エロエロンナ物語   作:ないしのかみ

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外伝11の頭を飾る予定でした。
でも、やっぱり長くなってしまったのでこちらへ掲載します。


〈幕間〉、魔界

〈幕間〉、魔界

 

 魔界とはこの世とは別の異世界である。

 で、終わってしまえば楽だろう。実際、世の中の多くの人間はそれ以上の情報を知らない。

 それは、魔界なる物の実体が余り判っていないのに起因する。

 

 魔界が初めて認知されたのは古代王国時代にまで遡る。

 それまで知られていなかった異世界であり、突如、エルダに魔界の門が開いたのである。

 その世界には世界を統べる魔王なる者の存在があり、その支配下にある眷属として、魔族や魔物等が大挙してこちらへと侵攻してきたのである。

 彼らは異形の姿をしている者が多く、種類も千差万別で、例外なく魔力が高かった。身体能力を使うように、生まれ持った【生体魔法】を使いこなす恐るべき侵略者であった。

 

 超古代文明滅亡後、エルダ界は混沌とした状況に置かれていたが、この魔界の侵攻に立ち向かうが如く、分裂していた勢力が一致団結して一つの勢力が出来上がる。

 古代王国の誕生である。

 劣勢であったが、古代王国は団結して時の魔王を討ち果たし、少数精鋭の英雄達が魔界の門への逆侵攻をかける。

 そして門を閉鎖させ、その接触を断つ事に成功したのだ。

 

 だが、英雄達は魔界からは帰還しなかった。その為、門の向こうの世界、魔界とはどんな場所なのかを記述する記録は残念ながら残されていないのである。

 現在、魔界の様子として知られる記述は、捕虜となった魔族達より尋問で聞き出した内容が主であり、その信憑性はかなり怪しいと思わざる得ない。

 彼らが真実を語っているとは限らないからである。むしろ、情報を混乱させる為、ある事無い事を捏造している可能性だってある。

 更に純粋に、本当に魔界からやって来た第一世代が少なくなり、エルダで産まれた第二世代以降が魔族達の中心となると、親から聞いた記憶が歪み、間違って伝わっている場合もあるだろう。

 

 その中でも証言を精査すると、ある程度の共通項は出てくる。

 魔界とは魔族が統べる地である。

 頂点は魔王と称される、もっとも力のある魔族が支配者として君臨している。

 魔王とは単に力の強い魔族ではなく、魔王以外の者は無条件に臣従する絶対的な支配力を持った存在であるらしい。

 その世界は弱肉強食な荒れた世界であり、戦乱が続き、魔族同士の抗争も絶えない。しかし、魔王は自分の支配領域外に関しては干渉せぬ、比較的緩やかな統治を行っているらしい。

 但し、例外はある。

 それは魔王となるべき存在が複数現れた場合である。その場合、新たな魔王は周辺の魔族を取りまとめ、新たなテリトリーを確保するべく、異世界への侵攻を始める。

 一つの世界に魔王は二つ並び立たないからである。これは我々の世界で類似の物としては、新女王が誕生して分蜂される蜂の行動にも似ている。

 

 過去、魔王同士の戦いは不幸しか起こらなかった為、もし魔王が誕生した際は一方が別の世界へ去る事が不文律になったらしい。

 つまり、エルダに開いた魔界と呼ばれる世界も、元々は単なる異世界で魔族が侵攻してくる前までは、魔界では無いとの話になる。

 だから、氷に閉ざされた永久凍土地帯やら、猛毒のガスが蔓延する湖沼地帯だのとの特異な場所とかも供述に残るが、殆どは我々の世界とは変わりない光景が多数を占めるらしい。

 但し、農業や漁業の様な一次産業の全ては奴隷が担い、支配階級は全く生産には携わらずに、退廃的な遊興にふけり、唯一の生きがいである戦に興じているとの話である。

 女系魔族。淫魔の様な魔族が煽情的で退廃的な姿をしているのも、そのせいであろう。

 

 それはともかく、こうして古代王国は魔界の侵攻を防ぎ、魔界からの援軍を絶たれた魔族は暴威を振るいながらも、徐々に衰退する事となる。

 倒された魔王の後継は立てられたが、幸か不幸か(エルダ側にとっては幸運であったが)、それは真の魔王とは言いがたい支配力の弱い存在であった。

 無論、それなりの支配力はあり、膨大な魔力や高い戦闘力も侮り難い存在ではあったのだが、魔王に必須とされる『全ての魔族が忠誠を誓う、絶対的な支配力』を有しておらず、魔族の間に綻びが生じたのである。

 ヤシクネー族の離反が一番良い例かも知れない。

 奴隷として使役され、自分達が上位魔族の食料として食べられる事に何の疑問を抱かなかった彼女たちが、魔王の精神支配に支配されていた世代から代を重ねて、遂にそれに反発してエルダ側に寝返ったのである。

 

 そう、魔族も世代を重ねる毎に魔王からの呪縛を受けなくなって行ったのだ。

 魔族だからと無条件で連携し、犠牲を厭わずに一糸乱れず行動する軍隊アリの様な行動は、魔王の支配故の産物である。

 魔王が「捨て駒となって死ぬ」と命令すれば、魔族は何の躊躇も無く、「はい、魔王様」と捨て駒となって命を散らしたのだ。しかし、これはもう過去の光景である。魔王の道具では無く、個々が自分の考えで行動する個人になってしまった魔族には、この真似は出来ない。

 ただ一つ危惧するのは、魔族の中から『真の魔王』が再び誕生しないかだけであるが、こればかりは余りにも不確定要素が大きく、予想がしがたい。

 我々に可能なのは、悪夢が再び起こらぬ事を祈るしか無いのである。

 

 この魔族との戦いが古代王国の歴史とも言える。

 古代王国は建国から終焉まで、ほぼ魔族との抗争に国力を費やして、戦いに終始した。

 その結果、魔族の技術を取り入れて、魔法が異常に発達した社会を形成した。それは現代でも再現不可能な高度な魔法も多い。

 しかし、それでも次元に干渉して、別の世界へ通じる門を開ける魔法は再現できなかった。

 かの女傑、テラ・アキツシマが「そいつがあれば、もしかしたらあたしの世界へと帰還できるのに」と嘆いたとの話は余りにも有名である。

     

ラルフ・カーンズバック著『古代王国誌、別冊』




魔界のお話でした。
魔族はそれでも生物(いきもの)なので、特殊ですが時が来ればいずれは死にます。
魔王はその為に魔族の血統を他次元へと送って、種の保存に尽力するのでしょう。
え? 次元を越えて、異世界への扉が再び開く事があるのか?
それは未定です(笑)。

外伝の方は今週末にまで上げる予定です。
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