午後六時半。俺は今、とある場所向かう電車に乗っている。
ガタンゴトンと音を立てて走り、夕暮れ時特有のオレンジ色の陽光が差し込む車内には、ちらほらと浴衣を着た人間が見えた。
浴衣を着た人間の大概は、家族連れやカップル、あるいは同性同士でのグループ。そして俺と同じように寂しい一人。
そう、今日は由比ヶ浜の言っていた花火大会の日。俺も向かうところであり、かれこれ最寄駅から十分は電車に乗っていた。
「………………」
祭り会場へと向かう乗車客で高密度になっている中、運良く座席に潜り込むことができた俺は……凄まじく凹んでいた。
原因は一通のメール。朝からずっと固定で日ラッキぱなしのそのメールに、何度目かわからないが目を落とす。
差出人:雪ノ下
題名「花火大会のお誘い」
本文「厳しい暑さが続いていますが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
暦の上では秋ですが、酷暑の毎日が続いています。
残暑お見舞い申し上げます。
さて、今回こうしてご連絡しましたのは、夏祭りへとお誘いするためでございます。
八月も終わりに向かいつつあり、新たな学期に備えて体を休めているところでしょうが、できるのなら共に夏のひと時を過ごしたいです。
もし来ていただけるのなら、会場の入り口にてお待ちしております」
終始かしこまった文体で送られてきたそれは、雪ノ下からのメール。
内容を要約すれば、花火大会に行かないかというもの。つい今朝方送られてきたこのメールに、俺は断りの返信をした。
いやマジで、心臓が止まるかと思うくらい心苦しかった。せっかくの雪ノ下と会えるチャンスをふいにしたのだから。
理由はもちろんのこと、由比ヶ浜との約束である。
「ハァ……」
喉の奥から、声を伴わないため息が漏れる。3時間ほど前に「わかりました、ではまた学校で」と返信が来てからこの調子だ。
──あーあ、やっちゃったね。
サブレを預かった日のオクタの言葉の意味がようやくわかった。奴はこのことを、事前に知っていたのだ。
問い詰めてみれば、そもそも雪ノ下に俺を誘うようアドバイスしたのはオクタだという。何やってくれたんだあいつ。
──残念だよ、せっかく進展すると思ったのに。
……起きてたのかよ、オクタ。
──うん、実は昼くらいから。まさか断るとはね。
当たり前だろ。確かに死ぬほど惜しいが、先にしていた数少ない友達との約束すっぽかすほどゲスじゃねえよ。
──なんなら、雪ノ下さんと三人でいっちゃえばよかったのに。
いや、それこそねえだろ。なんかわからんが、雪ノ下も由比ヶ浜もすごいことになる予感がするわ。
あーもう、やめだやめ。ふいにしちまったものは仕方がないし、今日は由比ヶ浜と花火大会を楽しもう。
──ふふ、そうだね。今回は僕も諦めるよ。それじゃ、おやすみ。
おうおう、そのままずっと寝てろ。
『こちら側のドアが開きます』
数分後、 いよいよ由比ヶ浜と待ち合わせの駅に到着する。俺はまた嘆息して腰を上げた。
ぷしゅーと開いたドアから降りたのは俺一人。むしろ乗る人数の方が圧倒的に多く、車内はさらに密度が高くなる。
運転者の声とともにドアが閉まるのを見送ってから、改札に向かった。あとでまたあれに乗ると思うと憂鬱だ。
人の流れに逆らうように改札を抜け、彼女の姿を探す。待ち合わせ五分前、きているのならばもういるはずだが……
『まだみたいだな』
俺の身長は179cm、平均より少し高い視点で見渡すが由比ヶ浜は確認できず。
仕方がなく、コンコースの柱に寄りかかって待ち始めた。ぼうっと眺めていると、見覚えのある顔がちらほらといる。
ほとんどが校内ですれ違ったとかそんなレベルの人間、時々いろはの連れてる謎の女子集団のメンバー。
こっちをチラチラ見てくる彼女らの視線を受け流していれば、カランコロンと北口の方から下駄の音が聞こえた。
やや急ぎ足なその足音に目を向ければ……それは見覚えのある人物。というか、今待ち合わせをしている相手だった。
薄桃色の浴衣はところどころ小さく花が咲き、朱色の帯がよく映える。いつもはお団子のピンクがかった茶髪はアップに纏めていた。
つい三日前にうちにサブレを引き取りに来た、由比ヶ浜結衣である。
「あ、ヒッキー!」
思わず手をふれば、由比ヶ浜はこちらに気がついて少し走る速度を上げた。
下駄を履き慣れていないのだろう、やや危なっかしいその足取りに数歩前に出て、無意識に手を差し出す。
由比ヶ浜は少し驚き、しかしすぐに笑うとまた一段階スピードアップして俺の手に自分の手を乗せた。
「ゴール、なんちゃって」
『おう、お前が一等だ。参加者もお前一人だ』
「たはは、それじゃ不戦勝じゃん」
可笑しそうに笑った由比ヶ浜は息を整えると、傾けていた体を持ち上げる。
「ふぅ。ごめんねヒッキー、ちょっと、バタバタしちゃって」
『まあ、普段浴衣なんて着ないだろうしな』
恥じらうような、恥ずかしそうなはにかみ笑いを浮かべる由比ヶ浜に首輪を使う。
「ほんとそれね、ママにも着付け手伝ってもらってさー」
『奇遇だな、俺もだ』
「あ、そういえばヒッキーも甚兵衛だね」
半袖にジーンズ……というおきまりの外出コーデではなく、俺の体を包み込むのは濃い紺色の甚兵衛だ。
最初はラフな格好だったのに、たまたま午後休だった義母さんにぽろっと話したら瞬く間に着させられた。
『動きにくいし、ヒラヒラしてるし、ポケットないし、なんなら今すぐ脱ぎたい』
おかげで手提げバッグを持つことになった。手にもの持つの、あんま好きじゃないんだが。
「あはは、ヒッキーらしいな。でも、その、似合ってるよ?」
くしくしと髪をいじりながら言ってくれる由比ヶ浜。フォローしてくれたらしい。
『お前も、なんだ。いいんじゃないか』
「えへへ、ありがと」
なんだこのむず痒い雰囲気。お互いに褒めたせいか、妙に気恥ずかしくなる。
とりあえず行くかと、由比ヶ浜を手で促す。ここ数ヶ月一緒に部活をしてたからか、彼女は察して頷いた。
先ほど通ったばかりの改札を二人で抜けて、電車を待つ。
その間、沈黙が舞い降りた。普段はあっちから延々喋ってるが、普段じゃない状況だからか押し黙っている。
あー、なんか居心地が悪い。いや、もともと喋れないから沈黙自体は別にいいが、こいつが相手だとなんかなぁ。
『花火大会は』
「ヒッキー、花火大会って」
この空気をどうにかしようと、俺の首輪と由比ヶ浜の声が出たのは同時だった。
互いに顔を見合わせて、先にどうぞと目線で言い合う。しかし由比ヶ浜は首を横に振ったので俺が先に言った。
『花火大会はよく行くのか?』
「うん、私は毎年友達と行ってる」
なるほど、由比ヶ浜らしい。俺は特に何回も言った覚えはない。
「ヒッキーは?」
『三回、だったっけな』
比企谷家に来た年の夏、義父さんたちが早くうちに馴染めるようにと連れてってくれたのが一回め。
小六の時、雪ノ下と行ったのが二度め。あの時は流石に子供だけでは危険だと、両親のどちらかがいたか。
そして去年、折本に突然家に突撃され、強引に約束させられて、3回め。あの時はあいつの友達も一緒か。
『そういえば、現地集合にしなかったのはなんでだ?』
「ほら、人が多くて合流が難しいじゃん。携帯も通じないし」
携帯……ああ、そういやそうだった。一年前の時は折本たちと連絡取れなくて少し焦った。
そう頷いているうちに、電車がやってくる。開いたドアの向こうには俺たちと同じように浴衣や甚兵衛を着た人々。
きっと、皆花火大会が目当てなのだろう。由比ヶ浜と二人で扉のすぐそばの隙間に滑り込むと、ガタガタと扉は閉まった。
『そういえば』
「ん?何ヒッキー」
ふときになることがあって、首輪のパネルを操作して音量を下げると話しかける。
『さっきなんて言おうとしたんだ?』
「えっとね、さっき言っちゃった、かな」
さっき……ああ、なるほど。由比ヶ浜も俺に花火大会に行ったことがあるのか聞こうとしていたのか。
偶然同じことを勧化ているもんだなと思えば、由比ヶ浜もまた同じなのか照れ笑いをする。やめろ、こっちも恥ずかしくなる。
ガタン!
「ひゃっ!」
しばらく電車は走り続けて、窓の向こうにポートタワーが見えてきた頃。ふいに電車が大きく揺れた。
その拍子に履きなれない下駄のせいか、由比ヶ浜がバランスを崩して、こっちに倒れ込んでくる。
それを自然と受け止めた。その瞬間、ふわりと甘い香りが鼻をつく。
「ご、ごめん」
『気にするな』
そう謝り合う顔は、ひどく近い。みるみるうちに由比ヶ浜の顔が赤く染まってゆく。
普通の男子なら一種の勘違いをさせそうな表情の由比ヶ浜は、揺れが収まると速やかに離れていった。
ふう、危ない危ない。生来の疑り深さと自分への不信がなかったら今ので勘違いしてたかもな。
(ひ、ヒッキーの腕と胸、すごく硬かった。さいちゃんのテニスの時も思ってたけど、ヒッキー運動部じゃないのに筋肉やばくない!?)
「「…………」」
また、沈黙。それは隣の駅に着くまで続いた。
降り立った駅前は人で溢れかえり、喧騒に満ちている。なるほど、これは待ち合わせをするには最悪だ。
改札を通過すると、はぐれないように、それとなく由比ヶ浜を他人とぶつからないように体で守りながら進んだ。
「はーっ、やっと出れた!」
『やっぱりすごい人数だな』
駅前から会場の公園、その広場のところまで移動したところで、ようやく一息つく。
いやもう、ここにくるまでだけで相当疲れた。これで一人で来たとかなら絶対引き返して帰ってるレベル。
見渡せば、普段は閑散として、だだっ広い印象だけを受けるこの広場にも多くの屋台と、それに群がる人ばかり。
うへぇ、これの中をまた突き進むのか。もう考えただけで帰ってインラスの尻尾を抱き枕にしたくなってきた。
『由比ヶ浜、やっぱり帰っていいか?』
「よくないしっ!」
ちぇ、と自分の半分冗談が拒否されたことに舌打ちしつつ、気持ちを切り替える。
「まだ花火までは結構時間あるねー。どうする?」
『実は小町からあれこれ頼まれててな』
なんか夏休み後半結構遊んでた感じがするが、あいつは本来受験生。そのため今日も来れていない。
なので、俺にお使いを頼んできた。いくつか祭りで食べ物を買ってこいという指令だ。きっっと夜食にするんだろう。
「へー、どんなの?」
『ちょっと待て、メールがある』
携帯を袋から取り出して立ち上げる。由比ヶ浜がぐいっと覗き込んできた。
すると、パッと画面に浮かび上がったのは雪ノ下からのメールだった、やべ、消し忘れてた。
「……これって、ゆきのんからのメール?」
『あー、まあな』
「……誘われてたんだ」
『つい今朝きた。まあ、流石にダブルブッキングはありえないから断ったよ』
くっ、今更ながら悔やまれる。明日も花火大会やらない?ダメ?あっそう。
「……そっか。そうなんだ」
『どうかしたか?』
「んーん、なんでもない、それで、小町ちゃんのメールは?」
ああ、そうだった。雪ノ下のメールを閉じて、その上にある小町からのメールを選択して開く。
小町のお買い物リスト
焼きそば 四百円
わたあめ 五百円
ラムネ 三百円
たこ焼き 五百円
花火を見た思い出 プライスレス
……なんじゃこりゃ。
なんというか、最後の一文になんとも言えない気持ちになる。ほら、由比ヶ浜も苦笑いしちゃってるよ。
とりあえず買うものを記憶すると、「了解」とメールを送る。そうするとこれから使い物にならなくるだろう携帯を袋に放り込んだ。
『あー、すまないが買うのに付き合ってくれるか』
「うん、いいよ。私も何か食べたいし」
ならばと、リストの順番に買っていくことにする。
「〜♪」
一歩前を行く由比ヶ浜は祭りの陽気に当てられたのか、それとも小町のメールの影響か、上機嫌そうだ。
カラコロと鳴る下駄に合わせるように唄う鼻歌は、雑踏の中でもよく聞こえる。なんだかこっちも少し楽しくなった。
ほどなくしてたどり着いた出店は、軒並み大盛況だった。
味はそれなりとわかっているのに、皆並んでそれを買いたがっている。お祭り効果というやつだろうか。
立ち止まって自然に隣になった由比ヶ浜も、おーとジューシーそうなソース焼きそばを見て目を輝かせた。
「ね、ね、どれから食べる?りんご飴?」
『それは小町のリストじゃなくて、お前の頭の中のリストだな』
いや、確かに美味しいけど。
「むー……じゃあ、どれからにする?」
『そうだな、まずわたあめでも……』
「わー!見てみてヒッキー!これPS3あたるよ!」
言ったそばからまた他のものに興味出しやがったよ。お前はサブレか。いや飼い主だった。
苦笑しながらそちらを見ると、由比ヶ浜の目は宝釣りの屋台に釘付けになっていた。なんか子供っぽいな。
『いやいや、当たらないからな』
「え、でも紐繋がってるじゃん」
『あたるまで金使うつもりか?それに仕掛けでもされてたら意味ないだろ。ほら、いくぞ』
「むー。はーい」
それから、俺たちは屋台を巡った。
途中色々と立ち止まる由比ヶ浜に適当に相手しながら、目的のものを一つずつ、確実に収集していく。
気分はコレクターだ。ややっ、ここにありますは、特撮番組の写真が袋にプリントされた普通のわたあめにござる。
全ての屋台で、由比ヶ浜はそれは楽しそうにしていた。その純真さは俺たちの都市では稀であり、自然顔がほころぶ。
思えば、いつもこうだ。
由比ヶ浜結衣は静かな部室を少し、賑やかにしてくれる。きっと、それは雪ノ下のためにもなっている。
騒がしいのは嫌いだ。それは単なる無秩序、所詮楽しいと証明するために群れているだけに過ぎない。
だが……やはり、賑やかなのは嫌いじゃない。きっと昔の俺が聞いたら、絶対に信じねえだろうが。
わたあめ、ラムネ、たこ焼きと買って、あとは最初の場所に売っていた焼きそばだけになる。
「あとは焼きそばだけだね、ヒッキー」
『ああ、確かこっちだ』
そう言って、踵を返したとき。
ふと、こっちをみている人間たに気がついた。その途端、そいつは手を振ってこっちに近づいてくる。
「あ、ゆいちゃんだー」
「お、さがみーん」
それに応じて、由比ヶ浜も手を振って数歩歩み寄る。
由比ヶ浜がさがみんと呼んだ少女。当然のように俺は知らず、あちらも知らないのか自然と由比ヶ浜を見る。
「えっと、この人は……」
「あ、うん。同じクラスの比企谷くん。こちら、同じクラスの
まずはさがみんこと相模南に、次に俺に紹介する由比ヶ浜。
すると、ああと相模は頷いた。それから「例のテニスで葉山くんに勝った人ね」と続ける。
なるほど、あれで少し名が知れたか。そういやあのあと、なんとなく周りから目線を感じた気がする。
とりあえず、軽く会釈をしておく。その時、相模と目があった。
ふっ、と。
相模の顔に、笑みが浮かんだ。
「あ、そうなんだー!一緒に来てるんだねー!私なんて女だらけの花火大会だよー。いいなー、青春したいなー」
「っ……あはは!なにその水泳大会みたいな言い方!ていうか、全然そんなんじゃないよー!」
由比ヶ浜はちょっと言葉に詰まって、それでもいつかみたような笑顔を取り繕ってそう返す。
だが、俺はそうはいかない。相模が一瞬浮かべたあの表情、それが彼女の真意を全て物語っていたから。
ほほえましい微笑?それともいっそ清々しいほどの爆笑?いいや違う、あれは紛れもなく、
この女は今、「由比ヶ浜結衣の連れている、しかも例の葉山くんに勝った男がどんなかと思えば、こんなもんか」、と。
そう思ったに違いない。今日はメガネをしてこなかったことも災いしたか。
「えー、いいじゃん。やっぱ夏だし、私たち女子高生だし?そういうのもいいよねー」
笑いは崩さず、されど見下す色を含む視線も収めず。相模南は比企谷八幡を嘲笑する。
それはとってしかるべき行動だ。クラスカーストの最上位にいる由比ヶ浜が連れているのが、カースト最底辺の俺なのだから。
相手を知らないからこその、表面情報での判断。彼女は最も手っ取り早いもの……レッテルで俺を見た。
……ああ、忘れていた。この数ヶ月、雪ノ下雪乃という、最初にして最大に心を許せる相手がいたことで、呆けていた。
俺はもともと、こういう存在だった。誰よりも下にいる、誰にも理解されない、そういう存在だろ。
『焼きそば、先に行って並んでる』
「え、あ、うん。すぐ行くね」
これ以上は、由比ヶ浜にも迷惑がかかる。そう思って俺はその場を離れた。
カーストが激しく違うものが一緒にいることは、上側の人間にとって弱みになる。それが陰口になり、風評になるのだ。
やがて根も葉もない噂になり、冤罪のような嘲笑が生まれるのだ。俺はいいが、由比ヶ浜にそれが向けられるのはダメだ。
由比ヶ浜結衣の友人であるなら、彼女を今の場所から引き摺り下ろしてはならない。彼女の安寧をこそ守るべきだ。
転がり落ちればどうなるかなんて、わかりきってるんだから。落ちても一緒ならそれでいいなんてのは、妄言だ。
思えば由比ヶ浜も折本も、あいつらがすごいコミュ力を持っていただけで、元は決して混じり合わない人種だ。
我ながら……少し、気が緩みすぎたか。
まあ、それはいい。
最初のところに戻って、しばらく並んで焼きそばをゲットする。
「ヒッキー」
そして自分が食べる分と小町のぶん、二つ買ったところでカランと下駄の音がした。
振り返ると、そこには心なしか申し訳なさそうな顔をした由比ヶ浜がいる。
『話終わったのか』
「うん……あの」
モジモジと、ソワソワとする由比ヶ浜。なんとも言えない罪悪感が、その佇まいから感じ取れた。
別に、謝ることなんて一つもないのに。基本的に、俺たちの交流場所はあの部室が主だ。クラスはまた別だろう。
『りんご飴』
「へ?」
『買いたいんじゃなかったのか』
だから俺は、なんでもないように、全く気にしていませんよという風にそう首輪に言わせた。
空気の読める友人は目を見開いて、それからクスリと笑い。
「うん!」
そう、さっきまでの雰囲気を吹き飛ばすように笑った。
読んでくださり、ありがとうございます。
次回、由比ヶ浜結衣はーー