あのベジータが敗北を喫した。しかし敵の正体は分からない。

謎めいた敵を追って、ベジータと悟空は時間を超えて過去に戻るのであった••

※pixivとのマルチ投稿作品です。

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ベジータを倒せし者

10月15日の午前7時。突然、悟空の家にベジータがやってきた。これは実に珍しいことだ。

 

 

ベジータ「カカロット。頼みがある•••。まずは俺の話を聞いてくれ」

 

寝惚け眼の悟空は、取り敢えずベジータを家の中に入れた。ベジータは神妙な面持ちである。

 

ソファーに座ったまましばらく黙っているベジータ。意を決して悟空に昨日の出来事を打ち明ける。謎の戦士に一撃でやられてしまったという衝撃的敗北の一部始終を•••。

 

 

悟空「なっ!ベジータが一発で負けただって!?一体、誰だよ相手は」

 

ベジータ「ちっ。静かにしろカカロット。残念ながら敵の顔は見とらん。何しろいきなり殴られたからな•••。とはいえ恐るべき戦闘力の持ち主だったことは確かだ」

 

 

事の成り行きを説明するベジータ。話は以下のようなものだった。

 

 

昨日は珍しくブルマの元に帰ってきたベジータ。修行の疲れを癒すために寝室に向かった。すると寝室のドアの向こうからブルマのタダならぬ艶めいた声が聞こえてきた。

 

ブルマ「ねえ••抱いて?ねえキスしよ••ねえったらねえ」

 

ベジータ「な••」

 

◯◯◯

 

聞き役の悟空は信じられない。

 

悟空「し•••信じらんねえなあ。ブルマが浮気すっかな?本当かよそれ」

 

ベジータ「フン••。ブルマの奴は覚えてないとシラを切りやがるがな。俺は確かにその声を聞いた」

 

 

◯◯◯

 

話は続く。そこで激怒したベジータは思い切りドアを開けたという。

 

ベジータ「誰だぁ!人の部屋で何してやがる」

 

しかしベジータはイキナリ腹に強烈な一撃をくらい、そのまま倒れこむ。

 

ベジータ「ぐ••ぐっ。き、貴様〜」

 

ベジータは顔を上げて起き上がろうとするも、あまりに強烈な一撃だったがために敵の顔を拝む前に意識を失ってしまった。

 

ブルマ「ちょ!ベジータ大丈夫!?」

 

意識を失っていくベジータの頭の中では、ブルマの声だけが何度も響き渡った••。

 

これが昨日ベジータを襲った出来事であった。

 

 

ブルマの浮気。そして浮気相手の間男に負けてしまうという、想像を絶する屈辱。意識を取り戻したベジータは、ブルマと口も聞かずそのまま家を出てしまったという。

 

◯◯◯

 

ベジータは悔しさで唇を噛みしめる。

 

ベジータ「間男のクセに恐るべき戦闘力だった。しかしあれで俺に勝った気でいると思うと許せん」

 

 

ベジータの話は謎が多かった。まず敵の正体が判然としない。

 

悟空「不意打ちとは言え、おめえを一撃で倒すなんてな••。顔は見れなくても気は感じただろ。ど、どんな奴だ?ビルス様か?ウイスさんみてえなんか?」

 

ベジータ「違う!今まで感じたことのない気だった。あんな攻撃的な気を発散してる奴に出会ったのは初めてだ。何より殺気が凄まじい•••」

 

 

悟空の顔が険しくなる。かつてない恐ろしい敵がベジータを襲ったと見受けられた。

 

 

ベジータは悟空に一枚の紙を見せる。そこには『すまん。許せ』と書かれている。

 

悟空「なんだこれ」

 

ベジータ「これが奴が現場に残してった置き手紙だ。ふざけやがって•••。人の妻に手を出した挙句、俺を殴りつけて許されると思ってるのか」

 

置き手紙をクシャクシャに丸めるベジータ。

 

 

ベジータ「あれから奴の気はもう宇宙のどこにも感じられない。あれほどの達人だ。おそらく、この宇宙ではなく別の宇宙から来た猛者なのだろう。もはや奴を探すことも困難だ」

 

敵の正体は第七宇宙以外からの来訪者というのがベジータの推測である。

 

 

悟空「それで•••オラに頼みってなんだよ」

 

ベジータ「頼むカカロット。ブルマが管理しているタイムマシンをここに持ってきて欲しい。それが奴の正体を突き止める唯一の手段になるはずだ」

 

 

かつてセルが、未来から過去に移動する際に使用したタイムマシン。これがポイポイカプセルの状態でブルマの家に保管されているのだ。ベジータはこのポイポイカプセルを、ブルマに黙って持ってきて欲しいという。

 

 

悟空「そんなことはブルマに頼めよベジータ」

 

ベジータ「俺はブルマとは会えない!話すこともできない。だから、お前に頼むしかないんだ」

 

いくらブルマの旦那に頼まれてるとは言え••。事実上の窃盗行為なので悟空は悩む。

 

 

ベジータの説得は続く。

 

ベジータ「お前だって、俺を倒した猛者と戦ってみたいはずだ。カカロット!」

 

悟空「だけどオラがブルマに怒られちまうぞ」

 

ベジータ「俺を倒した野郎はその気になれば銀河だって消せる。そんな奴を放っておく気か。また来るかもしれんぞ」

 

確かにベジータを倒すほどの敵であれば、正体を突き止めねばならない。地球、いや宇宙の危機でもある。悟空は渋々ながら承諾した。

 

◯◯◯

それから約1時間半が経過した。

時は10月15日午前8時50分。

 

孫家の前の庭に、巨大なタイムマシンが置かれている。悟空はブルマの秘密の部屋から、無事にポイポイカプセルを探し出したのだ。

 

悟空「いや〜探すの大変だったぞコレ」

 

ベジータ「よくやった。これで奴の正体を突き止められるぞ」

 

 

悟空とベジータはタイムマシンのコクピットに乗り込んだ。

 

悟空「でもベジータ。どうやって動かすんだ」

 

ベジータ「ち••。説明書は無しか。だが簡単そうだな。このダイヤルを弄ればいいんだな」

 

ベジータは鍵を回し、ダイヤルを昨日に設定してスイッチを入れる。

 

するとタイムマシンが起動。操作パネルが眩く光る。様々な機器が作動しだす!

 

 

悟空「うわわっ。すげえな!」

 

悟空らを取り囲む周りの景色がグニ〜っと歪んで、そして元に戻った。

 

 

ベジータ「ふうっ。動いた。簡単だったぜ」

 

悟空「でも景色はなんも変わってねえぞ。これ本当に昨日に来たんかな?」

 

 

悟空がキョロキョロと景色を眺めていると、家の玄関からチチが出てきた。タイムマシンを見るなりコクピットにいる二人に怒りだした。

 

チチ「なんだコレ!邪魔だぞ。片付けてけろ」

 

コクピットの中から返事をする悟空。

 

悟空「わりぃチチ。今すぐに片付けっから。ところで今日は何日で今は何時だっけ?」

 

チチ「ん?今は14日の朝9時だぞ。どした悟空さ。大丈夫かだか?」

 

 

ベジータは拳をグッと握りしめた。

 

ベジータ「よし!昨日に来たんだな」

 

チチ「んじゃあ、とっととそれ片付けてくれな。洗濯物干すのにじゃまだべ」

 

チチは家の中に戻って行った。

 

 

外に降りてタイムマシンをポイポイカプセルに戻し、ポケットにしまうベジータ。

 

 

ベジータ「よし。後は俺の家に戻って、奴が来るのを待ち構えるだけだ」

 

 

一瞬で西の都のカプセルコーポレーションへと移動した二人。そして事件が起きたというブルマ家の寝室の中へと入っていく。

 

 

悟空「おおお•••。ちょっとドキドキすんな〜」

 

ベジータ「カカロット。お前はそのクローゼットの中に隠れてろ。気は消しておけよ。敵が察知するかもしれんからな」

 

悟空「なんかオラが間男みてえだな」

 

悟空はベジータの指示に従いクローゼットの中へと隠れる。そしてベジータはドアの前で仁王立ちして、間男が現れるのを待った。

 

 

ベジータ「いつでも来やがれ••。昨日のようにはいかんぞ」

 

 

そこに誰かがガチャリとドアを開けて寝室に入ってきた。ブルマだ。しかし彼女は酔っ払っている。

 

ブルマ「あ〜ら。ベジータじゃな〜い。珍しいわね、この時間に戻るなんて。どうしたの〜」

 

ベジータ「ブルマ•••お前は本当に一人か?間男と一緒じゃないのか•••?」

 

 

ベジータの言動に呆れるブルマ。

 

 

ブルマ「間男って誰よ?見て分かるでしょ〜。私は一人よ〜?」

 

ベジータ「分かったが、なんで朝から酔っ払ってるんだ•••」

 

ブルマ「旦那にほっとかれてる妻は寂しいのよ•••」

 

 

クローゼットの中から隠れて部屋の様子を伺っている悟空は困惑した。

 

悟空「な•••なんだこの展開は。オラ、なんか見ちゃいけねえものを見てる気がすんぞ••」

 

 

そんな悟空の気も知らずに、酔ったブルマはベジータに迫りまくる。

 

ベジータ「や•••やめろブルマ。離れろ!これから恐るべき猛者と決着をつけなきゃならん。そしてお前の目を醒ましてやる!」

 

ベジータに抱きつくブルマ。

 

ブルマ「もう〜。ベジータったらそんな話ばっかり••。ねえ••抱いて?ねえキスしよ••ねえったらねえ」

 

完全に想定外な展開に大いに焦るベジータ。

 

ベジータ「ば•••ばか!やめろ。カカロットがそこから見てるんだぞ」

 

ブルマ「んー。何を照れてんの〜?可愛い!」

 

ベジータ「‼」

 

その時、寝室のドア越しに恐るべき殺気を発散する強者の存在を感じたベジータ。

 

 

ベジータ『これだ!この気こそ奴だ!ついに来やがったな。相変わらず恐るべき戦闘力を発散させてやがる•••。何よりも殺気が凄まじい!』

 

その殺気の主はドアを開けて部屋に乱入してきた。

 

「誰だぁ!人の部屋で何してやがる」

 

部屋に乱入してきた敵の剣幕が凄まじいために、恐怖を感じたベジータ。イキナリ、敵の腹に強烈な一撃を入れてしまう。

 

敵は堪らず腹を抱えて蹲ってしまった。

 

 

「ぐ••ぐっ。き、貴様〜」

 

 

ベジータはその姿に見覚えがあった。自分である。

 

ベジータ「こ、こいつは•••俺だ!昨日の俺じゃないか!じゃあ•••まさか•••。俺を倒した敵の正体は俺だったのか!?」

 

ブルマ「ちょ!ベジータ大丈夫!?」

 

 

突然に腹を殴られた昨日のベジータは意識を失ってしまった。

 

ブルマ「ん•••んー!?私が酔いすぎちゃってるのかしら••。ベジータが二人いるように見えるわ〜••」

 

ベジータ「生まれてこのかた感じたことのない気だと思ったら•••まさか俺自身の気だったとは••」

 

意識を失った昨日のベジータを見下ろしながら、今日のベジータは思わず寝室にあった紙に『すまん、許せ』と書き置きをして逃げてしまった。

 

一部始終を見ていた悟空は唖然とした。

 

 

悟空「オ•••オラは何しにここに来たんだ」

 

 

史上最強の敵と戦うつもりでいたのに、寝室のクローゼットに一人取り残されてしまった悟空。ゆっくりとクローゼットから出てきた。

 

ブルマ「あれ?孫くんがなんでここから出てきたの?私、相当ひどく酔ってるみたいね•••」

 

 

 

意識を失った昨日のベジータをそのままにして家を出た悟空とベジータ。

 

外は涼しい風が吹いている。二人は、なんとも言えない寂寥感を抱えていた•••。

 

 

ベジータ「付き合わせてすまなかったなカカロット•••」

 

悟空「気にすんな•••」

 

 

二人は虚しい気持ちでタイムマシンで15日へと戻って行く•••。

 

 

 

おしまい

 

 

◯◯◯

 

ドラゴンボールに登場するタイムマシンは、時間軸を分岐させて未来を変えちゃうタイプなので、本来こんな感じにはならないと思われますが•••

 

今回は過去に遡っても、未来を変えられないタイムマシンということにして書かせてもらいました。


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