ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「太陽は化身がいたり堕とされたり利用されたり……大変だなぁ……」「まぁ太陽系っていうくらい代表的な恒星ですしね……それにあの光のおかげでみんな生きていけるわけですし……」「そりゃあ大体の神話で主神にもなるかぁ……」「……んまぁ、その分ちょっと『アレ』なところもあるんですが……」


それでは、どうぞ。


第六十八話 太陽さえ霞む、矢を放て

 上空から降りていくヨルムンガンドを見ながら、フードの男……キャスターは、敵の軍を見て笑った。

 

「ほう、砲亀兵とやらか。……わが軍に組み込むのによさそうだな。おい司令官。我々も降りるぞ」

 

 キャスターがそういうと、司令官はあきらめたような顔をしてその言葉にうなずいた。そもそもこの船に乗っている『兵士』たちもこのフードの男の手下のようなものだ。反乱がおきてもそこまで影響していないのは彼らに自我というものがなさそうなのが理由でありそうだ、と司令官は感づいていたが、余計な藪をつついて蛇を出したくなかったのもあり、ノータッチでここまで過ごしてきていた。

 そもそも『ロマリアをくれてやる』というガリア王の言葉に飛びついたという後ろめたさもあり、司令官はこの船の中での発言権はないに等しいのだった。

 

「よし、ならばこれより我らはあの舞台に向けて降下し、強襲。そのままあの兵科たちを『吸収』してロマリアへ進軍する。用意せよ」

 

 フードの男の言葉に、数人の兵士たちが駆け出していくのが見える。この船も含めてすべての船に彼の『兵士』が乗っているので、それに伝令を飛ばしたり、それこそ『降下準備』をさせに行ったのだろう。巨大なゴーレム……『ヨルムンガンド』を乗せるほかに、あの兵士たちと武器を乗せていたため、相当風石を乗せて船に無茶をさせていた。それが軽くなるのはうれしいな、と司令官は唯一感じられた前向きな感想をかみしめるように、ロマリアへの航路を指示し続けた。あの『兵士』たちと『ゴーレム』が降り立った以上、この国境近くの兵士たちの妨害はなくなるも同然だ。ここを抜いてもいくつかは妨害を受けるだろうが……国境を越えられた以上気にするものではないだろう。

 

「下方にて進軍するゴーレム、および大軍団を追い越しすぎないように速度を抑えよ。前線を合わせ、進軍する」

 

・・・

 

「ふむ、ちょうどよいところに落ちたな。……まぁ、このくらいの高さなら落下傘がなくとも戦闘不能にはならないだろう。動けないものはおいていく。衛生兵は負傷者を回収、治療しつつ前進せよ」

 

 フードのキャスターが降下した直後に言いながら前進を始める。試作品とはいえこの落下傘というやつは改善の余地ありだな、と思いながら、目の前で展開準備をしているロマリアの砲亀兵部隊に向けて前進を開始する。

 

「とまれ! 貴様たちは国境を越えている! そこで引き返さねば、攻撃を開始するぞ!」

 

 距離が離れていても声が聞こえるのは、きっとこの世界特有の『風の魔法』とやらで音を届けているからだろう、と考えながら、こちらも兵を展開しつつ前進する。それを確認したのかはわからないが、向こうも砲を展開し始め、続々と撃ち始める。同時に魔法も若干飛んでくるが、こちらに届いたところで防御を貫くことはないだろう。普通の人間向けの兵器では、こちらは傷つかないのだ。魔法を纏った杖なんかで直接攻撃されればわからないが、この程度なら無効化することができる。

 

「前進せよ。奴らを取り込み、我等はさらなる大軍団へと成長するだろう」

 

 ……キャスターたちの動きを止められるものはなく、敗走もできず国境警備の兵士たちは『大軍団』の一員となり、先ほどまで自分がつかえていたロマリアへ向けて、進軍を始めるのだった。

 

・・・

 

「! 上空のカルキから連絡だ。……国境のほうで巨大なゴーレムと船団……後はフードの集団を発見とのことだ」

 

「ほう。以前ばりえーるの家を襲ったゴーレムじゃな?」

 

 アルキメデスの疑問に、そのようだ、と答えながらカルキには攻撃を仕掛けないように言い含めておく。もしここにカルナが来たときの主戦力であるからだ。彼女には斥候に徹してもらって、強大なサーヴァントが現れた時に助太刀してもらわねばならないからな。

 となるとこちらから誰を出すかなんだけど……。

 

「ならわらわたちが行くのがいいかしらね?」

 

「じゃっじゃーん! 壱与たちの出番ですよね、ね?」

 

 いつの間にやってきたのか、卑弥呼と壱与が俺の背後から話しかけてきた。

 ……確かに、国境のほうに敵が来ているというのなら、街の防御の人員は少し減らしても大丈夫だろう。……けどなぁ。二人とも出ていくと少し不安はある。……どっちかを残して、その代わりに……。

 

「むぅ?」

 

 このあざとロリジジイを向かわせることにしよう。そろそろこの屋根の上に書いている数式もごまかせないくらい大きくなってきてるしな。

 

「……壱与、こっちに残ってくれるか。代わりにアルキメデスを向かわせるよ」

 

「わかりましたっ。えっと、こっちに残るってことは……こう! ですね!?」

 

 そういって、壱与は四つん這いになる。……なんでだ?

 

「……え? ……ちょっと立ってるの面倒になったから椅子が欲しいなってことじゃないんですか?」

 

「……あー、実はそうなんだ。ほら、つぶれるなよ」

 

「あぁーっ! すっごい! ギル様の重みで屋根に手と膝を押し付けられて、このごつごつした痛みが……あーっ! 骨ッ! 骨に響くゥッ! そんでイくぅっ!」

 

「いつも通りねぇ……。ま、いいわ。……あんた、飛べんの?」

 

「む? ……だっこ、頼むぞ?」

 

「……娘の小さいころ思い出すわねぇ、こんなジジイなのに。……ほら、よっと。……あら、軽い。ごはんちゃんと食べてんの?」

 

「食っとるわい。そもそもこの体はほぼ作り物。内臓なんかも効率化してかなり軽量化しておるからの。収納した武装を出すと三桁行くが……出すか?」

 

「出さなくていいわよそんなもん。軽いなら軽いほうがいいわ。……娘かー。ギルぅ、あんたこの状態でもわらわのこと孕ませられるわよね?」

 

「え、できるけど……ほしくなったのか……?」

 

 アルキメデスを抱きながら、唇を尖らせつつ下腹部をなでる卑弥呼。……アルキメデスの抱き心地に、母性が復活したらしい。

 

「うぅー……やめとくわ。やるならあの『城』でお願いすることにするわ。……ふー、わらわにも母性とかあったのねぇ……てぃっ」

 

「あっだ! なんで蹴るんですか!?」

 

「ちょっと人間性落としておきたくてね。カルマ値調整よ」

 

 そういって、壱与の右太ももを蹴った卑弥呼はアルキメデスを抱えたまま空に浮かび、国境方面へと飛んで行った。……帰ってきたら重点的に慰めてあげるとしよう。

 

「うふ、女王っていうのも大変なのね。今度アンリともお話してもらおうかしら。色々と参考になりそうだわ」

 

「……それ自体は構わないが……アンリも子供欲しがるようになったらどうしよう」

 

「あら、いいことじゃない。辺境伯? とやらになったのでしょう? ここらでもうちょっと功績積んでおけば、アンリの結婚相手としては問題ないんじゃなくて?」

 

「そういうもんか……?」

 

「そういうもんよ。あ、その前に王さまのマスターと結婚しておいたほうがいいかもね! 公爵はでかいわ! あそこ三姉妹だし……三人ともイっちゃえば確実に行けるわよ!」

 

「……そっかぁ。じゃあまずはマスター……ルイズと結婚するか。……この戦いが終わったら、俺……あたっ」

 

「そーゆーの、今は言っちゃだめよ、もう」

 

 マリーからの突っ込みを受けながら、俺たちは再び気を引き締める。……俺の下で喘ぐうるさい椅子は、意識して無視することにした。

 

・・・

 

「圧倒的だな、新兵器と『かの軍隊』たちは」

 

 眼下に広がる、快進撃を続ける見方を見て、ガリア反乱軍として極秘任務を続ける司令官は、感心したようにつぶやいた。これなら、本当にロマリアを灰にし、自分がトップに立つのも夢ではないのでは、とほくそ笑む。

 

「このままロマリアの地を蹂躙しつつ、アクイレイアを目指す! 教皇を始末し、私がその立場になれたとしたら……む? おい、あそこに何か見えないか? 鏡の反射のような」

 

 司令官がそういった瞬間、巨大な光線が司令官のいる艦橋を貫き、風石ごとその場にいた人間を消滅させた。直後、動力を失った司令官の船は墜落。ほかに浮かぶ船たちも、次々と貫かれ、墜落していく。

 

「ほー、おぬしもなかなかやるもんじゃの」

 

「はーっ、くっそ、ほんとに武装展開したらおっもいわねこいつ……」

 

 両手でアルキメデスをぶら下げ、展開した銅鏡から宝具を発動している卑弥呼と、その卑弥呼に抱えられながら武装を展開し、背中の鏡で太陽光を集め、魔力と纏めて右腕の装備から発射するアルキメデスが、そこにはいた。

 アルキメデスの装備からは、宝具発射後の冷却をしているのか、装甲が展開されていたるところから余分な熱量を排出していた。辛そうに顔を歪めていた卑弥呼が、さらに眉間にしわを寄せる。

 

「あっつ! 重いうえにあっつ! ……あんた、落としていい?」

 

「はっはっは、ここまでくればそれも……ん? おいババア、下を見るがよい。砲弾が飛んできそうじゃ」

 

「あら、ほんとじゃない。高度上げようかし……は? あんた今ババアっつった? この場でぶち殺すわよ」

 

「かっかっか! 英霊なんて大体本質的にジジイかババアじゃろて! 気にするな! おっと来るぞい」

 

「ちっ。降りて殺してから死んで来い!」

 

 舌打ちとともに、卑弥呼はアルキメデスを離し、自身もその場から離れることで、地上からの砲撃を躱す。地上へ向かって落ちるアルキメデスだが、冷静に再び背中の鏡を展開し、光を集め、右腕の砲にエネルギーを集める。

 

「さぁてここいらでぶっ放してやるかのぅ! 陽光よ集え! 機構よ回れ! 我が叡智は偉大なる太陽のように光り輝くだろう! 『世界を超越し、宇宙を捉える(アルキメデス・アクティノヴォロー)』!」

 

 アルキメデスから地上に向けて放たれた光線は、地面に着弾し、周囲を破壊しながら広がっていく。その反動で落下速度を緩めたアルキメデスは、壊滅的な打撃を受けた兵士たちの真ん中、着弾地点へ着地する。

 

「ほっほ、わしに恐れをなす必要はない。戦闘能力なぞ皆無の老人じゃてな。……しかし、わしの機械は恐れるがよい。この『アルキメデスの機械』たちが何に特化しているか、その身で証明するがよい」

 

 敵の兵士たちの中心で不敵に笑うアルキメデスから、様々な機械が飛び出し……フードをかぶる兵士たちの殺戮を始めるのだった。

 

・・・

 

「ちっ。落ちたフネから風石を補充しな! 兵士たちはキャスターが勝手に回収するだろうさ!」

 

 巨大ゴーレム、『ヨルムンガンド』の上に乗って命令しているシェフィールドは光線によって墜落していく味方のフネを破壊させ、中に搭載してある風石を取り出し、食べさせるようにして取り込ませた。

 

「サーヴァントか……面倒なもんが来たわね……キャスターとその軍勢だけじゃ不安だが……あの虎男もいなくなって、残るはボケたジジィしかいないとは……」

 

 そこで、シェフィールドは崇拝するジョゼフの横に侍るあの少年の英霊を思い浮かべた。能力的に仕方がないとはいえ、自身が召喚した英霊が、あそこまで直接的な戦闘力を持たないとは予想だにしていなかった。『神の頭脳』と呼ばれる虚無の使い魔の召喚する英霊なのだから、ガンダールヴのように前方で守りを任せられるようなサーヴァントを召喚したかったものだ。

 

「ふん。まぁ、今は存在しないものに頼ってもしょうがないね! ……見たところここにはあの黄金の王は来てないようだし、あの魔法ならまだヨルムンガンドは耐えられる」

 

 『反射』の魔法をかけただけではなく、エルフの技術で『焼き入れ』までした鎧なのだ。このヨルムンガンドは生半可な威力では負けたりはしない。そうシェフィールドは自信をもってヨルムンガンドを進軍させる。ロマリアの軍も先ほど斥候隊を送ってきていたみたいだが、船からもぎ取った大砲で武装したヨルムンガンドの砲撃で先ほど全滅した。

 このまま進軍すれば、おそらく『聖戦』でも発動したロマリアの軍が布陣しているところにぶつかるだろうか。そこにガンダールヴの主……『虚無』を持つあの小娘もいるだろう。こういう時には前に出させられるのが虚無というものだ。それを捕らえ、ロマリアも灰にし、ジョゼフのもとに帰れば、あの主は笑顔を向けてくれるだろうか。シェフィールドは少しだけ切なげなため息をつく。しかしすぐに切り替えて、ヨルムンガンドたちを進軍させていく。またどこかの兵士たちがやってきたようだが……普通の系統の魔法や砲撃ならば、『反射』によって勝手に壊滅していってくれている。ただ歩くだけで軍を壊滅に導くこの兵器は、かなり使える、とシェフィールドは改めて満足感を覚えた。

 

「……さ、あとはこのままアクイレイアまで行くだけね。……待ってなさい、教皇……!」

 

・・・

 

「ふむぅ、ワシの機械は素晴らしいがワシ自身がカスじゃの。ま、このぷりちーぼでーではしかたがないか」

 

「それ今考えないとダメ!? あんたわらわが守ってなかったら3回は死んでるわよ!? あー、こんなのに母性感じちゃったから勝手に庇っちゃうー…!」

 

 ひとり敵陣のど真ん中で顎に手を当て考え込み始めたアルキメデスを援護するように、空中の卑弥呼が光線を降らせる。流石の熟練度か、光線は的確に敵の兵士を焼き、行動不能にしていく。

 少しして我に帰ったアルキメデスが、思い出したかのように光と魔力を集め、光線として発射。ヨルムンガンドの胸部にあたり、その勢いで後ろに倒した。

 

「ふうむ。貫けんのぅ。こうしてはっ倒して遅らせるのが精一杯じゃ」

 

「じゅーぶんよジジイ! 船は落としたし、兵士も減ってきた! あのクソデカ人形だけならわらわたちの王がなんとかするでしょ!」

 

「他力本願ババアじゃの。まぁええじゃろ。頼れるところは頼らんとな」

 

・・・

 

「む。……こっちにあの巨大ゴーレムが来るらしい。……迎撃しに行くか」

 

「あら、こっちを開けて大丈夫?」

 

 卑弥呼からの情報を受けて、俺は椅子(いよ)から立ち上がる。ずっと気持ちよくなってたらしい壱与はその瞬間崩れ落ちたが、まぁ少ししたら復活するだろう。マリーの言葉にカルキもいるし、と返して、『天翔る王の御座(ヴィマーナ)』を取り出して飛び立つ。音もなく最高速度に達した『天翔る王の御座(ヴィマーナ)』は、すぐに煙が上がっている場所へと到達する。土埃と火災の煙が高く上がっているから、狼煙のようになっているのでわかりやすかった。……あ、あれはどっちの光線だろう……。細いから多分卑弥呼の砲かな……あ、あっちのゴーレムぶっ倒してるのはアルキメデスの方かな。魔力混ぜたら太陽光ってあんなに増幅されるんだ……。

 

「開け、宝物庫」

 

 せっかくなので、倒れているゴーレムに宝物庫からの宝具を打ち込んでいく。最初は弾かれたりしていたが、何度も落としているうちに少しずつ削り……何らかの防御魔術……こっちで言う防御魔法を砕く感触と、その後物理的に鎧を貫いたあたりで通りがよくなり、そこから内部を爆破していけばゴーレムも沈黙した。……フーケの土ゴーレムと違って、再生能力はないらしい。そこまであったらちょっと苦労していただろうから、よかったと胸をなでおろしておこう。

 

「あ、来たわねギル」

 

「おーい! もう一体倒すから頼むぞー!」

 

 卑弥呼はふわふわと飛んでこちらにやってきて、アルキメデスは飛べないから下から大声で報告してからもう一発宝具を打つ。……引っ張られる魔力的にめっちゃ効率いいな。三回くらい打ってようやくジャンヌの第三宝具の発動魔力くらいだな。継続魔力は考えないこととするが。……ジャンヌの第三宝具が燃費悪いのかアルキメデス光線が燃費いいのかわからんが……。

 そんなことを考えているうちにもう一体が倒されたので、再び集中砲火を食らわせる。かったいなー。

 

「おっと、危ないぞ」

 

「ひゃんっ」

 

 ぼーっとしてたのが悪かったのか、ほかのゴーレムが持っていた大砲が俺に向かって放たれる。あれは普通のものじゃないな。俺たちにも攻撃が通る砲弾だ。

 同じくぼーっとふわふわしていた卑弥呼を抱き寄せてそのままヴィマーナで機動して躱す。その時にめちゃくちゃ乙女な声が出た気もするけど、かわいいのでスルーとする。

 

「お、もう一体」

 

 これで三体目だ。そう思って宝物庫を開くと、瞬間砲弾が飛んできた。……ある程度予想はしていたので緊急機動ではなく盾の宝具を取り出して防ぐ。下からも来ているから、たぶんフードのサーヴァントが来ているのだろう。下は森の中なので、どのくらいの規模がいるのか想像もつかないが、たぶんかなり多くいるだろう。ちらっと大砲を背負った亀も見えたので、こちらの兵士が取り込まれているのもあり得るな。

 そんなよそ見をしていたからか、黒煙の中からゴーレムが飛んできたのに驚いてしまった。倒されていたゴーレムを、ほかの無事なゴーレムがぶん投げてきたらしい。投げられたゴーレムの中心あたりから嫌な光が漏れているのが見えて盾の宝具を取り出しながら回避行動をとるが、おそらく間に合わないな……!

 

「卑弥呼、舌噛むなよ!」

 

 バレルロールをしながら下降するが、それよりも早くゴーレムが爆発する。その爆風に押されてヴィマーナから投げ出されるが、態勢を立て直したヴィマーナが自動でこちらを拾いに来てくれる。邪魔されながらもなんとか再び乗り込むが、対空砲のように大砲の弾が飛んでくるのでそのまま回避機動に入る。

 

「ギルッ! 反転っ!」

 

 卑弥呼の声に、進行方向を急激に変える。その際に当たりそうな砲弾は盾の宝具で防ぐ。

 

「今あの『見えない矢』を感じた! どっかにいるわよ、あのジジイが!」

 

 俺のいつも使っているヴィマーナを落としたアーチャーか! 止まっていたら撃たれるな……! 止まってなくとも撃たれるんだが!

 

「自分の勘に従いなさい! 感じようとしたら手遅れよ!」

 

 卑弥呼のアドバイスに従い、何度か急停止、急旋回をしながらなんとか回避を繰り返すが、さすがに次に来たものには驚きを隠せない。

 

「……くっそ、誘いだされたか……?」

 

「その問いには是と答えよう。黄金の王よ。ここでお前を終わらせるために私は来た」

 

「……カルナ」

 

 ヴィマーナに乗る俺よりさらに上。太陽を背負って、英雄が立っていた。

 

・・・

 

「→王女。ギルのところにカルナが来た。……私も向かった方がいい?」

 

 音もなく隣に降り立った少女……カルキさんが、首をかしげながらそう聞いてくる。……どう見ても幼気な少女にしか見えないのだが、単純な能力だけなら王さまよりも上というのが信じられないほどである。そんな彼女がこの町で後方にいてくれるのはとても心強いが……行ってもらった方がいいのかしら……?

 

「こちらの防備は薄くしても大丈夫なの?」

 

「→王女。大丈夫とは言い切れない。こちらを攻められたとき、サーヴァント一人では厳しいかもしれない。……でも、あちらにはほぼすべての敵戦力が集っている。この町を失うか、ギルを失うかだったら後者の方が被害は大きいと思う」

 

「……それなら……でも……」

 

 王さまを失うのが痛手なのはわかる。彼がいなければ、サーヴァントを擁する敵勢力から国……ひいては世界を守ることが難しくなる。……でも、この町に生きる人たちを守れないというのも、私やアンリは選ぶことができない……どちらも取りたくなってしまう。

 

「なら、そっちは僕が行くよ」

 

「えっ……?」

 

 緑髪のメイド……? いえ、この方は……!

 

「→原初の親友。頼んでもいい?」

 

「ふふ、もちろん。……その代わり、この町は頼んだよ。僕のマスターもいるんだ。傷ついてほしくない」

 

「→緑髪メイド。もちろん。任せて」

 

 カルキさんが力強くうなずくと、メイド……いえ、エルキドゥさんが霊体化する。王さまの救援に向かったのだろう。どうか無事に帰ってきてほしい、と思いながら、私も警戒を続ける。カルキさんはこちらに目配せをすると、するりと再び上空へ戻っていった。空からまた警戒してくれるのだろう。

 

「……どうか、皆が勝利しますように……」

 

 少しだけ目を閉じて、祈る。

 

・・・

 

「まさかこっちにお前が来るとはな。町に直接来るもんだと思っていたが」

 

「こちらの対策に数を出せば、お前はこちらに来るだろうと思ってな。貴様を消しさえすれば、大半の英霊は消える。そうなればこちらの勝ちだ。……不確定要素があるとはいえ、お前が一番の不安要素だからな」

 

 そういって、手に持つ槍を構えるカルナ。下からの射撃も警戒して、すでにこちらのヴィマーナは動き出している。

 

「やぁ」

 

「っとぉ!」

 

 バレルロールからの急停止で機首を直角に上げて急ブレーキをかけたところで、隣にエルキドゥが実体化してきた。びっくりして少し操縦を誤るところだったぞ……まったく、驚かせてくれる……。

 

「下は任せて。狙撃手は僕が仕留めよう。……君は……太陽を堕とせるよね?」

 

「……任せろ。あれほどの強大な英霊とはあんまり戦ったことないが……俺はそういう信頼を裏切ったことがないんだ」

 

「ふふ、期待しているよ」

 

 そういって、エルキドゥは船から身を投げる。少しすればアーチャーの攻撃もやむだろう。

 

「さて、約束した以上、ここで決着をつけないとな」

 

 俺はカルナに視線を向けながら、宝物庫を開いた。ここで決着をつける……!

 宝物庫からの斉射を槍の一振りと少しの身振りだけで躱すカルナ。……こいつ才能に溢れすぎだろ……! 

 

「一方向でダメなら!」

 

 俺の背後からだけではなく、カルナの背後、上、下、死角になるであろう方向から時間差をつけながら発射する。さすがのカルナでもその場では躱しきれなかったのか、大きく槍を振るって宝具から逃れる空間を作った後、大きく加速して囲まれている状態から抜け出す。

 だが、それを待っていた! びゅお、と風を切る音を立ててヴィマーナが突っ込む。カルナは少しだけ目を見開いたが、船首に軽く手を当てると、それを起点に体を持ち上げるように回り、そのまま操縦席に座る俺に槍を突き出してくる。

 

「くそ、たぶん怒られるんだろうなぁ……」

 

「? 何を言って――」

 

 俺に槍の先が突き刺さる瞬間。俺のつぶやきに疑問を感じたカルナが怪訝そうな顔を見せるのと同時。俺たちをまばゆい光が包む。……何度もやって芸がないと思われるかもしれないが、これは『ブロークン・ファンタズム』だ。ヴィマーナの炉ごと暴走させ、魔力の爆発として顕現させる。俺が操縦席から離れないで突っ込ませたのは、ヴィマーナを操って戦うからではない。この『ヴィマーナの座席を防御宝具で固めていた』からなのだ。それでも爆心地の真上。ダメージ的にもカルナよりはマシ、くらいのものでしかないが、俺には黄金の鎧があり、カルナは陽光の鎧を失っている。最強の矛を手に入れたために失った防御の差こそが、今ここで少しの隙を生み出した。

 

「回れエア! ……『天地開闢す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!」

 

 そのまま剣先から飛び出してきたエアを射出しながら柄を掴み、真名を開放する――! 完全に魔力を籠めた状態ではないが、宝物庫内で魔力を籠めてすでに刀身を回していたのだ。宝物庫内はかなりの嵐になったと自動人形から死ぬほど文句が出ているが、そこはそれ、この一瞬のためならば構わない――!

 

「――真の英雄は目で殺す」

 

 だが、そこからでもカルナは反応して見せた。突き出した槍を戻すのは不可能と判断して、視線による光線……『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』がエアの刀身を少しだけ弾いた。それでずれたのは微々たるものだが、カルナの左の脇腹、腰の少し上あたりをえぐり取るだけになってしまった。

 

「貴様の奇策には脱帽した。俺も少し運命が違えば負けていただろう。……だが、これが実力の差だ。悪く思え」

 

「くそ……! あと少しだった……!」

 

 ひゅお、と風切り音を立てて、右手を突き出して隙だらけの俺の首を刎ねようと最小の動きで迫る――!

 

「……俺だけじゃ、届かなかった……!」

 

「な、に――?」

 

 轟音。俺の目の前で、カルナが大きく姿勢を崩した。

 

「……『太陽に連なる英雄』だから、太陽光には警戒が遅れたな」

 

 遥か下、地上ではおそらく、どや顔のアルキメデスが腕の砲を構えていることだろう。太陽の光を集め、魔力で増幅して放つという特性上、カルナにはあまりダメージは期待できないだろう、と思っていた。

 ……それは、きっとカルナも同じだった。危険度的には、うぬぼれるようだが俺のほうが上だったのだろう。だからアルキメデスへの注意が遅れた。確かに当たったカルナもそこまでのダメージを食らっているようには見えない。あの鎧がなくとも、太陽に関係する攻撃を軽減するスキルがあるはずだ。だけど、俺の目の前で隙をさらすには十分だ。

 

「俺と一緒に堕ちろ、英雄――!」

 

「なるほど、その右手の宝具すら――」

 

 何かに納得したように表情を柔らかくするカルナ。この状態になっても最後まで何とかしようとしているようだが、それよりも俺の左手の刃のほうが届くのが早い。

 

「ぐっ……!」

 

 小碓から預かった、すでに二人を貫いた小刀。それを借りて、今こうして突き刺したのだ。これはすでに役割を終えたとはいえ対『男性』の宝具であったことには変わりはない。霊核を破壊するとまではいかなくとも、カルナにかなりのダメージを与える。

 そのままの落下速度で、地面へ激突する。流石の英霊でもダメージを受けたが、カルナにはとどめになったようだ。四肢から力が抜けたのを感じる。

 

「……負けたか」

 

「……一対一での戦いじゃなくてすまんな。……俺はみんなに助けてもらっている王なんだ」

 

「いや、良い。そういう王が、きっと一番、良いのだろう」

 

 倒れたまま、手に持った槍を掲げるカルナ。

 

「……我がマスターは、救いようのない悪ではあるが……ただの人間だ。決着をつけてやってくれ」

 

「もちろん。ワルドは俺のルイズを泣かせた。それは地の果てまで追いかけて報復するつもりさ」

 

「ふっ。なら、良い。……最後に一つ。我ら英霊以外のおかしな存在には気をつけろ。……あれは俺やお前ですら、正攻法では勝てぬだろう」

 

「ああ」

 

 『あの』謎の存在に対してだろう。カルナはそれだけ言うと、再び掲げていた槍を下した。

 

「……こうして陽の光差す中で消えていくとは……俺にしては少し、幸せなものなのかもな」

 

 それだけ言い残して、カルナは消えていった。……負けたとは思えない、穏やかな顔をして。

 

「……決着がついたみたいだね」

 

「ああ。そっちも?」

 

「うん。……少し削られたけどね。すさまじい人間だった。ただ技のみで、僕の機能を追い越したんだ。……本当に人間というのは、すごいよ」

 

 とても楽しそうに、エルキドゥは笑う。

 

「――うん。俺もカルナを倒せて……少し自信になった。……これからも頑張るから、一緒に歩んでくれるか?」

 

「――」

 

 呆けたような顔で、エルキドゥがこちらを見る。

 

「――ああ。もちろん。これからもよろしくね」

 

 エルキドゥの嫋やかな手が、俺の差し出した手を握ってくれる。……とてもきれいな手だ。この英霊とともに歩めるよう、努力していかないとな。

 

・・・




「これ、ありがとな」「いえいえ。……こうしてこの小刀だけでも連れて行ってもらえて、僕の気持ちもすっきりしました。……戦いに連れて行ってくれなかったことは、まぁ後で閨にて償ってもらうとして……」「え、償いって……そんなことしなくてもちゃんと相手するって。……また夜にな」「ほわぁ……はいっ」

「……どーすんのよ。あいつノリノリで準備しに行ったわよ」「……あー、まぁ、何とかするよ」「……淫乱ピンクも待ってたわよ。大変ね」「あー……何とか……出来たらいいなぁ……」


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