ようこそ、×××。ここはあなたの世界だ。
「気味わりィなァ、こりゃァ…扉の向こうが自分の後ろ姿だったり自分の後ろ姿が自分の正面だったり…全くもってつながりがねェ」
そう言わないで×××。君が望んだのは
「うるせェ、言いたいことはわかってる。どこの神様も意地悪なもんだなァ…」
君が私を
「黙れ、深碧。いや、こいつも俺かァ…」
そうだよ、もう深碧はいないんだ。ねぇ×××。君が未来に得たものは過去に失ったものに釣り合うのかい??
「何回も言わせるな、黙れ」
そうはいかない、これを聞かないことには
「黙れッ!!」
自身の大声で目を覚ます。嫌な汗が額から口へと流れ込む。
「しょっぺェ」
「ひーくん、どうしたの」
「…緑青か、わりィなんでもねェ」
「…そ」
扉から顔を出した緑青はそのまま引っ込んで離れていく。
もはや、自分の名前とは思えもしない響きを口に出そうとする。
「…。…??」
口から出るのは息だけ、声にはならずそのまま虚空へと消えて行く。
「参ったなァ…」
頭をガシガシ掻きながら、秘色と緑青の元へと向かう。
「へーいひーちゃん。うなされたのー??」
ソファから顔を逆さにしてこちらを見てくる秘色にムカついたので取りあえずソファを蹴っておく。
「いったーい、不機嫌だねぇ」
「おかげさまでなァ」
「えへへ、じゃあ感謝してよね!!」
「するかタコ」
「まぁ、それはそれとして、お客さんだよ」
「あァ??」
秘色が指し示す方向には見知った、しかし見慣れない姿があった。
「おいおいこりゃァ、一体全体どういうことだァ??」
「俺も聞きたいけどね、そのムカつく顔が自分の物だと思うととてもイライラするよ」
そこにいたのは自分自身であった。
「ひーちゃんが二人とはねー。深碧姉さんが生きてたらさぞかし大喜びでしょうよ」
「深碧は関係ないだろォがァ」
「全くだ、秘色は何言ってんだか」
ソファの背もたれ部分に腰かける。目の前の自分自身は、警戒しているのかすぐそばに置いてある椅子にすら座ろうとしない。
「…そんなピリピリしなくても大丈夫だぜェ…俺も今のとこはお前に害を加える予定はねェ、もちろんそこの秘色もそこの緑青もだ。」
「…わかった」
しぶしぶといった様子で座る。ちょうど緑青がふわふわと浮きながら、飲み物を持ってくる。
各々のまえに緑青は置いて行ったが俺と秘色しか飲もうとはしなかった。
「さァてェ…この状況を整理すると俺が二人いるってェことでいいのかァ??」
「どうだろうね、ひーちゃんだけと考えるのは早計かもよ」
「ボク達も二人いる可能性があるわけだよ」
「…俺がここに来れたのは運が良かったからだ。確かに、その二人が言うことも一理ある。」
ボソリと自分自身が答える。通るような声ではないが聞こえない声ではない。なるほどと頭の中にメモしてから本題に入る。
「大事なのは今この世界に俺が二人も存在してるっつー異常事態が他に何の問題もなく存在できちまってることだ」
「確かに、ひーちゃん以外に目立った変化はないね。私が知覚できる限り」
「ボクも同じだね、だけどひーくん。それに何か問題でも??」
「今すぐにでも俺たちの中の『國嵜』が仕事をし始めても構わない…そういうことだろう??」
今度ははっきりと自分自身が答える。やはり、こいつの大元の存在は自分自身だと確信しながら話を続ける。
「そういうわけだァ…今のところこの存在自体は問題はないが、時間が経ってくるとどォなるかはわからねェ」
「…速やかな対処が求められる、か」
「あァ、しかもこれは俺たちの体質上なかなか簡単なことじゃねェ」
「お互いがお互いに致命傷を与えられない、ならどうする」
「この世界には便利なもんがあるじゃァねェか」
「「「「
「流石俺と俺の姉妹だ、話が早い」
「でもひーちゃん、それじゃあ、消えるのは『こちらの』ひーちゃんの可能性もあるってことだよね」
「馬鹿か秘色、いきなり生み出されといて存在が危険だから消えろだなんて言えるわけねェだろ」
「つまり二人のひーくんのうちどちらか消えればいいという事実をそのまま受け止めて本当にどちらかが消えるという勝負に持ち込む…??」
「そォだ、緑青。あんたもそれでいいだろう??」
「ああ、構わない。そもそも、そんなことをしなくても俺はあんたに消えろと言われれば素直に従うつもりだった」
「ひゅー、真面目さんはこれだから困るぜェ…もっと自己主張してかねェとなァ!!」
誰からともなしに立ち上がる。一同は外に足を向けて歩き出した。