配分は殆どゆきのん、少しがはまさん、ヒッキーは画面端です。
1話完結です、暇つぶしにどうぞ。
「ねえねえ」
・・・なんでいつもこんなのばかり言い寄ってくるのかしら。
肝心の彼は中々こちらに向き合ってくれないのに。
「女2人でなーにしてんの」
まるで夜の光に導かれる羽虫のように何処からでも湧いてくる。
「暇なら俺らと一緒に遊ばない」
別にお高く止まっているつもりなんて無いわ、少し自分に正直なだけ。
けれど、見た目だけで判断して寄ってくる虫に頭が来るのは仕方ないわよね?
「そう言わずにさー。あ、番号交換しよ?」
番号を教えてくれ?ふざけないで。まだ彼の番号すら知らないのに。
「近くにいい店あるんだ。これから行こうよ」
私達があなた達に着いていくとでも?
人を待っていると言ってるのに、本当にしつこいわね。
いつも断ってからが長い。なぜこの手の人間は皆こうなのかしら。
話しかけていた男の一人が私の肩に手を伸ばす。
あなたなんかに触れられたくない。通報するわよ。
何も見えてない、相手のことを見ようともしないくせに、私達を視界に入れないで。
「そこの店マジでオススメなんだよー。おごっちゃうよー」
さっさと気付きなさい。
おごってくれなんて一言も頼んでないわ。
それに、あなた達に施しを受けるほどお金にも困っていないわ。
あなた達と行くどれだけ良いお店よりも、3人でいくファミレスの方が何倍も好きなの。
はっきり言ってあげる。
二度と口を開かない事をお勧めするわ。ミントでも食べてきたら?
それ以上近寄らないで。
これだけのヒントがあってまだ分からない?
そろそろ気付きなさいよ。
「ねね、君って何座?俺?俺はおとめ座ー」
まだわからないのかしら?あなたの正座なんて誰のものより興味ないの。
今すぐに全国のおとめ座の人に土下座で謝ってもらいたいわね。
「えー、いいじゃん、教えてよ」
それじゃあ教えてあげるわ。
私の正座は『さよなら座』、これで気付けないかしら。
ちなみに彼は獅子座。
ふふ、獅子だって。独りで居るところとか、奥さんに狩を任せて自分は動かないところとか、意外と似ているのね。
「あははー。何それウけるー」
はあ、頭が痛くなるわね。
あなたたちが振られた数だけ10円玉があれば、高校生の頃に私の住んでた1室を借りられるでしょうね。
ハロウィンに習って、Date or Moneyって言って回ればいいんじゃないかしら。
「遅れてくる男なんてほっといてさー、行こうぜ」
何度聞いても答えは同じ。
周りに居るお友達にも伝えてちょうだい。
あなた達なんかに微塵の全然興味もないの、私達の時間を邪魔しないで。
私達は大事な人と待ち合わせをしてるの。あきらめて帰って。
3つ数えてあげるわ。
次に私が目を開けたら視界から消えていなさい。
1つ 触らないで
2つ 私たちを見ないで
3つ そろそろ通報するわよ
「折角こうして出会えたんだからさー」
気付きなさいよ。
私があなたの運命の人だとでも?冗談でしょう。
あなたには溝鼠がお似合いだわ。
そして私は猫。一方的な関係であって、決して対等になる時なんて来ないわ。
因みに彼はライオンね。あら、どちらも同じ猫科なのね。
まことに遺憾なのだけれど、これは対等な存在と言えるのではないのかしら。まことに遺憾だけれども。
「ねーねー」
まだいたのね。
本当に通報するしかないのかしら。
彼女の方を見やる。
同じ様に困った顔をしている。
全く、彼は一体何をしているのかし・・・・。
目の前の彼らの奥、駅の改札を抜ける1人の男。
高校を卒業してから少しは身なりに気を使うようにさせられた彼は、それでも相変わらずの猫背でポケットに手を入れ、傾く頭には1本のあほ毛が猫じゃらしのように揺れている。
自然と息をつく。
・・・・今までこんなに不快な思いをしていたのは全部あなたが私達より遅れてきたせいよ。
集合時間ぴったりでいいと思っているあなたが悪いの。
以前から私が5分前行動を心がけていると知って居るはずなのに、それより早く来ないあなたが。
やはり彼には調教が必要ね。
ふふ、『いい』ことを思いついたわ。
傍らの彼女に視線で話す。
きっかり1秒。
それだけで彼女は理解してくれたのか、多分今の私がしているであろう、悪戯気な表情を浮かべる。
目の前の彼らはやっと表情が動いたことに手ごたえでも感じたのだろうか。
でも、残念。
あなた達に一生向ける事は無いわ、今回も後ろの彼に向けたものなの。
「ヒッキー!」
満面の笑みで大きく手を振る由比ヶ浜さん。
ふふっ、声は聞こえなくてもその嫌そうな顔を見ればあなたが何を考えているか位分かるわ。
でも、今回は待たせたあなたに責任があるの。
今後遅れて来る事があったらこれより面倒な事になるかもしれないわよ?
隣の彼女と笑いあう。
さあ、どんな方法で彼が助けてくれるのか楽しみだわ。
ねえ。遅刻谷くん。