MrサタンZ 真の英雄   作:寅好き

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英雄 ミスターサタン

 悪の化身の魔人ブウとの死闘の後に、ドラゴンボールにより、地球での戦いの傷痕、そして、魔人ブウによって死亡したもの、負傷したものを善人のみ、復活、治癒された。

 ミスターサタンも『気功砲』を放ち、亡くなっていた為に、この時復活を果たした。

 地球では、なぜかミスターサタンが皆を蘇らせてくれた。

 閻魔を倒して、皆を連れ帰ってくれたと騒いだほどであった。

 その後も、武道に目覚めたミスターサタンは、鍛練を欠かさず、世界チャンピオンを護りきり、殿堂入りを果たし、チャンピオンを魔人ブウの生まれ変わりのウーブに託し、引退した。

 激闘から数十年、ジャネンバ復活、破壊神降臨など幾度も地球の危機が訪れたが、そこにはZ戦士と共に勇ましく戦うミスターサタンとカーシの姿があったことは言うまでもない。

 そしてエイジ836年、遂に英雄の最期の時が来ていた。

「カーシさんのおかげで、何も思い残すことなく旅立てます。ただ心残りは、ビーデルや可愛いパンちゃんのこれからを見ていけないことだけです…」

ミスターサタンはベッドに横たわりながら、憔悴しきった状態でポツリポツリと心情を吐露する。

「おじいちゃんそんなこと言わないでよ…もっと長生きしてよ…」

「パパ……」

「義父さん…」

集まっていたミスターサタンの溺愛する孫パン、娘のビーデル、悟飯とミスターサタンの最期を覚悟し、パンは悲痛の声を、ビーデル、悟飯は声を圧し殺していた。

 ただ、親友であり家族であったカーシは無言を貫き、そこにたっていた。

 ただ表情にはその悲しみのほどが浮かんでいた。

「パンちゃんそんな顔しないで…おじいちゃん笑っていて欲しいな…」

気丈にも笑顔で話すサタンに更なる悲しみが皆に襲いかかるが、サタンの意を汲んで必死に耐えている。

 笑顔であったサタンは、一転して真剣な表情になる。

「カーシさん…本当に感謝しても、しきれません。カーシさんに頼りきっての人生だった…そこでわしの最期の頼みを聞いてもらいたいんですが…」

「なんだ…なんでも言え」

「これからもビーデルやパンちゃんを見守っていてあげてほしい…そして、地球をお願いします…」

「ああ…約束してやる」

カーシの頬にも一筋の涙がこぼれ落ちる。

「そして悟飯君にも二人のことを頼みたい」

「もちろんです。義父さん…」

サタンは二人の言葉を聞き、頬を緩める。

「ああ…これで安心だ…仕事はザンギャさんに任せて…ビーデルやパンちゃんのことも…カーシさん、悟飯君に頼めた…これで旅立てます。…ああ…ご先祖様やベエも迎えに来たようだ…。あの世でまた……あ………い…………ま――――」

「おじいちゃんっ、おじいちゃん…目を開けてよ!おじいちゃーーーん!」

「パン……」

ビーデル、パンは抱き合いながら涙を流し、

「義父さん……」

悟飯は静かに涙を流し、

「……俺に任せろ……サタン…」

 

エイジ836年享年100歳、本名マーク、通称ミスターサタンは皆に見送られながらこの世を去った。

 翌翌日には、ミスターサタンの葬儀が国葬として行われ、涙を流さないものはいなかった。

 そして、皆の記憶に英雄ミスターサタンの雄姿が刻み込まれたのだった。

 

◇◆◇◆◇◆

「あれ、わしは死んだんじゃ?それに若くなっとる!?」

次にサタンが目を覚ました時には、若くはつらつとした姿で、雲のような地面、巨大な和風の神社のような建物の前に来ていた。

「何しているおに、しっかり列に並んで欲しいんだおに」

「おーにーー!?」

「!!いきなり叫ばないで欲しいおに」

目の前にいきなり現れた、赤鬼青鬼に叫び声をあげるサタン。

「す、すいません。並びます」

しかし、破壊神をも目の前で見てきたサタンは、すぐに順応し、列に並んだ。

(いったいここはどこなんだ?)

サタンはあっちこっち挙動不審に見回していると、

「マークさーん」

サタンの本名マークを呼ぶ声が。

(慣れないなー)

と思いながらも返事をし、建物に入っていく。

「!!!…あわあわ!!」

「何を驚いている」

「大きい…閻魔大王…舌を抜かれるーー」

閻魔を見て逃げ出そうとするサタン、しかし、ラディッツをも簡単に押さえ込んだ人物である。

サタンも押さえ込まれる。

「すいません、すいません、腹痛を装おってすいませーーん」

土下座を繰り返すサタンに、閻魔はため息をつきながら、諭すように声を掛ける。

「そんなことは気にするな。お主は魔人ブウを倒すのに貢献した。全宇宙を救ったのだ。お前がいなかったら。全宇宙、そしてこの世も滅んでいた。従って体を与え、大界王星送りとする」

「えっ!」

「こっちおに」

「えっ!」

「乗るおに」

「えっ!」

「次は大界王星ー、大界王星ー」

ミスターサタンが目をぱちくりして驚いている間にことは進み、大界王星についていた。

 そして、いつの間にかある人物の前にたどり着いていた。

 黒い触覚、サングラスを掛け、界王と書かれた黒い服を着る、ずんぐりむっくりした人物。

「…コオロギ?まさかゴキブ――」

「無礼者ー。誰がゴキ〇リじゃー!まったく今時の若いもんは――」

「すいません」

この世に来て何度目のすいませんなんだろう、とサタンは思いながらも頭を下げる。

 そこには、以前の傲慢だったサタンの姿は微塵もなかった。

「まあいい。ついてこい」

ゴキブ〇もとい、界王の後を渋々着いていくサタン。

「お前ら、集まれー」

「なんだ?新入りか?」

そこらじゅうから、集まってくる人外の生命体、ムキムキのマッチョの天使だったり、虫人間だったり。

 しかし、我らがサタンは順応し、驚くことはない。

「これからお前たちと一緒に修行していく地球出身の通称サタンだ。オリブーは先輩だからな面倒を見てやってくれ」

「はい。よろしくなサタン」

ムキムキマッチョの天使オリブーが前に進みでて手を差し出す。

デカイ!地球には天使なんていないけどなーと疑問に思いながらも、サタンも手を出し

「サタンです。よろしくお願いします」

と挨拶を交わした。

 大界王星での修行が幕を開けた。

 

◇◆◇◆◇◆

大界王星でサタンが修行を始めて数十年が経過した。

「どりゃあー」

「まだまだ」

サタンはみるみるうちに強くなり、パラレルワールドのヤムチャ同様オリブーには劣るものの、遜色のない力をつけていた。

「集まれー」

そんな時だった。

北の界王が久しぶりに皆の元を訪れた。

「どうしたんですか界王様?」

一同整列し、代表でオリブーが尋ねる。

「ああ、大界王様の突然の思いつきでな、あの世一武道会が開催されることとなった」

「ウオーーー!!」

一同から地鳴りのような歓声が上がる。

その中にはサタンの姿も。

 サタンも常々オリブーからあの世にも武道会があり、東西南北の強者が一同に介すものだと言うことを知っていたからだ。

「で北の代表を発表する。まずはオリブーそしてもう一人は―――」

しかし、サタンは呼ばれることはなかった。

(まあしょうがないよな。ここには数百年、数千年修行している人が殆どだ。わしは新入りだしな)

少々残念に思っていた時だった。

「サタンちょっとこい」

なんだろう?と思いながらもサタンは返事をし、走っていく。

「なんですか界王様?」

「お前はあの世一武道会特別推薦枠での出場が決まったぞ」

「えっ、特別推薦枠?」

「ああ、大界王様より遥か上におられる御方からの推薦らしい。感謝して頑張るようにな」

「あ、あ、あ、ありがとうございます」

深々と頭を下げるサタンの脳裏に、あの若者と御老体の姿が浮かんだのは言うまでもない。

◇◆◇◆◇◆

 あの世一武道会当日。

 サタンはオリブーと共に会場にやって来ていた。

 あの世中から観客が集まり、その盛況ぶりは凄まじいものであり、サタンもその光景を見て、天下一武道会を思い浮かべ、心を踊らせながらも、いつも共に出場し、支えてくれたカーシのことを思い浮かべていた。

(カーシさん…今頃何をしているのかな)

郷愁の念に駈られていると、心配したオリブーが話し掛けてきた。

「大丈夫かサタン?なにかあったのか?」

「いえ何でもないです。元気ですよ」

「そうか。俺はお前とは別のブロックだ決勝で会おう」

「はい」

サタンとオリブーは拳を合わせ、会場に向かった。

――――

「対戦相手のキャタピー選手は繭にこもってしまったのでサタン選手の勝利です」

「えっ!」

――――

「対戦相手のタカピー選手息切れのため、サタン選手の勝利です」

「えっ!」

 やる気がみなぎっていたサタンであったが、優勝候補のオリブーやパイクーハンと当たることもなく、トントン拍子で来ていた。

 わくわくしていたサタンにとっては拍子抜けであったが。

 ついに準決勝。

「相手を圧倒してきた特別推薦枠。北の代表ミスターサタン対、相手に触れることも、触れられることもなく圧勝してきた、同じく特別推薦枠ミスターK」

武舞台に上がったサタンの前に、ずんぐりとしたポッチャリ体型のマスクを被った対戦相手が現れる。

(つ、強い!)

 いつぞやのサタンならば、その風体を見て弱いと決めつけていただろう。

 しかし、今のサタンは気で相手の強さを測ることができるまでになっていた。

「よっ」

「へ?」

対戦相手がてをあげて挨拶してくる。

「まだ分からないか。しょうがない」

対戦相手は徐にマスクを脱ぐ。

「えっ!!!」

対戦相手の素顔を見てサタンは絶句する。

「久しぶりにだな。サタン」

「カーシさん…夢じゃないんですか」

何度思い出しただろう、何度会いたいと思っただろう。

 カーシが目の前に現れたのだ。

「な、なぜカーシさんがここに?」

目を潤ませ、声をつまらせながら問いかける。

「ビーデルも悟飯も見送って寂しくなって、サタンに会いたくなったから瞬間移動できたんだ」

胸をはり、鼻を高くして自慢気に話すカーシ。

「サタンお前強くなったな。天下一武道会の時と違っていい戦いができそうだ。来いサタン」

「はい。いきます!」

サタンは涙を拭い走り出した。

 自分の成長を、再開できたことへの喜びを拳に込めて。

 




長らくの御愛好誠にありがとうございました。
 皆さんのお陰で書ききることができました。
 読んでくださった皆さんの、感想を書いてくださった皆さん。
 本当にありがとうございました。

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