未だにランサーかエクストラか迷っている…どっちがいいと思います?
さて、今年最後の投稿です。全部オリジナルなので自信はないです。
年末もそんな感じの書き納め、楽しんでいただけると嬉しいです。
学校で倒れた翌日。
「じゃあ、俺たちはもう行くぞ」
「本当に一人で大丈夫ですか?」
靴を履き、振り返る二人。
心配を顔ににじませる両親に、俺は首輪……ではなく、スマホの画面の上で指を滑らせた。
随分と使うのが久しぶりな気がする読み上げアプリに、言いたい文章をつらつらと書き込んでいく。
ある種の面倒くささを感じるが、脳に少しでも負担をかけないためと首輪の使用を禁止されたので仕方ない。
『大丈夫です。もう子供ではないですから、迷惑はかけません』
ボタンを押し込み、そう答える。ただでさえ多忙な人たちなんだ、これ以上邪魔はできない。
すると二人は顔を見合わせ、不思議そうな顔をした。
「何言ってんだ、お前はまだ子供だろう?」
「ええ、その通りです」
「……?」
今度は俺が首を傾げる番だった。
もう17歳にもなるし、人に言えない職業とはいえ働いてるんだから、子供じゃいられないだろう。
それを伝えようと携帯を胸のあたりにあげた時……ぽん、と義父さんの手が頭に乗せられた。
「確かに、お前はエージェントだ。給料をもらい、仕事をするという社会人の決まり事の中にいる」
「ですが、それ以前にあなたは高校生であり、私たちの息子です」
義母さんまで、俺の肩に手を置いて諭すように微笑む。
「だから、迷惑くらいかけろ。子供には甘えられたいんだ。そもそも、この程度迷惑にすらならねえよ」
「それとも、私たちはそんなことすらできないほど頼りないですか?」
わざとらしくしょんぼりとした顔をする義母さんに、ブンブンと顔を左右に振る。
この人たちが頼りないなんて、とんでもない。俺が最初に人間の暖かさを知ったのは、この人たちからなのだから。
「よし、それでいい」
「家の事も、小町のことも、あなたにはいつも頼りすぎました。今日くらいはゆっくり休みなさい」
クシャクシャと頭を撫でる義父さんの手も、優しく笑いかけてくれる義母さんの笑顔も暖かい。
その親心を感じて、なんだか血が繋がってないとかそんなことで遠慮していた自分が、ひどく薄っぺらく思えた。
「…………(コクリ)」
だから、ただ頷く。それだけで義父さんたちは満足そうな顔をして、仕事に出かけていった。
「…………」
玄関の扉が完全に閉まるまで見送ってから、リビングに戻る。
当然、そこには誰もいない。カマクラもインラスもまだ寝ているし、小町はとっくに学校に行った。
本来なら既に授業が始まっている時間の家の中は静かで、どこか物寂しく思いながらソファに座る。
「……………………」
……暇だ。
掃除をしようにも昨日寝ている間にいろはが家中綺麗にしていったし、洗濯物も溜まっていない。
飯はさっき義父さんたちの分も含めて作ったばかりだから、腹も空いてなかった。勉強も、文化祭前で授業は止まっている。
つまり、本格的にやることがない。
「…………フゥ」
自然とため息が漏れた。突発的な休みって、何していいのかいまいち分からなくなるんだよな。
しかも、多方に迷惑をかけまくった上でのズル休みだ。理由があるとはいえ、そもそも何かしていいのかさえ戸惑う。
「…………」
ふと、自分の存在意義ってなんなのかと思った。
いや、男子高校生が一人でやることないとそんなこと考えたりしない?俺だけ?あっそうですか。
この比企谷家の中で、俺はどういう存在なのだろう。あの二人の息子として、小町の兄貴としてうまくやれているのか。
少なくとも、嫌われてはいないだろう。義父さんたちや、小町から感じる好意は本物だとわかる。
なら、なんでこんなことを考えるのか……俺には未だ、無性の愛というものが分からないからだ。
原因はわかっている。
あの悪夢のような研究所で、俺は何度でも使える実験台として……あいつに価値を証明したから生き延びられた。
皮肉な話だ。あそこで抜け殻のように過ごすうちに、大切な誰かの前では役に立つと証明しなくては不安になるようになったのだ。
それは解放され、愛を向けられてなお俺の心に楔として残り続け。
そして今も、俺の心を引き摺り込もうとしている。
『お義兄ちゃん!』
『おう、八幡』
『あら八幡、いつもありがとうございます。しっかりと食事をとっていますか?』
何もしないでいると、この場所にいていいのか、笑顔を向けてもらう資格があるのかと疑ってしまう。
そんなに怯えなくても、三人とも蔑むことなんてないとわかってるのに。ついさっきも心配してくれたのに。
だというのに、信じきれない自分がひどく嫌になる。こんなことは、愛してくれるものへの冒涜であり裏切りだ。
『それに、彼がいるから』
……思えば、今回もそうなのだろう。
もう一度雪ノ下の力になれると柄にもなくはしゃいで、浮ついて、無意識に自分の怪物性を過信した。
人間は過信する生き物だ、と昔どこかで聞いた。ならば、人間でない
……答えはノーだ。
むしろその逆、それが唯一役に立てると、彼女のためになると思い込み、押し付けて、勝手に自滅した。
陽乃さんからの挑戦なんでどうでもいいなんて、そんなのはカッコ付けの見栄っ張りでしかなかった。
なんでも自分一人でできる気になって、自分ならやれると勘違いして、何かをしないとと躍起になっていた。
結局のところ、俺はただ雪ノ下によく見てもらいたかっただけなんだ。なのに迷惑かけてるんじゃあ世話ない。
きっと彼女は、今頃呆れているだろう。むしろこんなワガママでいいカッコしいの男なんて見切っててもおかしくないまである。
いや、さすがにそこまではないと思いたいが……俺はそれを知らないし、こんなことになって顔向けできない。
「……ハァ」
また、ため息が漏れる。
あー……雪ノ下に会いたいなー。
『ユーガッターメール』
……ん、メールか。さては密林で頼んでたホットケーキ焼き機でも届いたか?
差出人:由比ヶ浜
題名:放課後
本文「ヒッキー、大丈夫?働きすぎたんだからちゃんと寝てなきゃダメだからね!
それでさ……もし体調が平気だったら、夕方の五時くらいに駅前のサイゼに来てくれない?
ゆきのんと二人で待ってるから」
そのメールに、俺は目を見開いた。
────
カラン、と鈴の音を鳴らして扉を開く。
見慣れたサイゼの店内は、九月の初頭よりいくらか涼しくなってきた夕方の外と同じくらいの空調になっている。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
近づいてきた店員に、ポケットから手帳を取り出すとあらかじめ書いておいた文章を見せた。
『知り合いが先に来ているので』
「そうですか。では後ほどお伺いします」
軽く頭を下げると、店内の席に視線を巡らして彼女たちを探す。
夕方になって、学校帰りの学生などでそこそこ賑わっているため、見つけるのに少し時間がかかる。
「あ、ヒッキー!こっちこっち!」
そのせいで、先に発見された。
半立ちになってぶんぶん手を振る由比ヶ浜に軽く手を上げ、ちょっと注目を浴びながら歩いていく。
対面に座ると、店員が水とメニュー表を置いて、「ごゆっくりどうぞ」とお決まりの言葉を言っていった。
「………………」
「………………」
店員がいなくなって、沈黙が舞い降りる。
由比ヶ浜はどう話し出すか迷っているのか、ソワソワと体を揺らしていた。
この微妙な空気を読んで延々と黙ってそうだったので、仕方なしに携帯を取り出して文字を打つ。
『クラス展示の方はどうだ?』
由比ヶ浜は少し驚いて顔を上げ、それから堰を切ったように話し出した。
「うん、順調だよ。隼人君もさいちゃんも、他のみんなも練習頑張ってる」
『そうか』
「うん」
会話が途切れる。何かないかと考えて、あることに気付いて文字を打つ。
『そういえば雪ノ下は?』
「あ、ちょっと遅れるって。そのうち来ると思うよ」
『そうか』
「……うん」
それきり、また会話が途切れた。
……うーん気まずい。いろはに聞いた
こういう時どうすればいいのか……教えてリア充葉山えもん!え、なんでもいいから駄弁れ?俺にそういうのを期待すんな。
「ひ、ヒッキー!」
「っ!?」
うわっびっくりした!いきなり大声で呼ぶなよ、思わず飛び上がっちゃっただろうが。
「すぅー、はぁー……」
由比ヶ浜は大きく深呼吸し、それから真剣な顔をするとジッと俺の顔を見てくる。その眼光の強さに思わずたじろいだ。
俺がビビってる間にあちらは何かしらの覚悟を決めたのか、真面目くさった顔のまま口を開き──
「あたし、これからヒッキーのこと叱るね」
…………………はい?
「確かにヒッキーはさ、頭いいんだと思うよ。部活の時もゆきのんとすごい考えながらゲームしてるし、時々何言ってるかわからない会話してるし」
いきなりのお説教発言に俺が呆然としている間に、宣言通り由比ヶ浜は話し始めた。
「もう同じ高校生なのに働いてて、仕事するのもあたしたちより慣れてるんだろうけどさ。でも、だからってヒッキーばっか無理する必要ないじゃん」
「…………」
……それは、どうなのだろう。
俺は何かをする能力があり、それを行使する状況にあるならば、全力で使うべきだと思っている。
家にいるときに考えていたことを抜きにしても、俺には他の奴らよりも組織運営をするスキルがあった。
やり方は少し間違えたかもしれないが、やったこと自体は間違っていないはずだ。
「あたしは、さ……辛かったよ」
「……!」
「フラフラで倒れそうなのに、休みもせずに仕事してるヒッキーを見るの。ずっと言い出せなかったけど、胸が張り裂けそうだった」
ああ、けれどそれはあくまで俺の主観でしかないのだろう。現に今、由比ヶ浜は泣きそうな目で俺を見ているのだから。
自分が認識している自分と、他人から見た自分にはえてして齟齬がある。そして彼女から見て、俺は無茶をしていたのか。
「あたしにできたことはすごく少なかったかもしれないけど、頼ってほしかった。ヒッキーがなにもかも抱え込む前に、話してほしかったよ」
「…………」
「だってあたしは、ヒッキーの友達で……ヒッキーのことが、好きなんだから」
その言葉に、胸に杭を打たれたような衝撃を受けた。
好きな人のためになにかをしたい。真っ直ぐな目で、ストレートな言葉でぶつけられたその意思を、よく知っていたから。
わかるからこそ、疑う余地がない。純粋に、自分でも驚くほどに、すんなりと由比ヶ浜の悲しみと怒りを感じることができる。
『すまなかった』
だから、俺が書けたのはその一言だけだった。
彼女の眩しいほどに芯の通った心の前では、どんな屁理屈も言い訳も陳腐に思っちまう。
「うん、許す。でも二度目はないからね!」
そして、彼女はあっさりと許してくれた。最初から俺が一言謝ることだけを望んでいたのだろう。
えへへとはにかむ彼女の顔からは、どこか肩の荷が降りたような気がする。随分と心配させたらしい。
……今なら、あのことを聞いても平気か。
『それにしたって、あの件はやりすぎじゃないか?』
思い切って、文字を打って発音する。由比ヶ浜はまた瞠目して、それからごまかすように手を後頭部に置いた。
「あー……あはは。やっぱり厨二に聞いてた?」
正確にはいろはだが、由比ヶ浜とは面識がないので材木座で通しておくか。
『ああ、
「うっ」
明確に内容を伝えると、由比ヶ浜は目線を逸らした。悪事がバレた子供のような反応に苦笑する。
昨日、いろはに聞いたことの一つ。
それは、由比ヶ浜がクラスメイトたちが見ている中で相模が尻餅をつくほどのビンタを食らわせたという話だ。
俺が倒れたという話は、オクタが入れ替わって保健室で少し休み、それから家に帰るまでの間で瞬く間に広まったらしい。
その原因が相模の発表した劇と知り、由比ヶ浜は激昂。クラスに戻ってきた相模になんの前触れもなく一発お見舞いした。
で、そのあと色々と言ったらしいが……流石にそこまでは、噂の又聞きでは詳しく知ることはできなかった。
「だって、さがみん何もしてなかったのにヒッキーに全部仕事押し付けて、勝手にそんな企画してたんだよ? そんなの、おかしいじゃん」
『それにしたってへたり込むくらい強くやる必要あるか? ていうか、そのせいでお前の学校での立場も……』
「そんなのどうだっていいの!」
変わっちまうだろ、という電子音声は、何度目かの由比ヶ浜の大きな声でかき消された。
「……好きな人が倒れたんだから、怒ってもいいでしょ」
ぷいとそっぽを向いて、ぽしょぽしょと言う由比ヶ浜は、雪ノ下がいなかったら一発で落ちるほど可愛かった。
あー、最近本当にチョロくなってきてるな俺。このままじゃ役に立ちたい相手ばかりでまた頭痛がしそうだ。
『ありがとう由比ヶ浜。俺のために怒ってくれて』
「うん。へへっ」
でもまあ、悪い気はしない。
「…………」
しかし、相模がかわいそうである。確かに何も仕事はしてなかったが、俺自身ほとんど思うところはないしなぁ。
怒ってくれた由比ヶ浜には申し訳ないが、悪いことにならないようにしないとな……
────
それから少しして。
「あ、ゆきのんからメールだ。もうすぐ着くって」
由比ヶ浜がメールを確認した直後、店の入り口が開く音がする。
二人一緒に振り返ると、入ってきたのは艶やかな長い黒髪を持つ美少女。見間違えようもない、雪ノ下だ。
雪ノ下は先ほどの俺のようなキョロキョロと店内を見渡して、すぐに俺たちを見つけると一直線に歩いてくる。
「ごめんなさい、少し書類整理が長引いてしまって」
「ううん、全然いいよ」
由比ヶ浜が横にずれ、雪ノ下がそこに座る。さりげない気遣いはさすがトップカーストの人間というべきか。
席についた雪ノ下は、荷物をおいて一息つく。どうやら今日も分実の仕事でお疲れらしい。
つい昨日あったばかりなのに、疲れて見えるのは俺の罪悪感から来る思い込みだと思いたい。
俺も早いとこ復帰しなくてはと思っていると、雪ノ下はこちらを見る。
「比企谷くんも、ごめんなさい。そしてこんばんは」
『こんばんは、雪ノ下』
律儀に挨拶をしてきたので返す。彼女はふっと微笑んだ。
「もう調子は良さそうね。良かった」
『おかげさまでな。迷惑をかけた』
「いえ……それより」
そう言い、俺と由比ヶ浜を交互に見比べると納得したような声を漏らす。
「どうやらその様子だと、由比ヶ浜さんとの話は済んだようね」
「うん、まあね」
そうだな、色々と言われた。
彼女の思うことの一端、疑う余地のない思い。それは聞いても、決して不快なものではなかった。
首輪を使えなくて、いつも通りすぐにレスポンスを返せなかったことでちゃんと聞くことができたのは僥倖かもしれない。
「そう。なら、私も気兼ねなく説教できるわ……と言いたいところだけれど」
おや、どうやら怒られるわけではないらしい。てっきりこっ酷く叱られるのを覚悟していたんだが。
拍子抜けしたような俺の顔を見て、雪ノ下は自分がどう思われているのか分かったのか呆れ顔でかぶりを振る。
「心配しなくても、仮にも病人にこれ以上の責め苦を与えるつもりはないわ。それに、私は助けられていた立場だもの。偉そうなことを言うのは筋違いというものよ」
いや、それは違う。最後には迷惑をかけてしまったのだから、俺は彼女を助けられてなどいない。
この世界は結果が全てなのだ。最終的にやりきれなかった俺は、感謝も謝罪もされる資格はない。
「考えていることはなんとなくわかるけど、それは思い違いよ」
それを伝えようと携帯に指をかざした途端、雪ノ下の一声で遮られた。文字を打ちかけていた手が止まる。
顔をあげると、雪ノ下はすました顔で「やはりね」と肩をすくめた。どうやらカマをかけられたようだ。
「私も、そして文実も、貴方の力に頼りすぎていたわ。一人に頼るやり方はいつか破綻すると分かっていたのに、甘えてしまった」
『いや、それは俺が勝手にやったことだ』
「それでもよ。このようなことになった以上、もう遅いし、ただの自己満足だけれど……本当に、ごめんなさい」
深々と頭を下げる雪ノ下。見ているこちらが謝りたくなる綺麗な姿勢だ。
「ゆきのん……ねえ、ヒッキー」
「…………」
「ヒッキー?」
……違う。俺は雪ノ下のこんな姿が見たかったわけじゃない。
責任感の強い雪ノ下が今のタイミングで会えば、こういう行動をとることは容易に予想できたはずだ。
かといって、謝るなとか、お前には関係ないとかいっても効果はないだろう。それでは謝った彼女の意思を蔑ろにすることになる。
頭を働かせろ、比企谷八幡。この場を丸く納め、これ以上雪ノ下に責任を感じさせない方法を。
……まあ、これしかないか。
『わかった。これ以上無茶なことはなるべくしない』
少し間を置いて、まずはそう携帯で言う。こちらが受け入れない限り、雪ノ下は話を聞かないだろう。
「そう……ならいいわ」
『だが、お前の補佐である以上必要なことはさせてもらう』
顔を上げていた雪ノ下は、ピクリと肩を揺らす。
由比ヶ浜が目を見開き、俺を見た。大丈夫だ、これまでのやり方を続けるわけじゃない。
『とはいえ、これから劇の練習も入るんだろ。だからあんまりやりすぎてるようなら、言ってくれ』
「「え……?」」
次に読み上げられた文に、二人は同時に間抜けな声を出した。君たち仲がいいですね。
それはともかく……俺が二人に提示したことはそう難しいことじゃない。
人は自分が関与できないところで何か起こると、その時こうしていればとありもしないイフを想像して後悔する。
だったら、最初から彼女たちに俺の行動を監視させればいい。そうすれば彼女たちも安心できるはずだ。
そもそもの話、今回の失敗は俺一人が急ぎすぎたことが理由である。彼女たちの許容するペースでやれば、問題ないだろう。
「……っぷ」
「ふ、ふふふふっ」
しばらくして、俺の言葉の意図を理解した二人は顔を見合わせ、吹き出したかと思うと笑い出す。
「もう、ヒッキーの言い方遠回しすぎだし」
「最初から素直にいえばいいものを、ふふっ」
そう簡単に素直に言えたらこっちも苦労してねえよ。だから小町とかに捻デレとか言われるんですね、ハイ。
「はぁ……うん、でもわかった。それがヒッキーの望みならそうするよ」
「ええ。ワガママでひねくれている部員の望みを聞くのも、部長としての務めよ」
涙が出るくらい笑った二人は、やがて満足したのか目尻に溜まった涙を拭いてそう言う。
望んだ通りの答えを得た俺は、あらかじめ用意していた答えをボタンを押して返した。
『おう、よろしく頼むわ』
「うん、これからちゃーんと見てるからね!」
「せいぜい、私たちに管理されることね」
笑顔で宣言する二人に、俺はコクリとうなずいた。
なんとか不必要な気遣いやしこりを残さずに解消できたようだ。ひとまずは安心といったところか。
これから、俺自身も気をつけねばなるまい。同じことで二度も迷惑をかけるのは、ちっぽけなプライドが許さないからな。
「さっ、難しい話は終わり!ちょうどお腹空いたし、ご飯食べてこ!」
「そうね。今日は少し疲れているから、家に帰って作るよりもここで済ましてしまったほうがいいでしょう」
『だな』
それから、二人と雑談を交わしながらサイゼで夕食をとりましたとさ。
読んでいただき、ありがとうございます。
感想などをいただけると励みになります。
みなさん、2020年もよいお年を。