どもども。まず最初に、誤字の報告、本当に助かります。感謝感謝、です。
ではあらためて、読んでくださってる方、お気に入り付けてくださってる方、感想くださる方、本当に有難うございます。
他に沢山華やかなお話がある中、非常に地味なこのお話が、前回まででついにお気に入り100件を超えました。その後もじわじわ増加中で、本当にうれしいです。
さて、今回は、林間学校編、後編の前編です(ナンノコッチャ)
失礼、わかりにくいので後編① です。
林間学校二日目、果たして留美は、無事に八幡たちに会えるのでしょうか。
なんだか、
目が覚めた時、一瞬いつもと違う視界に混乱した……天井がすぐ目の前にある。二段ベッドの上の段って結構高いんだな。
そう、昨日から、林間学校で……。ようやく頭が働き始める。部屋の時計を見ると、まだ五時を回ったばかり。仁美たち四人はまだぐっすりと寝ているようだ。昨日、遅くまで起きてたみたいだし。
他のみんなを起こさないように、静かにベッドのはしごを降り、カーテンを小さく開けて窓の外を見てみる。外はすっかり明るくなっているけれど、太陽はまだ昇ってきたばかりのようで、林の木々が長い影を作っている。
予定では、今日、日中は自由行動のはず。それから、夜に肝試し。自由行動も肝試しも、基本的には班ごとの行動だ。この部屋の四人と一日中一緒……。正直、気が重い。でも、今日を乗り切れば、明日はクリーン活動(ゴミ拾いとか掃除)をして、帰るだけだ。そう考えて、どうにか気持ちを奮い立たせる。
**********
朝食は簡易なバイキング形式で、クラス、男女関係なく、好きなもの同士で食べて良いとのことで、みな大騒ぎで食べている。私は、窓際の一番端の、外の景色を眺めながら食べられる席に座った。食堂を見回してみるが、八幡たちは居ない。どうやら朝食は一緒ではないようだ。その事をちょっとだけがっかりしている自分に驚いた。どうやら私は、あの人達が、その、嫌いでは……無いみたい。ふふ、変なの。
ふと気が付くと、もう半分以上の子たちが食事を終えて、食器を返し、部屋へと戻っていく。私の部屋の四人も、食堂を出て行くところだった。私は、残っていたパンを口に押し込むと。少しだけ急いで食器を片付けた。
**********
御手洗いを済ませて部屋に戻ると、もう誰も居なかった。食事に出る前に、出かける準備を済ませておいたのだろう。多分だけど……わざと。私を置いてけぼりにするために。
さすがに凹んだけれど、とにかく仁美達を追いかけなくちゃ。素早く手荷物を用意し、首からカメラを下げ、すぐに部屋を飛び出した。
飛び出した……けど。走り出そうとしていた足が止まる。……飛び出して、追いかけて、それで? 彼女たちに追いついたとして、なんて言うの……?
それでも、私はのろのろと歩き出した。追いつけなくたっていい。むしろ、見つけられないほうがいいのかもしれないな、なんて思いながら。
そんな事を考えながら歩いていたのに、案外簡単に四人を見つけてしまった。正面玄関から出て右手の、本館から少しだけ離れた林の中に、やや大きめの東屋があり、そこから森ちゃんと仁美の声が聞こえて来る。おそらく、由香と友ちゃんも一緒だろう。
たった今まで会いたくないな、なんて考えていたくせに、それでも四人に追いついたことにどこかホッとして声をかけようと……
「それにしても、鶴見、調子に乗ってるよねー」
そう言った仁美の声に、思わず木の陰に隠れてしまった。
「せっかく葉山さんが声かけてくれてんのに、『別に興味ない』とか言って、どっか行っちゃうしさ」
「そそ。相手してらんない、みたいにさ。でも、あの、なんだっけ、雪なんとかさん? 目が超怖くなかった~? やばいよね、あれ」
「わたしも怖かった。目、合わせらんなかったもん、あとゾンビみたいな目の人も」
「ゾンビみたいとか笑えんだけど」
「でもさー、私、見ちゃったんだよねあの後」
何か思わせぶりに森ちゃんが言う。
「え、何?」
「それが、ウケんの。鶴見、あいつ泣いてたんよ」
……一瞬、頭が真っ白になった。
「あいつ、たまたまあたしから真っすぐ見えるとこに立ってたんだよね。で、何となく見てたら、俯いたまんまで、涙ポロポロ流しながらなんかボソボソ言ってんの」
「なっ、カッコ悪……」
見られて……た。 ……あんな
足が震える、目に涙が溜まってくるのが自分でもわかる。いつも私の事なんか見ないくせに、どうして、あんな時だけ……。
「じゃあ、あの怖いおねーさんに、『ハブられて悲しいよー、えーんえーん』とか言っちゃってたりして、ぷ」
「フッ、誰よソレ」
「だいたい鶴見もさー、藤沢んときの事、あやまってもこないじゃん。それじゃ、こっちだって終わりってわけにいかないよねー」
そう、私は、今までの子たちと違って、「何となく」ハブられたわけじゃない。こんなの、幼稚だと言ってみんなを馬鹿にしたんだ。 ……直前まで、自分も同じ、幼稚なことを、馬鹿な事をしていたくせに。
だから、私に対する嫌がらせは、今までみたいに自然には終わらないだろう……もしかしたら、ずっとこのままなのかな……。
でも、じゃあどうしたら良い? みんなに謝るの? 私が間違ってた、って。
……嫌だ。絶対に嫌だ。
それは、あの日みんなが泉ちゃんにした事を許すって事だ。 ……あの時、私が泉ちゃんを見捨てたことを許すって事だ。そんな事、できない……よ。
ポタッと、抑えていた涙が落ちる。私、また泣いてる。かっこ悪いなぁ、私って。
「あ、テニスコート、もうそろそろ使える時間になるよ」
そう言って由香がぴょこんと立ち上がる。
「んじゃ、行こっか」
「あー、鶴見は?」
「来ないんだからほっとけば。自由行動は『好きな人同士で組んで下さい』だしねー」
「あはは、じゃあしょーがないっかー」
四人の声が遠ざかっていく。その声が完全に聞こえなくなるまで、私は動くことが出来ずに居た。
これからどうしよう。さすがに彼女たちを追いかけて一緒にテニスするなんて出来るわけがない。仕方なく、来た道を重い足取りで引き返す。
本館の前まで来た所で、生け垣の刈り込みをしていたらしい職員さんが声を掛けてきた。
「どうしたの、忘れ物かい?」
確か、昨日、外遊びの指導をしてくれた、中岡さんとかいう方だ。
「いえ……」
「お友達は一緒じゃないのかな?」
「…………」
私が何も言えずにいると、中岡さんはにっこり笑って、
「おや、それはカメラかい? 最近のは、おしゃれで小さいんだねえ」
そう言われて私は、いつのまにかデジカメを胸に抱きしめるように持っていた事に気が付いた。
「あ、……はい。 ……お母さんが、写真、撮っておいでって」
「そうかい。……じゃあ、あの小さい水路にそって少し降っていくときれいな川があるよ。林も開けていて、今の時期なら川沿いにラベンダーも咲いてる。いい写真が撮れるんじゃないかな」
中岡さんは、私の様子を見て、それ以上何も聞かずに話を変えてくれた。
「ありがとうございます。じゃあ、そこ、行ってみます」
私は笑顔を作ってそう言った。 ……ちゃんと、「笑えた」と、思う……。
**********
中岡さんに教えてもらったとおりに、水路沿いの細い林道をゆっくりと降っていくと、サラサラと水の音がしてきた。少し歩くと、急に視界が開けて、ゆるやかにカーブしているきれいな川に突き当たった。
川幅は五メートルほどだろうか。川底の石が陽の光を反射してキラキラしているのがはっきり見える位の浅瀬になっている。対岸には鮮やかな紫のラベンダーと、白い小さな花がたくさん咲いていた。
何枚か写真を撮る。遠くの山々がちょうど林に隠れてしまって、川と一緒にフレームに入らない。もう少し角度を変えようと、川の上流に向かって川沿いの道をのんびりと歩く。すると、バシャバシャという、水を掛け合うような音と、きゃあきゃあ言う歓声が聞こえてきた。
顔を上げて先を見ると、どうやらあの高校生達が水着で水遊びをしているようだ。葉山という人もいる。私は、あの人がどうも苦手だ。多分、一人でいる私を気にかけてくれているんだろうな、というのは分かるけれど、あの、急に距離を詰めてくる感じと、いかにも作って貼り付けたような笑顔がなんだか好きになれない。
引き返そうかな、と思った時、川沿いの木によりかかって座っている八幡を見つけた。ちょうど日陰になっているので、最初は気が付かなかった。
目を閉じてる。寝てるのかな? 起こさないように、そっと近づく。他の高校生達は激しく水を掛け合うのに夢中で私に気付いていないみたいだ。
……八幡って、目を閉じてると、すごくきれいな顔してる。木漏れ日が当たってキラキラしていて、絵葉書の風景みたい。 ……なんだかドキドキしてきた。そっとカメラを構え、木に寄り添うように眠る彼を写真に収める。八幡はまだ気が付かない。このまま立ち去ろうかな、と思った、けど……。
―― 向こうに居場所がないような時は、俺らんとこに来ればいいんじゃねーの ――
その言葉が私の背中を押す。勇気を出して、私は八幡に近づく。今度はわざと足音を立て、まるで今来たばかりみたいに。
それで起きたらしく、八幡はパチリと目を開けると、私に気がついて、やる気なさそうに左手を小さく挙げて、
「よっ」
と一言だけ。私も、
「うん」
とだけ返事して、八幡のすぐ横に座った。くっついてはいないけど、でも体温を感じる距離。それだけで少し心が上向く。
二人並んで、他のみんなの水掛け合戦を見ている。雪ノ下さんの目が本気だ。こんな遊びなのに、絶対にやられたままでは終わらない……あの人にはあまり逆らわないようにしよう。
「……ねえ、八幡は、なんで一人なの?」
「水着持ってきてねぇんだよ。おま……留美は?」
「ふーん。私のほうはね、今日一日自由行動なんだって。それで、朝ごはん終わって部屋戻ったら誰も居なかった」
「……そか」
「うん」
……そのあと偶然、私への陰口を立ち聞きしてしまって、悔しくて泣いて、そのまま逃げて来ちゃった。なんて事、かっこ悪過ぎてとても言えない。
その後も二人でぼーっと川の方を眺めてると、由比ヶ浜さんが私たちに気づいたみたいで、雪ノ下さんと一緒に川から上がってくる。近くに敷いてあったレジャーシートからタオルを取って、体を拭きながら二人でこっちにやって来た。
由比ヶ浜さんが、タオルで少しだけ濡れた髪の毛をぽんぽんってしながら、私の前にしゃがんで声を掛けてくれた。
「あのさ……留美ちゃんも一緒に遊ばない?」
私は小さく首を振った。さっきの彼女たちのようにはしゃぐ気分じゃ無い。
「そ、そっかぁ……」
由比ヶ浜さんをがっくりさせてしまった。ごめんなさい……。心の中で謝る。
「だから言ったじゃない……」
雪ノ下さんが、由比ヶ浜さんに声をかける。この三人、なんだか他と違う空気を持ってるけど……どんな関係なのかな。
「ね、八幡」
「ん? どした」
「えっと、この三人って、付き合いは長いの?」
「いや、知り合ったのもこの春からだし、そもそも付き合いどころかまともな人間関係が成立してないまである」
「……はぁ。なんとなくわかった。じゃあ、八幡は、さ」
「お、おう」
「小学校の時からの友達っている?」
「いない、な。ま、正直必要ない。だいたいみんなそうだぜ、ほっといていい。義務教育終わればあいつら多分一人も会わないぞ。ちなみに俺は中学校の時の友達もいない」
急にドヤ顔になった八幡に、由比ヶ浜さんが呆れて、
「そ、それはヒッキーだけでしょ!」
と言うと
「私も会ってないわ」
雪ノ下さんが
「留美ちゃん、この二人が特殊なだけだからね?」
「特殊のどこが悪い? 英語で言えばスペシャルだ。ほら、なんかちょっと、優れてるっぽいだろ」
「日本語の
雪ノ下さんまで関心している。珍しい……のかな?
「なあ由比ヶ浜、おまえ、小学校の同級生で、今でも会うやつ何人ぐらいいる?」
由比ヶ浜さんは、顎に手をあてて少し考えてる。
「会うって言っても……同窓会とかを別にしたら、一緒に遊ぶってのは、一人か二人、かなぁ」
「お前んとこ、一学年何クラス?」
「ん? 三クラスだけど」
「一クラスだいたい三十人として、掛ける三で九〇人。その中で、今も付き合いがあるのが一人か二人、%にすると、ええと……」
「約一・一から二・二パーセントね。小学校からやり直したら?」
雪ノ下さん計算早いなぁ。
「まあとにかく、人付き合いの得意な、
「美人……えへへ」
「由比ヶ浜さん、別に褒められているわけではないわ」
「普通のやつの人付き合いが由比ヶ浜の三分の一くらいだと仮定すれば、小学校時代の友達が高校生になっても友達やってる確率は一%以下だ。こんなもの、誤差の範囲だ。よって切り捨てていい。よし、証明終了」
八幡は得意気に胸を張って言い切った。由比ヶ浜さんは「なるほど~」とか言って納得しかけている。
けれど、雪ノ下さんは、そっとこめかみを押さえる。
「この男……何から何まで仮定だけで証明をでっち上げたわ……。数学を何だと思っているのかしら」
「うん。さすがにそれが無理やりなのは小学生の私にもわかる……」
私がそう言うと、
「え、あれ? あ、そ、そうだよ! こんなのおかしいよ!」
由比ヶ浜さんが手をブンブン振りながら八幡に抗議する。
八幡は、チッと小さく舌打ちをして言う。
「数値とかはどうでもいいんだよ。要は考え方の問題ってことだ」
「さっきの証明はまるで
雪ノ下さんは、納得行かないというようにブツブツ言っている。由比ヶ浜さんは、
「んんー……あたしはあんまり賛成しないけど……。でも、一%てことは百人の内一人でいいってことでしょ。そう考えれば、少しは気が楽になる、かな。みんな仲良くって、やっぱしんどい時あるし」
何となくだけど、由比ヶ浜さんが自分の経験を話してるんだなって事は分かる。こんなに誰とでも仲良くなれそうな彼女でも、そういうこと、あるんだな……。でもそうか、百人中一人でいい、そう思うと何故か、泉ちゃんの顔が一瞬だけ心に浮かんだ。
由比ヶ浜さんはそこで私に向き直って、優しく微笑んで言った。
「だから、留美ちゃんもそう考えれば、さ」
「うん。でも……お母さんが……。いつも、友達と仲良くしてるかって聞いてくるし。林間学校でも、たくさん写真撮っておいで、思い出になるから、って、デジカメ……」
由比ヶ浜さんにカメラを見せながらそう答える。
「そうなんだ……、いいお母さんだね。留美ちゃんの事、心配してくれて」
そう、お母さん。 ……今の私の状況を知ったら、きっと心配するだろうな。そんな事を考えていると、
「そうかしら……。我が子を支配して、管理下に置く、所有欲の
冷たく、暗い声で雪ノ下さんが言った。ちくん、と胸の奥に小さな痛み。
由比ヶ浜さんは大きく目を見開いて、
「え……。そ、そんな事無いよ! ……それに、その言い方はちょっと」
そう言うと、二人の間に緊張が走る、八幡が割って入った。
「雪ノ下、まああれだ。母親ってのは余計なことすんのが仕事、みてぇなところがあるからな。俺が休みの日にゴロゴロしてりゃ小言を言うし、勝手に人の部屋掃除するし……。たとえそれがお前の言う管理だとしても、愛情が無かったらそもそも管理しようとさえしないだろ」
雪ノ下さんはきゅっと唇を
「……そう、ね。普通は……そうよね」
彼女は、私に向かって優しく微笑むと、
「ごめんなさい。私が間違ってたみたい。無神経な発言だったわ」
そう言って私に向かって頭を下げた。小学生の私なんかに、
「あ、全然……。なんか難しくてよくわかんなかったし」
どぎまぎしながら私が言うと、四人とも静かになってしまった。なんだか気まずい。彼女とその母親の間には、きっと私なんかでは想像できない何かがあるんだろうな……。
「まああれだ。なら、撮っておくか? 俺の写真。誰も撮ろうとしないからスーパーレアだぞ」
八幡が空気に耐えきれなくなったようにそう言った。
「いらない」
「……そうですか」
バッサリ、という感じで私が言うと、少し凹んでるみたい。でもいいの……だって、もっとレアな八幡の寝顔、もう撮っちゃったし。
「まあ何にせよ、ぼっちには生きにくい世の中だ。
「た、正しいぼっちってなんだし」
「それは、他人は他人、自分は自分、ってのをきちんと理解しているぼっちだ」
「? どゆこと、あんましよく分かんないんだけど……」
「人間は一人ひとりみんな違う。そんな当たり前のことがちゃんと理解出来てないから、自分と違う誰かを排除し、傷つけようとする。 親子だって、友達だって、みんな一人ひとり考え方も何もかもが違うんだ。だから……、自分と違う他人をちゃんと認めてやり、
「『正しい』ぼっち、か……」
私がそうつぶやくと、八幡が続けた。
「一人ひとりがバラバラになっても自分自身と向き合えるなら、無理して誰かと仲良しごっこする必要もないし、大勢で群れて、
「……うん」
八幡の言葉は、なぜか私の心にすっと入ってくる。
「比企谷くん……、あなた、小学生に『
私たちの様子を見ていた雪ノ下さんが、少しだけ楽しそうに言う。
「俺を
「教祖? あなた、そんな器じゃないでしょう? せいぜい末端の勧誘員がいいところよ」
「さいですか……」
「……でも私も、あなたが言ってること、何となくだけど解るわ。『正しいぼっち』ね。ふふ。比企谷くんらしい……」
「ゆきのんまで……、わかるけど、でもそんなのって、なんだか寂しいじゃん……」
由比ヶ浜さんは小さくそう言った。
「ねぇ、私の状況とか、今みたいな嫌な感じも、高校生くらいになれば変わるのかな……」
私がそう誰にともなく尋ねると、
「少なくとも、あなた自身が今のままでいるつもりなら、絶対に変われないわね」
雪ノ下さんの言葉はいちいち胸に刺さる。
「けど、この先周りが変わることだってある。だから、いまの人間関係にこだわって無理に付き合い続ける必要なんてないだろ」
「でも……、留美ちゃんは今が
由比ヶ浜さんが切なそうな顔で私を見ながらそう言った。
「辛いっていうか……今、自分が惨めっぽくて嫌なの。無視されたり、陰口言われてんの聞いたりすると、悔しくて、そんな自分がかっこ悪くて、さ」
「そうか」
「嫌だけどさ、もう、どうしようもないし」
「……何故?」
雪ノ下さんが静かに聞いてくる。
「……見捨てちゃったんだ。その子にとって絶対に見捨てちゃいけない時だったのに、私は……。だから、また同じように仲良くなんて出来ない。あの子とも、みんなとも。またいつ、誰がこんなふうになるか分かんないし、それなら、なんかもう、このままでいいかなって。……惨めなのは、嫌だけど……」
思い出したら、また涙が
「惨めなのは嫌か」
「……うん」
八幡に問われ、顔を上げないまま小さく
「……
八幡はそう言って立ち上がった。
そっと見上げると八幡と目が合う。相変わらずどよんとしてるけど、なぜかその
八幡、ついに立つ!!(物理的に)
はたして八幡は、出口のない迷路に囚われた留美姫を救い出すことができるのかっ!!
次回 『 決着 』 ――君は、腐った目の中に希望を見つける――
*注)
ご意見、ご感想などお待ちしています。
11月11日 ルビ追加、一部語尾等修正。
同 誤字修正しました。 snow flowerさん、いつもありがとう。
11月12日 誤字修正しました。 くるぷさんありがとう。
18年2月12日 誤字修正 兄やんさん報告ありがとうございます。