声を失った少年【完結】   作:熊0803

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すみません、金曜から少し予定が立て込んで書けませんでした。
今回は相模の回、結構な改変あり。
反応が怖いものの、楽しんでいただけると嬉しいです。


63.声を無くした少年は、フェスティばる。 5

 一人になりたいとき、人はどのような場所へ行くだろうか。

 

 

 選択肢の第一候補、同時にほとんど百パーセントの確率で挙げられるのは……自分以外に誰もいない場所。

 

 ではなぜ、そのような場所を求めるのか。この答えもまた、一つに絞ることは比較的簡単だ。

 

 自分の考えや思い、はたまた存在意義そのもの……あるいは、居場所を見つめ直したいから。

 

 故に、そのいずれかを見失った時。誰にも邪魔されず、ゆっくりと思考に耽ることが許される場所を求める。

 

 では、今の相模はどうだ。

 

 おそらく、あいつは今著しく自尊心を傷つけられた状態だろう。

 

 相模南という人間は、もとより派手なグループにいたことで、他者から強く認識されることを好んでいる。

 

 しかし、三浦という女王がトップカーストに君臨したことでその優位性は失われ、二軍グループのリーダーに収まった。

 

 今回の実行委員長という役職は、そんな彼女にとって二軍落ちした分、満たされない優越感を満たすには十分なものだった。

 

 実務の方も、自他共にに止める秀才雪ノ下と、事務仕事に慣れた俺という一級戦力を確保できた。

 

 人気者の葉山の推薦で実行委員になり、更にあの伝説の雪ノ下陽乃に認められ、全てがうまくいっていた。

 

 

 ……だが。それこそが運の尽きだ。

 

 

 足りないものの代わりにした文実は崩壊しかけ、陽乃さんは雪ノ下の激昂で一部とはいえ発言力を失った。

 

 そして見事に操り人形にされていた相模南は……しかし、誰にも称賛も罵倒もされなかった。

 

 そう、何もなかったのだ。

 

 相模のアイデンティを崩壊させた最後の一手を決めたのは、おそらくはいろはによる認識の改変。

 

 本来なら受けるかもしれなかった侮蔑も軽蔑も嘲笑も、相模が受けることはなかった。

 

 ……だが、いっそのことそちらの方がまだ良かったのかもしれない。

 

 

 だってそうすれば、少なくともそこに自分はいるのだから。

 

 

 集団の中において自己を見出す人間の典型的な弱点だ。周りにいる人間からの認識が、何よりの自己証明になっている。

 

 それを失えばもう、自問自答の迷宮入り。

 

 自分とはなんだったのか、自分に価値があるのか……自分は誰にも必要とされていないのか、と。

 

 問いに答えるように、周囲は雪ノ下の指揮の元、文化祭開催に奔走した。いよいよ相模を誰も求めなくなった。

 

 居場所を見失った相模は、逃げ出した。

 

 だが人間とは面白いもので、そういう時ほど誰かに見つけて欲しいと願うものだ。

 

 自分では居場所を見出せないのだから、あとは他者に肯定してもらうことでしか自分の承認欲求を満たせない。

 

 ならば、見つけてもらえる場所にいるはずだ。どこかの空き教室や、鍵のついた場所になんていない。

 

 

 

 差出人:一色いろは

 題名:頼れる後輩からのアドバイス♪

 本文「どうやら困っているらしい先輩に、可愛い後輩がとっておきの情報を教えちゃいます♪

 特別棟のどこかに、強い負の感情を発している人間がいます。

 とはいえ、これだけの人数の感情が渦巻く中で具体的にどこかまでは絞り込めませんでしたので、あとは先輩にお任せします。

 というわけで、あなたのいろはちゃんからの手助けでした♪

 先輩の劇楽しみにしてるんで、頑張ってくださいね?」

 

 

 

 幸い、有能な後輩によって範囲は絞り込むことができた。あとは見つけ出すだけだ。

 

 考えろ、比企谷八幡。

 

 全ての感情を切り捨てて、本来お前が知っている人間の悍しくどうしようもない、その本性を思い出せ。

 

 その上で模索し、試行し、選択し、取捨し、推察し、推測しろ。その全てを用いて、己が責務を果たして見せろ。

 

 ……主に部活動の部室が密集している特別棟、その中で最も一人になれる、そして容易には見つけられない場所。

 

『……屋上か』

 

 あたりをつけて、走るスピードを上げる。

 

 皆体育館の方へ向かったのか、誰もいない廊下を駆け抜けて階段を三段飛ばしで登り、頂上を目指す。

 

 中央階段、屋上前の踊り場にたどり着いた。

 

『相変わらず汚えな』

 

 いつの日か川崎に出会ったそこには、机と文化祭の荷物が乱雑に積み上がっている。

 

 その間を通り抜けるように、埃をかぶった廊下に足跡が残っていた。ビンゴだ。

 

 その足跡をなぞるように物の間を通り抜けて、やや錆びついた扉の前に立つ。

 

 古ぼけた錠前の輪っかの中に人差し指を差し込んで、それから強く握ると自分に向けて引っ張った。

 

 ガキン、と音を立てて、錠前はあっさり外れる。前に見た時から思ってたが、これじゃ入り放題だな。

 

「……フゥ」

 

 開ける前に、これまでの道中で考察した自分の思索に結論をつけることにした。

 

 相模南は、雪ノ下や由比ヶ浜のようになりたかったのだろう。彼女らのように求められ、認められ、頼られるような存在に。

 

 だから実行委員長という勲章を身につけて、特別になった気に、自分が強くなった気になった。

 

 でもな、相模。人間はそんな簡単には変われないんだよ。お前がやったことはただ、ハリボテの仮面を被っただけだ。

 

 人は変われる?変われた?変えることができた?

 

 否、否だ。

 

 変わらないよ。少なくともそれまでの、そして今の自分を否定し、目を背ける限りは変わらない。

 

 過去をを消せると思うな。上書きできると自惚れるな。見せかけが綺麗だって、本当の自分まで綺麗になったなどと抜かすな。

 

 そんな簡単に変われるのなら、変わりたいさ。彼女に完全無欠にふさわしい……そんな存在に。

 

 

 ギィ……

 

 

 軋んだ音を立てて、彼女を自ら檻に閉じ込めるための壁を押し開く。

 

 閉ざすものをなくした先には、吹きすさぶ風と青空が広がっていた。

 

 そこから目線を落とすと、フェンスに背中を預けてうずくまる、小さな姿が一つ。

 

『見つけたぞ、相模』

「…………………………」

 

 相模は、膝に埋めていた顔を胡乱げに上げる。

 

 こちらを見て、やってきたのが俺だとわかると、落胆に怯えが半分ほど混じったような顔をした。

 

「……どうして、あんたがここに」

『副委員長補佐だからな、あいつの言うことには従う必要がある』

「……そっか。雪ノ下さん、か」

 

 目を見開き、一瞬怒りを浮かべ、けれどもすぐに自嘲げに笑って、また顔を埋める相模。

 

 ……てっきり睨みつけられると思ったが、想像していた以上に参っていたようだ。少し同情さえする。

 

 思ったよりも説得は楽にいくかもしれない。敵愾心バリバリよりかは、投げやりな方が少しは扱いやすい。

 

『エンディングセレモニーが始まる前に戻れ。城廻先輩も打ち合わせのために待ってる』

「……あんた、劇があるんでしょ。だったらこんなとこにいる暇ないんじゃないの」

 

 弱々しく、風でかき消されそうなほどに小さな声で拒絶する相模。

 

 実にらしくない姿だ。いろはのように心は除けんが、少なくともフリで落ち込んでいるようには見えない。

 

『本来ならそうだが、今は葉山たちとか、雪ノ下たちが時間を稼いでいる』

 

 とはいえ、ここに来るまでにもう十分は使ってしまった。

 

 おそらく今頃、雪ノ下が陽乃さんを引き込んで何かしらやってるだろう。あまり時間は残されていない。

 

「……ふーん、そっか」

 

 相模の反応は芳しくなかった。

 

 自分が羨み、それゆえに憎んですらいるはずの三浦や雪ノ下の名前が出ても微動だにしない。

 

 さてどうしようかと次の言葉を考えていると……カサ、と小さな音がして足元に何かが投げられた。

 

 拾い上げると、それは折りたたまれた紙。中に書かれているのはおそらく……

 

「集計結果。それが欲しいんでしょ、持ってきなさいよ」

 

 自分の持ち去ったものの価値がなんなのかはわかっている、か。

 

 だが妙だ。あれほどまでにみんなに見られ、衆目を集めることを望んでいたのに、あっさりとそれを手放すなど。

 

 とはいえ、そこに思考を割いていられるほど余裕がない。

 

 雪ノ下と俺が受けた依頼は、相模南に委員長としての責務を全うさせること。

 

 であれば、ここで彼女を置いていくことは依頼の放棄になる。それは雪ノ下の意思をないがしろにするのと同義だ。

 

 俺にそれはできない。

 

 相模を何としてもエンディングセレモニーに出席させ、その栄光を挫折と後悔とともに与えなくてはいけない。

 

 そのために最も効果的な方法は、彼女が求める言葉をやることだが……残念ながら俺はその役じゃない。

 

 それ以前に、今の妙に意気消沈したこいつにどんな言葉が届くのか全くわからん。

 

「うちさ、最低だよね」

 

 最悪の場合、罵倒して逆上させるか。

 

 雪ノ下をいじめていた奴らに向けて浮かんだ俺の考えを先読みするかのように、相模の嘲るような声が屋上に響いた。

 

「葉山くんに頼られたって調子乗って、雪ノ下さんのお姉さんに認められたって勘違いして、仕事全部押し付けて。ほんと、自分勝手」

『……そうだな、その通りだ』

 

 これは、どういうことだ?

 

 相模は、決して自分のそういった部分を認めようとしない。

 

 都合の悪いことから目を逸らし、自分を肯定し、他者を見下して己のエゴを満たす。それが相模南の本性だと思った。

 

 なのに、今の彼女の言動はその定義から外れている。自分の中で確定していた、彼女の行動から判断した人間性と違う。

 

「結衣ちゃんさ、すごく怒ってた」

 

 困惑している俺をよそに、相模は独白を続ける。

 

「あんたが倒れて、教室に戻ったらいきなり引っ叩かれてさぁ」

 

 ……これ、もしかして聞いてなきゃダメなやつだろうか。

 

 間違いなくそうだろうな。量によるが、言いたいこと言わせて吐き出させた方が言うことを聞かせやすい。

 

 移動する時間を考えて、あと十分。面倒臭いが、その間はこいつの独り言に付き合ってやるとするか。

 

「あの時受けたビンタ、マジで痛くてさ。その上説教されて、なんでうちがこんな目にって思ったんだよ」

 

 まあ、そうだろうな。

 

 相模からしたら突然叩かれて説教されたんだ。自分は悪くないと思っていたのだから、理不尽に感じたに違いない。

 

「でも、そうじゃなかった」

 

 しかし、相模は己の驕りを否定した。

 

『……何が違ったんだよ』

「私が振りかざしてたものは、本当はあんたが倒れるくらい必死に全部作ってて……そのくせ威張り散らしてたから、しっぺ返しくらったんだ」

「……!」

 

 まさか、気づいたのか。

 

 あの相模南が、自分の行動の意味と、それが招いた結果を。

 

『……なんでそう思った』

「だって、結衣ちゃん本気で怒ってたんだもん。真剣に、本当に、あんたのために怒ってた」

 

 俺のために、か……

 

「いっつも三浦さんにヘラヘラ笑ってた結衣ちゃんが、あんな顔して……それ見たらさ。うち、何やってたんだろって馬鹿らしくなった」

『……そうか』

 

 自分を小馬鹿にするような口調。決してあの相模が言っているとは思えない。

 

「それで、ちゃんと考えてみたら……うち、何もしてないじゃん」

「……!」

「なのに、なんでも好きにできるって勘違いして……そのせいで何もかもなくなった。ううん、最初からうちは空っぽだった」

『……相模』

「なのに、誰もうちを責めなくて……うちにはもう、何をしたらいいのか……!」

 

 相模の声が、途端に不安定になった。

 

「だから、そんな自分を見られるのが嫌で、誰にも会いたくなくて……!」

 

 座りながら全身を震わせ、両手でグシャグシャと髪を掻き乱し、いやいやと子供のように首を振る。

 

 ……その様を見て、ようやく理解した。

 

 俺が突きつけるまでもなく、相模はとっくのとうに自分のやったことと向き合っていたのだと。

 

 きっかけは、さっき自分で言っていた通り由比ヶ浜から受けた言葉や痛みだろう。

 

 彼女の真剣な感情が、相模にいっそまっすぐなほどにまざまざと現実を振り返らせた。

 

 本物の思いとは、えてしてそういった強制力を持つ。直に受けた俺がいうのだから、間違いない、

 

 自分を見つめ直した相模は、しかし俺の予想通りいろはの行動によって他者の理解も受けられなかった。

 

 結果、自分の惨めさと一人で……俺から言わせればそれが当然だが、向き合うことになった。

 

 例えば、何もしなかった自分。例えば、誰からも必要とされない自分、例えば、雪ノ下などと比べて無能な自分。

 

 それらを見てしまい……彼女は舞台の上から逃げ出した。

 

 自己を周囲からの評価で見出すタイプの人間からこそ、どうしようもない自分を見られることを嫌がった。

 

 全く人間らしい、逃避の仕方だ。

 

「うちは……うちはどうしたら……うぅ……」

 

 ……俺は、この場において相模に何をいうべきだろうか。

 

 慰めの言葉か?それとも当たり障りのない、優しい言葉か?

 

 馬鹿を言え。そんなものは俺の領分じゃないし、こいつ自身俺にだけは言われたくはないだろう。

 

 相模にとって、俺は自分の痴態を体現するような存在なのだから。同情なんてされようものなら屈辱以外の何物でもない。

 

 では、どうするべきか。

 

 そんなの、最初から分かりきったことだ。

 

『そうだな。お前は無責任で無鉄砲な最低の人間だ』

「っ……」

 

 今一度肩を震わせる相模。甘い言葉を期待していたなら悪いな、そんなものは葉山みたいなやつに求めろ。

 

『責任から逃げ、仕事から逃げ、あまつさえ最後の責務からも逃げた。面白いくらいのクズっぷりだ』

「そんなの……っ、そんなの今更あんたなんかに言われなくてもわかってる!」

 

 そこで初めて、相模は顔を上げた。無気力から一転、怒りを涙の滲んだ目に込めて俺を睨みつけてくる。

 

 自分がわかってることを他人に言われると、無性に苛立つからな。俺もよく目が腐ってるって言われるし。くすん。

 

「それでも、うちにはもうどうしようも……!」

『でも、それを自覚してるかどうかだけでも違うんじゃねえの』

「……え?」

 

 怒りからまた一転、呆けた顔をする相模。由比ヶ浜もなかなかだが、すげえ百面相だ。

 

『自分は最低だ、最悪だ。それをわかってんなら、あとはどうにかして底辺から這い上がるだけだろ。いつまでも自分がやったことに知らん顔してるやつよりかは何倍もマシだ』

「それは……確かにそうだけど……」

 

 今度は混乱したような顔になった。まあ、自分の葛藤やら懊悩やらにバッサリと言われたらそうもなる。

 

 しかし、それが事実だ。自分のやったことに後悔して落ち込むのなんて当たり前で、何も特別なことはない。

 

『だいたいな、人間なんてみんな何かしら最低な部分は持ってんだよ。お前だけが悩んでるなんて思い上がるな』

「なっ……!」

 

 俺に言わせれば、人なんて文字からして片方が片方によりかかってんだ。

 

 誰にも迷惑かけずに生きてる人間など、一度も失敗を犯さない人間など、誰一人として存在しない。

 

 そうやって人生の報われなさと自分の不甲斐なさを知って、ようやく人は少し成長する。

 

 何回も積み重ねて、その度に思い悩んで、時には投げ出したくなって、それでも前に進むしかない。 

 

『問題は、それを自覚した上でどうするかだ。いつまでもウジウジしてたいなら好きにすればいいが、少なくともお前には今ひとつだけ挽回するチャンスが残ってるだろ』

「ちゃ、チャンスって……今更何があるっていうのよ」

 

 ほらよ、と先ほど相模が投げた集計結果をすぐそばに投げ返してやる。

 

 相模は目を見開き、恐る恐る手に取ってから俺の方を見上げた。

 

『お前は失敗と挫折を学んだ。だったらあとはそれに見合うだけの責任を果たしてみせろ。そうすりゃ、少しは何か変わるんじゃねえの』

「……あんた、どうしてそこまで」

 

 なぜ自分にこんなことを言うのかわからない。そんな顔で、相模は俺を訝しげに見上げてくる。

 

 まあ、今回のことは陽乃さんが色々やらかしたから申し訳ないつーか、けじめというか……いや言ったことは本音だけど。

 

『言っただろ、俺は雪ノ下の補佐で奉仕部だ。だから仕事はきちんとやりきらなきゃいけないんだよ』

 

 わざわざこの場で言う必要もないだろうと、代わりの言葉を首輪に話させる。

 

 すると相模はぽかんとして、やがて何かをかみしめるように集計結果の書かれた紙を胸元で握りしめた。

 

「…………何それ、バッカみたい。あんたもいいなりじゃん」

『生憎と、社畜は上からの仕事に弱くてな』

 

 ちら、と腕時計を見る。

 

 時計の針は、ちょうど体育館を離れてから二十分と少しの時間を刻んでいた。

 

 そろそろ時間切れだ。

 

『さあ、どうする。ここで閉じこもって最低のままでいるか、少しは仕事するか。選べ』

 

 最悪、多少不恰好になろうが相模が最初に言ったように集計結果だけ持ち帰ってどうにかする。

 

 最後の忠告に、相模はしばらくうつむいたままだった。

 

「……ざ……な」

『なんだって?』

 

 半ば答えを確信しながら聞き返すと、バッと相模は顔を上げる。

 

「だから、ふざけんなって言ったの!何あんた、人が黙ってれば偉そうに説教して!根暗なぼっちのくせに!」

 

 叫ぶ相模。俺は内心ガッツポーズをして、言葉を返す。

 

『ああ、そうだ。だからお前はそんな俺に見つけられた程度の人間ってことだ』

 

 最後の一押しとばかりに煽ると、相模の眉がさらに釣り上がる。

 

「なら、やりゃあいいんでしょう!?あんたみたいなやつに舐められっぱなしとか最悪だし、やってやるわよ!」

 

 俺は内心ニヤリとほくそ笑んだ。その言葉を聞きたかった。

 

 勢いよく立ち上がった相模はズンズンと進み、俺を押しのけると乱暴な手つきで校内への扉を開ける。

 

「見てなさいよ、絶対あんなみたいなクズの言う通りになんかならないから」

 

 なんかツンデレめいたセリフを残して、相模は屋上を後にした。

 

「…………」

 

 錆びついた音を立ててドアが完全に閉まるのを見守って、俺はポケットから携帯を取り出す。

 

 新規メールを作成して、雪ノ下に当てて『任務完了。相模がそっちに向かった』とだけ送った。

 

 返事はすぐに帰ってくる。『了解』だけの非常にシンプルな返答だ。

 

「…………ハァ」

 

 スマホの電源を落として、高い空を見上げて息を吐く。

 

 驚くほどすんなりと終わった。相模がごねたらもう少しきつい言葉選びになっていたことだろうが。

 

 何はともあれ、結果オーライだ。これでエンディングセレモニーは無事に開けるだろう。

 

『さて、俺も向かうか』

 

 一人舞台が終わって、あとに残るのは大舞台。

 

 先ほど相模が通った階段を降りて、俺も体育館に向かった。

 

 

 さあ、いよいよ本番だ。




読んでいただき、ありがとうございます・
どうでしょう、原作の八幡のやり方をなんとか織り交ぜて入れることができたでしょうか。
さて、次回はいよいよこの章最大のオリジナル回。
なるべく早めにあげます。
感想をいただけると嬉しいです。







悪役に……
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