ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
ジョゼフとの闘いが終わり、シェフィールドが自爆したことによって、アンデルセンも現界を保てず消滅していったのを感じた。……これで、ガリアの虚無はいなくなったことになるな。
「カルキ、無事か?」
「→ギル。無事。……二人で初めての共同作業、だったね。ジョゼフ入刀」
「……その言い方はやめようか」
結婚式のいち儀式扱いされてはジョゼフも不本意だろう。……だけどまぁ、これでタバサもシャルロットとしてガリアの女王として戴冠できそうかな? あとで王弟派のところに行って話聞いてこないとな。
あとは、とりあえず戦場に散らばったロマリア、ガリア両軍をまとめさせて、この『聖戦』を一度終わらせることだ。トリステインとしてアンリにも動いてもらう必要があるかもな。
「マスターもありがとな。助かったよ」
「どういたしまして。まぁ、宝具が虚無由来の力だったから、私がいれば有利になるのは当然だけどね!」
そういって薄めの胸を張るマスター。うんうん、この子は調子に乗ってる時が一番かわいいなぁ。
「さて、少し落ち着いたら戻ろうか。今後どう動くのか、聞く必要もある」
俺たちはそのまま、ロマリアの軍の方へと戻るのであった。
・・・
「なるほど。そのままタバサはガリアの女王に。……その方がいいかもな」
タバサ率いる王弟派がガリア側を掌握し、ロマリア側に停戦の申し出をしたことを確認した。もともとこの聖戦もジョゼフを止めるための物だったので、ロマリア側もこれ以上続ける理由もなかったのだろう。すぐに受け入れられ、お互いの軍は退くこととなった。
ヴィットーリオはいつもと変わらぬ微笑みを浮かべながら、これ以上犠牲が出ないのならばそれはよいことです、と頷いて全軍にロマリアへの帰還命令を出し、一足先にジュリオとロマリアへ戻っていった。
「さて、今回の件で俺……オルレアン辺境伯がジョゼフを倒した、ということになるだろう。そうなれば、ガリアの側に口を出す権利が少しだけ生まれる」
「……そうなれば、私とトリステインで何かしらの条約を結ぶことにして……友好の証としてあなたと私が結婚をしても怪しまれなくなる。……好き」
「お、おう。俺も好きだよ、タバサ。……まぁアンリにも話は通してあるから、ガリア、トリステインの関係強化につながるし問題はないんだろうが……」
「……アルビオン公王とかになるの?」
「どうなんだろ、その辺。俺立場とか疎いからなぁ……」
生前からずっと王でしかなかったので、俺はあんまり貴族社会とかその辺には疎いのである。いや、そりゃこっち来てからある程度勉強はしたけど……。まぁこれでトリステイン、ガリア、アルビオンと三つの関係国が強化されるのだ。ロマリア側も何かしらの手を打ってくるだろう。……あの飄々とした態度を崩さないヴィットーリオのことだ。アンリかタバサに何かしら手を出すことも考えられる。……アンリにはマリーがいるからともかくとして、タバサの方は身辺を固めないとな。これ以上ガリア側にタバサみたいな王族の隠し子とかいないよな……? あ、イザベラもアルビオンで完全に保護しないとな。父のジョゼフの話をしてから少し落ち込んでいたから一人にしてたけど、そろそろ話を聞いてこれからどうしたいか確認もしないとな。
「やることはいっぱいだな」
「ん。……でもまずは、お母さまを治す。……結婚式、出てほしい」
「ああ。まずはそこから始めようか」
・・・
ゲルマニアにあるキュルケの実家。その離れの一室で、タバサの母親は眠っている。
「……ん、確かに精霊が狂わされてる感じがするわね」
「よし、ならやはり霊薬で行けそうだな」
ダメなら俺のスキルで治療することにしよう。……最初からやらないのは、そのスキルを使うとカトレアのように女神の残滓が残って、何かしらのサーヴァント召喚につながらないとも限らないからだ。宝物庫の中のもので治せるなら治せるに越したことはない。
不安そうに俺の渡したエリクサーを握るタバサが、母親に近づく。今回はこちらも全力を尽くすため、卑弥呼と壱与の鬼道コンビ、ジャンヌとペトルスの聖人コンビに来てもらっている。……ペトルスは聖人かって? ……まぁ、本人が言い張るし、宝具も一応疑似聖槍らしいし……。卑弥呼と壱与のチームヤマタイにはすでに鬼道で水の精霊なんかを呼び寄せてもらっているし、ジャンヌにはそのスキル、『聖人』としてタバサの母親への保護を祈ってもらっている。ペトルスはそんなジャンヌを見て聖なるオーラに興奮しっぱなしだし、最強の布陣となっているのだ……! ……ほんとにペトルス必要か……?
少しだけ口を開かせ、その隙間からエリクサーを流し込む。無意識に飲み込んだタバサの母親の喉が動き、無事にすべてを飲ませると……うっすらと体が発光する。
「お、来た」
「わ、ほんとですね。少しずつ周りの精霊たちが戻っていってます」
「よかった、無事に治りそう……。神よ、王よ、その加護に感謝を」
「ひょー! あばばばば! 異国の聖なる女王と王女もすんばらしいし我が聖女たるジャンヌさまもすんばらしいぃー!」
「病人の前で興奮するなよペトルス」
「ふんぎゅ。せ、聖なる王に、聖なる裸締め……ふ、ふへ、て、天国見えちゃうぅ……」
「ほんとに見えてるんじゃないの? それ。ある程度で開放してあげなさいよ」
卑弥呼の声掛けに、優しいなと思いつつも、気絶したくらいで開放してあげる。壱与と同じタイプの、俺にされたらなんでも嬉しい系の子だからな、ペトルス。
「……あの、ギル様? あ、あとで壱与もこう……裸締めできゅっと」
「日本酒みたいに言うなよ。壱与は弱すぎるからこういうことするとほんとに死ぬだろ」
「そ、それはそれでありっていうか……」
「俺はナシだからやめとくよ。それより、タバサのお母さんの容体はどうだ?」
「あ、それはもう安心していいかと。今は普通に眠ってます。起きたら……記憶の混濁はあるでしょうが、正気は取り戻していると思いますよ」
「そうか……それならよかった。タバサ、起きるまで横にいるか?」
「……うん。お母さまに、いろいろ教えないと、だから」
「……そっか。なら、俺たちは部屋から出てるよ。自動人形を一人置いていくから、何かあればその子に声をかけてくれ」
「ん。……ありがとう、王さま。私はガリアの女王になる。……けど、ずっと、貴方の騎士。忘れないで」
「もちろん。女王で、騎士で、俺の恋人だよ、タバサは」
「……照れる。ありがとう」
少しだけ年齢相応の笑みを浮かべたタバサを部屋に残し、俺たちは別の部屋へ移る。……今後のことを話し合わないとだからな。
部屋を移ると同時に椅子を引く壱与。なにしてんだろ、と思っていたら椅子を避けてそこに四つん這いになった。……まだ椅子になりたいのかこいつ。
「……話し合うんだから、椅子になったらダメだろ、壱与。席に着きなさい。……あ、いや、俺の膝にこい。頑張ってくれたからご褒美だ」
「っ!? い、いいんですか!? ……う、うひょぉ……おむつ履いとこ……」
なんだかお尻の感覚がもふもふしている壱与を膝にのせて席に着く。卑弥呼、ジャンヌ、気を失ったペトルスが席に着くと、霊体化していた謙信やアルキメデスが現界し、同じように席に着いた。
「お疲れ様、殿。よかったね、助かって」
「ふむー、ワシは殺す方は得意なんだが生かす方は苦手でのぅ……」
「ああ、よかったよ本当に。……アルキメデスもほかのことで役立ってくれてるから、大丈夫だよ」
「ほほ、そういって貰えると嬉しいの。それで、次なる計画であるが……」
アルキメデスがそういうと、扉がノックされる。誰だろうと思いつつ扉前の自動人形から訪問者を聞くと、キュルケが来たという。……確かに気になるもんな。彼女も話に混ぜるとしよう。
「あ、ダーリン! 来ちゃった。ウフ」
「いらっしゃいキュルケ。……と言っても、ここは君の家なんだけどな。……ほら、座るといい」
席を進めると、キュルケは貴族らしい所作で椅子に腰かけた。……うーん、お嬢様なんだなぁ。
「タバサのお母さんの方はどうなったの?」
「ああ、無事に治せたよ。今は目を覚ますのを待ってる。タバサもそっちにいるよ」
「そ。なら、二人っきりにしてあげた方がいいわよね。積る話もあるだろうし。……それで?」
キュルケは目を鋭くさせて、俺に聞いてくる。それで、というのは、これから先、暗躍しているだろうロマリアにどう対処するのか、ということだろう。
「それを今から話そうかと思ってたんだ。……ロマリアはタバサかイザベラ、アンリかマスターあたりに何かしてくると思っている。多分あいつらの目的は聖地、もしくは虚無の力だ」
教皇という立場と、ジョゼフを狙った手腕。それらを考えると、そういう結論に至った。
「イザベラはアルビオンで保護している。……アンリにはマリーがいるし、マスターは言わずもがな。ここはタバサの護衛を強化するのがいいかな。タバサのお母さんもいることだし、また狙われたら面倒だ」
「確かにそうね。あの青髪ぺったんの急所はあの母親。またさらわれでもしたら、ガリアという国がロマリアに落ちることになるわ」
ガリアはエルフたちの領地に接している。故に聖地への橋頭保として必要な国ではあるしな。また狙われると思っていいだろう。
「サーヴァントを付けた方がいいんじゃない?」
「い、壱与は無理ですよっ!?」
「最初から期待してないから安心なさい、馬鹿弟子」
それもそうだな、と少し考える。手を出してくるにしても直接的ではないだろう。暗殺なんかしてしまっては意味がないからな。同じく、母親も暗殺されたりはしない……。されそうなことと言えば、また母親を攫うか危害を加えるか。後はタバサ自身を攫うか……。うーん、探知が大事なんだよなぁ。そう考えると、卑弥呼とかいいかもだけど……。
「……タバサって兄弟姉妹いたりしないよな?」
「一人っ子って聞いてるけど……あ、従姉妹がいるとかは言ってたわね」
「ああ、イザベラか。そっちは大丈夫。……ほかにも兄弟とか姉妹がいたりしたらタバサと入れ替えて……とか考えたけど……その必要はなさそうかな」
なんにせよ、直接的な戦闘力より、考えて実行できる頭脳派の方がよかったりするんだろうか。……そうなると卑弥呼か謙信か……うーん。
「その辺はまた落ち着いてからかな。アンリとかにも話を通さないとだしね」
とりあえず信じられないくらい人員がいる自動人形を、大量にガリアの王宮に配備することにしよう。千人超えてるし、数百人割り振ったところで宝物庫の中も寂しくはならないだろう。
「人形……人形か」
「どうした? アルキメデス」
王宮のどこに配備しようか、と話していると、アルキメデスが顎に手を当ててつぶやいた。
「……のうギルよ。ワシの身体を作った時の素材、残っとるか?」
「え? ああ、宝物庫にまだまだあるぞ。なくなることはないからな」
「うむ、ならばワシにもやれることはあるな。……それであのタバサという娘っ子の身代わり人形でも作っておくとしよう。何かあってもそれを入れ替われば、本物は無事じゃ」
「あー……なるほど」
「もともと無口な娘じゃしの。機能も限定的ならほかにいろいろと仕込むこともできる。……ふぇっへっへ、このワシに任せるがよい」
そういえば学者系だったなこの子、と思いながら、宝物庫から色々と材料を渡していく。……そういえばこっちの世界にもそっくりにマネできる魔法人形みたいなやつあったな。あれでタバサと人形入れ替えられたら……うーん、でも普通にディテクトマジック掛けられたらバレるか。アルキメデスの作る方はそんなに違和感なくできるだろうけど、俺の真似してた魔法人形はちょっと惜しい出来だったらしいし……。ま、入れ替えられても大丈夫なように俺との同盟結婚話出してるんだから、対応はできるか。
「よし、ある程度まとまったから、次はアンリのとこ行ってくる。……ここは任せるぞ、卑弥呼」
「はいはい。なんかあったら呼ぶから、安心して行ってきなさい」
・・・
「ぶふー!?」
「あら、はしたないわよアンリ」
アンリとマリーはお茶を楽しんでいたところだったのだが、俺がタバサとのことを報告するとすごい勢いで飲んでいる紅茶を吹き出し始めた。対面に座っていたマリーにすべてかかっていたが、笑顔のままたしなめるくらいで……お、アイアンクローだ。
「ま、マリー! は、話し合えばわかるはずよ! いたたたた!? マリー、貴方指細いからすごい食い込むわね……!? これが姫の握力かしら!?」
「それで? 王さま、続きを聞かせてもらえるかしら? 何か故あってのことなのでしょう?」
手先には万力のような力を込めながらも、変わらない優しい笑顔のままでマリーがこちらを向く。……こっわ。そういえばこの子フランスで生き抜いた子なんだったな。社交界の儀礼としてのポーカーフェイスたる笑顔を浮かべているんだろう。
「あ、ああ。えっと、俺の立場なら、ガリアの女王との結婚は問題ないだろうと思ってな。俺とタバサの結びつきが増えるなら、トリステインとしても関係の強化になるだろうと思って」
「確かにそれもそうね。アルビオンはトリステイン領内のように扱われているけど、実態は独立の公国のようなもの……ガリア王族との結びつきが強くなるのなら問題はなさそうね」
どうかしら、アンリ、とようやく満足したのか手を離すマリー。顔取れてないわよね、と一通り自分の顔面の無事を確かめた後、アンリは咳ばらいを一つ。
「ま、まぁ? 理由あることでしたら私も否やはありません。……これで騒ぎが落ち着けばわたくしも結婚するの、ありかしらね……?」
何やらアンリとマリーはこそこそと話し始めてしまったので、俺は俺でまたタバサのもとへ帰ることにする。
全部をほっぽってきてしまったので、タバサの戴冠式もやっていないのだ。ロマリア……ヴィットーリオが停戦した後にガリア軍にこんこんと何やら演説していたが、それも落ち着いてそれぞれの軍も離れていくころだろう。そんなときに主役のタバサがいないんじゃどうにもならない。向こうも待ちぼうけているだろうし、いったん逃げ……いや、戻るとしよう。
・・・
「……おかえり」
「あれ、タバサ? お母さんの方はいいのか?」
「ん。目も覚まして、説明もした。……まだ疲れてるみたいだから、一度休んでもらおうってなった」
「そっか。……よかったな、タバサ」
「ん。……王さまのおかげ。……次は、私が恩を返す番。……ガリアの女王として、頑張る」
ぐ、と拳を握るタバサ。……こんなに小さいのに、色々と背負わせて申し訳ないが……ロマリアの陰謀と戦うには国の力というのが必要だ。
『四つの四』なるものを集めて『聖地』を取り戻そうとしているヴィットーリオ達には悪いが、こちらも利用されるだけではないということを思い知らせてやらなければならない。とりあえずガリアに戻る道すがら、今までの計画を話す。『ガリア王宮自動人形サービス』とか、『タバサ身辺警護強化キャンペーン』とか『身代わりそっくりタバサちゃん人形』についてだ。
「……私、狙われる?」
「たぶんね。そのために手は打ってるんだけど……」
「私、やる。王さまと結婚できるんだし……。でも、もし私がさらわれたりして『スキルニル』とかで代行立てられたら……王さまはそれと結婚するの……?」
「……まぁ、その、人間じゃないのと結婚するの初めてじゃないし俺は問題ないんだけど……」
宝物庫の中で自動人形がざわめくのを感じながら、俺はタバサに答える。
「……私、我慢する。最後に王さまのお嫁さんになれれば、いい」
「覇王みたいなこと言うじゃないか……」
しかしこの世界での最初の妻が人形なのも中々癖が濃くなっちゃうから、できればタバサのままがいいんだけどなぁ……。
「とりあえず、しばらくは様子見。何かあれば連絡するから、待ってて」
そこまで言われてはこれ以上言葉を重ねることもないだろう。ここはタバサを信じて一旦アルビオンに戻るべきだろう。そういえば学院の方にも顔を出すよう言われてたな。今回の戦いでの表彰をするとかなんとか……トリステインがきちんとこの聖戦に参加していたということを表すためにも、ギーシュ率いる水精霊騎士団やオルレアン辺境伯がしっかりと参戦していたというのを示すのは大切なことなんだろう。たぶんギーシュとその下……副隊長くらいまではシュバリエとか貰えるんじゃなかろうか。俺もなんとかという勲章をもらえる予定だし、アルビオンにおける支配力をさらに強められると聞かされている。復興も進んできてだいぶ民たちに笑顔も戻ってきているので、ここらで色々できることが増えるのは大きい。なんか娯楽施設作ろうかな。ざぶーん的な……。
「それじゃあ、ひとまずまたな」
「ん。次は、夫婦どうしで、初夜、迎えたい」
「もちろん。俺も楽しみにしてるよ」
そういって、俺はタバサの頭を王冠を避けるように撫でてやる。気持ちよさそうに目を細めた後、タバサはさみしそうな顔をして、こちらに手を振ってくる。最初のクールな感じからは想像もできないほどのデレっぷりである。
俺も後ろ髪惹かれる思いで、霊体化してガリアを去るのだった。
・・・
「久しぶりに戻ってきた気がするな」
気がするだけではなく実際に久しぶりなのだが、俺は鯖小屋の前で独り言ちた。トリステインそのものには結構帰ってきてたけど、学院の方だったり城下町の魅惑の妖精亭の方だったり王宮だったり、この鯖小屋に立ち寄ったのはずいぶん時間が空いてしまっていることだろう。
今ここではアルキメデスがタバサ人形を作っているはずだが、ずいぶんと静かだ。……もう完成したのか、信じられないくらい製作が滞っているのかのどちらかだろう。前者であってほしいが……と思いながら、扉に手をかける。
「ただいまー。アルキメデス、調子はどうだー?」
「む? おお、来たか小僧! 待ちくたびれたぞい」
そこには、リビングのテーブルで呑気にお茶を飲んでいるアルキメデス達の姿だった。サポートになるかと置いていった卑弥呼や壱与も同じくくつろいでいるので、タバサ人形は無事完成したのだろう。よかったよかった。
俺が入ったのに気づいたシエスタがおかえりなさいませ、と声をかけてくれるのに答えながら、アルキメデスに完成したのか確認する。
「うむ、一度作ったものじゃしの。応用するだけで作れたのでそんなに時間もかからんかったわい。その分、他に機能を乗せるのに時間を使えたからの」
まっておれ、とアルキメデスが引っ込む。卑弥呼がちょいちょいと手招きするので、俺もテーブルに着く。シエスタが湯気の立つおいしそうな紅茶を置いてくれたのに礼を言ってから、一口。お、うまいじゃないか。腕を上げたな。
紅茶に舌鼓を打っていると、むすっとした顔で頬杖をついていた卑弥呼が口を開いた。
「あんた、もっと早く来てればよかったのに」
「え? ……なんだよ、寂しかったのか? ほれほれ、膝の上来るか?」
「そうじゃないわよ。……膝の上は行くけども。あんたが帰ってくるのに余計な時間かけたせいで、あの人形、まぁまぁ魔改造されてるわよ。あのジジィの趣味全開って感じ」
顔を赤くした卑弥呼を膝に乗せ、便乗して乗ってこようとする壱与を足蹴にしてひっくり返す。
「え、どんな感じに? 自爆機能とかついた?」
「それは一番最初に付いてた。……んまぁ、見ればわかるわよ。あんたにとって損はない機能なのは確かね」
「え、俺にとって損はないって……かわいい、とか?」
「ぶっ殺すわよ色ボケ王」
右手に銅鏡が現れたので、冗談冗談と誤魔化す。
どんなのが来るかなーと卑弥呼とわちゃわちゃいちゃついていると、アルキメデスが大きめの荷物をもって戻ってきた。
……俺には包帯ぐるぐるのミイラにしか見えないんだけど、それほんとにタバサとそっくりなんだろうな……?
「ふぃー!」
ごとん、と結構鈍い音をさせて、ミイラがテーブルに置かれる。……こら、食卓にミイラを乗せちゃいけません。
「これじゃ!」
「お、おう。……そうか。で? ほどけばいいのか?」
「む? そんな面倒なことにはしておらん。横に切れ込みがあるじゃろ? 蓋みたいにぱかっと開くようになっとる。ひょっひょ、プレゼントをもらった子供のようにドキワクしながら開けるがよい!」
そういわれてよく見ると、確かに切れ込みが入ってる。……ミイラ風の入れ物とか想像しないじゃん……。
縁に手をかけて上にあげると、アルキメデスの言った通り、蓋のように開いた。中には……確かに、タバサと言われても違和感のないほどの少女が一人、眠るように入っていた。
「おぉー……外見とかそっくりだぞこれ。すごいな……肌とか髪の質感もそっくりだ」
「判断基準が色ボケじゃのう! 王が性欲旺盛なのは良いことじゃがな! 破滅するなよ!」
からかってくるアルキメデスに苦笑を返すと、タバサ人形が目を覚ました。おー、瞳の感じもそっくりだ……。
俺と目が合った後、しばらく俺をじっと見つめて……上半身だけを起こした。……こういうところは人形って感じするな。顔がこっち向いたままなのもホラーっぽい。
「ご主人様。おはよう」
「え、お、おはよう。……ご主人様?」
「ご主人様。あなたは私が起動した後一番最初に網膜センサーに移った人物。あなたの外見、魔力波動等を覚えた。貴方をご主人様として設定した」
「……アルキメデス?」
「うん? はっは、わざとじゃぞ? こういうの黙っといた方が楽しいじゃろ」
悪びれずにそういったアルキメデスにため息を返して、まぁそれはそれで仕方ないかと切り替える。こっからまたそういう機能なくせとか始まると間に合わなくなるしな。最初にこういうものが欲しいと要件定義してなかった俺が悪い。
「ご主人様。引き続き初期設定を開始する? 肯定の場合は頭に手を乗せて」
撫でろってコトか……? この辺もアルキメデスの悪ふざけっぽいな。そう思いながらも、手を頭にのせる。ぱちり、と瞬きをして、タバサ人形は完全に立ち上がり、入れ物から出てくる。……おお、厳密にはわからないけど背格好も一緒だな。学院の制服の着方もそっくりだ。ほえー、手の込んだことだ……。
そう感心していると、タバサ人形が初期設定を開始する、と言うや否や、服を脱ぎ始めた。……服を脱ぎ始めた!?
「……!?」
「おお、初期設定じゃからな。衣服とかノイズじゃろ」
「お前それはコスプレとかへの冒涜だぞ」
「?」
可愛らしく小首をかしげるアルキメデスに、何度目かわからないため息をつく。……で、初期設定って何するの?
「性交する」
「そっか、性交……性交!?」
「性交じゃぞ」
「せ、性交って言ったのかこのじじいは!?」
「性交って言ったわよ。聞き間違いじゃないわ」
ちょっと発言が危なくなってきたので、俺は改めてアルキメデスの肩を掴む。
「何故……?」
「じゃから初期設定じゃて。小僧、この人形の元となったおなごとはもうまぐわっとるんじゃろ? じゃから小僧がこの人形と深いところでつながることで、逆に小僧からこの人形へ、そのおなごの情報を逆流させるのじゃ。小僧は色ボケじゃから楽しめるだろうし、一石二鳥じゃろ」
「否定できない……!」
最低なハンドサインを両手にしながら俺を煽るアルキメデス。……もしかして、と卑弥呼を見ると、うなずかれる。これが『俺が損はしない機能』か……!
「ほれ、そっちの部屋で一発やってこい。流石にそこの中身まではわからんかったからいろんな動きをするようにしとる。中に一発出せばオッケーじゃから、ささっとの」
「……後で色々話すことはあるけど……ま、行ってくるわ」
ここで騒いでも話は進まないだろう。それより全裸の状態でこちらを見上げてくるタバサ人形にいたたまれなくなったので、横抱きにして寝室へ連れていく。……タバサより感情を感じない瞳でじっと見つめられてるんだけど……。大丈夫かな……。
・・・
「気になっているようじゃのう! よかろう、教えてやろう! まず一つ、『自爆』! 機密保持とか色々必要な時も来るじゃろ! 二つ目、『内臓操作』! 自身の身体であれば不随意筋ですら自分の意志で動かせるぞい! 三つ目、『主従同期』! 主人と認めた物との交わりで、お互いの記憶を同期できるようになっておる! どれを同期させるかは主が取捨選択できるぞ! 四つ目、『体液変換』じゃ! 食べた物や飲んだものを取り込んでおいて、それを組み替えることによっていろんな成分、味の体液を出せるぞ! ほっほっほ、桃の味のするおしっ……あいだぁっ! な、なぁにするん……じゃ……」「……本人に、許可を取って」「ほ、ほほほ……わ、ワシ、ボケてるからわからないぞーい……」「……あとで、ギルに、言う」「まー! 待て待て! よし分かった、後ほどこの人形と……ごにょごにょ」「……今回は、許す」
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