ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
さて、出発は明日となったが、その間にみんなの準備を見に行くとしよう。俺の準備なんて宝物庫ごと移動してるから不要だし、マスターも同じくだ。久しぶりに会ったコルベール先生とも話しておきたいしな。
……つまり、要するに、いわゆる、日常パートである!
・・・
早速だが、タバサの部屋にやってきた。彼女の拘束は解いているが、勝手にいかないように自動人形を一人付けている。これは監視もあるが、護衛でもある。アンリやキュルケ、コルベール先生の下にも一人ずつ送り込んでいる。何かあれば俺のところまで全力で連れてくることになっている。
ドアをノックすると、中から小さな声でどうぞと声が聞こえて、向こうからドアが開いた。自動人形はメイドも兼ねているので、こうして細かな気遣いもしてくれるのだろう。
「よっ。どうだ、体調は。無茶はしてないからあんまり痛めたところはないと思うんだけど……」
「……特に痛むところはない。明日の準備も出来ている。……そういえば、いくつか頼みがある」
「うん? ああ、何でも言ってくれよ。叶えられることは限られているけど、できる限りは力になるよ」
「……ならば、まずは母を治すという薬を見せてほしい。あなたの蔵のことは聞いているけど、実際に見てみたい」
「ああ、なら」
そう言って、俺は宝物庫から一つの小瓶を取り出す。これこそなんでも治すという伝説の霊薬『エリクサー』である。これは神様が自分で作っていたものをいくつか貰ってきたものなので、大体なんでも治す優れものだ。身体の傷はもちろん、精神なんかの目に見えないものも治すという頭のおかしい性能をしている。これは神様から色々説明を受けたのだが、世界の記録を調べて『健康』であった時の情報を参照してそこに戻すという治療薬と言うよりは巻き戻し薬とでもいうべきものなんだそうだ。なにやら文庫本を読んでいたら思いついたらしく、名前は『エリクサー』だが結構出来立てほやほやの新薬なのである。
「これが……」
「ああ。これが俺の持つ中で一番の治療薬だ。精神を壊されたとかだとしても治してくれるものなんだが……」
「そう……これは飲むもの?」
「どちらでも大丈夫だ。……外傷じゃないなら、飲んだ方が良いらしいけど」
俺の出した小瓶を矯めつ眇めつするタバサが、ふと机に向かい、何かを取り出した。
「……水の秘薬でも、母様は治せなかった。一度試す」
手に持っていたのは、ナイフだ。相当手入れをされているのか、切れ味は相当によさそうなものである。
「おおっと!? やめとけやめとけ! 治るのは保証するし……切ると痛いぞ!?」
自分を傷つけて試そうとするタバサをなんとか止めようとするが、その目に宿る覚悟を見て、それは不可能かもと思ってしまう。
「こ、心の傷が治るかと体の傷は別物では……?」
「今までの水の秘薬と違うというところがわかればいい。母様を助け出すのが一番の目的。治すのは……これからもあなたに仕えるなら、何度もチャンスはあると思う」
「うーむ……」
そう言われると弱い。確かタバサの母親はエルフの呪いでそうなったという話なので、もし薬でダメならば他の魔術的なアプローチもしないとだし……そのためには、確かにタバサの母親の身柄が必要だ。その一歩目として、この霊薬の効果を知りたいってことか。
「……指くらいなら治る?」
「……切り落とすの?」
「そのくらいじゃないと、今までの薬と変わらない」
「なるほどな。……欠損くらいなら治るよ。死んでいないなら治ると言ってもいい」
と言っても、脳とか心臓とか、人間としての『核』の部分が失われてしまっては難しいが……。俺がそう言うと、タバサはだん、と自分の指を切り落とした。
「覚悟決まりすぎだろ!」
止める間もなかった、と言うのは言い訳だが……タバサ自身も苦痛に顔をゆがめながら、エリクサーを手に取って手に振りかけた。すると、にょきにょきと擬音が聞こえるような動きで、タバサに指が戻った。始めてみるけどまぁまぁキモ……いや、女の子にそんなこと言ったらだめだな。自動人形がそっと切り落とされた指を回収し、綺麗な布に包んで宝物庫に送った。……え、なんで宝物庫に送ったの……?
「……凄い効能……水の秘薬とは違う……これなら……」
指を曲げ伸ばして効果を確認したタバサは、俺に向き合って頭を下げた。
「疑って申し訳ない。でも、これなら希望が見える。……あなたの騎士にしてください」
「……ああ。もちろんだ」
俺が手を差し出すと、タバサも手を出して握手をしてくれた。よし、俺もやる気が出てきた。タバサの母親を助け出し……その治療をする。ガリアとの戦いになるだろうが……女の子を手に入れるために戦うなんて俺はいつでもやってきた。ここは……あんまり好きではないけど、英霊王としての面目躍如と行くかな。
・・・
次に訪れたのは、コルベール先生と直のいる研究所だ。ゲルマニアに行っていたころの話を聞きたいので、こうして訪れたのである。
「おお! ギル君ではないかね! ようこそいらっしゃい!」
煤だらけで俺を出迎えてくれたコルベール先生は、笑顔でどうぞどうぞと室内へ案内してくれた。中で直が何かやっているらしく、とんかんと金属を叩く音が響いている。
「いやぁ、君なら興味を持つと思っておったよ! 今の私の最高傑作だからね、あの飛行機は!」
「だろうな。あの巨大なものをよくもまぁ飛ばしたもんだよ」
「ナオシの『戦闘機』を飛ばしている『エンジン』よりは出力がないんだけどね。あの『プロペラ』は凄いよ! それに固定翼を組み合わせることで空力を生み出す……直や君の生きていた世界の科学とはすばらしいな!」
感動した面持ちでそう叫ぶコルベール先生。相当熱中しているようだ。こういう時の先生はどうもマッドな雰囲気を醸し出してくるので、直と一緒であんまり接触したくない危険人物になるのだが……色々と知っている直と一緒とはいえ、蒸気機関を作り出してさらにその先へと向かおうとしているのはこの魔法がすべてだとする世界では珍しいので、支援したくなるのだ。
かなり善良な人間なのは確かだしな。
「それにしても、一つ完成させると最初は満足していても改善したいところがいくらでも出てくるな! もう二号機を作りたくて仕方がないよ!」
「開発欲が凄いな……まぁ先は長いし……一人じゃ思いつかないこともあるだろうから、仲間を作るのもいいかもしれないな。科学クラブとか作ればいいんじゃないか?」
元の世界でいえば科学部って感じかな。俺がそう提案してみると、先生は疑問の表情を浮かべた。
「科学クラブ……?」
「ああ。先生にはいないかもしれないけど、生徒には科学に興味を持ってる子とかもしかしたらいるかもしれないだろ? 授業とは別に、そういう生徒を集める活動をするんだよ」
放課後なんかは暇してる貴族も多そうだしな。こうして一つ大きな成果を出した人物であるコルベール先生が集めるのなら、何人かは集まりそうなものだけどな。
「なるほど……! 同好会を作るということだね!」
「ああ、同好会。その言い方が近いかもな」
「そうかそうか! この飛行機を見て、もしかしたら科学に興味を持つ子が現れるかもしれん! 最初は少ないかもしれないが、色々な研究、色々な開発をしていくうちに……!」
最初の火種が広がっていくとは限らないが、世界は広い。一人でできることには限界があるし、コルベール先生のような化学の徒が現れるかもしれないしな。
「そうか……そうかなるほど! それは良い!」
そういうと、コルベール先生は何やら髪を取り出してがりがりと書き込むと、それを持って扉へと走った。
「私はさっそく学院長に科学同好会の開設許可をもらってきます! ろくにおもてなしも出来ずに申し訳ない!」
「いや……気にすることはないよ、コルベール先生。気を付けて」
俺がそう声を掛けるが早いか、コルベール先生はもう出て行ってしまったようだ。乱暴に閉じられた扉を苦笑して見送ってから、俺も外に出た。
さて、次はだれの所に向かおうかな。
・・・
「あら、ダーリンじゃないっ」
「おや、キュルケ」
一旦帰ろうかなと思って歩いていると、フレイムと共に歩いてきたキュルケと出会った。
「ちょっと、色々聞いたわよ? いつの間にか伯爵にまでなってるなんて!」
「えー……どこから聞いたんだ?」
「ルイズからよ。あの子、ちょっと熱くさせたらすぐに口滑らせるから情報収集にはもってこいよね」
苦笑しながら「気を付けてあげなさいよ」と釘を刺してくるキュルケにありがとうと返してから、彼女をお茶に誘う。
「いいわね! じゃあ、私の部屋なんてどう? お茶だけじゃないおもてなし、してあげるわよ?」
そう言って俺にしなだれかかってくるキュルケ。おお、いいねと思いながらも、明日出発だしなと考え直し、俺はしなだれかかってくるキュルケの腰を抱いて体制を変えて壁にキュルケの背中を押し付け、顔の横に手をつく……いわゆる『壁ドン』の状態にしてから、キュルケの顎をクイッと……もう少女漫画に出てくるイケメンをトレースしたような動きで押さえてから、キュルケにささやきかける。
「ははっ。それはとても魅力的だが……そうなると明日に響くからな。帰ってきたら、俺から誘わせてもらうよ」
「な、なっ、にゃにゃっ……!」
「はっはっは、真っ赤だなキュルケ。『微熱』の名前の通りってことかな?」
結構初心なところがあるのか、それとも自分から攻めることしかしなかったから逆に攻められると弱いとか?
それはとにかく、こうしてお姉さんっぽい女の子があたふたしている姿を見るのは癒されるなぁ。こういう女の子のギャップある姿を見ることでしか得られない栄養素ってあると思うんだよね。
「とにかく、それは帰ってきてからのお楽しみってことで。今日は普通にお茶でも飲もうよ」
そう言ってから、俺は少しからかうような笑顔をキュルケに向けてから彼女と共に学院のテラスまで向かうことにする。
「……ちょっとびっくりしちゃったけど……。ふふ、言質は取ったわよ」
隣を歩くキュルケが何か言っていたような気もするが、まぁ独り言なんて追及されたくないものだ。ここはスルーするのが大人の対応だろう。
少し歩くと、テラスにたどり着いた。学生の姿は少なく、席を探さずとも座ることができた。あとは自動人形たちに準備をお願いすると、俺たちの前にはティーセットが置かれた。いつも通りの手際だし、いつも通りのおいしさだ。流石は黄金の侍女。
二人でカップを傾けながら、ゲルマニアの話を聞く。どうも直は向こうの貴族やら工房の職人なんかも巻き込んであれを作り上げたらしく、一部の人間からはかなり信頼を得たらしいが、別の一部の人間からは蛇蝎の如く嫌われたらしい。なんとも両極端な男である。
そんなことを話していると、キュルケの肩越しにこちらに近づいてくる人影を見つけた。こちらに手を振りながら近づいてくるのは、いつぞやの件から仲良くしているケティであった。
「ギルさまぁーっ」
その声にキュルケも振り返り、ケティを視界に入れたようだ。そのままこちらに近づいてきたケティは、少し息を切らしながらも笑顔で俺に挨拶をしてくれた。
「こんにちわっ。あ、あの。廊下を歩いていたらギルさまがいるのが見えて……えへへ」
「……ダーリン、だぁれ、この子?」
「……ダーリン?」
少しいぶかしげな顔をしたキュルケと、キョトンとした顔のケティがお互いの顔を見る。そういえば面識はないかと俺はお互いのことを紹介する。
「キュルケ、こっちは君の一個下。一年生のケティだよ。俺が召喚されたときに色々あってね。その時から仲良くしてるんだ」
たまーに鯖小屋にも遊びに来たりして、そこで卑弥呼や壱与から鬼道っぽい占いを教えてもらってたり、ジャンヌと一緒に料理をしていたりするのを見たりすることもある。目立たないが、俺の召喚した子たち全員と面識のある珍しい娘なのだ。
「で、こちらはキュルケ。ケティの一個上で二年生。俺のマスターと友達なんだ」
ケティには俺の色々を教えているので、マスターと言うのがルイズってのも知っている。というかじゃないと鯖小屋には招待できないしな。信頼できる娘だっていうのはわかったので、俺も教えることには迷わなかった。
ちなみに鯖小屋でマスターと出会った時にはどこか通じるところがあったのか、マスターのことを『先輩』と呼んで慕っているようだ。マスターはそもそも座学はトップだし、虚無の属性に目覚めたことで魔法のコンプレックスもあまり感じなくなってきたので、素直に後輩として迎え入れているようだ。ちょっとだけケティのほうが背が高いので、小さい子が大人ぶっているようにしか見えないのも、ウチのマスターが可愛いポイントである。
ケティは俺のことも慕ってくれているらしく、会えば先ほどのように子犬っぽく駆け寄ってくれるのは、とても可愛らしい。なんというか、後輩力の高い娘なのである。
「ふぅん……まぁいいわ。座んなさいな」
なんだかんだで面倒見のいいキュルケがケティに座るよう促した。ありがとうございますと礼を言ってから、ケティもテーブルに着く。自動人形は話の流れから席に着くと予想していたらしく、流れるような動作で新たなカップを出してお茶を注いだ。
「ありがとうございますっ」
自動人形に礼を言ってから、ケティは紅茶を一口。鯖小屋で出しているのと味は変わらないので、飲みなれた味に安心したのだろう。ほぅ、と一息ついた。
「そういえばお二人は明日からまたどこかに行かれるとか。お気をつけて行ってきくださいね……?」
「ああ、ありがとう。気を付けるよ」
「あら、良い子じゃないの」
そう言ってキュルケはケティを撫でる。わかるぞ。子犬っぽさあるから撫でたくなるよな。俺も滅茶苦茶撫でるもんなぁ。
「私も色々と教わっているのですが、まだまだお力になれなくて……」
「ははは、いつもウチの小屋に遊びに来てくれるだろ? それだけでも十分さ」
「そう言っていただけると嬉しいです……! 私、来年の使い魔召喚の儀で、ギルさまみたいな素晴らしいパートナーを召喚できるように頑張ります!」
「う、うーん……そう言われると英霊出てきそうだからあんまりよくはない気がするけど……」
こちらの世界では『精神力』とも呼ばれる魔力だが、名前が少し違うだけで俺たちの原動力となる魔力と変わらないものらしい。だからこそ神様が肩代わりしているマスター以外のこちらの世界の人がサーヴァントを召喚することもできるし、維持することもできている。あとは召喚する適性があれば、この世界でも英霊召喚をすることは可能なのだ。
こちらの基盤にはなかった英霊召喚も、紛れ込んだ聖杯と英霊召喚を行える俺がこちらに来てしまったことで新たに世界に刻まれてしまったらしい。そこは本当に申し訳ないとは思うが……。
「まぁ、そう意気込まなくても、ケティに合う使い魔がきっと来てくれるよ」
猫とか兎とかそういう可愛いのを抱えてほしいから、個人的にはそう言った小動物が来てほしいとは思うけど……。
「そうですよね! うーん、どんな子が来てくれるかなぁ……」
「ケティは何の属性なの?」
「私は火の属性なんです! だから、ツェルプストーさまと一緒なんです!」
「へぇ! それはいいわね! 火は破壊だけではない、表裏一体の属性。……それと、キュルケで構わないわよ。同じ火属性だし、もっと仲良くしましょうよ。ね?」
「わぁ……! ありがとうございます! それでは、キュルケさまと呼ばせていただきますね!」
「ふふふ、可愛いわぁ……妹がいたらこんな感じなのかしらね?」
それから、昼食の時間になるまで俺たちはお互いのことを話して親交を深めた。
「それじゃあ、また後で」
「ギルさま、失礼いたします!」
昼食を取りに食堂へ向かう二人と別れ、さて次はだれに会いに行こうかなと思いながら学院内を歩きだす。
・・・
次はだれに、とか言いつつも、俺の知り合いなんて学院にはそんなにいないのだ。なので、一旦鯖小屋へ立ち寄ることにした。昼時だし、シエスタもお昼を用意している頃だろうしな。
鯖小屋の施設はかなり便利になっており、使用しているシエスタも『料理が楽しくなる』と言うほどに色々なものがそろっている。火力が簡単に調整できるコンロに、これ何に使うんだかわからないというくらいにある調味料。どれを使えばいいのか迷うほどの調理器具の数々。そんなものが所狭しとおいてあるのがウチの鯖小屋キッチンなのである。
こうして小屋へやってきたときも、昼時だからかシエスタが鼻歌を歌いながらなにやら鍋をかき混ぜているのが目に入った。……メイド服っていいよねぇ。その横にいるのは同じくメイド服姿のジャンヌ。うむうむ、今日のお昼はチーム芋煮会が作ってくれているのか。……材料的にチームセンゴクもなにやらやってるみたいだが……あの大きさの猪とかどこからとってきたんだ……?
後ろからじっと見ていると、そんな俺の視線に気づいたのかジャンヌが振り返る。
「わ、なんか視線感じると思ったら……マスターじゃないですか。なんです、そんなえっちな目で見て!」
振り返るだけでは飽き足らずそんな失礼なことまで行ってくるジャンヌ。……いや、確かにそういう目で見てたから否定はできないけどさぁ……。よくわかったものである。個人的にはミニスカメイド服も大好きだが、クラシカルな丈の長いしっかりとしたメイド服も好きなのだ。そこに隠されている脚とかを考えるだけでちょっと興奮してくるのは俺だけだろうか。
「ぎ、ギルさんっ!? え、えっちな目って……え、えと、ご飯にしますか、お風呂にしますか? ……そ、そそそそそれとも! わ、わわわ」
「私にしますか?」
「ジャンヌさんっ!?」
せっかく勇気を出して新婚三択を選ばせてくれようとしていたシエスタをしり目に、ジャンヌがスカートの裾をちらりと上げてセリフを横取りしていた。シエスタはだいぶんショックを受けてみたいで、ジャンヌの肩を掴んで揺らし、どういうことかと問い詰めていた。
「ふっふっふ、こういうのは早い者勝ちと相場は決まって……あ、あの、ごめんなさい謝るんで揺らすのやめてくださ……おぷ、はきそ……」
「わぁっ、ご、ごめんなさい!」
顔色の悪くなったジャンヌを椅子に座らせて、とりあえず休ませる。それからシエスタに昼食を食べに来たことを伝えた。
「そうだったんですね! 今日は謙信さんたちが色んなお肉を持ってきてくれたので、今日はたくさん作ったんです! ぜひ食べて行ってください!」
そういうと、シエスタは俺もテーブルに着かせて、配膳をしてくれる。手伝おうかと申し出てみたが、こういうのはメイドの仕事だと笑顔で断られてしまった。確かにシエスタは俺の専属メイドだし、仕事を奪うのも良くないかと思い返して席で待つことにした。……それにしてもジャンヌは復活しないな。三半規管弱いのか……。それから、シエスタが料理をテーブルの上に配膳し終わると同時に、他のみんなも集合し始める。
今日は特にやることもないので、サーヴァントは全員集合だ。謙信に信玄、壱与と卑弥呼、そして小碓とペトルスが食卓に着いた。俺とシエスタ、ジャンヌを含めると九人の大所帯だ。みんなでシエスタとジャンヌ合作のシチューやステーキを食べる。……うん、美味しい。俺も生前料理に挑戦したことがあるが、ここまでしっかりとしたものは作れないので、こういう技能を持っている人
はかなりありがたい。
「そういえばギル? これから久しぶりに国に喧嘩売るわけだけど、どこまで行くの?」
食事がある程度落ち着いたところで、卑弥呼が俺にそう聞いてくる。……国に喧嘩……まぁ、そうなるか。でもまぁ、言うことはそうだけどやることはいつもと同じだ。
「どこまでって……納得するまでだよ。タバサの母親を助け出して、もうタバサに手を出さないって思うまで行こう」
そこまでシンプルに行くとは思えないけど……ここで決意を言うくらいならいいだろう。それに、最初から低い目標では士気にも関わるしな。
「そ。ま、その辺はあんたに任せるわ。わらわたちの王なわけだしね? ふふっ。期待してるわよ、英霊王様?」
いたずらっぽい笑顔で、卑弥呼が俺にスプーンの先を向けながら言ってきた。苦笑いしながら周りを見ると、他の子たちも俺のことを見ながらにこやかに食事をしているのが見える。……期待が
重い……が、それだけ俺に信頼を置いてくれているということか。それに応えられるように頑張らねば。
「それで? 今日はこれから何か予定でもあるの?」
「いや、とくには無いけど……」
「じゃっ、じゃあ! 私たちを相手に無限発射編ってことでどうでしょうか!?」
鼻息荒くふんすふんすと机をたたく壱与。……流石は壱与だ。あんなに激しく机をたたいているのにほとんど音がしてない。……しかし、まぁ、やることもないしなぁ……。
「なら、寝室で待ってるとするかな」
そう言って立ち上がると、壱与がシチューを一気に食べきって、苦しそうに胸をとんとんと叩きながら俺の後についてきた。……この子は本当に性欲に忠実だな……。
「いっちばんのりでお願いしますギル様ぁっ!」
「よーしよしよし。じゃあ、壱与は最後にしようかなー」
「なんでっ!?」
ショックを受けている壱与の襟元を持って壁に引っ掛けて、ついでに宝具で縛っておく。それから魔力を解いて衣装を変えて、ベッドに腰掛けて宝物庫からワインを取り出す。
「え、ちょ、ほんとにっ!? ほんとに最後にされる感じですかコレっ! っていうかもう壱与のこの状況を酒の肴にする気満々ですよねっ!?」
「はっはっは、壱与が囀る姿は見ていて面白いなー」
「そのくらいにしておいてあげなさいよ。まったくもう」
呆れながら部屋に入ってきたのは卑弥呼だ。結った髪をほどきながら、壱与に向かって弱い光線を撃っている。あれで拘束を解いてあげようとしているのだろう。……でも卑弥呼は意外と繊細な操作ができないので、壱与の顔面ぎりぎりとか服のつなぎ目に着弾して、なんとも恐ろしいダーツみたいになっていた。
「……流石はオチ担当だな、壱与」
「あら? 腕鈍ったかしら……」
「ひっ! ……こっ、ころしゅっ! 卑弥呼しゃまっ! ここから解放されたら殺しますからねっ!」
・・・
「ちなみにだけど、わらわ、芋娘、旗娘、委員長、女男、壱与の順でつぶされたわ。……え、性なる女と鎧女? あの二人は気づいたら食卓の上で寝てたわよ。自由人よねぇ……」「それもいいですけど! 私結局最後までお預けだったんですけど! ちょっと最近放置プレイが無駄に高度になってきてます!」「あーはいはい。もう少ししたら三番か四番くらいまた順番伸びるんだから騒がないの」「……えっ。なんでそんな急に予知みたいな……えっ、見えたんですか!? 増えたの見えたの!?」
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