狐という獣の化物。
九つの尾を持ち、世界を滅ぼす程の力を持った化け狐のお話。
俺は化け狐である。名前は九喇嘛、九つの尾を持つ化け狐。
人はその姿を見て、九尾だ何だと呼んでくるが、致した方がない。俺の他にも尾獣の化け物がいるのだから。
一尾二尾三尾四尾と続いていって、最後に俺様「九尾」が来るのだ。尾の数だけ強いと思ってくればそれが正しい。一尾が雑魚で九尾が最強。つまり俺が世界で一番の強者である。
しかしその最強の俺様といえども油断は起こる。ちょっと油断したら変な人間に操られ、そして操られたかと思ったら里を滅ぼそうとしていて、その滅ぼそうとした里から別の強い人間が現れた。
勘違いはするな、やられてはいない。最強の俺様がやられるはずがないのだからな。ふん、もし俺様を弱いと思っている輩がいるのなら、今日の夜にでも化かされることだろう。それが幽霊か狐かは、その輩の態度次第だ。
ともあれ、俺様はやられはしなかったものの、封じられてしまった。やることができなかったと思って貰って良い。さすがにその里一番に強い、歴代最強の人間といえども、俺様を倒すことは不可能だったのだ。せいぜい封じることが精一杯、そう言ってやれば、少しは俺の凄さが百分の一でも伝わるか。
そして最強の俺様は封じられた。
最弱の人間――赤ん坊に封じ込められたのだ。
…………。
いまだアーンアーンと泣く赤子のお腹に封じられた俺様。赤ん坊の赤ん坊的なものになってしまった俺様、この赤ん坊のどこにこんなスペースがあるんだというくらいに広くて暗くて一センチもない水が溜まっている場所に封じ込められた。
しかも変な鉄の棒が前に連なっていて、俺様の偉大な手さえ満足に出せない。とりあえず一通り暴れてみて、この棒が壊せないことが分かってから、俺様は周りを見渡した。
棒がこう、ぐるっと俺様の周りを囲んでいた。
そんでもって上のほうにその棒の先にくっついている板があった。
思い切りジャンプしてその板を壊せば良いと思うだろうが、甘い甘い。棒と同じような素材でできていて、俺様にたんこぶができてしまった。
ジンジン痛いぜ。たんこぶを作るなんて、ジジイに怒られて以来だ。
そしてしばらく考えて、なんか操られて暴れっぱなしだったから急に疲れを思い出して、だから寝た。案外寝て起きたらなんとかなるもんだ。俺様は最強だからな。
そして起きたら辺りは相変わらず暗かった。どうやら太陽なんかはないらしい。
周りは暗いし、床は冷たいし、なんなんだこれ。しかも周りは変な棒に囲まれ阻まれで、碌に動けやしない。
別に怖さを誤魔化すわけじゃないが、暇つぶしにとりあえず思い切り叫んでみたら、赤ん坊の泣き声が聞こえたので、俺は耳を澄ましてみる。
なんだこれはと思いながら考えると、おお、なんと赤ん坊の姿が見えるじゃないか。誰だこの間抜け面はと思ったら、俺様を封じ込められた赤ん坊だった。どうやら俺様はそいつのことを色んな方向から見えるらしい。背中からでも前からでも上からでも下からでも自由自在だ。三人称視点、という奴だな。さすが俺様、無敵だ。
暇だからそいつのことをジーっと見る機会が増えていた。他にやることもなし、寝て起きて、そいつを観察しているというのが俺様の日課だ。と言っても、こいつ自体が動けないので、俺様の景色が変わることもそうないのだが。
しかしたまに変なジジイそいつを見に来て「べろべろばー、もう火影なんてこりごりだよー」と言いながらそいつの前で変な顔をすることがあった、その変な顔が面白おかしいのか、赤ん坊は指をさしてキャッキャッと笑った。そして少ししたらすぐに「火影様! 仕事を終わらせてください!」と煩く注意する奴が来て、結局赤ん坊は一人になる。その際にその火影と呼ばれるジジイが「じゃあな、ナルト、また来るからな」と言って帰っていくので、どうやらこの赤ん坊は「ナルト」と言うらしい。間抜け面に相応しい間抜けな名だと言って良いだろう。
そしてまた赤ん坊の居る殺風景な部屋は静かになり、赤ん坊も可笑しそうに笑うことなく、ボーっと天井を見上げていた。
ふん、この前にも何度か封じ込められてやった俺様であるが、今回のこの赤ん坊は周りの人間にも碌に好かれていないらしい、赤ん坊という奴は、もっと無条件に可愛がられるんじゃなかったか? まあ、こいつのような間抜け面では、それも無理なのかもしれないがな。
…………べろべろばー。
キャッキャッと赤ん坊は可笑しそうに笑った。
九喇嘛が美少女になってナルトLOVEになる話を見たことがあっても、九喇嘛視点の話は見たことがないなあと思いながら書きました。
見たいなあ(チラッ