オリジナルの方が詰まってるので、こちらを投稿しました。
結局、落ち込んだキンジに何も言えないまま、天照大御神が降臨の場所に示した宇治橋に、カラスが鳴いている夕方、私達四人は集まった。
本当は私一人のが良いんだけど、オバさんは言った所で無駄だし。キンジと志乃も、離れる気無いって雰囲気で、私から目を離さないし…………もうしょうがないから振り切るの諦めた。どうせいつかは話す事だし、今話しても大丈夫よね。
夕方六時頃、天照大御神が指定した時間になった時に、辺りの空気が変わった。
「ッッッ!?」
「なっ!?ぐぅッッッ!!!!!」
「………………」
「二人とも深呼吸して、肺の中カラッポにするくらい息を吐いて、直ぐに馴れるわ」
空気が変わった事で、苦しそうにもがく二人を尻目に、深く息を吐いて、身体をこの空間に慣れさせる。
超高純度の神域、昨日の豊受姫の時とは、比べようが無いほどの純度、あっちも高密度だったけど、これはもう別次元、あっちが異界なら、こっちは異次元。
空間に満ちてる神気の密度が濃いのもあるけど、それよりも神気の純度が高い。ここまで行くと本当に別世界ね。
私も余裕が無いから、二人ともごめん。
これから降臨する存在を考えて、背筋が凍る。冷や汗が止まらない。
天照大御神
この国の主神であり、別天神や神世七代を除く、ほぼ全ての日本の神の頂点、神の国を統べる女王であり、三貴子の長女、およそ考えられる太陽神の中で、最も穏和な神だけど、所詮は神。
私は恩があるから、あまり考えたく無いけど、でも気紛れで世界を滅ぼせる存在の一柱なんだよ、信用なんて出来ない。
そんな存在が、私達の前に今、降臨して…………
「ヤッホー皆、皆の大好きなアマちゃんだよ~♪」
「もうちょい考えて登場しなさいよバカァァ!!!!!」
一昔前の女子高生姿で、ガラケー弄りながら登場したバカに、思わずツッコミを入れた。
「は?え!?」
「だ、誰だお前」
「お久しぶりです、大御神」
各々がリアクションをする中で、私はこのミーハーにツッコミを続ける。
「なんなのその格好は!?いつもの神子服はどうしたの!!」
「え~、最近はコレ流行ってるっしょ?」
「いつの時代の流行よ!!つかその口調も流行ってないから!!」
私が言った事を信じてくれたみたいで、あっけらかんと雰囲気を変えて、真面目な空気になる天照大御神。最初からそうして欲しいよ、本当に。
なんで態々一昔前の女子高生の格好なんだか、頭のネジがダース単位で抜けてんじゃないの?
「あら、そうだったの。最近は流行が速くて、直ぐに変わるわねぇ」
そりゃ、昔と違って、今は毎年変わるものだか…………………なにやってんのこの神様は!!!?
「何してんのいきなり!!!!」
突然服を脱ぎ出した大御神を、無理矢理止める。
「いや、いつものに着替えようと、」
「それならせめてキンジさんが居ない所でしてよ!!!!」
油断出来ないったらありゃしない、この神様は人の常識に興味が無いからか、基本的に自己中なんだよ。
「でも、今回は宇治橋のみの限定降臨だしぃ、橋の上はどこで着替えても同じじゃない?」
そりゃそうだけど、せめてその部分が………………むぅぅぅ!
「俺は後ろ向いてるよ、うん。ボソッ佐々木、あれが本当に天照大御神なのか?」
「……………ボソッ私も初めて見ましたよ?っていうか見たことのある人なんて、それこそ数人だけでしょうし、宮内庁でも居ないんじゃないですか?見たことのある人なんて」
「ボソッ神道関係者でも居ないわよ!それよりあかりのバカ、何でそんな危ないことするのかしら!?」
キンジが後ろ向いてる中、天照大御神が着替えをする。
ったく、何も無い場所から物を取り出すなんて出来るんだし、着替える位、プリキュアとかみたいに一瞬で出来ないの?
思わず目を細めて天照大御神を見ると、大御神が話し出した。
「それ、光速でやるから、周り大変な事になるのよ?」
あれ、現実だととんでもなく危険だったのね、知りたくなかったわそんなこと。
「ま、周りの被害無くする方法もあるけど、
そう言って帯を投げてきたから、仕方無く着物の着付けを手伝う。
一時間しか無いのにこんな事してていいのかな?
「ん、ありがと、あなたももうすっかり女の子ね、好きな人も出来たみたいだし?」
にやけながら言われて、顔が赤くなる。
「今はそんなこと話してる時間無いの!!」
「もう、せっかちねぇ、別に良いけど」
飄々とした態度の天照大御神を睨もうと、大御神の顔を見たら、そこには景色が広がっていた。
「……………………ねぇ貴方、キンジ君だっけ?」
な!?いつの間に移動したのよ!
慌てて周りを見回したら、キンジの前に居た。
今目の前に居たはずなのに、離れてるキンジの所に一瞬で!?
「ッッッ!?………そうですが、何か問題が?」
驚いて後退ってるキンジを尻目に、天照大御神を睨む。
音しなかったから瞬間移動ね、しかも予備動作が分からなかった、見た所余裕綽々だし、本人にとっては手品みたいなものなのね。
「
そう言ってゆっくりとした動きで、キンジの腕に
うがぁァァ!!
キンジに媚び売るなバカァ!!
キンジもなにドギマギしてんのよ!!
「ちょっと、話が出来ないでしょ!!?」
無理矢理割り込んで引き剥がす。
オバさんが顔面蒼白になってるけど無視無視、気を付けないとキンジが盗られちゃうよ。
「あら、怖いわぁ。それで、話ってなにかしら?」
余裕の表情でこっちを見るな、ドヤ顔するんじゃないわよ、メッチャ苛つく!!
「私の
キンジと志乃が驚いてこっちを見てくるけど、無視する。また後でこってり絞られるのはもう分かってるんだから、もう何も怖くないわよ!
「えぇ~、それがあるから貴女生きてられるのよ?態々車のリミッター外す人なんて居ないでしょ?」
「車を改造して、とことんまで速くする人達は居るけどね」
なんで車で例えるのよ、今一分かりにくいわね。
「そんな、チキンレースじゃないんだから」
あぁ、っもう!
どうせそうやって渋って、私の事巫女にするつもりでしょ!?
絶対嫌だから!私未だやりたいことも、やらなきゃいけないこともあるんだから、人形なんて、絶対に嫌よ!!
「チキンレースよ、私来年に死ぬかも知れないのよ!?」
「あら……それで?巫女になるつもり無いなら、貴女の強化なんて嫌よ。
なにそれ?
私が神と敵対するってこと?
「意味分かんないわよ、
「それはもう清算したでしょ?」
全くこっちの話を聞く耳持たないじゃない、こうなったら仕方無い、これで………
私がスカートの下の拳銃に手を伸ばすと、大御神が面白そうに笑った。
「止めときなさい、音の速さじゃ、私はささくれも出来ないわよ」
なら、本当かどうか試してみようじゃない!!
私が銃に指を触れた瞬間に、志乃が私を押さえ付けた。
なんでよ!!!!?
「離して志乃!こいつには一発キツいのを「やめてあかり」…………………」
押さえ付けから離れようともがきながら、志乃を睨み付けると、志乃が泣きそうな顔でこっちを見てきた。
「私、あかりと離れ離れになるなんていや…………お願いだから」
私達にしか聞こえないような声で、志乃がすがるように呟いた。
驚いて志乃を見てると、オバさんの方から神気が流れ出てきた。
豊受姫が強制降臨したみたい、流石に敵意を出せば、黙ってないか。
「あら?お豊、何で来たのかしら?」
「いえ、私も大御神のお気に入りが気になりまして」
豊受姫の登場を、口調とは真逆に、まるで来るのが分かってたとばかりにニヤつく大御神に、思わず怒鳴りたいのを堪えて、ゆっくりと臣下の礼をとる。
大御神に敵意を向けた私に、釘をさすように殺気を飛ばす豊受姫に、裏目裏目に出る私の行動に私自身が苛立つ。
志乃は、私が銃に手を伸ばす気がないのを悟って、私を押さえ付けるのをやめて、横で私と同じように臣下の礼をとった。
「大御神、どうか御慈悲を」
「お願い致します」
キンジはいつでも動けるように、警戒しながら私達の近くに陣取った。
相手が神様でも、私達の事守る気なんだ、何か嬉しい。
そうだよ、キンジは私の事守ってくれるんだ、なら、私はもう満たされてる。キンジに大切にされてるってだけで、私は満足なんだよ、だから……………………………
「嫌よ、私に得が無いわ」
一日の八分の一、これが最大の譲歩よ。直ぐに止められるように私が起きてる間だけでね。
「四時間」
「なに?」
私の言葉に、大御神が満面の笑みで聞き返してきた。
「一日のうち四時間を、貴女に捧げます」
私の言葉を聞いた瞬間、待ってましたとばかりに大御神が笑いだす。
やっぱり、これが目的だったのね、現世に自由に降臨するのが貴女の目的。
こんな神域を展開しないと降臨出来ないような不完全なものじゃなく、自由になるための手段。それが巫女で、私は限定的にそれになるのよ。
「アハ、アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!貴女やっぱり面白いわ!!
………………え?
「たったそれだけで私が動く?これでも私、神様よ?生贄とかで、人の一生なんていくらでも手に入った時代もあったのよ?」
あんまりな言葉に、私が思考停止してると、愉快そうに笑いながら、天照大御神が言う。
「あなた本当に面白いわ、そうね……………うん、決めた。一日の内、貴女が寝てる間、貴女の身体の所有権を渡しなさい」
なにそれ、じゃあ私は、寝てる間大御神になにされても止められないってこと?
「そしたら、リミッターの解除なんかより、もっと良いものあげるわ。あなた面白いから、特別よ?
「大御神、ここに私が居るのですが?」
「あなたは言わないでしょ?」
何よ勝手に話進めて………そもそも、能力の強化より良いものって何よ?まさか貴女の力が使えるって訳じゃ「色金」
!?
「正確には違うけど、あなた達からすれば同じようなものだしね。貴女にあげるわ、紛い三色じゃなく、純粋な神の物質をね」
そう言って大御神が私の手をとって、掌に橙色の金属を乗せた。
「これは……………」
「
掌に乗ってる金属は、淡く橙色に発光して、ほんのり温かい。
「これに、色金クラスの力が?」
一緒に覗いてた志乃が、信じられないような声を出す。
「青生生魂の中でも、私のは特別製よ、誰でも使えるがコンセプトなんだから」
つまり、色金みたいな面倒な性格の適性が要らないってこと?
「その分、出力は他の青生生魂よりも低いけどね、色金三種と同じ位ね、後
それ、性能が低いって言えるの?
ってか、金って?
「後、貴女にはこれもあげる」
そう言って大御神は、志乃に古めかしい手紙を渡してきた。
なにこれ、達筆過ぎてなんて書いてるか分かんないんだけど。
「それ、紹介状よ、賽銭箱の上に置いて御詣りすれば、運が良ければ交渉できるわ、神と」
はぁ!!!?
「なんて危険物出してんのよ!?要らないわよ!!」
慌てて志乃から手紙を盗って、大御神に押し付ける。
ただでさえ豊受姫と大御神の二柱でお腹一杯なのに、これ以上神と繋がりが増えてたまるもんですか!
「あら、そう。もしかしたら他の神が、この娘に青生生魂くれるかもしれないわよ?」
それって、
「志乃が複数の神の人柱になるじゃない、そんなの絶対にさせない」
「いいえ、これをすれば
きっぱり言うなぁ、何でそこまで私達に入れ込むの?
裏がありそうで怖いんだけど。
私と志乃が反則みたいな存在だから?
「私の力に耐えられて、神降しが出来る位才能があるのは貴女位だもの、これくらいはサービスするわ。勿論、引き受けてくれるわよね?」
つまり、私以外に替わりが無いから、私を厚遇すると。
納得できないし、ふざけんなって思うけど………………それでも、キンジが死なない為には、神の力は、必要で…………………………………
「引き受けて、くれるわよね?」
でも、私が今より強くなれば………いや、今の私じゃ一人でヴラドにも勝てない。そんなんじゃ、たった一年でなんて、でも………………うぅ。
「………は、い……受け、賜り、ました………ッギリッッッ‼」
下唇を噛んで、地面を睨みながら言う。
そんな私に満足そうに笑うと、私の近くにいたキンジに、小声で何かを言って、大御神は還った。
結局、また勝てなかった。転生前に完膚なきまでに負けて、今回も手も足も出なかった………
「それじゃ、皆バイバイ!次逢うときは、味方同士が嬉しいわ」
そんな、意味深な言葉を残して。
やっと伊勢から帰ってこれそうな雰囲気になってきたなぁ。
志乃がどうなるか、あかりはどうするのか、そしてキンジは天照になに言われたのか。つか強制降臨させられたオバさんは無事なのか。
……………………………………どうやってこれ畳もう?(広げられた風呂敷の大きさに困惑)