ポケットモンスター special of transporter   作:熨斗付けた紅白蛇

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4話 シズクと"水"の残滓

 ざくピチャ、ざくピチャ

 

 さくさくさくさくさくさく

 

 隣に簡易の雨合羽を着せたシズクを伴いながら、雨に濡れた草原を傘をさして歩いて行く。

 地図には大まかなことしか書かれていないため、川の方向ぐらいしかわからなかった。片手にコンパスを持ち方向を確かめながら進みながら、となりのシズクを見やる。

 

 非常に楽しげに、シズクは歩いていた。水の冷たさが心地よいとばかりに脚が濡れることも気にせずに、さくさくと歩いて行く。

 雨の中を歩くことを選んだのは、シズクだけだ。ホムラは嫌そうに鳴くとボールに入り、ライカは特に何の反応も示さずボールに入った。進化前でありながら示される反応はまるで進化後のようで。それはたしかに、かつてのゲーム時代の残滓だった。

 

「シズク、雨は良いか?」

 

「……ブイッ」

 

「水は好きか?」

 

「ブイっ……!」

 

 問いかけられることに愚問だと主張するように、シズクは雨合羽を邪魔そうにしながら歩みを止めることなく雨の降る空を見上げる。雨を見つめる。

 

「……そうか。水が好きか」

 

「ブイ……!」

 

 川を探すと言う目的を半分忘れ、機嫌良く雨の中を歩いているシズクを見ながらトゥルーは考える。

 シズクという名前は元々シャワーズになっていたからと付けた名前だった。ホムラとライカも同様だった。だが、今のシズクたちはイーブイに戻っている。つまり、好きなタイプになる権利を再び手に入れているのだ。今までトゥルーはまた同じ進化先にするつもりでそれに対応するニックネームを付けた。進化させる先を決めていた。

 だが、この世界ではトゥルーだけでなくシズクたちも意思や感情がある。

 ならば、

 

「進化先を選ぶ権利は、シズクたちにもあるよな」

 

「……ブイ?」

 

 ポツリと呟くように言われた言葉に気づくと今まで雨に見惚れるようにしていたシズクは不思議そうにトゥルーを見つめる。

 その視線に気づいたトゥルーはふわりと普段見せないような柔らかい笑みを浮かべる。

 

「シズク、なりたい進化先があるのなら、それになっていいからな」

 

「………………ブイ?」

 

「言葉のままだから深く考えなくていいぞ」

 

 突然のことに訝しげにトゥルーを見ていたシズクだが、なぜ言う必要のないこと(・・・・・・・・・)を言うのかと不思議そうにしながらも気にせずに歩みを進めた。

 

 

 雨は、弱まってきていた。

 

 

 

「………………あ、しまった。川は見つけたけど時間かけすぎた」

 

 

 

 _________

「それじゃ! 行くぜ!!

 またな! ゴロウ! オーキドのじーさん!」

 

 トゥルーがいる場所から少し離れた場所で、少年がオーキド博士とゴロウという少年に別れを告げて旅立って行く。

 ゴーグルを身につけて、スケボーに乗って、隣にヒノアラシを連れて。

 

「目指すはあのヤローと盗まれたワニノコ」

 

「さあ行こうぜ! ……相棒!」




トゥルーさんは、思考が脱線しまくったら色々と脱線する人です。または他の物事が疎かになるとも言います。
……ダメじゃん(汗
次はもう少しましな動きが出来たら…いいな……


実のところこの話、シズクの進化先決定話だったりします。今まではそれぞれのNNが表すタイプに進化させる予定でした。進化の石で進化できる先とも言います。
ですけど、それはある意味ゲームの時の感覚が抜けてなかったからこそ付けた名前だった訳です。
ゲーム時代の残滓のようなホムラとシズクの反応を見はしました。ですけども、あくまでも残滓。
ホムラは嫌がりはしました。けれども、実際にブースターなわけではない。シズクは水を好みましたが、シャワーズなわけではない。
進化の可能性のかたまり、イーブイ。三匹はたしかに進化前でしかなく、例え進化後を体験したことがあっても、再び同じ進化をしなくても良いわけです。

まあ、シズクは悩む必要なんて無かったんですが。

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