タグに『牌画像変換ツール』を追加した時にblinkなど本文の一部の特殊タグが動かなくなってしまったので、ややこしくて申し訳ないのですがこのお話だけ短編として投稿しました。
→不具合、修正してくださいました。
→なので本編に挿入しようかなと思ったのですが、また別の特殊タグが動かなくなることが発覚してしまったので、このツールとは相性悪いんだな……ということで諦めて短編として隔離したままにさせていただきます。
上記の特殊タグはムーンフォックス様の「様々な特殊タグテンプレ」を参考にさせていただきました。
時系列はたぶん1学期期末テスト終了後くらい。
「ねえねえ。たっつーのことだしさ、
いきなり部屋にやってきたと思えば、これまた突然の発言に龍園は顔をしかめる。
「だったら何だ」
「あのね、今日のおとめ座は1位。ラッキーアイテムは牌だったの! これはもう麻雀をやれという思し召しかなって」
今日はね、黒猫ちゃんが足元にすり寄ってくれる夢を見たりもしたんだよ、と京楽は興奮した様子で語った。黒猫が前を横切ると不吉だとか言われるが、この女にとっては関係ないことらしい。
「教えろと? 俺が?」
「うん!」
満面の笑みで頷く京楽を攻撃したい衝動に駆られるも、どうせ効きやしないのだからと龍園は心を落ち着かせた。気分屋だが時として意外に頑固な彼女のことだ、この調子だとどうせ諦めないことは分かりきっている。
「待て」
手で京楽を制しつつ、龍園は端末を操作した。相手は金田と石崎。この2人に麻雀の知識が無ければ他を当たらせようと考えていたが、幸い両方とも経験者らしい。続けてアルベルトにも連絡を入れる。こちらもすぐに承諾が返ってきた。
「アルベルトの部屋に向かうぞ」
京楽だけを行かせたほうが楽ではあるが、こんなのを放り込むだけ放り込んで何か起きれば後味が悪くなるだろう。それに、龍園の離脱を彼女が許すとも思えなかった。
「え、何で?」
「他人を自室に招き入れるのは
なお、京楽のことを龍園は他人以前に人とみなしていない。
「やれやれ。相変わらず我儘だなあ」
「テメエほどじゃねぇよ」
それはそれは実感のこもった言葉だった。
§
アルベルトの部屋には既に男子3人が
「それで龍園さん、麻雀って……?」
「馬鹿にでも分かるように教えてやれ」
指を突きつけながら言えば、その馬鹿はにっこり元気よく「お願いします!」とお辞儀していた。皮肉の通じない女だ。
「京楽に、ですか」
「うむククリちゃんは麻雀のルール紹介を所望するよ」
だったら何故龍園までついてきているのかという疑問が湧いたのだろう、金田は訝しげな視線を送り……やがて納得したのか、無理やり自分を納得させたのか、「それでは」と説明のため画面を開きながら話し始めた。
4
「麻雀では基本的に3枚1組を4つと2枚1組の計14牌を集めることになります。4
「えっと、最初から14枚配られるの?」
ククリの言葉に石崎が首を横に振る。
「違うぜ。4人プレイヤーがいて、親は14枚だけど他の3人、子は13枚ずつだ。最初に親が1枚捨てて、そのあとはみんな山から1つとって手元から1つ捨てるのを繰り返す」
イメージ
「じゃあ手元の牌は常に13枚なのか」
「ええ、そして山から牌を取るのをツモと呼びます。さて、まずは牌の種類でしょうか。このような感じで34種類の牌が4枚ずつあるのです」
「ふむふむ。数字のやつと文字のやつがあるのか。ちょっとトランプみたいだね」
「そうですね、
「そんでこの牌を揃えて4つ作んなきゃいけねー
「はい、3枚1組の
「このように
「質問質問。{八九一}とか{⑤6七}はOKなの?」
「いや、駄目だ。9と1はつながんねぇし、違う種類の数牌だと順子にはならない」
「石崎氏の言う通りですね。そして、次に
「なるほど、同じ柄を集めればいいのか」
「おう。
「3枚1組でなく、4枚1組の
「お、さっき言ってた4
よく覚えていますね、と首肯した金田に対しククリが「えっへん」と胸を張った。
「
アルベルトが出した湯のみを傾けてから、金田は口を開いた。
「その通りです。この雀頭を1つと面子を4つで完成なのですが、これらの組み合わせは何でもいいというわけではありません」
「役がないと
「
「役?
聞きなれない単語のようでククリは首を傾げる。
「あー、役の点数みたいなもんだ。一翻が1番簡単に作れて二翻、三翻と難しくなっていく」
「様々な役がありますが、単純なのは自分が引いた牌のみで4
「そうそう。あと1枚あれば完成って状態、
「うん、テンパイとリーチはなんか聞いたことあるな」
テンパるの語源がテンパイですしね、と金田は頷いた。
テンパイ
「例えばこの場合、あと{白}が1つあれば4
「こういう時『リーチ』って宣言するわけだね。テンパイなこと以外に条件とかはあるの?」
「持ち点が1000点必要になります。この点数はその局であがった人のものとなるので、自分があがれば当然返ってきますし、他の人がということになればその人のものになりますね。誰もあがらずに局が終わる『流局』であれば次の局に持ち越しです」
「あとは
はい、と金田が石崎に同意して説明を続ける。
「ポン、チー、カンをしていない。つまりツモのみ、自分が引いた牌だけの状態である必要があります。そしてリーチをした後にも制限がありまして、手牌を動かしてはならず、自ら当たり牌を引くか他の人が当たり牌を捨てるかということが無ければあがることが出来ません」
「ふむ。他の人が、自分の欲しい牌を捨ててたらどうなるの?」
「麻雀牌の組み合わせの完成、『あがり』には『ツモあがり』と『ロンあがり』があります。自分が引いた牌であればツモあがり、他の人の捨てた牌であればロンあがりです。つまり、その状況ではロンをすることが出来ます」
「えーと、だったらさっきのやつでいくと、当たり牌である{白}を引ければツモあがりになって、他の誰かが捨ててくれればロンあがりになると」
ククリの言葉に男2人は頷いた。話を理解しているのかしていないのか、部屋の主であるアルベルトはゆったりと彼らを見守り、龍園はといえばどうでもよさそうに自らの端末をいじっている。
「ただ、このロンにも条件があるんだよ。フリテンの時はできねえっつーやつだ。いや、ロンが出来ないテンパイをフリテンって呼んだほうが正しいのか?」
「そうですね。これには3つのケースがあります」
金田はすっと指を3本立て、まず1本折った。
「1つは当たり牌が既に自分が捨てた牌の中にある場合」
「これだと{2}を捨てたから、{2}でロンあがりをするのは無理になるってこと?」
「そうなるぜ! それでこの後、リーチをしてから{2}が駄目だったってことに気づいたなら諦めてツモあがりするしかねえ。リーチして無けりゃ手を変えて当たり牌を違うやつにすればいいんだな」
「付け加えると、逆に他の人から見れば自分が{2}を捨ててもロンあがりはされないことが分かりますから、これは安牌ということになるのです」
つまり自分の捨てた牌と他の人の捨てた牌をきちんと確認するべきなんだね、とククリが納得する。
「そしてややこしいのですが、複数の当たり牌がある多面待ちの時は1つが該当してしまえばどれもフリテンになります。今回のケースで、例えば手元に{34}があるので{2}と{5}のどちらかが欲しいという時でも、{2}を自分が捨ててしまっていればこの{2}を他の人が捨ててもロンできないのは勿論、{5}が捨てられていてもロンはできないのです」
「うわ、それは面倒だ」
「だな。で、あとのフリテンは、テンパイした後に他の人が捨てた当たり牌を見逃しちまった時だ」
「そうなると……リーチを宣言してるなら、ロンは諦めてツモあがりするしかないってなるのかな」
1つはそれです、と金田が2本目の指を折った。
「最後の1つはリーチをしていない状態で見逃してしまった時ですね。この場合、自分が牌を捨てる番が来るまではロンをすることができません」
「色々あるんだねえ」
大量に知識を詰め込まれ疲れたのか、うーんとククリが困った顔で伸びをする。そんな彼女を見た龍園は少し口角を上げていた。
「さて、では先ほどポン、チー、カンをしているとリーチが出来なくなると言いましたが、それらについて軽く説明しておきましょう」
ポン
「ポンとは、自分が同じ牌を2つ持っていた場合……これだと{發發}ですね。他の人が捨てた牌がそれらと同じであれば加えて3つに、つまり
「ポンしたらその牌を倒して晒さないといけないんだな。誰の捨てた牌をもらったかで置き方が変わるぜ。そんで、他からもらって1枚多くなってる状態なわけだから余分な牌を捨てる」
「ふむ、じゃあ自分の手を公開するんだし情報戦でちょっと不利になるんだね」
その通りです、と金田は指で眼鏡を押し上げた。
「チーもポンと似ていますが、こちらは
チー
「自分の持ってる2枚が、あと1枚あれば
「はい。そしてカン、これは同じ牌を4つ集めるものであり、この4枚1組の
「じゃあ4
「それだと
「ええ。カンをすると点は上がりますが、無理にやらなければいけないものではありません」
「
「んーと、ちゃんと自分で4枚引いたのに『カン』って宣言して牌を倒さないと
「ああ。だって手牌が1枚不足することになるだろ? だから
「それと、カンではドラが増えまして……これについては後で説明しますね。次は、
「この
「カンもポンと一緒で誰の捨てた牌をもらったかで置き方が変わるな」
「こちらの
「他の人から牌をもらうことは出来ないのか」
「おう、ポンしてから自分でツモらねえとダメだぜ」
2枚はもらえないのね、というククリの呟きを両名が肯定する。
「では、先ほど述べたドラのことをお話ししましょう」
「この場合、{南}がドラになり、あがった時に持っていれば点数が加算されます。ただし、役ではないのでこれだけであがることは出来ません」
「なんで{東}じゃないの?」
「表示されているものの次の牌なので。{①}ならば{②}、{4}ならば{5}、{九}ならば{一}。字牌では{東}→{南}→{西}→{北}→{東}、{白}→{發}→{中}→{白}という感じですね」
「カンをすると槓ドラも加わるんだな。1回ごとに1枚、最大4枚だ」
「この{⑥}、じゃない{⑦}が槓ドラになるのか」
「ええ、そしてリーチをかけてあがると確認できる裏ドラもありまして。ドラは全員見ることが出来ますが、こちらはリーチした人のみです。さらに槓ドラがめくられている時にリーチをかけてあがれば槓ウラをも確認することが可能です」
ドラと裏ドラと槓ドラに槓ウラの計4枚、場合によってはさらなる追加も有り得るというわけである。
「あとは赤ドラだな。{赤5赤五赤⑤}こういう赤い文字になった牌は持ってあがるだけでドラと同じ扱いになる」
「わあ、いいね、お得だね!」
「ではこの赤ドラと相性のいい役から紹介していきましょう」
タンヤオ
「タンヤオは
「1と9、それに
「『喰いタンあり』であれば大丈夫です。このルールが一般的ですね」
もし喰いタンなしのルールであった場合は、タンヤオに
役牌
「続いて役牌。これも一翻役でして、同じ
「場風か自風かオタ風か、だな」
「ええ。さて、麻雀は4人で行いますが、このうち1人を親、3人を子として進行していきます。親は固定はされず持ち回りであり、原則全員が親を経験します。1周目が東場、2周目が南場ですね」
子があがるなどして局が終わると、今度は親の右隣のプレイヤーが次の親となる。東4局が終了したら南1局に入ることが出来るのだ。
「場風は東場なら東、南場なら南。自風は自分の席によって決まり、親は常に東でその右の人は南、正面の人は西、左隣なら北。そして場風でも自風でもないものがオタ風ですね」
「東場で親の左隣のやつの場風牌は{東}、自風牌が{北}だからこのどちらかが3枚だと役牌にできる。{南西}はオタ風なんで無理だ」
んー、とククリははてなマークを頭上に浮かべる。
「それだと東場の時は親が場風牌も自風牌も{東}になるけど、いいの? 他の人よりオタ風が1枚多くなるよね」
「はい、それだと{東}を集めた際にもらえる点数が増えますね」
南場ならば、親の右隣にいる人が場風も自風も{南}なので、同じく{南}を3枚あるいは4枚揃えれば二翻がつくことになる。これらをダブ東、ダブ南と呼び、東場→南場で終わることが一般的だが、さらに南場から西場へ入ればダブ西、西場から北場に入ればダブ北が登場する可能性もあるのだ。
「締めくくりに、
ククリは頬杖をついて脳みそを懸命に回転させた。
「ふむふむ。あとは、みんな数字が連続してるよね。
「仰る通りです。けれども、門前でなくてはならないのでチーをしてはいけません」
「んで、
「たとえば{六七}を持っていて{五}か{八}を待つ、{78}を持ち{6}か{9}を待つような状態ですね」
むーとククリが唇に指を当て唸った。
「
「勿論です。その場合、タンピンと呼ばれていますね。麻雀では基本的に役を複合することが出来ます」
タンピン
「さらにこの時リーチをかけているとメンタンピンと呼称され、一翻役3つの組み合わせなので三翻がつくのです」
「翻数が多けりゃ点数も高くなる。役の複合は高得点を狙うのに絶対必要だな」
麻雀の初歩的な説明は以上です、と金田が言えばパチパチと拍手の音が響く。にこにことククリが2人に礼を述べ、アルベルトもぺこりと頭を下げていた。
金田、石崎、ククリ、アルベルト。龍園を除けばちょうど4人揃っているというわけだし、と金田はある提案をすることにした。
「端末を用いて、一度麻雀を体験してみますか?」
「いいな! こういうのってやっていくうちに覚えていくもんだぜ」
乗り気になる一同であったが、そこに水を差す男が現れる。
「俺も交ぜろよ。金田はそっちのサポートに回れ」
愉快そうに口の端を吊り上げる龍園がただの親切心で申し出たわけではないことは明白だった。麻雀で打ち負かしたいのだろう、と金田は適当に推測する。あるいは流石に手持ち無沙汰になってきていたのかもしれない。
分かりましたと返事をしてククリたちの背後に回ると、最初の親、
「よーし、スタートだね」
明るい声で開始が告げられ、そして──何故か、石崎が唐突にお茶を吹き出す。その顔は驚愕に彩られていた。
どうしたのかと問いかけるより先に、ぽわぽわした表情のククリから「これ、どうなってるの?」と画面を見せられる。瞬間、金田の眼鏡はずり落ちた。
東1局
「
親が14枚の配牌の時点で既にあがることができる場合に成立する役、
どちらも役満(とても難易度の高い役)であり、両方を成立させる確率は何十億分の一という領域である。
「えっと? それなあに?」
先ほどは説明しなかったため、彼女が理解できていないのも仕方ないだろう。そう、仕方ない、分かっている……だが。
「俺たちの説明は何だったんだ……」
どうしようもない脱力感というか、そういったものに襲われてしまう石崎と金田に対し────どこまでも不機嫌そうに龍園は舌打ちし、ククリとアルベルトは首を傾げていた。