宮永咲の白糸台生活   作:タマアザラシ

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番外編・先輩

長野県代表、清澄高校が全国大会のために借りているホテルの一室で清澄高校のメンバーは全国二連覇中の、そして三連覇が確実とされていた白糸台高校の二回戦の試合を観戦していた

 

「こ、この金髪っ娘めちゃくちゃ強いじぇ」

 

「ですが、偶々運がよかっただけの場面も見られます。部長なら何とかしてくれるでしょう」

 

「無茶言うわね和は、ま、確かにただでやられるつもりはないけどね」

 

中堅戦の試合を見て他校を圧倒している淡の姿に優希は恐怖を、和は睨み付けるような目を、久は笑みを浮かべながらそれぞれの感想を口にしていた

 

「副部長はこの大星って娘をどー見とるんじゃ?」

 

唯一の二年生である染岡まこはこの清澄高校麻雀部の副部長に淡について尋ねた、というのもこの副部長は対戦相手の力量を見極める能力が高く、また清澄高校内で一番強い存在でもある、なのでそんな副部長から見て淡はどれほどのものかと尋ねたのだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子、ちょー可愛い!!」

 

試合とは全く関係ないコメントにまこはおろか副部長の発言を待っていた和も優希もずっこけるのだった

 

「デュフフ♪金髪巨乳にあのあどけない顔!!やばいいろいろと妄想が広がるわー!!今度の新刊はあの子をテーマにして書こ!!あー何が良いかなー生意気そうな顔だから先輩にあんなことやこんな事をされるとか!!それとも同級生にあーいうことやこーいうことをされるとか!!あ、興奮しすぎて鼻血がでそ」

 

「誰もあんたの変態的な考えを言えって言ってないでしょ、緑(みどり)!!」

 

三年間付き合ってすっかり慣れた久はどこからか取り出したハリセンで副部長・・・緑と呼ばれた女性を叩き、緑は額をテーブルに打ち付けた後、額を抑えながら痛みで悶えるのだった

 

「久!?私のキューティクルな顔に何てことするの!?」

 

「何がキューティクルな顔よ!?どーせネットでしかモテないくせに!?」

 

「ね、ねねねネットだけじゃねーし!?現実でもモテてるし!?」

 

「嘘言いなさい!!高校三年間、友達すら私以外ろくにできなかったでしょ!?」

 

「お前は言ってはならないことを言ったなー!?」

 

お互いに口喧嘩から始まり、次第にエスカレートしていくなか和たちは止めることなく観戦に戻るのだった・・・ある意味これは清澄でのいつもの光景であるし、なんだかんだ言って二人とも仲が良いのは和たちもよく知っていたからだ

 

久とキャットファイトを続けている少女・結城緑(ユウキ ミドリ)こそ清澄高校麻雀部副部長であり、団体戦の大将を務め、

 

 

 

 

 

 

そして白糸台団体戦大将を任されている宮永咲の中学の頃の先輩でもあった

 

________

 

「まーこの子はチャンピオンや咲と比べたらまだまだ穴があるから同卓する人によっては久なら何とかなるかもね」

 

「・・・てことは一対一ならまず勝てないってわけね」

 

「そーいうこと、私は相手やチームメイトに対して過大評価も過小評価もしない主義だからね。でも久だから勝てる可能性が十分あるって言えるわけ」

 

キャットファイトが終わり(といっても緑だけボロボロになっただけだが)緑は淡の実力を久より上と答えつつも穴があるとハッキリと言いきった

 

「けど対面した時は物凄く恐ろしかったじょ、ぶちょーでも勝てるかどうか・・・」

 

「優希、あなたにしては珍しく弱気な発言だね、だけど大丈夫、勝負に『絶対』はない」

 

優希は淡と対面したことがあるのでその恐ろしさが脳裏にこびりついているのか弱気な発言をしているが、緑はそんな後輩を元気づけるように言い切ったのだ・・・勝負に『絶対』はないと

 

「麻雀ってのはどうしても運が絡む競技でしょ?どんなトッププロでも負ける可能性は存在する、それでも絶対負けると思うは麻雀の腕じゃない、気持ちがすでに負けているからだよ。気持ちで負けてちゃ勝てる可能性もゼロになる、ま、その点久は問題ないけどね」

 

そういって優希の頭にポンっと手を乗せて落ち着かせるように撫でるのだった

 

「だから優希も絶対に負けるなんて思っちゃいけない、むしろ相手が誰でも絶対に勝つって思わないとね」

 

「・・・そうだじぇ、弱気になるなんてアタシらしくなかったじぇ」

 

「そーそー、相手が例えチャンピオンでも絶対に勝つって思わなくちゃ」

 

「うおーーーーーー!!!!やってやるじぇーー!!」

 

緑の励ましに優希は気合を入れなおして雄たけびを上げ、周りに迷惑ですよと和に注意されながら、緑は冷静な頭でもし白糸台と当たった時のシチュエーションを考えるのだった

 

(まー気持ちで負けてなくてもそれだけでチャンピオンに勝てる程甘くはないだろうけどね)

 

優希にはああいったものの、優希の相手であるチャンピオン・・・いや白糸台と清澄では実力差がハッキリしていた。もちろん清澄のメンバーが弱いわけではないのだが、相手の方が一枚も二枚も上手、そして相手が白糸台の一軍であっても負けるとは思えない久の相手がよりにもよって『牌に愛された子』クラスの相手である、ハッキリ言ってしまえば清澄が白糸台に勝てる確率は絶望的であると緑は冷静に分析していた。

 

(ていうかチャンピオンや咲だけでも厄介なのにあんなのが中堅にいるわけ!?あんなチームにタイマンで勝てる可能性があるのは今年の千里山か臨海ぐらいでしょ!?)

 

白糸台のチートすぎるメンバーに思わず悪態をつく緑であったが、ふと画面を見ると中堅戦が終わり、そして淡がかつての後輩とハイタッチをする姿を見た瞬間、思わず頬を緩めるのだった

 

(けどま、他校の出方によっては確率は十分に変化するし、いつだって勝負に勝つのは麻雀を愛し、麻雀を楽しんでいるものだからね

 

 

 

 

 

・・・そうでしょ?咲)

 

_______

 

緑の咲が出会ったのは全くの偶然だった

 

当時部員数が自分しか所属しておらず、ネット仲間を何人か誘って打つのが日課であった緑はその日、麻雀部の部室に忘れ物を取りに来た時に、麻雀牌を綺麗に手入れをしていた宮永咲と出会ったのだ

 

咲は緑が現れた瞬間に慌てて逃げ出してしまったが、緑は予備でおいていたホコリが被った麻雀牌も綺麗に手入れをしている事に気づき咲に興味を持ったのだ

 

緑は咲の制服から一年生であることを知り、一年の教室を所構わず探し、そしてついに咲を見つけ出したのだ

 

緑は半ば強引な形で麻雀を誘い、そしてネット仲間の二人と咲を加えて麻雀を行った

 

結果は緑の圧勝・・・しかし緑は咲の闘牌から違和感を感じ、改めて結果を調べなおすと驚きの結果が乗っていたのだ

 

全局±0、緑はこの結果から咲がわざとそうしたことを知り、咲と二人っきりになった後、咲にこの事を尋ねるのだった

 

咲は怒られると思い、小さな声でお年玉をかけた家族麻雀の勝ちすぎたら両親が困った顔をし、かといって負けすぎてお年玉を減らされるのが嫌でそうしていた、そのことを知った家族はお互いに気分を悪くしてしまうため家族麻雀は禁止となったと咲は答えたのだ

 

緑はまさか家族のイベントでそんな神がかり的な技術を手に入れた事に驚きを隠せずにいたが同時にもったいないと思い咲にこう伝えた

 

・・・そりゃさ、誰だって負けるのは悔しいし勝つ方が嬉しいよ、でもこれじゃあ、あなたが楽しくないじゃん

 

その後緑はいつものメンバーを連れてきてこの前の咲との対局でのネタ晴らしを行った後にもう一度打とうと咲とみんなに提案した・・・当然、今回は±0はなしと、やったり負けたりしたらこの可愛らしい猫耳メイドで残りの時間を過ごすようにと伝えて

 

咲は戸惑い断ろうとしたが、周りのメンバーは可愛らしい後輩に猫耳メイド服を着させようと気合が入り断りづらくなったのだ

 

・・・そして試合の結果、咲が圧倒したままオーラスまで進むのだった

 

咲は周りが不機嫌になっていないだろうかびくびくとしていたが、そうはなっていなかった

 

・・・むしろ咲に圧倒されながらも全員楽しそうな顔を浮かべていたのだ、それは誰もが咲の実力に魅力されていたからだ

 

結果は咲の圧勝、そして緑は咲に尋ねたのだ

 

・・・明日もまた、私たちと打たない?

 

それから咲は緑に誘われて麻雀部に入りこみ、緑が引っ張って連れてきた三年生や二年生、はたまた教員や他校の生徒と咲は打つようになり、そして咲は麻雀の熱を取り戻し、そしてどんどん麻雀が好きになった

 

そんな月日が流れ、そしていつの間にか咲と緑はお互いに笑顔を浮かべながら隣で歩くようになっていた

 

_____

 

(あれから三年か・・・一時はどうなるかと思ったけど、いい『縁』を結べたんだね)

 

咲との楽しかった中学での思い出を振り返りながら、同時に寂しい気持ちになっていた

 

・・・咲は他校との交流や後輩たちができてからも家族以外での一番の縁が強いのは自分だと思っていた、だけど今の咲には自分とは違う強い縁で結ばれた娘がいる、それが緑にとってとても寂しかったのだ

 

(これが子離れできない親の気持ちってやつなのかな)

 

そう静かにため息をつきながら、その表情は柔らかいものだった

 

(けど、良い顔をするようになった、良い笑顔を浮かべるようになった、それだけで私は嬉しいよだから・・・)

 

 

 

 

 

 

 

・・・最高の舞台で最高の試合で最高に楽しい試合をしよう、咲

 

緑は目をまるで炎のように燃やしながらそう強い決意を抱くのだった

 




人物紹介

『清澄高校三年・麻雀部副部長』結城緑(見た目・FGOの刑部姫)
本作のオリジナルキャラで咲のいない清澄高校の大将を務めている。
中学時代は咲と同じ学校へ通っており、偶然出会った咲に興味を持ち、その後仲の良い先輩後輩関係となった。
人のセンスを伸ばす才能があり、咲のインターミドル二連覇の偉業も緑の指導がなければなしえなかったと当時の照は語るほどだった、そのため清澄メンバーも各々それなりにレベルアップしている。ただ和への指導に関しては緑自身はしまったと思う部分があった。
公式戦には今まで参加はせず、今年が初参加で初の全国でもある、なお個人戦は不参加。
咲が中学時代牌を置いたことを誰よりも気にかけており、咲が再び麻雀を始めたと本人から直接話を聞いた時には涙を浮かべて喜んでいた。
趣味はネットアイドル、休日などではネットアイドルとして活躍しており、人気もなかなか、ただし現実ではネット外での友達が久しかいないというボッチである。
名前の由来は名前と苗字から『多くの人と良い縁に結ばれる子』に育ってほしいという願いがあり、緑自身もこの名を気に入っている・・・ただしボッチである
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