ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
「まったく、何度も言うけど……ジュリオ、あんたは暗躍するのが好きだねぇ」
「はは、ライダーにはあまり合わないやり方かな?」
空を往く木造のフネの上で、二人の主従が風も気にせず会話をしている。主人であるジュリオの風竜を含めれば乗組員はまた増えるのだが、このライダーの駆るフネに……いや、船に、乗組員というものはほぼ不要。二人も船の操縦など気にせず、船首のあたりに立っていた。
「いや? アタシはそーゆー面倒くさいのをやらないだけで、否定はしないさ。いざってときには全部賭ける! アタシがこだわるとしたらそれだけさね」
「はは、そうだね。……その全部を賭ける時のために、準備をしているのさ。面倒だろうけど、もう少し付き合ってもらうよ」
「はっ、アンタはアタシの雇い主。アタシは副官みたいなもんだよ。アンタがそういうなら、最後まで付き合ってやるさ。……それに、アタシもここで目的が果たせそうだしな」
「ああ……あの黄金の王との決着だったか。……こちらとしては望むところだから助かるけど、あの王は君に何をしたんだい?」
「……聞けばアンタでも殺すけど、それでも聞くかい? 冥土の土産とするにはもったいないかもしれないけどね」
顔は笑っているが目の奥は笑っていない。本気の目だ、とジュリオはニコリと笑いながら冷や汗を流した。英霊というものは、芯となる生き方が強すぎてどこに逆鱗があるのかわからない、と心の中で愚痴を吐く。
「……いや、やめておくよ。もし聞くとするなら……全部負けて破産した後になるかな」
「はっはっは! そりゃあいい! 確かに全部失った後なら聞く価値もあるかもね!」
呵々大笑するライダーに、何とか正解を選べたか、と安堵の息をつく。……もう少しで目的の修道院だ。そろそろ風竜に乗り換えるとしよう。
「それじゃあライダー、行ってくるよ」
「はいはい。この辺で停泊してるから、戻ってきたならそのまま乗り込みな」
「ああ、了解した」
そういって、ジュリオは船から身をひるがえし……自身の相棒である風竜に乗り込み、修道院へと向かっていった。
「……最後の最後、アタシがあの王を凌駕できれば……アタシの望みは叶えられる」
・・・
「そうかそうか、ハシバミ草はうまいか。どんどん食べろ」
ガリア女王の政務室で、俺はタバサにいろんなものを食べさせていた。味覚とか趣向もシャルロットと同じなので、こうして出したら出した分だけ食べるのだ。……いっぱい食べる君が好き、というやつだな。今度シャルロットにも食べさせてあげるとしよう。
「んむむぐ……ご主人様は女性のお腹を膨らませるのが趣味……むぐむぐ」
「……なんか言い方に棘があるな」
「下腹部なら尚よし?」
「お、下ネタだったんか。やめてね?」
ぺちん、とデコピンしておく。あんまり強くやるとせっかく作ったタバサの頭に凹んだ跡ができるか首がもげるかしてしまうからな。
「……仲直りできると思うか?」
定期的にシャルロットと同期しているタバサは、ほとんどシャルロットと記憶や想いを同じにしている。そんなタバサに、今離れている二人のことを聞いてしまうのは、俺も少し不安だからだろう。あの二人はかなり複雑な状況になってしまっている。彼女たちの過去を知らない俺が、二人がどうなるか予想できずにあたふたしてしまい、こうして落ち着くためにタバサにたくさん食べさせているのも仕方のないことだろう。
「……んぐんぐ。ね、ご主人様。咀嚼の隙を与えないでご飯を突っ込むのは、もぐもぐ、ガチョウの肝臓食べる時のやり方、もぐっ」
「おっと、ペースが速かったか。すまんすまん」
ひょいぱくひょいぱくと与えた分だけ食べてくれるものだからペースを考えていなかったな。
「……どうだろ。肝臓、食べる? それっぽい臓器はあるから、だせる、よ?」
「出さなくていいぞ。そもそも人の肝臓は食べたくないし……」
「……でも壱与は食べてほしそうだったよ。好きな人には内臓を食べてほしいんじゃないの?」
「壱与は特別で特殊だから、気にしないでなー」
そっか、と言いながら裾をめくってお腹を見せていたタバサが再び裾を下す。……ここでうなずいてたらこのまま抉る気だったのか……? こっわ。こういうところ作成者のアルキメデスに似てるんだよな、この子。変に思い切りがいいというか……。……よくよく考えれば、このタバサが俺とアルキメデスの子供みたいなもんなのか。……なんて嫌な出自なんだ。俺がタバサの立場なら、グレる自信がある。
「……私は、幸せだよ。ご主人様もマイスターも、オリジンのことも大好きだから、私はグレない。安心していい」
「……そういえばうっすら繋がってるんだったか。良い子だなぁタバサは」
がっしゃがっしゃと乱雑に撫でる。シャルロットもそうだけど、こういう撫で方を喜ぶんだよな。ちょっと雑めな撫で方というか……ルイズあたりにやるとバチバチにキレられるやり方だ。
「……ん、うれし」
タバサがもぐもぐと咀嚼しながら、目を細める。向こうに置いてきた自動人形から、話し合いが一息ついたという連絡が来た。ならば向かうか。タバサはまだしばらくここで食べてるだろ。こっちにも自動人形はいるし、影武者らしく一人にしておくのが最善だろう。また会いに来ると言い残して、俺は女王の執務室を後にする。
・・・
「……あ、ギル」
「お、おかえり」
寝室の扉を開くと、先ほどより距離の近くなった二人がベッドに腰かけていた。お互い話したいことは話したのか、わだかまりはなくなったようだった。
「ずいぶん打ち解けたみたいだな」
「まぁ……ね。本当に……回り道をしてしまったけど……」
「……もう、イザベラとお母さまだけが私たちの家族。……これからは、お母さまとのご飯にも一緒」
そういえば、シャルロットは夕食を母親とだけ食べているんだったか。母親も表舞台に出たくないということもあり、ずっと城に引きこもっている。その方が狙われにくいというのもあるし、理解できる理由だ。
ここで話が終わったのなら……イザベラをどうするかだな。このまま王弟派の……シャルロットの派閥の貴族に見つかれば「処刑しよう」となるに決まっている。負けた王族というのは、根絶やしにされるものだからな。え、俺? 俺はその……王女とか姫とかを血脈に吸収していく感じの……あっ、やめてください。絶倫王と呼ぶのは……あっ、ほら、石は投げないで……。
「……これから先、普通に城も歩けなくなるのは困る。明日にでも仲直りしたって伝える。……文句は言わせない」
「ん、それがいいだろうな。今やシャルロットだけが今のガリアにとっての唯一の王族だ。そのシャルロットの言葉なら、心の中はどうあれ認めるだろう」
「そう、それよ!」
急にイザベラが大声を出す。もう夜なんだからちょっと静かにした方がいいかもな。
「エレーヌ! 聞いていたけど、貴方の周りにはもう少しからめ手を使える人間が必要よ! ……私に北花壇騎士団を預けてほしいの」
そういえばガリアには東西南北それぞれの名前を関した騎士団があった気がする。それのうちの一つはイザベラが長となっていて、そこは後ろ暗い任務を含めたイザベラの私的な任務もこなしていたらしい。そういえばそこからの任務で来ていたシャルロットと戦ったこともあったな。そこのポストが欲しいということなのだろう。
「ロマリアから来てるやつだとか、少し聞いただけで怪しいのがたくさんいるわ。後ろに何があるか調べておくのは大切よ」
「それもそうだな。……こちらからも色々と手を回すとしよう。騎士団ではなく裏の手の者を使う時もあるだろう?」
どさ、と資金を置く。
「これなら……あの面倒な『元素兄弟』をまた雇いなおせるかもしれないわね」
「『元素兄弟』?」
「まぁ……金次第で何でもやる傭兵よ。かなり優秀だけど……それなりに高いのよね。しかも金次第でどこにでもつく。どこかにつかれても面倒だからずっとお金を払って私についてもらってたけど……。今までの騒ぎで支払いが滞ったから、たぶん今頃別のクライアントを探してると思うわ」
なるほど……そこまで優秀ならこちらでも使いたいものだ。
「それならもう少し追加しておこう。……完全にこちら側につかせられるなら、そうして欲しい。それが無理なら、敵につかないようにしておいてくれ」
「……難しいことを言うわね。まぁ、やるけど……。期待はしないでよ? ああいうやつはどっか頭のねじ飛んでんのよ」
今までの雇い主でそれなりにやり取りをしたことのあるイザベラがそういうのなら気難しいやつなのだろう。
「……その辺は任せる。明日、玉座の間で色々と茶番をする。……少し不快かもしれないけど、頑張って」
「ええ。それくらいで済むのなら、何にも問題はないわ。エレーヌ、今日はありがとう」
「こちらこそ。……また明日」
二人が最後に軽く抱き合ったのを見届けてから、俺たちは再び窓から帰った。……こっちもアルビオンの面倒な仕事を進めないとな。
・・・
「アルビオンは公国となった。……必要なものはなんだ、ジャンヌ!」
びし、とジャンヌを指さす。ここはアルビオンにある第二鯖小屋……鯖部屋だ。今俺の召喚しているサーヴァント、そしてカルキが大集合している。そんな中でわざわざジャンヌを指さしたのは、まぁ、適当だ。『好きな子に意地悪したい』の亜種である。
「えっ、えっ、あ、えっと……な、なんでしょう……お、王さま?」
「よし、期待通りだジャンヌ!」
「え、正解!?」
「いや不正解だ!」
「期待持たせるのだけはやめてくださいよぅ!」
ひーん、とショックを受けて突っ伏すジャンヌ。可愛い可愛い。
「うーん、なんだろね。国民とか領土とか当たり前のことを聞きたいんじゃないだろうし……」
謙信が頬杖を突きながら首を傾げる。
「っていうかわらわ達を呼んだっていうのがヒントになりそうよね。で、何? わらわ達になんかさせたいの?」
お、卑弥呼がいいパスをくれたな。ここに俺の呼んだサーヴァントが全員いること。それがヒントになるというのは間違いない。彼女たちにはやってもらいたいことがあるのだ。
「ああ、この国では俺がトップとなるんだが……省庁が欲しい。俺一人だと決定から動き出すまでに時間がかかる」
アルビオンの発展は相当進んできた。住むところも住民も増えてきたし、陳情やらなんやらが上がってくる。生前のような落ち着いた状況ならまだよかったのだが……俺が今アルビオンから離れたりして動く以上、その代わりが居る。
「あー……なるほどね。それをそれぞれわらわ達が担当しろって?」
「や、やりますやりますっ! 壱与、ギル様のお力になれるならなんでもっ!」
「もちろん謙信や卑弥呼達が離れることもあるだろうから実務の人間はまた別に用意するとして……トップとして動くなら、『騎士』だと思われてるお前たちが一番いい。誰よりも信頼してるしな」
「ふぁあ……ギルしゃぁん……」
「お、なんだなんだどうした?」
先ほどまで不機嫌だったジャンヌがぬるぬるりとこちらに引っ付いてきた。おいおいなんだ、急に引っ付いてきて。寂しくなったのか?
「……『信頼してる』って言われて喜んでるんじゃない?」
「はっはっは! 単純なおなごだ! まぁそこがこ奴の良いところでもあるが!」
「そういうことか。……ほらほら、こっちおいで」
ジャンヌを抱き上げて、そのまま膝の上にのせる。首に抱きついてきたので、このまま話を進めるとしよう。
「必要なのは七つ……いや八つか? とりあえず軍事。軍務省に謙信」
「ほお。ふふ、良い判断だ。私の方がこの赤いのより軍事に向いてると思ってくれたということかな? 軍神と呼ばれたこともある私だ。任せてくれたまえ」
「あー、まぁ、その軍務省に統括庁っていうの作るから……そこに信玄」
「む? おう、まぁ何をするかは知らんが……おぬしがそういうのならそこに付こう」
腕組みをしたままの信玄が何度か頷く。後で小言を言われそうだが、まぁその時はその時だ。
「で、アルキメデスには工部省を担当してもらいたい」
「む。……わしとしては願ったりだが……この星でやれるもんかの? ま、やってええならやるんじゃけども」
まぁ科学省とか魔導科学省とか作るよりはいいだろ。それだと異端とか言われたりするかもしれんからな。よくわからん言葉を使っておけばごまかしも効くだろ。
「ま、ええけどの」
楽しそうに何やら書き始めるアルキメデス。やることリストでも作ってるのだろう。
「卑弥呼は内務省かな。壱与は……式部庁とかにしておくか」
下手に自由度高いところやらせたりするといつの間にか卑弥呼にクーデター起こしたり俺をあがめる何かしらの部署を作り始めるので、あんまり自由度なさそうなところにつけておくとしよう。仕事内容も後で詰めておかないとな……。
「どれどれ……? ……おっ、ちょっと右腕っぽいじゃないの。良いじゃない。わらわこういうの素直にうれしく思うタイプよ」
「壱与はー……えっ、なんですこの仕事内容。兵士とか集められないじゃないですか! くぅー……! どうにかして下克上できないかなぁ……」
俺の渡した仕事内容を見てか、正反対の反応をする二人。……やっぱりクーデター考えてたんじゃないか壱与。あっぶね。兵士とか集められないように権力持たせないようにしとこ。
「主、主っ! ぼ、僕はっ!? 僕はどこに……」
「小碓は情報省。ここしかないと思ったね」
アサシンたる小碓はこういうところで活きるだろう。小碓が後進を育ててくれれば、情報収集役を『魅惑の妖精亭』に頼りっきりにしている状況も解決するだろう。
「ほほー! これは自分もどこかを任せてもらえる流れ! ささ、聖王よ! この自分にもご下知を……!」
そういって跪いて両手を頭の上にあげるペトルスに、わかったわかったと書状を渡す。それを恭しく受け取ったペトルスは、その中身を読む。
「ペトルスには聖務省を。毛色は違うが……いけるだろう?」
「うむ! 聖なる聖王を広め、この世に聖なる教えを広めよう!」
いや、お前の聖なる教えとか絶対やばそうだからあんまり広めないようにしてほしいんだけど……やってほしいのはロマリアの……あの考えとかを学んでほしいんだけど……。そうすればロマリアが何を考えているか、少しはわかると思うんだけど……あんまりブリミル教とか詳しくないからな。その辺の神話とかを調べたりしてほしい。この世界のみんなの心の拠り所だ。そういう気づかいは同じく拠り所のある人間の方が理解しやすいだろう。
「で、ジャンヌ。ジャンヌにはこれを。民生省だ」
今だ存在するアルビオンの復興、そしてその後の民のための仕事は、ジャンヌが最適だろう。ぐしぐしと俺の胸元で涙をぬぐったジャンヌが、俺の持っている書状を受け取る。……あーあ、これ結構いい服らしいんだが……ま、こういうのは受け止めてやるのが俺の仕事だろう。
「んぅー……難しいかも、ですね。私ただの村娘だしぃ……」
「もちろん補佐はつけるさ。トップだけはお前たちで固めたいってだけだ」
色々とそのあたりも調整せねばなるまい。みんなから希望は募るが、信頼できそうなのが居れば積極的に下につけるとしよう。流石にシエスタを付けるのは難しいだろうがほかの貴族が居ればその辺を隠れ蓑にいろいろできるだろう。学院から良さそうな子を連れてくるのもいいな。ケティあたりの女子援護団を味方につけたい。一応トリステインの仲間扱いだから何とかならんだろうか。その辺は後でマザリーニに聞いてみるとしよう。
「→ギル。私は?」
「あー……いやー、カルキはエルキドゥと同じで自由に動いてテファやルイズ達を守ってほしいからさ。それにほら……カルキに仕事ができそうなイメージがないというか」
「→ギル。超失礼。こちとら未来の超人工知能。仕事ならバリバリやれる。むしろ人類の代わりに仕事ばっかりしてた。人工知能の私ですらちょっとブラックかこれ? と思ったくらい」
カルキの無表情な瞳から、さらに光が失われた気がする。……そんな忙しかったのか。後でちょっと慰めてあげるとしよう。
「ま、それでもカルキはどこかにつける気はないよ。もしつけるとするなら……俺の副官とかになるかな」
それこそどこかの省庁とかにつけちゃうと働きづめでまた光が失われることになりかねないので、その辺は気にしてあげるとしよう。エルキドゥはテファ達の護衛もあるからここには呼んではいないが、あとでこの話をすると背後に立って無言で圧をかけてくるようになってしまったので、この話自体内緒にしておこう。言うと無言で背後に立たれたり無言で枕元に立たれたりするからな。あれは心臓に悪い。
「よし、とりあえずこれで最初の話し合い……会議は終了だ。ま、ただの公国内閣発足の会ってことだな。ロマリアの件もあるが、銀色ウニやらエルフにとりついたあいつらのこともある。他の国にも色々と情報網は広げるとしよう。その辺は小碓、頼んだぞ」
「はぁいっ。へへへ、初仕事ーっ」
嬉しそうに音もなく退室していく小碓。それを皮切りに、それぞれが部屋を出ていく。今やることがある子もいるので、それに向かったのもあるのだろう。
「よし、俺もこっちで少し仕事したら……学院に戻るかな」
・・・
「あー! やっと帰ってきたわね馬鹿ギル!」
「お、部屋にいたのか。探しに行く時間省けたな」
ぷんすか怒っているルイズをスルーしつつ、ラッキーラッキーと頷いておく。こういう時は何言っても燃料になるからな。スルーしとくのが吉だ。……まぁ、場合によってはスルーしたとしても凶みたいなこともあるので、その辺はもうルイズの機嫌次第だろう。今回の感じだと、あとで添い寝でもしておけばごまか……げふんげふん、機嫌もなおるだろう。
「それで、あの後新しい情報は出てきてないか?」
ルイズの後ろで苦笑いしているテファに視線を送ってから、ルイズに聞いてみる。二人の虚無の使い手がしばらくこの本とにらめっこしていたのだ。何か情報が追加されてればいいのだが……。
「……ううん。あれが今出てきた最新の情報。……新しい呪文だけじゃないのね、出てくるのって」
ルイズのつぶやきに、確かにと返す。そういう小ネタ的なのも送ってくるんだな、始祖の祈祷書……。デルフも「必要なものが浮かぶ」って言ってたけどそれって呪文のことだけじゃなかったんだ。そう考えると、結構有用なものなのかもしれんな。
「……っていうか! 私色々聞いてないことあるんだけど! 公王って何! 結婚ってなに!」
「あー……その辺は非常に高度な政治的判断が……」
「お父様みたいなこと言わないで! 別にあんたが公王じゃなくてもタバサには手出してるでしょ!」
「まぁそれはそう」
「認めんな!」
げし、と一発蹴られる。……ルイズの体重が軽いからか蹴った反動でよろけてるのかわいいなぁ。
「でもほら、うちもちゃんと内閣発足したからさ。ルイズのポストも用意してるんだよ」
うちのマスターたるルイズは虚無の魔法に目覚めるまではいろんな知識を身に着けるように努力していたと聞いている。ベアトリスの件の時もそうだが、この世界での貴族のマナーや礼節、そして時勢や権利なんかにも詳しい。卑弥呼の内務省かペトルスの聖務省あたりに言ってもらいたいんだよな。ロマリア公認の『聖女』だったこともあるわけだし、聖務省の方がいいかな。
「へ、へー? あんたも中々わかってるじゃない。そーよ、私ってば聖女だったんだからね! もっと敬いなさいよっ」
ぺしん、と俺をたたいてくるルイズ。……この子照れ隠しに手が出るから結構危険だよな……。まぁ怒ると最悪杖が出てくるのでもっと危険なんだが。これくらいは許容するべきか。力弱いし……。
「テファには民生省の手助けをしてもらいたいな。森の中で子供たちを育てた経験も活かせそうだし」
「うんっ! 私、頑張るわ!」
さすがに表舞台にはまだ出せないけどな。その辺もろもろ解決したら、むしろエルフとか仲間に入れたいところではある。潔癖そうだから、不正とか許さなそうだし。……ビダーシャルしか見たことないしそのビダーシャルも今や乗っ取られちゃっててあんまり参考にはならないけど。これから知っていくとしよう。
「キュルケとかモンモンとかケティとか、仲間に入れたいのはたくさんいるんだよな。学院にいる間に出会ったら片っ端からスカウトするとしよう」
「……アンタね……まぁ王さまだったんだしそういうのワクワクするのはいいんだけど、ロマリアの……ジュリオの動きにも気を付けなさいよ! 今狙われるとしたらアルビオンかガリアなんだから!」
「ふむ……ルイズもそう思うか。トリステインにはルイズ、アルビオンにはテファ……だけど今は俺がアルビオンにいるし、虚無が存在しないのはその二つだけって感じだしな」
ガリアはジョゼフが死んでしまったし、キュルケの祖国であるゲルマニアに虚無の使い手は現れないだろうし……おそらくだがトリステイン、アルビオン、ロマリア、ガリア。ここに『四つの四』がそれぞれあると考えて良いだろう。それぞれのルビー、そして祈祷書のようなものが、他に三つ。きっとそれをそろえることが、ロマリアの目的。……だとしたら、今一番狙われてるのはガリアだろうな。シャルロットの王位はまだ盤石なものではないし、取り巻きの中にロマリアの神官も混ざっていると聞く。内部情報はほぼ筒抜けと考えて良いだろう。
だから……シャルロットを消しに来るか……? しまったな、その辺もさっきの会議で聞いておけばよかった。卑弥呼か謙信、アルキメデスあたりが何か思いついてくれただろうが……。今はタバサ人形で何とか対処できる事態であることを祈るしかないな。
こちらはこちらで、何か動きがあるまでは……。
「内政タイムだな。……ルイズ、今日は一緒に寝よっか」
「はぁ!? あ、アンタテファもいるのに何言って……」
「はいっ! わ、私も一緒に良いですか!?」
「いいわけないでしょ! そんなおっきいおっぱいが寝れるベッドはありません!」
「あるわよっ。王さまのおかげでルイズのベッド、すごいことになってるじゃない!」
ぐぬぬ……とテファとルイズがにらみ合う。……やはり一緒に虚無のことを調べていたからか、仲良くなってくれたようだ。ふむ、良きかな良きかな。
「まぁまぁ。ここはルイズが少し大人になって、俺とテファを受け入れてくれよ。な?」
「むぐ……ま、まぁ? 仕方ないわね。よく考えたら私の部屋に私のベッドだし? 私の器みたいに大きいから、二人くらいは余裕だし?」
ふふん、と鼻高々に言うルイズ。うんうん、そうだそうだ。俺を受け入れてくれたルイズの器は、そりゃ大きいものだ。
「よっし、それじゃさっそく、二人の虚無の話を聞こうかな」
「あ、ちょ、馬鹿っ、そんなところは虚無に関係な……ひゃんっ」
「わ、わ、王さま、大胆……ルイズも、かわいい声出すのね」
「テファもおいで。テファのかわいい声も聴きたいな」
「う、うんっ。え、えーいっ!」
「わぷっ、ちょ、胸でおぼれる……ど、どきなさいよっ」
こうして、虚無の使い手二人との夜は更けていくのだった。
・・・
「はい?」
しばらく学院で過ごした後にアルビオンに戻ってくると、部屋の中には自動人形を伴ったシャルロットがいた。それと同時に、タバサの方から念話も飛んでくる。
シャルロットの戴冠パーティの直前。タバサが攫われたらしい。そっくりの妹らしい女の子と、ジュリオに襲撃され、眠り薬をかがされた後見知らぬ修道院に送られていたらしい。ちなみに眠り薬は利かなかったけどとりあえずスリープモードにして乗り切ったと言っていた。……そういえば対毒機能あったな。
「っていうか妹!? シャルロット、そんなのいたのか!?」
「知らない。少なくとも私が知ってる中では見たことがない」
ちなみに今タバサがいるのは険しい山を越えた先にある、崖のような岬の先にある、孤島のような修道院なのだとか。……その妹はなんかあってそこに送られたのか……?
「えぇ……? 王位継承権的に邪魔だったとか……?」
「……ジョゼフならそんなことしないで殺してる。……妹? 私と双子だったりする?」
「ん? ああ、そういえばジュリオは存在ごと消された不遇の存在とか言ってたな。ガリアの伝統に消されたとかなんとか」
「……ガリアでは王家に双子が生まれるのは凶事。どちらかを『なかったこと』にすることはあり得る。お父様やお母さまが猛反対して、消すんじゃなくてそういうための修道院に送り込んだのかもしれない」
なるほど……ガリア王家の闇ってやつか。以前双子の王子かなんかがすんごい乱を引き起こしたんだろうな。それ以来禁忌になってしまったのだろう。だが……そうなると、ジュリオたちの狙いも見えてくるな。
「……そのシャルロットの妹、ジョゼットって子が虚無の素質を持つ子なんだろうな」
「それを通じて、ガリアをロマリアの側につけようってこと?」
「そうなるな。……その辺の件だと、結婚のこととか知らなさそうだな」
「……確かに。アルビオンの公王がギルなのは向こうも知ってるはず。……色仕掛け?」
「えっ。確かに俺はその方面弱いけど」
そのジョゼットが何者か知らないけど、シャルロットと双子でそっくりなら確かに好みど真ん中だ。……シャルロットとタバサとジョゼットで青髪三連星できるなとか考えてないぞ。……考えてないからな?
「その辺気にしながらベッドインするから大丈夫!」
「……そもそも私だと偽ってる知らない妹とベッドインしてほしくない」
「それは確かに」
シャルロットのことを考えてない発言だったな。反省しないと。
「……その妹の倍相手にしてくれるなら、許す」
「シャルロット……優しすぎるぞ。悪い男に引っかかりそうだな」
「ギルが、たぶん悪い男。でも後悔してないから大丈夫」
おいおいおいおいおいおいっ。なぁなぁなぁなぁなぁなぁ! 可愛すぎないかこの子! 俺の嫁になるんだぜ? その高まりのまま、シャルロットを抱き上げる。
「じゃあ、嫉妬してるかわいいシャルロットの機嫌を取るために、今のうちにたくさん相手しておこうかな?」
「……ん、嬉しい。機嫌もなおっちゃうかも?」
いつも通りの無表情さの奥に少しだけ嬉しそうな表情を浮かべながら、シャルロットは俺に体を預ける。
「たくさんしてほしい。これからちょっと隠れることになるだろうし、その分も……やめてっていっても、やめないでね?」
「もちろん。今日は激しくしちゃうぞー」
わっはっは、とわざとらしく笑いながら、俺はアルビオンの城にある寝室へとシャルロットを連れて行くのだった。……執務? あとでやる後でやる。ほんとだよ。信じてほしいな。え? 無理そう? そんなぁ。
・・・
「軍務省! その名の通り軍務に関することをやるよ!」「……統括庁。軍務省の補佐らしい。……ふん」「工部省! まぁからくりやら工業やらその辺を担当するところじゃの」「内務省。その名のとおりよ。……もっと細かく? ……法とか税とかその辺。以上」「壱与は式部庁です! 祭事とか儀礼とか司りますっ」「情報省。暗躍したり暗殺したり潜入したり色々やるよ! 後ろ暗いことどんとお任せ!」「聖務省である! この世における宗教やら歴史の情報を集めたりする聖なる省庁であるっ。ふんす!」「民生省を任されました! まだまだ復興に色々と必要みたいですし、復興した後も国民のみんなを助けたりしますよー!」「公王である。省庁それぞれのトップと昼夜問わず会議したりして、方針を示すぞ。……ところで謙信、この後空いてたりは……」「君のためならいつでも空けるとも。ふふん、軍務と公王のアヤシイ関係、ってやつだね」「あーっ! 一番独裁政権になるやつぅーっ!」
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