須川亮とRe:文月学園二年生生活   作:森野熊漢

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割と忙しくて書く時間が全然取れませんでした。
待ってくださっていた方、申し訳ないです。お待たせしました。

気付いたら何故か島田アンチが進行してるんですけど……どうしてこうなった。




Dクラス戦 前編

雪下の召喚獣操作の特訓をした翌日の昼休み。

 

「須川さん、試召戦争がいよいよ始まりますね」

「そうだな」

 

屋上で雪下と俺は弁当を食いながらこの後の試召戦争のことを話していた。

 

「須川さんはその、楽しみではありませんか?」

「何がだ? 戦争をすることがか?」

「はい、その……私は召喚獣というものを動かしたのは昨日が初めてですが、それを使って自分がどこまでやれるかというのが楽しみで……」

 

雪下の表情は、「ワクワク」という文字が頭上に現れてもおかしくないくらいに晴れやかである。

 

「俺はそうだな、別にそこまで楽しみというわけではないな」

「それは……どうしてです?」

「ん、まあ単純に面倒なのと、負けたら設備が落とされるといったデメリットがあるからな」

「でも、それを承知でやるのが試召戦争というものですし……勝てば施設を上げられるのでしょう?」

「確かに、基本的にはそうだな」

 

雪下の言うとおり、勝てば基本的にはクラス施設を入れ替えることができる。負ければ、交換という形になるのだが、最底辺設備の俺たちと交換なんてしたいクラスなどいない。そのため、設備のレベルが落とされるという事態に陥ってしまうのだ。

 

「俺としては別に卓袱台に座布団でもなんら問題はないんだがな」

 

煎餅座布団なせいで長時間座っていると尻が痛くなってくるのと畳が傷みまくっている以外には、割と俺好みの施設ではある現状である。

教育施設として正しい在り方かどうかというのは非常にツッコみたいところではあるが。

 

「……まあ、やることはやるさ。だから雪下も今できることを精いっぱい頑張ればいい」

「はい!」

 

にっこにこしながら頷いてくるが……本当に大丈夫だろうか。

 

俺自身、久しぶりの試召戦争のため、今の自分がどこまでやれるかというのが若干楽しみではある。

だが、ここからしばらくの間はほぼやる気が出ないだろう。

 

というのも。

 

(坂本の奴、景気づけのためにDクラスを落とし、その後にBクラスを攻めるはずだからな)

 

クラスメイトに操作慣れさせる意味合いも含めて何戦かする。それはいい。

 

(だが、打倒Aクラスのモチベーションをあいつらに持たせ続けるために施設交換をしないっていうのがな)

 

坂本の考えていることはわかる。あのバカたちは一旦少しでも良い設備を手に入れてしまえば、そこに甘んじようとしてしまうだろう。

そうさせないための、施設交換なし、ということをかつて実行した。

今回もおそらく、いや絶対にそれは行われるだろう。

そして順調にAクラスに挑み。

 

(そして蜜柑箱と御座、か。やりきれないよな)

 

以前はそうなった。今回もそうなってしまうかもしれない。

そう思ってしまい、どうしても気持ちが乗らなかった。

 

「……須川さん? 大丈夫です?」

 

気付けば、弁当を食べ終わっていた雪下が俺の顔を覗き込んでいた。

…………!

 

「あ、ああ。悪い。ちょっとな」

「そうですか……、せっかく初めての試召戦争なんですよ、楽しんでいきましょう?」

 

俺は既に何回目かわからないがな、とは言ってはいけない。絶対にだ。

 

「そうだ、な。あと雪下」

「はい?」

「……顔が近い。離れてくれ。困る」

 

俺の顔を覗き込んでいる雪下の顔がなかなかに近く、落ち着かなかった。

……ほら、屋上の扉の影から殺気を感じるぞ。これは教室に戻る時から警戒しないと命をとられる可能性があるな。困るなあ。

 

「……わかりました。困ると言われてしまったら離れるしかないですね……」

 

俺の意思を汲んでくれたのか、素直に離れてくれた。

そして一瞬だけ俺が意識を向けていた扉に目をやったのだが……なんだ? 殺気が引っ込んだぞ?

 

「じゃあ、須川さんも食べ終わってますし教室に戻りましょう? 時間はありますが待機しておいた方がよさそうですし」

「……そうだな」

 

理由はわからないが、どうやら残りの時間も穏やかな時間が過ごせそうだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おい、横田。伝令を頼みたい」

「代表、なんだ?」

 

試召戦争が始まり、今はその最中。

俺は雪下と共にFクラスで待機していたところ、坂本が横田を呼ぶのを耳にした。

何故ここに俺がいるのか。それは単純に俺が坂本に近衛兵を志願したからだ。

初めてということで、試召戦争の雰囲気を知ってもらうために雪下も俺と一緒だ。

 

「そろそろ明久たちが押され始めるころだ。発破をかけてきてくれ」

「それはいいが……どう声をかけたらいいんだ?」

 

なるほど、確かに吉井は召喚獣の操作に優れてはいるが、戦争ともなると一対多数なんて当たり前だ。

いつどこで被弾してもおかしくないし、なにより集中力が切れてダメージを追うというのも考えられる。

まあ他にもメンバーはいるが、そいつらもギリギリのところで持ちこたえている、といったところだろう。

さてさて、坂本はどういう言葉であいつらを鼓舞するつもりだろうな。

 

「逃げたらコロス。そう伝えてくれ」

「……わかった」

 

ああ、やっぱり坂本は坂本だった。ゲスだ。

 

「なんだ、須川」

 

俺がじとっとした目で坂本を見ていると、教室を出ていく横田を見送った坂本が俺に気付いた。

 

「いやなに、お前も大概鬼畜な奴だなって思ってな」

「ふん、あいつら相手に並大抵の言葉で何とかなると考える方が間違ってるからこれくらいが丁度いいんだよ」

 

おかしい、こんなことを聞いたというのに否定の言葉が思い浮かばない。

 

「さて、正直暇だから俺も出ていいか」

「お前な……と言いたいところだが、正直しばらくは来ないだろうからな。過度に戦力を削られないことが条件になるが、それでいいなら行ってこい」

「あいよ、行くぞ雪下」

 

お? 坂本が俺を戦力と数えているだと? 

まあ使い捨て装甲版感覚だろうから最悪一桁で帰ってきてもいいだろう。

 

 

「嫌ああああああああああぁっ!補習室は嫌ああああぁぁぁっ!」

 

唐突にひときわ鋭い悲鳴が聞こえてきた。この声は……島田か?

 

「今のは島田さんの声ですよね? 何があったんでしょう」

 

雪下が不安そうに尋ねてくる。

俺はいくつか可能性を考えてみる。

まず補修室は嫌、という言葉が聞こえてきた。

ここから考えられるのは戦死して鉄人に連行される直前という場面。

多くの生徒にとって、鉄人は補修室という地獄に引きずり込む死神にしか見えないだろう。

一番大きい可能性としてはこれが有力、といったところだろう。

 

一応他の可能性にも考えをめぐらせてみるが…俺には全く思い当たらない。

雪下にも思い当たる物があるか訊いてみたが、首を黙って振られた。

まあ彼女は試召戦争に何が起こるかなんて知りもしないから仕方ないか。

 

唐突にふっと俺の頭によぎった可能性だが、何故か貞操の危機に陥ってるような気がしてきた。

それも男にではなく女に迫られて、という状況な気がするのだが……。

いや、普通に考えて試召戦争中にそんな状況が作られることはないだろう。絶対に気のせいだ。

 

そう自分に言い聞かせながら走って行った先には

 

「邪魔者は殺します!」

 

島田と吉井にドリルみたいな髪型の女子がいた。

Dクラスの女子なのだろうが、そいつが何故か瀕死の島田を放置し、吉井に襲いかかろうとしていたところだった。

 

「代われ吉井、サモン!」

「っ! 須川くん!」

 

Fクラス 須川亮 VS Dクラス 清水美春

化学   98点  VS 41点

 

なるほど、ここは化学のフィールドだったのか。

そしてドリル系女子……清水は吉井と島田に削られたのか、だいぶ点数が減っていた。

 

「なっ!」

「悪いな、消えろ」

 

不意をつかれたからか、即座に行動できない清水の召喚獣の顎に向かって、武器の棒を思いきる振りぬく。

それだけで清水の召喚獣は消えていった。

 

Fクラス 須川亮 VS Dクラス 清水美春

化学   98点 VS DEAD

 

「おい、大丈夫か二人とも」

「え、ええ、ありがとう」

「助かったよ須川くん」

 

島田にも仕方なくだが声はかけておく。こんなところで変に事を構えることになるとめんどくさいからな。

 

「ん? 清水か。補修室へ行くぞ」

「お、お姉さま!」

 

何やら清水がお姉さまやらなんやら叫びながら鉄人に運ばれていったが……なんだあの子。

 

「須川さん、あの清水さんって子、なんだったのでしょう……」

「俺に訊かないでくれ……」

 

なんとなく、なんとなくだが清水美春というやつの記憶が蘇ってきた気がする。

確か極度の百合なんだったか? 今はどうでもいいか。

 

「まあ気にする必要はない。さて、総員他の奴らに見つかる前に離れるぞ」

「そうですね」

「誰か! 島田さんが錯乱した! 本陣に連行して!」

 

おい島田。今俺が言ったことを聞いていたか? いや、聴いていなくてもさっさとここを離れるべきってのはわかってほしいんだが?

それに何故味方である吉井を殺そうとする。しかも物理的に。

非常に面倒だが島田を羽交い絞めにして動きを止める。

 

「おい、島田落ち着け。吉井、さっさと他の所に行ってやれ」

「離しなさい須川! あいつは敵! 倒すべき敵なのよ!」

「ご、ごめんね須川くん! よろしく頼むよ!」

「ああ、任された」

 

吉井が走ってどこかへ去ってしばらくしてから島田を解放してやった。

 

「須川! なんでウチの邪魔をするのよ!」

「なんでも何も今は戦争中だ。無意味な仲間割れなどしている場合かどうかくらいはわかるだろう?」

「どうでもいいのよそんなこと!」

「……ほう?」

 

今こいつは試召戦争というクラス全体のことがかかったことよりも私情を優先した。

………………仕方ない。

 

「雪下、ちょうどいい。島田と召喚獣で戦ってみようか」

「え? す、須川さん!?」

「あんた何言ってるの!? なんでウチと雪下がそんなことしないといけないのよ!」

 

雪下の戸惑った声と島田のぎゃんぎゃんうるさい怒鳴り声。ああ、うるさい。

 

「なんで? そんなことも言わないとわからないのか?」

「当然じゃない! 雪下だってそうよね!」

「えーっと……その……」

 

ちらっとこっちを見る雪下の様子からすると、どうやらわかってくれているようだ。

 

「そうだな、じゃああえて教えてやるとするならば、理由は二つ」

 

仕方ない。時間の無駄だが言ってやるか。

 

「一つ目、味方に不利益をもたらすような行為を作為的に行うやつは排除されて当然ということ。

二つ目、雪下の召喚獣操作のさらなる慣れのためだ。お前はFクラスだが先の理由で別にいなくなっても問題ないからな」

「……っ!? り、理不尽よ!」

「そうか? お前が吉井にやろうとしていたことは俺以上に理不尽だと思うんだが?」

「あれは吉井が悪いのよ! 吉井がウチを見棄てようとしたから!」

「あ? それのどこが悪い?」

 

こいつ、戦争ってものをわかっての発言なのか?

 

「今後の戦場で必要とされる側が生き残ろうと策を弄するのは当然だろう? 吉井は操作技術という点数化されない大きな強みを持っていて、その力は試召戦争という場においてはどこであっても有用だ」

「そ、それならウチだって吉井より点数が高いわよ! 操作は無理かもしれないけどウチだって」

「お前、数学以外は吉井と同レベルだろうが。そんな限定的な力よりも広く発揮できる力の方が大事なんだよ」

 

大きな成果を得るために小さな犠牲はつきもの。特にこのFクラスはその傾向が強い。

だからこそ、前世の時から吉井や姫路、土屋や木下といったメンバーが作戦の要になり、俺たちFFF団が肉癖となって散っていったのだからな。

 

「ちっ……わかったわよ……」

「ようやくわかったか」

 

先程まで醸し出していた殺気が鳴りを潜めたあたり、納得いかないながらも理解はしたのだろう。

なら、島田にする指示は一つだ。

 

「じゃあさっさと科学の補充に行ってこい。いくら低いと言っても即死するかどうかでは大きな差だからな」

「……わかったわ」

 

教室にとぼとぼと戻っていく島田を見送る。

やれやれ、本当に面倒だった。

 

「須川さん……」

「ん? ああ、すまん雪下。見苦しいところを見せた」

「いえ、それはいいんです……理由がどうであれ、全体の足を引っ張るのはよくないですから」

 

うむ、きちんと理解してくれていたようでなにより。

 

「じゃあ、他のところの増援にでもむかってやるか。行けるか?」

「はい!」

 

元気な雪下の返事を聞き、早速どこに向かうかを考え始めるのだった。




試召戦争、及び戦闘描写は下手くそだと思います。
極力頑張っていきますが、温かい目で見ていただけると幸いです。
そして、須川君の自論展開部分も、割とノリで書いてるのでおかしなところがあるやもしれません。

お気づきのことや感想等、お待ちしております。
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