転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

362 / 439
戦争が政治的にぶっ壊れ始め、戦場が空から物理的にぶっ壊されたエピソードです。





第359話 元帥「マンマミーア」 新王「Dio mio」 空飛ぶ”ホ205/37㎜機関砲”に撃たれたイタリア兵も同じ事を言っていたと思われる

 

 

 

 陸海空合計で参加総兵力50万を超える日本皇国イタリア侵攻軍の三軍統合司令官の名は、”今村仁”。階級は元帥。

 

「儂もとうとう元帥になってしまったか……」

 

 43年4月1日に辞令を受け取りながら半ば呆然とそう呟いた姿が印象的だが、まあ皇国でも最大規模の軍集団を統括するのだから、そこは我慢して欲しいところだ。

 さて、”仏の今村”の異名を持つ温厚な人格者として知られる今村だが、本日は”イタリア解放軍(リベリツォーネ・イタリアーノ)”総司令官のアオスタ公共々頭を抱えていた。

 ちなみにアオスタ公、便宜上階級は”イタリア解放軍大将”であり、統帥権の問題で今村より階級は下だが率いる軍勢は元捕虜の50万と、率いてる規模だけなら今村と同等だ。

 

 ちなみにやはり情報伝達速度などの問題から上陸から二日目の朝にはポリコーロに史実に比べて大幅に機械化された工兵隊と施設隊の尽力もあり「陸上総司令部」が設営され、今村はそこへ移り、出来立てほやほやの臨時総司令官室に訪ねてきたのがアオスタ公だったという図式だ。

 ちなみに驚くべき事実を一つ。

 この司令部を始めとする野戦施設、その多くが軍規格化された”プレハブ工法”様式で設営されている。

 今回の作戦から実用試験を兼ねて実戦投入されており、イタリア攻略戦の”隠れた秘密兵器”となっていた。

 しかも司令部は、独立したディーゼル発電機を備えて冷蔵庫も使えるどころか冷暖房完備だ。

 

 当然、この2人が揃って頭痛に悩まされている理由は、南イタリアで五月雨式に拡大しているイタリア正規軍の投降と”イタリア解放軍”への入隊希望だ。

 はっきり言えば、この戦争に勝てばアオスタ公が次期イタリア国王になるのは確定で、今のイタリア解放軍こそが「次のイタリア王国軍」となるだろう……実は潤沢な食料や良好な待遇だけでなく、そういう見識や打算も上級イタリア軍人達はしっかりしていた。

 当然である。

 ここ数日の戦闘で、一体誰が現行のムッソリーニ・イタリア軍が勝てると思うのだろうか?

 しかし、当然のように現地雇用や徴用のノリでイタリア解放軍に編入するのは無理があり過ぎた。

 そもそも、そのあたりの法的整備、軍規ができていない。

 なので……

 

「数からして一度に受け入れ再編するのは不可能……となれば武装解除した上で、一時的に捕虜として受け入れるしかないでしょうな。そして”イタリア解放軍”に退役志願者が出た場合に随時採用と流布しておきましょう。無論、扱いは国際条約に準拠した捕虜取り扱いを順守させますので」

 

 そして、更に思考を沈降させ、

 

「ふむ。”書類上のみの捕虜”として武装解除、帰る家がある者は護送名目で地域の”イタリア解放軍”の元に送り出し、ある程度の食糧を持たせて帰郷させ、そのまま自宅待機という扱いで良いか。採用審査票でも持たせておけば、軍への再雇用を希望する場合には指標になるでしょうし、また犯罪や不正行為があった場合は無効になることは徹底的に周知した上で」

 

 いや、”自宅待機の捕虜”って前代未聞なんじゃ……いや、それは果たして捕虜と呼んで良いんだろうか?

 

「帰る家の無い者だけをプレハブの臨時兵舎、おっと”捕虜収容所”に収容すれば、大分建屋の節約になるでしょう」

 

 いや”仏の今村”さんや、だからそういう対応をするとね……

 

「Grazie. Maresciallo Imamura(ありがとう。今村元帥)」

 

「せめて今回の混乱と騒動を後世に経験や教訓として残しましょう」

 

 さて、そんな比較的穏やかな空気の中で会談を行ってる最中、野戦司令部ゆえに俄作りで安普請のドアがノックされた。

 

「入りたまえ」

 

 入室し敬礼したのはよく顔を知っているイタリア語に堪能な勤勉な情報将校で、

 

「今村閣下、緊急事態です。”バーリ(イタリア半島南部アドリア海側にある港湾都市。南部では規模が大きい)”が無防備都市宣言を出しました。また、都市守備隊司令官の少将の名で投降と麾下部隊全ての”イタリア解放軍への編入(・・)”を希望してるとのことです。その……」

 

 情報将校は言いづらそうに、

 

”イタリアの新たな盟主、アオスタ新国王(・・・)陛下に恭順と忠誠を誓う”とのことです」

 

 どうやら、やり手が手段を変えてきたようだ。

 無防備都市を宣言した以上、最低限の治安部隊は必要なわけで、最適なのは現地の守備隊に決まっている。

 

「Oh……マンマミーア」

 

「Dio mio(嗚呼、神様)……」

 

 どうやら早速フラグは回収され、頭痛の種が加速度的に増えたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、イタリア半島というのは日本人が考えるよりも狭く小さく、上陸地点のポリコーロからポテンツァまで直線距離なら100㎞もない。

 無論、直線で行けるわけはないのだが……だが、上陸から四日目の朝。

 万全の状態でポテンツァに着いた皇国陸軍三式戦車部隊が見たのは……無数の掲げられた”白旗”だった。

 

 いや、ちょっと待て。

 どうか状況を説明させて欲しい。

 勿論、イタリア軍はここに防御陣地を築いていたのだ。

 だが上陸翌日の午後、制海権だけでなく制空権も取られたイタリア南部上空を、とある皇国製航空機が駆け抜けた。

 晴天の中飛んできたのは、機種に37㎜機関砲を搭載する皇国版A-10みたいな二式複座襲撃機”屠龍”の改良型に、試製が取れて制式採用機となった”零式改対地掃射機”だ。

 どっちもイタリア人が駆逐された北アフリカで、無国籍化した偽フランス人(元フランス人)相手に”フライング・ミキサー”や”フライング・ミンチメーカー”として猛威を振るった機体だった。

 

 しかもどっちも1年前より格段に強化された現行の最新型だ。

 まずは”屠龍()から。

 エンジンを”零式艦上戦闘機三三型”や”彗星三三型(彗星改)”と同じ離陸出力1580馬力、水-メタノール噴射で1750馬力を発生する”金星”の最終型に換装。

 セッティングは彗星改に近い低~中高度重視のハイトルクセッティングで、左右のプロペラが逆方向に回転しトルクを打ち消し合う。

 武装は新型37㎜機関砲の”ホ205(ホ204の改良発展型か?)”。銃口初速725m/s、発射速度は毎分500発。日本人大好きなAPCBC-HEを使用した場合は、500mで垂直50㎜の装甲板を撃ち抜く。装弾数は50発。なにやらやたらと”5”に縁のある37㎜機関砲だ。

 また、装弾数1丁あたり300発のホ103改12.7㎜機銃4丁が”下向きの斜め銃”として胴体下面に集束搭載され、フライパスする際の対地掃射に効果を発揮する。

 ペイロードはなんと左右主翼に最大1.5tである。無論、ロケット弾攻撃も急降下爆撃も普通にこなせる。

 装甲防御はマジに装甲総重量はIl-2並みで、しかも装甲板自体がIl-2と異なり軽量装甲板だし、機体素材はデルタ合板ではなく日本が大量生産している超々ジュラルミンことA7075。おまけに機内燃料タンクは自動消火装置付きのセルフシーリング構造のインテグラルタンクで総合防御力は更に高水準だ。

 

 そして”零式改対地掃射機”

 エンジンを連山と同じ”火星”20番台最終型(中間冷却器付二段二速遠心圧縮式過給機、多点定時燃料噴射。ただし低~中高度重視のハイトルクセッティング仕様で水-メタノール噴射装置使用時は1930馬力)に換装。

 機体左側面に集中搭載される武装は……

 ・(前述の)ホ205/37㎜機関砲×1

 ・二式20㎜機関砲×2(疾風の機銃と同じもの)

 ・四連装毘式水冷12.7㎜機関銃(持続射撃重視の為、水冷式銃身の本銃を採用)

 うん。マジに空飛ぶミンチメーカー(ガチ)だわ。しかも主翼下にお約束の空対地ロケット弾懸架可能。

 

 どちらも皇国軍機にしては速度や航続距離は大きなものでは無いが(そりゃ使用用途を考えれば長距離侵攻能力や高速飛行能力は要らない)が、制空権を確保したことで、マルタ島やギリシャのパトラやザキントスから飛んできたのだ。

 

 更に前提条件を言わなければ不公平だろう。

 重要攻撃箇所であったポテンツァの防衛陣地は、初日から連山や彗星改の継続爆撃を受けていて……まずこれで心の半分が折れた。

 そして上陸から三日目、飛んできたのは爆撃機ではなく空飛ぶミキサーやら挽肉製造機だった。

 

 防空戦闘機が絶滅し(仮に飛んできてもすぐに叩き落され)、大小対空火器が破壊されつくしたポテンツァ上空を突っ込みながら37㎜砲をフライパスしながら12.7㎜機銃をばら撒く機体に、双発大型輸送機の図体にありったけ銃火器乗っけて旋回しながら火力をばら撒く機体……

 

 爆弾で吹っ飛ぶのではなく、仕込んだ対人/対軽装甲散弾ばらまくロケット弾の嵐の後に、こちらの弾が当たらない速度や高度で張り付かれ、集中豪雨のような銃弾で目の前で戦友が挽肉にされるのだ。

 しかもこれは、屠龍改と零式改の弾丸が切れるまで続く。

 

 ポテンツァのイタリア軍陣地に飛来したのは、屠龍改20機に零式改4機。これが上陸三日目の午前と午後に1回ずつ飛来。

 しかもこれのエアカバーについていたのは、あの厭らしい疾風×12機だ。

 この機体、制空任務だけでなく対地制圧任務も普通にこなす。

 つまり、護衛についてきたと思ったら屠龍改や零式改と一緒になって両翼に吊り下げた空対地ロケット弾を乱射してから、防空任務に入るのだ。

 ついでにイタリア機が飛んでこない時は、2級1組のロッテ単位でローテーションを組んで地上掃射してくるのだ。

 まさにイタリア軍にとっては踏んだり蹴ったり……そりゃあ心もポッキリ折れるだろう。

 

 イタリア軍を果たして惰弱と嗤えるか?

 いや、生存本能というものが人間にある限り、それは無粋というものであろう。

 未知ではなくやられていることはわかっているのに、どうやっても対処も対応もできない攻撃を食らい続ける絶望感と無力感……

 

 実は午後の空襲の時に白旗を掲げなかったのは、午前の空襲の被害の甚大さに呆然としていたのとあまりの恐怖で正気を失い錯乱したり発狂したりする集団シェルショックが発生し、その事態収拾と鎮静化に手間取ったからだ。

 

 そして結果として午後の空襲までに必要なだけの白旗を用意できず……僅かに間に合った白旗は、初手のロケット弾攻撃で旗手もろとも細切れになった。

 

 だからこそ、上陸四日目の午前に(皇国から十分な効果があったと判断された為に)空襲が無く、戦車隊が現れた時はイタリア地上部隊は心底安堵した。

 少なくともこれだけ距離が近ければ、誤射を恐れて空襲は無いだろうし、飛行機のように飛ばず速くもない戦車からなら、白旗は確実に視認できるからだ。

 

 そして、日本人は欧州の人間からしてみれば例外的に、あるいは病的にハーグ条約やジュネーブ条約を遵守する事はイタリア軍人にも知られていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今村元帥、イタリア新王アオスタ、仲良く敵味方を問わない汎世界的機関”権力者なのに苦労人同盟”に加盟決定w
なお拒否権は無い模様です。まあ、加盟特典も無いですがw

いや、まあ史実を基にした”仏の今村”っぽい判断ではあるのですが、案の定というかw
判断は間違ってはいないとは思うんですよ。判断は。
でも、日本人的な基準で物事を考えると……ただし、名指しされたアオスタ公改めアオスタ新王もこの崩壊速度は予想外だった模様w

とりあえず、イタリアンノルマは達成しましたが……
だってまだ上陸が始まってから1週間も経ってないんですぜ?
とはいえ、その原因の一つが地味に改良されてる”屠龍改”、そして試製が取れて完成に至った”零式改対地掃射機”の空対地コンボアタックだったという。
そりゃあ、高高度爆撃で高射砲やら対空機関砲やら潰された後にこんなのが飛んできて、上空にまとわりつかれてドカスカ一方的に撃たれたら、イタリア人じゃなくても白旗くらい掲げるでしょうね~。

日本人らしく慰撫から掃討まで丁寧に戦争をやってる皇国ですが、何故か全く計画通りに戦争が進んでない気が……

次回は戦車戦でも描こうかな~と。
どうか次回もよろしくお願いいたします。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。