艦これ海上護衛戦   作:INtention

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お久し振りです。前回の投稿から4か月も空いてしまいました。
失踪かと思われた方も多いかと思いますが、単純に忙しかっただけです。文章は書いておりました。
じゃあ投稿すれば良いじゃないかという話ですが、その通りですね。申し訳ございません。


第二三話 西海の護り

秋が深まる昼下がり、俺は一人で事務仕事をしていた。

うず高く積まれた未決済の山は無くなりそうにない。原因は2つある。

1つ目は第七艦隊の安否が気になって仕事に手が付かなかったためだ。艦隊の初出撃は波乱万丈だった。これでもかと敵襲があり、ひと時も安心出来なかった。司令官なのだから、堂々と構えていれば良いのだが、遠く離れた司令部で報告を聞くだけというのは何とも歯がゆいものだ。護衛艦に乗り込んで直接指揮を執っていた気分がまだ残っているのだろう。半ば強引に三航戦をトラックから引き出したため、救援には間に合ったが、仲介の鳳翔さん達には後でお礼をしなければならない。

2つ目の理由は単純で三日月がいないからだ。彼女は真面目さ故か、事務仕事が得意だった。俺はむしろ苦手なので、彼女に大きく助けられている点があった。第七艦隊はスタッフが少ないのと、他の艦隊と比べても重要書類の数が多いため、自分の目で確認しなければならない仕事が多いのだ。日本特有の紙文化も大いに影響している。決済システムがあるのに、なぜ紙に出して印鑑を押す必要があるのか理解出来ない。

愚痴を言っても仕方がないが、明日から出張だ。更に書類が溜まる未来が頭に浮かぶ。事務をしてくれる艦娘が欲しい。

 

 

 

翌日、朝のブリーフィングに参加してから出発する。第七艦隊が護衛しているテ82船団は無事グアムを出発したようだ。後数日で房総沖に到着するだろう。テ82船団だけでなく、他の船団も無事に航行している。

今日が無事なだけで、この前は自由航行していた輸送船4隻がロンボク海峡で次々と撃沈される事故が発生していたため、気は抜けない。護衛体制の強化はもちろんだが、責任を我が第七艦隊が負うか、護衛艦隊が負うか、はたまたインドネシア政府が負うかで議論が始まっている。我が艦隊からは保科参謀長が軍令部に赴いて説明を行う予定である。

俺が行くべきところであるが、実務に詳しい保科の方が適任だろう。それに、背後の調整が必要である。今回の出張ついでに各方面を回って味方を増やす予定だ。

これから向かうのは佐世保。西海の護りとして栄えた軍港だが、アメリカ軍の撤退後は海上自衛隊の基地だけが残っている。

羽田から長崎空港へ飛び、軍の車で佐世保へ向かう。空港で待ち合わせた黒塗りの高級車は自衛軍特有の数字ナンバーなので、すぐに分かった。

セダンは俺を載せるとすぐに発車した。途中、ハウステンボスの横を通る。駅から川を渡る橋の上には楽しそうな子供連れの家族が見えた。父親は自分と同じくらいの年齢だ。自分にも、彼らのような人生を歩む可能性だってあっただろう。何なら今からでも遅くない。だが、これまでのように、国を守る事を第一に考える姿勢が変わる事は無いだろう。そう思って前を向くと、バックミラー越しに運転手と目が合った。運転手は気まずそうに前を向く。変な所を見られたな。

国道205号線をJR大村線沿いに北上する。主要幹線道路だけあって車の数は多い。

 

「少将は艦娘を率いていると聞いていますが、本当ですか?」

 

車窓を眺めていると、運転手が話しかけて来た。

 

「ああ。駆逐艦しかいないがな」

「護衛艦も駆逐艦だけですが、艦娘も同じですか」

「いやいや、ちゃんと戦艦や空母もいますよ。多用途運用護衛艦みたいに言葉遊びはしないみたいだ」

「じゃあ本当に駆逐艦なんですね。若い女の子と一緒の部隊なんて羨ましいです」

「女の子ねえ。見た目は小学生くらいだけど」

「自分の娘みたいな感じですか」

「まあね。でも自分の娘を進んで戦場に送り出す親は親じゃない。そういう点では娘には思えないな」

「そんなものですか…」

 

運転手はそれ以上話しかけて来なかった。

 

 

 

車に乗ること小一時間。佐世保の街へ到着した。真っ先に向かったのは佐世保鎮守府ではなく、佐世保地方総監部だ。

更衣室を借りて軍服に着替える。階級章と勲章のお陰か、待たされることなく地方総監室へ通された。

 

「君が第七艦隊の長官か。よく来たな」

「は!お初にお目にかかります」

「そう固くならんでいいよ。第七艦隊と言えば、佐世保基地(ここ)にいた第三艦隊を引き取ったんだったな」

「はい」

「佐世保鎮守府設立当時は再前線だったが、後方戦線になった今では戦果が激減していてね。心配していた所にあのニュースだろう」

「私自身も驚きました」

「佐世保総監としては、第五水雷戦隊(5sd)が佐世保から撤退した後も東支那海の安定のために寄与して欲しいところです」

 

世間話かと思ったらこれが本音か。

 

「もちろんです。連合艦隊に伝えましょう。海上護衛作戦では佐世保も重要な拠点ですから、護衛艦隊とも連携を強化し、安定した通商を確保して行きます」

「頼りにしてるぞ」

「はい。明日、機動部隊の幕僚と会う予定ですので、佐世保に拠点を置く事を提案してみましょうか」

「本当かね!?」

 

俺の提案に総監は目を見開いた。

 

「主力は横須賀や呉に集中していますからね。関連設備はフル稼働ですから、分散先として佐世保も十分候補になるでしょう。ただ、艦娘の受け入れ体制は強化すべきと思料します」

「もちろんだ。米軍がいなくなった後、艦娘用の施設は拡充している。技術者の育成も進んでいるし、佐世保重工業(SSK)では君の所の"皐月"を修理した実績もある」

 

力説通り、かなり力を入れている様だ。技量については今度皐月に聞いてみるか。

 

その後、一通りの挨拶を済ませ、庁舎を出た。ロンボク海峡の事件で敵対しているかと思ったが、そうでも無かった。少なくとも表面では友好的に扱われる程度の信用はあるらしい。艦隊誘致の話が効いたか。

 

地方総監の次は道を挟んで反対側。自衛隊の病院だ。

受付で名乗ると、待合室で待つように言われた。待たされると思ったが、数分もしない内に白いヘルメットを被り、"警務"と書かれた黒い腕章をした隊員に取り囲まれた。警務官…つまり憲兵である。

 

「長官ご本人か、確認させて頂きます」

「構わないが、すごく厳重だね」

「艦娘相手ですから」

 

IDカード、顔認識などを経て、本人確認が済んだ。最上階に上がり、一番奥の部屋へ入る。かなり良い待遇だと思っていると、扉に鍵が掛けられていた。部屋の良し悪しでは無く、監視のしやすさを考えた結果のようだ。艦娘は箱入り娘みたいな存在だし、国家の最重要機密だから仕方無いのかも知れない。

警務官が扉を開けると、ホテルのような空間が広がっていた。病室は広く、簡単なキッチンや個室のトイレまで付いている。

窓際に近いベッドには一人の女性が横たわっていた。こちらに気が付くと、起き上がって姿勢を正そうとしたのを手で制し、来客用に置かれていた椅子に座る。

 

「初めまして。私は…」

「第七艦隊司令長官ですね」

 

名前を言い終わる前に、その人は短い茶髪を揺らしながら答えた。会うどころか顔すら知らないが、一目で目的の艦娘だと分かった。

他の艦娘もそうだが、初見では彼女が兵器だと思えない。モデル並みに整った見た目をしているので、本物の人間では無いことを察することが出来る程度だ。

 

「そう。今月から君の上官になる者だ。いや、上司と言うか…、今日は職場の上司では無く君の保護者として会いに来た」

「保護者…ですか」

「君に命令を出すし、君の行動責任を負うからな」

「せっ、責任?」

 

心理的な病を持つ相手にどう接すればいいか分からないが、いきなり高圧的に当たるのは間違っている気がした。言葉を選んだつもりだったが、反応を見るに対応を間違えたかも知れない。カウンセラーの資格など持っていないので、正解は分からない。こう言う時、身近に女性がいれば頼もしいのだが。自衛隊のWACは高嶺の花だし、俺の相棒は太平洋にいる。

彼女は何か考えていた様だが、やがて伏目がちの顔を上げ、艦名を述べた。

 

「名取といいます。ご迷惑をおかけしないように、が…頑張ります」

「こちらこそよろしく。明日退院と聞いたけど、本当かい?」

「はい。公式発表は来月ですが。調子が良いので」

 

精神的な病と聞いて心配していたが、時折笑顔を見せているので大丈夫そうに見える。

実は退院の手続きは済ませている。情報が漏れない様に関係者を絞った。この病院の職員でも知っているのは一部のみだろう。

 

「いきなり復職するのも難だから、俺の挨拶周りに付いて来るかい?」

「え…それは」

「艦娘である事は出さず、秘書兼護衛って事でさ」

 

我ながら良い案だと思う。挨拶周りついでに観光するのは良い気分転換になるだろう。

 

「提督がそう言うのなら、構いませんが…」

「よし。決まりだな」

「……」

「……」

 

俺は話上手では無いので、必要な事を話したら話題が無くなってしまった。彼女も静かな性格の様で、黙っていた。

お互いに窓の外を眺めたりしていたが、ふと目が合ったので何か話す事にした。

 

「君の大切な旗を貸してくれてありがとう」

「は、旗?あ…、水雷戦隊の旗ですね」

「あの旗のお陰で三日月が艦隊旗艦の役目を果たせている」

「それは、良かったです…」

「艦隊が帰還したら返すよ」

「いえ、べ、別にいいです。私より必要な人が持つべきです」

 

憂いを湛えた顔をしている。謙遜だと思うが、誉である水雷戦隊の証を拒絶するという事は無意識に実戦を避けている可能性がある。戦いに熱意が必要とは言わないが、十人十色の駆逐艦を率いて実戦に戻るのはまだ早そうだ。

 

「それならば、もう暫く借りておこう。ところで君…いや、名取は事務仕事は得意かい?」

「事務仕事…?」

「そうだ。書類や契約書の処理とか」

「出来ますけど…」

「じゃあ横須賀に着いたらお願いするよ」

「えっ…。あの、戦わなくて良いのですか?」

「君が嫌ならば無理は言わない。今はそこまで戦局が悪い訳では無いし。出撃しないのならば、司令部で事務仕事をしたり、航空隊の訓練をして貰うよ」

「分かりました」

 

名取は少し顔を明るくして頷いた。今度の提案は上手く行ったようだ。名取のためになるし、事務仕事を担当する艦娘も手配出来て一石二鳥だ。これで就役するかも分からない軽巡大淀の妹"仁淀"をスカウトしようと考えなくても良くなる。

 

 

 

名取との会話はのんびりとしていて、仕事で来ていた事を忘れそうになる。経歴や出撃以外の話であれば通常通り会話が出来た。常に自信が無さそうな話し方なのはトラウマというより性格だろう。艦娘の性格は人間よりも人間らしい。

常に警務官が入り口に立っていたので、仕事以外の話は明日以降にする事にした。




これまでに書いた話も少し見直そうと思います。
シナリオは変えませんが、誤字脱字や情報の更新などが主になります。
情報の更新とは、当時は知り得なかった"DDGまや"の進水や"DDHいずも"の空母化などです。(まさか艦船月刊誌のうわ言だと思ってた空母化が実現するなんて…)

後は、コメントにて論破された部分をどうしようかという点を悩んでいます。
言い回しを訂正するか、指摘通りの対応を求められる事にするか…。これらは艦艇の正確なデータがあれば発生しなかった点が多いと思います。雑誌や書籍・wikiには就役時のカタログスペックしか載ってないので、改装後の性能がよく分からないんですよね。一体何を見れば答えが載っているのだろうか…。
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