インフィニット・ストラトス、通称ISの発展により女尊男卑となった世界。
 世の中にはその風潮を良く思わない者が多く……世界のさまざまなところで反旗を翻していた。
 ……その中、とある諜報工作員は、今日も行く。
 報酬を支払われる、アンダーグラウンドの中での活動を。

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注:友達とISの話になった時、『性転換手術を受けた男はISを動かせるのか』とかいうよくわかんない議論に発展した所からティンと来た一発ネタです。
注:主人公がかなりアブノーマルです。正直人間性が壊れています。
注:原作キャラは某一名が記述あるのみで一切出てきません(ここ重要)。
注:本作では性同一性障害について取り扱っています。細心の注意を払っていますが、差別を助長しているのではないか?と疑いを持たれた方はその内容をご一報願います。



インフィニット・ストラトス;とある諜報工作員の暗躍

SIDE_とある潜入工作員

 大の男たちが怯えた声で喚き散らす。

 弾丸を眉間に撃ちこんでやる時に俺が見たのは、彼らの表情……単純な怯えや恐怖の色だった。

 まったくおかしな話である。

 この日、この場所で、この時間。彼らに襲いかかったのは、今まで自分たちがやってきたことと全く同じことだというのに。

 連中の一人が、命乞いをしてきた。なんでもするから、ということだったのでその『なんでも』に死を求めて心臓に弾丸をブチ込む。絶望の表情で白目を剥いて絶命したのを確認し、俺はその遺体を足蹴にして奥に進んだ。

 俺が招き入れた別働隊が機関銃の弾丸をばら撒く音がした……たしか、あの方向には重役たちが隠れるためのシェルターがあったはずだ。ついさっき、毒ガスを中に仕込んでおいたので時間と共に絶命するはずだったが、一応はテロ組織の重鎮ということか。まあ連中の備蓄から拝借したブツだったので気付くのは当たり前だろう。

 状況を鑑みるに、毒ガスに気付いて出てきた所をエージェント達に銃殺された。そんな所だろう。幸い毒ガスは急激に何倍もの大気に触れると効力を失くすという密室にしか使えないような物だったので銃殺した奴らの命を心配することはないだろう。

 そんなことを頭の端で考えながら、次の部屋の扉を蹴り破る。俺があらかじめ頭の中に入れておいた記憶だとこの部屋は監獄のはずだ。

 中に入ると案の定、数人の女性たちが鎖で繋がれていた。首には色々黒い面を持つ厄介な首輪が掛けられており、彼女たちは衣服らしい衣服を着ている様子が無い……ようする所の全裸であった。

 その光景を見れば、この組織がまともではないことなど日の目を見るより明らかだ。十代でフリーランスの諜報工作員(=スパイ)をやって人をバンバン殺している俺が言えた義理ではないが、拷問室に近い監獄で十人近くの女性を鎖に繋いでいるクズ共に比べれば幾分かはマシな自分がいる。これは俺自身が世間の最低辺を大きく下回っている事を考えれば……これ以上言う必要も無いだろう。

 俺は監獄の監視椅子にいた騒ぎに混乱している見張りの男の首の動脈に軍用ナイフを突き立てて命を奪うと、その男の持っていた鍵束から牢に合う鍵をさし回して彼女たちを開放する。全裸というのはあまりにも不憫だったので取りあえず見張りの男の来ていた服を切り裂いて、申し訳程度の布切れを渡す……ことしかできない。

 そして彼女たちを戒めていた最大の物体である首輪を専用の道具(諜報工作員として行動を起こす前に連中の所から掠め取ってきておいた)を使って解除する。

 廊下に出ると俺が招き入れた組織の連中、つまりはテロ組織をぶっ潰そうとしている比較的まともな方の暗部組織の幹部に遭遇したので彼女たちの身柄を渡す……無論、彼女たちの身の上の安全の保証を確約させておく。反故すれば俺が組織を内部崩壊させることで若干の脅しをかけておくのも忘れない。後々に彼女たちの肉親から金を巻き上げる良い材料になるからだ。

 弾切れを起こした銃倉を入れ替えて、俺は地下に進む。すると突入部隊第三小隊の連中とばったり遭遇した。最初から地下室のみを探索することになっていた唯一の正体だ。

 両手で機関銃を持っている機動隊に良く似た装備の連中はわざわざ俺に敬礼をして来た。その面を云えば、連中もまた『こういったこと』に真面目に取り組んでいるということだろう。

「Cheers for good hard is.(お疲れ様です)」

「Appearance of the inside?(中の様子は?)」

「It is a search currently being among of basement. At the same stalwart most is was shot and killed, but the figure of the guru is not found.( 地下室の中は現在捜索中です。それとほとんどの重鎮は射殺しましたのですが、教祖の姿が見当たらないのです)」

 まず俺の頭の中によぎったのは、やっぱりか、という当然の帰結であった。

 テロ組織『Clear Cosmos』は用意周到な教祖の元に集まった連中の集まりだ。さらに主要構成員は各国でそれなりに名を知られた科学者の集団でもある。

 そしてそのClear Cosmosが最終目標に掲げるのが――

「――っ!?伏せろ!!」

 咄嗟の事に、英語ではなく日本語でそう叫んでしまう。しかし今の世の中、アレ(・・)の影響で日本語が必須になっている世の中だ。多くの連中は一斉に伏せてくれた。

 そして、轟音。

 土煙を上げ、そしてそれを自ら引き裂いて地下室に現れたのは鋼でできた装甲を持つ、厄介な代物だった。

 ……インフィニット・ストラトス。通称は『IS』。

 十年程前、篠ノ之束(しのののたばね)とかいう迷惑極まりない女科学者によって作られた、物理法則やらいろんなものを無視した怪物兵器だ。

 今は軍用使用を禁じられているとかだが、一部の国では研究機関として軍を使うことで実質的に軍事利用を可能にしている連中も多い……そしてなにより、現代兵器での個々のスペックではどれでもそれに敵う物が無いという、正真正銘の兵器の頂点だ。

 世界に四百六十七機しかないISの中の一機、つまり世界の四百六十七分の一の機体が目の前に立っている。

(――ようやっとお出ましか)

 白状しちまえば、俺がClear Cosmosに潜入していた大きな目的が目の前のISだ。

 機種名は『ラファール・リヴァイヴ』。世界中に名だたるIS関連企業の中で世界シェア第三位の実力を持つフランスのデュノア社製の機体だ。以前仕事で入りこんだことがあるが、そのスペックの応用性は随一で、対暗部用暗部とかいう洒落た職の長であるお得意様曰く「あの機体はISがなんであるかが詰まっている良い機種である」とのことだ。

 しかし目の前の機体はとてもそうは見ることができない。走行はベコベコにへこんでいるし、手負いの武者でももっとマシな姿をしていると思う程にボロボロだ。

 それは、このラファール・リヴァイヴが強奪品であるのが第一な理由だ。

 Clear Cosmos、彼らがテロ組織として掲げた題目はただ一つ。

 『ISによる世界のゆがみを正す』ということ。

 現在の世界情勢を軽く説明すれば、それはこの一言に尽きる。

 女尊男卑。

 かつてあった男尊女卑の逆転……とは違う。差別をすることはあっても一応は存在した『女を危険な目に遭わせず、男が矢面に立ち守る』という性質からはかけ離れた、『女が偉くて男は偉くない』という馬鹿げた風潮だ。

 個人の技量など関係ない。女がどこまでも馬鹿で男がどこまでも優秀だとしても、女の方が優先される……極論ではそんな世界情勢なのだ。

 その世界情勢に対して異を放ったのがこのテロ組織Clear Cosmosであり、そのためにISを駆逐し、篠ノ之束博士を抹殺しようとして、その第一段階としてラファール・リヴァイヴを一機、某基地から強奪して、拷問用の遠隔操作型の電撃首輪まで作って。

 ……そして、それがこの結果である。

 ISを全て滅ぼすのにISを利用するという行為の矛盾。その行動が辿った、理想と現実の乖離。そしてなにより潜入工作員すら見抜くことのできなかった組織力の低さ。

 結局の所、Clear Cosmosはその題目に見合う分の実力を持っていないのだ。

「……虚しいね」

 口に出して呟く。組織の連中の話などを記憶と統合すれば、今ラファール・リヴァイヴを操縦しているのはこの近辺で誘拐されたIS適性の持つ十七歳の少女だ。なんでもIS適性が高いとかで近所の男どもを奴隷のように扱っていたらしく、そこをClear Cosmosの構成員に目を付けられて拉致されてきたという。

 そんな彼女は今、顔中を涙と鼻水でぼろぼろにして、装甲の下には何も見に着けずに、Clear Cosmosの意向に逆らえば一秒足らずで脳を電撃で焼き尽くされる首輪による脅しに怯えながらISを動かしている……マリオネット。

 彼女だけではない。牢獄にいた女性全員が同じような経歴を持ち……そして強姦や憂さ晴らしによってその身を穢されているのが変えようにもない現実だ。

 ……哀れだ。

 Clear Cosmosに潜入した初日、一日足らずで俺が抱いた感想がそれだ。

 ISによる、世界の変化を看過できなかったClear Cosmosのメンバー。

 ISによってありもしない自信により自惚れの塊となって一生消えない傷を心に負った女性たち。

 なにもかもが……

「……本当にくだらない」

『くだらないかね?』

 その時、耳の奥を削るように不快な声が聞こえてきた。

 喉が枯れた、老人の物だ。見れば、ラファールの近くに空中投影型のディスプレイが浮いている。

「ああ、くだらないね。はてしなく、掛け値なしにね」

 そんな老人、改めClear Cosmosの教祖である老害にそう答える。俺が思っていることを実直かつ簡潔に。

『ふむ、なかなかに話せる新人君だとは思っていたのだがね。どうやら君もそこらにいる無抵抗な蝿と同じだったようだね』

「無抵抗な蝿……ISの支配構造に屈している連中の事だな?」

『その通りだ。ISなんぞというたかが兵器に恐れを成して、女どもの業に屈した意志の無いデクノボウばかりが世の中に跋扈し、そしてそのまやかしの権力で好き放題やらかしている女どもが強そうな顔をする、そんな歪んだ世界……それが今の現実ではないか!!』

「まったくもってその通りだ」

 なに……と、教祖は間の抜けた声を出した。まあ、敵対した俺が意見に賛同すればそうなるかもな。

「あんたの言う通りだよ教祖サマ。実際にはISを自由自在に操って世界を無茶苦茶にできるのはごくごく一部の人間だ。ISにも適性くらいはあるし、今の世の中で威張り倒す連中の大半はそんな『優秀なIS乗り』の威を借りている狐に過ぎないだろうな」

 結局の所、教祖の言い分は正しい。少なくとも俺はそう思っている。

 だが。

「だが、一つだけ言わせてもらう。そんなことどうでもいい(・・・・・・・・・・・)

『なに……?』

「一々馬鹿に目くじらたてんなよジジイ。そういった奴らは基本的にこっちが強気に出れば警察関連を呼んでヒステリー起こすことしかできねぇ無能って相場が決まってんだ。どいつもこいつも腰ぬけで、こっちが少し本気出しただけでキーキー喚くことしかしねぇ三下ばかりなんだからよ」

 一拍置いて、教祖に再び語りかける。

「見てみろよ。そのラファールに乗ってる娘っ子、俺の言った通りになってるじゃねーか。ここに来る途中にこいつらのことを心配する親に遭ったけどな、そりゃ遭遇してしまったとしか思えなかったよ。ただ通りすがっただけの俺に必死に助けて欲しいと言ってきた両親たちを尻目に、酷い目に遭ってきたであろう連中はむしろこう口をそろえて言ってたよ、『助けなくていい』……酷い時には『殺して来てくれ』ってな」

 今度はラファールに乗っている女の顔が絶望に染まった。どのツラでそんな表情を作っているのか正直わかったものではないが、俺はそれを嘲りながら言葉を続ける。

「そんなもんだよ。あんたらだけじゃない。世の中にはそう思っている連中がたくさんいるんだ。ISの登場……白騎士事件から十年、まだまだ世の中の混乱は収まったりしていねぇ。馬鹿な連中は棚から出てきた苦労せずに手に入れることができる権力に有頂天になってるだけだ。あともう十年もすりゃ、女尊男卑なんていう馬鹿な政策も成りを潜めるだろうよ。本当に賢い奴らはその先のことすら考えて行動しているぜ?」

『ふざ……けるな!!』

 どうやら堪忍袋の緒が切れたようだ。激昂したようすで教祖は凄みのある声で叫んでくる。

『貴様に何がわかる!!このClear Cosmosにいた者たちがなぜこうなったのか!!全てISの存在によって人生を狂わされた者ばかりだ!!ある者は職を奪われ!ある者は無実の罪で家族を失い!ある者は人生をかけた研究を全て燃やされた!全て!女の!欲によって!!』

 結局、この話は平行線だ。俺の言っていることも教祖の言っている事も、両方が事実を述べており、正しいのだろう。元々正解なんてもんは世の中に存在しないのだから、自分が正しいと信じた道を行く……それが教祖の今の姿であり、俺の姿でもある。

 教祖は妥協できない。

 俺も妥協できない。

 ならば、どうするか……血生臭い暴力による争いでしか解決することができない。人間とは元来、そんな生き物なのだから……これはきっと仕方ないことだ。

 いや、仕方ないことではないのかもしれない。結局、俺は自分が譲歩できないからこうやって解決するしかなく、俺はこういう方法しか知らないのだ。

 だから、俺はこの場の争いを始めるとする。最後の引き金を引く。

「知るか。てめーらの個人的な恨み辛みなんざ俺には関係ねぇんだよ。俺は俺が良ければそれでいい。なら勝手に動いて勝手にぶっ壊されろ、出来損ないのエリート組織(笑)」

『――――ッッッ!!!』

 ぶちぶちぶち、と何かが切れる音が聞こえた。次には教祖が叫んだ……殺せ、と。

 顔中涙と鼻水と唾液でべたべたに汚した女がラファールの銃口を俺に向けてくる。こんな閉鎖的な空間で撃てば今のべこべこにへこみまくった装甲では耐えることなんざできないだろう。しかしそんなことも分からない程に……否、ただ適性があっただけで威張っていた奴なのだ。動かし方のノウハウなんて知らないだろう。そんな素人が知識を持っているわけがない。

 ……しかたねぇか。

「背に腹は代えられない……か。なら、ちょっとばかし――」

 自嘲気味にそう呟いた所で、引き金が引かれた。

 爆風、熱風、砂塵の嵐。なんてことか、まあこの世の地獄には到底及ばないけどこうなったら正直生身の人間じゃ生きてられないって状況か。まったく、つくづくふざけた戦果を発揮してくれるもんだよ、ISってモンは。

 ……ま、こうやって思考してられる程度には余裕だけどな。正直この程度としか思えないのは強化の失敗を強化で補おうとして失敗し続けた結果ってやつかね。なんとか地下室は崩れなかったみたいだし、万々歳ってところか。

 ちょっくら、ここから本気を出すかね。

「第三小隊、階段から出ていけ。今すぐにだ!俺は後で合流する。あんたらが誰も死ななきゃ俺への報酬が三倍になる契約なんだ、さっさとしやがれ!」

「りょ、了解……!」

 俺の私情たっぷり(でも報酬の件に関しては事実)な言葉に素直に従ってくれた。さっき俺の質問に対して律義に返答してくれたあたり、やっぱりその道のプロってことだ。

 それにしても連中、なんで自分が助かったかわかんなかったみたいだな。まあこの土煙じゃわかんないか。まあ、俺がコレ(・・)持ってるっつーことはあんまり知られてねぇからな。無理も無いか。

 第三小隊の連中が階段を上がって出て行ってから数十秒経って、土煙が晴れる。ぼろぼろのラファールは尻餅をつくように壁際で倒れていて……そして、その操縦者(とついてにディスプレイに映った教祖)は目を見開いていた。

 理由など簡単だろう。俺の前に突き出されていた左腕に、鋭利な構造をした装甲が装着されていたのだから。

『な……なんだ貴様、それは……!』

「おいおい、なにってそりゃお前、それはねーんじゃねぇか?お前はコレを世界から滅するためにClear Cosmosを設立したんだろうに」

 世界に、それ以外にこんな物が存在するはずも無い。

「わかるだろう?ISだよ」

 直後、俺の体は独特の浮遊感に包まれる。体が物体的慣性を無力化する装置(とは少し構造が違うが結果的には同じ現象を生み出す)PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)が起動した証拠だ。

 同時に目元に仮面のような装置が展開される。手足が装甲によって長く継ぎ足され……なによりスーツ姿だった俺の恰好は量子変換によって全身タイツに良く似た専用の黒紫色のISスーツに変貌した。

 ISの展開が終了する。目の前のラファールに比べると随分とスマートで鋭利的な装甲。色はISスーツと同じ黒紫色で、装甲は正直に言って薄く細い方だ。左右に空中待機している加速装置も従来の物に比べると遥かに小型。全体的に、身軽な印象を持たせるというのは客観的に見た俺の機体の特権だろう。

 不可視の槍兵(インビジブル・ランサー)。不愉快ながらも、俺の対暗部用暗部のお得意様が俺のために用意した、そしてさらにイラつくことに俺の商売道具の切り札だ。

『ば、バカな……なぜお前がISを……!!』

「組織に新参者入れるんなら性別ぐらいちゃんと確認しておけ。確かに乳房と子宮は摘出してるが男性器は未だにねぇよ。俺は一応、まだ女の範囲(・・・・)だよ」

 まあ、乳房と子宮……あと卵巣を取りだしたのは性同一性障害だからっつー側面を持ってるけどな。感覚は男で生理が来るとか地獄でしかない。まあそのせいかホルモンバランスぐっちゃぐちゃだから男か女か良くわかんない体型とか声だけどさ。まあ口調とか仕種とか、精神的な所は男だから連中は男だと勝手に認識したんだろう。

 潜入工作員としては果てしなく都合の良いことだ。

「さぁーて、ここで一つお前には選択権があるぜ教祖サマ」

 俺はインビジブル・ランサーの装備“ブリューナク”を展開する。太陽神の武器で投擲すると稲妻になるっつー伝説の槍の名前をもじった洒落た槍だがこれは電気ではなくレーザー機能を搭載した兵器で、レーザーで刃を作れればそれを発射することもできるっつー槍とは思えない性能を持つ装備だ。まあ、俺の戦法的にはあまり使わない機能だけどな。

 ヴン、という音と共にレーザースピアとしての機能を“ブリューナク”が発揮する。可視化した光子の波が刃として既存の骨組みに点火し、物理的な槍とは桁外れな攻撃力を持った凶器へと変貌する。

「一つ、無様に降伏して死刑、または牢屋の中で生涯を終えるか。一つ、ISをけしかけてその後俺の手で殺されるか……どっちが良い?」

 教祖が答えるまでもなかった。ラファールを身に纏った女が俺に特攻を仕掛けてくる。

「なぁーるほど。それがお前の決定か、教祖サマ?」

 俺は“ブリューナク”を一振りする。金属が削られる音と共にがくんとラファールが機能を停止……否、ISの操縦者の命だけを絶対に守る『絶対防御』、さらにそれが突破された場合の苦肉の策、『救命領域対応』が起動したようだ。この女はしばらくは目を覚まさないだろう。

『……私の負け、か……』

 教祖がこの世の終わりのような声を出した。

「そうだな。俺の正体を看破できなかった時点でClear Cosmosは終わっていたよ」

『そうか……。一つ、聞いて良いか?』

「なんだ?冥土の土産なら教えてやるよ」

『なぜ、君は自分のISを最初から使わなかった?それならば、私たちをすぐに制圧できただろうに……』

 何かと思えば、そんなことか。答えるのは造作ないことだ。

「簡単だ。俺はあくまでスパイだ。こんなの使う時点で勝負に負けてるようなもんだ。つまりこれは俺の切り札で……切り札は、最後まで取っておくからそう呼ぶんだよ」

 そうか、という声が聞こえた。

 直後、ディスプレイで自らのこめかみに拳銃を突きつけて引き金を引いた、老人の姿が映った。

 

 




DATA
【名前】不明(仮称:とある諜報工作員)
【性別】女(但し性同一性障害のため本人の精神的性別は男)
【年齢】十代後半
【国籍】不明
【詳細】
 フリーランスの諜報工作員。有り体に云えばアンダーグラウンドの組織から依頼を受けて実行するスパイ。
 一人称は『俺』。若干ながら乱暴な口調で、シビアでドライ、さらには現実主義で皮肉屋な性格をしている。SかMかで言ったら確実にS。
 今の女尊男卑の世の中やその風潮を心の底から『くだらない』と切り捨てている。
 基本的に報酬を払えばなんでもするが、その仕事の精度は報酬の額が大きければ大きい程上がって行くという典型的なフリーエージェント。
 上記の通り国籍は不明だが、東洋人であることと流暢に日本語を話している事から日本人であると思われる。
 身体的性別は女であるが精神的性別は男であるため、子宮や胸、卵巣を始めとした女性ホルモンなどに影響される臓器は外科手術によって摘出している。一応、完全な男性ではないためISには搭乗できる模様。
【IS】インビジブル・ランサー
【漢字表記】不可視の槍兵
【IS詳細】
 第三世代のIS。とある諜報工作員(以後『彼女』)が所有するISで、『彼女』のお得意様である対暗部用暗部の組織の長から半ば強制的に譲られた代物。
 『彼女』的には不愉快ながらも商売道具の中では破格の戦力であり、切り札となっている。ちなみにコア・ネットワークは常にOFFにしてある模様。
 全体的にほっそりとした外観に鋭利的な装甲をしており、ブースターも小型。足の裏や関節部分にも小型のブースターが装備されていることからわかる通り、本来スピード特化の機体である。
 作中では使用されなかったが、名の通り、唯一使用の特殊能力(ワンオフ・アビリティー)として“不可視の幻影(インビジブル・ヴィジョン)”を搭載している。
 装備は槍型レーザー兵器“ブリューナク”。レーザーでできた刃による刺突、斬撃、さらにはその刃を前方に発射できるなど、遠距離近距離中距離どれにも対応した装備。



……つづく(?)

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