ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
「カルキ!」
消えてしまった空間に向けて叫ぶが、パスの繋がっていないカルキの無事は瞬時には判断できない……! なんだ今のは! 霊核を破壊されて退去したとかじゃない……。一瞬で消えたぞ!? さっきの黒い球体がその正体でジョゼフの宝具なんだろうが……それを明かさないことには……。
俺がそんなことを考えていると、空間がゆがみ始める。……宝物庫に接続したときの波紋のようなものだ。警戒しながら成り行きを見ていくと、先ほどとおなじく、一瞬にしてカルキが姿を現した。……だが、少し体がくすんでいるように見える。なんというか……存在感や内包する光のようなものが弱まっているように感じたのだ。弱弱しく膝をついたカルキを、魔力に物を言わせ高速移動で回収する。
ちらりと確認してみたが、ジョゼフは面白そうに笑っているのが見えた。カルキがこうやって出てきたのは予想外らしく、意外そうな顔もしていた。
「ほう、アレを耐えるか。……出力不足であったか?」
顎に手を当てて背後の二人に問いかけるジョゼフに、やれやれと言いながらキャスター……アンデルセンが答える。
「万夫不当の英霊たちと違って貴様はまさに今宝具を手にした赤ん坊にすぎん。自身の力もその由来も理解していないからには、威力も落ちるだろうさ。それにそもそもその宝具はどうやら無理やり『世界の法則』から外す力らしい。そんなものは修正力にすぐ消されるからな。もともと発動時間は短いのだろうよ」
「なるほどな。……ならば、元より相手の力を削っておけば、必殺足りうるということだな」
「っく!」
その言葉を言い切ると同時くらいには、俺の目の前でジョゼフは剣を振りかぶっていた。――速すぎる! 片手でカルキを抱えたままではぎりぎり対応できるくらいでしかないぞこれ! 俺は直接戦闘タイプじゃないんだ! 恥ずかしいが、いろんな英霊の助けを借りて宝物庫の物にも頼りっぱなしの英霊王なんだぞ!
「そらそら、貴様、『眼』はいいようだが今一つ俺の速度には追い付けていないようだな?」
四方八方に瞬間移動かと見間違うほどの速度で動き、俺に剣を振り下ろすジョゼフ。たまにフェイントも混ぜられ、対応しようとした瞬間に別の角度から不意を突いてくる。くっそ、これが元人間の動きか!?
「ばっかもん! ワシを忘れたか!」
先ほどよりも時間がかかったようだが、チャージが終わったらしいアルキメデスが、ほぼ俺を巻き込むような目測で光線を打ち放つ。
「わらわたちも!」
「忘れないでくださいねっと!」
俺もジョゼフもその場から飛びのく。が、ジョゼフにはさらに卑弥呼と壱与からの攻撃が降り注ぐ。空を確認してみるが、どうやらガーゴイルたちはほとんど処理したらしい。脳筋みたいな解決法だが、助かったのも事実。
「三人とも、助かった!」
「まったく、助け甲斐のある男じゃのお前も! かっかっか!」
「そんなのに負けてんじゃないわよ!」
「それでこそ壱与のギル様! 愛してますぅー!」
三者三様の返しを聞いて、笑みが漏れる。……良い仲間を持ったものだ。
「愛か……羨ましいものだよ、金色のサーヴァント、ギルよ。その心に抱く感情を教えてくれ。……自分を愛する者が殺されれば、貴様は悲しんだり絶望したりしてくれるか?」
「それは当然、悲しむし悔やむし世を恨むさ。そして、それをやるような奴には……容赦しないと決めている」
言外にそんなことはさせないと意思を乗せて見つめる。手に抱くカルキのことは、俺の油断だ。敵の謎の宝具に対して、『星の力を得た』というカルキの言葉を軽視して対応しようとした俺の油断。それでカルキはこうなってしまった。……自慢じゃないが、俺は一度好意を感じた子には激甘になるんだ。……カルキがこんなことになってしまったことについては、お前を逆恨みさせてもらうぞ、ジョゼフ。
「御大層なことを言っているが……その片手のふさがった状態でいつまでもつかな?」
「はは、ご心配ありがとう。だが、これ以上カルキは傷つけさせはしない。いつまででも持たせるさ」
一つだけ希望があるとしたら、この船よりはるか下にいるあの英霊……こちらに来てくれれば、戦力にもなるしカルキの助けにもなる。……念話で要請はしているが、いつ来られることやら……。
「ほう、何やら秘策があると見える。話に聞いた黒き剣か? それとも上空に飛ぶあの娘らに隠された宝具でもあるのか? ……お前の希望を見せてくれよ。それを打ち砕きたいのだ」
「なんだ、そういうのに愉悦でも覚えるのか? ……確かに愉悦には一家言あるがお前に教える義理はないな」
ジョゼフのその暗い願望に、軽口で答える。お互いが口角を上げるだけの笑みを浮かべると、再びジョゼフが消える。……甘い!
「もうだいぶ慣れてきたぞ、ジョゼフ!」
「それはいいことを聞いた! もう一つ段階を進めるとしよう!」
まずい、余計なことを言ったか……! あの体に慣れてきたのか、ジョゼフの速度が一段と上がる。おいおい、さっきまででさえ結構ギリギリだったんだぞ……強がるもんじゃないな、まったく……!
「開け、宝物庫よ!」
空中の波紋から現れたのは何条にも伸びる雷、吹き出す炎、自然現象たるそれらすら、宝物庫には入っているのだ。それを指向性をもって放出して、俺の周りを無作為に撃ち抜かせる。高速移動するとはいえ、狙いは俺だ。最終的に来るところがわかっているなら、俺を囲むように幾重にも無作為な攻撃を仕掛ける。それが高速移動する相手への答えだ……!
「むっ、なるほど、貴様のその蔵には武具以外にも入っているということか」
「これでも奥の手でね。これでお前が手を出しにくく思ってくれればいいんだが」
「はっはっは! そうだな、相当苦戦するだろうな……キャスター!」
ジョゼフが背後に立つキャスターに声をかけると、面倒そうに持っていた本を開き、何かを発動する。
「今のお前ではおそらくついていけんぞ。それでもいいんだな?」
「当たり前だ! ここであの男を越えられねば、力を出し惜しみする意味がない!」
「うむ。……ゲルダの涙よ、カイの欠片よ!」
宝具かスキルかはわからないが、それを発動した瞬間、ジョゼフの魔力が一瞬膨らんだように見えた。……体つきも変わったか……? 魔力、および筋力の強化だろうか……。存在感そのものが大きくなったように感じる。
――それは、次の瞬間に実感することになった。気が付いたら背後で防御宝具が爆裂していたのだ。
「む、防がれたか」
――見えなかった、じゃない。感じ取れなかったぞ……!? 奴の動き始めがわからなかった……! これは……久々のピンチというやつだろうか。
「→ギル。私と、少しだけ、同期、して」
「カルキ?」
「→ギル。良いから、一言。私と、繋がると」
「……カルキ、君と繋がろう」
俺がそういうと、カルキの体が発光する。なんだ……?
「→プログラム。『カリ・ユガ』同期開始。成功」
カルキを抱く腕から、カルキの何かが流れ込んでくるのを感じる。
「→システム。『アヴァターラ』同期開始。成功」
再び、力が流れ込んでくる。
「→ギル。私の船を、貴方につける。我が船よ、時すら見ゆる、鳥となれ」
音もなく俺の頭上にカルキの星間船がやってくると、滑らかな動きで変形し、少し角ばった鳥のような形に変形した。これは……カルキが言っていた星間船の特化変形……ちらっと聞いたことはあるけど忘れちゃったな……七形態くらいあるんだもの……。だが、俺とリンクが繋がっているのか、あの鳥が感知した情報が直接俺に流れてくるようになっている。
「ほう、何やらそちらも力を得たか」
「……ああ、第二ラウンド、開始だ!」
相手の宝具がまだ詳細不明な今、こちらから仕掛けるのは悪手……啖呵を切ったが、ここは時間稼ぎをしながらジョゼフの手の内を解明することに力を注ぐべきだろう。
「ふっ!」
「そこ!」
高速移動が始まった瞬間、カルキと同期しているスキルが演算を開始し、俺の意識にその結果を流し込んでくる。それに従って宝物庫から雷を放つと、驚いた顔をしたジョゼフが寸前に軌道を変えて避けるのが見えた。
「……なるほど、先ほどの言葉はハッタリではないらしいな」
「ようやく不快そうな顔になったな。その顔をもっと歪ませてやるよ」
……あれ、俺すごい悪役みたいなこと言ったな。まぁ敵に言う言葉なんだ。ちょっとくらい悪いほうがいいだろう。
「こっちから行くぞ!」
宝物庫を開き、次は宝具を射出する。ジョゼフの回避方向を直前に感知してその逃げ場をつぶすように追い込んでいくと、ジョゼフが一瞬だけ隙を見せた瞬間があった。――そこだ!
仕留めるつもりで高ランクの宝具を打ち出す……が、それは数体のガーゴイルが割り込んできたことでぎりぎりジョゼフが回避する隙間を生み出した。
「ジョゼフ様!」
「なるほど、視界の共有か。……助かったぞミョズニトニルン」
――助かったようだが、今のでガーゴイルは品切れだろう。空に飛んでいるのも見えなくなった。……これなら、アレを……。
「っく!」
そんな俺の思考を中断させるように、目前にジョゼフが迫る。上空の目があるとはいえ、そもそも俺の反応速度は大分ジョゼフの速度に劣っている。距離を取って遠距離からちくちく行くしかないだろう。エアを抜くような隙は見当たらないし……カルキを抱えたまま真名開放はできないだろう。
何度目かわからない宝具の射出、炎や雷といった自然現象の放出。それらでジョゼフの攻撃を防いでいたのだが、俺は一つ忘れていた。……ここは、空飛ぶ船の上だったのだ。
「――な」
ばきん、と音がした。急に踏み込んだせいか、床が少しだけ抜けたのだ。そのせいで踏み込みが軽くなり、思ったように回避ができなかった。
「ゲルダの涙よ!」
「はぁっ!」
その隙を逃さないとばかりに、強化を受けたジョゼフが突っ込んでくる。……間に合わない。
「これでぇっ!」
「ぐぅっ!」
何とかできるだけの防御をして受けたが、速度は力だ。受けきれずに吹き飛び、何とか船の淵ぎりぎりで止まる。
「これで……行くぞ」
立ち上がろうと顔を上げた瞬間、すでにジョゼフは自身の胸の前あたりで黒い球体を生み出していた。あれは、宝具だ――正体不明の、カルキすら戦闘不能にするほどの……!
「貴様も虚無に帰るがよい。……『
防御……いや、回避……! だが、この体勢から、カルキを抱えてあれを避けるには……一手……。
「一手、遅かったな。黄金よ」
最後まで何とか対策がないか探す……が、カルキのスキルにあの鳥の目すらもってしても、それは見つけられなかった――着弾の瞬間まで。
「エクスプロージョン!」
目前まで迫った黒い球体と、俺の間に……光が生まれた。
・・・
「ギル! 無事!?」
すんごい勢いで上空まで連れてこられて、目の前でやられそうなギルがいたから思わず魔法を放ったけれど……。あの様子を見るにぎりぎりだったみたいね。
「無事ではないが……助かったよ」
片腕にカルキを抱きながら戦っていたらしい。……少しだけムッとしちゃったけど、まぁさすがにそれで怒るようなことはしない。
「ほう……我が宝具を打ち消したというのか……?」
「宝具? ……今の黒いのが?」
っていうか、あれは……ジョゼフ王……よね? 姿かたちが変わりすぎてすんごいことになってるけど……え? サーヴァントになったジョゼフ……? なにそれ、意味わかんないんだけど!?
上空へ運んでくれたエルキドゥも、私をぶん投げた後テファと一緒に降りてくるのが見えた。……この件については後ですんごい怖かったことを伝えるとして……。相手の宝具はジョゼフ王の虚無を内包したものだ。……さっき私が爆発の魔法を撃ち込んだ時に、それを感じ取った。なんというか、理屈とかじゃないから胸を張っては言えないんだけど、あの宝具の力に、私の虚無が溶け合う感じと、反発する感じの、相反する物を感じたのだ。だから、私の魔法はあのジョゼフ王の宝具に対抗できる。それをギルに矢継ぎ早に伝えて――。
「……マスターとして、私はあんたをサポートしてあげる」
「それは頼もしい。……宝具以外は任せろ。宝具は任せた」
相手はサーヴァントをサポートにして、マスターたるジョゼフが矢面に立っている。ちょうど私たちと同じだ。
「僕とテファはルイズを守ることにしよう。流れ弾は気にしないでいいよ」
「助かる」
ギルが、腕のカルキを抱きなおす。……おろしてもいいんじゃないの、それ。え? 戦うのに必要? ……ほんとぉ? ……まぁいいわ。そこは信じてあげる。……まぁ今更感はあるしね。カルキも相当な美少女だし……どーせ抱いてるんでしょー? ……ふん。まぁ、私もだけどね? 私も、だけどね?
「行くぞ!」
エアを右手に握り、左腕にカルキを抱き、ギルが突貫する。風切り音とともに、いろんな方向に宝具が飛び出していく。数は少なくなったけれど再生したガーゴイルや、ジョゼフ王の背後にいる二人に向けて的確に放たれていく。……あいつどういう目してるのかしら。あの数を認識して動きも予測して撃ってるわけでしょ? ……私だったら頭おかしくなりそう。
飛んでくる魔法はエルキドゥが弾いてくれる。テファは攻撃するような魔法を持っていないけど、周りを見回して注意してくれている。私は、精神を集中させていく。私が対処するべくは、あのジョゼフの宝具、黒い球体……!
「数でも逆転され、俺の宝具にも対処し始めたか……だがな、ここで引くわけにもいかん。そうだろう?」
「その通りでございます、ジョゼフ王! ここで引くことなく、あの黄金のサーヴァントさえ倒してしまえば、もう恐れるものなどなくなります!」
「うむ、その通りであるとも。この世界を虚無へと変え、それで俺の心を少しでも動かすことを望んでいる。……何度か放って、これにも慣れた。……行くぞ」
エアで切りかかるギルを体術だけで跳ね飛ばし、その隙に体の前でジョゼフが黒い球体を生み出す。……さっきより、黒さが深い……ような気がする。
「ルイズ、アレ、すごくイヤな感じがする!」
「わかってる!」
テファも虚無の感覚で気づいたのかそう叫んだのに答えてから、私は虚無の呪文を数節唱える。……頭に浮かぶすべての呪文ではなく、アレを消すに足るほどの力を籠める。
「『『
「『
発射されたジョゼフの宝具に、私の呪文をぶつける。今まで見たいに錬金やファイヤーボールを放とうとして発動されていた『爆発』ではなく、虚無の呪文として唱えたこれは、驚くほど私の狙った通りの場所で発動する。
ちょうどギルとジョゼフの中間で爆発した二つの虚無が、巨大な爆炎を上げる。……打ち消せた! でも予想より強大だったわね。ぎりぎり打ち消せたって感じだわ。さっきより強大になってる……。私の精神力的に、これと同じものなら後二度……それが限界だろう。さっきより強くなるなら、あと一度……かもしれない。だから――
「さっさと決めなさいよね、ギル……!」
小さくつぶやいた私の声が聞こえたわけじゃないだろうけど、ギルはジョゼフの虚無が打ち消された直後、その爆炎に紛れるように突っ込んでいっていた。
「はぁっ!」
「ぬ、うっ!」
エアでの連撃を、ジョゼフはその拳で受けている。後ろの二人は、ギルの宝物庫からの攻撃によって手助けできていない状況だ。何とか押し込んでほしい……ここが、たぶん最大のチャンスだと思うから……!
「ふん! はぁっ!」
「ふっ、しっ!」
剣と拳がぶつかってるとは思えないような音が聞こえてくる。何度目かの剣戟のあと、ジョゼフとギル、二人の間に一瞬の空白が生まれた。お互いにお互いの隙を感じたのだろう。
「『
「『
自分すら巻き込む状態で宝具を発動するジョゼフと、いつものように突き出す形ではなく、振り下ろすように宝具を発動するギル。お互いの宝具の発動が、超至近距離でぶつかり合う――!
――
――
エアは空気を巻き込み、超速で回転しながら、黒い球体にぶつかり、ぎゃりぎゃりと不穏な音を立てて拮抗する。……すごい。あの黒い球体の本質は多分、無限の発散……それに消滅されず、吸収されず、ああやって拮抗てきているのは、あの宝具が『世界そのもの』とでも言うべき強度を持っているからだろう。多分。私もマスターだけど、さすがに宝具の強弱がどうとかはまだあんまりわかってない。たまにギルとかギルの召喚したヒミコとかイヨとかに聞くけど、それもまだ勉強中って感じだし……。
これが終われば、もっとしっかり勉強しないとな、と決意していると、二人に動きがあった。
「我が宝具に拮抗するとは、その剣、すさまじいものだな……! 黄金の王よ!」
「はは! エアをほめてくれるのはたとえ敵でもうれしいものだな!」
「だが、その両手のふさがった状態で……もう一撃はどう防ぐ?」
「なん……だと……?」
「もう一度だ。『
拮抗している二人の間より上空から、もう一撃の黒い球体が生み出される。……予想はしてなかったけど、準備はしていた!
「もう一撃は私が防ぐのよ! 『
どぅ、と頭上に生まれた黒い球体に、私の魔法がぶつかる。……けど、完全には消しきれなかった。どんどん強くなっていっている……!? 八割ほどは削れたけど、残っているというのが問題だ。あれに当たれば確実に隙ができる。……それは、おそらく宝具を使わなくてもギルを殺せる隙。
もう一度、私も呪文を唱える。……でも、たぶん間に合わない。……なら、ジョゼフに直接当てる――!
「ふはははは! とった!」
「→敵。それは、無い」
「な――に――?」
どん、と鈍い音がした。頭上にあったものも、エアと拮抗していたものも、黒い球体が溶けるように消えていった。それと同時に、ギルがエアをずん、と突き刺した。……あれ、突き刺せるんだ。まぁ、先端とがってるしね。いけるだろうけど……。不思議なものだわ。
「→ギル。ごめん、ほとんど寝てて。……でも、繋がってるからこその、作戦だったね」
「……ああ、カルキ。力を貸してくれてありがとうな。……ジョゼフ、これで、終わりだ」
「ふ、はは……ははは……なるほど、その腕の女は……隙を、狙っていたのか。お前がどんなに危機に陥ろうとも、俺の隙を、この一瞬だけを狙って、ずっとその身を委ねたというのか」
「→敵。そう。私は、ギルにすべてを委ねた。たった一瞬のためだけに。お前が見せた、勝利を確信したときの隙を狙うためだけに、そのほかのすべての危機を、ギルに委ねた」
「……なぜ……そんな……他人にすべてを、委ねる、だと? ……なぜ、できる。なぜ、できた。……なぜ、負けたのだ」
切り裂かれたところから、血ではなく魔力を立ち昇らせながら、ジョゼフはなぜ、とつぶやき続ける。……それは、たぶん。
「→敵。……信じていたから。そして、信じてくれたから。良いところだけではなく、悪いところも含めて。私にないものを持っていると、お互いに信じていたから」
ギルの腕から降りながら、カルキの腕に白い鳥が降り立つ。それは音を立てて変形し、大きな剣に変わった。
「→敵。次に生まれることがあるなら、他人には絶対に裏があるって、信じた方がいいよ」
「はは……そうしよう。……ああ、あいつにも、きっと、裏が、あったのだろう、な。……それを信じられなかった、俺の、負け、か」
最後にそういって、ジョゼフは消えていった。……その場には、その場に呆然と座り込むシェフィールドと、ため息をつく少年が残った。
・・・
「→残り。絶望してるところ悪いけど、動かないで。動けば斬る。……そっちのサーヴァントも」
「はん。俺のような脆弱なサーヴァントが逃げ出せるとでも思っているのか! 阿呆め! お前らの半径十メートルに入った時点で俺の命運は決まってるようなものだ! 放っておけ!」
……なんで負けた側なのにあんな偉そうなんだあのショタジジイ……。むすっとした顔のまま腕を組んで壁によりかかり始めた。完全に去就をこちらに任せているのだろう。シェフィールドは……呆然とした顔のまま膝をついてうつむいている。……かわいそうではあるが……やったこと的には軽い罰にはならないだろうな。
「……は、ははっ、ジョゼフ様……ご立派でした……。……わたくしも、今参ります……」
「→ギル。離れてッ! こいつ、『火石』を持っていた!」
そう言うと同時に、カルキはまるで棒切れでも振り回すかのように白い大剣を振り、火石を握る手ごとシェフィールドを切り裂く。鮮血と魔力で真っ赤に染まった火石が、宙を舞う。返す刀でシェフィールドを切り捨てて、火石を遠くへ吹き飛ばす。……それ、そんなバットみたいに振り回していいもんなのか……?
そんなことを思いつつも、宝物庫から守りの概念を持つ宝具を出し、火石を囲むように配置する。後は、マスターたちを守る!
「マスター! テファも! その場に伏せろ!」
エルキドゥそれよりも早く反応して、すでに二人を伏せさせていた。流石だ。ありがたい。俺とカルキが三人のもとに向かい、カルキが大剣を盾の形に変えて俺たちの上に覆いかぶせてくれる。――直後、轟音とともに熱がやってくる。俺の宝具でも防げなかった炎が、船の近くまで来たのだ。……これでも、八割は削れてるんだけどな……すごい威力だ……。
「……何とかしのいだか。……けど、船も危ないな。降りるぞ、みんな! ヴィマーナを出す! 飛び乗れ!」
こうして、俺たちはジョゼフを倒し、その使い魔たちも……決着を付けられたのだった。
・・・
――ステータスが更新されました。
クラス:キャスター
真名:ジョゼフ・ヌル 性別:男 属性:混沌・悪
クラススキル
陣地作成:A
自身に有利な陣地を作成できる。虚無の力を使い、彼は自身のスキルを最大限発揮できる陣地を即座に作成することができる。
道具作成:C
魔力を帯びた道具を作成することができる。彼自身にそこまでの才能はないが、それなりのものを作ることはできる。
保有スキル
加速:EX
虚無の魔法の一つがスキルへと昇華したもの。自身の速度、そしてエネルギーの速度を加速させ、究極の発散……虚空の発生を可能としている。
爆発:B
虚無の魔法の一つがスキルへと昇華したもの。強固な魔術的結界、固定化などを貫通してダメージを与えられる。
簒奪:A
事実ではないが、彼が王位を簒奪したのだ、という逸話から。自身の支配下にあるものから、スキルを奪う。
神の頭脳:EX
ミョズニトニルン。始祖の四人の使い魔のうちの一人。その力を、彼は自分のものとすることができる。ありとあらゆる魔道具に関しての知識が備わり、自在に操れる。
策謀:A
自身の知略により暗躍する能力。戦闘を始める前に自身に有利な環境、状況を作り出すことができる。
能力値
筋力:B 魔力:EX 耐久:A 幸運:C 敏捷:A+ 宝具:EX
宝具
『
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~999 最大補足:1人
虚無の魔法による究極の加速。極小の虚無空間を作り出し、そこに引き入れた物のエネルギーを加速、発散させ、無へと帰す。あまりの強大さに対象は狭く、発生時間も短いが、これに対抗するためには純粋な存在の強大さ、魔力量などエネルギー総量の大きさなど、『究極の発散』に耐えられる耐久ステータスが必要となる。