剣の帝の異世界冒険   作:アルクロ

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第七十九話「痛みの代償の強さ」

~酒盛りしてから数日後:剣帝の部屋~

 

剣帝「最近暇だなぁ……何か面白いこと無いかなぁ」

 

黒影「面白いかは知らんが、俺的に面白いことなら今目の前で起きてるぜ」

 

剣帝「ん?何それ」

 

黒影「お前の現在の状態が常識外れ過ぎて笑える」

 

剣帝が寝泊まりしているセラフォルー領の屋敷の一部屋で黒影は剣帝のベッドに座りつつ、部屋の中で上半身裸で筋トレをしている剣帝を見ていた

 

その剣帝の筋トレの内容は、先ず逆立ちをしてから左腕の指先だけを床に付け、そのまま腕立て伏せをすると言うものだった

 

更に回数が五百回に行く度に小指から指の数を減らしていき、最終的には親指のみで自分の体を支えるという内容のようで、現在剣帝の体は中指と人差し指と親指の三本で支えられていた

 

黒影「ほんっとテメェは頭がおかしいんじゃねぇのかねぇ?」

 

剣帝「だぁまぁれ、お前に頭がおかしいとか言われたら他人に言われるより苛つくわ」

 

黒影「あっそー、そんな事言うんならお前が興味出しそうな事が新聞に書いてあったけど教えてやんねぇー」

 

剣帝「俺が興味出しそうな事?何だそれ」

 

剣帝は黒影の言葉に反応を示し、腕立て伏せを終えようとたった三本の指の力だけで自分の体を空中に押し上げて飛び上がらせて着地し、黒影の側に近寄った

 

そして、剣帝が近寄ってくると黒影は剣帝に見えるように冥界の新聞のとある一面を見せてきた、それを見た剣帝はニヤリと笑みを浮かべた後、服をちゃんと着てから何処かに向かおうと部屋を出て行った

 

~人間界:駒王町上空~

 

剣帝「さってとぉー、探すかな」

 

黒影「見つかるまで何分掛かるかねぇ?」

 

剣帝「さぁなっと」

 

剣帝は自分の気配を消しつつ駒王町の上空に転移してくると街全域に探知用の結界を展開し始めた

 

剣帝「……………アレ?学園に居ない」

 

黒影「なら、冥界にでも居るんじゃねぇのかね?修行とかで」

 

剣帝「それ、勘付いてたなら先に言ってくれねぇかな?余計な手間になるじゃん」

 

黒影「いやぁ、どうせ学園に居るんじゃぁねぇかなと俺様も思ってたんでなぁ?」

 

剣帝「嘘ばっかりだな、クソ野郎」

 

剣帝は五分程かけて駒王町全域を結界で誰かを探していたが、どうやら探していた人物は駒王町には居ないようだ

 

そして、黒影の言葉を聞いた剣帝は自分の真下に転移用魔法陣を展開し、すぐさま冥界に転移していった

 

~冥界:セラフォルー領~

 

剣帝「さぁて、居るっかなぁー?っと」

 

黒影「てか、見つけてどうすんだよ」

 

剣帝「んー?秘密」

 

黒影「あっそーかい」

 

剣帝は冥界に戻ってくると同時に探知用の結界を大規模に展開し、とある人物を探し始めた

 

そして、二分経った後、ようやく探していた人物の反応を察知した

 

剣帝「見っけ…」

 

黒影「んじゃあ、さっさと行こうぜ」

 

剣帝「あぁ」

 

剣帝は探していた人物を見つけられた事が嬉しかったのか少しだけ笑みを浮かべながら爆炎で加速を掛け、自分の後ろにソニックウェーブを出して飛んで行った

 

~セラフォルー領の外れ~

 

剣帝「この辺に居る筈なんだよなぁ、おーい!匙君やーい!」

 

黒影『そんなに叫んで、本当に出て来たら笑うぜ?』

 

匙「さて、今日も会長の為に修ぎょ…う……何でアンタがココに居るんだよ!」

 

黒影『ブッハ!マジで出てきやがった!!』

 

剣帝が探していた人物、匙の名前を叫びながら周りを見回していると、剣帝の後ろからその匙当人が歩いてやってきた

 

剣帝「やぁ、匙君」

 

匙「やぁ、じゃねぇよ!俺の質問に答えてくれよ!剣帝さん!」

 

剣帝「いやー、この新聞を見てね、良ければ君に修行を付けてあげようかと思ってね」

 

剣帝は匙から質問をされると、手に持っていた新聞を匙に見せながら自分がやってきた理由をつらつらと話していった

 

それに聞いた匙はふむふむと頷きながら剣帝の言ってきた理由に納得していた

 

剣帝「って訳だから、構えろ」

 

 

匙「!!」

 

剣帝「とっとと、構えろ、じゃなきゃ………死ぬぞ」

 

剣帝はゴキリと自分の右手の指の骨を鳴らすと、握るようにしながら自分の体の前に出し、構え始め、同時に殺気を放ち始めた

 

それを見た匙も慌てて自分の神具を展開し、剣帝の行動に対応しようとし始めた

 

剣帝「それで良い、と言いたいところだが、匙君、スマナイんだが本気で来てくれるかな?」

 

匙「本気って事は……ヴリトラになれって事か」

 

剣帝「勿論、さぁ、さっさとしてくれるかな?」

 

匙「…………どうなっても知らねぇぞ…ヴリトラプロモーション!」

 

剣帝が本気で来てくれというと匙は全身に力を込め始め、巨大な蛇の様な龍に化身した

 

剣帝「おぉー、これが龍王ヴリトラ……素晴らしいねぇ」

 

匙『コレなら流石のアンタでも苦戦するだろ』

 

剣帝「さぁ?どうだろう、ねっ!」

 

匙『なっ、消えっ、ガハッ!!』

 

剣帝「図体がデカイのとは割と戦ってるんだよね、コレでもさっと!」

 

剣帝は音と共に姿を消すと、次の瞬間、ヴリトラに化身した匙の顔を殴り飛ばし、その次に顎を下から蹴り飛ばした

 

匙『何て素早さだよっ!』

 

剣帝「いやいや、俺が素早いんじゃなくて……君がまだまだなだけだよ」

 

匙『何で!一発も!カスリすら、しねぇんだよ!』

 

剣帝「それはね、狙いが大振りだからだよ」

 

匙は剣帝に蹴り飛ばされた顔をすぐさま持ち直すと、自分の体を捩り、周囲を払う様に動いた

 

しかし、匙の攻撃を剣帝はするりと隙間を縫うよう回避しつつ喋っていた

 

剣帝「仕留めたいなら、敵の隙を狙って叩き込まないとね」

 

匙『隙って……そんなの戦闘中じゃ狙えないんじゃ』

 

剣帝「いいや?そうでも無いよ?隙ってのはどんな状況だろうと必ずあるからね」

 

匙『例えば、今、とかか?』

 

剣帝「そうそう、その通りぃーって、あっつぅ!!」

 

匙『よっしゃぁ!ようやく当たった!』

 

剣帝が回避行動を辞めてべらべらと喋っていると、その間に匙は剣帝に向けて黒色の炎のブレスを吐きかけた

 

剣帝「あー……アチチッ」

 

匙『今のでもアチチッだけで済むのか……やっぱりアンタは規格外だな』

 

剣帝「でも、普通は俺にアチチッって言われられるだけでも凄いんだよ?基本的に俺言わないし、良い成長だね匙君」

 

匙『アンタにそう言われると嬉しい気がするぜ』

 

剣帝「そんな匙君にはご褒美をあげよう、目を閉じて口を開けなさい」

 

匙『こ、こうか?』

 

黒炎を吐きかけられた剣帝はその数秒後に炎の中から飛び出してきて、体に付いた黒炎を手で払っていた

 

そして、前に会った時よりも匙が成長していた事を嬉しく思ったのか剣帝は匙に目を閉じさせてから自分の指を少しだけ切り、自分の血を匙に飲ませた

 

匙『んっ……がはっ!熱い!!体が燃えるように熱い!!!』

 

剣帝「頑張って耐えるんだ、そうすれば君はもっと強くなれる」

 

匙「何なんだよ!これ!!!」

 

剣帝「秘密、良いから頑張ってその痛みに耐えるんだ、そうすればこれから先、君が大切とする人達を護れるぞ」

 

匙「大切とする人達……会長……カテレア……」

 

剣帝(へぇ~、匙君の口からまさかまさかの人物の名前が出たなぁ)

 

匙は剣帝の血を飲むとヴリトラの姿から元の人間の姿に戻り、地面にのたうち回っていた

 

しかし、剣帝のとある一言に反応して、蹲りながらも全身の痛みに匙は必死に耐えていた、そして、匙の体を襲っていた激痛はものの五分ほどで全て消えた

 

匙「はぁー……はぁー……」

 

剣帝「まさかマジで耐え切るとは……やはり君は素晴らしいね」

 

匙「何だか……体に…力が漲ってくる」

 

剣帝「だろうね、それが君が耐えた痛みの恩恵だよ、但し、その力は振るい過ぎると自分の身を滅ぼす毒になってしまうから使うタイミングはちゃんと見計らうようにね」

 

匙「あ、あぁ、有難うな」

 

剣帝「気にしない気にしない、それは君が頑張ったからこその物なんだからさ」

 

剣帝は匙に謝辞を言われると俺は何もしてないよと言ってから、自分の後ろに転移用魔法陣を展開し、そのまま屋敷に帰っていった

 

そして、匙は剣帝が居なくなった後もずっと修業と言いつつ、自己修練に明け暮れていた

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