って言っても、いつものはそんな量が無いですけどね。
志乃と話しながら駅を出ると、駅前のターミナルに黒塗りの、いかにも高級車な感じの車が横付けされてた。
そういえば、女の子になってから、車の名前とか全っ然、覚えられないんだよねぇ、ロボとかいかにもな機械系も、名前があやふやだし、料理の名前とか、服の名前の方が直ぐに覚えられるんだよね、どうしてだろ?
「間宮さんと佐々木さんですね?訓練施設まで送迎します」
高級車の近くに立ってた黒スーツの、キレイな女の人が、駅から出てきた私達に話しかけてきた。事前に分かってたけど、ちょっと落ち着かないなぁ、周りの人達も、遠巻きに物珍しそうに見てくるし。
うぅ、何で志乃は平然としてるのよ!
やっぱり前世から、こういうのって乗り馴れてるの!?
「よろしくお願いします!」
志乃が軽く会釈をするだけなんだけど、私は緊張してるのもあって深く御辞儀した。
「そんな緊張しなくて大丈夫ですよ?」
私が緊張してのを、黒スーツの女の人が心配してくれた。まぁ、車酔いされても嫌だだろうし、型の力を抜こう。
「あ、はい。ありがとうございます」
取りあえず笑顔で返事です。笑顔が嫌いな人はほとんど居ないから、初対面には常に笑顔を心掛けるんだよ!
誰だって、仏頂面より笑顔の方が好きだもんね…………キンジももっと笑えば良いのに、そうすればネクラとか昼行灯何て呼ばれないはずだよ。キンジが笑ってる所も、金一さんに似てイケメンだから、絵になるもん、前一回笑った所を見て、自分の前世のイケメン度に、度肝抜いたからね?ビジュアル系みたいな、そんな感じのイケメンだよ、キンジは。
黒スーツの女の人が開けてくれたドアで、後部座席に志乃と並んで座る。ちょっとして黒スーツの女の人が…………言いにくいな、黒スーツの人でいっか。
その黒スーツの人が運転席に座って車を発進させるんだけど……………メチャクチャ静かで全っ然揺れないんだよ!!しっかり窓の外は景色が流れてるし、ホントに少しだけ揺れてるかも?って感覚はあるから、動いてるのは確かなんだよ!?なのに全っ然座ってるだけじゃ分かんないの!!この人すごいよ!こんなに上手い運転、体験したこと無いもん!!
「十時頃には到着しますから、お昼はあちらで準備されてるそうです」
「ありがとうございます」
お昼まであるんだ、どんだけ至れり尽くせりなんだろ、スゴい厚遇されてるよ。ちょっと怖いくらいだし。
「佐々木さん、私のこと、覚えてますか?」
あれ?この二人って、知りあいなの?さっきから初対面みたいな対応だったけど。
「はい、宮内庁直下の白雪先輩の同僚の方ですよね?お名前は未だ伺って無かった気がします。間違っていたら、すいません」
ありゃ、本当に知りあいなんだ。すらすら答えてるよ、志乃。つか、今宮内庁って単語聞こえたんだけど、マジすか?本当に宮内庁なの!?白雪先輩の同僚って何!!?あの人どれだけ隠し事してたの!!!?
「いえ、大丈夫ですよ、合ってます。私は
「ええ、こちらこそ、よろしくお願いいたします。ね、あかり?」
ちょっ!?いきなり振らないでよ驚くよ!!
慌てて二人の話に合わせる。
「あ、うん!私も、よろしくお願いします」
「うれしいです、将来有望なお二人と知り合いになれて」
え?そんな認識なの?もしかしなくてもメッチャ期待されてる!?私、そこまで強くなれる自信無いんただけどなぁ。前世の身体なら未だしも、今の身体じゃ能力も身体機能も戦闘に関しては負ける。
唯一勝ってるのは能力の発動のしやすさ位かな?これも、コントロール出来なきゃ、ただの暴走なんだけどね。
「期待には答えますよ、私もあかりも、そのくらい出来なきゃダメですから」
うへぇ、強気だなぁ志乃は。う~ん、でも確かに、その位出来なきゃダメかな、
「はい、私もSDA総合ランキング上位狙ってますから、強くなるだけなら、期待に答えます」
「それは、楽しみですね。この国は先進国の中でも、超人が少ない。
!?やっぱりこの人、超人レベルの人なんだ。
ってかやっぱり白雪先輩って、何者なの?この人の同僚何でしょ?…………むぅ、星伽神社が怪しい、スゴく怪しいよ。絶対何かあるでしょ!?
殻金、確か緋緋色金に着いてる、安全装置みたいなものだったよね?あれを外したのはヒルダだけど、事情を知ってる私と志乃なら、事前にヒルダの行動を止められる。
そうなれば、アリアが苦しむことは無くなる。殻金を外された後、時々アリアが苦しそうに胸を押さえて踞ってたの、知ってるんだから。本人は隠したがってたけど、同じ部屋で暮らしてれば、嫌でも分かるわよ。
「ちょっとテンション上がってきました。じゃあ、しっかり捕まってて下さいよ?」
「ふえ?」
「ッッッ!!!!?」
私が考え事してる間に、何か話し進んでたみたいで、佐々部さんがいきなり車をとばし始めた!!
ちょっと!?今までの安全運転はどこ行ったの?明らかにヤバイ速度出てるでしょ!!?
慌ててイスにしがみついて、外の様子を確認すると、何と山中を爆走してるみたいで、スッゴい音と共にメッチャ跳ねる。うえっぷ、酔いそうだよ、うぅ。
「口は開かない方が良いですよ、舌を噛む。なに、少しの辛抱ですから!!」
少しってどれくらいなのぉ!!明らかにこの速度山で出しちゃダメな速度でしょ!?うわぁ!!メッチャ揺れる!!!?
「う、キツ、いぃ、志乃、ぉ」
声を出すけど、揺れと気持ち悪さで、途切れ途切れになって、何か呻き声みたいに聞こえる。
「わ、私も、ちょっと、余裕、無い、よ」
志乃も限界そう、うぅ、酔い止めの魔術とか無いの!?無いから酔ってるんだね、ゴメンね!!
………うっぷ、ヤバ、もう、む
「着きましたよ、二人とも、大丈夫ですか?…………???」
その声が聞こえたと同時に車を飛び出して、森の中に二人して駆け込んだ。……………………何があったかは、黙秘権を行使する。乙女の意地なの、こんなこと、あっちゃいけないの。
「これくらい馴れないと、これから大変ですよ?」
何て言いながら、ミネラルウォーターを渡してくれた、佐々部さんに、ちょっと恨みがましい目線を送って、口をゆすぐ。
「うえぇ、私、乗り物強く無いんですぅ」
近くで志乃が唸ってる。私と同じようにミネラルウォーター渡されてたから、大丈夫だと思うけど、強く無かったんだ、乗り物。
「馴れですよ馴れ。経験すれば、嫌でも馴れます」
嫌だよそんな経験、いったいどれだけこんなことになるんだか…………うっぷ。
「ほら、いつまでもこんな所にいないで、施設に移動しますよ?」
誰のせいだと………うぅ、気持ち悪い。
私と志乃二人して、ふらふらしながら佐々部さんについていく。これじゃあお昼キツいんだけど、ちょっと休憩させて。
そんな事思いながら施設の玄関に入ると、ここは体育館みたいになってるらしく、中は靴を脱いで、下駄箱みたいな所に仕舞って、専用の内履き…………スニーカーみたいなのを履いて、中を歩く。
山奥だから、結構寂れてるのかなぁ何て思ったら、以外としっかり整備されてて、人の出入りも多いみたい。…………出入りしてる人皆、強そうだけどね。
「あ、きたきた、こっちこっち!」
廊下を歩いてると、廊下に備え付けてあるベンチに座ってた白雪先輩が、気付いたのかこっちに手を降ってくれた。
「お待たせしました~」
「白雪先輩~」
二人して顔色が悪かったから、白雪先輩が駆け寄って具合を確認してくれた。
あぁ、白雪先輩が女神様だよ、この人が尊い、何かもう報われてほしいよ、アリアより応援するよ、この人が報われないとか、不条理でしょ。
「ありゃ、元気無いね?どうしたの?」
心配そうにしてる白雪先輩に、佐々部さんが経緯を話してくれた。
「ちょっと車をとばしたら、この状態になってしまって」
「天誅ぅ!!」
話し終わった瞬間、白雪先輩がお札を佐々部さんに投げる。
あれ?何か物騒だよ、白雪先輩?
「のわ!?私は貴女とは相性が悪いんですってば!!」
「相性位どうとでもなるでしょうが!頼んだのは私だけど、いい加減その爆走癖治しなさいよ!!」
そう言って燃え盛るお札を佐々部さんに投げまくる白雪先輩、よく見ると髪をいつもまとめてる、封印のリボンが無い……………あぁ、白雪先輩もそうなのか、う、悲しい、キンジに平穏は一生訪れないんだね、私じゃなくて良かった。
「貴女も、親しい人に関する暴走癖を改めて下さいよ!!」
あ、佐々部さんがお札を全部叩き落とした。何かパンパン、腕が動く度になって、佐々部さんの髪が風圧で揺れてるから、あれ音速越えてるよ、キンジの血筋以外で、音速越えてる人、初めて見た。以外と居るんだなぁ、結構前世だと自慢だったんだけど、ちょっとショック。
「そう言えば貴女とは未だ決着付いてなかったね、姫奈」
「そう言えばそうでしたね、緋巫女」
な、何かヤバイ空気出てるんだけど?
「二人とも、キンちゃんは第二トレーニングルームにいるから。私は
「そういう訳ですので、私はここで失礼しますね。お二人がこちら側に来る日、楽しみに待ってますよ」
怖い、怖いよ二人が!!?
二人が離れて暫く、志乃と二人でぽつんと残されて、二人で体調が戻るまでベンチで休んでたら。目の前にスポドリが出てきて、そっちを見ると、キンジがいた。
「お前ら来てたのか、白雪はどこ行ったんだ?ほら、取り合えずこれでも飲め、お前ら顔色悪いぞ?」
いつも通り過ぎるキンジに、思わず抱き着いた私は、悪くないもん。
「うぅ、キンジ先輩ぃ~」
だって、ここに来るまでに今日一日で色々あり過ぎたんだから、これくらい良いでしょ?役得よ役得。志乃が不満そうだけど、
「ったく、しゃあないな、これじゃおっきい赤ちゃんだ」
キンジが何勘違いしたのか分かんないけど、今は抱き止めて頭撫でてくれてるから、何でも良いや…………むふふ、安心する匂い、何かポカポカしてきた。キンジは女の子を安心させる匂いがする。キンジはあったかいなぁ、皆が本気になるのが分かるよ、確かに離れたくないなぁ、ずっと一緒が良いってなるよ。
「ん、ありがとうございます、キンジ先輩。もう大丈夫です」
「よく分からんが、落ち着いたなら良い。それで、白雪は?」
「私達をここまで送ってくれた、佐々部さんと訓練しに行きましたよ」
キンジの質問に志乃が答えると、キンジが納得したような顔をする。
「なるほど…………二人とも、俺は白雪達の訓練見学するけど、二人も来るか?」
その言葉に二人して頷く。体調も大分戻ってきたし、この施設の設備とかも確認したいし、丁度良いからね。
「なら、着いてきてくれ、白雪が暴れられる所は少ないだろうしな」
そう言って先導してくれるキンジ、ここに来るのは初めてのはずなのに、もう構造覚えたの?スゴい。
すいすい進んでくキンジについて、『観戦スペース』ってネームプレートに書かれた部屋に入ると、ものすごい爆音が鳴り響いてた。
は?何この音!?って!!!?
「な、何ですかあれ!!!?」
「あ、白雪先輩本気になってる。この施設もつのかなぁ」
「俺も一回見たけど、あれは勝てる気がしない」
三人でそんな事言いながら、分厚い強化ガラスの先で、超スピードで動き回る佐々部さん相手に、
いや本当に、何あれ!!!?
火は温度が上がるほど青白くなるって聞いたけど、真っ白って何!?下手しなくても温度が四桁越えてるでしょ!!!!?
どうやって纏ってるのよ!!普通の火でも肺が焼ける!!!!!!
「天誅うぅぅぅぅ!!!!!!!!」
「三速
あ、佐々部さんが見えなくなった。あっちもあっちで、何でそんな速度出せるの!?もうそれ音速越えてるじゃない!!!そもそもそこまで速度出すと、脳処理が追い付かないでしょ!!?いくら処理を加速させてるとはいえ、それこそ電気信号を光信号に変える位しなきゃ無理だよ!?目が追い付かないもん!!!
「ぐッッッ!!………………まだまだぁ!!!!」
うわ、黒雪先輩になってる、怖いよぉ、思わず隣のキンジの裾を掴む。キンジもちょっと引いてるよ、そうだよね、黒雪先輩怖いよね、分かるよ、スゴく。
「あの状態、十分しか戦闘出来ないんですけど、よく粘りますね。佐々部さんも、あれは加速系統の魔術ですね、比較的簡単なものですけど、あの練度は見たこと無いです。有り得ない位善戦してますし、ちょっと驚き。一応、白雪先輩私と同じで
志乃が二人のこと教えてくれるけど、十分もあればそれこそ文字通り、十分な火力だよ、一人で小規模の大隊なら、制圧出来るんじゃないかな?
「私だって、伊達や酔狂で、
あ、ついに移動に衝撃波が追加されたよ、佐々部さんが移動した後に、炎が爆風で吹き飛んでる。もう、どっちも人の領域じゃ無いよ。超偵に武偵は勝てないって、こういうことか。
「キンジ先輩、私達の訓練って、必要なんですかね?」
ってか何かもう、ここで出た情報だけで、私達司法取引しないとダメなんじゃない?冤罪で無期懲役とか、余裕でありそうなんだけど。あ、あはは、あははははははははは、キンジが前途多難過ぎて辛い。よく高校二年まで生きてたな、前世の私。
「聞くな、俺もちょっと疑問だ」
「えっと、一応私達は制限時間が短くてですね、長期戦は無理なんですよ?」
呆れてる目で白雪先輩を観てた志乃が、二人から目を離して私達の話しに入ってくる。
む、ちょっと残念。
「一応聞くが、お前の全力戦闘は、何分持つんだ?」
「五分です。
白雪先輩、パトラと同じ
長期戦ならパトラにも勝ち目はある感じかな?念入りに準備して、対策をしっかり練ってれば、何とかって感じ。
「それだけあれば、戦闘は十分だろ、本当に俺らの訓練って意味あるのか?」
そんな感じに呆れてる私とキンジに、カツを入れるように志乃が言った言葉に、私は冷や水を掛けられたような思いになる。
「今これだけ強くても、一年後までになにもしなかったら、あかり以外、皆死ぬんですよ!?気合い入れて下さい!!」
そうだった、私達の相手は、
つか、よく考えると、白雪先輩の能力が活躍したのって、新幹線の時以降、全く無かった気がする。かなめには負けてたし。うぅむ、明らかに前世より強くなってるんだけど、その辺どうなってるんだろ?
「分かったよ、死にたく無いからな。あかり、戦闘訓練だ、そろそろここも空くだろうしな」
そう言って、準備運動を始めるキンジに返事をして、私も準備運動をする。
「はーい、中の気温戻るまで、ちょっと時間かかるかな?」
「空調設備が温度でやられてなければ、大丈夫だと思いますよ。今もこの部屋は冷房全力ですし、もう白雪先輩がガス欠ですから、後二十分位待ってて下さいね。この部屋に、中の状況をコントロールするコンソールがありましたから」
志乃がコンソールを弄ると、中でガス欠でぶっ倒れた白雪先輩と、同じく疲労困憊で寝っ転がってる佐々部さんに、スプリンクラーから水が掛けられてた。うわぁ、水が蒸発して、蒸気になってる、中どれだけ暑いのよ。
…………………これ、結構不味くない?何か二人とも動かないんだけど、ちょっと!?二人ともあんな暑そうな場所で気絶してんの!!?
「冷房も最低温度でいれ直して、スプリンクラー作動させて、熱気を逃がすために窓も開けましょう、本当に、よく二人ともあんな元気でしたね!?中の気温みたら40℃越えてますよ!!二人が危ないです!!!」
その声に反応して、キンジが中に入るための扉を開ける。中からとんでもない熱気が入ってきて、一瞬しかめっ面になると、中に躊躇なく入っていった。
「あかり!」
「了解です!」
中からキンジに呼ばれて、急いで担架を志乃と二人で持って行く、中はサウナより暑い、スプリンクラーの水が蒸気になってるせいで視界も悪いし、何で訓練で死にかけてんのよこの二人は!!
「白雪は俺が担ぐ、お前らはその女性を頼む!」
キンジが白雪先輩を担ぎながらそう言って、もうダッシュで部屋を出る。私達も佐々部さんを担架に乗せて移動するんだけど、結構重い、人は自分より重いのは原則持てないの!!私35㎏!!!佐々部さん私よりおっきい白雪先輩より高いんだから、私より重いにきまってんじゃん!!!!
「ふぐぅ、重いぃ!!」
「が、頑張ってあかり!!」
ええい、志乃は魔術でも使ってるのか楽そうで良いね!!!私はキツいんだよ!私も魔術使いたい!!…………………しょうがない、本日二回目、能力発動、発動キーは怒り………………………何で二人とも訓練で気絶してんのよバカァ!!!!!!!!
「ええい、ばかすか景気よく戦って、気が済んだら後始末丸投げとか………………ふざけんなバカァ!!!!!」
「わ!?ちょっとあかり待って、いきなり速いよ!!」
志乃の叫びを無視して突っ走る。
口でそんなこと言っても、しっかり付いてこれるでしょ?今朝私と同じ速さで走れたんだから。