須川亮とRe:文月学園二年生生活   作:森野熊漢

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お久しぶりです。
ようやく二巻が見つかったのですが、表紙が島田美波だったのでやる気が削がれました。

ごめんなさい、七割嘘です。
久しぶりなのでいろいろとおかしかったりしたら申し訳ないです。


祭りの幕開け

「清涼祭」

 

それは文月学園の新学年が始まってからの初めての行事である。

屋台だったりお化け屋敷などの教室での出し物、ほかにはクラスで調べたことを展示したりすることも認められている。

そして現在、各学年、各クラスで清涼祭に向けた話し合い、準備へと移っている時期であり、現在LHRでその活動が行われている。

 

「来い吉井!」

「行くぞ横溝君!」

 

行われているはず、なんだが。

 

「盛り上がってますねえ」

「あー、まあ、そうだな」

 

眼下の校庭で野球をしている我らがFクラス(バカども)を眺めていると、雪下月華が声をかけてきた。

 

「まあその盛り上がりは正直清涼祭に向けた話し合いに向けてほしいところなんだがな」

「あ、あはは……」

 

俺の正直な感想に雪下は苦笑いで返してきた。まあ、俺も誰かに同じことを言われたらそう返すしかできないんだけど。

 

「それ反則じゃないの!?」

 

ん?吉井の声が聞こえてきたが一体どうしたんだ……って、ああ、坂本がキャッチャーで吉井がピッチャーか。

おそらく坂本がかなり無茶、もとい故意に事故を起こさせるようなことを要求したんだろうな。

 

「貴様ら、学園祭の準備をさぼって何をしているか!」

 

……あ、鉄人が出てきた。あと少ししたら全員がここに押し込められるんだろうな。

あと少しだけ、のんびりした時間を楽しむとするか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さて、そろそろ春の学園祭『清涼祭』の……」

 

全員帰ってきてから、坂本がクラス代表らしく話を始めたのだが。

 

「とりあえず議事進行並びに実行委員として誰かを任命する。全権委ねるから後は任せた」

 

あー、うん。そういやそんなこと言ってたな。

 

「あら、坂本くんはやる気がないようですね」

「あー、まあそうだな。正直面倒だろうしな」

「そういう須川さんも面倒そうですね」

「雪下、そういうことは周りをよく見たらわかるだろう」

「いえ、見なくても察してはいるので……」

 

はは、と雪下と乾いた笑みを交わす。

 

「まあかったるいことは嫌いだからなあ」

「……なら、私が引き受けましょうか」

「そりゃ助かるが、いいのか。めんどくさいだけだぞ」

「まあ大変そうですけど……」

 

雪下はにこり、と可愛らしい笑みを浮かべた。

 

「楽しい思い出を作れたら、その大変だったこともきっといい思い出になりますから」

「…………そうか」

 

なんだか気恥ずかしくなり、俺は顔を背けた。

 

「美波が実行委員になる話だったよね」

 

あれ。気が付いたら話がだいぶ進んでるな。やってるのは……ああ、実行委員決めか。

島田は召喚大会に出るから実行委員になりたがってない野を見て、副実行委員の選出を坂本が提案した。

その声を受けて、教室内から推薦の声が聞こえてきた。

 

「吉井が適任だと思う」

「坂本がやるべきじゃないか?」

 

ふむ、思ったよりまともな意見が出てるじゃないか。

 

「ここは須川がいいんじゃないか」

「姫路さんと結婚したい」

「雪下さんに踏んでもらえるなら死んでもいい」

 

おい、俺の名前を出した後に変な意見を出すな。俺の名前がきっかけになってるように感じるだろ。

 

「あー、みなさんすみません」

 

ん? 雪下が急におずおずといった感じで手を挙げたぞ?

 

「どうした雪下。何か意見でもあるのか」

「意見というか、その、もしよかったら私が立候補しようかなって」

 

え……?

 

『えええええええええええええええええええええええ!?』

 

クラスから上がる驚きの声。悪いが今回は俺も皆と同じように声を上げてるぞ。

教室がびりびりと震えてしまってるがまあ仕方ないな。これでどこか潰れたりしたら学校の設備点検に不備があるってので訴えを出せるからそれはそれでありなんだが。

 

「……いいのか?」

「ええ、私は。島田さんがよろしければですが」

「だ、そうだが。島田は?」

「……そうね、ウチとしては文句はないわ。……ほんとはアキとがよかったんだけど」

 

何やら最後にぶつぶつ呟いていたが、まあ吉井をボコるチャンスが潰れたとかそのあたりだろう。

 

そこからはささっとやることが決まっていった。

前世と同じように土屋が写真館、横溝がウェディング喫茶を提案。その提案を俺が「中華喫茶」という意見を熱弁を振るってごり押しすることで潰しにかかる。

前と違ったところは、板書をしているのは雪下というところだ。以前は吉井だったせいか、候補の欄がだいぶ酷いことになっていたのだが、今回はというと。

 

候補① 写真館『欲望の顎』

候補② ウェディング喫茶『マリッジブルー』

候補③ 中華喫茶『ヨーロピアン』

 

うん。

 

「なんでこうなった!?」

「わっ!? 急にどうしたの須川君!?」

「どうしたもこうしたもねえよ! 吉井、お前この候補の後の名前を見てどう思う!?」

「どうって」

 

吉井は数秒間黒板に書かれた件の文字をまじまじと見て、

 

「ま、まあ特徴のある名前だよね! きっと興味を持ってもらえると思うよ?」

「俺の目を見て言ってくれたら多少なりとも信用できたんだがな」

 

なんで書記が吉井から変わってこうなってるんだよ。そして俺のだけは何があっても変わらねえのな!

いいけども!俺自身微妙に響きを気に入ってるからいいんだけど!

 

「皆、清涼祭の出し物は決まったか」

 

あ、西村先せ……じゃなかった。鉄人が現れ、そのまま黒板に目を向けた。

 

「……補修の時間を増やしたほうがよさそうだな」

 

入室早々失礼なことを宣ってくれるたなこの野郎。

 

「せ、先生! それは違うんです!」

「そうです! それは雪下さんが書いたのであって!」

「僕らがバカなわけではありません!」

 

おうおう、補修の時間を増やされたくないからって必死になってるな。

前回は吉井を選んだこと自体がバカと言われたんだが、今回はどうなるんだ。

 

「馬鹿者! みっともない言い訳をするな!」

 

ふむ、確かにみっともない言い訳ではあるな。

 

「雪下にこんなことを書かせるきっかけを作ったこと自体が頭の悪い行動だと言っているんだ!」

 

それ、俺たちに死ねって言ってる? 意見を言ったら書かれてたんだけど?

 

「だが、中華喫茶『ヨーロピアン』はなかなか面白い名前じゃないか? ヨーロピアン文化との融合でも図ったりするならいいかもしれんな」

 

なんか知らんけど評価を受けてた。あれか、二周目特典か?

特典ってなんのことか全くわからないけど!ふっと頭に浮かんできたから仕方ないな?

 

「まあ、今回の稼ぎを設備の向上に向けることもできるんだ。真面目に取り組んでいった方がいいと俺は思うがな」

 

鉄人の残した一言から、なし崩し的に中華喫茶に決定。厨房班とホール班に分かれることになった。

 

「厨房班は須川と土屋のところ、ホール班はアキのところに集まって!」

 

勝手に俺が厨房班のリーダー的な位置に置かれていた。土屋も一緒だし、そこは問題ない。

普段なら面倒だから適当にするところなんだが、今回はリーダーでも特に文句はない。

理由としては二つ。

一つ目は、俺にとって今回は二度目の出来事。二度目の中華喫茶である。

そのため、勝手に俺の中で「前世よりも美味いものを提供する」という目標を立てた。

「集客を上げる」というのも考えたのだが、机や諸々のアクシデントは避けられるかどうかはわからないため、可能だったらということで妥協した。できるだけなんとかするつもりではあるが、正直蓋を開けてみないとわからないから仕方ない。

 

そして二つ目。

 

「それじゃ、私は厨房班に……」

「お前はホール班だろう姫路」

「(コクコクコクコク)」

 

こうして姫路がしれっと厨房班に加わろうとするのを未然に防ぐためである。

今世では姫路の料理という名の薬物の被害を受けていないが、前世でその威力を知ってしまっている。

最終的には試召戦争に兵器として用いられたレベルのものを作ってる奴に、人様に出す料理を作らせるわけにいかない。

土屋が隣で首を縦にブンブンと振っているのは……ああ、そういや屋上で死にかけてたなこいつ。

 

「須川さん、私はどうしましょうか」

「……雪下は料理はできるのか?」

「まあそれなりに、ですが……自信があるかと言われたら微妙ですね」

「なら、基本的にはホール班を頼む。準備期間に料理は教えるから人が足りなくなった時に厨房に入ってもらえるようにするか」

 

俺と雪下がそんなことを決めているうちに少し離れたところで、島田によって吉井の腰骨が逝きかけていた。

 

「さて、がんばりますか」

 

俺たちの清涼祭はこうして幕を開けた。




この小説に評価してくださった方。感想をくださった方、ありがとうございます!
前回分はお返事できていませんでしたが、すべて目を通させてもらってます!
ここを亀更新ながら続けられてるのも感想をくださったり、評価してくださるおかげです。

ということで評価、感想いただけたら大変うれしいです。

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