文月学園。そこは馬鹿と変態と外道どもの巣窟。
 そこに在学する馬鹿にして変態にして外道。そして悪役を任ずる「佐山」の姓を持つ者の物語。
 

 この小説は終わクロ×バカテスの短編小説というかプロローグ的なものです。ちょろっと思いついて何となく書いてみただけなのでたぶん続きません。

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馬鹿と変態と外道ども

 長い坂道がある。中々に急で、上るたびにそこそこにキツイ労働を強いてくる道だ。その道の両脇には春の代名詞たる桜が舞っており、その花びらがヒラヒラと散っていくさまはひどく美しく、誰もが目を奪われる光景だった。

 その坂を様々な少年少女が歩く。共通点は二つ。殆どが大体同い年である事。そして文月学園の制服を着ている事だ。

 その坂の上には一つの高等学校が立っている。その玄関口と校門のあいだの前庭とでも言うべき場所。そこに一組の男女の姿があった。

片方の少年は髪をオールバックにしており、白髪が一房だけ横に撫でつけられている。長身であり、顔は無表情だ。

 その隣を歩くのは同い年であろう黒の長髪を持つ少女。その少女の顔は申し訳なさそうな感情を顔に張り付けており、その表情にふさわしい口調で隣の少年へと口を開いた。

 

「……ごめんね、佐山君」

「昨夜も言ったが新庄君が謝ることではない。この結果は私の意思であり、私がしたいからこうしたのだよ?」

「そうかもしれないけど……」

 

 釈然としない様子の新庄を見て、ああ、新庄君のそんな顔も素晴らしい。と思いながらも、ちらりと現在手に持っている紙片を見る。今年一年過ごす事になるクラスがかかれている紙だ。

 Fクラス。そう書かれていた。先ほど確認したから新庄も同じだ。

 新庄君と同じクラス。その時点で佐山にとっては幸せ絶頂ヒャッハー状態なのだが、彼女にとってはそうではないらしい。佐山は思考を巡らせる。どうしたものか、と。自分の行動のせいで新庄君が落ち込むというのは本望ではないと。

 元気づけなければならない。だから佐山は口を開いた。

 

「ふむ、では新庄く……」

「待って。何を言うか大体わかるから。言わなくていいから」

 一瞬の速さでの拒否だった。新庄は分かっている。佐山の考え込んでからの発言はろくなことがないと。そして、この程度の拒否で止まるような男でもないと。

「さすがは私と新庄君の仲だね! 言葉にせずとも伝わるとは! さて、互いに完璧な意思疎通が図られたところでさっそく行かせてもらうとしよう」

「ねぇ、佐山君。なんで手をわきわきさせてるの?」

「ふふ、この公衆の面前でそんな恥ずかしい事を聞くとは新庄君はやはり素晴らしいね。私は常識人で恥を知る男だから遠回しに言わせてもらうと……尻をこねくり回そうかと思っていてね?」

 

 新庄は無視することを選んだ。

 

「ふむ、無言の肯定を得れたところでさっそく」

 

 新庄は無言でネクタイを締めあげ、佐山の意識のシャットダウンを計った。

 

「朝からいちゃいちゃするのはいいが、ここで気絶させると遅刻するぞ」

「だ、誰!? ものすごく不名誉な言葉でこの状況を言い表したのは誰!?」

 

 佐山が恍惚とした表情をし始めていた時、背後から聞こえた声に新庄はネクタイを締める手を離す。かなりいい感じの締め付けだったのか、すっかり力の抜けきっていた佐山はそのまま地面に崩れ落ちた。

 そこにいたのは一人の男子生徒だった。長身で赤毛。野性味たっぷりと言う表現がピッタリの顔。それは新庄にとって知人である男子の顔だった。

 

「あ、坂本君か。おはよう」

「ああ、おはよう。佐山は大丈夫なのか?」

「あ、うん。大丈夫だよ。──殺したぐらいじゃ死なないし」

「お前はたまにすごいことを口走るな……」

 

 事実だからしょうがない。

 このまま放っておいても大丈夫だろうと新庄は思うものの、現在位置は玄関口のすぐ前。つまりは道のど真ん中。このまま放置するのは周りの生徒への迷惑となるし、こんなものを路上にのさばらせておくのはこの世の害悪だ。だからとっとと起こすべく肩をゆすってみるが、いい感じに入った締め上げのおかげで中々起きる気配がなかった。

 その様子を何をするでもなく眺めていた雄二だったが、やがてニヤリ、という表現がピッタリの笑みを見せる。

 

「新庄、ここは俺に任せてくれないか?」

「え? うん、良いけど……」

 

 彼は佐山の耳元へと口を寄せ、言った。

 

「今起きたら新庄が膝枕してくれるってよ」

「本当かねそれは!?」

「いきなり何を言ってるんだよ!?」

 

 一瞬だった。

 佐山は一瞬で直立不動の態勢をとる。そして近くに坂本の姿を認めると相変わらずの無表情を崩さないままに言った。

 

「なんで起きざまに貴様の野蛮なアホ面を見なければならないのだ馬鹿が死に腐れ」

「相変わらずだなテメェはよ……」

 

 額に青筋を立てながら言いつつ、渾身の右を放ちたくなるのを必死で堪える。普段の雄二ならば即座にマウントポジションを取得するべく行動を起こすのだが、すぐ後ろの校門前には生活指導の西村先生が所属クラスの書かれた紙を配っている。あまりの人外ぶりにまたの名を鉄人と呼ばれし彼の近くで喧嘩をおこせばどうなるか? その答えを導き出すのはそう難しい事ではない。

 

「遅刻すっぞ、急がねえと」

「貴様も一緒に来る気かね?」

「いや、テメェはムカつくから先に行く」

「それが正解だね。私と新庄君のさわやかな登校時間を邪魔するならば佐山法第二十七条にのっとり処罰せねばならん」

「…………」

 拳をわなわなとふるわせながら坂本は去って行った。

「さて、新庄君。邪魔者は去ったところでさっそく膝枕を要求したいが構わないかね?」

 

 それをしたら確実に遅刻するだろう、と新庄は思う。が、坂本が勝手にしたこととはいえ約束は約束だし仕方ないよねうん。仕方ない。

 理論武装は完璧。だからとりあえず妥協点として言った。

 

「教室に着いたらね」

「そうか、では急ぎ向かうとしよう」

 

 そういって、二人は歩き出す。

 目指すは文月学園校舎。

 そこは、馬鹿と変態と外道どもの巣窟だ。

 


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