転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

329 / 439
いよいよソ連のノブゴロド、その先にあるサンクトペテルブルグの攻略基本方針がきまったみたいですよ?

久しぶりに長い話になりましたが……それにしても大丈夫なんか? コレ。









第326話 ”赤衛国際革命旅団(Красная гвардия Интернациональной революционной бригады)”ってなんだよ?

 

 

 

 1943年6月初旬、モスクワにて『レニングラード奪還』、正確にはその前段階である『ノブゴロド攻略』の最終意思決定がなされた。

 

「究極的に言えば、”国際旅団”を集中的にノブゴロドに投入するか、分割してヴォロネジ、スモレンスク、ボログダの三か所に”前衛防壁”として振り分けるか……」

 

 赤軍総司令官のジェーコフは、そう切り出した。

 上記の三か所は、ドイツの南方軍集団/中央軍集団/北方軍集団のモスクワに最も近い最前線であり、同時にノブゴロドへ大きく軍を動かせば、三方位からの同時攻撃でモスクワを陥落させるだけの兵力を蓄えていると見做されていた。

 前衛防壁とは要するに”肉壁”の事だ。

 これはハイドリヒ率いるNSRが継続的に、意図的に漏洩させている欺瞞情報モスクワ攻略(タイフーン)作戦”が上手く機能しているという事だろう。

 その欺瞞を真実と誤認させるべく、ドイツ空軍は定期的にモスクワへと偵察爆撃を敢行し、各地地上軍は増強を重ねていた。

 実際の目的は。『ソ連の防空能力とモスクワの防空状況の確認』と『各拠点の防衛戦力の増強』なのだが。

 

「ジェーコフ君、仮に分割するとノブゴロドはどう奪還する?」

 

「300万全ては移動に問題がありますので、70~80万規模に分けて三都市の前衛に拠点を包囲するように配置し、その後方に赤軍本体を展開します。有り体に言えば戦力の水増しによる欺瞞戦術です。肝要なのは先ほど挙げた都市に駐留するドイツ軍がノブゴロド救援……いえ、モスクワに手出しできないようにすればよいのですから」

 

 スターリンが続きを促すと、

 

「数で圧迫し動けぬ間に、ノブゴロドに選抜軍を打突させます。判明している敵軍規模から考えて、最低でも正規装備・完全編成の100万以上の装甲軍が必要となるでしょうが」

 

 史実よりも負けが込み損耗の大きなソ連赤軍だがそれでもその動員力は流石であり、ドイツ人から叩き出され国内戦争難民化した各都市の住民を積極的に徴兵、訓練を施すことにより兵力補充を行っていた。

 無論、同時にドイツ軍により武装解除され放逐された兵はそのまま復員、武器を持たせて部隊消滅などで原隊復帰ができないなら再編入だ。

 この待遇を拒否すれば、無論市民ならサボタージュ、軍人なら敵前逃亡という扱いになる。

 

 これもドイツ人が無駄な”粛清”を嫌うからこそ、可能な方法だった。

 まあ、それも実際には収容所をわざわざ国費を使ってロシア人の為に用意したくないドイツが、面倒を回避するために「解放」しているという裏事情があるのだが。

 もちろん「この世から解放」という意味ではない。弾丸だって無料(タダ)ではないのだ。

 市民には家財を持ち出す時間を与え、赤軍兵すら武器と装備と書類だけ奪って放逐することがままあった。

 ぶっちゃけてしまうと欲してるのは”ドイツ式経済生存圏(レーヴェンスラウム)”であり、特に共産主義に染まり切った国民が欲しい訳じゃないということなのだろう。

 そのおかげで現在、ベリヤはロリハーレムを拡充させソ連は、バルバロッサ作戦の人的消耗を乗り越え(質的にはともかく)正規兵力600万人以上まで赤軍を回復させてはいるのだが……

 

「同志書記長、発言よろしいでしょうか?」

 

 スターリンは頷くと、

 

「構わんよ。ベリヤ君」

 

 ベリヤは一礼し、

 

「NKVD長官ではなく人民委員会議副議長として発言させてもらいますが、その方法は現状ではあまり芳しくありません」

 

「というと?」

 

 ジェーコフの問いに、

 

「数値的には回復していますが、赤軍の全体練度は回復しているとは言い難い。ノブゴロドの奪還だけで終わらせるのならそれでも良いですが、その後のレニングラード奪還を考慮するならノブゴロドでの正規兵力の消耗はできれば避けたい」

 

 そして少し考えるそぶりをしてから、

 

「最適解なのは同志元帥が腹案として発言しようとした、もう一つの選択肢……”国際旅団”の大軍を前面に押し出し、一気呵成にノブゴロドを物理的に押し潰す。でしょう?」

 

 ベリヤが促すとジェーコフは頷き、

 

「その場合、想定必要戦力は国際旅団150万、正規軍50万。残る国際旅団は三都市に割り振ります」

 

 つまり正規軍は半分にできるが、投入人員は2倍になる。

 それだけの数を投入しなければ、数で押すとしても戦場として成立しなくなるという意味であった。

 勿論、『外国人で編成された装備の悪い軽装歩兵』を摺り潰すことを前提とした作戦になる。

 つまり、20万程度と見られているノブゴロドの防衛戦力を150万の国際旅団を相手させることで消耗させ、正規軍の50万でトドメを刺すというやり方だ。

 

「それじゃあ足りないでしょう? サンクトペテルブルグ周辺に展開しているドイツ地上部隊は10万程度はいるでしょうし、ラドガ湖南岸にはフィンランド軍が5万程度は張り付いているでしょう。それらがノブゴロドの防衛に駆けつけてくる事態も考慮しないとならない」

 

 ベリヤは訂正を求め、

 

「”国際旅団”は装備も悪く、練度はようやく戦車を動かせるあるいあタンクデサントで行軍できる水準だ。足りない力は数で補うしかない。同志元帥、ノブゴロド投入の国際旅団は230万まで増やししましょう。そして赤軍正規を70万まで。残りを三都市に振り分ければいい」

 

 合計300万の大軍勢だ。

 赤軍の70万投入は、そう難しい事ではない。

 むしろ問題となるのは、”国際旅団”の移動だが……

 

「何回かに分けて、ヴァルダイ(ノブゴロドの南東120㎞ほどにある街)辺りに集結させればいい。ボロゴエまでは鉄道輸送が使えますし」

 

「しかし、それでは機甲予備が取れなくなりますが?」

 

 そうジェーコフは反論するが、

 

「構わんでしょう? 彼らは『革命を夢見て、国際共産主義に殉じる覚悟』で来たのですから。それでノブゴロドを奪還できるのなら、彼ら彼女らも本望であり本懐でしょう?」

 

 事もなげに「たかが200万人程度(・・)国際旅団(がいこくじん)など全てこの作戦で使い潰して構わない」とベリヤは言っていた。

 ベリヤのこういうところをスターリンは気に入っていた。

 

「いずれにせよ、我々には300万人以上の”余剰人員(・・・・)”に冬を越させる余力はないのです。であるならば、有効利用するべきだ」

 

 酷い話もあったものである。

 つまり、ソ連は急に増えた”金にかからない傭兵”に今年の冬を越させるだけの食料・燃料備蓄に関しては白紙だったのだ。

 そりゃあ国内で戦争難民が多発している状況なら当然かもしれないが……

 ベリヤの試算では、半分程度ならレンドリースも考慮すれば何とかなるが、いずれにせよ全員分は無理だろうと予想できていた。

 まあ、平常運転(いつものソ連)と言えば、それまでだが。

 

「しかし……」

 

 スターリンやベリヤと比べるならまだ人間としての良識がまた残っていたジェーコフは躊躇するが、

 

「同志元帥、あの者達は我らが”偉大なる大地(ルーシ)”の民ではないのです。優先すべきは国際旅団ですか? それともノブゴロドの奪還ですか?」

 

 答えが決まっている問いだった。

 

「国際旅団には、改めて”赤衛国際革命旅団(Красная гвардия Интернациональной революционной бригады)”の名を与えよう」

 

 議論の決着を見たスターリンはそう徐に発言した。

 

「共産主義の革命思想に命を賭す彼ら彼女らには、最高の名誉と栄誉を」

 

 それならば、金も物資も消費しないからだ。

 まさに”消耗品”に対する認識であった。

 

 無論、スターリンは”赤衛国際革命旅団”につけられる50万の赤軍正規兵が、外国人を後方からの火力で前面に押し出す”督戦隊”としての機能を持たせることを熟知していた。

 だから、「任務を理解(・・)している政治将校」を吟味しなければならないと。

 

「三都市に戦力を張りつけつつ、武装した300万人で物理的にノブゴロドの防御帯を圧し潰します」

 

 それがソ連という国家の結論だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、視点は同時期のサンクトペテルブルグに移そう。

 

「ふむ。まあ予想の範疇内と言えば、その通りなんだがな……」

 

 ああ、クルスだ。

 何というか……えっらい派手な求人広告を世界中にばらまいたな。Sリン。

 

「多分、募集求人数なら史上最大じゃないのか?」

 

「まあ、でしょうね。どのような国でさえ300万人の兵士は募集しないでしょうし」

 

 そう返してくるのは、”クラウザー・フォン・シュタウフェンベルク”。

 ドイツ国防軍からの出向組で、シェレンベルクやシュペーア君と同時期にサンクトペテルブルグに入ってくれた、言わば古参組の一人だ。

 出会った頃は少佐だったけど、確か今は大佐だったかな?

 参謀本部直参のエリートのはずなんだが、ありがたいことにウチとドイツ北方軍集団司令部やフィンランド軍との連絡役や調整役を買って出てくれている。

 まあ、今回も連携確認で出張って戻ってきたところなんだけど。

 

「ところで大公(Erzherzog)、どの程度の襲来を想定しておられるので?」

 

 えっ? そりゃあシュタウフェンベルク君、

 

「”赤衛国際革命旅団”とやら300万なら全員想定するぜ? 赤軍の正規部隊は派手な負けが続いてるから、投入できるのは多くても100万に届かんぐらいだろうけど」

 

 それにしても”Красная гвардия Интернациональной революционной бригады”ねぇ~。

 あの腐れ”世界粛清友の会書記長”、随分と派手な名前を付けたもんだ。

 名前負けせんと良いけどな。

 

「なっ!? 最大400万を大公はお考えですか……?」

 

 相変わらずチュートン人らしい真面目さだねぇ。

 シェレンベルクあたりは少しは見習って欲しいところだ。あとハイドリヒも。あいつらは人生を楽しみ過ぎてるきらいがある。

 

「実際に運用しようと思えばもっと少なくなるさ。共産主義だって物理限界を超えられるもんじゃないしな。ただ、最悪を常に想定するのは、為政者の務めってことさ」

 

 まあ、ソ連の車両数と輸送能力、モスクワからノブゴロドまでの行軍距離から考えれば、最良の条件が揃う夏でもざっと250~300万が限界ってとこだろう。

 一番の問題は輸送力。ソ連の兵站補給は補給線の”維持”ってのは弱い。

 だから奴さん達は「物資を拠点に貯めこむ」のを好む。

 前世のノモンハンとかはまさにそんな感じだ。

 

(だから、拠点に溜め込む物資量である程度は想定してる人数はわかっちまうんだ)

 

「モスクワからノブゴロド・サンクトペテルブルグに攻め込むのなら、最大の拠点になるのは鉄道の街”ボロゴエ”だろうさ」

 

「まあ、それは納得できますが」

 

 鉄道車両や線路の生産基地でもあるんだが、かつてモスクワと”レニングラード”が鉄道で繋がっていた頃の中継点で、爆撃されるたびに修理して今でもここまではモスクワから鉄道が繋がっている。

 距離はノブゴロドから南東へざっと170㎞。地上侵攻なら距離も手ごろで、物資集積地を作るのに都合のいい開けた土地も多い。

 

(というか、そういう風にドイツが誘導してるんだろうけどな)

 

 何故って行動が制御しやすいからな。

 出鱈目な方向から来られるよりは、進撃路を絞れる方が作戦は立てやすい。

 ソ連だってそれは理解しているだろうが、かといって「残っている物を使わない」という選択肢はない。

 何しろ、連中も余裕がない。

 大軍を投じないとノブゴロドもサンクトペテルブルグも攻略できないなら、それをできるようにする手段は限られる。

 

(拠点となってるのは厳密に言えばボロゴエ、オジョルニ、ヴァルダイに跨る平原……)

 

「だとしたらボロゴエより先は鉄道が使えん。機動車両による行軍が主体となるなら、クレスツィあたりが前線基地になるか?」

 

 クレスツィってのはノブゴロドから南東へ70㎞くらいな所にある、どうということは無い街だ。

 なぜここなのか?

 まあ、司令部置くには適切な場所だし、この距離ならノブゴロドの重砲も届かない。

 無線機通じなくても、ここなら最前線から伝令を走らせることもできる。

 それに戦車とかの無限軌道を使う戦闘車両ってのは、見た目とは裏腹に結構繊細なんだぜ?

 確かに道なき道は走れるが、未舗装地を延々走ればその重さ故にトランスミッションや足回りに過負荷がかかってガタが出やすい。筋肉太りしたアスリートが骨格が持たなくて膝、腰、足首なんかを故障し選手生命断たれるのになんか似ているな。まあ、戦場で動けなくなったら選手生命ではなく本物の生命を失うんだが。

 

 戦闘時ならいざ知らず、行軍の時は自動車同様に舗装地を走った方が良いに決まってる。

 つまりボロゴエ、クレスツィ、ノブゴロドは街道で繋がってるんだ。

 第一、ソ連の十八番であるタンクデサントさせながら戦車がガチのオフロード走行なんかやったら、あっという間にデサント兵が振り落とされるだろ?

 

「シュタウフェンベルク君、北方軍集団から回してもらえるのは、ロンメル上級大将率いる増強装甲軍10万で間違いないね?」

 

「ええ。全て”機甲擲弾兵師団(パンツァーグレネディア)”編成です。現在、密かに”マーラヤ・ヴィシェラ(ノブゴロドの北東75㎞にある街)”に兵力を集結させています」

 

 パンツァーグレネディア……火力増強機甲師団ね。

 ああ、あそこね。史実だと41年にドイツ軍が分捕ってその年のうちにソ連に獲り返されたが……今生だと、未だにガッツリ北方軍集団の拠点になっていた。

 

(余剰戦力として集められるのは、純粋陸戦戦力でギリ10万ってとこか)

 

 ロンメルの旦那が、小気味よく前線で装甲指揮執るのにはちょうどいい数だろう。

 あの人、自ら前線で機甲戦力指揮執るの抜群に上手いけど、数十万規模の方面軍単位の後方からの指揮となると途端に凡庸になるからな~。

 きっと前線やら現場の空気が読めないと感覚がつかみずらいタイプなんだろう。

 故に”最高の前線(・・)装甲指揮官”。まあ、よくある”現場でこそ輝く人材”って奴かな?

 

「マンネルハイム元帥の方は?」

 

「”チュドヴォ(ノブゴロドから北へ80㎞ほどの街)”の集積地で元気を有り余らせています」

 

 あー、あのスオミ産の魁塾長らしいと言えばらしいか。

 多分、ラドガ湖からヴォルホフ川を伝って河川用揚陸艇のピストン輸送で集結させたな。こりゃ。

 

「なら問題ない。どんなに悪条件が重なっても、今月の下旬には迎撃準備が整う。まあ見ててくれ」

 

 口の端が持ち上がるのが自分でも分かった。

 

 

【挿絵表示】

たかが(・・・)300万やそこらの雑兵、あしらってみせるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クルス:「待ち構えているのは、ウチのノブゴロド配備兵力だと誰が言った? そりゃあ機甲予備くらい普通は用意するだろう」

という訳で、クルス大公のお友達(?)で未だ北方軍集団にいて、フリーハンドで動ける遊撃兵力担当しているロンメルさん率いる10万とマンネルハイム塾長率いる7万の参戦が決定したようですよ?
機甲予備でw ええ。機甲”予備”デスヨ?
適材適所ですね~(スットボケー

つまり。この時点で”バルト三国義勇兵団(リガ・ミリティア)”の5万含めてノブゴロドの配備兵力は20万。
これにノブゴロド周辺に待機している上記約17万を加えて37万。
おまけにこの要塞火力この歩兵火力でクルスは歓迎準備をしております。
フォン・クルス大公、ガチです。ガチガチですw

さて、確かに赤軍正規旅団70万(督戦任務込み)を含む300万は、兵力8倍以上と巨大ですが……いや、大丈夫なんか? コレ。

さて、もしこの空前の人数差の防衛戦に勝利したら……世間の、いや世界の評価はどうなるんでしょうね~。

さて、次回はノブゴロドの土木工事の話と”空”の話でもしてみようかな~と。

次回もどうかよろしくお願いいたします。





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。