転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
まあ、相変わらず”アカの天敵”として元気にやってるようですがw
さて、基本的にサンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルス(Ninseblau von Cruz dir Erzherzog Sankt Petersburg)にとりクリスマスとは休暇を意味せず、むしろ繫忙期であった。
まず、”
これはどちらかと言えば大公というよりサンクトペテルブルグ正教の
そして、今年は更に色々あったのだ。
まず、ドイツ開発のおそらくは『レシプロ戦闘機の一つの到達点』になるであろう最新鋭高高度対応制空戦闘機”Ta152H”シリーズの開発を終えた”クリムト・
将来性を考え今後のジェットエンジン開発が軸流圧縮式一択になったドイツでは、非主流派になってしまった遠心圧縮式ジェットエンジンの大家”ハンゲルグ・フォン・
また、折よく、あるいはタイミングを合わせるように日本皇国から門外不出のはずのいわゆる”超々ジュラルミン”、”A7075”の配合開示と製造許可が『サンクトペテルブルグ限定製造』で打診が来たのだ。
無論、善意でもなく無料でもなく、『ギリシャからのボーキサイト(アルミの原材料)輸入』が条件だった。
要するに『日本皇国をサンクトペテルブルグとギリシャの間に挟んだ”
ギリシャが埋蔵、日本が採掘、サンクトペテルブルグでアルミ合金への精錬というスタイルを望んでいるのだ。
これはイタリアに荒らされたギリシャ国内の復興資金の確保や将来に向けた一次産業の育成という側面もあるが、実はもう一つの皇国には狙いがあるように思える。
発電量が大きく、アルミ精錬に必須な電力供給に余力のあるサンクトペテルブルグを「世界屈指のアルミ供給サプライヤー」にしようと目論んでいるように見えるのだ。
アルミの精錬は基本的に”ホール・エルー法”という電気精錬が一般的で、これには膨大な電力が必要となる。
エネルギーコスト云々以前に、その必要量を確保できる発電量が確保できる国が今のところ少ないのだ。
戦後は一気に世界のアルミ合金需要が拡大することは目に見えているので、「奪い合いによるアルミの価格高騰」が起きないように少しでも手を打っておく必要があったのだ。
特に航空機や軍需品に使われるような高精度・高強度のアルミ合金は戦略物資になりやすいのだ。
経済破綻しやすいギリシャの財政健全化は復興以後も確かに重要だが、『別に世界平和は望んでないが、対立構造を内包しても(明確な国家間対立もまた秩序であるという考え方)”世界の安定化”は望んでいる』というスタンスの日本皇国としては、不安定化要素は一つずつでも潰しておきたいのだろう。
まあ、『日本皇国の割とエグい胸の内』はいずれ書いてみたいものだが……
とにかく、クルスの元には航空機設計者のタンク博士、エンジン技師のオハイン博士、そして航空機に最適なアルミ合金という手札が揃ってしまったのだ。
これで大人しくしているクルスな訳もなく、ついに『サンクトペテルブルグ型ジェット要撃機』の開発が1943年12月に大車輪で動き始めたのだ。
そして、クルスもその開発計画にオブザーバー、いやプロジェクト責任者として参加しており、彼の仕事を順調に増加させていた。
というか、どうも面白い事が起きていたのだ。
さて、以前クルスはハイドリヒと”MIG15bis”をサンクトペテルブルグで作るという話をしていたが、タンク博士とオハイン博士が合流し、更に超々ジュラルミンが解禁された事でイメージが増大したのか……
(ん? これだけ集まればMIG15どころかアフターバーナー無しの”
ちなみにMIG15と17の外観的違いは、主翼部分(後退角が全体的に大きくなり、途中で角度が変わる)、主翼上の境界フェンスの数が増加(2枚→3枚)、
実はMIG15、高速域でかなり挙動が不安定な機体だったので、運動性とトレードオフする形で安定性を増す方向性で完成した”MIG15の改良型にして完成形”がMIG17という訳である。
そう、まだ設計図どころか概念図しかない筈の”ドイツ空軍次世代単発ジェット戦闘機”、開発コード”Ta183”は図面段階からブラッシュアップが開始されたようだ。
そう、1945年にサンクトペテルブルグの空を飛ぶ予定の”ヒュッケバイン”は、ますますその完成度を上げ、より強力に何より実用的になってゆくようだ。
☆☆☆
他にも大公としての通常業務や交渉事や案件を抱えており、日々多忙にして充実した日々を特に12月は過ごしていた。
ちなみに1943年12月24日の”
どうやらサンクトペテルブルグ四大聖堂は、持ち回りで『枢機卿猊下を招いた盛大なクリスマス・ミサ』を開くことになったようだ。
幸いと言うべきか?
今年は「無きロマノフ帝ニコライ二世が現れてクルスに自らの王冠を被せる幻視が見えた」という何やらオカルトじみたイベントや劇的な演説があったわけでは無く、
『我が治めし地に住む民よ、今年はどのようなクリスマス・イヴを過ごしているだろうか? 家族と共に過ごせているか? 愛する者と共に居られているか? 誰に怯えることなく、祈りを捧げられているか?(Жители моей страны, как вы проведете Рождественский сочельник в этом году? Проведете ли вы его со своей семьей? Со своими близкими? Можете ли вы вознести свои молитвы, не боясь никого?)』
今年はただただ『民に語りかけるような、あるいは慈雨が渇いた土地に降り注ぐような演説』だった。
クルス本人としては
「いや、激しいシャウトはちょっと前にやったばかりだろ? いつも同じ芸風じゃあ、大衆に飽きられちまう。政治ってのはある意味、”ショウ”だろう?」
ということらしい。
その発言はまさに政治家のそれであるのだが……いや、存外にこういう”清濁併せ吞む裏と表を使い分ける本質”こそが、「強さの一つ」として認識されているのかもしれない。
根本的に言えば、クルスにとって”宗教は政の一手段”に過ぎない。
実は、四大聖堂主教たちもそれを心得ている。
むしろ、だからこそクルスを信頼も信用もしているのだ。
クルスの統治には、「民心の集束とケアに自分たちのような宗教は必須」なのだと理解していた。
まず、前提として彼らは「共産主義化した祖国に不要とされ粛清の憂き目を見た者達の生き残り」だということだ。
そして、クルスは「必要だから信仰の自由を保障し、信仰の自由を守る」のだ。
正教徒であるかどうかは問題ではない。
いやむしろ、「正教徒
それは裏を返せば「必要無くなれば再び切られる」事の裏返しでもあるのだが……
(ふむふむ。枢機卿猊下の治世には、この先も我らの協力が必須だということですな)
「ほっほっほっ。重畳重畳」
今年のクリスマス・ミサを取り仕切るカザン大聖堂主教は、”イヴの演説”を続けるクルスの背中を、上機嫌に見つめながらそう小さく呟いた。
四大聖堂主教は四人とも、あの忌々しい聖職者を悉く殺したソ連の”
故に人を見る目、見抜く目は相応にある。
(確かに枢機卿猊下は正教徒ではない。だからこそ、”宗教の役割”という物を教徒としての主観ではなく、為政者としての客観として捉えられる……)
「そうであるがゆえの”我らが
サンクトペテルブルグ大公フォン・クルスの統治とは即ち、「ソ連で否定された生き方の肯定」であるのだから。
それは同時に「前統治者(レニングラード時代)の全否定」を意味し、ルーシ思想的には全く正しい行動なのだ。
つまり、フォン・クルス大公の施政が続く限りサンクトペテルブルグ正教が不必要となることはない。
何よりも素晴らしいのは、それを実現できるフォン・クルス大公のカリスマ、いや……”ルーシを体現するような在り方”だろう。
フォン・クルス大公の姿勢は、皮肉にもある側面において「皇帝が皇帝たらんとしていた古い時代のロシア的」であるともいえる。
☆☆☆
とまあこんな感じにクルスのクリスマス・ウィークは過ぎていき、上記のカザン大聖堂におけるクリスマス・ミサの後に”冬宮殿”でのクリスマス・パーティーとなったのだ。
クルス的には休暇やパーティーを楽しむというより、「内外に向けたプロパガンダの一環」をこなすという意識の方が強いが。
何しろ、クリスマス・パーティーの前に組み込まれたのは”叙勲式”だ。
ドイツ軍人の階級に干渉するのは横紙破りもいいとこだが、”サンクトペテルブルグ
サンクトペテルブルグ
なので、叙勲も昇進もクルスが決定できる。
ただ、早すぎる昇進は組織的に色々と問題が出やすいので、ノブゴロド防衛戦参加者には”ノブゴロド防衛従軍勲章”の受勲と
その叙勲式の後に企画されたのが、件の防衛戦参加者の慰労会をクリスマス・パーティーで……
「やあ。お嬢さんがた、クリスマスの夜を楽しんでくれているかな?」
そして、運命は動き始める……のか?
という訳で、今年のクリスマス演説は基本的に穏健、そしてそのまま”
うん、それにしてもタンク博士、オハイン博士、超々ジュラルミンが揃ったことで、まだ図面段階のTa183が着々と強化され、何やら”フレスコA”っぽい機体になりそうな……?
そりゃあ武装や電子機器や照準器はドイツ式になるんでしょうけど……うん、ほぼほぼオーパーツ扱いされそうな機体になりそうな予感w
まあ、それもちゃんと遠心圧縮式ジェットエンジンが完成できればの話なんですが。
さすがのクルスとサンクトペテルブルグでも一筋縄ではいかないか?
さて、無事にラストでクリスティアーナ&リーリアとエンカウントできたっぽいですし、果たしてどうなることやら。
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