ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
「そう。私は王になる」
すぐに向かった『聖戦』最前線。いつものように部屋で本を読んでいるタバサのところへお邪魔すると、ベッドに座るよう促され、そこに座るとその膝の上にちょこんと乗ってきたタバサが、何でもないかのようにそう言った。
「え、それ騙されてたりしない? 詐欺だったりするかもよ。お金要求されたりしなかった?」
「されてない。……でも、あなたを模した人形が来た。詐欺ではあるかもしれない」
「え、マジで?」
そういいながらタバサにつけた自動人形に視線を向けると、自動人形はその細腕で力こぶを作るようなポーズをとってふんす、と言っているような表情をした。自動人形から送られてきた情報によると、真夜中にめちゃくちゃ甘い言葉を囁きながら入ってきた俺を模した魔法人形に、初手でグーパン入れたらしい。どーすんだよそれ。本当に俺がタバサと寝たくて来たとかだったら。え? その場合俺は防げるだろうって? 防げるけどさぁ……。
自動人形も確信をもってぶん殴ったらしいので、その辺の間違いはないだろうけど……。ちなみになんでわかったのかというと全然いつもと違ったから、だそうだ。腹に拳を受けて上半身と下半身が真っ二つになっている魔法人形を見ながら、自動人形は本気で怒らせないようにしようと誓うのだった。
「……ロマリア側がなぜか私を『ガリア王』にしたいというのはわかった。私としても渡りに船。最後の一線は超えないように、利用されようと思った。……勝手だった。ごめんなさい」
「いや、タバサがそう決めたんなら良いよ。ジョゼフはタバサにとって仇敵なんだし……真実を明らかにして、決着を付けたいっていうのは自然なことだよ」
俺は膝の上に座って少ししょんぼりしているタバサの頭を撫でながら、残った手でおなかのあたりを抱えてやる。俺がそうするとタバサはそのお腹に当てられた手に自分の手を当ててきて、もぞもぞと動かす。
「……そういってくれると、うれしい。……また迷惑をかけると思うけど……ガリア王になったら、結婚する? そうしたらアルビオンだけじゃなくてガリアもギルのもの」
「ん、んー……う、嬉しいナァ……」
結婚したいと言ってくれるのは本心で嬉しいし、そこに偽りはないんだけど……ガリアも統治するってなったら俺の仕事がめちゃくちゃ増えることにならない? この戦争が終わった後の後始末とかまた復興のために東奔西走したりとかそれ言いだしたらアンリも俺と結婚してトリステインも……とかなりかねないとか……。
うおお、生前のトラウマが……! 明らかに常軌を逸した書類作業が俺を蝕んでいく……!
「結婚式は、母様も呼びたい。……お姫様みたいなドレス、実はあこがれてた。……変?」
「そんなことない! タバサには似合うだろうなぁ……」
「……ん。……ギルにそういってもらえると……嬉しい」
まぁそれは本心である。後でトリスタニアで一番の服飾店にデザインを発注するとしよう。……自分でも書類仕事を増やしてどうするんだ……?
「それはそうとして……少し、寂しかった。……ギルはまだ平気? ……ギルのギルは、とっても元気」
そういってタバサはお尻の下に感じる固さに気づいたのだろう。小ぶりだけど柔らかいお尻をもぞもぞと居心地悪そうに動かす。……そうだな。タバサも色々心労がたまっているだろう。
「少し、解消していくか」
「少し……じゃなくてもいい。……愛して?」
口数少ないながらも素直なタバサに、俺はそのままベッドに押し倒すことで答える。部屋の隅に自動人形は立っているけど……気にしないようにしよう。安全上必要なものではある。
・・・
「……腰がずーんとする。出しすぎだと思う」
「そういわないでくれよ。……まぁそもそもタバサも小柄だしなぁ……」
あれだけやればお腹も重く感じるか。俺も三回目くらいからこれやりすぎだな? とはおもってたんだけどさ……。止まらないよな。タバサとは久しぶりだったし……。
「……落ち着いたからもう一度話すけど、たぶんこれからは『聖戦』として私を王位継承者として掲げ、ガリア側の戦力を削ぎつつ戦線を押し上げていくことになると思う」
こちらを向きながら横たわるタバサが、いつもの落ち着いた口調でこれからのことを話し始めた。
「たぶん明日にでもロマリアの密使が来ると思う。それについて行って、ロマリアの後ろ盾の元私は王位を主張する。……何かあれば彼女を酷使するかもしれない。謝っておく」
タバサはそう言いながら部屋の隅に侍る自動人形をちらりと見た。なんだかんだで慈悲深い彼女のことだ。自動人形に何かあればと考えてしまうのだろうが……彼女はどちらかというと個体というよりは群体……すべての自動人形の中にほかの自動人形のバックアップデータみたいなものがあるので、たとえ一体がやられても、素材さえあれば体は作れるし、中身も自動人形の誰かから送られるのでそんなに悲しむべきことはない。……今まで増えたことはあっても減ったことはないので彼女たちも結構気楽に考えているらしい。
「いいんだよ。タバサが無事なのが一番だ。……お母さんの件は任せてくれ。こっちで保護する準備はできてるし、落ち着いたら治すよ」
「ん。期待してる。……最後にキス。良い?」
「許可なんて取らなくてもいいよ。……ほら、おいで」
タバサとキスを交わし、名残惜しいが部屋から退散することにした。ロマリアの密使とやらが来て鉢合わせても気まずいしな。……それに、まだ書類は半分ほど残っているのだ。イザベラも向こうに残してきたまんまだし……問題解決のために来たはずなのに、なんで俺は問題増やしてるんだ……?
・・・
「そんな……あなたがガリアの『虚無』だったのね」
目の前で対峙する男に、アンリエッタは冷や汗を流しながらそう告げる。
「この『ハルケギニア大王』とやら、悪くはない申し出であった。……だがしかし、余がまともな理由でこんなことをしているという『前提』が間違っているのだよ」
男……ガリア王ジョゼフが、苦笑しながらアンリエッタに話す。大仰な身振り手振りで、まるで役者が演じているかのような印象を受けた。
「俺は、『地獄』が見たいのだ。誰も見たことのない、心も魂も耐えられない、胸を掻き毟って死んでしまいたくなるような地獄が見たいのだよ。それだけなのだ」
ああ、そうか。とアンリエッタはふと思った。殺さねば。この王はまともではない。こうして政治的駆け引きで何とかなるような精神性をしていないのだと気づいた。
「だからこんな迂遠なやり方で聖戦など児戯にもならぬ地獄を作り出すことにしたのだよ、アンリエッタ殿。……せっかくだ。見物していきたまえ」
ジョゼフが指を鳴らすと、いたるところからガーゴイルが現れる。そこで、ただの護衛のふりをしていたアニエス……信玄が前に立ちつつ鎧を装着し、霊体化していたマリーがその姿を現した。
「ふん。こうなってしまってはこっちのほうがわかりやすくて好みじゃの」
「アンリは私たちが守るわ。……そちらもサーヴァントを出したらどう?」
油断なくアンリエッタを守る二騎のサーヴァントに、ジョゼフは少し驚いたように目を見開いたが……すぐに破顔してやれやれと首を横に振った。
「こちらにもサーヴァントはいる。……いるのだがなぁ……キャスター?」
「……こんな状況で呼ぶな。阿呆が。……しかしタイミングはいいな。……完成したぞ」
「子供……?」
ジョゼフの隣に現界したのは、どこからどう見ても子供にしか見えない青髪の少年。見合わないほど落ち着いた低い声が、気安くジョゼフに掛けられる。
「今のお前の発言がよかった。こうして動機が分かり、ついにお前という物語は完成を迎えた。……俺だけでこの二騎に相対するなど絶望そのものであるが……それはこれよりお前の二つ名となる」
そういうと、キャスターと呼ばれた少年は小脇に抱えていた大きな本を目の前で開く。
「おいマスター、いいんだな?」
「ああ、発動しな」
ジョゼフを挟んで反対に立つ女……キャスターのマスターたるミョズニトニルンが、少年に問われて許可を出す。
「うむ、まぁ早いほうがいいだろう。……それではこれにて脱稿! すなわち開放の時!」
ひとりでに浮かんだ本が、光を放ちながらぱらぱらと捲れて行く。まずいと思った信玄が飛び出したが、時すでに遅し。
「これにてお前の人生は書き上げた。タイトルは……『
宝具の真名を解き放った時、その衝撃で信玄は吹き飛ばされ、マリーはアンリエッタを守るためにその場に留まった。
「……これが、私の究極の姿」
光が落ち着いたとき、そこにいたジョゼフは……様変わりしていた。王として身に着けていた豪奢なローブや服装にはもともと入っていた装飾とは別に、新たに紫の線がまるで血管のように張り巡らされ、その服の下の体は、元の逞しい体つきがそのままに、皮膚の所々が半透明に透け、内側に夜空を思わせる暗闇と点々と光る星のようなものが見えるようになった。瞳はすべて黒く塗りつぶされたようになっており、すべての光を吸い込んでしまったかのよう。後頭部の後ろには、天使の輪のようなものが浮かんでおり……その輪も細かく砕け散っては戻るような動きを繰り返している。
「これがジョゼフ様の『究極の姿』……! とても素敵でございます!」
「……不味いのぅ。ワシとお前だけで、姫さんを守り抜く自身がないわい」
感涙し両手を組んでまるで始祖に祈る民のように跪くミョズニトニルンと、冷や汗を垂らしながら苦笑を浮かべる信玄。対照的な二人の姿を見たジョゼフは、口元を笑みの形に歪めると、右手をふわりと上げる。
「少しこの力を鳴らしておく必要があるか。……サーヴァントが二人に一国の女王一人……私の初陣としては十分なものであろう?」
「はんっ。どうでもいいが俺を戦力に数えるなよ? やるならお前ひとりでやるがいい」
「ジョゼフ様! 私とキャスターで支援いたします。存分にそのお力を振るってください!」
三対三の構図……しかし、サーヴァントが二体いるにも関わらず、アンリエッタの側は全員が険しい顔をしていた。向こうの前衛はジョゼフ……大将たるマスターが矢面に立ち、サーヴァントと使い魔が支援をするという通常のメイジやマスターとしてはあり得ない戦法であるにもかかわらず、それが正しいと思ってしまうほどの威圧感をジョゼフは出していた。
「ふむ、まずは手慣らしに……」
「ぐっ!」
一瞬であった。アンリエッタは、瞬きすらしていないのに、ジョゼフが急に目の前に来たように思えたのだ。こちらに突き出している拳を、未来予知じみた経験則で防いだのは、鎧に身を包んだ信玄であった。
「ふむ、加速して殴るだけではあるが、効率的だな。次は爆破も試してみるか……」
再び一瞬のうちに距離を離したジョゼフは、自らの手を握ったり開いたりして、感覚を確かめるような動きをする。
「……おい」
「……わかってるわ。次ね」
アンリエッタの前に立つ信玄と隣にいるマリーがその短い言葉だけを交わすと、信玄は目の前の敵三人に意識を向ける。
「次も耐えろよ」
不敵に笑ったジョゼフは、再び一瞬のうちに消え、信玄の目の前までくると、その拳を構え――思いっきり振るった。
「そら」
「ぐぅっ!」
先ほどの一撃と違ったのは、拳が当たった瞬間に爆発したこと。それによって鎧が破壊され、下の素肌が見えるほどに吹き飛ばされてしまった。
「シンゲン!」
「やかましい! やれ!」
「――! ……『
ダメージを負った信玄が叫ぶと同時。魔力を固め、マリーは宝具を発動する。ガラスの馬にアンリエッタとともに飛び乗り、その宝具が生み出した光を目くらましに、離脱を図る。
「――ほう。逃げるか」
「っ! ジョゼフ様、ガーゴイルに追わせます!」
「させるか! 『
マリーの宝具の効果で傷を癒した信玄が、立て続けに宝具を発動する。一瞬にして現れた武田騎馬軍団が、室内という状況にも関わらずその地を踏破し、ガーゴイルごとジョゼフ達三人に向けて突撃を敢行する。
「くっ! 小癪な……!」
「ふんっ! ……ふむ、まぁ、逃げおおせるか。我が力は正面戦闘ならばかなり行けるが、索敵は穴があるな」
目の前に迫る騎兵突撃を爆発する拳でいなした後、アンリエッタたちがいなくなった場所を見て、ジョゼフはつぶやいた。
「……まぁ良い。これは食前酒のようなもの。さぁ、これからメインディッシュと行こうじゃないか」
不敵に笑うジョゼフに、あきれたようにため息をつくキャスターと、目を輝かせるミョズニトニルンだけが、この場に残ったのだった。
・・・
「――なんだって?」
書類整理中。タバサのほうは無事演説も始まっているころに、信玄から信じられない念話が飛んできた。ジョゼフがサーヴァントの宝具によって強化され、並みのサーヴァントなんか目じゃない姿になったのだとか。何とか這う這うの体で逃げ出してきたという信玄は、確かにダメージを負っているような感覚がパスを通じて流れてきた。
「アンリは無事? マリーもか。それはよかった……だが、次の行動が心配だな。――まさか」
そうなると、タバサたちがまずい。マスターたちもあっちに残ったままだし……!
「しょうがない。ここは任せるぞ。俺は戦場へ飛ぶ」
自動人形に言うと、キャスターモードになって書類整理を手伝わされていた自動人形が雰囲気をむすっとさせ、帰ってきたときの褒美を要求してくる。……君ら俺のメイドなんだよな……?
「なんか考えておけ。俺のできることなら、まぁ、叶えてやるのもやぶさかではない感じがちょっとだけある」
とりあえず、イザベラに話をして、もう少しここで過ごしてもらうのを納得してもらわないとな。父親のことは……今は言わない方がいいだろう。
「イザベラ!」
「びっ……くりした! 急に入ってくるなんて非常識よ!」
持っていたティーカップを落としそうになり、顔を赤くして抗議してくるイザベラに、軽く謝罪を入れながらそばによる。
「申し訳ないが少し開けることになった。イザベラには引き続きここで過ごしていてほしいんだが……」
「相当急ねぇ……火急の用事ってコトかしら? まぁ私はただの旅行だし、戦争が落ち着くまでは帰れないし? ここにいてあげてもいいケド……」
「退屈させるかもしれないが、ここの施設はある程度自由に使ってもらっていい。今まで通り侍女をつけるから、その子がダメだって言わない限りは何してもおっけーだ」
「……アンタねぇ。他国の王女を自分の行政府で好きにさせるのはどうかと……まぁ、言ったところで無駄か」
イザベラがあきれた顔をしながらつぶやく。……そういわれてもな。本当に大事なものとかは宝物庫の中だし……。触られて困るものとかないし……。
「とにかく、そういうことで! 帰ってきたらまたいろいろ話そう!」
慌ただしく部屋を後にしてしまったが、許してほしい。それだけ急ぐのだ。
俺はそのままヴィマーナに飛び乗り、できる限りの速さで戦場へと向かうのだった。
・・・
「……何……アレ……」
ルイズの目の前に現れたのは、『ヒトのような何か』であった。タバサが実はガリアの正当な継承者であることを明かし、それによってガリア側に存在する『王弟派』とでもいうべき人物たちが立ち上がり、王国の両用艦隊が現れたその時……巨大な火球が現れ、その艦隊を飲み込み、乗組員ごと灰にしてしまったのだ。
そして、『それ』は現れた。頭上に輪を浮かべ、フライの魔法でも使っているのか宙へと浮く、ガリア王ジョゼフによく似た『何か』。
「聞け。これよりこの地に地獄を再現する。私の悲しみのために。私の絶望のために。貴様たちはこの無能王の手によって無へと還るのだ」
空中にいた艦隊の四割が消えた後、ジョゼフらしきその何かの言葉を聞いているものは少なかった。ほとんどの兵士たちはロマリアもガリアも関係なく算を乱して逃げ出し始めていたからだ。武器も何もかもを捨て、できるだけ身軽になって、あの巨大な火球の範囲から逃げ出そうとしていたのだ。
「……ふふ、面白い力だ。……次はアレも試してみたいが……」
まずはこちらか。とジョゼフは自身の周りを浮遊していた火石を一つ手に取り、強く握る。それだけで火石に小さなヒビが入り、封印されているエネルギーが逃げ場を求めてそのヒビから漏れ出始めた。
「まずはこちらからか。このあたり一帯を焼け野原にすれば……この俺に空いた穴も埋められるだろうか」
そういって軽く投げられた火石は、その軽さに見合わず遠くまで飛び……残りの艦隊を飲み込むほどの巨大な火球を生み出した。その余波で地上にいたロマリアかガリアかわからない兵士たちの何割かは、その熱に巻き込まれて蒸発した。まるで太陽のようだ、と生き残った誰かは思った。その火球は一瞬しか存在しなかったものの、それがもたらした被害は甚大なものであった。
空に残るのは、周りをガーゴイルが取り囲む小さなフネのみ。ここからではあれを止めることはできない……誰もがそう思ったその時。
「むっ?」
ジョゼフの手から火石が弾かれ、そのまま上空で爆発する。先ほどのように艦隊がいればまた灰になっていただろうが、不幸中の幸いか今は地上にしか兵士たちはおらず、恐慌を起こして転倒したりそれに巻き込まれてけがをしたくらいで済んだ。
「→テロ王。これ以上の狼藉は許さない」
「ほう……初めて見るな。どこの者だ?」
「→テロ王。私はギルの協力者。どこの所属かといわれると……あなたにもわかるように言うのなら、トリステインの虚無の側」
「ほう! なるほど! 俺とは違う虚無の者ということか! ……サーヴァントたる貴様らなら、確かに俺に届くかもな!」
ジョゼフの目の前に現れたのは、どうやっているのか、右手に大きな白い大剣を構えた、白髪の女……カルキであった。カルキは異常を知った後、右手に持つ大剣……星間船に乗り、ここまで文字通り飛んできたのである。そしてそのまま星間船を大剣に変形させ、飛んできた勢いそのままにジョゼフの手から火石を弾き飛ばしたのだ。
「だが、いくらサーヴァントとはいえ一人で来たのは失策であったな。……ミョズニトニルン。俺に力を」
「は、はっ!」
ジョゼフの言葉にミョズニトニルンが答えた瞬間、その額のルーンが輝き始める。
「ふむ、これが……よし、ではまずは貴様で試してみるとしよう」
「→テロ王。その必要はない。……私は時間稼ぎ。……ほら、来た」
「うん?」
「助かったよ、カルキ。また何かで礼をさせてくれ」
「→愛してる。やっぱり上の口に口づけ希望。してして」
「……帰ったらな」
そういいながら黄金の船に乗ってやってきたのは、やはり黄金の鎧に身を包んだ英霊王であった。
・・・
すごいことになってるな。何あれ? 人やめたの?
……あれは……ミョズニトニルンと……サーヴァント? 見た目的には三騎士らしさはないが……。
「やはり来たか! お前を待っていたのだ! お前を打ち倒し、この世界を焼き尽くし、その果てにある地獄を! 俺は見たいのだ!」
「待っててもらって恐縮だが……数で押させてもらうぞ」
俺の周りに集まってきていたガーゴイルに向けて、宝物庫から宝具を射出する。いくつか当たっていくものの、宝具が抜け、その穴が修復されていく。何?
「無駄だよ! そのガーゴイルは戦闘力はそこそこだが『水の力』に特化させている! どんなダメージを負ってもすぐに再生するのさ!」
「……面倒な。なら」
そう思ってミョズニトニルンのほうへ宝具を向ける。いくつかはガーゴイルに邪魔されるだろうが、それでも防ぎきれる物量ではないだろう。
「ふん。俺が放っておくと思ったか」
相手のサーヴァントの本が光ると、ミョズニトニルンを囲むように氷の柱が現れる。……魔術か? ならばクラスはキャスター……。何? 宝具を使っていた……? 作家で、そんな宝具ってことは……。アンデルセン! 三大童話作家のハンス・C・アンデルセンか!
「なんだ。俺の真名にもう届いたのか。……まぁいい。俺は死に直結するような逸話を持っているわけではないしな。名前が割れたところで是非もなしというところだろう」
それは確かにそうだ。ただの作家で、特に神話的な逸話もないとなれば、著名な弱点のようなものもないだろう。……しかし、虚無の魔法使いが前面に立って戦ってその使い魔たちが後方支援とは……なんとも特異な関係性である。
「こちらを忘れては困るな」
「むっ!」
「→ギル。左から失礼」
意識を向けた隙をつかれたのか、瞬間移動のような速さで近づいてきたジョゼフに襲われるも、カルキが間一髪で間に入ってくれた。
「助かった」
「→ギル。いえいえどーも。……ほかのサーヴァントはいつ来る? 物量で押せないのなら、短期で決めるしかない。乖離剣を」
「……それもそうか」
しかしこうもガーゴイルに襲われていては乖離剣を取り出す余裕もないな。下で逃げ惑う兵士たちをガーゴイルからかばうのにも使ってるし……。
「ほう、こうすればよいのか」
「……何?」
俺の宝物庫からの宝具を掴んだジョゼフがそうつぶやくと、その宝具の支配権のようなものが奪われたのが分かった。……なんだその面倒な力。
「貴様の宝物庫から飛び出てきた宝具も、『魔道具』というわけか。……ありがたく使わせてもらおう!」
「その汚い手で、などは言わんぞ。……だが、宝物庫から盗られたとなれば……幾分不快だな」
ジョゼフは加速の力を使うのか、瞬間移動のように近づいてきては、その手に取った剣で切りかかってくる。カルキも俺を守るために応戦してくれているが、そのせいで攻勢に出られない。ジョゼフ側に宝物庫を向けてしまえば戦力を増やすことになってしまうので、それも原因ではあるな。
「相性の問題ということだな。……ゲルダの涙よ!」
アンデルセンからの支援もなかなか面倒だ。ジョゼフのことを支援するキャスターというだけで、その性能は最高潮に高まっている。物語に沿った効果で支援してくるため、面倒なことこの上ない。
下では謙信とエルキドゥがマスターとテファを守るために動いてくれている。アンリについてくれているマリーと信玄は来れないだろうし、アルビオンの方で別の仕事を任せたジャンヌとペトルスも無理だな。……となれば。
対策を考えている俺と相対するジョゼフ達の間を、太い光の柱が横切る。……そうだな。こいつらしかいないだろう。
「馬鹿め馬鹿め馬鹿め! ばかすかばかすかとあんな物を出しおって! お陰で効率マックス! フルパワーじゃわい!」
「ちょっともー、面倒だから自分で飛んでくれる!? わらわ別にあんた運搬係じゃないんだけど!?」
「ごめんなさい卑弥呼様。壱与、さすがにその重さは持てなくて……箸より重いもの持ったことないので……」
遠距離攻撃三姉妹だ!
今の光の柱に巻き込まれたガーゴイルは、さすがに水の力に特化したとはいっても消し炭になっては再生も何もないらしい。舌打ちをしているミョズニトニルンを見るに、あっちは任せてもよさそうだ。
あの火球から発せられた光を吸収したのか、アルキメデスの背中の板はいつになく光り輝いている。流石はアルキメデス。偉大な存在は光り輝くものだヨとどこかのマッドサイエンティストも言ってたしな。同じマッドサイエンティストとして光り輝かないわけにはいかなかったのだろう。
「面倒なものが増えたか。……しかし俺の前には……なんだ……?」
急にジョゼフが動きを止める。隙か……? しかし罠の可能性も……。そう考えていると、普通に壱与が光弾を乱射する。ミョズニトニルンがガーゴイルで自分とアンデルセン、ジョゼフを守ろうとするが、いくつかは抜けてジョゼフへの直撃コースに向かう。……だが、光弾は当たる直前に何かに弾かれるように消え去った。……防御結界?
「……そうか、これが……。受け入れよう」
そういった瞬間、ジョゼフの内包する魔力量が爆発的に増えた。近くにいたひときわ大きなガーゴイルを吸収すると、その翼と同じようなものがジョゼフに生え、体が一回り大きくなったように見える。……上半身の服がはじけ飛んだので、実際大きくなったようだ。
その肉体は今まで見えていた顔と同じように、所々半透明になっていて、その奥には宇宙のような景色が広がっている。
「……素晴らしい。これならば、数の不利すら覆せよう。……我が名はジョゼフ。ジョゼフ・ヌル。虚無の絶望へ、お前たちを導くもの」
なんだ……? ただの魔力が増えただけじゃない。存在感のようなものが増した……?
「→ギル。まずいかも。多分だけど、星の力を得た」
カルキが俺の隣に降り立って、そういってきた。『星の力』というのは……。おそらく、俺たちと敵対しているあの『敵星存在』のことだろう。あの光るウニのような力を得たというのか……?
「→ギル。たぶん今までのように神秘がこもってるだけでは通用しない。乖離剣や私のこれのように、概念の力が必要」
そんな俺たちの前で、どしゅう、と光線が横切る。俺たちに近づこうとしていたのか、ジョゼフがそれに邪魔されて退くのが見える。……ちょっと焦げてるな。
「→訂正。ああいう『星の光を束ねた力』でも行けるみたい。あのロリジジイ、すごいね」
そう言ってやるなよ……。学者系サーヴァントなんて変なところあってこそなところあるだろ。
「ぬうぅ……これでも押されるか」
「そこまでの力を得たなら宝具を使え、馬鹿者。お前のその姿ならば、使うこともできよう。……まぁ、細かく言えばサーヴァントの使用する宝具とは違うものだがな」
「宝具……? ……なるほど、この力か」
ジョゼフが何やら魔力を収束させる。……かなりサーヴァント化してるようだな。宝具なんてものがつかえるとは……。
「喜びも、悲しみも知らぬ……我が感情の空虚と同じ虚無の力よ。加速せよ、発散せよ――『
両手をこちらに向け、真名を開放したジョゼフ。そこから現れた小さな黒い球体。……とりあえず遠距離攻撃で様子を見よう。そう思った俺に向けて、カルキが体当たりをする。小柄なカルキとはいえ、その力は俺を吹き飛ばすには十分だ。焦ったような顔をしたカルキを驚いてみた瞬間――黒い球体が一瞬でカルキに迫り、その姿を飲み込んでしまった。
「なっ」
「ふふふははは! まずは一匹、虚無へと還った!」
静まり返った戦場で、ジョゼフの高笑いだけが響き渡った――。
・・・
――ステータスが更新されました。
クラス:キャスター
真名:ジョゼフ・ヌル 性別:男 属性:混沌・悪
クラススキル
陣地作成:A
自身に有利な陣地を作成できる。虚無の力を使い、彼は自身のスキルを最大限発揮できる陣地を即座に作成することができる。
道具作成:C
魔力を帯びた道具を作成することができる。彼自身にそこまでの才能はないが、それなりのものを作ることはできる。
保有スキル
加速:EX
虚無の魔法の一つがスキルへと昇華したもの。自身の速度、そしてエネルギーの速度を加速させ、究極の発散……虚空の発生を可能としている。
爆発:B
虚無の魔法の一つがスキルへと昇華したもの。強固な魔術的結界、固定化などを貫通してダメージを与えられる。
簒奪:A
事実ではないが、彼が王位を簒奪したのだ、という逸話から。自身の支配下にあるものから、スキルを奪う。
神の頭脳:EX
ミョズニトニルン。始祖の四人の使い魔のうちの一人。その力を、彼は自分のものとすることができる。ありとあらゆる魔道具に関しての知識が備わり、自在に操れる。
策謀:A
自身の知略により暗躍する能力。戦闘を始める前に自身に有利な環境、状況を作り出すことができる。
能力値
筋力:B 魔力:EX 耐久:A 幸運:C 敏捷:A+ 宝具:EX
宝具
『
ランク:■■■種別:対人宝具 レンジ:1~999 最大補足:1人
誤字脱字のご報告、ご感想お待ちしております。