!!!」

 ほぼ確定してるけど、出所が同じので『私を撃て、運命の最終砲撃戦』(仮)とか、白色彗星帝国編で『波動艦隊散る、無敵の都市帝国』とか『女の花道、アンドロメダ玉砕』が予定してるよ。

霧島
「白色彗星帝国編の2つは2202見てたら、どんなオチの話か分かるわね…」

 そう言えば、本気殺しバージョンをやった社長が2202で『ヤマト』に乗ってたが、艦娘なら本気のを誰がやるかな?

霧島
「愛宕あたりが手堅いんじゃない?」

日向
「あ~…アイツは天然で本気殺しバージョンにしそうな気がする」


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第62話 ヤマト死す

(ミュージック&手拍子、スタート)

大和
「大和級戦艦、一番艦の大和です。

今日のサブタイは『ヤマト死す』!!

大和の運命はいかに!!?

さぁ、SPACEBATTLEGAILヤマトの始まりデェェェース!!!(ヤケクソ)」















大和
「War~♪ War~♪
争いは、えっ歌が違うし、歌うな?」



――― 冥王星基地 ―――

 

 

「Zweiter Schuss,Treffer!!!

Es gibt Problem mit dem dritten Schuss,Kugeln Ballistik!!」

(訳:第2射、命中!!!

第3射、至近弾なれど弾道に問題なし!!)

 

 若干手間取りはしたが、作戦通りにヤマトを砲撃出来た事の現れとして、モニターに映るヤマトが艤装から派手に煙を撒き散らしながら退避行動を取っている光景に、冥王棲鬼は通常型から引かれる程ににやついていた。

 しかもヤマトに随伴するイスズとハツヅキの2人に加えて合流したレシーテリヌイとヴェールヌイの計4人が何も出来ずに右往左往していたのだから、笑わずにいられなかった。

 

「Groβartig,wirklich groβartig.

Wie ich danke,ist Relaisverstaerker Satellit eine groβartig Waffe!」

(訳:素晴らしい、本当に素晴らしい。

私の見立て通り、反射衛星砲は素晴らしい兵器よ!)

 

 冥王棲鬼は自分の脇に備え付けられている反射衛星砲の台座に抱き付いて愛しく頬擦りをした。

 

「Was passiert mit Reflektierter Satellit?」

(訳:それで反射衛星砲はどうなっている?)

 

「In der Kuehlfunktion wurde ein Fehler bestaetigt,

Da der Relaisverstaerker mehrere Waermeverluste erlitten hat,dauert es auβerdem zwanzig Minuten bis fuenfundvierzig Minuten,um nach vershiednen Neueinstellungen erneut anzugreifen,

Auβerdem hat sich nach der Neueinstellung herausgestellt,dass fuer jeweils drei Schuesse ein bestimmtes Intervall erforderlich ist」

(訳:冷却機能に異常が確認されました。

更に中継ブースタが複数熱損したので、諸々の再調整からの再攻撃には20分から45分掛かります。

また、再調整後も3射を行う度にある程度のインターバルが必要だと判明しました)

 

「Immerhin kam der Aergei raus…」

(訳:やはり、不具合が出たか…)

 

 冥王棲鬼が気にしている、ヤマトに大打撃を与えた砲兵器……反射衛星砲は、此れまでは小惑星を遊星爆弾化させる為への放射性エネルギーの注入装置として使われていた試作兵器なのだが、対ヤマトの切り札たる対艦砲兵器への(再)改造を行った際に、小惑星改造用のと比べて数倍のエネルギー充填が必要と判明した為に色々と対策を取っていた。

 此の一貫としてぶっつけ本番に近い発射実験は、敢えて射程と使用する発射要塞を抑えてやったのだが、砲撃3射で危惧通りの出来事が起きたので、冥王棲鬼が渋い顔をした。

 

「Nun,ich habe ein Problem mit der Ladezeit,aber ich habe festgestellt,dass ich mehr Feuerkaft habe」

(訳:まあ良い、装填時間に問題があるが、火力は余りあるモノだと分かったしね)

 

 冥王棲鬼は反射衛星砲の不具合は仕方がないとしていたが、それ以上に性能がある事を確信して、取り敢えずは合格点と判定し、その確たる証拠を示しているヤマトを見詰めて笑っていたが、少しした後に違和感を経由してある事に気付いた。

 

「Was ist mit der Verteidigungsflotte passiert!?

Warum jagst du nicht YAMATO!?」

(訳:守備艦隊はどうしたの!?

何故ヤマトを追撃しないの!?)

 

 作戦上では、反射衛星砲で弱まったヤマトに対して、守備艦隊が追撃してそのままヤマトを沈めるなり、反射衛星砲の次射までの足止めをする筈だったが、いくら待ってもその守備艦隊が追撃処か攻撃する気配が無かったのだ。

 

「Neben YAMATO scheint es unmoeglich zu sein,Angreifen anderer Schiffstochter und des Air Cops hinterherzulaufen」

(訳:ヤマトだけでなく、他の艦娘達や航空隊の攻撃で大打撃を受けて追撃は不可能だそうです)

 

 ヤマトが反射衛星砲に被弾したが、その前にヤマトが右翼部隊を壊滅させた事でショウカク達は勢い付いたらしく、守備艦隊の多くを撃破してそのまま抑え込んでいて、逆に守備艦隊が救援要請を出している状態となっていた。

 更に言うと、ヤマト(達)が冥王星に近付いてるので、ミサイル攻撃を此れ以上行うと基地露見の危険性が大なので、もう出来なかった。

 

「Was machst du,diese Idioten!!!」

(訳:何やってんのよ、あの馬鹿どもは!!!)

 

 当然ながら、冥王棲鬼は水を指す醜態を晒している守備艦隊に両腕を振り上げて怒っていた。

 

「Setze Ersatzflotte ein,um die Verteidigungsflotte zu retten und den boesen Traeger zurueckzuhalten!」

(訳:予備の艦隊を投入して守備艦隊を救出させ、そのままあの厄介な空母娘を抑え込みなさい!)

 

 ガミラスにとって幸いだったのは、ヤマトは損傷が酷い事から冥王星からの離脱を行う気配が無かったので、取り敢えず冥王棲鬼は守備艦隊に対してショウカクがヤマトの救援に向かわないように抑えるように命令した。

 

「Was macht YAMATO!?」

(訳:ヤマトはどうするのですか!?)

 

「Attacke mit Reflektierter Satellit wie es ist!

In diesem Fall werde ich versuchen,YAMATO als Zile zu jagen und die Jagd zu genieβen!」

(訳:このまま反射衛星砲で攻撃する!

こうなったらヤマトを標的に、狩りをゆるりと楽しむ事にするわ!)

 

 悪しき処まで極めた狩人が人間狩りを至高の楽しみとする様に、冥王棲鬼はヤマトを反射衛星砲でいたぶり尽くそうと思って、笑って歯を剥き出した。

 

「Wie ist die aktuelle Position von YAMATO?」

(訳:それで、ヤマトの現在位置は?)

 

「Fahren Sie mit voller Geschwindigkeit in Richtug Satellit Karon.

Anscheinend werde ich mich im Schatten von Karon verstedcken」

(訳:全速力で衛星カロンに向かっています。

どうやら、カロンの影に隠れつもりです)

 

「Sueβ.

Reflektierter Satellit,naechste Kugel laden,beeilen Sie sich!」

(訳:甘いわね。

反射衛星砲、次弾装填、急ぎなさい!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星・衛星軌道 ―――

 

 

「ヤマト、カロンだ!」

 

 ガミラスの罠を警戒し、咄嗟の判断でガミラス艦隊を撃破したヤマトだったが、中央突破をした直後に反射衛星砲に被弾してしまった。

 しかも波動砲のエネルギー充填中に反射衛星砲に被弾した事が原因で波動エンジンが異状出力を出していたが、此れを全力退避に逆に利用して、艤装の火災熱と艤装の異状発熱を熱がりながら行っていて、予定地点としていたカロンの所まで何とか辿り着いた。

 

「…ガミラスはヤマトをアウトレンジ攻撃で葬るむもりなんだ」

 

「耐えてヤマト!

もう少しで死角に入るよ!」

 

「ロケットアンカー発射!!!」

 

 ヴェールヌイが歯軋りをしてレシーテリヌイが励ました中で、ヤマトは急角度の旋回や早めの制動が出来ないと判断した事から、真左に来たカロン目掛けて左手に持ったロケットアンカーを放って打ち込んだが、そのまま止まる気配を見せる事なく、続いていたイスズ達が「え~…」と呻く程の急旋回をしだした。

 

『補助ロケット噴射!!!』

 

「…りょぉぉぉ、かい!!!」

 

 鎖が千切れそうなロケットアンカーを両手で必死に握っていたヤマトが、沖田の指示通りに前方に突きだした両足の艤装から逆噴射をした事でやっと停止、少しした後にヤマトの所に来たイスズ達4人と目線を暫く合わせながら硬直した後、通信先のキリシマまでが揃っての溜め息を同時に吐いた。

 此の直後に、ヤマトの艤装から黒煙が大量に吹き出したが、ヤマト自身も含めて誰も見ようとしなかった。

 

『ヤマト、被害報告』

 

「…第三艦橋損失、波動エンジンその物にも若干異状が確認さて出力が徐々に落ちてます。

此れ等の影響で、波動防壁が半分以下に減りました」

 

『……見事に、ヤられたわね…』

 

 ヤマトが“蜘蛛人間”を思わせるマジックアームが背中に複数着けた宇宙服を纏った妖精さん達に艤装を確認と修理をさせながらの沖田への報告に、キリシマが何とか茶化そうとしたが誰も反応せず、現に見るからに酷い大破状態のヤマトが乱れた息を落ち着かせようとしていた事もあって、イスズ達4人は声を掛けれずにいた。

 

「…何だったのよ、あのビームは!!?

あんなの汚くて反則よ!!!」

 

「…戦争に綺麗も何も無いよ」

 

 暫く間を置いた後、レシーテリヌイが反射衛星砲に怒るもヴェールヌイに諌められていたが、そのヴェールヌイにも内心反射衛星砲に思っている事を僅かながらに感じ取れた。

 勿論、まぁ現時点では疲労と痛みで喋れないヤマトは兎も角として、イスズとハツヅキも反射衛星砲に同じ様に思っているのが、各々の顔に出ていた。

 

『くそぉ~…ガミラスゥ~…』

 

 だがそんなレシーテリヌイ達4人よりも、キリシマが一番に悔しがっていた。

 

『…隠密性と高威力を両立させ、しかもヤマトを一撃で大破させるのを持たせるビーム兵器を開発・配備するんじゃないわよ』

 

 キリシマは反射衛星砲その物より、その手の砲兵器の配備を予想出来なかっただけでなく、ヤマトに授けるべき策等を思い付けない自分自身に怒りを向けていた。

 

『怒ってないで、ガミラスのビーム兵器への対処法を考えろ』

 

『分かってますよ!!!』

 

 沖田の指示でキリシマが益々怒っていたが、その沖田もまた反射衛星砲の仕組みを見抜けない自分自身への苛立ちとして、右拳を口に当てた状態で硬直していた。

 

『…イスズ、そこから冥王星の裏を確認出来ないか?』

 

「出来ますが、裏には何にも有りません」

 

「火星・木星間の小惑星帯みたいに潜宙艦が潜んでいるってのは?」

 

「それは無理ってもんだよ。

あのビーム兵器は明らかに波動砲クラスの大型兵器思われるから、戦艦なら兎も角、潜宙艦に載せられるとは思えない」

 

 沖田は冥王星の裏に砲撃の主か兵器が潜んでいると思うも確認したイスズに否定され、今度はレシーテリヌイが潜宙艦と予想したが、ハツヅキが潜宙艦の搭載兵器としてサイズや指向性が違う事から否定した。

 

「それよりも此れからどうするんだ?

ヤマトがこんな状態なんだから、冥王星に降りるのは危険が高いぞ」

 

 だがヴェールヌイが指摘した通り、先ずは冥王星攻略をどうするかであり、予定では守備艦隊攻略後にヤマトとショウカクの各々の航空隊を主体として冥王星の地表を徹底的に調べてから基地攻略に赴く予定だったが、ショウカクは兎も角置いておき、ヤマトの状態を鑑みたら攻略作戦続行は危険だった。

 

『…我々がどう動くにしても、奴等はまた仕掛けてくるぞ。

イスズ達は周囲を警戒、ヤマトは応急修理を急げ』

 

「……冥王星を目の前にして…」

 

 大方退却するしかないと思われた為、イスズが歯軋りをしながら眼前の赤く変色した冥王星を睨んだが、ハツヅキに小突かれたのでヤマトに振り向いたら、ヤマトが申し訳なさそうにしていたので、慌てて合掌しながら頭を下げた。

 だがヤマトを中心にした輪形陣を展開して周囲を警戒し始めたイスズ達は、今度は艦隊か航空隊部隊が攻め寄せると思っていた…

 

「っ!!?」

「「「「……え?」」」」」

 

…イスズ達4人やヤマトの死角である上後方からカロンを掠める形で反射衛星砲のビームが飛んできて、ヤマトがまたしても被弾した。

 

「さっきのビーム兵器!!?」

 

「死角じゃなかったのか!!?」

 

 又しても被弾したヤマトに、ハツヅキがギョッとして、レシーテリヌイが誰ともなく文句を言ったが、ヤマトは此の一瞬の間にロケットアンカーの鎖が溶けてしまった事もあって、自分の意思関係なく妖精さん達や艤装の破片を撒き散らしながら冥王星へと移動……と言うより落ち始めた。

 只、此の為に反射衛星砲の次射が外れたのは幸い……と言えるのかな?

 

「どうした、ヤマト!!?」

 

「推力が無くなった!!!

冥王星の重力から逃げれない!!!」

 

「早く推力を戻せ!!!

このままだと墜落するぞ!!!」

 

「波動エンジンの出力が激減している!

もう無理、落ちるぅぅぅー!!!」

 

 どうやらヤマトは停止状態での被弾から吹き飛ばされた影響で冥王星の重力に捕まってしまい、無意識の内にヤマトを追い掛けたハツヅキがギョッとし、更にヴェールヌイが怒鳴ったが、此の直後にヤマトは冥王星の大気圏突入不可避の所まで来てしまった。

 当然、全員がヤマトが頭から墜落して艤装諸共ミンチ(かそれ以上)になる未来画図を予想してしまって硬直した。

 

『沖田提督、ヤマトの下前方に冥王星の氷海が広がってます!』

 

『ヤマト、補助エンジン全開!!!

焼き切れても構わんから、なんとしてでも氷海へ移動しろ!』

 

「了解……姿勢修正!!!」

 

 キリシマの事実上の進言を汲んで沖田はヤマトが助かるには氷海への緊急着水しかないと判断、直ぐにヤマトも沖田の指示に従って、大気圏突入中に何とか体を反転させ、着水出来る体勢に出来はしたが、明らかに降下速度が許容範囲を超えていて、そんなヤマトを必死に追い掛けているイスズ達が置き去りになっていた。

 

『ヴェル、お前が先導してヤマトを着水させろ!』

 

「分かりました……っ!」

 

「え、ちょっ!!?

私を踏み台にぃぃぃー!!?」

 

 いよいよヤマトに無茶な着水を行わせようとする直前に、沖田は自分が指示を出すより現場の艦娘に導かせるのが良いと判断、更に氷海への着水に馴れてるだろうロシア艦娘を信じてヴェールヌイに先導を命令し、そのヴェールヌイは直ぐに背後のレシーテリヌイを確認すると、わざと失速して横倒しでレシーテリヌイの胴体に両足を着けると彼女を踏み台として急加速し、此の影響でレシーテリヌイが背後に吹っ飛ばされてイスズ達3人が唖然としているのを見向きもせずに、何とかヤマトの前に躍り出る事に成功した。

 

「まだ降りるな!

此所だと横転するぞ!」

 

「無茶言わないでよ!!

波動エンジンの出力が激減してるのよ!」

 

 ヴェールヌイがヤマトが着水するに向きそうな氷の厚さと固さを見極めていたが、そのヤマトが自分の指示を待たずに降下しそうだったのを止め、ヤマトも言葉のわりに降下を防ごうと足掻いていた。

 

「…っ! 此所だ、降りろ!!!」

 

 ヤマトが限界に達する直前に、ヴェールヌイが着水に適した場所を見つけ、ヤマトに指示を出して直ぐに進路上の氷が砕けやすくする為に主砲での撃ち込みを始めた。

 

「着水、する!!!」

 

 そしてヤマトが覚悟を決めて降下し……両足を着けた氷がヴェールヌイの目論み通り粉砕しながら着水して、派手に氷と海水を巻き上げながら滑走を始め、水と氷の抵抗に加えてヤマト自身もブレーキを掛けようと少し屈んで足に力を込めた。

 

「っ!!?」

 

「あ、ヤバい!!!」

 

 その途中でヤマトが失速しそうな時に、ヴェールヌイが見落とした固い氷に蹴躓いて跳ね飛んで体制を崩したので横転するかもと思われたが、ヤマトが空中で何とか立て直して再度の着水に成功して、その直後から失速が始まった。

 

「「……ふぅ~…」」

 

 ヤマトが完全に止まると、空中で止まったヴェールヌイと暫く目線を合わせた後に揃って溜め息を大きく吐きながら俯いた。

 

「ヤマト、大丈夫か?」

 

 少しした後にハツヅキ3人が、更に遅れてレシーテリヌイがヤマトの所に駆け付けた。

 

「あ~…見るからに駄目そうね」

 

 両手を膝に当てて屈んで汗を大量に垂らしているヤマトは見るからに疲労でグッタリしていて、艦娘で言う赤疲労の極限状態になっていた。

 

「……波動エンジンが、完全に止まった…」

 

「それって波動防壁が…」

 

「ヤマトを喋らさないで!

ヤマトは呼吸を整えて!」

 

 嘔吐しそうな程に激しい呼吸をしながらのヤマトの報告に、イスズがギョッとしたハツヅキを注目してヤマトを気遣っていた。

 当然ながら、波動防壁を失ってもいたヤマトがまた攻撃されたら致命傷になるのは目に見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星基地 ―――

 

 

「Erfolgrecih Landung in diesem Zustand!!?」

(訳:あの状態で着水に成功した!!?)

 

「Was fuer ein Typ!!!」

(訳:なんてしぶとい奴なんだ!!!)

 

 反射衛星砲を3発前後も被弾して、更に危険状態で大気圏突入からの着水を成功させたヤマトをモニター越しに目撃して、ガミラスの面々は各々に驚いて軽めのパニックが起きていた。

 

「Damit hat YAMATO sein Vermoegen aufgebraucht」

(訳:だが此れでヤマトは命運を使いきってしまったな)

 

 冥王棲鬼もまたヤマトに驚きはしたが、周囲を警戒して動き回っているイスズ達4人に反してヤマトが着水後から全く動かずに硬直している事から、ヤマトが怪我と疲労で動けなくなったのを見抜いた。

 

「Ich gehe zu.

Reflektierter Satellit,bereit fuer drbifaches Feuer!!!」

(訳:トドメをさすぞ。

反射衛星砲、3連射用意!!!)

 

 勝利への決定打になるだろう反射衛星砲の最終砲撃の準備が進められる中、冥王棲鬼は満面の笑みでモニターに映るヤマトを見詰めた。

 

「Viel Glueck,YAMATO.

Aber du bist hier oben」

(訳:よく頑張ったわね、ヤマト。

だけど貴女は此処までよ)

 

「Reflektierter Satellit,drei aufeinaderfolgende Aufnahmen fertig!」

(訳:反射衛星砲、3連発射準備完了!!!)

 

「Abschiedsraum Weltraumschlachtschiff YAMATO,Reflektierter Satellit,Feuer!!!」

(訳:さらば宇宙戦艦ヤマト、反射衛星砲、発射ぁぁぁー!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星・氷海 ―――

 

 

『ヤマト、真上!!!』

 

 キリシマがヤマト目掛けて反射衛星砲のビームが落ちてくるのに気付いて直ぐに叫んで報せたが、当のヤマトはイスズ達と共に真上に振り向いてそのまま固まってしまった。

 

「……こんな所で、ヤマトは…」

 

 ヤマトが諦めたかと思える発言をして、イスズが急いでヤマトを突き飛ばす為に飛び出そうとしたが、イスズがヤマト目掛けて右手を突き出した直後、ヤマトが反射衛星砲のビームに貫かれて爆発に飲み込まれた。

 更に立て続けてビームがまた落下して連続の爆発が起き、最後に氷と海水を派手に巻き上げる大爆発後の水蒸気が晴れると、表面の氷全てが吹き飛んだ海面にいるべきのヤマトが全く存在していなかった。

 

「「「「ヤマトォォォー!!!」」」」

 

 イスズ達4人の絶叫を示すかの様に、少し焼け焦げたヤマトの測距儀が右端を突き上げる形で海面に漂っていた…




 感想または御意見を御待ちしています。

榛名
「前書きがビーストウォーズです!!!
『さよならラットル!?』版のビーストウォーズのオープニングになってます!!!
しかも投稿した曜日と時間がビーストウォーズの本放送時の時間帯ですよ!!!」

……幸か不幸か、ヤマトシリーズには、イボンコ(コンボイ)千葉トロン(メガトロン)ダーダー恐竜(ダイノボット)、ラットル、タランスが出てんだよねぇ~…

伊勢
「アンタ、此の作品を声優無法地帯にする気なの!!?
いえ、それよりも、今回大和が酷い目にあってるのに、初っぱなで何て事をやらせてるのよ!!!」

 因みに、本作の感想欄をよく確認してください。
 少し間違ってましたが、ビーストウォーズ最笑回での千葉トロンの言葉の1つがありますよぉ~…










……なんか、千葉トロンを原型にしたオリジナル棲姫を出したいなぁ~…と邪推する、今日この頃…

榛名&伊勢
「「それは止めて!!!
歴代最凶の呼び声名高い腹筋破壊大帝が出たら作品が壊れる!!!」」































佐渡
「…海老炒飯は何処?」





榛名&伊勢
「「………どっちの佐渡?」」


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第63話 冥王棲鬼の独断

――― 防衛司令部 ―――

 

 

『『『『ヤマトォォォー!!!』』』』

 

 イスズ達4人が反射衛星砲によって消滅したヤマトへ叫びながら、ヤマトがいた海面に駆け寄ったのが映るモニターを、防衛司令部の面々は現実の拒絶反応として暫く硬直していた。

 誰もがとてつもなく重い空気を感じていたが、少しした後に芹沢は溜め息を吐くと、秘書艦代理の恵と葉月と共に固まっている藤堂の所に向かった。

 

「レーダー等の反応に加えて、状況から判断して、ヤマトは轟沈したと断定。

第七次冥王星攻略作戦及びイスカンダル遠征は破綻したと判断して、遠征艦隊を含む全艦隊に地球への帰還を命じますが、よろしいですね?」

 

 呆然自失に近い状態だった藤堂は、芹沢の質問に我に帰ると、“やむを得なし”として頷いた。

 

「……ヤマトは、アンタ達の所為で…」

 

「葉月、駄目!」

 

 葉月は行かなくてもよかった冥王星を攻めたが為にヤマトが沈んだと思い、地球脱出作戦を復活させる為にガミラスの意向に乗っただろう芹沢に飛び掛かろうとしたが、その直前に恵に止められた。

 

「……ヤマトが沈んだのは、私達がガミラスの罠を見抜けなかったからなんだよ…」

 

 葉月を掴んでいる両手の力から感じられる通り、恵はヤマトが沈んだのは自分達の責任だとして、自分(達)の無力さを嫌悪していた。

 そして、恵はそれを他人への八つ当たりとして摩り替えるのは間違いだとし、葉月もそれを察して恵に抱き付いて泣き出していた。

 今更ながらの幸いな事だったのは、藤堂が見た処だと潜宙棲鬼の時とは違ってヤマトを罵る者が見当たらず、まぁ多くはガミラスの強大さからのであったのかもしれないが、ヤマト撃沈は防衛司令部の面々各々に衝撃を与えていた様だった。

 

「……此れで良かったのだ……此れで…」

 

 更に言うと、帰還命令を出しに藤堂達から離れていった芹沢もまた、彼なりにヤマト撃沈を思う事がある様だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星・沖合い ―――

 

 

 ヤマト撃沈による退却命令が下り、更に冥王星守備艦隊も退却した事もあって、ショウカクはヤマトのも含めた航空隊を回収しだい他の3人と共に冥王星と小惑星帯の中間宙域に後退して、暫くした後にイスズ達4人もショウカク達の所に辿り着いた。

 全員がヤマト撃沈に暗くしていたが、イスズが両手で抱えているヤマトの測距儀を見て、益々拍車が掛かっていた。

 

「……なんで…」

 

「「「「…?」」」」

 

「…なんで、ヤマトを守れなかったぁぁぁー!!?」

 

 ハマカゼはヤマトの測距儀を見た事で何かに触ってしまい、偶々自分の前に位置していたハツヅキの左頬を殴って彼女の胸ぐらを掴み上げた。

 

「アンタ達、何をやっていたのよ!!?」

 

「よすんだニャ、ハマカゼ!!!」

「よしてください、ハマカゼ!!!」

 

 ハマカゼはハツヅキを揺さぶってまた殴ろうとしたが、その前にタマとハツシモに止められて、そのままハツヅキから引き剥がされたが、2人に羽織られた状態のままで暴れていた。

 

「……すまない…」

 

 殴られた左頬を押さえながら目線を背けたハツヅキは、他の言葉だと言い訳にしかならないと思った為にただ謝るしかなかった。

 此の事はハマカゼの勘に触っていたが、イスズ達3人は罪悪感が強すぎて謝罪すら出来ずに硬直しているのだから、ハツヅキはまだ偉いと言える方だった。

 だがそれでもハマカゼは感情任せに喚き散らしていたが、ショウカクが強張った表情でハマカゼの右肩を突かんで自分の方に向かせた後に彼女の左頬を叩いた事でやっと静まった。

 

「…ハツヅキさん達の事を、私達も言えないでしょ」

 

 穏和な性格からは考えられないショウカクの行為に驚いていたタマとハツシモもそうだったが、ハマカゼもまた尻餅を付いた状態で暫く固まっていた。

 

「此れからどうするニャ?」

 

「…取り敢えず、ズイカク達の所に行きましょう。

それから、色々やってから、地球に帰りましょう…」

 

代えが思い付かないショウカクの提案にタマ達が何かしらの反応を起こす前に、ショウカクは静かに小惑星帯の方へと向かった。

 そんなショウカクにタマ達も順に続いていき、ショウカク達7人にかなり遅れてハマカゼも立ち上がって続いていった。

 

「……ヤマト…」

 

 タマ達7人は気付いていなかったが、ショウカクは左手を掴んだ右掌をずっと見下ろしていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― ガミラス基地 ―――

 

 

「…fertig……fertig!!!

YAMATO sank!!!」

(訳:…やった……やった!!!

ヤマトが沈んだ!!!)

 

 氷海のヤマト沈没地点の上空映像に、冥王棲姫は艤装獣共々歓喜の雄叫びを上げ、通常型の部下達は彼女に「Herzlichen Glueckwunsch(おめでとうございます)」と祝福の言葉を次々に掛けていた。

 

「Du kannst dich an beten und Millieu Admiral Bericht erstatten」

(訳:此れでミリュー司令に胸を張って報告出来ますね)

 

「Nein,ich melde mich nicht bei Millieu.

Es wird entschieden,den eingenen Kampf von “Diese Person ” zu verfaelschen,wenn er in der Form」

(訳:否、ミリューには報告しない。

アイツにすれば、“あの御方”に自分だけの功績にと歪曲するに決まっている)

 

 重巡リ級が嬉々とミリューにヤマト撃沈の報告をしようとしたが、それを冥王棲姫が止めるだけでなく、ミリューへの敬意皆無の態度もあって、全員が“えっ?”とした。

 

「Um jedoch keine YAMATO-Niederlage zu melden……!?」

(訳:しかし、ヤマト撃沈の報告をしない訳には………っ!?)

 

 重巡リ級達は、当初は冥王棲姫の心意を察せれなかったが彼女の妖しい笑みから何かを察して、各々に“まさか”と顔に表した。

 

「Ja,das ist mein Kriegsergebnis.

Wenn ich mich also direkt bei “Diese Person” melde,ist nichts falsch,oder?」

(訳:そう、此れは私の戦果よ。

だったら、私が“あの御方”に直接報告しても、何にもおかしくないわよね?)

 

「Vielen Dank,das Wort,aber die direkte Berichterstattung an “Diese Person” ist eindeutig unzustaendig!」

(訳:お、御言葉ですが、“あの御方”への直接報告は、明らかに権限を超えてます!)

 

「Auβerdem moechte Gepanarte Prinzessin ohne Wort sagen…」

(訳:それに装甲空母姫様に一声無しにやるのは…)

 

 当然、部下達が思い止まらせようと反対した。

 

「Weil es guide ist,tu es!!!

Dies ist eine Anweisung!!!」

(訳:いいから、やりなさい!!!

此れは命令よ!!!)

 

 だが当の冥王棲鬼は、ミリューからの更迭通達への焦りから、反対意見を一掃して本星への通信を強行させた。

 誰がどう見ても、冥王棲鬼は装甲空母姫がどうなろうと自分だけは助かろうと目論んでいたのは確かだった。

 

「Ich war mit diesem Sterm verbunden!!」

(訳:本星に繋がりました!!)

 

 明らかに嫌々で繋がらない事を祈っていた様だが、取り敢えずは部下達は通信を繋がった事(此の為に一部が恨めしそうな目線だった)への報告に、冥王棲鬼がニンマリと笑った。

 そして、メインモニターにノイズのみの映像通信が映しだされていたが、何か黒い人型の頭と両肩がボヤけながら浮き上がり…

 

『…Wer bist du?』

(訳:…君は誰かね?)

 

…映像に反して鮮明(少しエコーが入っていたが…)に聞こえた、威厳に満ちたと言うより威厳そのもの………誰も拝謁する処か声すら聞いた事も無かったが、此の場にいる全員が“あの御方”と称する、ガミラスを統べる絶対的な存在の声だと瞬時に判断した。

 此の天上の存在に、冥王棲鬼以下の全員が一斉に姿勢を正したが、本当に存在していた“あの御方”が前触れ無しに現れた事に、恐怖に限りなく近い緊張感で冷や汗を大量に流しながら硬直してしまった。

 

『…Da der Kommunikator normal arbeitet,sollte meine Stimme richtig ankommen,oder?』

(訳:…通信機は正常に動いているから私の声はちゃんと届いている筈だよね?)

 

「Oh ja!!!

Ich bin Koenig Koenig,der die Basis von Pluto in Richtung A-Galaxie haelt!!!」

(訳:あ、はい!!!

私は、A銀河方面にて冥王星基地をお預かりしている戦姫である冥王棲鬼であります!!!)

 

 “あの御方”を待たせてしまった事に“しまった”と判断した冥王棲鬼は、慌てて1歩前に出てガミラス式敬礼をして自分の所属と名を名乗ると、“あの御方”は「ほぉ…」と小声を漏らした。

 

『…A-Galaxie,die Richtung,die ich dir ueberlassen habe Millieu,

Oh ja,da war eine Person in order Ecke der Grenze,die das sagte』

(訳:…A銀河、ミリュー君に任せていた方面か。

ああ~そう言えば、辺境の一角にそう言う名の者がいたな)

 

 どうやら“あの御方”は冥王棲鬼を思い出す為に少し間を置いていたが、当の冥王棲鬼はと言うと、“あの御方”が自分を御存知だった事への嬉しさよりも、ミリューが“あの御方”に信頼されるに至る地位である事にムッとしていた。

 

『Und warum hast du mich Millieu genannt,der mich verlassen hat?』

(訳:して、ミリュー君を差し置いて、何故私を呼び出したのかな?)

 

「Ja!!!

Ist zu berichten,dass ich,die von mir gefuehrte Pluto-Basis,in den Kampf mit den Flotte ihrer Toechter und YAMATO,verwickelt war,die zuerst die Lichtgeschwindigkeit auf dem Planeten und der gefangenen Erde durchbrachen und am Ende eines erbitterten Kampfes die Sehnsucht sanken lieβen!!!」

(訳:は!!!

私が率いる冥王星基地は、攻略中の惑星地球で初の光速を突破した艦娘・宇宙戦艦ヤマトを配下の艦隊共々に交戦、激闘の末に此れを撃沈した事を報告する為にであります!!!)

 

 目的のヤマト撃沈を報告して、冥王棲鬼は“やりきった”と勢いよく右手を下ろし、部下達は安堵の溜め息を吐いていたが、当の“あの御方”は何故か沈黙していた。

 

『…Koenig Koenig, hast du gesagt?』

(訳:…冥王棲鬼、君と言ったね?)

 

 “あの御方”の問い掛けに「Ja(はい)」と力強く答えた冥王棲鬼は部下達共々、自分にお褒めの言葉を頂けると予想して思わず笑みを浮かべていた。

 

『Hast du gesagt,dass du mich angerufen hast,nur um so etwas Natuerliches zu vermitteln?』

(訳:君は、そんな当たり前の事を言う為だけに、私を呼び出したと言うのかね?)

 

「…natuerlich?」

(訳:…当たり前?)

 

 だからこそ、“あの御方”から予想とは真逆の言葉が飛び出した事に冥王棲鬼達はギョッとするしかなかった。

 ガミラスの戦争結果は“勝利”か“完全勝利”かの2択、それ等が果たせない時は死による贖罪しかない、前にミリューはそう言った通り、“あの御方”にしてみたら勝利とは当たり前の出来事。

 まぁそれ以前に、強敵の艦娘1人を苦労して沈めました、普通ならそんな報告は“アホかお前は”と思われて当たり前であった。

 

「Nein, das……YAMATO ist Schiffstochter,dia Lebendiger Geist versenk hat.

Die akribische Sorgfalt eins kleinen Soldaten,lhnen so schnell wie moeglich die Beseitigung des Feind es mitzutilen,um den Sie sich sorgen…」

(訳:いやあの、その……ヤマトは潜宙棲鬼を沈めた艦娘です。

貴方様がお気に掛けているだろう敵を出来るだけ早くお伝えしたいとの、小兵の細やかな心遣いでして…)

 

 冥王棲鬼(達)からだと、“あの御方”が今どんな反応をしているかが全く分からなかったが、元々“あの御方”が潜宙棲鬼撃沈以前からヤマトを何故か注目していたらしかったと言え、、冥王棲鬼はミリューは嘘をついていて実は潜宙棲鬼の件は“あの御方”に報告されていないのではと疑い始めていた。

 だとしたら、ミリューへの怒りは確かにあったが、それよりも“あの御方”に薮蛇をやってしまったのではないかと焦りだし、頭の中が“不味い”の単語で溢れそうになっていた。

 当然ながら冥王棲鬼だけでなく、此の場にいる全員が最悪の事態として各々の形での“粛清による死”を直ぐに思い浮かべ、通常型の者達全員が自分達を道連れにしかねない冥王棲鬼の背に“あの御方”にバれない様に抗議の目線を向けた。

 実際、“あの御方”が黙ったままの為に此の場に強烈な寒さと窒息しそうな息苦しさがあり、現に通常型の何人かが……なんと整備で基地待機だった戦艦ル級さえも含めて次々に倒れて泡を吹いていた。

 冥王棲鬼もまた、身から出た錆と言え、“早く終わってほしい”と何度も心の中で呟いている表れとして、異常量の汗を流しながら痙攣レベルで震えている艤装獣に強く握っていた。

 で、実際は1分前後か数十秒ぐらい、冥王棲鬼達にしてみたら1年近くの時が経過した後、“あの御方”が不意に微笑んだ……様に見えた。

 

『Vielen Dank fuer lhre Ruecksichtnahme auf mich,Herr Koenig Koenig』

(訳:私への心遣い感謝するよ、冥王棲鬼君。

そして君の忠節は覚えておくとしよう)

 

「…Oh!

Oh,dank,gluecklich!!!」

(訳:…っ!

あ、有り難き幸せ、です!!!)

 

 完全に忘れていたが、待ちに待った“あの御方”からのお褒めの言葉を頂戴して、冥王棲鬼は“はっ!”とするも直ぐに深々と頭を下げた。

 

『Dann tut mir das leid』

(訳:では此れにて失礼させてもらうよ)

 

『GURRE GAMYROS!!!』

(訳:ガミラス万ざぁぁーい!!!)

 

 “あの御方”との通信が終わる事が分かって、冥王棲鬼は通常型の者達……なんと倒れた者達までが失神した状態のまま立ち上がって、一斉に姿勢を正してガミラス式敬礼を、腹の中の物全てを吐き出しそうな大声を出した後、“あの御方”が軽く頷いて(その様に見えた)から映像通信が途切れた。

 だが、冥王棲鬼達は終わった後もガミラス式敬礼をしたまま固まっていて、暫くした後に通常型の者達が一斉に倒れた。

 

「……Ich wurde gerettet…」

(訳:……た、助かった…)

 

 冥王棲鬼は超弩級の意地で失神せずに堪えていたが、伏せって泡を吹いている艤装獣に凭れた状態で、無事に終わった事に安堵していた。

 だが、今の冥王棲鬼は極限の疲労状態に陥ってるので、自分が“あの御方”を相手に何を仕出かし、その結果何が降りかかる事になるのなど知る訳がなかった…

 




 感想あるいは御意見、または両方をお願いします。

 今回のでの後半はシュルツの報告に該当しますが、本作では此の事はヤマト原作以上に冥王星に悪影響として、装甲空母姫率いる太陽系制圧艦隊が早く戻ってこない事になります。
 更にそれは次回からの出来事も拍車を駆ける事になります。

 さぁ次回、ハルナ達土星組が冥王星に近付いてくるだけでなく、謎の艦娘の1人目が少しだけ出てきます。



 ちょっと脱線するけど、映画“空母いぶき”を見ましたが、若干鷹派の思考回路だった為か政府の対応がまどろっこしく感じはしましたが、中々楽しめました。
 1つ気になったんだけど、『いぶき』の僚艦の1隻である護衛艦『いそかぜ』に、なんか“亡国のイージス”で見た事がある気がしたんですが、それは自分だけですかね?
 此の事に加えて、頭が艦これに毒されている為か、まぁ艦長が最大の原因だけども、かの『いそかぜ』は磯風が浦風と融合したように感じてしまうんですよねぇ~…


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第64話 装甲空母姫の困惑

――― 木星・土星間宙域 ―――

 

 

「Wie viel!!?

Koenig Koenig berichtet direkt “Diese Person”!!?」

(訳:何ぃ!!?

冥王棲鬼が“あの御方”に直接報告をしたぁ!!?)

 

 装甲空母姫が率いる太陽系制圧艦隊の第一艦隊は此の時、遠征艦隊に包囲網を形成する為に火星・木星間の小惑星帯から反転し、その途中で他の空母艦隊と合理しながら冥王星を目指してい、その冥王星の沖へのワープの準備をしていた所にヤマト撃沈の一報が入って、随伴艦の者達と共に歓声を上げた。

 処が、直ぐに続けて冥王棲鬼の独断行為が伝えられて、装甲空母姫がギョッとした。

 

「……Auf keinen Fall…」

(訳:……まさか…)

 

 装甲空母姫には冥王棲鬼は独断行動を衝動的にやったとは思えず、同僚だった筈の彼女への邪推を始めた。

 元々、今回の太陽系制圧艦隊の大多数の総出撃は、冥王星に大戦力が駐留していたらヤマトが来ない事を危惧しての事からであったが、実の処は冥王棲鬼がヤマト撃沈の戦果を独占する為に冥王星から出したのではとしか思えなかった。

 更に予定された大艦隊での包囲網でヤマトを沈めるのであれば反射衛星砲が必要とは思えず、現に報告ではエリートを含んだ重巡戦隊では小破すら出来なかったヤマトは実質反射衛星砲のみで沈み、此の事を冥王棲鬼が見込んでいなかったとは思えなかった。

 

「…Hast du mich beschimpft!?」

(訳:…私を謀ったのか!?)

 

 装甲空母姫が達した結論は、冥王棲鬼はヤマト撃沈を自分だけの戦果として自分の身を安堵し、潜宙棲鬼の戦没の責任を自分に押し付けようとしているだった。

 装甲空母姫にとって不味い事に、実際ヤマトは冥王棲鬼のみによって沈んでしまい、その事での独断行動にミリューが何も反応していないので、現状からの判断だと自分の身は殆ど詰んでいるとしか思えず、ヤマトが簡単に沈んだ事への変な怒りと共に、冥王棲鬼の自分を嘲笑っている顔を思い浮かべての憎悪が上向きでの半開きの両手が震えている事から見てとれる程の憎悪が出ていて、周囲の随伴艦の者達が悲鳴を上げて引いていた。

 

「Tut mir leid!!!

Es scheint, dass eine abnormale Situation in der Uranus-Umlaufbahn aufgetreten ist!」

(訳:申し上げます!!!

天王星軌道にて異常事態が発生した模様です!)

 

 そんな装甲空母姫に、重巡リ級エリートが血相を変えて駆け寄り………理解に苦しむが、取り敢えず一大事になるかもしれない報告を伝えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 天王星軌道 ―――

 

 

「よし!!!

もうすぐ海王星軌道です!!!」

 

 時間を少し戻して、土星からの長距離高速航行をひたすら続けていたチョウカイ達は、やっとの事で天王星軌道の半分を過ぎる宙域にまで来ていた。

 尤も、ガミラス艦隊との接触を危惧した事もあって、天王星が目視不可の宙域を進んでいるので、チョウカイ以外の者達は感覚やレーダーで実感する事が出来ていないが、チョウカイの星間航海技術を信じていた事から全員が疑う事なく彼女に頷いた。

 

「ですけど、此所からが問題ですね」

 

「ああ、流石にガミ公も艦隊を幾つか配備しているだろうしね」

 

 ズイホウとイセの会話通り、現在まではガミラス艦隊と接触する事なく航行出来てはいたが、流石に海王星軌道からはガミラスが警備艦隊を配備しているのが予想されたので、此所からは容易く行けないのが分かっていた事から全員が各々に気を引き締めていた。

 

「だからと言って、速度を落とす事は出来ないわよ」

 

 しかも天王星軌道に入った直後に冥王星軌道からのと思われる暗号通信“ダヴーは迎撃成功の上、ブスクホーデンは泥にはまる”を傍受、此れがアウステルリッツの戦いの1場面である事をテンリュウ(本人曰く「戦いの歴史は“よくできました”だったんダー」)が見抜き、更にチョウカイがアウステルリッツの戦いに似た方式の作戦……つまり、囮を使っての奇襲攻撃での冥王星攻略作戦が実施されて本隊が出撃したのを察したので、キヌガサが言った通りに是が非でも急がなければならなかった。

 

「…っ! みんな、地球からの広域通信が聞こえたわよ……っ!?」

 

 そんな時に、ユウバリが地球からの通信を傍受して内容を確かめていたが、突然ギョッとして硬直した。

 

「どうした?」

 

 カコは何か嫌な予感を感じながらユウバリに尋ね、そのユウバリは暫くした後に拒絶反応がある声を何とか出した。

 

「……ヤマトが、冥王星で沈んだ」

 

 ユウバリの返事に全員が“えっ!?”としながら一斉にユウバリに振り向いた。

 

「それで、続きはあるの?」

 

「……第七次冥王星攻略作戦は中止………全艦隊に地球への帰投命令が出た…」

 

 ユウバリを通してのヤマト撃沈からの命令通信にフルタカ達はと言うと、防衛司令部の面々の様なガミラスの強大さを感じるよりも、間に合わなかった事へのショックが強かった。

 

「…嘘だ……嘘だ!!

ヤマトが沈む訳がない!!!」

 

 ハルナはヤマト撃沈を受け入れられずに喚き散らしたが、直ぐにヒュウガに抑えられていた。

 

「誤報、とかは考えられませんか?」

 

「だな、いくらなんでも沈むにしては早すぎる」

 

 アオバが現実的にヤマト撃沈を疑い、テンリュウも腕時計の時間を確認してアオバに乗っかった。

 だが、確認の返信が出来ない上に判断材料が少なすぎて、全員がヤマト撃沈を完全に否定出来ないでいた。

 

「……さぁ、どうする?

土星に戻るか?」

 

 ヒュウガが誰構わずに訊ねた通り、ヤマトが沈んで艦隊が地球へ退却したのだったら、自分達の冥王星突入は無意味なモノと化すので、選択肢としたら土星への帰還はありであった。

 だが現実的にはそれが最良かと思えたが、言ったヒュウガ本人も含めた全員が拒絶反応として誰にも目線を合わせずに沈黙していて、自然な形で土星に渋々帰還をしようと、先頭のチョウカイが溜め息を吐いた後に転蛇しようと左に顔を向けたが…

 

『…っ!!?』

 

…チョウカイの視線の先にして艦隊の真左にガミラス空母艦隊がワープアウト……彼女達から見たら、突然現れた。

 ガミラス空母艦隊もまたチョウカイ達に直ぐ気づくも、その存在が予想外だった事から驚いて硬直したらしく、両艦隊が御互いを見つめ合ったままの並走が暫く続いた。

 

「…もしかして……逃がして、くれる?」

 

 アオバがこのまま何事もなくいけるのかなぁ~…との淡い思いがあったが、ガミラス艦隊で旗艦と思われる空母ヲ級が、アオバ達は分からなかったが、間違えたワープ座標をした重巡リ級を射殺して失速して戦闘に適した陣形に移行し始めた事で否定された。

 

「フラッグのヲ級!?」

 

 若干冷静になったヒュウガが旗艦の空母ヲ級を確認したら、その者は太陽系制圧艦隊には存在しないと思われていた黄色発光体(フラッグシップ)であり、更に此の者の胸元に首飾りのアクセサリーとして人型の頭蓋骨が複数ぶら下がっていて、御丁寧に頭蓋骨各々に女性物の帽子が無理矢理被せられるか、スカーフを巻かれている等事から見るに、頭蓋骨はガミラスに殺された艦娘達の物としか思えなかった。

 此の為に元々空母ヲ級が魔導師を連想させていたが、此のフラッグは“邪悪な呪殺士”を連想させるだけでなく、空母ヲ級フラッグの直属の随伴の重巡リ級と雷巡チ級にも首飾りとして骸骨が1つぶら下がって、人型ではない軽巡や駆逐艦には人型の頭蓋骨が各々に白く描かれていた。

 

「……来まぁぁぁーす!!!」

 

 艦隊後方でガミラス艦隊が“小”の字型の陣形……上下左右どちらに転蛇しても逃がさないと示した陣形に移行し終え、フルタカが叫ぶのとほぼ同時に、先ずは重巡リ級群が、少し遅れて軽巡のホ級とヘ級の2種群が砲撃を開始した。

 

「何でアイツ等は、突然現れるんだよ!!?」

 

「ワープです!!!

きっとガミラス艦隊はワープをして此所に現れたんです!!!」

 

 カコが現実を避ける為に叫んだ疑問に、ユウバリが前々から予想されていた事を言うと同時に、ヤマト達の異常な前進速度はワープをしていたからだと察していた。

 

「不味い、逃げ道を潰された!」

 

 艦娘達に取って幸いだったのは、両艦隊共速度が速すぎた為に艦載機が発艦出来ず、更にガミラス艦隊の砲撃が全て外れていたのだが、此の砲撃は全て牽制になっている為に真っ直ぐ進むしかなく、もしこのまま前進を続けていたら海王星・冥王星間の小惑星帯に危険速で突っ込んでしまい、此の隙を突いてガミラス艦隊が一気に殲滅戦を仕掛けてくる……典型的な追い込み漁でのやり方が目に見えていた為、現にガミラス空母艦隊の多くが「その気になれば当てられる」と言わんばかりに笑っていた事もあってイセが思わず叫んでしまった。

 しかもイセ達はヤマト達遠征艦隊と違って波動エンジン未搭載故に波動防壁が無いので、ガミラス駆逐艦の砲撃さえも1発被弾したら危険な状態となってしまうのだから、全速力で逃げるしかなかったのだ。

 

「やむを得ん、迎え撃つぞ!」

 

「やられっぱなしは性に合いません!」

 

「駄目です!!!」

 

 だが、危険覚悟で艦隊最後尾に回って楯になろうとしたたヒュウガ、ハルナ、イセの3人は反撃をして、撃破は出来なくても隙を作る等をしようとしたが、そんな3人をチョウカイが叫んで止めた。

 勿論、ヒュウガ達3人は止めたのは衝撃砲が使えない事を指摘するのだろうと予想をしていたが、チョウカイは更にそれ以上に危険な未来を予想していた。

 

「此所で戦闘をする為に速度を落としたら、あの艦隊が呼び寄せた増援が押し寄せる可能性があります!!」

 

 チョウカイの指摘通り、ガミラス空母艦隊が……大方戦果独占を狙っているのだろう、通信をやろうとする気配が一切無かった為に見落としていたが、確かに下手に時間が掛かると他のガミラス艦隊が来てしまう可能性が高く、元々そう言う危険を回避する目的もあっての高速航行をしていたのだ。

 

「じゃあ、どうしろってんだ!!?」

 

 だがヒュウガが叫んでしまった通り、繰り返すがこのままだとガミラス空母艦隊の狙い通りに、追い込み漁の獲物と化すのが目に見えていた。

 更に不味い事に駆逐艦群もが砲撃を開始して、まだ避けられる範囲たが、徐々に散布界が狭まってきていた。

 

「このまま小惑星帯に逃げ込むしかありません!」

 

「だから、此の状態じゃ危険がありすぎる!」

 

「…ハルナが、囮になります」

 

 此れと言う有効策が思い付かない現状にチョウカイとイセが口論をしかけたが、ハルナが下唇を暫く噛んだ後での提案に2人がヒュウガと共に“えっ!?”とした。

 

「ハルナは高速戦艦です。

直ぐにガミラス艦隊を振り払って、追い付いてみせます」

 

 死ぬかもしれない事を自覚した為に引き吊った笑みを浮かべたハルナは、イセ達が自分を止めようと声を出す前にわざと艦隊から離脱した。

 当然ながらガミラス空母艦隊は、大半はイセ達を砲撃して続けたが、重巡リ級を中心とした一部は直ぐに狙いをハルナに切り換えた。

 勿論、ハルナは直ぐに回避運動を始めたが、瞬く間に至近弾に覆われて逃げ道を防がれつつあり、此の時に亡きコンゴウの顔が思い浮かんだ。

 

「……コンゴウ姉様………ハルナも、お側に行く事をお許しください…」

 

 コンゴウ本人がそう言った訳ではなかったが、ハルナはコンゴウは味方を逃がす為に致命傷を負ったんだと察していて、自分も今からコンゴウと同じ様な形で轟沈する未来絵図を思い浮かべてしまった。

 

「「ハルナ、逃げろぉぉぉー!!!」」

 

 ハルナが間違えた退避をした為に鈍ってしまい、此の隙を突こうとガミラス空母艦隊が一斉射を行おうとしているを察したイセとヒュウガが叫んだ直後、2人の予想通りにガミラス空母艦隊は空母ヲ級フラッグの号令下にハルナ目掛けて一斉射撃をした。

 漠然と直進してしまったハルナは、自分目掛けて飛んでくる光線群を見つめながら固まってしまい、イセ達が悲鳴を上げようとしたが…

 

「…っ!?」

 

…ハルナが被弾する直前に透明な何かが割り込んでハルナの楯となり、周囲に展開していたエネルギー膜が被弾箇所に波紋を描きながらも、光線群を次々にあさっての方向に逸らしてしまった。

 自信の存在にハルナやイセ達だけでなくガミラス空母艦隊までが驚き戸惑って硬直したのを尻目に、ステルス機能を含んでいるであろうエネルギー膜を解除して、全身を黒いローブに包んだ姿を現したのだが、ハルナ達が此の謎の存在に真っ先に思い浮かべたのは“西洋風の亡霊”であった。

 




 感想あるいは御意見、または両方を御願いします。

天龍
「……回想と言え、俺の声が1回だけひろしになってなかったか?」

 さ、さぁ、前回の後書きに書いた通り、今回の終盤にてヤマト最強のお助けカードである謎の艦娘の1人目“翠星の女王”が登場しました!

 現時点での“設定 艦娘”や今回ので“翠星の女王”の正体が分かったら「凄い!」の一言ですが、次回で真名が出ないまでも色々とヒントを出して行きますので正体……と言うより、誰を艦娘化させたのかが分かるかもしれませんよ。
 ついでに言いますと、“翠星の女王”は調べた範囲で艦これとのコラボ作品がありそうな気がするのに、全く無かったので、もしかしたら此の作品が“翠星の女王”が出る艦これ小説の初モノか唯一のになるかもしれません。

 因みに今回出たオリジナル設定の空母ヲ級フラッグですが、“キングダム”のブネンと“翠星の女王”の原作初盤に出てくる敵を元にして作りましたが、コイツ(➕α)は“碧星翠の女王”の噛ませとしていますので、次回を最後に出てきません。


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第65話 出現、謎の艦娘

――― 天王星軌道 ―――

 

 

 全身を漆黒のローブに包んだ謎の存在の出現に、地球・ガミラス両艦隊は揃って、前進しながらの混乱での硬直をしていた。

 特に謎の存在の真後ろにいるハルナはその極みであり、謎の存在から“殺気”や“慈愛”等一切が感じ取れず、此の事から深淵の中にいる様な恐怖みたいなのが湧き出ていた。

 

「……あ!」

 

 此の為、ハルナは謎の存在が自分の方に振り向いた時、謎の存在に自分の首を跳ねられるかと思った事に反して、実際には謎の存在がハルナを抱えてイセ達の所に素早く移動させた事は驚き以外の何物でもなかった。

 尤も、謎の存在がハルナを守った事があったと言え、イセ達もまたハルナと同様に謎の存在から理解不可からの恐怖を感じ取った。

 

「…っ!?

ヒュウガ、コイツから味方を示す信号が出てる!」

 

「馬鹿な!!?

こんな異質な奴がいたら、知らない訳がないぞ!」

 

、更によく確認したら謎の存在から防衛艦隊の味方識別信号……しかもガミラス戦前の物が発していた事もあって、戸惑いながら謎の存在に全武装を向けていた。

 だが自分から離れた謎の存在と向き合っているハルナはと言うと、謎の存在に抱き付かれたとの行為に加えて、その時に謎の存在の体温を感じては体臭を嗅いだ事から拒絶反応や警戒心が何故か無くなるだけでなく、火照りが自覚出来る程に顔を赤くしていた。

 妙な間を置いて、ハルナを守って身構えている自分達に反して迎え撃とうとする気配が全く無いだけでなく、謎の存在が少し顔を上げた事でローブの解放部分から地球の成人女性の顎と共に見えた口が微笑んだ事もあって、イセ達も謎の存在を妙な感覚と共に敵ではないと判断して、警戒を次々に解いていった。

 

「…安易に死ぬ事を選んではいけません。

貴女には待っている人達や、やらねばならない事が沢山あるのですよ」

 

「あ、はい!」

 

 只、優しく諌めた謎の存在に、ハルナが馬鹿正直に返した為にヒュウガがハルナを小突いたが、此の直後に謎の存在の背にガミラス空母艦隊の砲撃が一斉に当たった。

 まぁ、イセ達が謎の存在を味方と取り敢えず判断したのを裏を返すと、謎の存在はガミラスの敵と言えて……実際少なくとも空母ヲ級フラッグは謎の存在を潜宙棲鬼に近い地球の潜宙艦だと判断して、脅迫に近い形で随伴の者達に謎の存在の背目掛けて一斉砲撃を命じたのだが、当の謎の存在はと言うと、ローブの背中部分から白煙が上がってはいても、1寸も穴が開かなかった事から無傷と言える状態だった。

 しかし、不意討ちに近い形での背を撃つ行為は謎の存在にとって逆鱗だったらしく、イセ達に見せていた慈愛みたいなのを雲散霧消させながらガミラス空母艦隊の方に振り向いた時に、謎の存在が怒気を発しながら(多分)睨んだ為にガミラス空母艦隊の空母ヲ級フラッグ以外の全員が後退(アトズ)さった。

 尤も空母ヲ級フラッグのみは戦う気満々だったらしく、下がった駆逐艦の何隻かを粛清の形で沈めていた。

 

「……此処は、私が受け持ちましょう。

貴女達は先に進みなさい」

 

 謎の存在が少なくとも敵ではないとは分かるも、味方になるとはどうしても思えなかった為、イセ達は“えっ?”としたが、当の本人はガミラス空母艦隊に宣戦布告として、翳した右腕の袖口からビームが……間違いなく謎の存在は艦娘の様な存在であり、ローブの下に艤装を纏っていて、その武装の1つと思われる右腕の袖口から僅かに除いた黒い筒型のを使用して、左翼駆逐戦隊の1つを吹き飛ばした。

 

「早く行きなさい」

 

「無茶です!!!

1人であの数を相手にするなんて!」

 

 謎の存在は簡単に出来そうに言っていたが、元々ガミラス空母艦隊が比較的多数いただけでなく、別の空母艦隊がワープアウトした為にハルナが思わず叫んで止めようとしたが、当の謎の存在はハルナ(達)に振り向いて“心配するな”と微笑んだ。

 此の間にもガミラス空母艦隊は謎の存在目掛けて砲撃を繰り返して、謎の存在は右腕を翳してエネルギー膜を展開してその全てをいなしていた。

 

「早く、冥王星に!

貴女達を、ヤマトが待ってますよ」

 

「ヤマト!!?」

 

「ヤマトはまだ生きてます。

ですが、早く行かないとヤマトは本当に死んでしまいます」

 

 謎の存在がハルナ達の目的地だけでなく、会いにいこうとするヤマトをも知っていた事に、ハルナ達は謎の存在を少し疑ってしまったが、謎の存在のヤマト生存の報せで、確証が無い事を疑ったが、ヤマトがいる冥王星に行きたいとの願望がまた強くなっていた。

 

「此処をお願いします!!」

 

 取り敢えずは謎の存在の言葉を信じて、チョウカイが謎の存在に頭を軽く下げた後に反転して冥王星に向けて加速、他の者達も謎の存在への対応を各々にしては次々にチョウカイの後を追った。

 

「……貴女も、死なないでください」

 

 最後にハルナが分からないままに此所に留まりたい思いを払った後に、謎の存在に別れてチョウカイ達を追い掛けようとした直後、その謎の存在がハルナに振り向いて微笑んだ時に、重巡リ級の砲撃が謎の存在の左頬を掠めてローブのフードが揺らいだ。

 

「……!?

コンゴウ、姉様?」

 

 素肌を一瞬現した謎の存在の左頬に死んだコンゴウと同じ傷があった為、ハルナは謎の存在の正体はコンゴウではないかと思ったが直ぐに否定した。

 何故なら、左頬が続けて見えた、骸骨のヘアピンを止めた前髪が、濃いめの茶髪だったコンゴウのと違って煌めくかの様に美しい金髪だったからだ。

 だが冥王星に向かう間、ハルナはコンゴウが生き返って自分達を助けにきたかと思っては否定するのを、脳内で何度も繰り返していた。

 

 

 

 

 

「Schiffstochter werden entkommen!」

(訳:艦娘どもが逃げるぞ!)

 

「Mach dir kine Sorgen!

Es ist das erste Mal,dass du diese Kakerlake besiegst!」

(訳:雑魚を構うな!

あのゴキブリを倒すのが先だ!)

 

 ガミラス空母艦隊の一部がで逃げだしたハルナ達を追撃しようと騒ぎだしたが、艦隊旗艦の空母ヲ級フラッグが威圧して止めて謎の存在を倒す事を優先とした。

 此の為に随伴艦の一部が戸惑っているのを他所に、空母ヲ級フラッグは見えなくなるまで遠ざかっていくハルナ達を完全に無視していたし、謎の存在も後ろを振り向いてハルナ達が戦闘宙域を完全に離脱したのを確認していた。

 

「…Es ist Typ,der es anscheinend wert ist, lange Zeit gekaempft zu werden」

(訳:…どうやら久し振りに戦い甲斐がありそうな奴だ)

 

 空母ヲ級フラッグは謎の存在を強敵だと認知して、下唇を舐めていた。

 此れは、近年技術的格差の超絶的に拡大した事から、空母ヲ級フラッグにしたら戦艦娘をも含めた艦娘達の弱体化で物足りなさを感じていた上、最大の獲物になり得たヤマトと戦えないだけでなく彼女が早々と冥王星で撃沈した為、ヤマトの代わりとして最高級のトロフィー(戦利品)としての骸骨の1つになると思っての嬉しさを表れで、現に空母ヲ級フラッグは胸元の骸骨の1つを撫でていた。

 

「……Ich sage dir GAMYROS…」

(訳:……ガミラスに言っておきます…)

 

 実は謎の存在は空母ヲ級フラッグ達の骸骨に対して怒っていて、此の事は謎の存在が此所に現れた理由の1つでもあったのだ。

 

「Oh nein,ich noch nicht einmal im kampfmodus?」

(訳:ま、まさかコイツ、今まで戦闘モードにすら入っていなかったんじゃ?)

 

 現に謎の存在は先程までハルナ達のみに見せていた慈愛が完全に消えていて、フードの奥にあるだろう右目が一瞬青く光ったのを見て、ガミラス空母艦隊の空母ヲ級フラッグ以外の者達に悪寒が強く走った。

 

「Fuer diejenigen,die aufs Meer hinausgehen,ist die Rippe eine Manifestion von “meine Ueberzeugung zu Tode durchdringen”…」

(訳:海を往く者達にとって、骸骨とは“己が信念を死ぬまで貫き通す”との表れ…)

 

 此の時から謎の存在のローブが青く発光しながら揺れだしていて、ガミラス空母艦隊は否応なく謎の存在の殺気や怒気を否応なく感じて早くも気後れしていた。

 

「Auch wenn kulturelle Braeuche eine andere Bedeutung ausdruecken moegen,ist es keine gute Sache,bereit,spielerisch und wie ihr zu leben!!!」

(訳:…文化思考で別の意味を表す事があるとしても……貴女達の様に生半可な覚悟や遊び半分で、纏い翳していい物ではない!!!)

 

 謎の存在が感情を極限まで高めると同時にローブが捲れ上がり……否、元々はマントであったそれは本来の形に戻って謎の存在の全身を……長い金髪を(ナビ)かせた美女を(サラ)し出した。

 そして謎の存在が纏っている赤を主体とした装束の腹部には、X字に重ねた大腿骨2本の上に頭蓋骨……地球の俗に言う愉快なロジャー(Jolly Roger)と呼ばれる骸骨の紋章が大きく描かれていた。

 最後に、謎の存在が戦闘(or本気)モードに移行する為に一旦閉じているも直ぐに開いた青い両目を見た時、ガミラス空母艦隊全員は“十死零生”の絶望を感じて一斉に硬直した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Was ist mit der Zwite Flotte passiert?」

(訳:第二艦隊、どうした?)

 

 天王星軌道の別の所から冥王星を目指していた、別のガミラス空母艦隊は突然自分達の所に入った通信を対応し始めたのだが、相手方は自分達の呼び掛けに全く答えず、悲鳴を上げているだけだったので戸惑うしかなかった。

 まぁ、悲鳴と同時に砲撃音と爆発音が聞こえていたから戦闘中だとは分かったが、問題は相手方は明らかに尋常ではない状況下であった上、交戦相手が誰なのかが全く分からなかった事だった。

 

「Ist die Zwite Flotte,YAMATO,erschienen?」

(訳:第二艦隊、ヤマトが現れたのか?)

 

 どうやら相手方はヤマトと戦っているのだと思ったらしいが、ヤマトかどうかの正否が無くも、ヤマトと戦っているとはどうしても思えなかった。

 

「Womit die Zwite Flotte kaemmpft!?」

(訳:第二艦隊、いったい何と戦っているんだ!?)

 

 駄目元で直球で尋ねたら、悪い意味での歳出局面に入ったらしい相手方が一際大きい悲鳴を上げ…

 

『Es ist eine Hexe!!!』

(訳:魔女だぁぁぁー!!!)

 

…最初で最後の交戦相手の関連情報を一斉に叫ぶと直ぐに通信が途絶した。

 

「……eine Hexe?」

(訳:……魔女?)

 

 此れだけで理解出来る訳がなかったので、全員が揃って茫然とするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 土星軌道 ―――

 

 

「……Vernichtung?

Ist die Zwite Flotte eine andere?」

(訳:……全滅?

第二艦隊が他共々?)

 

 天王星軌道の出来事は当然ながら装甲空母姫にも伝達されたのだが、やはり装甲空母姫もまた茫然としていた。

 

「Es ist kein Fehler!!

Einige der anderen Flotten suchten und rettenen die Zwite Flotte,und die Gesamtzahl der Schaeden hat fuenf Flotten erreicht!」

(訳:間違いありません!!

第二艦隊の捜索及び救助に向かった他艦隊も幾つか殺られて、被害総数は5個艦隊に及んでます!)

 

 “魔女”と呼称された謎の存在もそうだったが、装甲空母姫は太陽系制圧艦隊に大損害が出た事に唖然として、随伴の者達は各々にざわついていた。

 

「Sagt Erde,dass YAMATO eine weitere maechtige Schiffstochter erschaffen hat?……!」

(訳:地球はヤマトとは別の強大な艦娘を生み出していたと言うのか?………っ!)

 

 随伴の者達は理解出来ていなかったが、装甲空母姫は少し間を置いてから、A銀河のオリオン湾の多方面で謎の存在の襲撃を受けて全滅した件が相次いでいるとの報告に加えて、自分達艦艇型の超弩級の者達の一部に流れている噂が頭に浮かんだ。

 

 それは深海(GALMAN)の同胞・深海棲艦は、ある一時だけ現れた謎の艦娘(艦種は戦艦らしい)に超弩級だけでなく戦艦ル級を初めとした主力の大半を一夜で沈められた為に地球で逆転敗北をした。

 更にその謎の艦娘は二百と数十年が経過した現在でも生きているだけでなく、数多の大軍や強敵と戦い続けて未だに敗北を知らずにいるとの事であった。

 更に“あの御方”はガミラスに害をもたらすだろう此の謎の艦娘を警戒していて、本星で謎の艦娘の対抗兵器である超弩級の研究開発を進めていて、“あの御方”がヤマトに興味を示しているのは、ヤマトが謎の艦娘と何らかの繋がりがある為だとの最新の噂もあった。

 

 まぁ噂の真偽や、魔女が謎の艦娘との関連は分からないまでも、取り敢えずは魔女が驚異的であり、場所的に第七次冥王星沖海戦に悪影響をもたらす可能性があるのは確かであった。

 此の為、装甲空母姫が艦隊行動としてとるべき選択肢は“冥王星に向かって魔女襲来に備えて迎撃体制を整える“か“今すぐに天王星軌道に赴いて魔女を見つけて排除する”かの2択であった。

 地球艦隊がまだ冥王星軌道にいる現状に加えて安全性を考えたら前者1択であり、普段の装甲空母姫なら迷わず前者を選んでいたが、此の時の装甲空母姫は違い……ハルナ達10人の艦娘達が冥王星に向かっている事を知らない上に通達されていない事もあって、心の中の悪魔の囁きに耳を傾けていた。

 

「Hinweis an das allgemeine Persona!!!

Die Flotte zur Steuerung des Sonnensystems aendert den Zeitplan,rast mit allen Schiffen in die Umlaufbahn des Uranus und eliminiert unbestaetigte Feinde!」

(訳:総員に通達!!!

太陽系制圧艦隊は予定を変更、全艦をもって天王星軌道に急行して未確認の敵を排除する!)

 

 装甲空母姫が選んだのは後者、彼女にとって幸か不幸かは別として随伴の者達全員が揃って了解した。

 装甲空母姫の心の中に有ったのは、ミリューと自分を欺いた冥王棲鬼への憎悪だけでなく、ヤマトと同等かそれ以上かもしれない魔女の首を取る事で恩赦を得ようとする自己保身だけでなく、あり得るかもしれない本星への栄転の淡い思いであった。

 斯くして装甲空母姫は艦隊を率いて天王星軌道へ転進、全ての別動隊も了解の通信が次々に届いていて、近い内に天王星軌道に太陽系制圧艦隊の全てが集結する筈であった。

 

 此の艦隊行動によって、太陽系でのガミラスに長らく付き添っていた勝利の女神がその浮気癖を発揮し、代わりに執着心の強い疫病神が来てしまう事になる………即ち第七次冥王星沖海戦からの太陽系の最終的な勝利者が確定するだけでなく、A銀河で展開するガミラス全体に影響を及ぼす事になるなど、側近として“あの御方”の傍で自分が控えて寵愛を一身に受けている未来絵図を夢見ている装甲空母姫が知る訳がなかった…




 感想または御意見、或いは両方でも御待ちしています。

 今回のサブタイトルは、次に出る予定の謎の艦娘その2“住よい国”が出た時の状況や気分で変える可能性がありますが、まぁ“住よい国”は現時点では本人より先に真名が出る予定なので可能性は低いです。
 此処で言うのもなんですが、“翠星の女王”は要望や作者の思想転換をしない限りはガミラス編のみの登場として役目を終えたら宇宙の何処かにいってしまうとしていますが、“住よい国”はヤマトや作品の根底に繋がりがあるので、名前のみかもしれませんが、ガミラス編以降も出る予定であり、ヤマトしだいで白色彗星帝国編の最終回あたりに出る可能性があります。

霧島(台本を見てる)
「…す、“翠星の女王”って、貴方、とんでもない人を艦娘として出しましたね!!!
あの人、艦娘化しなくても無茶苦茶強いじゃないですか!!!」

 先に言っておきますが、“翠星の女王”は今回のは先行登場と言うべき形なので、冥王星編ではあと1回出るか否かの状態です。
 じゃないと、大和の存在が食われるだけでなく、“翠星の女王”にイスカンダルに行ってもらった方が良いとなる可能性がありますので…

 因みに、第12話(追加)と第47話……特に後者は左足の損失に上手い具合に持ってかれてますが、金剛の左頬に出来た傷はと言いますと、初期設定では金剛の遺体が艤装諸共、突然変異か何かが憑依して“翠星の女王”になったとしていた事の名残となってます。
 当初は“翠星の女王”は次元断層の該当話にてヤマト達を助けて、その事で代価を求めるも榛名を見て、何も求めずに去ってしまうとしていました。

霧島
「あ~…あのキャラの代わりって事。
あのキャラより“翠星の女王”の方が艦これに合いそうだしね」

 現在は設定を完全に変えてしまったので、今は“金剛=翠星の女王”ではありません。
 因みに今回は書きませんでしたが、“翠星の女王”の艤装の形は“木曾改二”“川内改二”“古鷹改二”の3者の融合体と言うべき物に近いとし、戦闘スタイルは“天龍”と“プリンツ・オイゲン”の折檻型(➕α)に近くとしています。

 あと、深海棲艦戦時の一時に現れた謎の艦娘は“翠星の女王”とは別の奴です。
 つまり“住よい国”か“エインティース”のどちらかです。

 さぁ次回からは、冥王星の収監組の脱走がいよいよ始まります。

霧島
「ウラカゼ達が白兵戦みたいなのをせざるを得ないと思うけど、今はどう考えているの?」

 取り敢えず今は“エンドオブホワイトハウス(&キングダム)”を見ながら考えています。

霧島
「……マイク・バニングみたいに滅多刺し等のナイフアクションがあるの?」


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第66話 艦娘達の脱走(前編)

――― 冥王星基地・監獄 ―――

 

 

「っ! 本当に来た!」

 

 クロシオのリンチからの連行からの数日後、スズツキ経由のクロシオの言葉を、まぁ個人個人に大小差は有れども、取り敢えずは各々に信じていた牢の駆逐艦娘達は来るかもしれない日を待っていて、遂にその証である震動が強弱を繰り返しながら長続きし……地対空ミサイルを連射している現れである事を確信して、ハツハルに見られる通りに艦隊が来た事を感じ取った。

 

「……し!」

 

 だが現在の牢獄で通常型達が戦艦と思われる者を主体とした数人が来訪していた為、スズツキがハツハルを静めていた通りに、その事を知られない様にしていた。

 

「Wie ist es?」

(訳:いかがですか?)

 

「Na ja, nicht schlecht」

(訳:うむ、悪くないな)

 

 艦娘達はクロシオの様に誰かが連行されるのではと邪推していたが、此の時の冥王星基地は別方面からの査察を受けていて、緊急時と言う事で簡易的な見回りが行われていたのだった。

 此の為にガミラスは駆逐艦娘達を連行する気は無かったのだが、日本駆逐艦娘達は査察官を務める戦艦と思われる者………艤装を着けていない上に大型バイザーで覆われている為に顎以外の顔が見えないといえ、長い黒髪を伸ばした頭部に着いた信号桁を模したヘッドギアやアームガード等に妙な在視感があった。

 しかも此の者は変に興奮している上に、大きく鼻呼吸を繰り返し……明らかに駆逐艦娘達の悪臭や状態を最大限に堪能していて、当然ながら駆逐艦娘達は何とも言えない身の危険を強く感じていて、取り巻きの重巡リ級達が出来る限り目線を合わせない様にしながら引いていた。

 

「ねぇねぇ、アレに見覚えがあるんだけど…」

 

「確か、あの戦艦娘って死んでたよね?」

 

「だけどアイツは冥王星沖で沈んだんだろう?」

 

「思いたかないんやけど、アレがガミラスへ離反したって事はあらへんよな?」

 

 ネノヒ、ムラクモ、ナガナミ、ウラカゼの4人が狸寝入りをしながらの小声での話し合いから見られる通り日本駆逐艦娘達はどうやら査察官がとある戦艦娘ではないかと疑っている様だった。

 

「Ae hm,bald an einem anderen Ort…」

(訳:あの、そろそろ別の所に…)

 

「Was denn? Immer nogut?」

(訳:え? まだ良いだろ)

 

「Schnell schnell!!」

(訳:お早くお早く!!)

 

 重巡リ級達はヤマト(達)襲来を理由として露骨に嫌がっていた査察官をほぼ強制連行の形で引っ張って、監獄から出ていった。

 

「……行った様だね」

 

「そうね」

 

 そのまま廊下の奥にへと向かって他共々気配な無くなって少し経過してから、査察官の視線を背中越しに感じた駆逐艦娘の多くが未だに悪寒で震えていたが、モチヅキ達4人は溜め息を吐いた後に起き上がって、遅れてムラクモ達4人も続いた。

 

「脱走するには、良い日だよね?」

 

 艦隊が来ている事もそうであったが、その艦隊目掛けて放たれ続けているミサイル発射の影響の震動、更に微かに聞こえる轟音がある現状は、脱走を為の爆破をするには絶好の好機であり、現にネノヒの提案にムラクモ達3人が頷き、現金な事に僅かながらの可能性を見出だした事からやる気を出したスズツキ達3人もが一斉に頷いた。

 

「…そんじゃ、やってきますか」

 

「……パンパカパンパン♪、パンパカパンパン♪ パンパカパンパンパァ~ン♪ 爆らぁ~い」

 

 早速、ナガナミとウラカゼは目線を合わせると、脱走の為の穴の蓋を外して、クロシオが盗んだ爆雷を片手に穴に順に入って、ウラカゼは脱走先の壁の方に、ナガナミはスズツキ達の牢の真下にへと、各々に向かった。

 因みに本来の予定では、ハツハルは兎も角として、スズツキ達3人の脱走は無かったのだが、先述の通りにやる気を出した事から爆雷の引き渡しは自分達も脱走に参加する事を条件にした為、爆雷が2個有った事もあって渋々了解したムラクモ達は突貫作業でスズツキ達の脱走穴を掘って、此の時までになんとか間に合わせる事が出来たのだった。

 

「あと30秒で爆発するぞ!!!」

 

 少しした後に、ナガナミが穴から勢いよく飛び出して報告して、既に爆破地点である便器の対角線上の反対側に移動していたスズツキ達4人は、意味があるかは分からないが、一斉に毛布を被った。

 

「爆雷つけてきたぞ!!!」

 

 少し遅れてウラカゼも穴から出てきて、ムラクモ達4人は揃って穴から離れて毛布を被った。

 

「……よしあと10秒…」

 

 爆発の時が近づくまでに、ナガナミが体感で残り秒数を報せながら8人は何とか気を保とうとしていた。

 

「…8……7……6……5、おぉぉーん!!?」

 

 予定では、少しでもガミラスに悟られない様に2ヶ所同時に爆破を行う筈だったのだが、ナガナミが5秒前を伝えた直後にスズツキ達の所の便器が上昇する形で爆発し、スズツキ達4人が“えっ!?”と顔を出して便器を振り向いて直ぐに爆発の砂塵に飲み込まれてしまった。

 ムラクモ達4人はスズツキ達4人の牢獄が砂煙で満たされた光景に唖然としていたが、今度は予定通りにウラカゼの爆雷が起爆して、脱走穴から派手に砂煙が吹き出して、此方は無意識の内に毛布を被った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・????? ―――

 

 

「……爆発、2。

ミサイル発射のじゃないわね」

 

 此の時、ガミラス冥王星基地の何所かにいる者が、場所は特定出来なくても、爆破が行われた事を察していた。

 

「ガミラスがムツの先代みたいな爆発事故を起こした訳じゃなさそうね」

 

 どうやら何となくであったが、爆破は脱走を試みた艦娘達によって行われたのも察していた。

 

「させと、ガミラスは此の事に気付いていたかしらね?」

 

 その者は、脱走した艦娘達が自分の所にも来るのではと思いながら、ガミラスから拝借した缶詰飯を食べるのを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・監獄 ―――

 

 

「……成功、したかの?」

 

「そう見えるね」

 

 ウラカゼが爆破の余波が収まったのを察して毛布を捲って、ネノヒ達3人もそれに続いたら、自分達の牢獄がほぼそのままの形で砂埃まみれになっている光景があった。

 

「それより、ハツハル達はどうなった?」

 

 更にムラクモの指摘から4人揃ってハツハル達の方に振り向くと、その当人達は若干残っている砂煙に各々に噎せながら砂煙を払おうとしていたが、取り敢えずは全員無事のようだった。

 ついでに言うと、ムラクモ達から見た感じだと便器はしきりごと完全消滅していて、4人揃って全身砂まみれになっていたが、既に悪臭漂う垢まみれの状態だったので、誰もその事を気にしていなかった。

 

「……ナガナミ………まさかと思いますけど…」

 

「……わりぃ、時限信管の調整、間違えたみたい」

 

 どうやらナガナミの爆雷が早く爆発したのは調整ミスであったらしく、スズツキに指摘されるまでもなく自分でもそう思ったナガナミは右手を縦にしながら謝った。

 

「…後で殴らせて」

 

 只、ナガナミが笑っていた事もあって、彼女から誠意があまり感じられなかった様で、モチヅキの額に血管が浮かんでいた。

 

「それより穴は無事か?」

 

「……大丈夫だ。

入り口が少し崩れてるが、なんとか通れる。

そっちの方は?」

 

「今から見てくる」

 

 まぁスズツキ達4人が無事だった上に、警報が鳴っている気配がない事からガミラスは2つの爆破に気づいていないとの判断から、マツカゼがウラカゼに言われて爆破箇所を確認して脱走が可能と伝えて、マツカゼの質問返しにナガナミが穴に入って確認しに行った。

 

「取り敢えず穴は無事。

ちゃんと爆破は出来てた」

 

「じゃあ、行くわよ!!」

 

 少しした後に一旦戻ってきたナガナミの報告で、ムラクモは脱走の実施を決断、ウラカゼ以下の6人の顔を順に見て、彼女達が次々に頷いていた。

 

「……ムラクモ、後は任せたぞ…」

 

 ムラクモは最後にハツハルを見たのだが、残念ながらハツハルは先日からクロシオと似た病状を引き起こしていて、現にハツハルは嘔吐しそうな程に咳き込き続けていると、スズツキに背を擦られていて、当然ハツハルは此の状態故に脱走には足手まといと自他共に判断して此所に残る事となった。

 だが残留したハツハルが脱走に気づいたガミラスに苛烈な事をされるのは目に見えていて、そうでなくてもハツハルの体調が危険域であるので、スズツキ達同居人3人やムラクモは引き摺ってでも彼女を連れていきたいとの思いは有ったが、現実的には難しかった上にハツハル本人が拒絶しているので、後ろ髪を引かれる思いで彼女の要望通りに残すしかなかった。

 

「待ってなさい、ハツハル。

必ず助けを呼んで戻ってくるからね!」

 

 ムラクモは拒絶反応として歯軋りをした後に、事実上の別れの言葉を告げ、ハツハルは横になりながら微笑んで敬礼した。

 更にハツハルはスズツキ達3人を突き飛ばす形で行くように命じて、スズツキ達はそれに従って脱走の穴に順に入っていった。

 

「ナガナミ、行くわよ!」

 

「おう!!!」

 

 ムラクモはモチヅキが最後に穴に入るのを確認してハツハルの顔をもう1度見た後、ナガナミを先に行かせて自分も穴に入ってネノヒも続いた。

 

「みんな、もう少しや!!!

あともう少しで地球に帰れるで!!!」

 

 ウラカゼはネノヒが穴に入って先に進んだ後にハツハル以外の駆逐艦娘達に力の限りに叫んで穴に入った。

 まぁウラカゼが返事等を待たずに行ってしまうも、そう言うのが一切無かったものの、自分達に期待する思いみたいなのを感じ取ってはいた。

 

「おっしゃ!!!

穴開いて通れるぞ!」

 

 ウラカゼが穴に入ってスズツキ達3人を背にナガナミ達を追い掛けてようも四つん這いで狭い穴をいた時、そのナガナミ達は既に爆破箇所に辿り着いていて、先頭のナガナミが爆破箇所が通過可能である事を暗い中で何とか確認した。

 だが問題はその先に有ったモノで、人が何とか通れそうな広さはあったが、どうも廊下でも部屋でもなさそだったのだ。

 

「……あ! コイツは…」

 

 此の為、ナガナミは体を伸ばして手探りで確かめていたらそこは傾いていて、慌てて引っ込めたナガナミの右手をの指先を何かが掠めながら通り過ぎて、掠めた物が柔らかかった上に指先を嗅だら生臭い臭いがした事で、ナガナミは何があるのかを察した。

 

「どうした、ナガナミ?

通れなかったの?」

 

「いや、通れそうだけど、此の先のはゴミの廃棄構なんだ」

 

「…その先に行っても大丈夫そう?」

 

「駄目だ。

先が見えないから分かんね」

 

 此の間に後続のムラクモが来て、止まっていたナガナミから通過不可を疑うも、ナガナミの返事から彼女と共に進むべきを悩んだ。

 

「どうしたの、ムラクモ?

早く進んでよぉ~」

 

「えっネノヒ!?」

 

「ちょっ、ちょっ、待て!!!

なんか崩れる、なんか崩れそう!!!」

 

 そんな2人の後ろにムラクモより遅いペースだったネノヒが到着し、先の事を知らない彼女はムラクモを推したのだが、ナガナミが真下の地面が嫌な予感を感じさせる音が響いた上に気持ち傾いた気がしたから慌てて2人を止めて後ろに下がる様にしようもしたが…

 

「……あ…」

 

「「……嘘…」」

 

…ネノヒとムラクモの中間点から地面が折れる形で崩れてしまい、ナガナミとムラクモは思考停止状態で落下、ナガナミが尻餅を着く形で廃棄構に落ちて直ぐにムラクモが落ちてナガナミにおんぶの形で背後からしがみついた直後、思っていた以上に急勾配だったので急加速をして2人揃って悲鳴を上げて滑り落ちていった。

 

「ネノヒ、どした!?」

 

「…ムラクモとナガナミが落ちて滑っていった」

 

「……はあ?」

 

 此の直後にウラカゼが到着したのだが、ネノヒの呆然としながらの返事に素っ頓狂な声を出すしかなかった。

 

「嫌ぁぁぁー!!!」

 

「ケツが熱い!!!」

 

「えっ何!!?」

 

「ケツが熱いんだよぉぉぉー!!!」

 

「えっ何ぃ!!?」

 

「ケツが燃えるぅぅぅー!!!」

 

「ああー!!!

血圧が高いって事ぉぉぉー!!?」

 

 ネノヒやウラカゼ達を他所に、ムラクモとナガナミは室内コースターと言うべき状態で滑り落ちていて、暗闇の中を訳も分からずに(多分)高速で進んでいた為にムラクモがパニクっていたが、ナガナミはしがみつくムラクモの分の体重の影響分もあって尻に走る激痛で悲鳴を上げていたが、そうこうしている間にゴールと言うべき空間に到着して、2人揃って浮遊感を感じた直後にそのまま墜落……更に遅れてきた崩れた地面が2人の上に落下した…




加賀
「作者に代わりまして、感想または御意見、或いは両方を御待ちしております」

赤城
「……作品冒頭のって、やはり長門ですよね?
あの戦艦娘って死んでる上に本編出入り禁止だった筈では?」

加賀
「アレは第54話の感想欄でヤマト達より先に冥王星を襲撃しようとしたコスモゼロさんの所の長門に対しての、手打ちの1つとしての特別処置だったのですが…」

赤城
「コスモゼロさんの所の長門じゃない疑いがあるのですか?」

加賀
「裏で今回の出演を巡っての長門ファイトが行われたらしく、何処の長門なのかが分からないそうです」





赤城
「最後に1つ、前回先行登場した“翠星の女王”の正体が読者の多くが断定したとして公表しますが、本作ではかの伝説の銃が5丁存在するとしているそうです」

加賀
「現時点では5丁の内のNo.0とNo.3は所在不明、No.2は“翠星の女王”が所有、No.4は“住みよい国”が所有、そして最後のNo.1は大和が銀河間航路で手に入れるとしています。
作者の閃きや気分しだいで、“翠星の女王”はNo.2をとある艦娘に譲渡して、実は持っていたNo.0に持ち変えるかもしれないそうです」



















































赤城
「それで私達の所の長門はどうしたのです?
作者も見当たりませんし…」

加賀
「ええ、作者は多分落ち度はなかった筈なのにですね…」




























陸奥
「長門は何処!!?
駆逐艦娘達にトラウマを負わせかねない変態行為をした、あのロリコン変態戦艦は何処に行ったの!!?」






加賀
「長門なら、誘拐当然に連れてった作者と一緒に、アフリカでユニセフの活動をしてますよ」

赤城
「だから陸奥、マークハンドを着けてゴルディオンハンマーを持たないで!!!
ああ、金色発光をし出した!!!」


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第67話 艦娘達の脱走(前中編)

 今回の投稿前に“設定 艦娘”での未所有故の登場不可から“ガングート”“コロラド”“ジュゼッペ・ガリバルディ”“八丈”“石垣”の計5人を外して、“コロラド”はメリーランドと交代する形で暗黒星団帝国編で、“ガングート”はSUS編で、“ジュゼッペ・ガリバルディ”はガルマンガミラス&ボラー編にと、各々に出るようにしました。

 更にジュゼッペ・ガリバルディのみは姉のルイージ・ディ・ザヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィと共に、第35話にムツィオ・アッテンドーロとライモンド・モンテクッコリと各々に入れ換える形で出しました。




 それでは本編をどうぞ。



















…フレッチャー級の2人は、もう無理だろ!!!


――― 冥王星 ―――

 

 

「……此処は飛び降りるしかないよ」

 

 脱走してから落下による強制先行したナガナミとムラクモの後を追って、ネノヒ達は壁を伝う手段で許容範囲での早さで廃棄構を降りていき、その先の空間への入り口に辿り着くと、ネノヒは梯子等が見つからない為に飛び降りる事を後続のウラカゼ達に振り向いて伝えると………鼻を引き千切りたいと思う程の激臭からの拒絶反応と大きく溜め息を吐いた後に飛び降りて、高さ的に無事に降り立てて着地点が問題ない事を伝えた。

 只、着地点からの足裏からの感触が嫌に柔らかかったのを気にしていたが…

 

「…っ、あ!?」

 

「お?」

 

 ウラカゼ達もネノヒに続いて順に降りていき、最後尾のモチヅキが滑って飛び上がって避けたマツカゼの下を通って落下し、最後となったマツカゼがモチヅキとは別の所に降り立ったが、足裏に気色悪さを感じて右足を上げて裏を確認した。

 

「…っ! 腐敗した残飯だ!!」

 

「ガミラスもご飯を食べているって事ですね」

 

 モチヅキを介抱していたスズツキは、マツカゼが右足裏の腐敗物を悲鳴を上げながら払っている事に、笑っていたが、此の時にウラカゼがある事に気づいた。

 

「…ムラクモとナガナミは?」

 

 ウラカゼの指摘にネノヒも“あっ!”として、2人揃って直ぐ辺りを見渡すもムラクモとナガナミが見当たらなかった為、2人が移動したのかと思ったが…

 

「……此方、此方よぉ~…」

 

…よほど早く滑り落ちた為なのか、ウラカゼ達の着地点から離れた場所で、ムラクモは少し埋まった状態で呼んでいた。

 

「ムラクモ、大丈夫?」

 

「身体中が痛いわよ」

 

 ネノヒがウラカゼと共にムラクモの傍に来て、2人がかりでムラクモを引っ張り出しての確認をしたら、ムラクモは打ち身で一時だけ踞った。

 そんなムラクモの傍にナガナミもいたのだが、何故か彼女は突き上げた尻を両手で押さえながら臥せって呻いていた。

 

「アンタ、イスラム教徒にでもなったん?」

 

「……ケツが痛いんだよ、ケツが…」

 

「あ~…こりゃ酷いな。

せやけど、死にゃあせんから、気をしっかり持ちい!」

 

 ウラカゼが確認したら、ナガナミの尻は薄皮が広範囲に刷り剥けていて痛がってるのも納得出来たが、ウラカゼが気合いをいれる為にそんな状態の尻を強く叩いた為にナガナミが悲鳴を上げた。

 

「やはり此所は廃棄物集積所ですね」

 

 取り敢えずはナガナミが尻を押さえながらも立ち上がった時に、スズツキ達3人もウラカゼ達の所に近付いてきていて、牢獄よりも明度が低い照明で足元の現状を確認するだけでなく、奥の方で何かが大量に落ちる音がした事から、自分達の居場所を確認した。

 

「…取り敢えず、此所から出れるかしらね?」

 

「照明があるって事は人が入る事を想定していると思うから、たぶん出入り口はあると思える」

 

 ムラクモとマツカゼの話し合いによる状況判断で、先ずは出入り口を探す事として、取り敢えず辺りを見渡しながら歩き出していると、ムラクモがある場所を踏んだ左足の裏に痛みを感じて左足を上げながら確認すると、左足の裏に軽い切り傷が出来ていた上にささくれた金属棒みたいなのが埋まっていたので、ムラクモはその先を掴んで引っ張り出した。

 

「……っ!?

此れ、ル級の主砲の砲身じゃない!」

 

「他にも有んな。

此所には金属ゴミも捨てられてんだ」

 

 ムラクモは持ち上げた物に妙な在視感があったので、眉間に皺を寄せて記憶を探って導き出し、その答えは戦艦ル級の部品の1つだと察して思わず叫んでしまって、その近くでナガナミが色々な金属類を掘り起こしては捨てるを繰り返していた。

 そんなムラクモにモチヅキは小馬鹿にする様に笑って先に進んだが、少しした後に何かに蹴躓いて前のめりに倒れた。

 

「何なのよ、此、れ……っ!?」

 

 モチヅキは少し機嫌を悪くしながら、自分が蹴躓いて変に軽い音を響かせながら転がった物を拾い上げたが、暗いながらも確認して直ぐにギョッとした。

 

「が、骸骨だぁぁぁー!!!」

 

 モチヅキが蹴躓いた物とは白骨化した人の頭であり、更によく前方を確認したら、白骨化しなくても腐敗した死体が幾つも転がっていた。

 

「まさか、此所には遺体も捨てられているの!!?」

 

 ムラクモが他共々ギョッとしていたが、此の現状から言えるのは、ガミラスには“ゴミの分別”や“死者への礼節”に“もったいない精神”が全くない事を感じ取れた。

 そんな事からムラクモ達は揃って硬直固していたが、7人の背後の地面が2ヶ所同時にもり上がりだし………ある一定の処で何かが同時に飛び出して7人各々に驚きながら飛び退いたが、スズツキだけは出てきたモノの状態を見抜いた。

 

「…あ! 長10cm砲ちゃん!!!」

 

 出てきたのはアキヅキ級駆逐艦特有の艤装の一部である長10cm砲ちゃん2人であり、嬉しそうに跳び跳ねている長10cm砲ちゃん2人に駆け寄ったスズツキの反応を見る限り、此の2人はスズツキのモノである様だった。

 

「何で、スズツキのが此所に?」

 

「此の子達の話ですと、壊れたフリをしながら此所に逃げ込んで、私が来る等の可能性を信じてスリープ状態でい続けたそうです」

 

 言っているのがスズツキ以外は分からなかったが、艤装の一部品でありながらも可能性を信じて待ち続けていた長10cm砲ちゃん2人にムラクモ達は感心していた。

 

「でソイツ等は武器として使えるのか?」

 

「駄目ですね。

ですけど、代わりの物を多数拾い集めたって言ってます」

 

 ナガナミは10cm砲ちゃん2人を武器として期待したが、残念ながら2人揃って頭の砲身が2門とも折れていた為に武器としては使用不可だったが、その代わりとして長10cm砲ちゃん2人は腹部の装甲を開いて……一方からは首輪型の気圧シールド発生機7個とヘッドホン型の通信機1個が、もう一方からは……なんとガミラスの光線式拳銃が7挺も出てきた。

 

「おお、やってくれるね!」

 

「此れ、どっから手に入れたの?」

 

 マツカゼとモチヅキがシールド発生機を首に着けながらガミラスの拳銃に驚いていたが、他の5人も同様であった。

 

「そんな事より、コイツ使えんのか?」

 

「……大丈夫。

基本的な構造はコスモガンとほぼ同じ様だし、生体式認識装置等は着いてなさそうよ」

 

 それよりもガミラスの拳銃が使えるか否かであり、現にウラカゼがその事を気にしていたが、ムラクモが簡単であるも調べた範囲では使えると判断した。

 

「それじゃ、使えるかを試さないとねぇ~…」

 

「…っ! 待って!!!」

 

 まぁそれでも確証が欲しい事は確かで、此の事(➕α)でネノヒが適当な物を標的としての拳銃の試し撃ちをしようとしたが、スズツキが何かに気づいてナガナミの手を押さえた。

 スズツキの行為にナガナミがムッとしたが、他の者達も自分達のとは別の足音が聞こえ、しかも近づいてきている事に気づき、辺りを見渡して気付いた近くにあった小山の影に急いで隠れた。

 隠れて直ぐにスズツキとマツカゼが慎重に顔を少し出して確認すると、懐中電灯みたいなのを翳した人型が複数歩いてきていた。

 

「…何がおるん?」

 

「……チ級だ。

それも6人」

 

 逆光で見え難かったが、マツカゼのウラカゼへの返事で接近者が6人の雷巡チ級である事にウラカゼ達5人がギョッとしたが、少しした後にネノヒが何かに気づいた。

 

「ねぇねぇ、何でチ級が足音出せるの?」

 

 ネノヒの指摘でウラカゼ達も“あっ”としたが、雷巡チ級は上半身こそ女性の人型で下半身はサーフボードのみの存在だったから、確かに足音が出せれるとは思えなかったからだ。

 だがその答えは雷巡チ級達が艦娘達が潜む小山を直ぐ脇を過ぎた時に分かる事が出来た。

 

「……足だ。

あのチ級達には義足が着いてる」

 

「そう言えば、旧ソ連で深海棲艦の陸戦戦力としてチ級の陸戦型が存在したって資料がありました」

 

「て事はアイツ等はチ級の陸戦型、ガミラス基地の警備兵って事か」

 

 マツカゼの報せに全員が“えっ?”としたが、直ぐにスズツキが過去の資料を思い出して、続けてナガナミが該当する存在を指摘して苦虫を潰していた。

 

「不味いですよ。

チ級はマシンガンを持ってます」

 

 だが雷巡チ級達で問題にすべきなのはビームマシンガンを手に持っていた事であり、スズツキがその事を伝えた事から全員が頭に思い浮かべたのは“自分達の脱走が気付かれた”であった。

 当然ながら、まともにやりあったら雷巡チ級達に分があるのは目に見えていてウラカゼ達は嫌な冷や汗を掻いていたが、スズツキとマツカゼは雷巡チ級達が自分達を探している様に見えず、その現れとして雷巡チ級達はビームマシンガンの銃口下に着けた小型懐中電灯を前方と言うよりも下方に向けて左右に振っていた。

 此の為、スズツキとマツカゼは何かあると判断してお互いの目線を合わせながら頷くと、スズツキは通信機を着けると匍匐前進で雷巡チ級達を追いかけ、少しした後に雷巡チ級達が一斉に立ち止まるとスズツキは急停止して息を潜め……何事もないと判断したら通信機の翻訳機能を起動させて雷巡チ級の近くに忍び寄った。

 

(翻訳機能オン)

 

「有った有った!!

此所に落ちてた!」

 

「もう、銃なんて間違って捨てないでよね」

 

 屈んだ雷巡チ級の1人が足元から拳銃を拾い上げながら立ち上がった事に他の雷巡チ級達が一斉に溜め息を吐いての会話から、スズツキは雷巡チ級達は私的な事で此所に来たんだと察し、自分達の脱走がガミラスに気付かれてもいない事も察して背後のマツカゼ達に危険が無い事を手信号で伝えた。

 

「気を付けてよ。

巻き添えでこんな所に来るなんてかなわないんだから」

 

「だってぇ~…銃無くした事が冥王棲鬼に知られたら、アホみたいに始末書を大量に書く事になるんだよ」

 

「ホント、あの黒豆のおチビちゃんは変な事に厳しいからね」

 

 スズツキがどう思ったかは置いておき、どうやら雷巡チ級達の雑談だと、冥王棲鬼は案外通常型の者達から嫌われている様だった。

 

「しかも最近おチビちゃん、機嫌が悪いしね」

 

「あれが原因じゃない?

最近、戦闘糧食が変に減ってるからじゃない?」

 

「どうせまたヲ級の誰かが銀蝿(飯泥棒)をしてるんだよ」

 

「嫌だねぇ~…ヲ級のとばっちりを私達が受けるかもしれないんだから…」

 

「そう言えば、警備班の一部がまた所在不明になったんだよね?」

 

「また黒豆おチビちゃんが八つ当たりで粛清したんだよ!」

 

 スズツキは冥王棲鬼の悪口合戦の一部からアカギと(故)ガガを思い浮かべ、何処の世にも大食艦の空母がいる事が分かって笑ってしまった。

 幸い雷巡チ級達は雑談で夢中の為にスズツキに全く気づかなかったが、雷巡チ級の1人が右耳の通信機に手を当てて、少しの間だけ対応した後に仮面越しでも分かるぐらいに渋い顔をした。

 

「……艦隊としての出撃命令が出たよ」

 

「え~…私達もヤマトと戦えっての?」

 

「いや、苦戦してるリ級達を助けながら空母と戦えってさ」

 

 出撃命令に雷巡チ級達は冥王棲鬼への悪口を最大限に言い合いながら移動を急ぐ事なく開始したが、スズツキはヤマトが冥王星に来た事の確証を得て固まっていた。

 

「……よし」

 

「やるか」

 

「駄目駄目!」

 

「撃とうとするな!」

 

 モチヅキとナガナミはまた自分達の近くを過ぎようとする雷巡チ級達が隙をこれでもかと見せている為に奇襲をしようと拳銃を身構えたが、直ぐにネノヒとムラクモが取り抑えた。

 

「阿呆、アイツ等が来たっちゅう事はどっかに出口があるって事や」

 

 当初はモチヅキとナガナミはムッとしたが、ウラカゼの指摘を直ぐに納得した。

 少しした後にスズツキが戻ってきた時に雷巡チ級達は結構な遠くに行っていたが、彼女達の明かりで遠くからでも居場所を確認する事が出来た。

 で、ウラカゼとムラクモを先頭とした7人は、雷巡チ級達を慎重に尾行し続けていると、突然雷巡チ級達が一斉に止まってから1人ずつ上昇していき、先頭の者が天井扉を開けると順に入っていって最後の者が過ぎて直ぐに天井扉が閉じた。

 

「…彼処が出口ね」

 

「やな」

 

 念の為に少し間を置いてから、ムラクモとウラカゼは目線を合わせて頷くと、出口方向へ走り出し……壁に辿り着くと辺りを調べると、ウラカゼの左手に壁に刺さったフックが当たって、よく確認するとその上下に同じ物が多数有った事から此れ等が梯子の一種だと判断した。

 ウラカゼはムラクモや後続のマツカゼ達に順に目線を向けて頷くと、一息を置いて梯子を上っていった。

 

「…ロックとかある?」

 

「……あかん、電子ロックがある」

 

 ウラカゼは天井扉の手前まで昇ると電子ロックのパネルを見つけたのを報せた為、ムラクモ達が舌打ち等で各々に悔しがった。

 

「…ちょい待ち。

此のパネル、壊れてる」

 

 だがウラカゼはパネルに違和感を感じてボタンを幾つか押してみたら全くの無反応、よく確認したらパネルが壊れていたのが分かって下のムラクモ達共々“えっ?”とした。

 

「じゃあ、扉は?」

 

「いけるいける。

ロックされてへん」

 

「……呆れた。

ガミラスっていい加減なんだ」

 

「管理がなってないわね…」

 

 此れで通行可能だとは分かったのだが、此の事はモチヅキとムラクモの会話に見られる通り、嬉しさよりガミラスへの呆れ具合が強かった。

 まぁ取り敢えず、ウラカゼを天井扉を僅かに開けてその先に誰もいないのを確認してから、順に天井扉を通っていったのだが、実は色々と勘違いがあった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・管制室 ―――

 

 

「Verdammt noch nal!!

Jemand hat die Muellabfuhrttuer geoeffnet!」

(訳:くそ、まただ!!

誰かが廃棄物集積所の扉を開けたぞ!)

 

 ウラカゼ達は知る訳が無かったが、廃棄物集積所の天井扉が開いた事は冥王星基地に数多ある小型管制室の1つで確認されていたが、其所(ソコ)を任されていた重巡リ級の1人は画面越しに毒づいた。

 

「Ich habe dir geraten,nicht so viel einzusteigen!」

(訳:あれほど勝手に入るなと忠告したのに!)

 

「Weil ich nicht helfen kann,werde ich vorsichtig sein」

(訳:仕方がないから、私が注意してくるよ)

 

 実はガミラス冥王星基地では、何故か廃棄物集積所への出入りが相次いでいて、此の事に冥王棲鬼は基地が汚れるとして度々雷を落としていた為に、冥王棲鬼の八つ当たりが来る事を頭に思い浮かべてしまい、もう一方の重巡リ級は呆れながら溜め息を吐いてから注意をしに向かったが、扉を開けて管制室から出た直後に何者かに頭を扉に叩きつけられて怯んだ隙に顎下に右腕を回されて、呻き声を軽く上げながら抵抗しようとしたが、そのまま背後に引き摺られていった。

 当然、画面を睨んでいた重巡リ級ら凄い音がした背後を慌てて振り向き、ばたつく同僚の両足が見えなくなった直後に嫌な音が聞こえたので、少し硬直してから拳銃を取り出して、怯えながら身構えてゆっくりと扉付近に歩いていった。

 

「…aber was ist passiert?」

(訳:…ど、どうしたんだ?)

 

 そして退室すると同時に両手で持った拳銃を前方に突きだそうとしたが、その直前に自分達と肌の色が違う左手に両手首を掴まれ直ぐに対の手が持った短刀が自分の腹部に突き刺さった。

 此れだけでも衝撃だったが、思考停止による硬直をした重巡リ級をお構い無しで短刀を抜いてはまた突き刺すのを素早く数度繰り返した。

 滅多刺しになりながら重巡リ級は悲鳴を上げようとしたが、相手はその事を察して左手で重巡リ級の口を押さえた直後にトドメの一撃として短刀を左側頭に突き刺した。

 重巡リ級を刺殺した何者かは、他に誰もいなければ此所に来ようとする者達が無いのを察して、取り敢えず廊下に捨てていた首が変に垂れた重巡リ級の死体を管制室に引き釣り入れてから扉を静かに閉めた。

 何者かは重巡リ級2人の死体から拳銃と短刀を奪うと、少し見つめてからコンソールを操作して画面の監視映像を何度か取り替え……ウラカゼ達7人が身を潜めながら廊下を進んでいるのを見つけた。

 

「……あぁ~…工厰区画ね…」

 

 何者かはウラカゼ達の居場所を特定して、向かうだろう場所を予想した後、重巡リ級の死体を使って生体認証をしてから色々操作をして、冥王星基地の監視装置等の止めれる物全てを停止させた。




 感想または御意見、あるいは両方を御願いします。

 今回お披露目に近い形での雷巡チ級の陸戦型が初登場となりましたが、個人的には義足の形は真ゲッター2に近いのにしています。
 雷巡チ級陸戦型はガミラスだけでなく深海棲艦にもいたとして、今回のニュートラルに近い“突撃型”の他に“偵察型”“擲兵型”“工作型”等(但しガミラス版と深海棲艦版とは若干の差があり)、ガミラス(&深海棲艦)屈指のバリエーションが豊富です。
 陸戦型は重巡リ級にもあり、更に極少数ですが戦艦タ級にもあるとしています。

大和
「…さっそく、マイク・バニングをやらかしましたね」

 分かっている人もいるかもしれませんが、廃棄物集積所のパネルを壊したのも此の人です。

 前も書いたと思いますが、コイツは第一次木星沖海戦で死んだと思われた艦娘で、ちゃんと第46話の本編にも出てますよ。

 そして次回の最後でウラカゼ達と合流して、誰なのかが分かります。


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第68話 艦娘達の脱走(後中編)

――― 冥王星 ―――

 

 

「Aufraeumen,Aufraeumen,Runrun♪」

(訳:おっ掃除、おっ掃除、ルンルルン♪)

 

「……アタゴみたいな変な歌ね」

 

 脱走からの廃棄物集積所から廊下に移った後、当てもなく冥王星基地を静かに移動していた処、枝分かれ地点にてやり過ごした変なスキップをしていた重巡リ級の事を言ったモチヅキに、他の6人が思わず苦笑した。

 

「でもどうするんだ?

何時までも基地をさ迷っている訳にはいかないぞ」

 

「やっぱり見取り図とか欲しいよね」

 

「だけど、それが何処にあるのかが分からいんだよ」

 

 やはり問題なのは、基地からの脱出路を早く見つけないといけず、その事をマツカゼとネノヒが話し合うも解決への糸口がどうしても思い浮かばなかった。

 

「……あ、不味い」

 

 だが此所はガミラスの冥王星基地内部であり、現にガミラスの警備兵や警備ロボットだけでなく通行人も相次いでいて、現にウラカゼが自分達の所に近付いてくる存在に気付いて直ぐに安全そうな廊下の先に進んだ。

 

「そう言えばスズツキ、通信機使えないの?」

 

「……駄目です。

妨害電波系統が原因で何も反応しません」

 

「基地内部にも妨害電波を出しているのかよ…」

 

 牢獄でもお馴染みの警備ロボットをやり過ごした後、ナガナミが通信機の使用をスズツキに頼むもそれが出来ず、基地秘匿の為のガミラスの徹底ぶりにナガナミが唖然とした。

 だがそのわりには一時的に照明が時折落ちる事に呆れていたが…

 

「あ、でも、さっきチ級達は通信をやってたよね?」

 

「たぶんガミラスは室内ネット(イントラネット)の一種でやってると思うよ」

 

「それじゃあ、外とはどうやってるの?

例えば宇宙にいる艦隊にとか…」

 

 ネノヒが子供じみた疑問をマツカゼに問い掛けていたが、ムラクモが手を叩いて此処から糸口が見い出した。

 

「きっとガミラスは、外部通信を基地から離れた場所にあるやろう通信設備でやってる筈!」

 

「そしてそれは有線式で繋がってる!」

 

 ウラカゼの指摘にムラクモも乗っかり、基地から出るには通信設備を見つけるしかないとし、全員が頷いてそれを当面の最終目標とした。

 

「だとしても、武器が無さすぎるよ」

 

 だがマツカゼの指摘通り、ガミラスが拳銃数丁で脱出を許す警備をやっているとは思えず、間違いなく強行となるのが目に見えているから先ずは協力な銃火器等の獲得を目指すしかなかった。

 

「どうすんだ?

その辺から掻っ払うか?」

 

「……あ!!

この先は駄目!」

 

 ナガナミが誰ともなくぼやいた時、モチヅキが十字路の左に曲がった先に複数の雷巡チ級が雑談しているのを見つけて、後続の6人を止めた。

 

「…行くか」

 

 モチヅキと共に角から覗いたムラクモは、上手くいけたら気づかれないと判断して、他の6人も次々に頷いて結構としなった。

 先ずはマツカゼがスライディングで十字路を抜けて、次にウラカゼがネノヒがハイハイで抜けた。

 

「あ、止て!」

 

 今度はナガナミが行こうとしたが、雷巡チ級の1人が自分達の方に振り向こうとするのを察したムラクモが彼女を止め……その雷巡チ級が何故か暫く見つめていた後に同僚達の方に向いたのを確認してから、ナガナミとネノヒが走り抜けた。

 

「早く早く!」

 

 また雷巡チ級の何人かが何度か振り向いた後、マツカゼの催促でムラクモが駆け抜け、最後にスズツキが慎重に見極めてから長10cm砲ちゃん2人と共に駆け抜け…

 

「「「「「「…あ!?」」」」」」

「…っ!?」

 

…その途中で長10cm砲ちゃんの1人が蹴躓き、その事に気付いたスズツキがもう一方の長10cm砲ちゃんと共に止まってしまった。

 

「阿呆!!!」

「馬鹿!!!」

 

 幸いな事に、ムラクモとネノヒが直ぐにスズツキと長10cm砲ちゃんを各々に引き寄せ、長10cm砲ちゃんは倒れる直前にウラカゼとナガナミが2人係りでダイビングキャッチをしてマツカゼとモチヅキが2人の引っ張った。

 此の直後に雷巡チ級達が一斉に振り向き、ナガナミの髪先を勘違いと思える一瞬だけ見た事から少しした後に十字路に近づいてきたが、この間にムラクモ達は急いで先に進んで角を曲がっていた。

 

「……危なかった…」

 

 危機一髪だった状況にムラクモが他共々溜め息を吐いて、ナガナミが抱えていた長10cm砲ちゃんの頭を殴った。

 

「あ、此所!!」

 

 ネノヒが自分達がいる廊下に幾つか扉がある事に気付き、早速全員で固まりながら扉を1つ1つ慎重に調べたが、その全てに鍵が掛かっていて見た処だと他のも全ても同じ様だった。

 此の為、全員が残念がった後に他の所に移動しよう思っていたが…

 

「っ! 長10cm砲ちゃん!!?」

 

…何かに気付いた長10cm砲ちゃんが2人揃ってスズツキ達から走って離れていき、スズツキは気付いて直ぐに追い掛けて、他の6人も目線を合わせながら首を傾げた後に続いた。

 長10cm砲ちゃん2人はある所で止まると、跳び跳ねながらスズツキ達に目の前の扉を示した。

 

「…長10cm砲ちゃん、此所に何かあるの?」

 

 長10cm砲ちゃん2人が示したのは明らかに他とは違う二枚式の大扉であった。

 勿論、ナガナミとマツカゼが開けれるかを調べたが、他と同様に鍵が掛かっていた。

 

「……コイツはカードロック式だな」

 

「壊してみる?」

 

 マツカゼ達も大扉の先に何を感じていた様で、ネノヒが拳銃を翳してパネルを壊そうと示した。

 だがウラカゼが左手先のT字路の曲がった先から近付いてくる存在に気付いてネノヒを止めた。

 

「…鍵が向こうから来てくれたみたいね」

 

「やるか!」

 

 ムラクモとウラカゼは接近者を襲う事を決め、他の者達もそれを了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 此の時、警備係の雷巡チ級2人は雑談をして笑い合いながら巡回を一応していて、T字路を曲がろうとした時…

 

「…ふん!!!」

 

…ムラクモが角から飛び出して直ぐに、廃棄物集積所から持ってきた戦艦ル級の砲身を横一文字に雷巡チ級の喉に叩きつけた。

 もう一方の雷巡チ級は同僚が後ろに吹き飛ばされた事だけでなくムラクモの出現に驚いて硬直したが、直ぐに我に返るとムラクモにビームマシンガンを身構えようとしたが、その前に角から遅れて出たウラカゼにマシンガンを払われた。

 

「おどりゃぁぁー!!!」

 

 ウラカゼは雷巡チ級の懐に入って直ぐに、胸ぐらと左腕を掴んで気合い一閃で背負い投げをして、そのまま雷巡チ級が固まった隙を見逃さずに顎下に右腕を回して首を締め上げた。

 

「銃を取り上げろ!!」

 

「抑え込め抑え込め!!」

 

 雷巡チ級は命の危険を感じ取って、暴れながら発砲して仲間に報せようとしたが、その前にマツカゼがマシンガンを取り上げて、ナガナミ、ネノヒ、モチヅキが3人係りで手足を抑え込み、少しした後にウラカゼが雷巡チ級の首の骨をへし折った。

 ムラクモに襲われたもう一方の雷巡チ級はと言うと、どうやら気管を痛めた事が原因で、呼吸困難で苦しみ足掻いていたが、同僚が殺られて直ぐに窒息死した。

 

「窒息死なんて、初めて見ました…」

 

 自分達や地球への仕打ちからガミラスに思う事はあれど、拳銃を構えて備えていたスズツキは苦しんでから窒息死した雷巡チ級を憐れんでいた。

 

「…ナイフに煙幕、催涙弾……おお凄い、手榴弾も何種類かある」

 

「コイツ等、警備兵なのに空間騎兵より持ってるわね」

 

 他の者達も同様に思う事はあったと思うが、少なくとも雷巡チ級を各々に探っているマツカゼとムラクモはあまり感じられなかった。

 

「見事だったよ、ウラカゼ」

 

「流石、元呉基地柔道部主将!」

 

 此の間、ネノヒとナガナミが一本背負いを決めたウラカゼを茶していたが、元々ウラカゼは艦娘になる前の学生時代に全国制覇を数度成し遂げた柔道の凄腕で、艦娘候補生時代に重量級の空間騎兵を何人かを投げ飛ばした事もあって、駆逐艦娘ながら呉基地の柔道部主将を務めた事があったのだ。

 

「……ウチなんか、コンゴウ姉さんと比べたら弱輩や」

 

 だがそんなウラカゼがどうしても勝てなかったのがコンゴウ………彼女はウラカゼ以上に学生時代に全国制覇を連覇を成し遂げ、元横須賀基地柔道部主将や空間騎兵隊の特別教官を務め、そして柔道家・巴咲として出場した(現時点で)人類史最後のオリンピックである2188年度オリンピック(此の時の巴咲(コンゴウ)の応援句「コンゴウ、金GO(コンゴウ)!!!」は当時の流行語)で金メダル三冠を成し遂げていたのだ。

 此の時のウラカゼは謙遜ではなく、先代浦風と同様にコンゴウを守れなかった事の罪悪感を感じていて、ネノヒとナガナミは直ぐその事を察して彼女に謝った。

 

「あ、有った!」

 

 此の間にマツカゼはカードキーを見つけ出し、直ぐに大扉のパネルに刺し通すと、電子音を出して大扉の鍵が開いた。

 

「あ、ヤバい!!」

 

 だが此の直後に、ナガナミが騒ぎを艦じ取って走ってくる存在が多数に気づき、死体2つを運び込む等が出来ないのでやむを得ずそのままとして、急いで大扉の先に入っていき……他の雷巡チ級達が死体2つにギョッとしている間に大扉を閉じて、ムラクモが内側のパネルを拳銃で撃ち抜いて壊す事で鍵が開かない様にした。

 

「何なの此所?」

 

 取り敢えず長10cm砲ちゃん2人を信じて入ったのは良いが、光源皆無の為に真っ暗である事もあって、モチヅキが言った通りに入った所は何の馬車なのかが分からず、ガミラスがいる気配が無い事もあって、“暗中模索”の言葉通りに前進するしかなかった。

 

「……ん?」

 

 こんなんだからナガナミが何かにぶつかってしまい、目が慣れてきた事あってよく見ると、それはほぼ人型で黒い何かだったのだが、ナガナミには妙に見覚えのある輪郭をしていた。

 

「…ル、ル級だぁぁぁー!!!」

 

 ナガナミが該当する者を思い出して叫んでしまい、他の6人もギョッとしながらナガナミの方に振り向いた。

 だが当の戦艦ル級(?)は全く動く気配がなく、ムラクモが恐る恐る先程雷巡チ級から奪った懐中電灯でそれを照らした。

 

「あ、なんだ。

ル級の服か…」

 

 実際に有ったのは、ハンガーにぶら下がった戦艦ル級の衣装一式であり、その前後に同じ物が列を成して並んでいた。

 更にマツカゼが周囲を懐中電灯で照らしてみたら、他にも戦艦ル級の艤装の至る部品が各々にベルトコンベアの上にあった。

 

「此所はル級の部品生産工廂区画だったんだ」

 

 マツカゼの言った通り、彼女達がいるのは冥王星基地の工廂の一区画であり、現在は稼働停止状態だった。

 

「…あ、意外に軽いし、着こごちが良い」

 

「すっぽんぽんよりは、ましになりそうね」

 

 何を思ったのか、ナガナミは戦艦ル級の衣装の上を取って羽織るとそれを気に入り、ムラクモもそれに続いて同様に思った事で、他の5人も2人に習って衣装を手に取った。 

 

「……ユキカゼやアマツカゼはこんな格好してたのかよ」

 

「うわ、スウスウする…」

 

 只、ベルト等が見当たらない為にズボンがブカブカで履けない為に浴衣の要領で着る事となったが、元の衣装がワンピース型だった為に妥協したムラクモは例外として、特にナガナミとウラカゼは不満を露にしていた。

 

「あれ、長10cm砲ちゃん?」

 

 だが此所には武器になりそうな物は無さそうだった上、長10cm砲ちゃん2人の目的地は此所ではなく、現にスズツキが近くにいない事に気付いて辺りを見渡して、長10cm砲ちゃん2人が奥で跳び跳ねて示している事に気付いて、他と一緒にそちらへ向かった。

 

「何なのよ、此所、っ!?」

 

 長10cm砲ちゃん2人が先行した先にはガラクタみたいなのが多数転がるか山積みになっている空間であった為、モチヅキが右足の小指をぶつけた事もあって思わずぼやいていた。

 で長10cm砲ちゃん2人が跳び跳ねて示しているその先の中央部が目的地だった様だが、そこには何かが大量に吊り上げられていた。

 

「研究開発中のガミラスの新型艤装なんか?」

 

 7人各々に機械物と思われる物体群を調べていて、ウラカゼは言ったわりには拒絶反応が無くて妙な在視感を感じた事から否定していたら、突然此の空間の照明が一斉に点灯した。

 

「「「「「「「…っ!?」」」」」」」

 

 明かりが点いた事で判明した物体群の正体は………艦娘達の衣装付の艤装群であった。

 まさかの正体に7人全員が驚いて硬直したが、直ぐにガミラスにバれたと思って、身構えながら辺りを見渡して照明を点けたであろう存在を探した。

 

「へぇ~…此れが冥王棲鬼のヘソクリィ」

 

 声のした方に振り向いたら、そこにいたのは黒い長髪の殆どを前方に垂らした……古き幽霊キャラ貞子を思わせる者が、ガミラスから盗むか奪うかのどちらかで獲得したビームマシンガンを初めとした武器や装備を多数携帯して立っていた。

 

「「「「「「「…ギィヤァァァー!!!」」」」」」」

 

「…失礼ね」

 

 7人揃って、節分の鬼役のジンツウのプレッシャーを感じた時みたいに絶叫しながら逃げ出そうとしたが、相手側がムッとするも、原因であった髪を掻き分けて素顔を晒した。

 その素顔を見たウラカゼは、まさかの人物だった為に驚き戸惑ってしまった。

 何故なら相手は第一次木星沖海戦で死んだと思われた艦娘の1人だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヒ、ヒヨウゥゥゥー!!?」




 感想または御意見、あるいは両方を御願いします。

 と言う訳で飛鷹が合流の予定デェェェース!
 多分本作オリジナル設定になるかもしれませんが、本作の飛鷹は隼鷹の姉妹艦を思わせる変に図太い神経を持っているとしています。

飛鷹
「冥王星が堕ちたら、私もイスカンダルに行く事になるの?」

 実はお気に入りの軽空母娘の1人だった飛鷹は出したいけど難しいなぁ~…としていましたが、昔PIXIVで掲載されていた二次漫画にして、通販で買うのに苦労した同人誌“飛鷹昔話”をまた読んで飛鷹の艦隊合流を決めました。
 更に飛鷹は隼鷹とは真逆の不遇な艦歴……隼鷹が初陣を華々しく飾ったアリューシャンには未完成故に出撃出来ず、隼鷹が空母『ホーネット』撃破に貢献した南太平洋海戦では前日に機関が故障した為に撤退(“氷山空母を撃沈せよ”では此れが怪我の功名になるが…)、そしてマリアナ沖海戦で航空攻撃でタコ殴りにされて沈没、そして隼鷹の改二実装から結構な月日が流れたのに未だに改二が音沙汰なしな現状もあっての恩赦としてもあります。

 さぁ次回は飛鷹がどうやって入獄される事なく冥王星基地に入れたのかの回想から始めます。


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第69話 艦娘達の脱走(後編)

 教えて、ください♪

 艦これに生きる提督の元に♪

 全てのぉ~♪

 艦娘がぁ~♪

 ドロップするのぉ~なぁ~らばぁ~♪

 浜波は落ちますか♪

 タシュケントは、落ちますか♪

 フレッチャーはどうですか♪

 ジョンストンもそうですか♪

 教えて、くださいぃぃ~…♪





武蔵
「……何をやってんだ、アイツは?
さだまさしの“防人の詩”を変換して」

大和
「ろ号作戦が2週連続で達成するほどE-3を回ったのに、タシュケントがドロップせずに石垣5人に加えて長門、陸奥、赤城、加賀が30人近くもドロップしたんですって。
なんか憑き物落としの為に八八艦隊の仮想戦記を書くかどうかの軽い錯乱をしてる作者はほっておいて、本編をどうぞ!」


――― 第一次木星沖海戦時・木星沖 ―――

 

 

「……うっ…」

 

 ヒヨウが後頭部に痛みを感じながら目を覚ました時、虚ろな意識の中で最初に自覚したのは、中破した自分が死んだ艦娘達の遺体の塊の中にいた事であった。

 暫く間をおいて、ヒヨウは自分が救助艦隊の一員として(第一次)木星沖海戦に参加したのを思い出し、嫌な気配を感じながら目の前の遺体を軽く押し上げて状況を確認してみると………目に入ったのは、至る所で警戒行動か艦娘達の遺体を生死確認をしてから曳航しているガミラス水雷戦隊群のみであった。

 当然ながら、もう戦闘が行われている気配が無い上に、自分以外に生きている艦娘達がいるとは思えなかった為、ヒヨウはギョッとするしかなかった。

 

「……私達は、負けたんだ…」

 

 ヒヨウが悔しさを感じると共に現状からの判断は地球防衛艦隊は失神してから敗走した後であり、多分自分がガミラス艦隊の一斉砲雷撃からほぼ無傷で生き残れたのは救助艦隊の同僚や負傷者達が上手い具合に楯になった為だと予想した。

 幸い自分の艤装の状態は艦載機の運用が出来なくても航行には全く支障がなさそうだったので、ヒヨウは今すぐに此所から飛び出して暴れるなり逃走するなりを思ってコスモガンを手に掛けようとしたが、直ぐに無駄な足掻きになると断定してコスモガンの銃把(グリップ)を握ると直ぐに手離した。

 だからと言って、このままだと自分の生存がガミラスに知られるのは時間の問題であり、現に1個水雷戦隊が自分の所に近付いてきていたが、ヒヨウは此の時に上手くすれば冥王星基地に潜入出来るのではと思い立って、直ぐにナップサックを探って注射器ととある医薬品入りの(アンプル)を取り出して直ぐに自分の右腕に注入して艦載機の紙を1つ無理矢理飲み込むと、呻き声を小さく上げると再び意識を手離した。

 

 それから少しした後、ガミラス水雷戦隊は遺体群を次々に曳航し続けていってヒヨウを見つけ、彼女の生死確認を行って死んでいると判断して冥王星に向けて曳航し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 数日後・冥王星 ―――

 

 

「……Ein Flugzeugtraeger in der Naehe eines medizinischen Schiffen」

(訳:……医療艦に近い空母か)

 

「Es sieht interessant aber,es gibt nicht zu gewinnen」

(訳:面白そうな存在だが、得るべきものは無さそうだな)

 

「Ich werde diese Kerl aufgeben」

(訳:コイツは放棄するか)

 

 雷巡チ級工作型は第一次木星沖海戦から大量に得た艦娘達の遺体や艤装を確認し続けていて、その内の一班がヒヨウを遺体の1つと誤解して確認に当たったが、重要度が無いと判断した事から彼女から艤装と装束を剥がし始めた。

 ヒヨウを裸にして廃棄物集積所に捨てようとしたが、その前に別の班から呼び出しを受けてそちらに赴きて色々と会話をしている間に、僅かに開いたヒヨウの口から妖精さんが2人覗き出ていたが、雷巡チ級達が戻ってくると直ぐに引っ込んでいた。

 妖精さん2人に全く気付いていなかった雷巡チ級達の内の2人が、次の遺体を確認する為に診察台から退かしたヒヨウを担いで「Schwer(重い)」とぼやきながら運んでいって廃棄口に投げ捨てた。

 

 

 

 

 

 廃棄物集積所の遺体の山の上に落下して転げ落ちたヒヨウは暫くの間俯せのままでいたが、不意に指5本が僅かに動いた右手が直ぐに左手と共に彼女の喉を押さえると、ヒヨウは右の横倒しで丸くなると呻き声を出していたら………四つん這いになると同時にカーゴを胃液と共に吐き出して、暫く噎せていた。

 

「……キッツい、わね…」

 

 ヒヨウは息を整えた後に上手く死んだフリをしての冥王星基地に潜り込めたと自覚したが、咄嗟の思い付きでの死んだフリのやり形に苦笑していた。

 ヒヨウがやったのは、ペニシリンを大量注入して仮死状態となり、その後にブドウ糖と輸血を大量にしてから蘇生すると言う、医薬品や医療の知識があったからこそ出来た方法であった。

 だが此れは間違って死んでしまう可能性が高かったモノであり、後日此の方法を知らされた医師全員が「二度とするな!」と口を揃えては防衛軍が禁止行為の1つとする事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・現在 ―――

 

 

「…こう言う感じで、此所に侵入出来たって事」

 

 ヒヨウが自分の生存出来た理由を伝えられて、ウラカゼ達は揃って「はぁ~…」と小声を漏らすのみだった。

 

「……そう言えば、さっきチ級達が銀蝿の事を言ってましたが、アレはヒヨウさんだったんですね」

 

「廃棄物集積所の扉のパネルが壊れてたのって、コイツが出る為に壊したんやな」

 

 更にスズツキとウラカゼはヒヨウがやらかした行為とと思われるモノを各々に思い出して、本人に確認する事なく断定していた。

 

「ま、此れ以上は私の事はいいから、さっさとコイツ等を調べない?」

 

 ウラカゼ達はヒヨウから神経の変な図太さだけでなくマイペース度合いから、ジュンヨウの笑った顔と共に“やっぱりジュンヨウの姉妹艦”と頭に思い浮かべていたが、取り敢えず彼女の提案通りに此所にある艤装を調べる事とした。

 

「…此れは、コロラド級戦艦だ

いや、他にもサウス・ダコタ級やノース・カロライナ級……他にもヨークタウン級等の空母のとかアラスカ級のが多数ある」

 

 先ずはマツカゼが近くのを調べたら、自分の近くにはアメリカの大型艦娘のが多数あった。

 

「此方にはキングジョージⅤ世級やヴァンガードのがあります!」

 

 別の所ではスズツキがイギリス艦娘達のを見つけていた。

 

「リシュリュー級?……否、此れはダンケルク級。

うわ、ジョフレ級空母のもある!」 

 

「ドイッチュラント級やシャルンホルスト級、戦艦アルハンゲリクスのが有った!」

 

 更にモチヅキはフランス艦娘達のを、ネノヒはドイツ艦娘達やロシア艦娘達のを見つけた。

 

「はぁ~、チリのアルミランテ・ラトーレ級に、トルコのヤウズ・スルタン・セリム、ギリシャのサラミスまで……地球中の戦艦や大型空母の艤装が有るわね」

 

「うわお!

キヨシモが泣いて喜びそうな博物館が出来る程あるぞ」

 

 そしてヒヨウとナガナミがその他諸々を見つけて、此所には少なくともガミラス戦役に存在して、戦没するかMIA認定の地球の戦艦娘や空母娘達の艤装が大量に有った。

 

「…っ! ナガト、否ちゃう!

此れ、ムツの艤装や」

 

「確かムツって行方不明(MIA)の扱いになってたよね?

と言う事はムツも此所に捕らえられていたって事?」

 

「いや、修復痕がある。

きっとガミラスはムツを沈めてから、艤装だけを持ってきたんや、っ!?」

 

 当然ながら日本も例外ではなく、現にウラカゼとネノヒは奥でMIA認定だったムツの艤装を見つけたが、ウラカゼはその隣に有った艤装にギョッとした。

 

「……ヒエイ…」

 

 そこに有ったのは、ムツと同様にMIA認定だったコンゴウ級二番艦ヒエイのであった。

 駆け付けた駆逐艦娘達は、ヒエイの艤装を見つめるウラカゼが、重度のシスコンだったヒエイに姉コンゴウを守れなかった事を責め立てられている様に見え、ウラカゼの顔を見た処だと彼女自身もコンゴウの事を改めて自覚させられている様だった。

 

「…っ!?」

 

 駆逐艦娘達はウラカゼの事は察していたので彼女を慰めようとしたが、ムラクモは過ぎようとした脇にある艤装を見つけて驚くと、それを暫く仰視しながら硬直した後に泣き崩れてしまった。

 何故ならそれは空母タイホウのであり、ムラクモもまた自分の罪を否応なく自覚させられていた。

 

「…なんで、大型艦娘達の艤装が大量に此所にあるんだろ?」

 

「おそらく、ガミラスは艦娘達の艤装から地球の技術力を確かめていたようね。

況してや、大型艦娘の艤装となれば、最新軍事技術の塊みたいなのだからね」

 

 ウラカゼにネノヒとスズツキが、ムラクモにはとマツカゼとナガナミが各々に慰めていたが、モチヅキが艤装の存在理由に当然ながら疑問を思っていたが、大方はヒヨウの推測通りだと思われた。

 

「…なんか、不愉快ね」

 

 只、多分戦艦と勘違いされたのか(重)巡洋艦のが少々あるも、駆逐艦のが見当たらない……「今の駆逐艦娘は良いぞ、最高だ!」との言葉が示す通りに深海棲艦戦役以後から戦艦だけでなく巡洋艦をも駆逐する勢いで空母や潜水艦に並ぶ主力艦に長らくなっていた筈なのにガミラスはそう思っていない事が表れている為、モチヅキがムッとしていたが、その間にヒヨウは修復(か復元)された自分の艤装と装束を見つけて直ぐに着替え出していた。

 

「っ、ガミラスは案外良い素材を使っているようね」

 

 ヒヨウは自分が主力艦の1つと思われていた事もあって、治された装束の着こごちに思わず口笛を吹いたが、残念ながら艤装の方は機関(更に有る者には艦載機も)が主補揃って取り外されている為に装着せず、近くにある艤装もある程度調べるとそうであったので、此所にある全てがそうであると判断した。

 まぁ纏って使えるかはどうかは置いておき、駆逐艦娘達は艤装全てが使えない事に残念がっていたが、ヒヨウのみはムツの艤装の何ヵ所かを手で丹念に探り…

 

「…っ、有った!

ガミラスは気づいてない!」

 

…背部の底で見つけた隠し扉を横にずらして、更にその先のアナログ式のダイヤルを回して開いたら、何かが大量に落ちてきた。

 

「…ホルダー入りのコスモガン……最新のインカム式通信機……片眼式の暗視スコープ……小型爆弾複数……レーションに工作道具多数。

流石ムツ、万全な備えをしてるわね」

 

「何でムツの艤装にこんなのが入ってんや!!?」

 

 ヒヨウはムツの艤装から出てきた物を1つ1つ確認してから回収して、レーションのみは直ぐ口に含んだ為に駆逐艦娘達が悲鳴を上げたが、ウラカゼが叫んだ通りに駆逐艦娘にとっては疑問でしかなかった。

 

「宇宙戦艦ってのはよく単独行動を取る事が多いから、自分で艤装を直すだけでなく、遭難等をした時に艤装を守らないといけないのよ。

だから、ある程度のサバイバルの道具が備えられているのよ」

 

 ムラクモは沖田の初期艦にして秘書艦を長く務めていた事から、戦艦娘の多くが艤装が使えない非常時への備えをしている事があるのを知っていたので他に説明したが、実際見るのは初めてだった様なのか他と同様に驚いていた。

 まぁそんな駆逐艦娘達7人を無視して、ヒヨウは更にヒエイの艤装を探って隠し扉を見つけて開けたのだが、そこから落ちてきた物8個に他共々に唖然とした。

 

「……カ、カレー?」

 

「武器や道具類は?」

 

「一切無い…」

 

 ヒヨウとモチヅキのやり取りに見られる通り、ヒエイの処から出てきたのは、白米(ライス)付きで水無しで簡単に出来るインスタントカレーのみだったからだ。

 

「ヒエイの馬鹿!

何で食べ物しか入れてないのよ!」

 

「まぁヒエイらしいっちゃあ、ヒエイらしいけどな」

 

 ヒヨウは死んだヒエイに毒づいていたが、カレー好きだったヒエイらしい入れ物だったので、ウラカゼが苦笑していた。

 

「…まぁ、折角……有るんだし、食べよ」

 

 ヒエイに思う事は色々あったが、取り敢えず久々の地球の飯が食べれるので、ナガナミの提案に全員が無言で賛成した。

 

「あ~…我が儘言っちゃいけないけど、カレー以外のを食べたかったな…」

 

「ほんじゃあ、ムラクモは此れ食べな」

 

 ムラクモが辛いのが苦手だったので、辛口しかないカレーに溜め息を吐いたら、ウラカゼが差し出した物に目を疑った。

 

「…こ、紅洲宴歳館・泰山の……麻婆豆腐?」

 

「みんなカレーやと思ったら、1つだけ此れやった」

 

 ウラカゼが差し出したのは“日本一の激辛”と呼び声名高い麻婆豆腐であり、その手の愛好家達には神憑り的な人気食品だったのだが、ムラクモにしたら猛毒と同類の存在でしかなかった。

 

「…何でヒエイが、此れ持ってんのよ?」

 

「さぁ?」

 

 麻婆豆腐の存在理由は不明だったが、ムラクモには不味い事に、全員辛いのが好き嫌い関係なく飲み水が無い現状で劇物に等しい物を食べたくないので、7人揃ってカレーをしっかり確保していた。

 そんなムラクモが精神面での命の危機から固まっているのを無視して、7人は引き紐を引っ張って暖めようとしたが、その直前で駆逐艦娘達が入ってきた方から爆発音が響き、全員が何が起こったのかを察していた。

 

「……ガミラスの陸戦隊が入ってきたようね」

 

「まったく、飯をゆっくり食わせてくれないのね」

 

 此の部屋に入る前に駆逐艦娘達に気づいた雷巡チ級達が扉を爆破して入ってきた様なので、ヒヨウは袴の袖口を二の足の2ヶ所各々で縛った後にビームマシンガン等を手に取って、迎え撃とうとしていた。

 

「あ、ムラクモだけでいい」

 

 勿論、駆逐艦娘達も続こうとしたが、ヒヨウは隠密性を優先として、ムラクモ以外の者達を止めて出ていった。

 実はムラクモは此の隙にヒヨウのカレーを奪おうとしていたが、そのヒヨウがカレーをしっかり持っていったのでご破算となっていた。

 

「Ich ging zu einigen Orten der vorherigen Maedchen!!?」

(訳:さっきの奴等は何所に行った!!?)

 

「Da ist ein Licht auf der andere Seite!」

(訳:向こうに灯りが点いてるぞ!)

 

「Es ist dunkel!!!

Lass jemanden das Licht anmachen!」

(訳:てか暗い!!!

誰か照明を点けてよ!)

 

「Kommunikation damit erholt sich immer noch nicht!!?」

(訳:それと、通信はまだ回復しないの!!?)

 

 ヒヨウとムラクモが見た処、雷巡チ級達は既に工厰内部に入っていたが、駆逐艦娘達の所在が分からないだけでなく、室内の暗さに苦闘していた。

 まぁそんな中で雷巡チ級の1人が色々とぶつかりながらも非常灯を点けた時を見計らって、ヒヨウは安全ピンを外した催涙弾を雷巡チ級達目掛けて投げ飛ばし……音を立てながら転がってくる催涙弾に雷巡チ級達が驚きながらそれ目掛けて乱射し初め、少し間を置いてから催涙弾から色付きの催涙煙が吹き出して、それにあっと言う間に飲み込まれた雷巡チ級達は驚き戸惑いながら乱射し続けていて、悲鳴が聞こえる事から誤射を起こしている様だった。

 

「へぇ~…ガミラスのは熱探知や赤外線を阻害するのも入っているようね」

 

「お陰で簡単に一網打尽に出来そうよ」

 

 混乱している雷巡チ級から、ムラクモがガミラス製の催涙弾に感心していたが、そんな彼女と共に移動したヒヨウは今度は雷巡チ級達が纏まろうとしているのを察して今度は丸型の手榴弾の安全ピンを外すと、ムラクモから受け取った戦艦ル級の帯をくるんだ。

 でヒヨウはムラクモが爆破された扉のシャッターを下ろしたのを確認した後に手榴弾をボーリングの要領で投げ……雷巡チ級達は音を立てずに転がってきた手榴弾に気付く事なく、催涙煙を吹き飛ばす程の爆発に飲み込まれてしまって1テンポを置いてから一斉に悲鳴が上がった。

 催涙煙が薄れるのを見計らって、ヒヨウとムラクモはビームマシンガンを身構えながら飛び出し……雷巡チ級の殆どは即死していたが、比較的軽傷だった何人かは上半身のみを起こしてヒヨウとムラクモを撃とうとしたが、全員がその前に2人のどちらかに頭を撃ち抜かれていた。

 そして雷巡チ級の最後の2人が痙攣しながら失神していて、ムラクモが2人の頭を撃ち抜こうとしたのをヒヨウが止めた。

 

「何で止めるのよ!!?」

 

 ムラクモは此れまでの自分達への仕打ちから見るからに殺気だっていたが、当のヒヨウが無反応のまま周囲を見渡した後に雷巡チ級の1人を背後から脇下を掴む形で後ろに引き摺っていった事で全てを理解し、ヒヨウに習ってもう1人の雷巡チ級を引き摺っていった。

 

 

 

 

 

「「……っ!?」」

 

「ああ、気がついたようね」

 

 ヒヨウとムラクモが連れてきた雷巡チ級2人は、目を覚ましたら目の前に小型のドラム缶に腰かけたヒヨウと後ろに控えるムラクモに驚き、更に自分達が手足を縛られて猿轡(サルグツワ)をされた状態で小型ドラム缶に座らせられて動けなくされている事にパニクったが、ヒヨウが見せる様に刀身を撫でたナイフを見て硬直した。

 

「目覚めて直ぐにで悪いんだけど、アンタ達に冥王星で何が起きているのかを教えてほしいのよ」

 

「あ、言語分からないってのは通じないわよ。

アンタ達ガミラスは全員翻訳機を携帯しているって知ってるからね」

 

 雷巡チ級2人はヒヨウの言葉を“理解出来ない”と惚けようとしたが、直ぐにムラクモに見破られてしまった。

 

「さっきから何か基地の様子がおかしいのよね。

アンタ達通常型が妙に少ないし、矢鱈と一時的に照明が落ちてるからねぇ~」

 

「私隊はね、今冥王星は高出力兵器あたりで、地球から来た艦隊を迎撃しているんじゃないかって思ってんの………例えば、大和って艦娘が来てるとか?」

 

 ヒヨウとムラクモは会話する様に尋ねていたら、雷巡チ級が2人揃って“大和”の単語に反応したのを見逃さなかった。

 雷巡チ級2人も“不味い”と自覚したらしく、一方が笑い出すともう一方も続いて安直に笑って誤魔化そうとしていた。

 

「あれ? 私達、そんな面白い事言った?」

 

「アンタは知らないけど、私は漫才のセンスなんて持ってないわよ。

そう、クロシオと、違って…」

 

 ヒヨウとムラクモの会話が明らかにわざとらしかったが、雷巡チ級2人はムラクモが“クロシオ”の単語を強めたのを聞き逃してしまい………突然ムラクモが先に笑った方の左手で頭を掴んで顎を上げさせると、無表情のままナイフを顎下に突き刺した!

 もう一方の雷巡チ級は目の前で同僚の身に起きた事を受け入れられずに硬直していたが、少し間を置いてからムラクモが死んだのを察して同僚からナイフを引き抜いて頭を左に叩いたのを見て、頭を左右に振りながら猿轡越しに悲鳴を上げていた。

 

「ちょっとムラクモ、下手くそなくせに勝手な事をしないでよ」

 

「だって、ムカついたのよ、コイツ」

 

「……さて、アンタは私達と仲良く出来そう?」

 

 ヒヨウはムラクモに注意になってない注意をした後、雷巡チ級に意味ありげに振り向いたら、その雷巡チ級が何かを大声で言おうとするも猿轡で出来ていない事を察して、「あ、ゴメン」と言いながら猿轡を外した。

 

「Barbarischer weiblicher Affe,in dieser Grenze!!?」

(訳:この辺境の野蛮なメス猿、っ!!?)

 

 ヒヨウは雷巡チ級が自分達の求めを答えていない事を直ぐに察して、雷巡チ級の口を左手で押さえてナイフを左肩に突き刺し、その雷巡チ級はくぐもった悲鳴を小さく上げた。

 

「「…日本語でお願い」」

 

 此の後、ヒヨウとムラクモは此の雷巡チ級から冥王星で起きた出来事を“優しく丁寧(意味深)”に聞き出して、更に基地の地図を提供させる事に成功したと書いておこう…




 感想または御意見、或いは両方をお願いいたします。

 ご都合が少し入っていたかもしれませんが、飛鷹がやった仮死の方法は、ヤマトのPS2ゲーム“二重銀河の崩壊”で椎名晶がやった方法であり、更にブラックジャックも同じ事をやっているので、多分おかしくはない筈です。

飛鷹
「それよりも、最後の方でマイク・バニングを2回もやらせたわね」

 自分で書いたのなんですが、本作の飛鷹と叢雲は絶対横須賀所属だと思っています。

飛鷹
「貴方、PIXIVでのとある横須賀提督の顔を思い浮かべたからでしょう?」

叢雲
「それよりも、最後の雷巡チ級のはヤマト的に大丈夫なの?」

 そりゃあかんかもしれないとは思ってますし、本来の飛鷹や叢雲ならあんな事は絶対しないとも思ってますが、あの極限状態だったからああしてしまったとしています。
 個人的には、あんな状態だと並の人間は映画“二百三高地”の矢吹丈………じゃなくて、小賀武志少尉みたいに鷹派的思考回路に変わってしまうと思っています。

叢雲
「まぁオリジナル版の古代も未遂で終わったけど、やらかしたしね」

 だからですが、個人的にはリメイク版の古代の2編に渡っての行為は、少し理想に生き過ぎているんじゃないと思ってます。

 さぁ現在の第七次冥王星沖海戦は、ボクシングの試合で例えると、第1(ラウンド)は地球が優勢、第2Rは地球がダウンをしてのガミラス優勢となっていますが、次回から始まる第3Rはハルナ達が冥王星に到着してからの戦闘で始まります。

飛鷹
「取り敢えず言えるのは、此の海戦に判定は無いわね。
有るのはKOによる終戦のみ」










叢雲
「…処で、何で比叡はあの麻婆豆腐を持ってたのよ?」

 たまに感想欄にて麻婆豆腐を食べてる瀬名誠庵さんから貰ったんじゃない?
 当初は比叡はカレーしか持ってなかったとしていましたが、あの人の感想の幾つかで例の麻婆豆腐をも持ってた事に変えました。

 更に言いますと、麻婆豆腐を食べる予定だったのは望月でありましたが、諸事情があったので叢雲に代えました。

……あ~…マジカルパンダ麻婆が食べたぁ~い…

叢雲
「……アンタ、猫舌で子供舌だから“辛い”のと“熱い”のは駄目だった筈よね?
両方揃ってるのはもっと駄目だったわよね?」


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第70話 (キタ)るは新たなる局面

――― 冥王星沖 ―――

 

 

「っ!! 8時の方角に閃光が多数!」

 

「戦闘だ!!!

まだ戦いは続いているぞ!」

 

「コスモファルコンと新型戦闘機が飛んでます!!

アレ等に描かれている識別は、チトセさんとズイカクさんのです!」

 

「よっしゃ!!

て事は、ダヴーはまだ彼処にいるって事だ!」

 

 謎の艦娘から移動を続けていたハルナ達は、遂に冥王星軌道に突入して小惑星帯を抜けた所でズイホウから補給を受けながら最終体勢を整えていた時に、ハルナが遠方で戦闘による現状を見つけ、テンリュウが叫んだ通りに囮艦隊がまだ完全な形での退却に至ってない事が判明した。

 更にズイホウが双眼鏡で確認して、その方角で地球の戦闘機2種が飛び回っているのを見つけ、それ等の尾翼の数字からチトセとズイカクの航空隊である事を見抜いたが、新型戦闘機(コスモタイガー)は兎も角として、陸上戦闘機である筈のコスモファルコンがいる事に首を傾げていた。

 まぁ此れ等の事から、テンリュウみたいに多くが間に合ったと思っていたいたが、チョウカイは安堵の溜め息を吐いてユウバリに小突かれた後に微笑み合っていた。

 

「どうだ、イセ?

向こうの艦隊に通信が出来そうか?」

 

「…駄目。

やっぱり暗号通信は更新されていて使えないし、通常のはガミラスが怒鳴り合っていて、向こうに届きそうにない」

 

 唯1つ残念だったのが、イセは囮艦隊と通信出来ないかを試していたが、2つの通信方法は各々の理由で使えそうになかったのだ。

 

「さて、どうしたものかな?」

 

 ヒュウガが誰構わずに疑問を振ったが選択肢は“直ぐに転進して囮艦隊との接触を試みる”か“予定通りに冥王星に向かう”かの2つであった。

 だが各々の問題なのは、前者の場合は“囮艦隊が混戦をやっているのが目に見えているので、下手にしたら混乱を招いてしまう危険性が高い”、後者の場合は“何らかの形で自分達の存在を報せないと、囮艦隊が知らないまま撤退してしまう可能性が高い”であった。

 だが言った本人であるヒュウガもそうだったが、全員がどちらを取るかは既に決まっていた。

 

「冥王星に行きましょう。

ズイカクさん達に悪いですけど、ガミラスの冥王星艦隊はあっちに行っています」

 

 ハルナ達は冥王星軌道に辿り着いた時の状態に備えて土星を発つ前の入念な打ち合わせである程度決めて、可能な限りは艦隊に合流を目指す事としていたが、それが出来ない時や冥王星を目指す事が戦略的勝利(つまり冥王星基地の占領や無力化)の確率が高い場合のどちらかだったら冥王星を目指す事とする事であった。

 ハルナは冥王星守備艦隊の多くがズイカク達を攻撃していて、更にヤマトを沈めた事(謎の艦娘を信じたら誤認)もあって今の冥王星の近海は無防備であると予想したからの意見であり、全員も同感と判断してハルナに頷いた。

 

「でも、通信はどうするの?

あの分だとズイカク達が私達に気付いてくれそうにないわよ」

 

「どのみち、此の状況だと通信をしたらガミラスに探知されます。

私に良い考えがありますので、今は早く冥王星に行きましょう」

 

 フルタカが通信の事を気にしていたが、チョウカイが旗艦等の軍隊の上に立つ者が言うには不吉な事を言った後に、艤装から取り出したリレー衛星を脇に投げたが、

 

「……ズイカクさん…」

 

「ズイホウ、行くぞ!!!」

 

 戦闘の現象が自分達から遠ざかっていた事もあって、チョウカイは直ぐに冥王星へ前進していたが、ズイホウは何度か組んだ事のあるズイカクを思って戦闘現象を暫く見つめていたが、ヒュウガに呼ばれて後ろ髪を引かれる思いで続いた。

 

 

 

 

 

「冥王星だ!!!」

 

 小惑星帯から離れて暫くした後、チョウカイ達は読み通りにガミラス艦隊に接触する事無く、遂に冥王星が目視出来る所にまで辿り着き、全員が冥王星を一目見るとヤマトと同様に、赤く変色した現象に眉をひそめていた。

 

「あ、不味い!!!

前方にガミラス艦隊!!!」

 

 だがその直後、キヌガサが冥王星から来ているガミラス艦隊を見つけた。

 

「…敵はまだ気付いてませんよ」

 

「馬鹿、気付かれたぞ!!!

此方来ようとしている!」

 

 アオバがガミラス艦隊が自分達に向かってない事から見逃していると思ったらしいが、此の直後にガミラス艦隊が進路を変えて近づこうとしていた為、ヒュウガに怒鳴られた。

 当然ながら、全員が慌てて戦闘の準備を整えて身構えて硬直したが、当のガミラス艦隊は妙な遅さであった。

 そして雷巡チ級の複数を主軸とした水雷戦隊だったガミラス艦隊が“へ”の字の逆さに近い形で、比較的遠くから艦娘達の脇を過ぎようとした時…

 

「Du hast es schwer!!」

(訳:よう、ご苦労さぁ~ん!!)

 

…完全に無警戒だった上に、労いの言葉を掛けてきた為、艦娘達が揃って変な小声を漏らしてしまった。

 

「B,Bitte sei vorsichtig!!」

 

(訳:き、気を付けて行けよ!!)

 

 テンリュウが真っ先にガミラス艦隊が自分達を友軍艦隊と勘違いしたままズイカク達の所に向かおうとしているのを察して、少し噛みながらも返事をしながら右拳を振り上げ、他の艦娘達もテンリュウに習って右手を上げて振っていると、雷巡チ級達がお返しに軽く右手を振った後にガミラス艦隊はそのまま離れていった。

 

「…っ、びっくりした!!!」

 

 ガミラス艦隊が完全に見えなくなった後、イセが嘔吐しそうな程に大きく息を吐きながら冷や汗を大量に発した事に見られる通り、他の艦娘達も各々に緊張を解いていた。

 

「でも、何で間違えたのでしょう?」

 

「多分、慢心や油断したからだろう。

ヤマトを破って、艦隊が退こうとしている事もあってのだな」

 

 落ち着いてからズイホウが疑問に思っていたが、求められる事もなくに答えたヒュウガの予想通りであるとしか全員が思えていなかった。

 

「どうやら、運が出てきたようですね」

 

 チョウカイが引き吊りながら微笑し、先代鳥海率いる第八艦隊を深海棲艦の警戒艦が見逃した為に奇襲からの大勝利を得た第一次ソロモン海戦を思い浮かべていた。

 しかもチョウカイにとって縁起が良かったのは、第一次ソロモン海戦での第八艦隊と同じ様にフルタカ(古鷹)カコ(加古)アオバ(青葉)キヌガサ(衣笠)ユウバリ(夕張)テンリュウ(天龍)の6人が揃っていたが、代わりにハルナ、イセ、ヒュウガ、ズイホウの4人がいるとは言え、駆逐艦ユウナギ(夕凪)がいない事を残念がっていた。

 

「だけど、同じ幸運が続くわけがないわよ」

 

「……分かってるわよ…」

 

「兎に角、冥王星にはより“慌てず、急いで正確に”でいきましょう」

 

 そんなチョウカイがユウバリが釘を指された為にムッとしたが、ユウバリの言う通りにより警戒しながらも増速して冥王星に向かっていたが、その途中でハルナが止まってしまった。

 

「ハルナ、どうしたのですか?」

 

「…デブリが……冥王星の衛星軌道のデブリが異様に増えているんです」

 

「6度に及んだ海戦で、デブリが増えたのじゃないのですか?」

 

 ハルナは第5次冥王星沖海戦に参加して冥王星を見た時と比べて冥王星の周囲に違和感を感じていたが、彼女に訊ねたチョウカイは仮説に言いながら、疑問はあってもヤマトが敗れた事には関係ないと思っていた。

 

「ユウバリさん、先程の通信でヤマトがどの様にして沈んだか伝えられませんでしたか?」

 

「……確か、大出力のビーム兵器に多々被弾したからって言っていたわよ」

 

「ちょっと待て、多々被弾したからって、ヤマトは戦艦を沈める様なビーム兵器の所在が分からなったってのか?」

 

 ヒュウガがユウバリを返事から他共々に疑問を感じていたが、ハルナは頭の中でパズルのピースの1組が繋がった事から口に右拳を当てて固まった。

 

「…コードネームで砲艦の……ああ、『ナハトシュトラール』がいたよね?

ソイツに超遠距離(アウトレンジ)砲撃を受けたからじゃないの?」

 

「でも“砲声のする方に進路を取れ”の言葉通り、レーダーでも捉えられない超遠距離でも、ある程度は射角や位置が特定出来るから一方的ってのは考えられません」

 

 情報が少ないと言え、イセは『ナハト・シュトラール』説を予想したが、それはチョウカイが否定した。

 

「……一方的……つまり、ヤマトは……超遠距離だっただけでなく、常に死角から攻撃を受けていた…」

 

「でしたら、ステルス艦だったと言う事じゃない?

ほら、『レムレース』ってのがいなかった?」

 

「まさか、ガミラスはドイツ艦艇みたいに火力を低めにして機動力を最優先としているのよ。

いくら超弩級でも、速度低下の要因になりかねない大型兵器を載せるとは思えない」

 

 ハルナが独り言に近い形で呟いているのは無視して、フルタカはヤマトに沈められたのを知らないので『レムレース』(潜宙棲鬼)を推すもキヌガサに否定した事で、全員がビーム兵器は艦載砲ではないと判断された。

 

「……ドイツ…」

 

 だが、ハルナはキヌガサが呟いた“ドイツ”から何かに思い当たって、脳内のパズルに描かれた絵をある程度予想出来た事からピースを次々にはめて、彼女なりの答えに辿り着こうと右手を当てるのを顎から額に移して唸っていた。

 

「じゃあなに、ビーム兵器は冥王星の地表にあるっての?」

 

「……地表、っ!?」

 

 イセは冗談に近い形で自分でも否定的な意見を言って全員から“無い”と判断されていたが、ハルナは此の事からある兵器の存在に思い当たって、ビーム兵器のカラクリをある程度辿り着いた。

 

「馬鹿、それこそ有り得ないぞ。

“大きさ”“火力”“隠密性”を兼ね備えた陸上兵器なんか…」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……有りましたよ。

1つだけ深海棲に対して使われた、3点を兼ね備えた陸上兵器が」

 

「そうですよね。

ハルナの言う通り、そんな兵器が有るなんて………有る?」

 

 チョウカイがヒュウガに続いて苦笑しかけたが、釣られたハルナの指摘を少し間を置いてから他共々に“え?”としながらハルナに振り向いた。

 しかも深海棲艦との戦役に存在していた上に、開発・運用したのは地球側だと言うのだから硬直するしかなかった。

 

「何なの?

そんな都合のいい兵器は?」

 

 ユウバリはハルナに訊ねながら何かを思っていたが、ハルナはその事を察する事なくユウバリの引き吊った顔で思わず苦笑した。

 

「クルップK2ですよ。

嘗てドイツが開発して運用した28cm列車砲です」

 

「列車砲?」

 

「ハルナが言いたいのは、その内の『ロベルト』と『レオポルド』と呼ばれた砲2門です」

 

「……ア、アンツィオアニー!!?」

 

 ユウバリはハルナの返事を他共々、より有名な80cm列車砲『グスタフ』『ドーラ』の思い浮かべた為に当初は理解出来ないでいたが、補足情報でハルナが言いたい事の全てを理解するに至り、更にテンリュウとチョウカイもまた「あっ!」と叫びながらお互いの目線を合わせていた。

 此のクルップK2の2門が出たのは、西暦1944年1月から始まった“アンツィオの戦い”にてイタリア南部のアンツィオ(&ネトゥーノ)に上陸した深海棲艦を迎え撃ったドイツの迎撃作戦で投入されて、数撃で橋頭塁を壊滅させていて、故に渾名が“アンツィオ(Anzio)アニー(Annie)”。

 注目すべきなのは、ドイツはクルップK2は軍事的な常識の範囲での大きさと重さである事から昼間はトンネル内に潜ませる等徹底的に潜伏させた上に深海棲艦が空爆と勘違いした所為、ローマ陥落後に遺棄されるまでの半年間、深海棲艦を終始苦しめる事に成功していた。

 因みに『レオポルド』は後日アメリカ陸軍に奪還されて、遊星爆弾で消し飛ぶ迄アメリカのアルバティーン戦車博物館に露天で展示されていた。

 

「おいおい、ちょっと待てよ。

ガミラスは冥王星に列車砲を配備しているって言いたいのか?」

 

 カコは馬鹿正直に冥王星に列車砲が配備されていると思ったらしいが、直ぐにフルタカに否定されていた。

 

「列車砲が配備されていると言う事より、列車砲に似た発想で……何らかの形で砲を移動させる等をしているって事。

例えば、冥王星の地下を縦横無尽に移動しているとか、普段は偽装する等して隠れているとかよ」

 

 ユウバリはカコや他に分かっていない者達に説明しながら、長らく探っていた遊星爆弾の生成方法にも繋がっているのではと内心思っていた。

 ユウバリは土星からの観測で、ガミラスは小惑星を遊星爆弾化させる時の放射性エネルギーを注入するのに何らかのビーム兵器を使っている事は分かったのだが、その発射地点をどうしても突き止める事が出来なかったのだ。

 

「ではどうします?

どのみちビーム兵器は隠れているんですから、下手な行動をしたらヤマトの二の舞になりますよ」

 

 アオバの疑問は尤もであったが、ハルナは少なくともビーム兵器のカラクリをある程度見抜く手段を考えていて、それは危険性があった事からユウバリとチョウカイを順に目線を合わせた時に彼女達2人も顔を引き吊らせていたので同じ考えだった様で、時間を確認してからやるしかないと判断した。

 

「……此所で待ちましょう」

 

 ハルナが少し躊躇っての提案にイセ達8人が「待つ!!?」と叫んでしまった。

 当たり前だが、今まではガミラスに気づかれる前に冥王星に辿り着こうとしていたのに、それに逆行してはガミラス艦隊に発見される可能性を自分達で大きくしていまう事になり、先の様な幸運が続くわけがない事も察していたからだ。

 

「先のガミラス艦隊から見て、今のガミラスはヤマト撃沈を誤解した上に地球艦隊が退却しようもしてる事で相当慢心していると思えます」

 

「おそらく冥王棲鬼は海戦が終結したと判断して、遊星爆弾の製作を始める筈です」

 

 イセ達はチョウカイとユウバリの補足説明でハルナの狙いを分かってはくれたが、見るからに嫌々であったが、ハルナに了解として揃って冥王星・小惑星帯の間の直線コースから離れた所で待つ事とした。

 

「あ~…腹立たしいぃ~…」

 

「だったら今までの航海も含めて、アインシュタインの特殊相対性理論が分かるんじゃない?」

 

「…特殊……相対性、理論?」

 

「分かりやすく言ったら、模型作ってる時には1時間が一瞬に感じる反面、ホウショウの説教を受けていたら1分が数時間に感じるって事」

 

 時間経過を焦れったく感じている中での待ちの中で、ズイホウがチョウカイとの会話で「あ~」と言いながら(多分)納得しているのを巡洋艦娘達が苦笑した時、ヒュウガが冥王星の衛星軌道から何かを感じ取った。

 

「右舷側、赤道付近の衛星軌道で何かが動いたぞ!」

 

 ヒュウガの指摘に他の者達が一斉に双眼鏡(テンリュウは隻眼故に単眼式、アオバは一眼レフ付きカメラ)越しにそちらに注目し……キヌガサが何かを見つけた。

 

「デブリが動いた!?」

 

 キヌガサが指摘した小惑星(デブリ)に、こそあど言葉でのやり取りをして少し迷走した後に、全員がそちらに注目したが、一見したら変哲が無さそうだったが妙な違和感が感じられた為に暫く注目していると、その小惑星が十字型に開いた中で口だけある桃色の球体が欠伸(アクビ)で大きく口を開けた。

 そしてその球体が何であるかを艦娘達は知っていた。

 

「アレは深海棲艦の浮遊要塞!!

何でアイツがデブリに擬態して衛星軌道にいるんだ!?」

 

 ヒュウガが叫んだ通り、球体の正体は深海棲艦の超弩級達の随伴兵器である浮遊要塞であったのだが、更に驚くべき事に浮遊要塞は他にも有って、幾つかの小惑星からも次々に浮遊要塞が現れていた。

 

「ちょっと待て!!!

まさか衛星軌道のデブリ全部が浮遊要塞なのか!!?」

 

「あ、浮遊要塞が何かを展開しましたよ!!」

 

 テンリュウが浮遊要塞が多数存在する可能性に驚き戸惑い、フルタカが浮遊要塞群が前方に銀色の何かを展開したのを叫んで報せたが、ハルナとユウバリがそんな2人を「黙ってて!!!」と怒鳴った。

 どうやらハルナとユウバリはビーム兵器のカラクリの大方を察するもまさかと思っていた様だったが、その直後に極太のビームが冥王星の衛星軌道を蛇行した後に艦娘達の近くを過ぎて小惑星帯へと飛んでいき、少しした後に小惑星の1つに直撃した。




 感想または御意見、或いは両方を御待ちしています。

 遂に土星組が冥王星に辿り着き、更に反射衛星砲のカラクリを見抜く事となりました。
 此の事は第60話の後書きでも予告してましたが、実は当初は見抜くのは榛名ではなく夕張としていました。
 と言いますのも、夕張が反射衛星砲を見抜く事に繋がる要因を思案していた時に偶々クルップK2に辿り着き、更に第60話で反射衛星砲を“不沈戦艦『紀伊』”での列車砲の立ち位置にした時に“勇者王ガオガイガー”での列車砲ゾンダーが榛名山に潜伏していたのを思い出して、反射衛星砲を見抜く者は夕張から榛名に変更となりました。
 更に言いますと、本編での理由は不明ですが、此の余波で榛名は砲兵器に関してマニアレベルの知識を持っているとしています。

 因みに分かっている人には分かっていると思いますが、“ガールズ&パンツァー”で試合会場のモニターの土台はクルップK2だそうですよ。
 さてさて、アンツィオアニーから何人ドーチェを思い浮かべたのがいるのやら…


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第71話 参戦

 今回の投稿前に“設定 艦娘”での未所有故の登場不可で“浜波”を削除して“御蔵”を加えました。

 更に第35話と第36話を改正してグレカーレとルイージ・ディ・サヴォア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィの2人を生存として、ガルマン・ガミラス&ボラー連邦編で出す予定にしました。

…なんか前回イベント後の憑物落としが不十分だった所為か、対馬が5連続ボスドロップ等で加古共々大量に手に入る事態が起きましたから、続きの憑物落としをしようとも思ってます。




 それでは、本編をどうぞ!


――― 冥王星沖 ―――

 

 

「何、今のビーム!!?」

 

「ヒュウガ、今の見た!!?」

 

 真っ直ぐ飛ぶしかないビームが冥王星を沿う形で曲がった事を見て、フルタカやイセに見られる通りに驚いていた。

 此の為か、自分の目を疑っているも、直ぐに続いた第2射も同じ様な軌道を描いていたので事実である事が確実となった。

 

「何でビームが曲がったんだ!!?

物理的にあり得ないぞ!!!」

 

 やはり驚くべきなのはビームが曲がった事であり、テンリュウが戸惑っている通りに他の者達も各々にそうしていた。

 

「あのビームは浮遊要塞に当たって曲がりましたよ!

きっと浮遊要塞がビームを曲げているのですよ!」

 

「ええ、あの発光現象を見た処だと、浮遊要塞は空間磁力を発生させている見たいね!」

 

「あれじゃ、望遠観測とかだと絶対分かりません!」

 

 ハルナとユウバリの2人は反射衛星砲の仕組みを見抜き、自分自身を落ち着かせる事も兼ねて若干大袈裟な会話を続けていた。

 

「まぁ兎に角、今言えるのは、アレじゃあ誰だって蜂の巣になるぞ」

 

 ヒュウガの取り敢えずの意見に全員がほぼ揃って頷いた。

 

「そしてあんな大出力だと、ビーム兵器………仮に“反射衛星砲”と名付けるけど、かの兵器は間違いなく冥王星基地にあると言うより、冥王棲鬼が持っていますね」

 

 チョウカイの確定に近い指摘に全員が頷き、あとに求めるは反射衛星砲(と冥王星基地)の所在のみであったので、チョウカイは直ぐにユウバリの方に振り向いた。

 

「ユウバリ、貴女なら反射衛星砲を何所に配備する?」

 

「……地下。

それに熱反応や反射衛星砲の冷却で出るだろう蒸気等の代物が無い事から、ガミラスは海の水を冷却水に使うだけでなく海へ排熱している様に見えるから、海岸線に近い場所だと思うわよ」

 

 ユウバリは少しの間唸った後に自分なりの推測を出し、チョウカイ達は揃って彼女に頷いた。

 

「此れである程度は捜索範囲を絞れましたが、やっぱり防衛司令部と通信が出来ないと、かなり辛いですよ」

 

「そう言えば、さっき通信手段に考えがあるって言ってたよね?」

 

 フルタカが言う通りに防衛司令部との連携が求められたが、直ぐにキヌガサがその解決策になるかもしれない手をチョウカイが持っているのを思い出して彼女の方に振り向い、チョウカイはキヌガサに頷くとズイホウに振り向いた。

 

「ズイホウ、ズイカクの艤装をハッキングして防衛軍の通信ネットワークに侵入出来ませんか?」

 

「……やってみる!」

 

 チョウカイの提案に、テンリュウみたいに味方をハッキングする事にギョッとしながら驚いているか、イセみたいに管理が基本的にいい加減なズイカクのなら出来そうな事に「あ~…」と唸って納得している様に2つの反応があったが、当のズイホウは可否を少しの間だけ思案した後に了解した。

 

「本当に出来るの?」

 

「ズイホウはオタクだ。

そんじょそこらの艤装なんて楽勝だよ」

 

 イセがハッキングをまだ疑っていたが、ズイホウが模型製作を初めとしたオタク文化に精通しているのを知っていたカコが、そんな彼女を笑って否定した。

 只カコに悪気が無いと思われるも、ズイホウは不快だったらしく、ムッとしながらカコを睨んだが、直ぐに懐から取り出した眼鏡を掛けると、前方にサークルを展開しながら艤装から取り出したキーボードを叩き始めた。

 

「…っ!

どうやら、潜水艦の真似事は此処までの様だぞ」

 

 テンリュウが全員がズイホウに注目していた中で、冥王星から新たに現れた艦隊を見つけ、更に確実に自分達に向かってきているのを察して、彼女が艤装の1つである剣を大きく振ってから身構えた。

 

「Was machst du da!!?

Riflektierter Satellit ist im weg!!!」

(訳:そこで何をやっている!!?

反射衛星砲の邪魔だ!!!)

 

 予想はしていたが、ガミラスは艦娘達を相変わらず友軍艦隊と勘違いしていて、遊星爆弾の作成の為の反射衛星砲の砲撃に巻き込まれない様に注意しに近づいている様だった。

 更に言うと、冥王棲鬼に何を言われるかを危惧しての事でもあったが、テンリュウ達にはそんな事など分かるわけがなく、ただ無警戒且つ無防備に近づいている様にしか見えなかった。

 

「…狙うなら、好機だね」

 

「ええ、今こそ鍛えた伝統の技をお見せする時!」

 

 チョウカイ達はキヌガサの指摘に対して、チョウカイが目線を合わせると次々に彼女に頷き、他にガミラス艦隊が見当たらない事から冥王星に接近する好機であるとの判断もあって、直ぐに艦列が単縦陣に整えられた。

 

「目標、前方のガミラス艦隊、雷撃戦用意!!」

 

 艦隊の先頭に移動したチョウカイはガミラス艦隊の行動と位置から空間魚雷による攻撃を決断、彼女の狙いは先制雷撃で初手を制して砲撃で殲滅するであった。

 重巡以上の艦艇での支援砲撃下での突撃雷撃との定石(セオリー)とは逆ではあるも、海自時代に廃れるも宇宙で復活を果たした日本海軍……その中でも重軽問わずに巡洋艦や駆逐艦のお家芸である魚雷戦である事には変わりなかった。

 只、イセが砲撃が初手でない事にムッとしていたのをハルナに苦笑されていたが、他の者達は此れを了解として淡々と準備を進めた。

 

「……撃ち方、始め!!!」

 

 チョウカイが距離とガミラス艦隊の動きを見極めて、彼女の号令下に巡洋艦娘達7人は空間魚雷を一斉に投下………ガミラス艦隊は接近した事で違和感を感じていたが、雷撃に対して致命的な遅さで気づいた事で我が目を疑って硬直し、そのまま回避や迎撃が出来ずに次々に被雷した。

 

「…Feindlicher Angriff!!!」

(訳:…て、敵襲!!!)

 

 ガミラス艦隊の生き残りは此処でやっと相手が(地球艦隊)である事が分かって慌てふためいていたが、今度はハルナ達戦艦娘3人も加わっての砲撃が襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・基地 ―――

 

 

「Wasbedeutet es,wenn eine der Wachflotten zerstoert wird!!?」

(訳:警備艦隊の1つが壊滅したとは、どう言う事!!?)

 

 チョウカイ達が戦闘を始めた事は当然ながら、冥王棲鬼の所に直ぐに報告され、冥王棲鬼は直ぐに管制室にやってきた。

 だが冥王棲鬼は、ヤマトを撃沈して精神的な命懸けで“あの御方”に直接報告をした事で安堵しながら勝利の余韻に酔いしれていた処でのこの報告が伝えられた為、明らかに不機嫌であった為に偶々右肩同士を軽くぶつけた雷巡チ級を八つ当たりで射殺し、部下達の殆どは彼女と距離をとって目線を合わせないようにしていた。

 

「Es gab also einen Aussetzer Riflektier Satellit!?」

(訳:それで反射衛星砲での誤射があったの!?)

 

「Nein,es gab einen Bericht ueber eine “Feindlichen Angriff”, bevor die Kommunikation unterbrochen wurde…」

(訳:いえ、通信が途切れる前に“敵襲”との一報がありましたので…)

 

「Mit andern Worten,die Erdflotte ist zurueck?」

(訳:つまり、地球艦隊が戻ってきたぁ?)

 

「Ja…」

(訳:はい…)

 

 直ぐに原因は地球艦隊の襲撃によるモノだと分かったのだが、冥王棲鬼達は攻撃の主はショウカク達8人だと誤解していた。

 此れは冥王棲鬼達がショウカク達の所在を見失っていた事もそうだったが、装甲空母姫達と同様に土星残存艦隊の情報が全く伝わっていなかった事が原因であった。

 此の為、冥王棲鬼は襲撃した地球艦隊は大型空母1人を含む1個水雷戦隊だと過小していた。

 因みに装甲空母姫以下の太陽系制圧艦隊が作戦上での冥王星に即刻帰還するのを無視して天王星軌道で広く展開していたのは把握していたが、此れは“演習でもしているのだろう”と軽い気持ちで片付けていた。

 

「…! Eine andere Wachflotte kam mit einer nicht identifizierten Flotte in Kontakt!

Nicht identifizeierte Flotte ist definitiv Erdflotte!」

(訳:…! 他の警備艦隊が未確認艦隊と接触をして戦闘に入りました!

未確認艦隊は地球艦隊で間違いありません!)

 

「……Wo ist die Erdflotte hingegangen?」

(訳:……その地球艦隊は何所に行った?)

 

「Versuchen Sie dieSatellitenumlaufbahn zu durchbrechen,in die Atmosphaere einezutreten und ueber die Berge abzusteigen」

(訳:衛星軌道を突破、大気圏に突入して山間部上空に降下しようとしています)

 

「Lassen Sie die schweren kreuzer,die an der Basis verbleiben,mit dem Torpedo-Geschwarderlos!」

(訳:基地に残っているリ級を水雷戦隊と共に向かわせろ!)

 

「Es gibt jedoch bereits eine,die sich noch in der Basis bewegen konnen!

Lassen Sie mich an die Flotte dass Asteroidenguertels erinnern!」

(訳:しかし、基地に残って動ける者はもう少数です!

小惑星帯の艦隊を呼び戻させて下さい!)

 

「Es besteht keine Notwendigkeit!!

Das reicht fuer mindestens ein Torpedo-Geschwarderlos!」

(訳:その必要は無い!!

高々1個水雷戦隊なんかそれで充分よ!)

 

 冥王棲鬼は地球艦隊は直ぐにまた撃退出来ると楽観視していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・山間部 ―――

 

 

「っしゃぁー!!!

チ級を沈んだ!」

 

「2つ目の敵部隊、撃破!!!」

 

 冥王棲鬼の命が下った頃、重巡リ級の報告通りに冥王星の山間部上空に降下をして、交戦していた2つ目のガミラス艦隊の旗艦の雷巡チ級が随伴艦5隻全てが沈んだ為に逃げようとした処をハルナによって背中を狙い撃たれる形で轟沈した光景に、テンリュウが両手を振り上げながら雄叫びを上げ、カコが右拳を握りながらニンマリ笑った。

 

「気を緩めないで!!!

此の星はガミラスの庭先なんですよ!」

 

「…! また来るぞ!!

今度は凄い数だぞ!」

 

「雑魚を相手にしている暇は無いのに…」

 

 そんな2人に対してハルナが直ぐに注意したが、彼女が言った直ぐに周囲警戒に放たれていたズイホウのコスモパンサー群の1つがガミラス艦隊の第3派が急速に接近しているを発見して、その事をヒュウガが怒鳴って報せて、チョウカイが歯軋りをしていた。

 

「ズイホウ、 まだなの!!?」

 

「そう簡単にはいかないのよ!!!」

 

 因みに、ズイホウがイセの催促で逆ギレして怒鳴ったの見られる通りに今暫くはハッキングで手一杯の為、ヒュウガが彼女に変わってコスモパンサー隊を使役していたが、そのヒュウガらハルナ、イセ、ズイホウの3人共々先程から姿が見えないでいた。

 

「不味い!!!

今度のはリ級が付いてます!」

 

 更にユウバリがコスモパンサー越しに第3派には重巡リ級が複数同行しているを指摘して、アオバ達が顔をひきつらせた。

 

「いえ、リ級の艦列が乱れています。

きっとあの艦隊は押っ取り刀で出てきたのですよ」

 

 チョウカイはフルタカの冷静な指摘に軽く頷いたが、彼女のみはガミラス艦隊に対して更に思う事がある様だった。

 

「全艦、直ちに行動開始!」

 

 直ぐに対応を始めたチョウカイの命令に、後続のキヌガサ達6人は「了解!」と答えて彼女に続いたが、顔をひきつらせていた。

 

「Dart!!!

Bereite dich auf den Angriff vor!」

(訳:いたぞ!!!

攻撃準備!)

 

「Aber was denken sie?」

(訳:しかし、奴等は何を考えているんだ?)

 

 第3派のガミラス艦隊は射程圏内に入ったら、チョウカイ達7人が無防備に目の前を横切ろうとしていたので全員首を傾げていたが、“野蛮人だから”と簡単に片付けてチョウカイ達を目視で捉えて直ぐ主砲の一斉射を放ち、全てが直撃コースに入っていた。

 

「」

(訳:すり抜けたぁ!!?)

 

「Was ist los!!?」

(訳:どうなってるんだ!!?)

 

「Nicht schieβen,nicht schieβen!!!」

(訳:撃つな撃つな!!!)

 

 処が、ガミラス艦隊の砲撃はチョウカイ達をすり抜けて、そのまま遠くに飛んでいってしまい、更に遅れて放たれた空間魚雷も同じ様にすり抜けていた。

 ガミラスは当初砲火力がありすぎて貫通したと思ったが、チョウカイ達が何食わぬ状態で航行し続けていたので否定し、代わりに防御機能辺りだと思ったらしいが、空間魚雷までがすり抜け、チョウカイ達が各々にノイズを走らせながら姿を乱れた事から彼女達が何をしたのかを察した。

 

「Lass es uns tun!!!

Dies ist ein Hologrammbild!」

(訳:弩畜生!!!

アレはホログラム映像だ!)

 

「Aber es gibt eineRadarreaktion!!」

(訳:でもレーダーの反応は有るぞ!!)

 

「Die reale Sache ist in der Naehe!」

(訳:本物が近くにいるって事だ!)

 

「Also was ist die reale Sache!?」(訳:じゃあ、その本物は何所だ!?)

 

「…! Es ist unten!!!」(訳:…っ! 下だぁぁぁー!!!)

 

 ガミラス艦隊の面々は目の前のチョウカイ達がホログラム(偽者)である事を見抜くも本物の居場所を見抜けない事で僅かな間の隙を突く形で、山間部の低空飛行をしているだろうチョウカイ達から爆発音が多数聞こえると、何かが曲線を描いてガミラス艦隊目掛けて飛んできた。

 

「Oh,es ist eine Muschel!!?」

(訳:ほ、砲弾だと!!?)

 

 直ぐに飛んできているのが砲弾だと分かりはしたが、砲弾による砲撃などは西暦2199年の地球では限りなく古い手になっていたし、ガミラスに至っては最早“原始的”が頭に付くレベルであった為、艦隊全員が我が目を疑ってしまった事で硬直してしまい、そのまま何隻かが被弾してしまい……なんとチョウカイ達が丁字を描いていた事もあって、重巡リ級群こそはからくも中破ですんだが、駆逐艦群や軽巡2種に雷巡チ級等は轟沈していたのが多々あった。

 




 感想・または御意見を御待ちしています。

 少しネタ晴らしですが、今回でのハッキングの発想はCG映画版“キャプテンハーロック”を元にしています。

榛名
「ああ、地球圏での海戦中でのヤッタランさんの行為ですね」

 当初はハッキングは加古がやる予定でしたが、“瑞の海、鳳の空”を読んでオリジナル版ヤッタランと同じく模型作りが趣味の瑞鳳に変更となりました。
 瑞鳳(ズイホウ)が眼鏡を掛けたのも此の影響です。

榛名
「しかし、あの映画でのヤッタランさんは銀河英雄伝説並に“動けるデブ”との似て非なるキャラになったのは何故でしょうね?」


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第72話 上がれ、反撃への狼煙

――― 冥王星・山間部 ―――

 

 

「チョウカイの読み通り、ガミラスは砲弾に対する防御を疎かにしていましたね」

 

「ガミラスは此の御時世に砲弾が飛んでくるなんて思ってなかったんだよ」

 

 砲弾によって衝撃砲がほぼ無効なガミラスが多数撃沈できた事に、キヌガサとカコがお互いの目線を合わせながら笑っていた。

 

「Es war groβartig!!!」

(訳:いたぞぉぉぉー!!!)

 

「Schieβen und schieβen!!!」

(訳:撃て撃てぇぇぇー!!!)

 

 だがガミラスは直ぐにチョウカイ達を見つけると直ぐに反撃を開始して、光線砲による一斉射をしてきたが、それ等全ては山間部を縫う形での高速低空飛行をしていたチョウカイ達から外れて山肌を抉るだけに終わっていた。

 更に続けて空間魚雷も多数飛んでくるも全て外れてしまい、此れは山間部での低空飛行でレーダーが撹乱されている為だとは直ぐに分かりはしたが、ガミラス艦隊のらしくない命中率の悪さにキヌガサ達6人が各々に疑問に感じていたが、チョウカイのみは笑っていた。

 まぁそれでも“下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる”の要領で何割かが直撃コースに乗っていたが、それ等全てはチョウカイ達に見切られて避けられていた。

 そして更に続いたガミラス艦隊の砲雷撃もまた外れて、高度を落として自分達を追撃しようとするガミラス艦隊の内の駆逐艦の何隻が山肌に激突したのを見て、チョウカイは確証を得ていた。

 

「やっぱり!!

ガミラス艦隊は鍛練を怠けた為に、視覚が錯覚しているんです!」

 

 チョウカイの叫びながらの指摘に他の6人が“あっ”としながら納得していたが、要するにガミラス艦隊の面々は赤一色で目印になりそうな物が一切存在しない此の場の環境で目視での距離感が狂っていたのだった。

 地球でも此の事が原因で、雪山登山などで崖やクレパスへの落下事故が度々起きていたが、NASA主導での月面基地建設時に大気の無い月では視界が地球より鮮明になっていた事もあってEVA(イーブイエー)(Extra-Veicular Activity:船外作業)中の宇宙飛行士2名がバギーごとクレーターに落下して内1人が酸素ボンベの損傷で死亡するとの痛ましい事故が起きていた。

 地球史上初のEVAでの宇宙飛行士の事故死を起こしてしまったNASAは世界中からの非難を受ける中で対策として“雪山専門の登山家の助言を元にした視覚強化訓練の実施”“全ての乗り物にカーナビやレーダーを装備”等を速やかに実施した。

 勿論、日本もまた殉職した宇宙飛行士が日本人だった事もあって、取り分けて艦娘達に旧海軍の夜間視力強化訓練を参考にしたのを、月面での低空飛行訓練を含めてやらせるようになり、チョウカイ達は土星潜伏中も他のも含めてサボる事なく続けていた。

 それに対して、少なくとも冥王星に駐留するガミラスはと言うと、艦娘達とは天地程の差が出来たとの判断から訓練を色々とサボるようになった為、さっきから衝突の多発や攻撃を外し続けていた上、山肌に激突しそうだったのを急上昇しての回避で艦列を離れた処を狙い撃たれる者達までがいた。

 

「Was ist los!!?

Die Gegnerin ein Schiffstochter,das nur wild Techniken beherrscht,!!?」

(訳:ど、どうなっている!!?

相手は野蛮な手法しか出来ない艦娘に、っ!!?)

 

「In der Erdflotte,in der es nur Zerstoerer gibt,ist under GAMYROS einunbesiegbarer Feind!!?」

(訳:たかが駆逐艦しかいない地球の艦隊に、無敵艨艟たる我等ガミラスがこんな相手に!!?)

 

 ガミラスは此の事での艦娘達に出来て自分達には出来ず、更に今までとは真逆で自分達が次々にやられている現状に驚き戸惑っていたが、少数の賢明な者達は当然直ぐに屈辱を噛み締めながら視覚からレーダー重視に切り替えていたが、チョウカイ達はその事をあっさり見抜いていた。

 因みに、チョウカイ達は気づいていなかったが、ガミラスはまだチョウカイ達をショウカク有する水雷戦隊と勘違いしていた。

 

「それじゃ、次の手をしますか」

 

「……お休み、ガミラス!!」

 

 早速動いたチョウカイの指示に、ヒュウガが不敵に笑いながら上空のコスモパンサー隊から何かを一斉に投下させ……少し間を置いてから、ガミラス艦隊の面々が一斉に悲鳴を上げた。

 

「Was ist das!!?

Das Radar ist weiβ!」

(訳:な、何だ、此れは!!?

レーダーがホワイトアウトしたぞ!)

 

「Spreu!!!

Sie verteilen die Tachionhemmende Spreu auf einer groβen Flaeche!!!」

(訳:チャフだ!!!

奴等、タキオン阻害チャフを広範囲にばら蒔きやがった!!!」

 

「Nein!!!

Radar ist voll ver wendbar!」

(訳:駄目だ!!!

レーダーが完全に使えんぞ!)

 

「Vieh,weibliche Affen Erden!!!

Was fuer ein schlauer Kerl!」

(訳:畜生、地球の雌猿ども!!!

なんて陰険な奴等なんだ!)

 

 ガミラス艦隊はヒュウガがやった事を察していたが、最後の頼みの綱であったレーダーを使用不能にされた事に驚き戸惑っていた。

 圧倒的な強者との慢心からの自助努力を完全に放棄し、更に機械万能主義からの機械の一部と化すの道を選んだ事からの怠惰の極めていたガミラス艦隊は、自業自得と言うべき恥まみれのパニックを起こしていた。

 

「フルタカ、ユウバリとテンリュウと一緒に水雷戦隊を攻撃して下さい!」

 

「戦力分散の愚を犯すかもしれませんか?」

 

「大丈夫!

私の計算通りだとね」

 

 それに対して、チョウカイ達もまたレーダーが使用不能と化しているも何事もなく動き続けていて、更にチョウカイが冷静な分析から後尾のフルタカ達3人を分離して水雷戦隊の攻撃に向かわせ、自分達は離散している重巡リ級群の各個撃破を狙って彼女達の背後から接近すると言う、思いきった行動を起こしていた。

 

「Die Erdflotte wird ab 7 Uhr kommen!!!」

(訳:7時の方から地球艦隊が来るぞ!!!)

 

「Moent mal!!!

Das ist kein Torpedo-Geschwarderlos!」

(訳:ちょっと待て!!!

あれは水雷戦隊じゃない!)

 

「4 schwere Kreuze!!?

Die Jungs waren noch nie da!」

(訳:重巡が4!!?

アイツ等、さっきいなかったぞ!)

 

「Es ist die dirtte Flotte!!?」

(訳:まさか、第3の艦隊か!!?)

 

「Was haben die Patrouillen gamacht!!?」

(訳:じゃあ、哨戒の連中は何をやってたんだ!!?)

 

「…主砲、よく狙って……てぇぇぇー!!!」 

 

 ガミラスは此処でやっとショウカク達とは別の、第3波の艦隊と言うべき艦隊である事が分かって驚き戸惑っていたが、チョウカイは此の隙を突いて重巡リ級群に探照灯とレーザーの照射を開始し……彼女からデータを受け取ったキヌガサ、アオバ、カコの3人と共に一斉射をし、重巡リ級群が被弾して混乱している間に更にもう一斉射を空間魚雷と共に放った。

 

「Stoert mich nicht,Schiffstochter!!!」

(訳:調子に乗るな、艦娘ども!!!)

 

「Dies ist ein No-Guard-Kamp!!」

(訳:こうなりゃ、ノーガード(同航戦)の殴り合いだ!!)

 

「Ich werde dich in der achten toten!!!」

(訳:てめぇ等、八裂きにブッ殺してやる!!!)

 

「Schwerer Kreuzer derfaulen Schiffstochter!

Ich mache es kaputt,bis es sihlimmer ist ais Hackfleisch!!!」

(訳:腐れ艦娘の重巡どもめ!!!

ミンチ(肉挽き)より酷い状態になるまでに粉々にしてやる!!!)

 

 だがチョウカイはこれまで圧倒的な強さを誇ったガミラスに戦いを優勢にし続けた事で計算が甘くなったらしく、重巡リ級群は彼女達の砲雷撃で多くが沈んで残った者達も血塗れになっていたが、彼女達への憎悪に加えてガミラス重巡としての意地と誇りをもって、単縦陣を展開して直ぐに反撃を開始、先頭のチョウカイが一斉射で狙われ……チョウカイも僅かな動きでなんとか避けようとしたが、何発かが彼女の服を切って十字に重ねて顔を庇った両腕を初めとした体の何ヵ所かに切傷が出来て、更に両腕各々に固定されていた主砲2基(と各々に付属していた対空火器群)が吹き飛ばされた。

 

「「「チョウカイ!!!」」」

 

「…まだ主砲は3基あります!」

 

 キヌガサ達3人はチョウカイの状態から思わず叫んでしまったが、当のチョウカイは傷など気にせずに両腕の主砲2基を手早く外して残った主砲3基(それ等が何処にも見当たらなかったが…)で反撃し、キヌガサ達も直ぐに彼女に続いた。

 

「…火力が、火力がちょっと足りません」

 

「不味いぞ。

リ級の奴等が調子を取り戻してきたぞ」

 

 だが先の被弾で潮目が変わり始めてしまい、更にチャフの効果が切れ出して、着弾観測を行っていたコスモパンサーがチャフ散布の憎悪も含めて雷巡チ級のミサイル攻撃(ガミラス版は深海棲艦版と違って多様なミサイル攻撃が可能)で次々に撃ち落とされていた事もあって、重巡リ級群は被弾を多々しながらも沈む気配が無いままに連射し続けていて、元々“被弾=轟沈”であるチョウカイ達が回避優先に切り替えてしまった為に徐々に砲撃数が落ちていた。

 現に重巡リ級群はチョウカイに有効打を得てから散布界を少しづつ狭めていて、4人に次々に至近弾による切傷が出来続けていて、何時誰かが被弾してもおかしくない気配が出ていて…

 

「…っ!?」

 

「「「「カコ!!!」」」」

 

…遂にカコが被弾し、重巡リ級群は勢いに任せて彼女に集中砲火を浴びせて、カコは更に多々被弾するも撃沈や大破はなんとか回避はできはしたが中破してしまい、徐々に高度を落としていた。

 

「…こぉぉーの、変態野郎があぁぁー!!!」

 

 だがカコは誘爆防止の為の放棄も兼ねて、高度の降下が限界に達する直前に空間魚雷を一斉に投下………ほぼヤケクソの雷撃だったので殆どが見当外れな方角に飛んでいったが、1本だけが奇跡的に重巡リ級に命中して爆沈、此れに他の重巡リ級群がギョッとした隙を突いてのチョウカイ達3人が一斉射を放って、更にもう1隻が沈んで残り全ても大破して行動不能となってカコ同様に高度を落としていった。

 

「…間一髪でしたねぇ~……っ!?」

 

「「ア、アオバ!!?」」

 

 重巡リ級群をなんとか撃破した事で、アオバが溜息と共に気を抜いたが、その直後に真左から飛んできた光線に被弾して派手に吹き飛ばされてしまった。

 

「Dumm!!

Ihr kennt das Wort “Schutz” nicht,Leute!」

(訳:馬鹿め!!

“油断大敵”と言う言葉を知らん様だな、お前達は!)

 

 チョウカイとキヌガサはアオバをヤった光線が飛んできた方向に慌てて振り向くと、そこには別の重巡リ級が雷巡チ級と駆逐艦4隻の計5隻を従えて存在していた。

 因みに、此の6隻全員は先程ショウカク達3人と戦っていたので、各々にショウカクのコスモタイガーでの爆撃痕が見て分かる程にあった。

 チョウカイとキヌガサは新たな敵艦隊に隙を全く見いだす事が出来ない為、万事休すとなって思わず後ずさっていた。

 

「ぬあぁぁぁー!!!」

 

 重巡リ級エリート達はそんなチョウカイとキヌガサに一斉射をしようとしたが、その直前に下方から飛んできた砲弾と機銃に気づいて艦列を乱しながらも回避した。

 

「「カコ!!!」」

 

「私はもう逃げねえぞ!!!」

 

 チョウカイとキヌガサが驚きながら砲撃がする方に振り向くとそこには不時着したカコがいて、彼女は大破した艤装を外して野砲の要領で無理矢理動かしていた。

 しかもカコは駆逐艦群の爆雷が降り注いでいる中でも気にする事なく攻撃を続けていた。

 因みにアオバはと言うと、積雪が深い所に墜落して上下逆さで上半身が埋まっていたが、此の状態を脱しようとしている表れで両足が色々と激しく動いていたので、取り敢えずは生きてはいる様だった。

 

「チョウカイ、下がってください!!!」

 

 チョウカイとキヌガサはガミラス艦隊共々カコの奮戦に気がいっていたが、背後からのハルナの怒鳴りに我に返ると、直ぐに後ろに振り向いて、ズイホウの前と左右各々にいるハルナ、イセ、ヒュウガの計4人を確認

した。

 

「ヒュウガ、遅れないで!」

 

「張り切り過ぎだ!」

 

 更にチョウカイとキヌガサは左右各々にバク転をしながら飛び退いた直後、イセとヒュウガがハルナとズイホウを置き去りにして加速して前進した。

 

「…und 3 Schlachiffe!!?」

(訳:…せ、戦艦が3!!?)

 

 重巡リ級はチョウカイとキヌガサの行為に首を傾げたが、その直後にハルナ達3人の戦艦娘に気づいてギョッとしたら、直ぐに飛来したハルナ達3人の砲弾が直撃して上半身が吹き飛ばされ、駆逐艦2隻も若干差はあったが続けて爆沈した。

 

「Zwei Schlachiffe kommen herein,kommen herein!!」

(訳:戦艦2隻が突っ込んでくる、突っ込んでくる!!)

 

「Was sind die Jungs……!?」

(訳:アイツ等、何を……!?)

 

 更に砲撃後も自分達目掛けて突進してくるイセとヒュウガに駆逐艦2隻共々首を傾げた雷巡チ級だったが、その2人が左脇腹の太刀に手を掛けた事でギョッとしながら全てを察した。

 

「Auf keinen Fall,hast du Lust auf eine Schlacht!!?」

(訳:ま、まさか、衝角(ラム)戦をする気か!!?)

 

「Evakuiere,lauf weg!!!」

(訳:た、退避だ、逃げろぉぉぉー!!!)

 

「Nein,das laesst sich nicht vermeiden!!!」

(訳:駄目だ、回避不能!!!)

 

 雷巡チ級達は明らかに遅い退避行為を起こそうとしたが、その前にイセとヒュウガが抜刀術(居合抜き)で太刀を抜き……イセは仮面越しでも分かる程に顔面蒼白となって硬直していた雷巡チ級の首を撥ね飛ばし、ヒュウガは背を向けて逃げようとした駆逐艦2隻を続けて真っ二つにして撃沈した。

 

「……何で出てくるのですか!!?」

 

「馬ぁー鹿!!!

こんな状態で引き込もっていられないわよ!」

 

 チョウカイがヒュウガ達に怒鳴ってしまったのは、ハッキング中のズイホウを曝け出したくない事に加えて、戦艦娘達の存在から協力な増援が来ないように、敢えて戦艦娘3人を隠れてもらっていたのだ。

 だがイセの返し通りに出てこなかったらチョウカイ達は殺られていた可能性が高かったので、チョウカイは言い返せずに歯軋りをしていた。

 

「チョウカイさん、また水雷戦隊が来ます!!」

 

(ズル)いわよ、ガミラス!!

アンタ達だけはタッグマッチだなんて!」

 

 まぁ緊急電がある以前に、新たな艦隊が襲来しようとしていて、フルタカがその事を慌てながら報せ、ユウバリが思わず文句を言っていた。

 

「ちょっと此れって、不味いんじゃない?」

 

「ええ、このままだとジリ貧ですね…」

 

 キヌガサが短時間での連戦に危惧し初めていて、チョウカイも同意しながら舌打ちをしていた。

 しかも不味い事にチョウカイとキヌガサは空間魚雷を使い切ってしまい、砲弾の残弾数も不安を覚える程に減っていた。

 

「……ズイホウ!!!」

 

 こんな状態だからヒュウガがまだ出来ていないズイホウを怒鳴っていたが、当のズイホウは何も反応せずに歯軋りをしながら続けていたが、不意に表情が変わった。

 

「…よし………よし、来た来た来たぁぁぁー!!!

防衛軍のネットワークに侵入出来たぁぁぁー!!!」

 

 苦戦をして汗を大量に流してしたズイホウは、遂にズイカクの艤装のハッキングに成功して、最後にネットワーク通信を繋げると、両腕を振り上げて雄叫びを上げた。

 

「…防衛司令部、応答願います!!

防衛司令部、聞こえていますか!!?…」

 

 ハルナはイセ、ヒュウガ、チョウカイの順に目線を合わせて頷き合うと、ヘッドホンを頭に着けて防衛司令部への通信を試み始めた。

 

「後は防衛司令部に繋がる事を祈るだけだけど………問題はズイカクさんが乱戦とかで、通信を乱用していなければいいんですが…」

 

「それに、遠くに退却していたら、私達は磨り潰されるしかないぞ」

 

 最後の問題に対して、ズイホウとヒュウガはかなり不安を感じていた。




 感想・または御意見を御待ちしています。

 今回幾つか述べる事での1つ目、今回の前半で述べた月面での事故とその後の対策は“宇宙兄弟”を参考にしています。

鈴谷
「ああ、南波日々人が起こした事故。
本作じゃあ、日々人は死んじゃったんだ」

 2つ目は公式の艦これではどうなっているかは分かりませんが、“翠星の女王”の事もあって本作では帯刀している艦娘は宇宙海賊の艦みたいに衝角戦が可能としています。

日向
「だから本作での私達を再艦艇化したら、おそらく前弩級戦艦群みたいな衝角が着いていると設定しているそうだ」

 3つ目は、多分今回のみの登場と思われるタキオン阻害チャフですが、コイツは宇宙戦艦ヤマトのPS2ゲームの1つ“二重銀河の崩壊”で登場するアイテムですが、本来は“使用したコスモタイガー隊が一定時間敵のレーダーに映らなくなる”と言う代物ですので、本作のとは全く違います。

 4つ目は、まぁ艦娘の面々をみたらなんとなくは察する事は出来ると思いますが、今回は“氷山空母を撃沈せよ”版の第一次ソロモン海戦をイメージして書きました。
 只、塩胡椒レベルで“超弩級空母大和”と“CG映画版キャプテンハーロック”を入れています。

鈴谷
「そのハーロックでの終盤での『アルカディア』vs『オケアノス』でのヤッタランの(多分)名台詞があったね。
出すの早いと思わなかったの?」

 正直そう思いましたが、出し惜しみは無しとして此処で出しました。

 そして最後に、こう言うのは読者の皆さん各々にお任せとしていますが、今回のみは作中終始流れる曲を決めています。
 他のヤマトの二次クロスをそこそこ読んだ感じだと、殆どはヤマトの曲が使われていますが、個人的に今回は艦これの曲を使ってるとイメージしました。

鈴谷
「ほぉ、んで何を使ってるの?」

…“決戦、鉄底海峡を抜けて”!!!
(注:決戦、鉄底海峡を抜けて……艦これでも屈指の名曲且つ、“聞く脱毛剤”と称されるトラウマソング)

日向
「…っ! 攻めたな」
鈴谷
「おう! 攻めるね!」


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第73話 思わぬ通信

――― 防衛司令部 ―――

 

 

「いったい、何が起きているのよ!!?」

 

 此の時の防衛司令部はと言うと、キリシマが怒鳴り散らしている事から見られる通りに、太陽系制圧艦隊が冥王星に向かわずに、天王星軌道で広範囲に展開している事を理解出来ないでいた為、ちょっとした混乱が生じていた。

 そんなキリシマに対して、沖田は思案していて固まったままだったが、足止め艦隊の一員として出撃して帰還したキサラギ(これと同時に藤堂の秘書艦に復帰)以下の艦娘達や藤堂達は苦笑していた。

 

「ズイカク、太陽系制圧艦隊がワープをするだろう君達を待ち伏せているとは考えられんか?」

 

『…思えません。

アイツ等、私達を待ち伏せていると言うより、天王星軌道で何かを探しているとしか思えない』

 

 ズイカクはアマツカゼと共に戦線を一時離脱して海王星軌道からの航空偵察を行わせた結果を通信で、沖田に代わって彼女達の指揮を取っていた土方竜の質問を否定した。

 

『それに先程から太陽系内縁方面からガミラスの通信が爆発的に増えてますから、おそらく天王星軌道で何かが有った事は確かです』

 

「ショウカクさん、通信内容の解析は出来ますか?」

 

『駄目です。

通信量が多すぎますし、オオヨドさんやマミヤさんでない限りは…』

 

 更にショウカクが通信越しにズイカクの情報を捕捉していたが、彼女達も太陽系制圧艦隊の不可解な行動の影響でズイカク達に合流する事なく冥王星と小惑星帯のほぼ中間宙域で待機となっていた。

 因みに、ショウカクがキサラギの質問にオオヨドと共にマミヤを上げたのは、マミヤは補給艦であると同時に広域通信観測艦でもある為であった。

 

「……兎に角言えるのは、ガミラスに何かが起きた。

更に冥王星との連携が無きに等しい状況である以上は、何らかの手を打つには好機なのだが…」

 

 沖田は独り言に近い意見を述べたが、流石に此の現状でショウカク達に冥王星への再突入させる事は思い浮かべていなかった。

 

「ズイカク、オオヨドを呼び寄せて構わんから、 もっと太陽系制圧艦隊を偵察しろ!」

 

 まぁ現状では太陽系制圧艦隊の状況を確認する事しか選択肢になかったので、芹沢がズイカクに更なる偵察を命じて、そのズイカクが了解しようとしたが…

 

『……い司令部、防衛司令部、応答願います!!!』

 

…ズイカクの通信から、彼女とは全く違う声が大きく出た為、全員が一斉に硬直した。

 

『…わ、私じゃない!!!

私じゃない!!!』

 

 直ぐに全員が頭に“誰だ?”と思い浮かべて、思わずズイカクを見つめて、そのズイカクが必死に否定していた。

 

『…防衛司令部、聞こえてますか!?』

 

『ズイカク、貴女艤装をハッキングされてない!!?』

 

『えっ、ええ!!?』

 

「お前達は黙ってろ!!!」

 

 そんな防衛司令部が他共々戸惑っているのをよそに相手は必死に呼び掛け続け、更に微かに戦闘のと思われる爆発音や砲撃音も響いていたが、ズイカクがショウカクに指摘されて通信に何かをしようとしたが、芹沢が2人を怒鳴って止めて、此の間にキサラギがフミヅキと共に通信機を調整して繋がる様にしつつ、逆探知を始めた。

 だが此の時、キリシマとマヤは相手の声から各々に思い当たる人物を頭に思い浮かべて、“まさか”と思いながら目線を合わせていた。

 

「……長官、映像は出ませんが、応答出来ます!!」

 

「…君は、ヤマトか?」

 

『………違います!』

 

 通信が可能となって、藤堂が若干躊躇いながら相手に尋ねたら、その相手はどうも応答が有った事(+何か)に喜んでいたが、ヤマトである事を否定した。

 

「では君は誰だ?」

 

『…認識番号O-040417です!』

 

「ハルナ?

貴女、ハルナなの!!?」

 

 相手は藤堂の質問に、ガミラスの偽装と疑われない様に自分の認識番号を答えて、直ぐにキサラギが照合しようとしたが、彼女が動く前にキリシマがハルナのモノである事が見抜いて、無意識の内に藤堂を押し退けてメインモニターに近づこうとした。

 キリシマは死んだと思っていた姉妹艦ハルナが生きていた事に、現時点では喜ぶよりも戸惑っている様に見えた。

 まぁキリシマでなくても防衛司令部の面々も戦死扱いだったハルナに驚いている様であったが…

 

『はい、ハルナです!!

悪戯心でコンゴウ姉様に紅茶と騙して苦手なコーヒーを飲ませた為に、怒りの背負投げで犬神家にされたキリシマの姉妹艦です!

後、ヒエイ姉様お手製カレーをトイレに流したのに完食したと嘘をついたのがバレて、1日ハンデッドウーマン(吊るされた女)にされた…』

 

「アンタ、なんて事を言うのよ!!!」

 

 キリシマを初めとしてガミラスの罠と思って疑う者が多々いたが、ハルナがキリシマの黒歴史(恥ずかしい過去)を2つも暴露して、当のキリシマが怒鳴り返した事で全員が「あ~…」と呟きながら本物と断定した。

 

「ちょっ、キリシマ、落ち着け!!!」

 

「あそこに映ってるのはショウカクとズイカク、ハルナは映ってないよ!!!」

 

 此の為にキリシマはショウカクとズイカクが各々に映るメインモニターに殴り掛かろうとしてマヤとスズヤの2人が必死に抑え込み、ショウカクとズイカクが苦笑していたが、藤堂のわざとらしい咳で正気に戻ったらしく、キリシマは少し間を置いてから顔を赤して藤堂に頭を下げるとそそくさと後ろに下がった。

 

「…ハルナ、君達は今何所で何をやっているんだ?

それと今まで何所に生きていたと言うんだ?」

 

『はい、ハルナ以下11人の艦娘は土星の衛星エンケラドゥスでなんとか潜伏していましたが、第7次冥王星攻略の発動に合わせて土星圏から離脱、奇跡的に冥王星に辿り着いて現在冥王星守備艦隊と交戦中です!』

 

 ハルナ達が現在冥王星にいて戦っているのもそうだったが、土星にも艦娘の生き残りが複数いた事に驚いていた。

 

「土星に生存者がいたって、どう言う事だ!!?」

 

 だが直ぐに第一次木星沖海戦での決死輸送船団や同二次海戦での『ウィンダミア』を思い出され、そしてなにより芹沢達が意味ありげな反応をした事から、上層部は土星の生存者がいる事実を揉み消したのが分かり、此の為にマヤが芹沢達に怒鳴っていた。

 

「……君達が土星にいたのなら、空母ガンビア・ベイ達が乗り込んでいた『バッファロー・ビル』を知っているか?」

 

 藤堂がキサラギに振り向いて、そのキサラギが発信源が冥王星である事を逆探知で確認したのを頷いて報せ、沖田が手話か手信号でショウカクに警戒体制に入るように指令してショウカクが頷き、藤堂はまだ少し疑っていたので、敢えて間違った単語を使っての質問をした。

 此の質問にハルナが、“知らない”はまだ検討の範囲内だが、“知ってる”と答えたら、相手がガミラスによるハルナの偽者だと断定するつもりだった。

 

『いえ、『バッファロー・ビル』は知りませんが、ハルナ達の静止を振り切って地球に向かった『ウィンダミア』は知ってます。

それに乗り込んでいたのはチヨダさん達の筈です』

 

 だがハルナは否定して正解を答えたので、藤堂(達)は完全に本物と断定して不安を拭いさった事の表れとして溜息を大きく吐いた。

 

『…あの……チヨダさん達は……『ウィンダミア』はどうなったのですか?』

 

「木星沖で遠征艦隊に支障をきたす行為をしたから、公務執行妨害として搭乗員の一部が逮捕されたが、『ウィンダミア』はヤマトのお陰で地球に辿り着けたよ」

 

 ハルナ(達)に逮捕者が多々出た事への反応として沈黙が少しの間あったが、『ウィンダミア』が無事に地球に辿り着けた事に、特にその功績がヤマトであった事を声や音で分かる程に喜んでいた。

 更に言うと、『ウィンダミア』の1件が怪我の功名となって潜宙棲鬼(レムレース)発見からの交戦で撃沈に至った事を思い起こして、藤堂は軽く苦笑していた。

 

『ハルナ、また艦隊が来ます!!!』

 

『あ、はい!!!

現在冥王星で、ハルナ以下、イセ、ヒュウガ、ズイホウ、チョウカイ、フルタカ、カコ、アオバ、キヌガサ、テンリュウ、ユウバリの9名はガミラスの冥王星守備艦隊と交戦しています!

弾薬欠乏の可能性大ゆえ、大至急救援を要請します!』

 

 ハルナは藤堂達の信頼を得た事からの安心感から本来の要望を忘れていた様だったが、ズイホウの大声での報告でそれを思い出して直ぐに救援要請を出した。

 

『此方チトセです!

緊急報告、小惑星帯で複数の水雷戦隊が反転して冥王星に戻ろうとしています!』

 

 更にチトセの緊急報告でハルナ達を更に追い込みかねない事が知らされたが、此の事に沖田はある事を察していた。

 

「ショウカク、直ぐ冥王星に行け!!!」

 

 当然ながら、芹沢が沖田を差し置く形でショウカクに再反転を命じていたが、

 

『全航空隊、発艦開始!』

 

『敵の水雷戦隊はどうするニャ!?』

 

『攻撃するに決まってるでしょ!!!』

 

『ショウカクさん、航空隊は冥王星に向かわせてください!』

 

…当のショウカクは命令が来る前に航空隊を発艦させながら、冥王星へ随伴艦の者達を従えて全速力で向かいだして、そのまま通信が途切れた。

 

「ハルナ、今ショウカク達が向かったから、もう少し堪えて!!」

 

 キリシマはやはりハルナを思っていた事で、怒鳴りに近い形でショウカク達の再突入を伝えた。

 

『…あ、ショウカクさん達に冥王星の衛星軌道に注意を張って下さいと伝えて下さい。

ガミラスは衛星を使って弾道を曲げる地上型光線砲を配備しています。

私達は“反射衛星砲”と仮称する砲兵器の情報と映像を送っておきます』

 

 報せるのを忘れかけていたが、ハルナは反射衛星砲の判明情報を、アオバの撮影映像と共に添付をして通信を切った。

 その1つである反射衛星の役割をする浮遊要塞が光線を曲げている映像に誰もが唸っていた。

 

「此れがヤマトをヤった砲兵器のカラクリか…」

 

「ガミラスめ、面倒な兵器を開発したな」

 

 多くの者達は反射衛星砲の対処法を自分達各々のやり方で模索していたが、沖田はハルナ達の波動エンジン未装備等の現状を察したからの1手を打つために土方の方に振り向いた。

 

「土方、アマツカゼを引き抜いて、ショウカク達に合流させたいが、良いか?」

 

「勿論だが、念の為にアサシモも付ける」

 

 土方も沖田と同じくアマツカゼをハルナ達の所に向かわせるべきだと思っていたらしく、直ぐ沖田に了解した。

 

「と言う訳だからアマツカゼ、アサシモと合流してショウカク達の所に行け」

 

 幸いな事に、アマツカゼは護衛としてズイカクの傍にいたので、彼女は土方に了解としての右拳を左胸に当てる敬礼をすると、直ぐに画面外へ消えていった。

 

「…ズイカク、これ以上小惑星帯からガミラス艦隊を離脱させるなよ」

 

『了解しました』

 

 更に土方はズイカクにも命じ、そのズイカクがアマツカゼと同じ様に右拳を左胸に当てる敬礼をして了解すると通信を切った。

 

「……此れで、なんとかなるかもしれんな…」

 

 伝達不備から始まった思わぬ誤算が生じた事に、藤堂は溜息を大きく吐いていたが、沖田は更に動いていた。

 

「タイゲイ達3人はどの辺りにいる?」

 

「間もなく火星軌道に入ろうとしています」

 

「直ぐ呼び戻せ、大至急にだ」

 

 沖田はタイゲイ達の所在を確かめてからの帰還命令に多くの者達が首を傾げたが、土方は直ぐに、キリシマは少し戸惑った後に彼の狙いを察していた。

 

「藤堂長官意見具申、タイゲイ達を帰還させ、ユラの搭載エンジンをキリシマのとの積み替えを許可願います」

 

 タイゲイ達3人は海王星のキタガミやクロシオ等の救出を行う為、先日フミヅキとキヨシモによって試験運用が行われた改良型波動エンジンの試作品2基を手直し改良が行った事で新世代型波動エンジン(後の第2世代型波動エンジン)の先行試作品に昇華し、2基ある内の1つをユラに搭載されていたのだ。

 更に今述べた通り、ユラのとは別の新世代型波動エンジンの試作品がもう1基あるのだが……その所在は後々書く事にしよう…

 

「キリシマ達、第一艦隊を冥王星攻略戦に投入するのか?」

 

「いえ、第一艦隊だけでなく、『蓬莱丸』と『バッファロー・ビル』、可能であれば『ウィンダミア』を同行させます」

 

 藤堂(達)は第一艦隊投入までは察したが、その後の『蓬莱丸』級の動員を当初は理解出来なかったが、全員が直ぐに沖田の目論見を察した。

 

「まさか、空間騎兵隊に冥王星基地を強襲占拠させるつもりか!?」

 

 思わず叫んでしまった芹沢に、沖田は黙って頷いた。

 

「現在の冥王星圏2ヶ所での艦隊戦の状況予測から、冥王星基地の艦隊戦力は極めて少なくなっていると思われます。

此の事から艦隊戦を上手く対象すれば、降下からの強襲の成功率は極めて高くなると思われます」

 

「…確かに第二次木星沖海戦でのヤマトの行為を参考にしたら、空間騎兵隊を満載した輸送船ごとワープを行う事が出来るな」

 

 更に土方が沖田の狙いに自分なりに納得しての同意をした。

 

「だからと言って、装甲空母姫達が冥王星圏に戻る前にキリシマ達が冥王星に辿り着けるとは思えん!!

それに、そんな義烈空挺隊の二の舞になりかねない作戦に空間騎兵隊から参加する者が多数いるとは思えん!」

 

 芹沢が猛反対している中で述べた“義烈空挺隊”とは、深海棲艦戦時末期に占領された沖縄・嘉手納飛行場の切り込み破壊を行う為の旧陸軍の特殊部隊なのだが、実際行われた結果は深海棲艦の防空網に引っ掛かった事で沖縄に辿り着く前に搭乗機諸共全滅していた。

 更に藤堂はガミラスがある一手を打たれる事を危惧していた事もあって、空間騎兵隊は沖田の提案する作戦に反対するかもと思われていたが、それが間違いであった事が、つい先程から通信機越しに何かを対応していたキサラギの溜息から証明される事となる。

 

「…あの、芹沢参謀長……とても言い難いのですが、沖田司令の作戦はやらざるをえなくなりました」

 

 キサラギの指摘に芹沢が他共々“えっ?”としたが…

 

「おい、貴様等!!!

此所が何所なのか、分かってるのか!!?」

 

五月蝿(うるせ)え!!!

何所だか知ってるから来てんだ!!」

 

「さっさと退けぇぇー!!!」

 

…よく耳を澄ましたら、奥にある入り口の方で警備兵達が多数の者達との争いが聞こえていたが、どうやら警備兵達は塞き止めに失敗したらしく、大多数の騒がしい足音を鳴らしながら藤堂達の所に早々と近づいてきていた。

 その者達……黒い装甲服を纏った屈強な男性達と、艦娘と似て非なる女性達の大軍に、多くは先程とは別の意味での“えっ?”として、土方が軽く溜息を吐いて沖田と目線を合わせていた。

 

「……く、空間騎兵隊の連中だ…」

 

「なんで汗臭い連中が来たのよ」

 

 マヤとスズヤに見られる通り、藤堂達の前に整列した相手が普段は此の防衛司令部を含んだ中枢部を警護している空間騎兵隊の皆さんだと直ぐに見て分かった。

 只、スズヤは空間騎兵隊が苦手なのか、然り気無くマヤの後ろに移動していた。

 

「藤堂長官、話は聞いた!

冥王星基地への強襲降下をするんなら、俺達を行かせてくれ!!!」

 

「俺達空間騎兵隊の銃は市民に向けるんじゃなくて、敵に向けるモノなんだ!

その機会を与えてくれ!!!」

 

「いつまで艦娘達だけを戦わせるんですか!?

空間騎兵隊にも見せ場を与えてくれ!!!」

 

 空間騎兵隊が此所に来たのは先の芹沢の叫んでの指摘時にオペレーターの1人が空間騎兵隊の知人の無断で通信で伝えたのが原因だったが、更に後日判明した事だが、どうやら空間騎兵隊はクロシオの解放からの第七次冥王星攻略作戦の実施から、自分達の出番を期待していて、彼等なりに冥王星基地の占領や捕虜解放の為の降下作戦を立案してからの訓練をしていた。

 まぁ根底には、此のガミラス戦は空間騎兵隊(と言うより陸軍系統全て)は基本的に裏方だったので、常敗でも終始活躍していた艦娘や提督に臍を噛んでいたので、表舞台で主演を張れるだろう期待からこうして乗り込んで来ていたのだ。

 此の為、芹沢達の危惧に反して、空間騎兵隊に“否”と答える者は誰もいなかったのだ。

 

 そして結果的に言うと、此の直後に日本中の空間騎兵隊から出撃許可を求める通信が防衛司令部の通信士達が右往左往する程に殺到した事が決め手となって、空間騎兵隊の登場で若干渋々になったが、藤堂は沖田の意見を認める事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星 ―――

 

 

 ハルナ達が冥王星軌道に辿り着く少し前、反射衛星砲の連続攻撃にやられたヤマトは緊急着水で砕けた氷が再生した事もあって、若干浅いが暗い冥王星の海底で仰向けに倒れていた。

 深海棲艦戦時のであったら完全に沈没であったのだが、ヤマトは気を失っているも微かに呼吸をしている事から、自分の艤装がなんとか稼働している事が見てとれて、大破状態になっていても沈没にはまだ至っていなかった。

 だがヤマト上方の氷が砕けて何者かが、ヤマトの傍に降り立った。

 その者は暫くヤマトを見詰めていたが、不意にヤマトの右腕を掴み上げると、その右腕を自分の首裏に回す形でヤマトを担ぎ上げると、そのままヤマト共々冥王星の海底を進んでいった…




 感想か御意見のどちらか、或いは両方をお願いします。

 今回榛名が言った自分の認識番号はあるモノをそのままにしてますので、分かったらある意味凄いですよ。

 後、榛名の声に霧島だけでなく摩耶までが反応したのは、姉妹艦鳥海が榛名と中の人が同じだと言うメタ的な理由からですので。


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第74話 戦友、冥王星に戻り来る

 今回の投稿前に“設定 艦娘”の未所有故に登場不可に“ヒューストン”“デ・ロイテル”“パース”“神州丸”“平戸”“秋霜”“アトランタ”の7人を追加していましたが、獲得した事で“ヒューストン”“ディ・ロイテル”“パース”“神州丸”“アトランタ”“御蔵”の6人を削除しました。





 それでは本編をどうぞ!


――― 冥王星・ガミラス基地 ―――

 

 

『Das Flaggschiff wurde zerstoert!!

Links,Asturm von links!!!』

(訳:旗艦が殺られた!!

左、左から突進して来る!!!)

 

『Aufstieg!!!

Steig aus!!!』

(訳:上昇だ!!!

離脱しろ!!!)

 

『Nicht zerstreuen!!

Jeder wird zerstoert!!!』

(訳:分散するな!!

各個撃破されるぞ!!!)

 

『Nein!!!

Ausstatten,Feuer Ausstatten!!?』

(訳:駄目だ!!!

艤装が、艤装が火を噴いっ!!?)

 

『Beeil dich!!

Eine Muschel kommt von oben!!!』

(訳:回避急げ!!

上から砲弾が来るぞ!!!)

 

『Jemand kommtfrueh!!

Von einer Schiffstocher getetet!!

Bitte helfen Sie!!!』

(訳:誰か早く来て!!

艦娘に殺される!!

助けてぇぇぇー!!!)

 

「……Ein Albtraum…」

(訳:……悪夢だ…)

 

 冥王星に降下した艦娘達への迎撃を初めてから第3波までが撃滅されてしまい、前波から少なめの第4波が戦闘を開始してからと言うと、通信から聞こえてくるのは友軍の悲鳴のみであり、文字通りに耳を塞ぎたくなる状況に通信オペレーターを務める雷巡チ級達は仮面越しに顔を青くするしかなかった。

 

「…Fauler Muell!!!」

(訳:…怠け者の屑どもが!!!)

 

 その雷巡チ級達の背後にいる冥王棲鬼はと言うと、指令や増援を出せば出す度に恥の上塗りをしてしまう現状を解決出来ず、しかも最大の原因は部下達の殆どが慢心による鍛練を怠けていた事であるのが分かった為、噴火寸前の火山を連想させる程に怒りを露にしていた。

 尤も、その原因となったのは冥王棲鬼が部下達の鍛練を確認せずの本人任せにしていた監督不届いきであった所為、通常型達は冥王棲鬼に気付かれないように抗議の目線を送っていた。

 

「Koenig Koenig dir geht die defensive Flotte aus.

Erlaube der Asteroidenguertelfelflotte nur einen Teil zurueckzugeben!」

(訳:冥王棲鬼様、守備艦隊は使いきりそうです。

小惑星帯の艦隊に対して、一部だけでも帰還させる許可を下さい!)

 

 まさか基地陥落の危険性までは感じてはいなかったが、このままだと艦隊に大損害が出る上、更に自分達が最前線に投入される事を危惧した事もあって、小惑星帯の艦隊を呼び戻す事が具申された。

 その事に冥王棲鬼はと言うと、内心は“やむを得なし”と断定していたが、色んな意味で悔しがっていた事から、「Bastard(畜生)」と唸り声を出しながら震える右手に血管を浮かび上がらせていた。

 

「Kannst du mit Reflektierter Satellit zielen!!?」

(訳:反射衛星砲で狙えるか!!?)

 

「……Nein!

Ich kann nicht zielen!」

(訳:……駄目です!

狙いが付けられません!)

 

 冥王棲鬼は打開する為に反射衛星砲の使用を思い浮かんだが、残念ながら山間部での低空戦でレーダー波が撹乱されている上に上空(と言うより反射衛星要塞での中継)からの視認が極めて困難であり、そしてほぼ乱戦に近い状態になっていたので誤射の可能性が大なので使用不可と断定された。

 此の為に冥王棲鬼は潰しかねない程の歯軋りをした。

 

「…Auch wenn Sie das Verbidungsboot herausnehmen ,rufen Sie den Asteroidenguertel zurueck!!!」

(訳:…連絡艇を出してでも、小惑星帯の奴等を呼び戻せ!!!)

 

 冥王棲鬼が若干拒絶反応を出してはいたが、なんとか出した帰還命令に通常型達は直ぐに「Ja(了解)」と答えて作業に取り掛かった。

 

「Aeh,moechten Sie auch eine Mitteilung an Gepanarte Prinzessin senden?」

(訳:あの、装甲空母姫様にも通信を送りますか?)

 

 冥王棲鬼は言われなくても装甲空母姫達の太陽系制圧艦隊を呼び戻す事は頭に思い浮かべてはいた。

 そして装甲空母姫なら帰還要請を出せば直ぐに戻ってきてくれると思うのだが、その装甲空母が憎たらしい笑顔を自分に向けてくる光景が過った為、どうしても要請を出す気になれなかった。

 

「…Es ist gut.

Ich sage dir,dass du frueh im Voraus zureckkhren sollst」

(訳:…それはいい。

事前に早く戻るようには伝えているからな)

 

 要請を出すかどうかでの迷いが感じられたが、結局は冥王棲鬼は“否”としたが、通常型達は冥王棲鬼の慢心と自己保身を感じ取ったので内心呆れていた。

 

「Wenn ja,was ist der fuenften und sechsten Gruppe?」

(訳:それでしたら第5波や第6波はどうします?)

 

「…Die fuefte Gruppe kann so bleiben,wie sie ist,aber ich moechte ein wenig darueber nachdenken,damit die schste Gruppe wartet」

(訳:…第5波はそのままでいいけど、少し考えたいから、第6波は待機させて)

 

 此の時の冥王棲鬼に冷静さと状況判断能力が有ったなら、第4波迎撃でハルナ達は弾薬欠乏になりかけているのを見抜けた筈であり、第5波や第6波を続けて突撃させていればハルナ達を殲滅できた可能性は高かった。

 だが実際はと言うと、冥王棲鬼は“ヤマト撃沈”と“反射衛星砲”の2点が原因で戦略的柔軟性が失われていて、現に彼女は反射衛星砲を使うかどうか、そしてハルナ達をどうすれば狙い打てるかを必死に思案していた。

 

『Auf! Feind,oben!!!』

(訳:っ、上! 敵、上ぇぇぇー!!!)

 

 此の為、冥王棲鬼は自分の戦略的ミスを痛感するはめになるのが確定したのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・山間部 ―――

 

 

「第5波が来る!!」

 

「……クソッタレ…」

 

 第4波を撃退に成功したのもつかの間、ズイホウが第5波襲来を叫んで知らせると、テンリュウが歯軋りをした。

 と言うのも、彼女達はなんとか優位のままに第4波を撃退したのはいいが、気力や体力に怪我の具合は兎も角として、空間魚雷を使い果たして弾薬は欠乏寸前になっていたからだ。

 幸い第4波は駆逐艦のみだった事も幸いして、チョウカイとキヌガサにフルタカの3人は墜落して戦闘不能(但し応急処置で航行は一様可能)のアオバとカコから、テンリュウとユウバリはイセとヒュウガの副砲(蛇足ながら、イセ級とナガト級の副砲は速射性を強化する為にテンリュウやユウバリ達等の一部の巡洋艦娘の主砲と同じ14cm砲を搭載、コンゴウ級とフソウ級のは15cm砲の為に規格が違う)から、各々弾薬を提供してもらって継続していたのだが、それも限界を迎えようとして、更にショウカク達が来るか否かの不安からのストレスもあって4連戦の疲労が重たく出ていた。

 まぁそれでも全速で後退しながら、ハルナ達戦艦娘3人は弾薬にまだ余裕のある主砲での遠距離射撃を続けていたが、ズイホウは残った艦載機全てを発艦させる為に弓矢を下段の構えで身構え、チョウカイ達巡洋艦娘達3人はカコとアオバを牽引しながらハルナ達の背後でコスモガンを身構えていたが、第5波の駆逐戦隊群は怯む事なく突進を続けていた。

 

「…どうやら気付かれたようです」

 

 ハルナが悔しそうに指摘した通り、どうやらガミラス艦隊の第5派は艦娘が揃って弾薬欠乏寸前である事を見抜いたようだった。

 その為だろう、駆逐戦隊の先頭群は勝利を確信しての笑みを浮かべている様に見えた。

 

「くそぉ~、2割も沈められてない…」

 

「ズイホウ、ショウカク達はまだ来ないの!!?

もう着いてもいい位に時間が経ってるわよ!!」

 

「そんな事言われても、ズイカクさんとの通信が途切れてしまって、なんにも分からないんです!」

 

 元から危惧されていた全滅する未来が目に見えていた為、ヒュウガが歯軋りをしている隣でイセがズイホウに怒鳴っていたが、そのズイホウはズイカクが戦闘に戻った為に通信が途切れた事を伝えるしかなかった。

 まぁそれでも、全員ガミラスに対して“降伏する”や“標的となる”の2択など当然選ぶわけがなく、イセとヒュウガにテンリュウはガミラスの血糊で紫に染まっている太刀を身構え、ハルナは唯一残弾に余裕のある副砲を準備し、残りの者達はコスモガンを抜いていた。

 それに対して、ガミラス艦隊は次々に分散を始め……どうやら包囲しての一斉突撃を仕掛けようとしていて、ヒュウガが舌打ちをして、思わずキヌガサとフルタカが目線を合わせた。

 

「……うん?」

 

「ズイホウ、どうしたのですか?」

 

 だがガミラス艦隊が分散を開始して直ぐ、ズイホウがガミラス艦隊の後上空で何かが極めて小さく爆発したのを見つけ、続けてそれとは別の何かが近づいてきながら光ったを確信した。

 後者のみは更に不規則とも、何かの法則に沿っているとも思える点滅をし続けていて、ズイホウは意味を理解出来ないでいたが、彼女の指差しで存在に気付いたチョウカイは少し間をおいてからそれがモールス式の発光信号である事を見抜き、そして何を言っているかも解読した。

 更にガミラス艦隊は艦娘達と比べてかなり間をおいてから最後尾の者が後上空から自分達目掛けて急降下してくる何かにやっと気付いた。

 

「Auf! Feind,oben!!!」

(訳:っ、上! 敵、上ぇぇぇー!!!)

 

「Es ist eine Erdstaffe!!!」

(訳:地球の航空隊だぁぁぁー!!!)

 

 ガミラス艦隊が急降下してくるのがコスモタイガーの1個編隊だと直ぐ見抜いて、直ぐに対空射撃を行おうとしたが、その前にコスモタイガー隊は一斉にミサイルを多数放つと急上昇をして離脱をし、その直後にミサイル群が一斉に爆発して何かを大量に撒き散らした。

 

「Dah!!!

Noch eine Spreu!!!」

(訳:だぁぁぁー!!!

またチャフだ!!!)

 

「Der Feind wird wiederkommen!!!」

(訳:また来るぞぉぉぉー!!!)

 

 ガミラス艦隊は散布されたのがチャフである事を直ぐ見抜いて悲鳴を上げていたが、また直ぐにコスモタイガー隊の第2波が……先の数倍いたので、真打の攻撃隊が急降下してきていた。

 

「Koestlich,jeder wird zerstoert!!!」

(訳:不味い、各個撃破されるぞ!!!)

 

「Versammeln!!

Bald,zusammen!!!」

(訳:集まれ!!

早く集まれ!!!)

 

 どうやらガミラス艦隊はズイホウがいても、彼女の航空隊が半壊した事を察して上空警戒を疎かにしていた為に、コスモタイガー隊の奇襲を許してしまい、見るからに大混乱が生じていた。

 しかも包囲陣を展開する為に分散していただけでなく、空間魚雷を最優先とした代償に艦対空ミサイルを非搭載だったのが仇になってしまい、次々にミサイル攻撃や機銃掃射を受けていた。

 

「あの新型だ。

新型戦闘機が来てくれたか…」

 

「もう、遅かったじゃない!」

 

 コスモタイガー隊の襲来に、ヒュウガが安堵の溜息を吐いて、イセがちゃかしレベルで文句を言っていた。

 

「あの識別はショウカクさんのです。

ですけど、もう1つ見慣れないのが混ざってます」

 

 大体予測が出来てはいたが、ズイホウはコスモタイガー隊はショウカクのだと見抜きはしたが、もう1つのは見抜けず………当たり前だが、先代を含めてズイホウとはあまり関係が無いヤマトのであったから仕方がないと言うしかなかった。

 尤もハルナ、イセ、ヒュウガ、チョウカイの4人はなんとなく予測をしていた。

 

「ショウカクさんならミスりませんね」

 

「おいたわしや…」

 

 だが何よりがアオバが言っていた通り、ショウカクはヤマトの航空隊を臨時編入している事もあって、ガミラスの艦隊集合を幾つもの阻止し、更に集合できた者達も嚮導艦になりそうな者を見つけしだい沈められていたので、ガミラス艦隊は悲鳴を上げながら逃げ回るしかなかった。

 只、キヌガサに見られる通り、直援戦闘機隊(エア・カバー)の無い駆逐戦隊が空襲を受けたらどうなるかを、深海棲艦戦時にビスマルク海海戦(ダンピールの悲劇)や第三次多号作戦等で身をもって学んだ日本艦娘の後輩達はガミラス艦隊に若干哀れみを感じていた。

 

「……しかし、よく分かったな…」

 

「そりゃ、あんだけ派手に戦ってたら、誰だって居場所が分かるよ」

 

「そう言う意味じゃない」

 

 ただヒュウガ1人はこれまでの戦いで個人的に感じるモノがあり、イセが笑いながら勘違いをしていたが、彼女が変にしんみりしていた事もあってキョトンとした。

 

「私達は数時間程度、艦隊襲撃を5度も受けながらショウカク達の到来を疑っていたのに、此の疲労なんだ。

アイツは此れ等以上のを、フィリピン近海で数日間ぶっ通しで感じていたんだと思うと、簡単には言えないって事だ」

 

「……レイテ島直前での栗田艦隊の反転行為ですね」

 

 ハルナはヒュウガが思っていたのを察したのは、未だに反転を否定する意見が多々有るのだが、“後世の言った者勝ち”な中で当時の栗田艦隊の心情をなんとなく思っていた事であった。

 まぁ此の事は当時のイギリス首相ウィンストン・チャーチルが「栗田と同じ心情に至った者のみが、彼の行為を否定できる」と述べていたが、それでも先代が小沢艦隊(囮艦隊)の一員として沈んだズイホウは、ズイカク程にないにしろ、彼女なりに思う事があって複雑そうな顔をしていた。

 更に言うと、チョウカイもまた先代が第一次ソロモン海海戦で敵艦隊を撃滅するも最重要目標の輸送船団を攻撃せずに反転するとの似た事を仕出かした事を思い出して、大和に対して同情していた。

 で、此の間もガミラス艦隊は空襲でいいようにやられているもコスモタイガー全機がミサイルを使い果たそうとしていたが、不意に上空から衝撃砲の光線が多数降り注いだ。

 

「本隊の到着だ!」

 

 テンリュウが気付いて指で指し示した先に、再到着した遠征艦隊の本隊がタマとイスズの2人を先頭に急降下してきていた。

 

「ガミ公、イスズにはまる見えよ!!」

 

「ニャアァァァー!!!」

 

 遠征艦隊は2手に別れて、既にショウカクの航空攻撃で分散されていたガミラス駆逐艦隊を次々に攻撃をし始め、少した後にアサシモとアマツカゼを後左右に従えたショウカクが到着して第二次攻撃隊を発艦させるのだが、此の時点でガミラス艦隊は完全に総崩れとなった。

 

「…っ!

あそこに信号弾と発煙!」

 

「テンリュウ達、テンリュウ達がいる!」

 

 ガミラス艦隊の次派が来なさそうだったので、テンリュウ達は誤射防止や居場所を報せる為に発煙筒を焚き、更にハルナが信号弾を真上に打ち上げ、気付いたハマカゼがイスズに報せると、彼女は他を従えてそちらに向かって、自分達に向かって叫びながら手を振っているテンリュウ達を見つけた。

 

「Das Geschwader,warum das Basisgeschwader nicht kommt!!?」

(訳:航空隊は、基地航空隊は何故来ないんだ!!?)

 

「Koenig Koenig,machen die Idioten!!?」

(訳:冥王棲鬼は、あの馬鹿どもは何をやってんだ!!?)

 

 一方のガミラス駆逐艦群はと言うと、自分達を見殺しにしたのも当然の行為を仕出かした冥王棲鬼達への呪詛を各々に言っていた。 




 感想か御意見、或いは両方でもいいので御願いします。

 本編で巡洋艦娘の何人かがコスモガンを抜いていたのは、アーケード版は兎も角として、艦これ原作ですっぴん(装備品皆無)ドラム艦(ドラム缶フル装備)等となっている艦娘は拳銃とかを使って戦っているとの個人的な予想からそうさせました。


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第75話 攻守交代

――― 冥王星・ガミラス前線基地 ―――

 

 

 ガミラスの面々は味方駆逐艦隊に遠征艦隊が再襲来して危機的状況………厳密に言えば、ショウカクの航空攻撃を受けている事に“しまった”となっていた。

 

「Ja,diese Hand war…」

(訳:そうか、その手があったか…)

 

 冥王棲鬼に至っては人前では珍しく独り言として自分の戦術ミスを認めていて、部下達を驚かせていた。

 実際問題、第3の地球艦隊は軽母ズイホウ1人だけで、しかも彼女はまともな航空隊を搭載していないのが判明していたのだから、大量にある基地航空隊を投入すれば、殲滅まではいけたかは不明だが、取り敢えずは第3の艦隊に大打撃を与え、艦隊戦力をもってショウカク達を返り討ちに出来た筈であった。

 だが現実はと言うと、空母ヲ級や軽母ヌ級の全員が装甲空母姫に従って不在だった事もあるかもしれないが、冥王棲鬼は反射衛星砲の使用に拘ったが故に戦略的に盲目的になってしまい、航空部隊を遊兵と化して馬鹿正直に艦隊戦での逐次投入をして戦略的に不味い状況を生み出そうとしていた。

 だからと言って冥王棲鬼はこのまま泣き寝入りする性分ではなく、更に言うとミリューに戦略ミスをネチネチと言われる光景を思い浮かべた事でイラッと来た事もあって、直ぐに動いたのは良いのだが、彼女の場合は“やけくそ”や“暴走”とも言えるのであり、なにより此の結果で部下は酷い目にあうの典型であった。

 

「Reflektierter Satellit,Notfall vor bereitungen fuer Dreifachfeuer!!!」

(訳:反射衛星砲、3連射緊急準備!!!)

 

 命令を受けた雷巡チ級達は此の時に嫌な予感を感じていた。

 

「Nein,wie gesagt,ich kann nicht praezise schieβen,aber…」

(訳:いえ、先程伝えたように、精密射撃が出来ませんが…)

 

「Dann beruhigen Sie sich einfach,wo die Schiffsmaedchen sein werden!!」

(訳:だったら、艦娘達がいるだろう場所を凪ぎ払えばいいでしょ!!)

 

「Wenn Sie zu so etwas kommen,eine freundliche Armee im Kamp!」

(訳:そ、そんな事をしたら、交戦中の友軍が!)

 

「Bitte mach es!!!

Wie auch immer,er hilft nicht,also benutze es,um aufzuhoeren!!」

(訳:いいからやりなさい!!!

どうせ、アイツ等は助からないんだから、足止めに使うのよ!!)

 

 冥王棲鬼が味方を犠牲にしようとしたのを、雷巡チ級達は思い止めようとしたが、内心は駄目だと薄々予想していた様だったが、残念ながら冥王棲鬼の怒号で自分達も殺されると思ってしまった事もあって、渋々命令通りに準備を始め………冥王棲鬼の命令下に反射衛星砲が3連続で放たれた。

 モニター越しに反射衛星砲が目標地域に着弾した光景から、通常型の者達は駆逐艦隊の悲鳴や自分達への呪詛等の幻聴が聞こえた為に、各々に渋い表情をしていた。

 だが冥王棲鬼のみはそんな事が一切無く、この為に通常型の何名かが気付かれない様に彼女へ冷たい目線を向けていたが、当の本人は何故か悔しそうに歯軋りをしていた。

 

「Was!!?

Es gab ueberhaupt keine Antwort!!」

(訳:どう言う事!!?

手応えが全く無かったわよ!!)

 

「Es gibt viele unterirdische Hohlraeume in diesem Gebiet und geologische Untersuchungen werden nicht viel durch gefuehrt.

Vielleicht haben die Schiffsmaedchen in einem unbekannten unterirdischen Hohlraum gelauert」

(訳:あの辺りは地下空洞が多々存在していて、地学調査があまり行われていません。

おそらく艦娘達は未確認の地下空洞に潜んでしまったのかもしれません)

 

 どうやら冥王棲鬼は今回の反射衛星砲の攻撃は味方艦隊の意図的な誤射による殲滅で終わってしまったと判断した為に(ワメ)き散らしてしたが、雷巡チ級が溜息を吐いた後にその予想理由を伝えていたが、内心はそう言う命令を下さなかっただけでなく自分達から自主性を奪っていた冥王棲鬼を否定していた。

 更に言うと、こうなったら反射衛星砲よりも地貫通型の航空爆弾か対地ミサイルを使えばいいのではとも思っていたが、今の現状でそれ等を使うと自分達や基地の所在がバレる可能性が高いと思われたので誰も進言をしなかった。

 

「……Es bedeutet,dass der Brueckenkopf gebaut wurde…」

(訳:……橋頭堡を、築かれたと言う事か…)

 

 そしてなにより、冥王棲鬼の頭の中に“航空攻撃”や“ミサイル攻撃”の選択肢が有るかどうかは不明だが、彼女が此の局面での戦闘での敗北を事実上認めた事で決定的となった。

 

「Was wirst du jetzt tun?」

(訳:此れからどうします?)

 

「Komm,wenn du kommst!

Sagen Sie ihnen,sie sollen sich fertig machen!!!

Und was ist Asteroidenguerten,die ihnen sagen,dass sie zurueckkehren sollen!!?…」

(訳:来るなら来なさい!

あの2人に準備をするように伝えなさい!!!

それと、戻るように言っている筈の小惑星帯の連中はどうしたのよ!!?…)

 

 冥王棲鬼は迎撃戦の第2幕に入ったお思って怒気と共にやる気を出していたが、通常型の面々は冥王棲鬼への忠誠と信頼を………元々そんなに無かったのに、殆どを無くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Sie kaempfen,Koenig Koenig…』

(訳:苦戦してるわね、冥王棲鬼…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・山間部 ―――

 

 

 冥王棲鬼の身構えに反して艦娘達はと言うと、ショウカクの航空隊による偵察で反射衛星砲の使用が事前に知れた為に低空飛行での回避行動を起こして、その時に見つけた洞窟に入って退避してから暫く動こうとしなかった。

 

「ショウカクさん、大丈夫ですか?」

 

「どうやら艦隊での襲撃は一時的に止めたみたい」

 

 まぁそれでもショウカクは航空偵察を続けさせ、ハツシモが尋ねた時に艦隊襲撃が無くなったのを察していた。

 

「それより、アマツカゼの方は?」

 

 ショウカクはガミラス艦隊よりも、アマツカゼのユウバリとハマカゼを従えてのハルナ達への艦娘達には処置を、艤装には修理と改装の応急的な作業が気になっていた。

 

「……よぉ~し、此れでなんとかなった…」

 

 少し間をおいてから、アマツカゼは最後の処置者となったハルナの作業を終えて、ハルナの艤装の装甲を閉じて叩いていた。

 

「…通信、問題ありません」

 

「これで通信だけでなく、ある程度はマシな戦闘が出来る筈よ」

 

 アマツカゼ達3人が修理や治療とは別に施していたのは、自分達の修理用の予備部品を使ってハルナ達11人の土星に潜伏していた艦娘達に対して“通信機器の更新”と“衝撃砲の火力強化”であった。

 先ず通信機のは、ハルナ達9人は通信機の代わりとしてショウカクに避難していたヤマトのコスモタイガーを3機(ズイホウのみは、コスモパンサーとの半々の形で満載搭載)を航空格納庫に入れるだけの簡易的にすんだが、航空設備が無いテンリュウとユウバリには新型と入れ替えていた。

 先にやったユウバリ達10人もそうしていたが、ハルナが動作確認をして問題が無いのを伝えた事で、アマツカゼの作業は完全終了となった。

 因みに、此の簡易改造はアマツカゼの発案ではなく、彼女達が冥王星に再到着するまでに防衛軍の技術部からの通信を受け取って行われたので、アマツカゼ達はそれに従ってやっただけであった。

 

「だがアマツカゼ、正直私達はどれ位戦えるんだ?」

 

「難しいわよ。

5海戦ぐらいが限界だと思うし、ヲ級やル級と出会ったら諦めるしかない」

 

 アマツカゼがヒュウガの指摘に渋い顔で頷いた通り、砲火力強化に関しては、取り敢えずは機関の安全装置(リミッター)を全廃として無理矢理出力を高めただけなので、精々駆逐艦や軽巡を沈めるのが精一杯だと見積もられていた。

 雷装は発射菅ごと新型に全交換していたが、肝心の空間魚雷やミサイルをズイカク達囮艦隊があらたか持っていった事もあって数が少なく、そして砲弾は有るには有るが彼女達が各々に搭載している36cm砲や20cm砲に14cm砲の弾を持っていなければ、直ぐに作る事が出来ないので、アマツカゼが言った回数は大体空間魚雷の本数からの予想であった。

 更に突き詰めると、ハルナ達の機関はあと複数回の海戦を行うと確実に異常をきたす可能性大で、補給の問題は有れども、自力で星間航行どころか冥王星からの大気圏離脱すら出来なくなる事が予想され、その事をアマツカゼ(とユウバリ)は敢えて言わなかったが、ハルナ達10人はその事を察している様だった。

 

「早くも魚雷が問題になったな。

まぁ魚雷とかの問題は前から言われていたけど…」

 

 ヴェールヌイが溜息を吐きながらの指摘通り、弾薬の確保や補充………特にほぼ消耗品の上に嵩張る空間魚雷やミサイルのは遠征艦隊が地球出撃する前から問題視されていたのだが、“なんとかなるだろう”との補給線軽視の旧日本軍の問題が全く改善されていない楽観論から無視されていたのだ。

 

「やっぱり、マミヤさんに同伴してもらうべきだったな…」

 

 まぁアサシモが苦虫を潰しながらの指摘通り、此の問題の手っ取り早い解決法はマミヤとかの補給艦娘の同伴だったのだが、彼女は鈍足で戦闘力が無きに等しい為に足手まといになる、更にマミヤの遠征艦隊同行に地球残留の艦娘達が暴動を起こしかねないとの防衛軍上層部の危惧で却下となってしまった。

 

「だったら魚雷やミサイルが底を着く前に冥王棲鬼を倒して冥王星を奪取すればいいだけの話よ。

元々私達はそのつもりだったんだから」

 

 まぁ補給の問題は少なくとも冥王星を落とした後に解決すればよく、取り敢えずはイセの言う通りにするしかないので、全員が彼女に向かって頷いた。

 

「さて、そろそろ冥王星を落とす作戦を練りますか」

 

 イスズの提案に人21全員が集合して円陣を描いてしゃがみ、ショウカクが冥王星の地表を映したサークルを展開した。

 因みに艦娘達が現在いるのは、氷海のほぼ南であった。

 

「防衛司令部からの追加情報ですと、やはりハルナさんとユウバリさんの予想通り、ガミラス基地は沿岸部にある公算大と判断します。

更に言いますと、私の航空偵察で此の辺りに基地が無いのは確実です」

 

 実は司会進行役を務めるショウカクは航空隊で反射衛星を監視しつつ、ハルナ達を攻撃しに向かうガミラス艦隊の進路から基地の位置を特定しようとしたが、着いた時にはガミラス艦隊は交戦を始めていて、更に艦隊襲撃が途切れた事で諦めるざるを得なかった。

 此の事でのみは、冥王棲鬼が敢えて受け手に回った事は正しかったと言えるが、誰もその事を指摘しなかったし、それよりも誤りが多かった。

 

「反射衛星砲で逆算は出来なかった?」

 

 キヌガサの質問に、ショウカクは顔を左右に振った。

 

「やっぱり、ガミラスは反射衛星砲で基地を逆算される事への備えはしっかりしているようですね」

 

「それにガミ公は私等が攻めてくる事が分かってくるから、反射衛星砲の乱射を控えると思うぞ」

 

 ハツヅキとカコの意見に全員が同意と示し、反射衛星砲からの特定も諦めるとなった。

 

「やはり、自分の目で見て、感覚を感じ取って、ガミラス基地を見つけるしかありませんね。

それで沖田提督の指令はどうなんですか?」

 

 チョウカイの沖田をよく知っているからの意見に、全員が沖田の顔を思い浮かべながら頷いた。

 更に言うと、チョウカイの質問の答えは、丁度伝令兼外部通信機として衛星軌道にいたコスモタイガーの1機がショウカクの所に着艦して、ショウカクに沖田の指令が通達された。

 

「沖田提督の指令を通達します。

艦隊を統合再編、3手に分割して氷海沿岸部を徹底的に捜索します!」

 

 ショウカク越しの沖田の指令に、全員が「おう!」か「はい!」と一斉に答えた。

 

「先ず、イセさん、ヒュウガさん、アオバさん、テンリュウさん、ハマカゼさん、アマツカゼさんの6人は私を旗艦として左翼隊として時計回りで進撃します!」

 

 ショウカクにイセ達6人は「了解!」と揃って答えた。

 

「次にハルナさん、貴女はズイホウさん、キヌガサさん、ユウバリさん、イスズさん、アサシモさん、ハツシモさんの6人を従えて、右翼隊として私達とは逆の反時計回りで進撃して下さい!」

 

 次のハルナ達7人もまた同じ様にショウカクに返事をした。

 

「最後にチョウカイさん、貴女はフルタカさん、カコさん、タマさん、ハツヅキさん、レシーテリヌイさん、ヴェールヌイさんの6人を従えて、中央隊として氷海を横断して対岸を捜索するようにと事です!」

 

 最後にチョウカイ達7人も「了解!」と答え、全員が艦隊の分散に反対しなかった。

 此れは沖田が艦隊分散によって、反射衛星砲の集中攻撃を回避しようとし、更に捜索時間の短縮を狙っている事を察していたからだ。

 

「……チョウカイさん、分かっていると思いますが、ヤマトさんの捜索はしないで下さい。

沖田提督からの念押しがありましたよ」

 

 ショウカクは変な間をおいてからチョウカイに注意勧告をし、当のチョウカイは渋々頷いた。

 何度も言うが、地球が冥王星を落とすには短期決戦をやるしかなく、ヤマト捜索に拘ったが故に基地発見が出来なかったり、発見が遅れて勝機を失っては本末転倒であったからだ。

 只、チョウカイだけでなく、勧告したショウカクに、目線のみで2人を非難しているハルナもなんとか分かろうとしていた。

 

「それじゃ、今度ズイカク達と共に全員が揃うのは、冥王星を奪取した後のパーティーでって事ね!」

 

 イスズの意見に全員が頷き、各々で他の者達の顔を見てしっかり確認しだした。

 全員が揃わない、欠けるのは自分かもとの不安から沈黙が少しの間あったが、ショウカクが意を決してサークルを消したのを契機に、21人全員が揃って立ち上がって洞窟の入り口に向かって振り向いた。

 

「全艦、総出撃!!!」

 

「気合い、入れて、行きましょう!!!」

 

「冥王星を落とすわよ!!!」

 

 ショウカク、ハルナ、チョウカイが各々の形で檄を含んだ号令を出しながら先頭に走りだし、他の者達が一斉に了解すると同時に続けて駆け出して洞窟から飛び出していった。




 感想またはご意見、或いは両方でもいいので御願いします。

……此処まで来たら、サブタイトルを考えるのがキツい…

大和
「完全に未知の世界に突入しましたからね」

 艦これプレイヤー(提督)なら分かると思いますが、翔鶴達が各々に起こそうとする行為は、艦これ原作のイベント海域でよくあるボスマスを出現させる為の行為に該当します。
 突き詰めて艦これ原作で言えば、大型空母と低速戦艦が3隻以上いれば左翼隊(翔鶴班)、高速戦艦と小型空母が2隻と軽巡が複数いれば右翼隊(榛名班)、戦艦系や空母系が一切無しなら中央隊(鳥海班)となり、駆逐艦がそれなりにいないと逸れるか遠回りになりますのでパワープレイは無理ですよ。
 更に言いますと、3班の内の2つのゴールにはボスの弱体化(装甲破砕)に必要な勝利が求められます。

大和
「うわぁ~…1面で札3つが必要なのですか…」

 その点に関しては、まだ連合艦隊じゃないから救いがあると思います。
 まぁ戦力的にはどうかは知りませんが…

大和
「…あの……まさかと思いますが、ギミック解除な空襲マスは有りませんよね?」

 その為の要素を反射衛星砲に持たせてますよぉ~ん。
 ただ空襲マス要素の反射衛星砲の回避はもう少し先ですがね。

 さぁ皆さん、忘れてるかもしれませんが、此の作品で主人公を務める艦娘は大和なのです。
 次回は13話ぶりの久し振りに大和がメインの話となります。

大和
「でも大和が本格的に再登場するのにまだ暫く時間が掛かるんですよね?
100話もそろそろ視界に入ろうとしてるのに、目標の冥王星攻略からのA銀河離脱を出来るのですか?」(冷たい目線)

……あ、あはは…


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第76話 水底のヤマト

――― ????? ―――

 

 

「……?」

 

 ヤマトが我に返った直後に周囲を見渡して、今自分がいるのは暗黒の水の中………と言うより何所かの海底で立っている事は判断出来たのだが、頭がボンヤリしている事もあって、何故自分が此所にいるのかが分からないだけでなく、その前に何が起こったのかを思い出せないでいた。

 

「……貴女モ来ルノネ、私達ノ仲間ニナリニ…」

 

「っ、潜宙棲鬼? いえ、潜水棲姫」

 

 ヤマトはその為に自分が今まで何をやっていたのかを思い出そうと足掻いていたが、背後から声がしたのでそちらに振り向いたら、その方角から先日自分が撃破した潜宙棲鬼の祖(と思われる)である潜水棲姫がゆっくりと泳いで近づいてきていた。

 此の為にヤマトは潜水棲姫は自分を攻撃しに来たんだと判断して身構えたが、当の潜水棲姫はそんなヤマトを無視して直ぐ脇を過ぎていった。

 

「…っ!? 私!!?」

 

 ヤマトは潜水棲姫の目的が分からなかった事もあって、彼女の行く先を注意深く見詰めていると、その先に大破した艤装を纏ったまま俯せで倒れている自分自身たる戦艦大和が存在していた。

 しかも倒れている自分の艤装は宇宙戦艦化した今の姿ではなく、深海棲艦戦時の時の形状……厳密に言えば、副砲を半減して12.7cm連装高角砲を倍増(但し追加分は坊盾(シールド)無し)して25mm機銃を三連装と単装砲を大量増設し、更に後日同機銃を全て三連装として大量限界まで搭載して坊ノ岬沖海戦で沈んだ最終形態であった。

 此れ等の事から、潜水棲姫は沈んだ自分(戦艦大和)を回収して自分達の同類にしようとしているのが目に見えていたので、ヤマトは直ぐにでも潜水棲姫を止めようとしたのだが、何故か自分の体を動かす処か声を発する事すら出来なかった。

 

「…嘘つき」

 

「…っ!?」

 

 更にヤマトの背後から自分への静かな罵声が聞こえ、何故か今回のみは体が無意識の内に動かせて、背後に振り向いたら……直ぐ後ろに前方の倒れている自分とは別で、対空火力強化をする前の副砲4基を搭載していた深海棲艦戦時前半時の艤装を纏った自分自身……とは何故か思えない戦艦大和がいた。

 そしてヤマトはあどけなさがある此の大和に妙な在視感があった。

 

「…何で、日本を……地球を……XXX達の世界を守ってくれなかったの?」

 

 後に現れた大和は顔を伏せて上の過半分を見せていなくても泣いている事だけは分かったが、その事も上乗せであったが、大和の存在にヤマトに恐怖に近い罪悪感を強烈に感じさせていた。

 

「約束したよね?

貴女の手で、全ての海を取り返すって…」

 

 大和の言葉は直接的には“強さ”や“悪辣さ”は感じ取れなかったが、1つ1つがヤマトの心に深々と突き刺さる力があった。

 此の為だろうか、ヤマトは大和に対して逃げたり目線を逸らす等の行為だけでなく、「自分はやれるだけの事は全力でやった」とか「自分を戦線に投入しなかった(旧)海軍上層部が悪い」とか等の言い訳が頭に浮かんではいたが、それ等全てを口から出して言う事が出来なかった。

 それでもヤマトは喋るなり体を動かすなり、なんとかして体の硬直を解こうとしていたが、突然何かが脳裏に映り込み……豪雨の夜の海上で戦闘服の胴体部分の白地に血の染みを広げながら倒れている大和の上半身を抱き上げながら何かを叫んでいる光景が点滅するかのように何度も(ヨギ)った。

 ヤマトは此の事に驚きながら思わず自分の両掌を覗いたが、今度は両掌がその大和の血と思われるモノで赤く染まった光景が先程のと同じように点滅するかのように現れては消えていた。

 これ等の事から、ヤマトは先程から自分の体が硬直してしまった原因は、2つの幻影が各々1つ場面として現実の過去に起きていて、そして自分は大和に対して罪を起こしてしまった為だと否応なく察した。

 だが、ヤマトは大和に何をしてしまったのかをどうしても思い出す事が出来ずにいて、大和はお構い無しに何度も「何で?」と言い続けて、ヤマトを益々困惑させていた。

 

「…ソレハネェ~…貴女ガ偽ノ艦娘ダカラヨ」

 

「っ、偽!?」

 

 そんなヤマトの背後に先程遠くに行っていた潜水棲姫がいつの間にかに戻ってきていて、ヤマトがギョッとしながら振り向いたら彼女は過去の自分を抱えながらニンマリと笑っていた。

 過去の自分の事もそうであったが、ヤマトはそれよりも潜水棲姫が自分を偽者呼ばわりした事へ気がいっていた。

 だがヤマトは潜水棲姫に否定出来ず、更に大和も「やっぱり…」と言って更に気が沈んでいた。

 

「…貴女が守ってくれなかったのは、“どうでも良い”と思っていたからなの?

上の人達が言っていた通り、貴女は『大和』の艤装を、貴女の世界の物にする為に持ち帰ろうとして、だから守ろうとしなかったの?」

 

「……ち、違、っ!?」

 

『私はXXXXX人だ!!!

日本や地球なんてどうなっても良い!!!』

 

 ヤマトは大和の質問を渾身の力で否定しようとしたが、再び脳裏に走った幻影の中で自分が血の気の無い顔でベットで寝ている大和へ、彼女の質問を叫んで肯定していた。

 ヤマトはそれを否定しようとしたが、記憶や確証が無くも“事実”の単語が何度も浮かんでいた為に出来ず、必死に両手で左右を押さえた頭を激しく振っていた。

 

「…なのに、また地球の為に戦おうとするの?」

 

「……わ…」

 

 ヤマトは「私だって好きで選ばれたんじゃない!!!」と叫ぼうとしたが、大和の背後にレイテ沖海戦で戦没して自分が犬死にしてしまった29人の艦娘達の顔が薄く浮かんで、直接的に目線を向けてはいなかったが、自分を睨んでいた気がして顔を青くしながら硬直してしまった。

 

「貴女ニ地球ノ救世主ニハナレナイシ、地球ニ居場所ハ無イノヨ」

 

 ヤマトは潜水棲姫の呟きに、嫌々であるも思わず彼女の方に振り向いたら、潜水棲姫が抱える自分の髪が先端から白に変色し出し………髪が全て白髪化したら直ぐに額から鬼を思わせる角が生え始めた。

 ヤマトは自分の身に起きているのが深海棲艦と化している現象だと直ぐ分かり、拒否反応として思わず額を触るとそこに無い筈の角が指に触れ、更に毛先を見ると白くなっていて、ヤマト自身も連動して深海棲艦となろうとしているのが否応なく察した。

 ヤマトは脳内では嫌がっていても現象は進んでおり、肌までが白くなり始めて、戦闘服までが変わろうとしていた。

 そんなヤマトへのトドメとして、潜水棲姫の背後に“炎上するガミラス基地を見つめる武蔵”と“壊滅したガミラス艦隊を見つめる長門”………何故か先程いなかった2人の背が映る光景が浮かんで、少し間を置いてから武蔵と長門は揃って振り向いて“お前では地球は救えない”と冷たい目線で主張しながら主砲全てをヤマトに向けた。

 

「サァ、深淵ニイラッシャァァ~…イ」

 

 ヤマトは断末魔に近い絶叫を声に出来ない形で上げながら、自分が深海棲艦と化すのを察し、同時にそれが完全になったら武蔵と長門に討たれると予想した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…惑わすな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…だが突然、武蔵と長門が多数の砲弾に射たれて同時に雲散霧消し、続けて大和も………大小混ざった21発の砲弾に射ぬかれて、2人と同じ様に消滅した。

 

「誰ダァァァー!!?」

 

 深海棲艦化が止まったヤマトも同じ意見だったが、潜水棲姫が自分(達)の行為を妨害した者に叫びながら辺りを激しく見渡した。

 

「…っ、上カ!!!」

 

 そして潜水棲姫(とヤマト)は儚い程に薄い光が頭上から注したので揃ってそちらに振り向いたら、黒衣を纏って西洋風の幽霊を思わせる人型が足から急降下していた。

 潜水棲姫は何をしようとしたが、人型はその前に潜水棲姫の背に勢いを殺さずに着地、更に悲鳴を上げた潜水棲姫の一瞬の隙を突いて過去の自分を脇から抱き上げる形で奪い………そのまま直ぐに大和級戦艦のによく似た艤装の主砲と副砲の全てでの零距離射撃で潜水棲姫を撃沈した。

 ほぼ一瞬の内に武蔵、長門、大和の3人(の幻)を祓い、更に潜水棲姫を沈めた謎の艦娘を茫然と見詰めながら、ヤマトは彼女から大和と似た様な懐かしさを感じつつ、黒衣の開放部の奥にあるだろう謎の艦娘の見えない顔から、自分のとは若干違う罪悪感が含まれた悲しい表情が見えた様な気がした。

 

「……御免なさい…」

 

 謎の艦娘はヤマトの心情を察してたのか、抱える自分に謝りながら泣いているように感じられたが、当のヤマトは色々な意味で戸惑うしかなかった。

 

「…貴女を深海から助けるには、過酷な分岐路に向かわせるしかなかったんです」

 

 謎の艦娘は抱えている過去の自分の顔を脱ぐって元の姿に戻すと、そのまま後ろに振り向いて深淵の奥に向かおうとしたが、過去の自分に連動して元に戻っていたヤマトは自分でもよく分からないまま謎の艦娘を追い掛けてしまった。

 そして謎の艦娘の右の上腕を掴んで直ぐに、ヤマトに強烈な頭痛と共に………“海底に向かって赤い海中を頭から沈んでいる自分を追い掛けてきた誰かが右手を掴み”、直ぐに場面が変わってボンヤリとして“闇夜の赤い海上で誰かしゃがんで自分を抱えながら必死に呼び掛けて続け”、また場面が変わって“先のと同じ様に誰かが自分を抱えながらしゃがんでいるも、階段の最上段の所にいる長い金髪が目にいく女性に何かを訴えている”、3つの幻影が立て続けて見えた。

 

「……ヤマト、戦い、進みなさい…」

 

 ヤマトが幻影群に伴った頭痛で両手で頭を押さえながら真上を向いて絶叫していたら、頭痛が弱まるのとほぼ同時に正面から光が注し、謎の艦娘と過去の自分と共にいなくなっていた代わりに、最後の幻影の中にいたのと同一人物と思われる質素で黒いワンピースドレスを纏って変わった形の冠を被った長い金髪女性がいた。

 後光に近い形での逆光でボンヤリとしか見えなかったが、ヤマトにはその金髪女性が自分に微笑んでいる事が確証が無くも分かった。

 そしてヤマトは金髪女性に“長年ぶりに再開した母親”の様な強烈な懐かしさから、訳も分からずに涙を流していた。

 

「……X、XXさん!!!」

 

 ヤマトは脳の中では金髪女性が誰なのかが分からなかった筈なのだが、金髪女性を中心に放たれた強烈な白光に飲み込まれながら、ヤマトは金髪女性に向けて走りながら右手を伸ばしながら、知らない筈の金髪女性の名を本能に近いのに任せ、よく分からないまま叫んだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星 ―――

 

 

 ヤマトが呆ける事なく目を覚ました時、最初に目に入ったのは、火に照らされた事で1ヶ所だけ丸い影が出来ているも赤く凸凹(デコボコ)で軽い曲線を描いた岩の天井であった。

 ヤマトは続けて黒いマントを掛け布団代り掛けられた状態で仰向けで寝かされていたのを自覚しながら、自分はガミラスの光線砲(反射衛星砲)で良いように被弾して冥王星の氷海に沈んだ事を思い出して“ガミラスに捕縛された”と思うも、足先の奥に自分の艤装が………何処か飛行船を連想させる艤装に複数のケーブル越し直ぐに繋がった状態で、未だに存続しているKKK団のとほぼ同形の黒衣を纏った妖精さん達が数が少ないも自前の妖精さん達と共に応急修理を受けているのが見て取れた事で否定した。

 沈没後の自分の身に何が起きたかは分からないでも、ヤマトは兎に角まだ自分が(過酷な)現世にいる事は確実に分かっていた。

 

「よく眠ってましたよ。

宇宙環境への適用化をしつつの航海、更に潜宙棲鬼と戦った事で、疲れがかなり溜まっていた様ですね」

 

 ヤマトは自分を此所に連れきただろう女性の声を聞いて、本能的に素早くそちらに顔を向けたら、光源となっているキャンプ道具のとほぼ同じの携帯式の小型ガス焜炉(コンロ)が銀のポットの水を沸かしているその先の壁に持たれて座る金髪の女性………ヤマトは知らなかったが、ハルナ達を天王星軌道で助けて装甲空母姫が随伴艦隊の全力をもって捜索していた(夢の中のとは別の)謎の艦娘が胡座(アグラ)に近い形で右のみ上げた膝に右腕を置いた状態でいた。

  彼女が此所にいると言う事は、装甲空母姫以下の太陽系制圧艦隊の行為は完全に無駄骨だと言う事であった。

 

「…ぁ」

 

「疲れがまだ有るんだから起きない。

どのみち艤装の応急修理には時間が掛かるしね」

 

 ヤマトは彼女を夢の最後に見た金髪女性に何処と無く似ていた事に驚いていたが、当の本人は飛び起きそうだったヤマトを諌めた。

 ヤマトは取り敢えず横になると謎の艦娘をなんとなく見つめ、大方は腹部の骸骨の紋章が原因だと思うが、服装等から何処と無く“海賊”を連想していたら、謎の艦娘は背後から取り出した銀の取っ手付きコップ2つ各々に黒い粉を入れた。

 謎の艦娘は心地よい音を出しながら沸騰しているポットを持ち上げると、コップに極めて薄い湯気を上げる湯を順に注いでスプーンで軽く混ぜてから、コップの1つをヤマトに差し出した。

 

「…あ!」

 

 ヤマトは上半身のみを起こしてコップを両手で受け取って中を覗くと中身が珈琲(コーヒー)であるのが分かり、呪いとかに近い形で珈琲を入れるの極めて下手であった個人事情に加えて、横暴に近い形で蔓延っていた英国譲りの紅茶好きの金剛の影響下の旧海軍時代は紅茶ばかり飲んでいた為、珈琲の匂いに懐かしさを感じていた。

 

「……ぅ!」

 

…只、久しぶり故に、ヤマトは少し冷まそうと数回息を吹いてから一口飲んだら、まだ少し熱かった上に、混ざり物皆無のブラックの苦味に顔をしかめてしまった。

 

「御免なさい、ちょっと濃かったみたいね」

 

 謎の艦娘は少し笑った後に自分の珈琲を飲んだが、ヤマトは自分をお子様扱いされた気がしてムッとした。

 此の為、ヤマトは首回りのスカーフを少し緩めると、意地を張って珈琲を直ぐ飲み干したが、逆に此の行為で謎の艦娘に更に笑われていた。

 

「無理はしないモノよ。

珈琲も、戦闘航海もよ…」

 

「貴女に分かりますか?

誰にも信用されず、無理難題に等しい事をやらされ、責任だけを取らされる事を…」

 

 此の時のヤマトは若干感情が脳を支配していた事から苛ついていて、謎の艦娘の注意が堪に触った。

 

「…“何で選ばれたのは(ヤマト)なんだ?”って、周りから感じる。

“他の娘ならもっと上手く出来るんじゃ?”はと否応なく思って、いっつも悩み続けてるんです!」

 

「人は“運命”と言うレール(線路)から逃れる事は出来ない。

只、分岐する道を選び、その意味を理解するか否か関係無く進むしかない」

 

「その選べる選択肢は私には無かった!!!

只単に、責任と汚名を押し付けられただけ!」

 

 ヤマトは見ず知らずだが恩人かもしれない人に怒鳴ってしまったが、内心は“まずい”と思いながら、腹の底に溜まっていたのを吐き出せる感情を出せている事に驚いていた。

 そんなヤマトの事を察したか否かは分からないが、謎の艦娘は黙って聞き、少し間を置いてから一口珈琲を飲んだ。

 

「いえ、貴女は選んでますよ。

只、選択したのが無意識だったのか、意識したのを忘れているだけ」

 

「……む」

 

「少なくとも、貴女は此の旅は自分の意志で加わった。

それに貴女を信頼している者はいるとの証が、そのスカーフじゃないの?」

 

 謎の艦娘の指摘に、ヤマトは古代兄弟の顔を思い浮かべてスカーフを握った。

 

「人間ってのはおかしな者でしてね。

自分への悪い事は直ぐ聞いたり目に入ったりするのに、良い事はなかなか感じ取れない上、他人がそれを見せようとしないのよ…」

 

 先程からそうであったが、ヤマトは謎の艦娘の言葉に、勘に障る事は若干有ったが、その多くは抵抗なく聞き入れて心に受け止める事が出来て内心戸惑っていた。

 謎の艦娘が夢で見た金髪女性に似ていた事もそうかもしれなかったが、何故か彼女が母親………とまでいかなくても、(ヤマトにはいない筈の)姉からの注意に近いと感じていたからだと思っていた。

 そんなヤマトの心情を知ってか知らずか、謎の艦娘はヤマトに微笑むと自分のコップを脇に置いて右掌を差し出し、ヤマトは珈琲のお代わりの是非だと察してコップを差し出した。

 謎の艦娘がヤマトのコップを受け取った時に何かが地面を引っ掻く音がして、ヤマトがその先に視線を落向けたら、今まで気付かなかければ気にもしてなかったが、珈琲を入れ始めた彼女の左脇にサーベルの様な物(柄の形はどちらかと言うと、カットラスに近い)と、骸骨の紋章を銃把の下半分に広げ、物によっては更に負い紐輪がある台尻の一部分にシリアルナンバーと思われる“2”が刻まれた回転式(リボルバー)の光線銃が各々のホルダーに入った状態でぶら下がっていた。

 サーベルもそうであったが、ヤマトは銃の方が妙に気になった。

 

「良さそうな銃を持っているんですね」

 

 実際問題、地球の光線銃は自動式(オートマチック)の形だったので回転式のは珍しかったのだが、ヤマトはホルダーで大半が見えないも銃の形状から妙な懐かしさを感じていた。

 謎の艦娘はヤマトの銃に対する質問に関しては、何も答えずに笑っているだけだった。




 感想またはご意見、或いは両方を御願いします。

 大和には悪かったかもしれないが、今回の前半パートの執筆は実に楽しかった!
 久々にニヤニヤしながら書けた!

大和
「第65話で“翠星の女王”の正体が分かった人がいると思いますが、今回の後半でのやり取りは、艦娘として書かれていますが、極めて珍しいツーショットになってますね。
こんなのは松本零士作品でも有りませんから、下手したら地球でただ1つかもしれませんよ」

…正直、後半でのヤマトと“翠星の女王”とのやり取りで、自分の技量の無さを痛感しました。
 もっと上手いのが書いてくれたら、もっと面白い事になるかなぁ~…と思ってます。

 因みに、艤装の形状で分かってくれると思いますが、前半パートに出た謎の艦娘は“翠星の女王”でなく“謎の艦娘・その2”こと“住みよい国”はです。
 “住みよい国”の初登場となった場面は、彼女の作品で事実上の最終回となった話のを元にしています。

 尚、“翠星の女王”の正体が分かった人は、おそらく彼女のオリジナルを務めた歴代声優の誰かを当てていると思いますが、“住みよい国”の声は異論無しに決めています。
 個人的に“住みよい国”の艦娘の声は釘宮理恵としています。

大和
「…あの人に大和級のを務めさせたら、危険な存在になるのでは?
あの人がやったアルペジオ版武蔵がエラい事になったんですから…」

 実は“住みよい国”の声は冗談半分で池田昌子にしてました。

大和
「貴方、竹達彩奈さんを胃潰瘍にする気ですか!!?」

 ですが、池田昌子女史はまさかのデスラーママで起用となったので、此の影響で本作でのデスラーの声が池田昌子としているかもしれません……てか、今の女性声優で女デスラーを演じられる人っていますかね?

大和
「……ん?」

 だから代わりとなる“住みよい国”の声を考えていた時に見た“鋼の錬金術師 シャンバラを往く者”での釘宮理恵女史が演じたアルフォンス・エルリックが兄との別れる時に叫んだシーンで“これだ!!!”となって(勝手に)起用とし、此の影響で“住みよい国”の内面等がトントン拍子に決める事が出来ました。
 細かく言うと、“住みよい国”の口調は“ドキドキ・プリキュア”のキュアエースにアルフォンス・エルリックを足したのに近いかなぁ~…と思ってます。


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第77話 Start,1vs2

 今回の投稿前に“設定 艦娘”からタシュケントをアーケードで獲得した事(若干納得しない処が有りますが…)から“未所有故に登場不可”から“SUS編”に移動させました。





 それでは本編をどうぞ!



――― 防衛司令部 ―――

 

 

「ショウカクより入電、“左翼隊、ガミラス水雷戦隊と交戦、此れを撃破・殲滅”との事です」

 

「ハルナより入電、“環境改造と思われる無人施設を発見、破壊に至るも、周囲に基地らしきものは見当たらず”」

 

 再編成なった攻略艦隊3個が各々の計画に従って動いてからかなりの時間が経過して、恵経由の左翼隊と、葉月経由の右翼隊、各々からの報告が届きながら順調に進みながらも、基地発見の気配が全く起きそうになかった。

 何度も言っていると思うが、“太陽系制圧艦隊の帰還”等でそういつまでも時間があるわけではないので、報告が入る度に焦りと失望感が高まっていた。

 現に、葉月は表面上は淡白だったが、恵は見るからに苛立っているのが見て取れた。

 

「ショウカクとハルナに、進撃が遅くなってでも慎重な捜索をする様に命令」

 

 内心はどうなっているかは分からないが、沖田は恵に反して自分を落ち着かせていて、焦っての見落としをしないように命令を達して、恵と葉月は「了解!」と返事をして各々が担当する艦隊に通達していた。

 因みに、今の此の場にキリシマ達正規の艦娘達は冥王星への出撃準備を行い、更に空間騎兵隊に起きた面倒事の対処を行っている為に全員が不在であった。

 

「ズイカク達の方はどうなっている?」

 

「丹陽に加えてカスミとテルヅキが大破、チトセの護衛で海王星に退避していますが、ガミラス艦隊の封じ込めを継続中です」

 

「尚、チトセは航空隊の損耗が半数を越えましたので、残存機総てをズイカクに移転させたそうです」

 

 更に言うと、恵と葉月の報告通り、ズイカクはハルナ達の存在確認後に戦線に復帰して他の者達と共に冥王星艦隊を封じ込めてはいたが、損害と総合的な疲労状態から“限界”の単語を否応無く思い浮かばせていた。

 

「不味い。

小惑星帯のガミラス艦隊が冥王星に戻るのも時間の問題です。

このままですと、冥王星方面に最悪の事態が起きそうです」

 

「いや、最悪の事態はもう起きない」

 

 葉月はショウカク達冥王星で作戦展開をする艦隊がガミラスの物量に押し潰される事を最悪として危惧していたが、それを沖田が否定した為に“えっ?”とした。

 

「我々にとって最悪だったのは、ガミラスが冥王星を放棄する事だった。

現時点ではガミラスが放棄の選択肢を消したと判断する」

 

「ガミラスが冥王星を放棄する事が考えられていたのですか!?」

 

 第7次冥王星海戦そのモノを否定しかねない可能性を沖田が言った為、葉月は思わず大声を発してしまった。

 だが葉月はガミラスの冥王星放棄が最悪の事態なのかが分からなかったので、その事を沖田に尋ねようとしたが、此の間に葉月の分も管制していた恵が突然叫んでの報告に遮られてしまった。

 

「沖田提督、右翼隊との通信が途切れました!!」

 

「ガミラスが通信妨害を始めたのか?」

 

 ギョッとした葉月は兎も角として、沖田はなんとなく予想をしながら質問したら、恵はショウカク達左翼隊との状態比較で否定した。

 

「ノイズ反応です!!!

通信機にノイズ反応が起きた為です!」

 

「それって、つまり…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星 ―――

 

 

「尻尾掴んだ、尻尾掴んだ!!

金属探知も大きく反応した!!」

 

 ノイズによって通信が途切れてしまったハルナ達はと言うと、ズイホウによるコスモパンサーを先行させての航空偵察をしながら、ノイズ発生源………要するに、ガミラスの超弩級がいるだろう陸上施設へ向けて、艦列を複縦陣に移行しながら氷原を突進していた。

 尚、此の時の右翼隊は低空飛行をしていてので、足下の氷の粒子が白煙と化して美しく舞い上がっているだけでなく、あんまり足が動いていないと言え、ほぼスピードスケートをしている様に見えていた。

 

「やっぱり、怪しくありませんか?」

 

 只、不安視しているハツシモの言う通り、終始潜伏している筈のガミラスが、特に陸上施設が突然自分達に見つかる様な事をした行為に罠の可能性を感じずにいられなかった。

 

()鹿()、罠が有ろうと、やってやるしかないんだよ!!」

 

 だがアサシモが反論した通り、艦娘達には時間と物資を限られている以上は、選択肢は見敵必戦しかない………つまり、ガミラスの基地と思われる物は片っ端に攻撃するしかなかった。

 その為、例え罠が有ろうとも、己が牙と爪で罠を破壊して獲物に食らい付く気概が必要であった。

 

「まぁ、沖田司令が言う“シチューよりカツ丼を見つける”って奴だよ!」

 

「……貴女、“死中に活を見出だす”って言いたいの?」

 

「なんでこんな時に、アシガラを思い浮かべなきゃいけないんですか!!?」

 

 只、アサシモは変に背伸びして気取ろうとしたが、ユウバリには大きく溜息を吐かれ、キヌガサに怒鳴られての突っ込みで赤っ恥をかいて、赤くした顔を臥せったので他の者達から笑われていた。

 因みに、キヌガサが何故アシガラを上げたのかと言うと、勝利を異様に求める彼女はその一貫の験担ぎとしてカツ関連料理を大量に作り、まぁ旨い事には代わり無いのだが、それを下手したら1年365日続く勢いで3食揃って毎日出し続けては、他のミョウコウ級の姉妹艦を筆頭に提督や随伴艦達にも食わせていた為に変に怒らせたり嫌われる事(実際に1ヶ月強カツ料理を作って出し続けた為、ミョウコウがキレてアシガラを大破させた事件発生)がよく有ったのだが、どうやらキヌガサもアシガラの被害者の1人であった様だ。

 まぁ何処ぞの黄金伝説みたいな苦行者が出てしまうと言え、嘗ての“先代川内=夜戦”の様に“アシガラ=カツ料理”の図式が成立、カツ料理が食べたい提督は配下にいれば必ずアシガラを秘書艦にするようになり、経緯不明だがアシガラはカツ料理の観光大使に就任して遊星爆弾の被害でカツ料理が出来なくなるその日まで役目を果たしていた。

 

「前方より飛翔物多数!!

ミサイルです!!!」

 

 話を戻して、アサシモの赤っ恥と、アシガラの思い出した事の2つで、右翼隊全員が笑ってリラックスが出来たので、ズイホウが航空隊を通してミサイル攻撃を見付けての報告に、落ち着いての素早い行動が出来た。

 

「三式弾は……撃たない方が良いですね」

 

「此処はイスズに任せて!!!」

 

 ハルナは冷静に自分を分析して補給が出来ない三式弾をガミラス陸上施設攻撃の為に温存すると決めて目線を向けたキヌガサも頷いて了解、続けて目線を向けたイスズが直ぐに動いて先頭に躍り出た。

 

「さあやるわよ!!!」

 

「…ミサイル迎撃、開始します!」

 

 先ずはズイホウがコスモタイガー隊を緊急発艦(スクランブル)させてミサイル迎撃を始めさせ、ズイホウのコスモタイガー隊が離脱するとイスズが直ぐ空間魚雷を一斉射、ミサイル群の不規則でジグザグな動きに騙される事なく彼女の放った物全てが目標に次々命中していた。

 

「守ってみせます!!」

 

 最後にハツシモが次弾装填中で動けないイスズの背後から空間魚雷を発射、残ったミサイル全てを撃ち落とした。

 

「詰めがあまいですね」

 

 ミサイルが波状攻撃でなかった事もあって、ハツシモはミサイル迎撃の結果成功をイスズとズイホウと微笑みあった。

 だがミサイル攻撃が有っただけでなく、飛んできたミサイルが先程衛星軌道で使われた陸上型のであった事から、目的の基地であるかは不明だが、ガミラスにとっては重要な陸上施設が此の先にある事が確定した。

 

「皆さん、警戒を厳に!!!」

 

 此の為、ハルナは注意を促して全員が気を引き締め、ノイズ現象で長距離レーダーが少し不具合を起こしていたものの、自分達の妖精さん達と共に各々が五感全てを研ぎ澄ましながら周囲を睨んだ。

 

「…っ、見えた!!!

前方にガミラスの大規模な陸上施設を確認!」

 

 そして警戒体制を(それ程でなかったが)長くやった副作用での疲労で息が乱れだした時、ズイホウの航空隊がノイズ現象の発生源だろう陸上施設を発見し、彼女達もまた少し視界がボヤける赤い曇天の先のモノを確認した。

 そして近付く陸上施設のほぼ中心部には、人型の何かが、現時点では単独で存在していたのが分かった。

 

「ガミラスの陸上型の超弩級!!」

 

「ビンゴ!!!」

 

 ユウバリはその人型を予想通りの超弩級と断定し、ズイホウがそこから基地を見つけたと思って、歓声を上げた。

 

「…ヤラセハ……シナイ………っ!!」

 

 そして陸上施設の敷地内へ突入してハルナのみが砲撃可能距離に入ろうとした辺りから、超弩級の詳細な姿、最大の特徴が“マフラーと見間違いそうな異様に長くて太い三つ編みの長髪”なので人によってはラプンツェル(塔の上の美女)を連想するかもしれないが、大きめのイヤホンと太いフレームの眼鏡を着けている事から“引き籠りのオタク”方が連想された。

 

「アレが冥王棲鬼?」

 

「…違う……違う!!!

アイツは冥王棲鬼じゃない!」

 

 ハツシモが思わず独り言を呟いたが、アサシモは先代の記憶から超弩級が冥王棲鬼なのを大声で否定した。

 

「アイツは、集積地棲姫だ!!!」

 

「…集積地………ミンドロ島のですか!!?」

 

 アサシモの叫んでの指摘にハルナが反応した集積地棲姫とは、寄生していたフィリピンのミンドロ島にて初確認された深海棲艦の陸上型超弩級の1人であり、西暦1944年末に実施された旧日本陸軍のミンドロ島上陸支援の為に実施された礼号作戦にて、先代朝霜も含まれた挺身部隊(他に重巡足柄、軽巡大淀、以下は駆逐艦で霞、清霜、榧、杉、樫)と交戦、ミンドロ島沖海戦で清霜が戦没するも取り敢えずは撃破に成功していた。

 だが集積地棲姫は主任務としていた補給で重宝されてはいたが、あまり重要な領地を任せられるような存在ではなかったのだ。

 

「イケェェェー!!!」

 

 だから艦娘達は“此所はガミラスの基地でない”と苦虫を潰しながら判断したが、集積地棲姫は彼女達を小馬鹿にする様に笑ったら、周辺の地面から金属板が幾つか垂直立ちをしてそこからミサイルが次々に飛び出し、更に小型ミサイルランチャーの多数が物陰から攻撃を始めて艦娘達に襲い掛かってきた。

 

「此所はミサイル砲塁でぇぇぇーす!!!」

 

「至る所にミサイル発射台が有ります!!!」

 

 ハルナとハツシモが叫んだ事から推測するに、彼女達は無意識の内に地上型ミサイルは冥王棲鬼が使ってると思い込んでいたのが外れ、しかも集積地棲姫に先手を取られた事で軽い混乱が生じていた。

 まぁそれでも個々に回避しながらのミサイル迎撃をしていたが、明らかに連携が取れていなかった為、酷くても小破止まりであったが、全員が次々に被弾していった。

 

「反撃を、します!!!」

 

 だが艦娘達に“このまま何もしない”との選択肢は無く、ズイホウが直ぐにコスモパンサー隊を集積地棲姫に向かわせて爆撃をしようとした。

 だが集積地棲姫は今度は小型ミサイルを多数放ち……何機かはフレア等をばら蒔いての回避に成功したが、半分以上は次々に撃墜されていった。

 

「コスモパンサー隊が…」

 

「まるでイージス・アショア!!」

 

 コスモパンサー隊の惨状にズイホウが唖然として、ユウバリが集積地棲姫の高いミサイル能力から地上型ミサイル防衛システムを連想していた。

 

「そんなぁぁー!!!

確かアイツ(集積地棲姫)は対空性能がそんなに良くなかった筈だろ!?」

 

「彼処の集積地棲姫はガミ公に改良された奴って事よ!!!」

 

 現実逃避もあって、アサシモが集積地棲姫の能力を否定したが、直ぐにイスズが怒鳴って酷い現実を肯定した。

 

「マリアナ(沖海戦)の再現は、ハルナが許しません!!!」

 

 集積地棲姫は退避しているコスモパンサー隊を狙おうとしていたが、直ぐに動いたハルナが三式弾による一斉砲撃をして、内1つはミサイル1基を破壊してもなお集積地棲姫目掛けて飛んでいた。

 だが集積地棲姫はハルナの砲撃に対し、足下の周囲から多数飛び出した桃色の球体………ヤマトのアステロイド・シップ(同・リング)や反射衛星の元となった浮遊要塞が展開、その内の幾つかが集積地棲姫の前方に躍り出ると身を呈して三式弾8発全てを破壊した。

 ギョッとしたハルナに続けて、キヌガサが衝撃砲での一斉射をしたが、此方もまた浮遊要塞の幾つかが躍り出て、何かの防御膜に弾かれて6条全てがアサッテの方角に各々に向けられてしまい、被弾した浮遊要塞全てが小破すらしていなかった。

 

「浮遊要塞まで改良されてます!!!」

 

「此れは不味いです!!!

ハルナ、どうするんです!!?」

 

 ハツシモが悲鳴に近い報告をし、ズイホウが現状の危なさを感じて旗艦のハルナに問いたが、当のハルナは顔面蒼白で硬直していたが、ズイホウが何度も怒鳴っての呼び掛けで僅かに正気に戻った。

 

「ぜ、全艦、複縦陣から輪形陣に移行!!!

此の地域から速やかに離脱します!!」

 

 若干パニクっていたハルナの指令がまさかの撤退だった為にイスズとアサシモが驚きながらハルナに振り向いたが、2人を含めた6人全員が現状のままだと(ナブ)り殺しからの全滅が目に見えていたので、歯軋りをしながらハルナの命令通りに動いた。

 

「ズイホウさん、施設外に連絡機を飛ばして、救援要請を!!」

 

「了解!!!」

 

 ハルナの更なる指令にズイホウが直ぐに動いて、コスモパンサー隊を離脱させたが、暫くした後に地平線辺りでコスモパンサー隊が奥の方からの対空砲火と思われる大多数の光線群に捕まって次々に撃墜されていった。

 ハルナ達は異常な程に猛烈な対空砲火に驚き戸惑っていたが、その光線群が飛んできた方角をよく見たら、そこから6つの何かが右翼隊目掛けて高速で接近していた。

 

「…チ級?」

 

「今更なんでチ級が出てくるのよ?」

 

 状況的に接近してくるのがガミラス艦隊であるのは分かったが、全員が………特にズイホウとキヌガサはガミラス艦隊の、4、5、6番艦は毎度お馴染みの駆逐イ級のフラッグシップ(黄色発光体)であって不味かったが、1、2、3番艦はボヤけて見える艦影から雷巡チ級と思っていたが、妙な違和感を感じていた。

 

「いえ、あれ等はチ級じゃありません!!」

 

 だがガミラス艦隊が接近して詳細が分かってきて、確かになんとなく雷巡チ級に似ていたが、前者は足がある上に異様な大きさな手甲を両腕に纏っている姿からハルナがズイホウとキヌガサの推測を否定した。

 他の者達も各々の形でハルナに同意している中、接近中のガミラスの正体を消去法で分かる事が出来たが、それは最悪な現状を悪化させる要因の出現でもあった。

 

「…ガミラスの新型艦艇です!!!」

 

 ハルナ達を極悪の状況に貶める形であったが、後日“軽巡ツ級”と命名されるガミラスの新型軽巡洋艦が初めて認知される瞬間であった。

 

「やッテシマエ……返リ討チダ!!!………?」

 

 尚、ハルナ達7人の何人かは気付いても無反応、それに反して集積地棲姫は軽く疑問に思っていた様だが、旗艦として先頭に位置している軽巡ツ級のみには右太腿に包帯が巻かれていた。




 感想か御意見のどちらか、或いは両方をお願いします。

 と言う訳で、後半戦の第1陣として、榛名達は集積地棲姫とアーケード版イベント最終海域仕様で戦ってもらいます。

榛名
「初っ端から鬼の諸行をしますね…」

 此れがアーケードだったら、まだ丙レベルならなんとかなるかもしれませんが、乙や甲では地獄となると思いますよ。
 だって前のアーケード版イベントで港湾棲姫が浮遊要塞多数を随伴している状態で戦って、港湾棲姫を小破されれない処か浮遊要塞1つ撃沈出来ませんでしたから……(〇| ̄|_)…

榛名
「そして、現在行われている北方輸送作戦で、北方棲姫に煮え湯飲まされ続けていますしね」

…作者は艦これアーケードはこんな醜態ですが、本編での榛名達に対する艦隊はもっと強い予定でした。
 軽巡ツ級3隻はそのままでしたが、当初は更に重巡ネ級と駆逐ナ級2隻が着いていましたが、“幾らなんでも強すぎる”“重巡ネ級と駆逐ナ級はまだ早い”との判断で、駆逐イ級フラッグ3隻に変更としました。

榛名
「出るかが分からない後期型でないのが救いですが、まだまだ強力な水雷戦隊である事に変わりませんが…」

 尚、旗艦の軽巡ツ級のみに右太股に包帯が巻かれていたのは………まぁ間も無く80話に達しようとする此の作品をじっくり読んでたら分かると思いますよ。

榛名
「…で、100話以内にガス生命体の所に行けるかの不安が強まって来ましたね」

……うごごご…


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第78話 対岸で甦った悪夢

 今回の投稿前に“設定 艦娘”にて変更点を2つ、フレッチャーを“未所有故に登場不可”から“ガルマンガミラス&ボラー連邦編”に移動、“未所有故に登場不可”の御蔵を平戸に変更しました。





 それでは本編をどうぞ!


――― 冥王星 ―――

 

 

 ガミラスの新型艦艇である軽巡ツ級が駆逐イ級フラッグを従えての水雷戦隊の出現に対して、ハルナ達右翼隊は驚き戸惑っていたが、ほぼ無意識の内に集積地棲姫のミサイル攻撃を警戒しながら、砲撃を開始した。

 だがハルナとキヌガサがアウトレンジ(敵射程圏外)砲撃をして、更に配置的に左舷を晒す右翼隊にガミラス水雷戦隊が突進する形での丁字有利にも関わらず、砲撃に不向きな輪形陣であった上に当初の混乱が拭えない事で、砲撃の悉くが外れていた。

 

「当たった!!!」

 

「馬鹿!!!

駆逐艦沈めてどうすんのよ!!?」

 

 それでもハルナの砲撃が命中して1発轟沈したが、それは最後尾の駆逐イ級フラッグであった為、イスズがハルナに怒鳴ってしまった。

 更に言うと、キヌガサも軽巡ツ級3隻を狙わずに4番艦の駆逐イ級フラッグを撃って大破に至らしめてい上、イスズも言ってるわりには彼女達2人と同様に軽巡ツ級を砲撃していなかった。

 

「…っ! 撃ってくる!!!」

 

 此の為に、ユウバリ、ハツシモ、アサシモの3人の砲撃をはね除けての突進をする軽巡ツ級3隻が無警戒になってしまい、軽巡ツ級3隻は此の隙を突いて射程圏内に入ると直ぐに砲撃を開始、圧倒的な速射による光線群がハルナを中心とした艦娘達に襲い掛かってきた。

 

「皆さん、大丈夫ですか!?」

 

「アンタ等、何やってんのよ!!?」

 

 軽巡ツ級は速射性に反して砲火力があまり無かった事が幸いして、最大の被害はハルナが副砲4門と対空砲3基を失ってアサシモが魚雷発射管1基を破壊されて艤装が炎上(此の結果、アサシモは悲鳴を上げながら走り回っている)しただけで終わったが、そのガミラス水雷戦隊は右翼隊のど真ん中を突っ切って一時離脱をしていた。

 だが予想は出来たのにそれ相応の事をせず、なるべくしてなった被害に、アサシモがハルナ達に思わず怒鳴った。

 因みに、戦艦娘を初めとした主力艦娘達が敵戦艦や敵大型空母等の主目標を無視しての駆逐艦への攻撃を繰り返し、此の事に駆逐艦娘達が慌ててた主目標を攻撃して返り討ちにあう事の標的への逆転現象が起きる為の主目標の取り逃がしや大損害の退却は、困った事に深海棲艦戦時からよく起きていて、原因は艦娘が女性であるが故の精神的構造で、男性と違って博打的行為や“肉を切らせて骨を断つ”様な非情な決断がどうしても出来ずに安全策に走ってしまう為だと推測されていた。

 タチが悪い事に、敵旗艦を集中的に狙っても撃破に手こずって他の敵艦群に包囲されて大損害を被るとの逆パターンも存在、艦娘の多くに戦略的柔軟性の無さがよく指摘されていた。

 そして此の問題を艦娘達に言い聞かせる等をしても改善の気配があまり無いので、怒り狂った提督が艦娘達に対して“罵詈雑言を長時間浴びせる”“制裁との名を関しての暴力行為を行う”等の問題(ブラック)事案が“多い”のレベルで済まず、最早数えるのも馬鹿らしいレベルで大量に起きていた。

 

「物凄い速射性能です。

まるでアトランタ級ですよ」

 

 話を戻して、ハツシモは軽巡ツ級の速射性に圧倒的されながら、速射性だけでなく“大量に搭載された連装砲”や“砲火力が軽巡級以下の駆逐艦級”、そして再攻撃の為に大きく旋回している事から見て取れる“旋回性の悪さ”からアメリカのアトランタ級防空巡洋艦との共通点の多さを指摘した。

 

「またミサイルが来る!!!」

 

 だがガミラス水雷戦隊がハルナ達に再突撃しようと旋回していたが、もう1つの敵である集積地棲姫が此の隙を突いてミサイルを多数放ってきたのを、ユウバリが怒鳴って報せた。

 

「イスズさん!!!」

 

「イスズに任せて!!!」

 

 防空に秀でた輪形陣であった上、発見が比較的早かったので、今度のは安定して迎撃に成功した。

 

「不味い、頭抑えられた!」

 

 だが此の間にガミラス水雷戦隊に優位な位置取りを許してしまい、その事をズイホウが大声で報せた。

 

「ハルナ、戦わないと生き残れないわよ!!!」

 

 ユウバリはアサシモの艤装の消火をしての2種類の応急処置をしながら、嫌な現実を伝えた。

 ハルナも下唇を噛んで了解していたが、直ぐに対抗策を大声で伝えた。

 

「イスズさん、ズイホウさん、ユウバリさん、ハツシモさん、アサシモさんの4人と共に集積地棲姫をお願いします!

ズイホウさんは搭載機数が少ないですから、攻撃には参加せずにミサイル迎撃に専念して下さい!

ハルナはキヌガサさんと共に水雷戦隊を迎え撃ちます!!」

 

 ハルナは軽巡ツ級の主砲の射程が駆逐艦並であるとの予想からキヌガサと共にアウトレンジ砲撃で対処するとし、敢えてアウトレンジが出来ないイスズ達4人を切り離し、相手の集積地棲姫が誘爆する代物を多数所有しているが故に陸上型超弩級の中では弱い方である事もあって戦力分散の危険性が高い“二兎を追う”事とし、分艦隊旗艦となったイスズはやむを得なしと思いながら「任せて!」と答えた。

 

「…ハルナ、ヒエイの先代みたいにならないでね」

 

 艦隊が分離した直後、イスズは衛星軌道での海戦でのヤマトの先代比叡を使っての例えを思い出して、(タスキ)掛けの要領で無理矢理背負っていたヤマトの測距儀を右手で握りながら、ハルナに気遣った。

 

「ハルナは先代を含めたヒエイ姉様のとは違いますよ」

 

 ハルナはイスズを元気付ける為に無理に笑って返し、イスズはそんな彼女の内心を知ってか知らずか若干暗めの顔で頷いて集積地棲姫へ突進していった。

 

「本当に、先代ヒエイにならない様にしないとね」

 

「いえ、ハルナ達のはヒエイ姉様のとは違って、鎮遠さん達や(アドミラル・)グラーフ・シュペーさんのに近いです」

 

 ハルナがキヌガサへの返しに言っていたのは、西暦1894年(史実での日清戦争)に勃発した黄海海戦と、西暦1939年のラプラタ沖海戦の事であった。

 此の2つの海戦の共通点で言えるのは、先代比叡が戦没する事となった第三次ソロモン海海戦の突発的な近距離夜戦と違って昼間の海戦で、前者は清王朝唯一にして当時東アジア最強の戦艦娘の姉妹・鎮遠&定遠が、後者はドイツの装甲艦(海外の多くでは“小型(ポケット)戦艦”と認知)アドミラル・グラーフ・シュペーが各々にて、深海棲艦の巡洋艦隊の機動力と速射性能に敗れて後日戦没した事であり、確かにハルナ達の現状は2つの海戦………特に特集巡洋艦の援護射撃の有った黄海海戦のによく似ていた。

 蛇足であるが、黄海海戦後の夜戦で定遠は戦没してしまったが、辛くも生き延びた鎮遠は日本海隊に保護されて、そのまま日本海軍に編入、11年後の西暦1905年の日本海海戦で第三艦隊旗艦として参戦していた。

 更に蛇足、黄海海戦は丁度10年後の西暦1904年に起き、日本海海戦に影響を与え、後日毛沢東が称賛したもう1つのがあり、此の海戦直後に敷島級戦艦初瀬と富士級戦艦八島が深海忌雷で戦没していた。

 

「ハルナ、戻ってくるよ。

砲撃戦、開始しちゃう?」

 

 まぁ自分達の立ち位置が“比叡”“鎮遠”“アドミラル・グラーフ・シュペー”のどれかなのは置いておき、そんな事お構い無しにガミラスは攻撃を続けていて、現にガミラス水雷戦隊が再度突撃してきたのをキヌガサが報せた。

 此処まで来たら、ハルナも開き直りか落ち着ちのどちらかで、自分達が態々(ワザワザ)比較的安全圏だった土星を無理して離れて此所(冥王星)に来たのかをを思い出していた。

 と言っても“ヤマトを助ける”はほぼ破綻していたが、ユウバリが言った通りに“戦わねば生き残れない”を重く認識していた。

 

「キヌガサさん、いきますよ」

 

「ええ、キヌガサさんにお任せ!」

 

 ハルナはキヌガサと目線を合わせて同時に頷くと、ガミラス水雷戦隊に対する行動を開始………キヌガサを先頭にガミラス水雷戦隊の突進に対して“イ”の字の逆さをなぞる様に前進した。

 一部の者から見たらハルナとキヌガサは逃げてる様に見えるかもしれないが、此れはガミラス水雷戦隊に丁字有利を維持しつつ距離を取ろうとしていたのだ。

 

「勝手は、ハルナが許しません!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・氷海対岸部 ―――

 

 

「集積地棲姫に、新型軽巡による水雷戦隊!!?」

 

 連絡機として安全圏に向かったズイホウのコスモパンサー隊は、その殆どが軽巡ツ級に撃墜されはしたが、少数はなんとか辿り着いて、ハルナ達の現状を広範囲通信で発信していた。

 その通信を傍受したイセ達左翼隊は驚き戸惑っていた。

 

「基地が近くに有る、と言うのでしょうか?」

 

「いや、偶々ハルナ達が殲滅の好機だった、ともあり得る」

 

 少なくともハルナ(達)がポカをやらかしたとは思えず、その事からの逆算でガミラスが積極に出た理由を、アオバとハツヅキが思案していたが、他共々その答えを見出せずにいた。

 

「それよりどうすんだよ!?

此のままだと、ハルナ達が全滅するかもしんねぇぞ!!」

 

 だがなによりテンリュウが叫んだ通り、ハルナ達の現状が苦境なのが目に見えている以上は、何らかの行動を起こす必要があった。

 

「ショウカク、どうすんのよ?」

 

「…少し考えさせて下さい」

 

 早速イセが旗艦のショウカクに尋ねたが、当のショウカクは右手で口を覆って考えていた。

 ショウカクは別にハルナ達を見捨てる気など更々なく可能なら今すぐに救援に行く気であったのだが、彼女の考えではハルナ達へのガミラスの行動は“ハルナ達が基地に近付いた為”或いは“自分達が基地に近付いた事で遠ざけようとハルナ達を攻撃した”の2つであり、どちらかに決めようにも物証があまりにも少なかった。

 

「ショウカク、別に全員でハルナ達の救援に行かなくても、私とアオバを向かわせるのはどうでしょう?」

 

 此方側の基地の存在を否定しきれない事、更に本人達に失礼だから敢えて言わなかったがイセとヒュウガが低速である事、更にアオバとハマカゼは7人の中で最も足が速い事から、ハマカゼが艦隊の分離を進言した。

 

「おい、俺も連れてけよ!!!」

 

「馬ー鹿、アンタがいないと水雷戦隊が来たらどうすんのよ!?」

 

 まぁテンリュウが分離隊に加わる様にと怒鳴った為にイセに起こられているのはおいておこう。

 

「んで、どうすんのよ?」

 

 イセが更にせっついたが、自他共に認める優柔不断の傾向が強いショウカクは“ハルナ達の早期救援”か“作戦通りに基地の捜索”の2択を選べずにいた。

 まぁそれでも、ショウカクは頑張ってどちらかを選ぼうとしていたが、それを口に出して皆に伝える直前に、ガミラスに阻止される事となった。

 更に言えば、“沖田に訊ねる”も選択肢として有ったのだが、ショウカク達7人は動転していてその事を忘れていて、此の為に沖田との通信が途切れていた事に誰も気付いていなかった。

 

「……っ!?

左11時の方角にガミラス機!!!」

 

 ハマカゼが叫んで報せた方角に全員が一斉に振り向いて注目したら、確かにガミラス機が1機存在していて、そのガミラス機は左翼隊へ攻撃せずに彼女の上空で時計回りに旋回をし出していた。

 だが左翼隊の全員は此のガミラス機の行為を全て察していた。

 

「ガミラスの偵察機です!!」

 

「反射衛星砲が来るぞ!!!」

 

 アオバの叫んでの指摘に全員が同感とし、テンリュウがガミラスがやるだろう攻撃を予想して叫んだが、後者のみはハツヅキの悲鳴に近い報告で否定された。

 

「11時の方角に敵機多数!!!

大編隊だぁぁぁー!!!」

 

 全員がハツヅキの報せた方角に振り向いたら、少し間をおいてから、赤い曇天の彼方から大量の何かが次々に確認され………それがガミラスの航空部隊であり、狙いが自分達である事が容易に分かった。

 

「なにあの数!!?

明らかに100機………否、200機はいる!!!」

 

「ショウカク!!!」

 

「全航空隊、緊急発艦(スクランブル)!!!

全艦、輪形陣を展開!!!」

 

 敵編隊の数にイセがギョッとしていたが、ヒュウガの思わずの叫びを聞くまでもなく、ショウカクは直ぐに弓矢を構えて矢を放って、コスモタイガー隊を発進させ始めながら対空防御を命じていた。

 ショウカクの頑張りでコスモタイガーを半分弱の30機を上げる事に成功し、そのコスモタイガー隊はミサイルを放ちながら機銃掃射しての突撃をしていったが、幸いなのはガミラス航空隊は全てが対艦ミサイルを満載していたので被撃墜数が少なかったが、やはり“多勢に無勢”だった為に撃墜率は3割を越えたら良いレベルだったので、左翼隊を多方面からの攻撃をする為に分散しだしていた。

 

「イセ、撃つぞ!!!」

 

「主砲6基12門、いっけぇぇぇー!!!」

 

 只、コスモタイガー隊が攻撃している間に左翼隊は輪形陣へ移行しての対空戦闘の準備を終え、先ずはヒュウガとイセが三式弾による一斉射を放ち………まぁ1割強を撃墜するに至った。

 

「第二次航空隊、発艦!!

突撃!!!」

 

「対空戦闘、開始します!!!」

 

 此の間にショウカクが更にコスモタイガー10機を上げる事に成功し、同時に対空仕様とした空間魚雷を多数放ち、2人揃ってガミラス機群に若干回避させられてはいたが、多数の対艦攻撃を諦めさせる事に成功はしていた。

 

「糞!!! まだまだ敵が多いぞ!」

 

 ハマカゼとはショウカクを挟んでの反対側にいるハツヅキもまた突撃してくるガミラス機群を、防空駆逐艦の面目躍如と言うべき事に左翼隊で1番。撃墜するか追い払っていたが、それでもガミラス航空部隊の数が多すぎた。

 

「……っ、ヤバい!!!

ヒュウガの方に!!!」

 

「駄目です!!!

援護の火力が足りません!!!」

 

 まぁそれでも、ハードとソフトの両面で深海棲艦戦時より遥かに発達した対空関連によって、なんとかギリギリ保っていたが、1個編隊が左翼隊の隙を突いてヒュウガ目掛けて急降下爆撃の体制に入り、テンリュウとアオバが叫びながら迎撃しようとしたが叶わず、標的のヒュウガが直前に気付いて急降下爆撃隊に振り向いた直後に、ミサイルが複数発命中した。

 

「……なんで五番砲塔なんだ!!?」

 

 だがヒュウガは手持ちの第五主砲を楯にした事で、その第五主砲が完全破壊されてしまったが、自分自身は両手に極めて軽度の火傷のみですまる事に成功した。

 そして此のヒュウガへの爆撃を最後にガミラス航空隊はミサイルを使いきったらしく、次々に撤退していった。

 

「ショウカク、ハルナ達に悪い事をする事になるな」

 

「ええ、救援に行けません。

ガミラス航空部隊の根元を止めないと…」

 

 空襲で一時打ち止めになっていたが、ショウカクがハツヅキに悔しそうに頷いた事から見て取れる通り、ハルナ達の所に向わない事となった。

 だがそれは基地捜索の継続ではなく、第3の選択肢………そこが基地なのかもしれないが、第2、第3の航空部隊の出現を阻止する事であり、野放しにしたらガミラス航空部隊は次に右翼隊を狙う事が目に見えていて。そうなったらハルナ達が全滅してしまうと思わざるをえなかった。

 その事に全員が賛成の表れとして、イセ達6人が一斉にがショウカクに頷いて、ガミラス航空部隊が退いた先に向かいだしたショウカクの後を追った。

 そしてガミラスも迎え撃つ気が満々らしく、ガミラス航空部隊は露骨に撤退先を示していて、罠の存在を明らかに示していた。

 

「…しかし、冥王星には、まだヲ級やヌ級がいるのでしょうか?」

 

 追撃中、ハマカゼが不意に独り言に近い形で空母ヲ級や軽母ヌ級の存在を疑っていたが、言ったハマカゼ本人も含めて、確証が無いものの全員が内心で否定するも、そうあってほしい願望を持っていた。

 だが、突然通信機に強烈なノイズが起こり、全員が我慢で顔をしかめた直後に大型の光弾が1発、前方から飛んできた。

 

「敵です!!!

全艦、突撃!!!」

 

 不意討ちと言え、光弾の発見が早かったので、左翼隊が左右各々に一時分離しての回避で全員が無傷だったが、ショウカクは航空部隊を放った敵が近いと判断して、改めて随伴艦全員に戦闘命令を発した。

 そして暫くした後、左翼隊は何かの施設の敷地内部に突入………その中央部と思われる場所に、ガミラスの陸上型超弩級が、椅子のような物に腰掛けているのが見え始めた。

 

「ちょっと待って!!!

アイツって!!?」

 

 その陸上型超弩級の詳細な姿が確認出来る距離に入ったら、見覚えがあったその姿に全員が恐怖を感じながら血の気が引いたのを自覚した。

 

「何度デモ…」

 

 “側頭部の左右各々にシニヨンと見間違えそうな鈍角の角2本を生やした白い長髪(と言うより衣装含めて全てが白い)”“丸に近い大きな目”そして“腰掛けた艤装獣がU字型の滑走路を備えた”特徴3つから此の陸上型超弩級の正体を導き出す事が出来た。

 

「…沈ンデ、イキナサァ~イ!!」

 

 そして、最も多くの艦娘達を葬った為に人類連合軍から恐れられた深海棲艦の陸上型超弩級の最新型でもあった。

 

「飛行場姫!!!」

 

「ガミラスめ、あんな物騒な奴を冥王星に配備してたのか!!!」

 

 ショウカクとヒュウガが叫んだ通り、深海棲艦戦時から遥かな年月が経過しても恐怖の存在たる飛行場姫が、周囲に砲台小鬼を6基配備した形で存在していた。

 そして飛行場姫は戦闘体制に完全移行したらしく、上空の赤い積雲内部で上空待機させていた浮遊要塞群と航空部隊を大多数降下させた。

 飛行場姫が戦闘体制に入ったのを見て、ショウカク達左翼隊もハルナ達右翼隊と同様に、まぁ若干の違いがあったが、“戦わなければ生き残れない”を否応なく感じていた。




 感想または御意見、或いは両方をお願いします。

 前半にて、榛名&衣笠vs水雷戦隊が行われようとしてますが、正直言って此れは横山信義氏の近年の架空戦記作品の影響を受けてます。
 艦これ原作だけでなく、二次小説にもある“駆逐艦が砲撃のみで戦艦を撃沈”は、ガチの架空戦記の読んでる者にしたら“そんな事あらへんやろぉ~”と思われますが、本作では横山信義作品を参考に軽巡洋艦群が機動力と速射性能で戦艦を圧倒し、頃合いを見て雷撃で仕留めるを狙ってるとします。
 特に“巡洋戦艦『浅間』シリーズ”を読破している人なら、此の戦法で『プリンス・オブ・ウェールズ』や『比叡』が沈んでいるので、尚更分かってくれると思います。

日向
「さて、私達も戦闘に入ったが、お前は鬼か?」

 確かに艦これ原作だと悪夢の連合艦隊ですが、少なくとも本作では砲台小鬼は防御力が事実上陳腐化していて、大発系統等の対地装備無しでも撃破は可能としています。
 ですが、砲台小鬼は防御力の代わりに速射性が向上しているとしますがね…

日向
「やっぱり鬼だろ!!?」


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第79話 落ち続ける死兆星

――― 冥王星 ―――

 

 

「Flugplatz Prinzessin ist einen Zustand das Engagements eingertreten」

(訳:飛行場姫様、交戦状態に入りました)

 

「Agglomerirte Prinzessin verliert mehrere Schwimmende Festung,behaelt aber die Ueberlegenhit bie.

Die Zerstoer-I-Klasse wurde jedoch im Torpedo-Geschwader zerstoert」

(訳:集積地棲姫様、浮遊要塞を複数失うも、戦局の優位性を維持。

ですが、水雷戦隊は駆逐イ級が壊滅しました)

 

 オペレーターを務める重巡リ級群から冥王星の2ヶ所で行われている戦いが自分達ガミラスの優勢である事が伝えられていたが、冥王棲鬼は喜ばずに仏頂面であった。

 

「Mehr alles anders stoerte es diese Person…」

(訳:よりにもよって、あの人の手を煩わせてしまった…)

 

 冥王棲鬼が不機嫌である最大の理由はハルナ達右翼隊と交戦している水雷戦隊であった。

 と言うのも、彼の水雷戦隊は自分の配下でもなければ、太陽系制圧艦隊のでもなく、別所属からの増援であったのだ。

 駆逐イ級フラッグ3隻が全滅した事に罪悪感を感じていた事もあったが、やはり自分達の所に配備されていない軽巡ツ級………ガミラスの全体的に個体数が必要量に全く達していない新型艦を3隻も投入されていた事に、嫌がらせに近い形で見せびらかせている様な気がして苛立っていたからだった。

 

「Wie ist der Zustand von Reflektierter Satellit?」

(訳:反射衛星砲の状態は?)

 

「Die Wartung ist bald abgeschlossen」

(訳:間もなく、整備完了です)

 

 まぁ軽巡ツ級群を通しての邪推は取り敢えずいておき、兎にも角にも“新型”を冠するに相応しい高性能な上に錬度も十分、エリートやフラッグでないのが珠に傷であったものの、臨時に与えられた以上は存分に使い潰さないと勿体(モッタイ)なかった。

 

「Unterstuetzung Agglomerirte Prinzessin.

Reflektierter Satellit,ziel feindliches Schlachtschiff!」

(訳:集積地棲姫を援護する。

反射衛星砲、目標敵戦艦(ハルナ)!)

 

 冥王棲鬼は軽巡ツ級で冷静さを取り戻した事で、的確な攻撃指示を出し続けていたが、間もなくその冷静さを失う事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・ミサイル堡塁 ―――

 

 

「よし、駆逐艦は殲滅!」

 

「残るは、面倒な軽巡3隻だね」

 

 此の時の2手に分離した右翼隊の戦況はと言うと、イスズ達5人の集積地棲姫との交戦組は、ミサイル迎撃に専念しての守勢であったものの中破以上の損害を出さないで一様互角でいたが、ハルナとキヌガサのガミラス水雷戦隊との交戦コンビは、ガミラス水雷戦隊の駆逐艦イ級の全てを沈める事に成功して、なんとか優勢になろうとしていた。

 

「キヌガサさん、大丈夫ですか?」

 

「人の事より自分を気にして」

 

 だが駆逐艦イ級を殲滅するまでに、2人揃って身体の何ヵ所から出血をしていて、艤装に至ってはハルナのは第三主砲が魚雷直撃で消滅していて、キヌガサのは被弾多数で魚雷発射管を全損となっていた。

 否、それよりもハルナとキヌガサは砲撃戦での傷よりも、高速での位置取り合戦を繰り返した事での疲労感に1番ヤられていて、2人揃って息は極限に乱れて汗を滝の様に流し、なにより2人揃って頭の中が“休みたい”の単語で限界を超えての目一杯だったので思考停止状態になりかけていた。

 それでとハルナとキヌガサは自分達の艦隊戦の勝敗で集積地棲姫との戦いの行方が決まると見ていたので、気力を振り絞って戦意を保っていた。

 

「…此れで決めよう!!」

 

「はい!!!」

 

 現在、反航戦での一撃離脱が行われた後なので、両艦隊は相手から離れてからの再反転が行われていたが、キヌガサとハルナの2人は軽巡ツ級群より先に舵を戻していたので、ほぼ同航戦に近い形での一斉射撃が可能であった。

 現にハルナがキヌガサに頷いた後にそうしようとしていたが…

 

「「…え!!?」」

 

…2人の目の前に特大の光線が降ってきて、地面を派手に抉った。

 

「反射衛星砲!!!」

 

「此処ではないでしょう!!!」

 

 直ぐにハルナが攻撃の主を見抜いて、キヌガサが思わず毒づいたが、2人を標的に反射衛星砲の2射が直ぐに来ようとしていた。

 

「ハルナさん、狙われてます!!!」

 

 偶然にも、ズイホウがコスモパンサーを通して衛星軌道の反射要塞群の動きで反射衛星砲の狙いを察してハルナに怒鳴って警告したが、当のハルナは無意識の内にズイホウの方に振り向いてしまって退避行動を取らなかった。

 勿論、ハルナは直ぐにミスに気付いて退避しようとしたが、その前に反射衛星砲の光線が彼女目掛けて飛んできていた。

 

「糞お!!!」

 

 だが代わりにキヌガサが左肩のショルダータックルでハルナを突き飛ばす事で彼女を助けたが、此の反動で急停止してしまった事で反射衛星砲に被弾して右脚全てと右手が一瞬にして消失した。

 

「キヌガサァァー!!!」

「キヌガサさぁぁーん!!!」

 

 キヌガサは被弾によって絶叫し、ハルナとズイホウが思わず彼女に叫んで、ハルナが無意識の内にキヌガサの所に向かおうとした。

 

「来ないで!!!」

 

 だがキヌガサはハルナに怒鳴って止め、更にふらつきながら彼女から離れだした。

 

「……キヌガサさんよりハルナが残った方が、断然良いでしょう?」

 

「キヌガサ、まさか…」

 

 キヌガサの引きっての笑顔でのちゃかしから、彼女は冷酷な計算からの自己犠牲によるモノなのを、ハルナは察した。

 そしてその結果自分がどうなるかもキヌガサは自覚していた。

 

「キヌガサ逃げて!!!」

 

 土星で苦楽を共にした仲間の1人である事もあって、ハルナはキヌガサに叫んだが、当のキヌガサは何かに勘づいた事もあって立ち止まってハルナに振り向くと、無理に笑って左手で敬礼した。

 此の直後に反射衛星砲が真上からキヌガサに直撃して大爆発が起きて、キヌガサを完全消滅させた。

 

「キヌガサァァー!!!」

 

 ハルナはキヌガサが理不尽な形で散った事で何かが途切れしまい、キヌガサを泣き叫ぶとそのまま崩れ落ちて臥せってしまった。

 

「ハルナ、何してんの!!?」

 

「不味い!!!

ハルナの病気が再発した!」

 

 イスズがキヌガサの戦没と共にハルナの行為に気付いて、思わずハルナに怒鳴った。

 その脇のユウバリは、元々ハルナが長い土星の潜伏で精神を徐々に病んでいて、更にコンゴウの死が致命的になっていたのを知っていたのだが、イスズにハルナを弁護する事が頭に過ってはいたが、次に狙われるのがハルナだと察して硬直してしまった。

 

「…っ!!?

ぎゃあ!!!」

 

 だがハルナに取って幸いだったのは、軽巡ツ級の一斉射での着弾の衝撃波を受けた事で、危機的本能で取り敢えずはハルナはなんとか正気に戻って、軽く吹き飛ばされながら立ち上がって右袖で涙を脱ぐって戦線に復帰した。

 だが精神的ダメージが大きかった上に、1度集中が途切れた事で疲労感が大量に吹き出た事で貧血に近い目眩を起こしていたので、明らかに動きが鈍かった。

 まぁそれでもハルナは軽巡ツ級群を撃退しようとしていたが、その軽巡ツ級群に状態を見抜かれていた為に交互射撃による連続射撃に次々被弾していた。

 

「ハルナァァー!!!」

 

「イスズさん、私だけでも行かせて下さい!」

 

「無茶言わないで!!!

アイツ取り押さえんのに、今苦労しているでしょう!」

 

 間違いなく軽巡ツ級群(ガミラス)がハルナを沈めようと総攻撃を仕掛けていたので、アサシモが思わずハルナに叫び、ハツシモが自分達の状況を無視してハルナ救出に向かおうとしてイスズに止められていた。

 だがイスズ自身ハルナ救出に向かえない事で血を流す程に下唇を噛んでいて、更に集積地棲姫も自分達を押さえ込もうと攻撃の勢いを増していたので、どうする事も出来ないでいた。

 

「……此処まで…」

 

 遂にハルナは、蓄積ダメージは兎も角、気力が尽きてしまった事で足を滑らせて尻餅をついてしまい、そのまま立ち上がる事が出来そうになかった。

 軽巡ツ級群も此れを好機と捉えたらしく、1度ハルナから距離を取ってから統制雷撃でトドメをさそうとしていた。

 ハルナはそれに抗おうと思うも身体がどうしても動かせれず、逆に自分の死の光景に加えて、その後にイスズ達5人が(ナブ)り殺しにされる未来絵図をどうしても思い浮かべてしまった。

 

「……ヤマト…」

 

 軽巡ツ級群が転舵していよいよ雷撃体勢に入ろうとしたのを見て、諦めてしまったハルナはヤマトが頭に過って微かな願いを望んで目を瞑った。

 だがハルナは、僅かな風切り音が集積地棲姫の背後から聞こえた気がして、そちらに振り向いて注目していたら………ハルナの思い通り(?)にそこから飛んできた6本のミサイルが集積地棲姫の背中に直撃した。

 

「ヤ、止メロ!!!

燃エテシマウ!!!」

 

 集積地棲姫が無警戒だった背後からの被雷多数で誘爆を起こしだしたミサイル砲台の的確な消火が出来ずにいて、そんな彼女に合わせたかの様に背後に陣取って揺れ動いている浮遊要塞群に反して、イスズ達やハルナだけでなく軽巡ツ級群までが硬直してしまった。

 

「……何が起きたの?」

 

「チョウカイ達が来てくれたって事か?」

 

「だとしたら、6本だけってのはおかしいよ」

 

 イスズのぼやきにアサシモが自分の予想を言うもズイホウに否定された。

 

「……まさか…」

 

 確証は無かったが、ハルナはミサイル攻撃の主をヤマトだとなんとなく思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・氷海 ―――

 

 

「狙い通りに着弾しました」

 

 ハルナの思いは的中していて、現に氷の突起物に座っての片眼式望遠鏡で着弾観測している謎の艦娘の文字通りの足下での破氷の海で、ヤマトが頭の上半分だけを出した状態でいた。

 

「本当なんですよね?」

 

 尤も、今のヤマトは測距儀を無くしている上に通信アンテナが故障していて、しかも煙突ミサイルでの攻撃目標が全く見えない為に何も分からないので、どうも拗ねているらしく口で吹く事で泡立てていた。

 

「戦果を上げてますから、素直に喜んでなさい」

 

 謎の艦娘は子供っぽい事をするヤマトに苦笑したが、当のヤマトは益々ムスッとして目線を逸らした。

 だが此の行為で、謎の艦娘は更にヤマトを笑っていた。

 

「…私は行きます」

 

「此の際ですから、冥王星基地を叩いてくれませんか?」

 

「もがき足掻きながらやり遂げてこそ、人の為になるのです。

奇跡や他力本願に走る者や組織、特に軍隊がどうなるかは知っているでしょう?」

 

 ヤマトの冗談に近い提案に対して、謎の艦娘は丁寧且つ的確に返して、ヤマトは深海棲艦戦時末期に奇跡や神風を盲信していた旧日本海軍を思い浮かべた事で、唸り声の出しながらまた泡立てていた。

 

「では、私が言った通りにするのです」

 

「御世話になりまし……っ!

あ、待って!!!」

 

 謎の艦娘は去ろうとするも、ヤマトが礼を含めた別れを言おうとした時に呼び止めたので、フードの奥で見えなくても分かる程にムッとして振り向いた。

 

「名前は?

何て呼べばいいのです?」

 

 謎の艦娘はヤマトの質問で自分が名乗っていなかった事に気付いて、ヤマトから目線を剃らすと「あ~…」と呻きながら右手で顎下を摘まんだ。

 

「…そうね………翠の星の者、その戦の女王。

自分でも少し烏滸(オコ)がましいと思っているけど、クイーン・エメラルダス(翠星の女王)と名乗らせてもらう」

 

「…エメラルダスゥ?」

 

 ヤマトが名乗り名に眉間に皺を寄せたが、謎の艦娘ことクイーン・エメラルダス(以降の表記は“エメラルダス”)はそんなヤマトを無視して急発進での上昇をし、そのまま冥王星を離脱して何所かの宇宙に向かっていった。

 

「……赤主体の衣装なのに、エメラルド(青い宝石)に近いの?」

 

 ヤマトはエメラルダスが去った上空を見上げていて、暫くした後に彼女の名前の矛盾点をぼやいた。

 だがヤマトは同時に“エメラルダス”の名に懐かしさを感じていた。

 

 こうして秘密裏に行われた第7次冥王星沖海戦の幕間劇………後日の全宇宙にてヤマトと共に“宇宙最強の3艦娘”の1人に数え称される事になる“艦娘達の海賊女王”こと海賊戦艦クイーン・エメラルダスと宇宙戦艦ヤマトとの最初の出来事(ファースト・コンタクト)は終劇となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― ????? ―――

 

 

「ありがとうございます、エメラルダスさん」

 

「貴女も難儀ですね」

 

 第7次冥王星沖海戦が完全終結した数日後、エメラルダスは地球とガミラスが認知していない宇宙空間で、自分と別の謎の艦娘と出会っていて、彼女に頭を下げられていた。

 

「私が行かなくても、貴女がヤマトの所に行っていたのではないのですか?」

 

「いえ、今の私はイルミダスとの戦いで手一杯な上にマゾーンの侵攻に備えなくてはいけない身です。

それにヤマトの所に行く事を、あの御方がまだ許可しませんし、私の“本体”はまだヤマトに会う気がありません」

 

 時折姿がボヤけるか乱れている謎の艦娘は、エメラルダスの質問に静かに返していたが、イルミダスやマゾーンの2つへの腹立てが僅かに有ったが、それよりもヤマトに会えない事への苛立ちが内心有る事を見抜かれていた為、エメラルダスに笑われていた。

 

「…それに、あの尼を野放しには出来ませんし!………あ」

 

 謎の艦娘は表面上は冷静沈着(クールビーティ)にしていたが思い出しての怒りで思わず本音を漏らした事に直ぐ気付いてエメラルダスに謝ったが、エメラルダスは表面上は無反応のまま、謎の艦娘の本性は短気で気性が荒い事を察した。

 

「ですが、いずれはヤマトに会うつもりなのでしょう?

それに“時空戦艦”と呼ばれる身分なのだから、ヤマトに会う未来を時詠が出来るのでしょう?」

 

「ええ、あの尼と違って、私は遠き時の環が接する時にヤマトに会える事が出来ます」

 

 謎の艦娘はヤマトの事で嬉しそうに笑っていて、 内面はほぼ逆であったが、エメラルダスは謎の艦娘がヤマトによく似た容姿(それも“一卵性双生児”か“複製人間(クローン)”のレベルで)である事から“ヤマトの笑顔もこうだろう”と思っていた。

 服装(基本的に似てるが色が色々と違う)もあって容姿的には“ヤマトと会話をしている”錯覚に陥るかもしれないが、謎の艦娘の艤装もまた嘗ての戦艦大和最終形態(大和改)に基本的に似ているも、前方左右各々にある主砲2基、その各々の後部に背負い式で主砲が1基ずつ追加されている相違点から、エメラルダスはそう言う錯覚が一切無かった。

 

 宇宙最強の3艦娘の最後の1人である此の謎の艦娘もまたヤマト(達)と出会う事となるのだが、それがどう言う形でなのか、出会って何が起きるかは、現時点では まだ謎の艦娘本人にしか分からなかった…




鳥海
「作者さんに代わって、感想か御意見、或いは両方でも良いので宜しくお願いします」

摩耶
「…あれ?
衣笠って遠征艦隊に合流してイスカンダルに向かうんじゃなかった?」

鳥海
「それが、作者さんが合流する艦娘………特に重巡が多すぎると思った為に、急遽ヤマト原作の根本さんみたいに戦没する事にしたそうです。
衣笠にしたのは古鷹、加古の2人には役割があって、青葉は白色彗星帝国編に出る予定だからとの消去法からです」

摩耶
「衣笠には悪いが、アイツをおいておき、最後の辺りで遂に謎の艦娘の1人目の“翠星の女王”がクイーン・エメラルダスの艦娘である事が発表されたな」

鳥海
「第65話に少し書いてますが、エメラルダスの艦娘としての登場は旧作版漫画2種でのみ出たハーロックのオマージュです。
デスシャドウかアルカディアの艦娘を出さなかったのは、あの2隻を艦娘としたら女体化ハーロックになる可能性大となり、その通りに出した時の非難を怖れたから、まだ被害が少ない筈のエメラルダスに代えたそうです。
ですが本作のエメラルダスはオリジナルとは似て非なる存在と化したそうです」

摩耶
「余談だけど、エメラルダス投入の影響で本シリーズではキャプテン・ハーロックは『デスシャドウ』&『アルカディア』共々存在しないとしているそうだ。
今回の最後で“住よい国”がハーロックが戦う事になる勢力と戦っているのはその為らしい」

鳥海
「元々エメラルダスさんが私達を助けるのは予定通りだったのですが、本来の真名明かしは銀河間航路でしたが、諸事情で急遽前倒しにしたそうです」

摩耶
「厳密に言えば、コスモゼロさんの処での無茶ぶりだろ?
止めときゃよかったのに、あの人が最近姿見せないから作者が罪悪感を感じてるんだろ?」

鳥海
「更にあの人にこれまた急遽最後に出した謎の艦娘2人目“住よい国”の真名を明かしてしまいましたしね。
だから“容姿、服装、艤装の3点が大和に似ている”“追加分を含めての主砲の総数”でほぼ正体が分かるようにしているそうです」

摩耶
「“住よい国”の本質は短気で気性が荒いとしたのは、第75話で上げた奴のイメージCVが釘宮理恵にした事の副作用だと。
まぁあの人は“シャナ”“ルイズ”“大河”“アリア”とかツンデレのトップランナーばっかやってるからな…」

鳥海
「最後に、予定では“住よい国”の真名は銀河間航路で、先ずは遠征艦隊が助けた銀河鉄道の乗客がヤマトを見た事で明かすそうです。
“貴女、『xxxx』でしょう!?”との形だそうです」

















































摩耶
「んで、作者は何所に行った?」

鳥海
「何で行ったのかは、もう言わなくても分かるでしょう?」






























古鷹
「作者さんは何所なのですか!!?」
加古
「作者は何所だ!!?」
青葉
「作者は何所なのですか!!?」

青葉
「衣笠を無残に殺した!!!」

加古
「あの馬鹿野郎は!!」

古鷹
「何所なのですか!!?」















鳥海
「書くかもしれない、ハイスクール版デラーズ紛争と言うべき作品の骨組みを組む為に、デラーズ・フリートの取材調査に行ってますよ。
あと、1番のお気に入りMSのガンダム試作2号機を見にもいってます」

摩耶
「気持ちは分かるが、鬼殺隊の格好で殴り込んでくるな!!!」


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第80話 栄光は偽りと化し…

――― 冥王星・ガミラス基地 ―――

 

 

「Was war das fuer eine Rakete!!?」

(訳:あのミサイルは何だったんだ!!?)

 

「Ich verstehe nicht!!

Fs wurde jedoch nur aus dem Eismeer abgefeuert…」

(訳:分かりません!!

ですが、氷海の方から発射されたとしか…)

 

「Wenn ja,probieren Sie es gleich aus!!!」

(訳:だったら、直ぐ調べろ!!!)

 

 集積地棲姫を奇襲したミサイル群に対して、集積地棲姫本人やハルナ達は分かる事なく一時だけ硬直していたが、冥王棲鬼達は騒ぎながらも直ぐに攻撃の主の捜索を始めていた。

 

「Schick es ihm!!

Warum knackt das Eis!!?」

(訳:彼処(アソコ)に寄せろ!!

何故氷が割れているんだ!!?)

 

 冥王棲鬼は部下に命じて反射要塞群による上空偵察を行わせ、部下達は見落としたが、冥王棲鬼はほんの一部だけ不自然に氷が無い場所を見つけて映像の拡大を命じた。

 映像を拡大しての鮮明化を何度か繰り返した後、その場所に奇妙な黒点が映し出され、更に拡大と鮮明化をした事で黒点が人の頭である事が分かり、どう考えても此の者がミサイルを放った艦娘としか思えなかった。

 

「Es ist ein U-Boot!!?

Wann hast du es versteckt!!」

(訳:潜水艦だと!!?

いつの間に潜ませていたのか!!)

 

「Bereite dich auf U-Boot-Abwehrangriffe mit Raketen vor!」

(訳:ミサイルによる対潜攻撃の準備を開始します!)

 

 部下達は氷海の艦娘に驚いていたが、冥王棲鬼の命を待たずに攻撃の準備を各々に開始した。

 だが冥王棲鬼は潜水艦と判断された艦娘の頭や髪に在視感が有った為に疑問に思いつつ、自分でも分からない嫌な予感を感じていた。

 此の為、冥王棲鬼は更に映像の拡大と鮮明化を命じ、艦娘の黒髪ポニーテールの後ろに傾斜した赤い金属体が僅かに海面から覗いていて、その下に艦娘の艤装と思われる本体がぼんやりと見えていた。

 冥王棲鬼は“まさか”と思いながらも自分の予想を否定したがっていたが、艦娘の頭の左右各々の海面下に三連装主砲が微かに見えた事で、彼女に取っての最悪の答えを導きだした。

 

「Es ist YAMATO!!!」

(訳:ヤマトだあぁぁー!!!)

 

 冥王棲鬼の絶叫に部下達もギョッとしながら彼女に振り向いた。

 

「YAMATO muss gerade gesunken sein!!?」

(訳:ヤマトって、さっき爆沈した筈だよね!!?)

 

「Nein,es muss YAMATO sein!

Der Computer hat die Schiffstochter der Eissee als YAMATO zerifiziert!」

(訳:いえ、ヤマトに間違いない!

コンピューターが氷海の艦娘をヤマトと認証した!)

 

「Ich wurde wieder getaeuscht!!!」

(訳:また騙されたぁぁー!!!)

 

 ヤマトが生存した上に戦線に復帰した事に大混乱が生じていたが、冥王棲鬼は顔面蒼白になりながらも命令を発した。

 

「Reflektierter Satellit,dringender Start fuer YAMATO!!!

Beeile dich!!!」

(訳:反射衛星砲、ヤマトへ緊急発射!!!

急げえぇぇー!!!)

 

 部下達は冥王棲鬼の怒鳴っての命令を直ぐに実行していたが、冥王棲鬼は此の間頭の中が“不味い”が大量に脇だしていた表れとして異様に汗を流していた。

 冥王棲鬼(達)が異様に長く感じた間を置いてから待ち望んだ反射衛星砲が放たれ………無警戒そうに海に浮かんでいるヤマトの頭目掛けて光線が落下して大爆発が起きた。

 ところが、冥王棲鬼はヤマトを仕止めた手応えを感じられなかった為にギョッとして硬直した。

 

「Was hat YAMATO getan!!?」

(訳:ヤマトは何をした!!?)

 

「YAMATO machte kurz vor der Landung einen schnelien Tauchgang!」

(訳:着弾直前に急速潜航したんです!)

 

「Reflektierter Satellit,der zwite Schuss kann gehen!!?」

(訳:反射衛星砲、第2射はいける!!?)

 

「Nicht gut!!!

Mit Reflektierter Satellit koennen Sie nicht auf Feinde im Meer zielen und haben YAMATO voellig aus den Augen verloren!」

(訳:駄目です!!!

反射衛星砲では海中の敵は狙えませんし、ヤマトを完全に見失いました!)

 

 冥王棲鬼は反射衛星砲に外した事に頭を抱えながら悲鳴を上げて悔しがっていたが、不意に何かに気付いて硬直した為に部下達は疑問を感じていた。

 

「…Weisen Sie so viele Schiffe und Flugzeuge wie moeglich an,YAMATO zu suchen und

anzugreifen!!!」

(訳:…有るだけの艦艇や航空機を、ヤマトの捜索と攻撃に向かわせなさい!!!)

 

「Ist es nur wie Flugplatz Prinzssin oder Agglomerirte Prinzssin!!?」

(訳:有るだけって、まさか飛行場姫様や集積地棲姫様のもですか!?)

 

「Offensichtlich!!!

Alles wird YAMATO kompiett versenken!!!」

(訳:当たり前でしょうが!!!

なにがなんでもヤマトを完全に沈めるのよ!!!)

 

「Wenn Sie das tun,das Schlachtfeld…」

(訳:そんな事をしたら戦局が…)

 

「Weiβt du was!!?」

(訳:アンタ達は分かってるの!!?)

 

 部下達は冥王棲鬼の現実を無視した命令を撤回させわうとしたが、当の冥王棲鬼は聞き入れる処か益々怒鳴り散らし、彼女から明らかに焦りと恐怖が感じられた。

 

「Ich habe “Diese Person”den Untergang von YAMATOgemeldet!

Wenn YAMATOs Ueberleben nach auβen durchgesickert ware,haette ich………Ich “Diese Person”einen falschen Bericht gemacht!!!」

(訳:私は“あの御方”にヤマト撃沈を報告したのよ!

もしヤマト生存が外部に漏れたら、私は………私は“あの御方”に虚偽報告をした事になるのよ!!!)

 

 部下達の全員が冥王棲鬼の悲鳴に近い指摘に揃って軽めの悲鳴を上げ、同時に冥王棲鬼の言いたい事を理解した。

 元々虚偽報告自体が問題行為なのだが、よりにもよって“あの御方”へのであったのだから、“あの御方”に発覚した唯ではすまない処か、確実に即刻の処刑(粛清とも言う)が実施される。

 此の為、冥王棲鬼は“13階段を昇る”か“巨大杭に縛りつけられる”未来絵図を思い浮かべていた。

 普通なら部下達は“アンタが独断でしたんだろ”と内心毒突くかもしれないが、“あの御方”はそんな言い訳を許さずに連帯責任として全員が道連れとして処刑する、最悪の場合は冥王星諸共に消滅されると確定的な未来を思い浮かべた為、戦略無視の自己保身全開の命令に誰も反対しなかった。

 更に冥王棲鬼は指揮下だったらヤマトの屍体回収を命じる筈のミリューの嫌み全開の顔を思い浮かべていた。

 冥王棲鬼にとって現状下でも“腹立たしい”の一言だったが、実際にそうしなかった自分を酷く悔やんでいた。

 

「Es gibt nur noch einen Weg und dieses Mal werde ich YAMATO versenken!!!」

(訳:残った手段は唯1つ、今度こそヤマトを沈めるやよ!!!)

 

 冥王棲鬼が言った通り、基地陥落は思い浮かべはいなかったが、ヤマトに冥王星から逃げれられる、逃がさなくても装甲空母姫が戻ってヤマト生存を確認されたら、死への未来しか無いのだから、ミリューや装甲空母姫に知られる前にヤマトを撃沈しなくてはならず、部下達もそれが分かって顔を青くして異様に機敏に動きだした。

 

「Nichts,es war nur so,dass YAMATOs Untergang zu frueh gemeldet wurde.

Ja,ich habe nur“Diese Person” vorausgesagt,um YAMATO zu versenken!!!」

(訳:なんて事はない、ヤマト撃沈の報告が早すぎただけだったのよ。

そうよ、私は“あの御方”にヤマト撃沈を予告をしただけなのよ!!!)

 

 冥王棲鬼は自己暗示をしようと脇目も振らずに独り言を叫んでいた。

 此の決断が、第7次冥王星沖海戦の勝利者を決める要因となった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・氷海西側沿岸 ―――

 

 

「ハマカゼさん、大丈夫ですか!?」

 

「まだ、いける…」

 

「アマツカゼ、向こうのテンリュウの所に行って下さい!!」

 

「分かった!!!」

 

 ショウカク率いる左翼隊は飛行場姫と交戦して、テンリュウが大破、ヒュウガとアオバが中破してしまったのに反して、肝心の飛行場姫は航空隊や多数の浮遊要塞の妨害もあって無傷であった。

 そんな左翼隊にとって幸いだったのが、ショウカク(のコスモタイガー隊)のハマカゼ協力下の死に物狂いの迎撃に加えて、アマツカゼが走り回っての応急処置で、戦没者がまだ出さずに、なんとか五分五分に持ち込もうとしていた。

 まぁそれでも分が悪かった上に、コスモタイガー隊が壊滅したり、ショウカクかアマツカゼのどちらかがヤられたら一気に押し潰される事を自覚していたので、有効な手を探して足掻いていた。

 

「…どう言う事だ?」

 

「何故、航空隊を別の所に向かわせる?」

 

 処が、飛行場姫が突然嫌そうな顔をしたら、航空隊の大多数を氷海の方に向かわせて、勝利を放棄するに等しい事をした為に、ヒュウガとショウカクに見られる通りに驚き戸惑うしかなかった。

 

「…俺達は、もう目じゃないって事か!!?」

 

「いえ、アイツの顔を見た感じだと、不本意みたいよ」

 

 テンリュウは飛行場姫の行為は勝ちを確信してのだと思って悔しそうにしたが、直ぐにアマツカゼが彼女に応急措置をしながら否定した。

 

「じゃあ、ハルナ達が優位だからじゃない?」

 

「いえ、ハルナさん達もかなり苦戦してるらしい」

 

 今度はアオバが対岸のハルナ達の所に向かったと予想したが、此れはショウカクが少し前に当人達から苦戦故の救援要請が通信されていた事から否定した。

 尚、現在はショウカク・ハルナ間の通信が途切れていて、此の事が幸いとしてキヌガサ戦没が伝わっていなかった。

 そしてハマカゼ唯1人は飛行場姫や飛行隊の向かった方角の2点から“まさか”と思いながら、(タスキ)掛けで無理矢理ぶら下げているヤマトの測距儀に目線を落とした。

 

「ショウカク、あの航空隊に偵察機を着けれませんか!?」

 

「は?」

 

「アレ等が向かったのは、きっとヤマトの所です!!

ヤマトが生きていて、攻撃をしに向かったのですよ!」

 

 ハマカゼの指摘にショウカクが他共々「あ!」と言いながら、ヤマト撃沈への異様な拘りが分からないまでも、他全ての辻褄(ツジツマ)が合うと判断した。

 

「今は駄目だ。

そんな余裕は無い」

 

 だが迷いを顔に表したショウカクが答えず、ヒュウガがハマカゼの提案を否定した。

 

「私は行かせてもらいます!」

 

 ハマカゼはヒュウガを一瞬睨んだ後、自分が偵察に行こうとしたが、此れまたヒュウガが彼女の首裏を掴んだ事で止められた。

 此の為、ハマカゼはヒュウガに振り向きながら彼女に主砲を身構えた。

 

「…私は、“(い・ま)・は”と言ったんだ!!!」

 

 ヒュウガがムッとしながらの返しから、ハマカゼは彼女の思いを察した。

 それはイセ達5人も同じであった。

 

「ガミ公はワザワザ致命的なハンディをくれたんだから、その行為を喜んで受けようじゃないか」

 

 ヒュウガにハマカゼ達が次々に頷き、飛行場姫は彼女達がより強く攻めているのを察して全武装を身構えた。

 

「……さ…」

 

「さっさとアイツを潰して、ヤマトを助けに行くわよ!!!」

 

 ヒュウガが言おうとしたのをイセが奪って大声で言い、ヒュウガがイセを睨んだのは無視して、ハマカゼ達が一斉に「了解!!!」か「おう!!!」と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 氷海北側沿岸 ―――

 

 

「…行きましたね」

 

「私の計算通りに、上手くいきました!」

 

 此の時、今まで姿を見せないでいたチョウカイ率いる中央隊はと言うと、時間が掛かるのを覚悟して氷海を潜航して北部に辿り着いたが、浮上する為に海面の氷を壊した直後に南下するガミラス駆逐戦隊群を見つけたので、敢えて海中に潜んでやり過ごしてから、チョウカイを先頭に次々に氷海から出てきていた。

 因みにチョウカイが氷海を潜航する事にしたのは、反射衛星砲やガミラス艦隊をやり過ごす狙いもあったが、真の狙いはギリギリの範疇でヤマトを探す事であったが、通貨時にヤマトがエメラルダスと共に海底洞窟に潜んでいた為にすれ違いを起こしていたが、後々のを考えたら此れが幸か不幸なのかは人によった。

 

「あのガミ公の艦隊の規模から見て、どうやら此方が当たりらしいニャ」

 

「此れでMVPは貰ったって事ね!!」

 

「そんな事を言っている場合じゃないだろ」

 

 タマが過ぎ去ったガミラス駆逐戦隊群から此の方角にガミラス基地が有る可能性が高いと見て、全員が頷く事で同感としてしていた中で、レシーテリヌイがはしゃいだ為にヴェールヌイに強めに小突かれた。

 全員がレシーテリヌイが左脇腹を押さえながら呻いている事に苦笑していたら、上空に放っていたフルタカとカコのコスモタイガー群が降下してきて、そのままフルタカとカコの各々に着艦し、それ等に乗っていた妖精さん達が潜航中の戦局通達の通信群を報せた。

 

「ハルナ達やショウカク達は各々集積地棲姫や飛行場姫と戦って不味い事になってるらしいぞ」

 

 チョウカイがカコの報告に目線を逸らして苦虫を潰したが、カコは更に不味い報告を言うかどうかで悩んで思わずフルタカと目線を合わせた。

 

「カコ、フルタカ、今さら隠し事は無しよ」

 

 チョウカイは土星での長い付き合いもあって、そんな2人の反応から隠しているのを見抜いて掲示を示し、フルタカとカコは見るからに嫌そうに口を開いた。

 

「…キヌガサが殺られました」

 

「反射衛星砲が2発直撃しての轟沈だ」

 

 土星で長らく過ごした仲間のキヌガサ戦没に、タマとレシーテリヌイにヴェールヌイは唖然として、チョウカイは少しの間だけ下唇を強く噛ん臥せると足下の小氷を見つけ、それを拾うと遠くへ思い切り投げ、小氷が飛んでいった方角を息を乱しながら暫く見つめていた。

 

「…進撃しましょう。

此所でキヌガサの死を嘆いていても、何にもなりません」

 

「それだけ!!?

土星での長い付き合いの仲間の1人が死んだのよ!!!」

 

「レフィ…」

 

 レシーテリヌイがキヌガサの死に対して変に淡白だったチョウカイに怒鳴って彼女に詰め寄ろうとしたが、チョウカイの右拳の震えから彼女の内心を察したヴェールヌイがレシーテリヌイを止めた。

 

「で、チョウカイ、タマ達はこのままガミラス基地の捜索に行くのかニャ?」

 

「ええ、貴女が言った通りにガミラス艦隊群の動きから見て、基地は近くにありそうですからね」

 

「んで、悪巧みは?」

 

「勿論、します」

 

 チョウカイはタマのに続けてのカコの質問に対して、カタパルトを身構える事で示した。

 チョウカイのカタパルトからコスモタイガーが3機続けて飛び立ったが、旋回してから向かった先は基地が無い筈の南………つまり、氷海の方に飛んでいった。




 感想または御意見、良ければ両方でもいいので宜しくお願いします。

 前投稿から4ヶ月近く経過していた間にした事として、艦これイベントに併せて“設定 艦娘”での未所有故に登場不可に“薄雲”“迅鯨”“伊47”“第四号海防艦”“松”“有明”“屋代”“ヘレン”“サウス・ダコタ”“ホーネット”を追加していましたが、此の内の“薄雲”“伊47”“第四号海防艦”“松”“ヘレン”“サウス・ダコタ”“ホーネット”の8人に加えて“早波”と“平戸”を獲得した為に外しました。

 尚、艦これ関連の個人的な事での完全な余談ですが、7月作戦にてショートランド島泊地・主力艦隊第三群(第101~500位)に入る事が出来ました。
 此のお陰で“銀河★+1”と“TBM-3D”を獲得しましたし、パソコン版をやっていたら該当項目で自分の提督名・古村進が載っている筈です。

 更に言いますと、ローソンの艦これ一番クジで狙っていた水着鈴谷を1発獲得にも成功しました!


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第81話 ガミラスの海豹猟

 今回の投稿前に第12話でハルナが言っていた護衛艦はるなの事は第十雄洋丸事件である事を明確に表記しました。





 それでは本編をどうぞ!


――― 冥王星・氷海 ―――

 

 

 ヤマト生存を確認したガミラスは、よりによって至高の存在へ事実上の虚偽報告をした事による粛清の恐怖もあって対応は極めて早かった。

 ヤマトがいる海域へ次々に殺到するガミラス水雷戦隊は、先ずは単横陣を編成すると艦砲の連射によって邪魔な氷を破壊、ヤマトが潜航しているだろう海域の上方に達すると爆雷や対潜仕様の魚雷を大量投下する一撃離脱の攻撃を繰り返していて、暫く経過して氷海の氷が大量に無くなった時(と言っても極寒環境故に直ぐ再氷結しているが…)に飛行場姫の航空隊や集積地棲姫の地対潜ミサイルも大量に殺到してきた。

 どうもガミラス水雷戦隊は全員水中ソナー類を一切未搭載なのか、ソナーによる水中探索を行う気配が無かったが、それを必要としない物量頼みの力押しが行われていて、端から見たら氷海そのものを消滅させそうな勢いと量であった。

 だがその下で攻撃に晒されれているヤマトはどうかと言うと、海底の突起物群を彼女なりに上手く使っての海底すれすれの回避行動を行っていたので、稀に至近弾がで驚きながら多少の傷を負う事があったが、その殆どを避けていた。

 

「……本当に艦隊戦ってのは、何が起こるか分からないものねぇ~…」

 

 まぁ稀に判断や行動ミスで対潜兵器群の爆発範囲に入ってしまう事があったが、潜水艦娘ではないヤマトがそれなりの潜水航行が出来ていたのは深海棲艦戦時に読んだ潜水艦の基本戦術書を断片的にもなんとか思い出していた上、先日の潜宙棲鬼率いる潜水艦隊の動きを参考にしていたからだ。

 此の為か、ヤマトは色んな意味を含めての苦笑をしていたが、そんな彼女に反してガミラスのは極めて拙かった。

 なにせ、対潜兵器群が検討違いな所に行っているのが多々有るだけでなく、爆発深度の設定を間違えてヤマトの上方で起爆して(多分まともな)他の対潜兵器群に誘爆を引き起こしているのまでがあったからだ。

 勿論、ガミラスの醜態の原因は山間部での海戦と同様に研究や訓練の怠惰が原因であり、その事をヤマトはしっかり見抜いていた。

 此の為、今回攻撃してきた水雷戦隊があまりに無防備な艦隊行動を取っていたので、ヤマトは若干不安になりながらも煙突ミサイルを発射………前方の水中から飛び出した(煙突)ミサイル群に驚き戸惑ったガミラス水雷戦隊がまともな回避行動を取らないままに3隻が被雷して轟沈した。

 しかもガミラス水雷戦隊群が無様に慌てふためいていて、此れにはヤマトも呆れて溜め息を吐いた。

 

「Was machst du!!?」

(訳:何をやっている!!?)

 

 だがとある増援が到着すると、醜態を晒すガミラス水雷戦隊群を怒鳴って落ち着かせた。

 

「……ん?」

 

 海底すれすれを航行していたので、爆雷が減少して魚雷攻撃が止んだ2つの事(但し航空爆雷と地対潜ミサイルは変わらず、どうやら牽制として続けさせているらしい)に疑問を感じて思わず頭上を向いたが、同時に戦いの流れが変わろうとしているのを本能で感じ取った。

 そしてその予感が当たった証としてアクティブ・ソナーの発信音とその反射音が聞こえだし、ヤマトは思わず舌打ちをした。

 蛇足ながら、アクティブソナーとは“active(アクティブ)(積極的)”の言葉通り、発信主の存在や居場所が相手に知られるのを代償に自らが音波を発信して観測する観測機(要するに基本的にレーダーと同じ)であり、対極的な存在であるパッシブソナーは基本的に静止状態にならない為に微速か停船(当然だが攻撃は絶対禁止)して水中の音を拾う物である。

 まぁ兎にも角にも言えるのは、ガミラス水雷戦隊のソナー観測でヤマトがまだ生きているだけでなく、何所でどの向きに進んでいるのかが判明されたのが分かった。

 

「……くっ!」

 

 ヤマトは思わず歯軋りをしてそのまま砕けてない氷の下へと進んでいたが、実は此の時に直ぐに停止して海底の地形を利用して潜んでしまえば探知から逃れられる事が出来た(筈)だったが、ヤマトには潜水艦の知識(此れは合ったかもしれないが…)や経験が無かった為に愚行と言える行為を仕出かしていた。

 案の定、ガミラス水雷戦隊はソナー観測でヤマトの居場所と進路を突き止めたらしく、鳴り響くソナー音が時を過ぎる度に周期を縮まっていて、更に航空爆雷に続けて対潜ミサイルが止んだ為、ヤマトは何かを企んでいるだろうガミラス水雷戦隊のを察しながら頭上を見上げて続けた。

 

「……っ、え?」

 

 だからこそ、上に気を取られていたヤマトは真右から自分目掛けて向かってくる魚雷群に直前まで気づかなかった。

 

「あ、不味!!!」

 

 しかも直ぐに回避行動を取るべき処を、ほぼ反射的に右舷を晒してパルスレーザーで迎撃しようとするも、水中なので使用不可であるのを思い出して慌てた為、無防備に魚雷を複数本も被雷した。

 

「…潜水、カ級とヨ級!?」

 

 ヤマトは魚雷群が向かってきた方に振り向いたら、いつの間にか潜水カ級と同ヨ級の潜水艦隊(厳密に言えば潜水艦隊でなく潜宙艦隊、ヤマト達を散々苦しめたステルスフィールドは水中では展開出来ないらしい)が横並びでいた。

 此の艦隊の存在にヤマトは驚いたが、直ぐに彼女達は火星・木星間小惑星帯の生き残りである事を察した。

 因みにヤマトは粛清された事が知る訳がないので潜宙棲鬼撃沈後に逃げた者達の一部だと思っていたが、実際の彼女達は海戦当時ドック入りしていて粛清をしるやそのまま冥王棲鬼に匿われて今に至った艦隊であった。

 まあ此の潜水艦隊がどうであれ、彼女達の揃ってヤマトへ怒気を放っていて、ヤマトはその理由を簡単に察していた。

 

『Der tod von LATENTER DAEMON!!!』

(訳:潜宙棲鬼様の仇ぃぃぃー!!!)

 

 ガミラス潜水艦隊は“ヤマトに敗死した潜宙棲鬼”“その為に粛清された同僚達”の2つ事からの憎悪を極限まで込めた魚雷を一斉に多数を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球 ―――

 

 

「チョウカイ経由の映像が届きます!!!」

 

 此の時、チョウカイが偵察に放ったコスモタイガーが、ガミラス水雷戦隊の1つの後をこっそり尾行した上に、対潜攻撃による水柱が大量に上がっていた為、容易に発見されたヤマトがいる(だろう)海域に到着し、防衛司令部へ上空映像が送られた。

 

「チョウカイめ、何を勝手な事を…」

 

 但し、芹沢を初めとした一部はチョウカイの勝手な行為に嫌そうにしていたが…

 

「…映像を切り替えて、海中の映せないか?」

 

「……やってみます…」

 

 藤堂はそんな芹沢達に意味ありげな目線を向けた後、オペレーターに命じてガミラス水雷戦隊の攻撃目標が映るようにさせた。

 オペレーター達は当初は自信無かったものの、拡大と解析を数度続け、海中でヤマトが潜水艦隊と戦っているのを映す事に成功した。

 当然ながら防衛司令部の面々は各々の形で「ヤマト!!!」と叫んでいて、藤堂は驚きと喜びを交えたモノを発した後に芹沢が気づかれない様に歯軋りを一瞬だけした事を見逃さなかった。

 

「ヤマトと通信は取れないのか!?」

 

「…駄目です!!!

どうやっても繋がりません!」

 

「おそらくヤマトの通信アンテナが損傷したか、通信機その物が駄目な為だと思わせます!」

 

 ヤマトの生存に思わず喜んだのもつかの間、ヤマトが明らかに潜水艦隊相手の水中戦に苦戦しているのが見てとれた。

 しかもヤマトはそれなりにガミラス潜水艦を沈めてはいるもやたらと被雷しての焦りもあって、時折水中で唯一使用可の煙突ミサイルと取り違えて使用不可の主砲やパルスレーザーを使おうとして間違えに気づいて更に慌てる悪循環を起こしていて、藤堂は直ぐにでも助けが必要と判断してヤマトと通信を取ろうと命じたが、オペレーター達はどうしても出来ない事を伝えた。

 

「誰か潜水艦の指揮が取れる士官や提督はいないのか!!?」

 

「そんな絶滅種(潜水艦)を知ってる物好きがいるか!!!」

 

 更に藤堂のとは別に、若い士官の1人が水中戦に不馴れなヤマトを思ってそれ向けの提督を探し求めたが、直ぐに芹沢に怒鳴られ却下された。

 

「長官、どうするのですか!!?」

 

「あのままだと、ヤマトがもちません!!!」

 

 防衛司令部までもを焦せらせる悪手として、ヤマトは自棄糞(ヤケクソ)の開き直りとして、“肉を切らせて骨を断つ”の文字通りに自分の強靭さを信じて下手な回避運動を止め、更にガミラス水雷戦隊の支援攻撃までが始まった為に若い士官達が藤堂に詰め寄って、当の藤堂は分かってはいても有効な手を考えられずにいた。

 だが最悪の事態として、ヤマトが魚雷1本に被雷した直後に彼女の艤装から大量の泡が吹き出し、ヤマト自身もギョッとながら気泡噴出箇所に振り向いていたが、防衛司令部は更に騒然とさせた。

 

「ヤマトに何が起きたんだ!!?」

 

「状況から見て、水中用酸素変換器が損傷した模様です!!」

 

 藤堂の問いへの返しを示す様に、上空映像だと分かりにくいが、ヤマトは息苦しさから鼻と口を両手で押さえた。

 不味い事に、ガミラスもヤマトの現状を見抜いたらしく、意図的にヤマトが上に逃げる様な攻撃趣向を変えた。

 そしてヤマトは息苦しさと攻撃回避の為にガミラスの狙い通りに上昇を開始した。

 

「止めろ、ヤマトォォォー!!!」

 

 防衛司令部の誰かが叫んだが、ガミラスの次の1手を読もにもヤマトにはそれ以外の手段は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星・前線基地 ―――

 

 

「YAMATO tauchte auf!!!」

(訳:ヤマト浮上!!!)

 

「Was ist die letzte Vorbereitung fuer Reflektierter Satellit?」

(訳:反射衛星砲の最終準備は?)

 

「In Kuerze!!!」

(訳:間もなく!!!)

 

「Beciehl der Flotte,YAMATO voruebergeherd zu verlassen!!」

(訳:艦隊にヤマトからの一時離脱を命令!!)

 

 映像を見つめる冥王棲鬼は、ヤマトが浮上して下へ咳き込み続けたまま動かない事から好機と判断して、(彼女にとっては)最終攻撃として反射衛星砲の準備をその他諸々に命じ、数分後には命令通りに反射衛星砲が発射された。

 処が、ヤマトへの最後の反射要塞に光線が曲げられた直後、ヤマトは顔を上げながら緊急用の小型酸素ボンベ付きマスクを口元に着けると直ぐに急速潜航してまたしても空振りに終わった。

 

「……Ich habe zu viel Reflektierter Satellit verwendet…」

(訳:……反射衛星砲を使い過ぎたわね…)

 

 悔しさが有った事から歯軋りをしたものの、冥王棲鬼は時間経過で冷静になった事から、ヤマトが回避出来たのは反射衛星砲の何かを察した為だと判断していた。

 実際は当たりであり、ヤマトは先の回避したモノからの推定到来時間を元にし、しかもガミラス艦隊の退避もあって出来たのだった。

 

「Reflektierter Satellit naechstes Laden!!!

Benachrichtigen Sie die Flotte ueber einen erneuten Angriff und fahren Sie YAMATO an die Oberflaeche!」

(訳:反射衛星砲、次弾装填!!!

艦隊に再攻撃を通達、またヤマトを浮上に追い詰めさなさい!)

 

 冥王棲鬼はヤマトが長時間潜航が出来ない事を見抜いていた事もあって、再攻撃を次々に命じて部下達が「Ja(了解)!!!」と返して各々に動いている中、笑みを浮かべながら画面を見詰めていた。

 

「Ich sehe,das ist die Jagd auf Eidechsen auf der Erde」

(訳:なるほど、此れが地球での海豹(アザラシ)猟と言うものか)

 

 冥王棲鬼は深海棲艦の先人達………厳密に言えば目と鼻の先のダッチハーバーに寄生していた北方棲姫が残した資料の1つに有る北米イヌイット族が行う、砕いた氷から出てきた海豹を狙い撃つ狩猟を思い浮かべていたが、確かに現在のヤマト攻撃の現状は海豹猟と色々と共通点が多かった。

 

「…Ich habe mir eine gute Sache ausgedacht.

Lernen wir aus dem Favoriten FLUGZEUGTRAEGER WO LLASSE anstelle von GEPANARTE PRINZSSIN und machen ein abgestriftes Stueck aus YAMATOs Koerper als Trophaee」

(訳:…いい事を思い付いた。

装甲空母姫の所にいる物好きな空母ヲ級に習って、トロフィーとしてヤマトの遺体で剥製を作るとしよう!)

 

 冥王棲鬼はヤマトが逃げれない上に装甲空母姫(達)が戻る前に仕留められると判断した。

 しかも集積地棲姫と飛行場姫が各々に戦っている艦隊がヤマト救出に早期に来れないとの予想からも尚更であった。

 だからこそ、見ていた映像が画面から消えるだけでなく、照明が十数秒間切れた事には部下達共々驚き戸惑うしかなかった。

 

「Was ist der aktuelle Stromausfall!!?

Was ist passiert!!?」

(訳:今の停電は何なの!!?

何が起きたと言うのよ!!?)

 

 冥王棲鬼の独り言に近い問いに、部下達が直ぐに原因を調べ始めたが、原因を突き止めた1人は少しの間ギョッとしながら硬直した。

 

「Es ist schwer!!!

AGGLOMERIRTE PRINZSSIN warde getoetet!」

(訳:た、大変です!!!

集積地棲姫様が御討ち死になされました!)

 

 冥王棲鬼に集積地棲姫がハルナ達に敗死したのが伝えられて部下達共々驚きの声を上げた。

 

「Ist es nicht Fehler zu melden,dass die feindliche Flotte zerstoert wurde!!?」

(訳:敵艦隊を撃滅したとの報告の間違いじゃないの!!?)

 

「Nein,ich bin sicher,ichwerde sterben!

Es wird gesagt,dass die Raketenbasis auch in Flammen steht!」

(訳:いえ、討ち死で確かです!!!

ミサイル基地も誘爆炎上中との事です!)

 

「Es schein,dass die YAMATO-Angriffsflotte auch die Explosion das Feuer der Raketenbasis bestaetigt hat!」

(訳:ヤマト攻撃艦隊からもミサイル基地の爆発と火災を確認したそうです!)

 

「……Es war falsch,die Unterstuetzungsflotte von ihm zu ueberteragen…」

(訳:……アイツから支援艦隊を転進させたは間違ってた…)

 

 冥王棲鬼は自分の過ちを認めて悔いていて、此の事が珍しい事だったので部下達はギョッとしていた。

 だが此れ以降は…




 感想か御意見、両方でもいいので宜しくお願いします。

 今回のサブタイトルですが、“宇宙戦艦ヤマトNext STARBLAZERSΛ”の第5話と第6話での“マリナ・フレーザーが潜宙艦(?)を海豹猟の要領で引きずり出す”を見て、本編に若干の微調整を施してそうしました。
 此の影響で、今回の話の表紙(か扉絵)が有ったら“冥王棲鬼が反射衛星砲で狙う先に、海豹の着ぐるみを着た大和がデフォルメ仏頂面で胸から上を海面から出している”にしたいです。

大和
「貴方、あの作品は合わないとか言ってたわよね?」

……それはそれ、此れは此れ…

 それと、本編で海豹猟を連想するのは冥王棲鬼ですが、現時点では艦これ原作でカナダ艦娘が未実装なので、代わりにアメリ艦娘の誰か(思い浮かべたのはサラトガかフレッチャー)をアラスカのイヌイット出身として連想させたかったと思ってます。
 最近“アメリカ乱入の日本国召喚”を読んで、アイツ等は政府方針を無視してフロンティア精神(スピリット)でイスカンダル遠征に参加するのでは、と思うようにもなりました。

 最後に今回には没案で“水中戦に苦戦するヤマトを見かねた沖田の指示で、司令代行として恵がヤマトを指揮して潜水艦隊を殲滅する”がありました。

大和
「没の理由は、潜水艦隊殲滅を全く生かせられなかった為だそうです」


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第82話 オーロラに呼ばれて…

――― 冥王星 ―――

 

 

 此の時のチョウカイ達中央隊はと言うと“増援に向かう水雷戦隊”“行ったり戻ったりする航空部隊”“飛翔するミサイル群”等からの逆算からガミラス前線基地があるだろう場所へと進んでいっていた。

 当然だが、水雷戦隊や航空部隊に気付かれない様に慎重にであり、チョウカイ達3人の土星潜伏の経験がしっかり生かされていて、タマ達3人を感心させていた。

 

「……此所も外れ、みたいですね…」

 

 だが反射衛星砲の光線が上空を横切ったのを最後に頼りとしたモノ全てが途切れてしまった為、チョウカイ達は迷走をしだし、現に航空偵察を多々行いながら地図を覗きながらの打ち合わせをしていた。

 

「言っちゃあいけないのは分かるけど、ヤマトが危険な状態になっている以上は早く基地を見つけないといけないんだよ」

 

「そんなの分かってるって!!!」

 

 時間的猶予が失われている為に、チョウカイはハツヅキに思わず怒鳴り返していた。

 

「でも何でヤマトは潜航を続けているでしょう?

普通なら隙を見て、離水して逃げればいいのに…」

 

「ヤマトは海上着水した時に波動エンジンが止まってしまったニャ。

多分、波動エンジンが再起動出来ない上に、氷が邪魔して滑走しての離水が出来ないんだニャ」

 

「だったら、垂直上昇したら良いじゃないの!」

 

「馬鹿!!!

そんな事をしたら反射衛星砲に狙われる!!」

 

 多分フルタカは誤魔化してのリラックスを狙ってヤマトの疑問を発したが、残念だが此れはキラーパスであり、タマ、レシーテリヌイ、ヴェールヌイの4人と共にヤマトの危機的状態から変な焦りが出てしまう結果になった。

 

「皆、口を動かすよりも、ガミラスの基地が見つける為に動いて!!!」

 

「待てよ、チョウカイ!!」

 

 そんなフルタカ達5人にチョウカイが怒鳴って注意してさっさと先に行ってしまい、誰がどう見ても1番冷静さが失われているのはチョウカイであった。

 況してやキヌガサ戦没の一報もあっては尚更であり、彼女を止めようとしたカコはフルタカと少しの間だけ目線を合わせた後に揃って溜め息を吐いた。

 

「…此のままだと、その辺のガミラスを捕まえて吐かせようと仕出かすかもね」

 

「そう言えば、チョウカイって昔は火星のワルだったよね?」

 

 先行したチョウカイに急ぎ追い付こうとする中で、ハツヅキとヴェールヌイがチョウカイを(サカナ)に苦笑し合っていた。

 

「……彼処は、違う………じゃあアッチは…」

 

 だが実際の処、チョウカイは焦りの極みで自分をも見失いかけていて、その表れとして彼女は右手の指の爪をランダムに仕切りに噛んでいた。

 しかも暴走に近い形でカコ達を置いてけぼりにしていて、今ガミラス艦隊の襲撃を受けたら孤立状態で包囲されかねない程に警戒心も無くなっていた。

 

(……チョウカイ)

 

「タカオ姉さん?」

 

 だが不意にMIA認定の長姉タカオの自分を呼ぶ声が聞こえ、チョウカイは立ち止まって声が聞こえた方角を探ろうと辺りを見渡した。

 

「チョウカイ、どうしたんだニャ?」

 

「あ、いえ………タカオ、姉さんに呼ばれた、気がして…」

 

 タマ達は突然立ち止まったチョウカイに呆れながら怪訝な目線を向けたが、当のチョウカイは自分が驚く程に落ち着いた自分に逆に戸惑っていた。

 

「……あ」

 

 そんな時にチョウカイは右手側にあるモノを見つけて、それを見詰めた。

 

「…っ、オーロラ!!」

 

 最初はチョウカイの行為に戸惑ったが、フルタカを初めとして彼女の視線の先に振り向いたら、その先の上空にローマ神話の暁の女神(Aurora)の名を与えられた自然現象が起きていた。

 本来ならガミラス占領星の証として赤一色の大地が広がる通り、冥王星は敵地であり何時戦場になるのか分からない以上は気を抜くのは厳禁なのだが、微風に(ナビ)くかの様に揺らめく虹色のカーテンは彼女達を惹き付ける魅力があった。

 

「オーロラか…」

 

「シベリアの夜空を思い出しちゃう…」

 

 ロシアでは遊星爆弾で壊滅後もオーロラが見れるらしく、ヴェールヌイとレシーテリヌイが、艦娘であり軍人である前に年頃の少女である事から故郷ロシアを思い起こし、レシーテリヌイに至っては軽めのホームシックになっていた。

 

「何時の日か、地球でも安全に見れる様にしたいな」

 

「その為にも、先ずはガミラスの基地を見つけないと!」

 

 カコはオーロラからエンケラドゥスやそこに残ったアカギ達と共に旅立った理由を思い出して、ハツヅキと共に決意を新たにした。

 

「さあ、行くとするニャ!!」

 

「…チョウカイ?………?」

 

 タマの呼び掛けでガミラス基地探索を再開しとうと次々に移動し始め、フルタカがオーロラを見続けるチョウカイに声を掛けて、そのチョウカイが何かを気に留めながらも彼女に振り向いた直後、左後方から爆音が聞こえた。

 フルタカ達が爆音が響く先に振り向くと、その先の地平線の彼方がうっすらとした赤い光が存在していた。

 

「彼処はハルナ達がいる方角だね」

 

「そうか、ハルナ達は勝ったんだ」

 

 ヴェールヌイとフルタカが方角からハルナ達が集積地棲姫を撃破した事を察して他4人と共に微笑んだ。

 だが振り向くのが遅れたチョウカイは集積地棲姫とミサイル基地の爆発炎上に合わせてテレビ画面の砂嵐の様にオーロラが一瞬乱れたのを見てギョッとした。

 しかもオーロラは乱れが戻った後、色彩が僅かに薄くなった。

 

「…あり得ない………あのオーロラはあり得ない!!!」

 

 チョウカイはオーロラの不可解さからオーロラの発生構造(と言っても発生のメカニズムは未だに完全解明されていないが…)を頭の中から必死に取り出した事で、今まで感じていた違和感を完全解明して思わず叫び、そんなチョウカイにカコ達が一斉に振り向いた。

 

「チョウカイ、何があったんだよ?」

 

「オーロラは磁場の乱れで発生し、その磁場は惑星の公転で発生するのです。

ですが、火星と同じ様に公転しない冥王星には磁場が発生しえないのだから、オーロラが発生しえないんです!!!」

 

「っ、本当ニャ!!!

磁場が無いニャ!!!」

 

 チョウカイの指摘でカコが“えっ!?”としながら硬直したが、タマは直ぐに我に返るとコンパスを取り出して確認したら、コンパスの磁針は垂れたままで動いていない事からチョウカイの言う通りに磁場が無い事が証明された。

 

「じゃあ、あのオーロラはいったい何!!?」

 

 レシーテリヌイがオーロラを指差して叫ぶも誰も返さなかったが、レシーテリヌイ本人も含めてオーロラの発生理由を全員が察した。

 そしてチョウカイは直ぐに地図を広げて他共々覗きこんだ。

 

「…地図が正しければ、あの辺りには大型クレーターが有る筈なのに、それが見当たりません。

しかもレーダーも反応しません」

 

「予想される大きさなら、基地を作るには最適な場所になる」

 

「そして何より、ユウバリが言った反射衛星砲を設置する好条件が整ってます」

 

 チョウカイとヴェールヌイにフルタカは今まで見落としていたオーロラの下の地域に不自然な箇所があるのを見つけ、若干の自己嫌悪を感じつつ、他の4人と共に改めてオーロラに振り向いた。

 後はやるべき事はたった1つだが、躊躇いから少しの間硬直した。

 

「行きましょう!!

私に続いて下さい!」

 

 チョウカイの号令に6人全員が一斉「了解!」と答えると、そのチョウカイを先頭にしての単縦陣でオーロラへの下に向かって突進した。

 

「…クレーター発見!!!」

 

 霧らしきモノで白く霞むオーロラの下を進んだ先で、チョウカイがクレーターの岩壁を確認、通るに適してそうな谷間も見つけた。

 チョウカイは先にあるだろう物を確信すると、後続するカコ達6人に振り向いた。

 

「此れより突入、警戒を厳に!!!」

 

 チョウカイの指示にカコ達6人は強張った笑みで次々に頷いたのを確認すると、チョウカイは谷間に向かって加速しカコ達もそれに続いた。

 谷間突入直前に、チョウカイは右下辺りで光る何かを見つけて思わず振り向いたが、突入と同時に身体全体で静電気に近いモノを感じて気にはなったが、前方に神経を集中した。

 チョウカイ達は各々の形で呻きながらも停止や減速を一切せずに進撃を続け………静電気っぽいのが弱まりだすと、正面に出口と思われる光が見えると、耳の中に釘を刺したかの様な激痛を感じさせる強烈なノイズが鳴り出した。

 

「ああぁー!!!、此の先だあぁぁー!!!」

 

 後続のカコ達もそうだったが、チョウカイは両耳を押さえての悲鳴に近いのを上げながら、遂に谷間を抜けた。

 “長いトンネルを抜けると雪国であった(川端康成著『雪国』より)”の要領で、長い谷間を抜けた先の眼下には、窪地を平地に成らしたコンクリートの大地に司令塔か管制塔と思われる土筆(ツクシ)型の塔を中心に“滑走路複数本、その全ての上に航空部隊が発進準備中”“外灯と思われるロッド型の建築物(実はステルスフィールド展開装置)”“VLS式のミサイル発射台多数、幾つかは蓋を開いて白煙が薄く出ている”“識別不明の建物群と共に広範囲に多数配置された砲台小鬼(休眠中)”“貯水池と思われる人工湖”等が大量に立てれた広大な基地施設が広がっていた。

 

「…見つけた、遂に見つけた!!!」

 

「間違いなく此所はガミラスの基地だニャ!!!」

 

 チョウカイが歓喜の雄叫びを上げていて、タマが言わずともガミラスの基地であるのは確かであった。

 

「ちょっと、こんなに大きいのをだったの!?」

 

「よくもまぁ隠せたモノだったな…」

 

 まぁ予想を越える規模だった為にレシーテリヌイが驚き、ハツヅキが逆に呆れていたが彼女の言葉が過去形であるのは興味深かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・基地司令塔 ―――

 

 

「Was ist diesmal passiert!!?」

(訳:今度は何が起きたの!!?)

 

「Es ist schwer!!!

Ueber der Basis befindet sich ein Kreuzfahrt-Torpedo-Geschwader auf der Erde!」

(訳:大変です!!!

基地上空に地球の巡洋水雷戦隊がいます!)

 

 突然鳴り出した警報に部下達共々驚いた冥王棲鬼は、直ぐに理由を調べさせ、数十秒後に部下の1人が叫びながらの報告に部下達と共に「(何ですって)」と揃って叫んだ。

 

「Was meinst du!?

Funktioniert Stealth Field!?」

(訳:どう言う事!?

ステルスフィールドはちゃんと作動しているの!?)

 

「Es gibt keinen Fehler oder Leistungsreduzierung!」

(訳:故障や出力低下は有りません!)

 

「Das feindche Kreuzfahrt-Torpedo-Geschwader!!!」

(訳:敵巡洋水雷戦隊が各々に急降下雷撃の兆しが有ります!!!)

 

「Starten Sie sofort FESTUNG LMP!!!」

(訳:直ぐ砲台小鬼を起こしなさい!!!)

 

 実はガミラス前線基地はステルスフィールドを展開する事で完全に外部からの秘匿に成功していたが、そのステルスフィールドがレーダー類全てを阻害して無きに等しい状態にしてします致命的な反作用をもたらしていた。

 そして今回その為に侵入者達(つまりチョウカイ達)の発見だけでなく、その対応にも致命的な遅れを生じてしまったのだ。

 

「Das feindiche Kreuzfahrt-Torpedo-Geschwader teilt sich in zwei Teile und stuerzt ab!!!

Das Ziel ein Raketenwerfer und ein Flugplatz!!!」

(訳:敵巡洋水雷戦隊が2手に分離して急降下!!!

狙いはミサイル発射台と飛行場です!!!)

 

「Es ist schlecht!!!

Fuer diejenigen,aber fuer YAMATO angriff,!!?」

(訳:不味い!!!

それ等にはヤマト攻撃用のが、!!?)

 

 冥王棲鬼がパニクって指示が出せなかった直後、先ずはタマが放った空間魚雷2本が発射口に侵入してミサイルに接触、そのままミサイルを巻き込んでの大爆発を起こし、更にレシーテリヌイとヴェールヌイの放った空間魚雷群も同じにしてミサイルごと起爆を起こした事あって次々と誘爆を起こして大地震と思わせる震動を起こした。

 更にチョウカイ達4人は飛行場の航空部隊目掛けて雷撃をして爆発からの誘爆を誘発、更に戦闘機の機銃掃射さながらに低空飛行での砲撃で無事な物への攻撃を繰り返した為、ミッドウェー沖海戦の赤城達3空母を連想させる光景が出来上がった。

 結果的に連載爆発が2ヶ所で起きたが、ガミラスは奇跡的に隔離に成功したので基地そのモノへの影響は飛行場とミサイル発射台の壊滅のみでの最低限に抑え込んだが、此の影響でステルスフィールド展開装置群が放電を起こした直後に次々に爆発し、ガミラス前線基地が白日の元に晒される事になった。




 感想か御意見、或いは両方でもいいので宜しくお願いします。

 今回での鳥海が冥王星基地発見に至った要因は、漫画版2199のを参考にしています。
 そして何故に高雄の幻声が聞こえたのかは、冥王星基地陥落後に書きます。


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第83話 欲望と悪手の果て

――― ????? ―――

 

 

「…いったい何が?」

 

 第一次木星沖海戦の裏で船団護衛艦隊の1人として戦って他共々捕虜になったノルウェー海軍の巡洋艦ゴトラントは、艤装没収の身での持ち運び式の檻の中で数秒間の照明が消えた天井を見上げていて、更に地震に近い揺れで天井の柵付き換気口から埃が落ちるのを確認した。

 

「うぎあゃぁぁー!!!!」

 

 だが正面から絶叫が響いたのでそちらに振り向いたら、金属ベッド上で大の字の仰向けで固定されたアメリカの戦艦コロラド目掛けて大型カッターが高速回転をしながらゆっくり下ろされていた。

 

「コニー(コロラドの渾名)姐さん、FIGHT!!」

 

「コロラド、頑張るんだ!!」

 

 ゴトラントと同じ様に檻に入っているアメリカ戦艦サウスダコタとロシア駆逐艦タシュケントは柵を掴みながら前によってコロラドを励ましていた。

 

「此れに何をどうやって頑張ればいいのよ!!?」

 

「確かにそうだけど…」

 

 だが、コロラドが叫んでの指摘通り、出来そうな事があるとは思えないので、アメリカ巡洋艦アトランタが思わず頷いた。

 

「Schneiden und hacken und mahlen♪

Schneiden und hacken und mahlen♪…」

(訳:切って刻んで磨り潰す♪

切って刻んで磨り潰す♪…)

 

 その為だろうか、研究解明班の主任と思われる雷巡チ級(個体差なのか、妙に背が低い)が歌いながら踊っていた。

 

「Was ist es zu einer solchen!?」

(訳:何なの、こんな時に!?)

 

 そんな時に呼び鈴が鳴り響いた為、雷巡チ級の1人が壁のモニター画面に駆け寄って対応しだした。

 

「Danke fuer deine harte Arbeit!!

Ich brachte ein Geschenk von meinem Vorgesetzten mit,der zu unserer Basis kam,um zu spielen!」

(訳:お務めご苦労様です!!

当基地に遊びに来た優しいぃ~…上官からの差し入れを御持ちしました!)

 

「Sie muessen es jetzt nicht mitbringen!」

(訳:別に今持ってこなくてもいいでしょうに!)

 

 主任以外の雷巡チ級が文句を言ってはいたが、その割には差し入れを受け取ろうと次々に入り口に詰め寄り出していた。

 処が入り口の扉を明けると、その先で雷巡チ級が1人只突っ立ていただけ、しかも妙な違和感を感じて揃って怪訝な顔で凝視した。

 

「ウラカゼ!!」

 

「おどりゃあぁぁー!!!」

 

 実は此の雷巡チ級は既に死んでいて、背後に潜んだヒヨウが巧く立たせていたが、彼女の指示でウラカゼが背中を蹴飛ばして突き飛ばした。

 自分達の所に吹っ飛んできた雷巡チ級(死体)に驚き戸惑っている隙を突いて、ヒヨウとウラカゼはビームマシンガンで、更に左右各々で潜んでいたスズツキ、ネノヒ、モチヅキ、マツカゼの4人はコスモガンを各々に連射、目に入る雷巡チ級達を次々に射殺した。

 だが奥にいて無事だった雷巡チ級は直ぐに銃火器を取ろう動き、一部はヒヨウ達の事を他に報せようとしたが…

 

「今!!!」

 

「しゃあ!!!」

 

…換気口の柵を叩き落として飛び降りたムラクモとナガナミのビーム拳銃で阻止、一瞬の間にヒヨウ達8人によって殲滅された。

 

「艤装があったからまさかと思ってたけど、アンタ達も捕まってたのね」

 

「同誌ムラクモ、何故此所に!?」

 

「ちょっとヘマして捕まってたけど、ついさっき脱走して報復の悪戯を色々としようとしていたのよ!」

 

「…何なの、それ?」

 

 タシュケント達が驚いているのを他所に、マツカゼとムラクモはコスモガンで檻の鍵を射抜いて彼女達を解放した。

 因みにムラクモとタシュケントが親しげにしていたのは、2人が秘書艦経験多数の駆逐艦娘と言うだけでなく、ムラクモと親しいヴェールヌイを通して知り合った為であった。

 

「どうでもいいから、早く此れを止めてえぇぇー!!!」

 

「はいはい、分かってます」

 

 まだカッターが動いている上、1番先に助けるべきなのに1番遅いのだったコロラドが怒鳴って抗議したが、直ぐ(?)にスズツキが操作盤を長10cm砲ちゃん(x2)をハッキングして接触直前の所で止めた。

 

「……酷い事をするのね…」

 

 スズツキに協力したモチヅキがガミラスの悪行に唖然としながら、カッターを退かしてコロラドの拘束具を次々に外した。

 

「あ"あ"あ"ぁ"ー!!!

()ぬ"がど(オ"モ")っだあ"ぁ"ー!!!」

 

「よしよし…」

 

 コロラドは解放されて直ぐにタマタマ近くに来ていたサウスダコタに抱き付いて泣き出し、サウスダコタは若干戸惑いながらもそんなコロラドを後頭部を撫でながら慰めた。

 

「さて、私達は別ん所に行くけど、皆はどうする?」

 

 ヒヨウの質問にタシュケント達4人は当然ながら同行を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 冥王星・前線基地 ―――

 

 

「Viele Explosinen und Braende ereigneten sich in den Raketenwerfern!!!」

(訳:ミサイル発射台多数に誘爆火災多数発生!!!)

 

「Loesche das Feuer schnell!!!

Die Basis wird schnell!!!」

(訳:早く火を消せ!!!

基地が吹っ飛ぶぞ!!!)

 

「Die Aviation Unit ist ausgeloescht!!!

Flugplatz,alles unbrauchbar!!!」

(訳:航空部隊全滅!!!

飛行場、全て使用不能!!!)

 

「Entfrnen Sie das Wrack!!!

Sie koennen so etwas nicht reparieren!!!」

(訳:早くどかせ!!!

あんなんじゃ、修理も何も出来ないわよ!!!)

 

「Mach kein Geraeusch!!!

Sie koennen diese Basis mit dieser Flotte nicht fallen lassen!!!」

(訳:騒ぐな!!!

あれぐらいの艦隊で此の基地は落ちないわよ!!!)

 

 チョウカイ達7人の攻撃でミサイル発射台区画と飛行場全てが壊滅しての炎上で大規模なパニックが起きていたが、そんな部下達に冥王棲鬼は怒鳴って無理矢理静めた。

 実際に冥王棲鬼の言う通り、此の後から砲台小鬼群が次々に起動してチョウカイ達への砲撃を開始、被弾していないものの上空での回避運動に追われるチョウカイ達は基地攻撃の機会を失って、少しづつ基地郊外へと逃れようとしていた。

 

「Was ist mit YAMATO passiert!!?」

(訳:それよりヤマトはどうなったの!!?)

 

「Die U-Boot-Flotte wurde zerstoert wird aber baid wieder auftauchen!」

(訳:潜水艦隊が壊滅しましたが、間も無く再浮上します!)

 

「REFLEKTIERTER SATELLIT,Feuer auf YAMATO,sobald es fertig ist!」

(訳:反射衛星砲、準備出来しだいヤマトへ向けて発射する!)

 

「Was ist mit dem Kreuzfahrt-Torpedo-Geschwader ueber der Basis!!?」

(訳:基地上空の巡洋水雷戦隊はどうするのですか!!?)

 

「Wenn Sie YAMATO versenken,koennen Sie sie alle sofort vernichten!!!」

(訳:あんな奴等、ヤマトさえ沈めれば他共々一瞬で殲滅出来るわよ!!!)

 

 部下達がギョッとしていたが、冥王棲鬼はチョウカイ達の攻撃に加えてもう少しでヤマトが沈むとの予想から軽く錯乱していた。

 

「YAMATO tauchte auf!!!」

(訳:ヤマト浮上!!!)

 

「REFLEKTIERTER SATELLIT ist!!?」

(訳:反射衛星砲は!!?)

 

「Sie koennen in 3 Minuten schieβen!」

(訳:あと3分で撃てます!)

 

「Erteilen Sie einen Evakuierungsbefbhl an die angreifende Flotte!」

(訳:攻撃艦隊に退避令を出します!)

 

「TU es nicht!!!

Die angreifende Flotte schieβt weiter auf YAMATO,wae hrend sie die Belagerung eiesetzt!!!

Beweg ihn niemals!!!」

(訳:するな!!!

攻撃艦隊は包囲陣を展開したままヤマトへ砲撃!!!

アイツを絶対動かすな!!!)

 

「Wenn Sie das tun,wird angreifende Flotte REFLEKTIERTER SATELLIT sien…」

(訳:そんな事をしたら攻撃艦隊が反射衛星砲で…)

 

 冥王棲鬼が攻撃艦隊諸共ヤマトを消し去ろうとするのを部下の1人が止めようとしたが、冥王棲鬼はその部下を射殺して怯えた他の者達を威圧した。

 

「Mach es ohne herumzupielen!!!」

(訳:グダグダ言わずにやりなさい!!!)

 

 此の冥王棲鬼の行為は逆効果をもたらして部下達は硬直してしまい、反射衛星砲の発射準備が整ってもまだだった為、冥王棲鬼は部下達を押し退けて自分自身で反射衛星砲の引き金を引いた。

 

「Waschbecken,YAMATO!!!」

(沈め、ヤマトォォォー!!!)

 

 放たれた反射衛星砲の光線は貯水池表面の氷を溶かしながら天井へと伸びていき、その先の衛星軌道上の反射要塞によって曲げられたが、此の一部始終をチョウカイとカコに見られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・氷海 ―――

 

 

 此の時のヤマトは浮上を余儀なくされ、海面に出て直ぐに艤装内部への酸素の充填をしようとしたが、それ以外のも含めて阻止しようとするガミラス水雷戦隊の包囲下からの十字砲火を浴び続けていた。

 それでもヤマトは自棄糞か悪足掻きである事を自覚していたものの、主砲で応戦して駆逐艦の何隻かを沈めていた。

 

「Sie nicht veraergert!!」

(訳:狼狽えるな!!)

 

「Er kann sich bewegen,weil er in seinen Haender,ist!!!」

(訳:奴は手負いで動けないぞ!!!)

 

 だが対するガミラス水雷戦隊群(厳密に言えば、総指揮を取っている軽巡ツ級3隻)はヤマトが簡単には飛び立てない事を見抜いていて、随伴艦艇に的確な指示を出し続けていた。

 しかもヤマトが滑空出来ない様に破氷を必要最小限にしていた為、ヤマトが隙を見出せない事から歯軋りをしていた。

 

「……ビスマルクもこんな感じで戦ったのね…」

 

 ヤマトは悔しさや閉塞感を感じながら、自分の置かれた状態が行動不能状態で深海棲艦の大艦隊の包囲下で戦没した(先代)ビスマルクの最後に似ていた為に口元に笑みを浮かべた。

 

「…Was!?

Wurde REFLEKTIERTER SATELLIT geschossen!!?」

(訳:…え!?

反射衛星砲が射たれた!!?)

 

「Es wurde kein Evakuierungsbefehl erteilt!!」

(訳:退避令を出されてないのよ!!)

 

「Das kind,wir haben uns weggeworfen!!!」

(訳:あの餓鬼、私達を捨て艦にしたんだ!!!)

 

 突然ガミラス水雷戦隊が見て分かる程にざわついての混乱が生じたのを見て、ヤマトは味方を犠牲にして反射衛星砲が放たれ事を察した。

 逃げ出す者がそれなりに出ていた事から包囲網脱出を狙う好機が狙えるかもしれなかったが、ガミラス水雷戦隊の多くが半ば自棄糞で牽制しつつの砲撃を続投した為、それが完全に失われたと判断した。

 だがそれ以前に波動エンジンが全く起動出来ない上に補助エンジン2基までが出力が徐々に低下していて、その表れとして自分の腰下が水没していては氷海からの離脱が出来なかった。

 

「……糞…」

 

 そしてヤマトは時間的に反射衛星砲が来ると予想した歯軋りしながら目線を左に逸らした直後、彼女の遥か後方上空の衛星軌道で反射要塞の1人が反射板4枚を展開して反射衛星砲の光線をヤマトへの直撃コースに乗せるに適した角度に調整し終えた。

 

「アカギさん、御免なさい!」

 

 だが最後の反射要塞に反射衛星砲の光線が反射される直前にコスモパンサー1機が特攻して破壊、光線は弾道が変わる事なくそのまま真っ直ぐに飛ん上空を過ぎ去った。

 反射衛星砲が予想外の空振りをした為、ヤマトがガミラス水雷戦隊の全員と共に破壊された反射要塞のあった上空に思わず振り向いた。

 ヤマトだけはそれだけでなく、続けて後方上空から飛んできたロケットアンカー2基がヤマトの左右各々の主砲後部の艤装で、左舷側のはロケットアンカーの爪が巧く引っ掛かり、右舷側のは外れるも瞬時の軌道修正で鎖を絡めた後に爪が引っ掛かった。

 直ぐにヤマトは自分が鎖の軋む音多数と共に自分が浮上した事に驚き戸惑って硬直した。

 だがその間にもロケットアンカー2基の主であるハルナはヤマトを持ち上げながら彼女の上空をムーンサルトの要領で通過して、ヤマトの前方の海上氷原に着地した。

 

「ハルナ…」

 

「ハルナ、全力で牽引します!!!」

 

 ロケットアンカー2基各々の鎖を左右各々の手に持ったハルナは向かい合うヤマトに微笑みながら頷くと、遅れてきたイスズ達4人の雷撃で包囲網の南側が吹き飛ぶのを確認して直ぐに後進してヤマトを海から引き揚げてそのままの牽引状態でヤマトと共に離脱行動に入った。

 

「YAMATO rennt weg!!!」

(訳:ヤマトが逃げる!!!)

 

「Lass es nicht los!!!」

(訳:逃がすな!!!)

 

 ガミラス水雷戦隊は現実の拒絶からハルナのよるヤマトの牽引を茫然と見送っていたが、我に返った軽巡ツ級の1人の叫んでの指摘で次々に追撃しつつのヤマトへの再攻撃をしようとした。

 

「Eine REFLEKTIERTER SATELLIT kommt!!!」

(訳:反射衛星砲が来るぞ!!!)

 

 だが、その直前に代わりの反射要塞が展開されての反射衛星砲の第2射が飛来、退避がままならぬままに着弾して殆どが吹き飛ばされてしまった。

 此の時のハルナはヤマトを牽引して着弾影響範囲から離脱、合流したズイホウ達5人の護衛下に南部山脈の洞窟を目指して南進し続けていた。




 感想か御意見、質問も受け付けますので、宜しくお願いします。

 今回の投稿前に未だに改装工事中の“設定 艦娘”での“未所有故の登場不可”にて、現在の艦これイベントに合わせて“シェフィールド”“ワシントン”“????(判明次第修正)”を追加しました。
 尚、未所有のに投稿時点では“シロッコ”も有りますが、コイツは既に第35話でネタまみれで出していますので特別出演とし、“艦娘は戦没したが艤装は無事だったので次代に継承”との形で艦これ版原作のを後日出します。

 更に“設定 ガミラス”で“雷巡チ級陸戦型”“重巡リ級陸戦型”“戦艦タ級陸戦型”を若干暈しつつ追加掲載、“集積地棲姫”と“飛行場姫”の各々の捕捉で冥王星の個体が破壊されて起きる現状(艦これ原作で言う、ギミック内容)を追加しました。

 幻冬舎の“図鑑 銃だもの”2種は良いぞ!
 書き手には嘗てない程に頼もしい!


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第84話 覚醒、冥王身中の虫

――― 冥王星・前線基地 ―――

 

 

「Ihr seid nach YAMATO geflohen,weil ihr verrueckt seid!!!」

(訳:アンタ達がモタモタしていた所為でヤマトに逃げられたじゃない!!!)

 

 反射衛星砲の第1射が外れ、第2射はガミラス水雷戦隊群を壊滅させる結果になった事に、冥王棲鬼は部下達に責任転嫁しながら怒鳴っていた。

 まぁ確かにモタついた事もあるが、そもそもの最大の原因は冥王棲鬼の失策で集積地棲姫が敗死した為にハルナ達右翼隊がヤマト救出に来た事にあるのだから、部下達は冷たい目線のみで冥王棲鬼に抗議していた。

 

「Was ist die dritte 3 tell ung von REFLEKTIERTER SATELLIT!!?」

(訳:反射衛星砲の第3射は!!?)

 

「In Kuerze…」

(訳:間もなく…)

 

 冥王棲鬼は部下達を軽蔑し、部下達も冥王棲鬼への(元々あんまり無かった)敬愛感が完全消滅した為、完全無欠な不協和音が生じていたが、その数刻後に反射衛星砲第3射の充填が終わろうとした時に、また基地内で大爆発による揺れが起きた。

 しかも今回のは続けて何かの轟音が響いていたので只事でないのが分かったので、冥王棲鬼達は各々の形で驚き戸惑っていた。

 

「Was ist passiert!!?」

(訳:何が起きたの!!?)

 

「Im 8.Energiekraftwerke kam es zu einer Explosion und einem

Ausfall!!!」

(訳:第8エネルギープラントが爆発、落盤が生じました!!!)

 

「Der Schaden ist der schlimmste!!!

Auch die angrenzenden 1. und 7.Energiekraftwerke sind betroffel!」

(訳:被害は最悪です!!!

隣接する第1、第7エネルギープラントにも悪影響が出てます!)

 

 またしてもの被害で報告する部下の1人は泣きそうになっていたが、直ぐに犯人の予想は出来た。

 

「Ist es die Arbeit dieser Kreuzfahrt-Torpedo-Geschwader!!?」

(訳:あの巡洋水雷戦隊の仕業なの!!?)

 

「Falsch!!!

Sie sind am Himmel auf der Seite!」

(訳:違います!!!

奴等は反対側の上空にいます!)

 

「Dem Schadensbericht zufoge scheint die Expiosion von innen stattgefunden zu haben,und es besteht der Verdacht eines Unfalls!」

(訳:被害報告では爆発は内部から生じたらしく、事故の疑いがあります!)

 

「Rufen Sie das 8.Energiekraftwerke an!!!」

(訳:第8エネルギープラントを呼び出しなさい!!!)

 

 予想を外した報告に全員がギョッとしたが、直ぐに冥王棲鬼は震源地となった第8エネルギープラントへの連絡を指示した。

 出来ると冥王棲鬼は直ぐに通信マイクを奪うに近い形で取っていたのだから、彼女の怒り度合いは簡単に見て取れた。

 

「8.Energiekraftwerke,was machst du!!?」

(訳:第8エネルギープラント、お前等は何をやってんの!!?)

 

『Hey,Dies ist der amtierende Garnisonskapitaen♪

Derzeit mache ich eine auffaellige Ausrottung von Kakerlaken!』

(訳:ハァ~イ、此方は守備隊隊長代理♪

現在、ゴキブリ駆除をド派手にやってまぁ~す!!)

 

「Ausrottung von Kakerlaken!!?

Wovon in aller Welt sprichtst du!!?」

(訳:ゴキブリ駆除!!?

いったい何を言ってんのよ!!?)

 

『Uebrigens,wer bist du?』

(訳:処で、お宅は誰ですか?)

 

「KOENIG KOENIG!!!

Sie kennen lhren direkten Vorgesetzten nicht!!?」

(訳:冥王棲鬼よ!!!

直属の上官が分からないの!!?)

 

 冥王棲鬼は内心で通信相手の粛清を確定して怒り狂いかけ、部下達は呆れながらそんな彼女に同情していた。

 

『Ah…warst du wie KOENIG KOENIG…』

(訳:あ~…貴女が冥王棲鬼様でしたか…)

 

 だが当の通信相手は感情深くした後に沈黙し、何故か分からないが、通信相手が笑った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…初めまして、親愛なる冥王棲鬼様。

オドレの地球への落とし前、きっちり払わせて貰うからな!!!』

 

 通信相手は一方的に切ったが、冥王棲鬼は部下達共々暫く顔面蒼白で硬直した。

 冥王棲鬼が思わず通信マイクを落とした後、遅れに遅れて通信相手は敵だと認知した。

 

「…Ist es nicht gerade die Kommuikation innerhalb der Basis?」

(訳:…今のは基地内の通信だったよね?)

 

 冥王棲鬼の質問に部下の1人は半ば茫然とした状態で頷いた。

 

「Warum kam dann der Fe(d heraus?」

(訳:じゃあ、何で敵が出たのよ?)

 

 冥王棲鬼は部下達共々、思考停止状態で硬直してしまい、充填完了による反射衛星砲の自動発射(結果はヤマトを庇ったイスズが被弾して大破)や飛行場姫の敗死の通信報告にも無反応でいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・第8エネルギープラント ―――

 

 

「ようウラカゼ、どうなった?」

 

 冥王棲鬼への通信を終えて両手を壁に着けて臥せったたウラカゼに、ナガナミは笑いながら声を掛けた。

 ウラカゼは少しの間そのまま震えていたが、遅きに期した警報が鳴り出すと高らかに爆笑した。

 

「冥王棲鬼の胆を、キンキンに冷やしてやった!!!」

 

「そうか、やったんだな!!!」

 

 ウラカゼは狙い通りにいった事を確信して、ナガナミと両肩を掴み合って共に爆笑した。

 その間にもほぼ全域で火災が生じている第8エネルギープラントで、ヒヨウ達11人各々による破壊行動が楽しまれながら行われ続けていた。

 

「皆、守備隊隊長代理が命ずっぞ!

さっさと壊せ!!!」

 

 ウラカゼの半ば冗談の指示にヒヨウ達一斉に「おう!!!」と答えた。

 ゴトラント、アトランタ、ムラクモ、スズツキの4人は鉄パイプで片っ端に計器を叩き壊し、コロラド、タシュケント、マツカゼの3人はパイプや伝導管を手当たり次第に引き裂き、サウスダコタとヒヨウは手榴弾を仕掛けるだけ仕掛けてから起爆させ、モチヅキとネノヒは大型コンセントを引き抜くとお互いのを接触させて逆流を起こしていた。

 

「Er war dort!!!」

(訳:いたぞ、彼処だ!!!)

 

「え?、っ!?」

 

 だが暫くした後、第8エネルギープラントの異変を感じてきた第1エネルギープラントの警備隊が上方の連絡路を渡って到着、雷巡チ級陸戦型の1人が無警戒に背を向けていたネノヒを見付けると直ぐに同僚達と共にビームマシンガンでの銃撃を開始、その内の1発がネノヒの頭を横一文字に撃ち抜いた。

 

「ネノヒ、ネノヒィィー!!!

ヒヨウ、早く来て!!!」

 

「……っ、駄目だ…」

 

「何でこんな…」

 

 モチヅキが直ぐに被弾したネノヒを背後から脇下を掴んで後ろの物陰に引き摺ってヒヨウを呼んだが、そのヒヨウがネノヒの首の脈を調べて即死していたのを確認した。

 仲間の死にヒヨウが唸りながら歯軋りをしてモチヅキがネノヒの顔を抱き寄せてる間に、ウラカゼ達が物陰に潜んでコスモガンやガミラスから奪った拳銃やビームマシンガンで反撃を開始していた。

 

「こんな所に何時までもいれない!!」

 

「此のままだと焼き鳥になるわよ!」

 

 だがアトランタとコロラドが叫んだ通り、彼女達がいる近くで自分達が起こした火災と爆発があり、何時自分達に害をもたらすかもしれない不安からの焦りが出ていたが、高所から比較的優勢な警備隊も火の海に飲まれている第8エネルギープラントの惨状に加えて、ヤマト(達)の反撃への警戒もあって此方も焦りがあった。

 

「Verdammt!!!」

(訳:糞ぉ~!!!)

 

「Oh Idiot!!!」

(訳:あ、馬鹿!!!)

 

 此の為に雷巡チ級の1人が同僚の制止を振り切って手榴弾を投げてしまった。

 

「投げるのが、早過ぎるよ!!!」

 

 タシュケントは手榴弾が自分の近くに落ちるのを見抜くと、直ぐに物陰から飛び出して1度跳ねた手榴弾を蹴飛ばして相手側に返した。

 警備隊は弧を描いてのまさかの帰還をした手榴弾を茫然と目で追っていたら、その手榴弾が壁にぶつかった後に連絡路に落ちて直ぐの爆発に悲鳴を上げながら飲み込まれ、無事だった者達も爆発で折れた連絡路から次々に滑って真下の炎へ落下していき、携帯していた手榴弾辺りが引火誘爆を起こしたのか次々に爆発が起きた。

 

「YPAaaa!!! GOAaaL!!!」

(訳:ゴールだ、万歳!!!)

 

 タシュケントは敵の犯した隙を突いての警備隊一掃を成し遂げて、両手を振り上げての歓喜の雄叫びをし、偶々近くに来たムラクモとハイタッチをした。

 他の艦娘達もタシュケントに倣っていたが、アメリカ艦娘3人はお国柄の関係で複雑そうに苦笑し合っていた。

 

「どうします?

此のまま此所にいてもフライかリンチしかありませんよ」

 

「いや、出口は開きそうよ」

 

 アトランタが現状と増援を危惧していたら、何かに気付いたサウスダコタが示した方に振り向いたら、良いタイミングで大扉が開いて、そこから第8エネルギープラントの修理と消火に来た応急処理班が入ろうとしていた。

 

「Hab keine Angst,haeng!!!」

(訳:怯むな、掛かれ!!!)

 

 応急処理班は第8エネルギープラントの火災に驚き戸惑っていたが、班長と思われる重巡リ級の号令に答えると消火活動に入ろうとした。

 だがその直前に炎からコロラドとサウスダコタを先頭にした12人が次々に飛び出してきて、驚きで硬直する応急処理班を次々に突き飛ばして通路の奥へ逃げていった。

 

「Ein Eindringling!!!

Chase,Chase Chase!!!」

(訳:侵入者達だ!!!

追え、追え追え!!!)

 

「Loesch das Feuer!!」

(訳:お前は早く火を消してろ!!)

 

 班長の重巡リ級は配下の雷巡チ級陸戦型達に埋もれながら追撃を命じたが、此の直後に遅れに遅れて到着した討伐部隊の隊長の重巡リ級陸戦型に止められた。




 感想、または御意見、良ければ両方でも良いのでお願いします。

 自画自賛になるかもしれないけど、今回のガミラス側の最終部分は、ガミラスの言語をドイツ語に変換しているからこそ、面白く出来るのよねぇ~…


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第85話 最終局面へ

――― 冥王星・洞窟 ―――

 

 

 集積地棲姫をミサイル基地諸共に撃破し、ヤマトの救出したハルナ達右翼隊は、艦隊の再編が行われた山脈の洞窟に退避して、そこでの休息とユウバリによる診断からの応急処理が順に行われていた。

 

「ハルナ、無事だった!?」

 

「はい、ハルナ達は一応無事です!」

 

 ユウバリが最後になったヤマトの応急修理を行っていた時に、左翼隊のアオバ、テンリュウ、ハマカゼ、アマツカゼの4人も洞窟に退避として戻ってきた。

 

「ユウバリ、手伝うわ」

 

「ちょうど良かったアマツカゼ!

伝導管の幾つかが熱損しているから、迂回やバイパスを手伝って!!」

 

 早速、アマツカゼはユウバリがやっているのが波動エンジン関連だと分かって直ぐに彼女の手伝いを始めた。

 

「イセさん達はどうしたのですか?」

 

「あの2人は足が遅いから、軽症なのもあってショウカクと共に応急処置をしながらチョウカイ達への合流も兼ねてガミラス基地を目指しているよ」

 

「3人だけで行ったのですか!?」

 

「いえ、救援に来てくれたカコ達5人と一緒にです」

 

「本当、チョウカイがカコ達5人を救援に送ってくれたから助かったぞ」

 

 アオバとテンリュウはズイホウに返しながら、チョウカイがカコ、タマ、ハツヅキ、レシーテリヌイ、ヴェールヌイの5人を送ってくれたお陰で飛行場姫を撃破出来た事を思い出して笑い合っていた。

 

「……イスズ…」

 

 此の間にハマカゼは、ハツシモに抱えながらの膝枕で仰向けに寝ているイスズを見付けた。

 

「……今度は、確り守ったわよ…」

 

「イスズさん、あまり喋らないで」

 

 イスズはヤマトを庇っての反射衛星砲の被弾での腹部の大火傷をハツシモと共に濡れタオルで押さえられていたが、罪悪感を感じているハマカゼに気だるそうに笑って返した。

 

「それとチョウカイとフルタカが反射衛星砲の所在地を見付けたんだが、面倒な事に(ブツ)は基地南東部の貯水池の底にある。

そしてその貯水池は結構水深があるそうだ」

 

「…貯水池の底………では衝撃砲は使えませんね」

 

「ですから、魚雷か航空爆弾に砲弾が1番なのですが、チョウカイさん達の話ですと砲台小鬼が多過ぎて航空機や魚雷は迎撃される可能性が高い、巡洋艦級の主砲弾では効きそうにないそうです」

 

 更にテンリュウから反射衛星砲の所在地が伝えられたが、その攻略法の困難さからハルナとズイホウにアオバと共に唸り声を上げた。

 

「反射衛星砲って何?」

 

「…あ~そっか、ヤマトには反射衛星砲の事が伝わってなかったのね」

 

 キョトンとしたヤマトに首を傾げはしたが、アマツカゼは直ぐに反射衛星砲の情報が不伝達であったのを察して、ユウバリと共にヤマトへ反射衛星砲を説明を始めた。

 

「…波動エンジン、何処まで直せる?」

 

「私の思い通りにバイパスとかが上手く繋がれば、再起動自体は早めに出来る筈。

だけど第三艦橋が無いから波動防壁は直しようがないし、波動砲も時間が掛かる…」

 

「波動砲と波動防壁はいらないから、直ぐ再起動して全力航行が出来るようにして!!」

 

 ヤマトはそこから反射衛星砲の原理を理解すると、アマツカゼへ応急処置の優先度合いを指示しだした。

 

「…波動砲?」

 

 ユウバリは“波動砲”の単語に首を傾げていたが、2人共無視していた。

 

「ガミラス基地のステルスフィールドが失われている以上、狙うなら今が好機なのです。

ガミラスが基地機能を回復させたら、一貫の終わりです」

 

「確かに狙うなら今しかないな。

冥王星の全艦隊が基地に帰投するか、此の星から離脱しているしな」

 

「いや、今でしょ!!!

チョウカイさん達がガミラス基地の飛行場を全部壊してくれた上、ヌ級とヲ級がいない以上は冥王星の制空権を奪えます!」

 

 此の間中の話し合いでハルナ、テンリュウ、ズイホウの3人は好ましい点が多数ある事からガミラス基地攻略には絶好の好機だと判断した。

 

「ですけど、皆傷つくだけでなく、疲労が溜まっているじゃないですか。

逆に返り討ちにされる危険性があります」

 

 だがアオバの指摘通り、ハルナ達は各々の艤装が応急修理が行われたものの中破か大破しているだけでなく、自分自身もまた傷つき疲労の濃さを自覚………現にハルナ達は各々の形で疲労の極みからの眠気を抑えようとしていて、アサシモのみは堪えきれずに横になって寝ていたので、アオバへの反論が出来ずに唸っていた。

 

「…それに、反射衛星砲も健在です。

アレをなんとかしないと、ガミラス基地を射程圏内に入れる前にヤられます」

 

「ズイカクさんとチトセさんを呼んで反射衛星(反射要塞)を一掃するのはどうです?

反射衛星さえ無くなれば、反射衛星砲を無力化できます」

 

「現実的じゃないな。

準惑星の全域に展開しているんだ、一掃するには何年も掛かるぞ」

 

 そしてなにより、ハルナ達は最大の難関である反射衛星砲に対する上策を思い付けない為に唸っていた。

 

「「直ったあぁぁー!!!」」

 

 そんな時にヤマトの応急修理が完了、ヤマトが波動エンジンを再起動させたのを確認して、アマツカゼとユウバリをハイタッチをしながら歓喜の雄叫びを上げた為、アサシモとイスズ以外の全員がそちらに振り向いた。

 

「どうですか?」

 

「…よし、問題は無さそう!」

 

 最後にヤマトが足先を左右順に地面に叩いてからの跳び跳ねをしながらの動作確認を終えて、軽めのストレッチをやって背伸びをしたのを、ハルナは微笑んで見ていた。

 そんなハルナと目線を合わせたヤマトは、他の艦娘達1人1人に順に目線を合わせ、此の場にいる者達の中でまともに戦えるのは自分1人だけだと判断して、少し間を開けてから溜息を大きく吐いて腹を括った。

 

「ハルナ、悪いけどチョウカイとショウカクに連絡して反射衛星砲を一挙一足見逃さずに監視してと伝えて」

 

 ヤマトの指令にハルナは無意識の内に「あ、はい」と答えて指示通りに動いたが、全員がギョッしながらヤマトを見つめた。

 

「おいおい、まさかお前が反射衛星砲を壊しに行くってのか!?」

 

「そう言う事ですよ」

 

「無茶です、ヤマトさん!!!

波動砲がまだ暫く使えない上に波動防壁が張れないんですから、今度被弾したら撃沈しますよ!」

 

「それに、何か手を打たないと反射衛星砲の的になるだけです!」

 

「取り敢えず、波動砲と波動防壁は当面は要らないし、私なりに手は考えてある」

 

 ほぼ1人で打って出ようとするヤマトに対して、テンリュウが呆れながら驚き、ハツシモとズイホウがヤマトを止めようとしたが、当人から制止を聞き入れる気が全く感じられなかった。

 しかもヤマトが手を考えてある事に、逆に驚いていた。

 

「ヤマト、一体何を考えているのですか!?」

 

「反射衛星砲を狙い目にするのよ」

 

「反射衛星砲を!!?」

 

「私、何度も狙われて分かったのよ。

反射衛星砲には欠点………と言うべきか、狙い目とか弱点とも言えるモノが有る事をね!」

 

「弱点!!?

反射衛星砲に弱点が有るのですか!?」

 

「ええ、私の読みと狙いが当たれば、冥王棲鬼の顔を青く出来るわよ」

 

 質問したハルナもそうだったが、反射衛星砲の弱点なる物を信じられず、ヤマトを疑わしく見ていた。

 だがハルナ達10人は傷と疲労で(一時的?)行動不能なのだから、ガミラス基地の早期攻略の頼みはヤマトしかいないのだから、彼女を信じるしか選択肢は無かった。

 尤も此の場にいる者達でハツシモとハルナはヤマトを信じているようであった。

 

「上手くやれるのですか?」

 

「悪いけど、私、成否はあんまり考えてない。

ただ、いいようにやってくれた冥王棲鬼に砲弾を1発ぶちこまないと、気が収まらないのよ!!」

 

 今のヤマトの行動原理が負けん気の強さからの復讐心からであるのが分かって、ハルナ達は思わず笑ってしまった。

 だが、此れがハルナ達に安心感をもたらすと同時にヤマトへの期待感が高まった。

 

「少し待って下さい。

藤堂長官に作戦を伝えますので…」

 

 ハルナが藤堂へ通信をしている中、ヤマトは兎も角として、それ以外の全員が時間的に地球・ガミラス両陣営の状態から7度に及んだ冥王星攻防戦の最終局面に入ったと判断していた。

 それはハルナの通信を受けた防衛司令部もそうであった。

 

「そう言えば、藤堂長官が指令を出してますが、沖田司令はどうしたのでしょうか?」

 

「さあ?

私達の方でも沖田司令が通信に出ないんです」

 

 また同時にハマカゼとハツシモが沖田の所在を気にしていたら、少しの間だけ寝ていたイスズが起きてヤマトの背に振り向いた。

 

「…ヤマト、忘れ物が1つ有るわよ」

 

「忘れ物?」

 

「ハマカゼ、見ての通りイスズは動けないから、イスズの艤装からヤマトのを取り出して」

 

 当初は分からなかった様だったが、ハマカゼはハツシモも「あっ!」と言いながら目線を合わせ、直ぐに笑い合うとハマカゼがイスズの言った通りにして、ヤマト測距儀を取り出すとヤマト達に振り向いてそれを見せた。

 

「あ~…大事なの忘れてた!」

 

「ヤマト、後ろを向いてて下さい。

ハルナが髪をといてから着けてあげます」

 

 完全に測距儀を忘れていたのを自覚したヤマトが後頭部を軽く叩いてから掻いている光景にハルナは苦笑をすると、櫛を取り出してハマカゼと共にヤマトの後ろに回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・前線基地 ―――

 

 

『Das 8.Energiekraftwerke ist nutzlos!

Es gibt viele Opfer aufgrundder Sprengfalle des Eindringlings!』

(訳:第8エネルギープラントは駄目です!

侵入者のブービートラップもあって死傷者多数!)

 

「Loesche das Feuer auf Fall!!!

Die Temperatur des 7.Energiekraftwerke steigt und das 1.Energiekraftwerke brennt!」

(訳:火は絶対消せ!!!

第7エネルギープラントの温度が異常上昇している上に第1エネルギープラントに火が回っているんだぞ!)

 

『Dann komm um zu helfen!!!

Er und andere,der Feuerloescher und alle Trennwaende wurden zerstoert!』

(訳:だったら手伝いに来い!!!

アイツ等、消化装置処か、隔壁も全て壊したんだぞ!)

 

 此の時のガミラス基地はと言うと、基地全域で警報が鳴り響く中で破壊された箇所の消火と修理が行われているも、時折爆発が起きていた。

 

「Wo sind sie!?」

(訳:奴等は何所だ!?)

 

「Sie gingen zur Gabelung voraus!」

(訳:此の先の分岐路に行きました!)

 

 当然ながら破壊工作を行った侵入者達(実は脱獄者達なのだが、ガミラスは全く勘づいていない)の捜索からの討伐の為に警備隊と陸戦隊が至る所を走り回り、一部は発見に至って現場に急行していた。

「Zu welcher Passage bist dugeflohen!?」

(訳:どの通路に逃げた!?)

 

「Da drueben!!!」

(訳:あっちです!!!)

 

 発見通報の有った分岐路に辿り着いた1隊が各々に中央で全通路を睨んでいると右前方のから悲鳴や雄叫びが交じった銃声が多数聞こえた、直ぐ途切れてしまったがそちらを示した。

 当然直ぐに突入しようとしたが、1隊に気付いたコロラドとサウスダコタがビームマシンガンの連射で牽制してきた。

 

「…不味い所で掴まったわね」

 

「直ぐにでも増援が殺到しかねない…」

 

 コロラドとサウスダコタが足止めをしている間に、ヒヨウとアトランタが他共々に交戦していた1隊を殲滅していたが、場所的に来かねない大量増援を危惧した。

 

「あ!!

良い物が有った!」

 

 だがそんな時にゴドラントが倒した雷巡チ級陸戦型(擲弾版)の艤装から先端が覗いている物を見つけて、それを拾い上げた。

 

「分岐路にスプリンクラーは付いてました!?」

 

「スプリンクラー?

多分有ったぞ」

 

「なんとか起動させれませんか?」

 

「…やってみよう。

ディック(サウスダコタの渾名)、援護を頼む!」

 

 当初はゴドラントの狙いが分からなかったサウスダコタとコロラドだったが、彼女の手に持っている物を見て何となく察すると、コロラドはサウスダコタ援護下で通路入り口手前まで来ると、天井直上部のスプリンクラーを撃ち抜く事で強制的に起動させた。

 連鎖的に作動したスプリンクラー群からの水に1隊は驚き戸惑ってはいたが、此れだけだったら唯の嫌がらせにすぎなかった。

 だが直ぐに、ゴドラントが雷巡チ級陸戦型(擲弾版)から奪った、今や地球で嘗てのドイツの無反動砲パンツァーファウスト(Panzerfaust)(和訳名は“戦車への拳”、別名ファウストパトローネ(Faustpatrone)“拳の弾薬”とも)、そのガミラスの改良発展品を天井目掛けて発射、彼女の狙い通りに砕けた天井部分が落下して1隊を襲うだげなく、千切れた大型電線も繋がった照明諸共に落下して床一面の水に接触して致死量以上の高圧電流が1隊に襲い掛かった。

 

「……良いなぁ~…」

 

 思わずはしゃいだゴドラントにタシュケントが羨ましいに見詰めていたが、此れは深海棲艦戦時にパンツァーファウストがスウェーデンと旧ソ連に輸出され、両国に類似兵器が無かった事から長年に渡って重宝されたからだった。

 因みに、パンツァーファウストは改良型が日本(現地名“100mm個人携帯対戦車弾”)以下に輸出されるだけでなく、旧ソ連にて傑作・対戦車擲弾発射器RPG-2(正式名は『“p”учнoй “п”poтивoтaнквый “г”рaнaтoмёт』、バクロニムでの英訳は『Rocket-Propelled Grenade』)とその系統兵器の誕生に至った。

 

「っ! また来た!!」

 

「でも此れで時間は稼げる」

 

「先へ逃げましょう!」

 

 別の通路からまた別の1隊が銃撃しながら走ってきた事に気付いたサウスダコタが叫んで報せ、彼女がコロラドと共にゴドラントに頷くと直ぐにヒヨウ達8人と共に奥の方へと走っていった。

 

「Sie sind weggelaufen!」

(訳:逃げたぞ!)

 

「Chase Chase!!!」

(訳:追え追え!!!)

 

「Nein,das ist nicht gut!!!」

(訳:いや、此の先は駄目だ!!!)

 

 1部は当然ながら逃げた艦娘達を追おうとしたが、味方の1隊が分岐路の中央部で感電してのたうち回っている惨状から先頭の雷巡チ級が同僚達を止めた。

 

「Nein,ich kann den Strom nicht abschalten…」

(訳:駄目だ、電力を遮断出来ない…)

 

「Wir koennen hier nicht durchgehen」

(訳:此所は通れません)

 

「Umgehen Sie anders Menschen durch Kommunikation!

Bringen Sie auch einen Anker mit einem Draht!!」

(訳:通信で他の連中を迂回させろ!

それと、ワイヤー付きアンカーを持って来い!!)

 

 現状判断で通行不可である事が伝えられて隊長格の重巡リ級が歯軋りをした後に他の部隊に伝達させながら、自分達の綱渡りと感電中の味方救出の為の道具を取りに行かせた。

 

「…Auch wenn der All-out-Angriff der Erdfotte beginnen koennte!」

(訳:…地球艦隊の総攻撃が始まるかもしれないと言うのに!)

 




 感想や御意見等を御待ちしています。

 今回のに合わせて“設定値 ガミラス”での雷巡チ級陸戦型(擲弾版)の装備をバズーカ擬きからパンツァーファウストに変更しました。
 個人的にはパンツァーファウストって“戦場のヴァルキュリアシリーズ”や“ワイルド7”を思い浮かべるんだよねぇ~…

 後、“設定 艦娘”からも未所有故に登場人物不可ならワシントンを削除しました。


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