女の子も含めた親友三人で女子トイレに一ヶ月篭るという、思春期の繊細な男の子の心にハチミツをブチまけるがごとき所業を経て、僕らはついにポリジュース薬を完成させた。といっても作ったのはほとんどハーマイオニーで、僕らは材料集めをしただけだけど。
いや、あのスネイプの部屋から材料を失敬したのは、十分に仕事をしたと言えるだろう。
「後は、変身したい人の体の一部ね。ハリーとロンはクラップとゴイル。私はもうミリセント・ブルスロードの毛を手に入れてあるわ」
「オゲェ、クラップとゴイルの髪の毛。たまらないね」
ロンがジョークを言ってると、ハーマイオニーが顔を少し赤ながら「ちょっと待ってて」と言ってトイレの個室に入っていった。
「なんか、気まずいよな」
「うん」
「……」
「……」
なんとなく手持ち無沙汰になって辺りを見ると、栗色の髪の毛が落ちていた。ハーマイオニーのだ。ハーマイオニーの髪の毛と、ポリジュース薬……
「ロン!」
「うわっ! なんだよ、急に大声を出して!」
「閃いたよ! このハーマイオニーの髪の毛を使って、君がハーマイオニーになるんだ! そして僕とセ◯クスする! これを交互に繰り返すんだ!」
「おったまげえ! ハリー、時々実感するよ。君ってやっぱり、選ばれし者だよな。よし、先ずは僕がハーマイオニーになるよ。でも、次は君だぜ?」
「もちろんだよ。僕の処女膜は君のものだ。さあ、やろうロン」
マルフォイがスリザリンの継承者かどうかなんて、最早どうでも良かった。マグル生まれが死ぬ? 所詮穢れた血だ。好きなだけ死なせとけ! それより今は、ハーマイオニーの体だ!
僕たちは急いでハーマイオニーの髪の毛をポリジュース薬に入れた。
「ハーマイオニー汁だ……」
「ああ、そうだね。これで下の毛だったらな」
「それは高望みしすぎだよ、ロン……待てよ」
その時、僕の頭に稲妻が落ちて来た! ヴォルデモートがつけた傷が云々って話じゃあない! 閃いたのさ!
僕は直ぐに杖を取り出して、ありったけの魔力を込めて叫んだ!
「アァクシオォォ! ハーマイオニーのアンダーヘアァァ!!!」
「きゃあああ!」
「ハリー! 君ってやつは──!」
トイレの中からハーマイオニーの悲鳴が聞こえてくる。だけど、だけど……
「ダメだ! 『トイレのドア』が邪魔で、ハーマイオニーのアンダーヘアがこっちに来ない!」
聞こえてくるのは、ハーマイオニーの悲鳴と、“ゴン、ゴン”という何かが『トイレのドア』を叩く音だけ。
何が選ばれし者だ!
僕はこんなにも無力だ!
最年少シーカー? クソ爆弾喰らえだ!
ハーマイオニーのアンダーヘアも呼び寄せられないんじゃ、何の意味もない!
「ハリー、覚悟はいいか?」
「えっ?」
「僕が『トイレのドア』を開ける……。それで終わりだ……君はハーマイオニーのアンダーヘア──いや、秘密の部屋の怪物を手に入れる」
「で、でも! それだとロンの姿がハーマイオニーに見られちゃう! そしたら──」
「ハリー! ダメなんだ! ここからは、誰かが犠牲にならなくちゃ進めない! そして、進むのは君なんだ! 僕じゃない、君なんだ! だから僕が行く!」
「いやだ! ロン! ロォォン!」
ロン!
なんて気高いんだ、君は!
あれがロンなんだ! 魔法界で出来た、僕の最初で最高の友達! グリフィンドールは勇敢な者が集まる寮! ロンは誰よりもグリフィンドールが相応しい、誰よりも勇敢な奴だ!
「ハリー、君の友達は一人だけなのかね?」
「えっ?」
後ろから、声が聞こえて来た。そこにいたのは──不死鳥だ! でも、ただの不死鳥じゃあない。半透明で、それでいて、絶対的な『安心感』をあたえてくれる、そんな不死鳥だった。
彼は僕に語りかけて来た。
「君は多くの友を得た。かけがいのない友達というのは、得られない人はどれだけ望んでも手に入れる事が出来ない。君はそれを二つも手に入れている。それを忘れない事じゃ。ホグワーツでは、求める者にはそれが与えられる」
そう言って、不死鳥は消えてしまった……
ロンの他に、もう一人の友達……そうか!
「ロン、これを飲むんだ!」
「これは、ポリジュース薬! そうか!」
ロンがポリジュース薬を飲んだ!
体がみるみるうちに変化していく! これでロンがハーマイオニーの体になれば、『トイレのドア』を開けたのがロンだと言うことはバレない!
「ンまぁい! もう一杯!」
「きっとアンダーヘアだったらもっと美味しいよ!」
僕の言葉に、ロンが目を輝かせた。僕らはきっと、同じ気持ちだ。
「覚悟はいいか? ──僕は出来てる」
ロンがハーマイオニーが入っている個室に走って言った。一歩一歩進むごとに、ロンの体が変わり──猫になっていった!
「う、うわあぁぁぁあ! ハリー! ぼ、僕の体がぁ!」
「そ、そうか! あの毛は『ハーマイオニー・グレンジャー』のものじゃあない! その猫『クルックシャンクス』の毛だったんだ!」
「な、何だってえ!? それじゃあ僕は──!」
「うん。猫になる」
「マーリンのヒゲ! なんだって急に落ち着いてるんだ!」
ロンの体は猫になっていった。作戦は失敗だ。猫の体では、『トイレのドア』を開けることは出来ない。ハーマイオニーのアンダーヘアが手に入らないんだ……
「まだだ!」
「ロン!?」
ロンはスピードを上げた!
そうか、猫になりきる前に『トイレのドア』を開ける気なんだ!
頑張れ、ロン! 他の誰でもない、君の頑張りにハーマイオニーのアンダーヘアは掛かってるんだ!
「ハリー、ありがとう。遠い遠い回り道、本当に遠い……」
ロンは力尽きた。だけど、その前に彼は成し遂げた。『トイレのドア』は……空いている!
「君の気高い『意思』は僕が引き継ぐ! アクシオ、ハーマイオニーのアンダーヘア!」
僕の杖から、魔力が放たれる。魔力は空中を伝い、ロンの上を通り、トイレの個室へと吸い込まれていった……
「きゃあああ!」
「!?」
ど、どういうことだ!?
ハーマイオニーのアンダーヘアだけでなく、『ハーマイオニー本体』までアクシオされてるじゃあないか!
そ、そうか!
ハーマイオニーのアンダーヘアは毛深い! だから抜けずに、本体ごと来てしまったんだ!
冷静になって考えてみれば、アンダーヘアが引っかかったからといって“ゴン、ゴン”なんて音はしない! アレは『アンダーヘアの音』じゃあない『ハーマイオニー本体』の音だったんだ!
ど、どうする! どうすればいい! ここまで来たんだ、諦めてるという選択肢は、今の僕にはないぞ!
「逆に考えるんじゃよ、ハリー。全部でいいやって」
「全部……そうか! エンゴージオ!」
肥大化魔法を使って、ポリジュース薬と瓶を大きくさせる!
ハーマイオニーはアンダーヘアごとポリジュース薬の中へと吸い込まれていった……
何も、アンダーヘアにこだわる必要はなかったんだ……
「まだだ、ハリー! まだ終わってない!」
ロンが叫んだ。
そうだ、その通りだ!
僕は今からこの肥大化した、ポリジュース薬を飲み干さなきゃあならない!
ハーマイオニーが丸ごと入ってもまだまだ余裕があるんだ、明らかに僕より大きい。だけど、さっきも言っただろう? 今の僕に、諦めるという選択肢は、ない!
ハーマイオニー汁は、歯磨き粉の味がした。