転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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満を持してオーパーツでなくともオーバースペック機、イタリア生まれのドイツ育ち(サンクトペテルブルグ育ち?)な新進気鋭のMc205Bの詳細公開です。

P-38,39,40(レンドリーストリオ):「えっ? これと戦うの?(顔面蒼白)」




第328話 DB605A(本国仕様)、Mc205BとMC.205Aは別の機体であるという事実。そして……大体、クルスが悪い(平常運転)

 

 

 

 唐突だが、”Mc205B”は数奇な戦闘機である。

 元々は史実と同じくイタリアで開発されていたMC.202の後継として開発されていた機体だ。

 だが、転生者でもあったイタリア空軍近代化の父であるバルボ将軍が暗殺され、彼が主催していたイタリア航空業界の軍産複合体”イタリアの翼共同体(アエタリア・マフィア)”がムッソリーニを見限り離反。

 その後、北アフリカやギリシャでの救援の対価として、ドイツがフィアット、マッキ、レジアーネ社の新型機開発計画(+90㎜高射砲)のドイツへの移転を要求。

 実はこれ自体が生前のバルボとNSR長官ハイドリヒとの「転生者同士の裏の約束」があり、バルボが「自分に万が一のことがあった場合の遺言」に従い、NSRとドイツ政府、アエタリア・マフィアが動いたという訳だ。

 

 そして、紆余曲折がありそのチーム・イタリアの受け皿の一つとなったのが、レニングラードからサンクトペテルブルグになり復興が始まったサンクトペテルブルグであり、更には”メッサーシュミット・スキャンダル”のあおりで仕事を失った旧メッサーシュミット社のレシプロ戦闘機開発部門の人間が合流などがあり、サンクトペテルブルグの復興と再発展に歩調を合わせるように開発は加速していった。

 

 当初は、”MC.205A”というイタリア式戦闘機表記の名残が見える先行量産型が開発されたが、いつものように我らがフォン・クルス大公が余計なチャチャを入れたりして、更なる強化型開発計画が始まった。

 そして、それと同時に表記をドイツ式のそれに改められ”Mc205B”の開発が始まったのだ。

 

 実は、史実のMC.205Aと比べても、この世界線のMc205Bはかなり雰囲気が異なり、識別は簡単だ。

 いや、もっと言えば史実と大して変わらない、そしてやがて日本皇国空海軍が戦うだろう今生のイタリア空軍の”MC.205”と比べた方が早いかも知れない。

 その相違点を簡単に記すと、

 

 ・プロペラがVDM社製電気安定式可変ピッチ大口径三翅に変更されオリジナルより推進効率が改善されている

 ・翼が層流翼構造

 ・キャノピーが視界の良いバブルタイプ・キャノピーに変更

 ・胴体下のインテークをP51のようなメレディス効果の期待できるNACAダクトに変更(ほぼ大体クルスが悪い

 ・機首機銃をMG151/20mmに変更したために若干原型より機首が太くなっている(これも大体クルスが悪い

 セルフシーリング構造のインテグラルタンクを胴体内と主翼に内蔵。機内燃料搭載量を増加

 ・機体の構造強化でペイロードの増大

 

 そして、この機体に組み合わされる”この世界線のDB605エンジン”も、以前のそれと仕様変更が行なわれていた。

 基本仕様は、

 

DB605Aの基本スペック

エチレングリコール混合液液冷式倒立(・・)V型12気筒48バルブSOHC、機械式燃料噴射装置、簡易型電気演算式エンジン集中統制装置(コマンドゲレート)、空冷中間冷却器付二段流体継手無段変速式遠心圧縮過給機、MW50中間冷却器用水-メタノール噴射出力増強装置

出力:1850馬力(離陸時)、水-メタノール噴射使用時は2150馬力

 

 いや、高性能なんだが世代的にはグリフォン・エンジンと大体同年代・同排気量のエンジンではあるのだが……実は基礎設計自体は一世代前で排気量が8lほども小さいマーリン61ベースの”飛燕改”のカワサキ・マーリンと出力的には大差ない。

 いや、これはむしろ初歩的な電子エンジン統制制御デバイスであるパラメトロン式の燃料噴射装置や二段二速のスーパーチャージャーの無段変速化にトルクコンバーター使ってるカワサキ・マーリンがむしろ出てくる時代を間違えているオーパーツというかオーバーテクノロジーというか。

 

 DB605Aの機械式燃料噴射装置自体は、素材に困っていない事と加工精度が良いことは特筆すべきかもしれないが、基本構造は史実のDB605シリーズと大きな違いはない。大きく違うのはクランクシャフトで、モーターカノン搭載をスパッと諦め、中空シャフトからオーソドックスな中身が詰まった頑強な物に変更されたため、全体的な強度が上がり、より高圧縮に設計できるようになったことが大きい。

 

 問題なのは、簡易型電気演算式エンジン集中統制装置で、これはBMW801の本家機械演算式の”コマンドゲレート”を、パラメータ演算部分に機械演算機ではなく演算増幅器(オペアンプ)と抵抗器、メタル管(金属ケース真空管)、コンデンサー、ダイオード、ポテンショメーター、乗算器、標準電圧源、リレー接点などからなる電気演算回路、つまりは一種の初歩的なアナログコンピューターを組み込むことで機構をコンパクト化・演算処理のシンプライズ化を果たし物で、簡易式という言葉も「BMW801の歯車式機械演算機よりシンプルだから」という理由で機能的には同等であり、むしろ電気回路が故障の際は丸ごと交換できる演算ユニット化されてる分、整備性と信頼性は上だと言われている。

 実は現実のドイツでもV2ミサイルの初期制御や、V2計画に必要な計算用に電気演算式(アナログ)コンピューターが用いられているのだ。

 また、パラメトロンが用いられていないのは、日本皇国からの技術供与でパラメトロンが英国同様に自国製造可能となったドイツだが、それでも未だにより高度な演算を必要とされる据え置き型の新”Zuse”シリーズ・アナログコンピューターに優先的にパラメトロンが回されているせいだと思われる。

 このような特徴を持つエンジンに組み合わされるのは、二段無段変速式の遠心圧縮過給機(スーパーチャージャー)で、これはDB601のスーパーチャージャーをコンパクト化し純粋に二段式にしたものである。

 史実のDB605もDB605Lという二段式過給機を搭載したモデルが試作されているので、それ自体はそう難しい物ではなかったようだ。ただ流石に天下のダイムラーベンツでもトルクコンバーターの早期開発・量産は無理だったようで、無段変速には従来と同じく流体(フルカン)継手が採用されていた。

 そして過給機には、中間冷却器(インタークーラー)のブーストシステムとしてMW50水-メタノール噴射装置が組み込まれているが、これも大体クルスが悪い。

 

 

 

 そのおかげでMc205Bはイタリア空軍のMC.205とは形も中身も別物の機体となり……

 

Mc205Bの基本スペック

 ・最高速度:720㎞/h(戦闘重量、水-メタノール噴射使用時。未使用の場合は685㎞/h)

 ・限界降下速度:880㎞/h

 ・航続距離:1500㎞以上(機内燃料のみ)

 ・実用上昇限界:高度12000m以上

 ・外装ペイロード:700kg(両翼下。例:250kg増槽×2+R4Mないしパンツァーブリッツロケット弾)

 ・武装:MG151/20㎜機関砲×4(機首:プロペラ同調×2、主翼:プロペラ同調×2。1丁あたり250発)

 ・装備:Ez42ジャイロ・コンピューティング照準器、防弾バブルタイプ・キャノピー、バスタブ型コックピット周辺軽装甲、層流翼、簡易式与圧コックピット、後方警戒レーダー、セルフシーリングライナー付インテグラルタンク(胴体、主翼)、胴体下NACAタイプエアインテーク、電波高度計連動簡易式慣性航法装置、発展型ヒンメルベッド連動電波誘導装置、自動スラット、”電気回路式プロペラ同調装置(後述)”、自動燃料切替装置(増槽が装備されていた場合、自動で増槽の燃料を先に使用する)など

 

 とまあ中々に贅沢&高性能機に仕上がっていた。

 水-メタノール噴射未使用でも史実の戦時中イタリア戦闘機の最高峰”G.56(DB603搭載のG.55)”の最高速に匹敵し、水-エタノール噴射装置を使用すれば、最高速は史実のP-51Dを優越し、戦時中の米陸軍量産機最高峰のP-47Nに匹敵する。

 もっともこの世界線のDB605Aが、MW50未使用時でも史実のDB605AのMW50使用時よりもハイパワーな高出力エンジン(同じMW50未使用状態なら350馬力ほども上)というのが根本的な理由だ。

 エンジン出力に加えて機体と素性の良さもさることながら、オリジナルのMC.205より効率の良いVDM社製電気安定式可変ピッチ大口径三翅プロペラの採用と100オクタン級のハイオク航空燃料が現在、安定的に入手できているというのも極めて大きい。

 

 何しろ、ルーマニアのプロイエシュティ油田、ハンガリーのナジカニジャ油田は独ソ戦勃発以来大きな攻撃を受けたことはなく、またドイツの同盟国や友好国の扱い、あるいはスラブ人に対する態度は史実とは全く異なるので、極めて友好的な関係にあるのが強い。

 しかもルーマニアとハンガリーの二国、石油の対価としてドイツから積極的に適正価格で兵器購入していたりしているので、軍備は史実よりも近代化・拡大を果たし、実は「小粒だが隠れた実力者」とも言うべき存在になっていた。

 おまけに43年後半からは、ボルネオ島とかスマトラ島のオランダ(リパブリカ・ダッチ・シェル)保有の油田からの石油とバーダー交換で”リビア三国連合(トリニティ)”から石油輸出が始まる予定だ。

 しかもそれは、今や日英の浴槽となりつつある安全な地中海を通ってフランスに運ばれ、そこからパイプラインを通って地続きのドイツへ直接運ばれる手筈になっていた。

 つまり、この世界線のドイツは戦略的に無理をしてまでコーカサスまで油田を奪い行く必要から解放されたのだ。

 

 ちなみにこの壮大なオイルゲームの最初の下絵を描いたのは、現サンクトペテルブルグ大公、つまりまたしても大体クルスが悪い。

 

 ちなみに何気に凄いのは、機首だけではなく主翼の機銃もプロペラ同調式になっていることだ。

 これは主翼のかなり内側、つまり大口径化したプロペラの回転半径の内側に主翼銃も配置していることになる。

 史実のTa152Hも実は主翼のMG151が同じ理由でプロペラ同調式なのだが……コレの意味は案外と大きい。

 普通、主翼銃はプロペラを避ける位置に僅かに内側に銃口が向くように取り付けられ、前方特定の距離で左右主翼の機銃が集弾するように設計される。代表的なのは米軍機だが、前述のP-51Hモチーフな”飛燕改”もこれは同じだ。

 つまり最も弾丸が集中する”集弾()”が存在する。

 しかし、胴体の中心軸に近い部分に機体に並行して機銃を配置すれば、そのような点を作らずとも機体の機首方向へ真っ直ぐ飛んで行く、つまり点ではなく”線”へと飛んで行く。

 これは』点でなく線で狙らえる』ので弾着修正が楽(弾道を見ながら修正できる)になると同時に照準器と位置が近くしかも照準器の射撃軸線と平行に弾丸が飛んでゆくのでモーターカノンのような『同軸射撃』に近いので照準が楽になり、結果として命中精度が高くなる。

 また複数の機銃を集束させるようなものなので、集弾率が高くより濃密な弾幕となり結果的に有効弾(命中弾)が増える事に繋がる。

 

 いいことづくめのようだが、それでも多くの採用例がそう多くないのは、”プロペラの翅と翅の間を通す射撃”となるので、『プロペラ同調装置(シンクロナイザ)』が必要なのだ。そうでもしないと自分の撃った機銃弾でプロペラを吹き飛ばす羽目になる。

 そしてこの同調装置(シンクロナイザ)がかなり曲者で、かつて……いやつい最近(Bf109Gまで)歯車を用いた純粋機械制御式で、複雑で嵩張る物だった。

 それでも機関砲のMG151は物理的な撃針を使わない電気発火式なのでまだ同調装置が作りやすかったが……それでも同調装置自体は機械式だった。

 だが、またしてもクルスは開発の影でやりやがったのだ。

 

『えっ? せっかく機銃が電気発火式なら、制御系も電気(アナログ)回路にしたらどうだ? リレーやメタル管、電解コンデンサでも発砲コントロールくらいなら4丁の統制制御もできんだろ。それにプロペラ制御もエンジン制御も電気演算式なんだから同調制御もやりやすいだろ?』

 

 出たよ鶴の一声……おまけに簡単な概念図(回路図?)すらもスラスラとその場でメモ用紙に書き残していきやがった。

 これで火がつかない技術者はいないだろう。

 かくてMc205Bは前例のない『搭載機銃4丁を全て機体縦中心軸に近い場所に配してプロペラ同調で発砲させる』という前代未聞の機体となった。

 プロペラ軸を通して発砲するモーターカノンが原理的に1門しか搭載できないことを考えれば、それに近い状態で4丁搭載するというのが如何に常識外れか分かると思う。

 特に日英の最新型照準器同様に”見越し射撃”ができるジャイロ・コンピューティング式照準器のEz42との相乗効果は、決して侮ってはならない。

 

 余談ながら、より推進効率が良いのが分かっていてもMc205Bが四翅プロペラを採用しなかったのは、90度間隔の四翅ではプロペラ間が短すぎて同調がシビアになり技術的に難しいと判断されたかららしい。

 

 クルス、やっぱり火力バカかもしれない……トハさんの血でも騒ぐんだろうか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 なんか、まるで呼吸するようにドイツの国益になるというより『ソ連に嫌がらせをしている』感が強いクルスだが、世にも珍しい(確認されている限り一人しかいない)多重転生者であるこの男の前世の一つが、史実と大差ない非業の死を遂げた別世界線の赤いナポレオン(トハチェフスキー)だというのだから、まあ納得できなくもない。

 

 個人兵装火器から戦車、戦闘機のその搭載兵器の開発にソ連から奪い取ったレニングラード改めサンクトペテルブルグの復興と運営、並みの国の戦力を凌駕する強力な私兵軍団の創出に信仰の自由の復活にサンクトペテルブルグ正教の立ち上げ、挙句に多国間戦略的石油取引の青写真を作り、その果てにサンクトペテルブルグ大公に就任……

 

 かつての来栖任三郎、今やサンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルスの首は、確かに現時点までのやらかしだけでも”100万ルーブルぽっち(・・・)のはした金”じゃあお話にならない。

 そして、ソ連の被害額はこの先も大公の命運が尽きるその日まで確定的に増えていくだろう。

 さて、そんな本日のクルスは冬宮殿の執務室で窓の外を眺めながら、

 

「Jumo211Jのエンジン音か……」

 

「? 大公、どうしたんですか?」

 

 するとクルスは小さく微笑み、

 

 

【挿絵表示】

「”10万ルーブルの男”がどうやらご到着のようだな」

 

 現在進行形で賞金額100万ルーブルの男がそう呟いた。

 どうやら、ノブゴロドの戦力は更に厚く、おそらく近々始まるだろう戦いは更に熱くなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてて思ったんですが、ホント大体クルスが悪いw

ちょっとした作者としてのイメージですが、”飛燕改”は『ジェットエンジンやレーダーFCSを搭載してないだけで技術その物は50年代後半の史実日本技術が詰まったオーパーツ機』なんですが、”Mc205B”は『史実ドイツが敗戦の日まで溜め込んでいただろう技術を惜しみなくつぎ込んだオーバースペック機』って感じです。

海面上昇率、旋回性能、運動性能、航続距離で勝り戦闘機としての総合性能は飛燕改が一歩勝ります(馬力は多少低くても500kg近く軽い)が、火力ではMc205Bに軍配が上がるって感じで、パイロット次第では『飛燕改に勝てる、この時期では数少ない機体』です。
まあ、ソ連は四の五の言わずにさっさとYak-9持って来いとw
火力重視は、やっぱりソ連機(特に空飛ぶ防弾版のIl-2)対策ってのが大きいかな?

しかもこの機体、他のイタリア生まれの”5”トリオと同じくメイン開発はサンクトペテルブルグですが、何も製造はサンクトペテルブルグだけじゃないですからね~。
コンポーネント自体は既存のドイツ製、パーツ単位でならほら、もう懐かしい”強制収容所詐欺”の例の工業都市でも大量生産してますしw

Bf109をはじめ、Me262以外のメッサーシュミット系の開発が件のスキャンダルでおじゃん(Bf109は現行のG型で打ち止め)になり、その隙間を埋めるように登場したのがこのMc205Bなのですが、お陰で泥縄式だったドイツの航空機開発ツリーは随分整頓されるみたいですよ?
Fw190は今はA-8準拠が主流で、43年後半には2000馬力級のA-9がメイン生産機になるかな?
多分、D型を試作機作成程度で飛ばして、それを叩き台にストレートにTa-152Hに移行するかも。

夢膨らむ開発構想ですが……最後にトンデモネーの(ただしクルスよりはマシ説)が出てきましたね?w

次回は、魔王様と主治医、そして”あの機体”のお披露目かな~と。

次回もどうかよろしくお願いいたします。

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