というわけで、なるべく毎日投稿。文化祭まで一気に駆け抜けましょう。
楽しんでいただけると嬉しいです。
とある日、いつも通りパソコンで組織への報告書を片付けていた。
気がつけば、夏休みもまるまる一月経ってしまった。今年はなかなかに忙しかったものだったと思う。
奉仕部の課外活動、数度の由比ヶ浜や小町とのお出かけ、折本たちと遊びに行ったりと、色々あった。
だが、退屈ではない一ヶ月だったと思っている。小二とかの俺なら三ヶ月足りないーとか言ってただろうが。
それに、外に出て、人と関わるというのはある種の安心を俺にもたらしてくれる。俺はその間はまだ普通である、と。
俺は怪物だ。人のナリをしていて、知性を持っていようと。たとえ傷を消したって、その事実は変わりはしない。
オクタは自分こそがそうだと言うが、それは俺を安心させるための詭弁に過ぎない。この手は同じく血塗れている。
事実は事実でしかなく、過去に厳然として存在するのである。だからこそどこかに安寧を求めるのだ。
まだ、人間でいられる。自分に人間の部分が残っていると、そう確信できるものを。
『なんてな』
誰もいないリビングの中で、無意識に首輪から声が漏れる。無論、それを聞くやつはどこにもいない。
小町は友達の家に遊びに行ってるし、インラスは部屋で昼寝。両親はいつも通り仕事まっしぐらだ。
かくいう俺も、鶴見さんから回ってきた総括書類の処理の手伝いを行なっている。ここ一月のまとめみたいなもんだ。
他のメンバーは一週間前に完全な休みに入ってるが、千葉で唯一の〝ナンバーズ〟の俺はそうもいかん。
〝組織〟には任務達成数や戦闘力、能力の有用性などで序列を決められる。その上位十二名のうち、俺は二位に座しているのだ。
その采配の理由の八割は戦闘力と強靭な不死性に由来するが、だからといって殺人マシーンだけでいればいいわけではない。
他のメンバーへの示しというか、まあただのカカシじゃねえぞってことを見せなきゃならないのである。
『変に肩書を持ってると辛いよ、っと』
最後の一文字を書き終えて、保存してからファイルを閉じる。そうするとアプリを起動して入念に暗号化した。
ロックを完了すると、特殊回線を通じて鶴見さんに送る。あの人も今、報告書を処理しているはずだ。
ピコンッ
程なくして、傍に置いた携帯にメールが届く。
ソファに軽く沈んだスマホを見ると、「OK!」と今にも過労死しそうなツルのアイコンを受信していた。
……うん、まあ俺が片付けたのなんて、せいぜい俺のチームと、他五個くらいの地区のだけだからね。
千葉全域のメンバーの情報をまとめる鶴見さんは、多分俺の100倍は忙しいだろう。あの人IQが常人離れしてるだけの人間なのに。
『さて、飯でも食うか……』
時計を見ると、すでにその針は頂点に達している。
鶴見さんからのエマージェンシーコールがあったのが9時だ。単純計算で3時間くらいやってたことになる。
……朝飯食ってないし、どうせ飯の匂いを嗅ぎつけたらインラスが降りてくるだろうからステーキでも焼くか。
立ち上がって体を伸ばし、キッチンに移動すると冷蔵庫からステーキ肉を取り出す。義父さんの会社の人からのもらいもんだ。
胡椒をふり、フライパンを取り出して火をかける。十分に温まると、バターと一緒に肉を投入した。
じゅわ、と音を立てて肉が焼ける。やや強火の炎がフライパンを熱し、美味そうな匂いに唾が出てきた。
グオッ!
肉をひっくり返したところで、重々しい足音で二階から案の定インラスがやってくる。
『おう、来たか寝坊助恐竜』
首輪を使いながらインラスを見れば、目を爛々と輝かせた奴は太い尻尾をビシバシ床に叩きつけている。
床が特別製で良かったと思いつつ、奴の手の中を見た。そこには、おおよそモンスターみたいな恐竜が持つものじゃないものがいる。
『また抱いて寝てたのか』
「ワンッ!」
「グオッ!」
今度は二つ返事が返って来た。一つはインラス、そしてもう一つはインラスが両前脚で持ってる犬……サブレだ。
面白いもので、俺が食うな、仲良くしろと言ったら、インラスはサブレとたった1日で仲良くなっていたのだ。
今じゃ奴の寝床で一緒に寝てる始末である。まあ、由比ヶ浜に犬のミンチを返すわけにもいかんので助かった。
『もうちょっと待ってろ、すぐお前の分も焼いてやるから』
「グオ!」
「ワンッ、ワンッ!」
『はいはい、お前のもな』
サブレを抱えたままソファの方に行ったのを見届けて、そろそろいい頃会になったステーキをさらに移すと二枚目を焼きだした。
十分ほどして、インラスのためのが焼きあがる。ついでにボウルにサイエンスをぶちまけて、食卓に持ってった。
『おいお前ら、できたぞ』
「グオ!」
「わふっ!」
器用にテレビのチャンネルを変えていたインラスとサブレは、一瞬ですっ飛んできた。
苦笑いしつつ、床にそれぞれの飯を置く。そうすると自分のをテーブルに乗せ、席について手を合わせた。
『いただきます、と』
俺がそう行った瞬間、今か今かとヨダレを垂らしていたペット二匹が飯にがっついた。ガブガブと勢いよく食ってる。
お前ら食っちゃ寝てといいご身分だよな。俺も雪ノ下がいなかったら学校行かないで同じ生活がしたいよ。
ブーン
ん?なんだ、メールか?
一口分切り取ったステーキを運ぼうとした瞬間、メールが届いた。一旦食器を置いてポケットから取り出す。
普段用のスマホには、メッセージ受信の通知が一件。開いてみれば、それは友人からのメッセージだった。
差出人:戸塚
題名「八幡くん、元気?」
本文「八幡くん、こんにちは。まだまだ暑いけど、体調はどうかな?水分はこまめにとってね。
それで、実は今テニスのスクールが終わったんだけどね。今日はこの後は何もなくて、なんとなく八幡くんと遊びたいなって思ったの。
だめ、かな?」
メールの内容は、有り体に言ってお出かけの誘いだった。最後の一文がなんともいじらしい。
これで雪ノ下に惚れてなかったらノックアウト必須だ。まあ、そうじゃなくても十分キュンとはしてるんだけどね。
か、勘違いしないでよね!これは心変わりしたとかそんなんじゃなくて、戸塚が天使なだけなんだからっ!
……キモいな、うん。キモい。
『まあ、たまにはいいか』
ここ一週間くらい日中はずっと家の中だし、夜は夜で仕事ばっかで少々ストレスは溜まってる。
気分転換にはいいだろうと、了承のメールを返した。すると間髪入れずに喜びの絵文字とともに、二時に駅でとメールが入る。
『さて、さっさと食うかね』
また了承の意を返し、俺はナイフとフォークを握った。
ーーー
ステーキを軽々と平らげ、まだ腹が減ったというインラスにもう一枚焼いてから家を出た。
テクテクと歩いて二十分、最寄駅から三つほど隣の海浜幕張駅に着く。
今日も今日とて外回りか出張帰りと思しき社畜の方々がひしめく駅の中を潜り抜け、改札を抜けた。
さて戸塚はいるかと首を巡らせれば、なんかのお知らせが掲示されてる柱の前に戸塚と思しき少女が見える。
思しき、という表現の意味は、戸塚がお洒落な格好をしていたからである。普段のテニスウェア姿とは似ても似つかない。
薄緑色のワンピースに薄い灰色のカーディガンを羽織り、手には小さなバッグ。活発な普段から一転、完全に女の子の装いだ。
『よう、戸塚』
「あ、八幡くん。こんにちは」
とりあえず、近づいて挨拶をする。戸塚は少し俯かせていた顔を上げ、ぱっと笑顔を浮かべた。可愛い。
ちらちらと戸塚を見ていた周りの男から、嫉妬じみた目線が向けられる。悪意がないのは、腐り目を隠す眼鏡のおかげか。
「突然ごめんね。予定とかなかった?」
『いや。なんなら誘われなかったらペット達の仲間入りしてたとこだ』
いやほんと、小町もいないと自分とペット達の世話しかしないで済むので、気が緩んじまうのだ。
掃除と洗濯物を片付け、両親の明日の仕事着をアイロン掛けして、あとは夕食を作って冷蔵庫に入れると、さあやる事がない。
あとは〝組織〟の雑用が回ってくるけど、まあ些細なものだ。でも喋れない俺に新しい心情吐露剤薬は試そうとするな。
『にしても、気合入った格好してるな。女の子の嗜みってやつか?』
「う、うん。どう?似合ってる、かな?」
『まあ、戸塚はテニスやってて体のバランスがいいからな。似合ってるんじゃねえの』
(やった、褒めてもらえた!お母さんにはちょっとからかわれたけど、八幡くんには色々お世話になってるし……ぼ、僕も女の子だから!)
ちなみに雪ノ下のは、完璧な生活習慣と食生活の上での奇跡の産物である。
この前メールでの会話中に聞いた話じゃ、牛乳飲む量増やしたらしいけど。
ま、まあ、陽乃さんがあれだし、雪ノ下母も着物着ててよくわからないけどアレなので、望みはあるだろう
……あるかな。うん、きっとある。そう信じよう。信じたい。
「ありがとう。八幡くんも、似合ってるよ?男らしいっていうか」
『そうか?適当に選んできたんだがな』
ファッションセンス?何それ美味しいのである。そんなもの考えてる暇あったら料理本でも読んでる方が有意義だ。
それ言ったら珍しく小町&義母さんに激怒されて、更に同僚の人たち数人と一緒に着せ替え人形にされたけどな。
なんで女の人ってあんな服着せるの好きなのん?あと服脱ぐたびにキャーキャー言うのはどうかと思います。
『で、何がしたい?戸塚が行きたいところに行くぞ』
「……それ、八幡くんが考えるのが面倒くさかったりしてる?」
ぎくり。
「その顔、図星なんでしょ?もー、ダメだよ?」
『いや、すまん。ここ最近スーパーくらいしか出かける場所がなくてな』
あと図書館と予備校。そもそも、本質的にはインドア派である俺に予定を組めという方が無理がある。
とはいえ、女子と出かけるのにノープランはまずかったか。折本ならそれはウケない、とか言うこと間違いなしだ。
『じゃあ、映画で観るか?』
「あ、いいね。僕、ちょうど見たいものがあったんだ」
『なら、そうするか』
映画館なら、一番近いのはシネプレックス幕張か。あそこなら飲食店もゲーセンもあるし、映画の後も楽しめるだろう。
戸塚を促して一緒に駅を出ると、未だ暑さ収まらない真夏の太陽の下へと出た。相変わらずあっちーな。
「うわ、暑いねー」
『テニススクールは外なんじゃないのか?』
「ううん、室内。だからクーラーも一応かかってるんだ」
ほへー。テニスコートっつたら屋外のイメージが強いけど。あと体育館。
そういやテニスっていえば、あれ以降テニス部はどうなってるんだろうか。
『戸塚、部活のほうはどうだ?』
「えっとね、あの時の依頼の後八幡くんみたいに打てるよつになりたいって入ってきた人が何人かいたの。一年生なんだけどね。元からいた皆も、少しやる気を出してくれて……」
『そうか、良かったな』
それなら筋肉痛に悶えた甲斐があった。予想外のベクトルからだが、当初の依頼の内容は達成されてるだろう。
でも、俺みたいに打つのを目指すのはやめような?あれ、普通の人間じゃ難しいから。下手すりゃ腕折れるから。
「改めてありがとう、八幡くん。おかげで僕も、部活がもっと楽しくなったよ!」
そう言って、純粋な笑顔で見上げてくる戸塚。ヤッベ、今心臓が高鳴ったわ。マジで戸塚天使だわ。
それから戸塚が嬉々としてテニス部の様子を話している間に、目的地に着く。中に入ると、やかましい音が溢れ出る。
「わ」と驚く戸塚の声を聞きながら、エレベーターを上がって映画館に向かった。10スクリーンもあるそこそこ大きなとこだ。
八月末、この時期になると休みなのは学生くらいだ。よって映画館も比較的空いており、スムーズにチケットを購入。
意外にも、戸塚が選んだのはホラーだった。入り口でスタッフに半券をもいでもらい、いざシアターへ。
「結構まばらだね」
『まあ、時期的にな』
シアターの中は、案外静かだった。ちらほらといるバカップルとか、怖いもの見たさのリア充軍団を除けば。
バカップルはこっちがイラつくくらいうるさい。リア充軍団はもっとうるさい。お前らは騒いでないと死ぬのか。
というか、リーダー格の女がなんとなく三浦に似てた。なんでリア充って似たような格好ばかりしてるんだろうな。
個性個性と騒ぐ奴ほど、個性がない。ある種のテンプレだ。かと言って、視界の端に映った茶色ロングコート野郎みたいなのもあかん。
そんな適当なことを考えながら、眼鏡越しにシートの後ろ部分を見つめて25Eと25Fの席を見つけ出し、座る。
「僕、なんとなくこの空気好きだな」
『同感だ』
映画が始まる前には、独特の雰囲気がある。静謐ともとれるそれは、どこか侵しがたい雰囲気があるのだ。
リア充どももそれは分かっているのだろう、ほのかに劇場が薄暗くなり、予告映像が流れると自然と黙る。
「ねえ、八幡くん」
ぼうっとアクション映画の予告を眺めていると、隣から声がかけられた。
ん?と見下ろせば、戸塚はなぜか少し顔を赤くしてから、下を向いて早口に言った。
「怖くなったら、手、触っていいかな?」
そんないかにも女の子らしいことを言う戸塚は、とてつもなく可愛かった。雪ノ下と小町の次くらいには。
『まあ、俺なんかで良ければ』
だから俺は、そんな言葉を首輪越しに吐き出した。
ーーー
映画が始まって、しばらくがたった。
画面から飛び出す3Dのワンピースの女幽霊はもはや見慣れてきて、物語も佳境に入っている。
「ひゃっ……!」
その中で、戸塚はいわゆるビックリ的なシーンで俺の手を握ってきた。その度にビクッと飛び上がっている。
そういえば、小学生の頃に一度だけ家に雪ノ下を招いた時もホラー映画見せたらこんな反応をしていたか。
後でしこたま怒られたなぁ。あのときの俺、なんであんなものを見せたのか。あれか、怖がる雪ノ下を見たかったってか。
ちなみに俺はホラーは普通にいける。というか、俺自体がホラーのような生物なので、なんとも感じない。
そうこうしているうちに上映は終了し、エンドロールが流れてシアターが明るくなる。
「ふう、怖かったねー」
『そうだな』
「ごめんね、何回も手を握っちゃって」
気にするな、とジェスチャーをして、立ち上がって戸塚に手を差し出す。
戸塚は少し驚いた後、にこりと微笑んで俺の手を取って立ち上がった。そうすると、すっかり元の光を取り戻したシアターを出る。
他のシアターからも出てきた客の流れに導かれるままに外に出ると、外階段に繋がっていた。
外に出ると、2時間と少しが経ってもちっとも暑さの変わらない太陽がビルに遮られ、中途半端に光を降り注がせる。
『少し、休憩するか。映画の感想でも話しながら』
「うん、いいね」
すぐ目の前にあったカフェに入る。
幸い、俺たちのように映画を見終わった人で賑わう中でも
そんなに混んでもいないので、するりとレジまで到達すると手早く注文を済ませる。
「アイスコーヒーで」
『じゃあ、アイスココアで』
「はぽん。我もアイスコーヒーで頼む」
三者三様、それぞれのものを頼んだ。そんなに時間がかからずに飲み物を受け取って、テーブル席についた。
それから一口、頼んだものを飲む。はふう、と長時間映像に集中していた意識が緩む感覚がした。
「迫力満点だったね!僕、何回も騒いじゃったよ」
それならほどなく、戸塚は映画のことについて話し出す。俺はこくり、と頷いて同調の意を示した。
「うむ。少々アメリカナイズな傾向に行き過ぎていたような気もするが、まあ迫力という点ならばなかなか評価できるのではないかと我は思う」
まだまだ開発途中の首輪の代わりに頷く俺に対して、隣の奴はうんうんと頷きながらそんな偉そうなことをのたまう。
…………うん。極力視界に入れないようにしてたけど、さすがに会話にまで混ざられたら無視は無理だ。
『材木座、お前何やってんだ』
「ややっ、これはしたり。ちょうど映画館の中で見かけたのでな、話しかけようとしたが映画が始まってしまったのだ」
まあ、そんな気はしてたよ。つうか、真夏なのにこんな格好をしているのはよほど頭のネジが外れた阿呆だけだ。
そして残念なことに、見てくれだけはいいこいつはそういう意味じゃあアホ極まりない。革グローブとかもう見てるだけで熱い。
戸塚を見ると、さすがに苦笑いだ。ここでなんでいんの?みたいな露骨な目線を向けないあたり、性格が良い。
『まあ、この際いるのは良いとして、だ。お前ホラーとか平気だっけ?』
「まあ、な。星の数ほど修羅場をくぐり抜けてきた我にすれば、あんなもの屁でもない……それより雪ノ下嬢の添削の方が我には恐ろしい」
あー、こいつ新作ができるたびに奉仕部に来てたしな。夏休みに入れば、直接持って俺の家に来る始末だ。
で、毎回容赦なくツッコみ所を指摘する雪ノ下を心底恐れているらしい。情けないというか、なんというか。
「あはは、確かに雪ノ下さんはきついところもあるけど……でも、良い人だよ」
「それは分かっているのだがなぁ。ほら、なんせ我豆腐メンタルなんで、あの罵倒はめちゃくちゃ効く」
あはは、とまた苦笑する戸塚。まあ、あの辛口に猛毒を混ぜ合わせたような容赦のなさは一種のあいつの優しさだ。
優しい言葉などで誤魔化すくらいならば、容赦なく思ったことをぶつける。それで相手が折れても伸びても、どちらでも。
雪ノ下雪乃は嘘を嫌う。だから正直に、真っ直ぐに生きようとしている。俺などがそばにいてはいけないほどに。
しかしこれは、あくまで俺の感想だ。
人間、誰しもそれぞれ別々の見方をする。それが人が相手でも、例えば今日の映画が相手でも。
似通うことはあっても同じことはなく、だからこそ完璧な理解なんてものはこの世には存在しない。
なぜなら人は人であり、あいつがこいつにはなれないのだから。だから、理解できたなんて、こうだと決め付けるのは悪だ。
例えば俺は、俺と出会う前の雪ノ下を知らない。中学生の頃の雪ノ下も知らないのだから。
……まあ、そんなことは今はどうでも良いか。
「雪ノ下嬢のことはともあれ、良い息抜きになった。これで原稿に集中できる」
『宿題はちゃんとしてんだろうな』
「我をあまり舐めないでもらいたい。最初の二日で終わらせたわ」
さすが、勉学に関しては異常に強い。これで厨二病がなけりゃ完璧なのに。
「わっ、すごい。僕は一週間前までやってたのに」
そりゃ、戸塚は部活もあればスクールもあるしな。
材木座には、〝仕事〟以外だと俺以上に普段することがないらしい。そのため時間は有り余ってるのだ。
「八幡くんはどう?もう宿題終わったのかな?」
『まあな。あとは妹の自由研究のレポートとかしてたんだが……』
それからしばらく、カフェで夏休みの思い出話に花を咲かせた。主に俺と戸塚の間で。材木座?知らん。
そのあとはいつかのように三人で遊びまわって、ゲーセンとかスポーツショップとか、まあ色々と行く。
そうして、少女……と飛び入り参加してきたウザい友人との一日は、日が暮れるまで続いていった。
読んでいただき、ありがとうございます。