そして、お久しぶりでございます、私です。
活動報告を見ていただいた方は分かるかもしれませんが、最新刊とネタが被ってしまって、ちょっと錯乱気味でした。こういうことってあるんですねぇ、リハビリに書いたお話の投稿です。
後2話投稿するのでどうぞ、作者からのお年玉みたいな(?)感じです
家に帰ったら兄さんがいて、泊まるところがない貧乏仲間の風魔を家に連れてきて、居間で今までの経緯をお土産を渡した後に話した。爺ちゃんは「
「キンジ、お前……………」
兄さんの前に出されたお茶が、全然減らないまま、冷めきってる。兄さんも声が一段と低い。
これは兄さん怒ってるな、まぁこれから土下座交渉するんだが。
「兄さん、頼みがあるんだけど…ッッッ!!!?っつう!!」
「それで、お前はおめおめと逃げ帰ってきたのか!!」
兄さんはぶち切れて俺を今から縁側に投げ飛ばすと俺に向かってガンガン殺気をぶつけてきた。
「ウグゥッッッ!!!?」
兄さんの拳を腹に受けて、縁側から庭に放り出される。
「先輩!?」
兄さんの声につられて台所から出て来た風魔が、殴り飛ばされた俺を見て悲鳴を上げる。ハハハ、これくらい普通普通、未だ軽い説教だ。婆ちゃんはそもそも台所から出て来てない。このくらい良くあることだし、止められるのは爺ちゃんだけだからな。婆ちゃんは基本的に、爺ちゃんに判断を任せる放任主義だし。
「………
庭で正座して、頭を下げる。土下座は未だしない。
「ふざけるな!!何で俺が弟の尻拭いせにゃならん!!家訓の『最後までやり遂げろ』を覚えてないのか!」
顔真っ赤にして怒ってる兄さんメッチャ怖い。いや、俺も格好悪りぃと思うし、こうやってうだうだ考えてるのもダサいと思う、
あかりの助けになれるのは、兄さんに頼るしか無いんだよ。渡米経験があって英語ペラペラで向こうの土地勘も多少ある兄さんが適任で、もう兄さんにしか俺は頼れないんだ。
「俺一人じゃ、もうあかりを助けられ無い。お願いだ、兄さん、助けてくれ」
土下座をして頼み込む。兄さんからの殺気が一段と強くなった。常人ならもう気がおかしくなるレベルの殺気に、庭の木に止まってた小鳥がバサバサと飛び立ち、爺ちゃんが呆れたように溜め息を吐いた。
「心底お前には落胆したよ…………立て、キンジ。俺が介錯してやる」
底冷えする声で言われて、急いで今の位置から離れる。
離れて一瞬、そこにナイフが三本、《パパパンンンンンッッッ!!!!!!!》と音を立てて突き刺さる。音越えのナイフ投げとか、やっぱりうちの兄さんは怖いな。つか兄さんも『春水車』使えんのね、俺も急いで白雪との
…………うし、掛かったぞ、ヒステリアモード。
なるまでに少し時間が掛かったけど、兄さんはこの俺を真正面から殺す気で来るらしい。
武偵が殺人なんて、中国とかなら大丈夫らしいが、日本ですると犯罪だ。殺人の許可が降りる職もあるが、少なくとも武偵にはそんなこと許されない。だから兄さんも本気じゃないと信じたいが………………………大丈夫だよな?
「ふぅ………『羅刹』」
兄さんが身体の倒れる動きを加速に使う、遠山家の歩方『
兄さんの掌打に、強烈に嫌な予感がして、腰から下で『桜花』を使い、直ぐに後退して回避するが、兄さんも『地滑り』で追従する、兄さんは右拳を起点に、当身から投げ技に繋げようとするが、袖を掴まれた時に、逆に掴み返して組み合う。
「弟相手に殺気なんて、物騒だぞ兄さん」
体格が殆ど同じで、拮抗してた組み合いの力を、一気に抜いて兄さんの顔に頭突きをするが、兄さんも頭突きをしてきて、鈍い音と共に激痛が走る。
「今は、お前は弟じゃない」
兄さんの視線に耐えきれず、蹴り技で兄さんと距離を取ると、兄さんが左腕を少し身体から離した、俺も左肩に掛けてるショルダーホルスターから銃を抜こうとしたけど、兄さんの投げナイフの方が、一瞬速く俺の防刃の制服の上から、左腕を強打する。まるでバットでフルスイングされたみたいな衝撃が、左腕を襲う。
衝撃で思わずホワイトアウトしそうになる視界を、奥歯を噛み締めて耐えながら、銃を抜くのを止めて『桜花』で接近する。まだ近接の方が安全だ、音より速いナイフとか、当たればさっきみたいに視界が真っ白になる。銃弾じゃナイフの軌道を殺しきれないし、無理にでも近付いて近接戦に持ち込むしかない。体術はあかりとの特訓で、とんでもなく高レベルのものを身に付けられたんだ。
それにしても兄さんのナイフ投げはスゴいな、まるで初動が見えないぞ、気付いた時には目の前にナイフが迫ってる。『不可視の銃弾』のナイフ
背後を家に、兄さんを睨む。
「もう、庭がぼろぼろじゃないか、婆ちゃんに怒られる」
「死んだ後の心配は……するなッッッ!!」
背後の家にナイフが当たる可能性があるから、兄さんはナイフを投げずに『地滑り』で近寄ると、また右腕起点のコンボをしてこようとする。
「未だ未だ詰めが甘いな」
「ッッッ!!!!?」
上半身の対処に気を削がれていると、兄さんが蹴り技を出してきてバランスを思わず崩してしまう。
「『指固め』」
「………っつうッッッ!!!!?」
掴んでいた俺の右手の指を固めてきた!?
なんだこれ、指所か肘先から全く動かない!!
右手を兄さんの左手で固められ、兄さんの
「無理に動くと腱を痛める、そう固めた。これで最後だ金次、『羅刹』!!」
兄さんがそう言って繰り出してきた拳を、見て直感で分かった、あれを食らったら死ぬ、問答無用でもっていかれる。
明確に訪れる死に、過去の事が頭を駆け巡る。
小さい頃に兄さんと遊んだこと、小学五年生で初めてヒステリアモードを発動して、ちょっとした騒ぎになったこと。初めてなった相手は、カナだったっけなぁ。中学の制服姿が可愛くてつい。最後に、あかりの笑ってる顔が頭を駆け巡って………あぁ、これ走馬灯なのかと、まるで映画でも観ているような、他人事な感覚で思った。
それと同時に、あかりの泣いてる姿を思い出す。
「先輩!!!!」
風魔の声のお陰で、トンでいた意識が戻る。
助かったぜ風魔、俺は未だ死ねないんだ。
死ねない、まだあいつが救われてない、あかりに恩を返していない、あかりには救われたんだ、あかりにまだ、
視界がモノクロになり、俺の思考以外のあらゆるモノが遅くなる。急にクリアになった思考で、今の状態を認識する。『死際のヒステリアモード』、あかりの言ってたヒステリアモードの派生系。兄さんの拳という、明確な死に本能が反応して、覚醒したみたいだ。
止まった世界で今の状態の打開策考える。右手を封じられて、後退も出来ない、左腕はさっきのナイフのせいで少し痺れてる。体勢から銃を抜くのは無理、兄さんはどういう原理か、当たれば即死な拳を、鳩尾の上、心臓の真上に当たる部分に向けて放ってる。
選択肢を出せ俺、このままじゃ何も成せずに死ぬぞ!
ナイフで迎撃、ダメだ予備動作が遅すぎる、拳銃で何とかする………論外、今の兄さんは拳銃じゃ止まらない、それに住宅地で昼間っから銃声なんて出せるか、警察呼ばれるわ。
足技、固められてる右手のせいでバランスが取れない、もし足技が決まっても、回避出来ない可能性がある。そもそも上手くいかない可能性の方が高そうだ。
指固めから無理矢理抜け出す。
これも論外だな、骨なら未だしも、腱を痛めるのは不味い。俺の桜花は骨と筋肉を酷使する、必然的にその二つを繋ぎ止める腱は俺の急所だ、まさにアキレウスのアキレス腱、ジークフリートの背中といった所、変な傷め方してみろ、一生右手での高速戦闘が出来なくなる可能性すらある。
……………なら!!
「ッッッ!!!!!?」
それでも、兄さんの拳は速い訳じゃないし、『秋水』を乗せられる程体重移動がお互い出来ていない、体格もほぼ同じ俺達なら、
兄さんの拳に俺の音速を越え、弾丸すら置き去りにする拳を真っ正面からぶつける。本当なら兄さんの腕を完全に破壊する攻撃は、兄さんが直前で指固めを程いて絶牢を使って俺にカウンターを決めてきた。
「………金次お前、なんて速度で拳を、」
兄さんの絶牢を橘花を使って減速、そのまま殴り飛ばされた空中で、中国雑技団みたいな体をくるくる回転させる受け身で衝撃を殺す。
「兄さんの即死攻撃よりマシだ。それで兄さん、まだ納得してくれないか?」
お互い距離が少し離れて、睨みあってた時に、兄さんが呟く。
「……………………それだけ力があっても、逃げ帰るしか無かったのか?」
「あぁ、土台が既に違う。
俺が言った例えを、兄さんは微妙な顔して受けとると、至極嫌そうな顔して髪をかきむしる。
「休暇は延長だな、こりゃ大学になんて言い訳するか。」
それを聞いて、俺は思いっきりガッツポーズをした。
「よっしゃあ!!」
「スゴいです先輩!!」
駆け寄ってきた風魔と思わずハイタッチ、その後気付いて顔赤くしてそっぽ向く。なぜ俺は出会って一日目の女子とハイタッチなんて、ウゴゴ。ヒステリアモードがキレて普通の俺に戻ったせいで、女子に対して免疫が落ちている為、こういう事でも直ぐに気恥ずかしくなって誤魔化すような仕草を取ってしまう。
「何をやってるんだ」
いやぁでも、良かった良かった、兄さん即死攻撃してきて本気で殺されるかと思ったからな…………即死かどうかは勘なんだけど、さっき俺が兄さんに言った時に否定しなかったし、あの拳は本当に即死攻撃だったんだよな、多分。
「兄さん、さっきの兄さんの拳、どうゆう原理なんだ?」
「鎧通しの要領で、心臓の真上から、打撃で振動を心臓に直接当てて、心臓麻痺にする技だな。」
何て凶悪な、文字通りの即死技じゃないか。
それに気軽に鎧通しとか言ってるけど、それは拳法家の奥義の一つだ。習える道場どころかまず使える人間が皆無だよ。
「どんな状況で使うんだよそんな技、凶悪過ぎる」
「何を言っている、この技は部位欠損や外傷を残さず、食らった後も痛みを感じない、人道的な技だ」
「食らった後痛みも感じないって、何で分かるんだよ」
「俺が一度食らって体感してるから、それは間違いないぞ」
って、うちの兄は人間止めてるなと、つくづく思う。
風魔と二人して兄さんに微妙な目線を送ると、兄さんが気不味そうに言う。
「それならお前のあの拳、あれの方が危険だろうに、使ってる方も使われた方も」
話題をそらすにしては真面目なトーンで言われた事に、どう答えようか詰まる。
「あれは、その、そうでもしなきゃ追い付けないっつうか、あの技も盗んだものっつうか」
「まどろっこしい、あれは危険な技だと言うのは分かるな?」
「それはそうだろ、本来相手がアホみたいに強いか、人以外に向けて使う技何だから」
俺がそう言うと、兄さんが半眼で俺を見詰めてきた。え、俺何か不味いこと言ったっけ!?
「それをお前は俺に向けた訳だが」
あ………いやでも兄さんも殺意マシマシだったから
「兄さんも俺相手にバカみたいに殺気出して、即死技ばかり使ってきたじゃないか、ナイフとか羅刹とか!!」
「殺気はフェイクだ、いや、怒ってたのは確かだが。それよりお前が逃げ帰ってきたのが気になったんだ」
「ふざけんな、後からだったら何とでも言えるじゃないか!!」
こっちはガチで死の危険を感じたんだぞ!!
「あ、あの、御二人共に、少し落ち着いて「「少し黙ってろ(くれないか)」」う………はい」
横から話し掛けてきた風魔を黙らせて、兄さんと睨み合う。
だいたい最近の兄さんは、勝手が多過ぎるんだ。この前だって約束してたのに結局はあの女が選ばれて………いかん、怒りが沸々と湧いてきた。
すわ、このまま第2ラウンドかという空気をぶち壊したのは、我が家で誰も逆らえない最強の御方だった。
「あんた達、何やってんだい!!!!!!」
声に驚いて三人で声の方向に目を向けると、縁側の方から特大の怒気を纏った婆ちゃんの姿が見えた。あ、これダメなヤツだ。なんて思わず考える。
今日から、しばらく晩飯抜きだろうなぁ。
「ボソッだから言ったんですよ」
もっと詳しく言ってくれと、この時俺は強く思った。