ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「失礼過ぎないか? 誰が煩悩尽きない王だって?」「……あ、あはは。間違ってはいないと思うよ? ……じゃなきゃ僕みたいなのに手を出したりしないでしょ? ……しかもあの子ごと……。でも、うれしかったよ。ふふ」「私も、そのおかげでこうして二人一緒に王様のお嫁さんになれたんですし……」「そうそう。二人そろって、『お嫁さん』に……ね」


それでは、どうぞ。


第六十六話 無無明尽と言われた王

「すごいもんだなぁ」

 

「……そうですわね」

 

 目の前の妙に男らしい振る舞いをするドレス姿の貴婦人……アニエスに少しだけ胡乱な目線を向けながら、再び街の姿に視線を移す。

 

「うふふ。みんなでドレスパーティなのね? シンゲン……じゃなくて、アニエスも似合ってるわ?」

 

「うむ! まぁわしも生娘ではなくなったわけだし、このような衣装で女を楽しむのもよいものじゃな!」

 

「……人の体勝手に使ってる割には人生楽しそうですねぇ」

 

 思わずため息が出る。本人の意識も半分ほど戻っているとは言っても、主導権はシンゲンにあるらしいし、もうそろそろ体も完治するらしいからそうなったらアニエスの意識も表に出てこれる、とは言っていたけど……。大丈夫かしら。アニエス、あなたの体は完治しても無事なところはあんまりないのかもね……。その時は慰めてあげようかしら。

 

「しっかし、剣を佩けぬとは、警戒心の高いことだ。ま、わしには関係ないが! がっはっは」

 

「その笑い方やめたほうがいいと思うわ、アニエス。もっとレディにふさわしく笑わないとね」

 

「……おほほ」

 

「あっはっは! 似合わないわ!」

 

「じゃろな。殴るぞ」

 

「緊張感ないわねぇ」

 

 サーヴァントってこんなのばっかりなのかしら? でもわたくしの一番敬愛する王さまは……もっとしっかりしてて、頼りがいがあって……あ、でも確かにたまにおかしいわ。やっぱりみんなどこかしらおかしいところあるのかしらねぇ……。マリーも最初はお姫様って感じだったけれど、だんだんと明るく……というか、遠慮がなくなってきたわね。いいことなんだけれど……。

 外に見える贅を尽くした格好をする神官と、貧困にあえぎ炊き出しに列をなす平民たちの差に頭がくらくらしそうになっていると、マリーの頭をぐりぐりと拳でお仕置きしていたシンゲンが、はぁと私と同じようにため息をつきながら座りなおして、腕を組む。

 

「しかし、おぬしの気持ちもわかるぞ。神仏関係は複雑怪奇なものよな」

 

 わたくしと同じところを見ていたシンゲンが、眉根をひそめて吐き捨てるようにそう言った。彼もこういう宗教関係には何か言いたいことがあるらしい。

 

「建物はきれいだけれど……どうやって建ったかを考えると素直には見れないわねぇ」

 

 マリーも頭を押さえながら苦笑する。がらごろと音を立てて進む馬車に揺られながら、この後のことに思いを馳せる。ロマリアに来ることになったのは予定通りのことなのだが、本日はその予定の日よりも二十日も前にこうして来ていた。なぜか、というと……『奇跡を見せる』と言われたからなのだが……。きっとたぶん、厄ネタよね、と頭を抱えそうになる。

 

「む? 歌か……わしにはなじみのない曲調だが……」

 

「聖歌ですわね。いろいろと思うところはありますが……歌声の美しさに違いはありませんね」

 

 少しだけその歌に聞き入る。……お忍びできているから大っぴらに歓迎はできないが、もてなす気持ちはあるという気づかいだろう。

 

「ふむ……む? おい」

 

「わかってるわ。ねえアンリ?」

 

「何かしら?」

 

 聖歌が一番の盛り上がりを見せる中、マリーが笑顔で指をさす。その指の先には、顔に傷を負った、妙齢の女性が一人、座り込んでいた。

 

「あれ、サーヴァントだわ。きっとあの聖歌隊の中にマスターがいるのね」

 

「はぁ……これが『神の奇跡』だったりしないわよね……?」

 

 胸元の『本体』をいつでも起動できるように光らせ、戦闘態勢一歩手前の状態で笑うシンゲンと、笑顔だけど油断はしていない様子のマリー。わたくしも、入り口でカバンにしまうように言われた杖に意識を向ける。

 

「向こうも私たちに気づいているだろうし、こんなところで何かしてくるようなことはないだろうけど……一応気を付けてね、マスター?」

 

「こういう時だけそうやって呼んで……はぁーっ……」

 

 さらに深いため息が出てくる。……聖歌だけがこの場での癒しだわ、ほんと。歌い終わって指揮をしていた少年が振り返る。……月目? 縁起が悪いとハルケギニアでは敬遠されているものだが……そんな月目の少年が聖歌隊の指揮者を務めるなんて……何かよっぽどな事情があるのだろうか?

 とりあえず、このもてなしをねぎらうために窓から左手を出す。それを見て、指揮者の少年はわたくしに礼を奉じた後、そのまま近寄ってくる。貴族か軍人のようね、とふと思った。それからうやうやしくわたくしの手に唇をつけた。

 

「ようこそロマリアへ。お出迎え役を任されました、ジュリオ・チェザーレと申します」

 

 とても優雅で洗練された、気品ある仕草である。話を聞いてみると、神官なのに貴族のような立ち居振る舞いをする理由は、軍人のような生活をしていたから、らしい。以前のあの戦では、武人として参加していたとのこと。

 ……あの戦。少し暗い気持ちになるが、それでもこちら側に立って戦ってくれていたという少年には、礼を言いたい。

 

「いつまでおべんちゃらやってんだい? さっさと姫様を案内したらいいじゃないか」

 

「……わかってるよ。申し訳ありません陛下。彼女は護衛のようなものなのですが、平民ゆえ何分態度が……」

 

「いえ、気にしておりませんわ。わたくしもそばに置く秘書は平民ですもの。ねえアニエス?」

 

「む。は。その通りにございます」

 

 シンゲンがアニエスのように声を固くして、『固い平民上がりの軍人』の真似をしてくれる。そのまま『護衛のようなもの』と言われた女性に視線を向け、お互いに少しの間視線をぶつけていた。……お互いサーヴァントだと気づいているのだろうから、何かしらの駆け引きのようなものが行われているのだろうか。にこにこと笑顔のままのマリーも、わたくしをいつでも助けられるような位置取りをしている。いつも守られるような立場にいると、そういうのも少しはわかるようになるものだ。二人とも、この場で戦いが起きてもわたくしを守りながら離脱できるような位置に常にいるようにしている。

 

「こちらへ。我が主が陛下をお待ちです」

 

 何やら固い空気の中、ジュリオの先導を受け、我々は呼び出した本人である聖エイジス32世のもとへと向かうのだった。

 

・・・

 

 きゃあ、という事件性のある悲鳴と、わあぁ、という野太い掛け声が、懐かしきアウストリの広場へ広がる。前者はほぼすべての女子生徒、後者はギーシュ率いる水精霊騎士隊の声だ。俺が風呂場に突撃したあの騒動の裏で、早めに上がったモンモンや他の女生徒たちが怪しい動きで走るギーシュたちを目撃。付近を捜索すると、地面から女子風呂へと繋がる地下通路が彫られており、女子風呂と外を隔てる壁に『錬金』で穴をあけてあったのだとか。状況証拠がそろってしまった彼らは、一人ずつ捉えられ、女子生徒からの過激な尋問ののち、実行犯が水精霊騎士隊の全員だということが発覚。それが学院側にも伝わり、こうして奉仕活動として白い目で見られながらゴミ拾いをしたり掃除をしたりしているらしい。

 

「まったく……あんな恥知らずな奴らが女王陛下の近衛隊だなんて……何をお考えなのかしらね」

 

「あ、あはは……」

 

「え、それだと俺も辺境伯なのに女子風呂突入した恥知らずだぞ?」

 

「あんたは私が主人としての責任をもって折檻したからいいの。あそこにいたのなんてティファにタバサにキュルケにケティに……あんたのお手付きばっかりじゃないの。いつもあの小屋の風呂でやってるのと変わんないでしょあんなの」

 

 あの爆発させられたのはそういう意図があってのことだったのか。……ごめんなマスター。あれただのストレス発散なんだと思ってた……。

 

「ギルさん、私もいつでもお風呂ご一緒しますからね! お背中もその御髪も、そ、その、た、大切なところまで、しっかり洗ってご奉仕いたしますわ!」

 

「うっさいわよエロメイド。あんたはギルを見かけるたびに発情して……」

 

「はっ、はつじょっ!? ちっ、違いますっ! 私はただギルさんの寵愛を受けたいだけで……その過程で、お子を授かれればなぁ、なんて。きゃっ」

 

「やっぱりエロメイドじゃない。……あんたもこんなのが専属メイドで大変ね」

 

「はっはっは、かわいいもんだぞ。それに、マスターも俺の恋人なんだし、いつかはそういうことするかもしれないんだぞ? ……そうしたらシエスタよりもハマるかもな。エロマスターだ、エロマスター」

 

「エロメイドよりいやらしいじゃないのそれッ!」

 

 だぁん、とマスターがテーブルに拳を振り下ろす。『台パン』というやつだな。多分違うけど。机の上に並べられた茶器が揺れ、注がれていた紅茶が少し跳ねた。

 

「どうどう、落ち着けマスター。俺だって『絶倫王』やら『キング・オブ・エロスター』やら国民からあだ名をつけられたものよ。……よくあれで不敬罪とかにならなかったな。俺の国、自由すぎか?」

 

 というか俺の立場が不当に低い気がする。王様だぞ。『絶倫王』から略されて『ぜっちゃん』とか言ってくるおっちゃんとかいたからな。事実だし親しみやすい名前だから別にいいやと思って許してたけど……子供がそれを聞いて俺のこと『ぜっちゃん』呼びしてくるのには少し困ったがな。元ネタは知らなくていい。無垢なままでいてくれと思っていたが。

 

「そ、そそそそそれに? 私はほかのやつらみたいに簡単に体を許したりしないんだから! 初めての時は、しっかり結婚式を挙げて、お互いに身を清めた後にきれいな景色がみられる屋敷の寝室で愛を確かめ合いながら……」

 

「そういう憧れがあるのか……マスター、結構乙女だな」

 

 顔を真っ赤にしながら身振り手振りを加えて説明してくれたマスターを、ひょいと持ち上げて俺の膝の上へ。お互いに対面するような体勢になると、マスターは何も言わずとも俺の背中に両手を回してくれる。

 

「んぅ、何よ。キスしたいの?」

 

 体を密着させながら、顔だけこちらを見上げてくるマスター。シエスタが顔を隠してはわあわ言いながら指の隙間から覗いているのを無視しつつ、軽く口づけておく。

 

「ん、ふ……。ね、もっとぉ……」

 

 久しぶりだからか、もじもじしながらもまだ求めてくるマスター。

 

「でもなぁ……このままだと最後まで行っちゃうかも。それでもいい?」

 

「ふえっ!? さ、ささささ最後っ!? 最後って最後!?」

 

「そう、最後までだ。いつもマスターには見せてない――なことや―――なこととか――に―――を――――して――するようなことも……」

 

「ひゃ、ひゃ、ひゃー……! そ、そんなのっ。破廉恥だわっ。破廉恥だわーっ!」

 

「す、すっごぉい……ぎ、ギルさん、それ、今度私にもしてください! ――を―――するのがとても興味ありますっ! あ、あと、―――に――するとか……お、お尻、きれいにしておかないと……!」

 

「すっご。桃色空間すぎるだろここ。壱与でも通り過ぎた?」

 

 俺の膝の上で顔を真っ赤にして思考停止しているマスターと、興味津々で後のプレイを予約していくシエスタ。……うーん、まったく。

 

「よっと。一応言っておくけど、俺はマスターの望みは叶えようとしたからな?」

 

「ふぇ? ちょっと、急に何……ひゃんっ!」

 

「シエスタ、退室しろ」

 

「はひっ。し、失礼しますっ!」

 

 ベッドの上にぶん投げられたマスターに覆いかぶさる。

 

「上、脱がすぞ」

 

「ふぇっ!? ふえっ!? む、胸っ。出ちゃってる!」

 

「出してるからな」

 

「ひゃああぁぁぁ……や、やだ、スカート、どっか行っちゃったっ」

 

「どっかやったからな」

 

「……こ、こここここっこここっこっこ……」

 

 ……急に鶏になったか……? ベッドの上で唇を尖らせながら壊れた鶏みたいな声を出し続けるマスターを見ながら、そそくさと下着を脱がしていく。

 

「これからっ! するのっ!?」

 

「これからするよ」

 

「お日様出てるわよっ!?」

 

「明るいからよく見えるな」

 

 そう言いながら、俺も服を脱いでいく。

 

「大丈夫。初めてでも痛くないようにできるから」

 

「はわわわわ……お、お手柔らかにっ」

 

「それはマスター次第かも」

 

・・・

 

「……っばいなぁ……」

 

 思わず頭を掻きながら、目の前に仰向けで寝るマスターを見下ろす。……あんまりこういうの女の子に言うのもあれだけど、ひっくり返されたカエルみたいな恰好で気絶している。……いやまぁ、夢中になっちゃったのは俺だしもっともっととマスターが求めてくるから、調子に乗ってこんなになるまでやっちゃったっていうのもあるけど……。

 

「し、失礼しまーす……」

 

「シエスタか。ごめんな急に追い出しちゃって」

 

「い、いえ。やっぱりその、ミスヴァリエールの初めてに私みたいなメイドがいるのも変だと思いますし……うわ。生きてるんですか、これ?」

 

「生きてるよ。シエスタもこんなになるときあるだろ」

 

 俺の着ていた上着をマスターにかけてやる。目が覚めるまではこのまま眠っててもらおう。起きたら一緒に風呂だな。

 

「……何回くらいしたんですか?」

 

「そんなにだよ。五回くらいかな?」

 

 シエスタや卑弥呼達みたいに回数をこなした子もいいけれど、やっぱりこういう風に初めての子とするのは新鮮でとても興奮してしまう。一回目なんてすぐに終わっちゃったしな。

 

「五回……初めてで、しかも一人で……ミスヴァリエール、起きたらたくさんお世話しますからね……ゆっくりお休みください……」

 

 慈母のような微笑みを浮かべながら、シエスタはマスターのことをなでる。……そのまま指についた白い液体をぺろり。やめなさい、自分でいうのもあれだけど、ばっちいんだから。

 

「あ、そういえば……」

 

「ん?」

 

「謙信さんが『終わったら呼んでほしい』って言ってました。何やら、使者が来てたとか……」

 

「俺に?」

 

 珍しいこともあるもんだ。確かに辺境伯としていろいろ使者を迎えることもあるが、大抵は向こうで政務を任せている代理人が処理してくれる。基本的に俺のサーヴァントたちは俺の代理人も兼務しているので、こういう時は謙信や卑弥呼あたりの政もできる子が対応したりする。それで後で俺に教えてくれたりするのだが……呼ぶというのはなかなかだな。何か火急の用事だろうか?

 

「……よし、行ってくるよ」

 

「かしこまりました。ミスヴァリエールのことはお任せください」

 

 メイドらしく一礼するシエスタにその場を任せ、俺は服を着て謙信の元へと向かうのだった。

 

・・・

 

 謙信から一通りの事情を聴いた俺は……というか『俺たち』は、コルベール先生の飛行船、『オストラント号』にて一路ロマリアへと向かっていた。使者からは手紙……というよりは命令書を受け取ったらしく、そこにはルイズとテファ、そして俺――『オルレアン辺境伯』のほう――を連れて至急ロマリアへくるように、と書いてあったのだ。至急とあれば陸路では遅い、ということでコルベール先生に頼んでこうしてオストラントを動かしてもらい、俺たち三人の護衛として命じられた『水精霊騎士団』と、俺の騎士団扱いのサーヴァントたちも乗り込み、こうして大空をかけているということなのだ。

 ちなみに今回の留守番役はジャンヌとペトルスである。宗教国家にこの二人を連れて行くのはちょっと、となったのもあるためだ。……ペトルスは『変なものを信じている人たちを改宗させてやらねば!』とか過激派みたいなことを言っていたので折檻しておいてきた。これ以上俺を神とした宗教を広げられても困る。

 そして今学院で評価が地の底を這っている『水精霊騎士団』のみんなは今回の任務にかなりの気合が入っているようだ。さっきから甲板のほうで気合を入れあっているのが見える。……うるさいからそろそろ落ち着いてくれねえかな……。

 

「ね、ギル? ……部屋いかない?」

 

 そういえば悩みの種はもう一つあったのだった。つい先日欲望に負けて押し倒してしまったマスターなのだが……。

 

「……ベッド、結構大きかったわよ?」

 

 あの一件で『目覚め』てしまったらしく、こうして隙を見つけてはベッドに誘ってくるエロマスターになってしまったのだ。……しばらくしたら落ち着くだろうが、それまではこれが続くんだろうな。

 冗談で言ったのに、ほんとにこんなハマるとは思わなかったな。……一晩三回くらいはしないと満足しないようになってしまったからな……。

 

「わかったよ。先行って準備してきてくれるか? こっちの用事が終わったら行くよ」

 

「っ! ほんと!? わかったわ。いろいろ準備して、待ってるからねっ」

 

 一気に元気になったマスターを先に部屋に向かわせてから、俺も俺でコルベール先生とやることがあるのでそちらに向かう。燃料を補充したり航路の相談をしたりしなければならない。お忍びのアンリに会いに行くから、対外的には『魔法学院の学生旅行』ということになっているのだ。コルベール先生はその引率。俺は偶然ロマリアへ行く予定があったので便乗させてもらった一般辺境伯ということで通すことになっている。

 アンリはその辺も手を回してくれたようで、入国許可証はすぐに発行できたし、テファの耳はすでに宝物庫の中にあった宝具で隠しているし、変な絡み方さえしなければすぐにアンリの元へは迎えるだろう。……騒ぎを起こしそうなのは、今のところ『水精霊騎士団』の子たちと、我等がサーヴァントたち。そして大穴で我がマスターだな。その辺気を付けるとしよう。つくまであと二日くらいは空の上だし、着く直前くらいにみんなに注意をして、落ち着かせればいいだろう。後は野となれ山となれだ。俺はそうやって生きてきた。……今は死んでるけどな! あっはっは。英霊ジョークだよ。笑っとけ。

 

「よし、それじゃあ部屋に戻るかな。コルベール先生、お邪魔したね」

 

「む、ああ。ゆっくりしていってくれたまえ。……しかしこれはすごいな。これならば空の上にいる間の無聊を慰めることもできる!」

 

 コルベール先生には科学系の何かを渡しておこうと思って、エンジン系の本を渡してみた。直もここにいるし、二人であーだこーだ言いながら楽しむだろう。二人は早速仲良さそうに本を読み、議論を交わしながら白熱していた。……手は出すなよ、直。

 

「おいおいこれでエンジンを安定して作れるようになるならゼロ戦も量産できんじゃねーか? ……パイロットを育て始めたほうがいいか? そしたら並行してマニュアルの作成も……」

 

「おい直これはすごいぞ! この『くるま』とやらを作れれば、馬車よりも早く多量の物資を遠方へ運んだりできると! ほあー! 夢が広がるなぁ、直!」

 

 ……まぁ、その。しっかり睡眠はとれよ? そう思いながら、俺は部屋を後にした。……マスターは早めに潰して寝かさないとな。夜更かしが続いているから早めに寝かせてあげないと、睡眠不足はお肌にも健康にも悪い。かわいいマスターの健康のためにも、健康に悪い夜更かしはやめさせないとな。

 そう決意を決めながら、俺はマスターの部屋を開ける。

 

「あっ! おかえり、ギル。……準備万端よ?」

 

「……みたいだな」

 

 謎のお香(たぶん催淫効果がある)の香りが漂う部屋の中で、何本か空いている瓶(たぶん精力剤)が転がるベッドの上でマスターがネグリジェ(たぶん特に効果はない。外見がいやらしくなる)を着て寝ころんでいた。とっても淫靡な空気漂う部屋である。聴覚、視覚、嗅覚に働きかけてくる色気の衝撃だ。これでベッドに行ったらマスターの肌の感触、そして体中を舐めたり吸ったりする味覚で俺の五感は確実にエロ一色になってしまうだろう。……生前を思い出して暴走しないようにしないとな。『性欲王』の名前はこの世界では広めたくない!

 

「こっち、きて? ……もう待ちきれないわ」

 

 ゆったりとした口調で誘ってくるマスターのもとへ向かい、俺はベッドに膝をつく。そっとネグリジェを脱がし、マスターとの一戦が始まるのだった。

 ……ちなみに小碓が窓の外からずっと見てるのと、謙信が護衛の名目でクローゼットの中から覗いてたのと、壱与と卑弥呼が鬼術を使って部屋を盗撮してたのと、アルキメデスが普通にベッドの下から鏡を使って盗み見てたのは、スルーしておくことにした。

 

・・・

 

「……」

 

 やっちゃったなー、とロマリアの港で俺たちは苦笑いを浮かべていた。入国許可証など、必要な書類やらはそろえていたし、問題はない……と思っていたのだが……。

 

「……」

 

 入国の審査をしているロマリアの官史は、入国許可証と俺たち、そして『オストラント号』をじろじろと見る。いやー、ははは。蒸気機関搭載飛行船はなかなか見慣れないだろうな。こうして官史が訝しそうな目で見ているうちに、野次馬も増えてきていた。どう見てもこの世界の船にはつかない翼と、プロペラ。今は動いていないが、蒸気機関が動いていたらしゅしゅぽぽと蒸気を噴き出していたので、それも珍しいのだろう。その蒸気機関に関しての説明をコルベール先生がしていると、さらに官史の目が細められた。

 

「神の御業たる魔法を用いずに、そのような怪しい装置で空を飛ぶとは……異端では?」

 

「異端!?」

 

 隣の官史が異常に反応する。この国の役人は全員ブリミル教の神官なので、そういう言葉には敏感のようなのだ。テファの耳ちゃんと隠しておくように言っておいてよかったぁ。もともと怪しまれないように帽子を外しているため、居心地悪そうにしながらも、テファは堂々と立っていた。横にエルキドゥもいるし、この程度では彼女も負けないだろう。

 

「ふん、まぁいい。怪しいところは……あるにはあるが、こうして許可証も持っていることだしな。騒ぎを起こすなよ。通ってよし」

 

 一時間ほど拘束されてしまったが、まぁこうしてすんなり通れただけで重畳だろう。まったく。こういうところでは融通が利かなくて困る。

 アンリのいるところまで向かい、話を聞かねばな。

 

・・・

 

 案内役と言われた『ジュリオ・チェザーレ』という少年の先導の元、俺たちはアンリのいるところへとたどり着いた。こういう教会のような荘厳な建物は見ていると感動するなぁ、と思いながら、ぞろぞろと建物へ入っていく。

 俺とマスター、テファとエルキドゥはアンリの元……大晩餐室へ。キュルケたちは別室へ通された。俺の目の前には、ジュリオとアンリ、そして……

 

「初めまして。急なお呼び出しに応じてもらい感謝いたします。……ロマリア教皇、ヴィットーリオです。どうぞよろしく」

 

 ロマリアのトップ。教皇がいた。

 俺たちは勧められた椅子に座り、彼らの話を聞く。……どうやら、エルフたちが占領している『聖地』を人間の手に取り戻したいから、『虚無』の力を貸してほしい。ということらしかった。

 俺はマスターと。テファはエルキドゥと。そして、ヴィットーリオはジュリオと、それぞれ『虚無』と『虚無の使い魔』の関係なのだと伝えられた。……まぁ、その辺は知っていたが。っていうか『虚無の使い魔』はサーヴァントじゃないんだな。ジュリオって子はどう見ても普通の人間だ。……けど、確かにサーヴァントの魔力も感じる……どういうことだ?

 

「ああ、紹介が遅れました。もう一人いるんですよ。……出てこい、ライダー」

 

 ジュリオが手袋を脱ぎ、右手の甲をこちらに見せるように掲げる。……令呪。しかも、フーケやアンリとは違い、三画ある。そして、その言葉に従って黄金の粒子が部屋の一角に集い、現界したその姿は……。

 

「……久しぶりだねぇ、金ぴか」

 

「……ライダー。君か」

 

 俺と絆を結んでいるものの、俺の要請にはほとんど従わず、俺と敵対する勢力に積極的に付こうとする謎多き女性。……俺のことが嫌いってわけじゃないと思うんだけどなぁ。何人かいる俺と相性の良くない女性サーヴァントとは別の感じだし。

 だがまぁ、これでサーヴァントの気配にも納得できる。

 

「……知ってるの?」

 

 隣に座るマスターがこっそりと俺に聞いてくる。俺はそれにああ、と答えて。

 

「太陽を落とした女とまで言われた伝説の海賊……フランシス・ドレイクだ」

 

 顔に傷を持つ女傑は、こちらを見てにっかりと笑うのだった。……ほんと、なんで敵のほうにばっかり行くんだろうなぁ。座ではあんなに仲良くしてくれるのに。

 

・・・




「ね、ねえキュルケ?」「……なによ、そんなしおらしい声して。気持ち悪いわよ?」「う、うっさい。そ、相談があるんだけど……」「は? あんたが? あたしに?」「……こういうの、得意そうなのあんたしかいないし……ほんっとに嫌なんだけどね!」「はいはい。わかったわかった。言ってみなさいな」「……その、―――の時って、――してる?」「……はい?」「だ、だからっ! ―――の時に、こっちのほうで――したり―――してたりとかするの? って……」「ちょ、ちょっと待ってよ! ……まさか、ダーリンと……『シた』……の?」「う、うん。そ、その、ほかにも相談があって、あの、今一日五回くらいしてるんだけど、た、足りないわよね!?」「は、はぁ!? 五回!? ダーリンの『アレ』相手に!? ……それで足りないとか、あんたあたしのこと馬鹿にできないくらいじゃないの……」


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