※個人的解釈で咲夜さんとレミリアのお話を書いてみました。苦手な人はストップでお願いします。
銀髪の少女は、ただ茫然と立ち尽くしていた。
足元に転がる父親と母親、それと見知らぬ男。両親は首元を赤く血で染め、全く動かない。
「………ぁ」
少女は気付いてしまった。両親がもう決して動かない事、そして、男の口元の牙と背中から生えている翼。これが何を意味しているかを。
「吸、血鬼……………」
「おいおい、ガキかよ。味は良くても血液の量が足らねえんだよなぁ。」
この吸血鬼が、両親を殺した。それだけがはっきりとわかった。逃げようとするが、足がもつれてしまい、転んでしまう。その時にポケットから1つの懐中時計が転がり落ちる。
「あう………!」
「逃げられても困るんだが、あいにく俺の趣味じゃねえから眠っててもらうぜ。」
真後ろからそう告げられた瞬間、落とした懐中時計を握り締め、祈ることしか出来なかった。そして首に殴られた激痛が走り、そのまま闇の中へと落ちていく。
その少女が目を覚ましたのは、森の中だった。今まで倒れていたはずの舘は跡形も無く、全てが夢だったかのように消えていた。
「……?あれは……?」
本当に夢だったのか、と思った瞬間、首に激痛が走る。あの吸血鬼に殴られたところだった。
やっぱり、夢なんかじゃなかった……!!
少女は決意した。
両親を殺した吸血鬼を必ず根絶やしにする、と。
手にしていた懐中時計に誓った。
そして彼女は一人きりで生き延び、殺すために技を磨き、吸血鬼の全てを調べ尽くした。その殺意は数年の歳月を得てなお、消えるものではなく、逆に増幅していった。また、懐中時計には数秒であるが時を止められることが出来ることもわかった。おそらく両親の思いであり、呪いでもあるのだろう。
そしてある日のこと、とある舘に吸血鬼がいると言う噂を聞いた。名を紅魔館、と言うらしい。
少女はそれを聞き、喜び、震えた。
やっと、やっと殺すことが出来る。
そう考えた少女が行動を起こすのは当然のことだった。その日の内にそこへと向かう。正面突破なんてものはしない。裏から入って誰にも気付かれずに殺す。それだけが頭の中にあった。
時間は太陽が沈み掛けている夕暮れだった。外堀に縄を掛け、中へと侵入する。襲われることはないだろうと高を括っているのか、警備の一人もなく、罠の1つもなかった。お陰で容易に舘内に入り込めた。
舘内は異様な空気で包まれていた。見つかったらどうしようか、と思っていたが、中にすら人を配備してないらしい。どんなに阿呆なのだろうか。
「……こっちか」
直感であったが、確証があった。何しろあの時のあいつと同じ雰囲気がするからだ。そしてその雰囲気は1つの扉から感じられた。
――ここに。ここに吸血鬼が!
静かに中に入る。すると吸血鬼と思われる少女は後ろを見ていてこちらに気付いていなかった。
それを見た瞬間、焦りと同時に高揚感に襲われる。
この手で!吸血鬼を!殺せるんだ!!
そう思った時には体が動いていた。手に持った銀のナイフはその少女の心臓を捉え――
「あら、ようやく来たのね。待ちくたびれそうだったじゃない。」
刹那、肌で感じ取った殺意に思わず飛び退く。やらなければ殺されると本能が言っている。
「………くっ、これで!」
ポケットから懐中時計を取り出し、時を止める。その数秒の間に、出来る限りのナイフを―
「――さようなら」
時が動きだし、無数のナイフが突き刺さる―
――はずだった。しかしナイフは少女に1つも刺さることなく地面に落ちる。
「なん、で」
「貴女のナイフは私に刺さらない。そういう運命だから。ついでに言うと貴女は私に勝てない。私がそういう風に操ったから。」
崩れるように膝を落とす。まさかここまでだったとは。泳がされていたのは私だった。
「………殺せ。私はお前に負けた。」
しかし吸血鬼は、
「誰が殺すと?私が勝った、ならどうしようと勝手でしょう?そうね、メイドが足らなかったからメイドにでも――「ふざけるな!!」
負けた相手に情けを掛け、それどころかメイドをしろと?何を言っているんだ、こいつは。
しかし、その吸血鬼は少し微笑んで、
「――3日後。その日に貴女の本当の目的を晴らさせてあげる。悪い話ではないでしょう?」
本当に言っていることがわからなくなってきた。でも、こいつの言うことが本当なら。
「………わかった、3日ね?それが嘘なら私は腹を切るなり舌を噛みきるなりして死ぬわ。」
「ええ、楽しみにしているといいわ。」
そして、3日後。
吸血鬼の部屋のクローゼットの中に押し込められ、待っている。
隙間から一筋の光が入り、そこから部屋の中が見通せていた。
数分ほど待ったところで、部屋の扉が開く。
「ようこそ、紅魔館へ。でもわざわざ挨拶とは、物好きな吸血鬼も居たものね。」
「いーや、ただ単に気分で寄っただけだ。んな面倒なこと本心で誰がするか。」
ドクン、と。心臓が跳ね上がる。間違いない、あいつが両親を殺したやつだ……!!
「少し紅茶を入れるからそこのソファーに座って待っていて貰えないかしら?」
と同時に、こちらに目配せする。合図を送る様に。
握り締めた懐中時計は時を止め、銀のナイフは心臓を捉えた。
「おま、えは……クソ……ガキが……」
「あんたが居なければ!!私は!!!」
そのまま何度も何度も突き刺す。死んでいても構わない。何回でも殺さないと気が済まない。
「ほら、言ったでしょう?という訳で、貴女は私のメイドよ。拒否権は無いわ。」
吸血鬼に言われ、やっと理性が戻る。本当はなんでそんなことを、と言いたいが、負けた身である限り、そういうわけにはいかない。
「……ええ、わかったわ。両親の復讐も終わったし、やることなんてないしね。」
吸血鬼はその答えに笑い、
「じゃあ、貴女の名前を付けてあげる。そうね―
――十六夜 咲夜。それが貴女の名前よ。」
これは、とあるメイドと、とある吸血鬼の、出会いのお話。