俺はベル・クラネルを全力で応援する (ぽけてぃ)
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#1 寝落ちしたら転生した



思い付きと勢いによるものです。
読者の皆さんが楽しめるように書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします


 

「────ん?」

 

「────ちゃん?」

 

誰だ?

 

「────兄ちゃん?」

 

誰か呼んでる?

 

「お兄ちゃん?」

 

「………………えっ?」

 

ぼやけた意識がすっきりしていく。鈍った五感が徐々に戻ってくるのを感じる途中で聞こえた声は何処か聞き覚えがあった

 

あれ?俺は何をしていたんだっけ?

確か、新刊のラノベを読んでいて…………そう、そのまま寝落ちしたんだった。

 

少し頭を働かせて記憶を(さかのぼ)る。すると出てくるのは買ったばかりのラノベの内容ばかり。どうやら読んでる途中で寝てしまったらしい。面白い内容だったのでついつい夜更かししてしまったのは自分のミスだと嘆く

 

ん?でも俺今立ってるよな?しかも何か重たいし、何これ?鎧でも着てんの?

 

体に鎖を巻かれたかの如く重さが足に伝わる。しかも寝落ちした状態の自分が机に突っ伏している状態ではなく何故か立っているという奇妙な出来事。夢遊病か何かの類いという考えもあるが、今までに起きた事もないので考えにくい。色々と分からない事が多かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟だろうか?目も馴れてきて薄らぼんやり見つめる先には剥き出しになる土の壁、土の天上、言わずもがな土の地面

明かりは無く、ぼんやりとした暗さ。

洞窟の奥が暗くて見えないので長さがとてつもなく長いのが伺える

 

 

何処かに連行されたかと思考に走ったが、体が縛られておらず、思いの外自由に動かせるのをみるとどうやら違うようだ

 

では何で体が縛られたみたいに重たいのか?と視線を体に向けるとそこにはまるで騎士のような装甲を施し、腕には籠手(こて)まで着けた自分の姿がある

 

「え゛?」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「は、はい!?」

 

混乱の最中、隣からいきなり声が響いたので横を向く。すると目の前に広がるのは鮮やかな金色

 

何故洞窟に金色が?と更に頭がこんがらがる。そして金色が髪だと気付くのに数秒有して、

 

「お兄ちゃんどうかしたの?早く安全階層(セーフティーポイント)に向かおう?」

 

自分の顔を覗き込む顔と目が合う

 

「………………えぇ!!?」

 

それこそ整った顔立ち、瞳は清んでいてその人の純粋さを物語っていた。顔は少し童顔で、未だに幼さとあどけなさが残っている。絶世の美女、いや、神にも引けを取らない程の神秘的な雰囲気が滲み出て、

 

 

──────ダンまちのアイズ・ヴァレンシュタインその人だった

 

「ア、ア、ア、アイズ・ヴァレンシュタイン!!!?」

 

「…………むぅ」

 

 

 

どうやら異世界、ダンまちの世界に転生したらしい────?

 

 

 

 




最初なので短めに


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#2 安全階層に来てます


1日に2話投稿文!
金輪際しないであろう事をしてみました


 

はい、ということで何がどうなってかダンまちの世界に来ちゃったらしいです。というか詳しくはさっぱり分かりません

 

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうか?────通称ダンまち

 

主人公のベル・クラネルがミノタウロスに襲われてる所をヒロインのアイズ・ヴァレンシュタインに救われる所から始まる冒険譚

ベル・クラネルが英雄になる成長物語だと俺は認識してるけど、実際の所はどうなんだろう?

アニメ知識だし、原作も終わってないらしいからな、アニメ以降が全く予想出来ない始末。つまりは途中から行き当たりばったりの無理ゲーと、そういう事ですね

 

 

 

 

 

 

 

ということで現在は50階層、アイズさんに連れられてダンジョンで数少ない安全階層(セーフティーポイント)に来ていました。勿論ファミリア総動員で

 

開始早々ダンジョンに潜ってる事実。これって最早恐怖だよね?しかも後戻り出来ないレベルの深さ

 

 

ダンまちの世界に来て素直に喜びたい所だけど、どうやらそう簡単にはいかないっぽい。

 

詰まる所、俺も冒険者なわけだし、ここから多分モンスターと戦わないといけないんだろうな。体は何とか動かせるけどまだ少し慣れない感じが酷いし、やっぱり違う体に転生したって事?

 

転生っていうか、何て言うのかな、俺はこういう事(アニメ世界に転生)(別に期待してたわけじゃない)になったら絶対に原作と関わらない選択肢を選ぶつもりだったんだけど。無理矢理原作に新キャラ加えて、後戻り出来ない所でそいつに乗り移ったって言えば適切か、

 

 

 

「アイズさんそろそろ離れてくれませんか?」

 

「…………アイズ」

 

「……はい?」

 

「今までアイズ、だった。どうして“さん”つけるの?」

 

「いや、それは何と言いますか、唐突に皆をさん付けで呼ぶブームが到来したといいますか、」

 

「アイズ、って…呼んで」

 

「………………あ、アイズ…」

 

「うん、お兄ちゃん」

 

なんで選りにも選ってアイズ(ヒロイン)師匠ポジ(兄さんポジ)になっているんだろう

 

あれ?記憶ないよね?俺ってばダンまち世界に産まれてからここまで生きた記憶がこれっぽっちも無いんですけど!?

今までこの体にいた人どこにいったの!?戻ってきて!俺には無理!モンスターと戦うとか死ぬ!ってかヒロインキャラ呼び捨てとかハードル高過ぎ!!

 

「それじゃあア…アイズ。そろそろ腕に抱き着くのをやめてくれるかな?」

 

痛いんですよ。何とは言いませんがその胸に付いている“何か”を包み込む鉄の鎧が!

 

出来れば鎧なしで抱き着いて欲しかったが、それはそれで俺の尊厳が保てないような気がする

 

 

 

 

「うん、分かった」

 

少しは難航するかと思われたアイズ引き剥がし作戦は、アイズの素直さのお陰で、予定より早く事が済んだ

 

「ありがとう。アイズ」

 

そう言ってアイズを見ると、こちらを見ていたのか目が合う。アイズと目を合わせるのは2回目だが、なんだろう。作画通り、いや、作画以上に人形みたいな可愛さだな。改めてダンまちの世界に来たんだと実感するわ

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつまでアイズ見てるつもりよ、ニコ」

 

「そうだ、そうだ。アイズ恥ずかしがってんじゃん!」

 

アイズの頬か少し赤らむように変化するのを見てると、後ろから2つの違う声がかかる

 

振り向くと案の定、褐色の肌をしたアマゾネスの姉妹がいた

 

そのままの意味で小さい方がティオナ・ヒリュテ、大きい方がティオネ・ヒリュテ

 

原作通りなだけあって二人とも物凄く美人なのだが…………うん、実物見ると妹には頑張れとしか言えないな

 

「そうだな。アイズ、ずっと見つめたりして悪い」

 

「「………………」」

 

「なんだよ」

 

鳩が豆鉄砲喰らったような顔しやがって、何もしてないじゃねーか

 

「いやいや、おかしいでしょ!どうしたの今日のニコ?頭でも打った?」

 

「え、えぇ。いつもなら“兄の俺がどれだけ妹を見ようと俺達兄弟の勝手だろ!口を挟むな凹凸(おうとつ)姉妹”って突っ掛かってくる筈なのに」

 

ちょっと待て

 

え?この体の持ち主さんってそんなシスコン侍らかすような人なの!?

 

あれ?この世界で保とうと思ってた俺のクールなお兄さん設定が(ことごと)く崩れていく

 

「………………そ、そうに決まってんだろ!今回は少し趣向を変えてみただけだ、見事に騙されたな。お……凹凸姉妹!」

 

「なーんだ。そんなことか、いきなり変なこと言うからびっくりしちゃった。」

 

「私も、てっきりニコに別の人格が乗り移ったのかと思っちゃったわよ」

 

な、何言っていてんのティオネさん。心臓止まるかと思ったわ

 

「………私も」

 

ちゃっかりアイズも同意している点で、俺はニコとかいう奴の人格をもっとしっかり把握する事を余儀なくされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それより凹凸って何の事かな?」

 

「あ、……そ、それはですねティオナさん」

 

「問答無用ぉぉ!」

 

この後、男の悲鳴が安全階層全体に響いて、少しばかりいたモンスターが縮こまっていなくなったのは、言うまでもなく俺のお陰だ

 

 

 




分かる人は何となく分かったと思いますけど、ソードオラトリア1巻の所です


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#3 モンスターは灰にならないみたい



長くしてみました。
お気に入りにしていただきありがとうございます




 

 

「総員撤退!」

 

50階層にて、突如出現した芋虫型のモンスター。の進化形

他の人の反応を見る限り新種だろうか?全長50メートルは存在するし、何かよく分からん羽まで生やしてキモイの一言に尽きるモンスターが佇んでいる

 

出来れば戦いたく無かったので撤退という団長の言葉に一安心する俺だったが、

 

「えぇ!倒そうよ団長!まだウルガの仇もとってないのに!」

 

「ちょっとティオナ!団長の指示に文句つける気!」

 

「俺も納得いかねぇな、あの芋虫野郎を殺るまで気が収まらねぇ」

 

「ちょ!ベートまで!」

 

「僕も大いに不本意だ。でもあのモンスターを始末して、かつ被害を最小限に抑えるにはこれしかない。月並みの言葉で悪いけどね」

 

「アイズ、ニコ、あのモンスターを討て、2人でだ」

 

「……………はい?」

 

「分かった」

 

えーっと、大変な事態になった…のか…な………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───数時間前───

 

 

 

未到達領域59階層に行く筈だった【ロキ・ファミリア】だったが、フィンさんのディアンケヒト・ファミリアの依頼をこなすという指示により51階層のカドモスの泉が存在する【ルーム】と呼ばれる場所に向かう事となった。

 

詳しくは聞いてなかった(意味が分からなかった)けど、カドモスの泉は2ヶ所存在してまとまって行くには時間が掛かるので、2班に分かれ出来るだけ人数を減らし少数先鋭で行くことになったのだ。あとはセーフティーポイントにて待機だと、俺も待機が良かったなぁ

 

 

 

 

まぁ、それ事態には殆ど不満はないのたが、

 

 

「アイズさん!依頼一緒に頑張りましょう!」

 

「うん、レフィーヤも頑張って」

 

「何で団長と一緒じゃないのよ………、何で…………」

 

「ティオネまだ言ってるの?ニコがいるからいいじゃん!」

 

「あんたには解んないでしょね、ティオナ。誰が好んでニコ何かと…………」

 

団長さん、完璧に人選ミスっすわ

 

1班 俺、アイズ、レフィーヤ、ティオナ、ティオネ

 

2班 フィン、ガレス、ベート、ラウル

 

少数先鋭とか行ってたけど、自分が絶対にティオネと一緒に行きたく無いのが犇犇(ひしひし)と伝わってくる

 

だからって俺をこっちに放り込むのは余りにも酷じゃないですか?

 

前を歩く女性四人を見て思わず溜め息が溢れる

 

まぁ血に飢えた小さい方のアマゾネスと、うちの妹ことアイズ(戦闘狂)がパーティにいるお陰で、俺が殆どモンスターと戦う機械が無いのは好ましく思うけど

 

まぁ一応警戒はしとくかな

 

腰にさしてある剣を抜き取る。蒼くきらびやかな剣先が輝きを放つ剣

俺の武器。瞬時にそう理解させる程、手にずっしりとよく馴染んだ。

 

その剣を、縦に横に何度が振り切ってみる。

多少重たさを感じるが、それが剣に威力を加えてるのを握っているだけで解る。切れ味も申し分ない。

 

メチャクチャいい剣じゃないっすか

 

 

「体の違和感には大体馴れたし、鎧も軽く感じる。これがステータスによる補整なのか…………、何となくだけど動きを体が覚えてる感じがあるな」

 

剣を手にかけたときに手が剣に馴染むのを感じたように、モンスター相手の動き方や足さばき剣の振り方も体があらかじめ解ってるみたいだ。

 

「ん?何一人で剣を振ってんのよニコ?」

 

「い、いえ!何でも!!」

 

「?………そう」

 

不意に後ろを向いたティオネに不思議がられるも、深くは追求してこず胸を撫で下ろす。剣を腰に仕舞い歩みを進めることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっぃぃぃいたあああ!」

 

警戒を怠る事を忘れず、しかしながらルームに着いたティオナが思わず肝胆の声を挙げ───叫んだ

 

「うお!広いなぁ」

 

俺もルームの広さに目を見張る

いや、ほんとにデカイ。東京ドーム何個分だこれ?

 

計算してみようかと試みるも、そもそも東京ドームの大きさを知らなかった。ってか、田舎育ちで実物見たことないし

 

 

「あんたらはしゃぎ過ぎよ。早くカドモスの泉水をとって団長に会いに行きましょう」

 

ティオネさんは相変わらずぶれないね。フィンさんに会いたいオーラが体から滲み出てるよ

 

 

 

 

 

「…………その事なんですけど、」

 

ティオネの言葉に申し訳程度に手を挙げてアピールするレフィーヤ。皆が注目したのを見渡し、そして言葉を続ける

 

カドモス(強竜)………いませんよ」

 

「「「へっ?」」」

 

俺とアマゾネス姉妹が途端に変な声を出す。

 

辺りを見渡すが、レフィーヤの言葉通り確かにモンスターらしきものは見られない

 

平然としている所を見ると、どうやらアイズは直ぐに気付いてたようだ。

兄なのに気付けてない自分が情けない

 

 

 

 

「あれ!見て!」

 

皆で周りを見渡す最中、ティオナが何か気付きそちらの方向を指差す。そこには

 

「!!カドモスの…死骸!?」

 

無惨にも死んでいるカドモスが倒れていた。

あれ?アニメでは倒したモンスターってすぐに灰になるけど原作では違うの?

ティオネの言葉に、困惑している俺以外が正論だと息を飲む

 

「私たち以外の冒険者が倒したんでしょうか?」

 

「こんな深層にこれるパーティーは限られている。特定のファミリアが私達と遠征を被せてくるなんて聞いてないわ。それに良く見て!ドロップアイテムが回収されてない!」

 

「うっわー!『カドモスの皮膜』!?すっごい高額アイテムじゃん!!」

 

「こんな超レアアイテム捨てていく冒険者なんているわけないわ!何かが居たのよ、ここにカドモスさえ殺しのける冒険者じゃない何かが………!」

 

ティオネの推測に、ティオナとアイズは顔が険しくなり、レフィーヤは怯え身震いをする

 

「嫌な予感がする。すぐに泉水を回収!出来るだけここから離れましょう」

 

その言葉に全員が同意して、泉水を回収。カドモスの皮膜もちゃっかり回収してその場を後にした

 

 

 

 




多分次からもっと長くなります。
────します!


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#4 推理しました



思ったように進まない
あと、ソードオラトリアと書いてありますが、殆どオリジナル展開です。にわか知識なので


 

 

「それにしても、さっきの何だったんだろうね?」

 

51階層から50階層までの帰り道、ティオナさんが────この際、全員さん付けは止めるか

ティオナが先程のカドモスの泉での事を問いかける

 

「さっきも言ったけど、私は冒険者でもない“何か”によるカドモス襲撃かしらね」

 

「わ、私もそう思います」

 

ティオネは先程の自分の推測を述べ、レフィーヤはそれに私もと頷く

 

俺には全く分かんないので、聞き耳程度にと話を聞いている。

 

「ん?」

 

すると、右側を歩いていたアイズに服の袖を引っ張られた

美少女による物凄い萌え展開なのだが、何故だろう?あまり萌えない。末期か?

 

「どうしたアイズ」

 

「お兄ちゃんは、カドモスの事…どう思う?」

 

どう思うって言われても、ほんの数時間前にダンまちの世界に来た俺にとって殆どが未知なんですけど。先ずカドモスの姿すら知らないし、俺

 

ってか何時の間に『ダンまち』は冒険ファンタジー小説から推量小説になったのだろうか?BGMに名探偵コナンの『推理』を流しても違和感ない程に様になっている

 

推量要素なんてアニメの時には無かったし、そもそもアニメではロキ・ファミリアあんまり出てこないし、この後どうなるかすら分かんない。既に詰みゲーっぽい状況

 

でも一応兄なので、アイズの前では恥をかく訳にはいかない。それっぽい事を言おうと思う

 

「落ち着けアイズ。真実はいつも1つだ、いつか必ず答えは見えてくる」

 

ヤバイさっきのコナンネタに引き摺られた

かっこいいこと言ってるけど、何も分からないだけのただの凡人アピールですわ

 

「そう…だよね…」

 

納得しちゃったよ、どーすんのこれ?体の元の持ち主さん、ちゃんとアイズに物事を疑う事を教えた?なってないよ全然

 

アイズが少し抜けてるのはアニメ見てて分かってたけど、実際に体験するとお兄さんポジション(代理)の俺としては虚しくなってくる

 

 

 

「ニコの言う通り、いくら推測を立ててもそれはあくまで推測。事実だけを持ち帰って、いち早く団長に伝えましょう」

 

冷静にティオネが場を納める。

それに頷き、皆が歩くペースを一段階速くした

 

目に団長に会いたいって書かれてなければ、滅茶苦茶かっこいい事言ってるのにな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああッ!」

 

少ししてだろうか、ダンジョンに男の悲鳴が響き渡る

 

「ん?誰だ?」

 

全員が声に反応して1度立ち止まる。

ロキ・ファミリアの誰かだとは思うんだけど聞いた事ない声だな

 

「今のは!」

 

「ラウルの声!?」

 

そう呟く姉妹に、俺はそうかそうかと納得した

 

ラウルといえばアニメでは一回しか登場してないキャラ。しかも声だけという残念な初回。俺が声を忘れてて、知らないのにも合点がいく

 

「向こうで何かあったんじゃね?」

 

そう考えるのが妥当だろう

と、俺の声が耳に入った瞬間ティオネが血相を変えて駆け出した

 

うん、何考えてるか大体予想つくな

 

「団長!!」

 

ティオネらしいと思い。だが何が起きたのか気になるのも事実

 

「アイズ、ティオネ、レフィーヤ!俺らも急ぐぞ!」

 

「うん」

 

「は、はい!」

 

「分かった」

 

三者三様に答えて俺達も駆け出した。途中モンスターも出てくるが、アイズとティオナが瞬殺で倒していく。

 

俺?俺はモンスターを華麗に避けて進んでるよ。ってか前の二人が速すぎてレフィーヤが遅れそうだからそっちの護衛してるんだけどね

 

 

 

 

 

「チェストォォ!」

 

また一匹アイズ達が取りこぼしたモンスターを袈裟懸(けさが)けに切り裂く。

レフィーヤも俺の後に付いてくるが、苦渋の表情を浮かべていた

概ねアイズに追い付けない悔しさと、守られてるという惨めさ故といったところか

 

そんな事を考えていると又もモンスターが迫ってきたので、足を切り動けなくさせる。

 

前を向くと既にアイズ達との差が20メートルは開いていた

本当どんだけ敏捷値上げてんの、レフィーヤとか既に息が上がってるけど……

 

「大丈夫かレフィーヤ?」

 

「は、はい。ニコさんは…私に…かま…わないで先に…行って下さい」

 

いや、ダメだろ。レフィーヤ一人を置いて行くのはあまりにも危険過ぎる。そう言ってる間にも俺達とアイズ達との差が開いてきてるし……………こうなりゃ自棄(やけ)だな。ごめん、レフィーヤ

 

心で謝りつつ俺はレフィーヤの背中と膝を抱き抱え、持ち上げた

 

「え、えぇ!?ちょっ、何してるんですかニコさん!?」

 

「何って、…お姫様抱っこ?」

 

「お、降ろして下さい!私の事は大丈夫なんで!!」

 

俺に抱き抱えられるのそんなに嫌だったかなぁ?

あ、そういえばエルフって親しくない人に触れられるのを極端に嫌うんだっけか?

 

「レフィーヤ1人じゃここのモンスター倒せないだろ。それにアイズ達との差も開いてきてる、これが最善策なんだよ」

 

「うぅ~………」

 

「少しの間だけ我慢してくれ」

 

「………………分かりました」

 

「ありがとさん」

 

そう笑顔で返事すると、レフィーヤは顔を真っ赤にしてそっぽ向いてしまう。そこまで嫌われるって何したの元の持ち主

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「追い付いたぁ!」

 

本気出して走り、モンスターも置き去りにするスピードで洞窟を駆け抜けた俺は、やっとのことアイズ達に辿り着く。

 

「遅いわよニコ……って!何でレフィーヤをお姫様抱っこしてるわけ!?」

 

なんでか一番に駆け出したティオネがいた。そのティオネの言葉に目を見開くティオナ、何故か頬を膨らまして睨むアイズ。うん、アイズの目が痛い

 

「そりゃ、お前達に追い付くためだろ。ちゃんとレフィーヤのステータス考えろよ」

 

抱っこされてる本人が「やめてください、やめてください。恥ずかしい…恥ずかしい……恥ずかしい………」と顔を手で覆い隠してるが、それを気にしたら敗けだ

 

「お兄ちゃん……後で、お仕置き…だから、……」

 

「何で!?」

 

不貞腐れた表情をするアイズの理不尽に俺は些か疑問が残る。

だが、口を開こうとした瞬間

 

「団長!!」

 

ティオネの言葉に遮られる。

視線をアイズから目の前に向けると、そこには2班のメンバーがいる。のだが、

 

「…………げっ、」

 

 

そいつらが黄緑色の芋虫型のモンスターを何匹も連れてやってきた

 

「何?あのモンスター!?」

 

「新種の……」

 

ぼそりと呟くアイズの言葉が耳に入る

新種──つまりは未知のモンスターなわけだ。

 

 

 

 

 

 

───ん?ってことはカドモス倒したの、この芋虫じゃね?

 

 

「ニコ達!逃げろ!!」

 

考えてるといつの間にかフィン達が近くを通り過ぎる

何故倒さないなどと野暮なことは聞かない。折角戦わずに逃げれるなら、逃げよう!うん、芋虫とか気持ち悪いわ

 

 

「団長の指示よ、逃げましょう!」

 

「逃げるなんて嫌だ!私が倒す!」

 

「ティオナ!!」

 

何で、こうもロキ・ファミリアの人間は自我が強いのだろうか、地面を蹴りだし、止めるに止めれない距離にいるティオナはどうやら芋虫君1号(勝手に名付けた)を倒そうと考えてるらしい

 

いや、延いてはオラリオ最大級のファミリアの団長が考えなしに逃げてる訳ないじゃん。

逃げる準備を始めながら何も考えてないティオナを憐れむ

 

「止せ、ティオナ!!」

 

────ベチャァ

 

「うおっ!?と、溶けた!?」

 

ほらやっぱり

 

懐に潜り込み、勢い良くウルガを降り下ろすティオナだったが剣先が芋虫君1号に触れた次の瞬間に、溶けた自分の武器を見るはめになってしまう

 

「なっ!!」

 

「体液に触れるな!」

 

んな事だと思ったよ

少し呆然としているティオナをもう一度哀れみ、逃げ出した。

これからの団長の考えを聞こうと、フィンの横へと並び走る

 

「芋虫君ってカドモスを倒した奴?」

 

「あぁ多分だが、このモンスターを50階層(安全階層)に連れていくわけにはいかない」

 

「んじゃ、倒すってか?でも芋虫君には武器効かないだろ」

 

そう問い横を向くと、少しの希望のある目するフィンがいた

 

「いや、攻撃はちゃんと効いている。ただ一回の攻撃に1つの武器を犠牲にすれば……だけど。しかも、あの量」

 

「部が悪いな」

 

「だね。だから【ルーム】に向かおうと思う」

 

「おいおい、団長さん。いくら広いところに出たって結局は囲まれるだけだぞ?」

 

「攻撃は剣によるもとだけじゃないってことさ………」

 

「ん?」

 

その返答に真意を見出だせずフィンを見つめ返すと、フィンが見てるのは俺の腹部分

俺もそこには目を移すと、

 

「ふぇ?」

 

「あっ!そういうことか」

 

未だ抱えているレフィーヤの顔が目に入った

 

 

 





書いてると自分の文章の拙さが良く分かって、萎えてきます。もっと頑張らないと

参考までにコナンのBGMはYouTube等で『名探偵コナン』『BGM』『推理』の単語で検索すると出てくる筈です。


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後衛職の素晴らしさを改めて知った


なんかレフィーヤがヒロインみたくなってる………



 

 

結論的に言うと、フィンがやろうとしている事はレフィーヤの魔法で芋虫君の一斉清掃だった。

 

武器を溶かす体液も魔法までは溶かせない、実態のない攻撃は防ぎようがない

それ故、魔法なのだ。

 

その為の広い空間であり、【ルーム】に向かうという事だったわけだが、

 

「何でこんなに芋虫君いんだよ!モテキか、モテキなのか!」

 

「うっさいよニコ!何言ってるかわかんないし!!」

 

俺達がいたルームにも芋虫君が溢れていました

 

そしてティオナは自分の愛用の武器が使い物にならなくなってキレてます。って俺に当たんなよ、自業自得だろ

 

 

「レフィーヤの魔法で殲滅(せんめつ)する!皆はレフィーヤに芋虫がいかないように惹き付けろ!!」

 

ルームに響く程のフィンの声、それに全員が同意してレフィーヤから引き離すように芋虫君を惹き付ける

 

「ニコ!君はレフィーヤの護衛だ、しっかり頼むぞ!」

 

「え?でも攻撃できないんじゃ護衛も何も………」

 

「君のグリムエッジは“不壊属性(デュランダル)”だろ!多少切れ味は落ちるが、壊れる事はない!」

 

グリムエッジ、多分だけど俺の剣の名前だろう。それがデュランダル?確か永久に壊れない剣。成程、俺は芋虫君に攻撃出来るってわけか

 

ってか団長、その言い方だと切れ味落ちるのは何も問題ないみたいですけど……………違いますよね?

 

「分かりましたよ」

 

 

 

フィンの指示に従いレフィーヤの傍に寄る。

 

まだ詠唱を行ってないみたいで、緊張しているのが杖を持つ手が震えている事から伝わる

 

「レフィーヤ、気張んなよ」

 

「ニ、ニコ……さん」

 

横にいるに俺に気付かない所、よっぽど怯えているみたいだ

 

「ニコさん、私怖くて………」

 

俯き呟くレフィーヤ、俺はその頭を安心させる為に優しく撫でる

レフィーヤも少しビクっとしたが、直ぐに安らぎを取り戻した様子だ

 

「大丈夫だレフィーヤ、もしミスっても俺が芋虫君達を何とかする。………確かにレフィーヤの魔法が一番効率的で確実かもしれない。でもミスっても誰もレフィーヤを咎めないし、軽蔑したりもしない」

 

「ニコさん……」

 

「だから安心して………な?」

 

腕の震えが止まり、顔を上げるレフィーヤの表情を見て、撫でるのを止める

少し名残惜しいきもするが、今のレフィーヤには必要ないだろう

 

「はい!」

 

心強い返事をして詠唱の準備に入るレフィーヤを横目で捉え、さて自分もレフィーヤの護衛に専念するかと深呼吸して剣を構える。そんな中、1つレフィーヤのやる気を更に出させる方法を思い付いた。

 

「それにな、────アイズに認められるチャンスだぞ」

 

「ッ!はい!!」

 

レフィーヤの必要以上のアイズへの尊敬、それはダンまちの世界に来て間もない俺にもすぐに分かった事の1つだ

 

先程より力強い返事を俺は心地よく受け止め、再び剣を構える

 

「悪いな、ここは通行止めだ。芋虫野郎」

 

さて、目の前に群がる芋虫を蹂躙するか

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ニコさんの手………暖かかったな

 

自分の杖を握り、辺りを見渡す

今まで使っていた杖は必要以上に手に馴染むのを感じられた。まるで体の一部みたいに

視野も広い。周りがよく見える。こんなの初めて

きっとニコさんのお蔭だろう。私はそう思いたい…………

 

 

「そんなのだからアイズさんに怒られるんですよ、」

 

先程の撫でられた感触を思いだし、顔が熱くなる

それを吐き捨てるように、ポツリと呟いた言葉は彼には伝わらない。私の思いも引っくるめて

 

だからせめて見ててほしい、認めてほしい、成功したら褒めてほしい、私が尊敬する二人に。私は後ろで、二人を支えられる存在になりたいから!

 

だから私は詠唱を唱えるのだ、二人が安心していられるように

 

すっと息を吐き呼吸を整える

 

 

 

──────よし、

 

「誇り高き戦士よ、森の射手隊よ───────」

 

そして私は魔法を唱え始めた

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「全く、魔法ってのは凄ぇな」

 

背中越しにレフィーヤの魔力が集まる感覚を身に感じ、味方の自分ですらも少しばかり身震いをする

 

エルフというのは精霊にもっとも近く魔法を得意とする種族だからな、当然と言えば当然か

 

 

 

その魔力を敏感に察知した沢山の芋虫君が、やはりというべきかレフィーヤの周りに群がてくる

だがそれは俺が許さない

 

 

 

「レフィーヤに近づくんじゃねえぇぇ!!」

 

芋虫君18号の顔を縦に切り裂いた瞬間に、その横からレフィーヤに向かい切り出す芋虫君19号。

その胴体を横から一刀両断、内蔵までくっきり見える切れ味に驚愕する暇もなく、反対側からレフィーヤに向かう芋虫君20号が目に入る

 

芋虫君19号の頭を借りて瞬時に跳躍を行う。レフィーヤを飛び越え芋虫君20号の頭に丁度飛び降りるのを確認して、グリムエッジを垂直に思いっきり突き刺した

 

口と刺し口から血を大量に吐き出し死んだのを確認して、また直ぐに辺りを見渡す

 

「──同胞の声に応え、矢を(つか)えよ。帯びよ炎、森の灯火(ともしび)。撃ち放て、妖精の火矢 ────」

 

芋虫君が俺を見て攻めあぐねている中

詠唱に完全集中しているレフィーヤが目に映る。芋虫君が近くにいるのなんて微塵も気にしてない。不安も完全に吹っ切れて、最高のコンディションといっても過言じゃないだろうか。これは俺に全信頼を置いてるって事でいいんだよな

 

自分でも頬が緩んで口角がつり上がるのが分かる

後衛職の人に頼られるってのは前衛職にとってどれだけ感動かつくづく思い知らされた

 

「それじゃもう一頑張りしますかね」

 

セーフティーポイントで荷物整理した時に見つけたポーションの場所を思いだし、取り出して飲む。用を無くした瓶は後ろに投げ捨てた

 

喉から体内にひんやりと液体が伝わのが、体にこべりつく生暖かい芋虫君の血液と違って気持ちいい

効力が徐々に表れ疲れた自分に体力が戻る

 

「よし、行くか」

 

地面を蹴り、レフィーヤの傍を走り回る。護衛という命令、レフィーヤから離れきれない点で芋虫君に切り傷をつける程度しか間合いを踏み込めないが、傷だけでも牽制になると必死に間合いに立ちいる芋虫君を蹂躙していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その時は訪れた

 

 

「──── 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え!」

 

詠唱の終了、レフィーヤの周りに立ち込める炎の渦、浮かび上がるは無数の炎の矢。それは同時に芋虫君達の終了も物語っていた

 

「ヒュゼレイド・ファラーリカ!!」

 

「全員撤退!レフィーヤの魔法がくるぞ!」

 

レフィーヤの叫びと同時にフィンも叫ぶ

詠唱が終了し魔法が放たれる僅か一瞬、この場にいる全員が芋虫君が追い付けないスピードでルームの壁、部屋の端っこまで移動する

 

 

そして矢に貫き焼かれ燃え上がる芋虫

広範囲攻撃なのだろうが、その威力は単体攻撃の強さにも引けを取らないレベルだった

 

まさにルーム一体が火の海とかした状況に、近くに来ていたフィンは余裕の表情を、多分俺は驚きの表情を浮かべている

 

「………これだから後衛職は捨てがたいよな」

 

そう小声で呟いた言葉がフィンに聞こえたかどうかは定かではないが、当然といった顔でこちらを見る彼を俺もまた一瞥した

 

 

 

 

 

そんな惨状も数十秒で終わり告げて、残ったのは芋虫のだったものの灰だけだった

 

「フィン、この芋虫の魔石は───」

 

「勿論、回収するよ」

 

最後まで言い終わらぬ内に切り出すフィンは、不確定要素が多すぎるからね、と付け加えて皆が集める所に向かっていった

 

 

 

 

さて俺もと、足を踏み出した瞬時に右腕を掴まれて、おっとっとっとバランスを少し崩す

 

誰だろうと後ろを向くとそこには今回の立役者のレフィーヤ本人がいた

 

「ニコ……さん…」

 

「ん、どうしたレフィーヤ?」

 

もじもじとからだをくねらせながら言葉を紡ぐ彼女を、俺は不思議に見つめる

 

「あの、どうでしたか?」

 

どうでしたか?それが先程の魔法の事を指してるのは言うまでもなく。

 

「───最高だった。あんなんがこの世界にはあるんだなーって思ったね!今回の事は間違いなくレフィーヤの手柄だ。誇っていい、本当に素晴らしかったよ!」

 

そんな風に褒め称える俺がいた

 

「そう………ですか…………」

 

「うん!」

 

「…………………やった!」

 

小さくガッツポーズするレフィーヤを微笑ましく、その嬉しさを伝える相手がまだ残ってると思い

 

「ほらほら、レフィーヤ!アイズのところに行くぞ、絶対褒めて貰えるから!」

 

そう言って手を取り、皆の集まってる所に向かった。小っ恥ずかしいが、俺も早くレフィーヤが喜ぶ姿を見たいと思ったのだ

 

「そんな……だか………私…勘違い………ですよ……」

 

「え?なんて!?」

 

 

後ろから小さくぼそぼそと聞こえた声が余り聞きずらかったので、逆に気になって聞き返すのだが

 

「何でもないです!」

 

と、言葉が返ってきた

うん、聞かれたく無いことだったかな

 

 

 

 

その後、アイズに褒められたレフィーヤが有頂天になったのと逆に、レフィーヤと手を繋いだからという理由でお仕置き×2になったのは流石の俺でも予想外だった

 

 

 





グリムエッジ=恐ろしい(グリム)刃(エッジ)みたいな
安直すぎてすいません。


夏休みも後少し、不定期更新になってしまうかもしれないけど、出きるだけ頑張ります


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6話


前半が上手くかけてない気がする



 

 

 

 

さて、芋虫を滅殺した我らが魔石を回収して団長に急かされる形で、50階層に戻ってきたは良いが、良いのだが…………

 

「流石に俺もここまで芋虫ハーレムは望んでないわ…………」

 

「言ってる場合!?急いで皆の所に向かわないと!!」

 

既に50階層に芋虫が充満していました、はい。

 

急いでキャンプベースに向かった俺達だったが、待ち構えるのは何匹もの芋虫と、既にいくつかのテントは溶け崩れており、骨組みが露になっている状況だった

 

「うわあぁ……」

 

「無惨だな」

 

「どうなってやがる!?リヴェリアは何してんだっ!!」

 

吠えるベート、その言葉は的確に的を射ていた。

これでもオラリオ最大のファミリア、その幹部であり昔からファミリアにいる古参株のリヴェリアが居ながらもここまで無性にテントを壊される事はない筈だ。

 

 

 

思い当たる節はある、腐食液の効果だ

 

確か待機中の奴等の大半が武器で戦うタイプの冒険者だった筈。それを考慮したら後退を余儀なくされるのも頷けるものだった

 

不壊属性(デュランダル)ってやっぱり珍しいのか…………

 

自分の武器の性能に少しだけ優越感を覚える

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いた!」

 

ティオナの声にキャンプスペースの先を全員が見つめる

 

ぼやけてはっきりとは見えなかったが、少し進むとリヴェリア達がいるのをしっかりと見る

 

前衛職が後衛職を取り囲み、俺達と同じように魔法で対抗していた

殆どの武器の刃が腐食液で溶けきり、鋼鉄の盾ですら三日月の形に削られているのをみると状況は好ましくない

 

 

「少しでも遅れてたら危なかったな」

 

武器を1つ失い、その止めた一瞬を何度も重ね魔法を詠唱する時間を稼ぐ

そして魔法での一撃

 

そういうやり方で芋虫と対抗していたリヴェリア達だったが、余りの芋虫の数に遂に武器が底を尽き掛けていた

 

本当に俺達が少しでも遅れたら負傷者が出ていたかもしれない

 

 

 

 

 

『嫌な予感がする。魔石回収を早々に切り上げるぞ、急いで安全階層に向かおう!』

 

 

 

魔石回収中のフィンの言葉に、それは杞憂だろうと内心呆れてた自分だったが、それが今まさに現実として起きているのを実感すると、やはり団長の素質と言うべきか。

最悪を伝える危機察知能力、そんな自分の第六感(シックスセンス)を信じる事の出来る器量、即座に行動に移す姿に感嘆の念を覚え、状況が状況じゃなかったら手を叩いて称賛していただろう

 

「ニコ、アイズ。君達は前衛でモンスターの退治に専念してくれ」

 

「了解!」

 

「分かった」

 

フィンの指示に従い、前衛で戦っている奴等の前に駆け抜け、芋虫を敵意を以て威圧する

 

「そういえばアイズのレイピアは不壊属性なのか?」

 

「うんうん、普通のレイピアだよ」

 

「えっ?───はぁぁ!?何考えんだ団長は……!」

 

普通のレイピアってことは、つまりは腐食液で溶けてしまうということだろ、それはもう壊れない剣か魔法が無い限り────────魔法?

 

「魔法、魔法だアイズ!お前何か使える魔法なかったか?」

 

「むぅ…………お前じゃない、アイズ!」

 

「分かったから!アイズって魔法使えなかったっけ?」

 

「使える、【エアリアル】」

 

そう唱えた瞬間、アイズを下から上に風が包み込んだ。髪が靡き、レイピアに風が付加する。その姿はまさに“風の戦士”と呼べるもの。その可憐さに一瞬程目を奪われた

 

「よし、それだ!アイズはその状態で攻撃しろ!」

 

「え?でもレイピアが、溶けるん、じゃ……」

 

「大丈夫。その風は魔法、風が腐食液から護り溶けはしない筈だ」

 

俺の予想、延いてはフィンの推測が正しければ。

 

だから団長は剣が溶けない俺と、溶かす液を寄せ付けないアイズを選んだわけだ

 

全く俺が気付かなかったらどうなってたか、まぁそこは俺を信じてくれたんだと思っとこう。

 

「いくぞアイズ!」

 

「うん、お兄ちゃん!」

 

何匹もの芋虫が波の如く押し寄せる

 

その芋虫の頭や胴体、急所だと思われる部分を的確かつ確実に斬り倒していく、

 

「────ッチ!」

 

思い過ごしかもしれないが、芋虫にすっと通っていた刃が徐々に通りにくくなっていくのを感じる。

 

切れ味の低下、流石にモンスターを切りすぎたと今更ながら気付いた

小さく舌打ちをして顔を歪める。出来れば今すぐにでも止めたい、だがしかし、止むことのないモンスターの軍勢にこっちも止まるわけにはいかない。

 

「かかってこいやぁ!!」

 

叫び声を挙げて、再び俺は駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた距離にいるアイズが、目に見える最後の一匹を切り刻んで殺す

 

「ふぅ、」

 

終わった、そう思い乱れた息を整える。アイズも安堵してレイピアをしまう

 

そこらじゅうに転がる芋虫の死体の数々、腐食液が土に溶け込み蒸発した臭いと血の臭いが混ざり漂う。まさに異臭、鼻がひん曲がりそうな匂いに思わず顔が歪む

 

辺りを見渡し、もう流石に何も起きないだろうと剣を腰にしまった

 

まぁここで終わったなんて言って、フラグたてるような人は────

 

 

「全部……倒した………?」

 

ちょ、ティオネ、それフラグッ!!

 

 

────ゴゴゴゴッ!

 

「なんだあれ!!?」

 

「さっきまでのモンスターより遥かにデカイぞ!!」

 

終わったと安心しきった全員が上を見上げ更なる恐怖に息を呑む中、誰かが叫んだ

 

ほら、やっぱり

 

どうも芋虫の親玉らしきデカさのモンスターが佇んでいる。羽まで生やして、なんとまぁ可愛らしいこと

 

「よし、撤退だ。みんな地上に帰ろう!」

 

あわよくば帰りはファーストクラスでお願いします

 

 

 

 

 

 

「アイズ、ニコ!あのモンスターを討て、二人でだ」

 

皆が撤退の準備を始める中、俺はアイズに引き摺られてモンスターへと向かうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だっるいわ~、」

 

「お兄ちゃん、頑張ろ」

 

走って芋虫に向かいながらアイズと話していたが本当に面倒くさい。あとで残業代がしっかりでるんでしょうね、団長

 

そんな俺に何を思ったか励ますアイズ。そうやって上目遣いで頼まれると断れないんだよな、ただでさえ可愛いのに

 

「……………はぁ、分かったよ。」

 

「あり…がとう……」

 

しぶしぶ了承する俺にアイズは少しだけ微笑むのだった

 

 

「んで、どう倒すの?アイズは何か倒す算段ある?」

 

「?」

 

「いや、そんなキョトン顔されても、可愛いだけだから」

 

「………………可愛い…」

 

いや、ミスった。アイズさん変なスイッチ入っちゃったみたい。

 

「別に変な意味じゃないぞ、………そうだな妹として凄く可愛いって事だ」

 

「……………ふん、」

 

あれ?何かミスったかな?

誤解を解いたつもりが、何故か不貞腐れて眉間に皺を寄せるアイズ

兄思いのアイズなら喜ぶと思ったのに…………う~ん、分からん

 

 

 

 

「って、不貞腐れてる場合じゃないぞ!アイズ、作戦会議だ。何か巨大芋虫倒す良い方法ないか?」

 

見上げた先にいる芋虫を見て、だいぶ近くに来たことに気づき早く対策を立てないとと、焦燥にかられる

 

「?だから、お兄ちゃんが倒せば良い」

 

「いや、無理だよ。こんなちっぽけな剣1本で倒せる相手じゃないだろ」

 

アイズのエアリアルなら────微妙な所だな

何か、何か他に良い手はないか、

 

どうしたら?良い案が思い付かない。何も思い付かないままに芋虫とあと10メートルに迫ったら距離を確認して、すがるようにアイズを見る。

すると、アイズは又も頭に疑問を浮かべていた

 

「────魔法」

 

「えっ?」

 

アイズの口から聞こえた“魔法”という言葉。その真意が汲めず、思わず立ち止まてしまった

 

何?魔法?魔法って何の事だ?

 

頭をフル回転して考えるも全く解らない。少し遅れて立ち止まったアイズが、俺の目の前に立ち首を傾げる。まだ少し不思議な顔でこちらを覗く彼女は先程の言葉を補うように呟いた

 

「お兄ちゃんの魔法で倒す……………じゃダメ?」

 

俺の魔法

 

エルフが得意とする魔法だが、希に人間や他の種族にも宿る事がある。途方もない努力と、魔法に対する絶対の思いが起こす奇跡により魔法は人に実るのだ。魔導書は例外的として、

 

つまりは俺も魔法が使えるって事?

 

「俺の………魔法?」

 

「うん、────【エクス=カリバー】で倒せば、勝てる」

 

エクスカリバーとか、また中二病を(こじ)らしたような名前だな

 

既に剣の名前が魔法になっている矛盾に俺はとやかく言うつもりは無かった。というか、その余裕が無かった

 

俺の魔法【エクス=カリバー】

これは推測だがほぼ確信と言っても過言じゃない。これは必ず詠唱が必要な(・・・・・・・・)魔法だろう

 

元々、ベル・クラネルの【ファイアボルト】は魔導書によって彼が得た魔法。それは速効性の高い魔法で、彼が自ら望んだ内容が反映されている

 

だが詠唱なしの魔法なんて早々存在しない

そんなのあるだけでこの世界ではチートになり得る存在だからだ

 

確定ではない、だが確信はあった

俺の魔法は詠唱が存在して、

 

 

 

 

────俺はその詠唱を知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────お兄ちゃん!!」

 

「ッ!!」

 

るつぼに()まりかけた自分の思考がアイズの声で現実に引き戻される

 

何考えてんだ俺は

冷や汗が酷いな、心拍も早い、クソ調子が狂う

 

「どうしたの?大丈夫?」

 

「…………あぁ、大丈夫だ。問題…ない……」

 

もしフィンが俺の魔法で芋虫を倒すと踏んでアイズと俺を送り出したとしたら

 

そんなの考えるだけで恐ろしい。なんせ俺はその魔法を、詠唱を、効力を知らないのだから

 

乱れた呼吸は胸を押さえるだけでは上手く正常に戻らない

 

「それじゃ、私が芋虫を惹き付けるから、お兄ちゃんは詠唱に専念して、」

 

「それ…なんだけど、……やめだ。やっぱり…アイズの魔法で倒そう。俺も攻…撃を…加え…るから」

 

「どうして?」

 

どうして?そんなの答えられるわけがない。魔法の詠唱を知らないなんて言える筈がない。言ったらバレる、俺が転生者だってことが一番バレたらいけない人にバレてしまう

 

魔法ってのは一発で戦況を大きく変えることの出来るものだ、それの詠唱を忘れるなんて、一級冒険者に有り得るわけがない

 

「そんなの……どうでもいい、だろ。とにかく、やるぞ」

 

「…………分かった」

 

何時もなら兄の言うことを聞く出来た妹なのだが、今のアイズの優しさが俺の胸を締め付けるようだった。悪い方向に陥った思考が更に深く陥る

 

心と頭が痛い。心は言わずもがな罪悪感や焦燥感によるもの、だが頭は─────おいおい、混乱してるのか俺が、迷ってんのか、今の判断に?

 

アイズならやれる。なんたって剣姫だ、オラリオ最強の女剣士なんだ、俺の魔法が無くたって、余裕で

 

────ズキッ

 

頭痛が酷い。頭が割れるみたいだ、なんでこんなに…………

 

 

 

 

 

 

『思い出せ、絞り出せ、アイズを救えるのはお前だけだ』

 

 

心が浮き足立つ中、先に芋虫に駆けていくアイズを見た瞬間に乱れだす心のの合間をすり抜けるように、そんな言葉が酷く締め付けられる頭に響いた気がした

 

 

 






エクス=カリバーとか………………
自分で書いてて恥ずかしくなりますね。

そろそろ亀更新になりそうです。頑張って投稿しますが、難しいかも


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