久々に〈幕間〉付きです。
〈幕間〉、西方服装史
古来から衣服は防寒などの実用的な側面以外、纏う者の地位を表す物としても機能してきた。
最初に文明が興ったと言われる(妖精族、特に南大陸の者ははこれを否定するが)、超古代文明では、かなり様々な装いが着られていたらしい。
らしい、と曖昧なのは遺跡から発掘される他に現物が残ってない為である。
また、記録の上でも記述は少ないが、その残滓と言える装いは現代に繋がる服の系譜として受け継がれている。
特に身体にフィットする形式の服。レオタードやボディスーツ系の装いはこの文明期でよく見掛けられる物が、現代まで残った物と言われている。
本当かどうかは眉唾なのであるが、こうした服を着用した超古代人が海面下何万メートルもの深海や、星空の彼方の世界まで行ってしまうとの話すらある。しかし、露出度の高さから、これはお伽話なのだろうと結論せざる得ない。
強化服(パワード・スーツ)や戦装束(バトルドレス)とか言う物であるらしいが…。
古代王国期に入ると流石に記録は増えてくる。
あの時代は貫頭衣系のゆったりした装いが中心だった様だ。
服地は麻が主な素材で、上流階級は絹を纏っていた。絹は東方からの輸入品で大変高価な物であったが、競う様に買い求められている。
また、やたらと貴金属の装身具を付け、顔にアイメイクをするのが流行った。これは一種の魔除けと、虫避けであり、実用的な側面もあった様だ。
中期に入るとかの女傑、テラ・アキツシマの影響で奇抜な装いが一気に広まる。
立体裁断法。バニースーツやパンツスタイル。逆にワソーなる平面的な裁断を駆使した形式(これは西方では広まらなかったが、東方に大影響を与えている)も伝えられ、バリエーションが一気に広がる事となる。
中にはビキニアーマーの様な奇抜な物すら含まれる。テラ自身が薄着を好んだ為、以後、女性が肌も露わな服装をするのがタブー視されなくなった側面もある。
テラが何処からこれらの衣服を考案したのか、それは謎とされており、今後の研究に期待する物である(なお、著者は「あたしの生まれた世界から」とテラが証言しているとの記録は、眉唾として一切を否定する立場を取りたい)。
また、綿花が西方で普及し始めたのもテラの功績であり、以後、木綿が主要な織物素材に加わった事は特筆されるべきだろう。
新暦期。当時は西方の社会全般が貧しかった。
東方では早くから統一国家、皇国が成立したのと違い、最初の200年程は戦乱が絶えない野蛮な世界であったのだ。
服装も実用的な物が好まれ、華美な装いが発展する下地が無かった。ようやく300年代に法国が建国され、宗教的な権威付けの為に神官服が発達すると、ファッションもどうにか華やかさを取り戻す事となる。
当然だが神聖で厳かだが、権威ある装いが好まれた。肌を隠した長衣スタイルが基本であるが、これは古代王国の物が基礎になっている感じであり、有り体に言えばリバイバルであると言えよう。しかし、この装いは西方の上流階級に影響を多く与えた。
新暦500年代以降、貴族女性の基本スタイルはドレスである。
しかし、これにも時代によって流行り廃れがあり、腕や脚を大胆に露出させたり、逆に身体をコルセットで締め付けて身体のラインを隠す物。などが周期的に流行する。
貴族以外の富裕層は、概ね貴族の装いに準じているが、それよりもボーンなどを使わない、活動的でラフなスタイルが好まれた。
庶民はめかし込んでいるとしても簡素な服装である。
生活は厳しく、庶民の服装は基本的に着た切り雀で、数着の着替えを着回すしか道がなかったせいでもある。
新ルネサンス期(新暦800年代)までは洗濯行為は、布を傷める屎尿法か灰を使ったアルカリ法でやるしかなかったのだから、無論、庶民の服は洗濯もされなかったのだ。
当時の洗濯とは重労働で、おかみさんが井戸端会議をしながら出来る様な代物では無かった。洗濯とは富のある富裕層だけに許された贅沢であったのだ。
新ルネサンス期に洗濯板と石鹸が登場した事を、庶民は感謝すべきであろう。
今の繊維素材は木綿や麻などの植物素材が中心で、他は羊毛。それと東方よりもたらされる絹。変わった所で南洋産の魔糸である。
この内、羊毛と絹と魔糸は動物性糸であるが、絹の正体は実は不明である。輸出している皇国が厳しく秘密を管理している為、西方ではそれが何らかの動物から採れる糸である事しか伝わっていない。それ故、恐ろしく高価な贅沢品になっている。
南洋産の魔糸は、魔族であるアラクネーやヤシクネーが吐く繊維である。これも恐ろしく高価であったのだが、大航海時代によるバニーアイランド再発見で、ヤシクネー達が魔糸を商業生産した事もあり、価格は暴落。頑張れば庶民の手が届くまでになっている。
繊維では無いが、同様にゴムの再発見によって、ファッションは新たなバリエーションを生み出している様だ。
チュチュ・パニエ著『西方服装史』より。
〈外伝〉実習航海9
化け物ミミズ。海魔の触手の上から、教授は三人を見下ろしていた。
「火山爆発。貴方の仕業かしら?」
「ブロドールではなく、私が手を下す羽目になるとはね」
教授はそれに答えず、如何にも面倒臭いと行った仕草でやれやれと肩をすくめる。
「どうせ、私達を生かして返す気は無いのでしょう?」
ビッチは教授めがけて魔導杖を向ける。
ガリュートとミモリは二人の関係が分からなかったが、この仕草で理解する。
あれは敵だ。と。
「ほう。何かの魔法を使う気かな?」
「裂けよ、【烈風】!」
公爵令嬢が唱えたのは真空の刃。いわゆるカマイタチを飛ばす攻撃魔導である。
初級魔導に属するが、射程は30mと割合長い。
熟練の魔導士であるなら命中さえしさえすれば、大木や、薄手の鉄の盾すら切り裂くであろうが、威力的にはビッチが使えるランクでは心許ない。鎧を着ていたらダメージが入るのか怪しいレベルである。
「おや、危ない」
化け物ミミズの頭部に乗っていた教授が、その場でジャンプしてひょいと避ける。やや下を狙いすぎていたらしく、真空の刃は土台であるミミズに当たって「かっ」と乾いた音を立てた。
「精度が悪いですね。良く狙う練習をした方が宜しいですよ」
「それはご丁寧に…ですわね」
範囲魔法ではない単体攻撃術なので、『放つ』と同時に『狙う』事が必要になるのである。それを指摘されたビッチは、相手がとてつもない余裕を持っているのに焦りを感じる。
こちらに飛び道具はない。教授は化け物ミミズの頭部におり、地上から数メートルの高さに位置している。よって、今、自分の持つ魔力が切れたら一方的に殴られるだけなのだ。
「そろそろ相手をして差し上げますか」
金髪縦ロールを揺らして残存魔力量を計算しだした彼女に、仮面の怪人は自分の長衣の中から、長大な棒状の物を取り出してうそぶく。
魔導杖の一種らしい。これを口に当て「ぴーよーよー」と不思議な音色を奏でる。
「笛なのか?」
「きゃあっ、ガリュートさん、ビッチ様ぁ!」
ウサ耳族の彼は、笛であろう音色の正体を探ろうとウサ耳をぴんと立てるが、直後にミモリの悲鳴が耳に入ってきた。
地面がボコッボコッと隆起し、泥状のヒト型。クレイゴーレムが何体も浮かび上がってきたからである。
「あああああああああああああああああああああああああああああっ…」
しかし、曲がりなりにも授業で魔導知識の習う士官候補生ならそう判断しただろうが、一般人で魔導とは縁遠いミモリには、それは地獄から現れた異形の魔物である。ヤシガニの身体を丸め、頭を抱えて恐怖に震えつつ、泣き叫ぶ事しか出来ない。
「これが、エロコが前に語っていた粘土人形(ネンドロイド)ですのね」
「班長」
ビッチの前にガリュートが抜刀しつつ、カバーに入る形で護衛に入る。
魔導を使えるのはビッチだけで、この攻撃手段が無くなれば教授に手も足も出なくなる。故に地上で対抗可能な雑魚は自分が引き受ける役割分担であった。
「ミモリ、済まない」
無論、これは行動不能なミモリを斬り捨てる形となるが、良心の呵責を感じながらも軍人らしく、大の為に小を捨てる判断をしたのである。
全てを救う事は現在不可能。なら『少しでも光明の見えて、最大限自分達の助かるベターな選択をせよ』が、学校で教えられる座学での戦略論であった。
「ヤスミーンが使えれば…ですわね」
竜の方は逃亡してしまっている。
余りにも激しく暴れるので、手綱を握っている方が危険とビッチが判断した為である。
無理すれば飛び立とうとして、引きずられて怪我をしかねないし、元々、ヤスミーンは戦竜と言っても純粋戦闘用とは言い難いタイプであった。
この教授戦に投入しても役に立つかどうか。と考えた時、彼女の鞍に連弩があった事を思いだして、舌打ちする。
あれだけは装備してから放すべきだった。
「後悔先に立たず、ですわ」
◆ ◆ ◆
クローバーは乳を飲んでいた。
母親であるタカトゥクが居ないので、仕方なく代用として食堂で出して貰った物である。
艦内で飼っている山羊からの搾り立てであるが、無論、タダではない。と言うか、かなり高い。酒並みの価格を取られた。
「おいしー」
「そりゃそうだろうよ。俺の小遣いが飛んでいるんだからな」
ちっちゃいヤシクネーは頭を傾げて、「お替わり」と元気よく要求した。
産まれてから一日と経っていないが魔族の成長は目を見張る程で、彼女の身体は大きくなり、また貪欲に知識を吸収していた。
特にダニエル付きの侍女二人が面白がって言葉を教えたので、言葉遣いもかなり操れるレベルになっていた。
「にしても大きくなったな。もうポケットに入らないぞ」
「そう? じゃ、何処で寝ようかな」
体長8cm程度だったクローバーだが、既に20cm程に大きくなっている。体色も透明だったのが色が付いてヤシガニらしくなっており、上半身の人間体も肌色になって、紫色の頭髪が伸びてきていた。幼いが顔立ちは母親似である。
「まだ、ぷよぷよしてるな」
「きゃははははっ、くすぐったい」
ダニエルの指先で触れられ、クローバーは笑い転げる。
身体がキチン質の外皮で覆われるまで、なるべく栄養を取って身体を大きくしなければならない。これは脱皮を繰り返す甲殻類の基本である。
「ダニエル様、部屋の掃除が完了しましたが…その」
そこへやって来たのはダニエル付きの侍女。確か、名はテルミと言ったか。
ベテランと若い方のコンビで、若い方である。薄紫の長い髪の毛を両脇で縛り、流しているツーテールが特徴で、背中には何故か大きな箒を背負っている。
「何だ?」
「タカトゥク様のオブジェを、どう処理したのか宜しいのか判断に苦しみまして、ご裁可をお願いしたいとアリエル様が」
「アリエルが?」
アリエルはベテランの方で、地位的にはテルミの上司に当たる。もっとも、ダニエル付きの侍女は二人のみなので、侍女長だが本家に帰れば下っ端である。
当然だが、ただのメイドさんでは無く、二人とも護衛も兼ねる戦闘侍女であった。
◆ ◆ ◆
夕刻。水位は徐々に下がっていった。
海面下へと沈んだ港の護岸が姿を現している。波にさらわれた港は建物が一掃され、悲惨の一言では済まぬ惨状であったが、何も手を貸す事は出来なかった。
「これ以上は、移乗もままなりませんな」
操舵甲板にて、艦長へ指導教官のデス・ルーゲンス少佐が意見を述べる。
乗せられる分だけ、練習艦で助けた難民を他船へと移乗させたが、既にフロリナ港に到着した船舶では手一杯で、これ以上は望めそうも無かった。
「残存人数は?」
「概ね、百人前後ですな」
エロンホーフェンの最大乗組員数は三百人。定数は二百人前後である。
食料や水の残量が気になるが、幸い、入港したばかりなので多少の余裕はあった。何とか航行可能であろうと艦長は計算する。
「いつまでも、ここに留まる事は出来ぬ。明朝出港しよう」
「行き先は?」
「先のマールゼンと同じく、本土か、或いはバニー本島の東岸域だな」
津波をもろに被った西岸域と違い、反対側の東岸域ではまだ被害が少ないのではないか、との希望的観測なのだが、これも行ってみないと分からない。
「本土へ行くと討伐艦隊との連絡は、ほぼ絶望的になりますからな」
「しかし、東部域でも無事な港があるのかは賭だ。
竜が健在ならば、事前に偵察も可能だったのだが…」
そしてそれを操れる、ビッチ・ロートハイユ士官候補生は行方不明のままだ。
明朝までに発見出来ず、未帰還となると彼女に死亡判定を下して、最悪、遺体回収すら出来ずに出港との結果となる。
「まだ希望はあります」
「私の考えてる事が分かるのだな…」
艦長はやや悲しい笑いを浮かべて、視線をルーゲンス少佐から外した。
「済みません」
「いや、構わんよ。しかし、そうであって欲しいものだ。
暫く休む。ずっと指揮を執り続けたので眠い」
余りにも色々な事があったので、忘れかけていたが大佐は一晩寝ていない。
少佐に「20:00まで休むが、何かあったら直ぐ起こせ」と言い残し、甲板を後にする。
◆ ◆ ◆
「こいつぁ」
自室で出迎えたのはアリエル。侍女長である。
背の高い女性だ。長いブラウンの髪の毛を後ろでまとめ上げ、大きな瓶底眼鏡で表情は読み取れない。顔立ちは整っていると思うのだが、ダニエルは素顔を見た事が無いので不明だ。
「どうしますか?」
声は若い。実際年齢も三十路を越えていない筈なのだが、口調は常に事務的なので、余りプライベートな話題を尋ねた事は無かった。
問題は部屋に鎮座する、タカトゥクが残した抜け殻だ。
下半身のヤシガニ部分。それが見事な形で原形を留めたまま、寝台の上にあった。キチン質で出来た等身大のオブジェと言って良い。
「もしかしたら、本国へ持って帰れば、好事家に高く売れるかもな」
最初は透き通っていたのだが、時間が経った今は、やや黄色っぽい色が目立つ。残念だが、女性が生えていた上半身部分は外骨格ではないので存在しない。もし、それも脱皮の対象であったら、もっと高く好事家が買うんだろうと夢想する。
「では、そうしますか?」
「いや、冗談だ。しかし、どうするか」
クローバーの方をチラリと見る。
六本の脚と鋏を上手く使って、器用にダニエルの肩の上に乗っているのだ。
「こいつにとって、お母さんの物だからな」
処分するのは楽だ。体積に比較して軽量だし、力を込めれば容易に破砕が可能だろう。バラバラにして海へ投棄すれば済む話だ。
しかし、あの産婆が言う事には「タカトゥクは長くない」との話だった。本当だとすれば、これはクローバーにとって形見の品と成り得ると言う事になる。
だが、この狭い船室では邪魔だ。長さ1.5m。幅が2.5m近くある。保管しようにも場所が無い。
「いずれにせよ、保管したいとの話ですね」
「ああ、が、船倉を借りる訳にも行かないしな」
普段は空いている船倉も、今は難民の生活区画に転用されている。
二人が頭を悩ましている時、薄紫の長髪をなびかせつつ、箒片手にテルミが室内へと入ってきた。
「あら、それなら簡単ですよ。天井から吊せば良いんです。あれ、見た目より軽いですし」
話を聞いてテルミの出した解決策がこれである。
「何ぃ?」
「寝台の所なら空いてますよね。そこ以外だったら、吊されてると邪魔臭いですけど、寝台なら寝る時以外はデッドスペースですし、どうせ横になるから邪魔にはなりませんよ」
「提灯かよ…」
絶句するが、確かに言っている事は理に叶っていた。侍女長はふむふむと頷いている。
だが、頭上にヤクシネーの抜け殻がゆらゆら揺れているのは、目が覚めた時に心臓に悪そうである。それをダニエルが抗議するが、「では、坊ちゃまは如何なる代案をお持ちですか?」とテルミに問われると、何も出てこなくなる。
「わぁ、おかーさんだ」
結局、抜け殻は吊されてしまった。
クローバーはゆらゆら揺れる母親の姿を見て歓声を上げている。それを見て『まぁ、こいつが喜んでいるから良しとするか』と、ダニエルは無理矢理自分を納得させた。
◆ ◆ ◆
ミモリは怖くて怖くて、泣き叫ぶ事しか出来なかった。
化物ミミズの上に立つ男。男だろうとミモリは判断した、は、笛を吹いて人型の異形を操り、ビッチとガリュートがそれに対抗して武技を繰り出す。
幸なのか不幸なのかは知らないが、この戦いの間、自分は無視されていた。
ただの民間人。それも何も出来ない小娘なんかに割く戦力が無かったからなのか、それとも、士官候補生さえ始末してしまえば、こんなヤシクネーなぞ、いつでもひねり潰せるとでも敵の男が考えていたのか、それは解らない。
「くそっ、斬っても斬っても手応えが無い」
まずガリュートが倒された。
果敢にビッチに近づこうとする敵を牽制し、その身を守っていたのだが、粘土の塊である相手に剣は相性が悪すぎた。
普通のクレイゴーレムは、それを駆動させる為の核(コア)があり、それさえ発見して破壊してしまえば無力化するのであるが、教授のネンドロイドは超古代文明の産物である為にコアレスなのである。
つまり、剣で斬っても対抗手段が無い。
斬り落とされた部分は独立して動き、小さなネンドロイドと化すだけで、そいつはその内、本体と融合して元のサイズに戻るのである。これは始末が悪い。
「あっ、ガリュートさんっ」
多勢に無勢。ゴーレムパンチで殴り飛ばされる。
その次はビッチだ。
最初は教授との戦いに専念していたが、護衛役が倒された事で自衛に切り替えざる得ない。だが、カマイタチもまた、敵のネンドロイドに対して有効打には成り得なかった。
エロコから聞いていた話から、あの粘土人形の身体は油粘土に近く、着火すると良く燃えるとの事実を聞き出していただけに、「火属性の魔法を覚えていたら」と悔やむが、彼女の専門は風属性である。
「ああっ、ビッチさん!」
健闘虚しく、殴られて大地に伏せる公爵令嬢。
教授は勝利を確信し、笛を吹きながら地上へと着地する。ミモリは泣くのを止め、慌てて二人に駆け寄って、大きく鋏を広げて阻止しようとする。
脚一本を失っているから、松葉杖の補助があっても動作は緩慢だったが、何とか間に合った。
怖い。怖い。怖い。
でも、今何かしないといけない。
この人達を見捨ててしまったら、あたしは一生後悔する気がする。と感じていた為だ。
「邪魔するか、ヤシガニーの小娘」
教授が笛から口を離し、馬鹿にした口調で問う。
ちなみにヤシガニーとは、ヤシクネーに対する蔑称である。
ミモリは頷き、無言で教授を威嚇する。前椀部の鋏がカタカタと震えてるのは気のせいでは無い。
「では、お前も一緒に死んでもらいますよ」
「死ぬのはお前の方だ。メライシャン」
教授の言葉を遮り、涼しげな女性の声が響いたのがその時だった。
ミモリは幻かと目を疑う。
「誰?」
〈続く〉
実習航海編は 〈閑話〉にしてきましたが、他と違って余りにも長編なので〈外伝〉と名称を変える事にしました。
ヤシクネ提灯。ねぶた祭ですね。
実は脱皮後の皮は、カルシウム補給の為に脱いだ本人が食べる事もあるんですが、大抵のヤシクネーは貧しくて栄養が行き届いてないので、その皮は「不味い」そうです。
逆に栄養過多の場合、余計な糖分とかを分泌しているので「甘くて美味しい」そうです。でも、大抵の彼女らは薬だと思って黙々と食べるんだそうで、最近は食糧事情も良くなったので、別の食物からカルシウム分を補給する方が多いとか。
さて、絶体絶命に陥ったビッチ達の前に現れたのは?