ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
……絶対に、許さない……!
「シャルロット様! アルビオンからの書簡でございます……!」
「……そこに置いておいて」
あの、バカ公王……! ぜったい、許さないんだから……!
なんでこんなに処理すべき仕事が溜まってくるわけ!? 私の下にも書類を処理する専門の人がいるのに、そこすらいっぱいいっぱいになりかけてて私のところまで上がってくるのがとんでもなく多い……!
「……ふぅ。これでこっちのは終わり。……あとは」
「しゃ、シャルロット様!」
「……そっち。置いて」
「はっ」
いなくなったらいなくなったで私のこと困らせて……! 一応今園遊会中なのに! その状態なのに書簡がばかすか届くから、園遊会参加しながら空き時間にこうして仕事をしてるから時間が……時間が足りない……!
後に回そうにも期限を切られてたり急ぎで必要だったり……! これ絶対わざとだ! ジュリオたちが姉の移送を兼ねてロマリアに帰るから、それを狙ってこんなことをしてるんだ……。
目の前の書類の山に一瞬だけ頭を抱える。そのあとすぐにペンをもって、内容を見ながらサインをする。一応問題ないと確認されてきたのが上がってきてるはずだけど、一通り目を通してからサインをしないと、たまにトラップみたいにわかりにくくこっちが不利になるような内容のものもあったりするので、気が気でないのだ。
「シャルロット様。そろそろお着換えの時間でございます」
「……あと、二枚だけ」
「はっ」
身の回りの世話をしてくれる執事が、短く答えて退室していく。
……これで、よしっ。
「……着替え……」
コルセット、締めるのきついんだよなぁ……結構体の線とか出ちゃうし。……トリステインの女王くらいスタイル良ければ、自信もって着れるんだけどなぁ……。
――っとと。考え込んでて遅れるのはまずい。園遊会はまだ続く。それが終わるまでは気を張っておかないと……!
「……今日の夜来たら、絶対叩く」
この状態で公王の夜の相手までさせられたらたまったもんじゃない。……アレをすると睡眠時間まで削られるので、たまにウトウトしそうになるのだ。……今日は、絶対断る! っていうか、たとえしたとしても途中で寝る自信がある。……それはいつも通りの気絶になる、のかな……?
・・・
「止まれぇい!」
騎士団長のよく通る声が響く。
ロマリアの帰路に待ち伏せた俺たちは、予定通りにやってくるであろうと判断し、ルイズの虚無『幻影』の魔法を発動。東花壇騎士団の数を何倍にも増えたように見せて、準備をしていた。それでも、向こうの軍の方が多いようだが、こっちのこれはこけおどしだ。向こうが進軍を止め、こちらが不意を突ける隙を作れれば良い。
今も前に出ている騎士団長と、向こうの先頭を進んでいた騎士が、舌戦を繰り広げている。向こうが戦う意思を見せたら、俺がルイズとともに馬で突貫し、タバサを取り戻すという寸法だ。ここまでくればタバサとのつながりもかなり濃く感じる。やはり教皇の馬車に乗っているようだ。あの他より豪奢な馬車が、教皇のモノなのだろう。
「こうなったら、実力行使で取り返す!」
ちなみに顔が割れるとまずいということで、イザベラと『地下水』は来ていない。何かあれば、俺が東花壇騎士団を説得して動かし、奪還に動いた、というシナリオになるのだろう。ま、そん時はそん時だ。別にこちらの世界の人間でもなし、破門されたとて俺は気にならん。そもそもアルビオンが付き合いあるのはトリステインとくらいだしな。……あ、でもガリアとの関係もまずくなるのだろうか? ……ま、その辺は何とでもなるだろう。未来の俺が何か妙案を思いつくに違いない。
そんなことを考えているうちに、向こうもこちらも杖を抜き始めた。最初はファイヤーボールとか遠距離の魔法が飛び交い、どんどん接近していくうちに切り結ぶようになるのだろう。
「行くぞ、ルイズ。捕まってろよ」
「う、うんっ」
俺の前で馬にまたがっているルイズが、手綱を強く握る。俺は片手でルイズのお腹あたりに手を回して、もう片方の手でデルフをにぎっている。この状態なら魔法を吸えるデルフが取り回しも兼ねてやりやすいだろう。
「はっ!」
俺の掛け声で、馬が駆ける。少数で突っ込んでくる俺に魔法が集中するが、デルフが吸い、それもできなければ切り裂いて、一直線に教皇の馬車を狙う。
向こうもそれがわかっているのか、俺の前を塞ぐように騎士たちが集まってくるが……。
「『爆発』!」
イリュージョンによる幻影はこの時点では必要ない。ルイズにはこうして補助で爆発を起こしてもらえるように、幻影の騎士たちは走り始めたあたりで解除してもらっていた。
集まった騎士たちの中心で爆発し、道が開ける。最高速度で馬を走らせながら、まっすぐと単騎駆けしていく。
「……見えた!」
かなり近いところまできた。さらに前を塞がれるが、そこはもうルイズの魔法に頼らなくても、俺が飛べばいい。
「口閉じてろっ!」
小さく、腕の中で「んっ」と聞こえたと同時に、俺は馬の背から飛び出す。騎士たちの頭上を通りながら、馬車まで数十メートルの位置へ着地。そこでようやく御者が馬車を走らせようとしているのが見えたが、この乱戦の中だ。味方の騎士が邪魔ですぐには走り出せないだろう。
「ルイズっ! タバサが見えたら掴めっ!」
「わかってるっ!」
馬車にとりつき、デルフを一閃。扉が切り裂かれ、中が見える――。
「――よう、色男」
――銃!
「っく!」
ルイズごと横に転がり、一射目を避ける。
「……不意打ちのつもりだったんだけどねぇ」
「馬車の中から誰も出てこない時点で警戒してただけだよ」
がたん、と切り裂かれた扉の中から、赤い軍服のような恰好の女性が降り立つ。その後ろには、教皇とタバサの姿。……ジュリオがいない……?
「ま、前哨戦ってことでさ。……楽しみなよ、ギルッ!」
だだん、とほぼ同時に銃声がする。一発目は俺。二発目は避けようとした先に置かれるように放たれていた。……未来予知かよ……!
一発目をデルフで受け、二発目はその場から動かないことで躱す。その間に片手で装填しながら、別の銃をもう片手で取って、射撃。それを短いスパンで繰り返されて、こちらは防戦になってしまう。
……公王として動いている今、確かに宝物庫は使えない。後は風魔法の使い手という設定にしているので、それに偽装した魔術を使えるくらいだ。……だが、俺はその代わりに強大な力を連れてきている。
「『加速』!」
ひゅ、と俺の手元からルイズが消える。銃声と剣戟の音でごまかしながら、ルイズは『加速』の魔法を唱えていたのだ。ジョゼフを倒してから始祖の祈祷書に現れたという魔法。それを習得し、何度か実験して、距離、速度を理解したルイズは、ジョゼフ程ではないがこの魔法を使いこなしている。俺が抱えていた地点から、馬車まで一息に行ける距離を、ルイズはきちんと計算していたのだ。
「タバサっ!」
「っ!」
「なっ!」
ルイズ、タバサ、教皇が、それぞれの反応を見せた。……軍服の女性……ドレイクは、笑顔のままこちらを見ている。ちょっとは驚いたりしないか、普通は……。
ドレイクから注意を外さずにルイズ達を見ると、タバサを抱えたルイズは、小規模の『爆発』を唱え、教皇との距離を稼ぐ。
「ギルっ!」
「わかってる!」
ルイズが手元から移動した瞬間に、俺は走り出している。ドレイクもかなり強力なサーヴァントではあるが、クラスはライダー。俺と同じく、その武勇だけで英霊になったわけではないし、そのような逸話もない。接近しての対人戦は、彼女にとっても不利だろう。
その証拠に、俺を近づかせないように射撃をしつつ、教皇を守れる位置に移動して行っている。……おそらく、俺とドレイクは同じことを考えている。向こうは教皇を。こっちはルイズを回収して、ここは一度仕切り直しを、というものだろう。
一気に加速して、ドレイクに接近。デルフを使ってフルパワーでドレイクを教皇の方へ飛ばす。
「っつぅ! ……やっぱりこういう戦いじゃどうにもならないねぇ!」
「っと。こっちは目的を達した。後は逃げるだけだ」
ぴゅい、とタバサが指笛を吹く。シャルロットの記憶、経験を引き継いでいるタバサは、こうしてシルフィードを呼ぶ指笛も同じように吹ける。まぁシルフィード本人がシャルロットとタバサを区別できていないわけではなく、「お姉さまが言うなら仕方ないのね」とシルフィードが協力してくれたから、こうして呼ぶことができているのだが。
高速で飛来するシルフィードは、タバサを掴み、高度をぐんぐんと上げていく。途中で器用に体を動かし、背中にタバサを乗せた後、ガリアへと向かっていく。
「なるほど、ドラゴンとは考えたねぇ」
変わらずにニヤニヤとしたまま、ドレイクが離れていくシルフィードを見る。銃は肩に担ぐようにしており、一見隙だらけだが……まぁ何か仕掛けようとしたら反応できるようにはしてあるのだろう。
あとはこちらも引くだけだ。この状態になったならロマリアもほぼ詰み。ここで戦ったところでマスターが離れているドレイクでは……いや、待てよ? ジュリオが離れる?
「――しまった」
タバサ奪還のことにとらわれすぎていた。ドレイクがいたことで更に視野も狭くなっていたのだろう。ジュリオの力は、幻獣を操ること。あいつには、巨大な竜の相棒がいたはずだ……!
「ギル! あれ!」
ルイズの声に上を見ると、シルフィードに襲い掛かる巨大な竜の影が。やられた、そういうことか! 奪われないためにドレイクがいたんじゃなくて、奪われても問題ないようにしていただけ……!
大きさが違うから出力も違うのか、シルフィードより上から襲い掛かった巨竜は、体当たりでタバサを吹き飛ばし、口に咥えて山脈の方へと飛んでいく。
「シルフィード!」
呼びかけながら手を振ると、声が聞こえたのか身振りが見えたのか、シルフィードがこちらに飛んでくる。
彼女に乗って上空まで行けば、ヴィマーナが出せる。低空ぎりぎりを飛ぶシルフィードに、俺はルイズを抱えて飛び乗る。
「雲へ! 途中でヴィマーナを出す!」
俺の指示にきゅい、と鳴き声を返したシルフィードは、再び高度を上げて行く。雲の中に飛び込んだ瞬間に目の前にヴィマーナを出し、乗り換える。
「シルフィード! 人になってこっちに!」
「きゅいっ!」
「ちょっと裸っ!?」
人に変わってヴィマーナに乗ってきたシルフィードにマントを着せながら、雲の中を進む。結界があるからか風もそれほど感じず、雲の水分も体についていることはない。
音もたてず飛ぶヴィマーナは、すぐにジュリオの駆る巨竜に追いついた。流石に戦闘機よりは速くなかったか。
「ルイズ、操縦任せるぞ」
「え、ちょ、ええ!?」
「思考すればその通りに動く!」
ヴィマーナの操縦の権利を一時的にルイズに渡して、俺は巨竜の背に飛び乗る。ヴィマーナを見たタバサが暴れるか何かすれば咥えている服が破けて落ちてくるはずだ。そこをルイズがキャッチしてくれればいい。俺はここで、ジュリオの気を引くだけだ。
「よお、兄弟。派手にやってくれたな」
「はは、そっちもね。……でも、ここまで来た時点で、俺たちの勝ちだ」
「何?」
俺たちが会話をしている横で、ヴィマーナがやってくる。機体の上にはタバサの姿が。だいぶ早いと思ったが、ヴィマーナの速度ならそれもあり得るかと思いなおす。
「おっと。ここで俺に何かしようとしない方がいい。『狙ってる』ぞ」
「……そういうことか」
一対一で俺と対面しているには余裕そうなジュリオが指さすのは、雲。すぐにそこから、木造の帆船が何隻も飛び出してくる。あれは、こちらの船ではない。ドレイクの『
その砲門はすべてこちらを向いており、俺たちが何かするようであれば即刻射撃してこようとしているのだろう。流石の俺も早打ちには自信がない。宝物庫を開いている間に、向こうが射撃を終わらせてしまうだろう。
「……それで? 要求を聞こうか」
「いやなに、別に何も望まないさ。今、この場所に、お前たちがいるっていう時点で、俺たちの目標は果たされたんだ」
そう言って山脈の手前まで来た時に、ジュリオが「見なよ」と山脈……確か『火竜山脈』というのだったか……を顎でしゃくった。
疑問に思いながらも視線を向けると、少しして山が揺れ始める。……なに? 地すべりとかか……と思った直後、さらに激しく揺れる。地震なんてもんじゃないほどの揺れだ。土が舞い上がり、まるで山全体が燃えて煙を出しているかのように覆い隠して行く。
そして、少しすると……山の一部が浮かび始めた。……これは、アルビオンと同じ……? 浮かび上がった山の一部は、そのまま上昇していく。
「これが、俺たちが見せたかったものだ」
「あれは……風石が?」
「ああ。そうだ。地中で大きくなっていった風石の力が、あの重さの山を持ち上げるほどに高まったから起きたんだ。……そして、それはこの山だけじゃない。このハルケギニアのいたるところで起きる可能性があるんだよ。少なくとも、数十年以内に!」
それは……大変なことになるな。どこで風石が大きくなっているのかわからない以上、突然今のように街の一部とか国の一部が浮かび上がる可能性があるということだ。そうなれば被害はとんでもないことになる。
「だから俺たちはエルフの国にある『聖地』を目指さなければならないんだよ! 『聖地』にある魔法装置なら、この風石の暴走を打ち消すことができる!」
「なるほど。それで『聖地』を奪還しようとしていたんだな」
「そうだ! 教皇様はずっとそのために動いていた! 虚無の『四つの四』をそろえて聖地へ行き、そこにある『魔法装置』を使用してこの風石の暴走……『大隆起』を止めなきゃいけないってな!」
ジュリオは、今までロマリアが何のために暗躍してきたのかを熱弁する。……今まで黙っていた鬱憤を晴らそうとしているようにも見えた。
「それを言って各国に協力を頼めば……」
「信じないだろう! お前たちみたいな馬鹿は見てないものを信じない!」
そういわれてしまえば、確かにと頷いてしまう。たとえ本当でも、聞いたこちらが「嘘ではないか」「ブラフなのでは」「ほかのことを隠すために言っているのでは」と疑ってしまえば、さらに協力するのが遅れてしまう。下手をすれば明日にでも今の山のように浮かび上がってしまうのかもしれないというのであれば、協力してくれなさそうなジョゼフを排除し、新たな虚無を配置して、からめ手で協力せざるを得ない状況にするというのが一番早いものだったのだろう。それでもこちらが抵抗するから、最終手段でこの『大隆起』を見せるしかなくなった、ということか。
「……お前の抱えているものは、それほどのモノだったんだな」
それならば、と俺は続ける。
「こうまでされちゃ信じる信じないとかじゃないな。協力してその『魔法装置』を取りに行かなきゃ、世界が混乱する」
「お前……」
意外そうな顔で、ジュリオが俺を見上げてくる。
「なんだ? 今まで邪魔しまくってたから、今度も邪魔すると思ったのか?」
「……いや、お前のことだからもう二、三変なことを言われると思ってた。こんなに素直にうなずかれるとそれはそれで気持ち悪いな」
「言うじゃないか、兄弟。……さて、一度降りるか。どうやら、教皇たちとも話さなければならないことができたみたいだからな」
そう言って、俺はヴィマーナに飛び乗る。
「……ちょっと」
「わかってる。降りながら説明するよ」
そう言って、ルイズから操縦権を戻してもらい、ヴィマーナではなく竜に戻ったシルフィードに乗って、俺とルイズ、タバサの三人は地表へと戻るのだった。
・・・
地上に降り立つと、下でも戦闘は中断されていた。東花壇騎士団の団長のバッソ・カステルモールがヴィットーリオとともに立っているのを見るに、先ほどの騒ぎが起きるまでは人質にでもして膠着状態を維持していたのだろう。じゃなければ人数差で押しつぶされていただろうし。
「どうやら、そちらでもご覧になれたようですね」
落ち着いた口調で、ヴィットーリオが微笑みながら言う。すべてを見透かすような……というか、今回わかりやすく「帰る」と言い出したのは、この辺で『大隆起』が起きることを予測していて、こちらに近づいてきた俺たちかその手の者にこれを見せつけるためだったのだろう。実際見透かされていたわけだ。
そして、それからはヴィットーリオ達の独壇場だった。『大隆起』は地面に生成され続けた『風石』によって大陸が浮き上がる、数万年に一度の現象で、彼らロマリアが調べたところによると、このハルケギニアの五割の土地が浮かび上がってしまうんだそう。
「……ふむ、まぁその『大隆起』のことも『聖地』のことも信じるとして……こちらでも調査はしたいな。資料と手法を共有してもらえるか?」
「もちろん。こちらとしても、情報の裏どりをしてくださるのは助かりますからね」
「後、ガリアの件だが……シャルロットを玉座に戻す気はないんだな?」
「ええ。ガリアは大国にして『聖地回復連合軍』の要。女王が『担い手』でなければ、末端までの士気が上がりませんので」
「ほう。じゃあアルビオンの士気は最悪か?」
「……はは。ご冗談を。『担い手』ならずとも、貴方はその使い魔。同じ虚無の同胞であるわけですからね」
俺の言葉にも、ヴィットーリオは真面目に返してくる。……これ以上の隠し事はなさそうだが……。
「ガリアについてはシャルロットからもジョゼットに任せるとは聞いている。そこはまた、すべてが終わった後に話せばいい。……後は、それだけか?」
「ええ。ガリアの女王が即位した後……つまり園遊会の後にハルケギニアの国主の皆さんを集めての会議を開きます。そこで、さらに今後のことを詰めていければ、と」
その言葉に、俺は頷きだけを返す。とりあえずはその聖地にあるという魔法装置を見なければ、どういう意図があるかもわからん。今は風石による大隆起が真実であるという裏付けをして、諸国連合による聖地奪還に協力していくしかないだろう。
ヴィットーリオはロマリアの聖騎士、ガリアの騎士たちに向けて「争いは終わり、我等は真の兄弟となった」と声をかけると、ぎこちなくとも両軍は友好的に握手し始めた。おそらくけが人はいても死人までは出ていないというのが大きいだろう。そうじゃなければ、こんなすぐにわだかまりは解けない。
「……ギル」
「わかってるよ。こっちでアンリと話は進めておくから、ルイズは……エレオノールに連絡してもらえるか?」
「エレオノールお姉さまに……?」
「ああ。研究機関で働いてるんだろ? しかも『土』の専門家と来たもんだ」
なら、地中に埋蔵されている風石の調査にこれほど向いている人もいないだろう。こちらも学院に声掛けしておくか。あの先生なら土のことで頼れそうだし……ギーシュあたりにも声をかけて、水精霊騎士団を動かすとしよう。
「……わかった。手紙を出しておくわ」
「頼んだ。ま、アンリからアカデミーの方に命令は行くだろうけどな」
それでも先触れは必要だ。こういう調整をしておかないと、人はすぐには動けないからな。さて、あとはシャルロットたちのことだ。彼女自身は別に『シャルロット』という名前と一緒に玉座を明け渡しても別にいい、ということだったが、それはそれで問題がある。彼女をもとに作り出したタバサの名も使えないし、生前のころのように『真名』の慣習があるわけでもないし……。とりあえずアルビオンの王宮でメイドとして働く、と言ってくれたので、タバサとともにシャルロットは俺付の専用メイドということになる。……風韻竜のシルフィードも、それに倣ってアルビオンで働くと言っているらしいし、そこなら安全だろう。
後やるべきことと言えば……イザベラを通じてガリアの方へちょっかいをかけ続けるのと、アンリにこれからのことを相談するだけだな。
・・・
「……すごい、文章がするすると頭に入ってくる! 走り出したペンは、止まらない……!」「うお、すごいなこの栄養剤……やっぱりあの時の研究で出来ただけはあるな。空き瓶を宝物庫に戻せば補充されるし、便利なものだ。神代の霊薬」「……この子、頭馬鹿になったりしないよね?」「しないしない。未来の元気を先取りしてるだけだから、明日の今頃には反動が来るくらいだよ」「……可哀そうに。ま、同情してあげるだけだけど。じゃあ、今日の夜もこの子は元気ってコト?」「ああ、たぶん気絶もできないんじゃないかな」「……ふぅん。そぅなんだぁ……」「……謙信? 目が怖いぞ?」「ふふ。そんなことないよ。いつも通りだとも。……そうだよね?」「アッハイ」
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