転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
まあ、ちょっとお久しぶりなパイロット娘×2が登場するみたいですよ?
ドイツ→日本→ソ連と進んできたクリイベ(?)リレー、その次は……アメリカ! ではなく、
「さあ”リア”! 決戦の夜は来たりよっ!!」
「はぁ? ”クリス”、あんた何を言ってるのよ? あと、もしかして乳少し盛ってる?」
ここは今をときめくバルト海の誇る大都市サンクトペテルブルグ、その中でも大公の居城として名を馳せる、共産主義者が蔓延る以前のかつての帝国華やかかりし頃の栄華を取り戻しつつある”
そして、今日は1943年12月24日、つまりクリスマス・イヴ。
本日、冬宮殿ではノブゴロド防衛戦を戦い抜いた戦士たちの慰労会を兼ねたクリスマス・パーティーがサンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルスの主催で開催されていた。
勿論、ただのパーティーではなく「ノブゴロド防衛成功の祝賀会」、つまりは”戦勝を内外にアピール”するためのプロパガンダ向け式典だ。
なので招かれた客は、ドイツ軍/フィンランド軍/バルト三国軍のゲスト参戦各国の重鎮に加え、「華々しい活躍をしたマスコミにとって読者ウケしそうな面々」が招かれていた。
特にサンクトペテルブルグ大公領のご当地軍である”
陣頭指揮を執ったヴァトゥーチン中将を筆頭にカミンスキーなど旅団長級の面々、市民軍航空隊の筆頭教官であり防衛戦ではサンクトペテルブルグ仕様のVG39戦闘機200機からなる市民軍戦闘機隊隊長を務めたロスマン大尉、更に
「ほっといてよ。
「アンタは一体、何と戦ってるのよ?」
先ほど姦しいやり取りをしている、市民軍航空隊きって女流エース、先の戦いで女性パイロットとしてただ二人「ダブルエース=10機以上撃墜」を成し遂げた”クリス”こと”クリスティアーナ・フォン・ホーエンツォレルン”と、”リア”こと”リーリア・リトヴァク”も参戦していた。
厳密に言えば、パーティーの招待状こそ届いたがリーリアは「着ていくドレスが無い」ことを理由に謹んで辞退しようと思っていた。
そもそもリーリアはモスクワ下町の庶民育ちという感じで、いかにもセレブでハイソな面々が集結しそうな「宮殿でのパーティー」なんてトンと縁が無かった。
なので柄にもなく気後れして欠席しようとしたら、何故か自分にぴったりのサイズの純白のパーティードレスを片手に、
『やっぱりリトヴァクと言えば、パーソナルカラーは白一択よねっ♪』
という謎のセリフと共に親友枠で空中でも”
そして、本日も「ドレスの着方なんてわからないわよ」とリーリアがゴネると、クリスティアーナは予めリーリア言い訳(最後の抵抗)を予想していたのか、引きつれていたメイド隊に命じて強制お着換えタイムと相成った。
慣れてるお嬢様、
そしてそして、リーリアは生まれて初めてリムジン(しかもマイバッハ・ツェッペリン)に乗るという経験と共に”冬宮殿”に強制連行される羽目になっていた。
「私にまでこんな格好させて、ホント何がしたいのよ?」
「もっちろん、フォン・クルス大公とお近づきになりたいのよっ♪」
そして、クリスティアーナには
「ほら、”大公妃”って空席だし、私ってば家柄だけはいいじゃない? というか、血筋や名門って意味じゃあ欧州屈指でしょ?」
フォン・ホーエンツォレルン=フォン・プロイセン。クリスティアーナは滅びたプロイセン帝国の
ついでに言えば、祖母はコーカサス副王であった帝政ロシア大公家の出身だ。
「そういう意味では私って、かなり正妃を狙えるポジションに居ると思わない? 大公殿下からの覚えもめでたいし」
クリスティアーナ(とリーリア)は、クルスと面識自体はあるのだ。
(なんか。お目出度いのは
「それにほら、クルス大公って別にお稚児さん趣味Onlyって訳じゃなくて、結婚歴あるから”
(未だにクリスが私より1つ年上ってのが信じられないのよね……)
※クリスティアーナ=1920年生まれ、リーリア=1921年生まれ。
「それにほら、大公殿下が大公のさらにその上、国王とか皇帝とか目指したくなったら、私の血筋って絶対に役立つし……まあ、現実的な権力や財力はそれほどじゃないけどさ」
世知辛い話である。
「ん? フォン・クルス大公が、そんな”
「なにその某”ハルヒ”さんみたいな言い回し」
「ハルヒって誰よ?」
「あー、いやこっちの話。えっと、前にもそんなこと言ってたよね? 確か”神罰の地上代行者”だったっけ?」
リーリアは頷き、
「ロシア人の血が教えてくれている気がするのよ。大公は”そういう類の存在”だって。なんていうか……元ソ連人の私が言うのもなんだけど、神罰を人の姿にしたような『神を信じぬ者の
流石は史実でも”この世界線”でもエースになった女、実に良い感性をしていた。
「んー……そこまでフォン・クルス大公って人外っぽい?」
「まあ、この感覚はドイツ人には分かりにくいかぁ……”
うん。やっぱりリーリアも根っこはソヴィエト人だとわかるロマノフ感だ。
「ロマノフ王朝は極論すれば”弱い”から負けたし滅んだの。強き者が、勝ち残った者が”新たなルーシ”を作る。
これもモンゴル人の西方侵攻でロシアの大地が蹂躙されつくされ、2世紀に渡り被支配民となった”タタールのくびき”の呪いだろうか?
ロシア人も中国人もその影響が強い民族も、特に旧西側諸国から「国際ルールを守らない」と非難される事が多いが、語弊はあるが……彼らは別に悪気はないのだ。
そもそも”ルール”に対する考え方が違う。
・弱者は強者の決めたルールに従わなければならない
・強者は弱者の決めたルールに従う必要はない
なぜなら、強者とは即ち『ルールを定め、他を従わせる力がある者』だからだ。
即ち、彼らの根本的な発想は、とても単純な”パワー・ポリティクス”なのである。
だからこそ、自分達が弱いうちは「犬のように従順に尻尾を振り」、自分たちの方が相手より強いと判断すれば平然と
それは近代に始まったことではなく、今現在もそれが続いている。栄枯盛衰の度に大量の流血と文化破壊を伴い、かの地の歴史はその繰り返しだ。
「でも、フォン・クルス大公はロマノフ家とは、根本的に違う。苛烈さだけじゃないわね。凄味? それとも殺意? ともかく”満たされて豚のように肥え太ったロマノフ王朝”とは絶対的に違うのよ」
これはきっと、元赤軍の”裏切者”達がなぜ熱狂的に、あるいは狂信的にクルスを”信奉”するのかが垣間見えてくる。
とても単純に言えば、「強さこそが正義」であり、それが絶対であればあるほどより強固になってゆく。
「多分、フォン・クルス大公は、富も権力も必要と思うならクリスの家門に頼らずとも、自力でどうにでもなるわよ、それこそ王位でも帝位でもね。だけど、きっとそれらを欲するとしても”手段”であって”目的”ではない気がするわ」
「むぅ~っ! なんかリアの方が大公殿下を理解してるっぽい!」
「いや、これは民族固有的な感覚だし……」
「でも、大公って元日本人じゃん!」
「う~ん……そうなんだけど、どうもクルス大公って日本人っぽくないというか、そこはかとなくルーシ的根源存在というか……なんでだろうね?」
クルスは多重転生者であり、その前世の一つにキーがあるのだが……まあ、それにリーリアが気づける訳は無いが。
「それはともかく、本気で大公の
リーリアはロシア人としての感覚が強すぎて、逆に『クルスを決して恋愛対象として見れない』からこそ、客観的に理解できるのかもしれない。
「んー……それは分かった。分かったけど、リアはそういう相手、居ないの?」
「今のところ、アテは無いわね」
「じゃあ、このパーティーで見つけてみたら? ほら、ドイツのイケメンパイロットとかも来てるしさ」
「まあ、考えておくわ」
気の無い返事のリーリアだったが、もしかしたら意外な出会いが待っているのかもしれない。
先は分からないが、”冬宮殿のクリスマス・パーティー”が始まろうとしていた。
という訳で、お久しぶりのクリスティアーナ&リーリアの女流パイロット・コンビの登場です。
それにしてもリーリアのクルスに対する”分かりみ”が強いw
まあ、ユダヤ系ではあるんですが彼女もまた”生粋のロシア人”という事でしょう。
そして、クリスティアーナ(転生者)は、やっぱりどこか”アホの子”臭いw
とりあえず、次回から(多分)始まるであろう冬宮殿のクリパでの健闘を期待しましょう。
まあ、ヒトラーとハイドリヒは反対はしなさそうな雰囲気はあるんですが……クルスの行動と思考がマジ作者にも読めないしw
という訳で、次回はサンクトペテルブルグ大公フォン・クルスの登場予定です。
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次回もどうかよろしくお願いいたします。