二人は何を話すのだろうか。
この場所をなんと表現していいか分からない。灰色の空。立ち込める硝煙。鉄を焼いているのか、何かを焼いているような音と臭い。むせ返りそうだ。
「ったく、ガタガタだこりゃあ」
そんな世界の中で、男が誰に言うのでもなく吐き捨てる。男は苦悶の表情を浮かべている。それもそうだ。男の足はあらぬ方向を向いている。
「よお、お前さん大丈夫…ではなさそうだ」
別の男が話しかける。この男も人の心配をしている場合ではない。地面を這いずるのがやっとの状態だ。
「あんたよりはましだよ。それより、世間話でもしねえか?」
男が提案する。男はなぜか笑みをこぼしている。その提案は、現実逃避のようにも聞こえる。
「それで、何を話そうってんだ?」
だが別の男は、その提案に乗った。自らが置かれた状況から、少しでも気が休まると思ったのだろうか。その真意は定かではない。
「いや、簡単なことだ。今、何でもできると言われたら、何がしたい?」
男は、人の心をくすぐるような笑みを浮かべ、質問する。それに対し男は少し考え、一息つけると、質問に答えた。
「そうだな、安心して寝たいよ」
「というと?」
男は質問の答えに対し、続けざまに質問する。男は答えの理由を、ゆっくりとではあるが、しっかりと説明する。
「何も心配せず、何も悩まず、何も考えないで寝たい。それは簡単なようで、難しいことだと思うんだよ」
男の表情は、何かを噛みしめるように感じた。
「確かに、今ここで寝ろと言われれば、簡単に寝ようとするが、だが目を瞑ればいろんなことを考えちまう。なるほどな」
男は笑みを浮かべながら頷く。さて、今度は別の男が質問する番だ。
「で、お前さんは何がしたいんだ?」
「そうだな、俺は忘れられたものが行きつく場所に行ってみたい」
男は遠くを見つめながら答えた。別の男は、困惑している。それもそうだ。何を言っているかさっぱり分からない。
「なんだそれは」
「そのままの意味だよ。そいつのことを忘れちまったんだったら、そいつはどこへ行っちまったんだろうな」
男の困惑は増すばかりだ。
「皆が忘れてしまっただけで、そいつはそこにいるんじゃないか?」
「いや、そいつが忘れられちまった。認識もされない。なら、そいつがそこに“いる”ということにはならないんじゃあないか?」
男は悟ってしまった。この男が何を言いたいのかを。
「だから、その忘れられた先を見てみたいんだ」
先があるのだろうか。忘れられたものはただ、消え去るだけではないのだろうか。だが、それはそこにある。だとすれば、それは一体何なのだろうか。
そして数分の沈黙。その静かな時間を打ち破るかのように、空気を切り裂くような爆音がこの一帯に響き渡る。その爆音は、こちらに近付いている。その音は、二人の近くで、鳴りやんだ。
「はは、どうやらその先にはいけないようだぞ」
「ふん、余計な事しやがって」
二人の表情は、何かを受け入れるようだった。