白糸台高校二年生の渋谷尭深は珍しく上機嫌な様子で部室へと向かっていた、というのも昨日、彼女の親戚から送られてきた自分のお気に入りの緑茶をいただき、それを今日、新しい後輩たちに振舞うのだ
尭深の趣味であるお茶は同じ麻雀部員の亦野誠子はもちろん、先輩部員である弘世菫や宮永照からも絶賛されるほどおいしく、休憩タイムの彼女のお茶は彼女たちにとってお楽しみの時間でもあった
さらに今年からは天真爛漫な後輩と自分と同じタイプの物静かな後輩ができたため尭深はそんな二人の後輩に自分のお気に入りのお茶をごちそうすることが楽しみなのだ
『タカミーこのお茶すっごく美味しい!!』
『渋谷先輩が入れてくださるお茶すごく落ち着いて美味しいです』
「♪~」
尭深は自分のお茶を飲んで満面の笑みを浮かべている後輩たちの姿を思い浮かべて思わず小さく鼻歌を歌ってチーム虎姫専用の部室の前まで到着するのだった
「――――――――」
「――――――――」
(あ、淡ちゃんと咲ちゃんがもう来てる、何を話してるんだろう?)
ふと部屋の中で咲と淡の話声が聞こえ、尭深は二人の話の内容が気になって耳を傾けると
「じゃあサキが一番苦手なのはタカミーになるんだね」
「うん、そうなるね」
(・・・・・え?)
・・・二人の会話を聞いた尭深は、その内容が信じられずしばらくの間、部屋の前で固まるのであった
_______
(シクシクシクシク)
「・・・何があった?」
「さあ?」
「た、尭深!?どうした!?しっかりしろ!?」
部活も終わり、チーム虎姫は様子がおかしい尭深のための緊急会議を行うことにした、というのも部活が始まった時から尭深が落ち込んでおり、また、咲を視界に移した瞬間に悲しそうな顔を浮かべていたため、咲と淡を真っ先に帰らせて照と菫の上級生と同じ二年の誠子だけが残って話を聞くことになったのだった
しかし咲たちが居なくなった瞬間に尭深はソファーに横になって泣き始め、他の面々はどうすることもできずに困り果てているのだった
「え、なになに・・・」
そんな中、必死に尭深の話を聞こうとしていた誠子はポツリとつぶやいた尭深の言葉を聞き逃さず耳を傾けると、その内容に困り顔を浮かべるのだった
「どうした?何かわかったか?」
「いえ、その・・・」
菫に問いかけられ誠子は困った顔を浮かべながら一瞬照の方に視線を向け、照は首を傾げたが、誠子は意を決して照と菫に伝えるのだった
「えっと、今日部室に入るときに咲と淡の話声が聞こえて」
「フム、それで?」
「なんでも咲は尭深のことが苦手だそうです」
そのことに照と菫は驚いた、というのも咲と尭深の相性は悪いどころかお互いに似ている部分があるためにシンパシーを感じあい、仲良くなると二人は思っていたのだが、まさか咲の口から尭深のことが苦手だとはニワカに信じられなかったのだ
「聞き間違いじゃないのか?」
「私もそう思って聞いてみたんですけど、二度も聞き間違えるはずがないって言ってますからそれはないと思います」
菫は一瞬尭深の勘違いかと思い尋ねたが、どうやら照たちが来るまでずっと立ち聞きをしていたらしく、その話は確実なのが尭深の様子からわかった
「まさかあの咲がな・・・」
菫は咲が尭深のことが苦手なことを意外と思いつつもこのままではまずいと考えていた。というのも白糸台はチーム制で争われ、そしてそのチームの中で一番のものが大会に出場することができるのだ、予選程度では照が居れば余裕ではあるが、全国大会では全員の力を合わせないと勝つことは難しい、そんな中でチームの不仲は全体のモチベーションの低下にもつながりかねないため、菫は早急にこの問題を解決すべきであると判断するのだった
「照、お前は何か知って・・・」
菫はまず咲に一番親しい人物である照に情報を求めようとしたが、その当の本人は・・・
(ポリポリポリポリポリポリポリポリ)
ただ一心不乱にポッキーをまるでウサギのように食べているのだった
「こんな時に何をやっているんだお前は!!??」
「!?」
さすがの菫も照の事態度に怒鳴り、照はまるで菫にロンされた時の衝撃を受けて驚くのだった
「菫、そんなに怒鳴らなくても」
「黙れ!?こんな非常事態に後輩よりもお菓子をとるのかお前は!?」
「もしそんな状況なら私は後輩じゃなくてお菓子をとると思う」
後輩よりもお菓子(食い気)をとる照にさすがの菫も頭痛に感じていたが、照は気にすることなくお菓子を口にした、まるで何も問題が起こっていないように
「それに、別に咲は尭深のことを嫌っているわけじゃなさそうだし」
「は?」
照のその言葉に菫は理解できずに口を開き、誠子も尭深もどういうことかと照の方に視線を向けると照はポッキーを食べ終えたのか菓子箱をゴミ箱に捨てると尭深を見て提案するのだった
「尭深は確か家からの通いだったよね?」
「は、はい」
「じゃあ寮への手続きとかは必要ないね」
「おい照、どうするつもりだ?」
照は尭深に白糸台の寮生活ではなく実家暮らしであると確認し、菫は照が何をするかわからず尋ねると
「尭深には今日の晩御飯うちで食べてもらう、そうすればたぶん全部わかるはず」
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・・・そして現在、『宮永家』の玄関前
(き、来てしまった)
あれから尭深は照に連れられて宮永家まで連れてこられた、照はああいったが尭深は咲の口からハッキリ苦手だと言われているため、どうしても信じられないのだ
「あ、あの、宮永先輩、やっぱり今日は遠慮します、先輩のご両親にもご迷惑でしょうし」
「大丈夫、今日は両親とも仕事でだいぶ遅くに帰ってくるから、それに学校を出る前に咲にメールを送ってたから準備してくれてると思うよ?」
尭深は今日のところは遠慮しようと思ったが、このままだとズルズル引っ張ると思い照は無理やり尭深の手を引っ張って家の中に入るのだった
「ただいま」
「お帰りお姉ちゃん、遅かったね」
家の中からエプロン姿の咲がスリッパをパタパタさせながら帰宅した照を出迎えると、照の後ろにいる尭深の姿を見てあれ?っと首を傾げ、尭深は咲の姿を見た瞬間、思わず俯くのだった
「渋谷先輩?今日はどうされたんですか?」
すると咲の口から尭深がどうしてうちに来たのかと、照のメールで知っているはずなのにわざわざ訪ねてきたので、尭深はまるで来るなと言われているようでやっぱり嫌われているんじゃ!?と思い、照もあれ?と首を傾げるのだった
「咲、さっきメールで尭深が家に来るって連絡を入れたと思うけど?」
「え?メールなんて来てないけど?」
「・・・ホント?」
「ホントのホント」
咲が照のメールが来てないことをポケットにしまっていた(高校入学と同時に買ってもらった)携帯電話を照に見せると、そこには照のメールが届いていなかった、この事に照はあれ?とまた首を傾げて自分の携帯を見てみると
「あ、送ったと思ってたら送信ボタンを押し忘れてた」
照の操作ミスによってメールが送られていないことにさすがの咲や尭深もズルっと滑らせて呆れるのだった
______
「もう!!今日はたまたまカレーだったからよかったけど、もしそれ以外だったら今日のお姉ちゃんの晩御飯は抜きだったんだよ!!」
「ごめんなさい」
咲はプンプンと怒りながら準備を進め、尭深と一緒にテーブルに座っている照は咲に怒られてシュンっと落ち込むのだった
「ほら、お姉ちゃんごはんができたよ、渋谷先輩の分もありますのでどうぞ・・・その、家のカレーは甘口ですけどいいですか?
「う、うん、私も辛いのはあまり好きじゃないから」
咲はテーブルの上に三人分のカレーと簡単なサラダを置きながら尭深に味の好みを聞き、尭深は大丈夫と答えながらも苦手な先輩の自分が居るのにあまりにも普段通りの咲に戸惑うのだった
「「「いただきます」」」
それから三人は一緒に手を合わせた後、尭深は咲が作ってくれたカレーを口にすると、咲が尭深をじっと見ていることに気づくのだった
「あ、あの、咲ちゃん?」
「あ、ご、ごめんなさい、えっと・・・味はどうですか?」
咲は料理の感想を聞きたいのか少し恥ずかしそうにしながら尭深に尋ねると、尭深はそんな咲を心の中で可愛いなと思いながら素直な感想を伝えるのだった
「えっと、すごく美味しいよ?」
尭深の美味しいという感想を聞いた咲は、よっぽど嬉しいのか満開の笑顔を浮かべ、尭深はそんな満面の笑顔を向けられたせいなのか自分の顔が赤くなるのを感じて自分の分のカレーをパクパクと食べるのだった
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(・・・すっかりお世話になってしまった)
晩御飯の後に咲は二人分のお茶を注ぎ、尭深に自分の入れたお茶の感想を聞いて、上手にできていたことをほめられるとまた嬉しそうな笑顔を浮かべて今は食器洗いをしており、尭深は咲が注いだお茶をゆっくりと飲んでまったりしてしまっているのだった
「そういえば咲」
「何?お姉ちゃん?」
「尭深が咲に嫌われたって思ってるんだけど、咲は原因は何か知ってる?」
「ブーーーーー!!??」
すっかりまったりしていた尭深だったが、照から爆弾を投げつけられて思わず飲んでいた茶を吹き出してしまい、咲は照の発言にポカンっと口を開いたまま固まるのだった
「え?誰が誰を嫌ってるって?」
「だから咲が尭深のことを」
「えええええ!!??」
咲が照にもう一度確認したところ尭深のことを苦手といった咲自身がなぜか驚愕した声を上げ、咲はどういうことなのか尭深に尋ねるのだった
「あ、あの渋谷先輩、なんでそんな風に思ったんですか!?も、もしかして私何かしてしまいましたか!?」
咲はあわあわしながら尭深に尋ね、尭深もこうなったらどうにでもなれとやけくそになりながら今日の出来事を話すのだった
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「・・・・あー」
・・・そして尭深から一通り事情を聴いた咲は何か納得したように頷くのだった
「あーってあーって、やっぱり咲ちゃんは私のことが嫌いなんだ」
咲のその反応に尭深は咲にやっぱり嫌われてるんだと思い膝から崩れて四つん這いになっていると、咲は慌てて尭深に駆け寄り、そして『誤解』を解くことにするのだった
「ち、違います、実はその時淡ちゃんと『麻雀』について話してたんです!!」
「・・・麻雀?」
「はい、実は・・・」
『ねーねーサキ、サキって自分の持ち点を±0にする能力も持ってるよね』
『持ってるけど、それがどうしたの?』
『いやさ、ウチの部活の中じゃテルや私ぐらいしか防ぐことができないけどさ、他の部員の中だったら誰が一番やりにくいのかなって思って』
『淡ちゃんは一番最初の一回しか防いでないよね?』
『サキ!!余計なことを言わない!!』
『あははごめんね、で、±0を他の人だったら誰が一番やりにくいかだったよね?』
『うんそう、私も考えてみたんだけど誰も浮かばなくてさー』
『うーん、部活の人たちで限定すると渋谷先輩かな』
『ほえ?意外、タカミーなんだ』
『うん、渋谷先輩の能力、ハーベストタイムだったかな?』
『全部の局の第一打がオーラスで集まって役満を狙いやすくする能力だね』
『そうそれ、いくら私でも九牌以上集まった渋谷先輩の能力を防ぐのは無理だし、例え±0を狙わなくても淡ちゃんみたいな高火力を常に出し続ける事ができないからオーラスで逆転される危険性がある、特にお姉ちゃんや淡ちゃんと一緒の時とかが一番可能性が高いかな』
『ほへ~、じゃあサキが一番苦手なのかタカミーになるんだね』
『うん、そうなるね』
「・・・ってことを淡ちゃんと話してたんです」
(ポカーン)
咲の今日の淡との会話を改めて聞いて、尭深は自分が聞いた咲と淡との会話をもう一度思い出すのだった
(えっと、つまり・・・)
『じゃあサキが(麻雀で)一番苦手なのかタカミーになるんだね』
『うん、(麻雀だと)そうなるね』
全部が全部自分の誤解であり、自分が咲の口から聞いたのか麻雀との勝負では苦手というだけだったのだ
「つまり、全部私の勘違い?咲ちゃんは私の事、嫌いじゃなかった」
「そんな!?渋谷先輩のことを嫌いになんてなりません!!むしろ先輩の中で一番大好きです!!」
『大好きです』、そう咲の口からハッキリと伝えられた言葉に尭深は
「し、渋谷先輩?ど、どうして急に泣き出したんですか?お姉ちゃんもよかったねってほんわかしてないで、先輩、渋谷せんぱーーい!!??」
嬉しさのあまりに思わず涙をポロポロと泣き出して、咲はそんな尭深にどうしたのかと慌てるなか、(最初から予想できていた)照は後輩が妹の勘違いを解けて良かった良かったと泣いてる後輩をスルーしてお菓子を食べ始めるのだった
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オマケ
尭深「咲ちゃん、淡ちゃん、そろそろお茶にしよっか」
淡「あ、じゃあ私お茶菓子持ってくるね」
咲「淡ちゃん、つまみ食いしちゃだめだよ」
淡「ぶーぶー、いくら私でもそんなことしないし」
誠子「尭深、すっかり一年生たちと仲良くなりましたね」
菫「そうだな、私も問題がなくなってホッとしている」
照「・・・咲、私もお菓子」←なぜか首にお菓子禁止のプラカードを下げられてる
咲「お姉ちゃん、弘世部長から禁止が解けてないよね?」
照「・・・菫」
菫「後輩が泣いてる中お菓子をとる貴様にしばらくはお菓子はなしだ」
照(ガーン!!??)
人物紹介
『白糸台高校二年』渋谷尭深
白糸台二年生のチーム虎姫の一員
何かと似た部分が多い咲とはシンパシーを感じて咲を気に入っており、咲自身も尭深に懐いており、淡も天真爛漫な姿を羨ましいと思いながらも自分に懐いてくれるため可愛い後輩として接している
お茶が趣味であり、彼女が入れるお茶はチーム虎姫のメンバー全員が気に入るほどのおいしさを誇る
なお彼女には『ハーベストタイム』の他に『お茶の時間(ティータイム:淡命名)』という能力があり、この能力にかかったものはどれだけ気が張り詰めった人でも彼女のお茶によってほっこりすると言われている
『白糸台高校二年』亦野誠子
渋谷と同じチーム虎姫の一員
原作との変化は一番ない
どちらかというと咲より淡に関わることが多いため部内では菫の次に苦労人でもある