転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
唐突ですが、このエピソードを含めてあと2話でノブゴロド篇なこの章はおしまいです。
さて、その顛末とは……
「う、噓だろ……おい、誰か冗談だと言ってくれ。頼むから」
ああ、クルスだ。
一応はサンクトペテルブルグ大公なぞをやっている。
さて、俺はノブゴロド防衛戦の後処理、総統閣下のお膳立てで国際的アリバイ作りの為にジュネーブくんだりまで来たはずなのだが……
「なんだこの面会要請状とパーティー招待状の山は……?」
宿泊施設(一応、国連本部にも宿泊できる貴賓室はあるんだぜ? 俺も知らなかったが)に備え付けられた仮の執務机にうず高く積み上げられた紙束を見て、俺は思わずげんなりしてしまう。
「まあ、当然の帰結でしょうねぇ」
「シェレンベルク……お前、さてはわかっていたな?」
その笑み、愉悦が隠しきれてねーぞ?
仮にも上司を愉悦対象にするとかトンデモネー奴だな、ヲイ。
「ほら、ノブゴロド防衛戦前にハイドリヒ長官が来た事があったでしょう? あの時に少々お話を」
ああ、グデーリアン引き連れてフラっと着た時か。
Ju187のテスト飛行とかふざけたことを抜かしていたが……
「まあ、閣下は今や欧州における話題の中心。ノブゴロド防衛戦が各国から注目されていたことはご存知でしょう?」
「そりゃまあ、値踏みされてるってのは気づいてたさ」
例えば、ヤバくなったらどこに泣きつくか?とかな。
(どうせここで潰されるなら、所詮はその程度の男って判断だったんだろうが……)
悪いがアカ風情に大人しく踏み潰されるつもりは無いがな。
「だからといって戦時下にパーティーやら面談やら縁談やら持ち込まれてもなぁ……」
信じられないことに縁談の申込まで入ってたんだぜ?
それも欧州じゃあ誰もが知るような貴族から。
「戦後ではもう遅いという判断なのでしょう。上流階級や社交界とはそういうものです」
「そういう面倒は、せめて戦後……状況が落ち着いてからにして欲しいものだ」
するとシェレンベルクはニヤついた顔で、
「ならば全て断ればよろしいのでは?」
「……いいのか?」
いや、ちょっと「揉めるとまずいんじゃね?」って俺でさえ思うのも混じってるんだが?
「ジュネーブでの公務としての役目は既に終えています。彼らは彼らの都合を押し付けているだけです。華やかなパーティーや見目麗しい令嬢にご興味ないのでしたら、閣下は気にすることなく冬宮殿にお戻りになるとよろしいでしょう」
正直、助かった。
俺にとっては貴族の社交など煩わしいだけだ。
「後のことは万事、私とNSRにお任せください」
「……ダンケ」
するとシェレンベルク、笑みの種類を変えて、
「いえいえ。閣下はどうか心安らかに」
☆☆☆
「シェレンベルク少将、あれでよろしかったでしょうか?」
退室後の廊下、そう説いて来るのは護衛役兼”虫よけ”としてジュネーブに同行していた”アインザッツ”だった。
「構わんさ。今回の紙屑は、閣下に”自分のお立場”を軽く認識して貰うための余興、いや茶番に過ぎない」
やっぱり暗躍していたのはコヤツらだったか……
「やはり各家は……?」
シェレンベルクは頷き、
「どこもかしこも”二代目雷帝”、”フリードリヒ・デア・グロッセの再来”を取り込もうと必死だ。自分たちに大公が扱いきれると考えているらしいな」
「なんと愚かな……”天を仰せる”とでもおもっているのでしょうか?」
「貴族とはいえ所詮は人間。一皮むけばこんなもんだぞ?」
シェレンベルクはそう苦笑すると、
「とはいえ、戦時下はともかく戦後もずっとこのままという訳にはいかん。お前達も覚悟しておけ」
「ハッ!」
そう敬礼する見かけは幼いが実年齢不詳の少年兵に、
「まあ、今は閣下に可愛がってもらえ。大公は肉体的はともかく精神的にお疲れだ」
こいつ自身が疲れさせた元凶なのにどの口が言うのやら。
いや、マッチポンプは古今東西を問わず諜報業界の基本スキルだった。
「Ja♡」
そうクルスの部屋に入ってゆくアインザッツの背中を眺めながら、
(やはり、奇貨……いや”鬼札”になるのはホーエンツォレルンか……)
シェレンベルクはそう内心で呟くが、
「まあ、あれはあれで厄介なのだが……まだ制御できる分、マシとも言えるか?」
少なくとも”本家筋”は父も兄もドイツの正規軍人だ。
☆☆☆
さて、本来ならウルトラどうでも良い話なのだが……
「やはり来栖の小僧は社交というものをまるでわかっておらんっ! 恐れ多くも大公位を賜ったというのに何という体たらくっ!!」
その日、日本皇国の駐ドイツ大使”大島博”は荒ぶっていた。
そう、彼は親交あるドイツ文学に精通した文化人
まあ、理由が理由だけに納得もしているのだろうが、かといって面白い訳では無かったのだろう。
大島は盟友であるドイツ外務省外交アドバイザーのリッベントロップに連絡を入れ、総統閣下にクルスの態度を改めるよう直訴するように頼んだ。
リッベントロップは「外交におけるパーティーの重要さを理解しないとはとんだ野蛮人めっ!!」と憤慨し、副首相で社交やパーティーの場で懇意にしているゲーリングに連絡を入れてその時を待った。
そして面談は叶ったのだが……
「リッベントロップ君、これは外交ではなく内政の問題なのだが? サンクトペテルブルグ大公領はれっきとした我がドイツの特別自治区だよ」
要するに「お前の出る幕じゃない」と言われたのだが、それを中途半端に理解したリッベントロップは、内務省に掛け合って欲しいと頼んで退席したのだった。
「”レーヴェ”、どうやらリッベントロップ君にはパーティー分が足りて無い様だな?」
NSR長官レーヴェンハルト・ハイドリヒは、ただ苦笑するだけだった。
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そして一方、陰鬱な空気が流れるモスクワでは……
「同志書記長、実際に今回の一件はそう大きな事態ではないのです。現に赤農軍本隊の損害はこれまでの同程度の戦いに比べても極めて軽微と言えるでしょう」
そう一席ぶってるのはラヴィアン・ベリヤであった。
責任の所在を追及され、粛清に怯える首脳陣にとり、きっとベリヤは救世主にでも見えているのかもしれない。
「もしも我々の作戦に問題があるとすれば、赤衛国際革命旅団の戦力値を”
ベリヤは一旦言葉を切り、
「彼らとて最低限の働きは示してくれたのです。自ら身を挺し、己の肉体を障壁とする事で我々正規軍が戦線を離脱するまでの時間を稼いだのです!」
本当に舌と頭がよく回る男である。
つまり、ベリヤによれば「肉壁と被害担当にはなったので、投入する価値はあった」ということだろう。
物は言いよう、安易に撤退と言わず離脱という言葉を使うあたり、実にベリヤらしい。
「彼ら彼女らの自己犠牲と献身に我らは一定の評価をすべきでしょう。確かにノブゴロドを陥落せしめることはできませんでしたが、おかげで明らかになった事もあります」
するとスターリンはこの会議で初めて興味を持ったように、
「ベリヤ君、続けたまえ。何が判明したのだ?」
「はっ! 書記長」
ベリヤは一度咳ばらいをすると、
「ドイツには、早期にモスクワを攻略するほどの余力はもはやないということであります」
という訳で、始めてビジュアル化された”壱の子”ことアインザッツ君とホントお久しぶりな大島君でしたw
えっ? 大島君は今日も元気に”親善大使”しとりますよ?
各地名所旧跡を視察名目で回り(観光旅行と言ってはいけない)、ご当地のグルメを堪能しレビューにまとめつつ、ご当地権力者とのパーティー三昧です。
そして、今日も今日とて堪能な言語能力を生かして「ドイツ文化の素晴らしさ(=ドイツ賛美)」を政治面を排除して世界の主だった言語に訳しつつアピールしとりますw
しかも寄稿、発表されてるのがドイツ宣伝省でないのがミソでして……ゲッベは笑いが止まらんでしょうねぇ~。
皇国外務省と英国外務省は、とりあえず「対独国民感情の改善につながりはしてるな」と苦笑しつつ、英語版をアメリカのドイツ系移民社会を中心に流していたり。
まあ、次回はベリヤくんの奮闘に期待しましょうw
それでは残りも少なくなったこの章ですが、次回もどうかよろしくお願いします。